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1962-05-05 第40回国会 参議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月五日(土曜日)    午後一時三十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     相澤 重明君    理事            岡村文四郎君            佐藤 芳男君            鳥畠徳次郎君            林田 正治君            大森 創造君    委員            上林 忠次君            岸田 幸雄君            小林 武治君            田中 清一君            谷口 慶吉君            仲原 善一君            温水 三郎君            増原 恵吉君            谷村 貞治君            木下 友敬君            奥 むめお君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君   政府委員    法制局長官   林  修三君    防衛庁経理局長 木村 秀弘君    防衛庁装備局長 久保 忠雄君    調達庁長官   林  一夫君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    大蔵省主計局司    計課長     佐々木達夫君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  彌君    農林政務次官  中野 文門君    農林大臣官房経    理課長     筒井 敬一君    通商産業大臣官    房長      塚本 敏夫君    通商産業大臣官    房会計課長   赤澤 璋一君    建設大臣官房会    計課長     三橋 信一君         —————    会計検査院長  芥川  治君   事務局側    常任委員会専門    員       池田 修蔵君   説明員    日本専売公社副    総裁      大槻 義公君    日本国有鉄道監    察局長     村松 敏雄君    日本電信電話公    社総裁     大橋 八郎君   —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十四年度一般会計歳入歳出決  算(第三十八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和三十四年度特別会計歳入歳出決  算(第三十八回国会内閣提出)(継  続案件) ○昭和三十四年度国税収納金整理資金  受払計算書(第三十八回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和三十四年度政府関係機関決算書  (第三十八回国会内閣提出)(継続  案件) ○昭和三十四年度国有財産増減及び現  在額総計算書(第三十八回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和三十四年度国有財産無償貸付状  況総計算書(第三十八回国会内閣提  出)(継続案件) ○昭和三十四年度物品増減及び現在額  総計算書(第三十八回国会内閣提  出)(継続案件) ○小委員長報告継続調査要求に関する件   —————————————
  2. 相澤重明

    委員長相澤重明君) これより決算委員会を開会いたします。  昭和三十四年度決算外三件を一括して議題といたします。  本日は締めくくりの総括質疑、討論、採決を行ないます。  質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐藤君。
  3. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 池田総理が本日の総括質疑にお見えになりましたので、私は最も重大な、捨ておくことのできない問題について、きわめて簡明率直に質疑を行ないます。  私ども決算審査を通じて痛憤にたえないことは、予算執行に当たる政府並びに政府機関職員が、国民の汗と涙の結晶である公金を尊重し、保護するという精神に欠け、年々同じケースの不正不当の経理が跡を断たず、それに加えて現金または物品が盗まれたり、紛失したり、損傷したりして国損を招いていることでございます。総理が御病気を押して御出席になっていますので、短時間で切り上げるべく数字は省略いたしますが、私は、昭和二十五年度以降のこれらの件数と金額の数字を見て、実にあぜんたらざるを得ないものがあります。しかも、会計検査院の指摘せるこれらの数字は、文字どおり氷山の一角でありまして、御承知のように、会計検査院実地検査個所数において、毎年わずかに一割程度しか行なっていない実情から判断すれば、国損数字は真に思い半ばを過ぐるものがあるのでございます。私は、まず政府最高責任者たる池田総理のこの事実に対する御感想を承らなければならぬとともに、これに対する処方せんを伺いたいのであります。  漏れ承るところによりますというと、法務省においては刑法の改正を企図され、その中に公金に関する犯罪につきその範囲を拡大するとともに、これを重きに処すべく目下立案中と聞いておりますが、それも必要のことには違いありませんけれども、もっと抜本的な処方せんをお持ちにならなければならぬ時期に来たっているものと思うのであります。まず、この点についてお伺いをいたしたいのでございます。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおり、財務行政執行にあたりまして、会計検査院より毎年多数の批難事項が出ておりますことは、お話のとおりでございまして、まことに遺憾に存じているのであります。その原因はいずこにありや。私はやはり綱紀の弛緩、順法精神の衰え、また会計事務その他につきまして不なれな点等々が原因いたしていると思います。したがいまして、順法精神の高揚と、綱紀粛正をはかることがその根本であります。と同時に、私は、やはり職員の修練と申しますか、訓練をやると同時に、指導、監督に今後とも一そうの力を入れていきたいと考えております。毎年のことでございますが、ただ数年間ある程度件数が減っていることは、せめてものあれでございますが、決して油断のできない、また安心のできないことでございますので、お話の点を十分考慮いたしまして、従来にも増して努力していきたいと思います。  また、今御審議願っておりまする行政制度改革等も早く案を得まして、そして行政全般につきましての制度につきましても検討を加え、批難事項の絶滅を私は期したいと考えているのであります。
  5. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 民主政治思想の発達によりまして、予算に対してもさることながら、自分たちの納めた血税がいかに使われたかという点に、国民がだんだんと関心を持つようになって参りました。また、この風潮を高めるように向けることが民主政治家の務めでなければなりません。しかるに、不幸にして歴代政府並びに国会は、決算を重要視せず、あまつさえ、これを軽視せんとする傾向のありますることは、私のつとに遺憾といたしておるところでございます。ただいま総理がお答えに相なりました以外に、決算を尊重するという風潮を鼓吹するということにつきましては、おそらく総理も御異論のないところであると思うのでございますが、そういたしますと、決算を軽視せずこれを尊重するというためのやはり処方せんが必要と相なってくるのであります。私は、この点をお伺いする前に、まず私の処方せん総理にお示しいたしたいと思うのであります。それは、今日まで行なわれておる決算提出方式、すなわち、報告方式を改めて議案方式とすること、これが私の結論であります。この問題は、相当法制上の理論闘争にもわたり、また明治憲法制定当時の事情等にも触れねばなりませんので、総理のこの方面の有力なブレーンでありますところの林法制局長官と一応一問一答を試み、その上で総理の御所見を承ることといたします。  報告議案利害得失から見ても、決算報告案件として取り扱う結果として、各院は別々に議決いたしますから、国会単一意思議決とはならず、政府に対する国会監督作用が区々となり、政治的効果が従って薄い。ことに、各院ごと意思が異り、ときに矛盾いたしまして、そのために政府は適従するところに迷うことさえなしとしないのであります。これを議案として取り扱うならば、うらはらの効用を発揮して私は非常な好結果をもたらすものであると思うのであります。この利害得失について林君はどうお考えですか、お答え願いたいと思います。
  6. 林修三

    政府委員林修三君) この決算について、国会にいかなる形式で提出するか、あるいはまた国会においていかなる形で御審議になり、あるいは御意思をおきめになるという問題は、実はこの現憲法下においての国会になりましてから、かねて衆参両院においていろいろと御議論のあったこと、また現在も御議論継続されていることは私よく承知しております。しかし、私どもといたしましてもなかなか簡単に結論を出しにくい問題でございまするけれども、御承知のように憲法第九十条、これは旧憲法と大体同じような形で出てきておりまして、内閣決算会計検査院検査報告とともに次の年度に国会提出しなければならないということをきめておるわけであります。したがいまして、つまり普通の予算とか、あるいは予備費事後承諾とか、そういうような形で国会議決を求めるということを憲法がはっきり要請しているわけではないわけであります。それで、旧憲法以来決算につきましては、報告と申しては多少語弊があるかと思いますが、要するに、議決を求めるような議案としては出しておらないという格好になってきておるわけであります。これにつきましては現在、旧憲法時代からでございますが、衆議院と旧憲法時代貴族院、今の参議院がそれぞれにその決算をどう扱うべきかということを議決されているというのが今の現状でございます。これを議案として、たとえば政府決算についての御承認を求めるというようなことを議案として出すことが今の憲法第九十条の直接の要請からは出てこないと思います。しかし、そういう形で出すことが憲法違反かどうかということになりますと、これは法律論としては両論立つことだと実は思っております。必ずしもどっちかでなくてはならぬということではないと私は思います。しかし、これを議案として出した場合に、はたして利害得失がどうであろうかという問題になりますと、たとえば議案扱いについての衆参両院関係について、やはりこれは憲法には国会法との関係でいろいろの法律的な疑点もございます。また、いわゆる決算というものは内容から申しまして、個々の問題についてこれはいいとかこれは悪いというようなことが相当多いのじゃないか。これをまとめて、たとえば予算を名目的に一括していいとか悪いとかいうような性質のものではかえってないのじゃないかという気もいたします。つまり、まとめて決算を承認するとかしないとかいう議案の形で出すと、おのずからそういう形になる、議決になるかと思います。そういうことがはたして適当であろうかどうかという感じもしておるわけであります。そういう点で必ずしもこれは議案として出すことが、法律的にもいろいろ問題がございますし、実際的にも相当慎重な考慮を要することではなかろうかと思うわけであります。  それからこれは蛇足でございますが、今のような形で両院にそれぞれ内閣が出しております際に、現在の国会法のもとにおいて、衆参両院が御連絡によって国会意思を統一するような方式も、これも全く不可能ではないんじゃないか。この点私ども差し出がましいことを言う筋ではございませんけれども、そういう気もしておるわけであります。そういういろいろの点がございますから、直ちにこれを議案として出すことについては、私は相当のちゅうちょをいたすわけでございます。
  7. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私が法制局長官にお伺いいたしたのは、私が先ほどあげましたような事柄について、その利害得失をどう考えるかということをお尋ねしたのでございますが、憲法第九十条の問題にまでお触れになって——もっとも私が申しました利害得失の問題は、これは議案説報告説を割り切るところの正宗の名刀ではないと私は思っている。衆議院等論議においてその利害得失だけが論議の中心と相なっている。そのために焦点結論に導く筋からはずれておった観さえ見受けられておったのであります。すなわち、本問題の焦点は、条理の上から申せば、日本国会のように独立会計検査院から報告を受けるというあり方の場合は、当然議案扱いとして国会完結権が与えられるべきものであります。したがって、私は条理の上からは、日本必然議案扱いにすべきであって、何人もこれに異を唱える理由なしと断言さえするのであります。しかし、これを実行に移す場合の結論はまたおのずから別であって、そのときの政治情勢なり社会事情によって、報告扱いにするほうが適当であるという場合もあり得ると思うのであります。明治憲法制定の場合も、伊藤博文井上毅伊東巳代治金子堅太郎の諸氏が、起草の際に条理に基づき積極的に議案説をとったのであります。しかし当時の、不完全な予算制度、不完備な政治機構揺籃期社会事情等を憂慮したる顧問格のモッセやロエスレルなどのアドバイスによって一応報告説をとることになったのであります。しかしながら、これは明治時代の特殊の事情下にあった一時期においてとられたる便法にすぎなかったことを忘れてはなりません。翻って世界に口を移しまするならば、英米のごとく国会自体会計検査院を手足として、会計検査をやっておるところでは、これはみずからやったことでありますから、当然報告扱いになっておりますが、ドイツ、フランス、ベルギー、イタリアのごとく検査院独立機関であり、これが報告を出してくるという建前の国におきましては、いずれも議案扱いとして国会完結権を与えているのであります。しかして日本の場合は、その建前において後音に属しているにかかわらず、その取り扱いにおいては前者に屈するという、まことに筋の通らぬものとなっておるのでございます。議案説報告説との利害の比較によってきめるべき性質のものではなく、条理上当然の帰結として議案説でなければならない。一方議案説を否定してまで報告説をとらなければならぬ事情が、今存在するやいなや検討を行なって最後的に結論を下さるべきであります。  現在はすでに明治時代と違って、当時のような事情は私としては発見できないのであります。しかして、今こそ本然の姿に立ち返って、条理を貫いて決算議案とすることにより、国会における決算取り扱いにすっきりした筋を通すべきときであると思うが、この点林さんどうですか。
  8. 林修三

    政府委員林修三君) この席で佐藤先生理論闘争するつもりはもちろんないわけでございますけれども、これははたして議案的な取扱いがいいか報告的な取り扱いがいいかという、法文を離れた一つ利害得失論がまずあるわけでございます。もう一つ、今おっしゃいました決算制度、あるいは検査院というものの制度あり方からくる一つ条理的、筋道的な御議論、それから憲法の第九十条等の解釈からくる議論、いろいろこれは論点があるわけであろうと思います。憲法第九十条から言えば、先ほど申しましたようなことで、今のような形で出すということについては、別にこれは疑問の点は私はないと思います。直ちにこれを議案として出すことを、違憲とするほどの問題ではないことはそのとおりだと思います。  それから利害得失については、さっきちょっと申しませんでしたけれども、結局問題点は、国会としての意思一つにまとまることが、非常に政府に対する監督作用としていいということが、議案としての考え方の根底になるかと思うわけでございます。確かにその点はあるとは思うのでありますが、ただ決算というものの性格から申しまして、これは予算とは問題が違うわけでございまして、予算政府に対して支出権限を与えるということでございますけれども、したがって全体としてこの程度支出はよろしい、あるいは悪いということで簡単にきめられる問題と思うわけでございます。決算になりますと全体としてのいい悪いという判断、これはすでに過去においてできた事実でございまして、この事実の評価の問題、これを全体として評価するのがいいのか、あるいは個々的な問題として評価するのがいいのか、そこらにやはりいろいろの問題点があるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。この点は、今のように国会において各院で御自由と申しちゃ、語弊があるかもしれませんが、いろいろな点について、これはいい、これは悪い、したがって全体としてはどうだというような結論をお出しになるほうが、私はむしろ利害得失から考えていいのじゃなかろうかというふうな気がいたしております。  それからもう一つ筋道論でございますが、会計検査院制度、いわゆる会計検査制度国会それ自体権限、あるいは会計検査院というものが行政機関として一つあって、これらの報告を求めるについて国会が御審査になる、そういう制度のもとに、これはどうあるべきかという筋道論でございますが、これはお言葉を返すようでございますが、これから直ちに議案をとるか、報告をとるかという一筋道で出てくる問題じゃないのじゃなかろうか。どちらの制度にいたしましても、利害得失を考えてきめていくべきではなかろうか。憲法九十条から言えば、大きく言ってこれは両方の説が立ち得るわけでございますが、その場合に、やはり今検査院制度はこうだから、こうでなくちゃならないということで、簡単に割り切るような問題ではないんじゃなかろうかという気が実は私はいたしております。
  9. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は先ほど来申し上げましたように、利害得失は小さい問題である、それよりも条理の上に立って判断すべきであると思う。そうすれば、各国の例にもありまするように、会計検査院から報告を受けて、国会審査をする日本におきましては、当然議案説でなければならぬ。ただし、いろいろ政治情勢社会事情等にかんがみまして、いつ踏み切るかということは、これは議論があろうと思うのであります。私は林長官が納得されるまで、実は一問一答を繰り返したいのでございますが、林長官はこれを忌避されました。忌避された以上は、遺憾ながらお相手にはできないのでありますが、ただ林長官のただいまの御答弁の中に、すでに現在こうして、しきたりとしてやっておるのであるから正しいんだとおっしゃるが、現存するものは真理なりという昔の曲学阿世の学者の言葉を思い出します。かかる亡霊にとらわれているようなお言葉を今日拝聴することは、きわめて遺憾にたえないのであります。これを要するに、林長官は、憲法第九十条には提出方式が規定されていないのを率いとして、その城に立てこもっておいでになる。私は林長官が率直に、「私も条理の上からは議案扱いにすべきだと思いますが、今日の政治情勢社会事情からみて、今にわかに結論を下すべきかどうかの判断は、総理の御見解によると思います」というくらいの御答弁が実はほしかったのでございますが、しかし縁なき衆生と考え、これ以上あなたとは問答はいたしません。ただ、あなたは法制局長官なんだから、もう少し御勉強が願いたい。  それでは最後に総理に御所見を伺います。私と林長官との問答を御熱心にお聞きを賜わっておったことを、まず感謝をいたすのでございます。総理明治憲法第七十二条制定いきさつと、私の主張は十分翫味して下さったものと思いますが、新憲法第九十条も明治憲法第七十二条とほとんど同じ条文で、決算国会提出すべきことだけが規定されて、それに対する国会取り扱いが規定されていないのであります。それで明治憲法時代取り扱いが、そのまま踏襲されていると思いますが、新憲法制定いきさつを見ますると、天皇の地位とか、基本的人権の尊重、戦争の放棄、財政民主主義とか、こうしたものに議論が集中されて、第九十条の決算関係条文は、十分論議されなかったと聞いておるのであります。したがって、第九十条の条文解釈するにあたっても、その条文解釈するにあたっても、その条文だけからでなく、遠く明治憲法制定いきさつに思いをはせつつ、財政民主主義を強調する新憲法精神から押して判断さるべきものと思います。新憲法下においては、財政の運営に対する国会統制権は非常に強められ、いわゆる財政民主主義といわれておるのでありまして、かくて国会議決により成立した予算関係法律執行が、国会意思を尊重して忠実に、かつ効率的になされたかを判断し、これに対する国会意思を決定するには、予算法律案議決と同じ取り扱いにして、決算を承認しあるいは不承認にする、すなわち議案扱いにすることが新憲法精神にも合致するものと私は思うのであります。しかるに条理を無視し、新憲法精神に反逆して、いつまでも決算報告にとどめておくことによって決算が軽視され、予算編成並びに執行がお粗末となり、国民血税がむだに使われるのであります。このようなことが財政民主主義を強調しておる現憲法下に断じて許さるべきではない。ここに総理が御決断をされれば筋も通り、また冒頭に申し上げましたように、浜の真砂のごとく尽くるところを知らない不正、不当、不注意、乱費、紊乱、むだづかい、独善の是正にも貢献し、民主政治を軌道に乗せることにも寄与するであろうことを私は確信するのであります。もちろん報告方式議案方式に改めること自体は、国会みずからが決定すべき問題でありますから、いずれ本委員会の決定を見ることができますれば、衆議院委員会にも呼びかけ、政党会派をこえて両院議決を得べく努めたいと思いますけれども、このことは政府提出手続にも関係することであり、政府国会とが協力して改正に踏み切ることが望ましいと思いまするので、この際あえて総理の御所信を承っておきたいのでございます。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 決算審議にあたりましての報告方式によるか、あるいは議案方式によるかという問題につきましては、私も政府委員時代大蔵大臣当時から常にお聞きしておる問題でございます。私は条理の点から申しますると、佐藤さんの条理は通っておると思います。また今までの日本のやりきたり等から申しますると、憲法第九十条の解釈で、今までのやり方が悪いというわけのものでもございません。そうしてまた、それならば憲法第九十条を改正せずに、議案方式をとれるかという問題になりますと、私は九十条を改正しなくても議案方式はとれると考えております。しかし、とった場合におきまして、議決方式両院でどういうようになっていくかという問題等々いろいろ研究すべき問題があるのでございます。したがいまして、私はこれは国会におきましても御研究を願うと同時に、内閣におきましても研究をすべき問題だと日ごろから考えておるのでございまするが、遺憾ながらまだ結論が出ないことをお詑びいたしたいと思います。しかし、こういうことを研究する間におきましても、最近の決算委員会論議が、予算編成とかあるいは予算執行に皆さんの御議論が非常に参考になっているということは否定できない問題でございます。私はこの点、決算委員の方々の御努力に対しまして敬意を表しますと同時に、今後におきましても、この決算を通じて予算編成あるいは執行、あるいは予算行政効果経済的効果等につきましても、十分御審議、御指導願うようにお願いいたしたいと思います。したがいまして、議案方式にするか、今の報告方式にするかということの研究は続けるとともに、やはり先ほども申し上げましたように、予算編成執行あるいは行政効果経済効果等につきましても、ここの論議が稗益するようお願いいたしたいと考えております。
  11. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 事に処してきわめて慎重な御態度の総理から、私は今直ちに右か左かの御返答を得ることは、正直のところ実は期待いたしていなかったのでございますが、しかも非常に本問題に対して熱意あふれる御答弁に接しましたことは、私の感謝おくあたわざるところでございます。くどいようでございますが、この議案方式の問題は、条理の上からはきわめて明瞭な事柄であり、慣行にあぐらをかいて安きにつかんとする者を除いては、反対はないわけでございます。ただ政治的、社会的の情勢の判断によって、いつの時期に踏み切るかに、多少の意見の相違はあるかとも思います。私は池田総理の英知と経験が政治経済の上に大きく寄与いたしていることを、平素感謝をいたし、池田総理の武運長久——いや政運長久をこいねがう者でありますが、もしここで踏み切らるるならば、それこそ名を竹帛に乗るることとなると思うのであります。  どうか、すみやかに御研究と御考慮の上、あなたの総理の時代に決意されんことを、私は心から希望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  12. 大森創造

    ○大森創造君 私は、去る三月二十四日の予算委員会総理出席を要求したのでございますが、ちょうど衆議院のほうにお出かけになって出席を得られなかったので、水田大蔵大臣にかわって御答弁を願ったのでございますが、なお不満足でございますので、きょうあらためてお伺いいたしたいと思います。総理は時間がないそうでございますので、なるべく総理のほうに繰り上げて御質問申し上げたいと思います。その前に、二、三建設大臣、防衛庁長官にお伺いいたします。  いわゆる継続費の問題について、建設省では昭和二十七年あたりからずっと継続費の予算を使って仕事をやっておりましたが、それを昭和三十一年か三十三年かにやめておりまして、国庫負担債務行為というものに切りかえております。昭和二十七年当時に財政法の復活によって継続費というものが出て参りましたが、この構想をお出しになりましたのは、建設省ですか、大蔵省ですか、それともその当時の大蔵大臣池田総理でございますか。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の気持では、継続費というものが予算編成上必要であると感じまして、多分昭和二十八年度の予算で、それが財政法を改正されて盛られたと思います。しこうして、その必要は公共事業費の問題から起こったと記憶いたしております。
  14. 大森創造

    ○大森創造君 建設大臣にお伺いしますが、建設省は今継続費の、今年度なら今年度の単年度割りの予算審議しておりますけれども、いわゆる今総理のお答えになりましたように、継続費を復活したゆえんのものは、公共事業費について、多年度を要する、たとえば関門トンネルとか、あるいは多目的ダムというふうな種類の仕事を押し進める上において必要であったから継続費を使ったということでございますが、それをなぜおやめになりましたか。
  15. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ただいま総理からお話がございましたように、昭和二十七年度かに継続費の制度ができまして、建設省所管としてはダムについて継続費の制度をとってきたのでありますが、昭和三十二年に特定多目的ダム特別会計法というのができまして、この特別会計が設置されますと同時に、新規の事業は継続制度をとらないことになったのであります。特定多目的ダム特別会計法ができたということもありますが、同時に継続制度をとっておりました当時の実情を私ども聞きますと、やはり継続費で予算を組みますときには、あまり豊富に組むということもいろいろ補償の問題、その他関連した方面に影響がありますので、できるだけ内輪に見積って組む。ところが、実際に実施してみますというと、水没地の補償などは綿密に調査をし、実施を進めて参りますと、当初予定したよりは非常に金額に相違が起こってくる、あるいはダム・サイトなどについては事業の進行に伴いまして、基盤との関係で基礎工事のやり方が変わってきて、経費に大きな移動を生ずるというようなことで、継続制度をとった時代のことを聞きますと、せっかく継続制度はとっておりますが、きまった継続費の年度割りなり金額の配分が年々変更を加えなければやっていけないということで、実際上変更があったようであります。そういう関係継続制度一つの理屈はあるので彫りますが、実施上非常な不便があるということが一つと、もう一つは特別会計ができまして、その特別会計でまかなうようになりましたので、むしろ継続制度よりは債務負担行為をつけまして、事業に支障のないように進めていくほうがよかろうと、こういうことになって三十二年から変わってきたようであります。
  16. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 大森さん。総理大臣は二時半ごろまでにということでありますから、総理大臣に。
  17. 大森創造

    ○大森創造君 総理にお伺いいたしますが、第十三回国会における、あなたが大蔵大臣当時で、この継続費の問題についての質疑を見まするというと、継続費はもっぱら公共事業に使うんだ、昔のように軍艦は作らないんだという御答弁を再三されております。池田発言によると、継続費で絶対軍艦を作らぬということをずいぶん念を押して言われておりますが、これはどういうことでございますか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答え申し上げましたごとく、継続費の事項を財政法に盛りますときには、公共事業費関係で必要性を認めて設けたのでございます。しこうして、その継続費の種類あるいは期限等の問題につきまして、いろいろ議論があったと思います。そういう問題から過去において継続費はおおむね軍事、ことに海軍のほうの戦艦その他の大型艦に使って、大型艦のために継続費が非常に多く用いられた関係上、軍艦を作るようなことはないか、こういう御質問があったと記憶いたしております。私は昭和二十七年一月だったと覚えまするが、その当時は今の防衛庁も何もできておりませんし、海上警察隊もない、軍艦なんか作ろうということはその当時としては考えも及ばぬことでありました。したがいまして、私は今軍艦を作ろうというようなことは考えておりませんと、こう答えたのであります。あのときは何人も軍艦を作ろうということを考えるような状態でなかったということは、その当時の事実が証明していると思います。
  19. 大森創造

    ○大森創造君 わかりました。大体総理はそうお答えになるだろうと私も予想しておりました。しかし私が当時の記録を見ますると、当時の東大教授の大内兵衛さんや、現議員である木村禧八郎さんがそのことをくどく念を押しておられます。昭和二十七年という年は講和発効の年でございます。それから予備隊が保安隊に切りかわった年でございます。だからですよ、その当時の審議で木村さんや大内さんがしきりに問題にしたことは、今総理がお答えになりましたように、継続費というものは戦艦大和や陸奥を作ったとか、あるいは八個師団作ったとか、いろいろなことをやりましたけれども。そういうものを継続費でやったのだ、だけれども今度はそういうことはやりませんということをあなたは当時お答えになっておられる、くどいようにお答えになっておられます。だけれども、今私が申し上げましたように、大内さんや木村さんの発言は、講和発効の年だ、予備隊が保安隊になったのだ、そういう時期だから、客観情勢の変化によって、あなたは現在そう言っておられまするけれども、この継続費というものによって、当座の間は、二、三年の間は多目的ダムだとか、あるいは道路の建設なんかに使っておられますが、昔と同じにこの継続費によって軍艦を作る時代が来るのではありませんかということを、その点を執拗に当時の大蔵大臣のあなたと問答されております。客観情勢の変化ということが当然昭和二十七年に予想された。今お答えになったようなことをその当時の質問者は予想されて、情勢の変化がありますから、継続費というものをこのほうにお使いになりませんかということを——私はここに速記録を持って来ておりますが、そういうことは絶対ないとお答えになったのはどういうわけですか。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお話を申し上げましたごとく、昭和二十七年の初めごろ、日本が軍艦を作ろうというようなことは普通の人は私は想像していなかった、私も想像しておりませんでした。したがいまして、その当時の状況によりまして、ただいま軍艦を作ろうということは私は考えておりませんと、こう答えたのであります。
  21. 大森創造

    ○大森創造君 昭和二十八年度ですね、これは今議論をした十三回国会昭和二十七年。昭和二十八年度に新造艦計画が日本政府によってなされております。これによって戦後アメリカからそのときまで借りていた老朽艦艇群の中に初めて国産の新艦艇が多数加わることになりました。この今行なわれております第二次防衛力警備計画中の造艦計画にも匹敵するところの一大造艦計画が当時なされておりました。この構想が今の問答のありました翌年の昭和二十八年です。この構想はそもそもいつから生まれたものでございましょうか。私はこれを私なりに考えてみますると、これは突然雨後のタケノコのようにわいたものではない。いやしくも艦艇を作るというのですから、この艦艇の設計だとか、あるいは戦後のブランクを埋めるために長い修得期間が必要であっただろうと思います。これは防衛庁関係の今までのいきさつを見ても、憲法をずっと拡大解釈をして、昭和三十四年ごろになりますと、核武装も持てる、自衛のためならば核武装も持てますということを岸総理大臣や当時の防衛庁長官がお答えになっているような情勢の変化がございますが、そういうことから考えてみても、昭和二十八年にそういう造艦計画があった、当然修得期間が長くその前にあっただろうと思います。またそういうことが予測できないような池田さんではないだろうと思います。さらに、国内の当時の生産設備がどのような現状であるかということだって当然把握しておられる筋合いのものだ。艦艇の国産が可能か不可能かの調査をして、それをするだけでも簡単なことではないだろう。この見通しはむしろ講和条約の調印以前につけられるべきものではなかっただろうかと思う。事実そうだろうと思う。そういうことを土台にして講和条約が調印されるのでなければ全くめくら判である。将来の計画がないということです。いかがですか。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十六甲、七年、八年ごろに、継続費でなければ作りにくいいわゆる潜水艦あるいは駆逐艦等の自衛艦を作ろうということは、私は政府要路者はだれも考えていなかったと思います。公共事業費以外で、すなわち継続費で軍船と申しますか、潜水艦を作るようになったのは四年後の昭和三十一年だと思います。そういたしますと、二十七年ごろは私は軍船なんかということはとんでもないことだ。ただ海上警備隊のごく雑艦と申しますか、こういうものは、それは海上警備隊ができたときにはあるいは作らねばならぬ。初めはおおむねアメリカ合衆国から借りてきてやろうということでスタートして、自分で作ろうというようなことは、殊に駆逐艦とか潜水艦というものは、こういうものを作ろうということは考えていなかったのであります。私は記憶から申しますると、もしそれ軍艦を作るということを戦後に言ったのは、ソ連のグロムイコ全権が、日本には海軍を十五万トン持たすべし、飛行機を千機とか千五百機持たすべしということを、サンフランシスコでグロムイコがはっきり言っておりました。われわれはそんなことはとんでもないことだと、こう考えて、私自身も昭和二十七年、二十八年に継続費を要するようないわゆる性能の高い大艦を作るというふうな気持は全然持っておりませんでした。
  23. 大森創造

    ○大森創造君 それでは端的にお伺いしますが、当時の問答から見て、私は軍艦を作るのがいいとか悪いとか、今の憲法のもとにおいて甲型警備艇、乙型警備艇を、あるいは潜水艦をこの程度持つことが憲法違反であるとかないとか、社会党は反対、自民党は賛成、そういうことを言っているのではありません。この継続費というものによって軍艦を作りませんというふうにあなたは大蔵大臣のときに再三お答えになっている。ところが、前段申し上げました大内教授や木村禧八郎さんは、いや客観情勢がぐんぐん移行して再軍備の過程にあるのだから、あなたはそう現在おっしゃられていても、継続費というものによって軍艦も作るようになるのではありませんかというふうに、客観情勢の推移を前提にしてあなたに答弁を迫っている。そうすると、あなたは悪人ではないのだから、善人なんですから、そこで私はあなたの気持をそんたくして申し上げまするというと、今お答えのとおりの心境だったかもしれない。だけれども、それにしても、現在公共事業費は全部なくしてしまって、あなたが国会の席上で御答弁になったように、この継続費を復活させるゆえんのものは、昔のように——いま雑艦なんていうようなことをおっしゃいましたが、雑艦ですらこれは軍艦ですよ。あなたは海軍大臣で海軍の武官を相手にして訓辞をしているのではないのですから。専門家によりますというと、雑艦は軍艦の中に入らぬなんていうことが、衆議院予算委員会においては、これは軍艦に入るのか、憲法違反であるとかないとかいうことすら問題にしております。雑艦ですら当時のあなたと木村さんの質疑応答の中に言われていることは、これは軍艦の中に入る。これは頭が悪くないあなたですから、とっくに御理解だと思うのですが、国会を通じて国民に言っていることは、軍艦を作らないということは、これは戦闘をする雑艦であろうと何であろうと、その当時提案している継続費にはよらないということを言明されたのですからね。そうしますと、先ほど私が申しましたように、あなたが善意で当時そういうふうにお答えになったとしても、現在は公共事業費は全部一銭もなくして、先ほど建設大臣がお答えのように、国庫債務負担行為のほうに全部横すべりをさせているのですからね。そして本来の目的はまるきり軍艦を作るほうに集中しているのですからね。だから私は、軍艦を作ることが是か非かということを申し上げるのではなくして、政治の要路にあったあなたとして、それからずっとあなたは大蔵大臣を二期、三期やっておられて、現在総理である。だから政治責任の上からいっても、これはどうしてもこの継続費というものについては誤りであった、間違ったという言明が必要だと思うがどうですか。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、昭和二十七年一月お答えしたことにつきましては、私の当時の気持からいって誤ったわけでございません。ただ三十一年から後に潜水艦の必要が生じ、最近駆逐艦の必要が生じて、継続費を使うように相なったのでございます。当時は予想だもしておりませんから、ただいま継続費によって軍艦を作るつもりはございません、こう答えておるのでございます。そうして今公共事業が継続費を使わずに債務負担行為になった、こういうことでございますが、これは継続費よりも債務負担行為が適当だと、こういうのでやっておるのであって、これは継続費を公共事業に使うべきにあらずとかいう議論ではないと思います。債務負担行為と継続費のことについては御存じのとおりでございます。どちらによるかということは、そのときの政治上の考えでけっこうだと思います。
  25. 大森創造

    ○大森創造君 まあ総理は、そうしてお答えになっておりますが、頭のいい人ならわかりますよ。あなたも頭がいいんだから、きっと腹の中ではおわかりに違いない。当時、先ほど申し上げましたように、継続費で軍艦を作りませんということは、当時善意であったのでしょう。それから昭和三十一年に「おやしお」という潜水艦を作るときになって継続費を使った、これはよろしい、これを責めようとはしない。だけれども、善意であるにかかわらず、昔のように軍艦を作ることになりはしませんか。これは当然しろうとから見ても考えられるのですよ。昭和二十七年の翌年に新造艦計画がずらりと出ておるんですから、あなたが大蔵大臣であって、その当時そういうことを毛ほどもわからぬというならば、よほど将来の見通しがきかない大蔵大臣ということに私はなると思う、そんなはずないですよ。日本が講和条約をして、そして講和条約が発効して、安保条約ができて、あと三年たったらこうなる、四年たったらこうだ、その問答のあった翌年に新造艦計画がずらずら出ている。腹の中でわからないはずはない。わからないなんというのはよほど不明だ。そして私、そのことは、おそらく当時は善意である、そして今も善意であるとして切りかえちゃう。そのことは国会で念を押されておるんですからね。このことは強弁をされたならば、私はこの速記を持って天下に問う。おかしいですよ。あなたの態度としてはこれがほんとうだと思います。たとえば、二、三日前に国電の大事故がございました。十河国鉄総裁が機関士を集めまして、絶対誤りのないようにやるか、誤りございません。池田さんの答弁と同じですよ。継続費は使いません、軍艦に使いません、そうか、誤りをやる気はないですよ、機関士は。大蔵大臣のあなたも誤りをやる気は毛頭なかったのです。事故が起きた、軍艦を作っちゃった。そのときのあなたの態度はどうか、責任があるでしょう。今の造艦計画は全部だめですよ。こういう当時のあなたの言明を、今のような御答弁で済ませるなら、国会はあってもなくても同じだ。このことについては、あなたはもう少しすなおになりなさい。私が社会党云々にかかわらず、これはお聞きになって、今のような御答弁は、これは私が点数をつけたら、百点満点で十点ですよ。数字に詳しいあなたにしてはおかしな御答弁ですな。お答え願います。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十八年か九年か、私はそのときは内閣におりませんから存じておりませんが、昭和二十七年の一月にお答えしたのは、継続費でやらなければならぬような軍艦を作ることは考えておりません、こう言っておる。そうして昭和二十八年か九年に続々と軍艦を作ったと申されますが、これは継続費によらずに作ったのでございます。そこをよくお考え願いたい。軍艦は継続費で作りませんということで、単年度の経費で軍艦を作りませんということとは違うのでございます。だから二十八年、二十九年のことは、私は内閣におりませんでしたから、昭和二十七年の十一月にやめましたからこれは問題になりませんが、私は第三者として話をしている。ただいま継続費によって軍艦を作るようなことは考えておりませんと言ったことに誤りはございません。二十八年、二十九年に防衛庁で、そのときは保安隊ですか、保安隊で軍艦を作ったのは単年度の経費で作ったのでございますから、二十七年の一月にお答えしたことと矛盾しておりません。しこうして、継続費によって軍艦を作るようになったのは、これは三十一年でございます。私が答えたときよりも四年後であるのであります。したがいまして、私はあなたのおっしゃるようにうそを言ったとか、時代に目を向けなかったと、こういう気持はございません。
  27. 大森創造

    ○大森創造君 このことはわかっておりますが、それでは現在継続費で作っているところの艦艇についてはどういう釈明をされますか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今継続費で作っておりますことは、時代の変化によりまして、そうして財政法の規定によりまして国会の承認を得てやっておるのでございます。
  29. 大森創造

    ○大森創造君 池田総理がそのことをくどく言われておりますから、私もくどく繰り返しますけれども、いいですか、昭和二十七年に、財政改正のときに軍艦を作るつもりはなかったと、それは正しいでしょう。だんだん情勢が変化したならば作るようになりはしませんかと、昔と同じように、雑艦でも何でもですよ、そういうことがあったらたいへんだから、制限規定を設けてはどうですかということを繰り返し言われている、木村禧八郎さんや大内兵衛さんなどに。木村さんや大内さんが、客観情勢がぐんと進行して、潜水艦も作ろう、あるいは警備艦も作ろうという事態は、当時の一市井の人ですら予想できた、しかも過去のいきさつがありますから、そのときになったら、当時のあなた自身の善意にかかわらず、この継続費という予算項目を使うであろう、そういう時期が来るであろうということを予想して執拗に質疑されている。いいですか、それに対してあなたは、そういうことは絶対ございません——といういきさつから見て、これはとにかく継続費というものについて指摘どおりになったのだから、現在そうでしょう、何と強弁されようとも結果的にはそうでしょう。そして当時公共事業費の多目的ダムのために出発したものが建設省関係は全部すりかえているのだから、そうしたら私はなんらここで強弁される根拠がないと思う。こういうことであったならば、私は国会の意味がないと思うのです。何を言ったっていいんですよ。客観情勢の変化で、あのときはそういうつもりでなかったのだと一言言えば。こういうことです。国鉄の事故が多いから注意しなさいよ、はい注意します、あした事故を起こしたってだれも責任をとらぬですよ、総理大臣がそういう国会論議について責任を負わない態度であるならば。私は繰り返して申し上げますが、再軍備が是であるとか非であるとか、軍艦を作ることがいいとか悪いとかいうことを言っているのではありません。われわれは決算委員会ですよ、少なくとも。決算委員会質疑をする場合に、今のような過程から見て、総理がただいま私にお答えになったようなお答えが許されるかという問題です。許されるならばそれでいい、私にも考えがある。それはおかしいことだと思う。これは総理は行きがかりし強弁を押し通されるでございましょう。まあ物価が上がって、それでも財政は失敗しないといって強弁されるほどの強心臓のあなたですから。私が幾らこの問題で言っても突っぱねられるだろうという予測はかたくない。しかし、心ある人は、国会審議がこういうことでは怒りますよ。私は、だからどういうことをすればいいかということは、これは継続費に制限規定を今から設けて下さい。あぶなくってしようがない、何をやってくるかわからない。今から制限規定を設けることです。今から全部作った艦艇をやめろと言ってもこれは無理でしょうから、抽象的に再軍備に反対ではありません。こういうことをなぜやりましたか。おそらく昔がそうであったように、二兆円、三兆円かかる核弾頭をつけた潜水艦いつのまにかできている、あとで防衛庁のほうにお伺いしますけれども、そういうことになったら、継続費のほうが便利だという考え方だと思う。これは今あなたは答弁されておりますが、先ほど申し上げたように、継続費で軍艦を作るようになるであろう、そういう心配があるから、ひとつ制限規定を設けろということを国会の場で再三言っている。しろうとのほうがちゃんと当てている。今の御答弁であなたは差しつかえございませんか。もう一回念のために御答弁願います。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国務大臣を初めとして政府委員答弁につきましては、責任を持つべきでございます。しかし、答えたことが未来永劫にずっとそのとおりになるというように考えることは、行き過ぎの点がございます。したがいまして、私は昭和二十七年一月におきましても、今は母艦を作る考えはございませんと、今ということをはっきり言っております。これは速記に残っております。したがって、継続費の時間の問題になります。種類のことが問題になりましたから、軍艦を作るのではないか、今は軍艦を作る気持はないと、こう等えて、未来永劫に継続費で軍艦を作ることはいたしませんということを私は言っておりません。もしそれをある政府委員が未来永劫にと、こういうことを言うことは、私は常識を離れておると思います。政治は動きます。しこうして、昭和二十七年一月におきまして、私は今軍艦を継続費で作ろうという気持はありませんと、こう言っておるのであります。
  31. 大森創造

    ○大森創造君 多分私は池田総理はそう言われるだろうと予想していた。なぜ最初からそのことを言いませんか。前段のあなたの御答弁と、今の御答弁は、私に対する答弁内容がまるっきり変わっている。「今は」ということなら、将来は作る可能性はあるかもしれないということで、私は先ほど申し上げたように答弁を予想していた。今は作らないけれども、木村さんや大内兵衛教授のしろうとですらわかるような客観情勢であったのです。昭和二十七年内閣の衝にあったあなたがわからないことはない。だから「今は」ということを言った、なるほど速記を調べてみると、官僚的な巧妙さで「今は」と言っております。今は作らない、昭和二十七年当時作る気持はないということは、将来は継続費を利用して軍艦を作ると言っているのです。今は作らない、ところがさっきのあなたの御答弁はまるっきり違う。あなたはどういうふうに御理解になるかしらぬけれども、建設大臣、防衛庁長官、大蔵大臣、その他大ぜいの人はどういうふうに御理解になるか、さっきの御答弁と今の御答弁は違います。さっきは軍艦を作るつもりは全然なかったと言うから、私はむだ骨を折ったのですが、あなたのこれは、善意に解釈するとこうだ。国電の例もそうだ。ところが、あなたは今開き直ってどうだというように、今は軍艦を作るつもりはない、初めから言いなさい。そうしたら、今の御答弁を信じるとすると、今は作らなくても、二十八年から造艦計画ができたから、あったから、だんだん軍艦を作るということを言外に含めて、当時の国会をごまかすということになりませんか。今の前段の答弁と、今の答弁はすでに食い違っておる。前は軍艦を作るつもりは絶対にない、継続費は使わないと言って、ところが、今は軍艦を作るというつもりはないと言っているのは、当時から言っていたことですよ。そこで私は、今は作らないという御答弁でありますが、「今」というのに〇をつけておきました。こういう点巧妙だからそう言いのがれるだろうと思って〇をつけた。「今」という一字が非常に問題です。そうすると、当時の問答から見て、幾多の議員、菊川孝夫さんもおりますけれども、なくなった議員もおりますが、当時国会で時間をかけて審議して、あなたはすらっとごまかしたことになる。今は作らないが、だんだん作る、そういう問答にとっておりません。当時のこちら側の委員は。あなたの前段の御答弁は、その当時毛頭考えていない、論理の矛盾ですよ。今は作らないということになると、将来作るということになる、まるっきり私は当時の国会を侮辱したことになる。いかがですか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは心理学の問題になりますが、私は当時、先ほど申し上げましたように、軍艦は作るという気持はなかった、あなたが再軍備と言われますから……。
  33. 大森創造

    ○大森創造君 今は……。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はそういうふうに言っておりますが、私の本心は先ほど答えたとおりです。その当時軍艦を作る気持はございません。これがほんとうです。将来のことはどうかということになると、先ほど言っているようなことでございまして、そしてあのころいろんな人がおりましょう、今でも政治家の中にも核兵器を持つことがいいのだという議論があるかもわかりません。しかし、われわれは核兵器を持たないと、こう言っております。そのとき、いや持つかもわからないからということでは、これはまた議論にならない。だから私はその当時軍艦を継続費で作る気持はありませんと、こういうことは私の本心で、実際においても、また内閣においてもそう思っておった。継続費というものは、公共事業費で国庫債務負担行為よりも継続費がいいというので継続費の規定を置いたわけでございます。あのときは内閣全部が継続費で軍艦を作ろうという気持を持っていた人は一人もなかったと思います。そして、私がやめましてから吉田内閣末期、あるいは鳩山内閣になりましてから四年間は作らなかった。事態の変化に応じて、駆逐艦を作る必要がある、そのときに何か継続費でやったほうがいいということでやったのでございまして、私の真意は軍艦を作ろうという気持はございませんでした。そうしてまた、これは言葉のあやとして、今作る必要がありませんと言ったときに、これは将来作るのだと逆をすぐとられることはいかがなものかと思います。そこは政治家がよほど良識をもって考えなければならないことであって、私はこの速記録はずっと前から知っておるのであります。しかし、私の本心を言ったほうがいいと思いまして、先ほど言ったのでありまして、矛盾ではありません。私は今は——と言ったから、それは将来は作るのだというふうにとられることをおそれまして、初めから作る気持はないと、こう言っておるのであります。今度作ったのはどうしてか。それは事態の変化によって行なわれていく。しこうして、今こういうことを問題にして私の責任を追及することは、あるいは取り消しを要求されるかもわかりませんが、そのことは三十一年の軍艦、駆逐艦を作るときに議論をすべき問題でごさいましょう、私を呼んで。今になってこれがどうだとかこうだとか言っても、私の気持がこうだということをお誘いたすよりほかにないと思います。
  35. 大森創造

    ○大森創造君 私も池田さん、あなたと同じようにお酒が好きですから、それほどわけのわからないことを言うつもりはない。あなたよりも飲むかもしれぬ。そんなに紋切り型のくどいことを言ってあなたをいじめるつもりもない。あなたの責任をどうということもないが、事の順序次第で今云々ということを言ったのは、あなたは毛頭軍艦を作るつもりはないという御答弁であるにもかかわらず、大まじめに、私がだんだん質問してきたら、今は作るつもりはないと、「今」というところに特筆大書する答弁をされたから、私も、ははあそれでは、この「今は」ということは重大な意味を当時から持っていたのだな、今は作らないが、将来作るようになるのだということ、そこで、もう一つ私が言いたいのは、それならば、これがまた重大なことです。私はほんとうは今作るつもりはなくても、将来これを利用するのだ、公共事業費やそんなものはどうにでもできるのだけれども、実際は艦艇を作るようになる、軍艦を作るようになる、そのときには継続費を利用したほうがいいのだということが、「今は」云々というので、その気持が今の継続費についてのあなたの本心ではないかと思うのです。これは建設省を利用したのではないか。財政法の改正によって継続費を復活させるという構想も、これは建設省やそれから大蔵省ではなくて、あなたのお考えではないかと思うのです。それはともかくとして、私が申し上げたいのは、昭和三十一年に、その当時の国会が、潜水艦を作るときに継続費は使うべきではないということを言ったらいいではないかということをおっしゃるが、そういうことはないですよ。当時あなたがりっぱに国会答弁されたのは、この点もずいぶん念を押されておる。これは審議権ですよ。それで継続費に軍艦費などという科目ができたら、適当に削減してよろしい。国会は、木村さんは軍事費については二年間の期間にアメリカはなっている、だから五年では長過ぎる、そういう小さなことは言いなさんな、国会は万能なのだから、違った科目ができても削減してもいいし、予算減額もできるという問答がある。だから、これはあなたとしては、これは昭和三十一年に提案することがおかしい。国会がその当時に文句をつけたほうがいいとか、これをキャンセルしたほうがいいとかいうことではなくて、提案できないのです、当時のいきさつからして。あなたの政治的な責任からしてそうでしょう。この点一言お答え願います。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府委員が、軍艦を作る気持がありませんということは、その当時の状況で言っているのであります。しこして、情勢が変化して、その財政法の規定を使った。これは悪いということを言い得るのは、それは議論としてみんな言い得るでしょう。御議論として言い得るでしょう。しかしその財政法の規定を援用して、国会が承認されたら、私が承認前に言った私の気持は変わってきたということだけでございます。
  37. 大森創造

    ○大森創造君 それであなたの心理もわかりますが、そういう国会であったならば、私は決算委員会は要らないと思う。いいですか、未来永却に継続費でもって軍艦を作らないということを私は言っておりませんよ。これは国会にいやしくも権威があって、そうして吟味する場合に、あなたの弁明からして、軍艦を作っていいか悪いか。私は賛成するかもしれぬ。あるいは自衛のためには核武装をしてもいいという議論に賛成するかも、反対するかもしれぬ。そんなことは、私は酒飲みだから、そんなやぼなことは言わない。これはこのいきさつからして、客観情勢の変化によってぐるぐる変わるなら国会なんかあってもなくてもいい。これは何でも約束は客観情勢の変化によって変化する。それは変えていいことと悪いことがありますよ。客観情勢の変化によって立場が変わってくるというから、これは当然だ。だけれども、こういう問題が、客観情勢の変化によってするりするりとかわされたならば、これは総理大臣の資格はないですよ。これは大きな国民に対する何というか、ごまかしですよ。だから私が言うのは、軍艦を作ってもいい。継続費で作ってもよろしい。しかし、これは経済がいいとか悪いとか言っておりますが、それより以上にけじめをつけていただきたい。けじめをつければいいのですよ。けじめが必要でしょう、どうしても。けじめをつけるということは、あなた自身が私の言うことを了承をして、賛成して、当時の言明と今は違った客観情勢の変化だから、私は作ってもいいということは許されませんよ。この問答からして。だからけじめをつけていただきたい。けじめの形式はあなたに一任する。もう一つ、この際制限規定を設けたらよろしい。あなたが強弁されるなら、もう決算委員会は、ほかの汚職の問題やなんかもありますが、これは最大問題だと思っている。決算委員会議案なり何なりにしても、こんなことが看過されているのなら必要はないですよ。このことをけじめをつけていただかなければ、私は本決算委員会として参考人を呼び、当時の人を呼び、私の主張が正しいか、あなたの主張が正しいか、黒白を問うて、今後のあり方検討して、私はやぼなことは言わない、未来永久にわたって軍艦を作ってはまずいとか、あるいは継続費がそういうことになるだろうということに対して云々するわけではないが、それとこれとは違うのだから、当時の問答から考えて、このことは誤まりであったということをお答えいただきたい。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 当時の私の言ったことは、私の本心からいって、自分としては誤まりないと考えております。しこうして、情勢の変化によって、内閣財政法の規定によって継続費による潜水艦を作ったということは国会議決になりまして、そこでけじめがついたと私は考えます。
  39. 大森創造

    ○大森創造君 そのことを含めて当時の問答があって、だからこういうものでは、客観情勢の変化があった場合に困るから、継続費というものに制限規定を設けたらどうかということをあなたに対して問うたのに対して、あなたのほうはそういう気持は毛頭ないからと現在も言っておられる。当時としては毛頭ないからそういう必要がないと言っておる。このいきさつにかんがみて強弁されるなら、さっきの佐藤さんと林長官問答と同じだからこれは仕方がない。だけれども、ひとつこれは総理の言うことが理屈が通るかどうか。あなたも酒が好き、私も酒が好きで、どうも酒ばかり出しますが、やぼなことを言うわけではないのだから、あなたはきょうは五月五日ですから、子供の日だから、家に帰って酒でも飲んで、きょうは大森と問答したけれども、きょうはおれが間違いだったと思うでしょう。その一言を今ここで言いなさいよ。一言でいいから言いなさいよ。そうすれば私はそのことをここで帳消しにします。あなたは頭が悪いはずはないのだから、そのことをひとつきまりをつけて下さい。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまお答えしたとおりでございます。私は誤まりない、こう考えております。
  41. 大森創造

    ○大森創造君 それではこれ以上やるというと私もあれですから、もうきょうは総理との問答は打ち切りますが、あなたはおかしいですよ。今まで相当信用していたけれども、こういう問題についてそういう態度をとるということは、私としてはどうしても納得ができない。頭も悪くないでしょう、総理大臣ですから。ことに数字に明るいのだから、今までの問答の論理の過程をあなたはわかっておるはずだ。それで今のような御答弁で済まされるということは、これはさっきのお話ではないけれども、何と言うか、竹帛に残りますよ。あとでさらに吟味しますから……。自民党絶対多数であるし、だいぶん退席されておるようでありますから、総理との問答はやめますが、これはどうもあなたの答弁を相当程度信用してきたけれども、これはいけない、これはまことに遺憾でございました。当時の言明は間違いでございましたと。客観情勢がどうということはよほど頭が悪い。頭の中では、ほんとうはあなたはよくわかっておられる。いろんなことがあるから、乗っかかった船でもって、これはもううしろへ戻れなくなってしまった、総理大臣として。私との問答でこうなった。物価が上がってどうだこうだという問答に対しても、あなたはあやまりやしないのだから、池田総理は相当心臓が強いんだから、だからこの際こういう問題できまりをつける必要はないということで、これは意地ですね、これも酒飲みの意地だ、悪いことですが……。これ以上は申し上げません。ひとつ酒でも飲まれて、御静養いただきたいと思います。  総理に対する質問は以上で打ち切ります。     —————————————
  42. 相澤重明

    委員長相澤重明君) この機会に総理の時間の都合もありまするので、小委員会報告を先にして、そのあと質疑を続行したいと思いますから、小委員長報告を求めます。
  43. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 決算提出手続及び審査方針に関する小委員会は、昨年四月設置されて以来、決算審査に関する基本的問題について慎重に検討を重ねて参りましたが、去る四月二十四日、決算審査方針について全会一致の結論を得ましたので、それまでの審査の経過並びに結論の内容について報告を申し上げます。  決算提出手続及び国会における審査あり方については、従来より種々論議の存したととろでありますが、佐藤委員長は、就任後この問題を取り上げられ、昨年四月に本委員会が設けられ、決算審査をより有意義ならしめるには、今のような提出手続、及び審査あり方でいいかどうかということにつきまして、根本的に検討を加えることになったのであります。かくいたしまして今日まで、九回の会議を開き、多数の実務家、また学者及び当委員会調査室職員から説明を聞き、また、さきに衆議院決算委員会において、本問題につき、しばしば述べられた学者または実務象等の意見を参考としながら、本日まで検討を重ねて参ったのであります。  しこうして、審議の過程におきまして、決算提出手続や、国会における取り扱いの問題、すなわち現在の慣行を改め、両院一致の議決を要する議案扱いとすることの可否の問題は、法律制度改正にも及ぶことでありますので、学者、実務家及び当局の意見も分かれているのであります。したがいまして、短時日の間にこれが結論を得ることは、あまりにも困難であると思うのであります。一方、毎年提出されまする決算については、審査を、より効果的に行なうことは緊急の要請でもあり、またこの要請に即応いたしまして、現行の制度及び取り扱いのもとにおいて、実現し得る有効な方針について結論を得たいとの意見が強く出されたのであります。前述のとおり決算審査方針について、全会一致の結論を得たのであります。今、これを朗読いたして報告にかえたいと思います。    決算審査方針  一、決算審査に当たっては、会計検査院検査報告中心の審査方法を改め、国会議決した予算及び関係法律が適正かつ効果的に執行されたかを初め決算全般について審査しあわせて政策の実績批判を行なうものとする。  二、この基本方針のもとに左のとおり審査を行なう。   (一) 予算で定められた歳入歳出が現実の収入支出としてどのようになったかを審査する。   (二) 予算執行の経済効果行政効果等国費の効率使用について審査する。   (三) 決算検査報告に掲記の有無にかかわりなく、各省庁、政府関係機関等にわたり審査することとし、必要に応じこのうちから重点的に取り上げて審査する。   (四) 財政投融資は効果的に運用されているかを決算とあわせ審査する。   (五) 決算に関連する事項で現年度中の予算執行に問題あるものについては随時これを取り上げる。   (六) 重要な問題については現在の当局者だけでなく、執行当時の責任者その他の関係者も招致して事態を究明する。   (七) 決算審査は次年度の決算国会提出されるまでには終局する。  三、審査の結果左の処置を具体化する。   (一) 政府が負責を実をあげるよう追及し、必要により所管大臣に警告を発する。   (二) 改善を要すると認められるもの、その他不当な事項等については所管大臣に対し、改善のための具体策等について説明を求め、また警告を発する。   (三) 将来の計画樹立及び執行に反映するよう内閣全般に徹底させる方策を講ずる。   (四)  審査の結果を国会予算審議及び立法に反映させる具体的方策を講ずる。  これによりまして、決算審査を一そう強力に盛り上げていきたいことが念願されたのであります。  なお、決算審査方針そのものとは直接の関係はありませんが、それに関連いたしまして、小委員会において意見の一致を見ました別の事項について付言いたします。   (一)会計検査院法第三十一条(懲戒処分の要求)及び第三十三条(犯罪の通告)を迅速かつ強硬に発動することを会計検査院に要請する。   (二)公金上の非行については、刑事罰、行政罰とも処罰の範囲を拡大し、かつ普通の処罰よりはるかに重くするよう実現を期する。  この二項目であります。これは国民血税ともいうべきものの行方を見守るという重大な関心事であり、ゆるがせにできない問題でありますので、当局の適切なる措置を望むとともに、われわれ国会議員といたしましても、一段の努力を要するものと認めたのでありまして、強い要請がありました。  以上をもって報告を終わります。
  44. 相澤重明

    委員長相澤重明君) この際お諮りをいたします。  ただいま小委員長報告にございました決算審査方針を当委員会審査方針とすることにし、今後この方針に従って決算審査を行なうことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  46. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 次に先ほどの質疑を続行いたします。
  47. 大森創造

    ○大森創造君 総理が退席されましたが、私は一分間だけ申し上げて、次の質問に移ります。まことに残念です。日本総理がああいう御答弁をされることはまことに残念です。とにかく、けじめをつけていただきたかった。お残りの大蔵大臣、防衛庁長官、建設大臣その他の方はおわかりのことだと思いますが、こういうことでは国会審議にあたって情熱を失う。ひとつ真剣に誤まりないようにお答えを願いたいと思います。  まず防衛庁にお伺いしますが、昭和三十一年度に「おやしお」という潜水艦を作って、それから三十四年度、三十五年度にまた潜水艦を作りつつあります。そういう潜水艦については、どういう計画で、どういうものを作ろうとするおつもりですか。
  48. 久保忠雄

    政府委員(久保忠雄君) 三十一年度の「おやしお」に引き続きまして、三十四年度といたしまして二隻、これは七百五十トンの潜水艦でございますが、これを二隻作ることにいたしました。それからさらに、三十五年度に七百八十トンの潜水艦を二隻作ることにいたしております。それから三十六年度に一隻、これは従来よりも大きいものでございますが、千五百トンの潜水艦を一隻予算を取っておりまして、まだこれは契約をいたしておりません。一応そういう計画になっております。
  49. 大森創造

    ○大森創造君 朝日を見ますと、これはアメリカのことですが、「核弾頭つけて実射」、「潜水艦に装備のポラリス」、「米大統領承認か」と、ポラリスの核弾頭がTNT爆弾六十万トン相当の云々と書いてあります。これはアメリカのほうですが、きょうあたりの新聞を見ますと、核装備をした潜水艦などが日本には寄港できないから、アメリカの司令官が核装備してあると言ったら、日本国会や安保条約の事前協議の関係からいって、あわてて取り消しました。真偽のほどは私はわかりません。真偽のほどがわかってるならば、防衛庁長官にお答えいただきたいと思いますが、私は日本の防衛庁長官は、おわかりにならないと思うのです、私と同じように。そこで私は、お答え願えるならばお答え願うと同時に、これはアメリカと東南アジアの各国、アメリカ関係の各国も全部潜水艦というものを作る、攻撃用の核武装をした潜水艦を作るという計画の一環だと私は理解するのだが、どういう計画なんですか。やはり潜水艦群を作ることになるのでしょう。
  50. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 最初に、米太平洋空軍司令官のオドンネルの発言でございますが、最初に報道されましたのは、核爆弾を持った飛行機が、日本を含めた極東にあるという報道がされましたが、これにつきましては、私のほうも調べましたし、また米国務省も、さような事実のないことを言明をいたしました。その後オドンネル司令官の発言は、核爆弾を積み得る飛行機が日本を含む極東地域にあるということを発言したのだということが判明をいたしました。そうしてまた、その積み得る飛行機が、核爆弾を積んでおるかどうかということについては、日本内地に寄りますそうした飛行機に核武装をいたしておる事実はございません。それから何か、現在、防衛庁で計画をいたしておりまする「おやしお」以下の潜水艦が、核武装をする潜水艦のようにおとりのようでございますが、絶対にさようなことはございませんで、現在の自衛艦隊の装備の一つとして、これらの潜水艦を計画をいたしておるわけでございます。
  51. 大森創造

    ○大森創造君 これはUP電のあれを見ますと、中国の飢餓が相当ひどくて、それで内部崩壊をするかもしれない、それにつけて、アメリカを中心とした日本やそれからラオス、ベトナムあるいは韓国、台湾、ひとつ攻撃を加えたらどうかということをUP電は報じている。で、日本の防衛庁長官やその関係者筋は、国会でいろいろ問答されております核弾頭をつけたものは、自衛のためならば憲法違反ではないと、ただ政策としてとらないというふうに、昭和三十四年のころからだんだん変わってきております。で、国外から見た日本の自営隊のあり方、それから今作りつつある潜水艦というものは、どういう役目をするものかということは、あなたの頭の中にあるものとは解釈が違ってくると思う。そこで、そのことはともかくとして、ひとつ日本の防衛庁長官も、将来の行き方については、日本の防衛庁長官として、この際は核弾頭は申すに及ばず、国会答弁されているように慎重を期して間違いのないようにお願いしたいと思う。これからだんだんややこしいことになります。極東戦略がどんどん変わってきますと、それは不幸にして当たってきているのです。客観情勢がぐんぐん変わってきているのだから。そこでもう時間がありませんから、簡単にやりますが、大蔵大臣にひとつお伺いします。さっきの継続費というものは、これは建設省か大蔵省か、だれがこういう財政法の改正によって継続費の復活をお考えになったのですか。だれかおわかりの方はございますか。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) やはり財政法の問題だから、大蔵省が考えたのではないかと思うのであります。
  53. 大森創造

    ○大森創造君 当時の大蔵大臣は、先ほど退席された池田総理であります。私は大体、総理がいないところで言うわけじゃありませんが、水田さんも当時大臣でなかった、中村さんもそうでない、藤枝さんもそうでない、これらのことは百も承知なんですよ、総理は利口だから。昭和二十八年から造艦計画をする、そうすると、軍艦も相当作らなければならぬ。で、継続費というものを財政法の改正によって復活させたほうがよろしい。そこで建設省のほうは、だしに使われたのだと私は思う。そこで国庫債務負担行為というものに切りかえたのですが、国庫債務負担行為というものは、前からあった制度でしょう。
  54. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 建設省所管のダムにおいて、継続費の制度がありましたが、これが変わりましたのは、昭和三十二年に先ほど申し上げましたように、特定多目的ダムにの特別会計法ができて、それで新規の分はその特別会計でやりますから債務負担行為でいこう、今まで継続事業できたものは、そのまま続けていこうということで、その二本建で参りました。その後昭和三十五年に治水特別会計というものが新たにできまして、一切この治水特別会計一本に入ることになりましたので、そのころ継続費のほうもなくなってきましたので、昭和三十五年の治水特別会計の設定以来、この特別会計法ができますと同時に、この継続費の制度がなくなった、こういうことでございます。
  55. 大森創造

    ○大森創造君 以上で大体私の質問は終わりますが、建設大臣も大蔵大臣もお知りにならないと思うのですが、この公共事業費というものは、建設省が継続制度をちょっとかじっただけで、そうしてやめてしまうようなことになった。形式は私のほうの国会審議からみますると、前段申し上げましたような執拗な質疑昭和二十七年当時あったにかかわらず、結果はこうなっている。これはこの制度を公共事業費というものについてだけ継続費、財政法の改正をしてあれだけの質疑があるのにかかわらず、この継続制度というものを復活する、新設する理解に私は乏しかったのだろうと思います。この制度を復活させた真の目的は、初めから池田総理がちょっとお漏らしになりました、あのよろいがちらっと見えましたが、軍艦の建造が最初から目的であったと思われる節が客観的には——私は弁護士ではありませんが、この犯罪は初めから歴然たるものがあります。そうでないと強弁する理由よりも、どうも客観的に判断するとそのほうが強い。これは総理がおりませんから、私の所感だけ申し上げます。これは政治的問題になると思います。しかし、先ほどの問答総理上がお答えになったとおりでございますが、これは閣僚の皆さんにひとつ帰ってから総理にまたお伝え願いたいと思うのでありますが、とにかく、先ほどのような私の質問に対する答弁で、そうして総理が退席をされるということでは、私は非常に不愉快だ。私個人が不愉快でなくて、木村禧八郎先生や大内兵衛先生にも連絡いたしますが、非常に日本国会はさびしい。少なくとも論理を重んじてほしいと思います。やぼなことは言わない。軍艦を作ることはいいだろう、憲法のもとに、こういう客観情勢のもとにこうなったからということを理解するに私はかたくはございませんが、先ほどの総理答弁は私は絶対に負けられない。絶対けじめをつけてもらわなければ困りますが、きょうは時間がありませんから、あとでけじめをつけていただくことを、散会後でもやりますから、私は思いついたら離れないのですから、こういうことはあとで電話でもよろしいから、大蔵大臣は正直な人相をされておるから、電話下さい。さっきの総理答弁は間違いだ、あれは実はこうだ、だれか勇気のある真実を愛する人がおったら、私の会館の室に、七百四十六番ですから電話をして下さい。以上で終わります。
  56. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  昭和三十四年度決算外三件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 御異議ないと認めます。  それではこれより対論に入ります。  昭和三十四年度決算についての本委員会議決内容の案は、委員長及び理事打合会において打ち合わせた結果を取りまとめまして、お手元に配付してあるとおりであります。これより事務当局に朗読させます。
  58. 池田修蔵

    ○専門員(池田修蔵君) 朗読いたします。印刷物の三ページの中ほどからでございますが、「二、本件審査の結果」というところでございます。  (一) 本件決算について、予算及び関係法律が適正かつ効率的に執行され、所期の目的を達成しているか等に着目しつつ審査を行なったのであるが、数々の不満な点が発見された。   本院は毎年度の決算審査した結果、内閣に対し警告を発してその改修を促してきたところであるが、本件決算についても、その審査の過程において明らかにされた事実及び会計検査院の指摘事項にかんがみ、内閣に対し次のように警告を発する必要を認める。   1 政府は一段の努力をもって予算編成の仕方を改善すべきである。ことに予算編成の終末段階において重要事項が早急の間にきまり、合理性を欠く傾向があるので、重要施策の予算については特に慎重を期しつつ、予算全般に合理性を持たせ、適正かつ効率的な執行ができるよう改善すべきである。   2 各地方公共団体における行政の均衡及び水準向上のため、地方交付税、国庫補助金及び自主財源の比率を調和し、また国と地方公共団体との間に行政事務の分担を合理化し、ひいて国庫補助金の整理にも及ぶべきである。   3 食糧管理特別会計における食糧勘定の損失は近時累増しつつあり、これに対処するためすみやかに適切な措置を講ずるとともに、食糧管理制度全般についても再検討を行なうべきである。   4 農業共済保険事業の制度及び運営が適切を欠き、ことに損害の評価、共済掛金の徴収及び共済金の支払いなどには多数の不当事例も発生している事実にかんがみ、本制度改正とともに運営の改善を促進し、不当事例の絶滅を期すべきである。   5 各種健康保険の制度及び運営にも関連し、医療給付及び医療問題一般について早急に改善をはかるべきである。   6 大都市における通勤通学輸送の行き詰まりを打開するため、輸送力の増強をはかるとともに総合的な都市対策を樹立実行すべきはもとより、陸運行政一般に関する施策の強化をはかるべきである。また日本国有鉄道の地方路線における輸送の円滑もはかる要がある。   7 簡易生命保険及び郵便年金事業の業績を上げることに努力すべきではあるが、目標の割当に対する消化努力に無理があってはならない。   8 許可認可については大衆の利便を考え遅滞がないよう留意し、ことに通商に関するものについては、商機を逸せしめることのないよう迅速を期すべきである。   9 日本専売公社においては、塩事業の合理化及び製塩技術の革新を促進して生産費の低減をはかり、また喫煙の害について積極的に検討し、国民の保健と公社の利益を両立させる方向に進むべきである。   10 中小企業金融公庫の融資に関しては融資手続等が無用の煩瑣、遅滞に陥るを避け、ことに代理貸しの場合において代理機関の利便のために融資の円滑を阻止することのないよう留意すべきである。   11 会計検査院の指摘事項は近年件数、金額とも減少しているとはいえ、会計検査院実地検査が一小部分につき行なわれていることを思えば、それは氷山の一角に過ぎず、ことに連年指摘されている補助金の経理工事の施行、物件の調達及び国営各種保険事業等における不当事例についてはその一掃に努むべきである。  (二) 前記決算については右の警告を与えることとしたほか、格段の異議がない。  以上であります。
  59. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 本件につきまして討論の通告がございます。順次発言を許します。鳥畠君。
  60. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 私は自由民主党を代表いたしまして、昭和三十四年度一般会計歳入歳出決算外三件につきまして、審査報告書のとおり議決することに賛成するものであります。  ただ、私はこの際特に次の諸点について政府及び政府関係機関の当局並びに関係者の注意を喚起し、あわせて希望いたします。  決算審査して毎年政府に警告を発しておりますが、これがどのくらい政府によって尊重され、かつまた改善されまして、それが行政運営の施策の面あるいはまた財務処理の面に具体的にどういうふうに現われたか、また行政や財政がほんとうによくなっていくのでなければ、われわれ決算委員会審査政府に対する警告も徒労に帰するのであります。総理大臣初め各省大臣は、決算については特に留意されておるやに承りますが、ただいまの審査報告書にもありましたとおり、まだまだわれわれは不満を禁じ得ない点が多々あることはまことに遺憾とするところであります。国民血税の結晶であります公金が適正にかつ効率的に使用されますためには、まず予算編成の段階におきまして最も合理的でなければならぬことは言うまでもないことであります。特に最近の実際を見ますと、予算編成が最後の追い込みと申しますか、わずか一週間かあるいは十日間というような徹夜作業によって最も短時間の間にこれが結論に入るというようなことで、そしてみんな顔立てを少しずつやる、いわゆる総花的な結論に入るというようなことが多々あるように伺えるのであります。これらの慣例からこれを執行するにあたりましても、おのずからそこにまあ乱費とは申しませんが、乱費に近いというような非常に効率が下がってくることもしばしば見られるのであります。少なくとも重要事項の予算については、もっと真剣に慎重にほんとうのにじみ出たエキスのようなものを十分に計上するように予算編成の合理化を要請するものであります。  次には綱紀粛正の問題であります。ものには物心両面があることは言うまでもありませんが、財務の執行におきましても、制度や運営の仕方を組織化し合理化することの肝要なことはもちろんでありまして、今さら言うまでもないことであります。しかしながら、これを運営するものは結局人であります。その公務員がほんとうに国民に奉仕するの精神に徹し、公金を尊重するの観念に徹しなければ、完璧な制度も絵にかいたぼたもち同様であります。公務員のこの精神こそが高揚さるべきであって、いやしくも弛緩することがあってはなりません。  近年会計検査院の指摘事項が表面は幾分か減りつつあるようでありますが、それも単に氷山の一角にすぎぬのであります。不正不当が根底から減っているとは思われません。政府の首脳部におかれては常に綱紀の粛正を怠らないことが最も肝要であろうとかように考えるのであります。その支えとしては、公金に関する刑罰やあるいは行政罰、あるいは懲戒処分を重くすることもまたやむを得ないことと思うのであります。刑法の改正草案もこの線に沿っていると聞いておりますが、ぜひとも来たるべき新しい刑法に対してはこの実現を期したいものであると考えるのであります。このようにいたしまして、決算の面から不正不当を一掃することは、それだけ国民の福祉が増進されることはもちろん、一面政府国民の信頼を高めることであって、当路者の深く反省すべきことと思います。以上が決算に関して特に注意を喚起したい点であります。  最後に、近年財政投融資等の問題がいよいよ重要性を加えて参りましたおりから、政府におかれましてもこの問題がほんとうにわが国の経済その他諸般の事情に合致するよう、最も合理的な点に御留意あって、資金の効率的使用を行なわれんことを強く要望いたしまして、私の希望といたします。
  61. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 次に大森君。
  62. 大森創造

    ○大森創造君 私は日本社会党を代表して、昭和三十四年度決算四件の終結にあたりまして、きわめて不満な決算ではありますが、政府の強い反省を見守る意味において承認を与えたいと思うのであります。  三十四年度の決算に関して政府に警告を与える必要のある事項は、審査報告書案にも書かれたとおりでありまして、ここには繰り返しませんが、私は二、三の点について意見を述べたいと思います。  そこでまず申し上げたいことは、決算がとかく軽視されがちであることであります。政府予算については、これを通すについてはあらゆる努力を傾倒しているようでありますが、こと決算になるとなかなかそうではない。早い話が、大臣の出席や態度にしてみても、決算予算や法律が政府によって執行された結果でありますから、大臣は進んで出席して政府の行なった施策と業績について説明し、もし行政や財務の運営に失敗があったならば、その実情を披瀝して国民の代表たる国会の前に陳謝して、その実を明らかにすべきであります。それにもかかわらず、すでに済んだことだからとか、あるいは自分のやったことではないからとの気持からか、逃げ腰のような格好でいるのは納得できないのであります。なぜもっと真剣に決算と取り組んで、あやまるべきはあやまり、改めるべきは改めるという態度に出ないのか。それでこそ政府執行について国会に対して責任を負うところの実質が上がり、憲法精神も生かされるのであります。深く政府の反省を求めます。  次に綱紀の粛正、ことに上層部の汚職の粛正問題であります。それについてこの三十四年度決算はあまりきれいな決算とは言えません。なぜならば、この決算関係した時期の閣僚中に武州鉄道問題のような重大な疑惑を持たれた大臣がいたことであります。そんな閣僚の関与した決算だからして、それだけで決算の値打ちを下げていると思うのであります。また今日新聞紙上においても公務員の汚職が毎日のように見られるのは、ことに綱紀の問題が頽廃している何よりの証拠であります。こんなことでどうして国民血税が正しく使われるか、納税者のために真の福祉がもたらされ得るでしょうか。それをだれが保証いたしますか。政府当局の深い反省を求めるものであります。  なお、この際特に政府当局の注意を喚起したいことは、基地周辺の住民の生命、生活の態度についてであります。基地保護についてであります。基地周辺なるがゆえにやむなく犠牲を強いられる理由はないのであります。政府においては、これら基地周辺の住民に対して、物心両面の侵害に対して擁護措置と事後の補償をしてもらいたいことであります。  最後に、私は決算を承認したいとは思いますが、それは単純に承認したものではない。政府が本院の与えた警告を反省してよりよき決算を作ることを見守る意味で承認するものでありますから、政府はこの警告を熟読翫味し、全力をあげて改善の実をあげるべきであります。  以上のことを重ねて強調し、討論を終わります。
  63. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 次に奥君。
  64. 奥むめお

    ○奥むめお君 私は参議院同志会を代表しまして、この三十四年度の決算に承認を与えることを承諾いたします。  先ほど当決算委員会として数々の問題を掲げて警告を発しております。これを政府におかれては十分にこの警告の趣旨を読み取っていただいて、今後のあり方に反省をいたしていただかなければならないと思うのでございます。ことに綱紀の粛正につきましては、政府綱紀粛正という大旆を掲げて叱咤激励して間違いがなからしめるように、国民の税金が不正に使われることがないように、特に注意をしていただきたいということが私どもの念願でございます。そのことを強く要望いたしまして、今日の承認への結論といたします。
  65. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 以上をもちまして討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。  まず、昭和三十四年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十四年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十四年度政府関係機関決算書を問題に供します。本件につき、お手元に配付いたしました案のとおりに議決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  66. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 全会一致と認めます。よって昭和三十四年度決算は全会一致をもって配付案のとおり議決せられました。  次に、昭和三十四年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和三十四年度国有財産無償貸付状況総計算書昭和三十四年度物品増減及び現在額総計算書を問題に供します。以上の三件につきましては、いずれも異議がないとの議決をすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  67. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 全会一致と認めます。よって右三件は全会一致をもって異議がないと議決されました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の内容につきましては、ただいまの本委員会議決内容によりこれを作成することにいたしまして、委員長に御一任たまわりたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次に、大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。
  69. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま御決議の点は十分尊重いたしまして、各省各庁と十分の連絡をいたし、その趣旨の徹底をはかりまして、万遺憾なきを期したい所存でございます。     —————————————
  70. 相澤重明

    委員長相澤重明君) この際、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、従来より国家財政経理及び国有財産の管理に関する調査を行なって参りましたが、会期も切迫し、会期中に調査を終了するに至りませんので、本院規則第五十三条により継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 御異議ないと認めます。  なお、報告書の作成は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 相澤重明

    委員長相澤重明君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。  以上によって散会いたします。    午後三時三十三分散会