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1962-04-12 第40回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————   委員異動 四月十日委員横山フク君及び村山道雄辞任につき、その補欠として鳥畠徳 次郎及び木村篤太郎君を議長において 指名した。 四月十一日委員木村篤太郎君及び鳥畠次郎辞任につき、その補欠として 村山道雄君及び横山フク君を議長にお いて指名した。 本日委員山本利壽君及び片岡文重君辞 任につき、その補欠として徳永正利君 及び相馬助治君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理事            鹿島 俊雄君            村山 道雄君            阿具根 登君    委員            勝俣  稔君            佐藤 芳男君            徳永 正利君            山本  杉君            横山 フク君            永岡 光治君            相馬 助治君            石田 次男君   衆議院議員    発  議  者 島本 虎三君    発  議  者 吉村 吉雄君    発  議  者 田邊  誠君   国務大臣    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君   政府委員     厚生政務次官 森田重次郎君    厚生省社会局長 大山  正君    厚生省児童局長 黒木 利克君    厚生省年金局長 小山進次郎君   事務局側       常任委員       会専門員 増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○港湾労働者雇用安定に関する法律  案(衆議院送付予備審査) ○最低賃金法案衆議院送付予備審  査) ○生活保護法の一部を改正する法律案  (衆議院送付予備審査) ○児童扶養手当法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○国民年金法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ただいまより本日の社会労働委員会を開会いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  四月十日付をもって村山道雄辞任木村篤太郎選任。四月十一日付をもって木村篤太郎辞任村山道雄選任。本日付をもって片岡文重辞任相馬助治君が選任されました。     —————————————
  3. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、理事補欠互選を行ないます。  ただいまの報告のとおり、村山理事が一時委員辞任されましたために、理事に一名の欠員を生じております。この際、理事補欠互選を行ないます。慣例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。村山君の補欠として、村山理事に御指名いたします。     —————————————
  5. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 港湾労働者雇用安定に関する法律案議題に供します。  まず、提案者説明を願います。島本虎三衆議院議員
  6. 島本虎三

    衆議院議員島本虎三君) 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました港湾労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明をいたします。  戦後における日本経済は、資本主義のメカニズムとしての不可避の起伏を経ながら、矛盾を内包しつつも、一応、発展の一路をたどっているのであります。また、この経済発展と密接に関連する国際貿易においては、対米依存の不安定な貿易構造でありながらも、貿易量は年々増大しているのであります。しかし、池田内閣高度経済成長政策は、私企業の過剰な設備投資競争を招き、これがため原材料を中心とする輸送量増大は、国際収支の大幅な赤字を招来しているのでありまして、これが今後の日本経済に深刻な影響を及ぼすであろうことは明らかであります。しかるに、他方、この貿易量に見合う港湾施設不備のため、各港における船込みは、全国的な範囲に及び、滞船時間三百時間という世界的な記録すらあるのでありまして、これが経済に与える影響は、きわめて深刻なものがあるのであります。しかしながら、このような船込みを醸成した根本的な原因は、港湾労働者不足にあるということであります。それはわが国港湾労働者労働条件が、前近代的な諸慣行のもとに置かれて、職安行政不備による手配師等の存在によって、労働賃金のピンはねは常識化し、就業は不安定となって悲惨な生活環境に呻吟しているのであります。このような生活環境に対する不満、抵抗が港湾労働者陸上労働への逃避となって、港湾労働力不足という現実を招いているのであります。ところが、この経済変動の波を直接に受ける港湾労働者生活にあっては、好況の場合には労働力不足労働強化が起こり、不況の際には失業と低い労働条件とに追いまくられているのであります。一例として三五年度における横浜港における港湾日雇い労働者生活状況を見ますと、本人以外の家族のいないものが全体の四五・三%を占めているという事実が示されております。これを一般日雇い労働者と比較してみますと、一般日雇い労働者の場合、本人以外に家族のいない者は、一六・四%となっており、港湾日雇い労働者生活がきわめて特殊なものであることを示しているのであります。港湾日雇い労働者の大半が家族を持ち得ない根本理由は、結局これらの労働者賃金収入がきわめて低いこと、就業が不安定であることなどが考えられるのであります。この事実を常用日雇いとに分けて、不就労日数で見ますと、常用の場合、五日から九日までの不就労日数のものが四四・七%、四日以内が三八・六%ということになっております。ところが、日雇いの場合を見ますと、五日から九日までの不就労日数のものが三五・五%、十日から十四日のものが二八・四%を占め、日雇い労働者就業の不安定が明らかにされているのであります。このように就業が不安定である結果、賃金収入が少なくなってくるのは当然であります。これを月額収入で見ますと、七千円から一万円のものが一四・六%、一万円から一万五千円までのものが五八・一%で最も多く、二万円以上はわずかに二・四%で、常用の場合では五三・八%であるという事実に比較して、きわめて低いことが立証されるのであります。  このようなわが国港湾労働者労働条件現実を重視した世界港湾労働者は、国際的な連帯のもとに、去る三月二十七日を国際港湾労働者連帯行動日として、わが国の、日本港湾労働者労働条件向上生活の安定を目標に総決起大会を開くに至ったことは御承知のとおりであります。つまり、世界十三カ国の港湾労働者統一行動に決起し、世界の各港における日本貨物船ボイコットに立ち上がったのであります。これがわが国は言うに及ばず、世界各国経済国民生活に異常な影響を与えたことは明らかであります。しかも、わが国港湾労働者労働条件が改善される方向が見出だされない限り、今後とも国際的な連帯の中で日本貨物船ボイコットに立ち上がるという意思表示をなしているのであります。世界港湾労働者が、このような形で抗議せざるを得ないことは、ひとえに、わが日本政府及び港湾事業者が、港湾労働者対策をおざなりにした結果にほかならないのであります。ここに、わが党が本法案を提案する第一の理由があるのであります。  第二の理由は、国際収支の面から見て、港湾作業料を低く押えることに問題があると思うのであります。御承知のように、わが国海運事業は年々発展の一途をたどり、その年間取り扱い量増大し、今日では年間四億トン以上の取り扱い量を示しているのでありまして、海運業発展わが国経済発展にとって主要な部分を占めていることが明らかにされております。しかし、問題は、わが国政府港湾作業料を低額に押える政策をとっている事実にあると思うのであります。これは国内の一般料金とは異なり、対外的な問題でありますとともに国際収支面にも大きな影響を与えるものであります。たとえば諸外国港湾作業料を見ますと、トン当たり平均で、日本の場合二百円、世界各国において低いといわれているフィリピンにおいてすら五ドル(千八百円)で、さらにアメリカにおいては九・五ドル(三千四百二十円)と、わが国とは雲泥の差があるのであります。  一方、年間取り扱い量四億トンのうち、二億トンが外国船取り扱いとなっているのでありまして、結局一トン当たり四ドルの損失と見まして、約八億ドルの損失をこうむっているのであります。政府港湾作業料を低く押えるという方針をとっている結果、国際収支面でこのような問題を生じているのであります。この事実を私どもはきわめて重視し、対外的な方針の是正と、わが国海運業の正しい将来のためにも、本法案提出する第二の理由があるのであります。  第三に、本法案ILO内陸運輸委員会においてなされました港湾労働者雇用恒常化に関する決議趣旨に、全く合致するものでありまして、国際的見地から見ましても、本法案成立が必要となってきているのであります。  以上三つの理由本案提出いたしました理由でございますが、これらの理由根本に、わが国の低賃金構造の問題があることを強調しておきたいのであります。御承知のように、わが国労働者賃金はきわめて低いのでありますが、それは結局、ここで取り上げている港湾日雇い労働者のような低賃金労働者が無数に存在しているからであります。したがってわが国の低賃金構造を打破し、正常な労働関係を樹立するためには、これらの低賃金労働者への対策を確立し、雇用近代化生活向上をはかることが必要であると思うのであります。ここに私どもが本法案成立を重視し、その成立を期する理由があるのであります。  次に、本法案内容を簡単に説明しておきたいと思います。  第一に、日雇い港湾労働者不安定性を除去し、計画的な雇用を促進するために、日雇い労働者登録性を実施することにしました。  第二に、港湾労働計画的雇用を推進するために、中央港湾労働委員会地方港湾労働委員会を設けることにしました。  第三に、この港湾労働委員会が常に港湾労働事情実態を調査し、港湾輸送事業の合理的、総合的計画を立て、それによって各港湾ごとに必要な労働力の定数を定めることにしました。  第四に、この必要な労働力に比して、常用港湾労働者数不足する場合は、登録港湾労働者の中から不足せる労働者数を指定し、指定した労働者を優先的に雇用する義務雇用主に課することにしました。  第五に、この指定労働者が万一不就業の場合は、不就業手当を支給することにし、不就業手当原則として雇用主負担とし、その一部を国庫が補助することができる、としました。  右が本法案趣旨並びに内容の簡単な説明でありますが、つけ加えておきますと、世界のほとんどの海運国は一九四七年ころ港湾労働法制定しております。一九四九年にはILO港湾労働者雇用恒常化に関する決議を採択して、各国港湾労働法制定を促しているのが実情であります。  以上が港湾労働者雇用安定に関する法律提案理由説明でありますが、何卒慎重御審議の上、本案の採択を望むものであります。  以上をもって提案理由説明を終わります。(拍手)
  7. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本案に対する質疑は次回以降に譲りたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  9. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、最低賃金法案議題に供します。提案者説明を願います。吉村吉雄衆議院議員
  10. 吉村吉雄

    衆議院議員吉村吉雄君) 私は、日本社会党を代表いたしまして、最低賃金法案提出理由説明いたします。  本法案提出いたします理由は、第一に、現行法内容、その運用状況を見ましても致命的な欠陥があることであります。第二に、社会党案最低賃金制の本来の精神、すなわち、憲法第二十五条、労働基準法第一条、ILO第二十六号条約趣旨に立脚するものであるということであります。社会党最低賃金法案を提案する理由は、右の二点に集約されるのでありますが、特に、本法案現実的に要請される理由は最近の労働情勢より見て、若年労働者不足臨時工増大中高年令層就職難という雇用状況から見て明らかであります。  第一の理由、つまり現行法の致命的な欠陥を具体的に例示いたしますと、大体、次の五つの点に要約できると思うのであります。その一つは、現行法労使対等原則を無視しているということであります。ILO第二十六号条約を見れば明らかなように、最低賃金制運営にあたっては、労使が対等の立場で参加すべきことを規定しております。最低賃金制趣旨が、労働者最低生活を保障しようということにある以上、このILO第二十六号条約のいうところは、当然守らなければならないものであります。しかるに政府は、今なお第二十六号条約を無視して批准しようともせず、また、この条約に違反する現行最低賃金法運用によって、わが国の低賃金構造が温存されるという欠陥が、はっきりと実証されているのであります。  その二は、現行最低賃金法運営による実績を見ますと、最低賃金額を算定するにあたって、労働者生計費が全く考慮されていないという欠陥であります。現行最低賃金法第三条は、最低賃金労働者生計費類似労働者賃金、及び通常事業賃金支払能力を考慮して定められなければならないと規定されております。この規定は、最低賃金決定基準として国際的通念となっている三原則、すなわち、前述いたしました労働者生計費類似労働者賃金及び通常事業賃金支払能力の三原則を総合的に勘案しなければならないこととは一致しているのであります。しかるに、最低賃金額を実際に決定するにあたっては、三原則のうちの一つ、つまり企業賃金支払能力のみが優先的に考慮されている実情でありますために、類似の業務に従事する労働者にあっても、企業規模が相違するというだけで賃金に非常な格差があるのでありまするし、さらに、労働者生計費を無視した企業本位業者間協定による最低賃金額でありますために、最近の異常な物価騰貴により実質賃金は、ますます低下いたし、その結果、若年労働者を大企業に独占されて、労働力不足に悩むという自家撞着に陥っているのであります。このようなことになる理由としては、監督行政予算不足のために確保されておらないということもありましょうが、根本的な理由は、現行法運営が全く、企業本位となって行なわれているからであります。  その三は、現行法労働者組織化を妨げる役割を果たしているということであります。周知のように、諸外国における最低賃金法制定動機を考えてみまするに、最も大きな動機一つとして、労働者組織化の促進ということがあげられているのであります。この諸外国のあり方と比較いたしますときにわが国現行最低賃金法運営は、全くこれと逆行する傾向を示しているのであります。たとえば、大企業労働組合労働協約を結び、その協約下に未組織労働者組織しようと努力している最中に、低い賃金業者間協定を結んで、労働者組織化の努力を水泡に帰せしめるということ、これはまことに遺憾なことでありますが、教多くの事実としてあげられていることであります。本来、労働行政目的は、労働者組織化を育成し、それによって労働者生活向上をはかることにあるのであります。この労働行政本来の目的に違反して現行最低賃金法運営されている限り、私ども根本的立場から現行法の廃止を要求せざるを得ないのであります。  その四は、現行最低賃金制度が最高賃金制化しつつある、ということであります。このようになる理由は、現行最低賃金協定が、過当競争の排除と求人難の打開ということに基づいて決定されている実情の中にあると思うのであります。過当競争を排除するために業者が協定し、一定賃金以下は支払ってはならないことを決定はするが、一たんその事態が回避されれば、この決定した最低賃金額標準賃金として固定化し、結局、頭打ち賃金としての作用を持ってきているのであります。このことは、現行最低賃金額業者本位にきめられている当然の帰結でありまして、このような事態一般化する傾向を私たちは深く懸念するのであります。  その五は、現行法が右にあげたような欠陥を持ちながらも運営されていくことは、結局全国一律の最低賃金制成立し得なくなるということであります。右の五点はごく大まかにみた現行最低賃金法欠陥でありますが、このような欠陥を持つ最低賃金法は、むしろわが国の低賃金構造維持に役立つものでありまして、私どものとうてい容認し得ないものであります。したがって、現行最低賃金法成立以後の状況をみますと、昭和三十七年二月末現在で、業者間協定による最低賃金締結数は八百四十九件、適用使用者数八万五千人、適用労働者数百三十九万人であります。このうち最低賃金法第九条、業者間協定による最低賃金決定方式による最低賃金決定状況を見ますと、六百六十四件、その適用者数使用者で七万四千人、労働者百二十二万人であります、この実態から見まして、現行法適用数雇用労働者全体に占める割合は、きわめて微少の部分にしかすぎないのでありまして、これは実質的に現行法が、わが国の低賃金構造維持役割を果たしていることを如実に物語っているのであります。このような認識に立ちますとき、私ども現行法を廃止し、本来の意味最低賃金法成立させるほかないと考えるわけであります。ここに日本社会党があらためて最低賃金法提出し、わが国の低賃金構造を打破し、労働者の健康にして文化的な生活を実現しようとする現実的な要請があるのであります。  次に私は、日本社会党提案最低賃金法目的と、法案内容概略について申し上げたいと思うのであります。  まず本法案目的は、わが国の低賃金構造を打破し、労働者に対して憲法第二十五条に規定する健康で文化的な最低限度生活を営むことを、可能ならしめることにあります。周知のように、池田内閣高度成長政策失敗は、国民生活にはかり知れない悪影響を及ぼしているのであります。特に、わが国実態を見ますときに、最低限生活すら維持できない貧困者が、八百万人をこえて存在するのでありまして、これを雇用労働者賃金の面から見ますと、最低限生活をするに必要な賃金すら得ていない不完全就業者が八百万人もいるのであります。そして、池田内閣高度成長政策失敗による激浪は、社会の最下層に呻吟するこれらの貧困者、低賃金労働者に対して、最も深刻な結果をもたらしているのでありますが、それに対して、何らの救済措置も講ぜられていないのであります。これは道義的に見ても、また社会保障政策の上から見ても重大な問題でありますが、このような低賃金労働者を一掃しない限り、わが国の全般としての賃金水準の上昇はあり得ないのであります。そしてこの低賃金構造打破のためには、全国一律の最低賃金制がまず必要であり、これなくしてはわが国賃金実態を正しい方向に向けることはできないと思うのであります。  要するに、日本社会党最低賃金法案目的は、日本の低賃金構造実態に目を向け、その構造打破が急を要するとの観点に立つとともに、またILO第二十六条条約精神をも汲んで提案されたものであります。  次に私は、日本社会党最低賃金法案のおもな点について、法案趣旨説明いたしたいと思うのであります。  第一に、本法案は、労働基準法第二十八条第二項に基いて作られたものであります。御承知のように、現行法成立の際、第二十八条は修正され、第二十九条から第三十一条までは削除されております。社会党案は附則において労働基準法第二十七条を削除し、第二十八条から第三十一条までを修正して復活しておりますが、その意図は次の点にあるのであります。すなわち、労働基準法最低賃金規定は、憲法精神を受け継いで具体化し、労働者最低賃金を保障すべき立場から作られたものであります。しかるに政府は、この憲法精神を蹂躪し、労働基準法最低賃金規定を骨抜きにした現行最低賃金法を作ったわけでありますが、私どもは、現行最低賃金法は、憲法労働基準法ILO第二十六号条約精神にもとるものであると深く憂慮するのであります。ここに私どもが、憲法労働基準法精神に沿った、正しい意味最低賃金法案を提案する理由があり、労働基準法第二十八条から第三十一条までを復活させた重大な意義があると信ずるのであります。  第二は、最低賃金額決定基準は、生計費一般賃金水準、その他の事情を考慮して定めることといたしました。これは、現行法欠陥のところで述べましたように、監督行政の不行き届きと関連して、業者賃金支払い能力があまりに優先する企業本位の偏向を防止し、正しい意味最低賃金額決定させることにあるのであります。  第三に、雇用されている労働者は、原則としてすべて一律に、一カ月最低八千円を保障されることにいたしました。現行法運営による業者間最低賃金においても、その絶対額が最低生活費におよばないのみか、同業種間においてすら最低賃金額格差があり、労働者の団結、組織化を阻害していることにかんがみまして、全国一律の最低賃金額を法定いたしたのであります。  第四に、最低賃金定めを含む労働協約が、一定地域事業の大多数の労働者によって結ばれた場合、この協約をその地域の他の同種の労働者にも拡張適用できる道を開いたものであります。ここで「一定地域」とを、全国または府県、あるいは一行政上の単位をも含むものであります。これは最低賃金についての業種別規模別地域別格差を解消し労働者組織化を促進し、労働者生活安定と向上をはかろうとすることにほかならないのであります。  第五に、この協約拡張適用の場合、適用を受ける方の労使異議申出の権利を認めたことでありますがこの異議申出が賃金審議会で認められた場合、その意見に基づいて一年の猶予と、一年の範囲内で別段の定めをすることができる道を開いたことであります。  第六に、本法案では中央賃金審議会勧告権を与え、スライド制規定し、労働大臣がこの勧告を受けた場合は、必要な措置を構ずべき義務規定いたしたのであります。  以上はごく概略の本法案内容説明でありますが、何とぞ慎重審議の上、本法案精神である普遍妥当性を理解され、本法案を御採決されんことを望むものであります。
  11. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本案に対する質疑は次回以降にいたしたいと思います。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  13. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次に、生活保護法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提案者説明を願います。田邊誠衆議院議員
  14. 田邊誠

    衆議院議員田邊誠君) 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりましたわが党提出生活保護法の一部を改正する法律案、すなわち生活保障法案につき、その提出理由主旨並びに、その内容の大綱につき、御説明申し上げます。  生活保護制度が、憲法第二十五条の精神を実現すべき制度の中で最も大切なものであり、社会保障制度の基盤をなすものでありますことは、議題の余地のないところでありますが、この重要な制度規定する生活保護法が、制定後十数年間、その間に、社会状態家族関係経済状態生活水準等の急激な変遷に際会しているのにかかわらず、変化に応じた根本的な改正がなされず、その運用もまた、枝葉末節にとらわれて、根本的精神にもとる方向がとられ、そのため、憲法に明記された健康で文化的な生活を営む国民の基本的権利が、実際には保障されず、多くの不運な人達が人間らしい生活をなし得ないでいる現状はまことに憤激にたえない状態であり、その間の政府の責任は、まさに重大といわなければならないと存じます。わが党は、この現状に鑑み、生活保護法を抜本的に改め、その重大な欠陥を是正して、憲法の条章の本当の意味の実現をはかろうとするものでありまして、法律名も、その趣旨に即応するよう、生活保障法と改めようとするものであります。  以下順次、おもなる改正点とその理由について御説明申し上げます。  まず改正の第一の柱は、基準の改正を適切迅速なものにするために、生活保障基準審議会を作ることであります。生活保護制度には生活、住宅、教育、出産、生業、葬祭、一時の各扶助制度があり、また六種類の加算制度、四種類の控除制度があり、かつその基準は年令別、性別、世帯構成別、所在地域別におのおの計算されるわけで、非常に複雑な構成になっておりますことは各位の御承知のとおりでありますが、そのあらゆるものが、あまりにも低過ぎていることは周知の事実でございます。まず、その中心である生活扶助制度で調べてみますると、本法案提出時における基準では、一級地、標準五人世帯で一月、一万一千九百二十円、一人当たり月二千三百八十四円しか支給していないのでありまして、そのうち飲食物費は月八千二百十円、一人当たり千六百四十二円、一人一食平均十八円ということに相なります。もっと具体的に年令別、地域別に、飲食費一食当たりを出しますと、六才から八才までが一級地で一食平均約十九円、四級地約十四円、十八才から二十四才までが一級地約二十五円、四級地約十九円、六十才以上一級地約二十二円、四級地約十六円ということに相なるわけであります。多いところで二十円台、少ないところでは十数円台の食費という、まことに驚くべき僅少な金額に相なるわけでございまして、これでは、全く健康な生活ということはできず、ただ現在生きているというだけで、自分の体力を消耗し当然長らえるべき生命を縮めているといっても、断じて過言ではないのであります。嗜好品費を分析いたしますると、たばこ、甘味品等は考慮されておらずパンツなど消耗費の多い下着が一年に約二着余、四十ワットの電灯しかつけられない状態では、文化的な生活などとは絶対にいえないのであります。右のような実状から見て即時、大幅な基準の引き上げが断じて必要であり、その後も物価の上昇に見合うことはもちろん、さらに一般生活水準の向上等に従って、どきを移さず改定をさるべきものであります。しかるにかかわらず基準の引き上げについてはその場限りのごまかしの方法しかとられていなかったため、生活扶助を受ける世帯の生活水準は一般勤労世帯の生活水準に比して、立法当時よりぐんぐんと低下してきたのであります。すなわちその比率は、昭和二十六年及び二十七年が五四・八%でありましたのが、二十八年より四〇%台に下がり、三十二年度よりは三九%台に下がり、三十六年度の改定によって四〇%をわずかに上回り本年度の改定の基準でようやく四二%に達するであろうかと推定されるだけであります。健康で文化的な最低生活の水準ということは絶えず進展すべきものであり、単純にきめがたいものでありますが、特定の国における特定の時点においては客観的に決定し得るもので、かつ、決定すべきものであります。  しかも、最低限度というからには、その実施を予算のワクというもので縛り不可能にすることは絶対に許されないものであり、逆にそのことを国民に保障するために予算が組まれなければならない性質のものであります。しかるにかかわらず、この当然の原則が完全に無視され、主管、官庁の予算要求までが当てずっぽうのきわめて無責任無気力不十分のものであり、さらに、それすらも予算のワクということで大なたをふるわれるというやり方では、いつでも不運な人たちが人間らしい生活を保障されることは実現できないことになり、その間における人権の侵害はあとからではいかにしても、補うことはできなくなるわけであります。このような欠陥をなくし、この法律に実際の筋金を入れるために、生活保障基準審議会の制度を設けようとしていることがまず第一の改正点であります。すなわち、同法の第二章のあとに生活保障基準審議会の章を起こし、基準決定に関する厚生大臣の権限との関係に関して第八条に第三項を新しく規定するほか、所要の改正をすることによって同審議会の活用をはかろうとするものでありまして、まず、審議会は両院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する委員八名及び厚生、労働大蔵、各事務次官計十一名をもって構成され、十分重大な任務を補佐するに足る事務局を置き、毎年一回以上保護の基準の適否に関する報告義務変更の必要を認める場合の勧告権を持ち、また、厚生大臣の基準変更の際の諮問義務、並びに、厚生大臣が審議会の意見によりがたいと認めるときの再諮問義務規定し、さらに審議会の答申、意見、勧告に対する政府の尊重義務規定するものでありまして、審議会として、最も大きな権限を付与してその熱心な調査、民主的な審議による適切迅速な決定によって従来の政府の怠慢、無責任のため、憲法第二十五条の精神が実際に、十分に確立されていない弊を除こうとするものであります。  改正の第二の柱は自立助長に関してであります。本法の目的として、第一条に自立助長が明記されておりますが、自後の具体的条文はわずか生業扶助の項を除いてそれ以外はこの目的を実現しようという意味を持つものは全然なく、それのみかこの目的を抹殺する作用を有する第四条のごとき規定すらあるのであります。自立助長は対象者が機械ではなく生きた感情を持つ人間であることを念頭に入れたものでなければ実効が上がりません。現在の収入認定の制度は、不運な人が何とか苦しい努力の中から人間らしい生活を再建しようとする意欲を喪失させる仕組みになっております。夫が死亡し、足腰の不自由な老母と、幼い、三人四人の子供をかかえている母が懸命に働いた収入が扶助の金から差し引かれるのでは、疲れるだけが残る仕事をやめて、せめて家族たちのそばにいて、子供たちをかわいがり、親に孝養を尽くしたほうがよいという気持になることはあたりまえの話であろうと思います。苦しい中、条件の悪い中で母を慕う子供、看護してあげたい親を、目をつぶって家に残して働きに出ることは、その子供に、親に、少しでもおいしいもの、栄養になるものを食べさせたいという考え方で気力をふるって働いているのに、その収入が実際の生活を潤すものにならないのでは、働く意欲など喪失し、自立の道は閉ざされてしまうことは明らかであります。現在の制度運用においてもこの実体が直視され、行政上はこの法律をできるだけ広く解釈して、冷酷無比な収入認定の制度を緩和しようという方法がとられておりますが、いかにせん、第四条第一項の鬼畜のごとき条文に縛られて十分なものになっておりません。いわゆる勤労控除という制度は大衆の切なる希望に従って厚生省が智恵をしぼり切って作った制度でありますが、条文に縛られて必要経費の控除という理論の上にしか立てないため、実際の働きによる実生活向上という問題はほとんど解決しておらず、勤勉控除で、もし実際的に幾分の効果ありとしても、この制度は働く者一名につき幾ら控除であって、前例のごとき家族を多くかかえた未亡人には何分の一の効果しか及ばないわけであります。したがって、この勤労控除の制度は必要経費補充という目的のため有効な制度であり、存続拡充すべきでありますが、ほんとうに自立を促進するためには、これとは別に、対象家族に応じた、しかも必要経費というワクにしばられない収入認定控除の制度を作り、要保護者家庭中のある程度働き得る者が家族のために一生懸命働いた収入が実際に相当程度全家族を潤し、その結果さらに働く意欲を燃やし、仕事の習熟顧客の増加によってさらに収入がふえ、自立の道が急速にかつ大きく開けるようすべきであります。本案はそのため第九条の二の規定を新しく設け、右の目的を達成しようとするものであります。以上は、自立助長をはばむ収入認定を緩和しようとする条文でありますが他の点においても、自立助長に配慮いたしておりますことはもちろんであります。  改正の第三の柱は、適用の可酷な要件を緩和しようとするものであります。現行法でこれを規定いたしておりますのは保護の補足性の条項、即ち、第四条第一項及び第二項であります。まず第一項は、「保護は生活に困窮するものがその利用し得る資産能力、その他、あらゆるものを、その最低限度生活維持のために、活用することを要件として行われる」と規定されているのでありまして、あらゆるものまで極端にしぼったこの可酷きわまる条文のために、数年前までは病床の老人がただ一つの楽しみであったラジオ、それも売り払った場合、幾ばくの金にも足らないものでも処分しなければ扶助が受けられない。亡き夫の形見の記念品を泣く泣く手離さなければ扶助が受けられない田畑の真中の家を処分しなければ医療扶助が受けられないといった状態があったわけであります。  このように、実状に合わない条文に対して、行政に当たるものは厳密にいえば、この悪条文を幾分犯したものともいうべき苦しい解釈をしながらできるだけあたたかい運用がなされ、現在ではラジオとか自転車とかを保有し。また家屋等の全般的な処分をしなくても保護が受けられるようになっており、また、逐年幾分ずつ緩和される傾向にありますけれども、やはりこの条文にしばられて実情にそぐわず、対象者の人間らしい感情を踏みにじり、あるいは再起の希望を断つことが非常に多いわけであります。この点を改めるため、右条文中、その他あらゆるものをそのためのものに改めて、冷酷な鉄条網をとり払いさらに積極的にただし書きを加え、たとえば親の形見、夫婦の記念品、老人、病人、子供等の娯楽品など、社会通念上保有させることが適当なもの及び将来再起のため必要な、たとえば家屋、田畑、店舗、オートバイ、三輪車等々、自立助長に必要なものの保有をしたままで保護が受けられるようにしようとするものであります。  次に第二項では、「民法の扶養義務者の扶養が本法保護に優先して行われるものとする。」ことになっており、この条文のため家族とともに余裕のないきりきりの生活をしている人が要保護者に対する扶養義務のため、その生活を破壊されたり、また、それをめぐって親戚間の感情が対立したり、また、遠方に親戚がいるため、保護を必要とするものが急速に保護が受けられなかったり、いろいろの不都合が生じ、担当者も扱いに苦悩する現状にかんがみ、実状に合わない民法の扶養義務優先条項を削除して、あたたかい運営を行なおうとするものであります。  改正の第四の柱は、現在保護は世帯を単位として行なうことを原則としているのを、個人単位を原則とすることに改めようとするものであります。現在世帯単位を原則とされているため民法にいわゆる生活保持義務者ではない扶養義務者が同一世帯にいることによって、要保護者と完全に同一水準の生活をしいられることになっていることは、全く不合理といわなければならないことでありまして、実例をもって考えて見ますと、障害者の父、病人の母、幼い弟妹二名と同一世帯でいる十八才の少年がどのくらい懸命に働いても、収入がこの五人分の生活保護費以上の金額にならない限り、実生活費を引あげることにならないわけであって、若い青年の人権がじゅうりんされ、両親に対する孝心も、実際には実を結ばないことになるわけでありますので、このような重大な欠陥をなくすため、第十条を改め、原則的に個人単位としただ例外として、同一世帯の夫婦と並びに親と未成年の子供のみを一体として扱うことにしようとするものであります。このことによって、要保護世帯の中で懸命な努力をする青少年はその働きに見合う生活を建設し、かつ、実際的には収入のある部分は両親や弟妹の生活のため消費せられて、青少年の勤労による自己の生活建設の努力と、家族に少しでもよい生活をと願う愛情が実際上実を結ぶことになると考えるものであります。  改正の第五の柱は、本法施行上の苦情の処理を民主的なものにするため、中央、地方に、苦情処理機関を置こうとするものであります。従来、本法の取り扱いにいろいろ苦情が生じ、かつ、その処理が必ずしも適切に行われないことは、いわゆる朝日裁判の例をもっても明らかでありますが、裁判に訴えることはもちろん、実際は官僚の手によって冷やかに処理されることが多い、大臣、知事決定に期待が持てず、苦情を申し立てすらもあきらめている対象者が多い今日、民主的な機関を設けて本法のよき運用を期することが緊要なことであり、そのため第九章の二を新しく規定し、中央生活保障審査会、地方生活保障審査会を置こうとするものであります。中央審査会は厚生大臣にかわってこの任務を行うものであり、厚生大臣の任命する学識経験者六名、関係行政機関の職員五名、計十一名をもって構成するものであります。特に、その機関の特質にかんがみ行政の側よりある圧力を排するため、心身故障など特別の場合のほかは、その意に反して、罷免することができないことにしようとするものであります。地方審査会は、現行法の知事にかわってこの任務を行なうものであり、関係学識経験者七名、地方公共団体の職員六名計十三名をもって構成し、委員の身分が保証されることは、中央審査会と同様であります。  以上が、具体的な改正点でありますが、その他本法の理念を明らかにするための改正を行なうものであります。まず、現行法目的が、生活に困窮する国民に対して作られたものであるとしているのを発展させ、憲法第二十五条の理念を明確に確立させるため、生活に困窮するという、あいまい、かつ消極的な規定を改め、健康で文化的な生活維持することができない者に対して、適用させるものであることを規定するため、第一条及び第四条を改正し、さらにこの改正と前述五項の抜本的な本法骨組改造に対応し、かつ、題名より、恩恵的な誤解を一掃し、国民の生存権を明確にするため、題名を生活保障法と改正しようとするものであります。  本改正法は、昭和三十七年十月一日から施行しようとするものであり、ただし、生活保障基準審議会の規定は、その任務上、公布の日からただちに施行するものであります。本法施行に要する直接の費用は、基準審議会及び審査会の費用で年間約五千万円であります。  以上は本法案内容の概要でありますが、要するに、本法案は、社会保障の基盤の法律である生活保護法が、あらゆる面でその目的を十分に果たしておらず、国民の生存権がはなはだしく侵害されている点を根本的に改め、憲法第二十五条の精神を実際に確立しようとするものであります。健康な生活を保障する目的を持った法律が不完全であり、対象者が自分の体力を食べて、健康をすりへらしながら毎日を送らなければならない状態、文化的などとは、どんな観点よりも言えない状態、寿命や人間性をすり減らす状態を幾分でも少なくするためには、この法律をごまかすことすらしなくてはならない状態、関係官庁が違反すれすれの行政解釈をしなければならない状態を考えるとき、生活保護法の改正は、一日もゆるがせにすることはできないと存じます。このような欠点を根本的に改め、ほんとうに健康で文化的な生活を保障し、さらに、ほんとうに自立の助長をはかるため、あらゆる観点から検討いたしました本法案でありまして、憲法を尊重し擁護する義務を持たされ、そのことに最も忠実な各位の慎重な御審議の上、急速なる万場一致の御可決を、心から御願いする次第であります。   (拍手)
  15. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本案に対する質疑は次回以降にいたしたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  17. 高野一夫

    委員長高野一夫君) この際、委員異動について報告いたします。  本日付をもって山本利壽君が辞任され、徳永正利君が選任されました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  18. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。     —————————————
  19. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 児童扶養手当法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣に質問する前に、私が要求しておきました資料をいただきましたが、この資料を少し説明していただきたいと思うのです。特にわかりやすく、外国の貨幣じゃなくて、日本の貨幣に直して、そうしてどうなっておるか、御説明を願います。
  21. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 御要求の調査資料がまだ十分まとまりませんので、いましばらく御猶予願いたいと思いますが、とりあえず調査中のものを申し上げたいと思います。ただ、資料の印刷が間に合いませんので、口頭でお許しを願いたいと思いますが、第一は、各国の年金保険において、離婚が事故となっておる場合があるかないか、私は、大体ないと申し上げましたが、もう一ぺん調査せいということで、いろいろその後検討いたしました結果、アメリカの年金保険に、まあいささか問題になる条文がこれはございまして、それによりますと、年金保険の受給者の中に、労働者の寡婦または場合によってはヒズとありますから、その労働者のダイボースト・ワイフとありまして、離婚された妻ということになっております。しかし、これは労働者が死にまして遺族が年金をもらえるわけですが、その場合に、離婚後に夫が死んでおった場合でも、場合によってはその妻が年金がもらえるという規定だと思いますが、離婚そのものが保険事故になっておるということではないというふうに解釈されるのであります。したがいまして、ダイボースト・ワイフが対象になっているという規定が唯一見つかりましたが、これも保険事故としてではない。それからチェコスロバキアの現行法を見ますと、年金の対象に離別の場合の妻がなっておりますが、よく読んでみますと、これは公的扶助のようでございます。それから、オーストラリアでも、寡婦あるいは寡婦の夫、子供が年金の対象になっておりますが、この国では当初から社会保険というものがない、社会扶助一本でやっておりますから、社会扶助体系の中の制度である。したがいまして、私が先日申しましたように、離婚が年金事故になっておる国は今のところないようでございます。  それから、次に、消費水準なり物価指数のことの御質問がございましたが、消費水準につきましては、経済企画庁の一番新しい統計は三十六年度の上半期の分しかございません。それは前年度の三十五年度の上半期に比べまして七・二%の上昇でございます。それから小売りの物価指数の資料でございますが、総理府統計局の資料では三十七年一月のがございます。これは前年の一月に比べまして八・三%の物価の上昇があるという資料がございました。それから、母子世帯の収入の関係の資料の御要求がございましたが、御質問の中に、母親が一人、子供三人の場合の保護基準がどうだ、これとの比較で御質問がございましたから、それに関連して申し上げますと、母と子供が三人の場合、これは年令によっていろいろ違いがございますが、生活扶助、教育扶助、住宅扶助合わせまして約一万五千円程度の支給を受けることになっております。それを比べてみまして、母子世帯の収入の調査が昨年の八月に行なわれましたものがございましたので、これを見ますというと、大体二万円以上の月収のある母子所帯が、全所帯の四五・一%でございます。この二万円というのは、御質問にもありましたが、母が一人、子供三人の場合で、例の地方税の市町村民税の免税点すれすれの月収の額を御質問ございましたが、これは今度の改正法案が通りますというと、年間十五万円の線が免税点でございます。ところが、子供が一人ありますと、三万円づつそれに加算されますので、三人としますと九万円、合わせて年収二十四万円以下の者にこの扶養手当がもらえるわけでありますが、月に二万円の収入以下ということになります。そこで、二万円以上と以下に母子所帯の収入の階層別を分けてみますと、二万円以上が四五・一%、二万円以下が五四・九%ということになります。  なお、これに関連して、いろいろ恩給の加給加算の御質問がございましたが、これは厚生年金、船員保険、恩給その他ほとんど一人当たり子供四百円の加給年金が支給されることになっております。それから児童扶養手当の予算措置は、先般申し上げましたものを資料にしてあげておきました。  それから各国の児童手当の資料でございますが、これは古い資料は先般お手元に差し上げてあるわけでございますが、繰り返して申しますと、一九五八年現在で、児童手当をやっておる国が三十八カ国でございます。それから、一番新しい資料が、イギリス、フランス、イタリア、西ドイツ等の最近の改正の資料がございましたから、これは一応表にいたしておきましたが、イギリスの例で申しますと、適用所帯が全所帯でございます。被扶養者が十五才以下の児童を二子以上持った所帯、給与の内容を申しますと、第二子は、週八シリング、これは邦貨に直して週四百三円でございます。第二子以上は、一人につき週十シリング、これは邦貨で五百四円でございます。それから、一番最後の西ドイツのところを申しますと、西ドイツでは、一九六一年、昨年改正になりましたが、対象所帯は被用者と自営業者所帯だけでございます。家事労働者なり、官吏の所帯を除かれております。それから、被扶養者の範囲は十八才未満の児童二人を持つ所帯、これは大体イギリスと同様でございます。給付の内容は、第二子が二十五マルク、二千四百六十二円、これは月でございます。第二子以降は四十マルク、三千四百二十九円というような額になっております。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、大臣にお伺いをしますが、今まで御説明になりましたイギリスを一つとってみましても、これはILO精神に沿って全所帯を適用されておる。そうして第二子は週に四百三円、第三子は週に五百四円、こういうことになっておるわけですね。そうすると、日本との差額はあまりにもひどいじゃないか。日本は福祉国家だ社会保障制度だというのを、今の内閣は三本の柱の一番最初に掲げておるわけです。今直ちにこのとおりの実施はできないにしても、考え方から、その額からあまりにも離れておると思いませんか。今のドイツの問題でもそのとおり、ドイツだったらば一月幾らですか、三千四百二十九円ですね、一人につきですよ。日本の今改正しようとして出されておるのは、三人で千八百円でしょう、あまりにも差があり過ぎはせぬか。福祉国家だの社会保障制度を第一義とするというのは、これはから念仏じゃないか、一体これはどういうふうにお考えになりますか。
  23. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 確かに私どもは、日本の国をいわゆる福祉国家にいたしたい、かような考え方のもとに努力をいたしておるわけでございます。現在の姿そのものが、私は、日本が福祉国家になっておると言い切るだけの勇気はもちろんございません。これから努力いたしまして、そうしてそこへ持っていきたいというのが私どもの政治の目標であり理想である、かように申し上げたいと思うわけでございます。したがいまして、いろいろな制度を考えました場合に、現在の日本のいわゆる社会福祉年金の問題にいたしましても、あるいは社会保障の問題にいたしましても、まだまだ足らざるところはたくさんあるということは、われわれも自覚いたしているつもりであります。これを国民の皆さん方の御努力によって力をつけて、そうして改善して参りたいというのが現在の私ども立場であると、かように申し上げてよろしいと思うのでございます。今お話になりましたように、イギリスあるいはドイツ等に比べますと、確かに劣っておるということは、これは認めざるを得ない。ただ、イギリスあるいはドイツのこの種の制度と、今の日本国民年金法におけるいわゆる福祉年金、あるいはそれに準ずべき児童扶養手当の制度というふうなものとは、制度の上から申しましても、だいぶ開きがあるというふうに私は感ずるのでありまして、この金額そのものが、決して私はこれでもって十分過ぎるというふうには考えておりません。ただ、いわゆる児童手当とか家族手当というふうな制度までまだまだ行きかねておるのが現在の状態で、これからの問題であるというふうに考えまして、児童手当制度等につきまして、いろいろ検討を重ねておるというふうに御承知を願いたいと思うのでございまして、お話のとおりに、今の状態は、イギリスあるいはドイツ等に比べますれば、金額だけで比較するわけにも参らぬと思いますけれども、私は劣っておると認めざるを得ない。この点については、われわれもこの制度といたしましても、将来考えなくちゃなりませんし、さらに進んで、いわゆる児童手当制度、あるいは家族手当制度というふうなものについて積極的に検討をし、何とか制度の整備をはかって参りたい、かように思っておる次第でございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 それから、先ほどの説明で、二万円以上の人が四五・一%、それ以下の人が五四・九%、二万円の収入の説明が、一万五千円までは免税である、さらに第一子、第二子、子供に三万円の免税があるから、だから二万円になるのだという説明はよく納得できないのですが、もう少し説明して下さい。
  25. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 先ほど申しましたのは、この条文によりますと、支給の制限のところで、年額所得が、前年において、今度の改正案以前の案では、十三万円をこえる所得を有したときは支給しないという、支給制限の規定がございます。これを十五万円に今度していただきたいわけなんですが、そこでカッコの中で「(児童の生計を維持したときは、十三万円にその児童一人につき三万円を加算した額とする。)」ということで、この免税点を、今回の案では、十五万円に、子供一人について三万円ずつが加算されまして、その総額のところが、たとえば子供が三人おりますならば、年額二十四万円は支給がされ、二十四万円以上は支給がされないという規定があるのであります。そこで、月に割りますというと、年間二十四万ですから、子供が三人ある場合、月二万の収入があれば手当の支給はできると、こういう意味で申し上げたのでございます。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 どうもわからぬですがね。そうすると、二万円までの収入の人、手取り二万円ですね、その人には支給できるのですか。
  27. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは市町村民税の対象になる所得が年額十五万円以下のものなら扶養手当がもらえる。それから、子供が一人あるごとに三万円ずつはその十五万円に加算してよろしいと、こういう規定があるわけでございます。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、たとえば会社に勤めておって月に一万二千円なら一万二千円、十五万円以下の給料をもらっておった。ところが、その会社で今度は子供に対する扶養手当が出ておった。そういう場合には一体どうなりますか。
  29. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) それは市町村民税の対象になる所得だから同じことになる、やはりそれの収入と見られるわけでございます。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、各会社によっては扶養家族手当というのはまちまちなんです。千円出すところもあるし、三百円しか出さないところもある。そうした場合に、たとえばちょうど十五万円になる給料をもらっておった。扶養家族手当はわずか二百円か三百円だった。そうした場合は、十五万円の人と、扶養家族手当をもらっておらない人とアンバランスが出てきますね、それは、政府が補償するのですか。
  31. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは国民年金法にもそのような規定がございまして、そういうボーダーライン、つまりこれによりますと、十五万円をこえる者は支給しないというのでありますから、十五万の者はもらえて、十五万円を一円でもこえればもらえないということになりますから、そういうすれすれの線のところの人には確かに不公平はあるのでありますが、国民年金法のそういう規定もございますから、それを受けてやむを得ない規定だと存じております。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 それではこれは国民年金法一つ審議してもらって、そのあとで審議しましょう。すべて国民年金法で逃げられるんだから、国民年金法をやらないでこれをやるということは当たらない。国民年金法質疑が済んで、それからだね、これは。そうしなければ、極端にいえば年十五万所得があった、そうして扶養家族手当はわずかしかなかった。その人は国から扶養家族手当をもらえない。その人は会社の扶養家族手当は要らない、要りません、国からもらったほうがいいです、月千八百円つきます、それをもらったほうがいいわけですよ。ところが、国民年金法でそれはできないようになっているというなら、国民年金法をまず質問しなければ質問に入れないのです。全部工合が悪くなったら、国民年金法規定だ、国民年金法規定だと、それならなぜ国民年金法に一本にせぬか、逃げるときは国民年金法で逃げられる大体それくらいの人が多いんじゃないかと私ら思うのです。  もう一つお尋ねしますがね。先ほどもちょっと言われましたが、生活保護を受けている人ですね、これは一級地で、大体子供三人で親一人の場合どの程度になりますか。
  33. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) これは母親の年令、子供の年令によって相違があるわけですが、大体母一人、子供一人の場合には一万三千円くらいになると存じます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 私の資料では、いろいろそれはありますが、三十八才のお母さんで、十四、九、五才の子供三人おった場合は一万五千百四十八円になりますよ。そうすると、今度は十五万というのは最高ですから、年間十五万以下の人に適用される。そうするなら、そういう仕事をするよりも、扶養家族手当をもらったほうがうんと楽なんです。仕事をするよりも、扶養家族手当をもらったほうがいい、生活扶助をもらうほうがいい、こうなるのですが、それはお認めになりますか。
  35. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 生活保護は、御承知のように、補完的なものでありまして、他の制度でみられない、最低生活維持できない場合に、初めてその差額が補償されるという建前になっております。したがいまして、御質問のように、生活保護の額の多寡によりますけれども生活保護で十分な生活ができるなら、こういう扶養の問題というのは必要ないことになるわけでございますから、あくまでもこの児童扶養手当は、生活保護法から見れば先行していくものだ、この扶養手当だけでは、こういう額では生活できませんから、その最低生活をする保護基準との差額だけが生活保護で支給される、こういう建前になるわけでございます。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかっているのです。それなら十五万円の所得のある最高の人ですね、最高十五万円の所得のある人で、月収一万二千五百円ですよ、最高の人で。それ以下の人が多いのです。一万二千五百円、それに三人子供を持っていたら千八百円つくわけです。そうすると、一万二千五百円に千八百円、一万四千三百円です、最高の人で。年十五万せっせと働く人で、扶養家族手当をもらって、児童手当をもらって一万四千三百円です。そうすると、もうそんな仕事はしないでも、仕事がありませんといって生活保護を受けた人は一万五千百何十何円になるんですよ。そうすると、仕事せぬほうがいいじゃないですか。仕事しただけばからしいじゃないですか。それから、もしも今度は生活保護の人が仕事をすれば、それだけ差っ引かれるでしょう。そうすると、仕事を何もするなということになるじゃないですか。そうなりませんか、最高の場合ですよ。
  37. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) そのような矛盾がございますので、生活保護法で、この母子年金ができましたときに、母子加算という制度を設けました。この母子加算額は、母子年金の額に相当する額を生活保護で加算するということにして、この矛盾を一応解決したわけでございます。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはおかしい。逆にあなたは言っている、あなたは逆に言っていますよ。僕が質問しているのは逆なんですよ。生活保護のほうが高いんですよ。それも最高の場合ですよ。ところが、十五万円もらっている者はまず少ないと思うのです。今まで十三万円だったから、今度十五万円に上げた、それ以下の人が多いとみなすわけです。いわゆるお母さんが働いているのですが、どこでも一万二千五百円を、おいそれとやる人はなかなか少ないと思う。それより下なんです。たとえば月に一万円、私ら八千円やれと言っても、政府は八千円ときめてなさらぬから、八千円より下の人が多いと思うのです。そういう人は家族手当をもらったところで、一万円にもなりませんよ。たとえば八千円の人なら九千八百円にしかならない、九千八百円じゃ食えないでしょう。だから、そんならば仕事せぬで生活保護をもらったほうがいいのです。生活保護より低いことになる、働いた人が。
  39. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) この支絡制限が扶養手当の額とはまた別でございますから、扶養手当の額が実際の生活には役立つわけなんですね。これは一人子供がある場合には八百円、二人の場合には四百円加算する、結局千二百円しか月にもらわぬわけなんです。だから生活保護と扶養手当の額とは、ちょっと最低生活維持するにはウエイトが違うのではないかと存じます。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、同じ環境にあって、たとえば同じ家庭に住んで、一方は働いて何がしかの金を取ってきた、一万二千五百円なら一万二千五百円の金を取ってきた、一方は仕事がない、仕事をしない、生活保護にたよっている。そうなりますと、同じ条件の場合はどちらがいいですか。
  41. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) たとえば生活保護でもらう金が一万二千円としますか。そうすると、働いて一万二千五百円所得がある場合は被保護世帯にならないわけですから、働いていて一万二千五百円、遊んでおいて一万二千円もらえる、働いて五百円しか得をしないじゃないかという矛盾が確かにあるのでございますが、しかし、生活保護の建前は、そういうことと関係なしに、とにかく一万二千円というのが政府できめた最低基準だ、この基準に達しない場合は、それだけは保償するという建前でございますから、当然遊んでおって一万二千円もらって、働いて一万二千五百円だ、単に働いたために五百円の差しかないじゃないかという確かに矛盾はございますが、しかし、建前は、あくまでもやはりまともなからだをしておるなら、働く喜びで生活するということがやはり人間の本来の姿だ、望みであろう。生活保護を受ける場合には、やむを得ずそういうような状態にあるんだということで、その辺はやはり働く喜びというものを、何と申しますか、非常に高く考える、評価するというような建前でこの生活保護法ができておるものですから、これは矛盾というよりも、むしろ人間は本来働く能力があるなら働いて生計を得たいものであるというような信念のもとに、信条のもとにこういう制度成立しておるものだと存じます。したがって、一見矛盾のようでございますけれども生活保護を受けるのは、いろいろな理由で、本人が心からそれを希望してやるのではないので、職場があり、働く能力があれば、働いて食べるということを人間の本然の姿としておるんだ、それをこういう政策の上においても認めておるんだという建前で私はできておるものだと思います。
  42. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 先ほど来、阿具根さんのお尋ねを伺ったのでありますが、この問題は確かに一つの問題でございます。生活保護法それ自体についてさような問題が実は起こるのであります。世間の一部では、惰民養成ではないか、こういうような声すらある。こういうことでございますので、問題としては確かにあるわけでございます。ただ、現実生活保護の基準というものは、私どもからいえば、まだ上げてしかるべきものじゃないか、国民生活全体の底を上げる意味において、もちろんその際には、働いておられる方たちがそれより低い状態であるということは、これは私は許されないと思う。働いて、いわゆる勤労所得、最低賃金というふうな問題も同時に考えていかなければなりません。近い将来考えていかなければならない問題だと存じますけれども、ともかく、われわれといたしましては、現在の生活保護基準そのものが、国民のいわば一番下の生活を保障するということでありますが、もっと上げたいというくらいの気持を持っておるわけでございますが、一面から申しますというと、そこの境目におられるような者について、あるいは働くほうが損をするんじゃないか、むしろなまけたほうがいいんじゃないか、こういうような気分を起こす、そこに惰民養成をやってはいけないというようなことが出てくるわけでございます。ただ、生活保護法運用の問題としましては、やはりどこまでも、これは本来働ける人には働いてもらう、そして働いて生計を立ててもらう。それをもとにいたしまして、働けない人、病人、年寄り、子供、そういうような人たちに対する保護が主体になっておるのだと思います。ただ、一時失業のために働けないというような人も生活保護の中に入らざるを得ないという場合もあろうと思いますけれども、実際の問題といたしましては、新たに生活保護を受けるに至った人、あるいはまた生活保護から脱却いたしまして受けなくなった人、こういうふうな状態を調べてみますと、かなり新陳代謝が行なわれておるのであります。そういうことでありますので、だんだん生活保護法運用も私は改善されておると思います。また、働く意欲というものはどこまでも持ってもらいたいということがございますので、生活保護法のほうから申しまして、内職なり何なり、働いておる金を全部差し引いてしまうということはいかにもおかしいということで、いわゆる勤労控除の制度というふうなものを設けまして、全部とは申しません、内職なんかで得られました金を全部差し引くようなことをしないで、いわゆる生活保護の金の上にそれだけのものは上げる、上げるといっては語弊がありますが、つけ加えてやるという配慮もいたしておるわけであります。その点につきましては、社会党の皆さんはもっと強いお考えを持っていらっしゃると思います。結局生活保護の状態から脱却して、働いていただく方向に向かって保護世帯の方々に——語弊はあるかも存じませんけれども、お世話をするというふうな心持ちで私ども生活保護法運用しておる問題でございます。今の端境の問題になりますと、ややもすればそういう御心配をかける場合もあると思いますが、われわれとしましては、国民全体の収入がもっと上がることが必要でもございましょうし、それに伴うて生活保護の基準を引き上げたい。しかし、惰民を養成するというような非難を免がれるように努力したい、かように考えておる次第でございます。
  43. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、生活保護が高いと言っておるわけではないですよ。皆さんの考え方が、働いても生活保護に達しない人は、生活保護で差額をみてやるんだというような考え方が間違っていると言っているわけですよ。だから、今大臣が言われたように、生活保護法でぴしゃっと規定されておるが、私どもがこれは四、五年前から相当問題にしたのですが、そのころは、極端に言えば、魚をつりにいくためにミミズを掘ってきた。そのミミズを、ある人が、自分が魚をとりにいくんだから売ってくれといって五十円、三十円くれた。その五十円、三十円を引いた、生活保護から。山に行ったときに、たきものを持ってくる。枯れた枝を持ってきて庭すみに置いたところが、これは何十円に該当するといって引いた。これが政府の考え方だった。それでだいぶ問題になった。それで、それは引かない、そういうことになって、まあ少々内職をやっても見て見ぬふりをしましょうということになってきておるわけですね、その精神からいくなら、わずか七千円か八千円の収入のあったものを、なぜこれより低いような何をするか。その精神からいくならば、生活保護の上に七千円なり八千円なりをプラスしていいんじゃないか、こうなるんですよ。この児童扶養というのは、まず生活保護にして——そのおかあさんが七千円、八千円の収入がある、そういう人たちがある、内職をやって働いておる人たちが。しかも、生活保護を受けていない。こういう人にそれだけの児童扶養をやっても、これは生活保護より低いんじゃないか。これをプラスするような気持ならわかる。なぜならば、ドイツの問題がここに出ておりますが、ドイツは、労働者賃金日本の三倍になっております。おしなべてみて大体三倍といわれておる。ところが、この児童扶養は何倍になっておりますか。これは一人について三千円ですよ、あんた。日本の十倍ぐらいになっているじゃないですか。それだけ向こうは見てくれておるんですよ。その考え方からいくなら、この生活保護と比べた場合でも、この児童扶養手当というのは、まことに微々たるものじゃないか。国民年金をおっしゃるなら、それならなぜ一緒に審議しないか。少し悪くなれば国民年金に逃げていかれる。ところが、外国と比べて見ても、日本の国内と比べて見ても、児童手当といってやられるならば、もう少しみんなが、ありがたい、国が自分の子供をみてくれるんだという気持になって、おれはもっと働くぞ、何かいい仕事はないだろうかという、今、局長が言った精神面を強調するのなら、そこが精神面なんですよ。あなた方は、人間は働く姿勢を持っておるからだめにはならないのだと、そういう理論は成り立たないのですよ。私はこれは逆になっておると思うのですが、どうですか。
  44. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 社会保障の給付の水準にからんでの御質問だと思いますが、確かにおっしゃることは一面あると思います。年金におきましては、御承知のように、完全年金ということを理想にいたしまして各国とも努力をいたしておるわけですが、つまり年金額だけで食える、したがって、年金を受けておる者は生活保護は受けなくともいいということを理想といたしておるわけであります。しかし、イギリスにおいてすら、年金を受けながら国民扶助、日本生活扶助を受けておる者が三分の一もあるというようなことで、各国とも、この年金の完全年金に向かっての努力はいたしておりますが、非常に苦慮をしておるというような現実にあると思います。  それから、児童手当のほうは、これまた完全年金と違いまして、これによってすべての児童の経費が満たされるような額というのは理想的でない。むしろ親がやはりある程度の義務というものもあるのだから、いわゆる完全手当の何割引きかというところが一番よかろうというのが定説になっておるようであります。しかし、それにしても、日本のこういうような児童扶養の手当の額なり母子年金の額なりが低すぎる。大臣もおっしゃったように、誠意を一応表わしたのだというような程度のことであることは遺憾でありますけれども、いろいろ各社会保障の給付の水準との均衡の問題等がありまして、現在の段階ではこの程度でやむを得ない。しかし、今年の一月一日からこの児童扶養手当も成立したのでありますが、四月この法案が通り次第、わずかながら額を引き上げるというようなことで御審議をお願いしておるというような次第でございます。
  45. 阿具根登

    ○阿具根登君 その額を引き上げられたという、その問題はわかりますよ。しかし、これは物価が全然上がっていない横ばいのときには、これは少しでもよくなったということは言えるわけですが、物価がこれだけ上がってきては、これだけ上げても上げた意味をなさないのですよ、率直なところで。これは上げてやらなければいかぬという御意思はある。これは改正したのだ、善意だと、善意だけ認めてくれとおっしゃるのなら、善意が善意に受け取られるほど上げてもらいたいと思うのですよ。そうしなければ、物価がどんどん上がってきておる。御承知のように、大根一本四十円になっておるのです。それだけ上がってきておるのに、これだけ上げられても、ちっとも上げたという意味がないのじゃないか。私はそれをその問題では言っておるのですがね。
  46. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 先ほども申しましたように、各種の年金、厚生年金なり、船員保険なり、その他恩給の各種の年金で、この児童の加給年金というものが、御承知のように四百円でございます。それから、国民年金のほうもこれにおっつかっつ、これは公務員等の扶養手当が六百円というようなことで、この辺が何らか日本一つの相場みたいになっておるのでありますから、この問題は社会保障の給付の水準の問題として、その他の医療給付の水準等にからんで、やはり底上げをしなければならぬ、これに向かって今後努力をいたしたいと思っております。
  47. 阿具根登

    ○阿具根登君 努力はしてもらわなければいかぬし、いつも努力する努力すると言われるけれども、特に母親一人で子供を育てるという場合に、非常に苦しいからということでこの児童手当を考えてやっておるということですね。それなら精神面とか善意とかいうことはわかるけれども、あまりにもお粗末じゃないか。四百円が規定になっておるから四百円だとおっしゃるし、たとえば一般勤労者の扶養家族手当が六百円とおっしゃるけれども、この人たちは平均給料を幾らもらっておるのか、しかも主人が働いて金をもらっておる、しかも、子供が扶養家族になっておる。そういうものと同じような子供を考えられていると私は思うのです。ドイツの場合は月に六百マルクでしょう。日本の金で幾らになりますか、五万何ぼになりましょう。
  48. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 五万八千円。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 五万何ぼの金をもらっておる人まではこれだけのものを差し上げるのですよ。あまりにも差がひどくありませんか。
  50. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実はドイツの社会保障あるいはイギリスの社会保障等でいろいろ調べてみますと、疾病保険とか失業保険にむしろ先行して児童手当の問題というものを考えておるのでございます。日本社会保障の成立から申しますと、児童手当が最後に取り残されたという格好でございまして、わが国社会保障の体系上考えなければならぬ点だと思いますが、つまりビバリッジも言っておりますように労働中に事故があって失業したとか病気になったということ、そういうことよりも、稼働中の子供の手当のほうで現実生活をよりよくするということが生産性を高めるためにもなるし、労働者の家庭のためにもなるんじゃないかということが常識になって外国社会保障というものはできておるけれども、残念ながら、日本のほうではそういう点の実は検討が、これはちょうど戦後のいろいろな問題から、そういうことを体系的に考える余裕もなかったと思いますが、特に生めよふやせよのベビー・ブームの時代がありまして、いろいろなことから、こういう手当よりも、たとえば企業におきましては、いろいろ企業賃金の中で年功序列的なもので解決していくとか、社会保障と別個の形で解決しようということが先行したものですからこういうことになったと思います。御指摘のように、児童手当や扶養手当の問題等で、児童に対する手当というもの、施策というものはもっと進めてしかるべきだと、全く同感でございますが、ただ、先ほど申しましたような、そういう社会保障の成り立ちで、最後に取り残された。しかも、これはILO条約等のいろいろ基準によりまして、一体条約基準を達成する児童手当の総額がどれくらいかかるか計算をしてみましても、一千億くらいかかるわけでございます。厚生省の予算の大半がふっ飛ぶくらいの予算がこの基準を批准するためにはかかってしまうというようなことで、どうしようかということで、現在いろいろ児童手当の部会で検討を願っておりますが、今せっかく審議中ということでございます。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、それは戦前、戦中は生めよふやせよということだったけれども、戦後十六年になって日本政策そのものが変わってしまっているのに、十六年になってもまだだめだ、十六年もたてば、その当時生まれた子供は、児童手当、家族手当の対象からはずされるのです。今日まだそういう御答弁だったら、これはいつになるかわからぬのです。戦後五年か三年ならわかりますよ。これはしかし、もう十六年もたっておるのですよ。もうその後は生めよふやせよではないですよ。終戦後生まれた人だって、これはほとんどかからないのです。学生ぐらいなものでしょう。それに、まだ戦前、戦中の日本のやつが残っておるから一挙にできないのだ、こうおっしゃるなら、とても社会保障だの福祉国家だのということは言えたものじゃないと思うのです。
  52. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) そういうような御意見もございまして、中央児童福祉審議会でも、この児童手当というものは早急に実施すべきだということで、部会を作りまして、具体的な案を作成中でございます、それから所得倍増の十カ年計画におきましても、十カ年計画の五カ年の後半におきましては、国民所得もふえるであろうし、担税のまた余力も大いに出てくるであろうから、後半においてひとつ児童手当をやってしかるべきであろうというような答申もございまして、そういうことをめどにしてせっかく急いでおる次第でございます。
  53. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、所得倍増は、まあ一枚看板で、そう言われるかもしらぬけれども、いつも言っておるように、所得が倍になる前に物価が倍になっておるんじゃないですか。今から二、三年たって所得がよくなったといっても、物価がぐっと上がっているから、これは追いつきやしませんよ。土地なんか何十倍になったと思いますか。所得を上げるということよりも、もっと物価を下げることを考えれば一番いいんですよ。物価はぼこぼこ上がっていって、所得が倍になるのは一部の特権階級ばかりです。もう貧富の差というものはものすごく、戦前よりも、戦時中よりも開いてきておるのです。一部の人だけ所得倍増になって、あとの人は倍増になっていないのですよ。そんな倍増を考えたところで、物価高で、やっと少し上げてもらったと思うと、それ以上物価が上がっておったということでは何にもならほじゃないですか。
  54. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 御趣旨はよくわかります。せっかく給付額をふやしましても、物価が上がったのでは実質的には同じであるか、それ以下であるということになるわけでございますので、その意味においては御趣旨はよくわかるつもりでありますが、これはこれだけの問題ではございません。ほかのいろいろな生活保護の基準にいたしましても、その他の給付金にいたしましても、その問題はみなつきまとっている問題であります。政府としましては、極力物価の値上がりを抑制すべく、せっかく努力をいたしておるところでございます。同時に、現実において物価がどんどん上がっていってとどまるところを知らない、こういうふうな状態というものが出て参りますれば、長期給付についてやはり考えなければならぬ私は事態もくるだろうと思うのでございます。今月上がったからどうする、来月上がったからどうするというものでもないと思いますけれども、考え方としましては、おっしゃるとおりに、物価の値上がりを押えるということに極力努力すべきであります。同時に、現実を押えて、物価が何のかんのといっても非常に上がってきたというふうな場合に、今までのままでよろしいというふうにも私は考えておりません。ことに厚生省といたしましては、一番所得の少ない階層を控えておるわけでございますので、そういう人たちの生活のために物価というものは始終見ておらなければならぬし、また、一番頭の痛い問題ということでございます。今回上げましたのが物価とつり合いがとれておるかとれておらぬか、この問題があろうかと存じますけれども、これはこれとしてひとつお認めいただき、また、今後の物価の推移によりまして、この問題だけでなしに、低所得階層に対する対策として、厚生省としてもまじめに考えなければならぬ問題だと、さように考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  55. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの大臣の御答弁、非常に私同感するものですが、大臣が言われるように、厚生省は国民の最下層の一番苦しいところを受け持っておるわけなんですね。通産省等と違いまして、非常に日の当たらないところだけを受け持っておるという点では、私も非常にわかるのですが、それだけに、実際こういう階級の人が自分の家族であったならば、自分は一体どうするであろうか。われわれは幸いに健康で、こういう審議も続けられておりますが、われわれがもしも不振で、自分の家族がこのケースにはまっておるということを考えたら、一体どう感ずるだろうかということを、私はその最下層の問題を考えるとき、より考えなければならぬと思うのです。これは予算その他で相当困難ではありましょう。しかし、困難であるだけに、やはりやりがいのあることで、最下層の人たちに少しでも安心して生活してもらい、喜んでもらい、仕事に精を出せるような政策を立てていくということは、やはりこれはやりがいのある仕事だ、かように思いますので、非常に困難な点もあると思いますが、ひとつこの種の問題については、特段の今後の御配慮をお願いして私の質問を終わります。
  56. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ほかに御質疑ありませんか。——別に御発言もなければ、本案に対する質疑はこれをもって終了したものと認めたいと思います。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにして、順次御発言を願います。
  58. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、今日までの質問の過程におきまして、この法案の考えておられる児童扶養手当に対する増額については、私は非常に僅少に過ぎるとは思いますが、その考え方については同感するものでございますが、法そのものについて、私どもは遺憾ながら賛成ができない、こう言わざるを得ないのでございます。なぜかならば、こういう児童手当等の問題は、ILO精神にものっとって、一つの体系にまとめて、そうして全国民に適用すべく、これはやらねばならない。それをその場あたりのようなこういうことをやっていけば、当然一番最下層の人は、いかに所得が倍増になっても、やはり最下層の生活はちっとも向上しないということが私は言えるのじゃないかと、かような考え方から、社会党を代表いたしまして、反対の意見を表明いたします。
  59. 相馬助治

    相馬助治君 私は、民社党を代表して、ただいま議題になっておる児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対して賛意を表するものでございます。  現在の社会保障制度を充実いたしまするためには、当然国民の所得を保障し、別に医療を保障するという、この二本立ての骨組みによってこれを前進せしめなければならないと存じます。現に議題となっておりまする児童扶養手当法そのものは、もちろん十分であるとは申しがたいものでありまするが、政府は、さきに母子福祉法を出し、これとまたあわせてここに児童扶養手当法の一部を改正するのでありまして、その方向とその内容については、私どもは賛成をいたすものでございます。もちろんこれに満足することなく、今後ともこの方向をより積極的に推し進められることを特に希望いたしまして、私は本案に賛成をいたします。
  60. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本法案に賛成をいたします。
  61. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それでは、以上をもって討論は終局したものと認めることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。よって討論は終局いたしました。  これより採決を行ないます。児童扶養手当法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  63. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 多数であります。よって本案は、多数をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長提出する報告書の作成、手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  65. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて下さい。  暫時休憩いたします。  午後零時二十八分休憩      —————・—————  午後二時十一分開会
  66. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それでは午前中に引き続き、午後の再開をいたします。  国民年金法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  67. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは先ほどの児童扶養手当と同じようなもので、私ども国民年金法の一部だと思って午前中も質問したわけですが、ひとつ基本的な考え方を、次官もお見えのようですから、お尋ねいたしましょう。大体、池田内閣は、午前中申し上げましたが、社会保障と減税と公共事業が三大政策であって、その中の一番トップに掲げられておる政策社会保障ですが、この社会保障の基本的な政策について、ひとつ詳細に承りたいと思います。
  68. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) 御存じのとおり、世界の大勢から見ましても、社会保障制度の充実ということが政治目標としてトップに掲げられているような大勢でありまするし、わが国におきましても、今度は特にこの問題が重要視されて参りましたことは御存じのとおりでございます。池田内閣といたしましても、特に総理大臣は、社会保障制度の充実ということを最も高く評価して、重要なる政策として掲げておりますことも御承知のとおりだと思うのであります。したがいまして、厚生省といたしましても、この内閣の大きい目標の線に沿いまして、できるだけ予算等を多くとりたいものだということに重点をおいて努力いたして参ったような次第でございます。御存じのとおり、今厚生省の中へ私ども入りましていろいろ調べてみますというと、割に世界でとられている社会保障制度の項目といいますか、そういったようなものはよく研究されて、具体的な政策内容として実施しておるものと私ども考えておるような次第でございます。ただ、あまりに目標が多過ぎて、何かしら内容の充実の点に不十分な点があるように考えますので、省といたしましては、特に予算獲得というようなことに大体大きいねらいを置いて努力していこうではないかと、大臣とも相談いたしまして、その辺をねらいとして努力を重ねて参っているような次第でございます。
  69. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、現在、池田内閣政策として国民一般に訴えられたトップに掲げられておる社会保障ということは、これは非常に大きく打ち出したけれども、中身は何もなかった、厚生省としては、予算化するために相当努力された、それは努力したことはわかりますが、予算の伴わない社会保障なんていうのはあるかどうか。予算がこんなにとれなかったならば、社会保障の看板をおろせばいい。社会保障ということをトップに掲げて、現内閣は社会保障を三大柱のトップにしてこの議会に提案いたします、こういうことを掲げられておって、社会保障に予算の伴わない社会保障というのはあるかどうか。予算が伴わないようだったならば、なぜこういうのをトップに掲げて国民をまどわすのか。やりたいけれども社会保障は今のところは最大の自分たちの目標ではありません、予算がないから。こういうならばわかるけれども社会保障を第一にやりますということを言っておって、社会保障にこそ金が伴って初めて社会保障と言えるのです。国の資金が注ぎ込まれて初めて社会保障ということが言えるのです。ところが、厚生省が要求するもの、あるいは厚生省が考えておるものも出せないというようなことで、何で社会保障ということが言えるか。私はその点がどうもわからない。一般には社会保障をいかにもよくやっているように、こう言われておるのだけれども、実際問題としては、厚生大臣も言われたように、もう微々たるもので、なかなか予算がとれない。そういうことであるならば、厚生省自体が、社会保障の看板はおろしてくれ、そうしなかったならば、厚生省は予算はとれなかった、内閣としては社会保障を打ち出した、これではあまりにも国民に対して申しわけないから、看板をおろしてくれ、なぜそのくらいがんばれないのか。いっそのこと、この社会保障というのはまだまだ充実しないから、とてもじゃないが掲げられないというならば、これはわかります、予算面でというならば。ところが、社会保障やりますぞということを、いかにも大きくできるように打ち出しておいて、その実は微々たるものだ。これでは私は国民を愚弄するものじゃないか、こう思うのですがね。
  70. 森田重次郎

    政府委員森田重次郎君) ごもっともな御高見でありまして、まあ私らといたしましては、できるだけ努力を重ねたつもでありますが、御批判も相当強いあれがあるようでありますが、しかし、ある程度の努力——十全ではないが、その努力に幾らか沿い得たのではないだろうかと実は考えておるつもりでありますが、しかし、これをもつてむろん満足いたすものではございません。今後とも十分努力を重ねまして、予算の獲得に全力をあげたいと考えておる次第でございまして、この点につきましては、皆様方からも十分御支援と激励、御鞭撻を賜わりたいと考えておるような次第でございます。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 次官を責めてもしょうがないかもしれませんが、 こういう場所でお尋ねすれば、そういう御答弁がいつもありますが、それでは実際問題として、旧地主補償の場合は二十億の予算をつけられた。そして新聞の報ずるところによれば、四千億から六千億くらいの金を旧地主に融資するというようなことまでいわれておるわけです。一体旧地主とどちらが先だろうか。しかも、審議会の意見を聞いてみますと、これは生活保障すべきような旧地主はおらない。生活を保障しなければならないような旧地主は見当たりません、こういうことをいっているわけです。そういうのに二十億も出した。ところが、一枚看板である社会保障にはわずかなものだ、考え方が主客転倒しているのではないかと思う。それで、旧地主のほうにも一銭も出せません、あるいは財政投資等についても、それはもっともっと考え方も変えなければならないということでやってもこれくらいしか出せないというならわかるけれども、旧地主に二十億の金を出す、今度与党のほうでは四千億からの金を出すように決議されている。これでは全く逆行しておって、実際、次官や、あるいは大臣の考え方と行き方が別のように思えるのです。  もう一つ事務的な問題でお尋ねいたしますと、三十九国会の附帯決議はどういうふうに尊重されておるか。それから、今後社会保障の基本的な政策として、一体どこをどう直そうとするのか、そういう点をひとつ聞かしてもらいたい。
  72. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 三十九国会において、当委員会において御決議になりました附帯決議の一番肝心な点は、拠出年金において、免除を受けた者にも保険料を納めた者と同じように国庫負担をつけるということであったのであります。これはいわば見方によっては、現在の国民年金の体質改善の上において一番基本的な事項であったわけでございます。これにつきましては、すでに御説明申し上げましたように、今年度における一番重要な問題といたしまして取り上げ、そのとおり実施するということに相なったのであります。  それから、それ以外の事項につきましては、現在福祉年金につけられておりますいろいろな制限的処置、たとえば所得があれば受けられないとか、こういう原則は一応了解できるとしても、その制限の限度なるものが非常に低過ぎる、これを早急に緩和するように、こういうような御意向の御決議があったわけであります。そういうふうな御決議趣旨に沿いましてやりましたことが、御説明申し上げましたように、第一に、本人の所得が今まで十三万円あれば受けられないということになっておりましたのを、十五万円まで引き上げるということを実行したのであります。  それから第二には、公的年金を受けております場合には、原則として福祉年金の支給は差し控えるということにしておりましたのを、この際、大幅に広げまして、受けております公的年金が社会保障の趣旨から見てぎりぎりだと思われる限度以下であるならば、福祉年金をあわせ給することによって、何とかして最低保障と思われる程度まで二つの年金をあわせることによって出せるようにする、こういうことを実行することになったのであります。この措置によりまして、およそ四十万人ぐらいの人が新たに支給を受けられる、こういうことになったわけであります。一つどうしても計画をしておって実施できませんでしたことが、現在の制度では、夫婦がともに福祉年金を受けております場合には、おのおのが全額ではなくて、四分の一だけ減額されたものを受ける。逆に申しますならば、四分の三の額だけを受ける、こういう仕組みになっているのでありますが、これはどうも少しひど過ぎるじゃないか、そういう場合でも、二人とも完全な額が受けられるようにというのが諸先生方のお考えであったわけでありまして、政府側としましても、この実現を目ざしていろいろと折衝したのでありますが、残念ながら、これは実現をしなかったのであります。  それで、今後の考え方でございますが、いままでこれはすでに大臣からも申し上げましたように、国民年金においては、特に福祉年金におきましては、本来もらえるはずの人が、いろいろな制限措置によって、かなりもらえないでいたというこの事態を何とか改善しようということに努力を向けて参ったのでありますが、今回御審議を願っております法案の実現を見なすならば、おおむねその問題は解決するのであります。ただ、残ります問題が、世帯所得の制限がやや低過ぎる。たとえば都市のサラリーマンで扶養親族が五人いるというと、相当大家族の家でありますが、そういうような家におります老人は、息子さんのもらって参ります俸給、給与あるいは賞与の合計が五十万をこえると、もう受けられないという仕組みになっているのであります。これはどうも少し低過ぎるじゃないかという問題がありますので、これは当然残る問題でありますが、大まかにいって、大体所得制限なり、あるいは支給制限の問題は、ひとまず落ちつくところへ落ちついたわけであります。したがって、明年度からは、現在の福祉年金の額を積極的に充実していくということを根本的な方針として考えて参りたい、こういう考えを大臣以下持ちまして、そういう方針に従って来年度の実現を目ざしまして検討を開始しているということでございます。  また、拠出年金につきましては、これは保険料の負担を伴いまするし、また、国庫負担の仕組み等の問題もありまするし、また、現在の貧富にかかわらず、同じ保険料を納めているという、このフラット制の問題を改めていくかどうかというような問題もありますので、これらを含めて、相当根本的な改造というものを検討する必要がある。そうして、おそくても最初の五年目であるところの昭和四十一年には相当進んだ形のものにこの拠出年金を改造していく、同時に、給付内容を画期的に充実していく、こういうようなことを目ざして次の準備にとりかかる、現在こういう段階に進んでいるわけでございます。  なお、国民年金の改善は、いわば国民年金だけを取り上げても、なかなかこれはうまくいかないところもありますし、また、バランスを失するところがありますので、年金制度全体として、一つの目標をもって内容の充実をして参るということを現在厚生省としてはいろいろ研究しているのであります。大まかに申しまして、国家公務員の年金制度、あるいはこれに準ずるものは、まあまあこれはどうやら世界的に見ましても、ほぼ一流に近い水準に達しております。ところが、労働者の大部分を含んでおりますところの厚生年金の制度は、これは格段と悪い状態に置かれている。これを飛躍的に充実して参るということが必要なわけでございまして、この点厚生省としては、次の段階の年金の充実をもう基本的なねらいといたしたい、厚生年金については、すでにたびたび御議論を願っておりますように、昭和三十九年度が次の五年目の制度改正の時期であります。したがって、おそくも本年度からいろいろな検討に着手して、できるならば三十八年度にはもう実施に移せるというところまで案をまとめて、おそくも三十九年には、現在の厚生年金の内容と比べて、格段と充実をした厚生年金制度を実施するようにやっていく、そうしてその計画の固まりと対応しつつ、先ほど申し上げた拠出年金の飛躍的な内容の充実をやって参りたい、大体こういう段取りを組んでいろいろの検討を進めている状況でございます。
  73. 阿具根登

    ○阿具根登君 児童手当で質問をすれば、国民年金の関係でこれは上げられないとおっしゃるし、国民年金で質問をすれば、厚生年金その他の年金の関係があって上げられないと、これは堂々めぐりで、これはいつまでたってもいかぬですな。しかし、国民年金というのは、これは中心になるべきものだと私は思うんですよ。これがまずやはり一番大きな柱になって進むのであるから、これがほかの年金との見合いばかり考えておったならば、前進はないと私は思うんです。  それで、ざっと目を通して見ても、非常に国民年金は問題になった法律案でもございますので、附帯決議もこれぐらい長くついておるのはないんです。守られておるのは、十三万円を十五万円に引き上げたというだけなんです、率直なところ申し上げてですね。だからして、最初からわれわれがこの議会でここで決議をし、本会議で決議をした附帯決議をどれが守られているか。今福祉年金だけは聞きました。しかし、各年金の年金額を大幅に引き上げる、老齢年金、老齢福祉年金の支給開始年令を引き下げる、あるいは保険料、年金額、給付要件、受給対象等、すべての面において、社会保障の精神に従ってどこを改善したか、このためには大幅な国庫支出を行なうことと、これは金が要ることはわかっている、こういう社会保障に金が要らないということはないんだから。社会保障というものには金がつく、国庫支出が伴なって初めて社会保障と言えるのですから、ですから、わざわざ本会議でも本委員会でも、大幅な国庫支出を行なえということを特に附帯決議に書いてあるわけです。その次にもいろいろありますね。保険料の免除云々と、拠出年金を支給しろとか、あるいは年金受給要件に達しない者の実納保険料云々と、こういうのが九項目あるわけです。それにもはっきり国庫支出を増額しろ、あとのやつは小さいやつだけれども、特に大幅な国庫支出を行なえというようなことまで議会で決議しておるわけなんです。だから、その決議が一体どれがまあ決議を尊重されてやられたのか。福祉年金のことは今お聞きしましたからわかりました。それから、所得制限額の十三万円を十五万円に引き上げるということは、これは議会の決議をそのまま尊重されて出されております。十五万でも、まだ今の時代になってくれば、午前中申し上げましたように、物価高から見れば、これは上げなければならないんだけれども、その点ひとつ詳細に説明してくれませんか、議会で決議したのを一項目ずつ。
  74. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先ほど厚生年金との関係を申し上げましたのは、決してそれを理由国民年金の内容の充実をおくらせるというような気持なり考え方で申し上げたつもりは毛頭ないのであります。むしろ気持としては、国民年金だけで議論いたしておりますと、どうしてもこれは保険料の拠出能力の問題もありまするし、また、世界的な関連で議論いたします場合に、世界の相当進んだ年金制度を持っておる国でも、労働者の年金制度には相当いい制度を持っておりながら、そうでない自営業者については、案外お粗末であるか、あるいはほとんどないという事例が決して少なくないわけであります。やはり年金制度の根幹は、何といっても労働者の年金制度をりっぱなものにする、それに劣らないように、それ以外のものの年金制度を整えていくということにならざるを得ないわけであります。たまたま今までのところは、いわば年金制度から見離されておった人々を対象とする国民年金制度において、日本の年金制度を何とかして、引き上げようという角度で御議論をいただいたわけであります。また、そういう趣旨において、御議論も、単にそういう対象についての議論に限らず、広く日本の年金制度をどうするかという御議論をいただいておったわけであります。やっとこれでどうやら地ならしができましたので、今度は次の段階は、どうやら世界的に見て一流だといわれる国の年金制度まで厚生年金制度を持っていく、それに劣らないように国民年金制度も持っていく、そうして次の内容充実をやりたいという気持を申し上げたつもりで、やや言葉足らずになったのでありますので、この点は御了承をいただきたいと思います。  それから、ただいま仰せになりました各項目との関係でございますが、この附帯決議に、御議論になりました大きい一に掲げました項目は、これはいわば制度の基本に関する事項を御決議になったものであります。したがって、中には短期間に実現できるものもあり、中には若干の時日を要するものもある。特に年金制度の場合は、どうしてもやや長い射程で議論をしなければならぬ事情がありまして、議論が勢五年、十年、あるいは短い場合でも三年ということにならざるを得ない事情があるわけであります。それで、先ほど申し上げました厚生年金及び国民年金の内容を飛躍的に充実するというのは、気持なり事情を申し上げれば、実は大きい一の各項目に対応するものとして厚生省当局は検討を始めたわけなんであります。検討を始めます場合の基本は、この御決議に盛られておりまするように、まず、何といっても、その年金額を充実するということが基本になるのであります。それで、国民年金については、先ほど申し上げましたように、四十一年の実現を期していろいろな案を作っております。すでに実は試験的な案はかなりいろいろまとめてみておるのであります。概略を申し上げますというと、現在四十年拠出で三千五百円になっておりまする老齢年金は、これを五千円または七千円に十年後においては引き上げるようにするという、一応のめどは立てておるのであります。ただ、その細部のいろいろなやり方については、さらに議を尽くさなければならぬ点がありまするので、これを研究しておる。特にこの場合、フラット制のままでいきますというと、どうもいろいろ検討しましても、五千円のところをこえることはかなり困難になるのであります。もし所得比例制を導入するということになると、七千円をこえることは必ずしも不可能でない、こういうような事情があるわけであります。そこいらを中心に年金額の引き上げは議論をいたしております。  それから、支給開始年令の老齢年金における引き下げにつきましては、現在社会保障制度審議会でもいろいろ御議論をいただいておるのでありますが、拠出制の老齢年金六十五才というのは、労働者の年金制度である厚生年金六十才とのつり合いにおいては、これは変える必要があるまいという意見が大体において大勢を占めております。ただ、厚生年金の支給開始年令六十才が、かりにこれが縮まるということになれば、拠出年金における六十五才は下げる可能性はあるけれども、しかし、まあこれは世界の年金制度のおよその態勢から見て、六十才から六十五才という開始年令のほうは変える必要はないのじゃないか。ただ、この場合でも、現在国民年金にとっており、厚生年金ではとっておらない繰り上げ支給の制度、つまり六十才なり六十五才までいかなくても繰り上げて支給をするという制度の採用は、厚生年金においては必要であろう、こういう意見が大体今のところ固まりつつある、こういうことでございまして、まあこういう方法によりまして六十才なり六十五才という支給開始年令は据え置きつつ、しかも、個々の人々の実情に応ずる引き上げの措置というもの、繰り上げの措置というものはやっていくということで、実情に応ずるようにいたしたい、こういう考えでございます。  それから、老齢福祉年金の支給開始年令七十才というものについては、現在検討の段階でございますが、これは何とかひとつ引き下げて参りたい。十年先におきまして、これを六十七才ぐらいまではもっていきたい。いろいろこれは費用の試算なり何なりをしておりますが、これはすでに、申し上げるまでもなく、これから十年間はちょうど老齢人口がぐんぐんふえて参るときでございます。そういう際において年金額を引き上げる、今の千円という年金額は、十年先には少なくとも二千三百円まで引き上げたい、あるいはそれ以上引き上げられるかどうかということを検討しているわけでございますが、それに今の支給対象がうんとふえていく。ちょうど川にさかのぼってこぎ上がって行くような格好になって、問題が二つ重なる可能性があるわけでございます。それで、この支給開始年令の引き下げと年金額の引き上げをあわせてやるというのはなかなかむずかしい問題だ。しかし、むずかしいからといって、やらないというふうな考え方をとるべきではなくて、どうやったらやれるか、どういうめどでそれを整理していくか、こういうことで現在研究を進めている、こういう事情でございます。  それから、福祉年金の給付制限を緩和する問題につきましては、先ほど申し上げましたように、夫婦受給の制限は、何とかしてこれは来年度からでも撤廃をして参りたい。また、世帯所得の五十万円という制限は、実情から見まして、特に都市生活を営んでおるサラリーマンの家にいる老人にとっては、非常にこれは無理だと思われる実情が出て参っておりまするので、これも何とか引き上げを考えて参りたい、こういう考え方でございます。  それから、社会保障の精神をあらゆる組み立ての中に入れ込んでいくという問題は、先ほど来申し上げました免除に国庫負担をつけるということ自身が、これはまあ従来の保険理論と申しますか、古くからやっておりまする社会保険の技術的な組み立ての上からみると、いわば革命的なやり方になっているわけでありまして、   〔委員長退席、理事長鹿島俊雄君着席〕そういう面において、今までの保険技術の組み立てをこわしつつあるわけでございますが、ひとつ努めて社会保障の趣旨は随所に現われていくように今後とも研究して、ことに所得比例制を取り入れる場合におきましては、今国家公務員の退職年金制度なんかにありますように、俸給、給与の高い者は保険料をたくさん納めるかわりに、年金額は自動的に同じ倍率で高いものを受け取るというような、こういうやり方は何とか修正をして参りたい。保険料は所得に応じて納めるにいたしましても、受け取る年金の額にある程度の差等がつくのはやむを得ないとして、多いのはたくさんもらう、おまけに、それが国庫負担までが多い者にはたくさんついて、少ない者には少なくしかつかぬという今のようなあり方は、これは少なくとも国民年金や厚生年金にはやらぬようにしていく。幸いに、厚生年金では、かなり強い社会保障的な仕組みになっておりますので、国民年金において所得比例を取り入れる場合には、そういうふうにして参りたい。今たいへん雑に申し上げましたが、そういうようなことを含めた諸計画というものをまとめているわけでございます。気持から申しますと、年金の理論というのは、そういう技術的な構成の問題がありますので、実施する直前になっていわゆる政府案なるものを出すということをやりますというと、十分理解した上で論議をしていただけない。したがって、おそくとも実施の二年前ぐらいには、一応の政府案なるものを発表いたしまして、関係方面に十分お見せをして、そこでうんとまた意見を出していただく。いわば議案をその間さらすことによりまして十分論議をしていただいて、さらに調整すべき点は調整をして、すべて問題を十分理解をしていただいた上で議論をしていただくようにしょう、こういう考えでいるわけでございます。  それから、国庫負担の問題については、現在国民年金においては保険料の半分を国が負担している。で、給付から申しますと、三分の一を国が負担している制度でございます。これは現在の年金制度としては、一番高い国庫負担率でございまして、厚生年金におきましては、あの激しい労働をやっておりまする坑内夫等についてさえ、二割しか国が負担していない。それに対して三割三分負担しているわけでありますから、相当高いわけであります。しかし、この問題は、やはり十分論議をするに値する、たとえばドイツの年金制度なんかでは、国の負担が半分になっている例もあるわけであります。イギリスの制度は今の三分の一という負担率以下でございますけれども、そういうようなことも含めまして、この点はいろいろの角度から検討しております。したがって、将来まとめて御議論願う案としては、かりに現在の国庫負担のままであるとすればこういう案になる、もしこれをわれわれが望むように、これだけ国庫負担をすればこういう案になる、いずれにしてもそういう相関々係を明らかにした案にして十分御議論願うようにする、こういうような心組みで検討に着手をし、作業を進めておる、こういう事情でございます。
  75. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、老齢年金と老齢福祉年金の支給開始年令の引き下げについて、老齢年金は六十五才であって、厚生年金等の関係もあって、一応据え置いておるが、厚生年金の移動によっては考えられる。しかし、老齢福祉年金については、七十才のものを何とか六十七才ぐらいまで将来は引き下げたい、こういうお考えのようですが、もちろん拠出制、無拠出制だから、一応そういう理論も成り立つかもしれないけれども、これは国民年金というものは、そういう無拠出の人あるいは拠出の人に差等をつけるのが考え方ではなくて、無拠出であろうと拠出であろうと、老齢になって身寄りのない人、こういう人に対して国がめんどうをみるんだということになっておれば、当分の間、金額の面はこれはやむを得ないかもしれないけれども、年令の面は、最初からこれはよくいっても六十七才ぐらいまでだというのはいかがかと思うんですが、なぜ国民が同じ年令に達して老齢年金が受けられないのか、一方は六十七才、一方は六十五才、その点がどうしても私にはわからないんですがね。
  76. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) その点は先生のおっしゃるとおりでございまして、考え方としては、六十五才を目ざしてこれは引き下げを考えていくべきものだと思っておるわけであります。そういうことで実はいろいろ案をやってみたわけであります。ところが、何分にも年金額の引き上げとこれとをからみ合わせますと、十年間のうちに六十五才まで引き下げるということが非常にむづかしい、しいてそれをやろうとします場合には、たとえば七十以上の場合と六十五才から六十九才までの場合との年金額を違えるという案にならざるを得ない。大まかに申しますと、そういう案をやるといたしましても、毎年単に福祉年金のためだけに百億ぐらいを入れていくという勘定になるわけであります。これはもちろん先生冒頭におっしゃいましたように、社会保障というものに対する国の腹のきめ方、態度のきめ方の問題がありますから、それは福祉年金のために百億ぐらい入れてもいいじゃないか、むしろそれを当然の前提としてやっていくという、こういう大方針がきまりますれば、先生おっしゃるように、当然そこにいけるし、また、いくべきものだと思っております。私どもがいろいろ今いじくったところでは、ちょっといろいろな点から見てそれはむずかしい、いろいろの事情を考えてみると、どうも六十五才まで引き下げて、年金額はすっきり二千三百円までにするというぐらいのことが、まあこれも相当財政当局なんかが聞きますと、肝をつぶすような数字になっておりますけれども、これがまあ議論をしていただく場合のどうやらぎりぎりの案じゃないかという意味で申し上げたわけで、決してこれを固定して考えているわけではございません。幸にして、今後ぐんぐん社会保障に大きい金が投入できるということになれば、当然六十五才まで引き下げていく。六十七才ということを申し上げましたのはそういうようなことで、技術的にどうやらそこぐらいまでということ、それから、割合に世界の年金制度のうちで、無拠出の年金制度の中には六十七才ぐらいの支給開始という例があるわけであります。まず、今の七十というところは何とか脱却をして、そのぐらいまで十年間の間に持って参りたい。それから、残る問題は、また次の五年なり十年において改善をして参りたい、こういう大まかな見当を申し上げたのであります。   〔理事鹿島俊雄君退席、委員長着  席〕
  77. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、先ほど申し上げましたように、年令の差までつけるというのは、それは法の考え方からあまりひどいじゃないか。あなたは無拠出  だから七十になったら差し上げます、金額はこれこれだ、金額の面はそれは長い間掛金をかけた人と、それからかけない人の問題だから、一応それは今の場合はやむを得ぬところもあるとは思うんだけれども、年令において同じに人間が年をとっているのに、年令において、君は七十才だ、君は六十五才だというのは、私はどうしてもこれは受け取れない。当然金額は相当ふえるとは思うのですけれども、やはり同じ人間に国が将来を少しでも保障してやるとするならば、年令ぐらいは同年令にすべきじゃないか、こう思うわけです。それでは七十才以上の現在受けておられる方はどのぐらいでございますか。
  78. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま老齢福祉年金を受けておられる人は二百四十八万、約二百五十万でございます。それから、今回御議論を願っておりまする法案成立をいたしますと、前に申し上げましたように、さらにこれが四十五万程度ふえ、こういうことに相なる見込みでございます。
  79. 阿具根登

    ○阿具根登君 約三百万ですね。そうしますと、国民年金も発足してからまだ時間がたたないので、無理もないとは思いますが、私どもが考えるのは、非常に無計画であって、そうして一応こういうのは作ったが、まあいろんなでこぼこがあるということで、あっちを縫い、こっちを縫いというような、非常に何といいますか、一貫性がない。一貫してずっと、来年はここまで、次はここまでというような企画性がなくてやられておるうに考えられてしょうがないのです。まあそれを質問すれば、おそらく労働者を主体にしておる厚生年金が世界で一番悪いんだから、厚生年金をまず考えなければならん。幸い、三十九年が今後の五年間の基礎になるということですから、それじゃ一体厚生年金はどういう構想を持っておられるか。その厚生年金の構想によって国民年金はどう進むかということが出てくるのですね。厚生年金については、それじゃ世界で一番悪い厚生年金というならば、どういうように考えておられるのか。その構想があったらひとつお知らせ願いたいと思います。
  80. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) お答えする前に、お断わり申し上げたいと思いますが、私の言い方が少し悪かったためと思いますが、福祉年金については、決して目標を明瞭にしていなかったということはないのであります。むしろ今までは終始、現在ある一部の人々から過酷だといわれるこの各種の制限措置をまず撤廃して、いくべき人には、とにかく年金の額については問題があるにしても、いくようにするという状態に早く持っていくことが必要だという考えでやって参ったわけであります。ただ、いろいろ御議論なさる方と考え方の違った点は、そういう方々、はそれは当然だ、しかし、それだけじゃいかぬので、あわせて年金額の引き上げをやるべきだという非常に強い御主張であったわけでありますが、この点は、国家財政の面から見て、一度にやるのは無理だということであったわけであります。先ほど申し上げましたように、大体今度御議論を願っているこの措置で、一通り各種の制限措置の問題はあら方解決がつく。いよいよ年金額の充実というふうに考えているわけでございまして、方向のつかみ方なり手順ということについては、そう右往左往をしておったということはないのであります。また、今後も大臣もすでにたびたび申しておられるわけでありますが、いよいよ第二段階に入った措置というものを強く進めて参りたい、こういう考え方でございます。  それから、厚生年金との関連を申し上げたのは、主として拠出年金の部分でございます。拠出年金については、先ほど申し上げましたような、大よその構想及びその構想を基礎づけるいろいろな議論というものは、すでに一年くらい有沢広巳さんが会長をしておられる国民年金審議会で現在やっていただいております。ただ、事の性質上、まだまだ確定案というところまでこれを言っては言い過ぎになる。もう一回あらゆる角度から議論をし直してみたいということで今は議論をしていただいているというわけでございます。  それから、厚生年金につきましては、私は直接の担当でないので、やや言い過ぎになることを差し控えなければなりませんが、ただ、大まかな考え方といたしましては、現在厚生年金の組み立てが、フラット部分、月二千円のフラット部分と、その上積みになる千分の六という報酬比例部分との組み合わせによって成り立っているわけでございます。これが厚生年金という制度を、金額の点では、先ほど申し上げましたように、世界の水準から見てまことに貧弱な水準でありますけれども、組み立ての点からいきますと、これはかなり進んだ組み立てになっております。非常に社会保障性の強い、端的に申し上げますと、所得再配分の強い制度になっております。やはりこの調子は今後の改造にあたっても、どうしても残して参らなければならないということが一つであります。  それから、できるならばその要素をさらに強めるということも考える必要があるというので、まず、何よりもフラット部分になっております月二千円というものを、次の厚生年金の改造においてはどの程度に引き上げるかという場合に、出て参っております議論は、生活保護の基準程度のものがフラット部分で考えろという議論と、それとは全然別の立場で、これはやはり財源とからみ合う問題である、御承知のとおり、現在のフラット部分の財源は、国の負担と、それから事業主負担とで成り立っているわけであります。勤労者自身のふところをいためている負担である保険料の半分の分は、これは全部所得比例部分に回っているわけであります。したがって、このフラット部分を思い切って充実して参ります場合に、おのずから財源の関係において一つの限度がある。この限度を破ろうとすると、労使分担の同一というこの仕組みをある程度変えていくか、あるいは一割五分なり二割ということになっている国庫負担をさらに引き上げるということをする必要が、その問題が出るわけであります。これも十分論議に値するというので、現在いろいろな案を検討している、こういうわけでございます。  それから、所得比例部分の千分の六については、これはまだ態度があまり固まるところまで参っておりません。まあ次の改善の場合には、これはこの程度でいいじゃないかという考え方から、この部分を大きくしていかないというと、結局年金全体としてあまり大きい額にならない。そうなるというと、依然として寸足らずの年金という姿が残っていって、ほんとうにこれにたよって生活をするということができない制度のままでいかなくちゃならぬから、これも相当改めなくちゃいかぬ、まあこういうようなことでいろいろ議論をされているわけであります。なお、その場合に、すでに日経連等から出ておりまする、いわゆる企業年金というものと、この公的年金である厚生年金とをどういうふうに関係づけるかという議論は、当然これはやはりしなければならぬ議論になるわけであります。ただ、大まかな厚生省側の考え方から申しますと、あるいはこれは両者関係づけられる問題かもしらぬ。しかし、一応問題は厚生年金自体で十分論議をして、その上で企業年金と交渉するか、あるいは交渉しないままの状態でいくかという議論を詰めていくという順序にすることによって議論の混乱を避けたい。まあ非常に大まかに申しますと、そういうようなことでございます。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 細部について一、二点質問して、きょうは私は時間がありませんから打ち切りますが、福祉年金額について月額千円というものは、おそらく本法ができたときに相当論議されたものと思いますが、その基準は何ですか。
  82. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) この額は、当時、社会保障制度審議会が答申されました額をそのまま受け入れたわけでありますが、社会保障制度審議会がこの額を出されましたのは、その当時の生活保護における四級地の基準が二千円をちょっと上回るという程度の額であったのであります。で、まあ大づかみにつかみまして、二千円程度というものを一応ぎりぎりの年金額というふうに考えて、このぎりぎりの年金額のおよそ半分というものを全額国庫負担である福祉年金の額にする、まあこういう趣旨で答申をされたのであります。
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 生活扶助基準の第四級地ですね、すなわち農村地域の単身老齢者の生活扶助が二千円、その半額と、こうなっておるわけですな。これは当時相当論議されたこととは思いますから、むし返しはいたしませんが、生活の補助を受けておる方の半分だと、しかも、四級地だということは、これはもう低きに失するということは、当然これは問題になったことだと思うんです。ところが、その後、これは民間でも公務員でも一緒ですが、この二年の間に相当に物価が上がってきたのと、ベース・アップされたこと。昭和三十五年度に生活保護基準額で二・九%、三十六年度で一八%、三十六年度の補正予算で五%引き上げた。さらに本年度は一二%の引き上げを行なおうとしておるわけなんです。それで、諸物価が上がり、あるいは給与が上っておるのに、この福祉年金額は妥当であるかどうかということは、そもそもの出発が、そういうふうに生活扶助を受けておる人の半額、そういう非常に下から出発しておって、しかも、今度はすべてのものが上がってきたのに改善されないということは、一体どういうことなんですか。
  84. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先ほど御説明申し上げましたように、四級地をとりましたのは、当時の感覚といたしまして、まあ大体この福祉年金は、今まで年金制度に守られてない人々に対する年金制度だという考え方が一つ社会保障制度審議会にあったわけであります。そうしますと、勢い、おもなる対象は農村地方ということになりましたので、おそらくそれをとったということだと思います。それから、その後において、いろいろ生活水準なり、あるいは特に生活保護においては、意識的に貧乏の底上げをするという意味基準が引き上げられているのに、福祉年金にはそういう努力が全然見られぬのはという御批判、これはまことにごもっともなことでございまして、私どももその点は当然考えていかなければならぬ問題だという気持を持ち続けておったわけであります。ただ、順序といたしまして、乏しい年金でさえも受けられない人が現に相当今までいるわけであります。年令七十才を過ぎておりましても、いろいろな事情で御遠慮いただきますということで遠慮していただいているこの措置を何とか緩和して、一応公平感が出てくる程度まで制限措置を緩和するなり、あるいは撤廃できるものは撤廃して参りたいということで進んで参ったわけでありまして、繰り返し申し上げましたように、一通り荒ごなしがつきました来年度以降は、ぜひとも仰せのような考え方を盛り込んで年金額の引き上げをやりたい、もう厚生省当局としては、やるべきものという大臣の判断で、検討に着手しているわけでございます。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 この福祉年金額をもらう方は、これは御承知のように、非常にお困りの方なんですね。いわゆるもう七十才になって肩身の狭い思いをして生活をされている方々に上げると、こういうことなんですが、今度もうこの法案が終われば、直ちに今審議になっておりまする、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、あるいは恩給法、未帰還者留守家族援護法あるいは共済組合法等あらゆる年金が今度の国会では上がることになっているわけなんですね。それにこれだけは置き去りにされておるということは、各人の国民格差をなくする、縮めていくというのが今後の行き方であるにもかかわらず、ますます一方は置いてきぼりを食らっていく、国民年金という非常に社会保障のりっぱな面が出されておるにかかわらず、実質は一番おくれてきておる、格差はますますひどくなってきておる、こういうことになってきていると私は思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  86. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 今回いろいろ御検討いただいている公務扶助料とか、あるいは戦傷病者遺族に対する遺族年金というものが引き上げられるというのは、これはもともとそういった方々は非常に困っておいでの方々でありますので、当然これはあっていい措置だと存じます。問題は、そういう人々の年金額の引き上げは、先生方のお気持としてはわかるとしても、これだけ置き去りにするのは不当だというお考えだと存じます。私どもも、これを置き去りにしてはならぬというふうに考えておるわけであります。ただ、年金額も引き上げる、それから支給制限を撤廃するという二つのことが同時にはできかねる、それで、現在までいろいろな事情で制限措置を受けているこうした年金関係の四十五万、これをまず支給対象の中に持ってくるということを今回ぜひやりたい、そうしておいて来年から今度は全般についての年金額の引き上げを考える、こういうわけでございまして、ややおそいという点については、御鞭撻に従って、ぜひ来年充実して参りたいと思います。
  87. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  88. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記つけて。  本件に関する本日の質疑はこの程度で終了したいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。本日の質疑は終了いたしました。次回は来週火曜日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時九分散会