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1962-02-20 第40回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十日(火曜日)     午前十時十六分開議  出席分科員    主査 西村 直己君       池田正之輔君    船田  中君       保科善四郎君    山口 好一君       赤松  勇君    井手 以誠君       田口 誠治君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       横路 節雄君    横山 利秋君    兼務 上林榮吉君 兼務 川俣 清音君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (大臣官房長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     磯江 重泰君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    谷川  宏君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  山下 武利君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         国税庁長官   原  純夫君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (企業局長)  佐橋  滋君         運輸事務官         (海運局長)  辻  章男君  分科員外出席者         外務事務官         (アメリカ局北         米課長)    西堀 正弘君         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    渡辺  誠君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 迪郎君         大蔵事務官         (主計官)   海堀 洋平君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         大蔵事務官         (為替局資金課         長)      今泉 一郎君         大蔵事務官         (国税庁長官官         房総務課長)  広瀬 駿二君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      上田 克郎君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  木村 四郎君         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         日本専売公社理         事         (出産部長)  坂口  精君         日本専売公社理         事         (塩脳部長)  高橋 時男君     ————————————— 二月二十日  分科員堂森芳夫君及び横路節雄委員辞任につ  き、その補欠として田口誠治君及び滝井義高君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員田口誠治君及び滝井義高委員辞任につ  き、その補欠として横山利秋君及び赤松勇君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員赤松勇君及び横山利秋委員辞任につき  、その補欠として横路節雄君及び堂森芳夫君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  第四分科員上林榮吉君及び第三分科員川俣清  音君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算大蔵省所管  昭和三十七年度特別会計予算大蔵省所管  昭和三十七年度政府関係機関予算大蔵省所管     ────◇─────
  2. 西村直己

    西村主査 ただいまより予算委員会第一分科会を開会いたします。  本日は、昭和三十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、大蔵省関係を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告があります。順次これを許します。上林榮吉君。
  3. 上林山榮吉

    上林分科員 時間の関係で、まくら言葉をやめて、さっそく本論に入って質疑をいたしたいと思います。  政府が、三十七年度の予算において従来からの方針を踏襲して減税をやられたこと、ことに新機軸を出して減税をしたことは、いろいろな見ようがあろうけれども、私は、一歩前進である、こういう意味において、本問題に関しましてはそれぞれ御苦労のほどがわかるつもりでございます。そこで、これが多いとか少ないとか、あるいはもっとこういう方面にやったらどうかということはさておきまして、せっかく所得税、特に酒税物品税入場税、こうしたような方面減税をしたことは、これは税の本質からの改正もさることながら、二面、インフレ抑制というか、物価対策というか、そうしたような方面も織り込んでの一つ改正であろう、またそうでなければならぬ、こう私は考えるのでありますが、大蔵省中心にいたしまして、企画庁等においても、減税分だけの各品目別物価値下げをさせようという、行政指導か何か知らないが、そうしたような地についた方針をとられておるように聞くのでありますが、私は、その方針は間違いでないから、これを具体的にどの程度まで進めておるものだろうか、こういう趣旨においてお尋ねするわけであります。そこで、まず酒税物品税入場税の順に従って、どの品目が話がまとまったか、あるいはどの品目がまとまらぬでおるか、こういう点を逐条的にお示しを願いたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 こまかいことは、また個々に当たってあと事務当局から御説明いたしますが、まず減税だけは値下げさせたいという考えから、一月中旬に、物品税関係団体で構成されている物品税懇話会、この代表者を呼びままして、減税相当額小売価格から引き下げることを強く私の方で勧奨しましたところ、今のところ関係団体は全部その趣旨に沿うよう努力するという回答を得ました。また、個々業界に対しても、国税庁から、機会あるごとに、価格引き下げについての勧奨や、いろいろ相談を行なっておると同時に、大蔵省だけでもなかなかやれない問題でございますので、通産省を初めとする関係省に対しても、この際値下げ指導協力してもらいたいという申し入れをしましたところ関係省からも、これに協力する、そうして今努力しておるという回答も参っているところでございます。できるだけそういう方針業界指導を私どもはやりたいと思っております。酒の方は、大体話がつきまして、減税通り減税分だけ小売価格を下げられるという見通しが今ついております。その他のいろいろな物品についても、問題は、四月一日から下げるために、その前に出庫しているもの、四月一日までに出たものが全部売れてしまっておればいいのですが、古い製品の在庫問題を中心に技術的にもなかなかむずかしい問題がございますので、こういう点は懇話会自身でも自主的にいろいろ検討をやっておりますし、私どもの方でもその指導をやっておるという状態でございます。それから入場税は、業界の意向は、減税額の半分を入場料金引き下げに充てて、あとの半分は、いい映画を作るということと、それから設備を改善するというようなところにこれを充てたいというような希望が今ございますが、私どもとしましては、やはり減税分だけとにかく入場料も下げてほしいという方向で、今強力な勧奨をやっているという状態になっております。大体において、私ども、四月においてこの減税だけの値下がりを期待することが今のところ可能じゃないかと思っております。
  5. 上林山榮吉

    上林分科員 私は、大臣減税分に対する物価値下げの問題についてのきわめて熱心な努力に対しては敬意を率直に表するものでございますが、世間では、ビール税などはやめて、これをもっと大事な教科書の無償に回してやるべきではないか、これも私は一つ意見だと思います。そういうような意見もある際でありますから、減税分に対しては小売価格を安くしていかなければ、これはもうどの点から見ても国民としては納得のいかない点であります。私はそういう意味において、酒税に対する態度は非常に時宜を得たものである。私個人の意見をもってすれば、ビールをそれだけ安くしたところで、一部の人はさることながら、国民の大部分というものは必ずし本喜ぶものではない。ことに、ところによっては、それだけ値下げをしても、その数倍の値段で売るところもある世の中でありますから、そういうようないきさつから見て、あるいはビール会社は助かるかもしらぬけれども、大局的に見てどうだろうという意見もある。だから、そういう減税はやめてこれを教科書に思い切って回すべきだ、それがまた義務教育を責任を持って果たすゆえんであるという、きわめて熱心な議論があっちこっちにあったわけでありますから、事後処置としては、そういう意味も含んで、私は一応適切な提案をされたものだと考えます。  物品税についてもそれ相当に手が打たれておりますが、四月一日以前にすでに出庫されたものがあって、技術的な操作がやりにくいために、四月一日からの減税分小売引き下げにピントを合わすことができぬというお話でありますが、これも技術的にはそうだろうと思いますけれども、今大臣も御答弁になったように、私は、それが最小限度に食いとめられて、その大部分というものは四月一日からこれが実施できるようにしなければならぬ、こういうように筋を通して考えますので、一段の努力希望しておきたいと思います。  入場税の問題は、業界業界としての悩みのあることも、これは事実でありますが、しかし、それはそれとして、別途に政府がもし協力の手を差し伸べる方法があるとすれば、またやりようによってはあるのであるから、そういうような方向協力をする場合にはするものとして、今回は、一般大衆というものは、いいものを安く見られる、今度減税をしてくれたら、一カ月に一ぺん見たものが二回くらい見られはしないかなあ、こういう期待を国民は持っておるのです。だから、そういう趣旨において、減税分だけは、それぞれの御希望はあろうけれども、この際やはり一線を引いて、別途に協力態勢というものを政府としては考えるべきではなかろうか、あるいは長い期間においてそうしたような処置をとっていくべきものではなかろうか、こういうように考えますので、率直に私の意見を申し上げますが、大臣も、先ほどの答弁は、大蔵省その他政府としては、これは入場税もそういう希望はあるけれども、この際は入場税を安くして、減税した分を安く見られるようにしていくのだという御答弁でありましたが、これはそれぞれ影響するところがあるようでございますから、この際大臣の真剣な御決意を聞かせてもらえれば幸いだと思います。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 今私はそのつもりで勧奨しているところでございます。
  7. 上林山榮吉

    上林分科員 それでは、入場税に対する大臣の再答弁で御決意のほどがわかりましたので、これ以上この問題については質問をいたしません。  次に私がお尋ねいたしたいことは、専売公社に関する二、三の問題についてでございます。  御承知のように、専売納付金は、三十七年度は千五百九十五億三千二百万円、前年度の予算額に比較しまして、九十八億六千八百万円の増収を見込んでおられるのでございますが、これは私は専売制度根本に立ち至って一応検討すべきだと思います。日本専売制度は、どちらかといえば、財政専売の伝統を守り過ぎてやってきておる。これはもう沿革を見れば、言うまでもなく日本専売制度財政専売重点があることは、御承知通りでありますけれども、時代の変化というものは、ことに経済的な変化というものは、これは単に財政専売としてその益金を国庫に納めしめるという考え方だけでは——今日企業形態をある程度尊重しなければならぬ時期にもなっておるのでありますから、あるいはまた、これに付随するたばこ耕作者、あるいは塩の生産者、あるいはこれに対するところ製造をする者、あるいはこれを販売する者等々、すべてこれは企業形態なんです。実際の動きは企業形態がその大部分であるといってもいいのです。ただ、そういう時期でありますので、大蔵省として、あるいは専売公社としても、それぞれ悩みの点があるだろうと私は御推察できるのです。できるのですが、この専売制度根本をどういう方向に持っていくかという問題は、日本財政も今御承知通り金の収入があって、これを一ぺんに使えば予算規模がふくれるとか、あるいはインフレになるとか、その他のいろいろな理由から、あるいは経済成長の行き過ぎを是正しなければならぬとか、そういうような意味から、益金、繰り越しというものが非常に多い、税収にしても見込み以上のものが出てくる、こういう状態でありますから、この機会に専売制度というものを企業形態——これは私は百八十度の転換を希望しているのじゃありませんが、今までよりもウエートをもう少し置いたらどうかという意見を持っておりますが、これに対してどうお考えでありましょうか。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 専売公社あり方については、御承知通り民営論まで出ておる状態でございまして、これについての検討をいろいろの機関で今日までやっておりましたが、結局、そう簡単な問題ではないので、やはり当分今のような形でやっていくのがいいだろうというような結論になっております。しかし、おっしゃられるように、この企業性を重んじてもう少し弾力的な経営ができるようにという方向は賛成でございますので、実際の運営において毎年々々そういう方向へは相当気をつけて進んでいるのが実情でございますので、そういう方向への努力はいたしますが、全体をどういう形にするかという根本問題につきましては、やはり今のような方向で当分いくよりほかないだろうと思っております。
  9. 上林山榮吉

    上林分科員 私は、飛躍的に民営論にせよという意見は、ただいまのところ持っておりません。私が言うのは、財政専売という伝統的なカラーがあまり濃厚過ぎて、今言うように、企業性相当部分に織り込んでいるところ専売制度経営としては、今のままではあまり実情に沿わぬのじゃないか、こういう私の意見です。これはほかの国鉄あるいは電電公社というような方面も、公社とはいえ、あるいは政府関係機関であるとはいえ、何がゆえに国の経営から公社経営にしたかといえば、やはり政府関係機関ではあるけれども、どちらかといえば、企業形態というものに重点を置こうとした意図にほかならぬと思うのであります。これもだんだん大蔵省考え方も改まって、企業性というものを認める方向に一歩は門を開かれたようでありますけれども、まだまだ私が今専売制度で申し上げたと同じような趣旨弾力性がない。そういう見地から、専売公社の問題も、今大臣がお述べになったように、一時は民営まで行こうとしたのだ、そういう方向検討もしてみたのだ、けれども、なかなか複雑で、一気呵成にはいかぬものがある、だから今のままでいくという、その前段は、私は非常に率直な御答弁だと思いますけれども、まあやらぬものはそれでけっこうだが、今のままで当分いくという考え方の中に、もう少し具体的に企業性を取り入れていく努力をやはりせられなければならぬのじゃないか、こういうように思うのであります。  そこで、私がお尋ねしたいことは、専売制度は、今私が言ったように企業性というものをもっと取り入れるという程度で現在のままでいくとして、大蔵大臣、どうでございますか、あなたの所見でございますが、あなたは、専売公社自分所管にあることが、すべての点から見て非常にやりやすいとお考えになっておるか。たとえば、自分所管であるから、公平にやるとは言いながら、ほかの省の所管よりも少しでも思いやりがあるのだけれども世間が見ておるものだからどうもそれができないのだ、そこまではまだいいのだが、そういうことからさらに一歩退却して、そうだからまあまあ何でもこの辺で満足していなさい、自分所管であるがゆえにそうしたような遠慮というものがかえってあるのじゃないか、私は従来のあなたの専売制度に対するいろいろな考え方を見て、これは率直でまことに相済まぬけれども、そういうふうに考えられるのですが、いかがですか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 御質問意味がちょっとよく聞き取れなかったのですが、別にそういう問題はないと思います。特に今われわれが専売公社遠慮がちなことをやっているというふうにも思いません。
  11. 上林山榮吉

    上林分科員 賢明な大蔵大臣だから、私の婉曲な質問を率直に受けとってもらえる、こう思ったのですけれども、ちょっとはっきりしないので答えられぬというお話でありますが、もっとはっきり言えば、ほかの所管は、農林省にしても、あるいは運輸省にしても、建設省にしても、所管大臣というものを持っているのです。だから、制度の改革にしろ、予算の編成にしろ、あるいはその他の専売事業にしろ、大臣大臣で話し合いをしていくのです。ところが、あなたは自分ところ所管であるのに、自分は直接あまりタッチしない。タッチしておるけれども、タッチしているかのごとくいないかのごとく、自分ところであるがゆえにあと回しにする。しかも結論において、たとえば耕作者問題一つを取り上げてみても、あるいは塩の問題一つを取り上げてみても、これがどうも私どもの目から見ると、どうしてあんなに遠慮するのだろう。たとえば耕作者収納代金の引き上げの問題にいたしましても、あの作物成長作物であるから、この程度まではこれは諸般の事情を考慮して上げていいという考えは、あなた自体もほんとうはわかっているだろうと思う。これがわからぬとすれば、事務当局の説明が悪いのであって、こういうことはもうわかっておるのだけれども、一ぺんに上げると、ほかの省のものが文句を言うかもしれぬという遠慮があるのじゃないか、こういうように思われるのです。そこで私は、これはあっさりと、農林省とも関係がある専売制度でございますから、あなたが大局に立って、実情に即して、そうしてこれらの制度というものをもっと活用し、しかも、ただ専売益金を上げるということだけじゃなく、その根元にいるところ生産者なり、あるいは製造業者なり販売業者なり、こうしたようなものにもう少し数字をさいてやっても経営は成り立つのです。去年よりも九十八億円の増収を得ようとしているじゃありませんか。それを言うのです。だから、これは同じ農家でございますから、葉たばこのごときは農林省所管にこれを移したらどうか。専売公社をあっさりと大蔵省から農林省に移して、ただ法律を一本作って、その専売益金を一年に千五百億ことしは納めてくれ、来年は一つ千四百五十億納めてくれ、こういうようなふうにされた方が、かえって農民立場からいっても、あなたの立場からいっても、うまくいくのじゃないかと思うが、農林省所管を移すお考えはないかということです。これはわれわれ同士の間では、場合によっては農林省に移す運動をやろうじゃないかというメンバーも今数十人おります。だから、そういうような意味において、私はお互いの仲ですから、遠慮なく進言申し上げ、質問をしているわけです。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 公社企業性ということを重んずるなら、当然、この収納価格においても、公社がこれを見て適当にきめるということが正しいでしょうし、現にこの値段をきめることは総裁がやっております。大蔵省はまた監理官というものを通じてそういうものの監理をしておりますが、たとえば葉たばこ値段のきめ方を見ましても、当然これは一般農作物価格あり方、そのほかをも勘案してきめるものであって、農林省に移ったら耕作者が非常に有利になるとかなんとかいう性質のものではないのじゃないか。値段は公平に妥当な値段にいつもきめられておりますし、所管のかわることによってこの値段が特に左右されるというふうな現状であるとは私は思っておりません。
  13. 上林山榮吉

    上林分科員 大臣、これはあなたの所管だけじゃないのですが、政府審議会政府調査会、こういうものは学識経験者によってこれを構成するということになっておって、非常に世間体はいいのです。いいのだが、中には尊敬すべき学識経験者もおられるけれども、しかし、その自分の担当のことについては学識経験を持っているわけだけれども、それ以外の方面の人々を、学識経験者として審議会委員調査会委員になってもらっている場合が多いのです。そのために、その審議会調査会等で出た結論が、実際とはかけ離れておる場合が相当あるのです。これは専売審議会だけじゃなくて、一般に通ずる見方なんです。学識経験者必ずしもその問題に対しては学識経験者じゃない。そういうような意味において、たとえばあなたのところ専売公社審議会メンバーを見てみますと、輸入業を専門にやっている、自分葉たばこを外国から輸入している輸入商、その輸入商審議会委員になっているのですよ。それでは、専売公社が、たとえば葉たばこが少なくなれば、やむを得ないから増反を奨励しても、収納代金などの関係あるいはその他の関係で、そんなものを作っておったってだめだ、こういうふうになると減産になるわけです。あるいは災害が起これば減産になるわけです。そうすると、安易な道を二、三年前までは歩いておりまして、直ちに輸入原料を持ってこよう、こうするのです。そうすることによって、専売益金だけを上げればいいという、財政専売の精神にこれが立ちかえってしまうのです。だから、そういうような意味から考えて、利害関係のある葉たばこ輸入業者審議会メンバーに加えて、何が公正な議論、公正な結論が出ますか。出ないでしょう。ことに学識経験者といえば、さっき言うように聞こえはいいけれども、実際はその問題に対しては、むしろ学識経験者でない場合が多いのです。だから、私はそうしたような考え方からしまして、これは成長作物でありますから、もっと端的に言うなら工芸作物でありますから、農林省特産課、そうしたような方面指導することが、農民という基盤に立てば最もいいのじゃないか。そのときのできばえによって、そのときの経済情勢によって、専売公社大蔵省に納める専売益金というものを、一定の金額だけ納めるような制度にすれば、これは私は矛盾はないと思う。今のままならば、農林省に移した方が、そういう意味においていいと私は思うのだが、これはあなたの部下を督励されて、一つ研究テーマ——民営にするという議論よりも、私はまずとりあえず所管がえをした方がいいのじゃないかと思いますので、一つこの問題については御研究を願う、こういう程度にいたしておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう要望もずいぶん耳にしておりますが、しかし、かりにたばこ民営になって、民営になれば一つでなくてもいいのですから、幾つかあって、そうしてたばこが作られるということでしたら、葉たばこ生産あり方が変わっても私はいいかと思うのですが、今専売制度として一つしかなくて、買うととろが一つでございますから、耕作者も、結局、専売公社と結びついて指導を受け、そうして自分の作るものが計画的に全部適当な値段で買い上げられるということの方が実際にはいい。農林省の管轄に移したらという意見も、いつもこの値段をきめるときに出てきますが、耕作者自身は、適正な値段がきめられるなら、売り先は一つですから、そこと結びついた指導を受ける方が、むしろ自分の利益になるという面もございまして、これはそう簡単な問題ではなかろうと私は思います。
  15. 上林山榮吉

    上林分科員 大臣が私の申し上げたことに関心を示しながら、簡単ではないのでという御意見でありますので、これ以上私も申し上げませんが、これは一つ考え方なんですから、こういう考え方が起こるのは、一体どこに欠陥があるのだ、その欠陥を内輪で是正できるものは、もう一歩踏み込んでいただいて是正をしていただきたい、そして私が申し上げた問題は、一つ研究のテーマとして研究してみていただきたい。あんなに言うが、農林省所管を移せばどこに長所があるのだろう。自分ところにあるのに、なぜそういう声が起こるのだろう、なるほど、こういうところに欠陥がある。自分所管であるから、実情をもっとよく知っているはずだ。知っているはずだから、もっとこういう問題をよくしても、かりにこれから五十億削っても、専売益金というものは千四百数十億円という莫大な益金を国庫に納めておるのです。これは赤字経営じゃない。だから、そういうことも考えられて、なぜそういう声が起こるかということを検討して、もう少し内輪でできるものは是正してもらうという意味で、私はこの問題は打ち切ります。  さらに話を進めますと、塩の問題でございます。塩の問題は、イオン交換樹脂膜の完成によって技術が革新され、これを前提にして塩の収納価格というものが新しくきめられようとしておったのです。しかしながら、このイオン交換樹脂膜の企業ベースというものはまだ確立されていないのです。だから、塩の値段というものをもう少し是正してもらわぬと、経営が成り立たない、こういう声が一方にあって、専売公社としても、大蔵省としても、この問題に理解を示されておるようでございます。しかしながら、これに付随いたしましてある程度値段を引き上げられましても——これは専売公社指導によって経営をしてきたのですが、ある程度値段を引き上げられても、これについていけないグループが多少あるわけです。だから、金額も何十億という大きな金ではないようでありますから、こういうものの企業整備をできるだけ早急に一つやれるようにしていくべきであるという趣旨から、この問題についても、それぞれの団体、それぞれの政党その他から、公式にあるいは正式の書類によって大臣の耳に入り、目に入っておられると思うのであります。だから、こういう問題についても一つ督励をしていただきまして、実情に沿った対策を一つ急速に講ぜられるように、われわれの希望は、三十七年度の補正予算においてでも、こういう問題は金額が少ないからできるんじゃないか、こういうような考え方を持っておるわけでありますが、これは一つ大臣、及びこれに関係を持っている人があれば、企業整備の問題、塩の整理の問題、これについてお答え願えれば幸いと思います。
  16. 谷川宏

    ○谷川政府委員 お答え申し上げます。  塩業整理の問題につきましては、先般昭和三十四、五両年度にわたりまして、約百十四億の財政支出をもちまして一応整理をやったわけでございますが、その後なお、今お尋ねのような、さらに整理を必要とするのではないかという塩業者が二、三あることを承知しております。この問題は、先の塩業審議会の答申にもございますように、将来の新しい技術の導入を考慮しながら、塩業全体をいかに合理化していくかという場合におきまして、これらの塩業者の取り扱いをどうするかという問題を総合的に検討する必要があることでございます。従いまして、三十七年度中に補正予算等で処理をするかどうか、この問題は、公社総裁の諮問機関であります塩業審議会にさらに諮りまして、将来の塩業の合理化の具体的な方策との関連において、既存の塩業者を整理するかどうか、また、整理する場合に、いかなる方式で整理するかという点を根本的に検討しながら結論を出していただき、その塩業審議会の答申が得られました場合におきまして、大蔵省としてもそれをどう考えるかということを慎重に検討していきたいと思います。
  17. 上林山榮吉

    上林分科員 谷川監理官答弁は、論文にするとまことにりっぱなものです。しかし、実際に政治をやる上からは、そんなまどろこしいことをやっておっては間に合わないのですよ。生き返る人も死んでしまうのです。そこにやはり実情に即した研究、立案されたる仕事というものをやっていかなければならぬ。私は、先ほど申し上げたように、これを適正な価格に引き上げることはけっこうだ、一応やらなければならぬ、技術革新がまだ不十分である今日であるから、そうしなければならぬ、しかしながら、そうしてもなおかつついていけないということが、財政状態からはっきりしているのです。しかも、これは中小企業者のように自分が自由にすべてをやったのではなくて、専売公社指導監督によってやってきた仕事なんです。それが価格をある程度引き上げてもこれがついていけない、三十七年度では待ち切れぬ、こう言っておる。これが数十億円あるいはそれ以上の大きな金を要する場合は別としても、これは大局的に総合的に、あなたがおっしゃるようにそれぞれの手を経てやっていかなければならぬのですけれども、あなた方にやる意思があれば、これくらいのことは何でもないのであるから、私はこれ以上あなたを追及しようとは思わないけれども、そういうような意味において、もう少しあなた方が理解を持って——それは気の毒だけれども、今こうなっているからもう二、三年待ちなさいというようなことではだめなのです。だから、できるならば三十七年度の補正予算に組むような事務的な手続をスピーディにやっていただければいい。今言うように、たとえば審議会結論が出たらというなら、その審議会に、こういうのが適当であると思われるのがあったら、出されたらいいじゃないですか。われわれは適当だと思っているのです。そういうことをやらないと、かわいそうな業者がおるわけです。これはこういう意味合いにおいて一つスピーディにすべての仕事を進めてもらいたい。専売公社総裁、この問題に対してどうですか。これは大蔵省との関連もございますけれども、あなたは実際その仕事を担当しておられるのだから、こういう企業整備をできるならやらなければならぬ。ことに、もう三十八年度までついていけないような赤字経営で、経営すればするほど赤字がふえて、採算はゼロになる、自分のほかの財産まで中小企業者が出さなければならないというような状態になると、これは大へんなことではないかと思うのであるが、これに対して何か担当者として率直に——何も気がねは要りませんよ。私も深追いはしないから、気がねしないで大臣にもこういう席上でお伝えなさった方がいいと思う。
  18. 阪田泰二

    ○阪田説明員 お尋ねでございますが、現在、塩業整理の後に残存いたしました企業のうちで、そのときいろいろ考えました条件とだいぶ変わった条件が出て参りまして、企業の経営が困難であるといったようなものが二、三ございますことは、十分承知いたしております。この問題につきましては、御承知のように、塩業審議会の答申が昨年出まして、塩業というものを今後どういうふうに持っていくかというような大方針が出ておるわけでありますが、ことにその中心といたしまして、一例としてイオン交換樹脂膜というような新しい方法もございますが、そういったいろいろな新しい技術の導入というものと関連さして、今後の塩業界をそういう方向に持っていこうといったような線が出ておるわけであります。お話のような企業につきましては、ちょうどその間におきましてそういったような新しい技術の導入に伴いまして、現在以上に塩業の設備と申しますか、能率と申しますか、そういうものが改善されて、新しい時代に適応するようになる、そういう過渡的な状態をどういうふうに乗り切っていけるかといったような、非常に経過的なむずかしい問題があるように思います。まあ私どもといたしましても、ことに問題になっておりますような企業の現状につきましては、十分様子は調査いたしておりますが、いましばらくそういったような情勢も十分調査検討いたしまして、今後の情勢に処して適宜に処置していきたい、かように思っておるわけであります。
  19. 上林山榮吉

    上林分科員 最後に一言申し上げて終わります。  総裁は就任されてから日が浅いので、監理官などからお聞きになったり、あるいは各部長諸君からお聞きになったことを、ここでオウム返しに言ったきらいがある。これはやむを得ない。やむを得ないが、しかし、実態はそうではない。イオン交換樹脂膜はまだ完成しておらない、同時に、それは企業の採算ベースに合わないのです。これはまだ半年かかるか一年かかるか知らないが、それでは結論が出ないかもしれない。そういうような状態なんだから、それにとらわれないで一応の立案というものを考えていかなければならぬのが実情なんです。だから、守り本尊であるイオン交換樹脂膜の経営というものについて、あなたももう少し勉強されなければならぬと思いますが、しかし、それを待っておった日には、日本の塩業全体あるいはことに少しぐらい値段を上げてもらってもやっていけない現状については、これでは対策にならぬということを最後に申し上げまして、質疑を終わります。
  20. 西村直己

    西村主査 滝井君。
  21. 滝井義高

    滝井分科員 財政投融資の問題について一、二点大臣にお尋ねをしたいと思います。  ことしの財政投融資は八千五百九十六億円でございますが、一般会計が二四・三%伸びて、財政投融資の方も一七・九%伸びております。伸び率は一般会計に比べたら低いことに一応なっておるわけでございますが、各省から一兆五千億程度の要求があったものを、八千五百九十六億円に一応削減した形になっております。その場合に、私がお尋ねをいたしたいのは、財政投融資に対する大蔵省の見解が、ある場合には、一般会計と財政投融資とを加えたもので財政規模と言う場合があるし、ある場合は、財政投融資の額を除外して一般会計だけで財政規模だと言う場合があるわけですが、過去で調べてみると、ある大蔵大臣は、一緒にしたものを財政規模だと言うし、ある大臣は、一般会計だけを財政規模だと言って、大蔵省の言い方がいつも違っている。従って、どういう場合にそれが違っているかというのを見てみますと、たとえば昭和二十九年のような、非常に緊縮予算を組んで、同時に財政投融資についても切り詰めたような場合には、両者を合致して、大蔵省は、財政規模を非常に縮小しました、こう言っておるのです。ところが、一般会計が非常に膨張して、一般会計はあまり膨張させるとどうも工合が悪い、従って、その肩がわりに、ある程度財政投融資で肩がわりをさせる、こういうような場合には、財政投融資の方を財政規模の中に加えていないのです。そういう答弁をしてきているのです。どうも財政規模というものについての概念に一貫性がない。そこで、これは政府は国会でいろいろ論議をするときには、お互いに論議の基盤というものをはっきりしておかなければいかぬが、水田大蔵大臣としては、財政規模という場合には、両者を加えたものにするのか、一方だけにして言うのか、そこらあたりについて一つここで統一見解をはっきりさしておいていただきたいと思います。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 予算編成をやっておる過程におきまして私どもが気づくことは、これは施策としては明らかに金融でやることがいいというものと、そうではなくして、やはり一般会計で負担すべきものだという——従来この問題が相当混淆しておったようでございますが、最近は、やはり一般会計で負担すべきものと、これは金融によって施策すればいいというようなものがございまして、このかみ合わせば当然国の予算の編成のときにはやはり出てくるものでございますので、全く無関係ということはございません。ある程度これは関連させて考えておる問題でございますので、従来そのつどそのつどそれらの関連についていろいろ御説明があったかもしれませんが、事実問題としては、これは関連している部面が非常に多い。一定の政府施策を実行するためには、これはやはりその性質によって関連させていいものだろうと私は思います。
  23. 滝井義高

    滝井分科員 関連をして考えることが私はほんとうだと思うのです。ところが、過去をずっと調べてみると、政府の方は、緊縮予算を組んだ場合は関連さして説明している。ところが、膨張した予算を組むと、なかなか関連させない。どうして私がこういう点を言うかというと、実は財政投融資に対する概念がなかなかはっきりしないのです。先日もこの場所で、法政大学の高橋助教授だったと思うのですが、それを御指摘になった。私も昨年、一応、日本財政投融資についてはどうもはっきりしないから、大臣にはっきりしてもらいたいということを言ったわけなんですが、それが実を結ばない。本年また高橋助教授からそういう点の指摘をされたので、もう一回、くどいようですが、私も一、二調べて、問題があると思われる点を少し大臣の見解をお聞きをしてみたいと思うのです。  御存じの通り、経済が非常に成長をして、一般会計というものは相当膨張してきた。自然増収も四千七百四十億とふえてきました。しかし、財政投融資の財源である郵便貯金とか厚生年金、国民年金、簡易保険というようなものは、昨年すなわち三十六年の六千五十五億に対して、本年三十七年は七千百十四億ですから、九百億円ぐらいしか伸びる見込みがないわけです。その上に、産投特別会計の資金繰りも、ガリオア・エロアの返済を七十九億五百万ですか、こういうものを充てていくということになると、やはりこれは苦しくなってくることになるわけです。そこで、まず第一に、財政投融資に関連をして一番大事な産投特別会計の問題ですが、ことしの産投特別会計に一般会計から二百三十億受け入れて、資金からの受け入れが百五十億、これが一番おもなものになるわけですね。そうしますと、昨年は一般会計から入れていないのですが、ことし二百三十億入れる。来年もやはりこれは入れなければ、産投会計の金が不足してくるのじゃないかと思うのです。そうすると、こういうようにずっと毎年一般会計から産投会計の中に金を入れていくということになって、それを今度は利子をアメリカに払っていく、こうなると、産投会計は通り抜け勘定になって、見返り資金の利子をアメリカに払うというのですけれども、元来利子そのものもこれはその元本についているものであって、やはり税金を入れていけばその税金から利子が生まれてくるわけですから、従って、見返り資金の中に入れておる金というものが、どの金がガリオア・エロアの金であるのか、あるいはどれが一般会計から入れた金の利子なのかということは、金には区別がないわけですから、わからぬわけです。そういうものを、二重払いにならぬということで払っておいきになるとするならば、私は、産投特別会計なんというめんどうなものを廃止して、一般会計からおやりになったらどうかという感じがするわけです。何かそこに子供だましのようなからくりがあるような感じがするわけですが、こういう点の解明がはっきりされないと——産投特別会計の資金が苦しくなる、苦しくなると一般会計から持っていく、そうして一方見返り資金、開発銀行から返ってくる金を利子としてアメリカに払っていく、こういう何か回り水のような形をしてもらったのではやはり因ると思うのです。それが二重払いでないという理屈にはどう考えてもならぬと思うのですが、まずここらあたりの一番大事な、産投特別会計が資金的に苦しくなるという点、しかもそれを一般会計からやはり受け入れなければならぬという点、それならば産投会計をやめてしまった方がいいのではないか、こういう形になり、それだけめんどくさくなる。ここらあたり大臣は一体どういう解明をされるのか。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 産投会計で、たとえばガリオア・エロア関係の資産は、御承知のように、産投会計の今の資産の六千億円ぐらいのうち、大体四千億円ぐらいあると見ていいと思います。ですから、その中からりっぱに一般会計とは無関係に、ガリオア・エロアの返済はできる。できてなおかつまだ元はそっくり残るという計算になっておりますので、計算がはっきりしておりますから、その点は問題ないと思います。しかし、従来これを出資に充てておった関係で、それだけ返済すれば出資の資金がそれだけ窮屈になることははっきりいたしますので、これをはっきりするために別会計をまたもう一つ作るか、あるいは、おっしゃられるように、今後出資が必要な場合には一般会計から直接するかというような問題も考えられないことはございませんが、しかし、産投会計というものがあるし、二千八十何億のこの返済は、りっぱに一般会計とは無関係に払えるという計算が立っているのですから、同一会計でいろいろな役割を果たさせても、私はそう大して支障がないのではないかと思っております。ガリオア関係だけを抜き出した別途会計を作るということにすると事態がはっきりするのですが、これは実際問題としてできないことでごさいますので、要するに計算がはっきりしているならいいのではないか、二重払いになるとかいうような問題は全然なくて、今ある資産だけでも、払おうと思えばそれで払えるのですから、私は、計算がはっきりすれば問題がない、せっかくある会計ですから、この会計の中で従来通りの役割を果たされるようなことで差しつかえないのではないかと、今のところ考えております。
  25. 滝井義高

    滝井分科員 ガリオア・エロアの条約は、外務委員会がありますから、そこでこまかいことはやるとしても、とにかく二千八十五億円の金を十五年に払う、ことしは七十九億五百万円、来年は百五十八億程度になるわけでしょう。そうしますと、四千億のガリオアの金が積まれているといったところで、一般会計からとにかく繰り入れていかなければ、ガリオアの資金というものはだんだん苦しくなることは確実なんですから、最小限度そういう限度においてはこれは明らかに大きな問題を含んでいる。一般会計から入れずに、それを産投特別会計が今まで通りまかなって、それでアメリカに払えるというのならば、これはし等だと思うのです。ところが、そうでないところに問題がある。これはこまかくいろいろやると、これだけで時間がかかりますから、やめます。  次に、「予算の説明」の九ページを二つ見ていただきたいと思うのです。財政投融資と私たちが言う場合には、産投会計と、資金運用部資金と簡保資金、この二つが、九ページの資金計画の欄に小計として出ておるわけです。これをわれわれは、財政資金による投融資、こう言っておるわけです。ところが、その次の欄をごらんになると、公募債借入金というのがあるわけです。まずここまでが財政投融資の総額になるわけです。ところが、その次の欄をごらんになると、財投合計欄の次に、自己資金等というのがあるわけです。この自己資金等というのは、財政投融資の中に合計額として予算その他の説明をするときには、全く説明されないわけなんです。これは一体どういうことなんですか。私がさいぜん冒頭に申し上げたのはここなんです、一般会計の予算と、ことしで言えば、ヤーゴクロー、八千五百九十六億、この八千五百九十六億というものと、二兆四千二百六十八億円と足して——大臣は今、これは一緒にしなければいかぬ、こうおっしゃったところが、あにはからんや、そのほかに、資金計画の中には自己資金等という非常に大きなものがあるわけです。これをどうして財政投融資というものの中に入れて論議をしないのか。これは今まで論議をされていないですね。今まで政府はこのことについては一言半句も触れなかったのです。過去においてもそうです。一体、自己資金等という、この非常に大きな比重を占めておるものが、どうして財政投融資のときに政府は論議の対象とされないのか、それは一体どういう理由なのか、これを一つ御説明願いたい。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 各業態の活動規模を示すためには、当然この自己資金がどれくらい予定されているかということを示さなければ、この規模の全貌が出てきませんから、ここに入れてはっきりさせておることでございまして、これは新たに財政資金を投入する問題ではございません。過去の蓄積、そのほかのものが入っておりましょうし、これは政府財政計画、新たに投入する計画とは別個の問題でございますから、従来論議がなされておりません。ただし、各企業々々のその年の事業活動が論議される場合には、当然この自己資金というものはいつも論議されておりますが、政府財政投融資の問題としては、新しい資金の投入でもなんでもございませんから、これは別に今まで問題にされていなかったのだろうと思います。
  27. 滝井義高

    滝井分科員 財政投融資の対象にならない自己資金だから、問題にしなかったとおっしゃるけれども、われわれが日本経済を考え、あるいは景気の引き締め等の問題を考えるときは、これは財政投融資の資金と自己資金等とが合体してその企業というものは動いていく、仕事というものは運行されるわけです。ところが、これは、いわゆるたての一面だけを見て他の面を見なければ、ものの全貌というものは見ていないのと同じなんです。ところが、大蔵省のこの「予算の説明」をごらんになっても、自己資金等に対する集計も何も出ていないのです。大臣、これは主計局長でよろしいですが、一体こういう自己資金等を加えたならば、財政投融資の総規模というのは幾らになるのですか。昭和三十七年度は、ヤーゴクローという八千五百九十六億円に今度自己資金等を加えたら、一体幾らになるのですか。
  28. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、新しい財政投融資として資金を供給するものではございませんので、財政投融資としましては、御指摘になりましたように、資金運用部資金、産投会計、簡保資金、公募債借入金を計上いたしておりまして、特に各機関の全体の事業規模を現わしますため、参考として自己資金の方をあげておりますが、各事業体により性格を異にし、合計しても意味がないので、合計の計算はいたしてございません。
  29. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、大蔵省は資金の全貌を握っていません。日本経済の急所を握っておらぬのですよ。それでは、政府が金融を引き締めてやるとかなんとか言ったって、とても話にならぬです。常識的に考えて、この自己資金等という額をごらんになっても、おそらく八千五百九十六億にほとんどひとしいくらいに私はあるのじゃないかと思うのです。それを全然あなた方が集計もせずに、見もしないで、八千五百九十六億だけを問題にして、そうして二兆四千二百六十八億ですか、一般会計との経費だけで問題にしておったら、これは大へん大きなものを見落としておることになるのですよ。当然、政府としては、この自己資金等についても刮目してこの資金の動きを見ておらなければならぬと私は思うのですが、それは一体幾らくらいになるのですか。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 今計算をしていませんが、もちろん、私どもが各事業に財政投融資をどれぐらい予定するかというものの算出をするためには、この自己資金が重要でございまして、これだけの自己資金がある、そうしてことしはこれだけの規模の事業をしたいというような、そこから初めて、それでは財政出資が必要になるのか。出資が必要になるのか、融資が必要になるのかというようなものを算定してきているのでありまして、この算定をするためには、私どもはこの各事業の自己資金というものを最も重要視しているわけでございます。たとえば、電電公社というごときは非常に自己資金が豊富で、六十万個の電話を架設しても、電電公社の自己資金で大体それだけの計画はまかなえる、ごくわずか五十八億、これも借りかえですが、この程度の資金を見てやれば、これは目的の事業がやれるというふうに、やはり自己資金がどれだけあるかということを中心として、事業とのにらみ合わせで投融資計画の割り振りをきめているのですから、これは絶対無視してやっておるわけではございませんで、一番これをむしろ査定のときに重要視している項目でございます。
  31. 滝井義高

    滝井分科員 私、まさにそうだと思います。意見の一致を見たのですよ。これはとにかく公企業の投資額やら、政府、銀行、公庫の貸し出しベースを見るためには、自己資金をはっきり把握しなければ、貸し出しのベースなり、あるいは財政投融資のベースというものはきまるものでないのですよ。一体、この自己資金等に含まれるのは、どういう金が自己資金等に含まれるのですか、まずこれをはっきりしてもらったら、もっとはっきりしてくるのですよ。
  32. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 主として回収金でございます。
  33. 滝井義高

    滝井分科員 これは回収金やら繰越金ですよ。しかも、公企業の利益金、それから償却充当金、そのほかに、外債発行による調達金まで入るのですよ。そうしますと、これを明確に把握せずして、財政投融資というものは、大臣が御指摘になったように、論ずることはできないですよ。一体自己資金というのはどのくらいになるのですか。ことしのその自己資金を入れた財政投融資の総規模というものは、一体幾らになるのですか。
  34. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、計算いたしておりませんので、今直ちに計算をさせますから、しばらくお待ち願います。
  35. 滝井義高

    滝井分科員 私はちょっと過去の足し算をしてみたのです。そうしますと、三十四年は、五千百九十八億が財政投融資です。この総規模は九千百二億円です。それから三十五年は、ゴクヨイトコロ、こう僕は覚えておったのですが、五千九百四十一億円、そして総規模は一兆四百四十二億円です。三十六年は、七福神で、七千二百九十二億が財政投融資です。あるいは足し算が間違っているかもしれませんが、総規模は一兆二千二百七十二億円です。ことしは八千五百九十六億に、おそらく一兆四千億をこえておるのじゃないかと思うのです。そうしますと、この財政投融資というものは、当然私たちは自己資金等についても相当論議をしなければならぬ。ところが、国会においては、あなた方もこの自己資金に対する資料をお出しにならないし、われわれの方も、財政投融資については今までうかつ千万にも突っ込んでいないのです。従って、これはやみからやみ——と言っては語弊がございますが、全く論議の対象にならないままで過ぎていっているわけです。  そこで問題は、どうして私がこういうことを言うかというと、結局、ことしの予算というものは引き締めの予算だ、いわゆる中型の健全な予算だ、こうおっしゃっておるわけです。ところが、この一般会計と、それから財政投融資の総規模の状態を見ると、この規模というものは、昨三十六年のいわゆる岩戸景気といわれたときの財政規模をはるかにオーバーしておるものなのです。あとでまた触れますが、この状態の中からは、この予算というものが緊縮予算なんというしろものではないということがわかってくるわけです。こういう点が今まで盲点として残っておるのですが、今後財政投融資を論議する場合には、当然私は、大蔵省としては、自己資金とかその他についても詳細な資料を国会に提出してもらう必要があると思うのです。そうしないと、われわれは財政の全貌というものを正確に把握することができないわけですが、こういう点に対する大臣の見解は一体どうなのですか。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 国会ではあまり論議がなかったかもしれませんが、私どもの方では、財政投融資計画を立てるのですから、各業態の自己資金の問題も厳密な否定、検討をしておるものでございまして、むろん資料は十分持っておりますので、必要ならいつでもこれは参考資料として出せると思います。
  37. 滝井義高

    滝井分科員 とにかく、こういう大事な財政資金の計画というものが、国会に義務的に提出をされるという形になっていないところに、やはり日本予算制度というものは一つの非常に大きな問題があると思うのです。だから、この前も高橋助教授が指摘をしていましたが、こういう点については、やはり財政法なりを改正して、義務的に国会に提出する形をとる必要があると思うのです。これは、時間がだんだんなくなりますから、一応こういうことだけを指摘して先に参ります。  もう一つの問題点は、この財政投融資の範囲で、当然財政投融資計画の中に計上されなければならないと思われるもので計上されていないものがあるのです。それを指摘しますと、まず「予算の説明」の六十七ページをはぐってもらいたい。そうすると、余剰農産物資金特別会計の愛知用水公団に対する貸付、これは三十五年には四十五億円、三十六年には十七億円あるわけです。こういうものが財政投融資計画には全然載っていないのです。一体どうしてこういうものを載せないのかということです。これが一つです。それからもう一つ、四十七ページをおはぐりになっていただきたいと思います。四十七ページの、経済援助資金特別会計から、日本航空機製造株式会社に、三十七年度貸付金として五億五千万円、三十六年度は十五億、三十五年度は十二億貸し付けている。こういうものも全然資金の計画に出ていないのです。それから四十ページをおはぐりになると、そこの農業近代化資金です。この設置に、農業系統資金の導入等で三十六年三百億、三十七年は、四十一ページの左側の上段の方に、「三十六年度の三百億円より二百億円を増加して五百億円を予定している。」こう書いてあります。こういうものが全然入っていないのです。こういうように莫大な金が動いているにもかかわらず、しかも、これは財政投融資計画の中に入れられなければならぬと思われるにもかかわらず、入っていないのです。これは財政投融資計画の形式というものが、結局大蔵省の理財局の恣意的なものか何か知らぬけれもど、恣意的にやられているような感じをわれわれは受けるわけです。これは何か、あるものは財政投融資の計画に計上し、あるものは計上しなくてもよろしいというルールでもあるのかどうかということです。これは見れば見るほどわからない。さいぜん申すように、自己資金等の問題もあって、そしてその自己資金の内容が、外債なのか回収金なのか何なのかということもわからない。ある場合には一般会計から出したり、貸付金になってみたりして、わからない、こういう実態です。これでは、われわれがいかに勉強して予算を審議しようとしても、この予算の説明書と、それからあの一般会計の予算書だけをもらったって、徹夜に徹夜を重ねてもさっぱりわからないですよ。これでは、国会議員が、つんぼさじきというよりか、めくらさじきに置かれておると同じです。こういう点のルールと申しますか、これをやはり確立してもらわなければいかぬと私は思う。こういう点は一体どうお考えになっておりますか。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは、私よくわかりませんが、たとえば農業近代化資金というものは、政府財政資金ではございませんで、民間資金で、その民間資金の中からこれだけ特に近代化資金に使われるという予定でございますので、国の財政投融資計画の中へ性質上やはり入るべきものじゃないじゃないかと思います。これは民間資金だから、計画の中から抜けているように思います。
  39. 滝井義高

    滝井分科員 民間資金だから抜けておるのじゃないかと思うというのでは困るのです。何かそこに、こういう場合には財政投融資計画には載せない、こういう場合には必ず載せなければならぬというルールがないと、財政投融資計画というものは、われわれが今覚えておるように、ヤーゴクローとか、七フクジンとか、そういう数字を何かもじって覚えておるのです。しかも、これは一般会計の数字と同じ程度くらいにわれわれは大事に思っておる。ところが、ある場合には財政投融資に計上しておるけれども、ある場合には計上していない、このけじめをはっきりしてもらわぬと困るわけです。ここらあたりを、もし何かけじめをはっきりあなたの方でお作りになっておるならば、こういう場合は財政投融資計画に計上する、こういう場合は計上しなくてもよろしいという、そういう資料があるならば、それを一つきちっと出してもらいたい。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 けじめの問題ではございませんで、産業投資特別会計、資金運用部資金、簡保資金、公募債借入金、これがいわゆる財政投融資計画の原資でございまして、これに関する限り、これをどう配分するかというのが財政投融資の資金計画でございまして、一般民間の資金というものをどういうふうに使うかという、いわゆる国の事業計画というものではございませんで、政府資金の資金計画でございますから、けじめははっきりついておると思います。このほかのものは原資と財政投融資では見ていないので、これに限った範囲内の資金計画を財政投融資計画というのでございますから、けじめははっきりついていると思います。
  41. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、愛知用水公団に対する余剰農産物資金特別会計からの貸付なんというものは、今の論理には当てはまらぬことになる。愛知用水公団というのは、一部は財政投融資計画に載っておるわけですから。
  42. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。  財政投融資といたしましては、長期に安定的に動員し得る資金といたしまして、産投会計、資金運用部資金、簡保資金を中心といたしまして運用計画を立てまして、国会にも御報告申し上げ、御審議を願うようにいたしておるわけですが、御指摘の余剰農産物資金につきましては、回収金はアメリカに返済することになっておりまして、期に運用し符ない建前のものでございますので、財政投融資計画としてそこに入れていない、こういうことになっておるわけであります。
  43. 滝井義高

    滝井分科員 どうもそこらあたりあなた方のひとり合点でやられたのでは、われわれはよくわからぬわけです。だから、やはりこういう場合には財政投融資計画に載せる、こういう場合は載せないのだというけじめを、今のあなた方の御答弁方針通りにお貫きになるというならば、やはり国会ではっきりしてもらう必要がある。そうしないと、われわれはさっぱりわからぬ。出てきた数字を金科玉条として見ておると、類似のものが載っていなかったり載っていたりというのでは困ると思うのです。こういう議論は初めてするわけですから、もう少しあなた方の方も研究をして下さい。これは重要な研究課題だと思うのです。  それから財政投融資の資金の一番最大なものは資金運用部の特別会計ですね。これも四十七ページをごらんになると、資金運用部特別会計というのが出ておるのです。わずかに十行か十五行そこらです。五千八十二億の金の運用面については、私たちにとっては皆目わからぬわけです。どうしてこういう皆目わからぬことになるか、こういう五千八十二億というような、日本財政投融資計画の中の一番大事な資金源というものがどうしてこういうことになるかというと、政府は参考書類の国会への提出の義務も法律的にはないのですね、従って、正式の予算書類の中からは、資金運用部資金の活動の姿というものは、どこを探しても全くわからない。しかも、資金運用部の資金だけではない。公社とか公庫とか、あるいは政府銀行、こういうような政府関係機関もほとんど同じですね。こういうものについても国会はある程度はっきり提出をしてもらって、そしてそれがやはり討議の対象になる、そういう義務を負わせることが必要じゃないか。大事な資金運用部の計画というものを、たった十行か十五行だけのこの説明では、神様だってわからぬ。眼光紙背に徹するといったって徹しようがない。全くわからない。以上のことからいっても、財政投融資計画の概念規定というものは非常にあいまいです。だから大臣、一ぺん審議会でもお作りになって、財政投融資計画の全貌、その概念規定というものをどういう工合に国民大衆に、国会にわかるように明らかにするかということを検討してもらいたいと思う。私、去年からずいぶん勉強してみるけれども、なかなか全貌をつかめない。つかもうとすれば、一々大蔵省に行って資料をもらう以外に方法がない、こういう形です。大臣自身も、そこまで掘り起こしていくと、おそらく、待て待てということになるのじゃないかという感じさえするわけです。大臣、資金運用部特別会計の運用計画をこれでやってごらんなさいといったって、なかなかこれだけではわからぬ。だから、ここらの関係書類を国会に提出するという義務的な形を当然作る必要があると思うのですが、どうですか。
  44. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 財政投融資計画は、先ほども御説明いたしましたように、産業投資特別会計、資金運用部資金、簡保資金及び公募債借入金によってまかなわれておりますけれども予算そのものとして国会の御議決を願う産投会計から、純然たる民間資金によるものまでも含んでおりますので、これらを一括いたしまして国会の議決を得るようにすることは、必ずしも適当ではないのじゃないか。ちょうど財政と金融の中間に位いたしておりまして、相当弾力的に運用することが適当かと思います。従いまして、財政投融資計画全体を国会の議決にかけることについては、相当問題があるんじゃないかと思います。しかしながら、御指摘の予算の説明書の説明の不備な点につきましては、十分配意いたしまして、もう少しわかりやすいものを作るように努力いたしたいと思います。
  45. 滝井義高

    滝井分科員 これは相当検討すべき多くの問題を含んでおると思いますから、ぜひ一つ大臣も積極的に御検討になって、一挙にそういう資金計画の全貌を国会に提出することができないならば、今局長の言われた程度の、われわれしろうとが見てもわかる程度のものはぜひ作ってもらいたいと思う。  次は、財政投融資の原資の問題です。ことしの財政投融資の状態を見ますと、財政投融資の固有の原資ともいうべき財政資金がだんだん枯渇して、伸び悩み状態が現われてきておるのです。たとえば、郵便貯金を見ますと、三十六年度は千四百五十億円、ことしは千五百五十億円、百億しか伸びていないのです。それから簡保年金を見ると、三十七年度が千五百億、昨三十六年度が千三百六十億、百四十億しが伸びていない。三十六年度の伸びは、郵便貯金が百五十億で、簡保年金が三十六年度は二百十億と、相当伸びておったのですが、ことしは非常に伸びが縮まっておる。この現状は、最近、新聞では、年末になってから三十六年度分が非常に伸びたということを報じておるのですが、最近これは相当情勢は変わってきておりますか。
  46. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 特に見込みと違うようになると思われますものは、郵便貯金でございます。ただいま直ちに的確な数字を申し上げかねますが、当初四月以降伸びがかなり鈍化いたしておりましたけれども、十二月、一月と相当ふえまして、二月、三月は例年減少するのでございますが、二月の減少の状況もまだ見えておりませんので、郵便貯金につきましては、実績は大幅の成績をおさめるのじゃないかと思います。簡保の方は、的確な数字がございませんが、あまり見込みと変わらないように考えております。
  47. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、一応その見込みと変わらないということになると、相当大きく伸びるという情勢でないということになるわけですね。一方、そういう今までの財政投融資の固有の財源というものが停滞状態にある、そういう中で、私たちが見てみると、国民年金と厚生年金の基金が非常に伸びてきているということです。三十六年が千三百四十億円、三十七年が千七百二十億円、三百八十億増加をしている。郵便貯金と簡保年金を合わせたものより増加をしているわけです。このことは一体何を意味するかというと、財政投融資の原資というものが、今までの任意貯金的なものから強制貯蓄的な年金にだんだん比重がかかってきたということを意味するわけです。いわば財政投融資の原資の内部的な変化が起こり始めているということを認識しなければならぬと思うのですが、その点に対するあなた方の将来の考え方はどうですか。そういう方向財政投融資の原資というものは大きな転換を見つつあるというのが私の感じです。
  48. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御指摘のように、だんだん社会保険的な資金のウエートがふえてきつつあります。簡保資金につきましては、そのうちに保険金として支払わなければならぬような金額となって参りまして、運用資金としてはだんだん減ってくるのじゃないか、郵便貯金につきましては、一般の金融機関の預金との競合関係がございますけれども、まだ伸びる可能性があるのじゃないかと思います。御指摘のように、社会保険的資金のウエートがふえてきたということについては、われわれも同感であります。
  49. 滝井義高

    滝井分科員 そうなりますと、強制貯金的な年金の金というものが、財政投融資の中に非常に大きな比重を占め始めたということになると、この金の使い方についても一つの制約が出てくるわけです。制約が出てきたから、この前、国民生活の基盤強化のための分類表を作って、そういう強化のためにこれくらい使いますということを昨年からお示しになることになったと思うのですが、この金の使い方について、あなた方は、原資の性質が変わってき始めたのですから、どういう工合に今後これを変えていく方針なのかということです。どういう方向財政投融資の重点というものを今後変えておいでになる方針なのか。それは、出すもとの金が性質が違ってきたからには、当然これは考え直さなければならぬ。原資が強制貯蓄的なものになってきたのですからね。だんだんその比重が大きくなってくるのですから、従って、これは強制貯蓄をされた側からいえば、その金の使い方についての要求が出てくることが当然なんです。大蔵省としては、将来の財政投融資計画を考える場合に、当然これは方向としては考えなければならぬ問題点だと思うのです。どうお考えになりますか、大臣
  50. 水田三喜男

    水田国務大臣 まあ強制貯蓄的な資金で、大衆の資金であります以上は、これは有利に運用する、利回りを向上させるという運用をやらなければならないだろうと思います。そうしますと、従来財政資金で公共的なものとか、特に産業基盤の強化というようなものに長期低利の金を必要としたのですが、そういうところにこの資金の中で多く使うということになりますと、一般の今の零細貯金の方の利回りが減ってくるということになりますので、将来の方向としては、有利な利回りを確保しようとしますと、勢い、産投会計からの出資とか一般会計からの出資というようなものによってそういう部門をある程度受け持って、一般国民の零細貯蓄の資金の方になるたけしわを寄せないようにというような運用の方向が将来出てくるのじゃないかと私は考えています。
  51. 滝井義高

    滝井分科員 ちょっと大臣の言葉がたどたどしかったので、わかりかねたのですが、そうしますと、大臣としては、そういう強制貯蓄的な年金の金だから、この利回りを有利にするためには、産投会計を通じて有利に資金の運用ができるような、いわゆる利回りの高い方向にお金を持っていかざるを得ない、こういう御意見なんですか。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうじゃないのです。そういうところで特に低利な資金を分担しないと、全体の有利な運営がはかれないで一方にしわ寄せする、こういう問題が起こるだろうということを申したわけでございます。ですから、将来一般会計に求められる面と、それから産投会計への要望というようなものが非常に強くなってくるだろうと考えております。
  53. 滝井義高

    滝井分科員 御存じの通り、昨年古井さんが厚生大臣の時代、あるいは岸さんが総理の時代から、だんだん国民年金なり厚生年金の積立金というものが非常に多くなる。これは昭和四十年には国民年金でも二千三百億、昭和四十五年には五千五百億と、急ピッチに伸びていく。厚生年金でも基金が現在五千百億あります。これが昭和四十五年になると一兆四千億になる。おそらく財政投融資の大宗をこれが占めることになる。そうしますと、すでに現在あるように、これらの資金というものは民生安定の方向に、国民生活の基盤強化の方向に持ってきてくれという要求が非常に強くなると思うのです。ところが、国民生活の基盤を強化する方向にこの資金をつぎ込むということは、一つの矛盾が出てくる。どういう矛盾が出てくるかというと、そういうところにはその財政資金というものは低利で貸さなければならぬことになる。たとえば住宅あるいは上下水道というようなものは、低利で貸さないとやっていけぬことになる。そうすると、低利で貸せば年金の方の利回りが安くなるわけですから、年金の被保険者としては困るということが出てくる。しかし、お金はわれわれの金だから、われわれ民生安定の方向に使ってくれ、こうなる。しかし、それを有利に運営しようとすれば、産業基盤の強化、大企業の方向に持っていくか、輸出産業、将来伸びる産業に持っていく、こういうことになると、大企業に奉仕することになるわけです。そこでここに一つの調和と申しますか、この矛盾をやっぱり解決する調和というものをとらなければならぬわけです。この調和をどういう工合にとるかということが、やはり今後の日本財政投融資を計画する場合に、非常に大きな問題点になってくると私は思う。一体内閣としては、どういう方向でその調和を求めていくかということなんですね。この点、この財政投融資の使途別分類表というものをお作りになってから、ことしで多分二年目か三年目になると思う。この使途別分類表を見てみますと、ほとんど昨年と同じ分け方をしているのです。生活基盤の強化のために約五割程度、それから産業基盤の強化の方向に三割程度、それから重要産業の資金の補充、こういうところに、大体二割程度を持っていっているわけです。これは昨年も同じです。今年も同じです。ところが一方、資金の方は相当に強制貯蓄的なものがずっと伸びてきているのですから、そうしますと、やはりここらで、一体日本の民生安定のために、どういうところに金をつぎ込んだら一番生活基盤の強化になるかという問題になってくると思う。日本における生活基盤強化のために使わなければならぬ点は何かというと、今、日本で一番困っているのは住宅です。そうしてその次に一番困っているのは何かというと、高校生の急増対策です。こういう点に思い切ってやはり財政投融資を私は持っていくべきだと思う。これならば、そう高からず低からずというところの利回りになってくると思う。道路とか港湾とかというのは、社会的な資本の充実という面で強い要請はあるけれども、少なくともこの年金の金の重点というものは、そういうところを量大重点にして持っていく。そうしますと、今与党の内部でごたごたもめているような、高校生の急増対策をどうするか、地方交付税でたった五十億程度起債か何かで見てくれるというような問題は、解決してくるのじゃないか。同時に、国民が厚生年金なり国民年金に協力をする形が出てくるのじゃないかと思うのです。ところが、そういう点がこれは非常にあいまいなんですね。そういう民生安定の方向にこういう工合に持っていきましたと、ぴしっとするところがあいまいだ。こういう点、内閣としては当然明白な方向をこの際出す必要があると思うのです。こういう点に対する大臣の見解をお伺いしたいと思うのです。道路とか港湾というものは急がなければならぬけれども、幾分遠慮をしてもらって、この際一番困っているのは住宅と高校生の急増対策等なんだから、これに年金の金を持っていく。こうなりますと、これは民生安定に直結をしてくるわけです。こういう点、財政投融資の原資が強制貯蓄的なものになり、その比重が非常に重くなってきておる、しかも分類表をお作りになった、こういうときにはやはり大臣としては、これをそういう方向に持っていくのだということをはっきりせしめておく必要があるだろう、こういうことなのですが、それに対するお考えを承りたい。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 その方向へ持っていくために、使途別の分類表を作って、どういうふうに使われているかということをはっきり示すということになっておるわけでございまして、この表でごらんになってもわかりますが、もっぱらそういう方向にこの資金は運用されているということでございます。五〇%以上はもうはっきり国民生活に直結した部門に使われていますし、開発銀行への融資というようなものも年々比重が減っておりまして、従って大きい企業への融資というようなものの比重はもう一割もないというところまできておりますので、方向としてはそういうような方向で運用されつつあるのが実情でございます。  高校対策というお話が出ましたが、これも御承知通り、向こう三年間で五百何十億という計画でございますが、初年度の百五十億については、そこからの資金を五十億円起債として見ておりますが、計算でこれで大体足りるということになって計上しておるわけでございまして、やはり高校対策にもこの金を使っているのが実情でございます。
  55. 滝井義高

    滝井分科員 使っているのは私も認めるわけです。しかし資金の比重というものが、年金その他の強制貯金的なものが飛躍的に増加をしてきているわけです。一方、簡保や郵便貯金の方は停滞気味なのです。依然として昨年と同じように五割では、やはり問題があると思う。この際年金の保険料を順当に納めてもらうためにも、そういうところ重点を置く必要があろうということなのです。これは、こまかく中に入るのは時間がもうございませんからやめますけれども、大ざっぱなものでぜひやってもらいたいと思うのです。  最後にもう一つお尋ねしたいのは、この財政資金の不足を市中資金たる公募債に求めておるということです。財政投融資の固有の財源というものが、だんだん少なくなってくる。ところが、需要は一兆五千億も要請がある。そこで政府は依然として相当の公募債を三十七年度にお認めになっておるわけですが、三十六年度における公募債の消化の状態は一体どうなっておるのかということです。
  56. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 最近の金融情勢からいたしまして、事業債の消化がなかなか円滑に参りません。政府保証債も、去年の十一月ごろまでは大体毎月予定の規模で発行いたしておりましたが、昨年の秋以来、多少民間事業債の消化と対応させるために控えておりますので、計画よりか若干下回るような数字になっております。
  57. 滝井義高

    滝井分科員 三十六年度の政府保証債は多分八百七億くらいだったと思うのですが、この発行予定は幾らで、現在の消化状態は幾らになっておりますか。
  58. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 お答えします。今手元に正確な数字を持っておりませんが、当初の計画が八百四十二億でございます。不用もございますし、不消化などもございますが、約一割の八十億程度が発行未済になる予定でございます。
  59. 滝井義高

    滝井分科員 その発行未済になる分というのはどういうのですか。国鉄債、電電債、道路公団債というような、いわゆる財政投融資計画をになう非常に重要なものが、八百四十二億の中には含まれておるわけですね。政府が景気後退のために相当の金融引き締めをやらなければならぬ、そういうときに民間から金を吸い上げていくということは非常に困難な情勢に来ているわけですが、八百四十二億の一割程度は発行ができないということになれば、国鉄債とか、電電債とか、道路公団債という重要な社会資本を充実する計画に支障を来たすことになるわけです。先日私ちょっと新聞で見たのですが、その売れ残りの分をある程度資金運用部で引き受けた分があるのじゃないですか。それはどうなっていますか。
  60. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 まだ最終的にどの機関がどの程度政府保証債の消化ができなくなるかということは、はっきりいたしておりません。従いまして、仰せになられましたような預金一部資金で肩がわりするということはまだやっておりませんけれども、年度末までに実情を確かめました上、預金部資金で肩がわりするということで不足資金を解決いたしたい、かように考えております。
  61. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、年度末に預金部資金で穴埋めをするとすれば、当然その分だけ政府関係機関の事業資金の不足を来たすことになるわけです。それを今度八十億を三十六年分で持っていってしまうと、政府関係機関に金を持っていく分がなくなってしまいます。この穴埋めを一体どうするかという問題が、一つ出てくるわけです。それからもう一つは、こういうように八十億程度も公募債が未消化である、そうすると、ことしは、三十七年度は一体公募債は幾らになるのですか。
  62. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 先ほどの点、若干補足いたしますが、約八十億程度未消化と申し上げましたが、そのうち二十八億は不用で、事業が進みませんので要らないということになりまして、残りの五十四億につきましては、ただいま局長が御説明しました通り、まだ実行はいたしておりませんが、先日資金運用審議会の議を経まして、郵便貯金等の伸びを当てにしまして政府が肩がわりして引き受けるということで、各機関の事業に支障のないような措置をとっております。  それから来年度の話でございますが、来年度の公募債借入金は千四百八十二億でございますが、このうち政府保証債は約千億でございます。千ちょっとでございますが、ことしの当初計画八百四十二億に比べますと相当な増加額でございますが、このうちには約百四十億ほどの満期償還分がございます。そのほか五、六十億の定時償還分がございますので、純増ベースで見ますと約五、六十億程度、五、六%程度の増加、こういうことになっております。従いまして、ただいまの金融情勢ではなかなか困難な場合もあろうかと思いますが、年度間を通じては何とか目標を達成したい、こういうように考えております。
  63. 滝井義高

    滝井分科員 大臣今お聞きの通り、ことしでもとにかく五十四億です。ことしのこの借入金と公募債の総額は、千二百三十七億円だったわけですね。そのほかに、約四百億程度の借入金がついておるわけです。ことしの、三十七年の公募債と借入金は千四百八十二億円です。そのうち千億、政府が保証しているわけですね。そうすると、三十七年は去年よりかもっと激しい引き締めがあるわけです。もっと金詰まりになってくるわけです。その中で政府は千億の保証債をやる。そのほかに四百八十二億ばかりの借入金を別に許すことになるわけなんです。ここなんですよ、私の言いたいのは。財政投融資計画というものをきちっとお立てになってやるような場合には、こういう点についてもやはり、もう少し明白に、われわれにわかりやすい資料なり内容というものを、質問でなくて、前もってやはり予算審議の上に役立てるようにしておいてもらわぬと、いつの間にか、二十八億不要になりました、こういうことになる。そうすると、口では二十八億だけれども、その二十八億の事業が不要になってやめた企業というものにとっては、これはなかなか問題があると思うのです。そういう計画が狂ってきておるわけですから。狂うが、二十八億の金が不用になるということもまた、おかしなことですね。そうすると、ことしのような、三十六年度のような景気のいいときでさえも、八百四十二億全部消化できなかった、一割程度消化できなかった。来年は三十七年度は、一割というと百億以上になります。そのほかに借入金四百億やるわけです。そうすると、一体借入金の状態はどうなっておるのですか。この千二百三十七億のことしの公募債と借入金は順当にいっておるのですか。
  64. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま先生の御質問・の残りの額のうち、一部は地方債でございます。あとの半分くらい、約二百億でございますが、これが借入金でございます。この借入金はもっぱら住宅公団の生保からの借入金でありまして、二百億のうち一割は繰り延べの一環としまして繰り延べ、来年度引き受けていただく予定になっております。従いまして、ことしは百八十億は消化できる見込みでございます。
  65. 滝井義高

    滝井分科員 何ということはない、一割を頭から繰り延べさして、あとは消化できます、こういう話ですね。だから、こういう点は国会へ参考書類を出してもらって、やはり——二百億だろうと思っておっても、いつの間にか二十億のものは繰り延べられておる、われわれは知らないということでは問題があると思うのです。今、原資の問題や財政投融資のあり方の一、二の点についていろいろ御指摘を申し上げました。しかも指摘をした一、二の点についても、私自身ほとんど納得いかないのです。ことしの五十四億の公募債の未済の分については資金運用部から埋めます、そうすると、その資金運用部の埋めた五十四億というものは、今度は必ずどこかに穴があいてくることになる。どこかの機関にいく金が削減されなければならぬという関係が必ず出てくるだろうと思うのです。だから一波万波を呼んで全般的な連鎖反応が起こって、財政投融資計画というものはもとの計画とは似ても似つかざるものになってくる可能性が十分にあるわけです。こういう点は、予算だからやむを得ぬじゃないかといえばそれまでですけれども、そういう点についてはやはり財政投融資計画の全貌について、法律的にも資金的にも、その使い方についても、もう少しきちっと私たちにわかるように、大臣、ぜひ一つ三十八年度予算編成のときからしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  66. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、必要な資料は当然提出できますし、またこの書き方についても、もう少し参考になるような工夫はこらしたいと思います。
  67. 滝井義高

    滝井分科員 ぜひ一つ、法律的に国会に提出できるというような形を、できるだけ義務的にやらないと、人間というものはなかなかやらないものですよ。やかましい国会に、書類を出せば出すほど大蔵省はやかましく言われますから、出さぬ方がいいということになるわけです。しかし、これはやはりお互いに公金を扱うわけですから、できるだけ法律で義務的に出させるような形にしてもらいたいと思います。それから説明のむずかしいところは、できるだけわかりやすく、われわれしろうとにもわかるようにしていただくことを要望して終わります。
  68. 西村直己

  69. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私は滝井先生と違って、きめの荒いところ質問を申し上げたいと思います。  まず第一に御質問申し上げたいと思いますことは、昨年、国家公務員に対する人事院の勧告のありましたときに出された給与に対して、いろいろと私ども質問を申し上げたときに、大蔵大臣は、人事院から四月実施というような勧告を六月や七月に出してもらったとて、技術的には絶対にできないことである、こういうように言い放たれたのですが、このことは、今年の人事院の勧告の時期とか金額、また指数を調査する時期、こういう面にも大きな影響があろうと思いまするので、その点を再確認いたしたいと思うわけです。特に国の予算につきましては、定期昇給の分はそれぞれ予算化してありますけれども、ベース・アップの分はいつも同様に、補正予算でまかなうというやり方をしておりますが、大臣のあの当時の発言が私はいまだに気にかかっておりますので、きょう明確にしてもらいたいと思うのです。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 あのときは、技術的に困難と言ったのじゃないと思います。御承知のように、新年度予算は四月一日から発足しますし、三月三十一日までに国会の審議を終えてもらうということになっています。この予算がきまったら、その翌月に、さかのぼって給与を改定せよというようなやり方は困るということを申したわけでございます。従来は、人事院勧告がいつございましても、その翌年度の四月一日からこれを取り入れて実施するというようなやり方をしておりましたから、その問題はなかったのでございますが、そうじゃなくて、その年度の最初にさかのぼれということになりますと、それが毎年例になるというようなことでしたら、それをあらかじめ見込んだ予算を盛るというようなことが妥当な措置ということになると思いますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、人事院の勧告を待って——どういう勧告がくるかわかりませんし、勧告を待って措置するという建前になっています以上は、年度の中途で勧告が出て年度初めにさかのぼれというやり方が、非常に予算の編成の建前からも困るということを申したわけでございます。これは実際においてそうだと私ども思っております。
  71. 田口誠治

    田口(誠)分科員 予算編成の建前からむずかしいというお話ですが、実際にそれを実行しようとすれば、どういうような点に支障があるかということを、まず具体的に承りたいと思います。これは大臣がお答えにならなければ、給与課長さんも大月銀行局長さんもおいでのようですから、その方から私の納得のいくような御説明をいただければいいのです。大臣に限ってはおりません。
  72. 平井迪郎

    ○平井説明員 先ほど大臣から御説明申し上げましたように、技術的にできないという問題でないということは、繰り返して申し上げるまでもないと思いますが、ただ、公務員の給与の問題というのは、単に公務員給与ないし公務員制度だけの立場でなしに、広く国民経済的な立場から考えるべき問題でございますし、また給与の本質からいたしまして——インフレーションが急激に高進しつつあるような時期、そういった時期においては赤字補てん的な意味の遡及ということも考えられますが、原則としては、給与の本質から見まして遡及することは好ましくない、そういうような考え方が基本にあるわけであります。
  73. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今の課長のお答えからいきますと、遡及精算をやるとインフレを起こすというような点も考慮しなくてはいけない、それからまた、他の事業所にも影響があるんだから、この金額のきめ方、時期のきめ方についても考慮を払う必要がある、こういうことなんですが、そのことなれば、そのときに幾らでも論議ができることでございますけれども、私、ただ頭の中にこびりついておりますことは——大蔵大臣はきょうは答弁上手に逃げておられますけれども、内閣委員会の当時の速記録を出して見ていただけばわかりますが、これを審議する場合に、金はあっても、遡及精算をするとインフレをかもし出すから工合が悪いという意見もあり、それから増収見込みがないという意見もあり、いろいろな意見があったのですが、私らといたしまして一番困ったものだと思いましたことは、技術的にさかのぼることはできないということであったので、その点をきょう確認いたしたわけなんです。それで、ただいま課長のお答えの程度なら、場合によってはそういうことも、金額によってはあり得ると思いますし、考慮する場合もあるかもしれませんが、昨年度あたりの程度のものは、そういう考慮は全然なかったわけなんです。それで昨年の場合は、最終的には大臣がおいでになって、とにかく技術的にむずかしいんだ、六月や七月になってから、四月にさかのぼって遡及精算をせよというような、こんな勧告は受けられないのだ、将来ともこんなものは受けられないのだというようにお答えになったわけなので、そういうことがないということなら、これはこれでいいわけなんですが、その点やはりはっきりしておいていただかないと、もしそれがどうでも支障があるということなれば、人事院の給与局長もお見えになっておられますので、人事院の方へもいろいろとお尋ねしたいと思うので、もう一度明確にしてもらいたいと思います。あまり答弁上手にやってやってもらわぬように、率直に……。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきも申しましたように、私、技術的ということは言わなかったと思います。問題は、予算編成の建前とか、あるいは、給与の方を遡及させるという問題は好ましくないということを言ったわけでございまして、技術的にできないというふうには言っておりません。
  75. 田口誠治

    田口(誠)分科員 建前としては、四月から実施することを一月あたりに勧告してもらうことが、これは一番審議もしやすいし、予算化もしやすいと思うのですが、まあそうばかりもいきませんので、大体人事院の勧告する基礎資料になるものは、新年度の四月の民間給与を調べたり、物価指数を調べたりして、そうして金額をはじいておるわけなんです。そうしますと必然的に、勧告を出されたのはやはり六、七、八月というようなことに相なってくるわけなので、今大臣お話しのようなことでございますれば、永久に四月実施という勧告は出してもらえないということになるわけなんです。出してもらっても無意味だということになるわけなんで、そういうことから、その点が非常に憂慮されるのでお聞きをいたしておるわけなんですが、絶対にできないというものではないのですね。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは絶対に不可能なことじゃありません。ただ、そういうやり方は好ましくないと考えておるわけであります。
  77. 田口誠治

    田口(誠)分科員 人事院の給与局長にお尋ねをしますが、今の質疑のやりとりを聞いていただいておわかりだろうと思いますが、やはり人事院といたしましては、四月という月を対象にして、物価指数を調べたり、民間との格差を調べたりするという、こういう資料に基づいて今後もなされるのかどうか、この点伺っておきたいと思います。
  78. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 人事院といたしましては、公務員法にきめてございますところ、また給与法にきめてございますところに従いまして、公務員の給与の状況というものを調査研究いたし、それからまた民間の給与の状況を調べまして、公務員の給与を改定する必要があるかどうかということを判断するわけでございます。従来三月という月を調査の対象にいたしておったことは、御存じの通りでありますが、いろいろな経緯から、ことに最近におきまする過去二、三年と申しますか、四、五年というところでは、ぼつぼつ給与の上昇ということが、四月というところにおいて非常に大きなものがあるのじゃなかろうか、そのために三月調査を人事院がやっておるならば、実際に民間で給与の上がった状況と一番大きな開きが出るのじゃないかというようないろいろな意見が、御承知通り出て参ったわけでございます。そういうことをいろいろ勘案いたしまして、一昨年と去年は四月調査ということをやった次第でございますが、この調査の時期を変えるというのは、これは非常にむずかしい問題であろうかというふうに思っております。現在におきましても、まず本年の調査の時期というものも、たとえば、公務員給与につきましては一月の状態で調査いたすのでございますが、民間の状況はやはりここ二、三年来やっておりまする四月という月を直ちに現在変えるという非常に強い理由もまだ現在のところ出ておらないのであります。従いまして、今後の問題として十分研究をしなければならぬのでありますけれども、おおむね四月調査をやる公算が非常に強い、このように考えております。
  79. 田口誠治

    田口(誠)分科員 お聞きして大略わかりました。大臣の方から昨年お聞きいたしましたことは、言葉の表現で若干私が申したことと違っておったかどうかわかりませんけれども、いずれにいたしましても七月、八月勧告を受けても、四月にさかのぼるということは絶対にできないことではないということでございますので、その点は安心をいたしました。従って人事院の方としても、やはり最も公平妥当な方法で、今後とも勧告の作業を進めてもらいたいということを要望申し上げて、次に移りたいと思います。  次は、先般も大蔵委員会の方で、国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案が出ておったようでございます。この問題につきましても、やはり法の裏をくぐって非常に不統制な行為がなされておるというので、この点はそれぞれ法務委員会で指摘されたことと思います。そこで私が今日大蔵大臣にはっきりと確認をし、また、確認した上に立って処理をしていただきたいと思いますことは、かつて保全経済会が事件を起こしましたその直後に、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律というのが出ております。それで、この法律の第二条には預り金の禁止という項がありまして、その条文をそのまま読んでみますれば「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定による者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」こういうように明確に書いてあるわけなんです。従って、質屋さんの質屋営業法に基づく場合とか、そうした他の法律に基づく以外のものについては、何人といえども預り金をしてはならないという禁止条項があるわけなんです。ところが現在各民間の事業場を見ますと、社内貯金というのが非常に盛んにやられておるわけなんです。もちろんこの社内貯金につきましては、労働基準法によりましても、十八条の手続をとりますればできることになっておりますし、そうしてまた、国民貯蓄組合法に基づく貯蓄組合を作って社内預金をする方法もあるわけでございますが、この貯蓄組合法を作ってやる場合は、これはまあ法違反でないといたしましても、労働基準法の手続だけで社内貯金をするということになりますと、やはりこの出資受け入れの禁止の法律の二条に違反をするということに相なるわけでございます。この点について大臣はどういうようにお考えになりますか、特にその中で、業としてはならないということがありますが、この業というものの定義を含めて御回答を願いたいと思います。
  80. 大月高

    ○大月政府委員 ただいまの出資の受け入れの禁止に関する法律第二条と、労働基準法第十八条との関係でございますが、この二条におきましては、特別の、法律の規定のある場合はこの限りでないというようにございます。その条文を受けまして、労働基準法十八条があるわけでございます。この労働基準法十八条は、一般の金融法規ではございませんで、労使の慣行を法文化したものでございまして、長年、社会福利施設といたしましてこの制度が認められて、おったわけでございます。これを労働基準法で取り上げまして立法化いたした、こういうことでございます。この出資の受け入れの禁止に関する法律が施行になります以前から慣行としてやっておったわけでございますので、そういう観点を加味いたしまして第二条違反ではない、こういうふうに解釈いたしておるわけでございます。それで、業としてという法律でございますが、これは継続反復して行なう、それから不特定多数の人から金を受け入れる、この二つの意味を持っております。継続反復という点は、もちろん会社が金の預け入れを受けるわけでございますので、当然継続反復いたします。それから不特定多数であるか、あるいは会社の従業員が特定するかという法律論でございますが、特定と申しますのは、きわめて密着した法律上の関係にある、あるいは社会的な関係にあるということが要件になりまして、単に会社の従業員であるということだけでもっては特定しないというのが解釈でございます。従いましてこの第二条でだけ読みますと、この点は第二条違反、それを基準法の十八条及び長年の慣行によって認められておった善良なる制度である、こういう点で排除する、こういうように解釈いたしておるわけでございます。
  81. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今二条違反でないという御説明がありましたが、この社内貯金というのは、やはり政府の戦争政策の一環として戦前から貯蓄奨励を行ないまして、あえてこれをやらせたわけなんです。従ってそういう惰性から、途中で金を出そうと思っても、会社に金がなくて出せない場合があったり、そうして相当たくさんの金を預かっておって、その会社が破産をしたりして、預けておる従業員が非常に不利な立場に立たせられてきたという例が、全国的には方々にあるわけです。そこででかしたのが、この労働基準法の十八条によって預かるなら、利子は六分以下はいかぬ、それから引き出そうとしたら、そのときには何日以内には必ず金を渡さなければいけないとか、労働基準法のは、こういうような労働者を保護するところの法文であって、やみ金融の取締法ができた、この法律とは趣きを異にしておるわけです。従って、やみ金融の取締法をでかしておいて、そうして労働者が社内貯金をやっておるのは戦前からの惰性であるから、慣行であるから、これは違反にならないということは、そういう法文の解釈というものはあり得ないと思うのですが、そういうことがあるのですか。
  82. 大月高

    ○大月政府委員 労働基準法十八条の規定が、出資の受け入れの禁止に関する法律の二条を排除するかどうかという問題でございます。この問題につきまして、今お話のありましたように、労働基準法十八条におきまして、まず強制貯金を禁止いたしておるわけでございまして、労働協約によりまして、任意に預け入れるという決定がなければ、これを受け入れてはいけないのだということで、預け入れ側の完全な自由意思を尊重いたしておるわけであります。それから使用者による委託金の管理規程を制定する義務、あるいはこれを公開する義務ということが法律上きめてあるわけでございます。それから労働者が貯蓄金の返還を請求いたしました場合には、事業主はこれを返還しなくちゃいかぬ。それから、もしこの運営が不適正でございまして、労働者に害を与えるおそれがあるというような場合には、行政官庁が貯蓄金の管理中止命令を出すというような、いろいろな保護規定があるわけでございます。これは一方、金融機関の行政といたしまして免許主義をとり、厳重な認許可あるいは検査をやるというような問題と、面は異なりますけれども、なおかつこの金を預けるという方面を保護する規定として、各種の規定が置かれておるわけでございます。なお会社更生法の規定によりますと、この預け金は、給料だとかあるいは身元保証金あるいは源泉徴収所得税、そういうものと同列に、共益債権として返還を請求し得るということでございます。会社の従業員は、ある意味ではその会社に自分のからだを預けまして、そこから給料をとっている。もちろん最近の思想から申しますれば、これは単なる契約でございまして、必ずしも昔のように身分関係を持っているものではございませんけれども、これは継続的なる関係を持っているわけでございます。ある程度の会社と労働者との間の信頼関係を基礎といたしている。従いまして、そこから給料をもらうという点につきましても、働いたけれども給料がもらえないかもしれぬという問題がある。それと同じ立場におきまして、金を預けるという問題も、会社を信用して預けたい人は預けてもよろしい、そして、預けた場合には、引き出しにつきましては給料と同じように扱っていくのだ、これだけの保護をいたしているわけでございまして、この出資の受け入れ禁止の法律ができましたのは、保全経済会というような、法律上認められない機関において金を受け入れるということを防いだわけでございまして、正当なる仕事をやっております株式会社その他の法人が金を受け入れまして、しかもそれは従業員に限り、かつその自由意思に基づいてやるということでございましたならば、何ら労働者の保護に欠けることがないのではないか、そういうような観点から十八条ができておりまして、第二条との関係も、今のように考えているわけでございます。
  83. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまの御回答はおかしいのです。労働基準法に明記されていることは、これはあくまでも労働者を保護する立法であるわけです。それで戦前から、会社へ金を預ける社内貯金というような制度を一時政府の方から奨励をし、これは貯蓄組合法に基づいてでしたかね、奨励をしておったわけなんですが、その後、先ほども申しましたように、いろいろと労働者に不利な面が全国各地に発生をいたしたので、それでこの労働者を保護するところの立法として、基準法の中に、十八条に、強制貯金の禁止というような形の上においてこれだけの条文が書いてあるのであって、これはあくまでも労働者を保護する保護立法であるということなんです。それからこの出資受け入れの、やみ金融取締法の法律は、これはその他金を預けてもいい、預かってもいいという法律ですね。この法律以外のものは何人といえども業としてやってはならないということになっているのですから、それで今御回答のあったように、業とは反復継続式のものだ、こういうことになりますと、社内貯金はもちろん毎月々々同じような金額を貯金しているのだから、反復継続式のものでありますから、これは業と解釈しなくてはならないと思うのです。社内貯金だけ業でなしに、その他の金融機関が、ほかに集めのないものについては業として禁止をするということになりますると、これはちょっと事実がおかしいと思うのです。従って私は、この労働基準法に示されているものは、これはあくまでも労働者の保護立法であって、そうしてやみ金融の取締法の二条は、これはいかなるものといえども、ほかの法律で定めのないもの以外は金を預かってはならないのだという法律であるから、従って社内貯金そのものは、貯蓄組合法によるところの貯蓄組合を作って社内貯金をしておれば、これは合法ですけれども、その他の方法は、これは違法であるというような解釈が私は正しいと思うのです。それで、これは意見が両立しますけれども、あなたの回答だけでは納得のいく答弁にならないわけなんですが、もう少し、補足的に説明して下さい。
  84. 大月高

    ○大月政府委員 ただいまの法律の解釈の前に、若干補足的に考え方について御説明申し上げますと、金融の機構全体といたしましては、政府が免許あるいは許可いたしております金融機関に貯蓄が入って参りまして、それが正当なるルートに使われていくのが最も好ましいところでございます。それが現在のわが国の金融機構全体を通ずる思想でございますので、今までのお話の御趣旨は、われわれといたしましても全然異論のないところでございます。一方逆に、不正規な金融機関、免許を受けないもぐりの金融機関的なものがございまして、それが勝手に人から金を集めて、それを運用するということは、国民経済的にも非常によくない影響があるほかに、それ自体が不健全でございまして、その金を預かりっぱなしで返さないというような事件が起きる。これがただいまお尋ねの保全経済会その他の、いわゆるやみ金融機関であったわけであります。この取り締まりに関する法律は、これらのやみ金融機関を撲滅したいという精神に出たわけであります。今の社内預金の問題を金融の機構の面から申しますと、お話がございましたように、むしろ禁圧してしまって、正規の金融機関に全部入れてしまえということの方が、それは正しいのであろうと思うわけであります。しかし一方、労働者の立場から考えますと、必ずしも戦争に協力する意味でこういう慣行ができておったわけではないのでございまして、それ以前からの長年の労使間の慣行として、制度が立てられておったわけでありますので、そういう有利に金を預け得る制度を、この際禁止してしまうことがはたして労働政策としていいのかどうかということになりますと、われわれは金融政策の立場と労働政策の立場とを調整いたしまして、むしろこの社内順金の制度あたりは、ある程度金融の面から譲歩いたしましても、保護し、しかも乱用がないようにできるだけ努力していくのがいいのじゃなかろうか、こういう考え方を持っておるわけでございます。社内預金即やみ金融に対する預け金と同様だというようにも、われわれは今の全体の経済の制度として言い切れないのではないか。特に昨年の三月の調査によりますと、貯蓄組合を組織いたしまして金を預かっております社内預金の金額は約四千億ばかりございまして、これだけ大きな金を、非合法であるとして禁圧してしまうのが政策的にいいのかどうかという実態もあると思います。  それから法律解釈といたしましては、たとえば金融機関は免許事業であります。しからばこの免許いたしました金融機関がつぶれるとか、あるいは資産状態が悪くて金が返せなくなったという場合に、国がこれを補償いたしておるかと申しますと、やはり現在の自由主義のもとにおきましては、預金者の責任において損害をこうむっておる。そういたしますと、社内預金に対する危険性と金融機関に預けておる預け金の危険性は、濃淡相違がございますけれども、やはり性質的には同じである、こういうことになるわけであります。われわれは免許いたしております金融機関を極力厳重に監督いたしまして、不祥事件がないように努力いたしております。現在国民の金融機関に対する信頼度は非常に高い。何十年来、いまだ預金者に迷惑をかけた事例がないわけでございます。しかしこれは現実でございまして、法律上免許いたしております金融機関は絶対につぶれないのだ、つぶれた場合にも、預金は全額補償されておるかというと、そうではないということでありまして、われわれは監督をどちらの制度につきましても厳重にやるということでもって、正当なる慣行は保護していく方がいいのじゃなかろうかという考えを持っておるわけでございます。それに、先ほど申し上げましたような法律解釈も加えまして、われわれは社内預金制度を適正な制度として今運営いたしておるわけであります。
  85. 田口誠治

    田口(誠)分科員 社内貯金が貯蓄組合法に基づいて作られており、それが四千億ほどあると言われるが、私はそれなら正しいと思います。それならいいのですけれども、それをやらずに、こういう取締法があるにもかかわらず、単なる労働者の保護立法に基づいて金の預け入れを行なっておるこの行為は、やはりやみ金融の取締法の精神に違反しておるものであって、労働基準法の保護立法に基づいてやられるのはだめなんだ、これは二条違反だ、それから貯蓄組合をそれぞれ作って社内貯金をやられる面については、これは合法であるということになります。私はそこを仕分けして申し上げておるのであって、どうもあなたの御回答を聞いておりますと、何だかやみ金融の取締法は、法に基づかぬいろいろな金融機関ができては困るからこういう法を作ったと言われるが、今の社内貯金というのも、別に法律に基づいてやっておるのじゃないのです。貯蓄組合法に基づくところの貯蓄組合を作ってやっておるのは、これは法律に基づいてやっておるけれども、その他のものは法律に基づいてやっておるのでないわけなんです。ただ労働基準法という一つの労働者を保護する保護立法の手続を経ただけで、これは労働者を保護してもらうための手続を経ただけであって、決してほかの許されておる法律に基づいて貯蓄をしたり金を預かったりしておるものでないから、これはやはり二条違反ということははっきりしておると思うのです。これはまだ研究してもらう余地があろうと思います。きょうは何べん言うても、頭がそういうように固まっておりますから、答弁を変えてもらうということはなかなかむずかしいように察しますが、今申しましたように、明らかにここに書いて、あることは、何人といえども法律に基づくものでないものは、これは業としてやってはならないのだ、その業というものは反復継続式のものだ、今月も来月も同じような金を預けたり預かったりすることだ、これがはっきりと明確になされておるわけなんです。そうすれば今の社内貯金そのものも、国民貯蓄組合法に基づくところの貯蓄組合を作ってやらせるように指導するのが正しいことであって、そうでない、法律に基づかぬものが正しいのだというようなことを大月さんがお考えになっておるということは、これは何かちょっとこだわってみえると思うのです。  なお、この点は私は検討していただく余裕があるので、またおりを見てこの点についてお聞きする機会があろうと思いますから、お預けをしておきますが、慎重に一つ考えてみていただきたいと思います。考えていただけば、これは完全に二条違反ということは明々白々なものであるから、その点を強く私の方から要望申し上げておきます。せっかくこういう法律はできても、法律を守らないという、今のあなたの答弁のようなことが無理にでも通るとするなれば ——現在貯蓄組合を作って他の正規の金融機関へ預けておる人たちも、ほとんどやみをやっております。三十万円までは税金はつきませんけれども、三十万円ずつ別々にして、一人で何百万円というような積み方をしておる人もあるわけなんで、こういうようなことを憂慮されて、おそらく国民貯蓄組合法の改正もお考えになったと思うのですが、やはりこういう法律を作って、法律を順守させようとするなれば、へ理屈をつけて、それが法違反にならないというような間違ったようなことを政府答弁するというようなことは、これは遺憾なことである。やはりこの点は十分に研究をして、正しい指導をしてもらいたいと思います。
  86. 西村直己

  87. 赤松勇

    赤松分科員 私が今政府にお尋ねしたいと思います問題は、本来内閣総理大臣にお尋ねすべき性質のものでございますけれども、その機会を得ませんでしたし、三十七年度予算が衆議院を通過いたしますると、いよいよその機会を逸しますので、この機会に大蔵大臣及び国務大臣として、あなたに一つ質問をしたい、こう思うのであります。  それは御承知のように、昨年釜ケ崎事件が発生をいたしまして、当時政府は釜ケ崎だけでなしに、日本におけるスラム街の全体の対策について十分に施策を行ない、かつ来年度予算においては十分にその対策を講じたいということをしばしば言明したことは御承知通りであります。以来、衆議院におきましては法務委員会、社会労働委員会、地方行政委員会、相次いで現地の調査を行なったのであります。その際に、現地調査の結果、大体現地の治安関係あるいは環境衛生関係、住宅関係、労働関係、教育関係、その他各機関としての総合的な一致いたしました意見は、治安対策の面からのみスラム街の問題を処理することはできない、すなわち大阪高検の意見によれば、これは検事長の意見でありますけれども、問題は釜ケ崎だけではなしに、尼崎にも神戸にもスラム街がある、そして一触即発の情勢だ、第二、第三の釜ケ崎事件はいつ何時発生するかもわからない状態にある、従って事件が発生したときに、そのおしりぬぐいを治安当局がやるというのでは、これは自分たちとしては大へん迷惑だ、この際、政府としては問題が発生しない、すなわち問題発生の前提条件を除去するような方策を強く推し進めてもらわなければ因る、ぜひ国会においてこのことを十分取り上げてやってもらいたいということが、責任ある大阪高検の意見であったのであります。その他、大阪には若い学者でもって組織しておりまする社会学研究会というのがありまして、この諸君は数カ月間釜ケ崎に、釜ケ崎居住者に変装しまして、そしてドヤ街に居住しながら、しさいに、あらゆる観点から調査をいたしまして、その報告書も私どもいただいておるのであります。今さら私はスラム街の実態につきまして、ここで調査の結果をあなたに申し上げようとは思いません。ただ私は、この衆議院の各委員会の国政調査のあり方につきまして、当時批判を加えました。と申しますのは、多額の国民の血税を使い、私どもが地方に出張して国政調査を行なう、そして各方面意見を聴取して調査して帰って参りますけれども、これが委員会におきましては通り一ぺんの報告になって現われて、何らこれが施策の上に織り込まれてはいない。従いまして、法務委員会におかれましても、あるいは社会労働委員会におきましても、私は当時委員長に対しまして、この問題は調査をいたしました各委員会が総合的に問題を処理して、そうして三十七年度の予算の中に織り込むように政府に強く要求すべきである、そしてその結果を委員会に報告すべきであるということを要求しまして、中野社労委員長委員長会議にこれを諮りまして、当時私の意見が採用されましたけれども、三十七年度予算の上におきまして、しからばスラム街対策、なかんずくこの釜ケ崎の対策につきましてはどのような予算が計上されておるか、すなわち政府の治安対策あるいは厚生対策またこの環境衛生あるいは労働、教育諸般の予算がどのように計上されておるか、この際これを明らかにしていただきたいと思います。
  88. 水田三喜男

    水田国務大臣 こまかいことはあとから補足説明していきたいと思いますが、今私のところに持っております資料で申しますと、やはり環境の改善というようなことに資するために、厚生省の予算において生活館を設置するというようなことから、三千百万円の予算を計上しておりますし、労働省関係では、無料職業紹介あるいは生活相談その他の福祉対策を行なうための施設補助千二百万円、それから山谷地区につきましては、勤労青少年の福祉向上をはかるために青少年ホームというものの設置を補助する意味で五百万円、そのほか住宅関係の費用がまだ計上されていると思いますが、労働、厚生関係予算はそういうことになっております。   〔主査退席、保科主査代理着席〕
  89. 赤松勇

    赤松分科員 今三千万円というお話がございましたが、不良環境地区対策として厚生省が予算を計上しておるのは三千百五十五万円です。一体スラム街の環境を改善するための予算が三千百五十五万円であっていいのかどうか、これは非常な問題だと思うのです。昨年釜ケ崎事件の発生いたしました直後の政府の言明が、わずかに三千百五十五万円の施策になって現われたといたしまするならば、私は非常に問題だと思うのであります。しかもこの予算の内容を見ますると、これは都市のスラム街からドヤ街、パタヤ街、同和地区、アイヌの集団地区、こういったものを全部含んでおるわけであります。そうして日本全国のこういうような地区におけるところの環境改善の対策として三千百五十五万円、わずかこれぐらいな予算が計上されておりまして、これでもって不良環境地区の改善だとか、大きなことは池田内閣は言えないと思うのです。これではやらぬこことと同じなんですよ。一体これは全国にばらまいたらどれくらいな額になりますか。そしてここに内訳がありますけれども、たとえば生活館の設置費補助金、これは全国に十三カ所作る。共同浴場の設置は、これを十一カ所全国に作る。共同作業場の設置は全国に二カ所作る。共同作業場を全国に二カ所作って、これがスラム街の改善であります。共同浴場を十一カ所作って、これがスラム街の改善でございます、生活館十三カ所作るのだ、この施策で大蔵大臣、ほんとうにいいとお思いでありますか。今労働環境の予算が出ましたが、私は現地を視察したときに、今宮の職業安定所は暴力団手配師に圧倒されまして、ほとんどその機能を発揮することができない。それで、やむを得ません、あの事件が発生したので、あわてて大阪府の労働部が、非常に合法的でない、いわばこれは職安法違反だとも思うのでありますけれども、いいことですから僕は思い切ってやった方がいいと思うのだが、いわゆる正常でない労働分室というものを当時現地に作りまして、それでごまかしていっておる。そうして私どもが当時あのドヤ街をずっと視察をすると、何々組というようなちょうちんが、ずらっと入口に掲げられて、そうして木刀、鉄かぶとといったものがずらっと並んで、一見愚連隊とおぼしきやつがたくさん町に見張っている。われわれが行くと姿を消すわけです。しばらくするとまたぞろぞろ、みつにありついたアリみたいに出てくる。それから麻薬の町もちゃんと当局は知っているわけですが、これはどうすることもできない。その麻薬の町では、香港から入ってくる麻薬が神戸で仲介をされて、そこでうどん粉やその他をまぜて、どんどん売られておるわけです。たまたま麻薬の中毒患者でもって誤って死んだやつは、やみからやみへ葬られている。御承知のように釜ケ崎というのは、表からから見ると非常にきれいだ、どこがスラムかと思うくらいきれいなんです。しかし一ぺん中へ入ると大へんなんです。これは大阪の社会学研究会の諸君が書いておりますけれども、このドヤ街の一つの実態を申し上げますと、どれぐらい高い家賃をあの貧民窟の中で彼らは払っておるか。一例をあげますと、間借り地区では二階借りをしている世帯もあって、平均一・四軒、一世帯の平均の畳数はアパートでは二・二畳、間借り地区では四畳、しかし一人当たりの畳数にすれば、間借り地区は家族員が多いために平均一・一畳、一畳のところに寝ているわけです。そしてアパートでは〇・八畳ですよ。畳一畳にみな寝ていないのです。間代は、間借り地区では月払い、アパートでは日払いです。金額は、間借りの場合は一世帯大体平均月四千円です。それからアパートの場合は日に百三十円、一畳当たりに換算すると、間借りの場合は月に七百円、アパートの場合は千九百円、こういうことになるわけです。骨一畳が千九百円ということになりますと、これは日本では相当高級住宅だということになるわけです。しかし彼らは、ここに住まなければ住むところがないわけです。従いまして、こういうようなべらぼうな高い家賃を取っておるところのボスのもとで、こういうみじめな生活が行なわれておる、こういう実態であります。最近五階建の鉄筋を建てるといっておりますけれども、かりに五階建の鉄筋をあそこで建ててみたところで、どうにもなりません。根本的にはあのスラム街を一掃して、あそこへ近代的なアパートを作ってやる以外に方法はないと思うのです。  それから手配師の問題については、これはまだ依然横行しております。労働省の方では、手配師はなくなったと言っておりますけれども、なるほど山田組は解散になったけれども、なおあそこには手配師がたくさんおります。  それから、今大阪には千名以上の麻薬中毒患者がおって、このうち四百三十三名が釜ケ崎に住んでおる。これは警察の調査です。この四百三十三名のうちで、男が二百六十五名、女が百六十八名、これを国籍別にすると、日本人が三百七十四名、朝鮮人が五十一名、台湾人が八名、こういうことになって、職業別に見ると、無職者が二百九十一名、売春婦が三十一名、女給流れが十七名、工員が十六名、店員が十四名、土工、人夫が十一名、それから男娼が七名、行商、露店商が七名、飲食業が、五名、その他有職者三十四名、こういうように出て参るのであります。ここでその原因を大体調べてみると、中毒患者になったのは約六〇%が、麻薬業者の利益のために、勧められて、おもしろ半分に最初に麻薬の味を覚えて、それがだんだん高じてきておる。それから売春にいたしましても西成区は圧倒的に多くて、大体全大阪の四二%の売春婦がここに蟠踞をしておる。こういうような数字になっておるのであります。  それならば、一体暴力団がどれくらいおるだろうか。これは私はあさっての法務委員会の際に、法務大臣に聞こうと思っておりますけれども、大阪の刑務所の中の四百六十名というのは、ここに蟠踞しておるところの暴力団です。釜ケ崎におるところの暴力団は、約七十三団体、千七百名の会員がおります。その重立ったところを言うと、まず博徒では町田組、二七組、隆野組、愚連隊は互久楽会、藤井組、大義同志会南大阪本部、それから売春暴力団では鬼頭組、西川組、間組、和田組、山田組、それから右翼的偽装をしておるところの暴力団が、大義同志会、それから日本青年党、大日本菊桜会、平田会北大阪支部、愛国青年党、在日韓国反共殉国団の青年行動隊、こういうものが釜ケ崎に蟠踞をして、先ほど言ったように公然と鉄かぶと、木刀、ちょうちんなどを店頭にずらっと掲げておる。大蔵大臣、一ぺんごらんになるとよくわかるのですけれども、そういうことです。  それならば児童の状態はどうか。児童の状態を言えば全く悲惨で、目をおおうような状態です。まず三〇%の児童は、両親または片親のない欠損家庭の子供で、その内訳は、両親のない者一%、父親だけの者が七%、母親だけの者が二二%ということになっておる。それでどういうことをやっているかというと、託児所がありませんから、朝労働に出るときには子供に五十円ほどの金を渡して、これできょう一日食べておきや、大阪弁で言えば、こう言って、金を渡して出るわけです。従いまして、その子供はその五十円で一日の生活をするわけなんです。この間、全然ほったらかしです。その就学状態どもありますけれども、きょうは時間がありませんからこれは省略しておきますが、就学状態などは全く見るべきものがない。これを調べてみると、りつ然とするような状態です。こうして五十円を与えられた子供は、何を買おうと選択の自由があります。いわゆる買い食いのくせがだんだんついてくる。同時に、不在家庭で、それで不良の仲間に引き込まれるということになってくるわけです。  それから今度、子供を預かる商売があります。これは朝の八時から夕方まで、弁当代は別にして一日二百円です。それから夕方から夜十二時までが、これは売春婦も中におりますが、二百五十円です。別に住み込みというのがありまして、これは月に九千円から二万円という相場です。この点は、昭和三十六年九月四日の朝日新聞の「釜ケ崎にあすを」という記事にもこれは明確に現われておるわけであります。こういうふうにいたしまして、教育の面において、また児童福祉の面において、あるいは住宅対策の面において、労働対策の面においてあるいは環境衛生の面において、ほとんど見るべきものがないわけであります。しかるに大蔵大臣、昨年、池田総理があれほど国会において、二度と再び釜ケ崎事件が発生しないようにしよう、まことに遺憾でございましたと遺憾の意を表明しながら、昭和三十七年度のスラム街対策がわずかに三千万円とは一体何ごとですか。釜ケ崎一つだって、三千万円の金を投じただけで一体何になりますか。アパート一つ建てるのにどれくらいの金が要りますか。厚生省の社会局の方で幾ら対策を講じようとしたって、元来財布を預かっているあなたが、ぐっと財布のひもを締めておればこれはどうにもできるものではない。日本は二重構造ということを盛んに言うけれども、二重構造じゃない。二重ならまだいいんですよ。五重構造くらいです。厚年省はボーダー・ラインということをよく言うけれども、ボーダー・ラインの階層の中には、さらに三つも四つもの階層があることをよく知らなければならない。こういうような日本でありながら、一方においてはオリンピックがどうのこうのと言っている。私はオリンピックに対して別に反対するものではない。反対するものではないけれども、オリンピックにうき身をやつしておる陰に、こういうようなボーダー・ラインの階層、いわゆるスラム街に泣くところの多くの同胞がおるということを一体政府は何と考えているか。新聞が幾らこの人たちにあすを与えよといったって、政府の方がその気にならなければ、これはどうにもなるものではない。私は何も政府だけを責めておるものではない。こういうものが生じて参りました資本主義それ自身の内包する本質的な矛盾というものは、個々の人が何と考えようと、これは必然的に生まれてくるものだということはよく知っている。よく知っているけれども、しかし、それを少しでも改善していくのが保守政治家の任務じゃありませんか。他方におきましては、ごらんなさい、八幡製鉄あるいは日立、芝浦、これらの売り上げが一体どれくらいになっておりますか、おそらくこの三月決算におきましては、一社でもって二千三百億以上あるいは二王五百億を突破するかもわからない。八幡などは一日五億の売り上げをやっている。そうしてすばらしきこの高度成長の中で大もうけをしている。一方では独占はどんどんもうけている。他方においては、こういうように、食事代を含めて五十円子供に渡して出かける、その子供のめんどうを見ることもできない諸君がたくさんおるということです。私は、釜ケ崎対策というものは、ただ物を与えてやれば、それでもってあのスラム街のそれがすべて改善されるという単純な考えはありません。私があそこでもっていろいろ調べた結果、結論は、八〇%は善良な人間だ。労働能力を失っている人間もある、あるいは老人でもって寄るべのない人たちもある、未亡人もある、売春婦もある、しかし、その八〇%は善良です。これは政治の力で救うことができる。二〇%は暴力団です。この暴力団に物を与えてやっても、これは改善することはできません。この二〇%の暴力団に対しては仮借なく徹底的に弾圧をする。そして、これはむしろ権力の力で更生させていくというくらいな——それはむろん権力だけではだめなんですよ。権力の裏づけになる愛情、その他もありましょうが、とにかく二〇%の暴力団対策というものと、八〇%の善良なドヤ街の住人に対する対策というものは、おのずから別でなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。  この際、厚生省にお尋ねしたい。社会局長は、三千百五十五万円の予算をもらって、これで十分だと考えていますか。一つ大蔵大臣の前であなたはっきり言いなさい。どうです。
  90. 大山正

    ○大山(正)政府委員 来年度の不良環境地区改善費は、ただいまお話がございましたように三千百五十五万円でございまして、前年度すなわち本年度は千七百四十九万三千円でございますので、約一千四百万円ほどの増額に相なっております。その内訳は、ただいまお話もございましたが、生活館あるいは共同浴場といったような施設をすることを主眼にいたしておるのでございまして、釜ケ崎地区につきましては、府、市におきまして西成区対策協議会というのが設けられまして、労働対策、住宅対策あるいは福祉施設の拡充、医療、教育対策、いろいろ検討しておるところでございますが、厚生省といたしましては、昭和三十六年度の予算におきまして、釜ケ崎地区に生活館を建築中でございまして、補助をいたしております。来年度の昭和三十七年度の事業といたしましては、大阪市が第二愛隣会館という隣保館を設置する計画がございますので、先ほど申し上げました三千百五十五万円の予算のうちで、釜ケ崎地区につきましては、この第二愛隣会館の補助金を出すという計画をいたしておるのでございます。  御指摘にもありましたように、この不良環境地区改善費は、スラム街あるいは北海道のアイヌ部落、いろいろ各方面にわたっての施策の予算でございますので、私どもといたしましては、ぜひ、さらにこれを増額したい、かように考えておる次第でございますが、前年度に比べましては相当な増額に相なっておる、かような次第でございます。
  91. 赤松勇

    赤松分科員 労働省の方で、この特別地区労働福祉対策ということで、釜ケ崎地、区に建設予定の福祉施設に対する補助として千二百万円を計上しておりますけれども、この内容、それから構想、運営等についてちょっと説明して下さい。
  92. 木村四郎

    ○木村説明員 お答えいたします。先ほど先生から御指摘を受けましたように、大阪の霞町付近を中心といたしまして、千五百人から千七百人、こういったいわゆる立ちん坊と称する労働者が三々五々たむろしておりまして、これがいわゆる手配師の手によりまして仕事をあっせんされておる。そこにはピンはねとか強制労働等が伴うというふうな非常に悪い条件のもとに働いておるわけでございます。これではいけないということで、まあ騒ぎが起きたあとでございましたけれども、大阪府といたしましてはこれを何とかしなければならないということで、とりあえず大阪府分室というものを設けまして、そこに適当な練達の職員を配置いたしまして、いわゆる直接募集の援助というふうな形で、工場、事業場、すなわち求人者側から適当な連絡員というものを指名しまして、それが募集に来る。そして、労働者はその分室の前に集まるというふうにして、そこで直接募集行為を行なわせるような体制にしたわけでございます。それによりまして、いわゆる従来の悪質な手配師を排除しようという施策を講じたわけでございます。しかし、それでは不十分でございますので、施策の充実を期する意味におきまして、この就労の確保と、それとあわせまして労働者の福祉、すなわち生活相談であるとか職業相談であるとか、それから宿泊施設、食堂、理髪室、そういったものも作りまして、そういった労働福祉もあわせてこれを行なう。このためには適当なる法人というものをこしらえて、そこで運営をせしめて行政機関が強力にこれを側面から援助する、こういったような態勢にいきたい、それに要する経費といたしまして、補助率四分の一でございまして、千二百万円計上いたしたわけでございます。設置運営費の補助でございます。あとの四分の三は大阪府がこれを負担するというふうな計画で仕事をしておるわけでございます。
  93. 赤松勇

    赤松分科員 今厚生省及び労働省が説明しましたように、大臣あなたよくお聞きになったと思うのですが、これは地方自治体が行なうところの施策に対する補助金なんです。何分の一かの補助金ですよ。そうすると、池田内閣として、このスラム街対策としての総合的な国費によるところの大規模な対策というもの、そういったものは全然計上されていないわけです。だからスタートが間違っているんです。つまり地方自治体がスラム街対策をやるべきものである、そういうスタートから出発して、従って政府はそれに見合った補助金を出せばいいんだ、こういう考え方が三十七年度予算に貫かれておる。スラム街対策に対する考え方が貫かれておる。私はここに問題があると思うのです。それならば池田総理などがああいう事件が起きた直後に、いや自治体にやってもらいます。政府の方はそれに見合って補助金を出す程度のきわめて消極的な防貧対策しか進められませんとはっきり言えばいい。当時はまるで政府の手で一ぺんでスラム街がよくなるようなことを言って、ああいう事態が起きたのは、ひとえに政治の貧困にあるとこう言って遺憾の意を表しておきながら、三十七年度の予算の中においては、政府としての独自の政策というものは全然ない。たとえば建設省から出す予算にいたしましても、きわめて一般的な予算であって、釜ケ崎とかあるいはどこどこというようなスラム街に対する特別な対策というものは見当たらないわけであります。この点は一つ根本的に考え直さなければ、もう参議院選挙なんかで大きなことを言ってもらっちゃ困る。私どもはこういうような二重構造を何とかしますなんということは、以後あまり口にせぬようにしてもらいたい。二重構造など、たとえば、貧困対策とか防貧対策、福祉対策などはおおむね地方自治体にやってもらいます、政府の方はそれに見合ってただ補助金を出すだけの考えでございます、こういうふうに演説をやってもらわないと事実を歪曲することになるし、全く国民を欺瞞することになる、こういうふうに思うのです。私は大阪の治安当局の意見と全く一致しておるのであって、一度大臣もごらんになればおわかりになりますが、こういう階段式のところへみな寝ておるわけです。シラミと南京虫に襲われながら寝ているわけです。夏はとてもとても寝ていられるものではない。むんむんいたしますから、つい外へ出る。外へ出て何かのきっかけでああいうような事件が発生する。これからおそらくこれは何度も繰り返される。だれが扇動しなくても何度も繰り返される。ただその場合に事件の本質というものを見きわめなければならないのは、あの群衆が、政府は暴徒と呼んでおりますけれども、先ほど言ったように暴徒といわれるのは全体の二〇%、しかもこの二〇%は、あの釜ケ崎の事件の際には権力側に回った、警察側に協力したのです。群衆に向かって暴力をふるったのです。従ってその八〇%の人たちは善良な国民なんです。善良な日本人なんです。この善良な国民がどこに向けてその不満を爆発させたかというと、権力に対してです。警察に対してです。あれがもし権力すなわち警察というらち外から出て、一般民衆に対する暴力が行なわれたならば、おそらく群衆みずからの手でこれは克服されます。この点私は釜ケ崎の住民といえどもどもの同胞として十分に信頼していいと思う。平素から権力に対する不満が累積をいたしまして、あのように集中的に爆発したけれども、これが大阪市民の手にこういうような暴力が加えられた場合には——加えられることはありません。限界があります。しかし加えられた場合には、その住民みずからの手でそういう方向は是正される、これは現地の学者が長い間スラム街に入って研究したその研究の結果実証しておるところ結論なんです。私もこれを確信しております。従ってあの事件が発生した、暴徒に対しては何か断圧すればそれで事は足りるのだというふうな考え方でなしに、あのスラム街の中にいろいろ重なり合っているところの諸条件というものをあらゆる角度から、つまり社会科学の立場から十分にこれを科学的に検討して、そうしてこれに見合うところの対策を講じなければならない、かように考えるわけであります。  繰り返して申し上げますけれども、なお神戸にもある、尼ケ崎にもある、東京の山谷にもある、全国至るところにこのスラム街というものがあるわけであります。これがまた例の差別をされるところの部落民、その部落民の差別観念、それに対する不平不満、そういうものとずっと結びついて、今、日本社会の底辺にこういうものがあるということをよく考えていただきたいと思うのであります。この諸君は政治に対しては無関心です。池田であろうと、水田であろうと、だれが総理大臣になろうと、そんなことは関心はありません。河上になろうと、池田になろうと、別にそんなことは彼らの重大関心事ではない。だから選挙の際にはおおむね棄権してしまう。共産党が行っても喜びません。自民党が行っても悲しみません。政治に対しては無関心であるだけに、われわれはこの底辺に泣くところのこういうような貧民階層、ボーダー・ライン以下の諸君に対しましては、特別に愛情の手を差し伸べなければならぬ、そういう責任がある。あなたたちのように、池田もそうだけれども、皆東大をぬくぬく出て、そうして官僚畑を歩いて、けっこうなお給金を国家からちょうだいして、出世街道をひたすら歩んできた者にはこのスラム街の人たちの気持はわからぬ。幾ら私がここで説明してもあなたたちにわかるものではない。百万べん、千万べん私が言を費やしましてもそれはわかるものではない。ただ私は多くのことを望みません。母親が行商のため、あるいは日雇いのために自分の子供に五十円を渡して働きに行かなければならぬ、その母親の気持、あるいは夕方から売春に出かけなければならぬ、その場合に子供を二百五十円で他のうちに預けなければならぬ母親の気持、こういったものだけでも十分に一つ考えてやってもらいたいと思うのであります。その一点だけでも考えてもらえば、立ちどころに、福祉対策としてはもっと愛情のある予算が組めるのではないだろうか、たった三千万円くらいの金を、しかもアイヌ、同和事業を含めて、日本全国のスラム街でこれが福祉対策でございます、これが三千万円出しましたと、今厚生省の説明によりますと、去年の予算よりは何か一千万円ふえてはおりますとかなんとかいう説明なんです。そんな説明だれがまともに聞きますか、そんな説明を釜ケ崎でしてごらんなさい、ぶんなぐられてしまう。だれがそんなものをまともに聞きますか。一千万円ふえたといっていばっているのはあなたたちだけなんです。そういうことでは問題の処理はできないということをよくお考え願いたいと思うのであります。  私はなお釜ケ崎の資料につきましてはたくさん持っております。先ほど申し上げましたように、われわれ自身も反省しなければならぬ。それは国民の血税を使って国政調査に出かける。出ていって帰ってきて何をやるかといえば、通り一ぺんの報告書をこの委員会に出して、それをぺらぺらと委員会で五分ほど読んで、それで万事終わりなんです。毎年々々国会議員が国政調査に出かけていくけれども、それが予算のしに一体現われたことがあるのかどうか。現実に政治の上に生かされたことがあるかどうか。こんなことを繰り返しておったのでは国会の権威は地に落ちます。どんなりっぱな憲法を持っておっても、国権の最高機関なんと言っておったって、言っているのは国会議員だけで、おれは最高機関だなんて言えるのは国会議員だけで、国民から見れば、最高機関でもない、最低機関だということになる。ですから、われわれ自身もそういう点を反省しなければならぬということから、法務委員会に対しましても、あるいは社会労働委員会に対しましてもこのことを申し上げまして、従来の惰性を一掃して、国政調査をやった場合、私どもがそれを忠実に委員会で報告すると同時に、委員会は与党、野党を問わない、政府に対してその結果を十分に政治の上に、予算の上に反映させるという措置を講じようではないか、こういうことを私は強調して参りました。政府の方も、ああ、あれは恒例の国政調査という考えでなしに、衆議院から三委員会を特に釜ケ崎を指定してそこに調査に行った。その調査の結果も委員会で報告されておる。その委員会で報告されました報告書をせめて通り一ぺんでけっこうだ、ばらばらっと目を通すだけでもけっこうだから一ぺん目を通してもらいたい。そうして、その中から、たとい一つでも二つでも予算の上に生かしてもらいたい。そうしなければ池田、水田を含めて、あなたも国会議員だ、池田総理も国会議員だ、国会議員全体の権威を落とすことになる。三委員会が足並みそろえて、一地区に国政調査に行ったという前例はありませんよ、それほど当時国会も政府もこの事態を重要視しながら、三十七年度予算では三千万円、アイヌ、同和も含めて去年よりも予算がふえております、こんなことでどうして国民に申しわけが立ちますか。財政投融資も大事でしょう。しかし、財政投融資を受けるのは独占です。食うに困らぬ連中です。政府から投融資を受けられないところの階級、特に底辺にうごめいておるところのわれわれの同胞に対して、もっと思いやりのある政治を一つ考えてもらいたい。いわゆる補助金制度にたよってすべての責任を地方自治体に転嫁して、てんとして恥じないという態度は改めてもらわなければならぬと思いまするが、この点について水田大蔵大臣並びに国務大臣水田三喜男としてどう考えておられるのか、明確に一つ答弁をお願いしたい。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 国民生活に非常に密着した福祉行政というのは、御承知のように建前としましては第一次責任者が地方団体ということになっております。従って、政府は補助助成をやるという建前になっておりますが、これは、たとえば道路政策を政府が立てましても、その執行は御承知通り国が直接やるものと、地方団体を通じてやらせるものといろいろございますが、今そういう建前になっておりますので、本年度は二千何百万円で昨年の倍ぐらいの予算は盛ったつもりでございますが、これによって地方費の支出は相当あるはずでございますし、またさっき申しました住宅対策、文教対策、このほかにも政府はいろいろの施策をしておりますが、いずれにいたしましてもこの問題は重要な問題でございますので、今後国としての助成、そのほか各省で立てた対策の線に沿って、地方団体と十分協力して施策の強化をはかりたいと思っております。
  95. 赤松勇

    赤松分科員 その建前、つまり地方公共団体が福祉対策などをやるんだ、政府はそれを助成していけばいいんだ、その建前が間違っておったから、また適当でないから、釜ケ崎のような事件が起きたわけであります。どうして政府が独自の立場から集中的にやれないのですか。それが法律上やることはできぬ、補助金をやることになっているんだというならば、法の改正をやればいいじゃありませんか。自民党は多数を持っているでしょう、政府は多数を持っているでしょう、やればいいでしょう、どうしてできないのですか。あなたはスエーデンを御存じでしょう。スエーデンにおきましては、スエーデン政府が国全体の社会保障政策を、予算の上でちゃんと三〇%なり四〇%なり計上して、そしてやる。それから地方公共団体であるストックホルムはストックホルムとして、また三〇%なり四〇%の社会保障予算を組む、こういう建前になっておる。本来福祉対策なんというものを地方公共団体にまかしておくという建前自身が間違いだと思う。なぜならば、ここに例をとりましょう。大阪における釜ケ崎のあのスラム街は、大阪市政の失敗の結果出てきたものではないのです。日本の資本主義そのものの構造から出てきた内部矛盾の集中的な産物なのです。これは大阪だけじゃありません。そうでしょう。たとえば同和事業にしても、今日部落民なんだといって差別をされておる。それならばあれは地方公共団体の責任ですか。地方公共団体が差別したからそういうものが出てきたのですか。そうじゃない。あれは封建時代、徳川時代、あるいは足利時代からずっとああいうものが、いわゆる階級的な制度として、構造上の一つ制度として今日まで尾を引いてきている。そうしてそれが資本主義社会になってからさらに形の変わった一つの差別制度を生んできている。スラム街にしたってやはりそうです。御承知のように、社会保障   が貧弱な場合におきましては、たとえば貧困家庭は、今私がここで言うまでもなく、厚生省が一番よく知っておると思うのですが、貧困の最大の原因は病気なんです。病気が発生するからさらに貧困の度合いがひどくなる。貧困の度合いがひどくなるからさらに病気がひどくなる。それが悪循環しておる。その悪循環を断ち切るのは一地方公共団体でできるものではありません。これは国の社会保障制度として大きな政治の力が必要なのです。あなたの今の答弁を聞いてみなさい。いや今までは建前としてそういう建前にあるので、これからはさらに補助金を増していくような考え方でいきたい、そんなことでは第二の釜ケ崎事件を抑えることはできません。もし、ことしの夏再びあのような事件が発生した場合、あなたはその責任をどうしますか。もっともそれまであなた大臣をやっておるかわかりませんけれども、もしもああいう事件が発生したならば、あなたは三十七年度予算の編成者としてどういう責任をおとりになるか。これは水田さん、あなたは人間として、また日本人として十分考えていただかなければならぬと思うのです。幾ら百千のえらそうなことを言ってみたところで、問題は、ちゃんと予算の上に、そういう愛情の予算というものが生まれてこないことには問題にならないのです。重ねて言いますけれども、この際はあくまでもよけいなことは要りません。福祉対策は地方公共団体がやるものだ、政府はその補助金をやるという立場に立って依然としてこれからやっていくんだ、その一言だけ、ここではっきり言ってもらう。政府の独自のスラム街対策、社会保障政策の一環としてのスラム街対策、いわゆる釜ケ崎事件の発生しないような、そういうものを政府独自の立場からやるんだ、現在及び将来それをやろうとして努力するというのか、それとも地方公共団体にすべてをまかして補助金制度でやっていくんだ、そういう方針をおとりになるのか、参議院議員選挙の際に、大いに国民の前にあなたの責任ある言葉として批判に聞いたいと思っておりますから、重ねて政府の代表としてあなたの所信をお伺いしておきたいと思うのです。
  96. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府政府として、これは対策を立てる。そうして予算の強化もしたいと考えますが、しかしこれをどういう形で行なうかという問題は、これは御承知通り別でございまして、政府は統一的な対策を立てますが、これの実施者が全部が直接政府ではございませんで、地方団体を通じてこういう行政は行なわれていくと思いますから、それに対する助成は政府がする、こういうことになろうと思います。
  97. 赤松勇

    赤松分科員 政府は独自の施策を進めていくという力強い発言をいただきました。私も満足です。おそらくこれは三十七年度の予算には間に合わないと思いますが、三十八年度の予算の中には今のあなたの言葉が明確に出てくるということを期待いたしまして、私の質問を終わります。
  98. 保科善四郎

    ○保科主査代理 午前の会議はこの程度でとどめまして、午後二時四十分まで休憩いたします。    午後一時五十一分休憩 —————————————————————    午後二時四十四分開議
  99. 西村直己

    西村主査 午前の会議に引き続き、大蔵省関係予算について質疑を続行いたします。川俣清音君。
  100. 川俣清音

    川俣分科員 大蔵大臣にまず初めにお尋ねいたしたいのは、日本に会計年度のほかに、米の年度等もございますが、事業年度におきまして非常に不統一な姿で運営されておる点がございます。大臣にちょっとお尋ねしますけれども、米穀年度は十一月に始まりまして翌年の十月に終わるのですが、ことしの十一月から来年の十月までの米穀年度は、これは何年度と言うのでしょう。これは終わる月の所属する三十八年度を年度と言うのですね。米は終わる月の年をもって米穀年度と言うのですよ。ところが、麦はどうかというと、ことしの七月から始まりまして来年の六月に終わるのですが、これはことしの七月から始まる。始まる年を年度と言う。三十七年度と、こう言うのです。米だと三十八年度と、こう言う。数字からいうと、麦と米で一年違うのですね。それから米の需給計画は、これは米と合わせておりますから同じでありますが、やはりことしの十一月から来年の十月までを三一八年度需給計画と、こう言われております。それから砂糖は、やはり終わる月でございますから、これは来年をさします。ことしの十月から来年の九月までを、来年のいわゆる三十八砂糖年度と、こう言うのです。それから酒の方は御存じだと思いますが、御承知のように十月から来年の九月まででございますが、これは三十七年度、こう言う。三十七年度醸造計画と、こう言うております。肥料はどうかというと、肥料は始まる月の属する年を年度といたします。農薬の方は、終わる月の所属する年を年度とする。澱粉は始まる月の属する年を年度とする。大豆、生糸などは同様でございます。  これは主として農作物から見た年度でございますが、その他こういう年度が非常にまちまちだと思う。何月から始まるというのは、生産と需給計画からくるでしょうから、月は別にいたしまして、年度くらいは統一したらよろしいのではないか。非常にわかりにくいのです。これほど国民生活に関係のあるものは、一般国民が理解しやすい年度でなければならないと思うのですが、大蔵大臣、いかようにお考えになりますか。
  101. 水田三喜男

    水田国務大臣 年度を統一するわけにはいかないでしょうが、何年度といういき方については、これはやはりしてわかりやすくする必要があるだろうと思います。今までばらばらで発足しておったので、急に直すと、同一年度というものが二度出てくるというようなことから、なかなか直せないのではないかと思っていますが、これは統一した方がいいのではないかと思います。
  102. 川俣清音

    川俣分科員 肥料と農薬とが違った年度になっているのですね。これは何としてもおかしいと思うのです。従って、私は必ずしもこれを強要するという形はとりませんけれども、大いに検討しなければならぬのではないかと思うのです。二、三年前から私は、この統一については検討してみますという御返事はいつもいただくのですけれども、何ら検討されておらないのです。少なくとも農産物なら農産物だけでも年度を統一する。これは始まる月はおのずから違うと思いますけれども、年度の呼び方くらい統一しても何の不便もないのではないかと思う。これは今までの慣習によっていろいろつけられておりますけれども、やはり慣習から脱却すべきときがきたのではないかと思います。これはやはり大蔵省指導的役割をとらるることが適当ではないかと思うのですが、この点もう一度お伺いしたいと思います。
  103. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、呼び名は統一した方がいいと思いますが、どういう事情で今までこれができなかったかということは、事務当局から聞いてみることにいたします。
  104. 川俣清音

    川俣分科員 これは何の理屈もないと思います。おそらくこれでなければならぬということはないと思うのです。ただ、従来からの慣習でそれを継続しておるのだ、これだけよりないと思うのです。従って、これは呼び名ですから、呼び名はやはり便宜的に変えられても、本質的な問題ではないと思います。  次にお尋ねいたしたいと思いますのは、私ども国政調査で地方を回りましたときもそうですし、現に私どもがおります地帯におきましてもときどき耳にすることでございますが、国民の納税の義務は、これは国民の大きな義務であると同時に、やはり積極的な権利でもあると私は思うのです。従って、納税につきましては、厳格であると同時に、情実を排除するということが一番重要なことだと存じます。そうでなければ、納税成績は上がらないという結果になりまするし、国家に対する不信の念も出てくるという懸念もあります。  ところが、税務署の署員は、住宅難のために民家に宿泊するといいますか、下宿をする、間借りをするという事態がございます。間借りをいたしますると、あるいは近所から、あるいは間貸し人から、いろいろ納税申告の相談を受けたりいたすのでございます。親切に指導することは必ずしも悪いことであるとは存じません。非常にいいことだとは思いますが、しかしながら、正当な申告をいたしましたにいたしましても、他の者から比較いたしまして正当に申告したために安くできた、あれは税務署の署員がおるために安くなったのだ、というような弊害をときどき耳にするわけであります。私は必ずしも間借りをしておるから不正な申告をさしたとは思いませんけれども、正当な指導でありましても、指導を受けた者と受けない者の差が出てくる、こういう結果に相なると思うのでございます。  そこで問題は、税務署員は特に長く固定してその町村に置くことは好ましくないということで、転勤をさせようとするのでございまするけれども、転勤先に適当な間借りをする場所、宿舎がなければ、やはり民家を利用しなければならない。民家を利用することによって弊害が出る。こういう事態においては、何らか一般公務員よりも進んで住宅の提供を考えるべきじゃないか。これが税の公平の上からいって、また統一ある税制を確立する上からいいまして緊急なことではないかと存じますが、大蔵大臣、いかにお考えですか。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 全くごもっともだと思います。今のところは、住宅を必要とする人に対する充足率は六割三分ということになっておりまして、一般公務員よりはその充足率は税務署員は上になっておりますが、まだ不足を生じておりますので、遺憾なことだと存じております。
  106. 原純夫

    ○原政府委員 税務行政で私どもも日常特に心を痛めております点の御質問でありますので、私からも一言加えて申し上げたいと思います。ただいま大臣答弁になりましたように、私ども充足率という概念で一応これをはかることにいたしております。充足率といいますのは、職員が自宅を持っておるという者、それから公団、公庫の住宅、公営住宅——これはちょっと私あやふやですが、これは数は少ないですから省略させていただきまして、自宅でも非常にちゃちな自宅だ、不安定だという者は一応グループに入れまして、不安定でない自宅の分は刑に建てて、自宅でもその中でさらに安定、不安定の区分をするわけです。落ちついている者はよろしい、不安定な者、これを出していきまして、そのグループと、それから民家や公務員宿舎に住んでいる者、そのトータルを一〇〇としまして、その中で公務員住宅の割合が何%かというのが充足率なのであります。そこで、その充足率が、一般公務員全部平均しますと五七だ、税務の場合は六三%、ただいま大臣がお答えになった数字であります。年々税務がよくなるように配慮をいただいております。しかし、私問題だと思いますのは、安定、不安定をはかります場合に、いろいろ狭隘であるとか、設備が非常に悪くて危険だとか、家賃が高過ぎるというような条件を基準にして分けておりますけれどもお話通り、税務官吏の場合はやはり仕事の性質からいいまして、何年かに一回どうしても転勤させなければならない。転勤しても同じ家から通えるという場合もありますが、見方によりますと、同じ家から通える転勤は、転勤をさせなければならぬという考え方からいたしますとなお問題が残るということで、なるべく住宅を安定させたいという気持が一方にあるのですけれども、やはりそうもいかないということで、大体全体を通じて考えますと、四、五年に一回どうしても転勤する。その中で転居を要するものは、上にいけばいくほど多いというような状況であります。従いまして、不安定な者の数を計算するのに、税務の場合は何年かに一回、ごくひんぱんに転勤があるという事情を入れて、不安定の数が通常の計算より多いはずだという点を考えなければいけないのじゃないかということを私思いまして、実は先年来、そういう転勤事情を加味しました新しい充足率の算定方法というものを、部内に言いつけて今研究中であります。御質問の御趣旨の焦点も、そこに特に気をお使いいただいた御質問だと思いますので、私といたしましてはこれは十分その角度で突っ込んで、充足率に反映させるような点に努力をして、管財局その他にも十分御理解願うようにいたしまして、税務官吏の実態に合った充足率をなるべく高めるというふうな方向に持っていきたいと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
  107. 川俣清音

    川俣分科員 今の国税庁長官の説明でやや了解するのですが、普通の公務員の場合は借家にいたしましても、貸間にいたしましても、普通の料金をとるという形をとる。税務署の署員の場合は、できるだけ便宜をはかろうということが考えられておるようです。そういたしますと、それは安定した借家だ、こうみなされて充足率が計算されるのではないかとも想定できる。ですから、その充足率だけ、上がってきたものだけでものを計画するということは、やはり実態にそぐわない結果になりやすい。やはり異動を加味して、異動がひんぱんに行なわれるかどうかという観点から充足率を考えるべきであろう、こう考えますので、一段の努力を必要とするのではないかと思います。いわゆる公平の観念から言いますと、ほかの公務員との関係もあってというふうに遠慮されがちかもしれませんけれども、私はやはり税制の建前から言いまして、この際国の政治の信頼を確保する上からも、身分に従った住宅対策が必要であろうということを強調いたしまして、大臣の善処を望みたいと思います。もう一段の努力をする必要があるのではないか。
  108. 水田三喜男

    水田国務大臣 実は私が大阪、名古屋地方に現地の視察に行きましたとき、国税局からこの問題は訴えられましたし、税関からも同じような問題を要望されました。概して、福利厚生施設にしろ、大蔵省関係が一番施設が悪いということは、結局予算を査定する原庁でございますので、大蔵省だけが特に宿舎を建てたというようなことは、なかなか大蔵省としてはやりづらいというような関係から遠慮が出てきまして、庁舎にしましても、他の省は作りましても、大蔵省は何十年改装もしないということでとどまっているようで、その辺に非常な遠慮があるということを私は見ましたので、必要なものはそう遠慮しなくてもいい。大蔵省のそういう予算が他省に比べて上がってもいいのだ、できるだけそういう方針で改善したらどうかということは、今度の予算のときも私は申した次第でございます。確かにおっしゃられるように、自分ところだけの予算は、どうしても大蔵省として遠慮がちになります。こういう問題はやはり出て参りますので、必要なものである限りは、この充足率はもっと高めていくという方向へ一段と努力したいと思います。
  109. 川俣清音

    川俣委員 それでは善処を要望いたしまして、この質問は終わります。  もう一点だけ。これは現実の問題としてあるものを例にとって申し上げますが、戦後一時社寺有地が国有地に編入になりまして、その後またもとの社寺有地に無償配付をいたしました。このときに財務局がこのあっせんをしておるわけです。林野庁の国有林の中にお宮がある。これが戦前は社有地であったのが、終戦当時国有に変わりまして、あらためて社有地に無償譲渡された。この無償譲渡にあたりまして、財務局では営林署または県の社寺課に問い合わせをして、境界に間違いがないという副申をとりまして譲渡したわけです。ところが、あとになりましてから、林野の特別会計の台帳と違うという問題が起きまして紛争しておるわけですが、財務局が境界の問い合わせをあるいは社寺課へいたしまして問題なく解決したものでありますならば、大蔵省が譲渡したものをやはり基本にすべきじゃないかという考え方を私はいたすのですが、この点はどうでしょう。私はやはり国の財産を処分されるにあたりまして境界を明確にされたものと理解しますが、財務局が不信を買う結果になるのではないか。この点について御見解があれば、事務当局からでけっこうですから、伺っておきたい。
  110. 山下武利

    ○山下政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、突然のことで、私の方で明確な資料を用意しておりませんので、十分調べてからお答えをいたしたいと思います。具体的なケースがございましたらお示し願いたいと思います。
  111. 川俣清音

    川俣分科員 私はこの際ここで現実の問題を問い合わせるということよりも、財務局が無償譲渡する場合は、関係地域の者の承諾を得たものでございまするならば、財務局の者を信頼するということが正しいのじゃないか、そういう理解の上に立っていかがですか、こうお聞きしたわけです。これは隣接地の承諾をとって財務局が処分をした。私はそれならば合法的なものじゃないかと理解するのだが、それでもなお不備があるというふうにお考えになりますかどうかということです。
  112. 山下武利

    ○山下政府委員 お尋ねの点は、まことにお説の通りと存じます。もし具体的に問題がございましたら善処したいと思います。
  113. 川俣清音

    川俣分科員 今農林省の坂村局長が見えていて、肥料年度について説明してもいいということです。これはほんとうは大蔵省事務当局にお聞きしたかったのですが、せっかくおいでになったとすれば聞かないわけにもいきませんでしょう。肥料年度と農薬の年度といずれもあなたの所管なのですね。この年度はどういうわけで違えておられるのですか。
  114. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 肥料は私の方の所管でございますが、農薬は振興局で、違うわけでございます。私がお答えするのは適当かどうか問題がございますが、肥料については、実は肥料の需給の関係から見まして、秋肥が出回る時期というものを肥料年度の最初にいたしまして、春肥までを一年間にとりまして、八月から翌年の七月末までというものを肥料年度にしておるわけでございます。米についても米穀年度がございまして、いろいろ物に即しまして施策を考えて参りまする場合には、やはり一番物の出回りというものに合わせまして、たとえば値段をきめます場合にもそういう時期をとって流通関係考える方が最も適当だ、そういう関係で、いろいろ物によって年度の分け方が違うということであろうと思います。ですから、この点は、物を扱って参ります場合にはやはり一番便宜な方法でございまして、実際問題として不便は一つもないわけでございます。
  115. 川俣清音

    川俣分科員 経済局長、それは答弁にならないのです。あなたの方は八月から七月、始まる月を年度に入れているわけです。農薬は十月から九月なのですね。それで来年の称号を使っている。名前ぐらい統一したって別に差しつかえない。八月を五月にせいとか七月にせいというのじゃない。八月から七月はその実態に即応したものでありましょうから、それはよろしいでしょう。つける上の名前を、何年度というときには統一したらどうであろうか。肥料は八月から七月にするのを、いや七月から六月にせい、こういう意味では毛頭ない。実態に合わせて八月から七月でもいいでしょうが、肥料の方は始まるときをもって、ことしであればことしの八月から来年の七月までを三十七年度と言う。農薬の方は三十八年度と言うわけです。その呼び名を統一してはどうであろうかという提案なんです。
  116. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 肥料の方は私の方でいろいろ扱っておりまするけれども、農薬については私の方では扱っておりませんものですから、どういう事情でそうなったのかわかりませんが、おそらく何か理由があってそういう名前を使っておるのじゃないかと思います。私が答弁するのは適当でないと思いますので、差し控えたいと思います。
  117. 川俣清音

    川俣分科員 それは形式的には振興局と経済局ですが、十分承知なんです。ところが、今あなたはそういう弁解をするけれども、肥料と農薬では、肥料と言っていいのか農薬と言っていいのかわからないものも入っておる。たまたまこれを肥料に入れたり、たまたま農薬に入れておるわけで、かなり最近は起こってきておる。かつて葉面散布薬は肥料でなくて農薬として取り扱ったこともあるわけです。農薬として取り扱えば葉面散布薬あるいは促進剤のようなものも、あれはかつて農薬の薬品の部類に入っておった。肥料でいえば三十七年度だが、名前が農薬に変われば三十八年度だというのは、どういうわけですか。使う目的は同じでしょう。農薬と言われようと肥料と言われようと、目的は同じなんです。ただ、農薬というと三十八年度と称する、肥料だというと三十七年度と言う、これだけの違いなんです。なぜそういう区別をしなければならないか。区別しなければならぬ理由はないでしょう。八月から七月までということは理由がありますよ。農薬も、従来は比較的十月から九月までという一つの慣習はあります。これでも最近の農薬の需要の一番高いときでありますと、必ずしも十月から九月までが適当かどうかという問題はあります。あるけれどど、それは従来からの十月から九月までに一応認めるにいたしましても、どうも三十七年度と呼び、三十八年度と呼ぶ呼び方がおかしいじゃないか。これは統一したっていいじゃないか。統一できない理由はどこにあるのですか。できない理由を聞きたいのです。ただ習慣でやっているのか、何としてもできない理由があるのか。その点だけ聞きたい。
  118. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 肥料や農薬については、おっしゃるような事態も最近ございますので、名前が統一できない理由がどこにありますか、これは私だけの問題でもございませんので、一つ十分検討いたします。
  119. 川俣清音

    川俣分科員 今大臣もお聞きのように、何にも根拠がないのです。ただ、何月から何月までは一応の根拠がある。一番需要の多いところを需給計画の上からもはさもう、こういう計画ですから、これは問題は別にない。呼称ですから、呼び名くらいはできるだけ統一してはどうだろうか、こういう提案です。しかも実態に合うように、農薬と肥料などくらいは年度を同一年度にした方がよろしいじゃないか。このごろの農薬というものは、酵素とか酵母とか、あるいは発芽力を促進するというので、実際の肥料よりもそうした化学反応を起こさせる目的の農薬もかなりあるわけです。肥料か農薬か、いろいろ議論のあるところです。そういうのが年度が違うというのはおかしいのです。  私が申し上げたのは農林省関係の分だけについてのものですが、その他いろいろあるだろうと思いますから、どうか呼称は統一されるように希望したい。肥料年度なども、統計を見ますと、肥料年度、会計年度、暦年度と、こう三つ出しておる。肥料は大へん厄介なんです。会計年度、暦年度、次に肥料年度と、農林省のこのポケット統計の中にも三色出しておる。生産高というときは、暦年では幾ら、会計年で幾ら、肥料年では幾ら。こんな繁雑なことはないと思うのです。だから、そういう意味一つ検討願いたい。検討する検討すると言いますけれども、その場限りになりまして、検討が行なわれていないのです。私は去年やかましく言いまして、ことしから農林省の農林水産統計の裏へでもこれをつけなさい、そしてみなに注意を喚起するようにというので、初めてこれを付録につけさした。ごらんなさい。これは大いに注意を喚起したいと思ってつけさしたのですから、一つ検討を願いたい。これで質問を終わります。
  120. 西村直己

  121. 横山利秋

    横山分科員 私は大蔵大臣に、関税を中心にして貿易政策について二、三お伺いをしたいと思います。  その前に、私の持ち時間もあまりたくさんございませんから、私が聞きます前提になることをまず言うておかなければなりません。最近の国際的な経済情勢に多くの特徴がありますが、私が特に質問をしたい焦点として四つあります。一つは、欧州共同市場が非常に発展をしておる。この発展が日本の産業及び貿易に加速度的に非常な影響を与えることがすでに予想される。第二番目には、アメリカがEECに非常な接近をして、そのために互恵通商法案を新たにアメリカの国会に出そうとしておる。これはまた直接間接にわが国の産業に甚大な影響をもたらすことが当然予想される。第三番目には、この十月から自由化が繰り上げられて、九〇%の自由化がされる。しかしノーマルな状態でなされるのでなくして、金融引き締めという特殊事情の中で、しかも自由化が促進をされるということが問題である。第四番目には、政府及び与党内でも議論がされておるそうでありますが、伝うるところによれば、太平洋共同市場構想とアジア経済協力機構構想というものは、いずれの方向日本の経済や日本の産業を、関税の問題をも含めていこうとするのか、ということがこれからの問題になる。私がきょうあなたにお伺いしたい問題の前提として、こういう情勢の変化日本の産業の前に大きく待ちかまえておるということをまずお話を聞く前提として大臣承知をしておいていただきたいのであります。  そこで、お伺いしたい第一点は、EECの発展が日本の産業にどういう影響をもたらすかということであります。混合関税や対日通商政策の一元化ということで、当面はむしろ対日輸入の制限となってくることは大体識者の一致しておるところであります。もうすぐにミシンだとかあるいは陶磁器については抑制措置をするというふうに考えられておるし、あるいはまたガット三十五条援用などから、対日差別待遇国に全加入国の線をそろえるということが想定されておる。このEECの発展というものを今まで対岸視をしておったような感のある日本政府は、EEC対策としてはどういうことを一体考え、どういうふうに接近をしようとしておるのか、まずそれをお伺いいたしたい。
  122. 水田三喜男

    水田国務大臣 EECは域外に対する関税の統一というものはまだできていないところでございます。従って、日本としましては、今EECが一木として関係してない状態でございますので、個々の国との調整をまずはかることが先決である。従って、イギリス、フランスとの差別待遇に関する緩和の交渉、イタリアとの問題、こういうふうに、まず個別的に、外国が日本にとっている差別待遇の撤廃ということをさせることに努力しなければならぬと思います。それをしながら、EECが一体となって国内関税が統一されるときには、今度はまた新しい問題として、それとの関連における日本の関税政策の変化というようなもので考えていく。そうしてやはり、これと歩調をそろえて接近する体制をとっていくという方向より仕方がないだろうと思っております。
  123. 横山利秋

    横山分科員 しかし、情勢は、大臣のお考えほど遠い問題でなくて、現実にもうすでに陶磁器、ミシンについては混合関税を適用することが検討され、また一二%ときまっておる共通関税率を、六五%ないしは一二五%に引き上げようとする案が出ておるというふうに伝えられておるのであります。ここ数日来の新聞でも、テレビやラジオの各経済専門家の話も、声をそろえて、このEECの発展と、アメリカとEECとの接近というものが、どんなに日本の産業やあるいはその他に影響を与えるかもしれないということを言っておるのでありますが、今大臣お話のように、イギリスやフランスやあるいはイタリアの差別待遇を個々に是正をしていくのだ、そうしてそのうちにEECのそういうことが出たら対処するのだというような時間の余裕というものは、政治的にはあまりないのじゃないか、こういうことを私は考えるのであります。重ねてあなたの見通しをお伺いをいたしたいと思います。
  124. 水田三喜男

    水田国務大臣 米国の通商拡大法と日本関係を見ますと、関税を大幅に引き下げるということがEECとの間で行なわれたとしますと、日本も最恵国条項によりましてその恩恵は受けますが、はたしてただ乗りができるかという問題が出て参ります。当然日本にも引き下げの要請がくるから、日本としても引き下げなければこれと接近ができないというような問題を今後当然起こしてくることと思います。しかし、御承知のように、日本として一応自由化の計画を持っており、この自由化計画を行なおうとする以上は、現状から見まして、関税引き上げというようなことによって、この調整によって切り抜けなければならぬ事情にもありますので、今当分は逆行のような形の関税政策をとらざるを得ない。しかし長期的に見て、これは日本の国内の急速な合理化そのほかをやることによって、全体としては将来関税引き下げという方向にいって、これとの接近をはからなければならぬという非常にむずかしい問題を今持っているときだと思います。長目の対策と当面の対策というものを、やはりある程度区別して私どもは切り抜けていかなければならぬだろうと考えております。  そういう目から見まして、EEC対策も、いろいろむずかしい問題はございますが、やはり当面対策と、それからこれに接近する長期対策というようなものを私どもは分けて、それに対応した国内の施策をまずとらなければなりませんし、EECとの交渉もやらなければならぬ。一応この先はこうなるだろうという見通しと当面とは分けて考えるよりほか方法がないのじゃないかと思っております。
  125. 横山利秋

    横山分科員 お答えの中に三回もむずかしいむずかしいとおっしゃったのですが、ほんとうに私も、率直なことを言うとむずかしいことだと思うのです。ただ、しかし、このむずかしいということが、どういう情勢によって現われたかといいますと、これはEECの発展と、もう一つアメリカがEECに接近をするということとはある程度区別をつけてもいいと思うのです。アメリカがEECに接近をして、互恵通商法を新しく制定をしようとする意図のゆえんのものは言うまでもありませんが、アメリカの立場において行なわれるわけですね。アメリカは今EECのワクの中に入ることはできないけれども、しかしEECと接近をして同じ条件を確保しなければ、アメリカの経済がうまくいかないというところに力点があるのであって、日本の利益というものを考えているのではないのです。しかも、アメリカの利益とEECの利益とが結合をして関税が引き下げられて、それが自動的に日本に適用される。自動的に適用された関税引き下げというものが日本に対して恩恵を与えるものだ、理屈がかりにそうであっても、実際が日本の産業の中にあらしを吹き込むことになるということはだれしも否定されない。それを大臣はむずかしいことだとおっしゃるのですが、そのことを一体どういうふうにお考えであろうか。理論的にも実際的にも当面適当な政策である……、これは政策じゃない。向こうのおやりになることですから、こっちに非常な影響のあることを、日本は黙っていろ、アメリカとEECの両方の利益に基づいてやることだから、ということで、勝手に向こうがおやりになることを、日本は黙ってのむ、こういうことになることを私はおそれるのであります。将来かりに自由化というものが国際的な潮流であるといたしましても、それについての基礎条件が必要である。日本の特殊条件というものが必要である。そしてその適切な時期というものが必要である。だとするならば、アメリカとEECとの双方の利害だけで行なわれたその協定というもの、条約というものを、日本が拱手傍観して、きまったものは私ども適用されますねと言っているだけで、それで済むものであるかどうか。この点は、一体政府としてはどういう措置をおとりになるおつもりであるか。どうぞ勝手にやって下さい、私どもはきまったことが最恵国待遇の条項によって適用されますから、それに順次国内の体制を合わせてやっていきます、というふうにお考えでありますか。
  126. 水田三喜男

    水田国務大臣 だから、先ほど申しましたように、長い将来対策としては方向はきまっていると思います。しかし、当面すぐに日本がこれにならって関税を引き下げられないいろいろの事情もございますので、当面対策は一応当面対策としておりながら、とにかく日本の産業は温室経済で、今まで荒波に出ていなかったものでございますから、いろいろ体質上の問題を持っております。これを一気に改造するということはなかなかできませんので、今回の計画による自由化をする場合には、自由化を行なったらそのあと新しく適用する関税というようなものをきめて、今御審議を願っておりますが、相当部分関税を引き上げるという形によって自由化をやらなければならぬ実情に迫られておるところでございますから、一応そういう形で急激な変化を避けながら、長期的には関税引き下げという方向へほんとうに踏み切る、産業再編成に踏み切りをしていかなければならぬし、またそういう指導をわれわれはしなければならぬと考えておりますが、これはさっき申しましたように簡単な問題ではございませんので、これは順を追って対処するよりほか方法はないだろうと思います。
  127. 横山利秋

    横山分科員 お言葉が納得できないのであります。順を追って対処するというのは、消極的にアメリカとEECとの話し合いの成立を待ってそれに合わしていくということなのか。日本に非常な影響のある問題について、日本として一言なかるべからずという立場をおとりになるのか。けだし、この互恵通商法の期限は六月でございますから、六月までにアメリカの国会はこれをきめる。そうして、きまったものがその通りであるとするならば、大統領の関税引き上げ権限は、現行の二五%から五〇%に拡大する。特定品目については関税の全廃をする。ここまでアメリカの貿易政策が大転換を遂げると私は思っているのです。大転換を遂げるまでの決意をしているアメリカとEECとの交渉というものが——あなたは、向こうがおやりになったらこちらもベースを合わしていけますというお考えでしょうか。それとも、アメリカとEECとの交渉について、私のところも自動的に影響を受けるのですから、私のところの利益も考慮してくれるかどうかという交渉をなさらないのか、と聞いているのです。
  128. 水田三喜男

    水田国務大臣 この動きは、基本的には自由貿易という方向に向いているものでございますから、その限りにおいては日本は別に抗議すべき問題じゃございませんし、むしろ世界のそういう方向は歓迎すべきものだろうと思っています。しかし、そういう方向に動きながら、なおかつEEC諸国は、個々別々に見ましたら、ドイツは違いますが、他の国は日本に対して現実にまだ差別待遇までしておるという状況でございますので、これらの問題については日本はだだ拱手傍観をしているわけではございません。政府としては、御承知のように、昨年来からこの問題について強い交渉に入っている次第でございますので、まずこういう問題について、前提問題として片づけるべきものを片づけるという方向で行きたいと思っております。
  129. 横山利秋

    横山分科員 どうも、私のお話しているベースと大臣お話しているベースとがまだ合っていないようであります。フランスやイタリアや、あるいはイギリスとの差別待遇がたくさんの品目について残っていることは事実でございまして、その差別待遇の撤廃に政府努力をしておることは当然なことで、どうして早く差別待遇がとれていかないのかということは共通の話題であります。けれども、その共通の話題を乗り越えて、さらに大きなあらしが日本に襲いかかってくる。これを単に理論的に、関税の引き下げというものは時代の趨勢だからやむを得ないのだから、これはいいことだというふうに言って済まされる問題であるかどうか。すでに間近に迫ってくる第二段の問題について大臣としてのお考えはどうかと聞いているのに、第一段のことに話をそらせようとなさっているのは、あなたの親切な御答弁にならぬと私は思っている。  それについて、この間、佐藤通産大臣が商工会議所で発言をされました。かなり大胆な発言であります。私の立場と違うのでありますが、むしろ、大蔵大臣の、まあ向こうで交渉されることだから、アメリカとEECとの間の関税がぐんと引き下がって、そして最恵国待遇で日本が影響を受ける。そうすると日本の関税もぐんと下げなければならぬ。品物がどんどん入ってくる。自動車もどんどん入ってくるであろう。あれもどんどん入ってくるであろう。そうだったらどうなるかという非常に守勢的な立場でありますが、佐藤通産大臣はこういうふうに言われておるのであります。政府は、このような状況によって、産業の再編成が起こるかもしれぬが、このような産業構造の再編成につれて生ずる混乱に対して、長期的視野に立って強力な援護措置をとりたい。フランスが年間百五十億フランを産業転換に支出し、ケネディ大統領が一般教書で産業転換への助成補助を強調したのもこのためで、わが国も必要があれば産業転換のための特別資金措置を考える必要がある、こう語っておられるのであります。私は、このこともまた、私が質問をしておりますいわゆる第二段のあらしに対して、通産大臣大蔵大臣もあらしが来ないような防護措置をするのではなくて、いや、くる場合においてもこういうふうにきてもらいたいという防護措置でなくて、くることを前提にして、しかもそのあらしが非常なすごいあらしだということで国内の産業再編成を考え、そして産業再編成に必要な財源措置に強力な特別措置をうける、こういうようなお話のベースのように思うのであります。この通産大臣のお考えに対して、大蔵大臣としてはどういうふうにお考えでございますか。重ねてお伺いしますけれども、私の言っていることは、むしろそのあらし、アメリカとEECとの交渉、あるいはEEC内部における関税のあり方について実は伺っておるのでありますが、御答弁はそちらの前向きの問題と、国内のうしろ向きの問題と、二段に分けて御返事をいただきたい。
  130. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきから申しましたように、そういう長期的な対策、方向というものはわかっておりますので、これにどう対処するかという取り組み方を私どもはこれからしなければなりません。これは大きい産業政策の問題でありまして、今そういう事態に対処するための産業政策として、私ども、先を見た検討政府部内でもいろいろしている途次でございまして、まだ、ここで、今言ったように資金をどうするとかこうするとかいうような具体的な構想を持っておる段階ではないと思います。
  131. 横山利秋

    横山分科員 お答えが不十分でございます。私の申し上げたまず第一段の点であるアメリカとEECとの関税交渉について、日本政府として自動的に影響を受けるのであるけれども日本政府としてアメリカなりEECと折衝をなさるお気持はないのですか、それを簡単にお伺いいたします。
  132. 中山賀博

    ○中山説明員 お答えいたします。アメリカとEECとの関税交渉につきましては、日本としましては一応第三国の立場にあるわけでございます。しかしながら、日本は、同時に、米国との関係におきまして、あるいはEECの若干の国との関係におきましては、法律的にも最恵国待遇を与えられることになっておりますので、かなりの部分につきましては、その両者の間の関税引き下げ交渉の結果について均霑できるものではないかと考えております。しかしながら、同時に、両当事者といたしましては、もし第三国である日本があくまで域外に立ちまして、両者の間にもたらされる結果のみを均霑するということにつきましては、経済的にも、あるいは公正の原則に照らしても若干難色があるかと思いますので、その場合には、おそらくその関税交渉の結果というものは、意識的に日本に受益するところ少ないような方途で行なうのではないかと思っております。しかし、いずれにいたしましても、日本といたしましては、わが国といたしましては、全然第三者の立場でこれを傍観するということは、多少なりとも結果としては許されない事態に至るのではないかとも考える次第でございます。その間の経緯につきましては、まだ米国におきましては通商関税法の審議もされておりませんし、あるいはヨーロッパ諸国、EEC諸国におきましても、米国の様子を見ている関係もございまして、われわれとしましても、事あるごとに事情の調査はいたしておりますけれども、いずれの国からもまだ日本に対する確たる態度、確定的な態度はない現状でございます。
  133. 横山利秋

    横山分科員 アメリカとEECとの自主的な交渉だから、第三者であるけれども、拱手傍観することは許されなくなるであろうと判断をするというような御趣旨でございますか。
  134. 中山賀博

    ○中山説明員 ということも考えられるわけでございますが、まだ調査中でございまして、各国の、アメリカあるいはEEC諸国の日本に対する態度も確定いたしませんので、はっきりとした最終的なお答えができないのが現状でございます。
  135. 横山利秋

    横山分科員 しかしながら、もうすでにアメリカとして政治的に貿易政策の転換をしてEECと接近する。そうして、イギリスが実質上、名目上、EECに加入するのに対処するという決断をいたしますについては、それの影響が甚大であるか、大であるかという区別はさだかではないにいたしましても、この決意というものが日本の産業に大きな影響を与えるであろうことは、もう火を見るよりも明らかなことであります。そういうアメリカの政策の転換について、日米経済の今日の事情からいって、アメリカ政府の意向を聞き、日本政府の意向を伝えるという下交渉というものは当然なさっておられると思うのでありますが、その点はいかがですか。
  136. 中山賀博

    ○中山説明員 お答えいたします。アメリカがEECとの関係におきまして関税交渉を行なうという権限は、これからアメリカの議会において審議されます通商拡大法によるものと了解しております。しかして、この通商拡大法がいかなる形で通過するか、原案そのままで通過するか、あるいはいろいろな修正を受けて通過するかということにつきましては、必ずしも予断を許さないものがございます。同時にこれと相対しますEEC諸国におきましても、そういう事態を見てか、本件交渉に対する態度は幾らか瀬踏みしてみましたが、幾らか調査してみましたが、きわめて慎重でございまして、今のところ明確なる態度を示しておりません。従いまして、われわれといたしましては、最恵国の原則あるいはガットの原則等に照らしまして、あるいはまた、先般の大統領が要求しております権限等がそのまま通るものとして、どの程度の影響があるかということについては研究中でございます。
  137. 横山利秋

    横山分科員 これほどの問題について、情報の入手が少ないのか、あるいはその受け取り方について政府の内部の意思統一ができていないのか、できていても産業界に与える影響があまりにも強いので差し控えておるのか、その点はわかりませんけれども答弁はいずれにしても私は不満足なんです。  もう一ぺん大蔵大臣にお伺いをいたします。佐藤通産大臣が商工会議所でおっしゃったことは、私のいう第一段は別として、第二段、つまり国内措置としては問題の事態を正しく把握されておる。私どもに言わせれば、そういうことのないようにするという立場でありますから違いますけれども、第一段をそのままにすれば、あらしが吹いてきたらこれほどの覚悟が必要だという意味においては、真相を正しく把握しておると私は思う。通産大臣だから勝手なことが言える、大蔵大臣は銭を持っているからそう簡単なことは言えないということでもなかろうと私は思う。奥州の把握の仕方が同じであるならば、あなたもまた今日そういうことをする——直ちにするしないはともかくとして、どういうふうに大蔵大臣としてはこの問題の将来——将来といっても長いことではありませんよ。今年じゅうの問題ですよ、私はそう思うのです。具体的に措置をしなければならなくなるのじゃないか。その問題について大蔵大臣としては、あらしが吹いてきた場合における国内対策について、どういうお考えでありましょうか。通産大臣は、産業構造の再編成が好むと好まざるにかかわらず行なわれること、そうしてフランスやアメリカでやっておりますような産業転換への助成や補助の強化、特別の措置、特別の資金、これらについてかなり大胆なといいますか、真相を正しく把握したら大胆でないかもしれませんが、そういうお話をなさっておるのでありますが、大蔵大臣としてはどうお考えでございましょうか。具体的に一つお伺いをしておきたい。
  138. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもも、問題は正確に把握しておるつもりでございます。これにどう対処するかという問題につきましては、これは産業の主管官庁としての通産省もいろいろな構想を考えることと思いますが、私どももこれは考えるべき問題でございますが、さっき申しました通り、ただいま研究の段階でございまして、どういうふうな具体策をもって対処するというようなところまでは現在行っていないということでございます。
  139. 横山利秋

    横山分科員 つい先般までは、自由化が行なわれても関税を引き上げていけばよろしい、こういう考え方が何としてもありました。もちろん関税といえども世界の趨勢、それからガット等のいろいろな諸条件があるからそうは行くまいにしても、自由化に対しては関税措置をもって可能な限りこれに対処する、そうして国内の産業についてはあなた方のおっしゃるようないろいろな措置が考えられておった、そうしてきたんだけれども、もうすでに、その関税というものによって対処することはできなくなった。今回政府は、大蔵委員会に関税法の一部改正を出していらっしゃる。これは十月の九〇%自由化に備えて関税を上げて、関税のかきねによって少しでも国内産業を防衛しようという考えの跡片づけだと私は思う。この跡片づけの関税法の改正をこの国会で通したならば、あとはもう上げる問題ではない、いかにして下げなければならぬかという問題が、あらしのようにとうとうとして吹きまくってくる。あなたは、真相は私も通産大臣と同じように把握しておるつもりだとおっしゃるならば、そういう真相というものは、通産大臣のおっしゃる産業の再編成や、あるいは企業整理や、あるいはそれに伴ってなさねばならぬ特別措置というふうに理解してもよろしいのですか。
  140. 水田三喜男

    水田国務大臣 当面は、先ほど申しましたように、当面対策としてわれわれが考えておる方向で自由化を前進させる。しかし、それをやりながら、決してこの道は安易な道ではございません。業界にも十分な指導をしなければなりませんし、また本腰の対策を立てなければならぬ問題でございますので、その問題に移っていく。一ぺんは関税が上がって、そうして自由化への踏み切りをつけましても、それはそう長く持つ事態ではございませんので、いかにして関税引き下げをやってもたえ得るかという国内の産業体質改善問題がすぐ控えておるわけでございますから、これに対する対策は十分私どもは立てたいということでございます。
  141. 横山利秋

    横山分科員 通産省お見えになっておりますか。通産省にお伺いをしたいのですけれども、今私が御紹介をした通産大臣お話は、産業界に非常なショックを与えておるのであります、通産大臣にお伺いをするのがこれはほんとうでございますけれども、こういう言い方をしては恐縮でございますが、あの通産大臣の発言というものは、通産省全体がそう受け取り、そうしなければならぬと考えているものでありますか。
  142. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 通産大臣が経団連に行って言われましたことを、私どもも読んで拝見しておるのでございますが、私ども大体気持は同じように考えております。つまりEECとアメリカとの今後の関税交渉によりまして、おそらく関税はだんだん引き下げていかれるようになろうと思いますが、その余波は日本に及びまして、やはり日本に対しましても、関税引き下げの交渉なりなんなりというものがあるのではないかというふうに考えております。さような場合におきまして、ひとりわが国が関税障壁が低まるということによりましていろいろ困難な事態が生ずるのみならず、特にEEC内部における国際競争力が強くなる、あるいはアメリカ自体もますます国際競争力が強くなるという場合におきまして、EEC諸国あるいはアメリカの企業とわが国の企業が、東南アジアその他において、いろいろ通商貿易上の競争をしなければならないという場合におきまして、ますます競争が激しくなる。そのような意味合いにおきまして、わが国の企業として、国際競争力をますますつけていかなければならない。その場合におきまして、ある程度産業再編成と申しますか、重化学工業に力をつけるという方向は変わらないにいたしましても、この間いろいろ困難な、かつわが国として努力しなければならぬ事態が生まれてくる、かように考えておる次第でございます。
  143. 横山利秋

    横山分科員 EECの各国の状況をいろいろな角度でつかまえてみますと、その中に、一つ方向として、国際分業という方向があると私は思います。EECの圏内にイギリスが入り、アメリカが接近し、自動的に日本がその影響を受けて、同じベースの中にすわっていくということになりますと、日本の産業界もまたその特徴を生かすという方向に迫られざるを得ない。そうすると、どうしても産業界が再編成をされざるを得ない、国際分業の形に産業界を変えていかなければならぬ、こういうことになる。まことにこれはゆゆしい重大な日本産業の転換問題を引き起こす。そうでなくても、今国際経済の状況からいって、エネルギーの問題を初め、各般の産業において大きな波乱と動揺がある。かてて加えて国際収支によって引き締められている。その上に、この問題が日本の利益でなくて、アメリカとEECの利益によって日本に迫ってくるという状況について、何か考えるべきところがあるのではないか。日本独自の産業界の発展のために、消極的に、受動的にこの問題を受けとめて、それによって国内の産業の大転換と、それからそれによる巨大な特別掛冠を用意せざるを得ないという状況について、何か私ども政府の態度に非常な歯がゆい点を発見をする。かりに世界の経済の大勢というものが将来に臨んでそういうものであっても、それは日本がみずから招く立場においてそうでなければならぬのに、外国同士の利益によって日本が追い込まれていくという状況については、いかがなものであろうか。この辺に政府の国際経済に対するものの考え方、もちろんその問題については私はきょうは触れたくありませんが、外交政策との関係があることは百も承知の上でありますが、しかし経済問題としての分野から見ても、あまりにもふがいないような感じをいたすのでありますが、大蔵大臣の率直な御意見をもう一ぺんお伺いをいたしておきたい。
  144. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、やはり引き下げ交渉に日本が参加するという配慮をしなければならぬのじゃないかと思っております。そういう過程におきまして、これから日本の産業にどういう方向を与えなきゃならぬか、それに対する対策を準備しなければならぬかというようなことも、おのずからその過程において出てくる問題だと思いますので、このアメリカとEECの引き下げ交渉というようなものが始まれば、ただ傍観というだけじゃなくて、日本もこれに参加するような方向への配慮を私はすべきであろうと考えております。
  145. 横山利秋

    横山分科員 その次の質問は、伝うるところによれば、米国は、アメリカとカナダと日本の三国を基礎にして、次にオーストラリア、ニュージーランドを加え、最終的にはアジア諸国を参加せしめ、太平洋共同市場の結成を非公式に日本に打診をしておるそうであります。しかし一方、新聞でも伝えておりますし、政府内部でもすでに、消極的賛成という言い方が適当であろうかどうかわかりませんけれども、エカフェの推奨により、インドとタイと日本指導国になって、アジアのいわゆる共同市場を作ろうという動きがある。一体政府は、太平洋の共同市場と経済的提携を進めんとする方向に行こうとするのか。アジアの国々と一緒に、このブロック経済の方向に進もうとするのか、どちらのお考えでございますか。
  146. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ両方とも具体的になったという問題ではございません。アジアの経済協力機構を作るという問題も、なかなかそう簡単な問題ではございません。もしエカフェかちアジアの国に提案があって、こういう問題についての閣僚レベルの討議をしたい、あるいはそのための準備の事務的な会談を持ちたいというような提議でも日本にあれば、日本も参加する。そうしてこういう問題の検討に応ずる用意があるというような態度はようやくきめておりますが、今その範囲を出ておりません。太平洋共同体の問題も、具体的な問題ではございませんが、しかし、やはりいろいろな地域共同というような方向の動きがあるとしますれば、私は、日本としては多角的にそういう共同体というようなものに入っていくのがいいのじゃないか、一方でなくて、あらゆる方面日本は入ってもいいのじゃないか、そういう方向が正しいと考えておりますが、具体的な動きはまだございません。そういう動きがあったら、日本はそういう地域共同体の中へ、機会を求めて入っていくべきだと思っています。
  147. 横山利秋

    横山分科員 私の聞き違いかもしれませんけれども、一体政府は今日までガットその他で、ブロック経済というものはその地域内の利益だけを守るものであって、本質的に排他的なものだ、だからブロック経済を作ることについては日本は批判的であるという立場において一貫してきたのじゃないですか。今私は、あなたから、どこへでも入るという話を聞いて、やや意外に感じて、私の質問の前提としなければなりませんが、そういうことを今までおっしゃったことはないのじゃないですか。
  148. 水田三喜男

    水田国務大臣 排他的なブロック経済というものについては、私どもは反対しております。しかし、全体として自由貿易的な方向へ向かう過程においては、欧州のように先進工業国がそろっておって、地域的にも、また産業の国際分業というようなことをやる産業基盤もできておるという国の結合と、またそうでない国の結合は、おのずから違いますが、終局的にはそういう方向へいくための過程として、排他的でない地域共同化という段階があり得てもいいのじゃないかと思っています。
  149. 横山利秋

    横山分科員 ずいぶんお苦しい答弁のように思うのですけれども、ブロック経済——EECにしたって、南米の地域経済にしたところで、私は将来は別として、現実にあるものは、その地域内の利益を相互に守り合うという以上は、その半面に排他的な性格を帯びざるを得ないじゃありませんか。現にそれがあるからこそ、日本はEECから、陶磁器なりミシンなり、あるいはいろいろなものについて、排他的な立場から、さらに多く制限されざるを得ない状況に私はあると思う。今大臣が率直に、今まではそうであったけれども、そういうふうに言ってきたけれども、消極的であったけれども、しかし身近かに迫った太平洋共同市場やアジア経済開発機構が現にできるならば、日本は今までの考えを捨てて、そういうところへ参加をするのだ、こういうお話なら筋が通るけれども今まで、EECやそういう経済ブロックはどういうものか——日本はフリー・ハンドだから、そういうことを言うのが当然かもしれません。しかしそう言ってさておいて、あれはあれでいいのだという言い方というのは、私は今までの発言と矛盾するように思いますが、いかがでございますか。
  150. 水田三喜男

    水田国務大臣 太平洋共同市場なんというものは、まだどこからも言ってきたこともございません。ですから、現実の具体的な問題でないと言ったのですが、各地域に地域的な経済ブロックができるということは、ガットにおきましても、これは排他的でない限り認められておるものでございますので、ガットの認める範囲内においてのこういう共同体というものができても、これはかまわないと思います。
  151. 横山利秋

    横山分科員 こういうことで言い合っておっても意味がありませんから、やめますけれども日本がとってきた立場は、私の思い過ごしでなければ、地域経済というものが日本に与える影響から考えて、たしかあなた自身もそういうことをおっしゃったと記憶しておりますが、これ以上この問題は言いません。  外務省にお伺いしますが、今大臣がわざわざ正式に否定をなさったのですが、この太平洋共同市場構想というものは、今日までアメリカとの間に話題になっておりませんか。非公式には話が来ておるのではありませんか。また外務省はこういう構想について御相談なさったことはないのですか。
  152. 中山賀博

    ○中山説明員 そういう話は、われわれはアメリカから全然聞いておりません。
  153. 横山利秋

    横山分科員 御否定なさったのでありますが、そういうことがアメリカとして考えられており、日本に非公式に打診があるという確たる情報を私は持っておるのである。考えてみますと、これはアメリカとしてはむしろ当然なことかもしれないどころか、日本が中国や東南アジアに投資し、そしてアジア開発機構ができて、アジア地域ブロック経済ができ上がるならば、必ずしも好ましいことではないでしょう。しかし、片手にEECに接近し、片手でカナダや日本の有利な市場を確保しておきたいと念願するのは、アメリカとしては当然な構想であろうと思う。しかしこれは私の観測でありますから何でありますが、必然的に日本政府がこのどちらかに接近をして、この結成に参加するか、あるいはどちらにも参加しない今日の状態を続けていくかという岐路に立つと私は思っております。そういうことは大臣は仮定の問題だとおっしゃるかもしれませんけれども、、これは今日までアジアの問題につきましては、繰り返し繰り返し日本政府がアジアに提唱して断わられたことであります。断わられるには断わられるだけの理由があるけれども、今度はエカフェの方から話があった問題であります。だからこの問題については回答を出さなければならぬ。この回答を出すについては、アメリカの非公式に言ってきておる太平洋共同市場の問題についての回答も、同時に出さなければならぬと思う。これは大臣答弁が今しにくかったら、そう強くは要望いたしませんけれども、じきに目にあう問題である。それでは逆に聞きますけれども、アジアの経済開発機構に消極的な賛成という立場をどうもおとりになったようだというふうに見ましたが、それはその通りでありますか。そうだとすれば、そういう立場をとる理由は一体どういう理由がありましょうか。今日までの失敗、つまり東南アジアから言わせれば、また日本が大東亜共栄圏のようなことを考え始めた、アメリカの資本、日本の技術、東南アジアの資源、そういう岸構想をまた持ってきたということを言われるのがいやだから、おれらが出られぬというのか。それとも東南アジアのブロック経済というものは、工業国である日本と原料国である東南アジアとの結合がなかなか容易でないという経済的な判断からそうしておるのか。金を出すのがとてもえらくなるからこれはちょっと待ったということなのか。その辺の政府のお考えを経済閣僚としてお伺いしておきたいと思います。
  154. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ検討すべき問題がたくさんこれにはございますので、こういう問題について事前に相談しようというところあたりが妥当なところでございましょう。内容はまだ何にもない問題ですから、そういう方向の提唱があった場合に、これに応ずる仕方として、まず閣僚クラスの会合を持って十分にいろいろな問題の検討をしようという程度でございまして、それ以上には今の場合、実際には内容がないと思います。
  155. 横山利秋

    横山分科員 どうも私の質問が、私自身にとりましても、またおそらく日本の経済にとりましても、きわめて重要な対外的な経済問題として伺っておるのでありますが、御用心深いせいかもしれませんけれども、なかなか歯車がかみ合わないのが、私残念であります。与党の内部でもずいぶん議論のあった問題でございますし、この際、EECとアメリカの接近によって、日本の産業の再編成が起こるとまでいわれておる状況のことでございますから、経済的な見通し、判断、それに対して的確な対策の方向というものは、もう少し具体的に私はお伺いをしなければならぬと思っております。  一つ方向を変えて、具体的にお伺いしたいのでありますが、日米通商航海条約が来年の十月に切れます。私の承知をいたしておりますところによれば、ことしの十月には、どちらか一方から改定の申し入れをしなければなりません。この日米通商航海条約は、たしか最恵国待遇をうたい、それから日本の外資法に関係をいたします外資導入の規制についてもうたっておるわけでありますが、これまた時期が早いから、まだ用意がきまっていないとおっしゃるつもりですか。この改定交渉に臨む日本政府のお考えを伺っておきたい。と言いますのは、外資の導入が最近非常に多くて、そして今日までのように、単純な資本の投下という格好から、経営参加という方向が非常に多くなって参りました。例示をいたしますのは時間の関係上やめますが、このような傾向は今後もさらに継続する、増大すると私は見ておるわけであります。従いまして、アメリカの日米通商航海条約の改定要求というものは、かなり具体的に、外資の算入をやりやすくしてもらいたいということになるでありましょう。その他の最恵国待遇などの条項の改定と相待って、日本政府として、この問題についてどういうふうに対処をなさるおつもりでありますか。これは大臣でも外務省でもけっこうでございますから、具体的に一つお伺いをいたしたい。
  156. 中山賀博

    ○中山説明員 日米通商航海条約につきましては、まだいろいろ基礎的なデータを集めておる段階でございますので、具体的なものは進んでおりません。
  157. 横山利秋

    横山分科員 えらい簡単な話でありますが、毎年の国会でこの問題については、私もかつて一言発言をしたこともございますけれども議論になっているわけです。議論になっているけれども、この問題について、まだ何の用意がない、政府として、外務省としてのお考えがない、こういうふうに拝承してよろしいのですか。
  158. 中山賀博

    ○中山説明員 お答え申し上げます。日米通商航海条約が発効いたしまして、その間、両国の通商、経済上いろいろな問題が起こって参りました。そうして、アメリカ側から、日米通商航海条約をたてに日本を責められることもある一方、他方日本側が同条約を引用してアメリカ側を責めることもあった。そういう経験をいろいろ集めまして、将来改定交渉が行なわれると存じますけれども、今条文に即して、具体的な案はできておりません。
  159. 横山利秋

    横山分科員 外務省としては案はできていないけれども、この問題について国内的に直接主管省である通産省や大蔵省としてのお考えをお伺いいたします。
  160. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 ただいま外務省からお答えがあった通りでございますが、いろいろと検討すべき点等につきまして、これから今後検討して参りたいというふうに考えております。
  161. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 お答えいたします。外資法の問題につきましては、日米通商航海条約との関係もありますが、これを完全に取りはずしてしまうということについては、国内経済に対する非常に大きなショックがありますので、通産省としましては、積極的な理由というよりも消極的な理由で、たとえば中小企業に対する不当な圧迫だとか、あるいは産業秩序のかくらんだとか、あるいは国内技術を不当に圧迫するというような事態については、何らかの制限措置が必要じゃないかというふうに考えまして、その点寄り寄り研究中でありまして、現在のところまだ成案を持っておるわけではありません。
  162. 横山利秋

    横山分科員 今おっしゃったことは、現行法に規定をされておることでありますが、そのおっしゃることは、現行法を維持したいというふうに拝承してよろしいのですか。
  163. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 お答えいたします。現在の法そのままというわけには参らないかと思いますが、必要最小限の国内産業の保護の規定というものは何らかの形で残したい、こういうふうに私は考えております。
  164. 横山利秋

    横山分科員 次に、最近の話題となっております日韓交渉の側面を飾る保税加工貿易ということについてお伺いをしたいのであります。  きょうの新聞を見ますと、韓国商工部は大阪のある会社から一千万ドルの融資を受け、韓国中東部に出力二万三千キロワットの水力発電所を建設する計画を承認したと発表をいたしました。この保税加工貿易という問題について、与党内部におきましても、これを積極的に推進をするという雲行きで動いていらっしゃる方があるのでありますが、このように韓国では、それでは日本から入ったものを加工する場合においては免税しよう、そうしてできたものは韓国の軍が使うか、あるいはまた輸出に使うのだという方式について、政府側としてはどういう見解を持っておられますか、お伺いをいたしたいと思います。
  165. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもの方では、まだ代金決済のめどがついておりませんし、また日本からそういうふうに進出した場合の向こうの政府の保護という問題も、まだ国交回復前でございますからはっきりとはしない、こういう状態でございますので、今調査団が向こうに参っておるそうですから調査の結果、そういうもののめどをつけてから考えたいというので、今何も考えておりません。
  166. 横山利秋

    横山分科員 不敏にして私はその調査団なるものはよく知らないのでありますが、政府から出している調査団でございますか、どういう構成のものですか。
  167. 水田三喜男

    水田国務大臣 民間が自主的に行なっている調査団でございます。
  168. 横山利秋

    横山分科員 民間から行っております調査団の結果報告を政府が聞いて、それによって保税加工貿易を認めるか、輸出を承認するかどうかということをきめていく、きめるについては、政府としてはどういう構想でそれを承認し、また非承認をなさるお考えでございますか。
  169. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 韓国の加工貿易のお話でございますが、実はそのお話の内容というのが、きわめてばく然としておるというと非常に語弊がございますが、内容が実は私どもによくわからない点が多いのでございます。どういうものについてどういうふうにやるのか、あるいは向こうのたとえば保税工場において、こちらの企業が乗り出して加工をいたした場合に、その財産に対する保護と申しますか、あるいは請求権に対する保護とか、あるいは決済の方法とか、そういった点について全くはっきりわかりません。また先ほどお話がありました第三国へ輸出するのか、あるいは韓国の市場で販売するのか、そこら辺の事情もきわめてあいまいといたしておりますので、それらの実態がもう少しわかりませんと、どういうふうに考えていいかということはわからない実情でございます。従って現在民間の方で、ある方が韓国にいらしているそうでありますが、それらの事情がもう少しわかりましたならば、それを伺いました上で判断したい、かように考えております。
  170. 横山利秋

    横山分科員 韓国側は日本からの資本、技術導入による保税加工貿易の条件として、第一には、支払いは無為替延払いによる、第二番目は、それに対し政府の支払い保証はできない、第三番目には、その製品は軍納、つまり軍に納めるか再輸出に向けること、第四に、業種の選定にあたっては国内産業と競合しないようにすること、こういう条件がついております。ずいぶん勝手な話だと思うのでありますけれども、しかしこういう条件のもとに、私が今御紹介したように、韓国の商工部において承認されたと伝えられておる。湯川何がしという人が向こうへ行って、こういうような条件で話を持ってくる。持ってきて、政府はそれに対して——今の日韓交渉の現状からいって、私どものきわめて好まないところでありますけれども、どうもそれを承認し実行するという、そういうムードがある、私はそう思うのであります。一体政府は、日韓の経済の問題について、どういう基本的なお考えを持っておられるのか。今の韓国の経済情勢、生活状況、きわめて不安定ただならぬものがある。それにこのようなあいまいな、勝手な条件によって保税加工貿易を許し、しかもそれが韓国軍の整備増強に使われていく、そういうようなことを一体政府としてお認めになるものであろうか、しかもそれによって行なわれるそのお金は、国民の税金、国民の掛金から集積されたもの、財政投融資というようなものがそこに直接間接に投下せられていくであろうことをお認めになるであろうかどうか。私はその点について、大蔵大臣の慎重な御配慮をお伺いをいたしたいと思うのでございます。これは仮定の問題ではございません。具体的に進行しておる問題でございます。
  171. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の方はもう慎重な配慮をいたしております。ですから、たとえば民間から、保税倉庫の問題、無為替輸出の問題も、方針をきめてくれるのでなければ、調査に行っても意味がないというような主張もございましたが、私どもはそうではなくて、調査した結果、実情によって政府はいろいろのことを考えなければならぬので、事前にそういう方針はきめられぬという態度もとっておりますし、そういう点ではきわめて慎重にやっているつもりでございます。
  172. 横山利秋

    横山分科員 慎重であれば、さらに具体的にお伺いしなければなりませんが、もしもあなたがそういうお考えであるならば、今日の情勢下において、韓国へどんどん民間資本が進出するということは、経済情勢が不安定だから、まさか私はあるまいと思うのでありますけれども、そうすると、より確実な投下をするためには、日本政府あと押しが、その民間貿易にある程度されなければならない。そうするとその中に財政投融資が入っていく、そうしてそのできた製品を韓国軍が使うということは、あなたの言う慎重ということからいって、なさるべきことではないと思うのであります。財政投融資が直接ないしは間接にそういうところへ流れるような、流し得るような日本財政投融資の現状ではないという考えに御賛成になりますか。また第二番目に、韓国軍の増強にそういうものが行なわれる保税加工貿易については賛成できないという慎重な配慮だと私は思うわけでありますが、いかがでありますか。
  173. 水田三喜男

    水田国務大臣 日韓問題につきましては、日韓が今後どういう経済提携をするかというような問題は、両国間の会談によって将来きまっていくだろうと思います。そのときはそのときの問題でございますが、その以前における問題には、いろいろ慎重を期すべき問題が多うございますので、そういう十分な慎重な配慮をもって今臨んでおる次第でございます。
  174. 横山利秋

    横山分科員 くどいようでありますが、あなたの言う慎重と私の例示いたしました慎重とは一緒でございますか。
  175. 水田三喜男

    水田国務大臣 慎重というのは、大体そういう一連のいろいろなものを含めた慎重さでございます。
  176. 横山利秋

    横山分科員 まあこれ以上言っても仕方がありませんが、この点はくどく申し上げて、あなたの慎重な配慮をなさるべきことだというふうに申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  今大臣がおっしゃった、韓国とは国交が十分に回復していないというならば、その北の方の北鮮だって同じことであります。韓国の方には、慎重々々と言いながら、民間の調査団の結果を待って何とか善処してやるというようなムードが現われておるにかかわらず、北鮮の方は民間の作業がどんどん進行しておるにかかわらず、これは文字通りの慎重さであります。外交の問題にとらわれると話がむずかしくなるので、きょうは避けたいと思いますけれども、しかし北鮮貿易についても、少なくとも韓国と北鮮との貿易については、同じようなベースで扱っていいのではないか。ようやく昨年の四月に、今まで香港を経由して北鮮に向かっておりました船が、北鮮へ直航するようになりました。けれどもまだ決済の方はそうではなくして、パリにおける銀行を経由して決済をしておるわけであります。標準決済規則の改正というものをもういいかげんでなさって——物は直接に行っていい、支払いだけはパリを経由しろ、こういうばかげたことはないのでありますが、これが一例であります。そのほか日朝貿易についてなさるべき点は多々あると思うのでありますが、外交は外交、経済は経済として、国際収支の改善をなさねばならぬ今日であるとするならば、この日朝貿易について、もう少し考えるべき点はないのであろうか。北鮮へ品物を輸出してもいいけれども、受け取りにきてはいかぬとか、あるいは標準決済規則は改正せぬとか、こういう子供じみたような問題がまだ残っておるわけであります。大蔵大臣には標準決済規則の問題、外務省には、引き取りに来る人間の問題を、政府のお考えをお伺いいたしたい。
  177. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 北鮮貿易につきましては、お話のように、昨年の四月から間接決済を条件として片道取引を認めておるわけでありますが、その後貿易額はだいぶ増加いたしておりまして、一九五九年では輸出が十九万ドル程度、輸入が一万六千ドル程度であったのですが、一九六〇年には百十三万ドルに輸出がふえております。さらに一九六一年の一−九月の間で、輸出が二百六十万ドル、輸入が百七十七万ドルと、だんだん増加いたしておるのでございます。御指摘の点につきましては、なお検討してみたいと思います。
  178. 中山賀博

    ○中山説明員 北鮮との人の往来の問題についてお答えいたします。今お話があったように、ある限度におきまして、ある程度北鮮との貿易は行なわれておりますが、人の往来につきましては、ケース・バイ・ケースにきめられております。実際上は、あるいはこちらから行かれる方も、ことに中共等を経由しておいでになる方もあるやに伺っておりますが、事実上は、これはケース・バイ・ケースで処理しているという実情であります。
  179. 横山利秋

    横山分科員 お二人とも確かめたいのですが、為替局長は、標準決済規則の改正をこの問題に関連して考慮しておるというふうに、前向きで理解をしてよろしゅうございますか。それから外務省の方は、ケース・バイ・ケースということは、日本が輸出する品物を向こうが検査に来るというようなことをケース・バイ・ケースとして許しておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  180. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 御指摘の点につきましては、いろいろと困難な事情もあるかと思うのでありますが、それらの事情について検討してみたいという趣旨でございます。
  181. 横山利秋

    横山分科員 前向きということですね。
  182. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 前向きかどうか、現状維持かわかりませんが、とにかく私、検討してみたいというふうに考えております。
  183. 中山賀博

    ○中山説明員 北鮮から人が来る問題に関しましては、外交的な角度、つまりいろいろな国との振り合いもありまして……
  184. 横山利秋

    横山分科員 私の申し上げた条件の中で返事して下さい。
  185. 中山賀博

    ○中山説明員 前向きか、うしろ向きか、それはよく存じませんが、とにかく外交的な点その他も考態いたしまして、ケース・バイ・ケースに取り上げております。
  186. 横山利秋

    横山分科員 いや、私の申し上げたのは、日本が品物を輸出する、その品物の検査に来る、こういうような場合もケース・バイ・ケースで許しておるかということです。
  187. 中山賀博

    ○中山説明員 ケース・バイ・ケースで決定をしております。必ずしも許しておりません。
  188. 横山利秋

    横山分科員 どういうことなんです。
  189. 中山賀博

    ○中山説明員 ケース・バイ・ケースで審査しまして、諸般の基準に照らして、不許可になる場合も多いのであります。
  190. 横山利秋

    横山分科員 許可になった場合もあるのですね。
  191. 中山賀博

    ○中山説明員 あると承知しております。不許可といいますか、不許可になるだろうということで、まだ申請していない場合もあるように聞いております。
  192. 横山利秋

    横山分科員 きょうはその問題を論議するつもりではないから申しませんけれど、このように北鮮の問題についてはほかの条件、おそらく私は日韓交渉の条件だと思うのでありますが、あまりにもシビアな状況なのであります。もしも国際収支の改善ということが刻下の一つの大きな命題であるとするならば、私は社会主義圏との貿易について、今為替局長がおっしゃったように、北鮮との貿易は非常に増大をしておる、そのほかソビエトとの貿易も増大をしておる、あるいはまた東欧諸国との貿易も増大をしておる。そういう条件のもとに実際問題として進行しておるのでありますから、さまつ的な標準決済規則の問題や、輸出するときに検査に来るような問題を、重箱のすみをほじくるような格好でやっていくようなばかげたありさまは、改善すべきだと考えるのであります。今、大臣は、そういったこまかいことは御存じないと思いますから、お二人の役人に聞いたのでありますが、大臣の善処に待ちたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  193. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは善処したいと思います。
  194. 横山利秋

    横山分科員 それではこの問題については、大蔵大臣一つぜひ善処をしていただきたいと思います。  最後にお伺いいたしたいと思いますのは、私が当面の問題として列挙いたしました、貿易をいろいろな角度から進める基礎条件としての国内の体制の問題であります。産業界の問題は先ほど申しましたが、港の問題であります。港の問題といえば、当然のことながら港湾の強化ということが叫ばれておるのでありますが、それはもうどこでも言っておることでありますから、私はここでは取り上げて質問はいたしません。私が質問をいたしたいと思いますのは、港湾行政の問題であります。  政府に、質問主意書を半年ばかり前に提出をしたことがございます。港湾行政というものが、一つの港に各役所が全部出店を持っておりまして、一つの品物を輸出し、一つの品物を輸入いたしますについても、数十通の書類が必要である。役所は全部それぞれ身分相応か不相応か、ビルを持っておって、そしてその間の連絡不一致はおびただしい。この問題について、最近港における合同庁舎が一部において進行いたしておりますけれども、まだ根本的な改善にはなっておりません。先般、臨時行政調査会が発足いたしますについて、その検討事項の一部に取り上げられたようでございますが、私は非常にけっこうなことだと思う。ただしかし、それも天の声、地の声、人の声であるにかかわらず、それがもうすでに十年になんなんとして実行されないのは、お役所のなわ張り根性であります。何といっても、これが最後の問題であります。昔は、大蔵省の税関が相当重要な立場におりまして仕事をしておりました。管理の面と、それから物と人との出入りというものと、二つに分けてやっておったわけであります。まだ昔の方が港湾行政としては、私はすなおな立場であったと思う。今日の経済情勢変化というものが——昔に返ることが適当であるかどうかは別といたしましても、放置することのできない貿易上の隘路だと私は思っております。この点について、何も臨時行政調査会検討を待つまでもなく、政府みずからの決意と実行力さえあればなし得ることであります。この点、税関の主管大臣としての大蔵大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  195. 水田三喜男

    水田国務大臣 港湾行政の一元化ということは、もうその必要性を迫られておる問題でございます。ですから、今度の臨時行政調査会の問題にもなる予定になっておりますが、それを待たなくとも、今関係当局同士でオーソリテイ構想とか、そういうようなものを中心にして、今港湾行政の一元化の問題について現実の問題として、政府部内でも取り上げられて検討されておる最中でございます。
  196. 横山利秋

    横山分科員 私の質問は終わります。
  197. 西村直己

    西村主査 井手以誠君。
  198. 井手以誠

    ○井手分科員 大蔵大臣には財政予算に関していろいろお伺いしたいのでありますが、本日は海運に関して一点お伺いをいたしたいと思っております。なお、あと質問は後日に譲りたいと思っております。  今度の予算に六十二億六千万円の海運企業整備計画審議会の費用が盛られておりますが、伝え聞くところによりますと、相当大きな拡充計画を運輸省では計画をされておるようでありますし、すでに政府においても相当話が進んでおると承っております。それはどういうふうになっておりますか。開銀の利子を流用しようとか、たな上げしょうとかいうようなことを内容とした、海運強化対策の内容を承っておきたいと思います。
  199. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、海運合理化審議会からの答申が政府に参っております。その答申をもとにして、運輸省においては、海運振興に関して償却不足をどう解決していくかというようなものを中心として、いろいろの具体案を検討しておりますので、経済閣僚懇談会でその運輸省案をもとにいろいろ協議をいたしたことはございますが、まだ最終の結論には達しておりません。しかし、いずれにしろ海運に対しては何らかの措置はとるべきであるということは一致しておりますので、そういう政府の最終具体案をきめる。同時に一方、従来からしばしば言われておりますように、海運界がただ政府の援助を待つというだけでは足らない。海運界自身が経営の合理化について真剣な考慮をすべきであるというようなことから、業界が自主的にこの合理化案を作り、そうしてその合理化案を審査する調査会を償いて、その調査会に認められたものについては政府が適切な助成策をとるという構想でいこうということになって、とりあえず調査会を作ることだけをきめまして、その予算は計上いたしました。この調査会が発足と同時に、政府側としても合理化のあり方によってのいろいろ助成策もまたおのずから違ってくると思いますが、最終具体案を私どもはそれまでに間に合わせて作りたいと思っております。
  200. 井手以誠

    ○井手分科員 予算が審議中でございますかと、先のことはなかなか言いにくいのでしょうが、予算通りますと早々に審議会をお開きになる、話がきまれば、きまったことは新年度早々でも実行に移される、こういうことでございますか。
  201. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、その対策についての予算は三十七年度の予算には計上してございません。従って、調査会の審議が進み、政府の対策がきまるということになりますれば、次の年度において必要な予算が計上されるということになろうと思います。
  202. 井手以誠

    ○井手分科員 それでは、海運の強化対策というものは、審議会できまって、政府方針がきまったそのものは三十八年度から実行される、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  203. 水田三喜男

    水田国務大臣 必要な予算措置というようなものはそういうことになるかと思います。
  204. 井手以誠

    ○井手分科員 今運輸省から持ち込まれております案は、いろいろ新聞に出ておりますが、きまったものじゃございませんが、どういう内容でございますか。きまっておりませんから、その程度で私はお聞きいたしますが……。
  205. 水田三喜男

    水田国務大臣 運輸省の案は前向きの案ではなくて、今までの海運業界が負担しておる民間銀行、開発銀行に対する利子のたな上げを考えてほしいということが中心の案でございます。
  206. 井手以誠

    ○井手分科員 前向きではないから、大蔵大臣としては今のところそれに賛成ではないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。まだ決定されたわけではございませんが、大蔵大臣の意向としてはそうなんですか。前向きじゃないということですか。
  207. 水田三喜男

    水田国務大臣 海運界の意向、審議会の答申は、この際うしろ向きの対策をある程度とるのでなかったら海運の振興はできないという方向の答申でございますので、運輸省もその線に沿った案を今研究しているということでございます。
  208. 井手以誠

    ○井手分科員 あなたの意見はいかがですか。
  209. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題がたくさんございます。かりに利子のたな上げをやるとしましても、各企業々々の実態が違いますし、その合理化が違うことによって一律な措置というものも不適当になることとも思われます。そういうことで、やはり合理化のあり方との関連において政府の対策というものも考える必要があると思っております。利子のたな上げということは、今の海運界の状況から見てあるいは必要な措置じゃないかと思っています。しかし、元本に対する考え方もまたいろいろございますので、たとえばこういう償却不足で悩むというときに減資というようなことを全く考えなくて乗り切れる問題かというような問題も含んでおりますし、いろいろ研究すべき問題がございますので、まだ政府の具体案がきまっておりません。
  210. 井手以誠

    ○井手分科員 今お話しになったいろいろな事情があるということについてお伺いしたいと思いますが、事務当局でけっこうでございます。開発銀行から貸し出しておりますもののうちに、復金債六百二十五億ですか、あれは見返り資金のものとして計算されておるようであります。ガリオア・エロアの問題になって参りますが、先般大蔵大臣お話しになった見返り資金の二千五十三億の中に、六百二十五億円が入っておると思います。その復金債のものであった六百二十五億の中に炭鉱関係は幾らでございますか。また、炭鉱関係のものでこれが返ってくる見込みがあるのかどうか。
  211. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 井出先生御指摘のように、六百二十五億復金債を償還いたしますために、一般会計から交付公債を出資いたしまして、出資いたしましたその交付公債を見返り資金特別会計に継承いたしまして、現金をもって償還いたしまして、国債整理基金特別会計の方に無償で交付したのであります。従いまして、私どもは六百二十五億の復金債償還分は見返り資金関係の資産である、かように解釈しておるわけでございます。それで出資金になりましたあとは、私企業に開銀を通じて貸し付けられておりますから、今手元に数字がございませんけれども、炭鉱関係にも出資されておると思います。
  212. 井手以誠

    ○井手分科員 復金債のものが、一般会計から入って復金債を引き継いだとかなんとかという問題はありますが、一応あなたの方の答弁を承るといたしまして、その六百二十五億円、これは見返り資金の中に含まれておるという話でありますが、その中に炭鉱関係——多分これは終戦直後のあの傾斜生産当時の炭鉱住宅資金を中心にしたものであると思います。——それは幾ら残っておるのか。おそらく残っておるものは、もう経営者は行方不明か破産しておるだろうと思います。利子もほとんど最近入っていないと思います。全部だめだと思っておりますが、それは幾らでございますか。
  213. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 これは二十七年一月十六日に小計した数字でございますが、鉱業関係で三百三十四億円、そのうち炭住関係が百五十四億六千八百万円でございます。三十五年十二月末の数字しか今わかっておりませんが、鉱業関係全体で四十七億九千六百万円、このうち炭住関係が二十二億一千二百万円でございます。
  214. 井手以誠

    ○井手分科員 その数字の返ってくる見込みは、私は九分九厘九毛ないと思っておりますが、どうですか。それは行方不明か破産しておるものばかりと思っておりますが、それは活字だけでしょう。
  215. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 本件につきましては、御承知のように銀行局で監督いたしておりまして、理財局はやっておりませんので、私は正確なことをお答え申し上げられないのであります。
  216. 井手以誠

    ○井手分科員 大蔵大臣、四十八億ばかりの金は、もうこれは回収不能になった分であります。それをあなたの方は、見返り資金のガリオア・エロアを返済する原資の分に含められておる。その金額は銀行局が見えてからあとではっきりいたしますが、それは元金が四十八億円。その分を今後十五年間で返済する原資として納付金のその計算をいたして参りますと、利子が四十二億円、合わせて九十億円になるのであります。  ちょっとその前に理財局長に、ガリオア債務の支払い額元金千七百六十四億円、利子三百二十一億円、合わせて二千八十五億円、これはこの通りでしょう。
  217. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 その通りでございます。
  218. 井手以誠

    ○井手分科員 重ねてお伺いしますが、返済財源として十五年間に開銀の納付金千七百五十七億円、貸付金回収が三百五十四億円、貸付金利子収入九十一億円、合わせて二千二百二億円、そうですが。
  219. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お話通りに計算いたしております。
  220. 井手以誠

    ○井手分科員 そうすると、返済財源になっておる二千二百二億円のうちから、今の炭鉱の九十億円というものはこれは引かなくちゃなりませんね。
  221. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 復金債を償還いたしまして、見返り資金関係の資産として経理いたしましたものは、お話し申し上げました通りでございますが、見返り資金会計といたしましては、復金債償還と同時に開銀に対する貸付金、出資金になっておるわけでございまして、私企業に対する貸付金は、開銀からの私企業に対する貸付金でございまして、直接見返り資金と私企業との関係は切れておるわけでございます。
  222. 井手以誠

    ○井手分科員 そうじゃございませんよ。電力とか炭鉱の融資、炭鉱の貸付は復金債で計上したものですね。それは大部分戻ってきて、残ったものは回収の見込みのある電力関係の若干と、それから回収の見込みのない四十八億円が残っておるはずです。それは貸し倒れになっておりますから、二千二百二億円という見返り資金の財産にはならぬわけですね。財産にはならぬから運用の納付金の原資としては見込まれぬわけでしょう、貸し倒れになっておるんだから。
  223. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 先ほどお答え申しましたように、出資金に伴う納付金と貸付金の回収金と利子の収入をもって返済財源に充てようとしているわけでございまして、先生の御指摘のように貸し倒れの関係とは私関係ないものと考えております。
  224. 井手以誠

    ○井手分科員 それはおかしいです。見返り資金の千四百十億円、それと復金債を継承して電力、海運その他から戻ってきた金、これを今運用しておるわけですよ。運用した利益が納付金として入ってくるわけですよ。そうでしょう。それは間違いないでしょう。そうすれば、回収できない復金債の中の石炭関係の四十八億円というものは、これは戻ってきませんから運用できない。運用できませんよ。利子も生みませんよ。開銀の利益になりませんよ。そうでしょう。  もう一ぺんよくあなたの耳に入るように申し上げます。見返り資金の継承分として千四百十億円、これははっきりしておりますよ。そのほかに六百二十五億円という復金債の、これは一般会計から継承した分ですが、それがあるから合わせて二千五十三億円。これは十八億円別にございますが、二つ合わせると二千三十五億円。これを運用した利益で、納付金として来るわけです。それでガリオア・エロアは完全に返済することができますという説明なんです。ところが、炭鉱に貸し出した四十八億の金というのは、これはもう貸し倒れになっておりますから、これは開銀としては運用できないわけですね。全然運用できません、四十八億円というのは。そうすると、利益というものを全然生んでこないわけですよ。親がなくなったから利益も子供も生まない。そのものは返済財源から落さなくちゃならぬでしょう。わかったですか。
  225. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 非常に困難な問題でございますが、開銀の出資金のうち見返り関係の金を資産として引き継いだものは八七・七〇%くらいに見ているわけでございます。毎年いろいろな貸付が開銀からなされておりまして、それに伴う利子収入、回収金等いろいろございまして利益を生んで参ります。経費を差し引きまして毎年約百三十四、五億円の納付金を生んでおるわけであります。その納付金を十五年間で計算いたしまして、非常にこまかい計算になりますが、千七百五十七億と、こう見ておりまして、それが支払い財源のおもなもの、こういうふうに考えております。
  226. 井手以誠

    ○井手分科員 その通りなんですよ。ところが、あなたの方は復金関係のもの、一般会計から継承した六百二十五億円というものが全部元気で子供を生むという計算ですよ。貸した金が返ってきて、そうしてこれが利子を生んで、これが財源になって納付金になるという考えですよ。ところが、炭鉱関係の四十八億円はだめになった。そうすると開銀では運用できぬでしょう。六百二十五億円の中から四十八億円というものはまず頭から引かなくちゃなりませんよ。何もガリオア・エロアの返済のことで考える必要はございません。私、数字だけ申し上げるのですから、あまり深く政治的に考えぬでやって下さい。
  227. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御指摘の炭鉱関係の貸付金の回収不能の分は、開銀の全体の貸付金から計算をすべきでありまして、復金債六百二十五億のうちから返せないと計算すべきでないと思います。
  228. 井手以誠

    ○井手分科員 そんな言いわけはだめですよ。昭和二十四年に復金債六百二十五億というものを継承したのでしょう。そうでしょう。その債権を見返り資金が持ったわけですよ。持ったから六百二十五億円という金が次々に戻ってきたのです。戻ってきて、それが開銀の資金としてどんどん運用されておる。だからあなた方は、六百二十五億円というものは見返り資金の分だとしてガリオア・エロアの返済資金の財源になっておるのですよ。何もほかの金で、一般会計から開銀に出資したその金で四十八億円が貸されたものじゃございませんよ。これは、はっきりしているんですよ、四十八億円という炭鉱の分は。海運に幾ら、何に幾らと、ちゃんときまっている。その分が返ってこないのですよ。だから六百二十五億円から四十八億円は引かなくちゃなりませんよ。頭のいい理財局長がわからぬはずはないですよ。逃げぬでもいいですよ。わかり切ったことじゃないですか。六百二十五億円の中に四十八億円の炭鉱関係が残っている。それがだめになっているのです。
  229. 上林英男

    上林政府委員 今の六百二十五億は出資でございます。従って、現在の姿におきましては、産投会計の開銀に対しまする出資となっておるわけでございます。開銀の貸付金の個々の貸付金とは法律的には関係がない。と申しまするのは、開銀自体は、開銀はいろいろほかにも貸付をいたしております。中には御指摘の貸付金もあるわけでございますが、一般の貸付金その他の運用によりまして、ただいまでは三百億くらいの利益積立金もございますし、二百億円くらいの貸し倒れ準備金も積んでおるわけであります。出資に対しまする納付金といたしましては、見返り資金から出しました出資の割合に応じまして納付金をとるわけでありますから、開銀が生みました利益のうち、見返り資金が出資したものと実質的に考えられます二千五十三億すなわち八七%を納付金にかけました率、その金額がすなわち見返り資金関係の収入である、こういうことになるわけであります。
  230. 井手以誠

    ○井手分科員 結論はそれはわかる。八七%くらいになるから、その率をかけたら年間百三十億円の納付金になった、その八七%をかけた百十三億か四億がガリオア・エロアの返済財源になる。これはわかる。その二千五十三億円になった基礎というものは、それは一般会計から継承したあの復金債の復金の関係六百二十五億円を加えておるのですよ。見返り資金の継承分としては千四百十億円、理財局長の言うようにするならば、もう六百二十五億というものは返済財源から除いてしまわなければなりませんよ。そんな理屈を言うならば、そんなややこしいことを言うならば……。せっかくの答弁だから、六百二十五億円は含んで計算いたしますと、しかし六百二十五億円というものは、その中に四十八億円回収不能に陥っておるじゃございませんか。大体、おやじがなくなって子供ができるはずがないですよ。その分は運用の利益として納付金にはなってこないのですよ。生んでこないのですよ。開銀全体では計算もできるけれども、その開銀の中で八割七分、八七%に当たるものの中から四十八億円というもの、これは三%になるか何か知りませんが、この分は除かなければなりませんよ。それを私は聞いているのです。ことさらに、わからぬようになさるのですか。私の言い方が悪いのかな。
  231. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 なかなか御理解願えないのでございますが、六百二十五億円は出資に振りかわっておることは先ほど申し上げた通りであります。その六百二十五億円と千四百十億と、それから十八億円の振りかえ出資を合わせまして二千五十三億になるわけでございます。これが八七%になるわけであります。その八七%を百三十億にかけたものが、原則として見返り資金関係の収入と見ていいのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  232. 井手以誠

    ○井手分科員 だから、六百二十五億円の中に、これは向こうから、海運会社とか電力会社とか炭鉱から、返ってくるのですよ。あなたのように出資だとおっしゃるなら、六百二十五億は頭から全部引いてしまわなければならない。見返り資金の関係になるのじゃありませんから、一般会計の継承分だから、頭から引いてしまわなくちゃなりませんよ。しかし、せっかくのあなたの方で六百二十五億円を加えてつじつまが合うように説明なさっておるから、私はあなたの方の立場質問しておるわけですよ。六百二十五億円というものが全部生きて返ってくるのじゃございませんよ。虫食らいが、四十八億円返済不能になっておる。その分の金額は二千五十三億から引かなくちゃならぬはずです。当然そうでしょう。見返り資金の資産じゃないわけです。あなたの方は、千四百十億円と六百二十五億円は見返り資金の権利だ、資産だ、こうおっしゃっておる。ところが、六百二十五億円の中に、四十八億円はもうだめになっておりますから、その分だけ引かなくちゃならぬはずですよ。引いて計算しなくちゃならぬはずでしょう。貸した金が戻ってこないならば、その金は、四十八億円はほかに運用することができません。運用しなければ利子が取れません。いわゆる納付金の財源にすることができないわけですから、その分だけはやはり頭から引くべきじゃございませんか。
  233. 上林英男

    上林政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、六百二十五億円は出資になっているわけでございます。従いまして、その出資の権利というものは開銀資産の全部に及ぶわけでございます。従いまして、もしそれを含めまして開銀がたとえば穴があいておるということになりますと、実質的にはそういうことになるかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、開銀といたしましては約三百億円の利益金を積んでおるわけでございますし、それから貸し倒れ準備金もあるわけでございます。従って、その出資金の権利自体は六百二十五億円完全に保全されているというわけでございますし、現実にその六百二十五億円を含めました、全部でございますと二千三百四十億になったと思いますが、それにつきまして納付金を納めておるわけでございますから、その納付金につきまして、見返り資金関係の納付金と、一般会計の納付金とを分けるということになりますと、見返り資金から実質的に出した出資二千五十三億円の割合、すなわち納付金の八七%に見返り資金関係の収入である、こういってよろしいのじゃないか、こう思うのでございます。
  234. 井手以誠

    ○井手分科員 あなたの方で出資だとおっしゃいますならば、六百二十五億円は一般会計からの継承分でありますから、見返り資金の財源にはならぬはずです。これは一般会計からの継承分ですよ。あなたの方で出資だというならば、なおこれは私は検討しますから、あとの問題に移ります。  ことし一月三十一日現在で見返り資金の中で千三百四十五億円を引き継がれた中で、海運関係は幾ら残っておりますか。そして、その金利は一年間どのくらいになるのですか。
  235. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御質問の点はやはり銀行局の所管でございます。
  236. 井手以誠

    ○井手分科員 あなたの方からいただいたものによりますと、海運関係で一月三十一日現在三百七十一億円残っております。銀行局の説明によりますと、これに相当する利子が二十五億円から六億円だといっておるのであります。これは銀行局がいったことをあなたが裏づけするわけにはいかぬでしょう。それは大臣の方がむしろわかるだろうと思いますが、あなたが海運対策でかなり強い意見を持っておられますが、この点があると思いますが、三百七十一億円のこの貸付金によって生んでおります利子、これが二十五、六億円。これをたな上げすることになりますと、これは大へんなことになると思うのです。それは大臣、御承知でしょう。
  237. 水田三喜男

    水田国務大臣 存じております。
  238. 井手以誠

    ○井手分科員 私の計算では、これが十五カ年間ということになりますと、三百億以上の金になると思うのです。大臣、そのことを大体荒検討なさったことがございますか。
  239. 水田三喜男

    水田国務大臣 別にまだ検討しておりません。
  240. 井手以誠

    ○井手分科員 先刻お聞きしましたガリオア・エロアの債務支払額が二千八十五億円、返済財源が二千二百二億円。その差額は百二十億くらいで、これはなかなかあぶないところですな。綱渡りみたいなものですよ。これから炭鉱関係を引くと、もうとんとんになる。それから海運の利子を年間二十五、六億たな上げしてしまう。そうなりますと、これは大へん穴があいてしまうわけですが、あなたの方では、本会議でも当委員会でも、この財源があるから完全にびた一文も二重払いにならないように返済することができますと、強くおっしゃいましたが、そうしますと、このぎりぎりの返済財源と返済金額、もしこれが海運界が要望するようなたな上げということになりますと、これは二重払い——ほかの方から金を持ってこなくちゃならぬようになりますが、その点は大臣も御理解になると思いますが、どうですか。
  241. 水田三喜男

    水田国務大臣 二重払いの問題でございますが、もともと見返り資金関係の資産は現在産投会計に四千億前後あるのでございまして、もう二千八十五億の債務を払う財源は十分持っておりますし、しかも私どもの返済計画は、この元に手をつけないで運用の利益から払っていこう——一部回収金もありますから払っていこうというのですから、払ってしまったあとはこの元の金が残るということなんですから、これは二重払いの問題なんていうものは全然起こり得ないことでございますし、この点は問題なかろうと思います。今私どもの計画は、出資したものを各企業ですか、各機関を厳守せしめて回収するということをするのなら、これは場合によったら一度に払える計算にもなろうと思いますが、これは大へんでございますから、そういう形をとらないで、一番支障なく払える方法として、今の開銀の納付金中心の返済計画を立てているということでございます。それで計算がはっきり合っております以上、将来事情によっていろいろなことが生じましょうとも、問題はこの計算でございまして、ガリオアの返済計画というものが計算上ぴたり合うのでしたら、これは別に海運問題とからませることも私はないだろうと考えます。
  242. 井手以誠

    ○井手分科員 見返り資金のほかの財源のことを聞いておるわけではございません。本会議なりあるいは当委員会において、二千二百二億円という返済財源がございますから、二千八十五億円のガリオア・エロアの債務は完全に支払うことができます、従って二重払いには絶対なりません、という言明がございましたからお伺いしておるわけでございまして、ほかの問題をいろいろ聞いておるわけではございません。今まで利子があったではないかとかなんとか言われると、またほかの言い分も出てくるわけです。ただ、ガリオア債務の支出総額と返済財源のその二千二百二億円というものとの話を私はしておるわけです。この返済財源の方が百億ばかり大きいから、二重払いにはなりませんという答弁であるから私は聞いておるのですよ。だから、今までの答弁からいきますと、海運がたな上げする全部で七十億とか、これはいずれの場合にいたしましても、ずっと前の年度の分ですから、三百七十一億円の海運に対する貸付金がまっ先にたな上げになることは、これはだれが見てもわかることです。そういうことをやると、この今までの問題とは全然違うことになりますので、そういうことはできぬじゃないですか、たな上げはできぬじゃないですか、こう私は聞いておるのです。今までのいろいろな問題は私は聞いておりません。
  243. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど話しましたように、まだこの海運対策というものはきまっておりません。そういう利子のたな上げをどういうふうにやるとかいうようなものはまだ全くきまっておりませんので、これはその対策をきめるときにいろいろ考慮さるべき問題だろうと思います。いずれにしましても、今私ども考えております支払い計画からいうのでしたら、これは問題なく払えるということであります。
  244. 井手以誠

    ○井手分科員 今までの説明した計画では問題なく払える、その通りです。そうではなくて、利子をたな上げするようなことになると、問題なく払えるわけにはいかないようになって、支障を生ずるということになりますね。そうでしょう。——現在説明された通りに、たな上げとかなんとかいう問題がなくて、開銀の納付金あるいは貸付金の回収金、利子収入など、いろいろなことが起こらぬでやれば、二千二百二億円は入るから大丈夫だ、問題なく払えますとおっしゃった。もし、後日、事情によって三百七十一億円を貸しておる海運界の強化対策のために利子をたな上げするようなことになれば、問題なく払えると思っておったのが大へんな支障を生ずることになると思いますが、この点はどうですかと聞いておるのです。
  245. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは、今言いましたように、まだきまっている問題ではございませんし、支障を来たさないような方法が当然考慮されることと思います。今のところは、全然きまっておりませんので、何とも申し上げられません。
  246. 井手以誠

    ○井手分科員 大へん時間がたちましたので、本日はこの程度質問を終わりたいと思います。
  247. 西村直己

    西村主査 明二十一日午前十時より開会し、大蔵省関係について質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会