○淡谷
分科員 近代化資金にしましても、消化したいと思いますが、実は消化のしようがない。今度五百億の
ワクをとるために、大蔵省では大へん抵抗があったようでありまして、三百億を消化し得ないものがどうして五百億が消化できるかということを盛んに言われたようですが、三百億だから消化できない。五百億でもあるいは消化できないかもしれない。非常にたくさんある農民にちょこっと出したのでは、なかなか大へんです。みんな一応ほしいんです。ですから、やはり大臣おっしゃる通り、農民が大胆にこれを使おうと思えば、農民の数にふさわしいような大きな
予算を大蔵省に
要求してほしい。私も大いに応援します。ロッキードをやるのは、二百七十億の金がどこにいくかわからないというのでは、今の乏しい農林
予算ではとうてい黙っておられないから言っている。前大蔵大臣の佐藤さんもいらっしゃいますが、この点、大臣大いに勇気を持って、超大型
予算でもかまわないから、とっていただきたい。これをまずお願いしたい。
なお、
あとは役所の方々にお聞き願いたいのですが、下手にパイロット・ファームなんという名前をつけましても、試験研究の形にするんだということに踏み切らないと、とんでもない混乱が農村に起こるということを私は申し上げたい。今農村で大きいのは格差の問題です。農民というと、みんな一色にひどい生活をしている、こう申しますが、このひどい生活をしております農民の中にも非常な階層がある。農民というのは階級じゃなくて層、農民層だといわれております。農民層の中におのずから階層がある。もしもこの資金散布によりましてある農家が一回に百万円の融通を受ける、ある協同組合が何千万かの
融資を受けまして、しかもそれがほんの一部分、村の数からいっても少ないでしょう。全部に当たらない。ましてその村に一つや二つのパイロット・ファームができた場合に、パイロット・ファームとして
あとの農民に影響を与えるような
方向へいくならば、これは悩みはございませんけれども、もし資金を借りたのをいいことにして、近代的な農業を一農家だけでやった場合に、どういう心理的な影響を与えるかというと、これは大へんなものです。最近では、成長財の果樹にしてもあるいは畜産にしても、金があり、資金の融通を受けることができる農家はどんどん新しい畜舎も立てるし機具も入れます。機具でも肥料でも農薬でもえさでも、あるいは技術でも、住宅、生活
態度まで大へんな格差があるのです。この格差を詰めるように配慮しませんと、大臣が非常な配慮を持ってなされております農村の
政策が、逆に農村の中に新しい階層の対立、新しい階級の対立、不平を呼ぶことは必至なんです。一つの例として最近の水産資本の上陸作戦にしても、実際
一般の豚をやっておる、牛をやっておるものは太刀打ちできない形になって入っていることは、私再々申し上げておりますから繰り返しません。この農村に現存する農民間の階層、農民間の格差というものをなくするような
方法でかなり大型の
融資を行ないませんと、これは大臣、いかに要請されましても、あまり少なくて使えないという形が出る。これはもちろんおわかりでございましょうけれども、御注意申し上げておきたい。あえて大臣にこれはお断わりしておきたい。
それから、これは私ども社会党としては非常に言いにくいことですが、農民の人口の問題です。これはおそらく進歩した形で、今のままの形で農業人口を農村にかかえ込むことはどなたがやっても無理だろうと思う。私たちも無理だと思っている。首切り論を言うのじゃない。そこで人口問題の混乱があるのです。農村にある者がことごとく農業をしなければならないといったような、過去の農村人口論では私は間に合わないと思う。新しい人口論はそうじゃありません。上陸した産業に対して農村が太刀打ちできないのは、いつまでも生産の利益だけ追って、加工、貯蔵、販売の利潤を追求するに道がないという形の中に、幾らがんばっても農民の所得が落ちつかないわけがある。豚の下落がそうでしょう。これは大きな
施設を持った資本的な豚の飼育をやりますと、もう安いときは売らないでカン詰にし、あるいはハムにし、そうしてこれを売り出して、貯蔵、販売一貫した中において完全な利潤をおさめている。農民はそれができない。それがやはり農業人口というもの、農村人口というものを、単なる生産農業の形だけにおいてつかむところにある。その
意味において、あなたの方でおっしゃる協業、私の方で言う協同化、農民自身の蓄積された資本、あるいは国家から与えられた資本をもって、単なる生産じゃなくて、加工、販売面まで農民が押し出していって、そのために農民が動員されるということをとりませんと、正しい人口問題が首切りになってしまう。確かに今でも農業の所得というものは農外所得を含んでおります。あるいはこれは農外所得も取らなければなりませんでしょう。農村における労働問題も発生するでしょう。しかし、このはみ出した農村の人口が現実にどうなっているかということ、これを見ていただきたい。大臣も市場なんか御視察になったりして大へんけっこうですが、私どもは、そういう仕事をしたものとして市場を見ておりますが、これは確かにおっしゃる通り、草花の市場でもあるいは果物の市場でも肉の市場でもめちゃくちゃなんです。ただし、その
あとの小売段階においてもっと複雑な問題があります。私は、やはり農外収入、特に協業、分業が盛んになりまして、自然に若い人たちが農村から出るような状態になりましたならば、この農業からはみ出した人口がどうなっていくかという過程を、大臣にもう一ぺんこれを見ていただきたい。成長産業、成長経済、成長ムードにつられて、最近では農村からどんどん若い諸君が来ていることは、これは大臣御存じでございましょう。これは来るのはあたりまえです。前から農民は、農業半分、労働半分という形をやっておりました。私よく見ておりますけれども、鉄道あるいは郵便局なんかに行っておりまして、下の下働きなんかさせられて、ひどい労働をして帰ってくる諸君が、うちへ帰って服をぬいで野ら着に着かえて、夕方からもう一ぺん畑に出かけて行く。二度朝がある、これが農外収入の
実態です。これを見ております若い諸君が、農村に喜んで居つくはずがない。それがこの経済成長のムードにつられて東京に出てきている。私も相談を受けておりますが、このムードにつられて就職期待権とでも申しましょうか、来てみた者がついた形を一ぺん見てやってほしい。きのうも話が出ましたけれども、十五日に締め切って、翌月の五日に賃金を払う。日雇い労務者です。夜業をさせられている。二十日間は全然労働の賃金をもらわないでやっている。その圧迫で非常に苦しんでいるというようなのが再三出てきております。従って、確かに農業人口あるいは農村人口の再編成は大事でございましょうが、これは首切りなどしないで、全部吸収して何らかの職業体系の中に当てはめていきませんと、正しい
意味で農村の発展はない。特にことし差し迫った問題——加藤委員の御
質問の時間の
関係もありまするし、また機会もございましょうからやめておきますけれども、この差し迫った問題、一つだけ大臣に御
質問を申し上げたいのでございます。
農村の労働力の不足の問題ですが、今言ったように、定まった目当てもなく流れていきますので、現実にもう労力不足が農村に現われてきている。ことしの田植えどきにおける労力不足、あるいはは果樹なんかの袋づけなどにおける労力不足——これは昨年から出てきている。それが農村労働賃金の高騰及び労力不足を生みまして、どんどん果樹を切るという形で現われてきている。この具体的な対策を立てておきませんと、幾ら成長産業といっても、果樹や畜産の伸び方に悩みがある。何か具体的な対策を立てておられたらお聞きしたい。