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1962-02-24 第40回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十四日(土曜日)     午前十時十分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       倉成  正君    八田 貞義君       三浦 一雄君    加藤 清二君       川俣 清音君    久保田 豊君       島本 虎三君    田中 武夫君       芳賀  貢君    兼務 井堀 繁男君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     井上  猛君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      樋詰 誠明君         特許庁長官   伊藤 繁樹君         中小企業庁長官 大堀  弘君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君         通商産業事務官         (通商局次長) 山本 重信君         通商産業事務官         (通商局振興部         長)      生駒  勇君     ————————————— 二月二十四日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して田中武夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田中武夫委員辞任につき、その補欠と  して島本虎三君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員島本虎三委員辞任につき、その補欠と  して芳賀貢君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員芳賀貢委員辞任につき、その補欠とし  て久保田豊君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員久保田豊委員辞任につき、その補欠と  して高田富之君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第二分科員井堀繁男君が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算通商  産業省所管  昭和三十七年度特別会計予算通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  主査が所要のため不在ですから、その指名で私が主査代理を勤めます。  本日は、昭和三十七年度一般会計予算、同特別会計予算通商産業省所管を議題といたします。質疑を続行いたします。井堀繁男君。
  3. 井堀繁男

    井堀分科員 中小企業の問題はかなり広範にわたって捕捉しがたい点が多多ありますので、まず、中小企業といわれておりまする言葉内容について、少し明らかにいたしておきたいと思いますが、中小企業を、常時雇用する労働者の数で、たとえば製造業にあっては三百人未満とか、あるいは卸、小売にあっては三十人米満、ある法律では資本金を一千万に押えて、それ以下といったような、区々まちまちな規定がなされておると思うのです。この予算を審議していきます場合にも、この点を明らかにしておく必要があると思いますので、一応中小企業という概念を、的確な定義がありまするならば、一つ明らかにしていただきたいと思います。
  4. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいま井堀先生の御指摘のことにつきましては、現行法におきましては、御指摘のようにいろいろ違っております。必ずしも一律ではございませんが、私どもは、全体を見ましての一番統一的な概念といたしましては、中小企業金融公庫法あるいは団体法等関係から見まして、資本金一千万円以下、従業員三百人以下、商業関係等につきましては、従業員が三十人、ただしこれにつきましても、業種によって特例的な扱いができるというふうになっておりまして、税法等におきましては、大きなものは、特別償却規定は一億円以下というふうな、大幅にきめておるものもございます。こういうことで、現状の基準といたしましては、ただいま申し上げましたように一千万円と三百人、いずれかに該当すればよろしいという扱いが、一番一般的な原則ではないかと思います。
  5. 井堀繁男

    井堀分科員 そういう概念で、いろいろと区々まちまちですが、上の方は一応資本金が千万円以上のものは中小企業じゃない、それから製造業にあっては常時三百人の従業員を使っておれば中小企業に位しないということで、上は一応わかる。下ですが、一体中小企業者というのは、下という言葉はなんでしょうが、たとえば自営業者などに対してどういう理解をしておりますか。
  6. 大堀弘

    大堀政府委員 個人企業で、かりに経営者一人でやっておりましても、中小企業ということで扱っておるわけです。今私ども中小企業の中で多少下の方に特別の配慮をするという意味におきまして、小規模事業という概念一つございます。この場合は、ただいま申し上げました三百人に対するものが大体二十人ということに相なっておりますし、それから小組合制度におきましては、それに該当いたしますのは、おおむね従業員五人以下というふうな概念であります。そういった特殊な、中小企業の中の、特に小さなものに対しての対策を別途にやっておりますので、そういった下の方の概念もございますが、最低限はどうかといいますと、かりに経営者一人でやっておりましても、中小企業にもちろん入るわけでございます。
  7. 井堀繁男

    井堀分科員 そういたしますと、あなたのところで中小企業といわれる人口、あるいは有業人口、たとえば就業構造基本調査でいいますと、全産業有業人口が一応明らかにされておるので、その有業人口の中で、雇用しておる者、雇用のない自営業者あるいは雇用されておる者、農林、非農林というような分け方がいろいろあるようでありますが、もちろん農林業に入らぬでしょうが、非農林業の、あなたの方の対象にされる有業人口というものは、一体どのくらいになっておりますか、一つ数字で示していただきたい。
  8. 大堀弘

    大堀政府委員 多少統計とりようで違っておりますが、私ども農業を除いた全産業という概念をとりまして、その七九%程度中小企業従業者だと思います。
  9. 井堀繁男

    井堀分科員 ここに就業構造基本調査、それから労働力調査臨時報告がありますが、これが大体そういうものをお伺いするのに便宜じゃないかと思って、きょう持ってきたのです。総理府の方で出しております就業構造基本調査の上に立って、労働者労働力調査臨時報告を作って出しておりますから、これを大体そういう場合にお使いになられるのじゃないかと思いますので、ここでは全産業のうち農林業と非農林業二つに大別して、その中で区分しておりますが、この中でいうどの人口中小企業庁対象になるかを一つ伺っておきたいと思います。
  10. 大堀弘

    大堀政府委員 私ども、実は中小企業基本調査というのを三十二年に実施いたしました。その数字ベースに申し上げておるわけでございますが、ただいまの御指摘統計からいうと、非農林関係が一応私ども対象になるわけでございまして、そのうちの中小企業、先ほど申し上げました一千万あるいは三百人以下という概念で押えました中小企業従業者の数ということで計算いたしますと、数で千五百五十八万、比率で七九・六%でございます。これは三十二年の数字でございます。
  11. 井堀繁男

    井堀分科員 データの取り方でいろいろ違うと思いますが、一応大づかみにつかんで千五百万から千六百万に近い中小企業関係者がおるという一応の数字前提にいたしまして、お尋ねしていきたいと思います。この対象人口の中で、非農林関係自営業者ではあるが、雇用者を持っていない、人を使っていない人口が、この労働力基本調査によりますと四百六十五万と出ております。この数字はきっとあなたの方の基本調査とはだいぶ違いがある、もっとふえるだろうと思います。いずれにいたしましても、私今ここに持ち合わせているのはこの資料で、あなたの方の三十二年の基本調査は全体を見せてもらっておりますが、しかしあれは国勢調査就業構造基本調査の中から数字を抜きとっておるように説明書には出ております。ですからもとはあまり変わらぬようであります。とり方で多少違う。そうしますと、ここに問題になりまするのは、自営業者であるけれども、人を使っていない、自分一人でやっているという人口が四百六十万から四百八十万、それからここに働いておる家族従業者が、ここでは三百二十九万になっております。これはあなたの方の調査では、もっと数がふえます。こういう数字をざっと見ていきましても、八百万くらいのそういった人口がある。そうしますと千五百五十八万の中の割合が、あなたの方の調査資料によりますと、もっとはっきり出てくると思いますが、とにかく相当大きな割合になることは間違いないのであります。六〇%ないしは五五%くらいの数字になる。でありますから、中小企業政策対象になる人口割合からいたしまするならば、半ば以上を占めるこういう自営業者に対する中小企業政策というものが——これは予算の中をずっと見ていきましたけれども小規模事業対策などという抽象的な言葉が使われておりまして、あなたの方の行政的な保護対象に抽象的にはなっておりますが、具体的には一向そういうものが現われていないのです。この点に対して、この予算の中で、これとこれがそういうもののための予算だということの説明ができまするならば伺っておきたい。
  12. 大堀弘

    大堀政府委員 私どもといたしまして小規模事業対策といっておりまするのが、先生お尋ね——これは従業員二十人未満でございます。商業については、さらに小さな規模をとっておりますが、これがただいま御指摘の範疇に大体該当する施策でございます。この対策として、御承知のように商工会法によって商工会を結成いたしまして、それに対して政府経営改善普及員という指導員を置きまして、現在全国二千人くらいできております。商工会議所地区については商工会議所経営改善普及員を置きまして、経営改善のための指導をやっておりますが、これの予算小規模事業対策費といたしまして三十六年度は八億二千万円程度でございましたが、三十七年度は十億二千万円程度で、約二億円増額をいたしまして、これに同額のものを各都道府県が出しますので、総額としては二十億円以上のものが補助金として出される。これが直接の組織面における、あるいは経営改善に対する指導という面からの、零細企業対策ということの中心をなしておるわけでございます。それ以外に私どもやっております予算上の措置としては、たとえば近代化補助金、これは狭義の近代化補助金、個々の事業者に貸し付けるわけでございますが、これが今年度二十五億円でございましたが、来年度は三十五億円に増額になっておりますが、これは主として平均貸し出しが大体百万円でございまして、金融ベースに乗らないきわめて小さいところを対象にいたしました対策として、近代化補助金の運用は中小企業でも下の方で利用するという建前でやっておるわけでございます。  それから財政投融資面におきましては、御承知のように、商工中金中小企業金融公庫国民金融公庫とございますが、ただいま御指摘零細に対しまして一番働いておりますのは国民金融公庫でございます。平均貸し出しが三十万円未満でございますから、これはきわめて零細金融を広範にわたってやっておるわけでございます。この資金を来年度相当大きく増額をいたしておるわけでございますが、同時に商工中金は、これは組合金融中心でございますから、組合員ということが前提でございますが、組合員として相当小規模の方もこれを利用できる。ことに小組合等につきましては十分配慮をして金融をするように指導いたしておる次第でございます。その他いろいろございますが、大きな点を申し上げますと大体そういうことになります。
  13. 井堀繁男

    井堀分科員 大臣がお見えになりましたから……。今あなたが来る前に、中小企業概念を伺っておったのですが、あまりはっきりはいたしませんけれども、一応中小企業庁のお仕事対象になる数はどのくらいかということがはっきりしたのです。そうしますと中小企業基本調査によります数字と、それから就業構造基本調査によるデータとの間で多少の違いはあるにいたしましても、大体千五百五十八万だ、そのうち他人を雇用しないでやっておる自営業者、それから家族従業者、そういうものの数を今あらためてもらったわけです。そうしますとパーセンテージで千五百五十八万のうちの五五%ないし六〇%に達する多くの人口になるのです。でありますから、中小企業庁のお仕事対象になります半ば以上のものが、ここで言う零細企業とかあるいは小規模という言業で言われている数です。これは数が非常に多いだけではなくて、その実態は、あなたの方の基本調査によっても明らかでありますが、いろいろ多くの問題をかかえているのはここなんです。そして今の日本の産業構造を見てみますと、その大部分下請とかあるいは協力工場というような関係で、近代産業の実例をとりますと、自動車産業の例をとりましても、一台の自動車を作るためにどれだけの零細企業協力関係があるかということをお調べになっておるかどうかを伺ってみたいと思います。私どものところで調べた、たとえば一例をとりますと、自動車のウインド・ワイパーのような小さなものの部品を見てみましても、百数十に上る部品ででき上がっておる。幾つかの工場がありますが、代表的な工場、これも中小企業と言われておりますが、埼玉県にある田中計器実態を、私いろいろ関係があるので調べてみたのであります。今四百人くらいの従業員雇用してなかなか盛んにやっておるようでありますが、その工場下請されている工場が三百五、六十ある。これが今あげられた家族従業者だとか、あるいは一人、二人、多いところで四十人くらい、そういう工場で生産されておりますものが大体六〇%から六五%に近いものが外注されている。でありますから、自動車一つができ上がるためには、こういう零細企業協力関係ででき上がっているということがよく立証されておると思う。でありますから、あなたの方の保護行政の必要があるとするならば、この部分でなければならぬ。この点について私も予算をずっと詳細に見たのでありますが、今御説明になりましたように、そういう零細業者保護する組織上の措置として、商工組合などの小組合育成し、促進していこうということはわかりますけれども、こういう予算では結局隔靴掻痒で、もっと思い切ったやはり組織に対する育成をやろうとするならば、予算を通じてもわかりますように、もっと役所の中では積極的な組織機構が要請されてくるのじゃないか。あなたの方の機構をずっと拝見しましたけれども、たとえばあなたの方の門をたたきましても、こういう人たちのために行動のできる人はほとんどおりません。聞いてもわかりません。  それから金融の問題を今指摘されておりましたけれども、この人たち金融を求めておりますのは、信用組合がいい方です。商工中金だとか、あるいは中小企業向け銀行に多少の借り入れをしているものがありますけれども、ほとんど例外です。第一、信用保証協会保証をしてもらおうと思っても保証されません。取引銀行はありません。でありますから、保護政策から縁なき衆生になっている。おおむね、こういう人たち金融やみ金融、すなわち市中でいう高利貸しです。それから質屋通いをしている業者というものがかなり多い。それで非常に悪い条件で下請させられて、たたかれて、その上に高利で苦しんで、結局家族労働を搾取してようやく競争に耐えている、あるいは自営業者自身昼夜兼行で、自分労働力犠牲に供して、そして競争の中に耐えているというのが実態なんです。そういう人たちの努力によってでき上がった製品が売り出されるときには、大企業メーカーの看板で取引をされるのであって、あなた方が金融引き締めをやりますと、一番先にくるのは、手形操作犠牲になる中小企業、そうしてそれが今いう零細企業支払いを延ばしてくるのでありますから、どうしても高利貸し金融にたよらざるを得ないということで、その寿命は非常に急速に縮められるという悲劇が——とても表に出ておりませんけれども、こういう問題に目の届く中小企業政策が、この際最も緊要ではないかと思いまするが、この予算の中ではそれをうかがうことができません。しかし、この機会に何か新しい措置でも計画されておりますならば、一つ伺っておきたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 井堀さん、ただいま中小企業の面、しかもその一部について下請関係の問題についてお触れになりましたが、事実、中小企業対策というものが相当おくれているといいますか、このことは私どもも痛感せざるを得ない。ただいま中小企業基本法を出せというのも、そういうもののおくれを取り戻すという意味の強い要望だと思います。ところが中小企業実態は、今一つの例でお示しがございましたが、まことに多種多様でございます。従いまして、いわゆる中小企業基本法ができたからといって簡単にできるものじゃないという、 ここに通産省、ことに中小企業庁といたしまして、実は非常に腐心している最中でございます。今、自動車工業を御指摘になりました。過去において、たとえば造船関係一つの船ができる、それに対する下請関係、これは大したものでございます。大体今日までそういうものがほうっておかれているが、一体どういうことであったろうかと申しますと、いわゆる中心企業造舶の場合なら造船会社自身、あるいはまた機械メーカーなら機械メーカー自身が、自分会社に対する協力下請団体を作るとか、こういうことで、それぞれ下部の育成強化をしている。そのために、今日まで気づく点は、支払い代金が迅速になされなければならないとか、あるいは手形についての特別の配慮をするとか、こういう指導は実はして参ったのでございます。ところが最近の産業関係から見ますると、一企業に対して、完全に一企業だけで下請をやっておるという業態ならよろしゅうございますが、同種の事業体に対して二つ、三つの親会社を持つというようなことにしばしばなるわけであります。そうすると、この中小企業相互間の競争もまた熾烈であるという状況であります。そういうわけで、一つ下請関係を見ましても簡単な処理ができない。ただいまの公取その他でやっておる下請代金支払い促進方法とか、そういう行政指導、こういう点では不十分だと思います。ことに井堀さんが先ほどお話しになりました小業者、いわゆる家庭経営個人経営、こういうような部門になりますと、これはほとんど政府にたよろうということも考えず、みずからがやっているというか、放任されているというような状況だ。こういうものが五割近い対象の数になるのでございますから、中小企業として育成強化するといえば、こういうところに実は目をつけなければならないのじゃないか、こういうむずかしさがございまして、せっかくの基本法もまだまだ足踏み状況である。とにかく大筋の網を打つ方法はできるだろうと思うのです。今回の国民金融公庫等少額融資について、物的保証は必要としない、こういうような点を改善して参りましたのも、中小企業金融について、あるいは零細金融について特別なめんどうを見ようじゃないか、こういう一つの現われだと思います。しかしながらもっときめこまかな実態に即する対策をやる、その点では御指摘の通りに、まだ私どもの勉強が十分でない、かように実は思って、非常に責任を感じておる次第であります。
  15. 井堀繁男

    井堀分科員 私はこの中小企業の中で、もう少し明確に概念の整理を必要とするのではないかと思うのです。中小企業といいますと、十ぱ一からげに、最高三百人未満といいますと、百人から三百人くらいまでのものが中小企業だというふうに何か理解しやすいのであります。しかし半数以上、六割近いものがむしろそういう対象から漏れて、もっといいますと、今通産行政の中の保護対象にはなってないんですね。たとえばこの人たち社会保険にも——労働者の場合に比較して、所得関係から見ますと、これは就業等基本調査の中でも、それからあなたの方の中小企業基本調査の中でもよく出ている。所得階層別に見ていきますと、今日ボーダー・ラインといわれています生活保護対象、もちろん東京の一級地、五人世帯であらますから、相当高いものではありますけれども、それに比較いたしましても、全体の数で一千二百万人くらいの層になるのです。そのうち非農林関係のものを見ていきますと四百七、八十万、五百万近くになる。その数はどういうものかというと、さっきあげました八百万に相当する人々の対象がそこにくるわけです。もちろん中には、かつぎ屋のような、自営業者として扱うのにどうかと思うようなのまでが、この統計の中に入っておるようであります。とにかく、そういう人たちは人に雇用されておりませんから、労働行政保護対象になってこないのであります。労働保険社会保険恩典からもちろんはずされる。そして課税の面からいきますと、一応収益があればもちろん所得税対象になりますし、あるいはなくても地方税の、要するに事業税対象にはなってくる。負担の面ではけっこう一人前の負担が強制されて、行政面からくる保護対象になりますと、今言うように低所得者の中でも、社会保険恩典からもちろん漏れる。それでは金融の面でどうかといいますと、もしそちらにデータがありましたら伺いたいのですが、私ども調べたところでは、今申し上げた自営業者で、信用保証協会保証を受けている者は皆無です。それから国民金融公庫の窓口に殺到していますけれども、そのうちの要するにどのパーセントが貸付の対象になっておりましょうか、お調べになっておりますか。この人たちの大部分高利貸しです。あるいは最近の質屋通い内容を見てみますと、必ずしも米びつを入質するといったようなものではなくて、つなぎ資金あるいは一時の事業の継続のためのやむを得ない措置として、かなり無理な質ぐさを入れて資金を受けておる。これは八分から九分の商利です。やみ金融に至りましては、とても想像のつかないような高い金利で融資を受けておる。悪く言えば自殺行為である。しかしそれをやらなければ、どうにもその日が越せないというのが実情なんです。それに対して保護行政が何も行き届いていないのです。もし、こういうものに対して、あなたの方でこういうふうに保護行政が行なわれているというものがございましたら、具体的にお答えいただけばけっこうだと思うが、ありますか。
  16. 大堀弘

    大堀政府委員 御指摘の点につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、はなはだ広範でございまして、われわれの今までの対策が十分だとは考えておりません。今後十分努力しなければならぬと考えておる次第でございます。今回国会で、信用保証協会小口保証制度についても、特に従業員五人未満商業については二人以下の、いわゆる一番小さい企業に対して、特別に低料率で、しかも物的担保をとらないで、簡便に保証ができるという制度を新しく実施いたしますように、目下御審議をいただいておるわけでございます。大体、信用保証協会の利用でいきますと、現在第一種包括保険の一人当たりの平均実績額が二十一万円になっております。限度は五十万でございますが二十一万でありまして、かなり零細金融保証制度によって利用されておるというふうに考えるわけであります。詳細の内訳については、今手元に資料を持っておりません。  なお、先ほど申し上げました商工会運営改善普及員、これは新しい制度で、まだ二年目くらいでございますから、今後の活動に十分期待しなければならぬと思っております。私ども、今日まで報告もとっておりますが、これは大体七百軒に一人くらい配置しておるわけでございます。十分ではございませんが、これが、国民金融公庫で金を借りるのに借りる方法もわからないという方のために、いろいろとあっせんしておりまして、仕事の中で金融関係のあっせんの件数が三分の一くらいを占めておるように考えられます。この間、国民金融公庫で伺いましても、最近商工会の改善普及員がなかなかよく連絡をして活発にやっておるということも言っておりますので、さらに指導なり、あっせんの面で改善を加えていくようにしております。
  17. 井堀繁男

    井堀分科員 大臣、お聞きのように、商業では二人あるいは工業では五人、統計の上からいいますと、これは相当高い水準なんです。そこまでようやくおりてきたことは、おそきに失したのでありますけれども、けっこうなことだと思います。しかし、数の上からいうと、今言うように六〇%に近いものがはずされている。ここまでおりなければ中小企業対策にならぬぞということをはっきり記憶して下さい。これは今の保護対象から全然はずれている。だから、この問題は、通産行政だけでは救いがたいので、むしろ他の保護行政労働行政あるいは厚生行政の中でも対象に上せるような道を開いていくべきではないかと実は思っておるわけです。通産行政の中だけでこの問題を解決しようということも至難な問題だと思うのです。いずれ中小企業基本法などが出てくるようになりますと、こういう問題を追及せざるを得なくなってくると思う。ばく然と中小企業という概念の中に隠されてしまっている。そういうものを、もっとはっきり統計の上にも摘出されてくるように、私は行政としてもやるべきではないかと思う。こういう点に対して、はなはだ恵まれない、置き忘れられた、しかも重要な生産のにない手であるこういう階層があることを十分御記憶を願って、しかるべき措置を至急に講じてほしいということを希望いたします。  それから、二人ないしは五人という関係をあげておりますが、それ以下の者はその対象に上しにくいというところに私は技術上の問題があると思う。これは一人でも雇用すれば事業主としての義務を他の面では負わせられるのです。たとえば基準法の適用を受けますとか、あるいは社会保険などにおける、任意包括の場合も許されておりますけれども、私どもはそういうものは強制加入をさせろという主張をしておるのでありますが、そういう義務を雇い主が負うわけであります。そういうものに対する重荷をさらに課せられるので、これは断然だとは思いますが、そういった点に対する保護をこの際はずしているということは、一人でも使えば、他の法律ではきびしく義務を課している以上は、やはり保護もそれ以上にむしろ必要なことだと思います。一人でも雇用している部分については、貸付の対象としてぜひ取り上ぐべきであると私は思う。それを今回はずしているのはまことに遺憾だと思うのであります。こういう問題をはっきり希望しておきたいと思います。  中小企業関係につきましては多くの問題がまだたくさんございますけれども、今最も顕著な、要するに政治の保護対象からはずされているものを私は指摘したつもりであります。こういう点は至急改善されるように強く要望いたしまして、中小企業関係におきますもろもろの問題の解決を促進してほしい。特に、融資の問題については、このままにしておきますことは、日本経済をここから大きな破綻へ導くのではないかと私は思います。  多くの問題をまだお聞きしたいのでありますが、まあ一つ御勉強願うことにいたしまして、打ち切っておきたいと思います。
  18. 大堀弘

    大堀政府委員 先ほど先生からお尋ねがございました点、今手元に多少参考になるものがございますので申し上げたいと思います。  これは十一月の国民金融公庫の規模別の貸付状況調査でございますが、十一月だけでございますので、もし全体が必要でございますれば、また追って御報告申し上げます。十一月で、貸し付けております合計の金額で約百六十九億でございます。件数で五万七千件でございますが、このうちで従業員五人以下のものに対して貸し付けておりますのが八十七億でございまして、パーセントでいきますと五一・五%。件数が四万件でございまして六九・八%という、国民金融公庫の貸付といたしましてはかなり小さな方で運用されている。これは十一月だけでございますから、これだけでは申し上げられませんが、そういった参考の数字がございますので、補足して申し上げておきます。
  19. 井堀繁男

    井堀分科員 私も、十一月のデータは持っておりませんが、十月のデータは持っておりますけれども、これをまた分析していきますと問題があるのです。実際、そういう一つ一つの問題を見ていきましても問題がありますが、そういう人たちはごく限られた部分で、おおむね、そういう金融にたよらないでも、何とかやっていけるくらいの人たちが借りているのです。どうしても借りなければならないところには貸さないのです。ここに中小企業零細企業金融政策に対するてこ入れが必要だと思うのです。市中の金融機関を窓口に使っての金融では、零細企業金融というものは私はとうてい推進されないということを、ここではっきり言っておきたい。だから、ここには中小企業政策というものに対して新しい一つ金融政策が加味されてこなければ、一般の商業金融はもちろんのこと、ただ単に資金だけをつぎ込めばいいというわけではないのでありますから、そういう点はあまりデータの表の方ばかりを見ないで、もっと掘り下げて、それも今言うように五人以上あるいは二人以上のところですから、それ以下は入っておりません。そういうものが非常に大きな産業経済の上の役割をしておる、社会的な地位も非常に重要な地位にあることを、先ほど来数、字をあげて明らかにしたわけであります。十分そのものにしかるべき措置を要望いたしておきます。  次に、最近ひんぱんに起こっております鉱山関係の事故であります。しかも数多くの人が一挙に人命を失なうような事故がひんぱんに起こっておるわけでありまして、その跡を断とうとしていない。起きたときには世論もまた当局も、大いに騒ぎ立てるのでありますけれども、そのほとぼりがさめますと、うやむやのうちに葬られているという事例が実は多いのであります。私がこの問題をここで取り上げますのは、人命軽視の傾向というものは、非常におそるべき害毒を国民思想の上に流しておるということを忘れてはならぬのであります。だれもかれも民主主義の理想を説くのでありますけれども、民主主義の基本的なものは人権と人命の尊重にあるのでありまして、その軽視はおそるべき民主主義の反動的な力となって伸びていくということは、これはだれしも言っていることであります。私はお説教よりは現実の人命、ことに危険な作業に従事して、かつては日本産業のエネルギーをかついだ鉱山労働者あるいは日本の重工業の基礎をなします、日本の産業の基本的な作業である金属鉱山などの鉱山関係労働者が、今非常な悲境にさらされておりまするが、その対策が重要でありますことはもちろんでありますので、私がここで強調いたしたいのは、人命軽視の傾向というものは、国民に大きな悪影響を与えておるという点が存外軽視されている点をこの際強調したいと思います。そういう意味において、鉱山労働者保護というものが、よほど積極的になされなければいかぬのに、この予算を見ますと例年の予算と変わりありません。わずかにどうかと思うような点に増加があるだけであって、それも自然に要求されるような増加にすぎぬようなものであります。こういうものに対する当局の態度をこの際ただしておきたいと思います。ごく最近でけっこうでありますから、どれくらい鉱山における事故死があったか、一つ国民の前に発表する必要があると思いますので、数字をお答えいただきたいと思います。
  20. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 ただいま御指摘がございましたように、最近、特に今年に入りましても、年当初におきまして、相次ぎます重大災害が発生いたしまして、はなはだ監督行政に当たっております者として、ざんきにたえない次第でございます。最近の金属山関係におきましては、漸次災害件数も死傷者も下がってきております。しかし石炭山の関係におきましては、鉱山保安法が制定されて十一年になりますけれども、制定当時に比較いたしますと、件数も死亡者も減少いたしております。最近の傾向は、絶対値におきまして横ばい状態に入ってきております。ところが一方労働者数は減少いたしておりますので、そういう面から見ましても、率的にはむしろ好ましくないような傾向をたどってきております。  この石炭山の傾向につきまして数字的に申し上げますと、災害の発生件数は昭和二十五年では、十六万二千件あったわけでございます。これがだんだん減少いたしまして、五万件ないし六万件というふうなことになっておりますけれども、最近三カ年の発生件数を申し上げますと、昭和三十四年は五万七千六百七十二件でございます。三十五年では五万七千五百五十件、三十六年は、これは十一月までの統計でございますが、五万六千二百七十七件、こういうふうな状態になっております。このうち、こういう災害によりまして死亡いたしました人たちは、昭和二十五年の当初におきましては七百八十四名でございましたが、それから漸次減って参りました。昭和三十四年は五百七十四名、これは鉱山保安法制定以来の好成績であったわけでございます。しかし三十五年にはまたすでに六百人台になりまして六百十六人、三十六年にはこの死亡者は十二月まででございますが、六百四十二名、こういうふうに逆に増加いたしております。この昭和三十六年におきましても、御承知のような年当初の重大災害によります影響が、死亡者としては大きく現われてきているわけでございます。さらにこの状況を、労働者数も減少いたしておりますので、率として稼動延べ百万人当たりの災害率で申し上げますと、百万人当たりの災害率は、昭和三十四年では六百四十となるわけであります。ところが三十五年ではこの数字が六百七十五、三十六年では八百七、こういうふうな状況になっております。しかし昭和二十五年では、この六百台が千三百九十六というふうに大きかったわけでございますが、こういう大きな数字から見ますと、最近は相当に減少してきている、こういうふうなことになるわけでございますけれども、最近の状況は横ばい、あるいは昨年のごときは、むしろ増加の傾向にあったということは、はなはだ好ましくない状況を呈しておるわけでございます。ただいま御指摘ありました予算の面におきましても、一応いろいろな対策を考えておるわけでございます。しかし何を申しましても対策の根幹は、鉱山保安法あるいはこれに関連いたします鉱業法等の法規の厳正な運用、遵守ではないかと考えるわけでございます。従いましてまずこの点に重点を置きまして、人員的にも昨年の七月に四十名の監督官の増員をお願いしたわけでございます。従来二百二十五名おりましたのが、四十名ふえまして二百六十五名と監督官を増加いたし、さらに来年度の予算におきましても二十名をお願いしておるわけでございます。しかもこの昨年にふえました四十名と来年度の予算でお願いをいたしております二十名、この増員はすべて石炭鉱山に振り向け、また重点を九州と北海道のような大きな炭田地帯に特別に配慮いたしまして、その四十名と二十名のうちの二人だけを他地域に配属しますが、あとの残りは全部九州と北海道に持って参るわけでございます。しかもその配置のやり方は、同じ人間でもより効率的な監督順守ができますように、九州に五カ所、北海道に四カ所の現地の派遣班を設けておりますが、すべてここに配属いたしまして、効率的な監督を実施したい、かように考えておる次第でございます。
  21. 井堀繁男

    井堀分科員 統計でも明らかなように、最近石炭の斜陽的な傾向というものが、必然的にどうしてもこういう保安施設に対して資金を投じたくないというのは、私は営利企業のやむを得ない一つの悪い傾向だと思うのです。それだけに監督行政というものは、これに逆比例して積極的な保護政策がとられなければならぬことは、これはもう常識である。ところが予算を見ますと、同じ予算しか組んでない。こういう保護行政は、私は全く当局の責任を追及されてくることだと思うのです。これは単に私は炭鉱災害が非常に多くなってきたからというだけでなしに、さっきも申し上げたように、やはり平和主義、民主主義を指向する政治家のすべての責任だと思うのです。ことに豊州炭鉱の例を見てもわかるでしょう。八十七名が生き埋めになったままで閉鎖してしまった。私は刑法の中でも死体に対するきびしいおきてを設けて保護を加えているというのは、人命、人権に対する人の思想というものをはなはだしく敏感におそれておるからであると思う。しかるに、こういう日本の産業をになう労働者が、生き埋めになったままで、うやむやのうちに実は終結を告げるなどということは、これはもう近代社会において許される悲劇ではないと思う。そういう意味でも私は、本年度は通産行政の中では、そういう保護行政に画期的な予算を組んで、そして世論にこたえていくという態度でなければならないと思ったんですが、はなはだ遺憾であります。一つ通帳大臣はこういう点に対しては十分考えていただきたい。  そこでもう一つ、この機会に通産大臣に伺っておきたい一つの問題がある。それは同じ労働者のこういう保護行政の中で、労働省との関係であります。まず一元的な保護行政がいいか、あるいは今日の保護行政がいいかということについては、あまり問題にされておらぬようであります。しかし私どもは、こういう災害が起こったときに、現地調査などをやりまして感ずることは、確かにこういう労働保護行政については、私は基準法の上に立って保護行政を進めておる労働行政が本筋だと思う。通産行政のように、産業の要するに保護育成を主とする役所が、労働保護政策に力を入れたといたしましても、専門的な技術を要する部門については協力関係に置いてしかるべきだと思う。要するに保護の行政の中心というものは、一元的に労働保護行政にしていくべきじゃないかと思うのでありますが、これは政策上の大きな転換を必要とすることでありますから、一つ通産大臣の見解を明らかにしていただきたい。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 井堀さんのお話しになりましたように、人権あるいは人身、生命の尊重のないところに政治はございません。これは経済であろうが何であろうが、それが基調であることは、私も井堀さんの御意見に心から敬意を表するものでございます。ところで今炭鉱の保安という問題、あるいは労働基準という問題と、これは一緒であるのが筋じゃないかという御意見でございます。私ども産業保護ということを申しましたからといって、安全度の低いものに操業させるというような考え方は毛頭持っておりません。むしろ労働基準といいますか、この鉱山の保安の問題は純技術的な問題だ、かように考えておりますので、今の予算が少ないという点で、十分な活動ができるとかできないとかいう議論はございますけれども、私どもが特に留意をいたしておりますのは、この労働条件そのものにあらずして、安全が確保できるかどうかという、そういう意味の検査を専門的な技術的な観点に立って施行いたしておるわけでございます。私は、これはあえて労働行政通産行政と一体であるとかどうとかいう問題ではないのじゃないか。ことに井堀さんが御指摘になりましたように、最近の炭鉱経営が非常に困難になる。困難になると、生産の面には力が入っても、保安ということについては、あるいはこれをゆるがせにするような傾向はないか、そういう点が私どもにも同じような心配が実はあるわけであります。そういう意味から、炭鉱の保安検査については格段の留意をいたしております。ことに非常に景気のいい山でございますれば、経営者ももちろん十分力をいたしておるのではございますけれども、斜陽産業あるいは終山、廃山というものも間近い、あるいは経営者がかわるというような小中の経営につきましては、これが一番大事だということで、特に私ども留意し、指導しておる、これだけは一つ御認識をいただきたいと思います。私は基本的には産業だろうが何だろうが、御指摘になりましたように、人権並びに人命が尊重されないところにそういう経済活動はあり得ない、この考えには私も徹するつもりでございます。
  23. 井堀繁男

    井堀分科員 行政を一元化することは、いい場合としからざる事情のある場合もあろうと思うのでありますけれども、この場合は実際問題として、技術面における協力はむろん積極的でなければならぬのでありますけれども、やはり保護行政の中核は、一般の労働者の基準に比べまして、一段と強いものでなければならぬと思うのであります。そういう意味で一元化するということなら意味があるのですが、実際はそうではない。通産大臣一つ現場に行って勉強していただきたい。たとえば福岡の場合における基準監督署の見解と地方の基準局の主張とは非常な違いがありまして、大いに肝に銘じて、実際問題として私は指摘しておきたい。私は逆に保安行政については他の労働者よりは一段と計画的、積極的な保護行政が行なわれなければならぬという意味で、通産省が通産省の中に強い保護行政を行なおうというのであれば、私は大いに共鳴するのでありますが、事実は逆だと思う。今後改めるという通産大臣のお気持ちですが、どうも、大臣のお仕事中心産業的なことにあるのですから、付随的な仕事だというような傾向になりがちなことはやむを得ぬと思う。万能な佐藤さんですからそうでもないかもしれませんが、事実はそうでなかったということが、さっきの統計の上でも出ているのですから、あなたが予算要求をなさったのでありますから、もうこれは議論の余地はないのであります。ちっとも保安行政に対して親身を見せた予算ではありませんよ。これは一つ反省をして下さい。  そこでこの問題は、今委員長から時間の御注意がありましたが、もう一つわが党の立場から伺っておかなければならぬことがありますから、またあとあとこの問題は他の委員会でもありましょうし、十分反省して、これは民主主義の基本的なものでありますから、人道的な立場からもっと猛省を促しておきたいと思う。  それから次に、最近公益事業関係で、電気、ガス事業関係というものは産業に及ぼす影響も重大でありますが、国民生活に直接関係のある、ことに物価騰貴の中におけるこういう公益事業の料金の問題などは、非常に敏感になっておるときであります。しかるにどうしたあんばいか、東電関係あるいは九州電力関係の二社だけが公衆街灯に対する地方税が免税になっておる。他の七つの電力会社の区域は依然として一割公衆街灯に対する課税をやっておる。これは一つには、税金で一割の負担とともに、料金の方からいいましても一割程度高い。国民の側からいいますと、納税の公平の原則からいいまして、これははなはだ不合理なことなんです。それから公衆料金の負担という性格面からいきましても、差別をつけるということは、この料金はあなたの方の許可認可に関する事項でありますから、こういう不合理は、私はすみやかに解消しなければならぬと思いましたのにかかわらず、九州はおととしですか昨年ですか、とにかく東京とずれて解決がついている。もちろん課税の関係は自治省の所管かもしれませんが、しかし料金のきめ方が合理的であればそういう事態は起こってこないということになると思いますので、これは通産省の責めに帰することであると考えまして、こういう不合理を即刻解決されることが当然の行政だと思いますから、即時解決される用意があるかどうか、一つ伺っておきたいと思います。
  24. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 先生の御指摘ごもっともでございまして、実はわれわれもその線で今まで関係方面と折衝を続けてきたわけであります。はなはだ申しわけございませんが、今のところ説得不十分ということで、電力会社が特別の割引をしていないところは、はたして一般の広告灯であるか、それとも防犯の効果を上げるいわゆる公衆街路灯であるかといったような判定もつきにくい、徴税技術上はなはだ捕捉しがたいということで、今のところ押しまくられ、もしそれがいやなら全面的に免税はしないというような実は話があったわけでありますが、われわれとしましては、とにかく一カ所からでも、こういう悪税であると考えられておりますものをやめていただくのは非常にけっこうだと思いまして、とりあえず東京と九州、この二つは、今御指摘のございましたように、料金改定の際に、非常に徴税の方法が簡単でありますので、あるいは深夜の余剰電力をもっぱらつけておるというようなことで、実際のコストも安いというようなことで、総合原価を配分します際に従来よりも割り引いても、十分会社としてペイするんだという計算ができましたので、割引の認可をしたわけでございます。御承知のように、現在の電気料金はすべて原価主義になっております。従って、一部だけを政策的にいじるということはできない建前になっておるわけでございますので、われわれといたしましては、いずれ料金改定等がほかの会社にもなされるという際には、これは当然東京電力あるいは九州電力でとられたと同じような措置をとりたいと思っておりますが、実は最近非常に電気の需用が伸びておりますために、資本費の増高が著しくて、各会社とも実質的な経理は非常に苦しくなっております。従いまして、現在一斉にこれをいじるということになりますと、一斉に料金値上げというようなことになりかねぬようなことになりますので、われわれといたしましては、極力公共料金は低く押えたいという趣旨から、この現行の電気料金を改定するというようなことをしないでも十分徴税できるじゃないかということにつきまして、今後とも自治省方面と話を進めて参りたいと思っております。と申しますのは、東京におきましてもあるいは九州電力におきましても、まずこれは電力会社と納税者の間に問題が起こったわけであります。街路灯と申しましても、いわゆる広告灯と、ほんとうの防犯的の効果のある街路灯と、どこで区別するか。防犯的な効果のあるものなら料金は引きましょう。しかし純粋の営業広告のようなものは、これは引く必要がないじゃないかということでいろいろやりました結果、大体の大ざっぱな数字では、たとえば一晩じゅうつけているというものは、これはある程度広告があっても防犯の効果はあると認めよう。しかしお客さんがいなくなったら片っ端から消してしまうといったような電気は、明らかに営業用であって、防犯灯の効果を認めて料金を割引していく必要もなかろうというようなことで、大体東京電力、九州電力との間に話がついております。従いまして、電力会社と納税者との間に起こりましたとちょうど同じことが、地方自治体と納税者との間に起こった場合に、判断がつかぬというのが自治省の言い分だったわけでありますが、昨年の三月に九州電力、昨年の七月に東京電力の値上げが認められまして、そうして新しい電気料金になりまして、今ぼつぼつその問題は具体的に解決しつつございます。従いまして、今回の国会で地方税法の改正をお願いしておりますものは、とりあえずあれで通していただきまして、一年間あるいは半年間の九州、東京における電力会社と納税者との間のいろいろな争いがこういうふうに解決している、こういうふうにやれば、自治体で、これは防犯灯である、これは広告灯であるということも十分わかるはずじゃないかということで、さらに説得することによりまして、できるだけ早い機会に全面的免税という方向に持っていっていただくようにしたいと考えております。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 詳細に事務当局からお話しいたしましたから御了承いただけたと思いますが、元々電気ガス税は悪税だといわれております。で私どもから申したら、電気ガス税——ひとり街路灯に限らず、全部やめてくれという強い主張をしておるわけであります。ところが、御承知のように電気ガス税は、徴税から申しますと非常にとりいい税でございます。そういう意味で、地方自治体はなかなか難色を示しておる。その事の起こりはそこにあるわけであります。そこで東京と九州だけは過去のいきさつで安くした。しかし現在の割引規定がどうあろうと、また今後の状態がどうあろうと、東京と九州が現実に安くしておるものを、その他の電力会社に同様の処置がとれないわけがないだろう、そういう意味で、結論から申しますと、今樋詰君の申しましたように、いろいろのいきさつはあるだろうが、事実をもって克服して、全国も同様に、街路灯については東京、九州と同じような処置をしようと今努力しておるということでございます。御了承いただきたいと思います。
  26. 井堀繁男

    井堀分科員 努力中でありますならその結果を待つ以外ないと思いますが、一番私不合理に思いますことは、大臣も答弁の中ではっきりしたようでありますが、電気事業は国からの多額の財政投融資などの恩恵を受けておる。それは法律で規定されておりまするように、豊富な電力を低廉に供給するためにそういう保護が与えられておるわけであります。そういう多大の国の援助を受けておる公共事業であります。その公共事業の中で、さらに今言ったように公衆のための街路灯に対する課税などということはナンセンスに近い事柄であります。それが今度東京と九州だけやめて、他の地域は依然として税金をかけるなんていうのは、それは日本の自治制が全く独立した自治ならいいですが、こういうことは行政上のミスです。これは即刻閣僚の一人として処置をされることは当然なことだと思います。その当然なことがなされていないものでありますから、わざわざわれわれが質問をしなければならぬのであります。お気づきになりましたら、即刻解決をされるように強く要請をいたしまして、時間がきましたので終わります。
  27. 倉成正

  28. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間もあまりないようでございますので、こちらも簡潔に質問いたしますから、答弁も簡潔にやって下さい。  まず最初にお伺いいたしたいのは、事業協同小組合の事務補助についてでありますが、昨年の予算委員会及び商工委員会においてこの問題を追及して、御承知のように中小企業等協同組合法二十三条の三、これによって、組合員に対しては税制上、金融上の特別の措置を講ずべし。ところが何もやってないじゃないか、こういう点から発展したわけですが、結論的に申し上げるならば、昨年の商工委員会あるいは予算委員会等において椎名通産大臣、あなたの前任者の小山中小企業庁長官は、何らかの措置を講ずる、検討いたします、こういうことになったわけです。そこで、聞くところによると、最初はこの事業協同小組合の事務補助については、今度の予算編成の際に、中小企業庁としては一応掲げたが、第一回の省議で削られた、こういうことを聞いておるのですが、その間のいきさつを簡単にお願いいたします。
  29. 大堀弘

    大堀政府委員 御指摘のように、私どもとしても何らかの措置がとれないかということで、予算上も原案で考えておったわけでありますが、現在中央会その他、そういった形の補助ということは可能でございますが、協同組合ということでございますと補助が非常に困難であるということで、全体の会議で削除されたのでございます。その点は、はなはだ残念に思っておりますが、御指摘の通りでございます。
  30. 田中武夫

    田中(武)分科員 通牒か何か出して、中央会の補助の中からめんどうを見ろ、こういうことになっておるようですが、その間うまくいってないということは御承知の通りであります。昨年の商工委員会では、小山長官は、まず全国的な組織ができた場合、それに対しては考えましょう。現に、同じ中小企業等協同組合法による協同組合も、全国的な組織としての中央会には出ておるわけです。小組合はなるほど数は少ない。しかし全国的なものができればということで、一応昨年全国協議会というものができたわけです。ところが今回、言いますようなことで削られたのですね。この点については、はなはだ遺憾だと思うのです。これは中小企業庁長官より大臣に伺いたいんですが、中小企業庁では小組合の事務補助費というものを予算要求の際に計上した。それを省議で削った。なぜそういうことをしたのか、それをお伺いいたします。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 小組合に対する補助の問題だということでございます。その小組合の性格等からいたしまして、実は事務的な観点から、やむを得ず涙を流しながら削除した、こういういきさつでございます。これは、もちろん育成強化に、私ども最善の努力をするつもりでございますが、ただいままでのところ、理論的に、また実際的に困難だというような事情にあったわけであります。
  32. 田中武夫

    田中(武)分科員 涙をのんでということだが、理論上私は困難ではないと思う。きょうは時間の関係もあるから、そういうこまかいことの議論はいたしません。ただ申し上げたいことは、先ほどもちょっと話が出ていたようでございますが、いわゆる中小企業、こう一がいにいわれる中においても、零細なものに対して、より以上の保護施策が必要であるにかかわらず、それが行なわれていない、こういうことを申し上げておきたいと思う。  それと関連してでありますが、本年の予算小規模事業対策費というのがありまして、それに十億一千九百十一万三千円ですか、計上せられておるのですが、それは大体が商工会に対する補助費なんですが、これに一番多くをかけておるのが、商工会経営改善普及員の給料の問題です。今までの、たとえば六大都市で二万三千円であったのを二万五千円にした。その他の二万一千円程度を二万二千五百円にしよう、こういうことでありますが、去年からことしへの給与アップの状態は、公務員の七・一%にも及ばないわけですね。こういうことでほんとうにいい普及員が来るかどうかということが一つ。さらにこの普及員に対してはこれ一本きりなんです。そのほか旅費とかその他のものは全然出ない。他の関係の普及員たとえば農業普及員等についてはそういう手当が出ます。商工会法をわれわれが商工委員会で議決いたしましたときに、その附帯決議として数項目を掲げております。すなわち昭和三十五年四月十二日の商工会組織等に関する法律に関する附帯決議の三項にこういう意味のことを掲げておるわけです。ところがそれ以後何らの普及員に対する手が打たれていない。まず第一点が身分についてどう考えておるか。第二点、社会保障についてどういう措置をとられておるのか。とられておりません。さらに退職金についてどう考えておるのか。この点についてお伺いいたします。
  33. 大堀弘

    大堀政府委員 最初の御質問については、今回多少ベース・アップいたしたわけでありますが、これは決して十分ではないという点は、私どもさらに今後努力をしなければならぬと考えております。事務費の点につきましては、改善普及員一人当たりについて一万二千円、旅費も一万二千円、これは予算に計上しておりますし、研修のための研究会その他の開催のための費用も計上しておりまして、配慮いたしておる次第であります。わずかでございますが、つけておる次第であります。  それから改善普及員の身分の問題につきましては、先生御指摘のような点がございまして、実はこの点については法律の規定上はないのでありますが、通商産業局長の承認を得ないと普及貝の変更はできないということで拘束いたしまして、勝手に何かの理由で首を切られることがないように、私どもはできるだけ努力をいたしておる次第でございます。なお、中小企業団体関係の職員全体について、やはりこの際何か共済制度を作るべきではないかということを実は私ども痛感をいたしておりまして、昨年来多少検討して参ったのでありますが、今国会に具体的な案として取りまとめて提出できなかったような状況であります。今後この面については、一そう検討を進めて案を固めていきたい、かように考える次第であります。  なお社会保険の点につきましては、これは直接は各県が監督をいたしておりますので、補助金の交付要件といたしまして、普及員に関する適切な給与規程、退職金給与規程その他必要な労働条件を定めることを要求しております。さらに病気あるいは災害によって長期の欠勤をいたしますことがやむを得ない事情になった場合も、直ちに解職することのないように、一定期間を区切って、当該期間における人件費等については補助するようにということで通達をいたしておりまして、そういう範囲において、御趣旨の点も徹底するようにして参りたいと考えております。
  34. 田中武夫

    田中(武)分科員 こちらも簡単に項目別に聞いておるのだから、あなたの答弁も横へ議論が発展するようなことは避けていただきたいと思うのです。たとえば身分の保障についても、私が言っておるのは、普及員を一体どこに所属せしめるのか、こういう身分を言ったのです。勝手に首が切られないようにというようなことは、労働基準法でちゃんと書いてありますよ。そんなことを聞いているのじゃないです。それとも、労働法について議論がしたければ一時間でも二時間でも、それだけでやりますよ、あなた。なお、旅費は出ておるといいますが、これは一体この予算の十億一千九百何がしの金の中で旅費があるのですか、旅費はどこから出るのですか、言って下さい。  それから県において適切に云々、こういうことを指令を出しておる、こういうことであるが、私が聞いておるのは、実際において健康保険には入っているのか、入っていないのか、それから失業保険はどうなっておるのか、それから労災は保険に入らなくても、業務上災害を受けた場合には、当然基準法で補償があると思いますが、そういう労災関係等々がどうなっておるのか、それをやるにはまずこの普及員の身分を解決せなければならないわけです。これを地方公務員とするのかどうかという問題なんです。
  35. 大堀弘

    大堀政府委員 旅費の問題につきましては、十億円の中に入っておりまして、これは小規模事業指導事務費というものと、それから経営改善普及員研修会費、研究会費、というものがございますが、この中に旅費を含んでおるわけでございます。一人当たり月千円でございます。これは非常に少ないといえば確かに少ないかと思いますが、スクーター等を与えておりまして、かなりの範囲はそのスクーターをもってやっておるということになっておりまして、そういった面をあわせてこれは考えております。  それから社会保障の関係で、健康保険組合その他がどうかという問題につきましては、できるだけ加入するように指導いたしております。方針といたしましてはそういうことであります。  それから身分の府県への転換、あるいは県庁の職員にしたらどうかという点につきましては、実は検討をいたしてはおりますが、商工会が自主的な団体として作られておるものでございますので、できる限り、これもやはり自主的な団体の中で改善普及員が仕事をしていく方がよろしいのじゃないかというふうな点もございまして、なお今後検討いたしたいと思っておりますが、目下のところは、まだそういう結論を得ていないわけでございます。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま、まだ幾つかお尋ねがあるのだろうと思いますが、この普及員そのものにつきまして、最初御指摘になりました点、本給その他の手当が不十分じゃないか、これはもう確かに私ども考えましても十分だとは思いません。ことに、新しい制度である普及というか指導といいますか、相談相手になるという以上は、相当の方にぜひきていただかなければならぬと思います。そういうことを考えますと、一般より以上の待遇をすべきだ、かように実は思いますが、何分にも制度が新しいために、その点が、大蔵省を説得するのになかなか骨が折れた。今回わずかだが、月額旅費支給をするというようなところに進んだという状況でありまして、しばしば考えられる農業普及員等に比べてみたときに、非常に見劣りがするということでございます。これは一つ御鞭撻を得まして、一そう機会あるごとに改善に努力して参りたい、かように考えます。
  37. 田中武夫

    田中(武)分科員 今大臣から、農業改善普及員と同じようにということで、結局は了承いたしますが、そこを考えます場合には、私が言っているように、農業改善普及員は地方公務員であったはずであります。そうすると、商工会経営改善普及員もそうすべきじゃないか、そういう議論を持っているわけなんです。  さらに、中小企業庁長官は、なるべく健康保険だとか失業保険に入るように指導していると言うが、この場合、商工会か使用者になって入っている。——これは入っていますか。そうした場合に、いわゆる使用者が負担する社会保険料はどっちが負担しているか。それから本人が負担する分は二万何がしかの一本の給与の中から出しているのですか。
  38. 大堀弘

    大堀政府委員 実は、はなはだ申しわけございませんが、実施の状況がどうなっておりますか、県の方を使ってやっているものですから、実はまだ実情がそこまで十分調査が行き届いておりませんので、今後十分調査をいたしまして、その点についても十分配慮いたしていきたい、かように思っております。
  39. 田中武夫

    田中(武)分科員 まあ、不勉強だということで食い下がりたいのだが、きょうはこの程度にして、ホーム・グラウンドでやりましょう。  そこで、政府は一体法律を通すとき、あるいは単独に議会が附帯決議その他の決議をしたことに対して、どれほど尊重しておるのか、これが疑わしくなる。先ほど申しております商工会法の通るときにつけました附帯決議、あなたも十分御承知と思いますが、一項から五項まである。そのうち、二年を経過して、行なわれたのは、五項目のうち最後の五項だけ、五つのうち一つだけ、これを実行しただけなんです。あとの四つはやられていない。従って、これと同時に商工会議所法の改正もやらなければならないし、あのとき議論になりましたように、商工会議所商工会を競合せしめるかどうか。一応商工会議所のあるところには商工会は作らせないのだ、こういう趣旨であったのが、大都会の商工会議所では、いわゆるきめのこまかい小規模事業者の指導ということはできにくい、従って、商工会議所商工会を同じようにできるようなことを認めなければいけないじゃないか、こういうような議論になったと思うのでありますが、それも何ら検討を加えられていないのが実情なんです。検討しているというならば、この附帯決議一項から五項、そのうち五項は済みましたから、四項まで全部、どのようにしたか、一ペん言ってごらんなさい。言えないでしょう。
  40. 大堀弘

    大堀政府委員 附帯決議の御趣旨の点も、まだ必ずしも十分に実施ができておりませんことは申しわけないことであると思います。商工会議所の点につきましては、私も実は非常に問題があると考えまして、この支所の設置、これは現に、たとえば東京でございますれば、大田区に支所を作りますときに、支所を設置してそこに経営改善普及員を派遣しまして、現場の中小企業の団体と一緒になってやるような措置をできるだけ進めるように努力いたしておりますが、はなはだ申しわけございません。
  41. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣は一々附帯決議は御承知ないと思いますが、そういう状態でありますので、今後国会における決議を大いに尊重してもらわぬと困る。  そこで、商工会に関連してもう一度お伺いいたしたいのですが、昨年の何月か忘れたが、いわゆる労働者の総評に匹敵するように、中小企業の総評、すなわち中小企業総連合というのを作って、これが自民党の下部組織というような格好で現在動いております。商工会法第六条第三号を見て下さい。「特定の政党のために利用してはならない。」こういう規定があります。この法律を審議するときに、時の総理であった岸さんに委員会へ来てもらって、はっきりその点は委員会において確約をとっております。しかるに今日、これはそうではないと言われるかもしれませんが、新聞等あるいはその他の報道を見ても明らかなように、中小企業と、自民党のひもというか、パイプになる中小企業総連合を作っておる。これは明らかに中小企業団体をして、特定の政党のために利用しておる、こういうことになりますが、いかがお考えになりますか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 法律は御指摘の通りでございます。政党が利用しているのではなくて、利用されているのじゃないですか。そこらのところ、私にちょっとわからないのですが、逆じゃないかと思います。
  43. 田中武夫

    田中(武)分科員 それはわれわれも利用し合えば政府も利用し合えると思うのです。しかし、実際の中小企業総連合は、そんなのじゃないのですよ。これはホーム・グラウンドでやりましょう。これはそこの関係者も呼んできて一ぺんやりたい、こう思っておるわけなんです。  次に、予算の中に中小企業基本政策確立費というのがあります。七百九十九万五千円です。これはおそらく中小企業基本法を作るための調査会でも作ってやろうという費用ではなかろうかと思うのです。ところが今日佐藤大臣は、与党の強い希望によって心にもなく中小企業基本法を出す、こういうようなことを言っておられるのです。ほんとうに佐藤さんはあのタコ法を出すお気持なんですか。タコ法と申しますのは、たとえば公職選挙法が骨抜きになりそうだと言っておる。ところが与党が今作っておられるところの中小企業基本法は、政府があんなものを出すかどうか私は知りませんが、私の知る限りにおいては、法三章第十八条ないし十九条しかないはずです。そうして中は何もない。すなわち初めから骨がないからタコ法なんです。これはほんとうに出すつもりでおられるのか。実はわれわれはすでに準備を完了し、政府の出方を待っております。従ってここではっきりといつごろ出す、こうおっしゃるならそれに合わしてわれわれは出したいと思うし、出されないのならわれわれが単独で出していきたい、こう考えておりますが、いかがでございましょうか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中小企業基本法制定の要望は各界にございますし、また私昨年通産大臣になると同時に、中小企業問題とは真剣に取り組む、そういう意味において基本法の制定にもかかるということを実は申したのであります。昨年の臨時国会中、しばしばいつ出すかというお尋ねを再三伺いました。しかし私そのつどお答えしておるのは、急ぎたいが、なかなか実態をつかむことがむずかしい、そういう意味で十分実態をつかんで、しかる上で対策を講じていきたいということを繰り返して申したわけであります。ところが与党、なかなか熱心でございまして、カン詰になり、そうして原案ができた。与党でそういう原案ができれば、政府はもちろん検討いたしましょう、そして政府が納得いけばそれは出しましょう、こういうことで、ただいま与党の原案を預かっており、そうして私どもそれと真剣に取り組んでいるというのが実情でございます。このこととは別に、基本法は成案を得たら出すがいいでしょう。ことに社会党も第七次案を御用意なさっていると伺いますし、民社党も用意しておられるということであります。そこで、法案がどういうようにまとまりますか、もう少し時間をかけていただかないと、ただいまもう出すという結論を得たという段階ではございません。  そこで、もう一つの方の問題は、基本法を作る作らないとは別に、中小企業実態をとにかく調査することが必要である、また基本法ができましても、実態を十分に認識しなければならぬ、こういう意味で、実は実態調査のための調査費を予算に計上いたしてございます。これはただいまの基本法のための調査だ、こういうように限定する筋のものではございません。その他の関係、幾つも法案がございますので、従いまして、ただいまの基本法基本法で真剣に取り組んでおりますが、来月半ばくらいにはある程度の結論を出したいという気持はございます。あるいは半ばがまたもう少し過ぎるかわかりませんが、そういう意味で取り組んではおりますが、それとは別に調査は進めたいという意味で、予算を計上しているということでございます。
  45. 田中武夫

    田中(武)分科員 その後の情勢が、今大臣が言われたような情勢になったからそうした。おそらく与党がそういう状態でなかったならば、これは何かと聞けば、そのための調査費でありまして、今国会でそのための調査会法をお願いするはずでございました、こう答えるつもりであった。ところが与党の中小企業関係議員の強い要望といいますか、あるいは圧力というか、それに屈して、そのために中小企業基本法を出す、こう言っておられるのですが、ほんとうに今国会にお出しになるのですか。しかも与党のあれを政府案として出したら笑われますよ。ほんとうにあれはタコなんですよ。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕
  46. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま一、二の点で問題を提供しておりますが、おそらくこれから与党の政調会とも交渉を持つことになると思いますけれども、いろいろむずかしい点が多うございます。ことに各省関係の協力を積極的に得ないと、なかなか基本法は出せない。そういう意味で閣議でも発言をして、ことに労働省あるいは自治省等とも折衝を緊密にする。大蔵省はもちろんでございます。そういう意味で各省との協力態勢を作り、そして検討するということで、ただいま取り組んでおるような実情でございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは今国会に必ず出すという確約はできない、こういうように了解してよろしいのですね。  そこで、この基本法に関連してでございますが、先ほど申しましたように、わが党はすでに準備ができております。民社党においてもできておると聞いております。この両案ともに、中小企業に対して、きめのこまかい施策をするためには、現在の中小企業庁ではだめで中小企業省にしたい、こういう趣旨のことが両党の案に入っております。そこで、これは通産大臣に聞くのはどうかと思うのですが、中小企業省設置ということについては、大臣はどのようなお考えを持っておるでしょうか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように中小企業は、いわゆる通産省プロパーの仕事ばかりではございません。各省にそれぞれの中小企業があるわけであります。たとえば運輸省関係では、 ハイヤーだろうがトラックだろうが、同時にまた自動車の修理工場だろうが、これは全部運輸省がやっている。あるいは厚生省は薬屋さんをかかえている。これは各省に実は全部関係しておるわけでございます。そういう観点に立つと、あるいは別な省がいいという議論も成り立つだろうと思います。ところが、何か役所をふやすことが目的であるかのような印象を持たれることが、私どもとしてはまことに不満でございます。実際に取り組むのは中小企業そのものである。それにはどういう点で取り組むというような、内容が明確になることが先なんで、役所を作ることはそのあとだ。そして仕事の量が多くて、一省にするだけの十分の仕事内容がある、こういうことになれば、役所を作ることをだれも反対はしない。だが最初から大きなうちを作るのだということは、どうも本末転倒のきらいがありはしないか、こういうことで、今日直ちに中小企業省を作るという考え方は、少し飛躍だ、かように私は思います。
  49. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣も御承知のように、中小企業人たちは、やはり中小企業庁はわれわれのことを考えてくれる、しかし通産省は大きな資本のことを考えておる。これは常識で、そういうようにはだ身で感じておるわけです。そしてそういう要望が出て参るわけです。その要望の一つに商店街振興法といいますか、こういうものを早く作ってくれ、内容は、現在ある商店街、これに法人格を与える、あるいは調整行為ができる、あるいはまた共同駐車場とかアーケード、こういった共同施設に対して何らかの補助がもらいたい、先ほどの街路灯の問題も入って参りますが、そういうことを内容としたものを強く要望していることは、御承知の通りであります。来たる三月九日に、全国から一万人の関係者を動員して、そのための決起大会を開くということも、長官は御承知だと思うのです。われわれは、昨年秋の臨時国会に商店街組合法案というのをすでに出して、これは継続審議になっておりますが、政府としては、商店街振興といいますか、こういう問題についてどうお考えになっておるのか、お伺いしたいのです。  さらに、聞くところによると、中小企業団体組織法を今度改正せられるわけですが、その中に商店街の事項を入れようと最初は考えたようですが、今度またそれを落としたそうです。そういういきさつ、及び、最初入れようとして落としたのには、もちろんこの中小企業団体組織法では何にもならないから落としたと思うが、では、別に商店街振興についての施策を考えておられるのかどうか、お伺いいたします。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん経過をよく御承知でいらっしゃるようです。これは、中小企業について格段に御留意していらっしゃる結果、他党の動きなども詳細に把握していらっしゃるのだ、かように思います。その経過は、ただいま長官からお答えさせたいと思いますけれども、ただいまちょっと足踏みをいたしております。これはなかなかむずかしいから、一応足踏みをいたしておりますが、しかし、私ども必要は十分痛感しておりますので、さらに研究させていただきたい、かように思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)分科員 僕は、中小企業、ことに零細企業金融の問題あるいは経済調整政策からくる金詰まりの問題等は、何回か取り上げられておるので、そういうことは申しませんが、結論的にいって、中小企業金融といっても、結局は、その中小のうちで、より大きなものに吸い上げられて、ほんとうの零細企業というか、そういうところには、政府の機関である国民金融公庫ないし中小企業金融公庫等々の資金も、あまりこないのが実際であります。  そこで、提案をいたしたいのですが、これは政府機関以外のものまでも直ちにできないでしょうが、少なくとも政府機関である金融機関に対して、中小企業のワク設定にあたって、これは小規模事業者用だ、あるいは零細企業者用だ、特定の何百億かのワクの中で、これだけは小規模に貸さなくてはならぬ、そういうようなワク設定を考えておられるかどうか、お伺いいたします。
  52. 大堀弘

    大堀政府委員 私ども、中小の中でも、上と下とどういうふうにいくべきかということについては関心を持っておりますが、現在までのところ、そういったワクは作っておりませんが、今後対象をあげていきますような場合に、一方に、やはり中間面でも不足するという議論もございまして、多少政策的に考える場合にも、やはり下の方とのワクをどうするかということは検討しなければならぬと考えておりますが、なお勉強いたします。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは田中さん御承知だと思いますが、昨年、年末金融いたしました際に、中小企業炭鉱向けの特別のワクを作ったことがございます。過去の実績等から見れば、だんだん数字も固まって参るでございましょうから、将来は、ただいま言われるような、非常にきちんとしたワクは別としても、大ワクくらいは腹づもりとして持つように指導して参りたいと思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)分科員 わかりました。ぜひ、一つのえさ箱のうちで、より大きなものがそのえさを食ってしまうということのないような、別のえさ箱を作ってもらう、そういうことをお願いいたしておきます。  それから、この予算の中に、中共見本市開催補助費、こういうのが五千五百二十九万円掲げてありますが、これは一体どういうように使うつもりなんですか。
  55. 山本重信

    ○山本説明員 中共見本市につきましては、かねてから、いろいろな条件が整えば見本市が開催できるだろうということで、本年度も予算を計上しておったのであります。その実現には至らなかったのでありますが、新年度も同じ額を計上して、もし事態が熟せば開催したいというふうに考慮いたしております。
  56. 田中武夫

    田中(武)分科員 具体的に、いつ、どこの主催で、どこで行なわれるかということはない、しかし、行なわれた場合の用意のために、こういうことのようですが、そこなんですが、昨年も掲げてそのままになっておる。ことしも掲げておるわけですが、これは待ってはこないものであります。従って、政府がもっと積極的に中国貿易に乗り出す、こういう態勢がなければ、こういうことはできないと思う。ただ民間協定に待つというだけではだめではないかと思うのです。こういうこまかいことを私、取り上げる気持はないのですが、池田総理は、施政方針演説の中で、たとい言葉だけではあったが、中共貿易に触れておられるのです。ところが、佐藤大臣の、通商産業政策の重点についてという、商工委員会で行なわれたところの、本年度の通商産業に対する施政方針演説には、故意かどうか知りませんが、中共貿易のことについて全然触れておられないわけです。そういう点について、私は、言葉だけでも池田さんは言ったが、佐藤さんは無関心ではなかろうかと思うのですが、その点いかがですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん熱意を持っておりまして、区別をしないというか、一視に見て、全体としての計画を進めております。最近の日ソ通商取りきめなども、私、最終的にてこ入れして、非常にりっぱな通商協定が結ばれたようで、これなど、いかに努力しているか、いい証左だと思います。どうかよろしくお願いいたします。
  58. 田中武夫

    田中(武)分科員 日ソ協定についてはわかっておりますが、「重点の第二は、輸出の振興と経済協力の推進であります。」こう言っている中に、共産圏貿易についてはどうするかということは、輸出振興と関連して一つもうたっていないわけです。そこで、そういうように解釈したのですが、これはまたもっとホーム・グラウンドでやりましょう。  それから次に、特許庁長官にお伺いいたしたいのですが、三十四年三月二十七日、特許法等十法案を衆議院で採決いたしました際に、一項から五項まで附帯決議をつけております。そのことについて今日までどのように改善せられてきたか、お伺いいたします。
  59. 伊藤繁樹

    ○伊藤政府委員 先般の商工委員会におきまして、非常に激励的な意味で附帯決議をつけていただいたわけでありますが、その内容は、主として、できるだけ予算をふやし、十分な人員を確保して、未処理をできるだけ少なくしようということが中心でございますので、それ以降、この決議の支援のもとに、私どもとしましては、大蔵省に極力国会の情勢等も報告いたしまして、予算の増加、人員の増加、能率の増進に努めて参ったわけでございます。当時三十四年度の予算は、大体四億四千万程度予算で特許庁はやっておったわけでございますが、三十七年度におきましては一億五千万と、もちろん、これは人件費の増加もございまして、不十分ではございますが、かなり大蔵省にも理解のある態度をとっていただいておりまして、庁費も着実に増加しておる現状でございます。
  60. 田中武夫

    田中(武)分科員 ところが、そうではないのですよ。あの法律によって特許手数料を大幅に上げました。あのとき私はたしか言ったと思うのですが、いわゆる特許行政はもうけるための行政であるのかどうか。本年におきましても八億五千何がしの予算があることは承知いたしております。では、本年一カ年に特許関係の手数料として入ってくる金は幾らありますか。おそらく十億以上だと思うんです。それならば、特許庁はもうけるための官庁である、こういうことになるのですが、どうでしょうか。おそらくあのときの大蔵大臣佐藤さんじゃなかったかと思うんですが、補正予算を組めと私申しましたら、山中政務次官が参りまして、そういうことについては一つ検討します、そういうことで別れたと思ったのです。
  61. 伊藤繁樹

    ○伊藤政府委員 国会でそのような議論が出ましたことは、よく承知いたしておりますし、私どもといたしましても、大蔵省にそういうことで交渉をいたしておるわけでございますけれども、国会におきましても、われわれの交渉におきましても、この原則は必ずしも確立されておらない現状でございますが、向こうとしてはいろいろ理論もございまして、手数料は確かにサービス……。
  62. 田中武夫

    田中(武)分科員 何ぼあるのですか。
  63. 伊藤繁樹

    ○伊藤政府委員 手数料としては三億三千万、いわゆる独占的な登録料が六億以上でございまして、そこらにつきまして非常にこまかい議論が、当時国会でもなされ、今先生のお話しのように必ずしもすっきりした原則が確立するまでには至っておりませんけれども大臣もそういうことでとにかくがんばれということで、私どもも、ことしの予算でできるだけ骨は折ったつもりでございますが、まだそこまでいっておりませんことは、残念だと思っております。
  64. 田中武夫

    田中(武)分科員 特許庁の方に入る金と国が特許庁につける予算と比べたら、一方の方が多いんです。なるほど、少しずつ人員をふやし、強化していることは事実ですが、それでもまだたくさんの件数がたまって、二年、三年の日子を要することは、あまり改善できていないわけです。そこで、特許行政はもうけるものではないという観念を、一つ佐藤大臣からはっきりとしてもらいたいと思います。今まではもうけておるのです。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 田中委員の御指摘の通りでございます。特許行政でもうけるつもりは毛頭ございません。そこで、激励、御協力を得た結果、順次ふえております。最近特に私どもが悩みに感じますことは、せっかく予算をとりましても、適当な審査官を得ることが非常に困難になっておる、そういうことでどうもおくれがちだ。これは特許申請を早く処理することが一番必要なことでございますので、そういう意味のことを、努力しておるというのが現状であります。一そう努力するということを申し上げまして、足らない点も一つお許しを得たいと思います。
  66. 田中武夫

    田中(武)分科員 給料が安いから、いい人が来ないんです。これははっきりした、簡単な原則なんですが、まあ、大臣今おっしゃったようなところで、特許行政についても、忘れられがちであるが、大いに一つやっていただきたい、こう思います。  それから、これは外務大臣と両方にお伺いするのがほんとうだと思うんですが、日米友好通商航海条約、これが来年の十月までの効力なんです。すなわち、昭和二十八年の十月三十日発効で十年間です。その二十五条三項によって、一年前に、その条約についてどうするかということを意思表示しなければならぬのです。そうすると、本年の十月ということになるのです。法の七十三条、すなわち、内閣の権限の第三号、これは御承知のように、内閣は「条約を締結すること。」ができる。「但し、事前に、」これが原則です。「時宜によっては事後に、国会の承認を」「必要とする。」こうなっておる。従いまして、これは本年の十月三十日までに意思表示をせねばならない問題なんです。途中で臨時国会があるかどうかわかりませんが、少なくとも、事前に予定せられたものでありますので、今国会においてこの日米友好通商航海条約をどうするかというようなことの意思表示があってしかるべきだと思うのでありますが、どのように考えておられますか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 来年に参ります問題ではございますが、いろいろ今日まで議論されておりますので、政府としても、御指摘の点についていかにすべきか、よく検討した上で、態度をきめて参りましょう。
  68. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは、今国会でどうするということを国会に意思表示する、そういうことはまだ考えておられないわけですか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この国会でどうするということ、あるいはいつの機会にどうするということ、そこまではまだ考えておりませんけれども、日米友好通商航海条約についてどういう態度をとるか、その態度をとれば国会に対してはどういう態度で臨むか、そういうことも含めて一つ検討してみたいと思っております。
  70. 田中武夫

    田中(武)分科員 まだたくさんあるのですが、あまりせかれておりますので、最後に一つだけ、これはちょっと問題が変わるのですが、通産省内部の問題でございますので、大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、実は先日、全商工、すなわち、通産省の職員組合と、大臣との間に、交渉権をめぐって何らかトラブルがあったように聞いておるのですが、実際はどうだったのですか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お聞き及びのように、トラブルと考えればトラブルというものがあったようでございます。しかし、もちろん、事務当局がいろいろ折衝しておりますから、おそらく、同じ役所の内部でございますので、そのうち円満解決を見るだろう、ぜひそうあるべきだ。また、そういう際にはお力添えをお願いするかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。
  72. 田中武夫

    田中(武)分科員 そのうちではなくて、はっきりしておるのです。国家公務員法九十八条第二項には、職員団体は当局と勤務条件について交渉できるとなっておる。それは人事院規則の定めるところ、こういうことになっておる。人事院規則の一四の〇、交渉の手続のところにそれがうたってある。それに従ってやっておるから、交渉権がある。ただし、この交渉権には団体協約を結ぶということは含まない、こういうことになっておる。しかし、交渉権を認めないということはいけないわけです。大胆、何か交渉権を認めないということでトラブルがあったようですが、これは大臣の方がちょっと勘違いだと思うので、これはおれの方が考え違いだったということで、はっきりしてもらう方がいいのじゃないですか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いわゆる交渉権、これは生命権、財産権、いろいろございますが、そういう意味の権利ということと、それから組合の場合の管理者との間の交渉権というのは、特別な用語というか、特別な意味を持たしてあります。どうも同じ言葉が別な場合に同じように使われる、こういうことが問題を紛糾さしておる。そういう点、もう少し話を進めていく必要があるだろうと思います。今田中さんの御指摘のように、いわゆる団体交渉権じゃないと言われる。しかし、たとえば給与をお互いに話し合ってきめていこうというような話になると、これは団体交渉権に入ってくる。これが一番議論が衝突した点なんです。たとえば五千円ベース・アップを管理者と組合で話し合ってきめる、こういう話になると、ちょっと困るということに実はなるわけなんです。けれども、まあ同じ役所のことですから、とやかく理屈を言わないで、話はうまくいくようにしたいもの、だと思っております。
  74. 田中武夫

    田中(武)分科員 私はこれで終わりますが、これは議論をすればもっと発展すると思うんです。なるほど団体協約を結ぶということは含まないとなっております。しかし、勤務条件について当局と交渉することができる、ここに微妙な点があると思う。従って、言葉のあやだけでなく、ほんとうに話し合うのだ、こういうことであれば——交渉にも応じないのだ、こういうような出方はどうかと思うので、これは大臣といえども、やはり国家公務員法ないし人事院規則等は十分吟味していただきまして、つまらぬトラブルを起こさないようにしていただきたいと思います。なおこれでトラブルが起きるならば、赤旗が立てば、やむを得ずわれわれは組合側に応援に参りますので、さよう御承知願いたいと思います。  これで終わります。
  75. 赤澤正道

    赤澤主査 島本君。
  76. 島本虎三

    島本分科員 通産省所管の予算説明について、まず大綱について伺って、私のおもに聞きたいのは電力の関係でございますから、そこに重点を置いて御答弁願いたいと思います。  この予算書の中にも、三十七年度予算のうちの政策事項を五つあげておりまして、その中にもはっきりこの問題がうたわれておるわけでございますが、ほかに第五の点に列挙して、産業の適正配置及び産業基盤の強化費について、「今後におけるわが国経済の高度かつ均衡ある成長を達成するため産業の適正配置をはかりますとともに、地域格差の是正をはからなければなりませんので、前年度対比十一億九千四百万円増の三十八億五千八百万円を計上いたしております。」大臣はこういうふうにはっきりおっしゃっておることは、御存じの通りであります。そこで、この最後の方に、またこの問題を明確に言ってあるわけでございまして、「日本開発銀行につきましては、わが国経済の安定的成長を目標といたしまして、貿易の自由化に対処しつつ、産業基盤の強化、産業構造の高度化と資源の有効利用に直接貢献する産業育成、助長を目的として、三十七年度におきましては、電力、石炭、特定機械、硫安等に対する融資を重点的に取り上げる」、あとずっと説明してあるわけです。あとは全部省略いたしますが、こういうふうな観点からいたしまして、特に大臣に、電力行政について、現在エネルギー政策の面から、まことに重要な問題を中に含んでいる、こういうように私思うのでございまして、石炭にしても、または火力の推進にいたしましても、重油による安直なる経営方法にいたしましても、それ自体技術の革新と相待って、これはもう産業や国民生活の問題や、また、いろいろと与える影響が大きいほかに、この経営そのものも、独立採算を重点にするのか、公益性を重点にしてやっていくのかという、結果的に見て、まことにわれわれの方としては、重大な関心を払わなければならない問題もはらんでいると思いますので、通産省といたしましては、この採算に重点を置いた考えで進めますか、それとも、公益性について今後この中で十分対処していくような考えで進めますか、この両方をもってやる考えでございますかどうか、この基本的な考えをまず承りたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 島本さんと別に議論するわけではありませんが、電力そのもの、電力会社の経営、会社というよりか、電力事業というか、電気事業自身が公益性の強いものであるということ、これはもちろんでございますから、十分その公益性の期待に沿う、そういうことであることが望ましい、また、そういう意味指導はいたします。同時に、私どもは、この経営は民営形態が望ましい、こういう形で実はやっております。だから、民営形態であるというところに、事業の責任というか、これを強固にする、安定化する、その責任は経営者にある、民間事業の問題があるわけであります。そこで、これを結びつけて、ただいま言われる独立採算制というような議論に発展するのではないか、かように思いますが、独立採算制ということをどういうように解釈すればいいかですが、政府も、低利長期の資金等の融資あるいは一面において外資等の導入にも、いろいろ協力するということをいたしております。また、公益性の面から申せば、料金等を政府が認可しているという点が、その具体的な事例だと思います。私は、その二つ、必ずしも矛盾するとか、ぶつかる、こういうものじゃないように思います。
  78. 島本虎三

    島本分科員 私の方で、この問題については、大臣のただいまの答弁に対して反駁ということにはならないかもしれませんが、ある場合にはもう少しこれを深く入るようになるかもしれませんが、念のために、公益事業局長の方に、現在日本全国の無点灯部落が幾らあるのか、どういう地域に多いのか、その分布状態について御説明を願いたいと思います。
  79. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 今のお答えに入ります前に、ちょっと御参考までに申し上げたいのでありますが、無点灯率の少ないというのは断然世界一でありまして、全国のあれは三十四年度のもので、今三十五年度のがまだきておりませんので、三十五年の三月末で〇・四八%、全国でそういうことになっております。それをその前の年の三十三年の国連統計調べますと、日本に次いでデンマークが一・六%、オランダが一・九%、ベルギーが四・六%、スエーデンが六・三%というふうに、ヨーロッパの非常に文明の発達した小さな国でも、大体日本の三倍から十倍の無点灯率を示しておりまして、国土の大きい米国になりますと、七・九%、フランスが七%、ドイツ一一・六、カナダ一三、イタリア一七・三というふうに、これはちょっと日本とはけた違いの無点灯率が世界各国にあるわけであります。これは、今先生の御指摘のありました公益性というようなことも念頭に置きまして、各電力担当者が今までその解消に努めてきた結果の一つの証左じゃなかろうか、そういうふうに考えるわけでございます。  そこで、わが国の無点灯率、今申し上げましたように、平均いたしますと、〇・四八ということに相なるわけでございますが、三十四年には、地方別に見ますと、大部分の地方はもうみんな一%をはるかに割って、平均が〇・四八ということになっている。中には、〇・〇七というような、〇・〇幾らというものもたくさんあるわけであります。その中で、北海道だけが非常に高い率を示しておりまして、三十四年度末、つまり三十五年の三月に四・三%の率を示しております。そのときの戸数にいたしまして、三万二千八百三十六戸あったわけであります。その後、北海道電力におきまして、あるいは共同受電の方式あるいは一般供給をふやすというようなことで、いろいろ努力して参りまして、三十五年の年度末、従いまして、昨年の三月でございますが、そのときには、すでに二万八千七百九十二まで下がっております。さらに昨年の十二月末に二万三千五百八というところまで下がっておりまして、この三月の末には二万二千二百四十、従いまして、三十四年のときと比べますと、二年間に未点灯部落の約三分の一を消化して、一万戸電気をつけるということをやっております。われわれといたしましては、今後とも会社の方を指導いたしまして、未点灯部落の解消には努力したいと思っておりますが、何と申しましても、非常に広大な地域に散らばっておるというようなところには、非常に大きな金がかかるということのために、ほんのわずかの二万ばかりの人に電灯を引いて差し上げるということによって、それ以外の全道民の電気料金を二割以上も上げないとペイしないというような計算にも、計算ではなるわけでございます。そこで、一挙には参りませんので、農林省あたりと十分連絡をとりまして——農林省で御承知のように、農山漁村電気導入促進法というのをやっております。そこで、それをできるだけ活用して、一般供給でいかぬところには、共同受電というようなことで電気をつける、そういうものにつきましては、通産省もできるだけ協力したい。実はこの前の臨時国会に、大臣からもできるだけ早く解消したいとのお話がありまして、われわれ、農林省と、三十七年度の予算にぜひもう少しよけい予算をとるようにということで、いろいろ事務折衝したわけでございますが、ただ、農林省といたしましては、何と申しましても、国家予算を要求するという際には詳細なデータ等をそろえて、大蔵省と折衝しても、どこから突かれてもいいという資料がないと、ただばく然と要求するのでは非常に困るというようなことから、昨年の秋以来、道庁並びに北海道通産局、それから農林関係みんな相談いたしまして、現在調査をやっております。この夏に大蔵省に概算要求を出すときに、農山漁村電気導入促進法あたりにはその調査に基づいて農林省方面からできるだけたくさんの予算を要求していただき、また、大蔵省の方にも納得していただくように、われわれも相ともに実現していきたいというように考えております。
  80. 島本虎三

    島本分科員 なるほど、私は聞いていて安心をしたのですが、その内郷をよく分析してみますと、全世界にも優秀なほどに未点灯部落が日本の場合はなくなっているというデータ、しかしながら、地域的にこれを見る場合には、日本全体ではそういうデータであるけれども、そのうち北海道の場合だけは、他の国以上に、また、それに匹敵するだけ未点灯部落がまだ残っておるというようなデータが明確になったようです。全国平均は〇・四八%であって、それから北海道の場合には、特に二十五年度は一一・七%であり、三十三年度にはこれが四・八%になり、本年度は四・三%ですか、それほどになった。こう徐々に進んでいるのですが、まだ依然として他の地域と比べものにならないほど差があるということは、冷厳なる事実のようです。この格差の是正ということだけは、はっきりしなければならない問題でございまして、今のような未点灯部落の状態は、一日も早く解消しなければならないということは明確です。この問題について心配が一つあるのは、今大臣がおっしゃったような方式で参りまして、今度今の政府の高度経済成長政策に即応する所得倍増計画の推進をしていく、こういうようなことになって参りますと、今度勢い火力を出し、またあるいは水力ですか、川を利用する、こういうようなものもやり、いろいろやって電力を起こしても、太平洋ベルト地帯を中心とし、または他の中心となるような工業地帯のみにそれが集中し、この残された地帯に対しては依然としてそれが集中しないような結果になってはとんでもないじゃないか。ことにそういうような格差をそのままにし、ただ少しでも独立採算をその中に持ってやれというだけであるならば、この地域的に恵まれない僻地や、工業の発展しておらない、いわばぽかぽかのこの電力を供給できないような遠隔の地帯は、依然として残されるのじゃないか。こういうようなことは、公益性を優先させるような見地に立たなければとうてい解決できないのじゃないか、こういうようなことが当然考えられるわけなんです。現在のような九分割された制度のもとで、このあと十分無点灯地帯を解消するというならば、この中に明確な計画というものがあろうと思います。解消するまでの明確な計画がありましたならば、この際御発表願いたいと思います。
  81. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の電力全般の問題は別として、さしあたりの問題で無点灯部落、これはいろいろ努力しております。しかし、これは、島本さん、御想像がつくだろうと思いますが、北海道自身がずいぶん広い地域で、しかも非常に人家まで行くのに山奥へ入っていくとか、こういうようなところが、今言われるような無点灯になっておるわけであります。こういう地域に対して、公益性のあるものだから全部同じようにしろ、こう言われましても、たとえば北海道における鉄道の発達は非常におくれておる。鉄道はもう国有鉄道でやっておる。同じようにどこもやるべきだ、こう言われましても、駅まで出るのにずいぶんの距離を必要とする、こういう地域があるわけであります。これを解消さしていくのが、実は私ども仕事でございます。だから、そういう点で、ある程度の無理——無理というか、実現がそう短期間に片づかないという点についての御理解も、ある程度いただきたい、これは一つお願いであります。  それからもう一つは、工業が四大地帯に集中する、並びにベルト地帯に霊力がいくだろう、そこで、最近の立地計画から見まして、産業の地方分散、地方格差の是正、いわゆる所得倍増計画でもそういう意味のものをやっているわけです。それからもう一つは、電力の発電の事情は、島本さん御承知の通り、よほど変わって参りまして、最近の一番安い電力といえば火力発電でございます。しかも、最近は重油発電が安い。ことにまた、消費地と発電地とこれがよほど近接していないと、送電上のロスもあるというようなことから、りっぱな港等を考え、そして重油ばかりによらず、石炭などもさらに三百万トンよけい使って火力発電を計画する。これは産炭地発電とか揚地発電とかの問題もございますが、そういう意味で電力の供給形態も最近はよほど変わって参りまして、いわば火主水従というか、そういうような形になっておる。そういうところから、今度は比較的に作りやすくなっておるということであります。たとえば北海道における釧路について特別な石炭専用の火力発電を作れ、こういうような産炭地発電の計画等もございます。そういうことで、事情も変わりつつあります。それらのことも一つ御了承いただきたいと思います。
  82. 島本虎三

    島本分科員 その言うのはわかるのですが、今聞きたいのは、この無点灯部落をなくする具体的な計画があるか、立てておるかということです。というのは、私の方でもいろいろ仕事関係調べております。電電公社の場合でも、弱電を扱う一つの公益企業体であって、配電会社の場合でも、いかに私企業であるといえども、これは公益性を尊重する建前を持った企業体である。一方は全部引けたのに、もう電力だけは引けないという事情をそのままにして、言葉では解消いたしますということは、これはやはり画竜点睛を欠くような結果になることは明確なんです。もしこれでやるならば、はっきり私の方で申し上げておきたいのは、北海道の広いということは、これは本州でも広いのですから、そういうようなことがはっきりしております。しかしながら、電灯のつかないところがあるように、電話のつかないところもあるわけです。電話のつかないところに対しては、第一次計画、二次計画、三次計画、四次——四次はまたいっていませんが、計画を立ててやっているほかに、まだこれでもつかないような山の中では、有線放送施設を認めて、放送施設にまでも、これを電電公社の線路につないででも、市外通話までできるようにして、現在二年間にわたって考慮中です。このようにして計画をだんだん進めていっているのに、同じような状態のもとにもう電話がずっと行き渡っているのに、数年間依然としてまだ未点灯部落というのが方々にあるのです。だから、これを解消する計画があるかと聞いている。他の方では同じようにしてある。電力だけなくても、いいという理由はないと思うのです。これは大臣どうです。
  83. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今のお話ですが、有線放送などをお考えになると、これは電話の方が先に進んでおるとも言えるのです。だから、電信電話、これはずいぶんよく発達をして参りました。私などもその計画の一つに参画したつもりでございます。それからもう一つは、マイクロ・ウエーブの発達等が電話のレベルに非常にマッチしている。電気の場合にもそういうところまで手が回りますとよろしゅうございますが、ただ、先ほど樋詰君からお答えしておりますように、農協関係その他ともいろいろ折衝を持って、順次つぶしていく計画を進めていこう、こういうので、まだ十分の相談ができておらないのです。問題になりますのは、今鉄道の話をしたから、対抗上今度は電話の方でおしかりを受けておると思いますが、とにかく相当離れている。その離れているところまでの送電施設に実は困るわけです。ひどいところは、もう六十キロ、八十キロというところがあるわけでございます。そういう実情もある程度御認識いただかなければならぬだろう。アルプスの山の上にも電灯がつくようにしろというその議論は、しごくもっともですけれども、いましばらく時間をかけさせていただきたいというのが私どもの言い分であります。それじゃ今度はどうして計画を持たないのか、こう言われると、実情ではちょっと困る。電信電話なら、無電装置もあるのだから、 アルプスの上だってこれは可能だし、ラジオも聞けるけれども、電気だけは送らなければならない。今やっておりますのでは、たとえば離れ小島だと、その島で自給電力の措置をとる、そういう仕組みもございますが、とにかく電気が最近の文化文明を表わしておるように思える。その意味から申すと、少なくとも電灯だけはつけるように、それが九電力会社の発電でなくとも、その他の便利な、簡便な方法も考案のうちに入れて、そして日常生活と電灯というものを結びつける、これは私ども仕事だ、かように思っております。
  84. 島本虎三

    島本分科員 私の方では、具体的に大臣に聞きたいのですが、それは、昭和三十六年十月三十日の商工委員会の席上で、田中委員から関連質問が出された議事録がここにはっきりあるのです。これによると、もうなかなか大臣としてはりっぱなことを言っております。電灯のないところに電話がつかないというのは聞いている、しかし、電話がついているところに電灯がないなんということは、聞いたこともないし、そういうようなところがありますか、電話はついておるが、電灯がついていない、こういうものはさっそく電灯をつけさせましょう、こういうように言っている。そうして今度はそのほかにも、電灯がついているかついていないか、そういうようなところはたくさんあるそうですからそれは、至急調査をさして直ちに措置をしてもらいます、こういうようにはっきり言ってあるのは、私が言った通りです。そのほかに、まだ前にありますけれども……。もしそうだとすると、昨年の十月三十日に、もうこの問題が提起されて、大臣は十分手を打っていたはずなんです。すみやかにこの電力会社に十分な指示を流して——これらの村は積丹半島の神恵内、珊内、川白、ノットオブカルイシ、こういうふうにはっきり地名まであがって、この部落の戸数はそれぞれ八十六戸、五十六戸、十二戸、十二戸、こういうことになって、そこにすぐやると言ったのですから、どういうようなことをやったか、ここではっきり言ってもらえればいいと思います。
  85. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 局長から詳細に御報告いたさせますから、お聞き取り下さい。
  86. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 今先生御指摘の神恵内の件につきましては、この中の珊内八十六戸と大森二十戸、これにつきましては、地元の方から農山漁村電気導入促進法の中に一つぜひ取り入れてもらいたいということで、道を通じて農林省の方に申請をする手続になっているはずでございます。これが出て参りまして、それが道並びに農林省というふうに通ってきますと、北海道電力会社としては、農林省の方の補助金をいただいて、そして自分の方の金と合わせて、工事を至急進めたいということでやっております。それ以外の川向とノットオブカルイシ、この二つの地域につきましては、地元でも相当の負担をかけなければならない。しかし、何でもここには前に小水力があった。電灯を引くということになりまと、自分の方でも若干負担がかかるわけでございます。そこで、負担の方との見合いから、すぐに農林省の方に電気を引いてもらうための補助金を下さいという申請をしようかしまいかという決断がつかない。われわれといたしましては、大臣がこの前明言されましたことでございますので、至急解消すべく、北海道電力の社長、常務等にも、これは地名まであげて話をされておるから、至急なくすように会社も全力を尽くすように、そのほかの未点灯部落解消についても特別に努力するようにということを言ったわけでございますが、先ほどの答弁と重複いたしますが、北海道電力だけでやりますと、二割ないし二割五分電灯料金を上げるということであれば、未点灯部落は解消するわけでございます。ですから、それを上げてはいかぬということになりますと、これはどうしてもある程度国の方からの補助というようなものをいただかなければならない。そこで、従来電気導入促進法におきましては、一件当たりの金額が九万円までのものは三分の一本人が負担する、三分の一は地元の都道府県が負担する、三分の一は国が負担するということになったわけでございますが、それをこえる分については、だれも負担しているものはないということでだめだったわけでございます。そこで、今度の国会で、今自治省から提出して御審議を願っておるはずでございますが、辺地の公共的施設の総合整備に関する法律案ですか、これによりまして、九万円をこえる場合にも、そのこえた部分は、地方交付税の算定の際の基準に組み入れてよろしい、結局、こえた部分についても国が交付税で交付するという道を開くことによりまして、そういう相当金のかかるところに対してもできるだけ電気が引けるようにといったような、一般的措置がとられておるわけでございます。われわれといたしましては、先般の国会で、農林省にも、この問題について、一緒に農林省の方も出ておられましたので、それ以来、一体どれだけの未点灯部落があって、どれくらいの金がかかるということを共同で調査いたしておりまして、この八月に概算要求を出すときには、農林省の方から、ぜひある程度の長期計画で解消するというようなことをやっていきたいと思っておりますが、しかし、先ほど大臣も申し上げましたように、非常に離れておるといったようなところにつきましても、早急にやれるかどうかということになりますと、あまり高いというもの、経済性にどうしても乗らないというものにつきましては、ある程度残るのも、おくれるのもやむを得ないのじゃないか、今後さらにどういうふうにやっていったらいいかという具体的計画を、農林省、北海道庁とで検討したいと考えております。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま詳細に申し上げた通りの経緯でございます。しかし、未点灯地域ではただいまのような事情がわかりましても、それでなかなか納得がいくわけじゃない。また、時間がかかっておる以上、せっかくの世話にいたしましても、行き届かないという非難は当然当たるわけでございます。私ども、そういうところをできるだけ早目に解消さすように一そう努力して参りたい、これだけを申し上げまして、お答えにしたいと思います。
  88. 島本虎三

    島本分科員 まあ、努力は十分心からお願いしたい。この解消のための年次計画も早く立てて、これはいろいろな点で計画ばやりの、計画好きの現内閣では、当然必要な措置だと思いますから、その計画によってこれを解消させるような方法をとるように心から望みたいと思います。  それから、今までいろいろな説明がございましたけれども、ある程度私の方でも調べて知っているのです。これは現在一万百円くらいで一般の需用家につくくらいのものに対しては、配電会社は隣へつけるようなあんばいでやれる。しかし、それは第一順位で、第二順位もある。それよりもちょっと越えて、全額持つところまでならそれまでやる。それをやってもなおかつ損するようなところは、組合を作って、そっちの方に作っただけやるから、あとの保守も維持も全部組合でしなさい——今答弁されたのは、第四の方式の共同受電方式を言っている。こういう前世紀のようなものばかり奨励していっても、地域の格差はだんだん開いていくばかりで、こういうのは本式ではないのです。だから、ここではっきり所管しておる電力行政の一環として、通産大臣が命令によってできるような、電力会社によってやらせる方、これを年次計画によってやらなくては、前のような、自分でやって、とんでもない方式によってやらされるようなことを年次計画でやられたら、北海道だけいつでも属国のようにして、離れ島のようにしてやる行政は聞こえませんよ。今言っているのはこの方式なんですから、こんなことで私ごまかされません。これではだめですよ。今のような方法から、第四順位によるところのやり方はやはりうまくないので、直接配電会社によるようなやり方をやるべきであろう、こういうような点も十分考えてもらいたいと思います。  それと同時に、この点灯需用について、いろいろ今までやっておる電気税の問題なんかも、いろいろ問題になってきている問題なんですが、この免税点の引き上げや、また公益的な用も帯びておる街灯に対しての非課税方式については、どういうふうに考えられておりますか、こういうような点に対しても伺いたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 未点灯地域の点灯問題については、島本さんの御趣旨もよくわかりました。また、私どもの方の努力の至らない点もだんだん明らかになったようでありますが、これは過去は過去、これから私ども一そう努力いたしたいと考えますし、また、おっしゃるように、もう少し需用者の負担も、一ぺんに全部その負担をするわけにもいかないでしょうが、順次小出しに負担していけば可能でもあろうかと思います。その辺も、もう少し掘り下げて検討してみたいと思います。  それから第二の問題は、先ほどお話がございまして、この席でお答えをいたしたのでありますが、大体電気ガス税というものは悪税だといわれております。そういう意味から、これがなくなれば問題がないと思います。ところが、自治省の方から申せば、このくらいとりやすい税はないのでございますので、地方の歳入財源としてどうしても確保したいというような問題があるわけでございます。ところが、東京と九州については、街路灯について特に安くしておるということでございます。これを他の地域にも均霑さすべく同じような措置をとらせよう、今までの規定等ではなかなか議論があるようでございますが、そういうことを一つ克服して同じような扱い方をしようじゃないか、こういうことで準備を進めておるのが現状であります。
  90. 島本虎三

    島本分科員 これで終わりますが、最後に一点だけ伺っておきます。  これを進める上において、現在のような制度そのもの、九分割してこのまま、電力行政として将来ずっと大臣としてやっていくつもりであるか、それとも、今後公社関係と申しますか、公社制度に移行するようにして、強力に電力行政を実施するつもりであるか、この点について、最後に一点伺って終わりたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはいろいろ議論があると思いますが、今の九電力民営の方式でよろしいのではないか、かように私は思っております。いろいろ議論があることだと思いますが、当分この形で進んでいくつもりであります。
  92. 島本虎三

    島本分科員 時間もありませんので、これでやめます。
  93. 赤澤正道

  94. 芳賀貢

    芳賀分科員 通産大臣にお尋ねいたしますが、時間の関係があるから、二点だけお尋ねします。  第一点はジェトロの問題、第二点は特定物資納付金処理特別会計の事業運営の問題でありますが、第一の日本貿易振興会の三十七年度の運営については、先般、大臣から予算説明の形で、大体三十七年度は十七億円程度事業計画でこれを行なうということは承知いたしましたが、そのジェトロが発足以来今日まで行なっておる業務の中で、たとえば輸入雑豆あるいは輸入自動車等に対する差益金の吸収を行なっておるわけでありますが、これが一体ジェトロの業務であるかどうか、その点は、通産大臣としてどう考えますか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大臣と言われますが、今の質問については、事務当局から一つ説明させます。
  96. 山本重信

    ○山本説明員 ただいま外車の輸入及び雑豆輸入につきまして、普通の輸入とはやや違った方式によりまして、輸入差益とも称すべきものがジェトロに入るようになっておるのであります。ただいま特定物資輸入臨時措置法という法律がございまして、国際収支の理由からやむを得ず輸入をしぼらなければいけないという場合に、反射的に出ます過当利潤を一部の輸入業者に独占させることは適当でないという趣旨で、法律に基づく差益徴収の制度がございます。自動車及び雑豆につきましては、やはり輸入を相当抑制しておりますために、そうした利益が出るわけでございます。しかし、この二品目は、実はガットとの関係等もございまして、必ずしもガットの規定に違反するとはわれわれは考えないのでございますが、少なくともそうした問題を起こすおそれがございますので、法律によって指定をして差益徴収をするということは適当でないということで、では便宜の方法としてジェトロに吸収するという方法をとっておるわけでございます。その場合に事柄の性質上できるだけ公益性の高い機関にやらせるのがいいのと、さらに、しいて申しますれば、ジェトロは輸出振興ということを主体にしておりますけれども、輸入も含めまして、秩序ある輸入をするというようなことから、性格的にもジェトロが一番適当であろうということで、今のような取り扱いをしておるわけであります。
  97. 芳賀貢

    芳賀分科員 私が大臣に尋ねたのは、雑豆や輸入外車の差益金吸収をジェトロの事業あるいは業務として行なうことが妥当であるかどうか、しかもその根拠というものがいずこにあるかという点についてお尋ねしたのであります。
  98. 生駒勇

    ○生駒説明員 ただいまの御指摘の点は、私どももいろいろ考えたわけでございます。ただ、先ほども説明申し上げましたように、これはあまりにも過大に利益が出る、しかも一定の人にその利益を与えるということはいかにもまずいという考え方から出て参ります、やむを得ざる措置というふうに考えておりますために、これを貿易振興機関でありますところのジェトロに取り扱わせる、しかもそれは決算その他につきまして相当厳重な国家の監督を受けておる特殊法人でございますので、本来の業務から申しますと、御指摘のように多少問題が残るかとも存ずるわけでございますが、当時は、ほかのところにやらせる場合に、ほかのところに適当なものがなかったわけでございます。従いまして、ジェトロ法に基づきます付帯業務といたしまして、やむを得ずジェトロにこれを行なわしめたということであります。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 芳賀さんは事情をよく御存じでそういう質問をしていらっしゃるのだと思います。ジェトロで自動車を扱っておりますのはことしで二年目ですが、いわゆる見本市船といいますか、特殊な船を作るという方に自動車の差益は使うということでございまして、これは十分監督ができているようでございます。問題はおそらく雑豆の方じゃないかと思います。雑豆の実情は、私などあまり詳しく承知いたしておりません。北海道のいい豆を外国へ出して、外国の雑豆が安いという意味で、出した者に扱わしてもらいたいとか、あるいは最近の経済情勢からいかにしてくれとか、こういうような陳情が一、二来たことがございます。豆の方の実際の扱い方がどういうことになっておりますか、私も存じませんが、おそらくそういう点についての具体的な話じゃないか、こういうように思いますが、もしそういうことでございますれば、詳細に事務当局をしてお尋ねにぴったり合ったような答えをさせたいものだ、かように思いますので、私感じたことを率直に御披露する次第でございます。
  100. 芳賀貢

    芳賀分科員 たとえば、これらの業務がジェトロの付帯業務であるとすれば、昭和三十七年度ジェトロの事業の概要等のどこかにその内容というものが示されていなければならぬと思う。そういうものは全然ないわけです。三十六年度までの、たとえば収支予算の添付書類等を見ても、雑豆あるいは輸入外車の差益金吸収の業務がどういうふうに行なわれたかということは全然記載もされていないし、報告もなされていないわけです。ですから、ジェトロが特殊法人として国が二十億出資をしている機関である限り、たとい付帯業務であるとしても、そういう業務の内容とか結果というものが全然国会にも報告されないで、その保管あるいは管理の内容というものがどうなっているかということが国民の前に明らかにされないということについては、これは非常な問題があると思うわけです。ですから、私は、大臣に対して、一体これらの差益金吸収なるものがジェトロの業務であるかどうかということを冒頭にお尋ねしたのは、そこにあるわけです。どうしてこれを表明できないのか、その点お尋ねしたいと思います。
  101. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは付帯業務として許している。それから、雑豆の差益は一定の期間を経過して国庫に納入する手続をとる義務がございます。また、先ほど申しましたように、自動車の方の利益は見本市船の方に使うということでございまして、その支出までの間はジェトロが預かり金として処理しているということでございまして、これは数字がもう固まっていると思いますので、必要ならばその数字説明させたいと思います。だから、雑豆の方は、一定の期間ジェトロに置いて、その期間を過ぎると政府に納入する、こういうことでございまして、ジェトロは勝手に使わないということでございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀分科員 問題は、この二つの問題についても、雑豆の場合には、今大臣も述べられた通り、その差益吸収は昭和三十二年からやっている。三十二年、三十三年は、両年度それぞれ一億八百万程度の差益金を吸収して、この分についてはジェトロが国庫に贈与するという形で国庫に納付されているわけです。三十四年、五年、六年の三カ年については、各年およそ八千万円程度ですから、約二億四千万ですか、これはまだジェトロが銀行に預託中なわけです。ところが、これについても、通産大臣がジェトロに指示を発しなければ、国庫に贈与という形であっても納付することができないということになっております。だから、三十四年度以降の分等についても、三十七年の予算の収支内容等を見ても、特定物資の方は産投特別会計に三十億円繰り入れるということが明らかになっているが、ジェトロの関係のものは全く収支不明のままで放置されているわけです。それにしても、雑豆の方は経路をたどれば大体わかるわけです。ところが、外車輸入の方は、吸収はしているようだが、一体その差益金をどういう形で管理保管して、これがどういう経路で国庫に納付されているのか、あるいは国庫からたとえば見本市船の建造のために建造船協会の方に回されているのか、この経路は全然わからないわけです。通産大臣や一、二の通産省の役人の諸君は知っているかもしれないが、それ以外の国民やわれわれは全然それがわからないわけです。だから、これは疑惑に包まれているということになるわけです。その点、あなたは親玉なんだからして、当然御存じだと思いますから、明らかにしていただきたい。
  103. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今のは、この国会の予算分科会政府責任をもって答弁をいたしますので、国会を通じて、疑惑があれば国民にその疑惑を解いていただく、そういう処置をとりたいと思います。明快に処理の方法を事務当局から説明させます。
  104. 芳賀貢

    芳賀分科員 雑豆の方は大体わかりますが、外車の差益金については、たとえば外車の輸入協会がジェトロに対して入札の委託をやる、そういう契約を結ばれていると思うのです。その委託に基づいてジェトロが業者の輸入した外車について国内販売用に入札に付しているわけです。そういうことをやって、今度は輸入協会がジェトロに寄付金という形で納付している。大体その辺までは大よそわかるのですが、雑豆の場合は、ジェトロが輸入発注の交付証を輸入業者に交付する場合に、三十二年三十三年は外貨割当額の一五%、三十四年以降は二〇%、外貨割当に二〇%の差益金を事前に納付さして発券しておったわけですが、外車の場合はどういうような吸収の基準を設定してやっておるか、こういう点についても、経路を追って明らかにしてもらいたい。
  105. 山本重信

    ○山本説明員 雑豆の関係は、先生すでによく御存じというお話でございまするので、外車の輸入のことだけ申し上げます。  外車の輸入の場合の差益徴収の方法は、前年度の割当額につきましてはこういう方法をとりました。輸入業者がまず外貨割当をもらいまして、通常のルートで外車を輸入いたします。それを国内で販売いたします場合に、に分ける方法がございません。もし任意に販売をいたしますと、そこに適当な利益が出ますので、それを一括してジェトロに入札事務を委託する。ジェトロでは、車種ごとに最低価格の算定方式をあらかじめきめておきまして、それに基づいて希望者はだれでも参加できるような方法で入札をいたします。そうして、その車種ごとに最高価格の方から適格者をきめまして、その人に落札価格で渡す。それから、輸入業者の方は、普通の輸入手続によります経費及び適当な手数料を加えたいわゆるディーラー価格というものがございますので、そのディーラー価格をディーラーが受け取りまして、その差額をジェトロに寄付をする、こういう方式をとったわけでございます。総額において八億円の差益収入があったのであります。  それから、本年度の割当分につきましては、ただいまちょうどその手続をしておる最中でございます。大体の骨子は同じでございますが、一部、最低価格のきめ方等につきましては、前回の経験に徴しまして若干の改正をいたしております。そういたしまして、今回もおそらく私たちの予想では、前回と同じ程度の差益があがるのではないかと期待しております。ジェトロに入りました金は、通産省の指示によりまして、巡航見本船の建造、運営を担当いたしております見本市委員会の方にジェトロから交付する、こういう方法で処理いたしております。今までに見本市委員会が造船所との契約によりまして支払いを要する時期になりました分について、逐次ジェトロから見本市委員会の方にその所要額を交付する、こういう方法でただいま進行中でございます。
  106. 芳賀貢

    芳賀分科員 そうすると、三十五年度は八億円ということになるわけですね。三十六年度については、大体前年とほぼ同様な見通しを持てると言うが、この八億円というのは、外貨割当額に対して何パーセントになるか。雑豆の場合は外貨割当に対する二〇%の差益徴収ということになりますね。外車の場合には、この八億は大体何パーセントになりますか。
  107. 山本重信

    ○山本説明員 差益の率でございますが、これは車種によって非常に差がございまして、中には、輸入価格が五百万円程度のものが、入札価格が千五百万円というような、三倍になったものもございますし、それから、輸入価格に比べてごくわずかしか差益があがらないというようなものもございます。全部ならして幾らになりますか、ちょっと私、ただいまその数字を記憶いたしておりませんので、もし必要があれば、後刻計算いたしましてお示しいたします。
  108. 芳賀貢

    芳賀分科員 では、それはあとで資料にして出して下さい。毎年度の外車の割当額と、それから差益金の吸収額、また、車種別によって相当相違があるようですから、車種別にどのくらいの差益吸収をやっておるかという点を、これは主査資料として要求しておきます。
  109. 赤澤正道

    赤澤主査 善処いたします。
  110. 芳賀貢

    芳賀分科員 それでおよそわかったわけですが、雑豆の場合には通産産大臣の指示に基づいて国庫に納付しておる。外車の差益金の場合は、何ら国に納付しないわけですね。これはおかしいじゃないですか。一たん国に納付すべきものであれば、ジェトロの付帯業務としてやっておるのであれば、当然そういう差益金については雑豆と同様に納付するものはする、そこから見本市船の建造のために支出するということであれば、これは名分が立つわけなんですが、農林関係の分は全部吸い上げて国庫に納付して扱っている、省の関係の分については、国庫に納付もしないで、そして、いいかげんな形で、いや見本市船を建造するから、これは有効な使用でありますということでは、なかなか納得しがたいですが、一体、佐藤さんとしては、こういうやり方が筋の立った行政であるかどうか、どう考えますか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 あまりいい話のようには聞きませんけれども、すでに私どもが入ります前から実はやられておるのです。おそらくこういうことではないでしょうか。自動車自身が車種あるいは台数の非常な制限をして輸入を許可してきた、また、その使用も、だれでも新車が使用できるものじゃないというような非常な制限をしてきた、そこで、特別なディーラーの利益というものがあったようだが、これをディラーについてもいろいろ話をし、そこで今申したような簡易な便法をとったのじゃないか、実は国自身が管理しているものでないというような形で処理したのじゃないかと思います。問題は、そういうような処理が将来長く続くのかどうか。自由化ということが行なわれればこういう事態はなくなるわけでございまして、将来自由化という方向に進んでおりますから、自動車の問題も、いつまでもこの種のことが行なわれるわけではないでございましょう。けれども、いかにも新車を輸入して、一般の人が利用するときに非常に法外な値段で売られている、これは輸入業者としても一応の通常考えられる利益の程度にして、そして、また、高くてもその自動車がほしいという人の普通の利潤以上の差額、それは将来の貿易振興のために使うように一つ考えようじゃないかということで、関係業者の間の話し合いできまったものだろう、かように私は想像するのでございます。それが明確に行なわれておればあまり問題はないのでしょう。ただいま申し上げましたように、使い道も非常にはっきりしているし、また、台数も非常にはっきりしているし、また、輸入業者が扱う金額というものは、いろいろな生産国における相場価格等もございましょうが、落札するのが競争入札でございますから、これも非常にはっきりした金額だというもので、雑豆その他の処理とはその点では相当変わっているのではないか、かように私は思います。だから、この方法も必ずしも不都合だとは言えないと思いますけれども、しかし、自由化の方向へ進めば、もうこんなことはなくなる、かように思います。
  112. 芳賀貢

    芳賀分科員 ですから、見本市船を作るとすれば、一たん国庫に納入して、それから見本市船の建造という形で、その所要資金については、たとえばジェトロを通じて国が支出を行なうということにすれば、これは内容が明確になっていいと思うのです。雑豆はやるが、外車の場合はやらぬ。もともと、この暫定的な制度は、関税をもってしてもなおかつ、輸入物資というものは、国内の主要なる生産物資に対して国内の市場における競争上非常な圧迫を来たす、あるいはそれを放置しておけば業者が適正以外の不当利潤を得るというものを追及して、これを吸収すべきであるというのが特定物資輸入臨時措置法であり、その附帯決議に準拠してやったということになると思います。これは、そういう不当利潤の吸収を行なうことが悪いという意味ではないのです。しかし、やり方に不明な点があるのではないかということをわれわれは言わざるを得ないわけです。ですから、やはり、そういう点は、不十分な点がある、不明の点があるとすれば、すみやかに行政の面でこれは改善すべき問題であると思いますが、いかがですか。
  113. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 おそらく、ジェトロの持ち船になるということが一つと、これはまた逆な言い方をすれば、商品見本市船を国が作るというものではない、だろうか、そこに一つの問題があるだろうと思います。それでは全額でなくとも国が一部補助して作るのか、こういうことが論議されたのだろうと思います。おそらく国の予算を使わないでというのが今回の措置だろうと思います。また、関税そのものは今の利益とは別途に国に払っていることだと思います。だから、そういう意味では誤解を受ける筋ではないのです。ただ、事柄が事柄で、明確になっていないということで、今芳賀さんが御指摘になるように疑惑を持たれているのだろうと思います。そこらの混淆はないようでございます。
  114. 芳賀貢

    芳賀分科員 これは今大蔵委員会で審議中の関税定率法及び暫定措置法の改正とも関係があるわけです。特定物資関係の品目については、関税の暫定措置法の中でもその品目については従来通りの扱いにするということになっておる。ただ、問題は、雑豆にしても、外車の差益吸収にしても、その根拠がたとえば国会の附帯決議にあるとしても、これは特定物資輸入臨時措置法に基づく六年間の時限立法ですから、昭和三十一年の六月に公布になって、それから六年ということになれば、ことしの六月でこの特定物資の法律というのは時限が切れるわけです。そういうことで、この法律の根拠が失われるということになれば、当然雑豆、外車等についても六月以降はこういうような形にしても差益金の吸収はできないということになるわけですが、これに対してはどういうお考えですか。
  115. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 自動車、雑豆、これはガットの関係でいわゆる特定物資という中に入れるわけにいかないことば御承知の通りだと思います。今後それではどうするか。いつまでもガットとの関係で特定物資に入れるわけにいかぬといってしまって別な差益徴収方法をとると、今投げかけておられるような疑問を生じたり、あるいは疑惑が生じたりする危険がある、かように思いますので、今後の問題としてどういうように扱ったらいいか、もう少し検討してみたいと思います。これは根本の問題です。だから、今、特定物資についての差益吸収の法律がありましても、その中へ自動車と雑豆を入れることができてないというのは、ただいま申し上げるようなガットの関係だということであります。しかし、ジェトロだけで扱うことについて、政府機関の方が望ましいのではないかというお話もあるのだと思いますので、そういう意味の点を含めてもう一度検討させていただきたいと思います。今やっておること自身は、明確にどこでもその説明がつくようになっておりますが、やはり、特定物資に準じた扱いという、その準ずるということをもう少し明確にする必要があるだろうと思います。
  116. 芳賀貢

    芳賀分科員 そこで、特定物資の臨時措置法は、ことしの六月でもう失効するわけですね。そうしますと、臨時措置法に基づいて政令で指定しておるバナナとかパイ・カンとか、腕時計等の六品目についても、これは臨時措置法に基づいて差益の吸収をやることはできぬのですよ。法律延長でもやれば別ですけれども……。本法の品目さえも六月以降は差益は吸収ができない状態にあるわけだから、ましてや、附帯決議に根拠を求めてやっておる雑豆、外車等をジェトロの附帯業務としてやることは当然できないことになる。六月まではやれるが、しかし、それ以降については、たとえば貿易自由化の関係であるとか、関税制度関係を総合的に検討した場合に、一体この制度を期限が切れた暁にどうされるかということを通産大臣に尋ねておる。
  117. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはなかなかむずかしいことでございます。たとえば、自由化は簡単にはできない。自由化してしまえば、こんなことはなくなるわけでございます。今具体的に考えられる方法とすれば、自由化はできないが、ある程度数量をふやすことによって、多額の差益を生じなくても済むように価格操作の問題があるのではないか、こういうように思います。だから、国内産品との価格の調整が、ただいま申し上げるような数量増加によってある程度解決ができるなら、それも一案であって、この種の特別措置がいつまでも行なわれることはあまり望ましい方法ではないと私は思います。特に、雑豆その他農産関係の物資との関係もございますから、通産省だけの考えではいかようにもできません。よく農林省と相談いたしまして、国内の生産業者の圧迫にもならず、しかも特別な差益を作らなくて済むような、そういう適当な数量をきめることができるかどうか、その辺の検討をすることが第一とるべき方法ではないか、かように思います。
  118. 芳賀貢

    芳賀分科員 そこで、明確にしておきたいことは、一体、現存する特定物資輸入臨時措置法が六月で失効するわけですから、それっきりというように政府は考えておるかどうか、これは所管の通産大臣として明らかにできると思います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この特定物資の法律の中で、特に一番問題に私どもがしておりますのは、沖縄関係のパイナップル等がございます。これは、自由化の問題とにらみ合わせていかに処理していくかということで、ただいま検討させておる最中でございます。ある程度関税等を引き上げることによって自由化ができるというものもございますが、しかし、関税だけでは片づかない、ただいま申しますような特殊地域の問題がございます。これだけは最後に残さなければならないのではないかというような感じがいたしております。
  120. 芳賀貢

    芳賀分科員 ですから、この法律はどうするということを聞いておるのです。あなたは頭のいい人なんだけれども、勘がにぶいですね。六月でこの法律が切れるから、政府はこれを延長しようと考えておるのか、切れたままにしていこうとしておるのか、その点だけなんです。
  121. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 法律はなくなるということを前提にしてお答えしたわけであります。なくするつもりであります。延長しないつもりであります。
  122. 芳賀貢

    芳賀分科員 なくなれば、これらの品目は当然自由化ということになるわけですね。政令で示された品目並びにジェトロで扱っている品目については当然自由化になるわけですね。自由化するわけですね。
  123. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 当然自由化するとお考えになるのは結論が早過ぎる。今現にパイナップルについては、特別に自由化しないだろうということを申しました。だから、一部のもので関税を上げるものがございますし、あるいは物によりましては数量的な割当をする。それは、先ほど来申しますように、国内を圧迫しないで、特別差益が出てこないような、そういう数量割当の方法もあるじゃないかということでございます。自由化ということは、これは、私申すまでもないことで、御了承いただけると思いますが、各国とも、自由化というシステムをとっておりましても、その中身についてはいろいろの制限方法を講じております。国内産業に影響の大きいものについて、私どももそういう工夫はそれぞれするつもりでございます。
  124. 芳賀貢

    芳賀分科員 パイ・カンだけは考えておるということです。当然雑豆も自由化ということになるわけですが、自由化を推進している張本人は、所管の関係があってあなたが一番張本人ということになる。たとえば、農林関係においても、砂糖の自由化をやるとか、あるいは乳製品の自由化をやるとかという問題もときどき出てくる問題なのです。先般も総理大臣が砂糖の自由化を進めたらいいじゃないかという話を閣議で持ち出したということも新聞に掲載されておりますが、雑豆等についても、今でも関税のほかにジェトロで二〇%の吸収をやっておるのを、今度差益の吸収をやらない、自由化ということになれば、国内における雑豆の生産あるいは価格等に対する圧迫というものは重大な問題になってくると思う。しかも、雑豆は、貿易振興の一環として外国に輸出の実績もあるし、輸出可能の品目ということに当然なっておるわけですから、そういう国内の農業生産を極度に圧迫するような、ワクをはずした自由化という問題に対しては、これは軽々にこの法律がなくなればそうなるということでは判断すべきでないと思うのですが、こういう点はどうですか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この特定物資のものは、差益徴収の関係の法律でございますが、この法律がなくなれば差益徴収ということはできなくなる、ただそれだけの関係で、自由化するかしないかは、通産省と農林省が十分相談をして、しかる上できめなければならぬ。だから、今の砂糖の自由化だとかいうことで大へんな動揺を来たしておるようでございますが、これは砂糖だけじゃないのだ、砂糖をやればカンショは一体どうなるのだ、その他のてん菜等はどうなるのだ、こういうことで、影響は非常に大きい。だから、これは農林行政の観点に立って、自由化していいか悪いかということをそれぞれきめてかかるわけであります。いわゆる自由化を九〇%やるという場合に、残っておるものは、主たるものは農産物資が大きな部分を占めておるわけであります。従いまして、ただいまの特定物資云々のこの法律はやめになるが、その中に掲げてある品目そのものが直ちに自由化されるということではないのでございますから、これは一つ誤解のないように願いたい。その意味で、十分農林省と相談をして、自由化すべきものは自由化する、自由化できないものは自由化できないと、その明確な結論を出すわけであります。その六月末でなくなる法律ではとにかく差益金はとれませんから、自由化されない場合に、もうかったからといってこれを取り上げるわけにいかない、こういうことでございます。
  126. 芳賀貢

    芳賀分科員 そこに問題がある。、自由化されない、差益金の吸収はしない、その物資を輸入すれば、外貨の割当、FA制等によってある程度の調整はできるが、品目の単位についての膨大な利益はやはりどうすることもできないということになれば、やはり、それらの特定品目をめぐっての外貨の割当とか、取り扱い業者の行動等についてますます疑惑が生ずるということになるのです。今までがそうだから、疑惑がないと言ってもなかなかわれわれすなおに信用できない点がありますからね。こういう点については、関税にしても差益金吸収にしても、第一の眼目は国内産業保護ということにねらいがあって、その次に税収をふやすという点も目的にはなるが、ですから、やはり最善の配慮が必要だと思うのです。  時間がないから最後にお尋ねしますが、これだけではないですね。差益金吸収の制度というのは砂糖の場合にも常に問題になっているが、最近、甘味資源振興資金管理会という社団法人を、これは河野農林大臣指導して作らして、社団ですが、ここに三十四年、五年の差益金の十八億円を一応吸収して、これを使用する。あるいはまた、乳製品については、三十四年、三十五年の輸入バターや脱脂粉乳については、やはり積立金制度というものを、これは根拠はないけれども、とにかく二カ年間で四億六千万の積み立てを行なわしてやっておるとか、輸入物資については、関税制度以外に幾多の超過利潤吸収のやり方があるわけです。ですから、これをできれば一本のものに統一して行政的に処理するということが非常に大事じゃないかと思うのです。農林省に関係のあるものは農林大臣がやるとか、通産省に関係のあるのはあなたがやるとかいうことでなく、輸入を通じてのそういう関税の制度あるいは超過利潤吸収制度については、やはり国の行政で一貫した方針を立てて行なうということが適切だと考えるわけですが、そういう考え方は今の政府の中には全然ないのですか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま農林省がどういうことをしているか、私存じません。今農林省は農林省の立場でいろいろやっておられ、関係人たちが了承していることで、不都合がない。また、不都合がなければ、これは許されることだろうと思いますから、農林省のことをとやかく言う考えもございません。また、それでは、政府全体で外国から入ってくるものをどうするかということがあるかと言われても、ただいまそういうものを考えたことはございません。ただ、通産省自身としては、ジェトロという貿易拡大の機関を持っておりますし、これは、性格も御承知のように、いわゆる純民間ではございませんので、そういう意味で非常に公正な経理もやっておりますから、これで今日まではいいと思います。しかし、将来自由化が非常に進んできた後に、それこそ利益の上を徴収するというその考え方はいかがかと思いますね。自由化になれば、それはもう放任してしかるべきでしょう。自由化しない場合の特定の物資の割当があり、そのために特別な利益がある、これは本来国家に帰属すべきではないかという議論から、あるいはまたその利益を独占すべきじゃないという意味から、特定物資等の法律ができたのだろうと思います。それを、今後は、関税なりあるいは数量などで、数量増加というようなことによりまして、比較的に消し去ることも可能じゃないか。むしろ行政としてはそういう方向をとるべきじゃないかというように実は思います。だから、国際価格と国内価格の間に非常に差があるという場合に問題が起こるわけでございます。その国内価格というものも、あらゆる生産性の向上なり、耕作技術の進歩なり、あるいは経営の合理化等によって価格はやはり国際価格にさや寄せされないと、自由化されれば一たまりもなくつぶれていくものだ、こういうことを考えなければならない。通産省関係の物資においては、そういう意味の国際競争力を強化するあらゆる努力を実は払って参っております。ただ、問題は、農林省の場合を通産大臣としてしろうとの私が想像いたしますと、農業の特殊性から見て、国際価格にさや寄せするということはなかなか困難だというのが実情であります。そういう意味から、いわゆる自由化をおくらすという処置をとって国内産業保護している、これが今の実情だろうと思います。だから、今言われますような特定物資といわれるものが、今後自由化されないである場合だと、これは数量をふやすことによって下げる方法がある。また、数量をふやして価格を下げてその利益があまりないようにしたら、国内産業に非常に影響があれば、これは非常に詰めざるを得ない。そういう場合には公正な扱い方をする以外にないんじゃないか、かように私は思います。大体そういうことじゃないかと思います。
  128. 芳賀貢

    芳賀分科員 これで質問は終わりますが、とにかく、自由化を進めるという方向についても、やはり国際競争に耐え得る国内の産業各分野の体制というものは速急に整備されなければ、これは可能性がないことなんです。これは私が言うまでもない点です。しかし、原始産業に類する農林産業の分野においては、そういう体制が速急に企業的にも整備できるかというと、これはなかなか容易でないわけです。ですから、そういう確実な判断の上に立って自由化を進めるということであれば、自由化経済の上に立つ自民党政府としては、われわれは立場は違うが、それであってもそういかなければならぬと思うわけですから、この際すべて関税だけでこれをやるということは、ガットとの関係もあるし、なかなかできがたいでしょう、あるいはEEC機構等の世界的な発展を見た場合にも、これは対処しなければならぬ問題があるが、しかし、何としても、国内産業保護ということは、これは重大なことであるから、こういう点に対しては十分の責任のある配慮をもって進んでいただきたいということをわれわれとしては強く要請するわけです。特に、砂糖等については、輸入糖と国内糖との価格競争が今のような状態で国内で行なわれた場合には、てん菜糖を初め国内糖業の発展はできないわけです。一定の標準糖価というものは設定しておるが、外糖の輸入価格の引き下げによって、低廉によって、実際企業的に精製糖工業とてん菜工業が競争できない状態に今置かれておるわけですから、これを自由化するということになると、えらいことになるのですね。だから、その場合にはやはり関税、消費税等の操作をもう一度考えるということも私は妥当であると思いますし、あるいはまた、管理会なるものを河野さんが作ったわけですが、何も制度的に根拠のないようなものを思いつきで作ってみても、永続性というものはないわけですね。だから、それをやるとすれば、たとえばてん菜糖について納付金制度というのがあって、特定の会社に対して三十四年から法律で納付金をてん菜糖一キロで六円ずつ納付さしておるわけです。こういう事例もあるわけです。国内のてん菜糖業者にまでそういう納付金制度なるものを適用しておる事例もあるのですから、やはり、粘製糖業者に対しても、これに類するような、関税と別個に納付金制度というようなものを新たに設定して、そして国内における糖業振興の促進のためにそういう制度を確立するということは、これは非常に適切な措置であり、公明なやり方であるというふうにわれわれは考えておるのです。これをやらなければ国内の甘味資源の増産とか自給度向上は絶対できないと思いますから、これは所管は農林、通産にまたがっておるが、あなたも河野さんも屈指の実力者なんだからして、こういう重大な問題については在任中に施策を進めてもらいたい。ただ宣伝だけしても実行がそれに伴っていかなければ国民は信頼しないと思うわけですから、こういう点については速急に重点的に検討していくべきでないか。御所見があればこの点を承って、質問を終わります。
  129. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今言われますように、外国のものと国内のものとの競合あるいは競争関係に立つ、こういう場合におきまして、それぞれの役所がございますが、農林関係だからといって、通産省はこれをおろそかにしては相済みません。しかし、何分にも、今お話しになりました事柄は、私どもはあまり検討しておらなかったことでございますので、御高説に対して、右だとか左だとか、なかなか決しかねますから、もう少し私どももよく勉強をいたしまして、しかる上で対策を考えることにしたいと思います。
  130. 芳賀貢

    芳賀分科員 先ほど資料を要求いたしましたが、それにあわせて、雑豆、外車等はガットの関係があるというお話でしたが、これは譲許品目になっておるとすれば、一体その通商協定を通じて雑豆、外車等は、いずれの国等との間において譲許についての協定が結ばれておるか。いろいろその国名をあげて、さいぜんの資料と一緒でいいですから、御提出願うように、主査の方からお取り計らいをお願いいたします。
  131. 赤澤正道

    赤澤主査 資料を提出願います。
  132. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 委員長のお許しを得まして議事進行上お願いを申し上げます。  ただいま芳賀委員の質問中、準特定物資の自動車、雑豆の件についての収支の質問がございましたところ、すっきりいたしておりません。従いまして、これは疑惑を晴らすための意味におきましても、ぜひ次の書類を提出していただきたいと存じます。  まず、輸入自動車でございまするが、これは車種ごとに価格あるいは売上金も違いますので、車種、それからFOBの価格、これが数量、内地で競争入札されたときの金額、それの総トータル、このものは至急一つ本委員会に間に会うように御提出のほどをお願いいたします。  その意味するものは、特定物資なるものは、もともと、今大臣の答弁にもございましたように、すっきりいたしていないわけなんです。そこへ持って参りまして、すっきりしないのに乗じて、いわゆる大物有力大臣といわれるような人がこれに関係をなさって、過去においてはいろいろな疑惑を持たれて、それが一般質問なんかにも飛び出すというような状況なんです。従って、国民もまたこれは疑惑を持って見ておりますので、それを本委員会においてすっきりさせる、国民の疑惑の目をはっきりさせる、こういう意味において、特定物資納付金処理特別会計、これも通産大臣のこれに出ておりますけれども、ただ款項目の款の頭しか出ておりません。三十八億八千三百五十九万何がしのこの項目の内訳をはっきりするような書類を提出していただきたいと思うのです。特に、本年六月以降におきましてはこの特定物資の法律が効力を失するわけなんです。踏み切る時期でございますから、この際にぜひそれを至急提出願いたい。  以上でございます。
  133. 赤澤正道

    赤澤主査 これは、早急に本委員会に間に会うように出せという御要望だが、事務当局はできますか。
  134. 山本重信

    ○山本説明員 間に合わせるようにいたします。
  135. 赤澤正道

    赤澤主査 主査において取り計らいます。  次に、久保田君。
  136. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 まず、大臣に連日非常におそくまでお骨折りをいただきまして、まことに御苦労さんだと思います。特に、本日は長い間やって、私が一番最後になりまして、なおおつき合いいただきますことは大へん恐縮に存じまするが、私は私なりに、これから質問することは、これからの日本経済についてきわめて大事な問題だと思いますので、あえて御迷惑をお願いいたすわけでありますから、しばらく御協力をいただきたいと心からお願いをするわけであります。  私の質問は、この前商工委員会で少し口あけをいたしました問題を突き詰めて参りたい、こう思うのであります。時間が非常に限られておりますので、なるべく要点だけ申し上げますから、一つお答えをいただきたいと思います。なお、私の最後は共産圏の貿易になるわけでありますけれども、各国別の当面のいろいろの具体的な問題についてはいずれ商工委員会におきまして御質問を続けてやりまして、そしてお答えをいただきたい、こう思いますので、きょうはいわば総論的なことをお伺いいたすわけでありますから、その点もあらかじめ御了承をいただきたいと思うのであります。  この前商工委員会で私は大臣に質問を申し上げましていろいろお答えをいただいたのですけれども、どうもはっきりいたしませんので、私はもう一回私の質問の要点をはっきり申し上げてお答えをいただきたいと思うのであります。  それは、私は、政府の「昭和三十七年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というものを読んでみました。これは全体として表面的には非常によくできておるようであります。しかし、これを長期の目でながめますと、私は、これではここ二、三年のうちに大へんなことにぶつかって、少なくとも日本の経済が大きな断層にぶつかって大混乱を来たす危険をこの中にはらんでおるのではないかというふうに思われてしょうがないわけであります。と申しますのは、具体的に質問の要点を申し上げますが、まず第一は、国際収支のやや長期といいますか中期の見通しを政府はお持ちになっているのかどうかということであります。少なくともこれから約三年ないし四年の、年次で言いますれば一九六五年程度までの日本の外貨の収支の見通しをお持ちになっているのかどうかという点を一つ大臣にお聞きをいたしたいのであります。と申しますのは、この政府の「昭和三十七年度の経済見通しと、経済運営の基本的態度」を読みますと、この中で政府が期待をしておりまする輸出入なりあるいは設備投資なりその他のものがすべて政府の期待通りにいきますとしまして、三十七年度末におきまする政府の外貨手持ちは、アメリカからの償金並びにその返済というものを除きますと、大体におきまして十一億四千五百万ドルということになっております。ですから、表面に出てくる数字は、これから借りる分も入れて六億三千万ドルばかりになりますから、おそらくかなり大きな数字になると思います。しかしながら、その返済というものは、ことし一部を始めるが、その大部分の返済というものは来年度、つまり三十八年度に繰り越さなければならぬということになります。ところで、この十一億四千五百万ドルという数字は、少なくとも今まで政府が言っておりましたいわゆる外貨手持ちの危機ラインと称する十三億ドルというものを下回っております。しかも、その資金内容は、日銀の金の保有が二億ドルとか、その他アメリカに対する預け金その他でもって、いわゆる流動性を持った資金がおそらく一、二億ではないかと思うのであります。そういう状態のところへ、今申しましたような約六億三千万ドルというものが水増しをしてことしの末にいわゆる外貨手持ちになってくる。それでいけば、その大部分の返済というものはおそらく三十八年度でしなければならぬということになろうと思いますが、かりに六億三千万ドルを全部来年度に持ち越したとしますれば、月に平均してこれをなしくずすといたしましても、大体において五千万ドル見当の借金なしくずしを来年度はしていかなければならぬということになります。そのときに、十一億五千万ドルでいわゆる日本の貿易収支の資金繰りが大体できるのかどうかということが私には心配になるわけであります。おそらく、実際問題としては、来年度三十八年度に全部の借金をなくすということは困難であって、これをさらに次年度へ繰り越すというふうなことになろうかと思います。それにいたしましても、少なくとも二千五百万ドルないし三千万ドルの借金なしくずしは来年から再来年にかけてしていかなければならぬ。一方、あとで申しますが、いわゆる国内経済の急膨張によりまして、輸出入のワクは政府の予想以上に大きくならなければなりませんし、おそらくなるでしょう。そうして、これをまかなっていくには、とても十一億や十二億どころの外貨手持ちでは実際まかなえなくなるのではないかというふうに私は思うのであります。しろうとの考えでありますけれども、やはり、経済の原則というものは、大きくても小さくても私は同じだと思う。こういう点を考えますと、政府は少なくとも一九六五年度程度までの国内におきまする経済の膨脹あるいはそれに基づきまする輸出入の規模の拡大に応じて、少なくともこれをまかなえるだけの外貨をその間に蓄積しなければならぬ。しかも片方において借金のなしくずしをしなければならぬ。こういうことを予想した上の経済見通しの基本態度なのかどうか、こういうことが私は第一に疑問であります。もしこの点についてのお見通しなり計画なりをお持ちになるならば、御説明をいただきたいと思うのであります。
  137. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、所得倍増計画、いわゆる経済拡大計画、この際の数字はございます。その数字通りいっておれば、今のような御議論もないことかと思います。ことに、昨年の秋以来、ただいま経済調整段階に入っております。その調整の効果を十分見ないと、かつて持っておりました数字をそのままお話しするわけにいかない。今の段階は一体どういうことか。とりもなおさず、調整の効果を短期にあげさすというか、目的を達するということに私どもも力をいたしておるわけでございまして、いわゆる長期計画なるものはしばらくたなの上に上げているというのが実情でございます。従いまして、今どういう数字を持っておるか、それを話せ、こう申されましても、ちょっと訂正をしたものはただいま持っておりません。それはお許しをいただきたいと思います。
  138. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 私も全くのしろうとでありますからよくわかりませんけれども、常識的に考えてみれば、少なくとも明年度、明後年度におきまするいわゆる日本の外貨手持ちの天井というものは、国内経済の規模の拡大、それに結びついた貿易規模の拡大ということから見れば、非常に天井の低い窮屈なものになるということだけは、だれしも明らかになろうと思うのであります。三十六年度の政府の貿易白書によりますと、日本の国際収支の天井がうんと高くなった、だから大いに経済成長を伸ばしてもいいのだと言わんばかりのことを書いてあるわけでありますが、この点で、私は、今後二、三年にわたっては、政府のこれに対しまする基本的な認識を改める必要があるのではないかということを第一に痛感するわけであります。  これと連関をいたしまして、しからば、その次の大きな要因としては設備投資であります。設備投資は、御承知の通り、三十四年から三十六年の間に約十兆円の設備投資を現実に行なったわけであります。しかも、この三十七年度におきましても三兆六千九百億円の設備投資を行なうことになっております。これはかなり抑制をした数字だろうと思います。私は、国内の経済成長を断層を起こさずにやるには、本年度やはり三兆六千億円程度、ドルに換算すれば百億ドル程度の設備投資をすることが必要だ、また来年もおそらくこの必要があると思います。しかし、もし、この三十七年度それをやり、来年度もやるとしますと、三十四年度から考えますと、政府所得倍増計画で一九七〇年度まで十年間にやることをこの五年間に全部約十六兆円の設備投資をしてしまうことになるわけであります。従いまして、数字にはいろいろの狂いはあるにいたしましても、少なくともこれが現実の生産力化するのは三十八年ないし九年だとすれば、三十八年度ないし九年度の国民総生産というのは、いわゆる長期計画で十年後に予定をしました二十三兆がここに実現をするわけであります。こういうことにならざるを得ない。しかも、その内容は、非常に重化学工業中心のいわゆる工業的構造というものが出てくる。もちろん、ここに二重構造その他のいろいろの国内的の大きな問題は出て参りますが、全体として見た場合には、少なくとも今後四年後にはいやおうなしにそういう大きな日本の経済規模というものができてしまう。また、それをしない限り、大きな経済断層、つまり経済混乱というものを来たさざるを得ないというふうな関係ができてきておる。  としますれば、さらにもう一つ、今度は輸出入の規模であります。ことしは、御承知の通り、政府は目標としては輸入が四十八億、輸出が四十七億というふうに規定して、これを守るべく一生懸命やっておる。しかし、あの長期経済計画によりまして十六兆の設備投資が行なわれ、国民総生産が二十三兆になったときの政府の輸出規模は九十三億七千万ドルであります。現在の四十八億基準ということから見ますと、これは非常に大きな差があるわけであります。従いまして、この国民生産の伸び、投資の伸びに見合った貿易規模というものは、今後四年間に少なくとも今日の五十億ドルから九十五億ドル程度までふやさなければならぬ。平均をいたしますと一年間に輸出入ともに十六億ドル程度の伸びをどうしても実現しなければならぬということになります。これは数字的には多少の違いはありましょうけれども、大ざっぱな計算ではそうなります。  そうなって参りますと、国内的には非常に十二、三億程度のすれすれのいわゆる実質外貨手持ちの中で、しかも国際的には非常に困難になってきた国際環境の中で、輸出入を、特に輸出を、特に重工業製品を中心としたこういう輸出を現在のような輸出構造の中で伸ばすことができるのかどうか、実現することができるのかどうか。これをもし伸ばし得ないとするならば、どこかで大きく縮めなければならぬ。その結果は国民経済全体に大きなアンバランスが来るか、大きな断層を来たすということにならざるを得ないのではないかと私は思う。この点について、政府は、少なくとも一九六五年程度までの国際収支あるいは設備投資、国民生産、輸出入、こういうものを内外の変わってきました条件をにらんだ長期計画、——中期計画とでも言いましょうか、これをぜひ持っておって、ことしの経済、来年の経済というものの運営をはかるということが、私は今日の政府のとるべき最も基本的政策ではないかというふうに思うのであります。  よく、池田さんは、短期のいろいろな問題についてはいろいろ見誤りをやった、しかし長期のいわゆる所得倍増計画そのものは決して変えませんと言っている。しかし、以上のような事実から見て、池田さんの言われるいわゆる十カ年計画というものは、これは単に紙の上の計画にしかとどまりません。少なくとも経済政策の現実を律する生きた長期計画ではありません。この点は、少なくとも佐藤さんなり、あるいは藤山さんなり、いわゆる実力者であり、しかも場合によっては次の国家を全部背負って立たれるような人は、この事実をしっかりにらんで、少なくとも今日の経済政策の基本的な運営に当たられないことには、どうにもならぬというふうに思うのであります。総理大臣以下が、今の在庫が二億五千万ドルあるか二億ドルあるか、それを一カ月三千万ドルの食いつぶしになるのか五千万ドルの食いつぶしになるのかということをみなで一国の出責任を負うべき立場にある人が一生懸命にひたいを集めて相談をしてみて、なかなかきまらないで統一見解を出したということは、はっきり言って恥だと私は思うのです。少なくとも、保守の立場といい、革新の立場といい、私は、この程度の三年や五年先の見通しを持った経済の運営をしてもらわなければ、この変転の激しい時代においてどうにもならぬと思うのでありますが、以上の二点、国民生産、そして輸出、そういうものの見通しについてあなたはどう思われますか、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  139. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん大事なお話でございます。  第一点というか、久保田さんは、二、三年のところをとにかく明示しろと言われますが、この二、三年のところはできないというのは、先ほど答弁したのであります。しかし、総理以下閣僚か申しております長い目、——長い長い目は別といたしましても、いわゆる十カ年計画というか、所得倍増計画の四十五年度程度の姿は一体どうなるのか、これは申し上げてもいいことであり、また、それがただいまの目標でございますから、今調整に入って足踏みをいたしましても、四十五年になれば四十五年の目標にはぜひとも到達させたいのでございます。そこから申しますと、四十五年の貿易では、輸出は一〇%ずつ伸ばしていく、それが今の九十三億という数字になるわけです。輸入の方は、九・三%ずつ伸ばしていく、そして九十八億というような数字でございます。これが一応の目標でございます。一割輸出を伸ばすとか、あるいは九・三%に輸入を押える、これが平均だとすれば、調整の時期その他等考えると、非常に伸び率も大きい場合があります。現に、ことしの三十七年などは輸出を一四・五、一五%の伸びに考える、こういうこともあるわけでございます。だからこういう問題はそのときの経済情勢で考えていかなければならぬ、こういうことであります。これはいわゆるペーパー・プランといわれるか、あるいはそれは机上計画だといわれるか、とにかくそういう計画の予想の数字を持っておることは事実でございます。これを実施に移した場合に、これをはばむものが幾つもある。それは現に輸出にしても、日本は至るところに行ってぶつかっておるじゃないか、日米間の問題にしろ、アメリカは思うように日本の品物を入れていないじゃないか、あるいは東南アジアの諸地域は、日本が考えるようにそれだけの資力があるのかどうか、あるいはEECが域内調達で大部分まかなうようになれば、域外である日本など出ていく余地はないじゃないか。あるいはまた共産圏貿易に対して在来のような態度をとっておれば、そこでも日本は伸びないじゃないか、こういう悲観材料は幾つもあると思います。しかしこの悲観材料をあらゆる努力、工夫によって克服していくというのが私どもの政治の問題だ、かように実は考えます。それで、あるがままの姿ならば、これは至るところで八方ふさがりに当面すると思います。しかしそうしたものでもない、国際間は競争もするが、同時に協力の面もあるのである、これはかねてから私の申し上げておるところでございまして、その考え方は今なお私は正しいと思っております。だからその競争の面だけを取り上げないで、協力の面も取り上げれば、十分私どもが参加し得るものがあるだろう。これが一割になるかあるいは七分でとまるか、そういう点はございますが、いわゆる八方ふさがりで一切伸びていかないのだ、こういうのじゃないことだけは言えると思います。しかし容易なものでない。非常に困難に当面することだけ、これは今日から覚悟してかからなければならぬと思います。  ところでこれだけの輸出、輸入をするための国内生産というものは一体どうなのか。先ほど来設備投資のお話が出ておりまして、との設備投資が生産力化するその時期が、一年あるいは二年といわれている。そうすればどんどんふえていくだろう、こういうことでございます。大体輸出に向け得るものは一割ということを申しますが、国内の総生産から見て、国内に消費され、外国へ向け得るもの——国民生活を圧迫しないで正常な状態で出し得る数量は一体幾らか。いろいろなことを申しますが、これまた総生産の一割くらいは通常の状態において外国へ出しても、国内生活を圧迫しないで済むだろう、これは経済常識として実はいわれておりますから、そういう意味では、国内生産が伸び、拡大されることはやはり必要だと思います。ただ先ほど来の、設備投資の金額そのものが、直ちに全部が全部新しい生産力に加重される、こういうことではないと思います。これは非常に見方がむずかしいと思いますが、代替なりあるいは設備更新、こういう部分も相当ございますので、投資金額全部が全部というものではないと思いますけれども、ただいま申し上げる所得倍増計画の十カ年計画、机上プランだといわれるその案自身では、この生産力とそれから国民生活の上昇の程度と、それから国外へ出し得る数量、しかもそれが過剰生産だとか、あるいは逼迫を来たさないでやれるという一応の数字は、政府は腹づもりとして持っておるわけであります。ところが、おそらく久保田さんもそういうことが指摘されたいのだろうと思いますのは、ただいま申すような、長い目で見ろというようなことは申してはおりますものの、昨年来突入しておるこの経済状態が、はたして長い目の軌道へ乗せ得るのかどうなのか、いつ合致できるのか、こういう問題だろうと思います。ことしの三十七年の計画は、先ほど一応納得のいく計画が立てられておる経済白書が出ておる、こういうことでございました。これは私ども大へんありがたく思いますが、けれども、これを遂行しているわれわれから見ますと、この自習の点ともこの一、二カ月合っているとなかなか思えないのであります。ここ一カ月どうだったからといって心配することもないと思いますが、しばしばこの委員会等でお話がありますように、もし調整の効果が相当進むならば、鉱工業生産などあるいはもう少し確保し、そうして横ばいの時間はもう少し後にくるのじゃないか、こういうふうに思ったにかかわらず、依然として強いじゃないか、逆に増加しているじゃないか、こういう数字が過去の一カ月の中に出ておるのであります。そういうことを考えてみますと、今の状況については、まだまだ私ども本年そのものを判断するのにも足らない資料しか実はない。ここらで在来の方針を変更するわけにいかぬだろうというようなことを、実は今考えておるわけでございます。ただいま申し上げましたように、久保田さんは在庫論争、素原料の在庫が幾らという、その論争もなかなか政府はむずかしいことできまらないようだと言われますが、この在庫論争と同様に、設備投資論争も似通った点が実は多分にあるのでございます。大まかな数字はある程度つかんでも、その内容をさらに分析いたしますと、各人で相当感覚が違うのじゃないかと思いますし、また一月はどうだった、二月はどうだったと、こういうことになって参りますと、一そうその感覚の相違もございます。だが、これをこの四、五というような月になって、今のような状態ではたして進み得るかどうか、もう少し変わったものが出てくるのじゃないか、こういう点が三十七年の経済動向にも多分に影響がある、それが予想通りいかないと三十八年、また三十八年が計画通りというか、思うようにいかないと三十九年ということになって参りますし、そうなると四十五年というものが、あのときおれが指摘した通りに、あれはペ−パー・プランだったじゃないか、こういうような御批判を受けることにもなるのじゃないか、かように思うわけでございます。
  140. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 今秋は三十七年度の政府の計画そのものがいいと言っているわけではないのです。ただどうやらこれがそのままいったとして、こういう前提を置いているわけです。もう一つは、なるほど三兆六千億の設備投資が行なわれた、過去三年間で十兆円、これはいろいろ計算の余地がございましょう。それだけ実際にすぐ一年後に生産力化するかどうかもわかりません。しかしとにかくそういったものが行なわれたのであります。これを前提として、少なくとも大きな断層のできないようにやるためには、いやおうなしに今後とも三兆六千億程度の設備投資を、当分続けていかざるを得ないのじゃないか。それでないと、重工業化した国内のそういう新しい企業の商品の売り場がない。あるいはもう一つは非常にこのごろ国際競争力を増してきておるEEC内の企業や、アメリカの企業と太刀打ちができないのじゃないか。こういう二点から見ても、少なくとも高度成長なり経済成長を順調にやっていくには、どうしてもその程度のものは必要になってくる。そういうことになれば、少なくともあと二年後には、十カ年に予想したものの総設備投資額がそれでもって満配になってしまうじゃないか。従ってその一、二年先には、いやおうなしに国民総生産の規模というものは、一九七〇年度規模になってしまうということになると思う。従ってそれに見合うところの、今言ったようないわゆる輸出入の規模にしなければ、大きくなった生産力をまかなっていくということができない。できなければ、いやおうなしにそこに大きな断層を作るよりほかにしようがないということになります。そうすると政府の一九七〇年まで予想した貿易規模の拡大のテンポより、少なくともテンポとしては半分だ。そして年の伸び率としては、お話しの一〇%ないしは九・何%と、倍程度のものをやらなければいかぬということになる。こういうことが今の貿易構造の上で、しかも今のようにどこも非常に厳しくなっている状況の中で、うまく行くのかどうかということが問題だということを申し上げているわけであります。この点については先がありますし、時間がないからこれ以上やりませんが、そこでこれに対する国内策としては、今現に政府、民間いろいろ対策が打ち出されております。御承知の通り、民間では特にEEC関係の発展により欧州やアメリカの大企業の国際競争力が大きくなってくる、強くなってくる。これに対処するということが中心だということから、企業の合同の問題が出たりあるいは設備の拡充なり輸出水準のあれが出たり、それを独禁法の改正でやった方がいいか、あなたの方でそれはやらぬでも産業別のものをやった方がいいかという意見も出てくる。こういういろいろな意見が出てくるが、これらの国内策についてはまたここにも非常に問題がありますから、いずれ私はこの問題については機会をあらためて、一つあなたと論争なり御質問を申し上げたいと思います。  それ以外に国際政策という面では、今政府がいろいろおやりになっていること、やろうとされていること、これは一言で言えば非常にきめのこまかい経済外交を積み上げていこう、そして今おっしゃったような最近のアメリカの動向なりEECの動向なりドル防衛の強化、こういうようなことの壁を一つ一つ破っていこう、そして血路を開いていこう、こういうことであって、これはやはりやらなければならぬと思います。非常に困難でしょうけれども、どの程度効果が上がるかどうかはわからないと思いますが、やらざるを得ない。しかしそれだけでは不十分ではないか。私は少なくとももっと深く日本の企業なり、その国際性というものを考えた場合には、日本の経済構造といいますか、少なくとも貿易構造の一つの基本的な変革を、一気にはできませんけれども、逐次やっていくよりほかにはないのではないかというふうに考えるのであります。と申しますのは、日本の貿易の地域構造というものを考えてみますと、これは先だってもあなたが御答弁になった通り、何といっても欧米を一番重要視しております。しかもそのうちでもアメリカというものを一番重要視しておる。その次がいわゆる後進国地域、中でも東南アジアは、私に言わせれば大体において軽視と言っていいと思うのです。その次は何かというと共産圏、これは全く政府の現在の構造の上でも、政府のいわゆる長期政策の上でも無視されたような格好であります。ですから今の日本の貿易構造というものは、利こう言っていいと思う。まあ向米一辺倒、欧米重視、それから後進国地域を軽視し、共産圏は無視する、こういう地域構造の上にやっておられると見て差しつかえないと思う。これが貿易政策の基本だと思う。ところで、その上に今言ったようなアメリカのいろいろな最近の動向や、EECの動向や、それに連関する後進国地域のいろいろな動向、これらをまとめてみれば、どの程度具体的に日本に対して現実に効果を与えるかは知らぬが、いずれにしても有利ではありません。非常に不利で厳しい条件であることは間違いない。ところで、こういう貿易の基本的な地域構造というのは、これからの日本、また日本が生きていく世界的環境の中で引き据えて考えてみますと、基本的にいびつになっていると言わざるを得ないのであります。と申しますのは一番重要視しておるアメリカをとってみましても、アメリカは日本よりは経済的にも上だし、技術的にも上であります。今日本はいわゆる原材料や機械というものは、ほとんどアメリカからこの大部分を引いている。そのかわりに出すものは何かというと、主として軽工業品であります。品は一部ありますけれども、これは限界輸出だ。向こうに何かの突発事情がない限りそんなに伸び得ない性質のものであります。こういうことになっております。今まではそのために毎年貿易上の収支では大穴があいてきた。その大穴を今までは非経済的な要因とでもいいますか、軍事的な要因とでもいいますか、いろいろのAIDやその他の、いわゆる非経済的な経済ベースでは考えられないような収入で、一応穴埋めしてやってきた。これが一番中心です。ところでこのアメリカという市場は、貿易市場として日本から見れば、これから日本はますます重工業を中心に輸出を伸ばさなければならぬが、重工業では向こうは日本が行ってもかないませんし、必要ともしない。軽工業品についてはどうかというと、向こうに競合産業がどんどんあって、日本から少し行けばこれはシャットアウトを食うのは当然です。これは国内産業保護の立場からもどうしても、いろいろそこに協調やその他もありますけれども、しかし基本的な方向としては、この競合産業は日本が出過ぎればたたいてくるのが当然であります。しかも日本の国内の重化学工業を中心とする設備投資が進めば進むほど、アメリカはそれに必要な原材料なり、エネルギーはますますよけい入れなければならぬ。よけい入れてもそれが日本の対米輸出をふやすことにはほとんど寄与しない。しかもその穴埋めをするものがドル防衛その他でなくなってしまってきている、こういう状態である。これを今後ますます重視して、これを偏重していこうということが、第一間違いである。  第二は欧州でもそうであります。欧州は御承知の通り日本との関係は、向こうの方が経済水準は高いのであります。向こうから日本に来ておるものは、重工業機械の一部や高度のいわゆる軽工業品でありましょう。日本から向こうへ行っているのは、やはり同じように軽工業品、軽機械類であります。これは初めから競合しております。日本にとっても必要じゃないと同じように、向こうにとってもあまり必要じゃありません。いずれも競合産業が中にありますから行き過ぎればたたいてくる、こっちとしてもそうです。向こうからよけいくればたたかざるを得ない。こういうことで、それは経済成長の伸びに応じて多少は伸びて参りましょうけれども、そんなに伸びるのじゃない。それにさらにこれらはEECが発展してくるということになれば、私は伸びは多少伸びても、少なくとも日本の国内の急膨張をまかなっていくだけの輸出の増を考えるということは間違いじゃないかというふうに考える。伸びるのは伸びましょう。また伸びるような努力をするということも必要でありますが、そうであります。  さらに後進国地域はどうかと言いますと、ここでは私が言うまでもなく御存じの通り、日本の重化学工業品に対する需要は熾烈であります。しかし、ここにはいわゆる買う金がありません。金が第一ですから、借款か援助か何かしなければならぬ、なかなか持っていけない。日本にはその実力はない。しかもこれについてはアメリカもこれからどんどん積極的に出てきましょう。それから特にEEC諸国は、ますます積極的に出てくると思う。さらに、もう一つ見落としてはならぬことは、共産圏が経済発展に応じて、これに非常に有利な条件でどんどん出てくる。この三方からたたかれて私は日本の重工業品輸出、特にプラント輸出等も非常に困難になりはせんかと思います。もちろんこれに対処するようなそれぞれの具体策は必要であります。しかし大勢としてはそういうことになる。さらに軽工業品はその国々の綿製品、その他のいわゆる軽工業はどんどん興っておりますから、これが対抗要件、対抗策というものがどんどん出てくる。ここでも伸びることは伸びましょうけれども、そう国内の高度成長を支えるだけのものはない、こういうふうに私は思う。これに反して、ソ連や共産圏というのは、政治的な要因を全然抜きにして、純経済的な見地から見れば、日本の重工業化するこれからの産業の相手とすべき貿易市場としては、一番有利で一番安定していて、そして一番望みの持てる、一番適合した貿易市場だと言って差しつかえないと私は思う。それはなぜかといいますと、こういうことであります。私ばかりしゃべるようになってしまいますが、御承知の通り、ソ連にしましても、中国にしましても、北鮮にしましても、あるいは北ベトナムにしましても、今盛んないわゆる経済建設をやっております。ソ連の現在の、日本でいう設備投資額は、大体年間三百五十億ドル程度だといわれております。そのうちの約半分がシベリア開発に投ぜられておるといわれておる。中国の設備投資は大体百六十億ドルだといわれております。北鮮が大体十億ドル、それから北ベトナムは大体において四億ドルから七億六千万ドルというのですが、幾らになりますかわかりませんが、ことしあたりの投資額はそうなっておる。ですから、合わせて大体五百三十億ドルぐらいの設備投資が、日本を取り巻く共産圏において行なわれておるわけであります。そのうちで、今までの実績でいいますと、大体一割ぐらいのものを外国からの、主として建設資材の輸入に当てておるというのが実績であります。そして同時に、その見返りに、原材料その他のものの増産したものを、ちょうどその程度の金額のものを出していくというのが実績であります。これは一九六五年程度になりますと、少なくともソ連側が五百億ドルぐらいにふえるということであります。従ってシベリア投資はその半分と見て二百五十億ドル、中国の設備投資は、現在の百六十億ドルが大体二百四十億ドル程度にふえるといわれております。さらに北鮮や北ベトナムもほぼ似たようなテンポでふえて参ろうと思います。そうしますと、少なくとも日本の周辺に、共産圏においては年間、現在で約三百五十億ドル、一九六五年ころには大体において五百三十億ドル程度の、資本主義流にいえば設備投資が行なわれるわけであります。その一割がいわゆる生産財の輸入ということになります。そうしますと、ここに少なくとも三十五億ドルないしは五十数億ドルの日本軍化学工業の製品に対する大きなマーケットが出てくることは確実であります。しかもその半面におきまして、この辺におきます工業原料その他の資源がきわめて豊富であります。しかも資源が、埋蔵状態が豊富だというだけでなくて、急速に開発されておるわけです。従って現実の供給力を持っておるわけであります。それで向こうが、日本に大いにそういうものを買ってもらいたがっている。日本は売りたがっておりませんけれども、重化学工業品の適当な市場がない。ふえくればどうしてもどこか海外に新しい市場を求めざるを得ない。そうすればこれをねらうほかないんじゃないかと私は思う。しかも距離的に言いますと、工業の原材料のごときは、私が言わなくとも御承知の通り、この地域は大体今鉄鉱石や——これはあとで詳しく、数字をあげて申しますけれども、今持ってきているもので、一番遠いもので四分の一、一番近いものは二十分の一であります。運賃負担がうんと少なくて済むことになります。ですから、私は、この地帯が日本として、政治的要因をとって考えれば、一番よき、また日本に有利な、適切な市場だということになろうかと思うのでありますが、この点についての、政治的要因をとって考えた場合に、大臣のお考えはどうですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田さんの御高説を拝聴いたしまして、ことに、あまりにも広範にわたってお話しでございますので、なかなかこれを批判しにくい。ただ最後の、シベリアが見込みがあるからこれはどうだ、こう言われても、ただそれだけで答えるわけにはいかないのですか、実は私の考え方——これは一種の誤解を受けると困りますが、経済を拡大する、貿易を拡大する、これは一体目的は何だ、この目的をやはり明確にすることが必要だと思うのです。その目的が明確であれば、当座は何をする、長い長い月で見たらどうなんだ、こういうことに結びつかなければいけないんじゃないかと思います。先ほどのお話をずっと伺いまして、そうして各国がみんな設備投資なりあるいは貿易拡大をやっている——その目標がどうも不明確であってはどっかで行き詰まってくるのです。結局自国の産業を拡大して、自国の国民生活を向上さす、これがまず第一に考えられることであります。しかし今日の状況の、EECができるとか、あるいは米大陸が積極性を持ってEECと近づくとか、こういうことは、もうすでに一国にとらわれないという考え方に発展しているのだと思いますね。これは、今時間的に、ここで言うと非常に誤解を受けるのですが、将来の理想というか、目標というものはそういう方向にある。共産圏は共産圏で、いわゆる衛星国というものを従えた一つのグループというものを考える。これも、ソ連だけの犠牲に衛星圏をふんまえるという、そんなけちな考えではない。そういう点を考えて参りますと、長い目で経済のあり方なり最終的な——最終目標と申しては何ですが、長期の目標は一体どこに置くのか。そのことを考えると、先ほど貧乏国である東南アジアあるいはアフリカ諸国と貿易することは意味ないじゃないかというようなお話がございますが、これこそ長い目で見ると必要なことなんですね。自分に力があるなしは別ですが、これらの地域の民族をしてその生活を向上せしめるのは、いわゆる先進国自身にそれだけの責務があると言ってもいいわけであります。そうすることが、大きく言えば世界の平和につながる道だと思います。だから長期の計画としてはそういう方向に考えられていく。ところが現実の問題で、今日の段階は一体どうなのか。今日の段階自身を顧みると、日本の実情から見れば、これは国民生活も低い。だから、まずこの国民生活を上げることが先だろう。そういう意味において産業の基礎も強固にしなければならぬ。そういう場合だと、やはり長い債権にしては困る、今日現金がほしいという問題になる。これは非常に卑近な例によれば、しばしば下世話で言われるように、つき合うならば金持ちだ、どうも貧乏人とつき合っては出し前が多くてだめだ、こういうことになる。これが現実の目先の問題だと思うのです。政治的家となれば、目先も大卒でございますが、やはり長い目の長い目標、その到達への努力、これを忘れてはならないと思います。久保田さんの御高説を批判してまことに恐縮でございますが、どうも先ほど来のお話を聞いていると、目先の話と長期の目標が一緒になっていはしないか、そこらで私どもの話とどうしても食い違う。私はそういう立場で物事を見ていかなければならないのじゃないかと思います。ただいま共産圏の話が出ましたが、最終的にはイデオロギーなりで、必ずしも一致しないかもわかりません。いわれておるように、世界を共産国によって全部を占めるとかなんとか言って、四十年後は、世界は全部共産国になるのだ、こういうような話をしている。これはそこにイデオロギーの衝突、ぶつかりがあるだろうと思いますが、あらゆる工夫、努力をして戦争を回避し、平和を維持していく、片一力ではそういう熱烈な努力が払われる。こういうことを考えると、私はソ連に対しても、当方から平和共存を呼びかけることは可能なのだ。幸いにソ連自身が平和共存を言っている。その看板にいつわりないなら、可能なことだろうと思います。そういう方向で進んで行くならいい。ことにただいまシベリア開発の話が出ておりますが、鉄鉱石から見ても、石炭から見ても、あるいは石油資源から見ても、まことに豊富なものを持っている。これらを開発して世界の平和に寄与することができれば、ここはソ連ばかりではなく、世界人類の仕合わせといわなければならない。だから、そういう意味で、私どもも開発に協力することに決してやぶさかではございません。ただしかし、現実の問題、今日のこの段階で、それが可能かと申しますと、昨年ミコヤンが来たときに、シベリア開発の計画があるそうだが、自分たちもそれに協力ができればしたい、ついてはシベリアの計画について、出方へはっきりこういうものがあるのだという話はできないか、あるいは現地を日本の経済団をして視察さしてはくれないか、こういう話をしてみると、今日の段階ではシベリアはそうはいかない。こういうことで、これはふさがれております。だから私は、言われるごとく大きな大目標に到達する、それに今日々々の現在の努力が、いかにも別な方向へ行っておるかのように見られるが、人類の最終目標、大きな希望というものにみんなが一緒になって行くならば、今日少々右や左に行っても、そう心配することはないのじゃないか、こういうふうに思います。だから経済の問題自身も、やはり経済拡大、開発あるいは新技術導入といっているが、その目標は一体何なのか、あるいは別な言い方をすれば、政治の目標は一体何なのか、これがやはり問題を解決することになるだろうと思います。みずからが全部素っ裸になってみましても、現時点においては、いずれの国の政治家も自国のことを考え、自国民のことを考え、自国の産業を考える、こういう立場においての衝突なりがあるというのが、現段階の状況だと思います。だから現段階で全部を批判するわけには参りませんが、私はそういう意味で話をすれば、それはちゃんと合うのだ、ただ時期的な問題、これだけは区別していただかないと誤解を招く、こういうふうに思います。今回、日ソ通商協定ができましたのも、本来ならソ連と日本との間の貿易額はパー・パーであるべきなのに、それがことしは日本からの輸入を多くしよう、過去は日本へのソ連の入超ですが、これを少しでも消すようにソ連としても処置しよう、これなどはイデオロギーをこえて、現に通商協定を進めておる証左でございます。これは共産圏だろうが何だろうが、経済活動の目標がはっきりし、それが同一である限りにおいては協力可能だ、その点を申し上げたい。少しどうも無責任な話であるかのようにとられると困りますけれども、やはり目標と現時点とを区別していただくことが必要であろう、こういうふうに思います。
  142. 久保田豊

    久保田(豊)分科員 私も実は現時点の問題と、先のずっと長期の問題とを一緒にしている話ではありません。ただ、今申し上げましたような数字は、これは近い将来において実現可能な条件というものは、これだけあるじゃないかということを申し上げたわけであります。私はここへずっと準備をしてきておりますが、これはやはり段階があると思う。では本年度幾ら行けるかということになりますと、今度の協定では、御承知の通り一億二千五百万ドルと一億五百万ドル、これだけになります。しかし、現在業者が成約もしくは商談引き合い中のものを全部集約してみますと、それよりずっと多うございます。両方合わせまして三億三千万ドルくらいになります。大体調べてもらいました。そして共産圏全部で今年だけでも、ここに数字がありますが、相当大きな数字が出てくるのであります。さらにこれが、今のような状態でなく、もう少し政府間のはっきりした協定ができ、あるいは——貿易ですから、いろいろ双方に必要な条件がありますけれども、長期の取りきめができて、それを裏づけるような政府保証がそれぞれ行なわれるようになりますれば、少なくとも一九六五年程度には、ソ連が五億ドル中国が五億ドルそして北鮮それからベトナム、そういうもので大体においてかれこれ一億ドル近くの、十一億三千幾らというふうな数字が出ておりますけれども、モンゴールまで入れまして、これだけのものが可能だというのが専門業者の大体のあれであります。それをさらに伸ばしまして、全面的な再開が行なわれた場合は、一九七〇年を目標とした場合にどのくらいになるかというと、ソ連が十億ドル、中国が十億ドル、北鮮が大体二億ドル、北越が一億ドル、東欧圏が二億ドル、こういうので大体二十五億ドル程度の片道貿易が可能だ、今の向こうの日本品に対する購買力や、それから日本の原材料の購買力という点から見て可能だというのが、これは少し手前みそがあるかもしれませんが、業者の見方であります。しかし、とにかく今までのソ連貿易の実態から見ましても、協定額を毎年三割くらいオーバーしております。こういう実態から見ましても、政府がいわゆる口先だけでなく、ほんとうの積極策をとられれば、私はそのくらいのものは十分なし得ると思う。それを阻害している問題が幾つかあります。それの一つ一つの問題については、私はあとで商工委員会で現実に具体的に御質問を申し上げたい、こう思います。  少し長くなりましたが、もう一点だけ私は申し上げておきたい。今国際の貿易市場の問題が、政府としても問題になっております。また経済一般としても市場転換という問題が非常に大きな問題になっている。しかしこれをさらに日本のおもな企業なり産業に引き合わせてみますと、もっと具体的な問題が出ている。たとえば製鉄業を考えてもそうであります。製鉄は言うまでもなく基幹産業中の基幹産業であります。しかしどうですか。今大体一九七〇年に四千八百万トンの鉄鋼を作るという計画で進んでいるわけです。そのための原料になるところの鉄鉱石あるいはコークス炭のめどがありますか。実際にはめどがないというのが現実でしょう。東南アジア、今やっているところはほぼ限界に来ておる。今度は南米を掘るのだ、それからアフリカを掘るのだというふうなことでしょう。それもまだめどはついておりません。かりに掘り当ててうまく行ったとしましても、輸送距離はどうです。大体九千九百キロから一万一千キロ以上でしょう。現在の五七年度の平均で、日本の鉄鉱石の海上輸送距離の平均が約三千八百キロです。欧米諸国の倍です。それがそうなってくれば四倍から五倍になります。運賃はトン当たり相当高いもので、しかも不安定です。そういうものを使って四千八百万トンの生産が可能になりますか。石炭についても同じことが言えるでしょう。石炭は鉄鉱石よりまだ少しいいと言われている。しかし、持ってくるとすれば北米から持ってくるよりほかにない。あそこからパナマを通って日本へ持ってくるには、九千九百海里の海上輸送距離がある。こういう高いものを持ってきて日本の鉄鋼業の基礎ができるとは考えられない。日本の技術は優秀です。技術水準は高いようです。特に石炭の節約等については、西欧より優秀だということを聞いております。しかし、これだけの輸送距離があっては、これはなかなかうまくいかない。そのために運賃を少しでも安くしようというので、三億七千万円ですか、専用船を作ろうじゃないかということになっておるが、これもむだな話です。しかし、ソビエトや中国をずっとやれば——これは八幡あたりの調査を見ましても、中国では二百四十カ所の鉄鉱山が開発されている。それから大体鉱石にして一億三千万トンくらいの鉄鉱石が生産されている。これをFeの五〇以上というふうに詰めてみると、大体において六千万トンくらいでしょう。そのうち日本へ持ってこれる二十二の山を標準にして、その中の五〇%だけ持ってくるとしましても三百二十五万トンは優にできると言っております。これは東北や海南は入っておりません。そのうち特に可能性を持っている二つですよ。これだけでもって三百万トンは現実に今すぐできると言っております。さらにこれはシベリアにしても御承知の通りです。石炭についても私は同じようなことが言えるんじゃないかと思う。開らんにしましても、北票にしましても、滴道にしましても、本格的に日本が取り組んでいけば、これから五百万トンや六百万トンの輸入は数年後にはできないことはありません。私は自分自身が滴道の開発をやってきましたからよく知っております。あれから日本へ持ってきたら運賃が幾らかかるかということはよく知っております。しかし、あの地帯にはまだ未開発のものがあります。絶好のFeの六八くらいのものが鉄道から二キロくらいのところ、場合によりましては鉄道から四百キロくらいのところにうんとあります。それを目当てにしまして、戦時中小型の電気炉を六基持っていって私たちは建設したのです。そしてあのあたりからシリピンなどのソ連の資源はものすごいものであります。こういうものが開発された場合に——日本の必要とする鉄鉱石の海上運賃は大体七百から四百というものが基準でしょう。中国やソ連の場合は、まさに二十分の一程度です。今のような遠いところからそれだけのものを持ってきて基礎を固めずして、どうして日本の製鉄業が固まるか、私は固まらないと思う。しかも今度は作った鉄の市場、これはアメリカに売ろうといっても売れやしません。東南アジアは買いたいでしょうが、向こうは買えないということになれば、一番大きな市場はやはり共産圏じゃありませんか。少なくとも本気になって考えてみれば、経済的観点から見れば、これはイデオロギーでも何でもない。そこまで到達するのにはいろいろ困難な問題があることもわれわれ承知しております。しかし、日本も向こうも積極的に相信じ、協力し合うという基本の原則が確立されれば、今の困難な問題は一つずつ解決すると思います。解決しないことではない。しかも、経済の牽引力というものは、私が言っても釈迦に説法であるけれども、大体において経済の伸び率に正比例し、距離に逆比例するというのが原則のようであります。欧州の地域統合なり何なりも、この原則を大資本の立場から完全に活用したということであります。こういう点から見ても、日本は近くにないのですから、いや応なしに十分な可能性を持っているものをやることがぜひ必要であると思う。これは、たとえば石油と化学工業の関係を見てもそうです。今アメリカが原油を牛耳っているが、ソ連原油の方が一割も安い。これを入れることがアメリカ系の原油の独占的牛耳りをコントロールする唯一の手だと思うのです。さらに、肥料はどうです。肥料は今ドル防衛の余波を食って、アジア全体からオミットされている。中国なりソビエトに売るよりほかないじゃありませんか。もちろん、ここにはいろいろ問題があります。特にEECでは、御承知の通り百万トン売っているではないか。中国は、今日の段階では秋肥を二百万トンほしいと言っております。これだけの問題を解決せずに、近く肥料法案が出るそうですが、この肥料にしましても、市場問題の解決なくして国内的の問題の解決は不可能です。それでは片びっこになります。こういう状態である。繊維だってそうではありませんか。どこもここもみんなオミット食っている。高級な綿製品の出ていくところ、強力スフなり強力人絹なりスフなりあるいは合繊なりの出ていく先はどこですか。経済開発の進むにつれて急速に生活水準の上がっておるこの共産圏が、やはり将来大きな問題だと思う。現に業者はそういうふうに動いておるのであります。それを政府が何か——政府と言うと語弊がありますが、何かこれに対して非常に政治的な立場、思想的な立場からアメリカに遠慮して、共産圏の問題になると消極的になって引っ込み思案、さわらぬ神にたたりなしというのがあれだというふうに思うのであります。現にイギリスや西独はどうですか。ソビエトやなんかと政治的にも軍事的にも大げんかをやっているではありませんか。しかもそれでいて貿易だけはアメリカなんかに遠慮していません。資源のない日本が産業の基礎をほんとうに固めるには、政治家も産業人も自主性を持って、このくらいの見識を持ってこの機会に、私は一気とは申しません、少なくとも数年の間に、ソ連なり東南アジアを中心とする方向に市場転換をはからなければ、日本の経済のいびつというものはなくならないと思う。  時間がないので急ぎましたが、なお各国別の具体的な問題については、商工委員会でもっと突っ込んで、一つずつ御質問したいと思いますから、これを保留しまして、以上の点について佐藤さんの御意見を聞いて、きょうは一応中止いたします。
  143. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん御高説を長々と拝聴いたしまして、大いに私どもも参考になりました。この上とも十分勉強して、しかる上お答えしたいと思います。
  144. 赤澤正道

    赤澤主査 本日はこの程度にとどめ、明後二十六日は午前十時より開会し、経済企画庁所管についての質疑を行なうこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時四十九分散会