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1962-02-27 第40回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十七日(火曜日)     午前十一時四分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       仮谷 忠男君    倉成  正君       重政 誠之君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    淡谷 悠藏君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       川俣 清音君    兒玉 末男君       多賀谷真稔君    兼務 小松  幹君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     檜垣徳太郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         食糧庁長官   大澤  融君         水産庁次長   村田 豐三君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (企業局長)  佐橋  滋君  分科員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会経済部長)  小沼  亨君         総理府技官         (経済企画庁総         合開発局東北開         発室長)    浅間 一彦君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局東北開         発株式会社監理         官)      財前 直方君         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         農林事務官         (食糧庁総務部         企画課長)   松元 威雄君         農林事務官         (食糧庁経理部         長)      家治 清一君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         通商産業事務官         (通商局次長) 山本 重信君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌次君     ————————————— 二月二十七日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して多賀谷真稔君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員賀谷真稔委員辞任につき、その補欠  として兒玉末男君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員兒玉末男委員辞任につき、その補欠と  して勝澤芳雄君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員勝澤芳雄委員辞任につき、その補欠と  して高田富之君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第四分科員小松幹君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁、農  林省及び通商産業省所管  昭和三十七年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  赤澤主査が所用のため不在ですから、その指名により私が主査の役を務めます。  本日は、昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁農林省及び通商産業省所管昭和三十七年度特別会計予算農林省及び通商産業省所管を議題といたします。  質疑を行ないます。小松幹君。
  3. 小松幹

    小松分科員 通産大臣にお尋ねします。  最近、貿易自由化の傾向がはっきりして参りましたのですが、それと諸外国の、西独あたり企業合同の様子を見ておると、日本の格にするとさらに相当大きいところの企業が、英国でも、西ドイツでも、どこでも企業合同をやって、大きな資本を作って、大陸にあるいは海外に出ている、こういう情勢の中に、日本企業合同というか、そういう面について、通産省としてはどういう考えを持っておるか、それをお伺いします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通産省といたしましては、こういう問題について別に指導もしておりませんし、業界の自由にまかしておるというのが今の現状でございます。ただ、今小松さんが御指摘になりましたように、英国あるいはドイツ等におきましても、企業合同が盛んに行なわれております。最近私も経団連でEECについての所見を述べたのでございますが、その際、やはり事業経営の立場において、財界自身が対処する道を考えることが必要じゃないか、こういうことを実は申したのです。その中に、一つ外国の例などを示して、こういうことを言うと、企業合同をいかにも勧めるかのようにとられるが、外国がやっておるそのあとばかりついていく、それだけで能事足れり、かように私言うわけじゃないのだ、むしろ事業内容を改善して、経営力を強化することが必要だ、そういう癖の工夫をして下さい、こういうお話をいたしたのであります 最近は銀行筋あるいは財界筋でも、企業合同の話がしばしば出ておるようであります。あるいは今後それがどういうような形で進みますか、それをしばらく見たい、かように私は思っております。
  5. 小松幹

    小松分科員 まあよその国が企業合同したからどうか、こういうことは別に私も考えておりません。私は、通産省指導性というか、とかく今の自民党内閣保守党内閣は、何か問題が行き詰まると、特に財界方面の向きに対しては、自由主義経済だから、手をこまねいて——理想はいろいろ持っているだろうが、一応客観的に、そしらぬそぶりをして過ごしておる。もっと別の言い方をすれば、あまりに差し出がましくやると、官僚統制というそしりを受けるから、そして片一方では自由主義経済だから、こういうようなことをおっしゃって逃げ口上にしておると思うのです。ところがそれだけで日本経済というものが済まされるのかどうか、こういうことを考えてみたときには、そういう前時代的な、自由主義経済だからという逃げ口上にはなっても、それでは済まされない、そういう考え方がある。同時に、今度は中小企業とか認可あるいは許可、こういうようなものに対しては、目に見えぬ相当の圧迫を加えて、オーソドックスなイニシアをとった企業指導ということはようできぬ。表口からものは蓄えぬけれども、裏口からじわじわ締めるといったようなことをおやりになる。私は、これでも今日までは過ぎたからいいとして、これから先、貿易自由化というものを月の前にして、企業に対してもう少し表口から、オーソドックスなイニシアがとれないものかどうか。この点は佐藤通産大臣あたりは、もっと深刻に、今の日本経済なりあるいは企業あり方について考えているのじゃないか、こういうことを私は想像するわけなんですが、その辺について、どういう御判断を持っているのか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に私、意欲的な何ものもございませんので、先ほど申し上げた通りでございます。ただ、私どもが最近、あるいは後ほどそういうお話にも発展するのかと思いますが、このEEC諸国あるいはアメリカなどといろいろ日本産業を比べてみまして、そしてEECに接近するとかあるいはEEC協力するとか、こういうことをいろいろ考えますが、経済発展段階あるいは経済構造の相違、こういうものからみると、相当日本がおくれておるのですね。たとえばEECの問題がしばしば議論になりますが、EEC関税同盟から発展して、今日のよう々経済共同体になる。その前にすでにそれらの諸国は、自由化というものに踏み切る、それを進めてきておる、そうしてただいまのようなEECの強固な経済共同体を作る、そういう段階にまで発展してきている。ところで日本は、今ようやく自由化をやろう。その自由化も行き過ぎだ、あるいはもう少し足踏みができないだろうか、こういう議論すらある。日本経済の実情、あるいは国際的に見て日本産業自身がいわゆる中小企業と見られる、その形をとっている。その国内において、大企業中小企業との問題が今取り上げられ、一番議論の焦点になっている。こういうところに日本経済のまだ未熟性というか、あるいは幼稚性というか、そういうものがあるわけですね。こういうものを一体どういうようなテンポで取り返すか、これが私どもの必要なことであり、先進工業国に追いつくという、これはただ単に技術あるいは新部門の開発とこういうだけじゃないですね。経済界自身の置かれている状態が、ただいまのように非常におくれておる。その後進性をいかにして取り返すか、これが私どもの一番努力すべき点だ、かように思うのです。そういう意味において財界奮起あるいは協力、これを心から願っているというのが現状でございます。ただいま御指摘になりますように、自由経済をいつまでも金科玉条にしているのが能じゃないだろう。こういう御指摘のありますことも、これもわからないではございませんけれども、今の状況のもとにおいては、何よりも大事なことは、財界の積極的な奮起が一番大事なことだろう。そういう意味で、これはやはり自由経済建前でその速度を速めることをお勧めするということが望ましいのじゃないか、かように実は考えております。
  7. 小松幹

    小松分科員 イニシア気持がないという、それが実は最も問題だと私は思うのです。いたずらに通産大臣の席をあたためておればそれでいいというようにも聞こえますし、それで今日の日本経済を乗り切れるか。みんながそういう気持だったら、この日本産業、たとえば設備投資一つをとってみても、池田さんに言わせると、どうも設備投資が行き過ぎたんだ、わしらはどうもしようがないんだ、こう言うて設備投資の行き過ぎたことについて人ごとのように言っておる。それじゃ設備投資が行き過ぎたから、その行き過ぎたはね返りというものは、行き過ぎた大企業なりそういう企業者発議者というものが全部の責任を引き受けるならこれは何をか言わんや。ところがその引き受けというものは、やがて回り回って金融引き締め政策あるいは調整政策あるいはデフレ政策になってくる。そのときのしわは、今度はそういう設備投資に狂奔した人じゃないわけです。そうなると、これはもっと通産大臣設備投資たった一つでも、もう少しワクに入れて抑え得ることができないのかできるのか、これもやはりあなたまかせの年の暮れで、そういうイニシアもとらない、こういうことをおっしゃるわけですか、その辺どうなんですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろんこの設備投資をやるのが民間財界だ、こういうことを申したからといって、政治上の責任が全然ないというわけのものではない。もちろん政治あり方なりその指導性というものは必要だと思います。だがそういう意味において、私どもはただいま調整段階に入り、調整方法としての民間への協力を求める。その協力を求めるのはどういう方法だ、これはやはりお示ししているわけでございます。あるいは貿易拡大ということについても、やはり目標をお示しして、そして各業界財界協力を得ているということでありまして、政治の形の問題と、今言っていることと別に矛盾はしてない、かように思っております。
  9. 小松幹

    小松分科員 考え方方向としては矛盾はしていない。あるいは佐藤通産大臣ともあろう方ですから、私は相反する矛盾方向には向いていないと思う。ただ積極的なイニシアがとれていくか、あるいは大前提の前に向かって、まっ正面に非難あるいは攻撃を覚悟しても取り組んでいくという気がまえがあるのかないのか、この問題になると思うのであります。何も佐藤通産大臣が一人で火中のクリを拾え、こういうわけではない。池田内閣全体が、日本経済が、今少なくとも危機の様相を呈してきている。二面では成長過程をとると言いながらも大きなひずみが来ておる。また貿易自由化、国際的な大きな動きの中に、やはり再編成の時期が来ておる。その再編成に臨むにあたっての内閣全体の取り組み方、かまえの問題を、私は聞いているわけです。その内閣全体のかまえの中でも、通産行政担当者のあなたのかまえがきわめてたよりない。きわめて人ごとのような感じがする。それで押し切っていけるのかどうかというのがちょっと心配になる。だからさっき、設備投資一つの例をとってみても、設備投資は最近だいぶ抑えてきておりますけれども、一体このままで設備投資というものが、たとえば今はやりのコンビナートをとって見ても、既設コンビナートと新設のコンビナート計画とをどう調整していくのか。たとえば石油産業にしてもシェア拡大のためにあらゆる石油産業が争っている。そしてこのコンビナート形成によって、既設コンビナートは新しく資本を倍増していこう、こういうような意気込みを見せている。また新しい、たとえば大分の鶴崎、大分臨海工業地帯という、これからのコンビナート形成というものも、非常な地方財政をつぎ込んで、ほとんど全県の財政をぶち込んでもこのコンビナートと取り組んでいかなければならぬという考え方に立って、新旧のコンビナート形成というものに夢を託しながら、あるいは鉄鋼あるいは石油産業と組んでこの設計が流れつつあるこの場合に、一体日本コンビナートの数はこのままの状態でいいのか、コンビナート規模はこのままの規模でいいのかどうか、その辺のところを通産省としてはどう判断しておるのか、これは設備投資一つ具体例としてもお伺いしたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通産省としての新規計画認可許可、そういう場合に一体どうなるのか、もちろん通産省として同種のものについての、需給見通し計画を一応立て、そしてその範囲計画許可すべきものは許可する、こういうことで進んでおるわけでございます。全然見通しなしに、ただ競争——甲を許したから乙を許す、乙を許したから丙も許す、こういうわけのものではございません。こういう意味では、二重投資過剰投資というものを抑制することは可能だと思います。過去はともかく、現在私の考えておるのはそういうことでございます。  また、御指摘になりますように、自由化について、いろいろシェア拡大であるとか、こういう意味過当競争が行なわれておること、これも無視はできません。これが弊害をかもすというような場合、たとえば甲の産業が、乙、丙——関連はもちろんあるでしょうが、そういう産業にまで手を出す、こういうものについての扱い方は、よほど慎重にしなければならないということで、実は取り組んでおるわけであります。ただ私どもの本来の建前が、また耳ざわりか知らないが、自由経済だという建前から申しますと、第一は、業界自主調整ということを考えるということであります。だから、自主調整新規なものについてはなかなか考えられない。でき上がったものについての生産などは、比較的自主調整は可能なんでございます。計画中のものはなかなか公表いたしませんからむずかしい。ただ通産省自身としては、そういう原材料等の将来の需給計画見通しは一通り立てまして、それをうまく適当にあんばいしていくという考え方でございます。
  11. 小松幹

    小松分科員 設備投資資金の配分は、通産省の強力な指導でなくして、自主調整であってもいいのです。まあ今日まで自主調整は口で言われながら、なかなかできないのです。できないから官僚統制をさせようと言わないけれども、しかし自主調整にしろ、あるいは官庁の一つのモデル的な統制にしろ、やはり日本産業あり方というものについて一つ理想がなければ、船は、あなたまかせの年の暮れ、どこに行くかわからぬ。私は通産省には通産省としての建前というか、理想というものがあると思う。その資金運用方向、かりにことしの通産省所管設備投資ワクを、五千億なら五千億でしぼるとしても、その五千億の方向性というものはなければならぬと思う。ただ、おのが向き向き、おれのところはこれをやるからこれをやるという自主調整にまかせるわけにはいかない。この自主調整にしても、通産省一つ方向性があると思う。また今日過当競争が現実の問題として起こっている。同時に設備投資の過剰ということが、国内におけるところのシェア拡大ということで、やはり二重投資あるいは過剰投資になっている。通産省としては、こういう二毛投資過剰投資あるいは方々のコンビナート形成に対して、どういう方向性を持っているのか。それは、同時に、その裏づけとなるところの、日本貿易構造から考え日本産業方向性というものを持っておらなければ、私は船は進められぬ、かじはとれぬと思う。その辺のところをどうお考えになりますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お話通りでございます。私は、小松さん、大へん勉強家でいらっしゃるから、今通産省がやっていることは御承知だと思って、その点触れなかったのであります。  御承知のように、産業合理化審議会というものがございまして、それの中に資金部会がございます。この資金部会で審査したもので、いわゆる設備投資通産省関係総体の金額をきめたわけであります。昨年は、いわゆる設備投資は四兆円といわれた、その四兆円を一割削減して、三兆六千億ぐらいにする、そういう場合に、通産省関係は一体幾らになるか、一兆六千五百億になるとか、あるいは一兆七千億になるとか、こういうことでやりまして、最後は一兆六千億ということに押えて、この資金部会の議を経て、実施に移すというのが現状でございます。もちろん、これが時期的な問題で食い違い等もございますが、今考えられる方法としては、一応適当な方法じゃないか、かように思っております。
  13. 小松幹

    小松分科員 今のお話は私もよく知っております。資金の量で押える、私はその資金の量で抑えるという量的規制、量的な、一兆六千億なら一兆六千億で抑える、そのワク内で考えるということ以上に、もう一つ先に、そのワク内において、どういう産業の配列を持っておるのか。ただ資金の量でこれだけだ、それは国家の財政運用上あるいは金融の一般的な流れというものは、その資金量で一応目安がつくと思うのです。しかし、それだけでは、大蔵省が考えても企画庁が考えてもいいことである。もう一つその奥に、通産省はその量におけるところの資金の割り振り、産業方向というものを考えておるのかどうか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん、各業種と申しましても全部ではございません。十二業種設備資金要綱、これを各業種と相談の上でまとめて、そうして積み重ねたものが一兆六千億ということに実は相なるのでございます。もし御入用なら一応の内容を各業種別企業局長から説明いたさせます。
  15. 佐橋滋

    佐橋政府委員 私、急なものでしたから、資料を持って参りませんでしたが、ただいま大臣の御答弁にありましたように、各メーカーから三十六年度なら三十六年度の設備計画をとりまして、われわれの方としては、主要十二業種について、大体三十六年度にはどれだけの資金総数が充当できるかということを、銀行筋と連絡したしで、その数字範囲内に各企業設備計画を押えておるわけであります。だから順当に参りますれば、われわれの調整をした数字範囲内が、今の資金総数の面から当たったのと合っておるわけでございますから、順当にいけばそれだけのものが重点的に確保される、こういうつもりでやっておるわけでございます。現実問題としては、それが運転資金に回されたり、あるいは十二業種の占めております全設備投資の中の比率、こういうものが若干ずつ変化を見るというようなことから、われわれの期待したものが確保できないという場合もあり得るわけでございます。
  16. 小松幹

    小松分科員 そのような説明なら、もうわかり切ったことなんです。そうした場合に、通産省としては通産行政の上から、日本経済動向産業動向からどこに全力を入れてやるのだ、ここはこの程度企業整備をして立て直さねば過当競争になる、こういうあんばいがあるのかどうか。たとえば、かつて二、三年前、アクリル系繊維過当競争を言うた。言うたけれども過当競争はそのまま、何だかんだいいながら、もう繊維関係で作り上げてしまっておる。こういうようなことがあるわけなんです。今日でも、この四、五日前の新聞でも、既設川崎あるいは千葉、水島等それぞれのコンビナートが、非常な勢いで資金を確保しようといういろいろな動きがある場合に、通産省としては、一定のワクはもうこれだけだから、ワク内でお前たちがどうばたばたしようと、どっちに向いていこうが、右に向いていこうが左に向いていこうが、通産省ワクだけ与えておけば大筋はきまっておるのだから。こういう考え方に立っておるのか、もう少し積極的なものを持っておるのか、意欲的なものを持ってやりおるか、その辺のところを聞いておるのです。今、企業局長が、言うようなことは、だれだってわかっている。
  17. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣  企業局長数字をもって説明すれば、もっと納得いくようになったかと思いますが、数字をちょうど持っておらないというので、大へん失礼なんですが、小松さんに劣らないほどの意欲的な考え方があるだろうと思います。御承知のように、ただいま申す事務的な処理方法資金部会に各産業別のものを積み重ねていって、普通の状況なら、それがそのまま業界自身山主調整で話がつき、総ワクが認められる。ところが、昨年のように、設備投資を抑制しなければならない、その計画じゃ困る、こういうことで冬業界と折衝が始まったわけでございます。また非常に膨大な過当競争資金要望がありましても、それは資金の手当ができればいい、あるいはまた通産省が全部許可すればいい、しかし許可しないことがございますよ、ということは申してきたものであります。そこに問題があるわけであります。そこで、昨年のような設備抑制をした場合に、どうしても必要だと考えられるもの、基幹産業だと考えられるもの、たとえば磁力だとかあるいは製鉄だとか、こういうものについては、これは優先的にその設備投資を了承していく、あるいは最近の繊維業、これ自身から見れば、設備能力と現在の繊維の実績とは相当開きがある、能力自身がそこに相当余裕がある、こういうようなものについては、設備抑制の場合に、積極的にこれを押える。あるいは新規のたとえばラクタムを導入するとか、こういうようなものについては、繊維総体需給あるいは化繊への転移状況、それなどを見まして、そうして過当にならないように、過当競争にならないような指導を実はするわけであります。この積極的な指導が全然ないと言われますが、この点は非常にむずかしいことでありまして、それぞれの事情を同情すれば、それは際限のないところであります。しかし、それを全部認めていけば非常な過熱を生ずる、こういうことでありますから、せっかくある合理化審議会、その資金部会運営というものは、今後一そう運営に慎重を期していくべきではないか。ただデータをとったというだけでは足りない。今後の産業あり方等から見まして、過去の弊害を再現しないように、それだけの注意は今後一そういたすべきだろう、かように思っておるわけであります。ただいまのところ、設備抑制については、これらの機関の協力相当効果を上げてきた、かように私は考えております。
  18. 小松幹

    小松分科員 相当効果が上がっておるかどうかは問題としても、そういう傾向にあることは私も認めますが、私はその傾向だけでは今日乗り切れないのじゃないか、そういう心配があるから、もう少し、そういう傾向をとっておるとか指導方向に向いているとかという、あいまいな態度ではなくして、やはり石油産業ならばこの程度の企業理想とするのだとか、あるいはコンビナート形成ならこういう程度のものを考えるのだとか、こういうようにはっきりしたものを持たないと、たとえば商工委員会に出ている新産業都市建設促進法案ですか、あれなど見ても、まことに、どこでも県知事がうまいことを言って申請してくれば、大負けでみんな認可していきそうな法案で、これは相当私も議論があると思いますけれども、そうしなければ、なかなか最初から指定といってもできない。こういう問題にしても、私はもう少し重点的に産業の再編成の上に立った方針がはっきり出されなければ、あの新産業都市も、わあわあ地方をわき立たせて、そうして夢を追わせるだけの効果しかない、そういうように考える。その辺のところを通産大臣、どう考えているのか。あれは各県みなそれぞれ認めさせるというのですか。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、だんだん小松さんと私との基盤の相違が出てくるようでございますが、私ども、それは自由経済と申しましても、全然計画性のないやり方はしない。計画性は持っている。しかし、その計画性即計画経済ではございませんし、ましてや統制経済ではございません。そこのところで考え方がだんだん分れてくる。私どもが歩を運び得るのは、いわゆる計画性、まあその辺まででございまして、それからさらに進んでの、小松さんの言われるような計画性を持て、計画経済に踏み切れ、こう言われますと、私どもはちょっと二の足を踏むというのが今の状況でございます。今の地方の工業都市建設の問題にしましても、これは立地条件その他がございますから、どこか山の中へコンビナートを作れという計画は、だれも出しはしますまいが、極端なことを言えば、そういうものは実現性がないわけであります。コンビナートならば、海岸でなければならない、良港でなければならない、そういうように、各種の産業には立地条件がある。非常に工業用水をたくさん使うものもありましょうし、そういう立地条件に合わないと、それは知事さんがどう言おうが、市長がどう言おうが、それでできるものじゃないと思います。
  20. 小松幹

    小松分科員 私も何も無理に、社会党のいう計画経済を、あなたに押しつけようとはしない。しないけれども、今日の情勢はあまりにも無計画であり、出たとこ勝負であるから、強く言っている。たとえたならば、北九州の産業を復興する。そうした場合に一体水はどうなるのか、工業用水はどうなるのか。こうした場合に、工業用水というものには一向手をつけないで、そうして古い産業都市を、どういう格好で生かしていくのかというような構想がはっきり出てこない。だから、それでは北九州の水資源の問題を一体どう考えているのか。その辺のところが、はっきり水資源の問題が出ない限りは、これは既設工業地帯として幾ら再編成しても、右にあるものを左へやるだけであって、そういう点が通産行政としてはっきり出ているのかいないのか、その辺を伺いたい。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これも勉強家の小松さんとしては、珍しいことを言われるのですが、北九州の工業用水は、これは超党派的に推進の団体ができておりまして、うしろで多賀谷さんが笑っていらっしゃいますが、しばしばお目にかかり、今回の工業用水確保のための予算などにもちゃんとそれが出てきております。なかなか水の確保の困難な場所でも、特別な工夫がされておるので、これは一つ御了承願いたいと思います。
  22. 小松幹

    小松分科員 それは水資源の研究はしていますよ。あるいはちょこちょこ知事あたりはやっていますよ。しかし通産省としてもう少し大きな構想を持っていない。これは私が例を北九州にとったのであって、実際は本格的な水資源の問題の解決を私はなされていないと思う。ただ、所要の水のあんばいは最小限に考えつつあるでしょう。あるけれども、ほんとうの産業構造の面から立った水資源というものは考えていない。それは例でありますけれども日本コンビナートを見た場合に、少し二重投資過剰投資の傾向がある。小さなものがえらいことたくさんある。たとえば、イギリスあたりでも、イギリスは相当困難な産業形態になっておると思いますけれども石油化学のコンビナートがごくわずかしかない。日本の場合がイギリスのようにごくわずかでいいという断定はもちろんできませんけれども、しかし、日本の場合は、もう少し制限をするか、あるいは二重投資あるいは分散した形でないものができていいのじゃないか。その辺のところを、やはり社会党のように計画経済でないからというて、出たものを、にきびが出てきたから出てきたやつをつぶすわけにはいかぬと言っていれば、そのにきびはだんだん太っていくわけです。今までの通産行政というのはこういうような格好で一切やられておるのじゃないか。この点、もう少し、石油企業そのものに対する数の問題、それから、鉄鋼コンビナートというよりもいわゆる石油コンビナートの数の問題、この問題は現状でいいのかどうか、この点についてお伺いします。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そのお尋ねの前に、工業用水、これも、今とすれば少し短かいのかもわからぬですよ、あるいは三十年光くらいのものを計画を立てろと言われるかもしれぬが、いわゆる十カ年計画は持っているわけです。これは、全国的に工業用水確保、いわゆる所得倍増計画に合わした十カ年の長期計画がある。だから、全然あなたまかせというほどじゃない。これも一つ御了承いただきたい。  それから、今の石油精製の問題でございますが、イギリスはもうシェルが中心でございますし、イギリスはそういう意味の特殊な発展をしておる。今、企業局長の話を聞けば、石油精製では日本は世界で第二番目の国になっているということでございます。そういう意味では、小国といえども非常に数が多くなっている。これは、ソ連を入れればおそらく世界三でしょう。そういうところまでのし上がっておる。こういう実情は一つ御認識をいただきたい。  それから、その次は、今言われる石油、製鉄あるいは電力、今後はこの三つを中心にしての大コンビナート考える、経済構造あり方というか、こういうものになると、立地条件で、そういう場所は非常に限定されてくる。だから、どこにでもできるわけのものではございません。これは港が深くなければならない。そうして、将来必ず十万トン以上の大きな船が石油も持ってくれば鉄鉱石も持ってくるし石炭も持ってくるというようにならなければ、コストなど下がらないと思います。あるいはまた、発電所自身にしても、大きな五十万あるいは五十万以上のものを据えるとなれば、地質が非常に強固でなければならぬ。そういう意味で、非常に限定されるだろうと思います。ただ、今日ありますいわゆる石油コンビナートと言われるところのもの、これは、日本のものはみんな規模は小さいのですが、今動いているのが四つだそうです。あと計画中のものを入れると九つになる、こういうことでございます。これなども、立地条件その他で、一つという数には寄らない、規模はそう大きいものじゃない、かように御了承いただきたいと思います。
  24. 小松幹

    小松分科員 時間もないそうですが、まとめて申し上げますと、私は石油とかコンビナートに例をとりましたけれども、そのほか、過去においては繊維産業過当競争があった。今は一応落ちついた形で遊休施設になっておる面もあると思いますが、自動車工業にしても、まだ相当規模が小さくてたくさんある。そういうことで、自動車産業は、貿易自由化などに対して抵抗もしておると思うのです。企業そのものが自然発生的にできれば、それは仕方がない、こう言うけれども日本産業方向性とかあるいは貿易構造から見て、私は、今後の貿易というものはイージー・ゴーイングな貿易だけではいかぬと思うのです。向こうがAを作ればこちらがBを作る、向こうがABで来ればこっちはCDでいくという形の、違った、いわゆる落差のついた一つ貿易構造というものを持たなければならぬとするならば、やはり、日本産業も、今日までの格好そのままで、とにかくむちゃくちゃに輸出をすればいいんだ、できなければ税金を負けてもいい、あるいはどういう方法でもいいからその場限りで輸出をすればいいということになれば、私は、貿易過当競争に陥ってくると思う。今までの貿易というのは、いわゆる輸出ドライブがかかると、補助金が出るとかあるいは税金を負けるぞとかなんとかいう一つのむちが入ると、むちゃくちゃに競争して出る。あるいは信用抜き輸出なども最近出ておるように、そういうような方向になると、何でもかんでもやる。こういう形だから、受ける方は、いかにもあせって輸出をやっている、きのうはこっちの商社が来た、きょうはこっちの商社が来た、いわゆる外国において売り込み競争が頻発してくる。こういうことは、私は長続きしないと思う。そのときはとにかく貿易の帳じりは少しは上がるけれども、そういうことだけでは将来の貿易というものは進まない。そういうことならば、むしろ、ソ連や中共の貿易のいわゆる延べ払いでもいい、五年間なら五年間のじっくり安定した市場の上に研究と研さんを固めながらやっていくというような貿易もいいのじゃないか。それだけがオンリーであれと私は言っているわけではないけれども、ただその場その場で競争してやるという貿易は、今日までは許されたかもしれないけれども、今後はそういうことではいけない。そうすれば、やはり、そのもとであるところの日本産業構造あるいは産業の競争力、国内シェア拡大、国外における売り込み競争、こういうものをもう少し意欲的に調整していかなければ、私は、今日から先の日本産業の再編成あるいは貿易がスムーズにいくとは限らないと思う。この点について、これは抽象論でございますけれども日本通産行政というものは業者のしりぬぐいをするだけの行政じゃ意味ない。先頭を切って旗を振るだけの力を政府は持つべきだと思う。それが何も官僚統制に通ずるとか社会党の言う社会主義経済に通ずるというわけではなくして、もう少し先を見た一つの旗振り役をしっかりしたプランの上に立ってやらなければいけないのではないか。  こういう意味で、抽象論でありますけれども大臣に申し上げたわけですが、この点について具体例がいろいろ出て、ほんの具体例でございましたけれども産業構造の変化、貿易形態の変化、日本企業の再編成、こういう問題について大臣の最後の御所見を伺って、私は終わりたいと思います。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これも抽象論的なお答えをしてまことに恐縮でありますが、今小松さんの御指摘になりましたことは、私どももその通りだと思います。ただ、いまは大へんな変転期でございます。これは、経済的にはEECができたとか、あるいは産業自体の産業革命が行なわれておるとか申しますが、経済自体が大きく動いておる変転期である。同時にまた、それは世界経済そのものとして動いておる。東西の関係におきましても、経済の面において、その密接度はそれぞれ加わりつつある。現にイタリアなどはソ連の石油をうんと買っておる。また、西独自身はソ連並びにソ連衛星国に非常な貿易拡大をはかっておる。こういうことを考えてみますと、非常に変転している際でございます。そういう場合に日本が一体どういうようなことをするか。これは、先ほど私申しましたが、先進経済圏というものに対して日本もおくれを早急に取り返す、そういう努力をしていかなければならない。この小さな島国の立場においてお互いが競争し合う、そういうことはやめて、もっと大所高所、視野を広くして、世界経済の一環としての一翼をになう日本経済である、そういう方向に政府はもちろん考えなければならないし、財界もそういうことで今後の計画を進めていくべきじゃないか、かように私は思います。だから、ただいま抽象的な御意見と言われましたが、同時に御叱正をいただいたと私考えておりますから、その御嵩説には、抽象的には結論としては私もしごく賛成でございます。今後一そうの御鞭撻をお願いいたします。
  26. 倉成正

    倉成主査代理 多賀谷真稔君。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 十月一日から貿易自由化九〇%、さらにEECへの接近等が言われておるのですが、それに対処するために、政府は本年度すなわち昭和三十七年度の予算において、並びに法律案として今国会にどういう処置をなされたか、これを概括的にお聞かせ願いたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から概要説明させます。
  29. 山本重信

    ○山本説明員 自由化を一そう推進しなければならない状態になっておりますので、三十七年度の通産省の予算を編成いたします場合にも、従来と違いまして、自由化対策には特別な重点を置いて編成をいたしたのであります。  その第一は石炭対策でございます。石炭関係では、産炭地振興事業団の出資等を初めといたしまして、五十九億円の予算を組んでございます。  それから、次に、鉱業の関係でございますが、新鉱床探査の予算、さらに、経済協力資金の活用によりまして、海外鉱物資源開発会社の運営を進めるという計画を立てております。  それから、第三に、機械工業でございますが、機械工業が自由化を迎えまして特にいろいろ問題のある業種でございますので、重点機種の育成、さらに、市場確保というような観点から、賦払い信用保険制度の充実をはかり、さらに、重機械の延払金融の措置を講ずるというような措置を予算編成の重点として織り込んでございます。  それから、さらに、優良国産品を普及するために、国産品普及促進事業をさらに一そう拡大していこうというので、そのための補助費その他も計上いたしております。  直接自由化対策として考えておりますものは以上のような点でございますが、さらに根本的には、通産省の予算のほとんど全部がいわば自由化対策とも考えられるのでございまして、中小企業対策、さらに産業基盤対策等も直接間接にこの自由化対策のための予算というふうに考えて差しつかえないと思います。
  30. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 それから、法制的処置……。
  31. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 今山本次長からも御説明申し上げましたように、通産省の施策全体がいわば自由化対策でございまして、それに沿っていろいろ法律的な準備もいたしておるわけでございます。特に自由化対策として直接関連がありますのは石油関係、これを石油業法として現在準備を進めております。  それから、石炭関係といたしましては、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、それから、地域振興事業団法案、これは一応全国会で衆議院の方に提出いたしております。  それから、なお、肥料につきましては、現在二法がございますが、これにつきましていろいろ政府内部で相談いたしまして、これを廃止して、新たに肥料工業の振興法案を作りたい、かように考えているわけであります。  そのほか、中小企業関係、あるいはまた工場煤煙等の被害の阻止といった点をいろいろ現在考えておるわけであります。  そのほか、通産省の直接の関係ではありませんが、大蔵省関係といたしましては、自由化に対しましていろいろ関税措置の方法考えて今国会に提出するつもりであります。
  32. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、十月一日に九〇%の自由化が行なわれるというこの際に、政府としての対処すべき政策がきわめて微温的である、こう考えざるを得ないのです。石油業法のごときはまだもたもたしている状態です。予算が通過せんとしておるのですよ。ですけれども、一番肝心なエネルギーにおける自由化対策として最も大きい法案がまだはっきりしない。それから、石炭合理化法だって、これは買いつぶしだけです。悪い炭鉱の整理だけで、現在の炭鉱の体質改善は何もないです。あとは離職者対策。それから、肥料法案だって、これが貿易自由化対策になるのかどうか、これは私は別の機会に論議してみたいと思いますけれども、どこが貿易対策になるのか、ただ、今までの赤字の解消という面においてはこれは問題になろうけれども、これも私は自由化対策としての十分な処置とは受け取れない。関税、これは私は率直に言って自由化対策として行なわれたものだと思います。予算も、そういう意味において、たとえばメタルのことをおっしゃいましたけれども、これも一億が三億になったという探鉱費の増額程度で、業者の要求は百億ですよ。ですから、これもみみっちいものですから、取り立てて大きな政策というものはないと思います。  そこで、優良国産品の購入普及について、国雄普及促進事業ですか、これを考えられておる、こういう話ですけれども、一体この内容はどういうものであるか、お聞かせ願いたい。
  33. 佐橋滋

    佐橋政府委員 国産品愛用運動につきましては、昨年三十六年度の予備金からも支出を願いまして、それを引き続いて三十七年度約三千万、合わせまして四千万で国産品の愛用運動を現在展開しておるわけであります。これは、商工会議所の組織を主体にしまして、国産品普及推進本部というのを作りまして、地方の商工会議所あるいは府県を動員をいたしまして、現在のところ、明治以来われわれの根底に根ざしております舶来思想といいますか、いわゆる外国品先行性というものを打破するために精神運動を展開したい。そのほか、外国の主要な商品につきまして性能検査等をやりまして、国産品との性能比較をやって、国産品が決して外国品に対して劣っておるものでない、あるいは劣ってないものについては国産品の使用を推進すべきであるというような精神運動を主にして展開しておるわけであります。
  34. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 どうも物を扱う通産省が精神運動にたよるというのはおかしいと思うのです。しかし、率直に言って、日本には舶来品が非常に優秀だという長い間の観念がありますから、それもけっこうだと思う。しかし、私は、もう少し政府みずからそういうことについて実質的に具体的におやりになったらどうかと思うのです。これは私は大臣が席をはずされ、ておりますから大臣にもぜひ聞いてもらいたいと思うのですけれども日本の行政というものは、政府みずから模範を示す、まず隗より始めよという精神にあらゆる点において乏しい。それは、外国資本主義、自由経済においても、政府みずから先頭に立ってあらゆるものをやっておる。ことに、資本主義、自由主義であるアメリカにおいてはその傾向が非常に強い。たとえば、日本で言う労働基準法ですが、向こうの厚生労働関係法を実施するについては、まず政府みずから労働時間とかあるいは最低賃金、これを先に施行してみる。そうしてまた、政府が発注する会社については、まず労働時間の短縮をしなさい、これから以下の賃金で労働者を使ってはなりません、こういうことをやっておるのですね。それから、たとえば不況地域においても、不況地域で非常に困っておるという地域には、政府の需品は同じ単価であれば不況地域で購入するということをやっている。それから、いつでも問題になる中小企業の官公需品の問題だって、これは政府みずから中小企業からその需品を買うという考え方。ですから、私は、政府みずからやるということの精神が乏しいのではないかと思うのです。国産品愛用ならば、政府みずからそういう国廃品を購入されたらどうですか。大臣、今私は、あらゆる点において政府みずからやるという精神に欠けておるじゃないかという話をしている。これは、労働条件においても、外国では、民間にやらせる場合に、政府みずから最低賃金をやり、基準法を実施してみるのです。その後に民間に法律として押しつける。ところが、日本ではそういう精神がない。それから、不況地域の問題だって、同じように、政府の需品をまず不況地域から同値段であるならば優先的に買う。これは不況地域の振興政策になるわけです。それから、中小企業問題については、これは言い古された問題ですからあえて言いませんけれども、官公需品をこれらから確保している。ですから、国産品愛用を推進する場合は、政府並びに政府機関みずから購入をするということが必要ではないか。これはアメリカにも法律があるわけです。この点について一体どういうようにお考えですか。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 しごくごもっともなお話でございます。私は、そうあるべきだと思います。過去における例で、自動車だけは外車を国産車に切りかえた。これが、今言う国産品愛用の点から言って、最もはなはだしいのが外車だったものですから、これを取り上げたわけであります。その他、いわゆる官需自身が、今言われます地域的な問題、あるいは産炭地振興、それらの点にやや欠くるところがございますが、適当なものがあればぜひともそういうようにあるべきだ。どうも官がやはり率先しないと、あとなかなかついてこない。日本にはまた特別にそういう空気もあるようでございますから、それは特に範を示すべきだ、かように思います。
  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 今逆にバイ・アメリカン・アクトを日本がたたいているところで、なかなか言いにくいのですけれども、しかし日本はやはり中進国であるという実態を認識しなければならぬ。そこで、貿易自由化あるいはEECの接近ということの前に、やはりやらなければならぬ多くの問題が残されておる。それが、一度に日本貿易自由化の中に飛び込んだものですから、非常に政策的には混乱をするわけですけれども、やはり、米品優先購入法というようなものがあって、米国品が外国よりも、従来は二五%以上、現在は六%以上高くない場合は政府機関は米国品を購入する義務があると承っておるわけですが、やはり日本でも国産機械愛用促進臨時措置法とでもいうべきものを考えられるかどうか。これは一部で考えられたという話も聞いておるわけですけれども、一体どういうつもりであるのか、御所見を承りたい。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府自身が国産品を買うというか、国産品を使う、これは政府自身がきめることでございますので、いわゆる貿易・為替の自由化という自由化原則から見ても、こういうことは許されることであります。ただ、バイ・アメリカンというような考え方が徹底することは、本来の筋から見て私どもは賛成しない。だから、バイ・アメリカン政策を非難しておるわけでございます。そこで、間接的ではございますが、直接法ではなしに間接的に優良国産品が消費者にわかるような方法、そういう道をとってみよう。もうすでに、規格制度を設けたり、あるいは信用の置ける表示方法をとるとかいたしておりますが、さらに進んでは、商工会議所等を中心にして優良国産品を使用するように消費者に十分の認識を持っていただく、そういうことを一つの運動としてやろう、これは民間運動としてやろう、そのために政府がある程度の補助を出す、こういうことが今回の予算に計上されておるわけであります。
  38. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 私は、精神運動も悪くないけれども、政府並びに政府機関からおやりになったらどうか、こう言っているのです。そこで、よく言われておりますけれども、価格が一〇%以上外国の製品に比べて高くないという場合においては国産機械をお買いになったらどうか。これは法律がないと買えないんですよ。私が簡単にこの話をしておりますけれども、政府はみずから買えばいいじゃないかと言っても、買えないんですよ。日本の会計法では買えない仕組みになっているんですよ。それは一般の公入札でいくのですよ。法律が競合するから、法律の改正を待たないと、それは政府が買えばいいじゃないかとおっしゃるけれども日本では買えない仕組みになっている。たとえば、日本では、公共事業である一定の賃金で政府が雇おうとしても雇えない。それはPW賃金以上では雇ってはならぬと書いてある。日本の会計法では全然逆に行っている。政府が雇おうとする労働者はある水準以上ではしてはならぬ、こういうことになっている。これはやはり法律が競合するのですから、法律を改正しなければできない。精神運動じゃできないのですね。大臣、どうですか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、必要なれば法律を作りかえなければならぬということであります。今の外貨事情等が非常に窮屈になって参りますと、いろいろな工夫をすると思います。ただいまの段階でそういうようなところまでやることがいいかどうか、いろいろ政治的な判断もあるだろうと思います。ただいま多賀谷さん御指摘のように、大へんいい知恵もつけていただきましたので、いま一そう困れば、そういう処置も一つとってみたいと思います。
  40. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 単に外貨事情だけでなくて、国産の廃業を保護するという意味から私は言っているわけです。御留意を願いたいと思います。  次に、最近問題になっておる、今小松さんも質問をされましたが、企業合同の問題があちらこちらで取り上げられて、いや独禁法の改正が必要であるとか、いやその必要はないとか、政府部内で盛んに放送されているわけですね。藤山企画庁長官は、二十三日、閣議後記者会見をして、独禁法の改正を言っている。それは、結局、国際競争力を強めるために企業合同を促進する必要があろう、そこで、わが国の小さな企業規模を是正することが必要で、合同がうまくいくように現行独禁法を改正の余地があると思う。こういうことを言われておるわけです。そういたしますと、今度は佐藤公取委員長は、いや、それはよく読んでもらえば独禁法の改正の必要はない、こう言っている。それから、坂根事務局長は、自由化に備える体制をカルテルに求めるのはあやまちだ、こう言って、その次に、現在の独禁法の中でも企業合同はかなり可能だということを示唆しておりますね。政府の中であちこち放送されると困る。通産大臣はどこかで発言されてないかと思って、私は新聞をいろいろ読んでみるのですけれども、やっぱりよく逃げられておるのですね。産業構造の変革に対するところの産業体制の再検討という言葉でお逃げになっている。しかし、これは何を意味するのかはっきりしない。一体こういうことでは困るのですよ。役所の中であちこちで放送をして独禁法改正について旗を揚げられると、国民は非常に迷惑をする。どういう考え方であるのか、お聞かせ願いたい。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今多賀谷さん御自身でお尋ねのうちに御指摘になりましたように、この独禁法の問題をめぐっていろいろなことが言われる、その扱い方いかんでは国民が非常に迷惑する、こういうことですが、確かに、独禁法を改正するということは大へん迷惑することに違いない、こういうふうに思いますし、どういうふうに改正するだろうといってまた非常な動揺を来たす心配がある。そこに慎重さを必要とする問題だと思います。先ほども小松さんにいろいろお答えしたのでありますが、ただいまはとにかく経済自身の変動の時期であります。だから、いろいろのことが論議される。今までの経済状態において作られた法律がこういう変転の期にそのまま合い狩るかどうか、適応し得るかどうか、こういうことがやはり研究の対象になっておると思います。私は、今までも予算委長会等で考え方を明確にいたしておりますのは、なるほど変動の時期ではあるが、まだその変動現象というものが具体的に出てきておらないのだ、その具体的に出てきておらないうちに独禁法改正など言うことは早い、だから、これはもう少し情勢の推移を見て、しかる後にいかにすべきかを考えたらいいのじゃないか、ことに独禁法自身というものは今の経済あり方の基本法であり、その基本的な法律についての可否を論ずるのでありますから、もっと情勢の推移を見た上で論ずべきだということを実は申しておるのであります。これはもう再三にわたって申しております。  また、今の佐藤公取委員長並びに事務当局の話のごとく、過去において企業合同等を今の独禁法のもとで許さなかったというような例はないようでございます。だから、実際問題から見て、企業合同民間において平常の状態で行なわれ、そうして、それが特別な意図でないと、公取はそれを承認してきている、こういう実情から見ると、今の状況でどうこうという議論はまだ早いと思います。今後いろいろ計画されるであろうカルテルの問題、これが一つ議論になると思います。今までは、不況カルテルに対してはそれを一応承認しておりますが、それ以外のカルテル行為はこれを実は非常にきらっている、これをとめてきている、そういう考え方でございます。だから、事務局長の場合は今日までの扱い方をそのまま言っている、かように私は思いますし、また、それで、現在変転の時期ではあるが、どれだけの支障があるかということを考えてみますと、まずまずやっていけることではないか、そういうふうに思いますので、軽率に改正の要ありと言うことは、まだ法文上から見て結論が出る筋のものではないと思います。  ただ、一部企画庁、長官がどう言ったということが新聞に出ている、こういうことで、政府部内の意見が不統一ではないかというおしかりを受けるかもわかりませんが、おそらく、企画庁長官も、新聞にはどう出ておりましても、改正すべし、こういう断定は下しておらないだろうと思います。  それで、今経済界の評論家の意見なりあるいは財界の一部に、非常に結論を急いだ考え方で、改正の要ありという議論をされる力もございます。これはもう少し実情をよく聞いてみたらいいと思うのですが、どうも評論家の域を出ないのではないか。実際問題として、そこまでの支障がある、かようには私ども痛感をいたしておりません。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 その藤山さんの発言も、もう一つ別なことをおっしゃっておる。それは、消費者物価抑制の立場からは価格協定を厳重に取り締まるなど、独禁法運用の強化をしなければならないと言っている。一方においては独禁法改正の余地があり、一方においては独禁法運用の強化ですか、後者の場合は私はその必要もあるのじゃないかと思う。しかし、前者の場合は、さすがに大臣は、次に総理大臣になられたときに速記録が問題になりますから、なかなか慎重な発言ですけれども、私は、まだその前にする仕事があるのじゃないかと思う。企業合同の前にする仕事というのは、現在戦略産業であるといわれる機械工業の実態を見たらいいと思うのです。あれは一体何ですか。大企業々々々というけれども、実際は中小企業の集団ですよ。ミシン工場だって、従業員が一万人おるといっても、その一万人の従業員のうち実に六千人というものは販売員です。そして、職員が三千人で、ほんとうの従業員というのは八百人しかおらぬ。これが大メーカーですよ。八百人の人間で組み立て、あとの職員の三千人というのは何をしているかというと、その職員を動員して部分品を買い集めておる、こういう実態なんです。これは特殊な例かもしれませんけれども、こういう実態がある。あるいはまた自動車工業の状態でもそういうことが言えるのです。自動車工場の部分品あるいは付属品工場は、全工場数が三千工場ぐらいある。五百名から百名程度のものもありますけれども、そのうちの九割が五十名未満の零細企業です。こういう状態です。ですから、ユニットが月に一万台の乗用車を出さなければ競争に打ち勝つことができるとかできないとか言う前に、まず自分の体質改善という問題があるのじゃないか。これをやらずして競争に打ち勝つことはできない。幾ら企業合同をしたって、下は全部中小企業で、しかもその中小企業も専門化しておればいいですが、ただ低賃金の中小企業じゃ意味ないのです。これは一体大臣どうお考えですか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今事業についても下請あるいは協力関係ということに触れられました。これは国内において協力関係あるいは下請関係にあるばかりではございません。国際的にもそういうことが指摘できるのです。アメリカの自動車工業だって、ベアリングは日本から買い取っておる。こういう事例もあるわけであります。だから、この産業の見方というものは、今言われるように非常に単純なものじゃないわけです。たとえば今の自動東なら自動車の下請工場、それをごらんになると、下請工場のまた下請もあるわけですね。それほど産業というものは複雑なものだということを一応御認識いただきたいのであります。今までしばしば言われておりますが、一番いい例が造船です。造船を一つの例にとってごらんになれば、日本の造船業界というものは非常に発達したという。しかし、この造船所のある町はその下請産業で成り立っていると言ってもいいわけです。だから、外船の注文がなくなればその町自身がさびれる。産炭地はすでに御存じだが、それと同じ事態が過去の不況の際には起こったわけです。しからばこれが直営になり得るか、直営になり得る部分もございます。しかしまた、それを直営にしないで、専門的な部品メーカーというものも成り立つわけであります。あるいはその組み立て専門である方がより能率的な場合もあり得る。これが日本だけの特殊事情じゃございません。また別な例をとって申せば、家庭工業というものがありますが、家庭工業というもののうちには下請が非常に多いということをやはり無視してはいけないのです。かつてヤンマー・ディゼルなどは、その部品を農家に配付して、そうしてその部品を規格に合わしてもらって、そういうことで非常にヤンマー・ディーゼルが発達したともいわれている。しかし、そういうことをやりますと、ときに大資本家が中小を搾取するというような非難が出たり、低賃金のものはいつまでも低賃金だと言われる。ここに産業の近代化をはかっていかなければならない。だから、できるだけそういうものが簡素化されなければならない、見やすい形にならなければならない。だから、今中小企業の基本法を作れということを言われるが、こういうところにも非常な問題があるわけです。産業あり方というものは、かくも複雑であり、かくもまた非常にむずかしい。しかし、だんだん産業が発達して高度になれば、その関係はもっと見やすくなってくるということだと思います。今日の状態では一体どうしているのか、大企業協力工場に対しての協力体制というものをしいている。そういう方向で料金なりあるいは価格なり、そういうもののめんどうを見てきているということであります。こういう相互依存の産業形態、これはやはり無視はできない。一がいに、これは不都合だ、こうは断じかねることを一つ御了承いただきたいと思います。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 実態を認識してお話しになっているのか、あるいは認識しないでお話しになっているのか、はっきりしないのですけれども、それはどこの国だって部分品の工場はありますよ。しかし、日本のように零細企業によって立っていないのです。そうしてその部分品の工場は、Aというメーカーにも納め、Bというメーカーにも納める。今ベアリングのお話があったが、まあベアリングのような姿です。これを私は言っているわけじゃないのですよ。ただ低賃金だけでやっているという問題——たとえば今お話しになりましたけれども、一般機械でドイツと日本の従業員の比較が出ております。これは一九五六年でちょっと古い統計ですけれども日本においては従業員九十九人以下が五四・七%、ドイツにおいては二二・七%しかいない。そうして千名以上が日本においては一一・三%なのに、ドイツにおいては四二・一%もおるわけです。ですから、部分品を作る工場だって、あるいは外注を受ける工場だって、日本の場合とやり方が違うのですよ。それを指摘しておる。自動車や造船工業がアッセンブル工業であることは知っている。しかし、その程度の問題があるのですね。大体今日本で輸出をしておる品物の労働賃金を見てごらんなさい。日本は低賃金じゃない、こう言っているけれども、輸出産業で伸びている産業の賃金はどれくらい出るか。これは一体企業局では調査ができておるのか、あるいは労働省では調査ができておるのか、お示し願いたい。
  45. 佐橋滋

    佐橋政府委員 業種別の賃金は当然労働省の方で調査ができ上がっていると思いますが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、御容赦願います。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 一九六〇年の経済企画庁経済研究所で発表している経済分析、それによりますと、年間給与十六万円以下の産業が輸出総額の中で占める率が五九・八%ですよ。この統計で見ると、日本の輸出産業と賃金の分布状態が実にわかるわけです。九万九千円未満が一二・六%、十万円から十三万円までが三四・四%、十三万円から十六万円までが一二・八%、十六万円から十九万円までが三%、十九万円から二十二万円が三・七%、二十二万円から二十五万円までが六%、二十五万円から二十八万円が一六・九%、二十八万円以上が一〇・五%です。ですから、要するに低賃金の層が六割ですよ。それから造船とか鉄鋼とかいう二十五万円以上の層で大体二七%くらいまでいっているわけです。その中間はほとんどない。そういうのが日本産業構造であり、輸出産業の輸出額の割合です。ですから、何といっても低賃金の層が一番輸出の源泉になっておる。この実態を知らなければだめですよ。しかも、今お話しのように、造船なんというのは二十八万円以上のところにいっておりますけれども、アッセンブル工場で実態は低賃金の層がいるというのでしょう。ですから、これを厳密に区分けしてみますと、まだまだ低賃金の層がいると思うのです。私は、貿易自由化に対処する日本産業構造の変革の要はまずここにあると思う。これなくして幾ら大企業合同しても意味をなさぬ。この点についてどういうようにお考えですか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 賃金の数字の話は別にいたしまして、今御指摘になります協力工場あるいは下請工場、これが同時に輸出産業においてもそういうものはもちろんあるわけであります。また、単独にいわゆる中小企業の形において輸出産業に従事しておるものがあるわけです。そういうところのいわゆる中小企業の給与というものが、実は問題になるだろうと思います。そういう意味から、中小企業のうち、一部は経営形態の改善によりまして吸収されるものが出てくるわけです。また一部は中小企業そのものとして残るだろう。そういう場合の中小企業対策というものが実は必要だということになるわけであります。だから過去において、最低賃金制度が設けられるとか、あるいは中小企業の従業員に対しても共済制度を作るとか、いろいろ労働条件の改善ということがはかられるのも、中小企業というものを無視できないその状態にあるからであります。だから経済が発達し、中小企業経済において占むる割合が非常に変わってくる、このことが近代産業として指摘されるのだろうと思う。そういうような方向へいくと——これは説明がうまくないと誤解を招くことがございますから気をつけなければなりませんが、ただいま申し上げるような先進工業国というものは、そういう意味の関係がよほど整理されていることだと思います。先ほど言われますように、専業内容を強化するということが必ずしも経営主体自身が変るわけではない、産業構造自身を変えろというのもこういう点にあるわけであります。今中小企業基本法というものを、社会党さんも検討していらっしやるというのだが、下請産業一つとってみても、今言われるように非常に複雑なものなんですね。まして私ども中小企業全体についての対策を立てるということになれば、よほど実情を認識しないと、そこに間違いが起こる、あるいは取り残されるものが起こるわけであります。今多賀谷さんは賃金の面からのお話しでございますが、私は業態規模の面から申し上げたのですが、大体において結論は同じだろうと思います。ここらに日本経済の弱さがあるということだと思います。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 機械工業の下請依存度というのはだんだん拡大されておるわけですね。これは高度成長のために将来景気の不況がきた場合の対処もあるでしょう。あるいは低賃金という面もあるでしょうけれども、この下請工場が部分品を除いて本来親工場でやっておったものを下請に出す、こういう面が非常に多くなってきておる、これは親工場の労働時間数と、いわゆる外注下請という部分品を除いたものの労働時間数を比べてみると、わずか三年間に倍くらいの下請の方が労働時間数が多くなっておる。このことが私は非常な危険だと思うのです。そうしてそれが専用化され規格化されて、中小企業が成長しているならば、私は言いません。ところが、これは必ずしもそういう方向にいっていない。日本の部分品の工場でも、ベアリングのようなものは少ない。ベアリングのようにもう一企業になって各社に出す、あるいはコム会社のような形というものは非常に少ないと思う。依然として低賃金であって、その工場だけの下請部分が非常に多いと思う。これでは私は幾ら下請を育成するといっても専門化にはならない。専門メーカーとして育成することが必要ではないか、こういうように思うのです。私が言わんとするのは、企業合同という前に、まず体質の改善が必要ではないか、このことを申し上げたわけです。  次に外資導入の状況についてお聞かせ願いたいのですが、これはこの前本予算委員会でも質問がありましたが、最近の外資の入り方というは、単に資本の導入だけでなくて、経営参加という形で入ってきておる。しかもその経営参加というものが、ロイアリティの関係で入ってきておる。ロイアリティだけでは満足しないで、生産面にも介入し、その利益を得たいという気持でしょう。しかし、何にしても最近のものは非常に安易にどんどん合弁会社ができつつあるのではないか、合弁会社ラッシュということを言っておる人もありますけれども、私はこれは非常に危険な状態ではないかと思うのです。というのは、今入ってきておる数というものは、あるいは資本の姿というものは、それはドイツやなんかに比べて少ないでしょう。少ないでしょうけれども、将来日本において基幹産業として非常に高度成長をする部門において入ってきておるわけです。ですから今五十対五十という形は、金額にしてはわずかであるけれども、あなたの言われるような所得倍増計画でいくならば、将来は相当の額になる。こういう形になってきておる。これを通産省としては、あるいは大蔵省としてはどういうようにお考えであるかお聞かせ願いたい。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはいろいろ見方があると思います。この戦後の形から見まして、在来のような自国本位というか、自国が扉を締め切ったような形においての産業というものはなくなっていく。だから、戦時中あるいは軍国主義時代には、石油などに外資が入るというようなことは想像だにつかなかった。しかし、外資が一番先に入ってきたのは石油である。こういうところに新しい日本産業の行き方があるわけであります。これがまた日本産業を非常に発達させたとも思います。今多賀谷さんの言っておられるのも、おそらくそういう過去のような形の産業形態をとれというのではなくて、もしも今のように許していると、その産業を通じて植民地化するのではないのか、経済の収益は、あげて外国に取っていかれるのではないか、収奪が行なわれるのではないか、こういう意味の御心配だろうと思います。だからそういう意味から、私どもも外資導入あるいは経営参加というような事柄については、注意はしなければならぬと思います。しかし、過去においての軍国主義時代とはその点では格段の考え方の変化がある、飛躍があること、これは一つ了承していただきたいと思います。今日までの経過を見ますると、比較的に資本参加ということはあるが、経営参加というものは必ずしも非常な大きな部分は占めておりません。ことに為替の自由化ということが行なわれると、貿易自由化にあらずして貿易為替の自由化、その為替の自由化ということに踏み切っていけば、外国との資本の交流は一そう今日より盛んになる。そうして、産業もそういう意味ではよほど国際的な色を帯びてくる。それがまた産業の発展にも役立つものである。かように考えなければならないと思います。ただいま非常に危険があるとおっしゃったことは、どういう意味か、ちょっと私には解しかねますが、おそらく従属国家になるとか、従属経済になる、あるいは植民地経済になる、その心配だろうと思いますが、そういう意味ならば、ただいまも申し上げるように、私はその危険はさらに、さらさらないと言うのは言い過ぎかわかりませんが、今の日本の経営者なり日本経済自身、そんな楽に従属的な立場に置かれるものではない、かように思います。また、そういう意味から、業界もこれはやはり自粛して十分考えております。ただいま利益がこうだからということで、経営権まで参加さすとか、あるいはそれをあげてどうこうということは、まず非常に注意深く処理しておるようであります。また外国の経営者自身が、この国に出てきて新しい事業を起こすということは、これは一体どうなのか、ミシン等においては、為替の自由化が行なわれておる今日、その利益なども向こうへ持っていけるようになっております。やはりミシン工業が日本において盛んになることによって、日本国民がその関係で潤っておることも、これは事実でございますから、そういう意味から見ると、私は大した危険がないように思う。問題は、結局程度の問題だろうと思います。そういう意味の留意は十分いたしていくつもりであります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 過去のようなことをおっしゃいますが、私も過去のような封鎖的な経済を言っておるわけじゃありません。しかし、現実にやはり外資がずいぶん入ってきて、石油はお困りでしょうが。今現実に困って、石油業法を作らなければならぬ、いやそれは反対だなんて言っているのは、これはひもつきての原油を買わざるを得ないから、アラビア石油も一千万トン石油が出るのに、日本資本で作って、日本の円で買える石油日本国内で精油する人がいないというばかげたことになっている。私は、過去において日本石油資本が英米の資本と結びつくということの理由は否定しません。これはむしろ原油を確保するという意味もあったのですから、私はあえてその過去のことをいろいろ非難はいたしませんけれども、今借款をする会社だって、資本は入っていないでも借款をする。それも銀行から借款をするのじゃなくて、石油会社から借款をしておりますから、そのひもつき原油になって、それも八五%から九〇%がひもつき原油で、一〇%から一五%くらいしか余裕がないから、アラビア石油の原油も入れられないし、ソビエト石油も入れようと思っても、なかなか特定の会社しか入らない、こういうことになっておるのです。これは大臣、引用された例が非常に悪かったですが、とにかく石油は現実に非常に困っているということですよ。これは石油化学の面でも同じこと言えるのじゃないか。石油化学は、狭義の石油化学にしても、昭和三十四年の売り上げの二百四十一億が、あなたの方の所得倍増計画によると、七千七百億円になる。それが工業を含めますと、すなわちガス源の転換等を考えますと、一兆六千億円の売り上げが予想されておる。これはほかの産業に比べて飛躍的に増大をする部門ですよ。しかもコンビナートの中心は、石油化学です。その中心に外国資本がどかっと入ってきている。こういう形になるのですよ。ですから私は最近非常に安易に認可をしているのじゃないか。とにかく向こうの技術が入ってくるのは、みな新しい会社を作っておるでしょう。最近の申請の状態または認可状態を見てごらんなさい。それは昭和電工にしても三井石油化学にしても、あるいは日本電気にしても、アルミ一つやろうとしても全部資本参加という形で、株の五〇%ないし三分の一持たれておるという状態ですよ。これは日本がもう少し考えなければならない問題じゃないかと思うのですが、どうなんです。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 このごろ技術を導入するという場合に、私どもとすれば、資本参加はあまり希望しないから、資本参加という形は避けて、技術導入、ロイアリティを払うということで話をまとめる、その基本方針は大体堅持しておる。ところが、最近技術を売るということがなかなか困難になっております。だから今多賀谷さんの言われるように、どうしても経営に参加する、こういう場合にその技術を日本に持ってくることが可能だというやむを得ないものについて認めておるというのが実情でございます。しかし、これは御指摘になりますように、このごろのものは非常に最新式の技術であるために、それらの期間中経営に参加するというような例が起こる、これはどうもやむを得ないと思います。またその石油の問題について、なるほど国産原油あるいはアラビア石油がどうだとか、あるいはソビエト石油がどうだとかいうお話が出ておりますが、これは今日までのところでは、米国資本が入っておる会社でも、それぞれ引き受けておるわけであります。けれども、私ども考えるのに、将来の数量いかんによっては、ここにぶつかりが生ずるのではないか。だからアラビア石油自身も、みずからの製油所を持つようになりましょうし、そういうことには発展していくでございましょうが、ただいまのところは、行政あっせんで引き受けてくれておるわけであります。これは外国系の中でも、比較的アメリカ系など——イギリス系も同様でありますが、政府の行政命令というか、こういう事柄については、まずその国の政府の考え方に敬意を表しておるわけでございますから、いわゆるわがままというか、自由自在の状況ではございませんが、とにかく円滑な経過はたどっておる。そこで非常に危険な状態にさらされておるというものではない。この点は誤解のないように願いたいと思います。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 石油の話は別の機会にしたいと思いましたけれども石油の話をされますから、ついでに言っておきますけれども、それが今は外貨の割当があるから引き受けてくれますよ。ですから、十月一日からどうするのですかという話を初めから聞いておるわけです。大丈夫とおっしゃいますけれども昭和三十七年は、アラビア石油も出る量は少ないのです。しかしだんだん多くなる。それから現在国内産の原油も、あるいはまたスマトラの原油——北スマトラは少ないから、これは今までの会社を作る設立の過程もあります。私は話し合いができると思いますが、何にしてもすでに困った現象が出てきておる。ですから、今後外資導入については、もう少し基準をはっきりして、そうして今五〇%の場合はかなりいろいろ審議をしておるようですが、四九%以下というのは安易に認可をしておるようですね。ですから、こういった面も十分注意をしてやる必要があるのではないか。第一ロイアリティだって必要であるかどうか、はっきりしないものだって将来起こるかもしれません。ですから、はたしてこういう技術が確実であるかどうか、またそのロイアルティだけを払っていく方式がどうしてもとれないのかどうか、これらも十分検討する必要がある。なぜかというと、その産業は今は小さい産業であるけれども、将来は拡大をする成長産業である、こういうことを銘記してもらいたいと思う。かように考えるわけです。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお話はよく肝に銘じて忘れないようにしたいと思います。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 それから通産大臣が、先般経団連の欧州共同市場問題特別委員会で、外国の例を引かれて、フランスが年間百五十億フランを産業転換に支出し、ケネディ大統領も、一般教書で、産業転換への助成、補助を強調した、このことは十分わが国としても考えなければならない、こうおっしゃっておるわけですが、産業転換法か、そういうものを考えられておるのですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのところは、この資金の確保と言いますか、そういうものが必要だ、また業界自身にも、このおくれを取り返すためにかけ足でやると言いますか、そういう構想を指示しておる、こういうことでございます。これは必要になれば、当然そういう方向に進まなければなりません。しかし、日本経済は、どちらかと言いますと、まだそういう点には感覚がにぶかったのではないか。実は私、その話をしながら、自分でなにしておるわけではございませんが、今までのEECの見方は、関税の面は非常に強くみなにぴんときておるのです。関税同盟として活躍してきた、こういう意味から、関税ということには非常にぴんときておりますが、やはり関税もさることながら、EECが持つ経済力というか、新しい改革された前進をした経済力、生産性を無視してはいけないのだ、それにおくれをとるなということを実は経団連で強く話をしたつもりでございますし、その点が私の話のみそみたいなもので、ここへ特に重点を置いておるのでございます。だから将来、日本経済がさらに転換なり国際経済に対応していくためにその変革を来たす、その必要な資金は自分が確保すべきだ、過去において自由化に対処するための資金を確保したと同様の考え方、あるいはそれよりも強い考え方でこれは政府が支援すべきものだ、かように実は思っておるわけであります。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 確かにケネディ大統領も、被害を受ける産業が出たときには転業を促進さすための金融、技術士の調整を行なうということを書いております。しかし、日本の場合には、産業転換というのはなかなか困難であるということです。それは欧州のような完全雇用でないということです。石炭だって、あれだけ大臣が骨を折っておられるけれども、うまくいかない。一産業だってああいう状態ですから、私は産業転換を言うよりも前にやはりする仕事があるのじゃないか、その産業を一体どうして保護してやるか、このことは一体どういうようにお考えですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石炭の例をとってみますと、非常に規模は小さいが、目のつけどころはやはり産炭地域振興事業団というものがそういう意味のものだと思うのです。これは政府が命令してどうこうするものじゃなくて、財界協力がない限り、また自発的な計画がない限り、政府としてはなかなか進めにくいのでありますけれども、おそらく日本産業自身が、今の経営者自身が、過去の設備等をスクラップし、新しいものを考えていくということはあるだろうと思います。現に肥料の作り方にしても、アンモニアガスよりも新しいものを選択する、ここに新しい技術があり産業の改革があります。あるいは繊維にしても、純綿、純毛から化繊と変わっていき、またその化繊も内容的に変わってきている。やはり在来の従業員を擁し、しかも内容的には自然にその産業が変わっていくということでありまして、こういうことを私ども指導をし、これは見込みが非常に困難なことではありますが、それをやらなければ産業は立ち行かない、こういうように思いますので、必ずしも困難だと考えることもないのじゃないか。転換が繊維から鉄に変わるとか、あるいは鉄が軽金属に変わるとか、こういう変わり方はいたしませんけれども内容的にはどんどん変わってきておる。こういうことも必要な事柄でございます。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 最後に私は具体的に、九〇%の自由化が行なわれて、あとの一〇%を乗用車であるとか、あるいは重電機であるとか——重電機も今四十万キロワットをアメリカから買うのだとか、いやそれは困るのだとか言っておりますが、これも技術的な面よりも、延べ払いの支払い方法という問題があるわけでしょう。電力会社というのは政府機関じゃありませんけれども、料金の問題だって、開発銀行の投資の問題だって、かなり政府機関に準ずるぐらいの援助があるわけですから、政府としては、これを一体どういうようにされるつもりであるのかお聞かせ願いたい。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一〇%残っておりますものは、いわゆる国際競争力が非常に弱い、こういう品種になるわけであります。特に今あげられました自動車、あるいは重電機だとかいうものを言われますが、私ども見まして、残るものはやはり農産物が非常に多いだろう。それで、そういうものになりますと、あとそれをいつ自由化するかということはなかなか言いかねる。これは関税同盟をやったEEC内部でも、各国において、ほかのことはうまく話し合いがついているが、農産物資については非常な議論があるということで、各国とも今日まですったもんだしているという状況でございますから、日本の場合においてはなおさらのことだと思います。これは慎重にしなければならない。  それから自動車その他の機械については、物によりましては順次でき上がるものもあります。もうすでに電子計算機などは中型までは国内でできる、大型のものが、まだできない。また今の重電機、大きな出力の発電機にいたしましても、二十万台ならばもう日本でできる、来年くらいになれば三十万台くらいは大丈夫だ、こういうことになりますから、新しいものもどんどん開発されます。そういう場合に一つ問題になりますのは、国内で十分まかなえるが金融の措置が国内ではむずかしいということがあるのですね。言いかえますならば、外国へ注文すれば延べ払いで支払いができるが、国内に注文すると、この支払いが非常に短期になる、外国の場合よりも支払い条件が悪い。それで経営者から見れば、同じ買うならば支払い条件の楽な外国のものでいきたい、そういうことになる。このことは同時に国内産業を育成強化するという意味から申しても、あるいは外貨の節約という点から申してもまずいと思う。そこで大蔵省にも特に話をしまして、特別なものについては国内の支払いを緩和することを一つ考えろ、外国並みとは言わないが、もう少し緩和の方法があるのじゃないかということで、いろいろ交渉し、またそういう意味の予算が、今回はわずかではございますが、ついておる、こういうことでございます。今後世話をする場合に、やはり技術だけでなく、金融まで世話をするという考えでないと、国内産業に新しいものを育成していくことは非常に困難だ、かように実は考えます。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷分科員 重電機の話はわかりましたが、乗用車の問題は、一体自信があるわけですか。私はさっき下請あるいは部分品工場から体質改善の話をしたわけです。最近の日本の乗用車工場の進出を見てみますと、とにかく二輪車をやったところも三輪車をやったところもみな乗用車、それから造船をやっているようなところも乗用車と、大体外国でも車種がだんだん少なくなっておるのに、そういう先進諸国の実情を知っていながら、まあ自由経済ですからなかなかむずかしいところですけれども、しかし、見る見る脱落をするだろうとわれわれしろうとでも考えられるようなメーカーが乗用車に乗り出しておる。これは一体どういうような行政措置をとられるつもりか。ほんとうに貿易自由化ができ、昭和四十五年に百万台生産をして四十万台輸出をするということが可能であるかどうか、一つ自信のほどを伺いたい。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 自動車は、もうすでにトラックであるとかジープ等、またディーゼルにしても、外国へどんどん出ております。問題は乗用車です。乗用車が自由化に備えて一体どういうことか。なかなか自動車業界は強気でありまして、三十八年あるいは三十九年ぐらいになれば自由化してもいいというところもございます。しかし、私どもまだそこまで実は自信がない。これがやはり外国との交渉の一つになる。あるいは数量的に制限の話し合いが可能かどうか、そういうような問題として、自由化する場合にどういう処置をとるか、相手方と十分相談してみたいと思います。そういうことを考えて参りますと、ことにまた最近メーカー自身の技術も進み、コストもよほど下がっております。これは余談ですが、最近物価が高くなる高くなると言うが、小売価格でも自動車に関する限り五割以下になっておる、半分以下になっておるというように、非常に安くなっております。またもう一つは、道路と自動車の関係から、都心においての批判も非常に厳しくなっておる。大型車の使用というのはそういう意味で非常に制限されるようにもなる。こういうことなど考えてみますると、いわゆる国産車は、もうしばらくたてばおそらく競争可能な状況ではないかと、私は相当強気に思っておるわけであります。ただ今の中型がさらに大型にまでおそらくなるでございましょうが、そういう場合に乗用車自身が輸出される、その段階はいましばらくはちょっとむずかしいかもしれない、かように実は思います。
  62. 赤澤正道

    赤澤主査 加藤清二君。
  63. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、国会正常化、特に予算を早期に通過させることにつきまして協力をする意味において、腹は減ってもひもじゅうないという気持で質問をいたしまするから、一つ大臣も該博な知識をしぼって、要点だけをお答えいただきますようお願いいたします。  最初に、さきにこの委員会におきまする同僚芳賀委員の質問に対する答弁は不十分で、これに対して疑義が残っておるわけでございます。従って、きょうその資料が通商局の方から提出をされましたので、それについてまずお尋ねをしたいと存じます。すなわち、特定物資、それから準特定物資の収支状況また差益金の行方等々でございまするが、資料によりまして明らかになりましたところは、省いていきます。  第一、雑豆の差益金、これは資料に出ました通り相当の金額がございまするが、これを農業の同種耕作者に奨励金として交付する意思がございますか、ございませんか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 意思は、まことに残念ながらございません。
  65. 加藤清二

    加藤(清)分科員 農民は飢えてもやむを得ないとおっしゃるわけでございますね。  次に自動車の関係でございまするが、その前にちょっと聞いておかなければならぬことがございます。それは特定物資、準特定物資の銘柄を一つここであげて下さい。
  66. 山本重信

    ○山本説明員 特定物資臨時措置法によりまして指定されております品目は、ただいま三品目でございます。すなわちバナナ、パイナップル・カン詰及びすじこ、この三品目でございます。腕時計は昨年の十月、自由化と同時に特定物資から落とされております。  次に準特定物資と申しますか、ややそれに似た扱いをいたしております品目は雑豆、それから乗用車、そのほか若干の雑品がございます。万年筆、シャープペンシル、革製はきもの——これはつまり靴でございます。安全かみそりの刃及びココア・パウダー、これらの雑品目を前回割当をいたしますときには、雑豆に似た方法をいたしました。しかし、今後これを割当をいたしますときにどういう取り扱いをするかにつきましては、そのときに検討いたしたいと考えております。
  67. 加藤清二

    加藤(清)分科員 準特定物資の中の最たるものが輸入自動車だと存じますが、これの差益金の行方でございますけれども、これを一つ明確に御答弁願いたい。
  68. 山本重信

    ○山本説明員 一般用外車の輸入割当は先般千二百六十七台分、金額にいたしまして二百二十八万ドルの割当をいたしました。円換算をいたしますと、ちょうど八億円に相当いたします。その割当の対象となりました外車を入札によりまして、処分いたしました結果、出ました差益が総計八億四千百九十四万円でございまして、これは全部ジェトロに特別勘定を起こして、明確な処理をさしております。そのうち日本産業巡航見本市委員会に見本市船建造のために必要な経費を通産省の指示によって支払いをさせておりまして、ただいままでに二回支払いをいたしております。すなわち第一回に四億一千二百五十万円、第二回同じく四億一千二百五十万円、合計八億二千五百万円が支払われております。  なお御参考までに、見本市船の建造に要します総経費は二十二億円でございまして、そのうちこの外車処分による差益から支出する予定になっておりますものが十六億五千万円でございます。ただいまジェトロに第一回の差益八億四千万円のうちの交付残が千三百万円ございますが、これは近く行なわれます次の入札による差益と合わせまして、見本市委員会の方に交付する予定になっております。
  69. 加藤清二

    加藤(清)分科員 準特定物資のうちの雑豆の差益は国庫へ納付される、次に自動車の入札差益金は見本市船建造の方に回される。こうなりますると、一体ジェトロはその仕事だけを承って、労力奉仕をしておる、こういう勘定でございますか、これを大臣に承りたい。そういうことがジェトロの任務であるか、また一体ジェトロの法規で許された仕事のどの項目によって、第何条によってそういうことをしておられるのか、こういうことがはたしてジェトロの仕事として適当であるのかないのか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ジェトロの仕事としては本筋の仕事とは思いません。ただし、ジェトロは関連する事業というものはできるから、関連する事業としてこれをやっておるということでございます。なぜこれをジェトロにやらしたか、そうしてまたジェトロは一切の手数料をとらないのか、こういうことですが、ジェトロがやることが一番公正を期することができる、こういうことでジェトロをしてやらしておるわけであります。その他は最初に申し上げた通りにジェトロ自身で……。
  71. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それではジェトロの法規の業務内容のうちの第何条によってそういうことをやっているのかということを、これは大臣に聞かぬといけない、これは大臣がやらしているのですから。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第三章業務、第二十一条第一項の八に、「前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務」、その次の第二項に、「振興会は、前項第八号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣認可を受けなければならない。」それによって処理しております。
  73. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうすると、ジェトロとしましては、そのつど大臣にお伺いを立ててやっている、こういうことでございますか。お伺いを立ててまでもやるということになると、これはジェトロの意思であるのかあるいは通産大臣の方の、先ほどおっしゃいましたあそこにやらせると最も都合がいいからという、通産大臣の御都合主義でおやりになっているのか、その点をはっきりさして下さい。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 過去のことを私はよく存じませんが、おそらく一番最初はちっとももうからないことですから、ジェトロもいやがっただろうと思いますが、見本市船との関係があるし、君のところでやるのが一番公正を期し得る、こういうことで話ができたのだと思います。これは私の想像でありますが、多分そうだと思います。それからそのつど認可を受ける、その通りであります。
  75. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは今の山本次長のお話によりますというと、見本市船の価格は二十二億程度と相なっておるようであります。しかし支払われた金額は八億程度のようでございまするが、あと一体見本市船の建造費でございまするが、やはりこのような業務を再三継続させて、その差益で見本船を作ろうとしていらっしゃるのか、それとも見本市船が必要であるから、輸出奨励策として別途会計から捻出するという腹がございまするのか、その点大臣いかがでございますか。私の考え方からすれば、そんなまどろっこいことをせずに、あなたの腕でもって輸出振興費として一挙に獲得した方がすっきりするではないか、かように思うわけです。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは一回と二回で十六億五千万円、それを大体この自動車の差益で出す。残りの分は民間の出資ということで二十二億を調達することになるわけでございます。
  77. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の考え方からすれば、あなたは大蔵大臣の卒業生であると同時に、何人といえどもあなたは大物だ、かように思っているわけだ。従って輸出振興が今日の至上命令であるこの時期に及んで、それに必要な見本市船の資金を、そういうみみっちいあり方で出す、そんなことではなくして、一挙にこれを予算の中から取り出す、しかもその輸出振興に関する限りは通産大臣が自由になる金をでんと持っていて、そうして輸出振興に、いわゆる池田さんの大所高所からながめていて、あそこが足りない、ここが少ないという場合に、それこそ融通無碍に使えるような措置をすることが、あなたの大物の実力を一そう発揮するゆえんではないか。私はあなたを信頼するがゆえに申し上げる。あなたがそういう金を持っておったからといって決して悪事に使われることはないと思いまするから言うのです。なぜそういうことをおやりにならないのですか。なぜジェトロなんかにそんな仕事をやらして、国民から疑いをかけられるようなことを、あなたはしなければならないのですか、あなたは小者じゃないのですから。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お話のように輸出振興の金を持っていて、それを自由に使えて、そうしてどんどん伸びていけば非常にけっこうだと思います。しかし通産大臣はそうはできないのです。加藤さんは了承して下さるようですが、そうはできない。この見本市船の計画は、御承知のように継続でやっておりますので、昨年やったことをまた引き継いでことしもやる。ことしで完成するということでございます。そういう今までのいきさつもございますので、御了承いただきたいと思います。
  79. 赤澤正道

    赤澤主査 加藤君、あなたが待ちに待たれた関税局長がちゃんと参っておりますからどうぞ。
  80. 加藤清二

    加藤(清)分科員 特定物資について芳賀委員の質問の跡始末をいたします。この特定物資輸入臨時措置法なるものは、この六月に期限切れとなりますね。この跡始末を一体どうなさるのでございましょうか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 関税を上げて処理することにいたします。
  82. 加藤清二

    加藤(清)分科員 関税局長、あなたの方はこれに対してどうなさいますか。
  83. 稻益繁

    ○稻益政府委員 私どもの方でも、特定物資輸入臨時措置法の廃止に伴いまして、出ておりました差益は、ただいま国会に提案いたしておりますその方で、できるだけ吸収するということで新しい関税率を設定いたしております。
  84. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まず第一番に、それじゃこの法律が施行されて六年間に特定物資の関税収益は一体どのくらいあったのですか。次にこの差益を、今後法律がなくなるとおっしゃいましたね。あなた関税に移行するとおっしゃいましたね。そうなりますると、今までの差益分と同じ額を関税に移行していくのか、ないしは今までの差益金とは違った形において、違った数量において関税へ移されようとなさるのか、その点、大臣でも関税局長でも、いずれでもけっこうです。
  85. 稻益繁

    ○稻益政府委員 非常に厳格に申し上げますと、必ずしも従来の差益を関税に吸収するということではございません。たとえて申し上げますと、本来この差益の性質は、輸入に割当制がありまして、輸入制限の結果起こってくる希少価値から起こる利益であるという場合が普通でございます。一方関税の場合は、御承知のように国内産業の国際的な競争力、これを十分国際比価で勘案いたしまして、そして需要者なり消費者なりの立場を考えた上で、必要最低限の関税の設定を行なうという建前でやって参っておるわけでございます。従いまして、今回この特定物資輸入臨時措置法がたとえば廃止になるといたしました場合に、ただそれが廃止になるというだけでありますれば、その差益をどうするかという問題が起こるわけでありますが、一方で、昨年行ないましたように、時計の場合のごとく自由化を行なうということになりますと、先ほど申し上げましたような輸入制限から参っております希少価値に基づく利益というものは、そういう面で多分に解消するわけであります。従いまして、私どもとしましてはそういう自由化が行なわれないようなものにつきまして、できるだけ差益をこの際は関税に吸収する。自由化が行なわれるようなものにつきましては、新しい立場から国内産業の保護に必要な最小限度の関税を考えよう、かように措置をいたした次第であります。
  86. 加藤清二

    加藤(清)分科員 さっきの質問の、差益金は六年間に何ほどあって、何に使ったか、どう始末したかという問題……。
  87. 山本重信

    ○山本説明員 特定物資輸入臨時措置法ができましてから今日まで、毎年相当額の収入があったわけでございます。昭和三十六年度は合計で四十一億円でございます。それから三士五年度が三十六億円でございます。そのうちからそれぞれ三百万円程度の事務取り扱い費を差し引きまして、残りは全額産業投資特別会計へ繰り入れております。
  88. 加藤清二

    加藤(清)分科員 今後自由化された場合の問題でございます。つまりこの特定物資法が廃止されて、なお自由化という問題に直面するわけであります。従って二重の問題がここへ提起されてくるわけでございます。これについて一言申し上げておきたいことは、関税の引き上げで行きますることは、やがてそれと同種類の物資を輸出する場合に非常に難渋をする。内地のコストが引き上げられるというよりも、販売価格が引き上げられて輸出が難渋する、出血輸出だ、こういう言葉がここから出てくるようになる。このことにかんがみまして、諸外国では同じく関税をかけるにしても、オール輸入の場合にはたくさんの関税もかけましょう。しかしながら、同種類のものを一部輸出をするという物件に関する関税は低いのが常でございます。それを誤って去年行なわれました関税の場合のように、繊維の六割なんぼの税金を引っかけていくということをやりますと、池田さんが千三百円でけっこうでございます、まことにけっこうな相場でございますと参議院でお答えになっている、その足元から三品市場がストップ高になる。こういうことに相なりますので、これは物価が高くなって困る困ると言われているやさきに特に留意していただきたい問題でございますので、要望を申し上げつつ大臣の御意見を承りたいのでございます。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 要望で済むかと思ったら、答弁を求められましたが、お説の通りでございます。ただいまのバナナにいたしましても、バナナは大へん差益が上がっておりますが、これを関税でみんな吸収する、こういうわけに参りません。関税で吸収すれば、おそらくバナナは一〇〇%以上の税をかけなければならぬ。今回はバナナについては五割です。五〇%の関税をかける。そうしますと、なお利益があるじゃないかということですが、これは自由化されるまでの間はもちろん外貨の割当がございますから、外貨割当で数量をふやすことによって安くしていく、こういう措置をとりたいと思っております。パイナップルの場合は五五%ということでございますが、これならば利益はあまりなさそうでございますから、これでいいのかと思います。ただ、パイナップルの場合は、沖縄について特別な考慮をしているということであります。お説の通りであります。
  90. 赤澤正道

    赤澤主査 加藤君、兒玉君を午後に回しますよ。
  91. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そこでもう一つ問題になる点がございます。それは、本年の六月三日までは、この法律が生きているわけなんですね。ところがそれ以後はこれは死ぬわけです。その場合に、これがほかの問題でございますとよろしゅうございますが、輸入の問題は、これは伸びていくわけなんです。輸入業務というものは伸びていくわけなんです。そこで、六月五日以後は効力を失効してしまうということになりますと、ここに問題が起きて参ります。従って、その経過措置についてどのように考慮していらっしゃいますか。
  92. 山本重信

    ○山本説明員 特定物資輸入臨時措置法が期限が切れました際に、それと同時に関税が上がるように考えておるわけでございますが、ただいまの御質問の趣旨は、おそらくその経過措置をどういうふうにするかという御質問だと思います。ただいま私ども考えておりますのは、この特定物資の法律が有効な間に割当を受けて、その手続によって納付金を納めたものにつきましては、ある猶予期間を特に認めまして、関税が上がりましても、通関をする際に前の関税率が適用できるようにいたしたい、このように考えております。
  93. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いいことをおっしゃった。その通りです。そうしないと二重課税という問題が起きてきます。すでに二重課税が起きております。それじゃ、過去に起きたものはそういう経過措置はしなかった、今後のものだけはする、こういうことになりますと、関税平等の原則に反することになりますが、そういう件があったら大臣どうします。
  94. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一応局長に答弁させまして、それからあとで私が申し上げます。
  95. 稻益繁

    ○稻益政府委員 実はただいま通産省の次長から説明がありましたように、今回の場合はそういう特例法がなくなりまして、差益を納めて、しかも新しい関税率が六月五日から施行されるということになりますと、差益を徴収されたしに高い関税率がかかるということになりますので、これを防ぐ意味におきまして、十二月三十一日までは従前の例による、つまり低い関税率を適用するということを、新しく提案いたしております定率法改正案の付則に書いております。
  96. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、新しく今後六月五百以降はそのような経過措置を行なう、しかしすでに先ほどお話がございましたように、途中におきまして特定物資からはずされたものがございます。それはたとえば毛製品の輸入がしかりでございます。ウォッチがしかりでございます。その際は一体どういうことであったかというと、泣く泣く二重課税を払っているという事実があるのでございます。一体これはどうしますか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回は過去の苦い経験から、御迷惑をかけないようにいたしておりますので、今後は問題は起こらないと思います。過去の問題については、おそらく当時は相当前に、そういう事態が起こらないように業界指導したということでありますので、非常に都合よくいっておる業者もおりますが、またまずかった業者もいるということでございまして、その処置はただいま大蔵省においていろいろ折衝しておることだろうと思います。もう過去のことで、何年前になりますか、大体済んでいることではないかと、私かように考えております。
  98. 加藤清二

    加藤(清)分科員 済んでおらないのでございます。しかもこの件につきましては、おくれたおくれたと申しましても、四月一日から関税実施の際に、三月三十一日までは法律が生きております。これは先金を取られているわけです。差益金というのは先金でございます。担保も取られているわけでございます。これが三十一日に間に合わなくて、四月一日の午前二時に飛行機が着いたおかげでございます。スイスからここまで参ります間に、二時間や三時間の相違は、これは飛行機のことでございますから——内地の汽車でさえもきょうこのごろはしょっちゅう狂うのでございます。ましていわんや飛行機が二時間や三時間おくれたぐらいのことで、法律は法律であるというのでぴしゃりぴしゃりとやられますると、問題が起きてくるわけでございます。この場合にアメリカにおきましてはどうなっているか、日本の輸出品に対しまして関税を期日、数量によってかけていることはあなた御存じの通りでございまするが、この際はアメリカ国内に届けたらいいことになっている。スイスの飛行機は二時間前にちゃんと日本の領土の中に入っている。アメリカ流のお好きなあなたでございますから、その流儀でいったらこれは完全に免税措置になるはずです。にもかかわらずこれが二重課税されておる。これは一体今日中小企業は金詰まりで困っているというやさきにこういう金まで、二重課税で取ってよろしゅうございますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の実情をそれだけ伺えば、しごく同情の念やみがたいものがあるようでございますが、私、これは実際にどういう扱い方をしておりますか、実務担当者とその業界との話し合いで、こういう事柄は片づいていくのではないか、かように思いますが、大蔵事務当局、どういう処置をしたか、一つその答弁を聞かしていただきたいと思います。私は何々でなければならないということは、なかなか言いにくい事情もあるのではないかと思います。しかしお話だけ聞けば、私は非常に同情する方であります。
  100. 加藤清二

    加藤(清)分科員 しかも特定物資輸入の法律によれば、その除外例というものは第二条から、三条にかけてあげられておりますが、もう一つ大事なことは、その附則の中にこう書かれておるのです。「この法律は、施行の日から六年を経過した日に、その効力を失う。ただし、その日前に特定物資の輸入について外貨資金の割当を受けた者については、この法律は、その日以後も、」つまり効力を失った以後においても「なおその効力を有する。」と書いてある。これはどうなんです。二時間違っただけで、それでも二重課税をするのですか。
  101. 稻益繁

    ○稻益政府委員 非常に具体的な問題でありますので、私からお答え申し上げます。  御指摘の点は時計の問題だと思います。時計につきましては、御承知のように十月一日から自由化が行なわれております。一方関税率の引き上げは、法律の施行は昨年の四月一日であります。この実施時期につきましては——公布が四月一日であります。この実施時期につきましては法律の中に明定してございまして、自由化のときに合わせるという趣旨におきまして、十月一日から施行することになっているわけでございます。従いまして、非常に詭弁だと、あるいは仰せになるかもしれませんが、私どもといたしましては、四月一日に公布いたしまして、皆さんに、こういうふうに税率が上がるということは、十月一日から起算いたしますると、半年前に一般に公にしているということになるわけであります。しかる後に通産省で外貨割当がありまして、その際にも御指摘のような問題が起こりませんように、九月三十日までに、つまりそういう差益の納付をいたしたものは、入着をして通関を済ますようにということを十分に説明がいたしてあるわけであります。たまたま非常にお気の毒だとは存ずるのでありますが、十月一日以降にそれがおくれて到着したものがあるということでございまして、非常にお気の毒だとは存ずるのでありますが、現行法ではいかんともいたしがたい。と申しますのは、関税は関税法の五条で、申告の日に有効な法令に従うということになっているわけであります。従いまして、申告が十月一日以降でありますと、新しい法律に従わざるを得ないということでございます。
  102. 加藤清二

    加藤(清)分科員 だからこういう法律については、経過措置を事前にはっきりしておいてもらいたいと、今申し上げているのです。ところが今あなたのおっしゃることをまともに受けて聞いておりますと、ちっとも手落ちはないように聞こえます。ところがそれじゃ私も開き直らなければならぬということになりますが、それじゃあなたの方は、たとえば貿易自由化とそろえて関税を変えなさるかというと、そうじゃない、承りますが、毛製品の輸入の自由化は一体いつです。ところがこれに対して関税のそれの準備引き上げの時期は、一年半も前からやっていらっしゃるじゃございませんか。だから私は去年の予算委員会において、あるいは大蔵の特別関税の審議において、再三このことを申し上げたはずなんです。にもかかわらず、そういう矛盾をあえて行ないなさった、そうでしょう、どうなんです。
  103. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回の法律では、今御指摘のございますように、経過規定が入りますので、過去のようなことはないと思います。そのときにそういう経過規定が入っておれば、ただいまのような問題はなかったと思いますので、どうか御了承をいただきたいと存じます。
  104. 加藤清二

    加藤(清)分科員 貿易自由化もされない一年も前から、関税だけを引き上げちゃかなわぬ。だからイギリスの大使館からじゃんじゃん文句をつけられ、クレームをつけられて、そしてその分だけは外貨の割当をふやすということにおいて納得させたのだけれども、期日の面においてはどうかというたら、貿易自由化になる一年半も前から、ずどんと上げてしまった、それは間違いであるというたら、それは稻益部長——当時は部長だった、稻益部長は、もっともだというので、翌日もう一度審議したが、その日は今井通商局長と松村繊維局長が出てきて、ほかの委員を軽くひねって、そしてもともと通りにしていった。私はあいにくそのときに、小林橘川市長の葬式に行かなければならぬから出て行った。そのとき軽くひねって持っていった。その結果、経過措置も行なわずにこういうことをするものだから、こういう問題ができる。今時計をおっしゃいましたが、糸ヘンの問題は一体どういたします。あだやおろそかの問題じゃないのです。あなたたちはここでうまくきょう答弁を切り抜けていったら、それでよかよかだ、ところが、その犠牲を背負う業界は一体どうするのです。金に困っているやさきなんです。
  105. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ちょっと補足しますが、私、もっぱら時計の件だと思って申し上げたのですが、毛織物もそうでございますが、その他一切の物資につきまして、関税率の設定にあたりましては、原則は自由化を前提に、自由化の時期と合わせて新しい関税率を適用するということで一応貫いております。ただ物によりましては、完全な自由化でありません場合でも、相当量をふやすというような場合に、新しい関税率を適用するというようなことをやっておる場合もございます。非常に例外でございますが、そういうことがございます。
  106. 加藤清二

    加藤(清)分科員 時間がほしゅうございますし、大臣が善処するという答弁でございますから、これは泣く泣く引き下がりまするが、私はあと二、三点質問して終わります。  そこで次に問題は、関税を引き上げて自由化に備えると稻益局長はおっしゃられますが、先般私が予算委員会で質問いたしましたように、EEC諸国は関税を引き下げるという方向に行っております。アメリカまたこれに近づくにあたって八〇%、五〇%という関税引き下げを具体策としてケネディさんが、打ち出しておられます。日本は日米友好通商航海条約によって最恵国待遇ということに相なっているわけでございます。さすれば、日本はおのずから関税を引き上げざるを得ぬ結果に相なってくるわけでございます。この関税引き下げという保護措置はまた数年先と申しましょうか、近い将来においては変えざるを得ぬことになってくるわけでございます。こういう問題についいて、大臣は一体どうお考えになるかこの点をはっきり一つ……。
  107. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 実は、今までたびたび申し上げておりますように、EECやアメリカなどは非常に自由化の進んだ国であります。日本は今ようやく自由化をやろう、そういう際でございますので、国内産業も保護せざるを得ない。従って関税のあり方も、これはもう経済の特殊性からそこに相違がある、かように御了承いただきたいと思います。
  108. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、この問題こそ日本経済と申しましょうか、日本政府が正面から取っ組んで今から研究しておかなければならない重大な問題だと思うのです。さればこそ、今私は要望として申し上げておくことですが、ぜひこれは審議会なりあるいは調査会なり、何でもよろしいが、オール知能を動員して対策を練っていただきたい、かように思うわけでございます。  次に、特定物資輸入臨時措置法の除外例がございますが、これが問題の種です。この除外例について私はお尋ねしなければならぬのですが、外務省の方がいらっしゃるようですから伺いますが、この除外例をどう扱っておられますか。つまり日本人がもうかるものを輸入するときは、日本人に対しては特別課税が課せられるわけです。ところがここに除外例がございまして、臨時措置法施行令の第二条に、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国軍隊の用に供するため輸入する特定物資であってその特定物資が」と、ずっと書いて、除外例になっているのです。これらのものについては「この限りでない。」全部ただ入ってくるのです。税金なしでそれがやみに流れるのです。このやみが市場を混乱させておる。こういう問題を今度は関税だけでやるとおっしゃるから、だから聞かざるを得ないのです。これをどうしますか。
  109. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。本件につきましては、この国内法ができた理由としましては、日本と合衆国との間の国際条約、さらに一般的な約定に基づいて、それに即応してこういう規定ができたのではなかろうかと思います。
  110. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それはその通りですよ。これは別な法律によってできたのですよ。しかしあなたがそういう答弁で事は足れりとおっしゃるならば、私は次に発展しなければならぬ。たとえば、ここに日米友好通商航海条約というのがございます。これは国際法でございます。この国際法によって日本から繊維をアメリカへ輸出しようといたしますると、南アラバマ州及びサウス・カロライナ州ではワン・ダラーブラ・ウスの販売は禁止される。アメリカの労働組合が日本の毛製品を禁止する運動をやります。そのときに、この条約違反ではないかと言いますると、何と言うか、州法が優先いたしまするので、やむを得ません。これが過去の政府の答弁であった。あなたの答弁でいきますると、日本の法律はこれに優先することができないけれども、アメリカの州法は、この国際法に優先することができる。こういう答弁だ。そうなりますると、アメリカの自由はあるけれども日本の自由はないということになる。ここに問題の違憲訴訟ということが起きてくるわけだ。現に今日スティッツさんが日本を代表して、アメリカの連邦政府で違憲訴訟を行なっておる。こういう問題についてあなたはどうします。向こうが州法を優先させて、こちらは国内法はこのあとにつくなんというそんなばかなことで、これが互恵平等と言えますか。
  111. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。国際約定と国内法の関係は、日本建前としては、もちろん国際約定が優先いたします。それから国際法的な観点から見ても、当然国際約定が優先して、国内法はこれに従属するものと考えます。  そこで今御指摘のアメリカのサウス・カロライナ州の事件につきましては、アメリカの国内法上は、これは最終的には、最高裁判所がケース・バイ・ケースに判決を下している問題だと私は思っております。そしてわれわれの接触します政府側としましては、あくまで国際法が優先するという立場に立ち、これをそういう方向に解釈して行動していると思いますけれども、ケース・バイ・ケースの問題をとことんまで争いますれば、やはり最高裁判所まで持っていかなければならぬことだと思います。
  112. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは同じ問題について、この法律がなくなる、そして関税でいくんだとおっしゃる稻益さんのこの件に対する見解と、それから過去においてこういう件が起きたときに、通産省の御答弁としては、常に州法が優先する、こういう御答弁でございました。はたして州法が優先するとするならば、日本国内法も優先しなければならないはずです。将来の輸出の場合の問題と輸入の場合の問題の、これはレールでございますし、ルールでございますから、通産大臣のこれに対する確たる見解も承りたい。
  113. 稻益繁

    ○稻益政府委員 日本からの輸出の問題でございますか。
  114. 加藤清二

    加藤(清)分科員 輸入する場合に、この法律があったときでもなおゼロなんだ。アメリカから輸入される特定物資については、ゼロでしょう、除外例が作ってあるのだから。  説明しましょう。通産局はようわかっておる問題です。こういうことなんです。同じバナナを輸入するのでも、あるいはウォッチを輸入するのでも、米軍の用に供する、こう言うとこの法律は適用ができなかったのです。そうでしょう。ところが今度はこの法律がなくなる。そのときにやはり、ゼロでいく、こういうことなんでしょう。別にこれに対する立法措置をなさいますかということなんです。
  115. 稻益繁

    ○稻益政府委員 こういうことだと存じます。たとえば今御指摘のような特定物資を米軍の用に供するという意味は、俗な言葉でいえば、PXに納めるというような場合には、そういう差益をとらないということですね。従いまして、そういう米軍の用に供する場合には、関税についての臨時特例法で別途の規定をいたしております。
  116. 加藤清二

    加藤(清)分科員 関税をとらないでしょう。だから特別措置ですね。それはどうかといったらMSA協定、ここに書かれてある通り、あるいはこの友好通商航海条約、安全保障条約、この三つの法律によってとらないということですね。そうすると国内においてはこの法律の方が優先する。それに対してこれに優先するものをあなたの方では作る用意がないということでしょう。
  117. 中山賀博

    ○中山説明員 私の言葉葉がちょっと不十分だったと思いますので、ちょっと説明させていただきます。  今アメリカの方でも、国内法が優先するということははっきり言っていないと思うのです。一般的に日本も向こう側も、あくまで国際法が優先するのだ、そういう建前日本としては従来から主張しております。
  118. 加藤清二

    加藤(清)分科員 しからば違憲訴訟が成立しますね。国内法よりも国際法が優先するという、それはあなたの国際法学の原論的立場だ。その原論が正しいということであるならば、日本から毛製品、綿製品をアメリカに輸出した場合において、なぜそんな数量制限やら関税制限やら受けなければならないかというと、それは、連邦政府が結んだこういう法律では確かに互恵平等になっておりますけれども、州法がこれをがえんじませんからやむを得ませんと言うのが、今までの通産省の答弁だった。ということは、アメリカ国内においては日本と結んだ国際法よりも州法の力が優先する。だから泣きの涙であきらめてきたのです。業界も、労働組合も、これは力関係だと思ってあきらめてきたのです。ところがあなたのおっしゃるように、国際法の学問的な原論が正しいとおっしゃるならば、今までの答弁は間違っておった、こういうことになりますよ。そうしてなおかつ次に出てくる問題は、アメリカが今後さようなことをいたした場合には、州法は連邦憲法に違反するではないかと、言って違憲訴訟が行なわれます。さすれば現在やっているスティッツさんの問題は、日本国が勝つということになりますよ。いいですか、これで。
  119. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。  今おっしゃいました国際法の関係につきましては、たとえば、なぜそれでは日本通商航海条約に違反した行為ができるかということになると、これはやはりガットの問題に帰ってくると私は思います。そうして日米通商航海条約というものは、原則としてガットの原則あるいは規定を踏まえてできておるものだと思います。そうして今おっしゃったような除外例につきましては、アメリカは、ガットの場でその点について保留しまして、いわゆるウエーバーというものをとっておると思うのです。それがためにできるのだと私は思います。そこで、今おっしゃったように、それではなぜアメリカでごちゃごちゃしていつまでも片づかぬか、どちらかというと、国内法が優先しておるような印象を与えるかと申しますと、これは、結局とことんまで最高裁判所まで持っていくとすると時間もかかる、いろいろなことで、向こうの政府は、たとえばサウス・カロライナの事件を思い出していただけばわかると思いますけれども、業者を抑えてなるべくそういうことをしないようにするとか、あるいは今度は消費者の側をたきつけて、ああいう法は違法だというようなことをしておりまして、御指摘のように、はっきり国際法と国内法の関係がわからないようになっておると思いますけれども、われわれの立場といたしましては、少なくとも国際法優先の立場でいきたい、こういうふうに思っておりますが、実際にはその点は若干ごちゃごちゃしておるかもしれません。
  120. 加藤清二

    加藤(清)分科員 国際法が優先すると言っておいて、具体的な問題を出したら、そうありたいと願望に変わってきたら困る。ここでは、今願望やら希望やら、神様にお参りに行っておるのではなく、具体的に言っておるのです。先の言葉が今度は変わりまして、あなたは、今度はこう言いたいのでしょう、具体的な事実が出てきた場合に。なるほどMSA協定もあり、安保条約もあり、日米友好通商航海条約もあって、これは互恵平等になっておるにもかかわらず、アメリカ側は、日本から輸入する場合に、別な法律、別な規則によって制限をしておる、それが具体的事実である、こう認めるでしょう。それが認められなくて、原則論が正しいとおっしゃるなら、私は通産大臣に過去数年間何をやっておったと言いたくなる。しかも裁判ざたにまでなっておる問題だ。このために甘木は、ジェトロにしましても、あるいはこの業界にいたしましても、ずいぶん膨大な費用を使って法律的解決をしようとしておる。これはあだやおろそかな問題じゃない。これを私は一般質問でやりたかった。ところが大臣はどこかに行ってしまった。経企庁の長官は病気だと言ってこられなかった。それできょう終わりにあたって、これを聞いておるわけだ。具体的に例を出せとおっしゃったら、ここに資料がたくさんありますから、何年何月のどの事件と言って、みな出します。  さて、そういうふうに、ここに互恵平等の法律が国際間には結ばれておる。しかしながらアメリカ側は、日本の品物を買い込みますときに、いろいろ別な制限法律によってこれを制限しておる。そういうやさきにあたって、今度は自由化される、特定物資の法律もなくなる、自由化が九〇%されていく、こういう。そのおりに、日本国内におけるアメリカ軍の使用する物件については、バナナにしてもあるいはウオッチにいたしましても、これはすべてこの法律に準じておるとおっしゃる。この国際法の通り、国際法が規定しておるからこの法律は適用しない、その通りに今後もやるとおっしゃる。従って私の言いたいところは、それでは平等の原則からはずれるではないかということを言っておる。通産大臣にお尋ねします。
  121. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろ事務的には議論があるだろうと思います。だから、関税局長も何か発言したいということですから、これを聞くのが筋のように思いますが、私いろいろお話を伺っておりまして、いろいろ複雑な関係にある。だから、今一つの法律だけ建前にとってもなかなかうまくいかない。今具体的に心配していらっしゃるのは、米軍用の物資がやみに流れていく結果になるだろうということだと思います。そういう意味の取り扱い方について、ただいま行政協定等もございますから、そういう方法でこれが弊害をかもし出さないように、処置を十分具体的に検討さすべきだ、かように思います。おそらく関税局長もそういう発言じゃないかと思います。
  122. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいまの米軍に納めます物資の場合の特別扱いは、別途に例の日米間の米軍の地位に関する協定に基づきまして、私どもとしましては臨時特例法を別に出しておりまして、それで特別の扱いをいたしておる、こういうことでございます。もう一度つけ加えますと、一般の日米通商航海条約ではなしに、ただいま申しました米軍の地位に関する協定に基づいてやっておるということでございます。
  123. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ここに書いてある通りやられるのでしょう。そこで問題は、この国際法によってどんなに互恵平等の精神がうたわれており、各条項にわたって詳細なことが述べられておっても、なお具体的事実は、この法律をアメリカは束縛してしまう。日本はどうかというと、この法律や国内で作った法律以上にアメリカ策にサービスをする協定、規則までお作りあそばされておやりになっている、こういうことなんです。それは決して互恵平等ではないということを言っておる。これをせっかく改定されるのだから、経過措置もするとおっしゃるのだが、この経過措置を怠りますると——自動車の輸入許可は大体千二百台なんです。ところが、実際に入っているのは一万二千台の余なんです。これがやみに横行するのです。こんな広幅の大きなものが横行するから、東京都内はますます交通難と、こういうことになってくる。それのみじゃございませんよ。ウィスキーにいたしましても、何にいたしましても、そこから流れ出るものの方がはるかに大きいわけなんです。これが内地市場を撹乱しておるということなんです。なおかつ、この法律が今度は改定されるのです。日米友好通商航海条約の年限がもう来ておるのです。しかもこの法律は一年前に通告をしなければならぬことになっている。その一年前とはいつかといえば、もう迫っている。この法律が無効になるときが迫っているわけだ。さすればこの日米友好通商航海条約に対しても、何をなすべきやの問題について、審議会なりあるいは調査会なり、答申案の作成なりをすべきである。ほんとうに自民党の内閣の皆さんが、憲法は与えられたものであるから変えなければならぬと、こうおっしゃるならば、もっと具体的な、月の前にみすみす赤字を生むようなこういう問題について、なぜ改定が迫っておるのに、今日調査会も何もお作りあそばされぬかということを言いたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 日米通商航海条約については、他の席でもお答えをいたしました。通告の日限も迫っておるという状況でございますから。しかし、まだ迫っておると申しましても、ことしの秋かと思いますので、それまでに十分一つ政府の態度を決定して、しかるに必要なる処置をとる、こういう考え方でございます。
  125. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もう時間ですから、残余の質問はあとにします。
  126. 赤澤正道

    赤澤主査 本会議終了直後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  127. 赤澤正道

    赤澤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  128. 兒玉末男

    兒玉分科員 最近、生鮮食料品の生産者価格が、消費者価格に比して非常に不安定でありまして、特に私の出身地である九州地区におきましては、豚を初めとする肉類が非常に下がっておるわけであります。生産者の価格は暴落しましても、都会地なり消費地における消費者価格は全然下がらない。こういうようなきわめて重大な問題につきまして、それぞれの部門に分類し、かつまた、現在問題となっております流通機構の改革について、関係局長の率直な御意見と、今後の対策についてお伺いしたいと存じます。割り当てられた時間が、三十分という限定された時間でございますので、簡潔に申し上げますが、農林省当局としては、特に国民の四割を占める、最も経済力の低い生産農民の立場を率直に理解していただく立場から、責任ある御答弁をまず最初に要望申し上げたいと思います。  そこで、まず、いろいろな畜産物の価格が非常に安い。このことは具体的な数字で申し上げますならば、たとえば牛乳の価格の場合を例にとりましても、全国平均の飲用乳一・八リッターの価格というものが大体五十円でございます。ところが、農林省の生産費調査によりますと五十五円二十六銭、これはすでに三年前の昭和三十四年の統計であります。なお、全国農協中央会の調査によりますと、昭和三十六年の統計によりますと、七十四円二十七銭という生産コストが必要であるわけであります。こういうふうに生産費が非常に高いにもかかわらず、実際の生産者価格というものが非常に安い。こういうことでは、今度の農業基本法において畜産関係は選択的拡大の対象になっておりますけれども、これでは農民の所得が増加する根拠とならないし、これに対するたとえば価格安定政策なり飼料対策等に対して、どのような具体的な対策を持っておられるのか、まず、この点についての見解を御表明願いたいと存じます。
  129. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 ただいま牛乳に例をとられまして、畜産品の実際の販売価格、市場価格が、生産費に比べて非非常に安いではないかという具体的な御指摘でございます。せっかく皆さん方の御了承によりまして、価格安定制度も前臨時国会で一部物資について制度ができたのでありますが、私どもといたしまして、実際家族労働なり、要するに畜産物の生産費のうちで一番重要な労賃の取得が非常に少ないということは、いろいろの観点から調べて御指摘通りであります。今後、食肉にいたしましても、酪農品等にいたしましても、少なくとも目標は水稲等を目標にいたしまして、できるだけ労賃取得の多いように努めて参りたいと思います。  また、えさの問題でございますが、一気に草地改良をやっていくわけにも参りませんけれども、来年度からは公共事業費にも計画として予算上取り入れていただきまして、ぜひ計画的に自給飼料の増産をはかっていきたいと思います。いずれにいたしましても、乳製品等につきましては、自給飼料による場合と、都市中心等の濃厚飼料による場合と、非常に経費が差があるものでございますので、極力草地開発に努めて参りたいと思います。濃厚飼料の問題等につきましては、今後各専門部会等も、自給飼料委員会を設けまして検討して参りたいと思います。あまりにもいろいろ欠陥がある点がありますので、改善して参りたいと思います。
  130. 兒玉末男

    兒玉分科員 現在の状況におきまして、牛乳の需要というものは年々増加の一途をたどっておるわけでありますが需要と供給の関係におきまして非常に生産量が多い、こういうことならば、私はある程度の事情もうなずけるわけでありますけれども、絶対的に需要が多くて供給が足らない、こういうふうな状況のもとにおいてこのように生産のコストが非常に高いということは、何と申しましても、この小売価格についての積極的な安定政策が必要だということを私は重ねて指摘するとともに、農林省の価格安定法を提案する際の資料として出たのを見ましても、特に生産価格、いわゆる手取り価格の先進国等の例をとりますと、日本の場合は小売価格の三分の一以下というのが実態であります。イギリスの場合は小売価格の七割、フランスの場合五割、特に協同組合の発達しているデンマーク等においては八割という、小売価格に対しまして非常に生産価格というものが保障されております。こういう点等を見ます場合に、なぜ日本の場合はこんなにおくれているのか、こんなに開きが大き過ぎるのか、その根本的な原因というものが那辺にあるかということについて、局長の見解を承りたいと存じます。
  131. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 生産者価格、あるいは流通段階における卸、小売を通じての生産者の手取りが、比較的に少ないではないかという御指摘でありますが、私ども過去の傾向を見て参りますると、やはり過去の傾向でも、最近でも、比較的小売の幅が生産者の取得価格の上がりよりもやや大き過ぎるのじゃないかというふうに考えておることは、御指摘通りであります。われわれといたしましては、小売の流通段階等について、またたとえば牛乳等に例をとりますると、副食と主食の中途半端な段階でございまして、需要の関係から一合びん等を配っておるというようなこともございますけれども、そういうまとめた湿り方なり、機動的な配給のほかに、やはり配給段階が非常に複雑化しているということも認められるわけであります。最近、牛乳の問題が、小売あるいは生産者価格等を中心として出て参っておりますが、御指摘通り、非常に非計画的というか、それぞれ実情に応じて発展したことだと思いますけれども、中へ入って、なるべく流通を合理化していくということが必要だと思います。幸いにして価格安定制度ができまして、いろいろ内容を討議して、そしてメーカーの出産費等も十分検討される段階でありますので、メーカー、卸等を通じまして、小売態勢をできるだけ簡直にして、そして生産者の手取りを極力多くしていくということで努力して参りたいと思います。
  132. 兒玉末男

    兒玉分科員 流通機構の問題については、あとで御質問したいと思いますが、私たちの方の、特に宮崎、鹿児島県等は、ここ一、二年農林省指導等もありまして、相当養豚も盛んになっておるわけであります。酪農については、今申し上げた通り、乳牛を養ってもほとんど採算がとれないということで、今まで盛んに酪農振興ということが叫ばれて参りましたけれども、最近これがやっていけないということで、今は養豚の方に切りかえつつあるわけでありますが、最近はその養豚がまた暴落している。上部機関の指導者の言う通りやっておれば、いつまでも貧乏しなければいけないということで、今相当生産農民の不満が上がっているわけでございますが、私は、現在の、特に生産面の指導にタッチしている農協等の指導性の欠陥ということも、多分にあるのじゃないかと思うわけでございます。たとえば、現在の個人のばらばらな酪農方式なりあるいは養豚の方式を変えていくとか、また、出荷態勢については、共同出荷なり共販態勢、こういう一つの生産点における、いわゆる市場機構と直結した共同出荷なり、あるいは共販態勢というものをもう少し強化していかない限り、酪農にしてもあるいは養豚業者にしても、今局長が触れたような流通機構の過程において、農民の利潤というものがことごとくしぼり取られていくのじゃないか、こういう点を考えるわけでありますが、まず、生産点におけるそのような農協等の指導性の面について、どういうふうなお考えを持っているか、お聞きしたいと存じます。
  133. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 昨年あるいは一昨年来、豚につきましては、キロ三百円から四百円という値段が出まして、豚を飼っていればもうかるぞというような機運等もありまして、また、畜産の選択的拡大というような、畜産をねらっての生産旺盛等もございまして、特に九州地区は非常な増産になったわけでございます。お話通り、これは計画経済ではございませんけれども、少なくとも計画的に需要と生産の見通しをつけていかなければならぬのですが、これの御協力を仰ぐのは、やはり自主的な農業団体の活動に待つよりほかはないと思います。また、子豚等の購入にいたしましても、一頭八千円もかけて、買うというような不如意な生産態勢では困ると思いまして、われわれといたしましては、中央では全敗連あるいは全畜連、その他産地の、少なくても県単位では団結して、そして私の方としても、単に従来の動きとしての生産の予察ではなくて、今後を見通し計画的に出席と需要と合わせていく、そしてお互いに各県でどの程度生産していくかということも必要だと思います。御指摘通り、やはり全然自由な取引関係から、相当集約された団体活動にあわせていけば、事業団の価格安定等の措置も生きてくると考えます。現況といたしましては、非常に安い最低ラインは引きましたけれども、今後需要、生産等の見通しができますれば、十分労賃によってその需要にもそう触れないというようなことで、安定した養豚業をやっていただけるように、こういう不始末を二度と繰り返さないように、幸いの方へこのものを転回して参ろうということで、外部の農業団体とも十分連絡をとって、今後の問題を検討しておる最中であります。
  134. 兒玉末男

    兒玉分科員 生産面の点についてはあと二、三お伺いをしたいのでありますが、そこで、特に中央の市場から遠隔にある南九州等におきましては、なま豚の輸送における輸送費のコスト高というものは、相当生産者へしわ寄せされておるわけでありますので、これは当然常識的に考える点としては、農産加工工場なりあるいは屠殺場の増設、また枝肉センター等の設置、こういうことはきわめて緊急の課題として、私は、農林省としても積極的に指導すべきではないかと思うわけです。この点が第一。  それから最近九州地方におきましても、大洋漁業だとか、こういうふうな海の仕事をする会社が、おかに上がってきまして、たとえば養豚の加工工場とか、あるいは養豚飼料工場とか、こういうふうな大資本を背景として、地域における資本力の小さな農民に対しまして子豚を貸すわけです。それを飼育させる。その場合の条件は、相手は大資本である関係上、大資本を背景として、農民が非常に不利な条件でそういうふうな大資本の養豚に協力をしなければいけない、こういう傾向が最近目立っておるわけであります。単にこれは畜産だけでなくて、くだもの類でもこういうような加工工場の進出は、これは全国的な傾向でありまするけれども、このような大資本の進出に対しましても、当然これは多数を占める零細な資本しかない農民を守る立場から、また、農協の育成指導の立場からも、何らかの規制を加えない限りは、単にこれを拱手傍観していたのでは取り返しのつかない結果になろうかと思うのであります。特に国民経済所得の格差というものは、池田内閣の所得倍増計画に照らしましても、こういう状態で放置するならば、この生産農民の立場というものはますます窮地に追い込まれるわけでありまするが、こういうふうな生産地点におけるところの加工工場なり屠殺工場、または大資本のこのような進出に対する規制の問題を加えて、御答弁をいただきたいと思うわけです。
  135. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 お話の第一点の産地施設あるいは出荷の合理化等について御意見がございましたが、大体結論的に申し上げますと、お説の通りであります。私も賛成であります。ただ、ごみ皮等の処理等もございますので、一番どれが手取りがいいかということも考えて、大勢としてはおっしゃる通りでございますので、私どもといたしましても、そういう施設充実の場合に合理的なる指導をして参りたいと思います。  それから第二点に御指摘の大企業の進出でありますが、農民がその労力で生産する場合に、大企業でなければできないことじゃなくて、農民が共同体制をとってやればできるというような養豚関係等につきましては、できるだけ勧奨的にいって、大企業の進出といいますか、投資は差し控えるように指導して参りたいと思いますが、加工とかあるいは共同冷蔵施設で、かつ、地元の農民団体と十分対等で話ができたものにつきましては、ある場合につきましてはこれを育てていく、こういうふうに考えております。こういうことになりますと、かえって私どもとしては、信用ある会社を相手にいたしまして、対等関係が破れるならば、行政措置的に相当の勧奨ができるという考え方を持っておりますので、地元農民と対等に、また対等の契約で実行中でも、それぞれ事情によってはあるいは別な立場に立つ場合も予想されますので、そういう点は、十分各都道府県等を通じまして、また必要によっては直接的に、われれとしても、手取り関係、特に契約の履行関係について十分注意をして指導して参りたいと存じます。
  136. 兒玉末男

    兒玉分科員 今、局長の答弁は、きわめて私は重大な要素を含む答弁だと思うわけであります。と申しますのは、そういうふうな大企業の進出に対しまして、特に加工工場等においては、そういうふうな不当な競合関係が起きないよう十分行政上指導する、こういうことを言われておるわけではございますけれども、実際に生産農民の、そういうふうな大企業に対抗する農協を中心としたそのような一つの農民の団結といいますか、あるいは企業に対するそういう強力な意思はなかなかできないわけです。現実の問題として。やはり民間の大企業はなかなか農民をごまかすのがうまいわけです。ですから、一昨年のカンショ価格等の暴落の場合もそうでありますけれども、非常に農民は現金収入が少ないために、たとえば石当たりの値段はわずか五円か十円足らずであっても、実際は共販体制も農協の指導でうまくいっておっても、現実自分の生活が苦しい、そういう点に立ちますならば、わずか十円、五円のことでうまくまるめ込まれてしまって、今局長が言われるように、なかなかそういう大企業等の競合面においては思うようにできないというのが実態なのであります。もしそういうことが今までできておったならば、今日のようなこういう肉類等の暴落に対しても対処できたわけであります。それができないところに、今日やはり農民は、政治的な感覚なり、そういうような需給の関係がわかっておるはずがない。ただ、その地域における指導者の言うなりになるというような大きな弊害等を考えますならば、もう少し慎重な配慮をなすべきだ。現に、たとえば農協等における畜産技術の指導者の不足なり、あるいはまた増産の指導は、ふやせふやせということは言っておるけれども、たとえば飼育管理の問題、あるいは消費拡大の具体的な対策、こうものに今日地方の農協等は多くの欠陥を内蔵しておるわけであります。こういう面の指導、あるいはこういう内容面の充実を行なわない限りは、先ほど私が申し上げましたような大企業の加工工場の進出が、結局はその地域における全体の実力を吸収してしまう、こういう懸念が私たちは多分にあるわけであります。でありまするから、現在の畜産農協なり一般農協の畜産技術者の不足の問題、あるいはこのような飼育管理の指導の問題、また消費の拡大対策、こういう現在の大企業に対抗し得る農協の関係のてこ入れ、こういう面も少し積極的に行なっていかなければ、私は、今局長が言われたような、そういう円満な形における大企業との競争関係にはとうてい太刀打ちができないと思うのですが、農協等の内面指導について、また、その体制の強化についてどういうふうなお考えをお持ちか、伺いたい。
  137. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 私は、大企業の進出を奨励するという意味で申し上げたわけではないわけであります。大企業の進出等につきましては、従来からもそうですが、私ども、あるいは農地転用にあたりまして、農地局も非常に慎重な態度をとっておるわけであります。それはまさに御指摘通り、過去において美辞麗句で、きれいな言葉で出発したのが、御指摘通り、略奪的になったという場合もなきにしもあらずなのであります。そこで、われわれとしては慎重な態度をとるが、農民と十分話し合いがつき、あるいは一部農協資本を入れたり、合同的な形態等もとらしたい、これは行政指導としてはある場合には行き過ぎになる場合もあるかもしれませんが、農業基本法の精神に従って、われわれとしてはスタートばかりでなく、十分慎重な態度をとっていきますが、大体工解がついて、そうして間違いがないのだという場合につきましても、いろいろ農協側が十分発言できるような、あるいは資本的に、あるいは出荷的に、いろいろ行政的な、道義的な指導をして参る、出発時ばかりでなく、なるべくその後にわたっても十分注意して参りたいと考えておるわけでございます。大いに奨励していくわけではございませんで、非常に神経質に慎重な態度をとり、かつ、認める場合でも、十分御指摘の点は注意して参りたいと存ずるわけであります。
  138. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは畜産局の管轄かどうかわかりませんけれども、農業経営の一番中核をなす、先ほど触れました、特に技術指導者の増加の問題です。それから農産物加工工場を設置する場合に、農民の資金と農協資金とを併合的に使用して、そういう大企業の侵略から防ぐという場合に、やはり国家的な助成措置ということもきわめて必要じゃないかと思うのですが、そういうふうな技術指導者の不足の解消の問題、そのような資金の助成措置の問題、こういう点についてはどういうようなお考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。
  139. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 ただいま御指摘のような流通問題につきまして、流通といいますか、加工その他そういうような問題につきまして、農協あるいは他の資本とか技術とか、そういうものが一緒に組み合いまして、そうして農産物の利用度を上げていくというような意味におきましては、これは積極的に考えていく必要があろうというようなことで、現在の近代化資金の中におきましても、農民の資本等が過半数を占めているようなそういう会社等につきましては、近代化資金の対象として融資の道も考えていこう、こういうようなことで措置をいたしております。
  140. 兒玉末男

    兒玉分科員 そこで、内容を流通一面の方に持っていきたいと思うのでありますが、特に今畜産を主として申し上げましたが、最近は野菜類、それからくだもの、こういうもの等についても、これは特に生鮮食品の場合においては非常に腐敗性が高いとか、あるいは畜産物に比較して、計画的な生産指導ということが、なかなか需要供給の関係の把握が困難なので、むずかしいと思うのですが、特に生鮮食品については、こういうふうないろいろな困難な面も包蔵しておるわけでありますけれども、今日やはり生産者である農民が、常に畜産物と一緒に打撃を受けているわけでありますが、こういうような青果類等について、どうしたならば今日の窮状を打破していくことができるか、この需要と供給の関係あるいは保存等のむずかしい、このような生鮮食品についての対策を、当面の課題は別として、やはり恒久的な立場からこの問題に対処していかなければいけないのじゃないかということを考えるわけでありますが、青果類についての指導面をお聞きしたいと思います。
  141. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま野菜並びに果実についての流通安定についての御質問でございますが、われわれといたしましても、生鮮食料品の特殊な性格からいいまして、これの流通の合理化ということについては、いろいろ困難な問題を控えておるわけであります。しかし、当面、われわれとして現在やっておりますことについて簡単に申し上げますと、何と言いましても、第一には出荷調整ということが一番必要である、できれば計画出荷に持っていくことが必要である、こういう見地に立ちまして、くだものについては五種類、野菜については七種類について、全国の生産者団体を集めまして出荷協議会を開くとか、あるいはさらに全国的な段階における出荷協議会——大体は中央卸売市場、大都市を中心として協議会を設けるというように、出荷調整をやるという計画を立てておるわけであります。大体全体の出荷量の六割くらいが中央卸売市場に入って参るわけでありまして、全国的な段階におきましては出荷調整協議会を開く、それから府県の段階におきましても、それに呼応して府県内における出荷調整についての協議会を開く。これに対しまして何としても必要なのは、日々の市況を正確に伝達するということであります。そういう意味におきまして、作付の情報につきましては県より、それから生産者流通あるいは市況等についてはラジオ、あるいは市況における情報をまとめて出荷団体に流す、こういう情報提供の仕事も重要だというふうに考えまして、これを適時流していく、こういう措置をとりまして、できるだけ市場における需要と出荷との調整をはかっていきたい。その効果として、生産の上におきましても、そのときの需要に応ずるように生産の指導をして参る、こういう考え方を当面とっておるわけであります。今先生の御質問は、しかし将来の恒久策としてはどう考えるか、こういうことであったわけでございます。これは物によって違いますけれども、たとえばくだもののようなものにつきましては、これはどうしてもある程度加工度を高めていくことが、価格安定の上において必要である。現在では、くだものの加工度というものはわずか一〇%以下で、非常に低いわけであります。加工品としての供給を拡大していくということによって、やはり価格の安定をはかっていく必要があろう、こういう面におきまして加工業の育成、それからそれに伴う原料取引の合理化というようなことについて、積極的な指導をして参りたい、かように考えておるわけであります。
  142. 赤澤正道

    赤澤主査 兒玉君、時間も過ぎておりますので、一問だけにして下さい。
  143. 兒玉末男

    兒玉分科員 今市場機構の問題等について振興局長から御説明がありましたが、特に生鮮食料品を中心といたしまして、中でも価格差のひどい食肉なり、あるいは水産物等を含めて、需要と供給の関係で最も重大な役割を果たすところの流通機構の問題について、あと一問ということでございますが、せっかく立ちましたので、内容については二、三点触れるかと思いますが、振興局長責任ある御答弁をお願いしたいと思うわけであります。  それは昭和二十八年であったかと存じますが、中央卸売市場法の改正を含めて地方卸売市場法の制定ということは、全国の卸業者初め生産、消費者ともに、需給の関係を調整し、価格の安定をはかるという立場から要望されてきたところであります。現在、全国に七百二十三の魚介類関係の市場、それから魚卸市場が五百七十九、千三百五十六の青果類卸売市場があるわけであります。この取り扱い量というものが、実に中央卸売市場の倍以上あるという事実を考えてみた場合に、先ほど振興局長が言われました、特に需給関係の調整なり、または取り扱いに非常な困難を来たすところの青果類あるいは魚介類等の取り扱い等から考えましても、いわゆる地方におけるところの卸売市場法の制定ということは、きわめて重要な課題ではないかと存ずるわけであります。さらに加えまして、現在現存する市場の内容におきましても、先般河野農相等が芝浦等の一部を見て、その内情の複雑性ということに非常に驚いておられたということを私はお聞きしたわけでありますが、こういうような複雑な機構というものが、今日生産者価格を不当に押え、そして小卸価格は全然下がらないけれども、生産者価格というものは非常に暴落をしている。こういう偏向的な情勢というものを早急に改革すべきだ、こういうふうに私は考えるわけであります。でありますので、このような中央卸売市場法の改正に含めて、地方卸売市場法の制定等について、どのような積極的な構想をお持ちであるのか。  それから第二は、先般九州管区の行政監察局が、先ほど畜産局長に御質問いたしましたが、このような食肉行政についての生産、流通、消費関係についての勧告を出されるということを聞き及んでおります。まだこれが出された模様はないのでありますが、このような行政監察局の勧告について、おそらくもう農林省担当者は十分その内容は知悉されておるかと存ずるわけでありますけれども、この二点について、責任ある御答弁と今後の対策をお答え願いたいと存ずるわけであります。
  144. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 地方の市場の問題でございますが、御指摘のように、地力の市場につきましては、現在衛生上の取り締まりとか、そういうような見地で、地方の条例でいろいろ規制しております。そういうようなところがせいぜいでございます。市場の問題につきまして、中央卸売市場審議会というものを、一昨年でございましたか、法律によって設けまして、その際もいろいろ審議をしたのでございますが、何といいましても、生鮮食料品の価格とか流通問題、そういう点を考えみました場合には、非常に大きな集散地を大体その中心にして、第一にはそういうところからやはり手をつけるべきじゃないかという考え方のもとに、とりあえずの問題といたしましては、中央卸売市場の法律改正をこの前の臨時国会でお願い申し上げましたわけでございます。その際も、地方市場の問題につきましてはいろいろ付帯決議等もございまして——各地の実情によっても違いますし、また、魚とか蔬菜とか、そういうものによってもいろいろ性格が違うわけでございます。産地の出荷市場という形になるものもございますし、それから消費都市中心の消費市場、こういう性格になるものもございますので、そういう点十分今後検討しなければならぬ実情でございますので、引き続いてそういう問題についていろいろ調査、検討をいたしております。
  145. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 第二点の御指摘の監察状況でございますが、指導体制の確立、技術者の充実、その他流通の合理化、小売価格の適正化等につきましては、われわれとしても今取っ組んでいるまっ最中でございます。ただ、小売等の幅につきましては、特に機構が充実していないとか、あるいは政府側といたしましてもいろいろ施設的に世話をする点もございますので、これら等も検討いたしまして、ただ文句ばかり言えない筋もありますので、組合の充実をはかると同時に、経営等の合理化、あるいは運搬、あるいは牛乳等につきましては冷蔵施設、そういう点についても十分小売側とも話をいたしまして、極力幅の差を縮めて参りたいと存じます。
  146. 兒玉末男

    兒玉分科員 今の振興局長の答弁の中で一つだけ、百度確認という意味でもないのですが、もう一点お聞きしたいと思うのでありますが、特に生鮮魚介類を扱っておる中央卸売市場におきまして、少なくとも、先ほど私が指摘しましたように、公共性、公益性というものがその基本的理念でなければいけないわけでありますけれども、現在の特に水産物関係の中央卸売市場におきましては、巨大水産会社がこれを支配しまして、独占集荷の傾向にあって、それこそ生産から販売まで、こういうふうな一つの系列化によって、生産漁民や消費者に対する公共性、公益性というものが失われつつあるのが、特に水産関係の市場に著しい現象であるわけであります。このような水産関係の大会社の中央卸売市場に対する独占集術の傾向に対しまして、どういうふうな対策を講じようとするのか、その点だけをぜひあわせて御回答を願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  147. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 実は経済局の主管でございますが、水産庁としましては、巨大会社がそういうふうに市場をすべて独占的に支配するということにつきましては、慎重な考慮を持っておりまして、過般の市場法改正の場合におきましても、そういうことが問題になっておる次第で、十分そういう点について配慮をしておるような次第でございます。
  148. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 先ほどの御質問でございまするが、現状におきまして、大きな水産会社が独占的な集荷をしているというほど、そういう極端な状態にはなっていないのではないかと思います。しかし、傾向といたしましては、御指摘のような面もあると思うのでございます。場所によってもだいぶそういう点は違うと思うのでございますが、そういう事例が見受けられるのでございます。中央卸売市場法の関係につきましては、卸売業者に対しましては、直接農林大臣許可権を持っておりますし、監督権とか検査権、そういうものを持っておるのでございまして、そこで、たとえば東京のように三社ないし六社ありますうちに、かりに一社や二社巨大な資本の会社がありましても、そのために全体の水産物の取引が公正を欠くことがないように、市場の監督につきましては、十分厳重な監督をして参りたいというふうに考えております。
  149. 兒玉末男

    兒玉分科員 きわめて不満でありますけれども、またこれはいずれ次の機会にやります。
  150. 赤澤正道

  151. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 私は、東北開発株式会社に対する監督官庁である経済企画庁にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この問題につきましては、過去決算委員会において二回にわたり東北開発株式会社の役員に来ていただき、なお昨日また本席におきまして同僚の田中委員が質問されたそうであります。田中委員の質問の内容につきましては、実は私聞いておりませんので、ちょっときょう問い合わせてみましたが、なるべく重複する点がないように質問をいたしたいと思いますけれども、もし重複する点がありましたら、御容赦をお願いしたいと思う次第でございます。  まず私は、最近の東北開発株式会社の状態を見ましても、まことに残念なことだと思いますし、国民の多くの血税を費しておるこのような国策会社にこういうことが起きているということについては、監督官庁である経済企画庁におきましても、この際もう少ししっかりした態度で今後のやり方をきめなければ、また同じようなことが続けられるんじゃないだろうか、こう思うのであります。従いまして、まず前提として、経済企画庁としては東北開発株式会社にどのような監督権を持って、どのような監督行政をやってきたのかという点について最初お尋ねをいたします。
  152. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 東北開発会社にこのようなことが起こりましたことについては、まことに遺憾でございまして、監督官庁としての企画庁としても責任を感ずる次第でございます。一応現在までの状態から申しますと、東北開発は株式会社の形態をとつておりまして、公庫とか公団とかと違う形態をとっておるのであります。この形態をどういうわけでとったかという成り立ちにつきましては、いろいろ問題がございましょうが、そういうような株式会社の形態をとっておりますから、なるべく自主的な弾力的な運営をして進んでいくのが適当であろうという意味かと思います。従いまして、今日まで事業計画でありますとか、資金計画でありますとかを中心にして、大綱において指導監督してきたというのが現在までの実情でございます。
  153. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 最大の監督をやってきた結果このような実態が起きてきたということになるならば、一体監督の責任はいかにということになろうと思うのです。そこでその結果だと思いますけれども、昨年の臨時総会におきまして、役員の総改選をせざるを得なかったわけでありますが、その役員の総改選をしなければならなかった理由の大きなものはどういうものなんでしょうか。
  154. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、昨年七月末に経企長官の職を承りまして、そのときに前企画庁長官から引き継ぎました中に、今日までの東北開発運営そのものは必ずしも適当だと考えられないような点もあるし、この際、人心を刷新することが適当であろうと思うから、そういう方針のもとに進んできたのである。そうしてちょうど八月一日が総の任期でございましたので、新総裁裁を求めるためには、民間の有能な会社経営の経験もある人であって、かつ剛直な方がいいのではないかということでありました。従って、今川の伊藤総裁を得たわけであります。そういう経緯に上りまして新総裁を選び、新総裁の御意向に沿いまして今日の役員の選任をいたした、こういうことでございます。
  155. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 そこで役員の中でも、総裁、副総裁、理事は総改選になりました。しかし監事は依然として残って、今度は重要な地位を占めているわけですが、結局監事には責任がない、こういうふうにお考えになってそうされたのですか、その点についてはいかがですか。
  156. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 当時新総裁が御就任になりまして、過去のいろいろな事情もございますし、監事の職にあって現実の仕事をしてない人を補佐役にすることが適当であろうという総裁自身のお考えもあり、われわれも適当であろうかと存じたわけでございます。
  157. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 今言われたような形でかりに残されたとするならば、別に意見はないわけでありますけれども、しかし、東北開発株式会社の人事運営面がどういうふうな形でやられてきたかというのは、私より与党の幹部であられる、長官の方がよく御存じだと思うのです。そうしてその結果、会計検査院から異常な報告がなされておるわけです。それは、長官も御承知のように、三十五年度の決算に重大な不適確性がある。また今回なられた伊藤総裁の衆議院の決算委員会に出された釈明書によれば、これは明らかに虚偽的な決算書であるということを認めざるを得ないような答弁がなされておるわけであります。なおかつ、いろいろ審議の中で考えられることは、当時監事であった人たちもこの決算操作にあたって責任なしとしないというふうに私は見受けるわけであります、これは突き詰めていけば明確になると思うのであります。ですから、こういう点から考え責任がないとは言えないのじゃないだろうか。なおその上、今日、重要な地位にあった幹部が、汚職事件で今いろいろ取り調べを受けておる。こういう点も考えてみると、一体その原因はどういうふうに把握をされたか、その原因をしっかり把握されておるならば、人事のやり方についても、まだ、この際ほんとうに全部のうみを出してしまって、あらためてやるという方法があると思う。それが私は、なまはんかに、中途半端にまだヴェールをかぶされたままやられておる、こう見ざるを得ないわけです。ですから、今回の起きた原因をどういうふうにお考えになって、その原因を直すためにやられたと思うのですが、私はそれが十分やられていないと思うのですが、その点いかがですか。
  158. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回、伊藤総裁が御就任になりまして、そうしてその後、総裁が会社の経理その他をごらんになりまして、いろいろ問題点があるということで、私もお話を若干まず承ったのであります。この際、総裁としては、一つできるだけ公正に、しかも妥当に、何の遠慮もなしに全部洗いざらい会社の経理その他を新しい方針のもとに洗ってもいただき、立て直しもしていただく。過去にもしそういう変なことがあれば改正していただく、こういうことを申し上げました。総裁も当然、総裁自身の性格からいってもそういう考え方であるので、その後はそういう方針のもとに進めていただいておるのであります。
  159. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 今度新しい総裁になられてから出てきた問題というのは、御承知通り決算操作にごまかしがあったということが明確に出て参りました。そうして事業をやっておるセメントについても重大な問題が出てきた。から売りの決算操作をして、その上硬化セメントと称して、約一億二千万の損害を与えておる。そうして最近伝えられるところによると、砂鉄も今計画されておるけれども、これもどうもおかしい問題だということが指摘されております。それから土地造成についてもまた問題になっておる。結局やられておる重要な事業がみなこのようになっておる。そのなっておる原因を追及していけば、結局人事にからんでこういう事業が運営されておるということになっておるわけです。ですから、そういう意味から言うならば、新しい総裁がやりいいように、ほんとうに政府が責任を持って、これでは困るということで今度は立て直すような人事をされるとするならば、これに携わっておった理事はもちろんのこと改選されましたけれども、監事も同じことですし、その下の幹部についても、私は、相当手荒い処置をしなければ立て直しができない、こう思うのです。どうですか。
  160. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういうような点につきまして、私どもば、伊藤総裁を制肘して、社内の人事その他を動かしてはいけないとか、そうでなしに、私自身としては、伊藤総裁を信任して、総裁の思うままにやっていただくということを考えておりますので、決して制肘をしておるとか、あるいは何かそのために伊藤総裁が遠慮されておるということはございませんし、また伊藤総裁が今後そういうような運営についてのいろいろ御意見がございますれば、私としては率直に総裁の御意見を聞いて、そして総裁がほんとうに正しい運営をされるように私どもも御協力申し上げていきたい、こう考えております。
  161. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 伊藤総裁がしっかりされておれば、こういうことなんですけれども、今までの連帯でどこに問題があったかといえば、総裁と副総裁の意見が違っておったというところに大きな違いがある。主流派と反主流派、総裁派と副総裁派に分かれて理事会の運営が行なわれておった。そのことが全部上から下までそういうやり方でずっとなされておったところに問題点があったと思うのですよ。それを今また総裁が、総裁がと言われておる。しかし、その中には私はまだ不十分な点があると思う。不十分な人事がまだ残っておると思う。責任が明確にされてないと思うのです。引き継ぎの中でしっかりやろうといってもそれは無理だと思うのです。特に、それでは監督の東北開発の担当の室長の方から……。
  162. 財前直方

    ○財前説明員 東北開発株式会社の監理官でございます。ただいまの御質問は十分私理解いたしかねる点があるわけでございますけれども、前には、確かに私たち聞いておりますところでは、内部で主流派、反主流派というようなこともあったようでございますけれども、少なくとも新しい理事になりましてからは、そのようなことは一切ないものと私たち承知いたしております。ただ職員以下につきましては、別に交代をしておるわけじゃございませんので、これらの点につきましては、総裁が陣頭に立たれまして、職員の融和をはかるということにせっかく努力しておられるというふうに私たち報告を受けております。
  163. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 長官、ぜひ聞いておいていただきたいのですが、東北開発株式会社の決算を見ますと、三十二年の営業成績は、これは繰り越しでとんとんになりました。三十三年度は三億二千万円の赤字を出した。三十四年度は千五百八十万の利益だと、これはごまかして計上して、そのあと会計検査院から指摘をされたら土地造成の六千万円の手形が収入に入っておった。しかしこれはあとで解約された。結局三十四年度も約四千五百万の赤字がほんとうだ。三十五年度は六千八百二十七万円の黒字だと計算をした。しかし、そのあと今度は土地造成の解約を調べてみたら、二億八百九十五万円の赤字になる。三十六年度の見込みはどうかといったら十億の赤字だ。ですから三十二年、三十三年、三十四年、三十五年、三十六年、この五年間に約十二億七千万円の赤字を生じておるのです、事業をやって。そしてセメントを調べてみたら、驚くじゃありませんか。半期で十三万トンですよ。そして五十万トンの滞貨があるという。これは資料が私どものところに出ている。この中身については、もう少し会社側からよく調べて聞いてみますけれども、これを見ても一体政府は——ここでこういう会社を作る、これは東北の地域の開発のためにはけっこうだと思うのです。しかしこれが赤字をますます増大していく、そして赤字がふえれば一生懸命お金をまた税金で入れていく。これでは東北の人たちは納得しないと思うのです。ですから、今東北の中で言われていることは、もっとこの問題は徹底的に洗いざらいしてもらって、そして今の伊藤総裁のもとでもっとすっきりやれるようにしてくれ、今私が質問しましたのは、財前監理官から答弁したようなことを聞いておるわけではないのです。今どうなっておるか聞いておるわけじゃない。今までの点は十分なされていないじゃないか、またこれと同じようなことを繰り返すのじゃないか、繰り返す材料はあるわけですから。これは砂鉄の問題を取り上げてみましても、土地造成の問題を取り上げてみましても、セメントの問題を取り上げてみましても、これは相当なメスを入れてやり直さなければ、赤字は簡単に解消できないと思う。長官、この毎年々々赤字が累増してきた原因は一体どこにあるかという点を、あなたはもう少し誠意を持ってお考えをいただきたいと思います。
  164. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、この問題は、株式会社という形式をとっておりまして、政府が出資をいたしておるのでございますが、会社経営の基本的な立場からいえば、やはり人の問題が大きなファクターだと思います。東北振興のこういう開発会社としては、民間ではなかなかできないようなことをやって参らなければなりませんから、正しい意味での赤字と申しますか、そして将来それが基礎になってほんとうに発展していくということであれば、その点は一年、二年の事業開始の時期に赤字がありましても、これはやむを得ないことじゃないか、普通の私立会社におきましてもそういう条件がありますから。ただし、今回のような場合は、実は経営者の常識から申しますと、はなはだおかしな点がございます。ただいま御指摘のような、セメントが硬化して使用にたえないというような点あたりは、私も過去において経営者の立場におりましたからわかりますけれども、こういう点は、あまり注意が足りないと申しますか、それだけではないような感じもいたすのでございまして、前長官がその辺を考えられまして、私に人事刷新の引き継ぎをされたのも、そういう点にあったのではないかと思います。従って、今後私どもといたしましては、メスを入れまして、そして東北開発会社の本来の使命に立って正しく生きていくように、そしてその赤字が解消されるように、計画自体についても十分な注意をして参らなければなりませんし、また同時に、経理の問題等につきましても、もっと十分な監督をしていく必要があろうかと思っております。
  165. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 この大きな原因については、長官と私の意見とそう違わぬように思うのです。それが実際にやりいいようになっておるかなっていないかが問題だと思う。なかなかやりいいように私はなっていないと思う。たとえばやめた人たちがどこへおいでになったか、お調べになっておりますか、どうでしょうか。
  166. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 やめた方々がそれぞれの仕事についておられる、一応ここにあれもございますけれども、省略させていただきます。
  167. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 それは長官言えないのですよ。、言えないところにみな行っているのです。結局、人事管理、経営の面で失敗したその人たちをどこで引き取ったかというと、これは私は申し上げておきましょう。長官も御存じだろうと思いますけれども、私が知っておるのでは、理事の松本烈氏は農地開発機械公団の理事長におなりになっているじゃありませんか。これは政府機関ですよ。東北開発株式会社でどうもあれだから、今度はこっちの方で、今までの理事から、小さいかもしれませんけれども理事長になった。今度はその次の山本さん、この方は公営企業金融公庫の理事に返り咲いているのです。それから本郷さん、これは大した会社じゃないそうですが、東北開発株式会社から助成している東北石灰の取締役社長になっているわけです。結局、そういうふうに見てみますと、長官は役人の経験がないから割合私も質問しいいのですが、事務次官をされた、局長をされた、こういう人が行くコースというのがきまっちゃっているのですね。公社、公団、公庫の理事に入る、成績のいい人か悪い人か知りませんけれども、これが政治家になるのでしょうね。その公社、公団、公庫に入って、たらい回しにこういくわけです。それで役人ですと、おやめになってから、年金を月に三万かそこらもらって、それで退職金をもらう。そして二度の勤めに行って、もう、長官もお知りだと思うのですが、長官よりもたくさんの月給をもらっている。理事長になると二十六万円の月給なんですよ。そして四年の任期で——われわれは、長官も同じですが、四年任期ですが、いつでも解散になりますけれども、四年間確実にやって、そして退職金が八百五十万円もらえるのですよ。四年間で八百五十万円、二十六万円の月給をもらって、そしてもし失敗したら、また引き取ってもらって、どこかの理事長なり、理事に入れてもらえるわけです。これでは、幾ら綱紀の粛正だとかなんだとかかんだとか、言ったって、私はよくならないと思うのです。それはりっぱな方、いい方はどんどん民間に入っていただいて、あるいは国策会社でも公社でも公団でも入ってもらってやられることはけっこうだと思うのです。しかし、それがからみ合った人事の中でやられたらこうなるのだという、これは一番いい証拠だと思う。これは最たる見本だと思う。見本だから、私は、これは一つの例として警鐘乱打することは、ほかの問題について、やはり筋の通った常識的なものの考え方をしてもらわなければ困るということを言っているわけです。  それからもう一つの問題は、監事の方を見ればわかるのです。これは経済企画庁の東北開発室長が監事をやっているわけですよ。言うなれば過去の、何と言いますか先輩がこの会社の監事をやっているわけですから、そこの室長になったり、監理官になったりしたって、今の現役の人が調べることができるわけがないですよ。こういうからみ合わせですよ。こういうからみ合わせの中で、この東北開発株式会社というのは行なわれているわけです。これでは私は国民は救われないと思うのです。その中へ入っている人は、それは利益を得ていいかもしれませんけれども、これはやはり長官少しお考えをいただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  168. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御指摘のようなことがありますれば、むろん必ずしも適当だとは私思いません。ただ企画庁といたしましては、旧重役の方にやめていただきまして、そうして新重役を伊藤総裁を中心にして選任いたしたのでありまして、それ以上、どこに行くなとか行けとも言うわけには参らぬ点もございます。ただ、今お話しのような傾向については、われわれ将来とも戒心していかなければならぬ、こう考えております。
  169. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 それから、これは長官お答えになれるかどうかよくわかりませんが、助成会社の問題なんです。助成会社に投資する場合のその選定の方法はどういうふうにやられておるか。そのことは、見ますと、助成会社の社長にこの東北開発株式会社の理事、監事が就任をされているわけです。監事の方が東北造船の社長をやっているというようなことで、いろいろ聞いてみますと、それは無給で会社管理をやっているような形でやられておるようですけれども、この点でも少し問題があるんじゃないだろうか。通算で今度の三十六年度の決算をやりますと、十二億七千万くらいの赤字が出る。また私は出ると思うのです。砂鉄の問題とか、あるいは土地造成の問題で、まだ隠されているものがありますから。これは今出資が三十億になったのでしょうから、精算すれば二十五、六億赤字になってしまうんじゃないだろうかというふうに思います。中身はよくわかりませんけれども、その中から約二億五千八百万円というものが八つか十の助成会社に出ているわけです。ですから、このまま見ていきますと、助成会社の選定の基準なり何なりというものが、どうもあやしいというような青い方がいいか悪いか知りませんけれども、どうもおかしいのではないだろうかと思うのです。助成会社はどういうやり方をしているかという点について、おわかりになりましたら、お伺いいたしたい。
  170. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一般的に株式会社の運営から申しますと、助成するような会社の首脳者に、その本体の会社から社長が出るなり、あるいは専務が出るということは、これは通例の場合行なわれていることでございまして、おそらくそういうような例を踏襲して株式会社として助成会社に役員を出すということであったと思います。それが正当に参りますれば、連絡上便利でもございますし、あるいは本体の方針をそのまま受け継いで経営をするということが適当な処置として考えられると思います。ただ、そういう意味においてそれが悪用されますれば、悪い点が起こってくるわけでありまして、要はそういう点について戒心して参らなければならないことではないか、こう考えております。
  171. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 りっぱな方だと思うのですが、片方の東北開発の役員では、その経営に赤字を作るために努力をした人たちが、下の助成会社の今度は社長になったとか、あるいは常務取締役になって、またこれがうまくやっていけるんだろうかということが実は私も心配なんです。長官だってそれは同じことだと思うのです。ほんとうに経営能力のあるりっぱな方ならよろしいですけれども、役人の方の経歴は古くても、そしていろいろな面において特技はあるとしても、しかし、経営の面についてはやはりしろうとだという面があるわけですから、そういう者が、ただ単に助成会社だから何とかしなければならぬという形で上からやっている。それで片方の本職の方の東北開発株式会社の仕事を確実にやっていればいいのですが、それすら満足なやり方をしていないという言い方はどうかと思いますけれども、とにかく経営がよくなかったわけですから、そういう点から考えると、私は少し問題があると思うのです。具体的にどういうことがあるかという点については、もう少し事務的な調査をしましてから、またお尋ねしたいと思います。  そこで一体、今後の御計画はどんなふうにお考えになっているのか、そうしてこれほど膨大な赤字が出ている会社ですから、再建計画についてはどういうふうにお考えになっているか、その点について伺いたいと思います。
  172. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま伊藤総裁が、十分なる過去の会社経営と手腕とをもって、そしておそらく三十六年度の決算に当たりまして、できるだけ会社の経理内容を正確にするように、伊藤総裁としては私との話し合いでも、赤字が出たらまずいというだけではなしに、過去の悪い赤字はみんなこの際出してしまって、そうして新しい出発をしようということでございますから、そういう面については十分な検討をされて、今度の決算には当られると思います。そういうような数字が出ました上で、総裁としても、それらの赤字を解消し、あるいは新規事業をやるという意味の再建案をおそらくお作りになることだと思うのでありまして、そういうことに対しては、私ども十分に協力し、また監督して参りたいと考えております。  企画庁の監督というものが、今まで申し上げましたように、事業の大綱についてとか、あるいはその他の監督でございますけれども、これは私見になりますからあれでございますが、民間でありますと、一億円以上の会社というのは、計理士の厳重な監査を受けて経理報告を出すわけですが、そういう意味におきまして、やはり今の法律、あるいはそういうものである程度できるのではないかと思いますし、またそういう点についてもやるべきことがあればやりますし、また将来、こういう種類の株式会社に対して、そういうような方法でもっと厳粛な経理監査ができる方法を必要とするならば、やはりこれは政府全体としてそういう問題を考えるべきではないか。公団とか公社とかいうものと違って、先ほど申し上げましたように、民間の会社というのは、一億円以上のものはちゃんと計理士が監査をやっている。これは証券関係の問題もからんでおるからでもございますけれども、そういうような点もございますから、経理監査というものはもう少し慎重にやるべきではないか。そうして企画庁としても十分な監査をする。しかし、何らかの形で法制化が必要なら、あるいは株式会社として存続させるなら、そういうことも考えるべきではないかというふうにも考えておるわけでございます。
  173. 勝澤芳雄

    勝澤分科員 ただ、長官、あなたの言われたことは、この会社法の中にはっきりしているわけですね。総裁、副総裁人事は内閣総理大臣がきめるのだ、こういうことになっているわけです。それから理事、監事は株主総会できめますけれども、これは九八%までは大蔵省、国が持っているわけですから、極端に言うならば国民が持っているわけですから、人事問題については明確になっている。そこへ持ってきて、会社の業務を監視させるために東北開発株式会社監理官を置く、なおまたその監理官は、必要と認めるときはいつでも会社に命じて業務に関する諸般の計算及び状況を報告せしめることができる、こうなっているわけです。ですから、これは理屈を言えば、監理官がほんとうにこの法律に従ってやっておれば、こんなにひどいものにはならなかったじゃないか。セメントのから売り、それからまだ契約ができていないのに契約をしたと、まず第一番に、そういう虚偽の決算なんというのは不可能ではなかっただろうか。その次に問題になるのは、砂鉄の埋蔵量のこんな大きな相違点は出てこないのじゃないか。土地造成にからむいろいろな問題についても、こんなだれが見ても常識にはずれたような会社にやらせなくてもいいじゃないだろうかということがみな出てくるはずなんです。出てくるはずですけれども、実は、この監理官が監理官としての任務ができなかった。できないということは何かといえば、監理官の先輩がこの監事に入っているわけですから、そうして理事、監事は助成会社の方の役員もやっておるわけですから、こういう点をからみ合わせてみたら、私は、やはりその点をしっかりせぬことには、幾らやってもよくならないと思うのですよ。ですから、やはり何といっても人事の問題ですよ。先輩がそこに働いていて、後輩がその会社の監理をしろといったってできないのはあたりまえです。そうしてこの責任の所在は不明確なまま、今言いましたように、前役員の人たちはみな栄転して、引取会社がみな引き取るわけですから、幾らたってもよくならない。ですから、私は極端に言いますと、十二億七千万円も赤字を出したのは、経済企画庁責任だから、これを弁償しろというくらいのことを言うのが当然じゃないかと思います。それだけの監督権を持っておるはずだと思う。経済企画庁長官でないなら、それは総理がやっておるのですから、総理が、ということになると思いますけれども、そこのけじめがきっちりついてないところに、まだこういう問題が起きてくる。また、起きるようなことになっている。また、伊藤総裁のようなごりっぱな方がやられても、にっちもさっちもいかないところにくるのではないか。あるいは伊藤総裁の釈明書を見てみますと、実にかたい決意固めて、大へんなところに入った、えらいことになったというふうに考えてやられると思うのですけれども、そういう点から、この点につきましては、やはり過去の問題は、その責任なり、その原因を明確にしないでおくことは、ますます混乱をすることだと思いますから、また機会を改めて、今度は詳しく、実情について、まだ伺ってない点について指摘をいたして参りたいと思います。長官も、おれがならぬ前の話だということではあるけれども、やはりしりぬぐいはやらなければならぬわけですから、しりぬぐいをきっちりされて、三十六年度の決算が出て、三十七年度のこれからの方針をお立てになるときには、まだ残っているもろもろの分も明確にされて、今後のことをやるようにしていただきたい、こういうように要望しておきます。
  174. 赤澤正道

    赤澤主査 経済企画庁はけっこうです。  それから、農林事務当局は、質疑者の川俣さんがちょっとおりませんので、このまま待って下さい。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕
  175. 倉成正

    倉成主査代理 川俣清音君。
  176. 川俣清音

    ○川俣分科員 まず食糧庁長官にお尋ねいたします。  第一の質問は、三十七年度産米の政府買い入れ価格の予算上の算定の基礎を明らかにしてほしいと思うのであります。第二には、農業パリティ指数の推移から見ました推定さるべき三十七年度の米価はどのぐらいになるであろうか。第三は、物価の変動率をどのように見ておられまするか。第四番目は、国庫余裕金の利用率、活用度合いをどのように三十七年度は見込んでおられますか。次の問題は、三十五年並びに三十六年度の石当たり金利並びにその総計ですか、金利負担部分がどのくらいであるか、三十七年度はどのくらいの金利負担を見ておられるのか。大体これを先にやりまして、徐々にお伺いいたしたいと思うのです。
  177. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 第一の問題は、予算米価の単価でございますが、これは三十六年度産米について一−四等についての見込み価格をそのまま予算単価に見ております。それから第三点の、パリティとの関係で米価がどのくらいになるかという御質問でございます。米価は、パリティだけできめるのでありませんので、どのくらいになるか、ちょっとわかりません。それから第三点の物価の動向でありますが、当時よりは上がっております。それから第四点は、国庫余裕金は三十七年度は二五%であります。その次の三十五年、三十六年の金利でございますが、三十五年は石当たり二百七十八円、三十六年のただいまのところの見込みは約二百三十円、それから三十七年度では三百二十六円ということでございます。
  178. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでお尋ねいたしますが、三十七年度の政府買い入れ価格は三十六年度の米価をとった、こういう御説明でございますが、大臣は世間にたびたび、出産費及び所得補償方式によってその年々の米価をきめるのであるからして、上がればこそという事態はあるかもしれぬけれども、この物価の状態においては下がることがないのだという声明をいたしております。これは御存じの通りだと思います。そういたしますると、三十七年度産米の政府買い入れ価格は、生産費及び所得補償方式によって算定される額を基準として定める、こういうことだろうと思うのです。その額は、米販売農家の反当平均生産費について、その家族労働を都市労働賃金によって評価がえをしたものを、米販売農家の平均反収より標準偏差に相当する数値を控除した反収で除して算定する、ということであろうと思いますが、それは間違いでございますか。
  179. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 その通りでございます。
  180. 川俣清音

    ○川俣分科員 その通りだということになると、その通りで予算米価を算定いたしますと、三十六年度の米価にはならないと思うのでございます。そうじゃないですか。
  181. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 ただいま川俣先生から言われたように、いろいろな要素があって米価がきめられるわけでございます。ただいまのところ、今後三十七年産米の米価をきめる要素というのは、いろいろ浮動的なものでございます。そこで予算の単価としては、三十六年産米についてきめました米価についての一−四等の平均をとって単価にしておる、こういうことでございます。
  182. 川俣清音

    ○川俣分科員 三十七年度の予算を組むのでございますから、予算を組む時点におきましては、資料等が十分整備されておらないということはあり得ると思います。当然なことだと思います。しかし、大体の物価の動向、労賃の動向あるいは農業パリティの動向等から推察いたしまして、どの程度になるであろうかという推定ができないということではないと思う。これはすべての予算編成上のことでございますけれども、必ずしも政府の見積もり通り物価が動くか、あるいは経済動きが政府の期待するようなものであるかどうかは別にいたしまして、三十七年度の予算を組むときには、前年の八月末で大体予算の編成の方針がきまるわけであります。従って、もちろん推測が加わるのは、これは当然のことだと思います。しかし、その推測から推して、三十六年度と同じということは言えないんじゃないか。予算上適当な目安をつけておくことが、予算を組む本質でなければならないと思うのです。三十六年度と同様だというような予算を組むから、赤字が出るとか出ないとかいう問題が起こってくるわけです。別に政治的な問題が発生してくるわけです。そこで大体金利負担だけでも増額になるのでありますから、従来と同じものでありましても、金利負担だけ違うと今説明されましたね。そうすると、その分だけでも修正されていなければならぬ。三十七年度の国庫余裕金の利用率から言いましても、金利負担部分が石当たり高くなる、今こういう説明でしょう。去年三十六年度は二百三十円、三十七年度は三百二十六円になるという想定ができている、これで計算されたらどうでしょう。少なくとも材料のあるものだけでも入れ込んで三十七年度の米価を算定するということが、国に対して要求する予算上の処置というべきものではないかと思う。また国会の審議を経るにいたしましても、三十七年度は大体この程度であろう。その通りになるかならないかは米価審議会そのほかの審議機関を経なければならないけれども、この程度であろうという想像をつけておくことは、予算編成上の当然の義務だと私は思います。従来はあまり物価の変動もなかったし、従って前年度の例をとってみても、あまり大差がないという想定で、前年度をとってきたことはありますよ。これは必ずしも悪いとは言えない。しかし、こういう物価の変動、労働賃金の変動が激しく、金利負担の部分の変動が激しいというときには、当然予算上の措置を講じておくべきがしかるべきではなかったかと思います。このくらいの答弁は、長官はできそうだと思いますが……。
  183. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 今おっしゃる御趣旨はよくわかりますが、三十七年度の予算単価で米価を幾らという場合に、単に予算編成時に予想して、物価がどうなるかとか、あるいはその他の要素がどうなるかということは、不確定要素で、なかなかわかりかねると思うのです。むしろ、ただいま組んでありますようなものを予算単価に組み込んでいくという方が実際的であり、その方が現実に近いものになり得るという考え方もあるわけであります。そういう意味で、三十六年産米の値段を予算単価にしておるのでございます。これで一向差しつかえないというふうに考えております。
  184. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは従来は物価の変動または評価がえをする労働賃金に、そう大きな移動を見出すことができない、あるいは物価がかなり下がることもあるし、パリティを見ましてもかなり上がったり下がったりするから、むしろそういう変動の強いものよりも、過去のものを使う方が妥当だということは言えたと思うのです。しかし三十五年度から三十六年度にかけまして、物価の変動率あるいは都市と農村の賃金の上昇率あるいは農林省がとっております小規模の製造工業の低貸金部分というものは、非常に高騰を示しておる。こういうようにあまりにも激しく物価の変動が現われてき、労賃の変動が現われてきた。あるいは政府自身が期待しない以上の経済の成長が出てきて、何とか手を加えていかなければならない、こういう事態になっているのじゃないか。あるいは農業の構造改革もやらなければならないというふうに、農林省全体が変化を認めているのではないか。米価の算定だけは、なるべく変動から離れていたいというふうに——農林省の政策全体が近代農業に発展しなければならないという方向に持っていかなければならない、こういう進み方をしておるときに、米価の算定だけはおれのところは別だ、これは農林省全体からいいまして卑屈な算定の方式じゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  185. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 前にお答えした通り、川俣先生のそういうお考えもあるいはあるかもしれませんけれども、私どもは、先ほど来申し上げたような考え方で誠意を示す、それが最善の方法だというふうに考えておるわけであります。
  186. 川俣清音

    ○川俣分科員 では一つ大蔵省にお伺いしたいのですが、閣議で予算編成方針がきまり、そうして省議で予算編成方針がきまったら、前年度を基礎にして将来を見込むというのは幾つございますか。新しい産業構造に従って予算を組む、従って新規要求などもこれをを押えるのだといろいろな方針を出しており、従来と同じだ、変更がない情勢だということで予算を組まれたのはないはずだと私は思う。あればこれ一つじゃないかと思うのですが……。
  187. 相沢英之

    ○相沢説明員 米価の問題は、一つの予算単価の問題でございますが、前年度と同じ予算単価で組んだものは幾つあるか。これは数えたことはありませんですが、考え方としましては、これは従来からもそうでありますが、私どもが予算を査定します際には、今後における物価の上昇その他というものは見込まない、これは相当上がることもありますし、下がることもある、そういった変動要素がございますものですから、建前としましては前年度の予算単価ないしはその後はっきりと上がっているものにつきましては、その予算編成時における物価というものを基準としまして予算単価をきめる、こういうやり方でやっております。
  188. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうだろうと私は思う。たとえば建設省でも、大蔵省が承認されましたPWを見ましても、前年と同じだということにはなっている。賃金の上昇というものをどの程度に見るか、率がいいか悪いかは別ですが、PWも毎年その事態に応じて、やはり年々の率を見て、それよりも先を越さないように、先走りせぬようにということは心がけておるかもしれませんけれども、妥当なものをやはり出しておられると思う。そうじゃないのですか。
  189. 相沢英之

    ○相沢説明員 もちろん、予算単価を作ります際には、それで実行することをまず一応の目安としましてやりますから、すでに予算編成時におきまして、前年度の予算編成当時よりも物価の上がり方が明白でありまして、また今後における見通しにおいても下がるというふうに見込まれない、たとえば労賃というようなものにつきましては、当然予算編成時における時価を参酌しまして予算単価をきめるということであります。
  190. 川俣清音

    ○川俣分科員 財政法に基づきましても、一方においては、それに見合ったところの国の税収というものがあるわけです。税収に見合った歳出が当然考えられるわけですから、税収というものは、経済の成長というものに裏づけされたものが考えられる。しからば、税収というものが考えられるからには、物価の変動というものを当然見込んでおると見なければならぬ。それでなければ税収は出てきません。自然増収があるか、むしろ予定より減るかということは、当然物価の変動というものが織り込まれておる。そこまで見なければ税収の見通しがつかないはずだ。そういう意味で、歳出の点につきましても、四半期ごとに物価とにらみ合わして歳出をするという、きめのこまかい歳出の方法まで講じられておるはずです。そういうことになりますと、八月の時点、昨年の決定時とどれだけの変動があるであろうか。この予算を組んで、あとで追加しなければならぬというような事態が起こるか起こらないか、そう大きな変動のないようにしておくということが予算編成の基本でなければならないと思うのです。大きな変動が起これば、すぐ補正予算を組むのだという安易な考え方ではなしに、そういう予想せざる事態は、できるだけ避けていこうというのが健全財政の基本だと私は思う。そうすれば、八月の時点及び現在の時点において、この程度であろうという予想を積んでおくことが、私は予算編成のやはり基本であろうと思うのです。従って、大蔵省が将来の米の消費事情がどうなるであろうか、あるいは農業構造はどうであろうかということを、予想しておられるのか。あるいは食管制度は、どうしたならばよろしいかという意見も出ておるわけです。これはみんな将来を見通しての御意見でしょう。そうではないでしょうか。食管制度はどうあるべきかということを、将来のことを見通しての御意見じゃないのですか。過去のことを言っているのですか。将来を見通しての意見だと思うのです。そうすれば当然、米価はどうあるべきかという意見が、なければならぬはずだと思う。この点、食糧庁長官と大蔵省から、一つお伺いいしておきたい。
  191. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 たびたび先ほどから申し上げたことを繰り返すことになりますが、いろいろその変動の要素があるわけです。なかなか予想しにくいので、予算単価として取り上げるには、あのような方法がいいというふうに私ども考えておる次第であります。
  192. 相沢英之

    ○相沢説明員 予算単価につきましての、予算編成の際の基本的な考え方は、まさに今川俣先生のおっしゃる通りでございまして、私どももそういった考え方でやっております。ただ米価の問題につきましては、これは先ほど食糧庁の長官からも御答弁がありましたように、現在はパリティできめるということではありません。これには労賃の上がり、資材費の上がり、片や反収の増加、その他いろいろな要因を勘案して決定するようになっております。そういうことですから、今後において、そういった要素がどういうふうになるかということを、的確に見通すことは非常に困難でございます。そのことと、それから実際問題としまして、これは一−四等平均の米価で組んでおりますが、現実には五等、等外をも買う。従ってこの通りに米価が決定したとしましても、実際の結果はこれよりも下がってくる、こういったような要素もありますものですから、米価を算定、食管の予算を組む際に、前年度の決定米価をとるということが、特に不都合であるというふうに感じられませんものですから、これを採用しておるわけであります。  それから、ほかのたとえば建物の単価等につきましては、鉄筋コンクリートの建物を作る場合に、一定の資材、労力というものはそう変わるものではございません。従いまして、そういう要素について時価がすでに上がっている場合には、当然ある程度の価格というものがわかるわけであります。従いましてそういうものにつきましては、その当時の時価というものを勘案して価格を決定する、こういうような方針でやっております。
  193. 川俣清音

    ○川俣分科員 私は、根本的に言って、あとで補正を組まなければならないような措置は、できるだけ避けるのが本来の姿だと思うのです。初めから補正でまかなうのだということを、従来の慣習だからということでやっておることは、もう今の事態では許されないのではないか。初めての、予測しない事情でできた事態ならば、その年度において補正を組むということはあり得ると思います。神様でない限りあり得ると思うのです。そのために補正というものがあるのだ。初めから予測されている補正などということは、あるべきことではないと思うのです。これは原則だと思うのです。時間がないからわざわざ詳しくは説明しませんけれども、何といってもこれは本筋だと思う。これは初めから予想されているのです。今年はこのくらい上がるだろうということは予想せられておる。そうすれば、たとえば時期別格差というようなものを整理すべきか、整理すべきでないかということも、当然予算編成のしにおいて問題となっていいはずだと思うのです。これから問題になることは、国の予算書の中には出ていないでしょうけれども、やはり関係者の中には、有力なそういう意見があると、こう説明しておられる。そういう意見があるのです。あればあるなりに、予算編成のときにあたって、これを検討しておくべきじゃないか、検討しないで、あとになってから問題を解決しようというところに、むしろ混乱が起こるのではないかと思う。これは大蔵省、どうしたのです。見のがしておいて、寛大にしておいて、あとになってから修正を加えるということは、かえって予算を混乱せしめるゆえんだと私は思う。これは無責任な予算だと思う。あればあるなりに、問題として当然取り上げていくべきじゃないか。どっちになるかそれは別ですよ。これは議論になる。なさらないのか、あったのかということなんです。なさっておればなさったなりに、こういう理由で今年は従来通り尊重することにした、これならばわかりますよ。それならばわかるのです。そうではなしに、ただあいまいに、解決がつかないから去年通りだということでは、非常に無責任だというふうに思うけれども主計官、どうなんですか。
  194. 相沢英之

    ○相沢説明員 お話の前段の、補正予算を組むというつもりで予算を組むのはけしからぬじゃないか。まさに私どもも、補正予算を組むという前提で三十七年度の予算を編成するという考え方は、持っておりません。当然米価が上がるじゃないかというお話に対しましては、これは先ほど申しました通り、いろいろな要因が、ございますから、はたして上がるものか、またどの程度上がるかということは今後の問題でありまして、予算編成時において、これを想定して組むことは、はなはだ困難ではないかと思います。  後段の、時期別格差等、これは当然問題にすべきものであり、またそれに対してどういう考え方でやっていくかということにつきましては、もちろん私ども財政当局としまして、時期別格差等について意見は持っております。またその意見を、米価の決定の際に申し上げたこともございますが、ただ何分米価の問題は、先生十分御承知通り、そう簡単にきまるものではありません。予算編成の非常に忙しい時期に、たとえば時期別格差一つをとりましても、これを削るとか落とすとかいう議論をやっておりましても、とても果てしなく、間に合うものではございません。また与野党の皆さんが時期別格差を削ってもけっこうなんだという結論を、予算編成時にはっきりしてきますれば、私どもとしては別に異論はございません。また米価は、いずれにしましても米価審議会におきまして、十分御審議を願うという建前になっております。予算編成時におきまして、早急にそういうふうな問題を、一方的に政府が取り上げてきめて予算を組むというような考え方についても、これまた川俣先生から御異議があるのじゃないかと思います。
  195. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは何といいましてもこの場限りの答弁ですね。大蔵省は国の予算の編成権があるのだということを固執しておられまして、予算委員会におきましても、一部の修正にもなかなか応じないというほど厳格な態度をとっておられるわけです。それには確固たる基礎があるという自信の上に立っておられるのだと思う。ところが米価に限っては、確信があるかといえば、食糧庁の長官を初め、相沢主計官も、従来はこうであったから、こういうだけの説明です。どうなるかわからぬ。十分なファクターがないのだ。ないのだと言いながら、金利だけはどうして出てくるのです。今金利は三十六年度は二百三十円で、三十七年度は三百二十六円を想定しておる。ファクターが出てきているのですよ。とにかく出てきているのです。出るものもあるのです。たとえば包装の方を見ましても、相沢さん、御承知でしょうけれども、毎年、過去三年の平均ではなしに過去三年のうちの中庸の年をとる。この中庸というのはほんとうはいい加減なんですが、これから聞いていきましょう。一体三十三年から三十五年の三年間のうちで、中庸の年というのは何年をいうのですか。あるいは三十六年度の米価決定の平均包装代の算定は、三十三年から三十五年をとるのだ、それから三十五年の包装代は三十二年から三十四年の中庸の年をとる。三十五年に使いました平均包装費の中庸の年というのは、何年を使っておるか。また三十六年度米価決定にあたりまして、包装費を算出するときの中庸の年というのは何年をさしますか。説明はそうです。平均じゃないのです。三年間のうちに中庸の年をとる、とこうなっている。そうでしょう。
  196. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 川俣先生の方が私よりお詳しいのですが、包装代については、過去三カ年の各種包装の出回り比率の平均をとっておるわけです。等級間格差の方は、これも御承知だと思いますけれども、過去三年間の作柄の中庸の年ということは、全国平均というようなことでなしに、各県別にそれぞれ中庸の年をとるということで、その出回り率でやっておるということでございます。
  197. 川俣清音

    ○川俣分科員 私もちょっと言葉が不十分だというよりも、間違った点があります。確かに包装代は平均で、等級間格差が中庸の年、これは私の方の間違いでしたから、訂正しておきます。  そこでこれを推定いたしますと、もちろん単価が上がる場合もございますが、最近の動向を見ますと、グループにして見るとだんだん二重俵が減って参りまして、複式俵よりもかますの出回り率が多くなってきている。次に複式俵という傾向が出ている。これを三十六年のあなた方の推定——これは盗み推定でございまして、実は公表ではございませんので、あらかじめ断わっておきますが、それで参りますと、百分比に直して二重俵は一五%、複式俵が五三%、かますが三〇%。かつて二二%であったかますが三〇%に上がってきております。従って、二重俵がかつて一七%ぐらいのが、昨年は一五・九%というふうに下がってきておりまして、これが三十六年度の実績——今の実績ですが、現状でまだ幾らか出回る率もございますから、正確ではないにいたしましても、大体一五%程度ではないか、こう見られるわけです。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕  こうなって参りますと、私の計算によりますと、三十六年度の米価決定にあたりましては、三百十六円と見込んでおりましたものが、三百十三円になるということになると思うのです。そのように、現状でも動かないファクターがあるのです。今、政府の買い上げ数量をもって計算いたしますと、大体出てこなければならぬ。これから出てくるものはごくわずかなものです。大した影響を与えないものだと思います。そうすると、出てこないということはやらないということであって、出てこないということはおかしいと思うのですが、長官、どうですか。
  198. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 包装代等で大きく変わりのないものもございましょうし、あるいは変わりが出てくるものもございましょう。いろいろあると思います。そういうことであればこそ、私が先ほど申し上げたような計算をしておいた方がいいということでございます。
  199. 川俣清音

    ○川俣分科員 そんなことはおかしい。変わらないものは何も変わった方がいいということを言っているのじゃない。変わり得るものがあるんだ。現に変わりつつあるものを、あなた方把握しておられるのです。現につかんでおられるものなんです。人が計算すべきものでなくて、あなた方の立場で、従来買い付けたものの、二重俵はどのくらい、複式俵はどのくらい、あるいはかますはどのくらいということが大体わかっておる。どのくらいの比率になるか。一五・〇一になるか〇二になるかということはあり得ると思う。大づかみのものはわかっておらなければならぬはずです、現状において。十二月の末ごろになると大体わかっておる。一、二、三月に出てくる政府買い入れ数量というものは少ないでしょう。千分の一にも当たらぬですよ。そうすると大体のところが出たと見てよろしいんじゃないですか。どうせ一五・六であれば一上げるとか、一五・四であれば下げるというようなことはやっておるのです。一五コンマ幾らという、コンマ以下の方が幾らか違ってくるということはあり得ると思いますよ。あると思います。そのことは、すなわち三十七年度の米価の決定時にあたって、計算し直してよろしいんだと思います。たとえば都市との賃金の比較をとる場合でも、資料が出てこなければなりませんから、出てきたところでとる、そういう約束はあると思います。しかし、現在賃金上昇の傾向というのがある。少しくらいなものでなくして、大きいものがある。大きいものを集めている。それが米価のマイナスになるかプラスになるか別といたしまして、変動の非常に大きいものがあれば、下がる方にもあるだろうし、上がる方にもあるだろう。それで大体どういう結果が出るかということを見通しておくことが必要じゃないか。そうして今後の米価の決定にあたっては、こういう予測せざるものが起こってくるのか、予測したような傾向で出てくるのかということを、反省してみることが必要だと思うのです。ただ、いつでも出てきたままだということになれば、何のために食糧庁がこれだけの機構を持ってやっておられるのか。ただ、米価算定の時期だけに全力を上げるためにやっておられるのか、そうでないでしょう。一年の行政をするための運用の機関である。その間に、動向というものがどちらに向いておるかということを把握しておることが、食糧庁としての責任のある行政だと思う。そういうところから、あるいは統制をはずしたらいいか悪いかというようなことも、こういうものを取り扱った中から出てこなければならぬものだと思う。ただ政治的によかろう、悪かろうではならないものだと思う。それだけに、常に米価のあり方等について検討しておく必要があるんじゃないか、こう思うのです。このことは、大蔵省としても、ただ廃止した方がいいというような軽率なことはやらないで、将来の米価の方向としてはこうなるだろう、もう三年後にはこうなるだろう、それにはどうしたらいいかということを考えるべきだと思う。あるいは安くなる傾向にあるのか、あるいはすべての物価と並行して高くなる傾向にあるのかという把握の必要からも、現時点においてはどうであろう、決定時においてはどういう変化をするであろうかということを把握しておく責任が、長官にあると思う。長官は計算ができないかもしれない。しかし、部下を指揮して方向を見出すという責任は、私は幾ら新しくてもあると思う。むしろ新しい方が、そういうことを言い出しやすいのだと思う。長官、どうですか。
  200. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 川俣先生のおっしゃる通りだと思います。しかし、おっしゃることと予算単価の積算ということとは、また別問題ではないかというふうに考えております。
  201. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでは私は、もっとこまかいことを言わなければならない。こまかいことを言わないと、なかなかあなた方は理解しないからこういうことになると思うのですが、これは相沢さんにぜひ聞いておいてほしい。大蔵省がいろいろな、予算で査定する、あの能力というものは大したものだと思っておるのです。人間わざではなかなかできないような査定をよくやられると思って、感服しておるのですが、それならば、米価についてももう少し検討されたらどうだろうかと思うのです。  そこで、さらにお尋ねしますが、戦後における各種の食糧、農産物の価格の対戦前倍率表を見ますと、比較的高いものとして大豆、お茶、米などがあるということは皆さん御存じだと思う。それに反して低いものは麦類、イモ類、野菜、果実、畜産などがあるわけですが、今後、成長農業だといわれております野菜、果実、畜産物などは、戦前との倍率を見る場合に、比較的上がっておらないという統計が出ておりますが、これは需要は非常に増してきております。需要の増大に伴った価格形成ができていないのが農産物の特質でもあるようです。普通ならば、需要が増してくれば増すにつれて価格が上がってくるということが、自由経済の中ではいわれておるわけです。また、抽象的に説明するときには、需要の増大するものが利益が多いのだという説明もわかりやすく説明されておるわけです。ところが必ずしもそうでもないわけです。そこに農産物価格形成の非常なむづかしさがあると私は思うのですが、その点について畜産局長並びに振興局長の御意見をこの際伺いたい。
  202. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 先生のおっしゃる通りだと思います。
  203. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 青果物につきましても、自由な価格でございますので、今、御指摘のような背景のもとに、価格はできたものだろうと思います。
  204. 川俣清音

    ○川俣分科員 それでは大蔵省は、普通は需要が増せば、需要に応じた価格形成ができるんだというふうに、実はばく然とお考えになっておられると思うのだが、統計をごらんになると、私が今説明したように、必ずしも需要に応じて価格が上がっておらないという——生産ももちろんふえておりますけれども、それに倍して需要がふえておるのに、価格は、むしろそれに伴った価格を形成しておらないという事実がありますが、これを、相沢さんはにらみのきくところで、どういうふうににらんでおりますか。
  205. 相沢英之

    ○相沢説明員 どうもあまり勉強していないことをお聞きいただくものですからあれですが、私個人的に考えまして、野菜、果実、畜産物、そういったものの需要が相当強くなりましたのは、やはり比較的新しいのじゃないか。戦後しばらくの間は、もっぱらいわゆる主食類に対する供給が不十分であったために、また需要が多かったために、こういうものの価格というものは、相当顕著に推移しておるけれども、副食的なものは、なかなかそこまで需要者として手が回らないといったようなことがありまして、値段が上がらなかったのではないかと思います。これは需給関係できまるものでありますから、需要が相当強くても供給がこれに追いついていけば、なかなか上がらないということにもなります。ただ最近の傾向としましては、野菜、果実類は、価格の上がりはこのところ相当著しいのではないか、また将来の需給見通しましても、こういう今後における成長農産物は、他のものに比して、所得の伸びに従って需要の伸びる率が相当高いために、供給が追いつかないものは、相当価格の面でも上がってくるのではないかというふうに考えております。
  206. 川俣清音

    ○川俣分科員 大蔵省、なれないからそういう答弁もやむを得ないと思いますよ。しかし経済界の動きをかなり注目されておるのですから……。これはこういうふうにごらんになったらどうでしょうか。神田市場なり築地市場に、農産物の集荷状態によって、大根はたくさん入るから大根の値は下がるということではなしに、野菜全体の入荷率が高ければ、それに押されて比較的品不足のものであっても価格が上がらない。入荷率が非常に農産物の価格に影響しておるということになると思う。ですから、一体築地市場にどのくらいの野菜の入荷率があったかというととが、今日の相場に非常に影響しておることは御承知だと思う。だから品物が不足なものでも、他の野菜が大量に入荷いたしますと、品不足だから高いということにはならない。この品不足の場合は特殊点に、向けられるということで、それはある程度高くなるかもしれないけれども、消費価格が高くなるだけで、委託生産者に対しての歩戻りはそう上がっておりませんことは御存じの通りですね。入荷が少なければ、特殊地帯に売りさばかれて、消費価格は上がりますけれども、それによって生産者に歩戻りはして参りません。入荷率が非常に低いときには歩戻りが非常に多いという結果になっております。従って、果実でも同様でありまして、他の果実がどのくらい入荷したかによって、わずかに入った果実も、それに相対して押されて価格が下がっていく、他に入ってなければそのものは全体として高くなる、こういう傾向を持っておる。これはあなた方のところで十分調べて知っておられるはずです。今、私ここで出すと時間がかかるでしょう、だから出さないのですが、そこで農産物の価格というものは、大蔵省で考える価格のようにはいってないということさえ、相沢さんにわかっていただければよろしいのです。そこで、そういう観点に立って、米価も見ていただかなければならないのだ、こういう意味なんですが、それはこじつけだときっと相沢さんは言うであろうから、もう少し米価について詳しく説明をしなければならない、こうなるんです。わかっていただければ説明しないのですが、おそらく、わからなそうな顔ですから説明しなければならない、こう思います。  ここで農業生産の相対構成の変化を見ますると、この統計では耕種と畜産に分けております。耕種の中には米、米以外の穀類、豆類、果実、野菜、こうなっておりますが、一九三六年から三八年は、農業の総合を一〇〇といたしまして、見ますると、耕種の総計では一〇三・二、畜産が九三・四であった。それがちょうど戦争の直後一九四五年から四七年を見ますると、農業総合を一〇〇として、これをさらに耕種別に見ると、総計が二七・六で、そのうち米は一二四・三、米以外の穀類が九七・一、豆類が九〇・九、果実が八三・八、野菜が二三七・二、野菜は一九四五年から七年が一番生産の上がった年でございます。それに対して畜産物はどうかというと、三六・四と一番生産の下がった年です。それを最近時の、これは統計が必ずしも当たるかどうかわかりませんが、一九五七年から五九年を見ますると、米が九五・九、米以外の穀類が九二・三、豆類が一五・三、果実が一八〇・八、野菜が一一八・九と、野菜の生産は徐々に少しずつ下がりぎみでございますが、畜産は非常に膨張いたしまして、二一二・九。これは昭和の十一年から十三年、一九三六年から三八年を基準に見ますとそうですが、最近時の、いわゆる農業と他産業とが均衡された年だと言われる昭和二十五年から七年を基準にして見ますとどうなるかというと、昭和二十六年の畜産物が一一二・五が二十八年には一四八・一、三十年には一八一・四、三十二年には二一五・四、三十四年は、これは概算だとなっておりますが二四九・三。野菜はどうかというと、二十五年から七年を基準にしておりますが、二十六年は一〇八・六、二十八年は一三二・九、三十年は一四七・八、三十二年は一六六・八、三十四年は一七三・三、三十五年になりますと、これは野菜の方がやや横ばいになってきております。それで三十四年、一九五九年だけを比べますと、畜産物は二四九・王、果実が二五〇・〇、米は一八一・一、野菜が一七三・三、農業総産出額が一七〇・四となっておりまして、米の生産は他のものと比較した場合におきましては伸び率がとまってきておる、減ってくるという傾向にある。一体今後十年間に、米の生産はどうなるであろうかということの予想も立てていかなければならない。そういう場合に、一体どの程度に価格を形成するならば、現状のままで続くのか。他の産物よりも非常に価格に敏感なのが米でございます。徳川時代から、米が農産物のうちで一番価格に敏感なる作物でございます。ところが果樹も商品生産でありますから、敏感だと言われておりますけれども、消費価格が高過ぎるというと——生産者価格も高くなれば影響を与えますけれども、小売価格だけを見て、高くなったから必ずしも生産が伸びるというふうにはならないのです。ところが米、従来から生産者価格と消費者価格の間の、何といいましても一番中間経費の少ないものであります。自由経済時代におきましても二六%程度であったのではないかと思います。そういうふうで、統制になりますとさらに中間経費が減ってきておる。まだ縮小しなければならないと言われておりましても、一番生産者価格と消費者価格の間の、中間の経費の少ないのが米であります。それはなぜかというと、一つは価格に非常に鋭敏な性質のものだということでございます。従って価格形成がどのようにされるかということによって、今後の米の生産額にどのように影響するかということを検討しておかなければならない問題だ、私はそう思いますけれども、長官はいかがですか。
  207. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 非常にむずかしい問題だと私は思うのであります。価格と米の消費あるいは生産との函数関係がどうなるか、こういう御質問だと思いますが、なかなかむずかしいことで、私ども研究しなければならぬとは思いますけれども、むずかしいことがあると思います。むしろお教えいただけたら参考にさしていただきたい、こう思います。
  208. 川俣清音

    ○川俣分科員 今与えられた時間では、教育するだけの時間が実はないのです。いずれ別な機会に御懇談申し上げることはあり得ると思いますが、しかし私ども、従来から、徳川時代からの物価並びに賃金との比較、あるいは米の消費構造の変化というようなものを、かなり統計的に調べておりますから、それらの問題についていずれお話をする機会があると思います。  そこで、ちょっと戻りますが、振興局長、先ほどほかの委員の質問に、果樹の生産を伸ばすために、今後価格維持の上からいっても、できるだけ加工に持っていかなければならぬ。抽象的にはその通りだ。抽象的には満点だと思うのですが、現実にどうするかということになると、三十点つけられないのじゃないかと思うのです。外国のことをここに例に出すまでもなく、果実を、長い期間保存するとすれば何が一番いいかということになると、アルコール、果汁にすることが一番保存率が高い。これはもう御承知だと思う。果汁にする場合に税金がかかるということになりますと、せっかく加工がよろしいのだということで、ここで百点あげましても、実績が上がらない結果になると何にもならないと思うのですが、その点についていかがお考えですか。
  209. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話通り、生果で価格安定をするということについては、長期的に見ますとなかなかむずかしいのでございまして、やはり加工品の量がふえればふえるほど、市場の価格は長期的には安定すると考えられるわけであります。そこで今後の一つ方向として、果汁を大いに伸ばすべきではなかろうかというように御指摘もありましたが、私もそのように考えておるわけでございます。今お話の中に、一番貯蔵性のあるのはアルコールだというふうなお話がありましたが、私まだ、ブドウ酒とか直接アルコール行政につきましては、大蔵省の方でおやりになっておりますので、勉強をそこまでいたしておりませんけれども、果汁自身につきましては、今回の物品税の改正につきましても、特に果樹振興という見地から、従来果汁の含有率によりまして税率がそれぞれ設けられておりました。それを今回果汁四五%含有のものについては、従来五%の課税のものを免税とし、二〇%の含有率のものは従来一〇%課税になっておったものを五%に下げるというような措置をとっていただいたわけでございます。従いまして、やはり果汁の加工につきましてはずいぶんいかがわしいものも出ておりますけれども、できるだけ優良な製品、果汁含有率の高いものの需要の増進をはかって参りたいということで、せっかく努力いたしておる次第でございます。
  210. 川俣清音

    ○川俣分科員 せっかく努力中だと言われましても、努力ということになると、わかりやすく言えば、どうしてその保存度を高めるかということが努力だということになると思うんです。そうすると、なまの性質から発酵したものに変えるということだと思うんです。これはしろうとでもそうだと思う。ことしできたものを、一年なり一年半なり長持ちさせて保存させるということ、それによって果実の需給のバランスをはかっていく、こういうことだと思うんです。長持ちできなければ対抗できない。すぐ消えてしまうものでは対抗できない。それでもなまよりはいいということになる。なまよりは果汁の方が、果汁でも発酵さしたものの方が、保存率が高いということはもう明らかなんです。別に科学者じゃなくてもこれはわかる。どのくらい長いかということになると、これは勉強しなければならぬと思いますよ。だけど、アルコールになると大蔵省だということで、あなたは逃げておるわけにはいかない。あなたの方の責任は、保存度を高めていくということなんです。保存率を伸ばすということなんです。そのためにはどうするか、発酵させる、発酵さしたならば大蔵省の方からどういう文句がくるか、あるいは制約があるか、こういうことになると思うんです。制約があれば、それに対してどう解決していくか考えなければならない。そこまでいけば努力したのだということになるけれども、それはおれの方じゃないから知らぬのだということでは、これは努力ということにならないと思う。少なくとも、努力ということになれば、私らですらわかるのですから、その程度のことはやってしかるべきではないかと思うんです。  ここで相沢さんに一つ、あなたの方の所管ではないのですが、今振興局長が答えたように、今人工果汁のために天然果汁が押されぎみです。これは健康の上から、あるいは栄養価の上からいって、必ずしも好ましいものじゃない。また農林政策からいいましても、天然果汁を供給することが、価格の安定の上から、生産を上げる上から適切な施策だ、こうなっておる。そのときに、果汁を発酵させるとアルコール分が出てくるのですから、こういう天然果汁を、発酵した場合に今ではすぐ酒類として取り締まる、あるいはアルコールとして取り締まるということで、取り締まるのはいいけれども、すぐ税金をかけて、これを召し上げるのだということはどういうものか。最も国民が好むもの、しかも果汁については輸入も相当大きいおけです。輸入を阻止する上からも、外貨の流出を阻止する上からも、しかも国内にできる資源を活用する上からも、農協であるとか農業団体が果汁を作るような場合はもちろんのこと、会社がやる場合でありましても、監督を厳重にする必要はもちろんありますけれども、もう少し税率を上げて、需要の上からも、生産を奨励する上からも、もっと考慮していただく必要があるのではないか、こう思うのです。これはあなたの直接の所管ではないのですけれども一つ大蔵省代表のつもりで御答弁願いたいと思うわけです。
  211. 相沢英之

    ○相沢説明員 酒の行政は、私の方の関係でもございませんので、代表して申し上げることはいかがと思いますが、私の個人的な考えを申しますと、確かにおっしゃる通り振興局長も先ほど言われましたように、果樹の振興のために加工度を高める、従ってブドウ酒あるいはブランデー、そういった果実酒にこれを変えて保存することも適当な施策だと思います。ただブドウ酒やブランデーは、税金をただにする、あるいは非常に安くするということになると、酒はビール、日本酒、ウイスキーその他いろいろな種類がございますから、ブランデーとブドウ酒だけはうんと安くして、何ぼでも飲んでいいという形にも参らぬのじゃないか。それだけの理由がありまして酒に対して相当高い税金をかけておる、そういったことからしまして、ちょっと無理じゃないか。農家が国内でとれるものを材料にして作るなら、税制上かげんしてもいいじゃないかとおっしゃいますが、それでは、どぶろくはいかぬけれども、ブドウ酒、ブランデーだけは税金はただにして幾らでも作っていい、そういうことにはやはりちょっとならぬのじゃないかと思います。
  212. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいまアルコールの方の関係で、貯蔵性ということから、特に私の方で、アルコールの奨励という意味でいたしておるわけではないのでありますが、やはりできるだけ新しく需要を開拓するという意味におきまして、今後ともそういう方向に新しい用途が開拓されることは望ましいと考えております。具体的にアルコールにつきましての積極的な開拓というふうな面で、生産者団体からも御要望のあります、たとえばブドウ酒なんかについては、できるだけ純度の高いものを作れば、それだけブドウとしては消費量がふえるわけでございますから、そういう意味におきまして、大蔵省にも、そういう面におけるいろいろの考慮を払ってもらうように努力はいたしております。
  213. 川俣清音

    ○川俣分科員 相沢さんにも申し上げますが、別に無税でなければならないと言っておるんじゃない、やはり農業政策を加味した、しかも健康管理の上からいって、人工果汁でなく、天然果汁を発酵させるということになると税の対象になるのだから、従ってこれをできるだけ低率に——これは監督しなければならぬでしょうから、無税にすると監督がなかなかできなくなるということはありましょう。私は無税ということを言うのではない。やはりいろいろ政策を加味した低率の課税で、今後育成をしていくことが必要ではないか、こういう意味ですから、そのくらいのことは、農業政策を大蔵省で見ておられるその突端にあなたがあるわけですから、農業政策遂行の上から、一つ主税局はこう考えてはどうか、このくらいのことは言えないことはないと思うのですが、どうですか。
  214. 相沢英之

    ○相沢説明員 川俣先生の御意見、よくまた担当の主税局にも伝えまして、検討いたしたいと思います。
  215. 川俣清音

    ○川俣分科員 それではさらに、去年の米価算定の中に資本利子の問題がございまして、借入金の依存率を、米作所要総資金六億三千五百五十七円、米作のための借入金として一億四千百七十円、その比率が二二・三だと、こういうことになっておりますが、この米作のための借入金の中には、政府のいわゆる前渡金というものが入っていないという従来説明だったのですが、入っておるのですか、ないのですか。
  216. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 入っておりません。
  217. 川俣清音

    ○川俣分科員 従来入ってないのがほんとうなんです。私、これをなぜ聞くかというと、長官、実はもう気がついたと思いまするけれども、これに入っておるならば一定の金利を見た、こういうこともいえるのですが、別に前渡金の金利というものを去年初めて十九円算出されまして、これを作業の過程で見た。金利部分としてそこの部分で見たなら別ですけれども、どうも計算は最後になってから大蔵省からの注文だということで、十九円を差し引かれたような計算になったのではないかと思うのですが、この点は長官では無理ですから、経理部長でもいいし、担当からでもいいし、御答弁願いたい。
  218. 松元威雄

    ○松元説明員 それでは、私が当時の担当者でございましたから、私から御説明申し上げます。  確かに先生の御指摘通り、従来概算金利子を控除するということはいたしておりませんでした。それをなぜ昨年いたしたかと申しますと、これは自家労働に資本利子を見ることと相関連してとった措置でございます。三十五年におきましては、先住も御承知通り農林省の米価算定におきましては、農家の自家労働に対しては自己資本利子を見ておりませんでした。それに対しまして三十六年におきましては、自己資本利子を見ることにいたしたわけでございます。これは、従来見ておりませんでしたのは、自家労働は現実に支払われるものじゃなくて、いわば擬制計算である。従って現実に支出するものではないから、それには自己資本利子を見る必要はない、こういう建前でいたわけでございますが、それに対しまして、米価の払われるまでにも、たとえば農家は生活をしなければならぬ、そういうことになりますと、この借入金も観念的にはあるはずではないかというような点もございまして、そこで自己資本利子を見ることにいたしたわけでございます。そういたしますと、片や米の現物を政府に渡す前に概算金を支払う、そういたしますと、その概算金は、実質的にはやはりそういう資金にも充当し得るという観念に相なるわけでございます。そこで、その重複する部分を削るという意味におきまして控除いたした、こういうわけでございます。
  219. 川俣清音

    ○川俣分科員 一応前段の説明はわからぬわけでもない、そう考えられないわけでもない。しかし、これが政府のあるいは内容的には国庫の余裕金であったり、あるいは証券でありましたりして、確かに食糧庁としては借入金の分ですから、農民に貸す場合に利子を取るということもいえないわけはないと思う。あると思います。借りてきた金だからして金利を取るということもあり得てもいいと思う。自己資金じゃないのだし、運転資金じゃないのだから、いずれにしても証券なりあるいは国庫余裕金なりからして借りてきたのだからして、これを貸すのだからその部分金利を取るという考え方、それは不当ではないと思う。そうなってくると、あるいはあなたの前段の自家労働の問題からしても、取っていいのだということは言えないことはない。しかし、考え方によりましては、こういうことになるんじゃないですか。もしも食糧庁の借入金として、貸したのを金利を取るということになると、それだけ金利部分が安くなるということになれば別ですが、農民に貸したのだから、それを金利部分として米価の中に算定して取ったのだから、それだけ金利部分が減るなら別ですが、これは総計からして金利部分は減ってないでしょう。そうすると二重金利になる。総体の操作上からも中間経費として金利を取るし、また貸したものからも米価として金利部分を取るということになると、二重の金利負担をさしたということになりはしませんか。中間経費に金利が入ってなければ別ですよ。それだけ除いておるなら別ですが、中間経費の中に金利部分として、中間経費の金利部分は生産者が負担すべきか、消費者が負担すべきかは別として、生産者もまた負担しておることは明らかです。そうすると、生産者からは中間経費として金利部分を取りまするし、また貸したということによって米価から金利部分を取るということになると、一つの借りたという事実によって二回金利を取られるということになりはしませんか。
  220. 松元威雄

    ○松元説明員 実は二重ということの意味が、一つは米価算定と、もう一つは中間経費の問題でございまして、あるいは私、先生の御指摘の問題を完全に理解してないためかとも存じますが、金利の問題は、これは政府管理の中間経費の問題でございまして、政府が概算金を支払うために、これは政府として金利を負担いたしておるわけなのでございます。それがだれの負担かは別問題でございまして、政府としては確かに糧券を発行して金利を支払っております。しかし、そのことと、米価算定におきまして概算金の金利部分を控除するということとは、一応別問題じゃないか、私はそう思っております。私の方で控除いたしました理由は、自家労働に資本利子を見ることとの関連において、概算金が結果的には同じ機能を果たしておるから、それは二重になるから控除した、こういう理由でございまして、どうも今お話しの、概算金を支払うための金利の二重とは別問題じゃないかと私は思っておるわけでございます。
  221. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは別問題じゃない。なぜかというと、証券発行で金利を貸した部分だけ証券発行を少なくするなら別問題ですよ。金利を払っておるんですね。それだけ前渡金としての利子は中間経費の中から削除されればこれは別問題。同じ資金運営を一方では中間経費として金利部分を見ておる。米価算定にも、その金が利子を払わるべきものとして、米価算定でしておるわけです。それだけ米価を安くするということになっておるのですから、そういう作業をしておられる、算出をしておられる。だから前渡金を払った金利負担というものは米価の中に入っておる。それだけコストを安くされておるということになるでしょう。コストから引かれておるわけでしょう。コストから引かれたということは負担さしておる、米価の中に金利部分が負担させられておって、一方においては中間経費としてまた負担をしなければならない。これは二重の負担じゃないですか。
  222. 松元威雄

    ○松元説明員 同じ答弁の繰り返しになるかもしれませんが、かりに食管会計で糧券を発行しまして、これは金利を食管が払うわけであります。その部分をだれが負担するか、これは別問題であります。かりに完全なコスト価格でございますれば、その場合は消費者に転嫁されるわけでございますが、生産者からその分の金利を徴収する、それと同じ結果になるわけですが、米価を概算分の金利相当分だけ低くする、そうすれば消費者に負担させる分も減るわけですから、従って二重だということにはどうもならないのじゃないかと考えます。
  223. 川俣清音

    ○川俣分科員 これはそうじゃない。たとい消費者が負担をしたにしても、消費者は金利を負担する、また中間経費として負担をするという二重の負担です。消費者の立場からいうとそうなると思う。中間経費として、食糧証券を発行した金利は食糧庁が払うのじゃない。あるいはあなたはこういうことを言うかもしれない。しまいには赤字として負担をしているのだからと言えば、赤字負担のことを言えば、これはまた別ですが、そうでないとすれば、これは食糧証券発行の金利は食糧庁が払っておるのじゃない。だれかに転嫁されておる。消費者に転嫁されているか、生産者に転嫁されているかは別にして、食糧庁以外に転嫁されているわけです。この金利は当然の経費として負担している。そのほかに査定の上から、米価を安くするための作業として引かれている。そうすると、米の中にその負担分があるということになる。そのためにまた消費者価格を上げるということもあるかもしれない、今はないですけれども。そうすると生産者が負担しているということになるじゃないか。これは前から議論をして、あなたの方で検討してほしいというものをいまだに検討しておらないから、もう一ぺん問題にせざるを得ない。検討した結論はと言ったら今のような答弁で、十分な答弁ではない。経理部長、別に答弁することがあったら答弁して下さい。ないでしょう。だからもう少し明確に検討しておいてほしい、こういうことなんです。
  224. 松元威雄

    ○松元説明員 どうも先生と論点が食い違っておるせいかもしれませんが、概算金を、借入金かどうかという御質問があったのでありますが、かりに借入金と観念いたしますれば、その借入金を、政府は証券を発行して金利を負担して金を調達し、それを生産者に貸す、その場合には二重でないはずであります。つまり金利を一方では食管は払ってその負担をする、一方生産者から金利を徴収するわけでありますから、決して二重ではないわけであります。先生の論点が、概算金は借り入れでないという問題の御指摘なら、私は先生の御趣旨は確かに理解できると思います。そこのところが若干論点のギャップかとも存じます。
  225. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは私の言うのとは違う。食糧証券を発行して調達した。金利付の証券発行、金利負担の証券発行ですから、その金利はだれかに転嫁したければならない。赤字にするかどうかは別として、負担しなければならない。食糧証券のほかに、別に金を借りてきたために、この金利負担は米価の中に負わしたのだというなら話がわかる。それを検討してほしいと一年前から言っておる。検討の結果できたかというと、まだできていないから、またあらためて問題にしなければならぬ。これを別個に証券以外に、あらためてまた借りてきた金ならば、金利負担はだれにもかぶせるところがないから、米価に負わすなら負わせる、これもいい。これも一つ方法だと思います。だれに負わすかわからぬから、そこ米価の算定の中にこの金利負担を入れるということならわかると思います。証券発行で借りてきた金には金利負担があるわけですから、すでに金利負担が中間経費の中に盛られておるわけでしょう。これはそうでしょう。先ほど聞いたように、金利負担が入っておる。これは中間経費に入るわけだ。そうすると、生産者が負担するか、消費者が負担するか、だれかがこの金利は負担しておるわけだ。そのほかに同じ借りてきた金利負担のある金を、また米価に使ったからといって、それから負担させるというと二重負担ではないか、こういうのです。
  226. 家治清一

    ○家治説明員 先生の御意見と、それから企画課長の答弁との食い違いの問題は別といたしまして、負担の問題について申し上げますと、御承知のように、三十六年産米価以降は、政府の買い入れ価格と政府の売り渡し価格が全く逆ざやであります。従いまして、御指摘の金利を含めました中間経費は、実は全部財政負担、つまり国の負担でございます。ですから、金利を消費者に負担させた、あるいは生産者に負担させたという意味でならば、そうではございませんで、これは全く政府負担でございます。
  227. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうなるとなおおかしい。逆ざやというのは麦のような逆ざやとは違う。中間経費を入れて逆ざやになるということであって、それ自体逆ざやではないのでしょう。首を振るけれども、そうではないのです。それは違う。生産者価格と消費者価格が逆になっておるのではない。経費を入れて逆になるということはありますよ。それは逆になる。消費者価格、生産者価格そのもの自体から逆ではないはずだ。
  228. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 私の方も、先先のおっしゃることの理解が十分でない点もあろうかと思いますので、よく論点を整理いたしまして、検討させていただきたいと思います。
  229. 川俣清音

    ○川俣分科員 その検討もいつまでにやってくれるか。去年はすみやかに検討すると言ってちょうど一年たった。ですから、これはその場限りになってはいけない。わずか十九円ですけれども、心理的に与える影響は非常に大きいので、二重負担かどうかという説明がはっきりしなければならないと思う。わずか十九円でありますけれども、そういうことをやっておると、すべてがでたらめな計算ではないかという疑惑を持つのでありますから、公正な価格という前に立ってはやはり非難を受けなければならないと思いますので、十分説明のつくようにしなければならない。もう少しこまかく聞きたいのですけれども、大沢長官の勉強を期待いたしまして、この程度にいたしておきます。
  230. 赤澤正道

  231. 小松幹

    小松分科員 藤山長官、お疲れのところまことに恐縮ですが、まだ六時でございますから、時間はまだゆっくりあるらしいので、私は物価対策について政府の方で本気でやっているかどうかということをまずお伺いしたい。オウム返しに本気でやっているとお答えになると思いますが、物価対策はいろいろ出ても、物価を引き下げるという、その引き下げ方の具体的な問題と一体どう取り組んでいるのか、具体的な方策を一つお聞かせ願いたい。
  232. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価に本気で取り組むつもりでわれわれはやっております。御承知通り、三十七年度の物価が著しく高騰いたしますことは、今日の状態では望ましいことではございませんし、また将来にも影響を持つものでございますから、本気でやるつもりでおります。ただ現状におきましては、御承知通り物価というものは、あらゆる経済活動あるいは経済政策の七から総合的に現われてくるものでございまして、何かただ一つだけ取り締まる、あるいは制限するというようなことだけでは、物価対策はできません。従って総合的な物価対策を一応作りまして、そうしてその線に沿って各省それぞれ問題の具体策を願うように実は進めておるわけでございます。
  233. 小松幹

    小松分科員 総合的な物価対策でお尋ねしますが、どういうことが総合的に物価対策としてあげられておるのか、それを一つお聞きしたい。
  234. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、物価対策の総合的な面につきまして、最終的決定は実はまだ内閣としていたしておりません。しかしすでに素案を作りまして、先般の経済閣僚懇談会等においても御議論を願い、御検討を願っておるわけでありまして、さらにもう一回これを開きますれば、ある程度確定的になろうかと、こう存じております。問題は、御承知通り当面の対策もございますが、しかし、長期にわたって施策していかなければならぬ問題もございますので、それぞれあわせて物価対策として考慮していくべきである、こういうふうに考えて、ただいま進めておる、わけでございます。
  235. 小松幹

    小松分科員 ここに二月二十二日に経済企画庁案物価対策の十二項目というのが出ておりますから、これに従って一つ一つ聞いていきたいと思いますが、順序は、ここにあげてありますから、その順序でもいいと思いますが、第二項の「貿易自由化を既定方針通り推進するとともに、さしあたり自由化されない物資についても、消費者物価に影響の多いものは、その輸入を弾力的に考慮する。」というのは、具体的にどういうことを意味しておるのか。
  236. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 貿易自由化を既定方針通り推進するというのは、先般政府がきめました十月末までに九〇%の自由化をやる、この方針に向かって進もうということでございます。もちろんこれは、自由化をすれば国内で作る者も外国と競争するという立場で物を作りますし、またそれが非常に高ければ外国から入ってくるわけでございます。もちろん物価の引き下げに好影響があるということはいえるわけでございます。それからその次の、しかし当面自由化されないものがありまして、こういうものでも消費者物価等に影響するようなものであって、それが自由化されない、しかしたとえば輸入が割当になっておるというようなものにつきましても、ここにありますように、「消費者物価に影響の多いものは、その輸入を弾力的に考慮する。」この弾力的に考慮するというのが非常に意味があるわけでありまして、どうも企画庁あたりから見ますと、今までの各省のやっておる輸入政策というものは、いよいよ物価が上がって、どうにもこうにもならなくなってから手を打つというようなことが多かったのじゃないかということで、そこらの物価の状況を、十分常日ごろから観察をしておりまして、少し弾力的にそういうところをやるべきじゃないか。それかといって、国内で、たとえば農産酪農品とか、そういうものについては、御承知のような基本の線に沿いまして、相当体質改善なり生産の増強をやっておりますから、そういうものにまた非常に悪影響があってもいけない。そこらのかね合いがなかなかむずかしいところでありますが、そこを弾力的に考慮して参るということで、たとえば最近、一部の会社でバターを上げるというようなことが出ておりまして、直ちに農林省ではそれに対してバターを四百何十トンくらいですか、数量は忘れましたが、緊急輸入をする、そしてこれを現在の市中の販売価格よりも安く、半ボンド百四十円で放出するというような措置をきめたのは、その一例でございます。
  237. 小松幹

    小松分科員 バターの緊急輸入をするということは、ごく最近の新聞でも見ましたが、それで国内価格は下がる見通しですか。
  238. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 その点は、ごく最近の事例でございまして、実はきょうもその点について、農林省と打ち合わせをいたしておるわけであります。農林省としては、やはりバターの値段が上がらないように、効果のある措置をやりたいということでやっておられますので、これは相当有効な効力を発生するものだというふうに期待をしております。
  239. 小松幹

    小松分科員 そこであなたの方としては、企画庁ですから、そういう期待の上でやる、ところがなかなかそれでもバターの値は下がらない、こういうことになれば、それから先はどうするのかという問題になるわけですが、それから先の問題は、具体策として何かお考えがあるのか、その点を伺いたい。
  240. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 その問題は、輸入を弾力的にやるということだけで片づくわけではございませんで、もちろん、バターあるいはそれに類するマーガリンその他の食料の需給関係ということから問題が発生するわけであります。輸入と生産を含めた供給、あるいはそれに対する需要、そういう面とにらみ合わせて、関係省で実施をしていただくような手配になっておるわけでございます。
  241. 小松幹

    小松分科員 次の項目で、「独占禁止法の運用を強化し、違法な価格協定の取締りをいっそう厳重にするとともに、行政指導による勧告操短などについても消費者の利益がそこなわれることのないように十分配慮する。」ここで、独占禁止法の運用を強化するというあなた方の考え方。ところが通産省の方はむしろ逆に、独禁法の緩和を盛んに言っている。しかも通産大臣は、これを勧告操短をして現にやらしておる。鉄鋼あるいは繊維など、勧告操短によって、あなたの方の意図とは逆な方向をとっておる。こういうところは、あなたの方の関係と通産省の方針とが、独占禁止法の緩和の問題、勧告操短、この二つがちぐはぐで真正面からやっている。執行面はあなたの考え方と全く反対のことをやっている。この辺のところはどうなんですか。
  242. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 御指摘の第一点の、独占禁止法を緩和すべきじゃないかという声が経済界の一部に——われわれの見るところでは、今のところはごく一部だろうと思いますが、ございます。これは御承知と思いますが、貿易自由化、特にEECの発展というような問題から、日本企業が国際競争力を急速につけなければいかぬということになると、今までのようなことでなしに、産業界の再編成といいますか、普通にいわれている企業の合併、合同ということをもう少し業界自身考えなければいかぬのではないか。その際に、今まで申し上げたことはその通りであると思いますが、しからば、独禁法の改正をしなければ、そういう合併とかなんとかに非常に都合が悪いかというと、われわれが見るところでは、そういう事態は今のところ起こっていないのではないか。従って、この点については、先般通産大臣もお答えになりましたし、私どもの長官もお答えになりましたが、貿易自由化なりEEC対策ということに関連して独禁法を改正する必要があるのだというようなことは、通産大臣も言っておられません。従って、その点については食い違いがないというふうに私は解釈しております。  それから二番目の、行政指導によりまして勧告操短をやっているじゃないか、この点は確かに通産省ではやっております。ただ、その場合には、公正取引委員会と十分連絡をとりまして、必要やむを得ない場合にそういう手段をやっておるのであります。これも、われわれの見るところでは、繊維の価格あたりが非常に暴落をして安定しないということのために、一つは輸出も伸びないという事態が先般来あったわけであります。国内に対する価格と輸出価格というものは非常に関連しておりますので、そういう点を総合的に見まして、必要やむを得ないものについては、公取の方と連絡をとって、その了解を得て勧告操短をやっておるわけであります。ただ、ここで申しておりますのは、その場合にも、各省は、消費者の利益がそこなわれることのないように十分——今までもそれを配慮してやっておるといえば、そういう説明をするかもしれませんが、これほど物価問題が非常にやかましくて、国民の皆様にも御迷惑をかけておるときでありますので、普通でありますれば、こういうふうに景気が下降するときには、むしろ、通産省なり産業方面を担当しておる官庁は、やっきになって価格をささえる方に一生懸命になるわけでありますが、そういう観点で行政をやられては困るということで、企画庁でもやかましく、言っておるわけであります。もちろん、立場の相違はございますので、そこにものを決定するまでにはいろいろ意見の食い違いはあると思いますけれども、そこらは公取、われわれの方、通産省、あるいはほかの省にも関係してくると思いますが、十分相談してやるということになっておるわけでございます。
  243. 小松幹

    小松分科員 これは調整局長の意見というよりか、長官の意見を聞いた方がいいと思いますが、最近は、企業合同の問題とか、いろいろ出てきますと、日銀総裁も独禁法の緩和を望む、あるいは通産行政の中でも独禁法の緩和ということをいろいろいわれている。しかし、経済企画庁の方としては、今そこで言われたように、今の独禁法はこれなりに守っていくんだという考え方が先行しておる。しかし、いつもそこで問題になるのは、カルテルの形成を見ても、あるいは勧告操短を見ても、公取委員会と話し合いで、いつもそこがしり抜けになってくるわけです。それがために、独禁法というものを内輪からこわしてくる。だから、独禁法緩和という一つの大きな決意をひらめかせながら、実質的には独占禁止法を内部的にくずしていくこういう不況カルテルがそのまま残って、好況カルテルになって、あるいは協調料金、あるいは鉄鋼公販制度というような格好で残って、しかも、それが好況時代を今日まで過ごしてきておる。こういう点については、ほんとうに物価を引き下げるんだ、卸売物価を引き下げるんだというような観点に立てば、もう少し本格的に独禁法の精神を生かしていかなければならぬと思うのですが、この点、藤山長官の確固たる意見を私は承りたい。
  244. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 平常の状態でありますと、ある特殊の物資が著しく低落するというような場合に、それをある程度指示操短その他をやりますことは、必要なことである場合もあります。従って、通産行政の中でそういうような処置をされることもございます。ただ、われわれ物価という問題を扱い、物価の観点から申しますと、今日のような場合には、そういう場合におきましても、通産大臣としても十分お考えを願いまして、物価がつり上がるような状況にならないように、行政指導をはっきりしていただかなければならぬのでありまして、そういう点を、われわれ企画庁としては強く物価政策を推進する上において、通産省に申したい、こういうことでございます。
  245. 小松幹

    小松分科員 とかく、日本企業なり産業なりのやり方というものは、価格の下ささえというものをはっきりこしらえておって、その上に立ってシェア拡大あるいは過当競争を今日までやってきておる。やはり生産性が上がってくれば、その分だけは少なくとも価格は下がっていかねばならぬ。卸売物価は、少なくとも生産性の向上に見合う分だけ下がる傾向にあって、初めて私は諸外国企業の製品と対の競争ができると思う。ところが、ややもすると、日本企業というものは、そういう生産性の向上の分はほったらかしにして、物価を引き下げようとしないで、そこにカルテルの形成を見、あるいは協調料金あるいは鉄鋼公販制度というような奇形的なものを作って、そこを踏み台にして競争をしておる。これでは、諸外国貿易自由化にも、あるいは他の企業の輸出貿易にも勝てないと思う。一方では、国民の上にカルテル形成であぐらをかいた姿が出ていながら、他では競争するといっても、それでは実際に勝てない。そうなれば、ここはどうしてもほんとうに日本企業を守っていくためにも——今まではただ守るために、御都合主義に企業をかわいがるとか甘やかしている。これを甘やかさないで、ほんとうにかわいい子には旅をさせるというような意味で、生産性の向上に見合う分だけはぐっと価格を下げて、国際価格とつり合うだけのほんとうの競争をさせれば、自然に、企業というものは、もっと本然的な競争の場にみずからの体質を改善することにも一生懸命になるだろうし、あるいは貿易拡大にもみずから骨を折ってくるであろうし、あるいは企業合同などにも積極的な意欲が出てくると思う。ところが、そういうものを甘やかして、下ささえを国がしてやる、特に独禁法を緩和するというような形で、下ささえをしてやるから、その分だけは甘んじて甘えて外に出ていく、こういう姿があったのじゃないか。また、現にあるのじゃないか。これでは、日本企業というものは、いつまでたってもよくならない。ほんとうに賃金にしても、労働者の賃金というものをくぎづけにしたり、あるいは労働組合の動きを抑えて、賃金を低賃金に抑えて、そしてその利潤幅というものをむさぼりながら、対外競争をやろうという甘い考え方。賃金も世界の水準に合わせるのだ、物価も下げるのだ、その上で他と競争をやるんだというかまえができていない。そのかまえができれば、企業合同ども本格的にできるのじゃないか、こういうふうな観点があるわけですが、とかく日本通産行政というものは、そういう企業の陳情に甘えておる、あるいはイージー・ゴーイングな姿を見のがしておる、こういう点があると思うのです。経済企画庁長官としてもこの点はもう少し考えて——角をためて殺してしまってはいけないけれども企業を甘やかすという姿があるということは、企業自体のためにもよくない、日本産業構造のボリュームの拡大も出てこないと思う。この点、一つ長官の御意見を承りたいのです。
  246. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 企業を単純に甘やかすことは、必ずしも企業が発達するために適当だとは考えません。ただしかし、今日までの経緯から申しますと、日本の鉄鋼業にいたしましても相当な進歩をして参りましたけれども、御承知通り、戦争というようなことからして、産業全体が壊滅に瀕した、そこから立ち直っていかなければならぬのでございますから、その意味から申しますと、相当企業が新しく建設をし、あるいは新しく生産を拡大していくという面を努めて参りませんければ、企業の向上も、あるいは消費者価格の低減もできないわけでございまして、そういう面に通産行政相当力を入れてきたことは、これまた当然であって、それなくしては今日の発展は期待し得なかったと思います。ただ、次第に発展して参りますと、消費者の問題も今後はクローズ・アップしてくることが当然でございまして、経営者としても、将来の拡大のための経営の利潤の確保と同時に、勤労者に対する報酬、及び消費者に対する報酬と申しますか、サービスをして価格を低減していくという、この三つの面が並行して考えていかれなければならぬような段階に徐々に入りつつある。今日の物価問題を扱いまして、そのようにわれわれは進めていく段階企業の種類によってはすでになりつつある、また、なる時期ではないかと考えておるのでございます。
  247. 小松幹

    小松分科員 生産性の向上に見合う卸売物価、価格の引き下げということを具体的にどう指導していくか、これは企画庁の一つ考え方を伺いたい。
  248. 赤澤正道

    赤澤主査 答弁は明快にかつ簡単に願います。
  249. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り、ただいま申し上げたような趣旨でございますから、やはり三位一体と申しますか、企業及びそれに従事しております勤労者、消費者の利益、この三つを調和していくことが必要だ、こう考えております。
  250. 小松幹

    小松分科員 勧告操短を現に通産省はやっておるが、これは物価対策としてもう一回考え直す必要はないのかあるのか、このままそういうことをやっていいのかどうかということをもう一回お伺いしたい。
  251. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価というものが、私は、大きな変動があることは好ましいことではないので、上昇していくことをむろん抑えて参らなければなりませんが、何か著しく下落をしてしまうというようなこと自体が、やはり影響を及ぼす場合があるわけです。できればなだらかな状況でもって進んで参りますことが、企業の経営におきましても、あるいはそこに従事しておられる方についても、また消費者においても、一定価格ができるだけ横ばいでいくということが望ましいことであって、あまりに大きな変動ということは望ましいことだとは考えておりません。
  252. 小松幹

    小松分科員 勧告操短の問題を私は取り上げたんですが、一面から見れば、生産過剰的な傾向を持っておる。そのために、それを処置する上でどうも仕方がないから操短に入ったんだ。それを通産省が事前に勧告操短によって抑えておる。鉄鋼あるいは繊維、しかし、これがために生産性向上というものが——何のために設備投資設備投資といって、大へんな金をつぎ込んで設備投資をしたか。そこで勧告操短に陥れば、自然にロスというものが出てくる。生産性向上というものがそこで消されてしまうと思うのです。そういう意味で、もう少し物価を下げても、勧告操短というのは今の場合やらせない方がいいんじゃないか。それをやらした方がいいのかどうか、その辺のところを経済企画庁としてはどう判断しているのか。今のときに鉄鋼あるいは繊維の勧告操短をやらした方がいいのか、いや、やらせないでやはり今までのやり方でやって、少しは価格というものを押えてでもいく力がいいのか、そうして輸入、輸出も意欲的に進めた方がいいのか、その辺のところはどうお考えなんですか。実際通産省は勧告操短をやっているのですよ。
  253. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日の状況から申しますれば、御承知通り、鉄鋼その他外国から原料も買って参らなければなりませんし、その買ったものをできるだけ国内市場に出しますよりも国外市場に出すということが至上の問題だと思います。通産省もその線に沿って鉄鋼業を指導しておられるのではないか、われわれはこういうふうに考えております。
  254. 小松幹

    小松分科員 どうもその辺のところが、独禁法の緩和あるいは独禁法をますます強化していく、そういう企画庁と通産省指導理念の食い違いがあるのじゃないかと思うのです。これでは、それぞれの省はそれぞれの省の立場があるとしても、これは日本経済の安定を——昔の言葉を借りれば経済安定本部だった、この企画庁の前身から考えた場合に、もっと大きい意味産業合理化を考え、あるいは物価対策を練らしたならば、その企画庁の考える線で一本筋を通していく方が、これは迂遠の道のようであるけれども、将来は正しい道に行きつくのじゃないか。それが一本筋が通らないから、あっちでははこう言い、こっちではこう言い、そこ意見が分かれ、そこに公取委員会も適当にお茶を濁していく、こういう格好が、やがては日本経済いうものをびっこにし、行き詰まらせるのじゃないか。それは特にこの物価問題に関係すると、たくさんそういうことが出てくると思うのです。たとえば公共料金の値上げを抑制する、これはあなた方の方針としても絶対の方針だろうと思うのです。何回聞いても、あなたは公共料金の値上げを抑制するとおっしゃるでしょうが、一体抑制し得ているのか、今後抑制するという確約がなされるのか、この辺のところをはっきりごまかさぬで——たとえば三月までは抑制します、それでは四月からはどうなる、四月からは知りません、こういうようないいかげんな答弁じゃなくして、とにかく私が経済企画庁長官で、今日、日本経済の安定、物価の安定をするという責任上、公共料金の値上げはやりません、やらない方針で進みます、こういう考え方をぴしゃり出して、それを実践してもらいたい。その辺はどういうお考えなんですか。
  255. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまお話のございましたように、こうした問題は各省にわたった問題でございまして、従って、総合的な対策を政府が打ち出しまして、そして、その線に沿って各省が歩調をそろえていくということが必要だと思うのでありまして、先般の九月におきます貿易に対する対策というようなものも、そういう意味で総合対策を立てたわけでございます。従って、物価の問題を取り扱われます場合にも、各省がおのずから意思の統一をして、そして一つ方向に向かっていくという意味で、総合対策というものを立てて参りたい、こういうことでただいま努力をいたしております。  公共料金の問題につきまして、私としては、むろんこれを抑制していく考え方で終始しておるのでございます。ただ、物価問題というものは、御承知通り、非常に広範な問題でございまして、運輸、交通その他の関係が十分でない、あるいは電力等適切でない場合には、かえってそれが物価にはね返ってくる場合もございますので、そういう総合的な観点からこれらの問題を扱って参らなければならないことは、申すまでもないことであります。そういう意味におきまして、抑制をするという立場は変えておりませんが、その間に適当にやはり弾力的な運営をする場合が必要であることも考えなければならぬと思っております。
  256. 小松幹

    小松分科員 抑制するという物価安定策を立てながら、どうもまたしり抜けで、弾力的運営というようなことを言い出す。そうすると、具体的に聞いてみなければならない。  電力料金は、今まで上げたものを除いて、以後の電力料金は上げぬ腹ですか、それが一つ。私鉄、バス運賃の値上げは四月以降認めるつもりなんですか。それから最近はハイヤー、タクシーの乗車料金の値上げが起こっていますが、これは認める方針なんですか。その三つについて……。
  257. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 電力料金については、現状においてまだ問題になっておりません。将来何らかの問題になって参りました場合には、われわれ十分検討をしまして、それが生産に影響をし、あるいは将来の経済活動に影響して、物価高を起こすような原因の一つになるような場合が起こりますれば、そういう点について考えていかなければならぬと思います。  私鉄の問題につきましても、今日まで相当の期間われわれとしては検討して参っておるわけでございまして、単なる赤字だけでもってこれを上げようとは考えておりません。ただ、物価というものは、御承知通り、やはりそういう輸送機関その他のあれによりまして影響するところもございますから、そういう問題点から見て、かりに必要がある場合には、抑制の例外的な措置をとらざるを得ない場合もあろうかと思いますが、現状において、ただいま私鉄の問題は検討中でございます。  バス、ハイヤー等の問題については、これは検討を重ねることにしていきたいと思っております。
  258. 小松幹

    小松分科員 そういうようなおっしり方をすれば、物価安定のために公共料金を抑えるといっても、押えるものが一体幾つあるのですか。押えた方を聞いた方が早いかもしれない。一体公共料金で何を抑えたのか、一つここで企画庁として発表してもらいたいと思います。ほかのものはやむを得ず上げたけれども、これだけはがっちり抑えましたというものを二つ三つ例をあげて下さい。
  259. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだ私鉄の問題はわれわれ検討中でございまして、何とも今申すわけではございませんが、今後われわれとしても、そういうような問題について十分な検討をいたしたい。業者の人はいろいろな値段を申すだろうと思います。しかしながら、われわれとしては、その値上げの率を最低限にしぼっていくということについては、今日でも相当な努力をしておるつもりでございます。
  260. 小松幹

    小松分科員 例をあげて下さいという私のお願いなのですが、どうも例があげられないようです。最近は入浴料も上がるし、都電も上がるし、教科書代も上がってくる。ところが、消費者の方は経済一つなんですよ。電車に乗っても、バスに乗っても、子供に教科書や鉛筆を買ってやっても、ふろに入っても、これは一つなんです。あなたの方に申し込んでくるのは、方々からいろいろな角度でデータを出してやってくるけれども、受ける消費者としては一木に積み重ねられてくる。そこで、やはり消費者物価の抑制措置というものをやることが、ほんとうは輸出振興にもなるし、今の池田政策の経済成長をほんとうに土台から助けるものだと私は思います。池田さんのいわゆる成長政策というものは、もはや物価政策において基本的にがたがきておるのです。だから、思い切って消費者行政というものに取り組んで、引き下げるというよりも、もう防衛的に上げないという、この一点張りで終始してもらいたい。こういうように今考えておるのですが、この辺どうも経済企画庁長官の方もあまり自信がないようですが、長官に自信がなかったら、一体だれに訴えたらいいのかということが心配なんです。この点もう少し考えて、公共料金については上げないという一つの方針を貫いてもらいたい。  それから物価安定の十二項目をいろいろ言えば、数限りがございませんが、消費税、物品税、入場税等、今度は税金を下げたのだから、その税金を負けた分くらいは消費者に負けてもらいたい、こう消費者は思う。しかし、これはどうですか。物品税は四月一日から消費者に向かっては下がるというのですが、これは生産からすぐ出したときに物品税が加わると思うのです。そうなると、四月からは物品税は下げられないで、その一カ月前出たときにもう物品税がかかっておれば、結局四月一日に蔵から搬出したときからの物品について税金が下がるのだから、消費者に渡るときには五月に初めてそれがお目見えするのですが、その辺の処置をどうすべきでありますか。
  261. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物品税など間接税の引き下げにつきましては、今お話のように、これは四月一日から実施することでございますし、当然総合対策の中にも入っおりますので、まだ総合対策がきまりませんけれども、その一環として、本日の閣議でもって、大蔵大臣から物品税引き下げに関して、今御指摘のような点については特段の処置をとって、そして四月一日からできるだけ下げるということに方針をきめておるわけでございます。なお、入場税その他の問題等につきましても、それぞれ監督官庁がその方針に従いまして、けさの閣議の話では、入場税については若干異論があったけれども、だんだん業者との話し合いが進行しているという報告もございまして、その閣議決定の線に沿いまして進めていって、これが消費者に全的に適用されるように、政府としても努力をして参ることに決定をいたしたわけでございます。
  262. 小松幹

    小松分科員 けさ閣議でそういうふうに決定した、これは物品税については、四月一日から国民の前に消費者間接税が下げられたのだということがはっきり出るためには、少なくとももうきょうからそれに対して処置をしていかねば、四月一日からは絶対にそういうことはできないわけです。それから入場税についても、一〇%引き下げとか三〇%下げるというようなことになりますと、これは東京の日比谷の一流映画館と二流、三流の映画館では、それぞれいろいろ違うと思いますが、それだけの税引きということが国民にはっきり——たとえば百七十円であったのが百三十五円になりました、こういうように、消費者の上に、ああ税金が三十円下がったのだな、十五円税金が下がったのだなということがはっきりどういう形でできるのか、このくらいなことは、これは政治的にやるというよりも、行政的にしっかり手を締めてやればできないことではないと思うんです。この点は具体的にどういうように企画庁としては考えているのか。
  263. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういう点につきまして、けさの閣議でもって、店頭に表示する、その他をいたしまして——けさの閣議の決定を概略御説明いたさせます。
  264. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 けさの閣議で「間接税減税による物価引き下げに関する措置要領」というものがきまりまして、先生の御指摘になりました第一点の、四月一日から減税になるのだが、物品税なり酒税は庫出税になっておりますから、その前に税金がかかってしまうと、あとで戻し税をすることは非常にややこしい問題になりますので、従来そういう意味で承認しておりませんでした未納税移出承認、税金を納めないで蔵出しをしてよろしいという方法を、きょうの閣議で了承になりましたので、酒と物品税についてはそういう措置をやりますので、小売業者の方も四月一日から下げやすくなる。それからなお、そういうふうに未納税移出承認の特別措置を適用する業者名、商品名を公表するということにいたしております。それからもう一つ、どれだけ減税によって値段が下がったのかということをはっきりさせるために、小売業者につきましても、あるいは入場税の入場者につきましても、これを店頭なりあるいは映画館の窓口に、減税による入場料金の引き下げであるという旨を表示させる、あるいは小売業者の店頭に級別内容の変更を、色刷りポスターで、減税でこれだけ下がりましたというようなことをはっきり表示させるということを閣議で了解になっておりますので、そういうふうに関係省で実行してもらうことになっております。
  265. 小松幹

    小松分科員 これは実行あるのみですから、これ以上言うても仕方がございませんが、私は、政治というものは生きものだと思うんです。国会の議員がどういうようにつまらぬことを言うたりしたりしても、そのいわゆる発言の中に一つの大きな流れ、ムードというものが出てくると同じように、一国の総理あるいは閣僚、内閣自体が、物価を下げるんだ、国民一丸となって消費者物価をとにかくやるんだという値下げムード、こういうものをほんとうに起こす気になれば、私は、相当値下げムードというものは起こると思うんです。この辺のところが、私は、政治自身動きあるいは行政者の動きが、国民に反応しないことはないと思う。論より証拠、逆に、池田さんは倍増ムードで値上りムードを作ってきた。これは池田さん自身責任じゃありません。わしはそういう意味じゃなかったのだと言っても、これは自然、あれが上げればおれも上げるぞ、あれがすればおれもするぞ、悲しいかな、この人間の付和雷同性というものがある以上は、中心になる者が、心の中では逆なことを考えておっても、ほんとうは幾分国民に対するはったりの気持があっても、値を下げるのだという不退転の決意を示して、それが現実の末端の行政に映っていくならば、私は、相当値下げもそういう形でできると思うのです。これはそういう気がまえ、かまえの問題だと思うのです。この点は一つ企画庁長官の責任でやってもらいたい。そうでなくては、今までのように値上がりムードの中にいい気になってうたい文句でやられて、次から次にやったのでは、国民としてはもう立つ瀬がない。どこを見ても、ここを見ても、値の下がるものはなくて、みな上がるものばかりだ。企画庁が幾ら物価安定十二項目というようなものを掲げても、それは念払にしかすぎぬというようなことでは、政治というものが国民に徹底しないじゃないか。同時に、政治全体の不信をかもすわけなんです。この点は、物価安定の鬼になってでも、とにかく物価を上げない、下げろとまでは言い切れぬとしても、上げない、そうして消費者減税の分については、はっきり国民の目の前に、これだけ下げましたよ、ここまで政治は親切に下げましたよというムードを起こしてもらいたい、このことを強く申し上げておきたいと思います。  物価問題については数限りなくありますけれども、この問題はそれで終わるといたしまして、次は、経済の、景気の見通しと言うては語弊がありますけれども、最近在庫論争というのが盛んにやられて、長官としてもたびたび在庫論争は試みたと思います。結局、日本の場合には、引き締め政策かあるいは緊縮政策か、とにかく国際収支に穴があきかけると必ず在庫を心配する在庫論争が起こっておるわけです。今度も、輸入制限をしたから、在庫がどれだけあるか、いつ在庫が食いつぶされて底をついて、輸入に転化するか、火がいつつくのかということで、いろいろ問題があるのだろうと思いますが、どうも政府が考えておった鉱工業生産が、この前私が予算委員会で言ったときには、とんとんと下がるという企画庁の予定をそのまま受けておったのですが、十二月は確かに下がりましたが、一月は上がっておる。相当季節的な修正を加味しても、鉱工業生産は、三・八%か三・何%か、数字は覚えませんが、上がっておる。頼みの綱の鉱工業生産が依然として強含みで下がらない。こういうことになれば、これは一体経済見通しがどう狂ってくるのか、これは大へんな狂い方にもなってくるし、あるいは政策としてどこが悪いのか、いや善悪でなくして、どうすればとんとんと下がるような方向に向いてくるのか、この辺の、単なる在庫論争でなくして、もう少し政策面まで突っ込んで考えてみたいと思いますが、今の鉱工業生産はどういう見通しなんですか。
  266. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 鉱工業生産について申し上げます。  今御指摘にありましたように、鉱工業生産の動きがどういう推移をたどるかということが、輸入がどういうふうな動きをたどるかということに一番つながるわけでございますが、どうも最近の通産省で発表した数字を見ますと、ちょっとわれわれが予想しておりましたよりは生産のピークがずれているんじゃないかというふうに見ております。数字的に申し上げますと、十一月が二九九・三、これは季節修正をしたあとの数字でございます。十二月が二九六・七というふうに約一%下がったわけでございます。一月が、これは実数でいいますと八%以上生産は下がっておりますが、季節修正をいたしますと三〇七・九ということになりまして、十二月に比べて三・八%上がっておる。これは通産省と企画庁が実はいろいろ研究したのでございますが、どうも季節修正というのが、なかなか学問的にも理論的にも非常にむずかしい問題で、昨年のときにもわれわれ企画庁としては、特に十二月、一月から三月くらいまでの季節修正が非常に実態と——たしか二十八年から三十三年までの季節修正指数を固定してやっておりますので、問題があるんじゃないかというので、今研究しております。しかし、いずれにしましても、これは別の方で試算してみましても、どうも十一月、十二月、一月というのは、大体高水準の横ばいというのが実態に近いんじゃないか。数字的に見ますと、一月はもうちょっと下がっていいんじゃないかというふうに見ておりましたが、下がっておりません。これはいろいろ原因がございますが、やや引き締めの中だるみといいますか、これは日銀あたりでもそういう言葉を使っておるのでございますが、そういうようなものも現われております。たとえば投資財の機械の受注あたり、十二月は一昨年の十二月に比べて三割以上下がっておるというようなことで、投資財に対する需要は、相当目に見えて減ってきておるわけであります。生産はふえても、出荷の方はあまりふえないということで、生産者段階の在庫は相当急増しております。そういうようなことかから見ますと、逐次生産の調整過程に入るということは、はっきり言えると思いますが、当初われわれが予想しておったよりは、景気の調整が、相当浸透しつつありますが、幾分おくれているんじゃないかということを心配しておるわけでございます。
  267. 小松幹

    小松分科員 生産が下がらない。二月の実績を見なければ何とも言えないが、とにかく一月は季節修正で三・八上がっておるということは、その数字が決定的なものであるということも私は考えませんけれども、一応まだ鉱工業生産というものは強く生産能力を持ってやられておる、こういうことになれば、先ほどあなたの方で言われたように、横ばいという、企画庁が考えた年率六%ですか、九%ですか、とんとんと月々に下がって、大体早くて五月、おそくて六月ごろには底上げになって、三十七年度の上昇過程をたどるという計算というものも、あやふやになってくると思うのですが、そのあやふやは、これは日銀の意見もあるし、通産省の意見もあるし、企画庁の計算もいろいろあると思います。しょせんは、引き締め政策をしておるのですから、そういう方向には向くと思いますが、私は、今の姿というものが、だらだらと不況的な、デフレ的な傾向というものが、ロンドンの霧みたいなことで、しょっちゅう霧雨みたような格好でいく、こういうような政策がいつまでも——通産省は七月、八月までいくのだと言っているのですが、これで成長政策というものはどう判断したらいいだろうか、こういうところに帰着してくるわけです。そして今度は、特別心配屋が心配することなんでしょうが、その霧が晴れたときをいつに見るか、時期はいつであろうと、その晴れた先の輸入増加というものを非常におそれている。これはどう切り抜けていくか。池田さんの政策で、はたして切り抜けていけるかどうか。池田総理に言わせれば、この前の三十三年のときには、思惑輸入でどんどん輸入してえらい大きくなって、国際収支に赤字が出て、私がやめて、一萬田さんが出て緊急調整をした。ところが、一萬田さんがやったら急激に上がってきた。それは一萬田さんがショック的な一つの手を打っていったからである。ところが、今は、それをさっき中だるみと言ったが、調整の中だるみというようなことを言うたりして、何だかもたもたして、やるのかやらぬのか。実際やっておりながら、やらぬというようなそぶりをしてみたり、こういう何か擬態を呈して、自分はほっかむりして逃げている。どこかでどこかの人がネジを巻いているのだ。自分は犬の遠ぼえみたいに、遠くからあまり引き締めはしていないのだというふうに言うてみたり、引き締め過程はこのまま続けるのだと言うてみたり、こういうような政策に、ごまかしといいかげんな姿が出ているのではないか。そういうことで来年度予算を編成して、今日の景気の確率というものに、はたして自信があるのかないのか、その辺のところを一つ企画庁が、おれだったらこうやるのだ、おれはこういう見通しを持っているのだ、池田さんがどうあろうとも私はこう考えているのだ、こういう考え方をやればこうなるのだ、こういう一つのはっきりした企画庁の意見を聞きたいと思うのです。この点、どう御判断になっておりますか。
  268. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、今日の状況において、やはり九月の総合対策に基づきました引き締め政策を強行していくことが、一番適当であると思っております。総理にもむろんそういう意味で進言をいたしております。総理も私どもの意見に反対なくやっておられるのでありまして、そういうことによって今日以後も続けて参りたい、私はこういうふうに考えておるのでございます。
  269. 小松幹

    小松分科員 あなたは、こういうだらだら不況をいつまでで終わらせて、調整過程でない、正常な、ノーマルな経済運営に入るというお考えを持っているのか、その辺をはっきり……。
  270. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、だらだらという状態が続いていかないことを希望して、できるだけ引き締めをやって、ある場合にはどうも引き締め過ぎて少々困るじゃないかと言われるくらいにやることが、むしろ早くこの調整過程を終わるゆえんだと思っております。そういう意味で、消極論者と言われましても、そういう意味の説をなしておるものでありまして、総理に対してもそういう助言等をいたしておるわけでございます。
  271. 小松幹

    小松分科員 総理がおらないから、ちょうど平清盛が衣の下からよろいが出ているようなもので、あるいはよろいの下から衣が出ておるのか、どっちかわからぬが、とにかく経済成長政策だと力んで、その面はどうも看板をおろしたくない。しかし、やっておることは、デフレ政策で、だらだらわけのわからぬ、霧雲みたいな政策で行っておる。だから、衣の下からよろいがちらついてみたり、引っ込んでみたりというような格好で、きわめて不明朗な経済体制が出ておると思うのです。それは霧雲のような経済体制で、私は、万年調整政策をやりますと言うなら、今の看板をおろせばいい。看板は経済成長政策だ、こう言いながら、だらだら不況政策で、総理に言わせれば、調整段階に入っているというが、調整々々と言うて、調整が半年も一年も続くような政策をやって、看板だけは金看板の成長政策だ。しかも、成長に高度がついている。高度成長政策をやるんだというようなことは、ごまかしもはなはだしいと思う。それだったら、一回はっきりすることが大事なんです、政治はやはり責任政治だから。もう藤山さん、そろそろあなたがかわってやってもいいころだと思うのです。実際の話が、こういう政策で、だらだらはっきりせぬことをやられておったのじゃ、国民は実際快しとしない。もう少し、やるならやる。経済成長率が三年連続九%だなんておこがましく出して、初年度からひっくり返って、ぼそっと落ちてくるような成長政策をとりながら、しかも、やっている政策というものは、こういう霧雲みたいな政策をやってつかみどころがない。それでなおかつ高度成長政策と言う。いっそはっきりして罪を天下に謝すべき時期が来ているのじゃないか。もう私は野党だから、遠慮なく言っておるのですけれども、実際は、このままだらだら行くなら、何のことかわからぬ。六月だ、七月だ、八月だ、いや、国際収支もどうなるかわからぬと言って、最後のときには、今度はかけ込みの問題が起こって、同じようなことを繰り返すならば、どうせ経済は波を打っていくことは間違いないから、そんなに一瀉千里に走っていくようなことはない。経済には波があるわけだから、それをしゃにむにそうしないで、まあそれを一つはっきりしてもらいたい。これは経済企画庁長官にあえて言うても仕方がないけれども、あなたは池田内閣の閣僚として、しかも、経済安定の本部の長官であります。経済企画庁長官というのは、借りもののひな人形じゃないはずです。あなた自身はどう考えておるか知らぬけれども、外交政策ならば外務大臣が一人で受ける、そのように、少なくとも経済はおれにまかしてくれと、こう言うべきじゃないでしょうか。総理は、外交のことはわからぬ、経済のことは池田にまかしておけと言うが、そうじゃない、池田さんは、外交のことはおれにまかしてくれ、経済のことは藤山さんにまかしておく、こう言うべきなのに、あなたが遠慮して適当なことを言っておるならば、これはあなたも同罪になる。実際のところ、もう少し経済のはっきりした見通しを持って、ころ合いに、ぶすっと手を打ってやるべきことが必要じゃないか、こういうように考える。これを単なる在庫論争とかいうて、在庫がどうだ、手持ちが何ぼある、食いつぶしがどうだと、国会で在庫食いつぶし論争をやったって意味がない。結局は、調整政策をやるならやるで、はっきりかまえを出して、ぴしっとやる政策につながっていかなければ、在庫論争なんて何の意味もない。私は、そういう考え方に立って、もう少しはっきりした政策を出して、国民とともにやるならやる、こういうはっきりした観点を出してもらいたい。この点について、さらに経済安定の本部長官の、日本経済をどうおれが責任を持ってやるんだという、そのかまえを、ただ池田さんに義理を立てたようなことばかり言わないで、はっきり言ってもらいたい。
  272. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 個人の家庭でも同じでございますが、一家の主人があまり弱いことばかり言っておりますと、元気が出ません。従って、主人が元気なことを言うことも必要でありますが、それを補佐する女房としては、できるだけ現実に即して引き締めをやっていくということが大事なことだと思います。九月の調整政策につきましても、あれまでの間にいろいろ議論はございましたが、結局あれが採用されて参りましたし、今回また総合対策を立てるということについても、経済閣僚懇談会等でもやっておることでありますので、私としては、総理を助けてできるだけのことをいたして、そうしてこの難局を乗り切って参りたい、こう存じております。
  273. 小松幹

    小松分科員 それじゃ時間々々とせかれるので、泣く子と地頭には勝てぬそうでございますから、この辺で私の質問は終わりたいと思います。
  274. 赤澤正道

    赤澤主査 これにて本分科会所管の予算両案に対する質疑は全部終了いたしました。
  275. 赤澤正道

    赤澤主査 この際、お諮りいたします。  昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁農林省及び通商産業省所管昭和三十七年度特別会計予算農林省及び通商産業省所管についての討論採決は、これを予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 赤澤正道

    赤澤主査 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  分科員各位の御協力によりまして、円満に議事を進行することができましたことを感謝いたします。  これにて散会いたします。    午後六時五十八分散会