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参考人(柳満
珠雄君) ちょっと、私、自分の
銀行の都合でおくれまして、たいへん失礼いたしました。ただいまから
お話を申し上げたいと思います。
まず、劈頭に申し上げたいと思いますのは、この
法案に対する私の
意見は賛成でございます。
私は、
為替専門銀行の
資金調達の方式について諮問のありました昨年の
金融制度調査会におきまして、
為替銀行を代表いたしまして、
委員として
審議に当たりました。この際、本件に関する
一般為替銀行の基本的な考え方について申し述べたいと存じます。
まず、
昭和二十九年の
為替専門銀行発足から今日に至るまでの
為替銀行界の状況を、ここでちょっと振り返って見ますと、
為替銀行法が提案されました当時におきましては、すでに外国
為替業務に従事しておりました一般の
為替銀行は、大体においてこれに反対
意見であったといういきさつがございました。
つまり、すでに活躍中でありました
一般為替銀行の実資力の
強化や国際
信用の獲得があれば、特に
専門銀行という
制度を作る必要はないということであったのでございます。また、当時の賛成
意見にありましても、
専門銀行と一般
銀行は、その能力において十分競争と補完の
関係に立つように慎重な配慮を加えるべきであって、また各界、特に
金融界の積極的な協力が行なわれるべきであり、その意向の反映されるような運営が望ましいとする見解がつけられていたものと記憶するのでございます。
しかし、かようにして
専門銀行が発足しましてからの
実情は、
東京銀行においても、
海外支店網の
充実を初めとしまして、業容の拡大があり、また
一般為替銀行におきましても、
貿易為替金融に力を注いでおります。また、国際的
信用を獲得することによりまして、
業務の
発展に務めました。もちろん、これは国際
経済における
日本の地位の向上や、あるいは国力の
伸張というものを土台にしておったのではございますが、いずれにしましても、
業務の
発展に努めまして、それぞれその力を伸ばして参ったわけでございます。その間の両者の
関係は、競争という点ではそれぞれ業容の拡大に貢献するところがあり、
外国銀行に対しましても十分太刀打ちできるように育ちました。しかし、他面、
協調、補完という点では、私の口から申すのははなはだ遺憾でございますが、顧みまして、まだ十分なものではなかったものと言い得ると思うのであります。
しかし、われわれ
業界の問題といたしまして、公正な競争はもちろんけっこうなことで推進さるべきものであると思います。その結果が、ひいては
わが国の
貿易の伸展にもいささかでもお役に立つ面があるかと存ずるのでございますが、それがいたずらに行き過ぎとなりまして、他を押しのけることになっては、
貿易為替業務に従事する
銀行の公共的
使命にかんがみましても好ましくないし、また国際的
信用にもかかわるという面もございます。そこで、ここ一両年にわたりまして、過去の反省もありまして、
業界の問題として
為替銀行間の
協調態勢確立の必要というものが論ぜられるようになりまして、
金融界全体として、内に力を争うより、外にそれを結集すべきであるという機運が醸成されてきたのでございます。
しかし、
協調と申しましても、御
承知のとおり、こういう問題は今日明日直ちに実行できるというわけではなく、なかなかむずかしい問題でございまして、特にこれという方針や方策が打ち出されていたわけではありませんが、個々のケースとしましては、
貿易金融の
協調融資の
取り扱い、特に
商社の
海外活動に伴うものであるとか、
東京銀行の
海外支店との
コルレス契約の締結であるとか、特殊
貿易取引には
東京銀行の人員能力にお願いして
為替銀行全体の窓口になっていただくとか、あるいは昨年のアメリカの
輸出入銀行の綿花借款の
取り扱いについて、従来
日本銀行がやっておりましたのにかわりまして、
東京銀行を借款受け入れ機関にお願いしたとか、そういうような例は多々ございます。要するに、協力して
為替金融界全体の運営をスムーズにいたしたいという
方向を進めつつあったのでございます。特に一昨年から、これは先ほ
ども掘江さんから
お話しがありましたとおり、一昨年から昨年の
東京銀行の増資にかけまして、ほとんどの
為替銀行が話し合いの上、
東京銀行の株式を保有するという話を進めまして参りました。これはそういう
協調機運の明確化してきたものと申すことができると思います。
ところで、昨年来の
金融逼迫の
実情につきましては、今さらここで申し上げることもないところでありますが、それがまず
金融機関の金詰まりから始まりますことも、これも御
承知のとおりと存じます。かような際に、
専門銀行である
東京銀行においては、特にその
預金吸収網が少ないのと、
業務の特殊性のために、その
資金繰りの窮屈は十分察せられるところでありまして、かつ、当初予想しましたコール
資金への依存もなかなか困難の多い
実情にありました。かような情勢におきまして、昨年六月、大蔵大臣から、
金融制度調査会に対しまして本問題の諮問があったわけでありますが、
為替銀行の代表としまして
委員を勤めておりました私の第一に考えましたことは、前申しましたような
協調機運の中にありまして、これはまず
業界内の問題として対処する
方法はないかということであります。もう一歩具体的に申しますと、根本的な全体の
金融制度、
金融機構の問題として考えるべきことはもちろんといたしましても、まず何よりも当然のことではありますけれ
ども、われわれ
業界の問題として解決したいということでございました。
かようにしまして、調査会における
審議の結果は御
承知のとおりと存じますので、詳しくは触れませんが、まず
東京銀行の
実情につきましては、何らかの安定的
資金の導入が必要であり、
東京銀行の支援のためには
金融界に醸成されてきた
協調機運という、これを助成する基盤があるということが私たちの議論の出発点でございました。
そこで、具体的に問題となることは、第一に、まず安定
資金調達の
方法でございますが、これは
為替専門銀行発足当時からの問題の
一つでありまして、行政当局、
日本銀行、
東京銀行、それぞれにおきまして、特に
円資金の調達には御苦心のあったところと思いますが、やはり当初予想されましたようなコール市場の安定とか、
金融環境の整備という点においては、いまだ不十分なものがありました。
現状においては、
協調機運を基盤として、同業者
預金とか、
金融機関の借入金とか、他の手段もいろいろ考えたところでございますが、やはり
協調といってもギブ・アンド・テークの、双方により納得してつき合えるものが必要である。結局、債券の
発行によることが
現状ではやむを得ない
方法であるという結論に達したものであります。
それから、第二に、債券の
発行によるとはいえ、本来、
為替専門銀行の
業務は、
預金とこれを補完する
借り入れとを
資金調達の基盤として運営さるべきものでありまして、
業界内でもかれこれ
意見があったのでございますが、結局これは当分の間の暫定的、過渡的なやむを得ざる
資金調達補完の手段として、かつ、先ほど申しました
業界の
協調基盤の確立に役立つものとして認めよう、こういうことになったのでございます。
次いで、債券の
発行は、以上のような
資金のおもなる
調達源を補完するものであり、かつ、いわば現在の正常ならざる
金融環境において、過渡的な手段であるということ、さらに既存債券
発行銀行の営業との兼ね合いや、
為替専門銀行の性格から、債券の
発行の
限度は自己資本の五倍に設定することが、これらの
趣旨を盛り込んで、かつ、
専門銀行の運営にも支障はない線であろうと、こういうふうに考えられたわけでございます。
さらに第四に、具体的な
発行条件、消化
方法につきましても、
発行には、
為替専門銀行の性格上、比較的
短期のものが望ましい、既存
金融債その他起債市場の状況を勘案します必要がある、それから
発行者、消化先の採算をよく考える必要がある、こういう点に留意する必要がある。それから、消化の
方法については、
業界協調の精神に出ずるということから出発しておるのでございますから、
金融機関の消化を原則とすべきであると、こういうふうに考えるのでございます。そういう考え方を実現するためには、
関係者からなる協議会を設けまして、まず何よりも
業界の問題として対処する
方法をとりたいと考えているのであります。
以上、
為替銀行を代表いたしまして、
東京銀行の債券
発行の問題について私の考え方を申し述べましたが、要するに、本
法案の成立によりまして、
東京銀行の債券
発行の
方法が、
為替銀行の
協調関係を助成する具体的な場を形成しまして、今後の
業界の努力と
協調によりまして
わが国の
貿易為替金融の円滑化、ひいては
貿易の
振興に役立つことになれば、幸いと存ずるのであります。たいへん貴重な時間をいただいて、ありがとうございました。