○加藤(清)
委員 私は、
日本社会党を
代表して、ただいま提案されておりまする
政府提出
昭和三十六年度
一般会計予算補正(第2号)並びに
昭和三十六年度
特別会計予算補正(特第3号)に対し反対の討論をいたしたいと存じます。
池田内閣の経済見通しの誤りと高度成長の失敗は、国際収支の危機、物価の急激な高騰、所得格差の拡大を招来した。
池田内閣は、その責任を反省すべきところ、むしろ責任を民間に転嫁し、てんとして恥ずるところがありません。危機打開策を景気調整策と称して行なった一連の金融引き締め等のデフレ策は、そのしわを労働者、農民、特に中小企業に押しつけ、ついに、おのれみずから呼号した所得倍増計画は初年度に挫折、政策の転進のやむなきに至ったのであります。(拍手)
池田内閣の責任たるやまさに重大でございます。失敗の原因が過剰投資であるとは
総理の口ぐせでありまするが、もしそれ真にそれでありとすれば、
国民は
池田政策に納得できないことがございます。なぜかなれば、調整策としてとられたところの金融引き締め政策は、その原因である過剰投資をした大企業に寛大であり、原因を作らなかった、むしろ過剰投資を何もしなかったところの労働者や農民、中小企業、下請企業等にきわめて厳重であるからでございます。大企業の過剰投資ができたのは、労働者の汗とあぶらの結晶ではあっても、決して労働者の意思ではありません。中小企業、特に繊維産業や陶磁器産業がどこで設備を増大したでございましょうか。しかし、引き締めのむちはここに一そう激しさを加えているのが今日の実態でございます。罪を作った者に罰が少なくて、罪を作らなかった者に罰が重い。世人称してダンプカーの引き逃げと怨嗟の声が高いのでございます。(拍手)政治は確かにあやまちを犯しているではないでございましょうか。今日こそ、いたずらに面子にこだわり、言いのがれに急なるより、すなおにその非を認め、改むべきは改め、
国民とともに経済危機打開に邁進すべきときであると存ずるのでございます。
この見地に立ちまして、わが党は、すでに第一次予算補正にあたり、
政府の経済政策失敗の犠牲者
国民とその生活の救済は、緊急かつ可能な範囲、最大限度予算措置をするよう要望いたして参りました。さらに災害対策、石炭対策、医療費値上がりによる国庫負担の措置を組み入れたところの第二次予算補正を提出するよう強く要望して参りました。
しかるところ、今回
政府提出の第二次補正予算案は、わが党の要求とは天地雲泥の差でございまして、犠牲者
国民を救うの道はどこにも見当たらないことを遺憾とするものでございます。すなわち、
政府案は、災害対策費、
国民健康保険助成費等義務的経費、医療費改定に伴うところの増加経費、オリンピック準備費等をわずかに計上したにとどまっておりまして、この涙なき仕打、はたして
国民は救われるでございましょうや、遺憾のきわみでございます。
さきに本
会議におきまして石炭危機打開
決議が行なわれました。離職者対策などにつき若干の前進はありましたものの、総合エネルギー政策そのものについては何ら抜本的な施策が行なわれていないのでございます。なおまた、失対労務者賃金の引き上げ項目は削除されたのでございます。さらに、港湾対策にもわが党の要望はとられておりません。よって、わが党は、
政府提案の予算補正二案に反対の意を表明するとともに、この際、次の措置を要求するものでございます。自然増収見込みのうち、予測約二千億円になんなんとするところの膨大なものが明白でありながら、なぜこれを歳入として取り上げなかったかということでございます。財政民主主義の
立場、財政法の示すところからしても、これは歳入超過として義人として見込むべきでございます。歳入を歳出に見合わせるために適当に歳入数字を変更したり、自然増収をうやむやにすることは、明らかに財政法
違反であり、ひいき目に見ても健全財政とは言えないのでございます。
次に、歳出について二、三要求を申し述べます。
要求の第一は、災害対策でございます。干害対策費を追加するとともに、台風二十六号、集中豪雨被害復旧費及び三十六年度発生災害全般にわたり緊急必要な予算増額をすべきこと。わけても、個人被害の救済対策を強化するため、罹災者援護法等の制定を進め、必要な予算を計上すべきことを要求いたします。
要求の第二は、生活保護基準及び失対労務者賃金の引き上げについて。物価騰貴によるところの最大の被害者、すなわち、低所得者層の生活水準低下を防止し、かつ、これを積極的に引き上げるために、生活保護基準を本年一月より少なくとも一三%引き上げ、さらに失対労務者賃金を六百円程度に引き上げることくらいは、膨大なはね返り財源からして容易なわざであり、
池田総理の反省と義務感さえあれば今直ちにでもでき得ることでございます。わが党の生活保護費及び失対労務者賃金引き上げ要求に対し背を向けることなく、前向きで前進すべきでございましょう。もっとも、生活保護費は昨年四月から一八%、十月から五%追加措置がとられて参りましたが、これはその過年度経済変動に伴うところの事後措置でございまして、今年度消費物価値上がりは今年度の問題として、来年度予算に盛られた程度のもの、すなわち、二二%程度は本年一月から実施されてしかるべきでございましょう。
要求の第三、失対賃金については、第一次補正の際少なくとも一〇%は引き上げるよう要求して参りました。しかるに
政府は、何とかしたいと言ったまま今日に及んでいるのでございます。中高年令層の失対労務者のため悲しむべきことでございまして、
政府の怠慢では済まされない現実でございます。
要求の第四、医療費値上がりによる社会保険の被保険者、患者等の負担の軽減について、
国民健康保険については、第三十八国会での
経緯及び国保財政の現状にかんがみまして、国庫補助率を五%引き上げるべきでございます。さらに第三十九国会改定四・八%引き上げによる社会保険の医療費増額分を国が負担するよう処置すべきでございます。
第五に、石炭対策でございます。石炭危機打開
決議の精神にのっとり、当面炭鉱労務者の雇用と生活の安定のために必要な予算を大幅に引き上げるべきで、現在計上されている経費は、当面の最低限の要求から見てもあまりに貧弱、涙なきしわざでございます。これまで石炭労務者を中心に政策転換の要求が強く行なわれ、
政府またこれにこたえて解決を約束しておきながら、この程度一部の手直しでは全く二階から目薬、約束不履行の言いのがれにしかすぎません。
わが党の要求の第六は、港湾対策費でございます。最近、港湾船込み、荷揚げの混雑は、東京の道路と同様麻痺寸前でございまして、鉱工業生産や
国民生活に悪影響を及ぼすのみならず、輸出の阻害と
日本の名誉を国外に失墜するのおそれがございます。港湾設備、港湾労務者の対策の緊急を要するゆえんでございまして、これは道路交通地獄対策、流感対策とともに
国民の切なる願いでございます。政治家の目下の急務でございます。しかるに、わずかの予備費的対策費では
政府の誠意と関心を疑わざるを得ません。港湾労務者の対策費を別途計上すべきでございます。
討論を終わるにあたりまして、一言申し上げたいと存じます。
池田総理は、常に、大所高所に立って政治を行なうと述べておられます。まことに見上げた心がけである。しかし、あまり高過ぎまして、山の峰だけをごらんになって、足元をお見忘れではないでございましょうか。上に厚く下に薄いは保守党政策の常とはいえ、谷底に呻吟する者もやはり人の子、
日本人でございます。一掬の涙なき政治は、長続きしないでございましょう。さあれ、自民党が半永久的に政権の座につき、どんな失敗をしても政権移動の行なわれない今日では、まさに一党独裁というべきでございましょうか。独裁政治は行き過ぎがあっても反省のないのが常のようでございます。政治をする者にとって、たといそれがよかろうとも、
国民にとっては不幸な政治でございます。
国民のための
国民の政治を祈念しつつ、私の反対討論を終わるものでございます。(拍手)