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1962-02-23 第40回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十三日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席分科員    主査 中村 幸八君       相川 勝六君    臼井 莊一君       小林  進君    田口 誠治君       辻原 弘市君    野原  覺君       長谷川 保君    山花 秀雄君       井堀 繁男君    兼務 淡谷 悠藏君  出席国務大臣         労 働 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     住  榮作君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         労働事務官         (職業訓練局         長)      村上 茂利君  分科員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    岡田 覚夫君         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   石黒 拓爾君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  大野雄二郎君     ――――――――――――― 二月二十三日  分科員山花秀雄委員辞任につき、その補欠と  して小林進君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て田口誠治君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員田口誠治委員辞任につき、その補欠と  して山花秀雄君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第三分科員淡谷悠藏君が本分科兼務となつた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算労働省所管  昭和三十七年度特別会計予算労働省所管     ────◇─────
  2. 中村幸八

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算及び昭和三十七年度特別会計予算中、労働省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花分科員 せんだっての予算委員会における一般質問に、労働大臣に対して駐留軍離職者対策については分科会でなお詳細をお尋ねする、こういうことで私の質問を終えたのであります。きょうはその問題について微細な質問をしたいと思いますが、その前に一つ二つ予算関連性のある問題について質問をしたいと思います。この労働省から発行されました予算説明要旨の第二の点でありますが、「失業対策に必要な経費であります。」という点で、「最近における雇用失業情勢にかんがみ」というところで、「一般失業対策事業につきまして事業費単価引き上げ就労日数増加などの改善を行なって就労者生活の安定と事業能率の向上をはかることとし、これらに必要な経費といたしまして、二百七十九億七千六十九万七千円を計上いたしております。」こういうことになっておるのでありますが、賃金単価をどの程度上げられたのか、就労日数のどの程度増加によって改善を行なったか、こういう点につきまして詳細な点を御説明願いたいと思います。
  4. 福永健司

    福永国務大臣 御指摘の点につきましては、今次予算案編成にあたりまして、労働省といたしまして財政当局と鋭意折衝をいたしたのでありますが、ここに書いてありまする通り単価日数において若干改善をいたしたのでありますが、十分というところまでは参っておりませんけれども、これもかなり執拗に折衝いたしました結果こういうことになったわけであります。単価におきまして三十九円、日収が〇・五、こういう程度改善を行ないました次第であります。
  5. 山花秀雄

    山花分科員 単価三十九円値上げ、日数〇・五というただいまの答弁でありますが、そういたしますと、これは就労日数は何日、金額につきましては賃金単価幾らか、このお答えを願いたいと思います。
  6. 福永健司

    福永国務大臣 四百二十五円の二十二日ということになります。
  7. 山花秀雄

    山花分科員 二十二日、平均四百二十五円ということになっておりますが、この四百二十五円は一応平均単価だろうと思います。地域によりまして若干の高低があると推察いたしますが、その最低のところと最高のところをお示し願いたいと思います。
  8. 三治重信

    三治政府委員 今PW計算をいたしておりまして、本年まだ計算中でございまして、新年度やるものにつきましてはまだ目下作業中でございますが、引き上げ前の三十六年度におきましては、一番高いところが東京都でございまして、四百二十六円、最低地域、これはおもに東北、九州の町村でございますが、これにつきましては最低三百二十一円になっております。日数全国平均、どこでも二一・五日でございます。
  9. 山花秀雄

    山花分科員 そういたしますと、私は東京の方は作業量が多くて、日数が多く、地方に行きますと作業量が少なくて日数が多い、かように考えまして、ただいま質問したのでありますが、日数は大体全国平均と、こういうお答えでございます。二十二日労働でこの四百二十五円がどの程度の額になるかという点はまだ調査中でわからぬと言われましたが、四百二十五円平均点計算いたしますと、九千三百五十円ですか、多分その程度金額が出ると思うのです。そこで問題にしたいことは、生活保護支給金との関連性でありますが、これじゃ低いんじゃないかという気がするのであります。なお、先ほど申し上げましたように、最高賃金最高就労日数でこれが計算されますと、また若干の問題点がありますが、東京あたりは、御承知通り標準世帯生活保護が一万三千円以上に今度改定をされておりますので、どうも働いて生活保護支給金より低額ということはちょっと常識上うなずけないと思いますが、これらの問題につきまして、労働大臣はどういう御見解を持っておるか、承りたい。
  10. 福永健司

    福永国務大臣 御指摘のように、その数字だけを比較いたしますと、お話のようなことに相なるわけであります。予算折衝の経過におきましては、私も実は山花先生のおっしゃるようなことなども申しまして、強くわれわれの主張をいたしたのであります。その結果今申し上げたようなところであり、従って、十分とまで行っていない点を私も残念に思うのであります。その数字だけを比べますとそういうことも言えると思うのでありますけれども、法律建前が違いますだけに、これに該当する給与を受ける家族があって、その他の収入があっても差しつかえないし、そういうことが一そう望ましいわけであります。他の収入のゆえにこちらの方に生活保護の場合のような影響が及ばないという点等を考慮いたしますと、必しも一がいには述べられないと思うのでありますが、この方を所管いたします私といたしましては、今もお話のありましたような点等ともにらみ合わせて、従来お説のようなと申しますか、それによく似た主張もずいぶんいたして参りましたし、今後もそういう主張を引き続きしていかなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  11. 山花秀雄

    山花分科員 補正予算の本会議での討論のときに私一言触れておいたのでありますが、昭和二年の不況時代、当時は失業救済専業と言っておりましたが、これはざっくばらんに申しまして、遊んでいても賃金だけ払うという制度でありますが、一円四十銭程度でありました。物価が三百八十倍とか四百倍といわれておりますが、低い三百八十倍で倍数計算いたしましても、百七円今日の四百二十五円と比べまして低いのです。だから、遊んでいてもよいような、名目的に出て来いというその最低賃金で百七円低い。物価の倍数でありますが、昭和二年から見れば四百倍をおそらくこしているのではないか、こう思うのです。最低の三百八十倍に押えてもそういう計数が出るのであります。これはもう少し改善をしていただかないと、失対の労働者の諸君が世間から悪く言われますように、あまり仕事をしないという形が現われて参っている実情であります。賃金はやはり改訂して、たとい失対事業であっても作業能率を上げてもらうという方策の方が大局的、国家的見地から見て得策であろうと思います。これらの問題につきまして労働大臣所見を伺いたいと思います。
  12. 福永健司

    福永国務大臣 私もおおむねただいま御開陳になりましたような御見解と同じような考え方で、先ほども申し上げましたように、予算編成にあたって主張をいたしたのであります。国の施策全体の中でどうするかということで大いに努力ばいたしましたが、こういうところになったわけであります。決して高いと申せないのであります。御承知のような工合に相当たくさん出して、そしてよく働いてもらうということが望ましいわけであります。しかし、いずれにいたしましても、一方から見ますと、この種の状態はかりの姿といいますか、ずっとこの失業対策関係仕事に携わっている人もかなりいることはいるのでありますが、本来の建前といたしますと、なるたけ早く常用化されて安定した職業についていただくということの方が本意であります。それだからこっちが安い、こういうわけではありませんが、そういうこととも関連いたしまして、総合的にこうした関係のことの改善について、今度の予算編成につきましてもいろいろ努力をいたしたわけでございます。こういう関係人たちに安定した常用的な仕事についてもらうことのための積極的施策も従来よりはある程度前進したつもりでございます。そういう意味で総合的にこういうようなことに相なりましたのでございますが、私限りで考えますところでは、決して高くない、今後もさらに努力はしなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  13. 山花秀雄

    山花分科員 労働大臣もお認めになっておるように、これは決して高い質金形態でない、何とか考えていきたいが、いろいろな関係でこうなった。これは一段努力を払って、もう少し賃金を出すような予算措置一つ講ずるように、閣内においても努力していただきたい。  それからもう一つお尋ねしたいことは、この予算措置一般失業対策と、それから特失というものがありますが、特失関係賃金形態はどうなっておるのでしょう。それから一般失対と特失関係の、延べでも、一日の歩分けでもよろしゅうございますが、どういう按分比例になっているか、ちょっとお示し願いたいと思います。
  14. 三治重信

    三治政府委員 臨就特失の方は、賃金につきましては、労働省一般失対のように賃金を指定しておりませんで、これは一般のいわゆるPWに大体準じておるわけであります。それからまた、そこで働く一般失労務者以外の労務者と同じように、歩掛りその他労働の実態に応じて賃金を払う。その間、特別失労務者なるがゆえにどういう賃金ということはない。一般労務者賃金と同じように、大体能力に応じて支払われるということになっております。
  15. 山花秀雄

    山花分科員 そういたしますと、特失の方はこの国の予算とは関係なく、一般のいんしん作業の方へ職安を通じて回す、こういう措置をとっておる、こういうことですか。
  16. 三治重信

    三治政府委員 御質問の趣旨をあるいは間違えているかもわかりませんが、失対労務者の中で体力の強い人たち公共事業特失臨就に行ける人を特別に選別して、そういう資格者を指定しておりまして、そういう方々が、特失公共事業が始まりますと、そちらの方へ行く。特別に紹介していって、そこで働く。それは一般労務者と同じような賃金をもらう、こういう仕組みになっております。特失臨就が少ない、いわゆる五月ごろから九月ごろ、また公共事業の始まらないときには、一般失事業に就労させる。こういうふうに紹介関係で、一般失対に従事している方でも、そういういい、非常に高い賃金の方もある。そういうものの求人がある場合にはそちらの力に紹介していくという体制にしております。
  17. 山花秀雄

    山花分科員 大体話の内容はわかりましたが、そこで一つ、これは職安関係で特に調査を願いたい。というのは、おもに公共事業でありますが、そこへ人を向ける。そういたしますと、組から派遣されておる、公共事業を請け負った組と同じ労働をやっておりまして、一方では六百円とか六百五十円、一方では八百円から千円、そういう賃金が支払われておる。そういたしますと、その間相当大きな中間搾取が、これは具体的に現われてきておるのですけれども、そういう点は職安でお考えになっておるか、また調査したことがあるかどうか。少なくとも職安の本旨からして、そういう配慮までして特失の方の問題を扱っていただきたいと思いますが、一つ考えをお伺いしたいと思います。
  18. 三治重信

    三治政府委員 失対労務者特失に行った場合に、その特失臨就の現場で、安定所登録労働者と、そうでないいわゆる手持ち労働者との間に賃金格差が相当ある。それは一種のいわゆる中間搾取になるというようなお説かと思いますが、賃金も確かに手持ち労務者安定所紹介労務者との間に差がある。それは、手持ち労務者はやはりどうしても組として一定作業の推進の責任を持たしておる、あるいは長年雇っているための年功序列的なところも一ある。そのゆえに賃金の差が若干はあるというふうには考えられますけれども、われわれの方も、いま一段調査してみたいと思います。そういうようなことはないとは思いますが、われわれの方としても、手持ち労務者職安関係紹介労務者との賃金差がどれくらいあるかというようなことは、まだ十分調査はしておりませんので、そういう点についても今後調査をし、また検討してみたいと思います。
  19. 山花秀雄

    山花分科員 わずかな賃金格差であればわれわれも常識上認めるのですが、今申し上げましたように、一方は六百円ないし六百五十円、一方では千円内外で、格段の賃金格差があるのです。それから、職安から回りました労働者の方は、おもに組を通して入っておるが、公共事業施行主からは、その組に所属する労働者同一賃金を支払われておると思うのです。そういたしますと、あまりにも搾取がひどいという点です。これらの点は、職安仕事として厳格に調査して、さような格差を縮めるように、そうでなければ人を派遣しないくらいの意気込みで一つやっていただきたい。その一つの現われが、山陰あたりあるいは大阪西成あたり私設職安ができてくるという一点も、そこらがやはり原因をなしておると思います。まじめに働いておる労働者が膨大な中間搾取で苦しむ、こういう弊害を一つなくするように努力していただきたい。証拠を出せと言えば幾らでも出しますが、時間がございませんので、あとでもゆっくりこの問題についてお話を続けていきたいと思います。一応この問題は打ち切りたいと思いますが、これは臨時の仕事ということが建前になっておりますが、登録労働者になりますと、いろいろな関係でなかなか抜け切れなくて、実質的には常川の労働者同一形態をとっておることは御承知通りであります。そこで問題になりますのは、盆暮れにおける一般的にいう賞与金と申しますか、これが予算上ずっと前から固定化しておると思うのでありますが、来年度予算ではどの程度日数を国としてお考えになっておるか、お示しを願いたいと思います。
  20. 三治重信

    三治政府委員 本年度盆暮れのやつは十五・五日の補助をしておりますが、三十七年度におきましては、二十・五日ほどで、約五日増加さしております。
  21. 山花秀雄

    山花分科員 これは盆暮れのことでございますから、できれば一つ三十日ぐらいの予算措置を講ずるように一段努力を願いたい。今次はあるいは問に合いかねると思いますけれども、来年度予算編成につきましては、もう四年、五年というように常用化しておりますので、最低一カ月ぐらいの予算措置を講ずるように、御尽力をこの際お願いしたいと思います。  それから、この予算書を見ておりますと、本年度簡易宿舎と申しましょうか、宿泊所設備が、八百人の設備予算が計上されておるのでありますが、これは坪当たりどの程度予算単価で、どの程度宿舎設備をされるのか、それからどこへこの四カ所の宿舎を建てようとしておられるのか、おわかりでしたら御説明願いたいと思います。
  22. 三治重信

    三治政府委員 予算単価あとで調べて御報告申し上げます。これはおもに東京横浜神戸門司というふうな六大港に働いております港湾労働者のために作るわけであります。
  23. 山花秀雄

    山花分科員 予算をこう組まれておりますから、大体神戸で一カ所とか、横一決で一カ所とかいうふうなことは、もうおわかりになっておるのではないかと思うのです。宙ぶらりんで予算を組んでおるというふうにはちょっとわれわれも理解できないのですが、これはまたその建てる場所地域における自治体あるいはその他の関係で、協力してやられるのではないかと私は思います。そこでお尋ねしたいのは、どの程度予算単価の棟を建てようとしておるかという問題であります。
  24. 三治重信

    三治政府委員 一カ所二千五百万円の予定でございます。今一応予定しておりますのは、北九州の門司の辺に一つ、それから神戸大阪、それから東京横浜と言いましたが、これは間違いでございまして、北海道のいずれかに一カ所作る予定にしております。
  25. 山花秀雄

    山花分科員 私の尋ねたのは総額じゃないのです。一般的に坪当たり幾らかということです。これは港湾労働者宿舎だからといって、ボロ家を建てられたのではたまったものではない。
  26. 三治重信

    三治政府委員 大体七万五千円程度、今の一般の四階建の鉄筋アパートに準ずる――若干単価か低くなっておりますが、一世帯当たりが大体九坪くらい程度になっております。
  27. 山花秀雄

    山花分科員 今一世帯当たりというと、独身ではなしに、世帯の建物という意味ですか。
  28. 三治重信

    三治政府委員 独身の場合もたくさんございますが、独身の場合には、一棟大体二百人程度を収容するような設計になっております。
  29. 山花秀雄

    山花分科員 これは独身の棟を建てられようとしておられるのか。おそらく港湾あたりは大てい独身だと思いますが、今世帯当たり九坪というような御回答がありましたから、世帯宿舎を建てようとしておられるのか、その点をちょっと聞きたいのです。
  30. 三治重信

    三治政府委員 申しわけございません。間違いました。独身者ベッド式ので、それで二百人を予定しております。
  31. 山花秀雄

    山花分科員 ずっと前に、これは小坂労働大臣時代だったか、私ちょっと失念いたしましたが、神戸に一棟やはり私どもが尽力して建てました。七万五千円であの程度のものができるかどうかという一点でありますが、できればもう少し予算単価をふやして、せめてあの程度くらいの個人宿舎を建てるようにしていただいて、環境衛生をよくし、あすの再生産に従事できるような、いこいの場所にするように一つ御尽力願いたいと思います。  それから駐留軍の例の離職者対策の問題であります。これは労働大臣にお伺いしたいと思いますが、今度の予算措置にどの程度措置が盛られておるかという点であります。どこかこの資料の一カ所に駐留軍関係があったと思いますが、そちらの方から説明してもらった方が早いと思います。
  32. 三治重信

    三治政府委員 駐留軍関係対策について予算に計上されておりますものは、職業訓練費でございます。これは個所数は同じでありますが、入所者を昨年より若干減らしまして、前年度二千二百二十人の収容人員が千六百八十人に減っております。それから駐留軍労務者対策協議会の方も予算が計上されている。これは昨年法律が改正されまして、市町村にまで協議会を作るということで、この経費も若干計上してございます。さらに訓練手当、それから移転資金が昨年度同様予算に計上されております。一般職業紹介関係経費につきましては、これは特別に区別なく、一般職業紹介費の中に入っております。特別に予算上項目として計上してございますのは、駐留軍訓練費、それから職業訓練手当移転資金、それから駐留軍対策協議会経費ということでございます。
  33. 山花秀雄

    山花分科員 時代の脚光を浴びたといえばまことにお気の毒な話でありますけれども、石炭産業につきまして、特別のいろいろ便宜的な立法関係をせんだって見たことは、御承知通りであります。私は、駐留軍労務者もやはり同じような扱いをされていいのではないか、大局的にはそう考えているのでありますが、一方はエネルギーの革命だとかなんとかいうようなことで、石炭産業が衰微した形で大最失業群が出るということで、いろいろ政府では保護的な措置をとられたことは御案内の通りであります。駐留軍関係も、これは何といっても国情の違う、しかも、敗戦をしたときに、そういう心理状態の中で、長い間外交のかけ橋のような形で勤めてこられたことも、これは御承知通りであります。実情はだんだん縮小をいたしまして、またもう一歩ワクを広げますと、特需の関係も、ずいぶん衰微産業としてせんだって、御承知のように日本製鋼ビクターオート等々で約三千人ほどの大量失業が出ております。これは東京の府中、埼玉の所沢という一定地域に三千人から出ている。また、用事基地のありましたところのアメリカ軍編成がえによりまして、ずいぶん大量の駐留軍労務者が失業していることは御承知通りであります。これに石炭労働者と同じような保護措置をとる必要があると私は考えておりますが、この点につきまして、労働大臣所見を伺いたい。労働大臣は、この問題について、どうこれから対処していかれるかというような決意の一端をもこの際お伺いしたいと思います。
  34. 福永健司

    福永国務大臣 今次、離職者対策を講ずる、なかんずく予算措置をするということと関連いたしまして、今お話しになりましたような点もかなり論議されたのであります。しかし、いずれにいたしましても、現実に火がついており、深刻な問題である炭鉱離職者についてまず施策を強力に推進しなければならぬということで、御承知のようなことに相なったわけでありますが、もともと炭鉱の場合におきましては、今もお話がありましたように、政府施策と関連して、ある程度ああいうような事態になっているというようなことでありまするし、また、わけて地下産業という特別の作業環境にあって働いている人たちであり、従って、こういう人たちが、あと違った職場に行くのにはいろいろな困難も伴うという、こういう特殊事情も考慮いたしまして、ああいう措置をとったのであります。実際問題といたしまして、その際に、炭鉱離職者についてこういうような施策を講ずる場合においては、他のよく似た事情にある人たちをどうするかということについて、もとよりわれわれもある程度の検討をいたしました。その際において、駐留軍関係人たちについての話もまず出て参ったものの一つであります。今度の予算を提出いたしますまでに、そうした駐留軍関係その他やや事情が似通っているような人たちについてのいろいろの措置というところまでは、率直なところ十分にいたすことができなかったのであります。石炭につきまして私ども強力に主張いたしておりましたときに、逆な論法で、石炭についてこういうようなことをすると、あと駐留軍関係の人その他に問題が及ぶから、問題がでかくなるというようなことで、若干ブレーキをかけるような議論があったことも事実です。しかし、労働大臣といたしますと、ほかのことは追ってということにしても、とりあえず石炭に対してはこうということで、率直な話が、措置をいたしたようなわけでございます。こう申し上げることは、石炭だけで、ほかのことは考えていないということでは決してございません。財政当局折衝する場合等において、どういうように持っていくことがどれもこれもうまく措置していくことになろうかという、これも常に必要でございまして、従って御指摘のようなこともあるわけでございますが、私といたしますと、駐留軍関係の離職者等につきましては、これもこれとして、労働省としてはいろいろ配意を行なっていかなければならない、こういうように考えております。その割に措置ができていないじゃないかというところまで参りますと、今率直に申し上げましたような経過でございまして、ぜひ今後一段努力をいたしたい、こういうように考えておる次第であります。
  35. 山花秀雄

    山花分科員 労働大臣の今の説明を承っておりますと、石炭が大きな社会問題になったからその方を先に一応片づけた。しかし、駐留軍関係は別に忘れておるのではない。一段とこれから努力を払いたいということである。ところが、御承知のように、駐留軍関係は前々から問題になっていたことです。駐留軍関係を解決して石炭関係を解決するというのが、これはものの順序になっておるのであります。何か前後違った形になったことは、私もはなはだ遺憾であります。これは両方、一挙に同じように保護施策を講ずべきが普通ではないか、こう考えております。  そこで一つ問題にいたしたいことは、臨時措置法の問題であります。これは御承知通り時限立法になっております。三十八年五月十七日限りということになっておりますが、私どもは、政府が締結いたしました新安保条約に絶対反対しておることは御承知通りであります。しかし、事実問題といたしまして、駐留軍がいる限り、この駐留軍労務者関係はなくならないのであります。従いまして、駐留軍が日本におる限り、この法律を存続せしめるというような意図があるかないか。そういうことを駐留軍労務者の多くが希望しておる。ただ断わっておきたいことは、私どもの党としては、駐留軍は一日も早く帰ってもらいたいということが基本的な態度であることは、この際はっきり声明をいたしまして、この時限立法の延長をお考えになっておるか、この一点を労働大臣からお伺いしたいと思います。
  36. 福永健司

    福永国務大臣 たしか、今おっしゃいましたのは、議員立法によるものであったかと記憶いたしているのであります。当時各党の話し合いによって、御指摘のような時限立法になっているわけでございます。石炭につきましてもある程度そういう性格があるわけでありますが、今から三十八年五月になってどうするということを申し上げるのはまだ早いわけではございますが、漸次その時期に近づきまして、雇用の実態等についての事情が、なおこれを延長することが必要であるというような事情の場合におきましては、議員立法たると政府提案の立法たるとにかかわらず、それぞれ検討をしなければならないわけであります。ただいまのところ直ちにどうとは申しませんが、ぜひ必要な情勢がそのころになおありますということであれば、政府も熱意を持って検討しなければならぬ問題だろう、こういうように存じております。
  37. 山花秀雄

    山花分科員 この労務関係において改定すべき点が非常に多くあるのでありますが、ここで一々その質疑応答を重ねている時間的余裕もございません。それらの問題は、専門委員会の社労委員会を通じて、私なり同僚委員の方から質疑を重ねて参りたいと思うが、ただ一点お尋ねしたいのは、退職金の増額並びに制度改正が強く要請されているのであります。これは御承知のように、現行退職金制度は、二年以上、五年以上、七年以上というようになっているのであります。本年四月二十八日をもちて満十年以上の勤続になる現段階におきましては、これは一年ごと刻みというように一つ改定をしてもらいたいという要求がございますが、これらの点について改正する意図がおありであるかどうか、この一点を承りたいと思います。
  38. 福永健司

    福永国務大臣 今御指摘の点、労働大臣といたしましてももとより深い関心を持っておりますが、御承知のように、一応これは所管が調達庁の関係のことでございますので、御意見をよく拝聴いたしておきまして、打ち合わせもしてみたいと存じます。
  39. 山花秀雄

    山花分科員 たくさん問題をかかえております。それは専門委員会の力に回して質疑を続けていきたいと思います。  もう一点お尋ねしたい点は、これは労働基準の問題でありますが、せんだって予算委員会におきましても、労働大臣労働基準の概略について質問をいたしました。非常に作業が多量で、とても手が回らないというのが私は現状ではないかと思うのであります。また、そういう現状でございますから、基準法違反が各地に起きている。私どもが参って問題にすると、これがすぐ何らかの形で解決をする、こういうことであります。ところが、私どもはそんなに手広く回るわけにも参りません。それから基準監督署の監督作業も、今の人員ではとうていむずかしいと思いますけれども、やはり基準監督署の任務として、これは厳格に一つ守ってもらわないと、労働三法を作った意味が私は薄れると思うのです。ここに一つ目に余る特例だけを申し上げまして、至急に一つ改善をしてもらいたいと思います。これは八王子の基準監督署管内のできごとでありますが、事業主は芝田製作所、芝田英夫という方が社長さんをやって、その所在地は町田市にありますが、ここはあまり工場地帯ではございませんので、二百人前後のこの工場は、当該地区においては大きい工場であります。それが全然監督がされてなかった。就労規則も作ってなかった。せんだって問題になりまして、そういう就労規則も作ってないようなところでありますから、結局は労働組合を作ろうという運動が起きて、労働組合ができ上がりますと、その首謀者とみなされる人が解雇になった。そういうところから端を発してこの問題が出て参ったのでありますが、この労働組合ができたということで、至急に作業規則ですか、就労規則を作って届けたそうであります。その届けた就労規則が、実に法律違反の就労規則が届けられておる。それをそのまま看過していた。そこで本人がけしからぬじゃないかといって、その届けられた就労規則を一つ渡してもらいたいということでかけ合ったところが、基準監督署は頑として応じなかった。これは弁護士が介入いたしまして、弁護士が参ったときにはそれを呈示した。目下これは裁判になっておりますが、どうも人を見て扱うという官僚的気風が濃厚だと思います。こういう問題につきまして、直接の衝に当たられます基準監督局長の、私はきのうこの問題について質問をすると言っておりましたから、多分お調べになったと思いますので、一つ御答弁を願いたいと思います。
  40. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま御指摘の芝田製作所は、労働者を約二百名程度使っております自動車部品製造業でございますが、ただいまの御指摘問題点は、労働者の解雇問題、昨年の暮れに、会社側は、経歴詐称という理由で解雇予告手当を払いまして解雇いたしたそうであります。これに対しまして当該労働者は、不当労働行為による解雇であるといたしまして、現在東京地裁に身分保全の訴訟をして係属中でございます。なお、この事業場に対する基準監督といたしましては、過去十回ばかり監督をいたしております。最近の監督におきましても、相当程度の違反がありましたので、これに対して是正方を勧告し、請書を提出せしめまして是正に努めております。この問題は現在訴訟の係属中であります。また、訴訟の結果を待って善処いたしたいと思います。なお、私どもも経過を注視して参りたいと思っております。  なお、先生一例としてこの問題をお出しになりました。全般の基準行政の運営に非常に御同情のある御激励を賜わったわけで、予算、人員とも決して十分とは申せませんが、私どもとしては、全国で年間大体二十四万の事業所を監督いたしております。ただ御承知通り、中小、ことに零細企業におきましては、基準法違反がなお非常に多いわけであります。今年度予算におきましても、私どもといたしましては、全般的に中小企業、零細企業、この労働条件の向上、たとえば賃金にしても非常に低い、労働時間も長い、あるいは災害率も大企業に比べて倍以上に高い、こういった労働条件の向上、労務管理の近代化というものを全般的に強く推し進めて参りたいと思っております。ただいま御指摘の例の問題はもちろんでございますが、全般の問題にいたしましても、御趣旨の線に沿いまして努力をいたしたいと思っております。
  41. 山花秀雄

    山花分科員 ただいまの説明によりますと、十回ほど査察をして、違反事項があって注意をした、こういうことでありますが、また解雇された者は、閲歴詐称が理由で解雇された。閲歴詐称の点につきましてちょっと誤解があってはいけないと思いますので、この際はっきりしておきたいと思いますが、本人は大学卒業でありまして、雑役夫の募集にあたりまして大学卒業と言えば雇われないというので、小学卒業ということで入りました。ところが、これはしばらくたちまして、去年の四月から、どうも君の様子を見ておると小学卒業とは見られない、インテリ的センスが多分あったと思いますので、そこでもし大学を卒業しているのだったらそれで出したらどうか、職場変更をやろうじゃないか、それは悪うございましたということで、大学卒業であるという履歴書の改訂を四月に出して、それからずっと引き続いてきたのですから、これを閲歴詐称で首にするというのは、ちょっと時期がもう過ぎているのではないか。これは了解済みのことで、たまたま十一月に組合結成が起きまして、本人は衆望をになって組合結成のリーダーになったということで、今度はそういう意味で首を切られたので、不当労働解雇として、ただいま御指摘のように裁判ざたになっております。そこで、この査察をして数々の不備な点があった、こういう話でありますが、たとえばこれは一例でありますが、有給休暇ば、基準法においてはどういうことになっているのでしょうか。一年間通して幾ら出勤したら有給休暇を与えるということは、基準法に明記していると思いますが、ちょっとお聞かせ願いたい。
  42. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま私から過去十回にわたって監督をいたしたと申し上げましたが、その監督をいたしまして、なおかつ最近の監督の状況を見ますと、なお違反が多い。これに対して是正方の勧告をいたしまして、請書を出させて現在の線に努力をいたしておりますが、有給休暇のみならず、そのほかにも違反状況がありますので、この監督については厳重に是正方を措置いたしたいと思っております。  なお、ただいまの基準法の有給休暇の規定につきましては、基準法三十九条によりますと、「使用者は、一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した六労働日の有給休暇を与えなければならない。」こういうことになっております。
  43. 山花秀雄

    山花分科員 これは一例でありますが、今の基準局長の方から、就労規則、特に有給休暇の点についても警告を発した、こう言われておりますから、あえてこれ以上話の展開を私はやりたいと思いませんが、就労規則は、九割以上出勤しなければ有給休暇を与えない。ただいま明細では八割以上ということです。九割以上というと、これだけでもずいぶん基準法違反をやっているわけなんですが、単にこれは一例を指摘しただけなのです。証拠を出せといえば、各労働組合を動員してあさって参りますと、これは各所に幾らでも出てくるのです。たまたま氷山の一角として、話の筋道を立てるために一例をあげたにすぎないのでありますから、こういう点は、基準監督署の任務を十分遂行するために、一つ大いに努力を払っていただく。それで人手が足りないというのだったら、これは私たちも、現在人員では足りないということはよく了承しております。ざっくばらんに言いますならば、労働大臣、何をぼやぼやしているんだ、こう言いたくなるのであります。労働大臣の部下がこんなに苦しんでおるのに、上にあぐらをかいて一体閣議で何をやっているか、こう言いたくなる。一つ労働大臣もこの旨を銘記して、もう少し人員増加の配置の予算要求をやるように努力していただきたい。そして正当なる人員によって任務を円満に遂行するように1労働基準法というのは、これは私が申し上げるまでもなく、労働者一つの保護体系の法形態でありますから、私どもこれは大いに協力していきたい、こう考えておるのであります。  なお、時間の関係もございますので、私の質疑はこれで終わりたいと思います。しかし、同僚議員の方からもいずれ質問があると思いますが、例の、せんだって予算本委員会においても問題になりましたILOの条約の問題であります。何か閣議あるいは政府関係におきましては延期をするような話が伝わって、労働大臣一人が悪戦苦闘をしておるような、そういう新聞報道を児受けるのであります。また、せんだって政務次官を急遽ILO現地に派遣したということを聞いておりますが、この間のいきさつを一通り御説明願いたいと思います。
  44. 福永健司

    福永国務大臣 前段、基準監督行政について御注意をいただいたのでありますが、あとお話がございました通り、悪戦苦闘等もいたしておりませんが、決してあぐらをかいているようなわけには参らないのであります。しかし、御指摘のような点で人手が足りないということにつきましては、私もよく認識しておりまして、今度の予算についてもそうした折衝も行なったのでありますが、新しい分野に人を要するようなことでの人員増加等の交渉それ自体もなかなか難航いたしまして、ある程度のところまでいったわけであります。お話のような点についての人員増加というのは、なかなか達成することができなかったという事情にあることを非常に残念に思っておるのでありますが、労働省全体を見ましても、いずれもよく働いてくれておりますが、その中でも、ある程度の機械化する等の方法による合理化によって、内部でもある程度のやり繰りもつかないとは言い切れないと私は考えております。従って、今御説のように、今後において新定員の獲得、これにも努めますと同時に、部内での合理的な配置転換というようなことをもさらに考え、できるだけ御趣旨に沿うようなことにいたしたいと思います。その点についての御鞭撻に対しまして御礼を申し上げるわけであります。  後段のILO関係につきましては、申すまでもなく、ああいうような何年かにわたった経過にかんがみまして、一日一刻も早く提出いたしたいというのが私の念願であります。終始そうであったわけでありますが、その経過の中で、今度のジュネーブにおける結社の自由委員会、さらにそのあとのILOの理事会、こういうものが開かれるときとの関連においてのタイミングを私はかなり重視いたしまして、できれば今日以前に提出したいということで、政府間においても、また党との折衝も鋭意いたして参ったのであります。今日もそうでなければならぬわけでありますが、従来、提出いたしまして審議未了に終わるというようなこともしばしばございましたので、こういうことをいたずらに繰り返すということでもいけない。何とか出す以上けりをつけるということにならなければいかぬというようなこと等も考慮いたしまして、私は私なりに、出すこと自体は一刻も早くとも考えたのでありますが、関係者がいろいろ協議をいたしまして、総合的にこの際いかに処置すべきかということにおいての結論は、今日までには提出することができ一なかったということになったわけでございます。それじゃ、このことは、今国会は何となく見送るとかなんとか、そういうようなことでは決してないのでございまして、先ほど申し上げますように、提出ということとあとの仕上げということとを関連して考えて、何とかあとの見通し、見きわめも相当程度つけるような措置が必要であるというようなこともあわせ考えまして、今日に至ったわけでございます。  政務次官を向こうへ派遣いたしました点は、これは本来でありますと、もうとっくに提出されていてしかるべきものだというのが常識であろうと思うわけでございます。そこで、そういうような考え方の通りにいっていない実情につきまして、ジュネーブに参りまして関係者に真実を申し上げて、いずれにしても、出てないというような状況でこのままにしておくと、いかにもほおかぶりした感じを与えますので、そこで政府の誠意を説明さすために派遣した。その効果に至っては、どれまでのものが期待できるかというようなことになりますと、私も大した効果が期待できるかどうかわからないのでありますが、それにいたしましても、これは今のような経過のままでそのままにしておくよりは、こうした措置をとる方が幾らかでもましだ、こういうような気持なんであります。これによって、何だか大へん事態がうまく、どうこうなんということは考えるわけではないのであります。むしろ窮余の措置であるというように、これは率直でありますが、私はそういうように考えておるわけであります。それにいたしましても、できるだけの誠意は示さなければならぬ、これが本意であります。
  45. 山花秀雄

    山花分科員 労働大臣のただいまの答弁を終始承っておりますと、私は、労働大臣は早期提出に努力しておるということは、これは認めるにやぶさかではございません。そういう観点から、与党自民党の労働対策委員会ですら、また、閣僚内におきましてもこれに相当反対する勢力もありまして、孤軍奮闘の形じゃないか、こう推察しておるのです。この推察は間違いかどうかわかりません。  そこで問題になりますのは、ちょっと聞き捨てならぬただいまの答弁の一つでありますが、もし審議未了になって、そういう体裁の悪いことと、こういうようなお話がございましたが、早期に提出しておれば審議未了になることは絶対にございません。私は受け合います。野党が受け合えば間違いがございません。だから、そんな審議未了になるような懸念があれば早期提出すればいい、総理大臣の施政方針演説の質疑応答の中にも、これは今国会においては早期に提出して国際信義を増すと、こう言われていたんです。  それから総合的な、全体的なと、何か言葉をあやふやにされておりましたが、どういうところに提出がおくれた原因があったのかという一点。この点は少しはっきりしていただきたい。  それから加藤政務次官を派遣したのは、これはこちらの衷情を訴えるためだと、はたしてこれがいいかどうかという一点でございます。早期に提出しておれば、加藤政務次官を派遣する必要もなかった。言いわけ、弁解のために私は行ったのではないかと思いますが、そういうことが、いわゆる近代的センスを持ったILO関係の国際労働機構内の結社の自由委員会並びに当然行なわれる理事会において、かえって物笑いになるのじゃないか、こうなりますと、与党、野党の区別ではありません。日本国の一つの恥をさらすような結果が生まれてこないか、こう憂慮するので、私たちも心配しておる次第であります。これらの点について、先ほど申し上げましたこのいろいろな総合的判断という、その総合的判断というのは、一体どういう判断で提出の時期がおくれたかという点を、もう少し明快にしていただきたいと思います。
  46. 福永健司

    福永国務大臣 早期に提出していた方がいい、これは私は実はそう考えて、そう主張して参ったのであります。だれがどうということはないのですが、政府及び党で相談いたしまして、早期提出というだけの議論でそう一つにまとまらなかった、いろいろ議論があって、結局まだ提出に至っていないというような意味で総合的とこう申し上げた、言葉がいいか悪いかは別といたしまして、そういう次第でございます。  なお、政務次官を派遣いたしましたことがいいか悪いかということについては、これは見方によっていろいろございましょうが、きわめて私率直に表現いたしますと、先ほどから山花先生おっしゃるように、出ていれば行く必要はもちろんないわけでございます。それがいいと私も考えておったのでありますが、この段階において出ていないという、この現実がある場合において、出てもいない、だまっている、そのままがいいかどうかと、こういうことでございます。そこで、こういう次第でございますというように事実を向こうへ行って関係者に申すことの措置、これは日本人的センスかもしれませんけれども、出しもしない、だまっているということは、なおいけないと私は思いまして、提出に至っていないならいないで、こういうわけでございまして、今後、どういう努力をいたしますというようなことをごあいさつに参った方が、行かないよりは幾らかいいんじゃないか、これは率直な話なんですが、そういうセンスで政務次官を派遣したようなわけでございます。ということは、決してじんぜん時を過ごすというわけではないのでございます。私は一つのタイミングというものがはずれたという感じは、私においても最も深くいたしております次第ではございますが、とは申せ、今後さらに一段努力をしなければならぬ。先ほど早く出しておけば審議未了にならないのだとおっしゃるのでありますが、私も一応そう考えるのであります。しかし、あとの審議が進むか進まないかというようなこと等についても今度の場合はどうこうというよりは、むしろ過去においてああした経過等もございますので、ただ出すからそれだけでいいかということについて、いろいろな意見が関係者においてございます。いろいろ意見があるにしても、出すことは、いずれにしても何よりも先にそのことだけは必要じゃないかという意見、これもあるわけでございます。いろいろ意見があるのだが、今日までに早期に提出するということに至らなかったという点は、そうしたいろいろの考え方がある事態においていまだ提出に至らない、こういう意味において総合的という表現をいたしました。
  47. 山花秀雄

    山花分科員 しどろもどろのような表現を伺う、どうも労働大臣の答弁を聞いているとそういう感じがする。  そこで私は、もう予定の時間も過ぎて、他の質問者に迷惑をかけておると思いますから、一問だけ申し上げまして、あと質問者に席をかわりたいと思います。なお、この問題は重要な問題ですから、同僚委員の方からも重ねていろいろ質問があろうと思いますが、ただ労働大臣にお伺いしたいのは、本国会に労働大臣の責任において出すか出さぬか、これだけは、一つ決意のほどだけを御答弁願って、私の質問を終わりたいと思います。
  48. 福永健司

    福永国務大臣 労働大臣という建前、少なくとも福永労働大臣という立場においては、今までにも出しておきたかったのであります。いわんや今国会中にということでのお話、もとよりお話のようにしなければならぬ、こういうように考えておる次第でございます。私のみならず、単に労働大臣としての立場でなくて、総理大臣等も、早期提出については申し上げておるようなわけでございます。今お話しのようなことに、せひいたしたいと考えております。
  49. 山花秀雄

    山花分科員 一日も早くこの問題解決のために提出されんことを望みまして、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 中村幸八

    中村主査 次は、野原覺君。
  51. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 国連局長にお尋ねをしたいと思います。  今、山花委員からILOの問題で労働大臣質問がなされておったわけでありますが、八十七号条約については、日本政府としてはILOに対して何回約束をしてきたのか、その回数、これは国連局長から御答弁を願います。
  52. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 たしか七回だと思います。
  53. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 七回ではないでしょう。
  54. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 正式に申しますと九回でございます。
  55. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 今御答弁がありましたように、九回約束をしておるのであります。私はILO結社の自由委員会第五十八次報告を手にして見たのでありますが、その二百十九項に、「日本政府が一九五九年二月二十五日以来、九回にわたって批准の意向を表明してきた同条約が、いまだ日本によって批准されない事実に失望を表明する。」これはILOとしては驚くべき報告なんです。九回も約束をしてきたんです。労働大臣も何回か行かれた、政府の歴代の労働大臣が。そうしてみずから約束の演説をぶたれる。私は一回や二回ならともかく、九回なんですね。九回も約束をしてきたことが批准できなくて、そうしてILOとしては異例の警告を発したのです。しかも、この警告を発するいきさつを調べてみますと、昨年の十一月の理事会で、事務局次長がもうがまんがならぬというので政府代表理事を呼んで、今までは勧告で参りましたけれども、ILOとしては遺憾ながら警告の段階に入らざるを得ない、こういうことを通告して、この報告に書かれておるような警告が出されておるわけであります。これは外務大臣もよく御承知通りです。ところが、このような警告、あるいは私どもがILO八十七号条約の批准をやかましく要求することに対して、新聞紙の報ずるところでは、内政干渉だというような非常に非常識きわまる発言を自民党の中でしておる者があるやに聞くのであります。そういうところが労働大臣の足を引っぱっておるのだろうと私は率直に思う。池田内閣のような内閣に福永さんのような賢明な人が入って、自民党を基盤にしておられるということは、私は福永さんのために実に残念にたえない。これはおそらく労働大臣としては一生懸命になっておられる。それからジュネーブに行っておる工藤審議官や、あるいはまた、青木公使などは、恥ずかしくて理事会に出られぬと言っておるじゃありませんか。官仕えでございますからしょうがない。二月の十八日でしたか、工藤さんが羽田を出発された。実にしょう然と、どうしようと言って出発をしたのだ。そこへ今度は追っかけるようにして加藤政務次官を派遣するわけですが、私も加藤さんには出発のときに会いませんでしたが、新聞の報ずるところでは、もうもみ手でいくよりしょうがない、ただ悪うございます――今労働大臣が答弁した通りなんです。もう言いわけをするだけです。せめておみやげでも持っていきましょうというので、真珠を買うていったとかいかないということまで書いておる。私は国連局長に聞きたいのは、あなたは外務省におって国連関係を担当しておるわけだが、一体こういうような外交が、国連の中で日本以外にありますか。九回も約束をして、その約束を実現できなくて、議会閉会中ならいざ知らず、開会中に政務次官をジュネーブに派遣してぺこぺこ頭を下げる。それは誠意を示すという言葉で言えばそれまでですけれども、なかなか外国は、誠意を示すことには受け坂らないと思うのです。何というざまだ、こう私はILO理事会の代表諸君は受け取ると思う。このことを一体国連局長はどう考えるのか、これを承りたいと思うのです。
  56. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 私ども、ILOの八十七号ができるだけ早く批准されることを希望しております。従来ともILOにおきまして、いろいろ非常に長い間問題になっておる問題でございますけれども、従来ともILOにおいて、日本の例ばかりでなく、各国ともこういうふうに長い問解決しない問題があることはございますが、しかし、私どもといたしましては、できるだけ早くこの条約が批准されることを希望している次第でございます。
  57. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 ILOの理事会から失望を表明された国は、日本以外にどこの国があったか発表して下さい。
  58. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 そういうことは、幾つあったかということは私記憶しておりません。
  59. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 あなたは一局長にすぎない官僚でありますから、この重大な政治問題にも発展してきたことであるので、なかなか思うように答弁ができないだろうと思うのです。私は小坂外務大臣の出席を要求いたしましたが、今外務委員会が開かれておるので、残念ながらここにお呼びすることができないのでありますが、大へんな問題ですよ。国連外交中心は、池田内閣の国民に公約をしてきたことなんです。外交方針の第一に、国連外交中心、自由主義国家、アジアの一員、岸さん以来、ばかの一つ覚えみたいにこの三カ条を私どもは聞かされてきた。その第一カ条の国連外交中心がかくのごとし。何ですか、これは。私はこれ以上労働大臣を責めたくない。労働大臣の気持は私も個人的に知っておるし、実につらい立場に立っておる。できるならば総理と外務大臣に来てもらって、この問題を究明したかったのでありますけれども、残念ながらここにお見えにならぬ。八十七号の批准も、それからまた、一九五三年に批准した九十八号条約に違反していることも、理事会においては日本だけが孤立ですよ。日本はILOの常任理事国家です。常任理事国家として青木公使が代表理事で出ていって、そうしてこの八十七号批准の点もたたかれ、九十八号条約違反についても、私はこれからこれは問題にして指摘したいと思いますが、何回となく指摘をされて、理事会の模様を聞きますと、お気の毒なことに、青木さん、もう出るも入るもできぬということじゃないですか。本来ならば、政府代表理事の辞表をたたきつけて日本に帰りたい、こんな恥ずかしいことはないと言っている。それをいまだにこの国会に出さないで、もみ手戦術で加藤政務次官を派遣されるというような政府のやり方というものは、これは全くなっていないと思うのです。  そこで、予算委員会で野党を誹謗した誤れる文書については申し上げましたから、きょうはこれは触れません。(「もう一回言ってくれよ」と呼ぶ者あり)もう一回言ってくれという話もありますが、これはここでは触れないことにいたします。そこで、きょうは条約局長に来てもらいましたが、私は主として九十八号条約の違反の問題で国連局長に来てもらいましたから、国連局長の見解を聞いておきたいと思う。これは重大な問題ですから、国連局長はいいかげんな答弁ではいかぬ。私の発言の速記はジュネーブに行くのです。ILO理事会から、ILOの問題についてのこの速記は要求されておるのです。だから日本の国連局長がどういう答弁をしたかということは、ただちに今開かれておる理事会で問題になるのですから、あなたに一つ慎重に御答弁を願いたい。  一九四九年に九十八号条約が出されております。日本語に訳すと団結権及び団体交渉権条約ということになっておりますが、先ほど申し上げましたように、日本政府は一九五三年に批准をいたしたのであります。ところが、批准をした結果、この九十八号条約の第二条と公労法四条三項、地公労法五条三項は矛盾しているということになってきたわけであります。そこでこのことがILOで問題になりまして、条約勧告適用専門家委員会がこれを審査した。ILOの条約勧告適用専門家委員会というのは独立機関です。各国からすぐれた法律学者を選んで、どこの国にも片寄らない機関として、ILOの条約と勧告がそれぞれの国内でどのように適用されておるかということを専門的に審査をする機関であります。この条約勧告適用専門家委員会が、一九五九年の三月に、日本の公労法四条三項、地公労法五条三項のそれぞれはこの第二条に違反するという結論を専門家委員会が満場一致出したのであります。この結論というものは、実は専門家委員会の意見が理事会に出され、理事会の意見が総会に出されて確認をされるという段取りになっております。そうして専門家委員会は独立機関であるから、有権解釈、一つの判例に異議のある国は、国際司法裁判所に提訴すべし、提訴しない限りこれを承認したとILOは受け取ることになっておるのです。これは一九五九年三月に出した。そこで一九五九年の六月に、第四十三回の総会で、これが専門家委員会から出されて審議された結果、この総会は、専門家委員会の第二条違反という方針をその通りだと採択したのです。それから一九五九年の十一月になりますと、結社の自由委員会が右の所見を確認した。結社の自由委員会は、国連局長御承知通り、理事会の中に設けられておる。そうして今度は結社の自由委員会は、親の組織である理事会に勧告をして、一九六〇年の三月に、百四十四回の理事会は、検討の結果、第二条違反と決定したのです。日本は九十八号条約を一九五三年に批准しておる。日本の国内法は違反している、こう決定したのです。一九六〇年の五月になりますと、再び条約勧告適用専門家委員会か――今度は一九六〇年三月の決定に対して、日本政府から異議が出たのです。この異議は、私が昨年の予算委員会において文書で要求した結果、今ここにも持ってきております。その文書をILOは手に入れた。それからまた、青木公使、政府代表理事から口頭説明による異議の申し立てを聞いて、重ねて審議をしたのです。今度は日本政府の言い分を聞いて審議をいたしました結果、一九六一年、去年の三月に専門家委員会は、日本政府の青い分を十分検討した、それでもやはりだめだ、こんな言い分はなっとらぬ、これは筋が立たぬ、私に出したあの文書ですよ。私も去年の予算委員会では、 これはだめじゃないか、こう言いましたが、私が言うんじゃない。ILOの専門家委員会が、これはだめだと満場一致烙印を押した。そこで去年の五月二十九日から三十日にかけて、結社の自由委員会は、この勧告適用専門家委員会の意見を理事会に勧告したのです。去年の六月、第百四十九回理事会は、この勧告を日本だけの反対で承認をいたしました。これが去年の六月。そこで私どもは、去年の九月開かれた臨時国会においてこれを問題にいたしまして、外務委員会に私と大原君が出ていって、この問題を追及いたしました。当時小坂外務大臣は、見解の相違と突っぱねました。私どもは条約違反でないと思うと突っぱねました。ところが、その突っぱねた答弁記録、福永労働大臣の答弁記録一切を、ILOはどこから入手したのか入手いたしまして、一九六一年の十一月二十三日、ついこの間の理事会は、日本政府は、この九十八号条約に国内法が違反しておることについて筋の通らぬ理屈ばかり述べておるが、これは許すことができない、これはILOの理事会は了解できない、そうして直ちに、すみやかに国内法を改正せよ、条約を批准しておるのだから改正せよ、これを慫慂したのだ。その席に河崎公使は出ております。河崎公使から外務省に、この間のいきさつと、最終の去年の十一月の理事会におけるその九十八条約違反の慫慂についての報告がなされておるはずです。外務省はこれに対してどう対処するのか、御答弁願います。
  60. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 ただいま野原先住御指摘通り、この問題についての日本政府とILOの解釈とが違っております。それで、外務省といたしましては、この問題は、ILOの八十七号条約の批准の際に関係法が改正されますと当然消滅する問題でありますので、それによって解決したいと存じている次第でございます。
  61. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 八十七号の批准で解決をしたいということは、九十八号条約の違反を認めるということが前提になるわけです。いいですか、九十八号条約に違反しておる、だから八十七号の批准で解決をしたい、私はこう受け取らなければならぬと思う。しかも、河崎公使は、この最終の理事会で黙って退出したじゃないですか。一体私が読み上げたこの九十八号条約違反の指摘は何回になりますか。速記を調べてもらったらわかる。それは退出するときには、黙って退出できないであろうから、膨大な資料でございますから日本政府としてはこれを検討した上で回答いたします、このくらいの発言はしたかも一わからない。しかし、まっこうから反駁はできなかった。ILOからの報告によりますと、うなだれて退出しておりますよ。日本の外務省は、そういう恥ずかしい状態に出先外交官を置いておるのだ。私は、事労働行政に関すると、なぜこういう状態に持っていくのかと言うのだ。ではあなたは、九十八号条約違反と認めないのですか。あなたは国連局長として、九十八号条約違反じゃないと突っぱねますか。突っぱるならその論拠を私は聞きたい。
  62. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 先ほど申しましたように、これについては、日本政府とILO当局との解釈が対立しております。私どもといたしましては、日本政府の解釈が正しいと思っておりますが、こういうようにたびたび問題になりましたので、幸い八十七号条約の批准の際に関係の国内法が改正されれば、それでこの問題も自然に解決することになりますので、これが望ましいと存じている次第でございます。
  63. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 局長、日本は理事国なんです。理事会で再三再四満場一致決定されたものを、おれの言い分が正しいと言うなら、その正しいということを国際法的に明らかにしなければ正しいことになりませんよ。正しいのだ、正しいのだと言って、あなたは時をかせごうというわけだ。これはILO憲章違反ですよ。何のために理事国になっておるか、何のためにILOに加入しておるか。それなら脱退しなさい。ILOの満場一致の決定を、しかも私が読み上げたような回数でやっておるものを、何らの反駁もしないで、おれの方が正しいのだ――条約違反を見とめたら大問題になるからという心配があるのだろうと思う。外務省も事実は認めておる。認めておればこそ、国際国法裁判所に提訴しないじゃないか。ILOに加入しておる国が、理事会の決定、総会の決定に対して文句があるならば、これを国際法的に明らかにしなければならぬ。国際司法裁判所に提訴すべきですよ。ところが提訴しない。提訴したって負けるということがわかっている。それで九十八号条約違反でありません――一体どこに、日本の外務省は、ILOに対する道義的責任を感じているのですか。一体どこに、ILOというものを、あなた方尊重しようというのですか。私は、あなたが、日本政府の言い分が正しいのだ、九十八号条約違反ではないのだ、こういうわけですから、速記に残したいと思う。外務大臣でもないのだから、こんなことでいつまでも言葉のやりとりはやめます。国連局長の言ったことを速記に残すから、筋道を立ててどういう根拠か言って下さい。
  64. 高橋覺

    ○高橋(覺)政府委員 先ほどから申しておりますように、この問題について、ILOと日本政府との解釈が対立しておるわけでございます。従いまして、理事会の席上におきまして青木公使は、この問題についての日本政府の態度、考えにつきまして、これが案件になりましたときに留保をいたしております。仰せの、なぜ国際司法裁判所に提訴しないかということでございますが、ILO憲章上、解釈について問題が起こったときに、国際司法裁判所に提訴する規定がございません。先ほどから申し上げておりますように、八十七号条約の批准の際に関係の国内法が改正されれば、この問題も自然に解決することになりますので、さような方法によって参りたい、こう申しておる次第でございます。
  65. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 何も論拠になっていない。わけのわからぬ寝言ですよ。そんなことで、それが九十八号条約違反でないという論拠になりますか。しかもILOは、局長御承知のように拘束力を持たない。それを日本政府はよいことにしておる。拘束力を持たないけれども、ILOに加盟しておる国は、ILO憲章を尊重して、その決定は道義的にこれを果たすということが加盟国の義務ではありませんか。国連局長、そのくらいのことは知っておるでしょう。ところが、その決定を果たさない、道義的責任を果たさない、ILO憲章じゅうりんです。そうしてこれが条約違反だということになると、かつて国鉄との団交を公労法四条三項で拒否し、全逓との団交を拒否した。これは一九五三年に批准をしたわけで、その一年後から条約は効力を発生するわけですから、一九五四年以降においては、日本政府は条約違反の行為を積み重ねてきておる。このことを追及され、糾弾されたらこれは大問題だというので、がんとして条約違反を認めない、ただそれだけなんです。しかし私は、そのことはそのことだと思う。やはり間違いは間違いだ。ほんとうにILOを尊重し、ILO加盟国の一員として国際的義務を果たしていくという誠意があるならば、私は率直に、条約勧告適用専門委員会、理事会、総会が、口をすっぱくして九十八号条約違反を解くよう日本政府に慫慂しておる、これを受けるべきだと思う。それを受けないならば受けないだけの、もっとはっきりした法的根拠を出して争うべきだ。ところが、出先の理事は何も争わぬじゃありませんか。こそこそと退出しておるじゃありませんか。理事会に行ってものを言わぬじゃありませんか。こんな恥をさらしておるのが池田内閣の外交なんです。国威を発揚するとかなんとか口先だけだ。総理大臣がいないから、こんなことをここで言っても始まりませんが、ILO外交というものは全くなっておりません。この点は、私どもは重大に考えておるのであります。だから、この九十八号条約違反の問題、これによって生ずる日本の国辱的、日本の国威失墜の池田内閣の外交に対しては、この国会開会中に、適当な機会を見て私どもはこれを問題にしたい。ここでは相手が国連局長でございますから、もうこれ以上のことは申し上げません。このことだけを私は警告しておきます。  そこで、労働大臣にお尋ねをしたいと思います。今度は方向を変えてお尋ねいたしますが、この予算委員会一般質問で、山花委員から、賃金問題についてるるお尋ねをしておるのであります。私はそれに対する記録もずっと読んでみたのでございますが、今度の総評の五千円以上の賃金アップの要求、それから全労関係労働組合から、大体三千円だったと思いますが、賃金の要求が出されておる。これに対して日経連がこれを反駁しておるのであります。ことしの春闘における賃金論争は、これは日経連と労働組合側の、日本は低賃金であるのかないのかという理論闘争が核になってきておる。これは従来の春闘あるいは秋闘といわれた賃金要求と、ちょっとケースを異にしてきておるわけであります。これに対して山花委員が、総評と日経連の賃金論争について労働大臣はどう考えるかと質問いたしたところ、労働大臣は、私は第三者的な立場でございますから批判はしたくない、ここでは申し上げたくない、こう仰せられておるのでありますが、しかし、私はこれはどうかと思うのです。今、春闘というのが、この三月からストライキを打たれ、四月になると公労協の実力行使があるかもしれないという、労働問題にとっては非常事態に発展してきておるときに、ことさらにこの賃金論争に労働省がはっきりした見解を示さないということは、私どもいかがなものかと思うのであります。労働大臣所見を承っておきたい。
  66. 福永健司

    福永国務大臣 賃金について、総評、全労あるいは日経連等が、現時点においてそれぞれの考え方を表明しておりますが、これらは立場々々によってそれぞれ意見があるので、その意見がいいとか悪いとかいうようなことは、私、立場上直接申したくないのであります。ただいま野原さんの御質問の、日本は低賃金であるかどうかということを中心としてのお話につきましては、これが低いとか高いとかいうのは、どこに比較してということでないと言えないことであります。そういう意味におきまして、日本より高い国も相当あるし、低い国も相当ある、こういうことでございます。たとえばアメリカやドイツなんかに比べれば、確かに低いわけであります。また、同じヨーロッパでも、スペインなんかに比べると商いとかいうことが言えると思うのでありますが、しかし、賃金全体についての私の考え方は、国民経済の中で適当な均衡を保ちつつ、生産性の向上等とも見合って、逐次健全な姿で上がっていくということ、それ自体、私は望ましいと考えておるわけでございます。そういうような意味から申しまして、私どもは、この賃金について、より一そう世界的な傾向等についても正確に把握し、また、そういうことを国内にも正確な資料として提供する等のために、従来よりもさらに一般施策を講じていきたい、そういうふうに考えている次第でございます。
  67. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 労働大臣は、国会で質問をされますと、はっきりした労働大臣としての賃金に対する見解はどういうものかお述べにならない。これはうっかり述べたら大へんだとでも思っていらっしゃると思う。前の労働大臣石田さんが演説をしたら、前田専務理事にかみつかれた。うっかりしたことを言ったら、社会党や労働組合にかみつかれやしないかという御懸念があるのかもわかりませんが、 ところが、労働大臣承知ですか、去年の十一月二十二日付で、労働省は「日本の賃金事情について」というパンフレットを出しておる。労働大臣、国会では御答弁になりませんけれども、ちゃんと意見が出ておるのです。「日本の賃金事情について」。ちょっと初めから簡単ですから読んでみますと、「日本の賃金水準については、戦前から多くの批判があり、最近においても戦前の低い労働基準、労働条件のもとにあった時代の考へ方が根強く残っている。しかし戦後日本の社会、経済情勢は大きく変り、このような基盤はなくなっている。」低賃金、劣悪な労働条件の基盤が今日の日本ではなくなっておると断定をしております。これは去年の十一月二十二日の「日本の賃金事情について」という労働省から出た――私が労働省に、賃金に対する労働省見解を知りたいと思って要求して、手元に入った文書です。この断定は、これはいささか言い過ぎじゃないかと私は思うのです。戦前に「女工哀史」という書物が出た。「蟹工船」という本も出た。ああいった奴隷的な労働条件、奴隷的な労働賃金というものは、これはなくなったかもしれない。「女工哀史」なんというのは、これは奴隷です。こういう奴隷的なものはなくなったかもしれませんけれども、今日、日本が一流の工業国家としての労働条件、労働賃金が一体確保できておるかということになると、これは大問題です。確保できていない。だから私は、こういった基盤がなくなったということは、奴隷状態をさしておるというならば理解できる。しかしながら、これが低賃金の基盤、あるいはお話にならぬ諸外国に比べて労働条件が低い、そういうことをさすというならば、私はこれは了解できないのです。これは日経連の肩持ちのパンフレットです。労働省は、巧妙な日経連のちょうちん持ちをしておるのです。しかも、その先を、あまり長い文章ではありませんから読んでみます。「労働組合の組織率は戦前の最高八%から一九六〇年には三四%とほぼ国際的水準に達し、年々の賃上げに重要な役割を果している。」これはこの通りでしょう。ところが、その先「労働基準法や最低賃金法、各種の社会保険、社会保障等も整備され、社会立法の水準は先進国並みに高まっている。」これはどうですか。労働基準法というのは法律でできておる。しかし、私のあとで同僚議員から、これは基準行政で質問があるようです。おそらくそこで指摘されるでしょう。亀戸の労働基準監督署は、一人の監督官が三千からの事業所を持たされておる。電車やバスに乗っていかなければ監督できない実態、これを去年指摘したら、何かやっと車を一台よこしたらしい。どんな小さな基準監督署に行っても、一人が八百から事業所を持っておる。まあ平均二千です。一人の監督官が二千事業所の監督を持たされておる。こんなことができますか。だから基準法というものを作って、なるほど見かけだけは先進国並みの立法水準に達しておるかもしれないけれども、その中身の実体たるやお話にならぬです。それが今日の日本政府労働基準行政であります。それがその次に「最低賃金法」と書いてある。最低賃金法とは何か。業者間協定、これも山花委員が一般質問指摘したのです。業者間協定、こんなものは最低賃金ではございません。業者間協定は最低賃金ではありません。私はこれは断定しておきます。「各種の社会保険、社会保障等も整備され、」云々。社会保障だって、それでは日本と肩を並べておる工業水準の国家に比較してどうなっておるかというと、これも問題にならぬです。問題にならないものを、一番最後にこう善いてある。「先進国並みに高まっている。」こう断定をして、これを国民にばらまいておる。なぜ労働省はほんとうのことをパンフレットに主日かぬのかということです。私は文章表現としても、これは――なるほど形式的にはそういう法律はできた。最低賃金というものも法律ではうたわれておるけれども、ほんとうのことを国民に知らせてやるべきだ。今一千数百万の労働者が、日本は低賃金だと言って、応じなければ実力行使をやるのだという、この春の事態ですよ。この二月はじっとしておりますけれども、来月の今ごろになったら、もうそれは大へんな事態が目の前にきておるんですよ。なぜ国民にほんとうのことを労働省は知らせぬのですか。ほんとうのことじゃないでしょう、これは。これがほんとうのことであるなら御答弁願いたい。
  68. 福永健司

    福永国務大臣 だいぶ強いお言葉でのお話でございますが、私ども、御鞭撻をいただくという意味においてはまことに感謝にたえないのでありますが、戦前と戦後で違うという表現は、これは私は確かに違っていると思うのでございます。なお、その「先進国並み」云々というところも、「立法の水準は先進国並みに高まっている。」こういう表現になっておるわけで、野原さんも立法は大体そうたがというような御表現がある通り、この文章を静かに読みますと、そんなにうそはついていない、こう思うのでございます。しかし私ども、よりよくするという意味において、ただいまのような御鞭撻をいただき、そういう心がまえで前進をするということについては、何ら異議がございません。そういう心がまえで参りたいと思うのでありますが、野原さんの御表現をもっていたしますと、これらのことが言い過ごしである、こういう表現、それにつけ加えて日経連のちょうちん持ち的な傾向がある、こういうように言われるのでありますが、これはどうも野原さんのむしろ思い過ごしである、こういうふうに私は存ずるわけでございます。決して私どもは、日経連のちょうちん持ちのごときことはいたさないのであります。賃金等につきましては、あくまで公正妥当な考え方を持って前進していきたい。終始これは変わらないのであります。もっとも、こういうようなことは、日経連なんかから見ますと、ときどき、わが労働省、ことに福永労働大臣をやっておりまする現在は、どうも労働者に近づき過ぎている、こういうように言うような傾向もあろうか。まあせんずるところ、労働大臣なんというものは、両方からそういうことを言ってしかられながら、適当なところへ行くというようなことになるのかもしれぬと、このごろはある程度あきらめてはおるのでございますが、しかし、私の本意といたしますところは、決して今野原さんの御表現のようなことではないのであります。どうぞこの十一月二十二日の文書につきましても、御鞭撻はせいぜい願う、私どもそれに感謝するのであり、その御趣旨に沿うように、われわれはわれわれなりに努力をいたす所存でございますが、一面、御理解を持ってこの文章もお読みいただきたいと存ずる次第であります。
  69. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 あなたのそういう答弁が、国民全体に、一人々々になされればいいんですが、残念なことにこの委員会だけなんです。このような、基盤はなくなっていると断定したり、先進国並みに高まっている、こういう表現ですね、こういうパンフレットはちょっと気をつけないといけません。労働大臣実情を認めておるのですから、基準行政が十分じゃないということ、最低賃金もできていないということを認めておるのです。社会保障は自分も知っておる。知っておる労働省が、「先進国並みに高まっている」、その先は何にも書いてない、まるを打っておるんですよ。それから「このような基盤はなくなっている。」これが労働省のパンフレットです。これは日経連と総評が今つばぜり合いをやって、実力行使をやろうと入るときにこれが出ると、これが行司をやるわけです。一般の人は、そうすると何だ、労働組合たたけということになるんですよ、市民感情として。ちょっとこういうところの表現は気をつけてもらいたい。労働大臣の今の御答弁が真意ならば、私は労働大臣の答弁は答弁として承っておきます。こういうパンフレットというものは、軽率に出してもらいたくないです。こういうパンフレットが出る限り、労働行政は日経連の肩持ちだ、私はそう言わざるを得ないのです。  そこで、労働大臣にお聞きいたしますが、最低賃金というのは、今の法律に基づく最低賃金、あれは本物じゃありませんね。本物の最低賃金とは労働省はどう考えておるか。あんなものは本物じゃありませんよ。政府も認めておる。私、ここに政府の認めておる資料を持ってきた。だから、本物の最低賃金とは何でございますか、承りたいのです。
  70. 福永健司

    福永国務大臣 私が申すまでもなく、最低賃金にいろいろな形のものがある、根拠とする条文もそれぞれあるわけでありますが、野原さん御指摘のような、業者間協定のものは最低賃金でないとおっしゃいますが、これも一種の最低賃金だと私は思うわけでございます。これのみが最低賃金であるとは私も考えないのでございます。その他の形もあるわけであり、ことに最近に至りましては、労働協約に基づくものも漸次現われてきておるわけでありまして、労使双方が納得のいくような形において、単に業者協定のものばかりでなく、その他の形のものも現われてくるということは私も望ましい、こういうように考えておる次第でございまして、法の施行以来まだあまり長くもたっておりませんので、私どもといたしましては、できるだけこれが普及をはかりたいという意味におきまして、いろいろな措置を講じておるわけでございます。しかし、現在までのところ、野原さん御指摘の業者間協定によるものが圧倒的に多いというのが現実でございます。このままでよろしいかということになりますと、確かにこれは考えなければならぬところがある、こういうように私は存じております。
  71. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 最低賃金の方式は、労働大臣が申されましたように業者間協定もあれば、あるいは地域別、業種別に最低賃金を規定していく方式もあれば、社会党が主張しております全国一律の金額を規定する、いろいろあろうと思うのです。いろいろあろうと思いますが、今の業者間協定方式というのは、最低賃金の最も程度の低いものですね。これは労働大臣も今お認めになった。行く行くはいい方式に進みたい、こういうことでありますから、それはそれとして私は了解いたします。これは「国民所得倍増計画」、ここに本があるのですが、国民所得倍増計画といえば、これは池田内閣に関係した本です。経済審議会編、これにはっきり書いておるのです。全国一律の最低賃金方式に進めと書いておるのです。これは労働大臣お読みでなかったら、局長よく知っておるでしょう。「以上のように低賃金労働者を解消し、経済の高度化に対応して雇用の近代化を進めていくために、最低賃金制度は、計画期間中には現在の最低賃金決定の主体をなしている業者間協定方式から、全雇用労働者地域別、産業別の集団に分ち、その集団ごとに一律に最低賃金額を国が決定するような方式に移行しなければならない。さらに、将来情勢に応じては全国一律の最低賃金制度を実別していくことが望ましい。」これは国民所得倍増計画です。つまり私どもの主張する全国一律の最低賃金ということを政府自体も認めておる。業者間協定はやむにやまれぬことだ、こう言っておる。しかしこの実態この問題については、予算一般質問山花委員が触れておるから私は申し上げません。同時に、この書物のページをあけてみますと、労働時間短縮について書いております。この労働時間短縮も、どういうようにこの倍増計画で書かれておるかというと、「これら内外の要請と賃金水準の上昇という条件の下で、本計画では、」 倍増計画ですよ、「本計画では、週四十時間制、あるいは週休二日制の実現を目標として努力すべきであろう。」だからして、これには異議がなかろうと思うので、私は労働条件の改善賃金の問題については、やはりその目標に最も勇敢に邁進してもらわなければならぬと思うのです。今の労働行政を見ておると、一体いつまでも業者間協定で持っていこうというふうにしか思われない。それからこの週休二日制にしてもなかなか踏み切りがつかない、こういうことではいかぬです。やはり労働省が先鞭をつけて、業者をもう少し指導しなければいかぬです。労働省は、労働組合が先頭に立って主張する、だから労働組合の通りにはいかないにしても、やはり内外の情勢あるいはいろいろな賃金労働条件、これはよく労働省は御承知でございますから、もう少し私は思い切った指導をやられるように、この問題については要望しておきたいのであります。  第三点は、時間がありませんから簡単に申し上げますが、家内労働者の実態です。どのくらいおりますか、内職者は。
  72. 大島靖

    ○大島政府委員 家内労働者の正確な実態の把握は非常に困難でございますが、先年私どもの方で家内労働の実態調査を行ないました。その結果によりますと、大体家内労働者の総数は約七十万人、家内労働世帯は四十九万、約五十万であります。この七十万の労働者のうち、約八八%が女子になっております。これらが、御承知通り衣服、造花、玩具、各種の業態に分布いたしておるわけであります。昭和三十三年の統計でございます。
  73. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは基準局長正直に申されましたが、ほんとうに実態をつかんでいませんね。これはある書物によると百万、それから実際には二百万といわれておる。サラリーマンの家庭でも、今日では食っていけないから家内労働をやっておる。ところが、この家内労働は、これもいつも申し上げておりますようにピンはねがやられておる。従って、労働基準法もそれから賃金についても全くなっていない。そこで私どもは、家内労働というのが日本の現実社会に出てきておる以上は、この実態を把握して、家内労働を指導するに足る法律を規定しなければならぬのじゃないかということを長い間主張してきたはずです。これは基準局長よく御承知でしょう。長い間私どもは主張してきたのです。その主張してきたことが、この「国民所得倍増計画」の中に出ておりまして、こう書いてある。「賃金、安全、衛生、女子、年少者など各項目において法定基準に達していない労働条件が存在しているので、すみやかにそれらを法定基準に達せしめるため、労働基準監督行政の充実が望まれる。」こういうように考えて参りますと、実態の把握もできていないで野放しになって、そうして中間搾取者から二重にも三重にも手数料をぱくられておる気の毒な人たち、この気の毒な人たちを保護するために、労働省は真剣にもっと考えてもらいたい。そのために検討しておるのかどうか、場合によっては家内労働法というようなものを実施することも私は手だろうと思うのですが、大臣の御所見を承りたい。
  74. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま御指摘の家内労働問題につきましては、野原先生かねがね非常な御研究と、また私たちに対する御鞭撻をいただいておるわけですが、私どももまた、家内労働の問題につきましては、基本的な労働行政の周辺にある労働問題として、非常に大事な問題だと思っております。それと同時に、また非常に困難な問題だと思っております。一昨年の募れからこの方面の学識経験者、これは労使の方々も含めまして、こういう方々に御研究を願い、御審議を願っておりますが、今御指摘になりましたように、私が七十万と申しましたが、この家内労働の範囲自体非常にむずかしいわけであります。大きく分けますと、内職的な家内労働とそれから専業的な家内労働とございまして、専業的な家内労働というものは非常に技術的にも専門化しており、古い伝統もあり、賃金その他につきましてもかなり高いのでありますが、内職につきましてはもう千差万別でございます。しかも、その中に保護を要するものもございますし、保護を要しないものもあると思います。しかし、ほんとうに生活のかてとして内職に従事しておられる方々につきましては、何らかの対策はどうしても必要だろうと思っております。この専門の方々の御審議の結果、まず問題点をあげまして、その問題点について行政的な指導をしてみてはどうかということになりまして、昨年来、たとえば家内労働手帳を持たすという問題、あるいは家内労働の加工賃の協定をさせてみたらどうかという問題、あるいは安全とか衛生問題、こういった問題点につきまして、私どもの方でも全国的に典型的な業種を選びまして指導を実施いたしまして、そこで問題点をさらに深め、またそれら以外のいろいろな問題点を探り出すという形で現在行政指導をやっております。なお、これら専門の方々の御審議が続いておりまして、近日中にもまたお集まりをいただくことになっておりますが、ここで何らかの御審議の結果を私どももいただきまして、さらにこの問題を、野原先生御指摘のように強く進めて参りたいと思っております。
  75. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 次に、私は季節出かせぎ農民の問題について、これは労働省と農林省にお尋ねしたいのであります。農林省から昭和三十五年度の「農林漁家就業動向調査報告」というのが出ております。図書館から取り寄せてこれを拝見してみますと、農村から生活が苦しいので出かせぎにいく労働者が十七万四千七百人、農林省の統計にこう出ておるのです。農村から出かせぎに行く季節出かせぎ、静岡県の茶畑に出かせぎに行く、あるいは北海道のニシンとりに出かせぎに行く、これは主として北信越から東北、北海道に多いのであります。いわゆる単作地帯、つまり貧困な農家に多いのであります。これが十七万四千七百人、こうなっておるのですが、はたして職安を通っておるのかどうか、職安を通っていないとすれば農業協同組合を通っておるのかどうか、そういう公的機関あるいは準公的機関を通っておるならば、賃金その他でも問題はない。この点どうなっておりますか、職安局長にお尋ねいたします。
  76. 三治重信

    三治政府委員 三十五年度地域間の労務需給状況を調査した結果がございますが、私どもの職安を通じての調査の結果によりますと、三十五年で総人員十七万七千人、男子が約十二万二千人、女子が五万五千人強というふうになっております。最近では男子が労務需給でどんどん増加しまして、女子は停滞ないし減少をしている。それからさらに自県内、自分の県の中での季節的な移動の就職者を見てみますと、白県内の就職者が五万一千、他の県から来たのが十二万六千というふうになっております。
  77. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 農政誤長にお聞きしたいのですが、労働省調査労働省の下部機関を通じて調べるのですから、みんな職安ということになっておる。これではその他の、以外の者はつかめぬだろうと思う。私は職安以外もあると思うのです。農政課長いかがですか、実態は。
  78. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 農林省で調べましたのは、農林漁家就業動向調査調査をしておるわけでありますが、大体出かせぎに行きます場合のやり方につきましては、労働省の力でお世話になってやっておるというふうに考えておるわけであります。
  79. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 この点は、農協や職安を通らない者があるに違いない。私はこの実態把握の十七万というのは十分じゃないと思うのです。これはどうして調べたのか、私も時間がありませんから十分お聞きするわけにはいきませんが、実際はもっとあるのじゃないか。しかも、公的機関を通じていないのじゃないかという懸念がありますから、この点については、労働省、農林省ともに一つ十分御調査をお願いしたいと思います。  そこで、こういう出かせぎ者の就業先を産業別に見てみますと、建設業――土建です、それから食品製造業、漁業、農業、林業、卸小売業の順になっておる、農林省の統計を見ますと。中小の、零細企業ないしは不安定就業というのが大部分なんです。こういう点で、私は賃金水準の状態がどうなっておるかを心配するのです。いなかを捨てて村を移すのじゃない、一カ月ないし六カ月季節的に出かせぎに行く者の賃金水準は一体どういうことになっておるか、これは一つ労働省から御答弁願いたい。
  80. 三治重信

    三治政府委員 失業保険の被保険者の状態から考えてみますと、農林水産業におきましては一月当たり一万一千五百円、建設業で一万六千円というふうになっております。
  81. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 非常に低いですね。これはお話にならない。こういう面の指導も労働行政の中で考えてもらわねばならぬし、健康保険や労災保険の適用はどの程度に行なわれておりますか。職安を通じて行った者全部、これは健康保険や労災保険を適用することになっておるかどうか、失業保険についてもあわせてお尋ねをしたいと思うのであります。
  82. 大島靖

    ○大島政府委員 労災保険の適用については、出かせぎといなとにかかわらず事業所で把握いたしますから、事業所において漏れがなければ、これは適用になっておると思います。
  83. 三治重信

    三治政府委員 失業保険におきましては、大体十四万ということになっております。  それから、先ほど賃金が非常に低いようにお話しになりましたが、確かにそういう点もありますが、こういう方たちは、大体季節的に一人で移動されるわけですから、ほとんど給食や宿舎関係が全部無料提供というような格好で出てきておりますので、一般の都市の労働者賃金なんかと比べると、実質的には――その点の比較も実態調査もやっておりませんから、なかなか困難でございますが、実際問題といたしましては、宿舎、食事というものはほとんど使用者側の方で給与されている。それが現物給与で保険の関係には十分出ていない、こういうふうに考えております。
  84. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は、どうも労働省あるいは農林省の把握している数字が十分でないことが一点と、それから雇用契約が、私ども仄聞するところによると、年期奉公がかなりある、それから賃金も前借りをする、食っていけないから前借りしておって、そしてあとで労務を提供するという賃金の前借、それから向こうに行ってからの労働条件、たとえば漁業に雇われ、土建屋に雇われ、あるいは静岡の茶の採取、あるいはミカンとり、こういったようなところに雇われた者の住宅とか、いろいろな労働条件の問題等、非常に問題が多いと私どもは思うのです。これは私は、今日の労働行政の盲点になっていやしないかと思うのです。だから、この点については労働省に要望いたしておきますから、一つ的確な実態把握と遺憾のない対策を立てていただきたい。私は適当な機会があれば、半年か一年たったあとにこの問題はお尋ねしますから、十分な指導のできる態勢、実態把握をしっかりやって下さるようにお願いしたい。  それから農政課長にお尋ねしておきますが、こういう出かせぎ者の地帯は、先ほど申しましたように北陸、北海道、東北――秋田、山形、新潟、岩手、青森、こういうところに多い。つまり非常に低い生産地帯ですね。いわゆる単作寒冷地帯です。二毛作ができない、だから一毛作で次の裏作のときには仕事にでも行かないと、とても生活ができないという気の毒な農家なのであります。しかも、その年令等についても、きょうは質問いたしませんでしたが、労働省で御調査願いたいが、年令は相当商年令の者が多いらしい。家族を置いて自分だけ六カ月北海道に行く。家族の生活、子供の教育という問題も、現実に東北の各県では起こっておる。それから家族と二重生活はできないから、家族を連れて行きますと向こうにおける住宅問題もあり、向こうの仕事が終わる、ニシンとりなどが終わるとまた国に帰ってくるというようなものが十何万人もあるというのですが、この点に対する施策は十分なされていない。そこで農林省は、こういう単作寒冷地帯の人たちが多いわけでございますから、こういう単作寒冷地帯に対しては、施策として格段の農業振興をはからなければならぬかと思うのですが、どういう具体策を持っていますか。
  85. 岡田覚夫

    ○岡田説明員 現在出かせぎに出て参りますのは、大体農業の作業が終わりまして出て行きまして、それからまた農作業の忙しいときには帰ってくるという形が比較的多いと思うのであります。それにいたしましても、非常に生産力が低いということから、そういうことが出てきておるわけであります。従いまして、農業の生産力を上げることがまず第一の問題になるわけであります。それから第二には、過小就業にあります場合には、就業の機会の増大をするということが第二の方法になると思うのであります。そういうことで現在施策をいたしておるわけであります。
  86. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 どうも機械的な御答弁で、ほんとうに私は、真剣にこういう単作寒冷地帯に対する施策が行なわれておるとは思われない。毎年ふえてきておる。委員会で尋ねますと、農林省はいつもそんなことを言っておる。実際は何もやってない。これは遺憾に思う。これが一点です。私は出かせぎ労働者であなたに特に来ていただいたのは、この点についての施策をもっと十分やってもらいたいからです。私は適当な機会に農林委員会に行きまして、なされておるかどうか尋ねます。統計からいってなされていないのです。毎年々々出かせぎ労働者はふえて、家族を連れてジプシーのごとく今日さまよっておる。夏は北海道に来る、秋になれば和歌山県に行く、こういうような人の多い地帯に対する施策はないのです。  それから、先ほど申し上げましたように、近代的雇用問題、労働条件改善の問題、賃金の問題、これは労働行政の面で、十分に実態把握の上に具体的な対策を立てて下さるように要望をいたしたいと思うのであります。  以上で終わります。
  87. 中村幸八

    中村主査 次は、井堀繁男君。
  88. 井堀繁男

    ○井堀分科員 労働行政は、今、池田内閣の諸政策の中ではきわめて重要な地位に立たされておるものと思いますが、ことに労働省予算を拝見いたしますと、どうも政府の施政方針演説の中で述べられたものと労働省予算内容とは、何らの脈絡がない。従来の方針にならって、わずかの手入れをいたしたものと断ぜざるを得ないのでありますが、こういうことでは、池田内閣の主張する経済政策というものはますます国民に被害を浴びせる結果になると思いまするので、ぜひ私は、労働省予算だけでも政府の施政方針に述べられておりまするものと一致せしめるようにしなければならぬと思うのでありまして、最も多くの修正を要求する予算一つであります。時間の都合で多くを述べることはできませんけれども、ことに総理大臣の施政方針の中で強い関心をわが党が寄せましたのは、豊かな経済を基礎にして、高い精神と美しい感情、そうしてその次に、すぐれた能力をもってこれを推進するという表現の仕方は、言葉の内容をひっくり返してみますと、結局は日本の労働の生産性に対するきわめて婉曲な言い回し方ではあると思うのでありますが、そこを指摘しておるものと理解いたしておるのであります。ことにわが国経済が貿易自由化、もしくは為替の自由化などによる国際競争の激しいただ中に前進しなければならないという前提などから判断をいたしまして、今日ほど労働政策というものが具体的に、かつ積極的に予算の上に反映せられてこなければならないときはないと思うのでありますが、こういう点で私は労働省予算を見て、羊頭を掲げて狗肉を売る池田内閣の正体を暴露したものであるといわなければならぬと思います。ただ単に池田内閣のそのような欺瞞的な政策に憤りを感ずるだけでは足りないのであります。問題は、ただ単に池田内閣の経済政策がやがて破綻するであろうというだけではなく、それによってこうむる被害は、日本の労働者にとっては耐えがたいほど大きな痛手になると思うからであります。今日にしてその処置を緊急に改めなければいけないのではないかと思うのでありまして、今日の池田内閣の性格、自民党の政策の基本をなします点から判断をいたしまして、極端な変化を望むことはもちろんわれわれはいたしません。今日の政党の性格なり、内閣の基本的な考え方の上に立って、労働省予算の組みかえをぜひ要求いたしたいと思うのであります。しかし当面の予算の内容と、それからその運営によって、かなり改められる部分もあると思うのでありまして、この後者、すなわち従来の労働行政の中で、行政的な工夫や努力によって、相当の改善も行なえると判断できるものもないではありませんが、まずそういう点を一、二お伺いをし、そうしてわが党が組みかえを意図いたしております点を少し述べて、労働省当局の見解をただしてみたいと思うのであります。  一つは、労働省予算を見ますと、全体の上からいいまして、一つ大きな欠陥を指摘いたしたいと思うのは、従来もそうでありますが、労働行政の一番大切なことは、日本の雇用の実態を正確に把握するということでなければならぬと思うのであります。ところが、従来保守党内閣の一貫したものでありますが、場当たりというか、あるいは暗中模索というか、根本的なものをつかんでいないので、正確な政策も出てこぬと思うのです。それは労働関係の統計だと思うのであります。ことし統計関係予算を拝見いたしましたが、一向に斬新なものが出ておりません。私は毎回予算委員会でも質問の中でただしてきておるのでありますが、特に日本の雇用労働者というものが完全なといいますか、明確に把握できる雇用関係に置かれておる労働者だけをつかんで、それに多少の何か申しわけになるようなものを継ぎ足して、雇用対策の基本的なデータに使っておる。こんな乱暴な労働政策はないと思う。たとえば総理府の統計局の資料をわずかに修正をしたり、あるいは補足する。その補足もきわめて危険な補足の仕方をしておるのであります。  端的に質問いたしますと、今日の日本の有業人口、あるいは有業人口の中で不完全就労などという言葉を使っておるのでありますが、こんなでたらめな表現の仕方はないと思うのであります。すなわち国際的統計の上でいいます十四才以上の生産年令、そしてその中から労働人口を引き出して、ばく然とそれを労働人口だといっている。その中から完全失業者を問題にしておるわけでありますが、こういったような統計でもし日本の労働政策などを考えますと、これはいい結論が出てこないのは当然だと思います。まずこの点についてお伺いをしたいと思いますが、一体今雇用対策の対象に上される人口は、労働省はどういうデータでおつかみになっておられるか。またそういう基本的な政策の一番先に問題になりまする点について、ことしの予算の中では、特別の調査もおやりになろうとしておらないようです。そういうものを把握されるのには、どういうふうに統計行政をおやりになっておるか、この点を伺っておきたい。
  89. 大宮五郎

    ○大宮説明員 日本の人口、それからその中の特定の年令層がどのくらいおって、どう推移しておるか。さらにそういう人口層の中から、全体としてどのくらい労働する意思と能力のある者が出てきて、実際にまたその中でどのくらいの者がどういう仕事についておるか、こういう全体として最も正確な数字としては、五年ごとに行なわれます国勢調査がございますが、それではとても年々の労働力を追っていくには足りませんので、毎月サンプル調査によりまして労働調査というのをやることになっております。政府の所得倍増計画その他従来行なわれました各種の長期経済計画等におきましては、全体としての数字を問題にするときにはそのような数字を使うようにしております。しかしそれでは今のこまかな労働力の状態ないしは雇用の状態がわかりませんので、さらにその中から事業所に対する調査をして、毎月勤労統計等より産業別、規模別あるいは老幼男女別等の雇用の状態を把握するようにしております。それからそういう事業所に出入りする労働の状態も必要でございますので、労働力の移動調査によりまして、どういうところから事業所に労働者が入っていき、出ていった労働者はどういう方面にいっているかというような調査もしております。それからさらに、そういう事業所で雇われておる労働者が、年令別とか勤続年数別その他にこまかく分けた場合に、どういうふうに変わってきておるかというものも、年一同質金とあわせて調査しております。それからさらに職業安定局では業務統計といたしまして、公共職業安定所の窓口を通じての職種の状況の把握、さらには失業保険の業務資料によりまして、被保険者並びに失業保険の受給者、あるいは離職票を受け付けた者の状態などを調べております。それから日本の失業問題は、先生の御指摘のように非常にむずかしい内容を持っておりますので、これは労働調査でただ失業者を出すというばかりでなくて、特別の調査によりまして、単に失業者と言ってもいろいろな状態の者があるというのを捕捉できるように調べる調査もやっております。そういうものを全部総合いたしまして、雇用の各種の対策の参考にするようにしておるわけであります。
  90. 井堀繁男

    ○井堀分科員 端的にお尋ねいたしましょう。あなたのところのデータの基本をなしているものは、国勢調査並びに三年に一回ずつ行なわれまする雇用構造基本調査に基づいて行なわれておりますが、そこでこの調査が問題になるわけでありますけれども、一応生産年令に達した人口がどのくらいあるか、完全失業はどのくらいあるか、それから先が問題なのです。それをあなた方の予算を見ますると、大へんいろいろと違っておいでになる。けれども極端なことを言うと死に金になっておる。統計というものは、国会審議の場合に例をとってみますと、それは与野党それぞれ基本的な政策の立て方が相違しておりますから、いろいろな変わった答えが出てくることは当然だと思うのでありますが、データだけは、数字だけは、どちらから見ても同じでなければならぬと思う。つまり日本の政府の使っております資料、特に一番大事な経済政策の基礎をなす数字というものが実にでたらめなのです。ことに私は予算を国会に提出する前に出されておった数字の中で、経済はなかなか正確に捕捉することはできぬものでありますから、見方によって多少変わっていいと思うのであります。しかしその一番大切な生産の基礎をなす労働力というものの実態が正確に把握されていないところに、正確な見通しが生まれるはずはないのであります。ここら辺に問題があるのであります。ことに私やかましく言わなければなりませんのは、当然労働能力、すなわち労働の意思もあるし、あるいは働くだけの肉体的な条件も備えておる人たちがどういう状態に今あるか、それをどう組み立てていくべきかということが、これは保守、革新を問わず、正確な実態把握が前提にならなければいかぬと思うのであります。近代国家でこんなばかげたデータを使っている国はありません。従いまして労使関係の場合におきましても、よき労使慣行を作るなんと言っておりますけれども、そういうデータがあいまいなものですから、腰だめで話をしたり、あるいは思惑で議論をするというような事情が多いわけであります。このことは私は各般に大きな影響を与えるものと思いますので、少なくとも労働省の統計予算だけは生きた金にしてもらいたい、そういう意味で端的にお尋ねいたしますとすぐわかりますように、一体今労働力として期待し得る人口がどれだけあるかと聞かれたときに、労働省はすぐデータを出さなければならぬ、これはお答えできますかどうか、ためしに聞いてみたいと思います。
  91. 大宮五郎

    ○大宮説明員 一応労働調査によりまして新しい数字は判断することにしております。もちろん労働調査も先生御指摘のように、まだまだ制度等につきましては十分でない点もございますが、これは統計局でやっておる調査ではありますけれども、私どもも一緒になって、もっと正確なものを作って参りたいとかねがね思っておる次第でございます。これは三十七年度予算といたしまして、労働調査の拡充が事務的には認められたようでございまして、われわれはせっかく拡充されましたその労働調査を、できるだけ皆さんの御期待に沿うように内容を充実させて参りたいと思っておるのであります。一応先生の御指摘になりましたものを事務的にお答えするといたしますと、満十五才以上の人口は、昨年、三十六年の平均で六千六百十五万人、労働力人口が四千五百五十万人でございます。
  92. 井堀繁男

    ○井堀分科員 労働力人口という言葉を使いましたが、名称はそれでいいでしょうけれども、労働力人口というからには、それが直ちに文字通り経済の中の労働力として把握できるかどうか、できはしないでしょう。その中からあれを引きこれを引くということになってきて、そうしてすぐ雇用の対象としてどれだけの人口がつかめるということでなければ答弁になりませんよ。事務当局にこういうことを伺うことは適当でないと思うのでありますが、これは労働大臣に聞いても同じことを言うだろうと思うのであります。問題は、労働省の一番大切なのは、要するに日本の労働実態というものを正確に把握するところから始めなければいけないのではないか。そんな労働省なんて私はナンセンスだと思う。なぜ一体労働省は、こういう池田内閣の経済政策が、しかも労働者の生産性の問題を強くこの際言っておるのであります。大蔵大臣も予算編成の中で言っている。これはここをつついたら総くずれである。これだけの予算でそういうことができるとは私思いません。だものだから何とか格好をつけようというようなことで、一々こう暴露してしまうとわかりますように、むしろ私どもを誤らせると思うのです。あなたの方で出しておりまするこの統計が、さっきのようにとかく物を言うておる。労働力臨時調査、もしこれを私どもがこの結論だけをそのままこのように使ったら大けがをします。むしろ私は有害な役割しかしていないと思う。そのためにはもっと必要なところには私はうんと予算をつぎ込むべきであると思う。生かして金を使ってもらわなければ国民はやり切れません。そういう意味労働省予算編成の中で一番欠けておりますのは――それてなければ統計は内閣統計局に集約してみなやってもらう。しかし私は労働統計というものは独立してあるべきだと思いますし、もっとよくすべきものだと考えまするから、こういう質問を試みたわけであります。  しかしこれは労働大臣考えないと、労働省のあり方が問題になってくると思うのであります。労働省は、先ほど来の質疑応答の中であなたは苦しい答弁をされておりましたが、何も苦しむことはありはしません。労働者のありのままの姿を正直に堂々と述べれば、私は今日本の経営者陣営と労働組合との不必要な摩擦を解消することに役立つ部分がたくさんあると思う。ためしに賃金の問題を申し上げてもわかるように、労働賃金が一体どの程度が目安になるかということは、労働省が示さなければならぬ立場だと思うのであります。さっきのようによう言えぬでしょう。抽象的にはあると思う。それは国際的な一つの基準もあります。マ・バ方式もある、あるいは最近厚生省などで使っておりますけれども、ああいうものをばらばらに使うのは私はどうかと思う。一応賃金というものは労働省としては、実態生計費あるいは理論生計費というものはこういうデータに基づいて、そしてこういうふうに修正されて、そしてこういう数字が出てきますということは絶えず明らかにし、それを労使にあるいは政府予算編成の場合に提供すべき立場にあると思う。どんなに要求をしても一つも出てきませんよ。こういう意味で今日の労働省としては、今度の予算編成について一向斬新味が出ていない。こういう点を私は強く不満を訴えたい。時間がありませんから多く言及することはできません。たとえばもう問題になりましょう農業基本法が出てきておりますし、中小企業基本法が出てこようとしておりますが、たとえば農業基本法が出たため、農林省の最近の農業労働力の調査や研究がなされております資料をちょうだいいたしております。非常にすぐれたものが出ております。残念なことには部分的です。たとえば農村人口を、本気に言ったのかどうか知りませんけれども、三分の一くらいに、そして農村の近代化をはかることによって豊かにしようという考え方は、私はうなずけるものがある。しかしそういう政策を政府がかりそめにも口にするときには、その三分の二の労働力人口はどこへ行くか、あるいは農林省の所管だからわからないというようなことは私は許されぬと思う。直接的にはその農村から放出される労働力というものは一体第一種か、第二種か、第三種か、どこへどう吸収されるかということが私は問題になってくるわけです。私がこういう点の質問をしたら、労働省は資料の提供ができまいと思う。中小企業と一口に言っておりますけれども、この就業構造基本調査の中で見ますると、自営業者、一人親方あるいは家内労働、さっきも質問がありましたが、およそいいかげんな答弁をしておって、私はふき出して聞いておった。でたらめなんだ、つかみなんだ、だろうと思うなんて言っている。少なくとも労働力人口というものがこういう条件でこういう数字になるからして、現在はこういう政策のために、こういう経済の動きのためにこうなっておるということを、われわれは判断しなければならぬのであります。そういう基礎になるべき数字がないのです。労働省の統計局の責任者が一体労働力人口はどうなっているか、国勢調査で調べて、十四才以上の人口から完全失業者を引いたものが労働力人口だ、そんなべらぼうな答弁をして許されるものではありません。これは極端なことを言いますと、お恥ずかしい話だと思う。私はもっと、少なくとも就業構造基本調査の中から摘出するとしても、これとこれとこれは将来労働力人口になって、すなわち政府の経済政策との間にこういう成長なり、こういう変化が起こってくるということの資料を出すべきだ、私は労働省のあり方はよほど積極的に改めてもらわなければいけないと思うのでありまして、ここで言うのは適当ではなくて、むしろ総括質問なり一般質問の中で政府の態度をただすべきことであったかと思ったのでありますが、そういう機会が得られなかったので、国務大臣である労働大臣から一つ大いに閣議でこういう点を強調されまして、できるならば一つ予算組みかえくらいを大胆に主張されたらどうかと思うのであります。まあしかしこれは希望だけにとどめておきますが、ぜひ一つ統計の問題は労働省としても最も重要なことだと思いまするので、希望を申し上げておきたいと思います。  次に問題になりまするのは、労働行政というものは、私は二つの役割があると思う。一つは、今言うどんなに政府の政策が変わっても動かない事実というものを正確に統計でつかむことは、以上申し上げた通りであります。一つは、政府の政策が、特に経済政策が今日のように大きく変化をしてくる場合における労働行政というものは、それになじんだものが出てこなければならぬと思うのであります。ことに資本主義経済をとりまする池田内閣におきましては、古い政策ではありますけれども、社会政策というものがついて回らなければ、それは近代的な保守政党の政策でないことは、もう議論の余地がないのです。ところがそういう点を労働省予算の中から引っぱり出そうとしても、出てこない。極端なことを言いますと、今のような労働省のやり方なら、政府の経済政策がどんなに変わっても、大した変わりばえのしない予算を組むだろうと思う。  一例をお尋ねすればすぐわかるわけでありますが、これはいいかげんなことを言ったのだろうと思って、私どもは割引して見ておるのでありますけれども、総理大臣の――これは国会でやったのだからなにでありますけれども、非常に大事なことを言っておるのでありますが、大体が作文でしょうから、そう思うて見るより仕方がない。一応問題になりますのは、そういう言葉の一つ一つは別として、基本的に流れておりまするのは、私どもは保守党の政治、政策が、できるだけ新しい時代に沿うようになってもらわなければ、国民はたまりません。そういう意味で、そういうものを期待して、たとえば国民生活安定向上のために、日本の政治のあり方というものを福祉国家、福祉社会へ推進していこうということは、保守党の政策の中から生まれてくると思いますし、われわれの一応くぐってくる段階でもあると思うのであります。ここは政治的には共通の広場になると思うのであります。そういうものをこの国会でもわれわれは見つけて努力をしていきたいという立場で、実はお尋ねをするのであります。  そこで大蔵大臣の予算編成方針の中でも、国民生活の安定向上を実はかなり繰り返し述べておるのであります。その中で一番問題になりますのは、私は労働者賃金及び労働条件の問題は非常に大きなファクターになってくると思う。ところがこれもデータがないものですから、水かけ論をやるようなことになると思うから……。ためしに聞いてみましょう。さっきも聞いておりましたが、一体国民生活の基準は国民所得の中で何を求めるかというと、私は労働賃金だと思う。今日の労働債金というのは、日本の法律から言いますと、雇用関係の中に置かれておる賃金、報酬を言うのでありますから、かなり広い。一番わかりやすいのは、公務員あるいは公共企業体の労働者賃金幾らに見るか。福永さんは給与担当の大臣でもありますから、この点は私は非常に重要だと思う。先遣国ではどこでも労働儀金の目安といったら、すっと出してくれます。大体五つか六つに分けてちゃんと用意してあります。すなわちホワイト・カラーと重労働、軽労働労働の質からいって計算をしてくる。すなわち労働の再生産というようなものをちゃんと持ってくる。ありますか。聞いてみましょうか。一体日本のホワイト・カラーば賃金のよりどころはどこでしょうかと聞いたときに、労働省、すっと出してもらえますか。これはどこの統計にももちろん出てない。
  93. 大島靖

    ○大島政府委員 賃金のよりどころをどこに求めるかということは、非常にむずかしい問題でございますが、私どもの方の賃金統計におきましては、全労働者平均賃金あるいは産業別の平均賃金、さらにその中における今御指摘の職種別の賃金あるいは年令別の賃金、こういったものは毎勤統計なりあるいは職種別賃金で出ておりますことは、先生御承知通りであります。ただどこにその標準的な賃金を求めるべきかということになりますと、なかなか簡単にはお答えいたしがたい問題であります。
  94. 井堀繁男

    ○井堀分科員 私はそういうことではいけないのではないかと思う。これはどこでもあることですからね。  それからもう一つは、私は調査の中で大半なものが漏れていると思うのです。なるほどこの賃金が妥当だということをきめるのは、それは皆さんの責任じゃない。われわれ国会がきめたり、あるいは政府がきめて提案すればいいものです。しかしその根拠になる数字というものは、あなた方が出さなければならない。たとえば労働の再生産でもいいと思う。実態生計費なり理論生計費なりというものが国際的には基準があるのですから。それからILOの条約や勧告の中でもちゃんと示している。ILOの問題をやかましく言っておりますけれども、私どもが言うのは、何も条約を形の上でどうこうというのではなくて、国際社会に日本がりっぱなつき合いのできるようにするということになれば、そういうものをそろえていくことだと思う。今度ILOの理事会では、実質賃金調査を行なおうという提案がなされたようであります。私は非常に喜ぶべきことだろうと思います。そういう場合に日本はすぐ困るでしょう。もちろんパン食を中心にするものとジャガイモや米を中心にする主食のとり方とか、あるいは生活様式、いろいろ違うと思いますけれども、たとえば国際金属労働者同盟が四、五年前から何回も調査をいたして、相当のものを持っておるようであります。ああいう出し方ならできると思う。すなわち生活必需物資をずっと羅列して、そしてそれを得るために一体どれだけの労働時間が必要かという出し方をしておる。すなわちこれだけのカロリーを摂取するためには、パン食はどのくらい、米ではどのくらい、バターやチーズではどのくらい、あるいはお砂糖はどうなるとか、調味料はどうだということを詳しく出しておる。洋服の場合でも作業服あるいはせびろ、住宅の場合でもこれだけの部屋でこれだけの条件を持っておるものは、こうある、それを得るためにはどれだけの労働時間が必要かという時間で割り出している。そしてあとは貨幣で採算していくのでありますから、やや正確なデータが出てくる。私はこのIMFの資料というものは貴重だと思うのです。日本は参加していないものです。そういうものが今国際的に問題になってきているわけです。  ところが日本だけですよ。国内で一体重労働に従事する人の労働賃金がどのくらいか、聞きようがない。だからかけ引きをして、上手に言うよりしょうがないというようなことの団体交渉をやるものでありますから、しかも政府の雇用している三公社五現業なんかの賃金のきめ方なんか、あなたが今言うように民間給与に均衡させるような公務員、その公労員とあまり開きのないように、一体何がよりどころか、この賃金調査を見てみますと、われわれぞっとする。まるでけんかをけしかける材料として出しているようなものだ。私は存外問題は単純なところにあるのではないかと思う。やろうとすればできると思うのです。だからせっかくこれだけの調査をおやりになるのでありますから、実態調査は私はもう少し拡大してならやれると思う。実際要するに筋肉労働者の場合五クラスくらいに分けて、実態生計費の調査をしようと思えばできると思う。ただ困難なのは、中小企業、零細企業、家内労働に入ってきたときに問題がある。あるいは農村が問題になってくるわけであります。それにしても近代工業として、国際的な一つの格づけのある産業があるわけです。ただ貿易上必要とする目安とするだけではなくて、私は労働条件の上にも目安が必要だと思う。そういうものができてきますと、問題の解決は存外いい方向へ向くのではないか。だから私は保守、革新とかいうような立場上の問題以前の問題が、労働省の中には全く欠けておると思う。そしてその上に立てられてくるから、それはでたらめだと言われても、われわれは労働関係について議論をする勇気がない。もう少し労働省はそういう意味でお役に立つように一つお願いしたい。それは結局予算の組み方にあったのではないかと思いましたので、こういう質問を実はしたわけであります。  これはぜひ、労働大臣は閣僚として、池田内閣でもっと責任ある政治を推進するために、労働省のあり方を一つはっきりしていただきたい。それはむずかしいことではありません。現行予算をもう少し生かして使うということになると、幾らでも金が出てくると思う。見方によってはその半分使ったって惜しくはないかもしれない。それは再生産に振りかわってくる。日本の経済を拡大していくための基本的なものであります。これはいずれの国もそれをやっている。そういう意味で、労働省は、この際予算編成の時期にあたって、もっと本格的な、要するに労働省設置法に書いてあるようなものにしてもらいたいと思うのであります。いろいろお尋ねをしなければならぬのでありますが、そういう基本的なものについて労働省の持っておりますデータが、信憑力を疑われるようなものでありますから、私どもはそれも善意に解釈してそういうふうに言ったわけであります。この点について労働大臣の御所見を伺って、あと一、二お尋ねして終わりたいと思います。
  95. 福永健司

    福永国務大臣 非常に広範にわたって御意見を述べられつつ、私どもの所見を聞かれたのであります。ただいまの御意見中にも、私どもがこの予算編成にあたってかなり意を用いた点等についても、お触れをいただいておるのであります。労働省のあり方ということでいろいろなことから、私は私なりに積極的な前進を考えたのでありますが、でき上がりました予算は大したことでないと言われれば、そうかもしれないのであります。しかしそれにしても従来よりも幾分の前進はしたつもりであります。諸般の統計や、ことに賃金等を中心にいたしますところの労働経済の確立ということにつきましては、私どもも強い念願を持って今度の予算編成に臨んだわけでございます。実は機構的にも今おっしゃったようなことを中心とするものの確立を考えまして、だいぶ折衝等をいたしましたが、結局まあ十分なことはできませんでした。ただ賃金等を中心としての、今御注意のあったようなことについての前進は、ある程度したつもりでございます。しかし先刻も申し上げますように、えらくきわだって十分な措置というわけにはいきませんので、誇りを持って申し上げるほどのことには至らぬことを残念に思うわけであります。そこで、そういうようなある程度の前進はありましたにいたしましても、それとともに今度でき上がる予算について、この執行上、今いろいろ御注意のありましたような点についての配慮が行なわれるような活用の仕方――生かして使うというお言葉がありましたが、そういうことには十分心がけて参りたい、こういうように存ずるわけであります。  組みかえについての御意見がございましたが、これは私どもといたしましては、今日組みかえということにはちょっと参らないのであります。しかし組みかえはしないでも、生かして使うように心がけろとおっしゃる点については、そういう気持で今後臨みたいと考えます。
  96. 井堀繁男

    ○井堀分科員 次に、一、二具体的なことをお尋ねしたいと思いますが、それは最近労働省の、労働者福祉関係に対する新しい法律もどんどんふえて、非常に喜ばしきことだと思いますが、たとえば日本労働協会、中小企業退職金共済事業団、あるいは労働福祉事業団、雇用促進事業団、さらには従来の産労住宅のための資金融資法、あるいは職業訓練法、身体障害者のための雇用促進法、こういったような一連の労働省の直接の行政から離れつつある、あるいは面接の行政の中で工夫を要すべきものがかなりあると思うのです。こういうものが、それぞれの分野において活動しておりますことは理解できるのでありますが、こういう労働行政の関係者、労働組合だとか、労働問題に特殊の関心を持っております有識者、あるいは国会議員などには、こういうところで活動しておりますものを、できるだけ迅速に配付するように努力すべきである。特に労働協会などは、設立当時国会でも問題になりまして、その後も鳴かず飛ばずといったような形のようであります。この予算の使い方なんかに私は問題が多くあると思う。もっと労働問題に関する国民一般の理解を深めるという立場から考えても、ああいうやり方でいいかどうかということに問題があると思います。これは一つ研究を願うことにいたしまして、私も意見があるのでありますが、そういう意見を求めるようにすべきではないか。  それから中小企業退職金共済事業団のごときは、発足当時のいろいろな経過もありまして、これなんかに対しては、ことしはもう少し予算を積極的に組むはずのものであったのではないか。これはどういうわけでこうなったかということについても、実は聞いておきたかったわけです。  それから労働福祉事業団は労災関係でありますが、私は労災法についてはなかなか問題があると思う。ここなんかも、もう少し予算的に斬新的なものが出てきてよかったと思います。  時間がありませんからまたいずれ他の機会にお尋ねしたいと思います。  それから雇用促進事業団は、これは使い方が悪い。極端なことを言うと、予算をただ食いするのじゃないか。あまり看板が大き過ぎて、法律の第一条に規定してありますような文言が、なかなかこういうものでやれるかどうか、問題があると思う。これなんかも注意すべきことだと思うのであります。  それから特に産労住宅の問題は、もう時代が変わってきておりますから、法律の改正をやるなり、あるいは労働省の所管としてもっと積極的に労働者の住宅問題を扱えるまでにする、あるいは別なものを与えていいのではないか。産労者住宅の一番欠点は、事業主にまかされておるという点にあると思う。西ドイツの例をとるまでもありませんけれども、労働者の住宅は労働者自身が考える。すなわち、労働組合がこういうものに対して積極的な意思が、そして責任ある行為がそこから生まれてくるというふうに、こういうものを扱っていくべきではないか。西ドイツの成功の事実を私どもは見て、非常にいいことだと思っております。そういうことをやることによって日本の労働組合は健全になる。それからそういう事業活動というものは、労働運動にとっては非常に大きな教育的役割も果たしておると思います。私は公団住宅は行き詰まるという心配をしております。ほんとうは公団住宅のようなものは、労働団体もしくは労働団体を背景にした民主的なものが実施すべきものではないか。そうすると非常に生きてくる。こういう点に一つ工夫していくべきだ、予算の中でも考えていくべきだと思う。  それから特に職業訓練法関係と身体障害者の職業訓練関係は、から回りの様子がだいぶあります。これなども労働行政の中でもよほどお考えにならなければならぬと思います。こういうものについても、私はもっと労働者の組織的人格を代表する労働組合などの意見を取り入れるように注意すべきではないかと思います。いろいろな諮問機関もあるようでありますが、こういうようなものについては特段の配慮をお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、これだけはお答えをいただきたいと思いますが、それは公労法の扱い方であります。私は公労法、地公労法というのは、労働組合法の中で活用していけばいいのではないかという考え方でありますが、それは別にして、この際はこういう機関には、特に今のように望ましいことではございませんけれども、あっせんもほとんど行なわれておりません。おもに仲裁機能が一番強く発動し、まただいぶ分量的にもそうなっている。この場合に関係労働者の意思が反映しないという裁判は、民主社会においては罪悪です。一番いいことは団体交渉がいい。しかしこの前の委員会でもお尋ねしたように、うまくいかないということも大蔵大臣が正直に答弁されて、少少私は意外に思ったのですが、あれは公労法違反ですよ、大蔵大臣の答弁は。あれはいけませんよ。それはそれとして正直な事実を言ったのでしょう。こういう関係からいっても、どうしても今は仲裁裁定が大きな機能をなしております。あの場合に関係労働者が全部発言ができるという状態だけは、あの法律の精神からやるべきだと思う。そういう点からいきますと、今不幸にして日本の労働団体が幾つかに分かれておる。数の制限はありますから、やむを得ませんけれども、比例割として――ああいうものは組織労働者の数に比例するというよりも、むしろその団体の労働者のいろいろな意思が反映するルートを確実に生かしていくというところに、あの法律の精神があるはずであります。石田労働大臣時代から私どもはそういう注意はいたしておりましたが、公式にお伺いするのはきょうが初めてであります。ぜひ一つ公労法の精神を正しく扱うように、まず団体交渉に主力を置くが、しかし事実としては、仲裁裁定が裁判のような形で行なわれておる以上は、どの裁判を見たって、被告の意見を聞かないで判決するという裁判は、近代社会においてあり得ることではありません。ところが仲裁裁定はそういう実情が現われているし、しかも個々の労働者ではなくて、組織労働者一つの意思が反映しない、こういう点だけでも至急改めていただきたいと思いますが、大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  97. 福永健司

    福永国務大臣 最後の点はなかなかむずかしい問題でございまして、日本の現実を無視した処置もとれないわけでございます。御意見はよく拝聴いたしておきたいと思います。  それからその前にもいろいろお話をいただいたのでございますが、広範にわたりますので、これまた拝聴して今後の参考に資したいと思うわけでございます。  最後の点は、いろいろ影響するところもございますので、確定的にも申し上げられないのでございますが、検討させていただきたいと思います。
  98. 井堀繁男

    ○井堀分科員 ぜひ一つ公労法の精神にそむかないように、労働大臣は責任者でありますから、そういう点で今まで間違いを犯しているのを改めるように、厳重に処置をされんことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 中村幸八

    中村主査 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時一分休憩      ――――◇―――――    午後四時九分開議
  100. 中村幸八

    中村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働省所管に対する質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  101. 辻原弘市

    ○辻原分科員 雇用の特殊的な問題を例にあげまして、それから起きる諸般の労働問題、これについてお尋ねいたしたいと思います。私が今一つの例としてあげる問題は、山林に働く労働者の万般の問題であります。なぜ私がこれを取り上げたかといいますと、山林に働く労働者の雇用の形態というものは、労働大臣も御承知かと思いますが、一般事業所に雇用される労働者の形態でもなく、また日雇い労働者と称する範囲に包括されるものでもなく、一種特別な形態を実はとっておるのであります。しかも、最近の、特に都市と農村との格差というような面、あるいは農山漁村の最近の不況、こういう中に、雇用問題は一段と深刻になっております。その根本は何にあるかといえば、雇用の形態にある、こう私は率直に申し上げるのでありますが、そういう山林労働者の雇用条件、賃金、社会保険の適用、こういうものを含めて、労働省としてその実情を把握せられておるかどうか、あるいは今までの機会に調査をされたような、そういうなにがありますか。まずその辺のところからお答えを願いたい。
  102. 三治重信

    三治政府委員 林業につきまして、われわれの方で特に調査したのはございませんが、労働調査あるいは農林省のいろいろの調査というものを勘案してやっておるのでありますが、先生のおっしゃった、林業の雇用の形態の、非常に他産業と違う雇用の形態という問題につきましては、目下いろいろ調査中ですが、はっきりした資料がないので困っております。今のところ私たちが林業労働者として一応普通の賃金労働者であると推定しておりますのが、大体十二万三千人ほどでございます。
  103. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間がありませんので、できるだけ私は質問を続けていたしたいと思いますが、農林省の取り扱う部面においては、かつて私は問題を提起いたしましたけれども、十分ではありません。調査も不確かであります。なぜかといえば、主として林野庁等において把握しておるのは、いわゆる官業労働者に関する部面の調査等は正確でありますけれども、一般民間に雇用される労働実態などは比較的なおざりにされております。率直に申しまして、今労働省として把握しておらなければ、あえて私はそれをここで責めようとは思っておりません。ただ、労働省としてただいまから今後の問題として取り組んでもらいたいという意味で問題を提起するのであります。今局長の答弁によりますと、調査中でありますと言いましたが、それではどういう調査を試みられようとしておるのか。それから今あなたが言った一般労働者と違って特殊な形態があるというのは何をさして言うのか、具体的に一つ御答弁を願いたい。
  104. 大島靖

    ○大島政府委員 林業労働の実態につきましては、ただいま所管局長からお答え申し上げた通りでありますが、ただ特殊な問題につきまして、先生御承知通り、林業労働者実情というものは非常に複雑でございますが、その特殊の職種の質金でございますとか、あるいは御承知通り専業の度合い、そうしたものの関係、これは稼働率で見るわけでございますが、稼働率の状況、それから山林労働者の特殊の職種につきましての労働移動と申しますか、需給の関係、こういったものにつきまして、小部分の調査は行なっておるわけです。また今後ともそういった調査については意を用いて参りたいと思っております。
  105. 辻原弘市

    ○辻原分科員 やはり積極的にこの調査を、かなり断面をえぐってやる必要があると思います。今大島局長からのお話にありましたような調査も必要であります。同時にもう少し立ち入って、たとえば現今の労働問題の中で、完全なしかも一般組織労働者等に比較して、実際にやっておる労務内容、生活状況また労働者であるかないかという事実の認否の問題等々から比較をしても、何ら変わらない状態を持っておりながら、社会保険あるいは労働に関する保障が何ら行なわれておらないというのは、私はこの山林労働者の持っておる特徴的な問題であろうと思う。しかも私が申し上げるような山林労働者の数が日本に今どのくらいおるかということを労働省のどこかでお調べになったことがございますか。これはむずかしい点でもありますから、あとでもけっこうですが、まさに労働問題における陥没地帯であるということを私は指摘しておるのであります。そういう点については農林省等においても正確に把握いたしておりません。はなはだ残念なことでありますので、順次その問題点を今秋が指摘いたしましてあなた方の見解を承り、将来にわたってその解決への努力を願いたいと思うのであります。  まず第一に、その根本の問題は何かというと、これは雇用の関係にあると思います。すなわち完全なる賃金労働者でありながら、法制上賃金労働者という認定を下し得ない雇用の形態を備えておる。すなわち出来高請負払いという形態を昔からの慣行としてとられておる。これが根本であります。私がこう申し上げるよりも、むしろ山林労働者の雇用の形態は何かとあなた方にお尋ねした方が質問の順序としてはいいのですが、時間をとってはいけませんから申し上げるのですが、それが根本であります。  そこで、あと質問に関連いたしますのでお尋ねをいたしますが、いわゆる出来高――石数によって引き受け、そしてその石数によって山の所有主から所要額を経費として受け取る、これは事実上の賃金であります。こういう場合の労働者には絶対的に社会保険が適用できないものかどうか。まず一番最初に問題になるのは労災補償でありましょう。それから次には健康保険ないし日雇い健康保険の適用でしょう。それからもう一つは失業保険でしょう。それからもう少し社会問題として考えてみた場合には、いわゆる失業対策の問題があります。こういう各般の事柄が、現在においてはほとんど皆無といっていいでありましょう。ただ、これは前林野庁長官から昨年委員会で聞いたのでありますが、ごく最近北海道においてややこの問題を取り上げて、いわゆる労災保険のみを適用するが、ごとくの指導を行なって、これが一つのモデル・ケースになってきておるといわれております。私の知っておる範囲では、奈良県あるいは和歌山県等におけるいわゆる山林労働者の密集地帯、ここにおきましては、ごく最近労災保険の適用を行ない始めた。全部ではありませんが行ない始めております。しかしその他の社会保険に至っては全然皆無であります。そこで私が今申し上げた他の問題にもこれは適用できないものなのかどうか、ここの点について、一つ簡潔にお答えを願いたいと思います。
  106. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災補償の山林労働者に対する適用状況は、人数にいたしまして合計四十六万人でございます。
  107. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間が迫られておりますから簡潔に申し上げます。私がお尋ねした以外のことはお答えにならぬでもよろしいですから。
  108. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災補償以外の問題でございますか。
  109. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私が今尋ねましたのは、私は今、具体的な山林労働者という問題を提起して、これらに関して日本の諸般の労働賃金、雇用、それから社会保険、こういうものの中に現実に非常な不備があるということを申し上げておるわけです。そこで山林労働者が雇用の形態が違うかどうか。まず社会保険の適用が現在行なわれておらない。一部労災補償だけは現実にやっているが、それについての労働省の指導の方針と、それから出来高請負払いというような雇用形態を持っておる労働者が、現行法規で、あるいは将来の一つの取り扱いの方針として、永久に社会保険の適用が不可能かどうかということを私は伺っているわけです。幸いあなたが担当者であるとするならば、山林労働者の労災保険の適用数というのは、今あなたが言われた四十六万のうちどの程度ありますか。そこから簡潔に一つお答えを願いたいと思います。
  110. 大野雄二郎

    ○大野説明員 林業として私どもは把握しておりますが、その内訳は、伐採が三十八万、製薪炭が一万六千、その他が六万、こういうことになっております。
  111. 辻原弘市

    ○辻原分科員 官業労働者というのは、同じ林業でも国有林に所属する労働者というものは、これはまた民有林の場合と非常に違いますから、そういう部分をはずして、私が主たる対象としておるのは、一般民間人の民有林に雇用する労働者をさしています。
  112. 大野雄二郎

    ○大野説明員 ただいまお答えしたのは民間でございます。
  113. 辻原弘市

    ○辻原分科員 そこで次の問題は、労災については今言ったような形で進んでおる。今後も進ますための措置労働省としてはとられると思うのですが、具体策を持っておられますか。
  114. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労使関係を近代的なものにすることによって、賃金の把握ができるようにする、こういうことでございます。今日まで私ども三六%が石高当たりの賃金というものでやっております。ことしから関係者に非常に強く要請いたしまして、賃金そのものの把握ができるように要望しております。従いまして、来年度におきましては、賃金の把握の点においては非常に改善されるものと考えております。
  115. 辻原弘市

    ○辻原分科員 そこが問題点なんです。労災に関する適用問題から、いわゆる賃金の協定というのがにわかに最近進んできたことば事実です。ところが、これは地域によって非常に違いますが、一例を奈良県、和歌山県等のあれで考えてみますと、ごく最近まで、協定によって作られた賃金が四百円内外、これはいわゆる協定賃金といっておりますが、これが諸般の基礎になっている。そして労災が適用されておる。まずもって賃金をきめて、賃金労働者であるという協定賃金、これは事実出来高払いであっても、その賃金一つの尺度として労災が適用されるのですから、補償はこれが基礎になっている。山で働くのですから、たとえばその隣にはいわゆる林道開さくの労働者が働いておる。これは事実上の賃金というのは安いところで二千円、高度な技術、危険が伴うということになりますと、最も高い例としまして私の知る範囲では四千円ぐらいの賃金がある。片や協定賃金で四百円、ここに非常に大きな矛盾があるわけです。そういう点について、改善されると今おっしゃいましたが、どういう具体的の指導をおやりになっているのか。私はどちらかというと、この問題については下から見ているのです。だから、あなた方の指導方針というものがどうおりてくるかということを、下で注意深くながめているのですが、さっきも同僚野原君が指摘をしておったように、扱う労働基準監督署の第一線は非常に手不足だ。私はしばしば監督署にも、よく奥の方を見回ってやってくれ、よく相談に乗ってやってくれということを話しましたが、何さまその気持はありましても手不足だ。そういう点で、あなた方が今その指導を期待すると言いながらも、具体的にどういう方式でどうおやりになるのか。直接業者にあなた方が、たとえば基準局なら基準局あたりの力を動員してもそういうことをおやりになろうという気がまえなのか。その辺のところをもう少し具体的に私は聞いておきたいと思います。
  116. 大野雄二郎

    ○大野説明員 お説の通り、協定賃金は私どもの目から見まして安過ぎる形できめられていると思います。協定賃金は御承知のように使用者側と労働者の過半数を代表する者と協定いたしておりますが、保険料その他の関係がありまして、やや低くきめられている傾向があると思います。そこで私どもといたしましては、業者の自主的な賃金把握の努力を要請すると同時に、私どもも特に林業については不安定業種として、山の中に職員が入りまして指導するという積極的な態度をとっております。そのために、林業の問題につきましては特に協議会を作って指導する。ことにことしから安全規則がきめられまして、その機会を利用いたしまして懸命の指導を続けているわけでございます。
  117. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私、全国的なことはあまり知りませんが、この業種、いわゆる山林労働の業種は、一般的な形において適用しているのが非常に多いのか、あるいは擬制適用の形が多いのか、それは一体どちらなんですか。
  118. 大野雄二郎

    ○大野説明員 季節的なものが、有期と申しますか、それと、コンスタントなものを継続といっておりますが、有期、継続、地方によりましてばらばらにまざっております。その分け方がどういう比率になりますかは、私はただいまのところ手元に資料を持っておりません。
  119. 辻原弘市

    ○辻原分科員 もう一点、危険の伴う業種については失業保険などの場合もいわゆるメリット・システムが適用されておると思うのですが、労災の場合も山林雇用についてはその制度が適用されておるのですか、どうなんですか。
  120. 大野雄二郎

    ○大野説明員 されておりません。
  121. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それはどういう理由に基づきますか。たとえば石炭、それから石炭を含んで鉱山、あるいは危険を伴う土木建築、そういう種類のものはいわゆる危険業種としておりますが、山林労働は安全だという前提に立って諸般のそういう社会保険を考えられておるのか、その辺のところを明確にしておいてもらいたいのです。
  122. 大野雄二郎

    ○大野説明員 有期メリットにつきましては、土建だけという法律がございます。継続の方は百人以上でなければ適用にならない、その関係でございます。
  123. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私はそのメリットがいい悪いという議論ではなくて、、どうなっているかということのあれを聞いたわけですが、それならばこれはかりに擬制適用の場合も――というのは、実情を把握したいのです。山主があって、その山主から、事実上は出来高でもってその、石数を請け負うわけです。請け負って、その請け負った部分についての出来高を賃金としてもらうというシステムなんですから、そこですなおに労使の関係を取り結ぶ山主ならばいいでしょう。あるいはすなおに取り結ぶ事業主側の組合ならばいいんです。そうでない場合、おれのところはそれはいやだと言えば、法律上の拘束力は何もないわけですから、出来高でやっているんだ、何も私は労災保険を事業主負担としてする必要はないじゃないか、こういう場合は今後あなた方が指導した場合に突き当たる問題だと思う。そういうときに、具体的に一体どう処理するかという問題がある。そこで私はその前提として、今言ったメリット、それから擬制適用という二つの問題を出した。平たく言えば、もし拒否した場合、それを擬制適用の形態において労働者が支払う。そうするとメリットでやる場合は困るわけです。金額が上がってくる。とうてい労働者には耐えられない。そうするともとへ戻って、賃金協定をうんと上げなければならなくなる。そういういろいろな問題が出てくる。そういう具体的な隘路を打開しておかぬことには、幾ら指導といったってなかなか進まないものなんです。しかしそれを乗り越えて進まないと、これらの雇用形態を正常化するということはできない。あなたが言われた雇用を正常化するという問題はなかなか不可能です。だからどういう具体的指導をやるのか、たとえばこの労災だけを例にとってみた場合、健全な労使関係を、いわゆる賃金制度というものを確立させるのだ、そしてその前提には労使関係を持つのだ、言うなれば事業主負担と組合の負担というものが両建で確実にそれを実行させるのだ、こういうことになるのか。そういかぬ場合には今言ったような別の形をとるのか、これはどうなのです。これは具体的な現実の問題です。どうですか。
  124. 大野雄二郎

    ○大野説明員 やや迂遠でございますが、背景といたしまして、林業労働はこのごろ非常に不足して参りました。そこで働く労働者が、一番危険を伴うので、労災に入っていないとなかなか集まってこないという実情がございます。それからもう一つ林業の作業形態が近年非常に変化いたしまして、昔のような鉄砲というのですか、木をまとめておいて二度に落とすようなやり方でなく、機械集材機というようなものができています。それからおのやのこのかわりに、チェンソーに逐次切りかわってきて、作業の中身が最近急激に変化してきているわけでございます。そこでそういうような背景のもとに雇用を近代化するということは可能なことだと思います。賃金の把握ということは私どもことしからもうすでに着手いたしておりまして、かなりの成果を上げてきておるのであります。さようなことから実際上特に切り札としていかなる手があるかと申しますと、具体的にはないわけでございますが、こういう通常の企業に指導するようなやり方で十分の効果が上げられるものと考えております。
  125. 辻原弘市

    ○辻原分科員 失礼ながら、実情把握についてはもう一歩突っ込んでいないという感がいたします。それは無理からぬところです。われわれしょっちゅう山をかけめぐっておってもなかなか実態というものはつかめないわけですから、ましてや皆さん方が他の業種もあることで、十分な実情をつかめないということは、これは無理からぬところだと思います。しかし最近の経済の趨勢から考えてみて、今あなたの申された、いわゆる農山村における労働力というものが漸次、これは全体ではありません、いわゆる若年労働者が不足を告げておるということであります。しかしそこに定着しているある年代層以上の労働者というものは、流動いたしておりません。従ってより深刻なのです。さらにまた機械化ということを言われますけれども、個々に独立している民有林の場合には、そう機械化は進んでおりません。またそういう機械を利用できるというものは、地域によって限定されてきます。だから依然として困難な問題が残っておりますので、簡単に他の業種と同じようないわゆる雇用の正常化、賃金の確定というものは、いけるという把握があればけっこうですけれども、私はぶつかれば非常にむずかしい問題もあると実は考えるのです。従ってそういう認識をいま一度お持ちになるためにも、やはりもう少し具体的な調査をこの際やられてはどうか。全国のこの労働者の数というものは実に多い。実に多いが、存外手がつけられていないから申し上げるのであります。  その議論をいたしておりますると、何時間あっても足りませんから、そこで私は、今あなたが言われました賃金の把握が非常に容易になった、そうして通常の形態のような雇用関係を取り結びたい、けっこうでありますからぜひそうしていただきたいと思うのですが、少し実情を申し上げると、最近確かに山林労働者というのは、ほんとうに神武以来だと言われているくらい地域によっては労働賃金が上がっております。また雇用も非常に事業主側から言えばむずかしくなってきておる。大体最近の賃金では、従来普通の労働人口の年令でもって千円以下ぐらいというのが通例でありましたけれども、最近では千円を突破してきておる。ところが協定賃金というものは依然として据え置かれている。実態から言いますると、協定賃金は実際支払われる賃金の三分の一程度です。調べてごらんなさい、おそらくそうなっております。そこで私はここで極端な例を申し上げるが、それによってかりに山でもって木に登っておるのです。木に登って間伐もやりますしあるいは山からころがす作業もやっております。そういう同じような奥地で、さきにも申し上げたように林道開さくをやっておる。林道開さくというものはなかなか技術を必要としますから、さっき言ったように、場合によれば三千円、四千円、五千円というような高賃金を払わなければならぬ。同じようにそこでけがをしたとする。そうすると片一方は四百円が基礎になり、片一方は四千円が基礎になる。ここにやっぱりその地域労働者にとってみれば、大きな矛盾を感ぜざるを得ないわけです。そういうことを合理化することが何といっても必要なんです。私はそれを思うときに、これは単に山林労働の問題ではなくて、労災一般に対する根本的な問題がここにひそんでいるのではないか。それは何かというと、各業種にわたって賃金がばらばらである。ことに最近のように賃金格差というものが、同じ工業部門でも大企業と中小企業では違う。また日の当たる産業とそうでないいわゆる原始産業、農林漁業、そういった場合にはさらにまた悪い。また地域によっても非常な格差がある。いなかにいくほど賃金が安い。ところがけがをした、あるいは休業しなければならぬという場合に、それに対する補償というものは、これは賃金が安いから医者代が安いというわけにはいかぬ。賃金が安いから家族も安い休業補償でも食えるというわけにはいかぬ。要するに保険の観念としてはいろいろな考え方があろうと思うが、しかしそれはあくまでも休業に対する補償でありあくまでも療養に対する補償であるということになれば、極端な賃金格差のままで労災を適用するというところに非常な問題があるのではなかろうか。だからこれについては何か方法を講じないと――比較的同じようにスタンダードでいくならばけっこうであります。その格差というものが小さいならば、それはある程度の差があってもやむを得ないと思うのだが、月とスッポン、十分の一、十倍なんというような差が近くのそういう職域において起こるとなれば、何かこれは手を打つ必要があると思う。私はそれは一つのものの考え方としては、労災に関しては標準的賃金というものを考える必要があるのではないか。同時にまた今論ぜられておるような最低賃金、これは山林作業なんかの場合でもあるいはその他中小企業でも割に進んでいないですね労働大臣、そうして最低賃金があたかも最高賃金のごとく考えられて、むしろ賃金にストップをかけているというような例もある。労災に関しては今私が申し上げましたように何か標準的な賃金を設けるかあるいは最低の基準というものを――これは事実かどうか私も不確かなんですが、何か最近の労働省の指導方針として、これは失業保険の場合ですが、この数字は違うかもしれませんが四百二十八円ですか、いわゆる非常に安い日雇い労働者なんかの場合、その額に満たないものについては、その額までの補償を、事実上行政指導でもって行なうというようなことがあるのですか、何かそんなことを私は聞いておるわけですが。そういう一つ考え方もあると思うのです。最低をきめておいて、その最低に満たない額については、そこまで引き上げてそうして適用してやる、これも一つだと思うのですが、何かそういう方法をとらないと、この矛盾は私は解決しないと思うのです。公の席ですから極端に皆さんの耳が痛くなるような事例は引きません。いずれそういうことをお話し申し上げる時期もあろうかと思いますが、実にわれわれとして労災保険の適用上問題だと思うような例にぶつかるのです。そういう意味からも、正直者がばかをみている、そういうことは絶対になからしめなければならぬ。だからせめて非常な低い賃金から適用を受ける労災というものの改善を早急にはかる必要がある。私が今申し上げましたように、これはほんとうに私一価の考えなんですが、たとえば業種によって、この業種のいわゆる働く内容、危険の度合い、そういうものから考えて、これはかりにどの事業主が雇おうとも、少なくともこのくらいの最低賃金は必要とするであろう。甲、乙、丙、丁いずれもそういうものをこの仮定の一つ賃金として想定する、それに満たないものはそこまで引き上げて適用してやる。それが賃金引き上げ一つの論旨にもなると思うし、現実にはいわゆる療養休業そういうものに対する補償額が、同じような仕事をしておりながら片一方においては低いという、そういう問題をカバーしていく方法でもある。だから何らか前進した方法をこういう機会に考える必要があるのではないか。この点について労働省として考えられていることがあれば一つお答えを願いたいし、労働大臣としてもそういったことについて一つ積極的に改善策をはかられるおつもりがあるか伺っておきたいと思います。
  126. 福永健司

    福永国務大臣 今御指摘になりましたようなことで、私自身は必ずしも事情をつまびらかにいたしておりませんが、拝聴いたしておりましての感じといたしましては、そうしたことについていろいろ検討してみたいと存じております。実情につきましては事務当局からお答え申し上げます。
  127. 三治重信

    三治政府委員 失業保険につきましては、最低一般保険につきましては、二百円未満の部面については百二十円、日雇い保険におきましては日額四百八十円未満は一律二百四十円にしております。
  128. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど来林業労働者の労災問題についてお尋ねがございましたが、同時に先生が最初におっしゃいましたように、林業労働全般としてまだ非常に盲点があると申しますか、そういうことになっております。ことに最近奥山における若い労働者の確保の困難という問題が非常に大きな問題にもなっていると思いますが、こういった点、全般の労使関係の労務管理の近代化とかあるいは労働福祉の問題とか、あるいはことにこの業種は各産業の中でも災害率がきわめて高い。度数率にいたしましても強度率にいたしましても、きわめて高い。山林労働における作業安全の問題、こういった総体の問題につきまして、山林労働の現況からいたしまして、労働省としても全力を尽くして今後努力をいたしたい、かように考えております。
  129. 辻原弘市

    ○辻原分科員 今私が最後に言った労災の基準賃金となるいわゆる賃金率について何か方策がないかという点についてはどうですか。
  130. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災の角度からあるべき賃金を出していくというのは、私は筋が異なると思います。労災の方は実際にある賃金を基準に適用していくべきだと思います。また問題は実際にあるところの賃金といわゆる協定賃金とのギャップがある。そのギャップを埋めるようにいたすことが私どもの当面の任務であると思います。
  131. 辻原弘市

    ○辻原分科員 山林の場合には、あなたがおっしゃったことが実行されれば非常にいいわけです。あるべき賃金ですね。実際にもらっている賃金が基礎になれば、山林労働に関する労災についてはこれは大幅に改善をされる。ところが私の言わんとするところは、その他のものと非常に賃金格差が大きくなっている現況で、あなたの言われたことは私は百も承知なんです。従来保険のその部面からいくと、現実の賃金というものは、これは労災に限らずその基礎になっているが、何もその観念にとらわれる必要はないと思うのです。あくまでもいわゆる補償なんですから、何に対して補償しているのかという観念から出発すれば、私が言うように、格差を埋めるための措置を便法としてとり得ることはあるはずです。できないことはないのです。できないというのは既成の観念にあぐらをかいているということですよ、極端に言うと。だからかりにああいう従来の保険観念、あるべき賃金でもって補償するということの保険観念が動かせないとするなら、他に便法がないかということを私は言っている。今安定局長の方からお答えになった、いわゆる失業保険の失業の支給の場合に、三百円未満は百二十円まで引き上げるのですね、これは数字が違っているかもしれないが、ともかく引き上げるということは、これは一つの便法なんです。法律にはどこにもそういうことが書いていない、そういうことが書いていないが、実際の適用には、あまりにも低いから、そこで百八十日のいわゆる失業日数を補償してみてもとるに足らぬ、ほんとうの補償にはならない。失業補償にはならないということから、最低引き上げるという便法措置をとっている。だから私は労災においても同様のことが考えられるはずだというのです。だから今即刻いわゆる協定賃金、山林労働における協定賃金というものが打破されて、そして実質賃金、実態賃金に近づけ得るあなた方に自信があるなら、私は山林労働に関しては一歩前進だから、それでもけっこうということを言うかもしれぬけれども、それも解決できない、同時にまたそれは中間的な措置としての格差を埋めるための措置もとれないということでは、これは幾ら私がいろいろなことを言いましても、問題は解決しないというのです。だから何か問題解決のとっかかりを皆さんが探しなさい。そういう意味で参考意見をあなた方に申し上げているわけですから、どうでしょう、理論的に保険の観念についての論争を私はここで戦わそうとは思わない。だから私の申し上げているのは、従来は、今の観念ではあくまでも実態賃金でもってやっているのだから、そういう仮定の標準賃金というようなものは、これは大いに他にも影響を及ぼして違ってくるという理屈は私もわかる、そうでないなら別途の方法か何か考慮されなければならぬということを言っているのです。
  132. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災保険の方は、失業保険と違いまして、平均賃金と申しますか、賃金の高低に関係なしに補償されるという部分もある、つまり上医療については賛金が高かろうと低かろうと同じ医療が行なわれるという部分がございます。従いまして全く保険の性格が違う点を一つ御留意願いたいと思います。それから賃金にスライドしていく給付の部分についてはいろいろ問題があることは私ども伺っております。その点につきましては、労災の審議会の中に、昨秋以来労災制度の根本的検討を行なう研究懇談会を設けまして、目下諸般の問題を検討いたしております。今御指摘のようなところも熱心な検討の対象にあがっているところでございます。
  133. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間がございませんから、次の点に進みますが、失業保険にも問題がございます。私は主として山林労働を例にとりながらお話を申し上げていきますが、局長がさっきから言われたように、賃金改善され、雇用の形態が正常化できるということになれば、山林労働に関しても失業保険、それから健康保険、これを適用することができますかどうか、適用できますねと私は言いたいのですが、その点はどうですか。
  134. 三治重信

    三治政府委員 この農林水産業関係労働者につきましては、現在の社会保険の関係では任意適用事業になっていることは御承知通りであります。ところが最近この失業保険の加入促進の問題で、何とか適用を準強制加入的な、また非常に零細な人をどういうふうにして入れるかということについて、いろいろ方策を求められておりましたが、本年、北海道において林業についても農林業として適用することにしております。そのやり方は、あるいは先生御存じかもしれませんが、被保険者を農協単位にいたしまして、しかもそれにつきまして、季節性をできるだけ排除するような方法で今適用いたし、それを参考にいたしまして、三十七年度からそれを全国的に拡張して、この失業保険の加入に便宜を与えるように目下検討中でございます。
  135. 辻原弘市

    ○辻原分科員 失業保険の問題で、今の北海道の例、私もこれは聞いております。農協単位というお話でありますか、これは森林組合等もありますし、奥地の状況からいえば、むしろ森林組合の範囲が適当ではないか。そういう点もあわせ考慮されることが必要だと思いますが、その場合、これは繰り返して申し上げませんけれども、それぞれの失業保険法――まあこれは健康保険も同じような形態になるわけですけれども、法律においてはいろいろな障害があると思うのです。事業規模あるいは雇用人員等々、いろいろありますが、山林労働の場合には、それはもう千差万別ですからなかなかむずかしいので、いわゆる包括して、たとえば森林組合の卒業場の範囲、それら組合員として、いわゆる適用組合ですが、適用組合を設けてその範囲に入れば、その実態的な雇用の形態がどうであろうとも、要するに掛金をすれば適用する、こういうかなり柔軟性のある取り扱い方が全国的に行なわれるのかどうか、その辺のところは一体どうですか。
  136. 三治重信

    三治政府委員 北海道の林業につきましては、北海道と内地、ことに最近私有林の関係では私は少し状況が違うんじゃないかというふうな感じも持っておりますが、一応北海道の要領でやってみまして、そこで問題が出てくると思います。従って私の考え方としては、やはり今先生がおっしゃったように、林業組合単位に加入者を求め、その中で失業保険の適用をどの程度にしていくかということになると思いますが、方針としては、一応この方面について拡張適用をして、失業保険を施行していきたいというふうに考えております。
  137. 辻原弘市

    ○辻原分科員 参考にちょっと伺っておきたいのですが、従来適用できなかった一番根本というのは、これは法的に言えばどういうことなんですか。
  138. 三治重信

    三治政府委員 この農林水産業等いわゆる自然を相手とする労務というものが非常に季節性があるということ、それからやはり労働関係の役所の関係が、そういうところに施設がない。従って失業保険みたいに一週間に一度、十日に一度というふうに失業の認定を受けに行く場合に、非常に時間も交通の便もないというような、一つは自然的な条件、一つは行政の技術面というか、そういう施設機構の問題から、これは諸外国の例を見ましても、特別にそういう産業――農林業のための特別保険をやっているところはありますが、私の研究いたしましたところでは、一般保険に一緒に入れている国というのは、ほんの小さな農業国と思えるような二、三の国がILOの資料ではあるだけで、近代国家では大体特別にやるか、あるいはそれが非適用になっているのが大部分であります。日本では非適用になっていなくて、任意包括加入、希望者があったら入りなさいということになっております。それを個々の事業主、個々の労働者では入りにくいということで今考えておりますのが、いわゆる地域的に一つの団体で労使関係をある程度規制いたしましてでも、そこに秩序を持って、また先ほど労災法の問答がありましたように、賛金にある程度の予想がつけられ、またある程度の協定ができるならば、一応やれる態勢ができるのはないかということで、北海道でやってみたのですが、やはりそう特別に林業だけをはずす必要もなさそうだということで、農林漁業すべてに一応北海道でやったやり力を適用していく。内地と実態が違う部面については、さらにそれぞれ現地にもいろいろ実態を御説明願って、またわれわれの方としても提案をして、それを末端にまでできるだけ弾力的にやっていきたいというふうに考えております。
  139. 辻原弘市

    ○辻原分科員 今のお話で、積極的にやられれば前進するだろうと思うのです。非常にけっこうだと思います。おそらくこれはもう二十年来私はこの種の労働者について問題にしてきたので、やっとその第一歩をようやく踏み出すということになって、私自身も期待を持つと同時に喜ばしく思っておるのですが、今お話のような形で、また今あなた方が言われましたような認識というものを、現地の指導に当たらるる人々及び取り扱いをされる人たちが把握されるような措置を私は早急にとってもらいたいと思うのです。そのためにかなり相当量のその種労働者を控えている地域の、たとえば安定行政あるいは基準行政というところは人員不足の問題も起きるかもしれません。そういう点については大臣にも一つ積極的にお考えをいただきたいのですが、それらの任に当たられる人の増員等も考慮されますかどうか。それがないと、これは言うべくしてできないのです。山へ入ってごらんなさい。車でも行けませんし、結局足でもって運んでいかなければならぬ。よほど熱心な指導者でなければ、むずかしい労使間に立って、実情もわからぬところに飛び込んでいく、実際問題としては、これは、容易ならざる仕事だと思うのです。しかしそれをやっていただくためには、やはり現地指導者の何とかやらなければならぬという認識、決意といいますか、そういうものがなければならぬと思うのです。そのためにはまた本省としても、しかるべきやりやすい体制をしくということも必要だと思うのです。せっかく北海道における一つのテスト・ケースが実を結んできているのですから、何とかこれを早急に各地に及ぼすように指導してもらいたいと思うし、その意思の伝達をやってもらいたいと思うが、具体的にはどういうことに相なりまするか、くどいようですけれども、もう一度局長と、それから大臣にも――だんだんの話で、福永さんもかなり山は知らないとは私は申させませんので、そういう意味一つ腰を入れてやっていただきたい。この問題は今まで労働大臣はだれも手をつけなかった。私はもう十年も前から歴代労働大臣にかなり具体的な話をしたと思うのだけれども、一向に改善されなかった。あなたは、幸い諸般の問題にたんのうなんですから、一つ思い切っていい結果をもたらしていただきたいと思うのです。お答えを願っておきたいと思います。
  140. 福永健司

    福永国務大臣 私も、今辻原さんがかつて和歌山県の山奥のことを若干知っているんじゃないかというふうなことでおっしゃったかと思いますが、幾分は承知いたしております。しかし必ずしも現在の状況そのものを詳細にとまでは参らないのでございますが、すでに先ほどからも申し上げておりますように、一部北海道から手をつけておりますが、一挙にというわけにもなかなか参らないかとも思います。こういう方向へ、るる今お話のございましたような努力労働省全体としていたすように、私が推進いたしたいと思います。
  141. 三治重信

    三治政府委員 全国的に適用する分につきましては、予算措置もとっておりますので、それは決して十分とは申せませんが、そういう農林業で適用するものについて十五県くらいで一応目下調査させております。さらにこの年度実施の分につきましては予算措置もとっておりますので、旅費、庁費等も含めて特別に配慮してその適用を実施してみたいと考えております。
  142. 辻原弘市

    ○辻原分科員 いろいろ申し上げましたが、他に質問いたしたき問題もたくさんありますが、時間も経過いたしましたので私はこれで終わりますけれども、要するに治山治水十カ年計画とか防災とかあるいは山林の木材需給の問題とか、いろいろ経済問題あるいは社会問題等々絶えず論ぜられておるのですが、しかし今現われている現象というのは、先ほどから労働省当局も言われておりますように、若い労働力が農山漁村を通じて減少してきている。激減している。特に山林においてはそういった減少の結果が今山を荒廃させている。植林はなおざりになり、あるいは奥地のむずかしい山については賃金が高くつくから切れない。山の保持という点から考えてみましても、何といっても労働者がそこに定着をして日々その業務を担当していくという態勢がない限り、幾ら机上プランの治山治水計画を立てましても有名無実です。だからその意味において、私はこの機会に山林労働の雇用の関係賃金の形態、社会保険の問題等々をぜひとも解決したい。解決することがひいては国家的見地から見ましても、治山治水の重要な任務を何割か前進させる、そういう意味合いにおいて申し上げましたので、一つ特段の御努力をいただきたい。また私は別の機会にその実施の状況について――今度はあなた方なおざりにしておりますと、きょうのようにはいきませんから、どうぞそのことをお含みありたい。私の質問をただ委員会の質疑応答という形にとどめては、自今においてあらためてもう少しもの申すということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  143. 中村幸八

    中村主査 次は淡谷悠藏君。
  144. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 労働大臣一つ、せひ御考慮願わなければならないことがあるのです。実は経済成長に伴って、いなかの方からだいぶたくさんの農民が都会に流れてきている実態が、農村における労働力の不足と同時に著しい事実になってきたわけであります。これに伴いまして期待就職の者が安定所などを通じませんでどんどん入ってくる。ところが末端において非常に悲惨な事実が現われてきている。この間も私基準局に伺いましていろいろ御相談申し上げましたが、ある大きな工来場でこういう話がございます。前月の十五日に日雇い労務の総高を出しまして、翌月の五日に支払いをするという制度なんです。たまたま十二月に、これでは困るから何とか支払ってくれといって、暮れに支払ってもらいましたら、その間食べた食糧費、飯場料というものを全部差し引いてしまった。賃金は払わないままに十五日まで差し引いてしまった。今度は食うものが全然なくなって、お正月早々同じ郷里のしがない青物屋をやっておる男に顧みまして、菜っぱのくずをもらって食べているという事実が実際にあったのです。これは十五人くらいの集団就職の事実なんです。これは基準局の方に伺って御相談申し上げておきまたので善処して下さったと思います。  同町にまたそんな非常に不安定な就職をしております結果、労働条件なんかも非常に悪うございまして、この間も実際の例でございますが、蒲田の道路工事をしておりまして、十一時二十五分という深夜に、国道のコールタールの吹きつけの仕事をしておった、そこへ酔っぱらい運転といっても徹底した酔っぱらい運転で、どこか小さな町工場の専務が、蒲田で日本酒を二升飲み、大森で洋酒を八はいか飲みまして、女を連れてへべれけになって運転してきたのがこれにぶつかって即死しております。しかもひき逃げです。あとでつかまりましたけれども、その死んだ青年が、警察に聞きますと非常にまじめな青年だった。もらった保険はわずかに三十万、賃金が安いですから千日分でやられている。これはかなり大きな会社で、私はいつか折があったら、はっきり名前まで申し上げたいと思いますけれど、私自身行って交渉して、何とか会社でめんどう見てくれないかと言ったら、香典を渡しましたと言う。幾ら出したかと言うと、五千円出したと言うのです。たとい臨時工でも、もう少し親心があっていいと思いますが、さっぱりやっていない。もう少し何とかしてやったらどうかと言ったら、一日に五人も六人も出てくるのに、一々かまっておっちゃこっちがつぶれるというあいさつです。これがおそらくは流れてきております農村青年の就職の実態だろうと思う。同時に小さな仕事場、あるいは下請といったような工場で働いております労務者生活が実にみじめなことは申すまでもございません。そこでこういうふうなみじめな状態をいろいろ調益をしまして、労働基準法に基づいて取り締まるときには、罰則さえも適用するのが基準局の仕事だと思いますが、その点はいかがでございましょうか、そこまでは手が届きませんかどうか局長にお尋ねしたい。
  145. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま二、三の例をおあげになりました問題点は、いずれも現在の労働問題の最も重要なかつ最も困難な問題であろうかと思います。たとえば臨時工の問題、あるいは地方から他府県へ遠く、いわば出かせぎといいますか、移って参ります労働者の問題、あるいは災害の問題あるいは下請その他の労働者の問題、すべて現在の労働基準行政のみならず、労働行政全般を通じましての最も重要な問題であろうかと存じます。私ども労働基準行政をいたしましては、こういった労働者の保護の問題については、私どもも全力を尽くして努力すべきものと考えております。
  146. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 これは単に都市に流れてきましたにわか労働者だけではなくて、地方でも小さな工場の労働者は、相当日の当たらない場所に置かれているようであります。これはいろいろ地方的な事情もございまして、監督する上にもさまざまな隘路があるだろうと思いますが、第一に、今のような予算で大事な仕事が十分できるかどうか、まことに私は疑わしいと思う。手元に配付されましたこの予算書を見ましても、やはりもっと活動ができるように、監督に当たる皆さんが、ひももつかないで潤達に活躍できるような十分な予算を組まなければ、大事な仕事はできかねると思いますが、労働大臣どうですか、少し基準局の予算が少ないのではないですか。
  147. 福永健司

    福永国務大臣 淡谷さんからもそういう御意見があり、前からその種の御意見を他の方々からも伺っているわけでございます。午前中にも申し上げましたように、予算折衝の過税におきましては、そうした顧慮からの折衝もあったのでありますが、現実にでき上がった予算案では、なかなかそういうことに多くの配意が行なわれるというところまで参りませんでした。若干新規の仕事についての配慮はできたのでありますが、政府全体として、できるだけ人はふやさないでいこうという方針等もあり、なかなか御指摘のような点についての配意が行なわれなかったのであります。今御質問の要旨は、そういうようなことで必要は感じないかというような趣旨においてのお尋ねでございます。私は今お話しのようなことをしみじみ感じております一人といたしまして、今後そういうことについての努力をさらに続けたいと考えております。そこでまだどの部分をどうということを申し上げる段階には至りませんが、財政当局との折衝というようなこともさることながら、それはそれとして今後ともやるといたしまして、労働省の内部で若干機械化する等の措置等によって、こういう足らざる方へ人を向けるような措置ができないものかというので、ただいま実は研究をいたしておるところでございます。まだ具体的にどこからどこへどうということは申し上げられないのであります。そういうことの努力もいたしたいと存じております。
  148. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 労働大臣はばかに用心した答弁をしていますけれども、私は無理やり労働大臣を責めてこの予算措置をどうこうしていただこうというのではないのでありますけれども、大蔵省が予算措置上ろくに内部の検討もなしになたをふるって切ってしまう結果、予算ゆえに目的から逸脱するような例がしばしば出てくる。局長に伺いますが、全国に基準局というものが数にしてどのくらいできていますか。
  149. 大島靖

    ○大島政府委員 基準局は各県一つでございますので四十六でございますが、その下部組織といたしまして監督署が約三百程度設置されております。
  150. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 基準局の局舎なりあるいは監督署の事務所みたいなものはみなできておりますか。
  151. 大島靖

    ○大島政府委員 庁舎につきましては、国有財産で設置いたしておるものもございますし、あるいはその土地なりに借りておるものもございますが、これはもちろん国の施設でございますから、おおむね国家予算で設置いたしております。
  152. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 このあたりからじっくり一つ労働大臣に聞いていただきたいのです。この庁舎を建てる予算のつけ方がまことに不徹底です。私も方々歩くので、あっちこっち聞かされますが、これはある地方の一つの実例ですからそのつもりでお聞き願いたい。基準局長がこういう通達を出している。「拝啓」――そこから始まります。「秋冷の候、貴協会ますます御清栄の段お喜び申し上げます。さて、すでに御承知通り、某々労働基準局並びに某々労働基準監督署庁舎を新築することになり目下工事中でございます。しかるに、今回の建築予算は建物のみに限られているので、備品並びに落成式等の費用については、工場、卒業場有志に御協力をお願いいたしましたところ」云々とこうなっている。(長谷川(保)分科員「どこでもやっている」と呼ぶ)これは全部あると思うのです。この寄付は一体どうなっていましょうか。国民が協力をして国政を助けるのはいい。学校のPTA初めこのごろは寄付で困っている。特に基準局というのはこのごろ少しきばを抜かれちゃっているのです。終戦後の基準局はやはり労働者を保護する一線に立ちまして、かなり大胆に基準監督をやった。このごろはさっぱりやらないのですね。こうなった裏に何かがありませんかということをわれわれはしょっちゅう考えておった。たまたまこの間予算委員会などで方々回りまして伺いましたのが、今、長谷川分科員もおっしゃいました通り、各地に起こっているこの例なのですね。庁舎は作ったが備品も何もないという形態は、とても完全なものじゃないだろう。これは労働大臣どうですか。私、大臣の味方をするのですから、これは大蔵省から予算を持ってくる一つの有力なる資料にしてもらいたいと思う。こういう形はいいのでしょうか。
  153. 福永健司

    福永国務大臣 具体的の事実をつまびらかには承知いたしておりませんが、そういう文書が出ているとすれば、そういう文書を出すような事情であるということは非常に遺憾に思うわけであります。そういうことでは監督もなかなかうまくいかないということにもなります。なおよく調査し、今後にも処していきたい、こういうように存じます。ただちょっと伺いましたのは、直接どこかの事業場とか何かにあてたのでなくて、協会というと全体としての組織に対してそういう手紙を出しているかのごとき――それにしてもあまりよくないことでありまして、これは議論の余地のないところであります。自分の所管のところにそういうところがあるというに至っては、私も非常に責任を感ずる次第であります。
  154. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そこで、要求している備品の細目がまた大へん労働大臣の心胆を寒からしめるものがあるのじゃないかと思うのです。これははっきり申し上げますが、基準局の方で予算で組んで、これこれのものは寄付に期待するということをちゃんと出しているのですね。その内訳を見ますと私はまことに同情に値すると思います。こんな予算さえとれないとあっては、これは決して庁舎建設の予算とは言えない。まず備品として局長室の応接セット。局長室に応接セットのないような建築予算はあり得るはずがない。局長室のカーテン、局長のソファ、客机、いす、スチールケース、全部寄付に待とうという計画なのですね。各署の雑費、安全器具、これらを全部やはり寄付に期待するというのが出ているのです。おまけにこの落成式の招待宴会の経費までみんな寄付。まず一つ読み上げましょう。本省二名、県十名、仙台地方の、基準局でしょうが三名、財務局、財務部、安定所、県議会議員、県警、市警、行管、検察、農林統計、(「刑務所はないか」と呼ぶ者あり)刑務所はないけれども地裁がございます。市議、こんなふうに二百二十名も招待をして、おまけに一人当たり一千円の宴会費を見積もりました。サービス・ガールさえ含んでこれを全部寄付に待つという形が、一ヵ所や二カ所じゃございませんよ、全国にざらにある。こんな形で一体監督ができるでしょうか。もっと詳しいのがありますがやめます。  ついででありますが、この募金の構想がおもしろい。収入の構想ができているのです。焼きちくわの冷凍、鉄工所が幾ら、電気その他の工業、製材、土建、食料品、自動車、石油、石炭、新聞社、印刷、ハイヤーその他市の企業局、旅館、料理、カフェー、施設組合、銀行、証券会社、この担当の人の名前まで入れて募金計画ができているということに至っては、これははたして監督署の任務ができる態勢でございましょうか。およそ基準法にきめられました監督すべき対象の業種がみんな入っている。みんな小さい商店なり会社です。拒んだ場合にどうなるかと考えると、全くこれは一つの基準局の名をもってする脅迫じゃないかと私は思う。基準局長、どう思いますか。
  155. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいまのような庁舎建設に伴いまして基準局が寄付をいただくというようなことは好ましくないと思います。ただ現在の基準行政がこういったことによって監督の厳正さを云々されるのは私としてははなはだ遺憾でありまして、そういうことは私はないと信じます。今後におきましても監督の厳正さは厳に私は保って参りたいと思います。
  156. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 基準局長にお伺いいたしたいのですが、地方の基準局の局長なり監督署の署長なりの平均勤続年限はどのくらいですか。
  157. 大島靖

    ○大島政府委員 私ただいま平均勤続年数の資料は持っておりませんので、また後ほど調査いたしまして御連絡申し上げます。
  158. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 あるいは消防署か消防ポンプの器付を取ったり、学校が入学を種にして寄付を取ったりするのは天下の形勢でございますけれども、非常に気の損な労働者の待遇を見た場合に、この監督に当たる基準局、しかも罰則さえ適用できるような権限を持った基準局が、ないと言えばそれまでの話ですけれども、少なくとも疑われるような、またそういうふうな遠慮ができるような関係において――これはもっと詳しい例がございますが、きょうは別に個人に対してどうということはございませんから、一般的な事例として申し上げているのですから、この場では発表いたしません。非常にたくさんの人から、こんなことをしておいて、事業場という事業場から全部こういう寄付行為によって金を集めたのでは、とてもできないと思うのです。やはり長い間同じところに置かないで、絶えず人事交流をして、妙な色がつかないようにするのが一点。  もう一つ労働大臣一つあぐらをかいて、大蔵大臣に、こんなことが起こっては基準監督署の任務はできないからもっと予算を組めといったような強い態度に出てもらいたい。こういう点は大臣どうですか。こういうことでは実際監督ができないと思うのです。
  159. 福永健司

    福永国務大臣 お話しのようにいたしたいと思います。
  160. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 局長どうです。
  161. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど申し上げましたように、私といたしましては全国の基準行政の厳正はあくまで維持したいと思っております。
  162. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 さらに私心配しますのは、基準監督署の中に、各県――私大阪あるいは福岡まで行ってきましたけれども、若い非常に正義感に燃えた連中がいるのです。こういうことで、落成式もいいでしょうけれども、何か基準法に違反したような事例があって、これを持ち帰るとすぐチェックされる、消されてしまう。だんだん考えてみると、やはり庁舎建築なんかにお金をもらっている例がある。そういうところに限って基準監督がうまくいかないということをしみじみこぼす。おごり立って言いますとすぐ首になるというのです。自分たちの悪いところを隠しておいて、正義感に燃える若い正しい職員の首を切ったり配転するような、こんな署長とか局長がいるならば、これは厳重に取り締まるという約束をしていただけませんか。実例がないと言うなら、私出しますよ。
  163. 大島靖

    ○大島政府委員 私はそういうことはあるべからざることだと存じますし、そういうことは、私が先ほど申し上げましたように厳重に処罰していくべきものだと思います。あくまでも基準行政の厳正は確保して参りたいと思います。
  164. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 労働大臣はすでに御承知だろうと思いますけれども、これは理屈外の理屈で感情的になったり、あるいは別な理由をつけたりして、えてこういう正しい声が閉ざされている。これではとてもまじめな連中がまじめな基準監督なんかやりませんから、大臣もまずこういう腐敗したような行動のあった局長、署長級というのは、どん、どん首を切るなり、処罰をするなり、凛乎たる態度をもって監督行政に当たるように御指示願いたいと思います。この点いかがですか。
  165. 福永健司

    福永国務大臣 今お話のような方針で、厳正な態度をもって臨みたいと存じます。
  166. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 私はまだたくさん事例を持っております。あるいは御必要とあれば各県にわたる事例をたくさん出します。そこまでいかなくても、これはやはり大蔵省の責任もございますし、どだいが庁舎の建築に十分金を出せなかったという予算上の結果が大きいのですから、責めるべきはまず政府だと思います。労働大臣は強い人ですから、十分がんばったと思うのですが、われわれも一緒になってやはり正しい予算はどんどん組むようにいたしたいと思います。
  167. 福永健司

    福永国務大臣 いつのことですか。
  168. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 三十六年でございますから、ついこの間でございます。一カ所じゃないのですよ。見てごらんなさい、全部この通りだから。だからもしも御必要であれば私は非公式にでも各県にわたる事例をお知らせ申し上げます。どうか一つこの点は十分御注意になりまして、もし間違った行動がありましたら、早急にこれを処断するようにお願いしたいと思います。また労働大臣は、こういう事例があるからそんなことをしてはいかぬということを、はっきり各基準局なり監督署に厳重な指令、達しを出してはいかがでございますか。
  169. 福永健司

    福永国務大臣 適切な措置を講じたいと思います。
  170. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 私の質問はこれで終わります。
  171. 中村幸八

    中村主査 次は小林進君。
  172. 小林進

    小林(進)分科員 私は実は明日ゆっくり伺わせていただくつもりでしたけれども、大臣の御都合が悪いそうで、きょうだけということでございます。実は六時に私が言い出した会合があるのでございますが、せっかくでございますから、大臣のペースに一つ合わせましてきょうはサービスをさしていただくことにいたしますから、よろしくお願いいたします。  実は予算分科会でございますけれども、大臣が御就任になってから、私実は質問するのが初めてなんでございます。社会労働委員会で、大臣に一つ御就任の御意見を承りたい、承りたいと思いまして、半年有余大臣のおしりを追い回したのでありますが、どうもジュネーブにおいでなっているとか、西ドイツにおいでになっているとかいうことで、ちょっと日本の労働大臣か外国の労働大臣か区別のつかないような御行動が多うございまして、ついに今日まで御質問をする機会を逸してしまってまことに残念でございます。そういう意味で、私はできるだけ大臣の御発言になる雑誌だとか、あるいは印刷物等を通じて、今度御就任になった労働大臣のお考えはどういうところにあるのだろうということで勉強したのでありますが、またどうしても大臣の施政、所信というものを私はつかみ得ないのでありまして、限られた時間でありまするので、一つ簡単にお聞かせを願いたいと思います。石田大臣といえば、石田労政というものが何かわれわれにはつかめた。倉石さんが労働大臣になると倉石労政というものがつかめた。けれども福永さんには福永労政というものがあると思うが、どうもわれわれにはつかめない。あなた方の方針を聞いてみると積極労政、積極労政ということを盛んに所信表明の中に言われるが、しからばあなたの言われる積極労政というのは一体何だ。標準賃金でも定めるのかというとそうでもなさそうだ。賃金格差をなくするという目標でもお持ちになっているのかというと、それもさっぱり出てこない。それでは今までの物と金どだけを中心にした経済を、今度は労働力に力を得た新しい労働経済でも打ち立てられるのかと思っていますと、そういう点もさっぱりぼけている。われわれは非常にあなたの考え方をつかみずらく思っているのであります。一つ端的に、これが福永労政、だというものをお示し願いたい。
  173. 福永健司

    福永国務大臣 すでに私の考えておりまする労働行政のあり方の大要につきましては、所信を申し上げるような形でも申し上げております。その他の機会にも幾たびか御質問等に答えまして申し上げておるのであります。私は私なりに考え方を申し上げておるつもりでございますが、聰明な小林さんにまだお認めをいただけないということに至っては、私の表現がよほどまずいということになろうかと思います。しかしその点につきましては今後、ぜひ御理解を願えるように、大いにわが方から積極的に申し上げたいと思っております。  一口に積極労政というようなことを申しておりますが、これはいろいろの意味で申し上げておるのでございまして、ここに所信表明的なことを繰り返しますのは大へん時間を費すことでもあり、大体小林さんの方では承知の上でそういうことをおっしゃっておられるところもあろうか、こう存ずるわけでございます。私の一つの強い念願といたしましては、どうも労働行政全体においてよくないこととか、また気の毒なこととかいうようなこと、たとえば失業なら失業、災害なら災害というようなことが起こって、それをどう始末するかということが中心になっておりましたような労働行政、事実そういう跡始末とかしりぬぐいが多かったように私は思うのであります。これ自体は非常に大事なことであります。そういう事態がある限りにおいてはその始末をしなければならぬのは当然でありますが、しかしそれよりもむしろそういう事態をなくする、ないしはできるだけ少なくする、こういうような意味においてむしろ跡始末とかしりぬぐいということから脱却して、そういう事態を防ぐ方への積極的な行政というような意味において積極労政ということ等も印しておるわけでございます。  それからまた今小林さんのおっしゃった言葉をお借りしてみますと、私が常日ごろ思っておりますることをそのまま小林さんのお言葉の中に発見いたしたのでありますが、どうも日本の過去の行政のあり方では、金や物に重点を置いたような考え方がかなり多かった。たとえば過去において経済閣僚の集まりでいろんなことを協議するということになりますと、金を握っている連中や物の面の担当の連中が集まって、一番大事な人間の面での担当である労働大臣が抜かれていたということがしばしばあった。私は多分にこういうところに私なりの正義感を感じまして、そういうことであってはならぬということを――まあ人の言葉を引いて恐縮でございますが、私はケネディを礼賛する意味で申し上げていると解されてはまたいろいろそういうことから議論が発展しますので、今お話しになったことと関連する意味で引例さしていただきますと、ケネディの一般教書の最初の部分には、人の面労働の面がまず出て参っておる。それから物や金のことに及んでいる。ものの順序としてはそうだ、私はこの限りにおいては、ああいう教書の扱い方は大いに参考にしなければならぬと思うのであります。そういう意味においても、私は人の面、労働の面というようなものを非常に重要視するような政治の姿勢であらねばならぬ、これを私は私なりに感ずるわけでございます。その他、私なりの考え方で、労働行政というものは広く世界的の視野に立っても行なわれなければならぬとか、いろいろあるわけでございます。いずれにいたしましても、そうしたことでまだ小林さんのお認めになっていただけるところには参っておりません。今後そういう考え方で鋭意努力をいたしたいと思うので、よろしくお願いを申し上げたい。
  174. 小林進

    小林(進)分科員 時間もありませんから、今度は一つ具体的に、個々のケースは局長がおられますから局長を通じてお尋ねいたしますが、局長では答弁できない問題だけを大胆にお尋ねするのでありますけれども、これは労働省でお出しになっている本でございますから同違いないと思いますが、その一月号の中で、大臣は今井一男さんと座談会をおやりになっております。その最後の方にいって、今井さんが私どもの非常に常日ごろ言いたいことを大衆を代表して大臣に言われておる。これを簡単ですからちょっと読み上げますけれども、「私、大臣にお願いのような忠告のようなことを申し上げたいのですが、労働省はどうしても積極に出なければならないということはおっしゃるとおりですが、それについては、少なくともこれまで歴史的に労働者の団体はどうも労働省というのは色がついていると見ていた。外国では労働大臣というのはどこでも中立と見られているのですね。労使間から中立と見られている。日本では少なくとも労働者団体のほうは労働省はあっちを向いている、」あっちというのは経営者です。経営者の方の色がついている。「こういうふうに歴史的に」「事実上そういうことをいうのに理由のある面も、僕はあると思います。」今井さんは確かに労働省があっちの方に色がついていると言われるだけの事実上の原因があるのだ。これは今井さんが言うので、小林進が言うのではありませんよ。「しかし、これはやはりこれからの経済のための絶対に労働大臣の中立性というものが」労働者の側から「信用されなければ困るのでしてね。その意味から云いますと、」「福永大臣はとくにいろいろと苦労をされて来ておりますから、その点は私は一番ご期待申し上げられると思うのだけれども、」と、ここでちょっとあなたをほめているわけだ。この点、特に一つ、決して労働者の側につけとまでは言わぬけれども、従来労働省が歴史的に経営者側の色がついていると労働者側から患われているその不信用だけは一つ挽回するようにしてもらいたいという、これは今井一男さんの一人の意見じゃない。これはもう大衆の意向です。もう大ぜいの考え方です。これに対してあなたが、いやいや非常にありがたい御忠告でと低姿勢で受けておられるのでありますが、(笑声)この問題を私はこの委員会を通じて一つ明確にお答えを願いたいと思うのであります。
  175. 福永健司

    福永国務大臣 労働大臣のあるべき姿としていろいろなことが言われると思いますが、ただいま小林さんの御指摘になったことは、その最も大切な部分であろうと存じます。私は今井一男さんの言葉を引用されて小林さんが申された点につきましては、全くそうありたい、こう念願しておる次第でございます。  過去の労働省ないしは労働大臣について今井さんもちょっと触れておられるのであります。それがどうであったかということは私も申し上げることは御遠慮申し上げますが、必ずしも今井さんのおっしゃっているようなことであるかどうかは、これはいろいろ見方があろうかと思いますが、しかしそれはそれといたしまして、今後労働省ないしは労働大臣たる私のあるべき姿、とるべき姿勢といたしましては、今おっしゃる通りに私も考えて、重々心いたして臨みたい、こう考えております。
  176. 小林進

    小林(進)分科員 次に、一つ日米の箱根会談の問題ですが、これはこの前も出ました。政府、労使三軒で委員会を設けて、日米で一つ労働賃金の問題等を話し合ったらどうかという話があった。これに対しては前にだれかが質問をいたしまして、大臣は、それほど強い要望があったことではないというふうな御答弁がありましたから、その問題はおきまして、いま一つ、日米会談のことですが、これは中山伊知郎さんがお話になったことです。それはアメリカのヘラーさんという大統領経済諮問委員会の会長さんが中山さんにこういうことをお話になった。日本には所得倍増計画という大へんなものがある、非常にりっぱなものだそうだが、一体それは年次計画で産業別に賃金をどこまで上げるようになっているのか、これを教えてくれ、こういうヘラーさんの発言があって、日本側ではどうも返答ができかねて、まあまあということでごまかしてしまった、そういうことで非常に恥ずかしい思いをしたという中山さんのお話があった。これは大臣もお耳に入って、こういう話に対して福永大臣は、いや、産業別、年次別に賃金引き上げの計画がないわけではない、こういうふうにあなたはお答えになっているのであります。ないわけではない、と言っておられますが、この所得倍増計画にちゃんと裏づけをする賃金の年次計画があるということを――あなたが、ないわけではない、ということは、ある、ということでありますが、それを一つ御説明をいただくと同時に、その資料も一つできればちょうだいいたしたいと思うのでございますが、御答弁をいただきたいと思います。
  177. 福永健司

    福永国務大臣 そこのところ、私も苦しい言葉でたしか表現していると思います。正直に申し上げますが、所得倍増計画というものを経済企画庁を中心にして世に問うておるわけでありますが、率直な話、そういうものが出る最初から私は内閣で関係いたしておったわけではございませんが、所得倍増というからには労働者についてどういうようにということは、これはかなり中心的な問題であるべきだと私は認識をいたしておるわけでございます。そこで実はよく小林さん御存じの通り、企画庁の方では何年後にどうということは発表いたしておりますが、率直な話年次計画というものは出しておらないわけでございます。そこで私ども実はこの点につきましては、しばしば向こうで何年後にこうという数字を出しておりますだけに、われわれと見解の調整をして、その通りいくかいかぬかは別といたしまして、やはり目安というものを作らなければいかぬじゃないかということを、実は私就任以来幾たびか申しておるのであります。そこで、ないわけではないということは、具体的に明確にお示しするほどのものはないけれども、そういう方向への努力を私は私なりにいたして、適当な機会にそういうことが明らかにされることが望ましいというような気持を言うたつもりであります。たしか中山さんがその種のことを私に言われたことがあるし、私も同感でございますので、そういう言葉が出たわけでございます。  そこで、今資料というようなお話でございますが、やはりそういうことをいたしまするには、確信をもって申し上げなければなりませんし、また関係の方面でよく打ち合わせてやらなければいかぬと思います。先ほど小林さんが御指摘になりましたように、率直な話ですが、政府のこの種の総合的なものを作り上げるときに、あまり労働省の言うことをよく聞いてやったというまでには十分になされてなかったような気がするわけであります。ところが最近ではだいぶ考え方も変わって参りまして、人の面等をかなり重視した総合計画の樹立という方向へ、十分とは申せないかもしれないがやや行きつつある。私はひたすらにそういうような意味での努力を今後もいたしたいと思いますので、小林さんが言われる、ないわけではないということはあるということだとおっしゃいますが、そこいらを苦しい言葉を使っておりまする程度のことであるということにぜひ御理解をいただきまして、やがてそういうように申し上げ、ないしは見ていただくについては、やはり確信のあるものでなければならぬ。そこへもってきて、もともと私ども就任以前にこういう計画が立てられて何年後かの目標は示めされておるのでありますが、その後思ったとはだいぶ違うようなことで、若干引き締めも行なうというようなことで、何やかやでここのところちょっとなかなかむずかしい事態でございます。しかしそれなるがゆえにどうも今おっしゃったようなことについては計画がないということであってはなりません。現在の苦悩をそのまま申し上げて大へん恐縮でありますが、御理解いただたきたいと思います。
  178. 小林進

    小林(進)分科員 こういうことで大臣と論争をいたしておりますと、せっかくの時間がなくなりますので、きょうは一つ問題点の違いだけ、問題のある点だけを明確にいたしておきまして、これはまた他の委員会に持ち込んで一つ継続にするということで次へ参りたいと思うのであります。  これもやはり問題を明らかにしておきたい。これはさっきも本会議場で外務大臣が言われた。日本が低賃金だということから外国でのそういうトラブルというか、あるいは申し入れというものは今までないと外務大臣は言明をしておられましたが、私ども新聞紙上で見たところでは、先般、期日は忘れましたが、外務大臣から、日本の賃金の問題についてアメリカにおいてどうもいろいろな問題が起きているから、PR用に労働省一つ早急に日本の賃金に関する資料といいますか、アメリカ側を説得し得るようなPR用の資料を作ってくれるようにという申し入れがあったことを私どもは新聞で拝見いたしました。それが事実かどうか、この点が一つです。  いま一つは、やはり労働大臣のお言葉の中に、雑誌に出されたあなたの座談会の記事の中に、対米輸出の問題でいろいろアメリカでトラブルが起こっているが、 このバック・グラウンドには労働問題が介在をいたしておる、この介在いたしておりまする労働問題の中心は、いわゆる国内における賃金格差の問題である、だからこの格差を縮小するということが、日本の今日における非常な急務だと私は考える。これは大臣のお言葉そのままを私は今読み上げたわけでございます。これによりますると、日本の賃金問題がアメリカでもろもろのトラブルを起こしている根本になっているということを、労働大臣がお認めになっているという証左になる。外務大臣は、日本の賃金問題がアメリカで問題になったことは、外国から非難を受けたことは一つもないと先ほどから言われておる。同じ内閣の中でこうした不統一の状況はどこにあるのか、これを一つお答えいただきたいと思うのでございます。
  179. 福永健司

    福永国務大臣 まず最初の、小坂君が閣議で、日本が低賃金でないという資料、それをアメリカ側に提供するような措置をとってくれ――実は綿製品の関係で、賦課金の問題等でアメリカで御承知のようにいろいろ論議されておりますが、まだ小坂君が言いましたときには、これから論議がされるというつもりで小坂君は言ったわけであります。実際は、小坂君が言いましたときには、その論議は、向こうでは時差の関係もあって始まっておったのであります。私はこの点につきましては、記者クラブの皆さんからも実はちょっとしかられたのであります。私はこの点について別に何も言わなかったのですが、小坂君が記者会見で言うたのだそうでございますが、実際のタイミングからいたしますと、そのときに何か言っても、もう向こうじゃそれをやっておったので、事前のそういう措置にはならぬわけでございます。これは事実はそうだったのです。  そこで小坂君の申しました意味もそうであろうと思いまするし、私が外務大臣の言葉を聞いて、そうだという意味に解しました点は、別に低くないということでなくて、日本の賃金についての正しい事実を、間違えないように認識されるような措置を何かとったら、こういうように私は理解をいたしておったわけであります。そのことにつきましては、もう事実を事実のように伝えることについては、今までもやっております。しかも、先ほど申し上げましたようなタイミングでございますので、急にと言ったって、むしろ時間的には若干こっちの方がずれている。また、実際におきまして、その種のことは、それまでにも正しい認識を与えるための措置はとっておりますので、急にその種の話が出たからどういうことをしたということは、実際にはないわけでございます。ないわけでございますが、まあ、ああしたことも伝わっておりますので、私どもとしましても事態を明らかにしておきたいと思うわけでございます。ゴールドバーグの方かから箱根会談のときにも前もって言って参りました文章の中に、これは言葉は一字一句間違いないかどうかわかりませんが、意味といたしましては、私の記憶しておりまするのでは、日本の低賃金について誤解が支配的であるからというような表現があった。誤解が支配的である、そういう意味においてお互いに情報を提供し合ったり、正しい認識を得て、その誤解のあるようなことについて適切な方法を講じようという意味から、向こうでは一種の提案をしてきておったわけであります。ところが、こちらに参りまして、アメリカの言うような形のままのタスク・フォース式のものであることを別に固執するわけではないと思うというので、後日共同声明式のものの中に織り込みましたように、賃金はもちろん含みますが、いろいろ労働事情について情報の交換等をやろう、それも向こうで誤解が支配的である云々ということは、そのことが貿易を拡大する上において思わしからぬことになるということと思い合わせての向こうの表現であると思うのであります。それでありますだけに、私どもといたしましては、事実は事実として向こうに認識せしめて、そうして貿易は貿易で拡大しなければいけない、日本からの輸入を向こうで制限するような措置にさせてはいかぬということで、私どもはむしろ日米貿易の拡大という観点から、先ほど申し上げましたような情報の相互交換等をやろう、こういうような表現にいたしたし、事実それを望んでおったわけでございます。  そこで、後段の質問と関連するわけでございますが、賃金につきましてただいま小林さんが御指摘になりましたようなお言葉も、雑誌か何かに載ったのにあったかと思いますが、要するに、そういうような誤解が生じているという事態が貿易の障害になるということ、それがトラブルというような言葉になって表現されておるのかと思います。今おっしゃいました前後をずっと読んでみないとよくわからないのでありますが、終始私の頭の中にありますることといたしまして、日本の賃金事情を正しく向こうに認識させなければならぬ、こういうように考えておる次第でございまして、先ほどの本会議でも申し上げましたように、低賃金と申しましても、どこと比べるかによって低賃金であったり、高賃金であったりということでございます。しかし、世界の工業水準の高い多くの国国の中で、一般通念として見てどうであるかということになりますと、そんなに高い方じゃないということは言えるわけでございます。そこで、私がいつも申し上げておりますように、できるだけ国民経済の中で適当な均衡を保ちつつ、健全な足取りで賃金が上がっていくことが望ましい、こういうように考えておる次第でございます。そういうことに漸次なっていくことを期待するものであります。  一面、現実の問題といたしましては、現在の日本の姿のままで、しかもそれが誤解でなく、正しく理解されることによって、日米間の貿易拡大ということについてはぜひ望ましい結果が招来されることを期待するのであります。そういうことに理由がつけられて、日本からの輸入が制限され、ないしは賦課金が課せられるというようなことは、私といたしましては、これは非常に望ましからぬことであると思う次第でございます。そのことが、賃金は安いままでいいとか、、ぜひ安くしておこうというようなことを考えておるということでは毛頭ない次第でございます。
  180. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、大臣のお言葉は、切り詰めて言えば、日本の賃金は安くない、ただアメリカの方に誤解があるのだ、こういうことに集約されるかと思うのであります。  それでは一つ労働基準局長にお伺いしたいと思います。あなたは、労働基準局長の会議を昨年末かおやりになったときに、大体こういうお話をなさった。わが国の賃金は、国際的には、半分は低賃金でないが、半分は低賃金だと批判されても仕方がない情勢にある、その半分をわれわれの努力で解消すべきものと信ずる云々、こう言われているが、言葉のあやはあるけれども、半分は大体国際水準並みだが、あとの半分は国際的に見ても非常に低賃金、こういうことですね。私はまだあなたの方が良心的だと思う。今。日経連と総評で賃金論争をやっております。お互いに白書を出しております。私はこれに対しても多くの意見を持っております。これはぜひとも私は、日経連の主張と総評の主張を二つ並べて、大国に明確な結論を出してもらいたいと思っておるのでありますが、きょうは時間がないから、大企業の、日経連の賃金論争に対する批判はあとに回します。けれども、一言で言えば、日本の大企業ほど高金利を払っている企業はありません。日本の経済ほど不合理な財政投融資をやっておるものはありません。しかも彼らは、国内優先で、物が売れるときにはちっとも貿易に力を入れないで、国内にばかり力を入れている。やや輸出が下がりぎみのときには、自分たちの利潤をそのままにしておこう、世界一高い金利もそのままにしておこう、企業内の利益もそのままにしておいて、ただちょっと貿易が不振になったら、賃金だけはこれを押えようというがごとき、こういう日経連的ものの考え方などというものは、私どもはとうてい了承することができない。また、そういうことを労働省労働大臣が批判できないというようならば、私は労働大臣としての資格はないと思うのでありますが、その問題は後日にまた楽しみを残すことにいたしまして、ただ私は基準局長に言いたいのだが、わが日本は雇用と賃金の二重構造だ。格差の問題です。これまた、わが日本は、いわゆる先進国として国際的に恥じなければならぬ重要な弱点です。皆さん方が安くない、安くないと言うときには、それは大企業の一番いいところだけを持ってきて、そうして国際的にPRし、アメリカに宣伝したりして、安くない、安くないと言われるが、その底にはあなたの言われる暗い反面がある。むしろ多くの大衆が、こうした低賃金に泣かされておる。この問題はどうですか。あなた、明確に答えていただきたい。あなたが明確に答えたその答えが正しければ、大臣の答えがうそになります。
  181. 大島靖

    ○大島政府委員 私は、日本の賃金を国際的に見た場合、二つのことが言えるだろうと思います。一つは、賃金構造を国際的に見ました場合、日本の賃金構造の諸外国に比べての一つの特徴は、低賃金層か多いということであります。大体外国におきましては、平均と中位数がほぼ一致するのでありますが、日本の場合は中位数が低い方に回っておる、こういった特殊の賃金構造を持っております。この点は残念ながら事実でございます。と同時に、国際貿易上、日本の賃金が低い、 ソーシャル・ダンピングだ、 こういった非難は、私は必ずしも当たらないと思います。現在国際貿易上におけるソーシャル・ダンピングとか低賃金論、これについては、やはり各国の国民経済全般の生産性との関連において批判さるべきものであるということは、これは国際的な定説であろうかと思います。そういった意味では、私は必ずしも非難さるべき低賃金とは思わないのであります。  ただ総括して申してみますと、何と申しましても、日本の特殊な賃金構造、ことに企業規模による賃金格差、こういった問題については、私は労働行政としては今後とも努力していかなければならぬ。そういった意味におきまして、私も、全国の基準局としては一致して中小企業の労務管理の近代化、労働条件  賃金のみならず、災害率の低下にいたしましても、労働条件の向上に努力すべきものである、こういった意味合いにおきまして、私、かつて全国の基準局長を激励いたしたことがあるのであります。私の申しました気持は、以上申しましたようなことであります。
  182. 小林進

    小林(進)分科員 あなたが日本の賃金構造を特殊なものと見られて、そうして低い賃金層が多いということを率直に認められたのは、あなたは非常に正直です。この問題が、いわゆる賃金問題の本質なんです。私は、労働省はわが日本の賃金構造を二つの面でごまかしていると思う。これは労働行政の最大のごまかしです。これがまた、私が先ほどから質問をいたしております、いわゆる経団連、日経連側に色をつけていると思われているというのは、この二つの点です。その二つの点と申し上げますのは、一つは、今労働基準局長の言った、中小企業等を中心にしたこの大ぜいの低賃金層に対して、これを今も言うように、労務管理をするとか、あるいは厚生行政やら労災やら、あるいは健保やら、そういう面に問題を転嫁する、口をごまかそうとして、この低賃金層の賃金それ自体を引き出している。日本の賃金はこの通り二重構造なんだ。――なるほど、私は、大企業の賃金が高いとは言いません。言いませんが、一応政府の言い分を認めるとしても、その陰にはこれほど目に見えない低賃金層がいるんだということを、まともにそれを出して国際的にも報告しようとしない、表面に出そうとしない。それを労務管理というごまかしの方法で隠蔽しようとしている。しかも、その隠蔽しようとする一番悪い手段が、先ほどから言われているにせの最低賃金法であります。業者間協定と称するこれを、あなた方は隠れみのにしている。隠れみのにして、そうして三年間で二百五十万という業者間協定の中に最低賃金法を実施するのだというような、とんでもない目標を掲げて、そして今まで百二十万の業者間協定の賃金層ができたと、こう言われる。その人たちに払っておる賃金幾らですか、日当二百円から二百三十円、最近は高くなりましたと言うが、その高くなった賃金幾らかというと二百七十円だ。一日二百七十円に勘定したところで一カ月幾らになりますか。この業者間協定、あなた方のお作りになりましたこのにせの、偽りのいわゆる最低賃金法によって縛られている労働者の九〇%は、みんな月八千円以下の低賃金です。あなた方は低賃金で縛りつけるために、百二十万を二百五十万に引き伸ばそうとしていられるという。これは労働者を、いわゆる低賃金のワクで業者閥協定あるいは最低賃金に名をかりて押えつけている。実に労働行政の悪政です。これはごまかしです。これが一番私は悪いと思っている。これが一つ。それからいま一つは、あなた方に時間がないから私は一つ論争の種だけここに置いていくのですから、ここで敗北したわけじゃない、ほこをおさめるわけじゃないのであります。いま一つのごまかしは、大企業の賃金は非常にりっぱだといってPRしておられるが、そのPRをしている大企業の中に含まれているいわゆる臨時工、社外工です。同じ仕事をしながら、しかし大企業へいけば大企業へいくほど臨時工や社外工が多い。こういう人たちはみんな同じ仕事をしておりながら、もらう賃金はその半分もいっていませんよ。私は、時間があればこの臨時工の問題についてもっと皆様方に資料を申し上げて質問したかった。もし労働省がほんとうに人間を尊重する、労働者を尊重するというならば、この景気が興ってきた今日のこの段階にこそ、臨時工や社外工をなくするためにもっと力を注がなければならぬ。労働大臣、一体あなた方はこの社外工や臨時工をなくするためにどんな労働行政をおやりになりましたか。なるほど本工というものは、それはいわゆる所得倍増に基づいて、あるいは賃金は所得倍増ほど上がっていかぬけれども、皆さん方がPRするだけのいわゆる賃金はもらっているかもしれません。あるいはそういう厚生行政やレジャーを楽しむような設備も大企業は作り上げるかもしれません。けれども、これは私が言うのじゃない。今井一男さん――今井さんばかり名前を出して悪いけれども、この臨時工というものはどういうものなんですか。これは中小企業や零細業に臨時工というのはいません。これは大企業、五百人から千人、企業が大きくなればなるほど、この臨時工というものが出てくる。ある企業によっては臨時工は半分以上もいる。そしてこれは捨て扶持です。首切りも自由です。退職金も要らないのです。こういうものを置いて、そして景気不承気の調整役にしている。そして企業がぐんぐん景気よく高利潤が上がるときには、この諸君を夜に昼をついで、一生懸命に低賃金に働かして搾取しておいて、そしてもうける。今度は不景気になってくると、もう用事がないからといって、すぱっと切ってまう。ぱっと切ってしまう。こういうような労働行政が日本以外のどこにありますか、日本以外にありますか、先進国にございますか。ところが、本工、いわゆる本職、本採用と称する職員諸君も、こういう臨時工を犠牲にして、この諸君がいて不景気のときに首になっているから、本工も安心していられる。いわゆる本雇いの職員も安心していられる。経営者の方もあるいは木工の方も、こういう変則な形のものに対して手を打とうとしない。これに労働省も便乗しておる。本工、いわゆる労働組合の方からも、こういう変則なシステムはあまり責めてこない。経営者の力はこれを隠れみのにして、本工のいいところだけは、賃金がりっぱでございますの、何がりっぱでございますのと、PRの材料を作っておる。これを労働省もそのままにしておるじゃありませんか。あなた方は、いわゆる中小企業者や零細な企業者には、今申しまするところの業者間協定などというにせの最低賃金法で、みな食えない賃金を押しつけている労働行政。大企業や日の当たる大きな産業には、社外工、臨時工あるいは日雇い労務者というものの存在を認めて、そうして大企業にサービスをしている。日本の独占にサービスをしておる。私はこう考える。そうしてこの雇用の二重性、賃金の二重性というものを温存する労働行政をおやりになっておる。だから日本の労働行政は、何といっても経営者の色がついていると断ぜざるを得ないのであります。大臣、いかがですか、私の主張に間違いがございますか。
  183. 福永健司

    福永国務大臣 賃金についての二重構造を、私たちは望ましいものとは考えておりません。それを温存というか、そういうものの姿が残っている限りにおいて、ある程度そういう表現をされるのもやむを得ないとも思いますが、われわれがこれを欲してそういうことにいたしておることでは毛頭ないのでございます。そういう方法において法的に疑惑のあるような、基準法上処置すべき必要のあるような事態については、もちろんきびしく臨んでおるわけでありますが、その他の行政指導といたしましても、できるだけこういう例外的な姿のものが少なくなるようにということは、常時深い関心を持ってそういうことにやっておる次第でございます。なお最低賃金につきましては、業者間協定という形における最低賃金、これはごまかしだという御表現でございますが、これは必ずしもそうではないのでございまして、最低賃金にもいろいろな形のものがございまして、現在業者間協定という形のもの以外の労働協約に基づくもの、その他あるわけであります。実際の数字において御指摘のように業者間協定によるものが多い、これは現状でございますが、何しろ労働省といたしますと、今この普及について一生懸命やっておるところでございます。なお多少の時間をかしていただけば、漸次改善されていくことになると思う次第であり、事実賃金においてもそういった方向での検討も願っておるわけでございます。なお賃金につきまして先ほどから、どうも高いように宣伝しておるかのごとくおっしゃるのでございますが、われわれは決してそういうことはなのいであります。ただしかし妙な誤解があって、それでわが方の貿易が振わないようになるというようなことになりますと、これは労働者諸君のためにもなりませんので、そういうようなことにならぬような措置はある程度いたしておるわけでございます。それにいたしましても、その際において事実と違ったようなことを言って、ごまかしなどをあえていたしているところは毛頭ないわけでございます。先ほどから労働省の諸君を、日経連の方の味方のようなことをしばしばおっしゃるのでありますが、決してそうではないので、しごく公平に、むしろ労働省の役人は非常に労働者諸君と接触をよくしておるのであります。経営者諸君との接触はあまりないのであります。にもかかわらず、そうあまりおっしゃると、自然本人たちもそんなような気になると思われるのであります。大臣としてぜひお願いしたいのですが、せっかく公平にやっておるのに、あまりそういうようにおっしゃると、そういう者はないと思いますけれども、中には、人間ですからひょいとそういう心得違いをするようなことになるといけませんから、どうぞ一つ正しく理解をしてやっていただきたいと存じます。
  184. 小林進

    小林(進)分科員 時間もありませんから、私は次の問題に移ります。ただ、今の最低賃金法があって今日利益を得ておる者はだれか。それは中小企業者です。中小企業の経営者は、この最低賃金法があればこそ、この最低賃金法によって辛うじて労働者をとどめている。これがなければ、彼らは求人難に陥ることは火を見るよりも明らかであります。だから経営者が喜んで今最低賃金を作りつつある状況でございまして、それは決して経営者と接触があるとかないとかいう問題ではございません。労働省最低賃金法をしいたことで、彼らは感謝感激をいたしておりますけれども、反面、これに縛られた労働者は何ら賃金が上がっていない。その上がっていない証拠に、それでは基準局長に聞きますが、この最低賃金法がしかれて今日まで、大体六百件近くも業者間協定が結ばれているはずですが、その間に、この所得倍増の物価の値上がりの中に、最初結んだ業者間協定で改定をせられて、賃金を改めた業者が幾つありますか。私の調査によれば二十もありませんよ。ほとんど二百三十円か二百四十円の低賃金で結ばれたままに来ているというのが、私は今日の実情ではないかと思う。これは私の調査であります。いかがでありますか。
  185. 大島靖

    ○大島政府委員 最初最賃法施行当時できました最低賃金で、その後改定になりました件数は五十五件でございます。
  186. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、一割だけが辛うじて改定されたわけですね。
  187. 大島靖

    ○大島政府委員 大体金額分布を見てみますと、最初できましたころには二百円以下のものがなかなか多かったのでありますが、その後逐次上昇いたしまして、最近できます最低賃金につきましては、二百円前後のものは、特殊の例外を除いてほとんどございません。最近はだんだん二百三十円、二百五十円というふうに上昇いたして参っております。従前のもので特殊に低いもので改定いたしましたのが、今申しました五十五件でございます。なお最低賃金の結果賃金が上がりましたものは――適用労働者のうちで大体一〇%から四〇%のものがこの最賃額以下の労働者でございまして、これが大体八割ぐらいであります。その八割の労働者の中で賃金が大体一〇%から三〇%程度上がっておりますのが、これまた八割というような数字になっております。
  188. 小林進

    小林(進)分科員 この問題もまたこれで一つ留保いたしまして、次にいま一つ、さっきも辻原議員が林業労働者質問をいたしておりましたし、その前には野原君が農村の季節労働者質問をいたしておりましたが、私はこれに関連をいたしまして、両君の質問に出ない部分だけを一つ質問をいたして――質問というよりは、これも労働省と農林省の御注意を促しておきたいと思うのでありますけれども、最近は農業従業者というものが非常に変貌をいたして参りました。形が変わって参りまして、農村で申し上げますと、池田さんなんかも非常に大きな間違いを犯して、農業従業者も所得がふえたと言われるのでありますが、昭和三十六年度の十月の統計によりますと、農家の一年間の平均収入が四十二万何がしなんです。その中で農業所得が五三・二%なんです。農業外の非農業の収入が四六・八%です。ですから農家といいながら、その収入の実態は、ほとんど農業以外の労働賃金か、あるいはたまに第三種営業に基づく収入もあるが、ほとんど労働賃金で農家の所得はでき上がっている。なおそれを詳しく分析してみますと、農家は御承知のように専業農家、第一種兼業農家、第二種兼業農家と三種類あります。専業農家は農業の所得によって生活を保っているものでありますから、これは農民であることに間違いない。これは問題ありません。第一種兼業農家というのは主たる収入が農業に基づくものでありまして、百円の収入があれば五十円以上の収入は農業に基づいているのでありますが、これも一応この際いいことにいたしましょう。第二種兼業は、御承知のように主たる生計費、所得を農業以外の収入でまかなっている。農業の方はアルバイトだ。これはほとんど補助的な収入にすぎない。これを第二種兼業農家と言っているのでありますが、この第二種兼業農家というものがだんだん農業にふえて参りまして、今日ではもう三割何分近くになっている。そこで一体第二種兼業農家というのは、厳密に言って農民なりや労働者なりやという問題であります。これが労働者であるか、農業従業者であるか、中小企業者であるかという区別は、主たる生計の所得、収入生活のかてを、一体何の事業によって得るかによって区別されるのだと思う。そういたしますと、今農村の中の三割以上を占めているこの第二種兼業というものは、少なくともその生計のかて、生活のかてをほとんど労働によって得ている。農業以外の収入に置いている。これを省で分ければ、農林省の管轄に置くというのは間違いないが、これは当然労働行政の対象にすべきものと私は考えるが、こういう面について労働省は一体御研究になったことがありますか。しかも第二種兼業農家の生態、収入の内容その他を調査になったことがあるかどうか、一つお聞かせを願いたいと思います。
  189. 三治重信

    三治政府委員 第一種兼業農家その他農村の農家の関係につきましての調査は、労働省としてはやっておりません。政府全体としてやはり農林省の所管としてやっております。先ほど野原先生からもありましたように、農林省は従来から伝統的に、農家がどういうふうに変貌するかということで、農業の就業形態を初め種々の調査をやっておるところでございます。従ってそういう資料をわれわれも利用いたしまして、農村の労働力の移動という部面で研究はいたしております。そして第二種兼業農家というものは、離村をする労働力ではなくて、在村して第二次産業、第三次産業に就労を変えていく。もちろんこの方たちが第二次、第三次産業に就労をして、雇用労働者として働く。そしてその生活の主たる収入を勤労所得で得るということになれば、当然それは労働行政の対象になっているわけであります。事実、監督署におきましても、安定所におきましても、こういう事業所、商店というものを対象にしていろいろ労働行政を行なっているところでありますから、労働行政の対象にもなっているというふうにお答えできるかと思います。
  190. 小林進

    小林(進)分科員 今おっしゃるように、第二種兼業が、ここに数字がありますが、毎年々々ふえて参りまして、三十五年度ではもう専業農家が三四・二%、第一種兼業が、三三・七%、第二種秘兼業が三二・一%であります。これはまた三十六年度になるとぐっと変わってくる。だんだん第二種がふえてくる。今、三治さんの話によると、これは在村だからやはり農林省の管轄にまかしたらいいじゃないか、こうおっしゃる。これは実に危険な考え方だ。この人たちはもう完全なる賃金労働者なんです。賃金労働者であって、なぜ農村に住んでいるかというと、これは日本の政治のまずさ、いわゆる住宅の問題です。住居の問題が解決しないから、住居があるということだけで、この人たちは農村にいる。朝の早いのは四時か三時に起きて、一里も二里も道を歩いたり、そして汽車に乗ったりして五里も六里も十里も先の自分の職場へ急いで行く。しかもこの人たちはまずほとんど臨時工と言っていい。その職場における最低賃金で働かせられている。生活のために少し働こうといえば、いわゆる時間外の労働をして、八時か十時ごろ、うちへたどりつくのは十二時の後である。朝三時に起きて不眠不休で仕事に行く。これが全部というわけじゃございませんけれども、そういうのもあって、実にそれは気の損な生活状態です。それをいわゆる農林行政の方では、御承知のようにこれから二町君反歩の農家を作るのだ。粗収入百万以上の農家を作る、自立農家を作るということで、ほとんど農林行政からはみ出している。ところが今おっしゃるように、労働省の方も、あれは在村で農村に住んでいるの、だから、それはやむを得ない、おれの管轄じゃないと言ったら、これはとても浮かばれませんよ。そういう政治の盲点が今行なわれているのですよ。重大問題です。こういう人たちは、死んだら労働大臣のところに化けて出るかもしれない。そういうくらい不安定、悲惨な状況の中でいるのでありますから、その実態をつかまなければならない。その職場へ行けば職安がやっているだろう、労働基準局がやっているだろう。一体この往復の時間まで入れて、労働基準局は時間をはかっていますか。職場の時間だけじゃないですか。そんなことであたたかい労働行政ができるなどというのはいばれないのです。  残念ながら六時の約束の時間がありますから、きょうはこれで失礼しますが、この問題は大臣、後日またあらためて質問申し上げることにいたします。これで私は終わります。
  191. 中村幸八

    中村主査 次は田口誠治君。
  192. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今、日本の労働者労働基準法の完全実施、特に中小企業の労働者はこの点を強くこいねがっておるわけです。ところが現在の基準行政の実態を見ますと、いかにも貧弱であるということなんです。これは職業安定所の方もそうでございまするが、非常に貧弱である。そしてこの原因は、現場におる公務員の諸君は非常にまじめにやっておりまするけれども、とにかく仕事過剰で定員不足ということから、せっかく労働基準法がありましてもこれがものになっておらないということで、その点を非常に強く要望しておるわけでございます。  そこで私は数字的にもお伺いをして、いかに現在の労働行政が停滞しておるのか、無理であるかということをお聞きして、あとから労働大臣に今後の労働行政のあり方について御所見を承りたいと思うわけです。戦後昭和二十二年、三年ごろよりば、事業所数なんかも非常にふえておりますが、昭和三十六年度数字を持っておりませんが、昭和三十六年度は適用事業所というのはどのくらいになっておりますか。
  193. 大島靖

    ○大島政府委員 百三十六万七千事業所あります。
  194. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまの数字は三十五年の数字だと思いますが、違いますか。
  195. 大島靖

    ○大島政府委員 三十六年一月で百五十四万一千七百六十九事業所になっております。
  196. 田口誠治

    田口(誠)分科員 労災適用の事業所はどのくらいになっておりますか。
  197. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま資料によりまして調べまして、後ほどお答え申し上げます。
  198. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでは次に、労働基準法の適用を受ける事業所が、ただいま御答弁のありましたように非常に増加をいたしておるわけでございますが、百五十四万余にも相なっておるわけです。二十四年の数字を見ますると、五十九万六千四百八十という数字になっておるのですが、それが三十六年までに至りまして非常に事業所がふえておるわけなんです。ところがこの事業所を監督するところの監督官の数でございまするが、これは逆に減っておるわけなんです。この数字は一応つかんでおいでになりますか。
  199. 大島靖

    ○大島政府委員 現在基準局の総定数は八千四百八人、うち監督官の数は二千三百六十二名であります。
  200. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ここ五、六年前でも十年前でもよろしいのですが、対照比較のできる数字を出していただきたいと思うのですが、昭和二十四年ごろであれば、大体基準法ができまして労働組合活動もおさまった時期でございますので、その時期の数字と対照できると一番いいと思いますが、わかりませんか。
  201. 大島靖

    ○大島政府委員 昭和二十五年の数字を申しますと、総定数が八千三面十名になっております。
  202. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣も局長もよくその点を考えていただきたいと思うわけでございますが、昭和二十四年、二十五年に比較をいたしまして、事業所は百万ほどふえております。逆に監督官の数というのは六千人ほど減っておるわけなんです。そこで完全な監督行政ができるかどうかということを考えていただけばわかりますが、私ここに東京の向島署で調べたところの数字を持っておりますが、あの管内には適用事業所数が一万一千四百八十三事業所ありまして、監督官はたしか九名のはずでございます。この一万一千四百八十三事業所を九名で監督しようといたしますれば、一人当たり一千二百七十六事業所を持たなければならないことなんです。これは常識考えていただいてもわかりますように、このようなたくさんの事業所をかかえておって、労働の基準監督というものは絶対にできないわけなんです。それでこういうような状態にありながらも定員増を獲得できないのはどこに支障があるのか、それともその実態を訴えて予算要求をなされておらないのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  203. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど御指摘になりました基準局の人員の減少につきましては、今お尋ねのありました昭和二十五年をもとにいたしますと、総人員が今申しましたように八千三百十名が八千四百八名に、これはふえております。そのうち監督官の数は二千五百九十五名から二千三百六十二名、すなわち若干減少いたしております。これは事務竜の増加に伴いまして、専務官と監督官の振りかえ等もございましたので、総定数では若干ふえたのでありますが、監督官は若干減少いたしております。こういう実情でございます。なお監督官ないし基準局職員に対する事業所の平均でございますが、全国平均いたしてみますと、職員一人当たり百六十六事業所になっております。ただ今御指摘のように、都会地におきましては監督官ないし職員一人当たりの事業所数というものは、相当膨大な数に上るわけであります。従って私どもとしましては、全国的に業務量と監督官ないし職員の数のあんばいを再検討しなければならぬ段階も参っておるのではないか。たとえば川崎の監督署を例にとってみますと、これは優に地方の局に相当するだけの業務量がありますような現状でございます。そういった点で、今後全国的なあんばいも逐次進めていく必要があると思います。また同時に全般といたしましては、何と申しましても国家公務員全般の人員の抑制という関係もございますし、たとえば労災業務なんというものはどんどん業務量がふえておりますが、これはいかんともしがたい問題でありまして、こういった面における人員増は、私は必要であると思います。と同時に今御指摘になりました監督の点等につきましても、人員増が非常に困難ではありますが、同時に行政のやり方、集団指導でありますとか、そういった中小企業全体の労務管理水準、労働条件の向上を全般的に考えていく、こういう形の行政のやり方でもって、この膨大な中小企業の対象に対処いたして参りたい。今後とも先生の御心配の点につきまして、私どもも人員、予算ともなお十分ではございませんが、懸命の努力を続けたいと思っております。
  204. 田口誠治

    田口(誠)分科員 昭和二十五年から三十六年に比較をしての今公務員の定員数を回答されたわけなんですが、これは労働基準局ができた当時から、非常に幾つかの仕事がふえておるわけなんです。事務量がふえておるわけなんです。先ほどから指摘のあったところの最賃法の問題についても最近ふえたものでございまするし、こういうようなことで数えあげれば幾つかありますが、省略いたしますけれども、とにかく事務量がふえておるわけなんです。この事務量のふえておるのに対してなかなか定員はふえておらない。特に監督官に至っては、全国平均が百六十六事業所というお話でございまするけれども、そうだとすれば、しからば大都市の一千余の事業所を持っておるところと、この百六十六の平均になるとするならば、これは相当人事の交流というような面も考えてしかるべきだと私らには考えられるわけなんですが、これには何か支障となる点があるのか。大きいところはほうっておいても、あまり労働者の方からも文句がこないというのでほうってあるのか、そういう点について御解明願いたいと思います。
  205. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま全国平均数字を申し上げましたのは、基準局の職員一人当たりでございまして、監督官一人当たりにいたしますと五百八十二事業所となります。しかし先生御指摘のように大都市におきましては、非常に膨大な対象を持つわけなんでございます。ただ大都市の場合は対象になります事業所がかなり密集しております点、あるいは交通の利便、こういった点で必ずしも対象事業数だけで監督官ないし職員の配置を考えるわけにもいきませんが、今御指摘のような点は、今私が川崎の例をとって申しましたが、全国的に都市と農村地域との間にかなり再配分の必要もあると思うのであります。ただこれは従来の経緯もございますし、今申しました監督の態様もございますので、なかなか一挙には参らないのでありますが、逐次こういった面で整備を進めて参りたいと存じます。
  206. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これを大臣、お聞きになって、今後の労働行政としてどういうようにお考えになりますか、お承りしたいのですが、とにかく労働基準行政は、これは特に中小企業の労働者にとっては非常に大事な仕事でありまして、そうしてこれにたよるものは非常に多いわけなんです。これを軽く行政をされては、日本の労働者は浮かばれないわけなんで、こういうような実態にあるから来年度、また来年度を待たずしてでも、予算の補正を行なって定員増をやるというようなお気持におそらくなっていただいたと思いまするが、一応この点について御解明いただきたいと思います。
  207. 福永健司

    福永国務大臣 田口さんが強調されまするところ、私もまったくその必要性を強く感ずる次第でございます。従来ともこの人員につきましては折衝もいたしたのでございますが、政府としては公務員全体の数をできるだけふやしたくないというようなこともあり、また労働省といたしますと新しい仕事の分野等に定員を獲得する必要等もありまして、途中まではそろえて要求をいたしましても、ある程度やはり新規のもの等にはより力点が注がれるというようなこと等もありまして、今いろいろ御指摘をいただいているようなことになっておりますことを非常に遺憾とするものでございます。最後のお言葉にございましたように、来年度につきましては特段の努力をいたしたいし、また来年度を待たずしても何らかの措置を補正でというようなこともなかなか困難だろうと思います。他の省との関係等においても困難だろうと思いますが、できるだけの努力をし、さらにまた労働省の中において、何らかある部分を機械化する等の措置によって、こういう方向へ人を向けるようなことにできないかというようなこと等についても、今まですでに話題にも出しておるのでございますが、一段とそういう検討をいたしてみたいと存ずる次第でございます。
  208. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その上、いなかの方へ行きますと、それは東京よりは受け持ち事業場は少ないけれども、集団しておるというのと、遠くばらばらに事業場が離れておるということから、数の上において判断するということもちょっとむずかしいと思いますけれども、しかしこういうところに対しては機動性を持たせなければならないと思います。従って、昨年は五千八百万円でオートを八十台、特殊自動車を十九台ということになっておったのですが、それぞれ地方へ行ってみますと、これだけのものがどこへ配置されたのか、ちょっと見当たりませんが、こういう機動性についての今年度の計画をまず承りたいと思います。
  209. 大島靖

    ○大島政府委員 昭和三十七年度におきましては、特殊自動車、ジープの類を二十二台、オートバイを百二台増加いたすことにいたしております。従来だんだん自動車、オートバイ、自転車の類を整備いたして参っておったのですが、まだ監督署の末端に至りますと不十分でございますので、ことしも大蔵省に格段の御理解を願いまして大量にふやしましたが、なおかつ十分とは申せませんので、今後とも努力をいたして参りたいと思います。
  210. 田口誠治

    田口(誠)分科員 各監督署にオートなり自動車なりを大体配置できるのは、今の程度の進み方でいきますと、何年計画くらいで完了できるものですか。
  211. 大島靖

    ○大島政府委員 現在基準監督組織において保有いたしております機動力は、通常の車におきまして六十台、特殊自動車、ジープの類におきまして五十二台、オートバイにおきまして四百七十三台、自転車で一千四百七十五台に相なっております。これに先ほど申しました三十七年度増加分が加わるわけでございます。ただ整備完了と申しましても、これはどの程度までいけばいいものか、私どもは大体現在のところ五年計画くらいの予定をもって、十分とはいきませんまでも、相当な機動力を保有いたしたい、かように考えております。
  212. 田口誠治

    田口(誠)分科員 前に買った車は悪くなって廃車しなくてはならないし、そしてこの程度のふえ方では、四年計画、五年計画と言われたって、実際的にはなかなかそうならないと思うのです。答弁の上においてはそうでも言っておかなければなかなかむずかしいので、そういう御答弁があると思いますけれども、今の程度予算化では、私は絶対にそういうことにならないと思うのですどの点についても、今度の予算要求にはうんとがんばってもらいたいと思います。それで、少なくてもいなかの方へいきますれば、自動車なりオートバイなりを与えておかなければ、事実動けないのですね。それというのは、電車なり汽車に乗っていくような旅費を、実費だけ出すかといえば、実費だけ出ておらないのですね。これは全く働いておる監督官は気の毒だと思いますけれども、実費の四割、六割というような程度らしいですね。私、方々で聞きますと、そういうことを言って泣いておりますが、このようなことでは人だけを並べてみても、実際に仕事ができぬということになりますから、こういう点の調和はとって行政を行なっていただかなければならないと思いますので、私はこの点も強く要望をいたしておきます。  それから労災の適用事業場の数につきましては、先ほどまだ資料がないようでございましたけれども、おそらく昭和二十四年、五年の三倍以上になっておると思います。これはわかれば回答していただいてよろしいのですが……。
  213. 大島靖

    ○大島政府委員 昭和三十五年度の適用醜業場の総数が、八十万七千事業場になっております。昭和二十五年度が三十一万六千事業場でございますから、三倍弱に相なっております。
  214. 田口誠治

    田口(誠)分科員 やはり三十六年度には三倍に完全になっておると思います。そういうような実態でありますから、大臣、一つがんばってもらわなければいかぬと思います。  それから、時間がありませんので急ぎますが、安定所の方、これはまた求職、求人、この中に入ってお世話をいただいておるわけでございまして、安定所に対する期待も非常に大きく、これは事業主も労働者も持つわけなんです。ところがまたこの行政がいかにも貧弱なんですね。まずこの点は、県の安定課の予算は大体どこでも取っておりますけれども、安定所の方へいきますと、これは国と県とで予算を出し合っておりますので、貧乏な県は、こういう点で非常に職員の人が苦労をしておるわけなんです。それで私が実際に仕事がそれでできるものであるかということの疑念を抱くのは、とにかく一カ月にはがきを何枚しか出せぬとか、電話は一日に五本しかかけてはいけないとか、七本しかかけてはいけないとか、ところによりましては、向こうからかかってくるのだけ受けて、こちらから用事があってもとにかく電話もかけず、またはがきも出すなというような極端なところさえあるのです。幾ら交通量が多くなっておっても、路上の交通の面は一方交通ということもだいぶなされておりますけれども、安定所の電話の一方交通ということは、実際において商売にならぬと思うのです。そういう点は実態なんですよ。それでこういう程度であるということの把握は、事実本省の方ではやっておられるのですか、認識しておられるのか、その点を一つ承りたいと思うのです。
  215. 三治重信

    三治政府委員 それは少し前のことかと思いますが、最近におきましては、そういうふうにこちらからかけられない、はがきの枚数まで制限するようなことはないと思います。ことしの予算は、御承知のことと思いますが、昨年よりか庁費におきましても約六百万円ほどふやしております。そういうふうにしておりますし、なお電話その他も、毎年電話の本数もふやし、交換機等も入れております。なお来年度におきましては広域職業紹介を機動化するために、供給県、需要県を通ずるテレックス制度を設けまして、これを二十一台ほど入れてやるつもりでございます。なお電話も来年度においては百六十ほど増加するというふうにして、通信関係につきましては、広域職業紹介の発達、労働力の流動化のために、そういう通信施設の完備をやっていきたいというふうに考えております。
  216. 田口誠治

    田口(誠)分科員 局長さんあたりは出世コースが早過ぎて、現場を回ってきておられるかどうか知りませんけれども、それは昔のことのように思っておられると大間違いなんです。これは現在でも先ほど私が指摘いたしましたようなところはたくさんあるのです。それでここ数年前のことを申し上げますると、相当寒い地域でも十二月までは炭が買えなかった、火ばちが入れられなかったということなんです。なぜかといえば、幾ら十二月になっても、寒い日が途中にありましても、一日火ばちに炭を入れますると、もうそれが癖になってとることができないから、しんぼうのできるだけはしんぼうしようというので、寒に入ってからようやく火ばちに炭を入れたというようなところが、ここ数年前にはありましたけれども、そういうところは解消になっているのですよ。どうですか。だいぶ把握が違っておりますね。そういう違った把握の上に立って行政をなさると、これは大へんそごを来たすわけなんですが、今補助の方が何か言われたか、だいぶ違うでしょう。
  217. 三治重信

    三治政府委員 そういうところもあるいはあるかと思いますが、全体としてやはりところによってそういうふうな光熱費と通信費、関係その他を調整してやっていることと思いますが、われわれの方としては毎年庁費の類につきましては相当増加させて、業務並びに安定所の運営管理につきましては、相当改善してきているというふうに信じておる次第でございますが、なおおっしゃる通り私も最近安定局長になりましたばかりで、三年ほど前にも二年ほど安定局におって、地方の安定所もだいぶ知っているつもりでございますけれども、そう安定所の庁費が、電話をふさいでいるとか、あるいは光熟費で採暖をとれなくて困っているということについては、それほど私自身としては身にしみて感じていませんが、そういうことにつきましてなお注意をいたしまして、今後そういうことのないように、予算措置その他人事管理について配慮していきたいというふうに考えております。
  218. 田口誠治

    田口(誠)分科員 消耗品については、今申しましたような非常に窮屈な中で仕事をやっておるわけなんです。これはある県へ行って聞いてみましたら、インクに水を入れて使っておると言っておりましたが、インクに水を入れて使っていても、それは書けないことはありませんよ。ありませんけれども、そのくらい公務員の方でも地方におる人たちは苦労をして仕事をやっておるということを知っていただいて、そうして先ほどのように、ともかく六百万か予算をよけい見たからどうこうというようなことを言われましたが、この程度予算を全国へ配ってみなさい。どれだけにもこれはならないと思うので、そういうことからこれも一つ大臣、補正ができなければ、来年こそは一つこういう汚名を払拭するように、大臣としても努力をしていただきたいと思います。どうですか。
  219. 福永健司

    福永国務大臣 懸命にそういう努力をいたしたいと存じます。
  220. 田口誠治

    田口(誠)分科員 幾分は期待に沿う可能性はありますか。
  221. 福永健司

    福永国務大臣 実は先ほどからも人員の点等についても努力したが、うまくいきませんでしたと申し上げておったのですが、わずかな数字を申し上げると、かえってしかられると思ってそうしておったのですが、監督の関係では三十六年度に比しまして、三十七年度は八十二名は実は増加いたしております。それから人間ではそう聞けないからというので、先ほどオートバイや何かのお話もございましたが、ああいう方で若干機動力というようなことで補おうということ等もあったのです。しかしながらそれをひっくるめたところで、いずれにしても大したことはなかったということを御指摘いただいておる次第でございます。今安定所につきましていろいろお話も私ずっと伺っておったわけでございますが、努力努力ですが、ぜひ成果の上がるような努力になるように、一生懸命に努めたいと存じております。
  222. 田口誠治

    田口(誠)分科員 事務所というようなものについても、全国的に回ってみますると、非常に差があるわけですが、幸いに私の住んでおる岐阜市の安定所なんかは、りっぱなものを建ててもらいましたけれども、非常に貧弱なのがある。これに入ってみてほんとうにボロ家といっても、これは民間では対象のできぬくらい悪い事務所があります。これは調査なさればわかりまするが、ほんとうにその点は言語に絶するものがあるんですね。こういう点を一つ十分に意に置いていただいて、予算要求のときにはほんとうに戦ってもらいたいと思うのです。この戦いは大臣なり各局長さんなりで力の足らないときは、全労働がバックで幾らでもお手伝いをいたしまするから、それでまだ足りないときは総評も出てきまするし、当然社会党も出てきますから、このようなみじめな基準行政をやらないように一つお願いいたしたいと思う。  それでこういう点についてなお質問いたしたいことはございまするけれども、時間がございませんし、主査の方から私の顔色をながめておりますので、もう一問だけで私はやめまするが、先ほども質問が出ておりましたが、労災関係、これは労働者は掛金をしておりましても、事業所の方で金を納めておらないために、災害にかかったとき審査された金額が全然払ってもらえぬというのが、どこの県でも相当数件数があるわけなのです。それでこういうものに対しては法律からいきますると、支払いを規制した法律ができておりまするので、それに基づいて支払いをされておりますから、そういう実態が出るわけなんですが、結局今の法律のままでは何とも取りつく島がないというので、やれば民法の方で戦わなければならないということになる。これは戦ってみても、今度はその事業所の方でそれだけの力がない場合には払ってくれない。払ってくれないものをどうこうするという、法律がなかなかそこまで戦うにはむずかしいわけなんです。こういう点については一つ労働基準監督の、労働基準法を順守させる監督として、こういう事業所に対しては何か手を下す方法を講じなければならないと思うのです。これはただ労働組合が行ってがんがんやってみたとてだめです。それで法的に何とかこういう労働者を救ってやれる道を作らなければならないと思うのですが、今までにそういうような件数を把握されておると思いまするし、これに対しても何か案をお持ちになっておられると思いますが、そういう案がございますれば、ここで御披露をしていただいて、立法化をしていたたきたいと思うのです。いかがなものでしょうか。
  223. 大野雄二郎

    ○大野説明員 労災保険につきましては、労働者は掛金は出していないわけでございますから、あるいは失業保険のことかとも思いますが、類似の問題は労災においてもございます。当然労災に加入すべき使用者が加入していない、そのために労働者は労災の給付が受けられると思っておったのに受けられなかった、こういうような事態がございます。その場合には、もちろん基準法上の責任を免れるわけではありませんので、私どもとしては基準法所定の治療費を支払うように強く勧告いたしております。しかしながら問題は、それで使用者が基準法上の義務を果たし得ればいいわけでございますが、果たし得ない場合にどうかという問題でございます。これは法律上の支給制限にひっかかるわけでございまして、従来におきましては未加入のものについては、全然支給いたしていなかったわけでございます。しかしながら諸般の事情を検討いたしまして、この点についての緩和措置を今後考えていきたいと思っております。まだこれは基準審議会にも諮っておりませんが、新年度から若干この点を緩和してやっていきたいと考えております。
  224. 田口誠治

    田口(誠)分科員 質問する順序をちょっと違えて申しましたので、あとから聞こうと思っていたことを御回答いただいたわけで、失業保険の関係ですけれども、この面について、ただいまのような事実が相当にあるわけです。そのときに相当騒ぎ立てて、そうしてあとから金を持っていって納めて、工合よく話をつけて失業保険をもらう手続をとって、やる面があるのです。この点は、話のつく場合もありますけれども、かたく言われれば話がつかぬわけで、この点については、融通をしてもらって話をつけるということになるのですが、こういう場合に、保護すべきところの労働者がそういうような不利な立場に置かれないように、現在の法規から救わなければならないと思うのですが、この点について一つ考えを伺いたいと思うのでございます。
  225. 三治重信

    三治政府委員 確かに五人以上の強制適用の事業場でも、大都会におきましては、適用漏れがあるのは事実でございまして、そういうところに失業が起きた場合にそういう問題も出てきます。しかしわれわれの方として、全然保険料を納めておられない方で、ほおかふりをずっとしていて、失業になって初めて泣きを入れられるということにつきましては、やはり現地においては忍びがたいことを相当厳重に言うことと思いますが、それについては相当過去にさかのぼって保険料を払う。しかし事実破産みたいになった場合には、なかなかそれがうまくいかないというふうな関係で、この点につきましては今後さらに検討して、まず第一に適用漏れのないようにして、やはり保険料を納めさすことが第一だというふうに考えております。従いまして最近におきましては、求人の場合、また労働者職業紹介をする場合には、必ず失業保険の有無なんかも、今度は労働者側の方も、また安定所の側の方も積極的に確かめて、職業紹介を通じてそういう適用漏れのないようにしておるのであります。逐次改善をしていくと思いますが、われわれの方としては、一日も早くそういう強制適用の事業場がいわゆる適用漏れになるのを防いでいきたいと思います。  なお先ほど申し上げました六百万円、純然たる安定所の維持管理、いわゆる炭や水道料というものの増加が六百万円でありまして、実際の運営費、紹介費とか何とか全部を入れましたものは約一億二千万円増加しておりますので、一つそのように御了承願いたいと思います。先ほど申しました全部で六百万円というのは、そういう水道料とかいうもので、活動費につきましては、こういう職業紹介の流動化というようなことで、本年度は一億二千万円ふやしておりますので、その点私の答弁が悪かったのを訂正させていただきます。
  226. 田口誠治

    田口(誠)分科員 もう一問だけ。去年の野原委員の質問に対して大島局長がお答えになったのと、きょう私にお答えになったのと同じ答弁をされておりますることは、集団指導制によって人手の足りない面で成果を上げていきたいという答弁をいただいたわけですが、昨年御答弁になっておるのだから、そういう点はなされたと思いますが、昨年一年、どういうような集団指導制を行なわれて、どのような成果が上がっておるのか、そのために今後こうして進めていきたいという一つの抱負もあると思いまするので、その点伺いたいと思います。
  227. 大島靖

    ○大島政府委員 先ほど来御指摘のように、対象の中小企業に対してこの際非常に人員、予算等も不足でありますので、三十七年度におきましては、基準行政におきましては大体二億円くらいの増額をいたしまして、基準法施行以来最大の増加にはなっておりますが、まだ十分とは申せないのであります。従って私も基準行政は、中小企業の労務管理の近代化、労働条件の向上というものを基本的な使命としておりますので、この膨大な対象をなるべく産地企業集団に分けまして、同業でありますとか、問地域の中小企業総体として、中小企業の労働条件の向上、労務管理の近代化、たとえば三年計画等を立てさせまして、これをやってもらうという形で、今後策団指導を強力に進めて参りたいと思います。また昨年、一昨年と労務管理の講習会であるとか、あるいは商店の一斉閉店制、週休制の普及、こういった面において、また災害防止、安全の面におきまして、集団指導の効果は相当上がっておると思いますので、今後とも強力に進めて参りたいと思っております。
  228. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これで終わりますが、今までの質疑応答で、いかに実態が貧弱な行政がとられており、また隘路があるかということも大臣にお認めいただいたと思いまするが、出張しても、実費の四割なり六割しかもらえぬというような、公務員がかわいそうな活動をしなくてはならぬような予算措置は、もう来年は絶対ないようにしてもらいたいし、私の特に小言を言いたいことは、今年も十分なる予算要求がなされておって、そうしてここまで削られたものであれば、まだまだ労働省も存在価値ありというように思えるわけなんですけれども、予算要求そのものが非常に貧弱であって、その要求がまたつまみけられして、そうして予算が削られておるというような実態からいきまして、来年度予算要求の戦いには私どもも協力いたしますから、がんばっていただきたいことを最後にお願いをして質問を終わります。
  229. 中村幸八

    中村主査 次会は明二十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十分散会