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1962-03-15 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            永末 英一君            市川 房枝君    委員            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            堀  末治君            前田 久吉君            山本 米治君            原島 宏治君            須藤 五郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君   政府委員    日本専売公社監    理官      谷川  宏君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省関税局長 稲益  繁君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省為替局長 福田 久男君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    佐竹  浩君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○物品税法案内閣送付予備審査) ○酒税法等の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○関税定率法及び関税暫定措置法の一  部を改正する法律案内閣送付、予  備審査) ○租税及び金融等に関する調査(財政  及び金融一般に関する件)   —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案物品税法案酒税法等の一部を改正する法律案関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、以上の五法律案並びに財政及び金融一般に関する件について、大蔵大臣に対し質疑を行なうことにいたします。  質疑のある方は御発言願います。
  3. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 きょうは、せっかく大蔵大臣がお見えですから、大蔵委員会で審議している大蔵関係重要法案について若干質問したいと思いますが、その前に、少し国際収支の問題についてお尋ねしたいと思います。  従来、政府は、国際収支均衡回復、この問題については、大体秋ごろに国際収支回復をはかる、こういうことをしばしば言明されてきたわけなんですが、最近の事情から考えると、なかなか政府考えているようにうまくいくかどうか、相当疑問があるではないかというふうに考えるのですが、この点について大蔵大臣の所見をまず伺いたいと思います。
  4. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まず、三十六年度の見通しの問題ですが、政府見通しが、総合で七億二千万ドルぐらいの赤字だろうというのが今までの見通しでしたが、この一−三月の情勢が少し変わってきましたので、政府考えたよりも赤字カバーは非常に小さくなるだろうというふうに予想されます。  そうして、その傾向が三十七年度にどういうふうに続いていくかという問題ですが、御承知のように、一月、二月、三月もまだ十日までのものしか出ておりませんが、信用状ベースで見る経常収支の状態は、昨年に比べて非常な改善になっており戻すので、これは四方以後その形がはっきりしてくると思いますので、そういう点と、それからそのほかのいろんな要素を見ますというと、製品在庫は御承知のように相当ふえて参りましたし、機械受注から判断する先行きというものも、これは生産はもう落ちてくるという、そういう先行き指標ははっきり落ちてくる方向を示していながら、まだ生産そのものがわれわれが想像したよりも落ちていないというところに問題がありますが、これは私は、もうどう考えても、三月以降はほかの指標から見まして生産が落ちるだろうと考えております。三月以後、生産の鈍化というものがはっきり出てきませば、あとの点は今のところ大きい見通し狂いがございませんので、私はそのまま国際収支改善というようなものは大体見込みどおりに行なわれて、下半期全体を通じて均衡するという線は今のところはやはり確保できるのじゃないか。今まで考えておった見込みをまだ変更しなければならぬという事情には今ぶつかっていないと、こういうふうに考えています。
  5. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 三十六年度の国際収支の問題ですが、今、総合収支については七億二千万ドル以下に押えていくことができるだろう、こういうお話でしたが、この経常収支ですね、経常取引のほうでは相当大きな赤字になるんじゃないかと思うのですが、これの大体の見込み数字というのはどういうふうに考えていまずか。
  6. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経常収支の九億二千万ドルは見込みですが、これは大体この程度じゃないかと思います。今の輸入の工合ではこの九億二千万ドルが少しふえやしないか、もう少し赤字が多くなりやしないかと思われます。しかし、資本収支のほうは明らかによくなっておりますので、全体を通じては一億ドル以上のいいほうへの狂いが出てくると思います。
  7. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、やっぱり問題は、経常取引の面においてやっぱり均衡回復するということが私は根本的な問題じゃないかと思うのですがね。そういう意味で、政府のほうでは来年度の輸出計画において四十七億ドルの輸出をしたい、こういう計画ですがね、この四十七億ドルの輸出というものは相当困難な事情日本には来ているのじゃないかというふうに考えられるのですがね。そう簡単に、秋には国際収支均衡がとれるというふうに見込むことは無理があるんじゃないかというふうに考えるのですが、そういう点、どうですか。
  8. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、輸出の四十七億ドルは、今の情勢から判断して、このほうはできるのじゃないかという気がしております。で、十二月、一月、二月と、対米輸出というものは明らかに信用状の上ではもうよくなっている。一月は前年同期に比べても四割も伸びているということが信用状の上では出てきましたので、対米輸出が明らかに好転してきておりますので、これが四月以後にこの信用状数字が現われてくると思いますので、私はそこらから判断して、輸入が四十八億ドルがそれで済むかどうかの心配がありますが、輸出の四十七億ドルはいくのじゃないかという気がします。
  9. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 輸出輸入の面について、輸入の面については若干あとで質問したいと思いますが、今後日本輸出貿易拡大するという問題については、EECの問題をどう考えていくか、これが日本にどういう影響を与えるかという問題は、日本としても相当検討する必要があると考えるのです。最近の事情としては、東南アジアにおける入札等の例を見ると、やはり従来日本が進出しておった国々においてEECとの競争に負けておる例が相当多いのですね。そういうことから考えて、EEC発展日本対外貿易、特に東南アジアにどういう影響があるか、この問題についてはっきりとした対策を立てないと、日本輸出貿易に相当大きな影響があるのじゃないか。政府EECに対して接近するというような政策考え方を持っている、こういうのですが、その中身はどういうものか私はよく知りませんが、どういう方法接近するのかよくわかりませんが、いずれにしても、EECの動きというものを検討し、その対策考えないと、特に東南アジアにおける貿易というものは相当な影響を受けるのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  10. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) EECに対して私ども考えておることは、確かにEEC域外競争において相当これは問題が出てきまして、日本がよほどの国際競争力を今後培養していくという政策をとらなければ、いろいろな問題が出てくるというふうには思っておりますが、EEC自体との問題では、EECの中の各国別交渉をやって、日本への差別撤廃方向へ個々の国が進んでおりますし、昨年以来の協定によってもこれはお互い貿易はふえるという傾向に現在来ておりますし、現在たとえばオランダを例にとってみますれば、五割も一年間にオランダとの貿易は伸びているというように、EECとの接近方法について、今日本外交交渉を通じて非常に努力しているところでございますので、日本EECとの関係においては貿易は今後減っていくという方向にはございません。  問題は、EECの圏外におけるそういう競争についての配慮が特に必要になってくる、これはもうはっきりしておると思います。そこで、過般の入札の問題、これはいろいろございまして、金融の問題という面は非常に薄くてほかの要素が多かったのですが、しかし、そういうものに対抗する手段としても、従来プラント以外には輸出入銀行金融はやらぬという方針でございましたが、耐久消費財というようなものについても、これを金融のバックをして競争させることも必要ではないかというふうな事情が出てきたと私どもは判断しまして、今その点についての検討をしているところでございますが、根本的には、今後の対策としては、やはり関税率お互いに少なくするというような方向お互い貿易拡大する、それに耐えられるだけの日本国内産業体質を強化することによほどの力を入れなければいかぬ、もう最後の問題はやはりそのことに帰着するだろうと私ども考えております。
  11. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今、大蔵大臣お話のように、EEC自体日本との関係、これは一つ問題があると思うのです。もう一つは、域外、主として東南アジア等におけるEEC発展に対する日本対策というふうに、二つに分けられて考えられるわけです。  EEC日本との関係についても、大蔵大臣は非常に楽観しておられます。EEC自体の問題でも、関税引き下げ、そうして貿易拡大をはかり、いわゆる貿易の障害を取り除くために関税引き下げをずいぶんやっております。計画よりも相当進んでいるというふうな現状にあるわけですね。ところが、日本の場合、今度の関税定率法を見ても、今度改正になるのは百三十品目くらいありますが、そのうちで六十品目くらいは関税を上げているのですね。世界事情からいけば、アメリカ等においても関税引き下げについて大統領に権限を与える法案を出して、今審議されている。EECにおいても、すでに大幅な関税引き下げをしている。ひとり日本関税をまだ引き上げておるというふうな現状にあるわけですね。これは、関税の引き上げは貿易自由化対策としてやっておるという点では理解できるわけです。しかし、世界的な傾向からいえば、そういう意味日本は相当おくれているのじゃないか、今後の世界貿易場裏において競争していくという場合、日本関税政策一つにしても立ちおくれにあるのじゃないか。そういう点から考えると、なかなかEEC自体との関係において日本は決して有利な立場に立っていないのじゃないか。むしろ、関税引き下げが起こってくる。自由化はしなければならない。関税をそう下げてはいかぬ事情日本にあるわけです。そうEECとの関係においても、貿易が今後伸張するということを早急に期待することはむずかしいと思うのですが、どうですかね。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今そこが日本経済の一番悩みでございまして、自由化をとにかくしなければいかぬ、これははっきりしておりますが、自由化をするためには一時的に、最小限度に今私どもはとどめておりますが、関税をある程度上げるという方向によって解決しなければ、日本経済の実情から見て自由化に無理があるということは、もう御承知のとおりでございまして、自由化をするが、たとえば今の日本産業合理化計画から見たら、この合理化計画どおりにやっていけば、あと二年たてば国際競争力をりっぱに持てるのだという産業に対しては、二年間の暫定関税率をきめてこれに対処するというような方法も実際上はとらざるを得ないというようなことで、今度の関税率はそういういろいろの考慮をもっていじってございますが、こういう措置をとることによって自由化を踏み切ったあとで、すぐにもう長期的な問題としていま一歩関税を下げるということによって、初めてこのEEO国家経済との接近ができるのだと。それ以外にはできないというものへぶつかることが目に見えておりますので、やはり自由化は今言った形で一時的には関税を上げるという形で踏み切って、二段目にすぐそのあと関税引き下げてもなおかつ国際競争力に耐えられるという、この仕事に取りかかっていくという時期が私どもは重なっておるので、今後それをどういうふうにやるかが産業政策の大きい課題ではありますが、そうかといって、一度に低関税にまだ持っていくだけの体質改善ができておりませんから、やはり今言ったように、一時上げて、そしてその次に本格的に下げていくという二段がまえの施策をもって臨むよりほかには方法がないだろうと。私どもいろいろこの問題は苦労しておりますが、今のところそういうような踏み切り方をする以外にはないと考えております。
  13. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、われわれが政府政策を見ていると、何か場当たり的な当面の対策に追われて、少し先を見通し政策というものが欠けているんじゃないかというような気がするのですがね。たとえば、池田内閣になってから経済高度成長という看板政策を掲げて、そして設備近代化合理化、そういう体質改善をはかって国際競争に勝っていこうということで、踏み出したわけですね。ところが、その結果やはり輸入の増大ということになって、そうして今日国際収支の不均衡という事態が起きた。今度は国際収支の不均衡ということにあわてて、やはり金融の引き締めをやり、そうして設備投資を抑制していく、こういう措置に出ているわけですね。一つ一つ当面の問題を見ると、やむを得ないような理由があるようにも考えられますけれども、何か当面の事態に応待するというだけで精一ぱいだというふうな感じがするのですがね。自由化の問題にしても、自由化をやろうと踏み切って、自由化するためには日本産業体質を強化しなきゃいかぬという問題が起こってくる。しかし、今それだけの力がないので、関税を引き上げて、そうして国内産業も保護しなければならない。確かにアメリカ西ヨーロッパ諸国工業水準に比べて日本工業水準は立ちおくれておる。そういう事情が相当困難な立場日本を追い込んでいるのではないかというふうに考えるのですがね。  ですから、私どもは前から、アジア東南アジアを含めて、アジア地域との貿易拡大ということを相当強く主張してきたわけなんです。しかし、これは特に中共等の問題は、政府の、われわれからいえば施策が誤まっておるために、一向進展しない。東南アジア地域においても、東南アジア地域外貨の不足というふうないろいろの事情があって、なかなか貿易が伸びない。こういう事情になってきていると思うのですがね。  ですから、日本貿易拡大、これは私が言うまでもなく、日本資源の乏しい国です。したがって、その資源は海外に仰がなければならぬという意味で、諸外国に比べて日本の場合の貿易重要性というものは、非常に大きいと思うのですね。ですから、政府としても一貫した政策というものを立ててやっていかないと、あっちにもこっちにも破綻が来て、その破綻をつくろうということで精一ぱいだということになるのではないでしょうか。大蔵大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 設備投資行き過ぎというような問題も、やはり根本的には日本自由化を急いでおるという、また急がなければならないということを背景とした一つの現象であって、日本ほんとう自由化をするということになりましたら、どうしてもここで設備合理化近代化も必要であって、ある程度の設備投資は行なわれなければならないのであるから、設備投資行き過ぎたという中には、これはもうやむを得ないものを持っておると私は思うのです。  しかし、これが行き過ぎたことによって国内需要がいたずらに大きくなり、これが国際収支を悪化させるもとになる、輸出を減退させるもとになっておるのであるから、この調整をまた私どもがやって、押えて、一見矛盾した政策をやっているようですが、行き過ぎを押えるというだけであって、基本的には自由化に備える設備投資だけはここで相田無理をしてもやらせなければならないという要請があるわけですから、ことしはほんとうにそういう必要な設備投資はやらせる。ただ、国内需要の問題で、こう各企業競争して水準が上がるものじゃなくて、同水準競争による設備拡張というものはここですっきり押えてしまうというふうに、選別的な押え方をやる。この点は、去年は六月から始めたのですが、少しおそかったもので、ことしは四月に入ったらすぐ各社計画を出させて、これは待てとか、これは必要だからと、促進させるものと、押えるものとの吟味を四月から始めたいと私ども考えておりますが、そういう形によって必要な設備投資はどんどん促進させるが・待たせるものは待たせるで、形というやはりむずかしい問題があっても、もうこの自由化はできるだけ早く実現するという方針でいくよりほかはないと思うのです。  少し日本経済界が甘過ぎて、温室経済の中に今までなれ過ぎていましたので、何か問題があったら、それを理由に伸ばさせよう伸ばさせようという空気がともすれば出てくるのですが、これが一番いけないことで、自由化方針を動かさないでそういうことを考えておったら、もう国際競争に負けるぞということで、はっきりと経済界にもその決心をさせるということを今怠ったら、私はもう輸出振興のどうのこうのと言っても、いろいろなことを言っても、目の先じゃなくても、長期的な観点から、これは国際競争に負けることははっきりするのであるから、当面の輸出振興策振興策ですが、この必要な設備投資はここで相当いろいろな困難があってもやらせて、不必要なものはみんな押えるという方向でここを切り抜けていくよりほかに方法がないんじゃないかと思います。
  15. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、設備投資についても合理化計画どおりやっていく、こういうお話ですが、これは当然な考えであると思うのですが、ただ最近、事業大型にする、いわゆる合併とかそういう措置によって大型にして、いわゆるEEC国内において今行なわれているような資本の合流、企業大型化日本でもやっぱりそういうふうにしなければならぬという意見が出ておるようですが、これについてはどういうふうにお考えですか。
  16. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは私個人の意見ですが、私の意見としては、必ずしも大型化は要らない。しかし、今度は経営管理合理化ということをここでどうしてもやらなければならぬのじゃないか。小型でもこれがやれるのならいいのですが、事実上むずかしいとすれば、大型化によってこの経営管理合理化をやったほうがやりいいという部面がございますので、そういう意味において大型化一つ方法だと考えています。で、最近、私どもが各事業家に会っていろいろ聞きますというと、事業家自身がみんな今自覚してきていることですが、技術外国とほとんど同じです。同水準に行っている。使っている材料が大体同じだ。そうして日本のほうが労働賃金が安くて、なぜ日本製品コストが高いのか。これはここで十分考えなければいかぬというので、各社別にこの問題の研究日本事業家もようやく入り出しているようです。入った結果は、もう経営管理の点において、ここで相当刷新的な考慮を払わなければ負ける。技術が同じで、材料も同じで、ほとんど条件が同じであって、それでコストが高いというのは、日本経営管理が全くむだが多過ぎる、これをここでメスを振るわなければもうだめだということを、ほとんど今各事業家も自覚してきておるところでございますから、こういうものをやるのにはどうしてやったらいいかといったら、合併やなにかで大型化することによったら、これは非常に大きい改善になる部面が私はあるのじゃないかと思っております。
  17. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 大型化の問題ですね、これは日本アメリカヨーロッパEECとは非常に事情が違うと思うのですね。むしろ日本の場合は、日本の特殊的な事情ですね、いわゆる特殊的な事情といいますか、日本独自の独得な産業を伸ばすというふうな面をもっと考慮する必要があるのじゃないかと思うのですがね。日本人は諸外国に比べて、精密な工業、これについては十分太刀打ちできるのじゃないか。必ずしも大型化というふうな面にとらわれることなく、やはり日本人の特質的な、何といいますか、そういう面を生かしていくということ、たとえばトランジスターにしても相当外貨をかせいでいるわけです。最近は、時計にしたって、造船にしたって、日本として世界に伍して決して遜色のない、そしてそういう競争力に耐え得る産業というものがあるわけですね。そういう面は必ずしも大型化する必要はないと私は思うのですがね。むしろそういう面の内容の充実をはかっていくというふうな点で考える必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  18. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) むろん、大型化の利点ということはございましても、産業の性質によって大型化そうとしても化せないものもございますし、たとえば機械工業のごときは、中小企業でも特殊な機械を作る専門企業になるというようなことによって生きる部面というものは十分出てきますし、また威力を発揮する部面もございますし、小型で専門化していくという方向、それから産業特殊性を生かして中型が最も能率を上げるという産業もあると思いますので、これはもう一がいには言えないと思います。
  19. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、私は前から思っていることなんですが、一つは、やはり日本としては技術水準を高める、それからもう一つは、科学開発をする、こういう面にもっと力を入れるべきじゃないかと思うのです。これはもう一朝一夕でなる問題じゃないでしょう。いわゆる研究施設充実、さらにはさかのぼって日本教育において技術とかあるいは科学開発というふうな面が重視されて、そうしてそうていくということで、外国に負けないというそういう態勢を作るのでなければ、ずっと将来を見通してとても太刀打ちできないのじゃないかと私思うのですが、そういう研究体制の確立ですわ、またもっと根本には教育体制ですね、そういう面に、科学開発技術開発等にもっと重点を入れて考えるべきじゃないかと思うのですが、大蔵大臣にお尋ねすることには少し範囲が外へ出ているようにも思いますけれども、しかし日本としてはそういう面でもっと研究すべきじゃないかと私、前から思っていますが、どうでしょう。
  20. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ実際をいいますと、今技術導入あとを追ってそちらのほうの態勢を整えていくというところへ実際は入ったばかりで、昨年、ことしの予算を通じても、ようやくそういう方向配慮を厚くして私ども予算の問題でも気をつけたのですが、ようやく今そこへ入ってきたという段階だろうと思います。ですから、今後それをさらに強くしていかなければなりませんが、それをやっておったのでは日本産業国際競争力で間に合わない、戦争中の科学ブランクが十年以上あるのですから、このおくれを普通のことで取り戻すことはできませんので、もうここで外貨を少し使っても外国の今できている技術水準だけはもうみんな取り入れて、そうして世界的な技術水準までに一応日本産業を持っていって、それからそれをブランクの間のつなぎをあとからやるという形になったのですが、これはまあやむを得ないのじゃないかと思っています。たとえば、旭硝子から聞たのですが、ガラス繊維引き出しかま一つ研究で長い間やって、ようやく一応のところへ来てみたところが、もう戦後外国技術のほうが進んでいる。この技術を導入しようとしたら、一年の研究費だけ出してくれたら提供しよう。一年の研究費というのですから、わずかだと思ったら、三百億円だったという。三百億円の研究費をつぎ込んでやっている会社の製品は、こちらで少しぐらいの研究をしても、やればやるだけ年々差ができるだけで、これはどうにも追っつかぬということで、かぶとを脱いでその技術と組んでやるという決心をしたという話をしておりましたが、そういうふうに一応ここで日本外国水準に達するだけの技術導入技術提携をやっておいて、そうしてあとで国産研究がそこに追いついて、今度はは自分の力で技術水準を伸ばしていくというところへあとから追いつかせるという政策をとらざるを得ないと私ども考えて、これをできるだけ大急ぎで追いつく態勢をこれからとりたい、こういう考えであります。
  21. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 技術導入、大いにやらなければなならぬ、これは当然ですが、それだけにたよっておっては、いつまでたってもこれは世界競争場裏で確固たる地位を占めるということがむずかしいのじゃないかと思うのです。だから、技術導入は大いにやらなければいけませんけれども、やはり研究体制というものは一朝一夕にできる問題じゃない。これがやはり五年なり、十年なり、二十年なりとかかる問題です。ですから、やはりそういう面を、一貫した考え方としてやはり国としてもとっていくべきじゃないか。それから、研究体制のむだ等も省いて、合理化してやってということが私は必要じゃないかと、こういうふうに言っておるわけです。そういう点において、これは日本の場合は相当欠けているのじゃないか。研究施設研究予算  一つ見ても、ソ連、アメリカ、国の大きさも違いますけれどもお話にならない。私、今数字は持っておりませんが、前に調べた記憶はありますが、問題にならない、そういう面につぎ込む予算というのは。ですから、こういう面にもっと本格的に力を入れて、しかもこれは三年、五年で役に立つという性質のものではない。けれども、根本的にはそういう面に力を入れていくことが将来伸びる基礎になるのじゃないがというふうに思うのです。
  22. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり基礎科学、基礎部門の研究が何といっても先でございますので、国においてもっぱらそういう方向研究費をふやすということをやると同時に、民間の研究投資がもっと伸びなければなりませんので、せいぜいそのほかのいろいろな配慮をしておるわけでございますが、二、三年前に、こういう措置をとったら、日本研究投資及び民間の研究投資はある程度進むだろうと考え数字とはだいぶ違って、去年一年あたりの研究投資は、私どもの計算では二千億円くらい行なわれていはしないかということで、非常に日本研究投資というものは想像以上にこの一、二年ふえておるということは事実でございますので、この調子でいったら、私は当初十カ年計画で予定したものよりははるかに研究速度というものは早まりますが、ようやくそういう見通しができるところは確かに今来ておると思います。
  23. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 時間の関係もありますから、もう一つこれに関連してお尋ねしておきたいと思うのですが、政府貿易政策、これは主として自由世界、まあ大まかにいって自由世界という範囲内での考え方ですね。最近はソ連との貿易も漸次拡大するという方向に向いておりますけれども、やはり何といっても中共との関係改善するということがなければ、これは日本の将来の貿易拡大、通商拡大にとって非常に大きな問題であると私も考えるのですが、この問題については、やはり政治的な理由でどうもうまくいかないのです。こういう状態でいっては、私は行き詰まってくるのじゃないかと思うのです。もう少し中共の問題を真剣に取り組んでいくという考えはないのですか。
  24. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和三十二年でしたが、私が通産省に関係しておりましたとき、向こうとのいろいろな話し合いをしまして、結局政治と経済は分けて考えていい、可分という主義のもとにお互い貿易を進めようというような方向でやって参りまして、ずいぶん貿易制限も裏で撤廃いたしましたし、いろいろなことをやって輸出入一億ドル近いところまで順調にあのときは伸ばしたのですが、あのあと中止になって、今日まで貿易問題が進展していないということですが、それじゃ日本にとってどうかといったら、これは貿易は近場とすることが最も有利であって、原料を輸入するにしましても、との貿易が一番重要であることははっきりしておりますので、日本にとって貿易したいということははっきりしておりますし、中共側から見ましても、これはほかの国との貿易もやっているようでありますが、一番近い日本からの輸入が中共の建設を助けることははっきりしておりますので、向こうでもこれを入れない理由というものはないと思うのです。そうすれば、結局、問題はやはりあの三十二年当時に両国が返って、政経不可分ではなく、政経は可分だという方針に向こうがなってくれるならば、日中の貿易というのは、またあのときのような状況で急速に伸ばすということは可能だろうと思います。欧州諸国に対しては政経可分という立場貿易をやっているが、なぜ日本に対しては不可分だというふうにからむかということが問題であります。これはわれわれの努力の足らぬというところもあるかもしれませんが、この問題はそういうもっと大きい立場に立って解決する以外には打開の方法がともかくも現実にないのでありますから、私はどうにもならぬと思っております。
  25. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 政経可分とか不可分というような、抽象的な言葉では、明確にならないと思います。やはり政治的に中共を刺激するような政策日本はとり過ぎておりますね。近い例をいえば、韓国との交渉ですね。韓国と交渉をするならば、北鮮ともやったらどうか。北鮮はもうたな上げで、韓国とだけやる、こういうやり方を、一々中共側を刺激するような政策というものを進めている。もう少し日本立場としても平等に考え、同じような立場考えるというふうにやっぱり考え方を変えないと、これはいろいろな疑惑が起こってくると思います。そういう意味で、政経というものを全く切り離して、日本国内の政治に他国が干渉するということはないと思いますが、一本のとっている外交政策が中共を刺激するような政策をとっておりながら、貿易をやっていこうとしてもうまくいかない。やはりもっと融和した政策をとるべきじゃないかと思うのです。これは大蔵大臣にあまり質問しても、まあ当を得た質問にならないかと思いますので、私は大まかにいって、初めに言ったように、いわゆる社会主義国家との経済交流にもっと本腰を入れて考えたらどうかというこういう問題にしぼってお伺いしておったのですが、それはうまくいかないということは、やはり日本政府としても反省すべきじゃないかということ、こういうふうに結論的にお尋ねをします。
  26. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) われわれは共産圏との貿易を支障なくどんどん今お互いに伸ばし合うところまでいっているし、政治と経済をある程度分けた考え方でやっていくことも全くこれは可能であって、現実の世界がそういう形でお互いの交流をやっているのですから、中共だけがこの問題は切り離せない、たとえば承認を前提にしなければこの貿易協定はしないのだとかいうような問題でつかえているということは、これは私は両国の不幸であって、どちらがこれは考え直すべきであるかと申しましたら、今のところでは、この問題の停滞している原因というものは、とにかく私自身は明らかに中共側にあると思っています。三十二年度にはこの問題を非常に本気になって、そこらをうまくやって貿易をあそこまで伸ばしてきた責任者ですから、私はあのときを今考えて非常に残念に思っていますが、やはり向こうの態度いかんによっては日中貿易は伸びる要素を非常に持っているのですから、今の態度を向こうで若干でも変えるということでしたら、これはすぐにも私はうまくいくだろうと思っています。
  27. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは中共側にあるというふうな判断は、私どもから見れば間違っていると思うのですよ。むしろ日本政府側にもう少し反省すべき点があるというふうに思うのですがね。この点はさっき具体的に日韓会談等を話したわけですが、非常に片寄った外交政策をとっているというところに問題があるのじゃないかというふうに考えるのですが、日韓会談やるなら、なぜ北鮮との関係改善をやらないかという問題が起きるでしょう。これは外交問題になりますから、やめておきますけれども、私は大蔵大臣に要望しておきたいことは、社会主義国家との交流ということをもう少し政府として考えてもらいたい、こういうふうに要望しておきます。  非常に一般的な質問をしましたので、次に議題になっている税法関係の問題について質問したいのですが、私だけやっているとどうも工合悪いと思うので、永末さんにやっていただいて、そうしてまた続けてやります。
  28. 永末英一

    ○永末英一君 私は、政府考えている減税という意味合いと、それから今問題となっております資金事情の問題、二つをひとつ大臣にお伺いしたいと思います。  第一の減税ということですが、ことしもそれぞれ、間接税は別として、直接税でもいわゆる税率を変えて減税したという発表をしております。そこで、第一に、大蔵大臣は税率を変える、つまり免税点を引き上げたり、あるいは累進税率に該当していくそれぞれの所得層を上げるということによって、それが減税されたという。それだけが減税だとお考えですか。
  29. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どものやった減税というものは、要するに国民の租税負担を軽くするということでございますので、それに瀕するものは全部減税だと思っております。
  30. 永末英一

    ○永末英一君 租税負担率について、この前の本会議で質問したのですが、あなたのところの総理大臣は、租税負担率だけで増税か減税かを判定するような考え方は十年ほど前にやった、今さらそんなことをとやかく言われても古くさい議論であるかのごとき答弁をされた。ところで、租税負担率は現実にここ数年年々ふえているわけです。昨年の当初予算を組まれたときの租税負担率とそれから今度来年度の当初予算が提出されたそれにおけるあなたのほうで出された計画による租税負担率は明らかに上がっているといたしますと、大体これから年度末をもう一年見込めば、去年よりは、いわゆる本年度よりは来年度のほうがやはり租税負担率は上がってくる。つまり、租税負担率がだんだん上がっていくことは上がっていっても、やはり減税をしたと言われますか。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 租税負担率は上がっていっても、私は減税だと思っております。租税が重いか軽いかということは、結局国民の所得と、所得水準、消費水準関係することでございまして、それとの関連においてこれは判断しなければならぬ問題だと思います。年に百万円とる人に一割負担がかかったということと、十万円しか所得のない人に一割負担がかかったということは、負担率は同じ一割であっても、実質が全く違うのでございますから、したがって、国民所得が大きくなっていくに従って、租税の負担率というものが、率そのものが上がっておっても、実質的にはこれは負担の軽減であることははっきりしておりますので、負担率では租税問題を、税制問題を負担率だけで論議するということは私は間違いじゃないかと思っております。
  32. 永末英一

    ○永末英一君 所得の多いところで、そうしてその多いところで税率が変わって、いわば国民が処分し得る部分の中で消費に充てられる部分がふくれてきておる。それがそのときの物価水準に照らしてもいわゆる消費生活の内容構造が豊かになってきているという場合には、租税部分が上がっても、これは減税したのだ、こういう工合に大蔵大臣考えられるわけですね。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう場合でも、もし従来の税率であったら幾ら税を負担するかということと、それをその税率を変えたりいろいろして、減税措置をとったら幾ら減税になるかという問題でございますので、何にもしなかったらどうか知りませんが、そういう所得が上がってきた場合に、従来の税率でいったらこれだけ国民が税負担をしなければならぬというものを、この税制の改正をやってその減税というものをやれば、やっただけはこれははっきり減税でございますので、その結果負担率で、今言った国民所得に対する負担率とかいうようなもので計算した場合に、負担率がかりに上がったにしましても、減税という措置をとれば、それだけははっきり減税でございますので、減税をやるということと、負担率がどうなるかは、これはまた別の問題だと思います。
  34. 永末英一

    ○永末英一君 大蔵大臣お話を聞いておりますと、やはり減税というと、法律上税率をかけてやっているんだから、明らかにそれはそろばんではじけば前年度税率と比べると減っているのだから、減税だと言いたいような気がするのです。  ちょっと方角を変えまして、私は資料を持っておりませんが、同じ政府の部内である経済企画庁が、国民所得白書を出しました、三十五年度が一番新しいのですけれども、その中で個人の消費支出は、三十三、三十四年度の比率、それから三十四年度と三十五年度の比率をとった場合の百分比で表われてくる数字と、それから個人税及び税外負担、これは言うまでもなく税に対する負担でありますけれども、その負担との率を発表されたもので拾いますと、消費支出は三十五年度が前年度に比して、前年度が前々年度に比したものに比べますと、一一一・九%に上がっておる。ところが、その負担のほうは一二八・七%に上がっているという数字があるわけです。私は不幸にして個人税及び税外負担の内容をよく知りませんけれども、片一方租税負担率の上昇率から考えて、つまり消費水準の向上よりは政府が税金あるいは税外負担として個人に与えている負担の多いさのほうが三十五年度は大きかったということは、これはあなたのほうが、政府のほうで発表されておると思うのです。そういうような構造をとつておっても、やはり——ことしはまだわかりません、統計ございませんから。そういう構造がことしの税法でとられても、やはり大蔵大臣は三十七年度も減税したと言われますか。
  35. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今言ったとおり、負担率と減税の問題はさっき言ったとおりだと思います。
  36. 永末英一

    ○永末英一君 私が最初に申し上げたのは、所得の多いところでは、いささか税率が、つまり税負担分が大きくても、消費のために支出をする部分がふくれて、それによって国民の生活に受ける、言葉は悪いですが、受益部分が大きくなっている、だから、痛くないだろうから減税したと言えるというお考えのように思うのです。今出しましたのは、これは一般的な平均水準ですから、よくわかりませんけれども、明らかに負担部分が消費の伸びよりは大きくなっておるということになれば、国民にとっては前年度よりは痛くなっておるという工合に感じておると思うのです。私は、その減税というのは、国民にとっては、日常生活上無理やりにやはり税金等の形で政府が取り上げている、その取り上げられるものの痛さが、昨年とことしと比べてことしのほうが少なければこれは減税と思うし、痛さが強ければこれは増税と思うだろうと思うのですけれども、私の考え大蔵大臣は賛成されませんか。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 去年よりことしが楽になったかどうかという意味の主観の問題になりますと、これはいろいろあると思いますが、減税による税引きの個人所得が実質的にどれだけ増加しているかという一応の私どもの推算で見ますというと、三十五年度より三十六年度の方がはるかに実質個人所得の増加がある。たとえば三十六年度で七百億以上の増加と見ておりますが、これが三十七年度の今度の減税をやることによって九百億近い実質の数字増加があるというふうに推算されますので、これは減税によって事実上それだけの実質所得の増加というものがはっきり出てくるのですから、これは各個人から見たら主観的に皮膚にすぐ感ずるかどうかは別としましても、これは減税によってはっきりこういうことになると思います。
  38. 永末英一

    ○永末英一君 私は、痛さというような一つの主観的な価値判断に関連する言葉を出したので、そういう心理的な問題だとお取りになったようですが、そんなことを申しているのじゃないのであって、やはり経済的には数字で出てくる問題で判断をすべきだと思うのです。今、大蔵大臣の言われた数字の中には、二つの意味合いがあると思います。一つは、やはり現在の日本国民の中で、生活水準と所得とを合わした場合に、やはり低い層の中で今われわれが課されようとしている税金がどんな意味を持つかということが、私は一つの問題だと思います。もう一つは、先ほどから繰り返しておりますけれども、やはりあなたの方の所得倍増計画で一般的に物価水準が上がる、あるいはまた暮らしの水準が上がってきておる、その水準と一それは数字に出てくるものです。それと、今われわれが与えようとしておるこの税金の負担の度合い、これの勘案をしていかなければ、実質的な減税か増税かの議論は出ないと私は思いますが、まず第一の点で、よくいわれることでありますけれども、税法体系が違うのであまりどうもいい参考にはなりませんが、戦前九十万人程度のものが直接税を負担しておったと。今は、まあ戦後はシャウプ税制当時にめちゃくちゃに国民に税金をかけたのでありますけれども、今だいぶ減って参って一千万人程度になっておる。そういう大きないわば大衆課税、いわば課税を支払う底辺の人に少し、二万円ぐらいの免税点を上げました。しかし、そういうやはり税金をかけなくちゃならぬということについて、大蔵大臣は今の減税論に関連してどうお考えですか。
  39. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 戦前の昭和十六年を見ますというと、国民所得が、個人分を見ますというと、三百一十六億、所得税の額が十五億八千五百万円ということで、比率が四・四%という所得税の負担率がこれに出ておりますが、これをたとえば本年度の昭和三十六年度で見ましたら、個人分の所得が十一兆一千百十六億六千万円、所得税が三千六百六十三億円、この個人の所得と所得税額の比率は二・九%ということになって、同じような見方をしますと、三十五年度が三・四%、三十四年が二・八%、三十三年が三%、二十九年が四・七%、二十五年が六・五%、昭和二十六年が一番高くて一〇・二%というふうになっておりますので、こういうところから見たら、国民所得に対する所得税の負担比率というものは、この三十六年は今までで一番下がっておる、こういう数字になっております。
  40. 永末英一

    ○永末英一君 それは私が先ほど質問したときに答えてもらえば、まあちょっと似通った答弁だったと思いますが、今私が御質問申し上げているのは、その話ではなくて、一番低いところ、つまり一体政府は月収三万数千円あるいは四万円程度というようなところまで直接税をかけて、財政収入をはかっておる。ところが、まあ戦前は、先ほど申し上げますように、租税体系は違いますけれども、あまりそういう低いところは相手にせずに、一応財政が組まれておった。ところが、現在そういう低い所得者のところに税金をかけている。これは諸外国と比較をしても、非常に最低限は低いわけです。そういうことをなぜやっておるかということをお伺いしておるわけです。
  41. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 計数に関する問題でありますので、申し上げますと、一つは、課税最低限は昭和十五年より相当上がっております。御案内のとおり、これは実質額で換算いたしますと、昭和二十五年、二十七万、平均所得でございます。今日、三十六年が三十九が八百七十円、それから今度の改正で平年度四十一万四千円でございます。したがいまして、相当上がっているということは言えるわけでございます。  ただ、納税人員がなぜこんなにふえたかということでございます。これはもっぱら所得分布が変わってきたというところに最大の原因があると思います。と申しますのは、過去の、今わかっておりますのは昭和九年ないし十年の税制の構成比率でございます。が、二%の人員、今日の貨幣価置で玉百万円以上の所得を持っているわけでありますが、この人たちが二・三%でありました。これが当時、所得税のうちの五七%を納めておったという事実があるわけでございます。したがいまして、あとの九八%の人員があとの四〇%を受け持てば済んでおった。今日この五百万円以上の人員というものはもうごくわずかでございまして、〇・一二%程度でございます。これの受け持っている税金というものはごくわずかでございます。で、そういう意味で所得分布が全く変わっておりますので、それに合わせまして税体系ができておる。ただ、課税最低限は、先ほど申し上げましたように、戦前よりは上がっております。ただ、その戦前に比較いたしましても、昭和九−十年平均に比べますと、当時は七十万円程度でありましたので、これは下がっておる。現在のほうがまだ低い。これはよく考えてみますと、当時のその一般会計の歳入歳出を租税で全部まかなうということにはなっておりません。その当時は三〇%以上のものを公債でまかなえばいい。残ったものを税でもって配分しておったのであります。こういう今の歳入歳出を何でまかなうかという問題と、それから所得の分布が全く変わりました関係で、今のような形になっているわけでございますが、最低生活の人に関する限り、昭和十五年、まあこれが抜本的な改正をやった年でございますが、それに比べまして、すでに実質で平均で十四万円かた上がっておる、こういう事実でございます。
  42. 永末英一

    ○永末英一君 つまり、まあ戦前まで比較をする必要はないと思いますが、戦前の場合には、今御説明があったように、租税だけが財政支出に見合う収入の階層ではなかった。公債部分が非常に多かった。それは一体どういうことを意味しているかというと、あの当時の日本経済構造の中で、国家の支出をまかなうものはいわば非常に所得の多い者であった。公債は零細所得者が購入したことはないと思うのです。ところが、現在所得分布が変わったのだとおっしゃいますけれども、実際日本の国民大衆のほとんどが、戦前には経験しなかったような税金を課されている。こういう構造になっている。それで、現在大蔵大臣は大衆課税をやっているということになりますね。どうでしょうね、その考えは。
  43. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今主税局長が言いましたように、ただいまでは八五%以上、歳入の九〇%近いものを税でまかなっている。当時準三八%、あとは公債のほうがむしろ比率が多くて、租税では三八%しか……。そういうときでございますから、したがって、所得税の負担というものも、これは一定の収入者以上ということで済んでおったと思うのですが、そういう意味から見ましたら、今これは大衆がみな負担しておって、所得分布が変わったために、国民の相当大きい部分が、当時と比べて、租税の負担者になっているということは、これは事実でございます。
  44. 永末英一

    ○永末英一君 まあ今はそうお認めになったので、先へ進みますが、もう政府の所得倍増計画というものは、大蔵大臣よく御存じのとおりに、日本経済生産力を上げるというので、設備投資を中心にして、そういうところにいわば資金の注入をやって、生産力の倍増計画をやっていく。ところで、そういう形で日本経済に金を落としていきますと、今まででも、最近十年間の経験でも、所得分布は、先ほど主税局長のお話しのように、非常に変わってきて、ますますこれから変わってくるのではないか。その変わってくる来方が、たとえば所得の伸びと租税収入の伸びというものと比較いたしますと、現在の税率で、今までの経験によりますると、まあ租税の弾性値が大体一・六ぐらいになっておる、こういう工合にあなたのほうの発表で言っているわけでありますけれども、したがって、これから所得倍増計画を進めるについては、何億程度減税したというようなことが問題ではなくて、やはり抜本的に、今あなたの盛っておられる累進税率というものについて、累進税率だけが問題ではございませんが、少なくとも累進税率について所得倍増計画に見合った大幅な改編を考えるということでなくては、やはり今申しましたような大衆課税が残っていけば、苦しむのは、やはり非常に多くの人々が苦しんでいくのではないかと考えられますが、そういう御用意があるかどうか、伺います。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は長期計画に伴った国の歳出がどういうふうになるかということに左右される問題でございますので、税をそう長期計画的に見通すということは、なかなかこれむずかしい問題だろうと思いますが、方向としては、やはり一応そういう見通しはわれわれとして描いておかなければいかぬ問題だと思います。
  46. 永末英一

    ○永末英一君 何かよくわからぬ答弁ですが、所得倍増計画では昭和四十五年度における財政収入額が算定されているわけです、目標として。したがって、その財政収入額は非常に大きな額になっている。それなら、大蔵当同としては、その財政収入をどうやってとっていくかという計画がなくては、あんなものは計画だとはわれわれは思えないわけであります。したがって、その場合に一番われわれが心配しますのは、あなたのほうの所得倍増計画に賛成しているのではありませんが、今のような租税体系でやられますと、大衆は絶えず増税に悩まされる。政府が少しずつの税率を負けて減税だと言いましても、実質的にはやはり今申しましたようにどんどん経済水準が上がってくれば、やはり減税でないという感覚も持たれる。そこで、大蔵当局としては、ことしは所得税に関する、手直し的な意味でしょうけれども減税をしたと言われますけれども、もう少し長期を見通したら、まだわれわれとしてはこんなものでは不十分だと思いますが、これから一体どうやっていくのだという計画ぐらいはお持ちにならぬと、一体どうしてわれわれを昭和四十五年京で引っぱっていってもらえるのか、非常に不安なんです。そういう点をお伺いしたいわけです。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この長期計画から見ましたら、年々の国民所得はどれくらいを見込むかという見込みは大体ございますので、それに合わせて、国の経費の施策費のふえ方というようなものも大体長期的な見通しは一応は立てられます。で、国民所得がふえれば、税のほうはこれは累進課税でございますから、所得の伸び率よりも税の伸び率のほうが多いんですから、そこで施策経費のふえ方とのからみ合いで見ますというと、一応減税措置というものはほとんど年々これはやらなければならぬという方向だけははっきり考えられますが、そのときに、さっき申しました負担率との関係で、国民所得の上がるのに従って負担率を一定にするということは、これは考えられませんし、所得水準の上がることに応じて負担率というものは少しずつ上がっていくべき私は性質のものだろうと思っておりますので、そこらを調整した一応の長期計画は、立てればこれは立てられますが、税のほうからだけそういう計画を先に立てておくということは、これはむずかしいことだと思います。
  48. 永末英一

    ○永末英一君 税の計画が片一方見合わせなければ、国の財政収入に対する見込み額も僕は立たないと思うのです。なぜかならば、今まで発表されたところでは、一応現行租税体系というものを見合いながら、そして片方には国民の租税負担率の大体のめどをつけながら、そろばんをはじいておるのだろうと思う。したがって、国民全部の所得の伸びというものがどのように国民の一人々々の肩に落ちかかってくるかという、落ちかかり方のところを先ほどから問題にしているのであって、それならば、やはり租税体系に対する何らかの税収入目標というものをあなたのほうで立てていただかなければ、私どもは毎年々々今度はどうなるんだろうという心配をせざるを得ない。累進税率はやはりどんどん変えていきますとかなんとか言うてもらわないと、こわいですね。どうでしょうか。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一応のそういう計画といいますか、見通しといいますか、そういうものは持っておりますが、倍増計画そのものが実際が変わってきますので、税から見たそういう見通しとか計画というようなものも、立ててもそのとおりにはいきませんから、結局は年々状態を見て、そのときどきで税の調整をやっていくという方法よりほか仕方がないのじゃないかと思います。
  50. 永末英一

    ○永末英一君 所得倍増ということで、国民のふところ工合がふくれるような幻想を与えられる。取られるほうははっきりしておらぬというのでは、どうも片手落ちだと思う。こういうものが選挙スローガンになるのは、はなはだ涙が出るような悲しい思いがするのでありますけれども、ちょっと数字のことでお伺いしておきたいのですが、本年度の自然増収がもうすでに見込まれておると思いますが、年度末ですから。そこで、法人税は別にして、個人の所得税の中でどの階層がふくれたかという数字があれば、ちょっとお聞かせ願いたい、所得階層別で。なければあとでけっこうです。
  51. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まず全体で申し上げますと、所得税の三十六年度の当初予算は三千六百六十二億でございますが、これが実績見込みでは四千七百三十九億程度になるであろうというふうに考えております。で、これに対しまして、現行法による収入見込み額は五千六百三十億でございまして、そこで、改正による減税が、減税プロパーが四百三十二億、税源配分二百十九億、差し引きいたしまして改正法による収入見込みは四千九百七十九億でございます。ですから、実行見込みに対しまして二百四十億程度の増加になるわけでございます。  所得階級別の見込みでございますが、これは各階級別に出さねばなりませんので、あとで申し上げましょう。
  52. 永末英一

    ○永末英一君 減税に関する大蔵大臣のお考えを伺いましたが、どうも私の考えているところとぴしゃっと琴瑟相和せるようにいっておらないと思うのです。しかし、この問題は重要な問題なので、ひとつ御研究を、願って、いずれまた次回にあらためてもう一ぺん、がっちり伺いたいと思います。  時間があまりございませんから、次に資金市場についてお伺いしたいと思いますが、昨年の秋、株が暴落した。その株の暴落の一つの原因は、資金に困って法人が持っておる所有株を売り放すということが株の暴落の原因と聞いたわけです。今、私どもが心配しておりますのは、日本全体の資金市場というものを見た場合に、それががっちり、資金市場ですから、整理をされて運営されているというようなことは、望んでもなかなかむずかしいことかもしれません。しかしながら、願わくばその中で長期資金の担当する分野、短期資金の担当する分野等は、それぞれの業界があるわけでございますから、その整理が、やはり整理区分が行なわれ、そういうものに対して大蔵省がそれぞれ適切な指導をしていくべきではないか、こういう工合に思うわけです。そこで、この点について、資金市場の全体的な運営について、大蔵御当局はどういうようなお考えか、大臣に伺います。
  53. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 説明員からでよろしいでしょうか。
  54. 永末英一

    ○永末英一君 ええ。
  55. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) ただいまの御質問、短期資金、長期資金、いろいろあるわけでございますが、それらの各種資金の市場について、所要資金の調達が円滑にいくように、どういうように考えてやっているか、こういう御趣旨かと承ったのでございますが、そういうことでよろしゅうございますか。
  56. 永末英一

    ○永末英一君 ええ。
  57. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これにつきましては、御承知のように、長期の資金の問題につきましては、設備投資その他の資金源としては、株式あるいは社債もしくは長期信用銀行の長期貸し出しということでございまして、さらに短期の資金としては、これは普通銀行の預金を源泉とする資金があるかと思いますが、これらが円滑に全体としての資金需要を充足するように見て参らなければならぬのでありますが、これにつきまして、やはり経済の成長と見合いまして、経済成長に必要なやはり通貨の供給というものが、まず根本的に立って、それらが全体としての経済活動に必要な、つまり一種の血液を各所に配っているという役割を各種の機関を通じてやる、これの関係が円滑に疎通をするように考えて参らなければいかぬ、かように実は思っておるわけなんですが、私ども銀行局のほうですから、株式、社債その他の長期資金の調達問題、これは理財局の関係でございますが、とりあえず銀行川の関係について申し上げます。  今の、長期資金の問題は、主として長期信用銀行の資金による供給、これはまあ御承知のように、金融債を主たる資金源としているわけでございまして、金融債の円滑な発行、消化ということが非常に大事でございます。実は昨年来の利付金融債につきましては、これはまあやや順調に伸びたのですが、割引債等につきましては若干その消化が思わしくないという関係で、長期信用銀行の資金源といたしましては、一昨年に比べまして若干低下をする格好になっていますが、ただ、これは全体の設備投資計画というものがどの程度が妥当であるかという問題ともからみまして、設備投資があまり行き過ぎるということになってもいけませんし、適正な設備投資計画というものに見合っていかなければいけない。まあ現在までのところ、長期信用銀行による長期資金の供給というものは、三十五年に比べますというと、三十六年は若干落ちておりますが、しかし全体として設備の投資の行き過ぎを押え、繰り延べその他によって適正な規模にとどめようというような動きから見ますというと、まあ大体妥当な線に来ているのではないか、かように考えております。  一方、短期資金につきましては、これは御承知のように、預金を源泉とするものが大部分でございますが、このところ主として都市銀行関係の預金の伸びが、一昨年に比べますというと、若干低調になっております。一方、地方銀行、相互銀行、信用銀行といったような都市銀行以外の金融機関の資金源も、これはまあ順調な伸びを見せております。全体といたしまして、預金形態によるそういった資金というものは、大体当初見込みましたいわゆる貯蓄目標の上から見まして、大体目標額程度はいくのではないか。ただ、その中で、今申し上げましたように、都市銀行関係では落ちているけれども、他の機関でふえている、しかし全体として見れば、ただいま申し上げたようなことというようなことで、大体現在の設備投資計画というものを漸次スローダウンして参っておるのでありますが、まあそれらに見合った資金の供給というものが大体行なわれている。  しかし、通貨の量から申せば、全体の生産水準のスローダウンの将来の見通し等と考え合わせますと、まだ若干現在の通貨の水準は高めではございますが、昨年の七月以来、ずっと月を追ってだんだん収縮しておりますから、まあそれらに見合った全体としての長期、短期の資金というものの供給サイドにおいては、三十五年に比して若干落ちる部分もございますけれども、一方非常に依然として資金の需要が強い。そこで、需給のバランスから見ると、非常に緊張の度が強いわけでございます。しかし、これはやはり設備投資を初めとする事業計画というものを漸次調整して参らなければならない。その調整がだんだん進みますというと、全体としてのいわゆる金融の需給面における逼迫感と申しますか、そういうものがだんだん解消していくべき性質のものではないか、かように実は考えております。
  58. 永末英一

    ○永末英一君 大臣にお伺いしたいのですが、私どもの見ておりますところでは、政府が成長政策を出して、設備投資が大いに可能なような雰囲気を与えておる。そこで、大企業競争的に設備投資拡大をやっていく。ところで、本来なら、その設備投資というのは、長期金融機関、あるいはまた自己資本、株式、社債等で調達されなければならぬにかかわらず、自分たちの系列に属するいわば短期資金が本命であるべき銀行から金を借りる、それをいわばこげつかせてどんどん使っている。そのために、銀行局のほうから話がございましたけれども、地方銀行や地方にある小さないろいろな諸銀行の預金率がふえても、それは結局中央銀行、都市銀行に吸収され、そしてそれは系列の中に組み入れられて金が使われる。そうすると、一体現在の日本の廃業構造上、大企業だけの炭価投資で日本経済生産力が上がるわけはないのであって、結局系列に入った下請、入らない下請等々のそういう中小企業設備というものを変えなければ、これは全体としては日本生産力は上がらぬと、そう見ております。ところが、大企業はそうやって長期資金に手が回らず、短期資金に食い込んでやっておるために、中小企業は金が借りられないで、黒字倒産があり、不渡り手形が多くなっている、こういう非常に窮屈な状況になっている。大企業のほうだって金を借りたい借りたいというので、コール市場の金利のごときは非常に高水準を示している。今の銀行局の方のお話では、だんだんうまくいっているというお話でございましたが、実際はうまくいっておらぬ面が出ておると思う。こういう点について、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 市中銀行がそういう方向にあったことは、これは事実でございます。ですから、もしそういうような自分の系列の企業設備投資に貸し過ぎているという傾向があって、なおかつ各企業設備投資欲が強くて、一ぺん計画したものは腕ずくでもやってしまうのだという情勢にあるときに、すぐに準備なしに金融引き締めというような政策をとりますというと、もうそれは事実上やりかけた設備投資はやるのだという態度を持っている大企業の資金のために市中銀行の金が使われてしまうということははっきりしておりますので、そこで私どもはこの設備投資を押えようとかかったのですが、押えるためにはやはり順序があるので、去年の六月に各企業設備投資を一割繰り延べるというような方向への指導をやって、根回しもして、そして公定歩合を上げて警告を発していきながら、今度は各銀行指導に私どもは入って、銀行を通ずる各社設備投資計画を見て、これを延ばすような方向に押えてもらいたいといういろいろな指導をやって、そうして金融引き締めをやればすぐに中小企業が困って大企業へそのまま金が使われるということのないように、相当準備をしてからこの金融引き締め政策を、総合的な金融政策を九月になって私どもはとったのですが、それによってだいぶその傾向は是正されたと私どもは思っております。その中小企業等へ貸す率と、大企業へ貸す率、従来から大体一定の比率があったわけでございますが、この貸付比率を中小企業の比率を落とされないようにという指導もあわせてやりましたために、今度の金融引き締め政策をあれだけ相当やったにかかわらず、昭和三十二年の引き締めどきと比べたら、中小企業へのしわ寄せというものは相当緩和されて、年末の問題でもあれだけ世間から心配されたことでありながら、暮れからこの三月へかけて一番心配された時期を今乗り切っているということは、そういう一応の根回しと申しますか、準備的な指導を私どもがやったためにある程度うまくいったんじゃないかというふうに考えております。
  60. 永末英一

    ○永末英一君 その点について二つほどお伺いしたいのですが、一つは、政府のやっておる財政投融資というものは、確かに少しずつ中小企業関係にも増額するようになっております。しかし、財政投融資の主たる使い方は、資金市場にだけ限っていえば、長期金融に対して、それだけではございませんが、そこを主軸にして金が投下されておる。そこで、先ほど申し上げたように、もし銀行に対して、短期資金であるべきものを長期化しておる、しかもそれが大企業偏重になっておるところに、強い一つの指導力というのは今の状態ではなかなか不一能だとすれば、政府機関のほうが扱い得るものは主軸をやはり中小企業のほうに向ける、こういうことにならなければ、日本経済の全体のバランスはとれないと私どもは判断をいたすのでありますが、大蔵大臣のお考えはこの点についてはいかがでしょうか。
  61. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中小企業の必要な合理化ということは推進させなければなりませんが、しかし同時に、大企業合理化投資も、これはさっき問題になりました自由化と関連して必要でございますので、これは金融引き締め政策の目的が設備投資の急がないものはみんな待たせる、必要なものはやはり促進させるという基本的な方針を持っている以上、この中小企業だけにこの資金を片寄らせるという政策自身にも非常に問題がございますので、このバランスを見ることが私ども金融政策では一番必要なことじゃないかと考えております。今のところは、むしろ少し大企業といいますか、むしろ基幹産業部門への資金の供給が窮屈になり過ぎている。国の財政資金のあの計画を見ましても、やはり国民生活に直結する部面にということを私どもは多く考えましたために、五割以上がそういう面になっていますし、産業基盤を整えるというようなところへの金は三割、それから地方開発そのほかの基幹産業という部面全部合わせても二割ないというような財政投融資計画を今われわれが立てていますが、私自身はこれは方向としてはこの方向でいいんだが、ここで経済規模が一定の大きさになってくると、次にまた基幹産業の基礎固めの問題が続いてあとから出てくる。そういうときには、やはりそれに対する対策をとらなければならないと思うのですが、今金融政策全体として、私は基幹産業——電力その他の基幹産業部面への資金計画が少し、中小企業やなんかとの比率から見て、そちらのほうが手薄になってきているというような感じが私はしています。ですから、そこらは均衡をとった資金量のきめ方をする必要がある。私はその点においては再検討する時期に入ってきているのではないかと思います。
  62. 永末英一

    ○永末英一君 中小企業で非常に心配しておりますのは、非常に日銀券の発行が多くなって、お札は町にあふれておるが、そのお札の顔が見られないというのが中小企業者の非常な悩みなんですね。現在は管理通貨制ですから、政府の資金散布の予定と見合いながら監督はされているのだろうと思います。ところが、年度末になると、税金は取るし、政府事業は増資をやるというようなことで、実際に計画どおりに資金が政府から下へ落ちない。むしろ揚超になってくるというようなことになりますと、根本として、その今のような管理通貨制について、あるいは日銀が大元締めでにらんでおる諸銀行に対しても、もう少し固い日銀券を発行する基準を作るというということが必要ではないかという議論が出てきております。いわゆる預金準備率操作をひとつ行なうというようなことが必要ではないか。そうでなければ、たえず悪性インフレというものが来はしないかという危惧の念にとらわれているという感じがするのですが、そういう現在の通貨管理制について何か手を打つ必要があるというようなお考えはございませんか。
  63. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日銀の通貨供給方式の問題で、従来の貸し出し一本のやり方では、やはりそれがいいということにはなりませんので、その点についての研究は今十分いたしております。
  64. 永末英一

    ○永末英一君 日銀の今やっている金融操作の二つの柱は、金利政策と公開市場政策でありますけれども、この二つだけで今おっしゃったように全部は一体カバーできるかというと、やはり問題が残っておる。御研究願うのははなはだありがたいと思います。さっそくそれを研究して具体案を立てていただきたいと思いますが、この点に関連して、いわゆる公社債の投資信託等ができましたけれども、公社債に対する市場というものは実はできていない。これに流動性を与えるというような意味で市場を作れば、今のような観点からすれば、もっと長期の金融に対して市場が豊かに相なるのではないか、こういう議論がございます。大蔵大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  65. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公社債に対する流動性の問題は、これは当然必要なことでございますので、私どもは、今証券審議会にも諮問したり、それぞれこの問題の検討をいたしたわけでありますが、金融が正常化の現在、一挙に融通市場というようなものをうまく作るということは実際上困難でございますので、そういう方向へ向かった対策を一歩々々積み重ねていく以外には方法がないと思いますので、今せっかく審議会その他の意見を聞いておるときでございますので、その結果を見まして、われわれはこの点について十分対策を立てるつもりでおります。
  66. 永末英一

    ○永末英一君 企業が自己資本を拡張するについて、現在の企業課税のあり方がいわば損になってくるというので、借入金に依存し、これがいわば短期資金の長期化しておる一つの原因ではないかと思います。税制審議会がいろいろ調査をされ、問題はあるけれども、今一挙にやれないということで踏み切っておられない。しかし、先ほどのように、考えなくちゃならぬという問題の中に、企業課税のあり方についてもお考えを変えるという、こういうお考えはございますか。
  67. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、税制調査会が一応私の体系的な改正というものを目標に、三年間審議をしたのですが、最後にその問題と、まだ中央地方の税源配分の問題というふうなところは、とりあえずのこの措置だけはとることにしましたが、根本的にはもう一歩これは掘り下げた検討をしなければならぬということで、今後の課題として今残されている問題でございますから、引き続いてその問題の検討に入るつもりでおります。
  68. 永末英一

    ○永末英一君 もう二つお伺いします。一つは、土地の値段が非常に上がっている。土地の値段が上がっているのは、一般庶民にとっては、たとえば住宅を購入する土地がないという非常な不便を与えているわけですが、資金市場の問題にすれば、やはり土地の値上がりを見込みながら、それが担保力になって非常に多くの資金を動かしている原因になっているのじゃないかと思われます。ところで、その土地の値段というものが、実際に実現し得る価値程度の値段ならばいいのでありますが、だれが見てもこれは投機の対象になっている。投機の対象になっているものが担保になって資金に対する刺激になっているということは、実は資金市場における非常に大きな不信の念を及ぼしているのじゃないかと思う。この間の本会議では、税金のお話でございましたから、税金だけに関して大蔵大臣に質問いたしましたが、全般的に今度は資金市場の問題として、現在の土地の値段について何らかの規制をしなくちゃならぬとあなたはお考えになりませんか。
  69. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、今度の予算委員会で御質問が出ましたので、不動産を社告にした金融がどういうふうになっているか、実情を実は私どもこれは一ぺんここで全部把握しなければならぬと考えて、今この問題に入ろうとしているときでございますが、今までのわかっている限りの点では、一体不動産担保に金を貸すというのではなくて、資金需要がこう多いのですから、期限が来たときに待ってくれとか、あるいはさらに少し資金を追加して貸してもらいたいというときに、金融機関は一番不動産がいいと目をつけて、それなら、期限が来ているが、もう一期持つかわりに、追い担保として君のところで持っている土地だけ入れて置いてくれとかいうので、土地そのものを担保にして新しい金融市場操作が起こっているというよりは、その過去のものについて銀行が担保を確保するために不動滝をみな追い担保にとられているという例が非常に多いと聞いておりますが、この実態の研究はまだ十分しておりません。
  70. 永末英一

    ○永末英一君 その点についてはひとつ早急に資料をととのえて、ひとつこの委員会のほうに御報告願い、検討してみたいと思うのです。  最後に、外資の関係でお尋ねしたいのですが、貿易自由化、為替の自由化ということで、外国資本日本市場というものを見ていると思うのですね。すでに設備投資、オートメーション化ということで技術提携が行なわれ、その技術提携というものが、やはりそれに対して外資との関係が出てくると思うわけです。あるいはまた、外国資本が私企業に対して投資を行ない、株式取得が行なわれる。日本は金利が高いので、その高金利を目ざしてホット・マネーの流用かまた考えられる。ところが、利潤のあるところに資金が動くわけですから、これが資本主義の鉄則ですから、もしそれが多量に入ってくる  まだ入ってきていないと思いますが、多量に入ってくるとすれば、その変動によって日本の資金市場が非常な影響をこうむる。この点について何らかの対策はお考えですか。
  71. 福田久男

    政府委員(福田久男君) 現在、外資は相当に年々入り方が増加いたしておるわけでありますが、外資を入れるにあたりましては、一応それぞれの外資導入の下葉につきまして、安定した良質の、質のいい外資が入るようにということで、御承知のように外資審議会においてこれを審査しておるわけでございます。同時に、国内金融市場ないしは設備投資に対する関係等につきましては、たとえば産業合理化審議会において検討いたしまして、これならばよかろうというある一つの構想があるわけですが、その構想のワクに入っておるものというふうなものならばよかろうとかいうような、いろいろな国内に対するそういう設備投資なり金融市場に及ぼす影響をもあわせ考えまして、検討しながら審査いたしておるわけでございまして、したがって、こういう立場から申しますと、今の御指摘になりました点は織り込んで行なわれておるというふうに申し上げることができようかと思います。
  72. 永末英一

    ○永末英一君 これで質問終わりますが、私どもは、現在の日本のそれぞれの個人所得がございますが、その所得に対する最低のほうの免税点をうんと引き上げ、現在のように資産課税に対して甘いということは僕はけしからぬと思いますけれども日本経済の構造上それが少しでもまだ続くとするならば、そこで出てくる余剰力に対してやはり低所得者層にも資産所得に対する楽しみを与えてやらなくちゃならぬと思います。そういうことと関連しながら、今三つの点について大蔵大臣がせっかく研究し検討されるということでございますから、さっそくそれを検討されて、近い機会にまた相まみえるということを期待いたしまして質問を終わります。
  73. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 減税関係の問題について若干質問いたします。  第一点は、自然増収と減税の問題です。昭和三十六年度は自然増収が大体七千億円くらいあるのじゃないか、それから昭和三十七年度は約一五千億自然増収が見込まれるのじゃないかと思うのですが、昭和三十六年度の自然増収は大体どれくらいになりますか。
  74. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今のところ三千二、三百億……。
  75. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 昭和三十六年度ですよ。
  76. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 六年度です。そのくらいの見通しを立てております。そのうち補正予算を二回やりましたために、あと税の自然増収は千七、八百億、これが剰余金となって三十八年度に持ち越されるのではないかというふうに思っております。
  77. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 昭和三十六年度の当初予算において自然増収は三千九百三十億円、こう見込んでいますね。ところが、実際はその後非常にふえて、大体七千億円くらいになるのじゃないですか。今の大蔵大臣数字とだいぶ違いますね、これは。
  78. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) その自然増収の考え方の問題でございますが、通常、当初予算の段階では、今年度の当初予算が前年度の当初予算に対して幾らふえたか、それを自然増収と呼ぶこともございます。それから、その年の当初予算に対してその年の決算が幾らになりましたか、これをまた自然増収と呼ぶ場合もございます。それから、前年度の決算に対して今年度の決算が幾らになりました、そのときに税制改正なかりせばどうなったであろうか、それを決算ベースにおける自然増収と呼んでおるわけでございまして、ただいま先生のおっしゃった話から伺いますと、昨年度の、つまり三十五年度の当初予算対三十六年度の決算見込み、こういう意味で、自然増収をお使いでございますので、そうであるとすれば三千九百三十億プラス三千二百九十七億という数字になります。ただ、通常それはあまり自然増収とは申しておりませんが、おっしゃるような点で差額は幾らになるかといえば、三十六年度予算は三十五年度に対しまして三千九百三十億、それから三十六年度の当初予算に対して三十六年度決算見込みが三千二百九十七億、約三千、百億でございますから、おっしゃるように、大体合計すれば七千二百億くらいになる、こういうことでございます。
  79. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、三十七年度においても大体自然増収は、三十六年度に比べて四千七百幾らですか、そういう見込み政府は立てているのですね。そうすると、この自然増収は今までにない——いずれにしても今までにない巨額に達しているわけですね。それに対する減税の関係ですね、どういうように大蔵大臣、お考えになりますか。
  80. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 結局、減税ということは、国の財政需要との関係で幅がきめらるべきものでございますので、そういう点から見ましたら、御承知のように、財政の役割として果たすべき財政需要というものはたくさんございまして、公共投資の問題、そのほか経済が異常に伸び過ぎたためにそれとの不均衡が符に大きくなってきているときでございますから、そういう財政需要が特に大きいという事実と、それからもう一つは、四千八百億円の自然増があったにしましても、これはガソリン税をとって見ますというと、これはもう道路の経費に使われることになっておりますし、それから酒税その他の主税合計の二〇%何というものは、もうこれは地方交付金になるわけでございますから、このうちで、もう歳出増に——この税があるためにそのまま自然増に、歳出増に出す金額というものも相当大きいということを考えますというと、この四千八百億円自然増があるようでございましても、そういうものを差し引いたあと、減税に幾らを回すかということになりますというと、この財政役割に対する需要が多い点等勘案して、私はそのうちから一千億、まあ税法上の減税はもっと、千六百億とか、大きいものでありましても、初年度減税として一千億以上ということは、シャウプ税制の改正以来、もう最大の幅でございますので、私はそういう点を考えて、税制の幅としては、今の実情から見ましたら、私は相当大きい幅だというふうに考えております。
  81. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあこの減税の問題を財政需要の面からだけ考えて判断するというふうなことは、それは重要な部面でありますけれども、国民生活の部面から考えてやはり判断する必要があると思うのですが、これはどうですか。
  82. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは当然だと思いますが、国家財政としては、まず出るをはかることが先でございまして、それとこの歳入の関係をどう調整するかが関係でございまして、一方的にはそれはきめられない問題だろうと思います。今申しましたように、四千八百億円あっても、もう経費増として、税があるためにそのための経費増というものが千億をこすことでございますから、必要な経費を多く盛って減税を犠牲にするか、そうじゃなくて、減税に重点を置いて必要経費の増を抑えてしまうかというのは、これはやはり政策上の問題で、これは何方の面からこれを調節するということがやっぱり正しいやり方だろうと思います。
  83. 荒木正三郎

    ○荒木正三君 二、三日前の毎日新聞の世論調査ですね、大蔵大臣、見られたですか。これを見ると、やはり国民の相当な人たちが、今度の減税は非常に少ないという意見が二九%ですか、出ておりました。いわゆる物価の高騰に対する国民の批判と、それからその次に大きな問題として、減税規模が少さいということが世論調査の結果出てきているのですがね。財政需要がふえているから減税はもうできぬ、そういうことでは通らぬと思うのですがね。やはり特に自然増収が、従来にない多額に達するこういう機会こそ、十分減税に振り向けていいのじゃないですか。あの世論調査はどういうふうに考えられますか。
  84. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは今度の予算編成が国際収支改善というものを考え予算ということになっておりますが、そういう意味から、景気調整的な考えからいいますというと、国の経費として支出する形が、有効需要の喚起に寄与する率がどうなっておるか、反対に、そうじゃなしに、減税ということによって国の支出を押えるということの効果はどうか、この二つを比較すると、これはもう税を取ってこれを使うというほうが、景気調整にはなるというのが、通則でございますので、そういう意味におきまして、今年度のような経済情勢のときには、できるだけ減税を多くするほうが、経済政策としては好ましいという一応の結論から、私どもは減税の幅を、もう今考えられる最大限までやったというつもりでおりますが、きのうもお話ししましたように、国会へ出て来ましたら、どの委員会に呼ばれても、なぜ金を出さぬ出さぬと言う。大蔵省はおこられ役で、大蔵省が全部悪いのだ、だからこうなっておるのだというので、各委員会の要求を、私は興味を持って、皆さんの言うのを、ここまで出したらよかろうというのを記録して、それをざっと計算しますと、四兆億円出したら国会として満足するのじゃないかというくらいの要望で、そのくらいやはり国の施策については、今場合によったら国民生活のために支出をするほうが急務だと思われるような部門も、実際には今の一本には多いということであって、その要望にもある程度こたえなければ、やはり守勢としては適当でないということになりましょうが、今度の減税程度が、その需要とにらんだ、自分で言ってはおかしいのですが、ちょうどいいところじゃないですか。(笑声)
  85. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それはね、私は一般的な意見になりますがね、自然増収がまあ相当多額に上る場合には、これを国民に還元するというのが常識じゃないかと思います。それを、財政需要が多いからそれに振り向けていくのだということでは、際限がない。極端にいえば減税する余地がない、こういうことになる。国会でいろいろ論議しているのは、それはその問題について論議する必要があって、全体に見て減税額がまあ適当であるというふうに考えている人は、おそらくほとんどないですよ。与党の諸君にだって聞いてごらんなさい、まことにもうお粗末だというのか一般的な見解ですよ。今度は国民もそう感じている。それは五千億からの自然増収があるというのに、千六百億円というお話でしたけれども、実際三十七年度に減税するのは一千億円に足らないでしょう。少ないでしょう。そのくらいの減税は、まあ減税の名に値しないと思う。今度の自然増収からいえば、やはり政府は景気の調整をやろうというのでしょう。そうすれば自然予算の面においても、あんな二兆四千億という膨大な予算にならないで、もう少し引き締めた予算にならなければならぬと私は考える。今政府がとっている景気調整、いわゆる引き締め政策の上からいえば、そういうことをやらなければならぬ。ところが、各業界の圧力に屈してどんどんふやしていくそうしてどんどん減税の余地が非常に少なくなってきたというふうな、参議院選挙目当てのいわゆる人気取りの予算というものを作っているんじゃないでしょうか。そのために国民の当然減税さるべきものがそうされないというふうに私は考える率直にいって。今後、経済の成長につれて国民所得は増加します。したがって、国庫の自然増収も増加しますが、やはりそれに応じた減税ということをやっていかなければ、国民の失望落胆というものは僕はたいへんだと思う。ですから、そういう点、大蔵大臣どうですか。減税問題は今後もやはり継続してやっていく。国民所得の増加、経済発展に応じて所得が増加していくのですから、それの見合いにおいて減税政策というものは常にこう考えていかなければならぬというふうに思うのですが、どうですか。
  86. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき申しましたように、国民所得がふえれば、税のほうは累進構造ですから、税の伸び方のほうが多くなるという構造になっているのですから、その限りにおいては、国民所得の伸びに応じて毎年調整というものはやっていくべきものだ。したがって、減税というのは、これは年中行事になっていい性質のものだと思っております。現に終戦後減税をやらなかった年というのは三十五年だけであって、あとはいかなる年でも減税をやらなかった年はないわけでありますが、この傾向は今後も当然そうなるだろうと思います。
  87. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、問題は、今の課税の何が適当であるかどうかという問題になるわけですが、その問題はあとにして、先ほど主税局長は、戦前に比べて所得税はむしろ割安になっておるというふうな説明があったように思うのですが、これは私は納得できないと思うのです。戦前に比べて所得税は相当高いと思うのですが、どうですか。
  88. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) こういうことでございます。戦前の取り方ですが、昭和十五年、これは根本的の中央地方を通ずる税制改正を行ないましたので、この年次をまず基準といたしております。そうしますと、課税最低限、これはデフレーターで換算してみると、昭和九−十一年度は標準世帯で二十七万円となる。今度の法律改正で四十一万円まで行っておりますが、課税最低限は非常に上がっております。これは申し上げられます。やはり課税最低限を、同じように今度は戦後の二十五年ベースでとってみますと、標準世帯で実質で三・一二倍に上がっております。課税最低限、これは今の物価騰貴、全部を捨象したものであります。事業所得者につきまして約三倍くらいに上がっております。こういう点から課税最低限は確かにそのとおりであるということは言えるであろうと思います。それから、ここのもう一つのあれは、国民所得に対する所得税の税率はどうか、あるいは国税総額の中に占める所得税のウエートはどうか、こう申しますと、全体として比率は非常に軽くなっているということは言えます。  ただ、それならば各階級を通じて実際の負担はどうか。これは控除なり、累進税率の盛り方でございます。このことでいきますと、各階級とも必ずしも戦前より軽くなっているということは言えないということは答申の表でお示ししてあるとおりでございまして、いわば中堅階級あたりが戦前に比べて相当重くなっているという表が出ているわけでございます。もちろん、戦前に比べて各階級がどうなければならぬという必ずしも理論的の根拠はないと思うのでございます。それぞれの所得分布に応じまして、そのときの国民の負担力に合うように控除なり、税率を盛るというのが、やはり所得税の全体の構造だろうと思いますが、それにいたしましても、一応の目安にはなるわけでございます。  そういう意味で、昨年われわれは中堅階級以下の税率の引き下げをやったわけでございますが、これは残念ながら課税所得七十が円以下に限定されてしまった。そこで、ことしはその点を加味いたしまして、百八十万円以下のものについても税率の引き下げを行なっております。その階級についても減税したい、こういうことであります。十五年から見ますと、これは国税総額中に占める比率あるいは国民所得に対する税の負担率、これは確かに下がっておりますので、そういう意味では、先ほどの率がどうだというお話意味から見ますれば、そういう意味では下がっておるということは言えると思うわけであります。この一つは、何といっても日本経済の全体が変わって参りましたので、法人税のウエートが非常に上がったということだろうと思う。かつてわれわれはこういう計算をしたことがあるのですが、戦前で一般会計をまかなっておった各税のウエートがあるわけです。今日同じように一般会計をそのウエートでまかなうのが適当であるとすれば、一体法人税はどれだけの減税をしなければならず、所得税はどれだけの増率をしなければならず、あるいは固定資産税は——当時は地租、家屋税によってまかなわれておったわけでございますが、幾ら増率しなければならぬか、こういうことになると、法人税は今の半分でよろしい、所得税はもっとうんと上げなければならぬ、こういう答が出るわけであります。しかし、それにつきましては戦前基準が意味にならぬという意味でございまして、そういう意味でわれわれは、法人、個人を通じまして所得がどこに発生するか、個人の所得分布がどうなるかということを考えてやっております。全部が下がっておるとは申しませんが、戦前から見ますればそういう点で下がっておるということは言えると思います。
  89. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、国民の最低の生活を保障するという立場から、戦前の課税最低限、それから今日の課税最低限というものを比較して質問しておるわけです。戦前は所得税は千二百円までは免税になっておったと思いますが、主税局長、これは違いますか。
  90. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今先生のおっしゃいますのは、昭和九−十一年あたりでございます。それはおっしゃるとおりでございます。その点は、先ほどちょっと永末委員の御質問に対してお答えいたしたのであります。あの当時のものでいきますと約七十万円でございます、課税最低限は、そこで、先ほど申しましたように見ていきますと、ほとんど、高額所得者が非常に多かったものですから、そこで二%の人員で五〇何%持たしておったということでございます。また、税収は全体の一般会計の歳入中七割くらいで事が済んだ、三割は公債でまかなっておったふうなことで、そういう関係で当時は免税点が高くてもやっていけた。当寺と比べますと、課税最低限が現在は低いというのは御説のとおりでございますが、それにはそういう事情があった、こういうことでございます。
  91. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 しかし、国民生活から考えると、大体私ら戦前に生活した年数はかなり多いわけですね。免税点が千二百円ということは、やはり非常に生活が楽であったですよ。今日より、実感としてははるかに戦前のほうが楽だった。千二百円までの免税ということは最低生活を保障しておるという、そういう意味であったのかどうか知りませんけれども、少くとも最低の生活は実質上保障する、こういう結果が現われておると思うのですが、それが税収の内容が変わってきたので一がいに論ぜられぬというのが主税局長の話ですが、やはり免税点を引き上げるという点に、減税問題はやはり、大蔵大臣、もっと考えるべきじゃないかと思う。独身者は、十二万円が十三万円くらいでも、税金がかかってくるのですね。十三万円というと、月収にして九千円くらいになるのじゃないでしょうか。夏期手当、期末手当等を入れると十三万円。月収九千円で十三万円くらいになりますわね。そうすると、月収九千円ということ、これは高校卒業生です。高校卒業生に税金をかけているというのが所得税のかけ方なんですね。これではあまりひどいと思うんですがね。やはり課税最低限をもっと上げるべきだということが、戦前に比較して言えると思うんですね。それから、諸外国に比較しても、これはイギリスとかあるいはドイツあたりでは、たしか課税最低限は七十万円くらいになてておったと思うんですね。アメリカの場合は非常にもっと大きい。そういう諸外国と比較しても、日本の場合は非常に免税点が低い。今後の所得税を考える場合、免税点をもっと引き上げる、この間のように二万円に引き上げというのじゃなしに。そういう考えでいくべきじゃないかと思うんですが、大蔵大臣意見はどうですか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 独身者だと年収十四万幾らですから、月一万二千円くらい近くまでが免税点、この二カ年の改正によってそこまで行っております。問題は、全体との均衡の問題になりますので、基礎控除だけを多くするということになりますと、独身者と家族持ちとの均衡というものは非常に害されますので、したがって、この課税最低限を上げていくために、各種の控除、いろいろまぜてそれらを総合的に見て、この各層間の均衡をはかるという方法をやっておりますが、独身者と家族というものの生活のこれは違いというものは相当ございますので、そのために今の控除制度の運営の仕方も違っておりますが、これは国民所得が増していく過程に応じて順々にこれを上げていくというよりほかには方法がないんじゃないかと思います。私、昔党の政調会長をやっているときに、五人家族で二十五万円まで税金をかけないという、せめてこの政策だけは打ち出すべきだといって、非常に党内で反対され、そんなむちゃを言っても何とかいうことで、だいぶ問題を起こしたことがございますが、もう何年もたたぬうちに四十何万ですから、この調子でやったら、七十万前後免税点にするくらいなことは私はほどなく来るのじゃないかと考えております。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 大蔵大臣、非常にけっこうなんですがね、それはやはり実現しないと困るので、七十万円が最低限になるということが何年くらい後に来るのか。国民はぬか喜びになっては困りますからね。
  94. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、まだ七、八年でしょうか、二十五万円という線を打ち出したら、ここにいる大蔵省から、保守党はもっと現実政策を持て、そういうできないことを言ってもというのが当時の空気で、だいぶ問題になりましたが、今になってみましたら、もうそんな二十何方は昔の話で、四十万に今来ちゃっているんですから、今の日本の伸び方からいったら案外早いと思います。
  95. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 大蔵大臣がそれまで大蔵大臣しておられるかわからぬですが、それは別として、今の独身者の生活というものは相当苦しいんじゃないかと私は見ているんですがね。洋服一着こしらえるにしましても、やはり一カ月の収入ではできないですよ。われわれの時分は一カ月の収入では十分余ったんですよね、初任給で。今じゃ二カ月分は要りますね。そうすると、相当独身者の生活は苦しい。妻君ひとつもらうにしても、なかなか二十五才や二十六才ではもらえないというのが現状じゃないですか。先ほども言っていましたが、家賃も相当高い。そういう点から、独身者に対する考え方というものは少し従になっているんじゃないか。家族持ちが軽いというんじゃないんですよ。しかし、独身者に対する課税が非常にきびしい、こういうふうに思うんですがね。だから、そういう面を少し考慮すべきじゃないかという意見を持っているんですがね、どうですか。
  96. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の所得控除も、相当その点では、独身者のためにはほかの階層よりも比率がよくなっているということになりますが、今年度、三十七年度でさらに基礎控除を十万円に引き上げるということにしましたので、これが一番比率として大きく響いておるのは独身者で、この二カ年の措置によってさっきあなたがおっしゃられました九千円前後というところから一万二千円前後のところまで引き上げられてきているので、その意味においては、この一、二年で独身者のほうが税率から見ましたら最も優遇された層になっていますが、まだこれでは決して多いとは思いません。もう少しこれから上げていく必要が十分あろうと思います。
  97. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから、最低生活を保障する問題ですね、最低生活の取り方で非常に問題があって、水かけ論のようになっちゃうんですが、しかし、考えとしては、最低生活費は課税しないという考えは、大蔵大臣としてはしょっちゅう持っているんですか、持っていないんですか。最低生活費には課税しないという方針でおられるのかどうかということです。
  98. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは最低の生活費、これには課税すべきものじゃないと思います。
  99. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それの原則は確認をされているわけですね。そこで、最低生活ということになると、取り方によってもうまちまちですからね。税制調査会の何を見ても、最低生活は保障しているのだという見方をしています。これはしかし、われわれから見れば、本会議でもちょっと私若干質問したのですが、実際の生活費、今は幾ら要っているのかという、そこをやはり最低生活費として認めるという考え方にいかないといけないのじゃないかと私は思うんですがね、どうですかね。
  100. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはその国の国民所得水準関係のあることでございまして、各国別に最低生活の基準というものは違いますし、同じ国の中においても地方と都会、これはみな違いますので、一応その国の平均的なものの線を出して、それを最低生活水準と見たいというよりほかには仕方がないだろうと思います。
  101. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ですからね、日本の場合に、一応全国的な平均ですね、今どういう実際に生活をしている、その生活費はどれくらいかかっているのか、そういうものを最低生活とみなして考えていくかどうかという問題です。そうすると、私は本会議でも質問したんですが、これは都市平均ですけれども、都市平均というものをやはり基準にする必要があると思うんですよ農村の生活というものとは若干統計的にむずかしい問題があると思うので、やはり都市生活者の生計費が幾らかかっておるかということを基準に最低生活というものを考える必要がある、こういうふうに思うんですがね。政府の統計が、これはありますね。全国都市世帯の生活費が幾らかかっているか、そういう調査がありますがね。こういうのを基準に考えるのが適当ではないかと私は言っているのですが、最低生活費というものはどうでしょうか、大蔵大臣
  102. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 私のほうからお答えいたします。おっしゃるように、最低生活をどう考えるかという問題でございます。ただ、最低限と課税の問題、そういたしますと、あとはいわばその上にかかりましたものは税率は下のほうは低いわけでございます。ですから最低生活——まあ最低生活ということにはいろいろ議論がございましても、その最低生活費部分をもし控除をしておけば、その上回った部分だけ課税になるわけでございますから、その税率が百分の八からずっと刻んでいくわけでございます。そうしますと、可処分所得が残っていくという関係もございますので、必ずしも理論的に、——おっしゃるところは私平均生計費だろうと思うのでございますが、平均生計費を必ず税法上とらなければいかぬということはないと思うのでございます。ただ、国の財政事情さえ許せば、高ければ高いほどけっこうなことだと思いますが、そこには非常に問題がございますので、漸次高める方法でその辺を考えていくということ以外にやむを得ないのではないかと思います。今、先生おっしゃいましたので、われわれも見ておりますと、大体全国都市でもって、都市のあれが昨年の十一月では三万四千百八十六円、十二月になるとだいぶ上がっております。ですから、年間平均にするとどうなるのか、これよりだいぶ低いのだろうと思いますが、かりに三万四千円といたしますと、今度の課税最低限はやっていけるということには、数字的にはなろうかと思います。ただ、われわれの最低生活費の計算方法は、答申にも書いておきましたように、こういう三つばかりの方法でやってみますと、少なくとも現在は課税最低限は計算される最低生活基準を相当上回っておるということは言えるわけでございます。
  103. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは主税局長、十一月の一番安いところをとっているのじゃないか。私は、大体中どころをとって、昨年の八月をとったのですよ。そうすると、四・四五人で三万八千七百二十二円、五人家族になると月額四万二千五百円ですよ、昨年八月、九月、十月はだいぶ上がっておると思うのですがね。
  104. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは年賦課税でございますから、ほんとうを申しますと、年間平均で幾らになるかというのをとるのが一番正確と思いますが、その辺とりますと、ずっと、一月が三万円、それから二月が二万八千円、それから次に三万二千円、三万三千円、三万二千円、ずっと上がりまして、最近になりまして三万四千円台に来ておるということでございますので、おそらく計算してもそこはいけるのではないかと考えているわけでございます。  それから、各国の問題も非常に参考になるわけでございますが、おっしゃるとおり、課税最低限は日本は先進国に比べても低い。もちろん平均所得が低いせいだと思います。アメリカで大体日本と同じ標準世帯をとりますと百二十万、イギリスでございますと七十万台以下、ドイツは八十万以下になっております。しかし、今度は平均所得——平均の家族一世帯当たりの所得に対して、現在各国の課税最低限は何%のところへ来ているかという見方もあるわけでございます。これをとりますと、日本は各国よりもはるかに高いところに来ております。今の三十六年ベースで、五・八三%に来ております。西ドイツは四八・四%、イギリスは三九・三%、アメリカは百二十万ですが平均所得に対しては二九・〇%、こういうようなことでございまして、この辺もなかなか、まあこれだから日本がまた、いや免税点が高いのだとも甘えないわけでしょうが、その点、いわゆる理論的の最低生活費、それから実際の消費支出金額、それから各国の比較、この辺をよく考えて、いわゆる常識的に考えざるを得ない。目ざす方向としては、事情の許す限り漸次上げていきたいというふうに考えているわけで          す
  105. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は、いずれ所得税を審議するときに深く掘り下げて質問したいと思います。  それで、税制調査会の意見を聞いて、やはり課税最低限は低過ぎる、もう少し上げる必要があるという意見を述べておりますね。そういう問題を掘り下げて、また別の機会に質問いたしますが、いずれにしても、三十八年度も引き続いて所得税の減税は、大蔵大臣、やりますか。さっきは年中行事としてやっていくのだというお話でしたね。また、七十万円ぐらいまではどんどんやっていくのだというお話でしたが、三十七年度は一応こういう減税政策で、三十八年度もやっぱり減税政策をやりますか。
  106. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今のところ三十七年度の問題についてやっておりまして、まだ三十八年度の構想は持っておりません。
  107. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は間接税の問題についてちょっと尋ねたいのですが、今度間接税の減税が中心になっていますね。その中心は終戦後は酒税だったわけですね。しかし、この酒税も大衆課税ですからね、酒税と同様な大衆課税として砂糖をあげなければいけない。それから、たばこ。この二つはどうしても大蔵大臣が言うように大衆負担を軽減する、特に最下層の所得者ですね、そういう人たちに恩典が浴するような減税ということを言うならば、これは下げなければいかぬと思うのです。砂糖、たばこの問題をやっぱり取り上げる必要があると思うのです。これ取り上げなかったということは、大蔵大臣の大きなミスじゃないかと思うのですがね。これやると、非常に減税高が大きくなって困るということで、やからなったのですか。趣旨からいえば、当然取り上げるべき性質の問題だと思うのですがね。
  108. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 趣旨からいえばそうだと思いますが、しかし、これは減税の幅の問題とも関係しますし、もう一つは、砂糖は国内の農業政策との関連からむずかしい問題を持っておりますので、今回はこの問題に手を触れなかったということであります。
  109. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、砂糖の問題については一ぺん別の機会に質問したいと思っているのですがね。国内産業を保護するために、国民大衆の直接の犠牲ですよ、これは。非常に高い関税、商い消費税を砂糖に課しておる。これ、はそういう政策でいいのかどうかということは、もっと私は検討さるべき余地が十分あると思うのです。国内産業を保護するなら、直接大衆の負担でしないで、他にいろいろ政策はあると思うのです。そういうやり方は検討さるべきであると思うのですが、大蔵大臣、どう思いますか。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりでございまして、この税制をきめるときが去年の暮れでございましたので、当時砂糖に対する対策というものが、この政策が確立していませんでした。いろいろ検討はされておりましたが、結論が出ていませんで、ちょうど今になってこの砂糖問題どうするかが各省間でもやっておりますが、根本的には自由化するか、自由化は見合わせるかという問題がございます。もし自由化をしないでこの割当制というものを砂糖に関して維持する限りは、この超過利潤の発生、輸入利益の発生というものは、今の現状ではやはり避けがたいものでございますので、これをどうするかという問題が出ておりますが、今別の機関を作ってそれに超過利得分を寄付させて、そうしてそこで国内甘味の研究助成の仕事をするというようなことによって、将来甘味全体がもう少し下がって消費者に利益するような方法考えようというようなことが、今出してきている農林省の構想でございますが、これもいろいろ問題があって、さらにその程度からもう少し出て、食管が全部輸入する、そうして粗糖を製造業者に払い下げるという方法までいかなければという問題も出てきましたが、これにはまたいろいろ問題がありまして、そう簡単な問題じゃございません。その間にもし超過利得が永久的なことだというふうであったら、これは関税をいじってもいい問題になりますし、それから、そうなると今度は消費税との関係ということで、私どもはこれはできるだけ避けたいのですが、国内のイモとかあるいはブドー糖とかいうものが一定の計算の上に立って維持されている現状でございますので、砂糖の値を勝手に動かすことによってここにこれまでの農林政策に全部響きを持つということから、将来砂糖行政をどうするのだという筋の立たぬ間にこの消費税だけ勝手にいじるということの影響があまりにも多過ぎましたので、検討を後日に延ばしたというのがいきさつでございますが、砂糖問題は御説のとおりに何らかの考慮をしなければならぬだろう、根本的に考えないといかぬ時期に来ていると思います。
  111. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 たばこはどうですか。たばこについて全然手を触れない。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たばこの専売金率は戦前に比べてわずかばかり多くなっておりますが、金率では諸外国に比べて日本は特に高いということはない。外国のほうが実際において高くなっているという事情一つと、それからあとは、国内の葉タバコが最近収納価格を上げましたし、諸経費も上がっておる。金率は減ってくる傾向のときにかかわらず、三十一年度以来たばこは一ぺんも値上げしておりませんから、むしろ実質的にはたばこの価格は下がっていると言える時期でございますので、特に大衆たばこについての一部値下げはこの際やりたいというような考えで最初臨みましたが、税制調査会の審議の過程において、たばこのほうはもう少し見送るという結論になったわけでございまして、ほかの物品税に比べてすぐにたばこをいじらなければいかぬという緊急性というものは、たばこに関しては結論としてあまりないということになったわけですが、これは次の段階の研究問題です。
  113. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私、おかしいと思うのですがね。戦前に比べてあまり高くなっていないとか、そういう観点からこの問題を見たらいけないと思うのですがね。大衆負担をどう軽減するかという観点から、今たばこに課せられている税金ですね、これはたしか六八%から七〇%くらい税金じゃないかと思うのですがね。大衆たばこといわれる「いこい」ですか、そういうたばこについてもこれはべらぼうに高いじゃないですか。そういう観点からものを考えないと、戦前だってべらぼうに取っておったのですよ。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 物価倍率の比較その他これをやってみますと、たばこの今の値段と戦前の値段、倍率で見ましても、今の値段はもとの値段に比べてやはり高くないという数字が一応出ますし、たばこ以外のもののほうにまだ下げる必要に大いに迫られておるものがございますので、今回はそっちのほうを扱って、たばこのほうはあとに回す。いろいろなところから計算して審議したのですが、たばこはやはり外国との比較を一応していい問題ですし、あらゆる点から検討いたしまして、もとよりも大衆負担が強化したということはたばこについては今のところ言えないだろうと思います。
  115. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは戦前の物価指数と比較して、たばこがあまり値上がりしていないという、これも一つの見方かもしれません。けれども、大衆がのむたばこに七〇%の税金がかかっているという事態は、これはやはり大衆の犠牲ですよ。だから何としてもこの問題はやはり触れなければいかぬと思うのですよ、大衆減税というからには、これは近く十分検討しますか、大蔵大臣、たばこ、砂糖の問題については。そうして大衆減税をはかっていく、こういう見地から検討するかどうか。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは引き続き検討する課題になっております。
  117. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから、これは本会議で質問したのですが、質問しっぱなし、答弁しつばなしで、結局要領を得なかったのですが、国民総所得に対する税負担の割合ですね。税制調査会は大体二〇%という線を守るべきだと、こう言っているのですね。ところが、池田さんはそんなものは拘泥する必要はないのだというわけですね。水かけ論のような格好になってしまった。おそらく昭和三十六年度は二三%ぐらいになるのじゃないですかね、これは国民所得に対して税負担の割合は。
  118. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十八年度ですか。
  119. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 三十六年度です。
  120. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十六年度は二二、八%ぐらいになると思います。もし減税をしなかった場合は、三十七年度は二三、二%という負担率になろうと思います。減税によって二二、二%に今食いとめているということでございます。
  121. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これはやはり二〇%ぐらいで大体堅持していくというふうな考え方、税制調査会の考え方ですね。
  122. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは税制調査会自身も、あのときにおける情勢においては、大体このくらいが至当だろうということは言いましたが、もう国民所得の税の負担率があれでなければならぬというものは世界じゅうどこもございませんので、大体これは向こうもこだわっていませんが、またこれはこだわるべきものではなく、国民所得が増大して国民の生活水準がどんどん上がってくるという状態に応じて税の負担率は上がっていくのが筋であって、先進諸国を見ましても、これは社会保障制度かあれだけ行き渡るというようなことになってきますれば、当然国の必要経費というものは増大するし、それをまかなえるだけの国民の所得が多くなるのでしたら、税の負担率は上がっていくのがほんとうで、今百万円の所得のある人と、千万円の所得のある人とは、もう生活の実態が違うのですから、百万円の人が一割負担する苦しさよりも、千万円の人が二〇%、三〇%負担するほうが、まだ実際には生活は楽なんですから、そういう意味において、国民所得がふえるにしたがって、税負担率が上がっていくというのが、近代国家の行き方だろうと思います。ですから、アメリカにしろ、イギリスにしろ、ドイツにしろ、まず三〇%前後の国民所得の負担で、日本のちょうど一二、二%というのおくれていると見ていいんで、少しずつこれが上がって、早く三〇%ぐらいの負担に耐えられるというところまでいくのが、私どものむしろ理想でありまして、これを二〇%にくぎづけしなければいかぬというようなことは一切ないと思う。また、そうあっちやならぬと思うのです。
  123. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは国民所得が増加していけば負担率は上がってくる、それは差しつかえないことです。それはいい。しかし、日本現状における国民所得において、二〇%が適当じゃないか、こういう議論、私も賛成なんですよ。それは大蔵大臣の言うように、所得が上がってくれば、税の負担率は高くなってもいい、これは何にも差しつかえない。それはそれでいい。そうじゃなしに、今の所得の現状においては、二三%という割合は高いんじゃないか。これは抽象論になりますからしょうがないのですが、池田さんは、今大蔵大臣お話しになりましたが、アメリカあたりでは二八%ぐらいになっているのじゃないかと思うのですね。大体三〇%前後が多い。しかし、予算の内容がやはり検討されなければならぬと思うのですよ。  日本の場合は、これはある人も指摘しておりましたが、アメリカでは二八%かけている。けれども予算の半額は国防費に使っている。日本の場合は大体一〇%程度じゃないかと思う、予算に対する防衛費は。そうすると、この国防費というものを、アメリカ日本と、平均して考えた場合、アメリカは国防費を五〇%か、五三%出していますが、そを一〇%くらいに、日本と同じように縮めた場合に、アメリカの税負担というのはおそらく二〇五以下に下がるのじゃないですか。今二八%の税負担をしておるけれども、国防費が増大しておるからそういう結果になってくる。だから、日本の場合は、アメリカやイギリスが非常に高い税率をかけておるということで、日本の場合を律するわけにはいかない。日本の場合は二三%、これは高いんじゃないですか。実際各税目、所得税一つ言ったつて、十三万、十四万で税金がかかってくるのですから。たばこだって七割からの税金がかかる。砂糖だって大体それに近い税金がかかる。こういうかけ方ですね。もっと下げていくべきじゃないか。そうすると、当然三〇%程度になるのじゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、どうですか。アメリカ等の比較して、日本の割合は私は高いと思うのですがね。主税局長、どうですか。単に二八%とか三〇%ということじゃなしに、予算の内容からいって、日本の二三%は商い。欧米諸国に比べて、そういうことが言い得るのじゃないかと思うのですがね。
  124. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、日本の今の国民所得の水準から見たら、日本の現行税はまだ問いと存じます。
  125. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから、下げなければいかぬ。
  126. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただ、問題は、この税負担率というものを、動かさないでずっとやっていくという考え方には間違いがあろうということを言っておるので、現状における日本の所得水準から見たら、日本の現行税は私はまだまだない。
  127. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、二〇%で、国民所得がふえるのにこれを据え置いたらいいというこういう議論をしているわけじゃない。その点、大蔵大臣も、税負担の割合は高いから、それはまあ認めるということであれば、将来やはり減税問題については引き就いて慎重に検討していくというふうにしていただきたいと思うのですがね。  それから、これは大蔵大臣に、この機会に質問をしておきたい問題があるのですがね。時間の関係で。入場税の問題です。大蔵大臣がこまかいことは御存じないかと思うのですがね。今度国税通則法が国会に提案されているわけですね。この問題は、われわれとしても非常に重視しているわけです。それに関連して、入場税についても改正があった。税率の引き下げの問題は別として、問題はその入場税法の二十八条ですが、これに関連して、法人でない社団及び財団に対しても、法人とみなして今後罰則規定を適用する、こういう問題が起こってきているわけなんですがね。これは従来そういう罰則規定は実際には適用されていなかった。こういう問題が新たに起こってきているということは、これは民主団体に対する非常な圧迫であると考えているのですがね。そういう問題について、大蔵大臣御存じありませんか。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十分存じていますが、主税局長から……。
  129. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 実はこれは、人格なき社団の問題につきましては、戦後でも新しい法律におきましては、新しい税法につきましてはすべて設けられておるわけでございます。現在、所得税、法人税、こういうものにつきましては、その人格なき社団は法人とみなすということになっております。相続税法は、逆に個人とみなしております。これはそれぞれ今の所得税なり法人税というのは、一体どういうふうにして課税するのかという制度の問題と、これはあとは法制的な問題でございますが、罰則の適用について法人としてやるのか、個人としてやるのか、これを明らかにする必要がある。そういう意味で規定されておることでございます。それから、間接税につきましては、法人、個人を問わず、たとえば移出したものは、酒を移出したものについては課税いたしますから、本税の納税義務についてはわれわれはその規定の必要はないと考えておるわけでございます。  ただ、形式的な整備でございますが、罰則の適用について、一体法人なのか個人なのか議論の問題がございますので、その点は明らかにする必要があるということで、今度国税通則法で予定しておりますのは、国税通則法の十三条におきまして、一般的に人格なき社団で代表者あるいは管理人の定めのあるものについては、各税法で特別の定めがあるなら別であるけれども、そうでない限り法人とみなすという規定を入れておるわけでございます。これを受けまして、各税法は、相続税を別にいたしまして、今の罰則のところですでに、ここで法人とみなされたものと予定いたしまして書いてあるのでございます。法人の代表者が違反行為をした場合には、その代表者を罰するほか、法人に対して罰金刑をかける、こういう規定が各税法に全部入るわけであります。そのときに、法人の代表者のところまではその国税通則法で認めるわけであります。ただ、代表者といい、あるいは管理人と申しておりますので、そういう場合には、その管理人という名前を使っておっても、その管理人を含むのだという趣旨のことが各税法にカッコ背きで入っておるわけであります。その点が、今の入場税の二十八条でもそのことが需いてあるわけであります。したがいまして、もしこの国税通則法の十三条の規定がなければ、この二十八条の第一項並びに第二項は人格なき社団については動かない。罰則に関する限り、二十八条の罰則は動かないということになろうかと思います。すでに所得、法人、相続税において、人格なき社団の罰則についてそれぞれ規定しておりますので、ほかの税法でも、本来の納税義務はいいといたしましても、罰則についてこの規定を形式的に整備する必要があるというだけの理由で、これを入れておるわけであります。
  130. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 その問題は私のほうで非常に大きな問題になっていますよ。だから、大蔵大臣からもひとつはっきりと、まあ主税局長の答弁と同じであるかどうかお聞きしたい。国税通則法の十三条に一般規定として、人格なき社団、財団ですね、そういうものを法人とみなす、こういう規定があるわけなんですね。その規定を受けてたとえば入場税についていえば、二十八条に同様な規定がある。いわゆる両罰規定、罰則規定の中にそれが出てきているわけなんです。で、従来は、従来の違うところは、人格なき社団等については罰則規定は事実上適用されていなかった。ところが、今度ははっきりまあ適用するというふうに改正しているわけなんですね。改正している。そこで問題は、国税通則法がもとであって、そうして二十八条というのはその上に立って規定されているまあ関係条項なんです。そこで問題は、国税通則法が成立しない、かりにですよ、成立しない場合に、その入場税の二十八条は単独でも効力を発するのか、あるいはそれは死文になるのか、効力を発しないのか、その点、非常にわれわれ重要な問題として考えていますので、この機会に……。大臣はなかなか大蔵委員会に出てきませんから、尋ねる機会がない。
  131. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはさっき主税局長の説明したとおりで、あれが通らなかったという場合には効力を発しません。
  132. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは私は、法というものは、政府の解釈いかんにかかわらず、成立すれば、それは法の解釈は独自に行なわれるわけですね。まあ最終的には裁判所が行なうわけですが、そこまで聞くわけにいきませんから、一応大蔵当局の、大蔵大臣の解釈というものを重視したいのですがね。だから、主税局長、もう一ぺんはっきりその点をおっしゃって下さい。
  133. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 国税通則法がもしかりに成立しないとすれば、この入場税法二十八条の規定は、人格なき社団または財団に関する限り効力を発揮いたしません。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連して。今の問題は私たちも非常に重大な問題で、人権の問題だと思っておるわけですが、政府の答弁は私はやはり行政的な解釈ではないかと思うのですね。これは裁判になった場合問題が起こって、やはり裁判所がどういうふうに判定するかということは、私は残されておる問題だと思います。そこで、念のために、この際法制局長官なんかを呼んで、法制局長官の立場での解釈を私はやはり求めておくほうがよいと思うのです。それか、条文の中に、もしも通則法が通らないならばこれは死文だということを書き入れるなり、それはたいへんむずかしいことかもしれませんが、その点を明らかにしておく必要があると思うので、せめて法制局長官を呼んで、そうして見解をただしておくほうがよいと思うのですが、どうですか。
  135. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは政府の、国会の……。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 国会の参議院の法制局長の意見を求めてもよいと思いますし、それから林法制局長官の意見を求めても……。どちらが権威があるかといえば、やはり林法制局長官のほうが権威があると思います。
  137. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 両方呼んだらいい。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはやっぱりはっきりしておいたほうがよいと思うのです。今の私の提案を委員長が採択していただきたいと思うのですが。
  139. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 和紙税法を上げるまでにやってもらいたい。これは印紙税、関連はずっとしているから、各法案幾つも。
  140. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それはこの次にいたしましょう。
  141. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 きょうは朝からずっと長い質問で、大臣もお疲れだと思うのですが、めったにお見えにならないということで、あと二十分ほど時間が残っているわけです。私の質問も、私はきょうは実は入場税に関して質問いたしたいと思っておるわけですが、時間がもうないわけなんで、途中で時間がなくなってしまうようなおそれがあるわけなんです。しかし、大臣がせっかく見えておりますから、私は大臣の認証を改めてもらうために少し質問をいたしたいと思うわけです。  先ほど荒木さんもおっしゃいましたが、私たちの考えは、やはり税というものは所得税一本でいくべきものであって、間接税などというものは全部廃止すべきものだというのが、これが私たちの意見なんです。というのは、先ほど独身者に対する減税が非常に多くなってきているというようなことを言っておりますけれども、独身者は所得税のほうにおいては減税を受けているけれども、間接税のほうで独身者は一番税金をたくさん払っているのじゃないだろうかと思うのです。きょうは特に入場税が問題になるわけですが、入場税などを見圧しても、おそらく独身者が一番たくさんの入場税を払っておる人たちだと思うのです。そこで、私は大臣に、日本の文化政策立場から、この入場税について少し見解をあれしたいと思うわけです。  この入場税ができましたのは、御存じのように、昭和十三年シナ事変の特別税としてこの入場税というものは創設されたものだろうと考えております。昭和十三年のときにシナ事変特別税として創設されたときが一〇%だったわけです。それから戦争がだんだん激しくなってくるにつれて、昭和十五年には三〇%になったわけです。現在とほぼ似たようなことになったわけです。それから、昭和二十年、もう終戦前になりますと、この税が二〇〇%にまで増額された。結局、入場税というのはそういう非常時の特別税として私はずっと発展してきたものだろうと思うのです。しかし、もう今日本も戦争が済んで十何年、大臣がいつも自慢していらっしゃいますように、国民の生活も安定して、そうしてこういう特別税などはもう必要がないような時代になってきておると思いますが、主税局長、入場税というものは総額でどのくらいなんですか。
  142. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今年度の予算で、改正によりまして九十九億七千万円でございます。で、もし改正をいたさないといたしますと、百七十億でございます。
  143. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 小さいことを伺いますが、そのうちの音楽、舞踊の占める税金はどのくらいになっていますか。
  144. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 演劇がそのうち十八億七千八百万円でございます。それから、これは純音楽でございますが、七億八千八百万円でございます。
  145. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その税率は、私は世界に比べて日本は非常に高いと思っておるんですが、特に諸外国の税率の例がありましたら、参考までに伺っておきたいと思います。
  146. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 税率はだいぶ複雑になってございますが、これは一九五八年に映倫が調べたのでございますが、この映倫で調べたのでいきますと、日本は今度は一〇%でございますけれども……。
  147. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 映画が主ですか、それは。
  148. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ええ、そうでございます。これはまあ大体同じでございますので。当時日本は一八・八、今度は一〇%になるわけでございます。イギリスは廃止しましたが、当時一八・七、フランスが二八・九、西ドイツ一二・一、インド二六、それからアイルランド三〇、ニュージーランド八・八、オランダ一八・三、それからアメリカは、一ドル基礎控除いたしまして一〇%かけます。ただ、特殊な料金については別途の課税をやっておりますが、なかなかむずかしいように見受けられます。普通のいす席等については、それは定額の料金については一〇%、別に何か料金が追加されるときにはそれぞれきまっておるようでございますが、実行税率は映倫の調べでもわかっておりません。  なお、先ほど須藤委員から御質問がありました演劇、純音楽の税額でございますが、先ほど申しました十八億というのは、現行法による分でございまして、改正法でもって改正いたしますと、軽減いたしますと、十億四千八百万円、同じく純音楽七億八千八百万円が四億八千四百万円に減少いたします。
  149. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 展覧会は、今度は無税になるわけですね。ところが、展覧会が無税になって、純音楽や純舞踊の会が無税にならない理由は何なんですか。
  150. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは現行でも、展覧会、博覧会、遊園地、こういうものは第二種として取り扱っているわけでございますが、これは、ここでもおわかりになりますように、主として娯楽的要素が非常に少ないというところに着目いたしておるわけでございます。それで、現行でも御案内のように税率に差等がございまして、普通は最高三〇まで行くわけでございますが、それに対しまして、展覧会、博覧会、遊園地は一律一〇%ということであります。
  151. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 現行はそうだけれども、今度は無税にするわけでしょう、展覧会は。その展覧会と音楽会に区別をつけているところに、僕はあなたたちの文化性の低さを感じるわけなんです。なぜ展覧会は無税にして音楽会は税金をかけるかというと、音楽会のほうは多分に娯楽性があるという考え方だろうと思うんですがね。そうなんですか、主税局長、あらためて伺っておきますが。
  152. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まあ音楽といいましてもいろいろございますが、まず消費の実際の形から見て、やはり今の音楽会のほうが娯楽的要素が多かろう。その料金の問題、その設備の問題それからそこに行かれるいろいろな方々の実情から見まして、一般的にいえばそういうことが言えると思います。
  153. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはおかしい。ダ・ヴィンチやなにかの絵を見ることと、べ−トーベンのシンフォニーを聞くことは、何も違いがないのですよ。それをベートーベンのシンフォニーを聞くことのほうが娯楽性があるからとにかくフランスの名画が来ても入場税は取らないけれどもべ−トーベンのシンフォニーをやる音楽会に行くときには、その音楽会に入場税を取るという、ものの考え方自体が僕にはわからぬ。どこがどう違うのですか。べ−トーベンのシンフォニーを聞くことと、そしてフランスの絵を見ることと娯楽性がどう違うか、説明して下さい。それはあなたたちの独断ですよ。
  154. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今、娯楽性という観点からお話しいたしましたが、もう一つは、これは消費税でございまして、支出金額を課税標準にとっているわけでございます。で、支出金額が、それがどういうような内容を持っていましても、その支出金額の大小によって一応税の建前としては担税力の大小を判定する以外にない。こういうことから申しますと、一般に音楽会のほうが料金が高い場合が多いというふうにわれわれは感じております。
  155. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 音楽会が展覧会より金がかかるということは、これはもうやむを得ない。とにかく音楽を聞くためには、それだけの設備がなけりゃ聞けないということなんですよ。だから、展覧会なら、絵を持ってきて、運搬をしてきて、そして会場へそれを陳列すれば、それで事足りるかもわからぬ。しかし、音楽を聞こうと思えば、やはりシンフォニーの団体を呼んできて、そしてそこで演奏してもらって聞かなきゃ、それを聞くことはできないのですね。だから、どうしても費用はかさむのです。費用がかさむから税金をかけるというのは、それは理由にならないですね。
  156. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 費用がよけいかさむから税金をかけるわけじゃございませんです。で、その入場者が高い料金を払って見れるというところにそこに担税力を見出だしているわけでございまして、それで消費税の関係は、その内容がどうあっても、そこに高い金額を出せる人、出せない人、そこにアクセントを置いて考えているわけでございます。
  157. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうじゃないですよ。費用がかさむから、どうしても入場料金が高くなるというわけでしょう。何も金を持っているから、たくさん払いたいから払うわけじゃないのです。費用がかさむから、それだけの入場料を取らなきゃならぬ。だから、それでも今日の音楽会とか舞踊会というものは赤字を出しているわけですよ、現在ね。これはちょっときょう参考文書を持っていますから言いますがね。このごろ日本の音楽家、舞踊家は、音楽会や舞踊会をやるたびに赤字を出しているのです。ところが、絵かきさんは、展覧会をやって、自分の研究発表をするために自分がかいた絵を陳列して、そして人に見てもらう。これは展覧会で絵かきさんが絵を見てもらうというのと同じ行為なんです。ところが、こちらは税金がかかる。そのためにその会は常に赤字を出しておる。大臣、よく聞いておいて下さい。これは大臣の考えによって訂正してもらわなくちゃならない点だと思う。  芙二三枝子という芸術奨励賞をもらった舞踊家ですが、これが新作舞踊発表会を昨年の十一月二十五日に都市センター・ホールでやったわけです。その収支決算を見ますると、収入は三百円の切符四百十二枚売って十二万三千六百円、五百円の切符を五百五十枚ほど売って二十七万四千円、計三十九万七千円、これが収入なんです。ところが、これに二割の税金がかかったわけです。そうすると、これは七万九千四百円ですか、こういう税金がある。ところが、支出のほうを見ますと、会場費に九万一千円、それから舞台の大道具費が二万六千円、照明が三万二千円音楽の作曲、録音などに十三万円金がかかっておる。舞台装置が二万五千円、演出料が二万五千円、台本料が二万円、舞台監督に一万二千円、それから写真をとるのに三万円、それから印刷代が十一万一千二百五十円、衣裳が十六万一千五百円、原稿料が三千円、切手代ですね、それが一万円、それから弁当代が三万円、雑費が五万円、計しますると七十五万六千七百五十円ですか、こういうような金額になるのですよ。そうすると、これにもう一つ今の入場税の七万九千円というのが入りますから、支出が八十何万円という支出になってしまって、赤字は結局四十何万円という赤字がここに出てしまっておる。自分が研究して舞踊会をやろうとすると、すでにこのような赤字が出る。決して営利のためにやっておるのじゃなくて、絵かきさんが展覧会に絵を並べるのと同じ気持でやっている行為に対して、片一方は無税であり、片一方はこういうような税金がかけられる。そのために非常に仕事がしにくい。研究発表会もできない状態になっておる。これが舞踊会の例です。それから、藤原歌劇団がこの間「お蝶夫人」を、昨年の十二月の十日と十一日の二回東京の会場でやったのです。この場合も、小さいことはあまり言わないでおきますが、差引赤字が六十四万円出ておるわけなんです、藤原歌劇団で。それから、純音楽の立場でもなかなかこのごろはむずかしいのです。日本ハープ協会が主催で音楽会をやったときの収支決算がここにあります。支出のほうは会場費が五万円、会場付属費が六千八百円、印刷費が一万六千円、それから入場券が六千百円、招待状が二千三百円、いろいろずっとありまして、結局入場税を二万七千九百八十円払って赤字が九万一千百六十三円出ておるわけです。純音楽をやる場合でもこうなんです。大体これは全体的に言えることだと思うのですね。  こういうように、日本の芸術家が自分の研究した舞踊を発表しよう、音楽を発表しようとすると、常に赤字がつきまとっている。そういう赤字の中に税金が相当含まれておるという現状なんですね。こういう現状をごらんになりましたら、こういう音楽会とか舞踊会などに対して税金をかけることは過酷だと思うのですが、どうですか、大臣。
  158. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その種の催しものが相当に金がかかって利益が出ないという、赤字だということと、この入場税の関係ですが、もし入場料は同じで入場税は無税だと、その金が全部興行者のふところへ入るんだというんでしたら、赤字解消に役に立つということは言えるんでしょうが、入場料と入場税は別でして、これは入場税というものは入場者が払うことですから、これが確かに安くなったほうが多く人が入りいいということにはなろうと思いますが、その赤字とこの入場税がそのまま結びつかないと思っています。確かにこういうものについて現行二割、三割という入場税は多過ぎると私ども考えましたので、今度はいろいろ意見がございました、二段階の入場税を設けたらどうかということもございましたが、私どもは踏み切って全部一律一〇%にしてしまうという措置をとりましたので、こういう高級な相当入場料の高いところへ行く人も相当行きよくなるということは、この税を二割、三割を一割に全部一律にしたわけですから、あると思いますが、それによって人がどれくらいふえるかということは関係するでしょうが、催しものの赤字とは直接これは関係のないことであって、赤字対策ということとこの入場税の問題はどれだけの関連があるか、なかなかむつかしいと思います。映画においても、この入場税を減らしたということによって、そのために人間がどれだけ多く入るか、そうして映画館の赤字を埋めることに役立つかということは、私どももまだはっきりわかりませんが、いずれにしても、見に見った人は税金が下がった分だけ入場料が下がるんですから、負担が軽くなったということは言えるんで、問題は、それですから、今のこういう音楽会や舞踊会に対する入場税が高いかどうかという問題になりましょうが、私どもはこれを高いを見まして今度一律に一〇%に下げたということでございます。
  159. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ほんとうにこの音楽会や舞踊会、オペラがちゃんと赤字なしにやっていこうと思うならば、もっとたくさんの入場料を取らないとやっていけないのですね。みんなぜいたくなことじゃないわけですね。これだけのものをやるためには、これだけの金がかかる。だからせめて入場料も免税にしてもらえば、この会の運営が両面から非常に助かるということなんですよ。大臣の言うように、料金が安くなればたくさん人が来るだろう、たくさん人が来れば入場料がたくさん集まるから収入が多くなる、そういう面。それから、現在の入場税がなくなれば、五百円の入場料そのものがすっかりそのまま芸術家のほうに入ってくる。だから、収入がふえる。この両方の面から言えると思うんですね。だから、展覧会をやるのと音楽会や舞踊の発表会をやるのと同じ意味合いだから、芸術的、文化的な立場に立って、文化奨励の立場に立って、こういう入場税などというものは、こういう純粋な音楽会とか純粋な舞踊発表会などには課さないで、免税にすべきでないかこれが私の意見なんです。そしてそういうことを日本の芸術家たちは心から願っておるわけなんです。今日の状態においては実際やっていけないというのが現状なんですね。非常に活動が不活発になっていくわけなんです。この点に対して私は大臣の配慮を求めたい。どうでしょう。
  160. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう音楽会やなにかと映画そのほかの催しものとのこれは均衡問題がござまして、私どもとしては、入場税は、将来はとにかく、現在の段階で一挙にみんなはずすということは不適当だということで、思い切って今度一律に一〇%という入場税をきめたわけですが、一方、興行のためには、催しもののためには金がかかるからというので、現実に高い料金を払って見に立く者に対するほうを無税にして、ほんとうの大衆誤楽といわれている映画の方をまだ一〇%置くということも不均衡になりますので、これはやはり入場税は将来の問題としてみんな無税にするかどうか、これはつながっている問題で、そのときには当然考慮されるのでしょうが、今のそのほかの催しものにも一割置くというときに、特に金のかかるものについてだけ無税にするというわけにはちょっといかないのじゃないかと思うのです。これをやるときには、一律にこういう入場税というものは廃止しようというときに気をつけていかなければならない問題だと思います。
  161. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もちろん、私は映画にはかけてもいいから音楽会には無税にしろということを言っているのじゃないですよ。すべて無税にすることが一番いいわけで、私たちはそれを主張しているわけですから。しかし、まず第一段階として、展覧会が無税であるのに、それと同じ趣旨でやられるところの音楽の発表会や舞踊の発表会に対して課税するのは酷ではないか。同じとにかく趣旨なんですね。
  162. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  163. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記を始めて。
  164. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題につきましては、あらためて議論しましょう。きょうはこれだけで……。
  165. 岡崎真一

    ○岡崎真一君 ちょっと、大臣に一言。議事進行的なことなんですが、衆議院における税法関係法案の審議状況がどうなっているか、伺うと長くなるから伺いませんが、ただここに予備審査の税法関係がたくさんあるようですが、これは毎年のことでして、私は予算歳出と歳入とうらはらの問題で、歳出予算の審議を終わったならば、同時に税法のほうも終えてこちらの参議院によこさなければならないと思うのですが、毎年の悪癖なんです。すでに参議院に歳出予算案が来てから十日以上になるのに、いまだに衆議院の委員会に税法がひっかかっているのですが、衆議院の審議状況がどうなっているかということは、長くなるから伺いませんが、審議の促進方を、長年の悪癖だからすぐ直らぬと思いますが、ひとつ要望しておきます。
  166. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後二時五分散会    ————・————