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1962-02-22 第40回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十二日(木曜日)   午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理事            鹿島 俊雄君            村山 道雄君            阿具根 登君            藤田藤太郎君    委員            勝俣  稔君            佐藤 芳男君            山本  杉君            横山 フク君            坂本  昭君            村尾 重雄君   国務大臣    労 働 大 臣 福永 健司君   政府委員    通商産業省鉱山    保安局長    八谷 芳裕君    運輸省船員局長 若狭 得治君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    労働省職業安定    局長      三治 重信君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生省社会局厚    生課長補佐   金村 博晴君    厚生省保険局次    長       熊崎 正夫君    厚生省保険局船    員保険課長   中村 一成君    水産庁漁政部長 林田悠紀夫君    海上保安庁警備    救難監     松野 清秀君    労働大臣官房国    際労働課長   石黒 拓爾君    労働省労働基準    局労災補償部長 大野雄二郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査  (労働者災害に関する件)   —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それではただいまから本日の社会労働委員会を開会いたします。  労働情勢に関する調査の一環として、労働者災害に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、労働者災害問題について、一つ皆さん方行政庁でおやりになっておるのですから、これからすぐ実態報告を願って把握をしたい、あわせてその対策をどういう工合に進められておるかということをお聞きしたいわけであります。この労働者災害については、労災法規定されておる労働者災害対策、それから地下労働については鉱山保安局長管轄、それから海上の問題または陸上交通の問題、この中で労働者がどういう災害を受けておるか、この対策がどうなっておるか。特に海上災害の問題については、坂本委員が、あとから海上労働者の問題で質疑がありますので、私は割愛をいたしますが、まず基準局長、それから鉱山保安局長、それから基準局長から交通関係災害の問題についてもお話を願いたい、今運輸省から見えませんから。そういう事態、今の現状、三十四年から三十六年の間を通じてどうなっておるか、対策はどうしておるかをお聞きしたい。それから、関連して質問しておきますが、今の労働省からすれば、労災の経済がどうなっておるか、それから病院診療という工合に、治療の経過がどういう工合に進んでおるか。たとえば労災補償の給付の引き上げを必要と思うような面がたくさんあるわけです。たとえばじん肺は年金に一応踏み切りましたけれども、まだまだ十分ではないという陳情が、これは一生負い目になるわけですから、そこからも出ておりますし、現実に給与の千日分とかの打ち切り補償で、給料が安い場合に、今日の時代では生活ができないという問題も出てきておるわけであります。ですから、そういうものを含めてお話を願いたい。それからもう一つ、初めに全部言っておきますが、安全衛生の問題について、たとえばベンゾールについては、四十八条で一応ベンゾールの使用の率をきめて、禁止の段階に近いところまでいったわけですが、このベンゾールに類似したようなものが今日出てきていないかどうか。またはキーパンチャー、ああいうものに対策が講じられているかどうか。または私たちではよくわからないのですが、最近の機械化オートメイション化によって出てくる労働者キーパンチャーのようなもの、または化学の進歩に応じて、化学薬品その他によって人体に傷害を与えているようなものがあると聞いておりますけれども、そういうものはどういうものがあるか、それに対する対策、こういうもの、それから、これは厚生省関係者がおいでになると思いますけれども厚生省身体障害者自体が、たとえば肢体不自由者、それから、ろうあ、盲人とあるわけですが、これも何らかの傷害でなった人が相当な数になっているわけですが、こういうふうに陥っていかれて何の対策もないということになっておりますから、こういうものの厚生行政としての問題、しかし、この厚生行政管轄下に陥っていくわけですが、基礎はやはり労働者の、働いている人の傷害もしくはその他の傷害ということに関連をしてくる問題が多いわけでございますから、こういう点の対策、それから身体障害者雇用促進をどうしていくかという工合に、たくさんこれに関連して問題があるわけでありますから、ひとつ今の第一番目には三十四年から三十六年までの労働者災害状況、それからその対策、工場、地下——これは鉱山保安局長でございまするが、地下陸上交通災害の問題、こういうところからひとつお話しをしていただきたい。
  4. 大島靖

    政府委員大島靖君) 最近の産業災害状況について概略御報告申し上げ、あわせてこれに対する対策を御説明申し上げます。  最近の統計でとりまとめておりますのは、一番最近のもので昨年の十一月までが現在判明いたしております。休業八日以上の産業災害死傷を合わせまして、昭和三十六年、昨年の一月から十一月までの死傷者の合計四十一万四千件に上っております。これを一昨年、すなわち昭和三十五年の一月から十一月までの同じ期間と比較いたしますと、一昨年は四十万三千件でございますので、約一万件の増加になっております。その中で死亡者は、昨年一月から十一月までが五千七百一件でございまして、一昨年の一月から十一月までは五千百四十九件、五百五十二件の増加になっております。これが昨年の産業災害の全体の数でございます。ただ、全般的に雇用が非常に増加をいたしておりますので、この死傷者総数雇用労働者総数との関係からいたしまして、産業災害率という観点から見ますと、労働者千人の中でどれだけが死傷するかという死傷年千人率というもので見て参りますと、昭和三十六年の死傷年千人率は三九・四になっております。その前年の三十五年の災害率は四二・四でございますので、災害率においては低下いたしております。この災害率昭和三十年を見てみますと五〇・九でございまして、それ以来ずっと逐年低減して参っておりまして、現在は三九・四まで下がっております。災害率といたしましては下がっておるのでありますが、今申しましたように死傷の絶対数においてはなお増加しており、この点は、はなはだ遺憾でありまして、今後とも安全対策強化して努力をいたしたいと思うわけであります。で、この災害関係産業別に見てみますと、災害率の高い産業といたしましては鉱業、それから貨物取り扱い事業、それから林業、建設事業、この四つ事業が特に災害率が高うございまして、これらの特殊に災害率の高い産業については、格別の安全対策を進めていかなければならない。ことに貨物取り扱い事業におきまする災害は非常に高いわけでございます。ただいま先生御指摘の交通災害とも非常に関連いたしております。ただ、この貨物取り扱い事業災害の大半は貨物、荷物の積みおろしの場合でありまして、純粋の交通事故というものは、この貨物取り扱い事業災害の中では比較的少ない。ただ、全般の産業災害の中でも、ことに重大災害といたしまして、交通事故割合がやはり目立っておりますので、この点、産業災害と関連しての交通事故、この点は今後とも留意しなければならないと思います。産業別に見ますと、こういった産業が特に要注意の産業であります。  それから、災害の点で特に問題になります点は、大企業中小企業災害率が非常に顕著に違う点であります。全産業災害率は今申しましたようなことでありますが、これを百人以上の企業と百人以下の規模に分けてみますと、大規模産業におきましては一八・二という、割合に低い災害率でございまして、これは昭和二十七年ごろから逐年ずっと下がって参っております。ところが、百人以下の小規模産業におきましては、災害率は三七・三でありまして、大規模と比較いたしますと、倍以上の災害率を示しております。しかも、これが昭和二十七年からずっと災害率が上がっておりまして、三十二年には最高であったものが、三十三年からやっと下がり始めておりますが、なお今申しましたような三七・三という大規模に比較いたしますと、倍以上の災害率を示しております。したがって、私ども安全対策というものは、何と申しましても、中小企業安全対策に集中すべきものと考えております。しかも、この中小規模産業災害というのが、先ほど申しました災害全数の中で、約四分の三程度は中小企業災害であろうと思います。ことに重点をこれらの面に置きたいと思っております。  それから、もう一つ大きな問題といたしましては重大災害発生でございます。これは重大災害と申しますのは、一事故で三人以上の死傷が出ます場合のことを言っているわけでございます。これは三十五年に比べますと、三十六年は幾分減っておりますが、なおかつ、かなり件数としては多いわけでありまして、この重大災害防止に力を注ぎたいと思っております。これは原因別に見てみますと、設備によりますもの、不注意によりますもの、いろいろありますが、産業別原因別に一々の事故につきまして、詳細な分析をいたしまして、今後の安全対策に資するようにいたしておりますが、以上申しましたような災害の現況でございますし、対策といたしましては、特殊に高率なこういった四つ五つ産業には特に重点を置きたい。中小企業災害防止に特に重点を置いて参りたい。それから重大災害防止に特に重点をおいて参りたい。  それから、最後に一つ報告申し上げたいと思いますのは、昨年機械器具産業災害を詳細に分析してみましたところ、災害の約半数、四十数パーセントというものは、新しく職場へ入りまして一年以内にこの災害が四十数パーセント、約半数近くございます。この点私どもとしては、この新しく職場へ入る者、これは新規学卒者もございますし、それから、ほかの職種から新しくなれない職場に入って来たという者も、相当の年令の方もいるわけでありますが、要するに、新規入職者、この人々に対する安全対策というものを本年度は特に重点を置きたい。そういった形で今回も予算の面でいろいろお願いを申し上げているわけであります。また、これに関連いたしまして、中小企業安全施設の整備というものを進めていかなくちゃいけませんので、中小企業安全施設のための低利融資の制度も昨年の秋から発足いたさせまして、これらの点をあわせて今後も努力を続けていきたい、かように考えております。
  5. 八谷芳裕

    政府委員八谷芳裕君) 地下資源鉱山関係災害につきましては、計数的に申しまして、決していい成績をおさめておりません。これは監督の衝に当たります私どもとしては、はなはだ残念に思うとともに、この対策によほどの決意をもって臨まなければならぬのじゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。衝に当たるものとして深くおわびする次第でございます。  まず、災害概況でございますが、金属関係につきましては、おおむね減少の傾向をたどっておるのでございますが、特に石炭山におきましては、近年御承知のとおり、一昨年の豊州炭鉱重大災害、あるいは上清、大辻、こういうふうな相続きまして重大災害発生いたしまして、非常に世間をお騒がせするというようなことが起こっておりますが、この重大災害を含めまして、全体の数におきましても、必ずしもいい成績をおさめているという状態ではないわけでございます。鉱山保安法ができまして十一年、昭和二十四年に鉱山保安法ができまして、はっきりした統計も整理されてきておりますけれども、その後の概況は、全体の災害のネットの数学としましては、件数的には非常に減少いたしております。当初昭和二十五年までは十六万二千件の災害石炭鉱山において発生いたしておりましたけれども、三十五年には五万七千五百五十件、それから三十六年には、十一月までの統計でございますが、五万六千二百七十七件、こういうふうに下がってきております。しかし、この最近の件数は、昭和三十一年ごろから全く横ばい状態でございまして、この状態は、特にごく最近になりまして、全体の石炭鉱業労働者が減少いたしてきております。この経過からいたしますと、全体の数字が下がっていないということは、災害率と申しますが、私どもは、あとで申し上げますが、千人当たりで率を計算いたしておりますが、こういう率におきましては、はなはだ芳しくない状態を呈しているわけでございます。この状況を申し上げますと、これは三十六年につきましては、十一月までの統計でございますが、過去三年間の率を稼動延べの百万人当たりで申し上げます。発生件数は、昭和三十四年が六百三十六回でございます。三十五年になりまして六百七十回、三十六年の十一月まで八百回、こういうふうになっているわけでございます。死亡者は、昭和三十四年の六・三人、三十五年の七・二人、三十六年は八・六人でございます。全体の重軽傷を含めますと、昭和三十四年は六百四十人、三十五年は六百七十五人、三十六年は八百七人というような率になるわけでございまして、特にこの災害につきましては、大きな企業のほうと小企業のほうと分けますと、特にまた先ほども労働省から御報告がありましたと同じように、中小企業のほうに災害率が非常に高い、こういう傾向を持っております。先ほどの死亡率を、稼動百万人当たり延べ死亡率を出してみますと、昭和三十六年ございますが、大手炭鉱では五・六、こういうふうになるわけでございます。ところが、中小炭鉱では一三・三、約二倍半というような状態になっております。この大手と申しますのは、石炭協会に所属いたしております大手十八社でございます。中小はそれ以外の炭鉱に分けてやっておりまして、完全な石炭規模別ではございませんが、いわゆる石炭鉱業で申しております大手中小、こういう関係でございます。  災害状況につきましては以上のとおりでございますが、これにつきます対策でございます。鉱山保安局といたしましては、対策を大きく分けまして、三つの方向から考えております。第一番目には、鉱山保安法鉱業法のような、関連いたします法律の厳正な運用面でございます。これの運用強化でございます。第二番目には、保安改善のための援助でございます。保安機器あるいは保安施設に対します融資あっせん等援助でございます。第三番目といたしましては、保安設備保安が非常にこれを改善するのが困難な炭鉱に対します終閉山、もう炭鉱をやめたらどうか、こういうふうな終閉山に対する勧告をやりまして、災害率の高い炭鉱をつぶしていく、こういう三つ対策を考えているわけでございます。現にこれを実施いたしております。  第一番目の鉱山保安法鉱業法の厳正な運用面でございますが、これにつきまして御説明申し上げます。鉱山保安につきましての基本的な法律鉱山保安法でございまして、さらにこの鉱山保安法に基づきまして、省令、規則を出しているわけでございますが、この鉱山保安法の厳正な運用をはかります上にまず大事なことは、いかなる個所はどういうふうな違反事項があるか、この違反事項をどう手直しをし、安全な操業を行なわしめるか、こういうことを監督するわけでございますが、この監督官増員は、去年の七月に四十名認められまして、従来二百二十五名の監督官が、金属山も含んでおったわけでございますが、それに四十名の監督官増員が去年の七月に認められたわけでございます。したがいまして、二百六十五名になったわけでございますが、この四十名はすべて石炭鉱業関係監督官ということに配置をいたしております。しかも、その配置は、特に災害の多い炭田北海道九州重点的にこれを配置したわけでございます。かつ、監督効率を上げますために、北海道九州増員いたしました監督官は、すべて現地派遣班というものを現在持っております。北海道に四カ所、九州に五カ所でございます。九州は五カ所と申しますと、筑豊に飯塚、直方、田川、佐賀、長崎、こういうふうな現地派遣班というものが、監督事務所でございますが、こういうものを持っておりまして、ここへ配置いたしまして監督効率を上げていく、巡回回数をふやす、こういうやり方をとったわけでございます。さらに、来年度の予算といたしましてお願いいたしておりますのは、二十名の監督官増員でございます。これもすべてただいま申しました北海道九州のこの派遣班にくっつけまして、単に人数をふやすだけでなく、そのふやした人数効率化ということを考えておるわけであります。さらに九州北海道には特に災害が多いのでございまして、ただいま通産局に付置されております鉱山保安監督部鉱山保安監督局ということで昇格をお願いもいたしておるわけでございます。この点もどうぞよろしくお願いしたいと思っております。こういうふうに監督の側を強化するとともに、もう一つ対策といたしましては、鉱山保安法改正をできるだけ早い機会にこの国会に御提案申し上げたいというふうなことで、現在改正につきます審議をいたしております。この鉱山保安法につきましての改正は、労働者経営者と中立との三者構成からなります委員会を設けまして、過去八回にわたりましての審議を経まして、一昨日の二十日に通産省に対する答申が出て参ったわけでございます。この保安法改正におきましては、特に監督の面はただいま申し上げたような面でございますが、しかし、監督と申しましても、月に一回、あるいは多いところで月に二回行くところもございますけれども、しょっちゅう鉱山監督官がついておるわけではございませんので、まず第一に、自主的保安管理と申しますか、こういう面を鉱山自体でもやってほしいということで、炭鉱側にございます保管理者あるいは保安監督員、こういう機構、それから各鉱山に、保安法に基づきまして設置されております鉱山保安委員会というのがございます。この委員会経営者労働者半数ずつで構成されておりますが、保安の確保ということは、単にその採取責任者である鉱業権者だけでは全うし得ないことでございます。当然鉱山労働者の緊密な協力がなければ確保し得ない、こういう観点に立ちましてこの鉱山保安委員会協力を願っていく、こういう面をあわせて考えているわけであります。それからさらに、鉱山保安法といたしましては、制裁規定強化したらどうか、こういうこともただいま審議をいたしております。制裁規定と申しますと、ただいまございます規定に違反して、しかもその態様が悪質なもの、あるいは累犯を重ねるようなものは、単に改善の命令というようなことでなくて、できるならばもうその個所を休止してほしい、こういうふうな作業の停止でございます。そういう面を強化したい、こういうことで、ただいま鉱山保安法改正を取り運び中でございます。一方におきまして、鉱山保安法姉妹法でございます、あるいはさらにさかのぼりますと基本法と申しますか、鉱業法改正がただいま審議が進められておるわけでございまして、これはおそらく次の通常国会に提案されるものと考えます。私のほうの所管ではございませんが、この鉱山基本法でございます鉱業法の中にも保安の面を従来以上に取り入れてもらいまして、特に保安面から見ました能力主義、こういう面を取り入れてもらうように進めておるわけでございます。さらに、この鉱業法の方面におきましても制裁関係規定強化していく、こういうふうで、いずれにいたしましても、鉱山保安法鉱業法改正をはかるとともに、今まであります規定を厳重に実施することは当然でございますけれども、さらに必要な改正を施したい、こういうふうに考えております。  第二点といたしまして、保安改善のための援助でございますが、これは本年度の予備費で、補助金といたしまして七千四百万円の補助金が認められまして、中小炭鉱に対する保安費、こういう援助をはかるようにいたしまして、五〇%の補助を考えて、現在交付指令等も出しておるわけでございますが、さらに合理化事業団を通じまして二億六千万の保安融資を行なって施設改善をはかっていく、こういう面で保安改善援助を行なっておるわけでございます。  第三点といたしましては、保安改善を行なうことが困難であろうと考えられる炭鉱に対する終閉山措置でございますが、これはこの前の臨時国会で、石炭鉱山保安臨時措置法が成立されまして、十二月の二十五日に施行いたしました。それ以来、保安の不良な炭鉱につきましての調査を行ないまして、ただいままでに十二炭鉱石炭山につきまして廃止勧告をいたしております。九州が七炭鉱でございます。宇部四炭鉱常磐炭田で一炭鉱、十二炭鉱廃止勧告をいたしておりますが、さらに来年度の予算お願いいたしまして、来年度といたしましては四十五万トンを目標といたしまして、予算化できました場合には、この廃止勧告を、それに見合う数量の四十五万トン分の廃止勧告を行ないたい、こういうふうに考えておるわけでございます。まあ以上のような対策を現在講じておりまして、当初申しましたように、はなはだざんきにたえない状態でございますが、一日も早く地下資源の安全な採掘ができるような状態に取り運びたいと、ただいま努力中でございます。  以上、対策を申し上げました。
  6. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  7. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  8. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、鉱山保安局長から今後の対策についてお話がありましたが、私は、たとえばガスによる災害水没による災害、いろいろこう毎年繰り返しているわけです。ところが、われわれにもその結果がどうなったかということが報告されずに、次から次へ災害が起きて、そのときには問題点として視察もしているけれども、それが結末を十分つけていない。皆さんだいぶいろいろと努力もしていただいて今後の方針を立てて、今後災害が起きないということが中心なんですから、大いに努力していただきたいと思うのですが、昭和三十五年、六年の重大災害がいつ起きて、水没ガス爆発その他によってどれだけの人が災害を受けて、その救助その他がどういう工合に今あるかという現状を御報告願いたいと思うのです。これは、そこでずっと言うのに相当時間がかかるようでしたら、ひとつ委員に書類でお出しいただきたいと思うのです。残念ながら前述の六十何名というような膨大な昨年でしたかの九州災害も、結局うやむやのうちに、死体も十分に上がらないという状態にある。あれは水没ですけれどもガス爆発もたくさんございます。ガスのときにはすぐわかるようですが、水没の場合には、それがどういう工合になっているか、それから古洞との関係調査も十分にできていない。そのためにハッパをかけて水が入ってきて、ごそっと参ったというのも多いわけであります。事故が起きたら、その人が救助されるということはほとんどないという状態地下労働者は置かれているわけですから、今後も大いに今お話になりましたものをうんと強化をいたしてやっていただきたいのですけれども実態把握ですね、どういう経過でこの措置がされ、今現状はどうなって、この災害はどうなっているか、非常にたくさんありますから、私は過去三年か五年間くらいの間のものを、いつ幾日に起きて、何人が災害を受けて、それで鉱山業者監督の立場にある通産省との間にこういう話があって、現地では今死体が上がったのか上がらないのか、こういった問題がたくさん残されている。それをぜひ書類で出していただきたいと私はお願いしたいと思います。まあ、これ以上あなたのほうと議論をしていきますと、たとえば古洞の問題をどうするか、それからガス爆発に対するガスのパーセンテージの問題がどうであったかという、個々のケースを取り上げて今まで大きな災害については今日までやってきましたが、非常に私は監督不行届の面から災害が起きているということを、私はそうだとははっきり言いませんけれども、そういう疑いのあるものが非常に多いわけですから、ぜひもう一段と、この大筋の方針はこうして進められるのですけれども、もっときめのこまかい方法というものを私は進めていただかなければ、災害防止というものは無理ではないか。それからもう一つは、今度の鉱山保安法改正で、各山の保安委員会強化の問題、それから制裁規定強化の問題、それから保安の立場からの鉱業法改正もこれにあわせておやりになるという方針だそうですけれども、実際に制裁規定強化といったところで、実際にやれるのかどうかですね。私たちがはだに感じている状態で、中小企業の山でほんとうにやれるのかどうか。この各山の保安委員会、労使がやっている保安委員会というもので、実際に機微に触れてフェア・プレーの中で鉱山保安が守られるのかどうかという条件は、私は、今、局長お話になりましたけれども、今日までの状態から見て、そうなまやさしいものではないと思う。だから、これはどこでそれじゃ権限を持って災害防止の実際をするかというと、私は保安監督局ではないかと思う。鉱山保安監督局の権限で、行政権限によってこの実際に改正されたものが生きていくという格好にするためには、決意を持っておやりにならないと私はできないではないかという懸念を持っているので、その点も十分にひとつお考えおきを願いたいと思うのです。長くなりますから、書類で、ここ三年、五年くらいの間の事故発生、それからどういう原因で事故が起きたか、その始末はどうなっているか、こういうことをぜひ出していただきたい、これをお願いしたいわけであります。よろしゅうございますか。
  9. 八谷芳裕

    政府委員八谷芳裕君) ただいま法の改正等も大切であるが、実際に監督に携わる者が十分にその任務を果たすということについて御指摘がございました。全くそのとおりだと思いまして、今後も努力しまして、一人でも災害を減らすということに邁進をしたいと考える次第でございます。さらに御要求ございました資料は、できるだけ早く取りまとめまして御提出申し上げたい、かように考えます。
  10. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労災関係についてもう少しお聞きしたいと思うのです。労災部長お見えになっていますから、先ほど申し上げましたように、労災関係が今どうなっているか、それから診療所や病院の計画、それが実際に災害を受けた四十何万ですね、お聞きいたしますと四十一万四千人というのがことしの一月から十一月までの八日以上の死傷者件数なんですね。この膨大な件数を、今の労災病院、それから委託された診療所で実際やれているのかどうか。またはこれをどうつかんでおられるか。それから、その傷害補償とか打ち切り補償とか遺族補償とかいう問題で、今の現状でいいのかどうか、これをひとつお聞きしたい。
  11. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 最初に、労災経済の全般についてお答え申し上げます。三十五年の収支の決算では、保険料の収納が三百六十二億、その他を含めまして三百六十七億が収入になっております。これに対して支出の方は、補償費の支払い二百七十二億を中心といたしまして三百十二億、差し引き五十五億の黒字になっております。この支払いの内訳を見ますと、療養が八十七億、件数にいたしまして百八十万、休業補償が六十六億、件数にいたしまして七十万件、第二種の傷害補償が七十三億、件数にいたしまして七万件。それから遺族補償が三十五億六千万円等で、それから三十六年度の状況を見ますと、大体保険料収入が四百三十六億に対しまして、支出のほうが、補償費三百三十三億を中心としまして三百七十三億で、大体六十三億くらいの黒字ということに相なる見込みでございます。そこで、それから十二月までの支払いの実績を見て参りますと、先ほど申し上げました数字と大差ない傾向を示しております。これが直ちに第三の問題でございますか、保険給付の政善に通ずるかと申しますと、二つの問題がございます。一つは、御承知のように、労災保険では支払備金というものを設けております。そこで、三十五年度の損益計算におきましては、正確に記憶しておりませんが、約百二十五億程度の赤字であったかと覚えております。これは、年間の収支では黒字を示していても、支払備金の引き当てということを考えますと、まだかなり大幅な赤字を持っているわけでございます。さような関係で、年度間の収支において黒字であっても、直ちにそれが給付改善に回せるという論理はとれないということでございます。  それから第二点といたしまして、御承知のように、労災保険は、数十の事業ごとに保険料率をきめておるのでございまして、たとい年間において黒字を生じたとしても、それが直ちに各産業全般にわたって保険給付の改善の余力があるということには相ならない。あるものにつきましては余力があるけれども、あるものについては全然余力がないということにも相なっているのでございます。しかしながら、この前の三十五年の改正法の附帯決議におきましても、いろいろ問題が指摘されておりますし、前々国会にも、民社党のほうから法案が提出されております。私ども労災審議会の中においても、労災の給付改善について、労働者委員から意見書が提出されております。また、社会保障制度審議会においてもいろいろの問題が指摘されております。かような事情にかんがみまして、その問題については、労災審議会の中に、昨秋以来、労災法の研究会を設けまして、目下鋭意これが検討を行なっているわけでございます。  第二の、このたくさん発生した災害労働者に対してどのような療養が行なわれておるかということについては、詳しい統計は私どもとっておりません。労災病院において、目下これの治療に当たっていることはもちろんでありまして、指定病院においてもその治療が行なわれております。労災病院の問題につきましては、その特徴を発揮させるために、来年度予算においては、機械器材の充実に大いに意を注ぎまして、約一億六千万、本年度に比べまして九千万円ぐらい多い予算をみておりまして、労災患者の診療について、労災病院が特色を発揮できるような経済的な裏づけを行なっていこうと存じている次第でございます。
  12. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  13. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  14. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労災の経済の面からいって、今の部長のお話を聞きますと、給付改善のほうに回すだけの財源がないと、こうおっしゃったですね。それから、病院、診療所その他のものは統計をとってないと言われますが、これは至急に、労災会計、それから四十一万も八日以上の災害者が出ているのですから、うまく回っているかどうか、業務上の災害ですから、これは研究されなければならぬところではなかろうかと私は思う。しかし、前の保険経済との関係で、給付を改善をする余裕がないという見方は、私は意見がある。これは大臣にもあとで御所見を承りたいのですけれども、私は、今の労災補償千日分、打ち切り、たとえば給付が五百円なら五十万円ですね。千日分として五十万円にしかならない。そうなりますと、炭鉱災害のときに、非常に問題が起きました。だから炭鉱ばかりでなしに、今の平均賃金を見てみて、そうして給与の高い人は、千円なら千日分で百万円になるでしょう。しかし、低い人ならそうもならないわけです。ですから、私は、給付というものは、もう少しやはり上げてあげなければいかぬのじゃないか、ただ財源をどこから持ってくるということになるわけです。それで財源は、これはメリット制によって今共済保険料がかけられているわけだ。しかし、これは業者が全額負担、まあ国のほうも出していますけれども、このメリット制の配合によって、一番最初に言われた鉱山貨物、建築ですね、それから林業、こういうところに災害が多いから、メリットの問題もウエートが高くなっていると私は思います。思いますけれども、私は、やはり保険経済全体の経営からみて、給付を上げるというならば、保険料を上げる以外にないと思うのです、今のシステムからいって。保険料を今の状態に置いておいて、それでやりくりができるかというと、私は少し無理な話じゃないか。だから、そこらあたりの問題を、労働者の生活という立場から、私はこの問題をどう考えていくかという議論がされなければ、入るほうはそのままに置いておいて、そうして改善する余裕がありませんなら、私は答えはそのとおりになる。だから、そういうものは事務的に、労働者の生活実態に照らして保険料を引き上げ、一ぺんに多く引き上げるわけにはいかぬにしても、やはりある程度引き上げて、その給付を高めて、労働者の遺族の生活や、または傷害補償になった方々の生活を引き上げるというところに、私はこの労災保険補償という概念の本筋があるのではないか。経済や社会生活の関連において私はそう思うのです。ですから、そういうことを事務的にも進めていただきたいし、労働大臣としても、今後このような問題には重大な関心を持ってもらわなければならぬと思いますので、大臣の御所見もあわせてお聞きしたいと思います。
  15. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 若干言葉が足りなくて、あるいは誤解を招いたかと存じますが、私は、現在の年間の黒字が、直ちにそのまま給付改善の余裕額ではないということを申し上げたので、それに反対とか、そういうことを申し上げたのではございません。そこで、例を申し上げますと、石炭の三十五年度の決算を見ますと、補償費の支払いは三十七億六千八百万円でございます。それに対して保険料の収入は三十八億一千百万円でございます。そこで、この三十七億六千余万円に、大体事務費その他として百十五分の十五を足して参りますと、保険収支率は一・〇五五と相なります。石炭では赤字を示しているわけでございます。そこで、全体としては黒字は出ておりますが、石炭については、現在の料率では給付の改善の余力はないということに相なるわけでございます。そこで、それなら上げればいいじゃないか、こういう御議論もあろうかと存じますが、石炭鉱業の保険料の収納率を見ていただきますと、〇・九三五でございます。つまり六・五%というものは徴収できない。なぜ徴収できないかというのは、御承知のような石炭産業の事情によるものでございます。全産業の平均で見ますと、大体収納率は〇・九六、九六%くらいが収納できるのでございますが、石炭産業においてはこれが九三%という、かなりの——三%という大幅な収納率の低下を見ているわけです。これが三十五年度の状況でございまして、三十六年度になりますと、これは七月までかなり状況はいいときでございますが、このときは〇・七七九、これはその後上がって参りますが、収納率はよくない。そこで、現在の収納率は、もちろん石炭産業についての給付改善の余地がない。上げればどうだと言っても、これも上げる余地も、九三%という低位でございますので、簡単にはいかない。帳簿上の徴収決定額はふえるかもしれませんけれども、収納率は上がらない、こういうような関係になって、私どもとしては非常に苦慮しておるわけでございます。
  16. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 労災部長から申し上げましたような事情等もございますが、先刻来、藤田さんにおいて御発言をなすっておられるそのことの趣旨につきましては、私も重大な関心を持ちまして、また一面、労災保険審議会の意見等も聞きつつ検討いたしてみたいと存じます。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その何ですか、ちょっと今あなたの、また言葉が足らぬということになると思いますけれども、私は、先ほど反対だとあなたがおっしゃったとは理解いたしておりません。全体の中で今の給付を上げなければ、同じ労働者ですから、今は石炭の中で災害が多いので、これはむしろ災害対策のほうに力をお入れになっていかれるのであるが、たとえば石炭だけを上げなければ石炭の収支はつかぬというのでなしに、労災保険経済全体の中から、私はやはり石炭のほうが一・〇五五であろうが、一・二になろうが、全体の保険経済の中から、石炭労働者ばかりではなしに、あらゆる労働者の水準を上げていくという方式をとらなければいかぬのではないか、こう思っておるわけですから、あなたのお話を聞いていると、石炭のほうはこうだから、石炭のほうにはどうにもならないのだというようなことをおっしゃるので、私は石炭だけを摘出して言っているのではないけれども、保険経済全体の中から、全般の千日分でいくのかどうか、そういう全体の給付を上げるという、保険経済全体の、今石炭鉱業というものは、産業の中で非常に苦しいということなら、他の産業でカバーしてやったらいいじゃないか、私は、そういう方法は経済全体の中でやったらいいと、そう思う。
  18. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 労災制度のあり方として、藤田先生のような御意見もあることは私存じております。しかしながら、現行法の建前は、業種ごとに料率を考えていくという建前をとっておりまして、その事業の種類の支出はそこで負担するという建前をとっております。これがいいか悪いかということについては非常に問題がございましょう。しかしながら、労災制度というものは、さような考えのもとに今日まで発展してきたものであって、今にわかにこれを変えるということについては非常に問題がある。  それから、第二の問題といたしまして、災害防止というものと非常にそれとが密接にくっついてくる。メリット制、つまり事業ごとに、事業の種類ごとにメリット制を、料率をきめまして、その料率の動きというものが安全に対する配慮の一つの現われとして出てくる。さらには事業ごとのメリットというものともリンクしてくる。そこで問題は、やはり災害を根本的になくするという意欲を、労働者、使用者に植えつけるということではないかと思います。さような観点からいたしますれば、現在の料率の立て方が、にわかに工合が悪いという結論を出すことはできないのではないか、さような意味におきまして、そういう点も含めまして、労災審議会の中の懇談会において、目下いろいろ検討が行なわれている次第でございまして、先生のおっしゃることはよくわかりますので、その際にも十分検討の対象になると私ども考えております。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大野さんは労災部長も労働省では長いし、私も労災は少し初めから関係している。それで問題は、昔はメリット制というものはなかったのです。労働者災害をどうして救うかというところで労災保険というものができた。それで、今四つの業種なんかが非常に災害が急角度に上がって参ったから、メリット制というものが途中でできた、途中でできてきて、あまりたくさんの負担を他の産業に転嫁するというのでなしに、できるだけその産業で受けた災害は、できるだけその産業の負担によって処理しようじゃないかという考え方が出てきたことは事実です。それは私も承知しております。労災保険そのものができてきた根本の理念というものは、ここでこの産業でよけいあるから、他の産業の方は横を向いていたらいいという思想なら、鉱山労働者労災保険、建築者労災保険でやればいい、国の施策としてやった以上は、私は極端な話はしませんよ。しかし、一・〇五五というなら、それじゃ五五分は払わないで、鉱山から取ってやりますか、そうじゃないでしょう。おのずからそこには良識があると思いますけれども、現在の状態から比べてみて、石炭の例だけを申し上げますと、他の産業が負担しても、負担の限界がむろんありますけれども、全体の経済の中で、全体を引き上げていくという思想をもっと私は貫いていったらいいじゃないですか。それで、産業ごとの負担の能力のあんばいをして、メリットのあんばいをしてきめたらいい、私はそう思う。そうでなければ、その産業の力がなければ、そこの労働者は基準が上がらない。そのために他の労働者も基準が上がらないという理屈になるわけです。もっと大筋で労災補償というものを考えてもらわないと、そのワクにこだわって、事務的にこれはこうだからというような思想でものを進めていったら、本来の労働者災害補償という問題がちんばなものになってしまう、私はそう思います。あまり時間がないから、これ以上は申しませんけれども、そういう大筋でひとつ進めていただきたい。それでなければ私は困る。私は石炭の問題だけを言っているのではない。全体の給付を上げるためには、今の労災保険料をどの程度上げるかという研究はひとつぜひしてもらって、現実生活ができない状態の中で、家族が困り、本人が困っているという現実を事務当局で把握してもらわなければ私は困るのじゃないかという意見を申し上げておきます。  それから、これは基準局長ですけれども、先ほどのお話の中に、少し私聞き漏らしたのかわかりませんが、たとえばベンゾールの問題はよかったけれども、一応の措置はおとりになったけれどもキーパンチャーの問題が十分の措置をされていない。また、その他機械化化学薬品の生産によって起きてくるようなものをいろいろ聞いているのですけれども、これは労災ですけれども、どういう工合把握しておられるか、聞いておきたいと思います。
  20. 大島靖

    政府委員大島靖君) 最初の御質問の中に労働衛生問題がございました。後ほどお答え申し上げようと思ったのでありますが、この際、労働衛生の現況と、それに対する対策を御報告申し上げたいと思います。  有害業務に従事いたしております者に対しまして、特殊健康診断を実施いたしております。この特殊健康診断の実施の結果を申し上げますと、昭和三十五年度におきまして、総数十九万七千名、約二十万人につきまして特殊健康診断を実施いたしました。この二十万名の受診者の中で、何らかの所見のあります——異常のありました者、有所見者と申しておりますが、有所見者の率は、全般で見ますと一四%になっております。この中で、やはり安全の際申し上げましたように、中小企業におきましては、やはり有所見の率が高い、また、特殊健康診断の実施そのものも行なわれることが比較的少ないと、こういうことで、やはり中小企業にこの労働衛生の問題があります。で、なお御質問の重点であります、どういうものについてどういう対策があるかと、こういう点でありますが、この有所見率の特に高いものをあげてみますと、ベンゼンのニトロアミド化合物を取り扱う業務、これが二八%でございます。それから脂肪族の塩化または臭化炭化水素を取り扱う場所の業務が二五%、ベンゼンの同族体を取り扱う業務、これが二二・六、こういった特殊の業務につきまして特に有所見の率が高いのであります。そこで、その対策としましては、何と申しましても職場の有害業務について、有害因子をまず徹底的に洗い上げることが必要であります。最近、非常に技術の進歩に伴って、各種の化学原料その他の変化も著しいものがございますから、ごく最近、私どものほうでも、国際安全衛生情報センターというのがジュネーブにございまして、これに加盟いたしまして、ここから世界的に、こういう薬を使えばこういう障害が出てくると、こういう情報を広範に、かつ迅速に入手できるようにいたしております。さらに今回お願いしております予算の中におきましても、特殊の産業における有害因子を徹底的に調査するという予算も組んでおりまして、さらにそういうものに対して、やはり衛生上の有害因子に対応する予防基準というものを作っていかなくちゃいかぬのでありますが、それらにつきましては、特に私どもとして重点を置いておりますのは、粉塵による障害、それから電離放射線による障害、それから高気圧による障害、有機溶剤による中毒の予防、それから四エチル鉛による障害の予防、こういった方向に特に重点を置いて参っております。ことに、この中小企業の問題につきましては今申しましたような状況でございますので、特にこの衛生管理態勢というものを強化しなくちゃいかぬので、中小企業、ことに三十人以上のものにつきましては、衛生管理者というものを徹底的に専任させて参る。さらに、もっと低い中小企業、零細企業につきましては、私どものほうで特殊の巡回検診というものを、国なり、あるいは公的な団体で巡回検診を実施して、こういった障害と衛生上の病気を発見して参る、こういう対策をとって参りたい、かように思っております。  なお、キーパンチャーの問題につきましては、これは非常にキーパンチャーの中に、たとえば腕がしびれるとか、肩がこるとか、首がこってくるとか、そういう各種の障害があるように聞いております。したがって、これを現在私どものほうの労働衛生研究所において詳細な調査を実施させております。これによってその結果を待ってみたいと思うのでありますが、現在のところ、なかなかこれが特に問題として取り上げるべきかどうか、その点が医学的に非常にむずかしいところでありますが、なおしばらく研究していただきたいと思っております。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の労働衛生の立場から説明された資料を下さい。私も十分に控えられなかったから、いただきたいと思いますが、問題はあちらにもこちらにも出てくるんだけれども、その処置は、労使関係の中で、危険だとわかりながら、十分の保護対策が講じられていないということが中心ではなかろうかと思うんです。キーパンチャーにしたっておのずから限界をこえることによって障害が起きる。ある程度のものならばそう障害が起きないということが現実なようであります。たとえば今のベンゼンやその他の液体の関係におきましても、健康診断と言おうか、そういう業務にどの程度の時間作業をするかどうかということで、体力との関係において防げる部分がたくさんあると思いますから、むしろ労働の業務指導ですか、たとえば労働時間の短縮ですか、その人体にたえられるだけの労働時間の短縮の指導ですか、そういうものが中心のように思われる。最も悪いベンゾールのようなものは、まあできるだけ廃止していくという方法がとられるのであろうと思いますから、ぜひそこらの問題も、ひとつ今労働省の考え方を議論をすると長くなりますから、資料をいただきたい。  それからもう一つ身体障害者ですね、身体障害者雇用促進法というのが、私は労働省はどの程度研究されているかということです。今のような状態では、身体障害者雇用というのは、なかなか私は大きな成果を上げていないのではないか、こう思いますので、この御意見を承りたいと思います。
  22. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 身体障害者雇用促進法の実施の状況でございますが、こまかい資料は今手元に持ち合わせておりませんが、御承知のように、雇用につきまして、その計画を目下それぞれに定めたところから出しまして、その計画を指導しております。なお、そのほかに、予算上の措置といたしまして、雇用の適応訓練ということをやっておりますが、この適応訓練については、大体予算を消化し、しかも事業主が適応訓練をやったあと、そこに定着して正規の雇用になるというふうになっております。さらに三十七年度からわずかでございますが、重度の身体障害者につきましてもこの適応訓練をやってみようという予算措置をとつております。  それから、さらに従来、安定機関で身体障害者の登録を奨励して、その登録者について求人開拓をして就職をさせるということになると、どうもやはり一たんは登録したけれども、途中でなかなか、いざ求人開拓して就業相談をすると、いや、まあしばらく待ってほしいというふうなのも相当あるようになってきましたので、さらに本年におきまして、三十七年度におきましては再登録をいたしまして、再登録はもう少し求職者の状況を確かめて、さらに求人開拓、その本人の執務能力に基づく求人対策をやろうというふうに考えております。もしも御必要ならば、身体障害者の就職状況につきましての資料は、後ほど資料で提出いたしたいと思います。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえば身体障害者というのは、肢体不自由者、ろうあ者、盲人、三つあげられておる。大体八十万人から百万人というのが今推定なんです。肢体不自由者の職業訓練からその就職の機会を作っていく。今の促進法ではとても技術が悪いから、そういう人はなかなか雇えないから、これをどういうふうにして引き上げていくかということをひとつ私は研究していただきたいですけれども、盲人の問題を一つ取り上げてみても、これは厚生行政ではないので、むしろ職安行政ではないかと私は思うのです。今のあんま、マッサージは盲人の適職だと、われわれはそう思うのです。まずその盲人の方々が、あんま、マッサージを通じて社会に貢献してもらうのが一番いいと思う。ところが、あんま、マッサージの訓練というのは、目あきの正常な身体を持った人の教師が多いんです。受けるほうはそういう人のほうがいいかもしれませんけれども、むしろこれは厚生行政だということではなしに、職安の行政で、私は身体障害者雇用促進なり、そういう問題にも重大な関心を持って、盲人はどうする、ろうあ者はどうする、肢体不自由者はどうするというところをもっと研究されなければ、身体障害者雇用促進というのはできないのじゃないですか。これはひとつ大いに研究をしていただいて、身体障害者雇用促進をやっていただきたい、お願いいたしたいと思います。  それから、厚生省のほうにお尋ねしたいのですが、今の身体障害者の援護措置というものがほとんどできていない。予算を見てみましても、身体障害者の保護措置というのはほんのわずかです。ほんのわずか、百万近くおられる身体障害者の援護措置というのがほとんどできていないという——最も重度な人については、身体障害者福祉年金が支給されておりますけれども、それ以外のほとんどの人は何の恩恵も受けていない。厚生省の社会局は、どういう考え方で身体障害者の援護をやっていこうとするか、これをお聞かせを願いたい。
  24. 金村博晴

    説明員(金村博晴君) 身体障害者に対する援護措置が十分でないというお説でありますが、その点に関しまして、私どもとしても、現在のままで十分であるというふうには考えておらないわけであります。しかしながら、今までのいろいろな経過を見て参りますと、現在、身体障害者福祉法によっていろいろ定められております福祉の措置、更生医療でありますとか、補装具の交付でありますとか、そういったようなことに対する予算的な問題、あるいは身体障害者更生援護施設、そういった施設が全国に十分なだけない、そういうところがございますので、そういった点を逐次拡充していく、こういう点に重点を置いてやっていきたいというふうに考えております。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうなんですか。ことしの予算で幾ら組んでおりますか。今秋は職安局長に申し上げたとおり、たとえば盲人の適職といわれているあんま、マッサージの教授をどのようにして今後やっていくつもりですかね。一つの問題を取り上げてみてもそうでしょう。盲人のあんま、マッサージがどんどん減っていく。どうにもならん盲人の生活苦というものにどんな援護措置がありますか、それを聞かしていただきたい。
  26. 金村博晴

    説明員(金村博晴君) 盲人に対する適職をどのようにやっていくかという問題につきましては、大体来年度予算等で考えております措置といたしましては、現在国立の神戸光明寮において、農芸科というものを新たに設置いたしまして、養鶏あるいはマッシュルウムというものの経営というものを考えていきたい、こういうふうに考えております。  それから盲人自体の福祉措置といたしましては、御承知のように、盲人ホームというのがございまして、盲人であるあんまにいろいろな便宜を与える、こういう措置をしておるわけですが、これにつきましては、従来事務費等の補助がございませんでしたが、来年度から事務費一カ所二十五万円程度の補助をしたい、こういうふうに考えまして予算を予定しているわけでございます。
  27. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、身体障害者関係について、一つ雇用一つは援護措置ということで、災害を受けた方々は今後身体障害者になっていかれるわけですから、そういう人が多いわけですから、そういうことをお聞きしようと思ったんですけれども局長も課長もみな見えてないようですし、どうも今のお答えでは納得できない。これは日をあらためて私はやりたいと思う。  それで、最後に大臣に一言だけお尋ねしておきたいんですが、事務当局からいろいろお聞きしたんです。しかし、これは労働災害というのは、今までの労働大臣からもおっしゃっておりましたが、鉱山保安災害が非常に多いから労働省でむしろ持ってやりたいというくらいな口吻を持たれたような次第でございます。重大災害鉱山でたくさんに起きる。労働省で一括鉱山災害までやってみたらどうかというような口吻を持たれておった。この熱情は私は買うわけでございます。  それとあわせて災害が、局長お話を聞きましても、率としては減っておりますけれども件数としては毎年ふえているわけです。昨年は五千七百一人という死亡者を出しておるというような状態でございます。ですから、これはやはり健康な体で労働を通じて社会に貢献していくという、生活の問題もむろんありますけれども、それには障害を受けないというために、大いにひとつ労働者自身も気をつけなければなりませんけれども、その作業場の設備が悪かったり、労働が過重であったり、いろいろの面が関係してきているんではないか。たとえば災害の率で、職場で入社一年間の方々が四六%の災害を受けているということを考えてみましても、私は手の打ちようがまだまだあると思う。こういう点はひとつ労働大臣の労働災害に対する決意を聞いておきたいと思う。
  28. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) お説私も全然同感でございます。お話しのような考え方で今後大いに努力をいたしたいと存じます。
  29. 坂本昭

    坂本昭君 海上労働者の労働災害の頻発にかんがみまして労働条件、福祉問題、こういったものにつきまして検討いたしたいと考えます。  まず最初に、海上労働者災害、つまり海難の業態別の事件数、主として私は漁船についてお尋ねしたいと思いますが、その事件数、さらにその原因別、事項別の説明を簡明にいたしていただきたい。
  30. 松野清秀

    説明員(松野清秀君) 昭和三十六年につきましては、まだ資料の整理が完結いたしておりませんので昭和三十五年の資料に基づきまして御説明申し上げます。  まず、海難がどれくらい発生したかと申しますと、昭和三十五年におきましては三千二百三十三隻でございます。なお、これを船の種類別に分けて申しますと、この三千二百三十三隻のうち、漁船の海難が約四六%を占めておりまして、千四百七十九隻、機帆船が約三五%を占めまして千百二十六隻、汽船が約一四%で四百五十二隻、その他が五%で百七十六隻、こういうことになっております。なお、御参考までに、これらの海難をトン数別に分けて申しますと、五トン未満のものが約一八%で五百九十一隻、五トンから二十トン未満のものが二一%で六百八十四隻、二十トンから百トン未満のものが四二%で千三百四十九隻、百トンから千トン未満のものが一七%で五百五十九隻、千トン以上のものが約二%で五十隻、こういうことになっております。  そこで、もちろん海上保安庁といたしましては、航空機であるとか巡視船であるとか、あるいは通信施設等の全機能をあげまして救助に当たっておりまして、昭和三十五年におきましても、三千二百三十三隻のうち、約四二%に当たる千三百五十五隻を救助いたしております。その他民間の船舶によって救助されるものも相当ございますが、なお、昭和三十五年におきましては、いわゆる全損海難、つまり沈没とか行方不明になりましたものが全体の約一七%、五百四十六隻に達しております。また、海難によりまして喪失した人命の数は、昭和三十五年におきましては六百八十八名でございます。なお、この六百八十八名のうち、今申しました全損海難五百四十六隻に伴うものが五百八十六名に達しておりまして、この五百八十六人を船の種類別に分けてみますると、汽船関係が三十一人、機帆船の関係が五十人、漁船関係で五百三人、その他が二人、こういうことになっておりまして、確かに漁船の乗組員の犠牲者が非常に多いという実情になっておるのでございます。  なお、以上申しました数字は、これは一般海難と申しますか、台風とか、あるいは地震、津波というような、異常現象に伴う海難によるものは含んでおりません。ですから、御参考までに、昭和三十五年につきまして、そうした異常現象による海難の関係について申しますと、異常現象による海難船舶の数は百三十三隻でございます。そのうち、全損海難が三十七隻、人命の損失は四名、こういうことになっております。
  31. 坂本昭

    坂本昭君 基準局から、今の海難について、特に労働災害について特記すべきことがあれば御説明して下さい。
  32. 大島靖

    政府委員大島靖君) 漁業関係産業災害の現況を簡単に御説明申し上げます。  昭和三十六年一月から十一月までの結果がわかっておるのでありますが、これによって年間を十二カ月分推計いたしましたところで、死亡者が百五十八件、八日以上の休業を要する負傷が四千三百十二件、合計四千四百七十件と相なります。この労働者数に対する死傷年千人率は四三ということになりまして、主要な産業に比べまして、相当高い災害率になっております。この死亡のおもな原因を申し上げますと、海難によるものが五十八件、海中へ転落して溺死いたしましたものが三十二件、陸上交通事故、これはちょっとおかしいのでありますが、これは漁業に従事しておる者が陸上で交通災害にあう、これが十八件、一酸化炭素のガス中毒が十件、揚重機によるものが九件、こういった状況に相なります。
  33. 坂本昭

    坂本昭君 先ほどの海上保安庁の御説明を伺いますと、非常に漁船に多いということ、また、トン数も二十トンから百トンくらいが約半分に近いということ、こういう点は注目すべきことだと思いますが、そこで、ひとつ基本的な海上労働者の労働問題について少し検討いたしたいのですが、これはまず憲法二十七条の二項に、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」ということに基づいて労働基準法ができ、そうしてまた労働基準法の百十六条に特例と認めることによって船員法ができている。いわば海上労働者の労働基準法が船員法という形でできているわけでございます。  そこで、なぜこの労働基準法の百十六条に特例措置として船員法を認めたか、この理由について、これは労働省側と運輸省側との御見解を承りたい。
  34. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 運輸省関係お願いいたします。
  35. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 今御指摘のように、船員法は、海上労働の特殊性に基づきまして、一般の労働基準法とは全く異なった労働関係におきまして労働するわけでございますので、具体的に、たとえば労働時間の問題、あるいは報酬その他の保護の問題等につきましても、陸上の労働基準と全く異なる労働のことでございますので、別個の法体系においてきめたわけでございます。
  36. 坂本昭

    坂本昭君 労働省はどうです。
  37. 大島靖

    政府委員大島靖君) 船員労働は、今、運輸省から御説明申し上げましたように、非常に特殊な労働事情でございますので、沿革もございますし、したがって、労働基準法におきましては第一条ないし第十一条、こういった労働基準法の基本的な原則を除いて、その他のものにつきましては基準法百十六条によりまして適用を排除いたしまして、船員法のほうに適用しておるわけであります。
  38. 坂本昭

    坂本昭君 たくさん伺いたい点がありますから、一応きょうは問題を提起するにとどめておきますが、この環境が全く異るからという、そういう特殊性がいろいろな賃金や労働時間やその他のまた特殊性をも決定するというのは、私は通らないと思うのです。いかなる場所で働こうとも、労働という立場においては通ずるものがあるべきであり、特に、またこれから指摘して参りますが、船員法では第一条の二項に五トン未満の船舶と三十トン未満の漁船の船員を除いております。このことについてまず伺いたいのは、三十トン以上は船員法の対象となり、三十トン以下は労働基準法の対象となる、この理由はどこにあるのですか。それから一体、こういうふうに分けられた中で、海上労働者が、三十トン以上の場合と三十トン以下の場合に、漁船の船員が一体何人くらいいるかということを労働省は調べられたことがおありかどうか。  それからもう一点は、三十トン以下の漁船の、いわば零細漁業労働者の労働の実態というものはどういうふうになっているか。これは労働基準局として何人か担当官を充てられてお調べになったことがおありなのか、その辺の事情をひとつ伺いたい。
  39. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 船員法におきまして、御指摘のように、貨物船につきましては五トン以上、それから漁船につきましては三十トン以上というふうに規定しております。この国会に船員法改正案を提出しておりまして、それには漁船につきましては二十トン以上を原則として適用する。それによって、業種によりまして適用除外のものもございますけれども、二十トン以上を適用するというふうに改正したいと、目下提案しておるわけでございます。こういうふうに船員法の適用船員、それから労働基準法の適用を受ける者というふうに分かれますのは、漁船につきましては三十トン以上の漁船が大体遠洋、あるいは近海の漁業に従事いたしておりまして、その生活労働の実態が航用船の労働の実態と非常に近似している、同一である、陸上の生活を離れて、海上において相当期間継続して労働するというような点が一般の貨物船における海上労働と全く同一であるというところで、現在は三十トン以上の漁船に限って適用しておるということでございます。
  40. 大島靖

    政府委員大島靖君) 基準法の適用関係の漁業の総数につきましては、事業者数で約二万、労働者数で約十五万ということになっております。ただし、これは大ぐくりといたしまして畜産の事業が入っておりますのと、それから先生御指摘の漁業以外の水産業を含む数字でございますが、大ぐくりで、今申しましたように事業者数で二万、労働者数で十五万という数字が出ております。
  41. 坂本昭

    坂本昭君 それは三十トン以下ですね。
  42. 大島靖

    政府委員大島靖君) はい。
  43. 坂本昭

    坂本昭君 今の三十トン以上の場合の数について、船員労務官の側の調査、これはどういう数になりますか。
  44. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 漁業に雇用されております、特に三十トン以上の雇用者の数でございますが、大体九万五千人ほどでございます。
  45. 坂本昭

    坂本昭君 それでは次に伺いたいのは、水産庁に伺いたいのですが、今、運輸省からも、従来、三十トンで線を引いておるそれを今度は二十トンにする。三十トンを二十トンにすることによって、労働基準法と船員法の区別ができますが、今お聞きしたところでは、三十トン以上の場合には、これはもう主として海上の労働である、今度は二十トン以上が主とし海上の継続した労働である。それ以下の場合は、何というか、主として海上の労働でないというふうな御見解ですが、実態を知っておられる水産庁として、この線の引き方にどういう意義があるか、どうも私たち納得できないので、その辺ひとつ水産庁から御説明いただきたい。
  46. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 水産庁といたしましては、沿岸漁業、あるいは沖合い漁業、遠洋漁業というように漁業を分けておりまして、大体二十トン未満の船舶あるいは船舶によらない漁業を行ないますものを沿岸漁業というように申しております。それで今回の船員法におきましても、従来三十トン以上の漁船につきましては三十トン以上に適用されておったわけでございまするが、今回改正案を出していただいておりまして、これを二十トン以上というようにお願いをしておるような次第でございまして、したがって沿岸漁業を除きましては、大体船員法の適用を受けるというような形になるわけでございます。
  47. 坂本昭

    坂本昭君 労働基準法が昭和二十二年に提案されたときのその提案理由を見てみますというと、三点ほど指摘されております。その第一点は、契約自由の原則を修正して、国が基準を決定し、法律によって労使双方にとってそれらのおもむくべきところを示さんとするものだ、それによって労働者が人たるに値する生活を営むことができるようにさせるということが第一点で、第二点としては、労働関係に残存しておる封建的な残滓を排除することが目的である。それから第三点としては、最低労働条件の国際的水準を取り入れるということにある。まあ、こういう点が当時あげられておるのであります。そうして、先ほど歴史的な経緯もあると言われておりますが、この船員法を見ますというと、第三章、これには紀律という項目があります。そうしてこの紀律のところを見ますというと、ちょうど十七世紀の海賊のはやったころの、何といいますか、奴隷船のような、そうした表現が船内の秩序を守るために、いろいろと書かれておる。こういうことは、おそらく昔の海商法のなごりがあって、そのために取り締まり規則というような形で、その船員法というものが出てきたのではないかと思うのです。で、この中で特に労働基準法との関連において問題だと思うのは、第二十三条に懲戒のことが書いてあります。「懲戒は、上陸禁止」云々とありますが、上陸禁止ということは、いわば船の中では監禁をするようなことなんですね。こういうことがつまり海の労働基準法に書かれてあるということは、私は、この労働基準法の提案理由の趣旨から見ても、これはまことに、これこそ封建性というよりも、もっと封建以前の内容があるように思う。それからまた、三十条には争議行為の制限というのがあります。この争議行為の制限には、船舶が外国の港にあるとき、これは争議行為を制限するというのですね。それからまた、人命もしくは船舶に危険が及ぶようなときも制限をする。で、船舶に危険が及ぶようなときは人命もあぶないと思うのですが、これなどは労調法によって十分解決されていることではないかと思う。特にこの二十三条、三十条を含めた第三章の扱い方は、私は、これは今日の常識的な労働基準法、労働立法からいったらまことにおかしいと思うのですが、これはひとつ運輸省並びに労働省も見解を述べていただきたい。
  48. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 船員法は、先ほど労働法の立法であると申しましたけれども、そのほかにもう一つ、航行組織体としての船舶の航行安全の面からの規定があるわけでございます。この第三章はそういう面から規定したものでございまして、たとえば今御指摘になりました上陸禁止等の懲戒にいたしましても、航行組織体として船舶が社会から全く隔絶されまして、警察権も何も及ばないというところで一つの団体生活をとっていくというために、船長の権限として最小限度のものを規定するということは、どうしても必要であるというふうにわれわれは考えております。  それから争議行為の問題でございますけれども、たとえば外国において争議行為が行なわれるという場合には、これは正常なる労使間の交渉ということもできませんし、そういう意味におきましても、保護すべき対象ではないというふうにわれわれは考えているわけであります。
  49. 大島靖

    政府委員大島靖君) 船舶労働の特殊性とあわせて、勤労者の保護、こういう二点からしかるべき規定が船員法においてなされますことは、これは当然のことであろうと思いますが、ただ両者の調和が必要なことだと、かように考えます。
  50. 坂本昭

    坂本昭君 どうも、もう少し労働省側、しっかりしてもらいたいですがね。今日の近代科学が進んで、無線もあれば、いろいろと連絡が緊密になってきた今日において、私は先の運輸省側の御説明では納得できません。結局、そういう面が海上労働者のいろいろな労働条件の中に私は出てきていると思うのですよ。封建的な残滓として残ってきていると思うんですね。  それで、次に賃金の問題について少しお尋ねしたいのですが、たとえば賃金についても、船員法では給料その他の報酬というふうな言葉で、賃金とは書いてありません。これは五十二条ですね。五十二条に賃金という言葉を使っていない。そうしてここには、先ほど局長も言われた給料その他の報酬の定め方には、「船員労働の特殊性に基き、」という、特殊性という言葉が非常にひんぱんに出てくる。私は、特殊にきめるべきであるかどうか非常に疑わしいと思うのですね。こういう労働一般について、そういう特殊なきめ方というものはあるべきではなく、私は大きな原則をもってやるべきだと考える。特に労働基準法の二十七条では賃金の問題について「出来高払制の保障給」、こういうふうに規定されておる。特にこの漁業労働者の場合は、これは確かに出来高払い制にせざるを得ない面が多いと思う。したがって、従来も歩合制とか大仲制、こういったものが使われてきている。しかし、こういうものはきわめて封建的なもので、廃止すべきではないか。もちろん、こういうことについては、運輸当局もすでに御検討になっておられますが、この歩合制、大仲制、つまり所要経費を水揚高から引いてしまった場合には、ともすれば労働者に支払うところの賃金というものがなくなってしまう。しかも、大仲制は地域や業種によって差異もあるし、それからまた、魚の値段は、市況の不利によって労働者自身の勤労のゆえではなくして左右をされてくる。そういう点で非常に問題点があるので、これも当然廃止すべきだと考えられる。旧法の船員法では、五十八条に「(歩合による報酬)」、これも「船舶所有者の定める一定額」というふうに、つまり新しい賃金は労使双方が協議して定めなければならないのにかかわらず、この古い船員法では使の方のみが一方的に定める、そういうふうなことになっている。これは、今回の改正で「雇入契約」という形で、変わってくるように思うわけでありますが、そういうふうに船員法には非常に古い要素が多過ぎる。先ほど申し上げました労働基準法の二十七条で、これには「労働時間に応じ一定額の賃金の保障」というふうになっております。したがって、こういうふうな行き方を船員法もとるべきではないか。今度の五十八条一項と三項で、歩合制による場合の最低保障額及び諸手当の基準額が、「雇入契約に定める」というふうになりました。しかし、実際上これでやっていけるかという私は将来へ疑問を持つ。現在の漁業共済制度に賃金保障等の制度を加えなければ、実際こういうことをきめてもほんとうに支払うことができるか。私はその点について運輸省の御見解並びに水産庁の御見解も承っておきたい。
  51. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 現行の船員法におきまして、船舶所有者が歩合の一定額を定めなければならぬ、こういうふうに規定してありますのは、従来水産界において行なわれておりました全額歩合制というものを否定するということで入っているわけでございます。したがいまして、この規定は当時の情勢としては一つの進歩であったというふうにわれわれ考えるわけでございます。しかしながら、今日の情勢ではすでにこれはまあ古くなっておりまして、船舶所有者とそれから船員との間の雇入契約によりまして、こういう点ははっきり雇入のときに確認すべきものである、こういうことで船員法を今度改正された、こういうふうに考えているわけでございます。なお、今後の実施につきましては、全国に船員労務官がおりまして、こういう点の監査を十分実施していきたい、こういうふうに考えております。
  52. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 歩合制につきましては、これは次第に減少はして参っておりまして、現在全額歩合制をとっておりまするのは七九%になっております。それで次第に固定給の部分がふえて参っているわけでございますが、今後におきましては、漁業労働の特殊性もございまするが、できるだけ固定給のほうへ向かっていくように指導して参りたいと存じております。
  53. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  54. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  55. 坂本昭

    坂本昭君 今、運輸省のほうでは、船員労務官によって十分監督調査をしていかれるということですが、これはもう数も定員わずか八十人ぐらいで、私はなかなか困難であろうと思うのですが、それはともかくとして、こういう漁業労働者の賃金のきめ方について、労働省はどういうふうにお考えになりますか。非常に私は特殊なきめ方だと思うのですが、労働省の見解をひとつ承っておきたい。
  56. 大島靖

    政府委員大島靖君) この小零細規模の基準法の適用のございます漁業労働、この問題につきましては、実は基準法施行以来非常に、私、率直に申しまして、困難な問題がございまして、労働問題が経営の問題を離れて特殊なジャンルを作っているというよりも、むしろ一体になって行なわれておりますので、非常に困難な問題がありますが、それだけに、私どもとして、さらに今後努力しなくちゃいけないというふうに思います。賃金の問題につきましても、私ども、漁業労働の監督をいたしましたその結果によりましても、賃金の停滞というよりも、むしろ基本的な労働関係、たとえば賃金台帳の整備が足りないとか、労働者の名簿の備付がないとか、あるいは賃金遅払い、こういった点の違反とか、望ましくない点が多いのであります。そういった基本的な問題の整備がまず先決の問題であると思います。なお、ただいま御指摘の賃金停滞の問題につきましては、水産庁から御報告申し上げた方針どおり、私どももやって参りたいと思います。
  57. 坂本昭

    坂本昭君 これは賃金そのものではありませんけれども、社会保障として、いわば賃金の部門をなすものとして、船員保険の制度についても、この際検討してみたいと思うのであります。三十トン以下のいわば零細漁船労働者の労働条件が悪いだけではなくて、さらに社会保障の面でも非常に日陰扱いを受けておるのではないか。船員保険法は昭和十四年にできています。そして、この当時の社会保障立法としては、私はよくできていると思うのであります。疾病や労災や失業あるいは年金、こういったものが一括されており、かつ、政府管掌であるということ、それからまた、先ほど来議論された災害補償、これはなおるまで見る、そして、打ち切り補償をやらないということが、船員保険法の三十一条に出ております。こういうことも、私は、当時としては画期的な社会保障立法だと思う。さらにまた、船員保険法の三十条には、傷病手当金は四カ月以内は全額を支給する、それから後は六〇%に落ちていますが、こういうことは、今日の労災の法改正の中でも労働省自体はようやっていないので、私は、当時これを立法された船員保険法の立法家は、なかなかりっぱだったと実は感心をするのでありますが、注目すべきことは、船員保険法の十七条には、船員法第一条に規定する船員は強制被保険者であるということが明確に規定されている。したがって、われわれは、この海上労働者保護のためから見るというと、船員法の適用範囲の拡張ということが非常に望ましいというふうに考えざるを得ない。で、今回の改正では、これが政令で定める二十トン以上の漁船と、それから政令で定めるまき網漁業に従事する漁船の付属船にも適用するということだけれども、これでは、せいぜい適用範囲が一万人ぐらいふえる程度ではないかと思うのですね。さらに私が理解に苦しむのは、船舶安全法の漁船特殊規則、これで先ほど来水産庁から説明がありましたような、沿岸ないし沖合い漁業は第一種、遠洋漁業は第二種、それから母船、試験船、訓練船、あるいは指導船、こういった特殊船舶が第三種、こういうものが定められたのは昭和三十二年であります。これは政令の改正であって、水産庁が漁業の実態から、非常に専門的なことで恐縮ですけれども、揚繰だとか、底びき、あるいは一本釣、刺し網、敷網、こういうものは一種、それからカツオ・マグロ、以西底びき漁業、トロール漁業、こういったものは二種というふうに、実態から、おそらく運輸省に説明をして政令を変えたのであろうと思うのですが、この第一種のほうの、いわば零細漁民は、三十トン以下は、船員保険に入れない、そして、歩の悪い国保や国民年金にしか入れない。これは非常に差別待遇であります。私は、こんな差別待遇をしないで、五トンでも十トンでもいい、それ以上はすべて船員法の適用として範囲を拡大して特に零細な漁業労働者によりよい社会保障の制度を与えるべきである、拡大すべきではないか、まあ、そういうふうに私は考えるのですが、この問題について、運輸当局と厚生当局にお尋ねしたいのですが、まず、船舶安全法の漁船特殊規則で定められた第一種を船員法の適用から除いたのは、これは一体、船主側の要求によるものであるか、それとも、先ほどの説明を聞いていると、何となく日帰り漁業というものは海上労働ではないという点で、これはもうすっかり省いてしまったのか、その点の運輸当局の御答弁をいただきたいと思います。
  58. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 船員法が三十トン以上に現在規定されておりますのは、漁業労働の実態が、陸岸から離れまして、船舶の中で起居するということを常態としておる者を対象としておるわけでございまして、それ以下の、つまり、沿岸漁業につきましては、陸上労働と同じような労働であるという意味で、船員法の適用対象から除外いたしておるわけでございます。
  59. 坂本昭

    坂本昭君 沿岸漁業は陸上労働と同じだというのは、これは珍説じゃないかと思いますが、厚生省にお伺いしたいのですが、船員保険法の十七条で、船員法適用者が強制被保険者になるということになっていますが、そうなると、小さい漁船は災害が非常に多い。先ほど海難の事例をあげられましたとおり、二十トンから百トンという間には、三十トン以下が非常に多かったと思うのですが、漁船には災害が多い。それから賃金も少ない、それから保険料も安い、一方、支払いは非常に多い、かつ、その保険料の徴収率もどうも悪くなりそうだ、そういうことから、こういう人たちを船員保険に入れてしまうと非常に困るという立場から、船員中央労働委員会審議の際に厚生省が積極的に反対をしたというふうに聞いておる。これは何か文書をもって反対をしたのか、それとも審議の際に説明をしたのか、その間の事情を明らかにしていただきたい。
  60. 熊崎正夫

    説明員(熊崎正夫君) 坂本先生のおっしゃるとおり、船員保険法の十七条では船員法一条に規定する船員を船員保険の被保険者とするという建前になっておりまして、私どもとしましては、社会保険を所掌しております所管省として、船員法のほうの改正がございますれば当然船員保険法のほうの被保険者になるという建前でもって、それを堅持する方針をとっております。御承知のように、船員保険の財政状況から見て、船員法の一条の規定を拡大する場合に問題になる点は、確かにただいま先生のおっしゃるとおりに多々あるかと思いますが、それだけを理由にしまして、私どもが積極的にどうしても困るというふうな考え方を私どもは主張いたしておるわけじゃございませんので一船員法のほうの改正があれば受動的に船員保険法のほうの被保険者になるという考え方でもってやっておるわけでございます。
  61. 坂本昭

    坂本昭君 それでは厚生省としては、船員法の改正に受動的に従うのであって、というのは、実はそれだけでは私はなまぬるいと思うのですよ。つまり、今日の社会保障を推進するためから言うならば、この一番零細な漁船労働者を社会保障の面で守ってやるという点では、むしろあなたのほうから船員法じゃなくて、船員保険の対象をもっと広げるというくらいあっても私はしかるべきだと思う。しかし、巷間伝えられるところによると、厚生省がかなりこの阻害をしたのではないかと聞かれる節がある。これはまたあらためてひとつ厚生大臣のいる社会労働委員会でお尋ねすることとして、ただ、たしか保険財政の維持という点はあなたのほうは考えられるでしょうが、それが目的ではないので、この現在、昭和三十五年度末の船員保険の積立金は百七億が資金運用部資金に預託されているはずです。そしてこの船員保険の料率は千分の百六十九、この百六十九のうち、船主が百十六・五で被保険者が五十二・五、決して低い率とは言えないと思う。まあ非常に高くもないのです。かつ、この百六十九の細分を見るというと、疾病に対しては千分の九十一と、あとプラス千分の二、この二は赤字償還分としての二だと言うが、積立金百七億ということと勘案するとちょっと疑問点もあると思われる。さらにこの疾病の千分の九十一に対して船主が六十五・五、被保険者が二十五・五、それから千分の二については船主が一・五と被保険者が〇・五、それから失業に対しては千分の十一、このうち船主が五・五、被保険者五・五、年金に対して千分の五十六、船主が三十五に被保険者二十一、これに加うるに船主のみの負担の福祉施設分が千分の七と、事務費の千分の二、こういうふうに一応なっておると承っている。これらの数から、先ほども問題になった労災に対して千分の五十五船主が負担をして、これはメリット制でないということも一応明らかで、かつ、千分の七の福祉施設分、これが現在二億円も剰余金ができている。余っている。そして百七億の積立金がある。しかも、こういうときにあなたのほうでは大幅にこういう漁船労働者を被用者保険の中へ、しかも非常にかつてはよくできておった、今でも比較的まとまっています、そういう中へ積極的に入れるということをしないで、船員法が変わったら受動的に、パッシブに入れますということでは、これは私ははなはだ不十分だと思うのですが、これについてあなた方の漁船労働者に対する社会保障をどう進めるか、その見解をひとつ聞いておきたいと思う。
  62. 熊崎正夫

    説明員(熊崎正夫君) ただいまおっしゃられました積立金が相当あるということは、御承知のとおりだと思いますが、これは船員保険の総合立法の建前からいいまして長期年金給付分の積立金を確保しなければならぬということで、移立金を厚生年金と同じように持っておるわけでございまして、積立金があるから直ちに保険財政がいいということは言えないわけでございます。これは先生よく御承知のとおりでございまして、たとえば疾病給付分あたりにつきましても、必ずしもそれだけを取り上げてみますと、保険財政は決していいとは思っておりません。予算書にも出ておりますように一億五千万の一般会計からの繰入金をいただいておるわけでございます。しかし、お説のとおり漁船労働者についての社会保障を積極的にどういうふうにやるかということにつきましては、これは船員保険財政自体で考えなければならないか、あるいはその他の職域保険なり、あるいは地域保険で考えていくかという面もあわせて考慮しなければならないと思うのでございまして、船員法の現在の建前は、これはあくまでも法律の建前からして私どもはくずすわけにはいかない。これは御承知のように労災保険関係の関連もございまして、必ずしも船保財政で包括していくということについては非常に問題があろうかと思います。しかし、その他の職域保険なり、あるいは地域保険の面で、そういう船員保険から漏れた漁業労働者に対して、手厚く社会保障の線を拡充していくということにつきましては、厚生省としては他の一般の社会保障一連の政策とともに、十分検討して慎重に内容を充実していくように考慮していきたい、こういうふうに考えております。
  63. 坂本昭

    坂本昭君 この最近の漁業労働力というものは非常に減少しております。そして新しい労働力を確保することに困難になって、したがって企業が非常に安定性を欠いている。そういうことのために特に社会保障に対する要求が強い。あるいは退職金の制度、あるいは年金の制度、こういったものを一段と整備しないというと漁業労働力というものを確保できがたい。今厚生省のほうの説明では、百七億の中に確かに年金部門の積み立てもある、が、少しこれはこまかい点になりますが、この船員保険の中の年金の平均支給額は一体どの程度になっておるか、もしわかっておれば、その点を御説明いただきたいし、一体そういうことでこの漁船労働者に対する魅力ある年金制度となっているかどうか、その点の御説明をひとつ先にしていただきたい。
  64. 中村一成

    説明員(中村一成君) 数字でございますので便宜私からかわってお答えいたします。  年金部門におきまして、種々ございますが、まず老齢年金につきましての三十六年度、本年度におきますところの年金支給件数が二千四百人、年金額が一億二千九百四十一万八千七百九十二円と相なっております。次に、障害年金を申し上げますと、障害年金がまず職務外につきまして昭和三十六年、件数一千七百八十七件、金額といたしまして八千九百七十五万八千七百四十八円となっております。障害年金の職務上につきましては三十六年度で六百六十七件、金額で四千七十六万二千九百三十六円となっております。それから遺族年金でございますが、遺族年金が同じく三十六年度で職務外六百六件、年金額が一千六百十八万七千七百一円、職務上でございますが、これが三十六年度で四千三百九十七件でございまして、この金額が二億七千九十一万八千六百七十三円となっております。これを先生の御質問の一件当たりの金額として計算をいたしまして、老齢年金でございますが、これは加給金を含まない一件当たりの年金額が、老齢年金が四万五千九十三円となっております。それから障害年金が職務外で四万八千三百七十五円、職務上でございますと、職務上が五万二千七百六十三円、遺族年金が職務外で二万二千二百二十三円、それから職務上がいろいろございますが、平均いたしまして二万五千四百四十五円、こういうふうになっております。
  65. 坂本昭

    坂本昭君 今の数をお聞きしましても非常に乏しい金額であって、とうてい漁船労働者が船底一枚下は地獄という生活を保障されるにはあまりに低い金額だと思う。そこで次に問題は、船員法の第六章の「労働時間、休日及び定員」という章と、七章の「有給休暇」という章、これを見ますというと、七十一条と七十九条にいずれも漁船は適用しないということで、漁船労働者はまことに恵まれていないということが船員法の中でもはっきり出てくるのであります。私はこういう点も勘案して、これらの人々に退職金の制度、あるいは年金の制度をどういうふうに考えておられるか、これは運輸省と水産庁にお伺いしておきたい。
  66. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 船員法で漁業労働について、労働時間及び有給休暇に関する規定の適用を除外いたしておりますが、これは漁業労働というものは非常に季節的な労働でございまして、またその魚群の状況によりましては必ずしも労働時間によってきめるのが適当でないという実態でございますので、労働時間及び有給休暇の規定を除外しておるのでございます。  なお、今お尋ねの第二点の年金等の問題につきましては、一般の陸上労働の場合と同様に取り扱っていただきたいというふうに考えております。
  67. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 漁業労働が恵まれていないことは先生仰せのとおりでございまして、これはやはり漁業が今運輸省から答弁のありましたように、常に魚群を追いまして、魚がいなければ漁撈が成り立たないというような実態にあるわけでございまするので、やはり漁業そのものをできるだけ安定したものに持っていくというような根本的な政策を別個に考えていくということを必要といたしておりまして、特に沿岸漁業等につきましては、そういうふうな政策を現在とりつつあるような次第でございます。なお、中小漁業につきましても、次第にそういう方向へ向かいつつあるような次第でございます。
  68. 坂本昭

    坂本昭君 どうもきわめて抽象的で、たとえば沿岸漁業についてその振興策を考えておられる、立法的、予算的に検討しておられることも伺っておりますが、基本的な船員法の中で非常に差別待遇を受けているということを私は今回指摘をしておきたいと思う。  さらに、この社会労働委員会で船員法の一部改正をいろいろ議論するのは場違いではありますが、海上労働者の労働保護、そういう面で若干触れておきたい点は、今回の政令の定めるまき網漁業に従事する場合、その一隻が三十トン以上なら付属船が五トンあるいは一トン、こういう場合でも船員法を適用している。ところが、二九・九九トンの揚繰に適用しないというのは、これはどういうわけか。同じ海上労働者でなぜこういうふうな差別待遇をされるのかという点が一点。  それからまた、二九・九九というのは実質的に五十トンをこえる場合もある。で、なぜこういうものに適用させておらないか、これは船主のほうで適用を拒んでいるのかどうかということもひとつ伺っておきたい。  それからさらに、今ここに二十五トンの船がある、マグロ、カツオをとりに行っている、そういう場合には第二種になるわけですね、今度それが第二種でなくて船員法の適用を受ける。ところが、それが揚繰やイカ釣に行った場合には第一種ということで、今度は船員法からはずされる、どうもちっとおかしいじゃないかと思うのですね。その船の使われる場合の目途によって違う。まああなたは、一方は沿岸漁業で、これは陸上労働とあまり違わないという立場から説明されるかもしれないが、今三点について、どうも同じような労働条件であるにかかわらず、あなたのほうでは差別扱いをするような印象を受ける、御説明いただきたい。
  69. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) まず第一点の問題でございますけれども、三十トン以下の船舶であって、まき網等と全く同じような状態にあるものであって船員法の適用のないものというのはどういうわけかという御質問でございますけれども、これにつきましては、先ほどから申し上げましたように、船員法というものは労働保護立法でありますと同時に、一つの航行組織体としての船舶の規律というような面からも規定いたしておるわけでございます。したがって陸上から孤立した生活を継続して行なうということをまあ一つの条件にいたしておるわけでございます。必ずしも労働保護の面だけから立法いたしておるわけでございませんので、そういう特殊環境における労働というものを保護していこうということが一つのねらいであります。そういう意味で沿岸漁業のようなものは陸上の基準法によって規制するのが適当ではないかということで、現在は三十トン以上の漁船にのみ適用するというふうになっているわけであります。  それから第二点の船舶が遠洋へ出かけて、その船舶がまたその沖合いで第一種の漁業に従事するという場合におきましては、船舶の資格は、船舶安全法によりまして、第一種あるいは第二種の従業制限というものをきめるわけでございますので、そのときどきに、その漁業の実態によって、直ちに資格を変えていくということはございませんので、その資格によってたとえば今例にあげられました問題につきましては、第二種として取り扱うということでございます。
  70. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  71. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。
  72. 坂本昭

    坂本昭君 この際、今の三十トン未満の漁船労働者の失業保険、これは一体どうしておられるか。それからまた今後どうされるか。これについて労働省の職安局長の御説明をいただきたい。
  73. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 御承知のように、失業保険法では、現在のところ、農林水産業等を強制適用にしておりません。失業保険に加入したい人は、いわゆる任意包括適用で入っております。それで入っていただくというよりほかに現在道はないわけでございます。ところが、そういう失業保険の関係につきまして、今の任意包括適用の基準から見ますと、一事業主ごとだけではなかなか入りにくいという部面がありますので、今北海道で、試験的に集団的な失業保険の加入のやり方を試験しております。これを来年度から、できれば全国的にも、そういう行政措置として加入する措置を講じていきたいと思って、今検討中でございます。
  74. 坂本昭

    坂本昭君 次に、行方不明の人が、さっきの海難の報告の中でもかなりありますが、今回行方不明手当という制度が作られるようですけれども、これについてちょっと疑問がある点は、これは船員保険から労災として出るのか、どこから出るのか、また、十分予算措置を講ずることができるか。これは運輸省から、当委員会にも密接な関係もありますから、労災との関連でちょっと説明していただきたい。
  75. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 船員法は、今度の改正で、この行方不明手当が入ったわけでございます。この施行後におきまして、実際は、現在は船主からこの程度の手当は支払っておると思われるわけでございますけれども、これがもし保険化されるという場合には保険から、それから、その保険化がおくれる場合には、当然船主でこの金額を負担するということになると思います。
  76. 坂本昭

    坂本昭君 これはいろいろ労災の立場からも問題点が残っていると思うのですが、きょうはこれ以上はお尋ねいたしません。  それでさらに、漁業労働者の環境改善、これは安全並びに衛生の問題に関係がありますので、そういう点で若干お尋ねしますが、まず、この基地の福祉施設の問題であります。これは漁港法に基づくと、船員のための福祉施設を、この施設の基準の中に入れてはいるけれども、必須条件になっていない。したがって、各港に、浴場だとか、洗たく場だとか、あるいは休養施設、宿泊施設、診療所、こういったものについて、不十分な点が非常に多いので、今後海上労働者の福祉のためにどういう具体的、予算措置をするおつもりか、運輸省に伺いたい。特に昭和三十六年度は、特別な予算で、たしか二千万円で二カ所、かなり大きな療養施設をお作りになったというふうに聞いているが、三十七年について、どういう方針を持っておられるか、これは運輸省。  それからさらに厚生省については、御承知の年金福祉事業団、この年金福祉事業団によって、船員福祉施設の充実が今度はかられるようになってきました。これについて、三十六年度、さらに三十七年度と、どういう具体的、予算措置を持って、こういう海上労働者の福祉施設予算を計上しておられるか。各省から、簡単に説明をいただきたい。
  77. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 運輸省に関しては、船員の厚生施設につきましては、長い間船主団体——漁業者の事業主でごさいますが——というものと緊密な連絡をとりながら、厚生施設の整備に努めてきたわけでありまます。現在、一番施設関係を担当しております日本海員会館の施設は、全国で百数十カ所ございまして、これを漁船船員、商船船員がそれぞれ利用いたしているわけであります。予算につきましては、三十四年度より厚生施設補助を行なった。これは船主団体が三分の二の経費を負担する、政府が三分の一の経費を負担するということで、三十四年、五年は、海外における厚生施設補助いたしております。それから三十六年度及び三十七年度予算におきましては、国内における船員厚生施設に対する補助を考えております。予算額は三十四年度は四千六百万円、三十五年度は一千万円、三十六年度は二千五百万円、三十七年度も二千五百万円程度の現在予算を提出いたしておりますわけであります。
  78. 熊崎正夫

    説明員(熊崎正夫君) 船員保険関係の福祉施設としましては、現在、休養所二十三、保養所三十九、そのくらいあるのでございます。お尋ねの年金福祉事業団のほうから、船員関係に還え融資として出されるものは、ことしは二億、それから来年は三億を予定いたしております。
  79. 坂本昭

    坂本昭君 次に簡単に……。今のは国内の基地の場合ですが、海外漁業の場合、海外基地の福祉施設、これは例のサモアの施設が非常に悪くて、いろいろ問題になったことがあるので、その後だんだん改善されたように伺っておりますが、特にお尋ねしたいのは海上に出ていく漁船について、先ほどの舶員法の七十一条、七十九条で、労働時間、休日及び有給休暇の適用除外がされておりますけれども、これを廃止することはできんかという点が一点。これはつまり、海外に出る場合には、この適用除外を廃止してもらいたいという点が一点。それから、海外漁業の労働条件の最低基準をきめるべきではないか、これについてどういうお考えがあるか。さらに、この海外漁業の労働適正化のために、労使並びに官庁の三者による協議機関を作ってはどうか。これは実施の面では水産庁の政策になると思います。法的には運輸省の問題になると思いますが、両省から一つ御答弁いただきたい。
  80. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) まず第一に、遠洋に行く漁船について、労働時間及び有給休暇に関する規定を適用してはどうかという問題でございますけれども、先ほど御説明いたしましたけれども、漁業については、季節労働であるということで、従来は除外して参ったのでありますけれども、最近周年漁業というものもだんだんふえてきているような状況でございますので、船員法の改正につきましては、従来船員中央労働委員会に諮問いたしまして、その結論に従って改正するというふうにやっておりますので、そういう点についても、今後とも労働委員会審議されるかと思いますし、われわれはその結論が出次第いつでもそれを受け取って、必要な改正を行なう必要があれば改正するというふうに考えております。  それから最低賃金の問題かと存じますけれども、これにつきましては、目下われわれの手元におきましては、機帆船の最低賃金を中心に行政を進めております。したがいまして、今後漁業関係にも当然最低賃金制度の確立という問題が考えられなければなりませんし、われわれもそういうふうに努力するつもりでおります。そういう中へ入ってくる問題かと思います。
  81. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 海外漁業の形態といたしまして、役務提供のような場合もございまするが、そういうような場合には、先方の海外法規が適用されるということになるわけでございますが、国内におきましては、ただいま運輸省から御答弁になったとおりでございます。なお、労使間の懇談会のようなものを設けたらどうかというお言葉でございまして、もっともなことと存じます。現在は海外に出ます場合に、その契約書をよく調査いたしまして、できるだけ労働条件につきましても審査をしておるような次第でございますが、そういうふうな場合に、労使間のそのつど懇談会を設けるというようなことも必要かと存じまするので、そういうことをやりたいと思っております。
  82. 坂本昭

    坂本昭君 次に、船内労働の改善の問題で、特に船内設備改善の問題ですが、たとえば漁船には便所がないので、用便していると、冷たい風に北氷洋あたりで吹かれて痔が多いとか、あるいは途中で落っこってしまって転落行方不明というようなこともあるということで、こういうことについては、当然今回もいろいろと安全と衛生の面から改善されてくるように私たちも考えておりますが、そういう場合に非常に大事な点は、現在のいわゆる水産庁でやっている漁業許可制度というものが総トン数で制限されている、そのために休養部屋を作ったり、あるいは便所をこしらえたり、便所なんか大したことないかもしれませんが、そういう場合に、現在の許可制度のトン数制限ということで引っかかってくるのではないか、むしろトン数を魚倉の容積のみに限定をする、そうして総トン数としないで必要な、たとえば休養施設やらあるいはエンジン・ルームを広げていく場合は、これは増トンをそのまま認める、それによって労働条件がずいぶん改善され、安全性が著しく増すと思われるのですが、これについてひとつ御答弁をいただきたい。これはもう水産庁のほうだと思いますね。
  83. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) 先生のおっしゃいますように、漁船のトン数によって許可制度の限度をきめるということをやっておる次第でございまするが、実はこれにつきましてはいろいろ検討をいたしまして、魚倉の容積によって考えたこともあるのでございます。これは以西底びきにおいてそういうことをやったのでありますが、そういう方法をとりました場合、またいろいろ脱法行為が行なわれた実情もございまして、結局やはりトン数制度に復帰せざるを得なかったような状況でございます。なかなかこれを何によりまして規定するかということは、非常にむずかしい問題でございまして、現在せっかく検討中でございますが、何によってきめましても、たとえば甲板の上に魚倉を設けるというようなこともできまするし、まあいろいろ行なわれまするので、結局何回も漁船を検査いたしまして、特に出漁のときに漁船の検査をするというようなことが必要かしと存じております。十分検討をいたます。
  84. 坂本昭

    坂本昭君 今、出航の検査の問題も出ていましたが、これは確かに海上労働者の安全のために出航検査の法的な規制をやり、ちゃんと厳重な監督をする必要があると思う。現状ではずいぶんルーズな点があるのではないかと思う。さらに漁船の場合は、救命具の数の規制あたりも三分の一であるということは、かりに十五人乗っておったら、三分の一はブイにつかまって助けられることができるが、あとの人は知らないぞというような規定である。こういう点も私はたくさん改められる点があるので、特に漁船労働者に対して従来の差別待遇を私は全面的に直していただきたい。  最後に、率直に言って海上労働者の労働条件というものは、非常に悪く、かつ古い伝統にとらわれているので、ILO条約との関係は、どうなっているかを伺っておきたいと思う。昔、古くは七十号あるいは七十一号というものもあり、さらに一九四九年の第三十二回ILO総会における船内船員設備に関する条約、これは九十二号、それから賃金、船内労働時間及び定員に関する条約、九十三号、これの取り扱いはどうなっておるかを御説明いただきたい。  それからまた、一九五九年の第四十三回ILO総会における、いわゆる漁業に関する三条約、年少労働の百十二号条約、それから健康検査の条約の百十三号条約、それから雇入の百十四号条約、これの取り扱いはどうなっているか。これは労働省の国際労働課から御説明いただきたい。  それから一括してまたお尋ねいたしますけれども、ILO条約ではないのですが、運輸省の所管と思いますが、安全に関する条約として国際海上人命安全条約、これの取り扱いはどうなっているか。  それからもう一つ、満載吃水線条約の取り扱い、やはりこれについても所管省の御見解を求めておきたいと思います。
  85. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 御質問のございました一九五九年のILO総会における、いわゆる漁業、漁船関係三条約について簡単に御説明申し上げます。漁船員として使用することができる最低年令に関する条約、第百二号、漁船員の健康検査に関する条約、第百十三号、それから漁船員の雇入契約に関する条約、第百十四号、その三つが一九五九年にILOで決定されたわけでございます。批准状況は、非常に多くございませんが、内容的にはわが国におきましては、おおむねこれを満たしておると考えるのでありますが、細部の点につきましては、技術的な問題がございますので、目下なお検討中ということでございます。
  86. 坂本昭

    坂本昭君 九十二号、九十三号は——今のは一九五九年三の条約ですね。一九四九年の九十二号、九十三号は。
  87. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 失礼いたしました。九十二号条約、船内船員設備に関する条約、これは九十三号条約によって改正されたわけでございます。  それから賃金、船内労働時間及び定員に関する条約、第九十三号条約、これが百九号条約によりまして修正されるような格好になっておりますが、結局九十二号条約はいまだに発効をいたしておりません。百九号条約によって主として乗りかわることになっております。
  88. 坂本昭

    坂本昭君 それからあと運輸省の国際海上人命安全条約は。
  89. 若狭得治

    政府委員(若狭得治君) 今御質問のありました九十二号条約の船内船員設備の問題でございますが、これにつきまして、昭和二十七年以来、運輸省内に船員設備協議会というものを設けまして、労使それぞれ入っていただきまして、長い間、八年間にわたって協議いたしておりまして、三十五年にその結論が出たわけでございますけれども、国際条約を一部下回っているものもございますので、批准はなかなか困難ではないかというふうにわれわれは考えております。  それから国際人命安全条約につきましては、一九六二年に条約ができたわけでございますけれども、目下、国内法の立法の準備をいたしておるわけでございます。
  90. 坂本昭

    坂本昭君 それから吃水線条約は……。
  91. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 吃水線は、担当者がおりませんのでわかりません。
  92. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それでは本件に関する質疑は、本日はこの程度にいたしたいと思います。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。よって、本日の審議は終了いたしました。  次回は、来週火曜日、午前十時から開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    〔午後一時二十二分散会〕