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参考人(
城戸四郎君) 私、
城戸でございます。御指名によりまして
参考の
意見を申し述べさせていただきます。
入場税に関しましては、各般にわたる
入場税がございまするが、
映画の
入場税が
入場税の中において占めるウエートが一番大きいのでございます。したがって、私が
関係いたしまする
映画産業団体連合会という
立場から開陳いたします
意味からいたしましても、
映画に関するものを主といたしまして
参考意見を申し上げさせていただきたいと思うのであります。
この
入場税に関しましては、われわれは悪税と心得ておるのであります。永年にわたりこれが
撤廃を
要望して、今日に至っております。現に英国のごときは、
映画に対しては無税でございます。米国は一ドル以上に対してわずかにかけております。フランス、イタリアの、こときは、
入場税を取りましても、さらにそれを優秀なる
映画、あるいは
設備、その他いろいろな
意味において、これが
発達を助成する
意味においてその
税金を大半還元しております。いわゆる
映画の
推進の上にこれを利用しているということになるのであります。しかし、日本におきましては、本来
映画の初期におきまして、非常に好ましからざる
映画が当初出たというような
関係からして、やや
禁止的税金として課せられたのが発端でございます。しかし、
映画の
発達とともに、
自然映画の
社会性の
重要性が認められまして、あらゆる点において、いい悪いにかかわらず、その
影響力の甚大なることを
考慮して、
税金に対する
考え方が変わって参りました。
しかし、本質的に申し上げますと、この
税金なるものは
興行税から出発しておるのであります。いわゆる
興行者にかけるところの
税金である
興行税だ。ところが、それがだんだん変わりまして、
観覧税、そして
大衆の代弁をするんだという
意味において今日の
入場税ということに相なり、これも
国税として課せられ、また
地方税になり、さらに
国税になるというような、非常に今日までに
変化を来たしたのであります。その
変化を来たし、いろいろ名称が変わったゆえんのものは、要するに、この
映画を通じて取るところの
入場税が比較的税収に大きな
貢献をするというところに基づきまして、
大蔵当局のいわゆる税の
徴収技術に焦点が置かれまして、いろいろな
変化を来たしたものとわれわれは
承知しております。
今日におきましても、ややもすると、
大蔵省当局の各人は
映画に対する
認識を十分深めながら、なおかつ、
大蔵省という
立場になりますというと、ほとんど人が変わったごとくに、いわゆる
徴税一本というものにしぼられまして、そしてややもすると、
映画のいろいろなものに及ぼす
影響ということに対しましてはほとんど無
関心である。われわれはこの際、
映画の
社会性の向上というものに資せんという気持を持っているにもかかわらず、そういうものに対する援助、助成、
考慮というものがいかにも払われていないように感ずるのであります。たとえば
大衆に非常に必要である、あるいは宣伝であるというような
関係から、
無料で
大衆に見せる。つまり
無料入場料をもって、
入場料なしで
大衆に呼びかけるという場合におきましても、これをみなし税といいまして
税金をかける。このごときは、いわゆる世界じゅうにない類例であります。いわゆる
徴税技術に対してあまりにこだわり過ぎる
一つの例ではないか、こう私は
考えているのであります。
戦後におきますところの
映画が、一時
大衆を動員したという
現象に基づきまして、非常にいわゆる
映画ブームと申しますか、
劇場建設が非常に行なわれまして、今日におきましては、その
映画館に
格差、非常な差が出て参りました。言いかえますならば、非常に
設備も環境もあらゆる点において十分なものがあるにもかかわらず、一方には便所の臭気までも場内にあふれるというような非常な
格差があるものができて参り、消防署はこれが改善を
要望してやまないのでございます。しかし、この
設備の不完全なほうは、勢い自分のほうの
お客を吸引する上からして、
入場料を極度に
低減いたしましたり、それから三本、四本という写真を並映いたしまして
お客を呼ぶ。したがって、正常な
方法において興行いたしますと非常に資本がかかる、それと非常にアンバランスになる。したがって、
映画の
配給収入に著しく混乱を来たし、その結果はややもすると
映画製作者をして非常に低迷させるという
現象に相なったわけでございます。
ことに、この
テレビ発生以来、
映画というものは確実に
影響を受けております。
片方は
入場料を払う、
片方は
無料でスイッチを入れると同時に見れるのであります。そしてこの
テレビをやっているのは、これはわれわれのひがみかもしれませんが、
新聞社だとか、その
方面における
有力者の
提案がある
関係か、あるいは
テレビの本質上なのか、
政府は非常にこれに対して特段の
補助を与えておりますが、
映画においてはほとんどこの
補助を与えられたことの事例がないのでございます。たださえ
テレビの
影響があるにもかかわらず、そういうようになるというと、われわれは今転落して斜陽であるというにとどまらず、今非常に
破産の一歩
手前まで転落しつつある。その一方、健康的な
レジャーというものも
発達しつつありますが、それと同時に、不健康にしてなおかつ非常に
レジャーというか、なおかつ非常に
大衆の
関心をひいているものがございます。たとえばマージャン、競輪、パチンコのごときは一千億を超過するというような
収入を得ておるということを特に御銘記願いたいと思うのであります。
しかも、
映画というものは、今においては
設備その他において非常に費用を要し、また
労働者の待遇に対してもほかよりははるかに劣る。そういうような
関係と、
テレビその他に対する手段としては、
大作によってこれと対抗するにあらざれば対抗し得ないという
現状に対しまして、どうしてもわれわれは
税金を
免税いたしまして、そうしてそれの余沢を受けて、そして
映画の
推進に資したいというのが、われわれの念願、
希望でございます。したがって、われわれは単に
映画というものを
免税にしていただいて、それを直ちにわれわれのみの
収入にするというのではなくて、
大衆にもこれを還元するというような観点に立って今日に至りました。今日議会その他、特に
社会党、民社党におきましては、
全面的反対ということに御支持願いまして、自民党ももとよりこれに対する
認識を十分に持っていただいておりますが、ほとんど全党をあげてわれわれの
考えに対して、
減税ないし
撤廃に対して御了解を得、御支持を得て今日に至っていることは、われわれ
業者といたしましては、まことに
感謝にたえない次第でございます。
しかしながら、その
大作をこしらえることにつきましては、どうしても、われわれとしては少なくとも
減税の半分はいただきたい。先ほど申し上げたような
理由から、それをるる述べておるんでございまするが、それに対する、先ほど申し上げましたところの
徴税の上からいたしまして、どうしても下げたものは全部
大衆に還元しろという
政府当局の強い
要望がございます。これはあくまでもわれわれは
反対するものでございまして、ことさら
反対せんがための
反対でなくて、われわれの
現状は斜陽的、
破産一歩
手前である。しかも、
映画の
社会的に非常に
重要性を持つところの使命を保持する上において、どうしても最期の悲鳴ともいうべきこのいわゆる半分を
興行者及びわれわれ
映画製作者に、残りの半分を
大衆に還元するということをもって、今非常に
政府に対して主張しておるんでございます。
しかしながら、
政府は、今日におきまして、依然として強くわれわれに
要望するところのものは、今日
政府はあらゆる点において低
物価政策を用いておる。そして
映画というものは非常に目立つ。だから、そういう
意味において、低
物価政策に
影響するところ大きいという
考えのもとに、これに
協力してもらいたいというのが
政府の
要望、特に
大蔵省の
要望でございます。われわれといたしましては、低
物価政策ということが、いかに、今日
自由経済の貿易になろうとし、また
電気、
電車賃、
運輸などがややもすると値上げを認められるかのごとき状態にあるに際しまして、
映画というものはいよいよ低
物価政策に
協力する必要をわれわれは痛感しておるので、ございます。
したがって、この
大蔵省の
要望に対して、われわれは先般来数次にわたって協議をいたしまして、これに対しては全面的の
協力をしよう。しかし、われわれの苦労であるということに対しましては、十分に
当局が
認識していただくことを建前にして、われわれは全面的に
協力いたそうじゃないか。そこで、われわれは先般「
映画界は
政府の低
物価政策に全面的に
協力致します。
具体的方法については、
業界の良識により善処することをお約束致します。」、これを十分にお含み願いたい。いわゆる
破産しかかっている
業者というものを見殺しにしていいかどうかというようなことも、われわれは
考えているような次第でございまして、そういうことも言葉の中の含みとして御了解願っておきたい。「なお
参考までに申しそえますが、
入場税減税後は、これを
全国映画館前に表示し、
入場料金の安くなったことを
大衆に知らせます。」、これはわれわれがいかに
協力し、また
政府が
入場税の
低減に対しましていかに
大衆に
関心を持っているかということを、
政府の意思をもあわせ伝達せんとするところの
趣旨にほかならぬのでございます。
特に、一部の解釈としては、あるいは
新聞に出るところのことによりますると、要するに、ものが安くなれば
お客が来るのではないか、こういうような
お話がございまするが、これは
映画に関する限りはその理論は成り立たないのであります。つまり、
一つのものを売るときには、その
原価及び原料その他
労務等をやって、ある程度のコストが出ます。しかし、
映画というものは、
料金よりも、それよりもいわゆる
大衆が、特に
一般物価でも同じでございますが、
大衆が特に敏感に
映画の
入場料に
関心を払う速度が多いのであります。したがって、それが非常に妥当でないという場合においては、
大衆に見向かれなくて、われわれはいかに大きく宣伝いたしましても
大衆を引きつけることはできないのでありまして、したがって、われわれは、
一般の特価と違います、要するによき
映画を出す、
大作で、しかもいい
大作を出すというところで
大衆を引きつけるのでありまして、そういうことは、いよいよもって、われわれの現在の実構から、より以上の金を出しましていい
製作をするということにほかならないのでございます。どうかそういう
意味におきまして、われわれは今回の
政府の低
物価政策というものに対しましては全面的に
協力いたしまするが、十分に御理解を願いたいと思うのであります。
なお、伝えられるところによりますと、われわれのほうは、やっておいて、いいかげんになったらすぐ元に戻る、あたかもわれわれが、そういうことの常習犯のごときことを言われるのは非常に不本意でございます。われわれとしては、あくまでもそううい態度でなく、私利のために
入場料が上がることは、良心に誓ってそういうことは安野でないと思うのであります。いずれにいたしましても、われわれは
大衆を離れて存在するものでないので、
入場料は
大衆が決するということに相なります。
どうか以上の点を十分に御
考慮を願いまして、このたびの
入場税改正に対しますわれわれの意のあるところをおくみ取り下さいまして、今後の御
参考に願いたいと思います。ありがとうございました。