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久保田(豊)
分科員 今秋は三十七年度の
政府の計画そのものがいいと言っているわけではないのです。ただどうやらこれがそのままいったとして、こういう
前提を置いているわけです。もう
一つは、なるほど三兆六千億の設備投資が行なわれた、過去三年間で十兆円、これはいろいろ計算の余地がございましょう。それだけ実際にすぐ一年後に生産力化するかどうかもわかりません。しかしとにかくそういったものが行なわれたのであります。これを
前提として、少なくとも大きな断層のできないようにやるためには、いやおうなしに今後とも三兆六千億
程度の設備投資を、当分続けていかざるを得ないのじゃないか。それでないと、重工業化した国内のそういう新しい
企業の商品の売り場がない。あるいはもう
一つは非常にこのごろ国際
競争力を増してきておるEEC内の
企業や、アメリカの
企業と太刀打ちができないのじゃないか。こういう二点から見ても、少なくとも高度成長なり経済成長を順調にやっていくには、どうしてもその
程度のものは必要になってくる。そういうことになれば、少なくともあと二年後には、十カ年に予想したものの総設備投資額がそれでもって満配になってしまうじゃないか。従ってその一、二年先には、いやおうなしに国民総生産の規模というものは、一九七〇年度規模になってしまうということになると思う。従ってそれに見合うところの、今言ったようないわゆる輸出入の規模にしなければ、大きくなった生産力をまかなっていくということができない。できなければ、いやおうなしにそこに大きな断層を作るよりほかにしようがないということになります。そうすると
政府の一九七〇年まで予想した貿易規模の拡大のテンポより、少なくともテンポとしては半分だ。そして年の伸び率としては、お話しの一〇%ないしは九・何%と、倍
程度のものをやらなければいかぬということになる。こういうことが今の貿易構造の上で、しかも今のようにどこも非常に厳しくなっている
状況の中で、うまく行くのかどうかということが問題だということを申し上げているわけであります。この点については先がありますし、時間がないからこれ以上やりませんが、そこでこれに対する国内策としては、今現に
政府、民間いろいろ
対策が打ち出されております。御
承知の通り、民間では特にEEC
関係の発展により欧州やアメリカの大
企業の国際
競争力が大きくなってくる、強くなってくる。これに対処するということが
中心だということから、
企業の合同の問題が出たりあるいは設備の拡充なり輸出水準のあれが出たり、それを独禁法の改正でやった方がいいか、あなたの方でそれはやらぬでも
産業別のものをやった方がいいかという意見も出てくる。こういういろいろな意見が出てくるが、これらの国内策についてはまたここにも非常に問題がありますから、いずれ私はこの問題については機会をあらためて、
一つあなたと論争なり御質問を申し上げたいと思います。
それ以外に国際政策という面では、今
政府がいろいろおやりになっていること、やろうとされていること、これは一言で言えば非常にきめのこまかい経済外交を積み上げていこう、そして今おっしゃったような最近のアメリカの動向なりEECの動向なりドル防衛の強化、こういうようなことの壁を
一つ一つ破っていこう、そして血路を開いていこう、こういうことであって、これはやはりやらなければならぬと思います。非常に困難でしょうけれ
ども、どの
程度効果が上がるかどうかはわからないと思いますが、やらざるを得ない。しかしそれだけでは不十分ではないか。私は少なくとももっと深く日本の
企業なり、その国際性というものを考えた場合には、日本の経済構造といいますか、少なくとも貿易構造の
一つの基本的な変革を、一気にはできませんけれ
ども、逐次やっていくよりほかにはないのではないかというふうに考えるのであります。と申しますのは、日本の貿易の地域構造というものを考えてみますと、これは先だってもあなたが御答弁になった通り、何といっても欧米を一番重要視しております。しかもそのうちでもアメリカというものを一番重要視しておる。その次がいわゆる後進国地域、中でも東南アジアは、私に言わせれば大体において軽視と言っていいと思うのです。その次は何かというと共産圏、これは全く
政府の現在の構造の上でも、
政府のいわゆる長期政策の上でも無視されたような格好であります。ですから今の日本の貿易構造というものは、利こう言っていいと思う。まあ向米一辺倒、欧米重視、それから後進国地域を軽視し、共産圏は無視する、こういう地域構造の上にやっておられると見て差しつかえないと思う。これが貿易政策の基本だと思う。ところで、その上に今言ったようなアメリカのいろいろな最近の動向や、EECの動向や、それに連関する後進国地域のいろいろな動向、これらをまとめてみれば、どの
程度具体的に日本に対して現実に効果を与えるかは知らぬが、いずれにしても有利ではありません。非常に不利で厳しい条件であることは間違いない。ところで、こういう貿易の基本的な地域構造というのは、これからの日本、また日本が生きていく世界的環境の中で引き据えて考えてみますと、基本的にいびつになっていると言わざるを得ないのであります。と申しますのは一番重要視しておるアメリカをとってみましても、アメリカは日本よりは経済的にも上だし、技術的にも上であります。今日本はいわゆる原材料や機械というものは、ほとんどアメリカからこの大
部分を引いている。そのかわりに出すものは何かというと、主として軽工業品であります。品は一部ありますけれ
ども、これは限界輸出だ。向こうに何かの突発事情がない限りそんなに伸び得ない性質のものであります。こういうことになっております。今まではそのために毎年貿易上の収支では大穴があいてきた。その大穴を今までは非経済的な要因とでもいいますか、軍事的な要因とでもいいますか、いろいろのAIDやその他の、いわゆる非経済的な経済
ベースでは考えられないような収入で、一応穴埋めしてやってきた。これが一番
中心です。ところでこのアメリカという市場は、貿易市場として日本から見れば、これから日本はますます重工業を
中心に輸出を伸ばさなければならぬが、重工業では向こうは日本が行ってもかないませんし、必要ともしない。軽工業品についてはどうかというと、向こうに競合
産業がどんどんあって、日本から少し行けばこれはシャットアウトを食うのは当然です。これは国内
産業保護の立場からもどうしても、いろいろそこに協調やその他もありますけれ
ども、しかし基本的な方向としては、この競合
産業は日本が出過ぎればたたいてくるのが当然であります。しかも日本の国内の重化学工業を
中心とする設備投資が進めば進むほど、アメリカはそれに必要な原材料なり、エネルギーはますますよけい入れなければならぬ。よけい入れてもそれが日本の対米輸出をふやすことにはほとんど寄与しない。しかもその穴埋めをするものがドル防衛その他でなくなってしまってきている、こういう状態である。これを今後ますます重視して、これを偏重していこうということが、第一間違いである。
第二は欧州でもそうであります。欧州は御
承知の通り日本との
関係は、向こうの方が経済水準は高いのであります。向こうから日本に来ておるものは、重工業機械の一部や高度のいわゆる軽工業品でありましょう。日本から向こうへ行っているのは、やはり同じように軽工業品、軽機械類であります。これは初めから競合しております。日本にとっても必要じゃないと同じように、向こうにとってもあまり必要じゃありません。いずれも競合
産業が中にありますから行き過ぎればたたいてくる、こっちとしてもそうです。向こうからよけいくればたたかざるを得ない。こういうことで、それは経済成長の伸びに応じて多少は伸びて参りましょうけれ
ども、そんなに伸びるのじゃない。それにさらにこれらはEECが発展してくるということになれば、私は伸びは多少伸びても、少なくとも日本の国内の急膨張をまかなっていくだけの輸出の増を考えるということは間違いじゃないかというふうに考える。伸びるのは伸びましょう。また伸びるような努力をするということも必要でありますが、そうであります。
さらに後進国地域はどうかと言いますと、ここでは私が言うまでもなく御存じの通り、日本の重化学工業品に対する需要は熾烈であります。しかし、ここにはいわゆる買う金がありません。金が第一ですから、借款か援助か何かしなければならぬ、なかなか持っていけない。日本にはその実力はない。しかもこれについてはアメリカもこれからどんどん積極的に出てきましょう。それから特にEEC諸国は、ますます積極的に出てくると思う。さらに、もう
一つ見落としてはならぬことは、共産圏が経済発展に応じて、これに非常に有利な条件でどんどん出てくる。この三方からたたかれて私は日本の重工業品輸出、特にプラント輸出等も非常に困難になりはせんかと思います。もちろんこれに対処するようなそれぞれの具体策は必要であります。しかし大勢としてはそういうことになる。さらに軽工業品はその国々の綿製品、その他のいわゆる軽工業はどんどん興っておりますから、これが対抗要件、対抗策というものがどんどん出てくる。ここでも伸びることは伸びましょうけれ
ども、そう国内の高度成長を支えるだけのものはない、こういうふうに私は思う。これに反して、ソ連や共産圏というのは、政治的な要因を全然抜きにして、純経済的な見地から見れば、日本の重工業化するこれからの
産業の相手とすべき貿易市場としては、一番有利で一番安定していて、そして一番望みの持てる、一番適合した貿易市場だと言って差しつかえないと私は思う。それはなぜかといいますと、こういうことであります。私ばかりしゃべるようになってしまいますが、御
承知の通り、ソ連にしましても、中国にしましても、北鮮にしましても、あるいは北ベトナムにしましても、今盛んないわゆる経済建設をやっております。ソ連の現在の、日本でいう設備投資額は、大体年間三百五十億ドル
程度だといわれております。そのうちの約半分がシベリア開発に投ぜられておるといわれておる。中国の設備投資は大体百六十億ドルだといわれております。北鮮が大体十億ドル、それから北ベトナムは大体において四億ドルから七億六千万ドルというのですが、幾らになりますかわかりませんが、ことしあたりの投資額はそうなっておる。ですから、合わせて大体五百三十億ドルぐらいの設備投資が、日本を取り巻く共産圏において行なわれておるわけであります。そのうちで、今までの実績でいいますと、大体一割ぐらいのものを外国からの、主として建設資材の輸入に当てておるというのが実績であります。そして同時に、その見返りに、原材料その他のものの増産したものを、ちょうどその
程度の金額のものを出していくというのが実績であります。これは一九六五年
程度になりますと、少なくともソ連側が五百億ドルぐらいにふえるということであります。従ってシベリア投資はその半分と見て二百五十億ドル、中国の設備投資は、現在の百六十億ドルが大体二百四十億ドル
程度にふえるといわれております。さらに北鮮や北ベトナムもほぼ似たようなテンポでふえて参ろうと思います。そうしますと、少なくとも日本の周辺に、共産圏においては年間、現在で約三百五十億ドル、一九六五年ころには大体において五百三十億ドル
程度の、資本主義流にいえば設備投資が行なわれるわけであります。その一割がいわゆる生産財の輸入ということになります。そうしますと、ここに少なくとも三十五億ドルないしは五十数億ドルの日本軍化学工業の製品に対する大きなマーケットが出てくることは確実であります。しかもその半面におきまして、この辺におきます工業原料その他の資源がきわめて豊富であります。しかも資源が、埋蔵状態が豊富だというだけでなくて、急速に開発されておるわけです。従って現実の供給力を持っておるわけであります。それで向こうが、日本に大いにそういうものを買ってもらいたがっている。日本は売りたがっておりませんけれ
ども、重化学工業品の適当な市場がない。ふえくればどうしてもどこか海外に新しい市場を求めざるを得ない。そうすればこれをねらうほかないんじゃないかと私は思う。しかも距離的に言いますと、工業の原材料のごときは、私が言わなくとも御
承知の通り、この地域は大体今鉄鉱石や
——これはあとで詳しく、
数字をあげて申しますけれ
ども、今持ってきているもので、一番遠いもので四分の一、一番近いものは二十分の一であります。運賃
負担がうんと少なくて済むことになります。ですから、私は、この地帯が日本として、政治的要因をとって考えれば、一番よき、また日本に有利な、適切な市場だということになろうかと思うのでありますが、この点についての、政治的要因をとって考えた場合に、
大臣のお考えはどうですか。