○
国務大臣(
小坂善太郎君) その御
質問にお答えします前に、
総理大臣のお
考えで今度この新
協定がきまったわけです。もちろん私
ども、当然そこに至るまでの間に、大蔵
大臣その他常に参画して相談をいたしておったわけでありますが、結局、旧
協定は二条と四条が問題で、二条を実行するためには四条の
委員会を作るということになったわけですが、この四条も動かない、二条もしたがって動かない、こういう問題になったわけです。そこでかりに
日本が投資あるいはクレジットの形で供給して、それがどうなるかということを
考えてみますると、とにかく
先方はもらったものだという気持でいるときに、金を貸しあるいは投資する。こういう場合にそれじゃどういう条件が
考えられるかというと、これは非常に長期の、しかも非常に低利な、極端に言えば、無
利子という場合も
考えられるわけです。そこで現在の時点で、まあこの
協定にございます
ように、九十六億円を八年間に分けて
日本の物で出す、こういう場合に、これはまず
日本の物が出るのですから、ただ金を出してしまうということではないわけですが、ただ金額だけで計算してみますと、
日本の
国内金利をかりに六分五厘としてみますると、これは複利計算で逆算してみれば、今の時点でなんぼ払うことになるかというと、六十数億円払うということになるわけでございます。その
意味では九十六億円がそれだけ減額されるということになるわけであります。それから非常に長いまあかりに二十年、もっと長い場合も
考えられますが、まあ二十年として無
利子で貸し付けて二十年後に九十六億円を返してもらう、こういう場合を
考えてみますと、結局二十年後において
日本に返ってくる金の現在価値というものは二十数億円になるということでございますから、結局九十六億円から二十数億円引いてみますると、結局現在価値で見ますると、今の
協定のほうが有利であるということになるわけでございます。しかもなお
タイとのやはり非常に貿易額が大きいので、昨年度あたりは一億三千万ドルくらい輸出になっておると思うのであります。かりに一億一千万ドルとして、
日本の
タイからの輸入が六千万ドルとしても、五千万ドルのわがほうの出超になっておるわけで、これを貿易制限とかいろいろなことに持っていかれますと、九十六億円、すなわち二千六百万ドルというものが一年の輸出入で、たとえば現在すぐ隣国のカンボジア等でやられております
ような輸入制限に持っていかれますると、これはもう
たちまちそれだけのものは消えてしまう。それがいわゆる大所高所論、経済的にも大所高所論が成り立つわけだと思うわけであります。
それから、ただいまの御
質問でございますが、
日本は平和
条約の十六条でもって戦争当時の中立国あるいは連合国と戦った国、
タイはその後者に当たる国であったわけでございますが、これに対する財産は国際赤十字に渡すということになっておるわけです。これはいろいろ計算されまして二十七億円というふうに言われているわけでございますが、そのうち九億円が国際赤十字に寄託されて、そうして
日本は平和
条約十六条の義務を完全に履行したとみなすということにされているわけです。ただ、
日本の場合、十六条に言われております現実の金員で渡すか、あるいはそれと等価の物で渡すということについては、
日本に選択権があるわけでありますけれ
ども、その相談を
日本が受けないでもその措置をとられたというその行為に対して抗議をいたしまして、これがいまだ抗議中という状態になっているわけであります。しかし、二十七億円の中から九億円払って、あと十八億円はどこに行ったかということでございますが、これは泰緬鉄道の
関係でその資材費とか、あるいは労務費とか、あるいは
日本が徴発して労役をしいた人に対する補償という
ようなもののクレームに充てられておる、こういうふうに言われておるわけでありますが、それの実態についてわれわれしろうとをもってしてはそれを知ることは今日までできなかったというわけであります。しかし、われわれとしては、十六条でこれは放棄しておりますから、それが
日本のものになるという主張はできないわけです。ただ、わがほうの請求権として
考えられますものについては、大使館の
関係の財産、館員を含めてその財産、それに対する請求権はおるわけであります。これに対してまだゆうゆうと
交渉の余地があるというふうに思うわけです。
先方から一度オファーがあったわけですが、これじゃちょっと問題にならぬと言って押し返して、そのままになっております。そういう問題を含めて今後この特別円が
解決いたしましたら、あとで
タイ側に話し合うということになっております。これは矢先も当然こういう
話し合いに乗ってくるだろう、こう思っておるわけであります。