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1962-04-17 第40回国会 参議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十七日(火曜日)    午後一時三十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     村松 久義君    理事            天埜 良吉君            金丸 冨夫君            谷口 慶吉君            大倉 精一君    委員           大野木秀次郎君            鳥畠徳次郎君            平島 敏夫君            前田佳都男君            松浦 清一君   国務大臣       運輸大臣 斎藤  昇君   政府委員      運 輸 省      自動車局長 木村 睦男君    運輸省観光局長 梶本 保邦君   事務局側       常任委員       会専門員 古谷 善亮君   説明員     労働省労働基     準局監督課長 小鴨 光男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際観光ホテル整備法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○運輸事情等に関する調査自動車行  政に関する件)     —————————————
  2. 村松久義

    委員長村松久義君) ただいまより委員会を開会いたします。  まず、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより本案に対する質疑に入ります。順次御発言願います。
  3. 大倉精一

    大倉精一君 今度の観光ホテル整備法の一部を改正しなければならぬという理由について、わかるように具体的にひとつ御説明を願いたいと思います。
  4. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) 国際収支改善をはかるということが現下何よりも必要であることは今さら申し上げるまでもないことでございますが、それがためには総合的な国際観光振興策というものを作らなければならないのでございますが、その総合的な振興策の一環といたしまして、外国人観光旅客に対する接遇の充実をはかる、こういうふうな観点から登録旅館登録ホテル料金に関する制度を規制していこう、こういうのがねらいでございます。いわば今までホテル旅館料金野放し状況でございますので、それについて接遇上不当に高いと思えるものについては大臣が指示をして、そして適当な料金制度を作っていきたい、これが一つのねらいでございます。
  5. 大倉精一

    大倉精一君 そこで、今の御説明のあった中で、外国人接遇上不適当であると認めた場合に云々ということなんですけれども、これは何か基準でも設けられるのですか。
  6. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) 運賃におけるような認可制度というふうなもの、あるいは今回の法律改正のねらいでございます届出制度、こういったものをいろいろ私ども検討してみたのでございます。ところが運賃におけるような認可制度ホテル旅館料金についてとることは、これは困難であるし、かつまた、そこまでやる必要はないという結論に私ども達したわけでございまして、結局届出制が一番よかろうということになったのでございます。結局今おっしゃった適当な料金というものの基準は、運賃におけるような意味における原価計算はあるいは困難かとも思いますけれども、やはり原価主義、それから適当な利潤、それからそういった他の附近にあります旅館とのバランス、こういったものを具体的なケースケースに当てはめて、一応妥当な常識的な判断をしていく以外に方法はない、かように考えております。
  7. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、これは基準立てようがないというお話なんですけれども、趣旨としては、外人客に対して不当な料金にならないようにということは、外人客のことを思うということが主になっておるのか、あるいは旅館適正利潤というものに重点を置かれておるのか、どっちに重点を置かれておるのですか。
  8. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) お手元にお届けいたしておりますホテル料金表がございますが、日本及びヨーロッパ主要諸国におけるホテル客室料金というものの表を上級ホテル中級ホテル並級ホテルというふうな三つの区別に分けまして、フランス、西独、イタリア、スイス、アメリカ、イギリス、デンマークと日本との比較をいたしておるのでございますが、諸外国へ行かれる方々が最近非常に多くなって参りました。そしてよく諸外国との比較検討において、日本ホテル料金というものが少し高いのじゃないか、また外国から来られる観光客が、日本ホテル料金が諸外国に比べて少し高過ぎはしないかというふうなことを、最近非常に、何といいますか、各方面でよく私ども耳に入るのでございまして、そういったことが世界的な一つの合い言葉のようになってしまったのじゃ、これはやり日本として非常に国際収支改善する立場から困ると私は思うのでありまして、そういった意味から、この際、今まで野放しになっておった料金について新しい観点から国際収支改善という意味から、外客接遇上不当な料金を取っておるというふうなことがあれば困るというので検討をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  9. 大倉精一

    大倉精一君 この法案関連をしてお伺いをするのですけれども、昨今の新聞を見ますというと、オリンピックがもう間近く開かれるのでありますけれども、いまだにこのオリンピックのときにおける外客に対する旅館収容力等について全然目鼻がついていない、こういうような新聞記事があるのですけれども、この実情について御説明を願いたいと思います。
  10. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) お説のとおり私どもが一番心配しておりますのは受け入れ施設収容力の問題でございまして、先般当委員会におきましても、その点について申し上げたかとも存じますが、オリンピックの年には私ども推定では五十五万人の外客日本に来られるに違いない。そのうちで一時上陸客が約七万ございますから、宿泊対象とする外人観光客は四十八万人、かように想定をしております。その四十八万人の方々を一応まかなうためには三万三千室の部屋数を必要とする。ところが、現在では約一万一千室から二千室の間の見当部屋数しかございません。したがって約二万室のものは、なおこの二、三年の間に作っていかなければならないと、こういうふうな状況でございます。  一方、日本におけるホテル建設費というものは、御承知のとおり金利等関係もございますし、また日本が地震国であるということのために、外国よりもより以上建設費が高くつくというふうなこと等が理由になりまして、非常に建設費が高くかかっております。したがって私どもはその財政投融資、つまり開発銀行から少しでも多くのお金を融資していただいて、それによってより多くのホテルを作っていきたい。これを一つのねらいにしてやっておるわけでございますが、なかなかホテルとか、旅館というものに対する財政投融資の道が御理解を願えませんで、事志と違って、なかなか御融資いただきにくいというのが実情でございます。なお、昭和三十六年度におきましては約二十九億の開発銀行からの融資をちょうだいしておる現状でございます。三十七年度におきましては、もっと、もっと私ども融資をちょうだいしたいというので、今関係方面と鋭意折衝をいたしておる段階でございます。
  11. 大倉精一

    大倉精一君 何かお話によるというと、ホテル建設が非常にむずかしいので、いわゆる旅館業協力を求めて、旅館業観光客向けホテルを作ってもらう、改造してもらう、こういうように運輸省のほうでは奨励をなさっておりますけれども、これがなかなかはかばかしくいかない。業者協力もなかなか得られないというようなことが伝わっておりますけれども、そういうようなことはうまくいくのですか。民間旅館業者ホテル改造していく、こういうものについて奨励されて、その奨励に対して政府としては何か特別の援助なり何なりをおやりになる方針なんですか。
  12. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) お説のとおり、東京近辺が、特にオリンピックのときには最高のピークで、一日滞在客三万人と私ども推定をいたしております。これを全部ホテルに収容するということはとても困難ではなかろうかというふうに考えまして、日本旅館改造と、日本旅館新築ということを一つ方法として考えておることは事実でございます。また、それが日本へ来られる外客にとりまして、ホテルならば自分の国でも、どこでも珍しくない、日本に行ったからには日本旅館気分を味わいたいというふうな気持で来られる外客もあることでございますので、私どもそういった対策立てたわけでございます。  それで、どのくらいの部屋数を私ども希望しておるかと申しますと、日本旅館新築といたしまして二千考えております。それから改造を六千室考えております。六千室の改造は、一室改造費用を五十万円といたしまして、五十万円に六千かけますと三十億円になります。それから旅館一室新築費用を二百万円と考えております。大体、坪二十万円見当でございます。したがいまして、一室二百万円。二百万円で、そのうちの半分を国のほうでお世話する、あとの半分は自己資金でやっていただくということにいたしますと、百万円でございますから、百万円に二千室かけますと二十億でございます。新築が二十億と改造が三十億、合わせて五十億。それによって八千室の日本旅館東京近辺に準備したい、これが私どもの希望であり、その線で関係方面折衝を続けておるのが現状でございます。
  13. 大倉精一

    大倉精一君 一室五十万で六千室作る三十億円というこの金は、これは業者みずから自己資金でやれと、こういうわけなんですか。
  14. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) その五十億円を私ども新しく対象として考えておりますのは、中小企業金融公庫のほうから引き出し得ないかということを考えておるわけでございます。開発銀行のほうは、ホテル旅館に対する融資ワクというものが、残念ながら海運だとか電力のように柱が立っておりませんで、その他産業ワク内に入っておりますので、結局、その他ワクの中でほかの産業と一緒になって融資をしていただく、こういうことでございますので、なかなか思うようにいかないわけでございまして、日本旅館につきましては、中小企業金融公庫のほうから融資を仰ぎたい、こういうことで今折衝いたしております。
  15. 大倉精一

    大倉精一君 この改造する部屋なり、あるいは新築する部屋なりの設備につきましては、やはり国のほうで基準を示して、その基準どおりにやれと、こういう工合に指導されておるのですか。あるいは自由な構想でやれということになっておるのですか。
  16. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) この点は、国で融資お世話をする以上は、国として一定の基準というものを示しまして、この基準に示された規模に合致するようなものを作っていただきたい。そうしてそれについては国で融資お世話をしましよう、こういうふうな気持でおります。
  17. 大倉精一

    大倉精一君 まあこれはなかなか厄介な問題がたくさんあるようですが、たとえばオリンピックが開かれるときは十月で、日本ではちょうど観光客も満員の季節であるというようなこともあって、さらにまた基準も相当きびしいものになるから、自己資金でもってやるということになると、二の足を踏むこともたくさんある、こういうことも聞いておるのです。それからさらに、オリンピックが済んだあとどうなるか。オリンピックが済んだあと外人客が帰ってしまって、はたして日本お客さんがそういう割合で泊っていくのに適するような基準であるのかどうか、こういう点からいっても、相当これは先行き因難だと思いますが、この見通しはどうなんですか。
  18. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) 外客わが国への来訪数の推移というものについて、まあいろいろ見通しがあろうかと思いますが、私どもは一応やはり過去においてオリンピックの開かれましたヘルシンキの場合、あるいはメルボルンの場合、あるいは一昨年のローマの場合、こういった三つの例をとりまして、そうしてそれぞれの国においてオリンピックの開かれた年に何人外客がやって来たか、その前年にはどのくらいの人が来たか、オリンピックの済んだあくる年にはどのくらいの人が来てそしてその後その傾向はどういうふうな傾向を示しておるかということを、しさいに検討をいたしてみますると、いずれの国もオリンピックという一つ国家的行事を境として、観光客は伸びておるという事実があるのでございます。特に最近ヨーロッパ諸国におきまして、日本への観光という気分が盛り上がっておるときでございますので、私どもオリンピックが済んでしまえば、日本への外客はがた落ちになって、その施設はあくびをするというふうなことは結対にない、かように信じております。それは過去三回にわたるオリンピック開催国の例も調べ、またわが国独自の傾向も詳細に検討いたしました結果、そのような結論を得たのでございます。
  19. 大倉精一

    大倉精一君 役所においては、そういう結論見通しをお立てになっておるのかもしれませんけれども、肝心なことは、業者がこれをやるのですから、業者のほうでそういう自信がなければ、なかなかこれは乗ってこないというわけなんで、ましてやさっき申しましたように、十月というのはただでも国内観光客が非常に多いときであるから、むしろ外人目当てよりも、国内観光客のための設備をしたほうが安全であるという、こういうことが将来の指針として動くのです。今度外人客に対する料金を届け出て公示をする、場合によっては政府から干渉される、こうなってくるとまた問題になる。だからそういう点は、ひとつ運輸省のほうで十分業者のほうが納得してやるように、具体的に業者がそういうことを考えなければしょうがないかもしれませんが、そこに私は非常に難点があると思うのです。旅館業者の声を聞いてみますというと、そういうあぶないものにはあまり手を出したくない、こういうことです。ですから、私のほうとしてはやはり日本人お客さんのほうへ広げて、そちらのほうで商売して参りたい、外人さんのほうは将来どんな人がどういう工合に来るかわけがわからぬ、こういう声が現実にあるのです。役所で考えられておることとだいぶ食い違いがある。これを納得させるためには容易なことじゃないと思うのですが、これから大いに努力をしてもらわなければいかぬと思うのですが、そこで、どっちにしたとしても、オリンピックに間に合うように、何らかの形で作らなければ日本の信用というものはたいへんなものになってくる。これに対して運輸省としては、今民間協力を求めるという以外に手はないのですけれども新聞を見ますと、もうすでに海外では、来年の四月ごろから宿泊予約等とリンクして入場券の発売を始める。こうなってくるというと、おそらくことしの秋から外人宿泊予約を取らなければならぬということになる。にもかかわらず見通しが全然ない。こうなったら一体どうなるかということを心配するわけです。ですから、もし業者協力が思うように得られないという場合には、何かほかにお考えがあるのかどうか。
  20. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) お時間をいただいてはなはだ恐縮でございますけれども、私自身が直接駐独成田大使からじかに伺いましたお話でございますけれども西独のほうで五千人の人を日本オリンピックのときに送りたい。送る方法は一万トン級の船五はいをもって日本へ送る、こういうふうなお話でございまして、ドイツのほうでは着々その準備を始めたというふうに聞いたのでございまして、成田大使か私に言われたのに、一体こういったことをドイツで考えておるが、日本受け入れ施設は十分なのかね。こういうお話があったのでございまして、これにつきまして、私はいろいろ日本国内事情大使に率直に申し上げたのでございますが、一番大きな問題は輸送の問題じゃないかという話もしたのでございます。一万トン級の船を五はいもつける港というのは、一応横港しか考えられない。横浜から東京オリンピック会場まで簡単に計算をいたしますと三十キロなら三十キロ、こういたします。東京都内交通スピードというものが時速十五キロ、そうして五千人の人を観光バスで運ぶといたしますと、定員で乗せますと、五十人定員といたしますとバスが百台要ります。バスの長さが十メートルと仮定いたしますと、十メートルをそこに掛けますと、ちょうど千メートルで一キロでございます。延々一キロにわたるバスが、時速十五キロでのろのろと横浜からオリンピック会場まで列を連ねて動くということを想像するだけでも、これはたいへんなことでございますという話を申し上げたのでございますが、こういったいろいろのことを考えてみますると、結局必ずしもデラックスなホテルを作るだけが対策としていいのではなくて、やはりもう少し安直に泊まり得る設備というものを、やはり国として考えるべきじゃなかろうかというふうに私どもは考えております。それの一つ方法といたしまして、日本旅館新築改造ということも考えたのでございますが、そのほかにユースホステルの新造ということをただいま考えております。一応ただいままで運輸省としましては、今年度中にできますものを入れまして、国立を入れて四十五になります。一応四十五のユースホステルというものが、全国に三十七年度中にでき上がることになっているのでございますが、一つ方針としては、一府県に少なくとも一つというねらいでやってきたのでございますが、しかしオリンピックというものを考えますと、やはりユースホステル東京近辺にもう少し増設すべきじゃなかろうかという気持を持っております。これはひとつ来年度の予算折衝のときには、一つの大きな政策として、ユースホステル対策でもあるし、わが国青少年対策でもあるし、かつまたオリンピック観光客対策にもなり得るものだというふうにも考えておりますので、この面で少し問題を掘り下げて検討をしていきたい、かように考えております。
  21. 大倉精一

    大倉精一君 こういう問題はオリンピック特別委員会論議をされたことがありますか。
  22. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) この問題について、まだユースホステル活用ということにつきましては、それほど論議はされておりません。
  23. 大倉精一

    大倉精一君 ユースホステルじゃなくて、交通の問題とか旅館の問題、全体の問題……。
  24. 梶本保邦

    政府委員梶本保邦君) 交通問題一切がっさいひっくるめての対策協議会のようなものは随時開かれておりますけれども、困るな困るなという議論が、私率直に私申し上げますと、そういう声はみんな出るんですけれども、さて一体どうするか。極端なことを言いますと——非常に極端な議論で恐縮でございますけれども——オリンピック開催時を中心として日本終学旅行というものを一応文部省から通達でも出して全部ストップする、あげて日本の海陸の輸送力というものは、オリンピック観光客に充てるということも必要なんじゃないか、その時期だけ、一応二週間なら二週間、十五、六日オリンピック開催日数がございますから、そのときの輸送力というものを、どう按分し、振り向けるかということが一つの問題でございまして、そういったことも、国全体としてやはり輸送力活用ということを大きな目で考えていかなければならぬのじゃないかというふうな議論すら出ておるのでございますけれども、まだ残念ながら結論には至っていないような状態でございます。
  25. 大倉精一

    大倉精一君 これはたいへんな問題ですから、今ここでお尋ねしても、こうやるんだ、ああやるんだ、そういう答弁はないだろうと思うんですが、いずれはオリンピック特別委員会が設けられておりますから、そちらのほうで御検討になると思うんですけれども運輸委員会としても担当委員会として、この問題について触れずに、その場になって全く困った状態になってしまったとなれば、たいへん私らも責任を感ずるわけです。今のお話意見もこれは大いに意見だと思う。小学校の修学旅行をとめる、日本観光客をとめる、これは私は大へんな誤りであると思うのです。海外へ行ってオリンピックを見ることができないという日本人が、この機会にオリンピックの中へ入らなくても、雰囲気だけでも見て来たい、こういう願望が日本大の中にずっとあると思うのです。特に小学生あたりにこのオリンピック雰囲気を見せたい気持があるだろう。そういうものを全部ストップするという考え方があるとするならば、これはたいへんなことだと思う。ですから、私は逆に、外人観光客宿泊交通の問題にプラスして日本国内オリンピックに対するところの交通並びに宿泊施設ということも考えなければならぬと思う。これは将来大いにひとつ検討をしていただいて、遺憾なきようにしてもらいたいと思うのですが、いずれまた中間報告でも求めて検討をしたいと思いますから、遺憾のないようにひとつ進めてもらいたいと思います。  法案の内容については、なお検討したいと思いますので、次回に譲りたいと思います。
  26. 村松久義

    委員長村松久義君) どなたか御発言ありませんか。——本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  27. 村松久義

    委員長村松久義君) 次に、運輸事情等に関する調査議題といたします。  質疑の通告がございますので、この際御発言願います。
  28. 大倉精一

    大倉精一君 私はきょう都市交通関連をしてタクシーの問題について若干質問をしたいと思うのですけれども、まず第一番に、タクシーに関する問題はいろいろありますけれども、最初にお伺いしたいことは、御承知のように東京都内における営業車走行キロというのがきまっておりまして、三百六十五キロにきまっておる、ところが三百六十五キロというのは、相当以前にきめられた走行キロの数字でありまして、現在においては東京都内で三百六十五キロを走るというのは、これは不可能と思うのですよ。それに対して運輸省としての指導をどういう工合におやりになるつもりか、お伺いしたいと思います。
  29. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 東京都内タクシー最高走行キロは三百六十五キロで押えているわけですが、御承知のように最近非常に交通が混雑しておりまして、三百六十五キロまで走るということはまずむずかしいというのが実情でございます。ただこの三百六十五キロと申しますのは、かつて神風タクシーと称せられまして、むちゃにかせごうというふうな思想から、無理やりに走って収入を上げるということで、勢い交通事故あるいは労務管理等の適切を欠くという事態があったために、そのころに一応三百六十五キロ最高乗務キロということでこの線を出したわけでございまして、三百六十五キロ出さなければならぬというのでございませんで、最近の実情はそれ以下で走っております。まあこれは客観的に交通混雑等の影響のために、それ以下で走っておりますから、特にこの際、最高乗務キロを幾らにきめなくてはならないというふうな必要性があるかどうか、ちょっと私もうしばらく実情を見ていいのではないか、かように考えております。
  30. 大倉精一

    大倉精一君 大体この三百六十五キロに決定した当時の経過は、非常にこれは不明朗なものだったのですね。警視庁のほう、それから労働組合のほうからは、現在の走行キロ制限からいくならばスピード制限ですね、速度制限状態からいくならば、一日に三百五十キロが妥当ではないか、こういう意見があったのです。片や業者のほうでは、それじゃ少ないから三百八十キロでなきゃいかぬ、足して二で割って三百六十五キロになると、こうなったのです。あの当時でも警視庁のほうでも労働組合のほうでも客待ち時間等を含んで三百六十五キロ走れば、東京都内スピード制限を破らなければそれだけ走ってこれない、こういう事情があったのです。そういう妥協的なキロがきめられたのですけれども、今日においては御承知のような東京交通の麻痺の状態でありますので、三百六十五キロ強要されるというと、これは非常なスピードでもって走らないというと三百六十五キロ走ってこられない。今、局長最高キロをきめてもそれを必ず走ってこいというわけじゃないと、こうおっしゃるけれども、業界の実情は、いろいろ調査をしたり、あるいは聞いたりするところによるというと、やはり三百六十五キロを何らかの方法で強要するという、そういう傾向があるのですね。あの運転士は三百六十五キロ走っているじゃないか、お前は三百五十キロで何だ、こんなざまはというようなことでもって強要されるというのが実態なんですね。そういう実態をやっぱり運送指導者としてはつかんでもらわないというと、ただ形式的にものを言われても、そのようにはなっていない。ですから、むしろこの際三百六十五キロというような制限を廃止をするか、あるいはずっと下げるかしないというと実情に合わないと思うのです。私は、あの当時に東京都内でもって走行キロは、スピード制限がきまっているのですから、制限さえ守っていれば最高キロ走ってこいということは必要ないと思うのです。ですから、そういうことにきまったのですけれども、現在の事情におきましては、最高をきめなければならぬとすれば変更しなければならぬ、かように考えるのですけれども、そういう点について検討されたことありますか。
  31. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 最近の実情は、東京陸運局のほうでいろいろ調べておりますが、大体最近の混雑状況等の理由のために、東京都内におきますタクシーは、大体平均いたしますと三百キロ前後というところが平均の走行キロのようでございます。ただ、昨年あたり増車に際しまして監査等をいたしました結果、中にはまだ三百六十五キロぐらい走っている車も皆無とはいえませんが、非常に少ないというのが実情でございます。ただ、三百六十五キロをきめました当時のいきさつはお説のとおりでございまして、その後これがかなり守られてきましたし、それから事業者のほうも自粛いたしておりまして、スピード違反による事故その他は、タクシーについて都内につきましては非常に減って参りました。特に最近は混雑の客観情勢のために、出そうとしてもそうスピードは出せない、ただ三百六十五キロ以上は出してはいかぬという当時の基準がありますので、あるいは業者の中にどんなことがあっても三百六十五キロは走ってキロを出してかせがなきゃいかぬぞというふうなむちゃな指導の仕方をしているものがあってはいけませんので、その点は、われわれとしては各事業者に対してそういう指導、注意を喚起いたしておる実情でございまして、現在の状況のもとで事実上三百六十五キロまでキロを出して走るということがむずかしい状況でございます。この際、当時きめました最高乗務キロというものを一応きめなければならない客観的な必要性が非常に薄らいできておるんではないかといういうに考えますので、実情も把握しないのではございませんけれども最高乗務キロをこの際あらためて作り直す必要があるかどうかということについて検討をいたしておるような次第でございます。
  32. 大倉精一

    大倉精一君 私は、あの当時はそういうものをきめる必要はないということを主張したものですけれども業者の中には、やはり、無制限といっては極端でありまするけれども最高キロを非常に強要する業者も事実あるんですね。でけから、何百キロ以上走っていけないということは、業者の感覚からいけば必要かもしれません。が三百六十五キロそのままにしておきますというと、都心において非常に混雑な所を通過する場合には、相当所要時間も長くなるんです。で、それを突破すると、今度は思い切って走ると、こういう結果にもなってくるんです。これは運転士諸君から私はちょくちょく聞いておるんですけれども、そうなってくると、これは非常に危険ではないかと思うんです。確かに今タクシー運転士の事故は減っております。しかし、この減っておるということは、運転が非常にうまくなっておるんですね。全くうまい。うまいが、しかしながら最近における自動車の増加、それから運転士の不足、こういうアンバランスがありまして、いなかから来る運転士が相当おるわけですね。この運転士諸君が、なれないものですから事故を起こすというケースがあるんです。私はこの前、赤坂見附から国会までやってくれと言ったら、国会ってどっちでしょうか。というわけで、そういうのがたくさん来ておるんですけれども、これは運転士のせいでなくて、そういう人が、なれないから事故を起こすという場合もあるんじゃないか。そういうことからいって、最高をきめなきゃならぬとするならば、やはり最高基準というものをこの際再検討する必要がある。ですから、平均三百キロとおっしゃいますけれども、それはあくまでも平均であって、中にはそれ以上出しておる者がなければ平均三百キロにはならないわけですね。ですから、そういう点についてひとつこの際検討されなきゃならぬと思うんですけれども、そういう御意思はございますか。
  33. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 最高乗務キロをこの際修正いたしまして、実情に合う最高輸送キロをきめるかどうかということにつきましては、お話の点もなるほどごもっともな点もございすまが、かえってこれをきめて、最高乗務キロということになりますと、いろんな情勢から考えまして、これ以上走ってはいけないぞという最高限度——言うまでもないことでありますが、最高限度を示すわけでございますので、かりに三百六十五キロという従来の最高乗務キロというものをきめたために、三百キロあるいは三百二十キロ出して十分かせいでおる者に対しても、どうしても三百六十五キロ出せというふうな誤った指導をする者があるといたします。というと、この三百六十五キロをかりに三百二十にしろ三百三十にしろと変えますと、やはりそういう誤った指導をする者があるとすれば、やはり同じように、それをきめられた一ぱいのものを出せというふうに言うおそれもございますし、といって、この最高乗務キロは、読んで字のごとく、最高乗務キロでございますので、そこまで出すことを強制するキロ数でございませんので、ただ現状におきまして、現状に合う最高乗務キロというものをきめなければいろんな弊害が著しいというふうな状態になりますれば、当然考えなければいけないと思うのでございますけれども現状から見ますというと、むしろこういった最高乗務キロはなくて、しかもタクシー業者も自粛をし、あるいは交通混雑の中でやむを得ず低スピードで走るというふうな実情から見まして、むしろ最高乗務キロをこの際わざわざ変えて何か新しい刺戟を与えるということはいかがかというふうな感じもいたしますので、いましばらくこの点につきましては実情を見た上で考えていきたいと、かように考えております。
  34. 大倉精一

    大倉精一君 実情を見た上で考慮するというお話でありますから、ぜひともこれは早急にそういう点を調査をしてもらって、実態に即応するような新しい方法をとってやってもらいたいと思う。特に、三百六十五キロ最高であるから、これだけ出さなければならぬというものではないと、こういう御答弁でありますけれども、逆にいって、業者のほうから言うならば、三百六十五キロというのは強要し得るキロなんですよ。三百六十五キロ走ってこいと言っても、これは約束には触れないということになるんですから、そういうことも考えてもらわなきゃならぬと思いますね。ですから、これはひとつぜひとも早急に実情調査をされて、実態に合うようにしてもらいたい。これには、業者ばかりでなくて、皆さん方も、たまにはひとつタクシーに乗ってもらって、タクシーの中で運転士さんに聞いてもらう、これが、一番早いことなんです。そういう手段もとって、早急にひとつ調査をしてもらいたい。  それから次にお伺いしたいことは、タクシー運転士の給料の問題です。賃金の問題です。これは今でもなかなか労使間において紛争が起こっておるようでありますけれども、現在、収入に対する固定給の割合というものは、大体どのくらいになっておりますか。
  35. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) これも東京都内タクシーについてのお話であろうかと思いますが、東京都内タクシーにつきまして、昨年、一昨年あたりから新規の事業者の免許もいたしておりまして、そういう場合に一応運転者の給料についてもみておるわけでございます。で、陸運局といたしましては、かって非常に歩合制が強くて、そのために労働強化になり、ひいては神風タクシー的な過労に陥るというふうな実情もありましたので、できる限り歩合制を少なくして固定給の割合を多くしたいということで見て参っております。一応の標準といたしましては、少なくとも固定給は全体の五割以上を占めるという方向で、逐次さらによく改善していくようにという線で見ておりますが、実態は、全部にわたってなかなかそう平均しにくい性質のものでございますが、大体半々というのが現在の実情のように思っております。なお、いいものになりますというと、たしかただ一社でございましたか、全額固定給というふうなところもあります。また、八二とか七三とかいうふうな、非常にいい固定給のところもございますが、全体的に見ますと、大体半々というところのように存じております。
  36. 大倉精一

    大倉精一君 どうも役所のほうは平均数字でものを言いたがるんですけれども、こういうような問題は、何の会社は何社あってこれが運転士が何人、何%までは何人と、こういう数字を示してもらわないといかぬし、そういう数字をとらなきゃいかぬと思うんです。これは平均をとるんですから、おそらくそういう数字があると思うんです。それによって実態を見てもらわないというと、平均大体半々だという、そういう把握の仕方では、私は非常に危険だと思う。これも東京都内の一流会社の運転士に聞いてみますというと、依然として固定給は二千円だ、三千円だというのがある、現実に。そこで、これはあの当時の神風タクシーの問題をやったときに、本委員会におきましても、たくさんの決議のうちでこの賃金に関する問題につきましては、たしか自民党さんだったと思うんですけれども、大幅に固定給を値上げをすると、こういうような案が出ました。私は大幅という表現には賛成しませんでした。大幅といいますというと、たとえば二千円の固定給が大幅に倍になって、やっぱり四千円なんです。ですから、そういう表現はやめ、そのかわりに、固定給を主体とする賃金体系にすべきである、こういう表現になったんですね。で、この決議をどういう工合に御指導されてきたか、この実情についてお伺いしたいと思う。
  37. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 先ほど御説明申し上げましたように、新規に免許をします際等におきまして、運転者の固定給の割合について考慮を払っておるのもその一つ方法でございますし、それから機会あるごとに事業者の監査をいたしておりますが、その監査の中で特に運転者の給与の実態についてもよく見ておりまして、御指摘のように依然として固定給の割合の非常に少ない改善の必要のある会社につきましては、改善の勧告、指導等をいたしまして、固定給を上げるように指導をいたしておるのが実情でございます。
  38. 大倉精一

    大倉精一君 免許する場合に、事業計画というものを出すと思うのですけれども、その中で給与体系に対する条件も出てくると思うのですがね。これはどうですか、大体固定給を主体とする企業体系になっているかどうかということをお調べになるのですか、免許されるときに。
  39. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 免許のときには事業計画の中で運転者の固定給はどのくらいであるということを見ておりまして、最低の線、フィフティ・フィフティという以上の固定給でなくてはいけないという、一応のめどとしては見ております。
  40. 大倉精一

    大倉精一君 五分々々というのは、固定給を主体とする給与体系ではないわけですね。あの当時に六〇%という数字が出ましたけれども、数字を出すことはまずいというので、固定給を主体とする給与体系となったのですが、これは申すまでもなく主体とするのですから、少なくとも六〇%以上、七〇%から八〇%、歩合給というのはほんのつけ足しだ、こういうことにならなければならぬ。にもかかわらず、五分々々の給与体系ということは、あの決議案に対して違った趣旨でもって指導されていると思うのですが、いかがですか。
  41. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) ただいま申し上げましたのは、最低の線として大体その程度で見ておりますので、御承知のように非常に免許の申請が多くございまして、そのうち、車の両数の関係で免許になるのはその一割に当たらない程度の競争でありますので、したがいまして、一応今申し上げました程度で給与の実態を見ておりますけれども、実際に免許になります会社は、今のような競争率でございますので、ずっとそれを上回った国定給の割合のところが免許になっているのが実情であります。
  42. 大倉精一

    大倉精一君 これはひとつ資料を見せてもらいたいと思うのです。なかなかこれは大へんな部数になると思うのですけれども、大体固定給と手取り収入との割合別に、会社の数あるいは人数というものは出ませんか。たとえば固定給の割合二〇%から二五%までのものがどれだけ、あるいは二五%から三〇%まで、あるいは三五%までのものはどれだけ、こういうような数字は出てきませんか。
  43. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 御期待のとおりのものが出るかどうかわかりませが、実態を相当把握しておりますから、実は私その資料を持って参りますればよかったのですが持って参りませんので、概数で説明さしていただきましたが、資料として提出さしていただきます。
  44. 大倉精一

    大倉精一君 労働省の方にお尋ねしたいのですけれども、これはあなたのほうの仕事の分野かどうかわかりませんが、今申しましたようにタクシーの運転士については、交通安全という見地から今お聞きになったように、かつても当委員会において固定給を主体とする給与体系とすべきである、こういう決議をしておったわけですね。その後、たとえば大阪の陸運局あたりにおきましては、業者に対して固定給を六〇%にせいという勧告を出しております。まだそれは実現しておりませんが、労働省としては、これに対してどんな感じを持っておりますか。
  45. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) ただいま御指摘の点につきましては、運輸省と常にタイアップして指導しておるわけでございますけれども、特に三十三年の四月から内閣にできました交通事故対策本部におきまして、労務管理の適正化ということからいたしまして、特に刺激的な歩合制というものをできるだけなくすということで、固定給の割合を多くするように、関係の地方の基準局に通牒を出しまして、これに基づいて指導をしているわけでございます。一応の目安というものは、このときもきまらなかったわけでございますが、われわれの指導態度といたしましては、やはり六〇%というのを一つ基準にしまして地方の局長には説明はしておるわけでございます。ただ、今、先生御指摘のように、なかなか六〇%まで参らないというところが多い実情でございまして、今後とも業界を集めまして労務管理の指導の際に十分この点を徹底していきたいというふうに考えております。
  46. 大倉精一

    大倉精一君 まあ結果において、ああいう決議を国会で出しましたけれども、それをあまり尊重されていなかったと思うんです。たとえば今自動車局長からフィフティ・フィフティというような言葉もありましたけれども、そういうような趣旨じゃないんですね。ですからこれは現在のような交通事情のもとにおいては、さらにあの決議を生かしてもらうように、具体的に指導してもらいたいと思う。先ほど走行キロについての論議がありましたけれども、これは今のお話の固定給とこの走行キロとは非常に関係があるんです。ですから固定給がわずかに三千円だ四千円だという、そういう給与体系であれば、都心の込んだ所から解放された場所においては、猛然として走って行かないと、なかなか収入は得られない、そういう面もありますので、この際は固定給を基準とする、少なくとも七〇%ぐらいでないといかぬと思うんです。労働省においてはそういう具体的な指導をしてもらうように要望したいと思うんですが、これは運輸省とそれから労働省と、特にひとつ密接に協力しながら推進をしてもらいたいと思います。  それから運転士に対する将来の保障ということが非常に今やかましくなっていますね、本質的には労使間でもってこれは協定をするのが原則でありますけれども、現在のような業者の実態におきましては、業者個々に将来の保障をするということは、これは無理だと思う。これはやはり行政指導によって業者が何らかの形において連合して、共同して将来の保障をしてやるという、そういう制度を作るように行政指導をしなければならぬと思いますよ。これは局長いかがですか、そういう指導をなさる御意思ありませんか。
  47. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) 運転者の将来の保障につきましては、労使の関係におきまして各企業者が自発的にそういうことを考えるのが本則でございますけれども、監督官庁といたしましても、そういう点について十分関心を持っておるわけでございます。特に大規模の事業者につきましては、かなりそういう点がうまくいっておりまして、退職金制度等も逐次確立されてきておるのが実情でございます。小規模の事業者につきましては、これは東京だけではございませんが、全国的にそうでございますが、事業協同組合とか、そういったものを作らせまして、そういう方面から共同いたさせまして、将来の保障等につきましての積立制度とか、そういうものを作るように指導して参っておりますし、また、今後そういうことを一そう行政指導の面において意を配っていきたい、かように考えております。
  48. 大倉精一

    大倉精一君 労働省のほうも、タクシー運転士だけじゃないかもしれませんが、トラックの運転士もそうかもしれませんけれども、こういう路面労働者の将来の保障ということについては、特段の関心を持って何らかの指導をやはり私はしておやりにならないというと、どうしても今日の交通不安というものは根本的に解決しないと思うんですが、そういう点からひとつ見解をお伺いしたい。
  49. 小鴨光男

    説明員(小鴨光男君) ただいま御指摘の点について、確かに今までは労働条件ということで、労働時間とか賃金そのものについては一応の指導監督をやって参ったわけですけれども、企業外に、いわゆる解放された後の問題という点に一きましては、確かに指導が不十分であったと存じます。したがいまして、本年度から実は大企業はもちろんでございますが、中小企業の特にこういう労務管理があまりよくないところ、こういう事業をつかまえまして、退職金制度の確立、給与制度の近代化ということについて重点を置いて指導をやっていきたいというふうに考えておりますので、ただいま先生御指摘の点も含めまして、特に路面運送関係の事業については、指導の重点としてやっていきたいというふうに考えております。
  50. 大倉精一

    大倉精一君 関連して最後にお伺いしておきたいことは、そういうような労働者の賃金なり将来の保障なり、さらにはまた車両の整備、設備の改良等々の面について、現在は業者がもうかっておるかどうか知りませんけれども、もし現在の経営状態で許されぬというならば、タクシー料金に関する限り、これは値上げしてもやむを得ぬ場合があるのじゃないかという気がするのですね。私は、公共料金といいますけれども、この場合は電車や汽車とは少し違うという気がするのですね。電車や汽車の場合には、十円値上げした、しゃくにさわるから歩いてやろうかというわけにいかぬが、タクシーの場合には十円値上げしたらば電車に乗ってもいいということがあり得るのですね。だからこれはやたらにそう口にすべきじゃないかもしれないけれども、そういうような交通安全のために行なわなければたらないことに対して、経営上やむを得ぬという場合においては、それも考えられると思うのですけれども、特に東京のような交通事情の場合においては、料金制度についても考える必要があるのじゃないかというような気がするのですけれども局長何かお考えがあるのですか、そういう点について。
  51. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) タクシーも鉄道あるいはバス、軌道等と同じく公共の輸送機関でございますので、これの料金の改定につきましては、公共料金の変更ということで、政府といたしましても同じように今抑制の方針をとっておりますが、しかし、事業の実態から見まして、ただいま御指摘のような、あるいは給与条件が非常に悪くて、これを上げなければ公益事業としての改善もはかれない場合には、どうしても料金の改定に待たなければいけないといったような、真に必要やむを得ない実情がある場合におきましては、それぞれの手続を経まして改定のための検討実施をするにやぶさかではございません。そういう点につきましては、個々の申請につきましてよく実態を調べました上で善処いたしたい、かように考えております。
  52. 大倉精一

    大倉精一君 これは運輸大臣にお尋ねしなければならぬことかもしれませんけれども、同じ公共料金といっても、電車や汽車とタクシーと同列に並べるということは、これは若干いかがかと思うのですね。電車や汽車やあるいはバス等の料金タクシーとは少し違うのです、内容、性格がですね。さっき言ったように、バスとかあるいは汽車、電車というものは、これはもうほんとうに大衆の輸送機関であって、五円、十円値上げするということは非常に大きな影響がある。物価にも影響がある、心理的にも非常にある。タクシーの場合には必ずしもそういうような性格とは本質的に違うのじゃないかというような気がするのですね。これは検討してもらわなければなりませんけれども検討々々と言っているうちに、だんだん事態は進展していくのですね。特に最近政府において公共料金の問題について閣僚の間でも意見の相違があるようですけれども、これは局長の関与する範囲でないかもしれませんが、物の考え方をタクシーの場合はタクシーの場合のように考えていかなければならぬのじゃないかというような気がするのです。もしそれを押えているために働く者の将来の保障も、あるいは現在の給与も、あるいは設備改善もできず、不良車両を走らせなければならないというような事態になるとすれば、これは早急に考えないと交通の安全のために非常に害があるのじゃないか、こう思うのです、この間の私鉄のように。私は私鉄の運賃について、政府が私企業の経済の自由化をチェックする以上は、政府が責任を持て、あるいは利子補給なり低利資金の融資なりという責任を持たなければならぬ、こう言いましたけれどもタクシーの場合は、チェックしておるからといって、これは利子補給を保証するというわけにはいきますまい。そういう点について、もうすでに再検討する段階にきているのじゃないでしょうか。あるいは料金立て方自体にも問題があるかもしれません。そういう点について検討を進められているのか。あるいはこれからやろうと考えるのか。どっちなんですか。
  53. 木村睦男

    政府委員木村睦男君) タクシー料金は、他の鉄道であるとかあるいは軌道等と同じく、公共料金と申し上げましても、完全に輸送の実態から見まして同じものであるとは言い切れないと思います。やはりそこには若干の特殊性に基づく差異があると思いますが、まあいずれにいたしましても公共料金ということには間違いないと思います。したがいまして、その点につきましては今申し上げましたような考え方で対処したいと思っております。なおタクシー料金の変更、あるいは料金立て方等、いろいろ改善意見も出ておりますし、現に東京都内におきますタクシー料金につきましては、値上げの申請も東京陸運局のほうに出ております。この申請の中身につきましては、陸運局のほうで現在慎重に検討を進めておりまして、申請の内容につきましては、目下すでに調査をやっているのが実情であります。
  54. 大倉精一

    大倉精一君 誤解があるといけませんから申し上げておきますけれども、私はタクシー料金はやむを得ぬ場合には値上げも考慮しなければならぬじゃないかという趣旨は、この分をあげて交通安全という面に使われなければならぬという、こういう趣旨なんです。しかもその交通安全というものは何が一番根本になるかといえば、人間の問題なんです。事故は自動車が起こすのじゃない、人間が起こすのですから、人間のことを考える場合に、やはりそういうこともある程度必要があるのじゃないか。こういうことで申し上げているのであって、業者利潤のためにこの料金を上げるとかなんとかいう趣旨でないということを、念のために申し添えておきます。  きょうはこの問題この程度で終わりますけれども、資料を一応出していただいて、特に私はこのタクシーあるいはトラック等、路面労働者の賃金形態について非常に大きな関心を持っているので、資料に基づいてまた必要があればお尋ねをしたいと思います。
  55. 村松久義

    委員長村松久義君) 本日はこれをもって散会いたします。   午後二時三十七分散会      —————・—————