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政府委員(
八谷芳裕君)
地下資源の
鉱山関係の
災害につきましては、計数的に申しまして、決していい
成績をおさめておりません。これは
監督の衝に
当たります私
どもとしては、はなはだ残念に思うとともに、この
対策によほどの決意をもって臨まなければならぬのじゃないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。衝に当たるものとして深くおわびする次第でございます。
まず、
災害の
概況でございますが、
金属山
関係につきましては、おおむね減少の
傾向をたどっておるのでございますが、特に
石炭山におきましては、近年御承知のとおり、一昨年の豊州
炭鉱の
重大災害、あるいは
上清、大辻、こういうふうな相続きまして
重大災害が
発生いたしまして、非常に世間をお騒がせするというようなことが起こっておりますが、この
重大災害を含めまして、全体の数におきましても、必ずしもいい
成績をおさめているという
状態ではないわけでございます。
鉱山保安法ができまして十一年、
昭和二十四年に
鉱山保安法ができまして、はっきりした
統計も整理されてきておりますけれ
ども、その後の
概況は、全体の
災害のネットの数学としましては、
件数的には非常に減少いたしております。当初
昭和二十五年までは十六万二千件の
災害が
石炭鉱山において
発生いたしておりましたけれ
ども、三十五年には五万七千五百五十件、それから三十六年には、十一月までの
統計でございますが、五万六千二百七十七件、こういうふうに下がってきております。しかし、この最近の
件数は、
昭和三十一年ごろから全く
横ばい状態でございまして、この
状態は、特にごく最近になりまして、全体の
石炭鉱業の
労働者が減少いたしてきております。この
経過からいたしますと、全体の数字が下がっていないということは、
災害率と申しますが、私
どもは、
あとで申し上げますが、千人
当たりで率を計算いたしておりますが、こういう率におきましては、はなはだ芳しくない
状態を呈しているわけでございます。この
状況を申し上げますと、これは三十六年につきましては、十一月までの
統計でございますが、過去三年間の率を
稼動延べの百万人
当たりで申し上げます。
発生件数は、
昭和三十四年が六百三十六回でございます。三十五年になりまして六百七十回、三十六年の十一月まで八百回、こういうふうになっているわけでございます。
死亡者は、
昭和三十四年の六・三人、三十五年の七・二人、三十六年は八・六人でございます。全体の重軽傷を含めますと、
昭和三十四年は六百四十人、三十五年は六百七十五人、三十六年は八百七人というような率になるわけでございまして、特にこの
災害につきましては、大きな
企業のほうと小
企業のほうと分けますと、特にまた先ほ
ども労働省から御
報告がありましたと同じように、
中小企業のほうに
災害率が非常に高い、こういう
傾向を持っております。先ほどの
死亡率を、
稼動百万人
当たりの
延べで
死亡率を出してみますと、
昭和三十六年ございますが、
大手炭鉱では五・六、こういうふうになるわけでございます。ところが、
中小炭鉱では一三・三、約二倍半というような
状態になっております。この
大手と申しますのは、
石炭協会に所属いたしております
大手十八社でございます。
中小はそれ以外の
炭鉱に分けてやっておりまして、完全な
石炭の
規模別ではございませんが、いわゆる
石炭鉱業で申しております
大手と
中小、こういう
関係でございます。
災害の
状況につきましては以上のとおりでございますが、これにつきます
対策でございます。
鉱山保安局といたしましては、
対策を大きく分けまして、
三つの方向から考えております。第一番目には、
鉱山保安法、
鉱業法のような、関連いたします
法律の厳正な
運用面でございます。これの
運用の
強化でございます。第二番目には、
保安改善のための
援助でございます。
保安機器あるいは
保安施設に対します
融資の
あっせん等の
援助でございます。第三番目といたしましては、
保安の
設備、
保安が非常にこれを
改善するのが困難な
炭鉱に対します
終閉山、もう
炭鉱をやめたらどうか、こういうふうな
終閉山に対する
勧告をやりまして、
災害率の高い
炭鉱をつぶしていく、こういう
三つの
対策を考えているわけでございます。現にこれを実施いたしております。
第一番目の
鉱山保安法、
鉱業法の厳正な
運用面でございますが、これにつきまして御説明申し上げます。
鉱山保安につきましての基本的な
法律は
鉱山保安法でございまして、さらにこの
鉱山保安法に基づきまして、省令、規則を出しているわけでございますが、この
鉱山保安法の厳正な
運用をはかります上にまず大事なことは、いかなる
個所はどういうふうな
違反事項があるか、この
違反事項をどう手直しをし、安全な操業を行なわしめるか、こういうことを
監督するわけでございますが、この
監督官の
増員は、去年の七月に四十名認められまして、従来二百二十五名の
監督官が、
金属山も含んでおったわけでございますが、それに四十名の
監督官の
増員が去年の七月に認められたわけでございます。したがいまして、二百六十五名になったわけでございますが、この四十名はすべて
石炭鉱業に
関係の
監督官ということに
配置をいたしております。しかも、その
配置は、特に
災害の多い
炭田、
北海道と
九州に
重点的にこれを
配置したわけでございます。かつ、
監督の
効率を上げますために、
北海道と
九州に
増員いたしました
監督官は、すべて
現地に
派遣班というものを現在持っております。
北海道に四カ所、
九州に五カ所でございます。
九州は五カ所と申しますと、筑豊に飯塚、直方、田川、佐賀、長崎、こういうふうな
現地に
派遣班というものが、
監督事務所でございますが、こういうものを持っておりまして、ここへ
配置いたしまして
監督の
効率を上げていく、
巡回回数をふやす、こういうやり方をとったわけでございます。さらに、来年度の
予算といたしまして
お願いいたしておりますのは、二十名の
監督官の
増員でございます。これもすべてただいま申しました
北海道と
九州のこの
派遣班にくっつけまして、単に
人数をふやすだけでなく、そのふやした
人数の
効率化ということを考えておるわけであります。さらに
九州と
北海道には特に
災害が多いのでございまして、ただいま通産局に付置されております
鉱山保安監督部を
鉱山保安監督局ということで昇格を
お願いもいたしておるわけでございます。この点もどうぞよろしく
お願いしたいと思っております。こういうふうに
監督の側を
強化するとともに、もう
一つの
対策といたしましては、
鉱山保安法の
改正をできるだけ早い機会にこの
国会に御提案申し上げたいというふうなことで、現在
改正につきます
審議をいたしております。この
鉱山保安法につきましての
改正は、
労働者と
経営者と中立との三
者構成からなります
委員会を設けまして、過去八回にわたりましての
審議を経まして、一昨日の二十日に
通産省に対する答申が出て参ったわけでございます。この
保安法の
改正におきましては、特に
監督の面はただいま申し上げたような面でございますが、しかし、
監督と申しましても、月に一回、あるいは多いところで月に二回行くところもございますけれ
ども、しょっちゅう
鉱山に
監督官がついておるわけではございませんので、まず第一に、
自主的保安管理と申しますか、こういう面を
鉱山自体でもやってほしいということで、
炭鉱側にございます
保管理者あるいは
保安監督員、こういう機構、それから各
鉱山に、
保安法に基づきまして設置されております
鉱山保安の
委員会というのがございます。この
委員会は
経営者と
労働者が
半数ずつで構成されておりますが、
保安の確保ということは、単にその
採取責任者である
鉱業権者だけでは全うし得ないことでございます。当然
鉱山労働者の緊密な
協力がなければ確保し得ない、こういう
観点に立ちましてこの
鉱山保安委員会の
協力を願っていく、こういう面をあわせて考えているわけであります。それからさらに、
鉱山保安法といたしましては、
制裁規定を
強化したらどうか、こういうこともただいま
審議をいたしております。
制裁規定と申しますと、ただいまございます
規定に違反して、しかもその態様が悪質なもの、あるいは累犯を重ねるようなものは、単に
改善の命令というようなことでなくて、できるならばもうその
個所を休止してほしい、こういうふうな作業の停止でございます。そういう面を
強化したい、こういうことで、ただいま
鉱山保安法の
改正を取り運び中でございます。一方におきまして、
鉱山保安法と
姉妹法でございます、あるいはさらにさかのぼりますと
基本法と申しますか、
鉱業法の
改正がただいま
審議が進められておるわけでございまして、これはおそらく次の
通常国会に提案されるものと考えます。私のほうの所管ではございませんが、この
鉱山の
基本法でございます
鉱業法の中にも
保安の面を従来以上に取り入れてもらいまして、特に
保安面から見ました
能力主義、こういう面を取り入れてもらうように進めておるわけでございます。さらに、この
鉱業法の方面におきましても
制裁関係の
規定も
強化していく、こういうふうで、いずれにいたしましても、
鉱山保安法、
鉱業法の
改正をはかるとともに、今まであります
規定を厳重に実施することは当然でございますけれ
ども、さらに必要な
改正を施したい、こういうふうに考えております。
第二点といたしまして、
保安改善のための
援助でございますが、これは本年度の
予備費で、
補助金といたしまして七千四百万円の
補助金が認められまして、
中小炭鉱に対する
保安費、こういう
援助をはかるようにいたしまして、五〇%の
補助を考えて、現在
交付指令等も出しておるわけでございますが、さらに
合理化事業団を通じまして二億六千万の
保安融資を行なって
施設の
改善をはかっていく、こういう面で
保安改善の
援助を行なっておるわけでございます。
第三点といたしましては、
保安の
改善を行なうことが困難であろうと考えられる
炭鉱に対する
終閉山措置でございますが、これはこの前の
臨時国会で、
石炭鉱山保安臨時措置法が成立されまして、十二月の二十五日に施行いたしました。それ以来、
保安の不良な
炭鉱につきましての
調査を行ないまして、ただいままでに十二
炭鉱の
石炭山につきまして
廃止の
勧告をいたしております。
九州が七
炭鉱でございます。宇部四
炭鉱、
常磐炭田で一
炭鉱、十二
炭鉱の
廃止の
勧告をいたしておりますが、さらに来年度の
予算も
お願いいたしまして、来年度といたしましては四十五万トンを目標といたしまして、
予算化できました場合には、この
廃止の
勧告を、それに見合う数量の四十五万トン分の
廃止の
勧告を行ないたい、こういうふうに考えておるわけでございます。まあ以上のような
対策を現在講じておりまして、当初申しましたように、はなはだざんきにたえない
状態でございますが、一日も早く
地下資源の安全な採掘ができるような
状態に取り運びたいと、ただいま
努力中でございます。
以上、
対策を申し上げました。