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説明員(
牛丸義留君) 全般的な
麻薬の問題を御
説明いたします前に、特に最近
横浜地区におきまして、
新聞紙上等において
麻薬の
患者がちまたにあふれたというような記事がございましたので、その
状況をまず最初に申し上げたいと思います。
横浜の数日前の
状況は、ちょうど期せずして
近畿の
神戸地区と
横浜地区と
両方にそういう同じような
現象が起こったわけでございますが、私
どもの
麻薬取締官の
近畿の
事務所からの
連絡によりますと、七月の二日から三日にわたりまして、
麻薬中毒患者の間に、何か不穏な
形勢があるというような
情報が入ったわけでございます。それから二、三日たちまして、五日から六日にかけまして、
横浜におきまして、
麻薬の入手が困難なために
麻薬の
中毒患者が
横浜市内において
禁断症状を起こして、そのために不穏な
形勢がまた見られるというようなことが
担当の
麻薬取締官事務所からの
連絡があり、それで七月の七日の朝、それから八日ごろにかけてそういうふうな
現象が起こったわけでございますが、これはどういうことでこういうふうになったかということを、私
どもいろいろと
情報なり
推定が入るわけでございますが、ちょうど今時期的に申しまして、
麻薬、特にケシから採取されますアヘンを
中心にしました
麻薬が、現在
麻薬中毒患者等が常用している主体でございますけれ
ども、それのいわば出回りがちょうど
端境期になって、一時
中断をしている。それから
麻薬といっても、ほとんど現在
日本で不正に使用されておりますのは
ヘロインが
中心でございますが、
ヘロインの粉が非常に湿度に弱いということで、
雨期のこういう時期におきましては、一度に多数の
小分けができない、そういうために個々の
麻薬中毒患者は、一回の使用というものはごく微量でございまして、
小分けをして
密売をしているような
状態でございますが、そういう
小分けが一度にできないというようなことも
一つの
原因であるんじゃないかというふうに
推定されます。そういう全体として
東南アジア地区から
不法に
密入国者なり、あるいは
船舶によって
密売されておる
ヘロインというものが、
端境期において一時的にそういう
中断の
現象を来たす、それから時期的にちょうど湿気を持っている
雨期の時期でございますので、
小分けの問題について困難がある、そういうふうなことが、一時的な
麻薬の
密売における
不足を生じたのじゃないか、そういうものにたよっております
神戸地区なり
横浜地区の
麻薬中毒患者が入取困難になって、結局今まで隠れてこっそりとやっていた者が
禁断の
症状になって大っぴらになってきたというようなことが
原因だろうというふうに考えられるわけでございます。それで、これに対しましては、これは
そのもの自体は
法律違反でございますし、これは私
どもとして従来も
取り締まりなり、そのはっきりとした証拠に基づきまして
検挙なりを
実施してきたわけでございますが、
禁断の
症状を来たしている者
自体については、これを放置するということは
社会の問題でもございますので、とりあえず
横浜地区におきましては、
現地に臨時の
相談所を作りまして、そうして
症状の重い者を
横浜を
中心といたしました
神奈川県下の
精神病院に、
精神衛生法に基づく一時
入院の
措置を講じたわけでございます。現在は、もうすでにそれは解除したわけでございますが、七月十日までに
横浜地区におきまして
入院をいたしました数は三十三名に上っているわけでございます。同様に、
近畿の
地区におきましても、これは自費で入った者も含めまして、三十六名の人間が最近
入院の
措置をとったわけでございます。現在は、数日前のようなそういう大量の
現象はないわけでございます。これはどうもはっきりとしたことは私
どももよくわかりかねますが、
横浜地区においても、
不正麻薬が一部入手できたのじゃないか、したがって、ひところのような
現象がまたなくなったのじゃないかというように考えられているわけでございます。最近起こりました
新聞紙上等によって報道されました
横浜地区並びに
近畿地区の
状況は、非常に簡単でございますが、以上のようなことでございます。
それで、こういう
麻薬の
患者というものは、それじゃあ現在
日本全国としてどのくらいおるか、また、それに対しどういうふうになっているかということを御
説明申し上げたいと思うわけでございます。
麻薬の
取り締まりにつきましては、これは
日本では、
麻薬は、大体
原料といたしましては約五トン国産で
和歌山県
地区を
中心に農民が栽培しておりますのを国が買い上げをしております。そのほかに約二十トン近くのものを、主としてインド、トルコの中近東、
アジア地区から国が購入しておるわけでございまして、それを
原料として
医療用に使います
麻薬の
製造を、
麻薬製造業者として指定しております
製薬会社に払い下げをいたしまして、
医療用の
麻薬の
製造をやっているわけでございます。そういうふうな正当に
医療用に使われる
麻薬以外に、
東南アジア地域、主として直接的に参りますのは香港でございますが、さらにバンコック、それからシンガポール、ラングーンというような
東南アジア地域との
船舶あるいは
航空機等によりまして、
日本の港なりあるいは空港にいろいろと頻繁な交通があるわけでございますが、そういうものによって
麻薬が
不法に搬入されて、それが
日本の
国内の
麻薬密売者の
組織の中に販売される、それを通しまして
麻薬中毒患者に
不法に
密売されているというような
状況でございます。それを私
どものほうで百五十人の
麻薬取締官という専任の
取締官がおりまして、
全国を八
地域に分けてそういう
事務所を設定をして、そういう不正な
麻薬の
取り締まりに当たっているわけでございます。しかし、私
どもの所管をしております
麻薬取締官だけじゃなくして、港におきましては、税関あるいは
入国管理事務所、それから海上保安庁、そういうそれぞれの
警察、空港
警察なり、あるいは港湾の
警察、そういう
警察権を持っているところで
麻薬の
不法所持、あるいは密輸というものに対して
取り締まりを関連して
実施をしているわけでございますが、これが最近の
年間の大体
件数を申し上げますと、まあ少しずつ
年間上がっておりますが、最近の
検挙件数というものが
年面大体二千件ぐらいの
検挙件数でございます。それによって
検挙された
人員が、
人員も大体同じぐらいの
人員でございますが、それだけの
事犯が毎年われわれの
取り締まりの網にかかっているわけでございます。しかし、この行為は非常に隠密のうちに行なわれ、巧妙な手段によって、それから非常に国際的な
組織によって巧妙に
実施されておりますので、私
どもの、
警察その他のすべての
取締機関でございますが、そういうもののすべてにかかってくるものは、実際に行なわれているもののおそらく何分の一か、何十分の一かにすぎないだろうというふうに考えられます。それほどなかなか巧妙な
組織と
方法によって行なわれているわけでございまして、これに対する
取り締まりの強化ということが非常に必要になってくるわけでございます。
一方、
国内の
麻薬濃厚地域というものは
大体大都市でございまして、関東におきましては、
東京、
神奈川県の
横浜、それから
愛知県におきましては
名古屋地域、それから
近畿におきましては大阪、
兵庫、
神戸地域でございます。それから
九州におきましては
北九州、小倉を
中心とする
北九州、そういうようなところが
麻薬の私
ども濃厚地区というふうに呼んでいるわけでございます。そういうふうなところには
麻薬の
密売が行なわれ、それを購入することによって
中毒患者が
相当存在するわけでございますが、私
どものそういう
麻薬取締法違反としての
不正事犯としてあげられる、そこに乗っかかってくる
麻薬中毒患者というものが、大体
年間二千五百人なり三千人
程度のものは
中毒患者としておるわけでございます。そして、これはそのうちで
再犯といいますか、要するに初犯よりも
再犯の数が圧倒的に多いわけでございまして、七〇%
程度だったかと思いますが、そういう高い割合の七、八〇%というものが
再犯でございます。
常習だから繰り返しておる、こういうものは私
どもとしては
麻薬常習者、そういう
常用者、つまり
麻薬中毒患者というふうに考えていいわけです。そういうふうに
中毒患者が
濃厚地域においては
相当数ある。しかし、そういう捜査の網にかかってくる者は二千人ないし三千人ということでございまして、これも先ほど申し上げました
麻薬の
不正事犯の実際の数が、私
どもの
推定によって、
相当現在
違反の事例としてあがっているもの以上にある、同じ
意味におきまして
中毒患者の数も、私
どもの行政のそういう
組織の中にひっかかってくる、
活動の中にひっかかってくるもの以外に
相当の数があるのではないか。また、それは最近
相当増加しているのではないかということは、
検挙の
事犯なり、あるいは
検挙者も年々増加しておりますので、そういうものから
推定ができるわけです。これは大体私
どもとしては、それの十倍ないし二十倍くらいの
麻薬常用者がいるのではないかというように
推定をしているわけでございます。確実な
資料はございませんので、どの
程度かということは言えませんけれ
ども、
警察なり私
どものほうで
推定いたしておりますのは、
年間のそういう私
どものいろいろな
取り締まり活動の線に乗っかってくるものの数の大体十倍ないし二十倍のものが存在するというふうに考えられているわけでございます。先ほどの
横浜なり
神戸地域というものは、それの
一つの
現象として現われてきているわけです。
こういうものに対して、それじゃどういうことをやっているかということでございます。それで、
中毒患者につきましては、現在
精神衛生法におきまして、ほかに
麻薬取締法によってまだそこまでの
法規の
整備はできておりませんので、現在の
法規としては、
精神衛生法による
措置入院の
規定を援用いたしましてこれを収容しております。それは結局一般の
精神病者が、自己または他人に危害を及ぼすおそれのある場合は
強制入院させることができるという
規定が
精神衛生法にございますので、
麻薬の
禁断症状を起こしている場合は、それと同じ
症状なり
一つの行動が出て参りますので、それを援用いたしまして
入院をさしている、そういう
状態でございます。これは最近
相当のものが
入院をしておるわけでございますが、何しろ
精神病院そのもの自体が非常に
ベッドが
不足しておりますので、
入院をさせようにも、なかなかその本来の
精神病者の
入院にも十分ではないという
現状で、そこに、それよりももっと
入院患者としてはたちの悪い、
病院の言うことを聞かない、その
病院の規則に従いにくい
患者を引き受けるということは、非常に歓迎されない
現状でございます。残念ながら、実際はそういう
状態でありますので、なかなかその辺の
結びつきがうまくいっていない。そういうことで、昨年度からどうしても
麻薬患者を
専用に収容できる
ベッドがほしいということで、私
どものほうで
予算を要求いたしまして、国立で作るのが一番いいわけでございますが、なかなかそういうことが一気にできませんので、現在、昨年と今年の二
年間にわたりまして、大体二百
ベッド近くのものを
財団法人なり県なりに国が
補助をいたしまして、そして
麻薬中毒患者専用の
ベッドを県なりそういう
法人が作る、それに対して国が
補助するという
方法で現在出発しておるわけでございます。現在は
福光会という
財団法人の、これは
精神病院の
経営等をやっておって、
船橋にそういうものの
総武病院というものがございます。そう
福光会なり、それが千葉県の
船橋と、それから
兵庫県の
垂水——有馬温泉の奥でございますが、
垂水に現在百床でございますか、
船橋のほうが五十床、それから
垂水のほうは百床の
麻薬患者専用の
ベッドを今作っております。現在
計画なり工事中のものといたしまして、
東京の桜ケ丘の
病院に五十床、それから
神奈川県は、先ほ
ども申し上げましたように、非常に
濃厚地区として、
県自体も
横浜地区で困っておられる問題でございますので、今年県費を計上いたしまして、県立で県営の
麻薬中毒者の
専用の
病院を作るという
計画ができております。現在敷地はもう確定いたしまして、設計をされ、近く着工の
計画になっているかと思います。これに対しては、もちろん国がそれに対して
補助をするというように、現在まあそういうことでございますが、しかし、これにいたしましても、
常習者の
麻薬中毒患者 われわれが
取り締まりの
活動上把握できております
麻薬中毒患者も、先ほど申し上げましたように、二千名ないし三千名の者がおる。そういう者は、これは
禁断症状が起きたら必ず危険な
状態になるわけでございますが、そういう顕在している者の数を見ましても、現在の
ベッドは
不足でございます。で、来年の
予算におきましては、これに対して
ベッドを拡充するということが第一の問題であると考えまして、これに対する大幅の
予算要求をいたしたいと私
どもは考えておる次第でございます。で、これは単に現在
中毒症状を持っておる
患者の収容というだけではなくして、
取り締まり活動と実は密接な
関係があるわけでございます。それで、
横浜の
日出町なり
黄金町周辺に、そういういわば
麻薬の最終的な
中毒患者が
注射をしますようにできている一包の包みがございますが、これが大体六百円ないし千円ぐらいの相場で売られておるのでございますが、そういうものを
日出町なり
黄金町なりに、大体夕方くらいに
——私も一、二回ぐらいそこに見に行ったことがございますが、
密売をしているようでございます。なかなか現認できませんが、見に行きますと、あれがそうだというようなのが右往左往しておるわけでございます。これは今に始まったわけではなくて、ここ両三年来、もっと前からそういうような者が集まり、だんだんそういうような
地区がいわば一種のやみのマーケットのようになっているわけでございます。それに対して
神奈川県の
警察なり、私
どもの
担当でも
横浜に分室を置いてそういう者の
取り締まりをやっておるわけでございます。そういう者を、協力し、あるいは単独で何回かそれの手入れを
計画したのでございます。しかし、これは第一に困るのは、それをつかまえても収容するところがないわけでございますので、
専用の
ベッドを作るということは、結局
中毒患者の更生ということと、それから
麻薬取り締まりを
実施する上においても、どうしても必要になってくる。
両方の
意味を持っているわけでございまして、現在まではどうしてもその辺がうまくいきませんで、強力にそういうものの排除をする。それだからできないというのもちょっとおかしな理屈ではございますけれ
ども、現実問題として、さて全部つかまえて、それをどこに一体収容するかというような問題が
一つございます。それから、そういう者の中には、必ずしも全部がそれほど強い
中毒患者でもない。ただ
中間に立って、最終的な
中程患者はどこかにひそんでいて、そこに売りつける
中間者もいる。そういうふうなものの
取り締まりに関して、なかなか現在の
法規というものがうまくマッチしていない点もございます。たとえば
麻薬取締官は、
警察官と同じ
一つの
権限を
麻薬の
取り締まりについては付与されておるわけでございますが、しかし、
職務尋問の
権限がないわけでございますので、なかなかそういうところに入って行っても、
警察権の執行について十分な
活動ができないというような面もございます。それから、
中毒の
症状が明らかに起こっている者は、これは
中毒患者として認定もできるわけでございますが、手を見たりなんかしますと、明らかにたくさんの
注射のあとがあって、これは
麻薬の
常用者だということが
しろうと目にはわかっても、それを医学的に証明するというようなことがなかなかむずかしい問題でございます。また、そういうものが証明されて、それをもとにしてそういうものを
強制入院なり
検挙なりするというような点についての
法律的な
規定も現在十分ではないわけでございまして、そういう点も、現在、次の
国会等におきまして
麻薬取締法の
法律の
改正として私
どもが考えておるわけでございます。
大体
中毒なり
取り締まりの
状況は以上のようでございますが、たまたま今日は、昨年の一月から三月までニューヨークで
麻薬に関する
国際条約は、現在
九つの
国際条約があるわけでございます。
日本もこれに対して加盟をしておるわけでございますが、そういう
条約が必要によって今までだんだんとできたという
意味もありますが、
九つも
麻薬に関する
条約があるのでは非常に複雑でございますから、これを単一化するという動きが数年前からあって、昨年ようやくそれの
条約の案が一応でき上がりまして、そして
日本もそれに対して、その当時私
どものほうから代表が、その
麻薬の
単一条約制定のための
委員会にも出席したわけでありますが、一応
条約の案文ができまして、現在五カ国ぐらいのものが
批准をしております。
日本は、ことしの四月ごろその英文の成文が外務省に届きまして、現
在日本文に正式に翻訳する準備を進めておるわけでございますが、それができましたら、おそらく次の
通常国会において
条約案の
批准がなされると思います。そういう国際的に見まして
麻薬に関する
条約の
整備を今なされているときでございますので、私
どもも、そういうことで、
国会等においても、この次の
国会等においては
条約批准の審議がなされると思いますが、そういう
国際条約の
整備と関連いたしまして、それとの
関係においても現行の
国内法規の
改正が必要でございますので、そういうものとあわせまして、ただいま申し上げました
麻薬の
取り締まりなり、
中毒患者対策でいろろいと私
どもが困っております点と
両方合わせまして、
麻薬取締法なり、その他の
麻薬関係の
法律の
改正を、この次の
通常国会、つまり
条約案が
批准されますと同じ国会において御審議をお願いしたいと思いまして、ただいま事務的に検討をしている段階であります。
大体そういうような
状況になっておりますので、一応御報告申し上げます。