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1962-02-05 第40回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月五日(月曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 淡谷 悠藏君    理事 川俣 清音君 理事 小松  幹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       池田正之輔君    井出一太郎君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       岸本 義廣君    北澤 直吉君       倉成  正君    正示啓次郎君       周東 英雄君    田中伊三次君       田澤 吉郎君    床次 徳二君       中村三之丞君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    八田 貞義君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       井手 以誠君    加藤 清二君       勝間田清一君    木原津與志君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    中村 高一君       野原  覺君    長谷川 保君       山花 秀雄君    横路 節雄君       玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      宇山  厚君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月五日  委員倉石忠雄君、中曽根康弘君、山本猛夫君及  び西村榮一辞任につき、その補欠として正示  啓次郎君、田澤吉郎君、岸本義廣君及び玉置一  徳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岸木義廣君、正示啓次郎君、田澤吉郎君及  び玉置一徳辞任につき、その補欠として山本  猛夫君、中村幸八君、中曽根康弘君及び西村榮  一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。中村高一君。
  3. 中村高一

    中村(高)委員 憲法問題につきまして、すでに木原津與志君から党の立場より質問をいたしておるのでありますが、憲法改正提案権内閣にあるかないか、この問題は非常に重要な問題でありまして、どうしても、先日の論議について、さらに政府所見をただし、また、われわれの考えも聞いていただくことが非常に重要であるという建前から、重ねて憲法問題につきまして政府所見をただしたいのであります。  伝えられるところによりますと、内閣憲法調査会におきましても、すでに調査段階を終了いたしまして、今現在の段階では憲法改正すべきかどうかという段階に入っておりますことが新聞に報道されておるのであります。しかも、憲法調査会が発足をいたしましてからすでに四年半も過ぎておりまして、相当議論をせられておるようであります。しかし、この問題は政府ばかりの問題ではございませんので、私たちも党内に憲法問題の特別委員会を作りまして、われわれ議員も勉強をいたしておりますし、各大学の先生方にも来てもらって、われわれもわれわれの立場から憲法検討をいたしておるのであります。憲法は国の基本法でありまして、その重要であることは言うまでもありません。従って、憲法解釈論などにつきましても、ルーズな解釈を絶対にすべきではないとわれわれは考えておるのでありまして、政府の都合による便宜主義的な解釈ども憲法の場合はやはり慎重にいたすべきであることは言うまでもないのであります。この私が尋ねんといたします憲法改正提案権につきましても、すでに憲法調査会を設置する際に議論をされておりますこともよくわれわれは承知をいたしております。しかし、内閣改正案を提出する権利があるかないかということについての結論は出ておりません。政府では一応の統一的な解釈をいたしておるでありましょう。しかしながら、憲法解釈政府に最終的な決定の権があるわけでももとよりありませんし、また、政府政府立場からのみ憲法解釈するということは間違いであることも言うまでもないのであります。  そういう趣旨からいたしまして、私は、憲法改正のこの提案権の問題につきまして、後に、法律論の上から、どういう根拠から政府提案権があるのか、法律上の根拠を示していただいて議論をいたしたいのでありまするが、その前に、やはり一言、純粋な法律論の前に、日本憲法のあり方と内閣というものとの関連について、総理大臣意見を私は聞いておきたいのであります。  言うまでもなく、今日の憲法主権在民で貫かれておることは、総理大臣も御承知通りでありまして、従って、今日のこの憲法趣旨からいたしまするならば、旧憲法などと違いまして、主権在民であるという建前から、憲法改正するという場合に、最終的には主権者であるところの国民投票に負うておるという、これも一貫して貫かれた現行憲法趣旨であると私は思うのであります。従って、こういう憲法に貫かれた趣旨からいたしまして、憲法改正をせられたという場合においても、天皇国民の名でこれを公布するという、非常に主権在民が最終的に貫かれておると思うのでありますが、この日本国憲法に貫かれておる趣旨と、現在の憲法にあるところの内閣制度というものとをわれわれが考えてみるときにあたりまして、この憲法という建前から考えまするならば、あくまで内閣憲法の忠実な執行者であります。定められた日本の法規を忠実に守る側にあるのが内閣制度でありまして、特に、七十二条の内閣のいろいろの職務の中で、第一に規定されておりますものは、内閣法律を誠実に執行をするということがはっきり書かれておる。この趣旨からいたしまするならば、内閣は法の執行者であることが原則でありますが、この原則論に対しまして、憲法主権在民に貫かれておる趣旨と、内閣法律執行者であるという、一つ行政機関であるというこの建前については、総理大臣も何ら異議はないと存じまするけれども法律論質問する前提要件として、どうしてもこの点は申し上げておかなければなりませんので、一言総理大臣所見を承りたいと思うのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 わが憲法主権在民をはっきりうたっております。また、憲法改正される場合におきましては、国民投票によって、また国民の名においてこれが施行されることはお話の逸りでございます。しこうして、内閣のみならず国会憲法を守らなければなりませんし、法律を守らなければなりません。しこうして、内閣行政官庁として立っておりまするが、御承知通り議院内閣制をとっておるのであります。単に政府法律の施行のをやるものではございません。やはり、憲法規定しておりますように、議案を提出する権限規定いたしておるのであります。私は、こういう点で、大体あなたのお話と合っておるところもありますし、また、それよりも広く内閣権限というものを考えております。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 憲法改正につきまして、内閣の守るべき建前というものは、国務大臣として日本憲法を尊重をしなければならないという大きな責任を負っておるのでありますが、もう一つ憲法問題を改正をするというようなことに関しましては、一体内閣というものがそういう基本法改正に立ち入ることがいいのか悪いのかということも、これは日本ばかりではございません、どこの国にも憲法は当然あることでありますから、日本だけの立場から考えないで、各国憲法制度というようなものもわれわれは頭に置いて検討を加える必要があると思うのでありますが、一体外国の例を見まして、政府なり内閣から憲法改正提案をするようなことが許されておる国があるかどうかであります。これも、どうか、与党と野党との、あるいは政府野党との論戦というような立場ばかり考えないで、広い立場から一つ総理大臣所見を聞きたいのであります。どこの国でも、内閣が国の基本であるところの憲法改正に手を入れられるという国はほとんどございません。これは、議会制度をとっております国がたくさんありますが、共産圏のような、議会制度でない国は、これは論議対象からはずしてもけっこうでありますけれども議会制度の最も発達をいたしておりますイギリスであるとか、あるいはアメリカであるとか、ヨーロッパの諸国の憲法改正制度ごらんになって、どこの国に一体内閣憲法改正をやろうなどということのできる国があるか。アメリカ日本議会制度の違いがありますから、直ちにアメリカにないからというわけにはあるいはいかないかもしれませんが、最も日本に近い国情議会制度を持っておるイギリスなどにおいても、憲法内閣で、政府でいじろうなどということを考えただけでも許されないようになっております。どこの国に一体そういうことが許されるか。おそらく、私は、どこの国でも、憲法というような基本法は、内閣のような行政機関が手をつけるべきものではないということになっていると思う。しかも、内閣というものは、時期的にも制限を受けるものであり、常に変動の繰り返されるところの一時的な行政機関——憲法は半永久に続くことが通例であります。明治憲法ごらんになってもわかります通り、途中で憲法改正などが行なわれておるかどうか。五十年以上も手をつけておらぬのでありますが、これはまた天皇制時代憲法でありますから問題は別といたしましても、ごく短期な限られた内閣がもし憲法に手を染め得るとしまするならば、かえって私は弊害の方が多いんではないか。もし、非常に悪い例をとるのでありますけれども、独裁的な非常に権力主義的な総理大臣などが出てきて、内閣をリードして、この際憲法改正をやろうというような考えでも起こす余地を与えるということだけでも、われわれは慎まなければならぬ重要なことではないかと思うのでありまして、各国憲法制定をされました歴史をもう一度私たちはこの際冷静に考える必要がある。憲法制定したのは、その歴史は、いずれも、時の政権をとっておる者が横暴な政治をやったり、独裁的な政治をやることによって、国民が不満を持ち、むしろそういう独裁的な内閣を牽制をする、制限をするというようなところにも憲法制定歴史があることを考えましたならば、一内閣が国の半永久的に続くべき憲法に手を加えるというようなことは、おやりにならない方が国のためにもなるし、また、あなたがおやめになった将来のことも考えてもらって、やはり、立法立法府があるのでありますから、国会におまかせになるということの方が筋が通っておるのではないかと思うのでありますが、あえて内閣発案権提案権があるなどということを言わなければならない根拠がどこかにあるのか。なぜ一体立法府に一切をまかせる気持がないのか。解釈吐こういうこともあり得るなどということを無理に言わなくても、立法府にまかせた方が自然だというお考えを、これも総理大臣所見をやはり聞いておく必要があると思いますから、お尋ねをいたしておきたいのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 各国おのおの憲法を持っておりまして、そうして、その条文は必ずしも一になっておりません。また、アメリカのように完全な三権分立の国もあります。イギリスのようにそうでないところもございます。憲法が違い、国情が違っておるのでございますから、われわれは憲法自体を研究していかなければなりません。法律論といたしましては、われわれは、日本憲法内閣提出権はある。しかし、これは一に国会において発議されることでございます。国会がおきめになるととであり、国会が三分の二以上でおきめになったことを国民投票によって決するのでございまして、内閣の指示その他によって、あるいは総理大臣の個人的の考えでいかんともし得るものではない。全部国民考えによってきまることでございます。  政治論的のお言葉でございますが、政治論としてはいろいろな考え方もございます。今御質問憲法法律解釈と私は考えてお答え申し上げておるのであります。
  7. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣には後に法律論関連をいたしましてまた意見を聞いて参りたいと思うのでありますが、先日の委員会で、憲法改正については、国会はもちろんでありますけれども内閣にも提案権があるのだ、そういう趣旨の答弁を総理大臣法制局長官もしておられますので、法律上どういう根拠から内閣にあると言われるのか、法律しの根拠を先にお示しを願いたいと思うのであります。——ちょっと待って下さい。法律しの問題でありますから、法制局長官がお答えになることを決していけないと言うんでありません。しかし、問題が重要でありますから、法制局長官答えられることは政府を代表する法律上の見解であると解釈してよろしいかどうか。これは重要でありますから、あとで法制局長官答えだなどというようなことで……。(発言する者あり)よろしい、よろしい。総理大臣から二つ……。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 私がお答えしてもよろしゅうございますが、法律の技術的な問題もございますから、法制局長官をしてお答えいたさせます。法制局長官答え政府答えと御了承願いたいと思います。
  9. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律的な問題でございますから、私からお答えいたします。  憲法九十六条は現在の憲法改正手続をきめておるわけでございますが、この憲法九十六条で帯いてございますことは、憲法改正についての二つ段階をきめておるわけでございます。まず第一に、国会がこの改正の案を議決することと、それから、それが国民投票に付されるべきことと、二つ段階でございます。それで、同時に、国会における議決の過程におきましては、総議員の三分の二以上の賛成を要するという、普通のいわゆる法律案等と違いました特別多数を要するということが規定してあるわけでございます。同時に、国民投票にかけて、国民投票で過半数の賛成を得ることを要する、この二つのことが書いてある。  そこで、問題は、憲法改正議案について国会審議される段階がまずあるわけであります。その審議をされる段階において、その審議をされる対象となる議案をだれが出すかという問題でございます。これは、私ども解釈によれば、九一六条は直接にはそこには触れておらない、かように考えるわけであります。結局これは、一般憲法のほんとうの原則から解釈すべき問題である、かように考えるわけであります。  国会議員がもちろんこの憲法改正議案を御提出おできになること、これは問題ないことでございます。これは念のために申し上げますが、国会がお出しになるわけでなくて、その場合は国会議員でございます。合議体国会ではございません。国会は三分の二の議決によってその意思を決定するというのが憲法九十六条でございます。国会議員がお出しになる。これは現行では国会法規定によるわけでございますが、国会法は、御承知のように、特別に憲法改正議案提案手続を書いておりません。従いまして、これは現在の段階においては一般原則でお出しになるものと解釈せざるを得ないと思います。  それから、内閣の方でございますが、これは七十二条で、総理大臣内閣を代表して議案国会に出すという権限規定してございます。これは、議院内閣制建前から言って、この議案は、憲法上、いわゆる予算、これは当然で、内閣にのみ発案権があると考えられておりますが、法律案についても、議院内閣制建前から当然にあるものとわれわれ解釈しております。この点、学説に一部異論のあることは御承知だと思いますが、これは、多数説は法律案もあるという考え方だと思います。それに基づいて内閣法は第五条の規定を置いておるわけでございます。内閣法第五条には、憲法七十二条を受けまして、予算法律案その他の議案ということになっております。ここに憲法改正議案がうたってないじゃないかという御議論があると思います。これは、憲法改正議案というのは、まことに異例のことで、特別のことでございますから、そこに特別に摘記することではない、かように考えてあれは書いてないものとわれわれは了承しております。それに基づいて、それから直ちに内閣提案権なしということには私はならない、これは憲法一般原則議院内閣制建前からそう解釈すべきものだと思います。この点は、先ほど申しましたように、国会法にも憲法改正国会議員の御提案についての特別の規定がないのと同じだと思います。
  10. 中村高一

    中村(高)委員 御承知のように、憲法改正につきましては、憲法の各項の中に、特に、改正をすべき第九章というものを起こして、そうして、九十六条で、国会が発議をするという、こういう原則を打ち立てておるのであります。今、法制局長官は、七十二条の規定根拠として、内閣にもできるという、こういう趣旨意見でありますが、これは、政府提案のできるその規定は、きわめて一般法律を、あるいはその他のものを指すのでありまして、われわれが憲法を読んでみれば明らかな通り憲法改正については、わざわざ一つ条章を設けて、いわばワクをはめておるわけであります。改正をすべき場合はこうということ。旧憲法などにおきましても、改正をする場合は勅命によって行なうという一つ条文が厳としてあって、どうすることもできない。憲法改正というものは、きわめて厳正にワクをはめて、第九章というものを作って、このワクの中で行なえという趣旨があの改正規定であるとわれわれは見るのが法律解釈の上においては当然であると思うのでありますけれども、その点はどうお考えになりますか。
  11. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法九十六条が憲法改正に関する手続規定をきめてあることは、これはもうおっしゃる通りでございます。ただ、先ほど申し上げました通りに、ここでは、いわゆる国会が特別多数によって議決すべきこと、それから、国民投票に付すべきこと、この二つを言っておることと私たち考えます。あそこの九十六条の第一項の条文に、「国会が、これを発議し、」という言葉があるわけであります。で、学説の一部には、この「発議し、」という言葉をとらえて、これは国会が、審議される議案についても国会議員のみに発案権があるという根拠にしておられる学説もあることは、よく承知しております。しかし、もちろん学説はそれのみではないわけでありまして、また、私どもは、この「国会が、これを発議し、」というのは、そこの条文文理解釈から言えば、これは明らかだと思いますが、国会が三分の二の多数をもって国会意思をきめて、国民に向かって発議するというふうに読むほか、私は文理解釈としては読みようがないところだと思います。従って、その場合の国会における審議の素材となるべき議案、これはだれが出すかということは、憲法の他の条章から来るもの、かように考えます。これは、国会が唯一の立法機関であるところから、国会議員がお出しになる権限があるのは言うまでもないことでございます。内閣につきましても、いわゆる議院内閣制建前から、七十二条について法律案等提案権が認められると同じ理由で、これを法律的に否定すべき理由はない。政治論としては、これはもちろん別だと思いますが、法律的に否定すべき理由はない、かように考えるわけでございます。  ついでに申し上げますが、議院内閣制でございますが、イギリスは、御承知のように、法律案についても実は政府出してはおりません。御承知のように、閣僚である議員の名前で出す習慣でございます。またイギリスは、御承知のように、不文憲法の国で、特別な憲法というものを持っておりません。みないわゆる法律の形になっております。
  12. 中村高一

    中村(高)委員 今法制局長官が言われるように、たとえばイギリスの例などを見ましても、なるべく、これは、政府法律を出すというような形でなく、立法府を中心にして法律提案も行なうということが立法府本来の趣旨でもありますし、あなたが言われる通りイギリスのような議会制度の発達しておる国でもなるべく内閣政府法律提案しない方がいいというのが、私は本来の議院制度趣旨だと思う。それはあなたがおっしゃる通り。それを、一般法律提案権があるから憲法提案権もありますなんということは、あなた自身の今の言葉から言うてもおかしいではないですか。あなた自身の今のイギリスの例をとっても、議員提案をするということの方がいいんで、それを、一般内閣法律提案権がある、——それさえ外国などでは議員提案権にする方が筋が通っておるというのが外国の例である。それをあなたはみずからそういう説明をされながら、憲法改正の場合においては、非常に広く内閣提案権を拡張して、書いてない憲法改正までもできるんだというような趣旨に解することは、あなた自身の今の考えからいってもおかしいとは思いませんか。
  13. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、イギリスの例は、実は先ほど御説がございましたので申し上げたわけでございますが、フランスの例をとれば、フランスは、法律案の大部分は実は内閣提案でございます。同時に、第四共和国憲法では、もちろん大統領に憲法改正提案権を認めております。アメリカは御承知通りに完全な三権分立の国でございます。これは日本憲法とはちょっと比較すべき問題でないと思います。これは中村委員もよく御承知のことだと思います。これは結局それぞれの国の憲法解釈になるわけでございます。私どもといたしましては、第七十二条のいわゆる内閣議案提案権、これにどの範囲のものが含まれるかということでございます。議院内閣制は、御承知通り多数党が内閣を組織するという建前でございます。その建前から申せば、内閣は、先ほどおっしゃいましたように法律を正式に執行する機関ではございますけれども、同時に法律案改正提案についても提案ができるという建前をとっております。同時に憲法改正についても、純粋に法律的に考えれば、これを私は否定すべき理由はない、これは七十二条の建前から否定すべき理由はない、かように考えるわけでございます。
  14. 中村高一

    中村(高)委員 法制局長官、今の問題でありますけれども一体七十二条の、内閣を代表して内閣総理大臣議案を提出できるというのは、これは一般法律です。ここに憲法改正はできないとは書いていないから、広く議案だというふうにあなたはおそらく言われようとするのだろうけれども一体この七十二条の議案というのは、広く一般の場合を書いてあるのではないか、一般法律を意味するものではないかということを具体的に——いいですか、それじゃもう一つ言いますが、憲法改正については第九章を起こして、憲法改正という条項を起こしておる。このほかに議案を提出できるという条項があるとすれば、それは憲法改正以外の議案をさすのがこの憲法建前ではないかということを聞いておる。
  15. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御質問の点は、実は先ほどももう御答弁したことかと思うわけでございますが、憲法九十六条は、国会が御審議になります素材としての議案、それをだれが出すかということは直接触れておらないと私は思います。九十六条が実は憲法改正手続の条文でございます。憲法改正手続に直接触れた条文はこれしかないわけでございますが、これは先ほども申しました通りに、国会議決の方法の特例が一つあるわけであります。もう一つは、国民投票にかけるという、この二つの特例を書いておるわけでございます。その国会が御審議になります議案をだれが出すかということまでには、直接触れておらないとわれわれは解釈いたします。それは学界の相当多数の学説である、かように考えるわけでございます。結局、これは内閣につきましては、憲法七十二条及びそれを受けましての内閣法第五条があるわけでございますが、こういうものが解釈となるわけでございます。国会議員につきましては、唯一の立法機関であるというところ、あるいは国会法規定に相なってくるわけだと思います。  そこで憲法七十二条は、今御指摘の通り議案とだけしか書いてございません。その議案が何であるかは、憲法全体の趣旨から解釈すべきものと思います。法律案がこれに含まれるかいなかについても、実は一部に議論はあるわけでございます。これは、今おそらく大多数の説は議論しておらないと思いますが、内閣法は、法律案のことを、それを受けて明記しておる。憲法改正については、そこに書いてないじゃないかというのが御指摘だと思いますけれども、これは内閣法第五条の場合も、「その他の議案」で読めるのだ、またそれを否定する規定はない、かように考えておるわけでございます。この点は、特に私の方から言うべき問題でもございませんが、御承知通り国会法にも憲法改正議案提案の手続は何もないわけでございます。結局、国会議員提案権のあることは、これは議論がないのでございますが、憲法改正についても特別な規定はございません。しかし、憲法改正についての特別な規定がないということは、国会議員が御提案になる権限制限したものだとは私は思いません。その点では同じことだと思います。
  16. 中村高一

    中村(高)委員 法制局長官は、いろいろの別の立場から何か雑念を持って法律解釈を曲げて考えようとする気持があるように見えますから、私がこの条文を読むから、あなたは目をつぶって一つ黙って聞いていて下さい。総理大臣一つ、これから一体内閣が出てくるかどうか、黙って聞いていて下さい。「国会が、これを発議し、国民提案してその承認を経なければならない。」と書いてあるのだが、国会がこれを発議し、国民提案をすると書いてあるのが、どこから内閣が出てくるのか。「国会が、これを発議し、」と書いて、黙って聞いておって、内閣もあるのだなんというようなことはどこから出てくるのですか。冷静にこの条文を読めば、これは国会議員提案をして、そうして国会が可決をして、そうして国民投票に付すると、どうしてあなたはすなおにこれを読めないのですか。何か、いや内閣ができないとは書いてないとか、いやほかにもあるとかというて、横ばかりあなたは見ないで、上を見てまっすぐに少し歩きなさい。(笑声)あなたの考えは、まず先に横を見て、それからまっすぐ歩こうとするからいけない。まっすぐにあなたは、この通り解釈をして、よそ見をしてはいけませんよ。あなたのような解釈からいくと、まるで内閣は、雷タクシーみたいなものです。人がまっすぐに歩こうとするものを、あなたは横から飛び込んできて、そうしておれの歩く道だといって無理に割り込もうとするような解釈があなたの解釈であって、黙って正式にこの条文を静かに読んでいけば、「国会が、これを発議し、」と書いてあるのですから、なぜあなたはこの条文に書いてある通り国会が発議するというのだから、国会議員におまかせするという、そういう率直な気持になぜなれないのか。どうしてあなたはそんなにひん曲がって生まれてきておるのですか。あなたは根性が曲がっているのだ。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 「国会が、これを発議し、」と書いてございますが、その上を読んでみてもらいたい。「国会が、これを発議し、」の上を見ると、「この憲法改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し」、とこう書いてある。三分の二以上の賛成国会が発議し、三分の二以上の賛成を得るまでの憲法改正発案権はだれにあるかということは書いてない。三分の二の賛成国会が発議しということと、国民投票に持っていくことを規定しております。
  18. 中村高一

    中村(高)委員 それならば今総理大臣の言われるその前提である提案権は、それじゃもう一度法律上の根拠を示しなさい。その前の提案権はどこに規定があるか。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 規定はございません。その規定憲法七十三条の、内閣総理大臣は、内閣を代表して議案国会に提出する——七十二条でわれわれは発案権があるのだと考えておるのであります。
  20. 中村高一

    中村(高)委員 この七十二条の規定一般的な規定であるから、さっき法制局長官の説明によると、内閣法の第五条で「内閣提出の法律案予算その他の議案国会に提出し、」とあるが、そのどれに該当するか、法制局長官
  21. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は先ほども答え申し上げた通りでございまして、そこに特掲しなかったのは、結局憲法改正ということが非常に異例、特例的なことであるので、わざわざ書く必要はあるまいというので、いろいろなものを含めて「その他の議案」と書いてあるわけであります。それに含まれると解釈すべきだと思います。これは念のため、申し上げるまでもないと思いますが、憲法七十二条で認められていることを内閣法制限することは、もちろんできないわけであります。内閣法憲法七十二条を受けております。従いまして、憲法七十二条の解釈として書いてあること、それは当然に解釈上出てくることは、内閣法は全部含んでおる、かように考えるわけであります。従いまして、特掲してなければ「その他の議案」に入る、かように考えるわけでございます。
  22. 中村高一

    中村(高)委員 ただいま法制局長官は、内閣が提出する根拠を、内閣法第五条の「その他の議案」の中に含む、こう答えられたのでありますが、それはあとからつけた理屈ではありませんか。その「その他」というものに入るというのは、あとで何か必要があって、さんざ探した結果、これに入れようということになったのではありませんか。立法当時のそれはあなたの所見ですか、この点を答えて下さい。
  23. 林修三

    ○林(修)政府委員 内閣法立法当時は、実は私は法制局におりませんでございました。おりませんでございましたけれども、私は、その当時からそういうものを否定する趣旨で書いたものとは承っておりません。
  24. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、あなたの答弁によりますと、自分は立法当時のことはわからないけれども、その他の中に入るということを、あなたは法律上の解釈論としてこうなるのだ、こう承ってよろしいですか。
  25. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、先ほども実は申し上げた通りだと思います。結局、内閣法第五条は憲法第七十二条を受けております。問題は、第七十二条の解釈からくるわけでございまして、第七十二条でそれは含まれないとすれば、内閣法第五条にはもちろん書けないわけでございます。第七十二条に含み得るやいなやということは、問題の中心点でございます。第七十二条は、議院内閣制建前をとっておりますから、法律案予算等はもちろん、憲法改正議案を否定する趣旨とは私ども解釈できないわけであります。従いまして、内閣法第五条がわざわざそれを否定した趣旨とはわれわれは解釈すべきではない、かように考えるわけでございます。
  26. 中村高一

    中村(高)委員 今の政府委員の答弁によりますと、内閣法第五条の「その他」の中に内閣提案権が含むという御説明でありますけれども、しかし、あなたはほかの委員会で答弁をしたときに、質問を受けて、憲法改正のできるという条項を入れるか入れないかという議論があった際に、当時はアメリカがまだ占領中であったために、アメリカに遠慮したのか気がねしたのか、そのために内閣憲法改正などということができるなどということを占領中は入れない方が、いや入れられなかったんだというような意味のことを今までに答弁しておりませんか。違うじゃないですか。
  27. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の今の答弁と、今おっしゃった趣旨とは違っていないと思います。先ほど申しましたように、憲法改正のことは、これはもちろんめったに起こることでもございません。きわめて特例的の問題でございます。従いまして、特にそれを特掲する必要はない、かように考えたわけでございます。また同時に、今おっしゃいましたような占領中の事情もございました。従いまして、そこに特掲する必要もなかろう。当然憲法七十二条の解釈上出てくる問題は「その他」に含まれる、かように考えていいんじゃないか、かような考えでございます。これは何回も申し上げますが、御承知通りに、国会法自身にも、憲法改正議案提案手続については規定がないわけて、これは私どもそんたくいたしますれば、結局、現在でも国会議員憲法改正議案をお出しになることを否定しているものとは私ども考えません。この場合に、特別に国会法改正されて、たとえば提案者の数についての特別の規定が将来できるのかもわかりません。この点は、そういう立法ができるかもわかりませんが、現在の国会法を読んだ場合には、結局あの議案という言葉で読むほかは私はないと思っております。
  28. 中村高一

    中村(高)委員 私が聞いているのは、あなたはアメリカの占領中内閣改正を出すなどということはできなかったのだということを答えたか答えないか聞いている。そういうことを言うたかどうか。
  29. 林修三

    ○林(修)政府委員 アメリカの占領中できなかったからということは申しておりません。ただアメリカの占領中の特殊事情、いろいろな事情も考慮して、特にまた異例的、特掲的なものであるからあそこに書かなかった、特掲しなかった、そういうことであったということを聞いておりますということは、お答えした記憶がございます。
  30. 中村高一

    中村(高)委員 いや、あなたのように初めから「その他」の中に含まれるというのであるならば、アメリカの占領中だから遠慮したなどという発言をする必要はないじゃないですか。初めから「その他」の中に入るというならば、アメリカに気がねする必要も何もないじゃないですか、「その他」の中に入っているんだから。それをあなたはアメリカに気がねして、そういうことを入れなかったのですということを言うているじゃないですか。それじゃ速記録を見るから、あなたもう一度、言うたら言うたとあなたは答えなくらやいけません。「その他」の中に入るのならば、アメリカに気がねをしたから入れないなどというよけいなことを言う必要はない、初めからその他の中に入っている。アメリカが聞きに来たならば、その他の中にちゃんと入っているならば——そんなことは全然わからないのだから、それをあなたはアメリカに気がねしたから入れないというようなことを言うているじゃないですか。それとあなたの答えと違うじゃないですか。いや、心配しておられるならば、必ずしも読まなくてもいいけれども、(笑声)ここにある。あなたもしかし正直には言うているんです。  質問者が、この法案ができた当時の国会は占領下における国会であった関係上、憲法改正の問題を含むことについていろいろの気がねもあって、そういうふうな、入れなかったのではないかという質問に対して、あなたは「私ども内閣法を立案いたしますときに、そういうことを申していいか悪いかこれは問題でございますけれども、多少そういうことが内部においてあったということを申し上げる」ということを言うているところを見ますと、どうですか、この通り書いてある。あまりこういうことをたくさん読まない方がいいからわざと読まない。どうですか、これから見ると、やはり後になって問題が起こるといけないから、やはり内閣法の中に憲法改正というものを入れたがいいという議論があったことは事実なんです。けれども、これを入れると内閣憲法改正するなんというようなことをにらまれると——これはにらまれるかもしれない、そういうことから入れなかった。だからほんとうはないのです。ないのだけれども、あとから探したら、「その他」という救いの神があったから、これにもぐり込んだのがほんとうですよ。その当時に、いいですか、憲法調査会ができたのは昭和三十二年だ。このときにこの議論が出たので、おそらく調査会を作るのには、内閣提案権くらいないとまずいからどこかを探せと言われて、法制局の諸君が探したら、ここにあった、こういうのがほんとうじゃないですか。
  31. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは事情が違うわけでございます。これは内閣法律案の当初から、内閣法制局といたしましては、当然に含まれるものだ、かように考えておったわけでございます。ただ特掲するかどうかにつきましては、諸般の事情を考慮した。特にまた今おっしゃったような事情も一つの事情かもわかりませんが、しかし非常に異例のことであります。めったにないことをわざわざ書く必要もなかろう、かような考え方から書かなかった、こういうことでございます。三十年、三十一年に憲法調査会法が立案されるときに、あとからつけた理屈では決してございません。
  32. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 先ほどからの論議を聞いておりますと、この重大な憲法問題について、総理並びに特に法制局長官の答弁にはとうていわれわれは満足できません。最近政府憲法に対する態度が非常に粗雑になりました。憲法条文解釈から、憲法そのものさえどうでもいいというような風潮がある、これは非常によろしくない。従って、法制局長官も、その当時にはいなかったからよくわからないという答弁もございますし、この際、その当時の憲法制定に当たった参考人を呼んで事態を明らかにして、この基本法である憲法の本旨とあるいは解釈上の正しい点を明瞭にする必要がある。よって、本委員会を休憩しまして、参考人招致について理事会を緊急に開くように要求いたします。
  33. 山村新治郎

    山村委員長 淡谷君に委員長から申し上げます。  けさほどの理事会での話し合いの通り委員会は、あくまでも理事会でもっての話し合いを守っていく約束がございます。従いまして、後刻の理事会におきまして相談をいたしすます。   〔「休憩休憩」、「理事会を開け」、「質問続行」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  34. 山村新治郎

    山村委員長 理事会の話し合いの結果、質問を続けることになりました。中村高一君。
  35. 中村高一

    中村(高)委員 この法律論につきましてはまだ続けなければならぬのでありますが、その間に一つ重要な問題がございまするので、これを総理大臣所見をお聞きいたしたいと思うのであります。  先日の委員会におきまして、総理大臣は、今の条文から見ますと三分の二以上の議員賛成を得て国会が発議をするということに力を入れられまして答弁をされたのでありますが、問題は三分の二以上という点にあると思うのでありますが、先日の総理大臣の御説明によりますと、ただ単に三分の二の頭数がそろったから、それで憲法改正を押し切るというような考えが自分にもないのだという御趣旨のことが新聞に出ておりましたが、私たちも、憲法は国の基本法律でありますから、できるだけ慎重に扱うという総理大臣趣旨には賛成でありまして、他の法律案のように、もうこれで三分の二がそろったから押し切ってしまえというような性格のものでないことは言うまでもありません。総理の言葉をかりますならば、世論の盛り上がりという、こういう趣旨の説明もございましたが、いかにもわれわれもその通り考えておるのであります。ただ一人多くなったとか、あるいは二人多くなったからこれで三分の二がそろったからという、そういう趣旨にわれわれは解釈すべきではない。やはり世論の盛り上がりというものを見て、一般国民の下から、なるほど日本憲法日本の現状から改正をしなければならないという声が津々浦々から盛り上がるというようなことが、おそらく世論の盛り上がりだとわれわれは解釈をするのでありますが、三分の二というこの数に固執をせられるというようなことは、憲法改正をめぐって不祥な事態を招くというようなことも考えられるのでありますから、この点については慎重にという御答弁がございましたけれども、もう一度この点についての総理の所見をお聞きいたしたいと思うのであります。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法には、三分の二以上の議員賛成国会が発議して、そして国民投票を得るということになっております。やはり国民投票ということは、世論の気持を聞く、単に国会だけではいかない。慎重に考えておる趣旨から申しましても、単に私は、三分の二という条件は、もちろん必要であることは当然でございますが、それのみによって解決するものではない。私は、従来から、国論が二つに百八十度違うということは、民主主義のもとに非常に遺憾なことだという気持を持っておりますので、その気持の現われでございます。数もさることながら、数以上に国民の気持ということが大切だということを言っておるのであります。
  37. 中村高一

    中村(高)委員 総理大臣の慎重に扱うという気持は、私らも非常にけっこうだと思うのでありますが、中には、何でもかんでも日本憲法は占領中にできたんだから、これはどうしても改正をせなければならぬという、非常に拍車をかけておる諸君もあります。これは議論でありますから、必ずしもそういうことを言うことがいいとか悪いとか言うわけではありませんけれども、先日、私は新聞を見て驚いたのでありますけれども憲法調査会に出て、国会議員である人が、占領中できた憲法は無効だという論を、自民党の国会議員の方が言うておるのであります。私は驚くべきことであると思うのであります。委員外の学者や何かの中にいろいろな議論をすることはいいけれども国会議員が、調査会の中で無効だなどということを堂々と言うということは、憲法趣旨からいうても私は慎まなければならぬことではないかと思う。御承知のように、憲法の中には、国務大臣天皇もみんな憲法を尊重し擁護する義務を負うと書いてあるのでありまして、そういうことも考慮に入れずに、国会議員でありながら、日本憲法は無効だなどということを堂々と演説をして、それが新聞に出るというようなことは全くよろしくないと思うのであります。そういう非常に強い意見を持っておる者もあるし、あるいはまた総理大臣が心配をするような、世論の盛り上がりというようなものも、そおっとおけば、私は今、日本の国内においてどうしても憲法改正しなければならぬというような世論が盛り上がっておるとは見ないのであります。おそらく政府でも、現在日本憲法はどうしても改正したいという声が津々浦々にあるとは私たち考えておりません。比較的冷静に、今日では今の憲法をそれなりにやはり見ているというのが一般国民の現状ではないかと思うのでありますが、おそらくこのままに置いておくならば、そんなに総理大臣の言うように津々浦々から世論が盛り上がっきて、憲法をどうしても改正しなければならぬというような状況はなかなか起きてはこないと思うのであります。人為的に問題を起せばこれは盛り上がるということも言い得るかもしれませんけれども、冷静に置いておけば、そういう事態にはない。もっと今日の日本憲法国民がそしゃくして、そのよいところをとって、そうして守っていくという段階がわれわれは現在の段階であると思うが、今日の現状をごらんになって、総理大臣は、憲法改正をするという気分が盛り上がっておるというような事態にあるかどうか、これも総理のお考えを聞いておきたいと思うのであります。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法問題は重要な問題でございますので、今国内の情勢がどうだとかこうだとかいう意見は、私は差し控えたいと思います。やはり、せっかく国会議決された憲法調査会があるのでございますから、私は、国民のほとんど全部がこれに参加して、そうして十分議論なさることが民主的なやり方だと考えておるのであります。
  39. 中村高一

    中村(高)委員 実は私たち憲法調査会の動きというようなものを非常に注意深く見守っておるのでありますが、中には非常に憲法調査会憲法改正意見を早く打ち出さなければいけないというような議論もあるように聞いておるのであります。すでに四年半を費やしております憲法調査会で、いろいろの点から検討をしておることも、われわれは報告書を見ておりますからわかるのでありますが、現状は一体どういう段階になっているのか。伝えられるように、調査段階を終了をして、今改正をすることがいいか悪いかという段階にきておるようでありますが、調査会の方の進行の状況と、政府に対する報告はどういうふうになっておりますか、中間の状況をお聞きいたしたいと思うのであります。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法調査会が設けられまして、審議の過程につきましては時々新聞に載っておるようでございます。内部の議事の状況につきましては、関係当局より御答弁いたさせます。
  41. 林修三

    ○林(修)政府委員 実は私、直接憲法調査会の仕事にタッチしておりませんけれども憲法調査会の事務局の当局から聞いた状況をお答え申し上げます。  これは御承知通りに、三十二年から発足いたしまして、もっぱら昨年までは、いわゆる憲法制定の経過あるいは憲法の各条項の運用状況、これについて参考人あるいは公聴会等を開いて、相当詳細な検討をされたようでございます。昨年暮れに、これに関して報告書を出しておられるわけでございます。各小委員会から報告が出ております。この段階が一応終わりまして、昨年の暮れあるいは本年になって、今度は憲法の各条項についての各委員意見が今戦わされようとしておるようでございます。これにつきましても、同時に、公聴会等を開いて慎重審議をされるということになっております。一応の憲法調査会の中の建前では、明年後半までに一応の報告をまとめたい、こういうことで動いておるようでございます。
  42. 中村高一

    中村(高)委員 調査会の方から何か発表されたところによりますと、改正の是非をことしじゅうにまとめて、三十八年の八月とかに結論を出す方針のようなことが発表されておるのでありますが、もう少し具体的なことをわかる方はおらないですか。   〔「官房長官を呼べ」と呼び、その   他発言する者あり〕
  43. 山村新治郎

    山村委員長 中村君、ただいま官房長官はすぐ参りますから、お続けを願いたいと思います。
  44. 中村高一

    中村(高)委員 官房長官が来られて憲法調査会の進行の状況はお答えになるそうでありますから、この際、憲法調査会の運営について、総理大臣にお尋ねをいたしたいのであります。  憲法調査会規定からいきますと、結論を政府並びに政府を通じて国会に報告をするということになっておるのでありますが、一体、この結論というのは、改正の是非をさすものであるか、あるいはまた審議の状況だけを報告をすれば、それでも結論と言われるのか。通常の委員会政府に対する報告は、いずれも審議の結果を答申をいたしております。結果をまとめて答申をするのが、通常の政府委員会のあり方でありますが、聞くところによりますと、この問題は非常に重要であるから、審議会だけで結論を出して、そうして多数決で賛成とか反対とかいうことを出さない方がいいんじゃないかという意見もある。そうすると、審議の状況をそのまま報告をするということも、これもあり得ると思うのでありますが、しかし、調査会の法律の中には、結論を出せ、結論を報告せよというのでありますから、こういう審議をしてきたということだけでは、この調査会法の趣旨には合わないように思うのでありますが、この結論というのが、一体どういうことになるのか、審議の状況だけでもいいのかどうか、こういう点をお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 調査会の審議につきましては、憲法調査会が独自の考えでおやりになることを原則といたしております。従いまして、調査会におきまして結論と申しましても、多数がこう、少数がこう、あるいは議事の状況、その他御自由にお出しになる建前をわれわれはとっておるのであります。
  46. 中村高一

    中村(高)委員 それでは、なるほど、今総理大臣の言われますように、憲法調査会としては、これは独自の立場で答申をするというのがほんとうでしょう。ですから、どういう形で出てくるかは、もちろん調査会の結果を見なければわれわれも言えないことでありますけれども一つ、私は、総理大臣に相談をしたいと思うし、総理大臣意見を聞きたいのでありますが、それは、あくまで憲法改正国会が中心になるということだけは総理もお認めになっておる通りでありまして、従って、むしろ、こういう憲法調査会というようなものは、内閣に置かずに、国会に働くことの方が正しいということは、この調査会設置の法案の際にも、ずいぶん議論されたことであります。立法府法律改正をやるのでありますから、立法府自身がこの問題に取り組んで、そうして何年でもかかって、立法府の中に調査会を置くべきではないか、われわれはこの方が正しい議論だと、かように思っておるのでありますが、政府のいろいろな考えから、とうとう内閣調査会を設置してしまったのであります。しかし、反対の議論の中には、国会調査会を置くというと、国会議員だけが委員になっちまうのじゃないか、そうして院外の者を入れるということができないのじゃないか、そうすると、どうも議論が狭くなり過ぎはしないか、こういう議論も反対論の中にありました。いかにも、議員だけでこの問題に取り組むということも、確かに狭い形になるかとわれわれは存じます。しかし、これは参考人であるとかあるいは公述人を自由自在に、今日国会の中に、外部から学者を呼んで広い意見を拝聴できるという立場になっておるのでありますから、私たちは、国会の中にそういうものを作って、そうして院外の学者はもちろんでありますが、あらゆる一般の民間の声を聞いて、どんなに、長くかかってもいいから、拙速でなくして、完全な意見を取りまとめるということの方が、国家百年の大計であるとわれわれは思っておるのであります。そういう趣旨から考えますならば、すでに憲法調査会はもう発足してしまっておる。これはわれわれは認めておりません。憲法調査会を私たちは認めてはおらぬのでありますが、あるという事実はこれは明らかであり、すでに四年半も議論をして、相当に各方面から議論をしておるのでありますから、私は資料として相当に見る必要のあるものがあると思う。ですから、これはこれなりに一つの資料として、国会の中に憲法問題についての調査会を作って、そしてそのままこの資料を生かして、さらにそれに各方面からの積み重ねをやっていくことの方が、われわれは、憲法を慎重に扱うという意味においてもいいのではないかと思いますので、総理大臣所見をお聞きいたしたいのであります。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法調査会法を議会に提案いたしましたときに、いろいろ問題があったことは、お話しの通りでございます。しかし、結果といたしましては、内閣に置くことにいたしました。しこうして、お話しの通り、四年余り今続いております。これが資料につきまして国会議員の方方に参考としてお出しするということは、私は適当かと思いますので、この問題は各党間で一つ御協議願うことにいたしたいと思います。それよりも、こんな重要な問題につきまして、反対とかなんとかいわずに、ほんとうに国民の代表としてお入りになることを、われわれは非常に願うのでございます。
  48. 山村新治郎

    山村委員長 中村君に申し上げます。ただいま官房長官がおいでになりましたから、官房長官より憲法調査会審議の状況を一つお話し願います。
  49. 大平正芳

    ○大平政府委員 憲法調査会は、昭和三十二年の八月第一回総会を開きまして、発足以来昨年七月までのまる四年間にわたりまして、日本国憲法がどのようにして制定されたか、また、どのように実際に運用されているかにつきまして、審査を行ないました。そうして、昨年の九月から、そのような調査審議の結果明らかとなりました憲法の問題点につきまして、憲法改正する必要があるかどうか、憲法の運用を改善する必要があるかどうか、そのような必要がありとすればどのようにすべきであるかなどの点につきまして、検討審議いたしております。  これらの調査審議を行なうにあたりましては、委員の討議だけに終始することなく、必要に応じて参考人を招いてその意見を聞き、また、全国にわたりまして公聴会を開催いたしまして、広く国民一般意見を聞き、さらには委員を海外に派遣いたしまして調査を行なうなど、慎重の上にも慎重を期して、公正にして片寄ることのない調査審議を行なうよう、万全の努力をいたしておるわけでございまして、内閣といたしましては、これらの過程に何ら制肘を加えることなく、調査会の慎重な審議を期待いたし、ておるわけでございます。
  50. 山村新治郎

    山村委員長 それでは暫時休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十三分開議
  51. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。中村高一君。
  52. 中村高一

    中村(高)委員 憲法問題につきまして、午前中の議論に引き続いてやる予定でありましたが、特に内閣法規定については全然まだ議論いたしておりませんし、政府の言うように、その他の中に内閣提案権を入れるなどということに対しては、われわれは承服することもできません。なおさらに引き続いて内閣法検討をいたしたいのであります。また、別の問題でありますけれども、明確にするために、国会法の中に今後はもっと明確にうたうべきではないかというような議論も、議運委員会などでも議論されておることもありまするので、問題はまだ残されておりますが、理事会の申し合わせもあるそうでありますから、問題を本日は保留いたしまして、次の機会に譲りたいと存じます。
  53. 山村新治郎

    山村委員長 次に、野原覺君に発言を許します。野原覺君。
  54. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、社会党を代表いたしまして、今日最も大きな、最も重要な問題になっております日韓会談を中心に、ILO、その他、時間があれば、文教の若干の問題にも触れてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  日韓問題に入ります前に、私は二月三日の読売の夕刊で拝見いたしたのでございますが、フィリピンとの通商条約についてお尋ねをしてみようと思うのであります。  この二月三日の報道によりますと、日比通商航海条約の内容を変更するために、フィリピン大統領がこの旨を指示したとあるわけであります。外務大臣はこの点お読みになられたと思うのでございますが、これはマカパガル大統領の記者会見の発言でございますので、私は無視できないと思う。このことについて、政府は、フィリピン政府にどのような照会をして、どのようになさるおつもりであるのか、承りたいのであります。
  55. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  マカパガル氏が大統領になりましてから、諸般の問題の検討を行なわれておるようでございますが、その一環といたしまして、日比通商条約に関しましても、これを検討するようにという指示をされておるようでございます。しかしながら、野原さん御承知のように、この交渉は、与野党をともにいたしました交渉団がフィリピン側においても組織されまして、ラウレル氏が団長となって来てできたものでございまするので、当然、当時の野党でありましたマカパガル氏の政党においてもこのことを承知していたわけでございまするので、十分調査されることはけっこうでございますが、調査の結果、これは適当なものであるというふうになることを、私どもとしては願っておる次第でございます。
  56. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、政府といたしましては、フィリピンとの通商航海条約につきましては、いかなることがあってもフイリピン大統領の改定の要求には応じない、その方針をあくまでも堅持されるかどうか、伺いたいのであります。
  57. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 外交の問題でございますから、若干微妙な点もございまするので、今私がお答え申し上げました程度に御了解願っておきたいと思います。われわれは、両国の政府において合意した条約を日本国会においては批准をしておるわけでございます。しかし、その合意があったという事実、このことについて、十分その内容についても調査されて、妥当な結論を出されると思いまするが、おそらく変更というようなことについては考えられないであろうということを、われわれとしては期待をしておるわけでございます。
  58. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私どもは、変更がなければ問題はないと思います。けれども、この通商航海条約が昨年のたしか十月であったと思いますが、これが国会に提出をされました。当時、私ども社会党といたしましては、フィリピンの大統領選挙を前にしておることでもあるから、しばらく見合わすべきではないのか、大統領がかわるということになると、また条約の改定ということを申し出された場合に困るのではないかという意見が、実は強かったのであります。その旨を、実は外務委員会等においても、外務委員理事諸君に聞きますというと、政府に注意を与えてきたのでありますが、当時、政府は、いかなることがありましても改定には応じない、あくまでもこの条約で通すのだということでございましたから、私どもの党といたしましても、政府に協力をいたしまして、満場一致この条約は通過しておるのであります。ところが、私どもが心配しておりましたように、またまたフィリピンの大統領から条約の改定が申し入れられる。そうなると、これは本委員会においても問題になりました、たとえばタイの特別円のことであります。あるいはビルマの賠償の問題であります。池田内閣というのは、一たん外国と取りきめておりましても、またあとで外国からねじ込まれると、最初の方針をふらふらっと変えておられる。これは春日君が質問をし、わが党の委員諸君からもお尋ねをして追及した点でございますが、こうなると、一体、どこに池田内閣の外交方針があるのか、私ども了解に苦しむのである。従って、私はこの点を尋ねておるわけでございますが、この点について総理に重ねてお聞きしておきますが、そういう経過でこの条約はできたのであります。昨年の十月にできた条約を、フィリピンから横やりを入れられたからといって、直ちに改定に応ずるがごとき、そういう軽率なことはあるべきものではなかろうと思うのでありますが、いかがですか。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 フィリピンとの通商条約につきましては、私も関係いたしておるのであります。先ほど外務大臣がお答えした通り、与野党両方でやって参りました。そして私は、あの通りにフィリピン国会においても審議ができるものと期待いたしております。
  60. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この条約の問題は、もしもフィリピンから改定を要求されてそれに応ずるということになれば、私ども政府の責任を追及いたします。このことを申し上げておきたいと思う。先ほども申し上げましたように、タイの特別円にしても、ビルマの賠償にしても、これは大へんな責任であります。一たん話を取りきめておきながら、あとでまた申し入れられると、国民の血税から莫大な金額を支出しなければならぬという失態を、今日まで政府は重ねてきたのであります。私は、フィリピンのとの条約もまたそういう事態になるのではなかろうかということを懸念いたしますので、前もって実は警告をしておきたいと思うのであります。昨年の十月にできたものを、いかなることがあっても変改するがごとき、そういう方針のない、腰のないやり方では、私どもはあくまでも承服しない、このことを申し上げて、次に入りたいと思うのであります。  日韓問題でございますが、池田内閣は今日朴政権と会談を続けておられます。交渉いたしておるようであります。そういうところから見ると、朴政権は合法的な政権だという見解を持っておられるようであります。ところが、この朴政権に対してはいろいろな意見が出されておりまして、これは合法政権ではない、非合法政権だ、こういう見解もあるわけでございますが、私が総理にお尋ねしたいことは、どういう根拠に立って、朴軍事政権は合法性があると御判断なさっておられるのか、お示し願いたいのであります。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび御答弁申し上げておると思います。もちろん、朴政権はクーデターによって成立したのでございますが、御承知通り、大統領は前のそのままありますし、私は朝鮮の政体が変わったとは思いません。また、今の朴政権も、今後文民政権に移る暫定政権だと言っております。また、国際連合傘におきましても、朝鮮問題審議会には今の朴政権の参加を認めておる状況でございまして、私は、日本ができるだけ早い機会に韓国との国交正常化を打ち立てようという従来の方針によって、交渉相手にいたしておるのであります。  外交的に専門的な答弁は、外務大臣からいたさせます。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 三点あげまして、今の質問にお答えしたいと思います。  まず、昨年五月の軍部クーデターによる政変の結果、憲法規定のかなりの部分が停止され、国家再建非常措置法というものが施行されまして、国家再建最高会議が組織されたのでありますが、この過程を通じまして、元首たる大統領は留任しておるのであります。この措置は、憲法体制上、大統領に認められました非常事態下における権限根拠として行なわれたものと考えられます。従って、基本的には、新政府の承認を必要とするような政体の変更の事態は生じておらない。従って、国際法の観点からすれば、前政権と現在の政権との間には、法的な継続性が存在するものと考えられます。この立場は、従来韓国を承認しておる三十数カ国がとっておる立場でございます。  第二点は、御承知のようなクーデターの形で交代が行なわれましたが、憲法上の個々の規定に厳密に従っていないということは、事実さようでございますが、しかし、そういう手続問題について考えまする場合、それはあくまでその国の国内上の問題でございます。国際法上問題となる政府の法的継続性というものには、何ら影響を及ぼすものではありません。  第三点としましては、二年後、すなわち、明年夏の文民政権復帰を約束して、暫定政権であるという性格を公に表明しております。国連憲章を支持するということも明らかにしておりますので、従来の政権と将来の文民政権との間をつなぐ暫定政権と認めまして、交渉を行なっておる次第でございます。
  63. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、私は、ただいまあげましたその三点についてお尋ねをしていきたいと思うのであります。非常にこれは重要な問題であるからであります。  まず第一点は、総理並びに外務大臣の御説明によりますと、前の政権からの大統領のユン・ポソンが留任しておるということをあげておるのであります。そこで、私はお尋ねをいたしますが、このユン・ポソンという大統領は、大韓民国の憲法によって民議院から選出されたはずであります。ところが、今日民議院はどうなっていますか。朴政権ができて、民議院は廃止されたのではございませんか、外務大臣、いかがですか。
  64. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 機能を停止しておるわけでございます。
  65. 野原覺

    ○野原(覺)委員 民議院は明らかに廃止しておる。なるほど、機能を停止しておるということは、あなたは、大韓民国の憲法というものが廃止されていないという見解に立っておるだろうと思うのでありますが、大韓民国の憲法では、クーデター政権は認めないことになっておるのであります。クーデターをやって政権の座に着くということは許さないことになっておる。だから、クーデターによって朴が政権の座に着いた、そういうことをしたこと自体が、すでに憲法が事実上廃止されておるではないか。しかも、国家再建非常措置法という立法がなされておるのであります。国家再建非常措置法が憲法の効力を停止してしまっておる。大韓民国の憲法というものは今日ない。しかも、そのユン・ポソンを選出いたしました民議院というものは、朴がクーデターをやって、直ちに廃止をしたのだ。ユン・ポソンは大統領だという見解をあなたはとるでありましょうけれども、ユン・ポソンを選出した母体は廃止されておるのであります。廃止されております。ユン・ポソンというのは大統領の地位に今日ない。しかもこの人はそういうことを考えてかどうか知りませんが、大統領の辞任を申し出たのです。ところが朴がこれを許さぬのです。朴正煕がこれを許さない。脅迫をして大統領の地位に据えておるのでございましょう。つまり、ユン・ポソンという大統領を選んだ母体が廃止され、憲法が事実上否定されて、何のユン・ポソンが、前の政権からの継続の大統領だと認めることができますか。伺いたいのであります。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 韓国の憲法は機能を停止しておりまするが、そのほかに国家再建非常措置法というものができまして、これが相当部分、憲法を上回る部分もございまするが、憲法のある条章にかわって位置を据えておるわけでございます。そういう関係でございまして、これは廃止したというのは少し言い過ぎだと思うのであります。そこで、そういう問題がいろいろございまするが、依然として大統領は大統領でおるわけでございます。また一方そういうことを別といたしましても、国際法上は、その国の政体をどう見るかといいまする場合に、その政権の発生の過程というものの問題よりも、むしろ現実に、国際法上これを国として認めていって適当であるかどうかということの方を重く見ていることは、野原さんも御承知通りでございます。一九四六年にハンガリーの政変があった、あるいは四八年にパキスタンであった、あるいは四七年、四八年にビルマのクーデターがあった、あるいはタイでもあった、こういう場合に、やはりそういうクーデターによって政権ができたという過程を問題とするよりも、その国の政府がその国を現実に統治し、しかも国際法上これと相対することが適当かどうか、認めるかによって判断されていることはすでに御承知通りでございます。国内問題につきましても、今申し上げたような大統領というものを、そのままの形をずっといっていることもあります。かたがた、今申し上げたような、そうした国際法上の一般的な解釈の通念に従って、これと交渉をすることは適当と考えております。
  67. 野原覺

    ○野原(覺)委員 端的にお尋ねしますが、大韓民国の憲法はクーデターを認めておりましたか。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 クーデターというものは、これは正確な法律学上の定義というのは非常にむずかしいのですが、非常に古くは一七九九年のナポレオン・ボナパルトのときにそういうことがあった。そういうものを予想して一国の憲法が書かれているという例はないわけでございます。
  69. 野原覺

    ○野原(覺)委員 クーデターを認めないのに、クーデターで政権を奪取するということはできないのです。このことは憲法の否定ではございませんか、外務大臣。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どうも、クーデターというものを認めるか認めないか、あるいは好もしいものと思うかどうかということを、われわれの日本人の頭で日本の国に適用してこれを質問された場合、私は好ましくないと思いますし、また、そういうものがあってはならぬと申し上げざるを得ないのであります。ところが、実際にあるのであります。たとえば今申し上げたハンガリーの例もそうですし、それからキューバの場合もそういうわけです。それから、いろいろの国があるわけでございます。そういうふうに各国で行なわれている場合に、外国で行なわれることをいい悪いと批判して、それだからという、その過程を問題にすることは、これは国際間でいたしておらない実情であるということを申し上げたいわけでございます。
  71. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私はいい悪いと言っておるのではないのです。クーデターで政権を奪取したことは事実です、韓国で。これは認められる通り、このクーデターで政権を奪取したということは、事実上大韓民国の憲法を否定したことになるではないかと言っておるわけです。いかがです。
  72. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 クーデターというものが現実に起きまして、そしてそこに政権ができた。そこで、その政権は憲法を否定しておらない。ただ非常の際だから、韓国では、これを大統領の持っている非常大権の一部というふうに理解させようとしておるようでありますが、そういうことで、国家再建非常措置法というものができて、憲法のある条章をそちらの方にとっていくというような、そういう規定を作っておるわけでございます。それで現実に政治をやっておるわけです。それをわれわれがいい悪いという批判をすることは、これは外国のことでございますから差し控えなければならぬ、こう思うわけであります。
  73. 野原覺

    ○野原(覺)委員 民議院は廃止されていないのですか。あなたは民議院の効力は停止されていると言いますが、民議院は廃止されておるのでしょう。効力を停止したという証拠を出して下さい。私の知っておる範囲では、韓国の新聞によりますと、民議院廃止とどの新聞も書いてある。あなたが、民議院は廃止されていないと言うならば、それを出してもらいたい。
  74. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今の憲法の中にある民義院の条章というものは機能を停止してしまって、そして国家再建最高会議というものができて、これが非常に大きな権限を持っておるということでございます。従つて、現在民議院というものは動いておらない。見方によれば廃止かもしれませんけれども、とにかく見方によれば機能を停止している。これを今度明年の文民政権ができて、それでどうなるかということは、これは将来の問題としてわかりません。
  75. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大韓民国の憲法によりますと、外務大臣は御承知だろうと思いますが、大統領は民議院から選ぶということになっているのです。そうしてユン・ポソンが選ばれてきたのです。ところがその選んだところの民議院は事実上廃止されたのですよ。選出母体がなくなったのですよ。ユン・ポソンという自然人は継続しておるかもしれません。ところが、国際的に朴は困った。これではならぬというので、ユン・ポソンがやめたいと言うのを大統領に据えておく。これは、ユン・ポソンというのは大統領ではございませんよ。これは何といっても、大韓民国の憲法からいっても、国際的に考えても、だれが見てもこれは大統領じゃありませんよ。これは第一の理由は成り立たぬですよ。ユン・ポソンが大統領で継続しているから朴政権は続いているのだ、朴政権は韓国の政権として、李承晩、張勉からのずっと継続政権であるというあなたの見解はへ理屈ですよ。詭弁ですよ。いかがですか。
  76. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ユン・ポソン、この大統領はそのままいるわけでございます。やめたいと言ったかもしれませんが、結局いたいということになって残っているわけであります。そこで、この母体がなくなったじゃないかと仰せられまするが、これは今申し上げたように、機能は確かに停止しておる。しかしこれは、停止したからといって、それじゃなくなったというふうに即断することもいかがかと存じます。とにかく韓国においてはそういう制度を認めておるわけです。その間、認めておる以上、外国でありますわれわれからしては、その韓国の内政問題に一々干渉して、その当不当を言うことは差し控えなければならぬ。従って、国際通念によって、国際法上の一般的な解釈に従ってこれを認めていく、こういうことでございます。
  77. 野原覺

    ○野原(覺)委員 内政に干渉したくないのは私どもです。私はあとで指摘いたしますけれども池田内閣は韓国の内政に干渉しておりますよ。私はそのことはあとで申し上げたいと思う。  そこでこの問題は、私はあくまでもこれは了解できません。あなたの言うことは詭弁であり、へ理屈です。これは速記録をお読みになればわかる。大統領を選出した母体がなくなっているのに、何でそれが大統領として承認できますか。こういうことはあり得ないことです。  理由にあげました第二点の国連が認めているということがございましたが、いつ国連は朴政権を認めたのですか。私は不勉強で知りませんからお教え願いたい。
  78. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 決してそんな御謙遜をしていただいてはと思うのでありますが、十六回の国連総会において、従来から朝鮮の復興に関する委員会がございましたが、そこに韓国側が出席をして意見を述べておったわけです。昨年も引き続いてこれが認められておる。その際、北鮮も呼んだらいいじゃないかという話でございましたが、北鮮側は結局国連の権威、権限を認めない、こういう立場に立ちまして出席しなかった。従って、韓国に関する限り、国連の了解は、依然として引き続いて、朴政権ができる前からずっと引き続いて同様な解釈をとっておる、そういうふうに解しておるわけです。
  79. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、第一六回国連総会に朴軍事政権をオブザーバーとして呼んだ、オブザーバーとして出席をした。そのことをさして国連が認めておる、こうおっしゃるのですか。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国連の中に、アンカークといっておりますが、そういう委員会がございまして、これが国連決議に基づいて、一九四八年に朝鮮における合法政府として韓国を認めて、それ以来ずっと続いておるわけです。従って、それを認めないということになれば、昨年はその政権はだめなんだということを言ってしかるべきでございますが、その間に何ら事情の変更がない、こういうことで、国連は一貫して同様の見方を韓国の政権についてしておる、こういうふうに考えておるわけです。
  81. 野原覺

    ○野原(覺)委員 オブザーバーとして国連に出席したことが、国連が朴政権を承認したことだということは、私は大へんな御見解だと思うのであります。それならばお尋ねをいたしますが、中共——中華人民共和国は朝鮮動乱の直後オブザーバーとして国連に出席をしたのであります。この事実をあなたはお知りでございましょう。そういたしますと、中華人民共和国は国連が認めたのだと解釈してよろしゅうございますか。いかがですか。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私が言っておりますのは、従来から朝鮮における代表たる政権として、韓国政府を呼んでおるわけです。そうしてこの政権を相手にして、韓国の復興についてのいろいろな意見というものを各国で持ち寄って出しておるわけです。その観点から、ずっと出席してきている、こういうことを言っておるわけでございます。  なお中共の出席云々については、政府委員からお答え申し上げます。
  83. 野原覺

    ○野原(覺)委員 政府委員の答弁のある前に私は申しておきたいと思いますが、あなたは言葉を慎重に使ってほしいのです。事は外交上の、しかも重大な日韓会談に関する問題です。国連は朝鮮の代表として呼びましたか。韓国を朝鮮の代表として国連がいつ呼んだのですか。国連は朝鮮の統一問題を議題に供さなければならないから、韓国と北鮮を呼んだのです。三十八度線で分かれておるから韓国と北鮮を呼んだ。北鮮は条件をつけた。その条件がいれられないというので、北鮮は出席しなかっただけなのです。朝鮮の代表としては呼んでおりませんよ。  総理にお尋ねをいたしたいと思う。総理は本会議におきまして、私どもの党の河上委員長にこのような答弁をされておるのであります。「韓国とは歴史的に、地理的に、文化的に、いろいろ密接な関係があるのであります。韓国は一九四八年、国連におきまして、一応の独立国として取り扱われつつあるのであります。」私はこれは大へんな個所だろうと思うのです。国連で一応の独立国として取り扱われつつあるということは、私どもは理解できないのです。国連はオブザーバーとして呼んだだけなんです。オブザーバーとして出席したものは、これは国連が認めたことにはなりませんよ。その先にこう書いてある。「しこうして、その後におきまして軍事政権が起きて参りました。この軍事政権に対しまする各国の状況は、これを暫定政権として一応認めております。」暫定政権として各国が認めたのですか、国連に参加するすべての国が。これが第二点。「従って、昨年の第十六回国連総会におきましても、朝鮮の統一問題につきまして、韓国の代表者がオブザーバーとして国連に出席することを認めておることは、一応の暫定政権を認めておると私は考えていいと思います。」こうあなたは言っておられるのでございますが、ただいま申し上げましたように、オブザーバーとして出席したことが、どうして暫定政権になるわけですか。これは総理の答弁だから総理に御答弁願いたい。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その前に、私の答弁に関係がありますから申し上げますが、一九四八年の国連決議というのは、御承知と思って私は省略いたしましたが、朝鮮における唯一の合法政府は韓国である、こういう決議でございます。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 一九四八年十二月八日だったと記憶いたしておりますが、ここにおいて、国連の監視のもとに行われた総選挙による韓国政府を正統のものといたしておるのであります。しこうして、三十数カ国がこれを認めておるのであります。私は最近におきまして、この暫定政権に対しまする態度は、アメリカはもちろんヨーロッパの方でも今までと変わりないもの、こういう考えで進んでいると思っております。
  86. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私はまことにしつこいようでありますけれども、非常に答弁があいまいなんです。一九四八年、これはたしか十二月十二日だと私は思いますが、このことを私はあいまいと言っておるのじゃないのです。いいですか、韓国は国連が認めたとおっしゃいますけれども、韓国は今日国連に加入しておりますか。国連の一員ですか。外務大臣、はっきりおっしゃって下さい。
  87. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 オブザーバーとして出席を認められたので、加盟はしておりません。
  88. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは議論を発展させるためにお聞きいたしますが、一九四八年の十二月十二日の国連総会の韓国に関する決議をお読み願いたい。これは外務大臣が用意がなければ、政府委員からでもよろしい。韓国に関する個所だけ朗読してもらいたい。
  89. 高橋覺

    ○高橋政府委員 ただいまの一九四八年十二月十二日第三総会決議一九五を朗読いたします。   総会は、朝鮮の独立問題に関する  一九四七年十一月十四日の総会決議  一一二を尊重し、国際連合臨時朝鮮  委員会(以下臨時委員会という。)の  報告及び総会の中間委員会の臨時委  員会との協議に関する報告を審議  し、臨時委員会報告中に記述された  困難のため、一九四七年十一月十四  日の決議に定められた目的が未だ完  全に達成されていないという事実、  及び特に朝鮮の統一が未だ成就され  ていないという事実を念願におき、  1 臨時委員会の報告中の結論を承   認し、  2 臨時委員会が観察し、且つ、協   議することができたところの、朝   鮮の人民の大多数が居住している   朝鮮の部分に、有効な支配と管轄   権を及ぼす合法な政府(大韓民国   政府)が樹立されたこと、この政   府が、朝鮮の前記の部分の選挙民   の自由意思の有効な表明であった   し、また、臨時委員会が観察した   選挙に基くものであることと、こ   の政府が朝鮮における唯一のこの   種の政府であることとを宣言し、  3 占領国に対して、その占領軍を   できる限りりく朝鮮から撤退すべ   きことを勧告し、  4 臨時委員会の任務を引き継   ぎ、且つ、決議に定められている   朝鮮政府の状態に留意し、本決議   の規定を実施し、特に次のことを   行う、オーストラリア、中国、エ   ル・サルヴァドル、フランス、イ   ンド、フィリピン及びシリアから   なる朝鮮委員会を一九四七年十一   月十四日の決議に定められた目的   の完全な達成のための手段とし   て、設立すべきことを決議し、  (a) 一九四七年十一月十四日の決議   中で総会が設定した原則に従い、   朝鮮の統一及びすべての朝鮮の保   安隊の統合を将来するよう周旋す   ること、  (b) 朝鮮の分割により起こった経済   的、社会的その他の友好関係への   障害の除去を容易にするよう努力   すること、  (c) 人民の自由に表明された意思に   基く代議制政府の一層の発展に当   り、観察と協議を行う態勢にある   こと、  (d) 占領軍の実際的撤退を観察し、   撤退が行われた際は、撤退の事実   を確証すること、またこの目的の   ため、二占領国の軍事専門家の援   助を、委員会がこれを希望する際   は、要請すること、  5 委員会が、  (a) 本決議採択後三十日以内に、朝   鮮におもむき、同地に本部を維持   すること、  (b) 一九四七年十一月十四日の決議   により設置された臨時委員会に   代ったものとみなされるべきこ   と、  (c) 朝鮮全土にわたって、旅行し、   協議し、且つ、観察する権限を与   えられること、  (d) 委員会自身の手続を決定すべき   こと、  (e) 事態の発展に照し、且つ、本決   議の規定の範囲内で、委員会の任   務の遂行に関し、中間委員会と協   議できること、  (f) 総会の次の通常会期及びそれに   先立ち本決議の標題の事項を審議   するため招集されることのある特   別会期に報告を提出し、また委員   会が適当と認める中間報告を、加   盟国に配布するため、事務総長に   提出すべきこと、を決定し、  6 事務総長に対して、委員会に充   分な職員及び便益を、必要とされ   た技術顧問を含み、提供するよう   要請し、また、事務総長に対し   て、委員会の各構成国の代表一人   及び代表代理一人の費用及び日当   を支給する権限を与え、  7 関係国、大韓民国及びすべての   朝鮮人に対して、委員会の任務遂   行に当って、これにあらゆる援助   と便益を提供するよう要請し、  8 加盟国に対して、朝鮮の完全な   独立と統一を招来しようとするに   当って、国際連合が達成した及び   達成するであろう結果を損うよう   ないかなる行為をも慎しむよう要   請し、  9 加盟国その他の国に対して、大   韓民国と関係を設定するに当っ   て、本決議第二項に記述した事実   を考慮に入れるよう要請する。  以上であります。
  90. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、今お聞きの通りです。あなたはどのようにお聞きになられたか知りませんが、私は、長い文章でありましたけれども、これは大事な個所だと思って、速記にとどめる必要があると思って質問をしたのであります。今の一九四八年の十二月十二日の国連総会の決議は、確かにこれは韓国を認めております。この決議は私も認めましょう。ただし認めるにあたっては条件をつけておるでしょう。総理お聞きになりましたか。三つの条件をつけておるでしょう。その三つの条件とは何かといえば、第一の条件は、合法的な政府であるということであります。いいですね。第二の条件は、この政府はこの部分における選挙民の自由意思の有効な表現でなければならぬということです。第三の条件は、臨時委員会により監視された選挙に基盤を有する政府でなければならぬということです。私はこれ以上尋ねなくてもおわかりだろうと思うのです。朴政権が合法政府でございますか。あなたは民政に移管するとか、地理的、歴史的、文化的に関係があるからとか、いろいろ言いますけれども、そういうことは朴政権を合法政府と認める本質の理由にはなりません。あくまでも国連総会の意思というものは、この三つの条件を持たなければならぬのです。選挙民の自由な意思によってできた政府でなければ、国連総会は韓国においては認めないといっておるのです。この決議はその後変更になっておりませんよ。いかがお考えになりますか。それでもあなたは朴政権は国連において認められたものであると強弁をせられますかどうか、お尋ねしたい。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 一九四八年のあれによりまして、韓国政府は、あなたも同意なされたように適正な政府と認めたのであります。しこうして適正と認められた政府が、その後においてクーデターが起こった。そのクーデターによった朴政権というものは、合法的なあれでないからだめだという議論をなさるのならば、各国の人はそれをどう見ておりましょう。合法的な選挙基盤においてやったのではないのだけれども、一応クーデターでできた政権をどう取り扱っているかということが問題であります。出発のときには適法だ、これは認める。その後クーデターで朴政権ができた。これをどう見るかというときには、十六回国連総会で、国際的に従来と同じように取り扱っておるじゃございませんか。それで将来文民政権に移る、こういうので、私は、暫定政権と見て交渉相手にしておるのであります。このことは、十六回のあれにオブザーバーとして従来通りに出席を認めたことによって私は推察できると考えるのであります。
  92. 野原覺

    ○野原(覺)委員 十六回のオブザーバーというものは、朝鮮の独立の問題で国連が呼んだだけなんです。オブザーバーに出たということだけの理由では、直ちに暫定政権にはなりませんよ。これは私が先ほど指摘したように、朝鮮動乱の直後、国連は中共を呼んだのです。中共は、それではあなたは暫定政権とお認めになりますか。国連が承認をした暫定政権であると認めなければなりませんよ。それを認めるならば、私はやめましょう。いかがですか。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 今の朴政権はクーデターによってできたので、前の韓国政権と立場が違うか違わないかという問題であると思う。中共の問題とはこれは別個です。国際連合で立場が違うように見ておるかどうかということになりますと、クーデター前と後と同じように取り扱っているから、自分らも暫定政権であると認めるし、国際的にも認めている、こういうことであります。
  94. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたの河上委員長に対する答弁は、これは速記に書かれた通りでありまして、朴政権は暫定政権だ、その証拠はオブザーバーとして出席したからだ、こう答弁をしておるのです。ところが私は何回も言うように、中共の伍修権というのが朝鮮動乱直後中共を代表してオブザーバーとして出席したのです。十六回総会で北鮮は出席をしなかったが、朝鮮動乱直後中共は伍修権をオブザーバーとして派遣して出席したのです。韓国も出席した。中共もオブザーバーとして出席をしておる。韓国を暫定政権として認めるのだという見解をとるならば、中共も認められるという見解になるじゃありませんか。私はそれを聞いておるのですよ。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 そういうことをお聞きになっているから、答えているのでございます。クーデターが起こったから十六回総会に朴政権の代表を受け付けないということならば、クーデター前の韓国政府と違うような取り扱いになりましょう。クーデターが起こってから後も、国連におきまして、韓国問題についての審議に、前と同じようにオブザーバーとして認めておるじゃございませんか。何もそこに違った取り扱いをしていないという事実を言っておるのです。一ぺんでも出たらすぐどうこうという問題ではございません。今の朴政権と前の政権とは全然違うか違わないかという問題を、国連のあれをもって私は説明したのであります。
  96. 野原覺

    ○野原(覺)委員 オブザーバーとしては認めておりませんよ。前と同じようには認めておりませんよ。同じように認めておるならば、朴政権だけ呼ぶはずです。国連はなぜ北鮮に招請を発したのですか。北鮮に招請を発しておるのですよ。つまり朴政権が起こって朝鮮の国内情勢が険悪であるからということで、国連総会は朝鮮の言い分も聞こう、朴の言うことも聞こうということで、両方招請状を発しておるのですよ。その前は、クーデターの前のオブザーバーのときには、韓国にだけ発しておったのです。しかも国連総会の決議というものは、私が今申し上げたように、人民の意思に基礎を置いた政権であるということが条件じゃありませんか。朴政権はその条件を備えていないのです。総理、その点からいってもこれは国連総会の決議違反じゃありませんか。前と同じようなオブザーバーとして呼んだのではありませんよ。それならば北鮮は呼ばなかった。北鮮も呼んだのです。どうあなたは御解釈になりますか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 韓国に関する限りは前と同じようでございます。新たに北鮮を呼ぶ、呼ばぬとは別問題でございます。
  98. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは私は行き方を変えてお尋ねいたしますが、この国連総会の一九四八年十二月の決議は、韓国の場合は人民の意思に基礎を置いた政府でなければならぬ、こう申しておるのです。このことと今度の朴政権はどのような関連がありますか。あなたは朴政権は人民の意思に基礎を置いた政権だ、こういう解釈をとられますか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 それは前お答えした通りに、一九四八年のあの国連決議によって、韓国政権というものはできました。そして三十数カ国がこれを認めております。国連加入は認めておりません。しかしでき上がった韓国政権というものが、一時クーデターによって、あるいは選挙を行なわなかったり、憲法規定を相当程度無視いたしまして、国家再建最高会議をああいうふうに設けてやっておる、これは事実でございます。しからば、そういうようなことをして憲法をあれしたのは、一九四八年の決定に反しているから、これはだめだと国連が言っているかというと、そうでないのです。いずれは文民政権に移るからというので、暫定政権として同じように取り扱っているという事実を申し上げているのであります。
  100. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 事実問題で、若干補足さしていただきますが、北鮮は、実は十六回総会以前にも、十五回の総会にも呼んでおるわけでございます。ただし条件をつけておりまして、国連の権威を認めるという条件のもとに招請しております。これは朴政権ができる前からのことでございまして、朴政権ができたから今度は北鮮を呼んだんだという御議論は、事実と反するのでございます。それから十六回総会の決議の中にこういうことがございます。国連朝鮮統一復興委員会、さっき申し上げたアンカーク、これは、韓国の新事態に対し大きな関心を抱き、新政権の革命目標や国家再建のための努力には理解を示す反面、基本的人権の擁護と民主制度の維持につき、特に関心を示した云々というのがございます。やはり韓国の新政権については、この努力の目標等に対しては、国連は理解を示したということを言っておるわけでございます。
  101. 野原覺

    ○野原(覺)委員 国連は韓国をオブザーバーとして呼んだ、それから北鮮も同様に呼んだというならば、オブザーバーとして呼ばれること、そのこと自体からは暫定政権も何も出てこないのです。北鮮も呼んでおる。総理はオブザーバーに力を入れて答弁をされているのであります。これはそこからは出てこない。しかも総理は、オブザーバーとして呼ばれておるから、事実上国連総会の決議がどうあろうとも、国連は朴政権を認めておるのだという、こういう見解でありますけれども、国連総会で、人民の自由な意思に基礎を置いた政府でなければならぬという、この決議の文言が変更にならない限り、私は国連が朴政権を認めるはずがないと思う。あなたは朴政権を認めたとは何を根拠に言うのですか。オブザーバーとして出席することは認めました。国連はそれはやっております。朝鮮動乱の直後は中共にすらやっておる。アメリカもこれを承認してやっておる。オブザーバーというのは何も国連加盟にはならない。国連の一員にはならないのです。いろんな問題を聞く都合があるから、世界の平和のために、安全のために、オブザーバーとしていろいろ尋ねていくわけなんです。そのことからは、直ちに暫定政権ということは出ないじゃございませんか。国連総会の決議は、人民の意思に基礎を置いたものということになっておる。これは変更になっていないんです。だから朴政権は、人民の意思に基礎を置かない限り、私は国連が認めるはずはないと思う。民政に移管すれば話は別であります。民政に移管したならば、今日の国連は多数決でもって認めるかもわかりません。しかし、今日直ちに朴政権が認められていないでしょう。  総理に重ねてお尋ねします。国連が認めていないでしょう。あなたは認めているとおっしゃるのですか。あなたの言う暫定政権とはどういう政権なんです。国際法的に暫定政権とはどういう政権です。今日認めていないのです。いかがですか。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 一九四八年のあの当時にでき上がりました韓国政府と、そうしてクーデター後の朴政権に対する国連の態度は変わっておりません。朴政権は、国連憲章を尊重しと、こう言っております。そうして国連におきましても、以前と同じような取り扱いをしておるじゃございませんか。しこうして一九四八年の国連決議の公正な選挙とかいろんなことをいっておりますが、今朴政権がそういうことでなしにでき上った、それなら国連は呼ばないはずです。しかし、これは暫定政権であり、いずれは文民の政治に移るまでの暫定政権として取り扱うからこそ、十六回総会も、今までと同様に呼んでおる、こういうことでございます。
  103. 野原覺

    ○野原(覺)委員 暫定政権とは、それではどういうことですか。お尋ねします。暫定政権ということを、あなたはよくお使いになるのですが、暫定政権とは、どういう御解釈をとられますか。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 一九四八年のあの国連の期待しておるような合法的な政府に行くまでの臨時の政府、暫定的の政府、こう解釈しております。
  105. 野原覺

    ○野原(覺)委員 国連が暫定政権として認めたということは、オブザーバーとして呼ばれたことをさすのですか、重ねて聞きます。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 国連は、何も暫定政権と言ってはいないと思います。暫定政権というのは、われわれが、今後文民政権に移るまでの暫定的の政権だ、こう言っておるのであります。国連の方は、従来の韓国政府に対する態度と、このクーデターによる朴政権も同じように取り扱い、しかも来年の夏には文民政権に移るというあの宣言を信じ、そうしてまた国連憲章にのっとっていくという外交的立場を了解しまして、今まで通りの取り扱いをしておる、こういうのであります。
  107. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それはオブザーバーとして呼ばれたという事実だけでしょう。国連が認めてもどうしてもいないでしょう。オブザーバーとしては呼びました。ただそれだけのことです、朴政権は……。国連総会の決議は、先ほど私が言ったように、人民の意思に基礎を有するということが、韓国の場合には大事な条件になっている。ただオブザーバーとして呼んだというだけの話です。国連が認めてもどうしてもいない。国連は、暫定政権としても認めなければ、いわんやこれを国家主権としてなど認めてはいないのです。いかがですか。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 従来の韓国に対しますと同様な態度を国連はとっていると、私は思います。詳しくは外務大臣からお答えさせます。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど申し上げましたように、国連の十六回総会においては、新政権の行なっておることに対して理解を示しておるということを、特に言っております。
  110. 野原覺

    ○野原(覺)委員 国連は従来の韓国と同様な取り扱いをしておると私は思います、と言うのは、それはあなたが勝手に思うだけなんです。国連は認めてもどうしてもいないんですよ。その御答弁では、私は了解できません。私は、朴政権を国連が認めておるかどうかと尋ねておる。認めていないでしょう。はっきり言ってみなさい。国連が認めたのですか、認めていないのですか、はっきりおっしゃってもらいたい。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 国連が認めるということは、どういうことをおさしになっておるのでしょうか。今御質問が、朴政権というものは、一九四八年のあれによってできたんじゃないから、これを認めない、従来の取り扱いとは違うというふうなことを国連はしていない。認めるというのは、国連には加入はしておりませんよ。しかし三十数カ国があの韓国を承認しました。しかし、その三十数カ国は、何も今までと違った取り扱いをしていることを私は聞きません。アメリカにおきましても、朴大統領は正式の賓客として取り扱っております。そしていろんな経済問題につきましても、ドイツを初めとして、どんどん話をしているじゃございませんか。私はこの事実を言うのであります。
  112. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それならば中共はどうですか。中共は、韓国の朴政権以上にたくさんの国が承認しておるじゃありませんか。いかがですか。北鮮だって十数カ国が承認しておる。いかがですか。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 私は中国の問題をどうこう言っているのではございませんよ。朴政権は——ああいうクーデターでできた政権は、従来のクーデターでない政権と別の取り扱いをしておるか、こういう問題を私は論じておる。それは中共はアメリカは認めませんが、ワルシャワでの会談は、百四回やっております。認めていなくても、そういうことをやるのです。私は、あなたの御質問が、従来の韓国政権とクーデター後の韓国政権というものをどう見ているかという御質問だと思って、答えているのです。中国その他の問題は、これとは関係ございません。
  114. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私の質問は、国連総会の決議に違反していないかと聞いておる。国連総会の決議は、先ほど読み上げましたように、人民の意思に基礎を有する政権、韓国においてはそういう政府でなければ認めないというのが一九四八年の国連総会の決議です。朴政権は人民の意思に基礎を置いていないでしょう。その限りにおいては、一九四八年の国連総会の決議に違反しておるじゃないか、このことを聞いておるわけです。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 それは、あのときの決議の通りにいっておりません。従って暫定政権と言っておるのであります。しかも国連におきましては、国連憲章を守ることを宣言し、そうして来年には文民政権に移るということを、国際的に宣明しておりますために、あの四八年のあれによって、あの規定通りには行っていないけれども、これを暫定政権として従来と同じような取り扱いをしております、こういうのであります。
  116. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、国連総会の決議を満たしていない限り、これは非合法政権だという見解をとっておるのです。あなたはこれを暫定政権と言うのです。国連総会の決議は満たしていないけれども、一九六三年には民政に移管するのだ。だからこれは暫定政権だ。それじゃ国連が暫定政権として認めたのかと、私が執拗にお尋ねいたしますと、国連はそういうことは認めていないとあなたもおっしゃっておる。国連が認めていないのです。朴政権というのは、国連総会の決議を満たしていない限り、あくまでも非合法の政権じゃございませんか、こう聞いておるわけでございますから、あなたも率直にお認めになったらどうですかね。その限りにおいては国連総会の決議を満たしていないじゃありませんか。先ほど私が長々と読み上げさしたのはそのためなんです。満たしていないでしょう。暫定政権とは、だれも認める権限は今日はないのです。国連はそういう意思表示はいたしません。ただオブザーバーで呼んだだけのことなんです。いかがですか、総理。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申しております通りに、国連の決議におきましてできた韓国政権と、そしてその通りにやっていかない今のクーデター政権とについて、国連は同じように取り扱っております。私はその事実を、昨年の十六回総会において申し上げておるのであります。しこうして、その後におきましても、ただいま申し上げましたように、相当の国々が今までと同じように経済協力をやったり、あるいは国賓として迎えておるじゃありませんか。この事実を見、それなら合法的政権かどうかという問題で、クーデターで一時できたものが非合法的であっても、将来これがよくなるということになれば、国際的には認める例が、外務大臣も言っておるように、多いじゃございませんか。何もあれが非合法だからだめなんだという断定は、国際的には通らないことだと私は考えます。
  118. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私はそう考えないのです。国連総会の決議が韓国に対してあがっておる限り、それが変更しない限り、国連総会の決議に抵触するかどうかということの検討は一応下さなければならぬと思うのです。これは一応ですよ。その限りにおいて非合法です。あなたも認められておる。その限りにおいては非合法だ。  そこで、それであなたにお尋ねいたしますが、あなたは民政移管ということをやかましくおっしゃるのですが、民政移管について保障ができますか。あなたは、二年後には民政移管をする、だから朴政権を認めていくのだ、朴政権との間に会談を進めるのだと言う。民政移管をしないで今日のような独裁政権、ファッショの政権であったならば、日本が会談を進めていくはずはなかろうと思う。幾ら池田内閣でも、私はそのようなことはしないと思うのであります。民政移管について保障ができるとするならば、その確信のほどを承りたいのです。こういうこういうことがあるから、朴政権は必ず民政移管を一九六三年には、アメリカに約束したごとく、日本にも約束しておるごとく実現する、その確信のある根拠をお示し願いたいのであります。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、朴政権の宣言をまことに受けて言っております。しかも、日本と朝鮮との関係から申しまして、あれの言うことはだめだとか、信用できぬとかいうふうな態度は、私は、隣国としてとるべきでない。そうしてまたアメリカその他の自由国家群も、そのつもりでいっておるのだと思います。私は、朴政権の宣言、国連憲章を守る、そうして来年は文民政権に移るということを信用しておりますし、また信用すべきと考えております。
  120. 野原覺

    ○野原(覺)委員 答弁になりません。人を信用することは確かに美徳です。しかし、あなたは一国の総理大臣です。私どもの税金から韓国の財産請求権に対して払っていくのです。経済協力をやって投資をやるのですよ。そのときに、朴がそう言うからおれは信用していくのだ、これでは国民承知いたしませんよ。いかがですか。朴は民政に移管する——民政移管するということを、あなたはこの委員会において田中氏の質問に対し、あるいは井手氏の質問に対し、本会議においては河上氏の質問に対してお答えなさっておる。民政移管について、あなたの民政移管できるということの保障が何もない限り、私どもはこれを信頼するわけにいかない、何もないのですから。ただあなたは、朴が言うから、おれはそういう人を疑いたくないから信用していくのだ、信用することはいいことじゃないかと言うが、私はとんでもないことだと思う。あなたは日本の国の政治を預かっておる。日本の国の政治を預かっておる限り、相手の国の主権がどうであるのか、相手の政権の性格というものがどうであるのかということを、日本国民立場に立って、日本の国の利害の上に立って、あなたは判断していかなければならないのです。全くあなたはほんとうにノー・ズロ的な態度ではありませんか、言葉は悪いのですけれども。全くでたらめですよ。私はあなたからその確信の根拠を、もう一ぺんお聞きしたい。ないなら、ない。ただ朴がそう言っておるから、おれは信じておるだけだ、そうでございますか。これは国民が聞きたいところであります。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の重大問題でございますから、私は、韓国の要路者の気持を常に各方面からとっております。民政移管につきまして努力しておることを私は認めております。従いまして、私は、この政権と正常化の交渉を続けておるのであります。一国を預かるものでございますから、気まぐれにどうこういうことは絶対にいたしません。
  122. 野原覺

    ○野原(覺)委員 どういう努力を朴政権がやっておりますか、お示し願いたい。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 正常な外交ルートで今交渉いたしております代表からも聞いております。また朴議長と直接にも会っております。私は、いろいろなところから見まして、朴政権が民政移管、経済再建に努力しておることを認めております。
  124. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは一向答弁になりませんよ。それでは国民が聞いて憤慨いたしますよ。あなたは、民政移管をすると言う。総理大臣が言明する限りは、今どなたか言ったように、国民に対して具体的根拠を示す義務がありますよ。何もないじゃないですか。ただ正常なルートで外交交渉をやっておる。それは具体的請求権がほしいから、経済援助をしてもらいたいからやっておるだけのことなんだ。これは憲法を否定した政権ですよ。国家の非常措置を、ああいうものを作って憲法を否定した政権が、幾ら正常なルートで来たからといって、何でそれが民政移管になりますか。ないじゃないですか。時間を要するから私はここで申し上げておきますが、朴政権はこういうことを言っておるのです。これは韓国の新聞によって申し上げます。北鮮の新聞ではありません。具体的に私は、朴政権が一九六三年に、ほんとうに民政に移管するとは信ずることはできないのです。だから私は、具体的な根拠をここに出すのです。一九六三年といえば来年ですよ。今日朴政権はどうやっておりますか。戒厳令をいまだにしいておるじゃありませんか。聞くところによれば、第一線の部隊の将兵が信頼できなくて、スパイを入れておるというじゃありませんか。戒厳令をしいて、そういう状態で、来年どうして民政に移管できますか。しかもこういうことを言っておるのです。朴正煕が去年八月十二日に行なった民政移管声明の内容であります。これは朝鮮の韓国系の新聞からとったのであります。その中でこういうことを言っておる。選挙管理は、徹底した国家公営制を実施する。それから、憲法改正は、国家再建最高会議制定する、その草案を出す。それから、被選挙権は、旧政治家の政界進出を防止するための立法措置をとる。いいですか。これは日本の新聞にも報道されておりますよ。その他いろんなことがあるわけでございますが、憲法制定過程から国民意思を排除するということ一つだけを考えても、民政に移管できるとお考えになりますか。一国の憲法というものは、共和国においては人民が定めるものではないのですか。これは君主国ならば欽定憲法でいいでしょう。しかしながら、これを国民意思を聞かないと言っておるのです。最高会議がやるのだと言っておるじゃありませんか。これで民政移管ができるとあなたは言えますか。そうして選挙については徹底した干渉をやる。日本の新聞によりますと、また張勉の政権のような、李承晩政権のような政治をやるようなものが復活するならば、おれは第二のクーデターをやると、一月二十二日記者会見で言明したじゃありませんか。きのう、おとといUPIが、これを全世界に報道しておるでしょう。あなたもお読みになられたと思うのです。そういう政権がどうして——それは、韓国の民衆のために一日も早くりっぱな民主政権になってもらいたいと、私も希望いたします。けれども、残念ながら、そういう考えのもとでは民主政権というものは樹立はできない、民政移管というものは樹立できないのです。だから、アメリカに対して、あなたに対して池田・朴会談で、私は民政移管いたします、ああさようでございますか、こういうことを信頼するならば、朴がクーデターをやってきた今日までの業績というものを、客観的にしさいに検討してみて下さい。私は外務省に文書で要求したのです。このことについては外務大臣から御説明願いたい。五・二八のクーデダー以後、朴正煕氏は韓国の国内においていかなることをやってきたかということを、外務省は知っておるはずです。知らないで会談をやるはずはないと私は思いますからね、知っていらっしゃるあなたの知っておられることを、ここで御説明願いたい。
  125. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたしますが、他の国内でどういうことが行なわれているかということを批判することは、これは外務大臣としては適当でないと思うわけです。私は今あなたの御質問に対しまして事実だけを申し上げますが、これも公式な在外公館等がありませんから、新聞その他の報道を通じてわかりますことを取りまとめたものでありますが、革命直後、軍政権の手によって検挙された者が容共分子として三千九十八名、不正蓄財者として二十九名、張勉前政権幹部約二十名、張都瑛一派の反尊命分子として四十四名及び暴力団として一万七十五名に及んだと伝えられております。その後七月、八月に大量の釈放が行なわれまして、そのうち約三千名の暴力団は、国土建設事業に配置されたということであります。なお昨年の六月二十二日、反国家、反民族、反革命行為をした者の処罰のために、特別犯罪処罰に関する特別法が公布されまして、革命裁判所及び革命検察部が設けられました。昨年十一月十一日、この特別法の公訴特効が満了し、起訴六百九十六名、不起訴六百四十六名というようなことが明らかにせられておりますが、現在起訴者のうち四百五十二名が既決、二百四十四名が未決となっております。こんなような状況に聞き及んでおります。
  126. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理に、これは御承知だろうと思いますが、民族日報社長事件というのが起こっておるのであります。この民族日報の社長並びに幹部の諸君が容共分子であったとするならば、従来韓国が反共の立場をとっておったから、了解はできませんけれども、あるいはあり得ないことではなかろうと、私は思ったのでありますが、この民族日報社というのは、実は朴政権を批判したのです。朴政権がクーデターをやってから、これを批判したのです。その批判したという論説が気に食わぬというので、社長外その他の幹部をくくって死刑に処したのです。それから朴政権がクーデターをやって、革命政府を作ってから、このことを野党がやはり批判したのであります、ところが野党の批判が気に食わぬというので、社会党の委員長が死刑になったのであります。総理も御承知だろうと思う。統一社会党の委員長も死刑になったのであります。社会大衆党の委員長も死刑になっておるのであります。よく聞いてみますと、統一社会党というのは右派だというのだ、日本でいえば民社だ、右派社会党だというのだ、つまり容共分子だからといって死刑にしたのではないのです。南北の朝鮮は統一するということが、朝鮮民族としては最も望ましいことであるから、このことの努力をお互いにしょうではないか。私は悲願だろうと思います。かりに日本が九州と本州と二つに割れたら、日本人としては、それを叫ぶのは当然だろうと思う。その平和統一を叫んだということだけで実は死刑にしておるのだ、逮捕をし、投獄をしておるのだ、獄中で死んでおるのだ、こういうことをやっておるのであります。しかしこれは革命をやった直後のことであるから許せると、政府考えておられるかどうか知りませんけれども、私が先ほど申し上げましたように、憲法などは最高会議から草案を出すのだ、それからおれのやっておる政治をいろいろ言う場合には、第二のクーデターでも敢行するのだと言明しておるでしょう。何でこれが民政移管になりますか、これでは民政移管は保庫できないじゃありませんか。総理、これでもあなたは民政移管が保障できる、一九六三年に民政移管ができなかったら、あなた責任をとりますか。あなたは民政移管を保障すると言って会談を進められた。あなたが答弁されるときには、いつも民政移管が重点になっておる。では一九六黒年にこれができなければ責任をとるというならばやめましょう、おそらくそういうことはあなたとしてもおっしゃらないだろうと私は思う。また言えないことだろうと思うのであります。民政移管は、全く信頼するととができないのであります。重ねて御答弁を願います。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 クーデター前後におきましては、いろいろ非合法なことが行なわれることは、歴史の示す通りでございます。私は、今の朴政権が前政権、前に政権時代の腐敗分子を一掃することに、非常に熱を入れておることも承知いたしております。そしてその後、経済再建につきまして格段の努力をしておることも認めます。従いまして、私は必ずや朴政権は声明通りに、文民移管に着々その歩を進めつつあることを認め、これができることを私は今期待いたしておるのであります。
  128. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は韓国とだけ会談を持つということについては反対でありますけれども、百歩譲りまして、かりに会談を持つ必要がありといたしましても、民政移管が確実になった、その見通しがついたときに会談を持つことが日本のためであり、日本国民の要望であろうと思うのでございますが、総理はどのようにお考えになりますか。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろ議論は分かれておりましょうが、私は、国内の世論を見ましてもちろん拙速はいけません、慎重な態度をとりながら、日韓交渉の早期解決を望む声が多いことを、私は今考えておるのであります。従いまして慎重に考えながら、今の交渉を続けていく所存でございます。
  130. 野原覺

    ○野原(覺)委員 慎重ということは、はたして民政移管が可能であるかどうか、韓国の国内情勢というものが安定したかどうか、再建の見通しがあるのかどうか、そういうことをしさいに検討することが慎重ではございませんか。ところがあなたは今会談を進めておられるでしょう、それでも慎重とおっしゃいますか、会談を進めておるのでしょう、それは慎重になりませんよ、いかがですか。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、非常に努力しておりまするから、朴政権が民政移管に歩を進めておることを認めております。従いまして、その前提に立って交渉を始めておるのであります。
  132. 野原覺

    ○野原(覺)委員 日韓会談を急がねばならぬ理由が、特段にあるのですか。私どもに言わせれば、民政移管の見通しも立たない今日、アメリカが四十五億ドルも十年間か十何年間かに援助したのに、今日の韓国というものは疲弊のどん底にあります。私は具体的なデータをここに持ってきておりますが、これは時間がかかるから申し上げませんけれども、総理もよく御承知です。三人に一人失業です。ものすごいインフレです。工場という工場はほとんど動いていないのです。私はこの前も、これは外務省のある人から聞いたのでありますが、どんなみじめな生活をしてでも、日本の生活がいいというので密入国者が入ってくるそうです。ルンペンしてでも日本がいいというので、今日も密入国者は絶えぬのです。北鮮からは来ません。韓国からだけ密入国があるのです。そういうことについて見通しも立てないで急がなければならぬという積極的な理由国民の前に明らかにしてもらいたい、こういう理由だから急いでやらねばならぬのだということを、私はこれは最も大事な点だと思うのですが、明らかにしてもらいたい。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように、過去十年余り相当の金がアメリカよりつぎ込まれましたが、必ずしも効果があがっていないことを私は認めます。しこうして、また、経済事情もよくないことを認めます。こういう環境のもとに朴政権が立ち上がったと申しまするか、これを直そうとして努力を進めておるのであります。しこうして、日本との間には、季ライン問題等々、いろいろな懸案がございます。韓国のお話のような状況を早くもと以上に直す、よくするということが、隣国のわれわれとしての立場じゃございますまいか。いたずらに、向こうの政権がクーデターとか、将来当てにならぬとかいって、あの韓国の事情をわれわれ見たときに、手をこまぬいてほうっておくということは、将来の日韓関係から言って私はとるべきでないと思う。できるだけの努力をして、われわれは隣邦として問題の解決に当たると同時に、将来早くりっぱな国になることを、われわれは隣国の責任として望んでおるのでございます。
  134. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私どもも望んでおります。これは韓国だけではございません。北鮮についても考慮しなければならぬ国際的義務が日本にあると思います。私どもは率直に言ってそう思います。三十六年間朝鮮を統治してきたのは日本です。そのことがよかれあしかれ結論においてはこういう事態になっておるのでありまするから、ひとり韓国ではなく、北鮮に対しても日本はでき得る限りの援助をしなければならぬということは、私ども考えておるのです。しかし、援助をするにあたっては、これを救済するにあたっては、実のある救済をしなくちゃならぬと思うのです。私どもの税金からやるのでしょう。国民の血税から。血税からやるのに、——韓国の経済について五カ年計画を朴政権は立てております。この五カ年計画についてもどのように検討をしたのか。それから、はたして経済的に再建できるのかどうか、民政移管ができるのかどうか、私どもの税金を韓国に放出するにあたっては、十分効果のある見通しを立ててやらなければならぬと私は言っておる。その見通しがあるのですか。ところが、今助ければ、——アメリカは四十五億ドル放出したのにできなかったのです。どれだけのお金をやれば韓国は立ち直るというあなたは確信があって今日会談を進めていらっしゃるのか、承りたいのです。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの交渉の段階は、韓国人の日本における法的地位、あるいは前からの請求権の問題、あるいは李ラインの問題等を主にしていっておるのであります。しこうして、今後の韓国の経済再建につきましては、今交渉の段階にいっておりません。われわれも、隣国のことでございますから、経済五カ年計画につきましても拝見して、そして隣人として助けられることは力をお貸ししたいという気持はありまするが、経済協力につきましての話は、まだ私のところではいたしておりません。
  136. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは、お尋ねいたしますが、アメリカの上院で、レムニッツァー統合参謀本部議長が、七月の十八日でございますが、外交委員会に出席をして次のように証言をしたそうであります。もしアメリカが韓国への援助を打ち切るならば、アメリカは遠からずアジアの全権益と同盟国を失うだろう、もし韓国が共産圏の手に落ちれば、日本は千島、樺太と朝鮮からはさみ撃ちにされる態勢となり、日本の戦略的地位は非常にもろくなるだろうというのであります。それから、これは雑誌で読んだのでございますが、この自民党の親韓グループの有力な一人の方がこのように発言をされたというのであります。南北朝鮮が平和統一をするとアメリカはアジアにおける重要な戦略拠点を失うことになる、これは日本の赤化防止のためにも必要である、韓国を助けることは必要である、こういうことを私はいろいろ読んでみますと、この際、赤化防止だ、釜山に赤旗が立ったら大へんなことになるから、赤化防止という観点からも考えて会談が進められておるのではないかという私どもは見解を持つのでございますが、そのようなことはございませんか。   〔発言する者あり〕
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉の内容につきまして、そういう赤化防止ということが出ておるかどうか知りませんが、私は、やはり、われわれと同じように、韓国が自由民主主義国であることを念願いたしております。
  138. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、自由民主国であることを念願するために今日会談が急がれておるのだと理解してよろしゅうございますね。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 そうではございません。会談の分につきまして出ているとは、私は言っておりません。しかし、われわれと世界観を同じくし、自由をたっとぶ民主主義の国であることを、私は個人的に願っております。しかし、自由民主主義にするために交渉するというのではございません。われわれは善隣関係を保っていきたいのであります。
  140. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この点は大事な点でございますが、総理はほんとうのことをやはり国会においては申していただきたいのです。今私が質問したら、自民党の席の方から、それはそうだと、レムニッツァーの言うこと、親韓グルーブの有力な幹部の人がおっしゃったことを肯定するとても力強い発言がここであったのです。私は、それがほんとうじゃないかと思う。あなたも、言わず語らずのうちに、個人的にはそれを希望するというところから見ると、そういう考え方もあろうと思うのであります。ところで、申し上げたいことは、赤化を防止するということ、赤くなるかならぬかということは、外国が干渉すべきことではないのです。その国民がきめることです。だから、そういう考え方で交渉がされたら、これは大へんなことになろうかと思うのであります。  そこで、私が次にお尋ねをいたしたいことは経済上の問題でございますが、アメリカが四十五億ドルも援助したのに韓国はついに救済することができなかったというのは、どこに原因があると総理はお考えですか。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、参りましていろいろ調査したわけではございませんが、聞くところによりますると、やはり、財政経済の立て方につきまして十分でない点もございました。また、為政者におきまして腐敗した者があったということも聞いております。見たわけではございません。いろいろな事情がございまするが、私は、今、日本総理大臣といたしまして、どういう失敗があったということをここで申し上げることは差し控えたいと思いますが、アメリカが予期したより、また善良な韓国民が期待したような政治が財政経済において行なわれなかったということは、結果から見て言えると思います。
  142. 野原覺

    ○野原(覺)委員 お尋ねをいたしますが、あなたは経済協力についてはまだ何にも考えていないということでございますけれども、私はお聞きいたします。つい数日前の新聞でございましたが、実は大へんな記事を私は見たのであります。それによりますと、これは二月三日の読売の記事でございますが、自民党の日韓問題懇談会貿易小委員会は、二月の二日午後一時から院内で小委員会を開き、外務、大蔵、通産各省係官の出席を求め、日韓経済協力問題について協議をした。あなたは何にも考えていないと言ったのです。ところが、あなたが率いておられる自民党では協議をしておる。総裁が知らぬはずがない。その協議の中で、こういうことです。五台山の開発、三十八度線に近い五台山でございますが、五台山の開発のために財界から調査団を派遣する、保税加工貿易を活用するために日本コリアン工業が調査団を派遣する、これを認可すべきであるとこの小委員会は決定したと新聞は報じておりますが、この調査団を派遣するおつもりでございますか、お伺いいたします。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 経済再建に関しまする今の問題は、日韓の国交正常化の分でまだ出ていない、私はこう聞いておるのであります。しかし、個人的な意見といたしまして、わが党の方々が、民間の経済調査団が行ということはどうだろうという個人的なことでございましたから、私は、民間の人が創意によって行くことをとめる理由もないじゃないか、経済調査ということはいいことじゃないか、こう答えたことがございます。それから、今お話しの、わが党内におきます朝鮮問題懇談会等々は、これは有志の人が任意にお集まりになって、いろいろ相談されたことだと思います。その決議の内容等につきましては、私は聞いておりません。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その調査団を総理は派遣する方針ですね。
  145. 池田勇人

    池田国務大臣 政府の命令によってとか、政府の組織する調査団としては考えておりません。民間の人が自由においでになるのをとめる理由はないと思います。
  146. 野原覺

    ○野原(覺)委員 つまり、認可はする、——調査団の行くことは政府が認可しなければ勝手に行けるものじゃないのです。認可はするのですか。
  147. 池田勇人

    池田国務大臣 その認可というのは、渡航の認可でございますか、あるいは、経済調査についての、政府がこれだけの調査をしてこういうふうなことをやれという認可でございますか。今もちろん渡航の問題がございますから、認可は要りましょう。しかし、民間の人が隣国の朝鮮の経済状態を視察することは、私はとめるべき筋合いのものではないと思います。民間の人が発意によってやることです。
  148. 野原覺

    ○野原(覺)委員 渡航することはわかっておりますが、渡航の内容、目的なんです。渡航の認可をする場合には、どういうわけで渡航するんだという内容をやはり調べるわけです。だからお聞きしておる。  そこで、お尋ねをいたしますが、昨年の十一月であります。日立製作所は、韓国電力と契約をいたしまして、江原道三陟に出力二万五千キロワットの火力発電所の建設に乗り出したということでございますが、これはどうなっておりますか。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 個々の会社のことは聞いておりませんが、われわれとしては、輸出が大切なことでございますから、肥料その他につきましても、韓国を初めとしできるだけ各地に輸出したいという気持を持っております。日立製作所の二万何千キロかの発電については聞いておりません。
  150. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、この日立製作所というのは、これは報道されただけであって実体はないのかどうか。韓国電力会社と二万五千キロワットの建設に乗り出す借款をした、こう私どもは読んだのでありますが、そういうことは全然ございませんか。
  151. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あまり詳しくそういう話は聞いておりませんので……。
  152. 野原覺

    ○野原(覺)委員 じゃ、通産大臣。
  153. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お答えいたします。  私も知らないものですから、今通商局長意見を聞いたのですが、事務当局も、知らない、かように申しております。
  154. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それでは、お尋ねいたしますが、大阪に蝶理商社というのがあるのです。この蝶理商社が和一産業と協力いたしまして、滞江という川の上流、衣掛水力発電所、最大出力三万キロワット建設のために、返済期間二十年で一千万ドルの借款契約を結んだ、これはまだ認可されておるかどうかは知りませんが、何か政府に申請が来ていないかどうか、これはいかがですか。
  155. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 お答えいたします。  私もその件については承知をしておりませんので、必要がございますれば、よく調べてお答えいたします。
  156. 野原覺

    ○野原(覺)委員 承知していないということであれば、私どもも何とも申し上げかねるのでありますけれども、しかし、認可はしていなくても、こういう契約を結ぶ動きに出ているということは、これは全然承知しておりませんか。
  157. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 全然聞いておりません。ことに、ただいま三万キロ程度のものを支払い二十年、こういう延べ払いは私どもやっておりませんので、どうも実際からもちょっと話が違うかな、という感じがしております。  それから、いろいろお話がございましたが、いわゆる経済協力という意味でこちらから出かけたという実例は、ただいままでのところございません。それだけははっきりお答えできるのでございます。
  158. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そこで、総理に再度、これは重要なことでございますからお尋ねしておきますが、国交正常化が先であって、経済協力というものはそのあとに来るのだ、こういう方針で臨むおつもりでございますか。お聞きいたします。
  159. 池田勇人

    池田国務大臣 国交正常化が先とかあとかじゃないので、ぜひ必要なことだと考えておるのでございます。そして、経済協力は、やはり、向こうの経済の実情、向こうの経済計画、そしてわが国の状況等々、各般の事情を考えてなすべきことではないかと思います。
  160. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは外務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、日韓会談の話し合いの内容ですが、これは、私、前もって申し上げておきますけれもど、事は外交上の機密に属するということは、私はどうも了解ができないのです。今日、日韓会談くらい大きな国政上の問題はない。この国政の問題について、国会質問もできない、外交上の機密だ、こういうことで沈黙させられることは了解できない。  そこで、お伺いしたいことは、四つの委員会があるようですね。基本関係委員会、在日韓国人の法的地位及び処遇に関する委員会、対日財産請求権の委員会、それから漁業及び李ラインの委員会、この四つあるようでございますが、この四つの委員会は、それぞれどういう事柄を議題に供することになっておるのか、審議する内容及びこの委員会の構成メンバー、日本はだれで、韓国はだれで、どうなっておるのか。これは、重大な会談が今持たれておるはずでございますから、承っておきたいのであります。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その表題に言っておりまするようなことを内容にしております。ただ、漁業に関しましては、資源論というのから始めておりまするので、漁業協定をどういうふうにして結ぶかという内容までまだ入っていないようでございます。他のこまかいことは政府委員から説明をいたさせます。
  162. 宇山厚

    ○宇山説明員 委員会は、ただいまお話のございましたように基本関係委員会、請求権委員会、漁業委員会、在日韓国人の法的地位に関する委員会、この四つ設けられておりますが、基本関係委員会は、ただいままで会議をいたしておりません。それから、請求権委員会その他の各委員会の問題としておりまする議案は、その委員会の名称の示す通りでございます。構成メンバーは、ただいま個々の人々の名前は持ってきておりませんが、請求権委員会は、大蔵省の理財局長がわが方の主査でございまして、その他、外務省の者、大蔵省の者、法務省の者が参加しております。それから、漁業及び平和ライン委員会につきましては、外務省の者と農林省水産庁の者が出て構成しております。それから、法的地位に関する委員会は、外務省、法務省両省の係官がわが方の代表となっております。
  163. 野原覺

    ○野原(覺)委員 先般この予算委員会で田中委員から総理に質問がありました際に、総理は、在日朝鮮人の法的地位及び処遇につきましては、「請求権問題以前に相当論議を尽くして大体結論に近いところまでいっておるのであります。」、こう答弁をしておる。相当煮詰まっておる、こういうことを答弁されておられるのであります。  そこで、私はお尋ねいたしますが、この委員会では、もちろん法的地位及び処遇に関する委員会でございますから、当然国籍問題が議論になったであろうし、それから、永住権の許容及び処遇、強制退去及び追放の問題等々がそこで論議をされたと私は聞いているのであります。そこで、永住権の許容及び処遇のところを取り上げてお尋ねをいたしますが、韓国系の人と、それから北韓系の人と、この許容及び処遇については分かれることになるのでございますか。外務大臣にお伺いいたします。
  164. 宇山厚

    ○宇山説明員 在日韓国人の法的地位問題に関する委員会におきまして取り扱っている問題の討議の進捗状況を簡単に申し上げますと、在日韓国人の大部分は、終戦以前に日本人として来日し、平和条約発効時までに日本人と同様の待遇を受けて居住していた者でありますが、平和条約発効に伴いまして、自己の意思によらないで日本国籍を喪失いたしました。その結果、それまでの日本人として受けていた待遇を失なったものでございます。そこで、この在日韓国人を法的にどういうふうに取り扱うかという問題を審議しておるわけでございます。ただいままで、永住権の問題、永住権を付与された者の退去強制とか処遇の問題、それから、永住目的で韓国に帰還する者の持ち帰り財産等の問題、それから、この法的地位の問題全般にわたりまして問題点となるところを討議しておりまして、かなりの進捗を見せてはおりますが、この審議が最後の段階に至っておると言うにはまだ早過ぎますので、この内容につきましては、まだ具体的に申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、相当煮詰まっておるということを総理が答弁されておるからお尋ねをしておるのであります。聞くところによれば、永住権は韓国人並びにその子供には認めるけれども、北鮮の者には認めない、こういうこともいわれておるのでございますが、事実ですか。外務大臣、これは事実ですか。
  166. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど政府委員から申し上げたように、この問題は、交渉しております最中でございますし、こちらがどういうふうにするということを最終的にきめたわけではございませんから、この問題につきましては、交渉中でございますから、お答えを差し控えたいと思います。
  167. 野原覺

    ○野原(覺)委員 まだ言い得べき段階ではないということでございますが、私は、これは重要なことだろうと実は考えておるのであります。政府が御答弁なさらなければ私から申し上げておきますけれども、たとえば、婚姻の自由にいたしましても、今日北鮮系の諸君は朝鮮総連合の証明があれば結婚ができるということになっておる。ところが、今度は韓国とのこの会談の中で北鮮を差別するという方針が貫かれるやに実は聞くのであります。永住権は韓国人にだけだ、北鮮は違うのだ、こういうことになって参りますと、同じ朝鮮人の中でこれは大へんな基本的人権の侵害という問題が起こってくるし、国際的に日本立場というものがどういうことになるだろうかということを私どもは心配するのであります。そういう私の心配は杞憂でございますか。そういう意味の私の心配、つまり、法的地位及び処遇については、韓国籍の者も朝鮮籍の者も、南の韓国も北の朝鮮も何ら差別はないのだ、そういう建前でやっているのだ、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  168. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あまり実は内容に立ち入らぬ方がよろしいと思っているのでありますが、要するに、現在韓国は三十八度線以北に支配権を及ぼしていないのでございますから、そういう事実を頭に入れて交渉すべきだと考えております。
  169. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題はきわめて至要でございますから、私どもは、結論のいかんによっては大へんな事態になるということを前もって申し上げておきたいのであります。  そこで、財産請求のことでございますが、この八項目というものを井手委員に答弁をされておる。八項目のほかには、財産請求の問題は文化財と船舶に関する請求権があると聞いておりますが、そうでございますか。
  170. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そうでございます。
  171. 野原覺

    ○野原(覺)委員 一体韓国は文化財の請求を何を根拠に言ってきておるのですか。
  172. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一九〇五年から一九一五年までの剛に墳墓を発掘したりいろいろした、こういうことが先方の言い分でございます。
  173. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そにに対して政府は、どういうような態度で臨まれるのか、どうなさるのか、承りたいのです。
  174. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日韓関係の将来も考えまして、われわれとしては、過去において誤ったことをしておればいさぎよくその点については反省し、しかし、理屈のないものについてはこれは拒否せざるを得ない、こういうことをよく先方に納得させる、かような態度でいくべきだと思っております、
  175. 野原覺

    ○野原(覺)委員 船舶についても同様でございますけれども、これらの問題は他日外務委員会で実はお尋ねしたいと思うのであります。  そこで、対日財産請求権のことで私がもう一点お伺いしたいことは、李承晩時代には二十二億ドルの要求であった。それが十二億ドルになったのか、十億ドルか、八億ドル、六億ドル、こういろいろ言われておるのでございますけれども、今日、日韓会談の中で朴政権が日本に対して要求しておるその最終的な額は幾らでございますか。
  176. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 八項目というものをずっとレビューしまして先方の言い分を聞きますと、先方はいろいろな言い分を言っておりましたわけでありますが、わが方としては、そのうちで認められないものは、これはとても法律的に根拠が成り立ち得ないというようなことを申して反駁いたしております。従って、統一的にこれこれであるという額を先方から公式的に言ってきたことはございません。
  177. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは大蔵大臣に承りたいと思いますが、過日、あなたはたしか、資料のないものについては日本の国としては支払うことができない、こういうことを申しているのでございますが、これは間違いございませんか。
  178. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 支払うことができないというのではございませんで、目下向こうの請求権の内容をこちらが一応説明を受けた、その説明を受けましたが、資料が整っていないものもあると、こう申したわけでございます。ですから、まだ、どうして払うとか払わないとか、そういうようなところまで、資料の検討とか、問題は進んでおりません。
  179. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理にお尋ねしますが、私は、八項目についてはそれぞれの各項目によって支払うべきものは支払っていくということが当然であろうと思うのであります。それぞれの各項目を検討しなければならぬ。一括してこれを突っ込んで総額幾らだというようなやり方は間違いだろうと思うが、その方針で総理も臨まれますかどうか、承って一おきたい。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 各項目ごとに資料を整えまして、そうしてやっていくべきだと考えております。私は、まだ具体的のその交渉に入っておりませんが、考え方といたしましては、各項目ごとに、ことに利子の計算等、八項目ですか、いろいろな点があると思います。十分やはりお互いに誠意を持って、資料を集めてやるべきだと思います。
  181. 野原覺

    ○野原(覺)委員 資料に基づかない請求には応じない、そのように受け取ってよろしいですね。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 この資料と申しましても、もう十数年もたっておりますし、いろいろなどさくさの問題もあります。徴用された方々を一人々々調べていくというようなこと、これは何か人、何十万人ということは大へんだと思います。だから、やはり誠意を持って良識的に解決し縛る資料を探さなければならぬことは当然でございます。できるだけそういうふうにいたしたいと考えております。
  183. 野原覺

    ○野原(覺)委員 財産請求は、私はあいまいにはできないと思うのです。いろいろ新聞で伝えられるところによりますというと、政府のある筋では、一つ一つの項目によってこれを検討していくというと、とても国会の承認がむずかしい。だからしてこれは一括して考え政治的考慮、政治的交渉にゆだねなければならぬというようなことを言っておる者もあるやに聞くのであります。私どもは、こういうやり方では国民としてはこれは承知できないということを、重ねてここで申し上げておきたいのであります。  そこで財産請求でもう一点お伺いしたいことは、韓国に対する請求権が日本としてある。韓国から日本に対する請求権がある。これについては考慮をするようになっておると、小坂外務大臣は外務委員会でも、予算委員会でも答弁したと思うのでございますが、間違いございませんか。
  184. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題は何回も申し上げたことでございまするが、平和条約の第四条(a)項によって、われわれは韓国に対して請求権の商議に応ずることになっておるわけです。ところが、韓国におきまする日本の財産は、軍令三十三号によって没収されておるわけです。その事実をやはり平和条約の第四条(b)項によって承認をしておるわけでございます。そこで、そうした事実を一九五七年十二月三十一日のアメリカ解釈によって考慮しながら請求権の問題を解決する、かようなことになっておるわけでございます。
  185. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ところが、私は外務大臣にお尋ねしたいのは、一九五八年三月一日、所、東京、この日本国と大韓民国との間の全面会談の再開に関する覚書の中で、実はこのようなことを書いておるのであります。前を省略いたしますが、「日本政府は、大韓民国政府に対し、日本政府が、昭和二十八年十月十五日に久保田貫一郎日本側首席代表が行った発言を撤回し、かつ、昭和三十二年十二月三十一日付の合衆国政府の見解の表明を基礎として、昭和二十七年三月六日に日本国と大韓民国との間の会談において日本側代表が行った在韓財産に対する請求権主張を撤回することを通告した。」この共同の覚書では、韓国に対する財産請求権は撤回するのだ、このようになっておるのでございますが、あなたが何回となく、そしてただいまもまた御答弁になられました考慮だ、それは相殺だということとはこの覚書は違うのでありますが、いかがですか。
  186. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 経緯は御承知と思いますが、久保田発言にっよて日韓会談が不調になったわけです。そこで、その間の取りまとめをいろいろ両国で折御しまして、アメリカ解釈になったわけです。そこで今お読み上げになりましたようなことを日本側が申しました。アメリカ解釈というのはそれを考慮に入れておる、こういうことでございます。いわゆる相殺思想そのものではない。しかし一種の相殺思想といいますか、考慮の中に入れて解決する、こういう解釈によって双方ともやろうということに合意されたわけでございます。
  187. 野原覺

    ○野原(覺)委員 考慮に入れるということはわかるのですが、撤回したとあるのです。韓国に対する財産請求権は撤回したことを通告すると、こうあるのですが、そうなると、韓国に対する財産請求権というものは考慮されないことになるでしょう。撤回したのですか。そうすると、あなたの答弁が違う。いかがですか、私はそのことを言っておる。
  188. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一応請求権として日本がこれを主張することはやめるけれども、これを放棄したというその事実を頭に入れて問題を解決する、少し回りくといのですが、そういう解釈でございます。これは双方において合意しております。
  189. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、韓国に対する財産請求権については、韓国が日本に財産請求を行なう場合に考慮されるということを、韓国は了解しておるわけですね。外務大臣、韓国は了解しておりますね。
  190. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 アメリカ解釈というものを双方において了解したわけでございます。アメリカ解釈は、今申し上げたように、そういう事実を考慮してこの問題を解決しよう、こういうことであります。
  191. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間もありませんから、私は次に入りたいと思うのでございますが、竹島問題です。竹島問題と李ライン問題は、私は同じ性格の問題ではないかと思うのであります。どちらも国際法違反なんです。ところが竹島問題は今度の会談の中には入っていない。李ライン問題は、先ほど御説明があった通り漁業及び李ライン委員会として入っておるのであります。このような区別をされたのはどういうわけでございますか、総理にお尋ねいたします。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 竹島問題は、われわれは従来から当然わが国のものだと考えております。そうしてまた漁業問題につきましては、資源の関係等がございまして、やはりこれは一応正常化と関連せしめる問題だ、こうやっておるのであります。
  193. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は漁業の問題を聞いておるのじゃないのです。李ラインです。李ラインの問題は漁業の問題でごまかざれたらいけないのです。李ラインは国際法違反でしょう。従来そういう主張を政府はしてきたはずだ。日本はそういう解釈をとっておるはずです。いかがですか。総理は、これは国際法違反ではないという見解をとられて、漁業問題の中でうやむやにしてしまおうというお考えなんですか、どうなんですか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう気持で答えておるのでございます。李ラインというものは、われわれは国際法違反と考えております。しかもあなたも御存じの通り、この漁業問題は、何ラインと申しましても、やはり関係国が話し合いでいくものでございます。もちろん竹島問題も話し合いでいくべきでございますが、話し合いの段階を越えている。越えているというより、もともとこちらのものでございますから、これは交渉の対象にならない。片一方は、李ラインというものは、公海自由の原則から申しまして違反でございますが、しかし、普通にこういう問題につきましては、交渉の対象になるということは御承知通りでございます。
  195. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務大臣の御答弁によりますと、第三者の公正な判断に待つと、こう言っておるのです。私は、第三者の公正な判断とは国際連合であり、あるいは国際司法裁判所であろうかと、こう解釈するのですが、竹島問題について言っておる。ところが、李ラインの問題については第三者の公正な判断には待たないのですか、総理、いかがですか。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 私は関係国で話し合いをすることが適当であると考えております。
  197. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その点が私はどうも納得ができかねますが、どちらも国際法違反です。関係国であなたは話し合うと言っておりますけれもど、朴政権の方では断じて李ラインは撤回しないと言っておる。御承知でしょうね。そうなれば、竹島の問題が話し合いで解決しないごとく、李ラインの問題も解決しないじゃありませんか。あなたは、漁業だけが認められたら、李ラインは認めていこうというお考えですか。そういうことですか。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 李ライン問題というのは、漁業を主軸としておる問題でございます。そして竹島というものは、事柄の性質上違います。李ラインは撤回しないとだれが言っておるか。朴が言っておるからと申しましても、われわれはこれを交渉の対象にいたしておるのであります。
  199. 野原覺

    ○野原(覺)委員 では、李ラインの撤回はあくまで要求されますね。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 今までのような李ラインを私は認める気持はございません。
  201. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは私は非常に重要なことだと思う。はっきりとおっしゃっていただきたい。たとい漁業権がそこに認められても、李ラインを認めるかどうかということは大へんな問題であります。李ラインを認めたしで漁業権ということになれば、最悪の場合には日本漁船の拿捕ということもあり得るわけなんです。李ラインが国際法違反であるならば、なぜ竹島の問題と同様に、第三者の公正な判断を待つ、国際司法裁判所に訴えるということをやらぬのですか。これを会談の中に持ってきたというのはどこにその真意があるのか、私どもはなかなか理解ができない。はっきりおっしゃっていただきたい。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 李ライン問題の主軸は漁業権の問題でございます。従いまして、日韓の間におきまして、朝鮮海峡における漁業の資源確保のしから協定ができれば、李ラインというのは当然なくなることと私は考えております。この問題を国際司法裁判所に出すと申しましても、向こうが聞かなければだめなことなんで、ちょうど竹島の問題と同じでございます。だから、やはり善隣友好の関係から申しまして、竹島問題は別に交渉いたしますが、この漁業権を主軸とした李ライン問題につきましては、私は国交正常化で話していくのが適当と考えたわけでございます。
  203. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、李ラインの問題は単に漁業権の問題ではないと思う。季ラインを認めた上で漁業権をそこに設定するのか、李ラインを撤廃させて、そうしてこれは公海でございますから、双方が寄って漁業について相談をするかということは、これは大へんな違いであります。  それではあなたにお尋ねいたしますが、漁業権が認められたならば、李ラインは撤廃しないと言っておるから、それは承認していこう、そういうお考えですね。
  204. 池田勇人

    池田国務大臣 何もそんなことを言っておりません。李ラインというものは、漁業権を主軸とした問題でございます。そして、ここで漁業権につきまして両者の話がつけば、李ラインというものは当然なくなることと考えなければいけません。もともと李ラインというものは、国際法上あるべき筋合いのものではない。これを撤廃するとか撤廃しないとか言うことは、言う方が間違いであります。そこで、その間違いをこの交渉によってなくして、両君で円満た妥結をしようとするのが今回の交渉であるのであります。
  205. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、竹島の問題が国際司法裁判所に持ち出されるならば、当然李ラインの問題も持ち出されなければならぬ性格のものではないかと思う。これは漁業権の問題さえ解決すればと、あなたは甘くおっしゃいますけれども、漁業権の問題が解決しても韓国は撤廃しないと言っておるじゃございませんか。いかがですか。韓国が撤廃しなければ、いや、日本の漁船が入ることができたのだから、事実上の撤廃だという解釈であなたはお臨みになるのですか。私は、国際法違反というものは明確にしておく必要があると思うのです。国際法に李ラインが違反しておるならば、違反しておるということを明確にした上で漁業権の話し合いをしなければならぬ、私はこう思うのであります。あいまいにはできないと思います。重ねてお聞きしておきます。
  206. 池田勇人

    池田国務大臣 国際司法裁判所に提訴するかしないかによって、国際法違反とかなんとかいう問題じゃございません。李ライン問題というのは、われわれはそういう線を認めたわけじゃない。そういう線は国際法上もない。今までの例を申しますと、そういう漁業権の問題につきましては、ラインということでなしに、お互いに資源確保の上から話し合っていくことが通常の状況でございますので、交渉を今重ねておるのであります。
  207. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がありませんので、十分ではないのでございますが、私は最後に申し上げておきたいことは、この日韓問題につきましては、私ども先ほどから申しておりますように、人民の意思に基礎を履いてない朴政権、非民主政権であります。しかもやっておることはファッショ政権ではないかと思う。あなたは一九六三年には民政に移管すると仰せられますけれども、それはあなたの希望的観測にすぎない。お尋ねいたしましたら、何らの保証もない。しかもあなたが認めておるように暫定政権、朴政権には今日経済上の主権はないのです。アメリカの支配下にある。軍事上の主権もない。つまり、言うならば、私はかいらい政権ではないかと思う。そういう政権の実態があればこそ、残念ながら国際連合は認めていないのです。こういう政権を相手に日韓会談を進めて、請求権の問題であるとか、あるいは経済協力についても、調査があるならば派遣を認める、こういったようなやり方は、私どもは今の段階ではとるべきではなかろうと実は思うのであります。  そこで、次に労働大臣にお尋ねをいたしますが、ILOの八十七号については、いつ批准をされますか。
  208. 福永健司

    ○福永国務大臣 ILO八十七号条約の批准につきましては、従来政府が申し上げております通り、できるだけすみやかに関係諸案件の御審議とともに国会においてやっていただきたいと、かように考えております。
  209. 野原覺

    ○野原(覺)委員 八十七号の批准ができないために、ILOから、昨年の十一月に失望の意思を表明されておるのでありますが、総理はこのことをどのようにお考えになりますか。
  210. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれはそういうことを知りまして、なるべく早くILO条約の批准を、国内法の整備とともにやっていきたいと考えております。
  211. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は重大なことについてお尋ねをしたい。昨年の十一月の理事会に対して、日本政府は批准できない理由として、その文書を送っておるのであります。その文書を私ども読んでみましたところが、こう書いてあるのであります。ちょっと長いのでありますけれども、端折っておしまいのところだけ読みますが、「野党の反対によって」云々ということが書いてある。長いからここだけ読む。ここだけ読んだら労働大臣は御承知だろうと思う。八十七号の批准ができないのは、野党の反対によって、それら法案を撤回する以外には云々ということになっておる。野党がいつ八十七号の批准に反対をしたのか。これはILOから出された五十八次報告というのに載っております。いろいろ調べてみますと、ILOの結社の自由委員会——これはは政府代表は入っていない、日本の労働者代表も入っていない、当事国家は入らない。この結社の自由委員会で文書が配付された。その配付された文書の中に、政府から出された文書がそのまま出ておる。それに、野党が反対をするために八十七号の批准ができ得ないのだと受け取られるような表現になっておるのでございますが、労働大臣はこの点についてどのようにお考えになりますか。
  212. 福永健司

    ○福永国務大臣 私は、英語の方の文書も見てみましたが、ILO八十七号条約という表現ではなくて、それに関係する諸案件、関係案件という表現になっております。英語の方でも、ビルズ・リレーティング・ツー云々と、こういうようになっておる次第であります。
  213. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは関係案件に反対したとはなっておりませんよ。では、五十八次報告を読み上げて下さい。関係案件に反対したとなっておりますか、なっていない。これは労働大臣から読み上げてもらいたい。
  214. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいまおっしゃいましたしまいの部分は、こういうことじゃないかと思うのですが、「関係案件を臨時国会に提出しても成立の見込みのないことが明らかとなったのみならず、また廃案とすることなく次回の通常国会まで継続審議とすることについても野党の反対によってその実現が不可能となったため、遂に関係案件を今国会に提出することができずに会期が終った、と日本政府は述べている。」最後に、日本政府は、政府の同条約の早期批准の方針には何らの変更はなく、そのためにあらゆる努力をすることは、労働大臣よりしばしば公式に言明されたところで、政府としては来たるべき通常国会に提出し、批准関係案件の成立を期するよう努力をする考えであると述べている、こういうようなわけなんですが、この文章は必ずしもあまり上手でないと私も思います。思いますが、一方的に八十七号条約それ自体に野党が御反対なさるために云々というようなことは、これには書いてないと私は読んでおるわけであります。また、事実、社会党におかれては、IOL関係にいわゆる三原則ということで、条約の早期批准、関係国内法の改正——じゃない、皆さんの方では改悪という言葉を使っております。改悪反対、それからもう一点、特別委員会反対、こういうことをしばしば明らかにされておられまするので、そういうことが頭に入っておりまして、この文章ができておるということでございます。私今申し上げましたように、時間的なあと先関係等の表現が、これ、最もよい文章とは思いませんけれども、決して、一方的に八十七号条約そのものについて野党が御反対になっているかのごとき印象を向こうに与えるような文章ではないということを、御了承いただきたいと存じます。
  215. 山村新治郎

    山村委員長 野原君に申し上げます。やむを得ない事情によりまして、総理を退席させたいと思いますが……。
  216. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、労働大臣がそういうことを言うならば、ここのどこに国内法の改悪について反対をしておりますか。国内法の改悪について野党が反対したということは、ここのどこに書いておりますか。問題は、八十七号の批准について書かれておるのが、五十八次報告の二百十八項だ。これを見てみますと、たとい成立を見なくとも、継続審議とし、「本年末より開会される予定の通常国会において成立を期する考えであった。その後関係案件を臨時国会に提出しても成立の見込みのないことが明らかとなったのみならず、また廃案とすることなく次回の通常国会まで継続審議とすることについても野党の反対によって、」つまり、野党は反対をしておる、継続審議とすることについても反対をしておる、野党は八十七号批准に反対をしておるんだと受け取られるじゃありませんか。(「そうじゃない」と呼ぶ者あり)いや、そうなっておる。私は、これは大へんなことだと思うのです、この文章は。私どもは、あの災害国会といわれた臨時国会で、継続審議とすることに反対した覚えはありませんよ。継続審議というものは、国会に提出をされて、討議をされて、最終段階でやるのでしょう。臨時国会では出しましたか。提案説明しましたか。審議してない。審議してないものに、継続審議野党が反対したとはおかしいじゃないですか。そのことからいってもおかしいじゃありませんか。つまり、この文章が、八十七号の批准というものは、野党が反対をするから通らないんだという、政府は批准をする誠意があるけれども野党が反対しておるからだという、これは大きな野党を誹謗するところの国際文書だと私は思うのです。総理、この点をどう考えますか。
  217. 山村新治郎

    山村委員長 野原君に申し上げますが、やむを得ない事情によって総理は退席いたしますので、この答弁で総理は退席いたしますから、御了解をいただきます。
  218. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ちょっと待って下さい。委員長、実はこの問題は、私どもは重要に考えておるのです。委員長、いいですね。というのは、国際舞台において、公党である私どもが八十七号の批准に反対しておるのだ、こういう文書を政府からILOに出されたということであれば、これは重大なのだ。これはどう考えても、そう受け取られるのです。継続審議に反対した、反対した覚えがない。こういうことを臨時国会野党が反対したとは、何を根拠にこういうような表現をしたのですね。これは私は総理としても大へんなことだろうと思うのです。事実を曲げてILOに報告するということは、私は重要なことであると思うのです。だから申し上げておる。
  219. 山村新治郎

    山村委員長 そういうわけでございまして、労働大臣も十分答えますので、総理は御答弁がありましてから退席いたしますから、どうぞ。
  220. 池田勇人

    池田国務大臣 ILOの問題につきまして、政府としての向こうへの通知その他につきましては、労働大臣より詳しく述べることにいたしたいと思います。
  221. 山村新治郎

    山村委員長 内閣総理大臣、御退席願います。
  222. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま私が申し上げましたように、関係案件という表現になっております。そこで、野原さんおっしゃいますように、条約という表現ではございません。それから今おっしゃる通り野党が現実に臨時国会で継続審議に反対されたという事実はございません。おっしゃる通りでございます。案が出てないものを継続審議というようなことは起こり得ない。そういうことでの正式の論議が行なわれないことは、ただいま御指摘の通りでございます。そのことも、そこで私が先ほど申し上げた。どうも文章があまりうまくないからおしかりを受けるということではございますが、その前に、とうとうこういうわけで出すことができませんでしたという事実は明らかにされた。そこで、先ほども申し上げましたように、実は私も、この文章は、もう少しいい文章が書けておるべきはずのものだと思いまして、よく調べましたが、次官から次官に行っておりまして、実は私これを見てなかったので、大へん——その点は責任を回避するつもりではございません。もっといい文章であるべきものであり、将来大いに注意したいと思いますが、事実関係におきましては、ただいま申し上げましたように、国会には出なかった。事務当局に、なぜそれではこういう文章になったのかということを、私も責任上強く問いただしましたところ、社会党さんの方で三原則も掲げておられることであるし、とても継続審議にならないという状況判断を書いた、こういうことでございます。先ほどから申し上げましたように、そういうようにうんと注釈をつけてこういうものを表現すれば誤解がなかったと思うのでありますが、今お話のようなことになる文章は、私、文章それ自体うまくない、こういうように考えます。
  223. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働大臣、総理は特別の事情があってやむを得ませんから、私も退席を承認いたしましたが、これはILOに行かれた人から聞いたのです。ILOの結社の自由委員会では、日本野党とは何とけしからぬじゃないか、野党とは社会党だと聞くのだが、けしからぬじゃないかと受け取っておる。これはどう考えてもそう読めるんですよ。野党の反対によって——なるほど、その先に関係法案とありますけれども、これは文章は切れておるのです。関係法案を提出するに至らなかった。ところが、野党の反対は、ILOの八十七号の批准にかかっておる文章なのだ。これがそのままILOで配られておる。個人が事実に違うことを申告すれば、刑法上の犯罪になる。あなた方は、国際舞台で、ILOに対して社会党を誹謗するような文書を報告したということは、私は重大な責任問題だろうと思います。このことに対してどう対処されますか。これは文章の表現がまずかったでは済みません。私は、政府出したところの文書を出してもらいたい。同時に、野党は八十七号の批准に反対したのだと受け取られるような文書をILOに示したということについて、これをどう一体今後対処されるのか、お聞きしたいのであります。
  224. 福永健司

    ○福永国務大臣 先刻来申し上げておりまするように、よく読んでみますと、決して野党を非難するためにそういう表現をしたのでないということは、これは御理解をいただきたいと思うのでありますが、その点で、私は英文等でもどうなっておるかと思いまして調べてみましたら、先ほど申し上げましたような表現等にもなっておるわけでございます。のみならず、社会党が、八十七号条約を早く批准しろということを従来ずっと言っておいでになる、また、労働組合関係でもそうであるということは、これは少なくとも日本の労働情勢をちょっとでも知っている人は、よくよく承知しているのであります。今、文章のあまり上手でないことから、野原さん御指摘のごとく、おしかりをいただくようなことになったのでありますが、私は、ILO関係の人たちには、そういう意味に受け取っておられるかどうか、それは一々聞いてみたわけではございませんけれども、従来の客観的事実、すなわち、今も申し上げましたように、社会党及び総評その他では、この早期批准を常に唱えておられるということは、このILOの関係委員会でもよく知ってくれておりますので、そういうような誤解を生ずるようなことにはならなかったのじゃないか、そういうように存じておりますが、いずれにいたしましても、先刻来繰り返し申し上げております通り、文章があまりうまくないという点は、私も素直に認めます。以後大いに注意をいたしたいと存じます。
  225. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がありませんから、もうわずかでやめたいと思うのでありますが、私は、以後注意するでは済まぬと思うのです。あなたは、事実関係からして、日本の社会党あるいは革新陳営、民社党その他野党は、ILO八十七号批准には反対していないことを知っておる、だから心配ないじゃないかと言いますけれども、この文書が、政府から正式文書として配付されておる。あなたはこの文書の読み方を私はお知りじゃないのじゃないかと思う。いいですか、野党の反対によってその批准が云々となっておるのですよ。不可能となったとあるのですよ。野党の反対によってその批准が不可能になったとあるのですよ。八十七号の批准ですよ。これはどうも私はおかしい。「野党の反対によってその実現が不可能となった」、その実現とは何かといえば、ずっと前の文章からきて、八十七号の批准をさしておる。だからして、これは単に自今注意するでは済まぬのであります。ILOに対しで、昨年十一月の総会においては、ああいう文書を出したことは、こういう間違いだということを訂正されるおつ吃りがないかどうか。それがないとすれば、私どもは、これは重大なことを政府に申し入れしなければならぬ。私は、率直にそれは訂正すべきだと思う。
  226. 福永健司

    ○福永国務大臣 町原さんのおっしゃる通りでございますと、まさにそのお言葉が当たると私は思うのでございますが、先ほども読みました通り、「臨時国会に提出しても成立の見込みのないことが明らかとなったのみならず」と、そのあとになりまして、廃案とすることなく何とか継続審議にしたい、こういうことをも「野党の反対によってその実現が」ということで、八十七号の批准自体に社会党が反対になっておられるという表現はないと思います。先ほどの八十七号、英語の方で参りますと、先ほど申し上げたようなことで、八十七号それ自体でなくて、八十七号それに関連する諸案件という表現になっております。そこのところ、それにいたしましても、関連する諸案件ということでございましても、やっぱりもっと分析してものを言った方が、こういう今おしかりを受けることがないという意味で、この一種のことは、私は喧々今後より一そう注意しなければならぬと思いますが、今おっしゃったように、八十七号それ自体に御反対になった、それで批准がだめだという表現ではございませんので、廃案とすることなく、継続審議になるということが実現しませんでした、従って、実現しないような状況で、従って提出もいたしませんでしたと、こういうような表現になっておりますので、どうぞ一つ、文章の悪いところは重々私が責任を感じますが、決してうそをついているということではないということを御理解いただきたい。
  227. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働大臣、それではあなたの方から政府出した文書を出していただけますか。ILOで結社の自由委員会に配付された文書も、政府は責任を持って私の方にお示し願えますね。
  228. 福永健司

    ○福永国務大臣 けっこうでございます。私も、今申し上げたように、急いで原文等を読みましたが、私の語学の力をもってしては、あるいは誤解しているようなことがあってもいけませんので、よく御検討をいただきまして、おしかりはおしかりとしてやっていただくし、また、事実は事実として一つよく御認識いただきたいと思います。
  229. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は、政府がILOに報告した文書を拝見した上で、私どもは善処方を重ねてまた要請するし、あるいは場合によっては、これは国際舞台で野党を誹謗しておるわけでございますから、これは私どもは重大な抗議を申し入れなければならないと思うのであります。  そこで、時間もありませんから、これで終わりますが、最後に、荒木文部大臣にお尋ねをしたい。それは、あなたが、高等学校の急増対策について、文部省の四カ年計画というものを出しておられる。ところが、そのことは、今度の予算にはついに実現を見るに至らなかったのであります。聞くところによれば、昭和三十八年から四十年にかけまして百二十三万人の生徒が増加をするということでありますけれども、これに対する具体的な対策は何もとられていない。一体、来年の四月から四十万ふえるという高校の生徒、急増する高校の生徒を収容することのできる校舎は、来年の四月に建つのか建たぬのか、文部大臣はどうお考えですか。
  230. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘の通り、三十八年度から四十年度までの三年間が大体ピークでございまして、お話のごとく、百二十万人見当が急激に増加をいたすわけでございます。それに対しまして、三十八年度から四十一年度までの四カ年の計画をもって、急増対策に善処いたしたいという考え方で今日まで参っておりますことも、仰せの通りでございます。  そこで、三十八年度のピーク第一年に対処するために、予算措置としては、三十七年度十数億しか措置してないじゃないか、そのほかに起債のワクはございましても、そのことで事足りるかどうかという点が、御質問の要点かと心得ます。御案内のごとく、話は違いますが、中学のピークに対しまして、前向きの姿勢で善処さしていただきました。それと同じ考え方を、できれば高校急増に対しましてもとりたいというので、三十六年度予算以来、できることならば、普通高校に対しましても三分の一ぐらいの施設補助を通じてやれないものかということをやって参りました。ところが、結果としましては、予算折衝上、大蔵省に認めさせることができませんでした。さりとて、そのままでよろしいわけではございませんので、大蔵、自治省とも相談いたしました結果を申し上げますと、財政投融資引当分の起債のワクとしては、御案内の通り五十億円、そのほかに十三億円のさっき申し上げました国庫補助、さらにそれに加えて、九十一億円の交付税につきましては、交付税法の改正をいたしまして特別の科目を設けて、九十一億の交付税を高校急増分として措置いたしやすいようにしたい。そのほかに、高校急増全体として、新設校に対しましては用地が要る勘定になりますが、その用地約百八十万坪と推定されますしそれに対しましては、具体的な起債ワクが、御審議願っておる予算書の面には出ておりませんけれども一般起債を認可することを極力自治省としても努力をしたいという話し合いもできておりまして、少なくとも、以上申し上げたことによって、三十七年度に措置すべき前向き姿勢の予定されました急増対策はでき得ようかと考えておるのでございます。
  231. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣、これから校地を買うのです。校舎を建てるのです。私は、起債だというのでありますけれども、今日のこの地方財政の困窮しておる都道府県にあっては、起債を消化することはできないと思う。文部大臣も、従って補助金でまかなわなければならない、これは終戦処理だということでかかったはずなんです。しかもこの子供たち昭和二十二年から二十四年にかけて生まれた子供でしょう。つまり今から十何年前に生まれたそれが何百万人とふえてくる、このことは十年前からわかっておったのであります。おかっておったものを一つも措置しない。私も文教委員の一人として文部省にはそのつどやかましく言ってきた。四十万人ふえて入るのは、来年の四月ですよ。来年の四月ふえて入るのに今になってどろなわ式に、それも起債だというようなことで、これから校地も買わなければならない、校舎も建てなければならない。どうして一体間に合いますか。あなたが文部大臣になって何年になるのです。私はそのことを実は申し上げておる。しかも文部省の百二十三万人の計画ということも私どもは了解できない。これは中学卒業生の五九%だ。去年は六五%入っておるじゃありませんか。毎年高等学校に進学する者は、二%ずつふえていっておるのです。そうなれば百二十三が人が、三十八年から四十年にかけては、実は百八十万人ぐらいになるかもわからない。この者の収容を一体どうするか。あなたはそういうことをやるために文部大臣になっておるのです。あなたは日教組の悪口だけ演説して回るために文部大臣になっておるのじゃないのです。これは教育基本法にも書いてあるじゃありませんか。私はこの点についてきわめて遺憾に思う。しかし、きょうは時間がありません。いずれこの問題は、分科会なり文教委員会等で徹底的に私は追及をしたいと思うのであります。とてもこれは消化することは不可能だということになれば、あなたの責任問題ということを私ども考えておる。このことを申し上げて、本日はこれで終わります。
  232. 山村新治郎

    山村委員長 次会は明六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会