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参考人(
三村起一君) 私は、ただいま御紹介いただきました
石油鉱業連盟会長の
三村でございます。本日は
石油業法案につきまして、
意見を述べる
機会を与えていただきましたことについて厚く御礼を申し上げます。
現在提案されております
石油業法案は、もちろん本年十月の
石油輸入自由化に備えてのことでございますが、
世間の一部では、
自由化とは言いながら、
業法で規制するようなことは、真の
自由化ではないというような
意見もあるやに聞いております。はたしてそうであろうかどうか疑うものであります。
石油産業の実悪を知っておる人々の大多数は、
石油業法の
必要性というものを私は認めておるのだと信じております。通産省に設置されました各界の
権威を集めた
エネルギー懇談会は、
恒久法として
石油業法の
必要性を報告しておられます。また
経済団体連合会でも、
最初のうちは
業法に対して
反対論も相当あったのでありますが、今年の初めに何回か
エネルギー対策委員会を開きまして、
関係者を呼んで、いろいろと
事情を調べられた結果、
統制反対の
原則的見地は持しておられましても、
条件つきでありますが、やはり
石油業法はやむを得ないとの
考え方にまとまったのでございます。
次に、
わが国の
特殊事情から見た
業法の必要につきまして考えるところを申し述べたいと思います。もうすでにこの点は、
わが国の
特殊事情につきましては、
皆様方よく御存じのことでございますが、
わが国の
石油精製業界は、巨大なる
外国石油会社と密接な
関係を持っておりますので、いろいろ複雑な問題があるやに聞いております。
次に、われわれ
石油鉱業連盟の
立場から申し上げますと、
石油業といえば、
海外では掘ることから
精製、輸送、
販売、これみな一貫しておるのが
普通石油業でありますが、
わが国の
特殊事情としては
精製業と、それから
石油を掘るのとは別々になっておるような次第でありまして、われわれ
石油鉱業連盟の四社は、みずから
精製の
設備を
一つも持っておりません。したがってわれわれの
生産した
原油の全部を既存の
精製会社に買っていただかなければ、やっていけない
現状でございます。しかも
競争相手はどこかといえば、全部
外国の巨大なる
石油会社ということになっておりまして、
原油の
輸入が
自由化されることは、
石油精製会社にとっても、いろいろと問題もございましょうけれ
ども、われわれ四社にとっては、まことに大きな
影響をまともに受けるものと見るべきではないかと存じます。
そういう次第でございますので、
原油の
輸入を
自由化するにあたっては、
業法も要らないという人がもしあるとしますれば、全くわれわれ
石油鉱業連盟の四社の存在を無視された
立場に置かれることになると思います。特にわれわれ
石油鉱業四社にとって、今の時期に
原油の
輸入が野放しに
自由化されるということになりますれば、あたかも、
国産原油はもちろんでありますが、
アラビア、
北スマトラ等で花のつぼみが咲きかかったところで嵐が吹くようなものでございまして、私
たちの
企業にとっては、
死活にかかわるところの
重大事件でございます。
ここで少しく
事情を申し上げて御了解を得たいと思います。すなわち
国内における
石油資源の
開発は、この数年間の
探鉱の
成果がようやく実りの時期を迎えまして、過去
日本の、まず、
天智天皇時代は別といたしまして、明治になって
石油採掘というものが、やや本格的になって以来九十年の歴史を持っておりますけれ
ども、
横ばいの
状態で最近まできておりましたし、ことに戦後は八橋
油田を発見するまでは
横ばい状態でありましたが、幸いにして、ここ数年間
皆様方が第二十二国会においてお作りになりました
石油資源開発株式会社法によりまして、
開発会社ができてから著しく
原油の
生産が伸び始めたところでございまして、最近の
カーブは、ここへ持ってきてはおりませんけれ
ども、最近数年閥の
カーブを見ますというと、過去の
横ばい状態の
カーブから非常な勢いでもって上昇してきておりますことが、あたかも戦後
ヨーロッパの独、仏、伊三国の
カーブに類似してきておることを特に注意をしていただきたいと思います。これは、ひっきょう
探鉱活動が十分にやられた結果だと思いますので、もしも引き続き
探鉱活動が十分に行なえるならば、ここ数年の
実績から類推いたしまして、今後の増産は期して待つべきものがあるのではないかと思います。
しかし、他方において、この数年、
輸入原油の
価格が急落いたしました。このことは、決して
精製会社に対して、かれこれ文句を言うわけじゃございません。これは国際的な
情勢でございます。われわれの
原油も、したがって、わずか二年間で三〇%の値下がりを余儀なくされたのでございます。具体的に申しますれば、一キロリットル当たり九千五百円ほどであったのが、この二年間に、昨年の十月からは六千六百五十円に下がり、さらに最近は、これから二千円下げるように
貰い取り精製会社のほうから要望されてきております。現在の六千六百五十円という
価格は、米国の
国産原油の
価格とほぼ同じでございまして、
生産者手取り約一万円前後の英、仏、
独等の
価格から、はるかに安くて半値近くの値段で、われわれ
国産原油は引き取られておるわけでございます。これを
世界一安い中東からの
輸入原油と同じ
価格にまでさや寄せするということは、
精製業者の
立場としては、私はもっともだと思います。決してこれをかれこれ言うのじゃございません。しかしながら、今度は
立場を変えましたわれわれといたしましては、非常な窮地に立たされるわけでございまして、したがって今後、野放しの
自由化ということが行なわれた場合には、われわれの
生産した
原油が円滑に引き取られないということにでもなりますというと、日夜汗水流して泥まみれになって働いておる五千人の
従業員としては、それこそ
死活に関するところの重大な問題ということになりかねなしと思うのでありまして、この点は
精製業者と、われわれ
石油を掘るものとが、
両者共存共栄の道を開いていただきたいと思っておるわけでございます。
第二に、
海外開発の
原油の
引き取り問題でございますが、今のは量が少ないから、まあ大したこともなかろうということはよく言われますけれ
ども、今度
海外開発原油になると、逆に量が大きいからちょっと問題だというふうに言われるのでありますが、
アラビア、
北スマトラ石油の
引き取り問題が当面してきておるのでありまして、いずれも
わが国にとっては有意義な
海外開発事業でありまして、
政府の
財政融資も、すでに相当多額に受けておりますが、
北スマトラ、
アラビア両者とも、その
事業はりっぱに
軌道に乗っかってきました。特に
アラビアでは、今まで二十八抗井のうち、一本の失敗もなく、わずか二年余にして
世界第八位の
油田といわれるほどの大成功をおさめて参っております。
生産も、本
年度は六百五十万キロリットル、来
年度は一千万キロリットルに達するという見通しでございますので、
石油輸入国である
わが国にとっては、これを一
アラビア石油会社というのじゃなく、
国家的見地から見ましても、まことに慶賀すべきことだと思われます。
ところで、先ほ
ども述べましたように、
わが国の
精製会社と
外国石油会社との特殊な
関係がありますために、
国際価格であっても、量的の点で十分なお
引き取りができるかどうかということは非常に困難な問題があるのでありまして、この点は極力、御同情があり、また御
理解もある
精製業者のほうの態度でございますが、また一方、大きなユーザーとしての電力並びに
鉄鋼会社のほうでも、極力引き取るように御尽力下さることと思われます。またそういう
言葉も聞いておりますが、しかしながら、なかなか容易でないことだと思います。で、具体的に申しますと、現在
わが国の
原油輸入量のうちで六〇ないし六五%
程度のものは、
外国資本が半分入っておる
会社に対して、その親
会社である
外国石油会社が独占的に
原油を
供給しておりまして、さらに残りの二〇%は最近ここ数年間、莫大な
外油会社からの
設備資金の
借り入れ、それが、ただ単に金の
借り入れでなくて
原油の長期の
引き取りの、
購入の契約ができておるといわれておりまして、自由に
購入先を選択できるものは、わずかに年に五百万か六百万キロリットルといわれております。
以上のような論点から帰納いたしまして、
石油業法の必要だということを私はさらに、もう少し申し上げてみたしと思います。
このように
石油業界は、現在各種の重大問題が山積しております。かつ相当の
混乱が想像されるのに、
自由化にそのままで突入するということは、これはきわめて危険なことだと思われますので、
エネルギーの中心であります
石油産業が安定することは、
国家的見地からも非常に重要なことではないかと考えられます。
業法がもし成立しないときは、
自由化を延期すべしというような
議論まであるということも聞いておりますが、
わが国の
特殊事情と
石油業の
重要性からすれば、あるいは無理からぬ
意見かとも思います。あるいは
世間では、
自由化しても自主
調整すればよいじゃないか、
法律は要らぬじゃないかというような
議論もございますが、これはある
程度、なるほど願わしいことではございますけれ
ども、しかし現実の
石油業界の実情を見まして、はたしてそのことが可能であるかどうかということは、私はきわめて疑わしいと思います。
政府におかれましては、
自由化を前にして、国全体の利益という
大局的見地から、
重要産業である
石油事業全体の
秩序を維持することができますように、今回
石油業法の制定を考えられましたことは、きわめて私
たちは時宜を得た
措置であると思います。また、絶対必要な
法案であるとわれわれは信ずるものでございます。
現在提案されております
石油業法に対して、一、二、われわれの
立場から若干希望を述べさしてもらいますというと、第三条の
石油供給計画及び第十条の
業者の
石油製品生産計画に対する
勧告、こういう条項の
運用等を通しまして、
国産並びに
海外開発原油が、
ヨーロッパの
実例のごとくに完全
引き取りということが安定して行なわれるようにしていただきたく、特にお願いいたしたいと思います。
以上は、
業法についてでございます。これで大体終わっておりますが、なおこれとともに、
業法の
裏づけという
言葉がいいかどうかしりませんが、
裏づけとして、引き続き
国産原油の
保護育成ということと、この
石油鉱業連盟の四社の
原油の確実な
引き取り体制の
確立ということについて、かねがね念願しておるわれわれは、
政府並びに
語先生方にも、われわれの
意見は昨年暮れからして
要望書としてお手元にもお配りしたわけでございますが、この
事柄を、特にそういう具体的な
施策を、ひとつお考えをお願い申し上げたいと思います。これにつきましても、
石油連盟とは緊密な連携をとりながらひとつ進んでいきたいと思っておりますが、ついては二点について、特にお願い申し上げます。
国産原油の
現状につきましては、すでに述べましたとおりでございますが、
西欧諸国が戦後十数年間に
国内石油資源の
開発に一貫した
努力をやっておる
——どなたかもおっしゃいましたとおり、フランスのごときは何べんか
内閣がかわったにかかわらず、一貫して
政策を実行しておるということでございましたが、
国内石油資源の
開発に一貫した
努力を傾注した結果、めざましい
成果をおさめております。
わが国では、第一次五カ年
計画の
遂行によって
探鉱活動もようやく
軌道に乗りつつありますけれ
ども、
石油資源開発に対する
政府出資は、本
年度は
探鉱費二十五億の予定をしておりましたが、十億円の
政府出資を要望しましたに対して、わずか四億円に削られておりますし、また、
天然ガス関係予算も四億円の要求に対して一億丘千万円が予算化されておるにすぎないのでございます。これを
西欧の例に見ましても、
わが国五カ年
計画の
実績から見ましても、
油田、
ガス田の発見というものは、
探鉱投資額に比例しておる。ことに学界、実際界の
権威者を集めていらっしゃるペアックの御報告にもありますとおり、
連鎖反応式に
油田が
開発されるものだということを報告されておりますが、そういうふうに増大するということが
——探鉱投資に比して増大しているということが実証されておりますので、
わが国では、まだまだ未
探鉱地域が、陸上も広うございますが、まだ広いところの海中の大陸棚の
開発という点についても大きく残されておると思っております。昨年立てられましたいわゆる第二次五カ年
計画では、四十一年には
石油が百五万キロ、
天然ガスが一千五億
立方メーターの
生産が
計画されておりますが、これは五カ年間に総額二百三十五億円の
探鉱資金が必要とされております。しかしながら、これは一年間に今申しました
天然ガスと、それから
石油とを合わせまして、
天然ガスを換算いたしますと三百五十万キロリットルになりますが、それでもって、どれだけの
外貨節約かというと二百億円をこす金額になるだろうと思います。すなわち二百二十五億かけても一年でそれだけの二百億円以上の収入があるかと思われておるのでございますが、
政府の
探鉱に対する
出資も十分にしていただくことができず、
原油価格の大幅な値下げを強要されておる上に、さらに
生産した
原油の
引き取りが安心できないということでは、満足な
探鉱はおろか、
企業の将来に対して深甚の危惧の念を抱かざるを得ません。
しからば、これが財源はどうするかといえば、
石油については、現在
輸入関税や
揮発油税等が全部で約二千五百億円ほどございましょうが、その
賦課金が課せられておるのでありますからして、そのごく一部でもいいのでございますからして、一%とか二%とか、まあ一%はどうか知りませんが、二%とか、ごく少ない金でもいいのでございますが、何とか、年々確実に
国内の
資源開発に、ことに
探鉱資金のほうに振り向けていただくように、具体的な
施策を講じていただくということが最も強く要望されておるのであります。
第二に、
買い取り機関も簡単に申し上げますが、
海外開発原油につきましても、先ほど述べましたとおり
精製業界の
特殊事情のために、私
企業間の話し合いだけでは、十分な量の
引き取りの話は
まとまりにくい点があるように思われます。これらの
諮問題を円滑に解決するためには、たとえば何か国策的な
特殊法人の
原油買い取り販売機関を設立していただいて、また場合によっては国が必要とする
原油の備蓄もこの
機関を通して行なうというようなことにでもなりますと、今後の
石油政策遂行上、
一貫性をもって非常に有効でないかと考えております。
われわれはただいま提案されております
石油業法が成立することを心から、まずもって念願いたしておりますが、それと同時に、ただいま申し上げました
国産原油の
保護育成策と
国産及び
海外開発原油の完全
引き取り体制の
確立について、
世界的視野にお立ちになっていらっしゃる
皆様の御
理解と御援助をいただきまして、諸
先生方にお願い申し上げまして、この点を何とぞ具体的にしていただきたいということを、しかもすみやかに具体的にしていだきたいということを
一同衷心から念願いたしまして、この
機会に
連盟を代表して特にお願い申し上げる次第でございます。