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1962-02-20 第40回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十日(火曜日)     午前十時十八分開議  出席分科員    主査 中村 幸八君       相川 勝六君    臼井 莊一君       床次 徳二君    河野  正君       西村 関一君    野原  覺君       長谷川 保君    村山 喜一君       山花 秀雄君    兼務 上林山榮吉君 兼務 淡谷 悠藏君    兼務 井手 以誠君 兼務 受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     佐藤 正二君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         外務事務官         (情報文化局         長)      曾野  明君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      山本淺太郎君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君  分科員外出席者         外務事務官         (国際連合局管         理課長)    太田 正巳君         外務事務官   桜井 秀男君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         農林事務官         (振興局拓植課         長)      三善 信二君         会計検査院事務         総局事務総長  大沢  実君     ————————————— 二月二十日  分科員辻原弘市君辞任につき、その補欠として  西村関一君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員西村関一辞任につき、その補欠として  河野正君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員河野正辞任につき、その補欠として村  山喜一君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員村山喜一辞任につき、その補欠として  辻原弘市君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第一分科員井手以誠君、第三分科員淡谷悠藏君  及び第四分科員受田新吉が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算外務省所管     ────◇─────
  2. 中村幸八

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。  これより質疑を行ないます。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手分科員 本日は私は、最近ドミニカの移住者の引き揚げをめぐって非常に問題となっております海外移住、特に海外移住の中核をなしております日本海外移住振興会社内容について承りたいわけであります。大事な点は大臣から伺いたいのでありますが、事数字でございますから、特に経理内容に入りますので、関係各省とも一つ経理内容についての用意をしていただきたい。また大臣信越化学の専務をなさったことがありますから、経理には明るいと思っておりますから、それを期待して質問を始めたいと思います。  日本海外移住振興会社の国の出資金は、三十五、三十六、三十七年度、それぞれ幾らになっておりますか。そしてまた移住振興費用のうち、会社の方に入るのは出資金のほかに何があるのか、その点をお伺いいたします。
  4. 高木廣一

    高木政府委員 現在移住会社資本金は二十八億でございます。設立当初の三十年度は、資本金が一億七千五百万円のうち政府出資一億、民間出資七千五百万円でございましたが、その後三十一年度一億二千五百万円、三十二年度十億円、三十四、三十五、三十六年度各五億円の政府出資が行なわれて、現在二十八億円の資本金となったのでございます。  なお、このほかに米銀三行からの借款が現在四百五十万ドルでございます。これは七百五十万ドル借りまして、うち返還いたしまして残高が四百五十万ドル、こういうことでございます。
  5. 井手以誠

    井手分科員 今からお尋ねしますのは、いろいろ数字がございます問題がございますから、尋ねた分だけにお答えをいただきたいと思っております。三十七年度の国の出資金幾らであるか、また移住会社に対するものは出資金のほかに補助金、その他があるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  6. 高木廣一

    高木政府委員 現在のところ政府出資金だけでございます。ただ、三十六年度からグァタパラ事業につきましては、国が県に補助をいたしておりまして、それが工事の進行に応じて、県から移住会社の方に国庫補助が一億二千万、それから県の補助三千万、これが移住会社への事業費補助として加わっておることになっております。
  7. 井手以誠

    井手分科員 それではグァタパラの問題は、移住会社会計補助金として入るわけですね、どうですか。
  8. 高木廣一

    高木政府委員 そうでございます。
  9. 井手以誠

    井手分科員 それじゃあとでお聞きしますが、その補助金振興会社の受け入ればどうなっておりますか、三十六年度はどこにありますか。
  10. 高木廣一

  11. 桜井秀男

  12. 井手以誠

    井手分科員 私がお尋ねするのは、私の質問に対してだけ的確にお答えいただきたいと思います。ほかのことは要りません。  私はあなたの方からいただいておるいろいろな収支予算書損益計算書、全部そろえておりますから、私が聞いた分だけお答え願いたい、時間の関係がございますから。三十六年度一億二千万円の国の補助金振興会社はどこに受け入れておるか、その点をお伺いします。
  13. 桜井秀男

    桜井説明員 移住会社グァタパラ特別会計に受け入れてあります。
  14. 井手以誠

    井手分科員 局長からは振興会社の方に国の補助金は入るとおっしゃいましたが、どこにも出ておりません。特別会計は何もここに出ておりません。——ほかにたくさん問題を控えておりますから、あとに譲ります。あとでよく調べておいて下さい。それではお伺いします。局長にお伺いしますが、この移住振興会社三十五年度末、すなわち昨年三月三十一日までに幾ら欠損を出しておりますか。
  15. 高木廣一

    高木政府委員 六億四千九百万円であります。
  16. 井手以誠

    井手分科員 六億五千四百万円とは違いますか。
  17. 高木廣一

    高木政府委員 六億四千九百十八万四千三百万円……。
  18. 井手以誠

    井手分科員 あなたの方から出していただきました資料には、六億五千四百十一万九千五百円……。
  19. 桜井秀男

    桜井説明員 それは予算書ではないのですか。
  20. 井手以誠

    井手分科員 いや、これは三十五年から三十六年度の繰り越しの総欠損金になっております。
  21. 桜井秀男

    桜井説明員 それは年度の途中で予算計を作っているために、見込額計算してある結果、予定貸借対照表に載っているものでありまして、決算においては三十五年度末の連結表計算してあります。それが先ほど申し上げました六億四千九百万円になっております。
  22. 井手以誠

    井手分科員 わずかな差ですからそれは追及いたしません。  それでは三十六年度には幾ら欠損予定されておりますか。
  23. 高木廣一

    高木政府委員 二億四千四百万円でございます。
  24. 井手以誠

    井手分科員 それは本社だけだと思いますが、そのほかに現地法人移住振興ジャミック欠損幾ら予定されておりますか。
  25. 高木廣一

    高木政府委員 これは現地法人欠損も含めてございます。
  26. 井手以誠

    井手分科員 それは三十六年のどこに出ておりますか。その分は、私が持っております移住振興会社本社の分については、三十六年度予定貸借対照表の中には、当期純損失二億四千四百四十七万六千円、移住会社現地法人については、これには含まっていないはずです。含まっておりませんよ。
  27. 桜井秀男

    桜井説明員 この三十六年度予定貸借対照表というものは伯国法人も含んだ移住会社全体として、すなわち現地法人も支店という形で含めた計算によっておりますので、両方含んだものを予定しております。
  28. 井手以誠

    井手分科員 三十五年までは別々に掲示されておりましたが、どうして三十六年から含めるようになりましたか。その理由と、現地法人欠損幾ら予定されておりますか。
  29. 桜井秀男

    桜井説明員 三十五年度もこの予定貸借対照表においては一本で計算してあります。
  30. 井手以誠

    井手分科員 あとでまたいろいろお聞きしますが、それでは予定貸借対照表の中に円換算レート調整勘定という二億三千百四十三万一千七百円は、為替差損などを含んだ予備金だと私は理解しておりますが、その通りですか。
  31. 桜井秀男

    桜井説明員 お答えします。円換算調整勘定として二億三千百万余万円の計上をいたしてありますのは、三十五年度末における外貨計算円換算表示額と、三十六年度予算換算レート実勢レートを基準としまして円換算にした表示額との差額であります。ですから、この金額はもしここで会社が解散するというような立場になった場合には、それだけの為替差損というものを生じますが、しかし一方におきまして資産の再評価をしませんので、その金額は必ずしもこれをもって打ち切るというわけじゃなく、円換算差額になっております。
  32. 井手以誠

    井手分科員 それはある程度の差損予定した最後予備金ではございませんか。そういう意味ではございませんか。
  33. 桜井秀男

    桜井説明員 予備金性質は帯びておりませんで、予算を編成する上において現地外貨表示額実勢レートによって換算しますと、それだけの差額ができるということでございます。
  34. 井手以誠

    井手分科員 だから、その為替関係からそういう差損最後額をここに予定したのじゃありませんか。いろいろ回りくどいことを言わぬで、端的におっしゃって下さいよ。それじゃ何のための円勘定でありますか。
  35. 桜井秀男

    桜井説明員 普通の計算と違いまして、外貨で常に表示してある勘定日本の現在の円に計上するために、そのときそのときの為替レートによって表示額を変えるために、こういう差額が事実上できるわけでございます。
  36. 井手以誠

    井手分科員 為替レート関係からこういう円換算調整勘定を置いているのじゃございませんか。
  37. 桜井秀男

    桜井説明員 さようでございます。
  38. 井手以誠

    井手分科員 それでははっきりしているじゃございませんか。大臣、ここで一つ記憶しておいてもらいたいのは、すでに三十五年度末までに、今答弁があったように六億五千万円ばかりの欠損を生じておるわけです。それから三十六年度には最初から予定されたものだけで二億四千四百万円、さらに為替差損——これはこのまま欠損ではございませんけれども、少なくとも為替レート関係から、あるいは最終にはここまで欠損があるかもしれないというのが二億三千百万円、私は答弁は求めません。これだけは記憶をしておいていただきたい。  それから事務当局にお伺いいたしますが、現地法人欠損されたものはこれだけですか。ほかにはもう全然ございませんか。たとえば出資金あるいは融資金為替レートによる差損などが、なお隠されたもの、残っておるものがございませんか。
  39. 桜井秀男

    桜井説明員 現在のところはないわけでございます。ということは、融資について現地通貨で貸した場合には為替差損が生ずるわけでございますけれどもスワップ資金に振りかえましたので、為替差損は生じません。そういうようなわけでございますので、現在のところは一応これ以外はない見込みでございます。
  40. 井手以誠

    井手分科員 大臣小坂さん、ここの海外移住振興会社というのはとてもややこしい会社でして、政府三十五年度まで二十三億円、三十六年度はさらに五億円、二十八億円の出資であることは説明があった通りでありますが、この移住振興会社から現地——ブラジル事情はありますけれども二つ子会社を作っておりますね。それで毎年々々勘定科目なり、経理が変わってきて、今お話のように、それは本社の方に計上しましたとか、あるいは現地法人費用に持っていきましたとか、もうややこしいものですよ。だからその点私、きょう洗いたいと思って質問いたすわけであります。  続いてお伺いをいたしますが、三十六年度の当初の予算に、私ども昨年の分科会でいただいた資料には、当初三十六年度移住会社欠損は三億四千五百万円となっておりました。それでその後実行予算か何か知りませんけれども大蔵省の折衝か何か知りませんが、八月ごろになって二億四千四百万円に圧縮されておる。昨年ここで私どもがいただいたときには三億四千五百万円が予定されておった。そこでお伺いをいたしますが、今営業費総領は三十六年度幾らですか。
  41. 桜井秀男

    桜井説明員 お答えします。営業費総額は三億三千三百七十万余円ということであります。
  42. 井手以誠

    井手分科員 現地法人の三十六年度営業費幾らですか。
  43. 桜井秀男

    桜井説明員 管理費関係で八千五百万計上してあります。
  44. 井手以誠

    井手分科員 この移住局というところは、大体こういうものを扱う担当の局だろうと思うのですな。移住局の一番大きな仕事一つは、あるいは中心をなすものはこの移住振興会社の取り扱いだと私は思っております。この会社経理数字くらいそらんじておってあたりまえです。あれは幾ら、これは幾らとはっきりわかるのがあたりまえじゃございませんか。自分家計簿と同じじゃございませんか。  続いてお伺いをいたしますが、そこに私は参考のために、この日本海外移住振興株式会社法設立制定されたときの記録を今局長の前に差し出しておりますが、そのときの記録によりますと、その際は、かつて石川達三の「蒼氓」にあったように海外移住ということが非常に問題になり、こういう会社がある一部の食いものになったという非難が非常に多かったのでありますから、この移住会社設立にあたっては、わが党の和田博雄さんを初め、各方面から与野党を通じてきびしい批判なり注文があったと思う。そのときに、そこに記録にございますが、会社食いものにするなどの警告に対して、一万田大蔵大臣赤字が出ないように運営するという言明をなさいました。これはそこに書いてございます。それから同じ予算委員になっております当時主計局次長の正示さんは、赤字は必ず出ないようにするとこれまた約束をしております。当時外務政務次官であった園田さんは、採算の心配渡航費だけでございます。渡航費貸付はなるべく海外協会にやらせて、渡航費以外は会社自体運営できると信じておりますと、こう言っております。この振興会社赤字が出るかもしれませんよ、こういう心配に対して、赤字は出ないようにいたします、その確信がございます。こう言っておる。ところが、三十六年度の当初予算には、三億四千五百万円、これはここで審議されたものではございませんからかまいませんが、しかし少なくとも当初から二億四千四百万円の赤字が計上されて、しかも為替差損の二億何千万円というものも用意されておる。これは全部欠損とは申しませんけれども、用意されておる。営業費三億三千何百万円、少なくとも営業費を上回るようなこういう赤字が出るというこの運営がいいことかどうか。国会約束されたこの赤字が出ないようにするということ、一生懸命やってみても、移住に関することでございますから、どうしても思うように参りません。やってみて、努力してみて、若干の赤字が出たということならば、これは責めるわけにいきませんけれども最初から営業費と同額、それ以上の赤字予定されているじゃございませんか。大臣、これはどう思いますか。大蔵省には全部意見を聞きますけれども赤字が出ないようにするということを国会約束されておる。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話は非常に私もつりしんで拝聴いたして、ごもっともの点が非常に多いと思います。ただ、弁解がましいわけでございますけれども営業地域外国でございますし、かつ非常に広範にわたります。また融資先というものが非常に小さい。また、現在約十二億円、しかも小口でありまする貸付債権管理回収は、回収のためのコストが非常にかさむわけでございます。また移住地造成のテンポは入植の予定に見合って実施いたしていくべきものでございますが、分譲代金は、頭金以外は、据置期間が経過いたしましても、回収するということが、移住者の生活も考えますると、なかなかきちっきちっと回収するということも困難な事情もございまして、どうしてもこれが後年度に繰り越されていくという傾向もございます。また機構的に見ましても、事業所、人員は南米各国に分配置員を要するために、これも国内の企業という場合に比べまして著しく大幅にかさむ、これもどうも仕事性質上やむを得ない面もあるわけでございます。なお、株式会社ではございまするけれども、一方また国策会社としての見地から、融資に対しましても、また土地分譲代金原価算定についても、利子、所得税を除きまして、原則として五%の利息を付することになっておりまするから、現にアメリカの三銀行からの借款のために、三十五年度末までに二億三千七百万円の利息を支払っておりまするが、五%の利息を払って五%の利息で貸し付けるのでございますから、送金の費用貸付あるいは回収並びに管理に要する経費はすべて欠損の要因になっている。こういう事情でございまして、はなはだ弁解がましくておそれ入りますが、極力赤字は出さないという方針のもとに厳格に運営すべきものと心得ておりますが、何といたしましても、移住をやっていくというからには、ある程度の腹を、政府としても国策をきめてやっていく一方、移住していく方々の生計も考えまして、回収というものもあまり規則通りにいかない面もありまするし、かたがた対象地域が広範であるというような事情一つ御賢察をいただきたいものと考える次第であります。
  46. 井手以誠

    井手分科員 弁解がましいとおっしゃいましたが、いろいろ事情はあるにしても、最初約束が違うのです。  大蔵省にお伺いいたしますが、あなたの方の大臣赤字が出ないように運営をする、主計局次長赤字は必ず出さないと約束されたものが、最初から何億円も赤字が出るような、経営上営業費を上回るような赤字を組むような会社、これをどうして承認されましたか。
  47. 鈴木喜治

    鈴木説明員 先ほど外務大臣からもお話がありまして、まことに申しわけないことだと思っておりますが、当初設立しましたときに、これは一般会計出資もございますし、その後産投会計からも多額の出資をしておりまして、政府が株主という立場から申しましても、当然赤字を出さないように経営したい、こういう心がけは当然に持っておりましたわけでございます。先ほど外務大臣からのお話もありましたように、いろいろな事情で結果的に相当な赤字を出していることは、まことに申しわけないと思います。
  48. 井手以誠

    井手分科員 大蔵省あとではいろいろ言いますよ。外務大臣がこう言ったからなんて、大蔵省がそんなことではだめですよ。  次に進んでお伺いをいたしますが、移住会社現地に持っておるかたかなのイジュウシンコウジャミックという二つ法人、これは私の調べでは、三十五年十二月末、一年ばかり前には、投資総額二十四億円になっておりますが、現在移住会社から幾ら出資し、幾ら投資融資をいたしておりますか。また土地に対しての投資幾らになっておりますか。その点をお伺いいたします。
  49. 桜井秀男

    桜井説明員 お答えします。ジャミック及びイジュウシンコウに対する出資金は三億四千百万円になっております。伯国法人貸付金が八億六千百万円、十二月三十一日現在でございます。
  50. 井手以誠

    井手分科員 昨年のですか。それだけですか。
  51. 桜井秀男

    桜井説明員 ええ。
  52. 井手以誠

    井手分科員 投資はありませんか。——私の手元に出ておりますいろいろな資料によりますと、投融資総額は二十六億円くらいになっておるはずです。かたかなのイジュウシンコウジャミックという現地の二法人は、投融資総額二十六億円くらいになっておるはずです。あなたの方の資料としてここにあるのです。貸付が八億一千六百万円、それだけの仕事しかしておりませんか。
  53. 桜井秀男

    桜井説明員 本社伯国法人に対する出資は今も申し上げた通りでございます。三億四千百万円、貸付金が八億六千百万円になっております。
  54. 井手以誠

    井手分科員 それでは移住振興会社から伯国法人に出したものは出資が三億一千百万円、それから貸付が八億六千百万円、そうですね。それじゃ移住振興会社自身投融資総領幾らになっておりますか。
  55. 桜井秀男

    桜井説明員 一部会社において現在融資の残っているものが十二億一千八百万円、それから移住地事業として投資しておるものが十二億八千九百万円になっております。
  56. 井手以誠

    井手分科員 そのうち土地に対する投資幾らでございますか。自分の持っておるものは評価幾らですか。
  57. 桜井秀男

    桜井説明員 この移住地事業の中には造成費その他も含んでいます。ですからこれは伯国法人だけじゃなく、パラグァイ及びアルゼンチンの分も含んでいます。
  58. 井手以誠

    井手分科員 ブラジル会社ブラジルにおける日本会社現地法人、その持ち分ははっきりしておるはずでしょう。土地に対する投資幾らですか。
  59. 桜井秀男

    桜井説明員 資料が今手元にございませんので、追ってお知らせいたします。
  60. 井手以誠

    井手分科員 あなたの方の資料によりますと、十一億円になっております。それではお伺いしますが、この現地法人は毎年かなりの赤字を出しておる。大体五千万円ないし一億円毎年欠損を出しておるようですが、その通りですか。
  61. 桜井秀男

    桜井説明員 結局昨年末に一億五千万円の累計になっていますので、その後においてもやはり欠損が続いておると思います。
  62. 井手以誠

    井手分科員 移住振興会社自身多くの欠損を出しておる。また現地の二法人も、子会社欠損を出して、その分を本社の方で後日しりぬぐいをしておるという状態ですね。そこでお伺いしますが、土地に対する投資、それはここに資料がたくさんございますから、あなたの方でも大体勘でわかっておるでしょう。十一億ぐらい、そうでしょう。大体その通りと言えば、それでいいのです。
  63. 高木廣一

    高木政府委員 大体そうだと思います。あと業績を加えて十二億八千九百万円くらい。
  64. 井手以誠

    井手分科員 移住会社業務範囲ですが、法律の第八条第一項第四号によりますと、「海外移住を促進するため必要があるときは、外国においては本邦から移住する者を受け入れて農業、漁業、工業その他の事業を行うこと。」この業務範囲が非常に問題だというので、法律を制定したときには非常な論議がありました。これに対して当時の園田外務政務次官はこう答えております。事業渡航費貸付事業団体への貸付が重点であります。それから外務省矢口参事官は、移住会社は直接仕事をやるのは原則ではありません。会社自身やるのは、たとえば移住地があったところに、移住地だけでは利用ができぬから、道を作る場合など、やむを得ない場合にやるという意味であります。こう答えられております。土地に対する投資はこれは業務範囲外でございますなんということを、何回も繰り返して答えている。私はあとでも申し上げますけれども、かつてスペイン人とかイタリア人などが、これは不毛地だとして捨てた土地移住会社が買っておる事実を私は知っております。こちらからたまに視察に行って、これはよさそうだと言って土地を買った、そういうことは危険であるから土地に対する投資はやらないようにしようじゃないか、いやいたしませんと、あなた方は言明されておる。すなわち法律を作ったときの移住会社の目的は土地投資するものではございません。どうして十一億も土地投資しましたか。
  65. 高木廣一

    高木政府委員 井出先生のおっしゃった通りが、最初の考えであったと思いますが、その例外が結局。パラグァイで起こったのでございます。パラグァイでは従来パラグァイ政府植民地日本人が入っておったのでありますが、これは満植になって、もっと入れないか、しかしあそこにはすでに入っておるし、呼び寄せの世話をするようなものがないということで、結局移住会社土地を買って投資をして入れるというような例外的な行為に出たのであります。このパラグァイ移住者は相当大きな規模でございます。そこで原則を若干踏みはずしたという感じは確かにあったと思います。
  66. 井手以誠

    井手分科員 大臣、今お聞きでしょう。例外ということも私は聞きたくないのです。例外もあり得ないはずです。あなたの方の矢口さんは、いや土地に対する投資はいたしません。しかしその土地をほうっておくわけにいきませんから、その連絡造道くらいはやむを得ませんと答えられておる。パラグァイのときはいたし方なかった例外であった。それがだんだん拡大して、今日本体になっておる。その通りだ。土地に対する投資が本体ですよ。違反ですよ、はっきり言って。土地に対する投資はできないはずです。いつ国会に対してその改正が出ましたか。いつ国会に出して了解を得られましたか。
  67. 高木廣一

    高木政府委員 法律上はその他の事業ということで、法律違反になっておらないと考えます。
  68. 井手以誠

    井手分科員 ばかなことをおっしゃいますな。業務範囲第一項第四号は誤解を招くおそれがあるし、土地に対する投資をやってはいろいろ困るから、ここに論議が集中して、結局どうなったかといえば、土地そのものには投資はしないけれども、道路を作るくらいはやむを得ないじゃないか、こういうことでございますよ。何ですか。今実態は土地に対する投資が主ではございませんか。国会に対してそう約束しておるのですよ。国会をばかにしたことを言えば、私は承知しませんよ。
  69. 高木廣一

    高木政府委員 国会における約束については、確かに踏みはずしているように思いますが、日本海外移住振興株式会社法の第八条第五号に「前各号に掲げるもののほか、会社の目的を達成するために必要な業務を行なうこと。」とあって、できるということであります。
  70. 井手以誠

    井手分科員 だからこの第一項第四号では、解釈があいまいになると、土地投資するようなことがあっては困るから、そこで論議が集中して、結局「農業、漁業、工業の事業を行うもの」という意味は、土地そのものの投資は工合が悪い、しかし道路がなくては利用ができぬから、道路をつけるくらいはいたし方ありません、その範囲ですということをはっきり解釈しておるじゃございませんか。それで国会を通しておるじゃございませんか。ここに書いてある。矢口さんが言っている。
  71. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まさに御指摘の事情、私は当時の国会の御審議の内容について実は事前に十分調べて参りませんことをおわびせねばならぬと思いますけれども、ただいま御指摘のようなことだけでございますならば、これは若干御趣旨にはずれておると言わざるを得ないと思いますけれども、ただこの会社が多くの移住者を送り出していくその過程におきまして、海外移住という大きな国策の面から見まして、土地をある程度持った方がいいというふうな考え方で、移住者の希望にもマッチすると考えまして、かたがた移住局長から御答弁申し上げたように、会社ができますときの法律事項にも、その他の事務ということにおいてそれが許される、こう考えておりましたことだと存じまして、さような上地購入ということが進められてきたことかと考えております。
  72. 井手以誠

    井手分科員 許されるという考えが私はいけないと思うのです。事業が進んで参りますとそういうこともあり得るでしょう。私は絶対否定はいたしません。それならそれでなぜ国会に改正なりあるいはこういうふうにいたしたいという了解を求められないのですか。土地に対する投資はいたしませんと言うから、それじゃよろしい、全会一致で賛成いたしましょうということで通ったじゃありませんか。約束と違っておるじゃありませんか。附帯決議には何と書いてありましたか。  続いてお伺いをいたします。今米銀借款は四百五十万ドルとおっしゃいましたね。この金利は幾らで借り入れて幾らで貸し付けられていますか。その貸し付けた金利は——これは四百五十万ドルも邦貨に直してやって下さい。その受け取り利息幾らになっておりますか。四百五十万ドル借り入れた当時の記録では、四分で借りて一割で貸す。大臣よく考えておいて下さいよ。アメリカの銀行から四分で借りて一割で貸す。実際は一割二分で貸したところがあります。ドミニカから今度帰ってきた人たちには一割二分で貸した。その四分と一割の利さやでこの移住会社は経営していきますということに建前はなっておるのですよ。よく耳に入れて下さい。当時の記録をずっと読んで参りますと、私は全部あとで申し上げますが、こう書いてある。四分で借り入れて一割で貸し付ける、その利さやで移住会社の経営をまかないます。利子のかからぬ出資分もございますから、業務は十分採算ベースに乗ると確信いたしますということを、何回も関係者は言っておる。そこでお伺いいたします。今アメリカの銀行から何分で借りて何分で貸しておるか、その受け取り利息は年間幾らになっておりますか。
  73. 高木廣一

    高木政府委員 三十五年度は百五十万ドル借りましたのは五%でございます。これは国際金利につれて動きますので、昨年は前よりも少し上がっておるわけでございます。貸し付けた利子の方は、手取り五%基準で貸しております。これに関しましては移住会社設立のときに、今おっしゃった考え方で動いておったのでございますが、三十三年度の農林水産委員会で、移住会社は農業融資であるから低金利でやるべきであるという要請がございました。以来五%基準ということであります。
  74. 井手以誠

    井手分科員 それはうそじゃございませんか。今度帰って参りました鹿児島県出身のドミニカのあの気の毒な人には、それじゃ幾らで貸しておりました。一割二分でしょう。
  75. 桜井秀男

    桜井説明員 普通の農業者直接に貸す場合におきましては、農林水産委員会において国内の開拓者その他の低金利に比較して、移住者に対して一〇%ないし一二%では高過ぎるのではないかというような要請のために、その要請に基づきまして融資基準を改定しまして五%にしたのでございますが、企業の方についてはその基準が適用されてないということでございます。
  76. 井手以誠

    井手分科員 答弁なさるのには、企業に対して幾らとおっしゃって下さい、幾らで貸しておりますか。
  77. 桜井秀男

    桜井説明員 現地貨で、いわゆるクルゼイロならクルゼイロで貸し付ける場合には、為替差損が生じますから、これは従来から一二%以下になっておりますが、門またはドル貨で融資の場合には、利子所得税を控除した残りが五%というような基準になって貸しております。先ほどの農企業の場合は八%ないし一〇%で以前に貸しているものもございます。
  78. 井手以誠

    井手分科員 こういうことですよ。先刻移住振興会社じゃ本社の方から現地法人に対しては三億四千百万円出資している。貸付は八億六千百万円貸し付けておるという。これが一つの原資になって、いま一つアメリカの銀行から四百五十万ドル、日本の金で十六億二千万円加わった。それを加えたものが二十何億円という投融資になっているでしょう。そうでしょう。だからその金はアメリカから幾らで借りて幾らで貸しておりますか、農企業の場合は、その受け取り利息幾ら三十六年度には予定されておりますかと聞いておるのですよ。——その人はだれです。
  79. 桜井秀男

    桜井説明員 移住会社経理担当者でございます。
  80. 井手以誠

    井手分科員 外務省でわかりませんか、一々会社に聞かなくても。私は国会議員で忙しい中でちょっと調べたらおかしいことがたくさん出てきたから、聞いているのですよ。あなた方は本職じゃございませんか。一々聞かなくてもあなた方が調べておきなさい。
  81. 桜井秀男

    桜井説明員 実は申しわけございませんが、担当者が病気して休んでおります。一人は出張していますので、その関係で臨時に担当している関係上、申しわけありません。
  82. 井手以誠

    井手分科員 それじゃ出資金三億四千百万円、本社から貸し付けた分八億六千百万円、合わせてこれで十二億円になりますね。大臣、聞いておって下さい。十二億円とアメリカの銀行から借りておる十六億円、合わせて二十八億円の受取利息幾らになっておるか。利息は一割で貸せば幾らになります。——もうそんな、今そこでなにしておるのではだめです。二十八億円で、全部が貸金じゃないでしょう。しかし受取利息というものは、融資に対して一割ならば幾ら出てくるか、すぐ出てくるじゃございませんか。私は受取利息が一カ年間に七千万円や八千万円とかいう金額は少ないと思うから聞いているのですよ。  そこで大臣、これは聞いて下さい、こういうことがあるのです。この法律を制定したときに、外務政務次官園田さんはこう言ってある。借款は悪くとも年四分、三年期限、三回は更新可能でございます。三回は繰り返すことができますと、それはその通り。社債は五倍発行することができます。社債を発行されたことを私は聞いておりません。矢口参事官は何と言ったか。政府資金一億円、民間資金五千万円で国内の諸経費に充て、人件費はかからないようにいたします。外務省の石井参事官は、四分で借りて一割で貸したその利ざやで経費をまかない、内地の資金は現地には送りませんとおっしゃった。言い切ってある。現地現地でまかないがつきますと言ってある。大蔵省の方、聞いて下さい。あなたの方の谷川主計官、会社の性格から主として金融的機能を営み——先刻のあれと同じ第八条です、会社の性格から主として金融的機能を営み、経理は簡素にして、最初出資した一億円がなくなることはございませんと言っておる。先はどうなるかという質問に対して、最初国からいただいた出資金一億円は、将来なくなることはございませんと言い切ってある。大蔵省の方、よく聞いておって下さいよ。一億円がなくなることはございませんと言った。これは最近赤字で三カ月でなくなっておるじゃございませんか。種谷移民課長、今どこにいらっしゃるか知りませんが、採算ベースに乗らない事業海外協会にやらせますので、移住会社は十分採算がとれますと言ってある。大臣、これはあなたの答弁を求めたいのです。これだけ太鼓判を押した、採算に乗らないものは海外協会にやらせます、移住会社出資金がありますから大丈夫採算ベースに乗ります、心配はかけませんと言い切ってある。どうですか、これは。
  83. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点については若干、この当時移住会社というのは一企業としての採算ベースで運営していくという、またいけると、こう考えておったので、こういう答弁を申し上げたと存じますけれども、御承知のように南米中ことに一番移住が多く行くブラジルにおきまして大規模なインフレーションが起きて、その為替差損もあり、またそのことからして土地その他を獲得するために入植するための諸経費というものも非常にかかる。こういうような点から今御指摘のようないろいろな問題が起きてきたということは、これは認めなければならぬと思いまするし、またわれわれ移住を考えます場合、大きな国策の一環として考える場合、単純に一企業としての移住会社の性格そのものを守り続けろ、こういうことは今後いいかどうかということは、これは私といたしまして別に強弁するわけではありませんが、御一緒に一つ御相談を願わなければならぬではないか、かように考えております。
  84. 井手以誠

    井手分科員 移住という性質の市大性から私どもも相談に応ずるだけの用意は持っております。しかし移住会社というものは過去にいろいろな問題がありました。再びそういうものになってはいけないという非常な注意からこういう言明が行なわれているんですよ。だから変えようとするなら、なぜ国会に出してそれを了解を求められないのか、これを私は言っておるのです。  それではお伺いいたしますが、移住会社は十二億円の貸付を今日行なっておるはずです。正確なところ幾ら移住会社貸付をどういう方面に行なっておられますか。私が聞いたところでは、四千万円を貸し付けた原商会は焦げついてだめになっておると聞いておりますが、そういう面の説明を願いたいと思う。
  85. 高木廣一

    高木政府委員 原商会の件につきましては仰せの通りでございます。不良貸付となっております。
  86. 井手以誠

    井手分科員 昨年十二月末の貸付総額は、農工企業、現地開拓営農貸付、これは種類別に総額を教えていただきたいと思います。——なかなか答弁がうまく参りませんので進みますが、この十二億円も貸し付けた金というのは、移民をどんどん送ってもらいたいという意味で貸し付けているのです。これは移住会社の第一条の目的に書いてある。それでは移住会社から十二億円を借りた農工企業、そういういろいろな会社幾ら三十五年度、三十六年度には移民を送っておりますか。三十六年度には何十家族送っておりますか。
  87. 高木廣一

    高木政府委員 貸付のおもなものは農工企業よりも開拓——事項を申し上げますが、派米農業労務者に対する貸付が、これは三十六年十二月三十一日現在でございますが、四千五百十八万円、それから開拓農渡航前融資というものがございますが、これが一億三千百万円、それから開拓農現地貸付が、米貨建で貸しているのと現地通貨建で貸しているのと両方ある一わけですが、円建で合計六億四百三十一万九千円です。それからコロノ独立融資が円建で一億二千四百四十六万八千円、それから農工企業その他を含めまして円建で三億一千二百万円、合計で十二億一千八百十八万円。
  88. 井手以誠

    井手分科員 今説明があったように、移住を促進するためにこういう農工企業に対して十二億円の金を、これは国民の税金、出資から貸し出されておる。十二億円の貸し出しは金利は幾らですか。そして三十六年度には幾ら利息の受け取りを予定されておりますか。——大臣、少しひどうございますよ。私は委員会をこのままとめてしばらく待ってもようございますよ、二、三日……。こんなことでは審議できませんよ。移住局という局があるじゃございませんか。主管の局があるじゃございませんか。国が出した出資をもととして二十八億円も国は出しておる。それをもとにしていろいろな貸付なり何なりやっておる。その経理内容が、この国会の席で即座に答弁できないというのは、これはおかしいじゃございませんか。しかも十二億円という私どもの税金で出したこの出資金、それは移民を送ってもらうために金を出しておるのですよ。三十六年度に十二億円の金を借りたこういう農工企業の会社が、移民を何家族出しておりますか。それなら答弁できるでしょう。——一人もないはずですよ。一家族もないはずですよ。十二億円借りたこういう農工企業の会社が、ないはずです。そうでしょう。ありますか、ありませんか。ないならないでけっこうです。農工企業の、十二億円を借りたこの会社は、内地からブラジルならブラジルにどんどん移民を送るというためにこの金を貸すのですよ。それが三十六年度には一家族もございませんよ。
  89. 高木廣一

    高木政府委員 井出先生が農工企業に十二億と今おっしゃいましたが、十二億は全部の貸付でございます。農工企業はさっき申しました三億でございます。農工企業その他を合わせて三億でございます。全部が十二億です。受取利息は三十六年十二月三十一日の残高試算表によりますと、貸付金利息二千二百七十二万一千二百円です。
  90. 井手以誠

    井手分科員 そこでお伺いをいたしますが、十二億の金を貸しておいて、その受取利息はわずかに二千二百万円ですか。何分で貸しているのです。一分で貸しているのですか、五厘で貸しているのですか。一割で貸しておるならば一億二千万円の受取利息が入るはずです。
  91. 高木廣一

    高木政府委員 一割では貸しておりません。さっき申しましたように……。
  92. 井手以誠

    井手分科員 五分で貸して幾らになる。
  93. 高木廣一

    高木政府委員 大体は五分の利息でやっておるわけです。現地、たとえばブラジルの場合は一割二分の利息を取っておりますが、これはスワップをいたしまして、たとえば一ドルが百八十クルゼイロである場合も、スワップのレートは九十クルゼイロのレートというふうに勘定してきますと、五分の利息が一割二分になるわけなんであります。
  94. 井手以誠

    井手分科員 いろいろこれは聞きたいのです。おかしくてたまらぬ。しかし時間がありませんから進みますが、それではこれだけの金を出しておいて移民を三十六年中に幾ら送ったのですか。この融資を受けた会社ですよ。
  95. 高木廣一

    高木政府委員 ただいまの農工企業の場合に、移住者の数そのものと直結することは非常に短見であると思うのであります。この移住を振興する企業が今すぐに何名出すというような考え方は、最初そういう考えもございましたが、私はそれは短見であると思いました。移住を推進するために必要な企業であるならば、これに融資していいのであって、それが直接に移住者を何名出さなければいけない、こういう考え方は非常に短見であると思います。
  96. 井手以誠

    井手分科員 大臣お聞きをいただいたと思いますが、移住局長は私に対して三回短見だとおっしゃった。見識がないとおっしゃった。よく耳にとめておきますが、あなたは短見だとおっしゃった。移住会社法の第一条に何と書いてあります。移住を促進するためにと書いてあるじゃございませんか。移住と金を借りた者とは直接直結をしていないとあなたはおっしゃいますけれどもブラジル会社に、たとえば原商会とかいろいろな会社にあなたが金を借す。その借りた会社はそこの事業を盛んにして、内地からのなるべく多くの移民を受け入れるために金を借り、移住会社は金を貸すのではございませんか。それがどこが短見です。
  97. 高木廣一

    高木政府委員 私が短見と申したのは、非常に言葉がきつくておわびいたします。私が申し上げるのは、その企業が直接移住者を呼び寄せることだけではなくて、もっと広く日本移住地が発展をいたしましたなれば、その企業とは関係なく一般的な移住者がふえるように考慮することも必要である、こういうふうに思った次第でございます。
  98. 井手以誠

    井手分科員 大臣にお聞きをいたします。  こういう原商会だとかドミニカの漁業者であるとかいろいろな人に金を貸してあるのですが、その金を貸すというのは、借りた会社がどんどん栄えて内地から移民を相次いで受け入れるというために金を借り、また移住振興会社は金を貸すのではございませんか。移住がないならば何で金を貸しますか。そんなばかな話はどこにありますか。向こうのいろいろな事業をやっておる。農工企業をやっておるその会社に金を貸すというのは、その会社が栄えて何とか一人でも、一家族でも十家族でも、できれは百家族も移民を受け入れてもらいたいと思えばこそ、会社は金を貸しているのではございませんか。どこが短見だ。
  99. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は井出さんのおっしゃることと同感でございます。そのために移住会社というものがあり、移住者を多く送出するためにいろいろとそうした環境をよくするということのためにわれわれ作った会社と考えております。ただ高木局長も、この点についてはすでにおわびを申し上げましたことでありますが、金の貸された額とそれから送出された移民の数とそのものがずばりと合う、こういうような考え方が一部にあるとすればということで意見を申し上げたので、決してあなたの御質問に対して反駁するとかそういう気持を申し上げたのではないと思いますから、どうぞ御了承願います。
  100. 井手以誠

    井手分科員 一億円貸したから十家族はぜひ取ってくれとは、私はそんな計算ずくのことは申しておりません。  それでは話を進めますが、移住会社は莫大な現金を持っている。ずっと損益計算書を見て参りますと、三十一年から三十五年末までに五億ないし十億の金がずっと金庫にある。しかし会社の金庫に撒くわけにはいきませんから、銀行に預けてある。それでは三十六年度はその余裕金は幾ら予定されておりますか。そしてまた収支計算書の中にある十三億円というものはどういうものでございますか。
  101. 高木廣一

    高木政府委員 三十六年度期末及び現在十億五千万円の現金を持っておるわけでございます。
  102. 井手以誠

    井手分科員 これはずっと毎年の繰り越しを知っておりますが、こんなに金がダブついておるから、原商会とか南方漁業会社とか払いもできないような——一部は返した会社もありますが、金をもてあまして、昔から、金を持たぬ者が一ぺんに金を持つと何とかいいますね。それではその余った金はどうしておりますか。
  103. 高木廣一

    高木政府委員 銀行に預けております。
  104. 井手以誠

    井手分科員 どこの銀行で、どこどこですか。
  105. 高木廣一

    高木政府委員 ここに資料がありませんが、約十行あまりの銀行に預けております。
  106. 井手以誠

    井手分科員 十行じゃございません。二十数行です。ここにありますが、一千五百万円を新橋の何々支店、何々支店と二十数行に平均で千五百万円ずつずっと預金してある。もちろん私はそういう会社が株主の関係にあることも承知しておりますよ。しかし株主の持ち株というものは、元金は七千五百万ですよ。それからびた一文ふえておりません。何で二十数行の銀行に対して平均して千五百万円から二千万円預金しなければならぬのですか。これは疑えば疑うほど妙なものが出て参りますよ。一銀行か二銀行にどうして預けられませんか。銀行が株主の点ももうわかっておりますけれども、そういう株主合わせて七千五百万円しか出資していないこの移住会社が、銀行に何年も何年も十数億の金を預金しなければならぬ義理がどこにありますか。なぜ一行、二行に限定できませんか。
  107. 高木廣一

    高木政府委員 さっき私が十行と申し上げましたのは、支店を別にいたしましたので、支店を含めますと二十数行になります。  一行あるいは二行に入れるということにつきましては、これまた逆に議論が出ますと、なぜ一行、二行だけにやったということにもなると思いますので、なるべく広く分けてやっていく、こういうふうに考えております。
  108. 井手以誠

    井手分科員 それでは、移住局長、あなたはそういう銀行の取引なんということは詳しいかどうか知りませんが、私はあまり掘り下げてここは聞こうと思いませんけれども、こういうことも考えられますよ。会社の人が自分の友だちに紹介状をやる。そうすると、その銀行の分は、千五百万なり二千万近くものは、たとえ保証人がなくても、紹介状だけで借り得るということもあり得るのですよ。あったとは申しません。あり得るのですよ。それが二十数銀行にできますよ。十億円内外という莫大な金が遊んでおる。その金自身を第三者が借りたとかなんとか私は申しませんが、それが世の常ではございませんかね。それを監督するのがあなた方の建前ではございませんか。——いや答弁は求めません。もし一通りの常識があるならわかるはずだと思う。  それで、私はもう時間もだいぶ過ぎましたから、最後の方に移って参りますが、移住会社現地法人経理が出ておりますから、二、三私はお伺いしておきたいと思いますが、移住会社の貸借対照表の中に融資した金額が出ております。そのあとに、その担保が同じ資産として上がっておりますのはどういうわけですか。
  109. 桜井秀男

    桜井説明員 融資に対する担保と融資額を計上してありながら、担保額も資産に計上してあるのは重複ではないかという御質問でございますが、それは日本的に考えればその通りでございます。それでブラジル法律に基づきます財務諸表は、担保を設定しますと、貸借対照表に担保額も計上してありますので、負債勘定の方にも見返りとして計上しまして、相殺しているものもございます。
  110. 井手以誠

    井手分科員 負債の方には出ておりませんよ。しかし、それは日本ブラジルは違うかもしれませんが、貸付金額と裏づけの担保と一緒に資産に見て国会に出すというのはどういう意味です。  それからさらにお伺いをいたしますが、日本海外移住振興株式会社現地法人に対して、三十六年度には一億二千百万円の振りかえを行なっておる。移住地勘定として本社で要る金の一部分を一億二千万円移住会社に移してある。この移住会社の一億二千万円の受け入れはどこに出ておりますか、どこに受け入れられておりますか。
  111. 桜井秀男

    桜井説明員 本社及び伯国法人の連結貸借対照表というのは、先ほどもちょっと申し上げました通り本社の決算に、現地法人の決算を支店のごとく計算した結果、各科目に分解して計上してあるのでございます。その結果、本店勘定伯国法人勘定として計上してあるものは、二十二計上されておりますから、負債の方において、やはり相殺勘定として、最後本社勘定十四億二千万のものが計上してあります。それから担保取得についても、貸借対照表の負債の方の一ページのしまいから三行、四行目のところに、担保取得見返りとして負債の方に計上されてあります。
  112. 井手以誠

    井手分科員 いや、私が聞いておるのは、移住地勘定の一億二千百万円、これは本社移住会社から現地会社に移すのですね。その一億二千万円というものは現地の方に受け入れなければならぬわけでしょう。それは収入としてどこに書いてあるかと聞いておる。もう一つ聞きます。三十五年度移住地勘定は十四億円でございました。それが三十六年になると、どういうものか九億何千万円に減っているのですな。移住株式会社から現地法人に渡した金が、三十五年度には十億円だった。これは収支決算書に出ておる。ところが三十六年度予定では、九億五千七百万円に四億何千万円減っておるのです。これはどうしたわけですか。そんなに移住地勘定にぽかっと穴があいたわけですか。本社から、移住会社から現地法人に対しては三十五年度までには十四億の金を出しておった。三十六年度になったら、ぽかっと四億も五億も減って、九億五千七百万円に減っておるというわけです。なぜ減ったかということです。
  113. 桜井秀男

    桜井説明員 十四億円が実際の三十六年度において十二億円に減っているについては、一つ伯国の豊和工業の一億三千万円が、ブラジルにおける金融制度の改正の結果、木社の出資金に振りかえたこと、それからグァタパラ勘定において立てかえているものが、現地において特別会計ができたために一億四千万というものを特別会計に振りかえた結果、二億七千万ばかりの差が生じております。
  114. 井手以誠

    井手分科員 その残は。二億ばかりは欠損ですか。  大臣わかりますか。あなたは信越の専務をなさって非常に詳しいでしょうが、ずっと今までの答弁をお聞きになってわかりますか。特別勘定国会には書類はどこにも出ておりませんよ。あなたの方にもないでしょう。外務省の方にもないはずです。ないでしょう。移住局長特別会計の書類はありますか。
  115. 高木廣一

    高木政府委員 三十六年度からグァタパラ事業特別会計で一応区別してやっております。
  116. 井手以誠

    井手分科員 特別会計特別会計でよろしい。その決算はどこに出ておりますか。移住会社とかあるいは現地法人、どこに出ておりますか。
  117. 高木廣一

    高木政府委員 まだ決算までいっておりません。
  118. 井手以誠

    井手分科員 三十三年からでしょう。
  119. 高木廣一

    高木政府委員 三十六年度からです。グァタパラ特別会計……。
  120. 井手以誠

    井手分科員 それは全拓連の所有じゃございませんか。
  121. 高木廣一

    高木政府委員 それを会社特別会計経理をしておるわけでございます。
  122. 井手以誠

    井手分科員 まだいろいろありますが、何としてもややこしいし、わからぬ。ふえたり減ったり——今日まで十億円ばかりの欠損を出した移住会社、これは国会の言明に反してこれだけの損害を与えた。これは何も営利会社じゃございませんよ。大臣もおっしゃっている国策会社、私どもの税金で出資された会社ですよ。これだけ迷惑を及ぼしたこの会社の社長に対する退職金は幾ら出してありますか。在職わずか八カ月ぐらいの初代社長田中鉄三郎、二代目社長大志摩、退職金は幾ら出しましたか。
  123. 高木廣一

    高木政府委員 田中鉄三郎さんはちょっとわかりませんが、大志摩孫四郎前社長は六百三十七万円でございます。
  124. 井手以誠

    井手分科員 大臣、お聞きしますが、退職金というのは意味はわかりますよ。しかしそれはその事業に貢献したという意味に対して退職金を出すわけでしょう。大志摩さんがどういう人であるかは私はここでは申し上げません。岸さんの友人であること、私はそれだけは承知いたしております。その方に六百何十万円も——十億近い穴をあけて、こんな多額の退職金を出していいのですか。大蔵省はどうですか、これでいいと思いますか。
  125. 鈴木喜治

    鈴木説明員 いろいろ特殊会社等におきまして問題のある会社の役員の退職につきまして差等を設けたらいいという御意見もあろうと思いますが、また別に各国策会社を通じまして一定の水準でバランスをとりながらやるという考え方もございまして、今までのところは、大体各国策会社を通じまして最終報酬月額の六五%それに在職月数をかける基準でやっております。
  126. 井手以誠

    井手分科員 退職金というものはそんなに一律にすべきものじゃないでしょう。年金というものは違うわけです。国会の言明に反してこれだけの損失を国民に与えたその社長が、二十万も二十何万も給料をとった上に、わずかな期間在職して六百何十万円も退職金をもらうということが正しいのですか。大蔵省、正しいとお考えですか。こんな経理をやっておっていいんですか。
  127. 鈴木喜治

    鈴木説明員 先生の御指摘の通り、いろいろ問題はあるかとも思いますが、主務官庁である外務省からこういう基準でやるのに差しつかえないかという協議を受けました大蔵省としまして、この協議の基準が各国策会社を通ずる基準でございますので、やむを得ないという感じでございます。
  128. 井手以誠

    井手分科員 それではいよいよ最後に移りますが、外務省事務当局にお聞きしますが、移住振興会社はできてから最近までどのくらい移民を送っておりますか。これだけの、二十八億の国の出資アメリカから一時は二十七億円借りておって、どのくらい移民を送りましたか。雇用移民は別ですよ、この会社関係ですよ。
  129. 高木廣一

    高木政府委員 移民は渡航前融資移住会社でやっております。それから雇用移住者のコロノの独立融資をやっておりますし、結局戦後移住会社ができましてから出しました移住者は、現地における短期、長期融資、あるいは移住地の分譲、あるいは渡航前融資等、大体全部関係しておる次第でございます。
  130. 井手以誠

    井手分科員 派米労務者なんかに渡航費を出すというのは別ですよ。独立移民ですよ。ブラジルのある企業に対して雇われていくという雇用移民とは違いますよ。雇用移民ならば、何も会社はタッチする必要はございません。渡航費とかなんとか、金を貸すという必要は生ずるかもしれませんけれども。私が聞いたところでは、本来の目的に対して、三十年にこの会社ができてから今日まで、二月五日まで七百九十九家族、ことしは百八十八家族と聞いておりますが、事実ですか。
  131. 高木廣一

    高木政府委員 ただいまのは井出先生誤解していらっしゃると思います。移住会社の分譲地へ入る移住者だけをお考えになっていると思うのでありますが、一般雇用農業労務者も、会社のコロノの独立融資があるから促進されるのでございますし、また渡航前融資の助けをもって移住についての踏み切りができていく人もございますので、会社の活動範囲ですか、会社投融資の影響は移住着全部にわたっている、こういうふうに御了解願わぬと、会社移住地だけへの数をおとりになると少し幅が狭過ぎるのではないかと思います。
  132. 井手以誠

    井手分科員 大臣海外協会の連合会と輸出入銀行のことは別にいたしましても、移住会社と二本立になっておりますね。だから、採算に合わない貸付海外協会でやらせる、独立移民のこういう本格的なものは移住会社にやらせるという建前だ。何も派米労務者に渡航費を貸したから、これが大きな事業でございますと言えた会社の目的ではないと思う。本来の目的に対しては、本年はわずかに百八十八家族。渡航前融資をいろいろ貸したこともあるでしょう。雇用移民のためにいろいろ貸したこともあるでしょう。全然無関係だとは申しませんけれども、どうしてこんなに赤字になるのか。  私は結論を申しますよ。これだけしか移民が実現できない。何十億という資金を運転して、そして一カ年間に本来の目的である独立移民は、二月五日までに百八十八家族。これは向こうから聞いた資料ですから、間違いないわけです。そうでしょう。局長、何とあなたが言ったってだめです。これだけの多額の金を動かして百八十八家族しか送れないというのは、何か私はここに原因があると思う。それはあなたのやっておる土地の分譲その他がおくれたとか、適地でなかったとか、あるいは予定通り移民が来なかったとか、いろいろな理由があると思う。思うけれども、これだけの資金を動かしておる移住会社としては、以上の結果はあまりにも少な過ぎると思う。局長は、あなたは今にも立とうとされるが、これはりっぱな成績だとお思いですか。
  133. 高木廣一

    高木政府委員 井出先生少し誤解をしておられるのだと思うのですが、派米労務者はごく一部でございますが、ブラジルにコロノとして行きます移住者移住会社がコロノ独立融資、あるいは短期、長期融資、あるいはその他の融資をやっておるのでございまして、移住会社の分譲地に入る移住者の数だけが移住会社の活動、こういうふうにおとりになるのは非常に狭いのでございまして、派米協議会で担当して出しますものと、移住会社の分譲地に入りますもの以外に、コロノあるいはブラジル政府植民地に入る移住者に対しても、渡航前融資その他の融資をしておりますのですから、今の何百家族というわずかの数だけに限定せられるのは少し酷だと思います。
  134. 井手以誠

    井手分科員 それじゃまた戻りますが、移住会社から原商会なんかに莫大な金を貸し付けて、その貸付を受けた会社が最近一家族も移民を受け入れてないということは事実ですね。
  135. 高木廣一

    高木政府委員 今の原商会の場合は確かに……。
  136. 井手以誠

    井手分科員 原商会ばかりじゃございません。多くの農工事業、貸した会社がことしなんか一家族も受け入れてないでしょう。それだけは事実ですね。
  137. 高木廣一

    高木政府委員 ブラジルのオーリニョースという農業企業がございます。これはブラジルが中心になってやりましたのですが、これは農企業といたしまして、土地の買付融資その他をいたしまして、これは数は少なうございますが、二十家族出しております。
  138. 井手以誠

    井手分科員 いつですか。
  139. 高木廣一

    高木政府委員 三十六年度中でございます。
  140. 井手以誠

    井手分科員 何用ですか。
  141. 高木廣一

    高木政府委員 十一月でございます。
  142. 井手以誠

    井手分科員 またグァタパラの問題が起こって参りましたが、これはほかの委員会でやったこともございますから、本日はあまり申し上げませんけれども、しかしあなたの方はこのグァタパラという地区は一億四千万円で買って、土地改良その他をやって五億円近くで分譲なさるそうです。私は結論だけ申し上げますと、大臣もよくお聞き願いたいと思うのですが、グァタパラは全国から、この前の国会ブラジルとの協定で通りました二百七十五家族ですか、幾らかやることになっておりますが、これは予定よりも非常に資金がよけいにかかる。いろいろな理由から渡航希望者が少ないと聞いております。私の方の佐賀県も一家族だけ申し込んだ。しかしこれもどうも辞退するらしいという話で県庁はやっきになっておる。ところが向こうに移民して一応家を建てて何するまで二百万円の資金が要る。あなたの方の計算では一カ年間に収入がどんどん上がるから、夢の国のようなことを言われておりますけれども、その土地というものは、かつてスペイン人が農業をやって失敗した。洪水で荒れたところだ。これをりっぱな土地だといって、日本から行った人が買ったところが、案の定そこが悪いというので、土地改良専業にたくさんの費用をかけなければならぬその土地を一億四千万円で買って土地改良したとはいいながらも五億円で分譲しなければならぬ。その間の管理費その他が全部これに加わって、自分の家屋敷を売って移民した人の負担になるのです。私はグァタパラはこれ以上申しません。  そこで、私は最後大臣にお伺いいたします。お聞きの通り海外移住株式会社内容は、論議された通りであります。移住局長は何とかよけい仕事をしたような口ぶりを努めてお出しになりますけれども、その経理たるや欠損は明らかなものである。また現地法人がどういう土地投資して——石ころばかりのところに莫大な費用をかけて買っておるかもしれませんよ、ドミニカと同じように。その何十億か投資した現地法人のその土地投資というものがどのくらいの値段かわかりませんよ。ブラジルの通貨というものは一年間に半値になっておる。暴落しておる。アメリカの銀行から貸した金は半値になっておる。四分あるいは五分になったかもしれません。国が出したのは、ただの利子のつかない出資なんです。それで貸し付けておいて金利がわずかに七千万円か八千万円の受取利子しかないというのは、何としても解せない経理状態です。大臣はこの乱脈きわまる不明朗な海外移住会社に対してどんなふうにお考えになっておりますか。少なくとも国会に対する約束、ここにおける言明と相反していることは事実なんです。もしそれで大臣が先刻お話しのように相談したいとおっしゃるならば、改正案を出すか、あるいは何かの機会に国会の了解を求められて、事業計画を変えていく、そういう機構は少なくともしなければならぬと思う。それはぜひお願いしたい。したいが、しかしこういう移住会社経理状態であっては断じてなりません。一カ年間何百人か知りません。従業員は、初めは三人とか四人とか十人とか言われておりました。これは事業が大きくなればふえてくるでありましょう。しかし、利ざやだけで必ずやっていきますと言った移住会社が、今日では一カ年間に三億円になって、円資金の調整勘定を加えると五億円以上、国から五億の出資したものが、そのまま一カ年間に食いつぶされておる。はっきり食いつぶしとは、まだ決算ができておりませんから言いませんけれども、少なくともそれに近い経理状態の移住会社に対してどういう態度をとられますか。それをお伺いしたいと思います。
  143. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどからの御質問、私ども率直に申して非常に傾聴いたしておりました。私どもも非常に足らざるところがあるということを反省いたしております。ただ、この移住問題というものは確かに曲がり角にきておるのでございまして、最近のドミニカ問題等もございまして、これを再検討すべき非常によい時期に来ておると考えております。私どもそういう方針に基づきまして、現在移住に関する審議会がございますけれども、その人選等も全く一つ構想を新たにして委員の人選をやり直すということを考えまして、今寄り寄り協議をいたしておるわけでございます。また海外移住会社においても、これまた人選等についてさらに検討の要あるものと考えておる次第でございます。移住会社につきましては、これは実は私もこういう立場になります前からいろいろなことも聞いておりました点もございますし、この点については実は新社長に就任を願いまして、鋭意この立て直しに努力をお願いしておるような次第なんでありますけれども、本日は担当の者がおりません関係もございまして、はなはだどうも失礼したと実は思って伺っているわけです。しかし、それはそれといたしまして、ぜひ一つ移住の重要性にかんがみまして、また移住国策としてわれわれあくまでも大きく取り上げていかなければならぬ建前がございますし、これを円満に強力に推進するためには、何といってもそのための諸機関の整備強化が必要でございますから、そういう線に沿いましてできるだけ一つ努力して参りたい。またお知恵も拝借したいと思います。
  144. 井手以誠

    井手分科員 これほど内容があいまいな移住会社に対して、経理監督、人選その他についてあなたは腹をきめておやりにならなければならぬと私は思う。昨年のこの分科会では田中織之進さんが質問なさいまして、警告を発せられた。しかし、それでも何ら改まっておりません。  また、会計検査院事務総長がお見えになっておりますが、あなたの方の検査報告はどう書いてあります。そういう今までお聞きになったことを検査なさいましたか。あれでも大丈夫だとおっしゃいますか。ここに日本海外移住株式会社に対する検査報告となっておる。そういうことも、移住会社内容なり、現地法人内容を全部監査して、そのあとでこれは報告なさったのですか。あなたは確信をお持ちになりますか。
  145. 大沢実

    ○大沢会計検査院説明員 お答えいたします。  海外移住振興株式会社に対しましては、現地法人の書類も本社の方に来ておりますので、本社において毎年検査いたしております。三十五年度につきましても、数人で約一週間、延べ二十数人で検査いたしました。そして書類は十分検討いたしました。その結果、検査報告に書いておりますのは、事業予定通り進行していないということと、欠損がその年度だけで二億数千万円、累計で六億数千万円であるということだけしか記述しておりません。これで十分かというお話でありますが、そのほか検査しました結果によりますと、小さな問題といえば小さな問題かもしれませんが、現地において、たとえば橋梁や建物を作るために木材を、アルト・パラナという地区で伐採した。ところがその木材が小さくて橋梁や建物に間に合わないために、伐採した木材をそのまま売ってしまった。そのために、初めの計画が悪かったか、損をした。金額は大した金額ではありませんが、損をしたというような事態がありまして、これは検査報告には掲げてありませんが、移住会社に対しましては注意書を発しております。なお先ほどもお話がありました原商会、これも三十三年度でありましたか、担保もないのに貸し付けて、これは不安な貸付ではないか、回収が困難ではないかというので、注意書を発しました。当時においては鋭意回収をはかりたいというような回答を得ております。その他ただいまいろいろと井手委員からお話のありました点、今ここで数字的にこれがどうだったと申し上げるだけの資料を持ち合わせませんが、それぞれ担当課においては十分検討しておるつもりであります。しかし何分にも能力の点であるいは検査の不徹底な点もあろうと存じます。それらを十分に注意して検査の徹底をはかりたい、かように考えております。
  146. 井手以誠

    井手分科員 ここで十分でなかったとは事務総長は言えませんから、それはよくわかります。しかし帳面の上だけで帳じりが同じ数字になったから、それでよろしいというものではないのです。また法律の精神なりあるいは運営の実態あるいは経営の数字の裏ということも考えなくてはならぬ。国の、私どもの税金がはたして有効に使われるかどうかというところに会計検査院の目的があると私は思う。十分検査をしてもらいたい。  最後大臣、こういうことをやった移住会社に対してどうお考えですか。それだけを承って終わりたいと思います。
  147. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 発生的に考えていただきたいと思いますが、日本が敗戦後にすべて締め出されたという苦難の道を歩きまして、二十八、九年ころからブラジルあるいはドミニカの話が出てきて、昭和三十一年ころには移民が送致されるということで、非常に一種の解放感があったわけです。大いに移住をやろうという雰囲気の中でできた移住会社が、移住というものを甘く考えて、これは相当な営利企業としても成り立つような気持で、国会でも御答弁しておったのではないかと思われる節が、今の速記録等も御提示いただきましての御質問中、私には感ぜられるのでございます。しかし何と申しましても、これは国民の税金を使う国策会社でございます。われわれ移住の持つ非常なむずかしさ、これを認識しつつも移住会社というものはあくまで経営を厳正にいたしまして、しかも能率的な運営をして参りますように私としましても十分注意して参りたいと思います。
  148. 井手以誠

    井手分科員 どうも長い間ありがとうございました。まだ私の生命もありますから、十分この点は監視しておきますから、移住並びに会社経理に対しては十分な御戒心を特にお願い申し上げまして、一応終わります。
  149. 中村幸八

    中村主査 食事の時刻も参りましたが、いましばらくこのまま質疑を続行することにいたします。西村関一君。
  150. 西村関一

    西村(関)分科員 ただいま井手委員から移住政策特に移住振興株式会社の問題等につきまして、まことに重要な質問がなされたのであります。私も移住政策一般について御質問を申し上げたいと思っておるのでありますが、緊急な問題につきましてまず最初にお伺いをいたしたいと思うのであります。  それは、新聞の報道によりますと、明日池田・金会談が行なわれるということであります。韓国の金情報部長と池田総理とが会談をせられる、それはどういう意図を持つ会談でございますか。伝えられます、四月に行なわれようとしておる日韓会談の政治会談の下工作という意味を持つものではなかろうかと国民の多くは感じ取っておるのであります。日韓会談の行方につきましては、国民の大多数がこれを非常に問題にいたしておるのでありまして、従いまして明日の金・池田会談につきまして、どういう意味を持っておるものであるかということを外務大臣にお伺いいたしたいと思います。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓間の国交を正常化したいという気持をわれわれ持っております。またこれが非常に自然な形であるというふうに考えております。そのために、韓国における金氏が東南アジア旅行の帰途、こちらへ立ち寄りまするので、その機会に池田総理にお会いしたい、こういうことでございますから、池田総理もそれに応じて会われる、こういうことに承知いたしております。どういうことを話されますか、私もこれはお二人の会談でございますから、あらかじめどうこうと言うわけには参らぬと思いますが、要するに日韓間の国交を正常化したいという気持を双方において述べ合うということが中心であろうかと思います。
  152. 西村関一

    西村(関)分科員 日韓間の国交を正常化したいという点から日韓会談を進めていくのだと言われますが、すでに国会で各委員会あるいは本会議等におきまして、日韓会談の問題点については論ぜられて参りました。そしてまた政府は、一貫してただいま外務大臣の御答弁になりましたようなお答があったのでございますが、国民の多くは、今政府が相手といたしておりまする朴正煕政権に対しては、多くの深い疑惑を持っておるのであります。クーデターによって成り立った政権であるということは、ほかにも例がございましょうが、しかし現在なお戒厳令下にある、しかも憲法も国会も地方議会も停止されておる、十万人からの人間が逮捕されておる、言論、集会、結社の自由は奪われておる、その上民生はきわめて不安定な状態にある。その他いろいろな暗黒政治が行なしわれておる。こういう朴正煕政権に対して、今何がゆえに日韓会談を進めなければならないか。日韓の国交正常化を今何がゆえに急いではからなければならないかというような点に対して、国民の多くは疑惑を持っておるのであります。そのやさきに、明日金・池田会談が行なわれる。それは四月に行なわれようとしておるところのいわゆる政治会談の下工作のためにやるのじゃないか、こういうことを考えましても、これは決して不自然でないと思うのであります。私はその点に対して、所管の責任者であるところの外務大臣が、もう少し国民の納得するような答弁をただいまこの委員会の席上においてお述べをいただきたい。少なくともこれならばやらなければならないのだというような、みんなが納得するような理由を述べていただかないと、これはいけないと思うのであります。重ねて外務大臣のこれに対する御所信を承りたいと思います。
  153. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、予算委員会あるいは外務委員会等でしばしば申し上げておることでありますが、私は、国民の大部分と仰せられましたが、国民の大部分は、やはり日韓間の国交を正常化するということを望んでおると思います。しかし問題は、いかなる形において正常化するかという、その手だてが問題であろうと思いますので、そういう点について交渉をいたすわけでございます。その交渉を従来から続けておるのでございまするが、たまたま先方の、非常に実力のあるといわれておる人が会いたいと言ってくることについて、これは会うことはきわめて当然でありまして、国民が納得するような言明をしろと仰せられまするが、どういうことか、実は私にはよく理解しにくいと思うのであります。要しまするに、私は先般どこですかの世論調査で、日韓会談をやって妥結した方がいいということを考えている国民は六〇%で、日韓会談に反対しているというのは七%だったというようなことを、ラジオで聞いたことがございまするが、その理由は、とにかく日韓国交が正常化して、漁業その他の問題が解決するということを望むというのが主たる理由であったようでございます。まあ私どもは、国民の代表として政治をやっておりますのでございまするから、やはりなるたけ自然な、こだわりのない気持で、ことに外交等に携わるものといたしましても、世界の各国、各民族と仲よくやっていくということを考えるべきだと思うのであります。現に言論、集会、結社の自由がないのだからいかぬということでございまするが、われわれが大使を交換している国の中には、書論、集会、結社の自由というものがわれわれの考えるような形でない国もたくさんございます。しかし、これは相手方のことでございます。国と国との関係というものは、そういう国内問題は別といたしまして、わが国がその国と友好関係を結ぶという方が是なりと考える国との間には、国交を正常化するということは、これは当然のことだと考えているわけでございます。
  154. 西村関一

    西村(関)分科員 それは見解の相違ということもありますが、今の御答弁は私はあまりひどいと思うのであります。世論調査、ラジオでこう言っておる、ああ言っておる、これはラジオ、新聞等は政府が相当な規制をしているのでありまして、そういうものを私どもは信頼することができない。内閣の世論調査等によりますと、今大臣の言われたような結果は出てない。内閣の世論調査でやっている調査の資料など見ますると、必ずしも今大臣の御答弁と一致してないのであります。私は、今そういったようなことについて、時間がありませんからさらに申しませんが、第一、相手方の朴政権に対しては、他にも、わが国と国交を重ねておる国にもそういうところがあるのだから、それはかまわぬということでありますけれども、しかし、だれが考えてみましても、現在の朴政権というものは、これは予算の編成権も軍事権もアメリカに握られておるのでありまして、こういうような政権を交渉の相手にする、しかも民生が不安定だし、多くの社会的な危機をはらんでおる、韓国内の人民もまた、これに対して言葉を出せばすぐひっつかまえられてしまうから言わないけれども、非常に不安な状態にある。しかも南北が一つになりたいという機運が両方から動いておる、こういう状態に対しまして、何がゆえに急いでやらなければならないか。漁業の問題等は、李ラインなどは不当な一方的なものでありまして、これは国連等に提訴するという方法もありましょうし、そういう努力を弔ねることによって、日韓会談とは別個に解決する道があろうと思うのであります。そういうことを全然考えないで、国民の多くの意思——私は大多数ということを申しましたから、見解の相違があるといえぱそれまででございますけれども、多くの国民が心配しておるところの方向に、何がゆえに現政府はこれを強行していかなければならないかというような点に対して、非常に問題にせざるを得ないのであります。財産請求権の問題にいたしましても、当初日本側は五千万ドルと考えておりましたが、経済協力の名において、民間から六億ドルの巨費をこれに投入しようということが考えられておる。しかも資本の進出に対しましては、三年間無税であって、二年間は三分の二、一年間は三分の一の税に軽減をする。しかも韓国の労務者を安く使って、そうして日本の資本を韓国に導入して、そこにアメリカにかわるところの日本経済の、日本資本の韓国に対する協力体制を固めていく、こういったようなことがもしなされるといたしますならば、そこに日本の経済権力が植え付けられるということのために、かりに緊張が破れて、不幸な戦争が勃発するといったような場合には、日本の権益を保護するという名のもとに、自衛隊の出兵ということもあり得ないとは言えない、非常に危険な問題をはらんでおると思うのであります。こういう点に対して、もう少し政府は国民の声を率直に聞いて、慎重な態度でこの日韓会談に臨まるべきではないかと思うのであります。それらの点につきまして、もう少し御親切な御答弁を承りたいと思います。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私、非常にえりを正して御質問に対し御答弁申し上げているつもりでございますが、実は率直に申しまして、今まで何回もこの問題について御答弁申し上げておりますし、また予算分科会でございますので、そういう趣旨でお答えを申し上げさしていただければ大へん私はありがたいと思っていることだけ申し上げておきたいと思います。  ただいまのような御質問に対して、私が何回お答えいたしましても西村先生においては御納得をなかなかいただけないのじゃないかという点もございますけれども、ただ一言だけ申し上げておきますと、日本の新聞やラジオが政府の統制下にある、こういうお言葉は、私は実はこの日本のために、これは当議場においてそういうことがありますと、私もまた何か申し上げませんと、そういうふうに一般に認識されておるということになりますと、これはやはり大へんなことだと思いますので、そういうことはないということだけはっきりお答えしておかなければいかぬと思うのであります。  それから今の御質問の中に、何か日韓間の国交が改善されるということは、日韓が攻守同盟を結んで、そうして日本からも自衛隊の出動のごときことを考えるというふうな、そういう想定で御質問がございましたけれども、私どもはそういうようなことは全然考えておりません。これは自衛隊法にも、また憲法の精神から見ましても、全然考え得ざるところでございまして、さようなことと日韓会談をくっつけて仰せられますことは、私どもとしてはなはだ思い過ごしの御議論である、こういわなければならぬと思います。
  156. 西村関一

    西村(関)分科員 私も本日が予算分科会であるということを承知しておりますから、この問題につきましては別の機会に大臣の御所信を承ることにいたします。時間がありませんから舌足らずの点が私にもございます。政府の御答弁にもこれ以上を求めることが本日はむずかしいと思いますから、私はただ明日池田・金会談が行なわれるという新聞記事を読みまして、それに対する国民の、これを問題にする側の意見を代表いたしまして、この機会にお伺いをした次第でありますから、再答弁をこの問題については求めようとはいたしません。  引き続きまして、移住政策全般についてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど来井手分科員からいろいろ問題が出ておりましたが、戦後のわが国の移住政策全般を振り返ってみまして、政府の努力、民間の協力等によりまして相当な進展を見、成果を上げておるということは私も否定するものではございません。しかし、ただいまも井手分科員移住振興会社の点だけについて指摘せられました事柄等によりましてもわかりまするように、なお政府当局としては十分戒心せられなければならない点が多々あると思うのでございます。当初計画されておりまするところの年間一万人という数が、ある年には半数にも満たない、はるかにその予定数を下回っておるという状態であります。こういうようなことは、戦後日本の経済が異常な発展をし、そこで労働力の動態が変わったということもありましょうけれども、何かそこにわが国の移住政策のはらんでおる基本的な欠陥があるのじゃないかということを考えるのであります。それは、今回のドミニカ移民の大量帰還ということによりましても端的にうかがわれまするように、何かそこに一つの欠陥があるのじゃないかと思うのでございます。ドミニカの問題につきましては、各委員会におきまして質疑応答が行なわれたし、私も内閣委員会において外務大臣以下担当の皆さん方の御見解を聞いたのでありますが、外務大臣は、先ほどの井手分科員の御質問等をも含めて、今、率直に言って、わが国の移住政策に対してこれで万全であるというふうにはお考えになってないと思うのであります。どういう点をどのように改めて、より前向きの姿勢にしてわが国の移住政策を進展せしめるか、こういう点に対して、まず外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  157. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 移住の問題については、関係する行政庁がいろいろあるわけでございます。そういうような点からいたしまして、所管というような問題について、いろいろ各省の見解が表明せられ、一体どこに責任があるのか、責任の所在が不明確であるというようなことが従来から言われておるのでございます。私もそうだと思います。そこで、問題は、受け入れ地における態勢の整備、これが一番必要なことでございますから、これは、非常に口幅ったいことでございますが、これについては外務省において責任を持つ、かようなことが妥当であろうと思います。ただ、わが国内の事情につきましては、これは関係するところの各省において精通しておられるのでございますから、関係諸官庁との間によく連絡をとって参るということで、私どもの方が責任を持つ態勢を作る、これがまず第一だと考えまして、今年度からは農林省との間も非常に円満にお話し合いを願いましたし、大蔵省においても日本海外協会連合会の費用というものはやはり外務省一本につける、こういうふうに御配慮を願っておるわけでございます。従って、ドミニカ問題などが出ますと、やれどこの省がどう言ったというような問題が従来出ておるのでございますが、今後は外務省の責任においてやるということを明確にいたしまして、外務省において十分事前に調査をして誤りなきを期したい、これがまず第一点のように考えております。  さらに、将来の方向でございますが、私はやはり中産階級をその移住地に作る、これを一つの目標にして参りたいと思います。いわゆる移民というものは、かつて棄民と言われまして、国内の人口問題解決のために移住者を出す、こういうようなふうに考えられておったのでございますが、それではいけないと思うのであります。やはりわが国の優秀なる人材が海外に出て、その国内においても尊敬される、社会的な地歩、経済的な地歩を作り上げていく、そしてその移住者を通じて、日本移住地との間の関係がますます緊密になり、そこに資本の移動等も行なわれるということになりますれば——私はその形の移住というものが最も今後において望ましい形ではないか、かような基本的な考えを持っております。
  158. 西村関一

    西村(関)分科員 ただいまの外務大臣移住政策の基本的な考えに基いて、三十七年度予算の中で、移住政策に関しましてどのような重点的な要求をしておられるか。予算委員会の分科会でございますから、移住政策予算要求の重点はどういうところに置かれておるかということをお伺いいたします。
  159. 高木廣一

    高木政府委員 こまかいことでございますので、大臣にかわりまして、資料に基づきまして御説明いたします。  昭和三十七年度予算の重点要求事項といたしましては、大きく分けまして三つの点に重点を置きました。第一は、海外協会連合会組織機能強化、これは移住実務を担当いたします機関が充実されなければいけない。これは本部及び海外支部両方を含めてでございますが、これに重点を置きました。その詳細といたしましては、日本海外協会連合会の職員が移住地をつぶさに視察する機会をふやす。さらにこれの内訳といたしましては、移住者輸送引率旅費というものを、三十六年度は五百四十五万一千円でございましたが、三千百万円要求いたしまして、大蔵省の査定を得ましたのが一千万円、昨年の約倍になります。移住地視察の第二といたしましては、移住担当社現地視察旅費、これは三十六年度は全然ついておりませんでしたが、三十七年度といたしましては千百万円要求いたしました。しかし、これは認められませんでした。次は海協連職員待遇改善であります。本部職員の手当が移住会社と比べまして非常に低うございますので、平均二号俸アップということで、三十六年度は千五百五十万円の予算でございましたのを、二千八百万円要求いたしまして五百万円の増、二千五十四万円という査定を得ました。それから支部派遣者の本俸金額要求をいたしました。現在三百三十八万円の予算でございますが、それを千二百万円要求いたしまして、七百九十万円の増になりました。それから退職者手当積立の要求。海協連職員には退職手当積立も今日までのところはなかったのでございますが、二百四十四万円要求いたしまして、二百万円まで認められました。海外支部職員、これは一律三十ドル・ベースアップということを要求いたしましたが、現在八千五百万円の予算でございます。それを一億一千四百万円要求しましたが、九千五百万円、ごくわずかの増加でございます。次は移住者に対する資金的援助の強化、これは移住者支度費の補助金の増を求めましたが、現在通り。それから、移住地における道路、橋梁なんかは国の補助でやりたいということで要求いたしまして、そのうちボリビアについては認められましたが、会社移住地については認められませんでした、それから移住者に対するサービスの強化、これは一般移住者に対する講習会技術移住者に対する講習会等を要求したのですが、認められませんでした。結論といたしまして海協連の職員の増加、現地十名、本部二名及び待遇改善それから移住地におきましては道路、橋梁が一部において認められた、こういうような結果でございます。
  160. 西村関一

    西村(関)分科員 ただいまの外務省予算の重点要求につきましては、私も一々もっともだと思うのであります。特に海協連の現地の職員が非常に足りないということのために、その仕事がはかばかしくできない。非常に広大な地域に、担当している現地の出張員が苦労を重ねている割合に、能率が上がらないというのは、やはりそういう点にあるということは私も認められるのでありまして、そういう点につきましては、今後も十分な配慮が必要だと思うのでありますが、ただ一つ伺いしたいのは、外務大臣も言われましたように、日本移住政策は従来もいわれました棄民政策、また従来そういう時代もなかったとは言えないのであって、日本で食い詰めた人を海外に出して、そこでよりよい生活をさせるようにするのだ、あるいは日本のあり余っている人口を海外にはかすのだというような考え方でなしに、最も優秀な日本民族を、受け入れる側の国々が必要としているところの技術的あるいはまた労力的協力をさせて、そしてりっぱな現地の受け入れる国々の要求にこたえられるような素質と技能と体力と、かつ品位を備えておるところの移民を海外に送出しなければならないことは言うまでもないところでございますが、そういうことのためには、やはり国内における移住民の選出の問題、まずどういうふうにして、これは移住者として適格であるかどうかということをきめるか、これは海協連の地方支部にゆだねられておるのでございますが、そういう点に対しても従来私は十分でなかったと思う。それが不十分でありまするために、間々海外において問題を起こすというようなことがあったと思うのであります。と同時に、そこにおいて選ばれました移住民の方々が、相当期間訓練を受けて、そうしてそこにおいて必要な資格を備えて、それからいよいよ海外に出かけるということが大事でございますから、こういう移民センターと申しますか、訓練所と申しますか、そういう施設の整備拡充ということが当然考えられなければならぬと思うのでありますが、そういう点に対する予算要求が今の御説明では触れられてなかったように思うのでございますが、そういう移民の選出と移民の訓練、これに対してどういうふうにお考えになっておられますか。
  161. 高木廣一

    高木政府委員 ただいま申しました第三の移住者に対するサービス拡充という点で、実は一般移住希望者に対する講習会、それから技術移住者につきましては技術移住者に対する講習会というもので今先生がおっしゃいました技術センター的な仕事をやりたいと思ったのですが、本年は認められませんでした。来年はぜひ一つ努力したいと思っております。
  162. 西村関一

    西村(関)分科員 例をドミニカ移民にとりますが、ドミニカに出かけました人は、何週間どこでどういう訓練を受けて行ったのですか。
  163. 高木廣一

    高木政府委員 これは各地の重点的な、農業訓練所で大体一週間くらい宮崎、豊橋等で訓練をしたわけであります。
  164. 西村関一

    西村(関)分科員 一週間の間にどういうことを勉強したのですか。その内容はどういう科目をやったのですか。
  165. 三善信二

    ○三善説明員 移民の講習につきましては、従来から予算的には私どもは千二百万とって海協連に委託しておるわけであります。ドミニカの場合も、先ほど移住局長の申されましたように、豊橋、香川、宮崎、三重等で約一週間程度講習をやったわけでございます。その際に、講習の内容といたしましては、主として講習を受ける方は農業経験者でございますので、農作業その他は別として、ドミニカの国情、その他向こうの受け入れ条件、そういったものについて、講師はそれぞれ専門の方に来ていただいて講習をやったわけでございます。
  166. 西村関一

    西村(関)分科員 私は一週間くらいでは足りないと思うのです。一週間といっても中身五日そこそこだろうと思います。そのような短期間指導所に入れて、訓練所に入れて、あれもこれもと詰め込んでみたって、そう大して効果はないと思う。諸外国の例を見ましても、たとえばイタリアのような移住政策については非常に成果を上げておる国の例を見ましても、御承知の通り非常な長期間にわたって、相当な経費をかけて綿密な計画のもとに移住していく人たちの訓練をやっておる。一週間やそこいらでは、とうてい何ほどのこともできない。そういうことがまた今回のドミニカ移民の失敗の一つの原因を作っておると思う。そういうことに対して、現在訓練所がどこどこにあるということも私も大体知っておりますけれども、しかし、その施設等につきましてもまだ十分でない。また同時に施設が何ぼできましても、この訓練に当たるところの人に当を得なければ成果を上げることはできないと思うのであります。それらの点につきましても相当有能な人を訓練所長なりその指導員なりに充てるというかまえがなければ、これはただ形式的なものになってしまうと思うのでありまして、そういう点に対しまして、私は非常に不十分であるというふうに考えておりますが、重ねてその訓練についての政府の心がまえと申しますか、今後に対する計画というものを伺いたいと思います。
  167. 高木廣一

    高木政府委員 先生のおっしゃること、趣旨は全くわれわれ賛成でございまして、なるべくそういうふうにしたいと思います。しかしこれは、たとえば移住者を一カ月訓練するといたしますと、その生活費の問題とか、これが相当かさみますので、予算全般との関係もございますので、なかなか一挙にいかないのでありますが、われわれとしてはできるだけ訓練講習等も十分徹底をするようにいたしたいと思います。なお移住あっせん所に入っております間にも、これも非常に短期でございますが、一週間ばかり即席の講習をしております。それから船で参りますので、船中を利用いたしまして、語学その他の講習もいたしております。特に昨年は技術移住者を出しましたときには、ポルトガル語の専門家を特に加えまして、船中で、行く人々に相当きびしく語学の練習をさしておるというようなことで間に合わしておりますが、まだまだ十分でないという先生の御意見は、われわれも全く同じように思っております。予算のとれる限り、できるだけ徹底を期していきたい、こういうふうに思っております。
  168. 西村関一

    西村(関)分科員 移住船と申しますか、移民船の中でいろいろ教育もやっておる。また先ほどの予算説明の中で、その監督官を強化するというような御説明がありましたが、従来の移民船の監督官の傾向は、私は必ずしも当を得ておるとは思わないのであります。前国会の外務委員会におきましても、私はこの点について触れたのでありますが、外務省の海外に出張することのできないような、全然移民に関係のない、何ら移民に対する知識のない、そういう人を監督官として船に乗せるというようなことがあってはいけないと思うのであります。そういうことが従来なかったとは言えないと私は思うのでありまして、そういうようなことでは、とうていこの重大な任務を果たすことはできません。これが人選等につきましては、これは移住局長はもちろん考えておられると思いますが、大臣におかれましても、ただ部下にまかしておかれないで、重大な関心をお持ちになって、ただ予算を要求するというだけでなく、この人選について十全を期してもらいたい。またその補佐官等につきましても同様でございます。私はその必要の重大性は十分認めますし、予算ができるだけ多くつくことも認めます。その点について旧来必ずしも十分によくいっておったとは言えないと思いますから、重ねて御要望申し上げる次第であります。  それから現地の調査ということのために予算をふやすように要求したということを言っておられますが、これも必要でございます。事前の調査、事後の調査、これが十分でないということが、日本移住政策が十全を期し得ない大きな原因の一つになっておると思うのであります。調査もただ名目的な調査でなくて、実質的な、ほんとうにそれこそ土をなめるような、家を捨て、墳墓の地を捨てて現地に出かけていく人たちの身になって、それこそあたたかい親切心を持ってこの調査をしていただかないと、ただ形式的な、おざなり的な調査だけでは、失敗のもとを作ると思うのであります。ドミニカ移民の問題にいたしましても、政府はその事前調査に対して不十分であったとは考えていない、こういう今国会における御答弁でございますけれども、私は率直にこれが十分であったとは認めがたい。農林省の調査も、現地海協連の調査も、十分であったとは認めがたい。それらの点につきましても、調査員を派遣するということの費用をふやすことは賛成でございますが、それこそ移住する人たちの側に立って深い配慮を持って、土をなめるくらいの微に入り細にわたるところの調査を——これは技術と予算の制約もありますけれども、ひまがあれば現地に乗り込んでいって、現地の人と一緒に住まってやるというような調査をやってもらいたい。この二点につきまして御見解をただしたいと思います。
  169. 高木廣一

    高木政府委員 そういう趣旨で、できるだけ政府も万全を期したいと思います。ただ外地におきます調査につきましては、非常に広範でございまして、土地の問題のみでなく経済制度あるいは政治、あるいは国際情勢の変化すら影響してくるわけで、非常に幅が広うございますので、われわれとしてはできるだけ十全を期したいのでございますが、実際問題といたしましては、相手の国とも話し、われわれの力の範囲内においてできる限り万全を期していく、これに対する予算もできるだけふやすようにはしていきたいと思いますが、調査の幅というものが非常に深うございますので、そういう点も御了承願いたいと思います。  移住船の監督の問題につきましては全く同感でございます。ただわれわれといたしましては、外務省移住局の人が相当次々に出ておりまして、仕事にも差しつかえるくらいでございます。なるべくこれを移住担当のわれわれだけでなく、各省及びその他広げていって、監督をしながら移住者の実態も見、移住地の視察もしていくようにしたいと思います。移住監督は一応役人でなければならないという制約も現在においてはございますから、そういう点で苦労しております。  それから助監督につきましては、今度は、三十七年度予算といたしましては人員もふやしていただいたのでありますが、地方における各県移住担当者を、できるだけ広くこの制度に乗せて、助監督として働きながら現地の実情を知る機会を与えたい、こういうように考えております。
  170. 西村関一

    西村(関)分科員 移住局の方では手が足りないから、ほかの局の人の応援を求めるということも、それは実際的にはやむを得ない場合もあると思いますが、何も勉強していない、移住のことについては何も知らない、そういう人をやったって監督官としての役目は勤まりません。そういう点について、私はもう少し配慮をしてもらいたい。やはり外務省のほかの局の人が行かれることもあえて悪いとは申しませんが、十分な予備知識を持って、監督の資格に値するような用意をして乗り込んでもらいたいということを要望いたしますし、外務省に限らず、今、局長の御答弁のありましたように、ほかの省からも行っていただくと言われますが、やはり従来の例からいくと、外務省が中心になっておる。しかしむしろ農林省の農業移民の方が多いのですから、農林省が監督官を出した方がいい場合があると思う。ところが、どうしても外務省から出さなければならぬということで、資格に欠くるような人が監督官になるといったような例があったと思います。こういう点も今後は改めていただきたいし、適材適所でもって、これはどの省からでもけっこうではありますが、そういう配慮を十分にしてもらわなければならぬと思います。重ねて御答弁を願いたいと思います。
  171. 高木廣一

    高木政府委員 そういう趣旨でできるだけやっております。そうして現在監督となる人で他の局におる者は、最少限度三カ月移住局へ来て見習ってもらうということで厳重に実施いたしております。なるべく御希望に沿うように努力したいと思います。
  172. 西村関一

    西村(関)分科員 前国会の外務委員会におきまして、私の質問に対して、川村政務次官、鶴我政府委員からお答えになりました点でございますが、それはドミニカ移民について、ドミニカ移民のいろいろ問題になっておりまする点については、農林省とか外務省とかいわず、政府全体の責任だという答弁をしておられるのであります。移住局長は御病気で委員会においでにならなかった。川村政府委員は、私の質問に答えて、「ドミニカ地区は石ころで、いわゆる開拓には適しないというようなことであろうかと思っております。しかしながら、いずれに責任があるかといいますと、これはもう双方の、責任でございまして、農林省になすりつけるわけにもいきませんし、外務省といたしましても責任は十分あると思いますので、今後は双方でこの問題解決に努力して、すみやかに帰ってきてもらうことになっておりますから、それの埋め合わせをつけたいと考えております」こういう御答弁をしておいでになるのであります。また鶴我政府委員は「外務省の方といたしましても、海外協会連合会の支部長をして現地を見させておりますし、その点で調査不十分の責任は外務省にもあるわけであります。」こういう答弁をしておられるのであります。私はあえてドミニカ移民の責任の所在を明らかにしようというような考えでこういう質問をしておるのではありません。これはやはり向こうへ参りました移住民の方々の側にも責任がある。これは外務省が言っておられまする点、必ずしも否定はいたしません。しかしそれはさかのぼって言うならば、これを選んだ選任の責任があると思うのです。もしこの人に資格がないとするならば、なぜこういう人を選んだかというところにまでさかのぼらなければなりませんし、先ほど触れましたように、選んだ以上は十分な訓練をして送り出さなければならない。立地条件が劣悪であっても、あるいは国際情勢の変化、ドミニカ国の国内政情の大きな変化等があっても、これに耐えて初志を貫徹するだけの、そういうりっぱな移民を送り出す責任が日本政府にあるはずでございます。それらの点等につきまして、どちらにも責任がある、どちらにも問題があるというふうに私は思う。特にこれを選んだ政府の側に相当な責任があると思うのであります。私はこの責任があるということをここでもう一度再言明をなされ、再確認をなさるということのために、このドミニカから帰ってきた人の国家補償の問題にまで発展するというようなことを顧慮しながら、明確な御答弁をなさることがむずかしいというようなことがあるかもしれないから、そういうようなことを私は要求しているんじゃないのです。これはやはり政府のやることでありましても失敗はある。失敗は失敗としてその教訓をいかに今後の移住政策に生かすかということで、前向きの姿勢をとっていかなければならないと思うのであります。そういう見地に立ちまして、先ほど来私は御質問を申し上げておるのでありますが、先ほどの予算の問題と関連をいたしまして、事前の調査、事後の調査がこの一つの教訓から見ましても十分でなければならないし、選出の方法等、あるいはまたその後の訓練等の内容につきましても、今まで通りではいけない。今まで通りではこういう失敗をまた繰り返すということを案じまするがゆえに、あえてかようなことを申し上げておるのでございますが、私は前国会におけるところの両政府委員の答弁をたてにとって、政府のさらに責任を追及するという意図を持っておりません。それよりも、むしろどうしてお互いにこの非常な不幸な状態になったか、どちらの側に主として責任があるのか、どちらの側に主として問題があるのかということは、今ここで——この間の決算委員会等における参考人としての陳述を聞きましても、これは全く食い違っておる。水かけ論に終わっておる。そういうことを幾ら繰り返してみても、わが国の移住政策というものは前向きにならないと思うのであります。現に問題をはらんで不幸な状態になって多くの人が帰ってきたということは事実、また帰りつつあるということも事実であります。現地に残って、所を得て営農にいそしんでいる人もあるということもまた事実でありますが、同時に多くの人が帰っておるし、帰りつつあるということも事実であります。これらの点につきまして、政府はこのドミニカ移民の教訓をどのように今後の移住政策の上に生かしていくか。また帰ってきた人に対してはただ形式的な、労働省関係あるいは厚生省関係の法規の手続を踏ませることによって保護を加えていくのだ。また国援法を適用してこれらの人たちを送り返したのだから、見舞金等によって若干の手当をしていくのだということで事足りるとせず、これらの人たちも満足するような形で今後の立ち上がりを援助をするということが必要であるし、また同時に失敗は失敗として認めながら、これを教訓とし、わが国の移住政策をより進展せしめるということが私は大切であると思うのであります。この点につきまして外務大臣の御所信を承りたい。
  173. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先般の内閣委員会でも西村さんから同様の御質問がありまして、お答えをいたしたのでございますが、私どもこのドミニカの問題はまことに不幸な事態でございまして、これは主としてやはりカリブ海をめぐる国際情勢というものが、またトルヒーヨの政権をめぐるドミニカ国内の政治情勢の急変、そういうようなことが著しく同国の政治、経済、社会的な条件を劣悪化さした。これは何といっても一番大きな問題であろうと思いますが、これらの点についての諸種の教訓を生かしまして、帰国された方々についてはできるだけあたたかくその立ち上がりについて満足がいくように、政府としても配慮をできるだけやっていく、こういう方針で臨んでいきたいと考えておる次第であります。
  174. 西村関一

    西村(関)分科員 どうも私は内閣委員会における外務大臣の御答弁も、ただいまの御答弁も、そう言ってははなはだ失礼でありますが、外務大臣として、一国の移住政策をつかさどる、そのたばねになる責任者としての国会における御答弁としては少し情味に欠けているのではないかと思う。もう少し情味のある御答弁を願いたいと思うのです。そうしてまたもう少し誠意のある御答弁を願いたいと思うのであります。おっしゃる点はその通りでありましょう。その通りでありましょうが、これを聞きますドミニカから帰ってきた移住民の人たち、またこの移住政策について関心を持っている国民は、外務大臣のただいまの御答弁ではどうももう一つ——先ほど外務大臣がわが国の移住政策は曲がりかどに来ているということを言われましたが、曲がりかどをどのように踏み切るかということに対する外務大臣の確固たる一つの御所信とは受け取れない。どういう意味において曲がりかどに来ていると言われるのであるか、どういう方向に進めようとしておいでになるのであるか。トルヒーヨ政権の瓦解によってドミニカの移民は重大な危機に面した。それは大きな因子であったことは言うまでもありません。しかし先ほど来私がきわめて婉曲に申し上げておるつもりでありますが、政府の責任も決して軽いとは私は思っておりません。これをどう、この足りないところを教訓として前向きにしていくかということを、政府も議会も国民とともに考えていきたいという立場に立って質問を申し上げておるのであります。外務大臣から、曲がりかどに立っているわが国の移住政策をどうしようとお考えになっているか、曲がりかどというのは一体どういう意味なのか、もう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
  175. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 従来移住者を出します場合にも、人口問題の解決というようなことで、非常に数ばかりを考えて移住を考えていたわけであります。ところがそれではもういけないので、われわれとしては質的な移住者の向上といいますか、先方の国に行ってその中堅分子になり得るような技術を持った、農業技術にしろ他の技術にしろ、技術を持った移住者というものを出していく、こういう考えが取り入れらるべきものだと思うのです。そこでその国において中産階級として移住者がりっぱに立っていくような、そういう形の移住を考えるということが私は必要だと思います。しかしこれは政府だけの考えではいけませんので、御承知のように移住審議会がございますので、移住審議会において十分今後の移住政策の基本方針というものを練ってもらう、そうして国として大きな力を持ってこれに臨んでいく、かようなやり方が望ましいと考えておるわけであります。先方の国々において幾ら補助金をくれる、六十ドルとかあるいは百ドルくらいもらったのもあるそうですが、それだけくれるならいいから行こうということでぼっと行くということでは、今後の移住政策はいけない。やはり外国でございますから、こちらの思う通りにもならぬわけでございます。そこでそういう苦難に耐えていく、こういう強い気持もまた一方において必要だと思います。なんでも政府にかぶさるのでなくて、やはり相当の技術を持った人が、その人自身の開拓する気持、それからいろいろなその方々の移住の環境をよくする政府としての施策と意欲、こういうものがマッチし合った移住政策を今後考えていきたい、このように考えております。
  176. 西村関一

    西村(関)分科員 今外務大臣の言われたことは今きまったことじゃない。これはもう戦後のわが国の移住政策が始まったときからきまっていることなんです。今曲がりかどに来ていると言われることはおかしいのです。もうすでにそういう方針で今までやってこられたのです。そのことを曲がりかどに来ておるというが、わが国の移住政策、戦前の移住政策に比べて、戦後の移住政策はそういう点に重点が置かれておるのだと言われるなら、それは納得いたします。今外務大臣の言われたような点は私も触れた点であり、従来からわかり切っていることなのでありまして、そういうような点について移住審議会の議を待つまでもなく、これはもう十分に明確になっている点だと私は考えるのであります。  これ以上外務大臣に伺っても同じような答弁をせられるでありましょうから、次の問題に移りたいと思いますが、移住政策につきましては海外の国際的な機関との協力が必要であると思うのであります。この点につきましてILOの関係におきましては、ILOに対して政府移住政策についてどのような連関を保っておいでになりましたか。ILOのマンパワー・ポリテックスにおきましてこの問題が取り上げられておりますし、一九四〇年の二月には常設移民委員会が設けられましたし、四六年の八月にはモントリオールにおいてその第一回の委員会が開かれております。これらに対しまして日本政府はどのような連関を保って移住政策を進めておられますか。
  177. 高木廣一

    高木政府委員 ILOは移住問題をヨーロッパ人の移住問題に限定して、アジアの移住問題は取り上げないというのが過去の非常に執拗な傾向でございます。そういう関係でわれわれとしてはILOだけでは不十分であるということで、現在ヨーロッパにあります欧州移民政府間委員会、これに食い込んで、そうして将来移住というものを世界的な立場から取り上げなければいけないということで、一昨年来努力いたしまして、昨年五月やっと欧州移民政府間委員会に日本も正式にオブザーバーを派遣することを認められました。これには正式メンバーとして入りたいのでありますが、これも欧州機構であるからという強硬な一部の国の反対でメンバーには入れないのでありますが、これに正式にオブザーバーを出すことができました。  なおこれに日本がオブザーバーとして認められたのが一つの刺激でございましょうか、欧州移民政府間委員会自身が十分ファンクションしていない。最近は海外——欧州、カナダ、ニュージーランド、南米、これらの国々に欧州移民がほとんど行かないという不満から、この委員会を世界的機構にすべしという動きもございます。われわれといたしましては、これに積極的に働きかけたい。またそのほかに宗教団体でございますが、新教、旧教それぞれ移住に協力しているものもございますので、これにも積極的に働きかけるということをやっております。
  178. 西村関一

    西村(関)分科員 ILOはこれはヨーロッパだけのものでないことは言うまでもありません。これは国際的な機関であります。国連の外郭機関でありますから、当然アジアの問題、日本の問題についても——従来はそうでしょう。従来はそうでしょうけれども、現在におきましては国連に加盟しているところの日本といたしましては、当然この問題を取り上げるべく努力をすべきではないかと思います。またただいまの委員会に対してオブザーバーとして参加するようになったということもけっこうであります。あるいは世界教会会議のキリスト教の新教の移住政策の特別委員会に対して働きかけるあるいはカトリック、カトリックは特に法王が移住問題に対して教書を出しているくらいでありますから、これも熱心に中南米諸国に対するところの移住問題に対して関心を持っている。これらに対しても国際的な連関において、日本移住政策を伸長していく上に働きかけていくべきだという局長の御答弁でありますから、今後これを私は御期待申し上げたい。今田までどのような働きかけをなされたということに対して私はまだ寡聞にして承知いたしておりませんが、今後にこれを御期待申し上げたい。外務大臣もしばしば外国においでになるのでありますから、特にこれらの機関に対する連関を密にしていただくということをお願いを申し上げたいと思うのであります。  次に、移住の問題はただ単にわが国の利益を考え——イタリアなどは海外移住民の送金によって相当なドルをかせいでいるというようなこともありますが、そういう出かせぎ的な考え方で日本移住政策はとられてはならないし、とってはおられないということでありますが、しかしいろいろな意味において日本が国際協力の場において、移民を通じて世界平和に貢献していく、また人口が希薄であり、開発を求めておる諸国の諸地方に対して、これに応じていくようなりっぱな移民を送り出すということによって、それぞれの国に協力をし、ひいては世界平和に貢献するという、この大目的に向かって移住政策を進めて参ります上において、異民族との同化の問題があると思うのであります。そこに定着をして、それぞれの国の民族と同化していくということがやはり考えられると思うのでありますが、そのような問題についてはどういうふうに考えておられますか。
  179. 高木廣一

    高木政府委員 全く同感でございまして、実はその樹化の問題につきましては、昨年はカトリック移住委員会ですか、カナダで開かれまして、この問題を専門に検討いたしました。最近におきましては同化というよりもむしろインテグレーションといっておりますが、行く国民のいいところを残しながら相手の国民と協調していくというラインで施策を進めるべきであるというのが大体の世論でございますが、われわれといたしましても、そういうラインで移住者の指導に当たりたいと思います。
  180. 西村関一

    西村(関)分科員 私は、先ほど井手分科員も触れられました振興会社並びに海協連の運営について、若干お尋ねをしたいと思っておりましたが、きょうはもう時間がありません。いずれ外務委員会等におきまして、機会を得て、もう少し細部にわたってわが国の移住政策について御質問申し上げたいと思います。きょうはただ移住政策の大本と申しますか、わが国移住政策の根本問題と申しますか、そういうような点について、私の問題点といたしております点について政府の御所信を承ったのでありまして、今後これを起点といたしまして、もう少し細部にわたって移住政策全般についてお尋ねをいたしたいと思いますから、それはまたの機会に譲らしていただきたいと思います。  この機会に、外務大臣が御出席になっておりますから、最後に別な問題を一点だけお尋ねをいたしまして私の質問を終わりたいと思います。  それは前の国会のこの予算分科会におきまして私がお尋ねいたしました川北友弥君のケースについてであります。私はあの不幸な状態に置かれて、今なおサンフランシスコ湾口のアルカツラ島連邦立の刑務所に反逆罪の汚名を着せられてつながれておりますところのこの川北友弥という青年の釈放について、国会の各党各派の皆さん方の御協力を得て、前アメリカ大統領アイゼンハワー氏に釈放嘆願書を提出いたしました、また先般ケネディ司法長官が日本に来られましたときにも、清瀬議長の協力を得まして、清瀬議長とともに、ケネディ長官にケネディ大統領に対する釈放嘆願書について特に助言方をお願いをしたのであります。私は前国会の本予算分科会におきまして外務大臣にもお願いをいたしました。多くの署名が民間からも集められて、郷里の三重県、また大阪府等におきましては、非常にたくさんの署名が集められて、その釈放嘆願の署名が先方に届けられたはずでございます。外務大臣から、公の席上においては、大統領との会談その他の会談においてこの問題を取り上げることはできないけれども、私的な会談もできると思うから、できるだけの努力をしてみよう、こういう御趣旨の御答弁をいただいたのでありますが、今日まで何らそのことについてどういうふうなことをしたということを、個人的にも公にも承っておりません。ちょうどこの機会に、先般も予算分科会においてこの問題について私は質問をいたしましたので、その後アメリカにおいでになりましてどういうふうにやっていただきましたか、その後もどのように御努力をいただいておるか——清瀬議長が、一応議長という立場でケネディ長官を迎えられて、今度は公式の会見が終わったあと、その場で、私は一弁護士として一弁護士としてのあなたにお願いをするという前置きで、川北君の問題をあの老議長が涙を流さんばかりにして話をしてくれたというこの誠意に動かされたのであります。私は、外務大臣におかれましても、いろいろ国のお立場上公の席において、あるいは内政干渉に類するような疑いを持たれる川北ケースについて、アメリカの当局に話をするということはお控えになることはよくわかりますけれども、しかし一個人としてできるだけのことをしようということを言っていただいたし、池田総理に対してもそのように自分からも申しておくということを言われたのでありますが、そのことにつきまして、一つはなはだ申しわけありませんが、この前もこの予算分科会で聞きましたから、きょうはこの機会にそのことについてお答えいただければ幸いでございます。
  181. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 川北友弥君のケースは、これは陪審院がアメリカ国民としての友弥君をさばいたという形になっております。従いまして、外務大臣としての私の立場でこのことについて申しますことは、今お話しのように内政干渉にわたる、こうきめつけられる場合もあるわけでございますが、先ほどからお話にありましたように、私も昨年アメリカに参りましたとき、先方の最高の責任者の人にこの話を別室でいたしました。それについての回答はまだもらっておりません。以上であります。ただ、だれにどう言ったということは、そういうことを私今ここで申すわけにはいきませんが、申し上げましただけのことはいたしました。
  182. 西村関一

    西村(関)分科員 けっこうです。
  183. 中村幸八

    中村主査 それでは午後三時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時十七分休憩      ————◇—————    午後二時五十九分開議
  184. 中村幸八

    中村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管に対する質疑を続行いたします。上林山榮吉君。
  185. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 外務大臣立場は、私はよくわかっておるつもりであります。同時に、国会議員がどんな立場にあるかということもあなたは御承知かと思うわけであります。そういうような、話せばわかる間にありますけれども、どうしても当議場を通じてお尋ねしておかなければならない重要な問題があるわけでありますので、これからお尋ねをしていきたいと考えます。  まず第一点は、外交は、言うまでもなくすべてのものが外交なんですけれども、簡単にこれを分けますと、一般の外交と経済外交に観念的に分け得ると思います。私はその意味では、一般の外交も、また経済外交も、それぞれ特徴を持って、それぞれ重要であると、こういうように前提として考えるのでございますけれども、今日の世界経済の動き方からすれば、たとえば三年前、私がEECの問題を予算の総括質問でお尋ねしたころは、政府もわずかながらの関心は示しておられたが、今日ほどの関心をお示しになっていなかった。あるいはまたアメリカも、今までは日本立場を非常に理解しておったようでありますが、今日だんだん輸出、輸入の貿易の規制などをやったりしておる。ヨーロッパやアメリカはそういう状態である。一方、中共もしくはソ連の状態も、中共等が政経一体を唱えるために、急速に前向きの姿勢をとりながら、これが具体的に実現をしていっておらぬ。東南アジアは後進国過ぎて、どちらかといえば今のところ日本ができるだけ援助をしていかなければならぬという立場にある。こういうように、世界の経済の状況というものは時々刻々変化をしておる。これに対処するには、日本の経済外交は今まで以上に思い切った処置をとっていかなければならぬ段階にきておるのだ、こういうふうに私は総括的に考えるものでございますが、こうしたような情勢に対処されて、具体的にどういうような経済外交の手を打っておるのか、これをまず承っておきたいと思います。
  186. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せのように、経済外交というものは非常に重要になっております。ことにわが日本が繁栄するためには、どうしても輸出入貿易に依存しなければならない、こういう宿命を持っておるわけでございます。従いまして、日本はまた輸入をしていかなければならない。輸入をするためには輸出をしていかなければならない。その輸出をうまく伸ばし得るかどうかということは、今日のわが国の繁栄の基礎だと考えておる次第でございまして、この点は上林山先生の言われたことに全く同感でございます。お言葉にもありましたように、世界は動いておるのでありまして、まさにベネルックス三国が共同して、お互いの国税障壁をなくなしていくということをいっておりました時代に、今日のようにEECが強大になるということを的確に把握しておった人は少ないと思うのであります。まさに政策のかじのとり方によっては非常に大きく伸びもするし、あるいはその反対にもなり得る、こういうことで非常に重要と考えておる次第であります。しからばどうして経済外交を強力にするかということでありますが、私どもといたしますると、まず、日本は外交場裏に出おくれた、これが非常に大きなことでございまして、そのために日本に対する認識が十分でない国がたくさんあるわけでございます。ことにヨーロッパの各国において、日本に対して貿易上いろいろ差別待遇をしておる国がございます。これらの国に対して、日本の今日の経済の状況、あるいは日本の国民の考え方というものを的確に知らせることが非常に必要でございます。その意味からいたしまして、外交ルートを通じたり、あるいは先方の要人に日本に来てもらう、いわゆる招待外交と申しますか。日本の重要なる施設等も見たり、重要人物に会ったりして、よく日本の実情を知って帰ってもらうということに、できるだけ努めております。やはり政府の外交に関連いたしますことですが、民間の接触というようなことも非常に重要であると考えます。私どもとしましては、世界じゅうのあらゆる国に貿易を伸ばして参りますためには、その国、その国の持っております特殊事情をしさいに調べて、きめのこまかい輸出振興策をそれぞれの地域あてにとって参るというように考えております。たとえば、東南アジア等についても、その資本不足とか、あるいはモノカルチャー、そういうものに対してどう対処するか。これは開発輸入、経済協力をしたり、いろいろ技術指導をしたりというようなことによって、今後輸出をふやしていくというようなことを考えております。  いろいろ申し上げますと、長くなりますから、ごく大づかみに申し上げまして、私どもの考えを申し上げたわけであります。
  187. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 外交一般、特に経済外交一般に対する外務大臣のお答えは、これは一通りのお答えを確かにしておると思います。先ほどあなたの答弁の中に、招待外交をして、政府関係、あるいは民間関係の者によく日本の実情を知ってもらうことだ、その他だんだんと技術援助の問題、経済協力の問題、あるいは経済情報を的確につかむというような問題等についてお話がございましたが、前提としてはまさにその通りなんです。しかしながら、実際はそういうふうに行なわれているのか、私は私なりにそれぞれの国を四、五回にわたって見てきております。また日本の国民の一人として、日本の経済の問題についても重大な関心を持っておるつもりですが、そういう立場から考えまして、私はその経済外交推進の具体的な態勢というものが整っていないのじゃないか、たとえば、外地に参りまして、ハンブルグとか、ブラッセルなどでは、なるほど在外公館の職員の中に、EECの問題等についてきわめて熱心な勉強をしておる諸君も見ましたが、概して、たとえば日本の国際競争の入札の場合などに、はたして的確な経済情勢をつかんで、日本政府ないしは関係業者にこれを伝えておるのかどうか。私は、それぞれの入札のできなかった理由、あるいは一番札でありながらもこれが落札できなかった国際的な背景、これはいろいろの事情があると思いますが、しかし、こういう事情を的確につかみ得ないということは、経済情報を的確につかんでおらぬ、それはなぜかということです。私は、外務省の人事行政というものにやはり一つの欠陥があるのではないか、こういうように考えます。なぜかなれば、大体今までの外務省出身の外交官というものは、先ほど劈頭に私が申し上げたように、一般外交というような問題についてのみ経験が深い。経済外交という問題については、一部の人を除いてはあまり深くない。そこで外務省と連絡をとって各省が参事官等を派遣するわけでございますが、この参事官たるや、率直でまことに恐縮ですけれども、一年ぐらいはその国の言葉もろくにできない。言葉もろくにできない者が1中にはできる人もおりますけれども、私が平均して考えると、そういうような人々が、はたしてその国の事情というものをよくわかるのかどうかということです。  それから第二点は、これは第一線で活動をする在外公館の職員の人事の問題であるが、大公使は外務省以外からの人を何人ぐらい今採用しておられますか。私は外務省で外交官として育てた人々が七分通り大公使に出ていかれることはけっこうだ、しかしながら民間人の相当の有力者を一つ起用いたしまして、民間外交あるいは経済外交、ことに経済外交というような方面に民間の有力者を起用していくというところに、外務省の伝統を思い切って修正をしていく、七分通りは古巣で育った諸君でいいが、あと三割ぐらいは、あるいはときによって四割ぐらいは民間人を起用していく、こういうふうに、一つ思い切った人事の交流というか刷新というか、そういうことをおとりにならなければ、国際的な経済情報というものは的確にとらえられないのじゃないか、こういうように私は考えるのでありますが、これに対するお答えを願いたいと思います。
  188. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まず第一に、経済外交というものを重視する建前から、全体の外交官の頭をそちらの方に強く向けろというお話、全くその通り私も同感でございます。お言葉にございましたように、他省からも、ことに通産省が多いわけでございますが、いろいろその専門家に入っていただくのみならず、外務省としても経済専門家を養成する、こういう建前でいろいろ若手をその方面に向けております。中にはなかなかりっぱな人が最近出てきていると私は確信いたしておるのでございます。また他省から来ていただいておる方もだんだんになれられて、何回も外務省へ来たり通産省に帰ったりまた来たりというようなことをしておる場合には、非常に言葉の点でもりっぱになっておられる方も多いようでありますが、全体としてはいまだしということはお言葉の通りだと考えまして、せいぜいその方向で努力したいと考えております。  それから一般の経済界の状況を会社の方々と打ち合わせるために、月一回、会社現地の代表者の方々と会議を開くようにということを指導いたしております。ただ一社とあまり深くなりますと、これまたその職責上どうかと思われる点もありますので、この点には若干の制限があるわけでございます。  それから大公使の中で民間人を起用せよ、これも大へんけっこうな御意見だと思って、実はそのように心がけております。ところが実のところを申しますと、なかなか民間のいい方においでを願うことはむずかしいのでございます。まず第一に言葉の制約がございますのみならず、民間の会社でほんとうにいい方は、やはりその会社として大事な者ですから、交渉いたしてみてもなかなかいざという段階になるとむずかしゅうございます。そうかといって、先方で非常に期待している方には残念ながら当方でいまだしと思う方もございまして、現在民間からの方は四人大公使をしていただいているだけでございます。しかしいい方があればこれを起用するにやぶさかではないわけでございます。全般としては御意見の通り、もう日本政府の者が、といっても政府だけでやれるものではないと思いますが、大へん多いわけであります。要するに民間の方とも一体になりまして、お知恵も借りながらわれわれとしてはできるだけのことを努めていきたいという態勢で動いておる次第であります。
  189. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 大公使の場合は、言葉ができたほどいいに違いはないのでございますが、しかしこれは参事官や書記官と違いまして言葉はそれほどたんのうでなくても、私は日本の大公使として仕事は十分できるものである、問題は心がけの問題であり、どういうふうにして取り組んでいくかというその熱意にあるのであって、一つの条件といえば条件であるが、それを主体に置くべきものではなかろう、こういうように考えます。困難な中にも一つ大公使の数を、思い切って民間人を起用するという方針で今後さらにお進めをお願いしたい、こういうふうに考えます。  そこで、大公使及びおもなる参事官とか書記官、こうした者がその国に在勤する期間は平均して一体どれくらいですか。
  190. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 平均して大体三年くらいかと心得ております。
  191. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 三年ですと、先ほど申し上げたように大公使に限らずあるいは参事官や書記官に限らず、最初の一年間は、それこそ極端に言えばもう手探りで何か仕事をしておるという程度のものだと考えられるのです。だから外務大臣、これは私は国際会議でもそうだと思うのですが、のっぴきならぬとても大事な国際会議は別として、一般の国際会議は、メンバーをかえるともう名前から知ってもらわなければならないという非常なるハンディキャップがつくわけですね。ましてやぶっつけ本番にいろいろな問題を提唱し、交渉していくということは非常に困難な場合が多いわけですね。だからそういう意味から、大公使にしてもあるいはおもなる在外公館の職員にしても、私は平均三年などということでなく、特別の事情のある場合、たとえば健康上すぐれぬとか、何かその個人の理由の場合は別として、あるいは日本に一人か二人しかいなくて、外務省にそうした人はどうしても帰ってもらわなければならぬとか、どうしてもほかの国に行ってもらわなければならぬという特別の場合は別ですが、大体の方針は少なくともその国に五年くらいは置かぬと、ほんとうの外交の成果を上げていくことは不可能である。私は四十カ国くらいしかまだ歩いてみないからわかりませんけれども、大体そういうようなことが言えるような感触で帰って参りました。具体的に申し上げると角が立ちますからこの点については多くを申し上げないが、そういう意味において、少なくとも同じ国に五年くらいは置かぬと、日本人がその国に行ってその国の実情がわかるものではない。ましてやお互いに理解し合って優秀な成果をおさめるということは不可能だ。だからこういう意味において、もう少し在外機関は、特別の事情のある者以外はたらい回し人事をやらない、少なくともそういうような基本方針を打ち立てていった方が私は日本のために有利だ、しかも人物経済の上からもプラスになる、こういう考えを持っておりますか、いかがです。
  192. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これもまた同感でございます。やはりお言葉にありましたように、国際会議などではどうしても顔を知り合っておるということが非常なプラスになると思います。私、今までの平均を申し上げたのでございまして、これは人によっていい人はやはりそこで存分に働いてもらうという方針をとることを考えております。ただ、全体の人事行政をあまりよどませまして、いろいろな点で支障のある者があまり長くおりますと、下がぬれむしろをかぶせられたように蒸れて参りますから、その辺の風通しを考えて人材は簡抜するということでいきたいと思います。
  193. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 私の説に大体ピントを合わしてお答えしたばかりでなく、そういう方針で実際やっておる、ただあまり長くなるとボウフラがわくおそれがあるからそれを考えておるという御答弁でありますから、これ以上申し上げませんが、私は少なくとも平均五年ぐらいは置かれるということが適切であろう、こういうように考えるので、これ以上申し上げません。ただ、書記官やあるいは参事官を発令する場合、極端に言えば発令の前日まではわからない。これは外務省の非常にいいところかもしれませんが、また見ようによってはこれが外務省が脱皮しない、あるいは準備態勢の足らない非常に悪い点のようにも見受けられる。私はさっき申し上げたように、経済的に効果をおさめるためには、やはり一年くらい前に、お前は今度ドイツに行くんだ、お前は今度フランスに行くんだ、お前は今度パキスタンに行くんだ、こういうように一年前に——大公使は別として、その下の第一線で働く諸君に対しては、それくらいの準備期間を置く。語学も相当できるようだが、もう少し語学もしっかりやってくれよ、あそこは経済的にこういう問題があるから、そういう問題も一つ勉強してくれ。一年前に準備期間を与えて、その国の知識あるいは語学が下手であるならば、その一年間に少なくともそういうような準備態勢をとって、準備してから赴任をする、こうすることが適切なやり方ではないか。先ほど申し上げましたように、一年間はこれは何もできませんと言っているのが、在外公館の諸君の述懐でございました。それは英語は少しできても、あるいはフランス語が少しできても、その国の言語がわからぬ、わからぬので実際われわれは一年間はほとんど何もできないというのがほんとうです、こう言っておる。だから私は、ことにほかの省から来た方々の中に、大臣が言われるように、人物としてはりっぱな人が来ておりますけれども、今言ったような意味においてやはり準備態勢が足らない、あるいは外務省自身の人事の問題にしても準備態勢が足らぬのじゃないか、こういうように考えられる。これは御意見があれば承りますが、意見がなければ、御参考に願えれば幸いでございます。  その次に申し上げたいことは、私は海外渡航関係について、少し率直で恐縮でございますけれども申し上げてみたいのであります。  海外渡航に対しては、これはわれわれ国会議員でさえも外務省の不親切ぶりを考えておる一人でございますが、ましてや一般国民、一般の渡航者は、われわれよりもその不親切さを考えておられるのじゃないか、こういうように私は考えるのであります。たとえば旅券を交付する場合に、あなたはどこどこの国に行くのだということがわかっておるんだから、その場合はこれこれのいわゆる予防注射をしなければならぬ、こういうようになっておるのでありますから、これはやはり事務当局が旅券を交付する場合に、そういう予防注射を完全にしたかどうか、そういう忠告を与えるべきである。あるいはまた、そういうふうにしてやらなければ、外地に行っても非常なる迷惑をこうむる。私もその被害者の一人でございますが、そういうような意味において、親切が足らぬのじゃないかと思います。これは外務大臣、親切は十分足りている、一般国民も満足しておる、こういうようにごらんになっておりますかどうか、この点をまず伺いたい。
  194. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどのお話も大体同感でございますが、一年前に予告というのはちょっと長過ぎるように——これは上林山さんと非常に親しいから申し上げるのでございますが、ある時期を置いて私ども異動をいたします場合には、大体次の任地を言いまして、そうして当人の納得の上で喜んで行けるような、省内においても親切心と申しますか、そういうものが望ましいと考えて、さように最近はいたしておるつもりでございます。  今お述べになりました渡航の問題についても、外務省として配慮すべきは当然でございますが、その際に十分親切心を持ってやるようにすることはこれは当然のことでございまして、いろいろ私どもも手落ちもございますことと思いますので、そういう場合は率直におわびを申し上げ、また親切に皆さん方に接するように十分省内を督励いたしておるつもりであります。  実は、この機会に私も率直におわびを申し上げたいと存じますが、先年私もヨーロッパに行っておる最中のできごとでございましたが、あなたの場合非常に不愉快な目におあいになりましたので恐縮いたしております。帰って参りまして、さっそくその国の大使を私自身招致いたしまして、こういうことははなはだ不快なことであるから、以後かかることのないように厳重な話をいたしておきました。さらにそれと前後いたしまして、あなたに対する問題も先方では解消したわけでございます。この点につきましては、ちょうどこの機会に申し上げさしていただきたいと存じますが、黄熱病の予防注射証明書を上林山先生が御所持をされておらなかったことが原因になっておるのでございます。これは昭和三十四年七月に予防注射を受けておられる事実を、私からの電報によって証明いたし、これは私留守中でございまして、外務省としてはかったわけでございますが、そうしてまた現地の大使館当局は上林山先生が早急に検疫所から出所できますように、先方に対してあらゆる努力を行なったのでございますが、結局四日間御迷惑をかけたということは、非常に遺憾に存じておる次第でございます。外務省といたしましては、渡航先の予防注射の必要の有無については、できる限り旅行される方に周知せしめるように努力しておるのでありまして、黄熱病の予防注射についても、昨年、五月エチオピアの大使からの報告に基づきまして、その方面の旅行者に対しては黄熱病の予防注射が必要である旨を旅行エージェントを通じて周知せしめていたのでございますが、あなたの場合、外務省の構内の検診所で予防注射を受けられました際、若干の行き違いが生じた模様でございます。黄熱病の予防注射は、外務省にある診療所では取り扱われませんで、羽田の検疫所でなければ行なえないことになっておりますが、先生が外務省の方で注射を受けられました際、注射は全部終わったのかとお聞きになりました際に、検診所の者が、全部終わりましたとお答えいたしたために、この黄熱病の注射を終わられたものと了解されたことかと存知まするわけであります。もちろんその検診所の方において悪意があったわけではないわけでございまするが、黄熱病の予防注射は羽田でなければできないということを特に申し上げ、御注意をする、それだけの心づかいがなかった点は、はなはだ遺憾に思っておる次第でございます。外務省といたしましても、今後こういうようなことがないように十分注意いたしまして、渡航者に御迷惑のかからないようにこの周知徹底に努めておるつもりであります。これはつつしんでこの席をかりておわびを申し上げます。
  195. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 私は、自分が被害を受けたからここで私憤をぶちまけて何もあなたにやかましく言おうという考えはございません。ただ国会議員であるわれわれでさえこういう目にあうのだから、一般の人たちはもっとひどい目にあっているのじゃないか、こういう気がするから御忠告申し上げるわけであります。外務省では、どこに行くという国の名前も全部書いて、この国に自分は行くのだ、これに必要な注射をしてくれろ、こういうことを出したわけなんです。だから、これに書いてあるのはもう全部済んだんですかと言ったら、もう全部済んだから一つおみやげを頼みますよ、注射はもう何もほかにする必要はない、どうぞ行っていらっしゃい——あなたが言うように、これは悪意はなかったと思う。そういう言葉まであったのですから。悪意はないが、注意力が足らなかった、その意味において不親切だ、こう私は申し上げているわけです。しかも私は、それよりも、外務大臣、もっと重大なことをお聞きしたいのは、黄熱病の注射は六年間は有効なんですよ。だから、そのときしなくても、あなたはこの前にしておるから、それを持っていかれればいいんですよ、こうおっしゃって下さればいいし、しかも日本外務大臣が今お読みいただいたような趣旨で、確かに二年何カ月か前に黄熱病の注射をしておるのだ、こういう外務大臣の電報を、向こうの外務省が認めないというのは、国際慣例上あるのですか。日本外務大臣の公電というものは、そんなにエジプトあたりに通用しないものかどうか。私は、これは日本の外交上の一つの問題として考えてみなければならぬのじゃないかと思うのですが、国際慣例上、あるいは国際法上、これは条約によって黄熱病その他の注射をすることになっておるわけですが、それとの関係はどうなるのですか。私は、これは単なる法規だけの解釈からいってもどうかと思う問題だが、まして国際慣例からいって、日本外務大臣がわざわざ証明した電報を打ってそれが全然受け入れられないというのは、このまま同国の友好関係を持続するために、そんなことは言わぬ方がいい、こう思っておられるのか、友好関係と別途にしてただすべきものはやはりただすべきではないか、こういうふうに考えるのです。これは決して私の私憤ではございません。そうではなくて、そういうような意味でのお考えはございませんか。
  196. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の名前で、上林山さんが昭和三十四年七月に予防注射を受けておられる、こういう電報を外務省は打ったわけでございます。ところが、私帰ってきて、帰ったその日でございますが、こういう事件があって、それと前後して、どうもまだお出になってない話を伺ったものですから、私は直ちにさっきお話し申し上げたような手続をとりまして、厳重に先方の責任者にこのことを談じ込んだわけであります。これのためですか、あるいはその予防注射の証明が適正に検疫所に取り次がれたためでありますか、その点は先方の事情でございますが、とにかく今までのことは水に流してということで解決したわけでございます。従いまして、結局私の名前の電報によって、検疫所にあなたがとめられたという事態がなくなったのだ、こういうふうに思うわけでございます。いずれにしてもはなはだ遺憾な問題でありまして、これらの、外務省にございます医務局において、黄熱病の注射の証明書を持っていらっしゃらないと、このアラブ連合あたりはそういう問題がありますよということを申し上げれば一番よかったのでございましょうけれども、悪意はないので、今お話にもございましたように、非常に和気あいあいのうちに、みな終わりましたというようなことを申し上げたことは、これは確かに私どもの方の手落ちなんでございますが、また一つその程度にしていただきたいと考えておるわけであります。
  197. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 大臣が率直に遺憾の意を表せられておりますので、これ以上私も申し上げませんが、ただ一言申し上げておきたいことは、外務大臣が打った電報でも、向こうはそれによって釈放はしなかったのです。私はあの砂漠の暑い収容所に四日入れられておったんだが、大臣考えてみて下さいよ。あなた方の外務大臣としての旅行と違うのですよ。それと比べて、あの砂漠の中に四日間暑いときに入れられておってごらんなさい。これは最初からほかの国に行くのならばここにはとめませんよ、こう言っておったのですよ。けれどもここの国におるならばということであったから、あなたにそういう連絡をしてもらった。これは現地の下級職員の諸君はよくやってくれました。大使のやり方は必ずしも適切ではなかった。おどおどとして、向こうの外務大臣とか高官に対しては率直な交渉をなし得なかった。これは日本の外交としては卑屈じゃないか。だから、国際慣例としてはどうなっているのですか。日本外務大臣が証明したものは、相手の外務省なり政府がこれを了として直ちに——私がほんとうの違法をしているなら別ですよ、私は違法はしておりませんよ、違法はしているんじゃない。注射をして、法律を守っているんだ。そういう意味からいってこれはどうだろうか。まあ、あなたがこれ以上言うなとおっしゃるからこれ以上言いませんけれども、ピリオドを打つ意味で、日本外務大臣が公電を打ったら、これは大した問題じゃないじゃないですか、そういう問題が、証明したにかかわらず釈放されないというのは、上林山個人の私憤ではなくて、日本の国民として、日本の外交どこにありやと思いますよ、ほんとうに。この点は、私とあなたは個人的には親しいんだから、あなたの言わんとするところもよくわかっている、わかっているけれども、あなたが外務大臣をしておられるものだからこういうふうに言わざるを得ないわけで、この点は一つ会議員、一般国民に限らず、もっと渡航に対しては御親切に願いたい、こういう意味を申し上げて、これにはピリオドを打ちます。  その次には、私は移民の問題について大臣にざっくばらんにお尋ねしたいのです。どうでしょう、一般外交もやらなければならぬし、経済外交も非常に忙しくなってくるわけですが、移民の問題はもう外務省の所管を他の適当な省に移された方がよくはないかとすら思うのでございます。これは決してあげ足をとる意味じゃなくて、私はこれは建設的な意味で申し上げている。だからもうそういう問題は、外務省は不適当じゃないか、ほかの省にやらしたらどうだ、こういうふうに思うのですが、まずその御見解を伺ってから質問をいたします。
  198. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今後も、大いに移住を推進しなければなりませんけれども、この問題で、やはり一番重要なのは、相手国の受け入れ態勢、これがどうなっているかということを責任を持って見なければなりません。その意味から言いますと、やはり外務省以外には、現在の立場ではそれをやり得るところはないと考えざるを得ませんので、外務省として、もっと責任を持つ体制を強化することこそ必要ではないかというふうに考えておるわけであります。ただ、移住という事柄の性質から言いまして、これはほんとうに役所がやるのがいいのか、あるいは民間の移住というものに真に情熱を傾ける方々が寄って、ある機関を作られて、これがやるのがいいのか、外務省としてそういうものに対する外務省としてと申しますか、あるいは政府としてそういうものに対する指針を与えるような形に持っていくのがいいか、これは今後の非常な研究問題だと思うのです。しかし、少なくとも役所に関する限りで考えますと、現在の機構では外務省がやるのが一番適切なのではないか、こう思っているわけであります。
  199. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 やりようがよければ、おっしゃるように外務省でもかまわぬわけでありますが、今のようなやり方では、外務省よりほかに適当な省がないかなと、これは移民問題を真剣に考える諸君は、みなそういう考えを一応抱くのが最近の実情だろうと私は思うのであります。  まずお尋ねいたしますが、ドミニカの移民が難儀苦労して向こうに行ってみたが、着のみ着のままでまことに気の毒な状態で日本に帰ってきたという問題、これは外務省の調査が粗雑であったのか、あるいは現地のいろいろな関係でそれがうまくいかなかったのかは、それぞれの原因があろうと思いますけれども、せっかく日本を離れて、非常なる決心を持って向こうに行った、ところが、非常なる打撃を受けてやむを得ず再び日本の地を踏んだ。この一事を見て、はたして外務省が適切に移民問題を取り扱っているか、こういうことが言えるのであります。私は、一般外交は別として、あるいは最近の経済外交は別として、移民問題などは次の次にお考えになっているのじゃないか、あるいはまた手が足らないのじゃないか、そういう意味から次の次にしてしまっているのじゃないだろうか、こういうふうに考えるのですが、この点いかがですか。
  200. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 移住につきましては、従来各役所の間で、一体どこの役所がほんとうに責任を持ってやるのかということが、若干不明確であったように思うのであります。そのことが、だんだん各省ともにその責任を回避するような結果を生んでおりまして、一番迷惑をされたのは移住者それ自身であるというようなことの結果になりましては、これは大へんなことでございますから、私ども最近におきましては、外務省、農林省その他の役所との間に十分話し合いをいたしまして、今後移住は、外務省が責任を持つという体制をはっきりつけたわけでございます。三十七年度予算でも、従来ついていなかった海協連の地方支部の予算も、外務省に今度はつくようになりました。責任体制のあり方というものを明確にいたしたわけでございます。  ドミニカの問題が出ましたが、あれについては農林省の中田技官が現地を調査されて、これでよろしい、こういうお考えに基づいて出発しておるのでございますが、今後やはり外務省として——これは決して農林省がおやりになることがどうこうという意味じゃございませんで、外務省として、今後は十分責任を持って、外務省の調査によって、これでいいというところまで調査して御迷惑をかけないようにしたい、こう考えておるわけであります。
  201. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 大臣が、各役所の連結が不十分のために、その大きなしわ寄せが移民にきて、しかもそれがわざわざ日本に帰ってこなければならぬということは、これはまことに気の毒だから、今後は連絡を密にしよう、こういうお話です。これは一通り答弁として、そうおっしゃる以外に方法はなかろうと思う。けれども従来も、あなたが外務大臣でない時代も、やはり移民問題でいろいろなことがございましてそういう質問をすると、今あなたが答えたそのせりふを、委員会で聞いたことがちょいちょいあるわけですよ。それが一向に直っておらぬのです。今もあなたがお答えになったように、農林省の技官の調査を信頼して、外務省は何も調査をしなかった。在外公館は何をしているのですか。何のために在外公館があります。だからそういうような意味で、これは外務省がやるならもっと真剣な体制を整えなければならぬし、今のままでやるとするならば、農業移民は農林省に、あるいは工業、商業的移民、そうしたような技術援助のための移民は通産省へ、ただその外交折衝というものを分担して外務省がやればいいじゃないか、こんなにすら思うわけであります。私はドミニカの移民が、調査が疎漏のために帰ってきた、ただ気の毒だでは済まされないと思う。この問題は、帰ってきた者に対する政府としてあとう限りの経済的援助、精神的援助、法律がないならば立法して、この責任は、最終的に外務省が中心になって政府が負うべきである、あるいはいたわりの心、手を十分に差し伸べるべきである、私はこういうように考えますが、いかがですか。
  202. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それはお話しの通り、私どももさように思っておりますが、今お言葉の中で、外務省は調査をしなかった、公館はどうしたとおっしゃいましたが、現在では各地の公館がだんだん整備されておりますが、昭和三十一年当時でございますと、人手その他も不足だった点も、現在に比べればあるのであります。今後は移住関係の調査等についても、先ほど申し上げましたように、外務省の責任において万全を期したいと思っております。  またドミニカ問題は、この席でもいろいろ申し上げておったことでございますけれども、何といいましてもカリブ海をめぐる国際情勢の変化と申しますか、ドミニカがラテン・アメリカ諸国から経済断交を食った。これが大きなことでございますし、国内的にも、トルヒーヨ政権がああいう形になりまして、非常に国内政情が激しく変化したことも大きな原因でございまして、私は中田技官の調査が疎漏であったという意味を、決して申し上げておるわけじゃございませんで、そういう国際的あるいは国内的な移住地における変化、これを何といっても非常に大きな要素として考えなければならぬわけでございます。しかし、一たん志を立てて移住された方が、志半ばにして帰らざるを得なかった。これについては、従来の国援法というものを適用したことはなかったのであります。移民政策は棄民政策などといわれて、あなたも御承知のように、サンパウロあたりで全移住者が、マラリアのために倒れたというようなこともございましたが、今後はそういうことがないように、そういうことがあった場合には国に引き取る、そういう国援法の適用をあえてしたわけで、われわれといたしましては、そういう方に対してはできるだけあたたかく、再起されるように御援助を申し上げたい、かように思っておるわけであります。
  203. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 その事情は私も承知しておりますが、そういう場合に、たとえばアルゼンチンなどとは移民協定もできたわけでありますし、ブラジルでは、僕はブラジルの移民総裁に会ってきたのですが、それによると、農業移民だけではなくて、工業移民という言葉は適当かどうか知らぬが、あるいは商業移民という言葉は適当かどうか知らぬが、そういう種類のものも一つ加えてこれからはやってもらえないかと言ったら、日本人は非常に正直だから、農業移民では成績を上げていただいておるから、そういうふうに考えていこうという、これはもう数年前から言っておったのであります。そういう意味から考えまして、日本に帰ってくるというのを帰さないで、そこで実態調査をして、アルゼンチンなりあるいはブラジルなりに行く希望者があるならば、受け入れ態勢はこういうように正確である。その途中の援助はこういうふうに日本政府はしますぞ、こういうようにできなかったものかどうか、この点。
  204. 高木廣一

    高木政府委員 移住局長からかわって御返答申し上げます。  中南米各国への転住につきましても、われわれの方はさっそく関係国、パラグァイ、ボリビアその他と折衝いたしまして、最近になりまして、昨年の暮れでございますが、南米転住の道も移住会社融資というラインで道がつきまして、現在パラグァイ移住については、三月早々にしたいということでせっかく努力しております。  なお、ネイパ地区移住者につきましては、南米へ行くのはいやだ、集団で全部一人残らず日本に帰るのだ、国内への転住もいやだということで、非常に強く結束しておられましたので、これは南米転住の話は実現しなかったわけであります。
  205. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 もう一つ外務省移住政策に成績を上げていない点を指摘したいと思いますが、それは中南米諸国に移住するものの実績ですね。三十五年度幾らであったか、三十六年度は現在まででどうであり、最終的にはどれだけの人間を移民できるか、この数字をまず伺っておきたい。
  206. 高木廣一

    高木政府委員 三十五年度は、政府渡航費貸付が八千四百名でございます。従来七千名台でありましたが、三十五年度に初めて八千四百名になりました。三十六年度は、国内の労働力不足が非常に原因いたしまして、再び七千名台に戻るという実情でございます。  なお、これ以外に、政府渡航費貸付なくして、呼び寄せ、縁組みその他で移住いたします君が、これは北米を主として四千から六千くらいでございます。南米はごくわずかでございますが、これを合わせますと、大体日本海外移住というのは一万四、五千名でございます。ただ、われわれは、従来政府渡航費貸付渡航者数だけを発表しておったのであります。
  207. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 運輸省の海運局長か官房長は来ておりますか。
  208. 中村幸八

    中村主査 来ております。
  209. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 それではお尋ねいたしたいのですが、移民船を利用する数字は、今外務省がお答えになったように、三十五年度は八千四百名、三十六年度は七千名程度であろう、こういうことになっておるのかどうか。  第二点は、はたして移民船は何十%満船しておるか。ちょっと言葉が足りませんが、どれくらいの船に乗る席を埋めておるのか、何十%になっておるか、この点でございます。
  210. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。三十五年度の実績について申し上げますが、今申し上げますのは、大阪商船が運びました実績でございますが、三十五年度は六千七百十五名でございます。移民の席に対しまする、消席率と申しておりますが、これの比率は七六・四%でございます。三十六年度につきましては、もちろん一部推定が入っておるのでございますが、大体六・千六百六十名程度、消席率も推定が入りまして七五・七%程度、かように考えております。
  211. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 外務省お話と運輸省のお話と少し食い違っているようでありますが、その点は私はあまり多くを追及しませんけれども、ここに中南米等に移住する者一万一千人を送り出すための旅費その他の渡航貸付金を書いてあるわけです。一万一千名、今あなた方がお述べになった点からいっても、運輸省がお述べになった点からいっても、これはパーセントは違いますよ、人員の数は多少違うけれども、しかしながら、大局においてこれだけ送れぬのじゃないですか。移民船を利用して、そして一万一千名というものを送れないでしょう。ほんとうにこれは自信がありますと言えばそれまでのことですけれども、これは今までの実績からいい、同時に現在の国内の経済情勢からいって、この時期に移民するという者は、よほどの好条件、よほどの事情がなければ、とても一万一千名というものは送り出すことはできませんよ。できないものをなぜ予算に組むのかと言いたくなるのです。これはできますよ、こうおっしゃればそれまでですけれども、これなんか実行不可能です。去年もそうであったが、ことしもまたこういうことをやるから、これはたとえば移民船を持っていて、これを運航さしておる人々は、大蔵省の査定で、実行不可能な経営をせざるを得ないような羽目に陥ってしまうのですよ。外務省は何か責任を感じませんか。
  212. 高木廣一

    高木政府委員 移民を送っておりますのは、大阪商船のほかに、オランダの船でも運んでおります。それからオランダの船、大阪商船の船には沖縄からの移住者も入っていますので、こちらの計画通りになかなか参りません。三十五年度は実は、そういう意味におきましては、大阪商船及びオランダの船に関する限り、日本からの移住者がぎりぎりでございました。このためにオランダの船は、昨年の初めごろから、毎船ドックに入るたびに船席をふやしたという実情でございます。ただ三十六年度は、さっき申しましたように、国内の労働力不足ということで、農村の労働力も非常に不足してきまして、一万一千名の目標はおそらく八千名を割ったという次第でございまして、ただいまおっしゃいましたように、一万一千名というのは実際とかなり離れているということは、御指摘の通りであります。ただ、われわれとしましては、国内の潜在移住者といいますか、たとえば九州あたりの離島あるいは炭鉱その他の離職者で来た人も相当ございますし、あるいは内地開拓地の一部から南米転住を積極的にはからなければいけないというようなお考えもございますので、一万一千名の努力目標は依然続けておる次第でございますが、確かに実際なかなか苦労いたしております。
  213. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 最後に私は要望だけしておきましょう。あなた方が幾ら陳弁されても、これは実行不可能ですよ。おやりになってごらんなさい。もしこれができなかったら、来年度は何と言って答弁されますか。これはできませんよ。やってごらんなさい。絶対できません。私は言い切れますよ。これにはあなた方が、それこそ移民政策は外務省の中心政策だというくらいのところに、みんなが裸になって取り組んでいくならばそれはどうか知らぬ。あるいは制度を改正して、これにマッチしたようないろいろな準備態勢を整えて渡航者を勧誘するならどうか知らぬけれども、今までのシステムで、今までのやり方ではとうてい一万一千というのは確保できないですよ。だから実行可能な案を組まなければならぬ。あるいは消席率を満たさないならば満たすようなことをやらにゃならぬ、これはどうしても努力して、これがあいたものは、国の補助金というものによって移民政策をさらに継続していくためにやらにゃならぬ。それには外務省、運輸省、これが一体になって大蔵省とよく話し合いをしていかなければ、普通のやり方ではだめだ。もっと一つ徹底していただきたいということだけを申し上げてちょうど予約の時間が来ましたから質問を打ち切ります。
  214. 中村幸八

    中村主査 次は河野正君。
  215. 河野正

    河野(正)分科員 御承知のように終戦処理につきましては、目下国会の中におきましても、ガリオア、エロアあるいは特別円の問題、さらには日韓問題、こういうようにたくさんございますけれども、私は主としてそういう経済的な外交問題ではなくて、人道的な問題の面から若干質問を申し上げまして、大臣その他関係者の方々の御所見を承って参りたいと考えております。  この人道的な問題にもいろいろございます。もちろん中国におきます戦犯者がまだ残っておられるような現況もございますし、さらには遺骨の問題等もございます。ところが私はここで一言冒頭に御指摘を申し上げておきたいと思います点は、昨年の当委員会におきましても若干触れて御所見を承ったのでございますが、当時非常に問題になっておりましたのは、フィリピンのルパング島におきます元日本兵の問題でございます。この問題は、実は厚生省からも救出隊が出て参りましたし、外務省もいろいろ調査、救出等に非常に努力されて参りましたけれども、大山鳴動ネズミ一匹も出てこぬという格好で、この問題は終止符を打たれました。ただ私ども心配いたしますのは、元日本兵という名をかたって、いろいろ日本の国際的な信用を傷つけるような犯罪が起こってくる、そういう点を私も非常におそれるわけです。ところが最近新聞を見て参りますと、今度はマラヤで米ソのゲリラ隊が出没をして、その中に旧日本兵が若干入っておるというようなことが、新聞でも報道されておるわけです。そこで私ども心配いたしますのは、フィリピンのルパング島におきます問題は、一応終止符を打ちましたけれども、さらにその後マラヤにおきましてもフィリピンと同じような状態が生まれてきた、こういうことは国際信義の上にも非常に影響いたしますので、この際こういう問題につきましては、きちっと整理をする必要があるんじゃなかろうかというような意味で、これも終戦処理の一環としてこの際外務大臣の所見を伺っておきたい、かように考えます。
  216. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 適切な御注意でございまして、その通りどもも、日本兵の名をかたって、何か日本との国交、あるいは日本の信用を傷つけるような行為がなされることは、厳にその実態を突きとめて、これを解明しなければならないと考えております。フィリピンの問題は、先般も申し上げましたように完全に解決いたしました。マラヤの問題も、こちらからいろいろ先方に問い合わせをしておりまするが、どうもこれは道聴塗説でありまして、そのような実態はない、かように考えております。
  217. 河野正

    河野(正)分科員 そういう事実が明確でございますれば非常にけっこうでありますが、それと趣を異にいたしますけれども、私どもは党派は違いますけれども、参議院の辻政信君さんと私はちょうど住居が隣同士だ。これは家族の方々もそうでございましょうが、私ども毎日辻さんのお宅を見て、辻さんの安否はどうであろうかという心配をしておる一人でございます。そこで最近の新聞ではしばしば、東南アジアからタイ国に行って、その後中共の吉林省で何か軍事学校の教官をしておるという報道も行なわれておるようでございます。自民党の国会議員の方々の談話もあったようでありますが、こういう問題も、もし明らかにされるならば、一つこの際御報告をお願い申し上げておきたいと思います。
  218. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 辻議員の問題については、私どもも同君の安否を非常に気づかっておる一人でございます。今日までいろいろな手だてを尽しまして、でき得る限りの情報を集めてみたのでありますが、ラオスのヴァンヴィエンにおきまして、辻議員とおぼしき黒せびろの日本人に会ったというシナ料理店のおやじがあり、それを通じてまたいろいろその先等も見たという程度でありますが、私どもが知っておりまするところでは、某国際機関の責任のある人が、その人ならば中共に行ったのではないか、こう言っておる程度のことを聞いたのでございます。最近の新聞にも、今お話のございましたように、琿春でございましたか、日本人のそういう方とおぼしき方が学校の教官をやっておるという話が出ております。これについては、どうも私ども全く真偽がわかりません。
  219. 河野正

    河野(正)分科員 そこでいよいよ本論に入りますが、御承知のように昨年沖縄に総理府の人が参りまして、遺骨の収集を行ないまして、非常に大きな成果を上げた。このことはもちろん終戦処理に対しまする政府の責任でもございますし、また遺家族にとりましても非常に大きな恩恵だったというふうに理解するわけです。そこでそういう政府の努力に対しましては、私どもも強く感謝することについてはやぶさかではございません。ところがすでにアメリカ、イギリス、オーストラリアなど各国の遺骨も逐次日本に返されて参りました。そして大体この遺骨の帰還というものがほぼ完了の域に達しつつはございますけれども、ところが、東南アジアにおきましては、千体以上の遺骨がなお帰ってこない、あるいはまた中国におきましては、これは後ほど厚生省の方からも御意見を承りたいと思いますが、満州におきましてはあの終戦前後の混乱期に二十数万の日本人が死亡した。それからさらには、これは現在の中国において七十数体の戦犯の遺骨が残っておる、こういういろいろの問題が残っておりまして、そして戦後十七年にもなるわけでございますから、すみやかに戦争の傷あとというものを一掃したい、そういう強い念願であるにもかかわりませず、そういう問題につきましてはなお十分作業というものが完了しておらない。のみならず、遺族にとりましてもそうでございまするし、国民感情の上からも、やはり遺骨が帰って参りませんと、どうも最終的に整理が終わったというふうにはなかなか理解しがたい。と同時に、援護法の行政上の手続等もございまして、埋葬料がもらえない、そういう問題等も残っておるわけでございます。そこで昨年の委員会におきましても、この遺骨問題を中心として、いろいろ外務大臣から御所見を承って参りました。その後御努力願ったと思いますけれども、どういう状況にそういう遺骨の問題が推移して参ったか、その間の経緯を一つ伺いを申し上げたいと思います。
  220. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これらの経緯につきましては厚生省から……。
  221. 山本淺太郎

    ○山本(淺)政府委員 お答え申し上げます。中国の遺骨の問題につきましては、ずいぶん古くからのいきさつがあるわけでございますが、簡単に経過のおもだったところを申し上げますと、昭和三十一年の六月に天津におきまして日本赤十字社、日中友好協会、平和連絡会、いわゆる引き揚げ三団体と称しまするが、これらの三団体が中国の紅十字会と会談いたしました結果、たしかにコミニュケに載っておる事項の一つであったと記憶いたしておりまするが、次のように書いてあるわけでございます。「中国にある日本人の遺骨で日本側が資料を提供し、中国紅十字会が発見できるものであれば、中国紅十字会はその送還を援助することができる。」こういうコミニュケの一項がございました。これに基づきまして、三十一年の九月から後数回ございました集団引揚船で、二千三百九十八柱の遺骨が送り返されております。この二千三百九十八の御遺骨の中には、平和条約に基づきまする戦犯処刑者が四十柱含まれております。そのほか、中共関係の法務関係死亡者といたしまして、昭和三十年の十二月に四十柱、御遺骨が送還されたわけでございます。その後三十二年の八月に有田八郎さんが中国を訪問せられました際に、やや類似のお話が中国側からございまして、中国紅十字会から三団体に、送還するという好意的な回答を得たのでございます。また引き続きまして、昨年の六月に大谷さんが中国を訪問せられました際に、中国側から十八柱の日本人遺骨をお受けいたしてお戻りになったのでございます。従いまして、以上の合計をいたしますと総数二千四百五十六柱が送り返されておる次第でございます。こういう次第でございますので、中国側といたしましては、今後も遺骨が発見されれば逐次機会をとらえて日本に送り返していただくものと信じておるのでございます。  ところで、ただいま先生のお述べになりました満州地区につきましては、仰せの通り約二十万の軍民がソ満国境において、あるいはその後戦火が南に及ぶに従いまして各地で死亡いたされておるのでございます。当時の状況からいたしまして、この二十万の軍民の御遺骨につきましては、若干居留民で葬ったというような事跡もあるのでございますけれども、国境方面につきましては、その後どういうふうな状態になっておるかということを確認する方法がないような現状でございます。こういう状況でございますので、その後も二十九年の箱根会談と申しますか、李徳全紅十字会長が日本に参られました際に、わが国の方から、満州におきまする死亡者は同一地点で非常にたくさんの方々が死亡したものであり、これらの死亡者のうち、わかる限り日本人の居留民が名簿を作って帰国の際に中国側に引き渡したと言っておる事実もあるから、これらの資料をもう一度見ていただきたいということ、並びに当時わが方がわかっております資料を、先ほど申し上げました引き掲げ三団体を通じまして、中国側に提示いたしたのでございます。それからなお、お述べになりましたいわゆる戦犯関係の方々の御遺骨についても、これだけあると思うので、ぜひお返しをいただきたいといったお願いをいたしたのでございます。それにつきましては、十分努力をしたいというようなお活であったと承っておるのでございます。そういう状況でございますが、私どもといたしましては、ただいまお述べになりました、いわゆる戦犯関係の御遺骨につきましては、埋葬されたと思われる地点がほぼわかっておりますので、従前も資料関係三団体を通じまして御遺族にお渡ししておるのでございますけれども、もう一度日赤その他の、先ほど申しました三団体に、埋葬地点のこまかい、わが方として書き得る限りの詳細な要図を添えまして、もう一度懇請をしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  222. 河野正

    河野(正)分科員 いろいろ御努力願った点につきましては感謝を申し上げます。ところが、三十一年の天津協定、この中でも、資料がもしあるならば協力することにやぶさかでないというような中国側の意向であるということであるけれども、ところが、私が今指摘いたしましたのは一部でございますけれども、戦犯の遺骨——もちろん戦犯といいましても、日本と法の通念が違う場合がございますし、なおまたなくなった後の遺家族にとりましては、何らその間の問題についても問題はございませんし、私どもも人道的立場からこの問題を取り上げておるわけでございますが、そういう遺骨は、特に七十数体の遺骨というものは、その埋葬個所というものがきわめて明確にわかっておる、そういう資料が明らかでございますけれども、今日までこの問題に対します交渉というものがなかなかうまくいかぬ。三十一年の天津協定によりますれば、資料があればということでございますけれども、なかなか交渉がうまくいっておらぬ。なお、今局長お話によりますと、交渉したがというようなお話でございましたが、それでは一体どことどういう交渉をなさったのか。実は私どもも今までこの問題につきましては、自民党の方が中国に参られますと、さっそく自民党の方々に対しても遺族と一緒に陳情申し上げて、ぜひともこの問題が実現するようにというようなことで、実は全く人道的な立場から、超党派的な立場から、今日まで微力でありますけれども、いろいろと尽力をいたして参った。ところがそういう方々の帰国されましての御発言によりましても、なかなかうまくいかぬ。しかし厚生省の今のお話を聞きますと、何か交渉がどこかでやられておるようなお話にも承れるのでございますが、その間の真相はどうでございますか。
  223. 山本淺太郎

    ○山本(淺)政府委員 現在、御案内のように正常な国交関係を持ち得ませんために、このような問題の扱いにつきましてもいろいろ内面的な苦心を払わなければならぬところでございますが、ただいま申しましたように、天津協定及びその後チェコのプラハにおきまして、日赤の方々が中国紅十字会と話された機会もございますが、そういう際にはやはりこういう問題の話相手は、日本赤十字社以下三団体と中国紅十字会がする、それ以外の手だては、いわば認めない、こういうお話の筋でございます。従いまして、ただいま申しました経過につきましても、政府側といたしましては多数の御遺族の御要望にもかんがみまして、私ども資料のありのままを日赤その他の三団体にお示しするように手だてをいたしまして、側面的な協力をいたしているような格好になっておるわけでございます。またただいま申しましたさらに詳しい要図を書き添えましてお願いしたいということも、三団体と近く具体的な話し合いに入りたいということで、現在資料をさらに整備しておるところでございます。ただ一言お断わりしておかなければならぬと思いますのは、何分帰還者のもたらした古い資料でございますので、その後一部におきましては当時の墓地が公園になっておるというようなことで、確かにその当時は墓地として存在したものが、今日としては必ずしも十分現実に当該地にあるといったようなことの問題は別途あることだけこの機会に述べておきたいと思います。
  224. 河野正

    河野(正)分科員 今御説明がございましたように、たとえば都市計画その他によって現地が非常に変えられる、そういうことが起こって、せっかく埋葬個所を明確にしておきながら、実際にはこの遺骨収集ができない、そこで私どもはそういうことが起こってはいか灯ということで、この問題はなるだけ早く解決したいということで実は今日まで関係各省の方々にもお願いをし要請をして参った。ところがなるほど李徳全紅十字会の会長がおいでになりましたときにも、日中友好関係のために遺骨はぜひ返したいというような御発言があったことは事実でございますし、なおまた紅十字会の手で三回にわたり、また日本から中国に参りました訪中者の手によりまして、二回遺骨が送られてきたというような経緯もございます。そこで私は、中国側に、遺骨を返してやろうという意図があるであろうということは、これは大体察知をするわけであります。ところがそれでは一体具体的に——もちろんそれは国交が回復しておりませんから、政府機関を通じてこの交渉をやるということは困難であることは私どもも百も承知しております。しておりますが、しかしこれは終戦処理の一環として国が当然責任を負わなければならぬわけでございますから、そこで要するに、国が矢面に立つか立たぬか別として、国の責任としてやらなければならぬことは当然なことだと思うのでございます。その場合に日赤をお使いになるのもけっこうでございますし、民間三団体をお使いになることもけっこうでございますが、いずれにしても国の責任として解決しなければならぬということは当然だと思う。私どもは今日までいろいろ厚生大臣等に対しましても、御尽力を要請して参りました。ところが、今日赤を通じてというようなお話がございましたが、それでは今まで日赤が具体的にどういう誠意ある努力をしてきたか、率直に言ってこれには私は若干問題があろうと思う。極端に言いますと、日赤の中では、生きた者がまだ中国に残っておる、それなのに遺骨とは時期尚早だという意見も出ておる、そこでこれはやめられましたけれども、古井厚生大臣の時代に、古井厚生大臣に対しましてもとくとその間の事情説明して、島津社長に強力に要請をしていただいた経緯もあるわけです。そこで私は、今なるほど局長からるる御答弁をいただきましたけれども、そういう局長の意図がそのままそれぞれの団体に伝わっておるかどうか、そのまま局長の意思というものが生きておるかどうか。私はまことに残念でございますけれども、疑惑を持たざるを得ないというのが現在の心境です。そういうことでは、今申し上げますように、政府が矢面に立つわけではございませんから、政府の責任において日赤なりその他の二団体が矢面に立つということになりますれば、やはり問題は日赤なり三団体が誠心誠意このことに当たるかどうかということが解決のかぎを握ろうというように私どもは理解するわけです。ところが実際の経緯につきましては、私が申し上げた通りです。ですから、そういう実態、実情というものを十分御承知の上で今のような御答弁をなされておればけっこうだと思いますけれども、ところがそういう実情の認識が不十分で、今のような御答弁でしたら、私どもは満足するわけにいかぬと思う。遺族も満足するわけにいかぬと思います。そこで私どものそういう説明を十分お聞き取り願って、そういう認識に立って御答弁を願えればけっこうだと思います。
  225. 山本淺太郎

    ○山本(淺)政府委員 ただいま先生から非常にお気持のこもりましたお話伺いまして、私ども非常に心強く感じました。国会でこういう問題が十分御希望の表明があったということをさらに日赤等の団体にもお伝えしたいと存じます。私どもも先生と御同様に、多数の遺族からそのような要望を日ごろ受けておりますので、何とかしてそういう御遺族の気持がかなえられるように、十分誠意を持って善処したいと今まで考えておった次第でございますが、さらにきょうのお話をあわせまして、十分気持の底に強く秘めて参りたいと存じます。
  226. 河野正

    河野(正)分科員 そこで一つ、これは直接国交回復しておりませんからあるいは外務大臣に申し上げるのは酷かと思いますけれども、やはり終戦処理の一環でございますから、今申し上げましたような実情を十分御認識をいただいて、そうして外務大臣もそれ相応の具体的な御努力、善処というものをやられることを私は切に要望いたしますが、それに対する所見を一つこの際承っておきたい。
  227. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 同感でございます。もとより私もこの問題についてはできるだけ努力したいと考えております。邦人が多数なくなられました終戦時におきましては、ソ連軍の満州侵入とか、治安の混乱などの事情がございましたし、その後また御承知のように、数年にわたって国共の間に国内戦がございましたりいたしまして、なかなか先方の側に立っても実情の把握というものが困難な事情があるようでございます。しかしながら、ただいま厚生省の援護局長が申し上げましたように、政府側としましては関係団体によく協力いたしまして、当時の事情をできるだけ詳細な資料に作り上げるというふうに努力をいたしておりまするが、私もその資料作成に十分努力をし、しかも人道的な立場に立って、この資料がまとまりましたら適当なる機関を通じて中共側に要請をしたい、かように考えております。
  228. 河野正

    河野(正)分科員 そこで今申し上げましたように、なるほど埋葬個所がきわめて明確になっておる百体近い遺骨も現在ございます。それから先ほど御指摘申し上げましたように、旧満州地域においては二十数万の日本国民が尊い生命をなくした、こういう点につきましては、なかなか遺骨の収集というものも困難な点がございます。そこでこの二つの問題を解決するわけでございますが、そのためにここで一つ触れておきたいと思いますのは、それは今度二回目の墓参の許可が出て参りました。ソ連の墓参りの問題、このソ連におきましては今度の大戦の終わりにあたって、大体五万の将兵がなくなられた。そして今日異国の丘にさびしく眠っておられるわけでございますが、こういう切なる遺家族の方々の願いをソ連が認めて、そうして先般来第一回目の墓参りの許可をした。そうしてソ連地域では非常に広い範囲に埋葬されておりますので、遺家族の願いとしては一回、二回の墓参だけでは十分霊を慰めることはできないということで、できるだけ墓参に行って、なくなられた霊を慰めたいという非常に強い熱望があるようでございます。そこで今度の二回目の許可というものは七カ所、第一回目は二カ所、ところが実際には、ソ連から日本政府に通告された個所だけでも大体十八カ所あるわけでございます。そこで今後ともこの墓参が続けられ、そうして異国の丘にもうすでに十数年間眠った霊が慰められるということは、これは国民としても非常に同慶の至りでございますが、こういう墓参りの今後の見通しでございますね。と申し上げますのは、一回目が二カ所、第二回目が七カ所、ところがソ連からの通告だけでも十八カ所ある。そこで今後もこの墓参りというものを拡大していただくということが、遺家族の強い願いでございますので、この際大臣の見通し等に対する御所見を一つ承っておきたい。
  229. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第一回の墓参が遺家族の方々にとりまして非常に心あたたまることでございましたので、私どもも非常に喜んでおるわけでございます。今回十八カ所の墓参許可の話が参りました。人数も三十名と言ってきておりますので、この中に引率者の官庁の人を含むのか、あるいは随行の記者団等が含まれるのか、そういう点等についてまだ問い合わせ中でございますが、おそらく今後においても引き続いてかような墓参が許可されるであろうということをわれわれ希望し、かつ期待をいたしておるわけでございます。
  230. 河野正

    河野(正)分科員 実は厚生省の調査によりますと、ソ連地域内でなくなられました遺骨は大体五万五千人に達するであろう、そしてそういう方々の霊がソ連全土にわたって埋葬されておる。そこで厚生省の調査によりましても、大体三百十カ所ぐらいに埋葬されておるだろうというふうにいわれておるわけです。そこでなるほど今度第二回の墓参として七カ所の墓参が許可されたということは、今大臣の御指摘のように非常にけっこうなことだと思います。ところが厚生省の調査によりましてもなお三百十カ所の埋葬個所が、ソ連全域でございますとある。そういうことでございますから、この墓参の問題がさらに大臣の努力によって拡大していただかぬと、一部は霊が慰められたけれども、一部慰められぬということでは、遺家族の間でもいろいろ問題が起ころうと思うのです。そういうことからぜひこの際できますならば、二回、三回、四回というようなことで、このソ連全域にわたっての墓参が許可されるように、一つ何分の御努力を願いたいというように思いますが、その点に対しまする御決意のほどを承っておきたい。
  231. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も、また厚生大臣とされてもこのことを非常に強く要望しておられまするし、私の立場からも機会をとらえてはこの墓参の件を先方に要請をいたしております。今後これが先ほどお答えいたしましたように拡大されていくことを期待いたしておりますので、ぜひさようになるように努力を続けたいと考えております。
  232. 河野正

    河野(正)分科員 そこでこのソ連の墓参については、一つの条件がつけられておるのかどうか。たとえばもう遺骨を返すわけにいかぬ。そこでその遺骨を返すかわりに墓参を許可するというような意味の条件がついておるのかどうか、そういう点が明らかでございますならば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  233. 山本淺太郎

    ○山本(淺)政府委員 そういうことはございません。ただし仰せのように非常に広範な地域でございまするししまして、技術的に非常に困難であろうというようなことは、非公式に言われたことがあるようでございます。しかし今回の墓参及び前年の墓参に直接関連しまして、送り返すということはしないから、墓参に来ることを認めるといったような条件はございません。
  234. 河野正

    河野(正)分科員 私どもが仄聞するところによりますと、どうも遺骨を収集することは実際問題として困難であろう、そこでせめて墓参ではどうかということで、今度の許可がおりたというように理解をいたしておるわけです。ところが、それはまあ別問題として、そこで私ども伺いをいたしたいと思いまする点は、現在中国の遺骨収集問題というのがなかなかはかばかしくいかぬ。はかばかしくいかなければ、この際——もちろん私どもは遺骨を収集することが第一前提でございますけれども、もしその問題がはかばかしくいかぬとするならば、一つ中国における墓参の許可、この問題に対して外務省あるいは厚生省がそれぞれ交渉をやっていただきまする御意思があるかどうか、この点は第二段のかまえでございますけれども、この際遺族を代表してお伺いを申し上げておきたいと思います。
  235. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 中共との間には国交がございませんので、ソ連の場合のような工合にはなかなか私ども立場からいきにくい点はあるわけでございます。かたがた、先ほどお答え申し上げたように先方の内戦等の関係もございまして、邦人の死亡の状況あるいは墓地の現状というものが、なかなか正確に把握されておりません。また中共当局においていかように把握しておるかということも、なかなか知り得ないような現状でございまして、今のところソ連の場合のように個々の墓参りに行くということは、なかなか困難であろうかと考えております。しかしながらできるだけ御趣旨に沿いまして研究をしてみたいと考えます。
  236. 河野正

    河野(正)分科員 実は墓参りが困難だというような見方もございますけれども、一部は埋葬個所が非常に明確になっているわけですね。この一部については墓参りは非常に容易だと思う。ただ国交が回復しておりませんから、政府が直接そういう交渉をし得るかどうかということについては、それは問題がございます。しかしそれは政府の責任において、日赤なり平和三団体を使って交渉を願ってけっこうでございますから、そういう技術的な問題は別として、一部は確かに埋葬個所がはっきりしておるわけでございますから、墓参りというものは可能である。そういう意味での御善処が願えるかどうかという問題と、先ほど私が申し上げました旧満州地区においてはなかなか遺骨のあるところが明確でない。そこで遺家族としては、もしそうであるとするならば、旧満州地域のどこかで一つ慰霊祭でも行なったらどうだろうか。そういうことによって実際この問題の解決をはかったらどうだろうか、こういうような強い御要望の節もあるわけです。というのは、国民感情としてやはりどこかで折り目をつけないと、なかなかこの問題は解決するのが困難だ、そこで遺家族としてはもう終戦後十七年になるわけでございますから、どこかできっと折り目正しくこの問題について終止符を打ちたい、こういうお考えの方が非常に多い。ところが残された遺族はだんだん年とりますので、せめて自分の生ある間にという気持もあると思います。そこで何とかして早くどこかで一応けじめをつけたい。そのためには、今申し上げたように戦犯遺骨のごときは埋葬個所がはっきりしているわけですから、それは墓参りが可能である。それから満州地区においてはなかなか困難というならば、どこか一カ所で慰霊祭を行なわせていただく、そういうことによってこの問題について一応どこかで終止符を打とうではないか、こういう遺家族の強い御意思があるわけです。  そこでそういう点について外務大臣が直接矢面に立つということは、国交が回復しておらない今日においては、なかなか困難な面があろうと思いますけれども、これは終戦処理の一環として、当然政府が責任を持ってやっていただかなければならぬ問題でございますので、それは技術的には日赤なりあるいは民間三団体なりお使いになるということでございましょうが、一応政府の責任において解決していただかなければならぬということでございますので、今申し上げましたような二点についてどういうふうにお考えになりますか。この際一つ遺家族にはっきりしたお答えを願っておきたいと思います。
  237. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いろいろ御意見につきまして私も非常によく承りましたわけでございますが、御趣旨の線に沿いまして今後一つ十分に研究させていただきたいと思います。
  238. 河野正

    河野(正)分科員 研究だけでは話は進みませんので、研究と同時に今私が申し上げましたような結論が実現するように一つ御努力を願うということで、最後大臣の御決意を承っておきたいと思います。
  239. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も河野先生の御意見よく承りましたから、いわば前向きの姿勢で研究させていただきます。
  240. 中村幸八

    中村主査 次は野原覺君。
  241. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は主として竹島の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。そこで、まず竹島の問題でお尋ねをいたしますその最初に申し上げたいことは、辻富蔵という人が、それはその外若干名おりますが、島根県と国を相手取って告訴をいたしました。これは外務大臣御承知だろうと思うのであります。その訴状によりますと、この辻富蔵という人は、昭和二十九年の二月に竹島の燐鉱採掘権を得ているのであります。ところがその前年には、すでに韓国が竹島を占拠したために、採掘権を得たこれらの数名の者が鉱業権を完全に実施することができない。そこで問題が起こってきたのでありますが、その鉱業権を完全に実施することができないにもかかわらず、島根県は地方税として鉱区税を取り立てまして、訴状によりますと、九千何百円でしたが、取り立てられておるのであります。そこで辻さん外数名の者が裁判に持ち出したわけでございますが、島根県に対しては採鉱権に伴う鉱区税納付の義務のない確認訴訟、それから国に対しては損害賠償の訴え、こういうことで裁判しておりましたところ、昨年の十一月九日に東京地方裁判所から判決が出されておる。この判決によると、原告が敗訴ということにはなっておりますけれども、判決文を読んでみると、至るところに問題点が出されてある。このことは私は外務大臣もよく御承知だろうと思う。すでに新聞にも報道せられた問題であります。この点について告訴をされた国側として、特に竹島の問題ということになると外務大臣の責任はきわめて大きいのでございますが、この事案に対して一体どういう御所見を持っていらっしゃるか、承っておきたいのであります。
  242. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては同僚の稲田篤泰議員からもいろいろお話がございまして、私どもも研究させていただいておりますが、条約局長から御答弁申し上げます。
  243. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘の事案でございますが、これは相当長く裁判問題になっているわけでございます。被告の一人である政府といたしましては、この原告の方が主張されているように、たとえば国家賠償法に基づいて国家が全損害について補償すべきである。たしか九億円か何か要求されていたと思いますが、外交交渉が実を結ばないで今の鉱業権を実施し得ないことについての全損害を補償すべき義務が国家にある。こういう法律的主張には政府としては同意することができない。それは政府としては、もとより国民の権利を外交的手段によって保護することは当然でございますが、その保護の方法とか時期とか、こういうことについては政府はやはり国家全体の利害ということをも考えまして、いわゆる政策決定をして行なうのでありまして、その侵害があったらすぐにこれを排除する措置をする、こういう法律的義務は、現在の実定法からはすぐには出てこない。従って国家賠償法というものをそのまま適用して、全損害を国に補償させるという考え方には同意できないということを一貫して述べてきたのでございます。
  244. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 今の条約局長の御答弁は、私はきわめて問題があると思うのです。非常に問題だろうと思う。この東京地方裁判所から出された判決文をちょっと読んでみます。東京地方裁判所はいろいろな法律上の理由から原告を敗訴にはいたしておりますけれども、その判決理由書の中に次のように書いているのであります。その中の一節を読んでみますと、「右不法占拠に対して」これは竹島のことです。「いかなる時期に、いかなる方法を講じて、これを排除するかは、高度の政治的性質を帯びた外交上の問題であり、かかる問題の決定処理は、国民に対して直接政治的責任を負う内閣、国会等の国の政治部門の判断に委ねらるべきもので、これらの部門が採用した処理方法の適否は、司法裁判所の審査権の範囲に属しない。」これは司法裁判所の審査権の範囲に属さないから、裁判所としては触れないけれども、私がただいま述べましたように、直接政治的責任を負う内閣、国会等は、これを問題にしなければならぬのではないか、しかしそのことについて裁判所が口出しをすることは妥当でないからというので、裁判所はこの問題にはタッチしないということで、一応敗訴にはしている。つまり原告の請求権を棄却しているのでありますが、私どもやはりこれは政府及び国会に席を列するわれわれとしても責任を感ずる。これは内閣及び国会の責任で処理しなければならぬと思うのであります。裁判所の判決はともあれ、今条約局長のような御答弁で参りますと、何ら国は道義的にも責任はないのだ、こういうようなおつもりでございますか。外務大臣のお考えを承っておきたい。
  245. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題は法律問題として提訴されておりますので、法律問題として扱うというのが政府立場として適当であろうと考えております。
  246. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 外務大臣にお尋ねしますが、政府は国民の権利、財産を擁護する責任があるわけです。この人たちは竹島に採鉱権を持っている。いわゆる私有財産であります。この竹島の私有財産について、政府は責任を持って擁護していない、保護していない。そうでしょう。政府が責任を尽くしていないということに対して、つまり権利、財産を擁護していないということに対しては、どうお考えになりますか。
  247. 中川融

    ○中川政府委員 ちょっと私が先ほど申し上げましたことに補足させていただきたいと思います。御質問が、具体的な訴えについてどういう態度で政府が考えていたかというお尋ねであったと思いましたので、この訴えについての被告としての政府立場を御説明したのでございます。従ってこれは全く法律的な論旨を申し述べたのでございます。しかし裁判所の判決にあります通り、これはもっぱら高度の政治性を含んだ問題であり、政府の全責任においてやるべき事柄である。裁判所は介入すべき問題ではない、こういうことでございまして、これにはわれわれとしてはもちろん異存がないのでございます。これは高度の外交問題に属しますものでありますから、政府が全政治責任を負うべき問題である。その意味国会の御批判の対象になることは、これは当然である、かように考えておる次第でございます。
  248. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 政治的責任を負うべき問題だということをお考えであるならば、私はこの人たちに対して国は何らかのやはり補償を講ずべきではないかと思う。この問題はほってはおけないと思う。外務大臣、いかがですか。
  249. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 目下この竹島問題は外交交渉の対象になっておるわけでございます。この経緯につきましてはここであらためて申し上げるまでもないかと存じまするが、韓国の不法占拠が発見されるたびに、そのつど抗議しておりまするし、また歴史的な考証また正確な国際法上の解釈上、この竹島の領有権は日本にあるということは疑いない事実であるということを、韓国側の政府に十分周知せしめるように言っておるわけでございまするが、韓国側としましては、これは自分の方の領土であるということを主張しておるわけでございます。目下日韓会談を行なっておりまするが、これが妥結します際の一環といたしまして、私はこれはお互いで話してもなかなかけりのつかなかった問題でありまするから、国際司法裁判所のごとき公正なる機関の判決にゆだねるという立場に立ちたいと考えております。その結果竹島が日本に返って参りますれば、すべてこの問題は解決する、こういうことになろうと思います。ただ、今わが国として実力をもってこの竹島の領有を主張するというわけには、なかなか竹島の領有権をわが国の実力をもって確保するということは、これはわが国の外交方針としてとらざるところでございまするので、さような方針をとるよりほかない、こう思っておる次第でございます。
  250. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 問題は採掘権をなぜ許可したかというところにも、私は問題があろうと思う。これは燐鉱の採鉱権でございますが、記録によると昭和二十九年の二月にその許可を得ておるのです。ところがその前年に韓国は竹島を占拠しておる。あの日本の巡視艇が砲撃をされたのがその前年。実力をもって竹島を占拠している。そういうところにこの燐鉱の採掘権の願いを出したときに、政府は許可をしたのだ。政府が許可をしておって、そうしてこれをあくまでも守ってやらないというのは、これは私は政府の大きな責任ではないかと思う。採掘権を許可したならば、これは当然政府がその採掘権については支障のないように守ってやるべきじゃないか。ところが実はそうじゃなくて、採掘権は許可したものの、韓国が竹島を占拠したために、実は完全にこれを行使することができない。ここに非常に問題があるのです。だからこの点は私は竹島の問題がどのような妥結を見るにせよ、これらの人々に対しては何らかの補償をすべきではないかと思いますが、もう一度外務大臣の、これは道義的責任を政府は感じておられるのかどうか、この点だけでも私は承っておきたい。
  251. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お言葉のように、どうも私もこの点理解しにくいところがあると思うのであります。すなわち昭和二十七年の一月に李ラインというものが設定されまして、竹島はその内側に含められた。日本政府は十日を置いて口上書を一月二十八日に出しまして、この竹島は断じて韓国の領土ではない、こういうことを言っておるわけでございます。なぜそれでは二十九年になってそれが認められたか。おそらく日本政府として採掘権を認めるということでありますならば、こうしたことは一見矛盾するわけでございますから、ないのではないかというふうにも思うわけであります。ただ採掘権は御承知のように、地方のそれぞれの官庁がやりまするので、そういうことになったのかとも思いまするけれども、なおこの点につきましては私もよく調べさしていただきたいと思います。
  252. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 実は私はもう一度判決のこのほかのところを指摘しておきたいと思うのですが、こう書いてある。「本件の場合、原告は明らかに日韓間の紛争の犠牲者であり、これに対し国が何らかの損失の補償」これはカッコして(違法行為に対する損害の賠償ではない)、こうカッコはいたしておりますが、「損失の補償をするということは、政策上の問題として考えられてよい問題である。」と裁判所は判決の中に指示しておるのです。私はこれは当然のことだろうと思うのです。しかしながら裁判所としてこれにとやかくタッチできないから、一応その請求権は棄却した。このことについて日韓間の紛争の犠牲者をほうっておることと、それから小坂外務大臣が竹島問題について何も解決する力がない。解決しようともしていない。  私はこれからぼつぼつ触れて参りますが、ただ竹島は日本の領土だ領土だと言うだけのことなんです。あなたはやろうとしないのですよ。やろうとしないで、何らその解決の誠意も見せないで、現実に竹島にこうして権利、私有財産を持っておるところの者が大きな損害を受けて、これに対して政府は何らの道義的責任も感じないとしたら、これは国民が承知しないと思う。だからこの問題についてはこれは道義的責任を政府としても感じておられるだろうと思うのです。外務大臣、これはいかがですか。補償についてはこれは金額その他の問題もあります。いろいろなケースも出てきますから、簡単には応ぜられぬだろうとは思いますけれども、日韓間の竹島問題の紛争を政府はほったらかしにしておる。これはほったらかしていますよ。全く竹島については手をつけていないのです。これは法的にも手がつけられるにもかかわらず、何の魂胆があってか知りませんが、竹島の問題はたな上げにしておる。政府が現実に被害を受けた者に対して責任を痛感しないというようなことは、これはとんでもない政府だと思う。私はこの問題は了解できないです。だから政府は道義的責任を感ずるのか感じないのか、明らかにしてもらいたい。なるほど言われてみると二十九年に許可をしておるとすれば、ここにも問題があるし、感ずるのか感ぜぬのか、これだけでいいのですよ。この採掘権の問題については政府には責任があるのかないのか、これを承りたい。
  253. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は竹島問題について政府はほっておいているわけではございませんで、これは何とか解決しなければならぬ、こう考えておるわけです。しこうしてそのために日韓会談を行ないまして、国交が回復する、双方において信頼感が回復するときに、この問題について公正な解決方法を見出そう、こうしているわけでございます。この件につきましてはまことにお気の毒な事情かと思いますけれども、しかしながら法律的に政府の責任によってこれに対して賠償措置をとるとか、そういうようなことではどうも問題の性格上適当でなかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  254. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は法律的に政府の補償責任を言っておるのではない。政策的に政治的にこれは処理していかなければならぬ問題ではないかと言っているのです。いかがですか。私は法律のことを言っているのではない。法律については裁判所が判決を出しておる。これはいろいろな角度から……。しかし政策として政治上の政府の責任と申しますか、道義的なそういったものをここで明らかにしてやる必要がありはしないかと思いますが、いかがですか。
  255. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは事情はまことにお気の毒なことであると思っております。従いまして何とかして一つこの竹島問題も早く解決したい。そうしてこの点につきましてはこの鉱業権者が何とかお気の毒な立場に立たないようにいたしたい、こうは考えておるわけです。
  256. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは何といっても私は道義的責任が政府に大いにあると思うのです。これはだれが何といっても政府は大きな責任があります。これは考えてやらねばならぬと思うのであります。  そこで今外務大臣答弁で重大な点があった。竹島問題は日韓会談の中で考えていくという御答弁がありましたが、これはあなたの予算委員会の総括質問に対する答弁と食い違っておりますね。日韓会談の中では竹島の問題は取り上げないと池田総理もあなたも答弁されたのですが、これは速記を見ればどうなっておるかわかりませんが、私が今聞いたのでは、日韓会談の中で竹島問題を考えていくのだという意味の御発言をされましたが、どちらがほんとうですか。
  257. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の言葉も一度速記録を見ないとはっきりいたしませんが、もしそういうふうにおとりになるとすると、若干言葉が足りないのでございまして、私の真意は日韓会談が妥結しまして、先方も日本に対する信頼感を回復した際には、この問題を国際司法裁判所へ持っていく、こういうことに当然考えるであろう、すなわち日本の提訴に対して先方は応訴する、こういうことになるであろう。その際にそうした公正な機関を通じてこの問題の帰属を決定したい。もちろん結果については、われわれはあくまで竹島は日本の領土である、こういう結論が出るものと期待しておるわけでございますが、方法としてはさような方法がよかろう、こう思っておる次第でございます。もし前言で私の言葉が足りないために誤解を生じたとするならば、これは取り消さしていただきます。
  258. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は今あなたのおっしゃったことを、今度は逆の面から取り上げてお聞きしておきたいと思う。竹島問題というものは領土問題、これと李ラインの問題は、実は日韓の今日の懸案事項の最たる問題です。財産請求権その他経済協力も重要かもしれませんが、そんなものは領土の問題からいうならば片々たる問題です。みな国民はそう思っておりますよ。従って竹島問題が解決せぬ限りは、日韓会談を妥結に導くべきではない。日韓交渉ができ上がる、まとまるということは、当然その中に竹島問題が包含されておるのだ、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  259. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 竹島問題は、これは領土問題でございますから、従って妥協することのできない問題でございます。他の日韓交渉は、これは双方でいろいろ話し合って妥協する点もあろうかと思います。これが交渉の本質でございます。従って交渉の中には、交渉の議題として竹島問題は取り入れておりませんけれども、当然両方の国交が回復するという段階においては、この竹島問題を公正な国際機関がさばくということが双方に合意されるということが必要だと思います。
  260. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 領土の問題で、これは今日日韓の十年近い間の国際紛争上の大きな問題になってきておるわけですね。ところがこの問題を政府はどのようにして一体解決するのか。あなたはこれは領土問題だ、妥協はできないのだ、こうおっしゃいますが、一体どのようにして竹島問題を外務大臣としては解決しようというお考えですか。具体的な方法をお聞かせ願いたい。
  261. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、この竹島問題につきましては、国際司法裁判所に提訴する——今までも提訴しておりますが、相手が応訴しないのでありますが、韓国側がこれを応訴する、こういうことでこの問題を解決したい、こう考えております。
  262. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 応訴しますか。これは応訴しないでしょう。あなたは簡単にそうおっしゃいますが、国際司法裁判所というものは、相手側が応訴しなければ、これは受理できないことになっておる。これは去年であったかと思いますが、去年の十二月二十六日政府は竹島問題で抗議の口上書を韓国に渡しておるのでありますが、これは今までの経過からいって、一片の抗議書ではこの問題を解決することはとてもできないと私ども思うのです。これは奥村外務次官のときに、たしか昭和二十九年であったと思うのですが、一九五四年九月二十五日、奥村外務次官は応訴の合意を求めるために口上書を提出した。今から八年前です。ところが時の金という外交部長が、これを即座に拒否しておる。あなたは国際司法裁判所に持ち出すのだと言っておるが、相手側が拒否するじゃありませんか。相手側が拒否をしないという何らかの——朴さんとはこのころ非常に仲よくしていらっしゃいますが、何か朴さんが、日本が経済協力もしてやるし、池田首相や小坂外務大臣の言うことなら、おれも顔を立てなくちゃということで、暗黙の合意でも何かこの問題についてはあるのですか。国民はほんとうのところをやはり聞きたいのです。八年間ほったらかしにされて、具体的には個人の私有財産も野ざらしになって、そうして何ら政府はそれに対する責任ある処置もとらないという問題でもありますから、これは聞きたい。その辺の真相はいかがですか。
  263. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 八年前と日本に対する韓国側の心証というものは、非常によくなってきておると思います。従って日韓会談妥結の機運が韓国側にも出てきておるわけでございます。その際でございますから、これは八年前の状態とは違う、こう考えます。さらにまたどういう形になりますか、国交を回復する際の条約には、領土問題の解決ということがやはり一つの問題になると思うのです。ただ日韓交渉の議題になりませんけれども、その際には相手側が応訴することが一つの問題点になろうかと思います。
  264. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 李ラインの問題は、日韓会談の議題になっておりますね。それで竹島問題は議題にならない。これは何かわけがあるわけですか。
  265. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 竹島は領土問題でございます。従って先ほどから申し上げておるような妥協の対象にならぬということでございます。李ライン問題というものは、そもそも国際法上不法なラインでございますが、これを撤回するということについて先方に同意を求めまする際に、やはり魚族の保護とか、漁民の繁栄ということをお互いに今後の問題として考えなければならないので、漁業協定というものが結ばれることを期待しております。
  266. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は、李ライン問題も竹島問題も同じ性格のものではないかと思う。なるほど竹島は領土問題、李ラインは厳密な意味で領土問題ではないかもしれませんが、韓国の主権がその範囲に及ぶのだ、こういう見解できておるのです。やはり準領土的な様相を呈しておるのだ。この李ラインというものは、韓国の主権の及ぶ範囲なんだということを言っておるのです。だから単に漁業権の問題、財産権の問題などは、会談の議題にされてもよいかと思うのでありますけれども、竹島だけが切り離されるということ、李ラインと別個に扱われておるということは、私どもは釈然としないのであります。しかしそのことはさておいて、ここで私は大事な点でお聞きいたしておきたいと思いますことは、問題で国際司法裁判所に持ち出すとしても、相手側がなかなか応訴しない。これはこのごろの友好の空気だと外務大臣はおっしゃいますが、竹島問題は別なんですよ。竹島問題についても友好の空気が出ておるとすれば、具体的にどういうことですか。これを承っておきたいと思う。
  267. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 要するに合理的な解決ということで双方の主張が一致しなければ、領土問題については国際司法裁判所に提訴して公正な判決を仰ごう、こういうことについて先方が合意する、すなわち応訴する。それを見て国交が正常化する、こういうことだろうと思います。
  268. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私は、先方が国際司法裁判所に持ち出すことについて応訴すれば、これは国際司法裁判所でもよかろうと思うのです。しかしもう八年間やってきたのです。しかも最近の韓国の新聞によると、こういうことを書いておるじゃありませんか。「崔外務部長官は、池田首相が一月二十九日衆議院の予算委員会で、「竹島は日本固有の領土であり、韓国が理不尽に占領しておるものである」と述べたことに対し、「竹島が韓国固有のものであることは動かし得ない事実であり、池田首相の発言は単なる定期的発作にすぎないものである」と述べた。」これは崔外務部長官がしゃべっておることです。これはジャパン・タイムスの二月一日号の記事から私はとっておいたのです。簡単にいきませんよ。これは国際司法裁判所に持ち出すといったって、相手はなかなか判こを押しませんよ。応訴しませんよ。八年間応訴しなかったのです。しかも最近は非常に友好的だ、こういう甘い考えをあなたが外務大臣として持っていらっしゃることは、日本の国民は納得できません。  そういう甘い考えでは、日本の国民はこの問題にはみな憤慨しているのですよ。この竹島の問題では、質問をされると、総理大臣もあなたも、これは日本固有の領土です。何とかしなければなりませんといたけだかに言いますけれども、具体的には何にもしていない。  なお今度は韓国日報の十月二十二日付の朝刊です。これによりますと、「韓国外務部当局は去年十月二十一日、「独島(竹島)が歴史的に大韓民国の領土の一部であることは厳然たる事実であり、われらは現に竹島に対し、主権を行使している。」現にここに部隊が駐屯をしておるのであります。外務大臣御承知の通りです。「平和線の存在には十分な理由があり、」李ラインです。「国際法ないし慣例にも符合していることは周知のところである。」と述べた。」これは昨年の十月二十二日、朴政権の外務部長官が声明書を出しておる。つまり李ラインの問題と、それから竹島の問題については、最近の韓国はなかなか強硬なんですよ。これは池田総理大臣予算委員会でちょっとしゃべりますと、そのことが大きくなってはね返ってきておるではありませんか。これに対して依然として、国際司法裁判所に提訴いたします。八年前にもそうやって断わられた。それから去年も抗議書を出したけれども、そんなものは向こうからはねつけられておる。私はそんなことではこの問題は解決できないと思う。解決できないとすれば、その他に方法があるでしょう。外務大臣御承知でしょう。もし国際司法裁判所にどうしても相手が応訴しない、訴えに応じないということであれば、どのような解決方法があるのか、これはお教え願いたいと思うのであります。
  269. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先方の外務部長官のチェさん、崔という字を書くんですが、この人の言っていることは事実と違うのであれは御承知のように私が言ったことがございます。それを池田総理大臣ということで言っているわけでございますが、この問題については先方も非常に神経質になっていることはお話しの通りだと思います。しかしこれは現段階においてそうであるのでございまして、日韓間に国交が回復するという段階においては、われわれがこの竹島の問題を非常に強く言っていることは、先方は承知しているわけです。従ってこの問題は先ほどお話し申し上げたような筋で話をして、司法裁判所に提訴する、そういうことを先方に応訴せしめるということは当然必要なことでございまして、さような措置をとりたいと思います。先方が応訴しなかったらどうするかということでございますが、そのときには私どもも私どもとして考えていることはございますけれども、それは今申し上げることは適当でないと思います。
  270. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 あなたは日本外務大臣ですよ。そういうような答弁では私は了解できませんよ。国際司法裁判所の問題は、これは八年間試験済みなんです。あなたは朴さんと手を握りたいというので、とても仲よくしよう仲よくしようと思っておりますけれども、そのこととは別なんです。日本の領土である限りは、あなた方が国民に対して宣伝することと、外交でやっていらっしゃることとが、どうも私には食い違いがあるように思われる。私どもには勇ましいことを言って、何にもしていない。なぜ国際連合に持ち出さぬのですか。国連憲章に国際連合に持ち出さねばならぬ規定があるでしょう。それを今日まで十年間も国連に持ち出さなかった理由は、一体どこにあるのか。しかも今日こそ国連に持ち出さねばならぬじゃないですか。現にこの予算委員会の答弁に対しては、強硬なはね返りが来ておるし、竹島と李ラインは断じて譲らぬと、はっきり何べんも向こうの責任者が言っておるのだ。しかも八年間国連に持ち出さないで、今に至るもなお国際司法裁判所だ、こう言ってごまかしておられるということは、私どもは納得できません。なぜ国連に持ち出さないのかという理由をお聞かせ願いたいのであります。
  271. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国連に持ち出さない理由は何かということでございますが、私は司法裁判所において解決してもらうということはできると考えておるのでございます。国際司法裁判所において——韓国が独島といい、わが方は竹島、これはあくまでわが国固有の領土であるのでありますから、この点について見解が異なっておるわけですが、これをさばくことこそ国際司法裁判所の任務である、こう考えておるから、今のようなお話をしているわけであります。  国連に持ち出す問題は、御承知のように現にそのことをめぐって国際紛争が起きつつあり、あるいは起こるおそれが非常に濃厚である、こういう場合に持ち出すことができるのであります。また持ち出さなければならなくなるのでありますが、竹島の問題については、そういう態度をとるよりも、日韓間でもって話し合いをして、そして先方に応訴させ、司法裁判所で解決させるというのが適当な措置であろう、こう思っておるわけでございます。
  272. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 現に紛争が起こっておるのじゃありませんか。ごまかしてはいけませんよ。竹島問題は現に紛争が起こっておるのじゃありませんか。これは十年間紛争の問題じゃありませんか。日本の巡視艇の何とかというのが砲撃されたじゃありませんか。当時の政府は自衛権を行使しろといっていきまいたいきさつもあるのですよ。これくらい大きな紛争というものが他にどこにありますか。こういう紛争というものは、国連憲章第六章に紛争の平和的解決というのが書かれてある。なぜこれをやらぬのですか。あなたは今の私の質問に対してなぜ国連に持ち出さないのか。国連憲章の第三十三条なり第三十四条、それから第三士五条、第三十七条、特に第三十七条のごときは重要なことを書いてありますよ。この種の紛争は持ち出さなければならぬという義務づけをこれは規定しておりますよ。私は一々読み上げません。これは外務大臣条約局長もよく御承知なんだ。なぜ竹島問題でこれを用いないかということを聞いておるのだ。国民には日本の領土だ日本の領土だと言っておきながら、現実に韓国がそこに兵隊を駐屯をさしておるのでありまするから、韓国は、時間をかせげは、これは一つの民法上の占有権みたいなことを主張してくるかもわからない。ますます日本が不利なんです。外務大臣いかがですか。私はもう一ぺん得心のいく御答弁をお聞かせ願いたい。第三十三条、第三十五条、第三十七条、これを適用しなければならぬじゃないですか。そのために日本は国際連合に入ったのですよ。しかもこの国連憲章第六章というのは、国際連合に加盟していない国も紛争を平和的に処理するために適用されることになっておるのです。韓国はオブザーバーなんだ、これは国際連合には加盟していない。相手が応訴しないのですから——私は相手が応訴をするならば、この種の問題は国際司法裁判所でいいでしょう。過去十年間応訴しないのです。しかもなお今日も強がりを言っておるじゃありませんか。これを国連憲章の第六章が明確に規定して、紛争の平和的解決として条文をあげて規定しておるのに、これを今まで取り上げようとしない、今もまた取り上げようとしない。一体これはどうするのだ。私はこの問題は納得できませんよ。もう一ぺん国連憲章によるこの処理方式をとらないという理由を明確におっしゃっていただきたい。
  273. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 理由は二つございます。一つは国際司法裁判所に提訴することに対して、相手が応訴するであろうという見通しと申しますか、公算と申しますか、そういうことを私どもは考えておるからでございます。  それから第二の点は、国連憲章三十正条以下、三十七条に書いてあることは、ここに書いてございまするように、この紛争のあることが国際の平和を危うくする、こういう事態が認められるときにこの条項は考えられているのであります。従いまして、現在お述べになりましたように、これは昭和二十八年でございますが、わが海上保安庁の巡視船が銃撃を加えられた、これはもうその通り事実でございますが、それに対して、わが方が反撃をして、そして事態がさようなおそれがある事態になってきた、非常に緊迫した、こういう場合には、まさに御指摘のようなこの条章で述ぶるごとくでございます。一方、御承知のように韓国は国連にも入っておりませんし、わが方もそういう手段に訴えることなく、これは日韓間の国交が正常化する際には、国際司法裁判所によってさばかれる、相手も当然これに応訴する、こういう見通しを持ってやっておる、こういうことであるわけであります。
  274. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私はなるべく質問を早く終わりたいと思うのですけれども、そういういいかげんな御答弁では終わるわけにいかぬです。応訴の見通しがあるのですか。それでは端的にお開きしますが、応訴の見通しがありますね。これはほんとうに応訴の見通しがあるのですか。いかがですか。
  275. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国交が回復するときに、双方とも非常に不満な問題を持っておるということでは、真の国交が回復できないからでございます。国交が回復する瞬間には、これは当然先方は応訴すべきものだ、またわが方は先方が応訴して初めて国交の回復ということを考える、こういうことは当然だと思います。
  276. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そのことについての話し合いはできておるのですか。国交が回復する、会談が妥結をするその際には、君の方も君の領土だと主張するし、われわれもそう思っておるのだから、これは国際司法裁判所の事案として判決を仰ごうじゃないかという話し合いでもできておるのですか、承りたい。
  277. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはそうするべきものであるということを申し上げ、われわれの考えを申し上げているわけです。これは外交交渉のことでございますから、どういう辺までいっているとか、了解があるとかないとかいうことは申し上げるべき段階でございません。しかしわれわれとしてはそうするべきものである、こう信じておるわけでございます。
  278. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そうすると、そうすべきものであるというお考えをあなたが持っておられるならば、そのことについての話し合いができない限りは、日韓会談の妥結はしない。そうでしょう、べきものであるのだから。その裏づけがなければ、あなたの今おっしゃったことは何にもならぬですよ。だから、日韓会談の妥結の一つの条件だ、国際司法裁判所に応訴するかどうかは妥結の条件になる、そのくらいな強硬な決意でこの問題は会談の中では話をしていくというおつもりですね、承っておきたい。
  279. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はさように考えております。
  280. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私はこの全体を通じて、竹島の問題については非常に不満です。時間がありませんから申し上げませんでしたが、国連憲章の第六章、第三十三条、三十五条、三十七条、特に三十七条のごときは、この種の紛争は国際連合に持ち出さなければならないという当事国に義務づけの規定があるにもかかわらず、今日までこれを持ち出さぬのであります。どういうものか持ち出さぬのであります。持ち出そうとしないのであります。しかも、今の御答弁によりますと、日韓会談をやっておるから国際司法裁判所に応訴するであろう、応訴するであろうというような甘いお考えを持っておられるようでありますが、私どもは竹島に対する韓国の十年間のあの主張、今日とっておるやり方からいって、今もなお武力を持って駐屯しておるのでございますから、なかなかこの問題はそう甘くはいかぬと思うのであります。当然これは国際連合に持ち出さなければならぬ性質の問題ではないかと思うのでありますが、時間もありませんから、きょうは私はこれで終わっておきたいと思います。いずれまた外務委員会等におじゃまして、この種の問題は申し上げたい、このように考えるのであります。
  281. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 質問にお答えが残っておるというお含みでございますから申し上げますが、外交交渉をやっております際に、あまり全部申し上げてしまうといかがかと思う点もあるわけでございますが、親友野原先生のお話でございますから、一言申し上げますと、実は国連に提訴して解決ができていない問題がたくさんあるわけでございます。たとえばインドとパキスタンのカシミールの問題、それからオランダとインドネシアの間の西イリアンの問題、こういう問題が非常にたくさんあるわけでございます。ことに国連加盟国の間でこういう問題が解決していないのでございますので、いわんや国連加盟国でもない韓国と日本との間の問題を提訴して、この問題が友好な解決をすぐに期待できるかどうか、この点は実は一つ問題でございます。実はほんとうは野原先生から私が勉励叱吃されて戸惑っている形の方が、外交交渉上はいいのかもしれませんけれども、ここはやはりそういう事情も申し上げまして、私どもの真意をはっきり申し上げておくみ取り願っておきたいと思います。
  282. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 私はあらゆる措置をとるべきではないかと思います。しかも、あなたは韓国は国際連合加盟国でないとおっしゃいますが、国際連合加盟国でないものも、この国連憲章の第六章は適用されるのです。そうでしょう。そういうことはおっしゃらぬ方がいいですよ。そういうことは事由になりませんよ。加盟国でないものも適用されることになっているじゃありませんか。私はその結果がどうなるかわからない。それは国際連合に持ち出しても簡単に解決できるかどうかは疑問です。疑問でありますけれども、少なくとも日本が竹島を自国の領土だと強く主張するならば、当然ここに認められておるところのあらゆる措置、あらゆる方法に訴えることが妥当ではないのか。あなた方がこれをやらないから私どもは勘ぐるのです。竹島問題を再軍備に利用しておる、自衛隊の強化に利用しておる、そうでしょう。自民党の候補者は、韓国はけしからぬと選挙のときに演説しておりますよ。そうしてやらないのです。国際連合にも持ち出さないでおって、とにかく軍備を持たなければ、こういうことになるのだということに利用してこられたと勘ぐられても、答弁の余地はないですよ。私はそういう勘ぐり方をしたくない。私は正攻法であくまでもいきたいと思いますから、そういういやみは言いたくありませんけれども、国民の中には、けしからぬじゃないか、政府は口先だけじゃないか、そう思っている人がたくさんある。だから、そういうことのないように私は重ねて要望いたしておきます。せっかく国連憲章というものがあって、第六章をあげておるのでありますから、これらの方途にもすみやかに出るべきじゃないか。同時にまた、日韓会談がかりに妥結する場合には、竹島の問題、季ラインの問題が解決しない限り、妥結すべきではない。領土は日韓会談のあらゆる懸案事項の基本的な問題で、これが話がまとまらないで、一体何の韓国との国交の正常化ですか、何の友好ですか。私は、そういう決意で臨まなければ、この問題は解決できないということを重ねて申し上げて、終わりたいと思います。
  283. 中村幸八

    中村主査 次は淡谷悠藏君。
  284. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 外務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、この間予算委員会の一般質問の場合に、今度のロッキード購入に関する日本アメリカとの間の取りきめについて、いろいろ御説明願いました。その中に防衛庁が発表したという文句がございました。今あらためて速記録を読み返してみますと、「本年四月十五日」とある。この前のを見ても何年かわからないのですが、これは発表しましたのは何年でございますか、もう一ぺん伺っておきたい。
  285. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昭和三十五年六月十八日の防衛庁発表でございます。
  286. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そこでお伺いしたいことが二、三出てくるのですが、この間非常に短い本文の引用で、時間がございませんのでやめておきましたが、こまかい取りきめというのは、これ以上外務省ではなかったのでございますか。
  287. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ございません。
  288. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 安藤アメリカ局長がやはりそのときに答えたことを読み返してみますと、「この七千五百万ドルは、結局向こうの購入代金のために、米国政府が向こうの会社に払ってくれるわけでございます。」ということが言ってある。この場合に向こうの購入代金というのは、向こうとはアメリカ政府をさすのか、ロッキード社をさすのか、購入というのはアメリカ政府が買うのでございましょうか、どうもはっきりわからないので、もう一ぺんお聞かせ願いたい。
  289. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 向こうのとおっしゃいましたという今のお話しでございまするが、アメリカ政府がロッキードから購入しまして日本に渡すわけでございます。
  290. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 何を購入されるのですか。
  291. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 部品でございます。
  292. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 部品は何ですか。
  293. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 詳細は私たち存じておりません。防衛庁の計画に基づいてやっておられることでございます。
  294. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 外務省はその計画をごらんになったことはありますか。
  295. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 見たことはございません。
  296. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 藤枝防衛庁長官の答弁並びに久保装備局長答弁によりますと、さまざまこまかいものの購入があるようであります。これは防衛庁と新三菱との契約書には載っておりません。新三菱とロッキード社との間の取りきめも提示されておりません。従って七千五百万ドルは国会の段階においては全くのブランクです。大きなワクにすぎません。この全部の内容についてはどのようにきめようと、外務省は防衛庁に一任して、かまわないというお建前ですか、どうですか、お聞きしたい。
  297. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。交換公文に関しましては実は御承知の通り外務大臣と在日米大使との間になされております。それでその後のことは全部この実施でございまして、主務官庁は防衛庁でございますので、防衛庁が諸計画等につきまして米側とも相談しつつ実施されておる次第でございます。
  298. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 外務大臣の引用された交換公文の内容には、「引続き本件共同生産計画の実施に関する細目取極について交渉継続中のところ、両国政府間の合意が成立したので、本日防衛庁で日本側外務・通産・防衛の三事務次官、米側在日米国軍事援助顧問団長ロジャース空軍少将により取極の署名が行なわれた。」とこうある。外務省はその場にはおったのですね。おって、この細目取りきめが決定した内容には全然タッチをされない、こう思ってよろしいのですか。
  299. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答えいたします。この防衛庁の発表にもあります通り、主務官庁は防衛庁でございます。防衛庁におきまして、ここにも書いてありますように、MAAGのロジャース団長と日本関係事務次官との間に署名が行なわれました。これはいわゆる細目取りきめでございます。この細目とりきめの内容は、その発表文の最後に響いてあります通りでありまして、具体的な何をどういうふうにいつというふうなところまでは書いてありません。きめてございません。その具体的な実施の内容につきましては、その後防衛庁の方が米側と折衝されて実施されておるわけでございます。
  300. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 その防衛庁が取りきめました細目について、外務省は報告を受けておりますか。
  301. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 承知しておりません。
  302. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そこでお伺いしますが、この件に関しまして防衛庁からアメリカに出張しております防衛庁の庁員があるはずでございますが、何名行っておりますか。
  303. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 防衛庁からは一人出張しておると承知しております。
  304. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 氏名を承りたい。
  305. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 大浦三佐というふうに聞いております。
  306. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 字は正確にどう書きますか。
  307. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 大きい浦と書きます。
  308. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 名前はわかりませんか。
  309. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 ちょっととこの場ではわかりません。
  310. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 あとでわかったら一つお知らせを願いたいと思うのです。
  311. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 承知いたしました。
  312. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そこでこの七千五百万ドルの内容について外務省は、この間の私の要請に基づいた文書を出すために、アメリカ政府にその予算執行についての交渉を始められておりますか。
  313. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 この七千五百万ドルの内容については、先ほども申しましたように実施の問題でございますので、その実施につきましては防衛庁が主務官庁としてやっておられるわけでございます。防衛庁からどういうお答えがあったかは正確に存じませんが、防衛庁はアメリカ側と協議しておられると承知しております。
  314. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 このロッキード購入に関しての外交交渉は、いつ防衛庁におまかせになったのですか。
  315. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。このロッキードの購入の件に関しましては、御存じの通り昭和三十四年十一月六日の国防会議において、ロッキードF104型機二百機を昭和四十年末までに日米共同生産することに決定したということでございます。それからさらに同様なことが閣議で了解がありました。それに基づきまして防衛庁長官から外務大臣に対しまして、対米交渉の依頼がございました。これによりまして対米交渉をいたしたのでございます。それがこの前申し上げました情報文化局から発表しました交換書簡でございます。
  316. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 昭和四十年度の末までにですね。間違いないですね。
  317. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 そのように承知しております。
  318. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 間違いないでしょうな、これは重大なる時期ですから。私は国庫債務負担行為の最終年度は三十九年の年度末だと思っております。正確にお調べ願いたい。
  319. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 私はそういうふうに承知いたしておりますが、なお確かめてみます。
  320. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 これは御承知の通り国庫債務負担行為は五カ年間ですから、三十五年からですと三十九年しかいかないのです。四十年までになりますと、六年になります。
  321. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 ただいま御報告した通りだと承知しておりますが、なお確かめてみます。
  322. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そこでその取りきめの際には、このロッキードを発注し、購入する場合の外交交渉は、全部防衛庁に移管をしたわけですか。外務者がおやりになるのじゃないですか。そのあとのいろいろな外交交渉の件ですがね。
  323. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。外務省ではございませんで、防衛庁でございます。
  324. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 そういうことは実際にやり得るのですね。どの程度まで外務省がやり、どの程度まで防衛庁がやるのか。ただいわば外務省はロッキード購入の窓口を開けばそれでいいので、あとはどのようなことがあっても、防衛庁が一切これを取り仕切ってかまわぬという法的根拠でもありますか。
  325. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 防衛庁がこれを実施いたします。実施いたしますときには会社と契約するわけでございます。
  326. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 防衛庁が会社と契約を実施をする、これはもう実施をしていますね。これは防衛庁がやる。外務省はこのときには全然ノー・タッチなのですか。
  327. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 その通りでございます。
  328. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 たとえば今度の問題のように、私はこの七千五百万ドルの内容について公開を求めた。久保装備局長は即刻公開します、報告しますと言いましたが、翌日になって藤枝防衛庁長官は、これはアメリカ政府予算執行に関することだから、アメリカ政府の許諾を符なければならないと答弁している。このアメリカ政府の許諾を得るような外交交渉も、全部防衛庁にまかしてある、こうなるのですか。
  329. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申します。このロッキードの発注とか、こういったものはすべて条約、それから交換公文の取りきめの実施でございます。実施につきまして、防衛庁はMAAGと協議していろいろやっておるわけであります。われわれの承知いたしておりますところでは、防衛庁はMAAGと協議をしておると思います。
  330. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 このロッキードの購入に対して、外務省が調査その他防衛庁から委託されたことはございませんか。
  331. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 直接このものの選定における調査を委嘱されたことはございませんが、諸外国の例等についてどうなっておるかというようなことについて、われわれの知っておる点、あるいは調査してもらいたいということがあったやに聞いております。
  332. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 西ドイツがロッキードを購入しまして、そのときのロイアリティの問題で交渉があったように私記憶しているのですが、それではないですか。
  333. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 まことに申しわけございませんが、私よく存じておりません。
  334. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 存じておりませんではちょっと答弁になりませんから、ちょっとお調べ願えないでしょうか。きょうでなくてもよろしいですよ、私保留しておきますから。
  335. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 取り調べいたしてみます。ただ他国の軍機にわたることもございますので、あるいはどういう結果になりますか、よく存じません。
  336. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 ロイアリティで金を払ったのは軍機じゃないでしょう。そうなると日本の七千五百万ドルの内容ども、軍機にわたるというかもしれませんが、私はそういうものではないと思います。
  337. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 ただいま申し上げましたのはちょっと表現が足りなかったかもしれませんが、ドイツとロッキードの間は全然別な問題でございますし、また向こうは向こうなりのいろいろな事情があったと思います。
  338. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 それで私不思議に思いますのは、グラマン、ロッキードなどの交渉があったときは、防衛庁の塚本装備局長がこのロイアリティの問題をなかなか話さなかったわけです。ロッキード社との秘密な協定があって、日本は安くしているのだから、向こうの方に悪いから発表しませんと再々言っている。今度はちょっとのうちにもさらさらと言ってしまったのですね。これは塚本装備局長です。そういう態度は、どうも外交に名前をかりて、われわれ海外のことは知らないものですから、どうもいいかげんな答弁をしているような印象が強い。私は小坂外務大臣には一切そういうことはないはずだと思いますから、この際お調べになった内容——ロッキードに関することがわかりましたら、私きょうは保留いたしますから、あとでゆっくりお調べを願いたいと思う。  それから一点だけお願いしておきたいことがあります。今後外国との間にかなり膨大な取引もある、また予算もたくさん食っているような問題が出て参りますが、無制限に外交問題を当面の官庁だけに預けておくというのはどういうものでしょうか。防衛庁は今お聞きしますと一人ですよ。この一人の大浦三佐ですか、この人が向こうにおって二百七十億円にわたる部分品買い入れのいろいろな問題をチェックし、これを見ておるという形は、一体できるのでございますかね。取りきめの際に、そういう国際的な関係は、もう少しお取り扱いになった方が至当じゃないかと思いますが、外務大臣、いかがでございますか。
  339. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私ども外交の窓口をいたしております者は、大きな取りきめ全般の範囲を決定する際には、これはやはりそれ相応の立場からあずかるわけでございますが、そうした取りきめが一回できまして実施の段階になりますと、それぞれ責任の担当官庁にこれをまかせておるという形でございます。今防衛庁の一人というお話がございましたけれども、これは先方に行っておりますのは大浦とかいう人のようでございますが、当然国外では大蔵省あるいは通産省という関係官庁と協議して行なうものと考えております。
  340. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 このロッキード購入に関して、防衛費の経理その他で人事の入れかえは行なわれませんでしたか。これは外務大臣にお聞きしたい。実はグラマン機の購入の場合は、大蔵省その他では非常にひんぱんに防衛庁との間に人事交流が行なわれて、疑点を持たれました。吉村君などは、きめるときは防衛庁におって、予算を盛るときは大蔵省におった。外務省はそういうことはないと思いますが、その点をはっきり伺っておきたい。
  341. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 外務省にはございません。以前から外務省から渉外関係をつかさどるために一人出しておるわけでございます。この人は最近までは今インドにおります服部参事官で、最近これにかわって稲川という人が参っております。これは全然最近のことでございます。最近異動したのでございまして、別にこれと関係があるとは思っておりません。
  342. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 この外務省でお調べになったロッキードに関する調査項目を伺ってから、また質問を続けます。ただ最後に一言だけ外務大臣に確かめておきたいのは、今度の二百七十億円のアメリカの負担分の内容については、私は藤枝防衛庁長官の言明通りこれはいただけるものと信じている。これには部分品の価格もあるだろうし、青写真もあるだろうし、膨大なものだと思うのです。ロッキードと新三菱との間に行なわれております取りきめには、ときにはあるいは専門的な、あるいは軍機の秘密にわたるようなものがあるでしょうが、ただ部分品の名称、数量、価格、こういったような問題に関係のあります価格を中心とした材料というものは、これは国際的な秘密に属するものではないと思われますが、外務大臣としての御見解はどうでございましょうか。
  343. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この取りきめを実施する段階では、これは防衛庁が行っておられますので、私ども全然容喙しておりません。
  344. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 これは外交上の常識としてどうですか。つまりアメリカの方が日本に援助するといった内容について、金額がきまっておるのですから、この金額がどうなっておるかぐらいは、外交常識として機密に属しないものと思いますが、この点はいかがですか。
  345. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一度外交交渉いたしまして取りきめますと、その実施にはそれぞれ担当の部局がやっておることは前に申し上げましたので、本件に関しましては、日本側は防衛庁、アメリカ側は国防省がやっておる、そういうことでございます。
  346. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 お聞きのような状態で、まだ資料が出てこない分があるので、私はこれで質問を残して、他日また折を見て継続したいと思います。よろしゅうございますか。
  347. 中村幸八

    中村主査 外務省所管の質疑はきようで終わることになっておりますから、別の機会にお願いしたいと思います。外務委員会の方で…点…。
  348. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 外務委員会でけっこうです。
  349. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 実に申しわけないのですが、私も詳細はよく存じませんので、調査がどの程度のものであったかということをいろいろ調査して、その上で御連絡します。
  350. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 その御返事だけはこの予算審議の間にいただけないでしょうか。質問の時間がなければ仕方がないと思いますが……。
  351. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 まことに申し上げにくいのですが、非常にわれわれの局の中の資料がたくさんございますので、古いものをひっくり返してみなければならぬと思います。できれば次の機会にお譲り願いたいと思います。いかがでしょうか。
  352. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 一応きょうは御答弁がなかった、このように認識して質問は保留いたします。
  353. 中村幸八

    中村主査 保留の部分は別な機会にお願いいたします。  次は村山喜一君。
  354. 村山喜一

    村山分科員 私は二点につきまして、大臣並びに関係局長にお尋ねをいたしたいと思います。  第一点は日米教育文化会議の問題でございます。この日米教育文化会議の共同コミュニケを見ますと、昭和三十六年六月、ケネディ大統領と池田総理大臣が行なった決定に従って、文化及び教育の交流に関する第一回日米合同会議が開かれた、こういうことになっておる。そこでこのケネディ大統領と池田総理大臣の行なったところの決定でありますが、これは日米教育文化会議の性格を規定づけるものであると思います。しかしながらこのコミュニケを見てみましても、いろいろな問題点が出て参りますが、この日米教育文化会議というものの性格は一体どういうふうなものになっているか、さらに日米教育文化会議の目的は一体何であるか、ここに外務省から出されました「日米文化教育交流の十年間」という中屋健一、ロバート・シュワンテスの報告書がございますが、この報告書を見てみますと、当日の文化会議の討議の資料になっているようです。それに基づきまして、勧告という形をもって、両国政府にこのコミュニケが実施されるようにするのだというようなことが書いてございます。そこでこの勧告についての法的な効力というものは、一体どういうようなものがあるのか、さらにまた、今後日米教育文化会議の持っております任務というものはどういうようなものであるか、こういうようなことについて御説明を願いたいわけでございます。これは池田総理がアメリカに渡りましたときに、ケネディ大統領と会いました際において、安保態勢を強化していくという一つの考え方のもとに、日本アメリカとの教育文化政策について、そういうような面から、その一環として計画をしたものであるということもうわさに出ているわけでございますが、その安保態勢との関連性はどういうふうになっているのですか、この点について大臣からまずお答えを願いたいと思います。
  355. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この日米間の文化及び教育の交流に関します合同会議は、お話のように昨年の六月、池田総理大臣とケネディ米大統領との間に話し合いが行なわれました際に決定したのでございますが、その他にも、科学技術に関する会議を持とうじゃないか、あるいは貿易経済に関する会議を持とうじゃないかというようなことが、合意されておるわけであります。その合意に基づきまして、この一月会議が開かれまして、先方からはボートンという人と、こちらからは広島大学の学長の森戸辰男氏が議長になりまして、会議は非常に友好裏に行なわれた。その結果がこのコミニュケになって出ておりますが、今いろいろ御質問のございましたこの会議の成果でございますが、これは日本アメリカが友好国として存在しておるわけでございますが、その間に、双方の親密な立場にかんがみまして、アメリカの側においても国も若いことでもあるし、日本の古い文化の伝統に対しては、十分な敬意を払っておる、日本の文化についても多く知りたい、日本側においてもアメリカの躍進する文化活動についても十分知識を得たい、さらに次代をになう青少年の教育についても、双方意見を交換して、お互いにとるべきものはとっていこうではないか、こういうことが主たる目的でございまして、できるだけ両国における文化教育に熱心な方々によって、自由にこの問題を討議する、こういう運営の方法をとっておるわけでございます。さらに勧告が出るわけでございますが、勧告は政府に対してなされますが、法的には何ら拘束力のないものでございます。しかしもとより有識者の集まった討議の結果でございますから、政府としてもその勧告については、十分敬意を払い、その勧告において、とるべきものは十分にこれを政策に取り入れるようにするということが望ましいことはもとよりでございます。さらに安保態勢との関係でございますが、これは教育文化でございますから、そうした安全保障上の問題というものは、全然関係がないわけでございます。
  356. 村山喜一

    村山分科員 性格については、こういうような性格のものだということをはっきりおっしゃらないわけですが、このコミュニケを見ますと、明年アメリカで第二回のこの種の会議を開くということがきめられているわけです。そうなるとこの日米教育文化会議というものは、また永久的な会議ではないでしょうが、半恒久的な性格を帯びてきているのではないか。そうなって参りますと、これの持っております目的その他から考えて、今後の日本の教育文化政策にもきわめて重大なる影響をもたらすであろうということが言われるわけでございますが、説明によりますと、この会談は、日米交渉ではなくて、日米間におけるところの代表二十五人の相談会のようなものだ、こういうような説もあり、いわゆる半恒久的な性格を持っております組織形態から考えまして、その性格の点をもう一回お尋ねいたしますが、どういうようなものなんですか、もっと正確にお述べ願いたいと思います。
  357. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この性格とおっしゃいますと、会議自体の持たれたあの形を見ていただくとよろしいかと思いますが、双方がそれぞれの文化、教育に対して十分な尊敬を払い、お互いに理解し合う、またとるべきものはお互いにこれを摂取する、こういうことでございます。毎年一回開く、それも相互に開催地を交換し合おう、こういうことで、明年はアメリカにおいて開くということになろうかと思う次第でございますが、そういうこともこの委員会の討議の結果に待つというふうに、非常に自由な討論の場になっておる、こういう性格を持っておると考えております。
  358. 村山喜一

    村山分科員 自由な性格を持っておるということですが、この会談の内容についてはまた後ほど触れて参りますけれども、教育、文化を通じまして国際交流と相互の協力をはかっていくという考え方は、世界平和の基本的な構想の上からいっても望ましいことでありまして、日本アメリカとの間における教育、文化の交流が進んでいくことは賛成でございますが、問題は、このシュワンテスの報告書の内容を調べてみますと、アメリカ日本に対して行なっております教育、文化政策というものが、その性格的な、組織的な形態の上からいいまして、情報活動と結びついているということが、この報告書の中にもはっきりと述べられております。  そこで私も具体的に、その情報活動と結びついている、アメリカの大使館の影響下にあり、しかも日本の公立の図書館等の図書をいろいろ調べてみたのでございますが、非常に問題が多い点を発見をいたしております。御承知だと思いますが、USISが統括をいたしております日本国内におけるところの出版物、映画フィルム、展示品、そういうようなものを見てみますると、アメリカの文化センターから、日本の国内にあります日米両国共同センターへ、そしてその文化センターから日本の図書館に図書や資料が送られておりますが、その中にはもちろん学問的に非常に貴重なものもあり、そして教育的に今後参考にしていくようなものもたくさんあることは事実であります。しかしながら、この報告書の中にも明らかにされておりまするように、情報活動と結びついているものがありますので、それらの図書、出版物をもらいましても、日本の文化、教育活動に益があるのではなくて、かえって害がある、しかもその間にあって持て余しているという実情があるということを私は知っているのでありますが、この問題について、それらの図書等の内容がどういうふうになっているかということを、情報文化局の方でお調べになったことがありますかどうか、その点について、局長がおいでになったら答弁を願いたい。
  359. 曾野明

    ○曾野政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、なるほどアメリカのUSISが、アメリカの見地に立つ。パンフレットその他を各国において配布せられていることは事実でございます。しかしこれは決してアメリカに限ったことではございませんので、ソ連を含みまするすべての国は、直接その任国を誹謗しないような限りにおきましては、それぞれ自分の国の見地に立った啓発文書を配布いたしておるのでありまして、たとえば日本の国内におきましても、ソ連が発行しております画報は、月に五万部も出版され、何らそれに対して制約はございません。われわれといたしましては、すべての国のことを日本国民がよく理解をして、そしてそれを自分らの頭で批判をしてこなしていくところに民主主義の発達があり、諸国民相互の理解し合うゆえんがある、どういうふうに考えております。従って、ただいまお尋ねの点でございましたが、決してアメリカだけがそれを日本でやり得る態勢にあるのではございません。またこのUSISの活動が、直ちに今回の日米文化教育会議というものと結びついて、この会議がUSISのかかるアメリカの啓発活動を一方的に支持するものではございません。
  360. 村山喜一

    村山分科員 各国がそれぞれ自分の国の宣伝のために、また自分の国の政策を知らしめるために情報活動を行なうことは、これは自由でありましょう。またそれを読みこなして日本のものとしていくのは、民主政治のあり方として当然な姿であろうと思うのです。しかしながら私が知っております、これは文化センターでありますが、十一の日米両国の共同センターがあります。その中には、USISから図書や映画フィルムが相当持ち込まれております。その管理は府県が行なっておる。そしてそこには府県の吏員がおりまして、財政的な援助が行なわれている。こういうような形の中で、アメリカのそういうような、私たちが見たらあまり学問的に、あるいは教育的に好ましい図書ではないと思われるような、しかもそういうような一つの国家的なイデオロギーを持った書籍が非常に多くて、展示しておいてもみんながそういうようなのを利用しようとさえしない。それくらいおびただしい数のものが送られてきている。こういうようなのを見ますときに、もっとそこら辺については日本の、そういうような地方公共団体が金を使って、人間を使って管理をしている共同文化センターのあり方については、考えるべき点があるのではないか。それではソビエトの方からの資料は、そういうようなところでそういうような人間を使ってやってきておりますか、その点について承りたい。
  361. 曾野明

    ○曾野政府委員 お答えいたします。ソ連の文書につきましては、これはもう完全に市販で、非常に広まっております。今お話しになりましたように、確かにアメリカのもので、国民があまり関心を持たぬというものもきておることは事実でございます。しかしそれは結局国民が十分批判力を持っているからそういう結果が出ておるわけでございまして、これは今お話しのように、実はあまり影響力がないということにもなるわけなんでございます。  現在地方の自治体がどの程度財政的に関与しているか、私今ちょっと存じ上げておりませんけれども、おそらくそういうこともあり得るのではないか。しかしこれは別に特に意のあるところではございませんで、もしソ連の大使館がそういうところへも文書を配布しているなら、当然またそういうところを通って一般の大衆の目に触れることもある、私たちとしてそれをとめるというわけではございません、アメリカの文化センターは向こうの金でやっておるわけであります。それと同じようなことは、ここでほかの国の外郭団体もやっておる。アメリカは金を非常に使っておる、こういう結果ではないかと私は考えております。
  362. 村山喜一

    村山分科員 そういうような役にも立たないとこちらの方で思われるような資料が、日本国民に教育宣伝をしようという一つの目的のもとに、アメリカの政策を押しつけてもわからせるというようなことで持ち込まれてきておる。そういうような図書の数は膨大な数に及んでおる。しかもそれは日本国民にはあまり関心を持たれていない。そういうものに対して、やはり日米教育文化会議あたりでそれらの内容について討議をされましたか。
  363. 曾野明

    ○曾野政府委員 今回の会議は、先ほど大臣から御説明いたしましたように、民間団体の方を中心といたしまして、非常に非政治的な技術的な議論をいたした次第でございます。ただいまお話しのようなあまり読まれない図書、こういうものが来ると一応どういうふうにするかという問題も、図書の交換の問題も、やはり今回の会議におきまして話が出ております。そういうものを是正するということも、これは日本側としては当然考えておるわけであります。そういうことも話題の一つになりました。
  364. 村山喜一

    村山分科員 シュワンテスの報告書の中身を見てみますと、文化の交流、これは人物の交流が第一だ。そこで国家指導者層といいますか、最高のレベルにあるそういうような政治指導家であるとか、あるいはその他の部門にわたるところの指導者がアメリカを訪問しておるわけですが、その四百人以上の人たちが六十日間の国務省の招待を受けてアメリカに渡っておる。この中にはアメリカの政策に対して反対をしている人、あるいは批判をしている人は、どういうような理由か知らないけれども、とにかく入っていない。これはアメリカの政策であるのか、このような人たちが援助を受けることを拒んでいるのかわからない。こういうような表現で書いてあるわけです。これはお読みになっておわかりになっていらっしゃると思いますが、そういうような、いわゆるアメリカに非常に友好的な気持を持っていると、いいますか、アメリカの政治が正しいものだ、こういうような考え方の者だけが文化交流なりそういう政治交流といいますか、という形で人事的な交流が行なわれている。アメリカの政策に反対をし、あるいは批判的な気持を持っている者はこれには参加をしていない。こういうような事実が客観的な十年間に出ておりますね。こういうような一つの考え方というものは、アメリカ側の立場に立ったものであるのか、それとも日本側の立場に立ったものか、その点はどういうふうになっておりますか。
  365. 曾野明

    ○曾野政府委員 ただいまの点お答えいたします。ただいま、アメリカアメリカに好意を持つ方ばかりを招待するという実績ができている、こういうお話でございましたが、アメリカの考え方を私たちが承知します限りにおきましては、アメリカに批判的な方も招待を受けております。現に、この席では名前は申し上げませんけれども、おそらくアメリカとしては決して満足しないであろうという方も招待されて、アメリカに行っておる例もございます。アメリカとしては広くいろいろな方を呼びだいのであります。それは私たちがわかりません理由によりまして、御本人が行かれない場合が多い。その結果、結局第三者から見ればアメリカが非常に好意的だと考えている人が多数行く、こういう結果になっておるのじゃないかと思います。アメリカ政府の考え方は、私たちが聞いております限りにおきましては、そうでない方もどしどし招待をいたしたい、こういうことのようでございます。
  366. 村山喜一

    村山分科員 招待された人たちの中に、ほとんどそういうような人たちが入っていない。これはシュワンテスによれば、アメリカの政策なのであるか、それともこういうような人たちが援助を受けるのを拒んだのであるか、そこはわからないというふうに言っているわけです。そうすると今局長は、そういうのを拒んだ人が多いのだと思うというような表現でありましたが、そういうような具体的な事実について調査をされておるわけですか。
  367. 曾野明

    ○曾野政府委員 アメリカが招待いたしますのは、別に日本政府の手を経ないで、直接招待するケースが多いわけです。一々どういう方が行くのを拒まれたか、それを私たちは詳しく存じておりません。そしてまたそういうことを一々御本人について聞きますことは、すでに私たちとしてはなすべきことではないというふうに私は考えております。
  368. 村山喜一

    村山分科員 これは大臣にお伺いいたしたいのですが、この日米教育文化会議の共同コミュニケの全文を見てみますと、相当政府の方で援助をしなければならない幾多のものが入っておるようであります。特に日本の場合には、アメリカのように民間におけるところのそういう有効な団体がない。こういうものを日本の場合作っていくためには、どうしても政府の援助が必要であるということがいわれております。そうなって参りますと相当な金が日米教育文化交流に必要になってくる。そしてこの実績を上げていくためには、そういうようなものがますます必要になってくると思うのでありますが、そのような予算的なあるいは財源的な措置というものが、将来においてどの程度考えられているのか。と申し上げますのは、今回政府の方が提案をされております日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との協定、これとの関係はあるのかないのか、その点だけでよろしゅうございますが、その点について大臣はどういうふうにお考えになっておるかを一言お尋ねしたい。
  369. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この会議は先ほど申し上げたように、非常に自由な雰囲気のうちの討議でございまして、この会議の中に述べられておる希望を、政府はそのまま拘束されるものとして受け取らなければならぬということはないのでございますから、この会議の御希望はよく承って、よく検討をしてみたいと考えておりますが、ただいまのところは特に政府としてはこう考えておる、こう申し上げる段階にはございません。会議そのものに対しましては、予算的には旅費だけを計上いたしておる次第でございます。
  370. 村山喜一

    村山分科員 文化というのは、やはり高いところから低いところに流れて参るわけでありますが、日本の歴史的な文化の遺産というものを考えてみました場合に、中国大陸あるいは西欧の文化を吸収いたしまして、今日の日本の文化というものがあると思うのです。そういたしますと、アメリカの物質文明というのですか、非常に豊富な財力に基づくいろいろな文化活動、教育活動が行なわれ、それと日本の現在創造しつつある新しい文化、こういうものを比較検討いたしました場合に、ある点の特殊なものは別にいたしまして、そういうような文化の比較との上からいって、アメリカの文化がとうとうとして日本に流れ込んでくる、こういうようなことがこの十年間の報告書を見ましても現実に現われているわけですが、新しい日本文化の創造といいますか、日本が独得の文化を創造して人類の進歩に貢献ができていくような自信のある文化、そういうようなものはどういうふうにして育てていこうとお考えになっておるのであるか。これは文部省の所管にわたることになるかもしれませんが、一応文化の交流の問題については外務省の方が、国際的に交流させる場合においては、最終的な責任者であるということが規定づけられておりますので、局長あるいは大臣から、いわゆるこの新しい日本文化の創造という問題について、外務省としてはどのような考え方をお持ちになっているのかをお尋ねをいたしたい。
  371. 曾野明

    ○曾野政府委員 お答えいたします。今回の会議を見ましても、文化につきましては、やはり若いアメリカが、数千年の歴史を持つ日本の文化というものを吸収したいという雰囲気が非常に強いということは、はっきり出て参っておるわけなんでございます。一方、なるほど戦後におきましては、いわゆるアメリカの文化が日本に流れ込んでいて、必ずしもいい影響ばかりではないということは事実でございますけれども、私はこれは長い目で見まして、結局におきまして国民が健全なる善識でそれをそしゃくしていく限りにおきましては、決して日本の国民は外国の文化一辺倒になるものではないと私は感じております。こういうものは長い目で見ました場合に、やはり古い歴史を持ちまする日本の文化というものは、これは決してアメリカの文化に押し流されるものではないのでありまして、むしろその古い文化を持ちます日本の国民が、いろいろの外国の文化を吸収することによって、それによっておのずから、新しい日本文化が作られていくというふうに確信をいたしております。
  372. 村山喜一

    村山分科員 アメリカの新しい文化を吸収をしていく中で、日本の、世界の人類に貢献するような文化を創造をしていくとおっしゃいますが、しかしそれにはやはり日本独自の文化というものを育てていく——古いものはなるほどありましょう。しかし新しいものを育てていくためには、もっと角度を変えて、そして日本の大学教育なりあるいはその他の学校教育の問題、さらに広い意味の文化活動の面について、外務省が、国際的な立場に立って日本文化を伝達をする立場にあるならば、もっと今日の日本の文化行政なりあるいは教育行政、そういうようなところで行なわれております現実の姿を把握していただいて、そして今お話がありましたような方向に、もっと世界に誇れるような方向に育てていくという一つのファイトをお持ちになるように要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、さっき大臣のお答えの中には、ガリオア関係のは返事がありませんでしたので、あえて私はお伺いをいたしません。それは外務委員会なりで、また他の機会に論じていくことにいたします。  最後に、時間がきているようでございますので、ドミニカの問題をお尋ねをいたします。この問題については、すでに決算委員会で幾多の証人も立ち、あるいは移住局長の方からも答弁があり、大臣からも答弁がなされております。この内容をずっと見て参りますと、三十六年の十月の二十日、石田議員の質問に答えて、大臣は、調査に欠陥があったということを認めざるを得ないと思いますということを、はっきりとお答えになっておいでになります。そのほかいろいろ、今日のドミニカにおけるところの移民政策というものが、これは移民ではなくて棄民政策になっておったというようなことも、議事録を通じて明らかにされておるわけですが、高木局長説明によりますと、最終的には主務官庁であるところの外務省が責任をとります、こういうふうに三十七年の二月五日の決算委員会においては答弁をされているわけです。そこで私がお尋ねをしたいのは、ドミニカの各地区の状況は、それぞれ特殊情勢があるようでございます。一般的に言えば、いろいろな原因もあるわけですが、そのドミニカの中で特に私が申し上げたいのは、ネイバ地区の場合であります。このネイバ地区の場合は、やはり根本的には、水とかあるいは政局の不安定という以前のものがあったのではないか。それが今日の事態に発展をしているのではないかということであります。これは第一回目の調査の対象にはもちろんなっておりませんで、こちらの方から出発をいたしました後において、第二次の調査において、適地であるということが発表された。行ってみたら、適地ではなかったという事実が、もういろいろな資料に基づいて出されておることは、御承知の通りであります。そこで私は、こういうような損害を移住者に与えた、そのために今日の事態が生まれているわけでございますが、そういうような政治的な責任というものは外務省にあるとするならば、私は、当然何らかの措置をあなた方がこの際特別に講じていくというような具体的な案をお持ちになってしかるべきではないかと思うのでありますが、今日の時点において、大臣なりあるいは移住局長はどういうような見解をお持ちになっているのかを、一点だけお尋ねをいたしたいわけです。
  373. 高木廣一

    高木政府委員 ネイバの移住調査について、この前決算委員会で農林省中田技官がお答え申しましたように、中田技官は、現地へ参ります前に、ドミニカ政府からあらゆる詳細のデータを得て、日本でそれを検討し、最後に疑問の点を自分現地に行って見たのであって、自分としてはあれが不十分であるとは思わないということを申しております。それからドミニカの問題が、いつごろから問題になったかということを私も書類によって探してみますと、結局昭和三十五年八月ごろからでございまして、ネイバの移住者も入りまして一年あるいは二年半、当時の故郷へのたよりは相当明るいのでございます。この点先生にもぜひ御披露をいたしたいと思います。それによってあれも若干違うかと思いますが、先般決算委員会へ証人として呼ばれました久保文雄氏自身が、この方は徳島県出身の方でございますが、現地へおいでになってまる一年を経てからお出しになっている手紙がございます。ちょっと御披露申し上げます。  「早くも丸一年を迎え感無量なものがあります。さてこのたびは絵と共に当コロニヤ(開拓者移住地)の模様などをお報らせして少しなど後々の移住を志される人達のために参考ともなれば幸いに存じます。この絵をごらんの様にこんな美しい家に住んでおります。小生宅よりお隣りを望んだ絵です。」として、この絵のこまかいことを書いて、「こんな具合に総ての家が目もさめる様な美しさにペンキで化粧されています。少し離れた耕地から望むと巨大な花園の様です。台所、便所、別棟室は四部屋、そして家族数だけの上等のベットが置かれ、勿論蚊帳、枕、純白のシーツ及びマットが付いており、屋根及び台所周囲は熱にたえる特殊な材料が用いられて、一戸当り五〇〇ドル掛けたと言われるだけに立派なものです。移住者の住むには過ぎたる感があります。入植当時は未だ水道工事の最中で、新築のホヤホヤでした。住宅三〇戸、学校、教会、倉庫、事務所、管理官住宅(我々の世話をしてくれるドミニカ人の長)、以上の建物がネイバ山脈の麓、目の前にはネイバ市、バウルコ平原を望む景色の良い緑の丘に建っていて、其の周りが耕地になっております。」こうこまかく書いていて、「丁度御伽話の中に居る様な雰囲気に包まれます。最寄りのネイバ市迄道程二キロ、募集要領にありました様に、約束通り立派な直線のアスファルトの道路が最近に出来上り、益々便利になりました。」ということで、現地では映画をやったり、踊りをやったり、「八月十五夜の茶屋」を見たとなって、「うちでは今バナナ園とブドウ園の建設に力を入れており、バナナは一本分上物で一ドル、下ツツ込みで七〇セント、アメリカの大きなフルーツ会社が買取りに耕地迄トラックで積みに来ての相場です。とにかくドルとペソと同値なので有利です。次にドミニカから飛行機で旅行するとすれば、旅費は左の通りです。アメリカ、フロリダ半島のマイアミ迄大人往復一〇〇ドル、 ニューヨーク往復二〇〇ドル、米領プエルトリコ島迄往復四一ドル、これで旅行出来ますから、我々にも手の届かぬ夢ではありません。」ということを言っておられます。  また今度お帰りになっておられる小市さん、これは神奈川県の方でございますが、この方も同じように「昨年、御便りを差上げた頃植付けたギネオ(バナナ)がその後順調に発育致し、此の五、六月よりドミニカ・フルーツ会社へ毎週四、五〇本づつ出荷して居り、金額にして月一〇〇ドル前後の収入があり、今では苦しかった過去一年が夢の様で、入植第一段階をどうやら突破出来ました。」云々と書いてあります。  それからネイバからの手紙でございますが、小田原の日下部弘という方ですが、「横浜出港致しましてより二年半、この間何の御便りも致さず」云々、「現在、面積、品種共にド国一番のブドー園です。現在農務省も大変ブドーに力を入れ、アルゼンチンより専門家をまねき、小生の所有地の一部(三町歩)に二〇〇種のブドーの苗木を南米、ヨーロッパ等より輸入致し、試植致して居り、品種を見定めて後、小生に下さる事になって居ります。只今本年第一回目の出荷も終り、第二回目の収穫も二十日後には初まる予定です。当地方では品種により一年三回の収穫が有ります。小生のは大半がマーラガ種で、年三回の収穫です。販路も現在は業者の買附がはげしく、畑売にて代金も前払する故、全部買い取らせて下されなど申出る業者も有り」こういうふうに、これはネイバでございますが、ハラバコアその他からも来ておりまして、私はかなりこれは故郷に対する、少しオーバーの手紙ではあると思いますけれども、帰られてお話しになったような悲惨な状況では、とてもこういう手紙は書けないと思うのであります。  こういう点を考えまして、実際事態が変わったのは昭和三十五年八月、ドミニカが汎米諸国から国交断絶を受け、経済封鎖をされ、従来輸出できたバナナも輸出できなくなり、国内のマーケットも観光客が来なくなり、市場が狭隘になった。従って値も下がったというようなことが事情である、こういうふうに思います。こういうことを申し上げるのは、決して移住者に冷淡だということではございません。われわれといたしましては、外務省といたしましては、在外邦人のめんどうを見るのが外務省の責任であり、特に移住局長のポストにいる者は、移住者の安全その他については十分の責任を持たなければいかぬというふうに感じております。それがためにネイバに参りまして、私は移住者の方々に、皆さんを国援法のラインに乗せてお帰しすることにいたしました。しかし皆さんが政府に損害賠償というようなことで法律上の義務まで言われると、非常にむずかしくなると思います。見たところ、皆さん三十才前後の非常にお若い、元気な方ですから、お帰りになって前向きで一つ就職その他をお手伝いするというふうにさしていただきたいと申し上げたのであります。そのとき一番最初に、名前は覚えがないのですが、色の白い、感じのいい方でございました。われわれは自分らの意思で来たのであって、今度帰してもらうことは感謝しているというお話でございました。こういう事情でございます。
  374. 村山喜一

    村山分科員 私はここにネイバの地図を持っておるのですが、今読み上げた久保さんと小市さんですね。この人の土地がどの地区にありますか、わかりますか。おわかりにならぬでしょう。
  375. 高木廣一

    高木政府委員 わかりません。ただ今度お帰りになった方です、久保さんは……。
  376. 村山喜一

    村山分科員 この地図の中にあるように、非常に条件に恵まれた人もあるのですよ。中には……。けれども、この赤のところは全部耕作不能地です。私がこの問題について知ったのはおととしですが、私の郷里からネイバに行っている人がおりまして、ネイバの悲惨な状態について尋ねがあった。そこで移住局の方にも相談を申し上げまして、その結果また国援法に基づいて帰すようになった。今のようにあなた方が、あなたも直接行かれたわけだが、行ってみられて非常にいいところだったら、帰ってくる必要はないのですよ、手紙の通りであれば……。手紙の通りでないところに問題があるわけです。その調査の責任は、これは今まで決算委員会でもずっと明らかにされてきております。そのネイバ地区の状況報告書も、向こうのドミニカの海協連の支部長の池田さんの手紙を見ましても、これは明らかに当局のミスであったということをおのずから認めているわけです。そのところを読んでみますと、時間がありませんのでもう省略をいたしたいと思いますが、こういうようなとにかくひどいところに入れたということは、われわれの責任だということまで認めている。そういうような事実を……。
  377. 中村幸八

    中村主査 村山君に申し上げますが、あとにまだ質問者が残っております。時間もだいぶ経過しておりますから、結論を急いでいただきます。
  378. 村山喜一

    村山分科員 もうすぐ終わります。そこで時間がありませんので、あとは外務委員会に出席いたしまして申し上げますが、こういうようないわゆる政変であるとか、水であるとかという動かしがたい客観的な事実のほかに、こういうような調査が不十分なために、この地区の人たちは営農ができないというその実態、これはやはり特殊な例として、あなた方は認めていくということをお考えになってもいいのじゃないですか。その特殊条件は全然あなた方は考慮に入れない。これは漁民の問題についてもそうです。川畑さんの漁業移住者の問題についてもそうです。やはりそういうような全体的な移住政策の中から特殊な条件、特殊な場合は、やはり自分たちに誤りがあれば誤りがあった。そうしてこれはどうも工合が悪いじゃないかというふうにお考えになるのが、私は政治を正すものだと思うのですが、その考え方はございませんか。
  379. 高木廣一

    高木政府委員 ドミニカの特殊事情によって帰ってこられた方に対する援助ということで、政府といたしましてはあらゆるできる限りの援助をしております。まず最初の国援法による引き揚げから帰られまして、援護費といたしまして外務省だけで一家族当たり七万五千円程度のものをやっております。それからその他関係各省の援護措置を講じておるわけであります。それでただわれわれが特に考えなければならないのは、これからの移住政府ができる限り援助をし、協力するのでありますが、同時に政府のまるがかえの移住であって、どういう事態が出ても、そこへ行ったのはそれは政府のまるがかえであって、国際情勢がどうなろうと、それで帰ってきた場合は、政府が全部損害賠償の責めまで負わなければいけないということになってくると、これは南米における移住者、それのみではない。ドミニカにおいてがんばろうとしている人もあるわけであります。こういう人には大きな影響を与えると思います。特にこの移住者が要求しておられます二百万円、三百万円の補償金が出るのだということが、もうすでに現地の方には伝わっていって、君たちは早く帰らなければチャンスを失するぞというような連絡があるという報告もあります。このわれわれの処置ぶりというものが、ドミニカ及び南米において移住者全般に大きな影響を与える。われわれは移住者に対してできるだけあたたかくするとともに、全般の移住政策をこわさないように考えなければいけない、こういうふうに考えます。
  380. 村山喜一

    村山分科員 私はその全般的な移住政策に対する影響があるからといって、特殊のそういうような条件に合わないような場合まで律するのは間違いだと思うのです。やはりこの条件に照らし合わせて、国家賠償法の中にもありますように、職務を行なうにあたって、あなた方が故意にやられたとは私は考えない。やはり過失によって違法に他人に損害を与えたそういうような事例が、私はドミニカの中のネイバ地区だと思う。そういうような例から考えて、ここでもう時間がありませんので論議いたしませんが、もっとやはりしさいにわたるところの検討をしていただいて、それらの特殊な事情については特殊な事情として率直に認めて、何らかの措置を講じていただきたいということを要望申し上げて私の質問を終わります。
  381. 中村幸八

    中村主査 次は受田新吉君。
  382. 受田新吉

    ○受田分科員 なるべく早く切り上げて、いずれまた外務委員会であらためて質問を続けますが、大臣、あなたは健康ですから、きっとお疲れの中においても間違いのない御答弁を願えると思います。  昭和三十七年度一般会計予算で、外務省関係予算に直接つながる大事な問題を二、三点確かめておきたいと思います。  まず国際連合に対して、日本政府は財政的にどの程度の協力をしているか。第一は国連事務局に対する経費の分担率、これはどの程度であって第何位に属するか。アメリカは約三分の一と伺っておるのでございますが、日本はどの位置にあるか、これをまず伺いたい。
  383. 太田正巳

    ○太田説明員 お答え申し上げます。国際連合の会計年度は暦年でございまして、今年度の通常経費の総額は大体八千二百万ドルでございますが、国際連合はいろいろな収益もございまして、いろいろ差し引いたりいたしまして、大体七千四百万ドルを分担率によって百四加盟国に割り当てることになります。日本の分担率は二・二七%でございまして、百四加盟国のうち第七位に位いたします。
  384. 受田新吉

    ○受田分科員 国連の内部における経費分担割合からいうと、第七位ということになると相当の地位にあるわけですね。この七位という地位は、第一位から七位まで読んでいただきたいのですが、国連内部において経費をこの部分負担しておれば、別に何かの特典があるのでございますか。
  385. 太田正巳

    ○太田説明員 まず第一位から第七位までを読ましていただきます。第一位米国、ソ連、英国、フランス、中国、カナダ、その次が日本でございます。  国際連合の中でこの経費をたくさん分担いたしますことによって何か目立った特典というものはございません。
  386. 受田新吉

    ○受田分科員 この二・二七%という負担率は、何を基礎にして算出された数字ですか。
  387. 太田正巳

    ○太田説明員 これは国際連合の総会が設置いたしました、十カ国から選ばれます十人の委員からなります分担金委員会というものがきめました案に基づきまして、総会がこれを審査してこれを承認するという形式をとっております。今までの例では、大体におきまして、昨年の総会が多少ございましたが、大体異議なく承認されております。多少の異議はございますけれども、圧倒的多数で承認しております。分担金委員会の審査は秘密会でございますけれども、幾つかの総会の決議、それから分担金委員会の報告の中の内容によりまして、その査定の根拠はその国の総国民所得でありまして、それに多少の調整をいたしておる、その調整はどういう調整であるか多少はわかっております。一番大きな根拠が総国民所得であるということを申し上げます。
  388. 受田新吉

    ○受田分科員 この分担率を高めて、日本の国連内部における地位を高揚するという努力をすることが可能なものかどうか、あるいは分担率を低めて日本国民の負担を軽くするというような形も可能であるのかどうか、お答え願います。
  389. 太田正巳

    ○太田説明員 加盟国が努力いたしまして、そういうふうに持っていくということはまず不可能であるというふうに申し上げてもよろしいかと存じます。分担金委員会では大体どういう方法でやるかというと、相当機械的に計算できるようになっております。いろいろ国民総所得をどういうふうに計算するか、こまかくなるから申し上げませんけれども、ただ最後のところはどうしても裁量があるかと存じますが、こちらは資料を提供いたしまして、統計の資料は自動的に大体いくようになっておりますが、それに日本の特殊事情とか、そういうものがございますればこれを入れる、われわれ日本のもいっておりますが、それに基づいて向こうが決定いたしますので、加盟国のいろいろ意思というものが入る余地が非常に少ないのでございます。
  390. 受田新吉

    ○受田分科員 国連本部を適当な所に移転してはどうかという動きは、ソ連その他においても見られているわけです。この国連本部の移転について、日本政府はどういう考えを持っているのか、特に日本の場合においては第七位の地位も経済負担において占めているとなれば、平和を愛好する国家として、日本国に国連本郷を誘致するというような、そうした外交上の努力というようなものを、これは大臣として考えておられる筋合のものではないかと思うのですが、いかがですか。
  391. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ニューヨークにございます国連を、他に移すということが正式な議題として取りしげられたことは今までございません。わが国といたしましても、現状において非常に国連がいろいろの悩みを悩みつつも、権威を高めつつあるということに賛意を表しまして、これに協力する態勢をとつておりますが、ただこの国連の下部機関でございますね、それはできるだけ甘木に持ってきたい、こういうことを考えまして、今地震の研究に関しますもの、それから刑務所に受刑する人々にどういう教育をしたらいいか、こういうような機関ですね、これらについては大体日本に持ってくるというふうな話がきまっております。
  392. 受田新吉

    ○受田分科員 二つの下部機関が日本に来るような話がきまっている、これはきまっているのですね。——いつごろから実施されるわけですか。
  393. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 防犯研究所、今の受刑者に関する研究所でございますが、これについては来月発足することになっております。
  394. 受田新吉

    ○受田分科員 漸次国連の機関を日本へ移していきたい、まずそのスタートを切らんとしておられるようです。願わくは国連本部を日本に誘致するというこの大目標を達成するための努力、これは私どもとして、国連の内部において日本としてあまり横暴な考え方ではないと思うのです。高い理想を掲げて、国連に強く訴えて、日本国に平和機構の総木山を持ち込むという努力を、外務大臣あなたの腹で一つおきめになったらいかがですか。
  395. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今のところ実はあまりそれは考えておらないのでございますが、とにかくこれは非常な土地を要することでもございまするし、現状のような便利な所にあのりっぱな国連の本部がございますので、これでよろしいのじゃないかと考えております。
  396. 受田新吉

    ○受田分科員 少なくとも大外相としてそういう理想を持ち、またその目標に早く近づけるように努力するというくらいの熱情がなくてどうなさいますか。アメリカは広い地域で、私もあそこへ何回も行って見ましたけれども、それは場所は広いけれどもアメリカとソ連との対立の中で非常に苦労している。むしろ日本にこの総本山を持ってきましょうという熱情を、外務大臣の腹で、また日本政府の腹で、そういう目標を持って努力されることが、国連内部における日本の地位を高める上においても、全世界に平和を敷衍する上においても私は必要だと思うのです。そういう努力をされる、そういう意味でまず芽がちょっとふくくらいのあなたの御決意を私は心から希望するわけですが、現状においては全然さようなことは考えないということですか。
  397. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は国連の下部機関をできるだけ日本へ持ってきたい、すでに国連の本部はあるものでございますから、これから作るものはできるだけ日本へ持ってきたいということで、今申し上げたように二つばかり成功したわけでございます。今後ともそういうものがございましたらさようにしたいと思います。
  398. 受田新吉

    ○受田分科員 はなはだかぼそい外務大臣ですね。これはやはりソ連などから一応放送しておるのですから、竹本がむしろこれを放送してその空気を作るというようなことは別に外国に気がねはないわけなんです。これは日本として一番いい主張だと思うのです。あなたに少し大きな腹を持っていただくことを切望しておきます。  次に国連に関係する問題で、外務省の本省予算を拝見しますると、国連警察軍スエズ派遣費負担金というものが計上されて、しかもそれが相当額に上っている数字が出て、昨年よりもさらに七百四十万円という莫大な増額がされているのですが、これは一体どういう性格のものですか。
  399. 太田正巳

    ○太田説明員 スエズの分担金は、御承知のように英国、フランス、イスラエルのスエズ地帯侵入事件がございました。その善後処理のために、国際連合の決議に基づく加盟国の軍隊が約三千ばかり——多少違っておるかもしれませんが、それが今でもあの地区に駐とんいたしておりまして、このために一年間、先ほど私は経常費を申し上げましたが、経常費と別に一種特別会計のようなものとも違いますけれども、そういうものかと御了解いただきたいと存じますが、毎年大体二千万ドルばかりの金がずっと国際連合に必要でございます。そして今回のその予算はこの軍隊の維持費でございます。ただいまのところことしの一月から六月までの分だけ約千万ドルちょっと近い金でございますが、これがこの前総会で予算通りまして、この分担がきまった、こういうことでございます、
  400. 受田新吉

    ○受田分科員 これは一体継続的に負担せざるを得ないのですか。いつまでこの負担金が続くわけですか。
  401. 太田正巳

    ○太田説明員 私ども、いな全加盟国が一日も早く今のような状態が解決しまして、加盟国の軍隊がそれぞれ本国に戻る、その必要がなくなることを願わぬ者はないと私は確信しておりますが、現在までは残念ながら続いております。しかしおいおいこのお金は減っていきまして、軍隊も少なくなり、いずれのうちかなくなるものである、その意味においては臨時的のものであると私ども考えております。
  402. 受田新吉

    ○受田分科員 はなはだあいまいな点があるわけです。いつこれが解決するかわからない。そしてその所要経費の総領はきまっておるわけでしょう。いかがですか。ばく然としているのですか。
  403. 太田正巳

    ○太田説明員 軍隊の数によりましてその所要経費はきまるわけでありますが、軍隊の数がこの数年間動いておらないのでございます。その結果毎年大体二千万ドルばかりのお金を——多少は動いておりますが、あまり変わっておらぬ、こういうことでございます。
  404. 受田新吉

    ○受田分科員 昨年よりは一割以上増額しておるじゃありませんか。
  405. 太田正巳

    ○太田説明員 それは物価の騰貴ということだそうでございます。そのために軍隊の規模はあまり変わっておりません。
  406. 受田新吉

    ○受田分科員 国連の警察軍というこの警察軍というものは、国連憲章その他法的根拠はどこにあるわけですか。
  407. 太田正巳

    ○太田説明員 国際連合の総会というものが、もちろん国際の平和、安全の維持というものが憲章上は安全保障理事会というものが第一次的にございますけれども、総会はまたその上にある機関でございまして、総会の決議によってそういうものを設けることができると解釈されるのでございます。今スエズにおりまする軍隊は、この総会の決議に基づいてできました軍隊でございます。
  408. 受田新吉

    ○受田分科員 国連警察軍というのは軍隊ですか。
  409. 太田正巳

    ○太田説明員 加盟国が国際連合の決議に基づきまして国際連合事務総長の要請に基づきまして拠出いたしました軍隊でございます。国連の任命いたします統一の司令官の指揮下に置かれております。
  410. 受田新吉

    ○受田分科員 これは警察軍という名称を用いてあるのですか。
  411. 太田正巳

    ○太田説明員 警察臓とは、どちらかというと新聞なとで使っております用語かと存じます。国際連合におきましては、国際連合緊急軍という言葉を使っております。
  412. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると国連憲章のどの規定にも、また総会その他においても、警察軍という、はっきりと警察という文句を使ったことはないわけですか。
  413. 太田正巳

    ○太田説明員 私は国際連合の財政の方を所管いたしておりまして、国際連合の政治問題を直接担当いたしておりませんが、私の了解いたします限りでは、国際連合警察軍というものは憲章にはないと承知いたしております。そういう言葉は出てこないと承知いたしております。
  414. 受田新吉

    ○受田分科員 私も拝見してないわけなんです。将来そういうことを目標とすることを池田総理も言うておられる。ところがこれにはっきりと警察軍という言葉が出ておるのですからね。これは一体何を根拠に国連警察軍という言葉をお使いになったか、外務省の責任者から御答弁を願いたいわけです。
  415. 太田正巳

    ○太田説明員 国際連合緊急軍とただいま申し上げましたような軍隊ができまして、これはもうそういう緊急軍という言葉は少し異様な言葉かと存じますが、新聞などではよく国際連合警察軍と申しまして、その方がわかりがいいから、大体そういったような観念かと思いますが、国際連合警察軍というものをここ数年予算で使っております。予算で使うのみならず、新聞その他でもスエズの軍隊はそういうふうに呼んでおります。そういうふうに普通使われております言葉を使った、こういうことでございます。
  416. 受田新吉

    ○受田分科員 それははなはだあいまいなことなんです。普通使う言葉、新聞に書かれている——新聞というものがその警察軍というのをはっきり根拠を持って書いたものでない。ただ性格がそれに近寄っているという意味で書いたのがあるかもしれませんが、少なくとも外務省がお用いになる言葉としては、外交上の正確な用語をお用いいただかなければならぬと思うのです。これは国連の正式の軍隊であるという言葉を言うと、軍隊に協力することはどうも変ではないかというような批判を受けるというような気がねがあるのではないかというようにかんぐられても仕方がないわけです。少なくとも正式の外交上の用語として、国連憲章あるいは総会決議に正式な文書が出ていないものを、それをお使いになるのはどうかということです。
  417. 太田正巳

    ○太田説明員 おしかりを受けたのでございますが、私どもはそういう気がねは全然いたしませんのでございます。ただ予算などというときに緊急軍という言葉よりも警察軍と使いました方が実体をよく表わしているようである、そう考えましたので使っている、それだけのことから出たのでございます。
  418. 受田新吉

    ○受田分科員 これはほかのことに、適当な言葉を常識的に使うような役所じゃないのです。外務省という役所は、厳とした国連憲章をもとにし、国連憲章に用いてある用語を用い、また総会において決議された用語を用いてそれを正しく表現することが、私は外交上の行政を担当する外務省の任務ではないかと思うのです。まあ普通そういう方がわかりやすいから、などというようないいかげんな言葉をお用いになることは、現に国連警察軍というのがこの世上に正式に発足してないという現状において、こういう言葉を常識的にお使いになるということは、私は問題があると思うのです。
  419. 太田正巳

    ○太田説明員 御指摘の点よく了承いたしました。今後注意するようにいたしたいと思います。
  420. 受田新吉

    ○受田分科員 注意をするということでございますが、これは注意するというような問題よりももっと大きな問題があると私は思うのです。これはもうすでに国連に警察軍があるんだという印象を一般国民に与えてくれるということになると、国連の軍隊は警察軍であるべきだという一つの理想を持った。秩序保持のための軍隊として警察軍を期待するという立場の、われわれ国民の中にある相当大きな層の期待を、もうここで出ておるじゃないか、外務省予算書を見ると、国連警察軍派遣協力費とはっきりうたってあるじゃないかという問題が起こると思います。これは研究課題として外務省として十分考えてもらいたい。
  421. 太田正巳

    ○太田説明員 御指摘の点、よく承りまして研究させていただきたいと存じます。
  422. 受田新吉

    ○受田分科員 私はもう一つこれに関連して、この国連に対する日本の経済的協力は、先ほど事務局の経費を負担する分について、それぞれ適当な各国間の委員会においてこれをきめるということでございましたが、そういう比率でやるのか、あるいは別個に何かを基準にしてやられるのか、スエズの場合においても、さっきの国連本部のあるいは国連機構の経費負担の比率でやっておるのか、あるいは別の方法があったのか、これをお伺いします。
  423. 太田正巳

    ○太田説明員 国際連合に対します経済援助といたしますといろいろございますが、一番大きなものが国際連合拡大技術援助基金と申しますものと特別基金に対します拠出金かと存じます。これを二つ合わせまして国際連合の低開発国の援助の一番大きなお金のもとになるものでございますが、これは全額加盟国——加盟国以外の国でも拠出できますけれども、自由拠出、自発的の拠出金でまかなっておりまして、特にそういう義務ではございませんので、その分担率とか、そういうものはございません。大方の加盟国におきましては、大体国際連合でこれだけ拠出金を募集するという目標額がきまるわけでございますが、それの自分の国の分担率見当ということから、あるいは実際に集まりました金の自分の国の分担率見当、そういうことで出しておるのが、大体大方のように承知いたしております。
  424. 受田新吉

    ○受田分科員 どうも私はっきりしないところがあるのですが、それぞれの場合々々によって相違するというような危険がある。一体日本の実力というものを国連でどの程度買っておるのか、思いつきで価格が表示されるようなそういう協力関係というものは私は問題だろうと思います。これは非常に大事な問題ですから、私はこの国連の経費負担についてばく然とした協力がされて、日本国民が知らない間に外務省の外交交渉のいいかげんな敗北の結果、思わぬ負担を国民にかける危険はないかということを憂慮しておるのです。これは今の本部の機構は、たしか国民総所得を基準にやった。非常に厳重にやっておるからというから、すべてが厳重になっておるかというと、その場その場のケースによって違っておるという危険があるのです。これはあなたは大臣として国連における日本の経費の負担というもの、また軍隊派遣に対する場合などは国内の世論にもいろいろな動向があることを考慮して、この派遣することに賛成する者あり、反対する者ありという場合においては、軍隊の派遣に対する負担というものよりも、経済的協力は思い切ってやるというような日本の協力の方式の方が、国民に国連を納得させ、また国連に加盟した日本立場も立つと思います。そういうような協力関係のはっきりした根拠を、外交上の努力を、厳として退かぬくらいの熱意をもってお当たりになったらどうかと思います。大臣、いかがですか。
  425. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 太田管理課長から申し上げたように、この特別の負担、一般の分担金による一般負担のほかにスエズとコンゴの問題について負担をしておるわけでございます。ただ、どれだけの金を集めようか、こういうことで大体の目標をきめますが、中には全然納めない国もあるわけです。そこで、予定額がありまするけれども、実際に集まる額がそこできまってきますので、そのきまってきた額に対して、われわれ今やっておりまするのは、昨年までは二・一九、今年度からは二・二七、これが国連によってきまっておる分担率ですから、これをかけましてそれで日本の割合をきめるわけですが、ただ、われわれとしては戦後非常に経済状況がよくなってきているとはいいましても、まだなかなか困難な面もあるわけであります。国民負担も考え、また全然出さぬ国もあるという点にもかんがみまして、拡大援助計画の一部をわが国が受けておるということと関連させまして、この半分を負担している、こういうことが実情でございます。
  426. 受田新吉

    ○受田分科員 この問題はもっと掘り下げてお尋ねしたいのですけれども、時間でおもなるものを飛ばしていきます。  今の非常に厳格にやってほしいということに関連するのですが、どうも外務省予算を拝見しますと、至るところに分担金、補助金というものがずらりと並んでおります。これは他の省に見られないほどの莫大な分担金、補助金です。こういう項目を拝見したときに、これだけ莫大な国民の血税を補助されたり分担されたりする際に、その補助されたりあるいは分担した対象の実態を把握しないで、先ほど来議論になりました海外移住振興会社のように、経理がまことにずさんで、でたらめなことをやっている、こういうようなことが起こらないように常に私は努力しなければならぬと思う。外務省としてもこれだけの補助金や分担金をお受け持ちになっておられるのでございますが、補助金の使い方がどうであるかということを厳重に監視する担当役人というのはだれがやるのか、そしてその役人はどういう働きをしておられるのか、お答え願いたい。
  427. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 分担金は仰せのように非常にたくさんやっております。これはそれぞれの国際機関がありまして、日本がこれに加入しておりますから、その分担金がどうしても必要になってくるわけでございます。一例をあげますと、国連の食糧農業機関、これの分担金、あるいは国際小麦の理事会の分担金、国際砂糖理事会の分担金、常設仲裁裁判所の分担金、ユネスコの分担金、アジア法律諮問委員会の分担金、コロンボ計画、ずっとあるわけであります。これについては、われわれとしてはそういう機関に入っている以上、この分担金を納めまして、その機関を盛り立ててそこにおいてわれわれの主張を通していく、こういうことがどうしても必要でございます。そのためにやっているわけでありますが、この分担金が納められましたあとの機関に対しては、われわれもわれわれの立場から、この機関が正当に運営されておるかという監視は常時しておるわけであります。ものによりましては理事になったりいろいろいたしております。その機関の中でそれぞれ活躍しておるわけであります。
  428. 受田新吉

    ○受田分科員 今のは分担金ですが、今度は国内における補助金……。
  429. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国内のそれぞれの補助金は各局がそれぞれ分担して監視しております。
  430. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると、海外移住振興会社のあのずさんな経理などというものは、担当局長移住局長ですか。
  431. 高木廣一

    高木政府委員 移住振興会社の監督は移住局になっております。
  432. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると、移住局長の監視監督が不行き届きでそういうことになるということになりますね。職務怠慢の結果から生まれた悲劇である。
  433. 高木廣一

    高木政府委員 移住会社につきましては、毎月一回の定期報告及び海外におきまして同じく報告が来るのですが、これは非常におくれます。なお、年一回移住局振興課の機関が現地移住会社、支店を回わりまして監督するということ。それから運営につきましては融資基準というものがありまして、この範囲内では移住会社は自由にやっていく、それからそれを越すものについては関係各省連絡会議というものがありまして、これで協議をいたして指導する、こういうことでございます。
  434. 受田新吉

    ○受田分科員 会社へ乗り込んで帳簿を見たりして、その金の使途をはっきりと監視するというようなことを実際にやっておられるのですか、しばしば。
  435. 高木廣一

    高木政府委員 年一回、二回はそういうこともいたします。
  436. 受田新吉

    ○受田分科員 局長さんの御答弁を伺っていると非常に弱いですね。これではこの虚に乗じて何するか知れぬですよ。やはり厳重に経理状況を監視し、また事業とのつながりをよく監視して、国民の血税の使い方がむだになっていないか、不正はないか、また責任者どもが国民の疑惑を抱くような行為をしていないかということを常に監視しないと、外務省のお役人方は非常に上品でいらっしゃって、どういう監視役がむずかしいということならば、何か別に経理上の監察官というようなものを、これだけ多くの国内の補助金を出しておられ、委託費を出しておられるこの機会に、はっきりした特別の役人を置かれても私はいいと思います。それがもし外務省の内部から配置ができなければ、他の方から責任者を外務省に出向させてもいいと思うのです。
  437. 高木廣一

    高木政府委員 移住会社につきましては、まず会社に監査役がございますし、われわれの監督がございますし、それから会計検査院の検査、こういうことでやっております。
  438. 受田新吉

    ○受田分科員 会計検査院の検査というのは終局的なものですよ。現実に監査監督する地位は移住局長ということになれば、少しにらみをきかせて、むだな血税の使用を防止することに終始しなければならぬ。あなたが御苦労ならば、その責任者を他省から招致して、外務省出向で監査役、監査官のようなものを——大臣外務省のお役人の方は上品でゼントルマンでありますけれども、こういうつらいところはなかなかおやりになりがたいと思いますので、何か大臣、そういうつらい役を行政監察——これは鉄道には鉄道監察官とか、あるいは公安官とか、郵政省には郵政監察官というものがあるように、何らかの形で手ごわいおじさんをここに配置する必要はないか。こういう疑惑を抱かれたら外務省の威信地に落ちますよ、大臣
  439. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ごもっともなことで、監察は厳にいたしておりますし、またいたさせる考えでおります。従来のことは知りませんが、不肖小坂外務大臣になりましてから、そういうことで実際疑惑をこうむるようなことはない、われわれはかような運営をいたしたいと考えております。外務省の役人も決して他省の役人に劣るものではなく、十分能力を持っておりますから、厳重に監査いたします。
  440. 受田新吉

    ○受田分科員 不肖小坂が就任しているから間違いないと言いますが、全然間違いないですね。
  441. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 間違いありません。
  442. 受田新吉

    ○受田分科員 次に、外務省へいろいろなところから出向している役人が、特に在外公館にはいろいろな方面から参事官や書記官が出ておられる。その中に、あなたの方の御報告を伺いますれば、十人ほど自衛官が外務省の外交官になっておられるのですが、これは純然たる外交官という取り扱いですか、あるいは従来の駐在武官のような武官の性格が濃厚なものですか。
  443. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 防衛庁から外務省に出向しております在外公館のは、外務省の職員であります。しかしやっている仕事は武官のやる仕事をやっております。
  444. 受田新吉

    ○受田分科員 身分、官職、官は自衛官で、職が外務省の書記官とかいう形になるのですか、純然たる外交官ですか。
  445. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 各省から外務省の在外公館に出向しております者は、多元外交を避けるために全部一元的に外務省の職員ということになっております。従って防衛庁から出向しております者もその例外ではございません。一等書記官、二等書記官とか、そういう名前がついております。それで大使の指揮下に全部入っております。
  446. 受田新吉

    ○受田分科員 その場合に、防衛庁から派遣された自衛官は、自衛官の身分がなくなって、書記官の身分が新しくつくのですか、自衛官も残り書記官も残るのですか。
  447. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 身分は、外務省の身分ということで一等書記官、二等書記官、これが本来の身分であります。ただ武官同士のつき合いということもありますので、それに自衛官というのを兼官にさせる、しかし本来の身分は一等書記官、二等書記官で外務省の身分ということになっております。
  448. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしますと、この勤務の継続にあたって、自衛官の俸給から外交官の俸給にその間変わって、また国内に帰った場合には自衛官の方に戻るのですか。
  449. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 その通りでございます。
  450. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると、年金などの中にも自衛官でない期間が出てくるわけですか、間違いありませんか。
  451. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 そういうことになります。
  452. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしますと、これは一つの問題があると思いますが、間違いないかどうか。自衛官として勤続何年と計算しないで、自衛官十年、外交官五年、また自衛官十年というような計算で恩給が計算されるということに間違いないかどうか、これはとくと確かめていただきたい。今の御答弁に間遠いないかどうか。私は間違いがあると思います。自衛官の勤務がずっと続く形になると思いますが、もう一度御調査をして、間違いのない答弁を次の機会にしていただきたいと思います。
  453. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 御答弁を申し上げた通りで間違いないと思いますが、念のためにもう一ぺん調べてお答え申し上げます。
  454. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしますと、外交官はもはや自衛官ではない、自衛官の勤務は一切しないで外交官の勤務だけするのだ、こういう形になりますと、在外公館の武官などという問題もなくなって、自衛官の海外派遣というような議論もなくなる。今の官房長さんの御説であるならば、そうした武官外交という問題は全然なくなってくると私は思うのです。しかし実際にやっておる仕事が自衛官の範囲を越えないならば、それが軍隊の研究ということであるならば、実質的に、身分は外交官であっても、仕事は軍隊の仕事をしておるということになるので、これは非常に要領よく形だけを外交官にして、実質は軍隊の海外派遣、軍人が海外に勤務するという形になるのですね。これは非常に大事なことで、身分上の問題、勤務上の問題に関係するので、とくと、念入りの答弁をお願いしておきたいのです。
  455. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 いろいろ在外公館といたしましては国防上の問題とかいうものも調査研究する必要がございます。それで戦前は大使館付武官というものがございました。この昔の武官といいますのは統帥部に属しておりまして、指揮系統が統帥関係からきておりました。名前は大使館に付属ということになっておりましたけれども、直接の指揮系統は統帥部の方でございました。これが陸軍、海軍とそれぞれありまして、それぞれの統帥部から指揮を受ける。本来の外交関係の系統のものといろいろ多元的に分かれておりまして、そこに非常に弊害があったわけであります。そこで戦後は、海外に出る職員はすべて外交系統ということで一本にして、それからまたそういう仕事の上で国防関係の調査ということもありますが、そういう点では、その方面の専門家が防衛庁から出向して参りますが、しかし身分はやはり外交官としての身分になっておる。そして大使の一元的な指揮下に服する、こういうことにしてやっております。
  456. 受田新吉

    ○受田分科員 その場合に自衛官である外交官が防衛庁からいろいろな指示を受けることは全然ないのですね。
  457. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 一元的になっておりますから、すべての公式の指示は大使を通じてなされる。また現地のそれぞれのいろいろな報告、意見の上中というものは大使の名においてなされるということでございます。
  458. 受田新吉

    ○受田分科員 これはまたデリケートな問題ですから、後に次の適当な機会にお尋ねしますが、私は少し別の認識を持っているわけなんです。この現在の十人の自衛官の外交官が海外に駐在している国々と、その人数、及び今後置かれるであろうという見通しの国々とをお示し願いたい。
  459. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 現在は十名でございます、アメリカ大使館に三名、英国大使館に一名、フランス大使館に一名、ドイツ大使館に一名、ソ連大使館に二名、トルコ大使館に一名、タイ大使館に一名、これが現在でございます。今度の予算ではアメリカ大使館に二名増員を予定しています。そのほかは、今のところはさしあたり考えておりません。
  460. 受田新吉

    ○受田分科員 今置かれた国々は、何か軍事的な研究を必要とするという国々ですか。あるいは何か外交上の儀礼的な意味で置かれたということですか。
  461. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 やはり日本の国防上こういった国のいろいろな調査研究というものが必要であるということで置かれております。
  462. 受田新吉

    ○受田分科員 次に予算案に出てくることですが、外交官の待遇の問題にちょっと触れます。外交官の処遇について今在勤俸の増額が内閣委員会に法律案の改正案が出ております。ところがこれは物価高その他いろいろな外国とのバランスで引き上げられたようでございまするが、赴任旅費というものは今度増額措置がとられておらない。物価に在勤作とちっとも変わらないように上がっておる。外国のバランスの問題もあるが、赴任旅費だけをなぜ取り残しているのか。移転料とか日当とかそういう問題についても物価上昇、ホテル代の上昇等で必ず相当の負担増になっているはずなんですが、これをなぜ取り残したかお答え願いたい。
  463. 佐藤正二

    ○佐藤(正)政府委員 全く御説の通りでございまして、日当、宿泊は昭和二十七年にきめられたままになっておりますので、非常に足りなくなっておりますが、いろいろ全世界のデータをとりまして研究いたしますために、本年度間に合いませんでございましたので、明年度大蔵省と協議いたしまして改正いたしたいと思っております。
  464. 受田新吉

    ○受田分科員 本年度間に合わなかった事情はどうですか。こういうものは間に合わぬというようなことでは済まぬ問題だと思うんです。つまり一方を上げて一方を置くというようなと、同じような基準でいくならいいが、同じにいかないなら……。同じにすればいい、やるなら一緒にやればいい。それはどういう関係だったのですか。大蔵省の方おられますか。
  465. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そこはなかなか理屈と実際がうまくいきませんところで、なかなか予算折衝の段階におきまして、外貨も不足しておるし、ことしのところはもっとよく調べて来年もう少し話そうじゃないかということで、私どもの方も合意したわけであります。
  466. 受田新吉

    ○受田分科員 これは政治的な敗北ということですね、外務省、気の毒なことです。大臣、ちょっと馬力をかけぬと外交官お気の得なことになりますからね。私はこれはお味方してあげます。この問題はやはり外交官といえどもはっきりした待遇の問題だけは国内の公務員並みにぴちっと引き上げてやらなければいけない。いつまでも取り残すべきではない。はっきり申し上げます。  もう一つ大臣の付属機関に外務人事審議会というのがありますね。御存じの通りです。この外務人事審議会というのは一体何をしているのか、今まで十年間も在勤俸をくぎづけにして、外国のものの驥尾に付してきたということは、外務人事審議会は何をしているかということで、私を疑わしめるのです。一般公務員にはいわゆる人事院というものがあって、ちゃんと適当に勧告をしている。外交官にはそういう機関がないから、外務人事審議会がこれを代行しているのです。その外務人事審議会が力弱きもので、事務局も持たぬようなことでもさもさしているので、外交官がお気の毒に取り残されるということ、私はそういう結果になるのじゃないかと思うんです。大臣、そうじゃないですかね。
  467. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 外務人事審議会も非常に熱心にやってくれておるのでございますが、人事院の勧告が出ますことによってもなかなかその通り——このごろはうまくいっておりますが、従来いろいろな苦難を経てきておりましたことと同様に、なかなか苦難な道はあるわけでございます。ただ、この機会に一言申し上げておきますが、外交官の職務もなかなか従来のものと変わっておりまして、先ほど旅行のことについてもお話がございましたが、日本からお見えになる方が非常に多いたとえば、最近ロスアンゼルスの総領事が申しておりましたが、昨年一年間にこの総領事の手を直接経る方が三千三百何件とかいうことでございまして、そういう旅行者のお世話のようなことも非常にふえております。ただいまの御質問は、なかなか温情あふるる御質問だと感謝をいたすわけであります。せっかく今後ともよろしくお願いいたします。
  468. 受田新吉

    ○受田分科員 これは外務大臣、しっかりやって下さい。私が懸念しているのは、外交官は人間的に品格を保とうとして、こういう待遇問題は割合に言わないのですね。そこをつけ込んで大蔵省などが適当に、一般公務員と比較して取り残すような結果になるおそれがある。この点は、人事院という機関を持っている一般公務員に少なくともバランスのとれるような待遇改善、こういうものがあらゆる手当にまでも及ばなければならぬと思う。こういうことは、大臣、来年は、一年延長された旅費の問題は、これはあなたの責任でもありますから、一つ十分考慮して心得てやっていただきたい。  それから、外務人事審議会というような機関がせっかくあるのです、付属機関に。この付属機関を最高度に活用されるということをされないと、これが全く死んでおったのではしようがないのですね、この人事院にかわる機関としての外務人事審議会の活用と、もしこれが眠っておればあなたがたたき起こされて、あなたの方からハッパをかけられるように、また、必要があれば事務局を置くことを国会にお出しになれば、私は賛成してあげますから、こういうことも一つ心得ておいていただきたい。  それから、すでに夜はたんたんとふけていきつつあります。もう大臣の御勤務ぶりを私賞揚してこれでおしまいにいたしますが、今あなたがいみじくも触れられたお言葉の中に、日本の観光客が相当ふえている、ロスアンゼルスでも三千幾らあるということですが、大体日本から外国へ行っている人、日系米人その他の移住者等から日本へ送る金がどれだけあって、また日本観光客が日本へ落とす金がどれだけあるか。外貨の獲得にどれだけの貢献をしているか。今あなたは数字で示されたのですから、ある程度の数字はお持ちだろうと思う。この大事な外貨の獲得、経済成長の基礎ですね。
  469. 曾野明

    ○曾野政府委員 実は、観光の問題は、私の方の局で一部御協力をいたしておりますが、本来運輸省の所管の問題でございます。私の存じております限りにおきましては、昨年度におきまして外人が日本を観光に参りまして落としました外貨が、ドルで計算いたしまして約一億一千六百万ドルというふうに推定されているようでございます。在外の日系人が国内へ送ります金額につきましては、残念ながらただいま資料を持ち合わせておりません。
  470. 受田新吉

    ○受田分科員 一億一千六百万ドル、まあ四百億以上の金が観光客によって日本へ落とされる。これは大事な外貨獲得の資源ですからね。こういうものを、どんどん今後御努力なさって増加させなければならぬ。ところが、私たち外国旅行をしばしばやった者から見ますると、外国のホテルは、労働賃金などに比較しても日本と比べるとばかに安いと思うのです。日本は、たとえばアメリカの九分の一の労働賃金の基準であっても、ホテルは一万円も一万五千円もするようなホテルがあって、外国の一流ホテルと比べて決して宿賃が安くないです。こういうことで外貨獲得の基礎が築かれるかどうかという不安が一つある。おまけに宿泊料に税金まで取ろうとするようなあやまちを犯してくるということになりますと問題があるので、少なくとも外貨を獲得する手段としてもっとサービスを心得て、外人の誘致をはかっていく、各国にわたって公平に日本訪問客をふやして日本観光熱を充足さしてやるということを、外務省としてしていただかなければならぬ。これは運輸省の仕事というよりも外務省のお仕事範囲なので、御答弁を願いたいと思います。
  471. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私ども観光の重要性にかんがみまして、実は昨年度予算から外務省予算に観光面の頭を出してもらっておるわけでありますが、今後これは逐年ふやしていただきたいと考えております。実は在外公館が約百行館ございますが、この公館においてそれぞれ日本の観光についての宣伝を心がけるということは、これは非常に大きなことでございまして、運輸省のやられる観光事業と相待って、大いに観光に努力を尽くしたいと思います。
  472. 受田新吉

    ○受田分科員 いま一つ外務省のお考えを聞いておきたいことがあるのです。それは、私はインドやカイロで拝見したことですが、これは都市計画とも関係するのでございますが、日本にある外国公館を適当な地域にできるだけ集結するように、やむを得ぬ分は別ですが、最近のようにどんどん大公使の交換をされるような事情になった以上は、なるべく各所に分散させないで、一カ所に集結するような努力をされる必要はないのか。各国の日本における在東京外国公館を訪問するのにも、大へんなことになっておるような現段階で、できるだけ便利な地域に一カ所に集結させるような、カイロやニューデリーのような形の、在外公館を集結する努力をされる構想は、大臣、いい構想じゃないですか。
  473. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 問題は、東京になかなか土地がないということでございまして、御承知のように地価は非常に高いわけでございます。外交団に特別にそういう土地を提供すると申しましても、これはやはりわが方の在外公館がそれぞれ苦労して高い土地をめいめいで買っておるような事情もございますので、やはりこちらだけが特別のことをするということはいかがかと考えております。
  474. 受田新吉

    ○受田分科員 向こうがやらないから、こちらもやらないんだ、この考え方をおやめ願いたいのです。こちらが善意を持って当たれば、向こうも善悪になってくるものです。つまり、自主的な日本の外交政策に温情をもってすれば、向こうもこれにこたえてくるようなものですから、これは一つ大臣の信念をもってこちらが善意を施してやる、そして向こうをなびかしていくという、そうしたあたたかい心づかいを外交上もされることを希望して、私は質問を終わります。御苦労さんでした。
  475. 中村幸八

    中村主査 長谷川保君。
  476. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 おそくなっておりますから、私の質問は取りやめますが、そのかわり資料を出していただきたい。それは、ただいま受田分科員からもお話のありましたように、補助金及び委託費というのが、非常にたくさんある。昨日、実は急でありましたけれども外務省の方に、補助金、委託費を出す以上は、それらの団体から予算書が出ていなければならぬ、その予算書を調べれば一体どういうことをやっているかが私どもにつかめるので、ほぼ妥当な補助金、委託費がわかるということで要求したけれども、お出しにならない。かわりに見せていただいたのが、三十六年、昨年度補助金、委託費の関係の書類であった。そういうばかな話はない。三十七年度予算書が出て、初めて外務省の方で補助金を出すか、委託費を出すかということが出てこなければならぬ。これらの各団体の三十七年度予算書というものを予算委員会が終わるまでに出していただきたい。もしなければないでよろしいが、しかしこちらから難くせをつけますよ。またできればそれらの団体の定款あるいは寄付行為、それに理事長、専務理事、事務局長というのがあるでしょうから、そういう主要役員の名前を出していただきたい。というのは、けさほど来問題になった移住振興会社の問題でも、その事情に明るい人に私は少しく事情を聞いてみたところが、外務省の役人のうば捨て山を作ったのだということの話があった。そこで、一つそういうものを調べてきてもらいたい。  それで、受田分科員から先ほど来いろいろお話がありましたが、われわれも四回ほど外国に参りましたが、しかし行ってみて、いかに貧弱であったか、こんなことではだめだ、金が足りない、もっと十分な活動ができるようにしなければとてもだめだということを、行くたびに感じてくるのであります。国の問題ですから、われわれも出すべきものは出す。しかしそのかわり、むだなところにいいかげんなつかみ金を使われてはたまらぬと思います。ですから、出すべきものは大いに出して、外務省をうんと応援するから、外務省もうんとやってもらわなければならぬと思う。  それとついでにもう一つ問題は、私がこの予算書を見ていって内容がちっともわからない。この予算説明を見てもわからないのは、外務省本省の報償金六億七千万円の予算、この報償金というのは、どういう意味かわからない。大体の想像がつかぬことはありませんが、しかし私が考えておるようなものであれば、これだけの額ではだめだということです。もっと大きな額をとらなければだめだということです。一応お宅の方の説明書を見ても、昨年の大蔵省予算書を見ても、何のことだか意味がわからない。わからないで六億七千万円も出すわけには参りませんから、この内容はどういうものであるか、公開の席で工合が悪ければ公開の席でなくてもけっこうですから、その内容を教えてもらいたい。このことを注文して、私の質問は、本日はとりやめます。
  477. 中村幸八

    中村主査 これにて昭和三十七年度一般会計予算中、外務省所管の質疑は終了いたします。  次会は、明二十一日午前十時より開会し、厚生省所管に対する質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時三十九分散会