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1962-03-02 第40回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員   委員長 山村治郎君    理事 重政 誠之君 理事 床次 徳二君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    青木  正君       赤澤 正道君    池田正之輔君       伊藤  幟君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       臼井 莊一君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       倉成  正君    正示啓次郎君       田中伊三次君    中村 幸八君       中村三之丞君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三浦 一雄君       山口 好一君    山本 猛夫君       安宅 常彦君    井手 以誠君       加藤 清二君    木原津與志君       小林  進君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       横路 節雄君    玉置 一徳君       本島百合子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 三月二日  委員周東英雄君、八田貞義君、稻村隆一君、長  谷川保君、佐々木良作君及び西村榮一辞任に  つき、その補欠として正示啓次郎君、伊藤幟君、  安宅常彦君、小林進君、玉置一徳君及び本島百  合子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員安宅常彦君及び小林進辞任につき、その  補欠として稻村隆一君及び長谷川保君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。淡谷悠藏君。  なお、淡谷君の持ち時間は、理事会申し合わせにより、十分間ですから、念のため申し上げます。
  3. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まず総理お尋ねをいたしますが、これはだいぶ前の一般質問で、どうしても総理においでを願わないと解決がつかぬ問題になっておりましたので、きょうは特に公平なる山村委員長のお計らいと、自民党の皆さんの理解のある取り扱いによりまして、総括質問を許していただきましたが、非常に大事な問題でございますので、ぜひともこれは総理から明確な御答弁をいただきたいと思うのです。  御承知通り防衛費予算は、予算総額中でも相当大きな額を占めております。この中で、特に今度一号機が入りましたロッキード予算は、三十五年に六百九十八億円余が国庫債務負担行為で組まれております。この予算の組み方が、いろいろ審議の過程におきまして、これでいいかという問題が起こりましたけれども、この六百九十八億円が、たった一口の予算になっておりまして、航空機購入費として内容がちっともない。これはどうもはっきりしない。おまけにこれには、アメリカ援助分として予算外にまた七千五百万ドル、すなわち二百七十億円がこれに加わるので、大体九百六十八億円という大きな買いものです。ところが、この七千五百万ドルの内容に至っては、依然として不明。これでは国民は納得しないと思う。アメリカ予算執行であっても、日本予算審議に重大な影響を及ぼすものでございますので、この際総理から明確に、この七千五百万ドルの内容について私はお尋ねを申し上げたいと思う。  第一に、この七千五百万ドルが日本へ金で支払われるものか、あるいはそれ以外の方法で日本を援助するのか。この問題につきまして、元の赤城防衛庁長官藤枝長官との答弁に、明確な食い違いがある。藤枝長官は、これを思い違いだろうと言っておりますが、思い違いと言えないほど明確な違いであります。その点について、総理お聞き及びと思いますので、この食い違いを一体どう理解してよろしいか、一つ答弁願いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 F104の購入費につきましては、アメリカ政府が七千五百万ドル負担証することになっている。その金が一応日本にきて、そうして日本政府から払われるかどうかという問題についての赤城元長官藤枝長官答弁が違っておるというようなあれでございますが、事実はその七千五百万ドルの金は日本政府にはこないのであります。アメリカ政府ロッキード会社に払う。その経過におきまして、日本契約者たる新三菱重工ロッキードとの関係において、それだけ減額される。お金日本に参りません。赤城元長官の話をずっと繰ってみましても、以前は七千五百万ドルを差し引いた残りの金額で債務負担行為をする、こう言っております。そうして赤城元長官がその後一カ月くらいして、あるところで、この金は日本にくる、こう言ったのでございますが、これは赤城君の思い違いではなかったかと思います。その後赤城君も、そうではないように取り消しておるのでございます。七千五百万ドルのお金日本政府にはこない、アメリカ政府ロッキードに払うのでございます。
  5. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは総理思い違いしておるのじゃありませんか。一番重大な発言は、あるところといったようなばく然とした場所ではない。国庫債務負担行為をやりますという場合もこの委員会ですよ。これは昭和三十五年の二月二十二日です。しかも私の質問に答えた赤城さんの答弁が、これは日本へ金で払うのだとはっきり言っておる。これが主軸になる。これを一体どこで取り消されたのですか。重大な問題です。――いや、あなたじゃだめだ。あなたの言うことは信用しません。うそばっかり言っておる。委員長、きょうは総理に聞きます。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和三十五年二月二十二日の衆議院予算委員会におけるあなたの質問に対し、赤城元防衛庁長官が「総額から七千五百万ドルを引いたその残り日本で負担するものでありますし、それを国庫債務負担行為として要求した」こう答弁しておるのであります。これは藤枝長官答弁趣旨は同じでございます。その直後、ただいま御指摘のあった七千五百万ドルが金で日本の方へよこすことになっているとの赤城長官答弁があったのであります。しかし、これは前述の赤城元長官答弁と矛盾するように思えますが、その後一カ月たった昭和三十五年三月二十三日の参議院予算委員会第二分科会における佐多議員赤城元長官との間の質疑におきまして、本委会における藤枝長、百の答弁と同じ趣旨答弁がなされておることは御承知と思います。従って、当時におきましても、七千五百万ドルが日本政府に金で支払われるものではないことは明らかなようであります。従って、七千五百万ドルの支払われ方は、先般藤枝防衛庁長官が申したように、エンジン等につきましては米国政府が調達して日本政府に供与して、残余の分については日本政府契約業者たる新三菱重工米国納入業者であるロッキードとの契約に基づいて、米国政府からロッキード会社に支払われるものであるのであります。これが正確なところであります。
  7. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ちっとも正確ではありません。私はこの前から当委員会でしばしば言っておりますのは、昭和三十五年の二月二十二日、予算委員会会議録第十四号七ページです。これは今総理答弁されたようなあいまいな表現ではございません。「七千五百万ドルというのは、アメリカ政府ロッキード支社に払うのですか、あるいは日本の方へよこすのですか、どっちです。」私はこれだけしか聞いていない。これに対して、赤城長官は「その七千五百万ドルは金で日本の方へよこす、こういうことになっております。」これだけの問答です。総理が今私に言ったような、何かを差っ引いて払うんだというような答弁がありましたら、その資料を的確にお示し下さい。参議院の方で取り消したというならば、参議院速記録をお出し下さい。来るまで待ちます。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点は、七千五百万ドルの金が日本にくるか、こないかという御直間でございましょう。それは、日本には参りません。もし赤城君が日本にくるというふうに答えたならば、その答えは間違いでございます。
  9. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この予算委員会で、現職の防衛庁長官が、二百七十億円という金の経理の点について、日本へくるか、アメリカロッキード社に払うか、この重要な点で間違った答弁をして、そのまま今日まで持ち越されているということは、容易ならないことです。この答弁は一体どうなります。今になって間違いであると言っても私は承認できない。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、七千五百万ドルを差し引いた額が債務負担行為として御審議願うことになっておると前にも言っておるのであります。そして途中で、あなたの質問について、七千五百万ドルがこっちへくるんだという間違った答弁をしておりますが、今、調べによりますと、その直後、一カ月後において、参議院におきましては、やはりそれを取り消して七千五百万ドルは日本にこないんだということを佐多議長との間に答弁しておると私は聞いておるのであります。従いまして、経過の途中において思い違いのことがございましても、その前後から考えて、取り消しております。また、今はっきり防衛庁長官が答えておるのでありますから、御了承願いたいと思います。
  11. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは委員長にお願いいたしたいのですが、きのうも小坂外務大臣の当委員会における答弁と、外務委員会における答弁との食い違いについて、野原委員からだいぶ質疑応答があったようでございますが、どうも一つ委員会答弁しておいて、別なところに行って勝手にこれを取り消す、これじゃとても国会論議は進まないのです。取り消しておる事実があるならば、これは委員長からお計らい下さいまして、参議院なりの速記録のその部分をお取り寄せ願いたいと思います。
  12. 山村新治郎

    山村委員長 淡谷君に申し上げますが、昨日の外務大臣発言につきましては、当委員会におきまして、場合によりましては補足説明あるいは取り消してもよろしいという旨の外務大臣の言明がございました。従って、この点はすでに解決がされております。なお赤城防衛庁長官藤枝防衛庁長官との言葉行き違いにつきまして、この前、あなたの御質問がございましたが、それに対して、はっきり政府は、要するにその当時の赤城長官説明が間違っておったのじゃないかという御説明でございます。しかもそのとき淡谷さんの御要求は、要するに現総理として、どちらの言葉が正しいんだかそれを確めればよろしいんだ、場合によっては一分間でよろしいんだというようなあなたの御発言でございます。従いまして、その御趣旨によりまして、私どもは特に十分間を許したわけでございまして、内閣総理大臣からはっきりと、藤枝防衛庁長官言葉が正しいんだという確認があったわけでありますから、この点であなたの御要求は足りたものと私は考える次第でございます。
  13. 淡谷悠藏

    淡谷委員 せっかくの委員長お話でございますが、これは重大な問題の間違った答弁がある。しかもその六百九十八億の取りくずしが実際に始まっております今日、間違っておりましただけじゃどうも予算審議が進まないと思う。特にこういうことが軽々しく見のがされておりますと、今度はどこの委員会でも、答弁しておいてはすぐ取り消す、こんな形が起ってしまう。私は赤城元防衛長官藤枝長官との間の話の行き違いならばまだ恕しますけれども、同じ長官が、ある場合には、日本へ金でくるんだ、一カ月たつと、これはそうじゃない。同一人がこれを取り消すようでは、これは国会審議なんかちっとも権威ありはしません。国会論議というものは、自分の言葉責任を持たなければいけない。答弁責任を持たないで、国会論議は進みはしません。それを軽々しく許しておくならば、今後もこのようなことがしょっちゅう起こります。現に起こっておる。それは藤枝長官の食言であります。あなたはこの前に、七千五百万ドルの詳しい内容を提示しますと答えておきながら、翌日は提示しないと言っている。あなた自身が非常に国会答弁を軽んじておる。これは一体どうします。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 七千五百万ドルの詳細について提出せよという御要求でございました。その際、私は、七千五百万ドルにつきましては米国政府予算執行でございますので、アメリカ側と十分打ち合わせをしなければ御発表できない。しかし御要求であるから、できるだけ御審議に役立つような資料が提出できるように、アメリカ政府打ち合わせをして努力をすると申し上げたつもりでございます。そしてその結果、御発表いたした程度のことは発表できるということになりまして、資料を差ししげた次第でございます。
  15. 山村新治郎

    山村委員長 淡谷君、参考に申しますが、時間が超過いたしましたから、お含みおき願います。
  16. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、山村委員長にはっきりお知りを願わなければならない事態なんです。あなたは今、藤枝長官がそういうことを言ったと申しますけれども、そのあとで、私といろいろ問答があった末に、二百七十億円というこのアメリカ分担金が明瞭にならないと、日本側予算さえ審議ができないから出せと、重ねて私は迫った。そうしたら、どうも山村委員長は、これは前の赤城さんのようなあやまちがあっては困るから、一つ政府委員から答弁を聞いてはどうかと言う。私は、これはやっぱり責任上、藤枝長官にお答え願いたいと思った。そこへ出てきましたのが、山村委員長の御配慮によりまして、今病気でお休みになっているそうで残念でございますが、久保装備局長、この人は、はっきり出しますと言っているのですよ。あなたのような答弁はしていない。そして翌日になるというと、あなたはまたアメリカの方の予算執行だから、アメリカの方の許可を得なければ出せないと言っている。あなたはアメリカのどこと交渉されたのです。
  17. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは在日の米軍米顧問団交渉をいたしたのでございます。
  18. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外務大臣は、一切のこまかしいこの問題に対する外交交渉防衛庁に一任したと言っている。防衛庁は、それじゃこれに関しましては、軍事顧問団としか交渉してないのですね。アメリカ軍事顧問団というのは、一切の外交交渉に先んじて万事それできめられると、こういうあなたの御見解ですか。
  19. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 米国内部のことでございますが、私の理解するところによりますれば、米軍事顧問団は、米国政府の意向を確かめた上で私の方に返答したものと心得ております。
  20. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは大へん重大な点なので、一つもう少し聞かしていただきたいのですが、その次は、すぐにまたあなたの方では出しますと言っておる、できるだけ努力をして御満足のいくような資料は出しますと言っておる。出してこないじゃないですか。山村委員長はこれに対して、審議に間に合うようにお出しを願いますという注意をしておる。これを出しましたか。
  21. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国会の御要求でございますので、一切を発表しないようにという要請はございましたけれども、国会の御要求もありますので、できるだけ、その中でできるものは発表できるような交渉をいたしまして、お示しをいたしたような資料を出したわけでございます。
  22. 淡谷悠藏

    淡谷委員 確かにこの資料はいただきました。いただきましたが、分科会の最終の口の午後です。しかも、内容に至っては、ほとんどそれまでの質疑応答によって明らかになった航空機の単価を集計したものにすぎない。これで見ますと、アメリカで作るJ三機というものは、今までの価格のうちで最高価格ですよ。百五十万四千二百ドル、五億五千万円、まさに史上最高のこれはロッキード価格です。そうしてアメリカの方にしわ寄せをしておいて、そのさやをもって日本側の方の飛行機の値段を何とか安くしたような格好に見せるのがこのからくりです。私はこんな――委員長資料を出すといって、審議に間に合わないような資料を、しかも申しわけ的に出すような資料じゃ、とても審議が進まない。できません。こんな無責任なことじゃ審議は進むものじゃない。内容がさらにわからない。もっと詳しいものを出しなさい。こんなことでは審議はできません。   〔発言する者あり〕
  23. 山村新治郎

    山村委員長 淡谷君、それだけですか。――淡谷君に申し上げます。   〔発言する者あり〕
  24. 山村新治郎

    山村委員長 静粛に願います。淡谷君に申し上げます。淡谷君も理事でございまするから、時間をお守り願うことと、理事会の話し合いは、あなたが総理確認を求めるということだけがあなたの発言内容でございます。ところが、もうすでに総理確認はされておるのでございます。その他の問題は、どうか内閣委員会その他においてやっていただきたいと思います。(発言する者あり)理事会約束が違います、そういうことは。はっきり理事会約束です。――だめです。すでに時間が経過いたしました。そういうことを言ったら切りがありません。公衆の面前の理事会約束です。もし御質問があれば内閣委員会でやって下さい。  次に、横路節雄君に発言を許します。横路節雄君。   〔発言する者多く、退場する者あり〕
  25. 山村新治郎

    山村委員長 どうぞ社会党を呼んできて下さい。――理事の諸君、お集まりを願います。――それでは議事を続いて進めます。  淡谷悠蔵君。
  26. 淡谷悠藏

    淡谷委員 責任ある閣僚が各委員会でいろいろ思い違いやら行き違いを来たすような発言をしておることは、これはもう最近ひどい傾向になっております。こういうことは、国会審議上はなはだおもしろくないだけじゃなくて、国会の権威を落とすものであると思う。これに対して総理はどう考えられますか。どう対処されますか。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、今後は食い違いのないように十分注意していきたいと思います。
  28. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さらに藤枝長官にお聞きいたしますが、あなたがアメリカにいろいろ責任をなすりつけまして出されない七千五百万ドルの内容は、すでにロッキード礼と新三菱との間に契約書ができている額なんであります。一民間会社にわかっておることが国会に出せないはずがない。これは日本予算にも重大な影響がありますから、この審議中、横路委員総括質問をしている間に、十分先方ともかけ合って、この資料はぜひ御提出して下さいますように要求して、私は質問を終わります。
  29. 山村新治郎

    山村委員長 次に、横路節雄君に質問を許します。横路節雄君。
  30. 横路節雄

    横路委員 私は日本社会党を代表しまして、昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算、同じく昭和三十七年度政府関係機関予算に対しまして、総括質問をいたしたいと思います。  最初に池田総理お尋ねをしますが、けさNHKテレビでは、AP発としまして、ホワイト・ハウスでは、ケネディ大統領は、アメリカ時間で二日の夜、日本時間で三日、明日の午前九時、大気圏内での核爆発実験を行なう、それについてテレビ放送を行なう。ところが、大気圏内での実験に先立って、国内での再開に先立って、ライシャワー日大使を通じて池田総理通告をしたといわれている。このことは、去る昨年六月の池田ケネディ会談のときに、大気圏内の核爆発実験をやる際には、事前日本政府通告をする、こういうことが、池田ケネディ会談で言われている。けさNHKテレビ放送はそういうように報じているわけです。そこで、予算質問に先立って、この点について池田総理お尋ねをしたいと思います。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年六月、ケネディ大統領と私との間におきましては、核実験の問題が話題に上りました。しかし、そのときの約束は、今後国際関係に重要な問題につきましては、事前打ち合わせしようという口約束をいたしておるのでございます。核実験についてという限定はございません。ただいまの御質問、そういう大気圏内における核爆発のことにつきまして私に事前に話があったかどうかという御質問につきましては、外交上の機密の問題でございますので、ここでお答え申し上げるわけに参りません。
  32. 横路節雄

    横路委員 今、総理大臣の御答弁としては、外交しの機密だから言われない。しかし、きょうのAP発NHKテレビは、全国民に対して、ケネディ大統領が、アメリカ時間で二日夜、日本時間で三日の午前九時に大気圏内の核爆発実験をやる、その点については、去年六月の池田ケネディ会談申し合わせによって、ライシャワー大使を通じて通告をしてきたという、この点は事実ですかと、こう聞いているのに、あなたは外交上の機密だから答弁できないということは、国民全般は、それでは池田内閣アメリカ大気圏内の核爆発実験については了解を与えたのだ、こういうように了解しますよ。どうしてこういうことが答弁できないのです。それがあなた一体秘密外交じゃありませんか。これはなぜもっとはっきりしないのです。これはぜひはっきりしてもらいたい。けさNHKテレビ放送は、全国民に対してやっているのです。今あなたが言えないということは、それはあったということと同じになる。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年六月のときに話題に上りました核爆発は、大気圏内におけると、地下実験であろうと、絶対に反対であるということは、はっきり申しておるのであります。今、そういう事実があったかないかということにつきまして、昨年のその会談についての私の意見は、今もなお変更はございません。そうして事前日本にそういう通知があったかないかということは、先ほど申し上げましたように、私は今言うわけには参りません。
  34. 横路節雄

    横路委員 それは先ほどの私の言い分の中で、アメリカ時間で二日の夜、日本時間で三日の午前九時に、ケネディ大統領テレビを通じてアメリカ国民に対して大気圏内の核爆発実験をすることを明らかにする。そこで、池田ケネディ会談約束に従って、あなたにライシャワー大使を通じて通告をしてきたといわれる。そういうものがないならないとここで言ったらいいじゃないですか。あなたは、大気圏内の核爆発実験にしろ、地下核爆発実験にしろ、反対なら、私はライシャワー大使から言われたが、絶対におれは反対だ、こういうふうに言ってやったら、言ってやったとここで答弁されたらどうですか。答弁できないというのは一体どういうことなんです。こういうことでは審議できませんよ。これはどうですか。これから私は、タイ特別円やガリオア・エロア一切あげて、外交問題に関係して予算に関連のあるものをお尋ねするのだが、こういうあなたの秘密外交のやり方で一体審議が進みますか。国民は、あなたの今の答弁で、ああ池田さんはケネディに何とかかんとか言っておだて上げられたけれども、やはりあなたはこの核爆発実験については賛成したんだな、こう受け取りますよ。そういう印象を与えるのがいやだったら、はっきり答弁したらどうですか。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、昨年の六月にも私の意見ははっきり言っております。今もその意見は変わりません。ただ、御質問の、ライシャワー大使を通じてきたかどうか、外交文書が私のところへきたかどうかということにつきましては、私は今申し上げられません。国民は私は了解をして下さると思います。
  36. 横路節雄

    横路委員 ライシャワー大使からあなたに通告があった、APではそういって、NHKではそれを全国に放送しているというのだが、言えないというのはどういうのです。あったらあったと言われたらどうですか。それが国民に事態の真相を知らせることになるではありませんか。重ねてお尋ねします。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、その事実をはっきりここで言うことはよくないと思います。
  38. 横路節雄

    横路委員 池田総理、あなたのそういうやり方は、よく吉田さんが国会で非難されて、国民に非難されて、吉田内閣の外交秘密外交だ、こういって、吉田内閣がついに内閣をほうり出すようになった。それじゃあなたは同じ二の舞を踏みますよ。なぜ一体国会審議を通じてこういうことが明らかにされないのです。どうしても言えないのですか。こういう重大な問題をあなたは一体言えないということはないじゃありませんか。あったらあったという事実だけここで言われたらどうですか。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう問題につきましては、いずれ国会で御審議願うことになると思います。ただ、私は今はそのことにつきましてイエスともノーとも言えません。
  40. 横路節雄

    横路委員 委員長、いずれ国会審議を通じてとは何です。私はこの予算委員会総括質問を党代表でやっているのですよ。いずれ国会審議を通じてとは一体何です。そういうものの言い方がありますか。これが国会審議ではないのですか。委員長、これは一体何です。いやしくも私は社会党を代表してきょうは総括質問をしているのに、いずれ他の機会を通じて国会審議――これは国会審議ではないのですか。一体これはどういうのです。委員長から注意して下さい。   〔発言する者多し〕
  41. 山村新治郎

    山村委員長 質問を続けて下さい。
  42. 横路節雄

    横路委員 注意をして下さい。委員長、注意をして下さい。そういうやり方はないです。委員長から総理大臣に注意をして下さい。これは国会審議じゃないのですか。
  43. 山村新治郎

    山村委員長 質問を続けて下さい。
  44. 横路節雄

    横路委員 委員長から総理に注意をして下さいよ。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 私はこの問題について、テレビでどう出ているか存じておりません。しかし、ケネディ大統領と私との関係につきましては、私は今ここで申し上げるわけにいきません。いろいろな通信がありましても、申し上げるわけにいきません。
  46. 横路節雄

    横路委員 私は総理並びに各閣僚に申し上げたいのですが、これから私はいろいろお尋ねをします。ところが、皆さんが困ってくると、これは外交上の機密だから言えない。それじゃ一体どこで言うのです。どうしても言えないならば、秘密会でやったらどうですか。国会には前にそういう例がないわけではないのです。それならば秘密会でやったらどうですか。われわれ国会に対して、一体こういう重大な問題についてこれが言えないというのはどういうのです。しかも、言葉を間違えて――間違えたのだろうと思うが、国会審議であらためてやるなんということは一体何です。こういう池田さんのやり方は、吉田さんの最後の段階とだんだん似てきていますよ。この問題については、この私の質問の時間中にあらためてお尋ねをします。それまでよく考えておいて下さい。今私にとっさに聞かれたので、ちょっと戸惑ったのかもしれませんから……。  それでは、これは大蔵大臣でございますが、今までこの敗戦に伴うわが国の賠償、それから賠償の総額はどうなっているのか、それが今までどういうように、どれだけ返してどれだけ残っているのか、それから債務についてはどうなっているのか、経済協力については一体どういうようになっているのか、それをまとめて――一つずつお尋ねをしたいのですが、他に詳細にお尋ねをしたい点もございますから、あなたの方から、あらかじめ資料要求してあったのですから、一つ発表していただきたいと思います。
  47. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まず賠償を申し上げますと、ビルマに対しては、協定総額七百二十億円、三十六年度末までの一応の支払い見込み額を申しますと、そのうちで五百四億円、差引未済額が二百十六億円、それからフィリピンにおきましては、協定総額が千九百八十億円、支払い見込み額が五百十億円、差引未済額千四百七十億円、インドネシアが総額八百三億円、支払い見込み領が二百八十八億円、差引未済額が五百十五億円、ベトナム、協定総額百四十億円、三十六年度末の支払い見込み額八十四億円、差引未済額五十六億円、協定総額は全部で三千六百四十三億円、そのうちで支払い見込み額が千三百八十六億円となりますので、差引未済額が二千二百五十七億円、そのほかに、これは賠償ではございませんが、経済技術援助、無償で援助をするという協定になっておりますのが、ラオスが十億円、カンボジアが十五億円、総計二十五億円、一応三十六年度末までにはこれを支払うという義務上の見込み額を計上しますと、差引はゼロということになります。これらを入れますと、賠償と経済技術援助の合計が総額三千六百六十八億円、支払い見込み額が千四百十一億円、差引未済額が二千二百五十七億円であります。
  48. 横路節雄

    横路委員 次にお尋ねをしたいのは、昭和三十七年度の賠償等特殊債務処理特別会計の内訳、この予算に二百七十二億五百万円を組んでございますが、その内訳についてちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 内訳を申しますと、ビルマ賠償費が七十二億円、フィリピン賠償費が九十億円、インドネシア賠償費が七十二億円、ベトナム賠償費が二十八億五百万円、タイ特別円処理費十億円で、特別会計の歳入としましては、一般会計の受け入れと前年度剰余金とがございます。
  50. 横路節雄

    横路委員 今大蔵大臣から数字の御説明がございましたが、昭和三十七年度の賠償等特殊債務処理特別会計の内訳に、タイの特別円処理が十億ございますので、この問題について池田総理お尋ねをしたいと思うのです。  池田総理お尋ねしますが、タイ特別円協定で九十六億円を支払うことにいたしてありますが、これは債務なんですか、どうなんですか。もちろん、国会で協定に関してこれが承認されれば、当然これは債務になるわけですが、一体三十年協定のときの九十六億円というのは、債務だったのですか、債務でなかったのですか、これはどちらなんです。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 あの協定第二条によりまして、日本政府は九十六億円に相当する資本あるいは役務を供給する、こういうことになっておるのであります。従いまして、日本といたしましては、資本並びに役務を供給する義務があることになっておるのであります。そしてそのやり方につきましては、四条で、合同委員会できめる、こう相なっております。
  52. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、あなたの本予算委員会での私たちの党の辻原委員に対する御答弁を速記で見ますと、あなたは、九十六億円は債務なんだ、だから支払うのは当然なんだ、こういうことを言っているんですが、その点は辻原委員に対する答弁は間違っていたわけですか。九十六億円は当時から債務なんだ、だから払うのは当然でございませんかということをあなたは言っているが、その点、辻原委員に対する答弁が間違っているならば、私の思い違いでしたと、こういうように言っていただきたい。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、第二条によりまして、日本政府は九十六億円に相当する資本並びに役務を供給することに相なっております。だから、私はそういう義務があると考えております。
  54. 横路節雄

    横路委員 いやいや、そのときに辻原委員に対するあなたの答弁は、九十六億円というのは日本の債務なんだ、だから支払うのは当然だ、こう言っているんだが、今でもその考えに間違いございませんかと聞いておる。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど答弁した通りでございます。
  56. 横路節雄

    横路委員 もう一度言って下さい。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございます。
  58. 横路節雄

    横路委員 その通りですということは、当時から債務だと考えたわけですか。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 第二条の規定によりまして、日本がそういう義務を負うておる、こういう意味でございます。
  60. 横路節雄

    横路委員 じゃ、もう一ぺん言う。債務か債務でないか、聞いているのです。あなたの答弁を読んでみます。これを考えたとき、この債務というものは二十年前の債務だ、だから二十年前、十五年前の債務ならば、払ってくれというのが当然だから、私は払うのだ、こう言っている。九十六億円の二十年前の債務、それを考えたときに、一ぺんに払うというのはやめて、そして八年間で払うことにしたんだ、こう言っている。あなたはそう答弁していますよ。あなたは妙なことを答弁しているなと思うから、私が聞いているのです。これは、九十六億円は当時としては債務でないんだ、これは違いますというならば、そういうふうに言ってもらいたい。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 当時という言葉の、当時がわからないのですが……。
  62. 横路節雄

    横路委員 協定の当時です。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 十五億の特別円というものは、日本は支払う義務がございます。しこうして、その支払い方につきまして、五十四億円は現金で払う、そして九十六億円は、ただいま申し上げましたような条件によって日本が役務あるいは信用を供与する、こういうことに相なっておるのであります。これは債務であるか、日本の義務であるか、これは普通お考えになりますように、日本はそういう役務を供給する義務がある、こう考えます。
  64. 横路節雄

    横路委員 それは債務ではないのでしょう。債務ならば無償で払うのでしょう。今度あなたの方では、九十六億円については債務としてそれを八年間で払うことにしたんだ。私が聞いているのは、三十年協定のときに、三十年協定についてあなたは九十六億円を債務であると考えているのか、こう聞いているんですよ。そう考えてないなら、ないと言って下さい。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 あの第二条の規定によって、われわれはそういう義務があると考えておるのであります。これを債務ということでなしに、あの二条の規定によって供給の義務があると私は考えております。
  66. 横路節雄

    横路委員 あなたは言葉の使い方が非常にあいまいだから、言っているのです。この二条には、「九十六億円を限度額とする投資及びクレディットの形式で、日本国の資本財及び日本人の役務をタイに供給することに同意する」とある。これは債務ではないですよ。この三十年の協定の第二条にいう九十六億円は債務なのかどうなのかということを聞いているのです。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 これはいわゆる金銭債務ではございません。供給する義務がある、こういう意味であります。供給すると約束しておるのであります。
  68. 横路節雄

    横路委員 しかし、これは有償で貸すのでしょう。有償で貸すのだから、あとでお返ししてもらうのでしょう。これは債務ではないじゃないですか。それは違いますよ。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 供給することにしておりますから、供給の義務がございます。しこうして、その供給の仕方につきましては、第四条によってきめることに相なっておるのであります。
  70. 横路節雄

    横路委員 しかし、第二条は有償でしょう。どうなんです。あとでお返ししてもらうのでしょう。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 投資またはクレジットの格好でいっておるのであります。いわゆる金銭債務とは私は考えておりません。供給する義務がある。しかし、供給した場合の元本につきましては、われわれはこれを返してもらう、こう考えておるのであります。
  72. 横路節雄

    横路委員 池田さんの今の答弁は、辻原委員に対する答弁とは違うんですよ。あなたは文章を読んでみたらいい。あなたはあちらこちらで都合のいい答弁をしている。  外務大臣お尋ねしますが、このタイ特別円は、本来からいえば支払うべきものではなかったのではないですか。本来からいえば、タイ特別円というのは、日本としては支払うべきものではなかった、それを三十年協定で支払うことにしたんだが、しかし、本来からいえば、タイ特別円というのは支払うべきものではなかったのでしょう。この点は、外務大臣、どうなんです。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先方は百五十億円ということをどうしてもおりない、こちらはいろいろ考えた末、五十四億円は現金で払う、あとの九十六億円は、総理が言われたように、投資または信用の形式において供給する、こういうことを約束しておるわけでございまして、そういうことを供給する義務を負うておる、こういうことだと思います。
  74. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、昭和二十年の九月十一日に、タイは日本政府に対してこういう通告をしてきたでしょう。「タイは、同盟条約及びそれに連なる一切の条約及び協定は、特別円決済に関する両国大蔵省間協定、覚書をも含め、終止したものとみなす」、この通牒の来ていることは御存じでしょう。外務大臣、これは知っていますか。昭和二十年九月の十一日に、こういう一切の日タイの軍事同盟並びに特別円協定に関しては、全部これは廃棄だ、こういう終止に関する通告をしてきたじゃありませんか。どうですか、これは外務大臣
  75. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 タイが日本との同盟関係を打ち切ったという通告をして連合国側に立つ、こういう声明をしたことは、その通りでございます。
  76. 横路節雄

    横路委員 その声明は、日本政府には通告しなかったのですか、これは外務大臣どうですか。
  77. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今その書類を手元に持っておりませんから、条約局長からお答えいたします。
  78. 中川融

    ○中川政府委員 ただいまのお尋ねは、終戦直後に、タイが日タイ同盟条約及びそれに付属する協定を廃棄してきたかどうかということでございますが、これは終戦直後に廃棄いたしまして、その旨日本通告いたしてきております。
  79. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたは自分で御存じではなかったようだ。これはあなたの方では、日タイの特例円に関する交渉の中で、今私が取り上げた、昭和二十年九月十一日に、日本政府に対して、「タイは、同盟条約及びそれに連なる一切の条約及び協定は、特別円決済に関する両国大蔵省間協定、覚書をも含め、終止したものとみなす」、こうなっているじゃないですか。初め外務省は、だから特別円協定に関しては御破算だ、払う必要がないというのが、あなたたちの立場じゃありませんか。初めから外務省はそうだったんでしょう。どうなんです、小坂外務大臣外交交渉だから、外務大臣、あなたですよ。だめですよ、そういうことがわからぬでは。外務大臣――外務大臣だ。
  80. 山村新治郎

    山村委員長 条約局長が先にお答えいたします。
  81. 中川融

    ○中川政府委員 これは、日タイ同盟条約及びそれに付属するもろもろの協定を廃棄してきております。従って、昭和三十年当時に日タイ間で交渉が行なわれました際には、もとになる戦争中のいわゆる特別円勘定というものを設置いたしました協定は廃棄されておるということをこちらは主張したのでありまして、廃棄しておるから、その中の条項、たとえばいわゆる金約款というものはタイ側は主張し得ない、こういうことを主張したのでございます。
  82. 横路節雄

    横路委員 今の条約局長の話、よくわかる。どういうようにわかるかというと、日本政府としては、昭和二十年九月の十一日に、日本政府に対してタイの政府から、「タイは、同盟条約及びそれに連なる一切の条約及び協定は、特別円決済に関する両国大蔵省間協定、覚書をも含め、終止したものとみなす」、だから金約款はだめだ、こう言っている。あなたが言う五十四億円のうちのほとんどは金約款ではないですか。大蔵省は初めから、これは支払うべきものではないという立場に立っている。外務大臣、そうでしょう。あなた、もう一ぺん確認して下さい。知らなければ知らないでもいい。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 金約款のままに用いますれば、千二百五十億円になる。そこで、いろいろ交渉した結果、五百四十億円までおりてきて、さらにそれが百五十億円までおりてきたというのが、今お話しのような事情によるこちらの主張というものを先方がのんだ結果であると思います。
  84. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたはよくこの三十年協定の内容は御存じないのですね。金約款というのは、それをいうのではないのですよ。金約款というのは、この三十年協定の第三条の第二項に、「タイ外務大臣にあてたタイ駐在日本国大使の次の書簡に基いて日本政府がタイ政府に売却すべきであった金のうちまだ売却されていない分に対する請求権」、(a)、(b)、(c)と三つがある。この三つについては、あなたの方で私に出してきたじゃありませんか。(a)の一九四四年四月七日付の書簡において五千万円(b)の一九四五年一月十八日付の書簡において二百万円、(c)の一九四五年七月三日付の書簡において二千万円、それぞれ相当額の金をタイに売却することが約束されているが、ただし、円については云々となって、その点は四千四百万になっているじゃないですか。あなたの言う、いわゆる金約款について何千億だか要求してきたというのは間違いだ。何を言っているのです。委員長、これは困ったものですね。一体、今度の九十六億は、三十年協定がもとになっての九十六億円なんだ。それについて私の方でお尋ねしておるのに、外務大臣は、今回の九十六億円の支払いのもとになる三十年協定については全然御存じないようなんです。こういうことではなかなか審議ができませんよ。もう少し勉強してもらわなければ困る。  それでは、次にもう一つ委員長に協力して審議を進めるという……。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今三十年協定のことについてお話がございました。三十年協定というものは、そうした上に立ってできたものでございます。それは否定なさるのでございますか。私どもの言っておりますのは、三十年協定の経緯をお聞きになりますから申し上げたのでございまして、三十年協定というものは、わが国が国会の批准を得て、そうした諸般の事情を考慮されてできたものでございます。それについて、それが動かないから、どうしようというのが今度の協定でございます。
  86. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私は三十年協定についてまずお尋ねをしておるわけです。だから、三十年協定に至る経緯というものは当然聞かなければならぬ。私が三十年協定について聞いて何が悪いのです。今あなたの答弁は、三十年協定は国会の承認を得たからどうとかなんという話をしておる。  そこで、私は次の問題についてあなたにお尋ねをしたい。外務大臣昭和二十年の九月十一日に、いわゆる同盟条約は廃棄通告をされた。そうすると、条約の廃棄通告をされた場合には、敗戦国同士のこの条約についての廃棄通告に伴って、いわゆる請求権はお互いに消滅している、そうでしょう、この点はどうなんですか、外務大臣
  87. 中川融

    ○中川政府委員 法律問題でございますので、私からお答えさしていただきますが、廃棄通告はしてきております。従って、日タイ同盟関係及び同盟条約に基づくいろいろの協定等、これの効力がなくなったわけでございますが、しかし、それだからといって、日タイ間のあらゆる債権、債務が全部棒引きになったかというと、そうはやはり解釈されないのでございまして、それに影響されない限度においては、やはり債権、債務というものは残る、かように考えなければいけないと思います。
  88. 横路節雄

    横路委員 あなたは先ほど私に、外務省としては、タイの条約の廃棄通告に伴って、特別円に関する両国の大蔵省間の協定、覚書を含めて終止通告をしてきたから、この点については外務省はそういうふうに了解してやりましたと答弁したじゃありませんか。今私に答弁したでしょう。
  89. 中川融

    ○中川政府委員 ただいまお尋ねが、日タイ同盟条約及びそれに関連する諸協定が廃棄されたために、日タイ間のあらゆる債権、債務といいますか、請求権は、全部帳消しになったと申しますか、すでになくなったというお尋ねでありましたので、必ずしもそう言えないと申し上げたのでありますが、結局、廃棄されました協定に直接基づく請求権というものは、これはなくなるであろうということは当然想像されるわけでございます。しかしながら、日本銀行の帳じりに十五億円というものが残っておるわけでございます。これは厳として帳簿にタイ側の権利として残っておるわけでございます。従って、この十五億円というものをどう計算して、どう返すかというのが、日タイ間のこの問題の一番出発点になるわけでございます。それに対して、いわゆる戦争中の協定にありましたような金一グラム四円八十銭の割で金で返すことができるというこの金約款は、なるほど消滅しております。しかし、日本銀行の帳じりに残っております十五億円というものは依然としてはっきりあるわけでございます。これをどう返すというのが、その当時日タイ間の交渉内容になったわけでございます。
  90. 横路節雄

    横路委員 わかりました。外務大臣、おわかりですか。あなたよくおわかりでないようだけれども、外務大臣、いいですか、今中川条約局長答弁は、いわゆる日タイの軍事同盟が廃止された、それに伴って両国大蔵省間の協定、そう考えています。だが、今の答弁は、日本銀行とタイ大蔵省間の協定のみには効力があるという、そういう回答だ。両国政府間の協定は一切御破算だ、しかし、日本銀行とタイの大蔵省間協定のものだけは効力があるというように政府は考えた。それならば、第三条の第一項は、「昭和十七年六月十八日に東京で署名された特別円決済に関する日本銀行とタイ大蔵省との間の協定及び昭和十八年三月十九日にバンコックで署名されたタイ国庫特別円勘定に関する日本銀行とタイ大蔵者及びタイ銀行との間の協定に基いて日本銀行に設けられたタイ銀行特別円勘定に関する請求権」、これだけが有効であって、この第三条の第二項や策三項は、今の中川条約局長答弁からすれば、これは無効なんだ。そうじゃありませんか。今の条約局長答弁は、外務大臣わかりますか。大蔵省間の協定は、政府協定だから、これは廃棄だ、しかし、日本日本銀行とタイ大蔵借間の協定だけは生きておる。日本銀行の残高は生きておるというならば、三十年協定の第三条の第一項だけが有効であって、第二項と筋三項は、これは有効でないのですよ。外務大臣答弁して下さいよ。
  91. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 昭和十七年六月のもの、また、日本政府がタイ政府に売却することを約束した金のうちまだ売却されていない分、金の未引き渡しに関する請求権、これらの問題でございますが、これは条約関係でございますから、条約局長から……。   〔発言する者多し〕
  92. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣が事務当局から答弁をさせるという発言がありましたから……。
  93. 横路節雄

    横路委員 委員長、ちょっと待って下さい。私が聞くんです。――委員長に私は御了解をいただきたいのですが、この九十六億の問題は、三十年協定にさかのぼらなければわからないので、この問題は私は外務大臣に聞いておるのに、何が事務なんです。条約のこういう大事な、しかも国の金をもって支出すべきものを、これを私はわからぬから条約局長答弁なんというのは、分科会でやっておるのです。だから、きょうは各大臣出てきてもらっておるということは、政治的な論議もあるのだから、できるだけ外務大臣一つ答弁してもらわなければ困る。
  94. 山村新治郎

    山村委員長 ですから、外務大臣答弁させたわけでございます。委員長に説教されても困ります。
  95. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 第三条の二項に関するもの、この(a)、(b)、(c)ございますが、これらは別に商業ベースでそうした契約を結んでおる、それが売却すべきであった金のうち、まだ売却されていない分がある。それに対する請求権ということを言っておるわけでございます。
  96. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、今のその答弁でいいですか。それじゃ、今の答弁で私はあなたにお尋ねをしますが、今の中川条約局長答弁が正しいのですよ。政府間の協定は一切破棄した。だから大蔵省間の協定については廃棄されたと思う。大蔵省間の協定が廃棄されたのであるならば、今あなたの答弁されたのを聞く前に、あなたの方ではこういうように言っているじゃないですか。あなたの外務省ではこういう見解でやっているじゃありませんか。敗戦国同士間における条約、協定――戦いに敗れて、連合国に対しては敗戦国になった、この敗戦国に対しては、お互いの請求権は消滅をした。外務省の発表されている文書によると、こう言っているのですよ。第一次大戦の結果できた各平和条約においては、敗戦国相互間の請求権は戦勝国に譲渡されており、戦敗国同士の間ではかかる請求権を行使しないことになっていた。第二次大戦後のイタリー、ブルガリア、ハンガリー及びルーマニアに対する平和条約においては、これらの敗戦国はドイツに対する請求権を一方的に放棄している。さらに、サンフランシスコ平和条約においては、日本は相互放棄を条件としてドイツに対する請求権を放棄した――外務大臣、いいですか。これは外務省の見解を言っているのですよ。外務省で出された文書に基づいて私は言っている。この点はどうなんですか。敗戦国同士の条約が廃棄された、連合国に対しては敗戦国である、そういうものに対する請求権はないんだ、この点についてはあなたはどう思いますか。これは条約局長じゃないですよ。外務大臣ですからね、あなたの答弁はどうです。外務大臣答弁しなさい。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 条約局長をして御答弁させます。
  98. 横路節雄

    横路委員 そういうやり方ではだめですよ。(発言する者多し)外務大臣、何一つ答弁ができないじゃないですか。もう少し打ち合わせをして下さいよ。外務大臣は全然答弁できないじゃないですか。委員長、これじゃだめですよ。こういうことについて答弁できないじゃないですか。委員長、これじゃだめですよ。
  99. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げますが、外務大臣責任において事務当局に答弁をさせるそうでございますから、どうかその点は御安心をして質問を続けていただきます。
  100. 横路節雄

    横路委員 安心じゃないですよ。総括質問ですからね。
  101. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣責任を持っております。どうか事務当局の答弁も聞いて下さい。――それでは、外務大臣答弁されます。
  102. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今の点は条約局長からお聞き取りをいただきたいと思ったのですけれども、お許しないようですが、要するに、今お読み上げになりましたような外務省の見解というものは、交渉に際していろいろわが方の主張を言ったわけであります。ところが、それは向こうの入れるところとならない。そこで、一般的にそういうことを主張いたしましても、それではその請求権はどうなるかという法律的なものは残っていない、こういうことでございます。従って、三十年協定そのものはその法律的な解決になる、こういうふうに考えざるを得ないわけでございます。
  103. 横路節雄

    横路委員 外務大臣に私がお尋ねをしているのは、三十年協定にそうならざるを得なかったというが、一体、敗戦国同士の条約が廃棄された、協定が廃棄された、外務省の見解としては、これはお互いに請求権は消滅したんだ、こういう点についてあなたはどう思うかと聞いているのです。あなたはどう思うかと聞いている。(「質問がはっきりしない」と呼び、その他発言する者あり)質問がはっきりしないのじゃない。外務大臣の見解を聞いている。
  104. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういう主張をいたしましたけれども、結論は、三十年協定においてタイに関する特別円の処理を認めた、こういうことであります。従って、それが今のわれわれの解釈になっておる。その根拠は、今申し上げた通りであります。
  105. 横路節雄

    横路委員 それでは、外務大臣は今私の主張に同意をしたわけですね。敗戦国同士間における条約や協定というものは廃棄されてきた、従って、敗戦国同士の請求権は消滅している、これが外務省の見解である、こうですね。(「そうはいかぬだろう」と呼ぶ君あり)いや、今そう答弁した。あなたは今そう答弁したでしょう。私の言うことに間違いないでしょう。外務大臣、どうなんです。今横路君の言うように考えておれも主張したが、しかし三十年の協定になった、外務省としてはそういう見解だとあなたは答弁したわけだ。間違いないでしょう。もう一ぺん、外務大臣
  106. 山村新治郎

    山村委員長 条約局長をして御答弁させます。
  107. 横路節雄

    横路委員 だめですよ、委員長。もう一ぺん統一見解をしてきなさいよ。それではだめですよ、委員長
  108. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げます。(発言する者多し)静粛に願います。横路君に申し上げます。前のいきさつでございますから、外務大臣よりもかえって事務当局の方が真相がわかるのでございます。従って、事務当局に答弁をさせますから、事務当局の答弁を全然聞かないという態度はおやめ願いたいと思うのです。
  109. 横路節雄

    横路委員 条約に関する解釈です。ちょっと委員長、休憩して下さい。
  110. 山村新治郎

    山村委員長 どんどん進めて下さい。
  111. 横路節雄

    横路委員 だめですよ。外務大臣答弁できないではだめですよ。そんな一々できないことで一体この審議が進められますか。
  112. 山村新治郎

    山村委員長 横路君、外務大臣が答えられますから……。
  113. 横路節雄

    横路委員 では、もう一ぺんだ。
  114. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いきさつを申し上げざるを得ないわけであります。われわれは今の時点で外務省を担当しておるわけであります。外務省としては、そういうことになるのではないかという議論をしたわけです。しかし、その議論がいれるところとならない。そこで、両方で合意したのは三十年協定になっている、こういうことでございます。
  115. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私はもう一ぺんはっきり聞いておきたい。そういうことになるのではないかという考え方でやった――何ですか、そういうことになるのではないかということは。一体、請求権は消滅している、外務省はそういう見解かと聞いている。それならそうだと答弁してくれればいい。一体どうなんです。私が聞いているのは、そういうことになるのではないかじゃないのです。
  116. 山村新治郎

    山村委員長 横路君にもう一ぺん申し上げますが、私は、あなたの質問をなるべくやりいいようにするために、事務当局に発言を許したわけでございます。
  117. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、もう一ぺん聞きますよ。そういうようになるのではないかではない。条約における請求権は消滅している、これが外務省の見解なら見解だと、そう言って下さい。もう一ぺん言って下さい。
  118. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ともに同盟国として戦って日本は負けた、こういうことなんであるから、お互いに請求権などということは言わないでいいじゃないか、そういうことは一応われわれの方としては言うべき主張だと思うのであります。それを主張した。ところが、先方はそれを了承しない。それで、合意した結果が三十年協定である、こういうことです。これにはプリンシプルとか、そういうものはそれぞれの考え方であって、われわれの理屈としては、理論的にはそうなるべきものではないということは、われわれもそう思う、そう言ったわけです。何も国際間の話し合いをいたします場合に、これが原則だからそれに従わねばならぬというようなものは、ああいう戦争というものの跡始末については、これは特に普遍的なものはないわけです。両国間で話し合ってまとまったものがその原則である、こう思わざるを得ないのであります。
  119. 横路節雄

    横路委員 私が聞いているのは、いわゆる戦敗国相互間における条約は廃棄された、しかし戦敗国同士間における、相互間における請求権は消滅しているというのが外務省の統一見解ですかと聞いておるのだ。違うなら違うと、どっちなのです。あなたさっきから、そうなるのではないかというのは、言葉としてはっきりしない。統一見解かと聞いているのです。
  120. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 結論がきまった場合に統一見解というものは出るのでございますが、われわれが交渉する際にはそういう主張をした、しかし先方は聞かなかった、そこで三十年協定ができた。統一見解と聞かれれば、三十年協定を作ったときの双方の合意が、これが外務省の統一見解だということだと思います。
  121. 横路節雄

    横路委員 外務省にもう一ぺん聞きますよ。そうすると外務省としては、戦敗国相互間の請求権は消滅している、こういう統一見解のもとに立って交渉した、こういう点ですか、そこだけはっきりしてもらいたい。
  122. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 消滅することにしてもいいではないか、そう思おうではないか、こういうことを主張したわけであります。しかしそれは、向こうはいやだとこう言う、そういうことであります。
  123. 横路節雄

    横路委員 今の点については、外務大臣もう一ぺん聞きますけれども、そこであなたにお尋ねしたいのですが、それでは前の五十四億円というのは、どういう協定、どういう積算に基づいて出たのですか。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 数字の点でございますから、条約局長からお答えさせます。
  125. 横路節雄

    横路委員 委員長、ちょっと待って下さい。今度は中川条約局長答弁は別に拒否はしませんが、しかし外務大臣、タイの特別円協定は、三十年協定でこの第三条がもとになっているのです。あなたは当面の外務大臣として、この国会でこのタイの特別円について審議することについては、あなたの方に前々から通告してある。できれば条約局長などと言わないで、第三条について、五十四億円はこうこういうことによって五十四億円と算定したのだと答弁ができることが望ましいのです。しかし、どうしてもあなたができないというならば、これはやむを得ませんがね。これが外務大臣としてできないで、何で一体外務委員会その他であなたが主管大臣としてやれるのですか。(「できないよ」と呼ぶ者あり)どうしてできない。できないわけはないでしょう。
  126. 中川融

    ○中川政府委員 この五十四億円がどうして積算されたかということでございますが、これは一番もとになるものといたしましては、日本銀行にタイ政府の勘定として残っておりました約十五億円、これが一番のもとでございます。これは日本側としては、やはり一円は一円ということで計算しようということで、これを一円として約十五億円に計算しておるのでございますが、一方この日タイ両政府間での戦争中の別個の契約、先ほど外務大臣が商業ベースと言われましたが、要するに別個の商業ベースによる契約といたしまして、金をタイに売却するという契約ができていたのでございますが、そのうち三つの契約は、契約は有効に発生しておりましたが、実施してないままに終戦を迎えたという事態であったわけでございます。この金売却契約をやはりそのまま実行してやろうということで、この三つの契約の分といたしまして、それを現在の金価格に換算いたしまして、三十七億円を計算したのでございます。そのほかに、タイに引き渡すべくしてまだ引き渡してなかったタイ政府の所有にかかる金塊が、〇・五トンあったのでございまして、この分をやはりポンドに直してタイに払ってやろうとしますと、そうしますと、全部合わせまして、三つのまだ実施していない契約の分は、タイの勘定十五億円から、その分だけは円として差し引かなければいけません。その分を差し引きまして、結局全部通算いたしますと五十四億円になる、この五十四億円をポンドで払ってやろうということで、これをポンドで払うことになったわけでございます。
  127. 横路節雄

    横路委員 それじゃあなたに伺いますが、今あなたは差し引くと言うが、その五十四億円が出ました計算は、今あなたのお話ですと、十五億円から四千四百万円を引いたのですね。これはどうなんです。
  128. 中川融

    ○中川政府委員 その通りでございまして、十五億円から金売却未実行分の四千四百万円を引いたわけでございます。十四億五千八百万円、これを円で一円対一円で計算するということでございます。
  129. 横路節雄

    横路委員 中川さん、計算が合わないじゃないですか、合わないですよ。いいですか、十五億円マイナス四千四百万円、残は十四億五千六百万円、四千四百万円を金約款についてこれを計算をした三十七億円、そうして〇・五トンのいわゆる金の換算。五十四億になりますか、ならないじゃないですか。ならないですよ、これは。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今お述べになりましたほかに、金塊未引き渡し分がございまして、これを昭和三十年時におけるわが国の金公定価格に換算いたしますると二億三千二百万円、従って全部A、B、C三つ足しますと五十四億二百万になるわけであります。
  131. 横路節雄

    横路委員 いや、ならないですよ、外務大臣。ちょっと待って下さい、数字は私の方だって調べてあるのだから。四千四百万円について、金約款で計算をしたものが三十七億でしょう。それからこれを〇・五トンについて換算したものは、二億二百五十万円じゃありませんか。これは差し引いたら、ならないですよ。これはだめですよ。こういう一々間違った答弁をここでして、五十四億の計算すら、ここでできないじゃないですか。
  132. 中川融

    ○中川政府委員 これは間違っていないのでございまして、日本銀行に残しておりました勘定残高は、約十五億円でございます。正確に言いますと十五億三百五万三千六十五円五十五銭というのがその残額でございます。その中から金売却来実行分の四千四百万円を引くわけでございます。これを引きますと、これが十四億五千八百五万三千六十五円五十五銭、こういうことになるわけでございます。三の金塊未引き渡し分〇・五トンというのは、全然この勘定とは関係がないものでございます。
  133. 横路節雄

    横路委員 それではますます重大ですよ。いいですか、それでは五十四億と関係ないですね。それじゃ中川条約局長、言いますがね。これではだめです。これではだめだということを委員長に申し上げます。今の点については、あなたが今言ったのは、十五億幾らのうちから四千四百万円を引くと、残については十四億五千八百万になる。そこで四千四百万について、これを旧協定の金一グラム四円八十銭で計算すると、三十七億一千二百四十九万にしかならないじゃないですか。そうしたら十四億五千八百万円に三十七億一千二百四十九万を足したら何ぼになるのですか。五十一億七千万ほどにしかならないじゃないですか。そういうことにならないじゃないですか。今あなたは、この金塊の引き渡しは別だと言ったでしょう、だめですよ。
  134. 中川融

    ○中川政府委員 第三の金塊の引き渡しが別だと申しましたのは、日本銀行に残っております十五億円の勘定、この中の内訳になるのではないのでございまして、これは別に、すでにそのときに別にタイは金塊〇・五トンを持っていたわけでございまして、それを日本銀行の倉庫の中に預っておったのでございます。それでほんとうなら金塊自体を渡すのでございますが金塊を渡さないで、これをポンドにかえて二億三千二百万円というものを合わせて渡したわけでございます。従ってこのA、B、C、が三つ合わさりまして、五十四億になった、こういうことでございます。
  135. 横路節雄

    横路委員 中川条約局長の今の答弁のように、あなたは五十四億については、この〇・五トンの金塊の引き渡しは入っていない、こう言うから私は聞いたのです。  その次に、私は特にお尋ねをしたい点は、外務大臣が十二月四日の戸叶委員質問に答えて、あなたはこういうように言っておるのです。協定成立の当初から、タイ側においてはその解釈は自分の方はとらぬところである、そのために現実に協定は動かさなかったものであるけれども、その中に立っていろいろとうまいことを言った者がある、両方について。だからこの問題についてはなかなか進捗しないのだ、こういうようにあなたは言っておるわけです。そこのところを読んでみます。「百五十億ということに話をつけまして、そのつけた経緯も、いろいろ中に入った者が両方にいいようなことを言った経緯もあるようでございます。」私はこの点については一つ外務大臣に、外務委員会で何でこんなことをお話なすったか、両方の中に立った者が何かうまいことを言った。だから実は五十四億できまったものが九十六億の今度の債務償還ということになった、これはどういう意味なんですか。
  136. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この協定が調印されましてから、タイ側では直ちに、五十四億円以外のものは、九十六億円というものはやはりもらっておくものだ、こういうことを申しておったわけでございます。どういう事情でそういうふうにタイ側が曲解しておったかという事情については、よくわかりませんが、とにかくさように、交渉者自身がこちらでさようなことを約束しておきながら、タイ側においてはそういう機運ができた、こういうことは何ものかそこに、そういう曲解を考えざるを得ないような事情が先方にあったのではないかと思う、こういうことであります。
  137. 横路節雄

    横路委員 これは外務大臣承知でございますが、この前辻原委員から御指摘がございました、アメリカ人で弁護士のリップスというのが五十四億円の二%の一億八百万円の手数料を取って、アメリカで支払いをされた。タイ国内で支払いがされなかったために、税金その他がかからなかったので、大へんな問題になったという点は、御承知ですか、どうですか。
  138. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 タイ側のことでございますから、私どもはよく存じません。
  139. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣に、ここの現協定の第五条で、「この協定は、それぞれの国により、その憲法上の手続に従って承認されなければならない。この協定は、その承認を通知する公文が交換された日に効力を免ずる。」こうなっておるのですが、あなたにこの間辻原委員が聞いたところが、あなたはこう言っていますね。一月三一日の予算委員会における辻原委員質問に答えて、小坂外務大臣は「先方は、御承知のように、現在クーデターの政権でございますので、憲法上の国会の承認を得られないということになっておるわけであります。」この間そう答弁したのだが、この点はどうなんですか。私も実に妙な答弁をなすったなと思って速記を見ているのですが……。
  140. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それぞれの憲法上の手続に従ったわけでございます。従って、タイ側はタイ側の憲法上の手続に従って――タイ側の憲法は、クーデター政権の後にできた暫定憲法であるようでございまするけれども、いずれにしてもその憲法上の解釈によって、これの解釈によって、これはタイの議会の承認を得るということは必要ないということだったと聞いております。
  141. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、クーデターによる政権で、タイは暫定憲法であったから国会の承認を得られなかった、こういうわけですね。私はこの点については疑問ですからもう少しお尋ねしますが、憲法上の手続というのは、どういう手続が終われば憲法上の手続が終わったことになるのですか。
  142. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先方のことでございまするが、これは閣議の承認を得るという行政上の決定、それでよいのだと思います。
  143. 横路節雄

    横路委員 委員長、ちょっと私の話を聞いて下さい。それで間違いないのですね。今行政上の閣議の決定があればいいのだということですね。もう一ぺんちょっとお尋ねしたい。
  144. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 間違いありません。
  145. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣、それは憲法上のどの条文でそうなっておるのですか、ちょっと教えて下さい。
  146. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当時有効なピブン内閣下における憲法です。条項の何は知りませんけれども、当時の憲法は、領土の変更とか、そういうもの以外は行政取りきめでいい、閣議の承認でいいということになっておったと思います。
  147. 横路節雄

    横路委員 そうすると外務大臣、この協定で向こうで署名しているのはピブンですか、どうなんですか、それをちょっと……。
  148. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはワン・ワイ外相、ナラティップ外相ということであります。
  149. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、それは大へんなことですよ。三十年協定は無効ですよ。外務大臣は今何と言ったのです。ピブン並びに外相だと言うが、そうじゃないですよ。これは全然違う。私が読み上げます。この当時の憲法は暫定憲法ではないのだ。タイ王国憲法で、ここの第九十二条に「諸外国と平和条約その他の条約を締結することは、国王の大権である。タイ国領土の変更を規定し又はその履行のために法律の公布を必要とする条約は、あらかじめ、国民代表議会の同意を経なければならない。」この条約は国王の大権なんです。ピブンや外相のそういうことで、この条約は憲法上の手続を終えてないのです。これは大問題です。これはだめですよ。これは明らかに無効ですよ。そういういいかげんなことを言ってはだめです。そんなばかなことありますか。
  150. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当時の署名者は御承知のようにワン・ワイタヤコン、クロマムーン、ナラティッブ・ポンプラバン、その外務大臣が署名しているわけです。その憲法の手続がどうであったかということは、これは先方のことでありますけれども、われわれはさように理解しておるのであります。
  151. 横路節雄

    横路委員 これはだめですよ。憲法の第九十二条に、平和条約その他の条約を締結するのは国王の大権だとなっておる。この協定についての署名は国王でなければ、憲法上の手続を終えたことにならないのです。それをピブン総理や外相だけのそういうことでやっておるから三十年協定に疑義が出て、そして今日問題になっておるのであります。この協定はだめですよ。国王の署名がなければ、この三十年協定は有効でないのですよ。それは絶対間違いないのです。
  152. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先方は書簡をよこしておりまして、「大使はタイがその憲法上の手続に従って同協定を承認したことを閣下に通報する光栄を有します。」すなわちタイ側においては、タイの所定の憲法上の手続に従って三十年協定というものを承認したわけであります。それが閣議の決定の上で、国王の承認があるということであるか存じません。しかし実質的にはそういう成規の手続を経てきたものでありまして、無効とかなんとかいうことでは当然ないわけであります。
  153. 横路節雄

    横路委員 もう一ぺん言いますよ。このタイ王国憲法第九十二条に――私は前々から、なぜタイがこういうようにこの協定について疑義をはさむのだろう、こういうふうに私は思っておりましたところが、この第五条で憲法上の手続に従って承認されたというが、クーデターでも何でもないのです。外務大臣は、クーデター、クーデターと言うが、この憲法は暫定憲法ではないのです。これはタイ王国の憲法なんです。いいですか。今の憲法が暫定憲法で、当時のタイ王国憲法は当時の憲法だ。この憲法の九十二条に「諸外国と平和条約その他の条約を締結することは、国王の大権である。」とある。国王が署名しない限り、何で憲法上有効ですか。そういう無効なものを、だめです。これではだめですよ。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 タイの憲法は、その当時の憲法でありまして、暫定という言葉を使ったのは何かもしれませんけれども、タイの憲法は何回も変わっております。その当時のタイの所定の手続に従って、憲法上の手続を経て先方が承認してきたものでありますから、これは当然有効であるわけであります。   〔「そんなことを言ってもだめだ」「休憩、休憩」と呼ぶ者あり〕
  155. 横路節雄

    横路委員 だめですよ。憲法九十二条にきまっておるじゃないですか。大問題ですよ、これは。
  156. 山村新治郎

    山村委員長 横路君の時間は、あと五十分ございますが、暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩      ――――◇―――――    午後四時四十二分開議
  157. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。横路節雄君。
  158. 横路節雄

    横路委員 午前中に引き続きまして、タイの特別円についてまず最初に外務大臣お尋ねをしておきますが、私は、外務大臣はこのタイ特別円に関する三十年協定並びにその第五条について正しい解釈を御存じでないのではないかと思うわけです。特に私が先ほどタイ王国憲法を取り出して第五条の問題すなわち批准の問題に触れましたのは、あなたは一月三十日の本予算委員会で辻原委員質問に答えて、「先方は、御承知のように、現在クーデターの政権でございますので、憲法上の国会の承認を得られないということになっておるわけであります。」、実は、私が午前中の最後にお尋ねしたのは、こういうあなたの答弁というのは三十年協定について全く御存じないのではないか。しかも、なるほど今はサリット内閣がクーデターによって戒厳令をしいたままで、しかも今のはいわゆる恒久憲法ではなくて暫定憲法である、言うならばサリットの独裁政権です。あなたは三十年協定をそれと勘違いをなすっていらっしゃるのではないかと思うのです。まず午前の質問に引き続いてお尋ねをします第一の点は、この点は取り消しをなさるのが至当だと思うのです。外務大臣、こういうことをこの大事な委員会会議録に載せたまま、こういうことであなたが答弁されているということは大問題ですよ。だから、私は、ここであなたが正式に、これは間違いでございましたと、こういうことを取り消しなされた方がいいと思うのです、あとあとのために。
  159. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 三十年協定の当時に国会がないということを私言っておりますれば、これは間違いでございますから取り消させていただきます。
  160. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたなおそういう言葉のあやで言い張るというのはいかないですよ。あなた、ここにあるじゃないですか。「先方は、御承知のように」――「先方」とは何を言うのです。当時のピブン内閣ではありませんか。「先方は、御承知のように、現在クーデターの政権でございますので、憲法上の国会の承認を得られないということになっておるわけであります。」、何が当時のピブン内閣はクーデターの政権なんです。これは明らかに恒久憲法ではありませんか。だから、そういう点は、外務大臣、そうがんばらないで、すなおに取り消された方がいいんです。あなたががんばるから私は何べんも聞くのだ。間違いですよ、このことは。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現在クーデターの政権と申しましたのは、現在のサリット政権はクーデターの政権であります。これは、私、そういうふうに勘違い、言い違っておると思います。この点誤解がありますようですから取り消させていただきます。  なお、タイの憲法について簡単に申し上げますと、実は非常に何回も変わっておりまして、一九四九年に恒久憲法が公布されまして、それから一九五一年に一九三二年の憲法が復活いたしまして、一九五二年に改正憲法が公布されまして、これにあたるわけでございます。昭和三十年当時のはこれにあたるわけだと存じます。それから、五八年に憲法が廃止されて、五九年に臨時憲法ができておる、こういうような状況でございまするので、若干錯綜いたしておりますのは、私、現在の政権はと言っておりますように、若干思い違いがございますことをおわびいたします。
  162. 横路節雄

    横路委員 そこで、この第五条に、「この協定は、それぞれの国により、その憲法上の手続に従って承認されなければならない。」とある。そこで、今あなたから御指摘のように、当時の憲法は一九三二年に制定されたいわゆる立憲君主国としての憲法で、それが幾分何回か改定されたが、当時はタイ王国憲法としての恒久憲法なわけです。この憲法の第九十二条には、「諸外国と平和条約その他の条約を締結することは、国王の大権である。」これはまさに明治憲法と同じに、明治憲法では天皇の大権、タイ王国憲法ではタイ国王の大権である。従って、明治憲法から言えば天皇の御名御璽が必要である。だから、当然これはタイ国王の名前が署名されて御璽がなければならぬ。そこで、あなたの方で国会の承認を術なくてもいいのだということは、「タイ国領土の変更を規定し又はその履行のために法律の公布を必要とする条約は、あらかじめ、国民代表議会の同意を経なければならない。」、あなたは、その後段の「タイ国領土の変更を規定し又はその履行のために法律の公布を必要とする条約は、あらかじめ、国民代表議会の同意を経なければならない。」というので、これは領土の変更並びにその履行のための法律ではないから、従って国民代表議会の同意を経なくてもいいのだ、あなたはここを言っておる。あなたは、この協定については行政府責任者の署名でいいのだ、こういうので、先ほどあなたはピブン首相並びにワン・ワイタヤコン外相の名前をあげておる。だからこの点は当然いわゆる正式な批准書交換にはなっていない。だから、私が先ほど指摘をしましたように、三十年協定はいわゆる日本は批准したけれどもタイ国は完全な批准をしていない。従って、三十年協定についてあなたの方で五十四億円の金を払ったということは、いわゆる正式な批准が終えられていないものに金を払ったということになる。そういう意味では重大な問題なんです。だから私は午前中にそのことを指摘したのです。外務大臣、この点はどうですか。
  163. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 条約または協定を結びまする場合に、批准書を交換するという規定のものと、そうでなくて、それぞれの憲法上の所定の手続あるいは国内法による手続を定めて、そしてその承認があった旨を通報するというものと、二通りあるわけでございます。タイ特別円の問題については、その五条に明らかなように、憲法上所定の手続を経るということを言っておるのでございます。その憲法上の所定の手続とは何かというと、これはそれぞれの国の憲法上の所定の手続でありまして、タイ側はタイ側としての憲法上の所定の手続をするということでございます。
  164. 横路節雄

    横路委員 それでは、外務大臣お尋ねしますが、タイ王国憲法による憲法上の所定の手続、それではお示し下さい。私はここにありますから、第何条の何によってそういうタイ王国憲法のいわゆる所定の手続を終えたのか。この憲法のどこですか、何条の何のどこですか、これは。
  165. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 大権事項というものであります場合に、旧憲法時代の私どもの場合を考えましても、これはこの議会の承認ということが条件にならぬという解釈をしておったことを思い出すわけでございます。このタイ国憲法九十二条に、「諸外国と平和条約その他の条約を締結することは、国王の大権である。」ということがございます。大権であるということからいたしまして、国王の大権であるから必ず批准をしなければならぬ、批准書の交換をしなければならぬということは出てこないわけでございまして、タイ王国憲法の定める手続によってタイ側はこの所定の手続を終えたということを通報するということによって、われわれは、相手国の立場、その憲法上の手続というものについてこちらからとやかく指図する立場にはないので、タイ国側として憲法の所定の手続を終えたという通報を受ければこれを認めるということは、これは国際間の普通に言われるところの考え方であると思います。
  166. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私は、お昼からだいぶ休憩の時間もございましたので、外務省としては統一見解を示されるものと思っていたんです。今の答弁で、このタイ王国憲法の第何条のどこによって憲法上の手続を済ましたのですか、その点を言って下さい。あなたもタイ王国憲法を持っているだろうし、私もここに持っているのだ。あなたの方では、タイ王国憲法上の手続をこの条文によって終えたんだと、こういうことになっている。ただ向こうでそう言ってきたからやっていいのだということは成り立たない。だから、まず、外務大臣として、タイ王国憲法の第何条に基づいて憲法上の手続を終えたというのか、その点外務省としての見解はどうなんです。
  167. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 何条によるかと言われれば、憲法九十二条でございましょう。それによって、先方は、この国王の信任状を持っておる大使をして、わが国に、所定の手続を終えたということを通報してきたわけであります。それで了解する、――了解するといいますか、それによって効力を当然認め合うというのは、国際法の常識だと私どもは思っております。
  168. 横路節雄

    横路委員 いや、外務大臣、あなたはさっき私に何と言ったんです。この署名は、この条約の締結は行政府の権限でやれるのだ、こう言ったじゃありませんか。あなたは、私の午前中の質問の一番最後に、この条約の締結は行政府の権限でやれるのだとおっしゃった。だから、私は、それはおかしいじゃないか、こう聞いて、重ねて、行政府の権限でやるというが、だれが署名したのか、こう聞いたら、あなたは、今のピブン首相とワン・ワイタヤコン外務大臣の二人が署名したからいいんだと、こう言っておる。これは違うじゃありませんか。あなたはそう言ったんです。だから、この条約の締結については行政府の権限でいいんだということも誤りなら、ここで訂正しなさい。午前中あなたはそう言ったじゃありませんか。だからこれは問題が起きたんです。あなたは、今、この九十二条によってこの条約の締結は国王の大権であると言う。違うじゃありませんか。午前中あなたは行政府の権限だと言った。今は国王の大権であると言った。どっちなんです、一体。
  169. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 法律の解釈でございますから、法制局長官から申し上げます。
  170. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはよその国の憲法の問題でございますので、その前に、かりにわが国の場合をあげて実はお答えいたしたいと思います。  まず第一に、問題はこの条約の署名の問題でございます。この条約の署名は、この条約の協定にありますように、タイ側は外務大臣、わが方は大使でございます。この署名でお互いに内容を確定したわけでございます。あと、これの効力を発生させるのは、第五条の規定によりまして、お互いに国内の憲法上の手続によって承認する、承認をするという手続をとることをお互いに約束して、その承認を了した旨をお互いに通告するということによって効力を発生する、こう書いてあるわけでございます。その場合に、わが国においてはまずどうなるかと申せば、これはいわゆる批准条項ではないわけでございます。批准書の交換をするとはどこにも書いてないわけで、条約の型に、いわゆる批准書の交換をやるのと、かような協定のように、多少簡便な、いわゆるお互いに国内法上の承認を通知し合うという形と、両方あることは御承知のことだと思いますが、これは批准書の交換ではございません。従いまして、日本の場合は、憲法上の手続によって承認をするのは、憲法七十三条で実は条約の締結は内閣の権限でございます。そうして、条約については事前または事後に国会の承認を必要とする。従って、その手続をとりまして、内閣はこの条約の承認を決定しまして、その承認をした旨を外務大臣から向こうの大使に通告をしておるわけでございます。その場合のいわゆる承認権者は、わが国においては内閣であり、この承認については、もちろん批准条項ではございませんから、批准書に対しての天皇の認証は不必要でございます。従って、天皇の認証も行なわれておりません。ただ、これは承認書を交換するということにはなっておらないわけでございますから、日本側から言えば、国内法上の手続によって内閣が承認いたしましたという通告外務大臣から大使にしたはずでございます。  これは、タイの場合にそれを振り返ってみますと、タイの憲法九十二条でございますが、国王の大権であると書いてあるわけでございます。その場合に、国内の、手続として、タイにおいてすべての条約が、日本で言えば天皇のサインを必要とするか、あるいはアメリカの憲法上に示すように、場合によっては、あるものはいわゆる行政取りきめとして内閣の権限に属するか、これはタイの国内問題でございますから、こっちからはわかりません。しかし、いずれにしても、国王の大権であるという手続は了したものだと思うわけでございます。国会に出す必要はないということははっきりしております。そういう手続を了したことを、国王が承認したという、国王のサインした承認書を日本によこす必要はないわけでございます。先ほど申しましたように、そういう承認をしたという通知をこっちに持ってくればいいわけでございます。その承認の通知は、タイの大使から日本側に来ます。タイの大使は国王の信任状を持って日本に駐在しておるわけでございますから、その大使から、国内法の憲法上の手続を済ませましたという通告が来れば、これで日本としては、国内法の手続はタイ側は了したものと信用するのが当然でございます。それ以上こちらはせんさくする必要はないと思います。
  171. 横路節雄

    横路委員 今の法制局長官答弁答弁にならないのです。このタイ王国憲法は日本で言うならば明治憲法と同じ憲法です。国王の大権なんです。これが、あるいは行政府の権限でやれるのだということが午前中の最後の外務大臣答弁だったわけです。ところが、午後になりましたら、さすが外務大臣も自分の誤りを気づいたのか、まあ気づいたんだと思う。正式に、行政府の権限だということは取り消してもらわなくてはならぬ。これは憲法第九十二条に言ういわゆる国王の大権です。「諸外国と平和条約その他の条約を締結することは、国王の大権である。」、ただ、国民代表議会の同意を得なければならないものについては、領土の変更を規定し、またはその履行のための法律の公布を必要とする条約だとなっておるわけです。あなたは、午前中に、総理大臣外務大臣がこの条約について署名してあるから、従って憲法に基づいての行政府の権限としていいのだと言っておるが、そうではない。これは当時大蔵大臣であられた池田総理大臣にも責任はございますよ、あなたはその後大蔵大臣としてこれの支出について責任を持ってやられたんだから。去年の八月に衆議院から派遣された東南アジアの経済調査団で国会から派遣された諸君、自民党三、社会党二――社会党からは木原委員、山田委員。タイのバンコックで在留邦人の招待会があったときに、在留邦人から、この協定を変えてくれなければ日本人は困るという話が出て、そこで、木原氏があとから、条約は批准が済んでいるのに、そんな簡単に改定する前例がないからだめだと言ったら、在留邦人の諸君はみな、実は批准されてないのです、国内ではみなそう言っています、ワン・ワイタヤコンが勝手に調印をして、批准は済んでいないのだ、だから、彼はせっついて、その条約について改定をしてくれなければ自分の政治的な地位があぶないんだ、こう言って大騒ぎをしていると言っている。私は先ほど午後休憩になりましてから、この点を聞かされたわけですが、そういうこととは別に、このタイ特別円の現協定の第五条、憲法上の手続、タイ王国憲法の第九十二条のその規定から言って、これは日本においては批准を終えているけれども、しかしタイにおいては批准を終えてないのです。憲法上いわゆる当然大権を持っている者が調印をしなければ、日本の明治憲法で言うならば、いわゆる御名御璽、署名捺印していなければ効力を発生しないのに、ただ単に、それは大使から言ってきたからそれでいいだろう。それで今回の九十六億円のいわゆる新たなる債務としてこの協定の改定を出されてきたわけです。この点は、外務大臣、重ねてもう一ぺん言っておきますが、どうですか、ちょうどピブン元首相が今東京に亡命中ですから、何でしたらここへ呼んでいただいてもいいのですよ。――ちょっと林さん待って下さい。外務大臣にもう一ぺん……。あなたは、午前中は、行政府の権限だと言っておる。午後は、憲法上の規定によって国王の大権だと、言っている、どちらが正しいのです。これは外務大臣にですよ。
  172. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国王の大権でありましても、行政府の補佐のみによってこの協定が結ばれる、こういうことであります。広義の行政府の権限と言って差しつかえないと思います。  なお、この点について、この協定について国王は知らぬのではないか、こういうお話がございましたが、これは昭和三十年八月十二日にタイ側が布告を出しております。これは勅命による総理府告示で、八月五日の書簡交換により協定が発効した旨を告示しております。こういう現物がございますから、それで明瞭だと思います。
  173. 横路節雄

    横路委員 外務大臣外務大臣の午前中の答弁は、行政府の権限でやったというのです。この点は、あとで速記を見て、重ねてあなたに、その点については正式に取り消しをするならばしてもらわなければ困る。あなたはそういうようにネコの目の変わるように答弁されてはだめですよ。この点は、あなたは行政事項だとしてやったのですよ。午前中あなたはそういう答弁をしたのですよ。その点は速記を見ればちゃんとはっきりしてくるわけです。外務大臣お尋ねする点は、私はあらためて速記を調べた上であなたに対して重ねてお尋ねをします。なぜならば、午前中の最後のあなたの答弁は、行政府の権限である、こう答弁をしているのだから、その点は午後の答弁とは違う。  次に総理お尋ねいたします。
  174. 山村新治郎

    山村委員長 何か関連があるそうですから、外務大臣発言させます。
  175. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 タイ国憲法の第八条に、「国王は、内閣を通じ、行政権を行使する。」、こう書いてございます。すなわち、この意味から言いましても、行政権の行使、――ただ、国王が九十二条によって大権を持っておるということには、その通りでございますが、それを行使するのは、行政権を行使している。その行政権の行使においてこの協定は結ばれているということは、これで差しつかえないと思います。
  176. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたは、午前中、この協定についての署名者は総理大臣外務大臣だと、こう言っているんですよ。この協定についての署名者、それはタイの国王でなければならないのです。その点はあなたの午前中の答弁と午後とは違うが、この点は、私は重ねて速記を調べた上であなたに対して質問をいたしたいと思うので、次に移ります。  次に、これは、総理大臣、あなたにお尋ねをしますが、大体あなたの方で言っているお話の中で筋の通らないことがたくさんある。あなたは、衆議院の本会議で、この九十六億円についてはどうしたらいいか、たとえば一ぺんに減額して払った方がいいか、九十六億円は年賦で払った方がいいか、あるいは、減額して払って、さらに残りのものについては現物供与をした方がいいか、こういう問題についてあなたはいろいろ検討しておるけれども、減額してやることの方が、九十六億円についての年賦でもって支払うよりははるかに計算上はいいんですよ。数字に明るい池田総理大臣としては、全くこの点についてのお答えはなっていないと思う。特に、九十六億円に伴うところの石油精製所の問題は、タイのいろいろな政権その実力者と関連があるわけです。たとえば、タイの九十六億円の、あなたの方でやってきた石油の精製工場の丸善あるいは日本鋼管というのはだれにつながっていたか。日本鋼管や丸善は、三十二年の九月十七日のクーデター以前におけるピブン政権のもとにおける、サリットと肩を並べて勢力争いをしたバオ警察長官につながっていた。だから、この日本鋼管、丸善の九十六億というのは、これはピブン政権につながるその第一の実力者であるバオにつながっていた。それが三十二年の政変で倒れた。ところが、三十三年の四月の十八日には、富士車輌は七十六億円で国防省との間に石油の精製工場を作る協定をしていた。ところが、富士車輌のタイの代理店は、サリット元帥が経営する会社の中にある。だから、富士車輌とサリット元帥とはそういう結びつきにあった。ところが、その富士車輌と国防省との間に石油精製工場七十六億について三十三年の四月の十八日に調印がされたが、この点については、通産省は機械の輸出はしない、日本輸出入銀行はこれに対する借款は承認しない、こういうことになって、そこで三十三年には富士車輌のその協定は御破算になったのです。この九十六億円のこれら石油精製工場は、あるいはピブン政権の第一の実力者、あるいはサリット元帥が自分の会社内に持っている富士車輌代理店、こういう関係から今日に至って、そうして、それが、通産省では許可しない、日本輸出入銀行ではその借款に許可を与えないということでつぶれてしまって、そうして、先ほど私が指摘したように、三十年協定については効力があるかどうか重大な疑義がある、そこで、今日、サリット政権ができてから、この九十六億円は全部返してもらわぬければ自分たちの政権は成り立たぬ、こういうことで、今日、あなたが行かれて、九十六億円についてはこれを年賦で支払うことにしたんだ。これは、タイ国におけるそれぞれの政権に結びついたそういう日本商社との関係等が今日こういう事態になっているではありませんか。私はこのことをあなたに指摘をしておきたいと思う。  そこで、三十年のこの協定については、法律上効力があるかどうか、私は協定は効力がないと思う。この協定が効力がないのに、五十四億円を払って、今度の協定の改定でさらに九十六億円を支払うということは、われわれとしては絶対に承認できない。この点については、あなたはどう思いますか。
  177. 池田勇人

    池田国務大臣 九十六億円の問題につきましては、従来から、石油精製工場あるいはクレジット、いろいろな考え方があったのでございます。一つとしてまとまっておりません。今御質問の要点は、三十年のこの協定は無効だとおっしゃるが、これは、私は、あなたの独断である。政府はこれを有効のものとして取り扱っておるのであります。従いまして、私は、三十年の協定を前提といたしまして、そうして今回の協定を結ぼうといたしておるのであります。
  178. 横路節雄

    横路委員 この点については、私どもは、今主張いたしましたように、三年協定は、タイ側としては批准を完了していない。従って、これは効力について重大な疑義がある。それをさらに今回の協定で支払うということには、われわれは絶対に反対です。なお、これらの細部にわたってはさらに私は他の機会にお尋ねをしたいと思いますので、次のガリオア、エロアに私は問題を移したいと思います。  そこで、小坂外務大臣お尋ねをしますが、小坂外務大臣は、政府は当初よりガリオア、エロアについては一貫して対米債務であると心得てきた、これは債務であると心得てきた、こう言っているが、一貫して心得てきたのですか。私は一貫していないと思う。違うと思うのです。この点についてあなたの御見解を承ります。
  179. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一貫してさように考えておりました。
  180. 横路節雄

    横路委員 この点については、一貫してですか。それでは池田総理お尋ねをしますが、池田総理は、この対米債務については、一貫してガリオア、エロアについては債務であると心得て参りましたか。ガリオア、エロアについては、池田総理は初めからこれは債務であると心得てこられたかどうか、その点についてお尋ねしたい。
  181. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、昭和二十四、五年ごろでございましたか、このガリオア、エロアは債務と心得ておりますと国会でたびたび申しております。
  182. 横路節雄

    横路委員 だいぶ総理大臣も健忘症になられたですね。これからあなたが一貫して二十四年以来債務であるなどとは言っていないという証拠をあげますから、よくお聞きになって下さい。  昭和二十四年四月の十三日、あなたが吉田内閣の大蔵大臣のとき、衆議院の予算委員会で、米国の対日援助見返資金特別会計法案に関連して共産党の野坂氏がこうあなたに聞いている。ガリオア、エロアは贈与なのか借りたものなのかと問いただしています。また、マッカーサーの昭和二十二年二月二十日付のアメリカ陸軍省にあてられたメッセージ、これは予算議会だと思いますが、これについて、日本は贈与ではないと理解して考えてもいいのかと野坂氏が尋ねたのに対して、吉田総理は大蔵大臣だとこう言うので、あなたはこう言っている。見返資金特別会計法が設けられたからといって、今までの性質が変わってきたわけではない、しからばガリオアとエロアは贈与なりやあるいは貸与なりやという問題は、依然としてきまっておりません、これは私は講和会議においてきまるべきものと考えております、あなたはそう言っているのです。このうちのどこに一体あなたは債務だと言っていますか。  そこで、さらに野坂氏はあなたに聞いて、こう言っています。なるほどあなたの言うように講和会議できまるでしょう、しかしながら、われわれとしては、これが貸与の性質を実質上持っているのか贈与の性格を実質上持っているのかということによって取り扱いは相当違ってきはしないかと思う、かりに貸与の形式を持つものならば、憲法第八十五条によって当然国会の承認を得られなければならぬが、一体どうなんだ。あなたはそのときこう言っているのです。「野坂委員もおわかりのように、実質上今きめられない問題だと思います。ただイタリアその他の西ヨーロッパ諸国におきましての例を見ますと、講和条約でこれは贈与になった例もあるのであります。私からはそれ以上のことは申し上げかねます。」、あなたは、わざわざ、西ヨーロッパにおいて、イタリアでこの点は贈与になったという例をあげて、贈与になることを期待しているじゃありませんか。どこにここであなたは債務であると心得ているということを言っていますか。全然言ってないじゃないですか。  なるほど、二十四年は今から十三、四年前のことですから、そういうことをお忘れになったかもしれませんが、あなたは一貫して言っていませんよ。どうですか。
  183. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十四年の三月ですか、四月、見返資金のできたときにおきましては、このガリオア、エロアの問題につきましては、債務なりや、あるいはみな返さなければならぬものか、あるいは一部返すものか、なかなか不確定の問題だったのであります。そこで、二十四年につきまして、その質問については債務と心得るとは言っておりませんが、全体をお読み下されば、これはわからないものでございます、もらう場合もありましょうし、払う場合もありましょう、こういう意味で答えておるのであります。そうして、また、だから、先ほどのお答えにつきましても、二十五年ごろからは、私は債務と心得ておりますと、ずっと一貫して申し上げております。だれも、昭和二十四年の見返資金ができたときに、これがどうであるという結論はなかなか出にくい。それで、私は、その後ずっといろいろ研究したあと、二十五、六年ごろからは、債務と心得ます、こう言っております。
  184. 横路節雄

    横路委員 あなたは、二十四年のときには債務かそれとも贈与かわからなかったから、これ以上の答弁はないと言うが、対日援助見返資金特別会計法案と関連して、今私が読み上げたように、あなたは何と言っているかというと、この問題については、西ヨーロッパにおいて、イタリアにおいては贈与になった例がございます、こう言っている。何もあなたは初めから債務と心得ていないじゃないですか。二十五年、六年なんて、あなたは何も言ってないですよ。この点は、あなたが債務として初めから一貫して心得ているなどということは、そういうことは国会答弁の中には出ていないのですよ。この点は明らかにしておきたい。  それから、同時に、四月の十三日、この援助見返資金特別会計法案がさらに大蔵委員会で議論されたときに、大蔵委員会における当時の政府委員の諸君は、全部、あなたと同じように、これは贈与の場合もございます、こう言って、特にこの点については、特別会計のいわゆる特別勘定を設定したときのヨーロッパの例をるるあげているわけです。だから、この点は、私は、あなたが一貫して答弁されているということについては、あなたたちはなるほど昭和二十九年以降においては変えられたかもしれませんけれども、この点については何ら一貫していない。一貫していないものを一貫しているなどということを外務大臣が言われることは、間違いなんです。  そこで、次に外務大臣お尋ねしますが、これはあなたの方から提出されました「米国の戦後対日援助が債務性を有するものであると考えられる根拠資料」というものについて、私の方から一々これについて反駁をいたしたいと、こう思っているわけです。  まず私があなたにお尋ねをしたい点は――あなたもぜひ持っていて下さい。これは本委員会に提出したものです。「一九四七年六月十九日極東委員会決定「降伏後の対日基本政策」は、別添第Ⅰのとおり、日本の輸出代金は、占領に必要な非軍事的輸入であって降伏以来すでに行なわれているものの費用に対して支払うために使用することができる旨述べている。」これがいわゆる債務であるということだと言うが、外務大臣お尋ねしますが、この一九四七年の前に、占領軍に対する一九四五年の十一月一日付「降伏後における初期の基本的指令」、これをあなたは引用しないのは、これは一体どういう意味なんでしょう。この中にはどういうように言われているかというと、――これは御存じですか。もう一ぺん申し上げます。「日本占領及び管理のための連合国最高司令官に対する降伏後における初期の基本的指令」一九四五年十一月一日のこの初期の基本的指令の中には、明らかに、民生物資供給及び救済としてその方針が書かれている。この指令には、「占領軍を危うくするか軍事行動を妨げるような広範囲の疾病または民生不安の防止に補充が必要な限度においてのみ、輸入物資の供給に責任を持つ。」これがいわゆる日本の降伏後における米国の初期の基本的指令できまっている方針です。だから、いわゆる占領軍を危うくするか、軍事行動を妨げるような広範囲な疾病または民生不安の防止に補充が必要な限度においてのみこれが輸入されたんだ。占領軍としての当然の任務なんです。このことはあなたは御存じでございますか、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  185. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そのことは、占領軍といたしまして、アメリカ自体の利益からそういうことを考えたんだろうと思います。
  186. 横路節雄

    横路委員 今あなたの答弁で、この占領軍としての当時の民生品供給計画は、アメリカ占領軍のためにこれは出してきたものですよ。アメリカ占領軍が必要なためにこの輸入物資を許可してきたんですよ。この点は当然あとで――この前の国会でも昨年の国会でも申し上げているように、これは、十二月十九日に、マッカーサー元帥が占領軍の総司令官として管下部隊に、国際法並びににハーグ陸戦法規は順守すべきであるといった訓令、この陸戦法規の四十三条にもいわゆる占領軍として当然なすべき任務をうたっている。だからあなたの方でこれが債務であるという根拠に、第二項の一九四七年六月十九日の極東委員会資料を出してきているが、これはそうではなしに、今申し上げた一九四五年十一月一日のこの指令に基づいて、連合軍として当然の任務をやったものである。この点に対するあなたの御見解はいかがですか。
  187. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 アメリカとしまして一九四五年にそういう考え方を述べた、これはその通りでございまするが、その後の情勢を考えていただきたいと思うのでございます。日本としては敗戦後非常な物資の欠乏、ことに食糧の窮乏にあえいでおりました。われわれとしては、占領軍に対して輸入食糧を確保してもらう、またこの放出を要請したわけでございます。それによりましてアメリカ軍としても、占領軍としても、これに対して、その要請にこたえて非軍事的輸入を許した、こういうことであると思います。
  188. 横路節雄

    横路委員 この問題については、外務大臣、前にも申し上げたが、ガリオア支出予算を定めた一九四七年法や、五月に可決をした一九四七年第一次の追加予算法合衆国公法典第六十一巻、ここにこう書いてありますね。「別に規定する場合を除き、ある外国地域における政府及び占領に関し、米国責任と義務に応ずるために必要な次の如き事項の経費として六億ドルを支出する。」その第九項に、「かかる地域の市民人口に対し達成すべく追求されている目的を害するような飢餓、疾病、不安を阻止するに必要な最低の供給……」と、こう書いてあるわけです。これはいわゆるガリオア予算をきめたその予算、それから支出、その目的、それから占領軍の初期の基本的指令、こういうものを考えまして、この点は明らかにガリオア物資については、これは占領軍として占領上必要なためにやったもので、この点は明らかに贈与です。この点はどう思いますか。
  189. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 占領軍としましては、あるいは現地調達をすることも、これはその権限の範囲内においてできるわけでございます。しかしながら日本の当時の窮乏の状況にかんがみ、また当時の日本政府の要請にもこたえまして、非軍事的輸入をだんだんふやしていって、その予算アメリカ陸軍省の予算、すなわちガリオア・エロア等の予算支出からしていった、こういうことであると思うのでございます。
  190. 横路節雄

    横路委員 そうすると、あなたも占領軍として必要なためにやった措置だ、こういうようにお考えになるのですか。この点はどうなんです。占領軍として必要な措置であった……。
  191. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 占領軍として広義に考えて必要なものだと考えたと思います。しかし占領するための義務としてこういう経費を支出した、こういうことではないと思います。
  192. 横路節雄

    横路委員 この点については、外務大臣、先ほど申し上げましたように、昭和二十年十二月十九日の連合軍司令官の管下部隊に対する訓令の中には、明らかに国際法並びにハーグ陸戦法規は順守すべきであると書いてある。ハーグ陸戦法規の第四十三条については去年議論したところです。この点はそういう意味では、いわゆる占領軍としては当然の任務をやったことだ、占領軍としての当然の任務をやったのであって、これはいわゆる債務ではないのです。私はきょうはあなたにたくさんお尋ねをする点がありますから、こういう点につきましては去年議論をしましたから次に発展をしたいと思うのです。  そこで第二番目に、この一九四七年六月十九日の極東委員会決定「降伏後の対日基本政策」は、別に添付した第一の通りであるが、「日本の輸出代金は、」と、こうなっておる。「占領に必要な非軍事的輸入であって」云々となっておって、この日本の輸出代金は何もガリオア、エロア、いわゆる援助輸入に対しての見返りの輸出代金とは書いてない。どこに書いてありますか。どこにも書いてない。どこかに書いてあったらお目にかかりたい。どこに書いてございますか。何も書いてないじゃないですか。援助のあれだということをどこに書いてありますか、どこにも書いてない。
  193. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 「占領に必要な非軍事的輸入であって降伏以来すでに行なわれているものの費用に対して支払うために使用することができる」すなわち占領のためのいろいろな援助、また日本政府の要請に基づく援助、それから一般の輸入代金というようなものが全部これに入っておる、こういうことだと思います。
  194. 横路節雄

    横路委員 この文章のどこから見ても、これはあとで議論をしますが、輸入には二つあるわけですね。一般的ないわゆる商業ベースの輸入と、もう一つは援助に関する輸入とがある。これは向こうからいわゆる一般商業輸入のもので来た、だからお返しをした。一般的な輸出品を出した、その代金を支払うということで、この点については別にあなたの方で指摘しているこの文章のどこからも、援助物資に対する輸入の代金のかわりとして、いわゆる輸出をするんだということには、何もなっていない。  その次に第三番目です。外務大臣、これはたくさん議論をしたいのですけれども、予算でこまかなところであとで議論しますから、きょうは基本的にこうした問題について反駁だけしておきます。  第三番目に、ガリオア予算について、あなたの方で一九四七年二月二十日、マッカーサー元帥が米国議会に対して発したメッセージを引用して、このメッセージの中に、いわゆる「救済は慈善ではない」ということをあなたの方では言っている。しかしここに一体何と書いてあるのです。「慎重に考慮すれば米国の納税者はこの処置によって一ドルたりとも損をすることはない。結局これは勝利がもたらした明瞭な責任を果すための暫定的な処置に過ぎない。」と言っている。この日本に対する輸入は、「勝利がもたらした明瞭な責任を果たすための暫定的な処置に過ぎない。」と言っている。そうしてこの処置によってアメリカの納税者は一ドルたりとも損をすることはないと言っている。そこでこの問題について、ちょっと私からあなたにお尋ねしておきたいのだが、当時マッカーサー一元帥は占領軍最高司令官として、日本では絶対的な権力者なわけです。こういうことをアメリカ議会に言うならば、その点については、日本に対してはアメリカとしては債権なんだぞ、日本は債務なんだぞと明瞭に、協定その他によって、なぜ一体締結をしておかない。日本政府に対しては債務だぞ、お前らいつか払うんだぞということは、一つだって言っていない。そうしてアメリカの議会には、これは勝利者がもたらしたいわゆるわれわれのやっておる措置なんだ、米国の納税者には一ドルも損をさせない。これはアメリカ議会に対して言っておることであって、もしもほんとうに債務であるならば、当然これは占領軍の最高司令官として、絶対権力者として日本政府に対して、これは債務なんだぞ、こういう点を明確にしておかなければならぬのに、何も言ってないじゃありませんか。この点はどうですか。
  195. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 このマッカーサーの米国議会に対しまして出しましたメッセージは、当時の総司令部渉外局によりまして、この年の二月二十四日付で発表されております。この中には今お話のように、日本の債務だ。この表現によりますと全額債務のような非常に強い表現が出ております。思うにこれは、おそらく当時アメリカ国民として、旧敵国であった日本に対して、自分らの税金の中からたくさんのものが行くということに対する不平があり、それに対する融和的な言葉としてマッカーサー元帥が言ったことであろうと思います。なお、この席でも資料として差し上げてありますスキャッピンの一八四四、これ等には返済の条件は迫って相談するということが書いてございまして、先方としては、当然日本が何かの機会にこれを決済するということを期待しておったことは、当時から明らかだと思います。
  196. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、この点については、連合軍の司令官としては絶対権力者なんです。従ってこれは、もしもこれが債務であるというならば、日本政府に対して、これは債務であるぞ、アメリカとしては債権だぞ、こういう点を、いわゆる日本アメリカとの協定あるいは日本国内における国内法によって、この点を確定しておかなければならない。その点については何ら確定をしていないではありませんか。この点を私は申し上げておきたいと思うのです。  さらに次に、あなたは、ヴォルヒーズ陸軍次官補、ドレーバ一陸軍次官なども米国議会において同様の証書を行なっているというが、この点についてはあとで対日援助見返資金特別会計が設定されたときの件に関連して、私は申し上げておきたいと思うのです。  次に、あなたの方は第四番目に、私もここに持っています食糧輸入についての一般指令に関する総司令部覚書、スキャッピン一八四四のA、一九四六年七月二十九日、私もその全文の写しは持っています。この点については、あなたは食糧輸入についての一般指令に関する総司令部覚書として、その第四の項に、支払い及び経理の条件はあとに決定するものとすると書いてある。この条件は留保条件であって確定債権ではないのですよ。これは支払い及び経理の条件はあとに決定する。だからこれは債務なんだ、アメリカにとっては債権なんだ、こういうものではないのです。これは留保条件であって、確定債権ではないのです。あとで全部贈与になるかもしれない。こういう点を取り上げて、あなたの方で、だからこれは確定債務なんだ、アメリカにとっては確定債権だということは間違いです。今私は、ここに食糧輸入についての一般指令に関する総司令部覚書がございますから、その点について、あなたの御返答を承りたいのです。
  197. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 マッカーサーがそういうことを言ったのに、なぜ債務として確定しておかなかったか、わが方の債務として確定しておかなかったかということでございますが、私どもは債務と心得ておる一その全部を債務と確定するという意思は毛頭当時からなかったわけです。これは当時の情勢からして、いずれは債務として確定する時期があるけれども、それについては他日、日本の経済もよくなり、そのときに外交交渉をしてきめよう、こういうことで考えておったわけで、全然その点は矛盾ございませんのみならず、今のスキャッピン一八四四、これについても、後日その支払いの方法、条件は決定する、こう響いてあるのでございまして、これはその通りに、 マッカーサーの書簡の出る前に、今申し上げたように、すでに日本政府としてはこれに対して承諾をし、請書を出しておるのですが、さればといって、これの全額をわれわれが債務として確定するという意思を一度も表明しておるわけじゃない。日本のためにこの方がいいと思ってやっておることでございます。
  198. 横路節雄

    横路委員 債務性の問題について小坂外務大臣お尋ねねしておきますが、先ほど私が池田総理お尋ねしましたが、昭和二十四年四月に米国対日援助見返資金特別会計法案が国会に出された。これは前の国会でも議論したことですが、いわゆる経済協力法に基づいてのこういうやり方は、アメリカがその国に贈与として送った分については、これは特別勘定でやりなさいよ、こういうことになって、そうしてこの見返資金特別会計というものが、日本ばかりでなしに、こういう格好で特別勘定が行なわれたわけです。しかも日本の場合には、その金の支出についてはその一件々々について細部にわたって百パーセント連合軍総司令部の承認を得たものです。だからそういう意味では、一九四八年でしたか七年でしたか、経済協力法に基づいてこれは明らかになっておる。明らかになっておるものについて、なぜ今日これをいわゆる債務として返済するのか、その点について明らかにしてもらいたい。
  199. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 横路さん、よくお使いになっております例のフォーリン・エイドーアメリカ商務省の出しております文献によりますと、エイドというものにクレジットとグラントがある、こう書いてあります。その中で、グラントというものをさらに分けておりまして、その一部については、後日相談して何ぽか返してもらう、こういうものも含まれておる、こういうことで、日本の場合と西独の場合をそのグラントの中に入れております。何となれば、クレジットといいますと全額後日返してもらう、こういう趣旨で、日本のガリオア、エロアあるいは西独のような場合には、後に相談して何ぽかそのうちに返してもらう、こういうことからグラントの中に入れたと書いてある。グラントを訳せば贈与なんですが、ECA法による贈与、この中にはそういう意味で書かれておるというふうに了解するのが正しいと思います。といいますのは、西独の場合にECA法によって受けました援助は十五億二千万ドルであります。しかしそれにガリオアによって受けた十五億三千万ドル、それからプレ・ガリオアによって受けた三億ドルを合わして三十三億何がしになっておりますが、その場合に必要経費その他ユーゴヘの転送分を除いて、それを一括して三分の二切り捨てておるのであります。すなわちガリオアにおける問題の扱いも、ECA法による問題の扱いも同様に扱っておるということで御了解を願えると思います。
  200. 横路節雄

    横路委員 今の問題については、先ほど私が指摘しましたガリオアの支出予算をきめた一九四七年五月に可決した第一次追加予算法合衆国公法典第六十一巻で、こう書いてありますね。援助を贈与とクレジットに分け、ガリオアは贈与としておる。その贈与の一般的定義を同書は、明白な贈りもので、一つは支払いが期待できない、第二番目は被援助者は米国または他の諸国と共同目的遂行の義務を持つものである。支払いは期待されてないが、そのためにはアメリカと共同目的遂行の義務が必要だ。そうするとこの点については、平和条約の締結と同時に、日米の安保条約――日本アメリカと共同で防衛の義務を負った。そういう点からいって、アメリカ予算支出法その他を定めたこれを見ても明らかなように、援助は贈与である、しかも贈りものである、そういう点が明らかだと思うのだが、その点についての見解を再度お尋ねしておきます。
  201. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申し上げましたように、そのグラントの中に今おっしゃったようなことも書いてあるほかに、さらにグラントについては相談して、そのうちの何がしかを返済させるものが含まれておるということが書いてございます。それによるものだと思います。なお共同の目的を有するものということは、おそらく旧敵国であった日本にしても西独にしても、今後アメリカと共同の目的でもって再建をはかっていく、こういう気持であるから、こういうアメリカの納税者の負担による贈りものも援助も出すのだ、こういう趣旨だと考えるのでございます。安保条約の関係をおっしゃいましたけれども、安保条約は、これは御承知のように講和条約ができるときに同時にできたものでございまして、その前からガリオア・エロアの援助はなされておったということでございます。
  202. 横路節雄

    横路委員 次に、私は外務大臣に、同じく出された資料3、戦後対日援助処理問題に関する援助物資総額及び支払額についての説明、この点についてお尋ねをしておきたいと思う。日本政府が確定をしたアメリカ日本に対する援助総領は幾らですか。
  203. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 アメリカ日本に対して援助総額をこう言っているというのですか。
  204. 横路節雄

    横路委員 日本が確定をした総額は幾らか。
  205. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本として計算してですね。ちょっと待って下さい。
  206. 横路節雄

    横路委員 いや、あなたの方で出しているじゃないですか。
  207. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ちょっとその資料を今ここに持ちませんので……。援助総額十七億九千五百万ドル。
  208. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私のお尋ねが悪かったかもしれないが、日本政府アメリカからいわゆる債務として受け取ったというか、アメリカから日本が援助総領として受け取ったものはどれだけだか、こう聞いているのです。日本政府はどういうふうに計算して、その総額は幾らかと問いているのです。
  209. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申し上げた数字でございます。アメリカからは十九億五千万ドルでした、それだけのものだということでございますが、通産省の方において非常に御苦労願いまして精査した結果、われわれの受け取りのベースによれば十七億九千五百万ドルであるということになっておるわけです。
  210. 横路節雄

    横路委員 これは通産大臣にお尋ねをしますが、この金額は絶対に動かない金額ですね。この点を聞いておきます。
  211. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お手元に差し上げた数字そのものでございます。
  212. 横路節雄

    横路委員 それでは通産大臣にお尋ねしますが、この第二項に「これに対し通産省が保有する貿易庁、あるいは総司令部の資料に基づき各受領一件毎に関連資料を検討した結果、援助物資と考えられるものを集計した数字は次の通りである。」私が今あなたに聞いたのは、この援助総額は動かないのですねと聞いたことは、あなたの方で「援助物資と考えられるものを集計した数字」と、こういうようにわざわざ断わり書きを書いてあるから私はお尋ねしたのです。援助物資の数字だというのではなしに、援助物資と考えられるもの、これは絶対に動きませんか。
  213. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまあります資料では動きようがございません。
  214. 横路節雄

    横路委員 それでは通産大臣にお尋ねしますが、この点は去年椎名通産大臣に私がお尋ねをして、あなたもそこでお聞きの通りだと思うのですが、これは貿易庁で受けたものについては、まず第一、援助物資か商業物資かは規定していないのですよ。それからその貿易庁で受けたものに対しては、金額は書いてないんですよ。日本政府が貿易資金特別会計時代に貿易庁で受け受け取ったその受け取り書には、これは援助物資か、それとも一般商業輸入の物資かは規定していない。しかも金額が書いてない。それを何で仕訳できたのですか。
  215. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 それは当時といいますか、占領当初からの実情をこの前詳しく御説明申し上げたと思いますが、御指摘の通り、当時は策占領下でございますので、いわゆる仕訳が非常に困難でございます。しかし手元に残っております証憑によりまして、いわゆる援助と考えられるもの、あるいは通常物資と考えられるもの、それを仕訳をいたしまして、そしてただいま申し上げるような数字を集計いたしたわけでございます。ただいま手元に持っておる資料ではこれ以上のものはまず出てこない、かように私ども確信を持っておる次第でございます。
  216. 横路節雄

    横路委員 そうすると、通産大臣、今あなたが確信を持っているということは、日本政府が貿易資金特別会計時代に貿易庁で受けた通知書、受領書でこれが判断できるというのですか。
  217. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その通りでございます。
  218. 横路節雄

    横路委員 それは大へんですよ、あなたの答弁は。それは大へんですよ。そういういいかげんな答弁をされてはだめです。何を言っているんです。そういう答弁ができますか。私は去年から何べんも聞いているんですよ。一体この十七億一千六百九十二万五千四百二ドルについては動かない数字ですか。日本政府がどういうように積算をしたか、今は私はあなたにこう聞いたんですよ。貿易資金特別会計時代に貿易庁が受けたそれぞれの受領書は、一般商業物資、援助物資の仕訳はついていない。しかも貿易庁が受けたそれぞれの資料に金額は書いてない。今あなたは書いてあると、言ったではありませんか。何をそういう答弁をなさるのです。書いてないですよ。書いてないものを何で仕訳ができたのだ。そういう答弁をされてはだめですよ。
  219. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど来お尋ねのございましたように、通産省の持っている資料、それを計算して集計したのだ、実はかように申したわけです。今非常に大きい声をされておりますけれども、どういうことなのか。もう少し詳しく私の方、通産省の手にある資料、それをもう少し中身を言えというお話なら、あなたのおっしゃったのと私の言うのは食い違いがあるかもわからない。これはむしろ、横路さんが事情を御存じの上で、特別なものだけあげて、そうして佐藤は落とすだろうというので大きい声をされたかと思いますけれども、これは私も大へん残念に思います。そこでガリオア物資につきましては、昭和二十四年四月以降の分について、米国対日援助見返資金特別会計が設けられた当時から明らかであったので、これによりまして、昭和二十四年三月以前の分については、司令部遺留資料により――これは遺留という言葉を使っておりますが、ただ残したという意味でなくて、特別に司令部が処理していたその材料、それを司令部の責任者が帰った後、日本銀行でやはり引き続いて処理した、その遺留資料によって、援助物資として受領したことが明らかな物資について、米側の決算資料、IMF統計その他の資料に基づいて、当時の国際価格に照らし最も合理的と認められる価格により集計した、こういうことでございます。
  220. 横路節雄

    横路委員 あなたは大きな声を出すとか出さぬとか言っているが、そのこととは関係がなくて、あなたは間違った答弁をするからだ。あなたは、貿易資金特別会計時代に、連合軍司令部から貿易庁が受領したその受領群の中に、援助物資だとか商業物資だとか区別はない、金額は書いていない。その金額の書いていないものを、あなたは今ここで、いわゆる確定の援助総額である、こういうように言うから、私がそうですかと聞いたら、あなたはそうだと言った。ところが今伊藤次長から注意をされた。あなたはよく御存じないようだ、御存じないままにあなたは答えている。知っていないですよ。それではあなたにお尋ねしますが、通産大臣、アメリカの遺留した資料には金額が書いてありますか、貿易資金特別会計時代の貿易庁が受け取ったものには書いていない。総司令部が残したものについても金額が書いていない。それをどうやってはじいたのですか。
  221. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 金額の書いてあるものもありますし、書いてないものもあります。そこで、ただいま私が間違いのないようにこの書いたものでお答えをしたように、各種の資料からそれを算定して、(「各種とは何だ」と呼ぶ者あり)IMF統計資料その他です。
  222. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、あなたが今書いてあるというのは、第八軍の払い下げ物資には書いてあるでしょう。あるいはアメリカ以外の域外調達のものについては書いてあるでしょう。しかし総司令部が遺留したものについても全然金額はないのです。そうすると、今あなたはIMFその他でもって算定をしたと言うが、そうすればどういうことになるかというと、あくまでもこれは推定金額ではないですか、確定金額ではなくて推定ではありませんか。
  223. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 確定という言葉が気に食わなければ、これは取り消してもようございますが、いわゆる私どもが持つ資料で、いろいろ信憑を持ち得る集計金額というのが、お手元に差し上げた資料でございます。そういうように御了承いただきたい。ただいまあります資料――遺留資料であるとか、あるいは見返り資金その他の資料であるとか、また金額を番いたものもありますし、ないものもある。あるいはまた当時の会計そのものにいたしましても、複数レートでございますから、いろいろむずかしい算定があるわけであります。あるいはまた御承知のように、運賃等につきましても、当時の運賃レートもずいぶん変わっております。それを納得のいくといいますか、そういう意味で適正なものにして、そうして集計した数字でございます。
  224. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、これはあくまでも確定した援助総額ではないのですよ。これは推定の金額です。それでは一つ言いましょうか、二十四年四月以降の対日援助物資については輸入諸掛りというものは引いてある。ところが二十四年三月以前のものについては、輸入諸掛りは引いてない、そういうことは御存じですか。
  225. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 事務当局から説明させればはっきりするでしょうが、事務当局は、ただいま引いていないとおっしゃったが、引いてある、かようなことでございます。ただ、先ほどからお話が推定の数字かどうかということでございますが、推定という言葉が適当かどうか、私どもが申すように、信憑すべき妥当な数字ということは言えるのか、そこが一つの議論の点だろうと思うのですが、私どもは、いわゆる推定というような感じでなくて、あります数字から信憑性を持ち得るものを集計した、いわゆる妥当な数字だ、かように実は考えております。
  226. 横路節雄

    横路委員 いや、通産大臣、今あなたが指摘をした二十四年三月の――一つの例ですよ、二十四年四月以降のものについては、輸入物資から輸入諸掛りは引いて、対日援助見返資金特別会計に入れてある。ところが二十四年三月までのものは引いていないのですよ。あなたの方でどうしてもがんばるならば、私の方でここへ資料を出しますよ。
  227. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま事務当局の話を聞きますと、シフ価格だそうでございます。シフ価格でありますので、ただいま御指摘になりますような諸掛り費は引いてあるということであります。
  228. 横路節雄

    横路委員 これは違います。これは貿易特別会計ですよ。貿易資金特別会計のときに一体どれだけの輸入諸掛りを支出しているかというと、輸入諸掛りについては当時の金で九十五億五千万円、これは全部日本の負担になっておるのですよ。その場合には九十五億の負担になっていますよ。
  229. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 事務当局から直接説明させます。
  230. 伊藤三郎

    伊藤説明員 ただいまの点お答えいたします。二十四年三月以前も、二十四年四月以降も計算方法としては同じでありまして、シフ価格を出しております。従いまして通産省で計算いたしました十七億九千五百万ドルというのはシフ価格でございます。従って国内における諸掛りというものは、その中には加算されておらないわけであります。
  231. 横路節雄

    横路委員 そうではないのですよ。二十四年四月以降は、あなたの言うように、対日援助物資処理特別会計、そこに入ってきたものから輸入諸掛りは引いて、そして対日援助見返資金特別会計に入れたんだ、だからあなたの言う通り、その点については輸入諸掛りは引いてある。ところがそうではなしに、二十四年三月までは、輸入諸掛りは日本の負担になっておる。あなたは全然違いますよ。そういうことをあなたがおっしゃるのは間違いです。ここにある昭和二十四年度、「国の予算、その構造と背景」、大蔵省主計局がやっておる、これは当時の文部大臣の池田さんが大へんいい本だとほめている。一番最初に書いてあるがね。明らかですよ。これはこういうように数字が出ておる。この輸入諸掛りについては出ておる。しかも今私が申し上げた貿易資金特別会計で、その輸入諸掛りについては、当時の金で九十九億五千五百万円支出をしていますよ。日本の負担になっておる。あなたは違うと言うならば、ここに二つの資料があるからここに来て見られたらいい。違いますよ、それは全然。
  232. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の四月以降でありますが、これは援助物資のシフ価格を一ドル三百六十円、ある時期は三百三十円のときもございましたが、大体一ドル三百六十円で換算した額を積み立てております。それから今度通産省で計算いたしましたのは、シフ価格をドル建で計算をしたものでございます。従いまして、輸入諸掛りは、十七億九千五百万ドルの中には入っておりません。
  233. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、お聞き下さい。あなたは、伊藤次長も……。
  234. 伊藤三郎

    伊藤説明員 ちょっと補足して。二十四年四月以降は……(横路委員「以前を聞いているんです。」と呼ぶ)二十四年の三月以前でございますね。三月以前、通産省で計算しましたのは、シフ価格でございますから、その中には輸入諸掛りは入っておりません。日本へついてからの諸掛り、いわゆる輸入諸掛りは入っておりません。
  235. 横路節雄

    横路委員 ところがこの会計では、二十四年三月以前のものについては、輸入諸掛りを日本が負担をしているんですよ。日本が負担をしている。日本が負担をしているから、当然二十四年三月以前のものについては、あなたの方の計算からいっても輸入諸掛りは差し引いておかなければならぬ、こういっているのです。二十四年の四月以降は、あなたの方は対日援助処理特別会計に入った中から輸入諸掛りを引いて、対日援助見返資金特別会計に出している。だから引いているのです。二十四年四月以降は引いていることはその通りだが、二十四年正月は日本の負担になっているから、当然二十四年三月以前のものについては、これは引かなければだめだ。  委員長、これは私のところに資料があるわけだから、この点については軍務当局にこれを見ていただいて……(発言する者あり)いや、そうでなければ、援助総額は違わないというのだから、これはやってもらわなければならぬ。
  236. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、ただいま理事同士の話し合いもございましたので、この際暫時休憩いたします。正七時よりかっきり始めまするから、どうか御迷惑でもお集りをいただきます。    午後六時二分体感      ――――◇―――――    午後七時十二分開議
  237. 山村新治郎

    山村委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。  横路節雄料に発言を許します。なお横路君に申し上げまするが、御存じの通り、実はお約束の時間が超過いたしております。しかし、せっかくの社会党を代表する締めくくり総括質問でございますので、特に時間を寛大にいたしたいと思いまするから、横路君の良識を期待いたします。横路節雄君。
  238. 横路節雄

    横路委員 私は池田総理お尋ねをしますが、ただいま休憩中に各新聞社の夕刊が届いたわけです。この夕刊を見ますと、先ほど総括質問の劈頭に私があなたにお尋ねをした、あす日本時間で午前九時にケネディ大統領は全米放送をする、それは大気圏核実験についてする、しかも、けさNHKテレビ放送で、UPIはライシャワー大使を通じて、池田総理に話をしている。これは去年の六月の池田ケネディ会談で、これらについては通告することになっている。しかもきのうライシャワー大使が来て、あなたに通告をしている。しかも新聞には、ていねいに、ケネディ大統領池田総理あて書簡で、一、自由世界の安全保障のため実験が必要である、一、ソ連が査察と管理を伴なう効果的な核実験停止協定に同意するよう希望する旨述べている模様である。私が今あなたにこのことをお尋ねしているのは、国会を通じて、私たちは国民外交上の問題にしろ国内経済問題その他にしろ、明らかにするのが、これが政府の任務であり、また私たち国会議員が国会論議を通じて政府の意向をただして、われわれの意見も述べていくということが、これは私は民主議会のやり方だと思うのです。民主政治のやり方だと思う。あなたは先ほど、これは秘密だから言えません、こう繰り返し答弁されているが、どの新聞を見ても全部その内容まで出ている。私はこの問題については、別に社会党を代表してとか野党とかなんとかという立場でなしに、もっと国会審議を尊重してもらいたい。新聞にこれだけ出ている。一方では秘密だから言えない、一方では新聞にどんどん出てくる。こういうやり方では、私が劈頭にお話ししたように、吉田内閣と同じ轍を踏むのではないかと思うのです。もう一。へん国会審議を通じて、この問題については、あなたの所信なりを明らかにすべきだ、ここまで問題が明らかになっているのですから。それではあなたは、もしもここでこの点についてのあなたのお考えが述べられないとするならば、それは私は国会軽視もはなはだしいと思うのです。このはただ単に社会党という立場でなしに、一番よい機会なんですから、あなたのお考えをぜひ一つこの国会論議を通じて、国民の前に意思を明らかにしてもらいたい。
  239. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国会での論議、御質問に対して、できるだけ真実をお伝えすることが、私としての当然の積務ということはよく存じております。しかし外交上の問題につきまして約束したことは、しかもその約束が非常に国のために悪いとか、あるいは非常に支障が起こるということなら約束はいたしません。しかし大して支障のないこと、時間的に非常に短かい間で済むことにつきましては、私は約束を守りたいのです。それが国のためになると私は考えておりますので、けさほど申し上げたように、今ここでお答えするわけにはいきません。
  240. 横路節雄

    横路委員 この点は、総理大臣、あなたのお考えは私は違うと思う。ケネディ大統領とそういう約束をした、あすの午前九時にケネディ大統領が全米放送でこの点を明らかにする、それにつれて、あなたは、あなた御自身のお考えをどういう機会かに発表しようというのでございましょうが、しかし、きょうの夕刊は全部そのことを伝えているわけです。これだけ明らかになっているのを、ケネディ大統領約束したのか、ライシャワー大使との間に約束したのかわかりませんが、しかし一番よい機会ですから、あなたはやはり私のこの質問に答えて、この国会審議を通じて、この大気の核実験については、反対なら反対だと、こういう立場を明らかにすることが、私は政治のやり方だと思うのです。この一番よい機会に、なぜあなたがここであなたの意思を明らかにできないのです。これは一体どういうことなんです。あなたは賛成しようというのですか。あなたは核実験について賛成だというのですか。なぜ一体この国会論議を通じて、最もよい機会にあなたはここで答弁できないのですか、もう一ぺん御答弁いただきたい。
  241. 池田勇人

    池田国務大臣 核実験についての私の所信は、今朝御質問に対してお答えした通りでございます。私は理由のいかんを問わず、それが大気圏であろうが地下であろうが、絶対に反対であるということは、昨年の六月、ケネディ大統領に申し述べております。しかもこのことにつきましては、けさほどお答えしたように、今もなお全然変わりはないということだけは申し上げられます。申し上げられないことは、そういうライシャワーを通じてケネディからの書簡が来たか来ないか、こういう意向を持っておるかどうかということにつきましては、ただいまのところ、その事実を肯定も否定もいたしません。これが私の考えでございます。
  242. 横路節雄

    横路委員 それでは、あなたに一つお尋ねをしておきますが、明日予算委員会は午前十時から始まるわけです。おくれても午前十時十分か十五分だと思います。日本時間の午前九時には、ケネディ大統領は全米放送が終わるわけです。それではあなたはあすの予算委員会で、討論、採決の前に発言を求められて、この委員会ライシャワー大使から来た書簡の内容その他について発表できますね。そのことだけをあなたにお尋ねしておきます。
  243. 池田勇人

    池田国務大臣 私はあすの九時に発表するかどうかということにつきまして、はっきりまだ確かめておりません。従いまして、もしどうこういうことがありましたならば、すなわち発表その他がありましたならば、私の考えは適当な時期に申し上げたいと思います。また申し上げることが私としての務めだと思います。だから、あすの初っぱなに申し上げるかどうかということは、これは予算委員会の運営によって御決定願いたいと思います。
  244. 横路節雄

    横路委員 じゃ私から委員長に希望しておきます。この委員会の散会後でも、でも、おそらく理事会が開かれましょうが、日本時間で明日午前九時には、ケネディ大統領の今の大気圏内における核実験についての全米放送がある。いわゆるケネディ大統領からのメッセージの内容その他について、明日は予算委員会の劈頭に、総理大臣から一つここでその全貌を明らかにしていただくように、ぜひ委員長において取り計らいをお願いしたいと思うのです。
  245. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げますが、ただいま政府からも、明日そういうことを言えるかどうか、はっきりわからないという御言明がございます。従いまして、きょうから予算委員会におきましてお約束するわけに参りません。いずれ明日の委員会は、おそらく先ほどの理事会の話し合いによりますと、討論、採決の問題になりますので、その前に理事会等がございましたならば相談をいたすつもりでございますが、ただいまそれをお引き受けするわけには参りません。御了解いただきます。
  246. 横路節雄

    横路委員 次に外務大臣お尋ねしたいのです。これもただいまわれわれにニュースとして伝えられているのですが、ビルマでは、昨夜から今朝にかけてクーデターが行なわれまして、陸軍参謀総長のネ・ウィンというものがクーデターをやり、ウ・ヌー政権は倒れたというのですが、一体外務省の情報はどうなっておるのか、その点について一つお尋ねしたいと思うのです。なぜ私がこの点をお尋ねするかといいますと、先般いろいろ新聞の報ずるところによりますと、ビルマ賠償については、留保条項によりまして交渉する、こういうように伝えられておりますので、今回のクーデターで、ビルマ賠償についての留保条項に基づくところの交渉はどうなるのか、こういう関係もございますので、これも先ほどの休憩中にわれわれに伝えられておる点でございますので、外務大臣からぜひ一つ明らかにしていただきたいと思います。
  247. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ビルマのクーデターにつきましては、ネ・ウィン氏が――この人は国防軍最高司令官兼参謀総長でございますが、この人の率いる軍がクーデターを行ないまして、無血革命に成功したということでありますが、詳報は公電が入っておりません。飛行場も軍の統制下に置かれているということでございますが、まだ全貌について公電が到着いたしておりません。革命の直接の動機等については、従って公電到着を見た上で十分申し上げたいと存じます。  対日政策が変わるかどうかということについて判断をいたしますことは、時期尚早でございますが、ネ・ウィン政権は、御承知のようにウ・ヌー政権の前にあった。その当時の対日政策から考えまして、従来の対日政策には大きな変化はないのではないか。これは即断は早いのでありますが、常識的にさように思っておる次第でございます。  賠償問題については、政局の安定を見た上でないと確たることは申し上げることはできませんが、この点に関しても、あまり特段の大きな変化はないのではないかというふうに想像いたしております。
  248. 横路節雄

    横路委員 それでは先ほどに引き続きまして、ガリオア・エロアにつきましてお尋ねをいたしたいと思うわけです。  先ほどの二十四年四月以降の対日援助見返資金特別会計の輸入諸掛りの問題、二十四年三月以前の問題につきましては、少し細部にわたりますので、これは外務委員会に譲りたい、こう思うわけです。  そこで、私は佐藤国務大臣にお尋ねをしたい点は、先ほどあなたの御答弁で私どもが明らかになりましたことは、まず貿易資金特別会計自体の、わが国の貿易の専属機関としての貿易庁が総司令部からいろいろ受領した品物の受領書には、それが援助物資であるか、商業物資であるかについては書いていない。第二点は、もちろんその点については数量は書いてあるけれども、しかし金額については書いてない。従って、日本自体としては、算定すべきいわゆる基礎数字は全く何ものもないと私は思うわけです。なお、先ほどのあなたの答弁で、一体この十七億一千六百九十二万五千四百ドルとはじいた金額は何であるかというと、アメリカ側資料に基づいてやったのだ、こういうのであります。私は、あなたにこの際ぜひ一つ明らかにしてもらいたい点は、私どものところに通産省から正式に配付されました十九億ドルというアメリカ資料――私は先般予算委員会でもお尋ねをし、その後いろいろとあなた方の関係機関に尋ねましたところ、どういうようにしてガリオァ、エロアの援助物資の金額を算定したかといえば、日本には全く資料はない、従ってアメリカ資料に基づいてやった。そこでたとえば昭和二十年、昭和二十一年は、アメリカ資料では何ら仕訳をしていないわけです。  もう一度申し上げます。昭和二十年、昭和二十一年は、これはプレ・ガリオアと呼ばれていた時代、ガリオア以前と呼ばれていた時代、これについては仕訳はなかなか困難だ、金額は書いてない。それでは何でやったかと聞いたら、昭和二十二年度、一九四七年度のアメリカ側の決算資料に基づいて、その総額を数量で割ったものを推定金額として日本の通産省がはじいた。それを昭和二十年、二十一年に用いているのです。だから、これは全く推定金額なんです。今度は一九四七年、日本の二十二年の金額は何ではじいたかというと、アメリカ側の二十三年の金額を総数量で割って単価を出して、それを機械的に出しているわけです。こういうやり方で、一体かりオア、エロア援助については、これがほんとうに日本が受け取った正式の価格と言えるでしょうか。  そこで私は河野農林大臣にお尋ねをしたいのです。河野さん、私もあなたと一緒に予算委員会で当時席を並べていたわけです。あなたは昭和二十九年二月の予算委員会で、この場所で、当時は吉田内閣です。大蔵大臣は小笠原さんです。外務大臣は岡崎さんです。そのときあなたは吉田総理大臣に、昭和二十四年三月以前のものについては算定すべき資料がないではないか。現に今通産大臣が私に答弁したように、日本側の機関としては、援助物資、商業物資、金額その他をはじく何ものもない。あなたはそのとき、この間の事情を十分御承知だったと思う。そこであなたは吉田総理に何と言ったかというと、一体こういう何ら算定すべき確たる証拠がなくて、二十四年三月以前のものが払えますか。二十四年三月までのものは、これは絶対払うべきではない。対日援助資金見返特別会計ができた二十四年四月以降を基礎にしてやるべきだ。あなたは債務であるという観点に立っての御質問でございましたが、これは当時の予算委員会の記録に明瞭になっているわけです。河野さん、あなたは二十九年三舟、予算委員会委員としてここで吉田総理を追及されて、吉田総理も腹を立ててのことでしょうが、証拠書類のないものは払わないと言った。あなたはそれで引き下がったのです。今度立場を変えて、池田内閣の農林大臣として、あなたはこれに賛成をされたのかどうか。あなたは当時われわれと同じにここで席を並べて、予算委員会でやった。私は当時の会議録も持っているし、私自身はあなたと一緒に聞いたのです。あなたは今回農林大臣としてガリオア、エロアの協定に賛成したというのは、私はちょっと筋が通らぬと思うが、どうなんです。
  249. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。  御承知通りに、その当時いろいろ御議論はありました。私は、この問題の解決は、アメリカ側も言いますように、全体の数字を四分の一程度に引き下げて決済をするのであるから、何分占領中のことでもあるし、その時代のことであるから、アメリカ側としても正確に全部のものを支払え云々ということじゃない、そこまでアメリカ側も引き下げて請求するのであるから、双方のために解決をしようじゃないか、こういうことのように私は了承いたします。そこで私は、そういうふうな解決方法は、いずれ解決しなければならぬ問題であるならば、総括して解決することが妥当であろうという立場に立って賛成いたしておるわけであります。
  250. 横路節雄

    横路委員 河野農林大臣の今の答弁は、当時のお考えとは全く変わっているわけです。あなたは当時対米債権四千七百万ドルの問題についても、通産省の資料を十分承知の上で二十八年七月のこの国会質問をしているわけです。だからあなたは、今佐藤通産大臣が私に答弁しましたように、日本側としては何ら算定すべき金額もない、援助物資、商業物資のその仕訳もつかない、だから、三十四年三月以前のものについては、これを債務の対象にすべきではないというのがあなたの考えであったわけです。その点が、今、池田内閣の閣僚としてこれに賛成されたことは、当時のあなたのここにおける発言とは全く違うわけです。  次に私は、この点は総理にもぜひお聞きをいただきたいと思う。一九五〇年におけるアメリカの第八十一国会の下院の歳出委員会、ドッジ氏が提案したステートメントの中で、次のように言っています。対日援助の主要な援助物資であった食糧、綿花はいずれも過剰物資であり、食品金融会社によってすでに買い上げられているが、これは現行方法によって買い上げなければならないものである、その限りでは、現在も将来も政府支出の増加を意味しない、こう言っておるわけです。  先ほど佐藤通産大臣から、日本側には何ら数字がない、金額が示されていないというお話がございました。そこで私は、推定の金一額について、一々計算をしてみました。計算をしてみました結果、いわゆる昭和二十四年三月以前の小麦につきまして、通産省がはじいたトン当たりの価格を、年度一年前のそれぞれの日本側が算定した数量に、全部計算を合わせてみました。そうしてその合わせた計算に基づきまして、日本側が計算しているものと、当時私の手元に出されておりますところの通産省から出した当時の貿易資金特別会計時代における援助物資該当物資の国際価格について、これは出されたあなた方の資料に基づいて、私は一つずつ計算をしてみたわけです。その結果、二十年から二十四年三月までの、あなたたちのはじいたものの数量にかけてみると、実に驚くべき、小麦だけで、あなたたちの計算は二億一千六百三十九万八千二十九ドルであるけれども、これを国際価格――国際価格といっても、IMFで出しているこの国際価格で計算すると、驚くべし、二十四年三月までにアメリカ小麦が六千六百六十三万八千百七十八ドル不当の利得です。二億一千六百三十九万ドルのうち、あなたたちが示した計算によると、実にアメリカは六千六百六十三万八千ドル不当利得をしているわけです。それだけ日本は高く買わされているわけです。この点を私たちはあなたに指摘をしなければなりません。たとえば石炭について、通産省が私のところに出している資料に基づいて計算をすれば、アメリカ側の計算は、昭和二十二年の石炭については一九四九年のアメリカ価格で計算すればどういうことになるかというと、実にトン当たりアメリカ港渡しで十九ドルです。先ほど私が言いましたのも、全部これは運賃は別ですよ、別の計算ですから……。ところがアメリカの国際価格によると、石炭はその当時トン当たり九ドル六十九セント、昭和二十三年のいわゆる援助物資によるところのアメリカの石炭は、トン当り、正味だけで実に十ドル高いものを買わされているわけです。これはあなたの方で示されましたそれぞれの数量、金額に基づいて私は全部はじいたのです。こういうふうに、小麦については、わずか二十年から二十四年三月までのもので、三億一千万ドルで、その三分の一に匹敵するような約六千七百万ドルが不当利得、石炭については、トン当たり九ドルのものが十九ドルになっている。これが、この二十四年以前のいわゆる援助物資と称するもののアメリカ価格です。ドッジがステートメントの中で言っておるように、食糧、綿花についてはすでに買い上げたものだ、アメリカとしてはそれ以上支出は少しも増さないんだ、そういうものを、アメリカとしてはこういう不当な利潤を日本で上げて、しかも運賃は大体四倍ないし六倍とっている。これでもって二十四年三月までのものをはじいて、それが八億四千万ドルあるとか八億六千万ドルあるとかいうことは、明らかに、通産省にしろ外務省にしろ、日本国民の立場に立った場合、もしもこれが援助物資だとしても、この価格は不当である。私はあなたの方の計算に基づいて全部計算したんだ。これは明らかに二十四年三月までにおける不当なアメリカの利潤です。だから、この国会で問題になっているように三重払いではないのです。二重払いなんです。二重払いどころではないですよ。この点についてはどうですか。私はここに全部計算したのですよ。
  251. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今、運賃は六倍とか四倍とか、言われたが、何ぼに計算されましたか。
  252. 横路節雄

    横路委員 それじゃあなたに言いますが、私の方は、あなたの方の関係機関を呼んで、小麦については全部計算したのですよ。小麦については、いいですか、もう一ぺん言いますよ。あなた聞いて下さい。
  253. 山村新治郎

    山村委員長 個人的なやりとりはやめて下さい。委員長の許可を得て発言して下さい。
  254. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、あなたにもう一ぺん申し上げますよ。いいですか。昭和二十年のいわゆる援助物資であるという小麦についての計算はどうしたか。私は伊藤次長を呼んで聞いた。それは二十二年、一九四七年のものについては、おそらくこれはあなたは御存じないだろうと思う。米国の対日援助総額というのが決算資料に出ている。ここに出ている数量、金額は、これは正味なんです。運賃は入っていないのです。そこで金額を数量で割れば、トン当たりのいわゆる港渡しのものが出ますね。そこでこの点について、アメリカの国際価格について私は全部ここで計算をしたのです。これもあなたの方で、国際価格については出しているのですよ。全部私はあなたの力の資料に基づいてやったのだ。あなたの方の数量に基づいて、金額についてやって、それを一々はじいて計算をすれば、今私が指摘をしたように、運賃を除いてのことですよ、二十四年三月までは総額二億一千六百三十九万ドルだが、アメリカがいわゆるアメリカの国際価格で売れば、これから六千六百六十三万ドルを引いたものになると、こういうのです。わかりましたか。
  255. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま計算されたことについては、お答えを事務当局からいたさせますが、その前に一言お尋ねしたかったのは、先ほどのお話のうちに、運賃が四倍も六倍もというようにちょっと言われたかと思うので、どういうように運賃を計算されたのか、それをちょっと伺って、その総体としてのお話一つさしていただきたい。ちょっと私、御意見に不明な点がありましたので、お尋ねをしておるわけです。
  256. 横路節雄

    横路委員 その点は、日本興業銀行に残されている、たった一冊しかないそうです、私はその本を日本興業銀行から借りてきたわけです。日本興業銀行の調査部に残っておりますところの、いわゆる対日援助に関する物資の中の運賃、その運賃をもとにして私は申し上げたのです。それは日本興業銀行の調査部に残っている。今日、対日援助物資に関するところの運賃については、全部その本をもとにして引用してますから、従って私もそれを申し上げたのです。
  257. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その金額はトン当たり幾らというようなレートになっているのですか。それをどういうような計算をなすったかということを伺っているのです。運賃レートはトン当たり幾らか。その出された根拠は、ただいまのでよくわかりました。
  258. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、私の今の点についての総体の金額は、運賃を入れてないですよ。なぜ運賃を入れてないかといえば、あなたの方がここに出してきた米国の決算資料に基づいては、運賃総額は出ているけれども、その中身については、あなたの方では計算できないと言うのです。だから私も、こういう興業銀行の調査部が出している運賃については四倍だとかと言いました。しかし私が今申し上げた小麦については、正味の価格を言っているのです。この点はどうなんですか。
  259. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その運賃のお話は、何というか、本筋に合わして御説明の材料としてなすったと、かように私理解して、別に運賃に答えなくてよろしいわけですね。
  260. 横路節雄

    横路委員 運賃は、この点については、あなたの方で計算してないのですよ。
  261. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その通りです。
  262. 横路節雄

    横路委員 計算すべきものを計算してないのです。運賃についてはわからないというのです。そはでは小麦の総額についてお答えなさい。
  263. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 事務当局に説明させます。
  264. 横路節雄

    横路委員 委員長、今の通産大臣のやり方は一体何だ。自分の言っている小麦の総額について――一体今のようなやり方は何ですか。(発言する者あり)小麦について答えなさい。何です、今のやり方は。
  265. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げます。あまり興奮しないで下さい。ただいま通産大臣が答えます。
  266. 横路節雄

    横路委員 通産大臣が答えなさい。
  267. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 数字がわからないから、事務当局で説明させますと実は申し上げたんです。
  268. 山村新治郎

  269. 横路節雄

    横路委員 あなたも私に聞いているから、私もあなたにお尋ねしたのです。
  270. 山村新治郎

    山村委員長 私は委員長として議事を整理する責任がございます。従って伊藤企業局次長発言を許しましたから、その点御了解いただきます。伊藤企業局次長発言して下さい。
  271. 伊藤三郎

    伊藤説明員 通産省でいたしました小麦の計算を申し上げますと、二十二年度を申しますと、司令部の決算資料からは大体百ドル五十八セントになるわけでございます。それに通貨を十四ドル二十三セント加算いたしまして、百十五ドルで計算をいたしております。それに対しまして国際価格では、IMFの九十八ドルあるいはコモディティ・イヤー・ブックの百一ドルというのがございますが、これはシカゴ取引所あるいはテキサスシティ渡しということでございまして、司令部の百ドルばかりというのは、港の舷側渡し、いわゆるFAS価格でございます。IMF、CYは内地の価格でございますので、実際港に持ってきますと、これ以上さらに所要の鉄道運賃なり経費なりがかかるわけでございます。従いまして、通産省で二十二年に単価でとりました百十五ドルというのは、運賃もこれは入っております。従いましてこれは決して高いという数字ではないと思います。
  272. 横路節雄

    横路委員 いやいや、今の数字は違いますよ。今の数字は、あなたの方で出されたのはシカゴの価格二ドル三十セントを言っているだろう。ところが私の言っているのは、あなたの方で出してきたこの価格なんだ。国際価格で一九四五年から四六年、そのトータルは何、一九四六年から四七年はどうというので、私は全部出したわけです。だから、たとえば四五年から四六年のいわゆるトン当りの価格は、私の計算によれば、アメリカの国際価格は二十年は四十四ドル八セント、昭和二十一年は五十七ドル八セント、昭和二十二年は六十九ドル四十三セント、昭和二十三年は六十ドル三十三セント、この点は取り方によって違うのです。しかもこの点は、さらに私は申し上げておくが、一九四九年から五〇年の国際小麦協定におけるアメリカの最良質の小麦で、最高価格は一ドル九十セントになっている。一ブッシェル一ドル九十セントというのは、今ここに数字がございますが、この一ドル九十セントの価格は、ロングトンに直して五十三ドル四十六セントになる。全然値段が違うのだ。一九四九年から、五〇年の国際小麦協定におけるところの最良質のもので、最高価格は今申し上げたように一ドル九十一セントである。この点はロングトンに直して五十三ドル四十六セントなんです。こういう点については、これは明らかに不当ですよ。あなたの方も、これは推定の価格なんだ。私の方も、これについてはあなたの方から示された統計によってはじいたものなんだ。だから、先ほど一番最初私が通産大臣に申し上げたように、この日本側が言う十七億千六百九十二万ドルというのは確定の援助総額なのか、推定の援助総額なのかということになると、それは国際価格のとり方によって違うのです。だから、私はそのことを申し上げている。どうですか。そのとる国際価格によって、アメリカ国内価格によって、この十七億一千六百万ドルは動くじゃありませんか。だから、私はこれは確定ではなくて、推定の援助総額だと、こう言っているのです。この点はどうですか、価格のとり方によって違うのです。
  273. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど確定という言葉については、途中でその点を私も直さしていただいたと思います。なお、ただいま……。
  274. 横路節雄

    横路委員 どういうように直したのですか。
  275. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 それはこれから申し上げます。  ただいま御指摘になりましたように、当時の価格のきめ方、あるいは船運賃にいたしましても、なかなかきめ方がむずかしいんです。そこで国際価格だとか、あるいはアメリカの決算の資料であるとか、IMFの統計だとか、そういうようなものからまず妥当だというものを出して、そうしてそれで集計を作ったのでございますということを実は申し上げてございます。なお、いろいろ御議論があって、このとり方がこうなればこうだろうという、それは基礎数字が変われば、出てくる数字が違うことも、これは当然でございます。ただそれが、いわゆる客観的妥当性をどの程度持つかということ、これが一番大事なことだろうと思います。そういう意味において、私どもがこの十七億五千万ドルというものについての信憑性を皆様方に申し上げておるわけでございます。だから今言われる推定という言葉をどういう観念でお使いになりますか、結局……。
  276. 横路節雄

    横路委員 とり方が違う。
  277. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 とり方が違うとおっしゃるなら、そういうことでございます。
  278. 横路節雄

    横路委員 今の通産大臣の答弁で、その通りなんです。国際価格のとり方で違うのです。だから、私はあなたの方に去年から、一体当時の国際価格はどうですかといってお尋ねをしたところが、一年たって今日やっと国際価格について出してきたのです。だから何べんもその国際価格のとり方について私もいろいろ試算をしてみました。そうしますと、そのとり方によって違ってくるわけです。国際小麦協定の一九四九年から五〇年を見れば、一番よい質のもので最高価格は一ドル九十セントだ、これをロングトンでいけば五十三ドル幾らになる。そういうようにとり方がみな違ってくるから、そういう意味では十七億一千六百九十二万ドルについては、確定の総領ではなくて、推定の総額である。とり方によっては下がってくるのである、とり方によっては上がってくるのである。これをいかにも外務大臣が――あなたは前にどこかの委員会答弁しています。これから下には下がらぬが、これから上には上がるんだ、こういってあなたは答弁していますから、いずれ外務委員会であなたに聞きます。これから下には下がらぬが上には上がるなんと言っているけれども、推定なんです。  そこで私は、次にもう一つこの問題について、河野農林大臣にお尋ねをします。  河野さんは、昭和二十八年の七月、この予算委員会で、あなたは当時野党の予算委員として、対米債権四千七百十二万ドルについて、いわゆる爆弾質問をして、当時の吉田内閣としてはこれに答弁ができなかったことはみな承知しているわけです。この点については、あなたはこの委員会で二回にわたって質問をしています。昭和二十八年七月のときです。そこで私があなたに特にお尋ねをしたいのは、七月七日と七月十四日二回にわたってあなたは質問をしています。あなたの質問の重要な点は、対米債権については商業ベースに乗ってやったものであるから、これはアメリカに対するところの、日本としては別個の独立の債権である。ガリオア・エロアについては、これは援助物資であるから別である。ここでいろいろ論議をされまして、初め政府の方は、この対米債権四千七百十二万ドルについては、ガリオアエロアの総額がいろいろ計算されて、そのときに対米債権は和殺さるべきだという政府答弁でございましたが、あなたはそのときに、吉田総理並びに岡崎外務大臣、岡野通産大臣に食い下がって、この対米債権四千七群十二万ドルについては、商業ベースによるいわゆる独立したアメリカに対する債権であるから、これは絶対に相殺すべきではない。その点の確認をあなたは通産大臣並びに外務大臣にその説明を求めて、絶対にガリオア・エロアとは相殺しない、こういうことを政府側が答弁をして、あなたはここでの質問のほこをおさめたのです。ところが、今回の私たちの手元に出して参りましたこの対日援助処理に関する総額を見ると、あなたはここで明白に、対米債権については、この中で相殺をしているではありませんか。この相殺したことをもって、たとえばです、小坂外務大は、西ドイツは三三・一七%をかけたが、日本は十七億一千六百万ドルでやれば、二八・五%になるから、日本としては大したものなんだ、こう言ってあなたは宣伝をしている。ところが韓国に対する対米債権は、そういうものではなしに、独立した債権として別個にやるべきだとあなたはここで質問をして、政府側がそういう答弁をして、あなたは了解をしたのだ。それをあなたは、今回農林大臣、池田内閣の一閣僚として、この対米債権について、ガリオア・エロアの点について相殺を了解しておるのはどういうことなのか。よもやあなたは、二十八年の七月の七日、十四日、二回にわたって、当時爆弾質問だといわれた対米債権について忘れてはいないと思う。この点について一つあなたの御答弁をいただきたい。
  279. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答え申し上げます。  ガリオア・エロアに対する受け取り方は、私最初のほどは追放中でございまして、国会の様子も存じませんでしたが、国会におきましても、ずいぶんこれに対する受け取り方は、与野党とも変わっておることは御承知通りと考えます。従いまして、国と国との関係におきましても、総合的、総括的に、情勢が変わって参ることは、これまたやむを得ぬことだと私は考えます。諸般の情勢を勘案いたしまして、先ほどお答え申し上げました通りに、総括して処理をするということに今回いたしたということでございます。
  280. 横路節雄

    横路委員 河野さん、よくことわざに、君子豹変するとありますが、河野さんも、いつの間にか君子になったわけですね。これは、あなたはよもや忘れてはいないと思う。私も当時同じ予算委員として、予算理事として、ここであなたのその取り扱いについては、私も協力をしたのです。絶対に相殺すべきでないという立場に立ってやったのですよ。だから、相殺するから、小坂外務大臣のように、十七億ドルでいけば、やれ二八・五%になるとか、こういう自慢話、ほら話が出てくるのです。これは絶対に相殺すべきものではないのです。援助物資におけるものと商業ベースにおけるものとをそういうように相殺すべきではない。私どもは、この成り行きについて注意をしていた。注意をしていたにかかわらず、残念なことに、河野農林大臣が閣僚としてそれに賛成をされたことは、まことに遺憾だと思うのです。  次に、これは外交交渉のことですから、大蔵大臣でなしに、私は小坂外務大臣お尋ねをしたいのです。このあなたがわれわれに出しました資料三の三枚目です。資料三の三枚目とは何をいうかというと、総額から引いていく引き方の中で、韓国、琉球向け建設資材費というのが、五千五百七十八万九千五百四十三ドルをまず総額の中で引いて、それに三三・一七%をかけて、それから今私が申し上げました日韓の清算勘定高、琉球の清算勘定高を引いている。この韓国、琉球向け建設資材費というのは、私の手元に今資料がございますが、昭和二十一年度の連合軍関係費、いわゆる終戦処理費の中から、ここで朝鮮の住宅建設資材費として十二億円、沖縄再建資材その他に要する経費として一億円、これが昭和二十一年度の予算で出されている。この終戦処理費をもしもあなたが、あなたたちの立場に立って、ガリオア・エロアが援助であるという立場に立っても、この終戦処理費をここで引くのではなくて、援助総額その他から、朝鮮に渡したもの、琉球に渡したものを引いて、この終戦処理費の金額については、ここにございます五千五百七十八万ドルについては、当然これは韓国の清算残高、琉球の清算残高のように、西独並みに三三・一七%をかけたその残りから終戦処理費の関係を差し引くのが当然でございませんか。昭和二十九年五月の第一回におけるアメリカ側と外務省との交渉では、この計算は、明らかに終戦処理費は三三・七八%をかけた残から引いているではありませんか。この点について、こういう計算の仕方はどうしてしたのです。
  281. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げますが、最後におっしゃいました昭和三十年の交渉で、その三三・一七八をかけたものから韓国あるいは琉球向けの資材費を引いておるということはございませんようでございます。そういう交渉はいたしておりません。それから、御承知のように講和条約の第十九条では、戦争中占領軍のなした行為に対しのクレームを放棄しておるわけでございます。従って、アメリカ側としては、これは戦争中になした占領軍の行為であるからということで、これは日本がすでに放棄したものではないかという主張をするのは、条約によれば向こうの主張としては一応言えるわけでございます。しかしながら、この行為そのものが日本の占領と占領以外の地区に使われたものであるから、われわれとしては平和条約の十九条にかかわらず、どうしてもこれを引くべきであるということを主張いたしまして、総領から引きまして、そして西独のやったように三三・一七八をその残額にかけるのに使ったわけでございます。私どもとしては、この交渉は平和条約の十九条にかんがみれば成功したものと考えておる次第でございます。
  282. 横路節雄

    横路委員 小坂外務大臣答弁は、それは当を得てないですよ。それは昭和二十五年、昭和二十六年の朝鮮戦争の際に、終戦処理費でアメリカ軍に払ったが、しかし朝鮮に出動した軍隊に要した経費はこれこれあったと、こういって返してきているではありませんか。だから、この昭和二十一年のこの連合軍関係費、終戦処理費の中から韓国の住宅資材、沖縄の住宅資材というものは、終戦処理費というのは日本国内の米軍に払うものを、韓国の資材、琉球の資材に払ったものは、本来からいえば、ちゃんと日本の国庫に返していなければならぬのだ、日本の国庫に返すべきものであるならば、当然これは三三・七%をかけて、その中から――本来からいえば、直ちに日本の国庫に返さなければならぬものを、今日まで返してないんだから、最後のガリオアの返済の総額がきまってから、それを差っ引くのが正しいではありませんか。もしもあなたのような考え方からするならば、終戦処理費を援助総額の中で差し引くというならば、終戦処理費五十四億ドルは、当然そこで相殺をしなければならないではありませんか。この点は、軌鮮事変に出動した際に、日本国内の米軍に使うものを、朝鮮戦争に使ったものは差し引いて国庫に返した。私は、そういう例にのっとって、これは最終的に四億七千なら四億七千ときまったうちから差っ引くのが正しいと思うのです。
  283. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 朝鮮戦争に占領軍が使いました費用は、これは百八十三億円返してもらっております。これは朝鮮戦争ということに対して使ったから、特別にこれについてはアメリカ側の善処を求めたわけでございます。ところが韓国あるいは琉球というものは、かつて日本国内の地域であったわけでございまして、それに占領に来た当初使ったということでありまするから、これは別個のものである、戦争の当時の経費とは別個のものであるということが言えるわけであります。そして、私どもは援助総額は一体幾らであるか、そしてそれから通り抜け勘定、あるいは今言うたようなわれわれのクレームとして成立すべきものを差し引いて、そうして全部のできたものを三分の二切り捨てる、とこういう方式を用いたわけでございまして、先ほど御質問のありましたような、韓国あるいは琉球向けのオープン・アカウントのしりというようなものは、そのネットから控除すべきものである、相殺すべきものじゃなくて、そのネットから差し引かせるべきものである、こういう交渉をいたしまして、最後の残った債権としては四億九千万ドルというものを確定した、こういうことでございます。
  284. 横路節雄

    横路委員 この点については、外務大臣、これはどう考えても、このいわゆる計算の仕方というものは当を得てないです。しかしだんだん時間もございませんから、次に移ります。  外務大臣に重ねてお尋ねしますが、余剰報奨物資について、なぜ支払い総額の中に入れて支払うことにしたのかという点についてお尋ねをしたいと思うのです。なぜ私がこれをお尋ねしたかというと、昨年の五月十七日の予算委員会で、私の質問に答えて、あなたはこう言っています。一九四七年十二月十三日、総司令部から貿易庁に対して報奨物資についての貿易庁への覚書、これには支払いは後日決定すると書いていない。だから報奨物資は問題にならない。あなたはこう答弁しているのですよ。あなたは先ほど私に、食糧の一般輸入に関する総司令部の覚書の中で、支払い並びに経理条件については後日これを決定するというから、だから払わなければならぬのだとあなたは言った。そのあと引き続いて、私は聞きもしなかったのだが、あなたがみずから答弁を求めて、この報奨物資については、貿易庁の覚書には支払いは後付決定すると書いてないから報奨物資は問題にならない。今度の援助総額の中には入らぬ。こういう意味のことをあなたは昨年の五月の十七日答弁しているのに、何で今回のこの援助総額の中でこれを入れているのか。その点についてあなたにお尋ねをします。
  285. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そのSIM、サープラス・インセンティブ・マテリアルというものは、それについて千六百八十ドルで計算するという別の指令があるわけでございます。それに基づいて計算いたしたということでございますが、事務的なことでございますから事務当局から申し上げます。
  286. 横路節雄

    横路委員 私は、事務当局が去年答弁したのであるならば、事務当局の答弁を承ります。しかしあなたは私に、この点、私は聞いてないのですよ。聞いてないのに、あなたが一般食糧に関する輸入物資についての最後の項の支払い条件、経理については後日決定するから、これはいわゆる援助物資になるのだと、その説明をするときにあわせて、あなたは貿易庁に対する一九四七年十二月十三日の報奨物資については、支払いは後日決定すると書いてないから、だから報奨物資は問題にならないと、私は聞きもしないのにあなたはわざわざ答弁をした。だから当然今度は省かれていると思うのに、あなたはこの中に入れてきている。それはどういうわけなんだ。
  287. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一九五〇年の七月二十七日の指令には……。(横路委員「一九四七年です」と呼ぶ)一九五〇年七月の二十七口の指令でございます。これは余剰物資について、あるいはそのQMについて、このQMというのはクォーター・マスター・グッズ、現地の司令官が渡しました物資でございます。それについてはトン当たり千六百八十ドルの基礎においてチャージされるということが書いてございます。
  288. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私の聞いているのは報奨物資なんですよ。あなたの今言っているのは第八軍の払い下げ物資じゃありませんか。しかもあなたは一九五〇年のを言っているだろう。しかも外務大臣、第八軍の払い下げ物資については、トン当たり千六百八十ドルで計算しますよとなっている。あらゆる物資のいかんを問わずとなっている。それは私もその資料を見ました。しかし第八軍の払い下げ物資が、品目のいかんを問わずトン当たり千六百八十ドルとは、これは膨大な計算じゃありませんか。トン当たり千六百八十ドルというのは、私はその覚書を見たときに、単位が一つ間違っているのではないかと思った。千六百八十ドルでみな計算するなんということはない。今昔っているのは第八軍の払い下げ物資なんです。私は一九四七年十二月十三日の貿易庁に対するところの覚書を言っているのです。あなたは去年言っているのですよ。
  289. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 事務当局をして御答弁させます。
  290. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。今横路先生のおっしゃいましたように、昭和二十二年、すなわち一九四七年十二月十三日付の総司令部の覚書は、SIMの、要するに余剰報奨物資の輸入ということに関する覚書でございます。これには支払いの方法、具体的評価というものについては触れておりません。しかしながら、これに関連いたしまして出ました一九五〇年、すなわち昭和二十五年七月二十七日の覚書、これには……。
  291. 横路節雄

    横路委員 どこへの覚書きですか。
  292. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 これは日本政府に対する覚書でございます。
  293. 横路節雄

    横路委員 第八軍の払い下げ物資の……。
  294. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 払い下げ物資ではございません。SIM、QMでございます。SIM、QMを朝鮮事変の動乱の際に返還を命じた、それに関連して書いてきた覚書でございます。その覚書の中に、従来のSIMとかQMというのは、すべて日本に対して提供されたときには、その支払いを延ばすということ、それから後日この清算をするという了解のもとにされたものであるということが二項に書いてございます。最後のところに、先ほどおっしゃいましたように、返還されたそういったものの価格は千六百八十ドルという標準によってやるというのがございます。従って、くどいようでございますが、SIMも、この二つの覚書を合わせますると、やはり支払い方法は後に決定するという了解のもとにあったということを御了解願えると思います。
  295. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、報奨物資というのは、炭鉱労働者に対するところのたとえばゴムぐつであるとか、あるいは小麦であるとか、そういうものなんですよ。そのほか機械類も入っているでしょうが、それをトン当たり千六百八十ドルで計算をしなさい。先ほどからここで言っていることは、通産大臣と議論していることは、一体小麦のトン当たりは幾らなんだ、それは百ドルだ、それに運賃十四ドル幾らを入れてトン当たり百十五ドルに計算したのですよ。それを報奨物資について、あるいは払い下げ物資等も全部入れてトン当たり千六百八十ドルという計算の仕方もおかしいが、同時にもう一つ外務大臣申し上げます。報奨物資については、対日援助物資処理特別会計の中には報奨物資は入れるようになっているが、これから、対日援助見返資金特別会計の中には入れるようには指令書は出ていませんよ。もう一ぺん申し上げます。報奨物資については、二十四年貿易特別会計に入り、あるいは対日援助資金見返特別会計に入る、そのことについては、指令書は報奨物資は出ていないですよ。この報奨物資を入れたことについては、あくまでも不当です。外務大臣から御答弁があるならば御答弁を承りたい。特にあなたは私に対して、一九四七年十二月十三日の報奨物資についての貿易庁への覚書が、支払いは後日決定すると書いてないから、この報奨物資については問題にはならない。わざわざ断わりをしている。この脈についてもう一ぺん外務大臣お尋ねしておきます。
  296. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申し上げたように、一九四七年の十二月二日のSIMに対する覚書、それから一九五〇年七月の二十七日、SIMとQMの価格に関する覚書、これを総合いたしまして、先ほどのような御答弁を申し上げたわけでございます。かつて私がお答え申し上げた中に、この前の指令には、タームズ・オブ・ぺ-メントは後日決定されるということが書いてないということを申し上げたようには記憶いたしますが、であるから、その価格を見返り資金に入れるとか入れないとかいうことには言及していないようなふうに私は思っております。この一九五〇年七月の覚書によりまして、この千六百八十ドルというものが高いというお話でございますが、西独も同じ値段でこれを処理したということでございます。それからなおそれのうちのあるアイテムについては、たとえば五ガロン・カンとか五十五ガロン・カンについて、あるいはスクラップのようなアイテムについては、フェア・ヴァリューでもって、公正な価格でもって支配されるということが書いてございます。なおその支払いのセッツルメントについては、後日決定されるということが書いてあるのでございまして、日本側の扱いとしては、援助物資の特別会計に入れております。
  297. 山村新治郎

    山村委員長 横路君、ちょっと申し上げますが、非常に時間が経過いたして一おりますので、あなたの良識に期待いたします。
  298. 横路節雄

    横路委員 外務大、今の点は、あなたはそういう答弁をしているが、先ほどの食糧の一般輸入に関する覚書くの最後で、支払い条件、経理についてはあとで決定すると、だからこれは債務なんだというときに、あわせてあなたは――もう一度言いますよ、一九四七年十二月十三日の報奨物資についての貿易庁の覚書は、支払いは後日決定すると書いてない、だから報奨物資は問題にならないと言っているのです。あなたがそういうことをわなければ、私もきょう聞かないのだが、あなたがそのときに明瞭に答弁しているから、報奨物資は除いてきたのだろうと思っていたら、入っているから、私はこの点を聞いているのです。  だから外務大臣、通産大臣、申し上げておきますが、従って十七億ドル幾らというこの算定は、そういう意味では全く推定なんです。ますますこれは減ってくる。そういうことだけを申し上げておいて、これが確定した総額である、そういうことで、やれアメリカの数字を用いれば二五%であるとか、十七億ドルを用いれば二八・五%であるとかということはどこから押したって出てこない。  最後に大蔵大臣にお尋ねします。外務大臣に聞きます、もう一度。せっかく手を上げたから、聞きます。ガリオア・エロアの返済について、これは二重払いにならないのだ、ならないのだということで、私はきのうの同僚の井手委員質問、あなたの答弁を聞いていませんが、外務大臣が二重払いにならないというのは、どういう意味なんですか。
  299. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私が西独の場合に比べれば日本のこの返済条件が非常によろしいと言ったことについて、いろいろ御議論がございましたのですが、西独の場合は、まずアメリカの決算べースでもって総合額をはじいたわけです。全体の援助額をはじいた、それについていろいろなクレームを持ち出したということでございますが、これはいれられないで、そして西独の決算ベースのままに三三・一七八というものをかけて、そして十億ドルというものがきまった。もちろんそのいれられないというのに誤解があるといけませんから申し上げますが、マルクで積み立てた費用並びにユーゴー・ナトー政権へ移譲いたしました物資の代金、これが約三億トルだけ引いてございます。しかしその残ったものに対して、全部アメリカの計算をそのままうのみにいたしまして、そして返済額をきめたということでございます。それからわが方におきましては、いろいろ申し上げたような経緯で計算しておるので、有利であると申し上げておるわけでございます。  なお二重払い論でございますが、まず国民の側においては、この価格代金を払って、それを政府がためておるのであるから、政府アメリカとの関係においてはいつか相談をして払う、こういうことをきめてあるのでございますので、それを相談してきめるということは、まだ一度も払ってないものを初めて払うわけでございますから、二重払いにならない、これがまず第一点であります。  それから第二は、国民の側において払った金が、大蔵大臣のお話によりますと二千九百十九億円のものが四千億近くたまっておるという、それがさらに今後十五カ年間に運営されていく、そこで産投会計に開銀関係の納付金その他のものによって払われていくので、元金には手がつかずに残っていく、従って、これまた二重払いというのはおかしいのでありますが、かりに二重払いというものについての仰せのごとき論拠に立ってみても、二重払いにならない、こう申し上げておるのであります。
  300. 横路節雄

    横路委員 二重払いにならないということは、一般会計からの持ち出しがないという意味ですか、外務大臣。その点はどういう意味なんです。二重払いにならないというのは、二重払いにならないとあなたたちがよく言うから、それは一般会計からの持ち出しがないという意味ですか。外務大臣に聞いているのです。
  301. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 見返り資金に積み立てて、そうしてその上にまた今度何か新しく税金で大いに負担して払うということではないということでございます。
  302. 横路節雄

    横路委員 この点については、外務大臣、井手委員から何べんもあなたはお聞きだと思います。一般会計から五百八十六億八千九百四十七万円入れているのですよ。そして、それをまた払うことになれば、二重払いになりませんか、どうですか。一般会計から五百八十六億円を入れているのですよ、その点についてあなたにお尋ねします。
  303. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 見返り資金に積み立てた金が二千九百十九億円ある。それに、いわゆる五百八十六億円ですか、それだけのものを一般会計から入れてあるから二重払いになるんじゃないか、こういうお話でございますが、今申し上げているように、援助物資の見返りの金を積み立てて、それが二千九百十九億円になっておる。それがさらにいろいろな利益を生んで四千億円近くになっておる。それが今後さらにまた利益を生んでいくのであります。十五年間に生んでいく利益の中から全体で二千八十五億円というものを払う。従ってほかのものはみんな残るし、元金の二千九百十九億円というものはそのままそっくり残るのでございますから、さようなことにはなりますまいと申し上げておるのでございます。国民が安い品物を受けて、そして払う、さもなければもっと高いものを受けたものを、安くもらっておるのであるから、これは二重払い議論というのはおかしいではないか、こう申し上げておるのであります。
  304. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、今のは、一般会計から五百八十六億円を入れているのです。だから、そういう意味で総額の中に一般会計から入っている。だから、それを払うことは同時に二重払いになるのです。  そこで時間もだいぶたっていますから、大蔵大臣にお尋ねしますが、どういうふうにしてこれをいわゆる産投特別会計の中で返済をされるのか、その点についてお尋ねをしておきます。
  305. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 本来なら産投特別会計で払わなくてもこれはいいものだと思います。援助物資のドル価格を円換算して積み立てた資金というものは、御承知のように三千六十五億ございましたが、そのうちで電通とか国鉄というようなところへ支出した、いわゆる使用という経理区分になっておったものは、まだ国の機関の財産になって今残っておる。そういうものは一切支払いの元に見ませんで、私どもは大部分を引き継いだ産投会計だけで払うのが一番明瞭になる、しかも産投会計で引き継いだものは、開銀の出資になっておるもの以外に、輸銀とか電発とか、そのほか十六機関への出資金にもなっておりますし、貸付金から見ましたら、開銀に貸した貸付金以外に、一般会計、農林公庫、電通、各所へ金を貸してある。しかしそういうものも一切さわらないで、開発銀行へ貸したものの回収金と開発銀行への出資金から出てくる納付金、これだけで払おう、ほかの援助物資の積立金はたくさんありますが、それは全部省いて、この産投会計のうちの開発銀行分だけでこの支払いをしようという一応の計算を立てましたところが、それでりっぱに払っていけるという計算が出ましたので、現在の試算としましたら、さっき外務大臣が言われましたように、現在四千億円ございます以外に、今運用として経理したものではなくて、見返り資金時代に使用として経理したものに残っている財産もまだそのほかにございますから、総額相当大きいものでございますが、そのうちのごく特定の部分にしぼって、しかもそれを元を使わないで運用で払おうというのですから、これは支払い計画としてはりっぱに払えるものだと考えております。
  306. 横路節雄

    横路委員 もう一つ、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、海運の利子の件です。海運の利子の件については、海運の合理化審議会で、十五次船以前のものについて約千五百四十億残っておる、その支払い利子については、二分の一についてぜひ五年間猶予してもらいたい。毎年五十億円ずつ五カ年とすると二百五十億円になる。この間私は理財局長にいろいろ御説明を承りますと、開銀の納付金は大体年に百三十億円と見ているが、そのうちの八七・七%、百十五億が大体見返り関係への納付金だと思う。そういうことになれば、海運の十一五次船以前の残高千五百四十億円について二分の一の利子を猶予していけば、毎年五十億円ずつ正年間、二百五十億円猶予しなければならない。そうすると、当然この期間は一般会計から繰り入れなければならない。従って私は海運の利子については今いろいろ検討されていると思うが、この点についての支払い猶予その他は、これは当然できないことになると思うが、どうか。もしも海運の利子の支払い猶予について、今私が申し上げたように、年五十億ずつ五年間やるとするならば、その期間はどういうようにするのか、その点について明らかにしてもらいたいと思います。
  307. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 海運問題を考えなければ、さっき申しましたような計算で千七百五十七億の納付金を当てに支払いができるという計算になっております。従って、もし海運についての利子たな上げというような問題が別個に起こるということになりますと、当然納付金が減って参ります。しかし、かりに今言われておるような利子たな上げと申しましても、これは切り捨てるのではございませんで、将来この利子は返ってくるから、計算に狂いはないとしても、その支払い計画から見ましたら、その年次立てかえをしなければいかぬという事態は起こると思います。
  308. 横路節雄

    横路委員 そこで、私は最後に、池田総理並びに各大臣に申し上げたいと思うのです。  先ほどのタイ特別円の問題にしても、私どもはここでの論議を通じて、三十年協定についてはタイ国側の批准は終えてない。従って、これを払ったことについては、私はこの協定は効力がないと思う。さらにその点についてかぶせて九十六億を支払うということは全く不当である。  少しく時間は長くなりましたが、ガリオア・エロアについては、こまかな数字についてお尋ねをしたが、この点については、関係各大臣からわれわれの満足する答弁は得られていない。この十七億については、これは相当程度減額されるものである。  なお、特に河野農林大臣は、私は、二十八年の七月、二十九年の二月の予算委員会を例にとって申し上げましたが、河野農林大臣が、私は政治家としての良心を持って、農林大臣としても閣僚としても、ガリオア・エロアの清算勘定、あるいは二十四年三月以前のものについては、あなたが野党の予算委員として指摘をされた点をあくまでも閣内において主張すべきであったにかかわらず、君子豹変するという言葉があるが、それを閣僚としてお認めになったことは、はなはだ遺憾である。私はそれらの問題については、いずれ機会を見て他の委員会政府の態度について追及をしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。(拍手)
  309. 山村新治郎

    山村委員長 以上をもちまして、昭和三十七年度総予算に対する質疑は全部終局いたしました。  次会は明三日午前十時より開会し、昭和三十七年度総予算の討論、採決を行なうことといたします。本日は、これにて散会いたします。    午後八時三十三分散会