○藤本
委員 わが国の
経済は世界の脅威とまでに高度の伸長を遂げておりますが、それにもかかわらず国民生活には明暗の二相がありまして、社会保障を充実強化する必要をますます痛感いたしておるのであります。私は以下、社会保障が結局は国民生産、国民所得により、税、保険料、一部負担等によりましてまかなわれておりまするがゆえに、若干の
経済財政、次に社会保障について二、三点
政府にお伺いいたしたいのであります。
まず第一は、景気変動と財政
政策についてであります。近代における財政運営の重要なる特色の
一つは、景気を
調整し、国民
経済の変動を安定化するにあるのであります。一九三〇年代におきまして資本主義
経済の深刻なる危機を打開するために、その対策として用いられ、ケインズによりましてその理論構成のされましたことは周知の
通りでございます。すなわち最初は、公債を発行し、赤字予算を編成して、国民
経済の変動を調節いたす手段といたしましたが、後にインフレを抑制し、また
経済の過熱化を押える手段として用いられたのであります。財政の運営がかような景気
調整を行なう使命を十分に果たすためには、これに機動性、弾力性を与える必要があるのでありますが、それには現行の財政法の一部を改正するの要があると私は信ずるのであります。以下、私見を交え、若干その理由を明らかにいたしまして
政府の所見をお伺いいたしたいのであります。
申すまでもなく、財政は景気のよいときに膨張いたします。これは、財政収入が国民
経済の
発展、また国民所得の増加が反映いたしまして増加するからでありまするが、この財政収入は、国民
経済の、また国民所得の
発展・増加に比例的に増加するのではなしに、むしろ一般には国民所得の増加以上に増加いたすのであります。
昭和二十七年、八年、三十二年、三十五年の例によりましても明らかでございますように、大体二倍以上にふえる。これは、財政収入の骨幹でありまするわが国の租税構造が所得の弾力性を持っておる。すなわち、財政は、今国民所得に対しまして相当高い税をかけておりますけれ
ども、累進性を持つ所得税、景気の変動に非常に敏感な法人税をもって税組織の
中心になしておりまするから、景気のよいときには国民の所得の増加以上に税の収入が増加いたすのであります。従いまして、かような財政収入のたくさんあるときに、これを、その年度内に使い切らないで、たとえば
昭和二十四年のドッジ超均衡予算のごとく、また
昭和三十王年度予算における
経済基盤強化資金のごとく、あるいは財政法の一部を改正いたしまして、その一部をたな上げ留保して、そして総
需要を抑え、景気の過熱を阻止するということが必要であろうと思います。これに反して、不景気の場合におきましては、民間の投資は減りますが、財政支出は容易に減りません。それは財政支出の規模が景気変動のサイクルと無
関係に政治的あるいは
経済的の要因によりまして規定されておるからであります。また、一度増額いたしました財政支出が容易に変更されない。また、人口の増加、また公務員のベース・アップ等によりまして、自然増的な財政支出が非常に要請されるのみならず、景気の悪いときには、社会保障費、また、いろいろの不景気対策、あるいは社会不安に対する治安維持に要する経費等々の
需要があります。従いまして、財政投融資も減りません。また、税すなわち財政収入は、不景気になりますと、国民
経済、国民所得の沈滞率より以上に減るのであります。ここにおきまして、好景気の積極財政が消極的にならざるを得ない。また、財政投融資の原資でありまする郵便貯金、厚生年金、簡易保険も伸び悩む。ここにおいて、
政策の転換、そして
経済の変動を
調整いたすためには、この財政収入の不足を、好景気時に財政収入のあり余るものをたな上げしておいたのをここにくずして、景気を刺激し、国民
経済の変動を安定化さすべきであります。すなわち、景気のよいときにはこれを押え、景気の悪いときにはこれを刺激するという手を打つためには、財政の運営に機動性、弾力性を与えなければなりませんが、今の
制度下においてはできません。ここにおいて私は
お尋ねいたしたいのでありまするが、財政法の一部を改正する要があるということに対して、大蔵
大臣の御所見をお伺いいたします。