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1962-02-22 第40回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十二日(木曜日)    午前十時十一分開議  出席分科員    主査 中村 幸八君       臼井 莊一君    床次 徳二君       松野 頼三君    辻原 弘市君       西村 関一君    野原  覺君       長谷川 保君    山口 鶴男君       山花 秀雄君    兼務 上林榮吉君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         行政管理政務次         官       岡崎 英城君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     今村  讓君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (援護局長)  山本淺太郎君         運輸事務官         (船員局長)  若狹 得治君  分科員外出席者         総理府事務官         (行政管理局管         理官)     安山 達雄君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    細見  卓君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      西村 勝己君         文部事務官         (初等中等教育         局特殊教育主任         官)      辻村 泰男君         厚生事務官         (医務局次長) 鈴村 信吾君         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君     ————————————— 二月二十二日  分科員山花秀雄委員辞任につき、その補欠と  して山口鶴男君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員山口鶴男委員辞任につき、その補欠と  して西村関一君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員西村関一委員辞任につき、その補欠と  して山花秀雄君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第四分科員上林榮吉君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算厚生省所管  昭和三十七年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村主査 これより会議開きます。  昭和三十七年度一般会計予算及び昭和三十七年度特別会計予算中、厚生省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花分科員 きょうは、厚生省予算の、特にらい関係する問題について若干質問をしたいと思います。  御承知のように、らい患者は、ざっくばらんに申し上げまして強制収容、外出はできない、悪口を言うやつは、あれは刑務所生活だ、こういうようにいわれておる気の毒な立場に立っておるのであります。従いまして、官庁方面あるいはその他にいろいろ陳情要請がございましても、なかなか意を尽くせないという点がございますので、それにかわるといえば少し語弊がございますけれども、そういう意味を含んで一ついろいろ御答弁を願いたいし、また、お聞き取りを願いたいと思うのであります。  今度の予算書で見てみますと、約二億二千九百万円ほど前年度よりふえた予算になっております。ちょっとお尋ねいたしたいのは、私の勉強不足かどうかわかりませんが、この予算本書によりますと、ちょっと計数が甘いような気がするのであります。一応この点は、この予算本書の中のこれから私が読み上げます点について間違いがあるかどうか、一つ指摘を願いたいと思うのであります。四百六十四ページ、国立癩研究所二千九百八十万千円、四百六十九ページ、国立らい療養所二十億四百十三万六千円、これは十一カ所、一万一千六百五十床に関するいろいろな経費ということになっておる。それから四百七十一ページ、一般職員五億九千四百六十八万九千円、それから後に行政職員俸給の(一)の適用、(二)の適用というような形で四百九十七から四百九十八ページにある。これを合算いたしますと、この厚生省細目予算とちょっと合計が狂うのでありますが、この点どういうようになっておるか、一つ説明を願いたいと思います。
  4. 今村讓

    今村政府委員 この数字に間違いはないと思いますけれども、もう一ぺん合計して計算してみます。
  5. 山花秀雄

    山花分科員 あとでけっこうです。本予算書とこれと違っておりますと、いろいろこれから問題点が出てきますので。今私がちょっと質問いたしましたのは、四百六十四ページの癩研究所、四百六十九ページの療養所、四百七十一ページの一般職員、この一般職員多分内訳だろうと思いますが、四百九十七ページ、四百九十八ページ、ずっと出ておりますが、これらをどう計算いたしましても、こちらの二十三億五千八百七十四万五千円、これと違っておりますので、数字が違っておりますといろいろな施策が違って参ります。あるいは僕の計算違いかもわかりませんが、これは一つ明瞭にしていただきたい。
  6. 今村讓

    今村政府委員 実は予算書のこの表を作りますと一番よかったのでありますが、非常に項目が多いものですから、たとえば小児麻痺など見ますと、六カ所くらいにばらばらに出て参ります。それで、らいらい全部まとめて一表に作りましたので、ごらんになる上に便宜だろうと思います。この中には私立らい療養所とか、それかららい関係団体補助金とか、そういう関連事項を全部まとめまして、二十三億五千八百万ということであります。今仰せになりましたのは、国立らい療養所あるいは国立癩研究所というものだけでございますので、そのほかに私立関係補助金あるいは団体補助金というのもつっくるめにまとめてございますので、そこのところの仕分けをこれからいたします。
  7. 山花秀雄

    山花分科員 それでは続いてお尋ねしたいと思います。この本予算の四百七十一ページに、一応療養所関係の明細が約二十カ所くらい出ておりますが、そこでお尋ねしたいことは、御承知のようにあそこの患者はなかなか外部へ出られない、自分の声が反映できない。それは病院を通してやればいいといいましても、はたして病院がやってくれておるかどうかという、ああいうところに蟄居しておりますので、非常に疑惑を持っております。多分お手元の方へ要請書なり陳情書が出ておると思いますが、一番大きな不平になりますのは、例の患者看護をする作業手当が非常に少ないという点であります。これは御承知のように、国が一人前の人を雇って看護仕事をさせると、相当給料を出さなくてはならぬと思うのでありますが、手っとり早く所内同士病人同士看護をする。ある意味らいきますと手間仕事だというようなことで、安くこれを支払っておると思いますけれども、それにしても、あまり安いという声が高まっておるのであります。この仕訳書ではわかりませんが、一体どの程度支払い金額を部類分けしておるか、おわかりになりましたら御説明願いたいと思います。
  8. 川上六馬

    川上政府委員 作業賞与と申しておるわけでありますが、これはもちろん、一般の同種の療養所において支給をする賃金に比べますと、非常に安いわけでございます。これは相互扶助の精神でやってもらっているわけであります。そういう点で非常に安いのは安いわけでありますけれども、一応従来が六十円であったものを十円上げまして、三十七年度は七十円という単価にいたしております。
  9. 山花秀雄

    山花分科員 もう一つお尋ねしたい点は、食費関係でありますが、これはたとえば結核その他一般療養所における食事らい病院食事とは相違があるのですか、それともずっと一律に一般並み食事になっておるのですが。それで今幾ら計上しておりますか。
  10. 川上六馬

    川上政府委員 これは一般国立病院療養所と同一でございます。従来は、材料費だけが一日百五円二十九銭でございましたのを、三十七年度は百十五円に増額いたしました。つまり九円七十一銭の増額となっております。
  11. 山花秀雄

    山花分科員 百五円が百十五円ということになりますと、大体一割ちょっとということになるのでありますが、この算定基礎であります。これは一般病院とも通ずる算定基礎でありますが、一例をあげますと、東京あたりが経営しておる病院とは、同じ東京に存在しておりましてもずいぶん開きがあるのです。そういった点は、厚生当局としてはどのようにお考えですか。
  12. 川上六馬

    川上政府委員 都内の一般病院などに比べまして、大体国立の方の材料費の方が安いと考えておるわけでありますが、しかし、厚生省考えておりますのは、栄養基準を確保するようになっておりまして、従来から比べると、これでも今度は相当大幅に上げたつもりでおります。これはもちろん物価の方が上がりましたので、それに見合うものが多いわけでありまして、内容もそれに伴ってよくしていきたいと考えております。
  13. 山花秀雄

    山花分科員 栄養を考慮して、また物価の点を考慮して上げた。しかし、東京都よりは低い。東京都に散在する同じ病院関係で、国と都が違うということは、私は少し不合理じゃないかと思うのでありますが、こういう点について大臣所見を承りたい。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 東京都と国が扱いが違うという点についてのお尋ねでございます。私実は詳細を承知いたしておりませんので、政府委員の方から……。
  15. 山花秀雄

    山花分科員 大臣はさような下情にあまり通じないというような御答弁でございましたが、これはもう少し調査をしていただいて、同じ地域にありまして、一方は高く、一方は低い。国の方が高くて、都の方が低いというのであったら、従来の関係からちょっと話はわかりますが、都より低いということであれば、これは療養生活者にとっては大きな不満の原因になると思います。病人でありますから、不満というのは神経がいらいらする。神経がいらいらするということは、これは療養一つの禁句になっております。安心して一日も早く回復させるのが、国立病院本来の目的じゃないかと思うのでありますが、この点一段の御考慮をお願いしたい。  それからこのらい収容所に入っておるらい患者は、御承知のように人がなかなかいやがるので、親戚、親元等からも最初の三年ぐらい手紙が来るが、五年たてば手紙が来ない、最初の一年ぐらい幾らか金が来る、三年たつと金が来ない、こう常識的にはいわれておるのであります。今あそこに収容されておる方々の俗に言う日用雑品費用といいますか、それは結核あたり病院患者と同じ額なんでしょうか、それとも若干相違しておるのですか。これは食費の問題とも関連いたしますが、今幾らそういう小づかい、手当支給しておられるかということを伺いたい。
  16. 川上六馬

    川上政府委員 現在患者慰安金といたしまして、月五百円出しておるわけであります。それを三十七年度では五割増しにいたしまして、二百五十円増して七百五十円になっております。従いまして軽症患者作業の可能な者は、つき添いその他の作業賞与金で平均大体千五百円入るだろうというように見込みますと、一応来年度は二千二百五十円というのが、本人が一カ月に支給を受ける額になるわけでございます。それから、からだが不自由で障害年金をもらっておる者は、従来慰安金が五百円で、それから不自由者慰安金が二百五十円であったものが、今度、先ほど申し上げましたように、慰安金が七百五十円になりましたものですから、それに障害年金が千五百円つきまして、二千五百円に来年度からなるわけでございます。それから不自由者でも年金をもらえない者、これは慰安金を従来五百円やっておりましたのを七百五十円、それに不自由者慰安金が五百円つきまして千二百五十円、こういうことになるわけであります。従来、不自由者でもって障害年金をもらえなかった人ともらえる人との懸隔が非常に大きかったわけでございますけれども、もらえない者に対しましては、不自由者慰安金の二百五十円を倍額の五百円にいたしたわけでございます。その点、従来の格差がだいぶ縮まったわけであります。結核の場合も、日用品その他でもって三十六年度は千九十円、三十七年度は千二百八十五円というような単価にいたしております。それとの比較におきまして、以上申し上げましたように、そう開いていないというように考えます。
  17. 山花秀雄

    山花分科員 ただいまの御説明によりますと、年金おんぶをしておる、それから作業おんぶをしておる。その作業費用というのが一日七十円というので、今どきどんなにやさしい作業であっても想像できないような金額である。これがなければ、一般結核療養所における慰安金とずいぶんの開きがあるのであります。これは私は率直に改善をする必要があるのじゃないかと思いますが、大臣所見を承りたいと思います。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 慰安金の額についてのお尋ねでございますが、らい療養所における患者状況結核患者状況とは、おのずからそこに差異もあろうかと存じます。御指摘通り作業手当あるいは年金等関係から見まして、いゆわる慰安金というものが結核よりも低くなっておるようでありますが、これらはそれぞれの生活状況によって若干違っておると思うのであります。いずれにいたしましても、この種の問題につきましては御指摘のございましたところでございますので、なお私といたしましてもよく注意いたしたいと思います。
  19. 山花秀雄

    山花分科員 ただいま大臣答弁によりますと、結核療養者と若干の違いがある。ところが、結核療養者関係らいたしましても、これは何ともやっていけないというので、御案内朝日訴訟というのが起きたことは、御承知通りであります。これは朝日さんの方が一応裁判では勝ちました。これを厚生省がまたさらに上の裁判所の方へ持っていって、今係属中であります。千二百八十五円に本年度からなると言っておりますが、今の物価を一々計算して参りますと、とても足りない。だから裁判所は、朝日訴訟患者側に有利な判決を下したと私は思うのであります。それを厚生省が、またむきになってこれに対決していく態度が、私は社会保障を理解していないのじゃないか、こう思うのですが、これはおそらく私の不勉強かわかりませんが、灘尾さんの時代ではない前の時代にやったと思うのであります。しかし、今度灘尾さんが大臣になられまして、この問題についてどうお考えになっているか、これを取り下げる意思がおありになるのかどうか。取り下げれば朝日訴訟を認めて若干の予算措置を講じなければならぬという点で、なおがんばっておられるのかどうかわかりませんけれども、一応これはすなおに取り下げて、若干朝日訴訟待遇改善をやられるように配慮されることが、私は厚生行政一つ功績だろうと思うのであります。灘尾さんの大臣就任中に一つそういう功績を残して、りっぱに去られた方がいいのではないかと思うのでありますけれども、大臣所見を承りたいと思います。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 朝日さんの問題でございますが、御本人に対しては、なかなかむずかしい生活状況があったようでございまして、その点はお気の毒に存じておりますが、ただ裁判判決の趣旨に対しましては、その当時の問題としましては厚生省としてなお承服しかねるものがございますので、裁判で争っておるようなことでございます。しかし、それはその当時の状態のもとにおける話でございます。その後厚生省といたしましても、処遇については漸次改善を加えて参っていることは、山花さん御承知通りであります。当時の水準をそのままに維持しようというような気持ではもちろんございませんが、当時としての水準というものが、何かに違反するというふうには厚生省として考えられませんので、一応裁判で明らかにしようという態度をとっておるわけでございます。
  21. 山花秀雄

    山花分科員 当時と現在とは若干情勢の変化もある、こういう大臣説明であります。そこでお伺いしたいことは、ただいまお話しのありましたごとく、三十七年度から食費も若干上げた、この食費は、カロリー計算にいたしますと、どの程度のところを中心に百十五円という金額が出たのでございますか。また、一般に与える小づかいでありますが、物価がどの程度上がったという換算の基礎に千二百八十五円という金額が出たのか、これを一つ伺いたい。もう一つは、このらい療養所患者関係は、御案内のように七百五十円にした。もし作業賞与金の七十円に不満を持ってやらないということになったら一体どうなるのか、七百五十円でどうにもならないから、いやおうなしに七十円の低賃金でも働いておるので、そこで、もし国が人員を入れて作業につかしめるということになりますと、おそらくこの八倍も九倍も賃金を払わないとできないと思うのです。その辺を一つ十分考慮して、作業賞与金のもう少しのふくらみ、お小づかいのふくらみが当然あってしかるべきだと思います。ただいま申し上げましたように、なかなか外へ訴えに出られない、考え方によりますと刑務所生活のような強制収容を受けておる方々でありますので、配慮を賜わりたいと思うのでありますが、ただいま申し上げましたような賞与金あるいはお小づかいの算定基礎一つお話し願いたいと思います。
  22. 川上六馬

    川上政府委員 栄養はどの程度に確保しているかという御質問最初にあったわけでございますが、基準給食では総カロリー二千四百、蛋白が八十、脂肪が二十となっています。実際におきましては、三十六年の五月の国療の実績は、やはり熱量が二千四百カロリー蛋白八十九、脂肪が四十三ということになっておりますが、百十五円で献立などを適正にやりますと、今申したような栄養量を確保することができておるわけであります。先ほどもお話しありましたように、東京都などの材料費から比べますと総じて安いのでございますけれども、何しろたくさんの患者を抱えておりますので、そういう食品の買い入れ、調理の仕方というような点で、一般の場合よりも非常に有利に給食ができるものでございまして、この点決して、小さな病院材料費から見ると安いからといって、それだけ国立給食が悪いとは考えていないわけであります。  それから物価をどの程度見たかということでありますが、これは献立の仕方によりまして、物価の非常に上がっているものもありますし、あるいはかえって下がったものもございますので、献立の仕方で物価のスライドに上せなければならぬものと、それから物価がそう上がらない、かえって下がったようなものをうまく配合することによりまして、すぐ改善ができるというような面もございますので、そういうことをいろいろ勘案して、百十五円ということにいたしたわけでございます。  それからつき添いのことでございますが、五百円あるいは七百五十円というようなことでは、日用品にも足らないというふうなお話でございますが、確かにそういう点はございますけれども、先ほど言いましたように、作業費を加えますと、結核患者などに比べまして、実際の手取りというものは概して少なくないのでございます。作業はお互いが助け合ってやるわけでありまして、その他の生活はほとんどが保障されておるわけでありますから、そういう点は一つ御了承いただきたいと思います。それから特に手のかかる患者のつき添いというものは、三年ほど前からだんだんつき添い職員に切りかえておりまして、三十五年に五十人、三十六年に五十人、また今度の予算でも五十人をお願いしています。特に手のかかる患者さんのつき添いを、患者さんにさせないで済むように努力いたしておるわけであります。
  23. 山花秀雄

    山花分科員 今のお話を聞いておりますと、ずいぶん思いやりのない、また感覚の鈍い行政指導だと私は思うのであります。一例をあげますと、上がったものもあれば下がったものもある——これは物価の問題でございます。これは去年総理府の発表した新聞の切り抜きでありますが、一般食費関係においては、たとえば野菜なんかは七七%から上がっておる、果実、菓子類が一八%上がっておる。上がり率の非常に低いのは肉類、魚介類、これが六・一、六・八というように上がっておる。こういうように、大体食生活中心物価が上がっておることは、お帰りになって奥さんにお聞きになれば一番よくわかると思う。一体何が下がったか、具体的に明示していただきたいと思う。
  24. 川上六馬

    川上政府委員 一応油類、それから豆類などは少し下がったように思います。
  25. 山花秀雄

    山花分科員 油類豆類がどの程度下がったか。私はもしあなたが下がったと言われるなら、横ばい状態じゃないかと思うのです。一般的に下がったものといえば、自動車、テレビ、電気冷蔵庫というものが一般的に下がったと言えるでしょう。ここで問題になっておりますのは食費の問題であります。これ以上私は申し上げたいと思いません。  それからもう一つは、たとえばむずかしい作業要員の切りかえを行なって、年間五十人ふやしておる。何かそういわれますと、ああ五十人もふやしておるのかという感じがしますが、療養所は十一カ所あるのです。そうすると、一カ所当たり五人足らずの人間が配置された。作業手当をもらっておる人は相当おると思うのです。それから、これは七十円ですか、この作業手当で安い七百五十円をカバーしておるという形になります。これは生活保護の点でもよく問題になりますが、支給金をもらっている人がちょっと内職をやりますと、御案内のように、内職してかせいだ金額支給金から差し引かれる。これはむごい。最近何か、若干融通性のあるような措置がとられたということを聞いておりますが、それとこれとは、似たような問題だと思うのです。やはり仕事をした人には仕事をした金額を与える。そうしていわゆる日用雑品を買う金額は、一般療養所同様の金額を与えるのが至当じゃないかと思うのです。仕事をしておるから、年金をもらっておるから差し引くというような——私は、先ほど申し上げました生活保護費の点で、最近ちょっと厚生省考え方が変わったと聞いておりますが、その点、生活保護の方は、一体内職その他の収入は従来通りですか、若干変えられたですか。
  26. 大山正

    大山(正)政府委員 お話の点は、いわゆる勤労控除という制度についての御質問であろうかと存ずるのでありますが、生活保護制度は、本人が働きましたりその他の収入があっても、一定最低生活限度に満たないというその部分を補てんする制度に相なっておるわけでございますので、換言すれば、本人収入があれば差し引くというような形に相なるわけでございます。しかし、勤労によりまして収入があった場合に、それを全額その人の生活費に充てて、差額だけを支給するという考え方を貫くことが実際問題として適当でございませんので、その場合、勤労収入から一定金額控除いたしまして、それ以外の収入生活費に充当させるという建前をとっておるわけでございます。それでこの勤労控除につきましては、現在までは最高が二千二百十円以内を控除することにいたしておりますが、来年度予算におきましては、これを最高二千五百円までは控除する。ただし、それぞれの職業別によってもちろん違うわけでございますが、最高額といたしましては、二千五百円というものを勤労控除最高限度にいたしております。
  27. 山花秀雄

    山花分科員 ただいま御説明がございましたように、従来は、もうちょっとした内職でも全部差し引かれたのが例であります。そういう幾らか査定をゆるめ、控除を行なうということは、私は思いやりのある厚生行政一つだと思います。これがらい療養所に働いておるお気の毒な方にどうして適用がないかという点と、七十円をくるめると七百五十円でも大体何とかやれる——作業に全部おんぶしておることであります。これは一つ配慮ある措置をこの際特にお願いしたいと思います。大臣の御所見を承りたいと思います。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護法の勤労控除の問題と、それかららい療養所におけるただいま御指摘になりましたような問題と、若干状態が違うのじゃなかろうかというふうに思いますけれども、いずれにいたしましても、厚生省としまして、できるだけ療養所の内部において明るく過ごしてもらいたいと存じております。そういう意味におきまして、慰安金等につきましてもだんだんと増額もして参っておるわけでございますが、なおとの点につきましては十分検討さしていただきます。
  29. 山花秀雄

    山花分科員 こまかい点をいろいろだだしたいと思いますが、きょうは質疑者もたくさんおありのようでございますから、私は質問を終わりたいと思いますが、最後に一言厚生大臣に希望として申し上げたいと思います。  ここで一問一答をやっていることはこの場限りで済みますけれども、私はここで一問一答をやっておるただいまの議論を、療養所内に生活をしておられる方々にもしなまのままで聞かせたら大へんなことになると思うのであります。これは十分考慮していただきたいと思います。特に療養所生活しておられる方々は、御案内のように強制収容でございます。口の悪い人は、あれは刑務所生活だ、入れば一生そこが墓場だ、無期徒刑だ、こういうふうに言われておるのであります。だからそういう点もう少し人間味のある厚生行政一つやっていただきたい。予算関係その他むずかしい点があることは考えておりますけれども、やはり厚生行政の衝に携わる厚生大臣は踏み切って、この問題の改善のために努力していただきたい。また大臣を取り巻く各局長諸君も一つ、おれのやっている仕事は福祉国家の建設のためにやっておるのだという感覚に徹して、大臣を助けて厚生行政を円満に遂行できるように御尽力を願いたいという希望だけを申し上げまして、あとの質問者に席を譲りたいと思います。
  30. 中村幸八

    中村主査 先ほどの山花分科員の御質問に対しまして、今村会計課長から御答弁申し上げたいと申しております。
  31. 今村讓

    今村政府委員 先ほどの御質問にお答えいたします。先生申されました主要事項別調の国立らい療養所の二十億三千四百八十二万一千円というのと、予算書にあります四百七十一ページの予算、二十億四百十三万六千円と合わないじゃないか、こういうお話でございましたが、四百七十一ページの一番上の方でありますが、これはらい療養所の経費、いわゆる人件費とか運営費というものを二十億四百十三万六千円、そのほかに次のページに参りまして、下から六行目ほどに国立療養所看護婦養成費というのが二億二千七百二十八万八千円ございます。これは結核らい、脊髄、全部の看護婦養成でございますが、この中でらい関係は二千二百七十二万九千円というのがらい療養所十一カ所における看護婦養成の経費でございます。もう一つ次の四百七十三ページに参りまして、下から五行目でありますが、医療機器整備費というのが総額一億一千三百九十六万九千円でございますが、これも結核や脊髄を除きまして、らいだけにしますと七百九十五万六千円という金額に相なります。この三つを合わせましたものが、便宜上主要事項別調の中に書きました二十億三千四百八十二万一千円であります。詳細内訳を書くのを省略しましてお手数をかけましたが、さようなわけでございます。
  32. 山花秀雄

    山花分科員 ただいまのお話でよくわかりましたが、そういたしますと四百六十一ページの項目の国立らい研究所はこれに入っていないのですか。
  33. 今村讓

    今村政府委員 これは組織が違いまして、らい研というのは厚生省付属機関で、別な項目になっております。従いましてこれは主要事項別調の下の方の(3)らい患者生活援護委託費、その他というところで、この備考のところにらい予防事業費補助金、これは都道府県に出しますものですが七百十二万、その次のらい予防事業委託費、これは藤楓会の委託費でありますが、二百四十三万三千円、こういうふうなものが入っております。
  34. 山花秀雄

    山花分科員 もう一点ついでにお尋ねいたしますが、そういたしますと、四百七十一ページ、四百九十七ページ、四百九十八ページの人員、給料の点は、これは別の計算になるのですか。四百九十七ページの一般職の職員二千三十五人、五億九千何がし、これは別の項目になりますか。
  35. 今村讓

    今村政府委員 これは別の項目になっております。
  36. 中村幸八

    中村主査 次は、山口鶴男君。
  37. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 引き続きましてハンゼン氏病、らい対策の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、まず最初に、国立らい療養所の目的について大臣お尋ねをいたしたいと思います。  従来ややもいたしますと、ハンゼン氏病については、不治の病だ、しかも人に非常にきらわれる病だ、だからハンゼン氏病については強制入所を命じて、一般の社会から隔離をしておくのだ、こういうふうに一般では受け取られております。しかし私はらい療養所の使命というものはそうではないと思います。最近の科学技術の進歩に基づきまして、特にプロミンの登場等によりまして、ハンゼン氏病は決して不治の病ではない。初期に治療をいたすならば、完全に治癒することができる。こういうふうになっておるはずだと思うのであります。そこで私が冒頭に申し上げたように、らい療養所の目的は、隔離をするのが目的なのか、そうではなくて入っております患者の人たちをできるだけ早く治癒して、一般社会にまた復帰させる、いわゆる病院としての本来の使命に立ってこれを運営する、こういうおつもりでおるのか、この点を一つお聞かせいただきたいと思います。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 らい患者につきましては、御承知のように伝染性を持っておるものでございますので、これを一般社会から隔離する必要もあろうかと思うのであります。またらいに対する考え方につきましても、昔と今ではだんだん医学の進歩等に伴いまして、これは変わってこなければならぬと思うのであります。従いましてらい療養所に入れて、そこにただ置いておくだけというはずのものではない。もちろん療養に努めまして回復するものはぜひ回復してもらいたいと思います。また回復すれば一般社会に復帰するというふうなことも当然考えなければならぬ問題と思います。私のただいまの国立らい療養所につきましての理解は、あるいは誤っておるかもしれませんけれども、一面においてはらいの蔓延を防止すると申しますか、そういうような予防的な意味もございますし、同時に御本人にとりましては、そこにおてできるだけ安らかに生活をしてもらいたい、同時に療養に努めてもらいまして、回復し得るものはぜひ回復するように努めるのがらい療養所の任務ではなかろかと思います。
  39. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 重くなった方もございますから、もちろん隔離をしておくという場合もあろうかと思います。しかし同時に、今も大臣お話で、治癒すべきものはすみやかに治癒さして一般社会に復帰させる、こういうことを常に念頭に置かれて留意されておる、このお言葉は非常にけっこうだと存じます。  そこでお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、今や西欧諸国におきましては、ハンゼン氏病の患者というものはほとんどまれな存在になっておることは御存じの通りだと思います。一人か二人というようなことで、ほんとうに患者の数が少なくなっておる。ところが日本におきましては、一万人をこえる入所患者が現に存在をいたしておるわけであります。文明の進んだ国々において、このハンゼン氏病の患者がこれだけ多いという国は、私は世界のどこを見ましても日本しかないと思うのです。そういう中で、しかも大臣が言われたように、治癒を目標においてその運営をされるということを念頭に置かれまするならば、もっと国立療養所のほかに国立らい研究所というのがございますが、この国立らい研究所を拡充をいたしまして、らいを治癒するというそのための薬を製造するということにもっと力を注ぐべきだと思うのであります。私、予算書を拝見して驚いたのでありますが、厚生省が所管をいたしまする国立の研究所が幾つかございます。人口問題研究所、国立公衆衛生院、国立精神衛生研究所、国立栄養研究所、国立予防衛生研究所、国立衛生試験所、いろいろございます。この中で、とにかく文明国において一番患者の多い日本において、特にこの研究に力を入れなければならぬ立場にある日本において、あらゆる国立の試験研究所を見まして、この国立らい研究所が人員も非常に少ないし、予算も一番少ないということについては非常に疑問に思うのですけれども、一体どうしてこのように日本の特殊な病ともいうべきこのハンゼン氏病の研究にこれだけの少額の予算しか組んでおらぬのか、この点を一つ承りたいと思います。
  40. 川上六馬

    川上政府委員 らい患者は以前よりも御承知のようにだいぶ減ったわけでございまして、世界の諸国のうちでずいぶん多いところがまだたくさんあるわけでございます。日本は相当らいの施設に力を入れたために年々減っております。この点だいぶ明るい見通しを持っているわけであります。らいの研究所の経費というものが他の研究所に比べて非常に少ないということは御指摘通りでございますが、ああいう規模の小さいものでございますけれども、世界に誇る一つの施設ではあると思います。むろん不十分ではございますけれども、これだけの研究所を持っているのは世界では日本だけだというように聞いております。しかし、御指摘のように確かにまだ内容が不十分でありますので、年々この拡充をいたしておるわけでありまして、今後とも努力いたしたいと思います。
  41. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 日本より患者の多い国々があると言いますけれども、主として南方、東南アジアの国々でありまして、少なくとも資本主義がある程度発達をし、いろいろ科学文明の進んでおる国では、これは日本が減ったとはいうものの一番多いということは局長もお認めになるだろうと思うのです。国立らい研究所が世界に誇るというようなことを言われましたが、しかしプロミンにしてもこれはアメリカでできた薬でしょう。一番患者の多い日本で作られた薬ではないと私聞いております。私どうも不敏にいたしまして、この国立らい研究所がありましてもハンゼン氏病に対して日本が先がけてこれに対する特効薬をお作りになった——もちろん菌を純粋培養することはまだできないのだそうでございまして、これができればノーベル賞というようなことも聞いておりますが、しかしこれがそういった菌の純粋培養ができるできないはともかくといたしまして、少なくとも一番患者の多い日本として、世界に先がけてプロミンにかわるりっぱな薬なり何なりができる、研究の成果が上がる、こういうことがなくては、やはり厚生省がこの研究所に対して力を入れているとは私は言い得ないと思うのです。こういう点大臣、今後とも文明国において最も患者の多い日本が、世界に先がけてこの問題の解決のために力を注ぐということを実行をもって示していただくという御決意がございましたら、一つお聞かせいただきたいと思います。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまのお話の御趣旨には私も全く同感でございます。十分実情も調べまして注意して参るようにいたしたいと思います。
  43. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 特に昔からハンゼン氏病といいますと、何か非常にいやな病気である、また何かハンゼン氏病に対しては光明皇后以来慈善事業というような形でこの問題に対処するというきらいがあったのではないかと私は思います。確かに昔はそれでけっこうでございましたでしょう。しかしこれからはそうではなくて、これもやはり伝染病の一種である、科学の力をもってこれを解決をする、こういう形に対処の仕方を変えていくことこそが私は必要なことではないかということを考えまして、特にこの点を強く当局にお願いをいたしておきたいと思うのです。  そこでそういう立場に立って、今度は国立療養所のお医者さんの問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、予算書を拝見いたしますと、国立らい療養所に勤務せられておる医療職の方々は百六十四名というふうになっておりますね。定員のようでありますが、このうち充足歩合はどのくらいでございますか。欠員はどのくらいでありますか。この点お聞かせ願いたい。
  44. 川上六馬

    川上政府委員 国立らい療養所の十一カ所の医師の定員が百六十四名でありまして、それで現員が百二十一名、欠員が四十三名でございますから、充足率は七三・七%になっております。
  45. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 従来から見ますとだいぶ充足率が上がって参りましたことは、厚生省当局の御努力だと思いまして、私も感謝をいたしたいと思います。しかしまだ七三・七%ということで四十数名の欠員があるということは、何としても残念でございまして、この点についてはさらに御努力を要請いたしたいと思うのであります。  そこでこの定員が、最近御努力である程度埋まっては参りました。その構成を見ますと、はたしてらい療養所を適正に運営するのにふさわしい各専門の方々が配置せられておるかと申しますと、私はそういう点については非常に遺憾だと思うのです。先ほど申したことと関連をいたしますが、最近プロミン等の普及によりましてなおって参る方が相当出ております。ところが問題は、菌はなくなって無菌の状態になった。しかし何としても手の形が少し変わっておるとかあるいは顔に障害があるとか、そういう形で、無菌の状態ではあるけれども、社会に復帰するのに非常に困難がある、こういう事態がございますので、そうなって参りますと、どうしても整形外科と申しますか、そういった面のお医者さんが最近は特に要請をされておると思うのです。ところが私の住んでおります近くに栗生楽泉園がございますが、整形外科のお医者さんというのはほとんどおりません。これはどこでもそうじゃないかと思うのでありますが、そういう意味で先ほど大臣から言われたようにやはり治癒して社会復帰させるということを考え療養所が運営されることになると、それにふさわしいお医者さんの充実も必要でありましょうし、同時にまだ専門の方々の配置の状況もそれに合わせて行なわるべきだと思うのでありますが、こういう状態についてはどうお考えでございますか。
  46. 川上六馬

    川上政府委員 全くお説の通りだと思います。ただ非常に医師の確保には苦労いたしております。各大学などに懇請をいたしておるわけでございますけれども、なかなか適当な医師を充足できないので困っておるわけでございますが、今後とも十分に努力をいたします。特に最近は先ほどお話がございましたように、社会に復帰する患者が非常にふえております。それにはどうしても整形外科とかあるいは眼科の医者などが非常に必要なんでございます。そうした専門的治療を早く施したいということでありますけれども、各療養所にそれぞれそういう専門家を確保することは困難でございますので、現在では多摩の全生園などから手術に参っておるような状況でございます。なお、今年度から、ごくわずかではございますけれども、医師を雇い上げて、そういう手当をする費用が入っておりまして、たとえば栗生楽泉園などにおきましては、群馬大学などからもそういう専門家に行ってもらうようにしたい、こういうように考えております。
  47. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 こういった、人がいやがるといいますか、療養所の医師の待遇についても、ある程度抜本的に考える必要があるのじゃないですか。現在、特殊勤務手当という形で相当額の調整号俸がついておることは私も承知をいたしておりますけれども、しかし、これではまだまだ不十分だというきらいが私はあろうと思うのです。今、局長さんのお話になりましたように、いろいろ大学の病院等から差し繰って措置せられることももちろんけっこうでございましょうが、より抜本的な解決として、こういった特殊な病院に勤務する医師に対して本俸を直すということは、現在の公務員の給与体系からいって困難であることは承知いたしておりますが、特殊勤務手当を大幅に引き上げるとか、そういった特殊な措置を講ずる待遇の抜本的改善について、何か大臣、抱負はございませんですか。
  48. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 こういう種類の療養所に勤務ずる医者でありますとか、あるいはまた、特別不便な地域に勤務いたしますそういうところの医師を確保することは非常にむずかしいので、苦慮いたしておるところであります。ただいまお話しになりました問題につきましても、確かにそのお考え方でございますが、どの程度やれるか、またいろいろな制約もあろうと思いますけれども、これは一つ積極的によく検討さしていただきます。
  49. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ただいまの大臣の御答弁を聞きましたが、一つただいまのような御趣旨で最大限の御努力をお願いいたしたいと思う。  それから次は、児童生徒の問題でありますが、現在所内におきまして感染をいたしました児童については、それぞれ小学校、中学校、また高等学校についてはどこでございましたか、全国一カ所ございまして、高等学校の教育もやっておられることでございますが、同時に、未感染児童についても、国立療養所がその児童を預かって、別にこれは通常の学校に通わしておるわけでございますが、そういう施設をやっておることを聞いております。そこで問題になりますのは、小学校を出る、中学校を出る、高等学校を出る、そうしていざ就職ということになるわけですね。そうしますと、就職するとその住所はどこだということになる。そうすると、国立らい療養所ですね。多摩全生園とかあるいは群馬県の栗生楽泉園ということになりますと、非常に就職について問題が残るというのです。現に私もそういう子供たちがおりましたものですから、自分のうちで雇いまして、そして働いてもらったというようなこともいたしましたけれども、しかし、そういった特殊な形で問題を解決しようと思っても、私はこれは解決しないと思うのです。そうではなくて、やはり私の考えますのには、国立療養所の中にそういった未感染児童を収容するというのではなくて、どこか別に、国立らい療養所とは離れて未感染児童を収容し、できれば、未感染児童なんですから、これはらい療養所関係ないような形でいる子供たちだというようなことがわかるような形で何か収容し、そうして就職等についても問題のないような形にやっていくことが私は必要じゃないかと思うのですけれども、そういう点について何かお考えはございますか。
  50. 川上六馬

    川上政府委員 今お話しのように、建物は別にしておりますけれども、園内にある、そういうような心配が多いとすれば、一つ研究さしていただきます。
  51. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 この点は、一つ十分力を入れてお考えになっていただきたいと思うのです。せっかく未感染であって、一切病気的には心配はない。しかし、たまたま親がそういう人たちであったためにそういう施設に収容されて、そうしてそういった烙印が一生ついて回るというようなことは、私は現在の社会においては、非常に残念なことではないかと思うのです。この点についても、一つ大臣、実情を調べまして、この未感染児童の子供たちが、一生暗い影を背負って暮らすということのないように御努力をいただきたいと思うのでございますが、お考えがありましたらお述べいただきたい。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御趣意はよくわかりました。ただ問題は、親とあまりかけ離れたところに生活させることが、また御本人たちの気持の上でどうあろうかという点もございますから、よく一う実情を調べてみたいと思います。
  53. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 次に、一般患者方々がなおって社会復帰をする。そうした場合に、やはりある程度作業を修得させるとか、アフター・ケア施設というものがどうしても必要であろうと思うのです。そういったアフター・ケア施設については現在どのような形で行なわれており、また、今後の構想というものがございましたら、一つお聞かせいただきたいと思います。
  54. 川上六馬

    川上政府委員 確かに社会復帰をする患者が多くなりました。特にアフター・ケア、リハビリテーションというような問題を非常に重要に考えてきております。現在では園芸などわずかな作業をいたしておるわけでありますが、しかし、だんだんいろいろな作業で、職業補導的な面をこれから強化していきたいと考えております。
  55. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 時間もあれですから、次の問題に進みたいと思うのですが、次は患者方々の待遇の問題でございます。この点につきましては、先ほど山花分科員さんからいろいろお話がございましたので、重複を避けましてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、先ほど作業賃についてお尋ねがございました。作業賞与金でございますか、今年度六十円から七十円にされた、こういうお答えがございました。しかし、これはつき添い看護の場合の、いわば作業賞与金としては一番上の、最上のクラスの賃金の場合でございましょう。私の聞いたところでは、このほかに甲作業、乙作業、丙作業とあって、それについては、甲については昨年三十五円から四十円、たった五円しか上がっていない。それから乙作業については三十円から三十五円、これまた五円です。それから丙作業については二十五円から実に三十円、たった五円しか上がっていない。こういう状態であります。最高の七十円の場合だけ申されたのでありますが、しかし、四十円、三十五円、三十円、こういった作業賞与金で、これは労働賃金でないというふうにおっしゃろうと思うのですけれども、いかにしても現在の社会のものさしからいって、非常識きわまる額ではないですか。聞くところによりますと、多い方は四時間ぐらい、少ない方でも二時間ぐらい、いろいろからだの状況によって働かれておるようであります。最低賃金ということを考えましても、一日三百円くらいが最低でしょう。そして時間でもって、かりに、これは八時間の場合ですから、四時間とすれば、少なくとも百五十円、三時間、二時間の場合でも少なくとも百円程度作業賞与金が支払われてしかるべきではないかと私は思うのでありますが、こういった非常識きわまる額でもって患者の人たちに労働をしいて——しいておるのではない、好きにやっておられるのだと言うかもしれませんけれども、しかし、患者の人たちにしてみれば、ほかに収入を求める道がないのですから、みな働かざるを得ない。そういうことを考えまして、どうしてこういうような低い額でことしも据え置かれるのか、一つその根拠をお聞かせいただきたいと思うのです。
  56. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど申し上げましたように、一応らい療養所というものは、病院とか療養所だとかいうような一般のものと違いまして、そういう純粋の病院施設もございますけれども、大部分の患者さんは、その地にほとんど一生住みついておりまして、一つの村落のような状態になっておるわけでございます。それでそういう人たちの一つの共同的な社会生活相互扶助の精神によって営まれておるわけです。従って、一般社会と違いまして、その人たちお互いがいろいろな作業を分担してやってもらっておるので、建前といたしましては、一般の労賃という考え方でなしに、作業賞与金ということで支給いたしております。しかしながら、確かに仰せのように安いと存じます。ことしもわずかながら上げたわけでございますが、不十分と思いますので、今後努力を続けたいと思っております。
  57. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そこで、先ほど山花委員からのお尋ねでも、国民年金との関係の問題がございます。私の計算が違っておれば御指摘をいただきたいと思うのでありますが、国民年金を受給になっておられる、いわゆる障害年金をもらっておられる方は、月千五百円障害年金支給されます。そのほかに慰安金が月七百五十円支給になるわけですね。それから別に、不自由者慰安金が、二百五十円と今度五百円にしたそうでありますが、年金受給者は二百五十円据え置きですね。そういたしますと、年金受給者は慰安金七百五十円に不自由者慰安金二百五十円、それに年金千五百円を足して、月に二千五百円支給になりますね。それから年金をもらわないで作業不能な方々、この不自由者の場合は、慰安金が七百五十円、不自由者慰安金が二百五十円から五百円に値上がりいたしまして五百円、合計いたしまして月に千二百五十円ですね。ある程度作業のできる方、この方はどうかということになれば、慰安金七百五十円が支給される。それから作業賃が最低の三十円の場合ですね、二十五日かりにお働きになっても七百五十円にしかならないでしょう。そうすれば、働いておって、最低の収入の方は千五百円の収入があるということになる。次の乙作業の場合が千六百二十五円、甲作業の場合では千七百五十円、それからつき添い看護の場合が二千五百円ということになりますね。そこで、私の近くの栗生楽泉園の例をとって申し上げたいと思うのですが、あそこは長年いろいろ要望もあり、それからまた、らい療養所において患者の人たちの労働を伴わなければ所の運営ができないということは、これは確かに不合理だというようなこともあって、つき添い看護については、これは看護助手の方々に肩がわりしましたね。そうすると、栗生楽泉園では二千五百円を支給される方はいないわけです。そうすると、社会復帰直前の、からだも非常に健康になっておる、こういう方々であっても、千七百五十円しか全部の収入がないということになります。そういたしますと、国民年金の受給の方々——私は、年金というのは、普通の場合でいけば最低の場合だと思うのです。普通の社会、一般通常の社会で言えば……。しかし、一たん一般の社会を離れていらい療養所に入れば、この一般社会では最低の収入しかないところの障害年金をもらっておる人の収入最高であって、そうして普通に働いておる方は、それの半分ないしは六割、七割というような収入しかないというようなことは、どう考えても不合理ではないか。大臣に私はお伺いしたいと思うのですが、少なくとも一般社会で最低の暮らしをいたしておる障害年金受給者の方よりも、五割、六割、七割というような支給でもっておるこの作業賃の状態というものが、はたして適切だとお考えでございますか。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 障害年金の受給の問題につきましては、いろいろ資格要件もございますが、障害年金を受ける人と受けない人との間にふつり合いがある、これはある程度あるということは、その通りだと思います。ただ障害年金というのが、一般社会における最低の生活だというふうなところまで実は至っておらぬと私は思うのであります。むしろ一般社会においての最低の生活保障といえば、これは言うまでもないことでございますけれども、生活保護とかなんとかいう形においてやれる問題であります。障害年金はそこまでも至っていない、何かの足しにはなるかもしれないということでございますけれども、現在におきましてはそういう性質のものじゃなかろうか、そういうふうに考えるわけでございます。従いまして、らい療養所の中における生活におきましても、障害年金を受ける人と受けない人との間にアンバランスが生ずるということは、ある程度やむを得ないのではなかろうかと私は思うのであります。それにつきまして、多少ともその辺の格差というものをなくすべく、いろいろ努力しておるのが現状ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。  作業賞与金をめぐっていろいろのお話でございますが、これにつきまして、私の理解が不十分でございますので、あるいは間違っておるかもしれませんが、少なくとも従来のものの考え方としましては、らい療養所で何も勤労させようといいますか、勤労させて、そうして賃金支給しようというふうなところまで割り切った考え方はしていないのじゃなかろうかと思います。また、どちらにいたしましても、それほど勤労らしい勤労はそうできるはずのものではないのですから、やはりあそこの共同生活の中の問題として取り扱われれてきておったというのが、今までの普通の考え方ではなかろうかと思うのでございます。それにいたしましても、ただでやるとかなんとかいうことでなくで、奨励するといいますか、気持よくやってもらうという意味で何がしかのものを差し上げておる、こういう考え方できておると思うのであります。その金額が今日で妥当であるか妥当でないか、これはいろいろ議論もございましょう、また、われわれといたしましても、先ほど来事務当局からも御説明申しておりますように、幾らかでもその辺についての改善を加えていこうという気持でやって参っておるわけであります。何さま、私もまことに申しわけない次第でありますが、実情に暗い点もございますので、いろいろ御注意を受けたような気持が実はいたしておるわけであります。そういう意味でさらによく実情等も取り調べまして、改善を要するものはさらに積極的に改善の努力をいたしてみたいと存じております。
  59. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 この障害年金が、大臣の言われるように、ほんとうにお小づかい程度のものだということはその通りであって、われわれとしても、その障害年金はこんな額ではほんとうに少な過ぎるという主張をいたしているわけでございますが、しかし、私の申し上げましたのは、そういったきわめて低過ぎる障害年金ですら、一たん一般社会を離れてらい療養所に入ると最高収入状態になるのだ、こういう現実を、大臣十分一つ見ていただきたいと私は思うのです。結局、所内の方々が共同で現在暮らしておられます。そうしたときに、おれたちは働いておっても収入が少ないのだ、小づかいにも不自由するのだというので、実は国立療養所の内部の状態を聞いてみますと、内部の秩序保持に非常に苦労をするというのです。従って、無菌の状態の方がアフター・ケアの一環として所外へ働きに行く場合はけっこうであります。しかし、そうではなくて、とてもこんなことではおれたちはがまんできないというので、有菌の方が園に隠れて外へ仕事に行くというような場合も現に起きておるのです。こういうことでは、私は厚生省としてはきわめて遺憾な行政運営に結果としてなるのじゃないかと思うのです。従って、障害年金を大いに今後増額することもちろんけっこうであり、しなければなりません。同時に、当面らい療養所の中のそういったアンバランスを是正する意味で、不自由者慰安金なりそれから作業賞与金なりを増額をして、少なくとも年金受給者と均衡のとれる——というと、常識的には非常におかしい話でありますけれども、現実には所内では深刻な問題だ。作業賞与金障害年金と同等にはなる、少なくとも若干その上になる、こういう程度の施策をしなければ、このらい療養所の中の共同生活というものはうまくいかぬし、またあそこで勤務されておる園長さん初め、所を運営すべき人たちも非常に御苦労されると思うのです。こういう点局長どうですか。大臣のお考えもお聞きしたのでありますが、少なくとも障害年金受給領以上に作業賞与金を引き上げる、こういう決意はございませんか。
  60. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど大臣からも私も申し上げましたように、慰安金一般の五百円のが五割増で七百五十円になった、それから障害年金をもらわない人の方は、二百五十円が倍額の五百円となって、相当増額をいたしたわけであります。しかし、それで十分だというふうには考えておりません。なお、作業賞与金も、先ほど申しましたように増額したいというふうな考えを持っておる次第であります。年金の方の関係も考慮いたしまして、今後努力したいと思います。
  61. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大臣も今のやりとりで実情はよくわかったと思いますから、この問題については少なくとも大臣在任中に解決する、金の大してかかる問題ではないと私は思いますから、この問題の解決を即刻やっていただきますように、心から要請をいたしたいと思います。  時間もあれですから、あと一つだけお尋ねをいたしまして終わりたいと思うのであります。  それは看護助手の問題であります。患者看護人から看護助手に切りかわり、しかも当時臨時職員でありました看護職員が定員化されまして看護助手になったということは、私は非常に前進であり、けっこうであると思っております。しかし、何さま定員が非常に少な過ぎる、こういう話を聞いているのであります。聞くところによりますと、勤務実態はどうかといいますと、大体婦人が多いのでありますが、八時間くらい勤める。夜の場合は夕方から朝まで十数時間勤めるというような格好になっておるようです。しかも、定員が一ぱいでありますために、週休はもちろん与えられているのでありますけれども、祝祭日休、あるいは御婦人が多いので生理休暇が当然必要であります。ところが、そういうときに休もう、あるいは子供さんを持っている人とか、家族が工合が悪くなったというようなことで急に休まなければならぬという場合ももちろんございます。そうした場合に、勤務表が一ぱいなんですから、だれかかわりの人を同じ定員の中から——ほんとうはきょうは休みの日なんだけれども何とか勤めて下さいとか、あるいは明けでこれから休みになるわけだけれども引き続いて勤めて下さいとか、無理に頼まなければ休みすらとれないというのです。これでは現在の一般社会の労働条件からいってあまりにも私はひど過ぎるではないかと思うのです。でありますから、もっと看護助手の定員をふやし、そうして、現在栗生などあの寒いところで寒冷地手当が五級地、北海道地帯並みでありますが、ああいうのをスチームに切りかえるとか、手を省くようないろいろな施設を考えるとか、間に合わない場合は定員を抜本的にふやすとか、何とかそういう形で患者に不便をさせない、そうして十分の看護ができるといった道を確保するというお考えはございませんか。実はこの前の国会におきまして、私この看護助手の増員に対して請願を差し出しまして一応採択になっておるわけであります。今年度予算におきまして幾らかふやしたということは聞いておるのでありますが、何とかこの定員をもっとふやして、そうして働いている看護助手の人たちが生理休暇もとれ、祝祭日休もとれ、家族が急の場合は休みもゆっくりとれるというような状態、しかも患者看護には不便を来たさぬ、こういう状態を作るために努力をいたすお考えはございませんか。
  62. 川上六馬

    川上政府委員 看護助手は、先ほど申しましたように年々五十人ふやしてきているわけでありますが、なおこれは引き続いて年次的にふやしていき、そうして待遇も改善いたしておりまして、なるべく働きやすいようにいたしたいと思っております。ただいまお話のように、勤務上非常に無理があるかどうか、取り調べまして善処して参りたいと思います。
  63. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 聞くところによりますと、看護助手がどうも足りない、看護が不徹底だというようなことを患者さんが言いますと、所の方では、一応不自由度というものを再検討して、ある程度看護が行き渡るようにしようと考えているというようなことをいうのでありますが、そういうことは全く行き過ぎであり、そんなことはあり得ないと思うのです。せっかく実施されました新しい看護助手の制度が、これによってかえって働いている人も大ごとだし、また患者の方から見ても看護が行き届かぬということのないように、この制度を実施してよかったという形をつけられるために、今の定員化の問題については大いに努力をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  64. 中村幸八

    中村主査 次は、野原覺君。
  65. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は、都市清掃の問題を中心お尋ねしたいと思うのです。  都市清掃の問題と申しますと、ごみの問題と屎尿の問題ということになるわけでございますが、大臣も御承知のように、実は昭和二十九年に清掃法というのが制定公布されておりまして、その十八条には国庫補助の規定がうたわれているわけであります。その国庫補助の規定の一項に「ごみ又はふん尿を処理するために必要な施設の設置に要する費用」、つまり第十八条には、国庫補助の対象として「ごみ又はふん尿を処理するために必要な施設、」こうなっておるわけであります。ところが、その第十八条を受けました施行令の第六条では屎尿消化槽の設置だけしか規定をしていない。このことは、実に施行令の不備ではないかというので、私は昨年の国会の分科会であったと記憶いたしますが。この問題をお尋ねしたのであります。ところが、そのとき古井厚生大臣と当時の尾村局長の答弁は、これは予算を獲得していないから施行令だけを変えても空文に終わるおそれがあるというので、この点はこのままにしてあるのです。ところが本年度の予算を見てみますと、昭和三十七年度の予算要求額は三千二百万円の塵芥焼却炉の予算を獲得しておられますから、これは昨年の答弁から申しましても当然政令がすみやかに改正されまして、塵芥焼却炉というのか何というのか知りませんが、その意味の文言をこの第六条の中に挿入されるべきものであると思いますが、いかがでございますか、御答弁をお願いしたい。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 従来の関係は今お話しになりました通りであろうと私も思います。予算が獲得できなかったということで、政令を改めるというところまで至らなかった、かように考えるわけであります。今回は若干その種の予算も計上をして御審議を願っておるわけであります。予算が成立いたしました場合に、この政令の問題につきましては関係当局ともよく相談いたしまして、積極的に解決したいと考えております。
  67. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 時間もありませんから、私もできるだけ簡潔にお尋ねしたいと思うのです。従って大臣の方も、灘尾さんはなかなかいい声をしておられますけれども、失礼ながら声がちょっと小さい。どうも厚生省のこの委員会は低調だといううわさがある。その原因を探ってみると、厚生省当局の答弁の声が小さいことに原因があるように思いますから、一つもっと大きい声でお願いをしたい。  三十七年度の予算要求書を見てみますと、環境衛生対策費として二十三億七千七百九十一万八千円が計上されておる。その中に清掃施設費としては九、億六千十万円、その内訳がまず屎尿処理、糞尿でございます。八億六千六百十万円、それから二番目に高速堆肥化処理施設費用、いわゆるコンポストというのでございましょうか、これの費用が六千二百万円、それからごみ焼却場の施設整備が、ただいま申し上げました三千二百万円、これだけを清掃施設費として計上しておるようであります。ところがその説明書を見てみますと、まず屎尿処理のところでは三分の一と四分の一の補助、とこう分けておられます。三分の一というのは一般都市で、四分の一というのは富裕都市だ、こういうことでございますが、一体その富裕都市とか一般都市というところの基準は、つまり自治省がとっておるようなあの基準でやっておるのかどうか。そういたしますと、四分の一の補助という都市はどういう都市になるのか、ここら辺を一つ説明願いたい。
  68. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 三分の一、四分の一の補助率は、屎尿処理施設につきましては、従来五分の及び四分の一でありましたものが、補助率の引き上げになったわけでございます。そのうちで四分の一の補助率を適用いたします地区といたしましては、私どもは六大都市、川崎市、その他交付税交付金の不交付団体で、裕福な都市につきましてこれを適用するという考え方で理解をいたしておるわけであります。
  69. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 裕福な都市ということでございますが、そういう裕福な都市は大都市で、一番屎尿の処理に困っておる。私は形式的にそういうような区別の仕方はいかがなものかと思うのです。東京都にしても大阪市にしても、財政的には中小都市よりも裕福かもしれませんけれども、屎尿処理が大へんな問題なんです。だからそういうことについてはいかがかと思うのでございますが、そういうことであるそうでありますから、一応この問題はこれでおいておき一まず。  そこで予算書の屎尿処理施設費のところで、オリンピック分というのが計上されておる。一千四百四十万円、それからずっと見てみますと、首都圏対策分としてまたオリンピック分が出てくるのです。オリンピック分というのが一億四十万出てきておる。一体屎尿処理のオリンピック分と首都圏対策のオリンピック分はどういう関係があるのですか。二つに分けて予算書に書かれておるのはどういうわけですか、お尋ねしたいと思います。
  70. 今村讓

    今村政府委員 ちょっと入り組んでおりますので、整理して申し上げますが、ちょっと時間をいただきたいと思います。あとで御答弁申し上げます。
  71. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 御熱心な厚生省のことですから、私も協力したいと思うのです。  ではその次にお尋ねをいたしますが、これは大臣お尋ねしたい。実は私は、ごみ焼却場についての政令規定がないというので、昨年は古井さんに相当いやなことも申し上げたのでありますが、当時の古井厚生大臣も尾村局長も、この点については一生懸命にやりますからということであったのであります。ずっと経過を見てみますと、一生懸命になるほどやられまして三千二百万円の予算を計上されておる。この三千二百万円というのはお話にならぬのです。私はこれからぼつぼつ厚生省の十年計画と称するものについても実は追及して参りたいと思いますが、これは紙に書いた計画書で、予算の裏打ち、財政の裏打ちのない計画書はごまかしの計画書である。どこまで一体確信を持ってこういう十年計画を立てておられるのか、三十六年度から四十五年度までの十年でございましょうが、去年の実績とことしの実績、第一年度と第二年度の予算を見ただけでも、全国のものすごいごみを処理するだけのことがなされていないことは明らかなんです。そういう点から見て、はなはだ不満にたえぬのでありますが、いずれにしても初めて塵芥焼却場の施設費用が三千二百万円目を出してきておる。このことは私は率直に言って多といたします。これはやはりゼロのところにこれを打ち立てられて、わからず屋の大蔵省にうんと言わした腕前は、灘尾さんに敬意を表したいと思うのでありますけれども、三千二百万円、補助金割当は補助率が四分の一、そういたしますと、四分の一の補助金で補助するといたしまして、全国何カ所を予定しておるのか、私は予算をとるときにははっきり八カ所とか十カ所とか予定があったと思うのです。そうしてその予定しておる個所はどこなんだ、それを一つお聞かせ願いたい。
  72. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 御指摘のように、三千二百万円、四分の一補助という金額につきましては、いろいろ御意見もあろうかと存じますが、一応私どもの予定では、一日処理二十トン程度のもの八カ所に対して補助をいたしたいという考え方であります。
  73. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 八カ所の予定地はきまっておりませんか。
  74. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 これから検討したいと思っております。
  75. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 二十トンの焼却炉だということになりますと、およそこれは富裕都市は入っていないですね、富裕都市は入るわけはないのです。例を申し上げますと、大阪市のごときは、平常において一日に千二百トンのごみが出るのです。四トン積みのトラックで三百三十六台分です。そこで、このごみを焼却するために、今、木津川には三百五十トンの焼却炉がある。それから城東区に百五十トンの古い焼却炉がある。そうして、本年末完成予定として加賀屋というところに百五十トンの焼却炉を作るということになっておりますが、この三つで六百五十トンの焼却炉ができて、どれだけの塵芥を焼却するのか、私、大阪市に尋ねましたら、五〇%から五三%だというのであります。これは大へんなことであります。しかも、その百五十トンの焼却炉を作るには、八億円の予算が要る。そういたしますと、私は、塵芥の焼却ということは、東京都にしても、大阪市にしても、幾ら富裕都市であっても、これは容易なわざではなかろうと思うのでありますが、三千二百万円というようなわずかの金でありますから、これはいかんともしがたいのでありますけれども、あなたの方が十カ年計画を立てて——なるほど、この図式を見てみると、さすがにりっぱなものであります。私は昭和四十五年が待ち遠しいのです。もう一切ごみは川に捨てません、海に捨てません、屎尿も川や海には流しませんという計画になっておりますから、待ち遠しいのでありますけれども、一体、これはできるという確信がおありなのか。これだけの図式を実現するためには、一体どれくらいの金が要るかということを、私はまずお聞きしたいのです。これは大へんな金が要る。仄聞いたしますと、あなたの方は千億円とか、千二百億円とか言っておるようですが、そんなことではできませんよ。全国のごみと、それから一億に近い国民の糞尿を処理する消化槽、下水処理を、そういったものだけでまかなうということになると、これは大へんなことなんです。こういうことで、非常に問題があるのであります。そこで、この「屎尿ごみ処理の現状と十カ年計画」という厚生省の紙は、この裏打ちとして、予算がどれだけあればこれはできるとお考えなのか、参考のために一ぺんお聞かせ願いたい。
  76. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 ただいまお尋ねの十カ年計画の総事業費でございますが、一応私どもは二百四十五億円と試算いたしております。
  77. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 二百四十五億円で、屎尿を海に捨てないように、ごみを川に捨てないようにできますか。その積算を説明して下さい。二百四十五億円の理由を。
  78. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 失礼いたしました。ただいまのはごみ処理施設のみについて申し上げたわけでございます。そのほかに屎尿消化槽関係が約三百五十億でございます。それから下水道終末処理施設が七百二十億程度、合わせまして千三百億程度の試算をいたしております。
  79. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それでは千三百億なければできない。これは国の持ち出す金が千三百億だという意味ですか。
  80. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 これは国庫補助、地方の地方債あるいは自己負担の一切を含めました総事業費という試算でございます。
  81. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 総事業費が千三百十五億円ということでありますと、国の持ち出す金、補助金はそれではどれだけに見積もっていますか、起債をどれだけに見積もられますか。
  82. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 国庫補助の額につきましては、補助率の点で金額が若干変わって参るわけでございます。補助率を三分の一と大ざっぱに見まして、この千三百億円の三分の一程度見込んでおります。
  83. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 千三百億の三分のということになれば、大ざっぱに見まして四百億円です。四百億円の補助金が十カ年計画の資金だ。そういたしますと、昨年度が幾らで、ことしは幾らでございましたか。
  84. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 三十六年度の国庫補助金は、下水道終末処理につきまして十億五千六百万円、屎尿処理施設六億七千二百万円、ごみの関係が、いわゆるコンポストというものでございまして、七千百万円。それから三十七年度予算案として請求いたしておりますものは、下水道終末処理施設が十三億三千九百万円、屎尿処理施設十億十万円、コンポスト六千二百万円、焼却施設三千二百万円でございます。
  85. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういたしますと、清掃施設費は九億六千十万円だ。それにその他のものが若干入るといたしますと、下水と清掃施設費の合計で三十七年度はどのくらいになりますか。
  86. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 約二十四億でございます。
  87. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 三十六年度は十七億、三十七年度は二十四億、こういうことになるわけです。四百億の補助金でありますと、年度計画としては年間四十億の計算でいかなければならぬと思う。ところが三十六年には十七億で、三十七年が二十四億、これではできないですね。十カ年計画を立てて、そうしてオリンピックを前にして一生懸命やるのだというその意気込みの初年度において、かくのごとき状態では、十カ年計画はできませんよ。これは大臣お尋ねをしたいのですが、大臣もこの計画は御承知だろうと思うのです。こういう計画を世間に出されるならば、もっとしっかりした財政の裏打ちを考えて出してもらわなければならぬ。この計画はなっていないですよ。それから千三百億というのも、時間がないからいろいろは申し上げません、また機会があれば申し上げたいと思いますが、この積算も問題があります。この千三百億で一体塵芥と屎尿の処理ができるのか、問題がある。だから補助金幾らで起債が幾らだ、地方の持ち分、持ち出しは幾らだという緻密な計画をお立てになられて、その上で私はこういう年度計画というものを世間に出すべきある、塵埃と屎尿とやかましく言われるからというので、紙の上のこういうものを出されても、私どもはこれは信頼するわけにいかぬのです。十年たったあとには灘尾さんは厚生大臣をしていないでしょう、五十嵐さんは局長をしていないでしょう。だからおれは知らないのだでは済まない。この計画はだれが一体いつ立てたのだということはやはり残るわけでありますから、こういう点についてはいま一度検討し直して、そうしてはっきりした積算基礎をつけてお出しになるつもりがあるかどうか、大臣の御所信を承っておきたいのであります。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 屎尿処理、ごみの処理、すなわちいわゆる清掃関係仕事がきわめて重要であるということは、これはもう申すまでもないことで、また野原さんの年来の御主張になっておるところであります。私どももその趣旨には全く同感でございますので、こ  の方面の仕事につきましては極力努力して参りたいと考えておる次第でございます。この十カ年計画は、三十六年度を初年度としまして、今後十年ということで厚生省で一応の計画を立てておるわけでございます。厚生省としましては十年間にこの程度のことをやっていきたいという考えのもとに計画を持っておるわけでありますが、これには現実に後年度の予算の約束をしておるわけでもございませんし、起債の約束をしておるわけでもございません。厚生省としてはこれを目標として努力する、こういうつもりの計画でございますが、なるほどお話しになりましたように、先ほど局長の申しました約千三百億という金で済むものか済まないものか、この問題につきましては、これはぜひやはり検討を要すると思うのであります。物価関係もございましょうし、いろいろな関係もございまして、当初考え通りにいくかどうかということについては時々検討を要すると思いますが、少なくともこれに予定しておりますような事業量だけはやっていきたい、こういうつもりでおるわけでございますので、金額についてはあるいは変化するということもあり得ることと思うのであります。いずれにいたしましてもきわめて緊要な問題でございますので、私も相当力こぶを入れておるつもりでございますが、なかなか思うように参りません。参りませんけれども、厚生省としましてはこれは放置することを許さない問題である、かようなつもりで予算の獲得あるいは起債のワクの獲得につきましては最善の努力をして、予定しておりますような事業計画は何とかこしらえ上げて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  89. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 灘尾さん、私はここに目標として立てておる、これはいいと思うのです。昭和四十五年末に屎尿処理は水洗便所が三九・二%、それから消化槽が五四・一%、それから下水の浄化だろうと思いますが、浄化槽が六・七%、こういうふうにやればこれは屎尿は完全に処理されることになります。海にも川にも山にも流さないで処理されていく、これはいいと思うのです。ところがこれに到達するための年度計画なり緻密な予算の裏打ちに対してのものがないのです。だからこれは出してもらわなければ困ります。国会としてはこういうものをあなた方がお立てになる以上は、やはりもっと確信のあるそういった財政的な裏打ちのあるものを出していかなければならぬということを私は言っておる、これを一体いつお出しになりますか。
  90. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省の立てております計画は、先ほど申し上げましたような趣旨で立てておるわけでございます。従いまして、これに後年度の予算の裏打ちとか起債の裏打ちを現実的につけるというような意味における計画を国会に提出することは、これは私は困難だろうと思います。ただ厚生省としてはこうやりたい、これを確保していきたいというそれをお出しすることはできますけれども、おっしゃるような非常に厳密な意味における計画ということになりますと、厚生省として国会にお見せ申し上げるというわけには参らないと思うのであります。
  91. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 厚生省が単なる目安を立てるにしても、予算の裏打ちのあるもっとしっかりしたものを立ててなさることが私は目標の達成になることだ、こう思うのであります。これは御検討願いたい。  それからその次に、予算でコンポスト施設費用六千二百万円を計上しておる。コンポストとは高速堆肥化処理施設整備のことで、ごみと屎尿をまぜてそうして堆肥を作ることだそうでありますが、コンポスト設置の要求が自治体からございますか。私の聞くところでは、あまり歓迎してない。もう自治体はとにかくごみを処理したいんだ、屎尿を処理したいんだ、こんなもので堆肥を作らなくても化学肥料がたくさん出回っておる今日、ごみの処理にも屎尿の処理にもコンポストなんていうものは十分じゃない、こういう声を私は自治体の代表の人々から聞くのです。一体現実に自治体から要求があって六千二百万円というものを計上したのかどうか承りたい。
  92. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 お尋ねの点でございますが、コンポストの施設の補助金の要求につきましては、必ずしも他の施設の伸びほど強い御要望はないのでございまして、そういう意味で昨年度に比しまして若干予算が減少いたしております。しかしその程度の要求は地方から受けておりますので、施設を整備して参りたいということであります。
  93. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 コンポスト六千二百万円とあるのですが、要求がなければこれは焼却炉と屎尿消化槽に回すべきです。あるいは下水の浄化槽に回すべきです。これは私は、どうもコンポストを作る会社の要請厚生省にあるやに聞いておるのです。こういうものを研究しておって、厚生省のあなた方にいろいろお働きになっておる会社がある。自治体があまり歓迎もしないものを予算を計上しなくてもいい。金がないんですから……。今ごみは川や海に捨てて、もう捨てる場所がなくて東京なんか困っております。大阪も困っておる。これは局長よく御承知通り、捨てる場所がないんですよ。もう大阪だけでも三百六十台というようなそういうトラックのものをどこに持っていきますか。半分は何とかその処理をするとしても、もう捨てる場所がなくて、大阪なんか私のうちの近所の池という池はみな大阪市がごみを捨てる。そろすると近所の者は、ハエがわいてウジがわいて困るというので、市役所にどなり込んで、そこで市は困って今度板囲いをしましたが、そこから臭気ぷんぷんだというので大問題になっておる。埋め立てた土地は使えないのです。十年間はそれを使えやしないのです。建物は建たぬ、こんなごみを捨てたところには。もうごみの処理には悲鳴を上げておる。それにたった三千二百万円、お話にならぬですよ、こんな厚生行政は。しかもコンポストという歓迎しないものに六千二百万円、どうもこれは国が押しつけたのじゃないですか、率直にお聞かせ願いたい。
  94. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 地方からの要請がないということでは決してございません。特に地方では、果樹園地帯を持っておる自治体等から強い要望がわずかではございますが、この予算程度あるわけでございます。
  95. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それでは屎尿処理についてお尋ねをいたしますが、今現実に東京も大阪も海に捨てております。それから川崎も横浜も、海岸地帯の大都市は海に捨てておるのです。それからその次は川に捨てておるところがあります。その次には山に捨てておるところがあるのです。それから四番目には消化槽と下水処理ですけれども、これはお話にならぬです。私は東京都の例を申し上げますと、東京都は消化槽で二五%、下水で一五%、そうして肥やしに一〇%、計五〇%、残りの五〇%は東京湾のはるか沖に捨てておる。ところが現実に東京湾の厚生省から政令で規定されておる個所に捨てておるかというと、東京都民のお話を聞くとそうじゃない、もう東京湾沿岸のノリに一ぱい肥やしが付着して困る。厚生省は監督行政をなさっておるのですから、ときには月に一回ぐらい船に乗っていってどういうような処理をしておるか調べてもらいたい。ある人の話ですが、これは話が大きいので私もどうかと言ったのですが、東京湾の入口には伊豆の大島と同じ島が海底にできておるそうです。何だと言ったらこれは東京都民の肥やしだそうです。笑いごとじゃないと思うのです。それから都市によりますと、素掘りと申しまして、捨てるところがないものだから海岸に穴を掘ってそこにどんどん捨てるわけです。屎尿消化槽を作ると金がとてもかかるものだからどうにもならぬというので捨てる。ところがその海岸の穴の底は海に通じておるのです。これは去年あった話ですが、舞鶴では海岸線八キロは海水浴禁止になっている。それで舞鶴の市民が騒いで、プールが作れぬといって市役所にどなり込んでいったというえらい事件が起こったのです。舞鶴では貯留槽など作っておったが、それがあふれてずっと八キロ舞鶴市の周辺の海岸に糞尿が流れ出したものですから海水浴禁止になったわけです。これは大へんなことです。私はこういうことについてほんとうに親身のある指導をなさっておらぬじゃないかと思う。時間がないから一方的に申し上げますけれども、聞くところによると岩手県の一関市は屎尿を川に流しておって、実はあなたの方にその陳情にきたはずです。岩手県の一関市と下流の村との間に対立が起こった。川に流しては困るというので一関市とその村との間でえらいけんかになった。これは山の町ですから海がない、捨てるところがない、そこで厚生省陳情に行ったところが、厚生省は十カ年計画でやったらいいじゃないか、下水処理場を作れと言った。ところが十カ年計画なんというのは待っておれないのだ、今大問題が起こっておるのだ、どういたしましょうと言ったら、厚生省は一関市の陳情者に対していい方法を教えてやる、何ですかと言ったら山に捨てろというのです。こんな厚生行政がありますか。灘尾さんひどいですよ。これは山に捨てろといっておる。  それから神奈川県の小田原市へ行ってごらんなさい。あなた方はお役人さんとして調査をされましたか。小田原市はどこへ捨てていますか。箱根の山のまん中に穴をあけて捨てておるじゃありませんか。こういうように、もうどこの町も、中小都市、財政的に苦しい都市それから富裕都市といわれる大都市にしても水洗便所はとても金がかかってできないものですから屎尿処理に困ってきておる。これに対してこういう微々たる予算では私はいかぬと思う。  厚生行政とは病気を起こさない行政、病気をしてから病気をなおすところは病院がやります。それ以前の行政をするのが厚生行政です。そうするともうごみと屎尿だけで伝染病の原因にもなる。不潔な話です。私は日本の町をきれいにする、世の中を明るくするというお役所は厚生省をおいてほかにないのだから、この点についてはもっと真剣にやったらどうかということを言っておるのでありますけれども、消化槽にしても下水処理場にしてもきわめてごくわずかな予算しか取っていない。私に言わしたら十カ年計画もでたらめです。言葉はひどいかもしれぬけれども、こんなものは信用するわけにいかない。何年たったら日本のごみを、屎尿を完全に処理することができるか疑問なんです。この辺について厚生大臣の御所見を承っておきたいのです。いいかげんな答弁じゃ困ると思います。この問題は大問題ですから、あなたの御決意のほどを承っておかなければならない。
  96. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題についての私の考え方につきましては、先ほども申し上げました通りであります。私はやはり厚生行政として最も重点を置かなければならない施策の一つ考えておる次第であります。都市が急激に膨張いたします。また新しい都市もだんだんできてくる、そのために市民の生活上この問題がほんとうに切実な社会問題となってきておることも私よく承っておる。そのつもりで問題の解決に当たって参りたいと思うのでございます。われわれが努力いたしますとともに、地方の公共団体ないしはまた国民の皆さん方の御協力も得てこの問題は解決しなければならぬのじゃないか、かようにも考えておる次第であります。そう申しましても一挙に解決することはなかなか困難でございますので、われわれといたしましては国の補助なりあるいはまた起債の面において最善の努力をする。また地方団体といたしましては、やはり地方自治のこれは最も重要な要素をなす性質の仕事であろうと思うのであります。従いまして地方自治体においても、この方面の施策については特に重点を入れてやってもらいたいと実は思っておるわけであります。そういうふうな心持ちで問題の解決に当たって参りたいと存じておるわけであります。予算の面につきましては、だんだんの御指摘であります。私どもこれで十分とは決して考えておりません。まだわれわれの努力の足らざるところを憂えておるわけでございますが、さらに勇を鼓してこの問題について予算の獲得、あるいは起債の拡大ということに努力いたしたいと存じます。
  97. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 清掃法第二条というのは、灘尾厚生大臣はよく御承知だろうと思いますが、ここにはこのごみと屎尿、つまり清掃についての国及び地方公共団体の責務を述べておるのです。第一項は市町村の責務、第二項は都道府県の責務、第三項は国の責務をうたっておる。その国の責務のところには、「汚物の処理に関する科学技術の向上を図るとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が充分に果されるように必要な技術的及び財政的援助を与えることにつとめなければならない。」とうたってある。山に捨てるというような指導は、私は残念ながら必要な技術的指導ではないと思うのです。それから私は、これは厚生省にここで要望しておきます。いずれあらためてそのデータを請求いたしますが、その要望は何かというと、今日全国の特別清掃地区で山に捨てておるところは一体どういう都市か、川に捨てておるのは、どこの川でどこの都市か、海に捨てておるのはどこかというデータをすみやかにとってもらいたい。実はきょうこの委員会で要求するはずでありましたが、なかなか時間がありません。一々そういうこまかしいこともやっておれませんから、これは私はあらためて文書で要求をいたします。一つ的確に調査をして出してもらわなければならぬ。灘尾さんの御決意の表明がありましたから、その決意の表明を信頼する以外に今のところありませんから、どうか一つその決意に基づいて、勇を鼓してごみ、屎尿の処理に当たってもらわねばならぬと思うのであります。  その次には、肥やしのくみ取りを民間がやっておるのです。これはこの委員会でもちょいちょい問題になっておるのですが、厚生省は直営が望ましいというので、これは地方自治体の責任の仕事であるから民間にやらしてはいかぬ、民間にやらしてはいかぬというわけは、民間はくみ取りをやることによってもうけるのですから、労働者を低賃金にするというのです。これはもうけなければだれもやりませんから、いやでもするのです。それからくみ取り料の徴収でも、地方自治体よりも民間にやらせると高い。それから自治体からも若干の補助金を取るということで、とにかく利潤目当てに肥やしのくみ取りをやるということは、地方自治体の精神からいっても、また一々条文を申し上げませんが、地方自治法からいっても違反だ。こんなことをいつまでお認めになるのですか。行政指導だなんて生ぬるいことを言わないで——地方自治体の責任でしょう。地方住民の肥やしをくみ取るのは、地方自治体固有の事務になっておるはずです。この辺について一つ考えを承っておきたい。
  98. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 屎尿のくみ取り、運搬、処理というようなことにつきましては、御指摘のように、集められた屎尿を処理するととは、市町村の義務として法律の規定があるわけでございます。しかし、お言葉を返すようでございますが、現実の問題としては、御指摘になりましたように許可業者の担当している部分がかなりあるわけでございまして、これを法律上排除しているわけではないわけであります。しかしながらこれも御質問の中にございましたように、法全体の精神から見まして、市町村が直営でこれを運営するということは望ましいことでございます。ぜひそのように逐次切りかえて参りたいということで、機会あるごとに私どもはその方向に向かって指導いたしておるわけでございます。現実の問題から見まして、いつこれが全部の切りかわるかというような時期をお約束して申し上げることは、私としても今それだけの見通しがないわけでございますが、極力そういう方向に向かって指導を強化して、努力をいたして参っておるということを申し上げたいと思います。
  99. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 おっしゃることと、あなた方の指導の実績と違うのです。指摘いたします。どう違うかというと、行政指導で直営の方向にやっておると言いますけれども、実は逆をいっておりますね。なるほどこの清掃法を見てみますと、民間のくみ取りを禁止しておる条文はない。しかし清掃法の精神と地方自治法の精神からいって、局長の言うように直営が望ましい。それで行政指導をやる。その態度はいいのだ。ところが小倉はどうですか。御承知ですか、最近の小倉市の状態を。尼崎市はどうなりました。それから先ほど申し上げました岩手県の一ノ関市はいかがですか。一々聞いたら、あなたの方は困りますよ。一ノ関市は川に捨てておった。ところが山に捨てろということで山に捨てに行った。ところがこれはやっぱり不法投棄じゃなかろうかと市は考えた。しかしどうにも捨てる場所がないじゃないか。そこで民間に持っていって業者にやらせた。市自体が不法投棄をやっちゃ問題になるから、業者にやらしたらいいじゃないかということで、今、山に盛んに捨てているのですよ。そうして業者にやらせるようになったのです。あなた方、行政指導しているというけれども、現実に、これは最近業者にやらせるようになったじゃありませんか。それから石川県の金沢市は、去年の四月にくみ取りの下請会社ができたじゃありませんか。これは公社とは言っております。市が金を出しておって、衛生公社といっておるけれども——東京都も、百貨店なんかの大きなビルの塵芥に困って、これを処理するにあたって、東京都環境衛生整備事業協会という仮称の財団法人の準備に、今着手しているじゃありませんか。民間業者がやることも、法の精神からいっていけない。それから同時に下請会社にやらせるということも、やはり問題がある。地方自治法の第二条からいって問題がある。そういう逆の方向をいっておるのですよ。小倉市はごみを集める人員、器材が足らぬので、実は小倉の清掃組合が市に要求したのです。市は、じゃ共同で調査してみると言って、やったら、組合の言う通りだということになったのです。ところが組合の言う通りにやると、とても市の財政でまかなうことができないというので、民間の会社の下請にすりかえている。市がやりなさいと行政指導しておるでしょう、今厚生省は。市の直営でやりなさいと言っておる。こういう事例が、私が調べただけで——今これだけ言ったのですが、これはあげたら切りがありませんよ。あなたの行政指導というのは、実は何にも実績を上げていないですよ。どう考えますか、局長、この点。
  100. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 具体的にいろいろの問題があることは承知いたしております。また私どもの指導の力の十分及ばないということも、反省をいたしております。御趣旨にございますように、直営の方向に向かってこれを強力に指導していくという態度につきましては、今後とも力を尽して参りたい、かように考えます。
  101. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは厚生大臣に申し上げておきますが、勇を鼓してほんとうにやってもらいたいと思うのです。この行政は、思い切ったことをやってもらいたいのです。行政指導みたような生ぬるいことでは、これは直りませんよ。地方自治体が、自分の当然の仕事を、そんなきたない仕事はおれはやらぬのだという投げやりな気持——それから民間業者にやらせて困るのは一般の住民です。何のためにわれわれは市町村民税を納めているんだ、こう言って、全国至るところにふんまんが高いわけですね。これは一つ勇を鼓してやってやってもらう。その一つの具体的なやり方としては、清掃法を検討してもらいたい。私は大臣に清掃法を読んでもらいたい。清掃法の第十五条にはこう書いてある。「特別清掃地域内においては、その地域の市町村長の許可を受けなければ、汚物の収集、運搬又は処分を業として行ってはならない。」つまり市町村長の許可があれば民間営業もできるんだという規定になっておる。こういう規定を作っておるからやるんですよ。だから私は、この清掃法の十五条なんというのはもう削除してしまえ。これは灘尾さんがよく御承知のように、地方自治体の仕事となっておる。地方自治法第二条第三項第七号には、清掃というのをうたっておるのです。それをこの清掃法では、こんな許可さえすればできるんだという規定を置いておる。現実に民間業者をなくすることができないから、この十五条というものを過渡的な規定として、昭和二十九年に設けた。私も当時は国会におって知っておる。ところが、これを得たりかしこしと地方自治体はやっておるわけでありますから、こういうものはすみやかに削除してもらいたい。この点について大臣のお考えを承っておきます。
  102. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府のこの問題についての考え方につきましては、先ほど局長が申し上げました通りで、直営が望ましいと考えます。問題は、市町村が清掃をいたすにつきまして、その手段方法をどうするかというところからきておるかと思うわけでございますが、われわれとしましては、直営が望ましい形態と考えております。これは別に特に申し上げる必要はないと思いますが、実際問題としまして、地方のそれぞれのいろいろな沿革もあり、事情もある、あるいはまた急に制度、やり方を変えるということになれば混乱を生ずるという、いろいろ具体的な事情もあろうかと思うのであります。方向としては申すまでもなく、先ほどわれわれの申しましたような方向において進んで参りたいと思いますが、ときに、また現実の問題として、御指摘になりましたように、われわれから言えば必ずしも望ましからざる形態というようなことが、あるいは起こってくることもあり得るかと思います。しかし方向を変えるつもりは毛頭ございません。どこまでもそれでやって参りたいと思います。  それから清掃法の改正の問題でございますが、いずれにいたしましても清掃施設そのものが非常に不備な状態にあるわけであります。一ノ関市近辺の例をお引きになりましたが、やむにやまれずそういう処置をとったのではなかろうかと思うのであります。何にいたしましても、国も公共団体も、国民も協力して、清掃施設の整備ということを急いでやらなければならぬ。それがうまく参りますれば、おのずとそのような問題も解決するのじゃなかろうか。それまでの問題ということでございますが、私もまだ実情には暗いわけでございますので、また野原さん、非常にお詳しいようで、いろいろお話も伺えましょうし、またよく取り調べまして、清掃法改正の要ありとすれば、その改正というようなことも考えなければなりませんけれども、今申しましたような方向で今後行政当局を督励いたしまして、指導に努めて参りたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  103. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それからくみ取り手数料を取っておるのですが、これは手数料を取れと指導しておるのですか。肥やしのくみ取り手数料を取っておる。自治体にしても、民間業者は言うまでもありません。ひどいところはごみ集めの手数料を取っておる。これは私は税金の二重取りだと思うのですよ。これは私は憲法違反だと思っているのですよ、ほんとうに。これは憲法違反だ、あとで指摘しますが、飛躍したようなことを言うようですけれども、憲法九十何条、八十何条の違反です。こういう指導をあなた方はやっておられるのかどうか。これは局長に承りたい。
  104. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 御指摘のように清掃法の二十条でございますか、そこに手数料の規定がございまして、市町村は汚物の処分をする場合に条例の定めるところによりまして手数料が取れる、取ることができるという規定があるわけでございます。市町村におきます屎尿あるいはごみ処理の実情につきましては、ただいまのお話にもございましたように、市町村によっていろいろ事情が違うわけでございます。私どもとしましては手数料を取るという道を清掃法に開きまして、あとは市町村の実情に応じた条例に基づく処理にまかせておるという実情でございます。  それからなお憲法違反というお話がございましたが、私どもの考え方といたしましては別にこれは租税と重複しておるという考え方ではなしに、やはりこれは特定人に対する市町村のサービスである、事務であるという考え方から、条例上手数料を取るということにきまりますれば、これを取ることは決しておかしくないという考え方に立っておるわけでございます。
  105. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 重大な答弁をしましたね、あなたは。今の答弁は大へんな答弁ですよ。これは厚生大臣によくお聞き願いたいと思う。清掃法の第二十条、確かにあなたがおっしゃる通り書いてあります。「市町村が行う汚物の収集及び処分に関し、条例の定めるところにより、手数料を徴収することができる。」と書いてあるのです。あなた、これをこの文章の通り解釈して、条例を定めたならば取ることができるのだと、こういう指導をしておるから、全国大多数の都市が取っておる。ところがこの清掃法の第二十条というものは地方自治法の第二百二十二条を受けておるのでありませんか。地方自治法の第二百二十二条に何とあるかと申しますと、こう書いてある。「普通地方公共団体は、特定の個人のためにする事務につき、手数料を徴収することができる。」とある。普通地方公共団体はその公共団体の固有の事務については手数料を取ることができるのです。だから市町村民税を取っておるのです。地方自治法の第二条第三項第七号には清掃ということがうたわれておるのです。地方自治団体の固有の業務として清掃というものをうたっておるのです。清掃は固有の業務なんです。肥やしをくみ取る、それからごみを集めるというのは、これは市町村の固有の業務なんです。その固有の業務である市町村が手数料を取ることはできない。ただ手数料を取ることのできないということでも困るというので、第二百二十二条が起案をされたのです。その精神は、特定の個人のためにする事務については取ることができると、こうしたのです。特定の個人のためにする事務とは何ですか。区役所に行って身分証明書をもらうことですよ。印鑑証明をもらうことです。これは特定の個人のためにする事務なんです。一個人の要求に基づいて、主としてその者の利益のために行なう事務を特定の個人のためにする事務と行政法学でも定義しておるじゃありませんか。いいですか。だからそのときに手数料を徴収することができる。ところが今市町村自治体が手数料を取っておる実情を見ますと、頼みもせぬのに条例だといって取りにくるのです。いや、おれは自家で処理するのだ、こごみを裏のやぶで焼くのだ、あなたところで取ってもらわなくたっていいですよというところまで取りにくる。つまり汚物処理の請求のあるなしにかかわらず、一般住民から今その手数料をとるというのが条例になっているのですよ。これは違反ですよ。こういう取り方は違反です。これは一つ大臣の御所見を承っておきたい。
  106. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 清掃法と地方自治法の関係についての御議論のようでありますが、私法律に暗いわけでございますので、法律的なことを申し上げるのに自信も何もないのでありますが、私は、格別地方自治法の規定に抵触するものでもないし、清掃法においてこれだけの個条が認められておるということでありますれば、手数料を取っても差しつかえないのではなかろうか、また手数料を取る取らぬは地方の任意ということになっておりますから、地方の必要上手数料を取らざるを得ないという場合に、この清掃法の規定に基づいて手数料を取るということは、格別どこにも抵触する問題のようには思わないのであります。何さま法律論になって参りますとまことに弱いのでありまして、これでもって正しいかどうか。清掃法がすでに認められておって、その条項に基づいて手数料を取るということにつきましては格別の問題ではないのではなかろうか、ただこの種の仕事について手数料を取ることがいいか悪いかという議論になりますと、またいろいろな議論もあろうかと思いますが、法律論といたしましては特に問題とされるほどのこともないのではなかろうかと思います。
  107. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 現実に手数料を取られているのだから、これは政治論ではいかない、法律論でいきたいと思う。あなたは法律に弱いと謙遜されますが、法律に弱いならば断定しない方がいいですよ。これは速記に載って大問題になりますよ。灘尾さんともあろう優秀な方で地方自治法第二百二十二条の解釈ができないなんということになったら大問題だ。この問題は私は徹底的に究明します。場合によったら行政法学者等も呼んできてはっきりしたいと思う。これはとんでもない間違いだと思う。もう一ぺん申し上げますと、第二百二十二条は「特定の個人のためにする事務につき、手数料を徴収することができる。」ごみと屎尿は特定の個人のためにする事務じゃないですよ。たとえば百貨店あるいは大きな会社が、とてもごみが集まって困るから何とか取ってくれと言ったら取ってよろしい。これは条例でできる。そういう例外があるから、そういうことも含めて清掃法二十条はうたった。しかし一般的に一般住民が請求もしないところから取るということはいかぬでしょう。これはわかるだろうと思う。実は金沢市に条例ができまして今裁判になっております。金沢市長の土井さんを相手に行政訴訟をやっている。昭和三十五年六月十八日に金沢市の清掃条例制定の件が上程になった。六月二十九日この条例が可決、七月一日に公布。三十六年の一月一日から実施され、二月から徴収ということになった。三十六年の三月十三日以降に、市民の家に二月分と三月分のごみ代をよこせときた。これは世帯人員についてこのごみ代が規定されております。家族一人から三人までは月額二十円、世帯人員四人から六人までは月額三十円、七人以上は四十円。これはごみです。屎尿じゃないこれは条例ができたんだから料金をよこせと取りに来ましたから、この人が憤慨をしたのです。おかしいじゃないか……。この人は法律も知っておるから憤慨した。地方自治法二百二十二条は、頼んだ者が手数料を払うんだ。何だというと、これは手数料ですね。頼みもせぬ、おれはおれのごみをここへ捨てて焼くんだ、おれからまで強制的に取ることはいかぬじゃないか、いやこれは条例でございますから取りに来たんです。こう言う。そこで憤慨をして、金沢市民の有志が、よしというので、今市長相手に行政訴訟をやっておる。これはどう考えてもおかしいんですよ。だから、この辺については厚生大臣もおかしな断定をなさらないで、一つ十分慎重な検討をされた方がよかろうと思います。いかがですか。
  108. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、地方自治法に二百二十二条があり、また清掃法にはこのような規定があるわけでありますので、この手数料は清掃法に基づいて取っておるわけであります。そういうことでありますので、別に差しつかえはないのではないかというような趣旨のことを申し上げました。しかし法律上まことに暗いわけでございますので、この点につきましては私、なお一つ検討をいたしまして、その上でお答えを申し上げさしていただきたいと思います。
  109. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは一つぜひ検討をしていただきたい。私の見解は、あなたが検討される場合の参考として申し上げておきますが、憲法九十四条にはこう書いてある。「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」こうある。従って、この条例というものは法律の範囲を越えてはいけないということです。つまり、一般市民からまで強制的に手数料を取るなんという条例は、地方自治法の二百二十二条の範囲を越えておるというのが私の見解です。これは御検討の参考にしてもらいたい。  それから私は、こういうやり方は税金の二重取りではないかと思う。憲法八十四条にはこう書いてある。「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」とある。これにもこれは抵触しますよ。だから、ここら辺をしっかり検討された上で行政指導をしてもらわなければならとぬ私は思うのです。  以上で私は都市清掃についての質問を終わりたいと思いますが、灘尾さんは、まことに失礼な言い方をいたしますけれども、厚生行政のベテランです。私はあなたを前にしてこういうおべんちゃらを言うつもりはありませんが、あなたは確かに練達堪能な方だ。厚生行政官出身でもあるし、その右に出る者はないとすべての人が批評しておるわけであります。都市清掃の問題は重大だとあなた自身も申されたわけでありますが、先ほど読み上げました清掃法の第二条第三項には、国の責務というものが規定されておるわけでありますから、この精神に沿って真剣な御努力をしてもらわなければならぬと思うのであります。  第二点は、十カ年計画の実現のためには、抜本的な施策と勇気を持って当たってもらいたい。  第三点は手数料についての検討であります。こういう憲法違反、法律違反の疑いのあるやり方を市町村、自治体が盛んにやってきておりまするから、これについてはもっと法的にも深く検討されて、御指導を徹底的にやってもらわなければならぬのであります。大体自由民主党に所属をされておられる灘尾さんで、池田内閣というのは社会主義内閣でありません。従って、失礼な言い方でありますが、弱肉強食の資本主義を建前にしておる——そうでないとおっしゃればまた議論がありますけれども、そういう内閣の閣僚として、あなたも思い切った社会福祉行政というものはなかなかやりづらい点があるかもしれませんけれども、しかし厚生行政というものは、貧乏人をなくす行政、病人をなくす行政、お釈迦さんの生老病死をなくする行政が厚生行政だ。私は、国の政治の大半は厚生行政だと思う。だからあなたは、閣僚の半分の数をあなたが持っておるんだというくらいの御決意でこれは当たってもらわなければ、この塵芥も糞尿も処理することはできないであろうということを申し上げにおきたいのであります。時間がありませんから、もう一問で終わります。  看護婦の問題です。これは川上医務局長に伺います。  看護課の設置では、との分科会でもことしになってから質問があったようでありますが、去年これを私がお尋ねをしたときに、川上さんはこう答えておる。これは設置法の改正ではありませんから、課にすることは政令でできることでございますから、至急検討をいたしまして、なるべく実現をいたします。こうお答えになられて、期待して下さいと、こう私に言った。期待しておりましたけれども、課にならぬのです。一年間期待しておったが、看護課にならない。これは私非常に不満にたえないです。私は看護婦さんから頼まれて言っているわけではないです。看護婦が足らぬのです。今困っておるのです。しかもその看護婦を養成する学校の教師養成機関もない。いろいろなことで今看護行政ということは大問題になってきておる。このときに、どんな検討をしたのか。私に実現を約束しておきながら、いまだに実現できない検討をしたのか、それとも実現させるための検討をしてきたのか、私は去年のお約束がありまするから、これは承っておきたい。
  110. 川上六馬

    川上政府委員 私ども医務局といたしましては、看護課を独立させたいという考え方で努力しておるわけでありますけれども、機構の拡充はいろいろな関係もございまして今まで実現をいたしていないのは遺憾に思っておりますが、引き続いて努力をいたしたいと思います。課の設置ができないので、内部の人員も少しふやしたり、あるいは最近の看護婦の対策強化の必要上、局内におきましては関係課長が始終集まって、この問題に対していろいろ検討を重ねておるような情勢でございます。
  111. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 どうも今の御答弁では納得できないです。いろいろな事情で実現できなかったということですが、これははっきりおっしゃっていただきたい。今そこに岡崎さんお見えですが、あなたのところが、行政管理庁が反対したんですか、これは率直にお聞かせ願いたい。私は、きょうは川島長官に出てこい、こう言ったのだけれども、かぜ引きだ何だといって、来ないんです。けしからぬです。川島さんに野原がそう言ったと言うて下さい。出てこない。これは私はまことに許しがたいと思うのだけれども、しようがないから、政務次官でいいというのであなたに来てもらったので、あなたは単なる政務次官じゃないです。川島長官にかわってきょうは来ておる。どういうわけであなたのところは看護課にするということに反対するのか。反対するならば、看護養成について責任持ちますか。川上医務局長中心に、厚生省は、古井厚生大臣のときから執拗にこれは課にしようじゃないかという要求をしている。それになぜ反対するのです。その反対する理由を承りたいのです。
  112. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 ただいまのお話につきまして、今年度におきまして、課並びに部局等の増設、人員の増加等について各省から御要求がありましたことにつきまして行政管理庁としてとりました態度をちょっと簡単に述べさせていただきたいと思うのであります。  人員の増加については、もう極力削減をする、そして国民の負担をできるだけ軽くして能率を上げて、行政の実効を上げていただきたいという方針を行政管理庁はとりまして、人員の増加に対しては、極力抑制をさせていただいたわけでございます。それと同時に、部局の増設に対しましても、できるだけ抑制をいたしたのでございますが、部局の問題につきましては、人員をふやさない範囲において、各省の大臣が極力施策として御要求になるものは、人員をふやさなければ、部局の問題につきましては、ある程度お認めをするという態度を実はとらしていただいたのでございます。  そこで、厚生省全体といたしましては、実は社会保険庁の増設の強硬なる御要求がございまして、いろいろな折衝の結果、厚生省としては、人員はふやさない、各部局をある程度整理いたしても社会保険庁をお作りになるというようなお話し合いになりまして、今年度は厚生省は、社会保険庁をお作りいただくということについて、大体のお話し合いを進めたというような点がございますので、厚生省全体のいろいろな御要求に対しまして、十分行政管理庁としてはお認めを申し上げなかったというような次第なのでございます。自然その点で、看護課等につきましても、看護課の必要、不必要というよりは、そういう大きな厚生省全体の態度につきまして、厚生省の御要求を非常に、社会保険庁をお作りいただくという点につきましては、ほかの点はしぼったというような点になっていることが一つでございます。  それからもう一つは、私ども申し上げるまでもなく、河野行政管理庁長官のときに、各課の廃止を、全体にわたりまして二割の整理をいたしました。その際に、看護課が整理されまして、その後整理された課の復活を、全然認めないというわけでもございませんでしたが、大体において、各役所全体的に検討して、一ぺん廃止した課の復活は一応のピリオドを実は打っておるというような点がございましたので、看護課につきましては、このたびも御遠慮いただくというような点になった次第でございます。また、ただいまいろいろな経緯がございまして、厚生省の方といたしましても、非常な御要求もございましたが、ただいまのところ、全体の各官庁の建前から見まして、ただいま看護参事官もおられることでもございますので、今のところ御機能が非常に、そのためにお差しつかえがないのではないかというような見地から、実はこのたびは私の方でお認め申し上げなかったというのが実情でございます。
  113. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 時間がないから簡潔に終わりたいと思うのですが、あなたの御答弁を聞きますと、私は、人員の節減、これでいくんだ、これは賛成です。不必要な部局の設置は私も必要でないと思うのです。しかしこれは必要な部局については別なんです。これは岡崎さん御承知かどうか知りませんが、看護課というのはかつてあったのです。それを参事官にしたわけですね。それでいけるだろうと思ったところが、看護婦の不足、それから看護行政、幾多問題が出てきているわけです。どうしてもやはりこれは課に昇格させて、若干の人員も増加をして、看護行政に全力をあげなければならぬということに、実は自民党の方々も含めてみなその意見を持っておるのです。きのう床次君が質問したらしいですが、みな持っておるのです。あなたの御答弁では私は納得できません。答弁になっていないのですよ。あなたの方は設置法の改正をどんどん出している。この国会くらい設置法の改正の多い国会はない。この設置法の改正とは何か。減らす設置法の改正でないのがたくさんあるじゃありませんか。そうでしょう。どうして一体、厚生省から出されておる看護課だけいじめるのだ、看護課にしないことはいじめるのだ、こう言われると、これは川上医務局長灘尾厚生大臣が、看護課の設置要求に対して熱意がなかったととられるような御答弁もあった。社会保険庁ができたらよいのだ、だから、こっちを譲って、看護課は譲ったのだ、それは厚生省のへっぴり腰だというようなことで、おれのところもつい一生懸命やれなかったという意味の御答弁も、速記にはありますよ。私は、そういう言い方は行政管理庁としても卑怯だと思う。厚生省は要求しているのです。私は、ここで灘尾さんや川上さんを、とやかく言ってこの問題ではあえて追及いたしませんが、せっかく政務次官の岡崎さんがここへお見えでありますから、川上医務局長も、去年からことにかけてずっと看護課にぜひしたいのだ、こう言っておりますし、灘尾さんも同感の意を表されておるわけですから、行政管理庁は一つすみやかに検討してもらいたい。これは川上医務局長も、事務当局でもう少し熱意を持ってやってもらいたい。社会保険庁があるから、これを要求したら思うようにとれぬから譲るなんていうことをあなたがやられておって、私どもには、いや要求しているのだ、行政管理庁が反対、そういうことではいかぬですよ。だから、いいですよ。社会保険庁が必要なら要求しなさい。看護課が必要なら要求しなさい、そういうことでどうか一つ灘尾さんの方でも、この問題はもう少し真剣に取り上げていただいて、でき得るだけの努力をして、看護行政に万遺憾のない措置をとってもらうことを私は要求したいと思います。これで終わりますから、大臣とそれから岡崎行政管理庁政務次官から、その御所信のほどを承っておきます。
  114. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 看護婦課の設置につきましては、厚生省としては、これがある方が望ましい、かような考えで、いろいろ御相談もしたわけでありますが、政府全体といたしまして、人員の増加でありますとかあるいは局課の設置等につきましては、極力これを抑制する、こういうようなことになりまして、残念ながら目的を達することができなかったわけでございます。しかし看護婦の問題は非常に重要性を帯びてきておると存じますので、厚生省としましては、今日ただいま、看護婦課ができないにいたしましても、看護婦課があると同様のつもりで、この問題にりきましては善処して参りたいと存じております。また、将来の機構の問題につきましては、さらに努力を継続していきたいと思います。
  115. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 ただいまいろいろ御意見等も拝聴させていただきました。また、厚生大臣のただいまの御答弁もございましたのでございますから、行政管理庁といたしましても、看護関係の問題を軽視しているわけでは絶対ございませんので、十分この点を考慮いたしまして、よく検討さしていただきたい、かように思いますので、御了承いただきたいと思います。
  116. 辻原弘市

    ○辻原分科員 午後にかかって参りましたが、時間が少のうございますので、問題をしぼりましてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、本論に入る前に、これは医務局長の所管だと聞いておりますが、厚生省の第二共済組合の運営に関してちょっとお尋ねをいたしておきたいと思います。  他の共済組合と同様、運営審議会が設けられて、それぞれ組合員と役所側の委員が同数で運営をせられておるようでありますが、お尋ねをいたしたいのは、その運営審議会の議によりて運営規則の改正が最近行なわれたようでありますが、それは幾日に行なわれましたか。
  117. 川上六馬

    川上政府委員 第二共済の方はきょうは問題が出るということを予期いたしませんでしたので、その方の資料を持っておりませんが、今担当課長を呼んでおりますから、その問題はできましたら少しあと回しにしていただければありがたいと思います。
  118. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それでは課長が来られてから私は少し具体的に伺いますが、その前に、運営審議会の運営のやり方というものは、他の共済組合のみならず、その他一般の審議会等の運営と同様だろうと思います。私の聞いている範囲では、合計八人で構成されておるようでありますが、その場合の決定の仕方は、一般的にどういう形になっていますか、この点もし局長のところでおわかりになりましたら、あらかじめそれだけ承っておきたいと思います。
  119. 川上六馬

    川上政府委員 決定の仕方は、別に一般の場合と違うというようなことは聞いておりません。
  120. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それでは課長がすぐ来られるそうでありますから、この問題は課長が来られてからお尋ねをいたしたいと思います。  次に、われわれ政治をやる側の中でも、端的に申しますと、とかく厚生行政はあと回しにされがちになって、しかもその問題の中には、きわめて重要な深刻な社会問題等を含んでいる問題がたくさんございます。そういう点の一、二の問題をあげまして、大臣の御所見なり今後の施策について伺っておきたいと思います。  第一の問題は、精薄に対する対策の問題であります。たしか昭和三十六年度に、厚生省としては精薄に対する実態調査をおやりになったように私は聞いておるのでありますが、すでに完了せられたか、ないしは現在の状況の中で、どの程度実態をつかめたか、まず報告をいただきたい。
  121. 大山正

    大山(正)政府委員 社会局におきまして、三十六年度に精神薄弱者の実態調査を行なったのでございますが、目下集計中でございまして、大体六月ないし七月ころに中間集計がまとまるというような段階になっております。
  122. 辻原弘市

    ○辻原分科員 そこで、まず一番根本である精薄者の数というものは実態上どうかという問題、それについての中間的な集計というものはわかりませんか。というのは、私から申し上げるまでもなく、いろいろ他の問題がございますけれども、わけても精薄者については、なかなか実態がつかめないというのが今までの状況であったわけであります。しかし実態を把握せざる精薄対策というものは、およそナンセンスであると私は昔から考えておる。と申しますのは、要するに潜在的な精薄者というものが非常に多いわけですから、それが新しい調査でどの程度つかめたか、その辺がわかればお答え願いたい。
  123. 大山正

    大山(正)政府委員 現在まだ集計中で、実は総数の点もはっきりしておらないのでございます。従前から御承知のことと存じますが、発生率等からいいまして、精神薄弱者は大体三百万、精神薄弱の児童が百万、成人が二百万というように一般にいわれているわけでありますが、はたして実際にどういう数字になっているかということは、ただいまの実態調査の結果を待って知り得るというように考えます。
  124. 辻原弘市

    ○辻原分科員 調査の結果がまだ出ておらぬようでありますから、不正確な数字で議論いたすことはやめましょう。  そこで、昭和三十五年に精薄者の福祉法が制定をせられましてから、厚生省としては、成人に対する福祉施設を年々計画的に作られておるわけでありますが、その現況と、どの程度竣工し、どの程度が入居可能になり、現在どの程度の入居者があるか、それは希望者に対してどういうようなパーセンテージを示しておるか、そういった点についてお答え願いたい。
  125. 大山正

    大山(正)政府委員 精神薄弱者福祉法によりますおとなの方の精薄施設は、まだきわめて少ないのでありますが、三十七年二月現在で公立が十二カ所、私立が六カ所、合計十八カ所、この収容定員は千四十二名ということに相なっております。なお三十七年度予算におきましては、さらに七カ所を増設する予定になっておるのであります。これは精薄者の推定されます数に対しましてまことに少ない数でございまして、従前精薄児の施設はかなり進んでおったわけでありますが、成人の施設がきわめて少ない状況でありますので、今後ともできるだけ増設に努力して参りたい、かように考えております。  お尋ねの、希望に対してどの程度かという点は、現在まだそのような統計をとったものがございませんが、何といたしましても、わずか千名ほどの収容力でありますので、きわめて微々たるものであるということが言えるかと思います。
  126. 辻原弘市

    ○辻原分科員 あわせて一つ児童福祉法に基づく施設の関係の方も大体同様な項目について伺っておきたいと思います。
  127. 黒木利克

    ○黒木政府委員 児童の関係は、三十四年七月一日現在で、部分的ではありますが、精神薄弱児の実態調査をいたしまして、その結果、収容保護を要する精神薄弱児が三万八千八百五十六人に達するという推定をいだしております。これに対する施設数でありますが、現在のところ公立が六十カ所、私立が八十六カ所、計百四十六カ所、定員が九千三百四十四名であります。なお三十六年から通園施設をやっておりまして、この定員が千三百七十名、合計一万七百十四名を保護しておるわけでありますが、なお三十七年度におきまして収容施設において七百名、通園施設において三百六十名の定員増の予算を要求しておるような次第でございます。
  128. 辻原弘市

    ○辻原分科員 大体の概括的なことはその数字でもってわかりますが、結論的に言えることは、比較的に児童福祉法の関係に基づく施設の方は、やや前進の跡があるけれども、主として成人の施設に対してはこれはお話にならないわけです。諸外国の実情と比較いたしましても、端的に申して二十年もおくれておると思います。概数的にさっき局長が述べられたように、約三百万という全人口の中で占める率が三%のこれら気の毒な人というものは、わけても成人の方が非常に多いわけであります。多いということは、要するに成人の精薄者については、治療という問題がほとんど不可能に近い状態になっておる。それに比較していわゆる入居施設というものが人員にしてわずか千人そこそこということは、成人に対する精薄対策が、現在の段階において全く九牛の一毛で、ほとんど手が届いておらぬと申しても私は過言ではないと思います。  ここではこまかい議論をする時間がございませんので、大事な点についてのみ厚生省の見解を承り、私も若干の意見を申し上げてみたいと思いますが、これは精薄者の福祉法が制定されました三十五年にもかなり議論の行なわれたことでありますし、また私どもはかつて青少年問題協議会等のおりにも議論をいたしました。というのは、一体現状のような精薄対策でよいのであるかという根本問題です。それはなぜかというと、法律に基づく児童福祉の観念から、十八才未満は児童福祉法に基づく施設だ、かつては十八才以上は全然なかったわけでありますが、これは話にならなかった。全くこれは社会の前面にあまり浮かんでこない深刻なものだ。われわれはその実情をかなり知っております。十八才までは何とか頂けることができる、しかし十九才になって、うちに置いておいてはどうしようもない——いろいろな症状がありますけれども、場合によっては家族のみならず社会一般に対してもはなはだ迷惑をかける、一家心中といったような、そういう悲惨な事例も社会問題として過去に起きております。しかし幸い福祉法ができましてから、それ以上の者を施設に入れるという法律上の取り扱いだけはできているわけです。従って、一つの問題は解決されたやに見えるわけですが、それでは一体精薄問題が解決せられる方向にあるのかというと、そうではない。取り扱いの方法だって、なぜ一体十八才未満と十八才以上と区分けをして精薄問題をやらなければならぬか。医学的、また社会科学的に、あるいは環境的にいろいろ考えてみて、絶対そうしなければならぬ重大なファクターがあるのか。先に私の意見を申し上げてしまうようでありますけれども、そういう一つの切り方をせずとも、精薄者は精薄者としての一貫した対策が行なわれてこそ、預ける側、また社会にとっても、本人にとっても、十分系統的な施設の中で保護あるいは将来に対する更生、治療というものが行なわれるのじゃなかろうか、そういうことを私はしろうとながら実は考えるわけです。まずこの点について伺っておきたいと思います。
  129. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに先生の御意見、肯綮に当たるわけですが、そういうような事情もありまして、実は昨年の児童福祉法の改正で、精神薄弱者施設等に対して年令延長の改正をしたのであります。二十才までは児童福祉施設へ収容することができる、それから重症の身心障害の人については年令の制限を取り除きまして、これは国立秩父学園でございますが、法律の規定では、その者が社会生活に順応することができるようになるまでそれらの者をこれらの児童施設に在所させることができるというような規定を置いたのであります。これは一歩前進したわけですが、決して根本的な解決ではないと思いますけれども、そういう試みの努力をしておるというところでございます。
  130. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それは一歩前進であることは事実だと思うのだが。しかしあなたのおっしゃったように、根本的な解決ではない。極端な場合をいえば、十九才で入所しよう、しかし今言ったように成人の場合は非常に狭隘だ、しかし幸い近くに児童施設がある、ところがこれは入れないわけです。そういう問題があるでしょう。大体精薄という問題について、社会も、また場合によると親も、存外古い観念にとらわれて、誤った措置をしがちなんですね、そういう社会一般の通念からいうと、うちのせがれた精薄者でありますと言ってそれぞれの取り扱い機関に申し出るというのは、時期的に考えて非常におそいですね。得てして、いろいろ手を尽くしてやってみた——子供のうちはどうせ外には行かないのだから、あまり親も重大な関心を払わない。ところがいよいよ年がいってきて、さあその処置をどうするかというときに問題が非常に発生するわけです。その年令がいつかといえば、必ずしも十八とか二十で切れる問題じゃないわけですね。たとえばせがれが二十一になった、精薄である。その次の妹が十八才に達した。さあ妹の結婚のために、このまま養子を迎える。しかしうちには上の兄貴が精薄でおったのでは、とても新しく一家が作っていけない。そこでどこかないかというのが親の気持になる。これが一般的現象であります。そういうことについては私は根本的に解決されておらないと思います。これはまことに取りつく島のない、ほんとうに親の立場になって考えれば実に気の毒な困った問題なんです。非常に家庭的に恵まれた場合は別といたしまして、そうではない一般の家庭の場合、私はあえてボーダー・ライン層とか生活困窮者層だとは申しませんが、たとえば公立以外の私立の収容施設あるいはその他個人的におやりになっている宗教団体、そういうところへかりに預けるにしても、なまなかの金では行けない。たとえば月額一人預けるについてかりに二万円の経費を必要とするといった場合に、それを支弁し得る家庭というものは実際問題として非常に少ない。そういうことを考えたならば、どうしても公的な安い機関を、しかもこれは社会の責任として国費でもって収容できるという措置というものを早急にとらなければ、これらの問題は解決しない。ですから福祉法の改正によって年令が二十才に引き上げられたということについても、やや問題の認識を深めたという程度であって、決して根本策ではないということを私はまず申し上げたいのと、それからいろいろな方法があると思うが、一つ厚生大臣にお考えいただきたいのは、先ほどお話の施設の整備状況、これは国費でもって直接援助したものはこれよりはるかに少ないと思う。先ほどお答えになった三十七年二月現在公立十二、私立十八、私立は別とすると、公立の十二になる。そういう施設が都道府県の責任において・あるいは市町村の責任においてやられるわけでしょうが、児童施設の関連においてやられているかということが一つの問題、それからその前に私が申し上げた、たとえば厚生省が、それぞれの役所のセクショナリズムとまでは申しませんが、児童の場合には児童局だ、おとなの場合には社会局だ、こういう二本立の役所の観念から問題が取り扱われているとすれば、国民にとっては大きな不幸だと言わなければならない。特に児童福祉法を見ても、相互機関の関連性というものが強調されている。ましてや精薄、特に精薄のみではありませんが、身体障害者の対策にしても、医者の分野に関係するところもあれば、労働問題に関する部門もあり、また一般厚生事業としての社会的立場に立つ問題もありますし、大へん関連が深い。関連が深いとなれば、やはりまず対策をする人人の一つの心がまえというものは、そういう一つの役所相互間における従来の実績とかいろいろありがちな根性というものをなくしてかからなければほんとうに前進しない。そういう意味で、さっき課長からお答え願った一元化することができないということ、この一元化によって起こる支障は何か、それからもし一元化できないとすれば、せめて施設等も児童行政の関係において一元化すべきである。たとえば児童福祉施設、これが片一方にある。その近所におとなの施設がある。あるいは年令的にいっても十八才、十九才、二十才、そう変わりありません。そうすれば、施設のいろいろの付随施設などは、場合によれば共通して置かれてもいい。児童の取り扱いが先で、成人の取り扱いがあとにきたから、そこでてんでんばらばらに施設ができたというのでは、一体どうなるかということを心配する。そういう意味で、一元的な運営が次善の策としても行わるべきだ、そういう配慮が行なわれているか、そういう問題について、私があらかじめ意見を申し上げてしまったので、はなはだなんですが、今私の申し上げたような点についての大臣の御意見と、従来のあり方についての批判、今後の取り扱いの問題、こういう点について御意見を承っておきたい。
  131. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だんだんとお話を伺っておりまして、教えられる点も非常にたくさんあると存じます。その点はお礼を申し上げたいと思います。この精薄関係の施設は、今さら私が申し上げるまでもなく、日本の社会福祉関係の施設の中でもまことにおくれておると私は思うのであります。児童関係の施設が若干伸びて参りましたが、これとても決して十分でないことは明らかなことであります。それにしましても戦後どうやら伸びを見せてきた、こういう状況でございます。また児童関係から離れていわゆる成人と申しますか、そういう方面の施設に至っては、先ほど御指摘のありました通りに、ほとんどなきがごとしという状態にまだ低迷をしておるというのが今の状況だろうと思うのです。行政の分野といたしまして、この方が非常におくれておることはもう明らかな事実であります。従って厚生省としましてはこのおくれをとにかく取り戻し、先進国にも劣らないところまで持っていかなければならぬ重大な任務があるわけであります。何と申しましても、おくれておりますだけに、いろいろあちらこちらにちぐはぐを生じてきておる。先ほど児童福祉施設関係の年令の引き上げというふうなこともございましたが、これとても結局児童福祉施設の方が先にいっちゃって、そろそろ出さなければならぬというようなせっぱ詰まった場面においてさようなことが工夫されたということでありまして、問題の本質的な解決にはなっていないということはお話通りだろうと私は思うのです。従ってこの問題について、児童にしましてもまた成人にしましても、もっともっと国も努力を傾けていかなければならぬことは明らかなことであろうと思いますので、私どもそのつもりで努力をいたして参りたいと存じております。  行政の関係につきましても、従来の沿革と申しますか、さようなことで行政的に機構が分かれている、制度的にも分かれている、さような関係から、施設の点におきましてもちぐはぐな点を生じておるというふうなことで、いわば問題だらけだ、解決せられざる問題が非常にたくさん残っているわけでありますので、これらの問題につきましては、厚生省としましてはどこで何を扱うにしましても、精薄問題としてやはり一元的にものを考えて、その上でいろいろなことをあんばいしていくのが適当じゃなかろうか、かように考えておる次第であります。せっかく勉強さしていただきたいと存じます。
  132. 辻原弘市

    ○辻原分科員 非常に穏当なお答えであったわけですが、私は実はもうちょっと具体的な提案をいたしておるので、その点についての大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。というのは、児童福祉法だからすべてのものは十八才、先ほどのお話しのように二十才まで延長したということもありますけれども、そのワクで全部を切ってしまって、いわゆる年令的に横に切ってしまう、そういう行き方でいいのか。そうじゃなくて、問題によって系統的に一生その者のめんどうを見なければならぬ、そういう一つの対策については縦に切る方法があるんじゃないか。縦に切る場合に、医学的にいって、あるいは生活環境的にいって、あるいは職業補導的にいって、特段の支障があれば別として、なければこの際そういう根本策を考うるべきじゃないか。これは私は国費を重点的に使う意味においても効率的であろうし、入居者の便益という点においても非常に便利でありましょうし、またもう一つ大事なことは、これは単にお役所仕事じゃいかぬということなんです。はい申し込みを受け付けます。それはそれぞれ適格条件を満たしております。中に入れました、月給をもらって管理監督をいたしましょうということでは、これらの対策は成り立たぬ。従ってその衝に当たられる直接の人々の心がまえあるいは処遇、こういうものは特段に考えなければいけません。同時にこの問題については、何と申しましても今言いましたように長い間やるわけですから、豊富な経験を必要といたします。となれば、やはり幼少期における状況がどうであるか、それが成人に至ってどういうふうに発展をするか、そういうふうないわゆる入居者それ自体の心理状態をも発達的に把握し得る、そういうたんのうの士が私はやはり必要だと思うのです。しかしこれはなかなか得がたい。そうなれば今申し上げましたように、縦割りにおいて長くそれを補導し保護し、あるいは更生さしていくというような形の方がより便利ではないかというふうに考えるのです。そういう点について何かお気づきになられるような点がございませんかどうか、大臣から私はもう一回承りたいと思うのです。
  133. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 きわめて示唆に富んだ御意見でございます。お話しのように、年令で区分することが適当であるかどうかというところには確かに問題があろうかと思います。従来発達の過程と申しますか、発展の過程において、特殊児童とか精神薄弱者というようなことで分かれておりますけれども、人間自体としては一生を通じての問題でございます。そういう意味から申しますと、年令で横割りをして制度も違い、施設も違うというようなことが適当であるのかどうか、これは確かに研究すべき問題であろうと存じます。同時にまた、この仕事には限らぬと思いますけれども、この種の人を扱う仕事が、単なるお役所仕事であってはならねこと、これは申すまでもないことであります。そのためには、やっぱり適当な人を得ることが大事だ。そういう点から考えますれば、はたして現在こういった人を処遇するに足る人が十分用意されておるかどうか、さような養成の問題もあるいは出てくるのじゃなかろうか、かようにも考える次第であります。何にいたしましても非常に私は示唆を受けることが多いのでありますので、十分一つ検討させていただきたいと思います。
  134. 辻原弘市

    ○辻原分科員 何と申しましても、御本人は社会の各層にわたって意見を申し出るというようなことができない、気の毒な方々であります。またその保護者となっている家族、親を含めてすべての人も、今までの社会通念からいって、うちにこういう者があるのだということを声を大にして言うことをはばかる。そうなりますと、やはり政治、行政の面でこれを聞き上げ、取り上げていかなければ、また社会に他の問題がたくさんありますけれども、どうしてもこれがおくれていくわけなんです。私はおくれていく一つの原因というのはやはりそういうところにもあるのじゃないかと思う。従って、われわれは、機会あるごとに、その問題についての過去の実績、やり方、そういうものをそれぞれ批判、反省をしつつ、将来どうすべきかを真剣にやはり検討しなければならぬと思います。  もう一つの点は、これは私は総合的に考えるならば、厚生省の所管ではなく文部省の部面にも非常に問題が多いと思うのです。何となれば、端的にいって、精薄者の治療の限界というものは、やっぱりあるのじゃないかと思うのですね。そうなりますと、たとえば治療をする、あるいは将来の職業補導をする、訓練をする、そういった年令というものは、比較的に低い子供の時期にそれをやらなければ、おとなになってからやったってこれは手おくれなんだとするならば、今文部省がやっている特殊教育というものは、かなりのウエートをもってやらなくちゃならぬ。そうすると、厚生省がおやりになるいわゆる児童福祉法に基づく養護施設の目的を見ても明らかなように、やはり職業訓練等も保護とあわせてやらなければならぬことになっておるが、そこのかね合いは一体どうなのか。こういうことをだんだん見詰めて参りますと、一つの構想が浮かぶわけです。いわゆる若少年令期における精薄児の取り扱いというもののウエートは、むしろ特殊教育の面において、教育面から同時に保護をあわせてやるというウエートの置き方をやる。それから、成人に至っての精薄者の取り扱い方というものは、どちらかといえば、たとえば十八才以上、延長されましたからかりに機械的に二十から以上のものが、これから作られるであろう成人の収容施設に入ると仮定をいたしましたときに、そのうち何%が治療でき、何%が職業を付与して、りっぱに社会人として立てるかということになりますと、まあきょうは時間がありませんから、そういうことについての詳しい話を皆さんからも承りたいし、私自身も少し調べているところを申し上げてみたいと思うのでありますが、まあそれはさておきまして、結論から言うと疑問があるわけなんですね。そういたしますと、結局はいわゆる成人に対する対策というものは、たとえば老人ホームのそれに似たような性格、言いかえますると、その人がその収容施設に入って、その環境とある場合においては生涯をともにしなければならぬ。その人の一つの社会であり、生活の根拠であり、家庭である。そういうものが、私は成人に対する収容施設の事実上の眼目となる、こういうように思うのです。それで今作られているものがそれにふさわしい施設内容を特っておるかというと、いささか心寒い感じがする。そういうことを私はことで短い期間に、ああそうですかという議論をあなた方と、また大臣と繰り返しましても、これはまことに失礼でありますけれども、大した前進にはならない。問題は、そういうようないろんな問題を含んでいる点について、一つこれは審議会もあることですけれども、先ほど申しましたように御本人がものが言えないのです。親もそれに対して声を大にして政治に、行政に訴えるという力も比較的に少ない。ですから、あげて行政としては、厚生省の皆さん方において、もうこの時期において——今成人の場合にはようやくスタートをして若干の実績が現われてきているのですね。公立収容施設が自由にできて、私立が自由にできる。しかしこれは全部作ってからでは、もう議論をしてもおそいと思うのです。それは何といっても、実績がそういうことになってしまえばどうしようもない。そこで今昭和三十五年以来ある程度の経験を経たわけですね。このあたり一つ根本的にふり返ってみて、私が申し上げたように、いわゆる若少年令期における取り扱いはどこに重点を置かなければならぬのか、それがはたして特殊教育という形において、文部省の監督下に置かれておるのか、政治に対する重点の指向の方向に誤りなきやいなや、それに伴う施設はどうであるか、こういうことを抜本的に御検討願いたい。私は近代国家、文化国家といわれる日本が、こういうまことに——本人なり家族は耐えがたい不安と焦燥というものを持っております。約三百万、その家族を含めますと優に一千万をとえるでありましょう。そういう人々のために、ここらで一つ厚生省としても政策を現実に即するといいますか、将来ほんとうに、もしかりにですが、自分の家族にそういう人があったならば、おれは一体どうするかという立場においてお考えを願いたい。そういう意味で、根本的な御検討がいただけるかどうか、私は三十三、四年当時から、実はこの問題は機会あるごとに力説をいたしておるわけでありますが、この機会にさらに厚生大臣の真剣な取り組み方の御答弁がいただければ幸いだと思います。
  135. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、この方面の仕事はようやく芽が出たという程度であろうと思うのです。従って行政の運営におきましても、十分な研究がまだ達成せられておりません。あるいは国内全体から考えてみましても、この方面に対する勉強が不十分である、あるいは関心が薄い向きもある、こういう状況であろうと思うのです。問題はこれからという気持がいたしておるのでございます。その意味におきまして、いろいろ示唆に富んだ御指摘を受けたのでございますが、厚生省としましては、この精薄問題について真剣に検討いたして参りたいと存じます。のみならず、そういう状態で生まれました人の一生が不幸であることはもちろんでございますし、またその子供さんないしはそういう人を抱えておられる家庭の不幸ももちろんでございますが、できることなら、そういう子供さんが生まれないような工夫もしていかなければならぬ。これも厚生省考えなければならぬ点が多々あるのじゃなかろうかと思いますので、かれこれ総合いたしまして、今後の精薄対策というものについて私どもも一つ勉強もさしていただき、また検討もいたしてみたいと存じます。
  136. 辻原弘市

    ○辻原分科員 いずれまた正確な実態調査の資料ができましてから諸般の問題についてもお尋ねをいたしてみたいと思うのですが、最後に一点だけ。これは課長さんの方から一つ聞いておきたいのですが、法律の第二十七条に示されている入居費の問題なんですが、法律では、本人から一部または全部を徴収でき得るがごとく相なっておりますけれども、入居費の徴収の実態はどうか。私が先ほどいろいろ申し上げた中にありましたように、お金のある人は私立のあるいは宗教団体等のものに委託をすることができるが、いわゆる一般家庭、貧困者といわず一般家庭では月一万、二万というのにはなかなか無理な点があるので、やはり公立を望む。さらに生活条件の悪い保護者の家庭、ボーダーラインの家庭となれば、これはとても自己負担でもっていくことはむずかしい。そこで十分の八の負担を国がきめておるということになっておるのですが、しかし実際必要とする経費の一部または全部ということの法律通りこれを実施されますと、これはかなり本人負担がかさむと思います。そこで、私のお聞きした範囲では、法律はそうだが、実情は、食費についてのみ本人負担という例が非常に多いということでございます。その場合に本人負担の金額というものは平均にしてどの程度になっておるか、それがはたして今の一般家庭の生活条件に見合っているかどうかということを私は知りたいわけです。簡単にそこだけ一つ承りたいと思います。
  137. 大山正

    大山(正)政府委員 ただいま手元にその資料がございませんので、的確なお答えはできませんが、それぞれの本人または父兄等の負担能力に応じまして、あまり無理のないような程度費用を負担さす、残額はいわゆる措置費の形で国または公共団体が見るという形をとっておるわけでございまして、お話しのように大体食費程度のものを徴収するというのが普通のやり方に相なっておるわけでございます。  的確な数字がございませんので、後刻調べましてお答え申し上げます。
  138. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それでは時間がございませんから、次の問題に移りたいと思います。  それは、先刻ちょっとお尋ねをいたしました第二共済組合の運営でありますが、運営規則の改正をおやりになった審議会はいつでありましたか。
  139. 川上六馬

    川上政府委員 運営審議会の会長をいたしております課長がちょうど出張いたしておりますので、詳しいことはちょっとわかりませんが、私からお答えいたします。  運営審議会は一月の十八日と一月の二十九日に開かれております。
  140. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私も実はきのう申し上げておけばよかったんでありますが、共済組合の一般的運営でありますからお聞きできると思ったんでありますが、会長ではないでしょう。会長は厚生大臣、それから本部長は次官、こういうことになっておりますね。それは私の方でわかっておりますからよろしいです。  そこで、これは端的に伺いますが、実は運営規則の改正にあたって、この中にいろいろ問題がございます。それはきょう私の触れるところではありません。そうではなくて、この改正にあたっての会議の運営の仕方が妥当であったかどうかを聞いておきたいというわけです。具体的には、この八人で構成されておる運営審議会の運営規則を取りきめる際の採決がどういうふうに行なわれたかということ。この座長を勤められたのはお宅の管理課長ですね、横田さんですか、その方がきょうは出張されておるわけですね。御本人がいらっしゃらないが、本人がいなくても当然報告があるわけです。私から申し上げます。それは要するに八人で構成されており、片や組合側から出ました委員が反対しております。そうなりますと、四対四ということになります。慣例として座長はいつも官側から出ておる。この場合には横田さんが座長をされたと私は聞いておりますが、その場合の採決はどうなのかということなんです。さらに具体的にいえば、この採決にあたって横田さんはいわゆる官側代表委員として他の三名の方とともに四名の中に加わって賛成をされた。片一方組合側四名は反対をされたというならば、議長は一体だれが勤められたかということなんです。実際を申しますと、議長なきその委員会で、横田さんは採決にあたって賛成の意思表示をされた。そのあと議長席について賛否を問われた。私は一年生の算術だと思うのですが、どうもわからないのです。三対四と分かれて、そうして座長がついて三の官側の方の意見にきまったと採決せられたという運営がわからない。そこでその運営、採決の方法が一体妥当なりやいなやということを聞きたい。一般的にいってどうでしょう。
  141. 川上六馬

    川上政府委員 一般的にいえば、組合側と施設側が同数で採決をするときには別の座長がこれをきめるというのが妥当のように思うわけでございますが、しかしこの場合におきましては規則がございまして、「運営審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。」という規程に基づいて、ちょうど会長が管理課長でございましたから、管理課長の方できめたということになっておるわけでございます。
  142. 辻原弘市

    ○辻原分科員 可否同数の場合には会長が決する、すなわち座長ですね。座長がこれを決するという意味ですね。座長がこれを決するというのは会議一般的運営と同じなんです。しかしその場合に二重に行使しているわけでしょう。普通投票権の二重行使ということはあり得ない。そういう慣例があるのはナンセンスだ。そういう規則があるなら会議運営というのは非常におかしい。根本的にいえば可否同数じゃないわけです。可否同数になれば座長はいないわけです。大体会議というものは、可否同数に至ったとき今の投票権を行使していない座長がきめるということが社会通念で、一般の議事運営の取り運び方なんです。ところがこの実情を見ると、一ぺん行使して、座長の席に着いてさらに行使するということになれば、一人二役になる。そういうことになるとこれはまことにおかしいので、その辺の事情を私は聞きたいわけなんです。
  143. 川上六馬

    川上政府委員 今申しました規則によりますと、一応そういうことになっておるわけでございますけれども、お説のような点についても、ちょっと担当課長がおりませんので、よく聞いてみたいと思います。
  144. 辻原弘市

    ○辻原分科員 担当課長がおられないようですから、局長は正確にお答えはできないと思います。私は、ただそのときの状況がどうであったかということよりも、私の聞いた状況から判断いたして、一般的にどうかということを聞いておけばよかったのです。一般的にはああいうやり方というのはおかしいですよ。私もその規則を読みましたけれども、やはりその規則は一般通念の上に成り立っているものなんです。可否同数に至った場合は議長がこれを決する、座長がこれを決する、ある場合には会長がこれを決する。それが一般的なんです。しかし二重投票を行使してよろしいということにはなっていない。だから明らかに、このときのケースとしては二重投票を行使せざる限りこれは決し得ない。この議事の取り扱いは四対四と分かれるはずがないのです。この共済組合の運営というものは強引に持っていくものじゃない、あくまでも話し合い、ネゴシエーションできまるわけですから、同数四名の委員であっていい。たとえば議会のようにそれぞれの立場の意見がかなり食い違って、そして最後には通例として採決に訴えなければならぬような場合には、こういう委員構成はしていない。必ず奇数なんです。ところが、同数でもって構成して、運営審議会としてその議事が行なわれるといろ場合には問題がある。本来共済組合の運営というものはお互いに意見の隔たりがなくして円満に運営しようということが主体にでき上がっておるから、こういう委員構成なり運営がとられておる。しかしその中で今言ったように、これはおれたちの考えだというのでぜがひでも押し切ろう、押し切ろうとしたところに無理な形が出ておるのです。一般的にいってこれはまことにおかしい問題です。局長もよく事情がおわかりにならなければ——これは大臣、あなたも会長なんですから、他に笑われるような議事運営をやって、少なくとも厚生省所管に属するようなことが一般的社会通念で通らぬようなことをしておいて、それが規則とかなんとかといってやられておるということは、これは全くおかしいし、無効なんですから、よく事情を調べられて、また適当な機会に私にお答えを賜わりたいと思います。  恐縮ですが。もう一点だけ。それは部落問題についてちょっと伺っておきたいと思います。これも私はほんとうは時間をかけていろいろ伺いたいと思いますが、その中で特にこういうことを大臣に聞いておきたいと思う。ことしの予算は部落問題として五千万円程度厚生省として増額せられております。これは他の省に比して努力せられておるという点はけっこうだと思いますが、ただその努力の方向が誤った方向にいってはいけない。特に先ほど私が前段にいろいろ申し上げましたような精薄の問題、あるいは明日労働大臣お尋ねしようと思うのですが、深刻な失業問題、こういった問題を非常に数多く内蔵しておる地域というのはやはりこの部落にあるわけです。そこで部落対策というものが過去から今日までいろいろな形で行なわれてきておる。現在に至っては、政府部内においても取り扱いにいろいろ議論があったようですが、とにもかくにも同和対策事業として直接に予算を計上されてきたということは前進であったと思うのです。ただ昨年からおやりになっておるこの資料をいただきましたが、モデル地区を設定して推進するという方向をとっておるようです。いわゆるモデルですから、短い期間にそれをおやりになってテスト・ケースとして他に及ぼすということにおいては理解できる。しかしモデルはいつまでもモデルじゃなくて、恒久的重点地域としてこれが施行されるということになると問題だ。言いかえてみれば、部落以外の一般地域と部落との間にはあらゆる面において格差がある。同時にまたいわれなき差別もその中に存在するわけです。このモデル地区を永続的に推進していくことによって部落相互間の格差というものをつけていく、そういう屋上屋を重ねるやり方というものは、これは行政の上でも、政治の上でも好ましくないというのが私の考え方です。だから本年度も約一億五、六千万の予算の中で、八千万というものはモデル地区に重点が置かれております。モデル地区は全体の数からいっても少ない。そういう中で、このモデル地区を一体いつまで続けられるつもりか。一般地区とのそういう均衡というものは、どういう形でこれをとろうとなさるのか、その一点についてのみ私は承っておきたいと思います。
  145. 大山正

    大山(正)政府委員 現在同和対策につきましては、去る昭和三十四年の五月に同和問題の閣僚懇談会で了承になりました同和対策要綱ということに基づきまして、実施されているわけでございますが、御質問のありましたモデル地区につきましては、その要綱の中に、「総花的な行き方を排し、さし当り全国を数ブロックに分け、各ブロックにモデル地区を選定しここに各省の施策を実情に即して、総合集中し、有効適切な成果をあげるものとする。」とありまして、それに基づいてやっておるわけでございますが、お話のように、同和対策は部落全般に及ぶべきものでございますから、総花的にやっておりましても、なかなか成果が上がらない。各省の政策を集中して、とりあえず行なう地区というような意味におきまして、モデル地区を選定して、これに各省の施策を行なう。そのほかにも、もちろんモデル地区以外の一般地区に対しましても実施するという二本建のやり方をとっておるわけでございます。  来年度の厚生省予算は、同和関係予算が二億六千二百六十八万六千円でございまして、前年度に比べまして約六千万円ほどの増額に相なっておるわけですが、このうちで一般地区は一億七千六百万円、モデル地区は八千六百万円というようなことに相なっておるわけでございまして、モデル地区だけについてやるというようなわけでございませんで、それ以外につきましても相当の経費を計上いたしておるようなわけでございます。今後このモデル地区の扱い方につきましては、各省それぞれ検討いたしておるわけでございますが、御案内の同和対策の審議会が総理府に置かれまして、この審議会におきまして、さらに根本的な検討を行なうことに相なっておりますので、その検討の結果に基づきましてこれらのものについて再検討が加えられる、かように考えております。
  146. 辻原弘市

    ○辻原分科員 まあ、総理府の所管の審議会の方でこれまた実情の調査も進められるようでありまするし、私の希望いたすところは、先刻申しましたようにモデルがモデルとしてのみ消えてしまっては意味がありません。だからモデルをやったという現状においては、少なくともそのモデルでやった諸施策が、こういう面において非常な前進があったというならば、早急に部落全体を引き上げる、部落全体の改善に資するためにそれを他に及ぼすべきである。往々いろんなモデル地帯が設定されて、何とかいえば二、三年前からモデルばやりでありますが、一体そのモデルがどれだけの実効を納め、それが他の地域に大いに参考となって諸施策が進行せられるという場合は比較的少なく、ただ重点地域としてのみこれをやられる。そうなれば私は半分の意味しかないと思うのです。重点地域としてなら格差がうんとついたという結果だけが出てしまう。そうでなくて他の地域に対しての改善をなおざりにしてはならない。だから根本的に検討されるということでありまするなれば、その際においてそのいいところをもって他の地域全般の水準を高めることに努力が願いたいということであります。  他の質問は、また別の機会に行ないます。
  147. 中村幸八

    中村主査 午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後三時十分開議
  148. 中村幸八

    中村主査 休憩前に引き続き会議開きます。  厚生省所管に対する質疑を続行いたします。長谷川保君。
  149. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 最初に、私は厚生行政の根本的な態度に対して、一言お伺いをしておきたいと思います。  井掘委員も昨日指摘をされたのでありますが、私もまた、これは厚生省だけではありませんけれども、戦後のあの大きな血の犠牲を払ってかち得ました民主主義社会の態勢というものが、ことに行政の関係でくずれてきた。確かにこの点は、私は井堀君と同じように、アメリカあたりの厚生関係の役所へ参りますと非常に民主的だ、つまりサービスという考え方が徹底をしているということを感ずるのでありますけれども、どうも憲法二十五条実現の直接の責任担当省でありますところの厚生省に入ってみて、私どもが行く場合は別な立場もありますけれども、一般の方が行かれる場合に、非常に本来のあり方というものと変わった姿を感ずることがこの数年来強いのであります。公務員というものは、もちろん全体の奉仕者であるということを、憲法第十五条で強く申しておるわけであります。同時に、そればかりではありません。厚生省設置法あるいはその他の厚生立法を見て参りますと、厚生省の任務というものが、指導、監督、助成というようなことについてのあり方を強く規定しているわけです。ところが、どうも、ともすると監督だけになって、指導も大へんおっかない指導です。助成というようなことも、あるいは奉仕者という態度も見えなくなってきているのであります。こういう点、灘尾大臣は非常にすぐれた大臣でありますから、根本の態度として、厚生省があくまでサービス行政のほんとうの直接の責任者でなければならぬと思うのでありますけれども、厚生省の行政の根本的態度について、まず最初に一言承っておきたいのであります。
  150. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省関係の行政は、お話しの通りにサービスに徹すべきのもと私は考えておるのであります。行政にもいろいろございますし、また、厚生省の中にも各種の性格を持った行政部門がございますが、おしなべて、厚生省はいわば国民の皆さんのお世話をする役所であると私は考えるのであります。従いまして、これは私の年来の持論でございますけれども、その心持を持ってすべての行政事務に当たっていかなければならないと思うのであります。昨日もお話が出たかと思うのでございますが、生活保護というふうな問題が、単なる金銭出納事務に終わってはならぬと思う。やはりそこに、何ゆえに生活保護を行なうかということについてのはっきりした自覚を持って、そしてこれらの事務に従事してもらわなければならぬ。この趣旨のことは、私、就任の際にも厚生省職員の諸君にお話をしたことでありますので、そのつもりで職員の諸君の自覚と反省を促し、皆さん方がごらんになって何か権力的な姿というようなものにならないように、ほんとうに民主主義的な、ことに比較的お気の毒な方たちに関する仕事を扱っているだけに、始終そういう人たちのことを頭に描いて仕事をしてほしいということを私徹底させて参りたい、かように存じて及ばずながらやつでいるわけでありますが、もしもお気づきの点がありましたら、また遠慮なく御指摘を願いたいと思います。
  151. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 大臣のお言葉をまことによしとするものでございまして、どうかその通りにやっていただきたい。毎年、社会福祉事業の全国大会などで、厚生当局がどんなにつるし上げられておるか、非難が激しいか、また日本医師会の問題は、私は日本医師会側にも問題があろうと思うのであります。しかし、同時にまた、日本医師会が厚生官僚ファッショと言う言葉の中にも、御反省を願わなければならぬ面が多片あるのだと思うのであります。また、社会福祉施設などが順次減少していくという事実、こういう事実の中にも、やはり非常に情熱を持って社会福祉事業をやっていこうという人人が、非常に怒りを持って社会福祉施設をやめていくというようなところもあるのであります。こういう点は、ぜひ十分心してやっていただきたいと思うのであります。  そこで、昨年来看護婦問題が非常に大きな問題として取り上げられてき、今国会におきましても、与野党ともにこの問題を非常に大きく取り上げたのでございますけれども、この看護婦問題の重大さとともに、同じように重大な問題として、ここ数年内、ことに二、三年来大きな問題となってきておるのは保育所の保母の問題であります。この保育所の保母のなり手がなくなってきてしまったということは、すでに私が申し上げるまでもなく、至るところで指摘されているところであります。今回の予算を拝見いたしますと、保母の給与を引き上げるとか、あるいは措置費の内容を少し引き上げるとか、あるいは社会福祉施設の従業員の給与等の関係を引き上げるとかということがわずかにございますけれども、今日の重大な問題を解決するにはまだ足りないと思うのであります。この保育所の問題を扱って参りますときに、私にどうしても納得できない問題がございます。それはまず第一に措置率の問題であります。措置率という言葉をわれわれよく耳にし、読みもするのでありますけれども、一つ措置率ということについて正確な意味を教えてもらいたい。
  152. 黒木利克

    ○黒木政府委員 昨年措置基準というものを示しまして、それによって保育にかけるということの範囲をきめておるわけでございます。従いまして、それによりまして措置をする子供の保育所内部における率が出るわけでございます。従って、それを措置率と言うわけでございましょうが、その措置費基準につきましては、出した通知の内容等につきましては、御質問がありますれば申し上げます。
  153. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 そうすると、今度の措置基準、三十六年度からお出しになったと私も承知しておりますけれども、社会福祉法人の保育所をやっていくには、その保育しております子供の何%が、そういう児童福祉関係で申しますところの措置児童でなければならないということになっておるのでありますか。
  154. 黒木利克

    ○黒木政府委員 はっきりした規定はございません。従来は過半数なければならぬというような運営をやっておりましたが、ただ地域によりまして、いろいろ地域におきます子供の家庭の状況と社会構造の変化に伴いまして変化しておりますので、必ずしもその基準通り既設の保育所については言えない部面が出て参りまして、現在のところは、厳重なそういうような基準は設けておりません。
  155. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 しかし、一応どれくらいから上のパーセンテージがなければいけないということを示しておるのでございましょう。この問題が、社会福祉法人である保育所にとりましては非常に大きな問題になっておると私は思うのであります。
  156. 黒木利克

    ○黒木政府委員 新しく保育所等を認可する場合には、過半数のことを要請しておりますけれども、既存の施設の場合におきましては、それほど厳重には規定していないのでございます。
  157. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 末端へ参りますと、これは非常にやかましいのであります。しかし私は、保育所は、過半数の者が措置児童でなければならないとか、あるいはそれに近いものしか社会福祉法人として認めないというようなことは、非常に間違いだと思うのです。というのは、スラム街へでも行けばともかくとしまして、そうでないところにおきましてはそういうことはあり得ない。ことに私は、今日のような交通の非常に困難な事態の中におきましては、できるだけ小規模で分散をさせることの方がいいと思うのです。そうなった場合には、なおさら措置児童が過半数なければならないというようなことになりますれば、これは開設できません。それでは開設しなくていいのかということになりますと、そういうことではないと私は断じて思うのであります。ここに東京都の民生局で調べたものがございます。その実態調査によりますと、保育所に預けたいという人が全児童の約半数あります。ところが、保育所に預けております者は、認可保育所では全体の五・一%であります。でありますから、預けたいけれども預けられないという人々が、預けたい人のうちの約九〇%あるわけであります。その内容を見て参りますと、費用がかかるから預けられないという人が約六分の一、それから乳児なので預ってくれないというのが約三分の一、遠過ぎるから預けられないというのが約六分の一という状況、であります。こういうようなわけでありますから、今日の保育所の数は、公営のもの、民営のもの合わせましてもこれははるかに足りない。わずかに今申しました全体の五・一%しか認可保育所に預けてない、こういうことでありますから、十分に保育所を作らなければならぬということは明らかであります。ことに最近の交通禍の中に幼児が非常に多いということを考えますと、この点で厚生省はやはり十分な奮発をしてもらいませんと、この大事な子供の生命が、むざむざと失われていくという非常な危険にさらされているということになる。でありますから、この措置基準なんかは取ってしまって、そして営利を目的としないで子供をほんとうに大事にしていこう、児童憲章を実現していくために、あるいは児童福祉法を実現していくために子供を守っていこう、憲法を実現するために保育所をやろうという人があれば、営利を目的としない限り、そしてその利益金を私のために用いるとか、あるいは他に持っていくとかいうことをしない限り、社会福祉法人として許すべきだ、それだけのことをしなければだめではないかと思うのであります。ごく大ざっぱに私はつかむのでありますけれども、大体学齢未満の子供の数は、千三百万人ぐらいあるのじゃないかと私は胸算用するわけであります。その中で、御承知のように保育所に預かっている子供は約七十万人、これは三十六年五月の厚生省の統計でありますけれども、千三百万のうちで約七十万しかそういう保育所の手当ができておらぬ。少なくともお母さんたちは、子供の半数を預かってほしい、こう言っているのでありますから、これは社会福祉法人として基準に合いますものを、積極的に厚生省が作っていく。それが措置児童が少ないとか多いとかいうようなことで、新しいものでは過半数措置児童がなければ許さないとか、今までのものに対しましてもそれをやかましく言うというようなことになりますと、とてもそれはだめだから、結局もう保育所をやるよりも幼稚園をやった方がいいというので、統計を見ると、幼稚園の方へ行ったり、また保育所の方が割合都合がいいと保育所に来たりというように、児童の保育施設が幼稚園と保育所の間を行ったり来たりている。こういうところは、やはり先ほど申しましたように、官庁があまりやかましいことを言うからとてもやれない、また、ろくな融資もないし、ぐずぐずしていれば税務署に文句を言われるというようなことで、とてもやれぬということになってしまう。私は、こういう措置率なんというものはやめてしまうことだ、そこまでやって児童保育の仕事をやるべきだと思うのであります。これは今までやってきたことでありますから、大英断を要しましょう。けれども、そこまでいかないと、今申しました千三百万人からの学齢に達しない子供がある中で、七十万人ばかりしか預かってない。しかも、お母さんたちは、東京都で調べたのでも、半数は預けたいのだけれども預けられないという事態がある。今申した中にもございましたように、遠過ぎて預けられない、これが預けたい中の約六分の一あります。  それからもう一つ、ここで私、この表を見て非常に注意しなければならぬと思うのは、無認可保育所に全体の一・四%が預けている。これは今言ったようにめんどうくさいものだから、官庁でうるさいことばかり言って、実際には経済的な裏づけも何もほとんどない、こういうところから、認可なんぞ取らぬでやろう。しかし子供を大事にしたい。これは単に一般の人がそう考えるだけじゃない。厚生省が直接おやりになっています社会事業大学の有名な教授の人が、先年来、最低基準なんてうるさいことを言ってないで、そんなものをやるな。——これは私の友人でありまして、よくざっくばらんな話をするのでありますけれども、もう保育所なんかやって、官庁から変な干渉をされてやっちゃかなわぬ、とても合わないからやめて児童院をやる、これは正しい考え方ではないと思うのです。やはり最低基準に合うような金の融資もしてやる、税制の措置もしてやる、十分な保母を置いてやれるような措置をしてやるというようなことにして、その措置率なんというものをとっちゃって、だれでも子供を預けたいという人があったらどんどん預かってやる。営利を目的としない限り、公益の法人として、社団としてやるというようなことができれば、こんなことではなくてやっていけると思うのです。ですから、無認可保育所が全体の一・四%、これは決して看過すべき問題ではないと私は思うのです。こういうような事情なので、この点は十分に一つ考えなければならぬと思います。今の措置率をとってしまったらどうかと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  158. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、確かに今日の児童福祉行政の上から申しまして、大きな問題ではなかろうかと思うのであります。だんだんと保育所も、おかげさまで発展をして参ったわけであります。もう相当長い年月を経たと思うのであります。一面において、また幼稚園というふうなものもだんだんと普及して参っておるわけでございますが、しかし、今仰せの通り、世のお母さん方から考えますれば、もう少しこういうような施設がふえることを望んでいらっしゃるということもよくわかるのであります。需要に対して施設が足りないといううらみは確かにあろうと思うのでございます。そういう面からいたしまして、施設の増加をはかっていって御要望にこたえるということは、もちろん今後われわれの続いて努力して参らなければならない点であろうかと思うのであります。やはり現在の制度の沿革もございましょうが、実情から申しまして、この種の施設が足らないというようなことからいたしまして、保育所についで申せば、できるだけやはり所得の少ないような階層の方々に対するお世話の方から先にやるという考え方が、これは当初がそうでありますし、令でもそれが残っておると思うのであります。そういうような関係から、措置率というふうな問題も依然として今日残っておるのじゃなかろうかと思うのでございます。社会の変化によりましてこの種の施設がますます要求せられる状態にあります際に、この措置率の問題のごときは今後私どもが十分検討してかからなければならぬ問題だとは存じております。同時に、この保育所の問題、この前に予算委員会でも御質問がございましたが、保育所といい、あるいは幼稚園といい、似たようなものが現在あるわけであります。しかもその普及分布の姿がやはり違っておるわけです。国全体の要請から申しますと、一部に片寄るということのないように、すべての国民がこの種の施設を活用することができるようにしなければなるまいと思いますけれども、現在はそこまで至ってないということでございますが、どうやらこの保育所につきましても、あるいは幼稚園についても、曲がりかどに来ておるのじゃなかろうか、かような感じもいたすのでありまして、私はやはり、予算委員会で山中委員でありましたか御質問がございましたが、そういったふうにこれを大きく取り上げて、これの今後の方向をどうするかというような問題についても検討すべき時期じゃなかろうかと思うのであります。関係各省とももちろん連絡を密にしてやらなければなりませんが、厚生省としましては保育所をさらに飛躍させるのにはどうするか、あるいはまた、幼稚園との関係をいかにして調整していくかという問題を総合的に一ぺん考えてみたい、かような心持がしておる次第でありまして、今措置率を直ちにどうするこうするという結論はございませんけれども、これまた財政にも関係する問題でございます。私の方といたしましては、御趣旨の点につきましては十分今後勉強させていただき、また検討させていただきたいと存じます。
  159. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 保育所がどんなに少ないかということ、まだその保育の定員数が少ないかということについて、厚生省が出している白書を見ましても、人口千人に対して二十人以上の保育所の定員を持っているところは日本で三つしかない。これは愛知、新潟、高知であります。人口千人に対して十人以上二十人未満が十二県あります。大都市を見てびっくりしましたのは、大都市の名古屋は、人口千人について約五人の保育所の定員がある。京都は七・五人、大東京は何と四人、大阪、横浜等は三、神戸においては二というのがその数字であります。これを見て参りますと、あの交通のあぶない、自動車の住来のひんぱんなところで遊んでいる子供を、私はひやひやして見て通るのでありますけれども、問題はみなこれです。ここにある。だから国の宝であります。また人間としてもほんとうに大事にしなければならぬ子供たちを守ること、もっとどうやったら一体適切にこの保育所が広がっていくかということ。やはり今までこういう事態になったのはどこに原因があるかという問題に、この際真剣に取り組む必要がある。私ども東京を歩きましても、何とも見ておれないという感じがする。これはずいぶん以前から、終戦直後からでも児童遊園を作って、ことに公園などには遊戯の指導員がおってやるべきだという話もずいぶんあった。それからずいぶん長いのですけれども、依然としてこのような事態であって、そして私どもがひやひやして道を通らなければならぬということは、この際こういう交通が非常に差し迫った事態になってきておりますから、なおさらこの際、厚生省はこの点をやってもらいたいということを強く思うのであります。  それでやるにいたしましても、問題は、一つはこの事務費、措置費の内容であります。この予算書を見まして、その内容ですが、積算の基礎を見ていきますと、これはやはり無理だ。きょうは大蔵省の主計局長にぜひ出ていただきたいと思ったのでありますが、ほかの委員会で差しさわって主計官がおいでのようでありますけれども、これはひどいと思うのです。まず第一に、保母の給与、保母の待遇問題でありますけれども、今度保母さんたちの非常に強い要求があって、前年に引き続きまして今度一三%上げることになったわけでありますけれども、いずれにいたしましても、昨日も理論的には、公立は保母さんが一万一千三百九十五円になる、民間の施設は九千五百三十三円に理論的にはなるというように児童局長の方からお話がございました。けれども、保母になるには、申すまでもなく高等学校を出ましてから、二年もしくは三年の学校で特別な教育を受けなければならないのであります。これが多分平均の給与だと思いますけれども、初任給は一体公立では幾らなのか、私立では幾らなのですか。
  160. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は御案内のように、保育所の職員の給与は、子供一人当たり幾らという保育単価制度によって実施をいたしております。また施設におきましては、いろいろな経験あるいは学歴、年令の者を採用いたしておりますので、実はそういう給与体系がないのでございます。各施設においてまちまちだというような実情でございまして、いろいろ部分的には実態調査の例もありますけれども、ここではっきり初任給が幾らと申し上げられる数字はないのでございます。
  161. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 いずれにしまして毛、高等学校を出て二年といえば短期大学であります。短期大学を出て、とにかく平均給与が九千五百二十三円になるはずだ、一万一千三百九十五円になるはずだということでは保母は集まりっこない、保母のなり手がなくなるのはあたりまえです。今初任給その他の給与のあれもないということでありますけれども、こういうようなことで保母を集めようとしても、あのような骨の折れる、責任の重い仕事を、しかもいろいろ見てみますと、労働基準法による八時間労働で済んでおるのは実際はないようです。ひどいのは十時間も十二時間も、託児所的なものになりますともっと長い、十四時間も保母さんが働かなければならぬというところも多分にあるようです。こういう人々に対してこのようなひどい給与というのは、これは看護婦よりまたひどいのでありまして、このような給与でいけるはずがないのでありますから、これは当然積算の基礎を変えるべきだ。厚生省は多分もっと高いものを要求したのだろうと思うのでありますけれども、主計官どうですか。大蔵省は、これはこんな基礎でいいという考え方なのですか。
  162. 岩尾一

    ○岩尾説明員 保育所の保母さんの給与の問題でございますが、要求は一五%アップぐらいじゃなかったかと思います。われわれの方の見解といたしましては、先ほど児童局長からお話がございましたように、本来職員の給与につきましては、実際の現員現給を見るということではなくて、保育単価で見ておるわけでございます。従って、実際上基準よりも高く払えるところは払い、それより出せないところは出せないということで、きのうからお話がありましたように、公立の方は、東京都のようにみずからの持ち出しがあるために高い、私立の方は、それがないために低いということになっておるわけであります。そこで実際上そういった現実の給与をとらえて、それを是正していくことを考えるかということも考えたのでございますが、やはり予算で見る八割の補助というのは、そういった基準を基礎としてはじいたものでございますから、従来の基準単価というものを是正していく方がいいのではないかということで、従来考えておりました単価は、大体公務員のベース・アップにつれて逐次引き上げを行なっております。しかしながら、なお実際上同じような仕事をしておられる公務員の方々と比べまして若干低い面もあるので、そういった点を全施設について考慮いたしまして、公務員のベースとそういった基準が大体同じか、あるいはちょっと上になるようにということで予算を計上したわけであります。結果的には、現在保母あるいは指導員といった方々につきましては大体一三%くらい上がるのではないか。それ以外の施設の職員の方につきましては七・五%程度、従来の伸び以外に上がるのではないかと思います。なお、保母さんにつきましては、一三がさらにもう若干上がるのではないかと思います。なお、こういった点は、今後実行予算の段階で十分検討していきたいと思います。
  163. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 主計官に伺いますけれども、あなたどう思いますか、この給与で保母が集まると思いますか思いませんか。
  164. 岩尾一

    ○岩尾説明員 実際上は、各地の状況あるいは各保育所の状況によって違うと思います。また、先ほど申しましたように、これは基準の単価でございますから、その施設の状況によっても、現在さらに公務員よりも高い給与を出しておるところもあるわけであります。一がいに言えないと思います。
  165. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 もっと現場の保育所で調べていきますと安いのです。公務員はとにかくいいのです。東京都で見ましても、民間施設と公務員とでは一〇と一八という、八割公務員の方が高うございました。これはともかく、まだまだがまんができる。けれども、民間施設においては、これでは社会福祉施設としての保育所が成り立たない。今の単価の問題も、私資料を持っておりますから十分突っ込みたいと思うのでありますが、ほかに質問がありますのできょうは省いておきますけれども、しかし、だれが考えても、これでは子供を守るということはできない。日本の法律では、児童福祉法でもあるいは憲法その他の法律でも、あるいは世界的にいえば児童権利宣言でも、あるいは日本の児童憲章でも、子供を守るということは真剣にやらなければならぬということになっておる。けれども、これでは児童を健全に守ることはできない。従って、今の交通禍の中で遊んでおって子供が死んでいくということになれば、結局政治をやるものの責任です。ことに、おそらく厚生省側としてはもっとやりたいのだけれども、大蔵省が金を出さぬということだろうと思うのです。だから、できればきょうは大蔵大臣一つこの点は聞いてもらいたいと思ったし、またせめて主計局長に聞いてもらいたいと思ったのですけれども、ほかの委員会に御出席のようでありますから、この点は主計官としてぜひ考えてやってもらいたい。これはあなたの態度自体が、子供がたくさん殺されるか殺されないかということに直接つながっています。一つ御自分の子供のつもりで考えてやってもらいたいと思います。  時間がありませんからこれ以上追及しませんけれども、私、この点で一つどうにもがまんのできないのは、一三%アップをなぜ第二・四半期からにしたのか。だれが見ても、このようなことでは保母になり手があろうはずがないし、また、保母さんがほんとうに困り抜いてしまっておる。私は、去年あのままにしておけば、おそらく医療労働者のストと同じように、保母のストが始まったと思うのです。それをほんとうに子供かわいさに、保母さんはがまんをしてくれている。保育所の従業員諸君ががまんをしてがんばってやっていてくれる。これは当然上げるべきであるというならば、なぜ第一・四半期の四月一日から上げなかったか。これが私の理解できないところです。また、がまんのできないところです。これはどうしてそういうことになったのですか。単に金だけの問題でありましょうか、何か理由があってこうしたのか、伺いたい。
  166. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実はこれは大蔵省とも同じ見解でありますが、できるだけ保母さんの基準を上げたい、そのためには、きまった財源の場合には実施の時期をやはりおそくする方が、将来ずっと続く給与の問題でございますから、保母さんにも有利であろうというので実は七月にやったわけなんであります。  もう一つは、先ほど申しましたように、保育所の予算の施行につきましては、保育単価制度でやっております。厚生省としては、できるだけほかの施設と同じような現員現給制に持っていきたいのでありますが、それは急にもなるまい。しかし、せっかく獲得しました予算が、実際に保母さんの手元にいくことが保障されなくてはならぬ。これは事務当局の強い要望もございまして、また私たちもその通りだと思いまして、そこで現実に各施設ごとに保母さんがどういうような給与の状態にあるか、そして今度の財源措置で確実に一三%以上上がるというようなことを保障しなくてはなりませんから、そのためにいろいろな調査とか準備の手間がかかるというようなことの事務的な理由から、七月からにいたした次第でございます。
  167. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 この保育所の経理の実際を見ていきますと、やはり多くは赤字になっている。だから、時間がないから詳しいことを申し上げませんけれども、このことはもう実際お調べになる厚生省ではわかり切っている話だ。大きく赤字になっている。こういう問題を私は親切にめんどうを見てやらないと、さきに申しましたように監督行政になってしまって、ほんとうに助成して育て上げていくという態度がない。指導するにしても、ほんとうに親切に指導してやるというところがない。実際において大きな赤字になっております。これは東京都の、三才未満を十二名、三才以上を六十八名、つまり八十名保育している仕事でありますけれども、それを見ても相当大きな赤字です。これはほんとうだと思う。だから先ほど、保母の月給を上げてもほかへ使われるという心配があるというようなことがございましたけれども、これは当然のことなんです。だけれども、そのことはいいことではありません。いいことではありませんけれども、そうならざるを得ないような今日の保育単価の中の積算のやり方ですね。これは非常に無理があるし、さらに実際の保育所の労働を見ておりますと、これは過重労働です。ほんとうに保母さんたちを見ておりますと過重労働です。この点は根本的に変えなければいけませんね。この点は、時間がありませんから、これ以上は次に社会労働委員会か何かで詳しくお伺いしたいと思います。とにかくきょうは予算委員会でございますから。——こういう点が非常に不十分だ。これは主計官も御承知のように、昨年の厚生白書で、日本の社会保障というものは、なお数十年たってもとてもヨーロッパに追いつけぬということをお書きになって、総理大臣からしかられたということになったわけです。けれども、これは実際文明国として恥です。文化国家なんて言えたものではありません。だから大体そういう点、行政をなさいます方方、またわれわれの考え方態度というものが根本的に間違っている、文化国家としては間違っておる、非常におくれておるということ、これを考えてやり直してもらいたいと思います。  ついででありますから、保育所の問題をも兼ね、またその他の社会福祉施設等の問題も兼ねまして、もう一つ伺っておきたいことは、御承知のように、いろいろな施設をいたしますときに基準単価をきめるわけです。建築をする、何をするというときに、基準単価がきまっているわけです。たとえば老人ホーム。これはこの間の火災以来やかましくなりまして、老人ホームをやりますのに、御承知のように不燃質のものということになりました。これは保育施設でも同じでありますけれども、不燃質のもので、ブロックで建築する。これは今やりますと、どんなに好条件でやりましても坪七万五千円かかります。今度の予算では、これを多分四万五千円くらいに抑えているのじゃないかと思うのです。この点は、不燃質のブロックで作ります場合に幾らになっておりますか。建築関係の基準単価ですね。
  168. 岩尾一

    ○岩尾説明員 いろいろ施設によりまして違いはございますが、養老施設で申し上げますと、ブロックでやります場合に、三十六年度までは大体三万五千円という単価でございます。三十七年度におきましては約三割七分引き上げまして、四万八千円という単価でございます。
  169. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 だから私ども法律できめたのです。これはたとえば老人ホームで申しますと、二分の一が国、それから県があとの二分の一でございましょう。だから四分の三は国もしくは県で補助するということです。そうなりますと、法律でそうやれば、あと四分の一を共同募金なりあるいは何らかの形で寄付を仰ぐなりして作れば、これは進めていけるな、私どもはこう考えた。ところが、法律できまったことを、実際におきましては、今言ったようにどんないい条件でやっても七万五千円かかりますのに、四万八千円だということになりますと、申すまでもなく率が非常に下がってしまうのです。だからこれは、明らかに私は法律違反だと思うのです。現実かかるだけのものを見ないで、実際においては、保育所を作るにいたしましても、老人ホームを作るにいたしましても、社会福祉施設を作るにいたしましても、これはもう法律できめてあることを、行政の方で水増しをいたしまして薄めてしまう。法律通りやっていない。これは明らかに立法府のやることを行政官庁がひっくり返しておるということであって、法律違反なんです。こういう点を、さながら当然のごとくに今日まで習慣のようにやっておる。ここに、こういうような社会福祉施設だけではありません、学校でも何でもそうでありますけれども、今日における地方自治体が非常に苦しみ、あるいは社会福祉施設が苦しんでしまう、また実際に法律があっても、社会福祉施設が進んでいかないという原因がある。こういう点、私は法律違反だと思う。これは大臣どうですか。これは明らかに法律違反です。法律上は、四分の三老人ホームには出すということになっておる。実際におきましては、全部集めても二分の一にしかならぬという状況になるのでありますが、これは明らかに、立法府のきめたことを行政府がひっくり返しておる、こういう問題でありますけれども、どうお思いになりますか。
  170. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、実はしばしばわれわれの遭遇する問題でございまして、予算の編成の際に、関係各省の間でいろいろ論議せられる問題でございます。決して法律違反をやろうとかなんとかいうつもりで物事をやっておるわけではございませんけれども、現実に、さて建てるということになりましたときに、予算単価から見ると実際が違っておるというふうなことが起こりまして、実施する側から申しますと、かなり困難を感ずる場合が少なくないのでございます。だんだん努力いたしまして、何とか実際に追いつくようにというつもりでやった結果が、ことしは一般に建築単価などについても、相当大蔵省も引き上げるについて協力をしてもらったようなわけであります。前々からの問題でございますが、私どもとしましては、もちろん実際に応じた助成のできるようにいたしたい、かように考えておるような次第でございます。法律違反かどうかとおっしゃいますと、非常にお答えにも困るわけでございますが、何とか実際に近いものにして助成をして参りたいと考えておるわけであります。
  171. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 それは大臣としてお答えにくい問題でありますけれども、私はこれは明らかに法律の違反だと思うのです。法律を無視した、ことに立法府の権限というものを無視した僭越なやり方であって、これは許すことができないと思うのであります。この点は今後われわれは根本的に改めてもらう、改めるまでは、将来毎年追及をいたしたいと思うのであります。今年は初めのことでありますからこの程度にしておきますけれども、来年は、私はこの点については、もし改めなければ徹底的に追及するものであるということを申し上げておきます。  時間もあまりありませんからほかの問題に移りますが、社会福祉施設として、保育所あたりが、先ほど来申しておりますようないろいろな保育単価の問題その他でもって、とてもこれではやれないということになってやめようという人々があります。そればかりではありません。保育所の方はまだいい方でありまして、そのほか私が見て非常にびっくりしましたのは、社会福祉施設の年次別の推移を見ていきますと、これは驚くべきものがあるのであります。昭和二十九年三月三十一日現在と三十六年三月三十一日現在と、つまり七カ年のものを見て参りますと、たとえば更生施設でございますと、一〇〇の割合にあったものが七年間に五二という割合になってしまいました。医療保護施設が、一二二が九八になりました。授産施設が、三八四が二六四になりました。宿所提供施設が、一五三から二・六になった。つまり更生施設だと二分の一になり、医療保護施設だと二四%減った。授産施設だと五〇%減った。宿所提供施設だと四〇%減ったということになります。もちろんこれは時代の推移に従って、そういう施設があまり重要でなくなったものもありましょう。しかしそうでないものもあります。ここで一つ医療施設をとって考えてみると、どうも厚生省は社会福祉施設としての医療施設を廃止しようというように、この数年来——安田君が次官をしておったころからでありますけれども、そういう態度に見受けられるのであります。社会福祉施設としての医療施設というものは廃止しようとするのか、このことをお伺いします。
  172. 大山正

    大山(正)政府委員 医療保護施設につきましては、日本皆保険の進行に伴いまして、いろいろ問題があるわけでございますが、私どもといたしましては、医療保護施設の使命が非常に重要であるというように考えまして、これを助長して参りたいというようには考えておりますが、廃止するような考えは持っておりません。
  173. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 これはこの前も、私は予算委員会の本委員会で申し上げたのでありますけれども、医療というものは、保育も同様でありますけれども、営利の対象とするか、公共的なものとするか、この点は今十分研究して決断をすべきときだと思うのです。少なくとも公共的な性格を順次強くしていく、また少なくとも国民皆保険の下ではそういうものが強くなっていくであろうというように私は考え、また考えねばならぬと考えるのであります。そういうときに、もし社会福祉施設としての医療施設を廃止するという方向に持っていこうとするならば、これは全く時代に逆行するものである。むしろ逆に、今日私企業であります開業医諸君にも、順次公共的な医療になってもらうという覚悟をしてもらい、そういうような施策を進めていくべきであり、その裏づけとなる融資、その他税制の問題等を解決していくべきだと私は思うのです。ところが今の局長のお話にもかかわらず、事実はそうなっておらぬ。社会局の方へ行ってみますと、社会局の方では、あなたの部下は逆の行き方をしておるのであります。  まずそれでは具体的に一つ一つ聞いてみたいと思うのでありますけれども、御承知のように社会福祉法人の医療施設に対しましては、保護率六〇%というのがございます。これは保育園の措置率と同じようなものでありますが、つまり生活保護を受けている者を六〇%以上入れなければいけない、こういうことがございます。しかし今日、結核や精神病の医療保護施設は、申すまでもなく生活保護から、結核の命令入所及び精神衛生の措置入院ということに変わりましたから、生活保護患者が六〇%おるなんということは絶対ないわけです。生活保護患者はなくなってしまう。そういう形になる。にもかかわらず、私が数日前伺いますと、なお六〇%を固持していられるのであります。こういうことはあり得ない。六〇%の保護率というのはやめますか、どうなさいますか。それから今後社会福祉施設の医療施設というものは、保護率六〇%をやめるとすれば、どういうような基準を置いていこうとしますか。先ほど私が保育所の場合に申しましたように、営利を目標としないということであればよろしいということになりますか。どうなりますか。
  174. 大山正

    大山(正)政府委員 医療保護施設につきましては、低額または無料の診療を行なうものは五%という基準を置いておるのでございますが、特に被保護者の数、入院率六〇%という標準は、医療保護施設については設けておりません。
  175. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 そんなことはありませんよ。ちゃんと庶務課でそう言っています。はっきり六〇%と言っています。だからそういうことはありません。だから、私は六〇%ということ自体が変でありますけれども、同時に今は、昨年から制度が変わってきている。だからこういうことはあり得ないのだが、これをどう処置なさるかを伺います。
  176. 大山正

    大山(正)政府委員 一般の保護施設につきましては、六〇%という一応の基準を設けておるわけでございますが、医療保護施設につきましては、先ほど申し上げました低額、無料の診療五%という基準でやっておるはずでございまして、もし医療保護施設につきましてさようなことがございますれば、これはお話のように、結核、精神の命令入所、措置入院の問題でございますので、そのようなことは適当でない、かように考えます。
  177. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 今の五%というのは、医療収入の五%を減免に使えということです。まず社会福祉事業法にあります低額及び無料の診療を行なうという条件でありますが、今日の医療報酬の問題は、日本医師会が声をやかましくしておりますように、非常に低費診療ということであります。今日のあの低費の診療報酬よりもさらに低くしなければ、社会福祉法人として許さないということでありますか。
  178. 大山正

    大山(正)政府委員 医療保護施設といたしまして社会福祉法人で経営いたしまして、特に一般の医療機関と違うという面がありまして初めて医療保護施設ということになるわけでございますので、やはり低額、無料の診療を行なうという機関で初めて生活保護法の医療保護施設になり得る、かように考えておるわけでございます。この点はやはり一般の医療機関とは違う面があるというように考えざるを得ないわけであります。
  179. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 それはわかるのです。社会福祉法人で医療事業をやろうというものは、だれも金もうけをしようと考えていない。金もうけをしようと考えているものはそんなことはやらない。だからそれはわかる。ただ問題は、先ほど来のような六〇%ということをとってしまうということなら、それは一つの前進でありますけれども、同時に医療報酬の中の五%、新しく作るものについては一〇%、これをこの無料もしくは減額の関係に持っていかなければいけない、こういうこと。今日の日本医師会があれほど強く主張しております低額診療——だから不届きだ、こう言っておる。これが今日の健康保険の診療報酬の基準であります。これをさらにもう一〇%はみ出させなければならない。それを出して何かに使わなければならぬ。患者の減額及び無料診療に使わなければならぬ、こういうこと。こういうことを条件にして、一体今日の医療事業が立っていくと思いますか。東京都の社会福祉法人の医療事業の団体がいろいろ試算をしてみた。資産の再評価をして、二割それを上げて、そうして固定資産税等を払い、税金を払いまして、それでどこでちょうどそれが合うかという試算をした結果、医療報酬の七・五%、これがぎりぎりであって、これをこえると、むしろやめた方がいい。社会福祉法人をやめて、一般の営利事業にした方がいい、こういう計算が出てきたのであります。それを厚生省が、新しく作りますのには、医療報酬の一〇%は減免に使わなければならぬということをいたしますのは、さきに私が申しました社会福祉法人としての医療保護施設というものをつぶしていく、やめさせようということになるのではないか。また事実、二、三日前も東京都のずいぶん古くからやっております社会福祉法人の病院長と事務長が私のところにたずねて参りまして、経営の実態を申しました。もうやめようと思う、絶対にこれではできないからもうやめようと思うと言うて悲しんでおられた。生涯をそのためにささげてきたけれども、これではやめなければならぬ、もし病院を医療事業としてやっていくならば、もうこの社会福祉法人のワクをやめて、そして開業医として何でもかまわぬからもうけていくということでなければもうやれない、従業員の労働組合からも攻勢があり、とてももうやれるものではない、だからもうやめるという話をして悲しんでおられた。そこで私はきょう急にこの問題を取り上げたのでありますけれども、こういうようなことで新しくやる者には一〇%減免しておる。今の医療報酬が低額の診療だとい方ので、あれだけ日本医師会が大きな抵抗をしておるときに、なぜ社会福祉法人の医療事業についてはこれをしいなければならぬのか。社会福祉法人でありますからみんないい仕事をしたいのです。たとえば僻地における診療に進んでいきたい、あるいはスラム街の診療を無料でもいいからやりたい、あるいは後保護施設をやりたい、あるいは保健所の応援をしたい、いろいろないい仕事をしたいのです。そういう仕事にみんな使っていいというのなら別ですよ、それは使ってかまいません。あるいは看護婦が足らぬ、看護婦の養成をする。営利でなければかまいません。そういうものに使っても、それは全部五%なり一〇%に計算しますというならばまたそこに道があります。けれども、もともと税金を全部出しても、七・五%で済むものを、社会福祉法人なるがゆえに一〇%しなければ許さぬぞといって強く監督をされる、意地悪くされるということになれば、もうとても耐えられぬからやめようということになっていくのです。それが医療事業がこんなに減った理由です。だからその点を私はこの際厚生当局には考えてもらいたい。一体今の診療報酬基準というものは妥当であると思うか、思わないか。十分であると思うかどうか、大臣の御意見を伺いたい。日本医師会の申しますることは、これは全部むちゃなことであるかどうか。私は日本医師会それ自体にも問題はあると思うのです。問題はあると思いますけれども、しかしこの低額の診療という点につきましては、日本医師会の主張は正しいと私は見ている。今の診療報酬基準を大臣はどう思いますか。
  180. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの診療報酬は、御承知のように社会保険の方の関係においてきめましたものが、他の法律にも及んでおるというような形になっております。この報酬が十分であるか不十分であるかということについては、これは議論の分かれるところでございます。従ってまた始終問題を起こしておるということでございます。私どもとしましては、これが非常に不十分なものであるというふうには考えておりません。しかしこれはまあ水かけ論になるおそれも現状においてはあるわけでございます。何とか適正な医療報酬を払いたいわけであります。またもちろん療養担当者側も適正な医療報酬を望んでおられると思う。われわれも適正な医療報酬を払いたいのであります。そのためにいろいろ苦労をするわけでございますが、一がいに今のが不十分であると言い切られてはどうかと思うのであります。どうやらこうやらやっていけるというものを私どもは今の診療報酬としてきめておる、かように考えておる次第であります。
  181. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 この間も申し上げたのでありますけれども、私はその後また国立療養所及び国立病院の会計を調べてみました。そうしますと、この間申し上げた数字と違っておりまして、国立療養所の会計におきましては、御承知の所長の権限で医療収入のうちの二割は減免してやってよろしい、こういうことを計算に入れまして、二割をそういうことにした。つまり医療収入に二割をさらに加えまして計算をいたしまして、そして国立療養所収入は百三十五億円、それから支出の方は百五十五億円、それに看護婦の養成所とか、あるいは施設費用、建物はらい療養所や精神療養所と一緒になっておりますから大体の収容しておる人数、ベッド数で割りまして八割を加えます。そうしますとこれを合わせて百七十億円。結局収入に二割をさらに加えて計算しても二五%の赤字になる。国立病院の方も収入が百六十八億円ありますが、この中に一般会計からの受入金二十四億円、あるいは積立金からの受け入れ六億円等がありますから、これを差し引きまして百三十八億円の病院収入。支出の方は百六十八億円。これまた二五%の赤字になるのであります。こう申しますと、いやガン研究所を作るのだ、施設の改善をするのだ、こうおっしゃるでしょう。そんなことはあたりまえです。一般の施設ではもちろん償却しなければならぬ。さらにまた医療は日進月歩進んで参りますから、この国立病院全体の施設をよくしていくと同じように、ほかの施設もやらなければならぬ。看護婦の養成も大きい病院は全部やっている。これは昨年も申し上げたのでありますけれども、こういうことを考えていくと、国立病院国立療養所自体が今の診療報酬の規定でやって、それぞれ二五%の赤字になっているではないか。  それを他の医療施設、開業医の諸君あるいはまた社会福祉法人の医療施設に対してもなお押しつけて、それから一〇%の医療費の減免をしなければいかぬというようなことをなぜ主張しなければならぬのか。ここらに厚生省のお役人の頭に血が通っておらぬのじゃないかということを申し上げる理由があり、そこに低賃金と悪い労働条件に対して病院ストが起こり、保険医総辞退が起こっている。これは起こるべくして起こっている。私も経理簿記は自分の専門の仕事勉強した男でありますから、もし議論するなら幾らでも議論しますが、大ざっぱにつかまえてもそういうことになっている。それを十分御認識にならないでこういうことをやっていくから、大きな間違いが出てくる。  この間も申し上げましたが、入院料を生活保護及び健康保険の状況で見て参りますと、少し前後はありますが、三十六年の五月で大体一日五百円。一日五百円で患者を入院させていくというのはむちゃじゃないですか。アメリカは入院料一日三十ドル、約一万円です。往診料が日本は百三十五円であります。アメリカは十ドル、三千六百円であります。宅診はアメリカは千八百円であります。日本は、月一ぺんだけでありますけれども、初診料が五十四円であります。国民所得が一〇対一くらい考えましても、せめて十分の一くらいの診療報酬にしなければいかぬと思う。こういうむちゃなことを厚生省が権力をもって押していくから、日本の医療制度が混乱してしまう。こういうことを改めなければ、いつまでたっても解決しない。この際もし社会福祉施設を、保育所といわず、医療事業といわず、その他の事業をほんとうに厚生省がやっていこうとするならば、こういう問題を改めるべきだ。今はいやおうなしに低額診療をさせられておる。それ以上に五%、一〇%ということをつけてもらっては困る。つけるならば社会福祉事業はやめて営利事業でやるべきだと思う。けれどもそれでは時代逆行だと思う。あくまで公共的なものにしていかなければいかぬと思う。この点、私は大蔵省の責任があると思う。  主税局税制課長がお見えのようでありますけれども、主税局の方で税金をやかましく言うものだから、厚生省の方はここへ追い込まれざるを得ない。こんなことはやめてもらいたい。こんなことをやっているなら、社会福祉法人は全部やめます。私はやめさせますよ。こんなばかなこと、人道的によくない。そういうことをすれば、そのはね返りは患者にくる。今日患者の処遇がどんなものであるか、問題にならぬ。はね返りがそこにいくのだ。そして裏から取られる。どうやって取るか、めちゃくちゃな注射をやる。ある済生会の大きな病院でそれをやっているのを私は事実知っている。私の関係している病院看護婦をしばらく研修にやってみた。めちゃくちゃな注射をやっている。開業医は御承知通りめちゃくちゃにやる。それは診療報酬の請求書につけ増しをやらざるを得ないのだ。そういうように持っていくということは大問題だ。そういかないようにするためには、この五%、一〇%というのをやめるべきだ。今日の診療報酬が新たにせられるまでは、少なくともアメリカの十分の一にするまでは、こんなことをやめなければだめです。そうして営利を目的としないで、全力をあげて、真心のこもった医療をやってもらうということにしなければ、私はいけないと思う。課長さんとしては、ここでそんなことは言い切れまいけれども、帰って主税局長によく言ってもらいたい。大臣によく言ってもらいたい。こんなことではだめですよ。日本の医療を営利的なものに持っていってしまいます。やれないのです。そんなことをやっていてはやれないですから、営利的なものに持っていきます。ここから看護婦の問題が出てくる。看護婦は、幾ら集めても集まらぬ。私が昨年来やかましく言っても、厚生省は空を向いているのか、上を向いて歩いているのか知りませんけれども、さっぱり目が下につかぬようになってしまっている。  看護婦の問題でありますけれども、看護婦の養成あるいは看護婦対策について、昨日お話があったかに聞きましたが、私ちょっと仕事をしておって聞き漏らしたのでありますけれども、厚生省は一体どういう計画でもって看護婦問題を解決しようとしているか、その計画を聞かしてもらいたい。
  182. 川上六馬

    川上政府委員 最近の計算によりますると、病院に、医療法で必要といたしまする看護婦、準看護婦を置くといたしますと、一万四千くらい足らないという計算で、昨年この予算委員会で、何とかやっていけるだろうということを申したわけでありますが、当時は就業届の数字を使っておりまして、最近だんだん看護婦が不足だという声が強いものでありますから、これから医療センサスを使うことにいたしたわけであります。それを使ってみますと、今申しましたような計算になるわけであります。それでどうしても看護婦の補充をつけなければならぬということで、いろいろ苦労いたしておるわけでございますけれども、何しろ急に看護婦を作るというわけにも事実上参りませんので、やはり看護婦でなければならないような業務はむろん看護婦がやらなければなりませんけれども、無資格者でもできるような業務も相当看護婦さんがやっておる現状でありますので、その点では雑役などをふやして、看護婦さんはほんとうの看護婦さんの仕事をやってもらうようにすべきであります。お医者さんの方も、お医者さんがやらなければならぬものも看護婦さんにずいぶんやらしておるということもございますので、そういう点は改めるべきだと思います。  処遇の問題になりますと、確かに今お話しのような医療費にからむ問題になりますが、ともかくほかの産業などに行った方が有利だということで、離職していく者も最近相当ふえているようでありまして、どうしても処遇をよくしていかなければならぬと存ずるわけであります。  それから看護婦に対する魅力が少なくなったということで、最近看護婦の学校や養成所に志願する者が非常に減ってきたわけであります。これをすぐには数に現われませんけれども、今後この状態が進むおそれがあり、非常に心配いたしております。せっかく養成所の方で一ぱい定員をとって養成したいと思いましても、なかなかそれだけの志願者がないというようなところも出ておりまして、この点非常に心配いたしておるわけで、どうしても看護婦に相当した待遇をして、看護婦が魅力あるようにしなければならぬと考えているわけでありますが、それにいたしましても、できるだけ学校や養成所が定員一ぱいに養成していくように指導しております。実はこの面にも国庫補助をしたいと考えておりますけれども、今年はそれが実現しませんで、今後努力していかなければならぬ問題だと思います。ただ本年の予算の中に、府県で、看護婦等になるための修学を容易にするために貸費制度を作ってもらい、それに対して国が助成していこうというので、わずかでありますけれども、千八百万円の予算を計上して、御審議をわずらわしておるわけでありますが、これは案外希望者が多うございまして、相当役に立つだろうと考えております。現在非常に看護婦が足らないという原因の一つに、だんだん都市に流れていく、それから施設のいい方に移っていくということで、地域的に、あるいは施設ごとに見ますと、かなりアンバランスがあるわけでありますが、この貸費制度でそういう面をある程度防止することができる。といいますのは、三年間そこで働けば償還しなくてもいいという建前で、貸費制度を作ってもらうつもりでおりますから、これがさっそく幾らかそういう面には役に立つのではないか。それから養成所も、地域的に見てみますと、不足な面がございますので、これには補助金や融資をはかって、県に看護婦養成所を作ってもらうようにしたいと考えております。  それから今の看護制度でいいのかどうかという問題があるわけであります。ことに今の准看制度に対してはかなり批判がございまして、准看自体が相当不満を持っている。あるいは病院の中で看護婦と准看の間柄が、必ずしもうまくいかないというような問題も起こしておるわけでありまして、こういうような看護婦の身分とか業務内容、処遇などの問題は、どうしてももう一ぺん総合的に再検討しなければならないと思っておりますが、幸い臨時医療制度調査会がございまして、そこで今この問題を取り上げてもらっておりますので、その意見を待ちまして一つ善処したい。  いずれにいたしましても、昨年ああいうふうに答弁いたしたわけでありますけれども、その後の情勢はなかなか深刻なものもあると思いますので、私の方といたしましては、きょうもお話がありましたように、関係者の協力を求めまして、できるだけ早急に看護婦対策を講じていきたいと思っております。
  183. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 時間がありませんから詳しくはお伺いいたしませんが、まことにたよりない限りの対策です。そんなことでは看護婦の充足は全然できませんし、医療センサスで実態がつかめると思ったらこれも間違いです。これはこの間も申し上げましたように、あの県の県会議員が突如として全国の精神病院を調べたら、看護婦の数なんて医療法もくそもあったものじゃない。でたらめです。そういうのが一ぱいです。先ほども申しましたが、東京のある病院の人が私のところにやってきて、とても医療法なんて守っておれません。そんなことをしたら人件費なんか出やしません。もしそういうことをやって一応いてもらうような人件費を出したら、病院の経費の六〇%は人件費になってしまう、できません、こういうように申しているのです。実際にやってみるとそうです。それがほんとうです。ですからとても今のようなことではできない。これは徹底的に大臣一つ考え直してもらいたい。看護婦がいないと医療はできない。医者だけいればできると思ったら大間違いで、看護婦がいなければ医療はできない。少なくとも病院の医療というものはできない。これは徹底的に考えてもらいたい。御参考までに私の二、三の思いつきをちょっと申し上げてみます。  一つは、今看護婦が都会に集中して参ります。東京に出てくる。これをやめるのには、看護婦の給料に限って級地、一級、四級というのをやめる。そうしないとだめです。これは少し困難でありましょうが、特例を作ってやってもらいたい。そうして都会に集まることをやめさせる。  もう一つは、日本人は学校が非常に好きです。厚生省設置法を見ると養成所と書いてあります。これがいけません。なぜ看護高等学校にしないか。看護高等学校ということなら喜んで入ります。これで今の貸費制度をやったらどうですか。貸費制度はもう全国で相当やっています。二年を三年にしてもかまいません。二年でもいいんです。准看養成所を看護高等学校という名前に変えたらどうですか。そうしたらうんときます。というのは、高等学校にやる資力がないけれども、何とか教育させたいというのが親心です。子供もそうです。ですから看護高等学校という名前に変えますと、応募者がうんと出てくると私は見ておる。もう一つは同時に高等看護学院、これを看護大学というふうにしたら、女の人は教育に非常に熱心でありますから、希望者がうんと出てくる。ことに准看が非常に足りないこともありますから、准看からの進学課程の看護大学をもっと作ってほしい。それがないから准看にこない。進学課程に行けるという形、つまり今日の高等看護学院の課程に、進学課程と普通課程の両方あるが、それを看護大学にも作れば准看の志望者が入ってくる。これは文部省関係があって、学校というのは困難かもしれない。しかしソ連を見てごらんなさい。ソ連は一九三〇年までは医者は全部文部省でした。けれども一九三〇年を境にして医者の学校は全部厚生省にした、それでいいのです。当然病院に付属しなければできないから、そうすればいい。これをやってもらいたい。そうするとよほど違ってくるのではないかというふうに考えるのです。今の貸費制度は、主計官の方で十分考えてもらいたい。もしこういう看護婦のことに力を入れてくれないと、大蔵省の役人や行政管理庁の役人が病気になっても、看護婦を出さぬぞということを医療労働組合の方たちが冗談に言っておりました。そういうことでしたから、これは大蔵大臣以下も命に関係すると思って真剣に考えてもらいたい。  それからこういうような困難なときには、民間の人間というものは頭を上手に働かして、いろいろな工夫をするものです。それだから民間の看護高等学校とか看護大学というものを作るものがあったら、どんどん補助をやって下さい。そういう制度を作ってもらいたい。そうしますと、お役人の人はしゃくし定木の考え方をしますけれども、民間の人はなかなか抜け目ないものを考えますから、また困難は困難なりに、どこぞに突き破っていく道を考えます。ですからそういうことを積極的に一つ考えてもらいたい。  いろいろこまかいことを申し上げたいのでありますが、時間がありませんから、ついでにちょっと触れますけれども、神奈川の療養所看護婦さんが百十四名いるが、今月から来月にかけて五十名やめようという話が出ております。騒ぎになっている。事情を聞いてみますと、勤務評定をやったというのです。そして成績のいい人にたくさん金を出すから、もらわない連中が腹を立ててやめるということになっている。これは実にまずいやり方だと思った。それで病院当局としては病棟を二つ閉鎖するという形にする、また厚生省の方で調べに行くと、それは上手に病院の当局は従業員を押えて、厚生省に正しい把握ができないように努力するといううわさがあります。うわさですから、これはほんとうかどうか知りませんが、これは実にまずいと思うのだ。たださえ困っているところへ持ってきて、こういうことがあるということは非常にまずいと思う。  それでこの国立療養所のことで考えられますことは、国立病院は恩給もあり、いろいろするものだから、割合人が集まってくるのですけれども、しかし今日国立病院などに付属しております高等看護学院で、その卒業生を自分のところが困るから締めてしまって、他に出さないというやり方、これも先ほどの民間の看護学校を助成してもらうということと関連するのでありますけれども、これも困ると思う。私は最近幾つかの高等看護学院をたずねてみました。そうすると、基本人権の侵害でありますが、方々から来ております看護婦の募集の申し込みを、総務課長なり業務主任が握ってしまって、看護婦に渡さない、こういう事実を至るところに見ております。こういうことはいけません。そういうやり方が至るところに出てきて、国立療養所におけるこういう大量の退職というような問題が出てくる。だからこういう問題は一つ考え直して、よく監督して、それこそ指導してやってもらいたい。あなた方直接の仕事でありますから、こういうことのないようにしてもらいた  こういうようなまずいことが出て参りますその原因の一つに、日本の病院の管理者というものは医者でなければならないという、ここに問題が一つあると私は思います。この問題をやはり根本的に考え直す必要がある。御承知のようにフランスへ参りましても、あるいは西ドイツへ参りましても、病院の管理者はむしろ医者ではありません。日本の国立病院等には庶務課長という堪能な事務官もおりますけれども、しかし御承知のように専門技術者というものは、政治家ではありません。経営者ではありません。政治家、経営者というものと専門技術者というものはおのずから違います。ことに日本の医事教育というものは、非常な封建制を持っている。大学の医局というものは封建制を持っている。もうそのことだけしかわからないようなかたわの技術者に、日本の医者というものはされております。これは私も大ぜいの医者を扱っておりますけれども、始終そう思う。これは日本の大学の医療教育というものの、根本的に考え直さなければならないところでありますが、同時に順次変わりつつありますけれども、こういう育てられ方でできた全くの専門技術者の医者に、病院の管理、運用をさせるということは無理であります。もちろん医者でもそういうことに堪能な人はけっこうでありますけれども、医者でなくて病院管理者になれるということは、フランス、西ドイツあるいはその他の外国でも幾らでもやっております。そういう制度をこの際取り入れるべきだ。そうすると病院の管理、経営というものは、よほど変わって参りまして、この神奈川の療養所のようなばかげたことを、面と向かって、今日非常に看護婦が動揺しているときに、勤務評定をやって、ある人によけい金をやるなんということはやりません。やるにしてももっと上手にやります。そんなやり方をいたしません。こういう点が日本の病院の至るところに出てくると思う。そういう点を一つ考えてもらいたいと思うのであります。  最後に、こういうような社会福祉法人あるいはことに医療事業というようなものには、医療金融公庫あるいは社会福祉事業振興会あるいは年金事業団というようなものが出て参りまして、順次金融の道が開いてきておりますけれども、何しろ、たとえば医療金融公庫のことしの事業予算を見ましても九十億円です。ちょっとした病院を建てるとこのごろは一億円です。こんな九十億円はかりの金——もちろんこればかりではありませんけれども、このようなことでやれるはずがないし、ことに先ほど来申しておりますような非常な低位診療報酬——国立療養所国立病院の会計を主計官の方でごらんになったらわかります。私が先ほど申したことは、決してうそではありません。こういうような国でやっておるものでさえもこういう事態になっておるのに、それを診療報酬基準として押しつけておる。その中でもう特別な融資をしなければ、日本のそういうような医療施設の改善はできません。しかも医療というものは日進月歩する、こういうことでありますから、このワク自体がこんなことではだめです。こんなことでは何もできません。このことを根本的に考え直してもらいたい。ことに医療金融公庫でも年金事業団でも同様だと思いますけれども、窓口が市中銀行です。その市中銀行は二〇%責任を負わされる。このことから、つまりその事業が黒字になる事業でなければ金を貸さないのです。しかるにほんとうに営利を離れて医療の本質を実現をしていこう、ことに病院には、申し上げるまでもなく単に医療だけの責任があるのではありません。社会的な通念といたしまして、病院は地域社会の予防衛生事業あるいは医療事業のみならず、研究の仕事、あるいは医療関係の従来員の訓練、こういう少なくとも三つあるいは四つ、五つの仕事、任務を持っておるのです。厚生省の方でもそういう御指導をなさっていると思う。そういうことで、営利事業だけやっておるのではないのです。そうなりますと、今のような窓口銀行というものが二割の責任を持たされるということになると、営利でもうかっていなければ貸さないのです。ここに大きな問題が出てくるのです。  もう一つは、八分の利息です。これはもうだめです。先ほど来申しておりますように、今の診療報酬ではもうかりはしません。ことに従業員の待遇をどんどんよくしていかなければなりません。そうしなければ看護婦が集まらないという事態、そういう事態に、こんな八分なんという利息はとてもだめです。だから今やっております六分五厘に全部下げるということと、二千万円のワクなんて、そんなものでは役に立たない。医療金融公庫の二千万のワクなんてとってしまわなければいけません。そのワクをとれば、おのずから全体の総額も大きくしなければ、今の状態の日本の医療の役には立たぬ。こういう点を十分研究して、理解してもらわなければならぬ。いつも厚生省の悪口ばかり言っておりますが、厚生省の悪口を言っても、大蔵省がきついからどうにもしようがないというのが私どもの考え方なんです。  幾ら申し上げても切りがありませんし、時間がありませんから、ごく簡単にいたしましたが、そういう点をほんとうに考えてもらわぬと、実際直接人間の生命を相手にしている問題でありますから、もう基本人権の一番根本の問題でありますので、この点は大蔵省の方でよほど大きな理解を持って、今の保育所の問題にしろ、その他の社会福祉施設の問題にしろ、医療施設の問題にしろ、十分考えてもらわぬと、ほんとうに看護婦なんかなくなってしまいますよ。やる者はありません。これは世界的な傾向なんです。私が昨年厚生省に注意したのは、世界じゅう歩いてみて、どこへいってもそうなんです。なり手がない。こんな責任の重い、夜も働かなければならぬ、こういう仕事をやろうなんという娘さんは、今の享楽の時代に、世界的にないですよ。それが日本も一つの傾向になってきておる。今年は募集してもうまくいかぬように言っていらっしゃいますが、昨年は募集すればよくいくようなお話だった。ところがどういう点を見のがしておるか、応募者はあるのです。ありますが、高等看護学院を幾つかかけておる。それを全部計算に入れている。それから入るときには、土浦の高等看護学院でも三十三人入った。出るときは二十二人だ。途中でこんな仕事はいやだとやめてしまう。そういうことを厚生省は把握しないから、こういうとんでもないことになる。いずれにしてもこれは待遇問題なんです。いずれにしても、これらのことについては予算をつけて金を出してもらわなければどうにもならない。ですから大蔵省はこれらの点を十分考えてもらいたい。  大へん時間が超過いたしまして恐縮でございましたが、時間がありませんから、あとはまた社会労働委員会でいろいろ申し上げます。
  184. 中村幸八

    中村主査 次に西村関一君。
  185. 西村関一

    西村(関)分科員 私は問題を少年児童の非行の問題にしぼってお尋ねいたしたいと思います。  近時青少年の不良化、犯罪化が深刻になって参りまして、心ある人々を憂慮せしめておるのであります。これらの問題の処理につきましては、警察行政、あるいは家庭裁判所、検察庁、法務省関係にも大きな関連がございます。さらにまた文部省の社会教育、学校教育の問題にも関連がございますが、特に本日は灘尾厚生大臣その他関係政府委員の皆さんに対して、厚生省所管の非行少年児童の処遇の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず中央、地方、全国の児童相談所における相談事項の中で、非行少年児童に関連する相談事項が、どのような傾向をたどっておるか、またこれがどのように処理せられたかということにつきまして、大体の状態をお答え願いたいと思います。
  186. 黒木利克

    ○黒木政府委員 児童相談所における非行児童に対する相談は、教護相談と触法相談と申しておりますが、この教護相談と申しますのは、虚言癖とか、浪費癖とか、家出、浮浪、乱暴、性的ないたずらなど触法行為ではございませんが、児童の問題の行為についての相談をするケースでございます。触法相談は、御承知のような不法行為等、触法行為のあった児童の相談でありますが、これをあわせて非行児童相談といっておりますが、これが児童相談所の相談件数のうちの二三・六%を現在占めております。また最近におきましてはだんだんこの相談の率がふえつつあります。
  187. 西村関一

    西村(関)分科員 ただいま児童局長の答えがございましたが、なお健全育成相談というものもあるわけでございます。これらのものもやはり非行児童に関する相談事項といたしますならば、相当相談件数の全体のパセーンテージはふえると思うのでございます。従いまして非行児童の相談所における相談事項の中で占める重要性というものは、件数からだけ申しましても非常に大きなウエートを持つと思うのであります。これは青少年白書でございますが、中央青少年問題協議会から出しておりまする一九六〇年版のこの白書を見ますと、そのような認識を新たにせしめられておるわけでございまして、ただいまの局長の御答弁におきましても、そのことが裏書きされておるわけでございますが、おそらく全国の児童相談所の門をくぐりまするところの児童の数は、十万をこえるであろうと思うのであります。十万をこえるであろうと思われまする児童の中で、収容保護をしなければならないと思われるところのものが、おそらく四、五万に達するのではないかと思うのであります。これに対しまして、これらの非行児童に対する収容施設は、中央、都道府県、市町村、私立を合わせまして、どれくらいの数になっておりますか。そしてまた現在どのくらいの児童が収容せられておりますか。
  188. 黒木利克

    ○黒木政府委員 お尋ねの教護院の施設の数でございますが、公立が五十四カ所、私立が二カ所、国立が二カ所でございます。在籍の人員は、国立の施設の在籍人員を含めまして、総数が五千三百三十六名になっております。しかし御指摘のようにたくさんやはり収容を要する子供たちがおるわけでございますが、施設の数が足りないために、養護施設でこういうような子供たちを収容せざるを得なくなっておるという現状でございます。
  189. 西村関一

    西村(関)分科員 今局長のお答えいただきました、教護施設が足りないためにやむを得ず養護施設に収容しなければならないと思われる、そして収容されておりまする、当然教護施設に入れなければならない性質の児童は、どのくらいでございますか。
  190. 黒木利克

    ○黒木政府委員 大体一割四、五分はおるであろうという推定でございますが、ただなかなか児童相談所ではっきりと教護施設にいくべきだ、あるいはその必要がないという判定もむずかしいものでございますから、はっきりした数字がつかめないのでございますが、しかし養護施設の児童のいろいろ分類から、一割はこす数字というものを収容しておるという現実でございます。
  191. 西村関一

    西村(関)分科員 そういたしますとその他の教護を要する児童の行方はどうなりますか。それはまた十分な保護の責任を持ち得ないところの両親、身寄りのところに帰りますか、あるいは野放しになりますか。そこに今日ロー・ティーンの犯罪の非常な深刻な様相を呈して参ります素因があると思うのでございますが、これに対しまして政府はどのようにお考えになっておられますか。私は、教護院施設が非常に軽んぜられておる、もちろん厚生省所管の児童福祉施設全般につきましても、諸外国の例と比べまするならばまだまだ不十分であるということを痛感いたしておるのでございますが、その中におきましても教護施設はさらにひどい状態に置かれておるのではないかという感を抱いておるのであります。はなはだしいに至りましては、教護院というのはこれは厚生省の所管ではなくて、法務省の所管ではないかというような認識をすら持っていらっしゃる方々が、相当な知識人の中にあるということ、これは厚生省大臣、局長さんたちにも私は責任があるのではないかと思う。しかもこの非行児童の問題の処理に当たる最尖兵ともいうべき役割をしている、非常な労多くして報いられるところの少ない教護施設に働いている方々のことを考えますときに、しかも野放しにされておる多くの教護を要するところの児童の行方を考えますときに、これは国として児童憲章の建前から申しましても、憲法の精神から申しましても、非常に大きな責任があるのではないかと思うのであります。この点、灘尾厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  192. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非行少年の問題がわが国としまして非常に大きな問題、ことに将来のことを考えます場合に、ほんとうに心配しなければならない問題でありますことは、申すまでもないことと存ずるのでありますが、これに対しましていろいろの施設を講じて参っておるわけでございますが、その一環としてただいま少年教護関係の教護施設のことについてのお話がございましたが、私も実は昔、感化院法でございますが、これが少年教護法に変わりました際に、あれは議員立法でございましたが、私もお手伝いをさしてもらった記憶もございます。当時と比べまして世の中がずいぶん変わって参って、社会もずいぶん複雑になっておりますが、いかにもこの少年教護施設の進歩の度合いがのろいという感じを実は今持っておるわけであります。非行少年問題については各般の施策、またあらゆる方面が協力してやらなければならない問題でございますが、やはりこういったふうな施設につきましても、もっとこの時代において積極的な態度でもって、施設の充実を期していくべきではないかということを実はしみじみ感じておる次第であります。この問題につきましてはさらによく私といたしましても検討いたしまして、将来も努力を重ねて参りたいと存じます。
  193. 西村関一

    西村(関)分科員 青少年児童白書の三十一年度版の三百十六ページでありますが、一少年の述懐としてこのようなことが書いでございます。「いろんな先生方がみんな親切にしてくれました。けれどどこの誰にたよって行ったらよいかわからなかった」、こういうことを一少年が述懐しておる言葉が、この白書の中に載っております。私はそれを読みまして非常に胸打たれる思いがしたのであります。今日教護院が、先ほど申し上げましたように、また大臣のお答えいただきましたように、いわだ日の当たらない場所に置かれておる施設ともいうべき状態にあるということに対して、今後十分に検討を加えて、これが改善をはかっていきたいという御趣旨でございますから、大臣の今後の御検討を期待いたしたいと思うのでございますが、それにつきましても、若干の問題点と私の考えておりまするところを申しまして、御所見を承りたいと存じます。  まず教護院に送られて参りますところの虞犯少年もしくは触法少年の取り扱いにつきまして、今日の新しい教育治療と申しますかの分野が適用されなければならないと思うのでございます。先ほど児童局長お話では、養護施設にやむを得ず収容しておると仰せられましたが、養護施設はやはり養護施設の目的がございますから、教護を要する児童のための特別な施設としては、まことに不適格なものが多々あると思うのでございます。特に教育治療施設におきましては、専門の教護施設においてもきわめてりょうりょうたるところのものである。こういう今日の進歩した学問の領域を、しかもまたそれぞれのこの方面の専門家を起用して、教護施設の教育治療の面に当たらせるというような施設と人材をこれに充てていくということが必要ではなかろうかと思うのでございますが、この点につきまして、これらの教育治療施設を持ち、また専門の教育治療に当たるところの専門家を置いているところの施設が、一体どのくらいございますか。
  194. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御指摘のように、教護院の内容につきましては、生活指導と、教育指導と申しますか、学科指導と職業指導、この三つがあるのでございますが、中でも御指摘のような学科指導もゆるがせにできないのでございますが、ただいま教護院の教護という職種の中の人たちで、三百十九名おりますが、そのうち教員の免許証を持っておる者は五一%の百六十四名でございます。従いまして、御指摘のような学科指導の面については、確かに教官の低下ということが心配されるのでございまして、今後ともそういう点には改善をして参りたいと思っております。
  195. 西村関一

    西村(関)分科員 私のお伺いいたしましたのは、施設の内部におけるところの教育の問題、学科指導の問題ではございませんで、それは後ほどお伺いいたしたいと思っているのでございますが、特にこの治療教育、精神治療医学の領域における施設が欠けておる、またその人材を登用するということにおいて、ほとんどなされていないという点を申し上げているのでございます。その点はいかがでございますか。
  196. 黒木利克

    ○黒木政府委員 失礼をいたしました。御指摘のように最近の教護の内容におきまして、精神医学的な心理学的な技術の導入というものが、もっと積極的に導入されなければならぬというようなことで、そういう専門家をだんだん起用するようにはいたしておりますが、まだ全施設に入っておるというような段階には至っていないのでございます。
  197. 西村関一

    西村(関)分科員 そこで今の国、都道府県、市町村、私立の中で、そういう施設を持っている施設、そういう心理学的な精神治療学的な施設を持っているところのものが幾つございますか。
  198. 黒木利克

    ○黒木政府委員 ただいま具体的な数字は持ち合わせておりませんが、国立の二カ所にはもちろんそういう専門職がおるのでございますが、その他の都道府県立の施設においては、医師なり心理学者を置かなくてはならぬということにはなっておりますけれども、いわゆる精神衛生のできる医者というのは、りょうりょうたるものではないかと思っております。
  199. 西村関一

    西村(関)分科員 その点につきましては、大臣はどのようにお考えでございますか。
  200. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だんだんと社会福祉関係の施設も進んだとは思いますけれども、しかし私は字問技術の進歩ということを考えました場合に、それの導入ということが非常におくれておるのではないか。一面から申しますと、そういう方面の専門家の数も日本においてそれほどたくさんおるとも思いませんけれども、何にいたしましても時代の進歩に照らして、ひとり教護施設だけではないと私は思いますけれども、おくれている点が多々あるように思うのであります。今御指摘になりましたような点も、一体昔とどれほど今変わっているのだろうかというような疑いを持たざるを得ないような程度でございまして、これでは厚生省としても十分任務を果たしたことになるまいと思うのであります。どういう点につきましても、ひとり教護施設だけの問題ではございませんけれども、厚生省としてこれから大いに開拓し、前進しなければならぬ分野ではなかろうか、さように考えている次第でございます。
  201. 西村関一

    西村(関)分科員 その点につきましては今後十分改善を願いたいと思いますが、次は教護院の児童の教育の問題でございます。教護院のみならず、児童福祉施設の収容児童に対する学科指導、施設内の教育は、一体どのように行なわれておりますか。
  202. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御承知のように養護施設等におきましては、入所児童は近くの一般の学校に通学することになっておりますが、教護院の入所児童につきましては、教護院において小中学校に準ずる教科を授けることになっております。
  203. 西村関一

    西村(関)分科員 その準ずる教育というのは、学校教育法による教育とみなされておるのでございますか。
  204. 辻村泰男

    ○辻村説明員 ただいまの御質問は、教護院の中での児童福祉法に規定されております学校教育に準ずる教育が、学校教育法の小学校、中学校の教育とみなされておるかという御質問でございますか。
  205. 西村関一

    西村(関)分科員 準ずるという意味が、どういうことかということです。
  206. 辻村泰男

    ○辻村説明員 その中身と申しますか、教育の内容につきまして、大体小学校、中学校で教育をいたしております内容に準ずる内容の教育をすることになっておる、かように私ども考えております。
  207. 西村関一

    西村(関)分科員 準ずる教育ということでありますが、問題は施設の子供が社会に出ようと思うときに、卒業証書がもらえないということですね。卒業証書がもらえないような教育をされておったのでは就職もできません。そういうことに対して、厚生省は一体どういうふうに考えておられますか。
  208. 黒木利克

    ○黒木政府委員 準ずると申しますのは、実は学科指導の方は小中学校の方の教科書を使用いたしまして、国語とか数学とか、英語、理科、社会、音楽、図工等を実施しておるわけでございますが、しかし対象児童の特異性に着目して、職業指導なりあるいは生活訓練なりを兼ねて実施しておるのであります。そこでこの教科を終了した児童に対しましては、教護院長が修了証明書を発行する。この証明書は小学校の卒業証書と同一の効力を有する。すなわち義務教育を修了したことになるわけでございますが、しかし実際は教護院の修了証明書というものが社会にはむしろ逆効果がございまして、子供のためにも実はならない、教護院におった証明になるわけでございますから。そこでこれは実は文部省とは正式の話し合いはしていないのでございますが、地元の教育委員会とお話をいたしまして、もよりの学校長の卒業証書をいただくようにお願いをしておる。もちろん教護院における学科指導というものも熱心にやっておるわけでございますが、もよりの学校の協力を得まして、そういう御協力を得ておるという実情でございます。
  209. 西村関一

    西村(関)分科員 それが実際に行なわれていないということを私は心配しているのです。局長はそういうふうな方針で臨んでおられるので、それが徹底すればけっこうなんですが、文部省の協力がどれだけ得られておるか、地力の教育委員会がそれに対してどれだけ協力しているかという実態が、私は問題だと思うのです。今お答えいただきましたように、院長の証明ではこれはかえって逆効果でございますので、むしろ教護院を出たということは、本人も、また教えた先生も伏せてやりたいし、本人も伏せておきたいというのが人情であります。卒業証書なとは、今局長の言われましたようなもよりの小学校長の証明をいただくというような計らいを、ぜひやっていただかなければいけないと思うのですが、その点に対しまして文部省はどういうお考えをお持ちですか。
  210. 辻村泰男

    ○辻村説明員 その点につきましては、厚生省とまだ正式なと申しますか、お話し合いをいたしておりませんけれども、私ども、地方の都道府県教育委員会あたりから、そういう問題につきまして質問を受けることがございます。その際に文部省として答えております態度は、教護院におかれて、この子供についていわゆる不良性が十分除去されまして退院をした。退院をいたしますれば、これは当然義務教育でございますから、教護院としては、その小学校あるいは中学校といたしましては、その子供の籍は学校に復するわけでございます。その学校に籍が復しましたからには、卒業の時期が参りますれば、当然その学校の卒業証書を授ける、これは申すまでもないわけであります。そこで教護院と学校と十分連絡をとられまして、その児童の院内での教護の効果を十分しんしゃくいたした上で、なるべく卒業の時期に間に合うように学校に籍を復すと申しますか、学校に通学するという形をとりまして、小学校なり中学校なりの卒業の証書を渡すように、こういう指導をいたしておる次第でございます。
  211. 西村関一

    西村(関)分科員 お尋ねするまでもなく、私の手元にあります資料でお伺いいたしますが、教護院の年令別在籍者数というのを見ますと、三十四年の十二月末現在のこれは私の資料でございますが、これを見ますと、十四才、十五才というのが非常に多いのでございます。ずっと六才から十八才までの年令別の数が出ております。そういうことから考えますと、今文部省のお答えになりましたような、教護院から出て、もう教護を必要としないということで退院をする、そして学校に帰るというような場合は、これはそうたくさんないのです。ほとんどこの教護院で少年時代を送る、そうしてまっすぐに社会へ出ていかなければならない、こういう状態でありますから、今文部省のお答えになりましたようなことは実情に即さないのです。事実そういうことはございません。非常に少ない例でございます。そういうふうにありたいと私ども願いますけれども、実態がなかなかそういう工合にいかない。そこにまた教護院の先生たちの悩みがあると存ずるのであります。従いまして今のようなお答えでなしに、私はもう少し親心のある計らいを文部省としては考えていただきたいし、また今日まで厚生省と文部省との間にそういうお話し合いがなかったということ自体、私には不思議なんであります。児童の行方を考えるならば、当然今日まですでに感化院時代から五十年の歴史を持っておる、この教護院となりましてからもすでに十数年の歴史を持っておる。今日までこの大事な問題に対していまだお話し合いがなかったということ自体が、私には不思議でならないのであります。その点に対しまして、児童局長はどういうふうにお考えでございますか。
  212. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほども申し上げましたように、制度上は教護院で教護院長が修了証書を出す、それが小中学校の卒業証書と同一の効力を有するというような建前になっておりますので、文部省とはこういうことで話し合いがつき、制度ができておるわけであります。しかし御指摘のように、現実には逆効果になるものですから、もよりの学校の校長にしかるべくお願いして、しかるべくやってもらっておるということでございます。ただ学科指導もしないのにしかるべくというわけにも参りませんから、実は夕食後——個々の教護院での学科指導は大体午前中でございます。午後は体育とかあるいは職業指導とか、生活訓練的なことをやりまして、やはりカリキュラムから申しまして基準には達しない。それは年令的に、また子供の素質とか、いろいろ事情がございまして、一般の学校とは違うわけでございます。そこで夕方以後一時ないし一時半、学習補習をするというようなことで、実はもよりの校長先生にしかるべくお願いしておる。私は今まで適当にしかるべくやってもらっておったと思いますが、もしそういう事実が各地におきましてないというならば、これまたあらためて私の方でその適正な指導をしなくちゃなりませんから、いろいろお知らせをいただきまして、しかるべく学校長にお願いしてやりたい。これは正式に文部省にお話をしますと、文部省としても頭からよろしいとはなかなか言いにくい立場におありになるのではなかろうか、これは地元々々で事実行為としてしかるべくおやりになってもらう以外にないのではないかということでやっておる次第でございます。
  213. 西村関一

    西村(関)分科員 いろいろ法体系の問題がありますから、それはなかなかむずかいと思いましす。その壁を何とかして破るということが、私は行政の任に当たられる方々の心がまえではないかと思うのです。いろいろ隘路はございますし、壁はございますが、しかしこれを克服して、不幸な環境のもとにこういう施設に収容されざるを得なくなったという児童の将来に対する深い、あたたかい親心が、やはり行政の面に必要ではないかと思うのでございまして、ただ各地方の教育委員会なり学校の校長さんのしかるべきはからいにゆだねるということだけで、それがどういうふうに行なわれているかということを見届けていただかなければ、私は親切な行政の指導だとは言えないと思うのでございます。その点につきまして、私は局長の言われたような工合に必ずしもいっていないと思う。全部が全部いっていないとは申しませんが、事実子供を預かっていらっしゃる施設の責任者の悩みが、そこにあるということを私は感じておるのでございます。地方におります者といたしまして、また心して各地を歩いて教護施設を見ましたときに、そういう感を深くするのでございます。ここに正面切って文部省と話し合うということができないにしても、あるいは何らかの非公式な話題に上せるとか、何らかのそういう話し合いを続けられることによりまして、その隘路を克服するところの道が発見されるのじゃないかと思うのでございます。ただ、それを地方の教育委員会だけにゆだねる、学校の校長さんにしかるべくはからってくれということで、教護院の施設の長とが話し合いでやるといろ、それだけじゃなしに、やはり中央においては、この大事な問題、教育を受ける権利を持っているところの非行児童の将来が暗くならないように、またカリキュラムの問題がございますから、むやみやたらに卒業証書を出すことはできませんが、その点は教護院の指導監督に当たるところの児童局におきまして、やはりそれらの点も含めて、監督指導をなさるということは当然であろうと思いますし、そこは、本省と都道府県とその施設の責任者と、文部省と地方の教育委員会とがしかるべく話し合いを重ねていただく、そして、ただ形式的にこういうふうにやっているから、これで何とかなっていくのだろうというのでなしに、その実態を見届けて、成果が上がるまでは追及していく、こういうかまえでお進みをいただきたい、かように思う次第でございます。その点、大臣におかれましても、ぜひ御留意をいただきたいと存ずる次第であります。  さらに、その次の問題でございますが、児童の非行の初発年令と収容年令の平均でございます。これはどのように相なっておるのでありますか。
  214. 黒木利克

    ○黒木政府委員 私の方の手持ち資料では、全国教護院の入所児童の非行の初発は、昭和三十四年は五才以下の者が四十二名おりまして、二・一%でございますが、三十五年はそれが五十名になりまして、二・六%でございます。これは男の方でございます。女の方では、昭和三十四年に五才以下が八名で二・一%、三十五年は七名で、一・八%でございます。なお、家庭裁判所の取り扱った刑法犯少年の非行の初発年令は、六才未満が、男が二十一名、女が四名というような数字がございます。それから、私の方の国立武蔵野学院の教護院へ入所いたしております児童の非行の初発年令は、昭和三十五年が、五才が七名でございます。
  215. 西村関一

    西村(関)分科員 最後の点ちょっと聞き漏らしましたが、収容年令の平均は何才なのですか。
  216. 黒木利克

    ○黒木政府委員 収容年令の平均は、先ほどの先生の三十四年の資料では、十四才ないし十五才が一番多いと言われましたが、三十五年末の調査では、平均が十二・九才、男が十二・八才、女が十三・四才、だんだん低年令化しております。
  217. 西村関一

    西村(関)分科員 初発の年令の平均は何才になっておりますか。
  218. 黒木利克

    ○黒木政府委員 初発の平均というわけには参りませんが、五才以下がやはり全体の二ないし三%程度あります。
  219. 西村関一

    西村(関)分科員 私の問題といたしておりますのは、初発の年齢と収容年令の平均の間にずれがあるということです。これが私は問題だと思うのでございます。教護院に収容するということは、よほどの場合でない限りは強制力を使わないということになっておりますから、保護者の承諾を得ることができないために、初発のときにすぐに収容すれば、小さい間にその芽をつむことができるのでありますが、それができないままに収容時まで悪い環境に放置される。そういうところに、今日の青少年の不良化、犯罪化の悪化の大きな原因の一つがあると思うのでございます。これは、なぜ親が教護院に入れることを快しとしないか、拒むかということは、これは昔の感化院と違う、非常に開放性があるし、また非常に家庭的な雰囲気で教護をするのであるから、背の感化院とは違うと幾ら当局が言って聞かせましても、親として子供を託すことにちゅうちょする原因はどこにあるかというと、私はやはり学科指導の点にあると思うのでございます。卒業証書ももらえないようなことでは、これはかわいそうでやれないというような気持が、先に働くというふうに私は考えるのであります。そういうところに初発のときに収容すれば、まだ芽が小さいときにつむことができるのに、そのままずるずるとほったらかされますために非常に悪くなっていく。こういうことが考えられるのでございまして、それらの点から考えましても、ぜひともこの教育の問題、学科指導の問題、それから卒業証書に準ずる証明書を発行する問題、できれば卒業証書を出していただくというような点も、これらの点から考えましても、私は非常に大事な点ではなかろうかと存ずるのでございます。  次は、費用の問題でございます。児童福祉法によるところの収容施設設備費の国庫補助金の総額は、約三千万円と承知いたしておりますが、さようでございますか。
  220. 黒木利克

    ○黒木政府委員 三千万円余りでございます。
  221. 西村関一

    西村(関)分科員 明治四十一年に感化法が改正せられまして、府県必置となって教護院になったのでありますが、それからだけでも五十年の歴史を持っている。ですから、施設は老朽に老朽を重ねている。そういう状態であり、また先ほどから御指摘申し上げておりますように、最新の学問を取り入れた施設を併置しなければならないし、学科指導の面におきましても、施設の十全を期していかなければならないにかかわらず、施設そのものが老朽化している、こういう状態でありますのに——もちろん教室や体育館、学校設備とまでは手がいかない。まずそこに収容しているところの子供を、どのように生活面において教護の目的を果たしていくかということから、やはり舎屋の老朽化したものから建て直していかなければならないという必要に迫られておる現況であります。それにもかかわらず、一カ年三千万円くらい予算で、はたして教護院の施設を充実していくというふうに考えられるだろうか、私は大いに疑問を持つのであります。その点大蔵省の方ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  222. 岩尾一

    ○岩尾説明員 施設につきましてはいろいろと御要求があるわけでございますけれども、全体として、従来からの各種施設の施設費等の状況もございますし、また他の社会福祉施設等の関連もございますので、総体としての関連を顧慮いたしまして、一応三千万円といたしたわけでございます。もっとも三千万円と申しますのは二分の一の補助額でございますので、実際上県の方が出す場合には六千万円となるわけでございます。
  223. 西村関一

    西村(関)分科員 二分の一の補助であっても、これを倍にしたところで六千万円。話にならないです。厚生省は、これはどのくらい予算要求をなさったのですか。
  224. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は昨年までは、いろいろ各県の財政の都合で、教護院の新築とか改築の要求があまりなかったのでございますが、本年ごろから教護院の改築の要望が非常にたくさん参りまして、私の方で大蔵省に要求するのにずれがございまして、まことに申しわけない結果になったのでございますが、明治時代にできた教護院が、まだそのままの建物であるのは、事実でございますから、明年度以降、設備費の獲得に努力したいと思っております。
  225. 西村関一

    西村(関)分科員 さっきの教育の問題ですが、教育費につきましては、児童福祉法によるところの収容施設措置費国庫負担金の交付基準によるところの、事業費の児童一人当たりの国の示す単価表から、教育費の月額が出ていると承知いたしておりますが、これを見ますと、小学一年生について月額百七十六円、中学一年生について四百二十八円、こういう国の示す単価が出ておるわけでございますが、はたしてこのくらい費用で、しかも一カ月の費用です。これではたしてさっき言われましたような施設内におけるところの教育ができるとお考えになりますか。また教護院にありましては、教材費として小学校の該当児は八円、中学校の該当児は十二円でもって、それぞれ加算する額とされておるというふうに承知いたしておりますが、一体今日のこの物価高のときに、わずか八円や十二円でもって何の教材費がととのえられるかという問題であります。一体これで何をしろというふうに厚生省は教護院の責任者に要求していらっしゃるのか、全く了解に苦しむのであります。それも要求せられたけれども、大蔵省でばっさりやられたというならばしようがないと思いますけれども、これは一体児童局長、どういうふうに要求なすったのですか。
  226. 黒木利克

    ○黒木政府委員 数字が少し違うのでございますが、たとえば小学校六年生の場合の算定基礎でございますが、教科書費が四百九十二円、学用品費が千九百二十円、通学用品費が六百円、その他実験費といいますか、それが二百四十円となっております。これは生活保護の教育扶助の基準をそのまま採用しておるわけでございます。ただ教護院の方は、教材費として、小学校の該当児童は月額八円、中学校は十二円の加算をする。それから生活保護の教育扶助とまた違いまして、補助学習用品の参考書でございますが、これが三百八十一円、学級費が二百一円というものが、生活保護よりもさらに加算されているというような数字でございます。
  227. 西村関一

    西村(関)分科員 これは私はもう少し資料を突き合わせてお伺いしたいと思いますが、時間がありませんから、後日、また直接厚生省の担当の方からよく伺うことにいたしまして、これ以上お伺いいたしませんが、あと急いでおられますから、まだたくさん質問が残っておりますけれども、最後に一点だけお伺いをいたしまして、お譲りをいたしたいと思います。  それは施設の子供の食費の問題です。朝日新聞の昨年の十二月二十六日付の夕刊を見ますと、「施設の子は腹ペコ」「たまらないと脱走も」という題で、記事が載っておりました。「食費の増額はままならず」という副題がついて、厚生省は、せめて一日三十円くらい食事を出したい、三日に一ぺんぐらいは卵の一つらいは食べさしたいということで御要求をせられたが、大蔵省は二十六円八十九銭に削った。これでは——二十六円八十九銭というのは、どういう計算の基礎でこういうはしたが出たのか、計算機にでもかけられたのか何か知りませんが、これで、発育盛りの、食べ盛りの子供が満足した食生活ができるかどうか。厚生省がお調べになるならば、おそらく施設の子供たちの栄養状態、発育の状態は、一般の同年令の児童の栄養状態、発育状態とは格段の違いが出てきていると思うのであります。しかも間食代は五円。五円で一体何が、どんな間食がととのえられるか。この新聞を見ますと、施設の方では苦心をして、サンドイッチを作ったときのパンの耳を集めて、それでおやつを作って出しておるというようなことがいわれておる。そういうよう苦心をしていろいろやっている。いずれにいたしましても、このような一日一人九十一円五銭という食費、二十六円八十九銭というような一回の食費では、とうてい満足した栄養を与えることはできないと思いますが、私の考えが思い過ぎでございましょうか、いかがでしょう。
  228. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御指摘のように施設側からそういう声がやかましいのであります。また資料によりますと、一般の児童に比して、施設の児童の体位が少し劣っておるのではないかというようなことも言われておりますが、ただこの収容施設の十二才から十四才の例をとりますと、従来は一日七十六円七十三銭であったものが八十四円三十一銭と、かなりの増額をしていただいたのであります。卵は五日に一個というのが三日に一個にはなりましたけれども、これでもカローリーは二四五〇、蛋白は九十グラムでありまして、一応日本人栄養所要量には該当しておるのでございますが、しかし額が少ないということは私たちも認めておりまして、機会あるごとに増額をお願いいたしておる次第でございます。
  229. 西村関一

    西村(関)分科員 今後の教護施設の運営に対する厚生大臣の御方針を承って私の質問を終わりたいと思いますが、きょうは文部省の関係の方も見えていただいておりますから、厚生大臣にお伺いいたしますために、文部省の社会教育局の担当の政府委員の方にお伺いをいたします。  このように非行少年が激増しておりまする問題を解決する国の所管は、御承知のように厚生省、法務省、警察関係という工合にまたがっておりますが、私はやはりこの非行少年が出てくる素因をなくするために、社会教育の果たす役割は非常に大きいと思うのであります。そういう点につきましては、すでにいろいろな集団的な指導が、青少年活動、あるいは青少年団活動やボーイ・スカウトやガール・スカウトの活動を通じてなされておりますが、地域社会と密接なつながりを持ってこういう非行の芽をつんでいく、そういうような非行対策、協力対策、協力員制度とか、たとえば家庭裁判所等少年保護司関係でやっておられますBBS運動、これは法務省でやっているんだからというんじゃなくて、青少年の社会教育の責任をとっておられまする立場から、こういう非行少年に対する対策を文部省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  230. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 お答えいたします。  青少年の不良化あるいは不良化防止のもとになる健全育成という問題につきましては、青年と少年ではかなり対策が違っておりますが、一般的に申しまして、文部省の方は、学校教育以外の社会教育面では、できるだけ青少年の広い意味の教育の機会を拡充する。これは教育といわれない余暇の積極的な活用というものも含みまして、できるだけ教育の機会を拡充するということと、ただいま先生のお話しになりました健全な団体活動を助長する、この二つの事柄を中心にして、助成保護の措置あるいは指導者の育成、その利用する施設の拡充、そういうことを担当しております。年少の少年、ことに問題になります非行少年のいわゆる転落という問題に関しましては、小中学校に在籍する生徒の中にも出てきておるのです。教育を受けている者の中にも出てきている現状でございまして、その点につきましては、少年団等の活動、あるいは内部で行なわれておりますいろいろなこども会あるいは育友会というような、そういうものの世話をする指導層に対する教育、研修というようなものもやっておりますし、また全国にありますPTA活動の中で、特に児童の愛護という観点から、それだけを目的にした研修会等もいろいろ昨年行なっております。そういう面で、校外保護という関係で義務教育によります児童生徒に対しての指導を強化していきたい、かように考えております。
  231. 西村関一

    西村(関)分科員 映画とか印刷物、書籍、広告、看板その他からくる影響というものがありますが、社会教育の面ではそれらに対してどういう措置を講じておられますか。
  232. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 映画の面につきましては、むしろ児童によいものをできるだけ推奨するということをやっておりまして、文部省の青少年向け映画の選定、そういうものをできるだけ見せますために、いわゆる早朝興行と申しまして、日曜等によい映画を見せるように、都道府県に対する補助金等も実施いたしております。  それから読みものの問題は、実は現在青少年向けに発行されますものにつきましてはそれほど悪いものはないじゃないか。その点戦争直後の低俗な漫画本の影響ということは、出版業者の努力によりましてだんだんなくなってきております。むしろ大人に対する一部の俗悪なものが青少年の目に触れて、それがいろいろ非行の契機になるというようなことがございますが、この面につきまして、文部省は直接そういうものの取り締まりなり抑制等をいたしておりませんで、これは厚生省関係でいろいろ児童保護条例等の措置を行なっているように承知いたしております。ただ、団体活動といたしましては、PTAが中心になりまして、あるいは婦人会等、むしろ直接民間の手でそういうものを買わせないようにということで、それぞれ地域において努力しておる次第であります。
  233. 西村関一

    西村(関)分科員 最後に厚生大臣にお伺いいたします。  先ほど来いろいろお尋ねをいたして参りましたように、青少年、児童の非行は非常に憂慮すべき状態にあり、初発の年令も低下しておりますし、また収容児の年令も低下しております。しかも収容施設は、先ほどお示ししましたように、その数において、内容においてお話にならないような貧弱な状態でございます。もちろん、教護院をふやすということだけでは問題が解決つきません。これは各省が緊密な連絡をとって、文部省は文部省の領域において、法務省は法務省の領域において、あるいは警察は警察の立場においてそれぞれ協力をしていかなければならないことはもちろんでございますが、とにもかくにも国の次の世代をになって立つ青少年の非行の現状は、まことに憂慮すべき今日であります。これをこのままに放置していくということは重大な問題であると思うのでございます。私は、この点につきまして。この道の専門家であり、またこの教護院制度の生みの親とも言うべき灘尾厚生大臣が御在職中に、この教護院の施設を充実し、拡大し、またこれを一つの拠点として地域の青少年の非行をなくするような運動を展開していく、あるいはまた居宅における指導を強化していくというような事柄に対しまして、関係各省と緊密な連絡をとってやっていただくよう願うものでございます。また、教護院の施設の内容につきましても、家庭的な雰囲気を保って参りますために、夫婦で児童とともに生活をする小舎制がとられておる。あるいはまた夫婦でなくて、寮夫と寮母が別々にいわゆる並立制というものがとられている。いろいろその一長一短がございましょうが、またここに参りますところの児童たちは、家庭をきらっている。従来の育って参りました家庭に問題がありますから、家庭的な雰囲気は最初は毛ぎらいするという傾向がございますが、そういうところにも施設の責任者の大きな責任と悩みがあると思うのであります。しかも従来の感化院ではなくて非常に開放的である。そしてまた職業の補導を通して品性を陶冶していくというような任務も負わされている。こういったような点について、私はこの教護施設に黙々として働いている、しかも夜も昼もない——これはほかの施設の方々の従事者でも同じことでございますが、特に私が本日取り上げております教護施設につきましては、これは非常に大きな犠牲が背負わされておる。職員の人たちは自分の家庭を犠牲にして児童に奉仕しているのである。しかもそれに対する待遇は、先ほど長谷川委員の御指摘になりましたように、非常に低い。私はこういう非常に労多くして報いられることの少ない施設に奉仕している人たちの待遇こそ、ほかの一般の公務員よりは特別な待遇をしてもいいと思います。そういうような点につきましても、私はきょう低い待遇に甘んじながら働いている従事者の待遇の問題についてもお伺いするつもりで、若干の準備もいたして参りましたが、もはや時間がございませんので、これは社会労働委員会等においてあらためてお伺いをいたしたいと思いますが、それらを含めまして、最後に私は厚生大臣の御所見を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  234. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本日は、先ほどの長谷川委員の御質疑といい、またただいまの西村委員の御質問といい、社会福祉、児童福祉、かような方面について格別深い御理解をいただき、御同情のある御質疑をいただいたわけでございます。厚生省といたしましては、従来の施策の至らざるところをしみじみ感じさせられるところもあるわけでございます。また私どもといたしましても、いろいろと啓発させられました点がありましたことをお礼申し上げたいと思います。  青少年の非行対策は、先ほども申しましたように、日本といたしましても、最も重要な、ことに将来に非常に大きな関係を持つ問題でございますだけに、政府も真剣にやりたいと思います。特にこれはひとり政府だけの問題ではなくて、家庭において、あるいは地域において、あるいは国民全体において、みんな一緒になって問題を解決する気持がほしいと実は思うのでございます。その基盤の上に立っていろいろな施策というものも生きてくる、また拡充することもできる、私はさように考える次第でございますが、いずれにいたしましても、関係の深い方面と格別密接な連絡をとりまして、青少年対策の上にさらに前進を遂げて参ることができますように努力いたしたいと思います。  なお少年教護院に対する御質疑でございます。実は私もだいぶこの方面から離れておりまして、最近の事情についてうといので、いろいろ教えていただいたと思うのでありますが、従来はまだ伝統的なものがそのまま残っておるのじゃなかろうか。学問、技術等の進歩、社会の進歩に比べまして、この種の施設がおくれておるのじゃなかろうかという感を深くするのであります。施設そのものの数がもちろん足りません。従いまして、その施設それぞれの特色があまりない。もっと同じ施設の中でも分類して取り扱ったらいいものがあるのじゃないかと前から考えているのでありますが、今もってそういう問題は解決されておらない、こういう状況であろうかと思います。さような次第でありますので、の施設整備に努めるということももちろんでございますが、その施設の中において行なうことも、先ほどお話しがありましたが、特に精神医学方面の学問を導入するというようなことも、今の時勢といたしましておろそかにならぬことだ、かように考える次第であります。何と申しましても非常におくれておりますので、さような方向に向かって前進すべく私も努力してみたいと思う次第でございます。総じて教護体制の再検討と申しますか、実は私思い出しますが、少年教護法という名前のもとに議員立法が行なわれました際に、これは教育保護だ、今の感覚と違うのだ、こういうふうな御趣旨のように伺ったのでございますが、その当時ある国会議員の方が言われましたことが、文部大臣になりましてからも実は今もなお頭に残っておる。と申しますのは、日本は一体——その当時は小学校令と言ったのでありますが義務教育と言いながら、文部省として工合の悪いのはみなはずしているじゃないか、つまり非行少年であるとか頭の悪い子であるとか、そういうものはみなはずしてしまって義務教育と称している、本来申せば文部省の教育として取り上げるべきものだ、こういう意見があったわけであります。だんだん進歩して参りまして、いわゆる義務教育の範疇の中にいろいろなものが取り入れられております。これは私は非常な進歩だと思います。そういうようなことでございますので、この少年教護につきましても、中にはいわゆる教育の対象としがたいという面もあろうかと存じますが、対象とし得るものにつきましては、これは文部省で所管しております小学校教育あるいは中学校教育というふうなものと、少なくとも密接な連関のもとに物事が行なわれていかなければならぬ、かような考え方もいたしておる次第であります。総じておくれております点はまことに申しわけないと存じますが、極力御趣旨に沿うように私も研究を続けてやりたいと存じます。
  235. 中村幸八

    中村主査 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  236. 中村幸八

    中村主査 速記を始めて。  次は上林榮吉君。
  237. 上林山榮吉

    上林分科員 時間を十分いただいて、あす質疑をいたしたいと思いましたが、主査がぜひきょう済ましたいから簡単にやってくれ、こう言うので、二点だけしぼってお尋ねをいたしておきたいと思います。  厚生大臣初め、事務当局にしろ大蔵省にしろ、それぞれの立場があるのだが、社会保障に関しては、確かに一歩前進したと私は思っておる。しかしまだまだ足らないものが相当ある、こういうように思いますが、そういう観点からまずあけたいことは、福祉施設にいるところのことしの中学校卒業生が全国で何名おりますか。まずこれを伺いたい。
  238. 中村幸八

    中村主査 今、政府委員室に呼びに行きましたから……。
  239. 上林山榮吉

    上林分科員 これくらいのことは、大臣はともかくとして、ここにおられるほかの局長も知っておらなければいかぬ。無理かもしらぬが、一人くらいこのうちで知っている人がいそうだと思ったが、まことに残念であります。  これらの社会福祉施設の人たちが、中学校を卒業して、遠くは東北、北海道あるいは九州、四国、中国、こういう方面から、最近は東京や大阪や、そういうところに相当就職しております。これは非常にいい傾向だと私は思います。だが、就職がきまると、まず遠いところから出てこなければならない。出てくるには、最小限度夜具くらいは持って出てこなければならぬ、冬の寒いときに。これらの人たちに対して、あなた方は厚生省として、あるいは労働省と語り合って、どんな手を打っていますか。いわゆる福祉施設におる間は、これはいろいろなことをして不満足ながらやっておるわけですが、こういう人たちが非常に喜び勇んで就職をして施設を出ていくのに、夜具を持たしてやれぬ。こういう状態が実情ですよ。これに対して、あなた方は予算の中から何か手を打っていますか。予算にないならば、次善の手を何か打っていますか、これをお尋ねしたい。
  240. 今村讓

    今村政府委員 お答え申し上げます。正式に、就職の場合のふとんとか被服とかいうふうなものはまだ予算化されておりませんが、入進学支度金というものは別にございますけれども、事実問題としては、共同募金の配分金というようなものから、しかるべく所長が物を持たして出すというようなことになっております。
  241. 上林山榮吉

    上林分科員 これは時間の関係があるから、私は何回も質疑応答はしないけれども、福祉施設の中学校を卒業して出ていく人たちに対するあなた方のやり方は、これは徹底していないのです。今おっしゃるように、予算化していないのです。施設では、そこから一人出る場合は、今おっしゃるように、そうしたようなこともできるのですよ。だが、同じところから十人も十五人も出る場合は、そうしたようなものでは全然できないのです。だからこの問題は、大蔵主計官、お聞きかと思いますけれども、来年度は私はこれは予算化すべきものだと思う。就職支度金というような名前でもいいのです。せっかく福祉施設で恵まれない人たちが中学校をやっと卒業さしてもらって、世の中に出ていくのですよ。これは人生の門出として、私は、施設としても、社会に送り出す意味において、やさしい手を差し伸べていくべきものではないかと思います。そういう意味合いにおいて、一つことしは適当な次善の処置をとられて、来年度はこれを予算化していく、こういうふうにしていただきたい。あまり研究していらっしゃらないようですから、これ以上申し上げてもどうかと思いますので、要望だけにとどめましょう。  第二点は、厚生省の無医村をなくしようという御方針には変わりはないのでしょう。
  242. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その通りでございます。
  243. 上林山榮吉

    上林分科員 ところがそれと矛盾するような制度を今回政府は作ろうとしておられるわけです。それはどういう点かといいますと、船員法の一部を改正して、今まで船に医者を乗せておったのだけれども、医者をおろして衛生管理者程度の者を船に乗せていこう、こうするわけですね。これは、いろいろな事情があるにしても、厚生省の基本的方針に矛盾しませんかどうか。
  244. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省といたしましては、全国津々浦々みんな医療が受けられるような状態でありたい、さような意味におきまして、いわゆる無医村を解消したい、こういう考え方をいたしておるわけであります。無医村ではございませんけれども、船の上におきましても、病気にかかりましたときにはできるだけ医者にかかれるようにしたいということは、厚生省としては基本的にさように思いますが、ただ現実問題といたしまして、無医村といううちにも、現実に医者の置けないような地方がありますと同様に、船におきましても、現在の実情から申しまして、すべての船に医者を乗せるということはかなり困難があるわけでございます。さような実情に即しまして、今回の船員法の改正につきまして、運輸省の方からも御相談があったわけでございますが、私どもとしましては、できるだけ船に医者を乗せてもらいたい。少なくとも今よりも悪くしたくないという気持は持っておりますけれども、今日の実情上やむを得ないと考えまして、了承いたしたようなわけでございます。ただ航路により、船の状況によりましては、厚生省として考えさせてもらわなければならぬ点もあると思いますので、政令の段階において、具体的になおよく相談をしていただきたい、こういうことを申しておる次第でございます。
  245. 上林山榮吉

    上林分科員 大臣も御承知通り、医療を行なうのには、医師法第十七条の規定によって医師でなければならぬ、こういうことがきめてあるわけですね。そうすると厚生省考えはそうでなかったのだ、運輸省が特殊な事情を説明されたからこれに賛意を表したのだけれども、でき得べくんば医者を乗せた方がいいのだ。しかしそうばかりもいかぬから、一部は乗せないでもやむを得ない、こういう話ですが、これは実際問題としては、そうしたような意見を言う人もあるわけです。私もそれはわからぬじゃないのですが、一番大きな問題は、医者でなければ医療をしてはならないという規定に抵触しませんか。たとえば衛生管理者が、船の中にお客さんあるいは船員がたくさん乗っておる、三人や五人じゃなく、百人以上たくさん乗っておって、急患が出た場合に、この人が診断をして投薬をすることが適当かどうか、こういう問題に対してほんとうに考えてみたことがあるのかどうか。これはあくまでも医師法の違反ではないかということと、かりにその法律上の違反だけではなくて、これが大事な人の生命に関係があったりしたらどういうふうにお考えになりますか。
  246. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 衛生管理者をさような船に乗せるということに相なっておるようでありますが、この衛生管理者がその職務として診断しあるいは治療を行なうということは、これは医師法から申しまして医師法の違反だ、こう申されても仕方がないと思います。いゆわる診察治療行為を医師にあらざる者が行なうということになりますれば、これは医師法違反ということに相なると思います。従って海上において医師がない場合に急に病人ができた、こういうふうなときに、事実問題はいろいろあろうと思いますが、あるいは無電の設備を持っておるとかいうことでありますれば、医者に無電で連絡してその指示を受けて、そうして何らかの処置をすることが望ましい、かようにも考えるわけであります。万やむを得ない場合には、これは応急やむを得ざる措置としてやることでありまして、職務としてそれが診察治療を行なう者ということでありますれば、これは医師ということになります。これは許されないと私は思います。万やむを得ざるときの一つの処置として一応認めざるを得ないという場合はあろうかと思います。
  247. 上林山榮吉

    上林分科員 私はこれが海運振興の一環として、経済的な意味からこれを処置することは、程度によっては必ずしも反対ではないのです。しかし冷静に考えてみると、人命というものがいかに大事であるかということを考えますと、しかも船の中です。海上生活者の気分というものがどういうものであるか、まだ客の方々はどういうものであるか、どちらにいたしましてもこれは特殊な状態にあるわけです。それが誤って診断をして、誤って投薬をしてその人が重病になりあるいは死んだ、こういうことになると、経済問題のために人命というものを軽々しく処置していいかということは、医師法にこういうふうにはっきり書いてある以上は、何らか医師法を改める法律を作らなければならぬのじゃないか、私はこう考える。あなたは運輸大臣からせがまれて簡単に妥協されて、こまかいことは政令できめれば大体いいということをおっしゃいますけれども、これは簡単にはいかぬ問題だと私は思う。ことに診断もしないでおく、薬を飲ませればかえって心配だからというわけで、無電を打つ、これはどこに無電を打つのですか。日本に打つのですか外国に打つのですか。かりに外国に打つということになった場合、これはどこかの港に寄港しなければならぬ。寄港すると、外国の医者代というものは非常に高いものにつくはずです。これが一体全体両面から考えてみて、負担の点から考えてみても、はたして適切か。単に海運政策の一環として経済的な意味からこれをおろすのだということは、よほど最小限度にその処置をしなければならぬのではないか。今流布されておるようなことになりますと、相当これは厚生省としては——あなたは反対陳情も受けているはずだ。運輸省も反対陳情を受けているはずだ。そういう反対陳情を受けておるのを、まあまあという意味で妥協しておやりになった場合、どういう事態が起こるかということを負担の問題から想像してごらんなさい。
  248. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は単なる経済上の問題では私はないと思います。従ってただ経済上の事情だけからきての場合ということになりますと、にわかに賛成するというわけにはいかないということになるだろうと思うのであります。ただ医者を乗り込ませることが困難な事情もございますから、いろいろなそういう実際的な事情から見まして、やむを得ないと考えられるものに限定してもらわなければならぬと実は思っております。厚生省としましても、もちろんお話もございましたように、できるだけ医者に乗ってもらいたいということにおいては、上林山委員と何の変わりもないわけであります。できるだけ乗ってもらいたいと思いますけれども、実情上やむを得ないという場合には、ある程度目をつぶるより仕方があるまいという考えをいたしているわけでございますので、政令を定めるとかあるいは航路を指定する場合には、ぜひ一つ御相談を願いたいということを申し上げておりますので、できるだけ最小限度に限るという趣旨をもって対処いたしたいと存じております。不幸にしてお話になりましたような事態が発生いたしますということは最も望まざるところでございますが、従来からもその意味においてはやはり心配もあったわけでございますが、もよりの寄港地になるべく早く着いてもらうとか、あるいはもよりの寄港地の医師と相談するとか、応急の処置はぜひとってもらいたい。国際慣行から申しましても、そういうふうなことも行なわれているように聞いているのでありますが、それらの点につきましては、船会社等とも十分厚生省といたしましては相談をいたしまして、なるべくさような心配のないような方向でもって善処してもらいたいと思っております。
  249. 上林山榮吉

    上林分科員 船内の保険関係はどういう処置をすることになりますか、その場合。
  250. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 船員保険の関係につきましては、医者が治療した場合には、これは船員保険によります疾病の給付ということになりますが、医者が治療を行なっておりませんで、衛生管理者がやった場合には、これは船員保険の対象にはなりません。従いまして、薬や他の薬剤関係を積み込んだ場合も、これは全部船主負担、こういうことになるわけであります。船員保険とは全然関係がない、こういうことになります。
  251. 上林山榮吉

    上林分科員 船員保険とは関係がないということは、経済的な意味関係ないと、こういうふうに私は聞こえたのですが、そうであれば、船員保険を作った趣旨はどこにあるのですか、これが適正に行なわれて船員の健康というものが保持されるようにという意味でしょう、それが適正に行なわれないということになりはしませんか、どうなんです。これはただあなた方のあげ足をとって、どこまでもいじめてやれという気はないのですよ。そうじゃなくて、ほんとうにこれは考えてやらなければならないことだと思うから言うているわけですから、何も形式的な答弁でないように、考え答弁しなさいよ。
  252. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 現在でも、やはり今度の船員法の一部改正を行なわない前におきましても、医者の乗っておらない船に乗っております船員は非常に多いわけでございますけれども、それでそういったものの取り扱いにつきましても、船員保険法によります疾病の給付という形には取り上げられない現状になっておりまして、先生の御説のように、やはり船員保険のワク内で疾病の治療、予防というふうなことで考えなければならぬのじゃないかというふうな御質問だと存じますけれども、これはやはり疾病給付といいますと、医師が治療をした場合にのみ給付の対象にいたすわけでございますから、どうしても現在の船員保険法の建前から見れば、その区分は給付外というものにならざるを得ないわけでございます。
  253. 上林山榮吉

    上林分科員 これは妥当な処置ではないけれども、運輸省から頼まれたから、その辺でやむを得ず妥協しようという意味の趣旨でしょう、正直なところどうなんですか。あなたは適正だと考えますか。やむを得ざる処置だ、こういうふうにお考えになりませんか。
  254. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 私どもは、実は保険関係仕事をやっておりまして、そういう医療行為をどういうふうにするか、それについて衛生管理をどういうふうにするかということにつきましては、実は所管外のことでございますので……。
  255. 上林山榮吉

    上林分科員 所管外で答えられないということでありますので、また適当な機会にお尋ねをいたしますが、近海航路などはこれはよかろうと私は思う。けれどもそれ以外のものは、これは厚生省の立場を運輸省に話すべきだ、私はこう考える。われわれが聞いておる船員法の一部改正案では、範囲が相当広い。それがこの一部改正案で、今医者が乗っておる船が何隻で、この法律が通ればそれから何人おろすか、結局何隻乗らないものが出てくるのか、乗るものは何隻か、その統計は運輸省持っているはずです。幾らなんです。
  256. 若狹得治

    ○若狹政府委員 ただいま医者が乗っております船舶の数は五百隻あります。この法律がもし成立いたしまして施行になりました場合には、大体今日まで運輸省の船員中央労働委員会におきまして労使間において相談いたしました航路に乗船させるものといたしますれば、大体二百隻程度じゃないかというふうに考えております。
  257. 上林山榮吉

    上林分科員 二百隻になるかもしれぬし、百五十隻くらいになるかもしれぬので、これははっきりしないのじゃないですか。
  258. 若狹得治

    ○若狹政府委員 今までの審議経過から見まして、大体二百隻になるというふうに考えております。
  259. 上林山榮吉

    上林分科員 その五百隻乗っておったものが二百隻だけ乗るということになると、三百隻は乗らないようになるんだ。そうすると、その三百隻はそのうち近海航路が何隻ですか。
  260. 若狹得治

    ○若狹政府委員 近海航路はございませんで、大体においてアフリカ航路、それから南米航路、ペルシャ湾船路というようなところへ行く船を重点的に指定する考えで現在おります。
  261. 上林山榮吉

    上林分科員 海運局は世界地図はもう頭の中によく入っていると思いますが、英国なりアメリカなりその他の海運国といわれるところの国は、あらゆるところに基地を持っているわけですね。日本のようにこんなに離れて持っていないわけなんです。だからそういうような関係から外国船は便宜を急にはかり得るわけですけれども、日本の船は急に便宜をはかることができないのですよ。そういうような観点からいって、近海航路ならいざ知らず、遠洋航路で、しかもたくさんの人が乗っておるという場合に、緊急ないろいろな問題が、一人二人じゃなくて、もっと大がかりな問題も起こり得るわけなんですが、そういう場合に、けがをしたような場合に、治療のできない者がヨーチンか何か塗ってそのままでいいものかどうか。医師が指示してこの場合はこの薬をこうやりなさいと言うならばいいんだけれども、そうじゃないわけなんだ。これは人命あるいは身体に非常に影響があるわけです。そこで問題は、私は近海航路はいいだろうという妥協案を出すわけです。あるいはもっと最小限度にとどめる方法はないかということを進言するわけですが、これはどうですか、船員局長厚生省は経済問題じゃないんだ、経済問題でそういうものをやるべきじゃないとこう言う。この船員法の改正をあなた方が希望するのは、経済問題と、それから大臣も言われたが、医者が不足で乗り手が少ないからという理由、あるいは経済問題、海運政策の合理化の一環、どちらに重点があるのですか。乗り手が少ないからかそれとも経済的に海運合理化の一環としてこれはやらなければいかぬというのと、どちらに重点があるのですか。
  262. 若狹得治

    ○若狹政府委員 このたびの船員法改正におきまして医師の乗船の問題を取り上げましたのは、実は終戦直後に現在の船員法ができておりまして、当時は戦争中に軍事上の必要がございまして医者の乗り組みを強制したわけでございます。五千トン以上の船舶に医師の乗り組みを強制したわけでございますが、当時はわずか数十隻の船舶があったのみでございました。最近は先ほど申しましたように、約五百隻程度の五千トン以上の船舶ができておりまして、それがすべて医師の乗り組みを強制されているという状況でございます。諸外国の例を見ますと、大体乗船定員百名以上の旅客船については医師の乗り組みを強制いたしておりますけれども、貨物船について医師の乗り組みを強制しているという例はないわけでございます。また最近の情勢では大型船が非常にふえて参りました。しかもこの乗り組み定員をできるだけ減らしていこうということで、現在海運界では非常に努力いたしておるわけでございます。具体的に申しますと、明年度予算におきましても、船舶の乗り組み定員を二十名にするという予算が実は織り込まれているような状況でございまして、またアメリカ等におきましても、マリーナ型の船舶の乗組員の定員は二十二名程度に削減しようというように努力しているようなわけでございます。従ってそういうような情勢から見まして一名のむだも許されないというのが、現在の海運界の情勢ではないかというふうに考えられるわけでございます。そういう点が海運の経済的な問題から出てくる理由でございます。  また今先生がおっしゃいました衛生管理の面から見ました場合には、二千トンから五千トンまでの船舶は現在は医師の乗り組みは強制されておらないわけでございますけれども、この就航区域は全世界にわたりまして、五千トン以上の船舶と全く同様な作業を行なっているわけでございます。従いましてわれわれといたしましては、むしろ三千トン以上程度まで医師の乗り組みを強制するのが、医療保護という面から見ては適当なわけでございますけれども、現実に医師の乗り組みというものを守っていくということが非常に困難な状況でございまして、たとえば現在の医師の乗り組みの状況を見てみますると、六十才以上の医師が約二〇%となっております。また一年未満で退職する方が約三〇%というような統計も出ております。従いまして現在医師の乗り組みを強制されております船舶の船主はこの獲得に非常に努力いたしておりますけれどもなお十分な手当ができない。しかも有能な医師を求めることはなおさらむずかしいという状況でございます。しかもそういう状況でありますにもかかわらず、三千トン以上五千トン未満の船についてはこの医療保護の制度については全く空白になっている、そういう意味におきまして、できるだけ医療保護、厚生の面からも労働安全の面からも、できるだけ向上させていくために、三千トン以上に衛生管理者を乗り組ませるということにしたわけでございます。
  263. 上林山榮吉

    上林分科員 三千トン以上の船に衛生管理者を乗せる。これはどちらかといえば近海航路が多い。こういう意味なら、われわれはその点はわかるのです。しかし遠洋航路であって、しかもたくさんの人が乗っておる、こういうのであれば、これはやはり医者が払底しておれば待遇を改善して医者を乗せるべきじゃないか。経済問題よりも人命尊重の方が大事だ、海運政策の一環だ、私が気が食わぬのは、これは国策として日本の海運政策をもっともっと推進しなければならぬという根本については、どなたにも負けぬくらいの熱意を持っていますが、しかし本格的な海運政策の打開をあと回しにして——いろいろな事情がございましょう。ございましょうが、本格的な海運政策の打開というものをやらないで、厚生省所管に飛び火してみたり、あるいは郵政省所管に飛び火してみたりして、そういうようなところから海運政策の合理化の一環だというような考え方は、少し本末を転倒しているのじゃないか。だから、この問題のごときも人命尊重が大事なんだから、経済問題も経営をする以上考えなければならぬけれども、その程度というものは最小限度にとどめていただかなければならぬ。それを五百隻から二百隻にして、三百隻には乗らぬでもいい、それは衛生管理者でいい、医業をやれないという法律がちゃんとあっても、その法律は犯してもいい。厚生大臣、これはいろいろな事情で実際問題として妥協されたことは私はわかると思うのです。わかるのだが、私は厚生行政をしっかり考えるならば、その妥協の範囲というものは狭くなければならぬ。やはり一歩前進主義でいかなければならぬ。この二法案は反対説が出るはずですよ。もっとひどくなるでしょう。だから、われわれは大局的見地に立って、海運政策もやらなければいかぬ、これはわかる。われわれも積極的に協力したいと思います。だが同時に、厚生行政、特に医者でない者が医業をやれる、こういう非文化的な話というものはありませんよ。これはやめなければならぬ。やはり医師の指示というものによってほかの者がやるというふうにしなければならぬ。ほかの船員は減らしても医師だけは乗せなければならぬ、大きな船は。あるいは遠洋航路のものは、あるいはたくさんの人が乗るものはそうしていかなければならぬ。だから両省で妥協の限度はありはしないか。もう少し両省で話を詰めて、反対運動もできるだけ最小限度になるような方向に持っていく必要がある。私はあらゆる機会にこれを申上しげております。党の総務会でも、はっきりと海運政策のまず大事なものをおやりなさい、その次に厚生省所管のもの、あるいは他省の所管のものを話し合いを進めなさい、こういう基本方針で私は進めてきた。きょうは、しかし主査ももう打ち切りたいといろ顔をしておりますからこの程度でおきますが、片や海運政策の増強もはからなければならぬ、だからといって、今申し上げるように医者でない者が、遠洋航海でたくさん人が乗っているのに衛生管理者でいい、そういうようなものじゃいかぬじゃないか。だからもう少し話を詰めて、その限度というものを、もう少しその線の引き方を考えられたらどうですと申し上げてきょうは結論にしたいと思います。
  264. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 わかりました。
  265. 中村幸八

    中村主査 以上をもちまして、昭和三十七年度一般会計予算及び昭和三十七年度特別会計予算中、厚生省所管の質疑は終了いたしました。  次会は明二十三日午前十時より開会し、労働省所管の質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十五分散会