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1962-04-17 第40回国会 参議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十七日(火曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     井上 清一君    理事            鹿島守之助君            木内 四郎君            大和 与一君    委員            杉原 荒太君            苫米地英俊君            永野  護君            堀木 鎌三君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            森 元治郎君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君   政府委員    外務政務次官  川村善八郎君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済局経    済協力部長   甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君    外務省情報文化    局長      曾野  明君   事務局側    常任委員会専門    員       結城司郎次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国に対する戦後の経済援助の処  理に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○特別円問題の解決に関する日本国と  タイとの間の協定のある規定に代わ  る協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 井上清一

    委員長井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を便宜一括議題とし、前回に引き続いて質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 大和与一

    大和与一君 質疑に入る前に、前回辻政信議員の問題についてアメリカ側と折衝する、こういうお答えがあったのですが、その経過を御答弁願います。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) あの委員会が終わりました直後、アメリカ側に対して、アジア局からその話をいたしておきました。それから、中国の紅十字会に対しても、そのことの調査方を依頼するように、日本の赤十字に対して依頼をいたしたのであります。その後、両方からまだ何の反響もございません。ただ、新聞のほうで伝えられておることは、御承知のように、謝南光氏はそういうことを言った覚えはないという趣旨のことを言っておられるということが伝えられております。私の承知しておるところでは、あの話は非常に内輪的な、何といいますか、うわさでは、という程度の話であって、公開の場所で論議されることを好まなかったように聞いておったものですから、私もそういうふうにしておったわけですが、国会でそういう話がございましたので、さような措置をとるということを申し上げておるわけでございます。どうもあまりその点非常に進展が期待できるということは、今のところあまり感じられないのであります。
  5. 大和与一

    大和与一君 いずれにしても、問い合わせておりますから、返事が来ますわけですね。
  6. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 本日から、参議院の本委員会においてガリオア・エロア及びタイ特別円の問題について審議に入るわけでございますが、最初委員会において総理大臣の要求をいたしておきましたにもかかわらず、今日は総理大臣の御出席がおできにならないということは非常に遺憾なことだと思います。委員長の御努力が足りなかったのですか、どういうことなのか存じませんけれども、やはり今日の参議院のこの委員会は、非常に重要視されなければならないはずの委員会であったと思うのでございます。にもかかわらず、総理大臣が御出席にならないということはどういう御事情でございましょうか。
  7. 井上清一

    委員長井上清一君) 十二日に総理出席してもらってガリオア・エロアの問題に関連いたしまして御質疑があったわけでございまして、きょうも総理出席を求めましたけれども、午前中は閣議及び参議院地方行政委員会で前々から約束がございまして、午後は衆議院の本会議がございますので、どうしても出られないというようなことでございます。努力いたしましたけれども総理出席を得ることができなかったのは、まことに遺憾でございます。来週はぜひとも出てもらいますよう努力したいと、かよう考えております。
  8. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 では、私は総理大臣に対して二点お伺いする質問を準備いたしておりますけれども、それは総理の御出席の日まで保留いたすことにいたしまして、外務大臣への質問から始めたいと思います。  私が外務大臣にお伺い申し上げたいことは、ガリオア・エロア返済金の中の一部二千五百万ドルが円貨で支払われ、日米教育文化交換の目的のために使用されるという交換公文に基づきまして、そういうことにお取りきめになった、そのことについて伺いたいと思うわけでございますけれども、この日米両国間の教育文化交流のために使用されるという、その具体的な使途計画というものはどういうふうになっておるのでございますか、それを伺いたいと思います。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まだ具体的に何らきまっておりませんわけでございます。この点について私も多忙をきわめておりまするので、まだ具体的に米側と話し合ったことはないわけでございます。
  10. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 何もまだおきめになっていらっしゃらないというようなことを伺うことは、少し意外のように思うのでございますけれども、この資金について、ガリオア・エロア返済金のうち二千五百万ドル、日本金にして約九十億円が用意されているというようなことにつきまして、ライシャワー駐日米大使からの通報、書簡というこの文書によりますと、最初の第一回及び第二回の支払いの中でそれが支払われることを希望していると、こういうよう最初の第一回、第二回とこういうことで急いでいらっしゃるというふうな印象を得るのでございますけれども、そういたしますと、これは時日にいたしましていつごろになるわけでございますか。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最初の一年からということになるわけですが、半年ずつ払うわけでございますから。これはむしろわがほうで希望いたしまして、最初はドルで払う分はなるたけ少ないほどよろしいわけでございますから、また一方日本にこれだけ円貨が積み立てられれば、これが利息を生むわけでございますから、そういう趣旨最初の分から積み立ててもらいたいということをわがほうが希望し、先方も同意してくれたわけでございます。しかし、それをどういうことにいたして使用していくかということになりますと、わが国内法制上の問題もございまして、どういうふうに財団を作るとかいうような形にして、その基金というようなことになろうと思うわけでございますが、国内所管庁との打ち合わせもいたさなければなりません。事務的にはそれぞれ多少はやっておるわけでございます。私のレベルまで上がってこない、そういう意味でございます。
  12. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 財団お作りになるという御計画があるというふうなことを伺っておるんでございますけれども、その御計画をもう少し詳しく、具体的にどういうよう構想になってらっしゃるのか、それを聞かしていただきたいのでございますが。
  13. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) この二千五百万ドルをいかにして使うかということにつきましては、先ほど大臣からも御説明がございましたように、まだ具体的の話し合いの段階に入っておりません。それで、おそらくアメリカ側においても、事務的にいろいろ検討をされておるのであろうと思いますし、われわれのほうも、日本側の希望としてどのようにしたら有効に使われるかということを事務的にいろいろ検討しておるのでございまするが、具体的な一つ構想というものは、まだ立っておりません。具体的問題といたしまして、この財団を作るかどうかの問題もございますし、財団を作った場合のいろんな法的な関係がございます。アメリカ法律財団日本の中でどういうふうな取り扱いを受けるのか、あるいはまた、日本法に基づく公益法人として作るべきなのか、それから免税の問題とか、いろいろ問題はあるやに考えられますので、その他の諸点もいろいろ考えております。  なお、この条約が批准されました後六ヵ月後に第一回の払い込みがあるわけでございます。今からいろいろ準備しまして、十分それに間に合うよう検討いたしたいと、かよう考えておる次第でございます。
  14. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 六ヵ月後に第一回の払い込みがあって、さらにまた六ヵ月後に第二回の払い込みがあって、それで全部の二千五百万ドルに到達するのをお待ちになるのでございますか。それとも、第一回の払い込みの後に、もうすでに仕事のほうは出発をすると、こういうことになるんでございますか。
  15. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) まだ具体的に話を進めておりません。しかし、第一回の払い込みというものが約四十五億あるわけでございまするから、おそらくはそのころから直ちにいろいろ諸活動ができるようにするのが当然じゃないかと、さよう考えております。事務的には各種の資料を検討をしておる次第でございます。
  16. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その四十五億、合計九十億というようなお金は、その利子をお使いになるというようなことになるんでございますか、それとも、元金のほうへも入っていって使うよう計画になるんでございますか。
  17. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) まだ具体的に確定した案はございません。しかし、今おっしゃいましたように、これを基金として利子でやっていったらいいんじゃないかという意見もあるようでございます。あるいはまた、その一部をもって、たとえばセンターを作ったらいいじゃないかという意見もあるようでございます。それから、いろんな機会に個人的ないろんな意見を述べて下さる方もございます。それらのことを勘案いたしまして、いずれアメリカ側と協議するわけでございますが、わがほうも意見を持って向こう交渉あるいは話し合いをすることになるかと思います。
  18. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 もし利息ということになると、利息は九十億に対して年間どのくらいの利息になるわけです。
  19. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) まあその運用の仕方でございますが、これをいわゆる普通の定期にするとか、いろいろな問題があるでございましょう。しかし、具体的にそこまでは考えておりません。今普通の定期は何分でございましょうか、三分四、五分でございますか、いろいろな投資もございましょうが、その態様によりましていろいろ違うと思います。それから免税の問題もあるかと思います。それらの問題、いろいろ法的に考えなければならぬ問題もあるかと思います。したがいまして、まだそこまで詰まった計画というもの、試案は作っておるわけではございません。いずれにいたしましても、約九十億というものを常識考えまして、これを五分といたしまして四億五千万円になるというような大体の観念は頭に描き得るわけでございます。
  20. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 日米箱根会談から科学委員会、それから今度の教育文化会議、みんなこれは新案保体制の裏打ちの会議であるというふうに私たちは見ておるわけでございますが、この日米安保委員会が防衛問題というような一側面を扱う協力機関であれば、この教育文化会議というものも、やはり教育思想面を担当する協力機関というものに結局なるのじゃないかというような見方もあるのでございますけれども外務大臣はそういう面についてどういうふうにごらんになっていらっしゃるのでございますか。
  21. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はこれは非常にいいことだと考えているわけです。日米両国が非常に緊密に経済的な提携をしていく。また日本安全保障についても日米安保条約がある。しこうして、そうした緊密の関係にある両国の間において、科学技術文化交流ということについて考えていくということは、非常に私はけっこうなことだと考えておるわけでございます。日本国内にも相当海外に留学することを希望している者もおり、たまたま経済的な面でそれができないという人も多いわけでございます。そういう志を持つ若い人たちに対して、そういう便宜が与えられるということに、この二千五百万ドルが使われるということを非常に期待いたしておるわけであります。
  22. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 日米教育文化合同会議コミュニケというものが一月三十一日に発表されておりますですね。このコミュニケの要旨というものを、こまかく出ておりますのをちょっと拝見いたしておりますけれども、この中にはいわゆる今まで文化交流というようなことについて考えられ、言われ、あるいは実行されてきた、そういうふうな面をさらに非常にこまかくいろいろ規定していらっしゃるように拝見するのでございますけれども、今まで常識考えまして、日米間の教育文化交流というようなことになりますと、日本のいろいろ古典的な文化アメリカの人が非常に珍しがり、喜び、あるいは尊重する、こういうものを押し出してくる、そういうようなこと、それからアメリカからはどういうものを得るのか、非常にアメリカ的な、いわゆるアメリカ的な生活文化というようなものを日本にどんどん紹介する。そうしてその間で非常に今まで障害になっていたのは言語障害言語が非常に不通であったというようなことから、今度はこの言語、語学の教育というようなことについて非常にこまかく力をお入れになるよう規定していらっしゃる。そいうようなことが非常にたくさんこれに出ております。けれども、それより先に何もないというようなことになりますと、何ですか、日米教育文化会議というようなものを作っても、今までいろいろ民間なんかでやっていたものを、さらに少し高いレベルで、国家的レベルでやるというにすぎない。しかも、国家的レベルでやるということになれば、やはり今日の世界情勢から見て相対立するイデオロギー世界であるというようなことになりますと、この一方的な、日米両国政府が支持しているようイデオロギー、そういうものにだんだん限定していく、そういうよう教育文化交流の指導の仕方であるのではないか。もしそういうものであれば、非常にこれは限定されていくものになるのではないかということが懸念されるのでございますけれども、そういう面についてもう少し外務大臣がどういうふうに考えていらっしゃるか、御所見を承りたいと思うのでございます。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この日米科学教育会議は、今年の初めに第一回が開かれましてから、第二回をこのまた五月にアメリカでやるというような合意がなされまして、日本の学界の方々等においても非常に期待を持っていらっしゃるというふうに聞いているのでございますが、私は加藤さん御指摘ように、日米だけがそういうことをして、他のほうに目をおおうんではないか、こういうようなお考えはむしろ私は当たらない。さように思っておらないので、日本としては、これは各種文化を取り入れ、そしてこれを日本的なものにそしゃくしていくということは、日本人の特技とも言っていいくらい、かってわれわれの祖先がずっとやってきたことなんでありまして、この際すぐれたものは取り入れ、また先方においてわがほうのすぐれたものを取り入れさしていくということは、これは非常に意義のあることだと思っているわけでございます。たまたま日本アメリカとの間では、さよう会議が持たれているわけでありますけれども、それが持たれたからといって、では、ほかの国には目をおおうのかということにはならない。大いに窓口の開けているものについては、積極的にこれを活用していくという態度でよろしいのではないかというふうに思っております。
  24. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私が、心配いたしますのは、日本から何か向こうに与えるものがあるということになれば、近代的なものじゃなくて古典的なものであるというところが、どうしても、今までもそうだし、今後も何か与えるということになると、特にそういうようなものが重要視されるというようなことになりがちだということを心配するのでございます。もちろん、それが悪いと言うのじゃなくて、それも非常にけっこうだと思いますけれども、そういうところに限定されるということになりますと、戦前の国際文化振興会というようにものがやっていた仕事が、ただスケールが少し大きくなったにすぎないというようなことでは、あまり今日においては意味がないんじゃないか。今外務大臣がおっしゃるように、もっと幅の広いものにするというお考えを承りましたけれども、その幅の広いものにするには、具体的にはどういうふうにしたら幅の広いものになるのでございましょうか。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の非常によさという、日本人の中にある東洋的な哲学といいますか、そういうものが各種芸術面に出ているわけでございます。そういうものは、ことにアメリカように近代的な文明が高度に発達している国において、特に要求される。まあ一面においては精神のささえにもなるというようなことで、非常に要望されておるように私は考えております。そういうものを交流したいと先方も言い、われわれもまた先方の非常に高度に発達した科学技術、これについて、それを取り入れるということはわれわれとしても利益であると思うわけでございます。何といっても、そういうふうな相互交流があるわけでございます。これを振興するということを考えまする場合に、直ちにそういうことをすれば、今度は自分らのほうがその国並みになるという考え方ですね、これは私はむしろ自信がなさ過ぎるんじゃないかと思っているわけでございます。
  26. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その国並みに。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その国の考え方のとおりに、日本交流すれば、なってしまうのではないかという考え方は、むしろ自信がなさ過ぎるんじゃないか。われわれの今までの過去において宗教が入ってきて、その宗教日本的なものにこなしてきたわが民族の優秀な気質からすれば、むしろこういう会議を通じて大いに日本科学教育面振興こそ考えられるが、決して心配することはないというふうに私は思っております。
  28. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今外務大臣のおっしゃったことは、私わからないわけではございません。今アメリカなんかでは、日本の東洋的な哲学というようなものは、非常に評価されているわけでございます。ですけれども、今の若い世代が、私たち日本人が東洋的な哲学を持っているのかどうだか、非常にこれは疑問でございますから、日本から与えるといっても、結局、そうすれば、今のものの交流じゃなくて、かって日本はこういうものを持っていたというようなことを向こうに紹介するというところにまた戻ってしまうのではないか。それからまた、アメリカから交流して何を求めるかということになると、何か進歩している科学文明というものを求めるというところに、また限定されるおそれがある。そういうよう文化交流というものは、まあやることは非常にいいと思います。だんだんそうやっているうちに、お互いに理解を深めていくことがあり得るということはいいと思いますけれども、これだけの大がかりの国家的なレベルでやるという以上は、やはりもう少し何か積極的なものがお互いにあるというようなものが、今から考えられるべきじゃないかと思うのでございます。これがいわゆる共産圏の場合ですと、自分の国のはっきりしたイデオロギーというものをいつでも持っていて、そうしてもうそれをまっこうに振りかざしてどんどん突進していくというようやり方をやられます。そういうものは非常に積極性があって強いもので、これが、今の日米間の文化交流というものに考えられている外務大臣の御答弁の範囲でございますところが何かぼやけてしまって、ただお互いに言葉が、アメリカ人日本語をよりよくしゃべり、日本人が英語をよりよくしゃべり、あるいはアメリカ人がお能だのいけ花だのを理解するというところにとどまって、それからお互いによく交際をするというようなところで、それから先の、何かもう少し、今の変わりつつある世界情勢というものに対して、日本アメリカがどういうふうに力を合わせて新しく建設的な努力ができるかというような、そういうようなものを与えるというようなものが、そこまで今までの外務大臣の御答弁の中に何も現われていなかったものですから、こういうものをお作りになるのでしたら、そんなことをも少し御研究なさる心要があるのではないか、こういうふうに考えるのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御指摘の点は、私どもも理解できぬわけじゃないわけです。しかし、こういうものはやはりその過程の中から生まれてくるもので、最初からそういう規定を置いて、これ一本やりでいくんだ。たとえば科学技術教育文化二つ方向があるわけです。教育文化の面においてはこういう形のものを作るんだ、そういう協定お互い相談して作るんだというような定義を置いて、そうしてやるということでは、むしろわれわれらしくないと思いますね。自由主義国というものは、やはりお互いに自由にものが言えて、自由に研究ができて、自由に会議が持たれるというところに特色があるわけでありまして、その中のいろいろな体験なり討議なりというものを通じて一つの成果というものが生まれてくるわけでございます。むしろ私どもは、そういう形に期待したい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  30. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうような心がまえでお始めになるということは、今までのいろいろの日米間の交渉経過、いきさつなんかから見て参りますと、何かいつでも日本アメリカの喜ぶようにやっていくというような性格がどうも日本人の中にあるらしい。いろいろ日本人外交を見ておりましても、結局はアメリカの喜ぶことをこっちも理解してやって、そしてそのペースで歩いていくということにいつでもなっていっちまうように思います。そういうやり方というものは、もう今またそれをやるべきでなくて、やはりもう少し高いところにお互い高まっていくという、目標だけはそこへ掲げておかなければならない。その目標を掲げておかないで、ただそこの出たとこ勝負でだんだんやっていく、その過程の中からまた生まれてくるというのでは、これは非常にあまりに多くのことが期待できないというふうに私は考えるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ日本人というのは、外国でやたらにおじぎをしたり、あいきょうを振りまいて、すぐ、日本へ来てくれというような話をするというのは、これはもう私も日本人の一人として、そういういわば素朴な後進性日本国民がしりにつけているからだと思いまして、それに対してに少なくともそういうことをしないつもりでおる。それでは、アメリカだけにそういうことをする人がおるかというと、そうではないですね。ソ連ならばソ連に非常に気に入るようなことを言っておる、あるいは中共に行っても、あるいはほかのヨーロッパに行ってもそうだという傾向というものは、私は若干あると思わざるを得ない。しかし、少なくとも政府の政策なりそういうものとして、アメリカが喜ぶようなことだけやっていくということ、これはそうじゃなくて、やはり日本日本として一番国民多数の利益と思われる方向において外交をやっているわけでございます。私はこのことから、今のお話からそれじゃ科学会議なりあるいは教育文化会議なりが、アメリカの喜ぶような方法においてこれを企図しているのだというお考えは、利は承服できないのです。私はやはり日本の全体の知識水準を高める、そして日本文化というものをより多く外国にも紹介し、外国のすぐれたものを取り入れる、こういう見地から、非常に心を広くしてつき合ったらいいだろう。そこで取り上げるものはどういうものか。結局、取り上げましたその形を政策として実行する場合には、これは政府の問題になるわけでございますが、その場合に政府としては、今申し上げたよう方向でこれを判断するという考えでおります。ただ、教育会議なりあるいはこの科学会議なりを始めるにあたって、政府は、こういう日本としてイデオロギーを持っているのだから、これによってやるべし、さもなくんばこの会議というものは参加できない、あるいは意味がないということを言いますことは、これはちょっと行き過ぎであろうというように思っているわけです。ですから、何でもないことのようですが、この討議の過程からいいものを生み出す、こういう考え方は、やはり非常な努力が要りますし、そういう話し合い過程でものを作り出そうとする善意と創意といいますか、そういうものが日本人にあるかないかということが、この成果を決定するというように私は思います。
  32. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その日米教育文化交流のいろいろな共同コミュニケの中にも、たとえば人物の交流なんということも書いてあるわけなのでございますけれども、たとえば、人物の交流なんという場合にも、じゃどういう人を選んで招待し、こちらから送るかというような人選なんということになりますと、すぐそこでもって、その人がどういういわゆる世界観を持っている人であるかということがかなり問題になると思うわけでございます。そういたしましたときに、今の外務大臣ようなお気持でございますと、少し何か信念が足りないみたいで、やはり結局は、アメリカ人に、向こうへ行って評判のいいような人だけ選ばれて行くということになれば、そういう人も日本の中にたくさんいるわけですから、それも日本の一部を代表することになりますけれども、またそうでないような、アメリカと別に仲悪くしようと思っているわけでなくても、アメリカの現在のやり方に対していろいろ批判を持っているというような人物もまたたくさんいるわけで、そういう人は選ばれないということになっていく。そうなりますと、向こうへ行って理解される日本の姿というものは、日本の一面であるというようなことになってくるんじゃないか、こういうことを私は懸念するわけでございます。最近私ある外国の人といろいろ話をいたしましたときに、日本の政治情勢なんというものについて向こうの人の認識を見ますと、日本の社会党なんというものは、ほんとうに理解されなさ過ぎるので、それは驚くべきものなのでございます。日本の社会党なんというものは、共産党なんというくらいのことを認識している方がアメリカのえらい方の中に、指導的立場にいらっしゃる方の中にそういう方がたくさんいらっしゃいます。新聞論調などでもそういうようなものがしばしば見られる。そういうようなことは、これは正しい日本というものを向こうに伝えていることにならないわけです。社会党というものが、その政策とかなんとかが、それに賛成するとかしないかということは別でも、日本という国の政治情勢というものも紹介する場合には、少なくとも第一野党としての社会党というようなものがあって、そういうよう考え方があるというようなことは、そのまま向こう交流されて紹介されるというような、そういうものでなければ、これはだんだんやっているうちにおかしな片寄ったものになっていくんじゃないか。やはり最初の基礎というものに、はっきりした信念をそこにちゃんとお持ちになっていらっしゃらないで、行き当たりばったりやっているうちにどうかなるだろうというよう考え方じゃ、私は非常に心細い、こう思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  33. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最初から社会党は問題にされないというふうなお考えでなしに、やはりそれは社会党が大きな最大の野党であるということは、これはみんな知っておるわけでございます。問題はそれをいかに理解させるかという努力の仕方にむしろ問題があるのじゃないでしょうかというふうに私どもは思うわけでございます。私がいろいろな討議の過程から問題を生み出していくということを申し上げておるのは、何も行き当たりばったりでということではないと思っておるわけでございます。それはアメリカ人というものは、非常に何というのですか、率直で、寛大で、そういう点は彼らの美点として一般に認識されておるわけでございますから、こちらだけが、非常に言葉は適当でないかもしれませんが、偏狭な気持でつき合うことはないんじゃないか。やはりこういう会議で、要すればどんどん違った意見を述べられることも、政府と違った意見を述べられることも、むしろある場合には歓迎すべきことでもあるのであります。初めからものを固定的に定義づけてしまわないで、やはりわれわれも大国民として広い心持を持ってものを見ていくということが望ましいのではないでしょうかというふうに思うわけでございます。
  34. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その問題をこれ以上いろいろ外務大臣とお話ししてみても、ちょっと始まらないと思いますから、そのことはこれくらいにして、またほかの機会に譲りたいと思いますけれども、私が今申し上げたのは、社会党が人物交流なんかのときに最初から選ればないだろうというようなことを、ひがんだり心配しているわけでは決してございません。ただ、それはもちろん社会党としても、米国なんかに対して自分の政党というもののPRというものが非常に不足であるということは、われわれが反省しなければならないことだと思っておりますから、別にそのことについてとやかく申し上げるわけじゃございませんけれども、どうも今までのこういうよう政府間のレベルということになりますと、どうしても自分の好むようなところに持っていくような格好になるので、そういうことじゃなくて、民間のあらゆる層を代表するよう文化交流でありたい、政治的な色のつかない文化交流ということでなければならないだろうということを、特に私は外務大臣にお願いをいたしておくわけでございます。  次に二番目の質問でございますが、それは「支払金の使途に関する交換公文」によって、この支払金が低開発諸国に対する経済援助に使われる。こういうことにお取りきめになっていらっしゃる。その問題についてお伺いするわけでございますが、このガリオアの返済金を東アジアの経済援助に振り向けることを日本側が希望して、そして米国側との間に交換公文交換した、そういうようなことを承っているのでございますけれども、その交渉のいきさつはどういうふうにおやりになったのでございますか。その辺を聞かしていただきたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちょっと失礼ですが、最初のところを聞き漏らしまして……。
  36. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 低開発国に対する経済援助の使途について、これはこちらから希望しておっしゃったのですか。
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのとおりでございます。われわれとして、そのガリオアのお金はアメリカに払うべきものと考えて、これだけの四億九千万ドル払うけれども、しかし低開発国、ことにアジアにおける経済開発のために用いられることを希望するということを言ってやりまして、そのよう交換公文になっております。
  38. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣が特にそういうことを希望なさったという理由はどういうところにあったのでございますか。
  39. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれこの四億九千万ドルというものをアメリカへ返金するということは、これはわれわれとしてはたいへんなことでございます。その金がやはり一つの目的に使われるということが、わが国の国民にとりましても、非常に喜ばしく、歓迎されるところであろうと、こう思いましたので、さようにいたしたわけでございます。
  40. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この交換公文には、アメリカ政府が、適当な立法措置を経ることを条件として、返済金の大部分を低開発国援助に対する合衆国の計画を促進するために使用する意図を有すると、こういうことになっておりますが、これは米国の議会の承認が得られる保証というものが別にないわけでございますね。したがって、米国の議会の意思がそのようになるかどうか。アジアの国のためにどう使用するということになるというお見通しがあるのでございますか。
  41. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、アメリカ日本が返してしまえば、アメリカの金でございますから、こちらが指図するというわけにはいかぬわけでございます。わわれれの希望を付してそういう公換公文ができたわけでございます。そこで、アメリカがこれをどう扱うかということでございますが、昨年、一九六一年の対外援助法におきまして、アメリカは初年度十二億、それから十五億ずつ四年間支出するという計画を議会で承認を得たのでございます。その十二億のうち、三億ドルがガリオア等の返還金、それからあとの九億ドルというものがアメリカの一般予算から出される、こういうことになったわけでございます。それから一九六二年の会計年度になりましてこれが増額されまして、今後五年間十五億ずつ出すということになったわけですが、その中で特に日本からの返金ということが入れられまして、そして議会に提案されるということになったと承知しております。今まで南米の諸国に対する援助に関してこれを純粋な経済援助に使うという項目が六百十八条というのにあったのですが、その場所に、日本からの返金を使うという新しい規定を入れたわけです。つまり六百十八条のところに日本からの返金というのが入ったわけでございます。したがいまして、アメリカ政府は、この公換公文を忠実に考えてくれて、そして議会に提案するということを履行してくれたと、こういうように承知しております。これが議会を通るかどうかということは、これは今後の問題でございますが、まあ大体そういう趣旨で通るのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。したがって、低開発国の援助にこのガリオアの返還金が充てられるということ、それから、これが平和目的に使われる、軍事援助でなくて経済援助に使われるということが明らかであるという点で、私どもアメリカ政府努力を歓迎しているわけでございます。
  42. 永野護

    ○永野護君 関連質問。今のアメリカの予算で、アメリカが低開発国に出すということになりますと、形の上からいうと、日本は無関係になるのですか。あるいは、日本も相談を受けて、あるいは、相談を受けるというよりも、むしろ日本がイニシアチブをとって、こういうところへ、こういう産業に出してくれというような発言権が日本にあるのですか。全然アメリカの適当と思うところへ出すことになっておるのですか。
  43. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは権利としては、日本にはそういうものはありません。しかし、池田・ケネディ会談の趣旨、あるいは日本アメリカの従来からの協力、協調の関係、そういうものからいいまして、私どもは、それはいろいろな希望を持っておるわけです。したがって、さような希望については私どもも申しましたし、アメリカ側としても、私どもの希望というものは頭に入れていろいろ考えてくれるとは思いますけれども、しかし、われわれがそれを権利として主張するということにはなりません。
  44. 永野護

    ○永野護君 もちろん権利として云々というようなかた苦しいことをあれしておるのじゃないのですけれども、希望として言いますと、その金の使い道を東南アジア、特に東南アジアなんかに関しましては、日本が一番よく知っておるわけですから、こういうところへ出してくれというような、権利というかた苦しいあれでないまでも、そういう道があらかじめ了解事項の中に加わっておりますと、権利というまでにならなくても、相当な発言権といいますか、そこへ「権」という言葉を使うと少しあれですが……。
  45. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ちょっとそれに関連して。永野委員からの御質問もございましたけれども、私も、そういう権利というようなことは、ちょっとこの際、言えないと思いますけれども日米科学委員会とか教育文化会議とか、そういうようなものができておるように、特にこの使途については、日本側の要求をここまでアメリカがいれてくれたのですから、何かそういうような相談し合う機関、委員会、あるいは合同会議というようなものを持ってくれというような要求をなさることはできないのかどうか。
  46. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この四億九千万ドルは十五年間に払う協定で、最後の三年間に八百七十万ドル、その前の十二年間は、半年に二千百九十五万ドル払うわけです。そのうちから、二千五百万ドルを二年に払うわけですから、千二百五十万ドルずつ最後の二回は日本に積み立てるわけです。したがって、最初には九百四十五万ドルしか払わないわけです。したがって、これについては、あまりどうもこちらから注文がましいことばかりつけて合同委員会というところまでいきますことは、私は大きな目からいって、どんなものかと思っておるわけであります。  実は御承知のように、西独では九年前に払うことをきめまして、西独の場合、こういう条件は一つもつけていないわけです。幸いにして、日本の場合には聞いてくれたわけでございますので、この程度でやってみて、そうして、そうした形式的なものでなくて、実質的にいろいろ緊密な連絡をとっていくというほうが、外交的に見てよろしいのじゃないかという気持を持っております。
  47. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そうしますと、緊密な連絡をとるということだけはおやりになるわけでございますか。
  48. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点については、交換公文の中に、低開発国の援助に使う、それから別の項を起こしまして、東アジアのことについて緊密な連絡をとる、こういうことがございますので、これを一本にしてアジアの問題に使うというようなことで協力するということにしますと、アメリカの議会側の気持もあろうと思いまして、別にしてございますけれども、やはり緊密な連絡をとるということは、交換公文にうたってございますので、私どもはさようになると考えております。
  49. 永野護

    ○永野護君 今の問題の続きですけれども、従来の経験から申しまして、低開発国、ことに東南アジア地方に対するアメリカの援助、非常に好意でやっておるにもかかわらず、現地人の受けが必ずしもよくなかったということは、アメリカ自体でもよく自覚しておると思います。私は、その意味において、今、加藤委員の御質問ように、委員会が作れれば私は理想的だと思うのでありますけれども、かた苦しい委員会でなくとも、少なくも、これを出すときには、日本意見を聞いてくれることは、アメリカのためにも得だと思います。加藤委員もよく御承知だろうと思いますけれどもアメリカがずいぶんいろいろ援助しておって、かえって現地人に対していい感じを與えていないような出し方がある。これは民族の特性と申しますか、東洋人には東洋人に共通のわかる気分の問題がありますから、特に今度のこの金の支出については、日本の意向を相談相手として聞くということも何らかの形でできる、何もいわゆる権利義務の関係規定するようなものでなくてもいいと思いますけれども向こうの人の、取り扱う人のこういうふうにしましょうというようなことが文書に残れば、これは理想的だと思うのですけれども、あとへ長く続く問題でありますから、そういうことが望ましいと思うわけであります。これは一方的にこちらが思っても、アメリカのほうがどういうふうに受けとるかわかりませんけれども……。
  50. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今のよう話し合いは十分してあるわけです。そしてアメリカ側もそういうような気持であるわけです。その意味ではずいぶん小坂というやつはうるさいやつだ、さんざん渋った上に値切って、しかも使途までいろいろ言うと、私はそういう点ではかえってそういう非難を甘んじて受けるつもりでやっておるわけであります。ただこうなっておるのだということを私がこういう席で言うことは、向こうにしても西独に比べてずいぶん日本はごつい、さんざん延ばして値切って、また使途までずいぶん文句をつけて、そして記録に残したというようなことになると、私は外交的にはいかがかと思っております。
  51. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その援助資金は軍事目的には使わないということにははっきりなっているわけでございますね。ところが、軍事目的に使わないというような言葉も、非常に幅広く解釈することもできるし、幅狭く解釈することもできるので、もし非常に幅狭く軍事目的ではないというようなことを言っておいて、そして実際は軍事目的にもなるような使い方も出てくるんじゃないかと思うわけでございます。そういうことについて、軍事目的には使わないということの範囲をどういうふうにお話し合になったか、それを聞かしていただきたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、結果的にラテン・アメリカの場合の項目に日本のが入って、そこで従来使われておった経済的な援助というものと同様の性格において日本の返金を使われるというふうな期待が持てるという点を御披露いたしたわけであります。しかし、共産党的な言い方からすれば、アメリカのほうの経済援助はすべて軍事援助だということになりますので、それは私どもはっきり違うという考えでおるわけであります。いわゆる常識的に軍事援助と思われるものではないと、こういうことでよろしいかと思っております。
  53. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっとそれに関連して。そうしますと、例の防衛支持援助というものにも使わないことは保証されていますか。
  54. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 保証といいますか、とにかく対外援助法というもののワクで使われる限りは、そういうものに使われない、防衛目的に使われない、こういうふうに思うわけです。
  55. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 防衛支持援助にも使われませんね。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちょっとお待ち下さい。防衛支持援助というのはどういうことですか、ちょっと防衛支持というお言葉が私によくわからないのですけれども。いわゆる開発援助に使われると、こういう意味なんですね。これは政府委員から答弁させます。
  57. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) ちょっと補足さしていただきますと、今度の一九六二年対外援助法案、先ほど大臣がおっしゃいました六百十八条に、日本のガリオア援助を第一部の目的に使うと書いてございます。第一部は、これは経済開発援助でございます。したがいまして、これはどうせアメリカの金であり、アメリカの使途でございますが、この法案からは、経済開発援助に使われるということが出ておるわけでございます。ただ、この法案は、先ほども御説明がございましたとおり、今向こうの議会にかかっているわけでございます。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうことになっておれば、軍事目的には使われない、だけれども、もし日本の側からごらんになって、どうもこれは軍事目的のほうに使うように解釈するというような場合があったときには、何かそこで、それは話が違うじゃないかというようなことを言うことができるようになっているのでございますか。
  59. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 緊密な連絡をするようになっておりますから、そういうことが明らかであれば、申します。
  60. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この日米両国政府は、東アジアの諸国の経済のすみやかなかつ均衡のとれた発展が同地域の安定と平和に不可欠であるということを認めた、これは非常にけっこうなことだと私は思います。現在の韓国や、ラオス、ベトナム等の国情は、非常に問題が多いと思うので、そういうような点に十分留意して、どうかトラブルの中に入っていって、そうして何かそれが非常に軍事目的的に使われたというようなことのないように留意を願いたいと思うのでございますが、やはりそういうような、今あげましたような国にも使われるわけでございますね。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どういうことにいたしますか、これはこれからの問題でございますけれども、われわれの気持としては、そういうトラブルの中に入らぬほうがよろしいというふうに思っております。
  62. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 アメリカが低開発国に対していろいろ援助している。その実情について、もう少し伺いたいのですけれども、そのアメリカ及び共産圏が両方で低開発国に対して援助競争みたいなことをしているように今なっているわけでございますけれども、その両方の国の援助の総額というものはどのくらいになっておりますか。
  63. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) この数字は必ずしも正確ではございませんが、われわれが入手している限りでは、一九五四年から五九年の七月までの統計によりますと、米国が五十六億一千万ドル、そのうち五十三億ドルは贈与でございます。年平均にいたしますと、大体十一億二千万ドルというベースで出しているわけでございます。  それに対しまして、共産圏諸国のうちソ連は、十二億三千万ドル。同じ期間でございます。中共が二億六千万ドル、チェコスロバキアが一億四千万ドル、その他ポーランドその他を合わせまして、共産圏諸国の合計が約十八億五千万ドルということになっております。
  64. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 米国の今までの援助の結果を見ておりますと、米国としては一生懸命やっているつもりでございましょうけれども、その援助のやり方が、ひもつきで、それから一年間ごとという非常な短期間の計画で、ばらばらで、これでは援助してもらってもあまりありがたくないというような非難が東南アジアの国々なんかでずいぶん聞かれる。このことは米国自身も承知していると思いますけれども、今後そうようなことについて、日本側から緊密な連絡をおとりになる場合に、そういうよう日本側考え方も十分お述べになる、そういうようなおつもりでございましょうか。
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 十分そういう点はわれわれの考え方を申し述べるつもりでございますけれども、ただ、低開発国援助はアメリカがひもつきで、ソ連その他共産圏がひもつきでないというようなことではないようでございます。  今申しましたように、五十六億ドルの援助のうち、五十三億ドルは、これはグラントで、ギフトでくれているわけでございます。ソ連の場合は、そういうものがない。非常に少ないようでございます。むしろ、必ずその金で農産物を買ってやるのですね。これは、共産圏は農業がどうもうまくいかないというので、農産物不足の事情があるわけです。その点非常に共産側としては有利なわけですね。援助するけれども、その援助は、必ずかわりの品物を受け取るという形で援助しているわけです。アメリカその他は農産物はむしろ過剰ぎみであるということで、それができない。これが、援助のやり方で、共産圏と違ってアメリカの非常にやりにくい点のように思います。しかし、何といっても、援助をできるだけきめこまかく、ほんとうに援助を受ける国の喜ぶような援助をするということが必要なんでございまして、その意味では、日本の農業の技術の進歩というものを非常にアメリカ側として感心をしている、高く評価しているわけです。何といっても東南アジアは農業国でございます。農業の生産性を上げるという意味で、日本の協力を非常に強く希望するということは最近の顕著な例でございます。
  66. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私が、アメリカの援助が非常に被援助国から不満であるということを申しましたのは、一方において共産圏の援助がうまくいっているということを考えているわけでは決してございませんで、外務大臣のおっしゃるように、共産圏側においても、アメリカのやることはまた全然やり方が違いますけれども、これもまた非常に高圧的に出ていくというようなことで、やはりあまり、援助を受けている国から、必ずしも評判がよくないし、それからそのやり方が非常に強引であって、一種の、援助という名をかりて侵略をしていくというような形さえも、あるところでは、アフリカのあるところなんかでは見られるのじゃないか、こういうふうに私も見ております。そのどちらのよくないところも今後は参考にして反省して、大いに助言を、日本側からしていただきたいし、ことに、アジアに対しては非常に親近感のある日本人としての援助ということは、日本側からの援助というものは非常にとうといものであろうということを考えますから、これがほんとうに純粋な、そこの、援助を受ける側の子供たち教育であるとか、住宅であるとか、病院であるとか、そういうような、ほんとうに喜ぶ援助に大いに助言をしていただきたい。これは私、希望いたします。  もう一つ伺いたいのは、ケネディ大統領は、今までのアメリカが非常に寛大にドルを低開発国に対して援助に使って、しかもあまりいい成果が得られなかったということに対して、たいへんに反省をなさって、研究をなさって、いろいろ新しい計画を教書にも出しているということを承知いたしております。昨年の三月二十二日、対外援助特別教書というものを議会に送っていらっしゃいます。その中で、長期計画でなければいけないとか、いろいろの面で今までと違ったことを発表していらっしゃる。これは非常に参考になると思いますけれども、その中で、「平和部隊」というようなことを、非常に耳新しいことを言われたのですけれども、それがどんなふうに活躍して、それから、短期間でございますけれども、今までの成績がどんなふうになっているかということがわかりましたら、知らしていただきたいのです。
  67. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 私ここに資料を持ち合わせておりませんので、こまかいことは申し上げかねますが、たとえばマレーであるとか、あるいはアフリカの方面に行っておるようでございますが、具体的な資料を今ちょっと持っておりませんので、明確なことは申し上げられませんが……。
  68. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 もう少し詳しいことは、何もおわかりにならないのですか。
  69. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) アメリカの平和部隊の活動の状況につきましては、実はまだ活動し始めましてからあまり年月もたっておりませんので、私どものほうでも全般的なものをつかめませんので、目下アメリカ側に照会中でございまして、おそらく近いうちに資料を提出できるようになると思います。しばらくお待ち願いたいと思います。
  70. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 じゃ、それは資料を後に提出していただきとうございます。  外務大臣にもう一つ伺いたいのですけれども、さっき私が申し上げました、ソ連の援助の仕方の中には非常にうまいものもあるけれども、ずいぶん強引なやり方もあるというふうに聞いているのでございますけれども、そのうちの一つの、全然新しいやり方で、アフリカのある国に、やはり農業開発のために技術援助が必要である。それで、今まで長い間いわゆる西欧の国の植民地であったという関係から、白人を見ればすぐ反感を持つ。相手が、長い間中立の国であって植民地なんか持ったことがないような国であろうと、あるいは植民地的に非常に苦しめられた国であっても、そんなことの区別なく、白人であれば反感を持つ。アフリカ人にはそういう傾向があると思うのでございますけれども、そういうアフリカ人の民族感情というものをうまく利用して、皮膚の黄色いアジア人という、そういう顔でもって入って行くと非常に入りいいというようなところを利用して、そのアフリカの原住民の言葉を最初から集団的に中共で訓練して、それから農業技術が非常に幼稚であるので、そこへ行って、すぐにそういうような気候の変わったところへ集団的に入って行って、原住民の言葉を使って黄色い皮膚で、それでそこで農業を指導するというようなことで、大量に移民とも援助ともつかないような形で入って行ったというようなことを聞いているのでございますけれども、そういうようなことを外務大臣はお聞きになったことがあるでしょうか。
  71. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 原住民の言葉をそのままに使うという話は、実は私はあまり聞いておりませんですが、とにかく援助します場合に、これが具体的に、すぐに非常に大量の押しつけをやる、今度は逆にソ連のものを買わせるというようなことでいろいろ批判があるということは聞いたことがございます。日本の場合などは、アフリカでいろいろ要路の人が来まして、日本に対する非常な親近感を話していかれる。ところが、やっぱりこちらとして非常に問題なのは言葉でございまして、これはやはりフランス語の国が多いわけですが、こちらでもそういう言葉の点が問題で、何かもう少し改善する方法はないものかというふうに思っているわけです。今の、平和部隊ですが、英語はまあある程度どこへ行っても通じるわけなんで、シュライバーという人がケネディ大統領の義理の弟かになる人だそうですが、その人も日本人が英語をもっと楽に使ってくれれば非常に工合がいいので、場合によってはそういう人を、英語を教える人を出してもいいというようなことも言ってきたことがございますが、なかなか国内事情がそれを受け入れるというにはどうもよろしくないような感じがしまして、これはお断りしたというような経緯もございます。何といっても、日本とすれば非常にいい立場にあるわけなんですけれども、遺憾ながら、なかなか言葉の点に問題があるというのが、日本が東南アジアなり、アフリカ諸国なりに出ていくのに一つの問題だと思っております。
  72. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 外務大臣は、西独の場合には、この援助資金を返したことに対して特別の条件をつけなかったというお話でございましたにもかかわらず、まあ日本では外務大臣のたいへんなファイトによってこういうふうな日本の希望条件がいれられたということで、この点は非常に御苦労さまであったと申し上げなくちゃなりません。そこでせっかくそこまで努力なさった以上は、その援助——東南アジアの低開発国の援助というものがいわゆる軍事費に流用されるような危険があるとか、あるいは限られた範囲の狭い政治目的のために使われて、かえって反感を得るとか、そういうことのないように十分に常に緊密な連絡をほんとうにおとりになって、そしてそのつど外務大臣のファイトによって十分にわれわれ日本人考えている希望、目的に沿うよう努力をしていただきたいと思うわけでございます。で、それにつきましては、西独の低開発国援助についてブレンターノ外務大臣の演説がここにあるのでございますが、この演説を外務大臣は御記憶でございましょうか。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ちょっと今記憶しておりません。
  74. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 では、ちょっと申し上げます。六項目ございまして、一は・「後進国援助は政治的条件の下で与えられるべきではない」。  二は、「ソ連の後進国援助は、西欧諸国が援助を断念する理由とはならない。」、つまり、ソ連がやっているからもうこっちはやらないという、そういう理屈はないと。  三番目は、「援助は後進国がみづから助けるような形で与えらるべきである。」。  四は、「すべての援助の基準は倫理的であるべきである。」。  五は、「いかなる援助も貧しい国民に対する慈善だと理解することは許されない。」。  六は、「すべての援助は他国との共同関係を前提としなければならない。」。  それで、援助の重点は、「後進国で不足しているのは資本のみではなく、むしろ広汎な教育の不足が問題である。資本は人を得て始めて有効な利用が保証される、従って後進国は資本に先行するものとして職業教育、訓練が必要であるという考えから技術援助、特に職業教育機関にかなりの重点をおいている。職業教育機関として学校を設置するほか専門家の派遣乃至受入が活発で併せて国際機関による援助にも重点を置いている。」。  こういうようなブレンターノ外務大臣の声明でございますけれども外務大臣はこれについてどういう御感想をお持ちになりますか。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常にいいことを言っておられると思います。
  76. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私も非常にこれはいいところを、今までの失敗の経験の上に立って非常にいいところをついていらっしゃるので、どうぞ外務大臣も御参考になさいまして、せっかくの苦心、東南アジア開発の援助のために使うという、そこまでお取りつけになったその目的を十分に達成するようにしていただきたいとこう考えるわけでございます。  なお、総理大臣への質問は他日に留保いたしまして、外務大臣に対する質問はこれで終わります。
  77. 井上清一

    委員長井上清一君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩    ————・————    午後一時三十七分開会
  78. 井上清一

    委員長井上清一君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  ガリオア・エロア返済協定タイ特別円協定、両件の質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  79. 森元治郎

    ○森元治郎君 きょうは総理が二時からおいでになるというので、そのつもりで出て参りました。ということは、今回のタイの特別円協定改定の問題は、総理個人の、総理の言葉をかりれば、大所高所という判断でおやりになったので、一にかかって総理の御答弁を承らなければ、審議が進まないと思うのでありますが、外務大臣もわざわざおいで下すったので、敬意を表して一、二事情をお伺いしておきたいと思います。  衆議院の審議を聞いていて、この問題で、いろいろわれわれの野党と政府答弁との食い違いはありますが、見解の相違もあり、いろいろしておりますが、一番わからないのは、法案が衆議院を通過してもわからないのは、なぜタイ国が最初ああいう誤解をして、途中で、五、六年たってから、やっぱり日本の言うのがほんとうだと、こう変わってきたか。その間の事情を参議院のわれわれにもひとつ大臣の口から承りたいというのが、きょうの私のおもな点であります。大臣どうですか、秘密会にでもしたら、ほんとうのところを言えるのか。この点から、まず伺います。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点については、私ども同じことでございますので、公開でけっこうだと思います。
  81. 森元治郎

    ○森元治郎君 大体われわれは衆議院での御説明も聞いたけれども、最もポイントのところですな。要領よくひとつ御説明を願いたいと思います。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この特別円問題は、三十年に御承知の協定ができて、これは八月に双方憲法上の所定の手続をとりまして、協定が発効されたわけでございますが、その年の十二月にナラティップ外務大臣、ワン・ワイタヤコン殿下が日本へ参りまして、どうもあの九十六億円はもらったもんだと思っているということを言ったのが事の始まりでございます。その翌年の一月にタイの外務省並びに大蔵省が、これはやはり同様もらったものであるということを言っておるわけでございます。わがほうは、そうではない、あれは投資またはクレジットの形式において供与する、供給するのだ、こういうことを言っておったのでございます。ところが、その間にいろいろな妥協案といいますか、結局、この協定趣旨を生かしつつ、現実にタイ側においても九十億円がもらえるような方式ですね、たとえば、合弁事業で、そして物が残る。しかし、その利益の中から九十六億円を日本に返させる。あるいはクレジットの形式で、その金利の利ざやから日本へ返させる。いろんな提案をしたわけでございますが、結局昨年度までその話がそのままになっておりまして、昨年からサリットが非常に強くこの問題を解決したいということを言って参ったわけです。本年の一月にわがほうの大江大使がサリットに会いましたとき、サリットは初めて、今お話しのように、あれは協定をたてにとって言われれば、どうも日本の解釈が道理であるということを言い出しまして、しかしながら、どうしてもタイ人はもらったもんだと思っておるし、理屈からいっても、日本に貸したと思っていたものが、協定を履行する段になってみると、日本から借りるということになると、どうしても国民感情が納得できない。ひっきょうすれば、ああいうばかな協定を作った者が悪いので、これはわれわれとしては大いに恥じなければならないけれども、しかし日本との友好関係考え、また日本のほうがタイ側の友好関係考えるならば、この問題はひとつアウトライト・ペイメントの形で解決してくれということを強く申してきたわけです。何ゆえにタイがこのよう先方側としてこの協定を曲解したか、これはタイ側の事情でございますので、私どもわからないわけでございますが、要するに解釈の相違ということではなくて、解釈は日本側の言うとおりである、しかしひとつ友好的な見地から日本もこれを考え直してくれ、こういうことで、新たなる協定ということで九十六億円を日本の資本財あるいはサービスの形でタイ側に支払う、こういうことにきまったわけでございます。  簡単に申し上げると、さような経緯でございますが、御質問ように、何がゆえにそれじゃタイ側がそういうふうに曲解したか。これは推測の域を出ませんけれども、要するにタイとしてはあの金約款ということを考えて、そして一ドルが十一バーツですか、ということで計算すれば千三百五十億円になる。それから金約款で、金で計算すれば千二百六十七億円になる。そういうことを考えていろいろ交渉した結果、だんだん金額がおりて、百五十億というのが最低の額だ、こういうことを言って参ったわけですが、いろいろ託しているうちに、五十四億と九十六億円に分けて、九十六億円のほうはこれは投資またはクレジットの形式で供給されるのだけれども、まあもらうものだというふうに考えたかどうですか、その協定のとき、その時点でどう考えたかわかりませんけれども、少なくとも、その協定タイ国民に知られるに及んで猛反撃を受けて、これはどうしてもやっぱりもらったものだと言わざるを得ないような状況になってしまったのじゃないかというふうに思っております。
  83. 森元治郎

    ○森元治郎君 まあタイ側の事情はわからぬということでありますが、私も本会議でちょっと総理——外務大臣にもお尋ねしたように、どうも残念ながら、日本側に疑わしいことがあるのではないかという感じがしてならないのです。それは衆議院でもさんざんお尋ねになったことでありますけれども、きわめて常識的に考えれば、日本側のだれかがタイ側に例の第二条の実施について無償のよう意味を吹き込んだのではないか、こういうことを感ぜざるを得ないのです。人の名前をあげたいのですけれども、これはなかなか重大な問題であるし、故人になっている人もあるので、そういうことは引用しないことにしますが、その人が直接タイ側に——サージ・リップスであるかだれか知りませんが、仲介に立った者あるいは向こう政府の人に、第三者を通じて、そういう意味のことを吹き込んだのではないか。だから、タイとしては、日本のだれさんが言ったのだということをあげて日本に抗議する、反省を求める、注意を喚起するということができない、間接ですから。そういうような不明朗なことがあったのではないか。三十年ごろ、まだ宮廷外交式な空気が日本政府あるいは外務省方面にもあったようでありますから、それらのことはないと強く否定し得ない空気があったようであります。外務大臣の憶測をたくましゅうすることはいけないと思うが、という答弁を速記録の中から私見つけたのですが、やはり全然わからないとなれば、憶測もまた一つのものを見る有力な手がかりになると思う。憶測をたくましゅうして、私の質問意味をとり上げて、こうではなかろうかと思われるがしかとわからぬ、こういうところでひとつ御答弁を願えないですか。
  84. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の考えは、先ほど申し上げたとおりでございますが、要するに、協定をして帰った、ところが非常な反発を受けて、どうもあれはああ書いてあるけれども、というふうなことをタイ国民に対して言わざるを得なかった、そういうことではないかというような気もするわけでございます。日本側から何かそういうことを、まぎらわしいような言質があって、そしてそのためにタイ側がもらったということを言い出したというようなことはないようでございます。
  85. 森元治郎

    ○森元治郎君 はっきりわかれば、向こうは、小坂さんが言ったとかなんとか言うでしょうけれども、隣りの部屋から漏れ聞こえてくるような風の吹かし方というのはありますからね、自然に耳に入ってくるような。あうんの呼吸という言葉がよく日本で使われるのですが、あうんというのは形がないのです。しかしぴったり合うのだから、あうんの呼吸かなんかで私はやったんだと思うのだが、この辺はありそうなことですね。外務大臣どうですか。
  86. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも今申し上げた以外に、私には憶測もその範囲しかいかないわけでございます。
  87. 森元治郎

    ○森元治郎君 非常に不明朗な条約の解釈、運用、実施だと思うのです。しかし、そういう前提から始まったこの交渉を、総理大臣という政治家の腹できめたのですから、その責任追及や何かは池田総理大臣にどうしても伺わなければならないので、これは別の機会に譲りますが、もう一つ伺いたいのは、総理及び外務大臣は速記録の中で、タイの債権についての話し合いをしたいと思うのだが、言を左右にしてタイ側はこれに応じない、こういうことを言っておるようですが、タイ特別円の問題が解決したあとならば話に応ずるかもしれぬが、今のところは応じない、こういうことを言っておるようです。そこで伺いたいのは、政府の言われている債権とは何を指されておるのか。債権に関する衆議院段階の質疑は、もっぱら同僚の岡田君や戸叶君なんかのほうから、この債権はどうなっているのだという、あるいは債務はどうなっているのだという質問だけで、政府側からの積極的な債権の内容の御説明がなかったので、まず債権とはどういうことを言うのか、そういうことからお伺いしたい。
  88. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その御質問にお答えします前に、総理大臣のお考えで今度この新協定がきまったわけです。もちろん私ども、当然そこに至るまでの間に、大蔵大臣その他常に参画して相談をいたしておったわけでありますが、結局、旧協定は二条と四条が問題で、二条を実行するためには四条の委員会を作るということになったわけですが、この四条も動かない、二条もしたがって動かない、こういう問題になったわけです。そこでかりに日本が投資あるいはクレジットの形で供給して、それがどうなるかということを考えてみますると、とにかく先方はもらったものだという気持でいるときに、金を貸しあるいは投資する。こういう場合にそれじゃどういう条件が考えられるかというと、これは非常に長期の、しかも非常に低利な、極端に言えば、無利子という場合も考えられるわけです。そこで現在の時点で、まあこの協定にございますように、九十六億円を八年間に分けて日本の物で出す、こういう場合に、これはまず日本の物が出るのですから、ただ金を出してしまうということではないわけですが、ただ金額だけで計算してみますと、日本国内金利をかりに六分五厘としてみますると、これは複利計算で逆算してみれば、今の時点でなんぼ払うことになるかというと、六十数億円払うということになるわけでございます。その意味では九十六億円がそれだけ減額されるということになるわけであります。それから非常に長いまあかりに二十年、もっと長い場合も考えられますが、まあ二十年として無利子で貸し付けて二十年後に九十六億円を返してもらう、こういう場合を考えてみますと、結局二十年後において日本に返ってくる金の現在価値というものは二十数億円になるということでございますから、結局九十六億円から二十数億円引いてみますると、結局現在価値で見ますると、今の協定のほうが有利であるということになるわけでございます。しかもなおタイとのやはり非常に貿易額が大きいので、昨年度あたりは一億三千万ドルくらい輸出になっておると思うのであります。かりに一億一千万ドルとして、日本タイからの輸入が六千万ドルとしても、五千万ドルのわがほうの出超になっておるわけで、これを貿易制限とかいろいろなことに持っていかれますと、九十六億円、すなわち二千六百万ドルというものが一年の輸出入で、たとえば現在すぐ隣国のカンボジア等でやられておりますような輸入制限に持っていかれますると、これはもうたちまちそれだけのものは消えてしまう。それがいわゆる大所高所論、経済的にも大所高所論が成り立つわけだと思うわけであります。  それから、ただいまの御質問でございますが、日本は平和条約の十六条でもって戦争当時の中立国あるいは連合国と戦った国、タイはその後者に当たる国であったわけでございますが、これに対する財産は国際赤十字に渡すということになっておるわけです。これはいろいろ計算されまして二十七億円というふうに言われているわけでございますが、そのうち九億円が国際赤十字に寄託されて、そうして日本は平和条約十六条の義務を完全に履行したとみなすということにされているわけです。ただ、日本の場合、十六条に言われております現実の金員で渡すか、あるいはそれと等価の物で渡すということについては、日本に選択権があるわけでありますけれども、その相談を日本が受けないでもその措置をとられたというその行為に対して抗議をいたしまして、これがいまだ抗議中という状態になっているわけであります。しかし、二十七億円の中から九億円払って、あと十八億円はどこに行ったかということでございますが、これは泰緬鉄道の関係でその資材費とか、あるいは労務費とか、あるいは日本が徴発して労役をしいた人に対する補償というようなもののクレームに充てられておる、こういうふうに言われておるわけでありますが、それの実態についてわれわれしろうとをもってしてはそれを知ることは今日までできなかったというわけであります。しかし、われわれとしては、十六条でこれは放棄しておりますから、それが日本のものになるという主張はできないわけです。ただ、わがほうの請求権として考えられますものについては、大使館の関係の財産、館員を含めてその財産、それに対する請求権はおるわけであります。これに対してまだゆうゆうと交渉の余地があるというふうに思うわけです。先方から一度オファーがあったわけですが、これじゃちょっと問題にならぬと言って押し返して、そのままになっております。そういう問題を含めて今後この特別円が解決いたしましたら、あとでタイ側に話し合うということになっております。これは矢先も当然こういう話し合いに乗ってくるだろう、こう思っておるわけであります。
  89. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると特別円が終わったら話し合いをするというのは、その大使館、関係の財産に対する請求の問題だけですか、それと選択権の問題に関する抗議というか、一つも相談しないじゃないかというようなこと、項目に分けるとどういうことになりますか。
  90. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 平和条約第十六条関係の処理が行なわれているわけですが、在タイ日本資産の正確なる内訳とか、それから赤十字には約九億円しか参っておりません、残りのものをどういうふうに、使われたかというふうな点につきまして、タイ側から一応の説明を聞いております。またイギリス側からも聞いております。その辺のところの事実関係をはっきりしておきたいという点が一つでございます。それからやり方がおかしいじゃないか、これは英・米・タイ・三国の関係がございまして、やり方がおかしい、この点についても抗議をしているわけですが、一応何らかのこれに対してしかるべき回答があってしかるべきじゃないか。それから除外財産、これは普通の小さい問題でございますが、それを返してもらうという問題、この三点であります。
  91. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、今までそれに関して向こうが乗ってこなかったわけですか。タイ側が小さい問題にすら乗ってこなかったわけですね、今までは。
  92. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 除外財産につきましては、先方は二千五百ドルならいつでも出すということを言っております。こちらの統計によりますと、約六万バーツ、十一バーツ一ドルとしまして五千ドルか六千ドルですから、それほど聞いているわけじゃございません。その問題だけでしたら、今すぐにでも二千五百ドルの小切手は渡すわけでございます。全体の大体の試算がどういうようになっておるか、その詳しい数字を知りたいという問題がございますので、そこで懸案のままにしてあるというわけでございます。
  93. 森元治郎

    ○森元治郎君 泰緬鉄道が、タイのほうからの説明だったと思うのですが、私はゆうべ初めて速記録を読んだのですが、こんな厚いので、すっと入っているだけでわからぬが、泰緬鉄道は戦利品としてイギリスが取ったということになっておりますが、鉄道というものは戦利品と政府考えておられるのかどうか。それから、戦利品、そういう問題についてわれわれが文句をつける法的立場があるのか、ないのか、この点どうですか。
  94. 中川融

    政府委員(中川融君) 泰緬鉄道は、イギリス及びタイの説明では、戦利品として進駐して来たイギリス軍が取ったんだということでございますが、これは戦利品と申しますと、通常、現実に戦争が行なわれたその戦場にあったいろいろのもの武器でありますとか、あるいは、必ずしも武器だけに限らず、その戦争に負けた相手の国の軍隊が持っていたいろいろな財産、要するに昔からの慣習、戦時国際法の慣習に従って特にそれを戦利品として取る、そして、それを軍事上の目的に戦勝国側が使うという権利が、いわば慣習的に認められておるわけでありまして、その限度では、やはりそういうこともあるかと思うのでありますが、泰緬鉄道というようなものを、いわば不動産になるわけでありますが、そういうものを戦利品として取れるかどうかということは、別にはっきりした規則が特にあるというわけではございません。しかし、泰緬鉄道は、御承知のように、日本の軍隊がもっぱら戦争目的のために特に強行軍で作った鉄道でございますので、まさしく軍用鉄道であるということは言えるのでありまして、それから言えば、戦利品として取るということも、あるいは不自然ではないのかと思うのでありますが、いずれにせよ、この問題は跡始末といたしまして、平和条約十九条で、戦争から生じた、あるいは戦争状態の存在することによって生じた請求権、講和発効までの請求権を日本が全面的に放棄しております。したがって、イギリス軍がいわば戦争状態の存在を前提としてとった行為というものについては、やはり日本としては請求権を放棄しておるわけでございますから、したがって、戦利品としてほんとうに泰緬鉄道をイギリスが取ってしまったということであれば、やはりこれは、日本としてはそれに対する権利は平和条約で放棄しておるというふうに解釈せざるを得ないと、こう考えております。
  95. 森元治郎

    ○森元治郎君 タイに言わせれば、あんな鉄道は三分の一ぐらいしか動いてないし、動いたって赤字ばかりで仕方がないからというふてくされたことを言っておりますが、どうですか、まず、タイの鉄道をひっぱがして、ちょうだいしてきたら、どれくらい手間賃がかかって——要らないものならば、ちょうだいしてもいいと思うのですが、大臣、計算されたことがありますか。どのくらい手間賃がかかるか。持っていくなら持っていけというような態度でしょう。
  96. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 現在どういう状態になっておりますか、車が走っておるわけであります、三分の一くらい。まくら木もあるわけであります。大体三分の二くらいはなくなっておる。これを作るときに、日本円として当時一億円ぐらいの円は使っております。それから、労務費というものが非常なものだろうと思います。日本軍将兵約一万五千名、現地労務者約十万名、それから連合軍俘虜約五万五千名というふうなものが、これを作るのに働いております。それから、まくら木とかレールというものは、主としてマレー並びにインドネシアから持ってきたということになっております。ちょっと計算いたしますにいたしましても簡単には出て参りませんので、非常に、何といいますか、ジャングルみたいなところに作ったので、労務費というものが一番よけいかかったのじゃないかという気がいたします。
  97. 森元治郎

    ○森元治郎君 まあ、いずれ総理にも御質問いたしますが、外国というのは、大臣、松葉一本だって、ちゃっかりして、合理性のあるものは取りにかかる。日本のほうはきわめておおようで、少しはぼやっとして、腹でやるようなことばかりやって、取るものはおっとりしておるという感じが、タイの問題一つ見ても非常に感ぜられることは残念だと思うのです。それは、いずれ別の機会に伺うことにいたします。  このくらいで、タイのほうはきょうはとどめたいのですがね。   —————————————
  98. 井上清一

    委員長井上清一君) じゃ、どうぞ。
  99. 森元治郎

    ○森元治郎君 それで、ほかの問題を  一つ。  アラスカかなんかで日本の船が、また、ゆうべあたりつかまって、合計三隻ぐらいになるかと思うのですが、その理由は、領海侵犯というようなことで、今、外電もはっきりしておりませんが、にわかに取り締まりがきびしいような、あるいは日本側の漁船が特に疑わしき行動をしておるような感じさえ受けるし、もう一点は、あの辺が軍事的な海面であるために特に神経質になっておるのか、そういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) あとでまた補足させますけれども、概要を申し上げますと、東太平洋漁業株式会社という会社の所属の第三十一播州丸、これが母船で、これが五隻のキャッチャー・ボートを船団として組んでおるわけですが、これがニシン漁業のために、アラスカ本土をコディアック島との間のシェリコフ海岐において漁業に従事中、キャッチャー・ボートの第五鵬丸が、四月一日ごろ、領海内で漁業に従事したかどで、また、第三十一播州丸船長が、この母船がシェリコフ海峡で許可なくして漁具を携行しておったかどで十四日夜、それぞれアラスカの官憲に連行され、裁判にかけられることになっておるわけですが、この両船長は監獄に入れられるということなく、自由な身柄のまま、第五鵬丸に収容されておりますが、コディアック島に上陸し、またはその他の方法によって帰国するためには、一人当たり五百ドルの保釈金を、また、両船が自由になるためには、船と等価のボンドを積まねばならないということになっておる由でございます。  アラスカ州当局が本船拿捕の理由とするところは、領海侵犯及びシェリコフ海峡が幅二十海里で、アラスカ州当局が伝統的に内水と見ておる地域での操業が不法であるということでありますが、わがほうとしては、その海峡全域を内水として認めておりませんので、この関係で、どの程度の地点で領海を侵したかということは、はっきりいたしません。したがって、この点について種々問い合わせて調査をいたしておるわけでございます。  なお、このニシン漁にこの地区へ出たのは初めてのことであるわけであります。
  101. 森元治郎

    ○森元治郎君 事情をワシントンの大使館に問い合わせておる段階ですか、今の段階は。
  102. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 先ほどの大臣のお話に、もう少し、今度初めて出ました事情の御説明をつけ加えさしていただきたいと思います。  この地域は、日米加北太平洋の公海漁業に関する国際条約がございまして、一昨年までは、要するに、出ていけないところになっておったのですが、それが、一九六〇年、すなわち一昨年の五月二十四日に、アラスカ沖のニシンをとってもよろしいということになりました。昨年は出ませんので、今度初めて、先ほど御説明ございました第三十一幡州丸が五隻のキャッチャー・ボートを連れて行ったわけでございます。そしてこれが四月の一日に侵犯したということで、十四日の夕刻につかまえられたということがございまして、当時、さっそく国務省からわがワシントン大使館にも事実の連絡がありますし、その後もワシントンから来ておりますが、新聞でもいろいろな情報がございますが、先ほども御説明ございましたように、実際どの地点でつかまったかということが、この問題の今後の進め方といいますか、処理に相当大さな問題になるわけでございます。と申しますのは、シェリコフ海峡というのは、幅が二十海里ございまして、新聞によりますと、ワシントン政府は、これはちょっとアラスカ州当局とは見解を異にしているように伝えられております。アラスカ州当局は、これは内海と認めるというような、伝統的な内海というようなことを言っていると伝えておるわけであります。それから、つかまった場所が、はたしてこの海峡そのものだったか、どうも、情報によりますと、あるいはこのウヤク湾とか、入り込んだところ、すなわちこれは国際法上も、条約的に見まして、領海と認められるような場所でつかまったかどうかということが非常に問題でございます。それで、事実関係が非常に大きな問題でございまするので、昨日、ワシントン大使館に、数点をあげまして、事情をさらによく向こうに問い合わせて、こちらに報告さすように訓令をいたしました。と申しますのは、昨日の早朝から、水産庁及び会社の方にも外務省のほうにおいで願いまして、種々協議いたしました結果、まず事実関係を確める必要があるということに意見の一致を見ましたので、われわれはワシントン大使館を通じ、それから漁業会社のほうは、幸いに、母船と一日一回交信があり、ずっとしておったそうでございます。したがいまして、その方法をもし使い得れば、その方法で直接母船とも連絡をとって確かめると、一応そういう手はずをしているわけでございます。
  103. 森元治郎

    ○森元治郎君 この船の船長からの連絡は全然ないのですか。
  104. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) キャッチャー・ボートが十四日夜つかまりまして、引き続いて母船の船長も、このシェリコフ海峡に漁網等を持って入ったというかどによって、いわゆる責任者としてつかまえられたということがわかっております。それで、漁船と実際連絡をとれたかどうか、今のところ、まだ、私ここに参りますまでは、聞いておりません。
  105. 森元治郎

    ○森元治郎君 私はあの辺はよくわからぬが、戦略的な地域だから、こういう内湾に船が入ってくることに対しては、あやまって入ってくるような、あるいはあやまって必要以上に基地に近づく船に対しては、適当な警戒法ができておるはずだと思う。発火信号なり、あるいは無線なり、何らかの措置は十分できたと思うのですが、文明国の沿岸であり、戦略的な地域ですから、それを黙っていて、入ってきたものをつかまえて、すぐ裁判所に送ってしまうというのは、少し強引過ぎはしないか。もう少し注意なり何かで済む問題じゃないかと思うのですがね、これはアメリカの習慣もあるだろうけれども
  106. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 今御懸念のようないわゆるセキュリティと申しますか、軍事上の目的でどうこうということは、われわれの聞いております情報では、少しも出ておりません。それから会社の人の話によりますと、船とは常時一日一回ずつ定期交信をしておられたはずで、この島のまわりもずっとあちこちと母船が回ってみられたらしいのです。それであまり魚がとれないので、つい奥深く行ったのじゃなかろうかというようなことも想像されるというようなことを言っておられるようでございます。
  107. 森元治郎

    ○森元治郎君 少し強引な感じは受けませんか。私は強引だという感じを受けるのです、アメリカ側が。
  108. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 強引と申しますと……。
  109. 森元治郎

    ○森元治郎君 いろいろ法律的に、アラスカ州とかアメリカ政府との間にも見解の相違もあるような地点で、アメリカの親友である日本の漁船が間違って入ったのをぱくりとつかまえて、裁判だのどうだのというところにすぐ話を持っていってしまうのは、少し強引過ぎやしないかと言うのです。
  110. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) その点につきまして、向こうのアラスカ政府が言っているのは、このキャッチャー・ボートは明らかに領海内に入ってきた領海内と申しますのは、具体的にはウヤク・ベイのようなことに了解されるわけです。地図はここにございますが、これはいわゆる国際法的に見て、もしこのベイの中に入っているとすれば、これは領海内でございます。アラスカ政府が言うのは、このキャッチャー・ボートがここに入ったということのようでございます。ただ、母船がはたして、どこにいたかということと、それからこのシェリコフ海峡自体に対する見解がいろいろございますので、先ほども申し上げましたように、一体領海侵犯ということはどこの地点であったか、それからつかまえられたのはどこであるかということ等、今項目をあげましてワシントンに問い合わせているわけでございまして、それが判明し次第次の措置をとることにいたしたいと、さよう考えております。
  111. 森元治郎

    ○森元治郎君 この領海ということは、いわゆる何海里説をとっているのですか。
  112. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) アメリカは普通の場合三海里でございます。しかし、入江になりますと、その突端のみさきが十海里であれば、その内海が全体に領海であり、さらにその線から外にもう三海里領海であるというのが一般の国際的な考え方であるようでございます。
  113. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、現在は事実関係を大至急調べて、それを見た上で、抗議すべきものは抗議するというわけですか。
  114. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) そのとおりでございまして、これはやはり水産庁、会社の方等と協議しまして、まず最初にとるべき措置としてみなの意見が合致したところでございます。それで領海内であれば、向こうはおそらく裁判にかけるというようなことを言うでございましょう。あるいはまた、向こうは、先ほども大臣が御説明申し上げましたとおり、現在身柄を拘束しているわけでございませんけれども、一人五百ドル、それから船についてはそれの等価の金を保釈金——ボンドとして積むならば、いつでも出てよろしいと言っているわけであります。この返事が来ましたら、その場所のいかんによりまして、また検討いたしまして、早急にしかるべき措置をとる、こういうふうに打ち合わせております。
  115. 井上清一

    委員長井上清一君) 御質問はございままんか。——それでは、本日はこれで散会いたします。    午後二時十九分散会    ————・————