○国務大臣(
水田三喜男君) 順々に御答弁申し上げます。
まず、
決算で
国会からいろいろ御批判を受けたあとの取り扱いでございますが、これは、この御批判の結果を十分に今後の
予算の執行に反映させるようにということについては、年々努力しておりまして、最近では、
予算の編成事務に入る前には、指摘
事項の趣旨の徹底をはかるために、
会計検査院からも具体的な注意をお聞きするし、各官庁にもこの旨を通達するというようなことで、事前の打ち合わせから始めまして、編成過程の中でも二度そういう問題を繰り返さないようにという配慮は十分払っておりまして、そして職員の不正行為等についての綱紀の粛正とか、あるいは研修の充実というようなための
予算も、この
決算で指摘された結果を参考にしてきめているというのが実情であります。
補助金の問題につきましても、これは始終問題を起こしておりますので、御指摘にあった
事項の点は、特に注意して
予算編成のときも私どもやっておりますし、編成後の執行についても十分に監督をしているつもりでございます。特に、農業共済保険
事業というようなものにつきましても、過去においていろんな御指摘がございましたので、今回は法案自身も私どもは変えまして、根本的にこの問題の改正を加えたいという趣旨からこの問題の改革にも入っておるということは、御指摘のとおりでございますし、租税徴収の適正の問題につきましても、私どもは徴税事務の適正化をはかるために
予算措置も今回は講じておりますし、特に国有財産の管理につきましては、過去いろいろ御指摘を受けておりましたので、この下部機構の監督強化についての
予算も五割程度本年は特に強化して、この問題の適正を期したいというような配慮をやっておりまして、大体、年々御指摘を受けている問題については、これをそのままに聞きのがしてしまうということはやりませんで、編成中心に特に気をつけてやっているのが現状でございます。そこで、
予算編成について、さらに
予算執行の適正化を確保するために考える必要がありはしないか、早急の間に大きい問題をきめるというようなことはとかく
予算の執行をルーズにする一番大きい原因になるというような趣旨のお話がございましたが、これはまことにごもっともでございまして、重要
事項の
予算で特に新規に
計上されるというようなものにつきましては、十分の具体案ができないうちに
予算だけとりあえずきめておくというようなやり方が実は問題でございまして、今おっしゃられるような問題は、そういうきめ方がいつも原因になるということを私どもは考えておりますので、今
年度の
予算編成におきましては、各省がこういう政策的な新しい
経費の
計上というような問題をまぎわに持ち込まれても、これは考えない。概算要求のときまでに具体案を作って、立法措置が必要である場合は法律案も伴うこと、案が間に合わない場合には法律の要綱を付して出すことと、そこまで行っている問題でなけいば新規
予算としての
計上はやらないと、こういう取りきめをして、今度の
予算の査定に臨んだわけでございましたが、一、二おくれて新政策的なものでそういうものが持ち込まれた例はございます。これは、たとえば教科書の無償配付というような問題でございますが、これは政策として当然
政府も考えてもいいということで、 この問題は、
政府としては、
予算に
計上するということはいたしましたが、後
年度の財政負担というものを考えなければなりませんし、
予算の効果とか、そういうようなものの将来を考えなければならぬという、こういう大きい問題につきましては、調査会というものを作って、そこでほんとうの案を作ってもらう、具体案を作ってもらう、それまでは三十八
年度の一年生の教科書についてだけこの
予算を
計上するというふうに最小限度にしばって、具体案は追って調査会において慎重に審議するというようなことで対処した例はございますが、今後は十分そういう方針で、早急の間に大きい重要
事項の
予算をきめるというようなことは避けるという方針でやっていきたいと思っております。
それから、国庫
補助金の問題は、御承知のとおり、これは国民生活が複雑になっていくに従いまして、行政も複雑になっていきますし、地方
財源だけでは行政目的を遂行できないということから、国の
補助を要するという
事項が非常に多くなって参りまして、特に今
年度ではもう負担金、
補助金が六千二百億円をこすということになって、地方
交付金の額よりも
補助金のほうかはるかに多くなる。こういうことになってきますというと、今後地方行政の行政水準の均衡とか向上ということを合理的にやっていこうとしますというと、どうしても地方固有の
財源と、それから国から
交付される
交付税と、それから
補助金、負担金というものの三つの組み合わせをどういうふうに合理化していくことが地方行政推進のために一番合理的であるから、こういう問題にぶつからざるを得なくなって参りましたので、税制調査会部門において、まず地方税制というものの検討をいたしますし、今度新たに
補助金の制度を取り扱う審議会を作るということにいたして、法案も通過いたしましたので、ただいま人選にかかっておりますが、この審議会にこの問題を取り上げてもらいますし、それから同時に、
補助金といい、地方税といい、
交付税といい、これをどう合理的に総合調整していくかという問題の前に、それを解決するためには、結局、国と地方の事務分担というような大きい問題がございまして、この分担のいかんによってはこの制度の
運用もまた大きく変わってきますので、内閣にできたこの行政制度の調査会というところにも、この問題を扱ってもらうというふうにいたしたい。各
委員会の結論を最後に総合して、地方財政の問題も私は合理的に解決できるんじゃないかと考えておりますので、そういう方針から、ここまで膨大になった
補助金、負担金の問題ですから、この合理化の審議会はどうしても設けて、審議を願いたいというふうに考えております。
決算の時期等については、おっしゃられるように、十分にここで改善したいと考えております。
それから、金融の問題でございましたが、まず
政府機関の
資金量をもう少しふやしてほしいということでございますが、これはただいま、大体
中小企業の使っておる金融的な
資金というものは、分量は六兆円をちょっとこす
金額となっておりますが、この六兆円の
中小企業の金融
資金を分量的に見ますと、商工中金とか、
中小企業金融公庫、
国民金融公庫、この
政府の三
機関の
資金は一割はございませんで、全
中小企業の金融のうちの八、九%という比重でございますので、むろん
資金を多くすることは必要でございますが、これを多くすることによって——少しくらい多くすることによって、
中小企業の金融問題というものは片づかない。大
部分が、九〇%以上というものが市中の金融
機関を通ずる
資金と、こういうことになっておりますので、私どもは、
中小企業金融については、今度引き締め政策をとる前に一番重視しましたことは、この五兆何千億という一般の市中の金融
機関の
資金壁を一割落とされるというと、もう五千億円も
中小企業には響くんですから、この貸出比率を落とさせない指導というものが、どうしても必要だと、こういうふうに考えまして、引き締め政策に入る前に、名銀行に対して、引き締め政策をやったあとも
中小企業への
貸付比率を三〇%——従来の率の三〇%を落とさないようにという指導を先立ってずいぶんしてございました。それからもう一つは、たびたび申しますが、三十二年のときの経験によりますと、突然金融引き締め政策というものをとると、大企業が
資金の大
部分を使ってしまう。これは無理ないことでございまして、設備投資
計画をやり出している大企業が、途中で簡単にやめるというわけにはいきませんので、引き締めをされても、もうすでに着手した設備投資というものは、腕ずくでもやるという態勢になりますし、銀行もまた自分の系列下の企業に対しては、無理してもこれはやらせるという態度をとりがちでございますので、突然引き締め政策をやりますというと、勢い大企業に
資金を使われてしまって、
中小企業に全部しわ寄せがくるということが考えられますので、私は、引き締め政策をとる前に、六月から二、三カ月かかって、そういう事態が起こっても、大企業の設備投資に全部金がそのまま行かぬようにという指導をずいぶんいたしました。そうして、日銀と
大蔵省で、各銀行を通じ、今銀行にできている
融資計画のうちの
計画を一割ぐらいずらせる、これを繰り延べるという方針で、銀行の協力を願うというような、いろいろな準備をして、引き締め政策に入りましたので、この点は、
政府の手の打ち方がおそかったという非難がいろいろございますが、この準備があったから、私は案外うまくいったのじゃないかと思っております。特に暮におきましては、引き締め政策をとる以上、
中小企業の問題等は一番心配しておりましたが、
政府機関の年末
資金手当を初めとして、一−三月の苦しいと言われている期間への
融資が、千億以上の
資金増加ということをやりましたし、また、信用金庫とか
相互銀行というようなものの非常な協力をいたしまして、前年同期に対して三、三割方貸出量を多くしたというようなこともありますし、市中銀行も引き締め前とほとんど同じで、むしろ引き締め後のほうが貸出比率が少し多くなっているというくらいで、この比率をささえたというのはまあよかったと思いますが、そういうようないろいろなことでここを——困難と言われる時期は踏み切って参りましたが、しかし金融は締めておりますので、むしろこのしわが今大企業のほうへ私は寄っているのじゃないかと思っております。
で、
中小企業の倒産件——よく非常に倒産が多いと言われますが、統計で見ますというと、
昭和三十四年、三十五年のほうが多くて、三十六年の件数は明らかに減っております。
それから不渡り手形の発生率も、三十四年、三十五年のほうが発生率は多くて、この三十六
年度中の不渡り手形の発生率は、過去のどの
年度よりも減っているということを見ましても、まあ何とかある程度円滑に推移してきているのではないかと思いますが、今申しましたように、大企業は相当の金融の詰め力でございますので、その部門から
支払いの遅延とか、あるいは手形の期限を延長するとかというような形で、
中小企業への新しい別のしわ寄せが今起こりつつあるというように考えますので、この点についての配慮は、今後私どもは十分必要だと思っております。で、いろいろこの金融の逼迫しているときに、一度に増資を集中させるというようなことも問題で、ございますので、昨年来増資の調整も私どもはやりましたので、一−三月は何とかいきましたが、増資調整そのほかによって四月から六月へ金融の困難さを少しずらしているという形になっておりますので、今後の対策は、この点を中心とする対策をうまくやればいいのじゃないかと思っております。四月は、御承知のように、まだ散超期でもございますので、日銀の売り戻しも今のところ円滑にいくという見通しでございますが、五月、六月のまた揚超期に入りますと、相生金融の問題が出てきますと思いますので、今
政府もその期間に対するやり方を慎重に私どもは検討し準備しておりますので、この点は、十分善処できるのじゃないかと考えています。
それから、設備投資についてのお尋ねがございましたが、大企業の設備投資が行政指導によってうまく押えられるということでしたら、金融の引き締めという一般的な方法で——無理な方法でこれをやらなくてもいいわけでございますが、これができなかったために、昨年から金融の引き締めという方法をとってきたのでございますが、それによって私どもは相当設備投資の抑制もできたと思っておりますが、どの程度これができたかどうか、まだ三月の末までのほんとうの統計が出ませんのでわかりませんが、昨年の設備投資は相当やはり多かったと考えています。そこでことしは、昨年の経験から見まして、設備投資の吟味は早くやったほうがいいという考えから、四月中にもうすでに通産省は合理化審議会でこの吟味は始めておりますし、私どものほうも
日本銀行と一緒になって銀行の調査をやって実態の把握を今やっておりますので、去年よりは私どもの行政指導力というものは強化していると思います。できるだけ不要なものは押えて必要なものにとめるという行政指導を私どもはことしは十分するつもりでおりますが、押えるといっても、
経済は伸ばさなければなりませんので、
政府の今の見方は、昨年は三兆七千億をこした設備投資であったと思いますが、ことしは三兆七千億円をちょっと切った程度、三兆六千九百億円程度にこれをとめることができたらいいという一応の目標を持っておりますので、行政指導を通じて大企業のほうも押え、
中小企業そのほかも合わせて、三十七
年度は三兆七千億円以内の設備投資に押えたいという考えを持っておりますが、したがって、そのためには、金融の引き締め政策というものはまだここですぐにゆるめられない、
国際収支の見通しがほんとうにつくというときまではそう安易にこれをゆるめるわけにはいかないと思いますが、しかし、三兆七千億円以内ぐらいの設備投資でとまるということでしたら、輸出入のあの見方が見方どおりにいきませば、昨年どおりの生産がまだふやせる、そして不景気にはしない、不況にはしないという見通しが立ちますので、一応
政府は三十七
年度の
経済運営の見通しという見通しの線に沿って今後運営していきたいと思っております。したがって、まだ、設備投資を押えるといっても、ことしは三兆七千億円ぐらいの設備投資は
予定していることでございますから、相当各所の企業が設備投資をやっている姿は目に触れることと思います。目に触れるのが実際でございまして、従来から考えますと、一年に三兆以上の投資でたいへんですが、ことし一応押えるといっても、その程度までは私どもは覚悟しておりますから、まだ各地に設備投資はある程度あるわけでございまして、その程度の予想の金融ということでしたら、別に心配なくいける。これをこしてさらに去年やりましたように四兆や四兆何千億という設備投資が出るということでしたら、これはもう金融の問題でも相当の問題を起こしてくる、今の程度の
政府施策ではどうにもならぬという事態になると思いますが、今のところでは、機械受注の現状を見ましても、先行き設備投資がそう大きくふえとるいうような先行きの指標も出ておりませんので
政府の今の行政指導と引き締め政策を依然としてある程度持続するというこの二つによって、ことしはほどほどに設備投資は押えられる。したがって、その程度でいくなら、金融問題もそういろいろな混乱を起けさずに済むというのが今の見通しでございます。