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竹井公述人 私が
竹井二三子でございます。私は、
日本生活協同組合連合会の
理事をいたしておりますけれ
ども、三人の
子供を持つ母親でございます。
国家の
予算をきめるときにあたりまして、
主婦がこういう場でそれに対して
意見を述べ、それを聞いていただけるということは、
ほんとうにうれしいことだと存じます。ようやく何か政治が
国民のためにあるのだという実感が持てるようになりました。
ほんとうにどうもありがとうございました。
まず
予算編成にあたりましての
池田さんの
方針というものを、
主婦の
立場から考えてみました。
池田さんの
方針として出されております
国民生活の安定、
福祉国家の建設、
減税、
社会保障対策の充実、
消費物資の
供給力の増加、
流通秩序の改善、
公共料金の
値上げ及び
便乗的値上げの抑制、
畜産物価格安定法の設定など、大
へん私
たちにとってはうれしいような
方針が出ておりますが、去年もおそらくこういった
方針で
予算が組まれ、そしてまたいろいろその
政策面で実施されて参りましたと思いますが、はたして私
たちの
生活にどれだけ影響を及ぼして、
国民生活の
安定向上というものが来たすかどうか、それはちょっと疑問なわけでございます。
そこで去年の私
たちの
生活というものを一応振り返ってみたいと存じます。
まず、去年は、非常に
経済が大きな
伸びをいたしましたということでございますけれ
ども、
経済の成長ということは一体どういうことなのかということを考えましたときに、それはとりもなおさず、
国民生活の向上安定でなければならないというふうに考えるわけでございます。こういう
観点で去年一年を振り返ってみましたときに、総理府が三千名の
調査を行なった中で、一年前に比べて
生活がよくなったという人が一四%、それから苦しくなったという人が三二%、変わらないという人が五一%だそうでございますけれ
ども、こういった統計の
数字はまずともかくおいて、私
たちの実際の
生活がどうであったかということを申し上げてみたいと存じます。
一番初めに、去年
値上げされました
国鉄運賃の
値上げでございますけれ
ども、これが
平均で一四%だといわれましたけれ
ども、実際私
たちが一年間どれだけ
国鉄を利用して、それがどうであったかを顧みますときに、私
たちの一番よく利用するのは
国鉄の短距離であります。そういうものが十円から三十円に
値上げされて、それは倍になっております。
それからまた
電気代の
値上げでございますけれ
ども、この
値上げ理由の中には、
家庭でも非常に
需用がふえて、それに追いつくだけの
設備投資をしなければならないからということで
値上げをされたわけでございますけれ
ども、私
たちの
家庭にはブレーカーというものがついておりまして、
契約量以上使うと
電気が消えるようになっております。それからまた、はたして
家庭の
需用がどれだけふえているだろうということで、私
どもの
協同組合の
組織で、全国二百九十九の
調査をやってみました。その
調査によりますと、
電気器具を購入したというのが非常にふえているわけでございます。総数といたしまして三百四十三個買っているという結果が出て参りました。それに対する
電気の
使用量を見てみますと、季節的な
使用の増はございますけれ
ども、
電気器具を購入したための
使用というものは
数字に出ておりません。これを見ましても、結局
主婦というものは、
家庭電気器具がふえたから、どこかで倹約しなければ
電気代がふえるということで、要らない
電気を消すとか、
螢光灯にかえるとか、いろいろな工夫をいたしておるわけでございまして、そういうものの現われではないかと思います。結局、
需用増に対する
設備投資だと言われますが、どうも私
たちでなく、その
原因がほかにあるのではないかということでございます。それが結局われわれの
電気代値上げという結果になってきたということでございます。
それから東京では、
ふろ代も
値上げされましたけれ
ども、それは
ふろ屋さんが申しますには、
公共料金だといわれて
値段を抑えられているけれ
ども、何らそれに対する
政策的な裏づけがないから、われわれだってやっていかれないとおっしゃるわけでございます。それはもちろんその通りでございまして、われわれとしては、
ふろ代というようなものは、ただ個人の企業というようなことにまかせておいて、そしてそれを
公共料金で押えるという
矛盾というものが感じられるわけでございます。
それから
家計簿の中に出て参ります
生計費の増を見ますと、パーマだとかクリーニングだとか、仕立てだとか、洗い張りとか、靴の修繕とか、そういった、人の手を要するものが非常に大幅に上がっておるわけでございます。こういうものも
調査をいたしまして、その結果が出ております。
それから
野菜、魚でございますが、これはやかましく言われておりますように、非常に急激に上がって参りました。そうしてその
上がりがそのまま
家計簿の
数字になって上がっているかといえば、そうでないわけでございます。
生活費の中で、
食料費が非常にふえたという方は、
調査の中で九0%ございますから、決定的に
食費というものは上がっているわけでございますけれ
ども、それぞれの
上がりがそのまま
家庭の
支出増になっているかと見ますと、そうではないのです。一体それはどこに
原因があるのかということで調べてみますと、それは
栄養が低下しているのではないかという結論を得ることができました。それは、日本人の一日の
平均食費というものが、去年で百十六円でございます。それが、私
どものやはり仲間の
灘生活協同組合で十一月に
調査をいたしますと、
食費を百四十一円から百六十円かけているというのが二五%、それから百六十一円から二百円かかるというのが二六%、これを見ましても、百四十一円から二百円までというのが過半数を占めているわけでございます。
それから、これは実際の
数字でございますけれ
ども、はたして今の
物価で、二十一才から四十才までの
成人男子の、これは重労働ではなく、軽い労働をする人が、一体どれだけの
食料をとれば
栄養に事足りるかということで検討をいたしてみますと、それは、
食品の中で、赤の
食品が
蛋白、黄の
食品が澱粉、緑の
食品がおもに
野菜というように、赤、黄、緑に分けて、一日の
必要量と今の市価とで計算いたしますと、
最低百四十七円かかるというような
数字が出て参りました。これを見ましても――これは決して
平均ではございません。これは
成人男子が生きていく上にぜひとらなければならない
必要量でございます。それを今の
価格で換算しまして百四十七円。それが
平均で百十六円という
数字ということは、どういうことでございますか。百十六円ということは、まだまだ低い人がいるということでございます。ですから、この
最低百四十七円とらなければ健康が維持できないというのに、そういう結果だということは、私
たちが知らない間に
栄養失調になっているのではないかということでございます。
それから、それを
野菜と
蛋白に分けてみましても、去年の十二月にやはり
生協で集計いたしまして、
幾ら野菜を買っているか、
果物を幾ら買っているかということを
調査いたしました結果、
野菜と
果物で二千二百十五円という
平均の
数字が出て参りました。それを一カ月、一人に割ってみますと五百三円、一日に割りますと十六円ということでございます。この
野菜と
果物の摂取の
家計簿に出た
数字というものを、
必要量と照らし合わせてみましたときに、これは四・四人の
平均でございますけれ
ども、今の
物価で計算いたしますと、五玉五百四十四円かかるわけでございます。それを一日に換算いたしますと、四十二円という
数字が出ます。それが集計の結果十六円という
数字が出ております。こういうことから見ましても、非常に
野菜のとり方が足りないのではないかと思います。
それから
蛋白を見ましても、
上肉から
並肉、肉から魚へ質を落としたという人が一八%おります。それから同じ
食品で冠を減らしたという人が三%、回数を減らしたという人が五%、それから安い店を探すという人が二四%、以前と変わらないという人が四八%、その他というのが二%で、実際食
生活に非常に大きなしわ寄せがきているということでございます。
こういうことで、去年一年を振り返りましたら、
池田さんが一・一%くらい
物価は上がるだろうという見通しでいろいろなことをなすったようでございますが、結果として八・七%という大きな
開きがきました。これらの
見込み違いといいますか、そういうものの
責任を一体だれがとって下さるのだろうということを私
たちは感じるわけでございます。これがもし私
たちに大きな力でもあったら、そういう
見込み違いをされては困りますということを非常に大きな声で申し上げてみたいところでございますけれ
ども、それが何でもなくそのまま通るということに、私
たちは非常に
矛盾を感じるわけでございます。
ことしのいろいろな
政策を見てみましたときに、一番私
たちを喜ばせたものが
減税でございます。
減税という呼びかけに対して、一体それでは実際どれだけ
減税されるのだろうと思って、やはり
数字を見ましたところ、今私
たちが一カ月に払っている
間接税でございますが、これがざっと酒、
たばこ、味の素、
砂糖、
電気、、
ガスなどというものを合計いたしましても、二千八百五十七円五十六銭という
間接税を一カ月に払っておるわけでございます。その中で、どれだけ
減税されるかということを見ますと、お酒がようやく少し
減税されますので、
数字の中で百八十円というような
減税額が出て参ります。
たばこに至りましては、
減税どころか、二%上がるというようなことでございまして、この
減税を見ましても、実際に
家計の中に響いてくる
数字というのはそんなに大きくないということでございます。これは
耐久消費財の
免税点が引き上げられることなど、いろいろございますので、それはそれとして大
へんけっこうなことでございますけれ
ども、どちらかといえば、直接毎日われわれの使っている
必需品のようなものの
減税ということには至っていないわけでございます。ですから、
減税されるということになれば、まず、
たばこ・
砂糖というものが一番先に取り上げられますならば、私
たちの
生活が非常に楽になるということじゃないかと思います。
それからここで申し上げたいのは、
電気ガス税というのはどう考えても悪税ではないかと思います。今
電気はぜいたくだとか、
ガスはぜいたくだということではなくて、これは
国民生活の中でお米と同じくらい必要なものではないかと思います。そういう
電気ガス税の撤廃というものは一日も早くやっていただきたいというふうに思います。
それから
減税された分の行方でございます。これが今までの
経験から参りましても、
減税されたから必ずそのまま
価格が引き下げられたかというと、決してそうではない。ですから、このことに対しまして、(「
心配ない」と呼ぶ者あり)今お言葉にも
心配ないとおっしゃいましたけれ
ども、それをどのようにして指導して下さるか、私
たちはちょっとわからないわけでございます。定価の中に幾ら課税されているかということを明記するようなことを
立法化でもして下されば、
消費者の方もはっきりいたします。業者の力もいいかげんなことはできないかと思いますから、
課税分の明記をぜひ義務づけていただきたいと存じます。
それから
文教予算の方を見ましても、
教科書の
無償配付というようなありがたいことが出ておりますけれ
ども、それは三十八年度からの実施のようでございます。それから
先生方は、
子供の今の
義務教育、
小学校、中学校の
現状というものを御存じかどうかと思うのですけれ
ども、非常に
すし詰め教室で授業いたしております。それで、生徒がだんだん少なくなったときに、それでは一組の人数が少なくなるのかと思えば、
先生の数がどんどん減っていくわけでございます。それから
先生がたとえば結核なとの病気で長くお休みになると、そのかわりに専科の
先生で免状を持っている
先生がそれに振り当てられるわけでございます。そういうふうな
観点から、
父兄の不満というものが非常にあって、私なんかも今度痛切にそういうような目にあって参りましたけれ
ども、そういうような
現状でございます。
それから要
保護者だとか準要
保護者などには
教科書も無償できます。
給食費もただのようでございますけれ
ども、それ以外のすれすれの
家族というものが大体一割いるわけでございます。そういう方は、もちろん
給食費も払えないし、卒業の経費、
文具代、それから
旅行費というものが出せないわけでございます。それは一体だれが出すかというと、知らない間に
父兄全体、私
たちが負担しておるわけです。いわゆるピンはねと言いますか、
給食費も払えない
子供は、みんなの中から出して食べさしておるという
現状でございます。
それから施設を見ましても、
理科室では
実験道具らしいものもなければ、
社会科のお
部屋に参りましても、それらしいものもない。
家庭科のお
部屋に参りましても、
割烹道具もなく、お
炊事一つ十分にできる格好になっておりません。そして毎月
家計簿の中から出ていく
教育費というものは、
小学校で、前後することがございますけれ
ども二千円くらいでございますこういうふうな
現状の中で、ただ
教科書無償配付というものがクローズ・アップしてきました
理由というのは、私
たちありがたいような何かわからないような割り切れないものがあります。それほど
教育というものに重点を置いて下さるならば、もっと根本的に、今の
義務教育の
現状で
教育が十分にできるようになっておるかなっていないかということを十分検討して、重点的な
予算の組み方をやっていただきたいと存じます。
それから
社会保障の力も、先ほど申し上げましたように五人世帯で今度一万一千九百二十円になるようでございますが、これを先ほどの一人の
食費に当てて考えてみますと、
社会保障の方では五十八円五十銭が一日の
食費になっております。先ほどの百四十七円という
数字とはだいぶほど遠い
数字でございますので、この
基準引き上げということをぜひ考えていただきたい。
また
医療費でございますけれ
ども、今はやっておる
かぜにかかりましても、
健康保険の
きく薬というものは制限されていまして、クロロマイセチンを飲んでごらんなさいということになれば、それは私
どもでは上げられませんから
薬局でと言われる。
薬局へ行きますと、一錠百円ということで、なおすのに薬代で千円買わなければならぬということで、
家族がみんな
かぜをひいたら、五人
家族で
ク口口マイセチンが五千円かかった。こういう笑い話のようなそうでないような現実がございます。そういう点もっともっと充実したものがほしいということでございます。
それから
消費物資の方でございますけれ
ども、
供給力を増加して下さるということは大
へんありがたいことでございます。今のいろいろ
経済の
伸びとともに大量生産されておるものがたくさんあるのじゃないかと思いますそれで実際には少しも
小売の
値段が下がっていないわけです。オートメイション化されてたくさんできたものをどんどん下げて下されば、私
たちは非常にたくさん買えるのじゃないかと思うのですけれ
ども、やはりわれわれのふところの中というものには限界がございますので、
幾ら生産がたくさんなされても、
値段が下がらないと
購買力というものはそんなにふえていかないのではないかということでございます。大量生産されたものはもっと安くしていただいて、それを私
たちがたくさん買えるような指導というものはぜひお願いいたしたいと思います。
それから今度出ました
畜産物価格安定法の運用でございますけれ
ども、豚肉なんかを見ましても、卸の方では非常に安くなった、暴落したと言われるのですけれ
ども、
小売の方に参りますと、それほど下がっていないわけでございます。ですから、この間の
開きというものは一体どこで吸収されていくかを考えましたときに、やはり
流通過程を徹底的に改革するというような
方針がない限り、
幾ら法律を設定しても、それを運用しようとしても、結果としてはあまりいいものが出てこないのではないかと考えます。それから
流通過程の
民主化という中で、ことしは
タマネギの
価格を安定するために、テスト・ケースで五千万円くらいの
予算を組まれたというふうに伺っておりますけれ
ども、ただそういう
政策だけで
流通過程というものは
民主化されるかということを考えましたときに、これは私、やはりなかなかそうはいかないのじゃないかというふうに考えるのです。こういうものをやはり
民主化していきますには、
消費者自身の
組織である
生活協同組合というものを、もっともっと全面的に強化していただければ、おそらくこういう
民主化というものは自然になされていくのじゃないかというふうに考えます。この
生協に対する
貸付金が、ことしは一千万円組まれたということで、去年よりは大
へんふえてありがたいことですけれ
ども、
タマネギ一つの
価格の安定をはかるにも五千万円のお金をお使いになるのなら、
協同組合の
組織にもっともっと
予算を組んで下されば、
消費者自身でこの
流通過程の
民主化というものに大きな貢献ができるのじゃないかというふうに考えます。
それからもう
一つ、先ほど申しました
卸売物価が下がっても
小売物価が下がらないという中に、メーカーの
系列化というものがやはり非常に強いのじゃないかということが感じられるわけでございます。
協定価格というものが非常に横行いたしておりまして、
薬屋さんの
ビラの中に、
値段を割って売るお店があれば一一0番へというような
ビラを出しているのを見かけたことがございます。一体一一0番というのは何だろう、警察が調べるのかなと思って、内容を見ましたら、それをしてはいけないということになっているから皆さん御用心下さいということで、
価格をくずさないということを、そういうふうな言い方で出すわけです。こういうものが
公正取引委員会の方で
独禁法違反にならないのかどうかということで、私
たちは疑問を持つわけでございます。ですから、そういう
系列化というものがだんだん激しくて、バターなどは絶対に
値段が下がらないようになっておりますし、
化粧品な
ども、やはり
値段が下がりません。それから
化粧品などは、中身はほとんど同じだろうと思うのですけれ
ども、入れものの外観が少し変わって、新
製品だということで三割くらい
値上げされてくるわけでございます。こういうふうな
現状の中で、非常に大きい
広告があちらにもこちらにも、テレビなんかの
広告を見ましても、これに対する費用というものをだれが負担するのだろうと考えたときに、やはり私
たちが負担して商品にかかっているのじゃないかということです。
広告もある程度必要でしょうけれ
ども、誇大の
広告だの、それから懸賞をつけてお客を呼ぶというようなものを取り締まる法案が準備されているということは、大
へんありがたいことで、ガムを
一つ買えば何万円当たるとか、そういうふうなことは常識では考えられないことですけれ
ども、やはり
消費者というものは欲に目のない人はないものですから、
スリル感と相待ってそういうものを買おうとしたり、それから
化粧品なんかも、これは非常にきくとか言われると、やはり女というものは少しでも美しくなりたいということで、三割も四割も高くなった新
製品を買っては、あとでぎょっとするというようなことは、
家庭の中にたくさんあるわけでございます。
それから
衣料品にいたしましても、何か流行おくれのものを身につけると恥ずかしいということで、去年買ったくつがもうことしはけない、去年こしらえたスーツがもうことしは色が工合が悪いとかいうことで、何か宣伝というものに私
たちが非常に振り回されているというような
現状でございます。これはもちろん
消費者にも
責任はございますけれ
ども、そういうものを取り締まる法というものをやはり考えていただきたいと思います。こういうことは、
アメリカあたりの非常に
生活水準の高いところではいいかもしれませんが、日本のようなところでは、あまりむだをしないような消費
生活の指導というものが一番望ましいのじゃないかと存じます。
大
へん時間を超過いたしまして申しわけございませんが、これで公述を終わらせていただきます。(拍手)