運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-21 第40回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十一日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       倉成  正君    八田 貞義君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       淡谷 悠藏君    岡田 利春君       加藤 清二君    川俣 清音君       西村 力弥君    兼務 井手 以誠君 兼務 永井勝次郎君    兼務 稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         文部事務官         (社会教育局長齋藤  正君         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     桧垣徳太郎君         農林事務官         (大臣官房経理         課長)     筒井 敬一君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         農林事務官         (蚕糸局長)  立川 宗保君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 増田  盛君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁次長   村田 豊三君  分科員外出席者         外務事務官         (経済局経済協         力部経済協力課         長)      沢木 正男君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  久我 通武君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中西 一郎君         水産庁長官   伊東 正義君         運輸事務官         (海上保安庁警         備救難部長)  樋野 忠樹君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         建設事務官         (計画局建設業         課長)     小久保欣哉君         自治事務官         (税務局市町         村税課長)  佐々木喜久治君         自治事務官         (消防庁総務課         長)      山本  弘君     ————————————— 二月二十一日  分科員高田富之委員辞任につきその補欠とし  て岡田利春君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員岡田利春委員辞任につきその補欠とし  て西村力弥君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員西村力弥委員辞任につきその補欠とし  て高田富之君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第一分科員井手以誠君、第四分科員永井勝次郎  君及び稲富稜人君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算農林省所管  昭和三十七年度特別会計予算農林省所管     ────◇─────
  2. 赤澤正道

    赤澤主査 これより、予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和三十七年度一般会計予算、同特別会計予算中、農林省所管を議題といたします。永井君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 輸入糖において超過利潤超過利潤と言っておるわけですが、超過利潤というのは一体何をさして超過利潤と言うのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  4. 中西一郎

    中西説明員 超過利潤の定義というお尋ねでございますが、三十四年、五年について問題になりましたときに、通俗的に超過利潤と呼ばれて参っております。その後、言葉として適切でないと実は考えまして、価格差益という考え方で整理をいたして今日に至っております。その価格差益といいます場合に、せんだって来予算委員会等でもお話がございましたが、輸入価格の下がった場合にその価格から出る場合もあり、三十五年のように、国内糖価が高くてその国内糖価価格差から差益が出る場合もある。その両方を含めて価格差益ということで考えるのが妥当ではないかということで、今日まで処理をいたしております。
  5. 永井勝次郎

    永井分科員 超過利潤は適切でない、価格差益だ、その内容はどの点がどういうふうに違うのか、明確にその違いをお聞きしたい。
  6. 中西一郎

    中西説明員 利潤に正常な限界線がありまして、それを越えるものは超過利潤ということが明確になりますならば、超過利潤という言い方もいいだろうと思うのですけれども、利潤の適正な限界というものをいろいろな産業界を通じて一定の線を引くということになりますと、これはとてもできません。また、そういう観念がないだろうと思うのです。そういう意味で、超過利潤と言うのは適当でないと考えておる次第でございます。
  7. 永井勝次郎

    永井分科員 価格差益との違いは……。
  8. 中西一郎

    中西説明員 価格差益という考え方をとりましたのは、これは価格が安定的に推移します場合には、それが出ないのでありますけれども、価格変動が非常に大幅にあったというようなときに、通常より以上の差益が出るということに着目をしまして、あえて利潤と言わないのは先ほど申し上げた通りでございますが、特に製糖関係業界でそういうものについての拠出ということを話として進められて、だんだんまとまって参ったということで、その価格差益ということに着目した基準を求めるということになったわけでございます。
  9. 永井勝次郎

    永井分科員 着目した着目しないということは別として、どういうふうに違うのかということです。われわれのところに配付された資料では、砂糖利潤見込み試算、こうしてあるわけですね。そうすると、これは利潤ではなくて価格差益というと、この試算というもの、この資料というものはもうほごになって、違った角度で検討しなければいかぬ。価格差益というような新しい資料を出してもらわなければ検討できないことになるのだが、どういうふうにそれが違うのか。利潤ということを従来使っておるわけですね。資料や何かに使っている。それをわれわれに対してはこういう資料を出しておいて、いつのまに利潤というものが価格差益になったのか、それがわからない。だからそれが数字的に結果としてどういうふうに違うのか。それをはっきりしてもらわなければ、われわれ今これを話をする前提としての基点がないから明確にしてもらいたい。
  10. 中西一郎

    中西説明員 すでに一昨年の末ごろからの話でございますが、昨年の四、五月の候、あるいは六月、いろいろな資料を国会に提出したことになっています。その間、超過利潤という表現をいたしておったことも御承知通りでございます。ただ、言葉の使い方として超過利潤という言い方は適切でないだろうということは、先ほど申し上げました通りであります。そういう意味で、昨年の中ほど以降は価格差益という言い方に変えております。ただ計算の仕方その他については、実質的には価格差益ということで処理して間違いはない。今まで超過利潤と言っておりましたものも、実体は現段階で価格差益と言っているものと同じものであると考えております。
  11. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、価格差益がある差益がないというその基準標準糖価ですか。
  12. 中西一郎

    中西説明員 標準糖価でございます。
  13. 永井勝次郎

    永井分科員 それじゃこの資料に基づいて、これは大臣から答弁をいただいたらいいのですが、計算もありますから……。  前回試算と今回の試算で大きく違った点は、今回の試算というのはブドウ糖等に控除しようというのが違うのであります。その点はこれは新しく追加されておる、これはよろしい。しかし計算内容において数字が非常に違っている。こういう違いは一体どういうところからきたのか、これを示してもらいたいと思います。私から申しますと、具体的に指摘してお尋ねしますと、利潤及び金利という項が、前回は二千二百六十七円であった、今度は四千九百二円になっている。この利子利潤というようなものがこういうふうに試算で倍近く違うというような根拠は、一体どこからこういう違いが出てきたのか、これを一つ伺いたい。
  14. 中西一郎

    中西説明員 お尋ねの点でございますが、二千二百六十七円という前回利潤及び金利計算は、これは非常にラフな計算になっております。と申しますのは、利潤につきましては、払い込み資本金に対する配当率を一〇%とし、金利につきましては、長期借入金につきまして年利九%ということでざっと計算しましたものです。今回と言いますか、昨年の六月に行なわれました新しい計算は四千九百二円ということになっております。この計算は、一つ産業だけを取り上げての計算は妥当でないのではないかということで、日銀調査主要企業経営分析、一億円の資本金以上の製造業企業収益率製糖工業を除きまして出しました。それによって算定したものでございます。製造業企業収益率は、三十四年の平均では一〇・五%、昭和三十五年の上期は一一・六五%ということで、他産業を持ってきて当てはめたという計算になっております。
  15. 永井勝次郎

    永井分科員 砂糖標準糖価の中には、加工から運賃利潤、こういうものを計算して、そして標準糖価というものがきまっているわけでしょう。利潤を全然見込んでいないわけじゃないのですね。それから超過利潤が出た、価格差益が出たという根拠は、原糖国際価格が非常に下がった、そして原料が下がったにもかかわらず、国内価格は上がっている。そういうところがら出てくる差益だ、こういうふうにわれわれは単純に考えるべきだし、標準糖価というものがもう適正利潤というものが見込まれているのだ、金利ももちろんその中に入っている。ところが、原料値段が下がったのであるから、取り扱い運転資金、全体の資金量は少なくなっている。普通のこの標準糖価で示す利潤よりは全体として上がっているわけです。利子が少なくて済むわけです。金がより要らない。ところが、これは逆に倍以上に上がってきている。こういうことは、一体、先ほど価格差益基準尺度は一メートルは一メートルなんだ、それに立って長いとか短いというものをきめるのだということを言っていたのですが、そうすると、尺度が狂ってくるわけですね。標準糖価というものはこうあるのに、それをほごにして全体のワク利潤をきめ、利子率をきめていく、こういう計算でこういうふうになったのだ。それならば、てんでこれはもう問題にも何もならないのですね。標準糖価の中にそういうものはちゃんと見込んであるのじゃないですか。これはどうなんです。
  16. 中西一郎

    中西説明員 その点非常に詰めて言いますと、いろいろ問題があると思います。ただ製糖工業全体として見ます場合に、その個々の企業に立ち入ってどうということでなしに、ほかの産業とのバランス関係でどうかということを概括的に見るというやり方としましては、先ほど私が申し上げましたような日銀調査経営分析に基づいてやっていくということで差しつかえないのではないかというふうに考えての計算であります。
  17. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣に伺いますが、標準糖価できちっと利子利潤も見て、これだけの糖価が維持されても、これだけ企業が成り立つのだということはちゃんときまっているわけですね。ところが、国際価格がぐっと下がった、国内価格はそれにもかかわらず下がらないでかえって上がっておる、こういうところから差益金が問題になってきた。そうすると、利潤というものはこういうものだ、利子というものはこういうものだ、今度はワクを広げて標準糖価以外のところからいろいろな統計を持ってきて拡大する、こういうようなことは一体正しいのですか。大臣、あなたは勘がいいでしょうから、こういうものはいいか悪いかという判断はつくだろうと思うのです。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 こういう計算はやはり事務的に計算をしておりますから、政策計算を変えるわけに参りません。従って、試算をいたしておりまする事務当局意見を尊重するということでなければいかぬと思います。
  19. 永井勝次郎

    永井分科員 それならば、われわれに示された標準糖価というものは、一キロ百二十一円、正しく言えば百二十一円六十七銭だ。この中には加工賃運賃金利利潤もちゃんと含んでいる。そうしてその中には、国際価格はこれだ、九十ドルという建値がちゃんと出ている。ところが実際は、建値はうんと下がって、国内価格はうんと上がっている。こういう事態において利子利潤は倍にふくれてきておる。推定生産費というものはうんとふくれてきておる。国内価格は非常な違いになってきておる。これは第一回の試算と第二回の試算とがこんなに違うというところに私は政策があると思う。大臣数字数字事務的にやっておるのじゃないですよ。こういうふうに標準糖価というワクをはずして、一般的な基準でこれを計算するというのだから、これは政策です、事務じゃありません。どうですか。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうふうに政策を加えて計算すべきものじゃないと私は考えるのでございます。、だから私は、自分の政策を加えていろいろ計算し直せという命令、指示はいたしません。私は、どこまでも事務的に計数というものはとるべきものだと考えております。
  21. 永井勝次郎

    永井分科員 それはけっこうです。それでは標準糖価計算せいということですか。標準糖価以外の糖価というものがここに出てきておるのですよ。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 その点、私もまだ深く研究いたしませんが、標準糖価と言いますけれども、その標準糖価はやはりある限界がありまして、変わるべきものじゃないか。標準糖価と言いますけれども、その標準糖価一定不変のものではないのであって、事情変化によって変えるということがむしろ適当じゃないか。たとえて言いますれば、金利と言いましても、これは上げる場合もあり、下げる場合もあります。それから運賃にしましても、上げる場合もあれば、下げる場合もある。しかし、それはむやみにそのつど変えるべきものじゃない。しかし、事情変化によってある程度変わった場合には、これを変えて考える方が適当であるということはあり得るのじゃなかろうか。これは私よくわかりません。わかりませんけれども、そう思います。なおよく勉強いたしますけれども、私は大目になりましてから、標準糖価はどうせいこうせいと言ったことはありませんし、全然そういう相談もしたことはありませんから、私、今よく記憶がありません。
  23. 中西一郎

    中西説明員 標準糖価というお言葉も、実は二色あるうちの、先生と違う方の解釈をしておりましたので、明確なお答えにならなくて相済まぬと思います、が、標準糖価と言います場合には、この価格差益を算出します場合の、国内卸売値段をどの辺に考えておるかということの標準糖価お話かと実は思ったのですが、先年のお話はそうではなしに、本年度ビート標準糖価を出します場合のお話かと思います。  そこで、もう一つございますのは、輸入原糖の標準的な価格前提にして、あるいはキロ当たり五円程度だったと思いますが、輸入糖についてもビート糖についても、大体五円程度利潤を見て計算をしてやっておると思います。今度の試算、昨年六月の試算もおおむねその程度キロ当たりの金額であろう。先ほど五千幾らというお話がありましたが、キロ当たりにすれば五円程度というふうに考えておる次第でございます。
  24. 永井勝次郎

    永井分科員 この標準糖価算定基礎になっている加工賃というものは減っております。それから製造原価も減っております。増したのは何かといえば、管理費販売費、である。著しく増したのは何かといえば、利潤金利推定生産費が倍もふくれておるというような形で、内容を分析すれば、こういうことになっておる。総扱いの数量が変わらない場合、値段が下がったら金利が下がるのはあたりまえだ。利潤もそれに比例して下がってくるのがあたりまえだ、もうけが多くなりますから。ところが、これは逆に利子利潤が倍近くふくれ上がっておる。いかにしてこういう数字をもっともらしく出して、業者の利益を温存させようという作意的な数字であるかということは、この数字において明らかである。それが大臣の言うように、標準糖価は毎年固定しないならしないで、毎年変えればいい。政府はずっと毎年算定して、それで利潤があるというのでちゃんと算定しているのが百二十二円という数字です。この中には利子利潤もあるのです。これは、国際価格はうんと下がったにもかかわらず、国内価格を上げておる。そういうところから、一般世論として超過利潤がひど過ぎるのではないか、 こういう議論が出てきて、こういう計算をした。最初はすなおな形で計算したのだろうと思う。第二回目はいかにしてこの利益を温存させるかというところで、こういう数字ごまかし方をしてやったのだろうと思う。だから、こういう結果になる。一キロで一円違えば、百万トンですから、これで十億違うのですよ。これほど大きな開きのあるところにこんなにひどい計算をしておる。さっき価格差益金だと言う。価格差益金基準は何かというと標準糖価だ。これは動かないものです。固定した価格だ。それに比較して上がったか下がったか、どれだけの差益ができたかということを単純に計算すればいいのに、今度は利潤利子や、そういうものを一切標準糖価ワクの外に出して、これは別にして、日銀の何だ、何は何だといってこういう数字を出してくる。私は、日銀数字を出して、こういうことをするなら、明確にやってもらいたいと思う。これはごまかしだ。数字説明はつかぬと思う。しかし、時間がありませんから、このことだけにかかっておられませんが、われわれは承認しがたい。基準となる、尺度となる基礎がないのですから、何が多くなって、何が少なくなったかということでなくて、そのたびに三十四年、三十五年では尺度をずっと伸ばして、その超過分超過として取ろうしておる、価格差益としようとしておる。こういうごまかしを私たちは認めるわけにいきません。それじゃ超過利潤をどういうふうにして各会社からこれは吸い上げるのですか。どういう方法で吸い上げられるのですか、納付させるのですか。
  25. 中西一郎

    中西説明員 これは、別段の法律的措置もとってないことは御承知通りでございます。いろいろ業界の中でも御相談がありまして、三十四年、五年についてはそれだけの拠出をしようではないかというし自主的な動きもございまして、それをもとにして、政府としてはその拠出が非常にアンバランスになっても困るという点もあって、バランスをとるという観点から、各社別計算についてはこちらからも協力しまして、業界と一緒になって計算する、そういうことでお出しを願うというふうに取り進めておるわけでございます。
  26. 永井勝次郎

    永井分科員 十八億になったのでしょう。あなた方の計算によると、十八億という金をどういうふうにして納付させるのですか。
  27. 中西一郎

    中西説明員 一つは、どこに納付させるかという問題がございます。これは一般会計あるいは特別会計ということでなしに、公益法人——製糖関係団体でございますが、その五団体でそういう公益法人社団法人を作りまして、そこへ積み立てる。積み立てた上で、その使途その他については農林大臣当局とよく相談し、その承認を受けて、公益的な目的に使うということで処理されております。  なお期間でございますが、現在のところではおおむね三年間、それを上、下に分けまして、三十六年の下期から、従って六回の分割になっております。
  28. 永井勝次郎

    永井分科員 そうしますと、この超過利潤と言いますか、価格差益金と言いますか、これは三十四年度、三十五年度に出た差益金でしょう。この差益金を三十六年度以降三カ年にこれを取るということになれば、その年度における会社計算では、その超過差益金を納入したということは、会社経理からいえば損金になるのですか、どうなんです、この経理は。
  29. 中西一郎

    中西説明員 その点、十分詰まってない点がございますが、考え方としましては、三十四年、五年の利益の中でそれが現在引き続いてずっと残っておる、その中から出させるのだという立場を貫きますと、三十四年、五年ではすでに税金を納めてしまった残りということになりますから、そういう立場を貫きますと損金でない、こういうことになろうかと思います。ただ考え方によりまして、三十四年、五年の超過利潤に相出する額を将来の利益の中から出させるという考え方をしますと、損金として扱ってもいいんじゃないかということになりますが、まだ十分詰めてない点がございます。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと私から……。私は大目に就任いたしましてから、昭和三十四年、五年の超過利潤の問題が未解決になっておる。これについてだいぶん各方面の御意見もあるということを知りましたので、すみやかに代表者に向かってこの超過利潤拠出すべきだということを強く要請して、そして代表者もそういたしましょうということになって、話をつけたのでございます。従って、今の損金で見るか過去の益金の中から出すかというようなことについては、会社の方でしかるべき案を作って持って参る。それについて今お話しのように、損金にして将来の利益の中からこれを差し引くというようなことは適当でないと私は考えます。
  31. 永井勝次郎

    永井分科員 これは三十四年度、三十五年度価格差益金でしょう、もうけ過ぎでしょう。これは三十四年度、三十五年度から取るのがあたりまえじゃないですか。それをこれからの利益の中から取って、そうして損金にする、あるいは損金に落とすとかなんとかいうなら、これは何も三十四年度、三十五年度価格差益金じゃないじゃないですか。これを三十四年度、三十五年度で取るというのがあたりまえです。そういう計算にしたって、これだけあるのですから、もう正当な計算からいえば、何十億とあります、百億以上ありましょう、その利益というものが。今部長税金でどうこうしたと言うが、それならば三十四年度、三十五年度の各会社経理をごらんなさい。どこがどれだけの税金を納めていますか、会社がどれだけの利益を出していますか。はっきりとそれだけの差益金がある。今の年度計算できるでしょう。その年度の各会社決算報告を私は持っております。三十四年度、三十五年度、どこにそういうものがありますか、どれだけ税金を出しておりますか。こんなでたらめな、こんなふらち千万なやり方というものは私はないと思う。それをなおかつ三十四年度、三十五年度差益金というものは計算上こう出た、それをごまかせないから、これからの利益の中からそれを払っていく、そういうひどい、でたらめなやり方というものは、子供だってそんなばかげたことは許さぬと思うのですが、三十四年度、三十五年度会社決算の中にどこにどういう利益が隠されておりますか、どれだけの税金を納めておりますか、明確に答弁して下さい。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 私が今申し上げたように、三十四年度、三十五年度超過利潤でありますから、会社のそれぞれの責任者は、その超過利潤を納付すべきだという建前をとりました。こうお答え申し上げたわけであります。
  33. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、三十四年度分の差益金は三十四年度の過去の蓄積の中から、三十五年度価格差益金は三十五年度の過去の蓄積の中から、こういうことですね。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 それは会社理事者におまかせをして、われわれはその三十四年、五年の超過利潤を納付するという話をいたしておりますから、それに同意を得ておりますから、その会社内容に立ち至ってはまだ考えておりません。
  35. 永井勝次郎

    永井分科員 内容に立ち至る、至らないというのじゃなくて、これは年度別の差益金が出ているんでしょう。過去にそれだけの利益があったというので、何も頭を下げて出してもらうというものじゃないでしょう。これだけの利益が当然あるのだから、その利益の中から出すことが正しいのでしょう。そうすると、それは年度別に分かれているんだから、年度別で出せということをはっきりさせなければ、わけがわからぬじゃないですか。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、これを拠出せしめる法律的根拠はございません。そういうことであれば、当然その年度で行なわれておるべきでありましたし、また私の前任者はそういうことを処理してあったはずでございます。それが今日まで未処理になっておりますのは、何かそこにいろいろ事情もあったことと私考えます。しかし、超過利潤について、今の差益金について、これを出すということが適当であるということを懇談いたしました結果、会社理事者承知いたしましたと言っておりますので、その出てくるのを待っておるということでございます。それはどういう方法でお出しになるか、そこまで立ち至って私はする必要はないと思います。
  37. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣は、これはおれの知ったことじゃない、過去のことだ、こうおっしゃいますけれども、現在それを事務処理されるのはあなたじゃないですか。あなたのところでどれだけの金額を査定し、どういうふうにこれを正しい方法によって納付させるかということは、あなたの仕事じゃないですか。過去のことだから知らぬというわけにはいかないんじゃないか。それからもう一つは、総括質問のとき、この方法は正しいんだ、超過利潤でこういうふうにしてやって、値段は下げない、国際価格は下がっても国内価格は下げないのだ、こう言っているんだから、それならば当然ここに差益金が出てくるわけですね。その差益金というものを法的根拠によって取るか、今言ったようなこういうインチキな方法で取るか、これはいろいろあると思うけれども、私たちは行政措置でやるとかなんとかいうことはインチキだと思う。どんぶり勘定で、どうだ、お前どれだけ出すか、こういうことでやる計算です。こういうひどいやり方計算をして出す。こういう国の財政の正式な機関を通さないで、正式な査定を通さないで、どんぶり勘定で行政的にやるなんということは、私はこれは国の財政を乱る汚職の根本だ。汚職の胚胎する原因はそこにあると、こう思うのですけれども、しかしそれにしましても、これは大臣が今処理をしなければならない仕事じゃないですか。それをよくわからない。この数字内容についても、間違っているなら間違っていると、私は、これは数字をはっきりと納得のいくような形において説明を求めなければ承知いたしません。これは通すわけにはいきません。この関係においてインチキな内容は私は許さぬ。だから大臣がここで処理する以上は、この金はどこから出すのだ、これからの利益からだなんて、そんなインチキなことは許しません。三十四年度差益金は三十四年度の分から、三十五年度差益金は三十五年度の分から、これは出すのが当然です。もしこの会社決算が正しいならこれだけの利益というものは隠している。税金の上からいえば、私は手を入れて脱税のなにで取り締まらなければならぬ。どれだけの税金を納めた、税金を納めたと言いますけれども、幾ら納めていますか。一億と納めていないのですよ。こういうひどいやり方というのはないです。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ永井さんおっしゃいますけれども、すでに昨年の六月でしたか計算をいたしまして、十八億何がしかの差益利潤が、三十四年度、五年度の分についてはこれを納付させようということを決定いたしてあります。そしてその事務が進行中に私は就任をいたしました。私は、この計算が間違っているか、間違っていないかということを言うべき立場でないと思う。それを間違っているとも考えません。従って、それがそれなりに進行すると、今お話しの通り、お前がその事務処理をするのが当然の責任者じゃないか、これは責任者でございます。従って私は、今事務処理をいたしておるのでございます。ただし、三十四年、三十五年の差益金について理事者はこれを納付すると言っておりますから、その金を財産処分して持ってくるか、どこから持ってくるかということまで、内容に立ち至ってまで私は考えません。ただし、今お話しのように、三十六年、七年、将来の利益の中からこれを出すということは適当でない。この点は私は永井さんと意見は同じであります。私はその処理でいいんじゃないかと思います。  もう一つ申し上げておきたいと思います。今、もうかった話のことばっかりおっしゃいますけれども、ものは相場でございますから、今永井さんがおっしゃるようにして、標準糖価ということになりますれば標準糖価基準にして、原糖がそれだけの値段でなしに、下がった場合もあれば、原糖を周く買う場合もある。国内の売買にしても、標準価格で売れなくて上がってもうかる場合もあるし、そこまでいかない場合もあるということじゃなかろうかと私は思うのであります。だから、私が今言う通り三十四年、五年について計算したら、こういう利益がある。三十五年、六年についてもこういう場合があるということじゃなかろうかと思うのでございまして、従って、もしそれだけの差益が常に固定的に見られるならば、そこに一つの手段が考えられなければならぬ。もしくはこれについて一つの法的の措置を講ずるか何かするべきである。さもなければ、関税の率をもう少し上げるとかというような取り方がほかにあるというのじゃなかろうかと私は思うのであります。ところが、一応標準糖価を定め、そして国際価格国内販売価格、そこに関税と、それに適正な会社利潤、もしくは会社の取得すべきものというようなものを計算して、そこに一つのある基準となるべき数字が出ておるのじゃなかろうかと思うのであります。それがいずれも相場のことでございますから、原糖が下がる場合もある、国内糖が上がる場合もある。そこで、それについて差益が非常に多く出てきた。それについて今やかましくおっしゃったのじゃないか、私の考えは違うかもしれませんが、私はそういうものじゃないかと思うのでございます。
  39. 永井勝次郎

    永井分科員 今の行政がしかれて以後、砂糖で損したという例がありますか。もうけ過ぎておるということは毎年度あります。損したということはありますか。損をするわけはないのです。なぜならば、九十ドルを建値として一定利益を中に見て、そうして百二十一円六十七銭、これが標準糖価、こういうふうに定めてあるわけです。それ以下になれば——以下になるということはない。外貨の割当をして管理をしているのですから。価格管理を政府がやっているのですから、それ以下になることはないのです。あったとするならば示してもらいたい。今の問題は、九十ドルの建値に対して今は国際価格は四〇年来の暴落でしょう。それが少しも国内価格に響かないというのはどういうわけかというと、下げないということを大臣は言ったでしょう。最低標準糖価で、それ以上国際価格関係なしに国内で自主調整で値段を上げていくというならば、もうかることがあっても損をすることはないのです。今の問題でも、これは正確に言えば、三十四年度国内の卸売価格は最高百三十一円までいっておるのですよ。三十五年度は卸売価格百三十八円までいっておるのですよ。どうですか、百二十二円で十分もうかるのに、そういう国際価格が下がっておるのに、国内価格はそういうふうで、価格差益は出ておる。ですから私は、価格差益というものがあるとするならば、原料の値下がり分の差額、建値九十ドルに対してその差額、国内における百二十二円という標準糖価超過分国内価格で高くした分、それが単純な形で価格差益として出てこなければならぬ、私はこう思う。それが価格差益金だと思う。超過利潤だと思う。百二十二円の中には適正利潤というものは含まれているのですから。ところが、今の計算でいうと、いや利子利潤というのは日銀のやつで計算し直したのだということで、これは二十二円とは比較にならぬほど膨大な数字をここに出しておる。三十四年と三十五年、なおかつそれでこれだけの利益が出た。その利益が出たというのは、この決算報告によると、会社決算には出ていない。会社税金で納めた、納めたとあなた方は言うが、税金でどのくらい納めていますか。名古屋精糖は三十五年五月期決算においては八千二百万円より納めていませんよ。三十六年の五月期においては九千三百万円より納めていませんよ。そうして台糖においても、明治製糖においても、新光製糖においても、この年度においてはみな各会社利益はないことになっておる。私は、こういうひどい内容というものはないと思うのです。大臣は勘がいいのだから、こういうことはどこに利益があって、どこにどういうものがひそんでおるかというようなことは一にらみすればわかるはずだ。そのにらむ目が曇るというのはあなたがおかしくなるから目が曇るのだ、正しかったら——あなたは実力者ならもっと実力者らしく、現在の処理の段階において、こんなインチキな超過差益の算定というようなものを認めるというばかな話はないと思う。しかもこういう関係において、これをこれらの利益の中で払っていくなんという、そういうやり方をしておる。これは損金に落とすのです。だれでも利益の中で損金に落としていくならばやりやすいのです。こういうようにインチキの悪循環をどんどん繰り返して、それがこの議会の中で明確にされないまま、口の先でごまかして、その場を通ればそれで知らぬ顔の半兵衛、それではあまり政治家としての良識がなさ過ぎると私は思う。実力者としての河野農林大臣——実力者というのは何か、事務のことがわからないからお前にまかせる、人まかせにして、そうしていいことだけ自分でやっていこう、そんなことではないと思う。やはり目が行き届いて、部内に対しては悪いことはさせない、正しいことだけをする、そうして政治の姿勢を正すというところに、大臣が実力者としての資格があると思う。ところが、大臣みずから姿勢がくずれていたのじゃだめですよ。でありますから、超過利潤の問題は消えないのですから、三十四年度、三十五年度は消えない問題である。そうして私はほんとうにやるなら会社の中を調査させます。訴えたらいいのです。政府の方で言うこの計算でもこれだけの利益があるというのですから、もっと違った立場でいけば、ほかの方でいけば正しい利益というものが算定できるはずです。その立場から、三十四年度超過利潤は正しく出させたらいい。これは国民が負担しているのですから。あらためて私は河野農林大臣の責任において、消費者や国民がもっともだと納得いける形において、苦い砂糖をなめさせられたけれども、その処理はさすがに政府だ、さすがに河野農林大臣だ、いろいろ今までうわさされたのは違う。河野農林大臣は何だか黒い幕がかかっておかしいとうわさされていたが、それは違う。すっきりと霧が晴れたような、胸のすくようなこの問題に対しての決断を私は聞きたい。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。先日予算委員会永井さんからいろいろ御注意がありましたので、直ちに砂糖につきましては現在のやり方について再検討するよう命じたのでありますが、一切計算をいたしまして、今の輸入糖についてどういう処置を講ずべきか、また国内生産の甘味資源についてどういう考え方でいくべきか、総合的に再検討を命じまして、そうしていずれ近く、なるべく早い機会に結論を得て処していきたいということで、将来の問題については、私は今申し上げたように考えておる次第でございます。  過去の問題につきましては、先ほど来申し上げますように、すでに前内閣の時代におきまして、業界政府との間に談合いたしまして、一応の結論を得たことでありますから、これが残務処理について適正にこれを処理するということを私はやっていきたい。今お話しのように、三十四年、五年についてもう一ぺんそろばんを入れ直せ、考え直せと言われますが、この問題については、一応私としては、今申し上げた通りに、すでに前内閣の時代において一応処理され、それを継承いたしております。あらためてこれを入れ直すということについては、ちょっとやりかねるということを御了承いただきたいと思います。  今後のことにつきましては、今申し上げたように、はっきりしたことを再検討いたしまして、すぐ結論を出し、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  41. 永井勝次郎

    永井分科員 三十四年度、三十五年度の分について再検討はしないとおっしゃるならば、この数字の算定の基礎について納得できるように——大臣みずからが納得がおいきになるならば、第三者に対しても納得ができる。あなた自身が納得できないことならば、第三者に納得できないと思う。納得できないことなら、間違いはさかのぼっても正すのがあたりまえですから、そういうふうにさかのぼってどうこうと言わないで、これは正しいということをこの議会で説得し得るように、この数字内容をさらに資料を出していただきたい。それが一つ。  それから今後において糖業政策全体をひっくるめて再検討しょうというお考えについては、私も大へん敬意を表します。ただ、ゆがんだ形でなくて、ほんとうに国民がもっともだという納得のいき方で、手の込んだいろいろなことをやらないで、すっきりといくようなやり方をしていただきたい。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 御発言ごもっともと思いますから、さっそく三十四年、五年につきましては、もう一ぺん私自身が再検討いたします。それから今後の問題につきましては、今お話しの通り、手の込んだようなことは考えておりません。十分勉強しまして、なるべく早く結論を得まして、その結論の上に立ってやるということで私は再検討中でございますから、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  43. 永井勝次郎

    永井分科員 それからこの超過利潤に対して拠出基準というものを各会社に示しておる、こういうことが新聞に伝えられておりますが、事実であるかどうか。そしてこれの拠出基準については、大きな工業会の方は賛成でしょうが、小さな力は大へん不平を持っている。その不平に対しては、正当な理由なく拠出に応じない場合、輸入糖の外貨割当比率で適当な措置を受けても異議なしとの誓約書を提出させる、こういうふうに言っている。言ってみればどうかつ的なことをやっているのですね。悪かったらこうだというのでなくて、今後のお前の割当に対して手かげんするぞ、こういうやり方というものは、私は決して正しい行政じゃないと思うのですが、どうですか。
  44. 中西一郎

    中西説明員 事務的な経過の御説明をいたします。この拠出は、本質的には寄付でやろうという処理でございます。ただその場合に、でこぼこになって、ある人は出す、ある人は出さないということになると非常に困るということで、現在それぞれ何かの形でしめくくりの措置を政府としてとってもらいたいという申し出があったわけですが、その際われわれとして考えられるのは、外貨によるそういう措置をとることあるべしということしかないと考えたわけでございます。それが発動される場合はほとんどないと思っております。中小企業の力は非常に困っておるというお話でございますが、事実はある程度は出したいということを言っておりまして、やはり人並みのおつき合いはするのだということのようです。大企業並みに全部出すというふうにはいきませんけれども、何ほどか出すということを言っております。
  45. 永井勝次郎

    永井分科員 この計算によって標準糖価というものがあるにもかかわらず、そのワクをはずして、いろいろ生産費はこれだけかかるという作為的な計算をやって、会社の採算性はいろいろ違うのだというこまかいことを考えてやっておるものが、大きな規模の会社と小さな規模の会社と、これを一律一体に溶糖実績で超過利潤を吸い上げるのだ、割り当てるのだということは、私は弱い者いじめだと思うのです。こういうワクまではずしてやっているやり方としては、私はおかしいと思う。決して喜んで納めておる形ではございません。われわれのところには小さなところからずいぶんひどいことを言ってくる。それから小さい方は、自分のところの会社の割当数量だけでは足りないで、人のやつを買って溶糖している。その分まで出させるといういろいろな問題が出てきております。しかし、この問題は時間がありませんから言いませんけれども、やり方は私は正当ではないと思う。  それからもう一つは、輸入糖に対する超過利潤というのは、こういうふうに非常に甘いやり方です。特に輸入糖というのは、ただ粗糖を買って溶かして色を白くすれば、それで一年に何十億あるいは百数十億というぼろもうけをするのですから、 こんなばかげた仕事というものはないし、企業努力やなんかの比率からいえば、私は問題にならぬものだと思うのです。こういう関係にはこういうゆるやかな価格差益金と言いますか、そういうものをなにしながら、一面ビート関係については、一つ会社に対して法律を作って、ぴしっとやっているのです。こういうやり方というものは比重の置きどころがてんで狂っているのじゃないか。日甜という会社一つに対して、お前のところは超過利潤があるからこれだけなにせいと法定して、毎年三億数千万円というものを吸い上げている。こちらの方は計算上百数十億というものをぼろもうけしている。それがこう計算して、こう計算して両年度で十八億円、その十八億の金の出し方は、大臣が明言されたから、これからの利益の中で出させないで、過去の蓄積から出させる、こういうものがはっきりしたから、それだけいいと思いますけれども、そういうように超過利潤の方は野放しにしておいて、このビート糖というものは、なかなか困難な仕事ですが、一社だけ対象として法律を作り、超過利潤として取り上げる。こういう違いというもの、ウエートのかけ方というものはどうかしておるのじゃないかと私は思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り日甜は、ほかの会社会社のおい立ちが違いますのは御承知通りであります。従って、これは今日まで長きにわたって政府が非常に保護したと申しますか、援助をして今日にきております。たまたまこの時代に入りまして、その利益が非常に上がってきておる。かつて国家負担を相当負った会社でございますから、これについては他の会社とは違った考え方をするというような点があるのじゃなかろうかと私は思うのであります。
  47. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、今のようなやり方が妥当だ、適正だ、こういうふうにお考えになるのですか。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話しの通り、ほかのものは野放しで、これだけは締めるのはどうかというのですが、日甜に対する考え方は私は適切であって、他のものについては、先ほど申し上げた通り、そういう非常に利潤が多いのをそのままにしておくことは、特に最近の傾向は輸入糖が非常に安い傾向、国際的に農産物は下降の方向にあるわけでございますから、これについては根本的に考えを改むべきだという私の考えに立って、先ほど来、再検討しておりますと申し上げましたように、へんぱな処置が妥当だということで申しておるわけではないのであります。
  49. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、価格差益があるないということは、一企業単位にこまかく計算して、お前のところはこれだけある、お前のところはこれだけあるというような、こういうような計算によって、積み上げによって超過利潤というものを取り上げるのですか。そういう考えが超過利潤という思想の中にあるのですか。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げましたように、日甜はこれまで長きにわたって国家が相当の負担をかけて育ててきた会社でございます。また他のてん菜会社にいたしましても、低利で融通したというものもございます。こういうものについては、それぞれの立場を平等にするためにある程度考えている場合もあるだろうと思います。これは永久にそういう立場をとるということは適当でないと思います。今、御承知の日甜のように非常に基礎が強固で、そして政府の援助のもとに非常に固定資産の償却が進んでおるというようなものと、新たに相当の資金を投じててん菜糖の製造にかかっておるものとはアンバランスになっております。従って、これを同一のバランスの上に立って施策をして参るというようなことになりますので、たまたまそういう処置をとっておるということだろうと思うのでございまして、これは決して長きにわたってそういうことをやるべきものじゃないと考えております。
  51. 永井勝次郎

    永井分科員 そうしますと、ビート産業については各社間の企業採算がアンバランスにならないように、上に出たものは法律でそこはとって、足りないところはそこへ何かつぎ込む、こういう思想で、こういう一つ考え方に立ってビート政策というものをお考えになっておられるのですか。一社だけ対象なんですよ。それから、その間に対象にならないところは、新設の方はほったらかしです。それからビート値段原料値段を上げるという場合、どこの会社は赤字を出しておるのだから、もうかっていないのだからそう上げるわけにいかない、こういうふうにもうかっておるところは野放しに置いて、最低の基準で一切のことをおやりになるのかどうか。私は、どうも大臣ビートなり砂糖なりの実態がわかっていてほんとうに政策をおやりになっておるのか、おわかりにならないで、そして大まかなところでそういうちぐはぐな筋の通らないやり方をしておるのじゃないか、こう思うのです。たとえばビートなんかも、コストの安上がりというところはけっこうだ、そうでなければ国際競争に勝っていけない。目標は、やはり国内だけで保護されたビート産業、糖業ではなくて、国際競争力を持ち得る糖業へ育成していかなければならぬ。そしてコストの安いところへやらせるのがあたりまえだ。そのためには一定基準を作って、そしてこの基準の中で企業努力によってもうけるようやれ、それ以下のところは、やれないものはやらなくてよろしいという一定基準を置かなければ、ただ国産は何ぼでもやればいいのだ、どんなにコストがかかってもどんどんふやすのだというようなやり方で行ったって、これは国際競争力も何もない。やはり一定の安定基準というものを置いて、その基準の中で企業努力というものを各社にやらせるという方式でなければ正しくない。その意味から申して、お前のところはもうかるからといって上をちょん切って農民に返さない、こういうやり方というものは私は正しくないと思います。それから大臣は、輸入糖価格は、国際価格が下がっても下げないのだ、これは国内のブドウ糖なり、そういうものを育てるためだ、こういうふうにおっしゃったのですが、一体制度的にどう結びついているのですか。経済的にどう結びついておるのですか。結びついてないじゃないですか。現在何も結びついてないだろう。これからそういうような考え方でやりたいという希望的な意見をお述べになったのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 私が過去の行政を御説明申し上げたのと、将来にわたってどうやるのかということと混同して御判断のようでございますから、あらためて明確にいたします。  今あとからお話の点は、私は国内の澱粉、カンシャ糖の育成のために標準糖価というものを置いておるのじゃなかろうかと思うのでございます。この標準糖価は、すなわちその糖価である限り澱粉はそれに対してどういう価格になり、あめはどういう価格になって、これで国内の農業は保護されるという立場をとっているのだろうと思うのであります。そこで、それに見合う関税を取り、しかるべき行政指導しているということがこれまでやってきたやり方であると思うのであります。ところが、先ほど申し上げましたように、こういうあり方がいいか悪いかということを再検討しよう、そしてたとえて申しますれば、輸入糖については、関税政策でこれを自由の価格にして、そして下がるものは下がるようにして、そしてこの関税収入を得て国内の甘味資源を育成強化するという方法もございましょう。先ほど来お話しの通りすっきりした方法、どういうふうにして国内甘味資源の保護育成ができるか、問題は、将来にわたって国内の甘味資源を育成するということが基盤になるべきものだと思うのであります。そういう角度から将来にわたっての問題をこの際研究するということで、せっかく研究をしております。  そこで、北海道のビートにつきましては、今申し上げました通りに、これまでのあり方が北海道のビートの今までのやり方でございまして、従って、今後の国内甘味資源対策と申しますか、ビート対策と申しますか、ということになりますれば、お話のように行政でやっていくことが私は適当である。これは永井さんも私も考えが同じでございます。従って、将来の一味資源対策としては、まず国内に全面的にビートの奨励対策を講じて、しかもその奨励の方法たるや、現在の国内甘味の価格よりも安い価格、しかもそれは企業努力によってできるかできぬかということを基盤にしてものを考えていくべきだ。しかし、当初においては相当の保護が必要であるかもしれませんから、経過規定はむろんあると思いますが、方向としてはそういう方向に行くべきものだと思うのでございますが、今申し上げますように、日甜に対する態度、北海道の現在のビート政策、これらは、これまでの考え方を基盤にしてやったことでございますから、それはいろいろの点が錯綜して、そこに矛盾があり、撞着があるように御指摘でございますけれども、一貫して、今後一つ国内の甘味対策については根本的に一連のものを考えていくようにしたいものだ、こういうので勉強しているところであります。
  53. 赤澤正道

    赤澤主査 約束の時間が超過しましたので、御質疑ば簡単に願います。一問にお願いします。
  54. 永井勝次郎

    永井分科員 それでは、私は、この超過利潤の問題、それから国雄ビートの問題、それから、最近きめられたという地域割の問題等問題がありますが、時間がないということですから、いずれ別な機会にこれらの問題をもっとはっきりさしていきたいと思う。  ただ、ビートの問題について一つお尋ねしておきたいのは、地域割をきめたようでありますが、これは非常に合理的なものとお考えになりますかどうか。これが一つと、それから、ビート工場を合理的に経営するためには地域の設定が絶対必要条件です。そうして、その地域の中心にこの工場があるということが望ましい方法です。ところが、今度のやつはずいぶん飛び地があるのですね。二百何十キロも離れたところへずっと飛んでいる。しかも、その飛んで設定したところでは、その場所を変えると言ったら悪いから、そこへ工場を新設するんだ、工場誘致運動だと称してそこへ入れている。新しい会社の地域としてそこへ呼び入れている。こういうふうに乱脈きわまるものだと思う。農民に工場設置だ工場設置だと言ってそれをやっている。工場設置といったって、大臣は、今まで工場を地元で要望するから作ってやったんだと言うけれども、これは町村長や一農民が要望するだけではなくて、実際は会社がやっていることです。営利会社がその陰にいて動かしている。営利会社の争奪戦なんです。そんなことは私が説明するまでもなく大臣よく御承知だ。それを何か農民のために作ってやったようなことを言うのですけれども、その結果として、こういうような乱雑な状態になっておる。こういう乱雑な状態ばすみやかに是正する方向でお考えなのかどうか、これが一点。  それから、輸入糖ビートの生産とを結びつけるという考えの中には、輸入糖でぼろもうけさしておいて、そのぼろもうけしたものをその会社が北海道でつぎ込み、会社のどんぶり勘定の中でやれ、こういう形においてお考えになっているのか、超過利潤超過利潤で国が正しい方法によってこれをとり、そうして、つぎ込むものはつぎ込む、こういうふうに行政を整理して、明確にして筋道を立てるという方向においてお考えになっているのか、これをお尋ねいたします。
  55. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。  北海道のことにつきましては、御承知通り、非常に広域のことでございますし、また、ああいう北海道の土地柄からいたしまして、実は農林省でこれを一々具体的にどういうふうに分けるがいいかということについての調査は困難でございます。従って、私は北海道知事にそのウエートを非常に大きくお願いいたしまして、まず原則として、北海道知事において、北海道行政を運用される上において一番適切な責任を持ってやれると考えられることを了承していくことが一番適当であるというふうに考えまして、ほとんどすべての場合、北海道知事の意見を尊重してそれに同意をしてやって参る、これが北海道におけるビートを増産し育成していく上において一番適当であろう、こういう考えに立って行政をやって参っております。従って、いろいろ飛び地がある、いろいろな御意見でございますが、これらにつきましては、なおよく説明は求めますけれども、基本は、北海道知事のお考えを尊重してやって参るということでよろしいのではないかと思うのでございます。  第二の、輸入糖でもうけたものを工場でどんぶり勘定で云々というお話でございましたが、これはそういうことは考えておりません。将来の点につきましては、先ほど申し上げました通り輸入糖会社会社として、これについて一つ根本的に考え方を新しくしていこうということで調査中であるということは、今申し上げた通りであります。  国内ビート生産につきましては、先ほど御説明した通りであります。
  56. 永井勝次郎

    永井分科員 ビートの問題はまた別の機会にもう少し突っ込んでお話をしたいと思います。  次は、ハッカでありますが、北海道の特産ハッカに対して、この自由化をことしの十月おやりになるようでありますが、これの自由化に備えて国内体制をどういうふうにお考えになっておられるか。現地では、今新しい品種として大葉という大きな葉の多収穫の品種ができて、これを今普及する最中です。もう少し年月をかしませんと、これが普及いたしません。その二年なり三年の期間を置いて自由化するというようなことをいたしますれば、現地は混乱なしに移行できるのではないか、こう思うのですが、これに対するお考えはいかがですか。  もう一つは、最近ユナイテッド・フルーツ・カンパニーが日本に進出してこようと、こういう話があります。御承知のように、この会社は、千八百億からの資本金を持って、南米からフィリピンからボルネオ、世界の各地に大農園を経営したりしながら、相当国際独占資本のつめを伸ばしてやっておるようです。日本に対してもそういう動きがあるということで、大宅壮一の話が文芸春秋に出ているのですが、その会社は、ドミニカやなんかで、自分の会社に不利益な政権に対しては、空軍を雇って、そうして爆撃をさせたり革命をやらせたりしている。カストロなんかの場合、キューバでも同じ手でやっている。こういうひどい会社だそうですが、これが日本にやってくるというのですが、大臣はこれをお聞きになっておるかどうか。もしそういう動きがあるとすれば、そういう外資会社の進出に対してどう対処されるか。この点をお伺いいたします。
  57. 河野一郎

    河野国務大臣 第二の、外国の好ましからざる会社が資本を持ってわが産業に進出するということについては、全然そういう事実を聞いておりません。また、そういう事態があれば、特別に考慮しなければならないと思います。
  58. 永井勝次郎

    永井分科員 考慮するのですか。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 考慮します。  もう一つはハッカの点でございますが、御承知通り、ハッカは輸出農産物の一部でございますので、これを自由化するという方向が方向としては正しいというふうに考えておりますが、よく事実を現地において検討いたしまして、遺憾なきような処置をとって参りたいと思います。
  60. 赤澤正道

    赤澤主査 残余の御質疑は他の機会に願うことといたします。  稻富君に発言を許します。
  61. 稲富稜人

    稲富分科員 農林大臣の時間が非常にないようでございますので、いずれ詳細に関しましてはまた他の委員会等でお尋ねすることといたしまして、私は本日は重立った項目について大臣お尋ねしたいと思います。ことに、私ここにお尋ねしたいと思いますことは、昭和三十七年度より実施されまする農業基本法を中心といたしまして大臣の所見を承りたい、かように考えておるわけであります。  まず最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、三十七年度の農林関係の予算について大臣の御所見を承りたいと思うのでありますが、それは、御承知のごとく、農業基本法の目的である農業経営の近代化、合理化あるいは農業経営規模の拡大、こういうようなためには巨額の財政資金の投入が必要であるということは、これは申すまでもないことであります。政府はその具体的な各種の施策を実施するため必要な財政措置を講ずる義務があるということは、第四条においてはっきり明示されておるわけであります。ところが、三十七年度のこの基本法実施の初年度に当たりまする予算総額は二千四百五十九億円でありまして、三十六年度当初予算の千八百七十二億円に比しますと五百八十七億円の増加は見ているようであります。もちろん予算規模は前年度に比しまして三一%の増加となっていることは私たちも見るのでございますが、せっかく農業基本法が実施される本年初年度の本年度の予算として、私は、これは不十分ではないか、こういうことを考えますので、これも、もちろん、私たちは、予算折衝にあたりましては、農林大臣が大いに閣内の実力者ぶりを発揮されて、大いにこれだけ獲得されたということは巷間漏れ聞いておるのでございますけれども、私たちはこれに対しては実に期待はずれの感がいたすのでございます。大臣はこれに対してどういう考えを持っておられるか、この際承りたいと思います。
  62. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、農業基本法が施行せられましてまだ一年にならぬのであります。従いまして、施行されたとはいいながら、この方向、講ずべき施策等については、御承知通りに、今後に待つべきものがあると私は思うのであります。従って、基本法の内容とするところをごらんになりましても、基本法を実施したらばこれをやって幾ら金がかかる、これをやって幾ら金がかかるということは、すぐに宙に出るようなものではございません。まず、私は、初年度におきましては、金の点よりも計画準備ということに重点を置いて、そこに万遺憾なきを期しまして、第二年度もしくは二年度においてこれが裏づけをしていくという段階になるべきものではなかろうかと思うのでございます。そういう意味において、たとえば、構造改善をやるにいたしましても、農業基本法に基づいて構造改善をやるというならば、すぐに二、三年でやったらいいだろうという議論も議論として成り立たぬことはないと私は思いますけれども、しかし、こういうものをやりますには、従来の例から申しましても、何らか農村の諸君の御協力を得て実行するといいましても、なかなか実行はむずかしい。いや、わきでやったところを見なければそう簡単には食いつけない、そう簡単にはやれるものではないというようなことで、スタートがなかなかそう早く参りません。これが実情ではないかと私は思うのであります。たとえば、牧野の改良にいたしましても、新しくこういうふうな方向でいこうと思うと予算が少ないではないかとおっしゃいますけれども、私は、どうやったって十億、十五億の予算を消化するのにもなかなか骨が折れるのではなかろうかと思うくらいでありまして、新しい農業として畜産を大いに取り入れる、それならば基盤となるべき牧野の造成がまず第一であります。それについてはもっと大規模に金をかけていくべきだ、それはその通りの議論であります。その通り私も思います。しかし、やるには、やはり、できたそばからこれを利用する人がちゃんとあとから待っておって、そして利用されるのでなければ、せっかく一ぺんひっくり返したものでも、またあとからシノダケが出てくる、雑草が出てくる、実際使うときにはもう一ぺんやらなければならぬということになるのが従来の例ではなかろうかと私は思うのでございまして、政府、また政治の建前としては、農業基本法を基盤としてこれに肉づけをする各種の施策をそれぞれ勘案いたしまして、十分青写真を作って、この青写真について大方の農民諸君の御理解と御協力を得て実施するということになりますから、そう初年度から、二年度からと、気は私は稻富さんと同様せきます。せきますけれども、実際と思うこととはそううまくいかないのではないかというような気がするので、まあまあこの辺のところで一つ大いに農民諸君の御理解、御協力を得ることに専念しなければいかぬのじゃなかろうか。行政機構についても考えなければならぬ点がありますし、準備万端整える準備期間がどうしても一年か二年かかるのではなかろうか、こう思うのでありまして、一応のなわ張りさえできれば、あとは、金をつければいい段階になりますれば、これはやることは割合やりやすいのではないか、こう思うのであります。
  63. 赤澤正道

    赤澤主査 ちょっと稻常君、大臣は重要公務のため正十二時に退席したいと御要求がありましたので、一つ御了承願います。
  64. 稲富稜人

    稲富分科員 農業基本法に対して農民の期待が非常に大きいことは、大臣承知通りであります。少なくとも、農業基本法を実施するにあたりまして、大臣の言われるように、慎重にやらなければいけない、こういうことも一面大臣としてはそういうことをお考えになっておるかわからぬと思いますけれども、少なくとも、私たちは、農業基本法の実施に対してもっと予算のこなし得るような計画というものは当然立てるべきものだと思う。  ことに、私は何も外国のまねをしろというわけではございませんが、日本の農業基本法を実施するにあたりまして最もその参考といたしました西ドイツの農業基本法の実施のごときは、一九五六年の予算額で前年度の一九五五年に対比しますと、初年度において二倍の増加を見ているというような状態であるのであります。  私は、西ドイツが初年度において二倍の農林予算額を見たから日本もこれに右へならえ、こういうことをあえて言うのではございませんけれども、要は、これが実施に当たる政府の熱いかんだと思うのであります。おざなりに農業基本法を片づけようとするのであるか、ほんとうに農民の期待に沿い、農民に次の日本の新しい農業を建設するための意欲を燃やさすかということは、やはり、こういうような予算面その他において大いに裏づけをするということが、農民の気魄を買う上において非常に必要ではないか、こういう点を私は考えるので、その点から、新しい農村作りに非常に熱意を持たれる農林大臣としては、どうもほかのことには強がりであるけれども、予算の面に対して、これでやむを得ないのだというような考え方というものは、非常に弱過ぎるのではないか。予算折衝の状態等もわれわれ承っておるのでございまするが、このくらいの予算でがまんしなければいけないような党内事情と申し上げまするか、あるいは政府自体の状態があったのではないかということをわれわれは非常に憂慮するわけであります。もちろん、本年度の予算を見ますると、あるいは果樹農業の生産の振興であるとか、てん菜の生産の振興とか、こういうものにいささか増加を見ている点はわれわれも見るのでありますが、ただ、そういう点から申し上げますと、政府が一番重点を置いておられるあるいは農業近代化資金の問題につきましても、これは大臣も御承知通りに、農林水産委員会等で、本年度金利を五分以下にしなければいけないのではないか、こういうような決議がなされている。しかるに、それが十分本年度の予算に実施されていない。こういうような点を見まするときに、はたして今年初年度の予算が十分であるかということに対しましても、私は非常に疑わざるを得ないわけでありまして、こういう点に対し、将来はそれはもっと大幅に増加する必要があるということを農相は考えられておるようでございますが、われわれは、率直に、本年度は足らなかったのではないか、足らなかったのはどこにその欠陥があったか、こういうことを検討してさらに来年度に当たらなくてはならないと思いますので、この点一つ、不十分であるということに対する考えを承りたい。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、先ほども申し上げました通りに、客観性が伴わなければ、政府だけが予算を取って進むということは効果をあげない。今近代化資金の金利の話が出ましたが、私は、金利は五分がいいとは決して思いません。もっと安くしなければいかぬだろうと思います。しかし、客観性がこれを許すか。今の農村金融をつかさどっておりますところの単協から信連、中金、行きと帰りの金利を考えてみますれば、どうあってもこの客観性が六分五厘以下の金利で農村に融資をするということを許さぬだろうと私は思います。もし五分で融資をするとする。これを単協の信用組合へ持って参りますれば六分で預かる。五分で借りたものをそのまま六分で預かるような機関が農村の中にあるというような、から回り、悪循環というようなことがあり得るような、——現にまさかないでありましょうけれども、そういう機関になっておる。そういう客観性があるということである以上は、私は、これの改善がまず第一の先決問題じゃないかと考えます。それが改善せられて、しかる後に農村金融についてもほんとうに正しい姿が生まれてくるべきものである。数十年前からあるところの今の産業組合、協同組合、その組織がそのまま今日ある。そこに新しい農村というような考え方一体成り立つだろうかというふうに考えますと、客観性の整備というものがまず先立つものだ、農民諸君も私はそう思うと思います。今のように、そこまで言うとまたお小言を受けるかもしれませんが、協同組合によって指導されておる農民、そうじゃない、農民によって指導される協同組合ということに変わっていかなければ、ほんとうのものにならぬだろう。さらに申し上げますならば、米麦を主体にした阪連、購連、資材その他利用するものにいたしましても、そういう面に重点が置かれております農業組織、団体組織というものは、はたして成長農産物のどんどん行こうとしておるときに、この農業団体の組織でいいか悪いか。たとえば、豚の問題が起こってきた、豚肉が暴落した。これに対して、一体、あれほどの豚肉を扱っておられる全敗連が、——先日芝浦に行って驚いた。全販連ともあろうものが何だこのざまはという気持がした。ここらにも私は農業団体自身の反省がなければいかぬと思います。私は、そういう客観性が伴いまして、そうして政府団体、個々の農民諸君というものが一体になって、ここに新しい農村というものを作り上げられるべきものである。それを、いたずらに古い型の中に入って、そしてそこには少しの前進もなければ改革のきざしも見えない。ただその間に立って政府並びに予算というものだけが前進をしようといっても、せっかく稻富さんから大いに激励されましたけれども、私だけやったところで、はしご段を上がってみたら、はしごがなくなって、二階で一人裸踊りをしておるような格好じゃなかろうかと私は思うのであります。どうか一つ、その点につきましては、客観性を整備するということについても、私を督励されると同時に、各方面に向かって今のように督励をしていただきたい、そして、全体のそういうムードの中に、私はりっぱなものが出てくると思うのでございます。  言葉が過ぎるかもしれませんが、一応、私は、今年の予算の編成にあたりましても、農林大臣として省内の予算は目を通しまして、これだけのものは来年度の予算としてどうしても要るもの、だといって大蔵省に書いて出しましたものは、大体十何項目が全部その通り大蔵省が認めているわけであります。私としては、一応まあこの予算でことしはある程度やっていけるのではない、だろうか。むろん金額の点については遺憾のない点はございません。ございませんが、まあいけるのではないかという気持で実は御審議を願っておるわけでございます。
  66. 稲富稜人

    稲富分科員 大臣が客観的情勢というものをいろいろ考えなければいけないというようなことをおっしゃっている。もちろん、あなたが予算編成にあたって非常に努力されたことはわれわれも承知しております。農林省の要求予算が大蔵省において非常に歩どまりが多かったということも、これは大臣の実力を示したものであろうということはわれわれも十分承知いたしておるのでございますが、私たちは、その客観的情勢というものを一つ踏み出して新しい農村作りをすることに今日の農業基本法に対する期待があるし、大臣に対する期待もあるわけなんです。近代化資金に対しましても、金利の問題については、もちろんわれわれと同じに、大臣は、三分内外の金利にしなければならぬのだ、こういうことを言われておることも承知しております。われわれは、やはり、客観的情勢の中に考えてこれだからやむを得ないのだといったら前進はないので、それはわれわれも努力しますが、客観的情勢をどういうふうにこれを直していくかということに対する施策というものが十分必要ではないかと思う。それほど客観的情勢を直さなければならぬということに対して大臣が考えておるならば、予算面に対してどういう問題が出てきておるかというと、その点はあまり出てきてないと思う。こういうところから、私たちは、今後もっと積極的な予算の裏づけによったそういう客観的情勢を次々に直すような政策をやることが必要であるということを特に申し上げたいと思うのであります。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 お話通りですが、私といたしましては、ただ一つお願いを申し上げたいことは、民間の団体もしくは客観性というものは、政府が作った客観性でなしに、たとえば、農民諸君の団結によって、協同化によってほんとうの協同運動が行なわれ、そうしてそれが盛り上がって中央に来る、そうしてそれを稻富さん初め皆さんで大いに御指導いただくということで、政府はむしろ受けて立つ格好のものであるべきではございませんでしょうか、これまでの農民団体もしくは農業団体の組織は、むしろ政府が上から作ったものでございますから、従って、いつまでたっても法律の裏づけがなければ満足な活動ができない。ここに現在の農業団体の弱みがあると思う。それを、これからの農業団体は、下から盛り上がってくる農業団体で、法律の裏づけなしに自主的にできるものになってほしいということを強く期待いたすのでございます。どうか一つ、ただいまの御発言、私は全く同感でございますから、そういう意味で、一つうしろ向きに大いに御督励をいただきたいということをお願いしたいと思います。
  68. 稲富稜人

    稲富分科員 この問題は後ほど質問しようと思っておったんですが、今大臣の方からお話がありましたので、この点一点触れておきたいと思う。大臣は、この前の新農村建設計画のときでもそうなんで、まず下の方から盛り上がってくるのに政府は受けて立つのだというような立場をとられておる。今度もそういう考えのように今もお話があったのでありますが、もちろん、盛り上がった農民の意欲というものを政府が受けて立つという態度をとるのは悪いことではございません。しかしながら、政府が強力なる自信のある方針を示して、この方針によってまた指導するということも忘れていけないことだと私は思うのであります。ただ盛り上がった力だけによって、こちらに受けて立つのだという、こういう自信のないことではほんとうの今日の日本の農業改革はできないと思う。農民がそういう意欲を燃やすための十分なる自信と十分なる指導というものを政府が持って、その上に盛り上がってきて、それが合致したときに初めて新しい農村の建設ができると思う。そういうような考えでおったならば、いつまでも農村の改革はできないと思う。この点、受けて立つのだといういかにもあなたらしくない弱そうなことを言われるが、受けて立つと同時に、おれもみずから陣頭に立ってこれを指導し、自信をもってやるのだという、これほどの気魄を政府みずからが持つということを忘れてはいけないと思う。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見のことは十分了承いたしました。つい、勇み足が多いものですから、あまり自信のほどを示し過ぎましてもまたお小言をちょうだいしますから、極力低姿勢でおりますけれども、よろしく今後御鞭撻のほどをお願いいたします。
  70. 赤澤正道

    赤澤主査 大臣、御退席になってけっこうです。
  71. 稲富稜人

    稲富分科員 それでは、農業構造改善事業につきまして承りたいと思うのであります。  三十七年度の予算編成にあたりましては、政府も農業構造改善事業についても相当に重点を置かれておるようにわれわれも見受けるのでありますが、やはり、将来の日本の農業をどうするかということの大きな問題の一つは、日本農業の特性であるところの零細経営、あるいは零細土地使用をいかにするか、そうして経営規模の拡大と経営の近代化をはかる、農業構造の改善をするのだということが大きな柱として計画されることはやむを得ないことであるし、当然だと思うのであります。そういう意味で、三十七年度予算においても、政府は、構造改善対策事業を大きく取り上げて、四十二億九千余万円を計上して、今後十ヵ年にわたり、三千百町村を対象に、農業基盤の整備改革、農業経営近代化施設の導入等、経営の近代化と立地条件に即応した主産地の形成を目的とする事業を実施していこうとしておられるように、で承っております。三千百市町村を対象とする十カ年計画については、具体的な事業別の実施計画があるかどうか、この点承っておきたいと思います。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕
  72. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいま、三千百町村につきまする全体の事業計画についての御質問でございます。  事業の対象といたしましては、御指摘のありましたように、おおむね全町村ということで考えておりまして、そのうち、工業化予定地であるとか、あるいは村の財政負担能力等から辞退したいとか、そういうふうな町村をおおむね一割と見まして、三千百ということを対象に考えておるわけでございます。事業の計画といたしましては、本年度の予算に計上いたしましたように、一町村平均、補助事業が九千万円、融資事業が二千万円ということで平均的な事業費を考えておるわけでございます。従って、今後十カ年にわたりまして、おおむね次々に助成すべき町村を選定いたしまして、そして事業の遂行をはかって参りたい。  計画の期間といたしましては、指定された町村は、一カ年間で計画を樹立する、それから、次の三カ年で事業を実施するということで、計画期間を含めておおむね四カ年で事業を実施するという考え方でございます。  それから、事業の内容いかんにつきましては、今先生が御指摘になりましたような、基本法にありますような構造改善事業を中心といたしまして、これの具体的な事業実施をはかる場合におきましては、どういう地域においては何を作り、またそれを作るためにはどういう技術を取り入れていくかということが当然今後の近代化の重要な要件でございます。  そこで、今後の行き方といたしましては、計画自身はあくまでも市町村長が立てるという計画にいたしておりますけれども、どういう地帯においてはどういう計画を立てるべきかというようなことにつきましては、農産物についての長期の生産及び需給の見通しが基本法でも立てられることになっておりますので、これをさらに地域におろし、各府県におろしまして、そして県別に一つの農業地帯というものができますならば、そういう地帯に包含された町村は、果樹地帯に包含された町村では果樹を中心とした主産地の形成をはかっていくように指導して参る。それを実現するための事業内容としては、お話しになりましたような経営規模の拡大であるとか、あるいは機械の導入であるとか、その他の施設を高度化する、あるいはそれを通じて土地基盤の整備をはかっていくとか、多種多様な事業をその町村の実態に合わせて計画をしてもらう、こういう考え方でおるわけでございます。
  73. 稲富稜人

    稲富分科員 ただ、この点について特に私注意を促したいと思いますことは、これは、御承知通り、すでにこの前河野さんが農林大臣をしておられる時分に新農山漁村建設の七年間の総合計画が立てられた。そのとき適地適産と言い、各町村からの意見政府は受けて立つのだというような計画だったと思う。ところが、その適地適産が、いつ方針が変更になったか知らぬけれども、有線放送に変わっていき、あるいは農村の公民館建設に変わってきた。最初はおそらく公民館を作るための適地適産でなかった、有線放送のための適地適産ではなかったと思うけれども、あまりの政府計算のずさんがそういう結果になったという感じがする。前の轍を踏まないということも大いに考えなければいけないと思います。そういう点から、この計画についてのもっとしっかりした方針というものがなければいけないのではないか、こういう点からお尋ねするわけでございますが、今のお話を承っておりますと、もちろん経営規模等に対します問題は前と非常に変わっておるようでありますが、適地適産、主産地の形成だということになると、やはり七カ年前の新農村建設計画と似たり寄ったりの計画のように思われるのでありますが、その点いかがですか。
  74. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 新農村建設事業を進めて参ります場合におきましても、その当時適地適産ということを一つの目的として掲げたわけでございます。これを振り返って実績を見ますに、御指摘のような点が多々あったと思います。しかし、その原因といたしましては、一つには、特別助成事業として町村にわずか一千万円の事業費、それに対して国が四割の四百万円を助成するというふうな計画でいったわけでございます。従って、これらの対象といたします事業につきましては関係のいろいろの農林省の予算がありますが、その対象とならないようなものだけを実は拾い上げまして、そして一千万円の対象事業ということで助成いたしたわけでございます。もちろん、新農村の全体の計画としては、もっと広範なものも包含して適地適産の計画を立てることになっておったわけでございますが、直接の助成の対象としてはわずか一千万円、しかも、いわば落ち穂拾いといいますか、関係局の予算に計上されていないものだけを拾い上げて事業の対象にいたした。こういうことが、今御指摘になりましたような公民館あるいは有線放送、——これ自身も、その村から見て必要な施設だとは思いますけれども、そういうものに多く行ったというのが見られるわけでございます。  そこで、今回の予算措置につきましては、少なくとも構造改善事業につきまして関係する事業予算は、全部それで包含してできるような仕組みにいたしたわけでございまして、最も大きなウエートを占めます土地基盤整備専業についてもこの予算の対象にする。それから、それ以外の農業関係の共同施設なりあるいは機械の導入なり、つまり、従来ありましたいろいろの施設につきましてもこの中に統合いたしまして、いわばこの事業として一応関係した事業をやろうとするならば、それに必要な事業対象はその中に含めて助成することができる、こういうことにいたしておるわけでございます。平均九千万円の補助事業、それに融資を加えて一億一千万円という事業でありますと、従来の新農村の実績から見ますと、その町村については相当思い切った事業ができるのではないだろうかというようにわれわれは考えておるわけでございます。従って、今後といたしましては、この事業の進め方、あるいは事業内容についての指導の体制、これらについては、今御指摘になりましたように、十分効果をあげるような方法をとって参りたいと考えております。
  75. 稲富稜人

    稲富分科員 そうすると、初年度の計画といたしましては、構造改善事業というものは、主産地形成といいますか、主産地対策というものをまず主体としてやっていこう、こういうように、今の御説明等で見ましても、予算面から見ましてもうかがえるのでありますが、大体そういうように解釈していいのでございますか。
  76. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 私どもは、その点について実はそうは考えていないわけでございまして、基本法の第何条でございますか、農地保有の合理化と農業経営の近代化を構造改善と総称いたしておりまして、それを実現するような諸条件を整えて地域的に総合計画を立てて実施する、そのために国が助成するというのが実は基本法の第二十一条にあるわけであります。この二十一条を受けまして、特定の地域についての総合計画を立てまして、そして事業を実施したいというのがこの構造改善事業の考え方でございます。従って、これらの事業をやって参りますためには、当然に、——従来の新農村の経緯から言いますと、各部落に平均的な事業をやらせる、結果においては何をやったのかはっきりしないというような事例がよく見られたわけでございます。構造改善事業を進めます場合におきましては、そういう経営の近代化ということを中心に置きますけれども、その近代化を進めていくためには、結局その地域において実践的な事業計画を立てて参らざるを得ないわけです。その場合は何を考えるかということになりますれば、具体的には、どういう作物をその地域においては適地適産として取り上げていくかを検討する、そうして、ある程度最近における市場の条件に最も有利な販売体制を整えるためには、大量販売、大量生産というふうな合理的な形態をとらざるを得ないであろう、そこに主産地というふうな考え方を入れて一体的に計画を進めていく必要があろう、こういう考え方でございます。先般農政審議会にかけましたこれに対するわれわれの考え方といたしましても、構造改善を通じて技術の革新、主産地の形成をはかるということをこの仕事の目的とする、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  77. 稲富稜人

    稲富分科員 非常に局長苦しい御答弁をなさっているのだが、私たち、予算面を見まして、来年度の計画を見ますときに、非常にふに落ちない点は、今も局長が言われましたように、この農業基本法に言う農業改善というのは、やはり、経営規模を拡大し、農業経営を近代化して自立農家を育成するのだ、ここに非常に主眼があったと私たちは思う。現に、農業基本法を作る場合には、池田総理大臣みずから、そういうような経営規模を拡大するんだというようなことを言っておられたのです。その結果は、自民党の政府は何か農民の首切りをやるのかというような非難があったものだから、そういう問題は姿をひそめたような形になって、今も一説明のありましたように、これに関連したとはいいながらも、主体が、こういうような適地適産、主産地形成に非常に移行しているような感じをわれわれは受けるわけです。この点どうなんですか。やはり、この経営規模を拡大するとか、こういうような問題によって農業基本法が示すような農業構造の改善をやるのだということをあまりうたってないようでございますが、こういうようなことに対しては、ほうっておかれるのでございますか、やはりおやりになるという意思があるのでございますか。その点承りたいと思うのです。
  78. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 先ほど構造改善事業というものについての基本法との関係にちょっと触れたわけでございますが、構造改善ということについての一つの目標としましては、 お話通り、自立経営を育成するというのが一つの目標であり、それを通じて農業の近代化をはかっていこうということであろうと思うのでございます。しかし、構造改善のそういうふうな目標を実現するためには、各般のいろいろの施策があるわけでございまして、基本法におきましても、それに関連して農地法の改正であるとか、あるいは農協法の改正であるとか、あるいは相続制度であるとか、いろいろの関連した施策は必要であろうと述べておるわけでございます。ここにあります構造改善事業というものは、それのいわば一環といたしまして、特定の地域につきまして、そのような農業経営の近代化をはかっていく諸条件を事業的に整備して参りたいということにねらいがあるわけでございます。従って、今お話しになりました自立経営というものについての育成、これを作り上げていくということが事業の目標でありますけれども、事業の内容といたしましては、今申し上げましたように、いきなり、その村における農家に色分けをして、自立農家にするもの、あるいはしないものといったようなことは、事業の実施においてはなかなかできないものであろうと思うのでございます。そこで、たとえば多頭羽飼育をするというようなことによって規模の拡大をはかっていく、そのために必要な家畜の導入なり畜舎の整備をはかっていくなり、あるいは草地の造成を考えていくなりという事業を通じまして自立経営農家ができてくるようにいたしていきたい。抽象的に経営規模の拡大あるいは資本の高度化と言いましても、具体的には、土地をどうやって利用していくか、あるいはどういう作物を作っていくか、それを実現するための労働手段はどうでなければならないのかというようなことができませんと、現実には経営規模の拡大も自立農家というものも具体化しないわけでございます。それらを作り上げていく諸条件をこの事業を通じて作って参りたい、こういう考え方でございます。従って、何らその目標を失っているというわけではございません。これが最終の目標でございます。
  79. 稲富稜人

    稲富分科員 それでは、くどいようでありますけれども、経営規模の拡大とか自立ということはあと回しにするということでございますか。お伺いしたいと思います。
  80. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 すぐにも経営規模の拡大をするというようなところもございましょうし、あるいは、経営規模という場合は、われわれはこれを耕地、資本、両方合わせて経営規模と申しておりますが、耕地面積を拡張できるような形態で事業が進められるところは、そういう方向もとり得ると思います。あるいはまた、かりに草地の造成を共同でやって利用するというようなことができますならば、それも一つの耕地の拡大ということにも相なるかと思うわけでございます。しかし、また、資本的に考えてみまするならば、従来の一頭か二頭かの飼育の形態が五頭なり十頭なりという形で拡大されるのも、これまた経営規模の拡大であると考えているわけでございます。いずれにしても、そういうこともこの事業を通じて実施して参りたいというふうに考えておるわけであります。
  81. 稲富稜人

    稲富分科員 経営規模の拡大、もちろん事業面においていろいろ違うと思いますが、耕地に対する経営規模の拡大はどう考えておられますか。
  82. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 耕地につきまして、直ちに、たとえば三町の農家を作るとか、二町五反の農家を作るといったことは、地域々々の実情によって必ずしも一律にいき得ないし、また、そういう計画を立てましても、実践的に実行はむずかしいと思われるわけでございます。従って、われわれといたしましては、村の実際にあわせまして、あるところでは、そういう土地の流動化に伴って経営規模の拡大ができるところであれば、耕地面積の拡大をするというような方法もあろうと思います。また、耕地はそのままの中におきましても、たとえば私どもの方で機械化実験集落、あるいは果樹園実験集落というようなものを行なっておりますが、果樹の例をとってみますと、大体十町歩くらいの集団を単位といたしまして、そして防除機具を中心とした協業化を行なっておるわけでございます。その中に包含される農家は、今までの調査によりますと、二十戸から八十戸くらいが参加をしておるという形態をとっておるのもございます。こういう形によりまして、今まで散在する形の農家、あるいは二反、三反作っておったというのが、十町歩単位に集団化されて、そして能率的な果樹園経営というものができてくるということになれば、それも一つの経営拡大の事業として考えているわけであります。
  83. 稲富稜人

    稲富分科員 経営規模の拡大ということは、将来そういうことでいろいろ具体化していこうというのでありますが、今日農村に非常に不安がありますのは、一面には経営規模の拡大をはかると覆いながら、一面には分散相続によって経営規模が縮小されるという問題があります。ところが、農業基本法には、御承知のように、第十六条に、「国は、自立経営たる又はこれになろうとする家族農業経営等が細分化することを防止するため、遺産の相続にあたって従前の農業経営をなるべく共同相続人の一人が引き継いで担当することができるように必要な施策を講ずるものとする。」というようにはっきりうたっております。これに対しては、もうすでにこの問題はひしひしと迫っておる問題でありますが、来年度においてはどういうような方針をとられる考えであるか。予算を見ましてもあまりないようでありますが、承りたい。
  84. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 基本法には、御指摘の通り、そういうことが書いてあるわけでございます。これは、一つには制度上の問題と、それから、一つは運用の問題とあろうと思うのでございます。遺産相続についての特例的な措置を今後とっていったらどうかという点については、法律制度の問題でございますので、農林省としても引き続き検討しておるわけでございます。他面、運用の面におきまして、たとえば、相続に伴いまして、土地は分割しないで資金の形において何らかの措置をとるというような場合に、自作農創設維持資金の活用で、そういうような方向で考えて参るというようなことも考えられるわけでございまして、制度の問題については引き続き検討する、運用の面については、事実も大体そういうことになっておるわけでありますが、そういうようなことが考えられるわけであります。
  85. 川俣清音

    ○川俣分科員 関連して……。  先ほどの答弁中に、土地の流動化をはかる、こういう御説明でした。そこで、土地の流動化をはかるとすれば、価格形成をどうするかという問題が起きてくると思うのです。このことを考えに入れないで、ただ土地の流動化をはかると言いましても、土地の流動化をはかれば必ず価格形成の問題が出てくるのですが、この点についての検討があっての答弁ですかどうですか。
  86. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 私の私見は別にいたしまして、所管の農地局長がおられますから、農地局長から……。
  87. 川俣清音

    ○川俣分科員 あなたの答弁に対する質問なんですよ。——それではいいです。
  88. 稲富稜人

    稲富分科員 今の相続の問題につきましては、ただ従来の自作農創設維持資金その他を運用することによって政府としては何とかやっていきたい、こういう考えですか。
  89. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 相続制度の問題については、基本法でもそういうふうに書いてありますが、制度的な問題については引き続き検討をしていきたい、こうお答えいたしたわけです。
  90. 稲富稜人

    稲富分科員 将来検討するといっても、実際上起こっている問題です。ことに、この農業基本法は実施されている。しかも、法文にも十六条にはっきりうたってある。すでに実施される年に、しかも条文の中にはっきりこれに対してうたってあるものを、今後考えなくちゃいけないということになりますと、だんだんそこにも農民の不安が出てくると私は思う。われわれが農業基本法に非常に期待するものは、農業基本法が実施されますると従来の農村の状態が変わるだろうという期待をしているのです。実施して今から考えるのだということでは、そこに、私たちは、農業基本法実施にあたって、はたして政府はどのくらいの熱意があるかということを疑わざるを得ないわけです。そこで、私たちは、この問題に対しましても、ただ従来ある法律、自作農創設維持資金によってこれを運営しようという考えではなくて、特にそれがための低利、長期資金供給の道を講ずるとか、そういうような具体的な方法を考えてこれに処するということをやらなければ、その点、この基本法を実施する上におきましては非常に政府は怠慢だと思うのですが、直ちにそういうような方法でもやって、相続対策の問題はもう起こっておる問題でございますから、来年度から実施するという熱意がないかどうか、その点承っておきたい。
  91. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 相続の問題につきましては、おっしゃる通り、現実に今非常に問題が起こっておるわけでございます。一、二年以来この問題の関連で十分検討して参りましたが、制度といたしましては、御承知のように、民法の均分相続の問題まで触れるかどうか、あるいは実際問題として、これをそういうところまで触れないで片づける方法があるかどうか、こういうような問題が根本問題になるわけでございまして、実際の農家の実態から言いますと、現在相続放棄だのいろいろな方法で一応はやって参っておるので、ございますが、そういう点を農林省で実態をもう少し把握いたしまして、根本になる制度の問題でございますから、慎重に制度としては考えたい、こういうようなことで、三十七年度におきましては、調査費を特にとりまして、実態の把握をしたい、こういうように考えておるわけでございます。さしあたりの問題として、現にいろいろの問題が起こっておりますが、これらについては、農業委員会等で就業構造の対策事業というようなことでいろいろ協議会を持ちまして、これについては予算措置を講じておりますけれども、できるだけあっせんとか、そういうようなことをめんどうを見ていきたい、とりあえずの問題といたしましてはそういうようなつもりで考えておるわけでございます。
  92. 稲富稜人

    稲富分科員 これは深く突っ込まなければなりませんけれども、民法との関係がどうであるとか、憲法との関係がどうであるとかいうようなことは、すでにこの農業基本法が通るときにそういう問題を検討して条文の中に入れておかなければいけない問題なんです。その法律が通ったあとに派生的に出てきた問題じゃないのです。少なくとも法律の条項の中に示している以上は、この条項をどう処理するかという民法の関係あるいは憲法の関係というのはすでに十分検討されてできたものだと私は思う。ところが、実施するときにあたって、その問題を検討しなければいけないということは、私は、政府としては非常に怠慢じゃないかと思うわけです。しかし、これは今責めましたところで時間がありませんので、十分一つ年度から対処するように考えていただきたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいと思いますことは、農業構造の問題でございますが、今日、私たちは、農業基本法を実施するにあたりまして、農業所得と他の産業所得との均衡がだんだんとれていくのだ、ここに農業基本法の実施の非常に重大な意味があるということを考えております。ところが、他の産業と農業所得者の所得というのはだんだんまた格差が大きくなっていくのでございますが、さらに、私たちがここに考えなければいけないことは、同じ農業部門におきましても、地理的、地域的な差によってやはり格差が増大してくる。特に、僻地農業等は、その所得、あらゆる条件において非常に区別されるわけなんです。ところが、この問題をどうするかということでございますが、これに対しましては農業基本法にもうたってありません。来年度の予算等におきましては、あるいはいささか厚生施設とかそういうことに対しては考えてあるようでございますが、農業を根本的にどうするかということに対しては、何ら来年度の計画がないようでございます。この僻地農業に対する対策をどうしてやっていくか、そして僻地農業の経営をどういうように上昇せしめるか、こういうことに対しての考えは持たれていないのであるか、この点承りたいと思います。
  93. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 農林省として、一般的な農業政策を進めていきます場合に、やはり僻地なりあるいは特別におくれた地域についてのきめのこまかい対策をやっていくということが必要であることは、御指摘の通りでございます。従来といえども、特殊立法がございまして、それぞれの地帯に応ずる振興対策を進めて参っておったわけでございます。具体的な予算といたしましては、従来、北海道につきましては、寒冷地という特殊な不利な条件のための対策として、寒冷地農業の振興対策ということを講じて参りました。また、昨年度からは、九州の特に災害常襲地帯についてのいろいろな不利な条件を克服するための農業振興対策として、防災営農振興対策というものを講じてきたわけでございます。今後におきましては、これらの事業も構造改善事業でいずれ全町村をおおうことになるわけでございますので、この構造改善事業を通じて実施して参りたい。僻地につきましては、農業以外に、たとえば社会施設自身も非常におくれておるというような面もございますので、これらの面につきましては、僻地の電気導入対策も講じておりますけれども、山村については、山村振興の林道綱を拡充するとか、いろいろな関連した施策と相待って実施して参る必要があろう、かように考えておるわけでございます。
  94. 稲富稜人

    稲富分科員 僻地農業対策とともに考えなければいけないことは、御承知通り、日本の農業が、農外所得のある兼業農家と専業農家とは、農外所得の農家の方が経営がいい。ここに日本農業の大きな矛盾があると私は思うのです。それで、私たちは、やはり専業農家を育成するという建前をとっていくことが農業基本法の重点であらねばならないと思うのでございますが、先刻来いろいろ話し合っておりますけれども、特に専業農家をどうして育成するかという点について予算面等にもうたってないようですが、専業農家に対してはどういう育成策を政府は考えておるのであるか、この点を簡単に質問申し上げておきたいと思います。
  95. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 専業農家対策とか、兼業農家対策とか、人を対象とした直接的な施策がなかなか計画ではむずかしいわけでございますが、まさに、先生のお話になりましたように、今後の自立農家というものは、やはり一つの専業農家としての形が育成さるべきものであろうと考えておるわけでございまして、構造改善事業についても、特にそういう点が目標として事業を進めて参りたいという考え方でございます。しかし、これに関連いたしましては、やはり、いろいろ普及の面あるいは農業教育の面におきましても考えていかなければならない面があるわけでございまして、農林省におきましても、こういう専業農家の後継者教育というような点については特に意を用いまして、経営伝習農場の拡充であるとか、あるいは各種の技術研修、これらも後継者の養成ということを兼ねまして、専業農家の育成に資して参りたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  96. 稲富稜人

    稲富分科員 次にお尋ねしたいことは、農業の生産性向上を促進するということも、農業基本法では重要な目的の一つでございます。この生産性を向上促進する方法としては、当然やはり起こってきますのは、土地改良であるとか交換分合というものが起こってくると思うのです。こういうような農業基盤の整備というものが生産向上の上に大きな必要条件になってくるのは当然であります。それは、これに対する補助率を今度はいささか上げておられるようでございますが、こういうものを促進するための土地改良、交換分合等を促進するための補助率を大幅に値上げをして、そして投融資の確保をして強力にこれに資する、これには長期整備計画を立てる、こういうようなことをする必要があるのではないかと思うのですが、これに対してはいかがでございますか。
  97. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 一般的な交換分合あるいは集団化に対する補助率の問題につきましては、所管の農地局長から御答弁を願うことにいたしまして、この構造改善事業で指定された地域につきましては、今御指摘になりましたような事業も当然対象にして考えておるわけでございます。従って、これら事業を含めまして、全体の補助事業九千万円の二分の一を助成しよう、こういうことで考えておるわけでございます。
  98. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 土地改良事業の補助率でございますが、この補助率の引き上げということにつきましては、農民負担とのかね合いでございまして、年々われわれ努力いたして今日参っております。特に、来年度におきましては、構造改善に資するということと、今後の農業の方向として、農業生産の選択的拡大として果樹その他の農産物に対して基盤を整備しなくてはならぬ、あるいは高度の農業技術として機械化の導入が容易になるように、そういうような観点から、耕地整備におきまする圃場整備として、大きい三反歩区画以上といったようなものにつきましての圃場整備につきましては、それに伴う暗渠排水あるいは農道といったものにつきまして、三十六年に比べまして一割の上乗せをするということにいたしておりますし、また、構造改善事業として取り入れられますものにつきましても、特に構造改善事業として十年間にやるということについての土地改良については、今振興局長からお答えになったように、やはり総合助成として二分の一補助になるように、そういうような措置を講じて対処していきたいと考えております。
  99. 稲富稜人

    稲富分科員 いま一点聞きたいのですが、生産性を向上するための農業機械化促進のためにいろいろ計画されているのは予算で拝見することができるのでございますが、この農業生産資本の効率化をはかるために、さらに、今計画されているほかに、農業集団化を促進して、現在の農業機械等に対する過剰投資を是正する必要があるのではないか。それがためには機械利用の共同化というものを進展する必要があるのではないかと考えられる。それがためには、農業機械の共同化を促進するために、農業従事者が共同して農業機械を購入したい、あるいは農業協同組合が農業機械の共同利用を行なう、こういうような場合には、その購入資金を確保するとか、あるいは利子補給等を行なうというようなことによってこれが促進をする必要があるのではないか。しかも、償還は長期であって低利の融資をする必要が非常にあるのではないかと思いますが、予算面にはこういう点が現われていない。これに対して政府はいかにお考えになっているか、承っておきたいと思います。
  100. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今後の農業の労働生産性を上げるというようなことにおきまして、また、当面は直接的な労力不足というような面におきまして、農業の機械化を進めていくということは特に必要であろうと考えておるわけでございます。この面におきましては、今回今国会にも法案の提出をいたしておりまして、機械化につきましては今後積極的な施策を講じて参りたいという意味でこの法案を提案いたしたわけでございます。御質問になったのは大型機械であろうと思うのでございますが、これの導入の方法についての助成措置を講じているかどうかという御質問でございます。今、国がこれに対します助成の方法は、大きく分けますと三通りあるわけでございまして、いわゆる深耕用であるとか、あるいは土層改良用であるとか、三十馬力以上の大型のトラクターにつきましては、これは県に所有させまして、その県が保有するものに対しまして国が助成するという方法をとっているわけでございます。それから、だんだんに、深耕トラクターであるとか、あるいは土層改良用のトラクターだとか、管理作業と結びつけて、営農用にも結びつけて使われていくということが今後の方向として望ましいわけでございます。そういたしますと、勢い町村なりあるいは農協で持っておるということが必要であろうと思うのでありますが、一つには、今回、近代化資金によりまして、これらの農業機械についての購入資金は近代化資金の融資の対象として考えておるわけでございますし、特に共同利用の形のものについては近代化資金の活用が望まれておるわけでございます。一般的にはそういう方法もあるのでございますが、先ほどから御質問のありました、構造改善事業におきまして、その地域において大型トラクターを購入したいというようなことが事業の一環として取り上げられますならば、それに対しては、当然構造改善の事業の中の助成の対象にしていきたい。その所有の主体は、あるいは協同組合が持つ場合もありましょうし、あるいは部落の利用組合が持つこともありましょうし、あるいは市町村が持つこともあろうと思いますが、そういう場合におきまする助成の対象にしていきたい、こう考えておるわけであります。
  101. 稲富稜人

    稲富分科員 最後に一点だけお聞きします。主要農産物の生産の選択的拡大というものが一そう促進されていくということは、これは基本法の中にもはっきり目的化されておるわけでございますが、これも、やはり、一つの見通しをつけた計画生産をやらなければ、またいろいろな問題が起こってくると思うのであります。そういう意味で、基本法の第八条には、「重要な農産物につき、需要及び生産の長期見通しをたて、これを公表しなければならない。」、こういうことが明文化されておるのでありますが、私はまだ見ておりませんが、これはすでに公表されているのか、この点を承りたい。
  102. 昌谷孝

    昌谷政府委員 主要農産物についての需給の見通しにつきましては、農林省内において引き続き作業中でございます。農政審議会の専門部会等の御意見を聞き、関係者の御意見等を聞きつつ、目下取りまとめ中でございまして、目下の作業の進展の度合いから申しますと、三月早々、あるいは三月中には少なくとも公表ができるという見込みで作業を急いでおります。
  103. 稲富稜人

    稲富分科員 これはあなた方をいたずらに責めるわけではございませんけれども、私たちは、農業基本法に基づく三十七年度の予算の審議に当たるにつきましては、やはり生産の見通しというものが非常に必要じゃないかと考える。この生産の見通しを誤るようなことがありますと、これによって農村に経済恐慌が来ることも考えなければいけない。こういう点から、私たちはすでに予算を審議しておるにもかかわらず、政府は見通しに対して目をつぶっているのでは、あまり怠慢過ぎるじゃないか。やはり、来年度の計画を立てられ、グリーン・プランを立てられるときには、一応長期生産見通しというものが必要じゃないか、私たちはこう考えるわけです。その見通しによって、来年度政策に対しても、将来の農業政策に対しても、計画生産をやるのでなければならぬ。今日までその計画生産がなかったということが農村経済を非常に混乱させる大きな原因になったということは、過去の日本の農業実態が示しておるわけであります。この点非常に遺憾だと思います。これに対しては、将来ともやはり長期見通しというものはこういうふうに非常におくれて出せばいいという考えであるか。少なくとも、先刻申し上げました農業基本法の第八条に生産見通しを公表しなければならないということがはっきりうたってある。いくら初年度といいながらも、農業基本法の条文の中にはっきり明示してある問題は、やはり政府としては当然これを実行する義務があるのですから、この義務は十分果たすことが必要だと思うのでありますが、これに対してはどういう考えを持っておりますか。
  104. 昌谷孝

    昌谷政府委員 御承知のように、生産の長期見通しにつきましては、そうしょっちゅうやる作業でもございませんので、また、御指摘のようにこれが直接個々の農家の生産の指標としてすぐ結びつくかどうかは多少問題がございますが、いずれにいたしましても、かなり慎重な作業を経てやりませんと、一たん出しましたものをそう簡単に切りかえるということもいかがかと思われます。そのような事情もございまして、実は、農業基本法が制定、施行されますと同時に、農政審議会の発足と同時に専門部会を持っていただきまして、さっそくに作業は始めておるわけでありますが、何さま、非常に困難な、かつまた影響するところも大きい作業でありますので、専門委員の皆さん方も非常に慎重をきわめまして、私ども当初考えておりましたほど作業が順調にいっていないことは、はなはだ残念でございます。しかし、事の性質上、そのように時間をとりましたこともまたやむを得なかったかと申しますか、むしろ粗末なものを出すのは法の本来の趣旨ではないという意味において、御容赦いただきたいと思うわけでございます。いずれにいたしましても、初年度からそう完璧なものが出せるかどうか問題でございますが、今後、長期の見通しでございますから、大きな事情変化があればその際また再検討していく、また、逐次完璧なものにいたしていくということで、慎重を期して参りたいと思っております。
  105. 稲富稜人

    稲富分科員 いろいろ聞きたいことがありますけれども、時間がありませんので私の質問はこれをもって終わりまして、いずれほかの委員会等でまたお聞きいたしますが、ただ一言だけ、ただいま申し上げました第八条に基づく長期見通しにつきましてはいつごろ公表される計画であるか、この点を承っておきたい。
  106. 昌谷孝

    昌谷政府委員 大体、事務当局としての作業はほぼ見通しがつきましたので、今後農政審議会で正式な御審議をいただくということになろうと思います。その際また大きな変更を要するような御意見でも出ますと事情も変わって参りますが、私のただいまの目算では、早ければ三月の初旬、おそくとも三月一ぱいというふうに考えて、作業を詰めております。
  107. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  108. 赤澤正道

    赤澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管について質疑を続けます。仮谷君。
  109. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 大臣もいないし時間も三十分ということでございますから、きわめて簡単に事務的なことだけ伺います。  まず水産庁長官に伺いますが、昨年周東農林大臣は当分科会におきまして、農業基本法と同様の方針で沼津漁業基本政策を樹立する、そのために沼津漁業振興法を準備している、こういうふうに言明をされたのでありますが、この振興法はいつ提出されるのか、お伺いいたします。
  110. 伊東正義

    ○伊東説明員 前の大臣が沿岸漁業振興法の準備をしているとおっしゃいました御答弁はその通りでございますが、その後いろいろ経過しまして、制度調査会の答申をいただきましたり、漁業法の改正、水協法の改正と実はにらみ合わせまして、今農林省の内部で検討いたしております。御承知のように、漁業法、水協法につきましては、何度か外にも発表いたしまして御批判を仰いでいますが、沿岸漁業振興法は、まだその段階に至っておりませんけれども、至急、中で相談いたしまして、先日大臣が答弁になりましたように、なるべく早い機会に提案をいたしたいと思って準備をいたしております。
  111. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 沿岸漁民の生活は、農民生活より決して高くないと私は思っております。その点水産庁長官はどのように認識されておるのですか。
  112. 伊東正義

    ○伊東説明員 沿岸漁業者の所得等を見まして、私ども決して高いものとは思っておりません。でありますから、一体沿岸漁業者をどういうふうに持っていくかということにつきましては、農林省の中でも、特に開拓者の問題とか山村の人々とか、あるいは沿岸漁業の非常に零細な漁民というものが、私は農林省の政策の対象の底辺のようなものだというふうに考えておりますので、その人たちの地位の向上をはかるようないろいろの施策を考えていきたいと考えております。
  113. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 すでに農業基本法は実施の段階に入っておる。中小企業基本法も今国会に提案されるように承知をいたしておるわけであります。ひとり漁民だけが放任されるという理屈はないと思います。そういうことは許されないと思います。いろいろ御検討なされておるようでありますが、一つ早急に善処されたいと思います。  なお、ただいま漁業法の改正の問題が出ましたのですが、漁業法の改正案はそれではいつ提出するのか、なぜおくれておるのか承りたい。
  114. 伊東正義

    ○伊東説明員 漁業法の改正につきましては、昨年九月でございましたか、一応要綱を作りまして各方面の意見を聞いたわけでございます。その後、その意見を聞きまして第二次案も作りまして、実は法制局等ともいろいろ打ち合わせをいたしております。ほとんどできておりますが、おくれております点を要約いたしますと、大きい問題が二点ございます。一点は、大臣許可の漁業につきまして、これの承継の問題と、あるいは期間更新の場合、これをどう取り扱うかというような問題が一つと、もう一つは漁業権の問題でございまして、真珠の漁業権を一体だれに免許するのかというようなこと、大きくいいましてこの二点にいろいろ議論がございまして、各方面の意見調整に手間をとりましておくれておるわけでございますが、法制局の審議も大体終わりましたので、これは早急に関係方面と御連絡の上に提出するような段取りに運びたいということで、関係方面と打ち合わせ中でございます。
  115. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 真珠の問題がいろいろ論議されておるようでありますが、答申が出ておるはずでありますけれども、どういうわけで答申が尊重されないのですか。
  116. 伊東正義

    ○伊東説明員 答申に出ておりますのは、先生御承知のように、ある漁場をとりまして、そこで過去にやっております経験者と並んで、ある一定の要件を備えた場合には、管理漁業権として——管理漁業権といいますのは、ノリとかカキとかが管理漁業権の対象でありますが、要するに組合に漁業権をやりまして、それを組合員にさらに分割してやるというような漁業権でございます。それと並行して、どっちがいいかを知事さんに選ばしたらどうかというような意味のことが出ておるのでありますが、真珠の商品のほとんど大部分が輸出商品であるという性格上、経験者優先という方がいいのじゃないかということで現行法ができておるのでございますが、われわれもこの点につきましても、答申よりも現行法の方が、真珠という性格からいっていいんじゃないかというような判断で原案を作っております。そういうわけで、この調整に手間取っておるわけでございます。
  117. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 時間がありませんから、私は真珠の問題で論議をしようとは思っておりません。ただこういうことでせっかくの漁業法の提案がおくれる、万一おくれたがために今度の国会でも成立を見ないといったようなことになりますと、この影響はきわめて甚大であります。漁業法の審議会が生まれて数年になる。答申案が出てから一カ年近くになるわけでありますが、もし結果がそういうことになるということになれば、これは漁民のために断じて許されない問題になると思いますが、すみやかに一つ提出するようにしていただきたい。大体いつごろ提出できるのかお伺いしたいと思います。
  118. 伊東正義

    ○伊東説明員 これは先のことでありますので、なんでございますが、われわれとしましては、今週なり来週のうちには関係方面と意見を最終的に調整しまして、その上で提案したいというふうに考えております。
  119. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 この許可のカツオ・マグロ漁業につきまして、一つお伺いいたしたいのでありますが、いわゆる九十九トン型というのがある。これは百トンという一つの制限ラインがありまして、それを越すことができなかった。改正法の趣旨からいいますと、これは当然撤廃されるものとわれわれは考えておるわけでありますが、撤廃される場合において、その補充トン数、これはどれだけ与えるのか、最高のトン数はどの程度まで認めるのか、そういったものについての御方針を、差しつかえなければ承りたいと思います。
  120. 伊東正義

    ○伊東説明員 現行法は九十九トンでワクを切りまして、それが百トン以上にはほとんどなれぬような現行法ができておることは御承知通りであります。私どもはこれは非常に制度としてはおかしいと思っております。でありますので、今漁業法の改正案では、こういう制限は撤廃いたしたいという考え方で法律案は作っております。そこで大きくなります場合に、これが何トンまでいけるかということにつきましては、実は私どもまだカツオ・マグロにつきまして、新規のものをどれだけやるか、資源その他の関係からやるかということは最終的にきめておりませんので、九十九トンの人が何トンになるかということは、まだ申し上げかねますが、大きくいたします場合には、過去において九十九トンで苦しんでいた人たちは、これは優先的に大きくなるような方途を考えてやったらどうかと考えております。ただ何トンまでということはきめておりませんが、方針としましては、優先的に取り扱いたいと思っております。
  121. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 その点は了解をいたしましたが、なお御参考までに申し上げて一つ意見を聞きたいと思うのですが、昭和二十七年に船齢が七年以上のいわゆる九十九トン型の漁船、これは特例法によりまして、百六十トンまで拡大をいたされております。それからさらに昭和三十五年に、これは許可方針として重ねて二百六十トンまで拡大をされておるわけであります。ところでその当時七年の船齢に達していなかったもの、代船建造の許可をもらえなかったもの、そのものは依然として百トンという制限に押えられて現状に至っておるという事実があります。こういうようなことは実際の行政の一〇の谷間と申しますが、非常に矛盾でありますが、そういうことを考えますと、今回の漁業法改正によって百トン・ラインが撤廃されるとするならば、当然この昭和二十七年の特例法によって恩典を受けた人たちと同様の措置をとるべきではないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、この点に対してはどうですか。
  122. 伊東正義

    ○伊東説明員 最終的にはまだきめておりませんけれども、過去にやりましたことは一つの大きな実績でございますので、そういうことは十分考慮いたしたいと思います。
  123. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 なお重ねて御要望申し上げておきますが、昭和二十七年の特例法で拡大されたという理由は、マッカーサー・ラインが撤廃されて、漁区が拡大されたということが理由であります。それではその当時と現在はどうかと申しますと、たとえばインド洋、あるいは太平洋、大西洋の東部といったように漁区はさらに拡大されておると思うのです。この実情を一つよく御勘案下さって、今までほんとうに行政の谷間にあって、置きざりにされた漁民のために、特別の御配慮をいただきたいと、特に御要望申し上げておきたいと思うのです。  次は、漁港の整備計画の問題についてお伺いをいたしますが、過日長官はどなたかの質問に答えまして、計画が六百一港でしたか、完成したものは百二十港、全然手をつけていないものが四十四港、こういうように申されたのであります。それでは昭和三十七年度に完成するものは一体何港あるか。そして残された、三十八年度以降に繰り越されるものはどれだけあるか、これをお伺いしたい。
  124. 伊東正義

    ○伊東説明員 三十年度に作りました整備計画は一応三十七年度で終わって、三十八年度から新しい計画で進むことで今準備いたしております。三十七年度の予算につきまして、これをどういうふうに配分して何港完成させて、継続港を何港残すかということにつきましては、実は今各県からいろいろ事情も聞きまして、どういうふうにやったら一番いいかということを検討し、打ち合わせて、もし三十七年度の予算が通りますれば、県の要望も受けて通したいということで、県と打ち合わせをいたしておりますので、今の段階で三十七年度に何港完成してしまうかということはまだきめておりません。予算を要求しますときには、大体七十港程度のものは完成したいということで要求したのでございますが、金額の要求よりは若干減っておりますので、現在幾ら完成するということはきめておりませんが、私どもの気持としましては、なるべく残った金額の少ないものについては、これは三十七年度の中で完成をしてしまって、三十八年度以降の第三次整備計画に持ち越す数は、なるべく少なくして持ち越したいというような気持でございますが、現在まだ何港完成するということはきめておりません。
  125. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 かりに予定通り七十港完成するとしても、まだ四百余り残る。これは大へんな問題です。その三十八年度以降に持ち越された漁港が完成をするというのは、いつごろの見通しなんですか、第二次整備計画の残りの分の……。
  126. 伊東正義

    ○伊東説明員 私ども、三十八年度からの整備計画につきましては、いわゆる従来の一種、二種という漁港を、これはいかにおそくても三年くらいで完成してしまおうじゃないか、そういう計画を立てませんと、十年もかかって新規の漁港ができないということでは、諸般の情勢が非常に変わってきますので、計画は一種、二極につきましてはおおむね三カ年で完成するようなことを考えよう、三極、四極につきましては五年ないし七年くらいのものが出てくるかもしれぬというようなことで、第三次の整備計画を作ろうという方針で、県には、あまりたくさん数をとりますことはこれまた計画完成がおくれますので、そういうことをめどにして数を選ぶようにということを流しておるわけです。
  127. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 この問題は私にもいろいろ意見があります。時間がありませんから論議はやめますが、先ほどお話がありましたように、すでに第三次計画というものが予定されておるようであります。この機会に一つ過去の進捗状況とか、あるいは個々の港の内容とか、そういったものを十分に検討をして、三十八年度からは総合的なもう少し権威ある計画として、ほんとうに決定したものは計画通り実施ができるといったような方向で進むべきではないか、一つの段階に来ているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  128. 伊東正義

    ○伊東説明員 漁港の整備計画は、御承知のように手続は審議会でやりまして、閣議の決定を経て、その上でまた国会の御審議まで経るというように、手続としましては非常に完備した手続になっておるのですが、現実の実行の問題になりますと、手続がむずかしい割に進み方が私は十分でないというふうに考えております。でありますので、手続だけ厳重なことをやりましても、これはなんですので、実施がうまく行きますような、先生のおっしゃいましたような考え方で、あまり総花式なものでなくて、しっかりした計画を作って実際にはやっていきたいというふうに思っております。
  129. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 もう一点、離島振興法に関連した漁港の整備の問題でありますが、私はこの問題について、水産庁あたりでいろいろ意見を聞いてみると、実施の順序と申しますか、県営事業を優先して考える、こういった線が企画庁にあるのか、水産庁にあるのか、そういうことが県を通じていろいろ耳に入ってくるわけです。これはどうも少しおかしいのじゃないかと思う。率直に申し上げまして、離島にある漁港というものは県すらも手が届かない。そういうふうな未開発の後進地域でありまして、そこに離島振興法を適用する意義がある、こういうふうに考えて参りますと、県営であろうと、市町村営であろうと、重要である、必要であると認めるならば、同列に考えるべきではないかというふうに思いますが、この点どうですか。
  130. 伊東正義

    ○伊東説明員 離島の問題でもございますから、直接には企画庁かもしれませんが、私も企画庁の方で離島関係の仕事をしたことがありますが、私のおりました当時はそういうような、どれを先にやる、県営が先で、市町村営とかそういうものをあと回しにするというような方針は立てたことはございませんでした。現在の考え方でも、特に離島等につきましては、単にこれは水産庁に結びついたということではなくて、交通の問題とかいろいろな問題から、内地の漁港以外の役割を果たしておるということが多いというふうに、私は離島の問題を考えておりますので、その点は先生のおっしゃいましたようなことにならぬように、私も企画庁とよく連絡いたします。
  131. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 水産庁長官、了解をいたしました。時間がありませんから、振興局長に一、二点お伺いをいたしたいと存じます。  外材の輸入港の指定の問題でありますが、その指定基準というものを承りたいと思うのです。大体現在の指定港、これはもちろん特定港も含んでおりますが、どうも中心地帯といいますか、ベルト地帯といいますか、そういうふうなものに偏在しておるように私は思うし、しかもこれから新しく指定しようという港も、そういうふうに予想されるわけでありますが、私は木材需要の安定あるいは価格の維持、あるいは後進県の開発といったような面からも、指定基準には、いま少し地域的な条件というものを加味すべきじゃないか、こういうふうな考え方を持つものであります。これについて局長の御意見を承りたいと思うのであります。
  132. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 木材の輸入に伴いまして、検疫をいたしておるわけでありますが、現在検疫をいたしておる木材の港といたしましては、防疫所のあるところが四カ所、それから出張所、それから出張所のないところにつきましても、木材が入って来ます場合に便宜そこへ出張して行きまして、検疫をいたすという方法をとっておりまして、それを特定港と称しておるわけでございます。  御質問の最後は、特定港はどういう基準できめておるかという御質問だと思うのでございますが、最近のように、木材の輸入量いかんによって、またどういう地域に揚がってくるかということによって、基本的には考えていくのが前提でございますが、そういうことになりますと、まず特定港といたしましては、国際貿易港でなければ当然外材の輸入ということはありませんので、国際貿易港であるということが第一の要件でございます。それから第二の要件といたしましては、当然外材の輸入に伴いまして、検疫等をいたします場合の、いわば下請的な消毒事業をやってもらう業者がいなければ、その地において輸入するというわけには参りませんので、木材検疫に必要な消毒業者がおるということを前提といたしております。それから輸入の量でございますが、これが今地域的に偏在しておるのではなかろうか、こういうことと相関連するのだと思いますけれども、現在までの特定港の利用状況を見ますと、非常に多いところもあれば少ないところもある。従ってやはりある程度の量が恒常的に入ってくるということを前提として考えていく必要があろうということで、輸入量の実績あるいは今後入ってくるべき輸入の見込み、これらを勘案いたしまして特定港の指定を具体的にきめていく、こういうことをいたしております。これは今の一般的な基準でございますけれども、しかし具体的には、それだけの量が入ってくる場合の貯木施設が、はたして港として十分完備しておるだろうかどうか。また貯木施設の設置に伴いまして、漁業権補償等の問題がありますから、これらの問題が各港において十分処理されておるかどうかというような点が、あわせて解決されるということを前提として指定について考慮する、こういたしておるわけであります。
  133. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 大体わかりました。一般的な基準というものもいろいろあると思うのですけれども、それじゃその基準についても、あるいはいろいろ国内の施設にしましても、現在指定されておる指定港あるいは特定港と、たとえばその地域の同級の港と比較して、どれだけの相違があるかという問題ですね。実質的には相違がないと思っておる。私の言葉が言い過ぎたとすれば、一つ現地を御調査願ってもけっこうだと思いますが、それより問題になるのは、やはり検査員が非常に不足しておることじゃないか。そういうことから、せっかく指定しようとしても手が回らない。それから立地条件の非常に悪いようなところは、自然敬遠されるのじゃないかというきらいが過去においても、あるいはあったのじゃないかと思うのですが、そういうことなら一つ思い切って内容を充実してはどうか。たまたま農林省の機構改革が発表されて、地方には地方農林局というものが新設されることになっておる。そういうことになれば、その機会にただいまの所管の問題を、思い切って内容を充実するというふうに踏み切ってはどうか。この点一つ大臣にも相談してぜひやってもらいたい。そして先ほど申し上げましたように、できるだけ地域的な問題を十分にお考え願いませんと、これが木材価格の問題とかあるいは需給の問題に非常に響いてくるわけでございまして、これは一つぜひ早急に御考慮いただきたい、かように思うのですが御意見を聞かして下さい。
  134. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今お話しになりました点は、まことに私たちも同様に考えておるわけでございます。先ほどの御質問は、基準としてはどうだ、こういう御質問でございましたからそのように申し上げたわけでございますが、特定港となりました以上は、木材が入りました場合に責任を持って、そこで係官が現地に出張して検疫をするということが建前でございますから、十分にこれに対する人の配置ということを前提として考えざるを得ない。従って従来ともそういう御要望に対しまして、人員の面から実質的な制約があったということも事実でございます。そこで三十七年度におきましては、来年度輸入される木材の需要量等とも見合いまして、相当思い切った予算的な措置を講じたわけでございます。一つは出張所の増設、二つは定員の増、三つはそれに必要な出張に伴う旅費の増、四つは臨時に木材が入って来ました場合に、それに即応する業務態勢をとるため、臨時職員制度の設置という措置をとることにいたしたわけでございます。ですから三十七年度以降におきましては、この予算が通りますれば、一応三十七年度において入ってくるべき木材の検疫については、遺憾なきようにできるのではないかと考えております。
  135. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 もう一点お伺いします。時間がありませんから結論を先に申し上げますが、農村の有線放送電話でございます。これの新設とか改善、そういったものに対して国は助成する意思はないか。それぞれまたその地区からの陳情もあると思います。それからもう一つは農林漁業金融公庫あるいは農業近代化資金、この融資の措置を講ずるような考えはないかという問題であります。これは今さら農村の有線電話の必要性を説く必要もないと思うのですが、もちろんこれは郵政省との関係もあると思います。しかし農業基本法の趣旨からいいますと、第二条の一項八号には、農村における環境の整備、農業従事者の福祉の向上ということも明記されておる、こういう趣旨からいっても、これは農林省も積極的に考えていくべきじゃないか、こういうふうに私は思うのでありますが、この点に対しての御意見はいかがですか。
  136. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 農村の有線放送電話につきましては、新農村の建設事業として助成の対象にいたしました関係もございまして、現在相当普及を見るに至っておるわけでございます。今後これらの施設についての助成を考えるかどうかということでございますが、三十七年度にはまだ新農村建設事業の最後の年の事業として残っておりますので、これの対象になっておるものについては、当然助成ができると考えております。しかし今後の一般的な有線放送に対する助成につきましては、今後こういう施設についての行き方はどうあるべきかということも関連して検討していく必要があると思うのであります。現在の有線放送における一つの問題といたしましては、一つには他の地区との連結、あるいは電電公社電話との連結といったような問題が考えられておりますので、そうなりますと、一面においては大体施設も大きくなるし、基準も高まるというふうなことにもなろうかと考えておるわけでございます。そうしますと、非常にへんぱなところで助成をするというようなものがあればですが、これは大体新農村建設事業等で救われておるのではなかろうか。そういうことでありますると、今申し上げたような要請にこたえるような方法としては、やはり融資で考えていくか、ないしは本来の電電公社の電話線を延ばしていくか、農村における有線放送網を活用、拡張していくという方向と、二つ考えられるわけでございます。一方郵政省の方においては、そういうふうな考え方で、いろいろ施策も進められておるようでございますが、農林省といたしましても、今も有線放送の施設設置につきまして、できれば融資の方法で今後助成していくことを考えていったらどうだろう、こういう考え方でおるわけでございます。
  137. 仮谷忠男

    ○仮谷分科員 時間が、あと二分ですが、それじゃ林野庁長官に、もう一点だけお伺いして終わります。  林道行政の問題でございますが、私どもは俗に峰越し林道という呼び方をいたしております山を越す林道でございますが、これはところによりますと、それを実施するということが、奥地開発の非常に重要な条件となっているところがあると思います。これは長官御存じであると思いますが、昨年山村の振興林道というのが新設された、これは奥地の再開発ということが目的で、非常にけっこうな案だと思っております。あるいはまた関連林道といったような方途もできていることはできておりますが、どうもいわゆる峰越し林道というものに対して決定的な方針というものが、確立されていないのではないかという感じがするのでありますが、これについて一つ新長官の御所見を承っておきたいと思います。
  138. 吉村清英

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  峰越し林道でございますが、元来林道の性質と申しますのは、山から木を切って出す、従って重量物を出すから逆勾配は困るということで、林道というものは性格としては行き詰まりの袋路の道ということにきまっておったのですが、最近のいろいろな諸般の情勢あるいは他の資源の開発、そういった問題から、それではいけない、特に運搬機関の進歩というものは、そういうものを必要としなくなりまして、それぞれ出す場合に、勾配ということもそれほど考えに入れずに出せるというような時期に達したわけでございます。従いまして、私どももこの峰越し林道ということが、はたして適切であるかどうか知りませんが、そういったものを考え出しまして、実はすでにそういうものも取り上げられるところは取り上げて参ったのでございます。今回も、その他の山村振興林道のように項目としてあげることはできなかったわけでございますが、この方針は変えずに実行していくという考えでおります。今までせっかく作って参りましたいろいろな林道を、この木材の搬出だけに使って、その後はほうって置くということのないように、どこまでもせっかくつけた林道は、そのほかの利用にも十分こたえられるような性格のものにしていきたいというふうに考えているのでございまして、この実行は、ぜひして参るつもりでおります。
  139. 赤澤正道

  140. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、主として安全操業とその問題点について御質問いたしたいと思うのです。また大臣並びに海上保安庁の方から人が見えておりませんから、水産庁に関係する若干の事務的な問題から御質問いたしたいと思うわけです。  最近の安全操業の実情を見ますと、一昨年は例年に比べて、漁船拿捕あるいは追撃の事件等が非常に減少いたしたのでありますが、昨年の傾向を見ますと、この傘捕の件数も、一昨年より約三割程度増加をいたしておるわけです。このように依然として漁船の傘捕の事件が絶えない。安全操業の問題は、単に漁民が関心を持っているだけではなくして、これは全国民のきわめて重大な関心を持っている問題点でありますし、そういう意味で、水産庁としては、今日一体どういう方針のもとにこの安全操業の指導をいたしておるのか、そういう考え方について承っておきたいと思うわけです。
  141. 伊東正義

    ○伊東説明員 安全操業の問題、御承知のように昭和三十一年でございますか、日ソの国交回復に伴いまして、従来のマッカーサー・ラインもとれましたので、この海域におきます安全操業につきまして、日本側とソ連といろいろ話し合いをする場を作るというようなことで、話し合いをしましたことは先生御承知通りでございますが、昭和三十三年の十二月でございますか、向こうから、安全操業の問題につきましては、平和条約の締結後でなければ話に応ずるわけにいかぬというような回答が、二年間くらい交渉しました結果参りまして、安全操業の問題それ自身としてはその後ソ連との話し合いは実は中断いたしております。そういう形で操業いたしておるわけでございますが、私どもの方といたしましては、これはいろいろ外交上の問題もございますので、水産庁だけで、独自な考え方でこれを処理するというわけにも参らぬものでございますが、御承知のようにあの地域につきましては、この前北方地域の引き揚げの関係の法律も実は出たのでございますが、あの地域については、特に日本側としては強い関心を持っておりますので、私どもとしては、海上保安庁、外務省等と連絡いたしまして、日本側としては領海三海里という主張をいたしてはおりますが、大体ソ連側につかまった人の話によれば、十二海里だというようなこともございますので、その辺の地域に、ある一定の距離を一応危険区域ということにいたしまして、なるべくその中には入らぬようにというような注意をしながら、実は海上保安庁と連絡をして、あの辺の小さい漁船は操業しているというような実情であります。
  142. 岡田利春

    岡田(利)分科員 安全操業の問題は、北方海域の場合と、韓国あるいは中国海域の場合とは、私は趣を異にいたしておると思うわけでございます。御存じの通り海上保安庁では、北方の場合は危険推定区域というものを設定して、その対策を立てておるわけです。そうしますと、北方の場合、特に知事が普通漁業権による漁業免許を与えるその海域自体において、すでに拿捕事件が発生をいたしておるわけですね。そこで、この危険推定区域、いわゆる漁業法による海区を設定して漁業権を許可をする、あるいはまた、指定遠洋漁業で操業区域の認可をするという場合に、北方の場合には、危険推定区域内にそういう漁業権が許可をされる、あるいは操業区域というものが許可されておるのかどうか、この点について水産庁としてはどうなっておりますか。
  143. 伊東正義

    ○伊東説明員 領海の問題は、先ほど申し上げましたように、三海里とか十二海里とかいうことを言っておりますが、先生のおっしゃいました漁業権の問題あるいは許可権の問題になりますと、あるいは地先水面というような表現で、一体何海里までその漁業権の管轄区域として漁業権を認めるか、あるいは許可漁業をするかという問題につきましては、これは先生も御承知のように、三海里とか、そういうことで限定はいたしておりません。知事の許可も、あるいは知事の免許漁業権等も非常に広い範囲になっております。それで、たとえばべーリング等への許可をいたしますと、これは大田許可でございますが、三海里内には絶対に入らぬようにいたしますが、大体の線を引きます場合には、それは十二海里ということを頭に置きまして線は引いております。決して十二海里以内には一切入っちゃいかぬのだという意味の許可等はいたしておりません。あるいは入ってもいいような形の許可もしているというような形になっております。
  144. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そういたしますと、北方海域のように、危険推定区域というものが設定されている場合には、その危険推定区域内には漁業権の設定もないし、あるいはまた操業区域の認可をすることもない。従って、当面その漁業権の許可の及ぶ範囲というのは、一応設定されている危険推定区域内にはないと解釈していいのですか。
  145. 伊東正義

    ○伊東説明員 これは実際に十二海里の中にまで、許可の範囲が及んでいないというふうには、私は言い切れないと思います。これは日本側の見解としまして、領海十二海里という説をとっておりませんので、危険推定区域内にも入り得る。法的にはそう言い得ると思います。
  146. 岡田利春

    岡田(利)分科員 もう少し詰めて言いますと、たとえばノサップの前にはすぐ貝殻島があるわけですね。この貝殻島に繁茂しているコンブを、根室に在住する漁民の人々が採取しているのは御存じだと思うわけです。そういたしますと、あなたの言によれば、あそこは三海里とか十二海里とかに関係はないわけです。しかし危険推定区域というものは海上保安庁で指導しているわけですね。あるいは旧マッカーサー・ラインというものが一応設定されたこともあるわけです。そうすると、この場合いわゆる漁業権というものは、その貝殻島に及んでおるのかおらぬのか、そういう点について具体的に考えた場合に、どうも三海里とか、十二海里というだけではなくて、当面北方海域の危険推定区域というものを一応認めて、その中では漁業をしてはならないという指導をしておるのであるか、もし漁業をしてもいいというのであるならば、これは北方領土との関係もありますけれども、どんどん入って行って魚をとってもいい、カニあるいはコンブを歯舞、色丹に行って採取していいということに、裏返しにすればなると思いますが、その点の見解はどうですか。
  147. 伊東正義

    ○伊東説明員 今先生のおっしゃいましたところに、現実の漁業権としてどこまで出しているかということは、私、詳細に承知いたしておりませんが、先ほど申しましたように、三海里とか十二海里というのは、ある国と国との間の海峡を通ります場合には、これは三海里なくても、まん中で双方の領海をきめるということになっておりますので、その間には三海里とか十二海里とかいう問題は起きませんが、今先生のおっしゃいましたような場所においては、貝殻島と日本とのまん中以上に、おそらく漁業権を出していないと思います。これは詳細に調査いたしまして、正確なことをお知らせいたしたいと思います。
  148. 岡田利春

    岡田(利)分科員 貝殻島の問題は、これは一応知事の漁業権の免許になりますが、それでは危険推定区域内に、指定遠洋漁業といいますか、許可漁業の操業区域を許可したことがございますか。
  149. 伊東正義

    ○伊東説明員 現実の問題としまして、今あるかないかということも、いま少し詳細に調査いたしますが、理論的にはそういう地域も操業区域に入れて、その上で、操業区域ではあるが、この区域は危険だから、なるべく入らぬようにと言うようなことは、現実の姿として、たまたまあると思います。
  150. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私はその理論的なことを聞いているのじゃなくて、実際問題を聞いておるわけなんです。現実にやはり危険推定区域内で拿捕が行なわれておるわけです。現実の問題としては漁船が入ってやはり操業しておるわけです。これはやはり、もし操業区域が許可されていないとすれば、漁業法の違反という問題も実は出てくるわけですね。当面の問題として、領土の問題の本質論を別にして、それは操業区域として大臣が許可をしておるということであるならば、これは日本の法律からいって合法であるわけです。私はいまだかって正式に操業区域が許可をされたという事実を知らぬわけです。ですから現実の問題としてそういう地域に許可しておるかどうか、またそういう危険推定線というものが海上保安庁の方で設定をされて、安全操業を指導している場合に許可すべきものかどうか、この現実の問題を私は聞いておるわけです。ですからごく簡単でいいですから、端的に答えていただきたい。
  151. 伊東正義

    ○伊東説明員 北方の問題でなくて、たとえば李ラインの問題等にいたしますと、李ラインの中が操業区域になっているということは事実でございます。ただ気をつけて操業するように、そういうことはございます。北方の問題について今具体的な事例で覚えておりませんが、これは理論的には当然操業区域の中にも入る。ただし、これは危険区域として海上保安庁でも注意をするということもあるから、その区域はなるべく操業せぬようにというようなことを言っていることがあると思っております。
  152. 赤澤正道

    赤澤主査 警備救難部長が参りましたから御質問願います。
  153. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は端的に聞いているわけですよ。そういう漁業許可自体もおかしいですが、漁業法に基づいて操業区域を危険推定区域内に北方の場合許可したことがあるかないか。北方の場合と韓国あるいは中国の場合とは違うわけです。区別して聞いているわけです。北方の場合に許可したことがありますかどうかということを聞いている。あるならある、ないならないでけっこうです。
  154. 伊東正義

    ○伊東説明員 今至急調べて御返事申し上げます。
  155. 岡田利春

    岡田(利)分科員 、どうも調査不十分であるのはやむを得ぬのですが、これはもう何年も続いて漁業が拿捕されているわけですよ。漁船が拿捕されたのは操業区域で操業しておったかどうか、そういうことは調べてないのですか。
  156. 伊東正義

    ○伊東説明員 あの区域で拿捕されました漁船は、ほとんど知事許可の漁船でございます。先生御承知のように、カニでございますとか、あるいはコンブ採取とか、これはむしろ許可漁業でもない自由漁業でございます。あるいは操業区域等につきましては、これは知事の関係でやっておりますので、私は、今申し上げましたように、事実と違ったことを申し上げるとなんでございますから、至急調査してということを申し上げたのでございます。理論的には、危険区域でもこれは操業区域になし得る。しかし現実にどういうふうにしたかということにつきましては、至急調査してお答え申し上げます。
  157. 岡田利春

    岡田(利)分科員 あなたはそうすると、まだそういう実態を調査していないという言葉ですから、もし操業区域というものが許可してない、あるいは知事の許可による——海区の設定は、これは大臣がするわけですがね。公示しているわけです。しかしながら貝殻島と納沙布の中間で一応線を引くというのですから、そうすると貝殻島に寄った、あるいはむしろ貝殻島ですね、これは知事漁業免許というのは及ばないのでしょう。及んでおるのですか。
  158. 伊東正義

    ○伊東説明員 そういう地帯につきましては、さっき申し上げましたように、三海里もないような地域につきましては、まん中に線を引きまして、そのこっちがたとえばA国ならA国、B国ならB国というふうに分けておりますので、おそらく先生のおっしゃったところにつきましては、知事はまん中のところまでを漁業権なりあるいは操業区域としてやっておると思います。
  159. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大臣の都合で大臣の質問を先にしてくれという要望ですから、事務的なことをやったり大臣のことをやったり、まことにおかしいのですが、大臣に私はお尋ねしたいと思うわけです。  今事務的な安全操業に関する北方海域を主として質問をいたしておるわけです。私は今日のこの領土の本質問題は別にして、歯舞、色丹、国後、択捉というものがソビエトに領有されているという現実は、はっきりいたしておるわけです。しかも日本の漁民は依然として貝殻島まで行って、貝殻傷に接岸をしてコンブをとっておることも事実なわけです。あるいはまた危険推定区域内にもどんどん入って行って操業しておることも事実なわけです。ですから拿捕事件が発生をいたしておるわけです。昨年の例を見ますと、ほとんど八割近くはソビエト関係の拿捕事件が多いわけなのです。三十六年は十五隻が韓国ですから、ほとんど八〇%はソビエトによる拿捕事件が発生をいたしておるわけです。この問題は政府として一体貝殻島に接岸をしてコンブをとってよろしい、あるいは危険推定区域内に入って操業してもよろしい、こういう方針でおられるのか。それが現実の問題としてソビエトに領有されて、本質的な問題は解決をしていないのであるから、その危険推定区域内には操業許可を一応大臣としてはしないという方針、あるいはまた知事が漁業権を免許する場合に、その海区の場合に危険推定区域内の方は及ばないと解釈すべきなのか、この点についての大臣の見解を承りたいと思います。
  160. 河野一郎

    河野国務大臣 水産庁長官からお答え申し上げた通りであります。
  161. 岡田利春

    岡田(利)分科員 水産庁長官は、これは大臣おられなかったわけなんですが、許可漁業については操業区域というものは、まだ十分把握をしていないので答弁ができないということなのです。それから今の、海区が公示をされて、指定をされて、知事が漁業権の許可をするわけですね。その許可をした場合に、この貝殻島のコンブの採取は許可されておるのか。そのことは政府として許可されておるとするならば、それを認めておるのか。現実には行ってつかまっておる。そういう実態を合法的なものとして、国際関係は別にしてわが国の国内では、それも合法的なものとして認めておるかどうかということを聞いているわけです。
  162. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り領土問題が、まだ結論に至っておりません。従って、わが方はわが方の解釈に立って主張することが適当でございます。ただそれがあとでトラブルが起こることをおそれて、お互いに自制しておるということでございますから、法律的に申せば、合法であるということでいいのではないかと思います。
  163. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そうすると今の大臣の答弁は、政府の方針としてはソビエトが事実上占有している貝殻島に接岸をしてコンブを採取することは、これは領土問題が解決されていないので問題はあるけれども、現実の問題として行なわれている実態を政府として認めるということなのか。日本政府としてそれを認めるのか認めないのか。もちろんいろいろ本質的な問題はあります。当面、ソビエトの占有されている貝殻島に接岸をしてコンブを採取しておるわけですね。これは日本政府として認めるのか認めないのか、この点をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  164. 河野一郎

    河野国務大臣 現実にわが方の領土であるものが占有されておるという事実、この事実を両国の関係において解決する段階に至っておりません。従って、そういう不自然な状態にありますところに正当な解釈、正当な行政を運用しようといってもこれはできない。やむを得ぬことだと私は考えております。
  165. 岡田利春

    岡田(利)分科員 やむを得ないということは、これは接岸してコンブをとってもよろしい、あるいはまた危険推定区域内に入って操業することもやむを得ない、認めておるのだ、こういう理解に今の大臣の答弁はなると思うのです。そう理解してよろしいですか。
  166. 河野一郎

    河野国務大臣 よろしいとも悪いとも答弁できない状態にあるという、事実を私は申し上げておるのであります。
  167. 岡田利春

    岡田(利)分科員 しかし前の大臣の答弁は、そういう事実を認めておる、認めるのだ、こういうことなんですから、事実を認めるということは、政府としてそういう実態を認めておるわけなんです。ですから、あとの答弁で本質問題が残っておると思う、認めるとも認められぬとも言えない、正常な行政が及ばない、こう大臣は言われておるのですが、しかしながら、政治は現実の問題でしょう。現実にこういう拿捕事件が発生している、いろいろ多くの事件が雑居しておる。これに対して政府が、もちろんいろいろ本質的な困難な条件があっても、安全操業という立場、漁民の生活を確保するという立場で、明らかなる方針のもとに行政指導をしなければならぬでしょう。その点はいかがですか。
  168. 河野一郎

    河野国務大臣 事情承知通りのことで、そこに行政指導せい、明瞭にやれといってもできぬことじゃないですか。行政指導をしようといったって、行政指導することができるなら、のいてくれといってのいてくれそうなものだが、のいてくれない。その事情が肯定されておるところへ行って、コンブをとることがいいことだからコンブをとれという行政指導をしようと思っても、行政指導のしょうがない。しょうがないことを、どうだどうだと言われても、やりようがないです。立場を変えて、あなたならどうお答えになりますか。こういう事情にあることは、国家のためにはなはだ遺憾でございますけれども、やむを得ない事情にあるということで御了承を願うより以外に、私は仕方がないと思います。
  169. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そういたしますと、大臣の答弁は、これはお手あげだ、まさしくお手あげで、いかんとも手のつけようがない。いわゆる火事が燃え上がったところに行ったような態度の答弁なんです。そのことをさらに裏返していきますと、これば現実に貝殻島でコンブを採取している、あるいは危険推定区域内に行って操業することも、これはまあ積極的にやれとは言えぬけれども、消極的にはそれは政府として認めておる、こういう理解になると思うのですが、いかがですか。
  170. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げた通り、認めておるとか認めておらぬとかいう問題じゃないと私は思う。政府が認めてやらしておる。政府が認めてやらしておるならば、危険を危険でないようにすることが、当然政府の責任であります。政府の責任においてこれを指導するということのできない状態にある。非常に遺憾な問題であると言うこと以外に、それはどういうふうにしたらよろしいのですか、何かやりようがあったら教えていただきたい。答弁の仕方を、どう答弁したらいいか教えていただいたら、私も勉強します。
  171. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大臣がそう投げやりだったら、これは一体だれがやるのですか。だれもやらぬわけですね。だから問題は、これに対する政府の態度として、これは現実の問題として安全操業が困難だ、困難であるならば、その漁民の生活、問題は生活なんですから、生活の立つ方法を別途に考えなければならぬでしょう。いわゆるコンブの増殖でも大々的にあの海区でやって、そっちの方に行かなくても生活が安定するようにしなければいかぬでしょう。あるいはまた操業危険推定区域内に行って魚をとらなければならぬ。どうしても危険だというのであるならば、別途に転換なりを、政府の方針として考えなければいかぬでしょう。現実に国民が漁業を営んで逮捕されあるいは抑留されている、こういう事態が、もうずっと長い間そのまま放置されておるわけです。大臣、これは一体こういう点について方法はないものでありますか。やはり国民の生活を預かる政府として態度をきめれば、当然その対策は出てくると私は思うのですが、いかがですか。
  172. 河野一郎

    河野国務大臣 対策は対策として、別途考究しておると私は思います。それが十分であるか十分でないかという問題については、研究の余地はあります。御承知のように、私も及ばずながら安全操業の問題につきましてはソ連とたびたび話し合っております。相当の努力はしておるつもりでございます。決して投げやりにいたしておりません。ことにこの問題について関心を持っておられる人は、どなたも努力しておられる、みな一生懸命努力しておることだと思うのでございます。しかし、なかなかその努力のかいがない。事志と違うということでございますから、やむを得ず第二段の方法として、これらの諸君に別途対策を講ずるという方向とあわせて努力しておるということじゃなかろうかと思うのです。
  173. 岡田利春

    岡田(利)分科員 時間が制限されていますので、この点特に大臣に、特に沿岸関係は、これは漁民の生活に結びつくわけなんですから、どうしても安全操業ができないとすれば——これはそう政府政策としてできない問題でもないと私は思うのです。一応そういう方向に、政府は国の責任においてその問題の解決をするために、そういう地域に対しては積極的な国の政策を進めていく、こういう態度が私は望ましいと思うし、あるいはまたさらに一そう拿捕、追撃の事件が多くなってくるとすれば、これはそこでは操業ができないわけです、幾らどういう答弁をしても。そうすると、これは漁船の人々が生活ができるように、転換をはかるという積極的な措置を政府はとらなければいかぬと思うのです。それとも思い切って本質的な問題の解決に、これは政府として具体的に努力をしていくか、明確に方針を打ち出してやらなければ、いつまでたってもこの問題は解決できないと思うわけです。この点、特に強く、私は大臣に要望いたしておきたいと思います。  そこで、水産庁長官にこの問題をお聞きするのですが、昨年の末まで北方海域並びに韓国あるいは中国の海域で操業中拿捕されて、船舶あるいは漁具もろともに没収される、こういう事件がずいぶん多く発生をいたしているわけです。この数は北方、韓国海域でどういう数字に上っておるか、資料があれば御説明願いたいと思います。
  174. 伊東正義

    ○伊東説明員 先ほどの転換の問題でございますが、今の被害に入ります前に、水産庁でもあの地域につきましては、特にいろいろ理屈は言いましても、なかなか操業がむずかしい問題がございます。つきいそをやりますとか、そういうことを考えて、なるべく貝殻島のそばまで行って操業せぬでもよくしようじゃないかということで、三十六年度、今年度は途中から経費をあそこに流用いたしました。来年もなるべくあの地域につきましては、危険区域以外のところにつきいそを作りまして、いろいろコンブの増殖をやるとか、そういうことも考えていきたいと思います。そのほかに例の北方協会等に十億の金を出して、それで融資をするというようなことも、あの地域の人々にやっておるわけでありまして、水産庁といたしましても、特に意を用いておるわけでございます。  それから先生の御質問のありました拿捕の問題でございますが、韓国関係では今まで拿捕されましたのが二百八十三隻ございます。人員で三千五百十人帰って、まだ帰っておりませんのが二百八十三隻のうちで百六十八隻、人は、向こうで不幸にして死亡したというような人を除きまして、全部帰っております。ソ連につきましては、今まで終戦後から総計いたしまして、拿捕が九百七十六隻、人員にいたしまして八千二百五十八人おります。まだ帰っておりません船が二百七十七隻、人員にしまして五十人というのが未帰還になっております。不幸にしてなくなった人が十三人くらいおります。中共関係では、百八十隻つかまりまして、人員にしまして二千百七十六人、これは未帰還の船が百九隻ありますが、乗組員は全部帰ったというような数字になっております。
  175. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そこで今数字が報告されたわけですが、私の持っている数字と若干違う点もあるようです。それは別にしておきまして、この拿捕されて返還されてない漁船は、韓国関係だけで私の調査では七十四隻という数字が出ているわけです。特にこれは返還されていなくて漁船保険に入っていない、特殊保険に加入していない漁船数が七十四隻、北方海域においては三百九隻、こういう数字が私の手元に実はあるわけです。そこでこの捕獲をされて船舶もろとも抑留される、しかもその船が返還をされない、しかもその返還されないだけでなくて、漁船保険等も入っていない、多大の損害を受けて再び立ち上がることができないという現状が、実は起きているわけです。最近伝え聞くところによりますと、自由民主党と大蔵省では、この保険に加入していない七十四隻の損害についても、ある程度お見舞をして、この人々の生活、あるいは漁業が成り立っていくように処置をしたい、このことが了承されたかのように聞いておるわけです。あるいはまた農林省自体としても、水産庁自体としても、この面についての具体的な調査をしておるように私は伝え聞いておるわけです。このような七十四隻の損害に対して、ある程度政府がお見舞をする、こういう考え方があるのかないのか、あるいはやるという積極的な急患を持っておられるかどうか、これは大臣一つ御答弁願えれば幸いだと思います。
  176. 河野一郎

    河野国務大臣 目下検討中でございます。
  177. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そういたしますと、韓国の七十四隻、損害額は一応九千五百万円程度という工合に、私は聞いておるわけなんですが、韓国海域における場合の漁業保険に入っていないで、しかも七十四隻の船が返還されていないという実態と、北方において三百九隻の船が返還をされていない。道内地帯、北海道だけでは二百七十八隻が返還をされていないわけです。しかもこのうち漁業保険に入っていない船舶は、百九隻あるわけです。これを時価、あるいはまた船の年令等いろいろな面から算定して、時価五〇%程度で算定しても、これは一隻当たり八十万円程度に及ぶわけです。この問題と、今私が質問した韓国の問題とは、全く同質の問題であると思うのです。従って、もしこれを検討して、この問題についてお見舞をするということになりますと、私は韓国の場合と北方海域の場合とは、切り離して考えるべきではなくて、同様に取り扱うべきだと思うのですが、この点の見解はいかがでしょうか。
  178. 河野一郎

    河野国務大臣 あわせ検討中でございます。
  179. 岡田利春

    岡田(利)分科員 大臣にお伺いしたいのですが、あわせて検討してもらっておることはけっこうなわけですが、私はお見舞をする、しないという問題を聞いているのではなくて、同質の問題である、これはだれが考えても同質なんですから、同質と理解するかどうかということを聞いておるわけです。
  180. 河野一郎

    河野国務大臣 そこらをあわせて検討しておるわけです。
  181. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そうすると、これは同質かどうか大臣はまだわからぬということですか。
  182. 河野一郎

    河野国務大臣 御説明のようなケースは同質でございますが、しかし、それぞれ事情が違う場合があるかないかというようなことを、検討しておるわけでございます。
  183. 岡田利春

    岡田(利)分科員 それから、もう一つお伺いしておきたいのですが、現在韓国海域あるいは北方海域で拿捕されて抑留されるという場合に、三カ月以上に抑留が及ぶ場合、政府は予備費からお見舞金を出しておるわけです。しかもこれは、韓国の場合には昭和三十二年の閣議決定に基づきますし、それからソ連、中共関係は三十四年の五月の閣議の決定によって、大体月当たり一万円のお見舞金を予備費から支出をされておるわけです。この一万円の留守家族の見舞金の算定基礎を、私もいろいろ調べてみたのですが、私の調べた範囲では、昭和二十八年当時の生活の実態から算出をして、一万円のお見舞金というものを出しておる。もちろんいろいろ内容は非常にはっきりしていない面があるわけなんですが、いずれにしても、昭和二十八年の生活の実態というものから算出をして、一万円のお見舞金を出しておる。しかも、これは予備費から出ておる、こういう内容になっておるわけです。そこで私は、この一万円の見舞金の算出基礎というものは詳しく積算なされておるのかどうか、しかも私が質問するように、二十八年当時の生活の実態の上に立って、この一万円というものの決定をされておるとするならば、生活保護基準も数度の引き上げを行なっておるわけなんですから、この抑留者見舞についても、当然再考慮をする必要があるのではないか、こう私は理解をするわけですが、この点についての考え方を承りたい。
  184. 伊東正義

    ○伊東説明員 先生御指摘になりましたように、北方につきましては、中国と一緒に三十四年に決定になっております。これは物価その他いろいろの問題もございますので、政府部内でも検討すべきじゃないかという御意見でございますが、水産庁としましても、こういう問題については常に検討をいたしまして、なるべく実情に合ったものに直すべきものは直していくという態度でいきたいというふうに考えております。
  185. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、この際特に大臣にお願いをしておきたいわけですが、先ほどの答弁からいっても、あるいは韓国の海域における操業の実態、拿捕の実情から考えても、依然として長期にわたって拿捕事件というものは続いていくと思うわけです。そこで残された家族の生活をささえる、こういう意味では、やはり見舞金も昭和二十八年に設定されたわけですから、実情に合うようにこれは是正をしてもらいたい。しかも、生活保護の基準も数度にわたって上がっているのですから、私はきわめて当然だと思いますし、しかも、この予算は予備費から出されているわけです。そういたしますと、これは当面予算上そう大きな問題でもありませんから、これは農林省の一つの行政措置でできる問題でもあるわけです。従って、そういう面で特にこの点の再検討を、私は強く要望しておきたいと思うわけです。  それと、もう一つの問題は、韓国海域で拿捕されて抑留された場合は、もちろん当時の韓国側の抑留所における待遇問題等から関連をし、差し入れ見舞金というものを、これは大体四月、八月、十二月のそれぞれの一日、しかも六十日以上抑留されている者に対して、年額三万二千円を三回に分けて支出をされているわけです。しかもこれは、それぞれの県において立てかえ払いをしておいて、そして国が三回に分けて、年額三万二千円の差し入れ見舞金というものを出しているわけです。しかしこの閣議決定からいいまして、韓国の場合、それからソ連、中共の場合には、三十四年五月の決定の当時は日ソ交渉が行なわれ、しかも戦争終結の平和宣言というものが、農林大臣も行かれて、その事態に到達した直後でありますから、待遇その他については、あまり多くの問題はなかったわけです。しかし、最近抑留帰還者の話を聞きますと、その当時から見て、待遇というものが非常に変わってきている、こういうことが実は私どもに報告されているわけです。そういたしますと、韓国の場合に、当時の実情に即応して三万二千円の差し入れ見舞金を出しているのであるが、北方海域あるいは中国においても、やはり抑留の待遇その他があまりよくないという実情が報告されている実態にかんがみて、これもやはり行政措置でできるわけですから、この点検討して、北方海域、中国関係についても及ぼす考えがないかどうか、この点を承りたいと思います。
  186. 伊東正義

    ○伊東説明員 先生おっしゃいましたように、これは相手の事情その他の事情から、こういう両方の区別ができているわけでございますので、現在韓国についてこういうものが必要であるかどうかということも、もう一回検討する必要があるかもしれません。両方一緒の立場に立ちまして、検討はしてみたいと思っております。
  187. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、この際特に大臣お尋ねをしたいのは、日ソ漁業交渉が近く再開されるわけです。しかも政府の代表は高碕代表が、きのうですか決定をしまして、政府としても、その準備を整えているように私は聞いているわけです。そこでこの問題は、特に安全操業、北方地域における漁業全般の問題として、非常に重大な関心を私どもとしては払っているわけです。昨年の交渉の経過を見ますと、一昨年六万七千五百トンに協定をされて、しかも豊漁年である昨年の協定では、これを下回る六万五千トン、さらに昨年いろいろ苦労を重ねて、その結果として、四十八度以南の流し網漁業の操業区域内にさらに一カ所の操業禁止区域が設定され、あるいはまたコマンドルスキー諸島の規制区域設定を余儀なくされた。しかも昨年の交渉の実情から考えますと、さらにソビエト側は漁獲量の規制というものを一そう強化してくるだろうし、あるいはまた四十八度以南の流し網の区域内に、昨年のソビエトの態度から見ても、さらにより一そう禁漁区域を拡大してくると一応予想されるわけです。しかしながら、多くの漁民、多くの国民は、政府のこれからの日ソ漁業交渉に対して非常に大きな期待をかけておるわけです。従って私は、この際大臣から、この日ソ漁業交渉に臨む政府の基本的な態度について見解を承っておきたいと思うわけです。
  188. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、北方におけるサケ・マス漁業の資源をいかに保護するかということにつきましては、決してソ連側に劣らない市大な関心を持つべきであると考えております。従いまして、この漁業についてソ連側から圧迫を受けるとか、ソ連側から日本の漁業について制約を強要されるとかいうようなことでなしに、わが国といたしましても相当の技術的調査もいたしております。従って、これらに対しての見通しについても、ある程度のものはあるわけでございます。従って、長期にわたってこの漁業を育成して参ることができるという見地に立って臨むべきである。われわれはどこまでも、ソ連側としても日本側としても、長期にわたって、両国がともにこの漁業によって、関係漁民諸君がりっぱに漁業を営んでいくことのできるような基盤を打ち立てるということに専念すべきであるという立場に立って、本年は交渉いたしたいと考えております。
  189. 岡田利春

    岡田(利)分科員 これからの交渉の問題でありますから、私も深く立ち入って聞くつもりはないわけです。資源保護についての大臣の見解は、まさしく私も同感であります。ただ問題は、多く業界関係者、あるいはその関係の地域において危惧している問題点として、従来、この漁獲量の決定については、科学的な根拠に基づいて行なわるべきである。サケ・マス資源の減少というものは、単に乱獲だけによるものではないのではなかろうか。北海道におけるニシンやサンマなどの魚族、ことにニシンなどは最近見ることができない。あるいはまた今までサンマなどが全然回遊しないところに、最近は回遊しておるとか、こういう変化もありまして、非常に重大な関心を実は持っておるわけです。日本の政府としてはずいぶん孵化事業にも力を入れておるのですが、サケ・マス資源の対策として、そういう科学的な調査については、昨年から問題になっておるのですが、自信がおありですか。それとも、特にそういう検討については十分それぞれの機関で行ない得る態勢に一年間あったのかどうか、この点特にお聞きしておきたいと思うわけです。
  190. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろの説をなす人がございます。いろいろの説をなす人がございますけれども、われわれとしては、現在の技術の段階におきまして可能なる条件を整えて、そうしてまず魚族の保護、繁殖ということに第一義を置いてやるべきである、こう考えております。
  191. 岡田利春

    岡田(利)分科員 日ソ漁業関係はこれで終わりますけれども、昨年の例を見ますと、漁期が迫って交渉が非常に難航して、それぞれの根拠地では騒然とした状態が現出いたしたわけです。あるいは強行出漁の態勢を整えるという事態まで実は発生しておるわけであります。今度は交渉は早目に行なわれますし、しかもそれぞれ代表もきまって、場所も東京——今度は向こうですか、向こうに変わるでしょうけれども、この点、特に交渉のめどその他について、私はこの際、出漁態勢に混乱のないように、もちろん相手のあることですから、そう簡単にいかぬ面もあるでしょうけれども、特にこの点については留意をして交渉に当たってほしいと思うわけです。さらにまた、高崎日本代表が決定をいたしておるわけなんですが、長年、歴史的に、日ソ漁業の関係について造詣の深い、しかもこの点については現在の内閣切ってのソ連通でもある農林大臣に期待するところは、非常に大きいと私は思うわけです。今度河野さんが農林大臣に就任されたので、特にこの問題の解決について多くの人々が期待していることは、事実だと思うわけです。従って、この交渉のめどについて十分配慮してもらいたいということが一点と、さらに四十八度以南のサケ・マス流し網漁業の禁止区域と漁獲量との問題が、何か不明朗な形で取引されるというようなことが、実は流し網漁業者の場合にずいぶん懸念されている向きもあるわけなんです。この点は、先ほど大臣の見解も聞いておるわけですが、特にこの点について多くの人々の期待にこたえるように、大臣としても最大の努力を払っていただきたいということを特にお願いをいたしておきたいと思います。  大臣関係の質問だけを先にやるそうですから、私は一応残った瞬間を保留しておきたいと思います。
  192. 赤澤正道

    赤澤主査 大臣に対する質問を留保しておる方が多いので、先に松浦周太郎君、西村力弥君、井手以誠君の順序で許可をいたしますが、ただし、事務当局で答弁可能なものは、時間はありますからあとで願って、大臣に対しては数回といたします。松浦周太郎君。
  193. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 私は、植伐の均衡、木材の需給の関係、外材の輸入等についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前にお尋ねをいたしたいことは、林業基本法及び漁業基本法というものをどうされておりますか、まず局長、長官方から、今までのそれを成案する過程における、どの程度まで進んでおるかという点を先にお伺いいたしまして、その上に一つ大臣の決意をお願いいたしたことば、本年の予算におきまして、農業関係におきましては、昨日もお答えになりましたように、新しい項目を十三項目も入れていただきまして、農村の方はほっとしておる状況でございますが、しかし、基本法がないといえども、漁業についても、林業についても、相当な予算措置は講じられております。しかし、政治の態勢としては、やはり農業基本法と並行して、漁業とか林業の基本法を制定すべきではないかという点でありますが、特に大臣は独創的な構想を持っておられますから、基本法の事務的な案ができましたならば、大臣の在職中にこの基本法を制定するためには、少なくとも本国会に出していただたけないかという点をお尋ねいたしたいと思います。
  194. 河野一郎

    河野国務大臣 せっかく事務当局においても勉強はしておるようでございます。しかし私は、今御指摘の漁業もしくは林業において、一般農業と同じように、基本法の制定が、今非常に緊急不可欠なものであるかどうかということについては、実はさほどの緊急性を私は考えておりません。と申しますのは、漁業についてはいろいろ漁業法の改正、林業については森林法の改正等において、当面処理する問題は処理できるというふうに考えておりまして、決して無用論を持っておるわけじゃございません、要らぬということではございませんが、さればといって、緊急に取り上げなければ行政上非常に不便を感ずるというほど、さほど考えておりません。
  195. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 お話のような点もありましょうけれども、政治の態勢としては、やはり均衡のとれた方向においてお進めになることが適当であると思いますので、できるだけ早く出していただきたいということを要望いたします。  その次の植伐の均衡でございますが、事務当局の方から出されました資料によりますと、大体今日の蓄積の総量は十八億四千六百万立方メーターでございまして、これの自然成長量は大体六千万立方メーターでございます。これは三%に該当いたします。ところが伐採の方を見ると、用材の伐採が六千三百六十万立方メーター、薪炭材が千六百三十八万立方メーター、大体八千万立方メーターになっております。自然成長量が六千万に対しまして、八千万やっておりますから、平均にいたしましても、片一方は四・二%であり、片一方は三%でありますから、一・二%というものが余分に切られておる。しかも未利用山林というものが大体奥地林及び保安林等を加えますと、三〇%に該当いたしますから、これは利用されておりません。そうなると、利用部分のものは、伐採の四・二%に対しまして、自然成長量は、利用地域から生産されるものは二%で半分でありますから、倍の伐採をいたしております。こういうような状況を続けていけば、たびたび大臣のお答えになりましたように、国土保安、林産物の増産、あるいは水源の涵養というようなことは行なわれなくなるのです。これは実際の数字の上に立っておりますが、この問題を解決するためには、一つは、先ほども事務当局からお答えがありましたが、奥山を利用するために林道を極力やらなければいかぬ、同時に外材の輸入を増加させなければ、現在の需給の調節ははかれないということになりますが、今年も林道経費は相当見込まれておりますけれども、これらを調整するに足るものではない。今後積極的にやられましょうが、当分の間、植伐の均衡は破れるということの憂いをいたしておるものでございます。従いまして、この利用山林というものの小峰量だけ切るということになりますれば、現在の輸入量というものの二倍ないし三倍を輸入しなければいけない。同時に奥山山林にいたしましても、少なくとも三〇%以上を利用しなければいかぬという結論になるのでございますが、これに対しまして、大臣の御感想をお伺いいたしたいと思います。
  196. 河野一郎

    河野国務大臣 問題は二つあると思います。  第一に、植えておるよりも切る方が多いじゃないかという点でございますが、まず切らなければ植える場所がない。まず自然林を切って、そこにりっぱな植林をしていく、そうして成長率の高いものに切りかえるということが山をよくしていくゆえんであろうと思います。従って、私の言うようなことばかりではございませんが、植えるよりも切る方が先になるということであって、特に昨年のように異常な木材の需要量があったときには、活発にその処置をとるということは、決して行き過ぎじゃないと私は基本的に考えております。ただし、そのあとについての処置は、むろん松浦さん御指摘の通り、林道をどんどん開くべし、植林もどんどんするべしということはやらなければならぬ、これはこの通りでございます。  外材の輸入でございますが、これも私は大いに活発にやるべきだ、これは今言う通り、切ることが先か、外材の輸入が先かということになりますと、必ずしもこちらが先であちらがあとだということはきめられない。そのときの情勢によって、外材が有利に入れられる場合は外材も入れたらよい、また伐採が可能である場合には伐採をしたらよい、そのときそのときによって適宜の処置を誤りのないようにしてとって、なるべく需要者のための不便にならないようにしていくべきであると考えております。今まで多少沈滞しておりました林政を活発にして、奥山の利用についても考える必要があるでしょうし、先般来御議論がありますように、牧野、牧草地としての利用度もだんだん進んで参ることでございますから、奥地の林道の開設、奥地林の利用というような点について、積極的な施策が必要であるということはその通りだと私は思います。
  197. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 結局、未利用山林の利用によって需給の調節をはかり、外材を入れることによって需給の調節をはかるということは全く同感であります。しかしながら、外材の輸入については、よけい入れれば国際収支が悪くなる。さりとて入れなければ日本の山の負担が重くなるということで、今日の国際収支の上では非常に苦労があると思いますけれども、国際収支の関係は緊急なものではあるが、山を一度荒廃せしめたならば、なかなか回復することができませんから、この点と見合って需給の調節をとっていただきたいと私は思っております。  外材の輸入についてでありますが、一番近いところにある外材はソ連材でありますけれども、このソ連材が黒龍江から流れ出る砂のために、あの付近の海が浅くて大きな船が行けない。どうしても二、三千トンの小船でなければ運べない。また日本海岸の都市に運んでくるものはいかだでやっておりますが、タグボートが足りなくていかだで持ってくることが困難だ、予定通りの数量を持ってこられないということになりますから、これに対してはそれぞれの海運業者のやることではございますけれども、海運業者に一つ奨励をしていただきまして、小型の船を多く作ってソ連材を多く運ぶ、あるいはタグボートは日本では多く作っておりませんが、ソ連のものを借りておるだけでありますが、これからタグボートを日本でも作ってやる。そしてできるだけソ連材を多く入れるということも一つの方法であると思います。そう言っても、ソ連の方では切って出す能力が足りない。そこできょうはそのために外務省の方も呼んでおりますが、これは非常にむずかしいことではございましょうが、ソ連と交渉して、一定の地域の山をこちらの方で買い受け、それをこっちで伐採して持ってくるということ、ちょうど漁業交渉のようになりますが、そういう交渉の道をお開きになる考えはないかどうか。これを外務省の方と農林大臣の両方にお伺いいたしたいと思います。
  198. 河野一郎

    河野国務大臣 私はまだ考えておりません。
  199. 沢木正男

    ○沢木説明員 外務省の方でも、主管庁からまだそういう話は聞いておりませんので考えておりません。
  200. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 次は米材の問題でありますが、昨年木材の値上がりから、米材をうんと入れるということによりまして、西海岸のオレゴン州に全部日本の商社が参りまして、そこでは非常な値上がりをして、需給の関係が破れて、オレゴン州の州有林が日本に輸出を禁止したという例があります。これは急に起こった問題でありますからそういうことになるのでございますが、アメリカとの間に折衝して、本年度はどのくらいのものが要るからそれだけのものを用意してもらいたいという、計画的な交渉を今からされる必要があるのではないか。そうでなければ、日本の方がどんどん競争して買ってくるために、アメリカの木材市場を暴騰さして、州有林の輸出禁止といったところまでいってしまうのですから、またそういうことによって値上がりしたものをどんと買ってくると、入れる商社がまた反対に損をするということになるから、これは両方の関係において、前もって必要数量をアメリカに外交交渉されたらどうかという点であります。
  201. 河野一郎

    河野国務大臣 昨年秋の日米閣僚懇談会において話し合いを始めまして、今話し合い中であります。
  202. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 外務省は。
  203. 沢木正男

    ○沢木説明員 私、その方面を担当いたしておりませんで、きょうはインドネシアのお話だということだったものですから、答弁いたしかねます。
  204. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 それではインドネシアの南洋材のことについてお伺いいたします。  日本のラワン材の輸入というものは相当の数量に達しておりまして、ここに統計をいただいておりますが、そのために日本から輸出されるラワンの原料による合板及びインチ材というようなものは、アメリカに輸出する順位からいけば、金額の上において四位くらいになっております。これが他国のものを全部加えますと、相当な数量に上っておりますから、実に大きな産業と言わなければなりません。しかるに、この原料は全部フィリピン一国に依存しております。そのためにフィリピンの方ではいろいろなわがままも言うし、また工場も向こうに建設して、日本と競争するというような現状になっております。それで、この関係の業者は前からいろいろ計画いたしまして、インドネシアの北ボルネオにおけるカリマンタンの森林を開発しようということで、数年来民間同士で政府の援助を受けてやっておりましたが、最近において政府間の交渉にされて、この問題を促進しようとかかっておられるようでありますことは、この業界にとりましては非常に感謝の至りでありますが、どの点までそれが進んでおるか、そこでいつ企業ができるかというような点を、交渉の経過をお聞きしたいと思います。
  205. 沢木正男

    ○沢木説明員 カリマンタンの森林資源開発の問題は、ここ二、三年来南方林業という団体を中心として検討が進められておりましたが、昨年の八月、インドネシアの農林大臣の決定といたしまして、カリマンタン森林開発計画委員会というものが正式に発足せられまして、発足してからすでに半年近くなりますので、現地の大使の御意見では、そろそろ政府間の交渉を始める時期ではないかという意見具申が参りまして、これに基づきまして主管庁とも国内的に連絡いたしまして、目下政府間交渉に入るべき基礎になります計画の審議をいたしておる段階でございます。政府間交渉をやるかどうかは、まだ計画の内容が確定いたしませんと、交渉の基礎が日本側としてございませんので、いまだ決定いたしておりません。国内の問題の発展につきましては、主管庁であります林野庁から御答弁があってしかるべきかと存じます。
  206. 吉村清英

    ○吉村政府委員 先生すでに御承知のように、フィリピン材が漸次減ってくるということから起こった問題でございますが、すでに南方林業開発委員会で検討を進めておられまして、内部的な検討は、民間側の商社、需要者、南洋林業関係者におきまして、せんだってカリマンタン森林開発協力会社設立推進委員会、こういうものが発足をいたしまして、現在これによって、この協力会社の設立あるいは事業の推進というような問題について具体的に検討をしておられるようでございます。一方私どもといたしましては、外務省を初めその他の関係官庁と協議、検討を進めているところでございます。
  207. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 このカリマンタンのが近く政府交渉で話がまとまった場合、各商社が競争して一ぺんに行ってやったってなかなか事業はできぬと思うが、これのやり方に対しましては、公団のようなものを作って、伐採してそれを商社に分けて売るとか、あるいは民間においてそういうような合理的な森林開発生産機関というものをお作りになる考えがあるか、この点は大臣の所管でございましょうから、大臣に御意見を伺っておきたいと思います。
  208. 河野一郎

    河野国務大臣 カリマンタンの問題、伐採につきましては、先方の政府と日本政府との間の取りきめがそう進んでおるとは私は思いません。従いまして、先方の伐採は、日本政府はそれにまだ興味を持つ段階に至っていないと考えております。
  209. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 それでもう一点お聞きします。木材の増伐に対する木材関係の金融の問題でありますが、一般の金融が引き締められると中小企業にしわ寄せになってくることは当然でありまして、木材の伐採の面においても相当な金融難に追い込まれております。そこで私の考え方は、木材業界においても、系統金融として、伐採面においては、林業関係でありますから、農中から融資するというような道を開いていただきたいということであります。これは伐採はおおむね十月から三月ごろまで行なわれますから、夏山もありますけれども、ちょうど農中の金がだぶついておるときにその資金を使って、農業方面に資金の要る場合にはそれが回収されるということになりますから、融資の上においても非常に便利であります。農中の法規の中には、農林漁業の関連産業に対して融資するということになっておりますが、木材関係においてこれを使うことができないという状況でございます。これに対しまして、組織委員になれということであるならば、それぞれの農中に対する出資もいたします、保証もいたしますということでございますから、農中の金を、木材の伐採の面だけは林業とつながりのある面でございますから、これを利用することのできるように一つ御尽力を願いたいという趣旨であります。
  210. 河野一郎

    河野国務大臣 承知いたしました。
  211. 松浦周太郎

    ○松浦(周)分科員 いろいろお尋ねいたしたいのでありますが、要は先ほどから申しておりますように、木材の需給というものは、いろいろなこれにかわる建材も発見せられまして、従来よりも需要量が相当に減っておりますけれども、そういう代替物ができた上における今日の状況が、今申しましたような大きな需要量を持っておりますから、この需要量を満たすとともに、森林を擁護していくということは、国土保安の上において重要な問題でありますから、こういう問題を解決するにいたしましても、やはり基本法というものが中心になって、その基本法のもとに森林法があるといういき方で石固めしていかないと、後に至って切り過ぎて悔いを残すということになりますから、この点に対して善処を要望いたしまして、質問を終わります。御答弁があれば伺います。
  212. 赤澤正道

  213. 西村力弥

    西村(力)分科員 私は、農村の出かせぎの問題について、それだけについてお尋ねしたいと思います。  近年農村の出かせぎが非常な数に上っておることについては、大臣も十分にお知りだろうと思うのですが、その状況について、どういう工合に事情を分析せられており、なおかつこれに対する対策を何らかお考えなのかどうか、事務当局や何かに指示をなすっておられるかどうか。こういう点がありましたら一つ……。
  214. 河野一郎

    河野国務大臣 はなはだ御無礼ですが、出かせぎというのは、今都市へ働きに行っておるという意味ですか、海外出かせぎですか、いろいろございますが…・…。   〔赤澤主査退席、倉成主査代理着席〕
  215. 西村力弥

    西村(力)分科員 言葉が足りませんでしたが、農村から季節的に県内あるいは他県、そういうところに出かせぎに出ておる、そういう事情についてです。
  216. 河野一郎

    河野国務大臣 この点はしばしば問題になることでございますが、私は、現在のわが農村の実情から考えまして、他産業との所得均衡の差額がございます。従って、都市に出て労役を換金することが非常に有利な場合が多い実情でございます。従って、これをあえて拒否するものではない。ただし、御承知通り、非常に過小経営でございますから、これを拡大経営にするということも一つの方法でございます。その場合に、都市に出る者は都市に出て、さっぱりと、あとに残った者は合併拡大というような道でなしに、いわゆる賃金収入も経営の一部に取り入れた兼業農業の育成ということも、農村として考えられるケースだ、わが国では。そういうものについては、そういう経営に対して安定したものを考慮していくというふうに持っていくべきじゃなかろうか。むしろ季節的なものということじゃなしに、兼業農家というような意味合いで育成して参るということも、一つの構造改善の中に取り入れて考えていくことが適当ではないかと考えております。
  217. 西村力弥

    西村(力)分科員 そういう工合にして収入を得るということは決して悪いことじゃない、こう仰せられますが、表面的にはそうですけれども、その出かせぎの実情について大臣内容を十分に検討されていないではないかという工合に私は思われるのです。それはどういう点からそう申しますかといいますと、一つは、昨年度に比べまして、今年度の出かせぎの集中度は、昨年は十二月でありましたが、十一月になってきておる。こういう工合に時期が早まっておるということ、それから二十才以上の出かせぎの率がぐんと増してきておるということ、それから次、三男が減って、経営者及び跡取り、そういう者がうんと数を増してきている。これは農林省の山形の統計調査事務所の資料に基づいておるのです。こういう形に現われてきておるのです。私のところにもときどき出かせぎの諸君が参りますが、この間六人参りました。年令を調べますと、四十代が三人、五十五が二人、五十九が一人、こういう年令になっておるのです。そういう事情をずっと見ますると、これは決してただ単に、現金収入を得るためにそのことは好ましいじゃないかというような工合に簡単には片づけられない。結局、理由を全部聞いてみますと、やはり収入不足を補う、こういうためにやむを得ず出てきているのだ、こういうことになっておるのです。ここまで追い込まれておる現状というものを十分検討せられまして、ただ単に金を得るのだからいいじゃないかという言い方は、もう少し十分に農政の衝に当たる方としての対策を検討せられたい、こう思うのです。三十五年度の農業報告、グリーン・レポートと言いますか、あれを見ますと、出かせぎの問題の調査はありませんし、またプランの方を見ましても、そういう点に対する言及がありませんが、こういう点から言いましても、この問題が非常に軽視されておる。私たちこういう工合に思われてならないのです。そういう点につきまして、今兼業農家の育成というような方向を出されましたが、出かせぎの問題は兼業農家の育成というものとはおそらく趣を異にしておるのではないかと思うのでありますので、何らかこれに対する対策を立ててもらいたい。私の希望したい点は、そういう出かせぎをもって収入を補なって農業経営をやっていかなければならぬという現状をなくする、こういう方針が強く打ち出されて参らなければならぬじゃないか、こういうことを期待したいのですが、それにはいろいろ広範な問題があるでしょうから、簡単にそうばかりは割れ切れない問題があると思うけれども、基本的にはそういう方向をはっきりと打ち出して、強力な対策、こういうものを望んでやまない次第なんです。それで大臣の所見がありましたらお伺いしたいと思います。
  218. 河野一郎

    河野国務大臣 統計は、ごく新しいものを持っておりませんけれども、数字数字にいたしまして、御指摘のような傾向が非常に多い。この事実は何人も否定できないわけであります。そこで、その原因が一体どこにあるかということは、私は大きく分けて二つあるのじゃなかろうかと思います。その一つは、今お話のありました通り、所得があまりはかばかしくいかない、農業自身について希望が薄いという点、もう一つは、機械化された等によって農業労力が現実に過剰になってきた点、この二つの点が私は言えると思うのであります。そこで第二の、農業労力が過剰になってきた、そこで外へ出るという者は別にいたしまして、第一の点につきまして、ことに長男、次三男、青年諸君が農村を離れるのが非常に多いということは、ことに最近の傾向として憂慮すべき状態でございます。私、農村の現状について見ますれば、だれが考えてみても不安である、曲がりかどにきておる、これからどうなるだろうかというこの事実は、実際当面しております農村の青年にすれば、これは実際焦燥の感にかられるのは当然だと思う。そして外に新しい天地を見出そうという努力、そういうものが非常に強く影響していることもまた見のがすことができないと思うのであります。そこで、これが対策として、ただ単に一時を糊塗するようなことをしてみてもしようがない。やはりこれら青年諸君に、将来に向かっての日本農業のあるべき姿に対しての自信を与えるということ以外にはないのじゃなかろうか、こう思うのでございます。そこで、われわれといたしましては、すみやかに日本農業のあるべき将来を想定いたしまして、新しい農村構造の改革、改善、そして主産地の形成、地域農業の確立等の処置によって、そして、それぞれの地方の農村青年がみずからの職業に対して希望と自信を持ってやれるように、一日もすみやかにその体制を作り出すということが必要である。これによって農村の青年が農村において安んじてその業に努力していただくことができるのじゃなかろうかというふうに考えて、もっぱらその道に精進して参ろうと考えておるのでございます。
  219. 西村力弥

    西村(力)分科員 そのようなお話、その通りだろうと思うのです。しかし、今出かせぎが出る原因を所得が少ないということと過剰労力、それが吐き出るということでありますが、農村の現状につきまして、過剰労働力が出かせぎとして出るという工合に把握するということは、見当がちょっとずれているのじゃないか、失礼ですが、そう申し上げなければならないのです。農村には、現実には過剰と不足というものが同時に存在する、こういうようなことが言えるのでありまして、それが現実であります。東北地方なんか、過剰と言えば過剰だけれども、農業経営全体から言いますと、それを過剰という工合には言えないのじゃないか。その間、従前ですと、やはりいろいろな仕事をして、ゆっくりとからだを休めて、春からの作業に対する体力を作るとか、そういうような建前でありましたが、そうやってはおれない。六十に近い人までも出ざるを得ないという工合になってきておる。こういう点を考えていただかなければならぬし、もう一つ問題点としましては、私の県の実情を見ますると、御承知通り庄内地方は米の単作地帯であります。ところが、そこの庄内地方からの出かせぎが県内で一番なんです。これはもう相当の規模の耕作をやっているのですよ。ところが、そこが県内で一番出かせぎをしているというのはどこからきておるか。だから、所得が少ないというよりも、それはやはり装備率と資本効率、こういうもののギャップというか、そういうものからきているのじゃなかろうか、こういう工合に考えられるわけであります。そういういろいろな事情がありますが、その点について希望を持たせるというお言葉でございまするが、なかなかもってそうは参らない。私から申し上げますと、そういう工合にして、自然にだんだん脱落していくということを期待しておるのではないかというような工合に疑われる場合が非常に多い。それは他産業との格差が大きいし、また農業内部においても格差が出てくる、こういうことを自然に期待をして、そうしてそこから脱落をして他産業に転移する、こういうことを望んでおるのではないか。言葉はまことに大臣仰せられる通りでありまして、その通りに参りたいと思うのですけれども、現実の姿はそういう工合には参らぬ。実際は、しぶしぶながらも他に転移することを期待する、そういう工合に考えられておるのではないかというような疑いを十分に持つのです。これは大臣に非礼にあたるかどうか、お答えがありましたら……。
  220. 河野一郎

    河野国務大臣 現実はおっしゃる通りです。これをそのまま看過いたしますならば、おっしゃる通りのような推測があっても、これはもう弁明の余地はないと思うのであります。従って、そういう認識に立って、それが対策として、私どもはこの国会で御審議を願っておりますように、設備の改善、内容の構造を改善して、そして、そこに新しい農村の建設に努力して参るということでせっかくやっておるわけであります。また同時に、新しい農業の育成等についても及ばずながら努力をいたしておるわけでございまして、おおよそわれわれの考えられる可能なものについては、あらゆる角度からきめをこまかく施策をして参ろうということなんでございまして、今おっしゃるようなことについて万能の施策があるか、これは私はおそらくなかろうと思う。どなたが政治をおとりになりましても、たとえば経営規模を拡大するんだ、そこに三町歩作るんだ、五町歩作るんだと言いましても、なかなか今山林をどうする、何をどうするとかいったところで、そこにそんなものが急に降って生まれるわけでもありませんし、急にそういうものができるわけでもなかろう、そこに今のような耕作をしたところで収入がそうふえるわけでもなかろう、農村青年の期待をにわかにそこにつなぐことができるかどうか、なかなか一つの施策で万能のものが生まれてこぬだろう。そこで山形地方において、ああいうふうに先輩がいちはやく果樹の栽培、いろいろな多角経営に入られたというようなことが、かえって今日非常にこれらの経営を助けておるが、一方米作地帯が比較的おくれておるというような現実、この事実も私は見のがすことはできないと思います。従って、これらの地方にも裏作、畜産を入れるとかいうような面で、きめをこまかく農業経営を多角化して参るということでなければいかぬのじゃなかろうか、こう思うのでございます。
  221. 西村力弥

    西村(力)分科員 これは特効薬的な策というような工合に、今すぐ即効的にできるものではない。これは時をかして、また広範な施策によって実現しなければならぬということは私もわかるわけです。  ところで、今兼業農家の問題が出ましたが、兼業するにしましても、現実にわれわれの県あたりに来ておるいろいろな工場に働いておる人々の給与状態を見ますと、実際は臨時工で大体一日二百円、本工で二百三十円、メリヤス工場あたりは百九十円ぐらい、女工さんがそのぐらいの給与だ、こういう工合になっておるのです。こういうことで、兼業収入で事を処理していこうという大臣のお考えは、われわれがよく言うた農民を首切るのだという方針、池田総理が何割か整理するのだと言うことと違う。違う方向をこの前の本会議から河野大臣はおっしゃったわけですが、しかし、そうおっしゃっても、現実にはそんな状態にあるということです。ですから、ここでこの農業のプランを見ましても、低開発地域工業開発促進法案をフルに活用して云々、こういう一つの方針を出していらっしゃいますが、ああいうことでほんとうに兼業収入でもって兼業農家として成り立ち得るような収入を得られるということは期待し得られない、こういうことなんです。ところが、今度新産業都市建設促進法というのが出ております。あれに対しまして大臣はおれも入れろという工合におっしゃって、その中に関係大臣として入られた。こういわれるが、あれはごく一部の地域、ことに臨海地域、そういうところを開発する。そのためには莫大な金がつぎ込まれる。そういう工合にやっていったら、ますます農村の地域の開発、就業機会の拡大なんということはおくれるし、その間がうんと開いてくるに違いないと思うのです。ですから、今度の新産業都市建設促進法案に大臣関係大臣として入られたというその考え方を一歩進めて、あの新産業都市建設の構想は、決して低開発地域、農村地域をおくらせない、同時解決、同時引き上げ、こういう方向に持っていくという工合に早急に考えられる必要があるのではなかろうかと思うのです。そういう点を御考慮なければ、結局兼業農家と言うてもだめだし、また新産業都市建設促進法の関係大臣として入られたあなたの立場というものはおかしくなってしまうのじゃないか、 こう私は思うのです。そういう点についてはいかがですか。
  222. 河野一郎

    河野国務大臣 あなたのお考えの通りでございます。あなたの今お話しになりました通りの考えで私は入って、そして工場分散、地方格差の是正というような意味を考慮して、新しい産業都市を建設して参ろうというつもりで入ったのです。
  223. 西村力弥

    西村(力)分科員 そういうお考えは早急に具体化されることを望みたいのですが、その答弁だけで具体化の方式を今求めることは無理かもしれません。しかし、そういうことはやはり真剣にやっていかないと、そういう六十代の人が出かせぎに行かなければならぬ。農村の人々は五十五なら相当の年輩です。そういう人々が出かせぎに行かなければならぬ現状を解決するのに、兼業化なら兼業化の方向をとるというなら、やはり新産業都市に集中的に投資していくというふうなあり方に対しては、農林大臣としては、はっきり同時引き上げという方向を考えてやっていただかなければならぬのじゃないかと思うのです。  それからもう一つは、箱根会談であなたはずいぶんいいことを言われたように新聞面で知っておりますが、池田内閣の所得倍増の政策が初年度から大体少しうまくなくなった。しかし設備投資が相当いきまして、重工業関係が生産量を相当期待できるようになったのですが、ここでEECという欧州のブロックが相当スピードを持って強力になってきたし、アメリカはアメリカでそういう方向をとっているし、この際相当やはり農業労働のスムーズな転移のためにも、われわれはそういう政策面の転換ということが望ましいではないかと思うのですが、このことは池田内閣の方針としてそう簡単にはいかないというふうに申されるかもしれませんけれども、今後あなたに期待する点は、こういう行き詰まった財政を転回するために、ぜひ一つ相当の決意を持ったいわゆる貿易構造の改善と言いますか、そういう面なんかにつきましても期待していく。そういうことがもう抜本的な解決になるのじゃないか、こういうことが考えられるわけなんです。  それでいろいろ申し上げましたが、この農村の出かせぎ問題につきましては、山形の統計調査事務所が調査しておりまするが、この調査を本年度は徹底的に行なって、その内容を分析し、それに即応した対策というものを樹立されるように願いたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  224. 河野一郎

    河野国務大臣 承知いたしました。
  225. 倉成正

    ○倉成主査代理 井手以誠君
  226. 井手以誠

    井手分科員 朝から長い時間お疲れのことと思いますので、簡単に二、三点だけをお伺いいたしたいと思います。  まず韓国米の買付のことでございますが、新聞によりますと、向こうからの申し出があって、十万トンあるいは五万トン近くは買わねばならぬであろうという情報が伝わっておるのであります。そのいきさつをお伺いしたいと思います。
  227. 河野一郎

    河野国務大臣 韓国側から米の買い入れの要望がございましたので、わが方としても所要な量については、 品質、価格等についてよく話し合いました上で、必要なものは買おう、こう考えております。
  228. 井手以誠

    井手分科員 必要なものは買おうということでございますが、それはちょっと私受け取りがたいのでございます。なぜならば、一昨年でございましたか、この席でも、あるいは第一委員室でも、この前三十五年度に韓国から三万トンを買い入れる場合に、そのときはちょうど抑留漁船乗組員を帰すという人道的な問題があったから、今回に限って人道上の立場から買うことにいたしましたという答弁が、当時の総理並びに農林大臣から明確にあったわけであります。御記憶であると思います。そういう特別の事情であるから今回に限りということが何回も繰り返し言明されておる。その韓国米について、向こうから相談があったからまた買うかもしらぬということでは、これは日本の農民にとっても、あるいは絶糧農家の多い韓国農民に対しても、それは大臣言葉を私どもは簡単に受け取るわけには参りません。前の言明とどういうふうになりますか。
  229. 河野一郎

    河野国務大臣 前の言明は、その当時の事情でそういう言明があったと私は考えます。しかし私農林大臣として、先般別の機会にも申し上げました通り、今年度の作柄からいたしまして、良質米がある程度適当な価格で入手できるならば、これを入手することは適当であると考えて、この商談に応じようという考えでおります。
  230. 井手以誠

    井手分科員 言明とは別に、それでは買わねばならぬほどの国内の食糧事情でございますか。日本の食糧事情のためにお買いになるのか。その点をはっきりしておいてもらいたい。
  231. 河野一郎

    河野国務大臣 昨年産米が天候のかげんで比較的軟質の米が多い、もしくは未熟の米等もありますので、良質米を一部加えて配給することが適当であろうという考えのもとに、もしあれば買った方がいいのじゃないかと思います。
  232. 井手以誠

    井手分科員 業務第二部長にお伺いをいたしますが、日本の食糧配給事情は、韓国米を買わねばならぬほど需給が逼迫いたしておりますか。端的に、イエス、ノーだけでけっこうですからお伺いしておきます。
  233. 中西一郎

    中西説明員 数字的には先ほど大臣が申しましたように逼迫をいたしておりません。質的にそういういいものがあれば買った方がいいのではないかということでございます。
  234. 井手以誠

    井手分科員 適当なものがあれば買った方がいいという程度の需給程度でございますか。この需給関係でなおどのくらいの量があったら食糧庁としてばいいわけですか。今後の生産計画も関係がございますから聞いておきたいと思います。
  235. 中西一郎

    中西説明員 幾らなければならないという詰めたことではございませんが、質的に低品位米が多い現状なので、配給米の質をならすという意味である程度の数量はあった方が操作がやりいい、そういう意味合いでございます。
  236. 井手以誠

    井手分科員 それでは米は今後もどんどん増産しなくては需給が十分ではない、安心できないという立場でございますか。
  237. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、昨年収穫期に起こりました集中豪雨、第二室戸台風等の影響を受けまして、非常に良賢ならざる米の量があったのでございます。そういう関係で、量的には今業務第二部長からお答えいたしましたように、不足を感じておりませんが、品質の上から申しますと、あまり良質ならざる米が集荷されておるという現状から見まして、配給米が悪い悪いという声があります際でございますから、ある程度の良質米は加えて配給した方がいいではないかという考慮に立っておるのです。
  238. 井手以誠

    井手分科員 それでは良質米としてどのくらいなお必要でございますか。配給を円滑にする上においては何万トンくらいですか。
  239. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、これは絶対なければならぬものじゃない。質で約束しておるわけではございません。しかし、配給いたす立場から、そういうものが適当な価格で入手できるならば、多少でも良質米を加えて配給する方が適当であろうという配慮に立って考えておるのであります。
  240. 井手以誠

    井手分科員 そのよし悪しは別にいたしまして、政府の方ではどの程度まで論議が進んでおりますか。大体何万トン買おうというところまで行っておりますか。
  241. 河野一郎

    河野国務大臣 そこまで行っておりません。
  242. 井手以誠

    井手分科員 今度金情報部長が参っておりますが、その点もあるかと思いますが、きょうあすあたりに大体きまるということでこざいませんか。
  243. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうふうに私は考えておりません。先方と品質、価格等を十分商談いたしました上で、最終的な決定は農林大臣においていたす所存でございます。
  244. 井手以誠

    井手分科員 それでは国内の配給上の都合から韓国米を輸入なさるということであるならば、配給に必要な良質米でない、あるいは価格の点で調子が悪いということであれば、お買いにはならない、かようなことでございますか。
  245. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  246. 井手以誠

    井手分科員 それでは絶糧農家が多い韓国の農家、そういったことなり、いわゆる日興関係とは別個に、日本の国内食糧事情だけからだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  247. 河野一郎

    河野国務大臣 先方の申し出がございましたから、その先方の申し出に対して、国内事情を勘案いたしましてこの商談に応じよう、こういうことでございます。
  248. 井手以誠

    井手分科員 最初に大臣は、前回は福田農林大臣が今回に限りと言われたが、自分は今度が初めてである、今回も国内事情によって闘うというお話がありました。私は国内事情だけで韓国米の輸入が、買付が割り切れるものではないと思うのです。この論議はあとでいたします。今回に限りということは、大臣ごとに今回に限りでございますか。あるいはまた一年ごとでも今回に限りで済むわけですか。それでは信用できませんよ。  大臣、私はもう一言つけ加えますが、米の生産がだんだんふえてきた。これでは制限ということも起こるかもしれません。その制限の前に一つ成長産業をうんと伸ばしていこう、それが私は日本の農林省の基本方針だと思う。農業基本法もそこに出発しておると思うのです。だから需給関係でないと私は思う。私は別の機会に総括質問でまた機会を得てあなたに聞きたいと思う。私がここで聞きたいのは、今回に限りというそういう言明が、そういう日本の農村の流れの中に、日本の食糧も余るようなものを外国からわざわざ買う必要はないじゃないか、外国米が一年分もたまっておるではないか、そういういろいろな論議の中に、いや、抑留漁船乗組員の釈放という人道上の問題があるから目をつぶってこの際だけは一つ買おうじゃないか、こういうことできまったわけですよ。だから今回限りになっておる。ところがあなたは、今回限りというと、あれは前の大臣である、おれは今回が初めてだ。今回限りというのは、やはりそこに相当の長期間を見通しての言明でなくてはならぬと私は思う。そんなに簡単に、今回限り、今回限りなら、春でも夏でも秋でもできることです。そんな簡単な今回限りがあってはならぬと思う。どうですか。もう自分は初めてだから今回限りということですか。
  249. 河野一郎

    河野国務大臣 前回は人道上の立場に立って拿捕漁船の交換というような理由のもとに、今回限りこういうことをやりますという御答弁があったのではなかろうかと思います。私は今申し上げた通りな理由で、先方の要請にこたえて、もしこちらの所期する良質のものが所期する価格で商談ができるならば、日本の立場に立ってこれは商談に応じていいのじゃないか、私はこういう立場をとっております。
  250. 井手以誠

    井手分科員 この問題はこれで終わります。また別の機会に譲りたいと思っておりますが、そんなに問題になったときに、今回限りという念を押されたことを次々にかえられたのではたまったものではございません。ここで特に私が申し上げておきたいことは、食糧配給の都合からよその国の米を買わねばならぬというお言葉は、私どもは十分記憶にとどめておきたいと思います。この点は後日さらにお伺いをいたしたいと思っております。  次に、これは小さな問題ですが、お伺いしたいと思います。自治省は見えましたか。
  251. 倉成正

    ○倉成主査代理 農林大臣はもうよろしゅうございますか。
  252. 井手以誠

    井手分科員 いや、その前に、私は大臣の実力を買って聞きたいことがある。簡単な問題でも、あなたの力をからなければだめですから。  自治省にお伺いをいたしますが、農村の共同畜舎に対する課税はどんなふうになっておりますか。また住宅に対する課税の免税点、基礎控除等はどうなっておりますか、その点をお伺いいたします。
  253. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 農家の固定費席税の課税の問題でございますが、農家の家屋並びに土地につきましては、それが農業の用に供されておるという事情、それから農業の用に供されておりますために、一般の住宅の用に供する部分とそれ以外の作業の用に供する部分というのがございまして、一般的に家屋の場合には、その床面積が広いというような事情を考慮いたしまして、その使用の状況を見まして、個々に市町村においてその評価につきましては特別な考慮を払うという建前をとっております。さらに農地につきましても、現在の農家の農地の収益の状況といったようなものを加味いたしまして、一般の土地との均衡をとりながら、できるだけ低い価額で評価をしていくという建前をとっておるわけでございまして、現在の現実の売買価額等に比較いたしますと、相当低い価額での評価が行なわれているということが言えると思います。  さらに……
  254. 井手以誠

    井手分科員 ちょっと途中だけれども、時間が大事だからずばりずばり言って下さい、基礎控除が百万なら百万、きちっと。それだけでいいのです。
  255. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 固定資産税につきましては、別に基礎控除はございません。免税点につきましては、土地につきまして二万円、家屋につきまして三万円、償却資産につきまして十五万円という免税点がございます。畜舎、鶏舎等につきましては、それが課税対象にしなければ通常の家屋と均衡を失するというようなものでない限りは、できるだけ課税対象からはずすという考え方で処理しております。
  256. 井手以誠

    井手分科員 不動産取得税について。
  257. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 不動産収得税につきましては、住宅の場合でありますと百万円の基礎控除がございます。それから住宅用の土地につきましても、その取得につきましては六十万円の控除があるわけでございます。それ以外はございません。
  258. 井手以誠

    井手分科員 それを聞きたい。それだけでよかったのです。  大臣にこの点をあらたまってお願いしたいのです。農家の畜舎は生産手段である。何もぜいたく品ではない。これはなくてはならぬものです。ところが最近、あなたの方針に従って各地方で共同畜舎をどんどん建てているのです。豚の暴落などは別問題にいたしまして、次々に共同畜舎を建てておる。その無理して作った共同畜舎にどんどん不動産取得税がかけられておる。住宅の場合は今お話のように百万円までは免税になっておる。もちろん全部課税されるわけじゃございません。今までは制度金融や農林中金から借りて共同畜舎を建てたものについてはある程度減税されておりました。今度また国会に出されている地方税法改正についても、近代化資金、それから農林漁業金融公庫法の第十八条ですか、それに基づいて借りたもののその分についてだけ免税をされておる。しかし、こういう近代化資金などというものは一市町村にせいぜい一口か二口です。ところが、共同畜舎は一市町村に十も二十も次々に建っていくのです。政府の方針に従ってやり繰り算段して作った共同畜舎に、ぱかんと不動産取得税がかかってくる。実はきのうも私は県内の三カ所から、困ったことだが何とか方法はないかという相談を手紙で受けてきました。生産手段である、なくてはならぬ共同畜舎ですよ。あなたの一番大事な成長産業であるこの共同畜舎に、税金がこんなにどんどんかかっては大へんですよ、片一方は百万円も免税になるのに。大体趣旨はおわかりだろうと思います。この際やはり、これは長い間懸案でございましたが、特に最近成長産業などということでどんどん建てておる。そのくらいのことは池田内閣随一の実力者は、わかっているはずだからやって下さい。どうです。
  259. 河野一郎

    河野国務大臣 よく御趣旨わかりました。善処します。
  260. 井手以誠

    井手分科員 期待しておまかせしてよろしゅうございますか。
  261. 河野一郎

    河野国務大臣 実情について自治大臣、大蔵大臣と談合いたしまして、よく御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  262. 井手以誠

    井手分科員 もう少し色よい返事がほしいですな。せっかくの質問ですから、そのくらいのことは、腹にきめたら大体あなたならできると思うのです。非常に無理だけれども、期待に沿うようにやる、こういう言葉ができないはずはないと思う。どうぞもう一ぺん・…。
  263. 河野一郎

    河野国務大臣 大体やるつもりでございます。
  264. 井手以誠

    井手分科員 次にもう一点だけお伺いしたいと思いますが、これは十何分かかかりますが、お許し願いたいと思います。砂糖利潤についてはずいぶん問題になって参りましたが、この点で一つこれも農林大臣の奮発を願いたいことを提案いたしたいと思っております。  その前に、食糧庁にお伺いをいたしますが、世界各国のおもな国の砂糖の小売値段一つ教えていただきたいと思います。
  265. 河野一郎

    河野国務大臣 恐縮ですが、ちょっと私から一言……。  砂糖の問題につきましては、午前中にいろいろお話がありまして、私どもといたしましては、前回予算委員会でいろいろ御審議がございましたものを、直ちに省内におきまして、抜本的にこれが改善方策をどうしたらよろしいかということについて目下研究、検討中でございます。すみやかな機会に根本的な対策を改善いたしたいと考えて、せっかく準備いたしておるのでございますから、その点御承知の上、一つお尋ねをしていただきたいと思います。
  266. 井手以誠

    井手分科員 ほかの方の質問も、私がいないときの分は大体聞いて、重複しないように考えて、また、せっかく根本的な対策を検討中でございますならばその参考に聞いていただきたいと思うのです。ずばり申しまして、あなたに砂糖の専売制の意思はないかどうかということです。これは今後の対策の中心になることでございますので、お伺いいたします。砂糖の専売制です。その前に、やはり世界各国その他を聞いておかなくちゃならない。そういう意味で、長くかかりませんから、どうぞ一つ……。
  267. 中西一郎

    中西説明員 ちょっと手元の資料を探しておりますが、私の記憶では、日本の卸売価格で恐縮なんですけれども、日本の卸売価格は非常に高価で、おおむね百二十二円見当であるということで従来やってきております。イタリー等の工場出し値は、ヨーロッパの中では高い方だと聞いておりますが、百十円程度だといいますから、日本より十円程度安い工場出し値だということを記憶しております。
  268. 井手以誠

    井手分科員 今私は図書館で一番新しい年報の中から情報をとって参りましたから、聞いていただきたいと思うのですが、小売価格は、日本に対してイギリスは大体半分ですね。フランスが大体日本の小売価格にして六掛くらいです。それから、西ドイツが六掛半くらいです。チェッコは、これは特別ですけれども、三分の一くらいの値段です。これは特別です。もっと安いところもありますよ。アメリカが大体六掛程度です。日本が百四十円であれば九十何円くらいのものです。日本は世界でユーゴに次いで二番目に高い国です。世界で一番高い国だと言ってもいいでしょう。そういうように高い値段でなぜいつまでも配給しなければならぬかということになるわけです。  それでは、食糧庁にお伺いいたしますが、三十五年度における砂糖会社利益一つ教えていただきたいと思う。製糖会社利益金額を教えていただきたい。
  269. 中西一郎

    中西説明員 三十五年度お話でございますが……。
  270. 井手以誠

    井手分科員 私の方で資料があるから、莫大な利益があるということはみな知っておるから、いいです。そんなことではためですよ。  そこで、これはいろいろ論議されたことですから省略をいたしますが、今年の十月からの自由化には砂糖は入っていないようですが、砂糖の自由化について農林大臣どんなふうにお考えですか。通産省ではやりたいという意向もあるようですが……。
  271. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、積極的に抜本的な甘味対策を樹立して、そうして、国内の生産の増強と、外糖の適正な販売というものについて案を立てようと考えております。
  272. 井手以誠

    井手分科員 それでは、もう結論に入りますが、国内の甘味資源の問題は、これはやはり切り離して解決すべきであると思う。これは多くの人の意見がそうなっていると思う。結局、今日は、国内甘味資源を保護しなければならぬということのために、超過利潤を生んだり、いろいろなことがうわさになっているのですから、やはりこれは切り離して、国内の甘味資源政策というものは別個に保護政策を立てるべきだと思います。私は砂糖ほど専売制を実施しやすいものはなかろうと思います。しかも、世界じゅう一番高い砂糖をいつまでもなめさせるというわけにもいかぬと思う。あなたからもすでにお話が出たと思いますが、前には利益の一部を政府に徴収するという法律案も国会に出されておる。これは専売制の前ぶれみたいなものですね。小手調べみたいなものです。ですから、おそらく、あなたの腹の中には、やはり専売にしなければいくまいというお考えが多分にあると思う。これはりっぱな考えだと思う。根本的に解決するには専売制以外にはないと思う。簡単には判断できないかもしれませんが、それに近い対策を立てるべきだと私は考えております。  もう時間はありません。結論だけを申し上げておきますが、いろいろ考えて参りますと、これ以外になかろうと考えておりますが、一つ砂糖について、安い砂糖を配給する。この物品税は幾らかと申しますと、一カ年間に関税が三十七年度には五百二十一億円。これはやはり今後貿易の自由化ということになって参りますとかなり影響を受けてくるでしょう。それから、税が三百八億円。これだけの税金がある。莫大な業者の利益があるということを考えますと、少なくとも外国並みくらいの小売価格にするような専売制あるいはそれに類似した制度を立つべきではないかと私は考えておりますが、一つみんなを助ける意味で思い切った政策をやってもらいたい。
  273. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げました通り、すみやかに基本的な案を立てて対処するということをこの機会に明らかにしておきます。
  274. 井手以誠

    井手分科員 せっかく私は、専売制はどうかと聞いておるのです。いろいろな資料をもって申し上げておるのです。研究中でありましょうけれども、また影響も多いでしょうけれども、そのくらい思い切ったことを言えぬことはないと思う。せっかく今研究中だからということでは済まされません。いやしくも河野さんがそんなことではいけません。しっかりやって下さい。
  275. 河野一郎

    河野国務大臣 専売でやるか何でやるかはこの機会に申し上げる段階に至っておりません。
  276. 井手以誠

    井手分科員 専売でやるかどうかは簡単に申し上げられぬとおっしゃいますけれども、やはりそれに近いものをやらなければならぬのではないですか。根本的な対策はないではございませんか。そうして、イギリスが公社でやっておるように、輸入は一手に引き受けて、そして国内の業者に原糖を入札させてどうするというような、何かそういった構想が必要じゃございませんか。
  277. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話しの通りに、一手に買い上げて、それを直ちに業者に渡してやるということも一つの方法と考えます。また、御指摘のように専売となりますと、これは農林大臣所管から所管が変わります。ということでございますから、いずれにいたしましても、これは全体に対して今後どういうふうにするか、抜本的な方策について実は検討中でございます。従いまして、その結論がどういうことになりますか、これは閣議の決定を待たなければ私からこの機会に申し上げる段階ではないと思いますので、私として申し上げ得る範囲をお答え申し上げた次第でございます。
  278. 井手以誠

    井手分科員 あなたはときどき非常に奇想天外なりっぱな意見を方々でお打ち上げになる。だから、ここで言えないはずはない。だから、専売制とはっきりは申しませんよ、それに近い構想、少なくとも一手に輸入品を買い受ける機関。専売制と言ってしまえば、あなたはほかの大臣関係があるとおっしゃいますから、それはそうでしょう。しかし、そういう構想が必要じゃないかと思いますので、それに対してどうですかとお尋ねをいたしておるのであります。そして、外国並みに小売価格が安定するような、そういう機関を設けるとか、そういうことにするということはいかがでございますか。
  279. 河野一郎

    河野国務大臣 施策としてはいろいろあると思います。御指摘のようなことも一つ考え方かと考えます。しかし、われわれといたしましては、この際本質的に問題を目下探求中でございますので、結論が出た上で、いずれ閣議の決定を経て発表するという段階になるだろうと考えております。
  280. 井手以誠

    井手分科員 これだけで終わりますが、一つ思い切った、できれば専売制、そこまで思い切った対策を立てるように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  281. 倉成正

    ○倉成主査代理 西村力弥君。
  282. 西村力弥

    西村(力)分科員 農林省の統計調査部長おいでだろうと思うのですが、農村の出かせぎの実態についての調査統計がございますか。
  283. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 ただいまの御質問でございますが、私どもの方では出かせぎ労働者の実態そのものについての統計資料はございません。
  284. 西村力弥

    西村(力)分科員 私は、労働省じゃなく、農林省の統計調査部に聞いておるのです。
  285. 久我通武

    ○久我説明員 御指摘のような出かせぎだけの調査というものは特にございませんけれども、農家から他産業へ人が出て参ります状態を調べます就業動向調査という調査の中で調査をいたしております。
  286. 西村力弥

    西村(力)分科員 完全に他産業に移動する、こういうことじゃなく、的に収入を補うために行くような、そういう点の調査というもの。先ほど大臣にも私は山形の統計調査事務所の資料基礎にしてちょっとお話ししてあったのですが、山形でやっておる調査は、そうしますと独自にやったということになるのですか。これによりますと、先ほど申しましたように、他県への出かせぎが、去年は十二月に集中しておって、十二月に五三%だったのが、ことしは十一月が五六%で、十一月に集中している。これだけ追い込められてきたということを示しているのですね。それから、十九才以下が減少して二十才以上が増加しておる、こういうようなこと。それから、経営者などの出かせぎが去年に比べて一四%も増しておる、次三男その他の出かせぎがぐんと減っておる、こういう調査が出ておるのですが、そういうことがありますので、詳しく集計せられたんじゃなかろうかと思うのですが、一体、こういう季節出かせぎをしておる府県は、今のような調査の範囲でどう現われておりますか。
  287. 久我通武

    ○久我説明員 ただいま御指摘のようなことも就業動向調査の中で含めて全国的に調査をいたしております。その結果も、昨年の大体一月から九月までの分を取りまとめまして、三カ年間比較をしておりますが、その比較の結果によりますと、先生の御指摘のように、出かせぎもまた相当に多く出ておりますが、昨年、度の御指摘のときの出かせぎは、主として土木建築その他の卒業に特に出ておるようでございます。ただ、何分にも全体の規模の小さな調査でございますから、一応の結果としては公表されておりますけれども、非常につまびらかにしておるということではございません。
  288. 西村力弥

    西村(力)分科員 不十分な資料だけで、グリーン・レポートにあるように、他の産業に完全に移ったというようなことを調べておられるのでしょうか。季節的な人的な出かせぎ、そういうものはあまり十分じゃないというお話でありますが、いずれにしましても、現実にそういう工合に起きているのでありまして、そういう調査はどういう工合に生かされておるか。これは経済局長の方が担当かどうか、調査はあなたの方でしょうが、この調査に基づいて、ほんのちょっとしたことでも対策的なものを考えておられるかどうか。これはどなたですか……。
  289. 久我通武

    ○久我説明員 この調査は、全国で農家経済調査をやっておりますところの全部の部落につきまして、全国で約六万戸の農家を選びまして、毎月その農家の世帯員がどのようなふうに移動しておるかということを調べる調査でございます。従いまして、社会的な一般的な移動あるいは特に職業的な移動等に分けまして毎月報告をとっておるのであります。そういたしまして、大体これは三十四年から始めておりますが、昨年の一月−九月の間を——これは四月が学校の卒業生がございますので、この辺で落ちつきますので、この間のものを取りまとめて先般公表しておりますが、大きな昨年度の傾向といたしましては、世帯をあげて離村するというものが例年に比べまして非常にふえておるところが非常な特徴でございます。ただいまお話の出ております他出の出かせぎというものは、昨年は御指摘のように非常にふえておりまして、全国的に見まして一七%ばかり平年よりも多く出ておるという状態でございます。ただ、他出は、申し上げるまでもございませんが、年々非常に不規則な結果が出ておりますので、これがどの程度が継続するかということがなかなか判明できませんものでございますから、十分なお答えはいたしかねますけれども、昨年実際出ておるのはどういうことで臨時的に他出しておるかということを見ますと、一番土木建築業というようなものに昨年は特に出ておるようでございます。これは全国的に毎月とっておる調査の結果でございます。山形のも山形の報告からとっております。
  290. 西村力弥

    西村(力)分科員 仕事があるから出かせぎに行くというようなことになるかもしれませんが、前のように、農業技術を修得するためとか、自分の見聞を広めるためとか、そういう種類のものはほとんどなくなった。やはり、より多く現金を得ようという性質の出かせぎが一番よけいになってきている。しかも、このごろの出かせぎの形態を見ますと、出かせぎが本業でうちに帰って農業をやるのが副業的なもの、年間を通してひまなときにはどんどん出ていき、忙しいとき帰ってくるもの、それから、冬季間の農閑期だけ出かせぎするもの、こういう三形態になっているのです。いずれにしましても、これは農家のあり方としては正常な形ではないはずなのでありまして、その実態を十分に調査せられまして、困難でもありましょうが、それに対する対策というものが考えられていくように期待したいと思うのです。  次に、労働省にお尋ねしますが、出かせぎの人がたずねて来たり、あるいは会ったり、あるいは資料によって調査したりしてみますと、職安を通じて行った出かせぎ者と、そうでない者と、両方ありますが、その比率が、大体これは腰だめでありますけれども、職安を通して行ったものの二倍くらいは縁故出かせぎである、こういう工合に推定されるのです。これはどういうところから来るのだろうか。労働行政のあり方としては本来的には全部職安を通ることを期待したい、こう言われるだろうと思うのですが、この現象について、私の推定によりますと、職安を通して行くと、結局税金の算定にあたってこれを隠し切れない、こういうようなところにあるのじゃなかろうか思うのですが、そういう点に対する一つの検討というものがあられるかどうか。それにつきましては、税金の対象にされる、こう言われますけれども、実際出てきて働く人々は、八百円ぐらいの賃金で、食費は大体二百三十円、それにふろ代二十円、あるいは往復の旅費、それに仕度金、そういうような取られるものを加えますと、一日幾らにもなりません。ですから、一日三百円蓄積したとしましても、百日で三万円にしかならないのですから、こういう実態を見ますと、そうおそれる必要もないだろうと思うのですが、税金の対象になることをおそれる、こういう工合に見ておるのですが、そういう点は検討なさったことがございますか。
  291. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 私、基準関係でございますので、所管外のことはあまりよく存じませんけれども、いずれにしましても、基準法でも、職安法でも、労働条件を明示してやらなければいけない、こういう問題がございまして、それに基づきまして種々の監督がございます。あるいは正式の窓口を通らずして直接の縁故募集でやっていくという場合もあろうかと思います。税金その他につきましては、ちょっとつまびらかではございません。
  292. 西村力弥

    西村(力)分科員 出かせぎ者の労働条件は大がいの場合は非常に劣悪です。賃金に限らず、労災保険、あるいは失業保険、健康保険、そういうものが全然見られていないという場合が多い。しかも、第一次請負でなく、第三次請負とか、そういう下請下請のところに行っている諸君は、ほとんどそういう労働保護というものを受けないで、裸のままで危険な仕事をさせられておる、こういう状況にありますが、これに対して労働監督行政として今までどんなことをなさっていらっしゃるか、お答え願いたい。
  293. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 特に基準法上の問題につきましては、出かせぎ労務者というものにつきましては、短期の雇用契約を有期的な雇用関係という形で把握しております。ことに土建関係、農林水産関係その他非常に多いわけであります。これらにつきましては、特に基準法の十五条の労働条件の明示の件についての違反、あるいは、それに伴いまして、賃金を正規に支払わなかったり、あるいは土建関係等におきましては時間外の割増し賃金の違反、あるいは労災法上の休業補償を支払わないというような、労働者の実質的な労働条件の違反が非常に多うございます。ことに出かせぎ県の監督署におきましては、その点を重点的に監督実施しておる次第であります。
  294. 西村力弥

    西村(力)分科員 今まであまりそういう監督行政を発動されたことが多くなかったという工合に私は見ておるのです。労災保険なんかは、所によっては、五十人おれば十人くらい加入させて、何か事故があればその人の名前で労災保険の適用を受ける、こういうような事例が相当あるのです。ことに、農村で働いておる人々は、そういう知識もないし、また、そういう交渉をやってやろうというような癖もついていませんので、非常に危険な状態のまま働かせられる。その点は、あなたの方で十分に監督権を発動されて、ことに注意してやっていただかなければならぬのじゃないか、こう思うのです。  それから、出かせぎ者の賃金未払いの苦情は去年はどのくらいありましたか。
  295. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 私の方で、この出かせぎ労働者の賃金不払いの苦情というものを特別には把握しておりません。個々の事案について監督署において申告を受ければ、業務の中では特にこの中背を最優先として監督を実施しております。ただ、出かせぎ労務者につきましての賃金の不払いは非常に多い件数を占めておりますので、この点についての申告を重点に監督を実施いたしております。
  296. 西村力弥

    西村(力)分科員 大体、出かせぎ者は、何日締め切りで何日払いというのが多く、賃金の締め切りから支払い日まで十日くらいある。だから、十日過ぎまで働いて十日前までの分をもらって、あとの分はもらえない、しかし早くうちに帰らなければならぬという工合で、もらわないままで帰ってしまう。そしてあとで地元の監督署に訴えるという形になりますが、その点なんかも、話に聞いてわかればやるけれども、そうでないところはぶつぶつ言っているという事情が多いのですが、そういう点は完全に処置していただかなければならぬことである。そういうことを一つお願い申し上げたいと思うのです。  それから、今申しましたように、この出かせぎの諸君が行くのは、直接請負のところよりも、多く第二次、第三次というところに就労している、こういう場合が非常に多いのです。そういうものですから、労働条件は、先ほどのように、保護関係においても手抜きをされておりますし、賃金は非常に安い、労働はきつい、こういうことになっておりますが、請負の形態というものは、こういう工合に下請々々とやって、それを全部労務者なんかにしわ寄せするというようなことになっておりますが、こういう現状について、あなたの方では何らか打開するという方法を考えておられるかどうか。昨年の九月期の決算を新聞でちょっと見てみましたが、大手の土建業者は全部黒字決算だ。ところが、下請関係はどうかというと、資材の値上がりと労務費の値上がりを自分でしょって、それを労働者にかぶせてもなおかつ自分たちは赤字倒産という方向をたどっておる、こういう工合になっているわけです。大手の方は、もう自分が間に合うだけのところで請け負って、間に合わないところは下請にやればいいのですから、計算をぱちぱちとやれば大手は黒字だ。完全に全部黒字です。そのしわ寄せを全部下請が受けなければならない。それを労務者が全部一身にかぶっていなければならない、こういう工合になっているわけなんです。ですから、請負形態というものについてはあなたの方で何らか新しく考える方法をとらなければならぬと思うのですが、何かお考えがあるかどうか。
  297. 小久保欣哉

    ○小久保説明員 ただいまお尋ねの件でございますが、確かに、建設業者の特徴と申しますか、元請が下請を利用するという形態が通常とられておりますのは、やはり建設業に伴う本質的な問題が確かにあると思うわけでございます。現在のところ、確かに建設単価の問題等でいろいろ労務者にしわ寄せがあるのじゃないかというようなことも、業者自体もいろいろ検討いたしておりまして、根本的な問題といたしましては、今元請オンリーでやるというようなシステムをとるわけにはちょっと参らないと思いますが、下請に対する系列化とか、あるいはその間の権利義務関係を明確にするというようなことでは、私ども、建設業者に対して、いろいろと契約約款の問題とか、下請に対する支払いの促進とかいうようなことで促進はいたしております。具体的に労務者問題につきましては、事はやはり労務費の値上がりというような問題に戻っていくのじゃないかというふうに考えておりますので、この点につきましても具体的な事情を調査いたしまして、かつ、公共工事等においては適正単価を用いるというような専門の努力をいたしまして、労務者へのしわ寄せをカバーしたい、こういうふうに考えております。
  298. 西村力弥

    西村(力)分科員 これはあなたの方でもちょっと手のつかないような工合になっているのかもしれませんが、しかし、今の状態というものは、下請関係が非常に窮境に陥っているし、それを労務者が全部かぶるということになっている。うまい話は全部元請一本でやる、うまくないところは下請にやる、こういうことになっている。これから公共投資でも道路予算でもうんとあり、消化し切れるかどうかわからぬということになりますと、そういう日本的な請負形態というものを何らか打開しないと、やはり、一つのひずみというか、そういうものがいつまでも解消されないということになるのではないか。その点は、あなたの方では今の答弁以上に出ないかもしれないけれども、早急に何らかの解決策をとられなければならぬと思うのです。  それから、労働省にお聞きしますが、下請々々といいますけれども、実際は、そういう能力を持たないで、ただ人入れ稼業的な機関はないのか。そういう形はないのかどうか。
  299. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 御質問の趣旨がわかりにくかったのでございますが、元請と下請の関係でございますか。
  300. 西村力弥

    西村(力)分科員 下請がずっと三次も四次もいくと、四次あたりは、自分で仕事をする能力を持たない、ただ人入れ稼業的な、そういう形態のものはないのか。
  301. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 間々そういう事態が見られますので、なるべく、近代的なと申しますか、そういう事業形態をとるように私どもでは指導しておりますけれども、間々そういうものが散見されます。
  302. 西村力弥

    西村(力)分科員 それは建設省の方では建設業法によって規制しているのだろうと思うのですが、あなたの方ではそれで大体間違いないという工合に考えておられるのかどうか。
  303. 小久保欣哉

    ○小久保説明員 下請がまた再下請に出すというような格好で、現実にある程度そういう事態がございますが、ただ、ただいま先生のおっしゃいました人入れ稼業という意味は、たしか非常に悪い業者というふうに御指摘になったかと思いますけれども、一応建設業法上では、一件五十万という工事の額のワクがございまして、五十万以上の工事であれば登録を受けた建設業者でなければ営めないということになっております。五十万以下の工事ですと問題はないと思いますが、五十万以上でございますれば、知事の登録なり、あるいは建設大臣の登録なり受けた業者でございますので、一応技術者の要件とかその他の所定の要件は備えている業者がやっているはずであります。さように了解いたします。
  304. 西村力弥

    西村(力)分科員 労働省にお尋ねしますが、これはちょっとお話が別になりますが、出かせぎの連中は相当切り下げられた賃金で働いている。それが地場の労働者の足を引っぱって、それをも下げている、そういう例はありませんか。
  305. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 具体的な資料としてつかまえておりませんが、一般的にそういう傾向が間々見受けられる場合がございます。
  306. 西村力弥

    西村(力)分科員 そういう点、問題として提起して、今後のいろいろな処置をお願いする、こういう立場で私はやっておるわけなんですが、その次に、文部省にお尋ねしますが、出かせぎで、今青年団の運営、青年学級の運営というものは全然行なわれない、——行なわれないのではなくて、行なわれることが不可能に近くなってきている、こういうことがある。あるいはまた、私の方の県の新聞なんか見ますと、出かせぎにみんな行っちゃって、お祭りの行事ができない。これはお祭りに弓を射て納めるのだそうですが、これをやる者が一人もいなくなっちゃって、何百年かの伝統がやれないという実情、こういうようなところまで出てきている。これは農林省もお聞き願いたいのですが、庄内方面の相当耕作反別の多いところですよ。そういうところが県内で一番出かせぎ数がよけいになっているという資料が出ているのですが、そういう工合にいろいろな障害が出てきているわけです。これによりますと、大江町なんかでは、青年団員が、男が百二人、女が四十八人、この中で出かせぎは、男が七十七人、女が二十六人、あと残っているのが四十七人、こういう工合になっている。青年学級なんかも、農閑期にやるのではなくて、農繁期にやるよりほかなくなった、そういうようなことになってきつつありますが、その実態の調査はできておるのかどうか、こういう問題に対してどういう工合な対策を考究中か。
  307. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 青年学級の現在の学級生は、いろいろな形のものを集めまして七十一万ございます。これは、昭和三十年ごろでございますと、全部入れますと百万をこしておったと思います。お話のように、青年学級は大体農村の青年の自学自習の場として自然的に発生いたしておりまして、この推移の傾向は農村に在住いたします青年の減少ということに関連があるわけでございます。現在その両年の比率を見ましても、第一次産業に従事しています青年学級生が、当時七四%であったものが六四%強と一〇%程度の開きになっております。私どもはこの二、三年来青年学級の運営につきまして、都市に流入いたします主として中小企業に従事いたしております年少の青年を、よく青年学級でとらえられないのではないかということに着目いたしまして、昨年来企業の中で集まって学級を営めるものは企業ごとに、あるいは都市でいろいろな中小企業が連合して経営できるようなものはそういうところにということで、また農村に残ります青年のためには農村の近代化のためにということで、それぞれ実験学級を設けまして、その内容を検討をして、それぞれの形で現在の青年学級の果たす役割を示していきたい、かように考えております。また短期の出かせぎの青少年に対しましても、本年度の実験学級の中には、北海道の河原青年学級のように、冬期の出かせぎの青年を対象といたしましたようなものもその指定をいたしまして、検討を加えているような次第でございます。
  308. 西村力弥

    西村(力)分科員 これは実情調査は、今からおやりになるのではないかと思うのですが、ことしは高度成長のあおりでよけいに出たかもしれませんけれども、しかしこれは決して農村の経営実態から行きまして、減るということはない、こういう工合に思いますので、そういう面についても早急に対策を立てられるように願わなければならぬと思うのであります。しかもこの青年諸君なんか、私のところに遊びに来る人に聞いてみると、ビルディング建設の足場の上に上がってふるえながら八百円そこそこのお金をもらって、飯場に帰ると、本来の棒頭や土工関係の諸君がおって、酒を食らってばくちをやって、おい、このやろう、いなかのあんちゃん、ばくちやれ、そんなこといやだと言うと、何だこのやろう、同じかまの飯を食っていてつき合わないとは何だと、こんな工合におどかされるとか、こんな工合で、まじめに出かせぎして、ほんとうにその腹巻の底に千円札を畳んでぎっちり押さえているのです。そういう形で出かせぎをしているのです。そういうところですから、これはもう文部省ばかりではなく、すべての関係省に考えてもらわなければならぬ問題であります。  次は消防庁にお尋ねしますが、出かせぎのために消防隊員が不足して、相当その編成に困難を来たしている、こういう実情にありますが、そのかわりに女子消防団なんかも編成されたりして、しかしそれは許可にならない無認可の女子消防団であったりしますが、そういう現状が極端になれば、何らかこれに対する対処策を考えなければいかぬじゃないだろうか、これが一点。  その次は、そういうむすこが置いていったはっぴを着て出動したそういう人々は出動手当はどうなるのか。そういう場合に負傷したような場合にはどうなるのか、それをどうするのか、こういう点、一つあなたの方の考えを聞きたい。
  309. 山本弘

    ○山本説明員 特に出かせぎ地帯におきまして消防団員が少なくなって、消防団の編成ができないというようなところまでいっているところがあるということでございますが、実は現在の消防組織法上は、いわゆる義勇消防という名のもとに、他に農業あるいはその他の職業を持ちながら非常勤で消防団の仕事をやっているという形態で、町村に消防体制が置かれているというところが農村地帯に非常に多くあるのでございます。そういうところから出かせぎの人が出たあとの消防体制ということは、非常に大きな問題になってくるのでございます。そこでわれわれといたしましては、非常勤であります以上、出かせぎを現在の制度下においてとめるということはできない。従いまして一時的な消防団員の減少に伴う隊の編成の困難につきましては、消防団員は、大体一年にその一割がやめて新旧の交代をするというような実情でございますので、いわば予備役とも言うべき、消防団員をやめた、これは比較的お年寄りになるかと思いますが、そういう人に一時的に消防の隊の編成の中に入ってもらうとか、あるいはまた西村先生からお話がございましたが、常時男が出かせぎしておりまして、消防団員を女がやっておるようなところもございます。これはあくまで例外でございまして、主として漁村あたりにあるのでございますが、そういうところの例にならいまして、臨時的に女子青年団員を任命するということも、これは違法ではございませんので、そういう方法もあろうかというようなことで、実は応急的な指導はいたしておるのであります。しかしながらこれはむろんあくまで応急的な、臨時的な考え方でございまして、いわゆる制度的に今後市町村の消防をどう持っていくか、特に最近は、消防団員がやめてからあと補充に困難を来たしているという一般的な傾向もございます。そうして、また今お示しのような出かせぎその他による一時的現象でございますが、非常に人数が足らぬために隊の編成に困るということになりますれば、非常にゆゆしき問題でございますので、そういった団制度のあり方、義勇消防のあり方というものを根本的に検討いたしたいと、かように実は存じておる次第でございます。それから報酬その他でございますが、実は最近だんだんよくなってきておるのでございます。一歩々々の前進をいたしておりますが、なお非常勤であり、また義勇消防であるという名のもとに、実は恥ずかしいような報酬あるいは実費弁償しかされておりませんので、こういう点がまた消防団員に対する魅力が非常に薄れている原因の一つにもなるわけでございますので、一度には参りませんが、徐々に報酬あるいは費用弁償、出動手当という問題につきましても、実情に即応するようなところまで増額していきたいと、かように存じておる次第であります。
  310. 西村力弥

    西村(力)分科員 私が第二点で質問したのは、消防団員として登録されていない人で、たとえばむすこが脱いでいったはっぴをおやじが着て出て行ったという場合、そのときの出動手当はその人に出るのかということと、もしその人がけがをすれば公傷になるのかどうか、こういうことなんです。
  311. 山本弘

    ○山本説明員 一般に消防は、火事の火元の方は消防隊がくるまで消火の義務がございます。そうしてまた消防隊がかけつけるまで、現場付近にある者は消火の協力義務がございます。それは消防法の二十五条でございまして、消防法二十九条によりまして、消防吏員あるいは団員から消火に協力を要請された場合におきましては、それに従事せしめることができるというふうになっておりまして、消防吏員あるいは団員の要請によりまして一般の方が消火活動その他に従事した場合は、いわゆる公務災害として——もし火事が起きました場合には消防吏員、団員と同じような形で、公務災害補償を受け得るようになっております。それから出動手当の問題につきましては、これは具体的な協力の礼でありますので、特に規定はございませんが、いろいろな形でその協力者に対して微意を表するということは、別段にとめられておりません。
  312. 西村力弥

    西村(力)分科員 協力要請があれば、公傷として認められるというのだが、あるなしにかかわらず、片いなかのお父さんが、息子がやらなければならぬことを仕事を捨てて行ったのだから、おれがかわって行こうという自発的な意思で行った場合にも、それは出せるんだろう。
  313. 山本弘

    ○山本説明員 その点の解釈といたしましては、広く解釈いたしまして、現実に消火作業に協力した場合は、援助があったものといたしまして、公務災害補償を出すように現実はいたしております。
  314. 西村力弥

    西村(力)分科員 それでは終わります。
  315. 倉成正

    ○倉成主査代理 本日はこの程度にとどめ、明二十二日は午前十時より開会し、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管について質疑を行なうこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会