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戸叶武君
アメリカの占領政策の変化でありますが、やはり第一次欧州大戦が終わった
あとで、ノルマン・エンゼルが新しい戦争の結果というものを予見しまして、もう過去の戦争と違って、戦争に勝ったからといって、相手の国から賠償金をたんと取れるのじゃなしに、負けた国をいじめつければ、その国の生産が麻痺し、復興がおくれ、そうして結局は勝った国が負けた国をいじめて得とるというようなことができてないので、ドイツならドイツが落ち込んでしまうと、その穴の中にやはりみんなが引きずり込まれてしまうというような
批判をしておりましたが、第一次欧州大戦後における戦後処理の理想というものは、やはり占領政策というものが、その国の
経済を復興させ、そうして生活の安定をはかっていかなければならぬというので、マッカーサーが終戦後
アメリカ国会にメッセージを送ったように、
日本のドル貿易の均衡をはかって、そうしてそれで
アメリカ側への支払いができるようにしていくのだというふうに、私はスタートは切ったのだと思いますが、そのうちに、何といっても、戦争に勝って、占領軍というのがおると、それに結びついて、
日本が満州でも
中国でもよくないことをやったと同じように、どこの国でも、変な利権屋みたいなのがくっついてしまって、どさくさに一もうけしようという
考え方から、やはり負けた国をうまいことを言いながら、しぼり取っていくという仕組みができ上がってしまったのですが、
アメリカだってやはりそれと違わないのです。そういう形で
日本が、戦後において大きな犠牲を払ってきたのだというのは事実なんで、事実上においても、
アメリカの
ガリオア・エロアに匹敵する以上の支払いを——支払いというか、
アメリカ側のふところのほうには
流れ込んでいったというような仕組みになっているので、これはなまはんかに、三分の一にまけさしたとかいう、博労の取引みたいなことを言わないで、これはほんとうに、私は、占領政策においてどういうふうに
日本が被害を受けたかということも、率直にこの機会に、いやみじゃなく——
日本人の正直というのは、向こうの言うのは御無理ごもっともというのは、正直じゃないのです。これは奴隷の正直というのです。やはり奴隷の正直はよして、さむらいなんだから、やはり
一つの、こういうこともされたと、今さらいやみを言うのじゃなくして、これだけの犠牲を払っていたのだから、これは
アメリカさんもひとつ考えてみてくれと、それで考えられないならば、やはり、私のほうはさむらいだけれ
ども、あなたのほうはゼントルマンとして、
一つの作法があるだろうからというくらいにやらないから、
アメリカが誤っているのです。今
アメリカの政策を誤っているのは、
アメリカが悪いからじゃない。
アジアの苦悩を代表して政治家が正直にほんとうのことを
アメリカに告げていないからです。
アメリカの有識者が一番望んでいるのは——
アメリカの政治家もこれはなかなか圧力団体に抗しかねるところがある、
アジア、アフリカのすぐれた指導者の声を
アメリカの大衆の中に投げつけてくれ、その反響において、
自分たちだけがよくなっていけば
世界は平和だと思うような
アメリカの夢を破るし、
アメリカが
世界に対する共同の
責任を持とうという感情が民衆の中に入ってくるだろう。今
アメリカが望んでいるのは、金を
日本からしぼり取ろうというような
態度ではなくて、そういう、
アメリカの
人たちが
世界連帯の思想を持って、ほんとうに
アジア、アフリカを腹から
理解できるような声を求めているのです。私は、今われわれがこの
ガリオア・エロアの問題でも
政府のいくじのない
外交に対して腰をけ飛ばしているのは、腰を抜かしているのでは、腰抜けではとてもほんとうのことが言えない、やはり
国民の中に、敗れたけれ
ども、とにかく、いやみでなく、こうこういうことをわれわれも
中国やその他で悪いことをやった、また犯した、だから、あなたたちはとにかく、
タイの言うことなら、ああそのとおりと言って、まるで何でもOK。
アメリカに、
タイに
日本が行なうような思いやりのある
態度はどこにあるのです。
日本は戦争で戦ったのだからというけれ
ども、戦後におけるところの
日本は
アメリカに協力し過ぎるほど協力していながら、いまだに真珠湾のことを忘れないで、われわれに対してこういうようなことをやるというなら——
アメリカが悪いのじゃない、
日本の
政府が
国民と
アメリカの指導者の中間に立って変なまねをしているからこういうことになる。これはよく
池田さんや
吉田さん好みの、ダレスさんのウォー・オア・ピースというものの中にも率直に
アメリカの
外交の間違いを告白しているので、
アメリカ人はそういうところ正直ですよ。
ソ連の悪口を言ったって、やはりヤルタ
協定を
アメリカがやって、
国民政府の主権というものを無視して、突っ放して、そうして満州、蒙古にも出てきなさい、樺太、千島にも出てきなさい、
日本をやっつければ
日本の持っていた権益はやりますと、
中国の宋主権があった外蒙に対しても、その宋主権を奪って、そうして独立という名でモンゴール人民共和国というような地帯を生み、それからある段階までは
経済援助をしていながら、これは
経済援助をしたら得にならぬといった形になれば、
国民政府からぐっと引き抜いてしまって、共産党に結果的には引き渡すというようなどんでん返しの
外交政策をやる。これは私は、
アメリカにチャイナ・ロビーといわれるほどの、蒋介石から金をもらっていた圧力団体までもあったが、
アメリカが今、
国民政府というよりは、むしろ
中国に不信感を買っているのは、
アメリカ本位の利己的な
外交政策が極東に混乱を巻き起こした。ヤルタ
協定以後におけるやることなすことすべて、善意から発足したか知らないが、
アジアの実態というものを把握しない、
アジアの憂いというものを
理解しない
アメリカ本位の
一つの
外交をやってきた。これが一番最後——最後かもしらぬ、この一番醜態が
ガリオア・エロアの処理だと思うのです。私は、
政府の今までの交渉過程というものは、ある段階々々に
国会でも
説明し、
了解を求めてなかったということより、非常に不満なのは、やはり
国民がどういう反応を起こすかということを見ないで、
世論というものと密着しないで、
外交というものは
外交権を持っている
内閣が相手の国とうまく取引すればいいという、こういう
外交職人の手に渡ったものだから、変な料理の仕方でもって、私たち
国民が非常な被害を受けているのですが、私はやはり今後における
外交というものはもっとオープンに、特に私は、
国会が国の最高機関だからといって、
内閣をしり目にかけようというのじゃないのですが、最高機関であると言われるのは、われわれは段階的に最高だというのを主張するのではなくて、主権者として、人民の意思なり感情なりというものを
国会が盛り上げてきているのだから、こういうところで率直に、
外交の基本的な
考え方、それから段階々々における処理というものをやはり
報告して、
あとの仕上げの技術的なものだけは別だけれ
ども、
了解を取りつけるという方法をしてもらいたかったのです。そういうことを今までやらなかったのも、われわれは非常な不満なんだ。この段階に入っても、
政府はそういう面においてはまだ何らの反省もないと思いますが、
小坂さんは若干良心を持っておりますが、どういうふうに考えますか。