運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-01 第40回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月一日(木曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 淡谷 悠藏君    理事 川俣 清音君 理事 小松  幹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       池田正之輔君    井出一太郎君       稻葉  修君    今松 治郎君       井村 重雄君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    周東 英雄君       床次 徳二君    中曽根康弘君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤井 勝志君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    井手 以誠君       加藤 清二君    木原津與志君       高田 富之君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       野原  覺君    長谷川 保君       山花 秀雄君    横路 節雄君       春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         厚生事務官         (保険局長)  高田 浩運君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月一日  委員西村榮一君辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  この際特に委員長から閣僚諸公並びに委員諸君に申し上げることがございます。  すなわち、当委員会は、時間を正しく守ることを全会一致をもって約束をされておる次第でございます。閣僚諸公並びに委員諸君の時間の厳守をお願い申し上げます。特に閣僚諸公におかれましては、総括質問中は、他の委員会出席のためにこの委員会を欠席することのないように特段の御注意をお願い申し上げます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。木原津與志君
  3. 木原津與志

    木原委員 私は、池田総理大臣並びに関係閣僚に、まず第一番に憲法改正に対する内閣総理大臣所信を聞き、さらに防衛の基本問題に関し、その次に三番目に内閣の三十七年度の経済見通し経済運営の基本的な政府態度、三点についてお伺いいたしたいと思います。  まず第一番に、憲法改正に対する池田総理所信でございます。御承知のように、鳩山内閣の当時、昭和三十一年に内閣憲法調査会が設置されました。この憲法調査会は、われわれ外部からは何をやっているのかわからなかったが、昨年の十月に至りまして、この調査会がいよいよ具体的に現行日本憲法改正の問題について審議をするようになったということを発表し、その後いろいろと憲法改正についての論議がなされておるということが新聞で発表されました。特にその改正主眼点については、まず第一番に現行憲法天皇制の問題、第二番目が憲法九条、再軍備の問題、第三番目に基本的人権に関する憲法規定をどうするかというようなこと、この三点が憲法調査会で種々論議されておる。しかも、聞くところによれば、この憲法調査会がなるべくすみやかに、あるいは本年度内に早急に改正案をまとめて、調査会報告書内閣総理大臣に提出するという段階にきておる、こういう次第であります。さらにまた、自由民主党においても憲法調査会という委員会が作られておるそうでありますが、この自由民主党憲法調査会においては、過ぐる一月の十九日の自民党大会において、憲法改正の決議を大会でやろうというような動きがあったということを新聞で私ども聞いておる。さらにまた、今度の参議院選挙を前にして、自民党では憲法改正草案国民に示して、そうして参議院選挙に社会党と対決をするというような段階にまで今日きておるのでございます。従いまして、今や国民関心は、一体この現行憲法がどう改正されるのか、この運命はどうなるかということを非常な関心を持って見詰めておるというのが、国民の現在の偽らざる心境であろうかと思うのでございます。池田総理は、組閣以来憲法改正の問題につきましては、終始沈黙を守って今日に至っておられる。歴代の総理の中で、憲法改正をまっこうから打ち出して、憲法改正するんだということをはっきり言われた総理は、鳩山総理だけであったと私は記憶するのでございますが、今や池田総理も、もはや世論が、特に自分の党の憲法調査会改正案を出そうとする、あるいはまた、憲法調査会においては今年中に早急に報告書を出そうとしておる、こういうような段階において、責任者である総理大臣現行憲法改正についての基本的な態度をはっきり国会において表明をして、そうして国民にその所信を明らかにするという時期に実はきたのではないかと思うのでございます。従いまして、まず第一番に、この現行憲法に対する総理考え方、もし改正をするということになれば、総理自身はどの点をどう改正しようという考え方を持っておられるか。まず一番に、その点について総理所信をただしたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法の問題につきましては、憲法調査会において諸問題を調査審議中でございます。この審議が済みましたら、内閣及び内閣を通じて国会報告することに相なっております。今審議中でございます。私は、憲法問題につきましては本会議でお答えした通りであります。国民世論盛り上がりを見ながら改正をするかいなか、またもし改正するとすればどういう点をどういうふうにするかということは、今後調査会報告が出まして、そうして国民がよくお考えになりまして、政府もまたそういう報告を見てよく考えて、それからきめるべき問題だと思っております。
  5. 木原津與志

    木原委員 総理は、憲法改正については国民意見盛り上がりを聞いて、そうして改正するかどうかということを考えるという答弁を、本会議においてもそういう趣旨答弁をなさっておる。ところが、現在の実情は、すでにもう憲法調査会が、先ほど私が申し上げました三つの論点について、論議を煮詰めてしまうような段階にまできておる。特にまた、あなたの自民党では、もうすでに改正案国民の前に出そうという段階まできている。この段階にきて、なお総理憲法に対する所信を明らかにされないということでは、国民一体この現在の憲法がどうなるのだ、どういう運命になるのだということについて一番の関心を持っておるのでありますから、総理は、国民盛り上がりを聞いた上でというようなあいまいなことを言われないで、この段階に至っては、こうあるべきだということのあなたの所信を、国会を通じて国民に宣言をされるという時期にもうきていると思いますから、その点についての所見をいま一度お聞きしたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 私の所信を言うべき時期でまだないと思います。
  7. 木原津與志

    木原委員 あなたがまだ言うべき時期でないというような態度をとっておられるので、私はあなたに一言申し上げたいことがある。というのは、実は私は、昨年の八月に、東南アジア経済調査で、衆議院から派遣をされて東南アジアに行きました。そのときに、たまたまカラチでのことなんです。私ども一行カラチに着きましたときに、日本大使館の人が見えておりましたが、そのときにこういうことを言った。池田総理が九月にパキスタンカラチおいでになるということで、一体日本総理大臣は国を代表するものか、それとも日本天皇が国を代表するかということについてパキスタンではわからないのだ、従って、パキスタン政府から日本大使館に、その資格、日本総理大臣は国を代表するのかどうかということで質問を受けておる、こういうことでした。それで、私が、一体日本総理大臣が国を代表するかしないかというようなことは、訪問にあたってどういう関係があるのかということを聞いたところ、総理大臣が国を代表するのであれば、あなたが向こうおいでになったときに大統領が迎えに出るのだそうです。あなたが国を代表した人でなくて、ただ単なる一国の首相であるならば向こう首相が迎えに出るのだ、こういうようなことで、一体どっちだろうというようなことを言うておった。そこで、私は、その日本外交官の人に、それは憲法上はっきりしているのだ、日本の国を代表するのは内閣総理大臣が代表するのであって、天皇が代表するのではない、これは憲法上明らかになっているというようなことを私言うた記憶がある。一体、外国に対して、あるいは国民に対してでも、憲法に対するはっきりした態度を国の政治をやる人がとらない、はっきりしたことを言わない、まるで、憲法に基づいて政治をやっておる人が、憲法の条章については口を符して、沈黙して何も語らないというような態度をとるから、今言うように、パキスタンあたりからでも、日本で国を代表する者は一体だれだろうかというような疑問を持たれるような結果になる。これは私よけいなことかもしれませんけれども、こういうようなことを考えてみましても、国民はこの憲法に対して、なおいろいろな論議をしておるのを聞いて非常に迷っておる、こういうときに、あなたが国の最高責任者として、しかも、現行憲法を守って政治をやるということが憲法に明記されてある、その人が憲法に対する所信を明らかにするということは、これはもう当然のことであろうかと思うのであります。この点について総理の御見解を……。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法解釈につきましては、私は責任を持ってやります。しかし、憲法解釈をどうするかという問題も、憲法改正するかしないかという問題とは違います。その点ははっきりお考え願いたいと思います。
  9. 木原津與志

    木原委員 そういうことは、総理からおっしゃられなくったって、私は十分知っております。私も法律を多少かじった人間ですからね、そういうことは知っているのですよ。  そこで、それならばあなたに一つ一つお尋ねをいたしますが、御承知のように、憲法調査会委員の人、この委員人たちは、大体において現行憲法改正すべしという論議に、思想に立つ人たちが大部分を占めておるようです。現行憲法改正してはいけないという意見を持って、そうして委員会なりで発言をしておられる人たちは非常に数が少ない。三、四人ぐらいしかおられぬように私は見ておる。この大多数の憲法改正意見を持っておる人たちが、多数決の原則によって論議し、あるいは意見を取りまとめるのでありますから、従って、この憲法調査会報告書の内容というものは、私はもうすでに決定しておる、決定するのだというふうに、こう見るわけなんです。そこで、この内閣憲法調査会論議経過を見てみると、まず第一番に、天皇制の問題について、現行天皇象徴とある規定を、国の元首——代表者です。元首もしくは行政の首長とすべきだ、そういうふうに改正すべきであるというような論議が圧倒的に強いような感じを持っておりますが、この天皇制に対して、現在の象徴天皇ということが妥当な憲法であると考えられるか、あるいは天皇元首というようなことでなくて、現行憲法のまま天皇国民統合象徴としての存在であるということが望ましいかどうか、この点について総理はどう考えておるか。これは内閣責任者としては言えないというならば、自民党総裁池田個人としてでも、この点についての見解国民に、この議会を通じて明らかに知らせていただきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 私は内閣総理大臣とし、また国民の一人として、憲法を守ることに専念いたしております。しこうして、その憲法をどうすべきかということにつきましては、内閣総理大臣としても、個人としても、今意見を述べるときではないと考えております。
  11. 山村新治郎

    山村委員長 この際、法制局長官より発言を求められております。内閣法制局長官林修三君。
  12. 林修三

    ○林(修)政府委員 今木原委員から憲法調査会運営方式についてのお話がございましたので、ちょっと誤解があるといけませんから申し上げておきますが、憲法調査会では最初の会議で申し合わせをいたしまして、しいて多数決報告するということはやらずに、多数意見少数意見を並列して公正に報告をしよう、そういう方式でやっております。多数決で一本の報告にまとめるというようなことは、しいてやらないということを申し合わせておりますということをちょっと御報告申し上げます。
  13. 木原津與志

    木原委員 憲法を順守する立場にあるから意見を申し述べられないということでございますが、私はそんなことはないと思うのです。改正するなら改正する方が望ましいというようなことは、内閣総理大臣として言うことは一向差しつかえないと思うのです。現に鳩山内閣のときに、鳩山内閣総理大臣は、はっきり、憲法改正しなければいけないと私は思うと勇敢に言っておられる。その改正の点については、具体的に天皇制だとか、あるいは家族制だとか基本的人権の問題、こういったような問題については現行憲法のままでいいと思うが、少なくとも憲法第九条の戦力を持たないという規定は、これは改正しなければならないと思うから、私はその意見で今後の憲法改正に取り組みますということを、この議会ではっきり憲法九条を改正するということを総理が言っておるわけです。だから、憲法を順守する立場にあるから今言うべき筋合いのものじゃないということをおっしゃいました。そうすれば、私どもとしましては、それならば池田総理は、今のところ憲法改正については改正意思はないというふうにとってよろしいか。さらにまた、私は今鳩山さんのことを申しましたが、鳩山さんは、憲法九条は自衛力自衛軍々持てるように改正したいというふうに言っておられたが、同じ自民党内閣総理大臣として、憲法九条を改正するという御意思があるかどうか、この点もあらためてお尋ねいたします。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 誤解のないようにするために申し上げておりますが、私は今内閣総理大臣とし、また国民として憲法を順守することに専念いたしております。そうして憲法改正は、私は改正についての意見は今言う時期にあらず、こう申し上げておるのであります。専念しておるから、改正意見を言わぬというのではございません。事柄が違うということだけを申し上げておるのであります。  しこうして、鳩山光電がそういうことをおっしゃったかもわかりませんが、私は、憲法問題につきましてはただいま答えた通りでございまして、調査会の御報告があり、そうしてその報告によってわれわれは十分検討を加え、またわれわれのみならず、国民にも十分検討を加えてもらって、そうしてお互いに検討した結果において右にするか左にするか、あるいは改正しないかということをきめるべき問題だと思っております。
  15. 木原津與志

    木原委員 そうすると、かりに憲法調査会報告が、憲法九条は改正して——どういう形になりますか改正して、要するに再軍備をやるべきだというふうに改正すべきだという意見調査会があなたに報告した場合においては、あなたは国民意見をよく聞いて、そうしてそれに対して態度をきめたい、こういう趣旨だと私は了解いたしますが、それならば、そういう場合に国民意思をよく聞いて、その上で改正するかしないかをきめるということになれば、あなたはそのときには国民意思をどういうふうな形で集約して聞かれようとするのか、その点についてあなたの御意見を承りたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 報告がありましたときには、その結果を見ながら、やはりそれはいろいろな新聞報道関係意見もありましょうし、各方面のいろいろな意見が出てくると思います。世論動向というものを見るのにはいろいろな方法がございます。世論調査の場合もありましょうし、あらゆる方法国民の気持を聞くように努力しなければならぬと思います。
  17. 木原津與志

    木原委員 それでは、この世論動向を聞くとおっしゃいましたから、私は一つあなたに提言して、あなたの御回答を求めておきたいと思います。  国民世論を聞くということの一番的確な方法は、新聞の論調だとか、あるいは公聴会とかいうようなことでは、これは完全に国民意思表明があったものというふうにはなかなか受け取りにくい点が多々あろうかと思うのであります。従って、一番的確な方法は、国民に一票々々の権利を行使してやらせることなんです。その一番の方法は何かといえば、国会を解散して総選挙をやる。その総選挙の中で、憲法改正をするかしないかということの意思表示を、少なくとも何千万国民の有権者に対してそれを行使させるという方法が、私は一番的確な方法であり、また立憲治下における国定の世論を聞く最大の方法だと思いますが、あなたはそういう調査会報告を受けて、そうして国民意思を聞くという場合において、憲法改正かどうか、改正するかしないかという点について、衆議院を解散して世論に問うという考え方に立たれるかどうか、その点をここで明らかにしていただきたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 報告が出ましてからいろいろな点を考えてみたいと思います。
  19. 木原津與志

    木原委員 これはもう話にならぬ。  それでは、いつまでやってものれんに腕押しの感がありますから、さらに論題を変えますが、憲法改正発議するのは国会発議をするということになっておるのは、これはもう憲法九十六条によってはっきりしておる。憲法改正案一体どうするかということが問題なんです。一体憲法改正をやる場合に、内閣改正案を作って、そうして国会に提出するというようなことができるかどうかについて、あなたの所信をただしておきたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 憲法解釈の問題でございまするが、もし憲法改正するときに、発案者がだれになるかということにつきましては、議論があるところだと思います。国会議員が出しますか、あるいは内閣も出せるかという問題、私は両方とも出せるのではないかと思っておりまするが、その場合にまだきておりませんので、もっと研究いたしたいと思います。ただ、今の憲法改正としてどういう議論がどういう根拠で行なわれておるかということにつきましては、法制局長官から答弁させることにいたします。
  21. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの木原委員お尋ねの問題は、実は憲法調査会法国会論議されましたときにも、非常に議論のあったところでございます。そのときに、これは提案者でございました自民党山崎先生、あるいは私あたりからいろいろお答えをした経過がございます。これは私ども考え方といたしましては、憲法九十六条で、国会の、両院のそれぞれ三分の二の多数によって発議し云々という規定がございますが、これは国会国民に対して発議するということを言っておるわけでございます。その前提として、国会において審議される案としての憲法改正案というものは、国会議員のみが提出できるものか内閣も提出できるものかということについては、今の憲法解釈からいえば、議院内閣制の現在の建前からいいまして、これは内閣提案できるということも否定すべきではなかろう、そういうことをお答えした経過がございます。これについても、学説はいろいろあることは御承知通りだと思いますけれども、私どもとしてはそう考えておりますし、これも相当の学者がそういう考え方を持っていると私は思います。これは結局憲法七十二条でございましたか、内閣総理大臣は、内閣を代表して予算その他の議案を国会に出すという規定がございまして、あの中には法律案提案権も当然含まれると考えておるわけでございますが、憲法改正につきましても、これはそれを否定する趣旨はない、かように考えております。これはもう議院内閣制ということからいって、当然に多数党が内閣を組織するという意味からいいまして、国会議員が出すことも、あるいは内閣が出すことも、政治的にはいろいろの意味の差があるかもわかりませんけれども法律的にはそう区別すべき問題ではなかろう、かように考えておるわけでございます。その政治的な妥当性は、これまた別問題でございます。
  22. 木原津與志

    木原委員 法制局長官憲法提案権についての法理論を展開されましたから、私はそれに対してお尋ねする。憲法改正発議権国会にあるということは九十六条によってはっきりしておる。旧憲法、いわゆる帝国憲法において、一体だれに発議権があったかといえば、これは天皇——憲法上論の中に、この憲法改正しなければならないようた時期に来たならば、朕及び朕の子孫が発議の権をとるということがはっきり書いてある。ここにおいて憲法改正内閣やその他議会草案を提出するのでなくて、天皇が直接勅書によって草案議会に付議して、そうして改正審議するということが、これはもう明治憲法定説だったと思う。内閣憲法改正提出権があったというような議論を私は聞いたことがない。もしあるならば、こういう内閣憲法改正提出権があるということをだれか学者学説として言うた人があるなら、あなたから私はその名前を聞きたいが、私の知っておる限りでは、旧憲法のときには、天皇勅書によって議会草案発議するということが、もう定説になっておったと思う。そうすれば旧憲法のときに内閣憲法改正提案権がないということは明らかになっておるにもかかわらず、旧憲法改正された現行憲法になってから、突如として、内閣改正提案権があるのだという議論は、あなたは多数説だと言うが、決して多数説ではありません。少数説なのです。その少数説をたてにとって、あなた方自民党の方では、内閣にも提案権があるということを言っておられるが、その意見学説としてはむしろ少数説なのであります。いやしくも憲法改正発議するには、国の最高機関である国会発議をするということになれば、この発議者改正革案を出して、そうして三分の二によって議決し、国民発議するという、これが私は正当な解釈だろうと思う。言いかえれば、簡単に言えば、内閣には憲法改正提案権はない、旧憲法と同じくないのであって、国権の最高機関である国会にのみ提案発議の権があると言わなければならぬ。これが法律の正当な解釈だと思うのであります。この点についていま一同政府の御所信を伺いたい。
  23. 林修三

    ○林(修)政府委員 旧憲法は、これはまあ木原委員のおっしゃる通り、七十三条ではっきり「将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ」こう蒔いてあるのであります。勅命をもって帝国議会の議に付すべしということでございます。現在の日本憲法の九十六条をごらんになりますと、国会発議し、国民の投票に付するということが条文になっております。これは国会発議し、議に付するということに条文の使い方が違っておることは一目して明らかだと思います。  それから今仰せられましたが、内閣の地位は、旧憲法と今の憲法とでは全然違っております。この点もお考え願わなくちゃいけないと思います。現在の憲法九十六条の解釈として、この国会が三分の二で議決して国会意思をきめて国民発議する、これはもう議論のないところでございますが、その前提として、国会審議をすべき議案がだれに発案権があるか、提案権があるかという問題は、今の問題と直接関連する問題ではないわけでございます。従いまして、そこに学説としても大体三種類くらい私はあると思っております。一つはこの憲法改正に限って、いわゆる発案権と申しますか、提案権国会議員のみにあるという考え方と、それから法律案について現在内閣提案権があると解釈されている以上、憲法改正についての議案についても同様であるという解釈と、それから法律案についても提案権がないのだから、憲法改正の議案も提案権がないのだ、大体この三説があると私は思います。その中でいわゆる法律案についても、内閣提案権なしとする学説、これは私は今非常に少数説だと思います。それからその次に、憲法改正の議案に限って国会議員のみにあるという説は一部にございますけれども、私はこれは必ずしも多数説とは思っておりません。結局これは、いわゆる国会審議すべき議案をだれが出すかということと国会発議するということは、実は区別しなければならない問題です。国会発議するというのだから、その構成員である国会議員が当然に提案するのだということは、これと直接につながる問題ではないわけです。これは憲法の他の条章と引き比べて、あるいは参照して解釈すべきものだろうと思います。これについては、結局七十二条で、内閣予算その他の議案の提案権を持っておる。その中には法律案も含まれるということは、これは今の通説だと思います。こういうことから延長いたしまして、憲法改正の議案につきましても、国会に議案を出す、つまり国会審議を促す意味の議案を出すということについては、内閣提案権があるということを否定すべきではない、かように考えるのが正当な解釈だと思っております。これが政治的に妥当かどうかということは、これはまた別問題でありますが、法律的にはそう解釈すべきものだと思います。
  24. 木原津與志

    木原委員 人民が、国民が主権者である、そうして国会が国権の最高機関である、こういう建前に立って、こういう趣旨に立っておる憲法のもとで、その憲法改正するのに、改正の発案権を議会がとらないで、内閣がこの発案権を持つんだというような議論は、これは政治的にも不当であります。同時に法律的にもそういう議論は私は成り立たぬと思う。特にあなたは、内閣法律案について議案の提出権があるんだ、だから憲法改正についての議案の提出権政府にあるんだということをおっしゃられますが、そんな議論は私はないと思う。法律案議会内閣が提出するのは、これは憲法に基づいて出されるわけです。内閣法五条がその点をはっきりいたしておりますが、それは憲法のもとにおいて許された内閣の権能なんです。その憲法によって許された権限を行使するのを、今度は憲法自身を改正するというその改正案を、憲法の下にあって憲法を実施する内閣が出すというようなことが、法律上も可能であり、政治上も妥当であるというようなことは、これはいささか通用しない議論だと思う。(「いささかじゃない、絶対だよ。」と呼び、その他発言する者あり)この席にも憲法調査会委員がおられますので、いろいろとヤジが飛んでおるようですが、憲法改正草案一体だれが出すかということについては、一法律問題のみに限らず、政治問題として毛、総理の慎重な正しいあり方を私は要求する。これを間違えば、これこそ国論が二つに割れて、そうしてこれは大きな政治問題になろうかと、私はそれを非常におそれるわけであります。この点について、一体憲法改正をやる場合に、内閣が議案を出すか、国会自身が議員立法によって出すのが政治的にも法律的にも正しい姿であるかということについて、はっきり国民にここで明示していただきたい。そうしないと、今後いろいろと内閣がかわるたびにその時々の内閣——池田内閣もそう長いことではございますまい、あるいは長期になにするかわかりませんが、またどなたかの内閣ができる、あるいは社会党の内閣ができるというようなことにもなりましょう。そういうような場合に、改正について、内閣が三分の二以上の議席さえとっておれば、憲法を自由に改正をする、改正案が出せるというようなことになれば、これは非常に問題になり、ここに政治の混乱が起こるのじゃないかと私は思う。こういう意味において、私は、池田内閣に、その内容についてのことをここであなたがおっしゃる時期でないといって拒否されますから、あえて深く追及いたしませんが、この憲法改正の手続、草案の提出、どういう形で改正国民に求めるかというこの手続だけは、ここではっきりこうあるべきだ、政治的に法律的にこうするのが正しい方向であるということをあとあとのために明示していただきたいと思います。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま議論が行なわれたように、いろいろ説がございます。われわれは、自分の意見としては、これは法律論としては法制局長官の答えたのが一番至当であるかと考えます。しかし、政治論としての問題は、法制局長官も別である、こう言っております。従って、法律論をわれわれこの上とも検討して誤りなきを期すると同時に、政治論としても検討してみたいと思います。ただいまのところは、先ほど答えた通りであります。
  26. 木原津與志

    木原委員 この脈は重大でございますから念を押します。  先ほど繰り返して申しますように、もし内閣憲法改正の発案権があるということになれば、将来どういう内閣日本にできるか知りませんが、そのできたときに、多数党が三分の二の議席さえ持てば、自由にこの憲法が、内閣の手によって改正案をどんどん出されて、そうして改正される。しまいには、ここ何年間かのうらに、改正が積み重ねられていけば、今の憲法は骨なしの憲法になるおそれさえあろうかと私は思うのであります。だから、ここのところで憲法改正についての手続の態度改正草案内閣が三分の二の議席さえ持てば自由に出せるということを言明されるということになると、私はこれは重大な問題になろうかと思います。重ねてこの点についてのあなたの所信をお伺いする次第であります。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておりますごとく、私は、三分の二プラスの一であるからといって、憲法改正案を出すというふうなことは今考えておりません。やはり国民の盛り上がる気持を十分参酌して措置すべき重大な問題だと思います。従いまして、この憲法改正問題につきましては、調査会ではせっかく審議中でございますから、反対だとか賛成だということを私どもとして申し上げる段階ではないわけであります。従って、どちらが発案者になるかということも、今のところはこう考えておりますが、しかし政治的にも考えなければならぬ問題でございますから、お答えはできません、こう言っておるのであります。
  28. 木原津與志

    木原委員 あなたは非常に賢明な宰相であられるので、こういう憲法改正というような問題については、三分の二の多数をとったから直ちに改正をするというようなことはしない、国民世論盛り上がりを待って、その上で対処するということを言われる、その言やよしであります。ぜひそうあってほしいと思う。そうでなければ、現在のこの憲法はいろいろと非難、論難を憲法調査会においてやられておる。あるいは押しつけられた占領中の憲法であるから、これは当然無効だというような議論、また占領中押しつけられたものだから、この憲法改正しなければいけないのだというようなことを言っておられる人が、この国会にも多数おられる。しかもその人たちは、この憲法が世界一りっぱな憲法だといって、だれ一人異議もなく、この国会で全員一致の議決によってこの憲法を生み出してきておる。今になってあのときのことを思い出していただきたいと思いますが、そのときは満場一致で憲法を可決しておきながら、占領軍が占領を解いてしまったとたんに、あれは押しつけられたのだというようなことを言っておる、これはまことにけしからぬことだと思うのです。国民に対して私はそういうようなことを言うべきじゃないと思う。そういう政治家の良心を私は疑うのでございますが、そういうようなことを言って今国民を非常にあおっておるというのが憲法調査会の実体じゃないかと私は思う。少なくとも現行憲法国会の一人の異議もなく、満場一致で議決され、しかも国民の一大歓呼の中でこの憲法が成立しておる。こういうような事態を考え、さらにまた明治憲法といえども、あれは日本人が作った憲法でなくて、あれももとをただせばプロイセン憲法の翻訳、しかもスタインという外国人が作った憲法です。その憲法でもあの制定の当時においてはりっぱな憲法だとして、しかもこの大戦の終わるまで一回の変更もされることなく四十有余年間憲法として存在しておった。こういうように、過去の明治憲法においても現在の憲法においても、満場一致の国会の議決と、国民の歓呼の中で成立いたしておるのであります。今この憲法改正するにあたって、憲法調査会の答申を基本にして憲法改正に着手するということになれば、満場一致どころか国論は完全に二分して、そうしてここで大きな政治的な混乱が起こるということは目に見えておる。だから一つ総理も、憲法改正というような問題はなかなか容易に口にされませんが、もしこれを改正するというようなことにでもなれば、国論がどうすれば一致してこの改正案を迎えるかといことに思いをいたされて、少なくとも国論が二分の形において混乱をし、そこに大きな渦を巻いて、あるいはそこからいろいろな不祥事が起こるというようなことのないような措置を講じる、そのためには内閣憲法改正の起草をすべきでなくて、国民あるいは国会がこの憲法改正についての盛り上がる意思の統合によって、そうして一致してだれ一人異議のないような憲法改正をしたいということを私は念願するのでありますが、この点についての所信をさらに表明していただきたいと思います。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 国民のだれ一人も反対する人がいないというふうな場面に至ることが理想でございますが、必ずしもそうはいかぬかもわかりません。しかし国民の大多数が盛り上がる気持で、そしてそこにいろいろな摩擦のないようにしていくことが私の念願であるのであります、もし改正するとすれば。だから私はまだ世論もきまらぬうちに、早くから三分の二以上をとらしてはいかぬとか、三分の一以上をとらなければいかぬとかいって騒ぐことは、今あなたのお気持と合っているかどうか——私はあくまで慎重に考えていきたいと思います。
  30. 木原津與志

    木原委員 憲法改正の問題はそのくらいで終わりたいと思いますが、ただ何度も繰り返えすようですが、憲法改正草案改正案内閣が出すかどうか、内閣に出す権限があるかどうか、またこれは出すことが政治的にいいかどうかということについては、総理に慎重に一つ考えておいていただきたい。そこでこれを今即答を求めようとしても無理のようでございます。いずれ他の機会に、私はもう一ぺん、この改正案提出権が、内閣にあるかどうかという点について私はあなたにお尋ねしたいと思います。そこで今私が申し上げた点について慎重な考慮をしておいていただきたいということを申し上げ、次に防衛の問題に入りたいと思います。  今年度の予算を見ますと、防衛関係予算が遂に二千億円をこえております。この二千億をこえた防衛関係予算は、今後もどんどん膨張していくのではないかと私は思います。この二千億をこえるに至った中には、防衛庁が計画をいたしております防衛五カ年計画が今年度の予算から頭を出したために、二千億の大台に頭を突き出したというふうに私は見るわけであります。そうすれば将来、今年から始まって昭和四十一年までが防衛五カ年計画の実施期限に入ります。いわゆる防衛五カ年計画によって防衛費というものは一体今後どれだけ膨張していくものか、その見通し、五ヵ年計画の大体の、こういうような計画でこれだけの将来予算が要るのだという点を、防衛庁長官から明らかにしていただきたい。
  31. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 お答えいたします。  最初に、二千億をこえたのでございますが、これは防衛庁の予算は千九百九十四億円でございまして、そのほかに日米安保条約に基づきまするところの施設提供費等が入りまして、二千五十四億になっておるわけでございます。第二次防衛計画につきましては、三十六年度までに達成されまする骨組み的な防衛力に対しまして、それの近代化あるいは機動化をはかろうとするものでございます。また科学技術の進歩に応じまして、特に誘導兵器の進歩に応じまして、その誘導兵器の導入をはかろうとするものでございます。従いまして、この三十七年度に始まりまする第二次防衛計画の末期でありまする昭和四十一年度におきましては、陸上自衛隊が自衛官十八万人、予備自衛官三万人、それから海上自衛隊が艦艇約十四万トン、航空自衛隊としましては航空機約一千機になるわけでございます。そのほかにただいま申し上げました誘導兵器といたしましてのナイキ、ホーク、おのおの二個大隊を整備する予定でございます。そしてその計画実施のために必要な防衛庁の費用につきましては、年平均百九十五億円ないし二百十五億円増の程度に相なることになっております。
  32. 木原津與志

    木原委員 この五カ年計画の予算が幾らくらいになるか、完成するについての予算の総額の大体の見込みを聞いておるわけであります。
  33. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 大体現在、三十七年度が千九百九十四億円でございまして、それに毎年平均百九十五億ないし二百十五億、平均約二百億といたしまして、五カ年で一千億増ということで、現在の千九百九十四億円にさらに一千億増ということに相なるわけでございます。
  34. 木原津與志

    木原委員 五カ年計画だけで一千億の増の見込みということになりますと、国の防衛関係予算はこの第二次五カ年計画が完了いたします際には、おそらく三千億以上の国費が防衛関係費として出るということは大体見通されるわけであります。そうすると先般の受田委員質問の中で、予算規模の問題でしたか、大蔵大臣は、予算規模は年々拡大する傾向にある、また所得倍増計画の実施の中では、むしろ予算の規模というものはどんどん拡大されることが望ましいというようなことを言っておられる。相待って、予算規模の拡大に伴うて防衛関係費が非常に増大してくるということになることは、火を見るよりも明らかなことであります。  そこで私は、総理並びに防衛庁の長官に一つだけ念を押しておきたいことは、御承知のように防衛力は国の憲法第九条によって、陸海空軍は戦力としては持たないということをはっきり規定してある。この戦力が何であるか、どういう概念であるか、憲法上どういう性格のものであるかということについては、いろいろともう数年、憲法解釈の問題で歴代の内閣に対して野党側で論争をしてきておりますので、今さら戦力の問題について私はここで議論はいたしませんが、少なくとも防衛費が二千億をこえ、さらに五カ年計画実施後においては三千億をこえる、あるいは四千億をこえるというような段階に来たるかと思うのであります。そうなりますれば、こういうように防衛費がどんどん増加されて、三千億、四千億をこえるというような軍備ができても、なお陸海空軍を戦力として持たないという憲法規定の中において、一体こういうような膨張が許されるものかどうか、少なくとも戦力の限界を、予算の範囲内でこれを明らかにしておくという時期に、今日到達しておるのではないかと思う。この点について総理並びに防衛庁長官の御所見をお伺いしたい。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは自衛権に基づきまする自衛力を持たなければなりません。そして自衛力につきましては、国民経済その他万般の点を考慮いたしまして、最小限度にこれをとどめたいという考えでいっておるのであります。従いまして、予算に占むる割合あるいは国民所得に占むる割合等々、各般の事情を考えまして予算を組み、また今後におきましても、五カ年計画を立てた次第でございます。
  36. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 最初に数字を間違えましたので、お答えいたします。五カ年間で平均二百億と申しましたが、その基礎になりますのは昭和三十六年度の予算でございますから、昭和三十六年度の予算千七百四十八億に対しまして、平均二百億ずつふえる、こういうことでございます。  また自衛のための必要最小限度の力というものは、いろいろ国際環境によっても変わって参りますので、これを予算の規模でどの程度ということは、なかなか言い出しにくいものだと存じますが、ただいま総理からお答えいたしたような心がまえでやって参りたいと思います。
  37. 木原津與志

    木原委員 今総理並びに防衛庁長官のお話を聞いておると、予算がどんどん膨張し、経済が膨張してくれば、その範囲内において防衛費を注ぎ込むということは、自衛権の範囲内で可能だというように受け取れるわけであります。受け取れるのでありますが、少なくとも憲法九条を率直に読んでみれば、日本の自衛のための戦力を保持することができるというふうな、こういう規定がかりにあるとすれば、総理や防衛庁長官の今のお答えで、予算の範囲内においてできるだけ自衛力を漸増していく、そのために予算が大幅になるということは、これは当然のことで認めていいことと思う、いいことと思うが、ただ気になるのは、憲法九条に、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ということをはっきり書いてあるのでありますから、予算の規模がどんどん膨張し、ふえてくる、そのふえるに従って、それに見合って戦力である自衛隊あるいは防衛庁の経費が無制限に、あるいは一定の限界における有制限ということも考えられましょうが、どんどん拡大をするということになった場合に、その拡大をした戦力というのは、憲法の陸海空軍を持たないというこの規定の中ではたして許される態度であるかどうか、私はここに疑問を持つわけなんです。重ねて総理の御所見を伺いたい。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 自衛のための最小限にとどむべきことは、金額並びに内容におきましても当然のことでございます。従いまして、国際情勢その他万般の事情を考えながら、自衛のための最小限度にとどめる心がまえできておるわけでございます。
  39. 木原津與志

    木原委員 自衛のための最小限度というのが、予算規模がずっと大きくなるに伴うて、どんどん何千億の国費を使うというような状態の軍隊ができた場合に、それは戦力といわないかどうか。膨大な予算を使うて、そうして火器を持っていつでも戦闘ができるというような軍隊ができしがった場合、その軍隊をなお憲法にいう戦力ではないというふうにいうのか。もしそれが戦力だあるいは戦力でないということになれば、その予算的な限界はどこに置けばいいのか。その点を明らかにしたいと思う。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、わが国の自衛のために必要な最小限度——予算が倍になったから防衛費も倍になるのだ、そういう考えは毛頭持っておりません。やはり最小限度にとどめて、そして憲法のいっております戦力にならない自衛のためのものと、こう私は考えておるのであります。
  41. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 もちろん防衛力の漸増ということは考えて参っておりますが、しかしそれは国力、国情に応じ、さらに民生安定その他の政策とも十分にらみ合わせて、ただいま総理がお答えになりましたような自衛の最小限度にとどむべきものであることは当然と考えております。
  42. 木原津與志

    木原委員 今、総理答弁にあるように、自衛力の最小限度ということは、周囲の国際環境その他の事情によってきまるのだというふうな答弁趣旨だと考えますが、そうなりますと、もし国際環境あるいは国内の状況が、日本自衛力ということをそう神経質にあるいは緊張して考える必要がないというような、そういう状態があると認められる場合においては、たとい予算の規模は大きくなっても、自衛隊の防衛経費というのは、そういうような国際環境が出た場合においては、漸増でなくて漸減、減らしていくというようなこともなければならぬと思うのでありますが、その点について減らすことも可能でありますかどうか。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 五カ年計画は、大体今の情勢で進んでいくことを予想していっておるのであります。そうして世界の情勢その他が急変いたしまして、自衛力を減らしてもいいということになれば、それは当然でございます。これは政治的に十分考えなければならぬ問題でございます。
  44. 木原津與志

    木原委員 私どもしろうとですから、防衛庁長官にいま一点だけお聞きしておきますが、新聞その他の報道によれば、新しく編成された師団は、昔の日本の旧師団と比べれば、三倍以上の火力と機動力を持っておるというふうに報道されておりますが、その点どうでしょうか。
  45. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 旧軍時代の師団よりも人員は少ないのでございますけれども、装備の車両あるいは火力等は、近代科学の進歩によりまして相当進歩いたしておりますので、その能力は、旧軍時代の師団よりも相当上回っておることは事実でございます。
  46. 木原津與志

    木原委員 質問の途中ですが、佐藤通産大臣から退席されるという連絡がありますので、先に一点だけお伺いしておきます。  今度の、池田内閣の今年度の経済見通しによれば、経済の成長卒が五・四%、それに対して輸出が四十七億、輸入が四十八億ドル、こういうようなことが経済運営の基本的な態度の中で書いてございます。この点については井手委員からも尋ねたことでありますが、ただ私はそのとき、あなたのお答えを聞きます際に、なぜ輸出が四十七億可能であるか、すなわち前年度三十六年度よりも一四・五%という大幅な伸び、あるいは前年度三十六年度ではおそらく五十億ドルをこえるであろうという輸入が四十八億ドルでとまるというその見通し、これはいずれ詳しいことはあなたのお帰りになりましてから、経済企画庁長官にお尋ねしますが、その点だけもう少し根拠をあげて、こういう国際環境であるから輸出が可能である、こういう国内の需給関係であるから輸入が四十八億ドルくらいでとまる見込みがあるのだという点について、詳細にあなたの時間の許す範囲内でお答え願いたい。
  47. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大へん便宜をはかっていただいてありがとうございました。  今の輸出四十七億、輸入四十八億という、この数字でございます。今までしばしば言われておりますことは、一国の輸出に向かう普通の金額というか、数量というか、総生産に対して一割前後は可能だろう、こういうことがいわれております。これを基礎にして考えてみますと、四十七億という数字は、総体的に非常に困難な状態の数字ではないということが実は言えると思います。だがこの点は、四十七億というものが非常に目標の高い数字ではないかという総体的なことが言えると思います。問題は、しからば三十六年の輸出の実績等から見て、三十七年に四十七億に進めるという、その具体的方策は可能かどうか、こういう問題であります。ことに三十六年の輸出が伸びなかったことは一体どこにあるのか。総生産の一側というならもっと出たはずだが、一体どういうわけだ、こういうことですが、三十六年の輸出の伸びが悪かったことは、何と申しましても国内の内需が旺盛だったということが、輸出を相当阻害しておる一番大きな要因ではないかと私は見ております。また一部国際市場の変動と申しますか、いわゆるアメリカのドル防衛なり、あるいは輸出ドライブというか、そういうような事柄も日本の輸出が伸びるという面において、また悪条件であったと思います。  ところで、最近の国際収支の改善をはかることがただいまの私ども責任であり、また経済界の協力を得る第一の使命だ、かように考えまして、最近におきましていわゆる設備投資の抑制がある程度効果を発揮したり、あるいはまた言われておる輸出マインドというものが国民の間に非常に強くなってきたり、あるいは内需についての鎮静も設備投資の抑制と並行して行なわれておる。こういうことでいわゆる輸出を進めていく、そういう方向の素地は今日できつつあると思います。  問題は、しからば外国の市場に対してどういうような見通しを立て得るかということだと思います。私が申し上げるまでもなく、御承知のように対米貿易のアンバランスというものが、日本の国際収支に大きな影響を与えておることはもちろんでございます。ことに先ほど申しますアメリカの輸出ドライブという政策、これが非常にきいてきていると思います。それに対する対策として、私どもが対米経済外交を全面的に展開しておる、あるいはAIDの資金の使い方についても、あるいは綿製品の賦課金の問題について真剣に取り組んでおることは、御承知通りでございます。また私どもが対米市場を見ました場合に、アメリカの市場と一言には申しますが、あの膨大な国で、とかくニューヨークを中心にしての東部に日本の輸出が集中されておる形もございます。それで、そういう事柄が日本の輸出について非常に批判を受けておるようでございます。アメリカ自身は広い市場でございますから、もう少し東部以外の地域に対しましても輸出の市場を開拓していく、あるいは貿易品の品種をふやしていく、こういうことによれば、最近のアメリカの経済成長政策とも相持って、必ず今日の状況をもう少し改善できるのじゃないか、かように実は考えております。  また欧州の市場、EEC等ができて、あるいはこれがブロック化し、日本は締め出されるのじゃないかという言い方も一部にございますが、同時に一億七千万の人口を擁する大きな経済圏ができるということでございますから、この意味においての経済の拡大、これにはやはり日本も輸出の面、市場として協力する余地はもちろんあるのじゃないかと思います。基本的な、いわゆる戦前の経済ブロックの思想は、あらゆる機会にこれを打破して参るつもりであります。その場合に、私どもが特に経済の外交の面で努めていただきたいと思いますことは、工業先進国が日本に対して各種の差別待遇をいたしておりますが、この差別待遇の廃止あるいは緩和等を外交の面で交渉を持つことであります。あるいはまたいわゆる低開発国に対しての経済協力、これを総合的に効果あらしめるような努力をすることだと思います。  また国内の資金的な問題にしては、何と申しましても輸出入銀行その他の経済協力資金等の資金の確保なり、あるいは輸出が円滑にいきますように輸出保険制度を整備するとか、あるいは強化するとか、あるいは輸出金融の円滑化をはかる等、各種の施策を実施することによりまして、本来可能なこの四十七億というその目標を達成したい、こういう意味で各界の協力を得る、そういう努力をいたすわけでございます。  それから四十八億ドルの輸入ということに対しては一体どうなるか。今日本の鉱工業生産等の伸び、経済の発展等から見て、過去の実情等から言えば、四十八億ドルに押えることは非常に困難ではないか。これはなかなか困難なことだと思います。十分協力を得なければならぬと思います。ただ私は、昨年の九月以来輸入抑制について政府がとりました諸施策、輸入担保率の引き上げであるとか、あるいは国内金融の問題であるとか、あるいは業界の協力等、それらが、ようやくある程度最近の輸出入の信用状等に現われておりますように、効果を免じつつあるように思います。  もう一つの問題は、国内の生産をささえておる原材料の在庫が、一体今日まで適当な数量であったかどうか。言いかえますならば、在庫投資が昨年は相当あったのではないか、こういうことも実は最近いわれておるわけであります。いわゆる設備投相当過大と同時に、輸入在庫の数量も相当多いのではないか。これは、私どもかように申しますのは、最近の鉱工業生産の実態等を見ました際に、輸入を押えてきておるにかかわらず、鉱工業生産はあまり鈍化しておらない。その実情等から見ると、ある程度の輸入在庫があった、蓄積がある、こういうことが実は言えると思います。この輸入在庫の蓄積を、今後は輸入抑制の結果、ある程度食いつないでいく、そういうような形に進むのではないかと思います。そうすることが一つの、国内生産を維持しながらも、同時に輸入を押えるという方向の効果が上がるのではないかと思います。  この前も一言簡単な答弁をいたしたのでございますが、最近自由化がどんどん進んでおりますし、その立場から見ると、輸入は非常に楽ではないか、そうすると、政府はそういうふうに考えても、四十八億ドルに押えることは困難ではないかというお話があったと思いますが、私は、この為替も、同時に国内の金融の実態と密接な関連のあるものだ、かように心得ておりますので、国内金融の引き締め状況がいましばらく続く現状のもとにおいては、この輸入を四十八億ドルに押えることも、これまた可能ではないかと思います。  もちろんかように申しましても、私は輸入、輸出について楽観をいたしておるわけではございません。また今日の国内の経済情勢そのものが、いわゆる引き締めの効果が上がり、調整がすでに実績、効果を上げつつあって、将来に非常に見通しが明るい、かような楽観的な議論をしておるわけではございません。ただこの新年を迎えまして、この結果輸出入信用状等について黒字が出る、あるいは輸入の実績が通関ベースにおいても横ばい、あるいはやや減っているとか、こういう数字が出ておりますので、これらは少なくとも将来を見通すものの一つの好材料としては取り上げたいと思います。しかし今日まで国内金融を引き締めて参っておりますので、この状態をもしも短期間のうちに緩和することがあれば、おそらく財界は一ぺんに走り出す、こういう危険もまたあると思いますから、そういう意味において、十分警戒を要する問題だと思いますが、そういう意味においてのPRも十分いたしまして、そうしてただいまの柱になるような点、これについての財界、金融界の十分の理解と協力を得て、そうして本来の目標の数字を達成したい、かように考えておる次第でございます。
  48. 木原津與志

    木原委員 通産大臣にはなお輸出の地域別の増加率についてただしたいと思いますが、時間がないようでありますから、この輸出、輸入の問題は経済企画庁の長官にお尋ねすることにして、ただ一点だけ最後にあなたに確かめておきますが、あなたが昨年度は在庫が非常に多かったのだ、今も多いような見込みだというふうなことを今おっしゃいましたが、この点は過日の一月二十七日の大蔵委員会における大蔵大臣の言われたことと違うようなんです。大蔵大臣はこう言っている。国際収支は一月から三月まで信用状は一億数千万ドルの黒字だ。このことは民間の在庫の食いつぶしで輸入が減ったからだ。在庫調整が一巡した五月、六月ごろ輸入が非常にふえてくる、こういうようにふえるおそれがあるのだ。それを政府は警戒しておると、こういうことを大蔵大臣は過日言っておられるのです。もう民間在庫は食いつぶしたということを言っておる。あなたは在庫がまだたくさんあるから輸入の点については大丈夫だと言う、そこに大蔵大臣とあなたとの間に在庫の問題について意見の食い違いがあるようです。だからそこのところをきょう私はただしておきたいと思ったのです。それが済んだらあなたはお帰りになってもいいです。
  49. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大蔵大臣がどういう答弁をされましたか、私は伺っておりませんので存じませんが、私は今日までも少しは食っておると思います。しかし、まだ食いつぶしてはおらぬと思います。またこれからもう少し在庫が減る、これから先も食いつぶす、こういうように考えております。だから輸入を、もう在庫を食いつぶしてしまって、なくなっているからすぐ輸入して、在庫を補給しなければならぬ、こういう状態ではないというのが私の見方でございます。
  50. 木原津與志

    木原委員 そこが違うから、あなたに聞いている。
  51. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大蔵大臣も後ほどお答えになるだろうと思いますが、そこまでは言っておらないだろうと思います。どういう言葉だったか私は存じません。  それからもう一つ、今の輸出、輸入の地域別の問題は、ちょっと数字を御披露しておきたいと思います。三十五年と三十六年を申しますと、米国、東南アジア、ヨーロッパ、その三つに分けて申します。三十五年は十億八千万ドルの対米輸出でございます。それから三十六年は、アメリカに対しては、一−十一月間の数字でございますが、九億三千万ドル、一カ月足りませんけれども、また金額も足らない。総体の割合を見ますと、三十五年は二六・七%、三十六年は二四・八%、パーセンテージもやや下がっております。それから東南アジアに対しましては、三十五年は十億ドル、三十六年は九億一千万ドル、パーセンテージで見ますると、三十五年は二四・六%、三十六年は二四・二%、それからヨーロッパでございますが、三十五年は五億ドル、これは全体に対しては一二・二%、それから三十六年は四億八千万ドル、一二・九%、こういうようになっております。その他の地域を合わせて総計一 ○0になるわけでございます。  それから輸入の方について申しますと、三十五年はアメリカからの輸入が十五億五千万ドル、これは総体の三四・五%に当たっております。それから三十六年は十八億九千万ドル、これは三五・九%、パーセンテージ並びに金額はふえております。それから東南アジアからの輸入、三十五年は七億ドル、パーセンテージは一五・六%。それから三十六年は六億七千万ドル、一は、四億五千万ドルの一〇%。三十六年は六億一千万ドル、これは全体の一一・四%、こういうことになっております。大きな市場を三つにして、ただいまのような数字になっておりますので、ここらの数字も基礎にして、私どもは今後輸出を伸ばしていく市場があるのではないかということでございます。
  52. 木原津與志

    木原委員 今通産大臣の説明を聞きましたが、民間在庫がまだだいぶ残っておる。そのために輸入は抑えることができるのだというような意見でありましたが、先ほどから申しますように大蔵大臣は一月二十七日の大蔵委員会で信用状が黒字基調になったのは、民間在庫を食いつぶして、そのために輸入が減った。在庫調整が一巡した五、六月ごろ輸入が大幅にふえるおそれがある、こういう発言をしておるのであります。そうすると、大蔵大臣の在庫に対する見方と通産大臣の見方とに若干食い違いがあるようでありますので、この点について大蔵大臣の所見を求めます。
  53. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今のお話の食いつぶしたということと、食いつぶしがこれから始まるだろうと予想されるということの違いがあるのでございますが、大体今通産大臣の言った通りだと思います。で、輸入がようやく落ちついてきましたが、しかし輸入水準と生産水準が一致していない。生産水準はまだ非常に高い。しかし信用状ベースで見る限りは輸入の激減という形がはっきり現われてきておりますので、これから在庫の食いつぶしというものが当然予想される。一月の二十七日当時には、まだ十二月の生産指数がわかりませんでした。十一月は非常に高かったので、もし十一月程度の生産水準で行くとすれば、この在庫余剰がどこまで持つか、生産水準が落ちない限りは、私は七、八カ月持つか、持たぬかというくらいのところではないかと想像したのでございますが、きょうようやく十二月の生産指数がわかりましたが、これによりますと、少し十一月より落ちてきましたので、この生産水準が少し下がるということになれば、在庫余剰があれば食いつなぎが、持つ期間がそれだけ延びるということも考えられるが、いずれにしましても、生産水準が落ちないで、今信用状に現われるような傾向が続くとしましたら、いつかはこれはまた輸入増という時期に来ますので、私どもはそれをおそれている。やはり輸入水準と生産水準が合うような形でなければ心配だということを言ったわけでございまして、食い違いはございません。
  54. 木原津與志

    木原委員 食い違いはないと言われますが、はっきりあなたは民間在庫の食いつぶしがされて、そして五、六月ごろ輸入が大幅にふえるということを言われておるので、この食いつぶしの点に、程度の問題だろうと思うが、いずれにしてもあなたからの答えは、民間在庫はもうすでに——すでにかどうか知らぬが、とにかく食いつぶされて、在庫調整の時期に入るのだというふうに考えておる。通産大臣は、まだ相当在庫があるから、輸入はそれによって抑えられるというような考え方なんです。だからあなたと通産大臣との間には若干食い違いがあるわけなんです。この点はさらに私は経済企画庁長官にも聞いてみたい。おそらく経済企画庁長官と通産大臣と、それからあなた、三人のこの点についての考え方は、私は三者三様違うのじゃないかと思う。経済企画庁長官、あなたは今の日本の在庫の見通し、在庫の食いつぶしが、いつごろ食いつぶされて、そうして在庫調整が進んだあと、一巡したあと、輸入がふえるという見通しを何月ごろに置いておられるか。その点企画庁の方の見通しを聞きたいと思う。おそらくあなたの見通しは違うと私は思うが、これはもう大へんなことになる。同じ政府の大蔵大臣と通産大臣と経済企画庁長官との見通しが違っているということになれば、これはまた見通しをもう一ぺん練り直して、国会に出していただかなければならぬと思うのですが、正直なところどうお考えになっておられるか、その点をまず、大蔵大臣から御返事いただく前にあなたから一つお聞きしておきたい。
  55. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体食い違いはないはずでありまして、私が見ておりますところは、大体通産大臣が見ておられるところと同じでありまして、伺っておりましても、大蔵大臣も食いつぶした、こう言われたかどうかは知りませんけれども、おそらく感触から言えば大した違いがないと、私ども心得ておるわけでございます。御承知通り昨年の七、八月まで、原材料の在庫というものがそう多くなかったのじゃないかという一応の予想を、実はいたしておったわけでございますけれども、その後の状況を見ておりますと、御承知通り港湾荷役等も非常に困難でありまして、従って通関実績等に表われておりますものから見まして、機械類が非常に多かった、原材料が少なかったというような見方もできたわけでございますけれども、そういう点が若干違っていたのじゃないか。今日では原材料の在庫というのは、相当やはり見通し的に、思惑的にとまでは申しませんけれども、あったのじゃないか。それを今後は食いつぶしていくといいますか、輸入をしなくても、そういう原材料はある程度持っているものをつぶしていける。それがどの程度までいくかということになりますと、これは、日本の今日の生産力の状況から見て、一カ月や二カ月はどうしても食い違うことが起こって参りましょうけれども、大体今の状況から見れば、五月ぐらいまでは、通産大臣も言われましたようにやっていけるのではないかというふうに見ておるのでございます。大蔵大臣も、食いつぶした、もう何もないのだと言われたわけじゃございませんから、この点、大した食い違いはないと思います。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今在庫がなければ、これから信用状に現われたようなことから、一月から食いつぶしが始まるだろうと予想するはずはありません。今あるからこの食いつぶしが始まるだろうということでございまして、どのくらいあるかというような数量のつかみ方は、非常にむずかしい問題でございますが、こういう点の見通し、いろいろの問題については、けさ経済閣僚の懇談会に総理も出て、私も通産大臣も、企画庁長官もこの問題で議論しておって、みんな意見が一致しているところでございますから、実際に食い違いはございません。
  57. 木原津與志

    木原委員 今三人の大臣の答弁を聞いても、意見は一致しておると言うけれども答弁の中では一致していないと思うのです。あなたは、はっきり、二十七日の大蔵委員会の中で、三月までに貿易は黒字になる、一億数千万ドルの黒字になる見通しがあるのだ、現に十二月は黒字だったということを言っておられる。これが三月までには一億数千万ドルの信用状の黒字が出る見込みだ、この原因は何かといえば、民間の在庫の食いつぶしで輸入が減ったからだ、こういうのでありますから、少なくとも、あなたの見解によれば、一−三月までの間には在庫の食いつぶしが終わって、そうして在庫調整が一巡した五、六月ごろ輸入がふえるというのですから、これはあなたの言うのが私ははっきりしていると思う。通産大臣だとかあるいは今の企画庁長官の御説明とは違うと思うのです。  そこで、この点について、三人の答弁が一致しませんから、一つ総理大臣のこれに対する見通し、はたして在庫を食いつぶして、そうして五、六月ごろ輸入がふえてくるのかどうか。大蔵大臣はそう言っておるし、経済企画庁長官あるいは通産大臣はそこまではっきりはしていない。そこに意見の食い違いがあるようですが、総理のこの点についての見通しをお聞かせ願いたい。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 在庫というのは、輸入原材料の在庫とお考えいただきたいと思います。そうして、輸入原材料は、大体昨年の平均が二二〇足らず。今、十一月現在はどれだけあるかというと、昨年の平均の二一七、八に対しまして二七〇くらい。一昨年の十一月が二二〇くらい。そうしますと、輸入原材料の額は、一昨年の同月に比べて二割多くなっておる。そこで、生産が伸びてきますから、この輸入在庫のふえ工合、片一方で生産も伸びるから、輸入在庫率、在庫指数、こういうものが出てくるわけです。十一月現在は輸入在庫率指数が一〇四です。一〇四という輸入原材料の在庫指数というのは、昭和三十五年ぐらいに一〇七ということが一ぺんありましたが、それに次ぐ大きい数字でございます。九月が一〇四くらい行っておる。一番少ないときは、去年の一月は九一・二でございます。それを比べますと、十月の生産が伸びても、在庫率というものはそう高くない。この原因はどこにあるかと申しますと、大体六、七月ころが在庫率指数が九五、六だった。このとき割に低かったのは、陸揚げの関係で船荷が滞貨しておりましたから、統計に載ってこなかった。それがだんだん港の荷役がよくなってきまして九、十、十一月ごろずっと出てきて在庫率がふえた。それから一〇四という在庫率というものは、今言ったように相当の輸入超過のサープラス分ですね、この一〇四という十一月に高くなったのが、十二月に、生産が伸びてくると輸入が正常な——正常な姿じゃございません、まだまだ伸びておりますが、伸びてくると、この在庫率が一〇二ぐらいになるのですが、幸いに——幸いといいますか、ちょっと二九七、八の何が十二月は三〇〇までいきましたが、これを月のあれしにますと二九二、三と、ちょっと減ってきておる。そこで、在庫率も減らぬでしょう。結局は在庫は相当ふえております。在庫率もよろしゅうございます。このいいものをいつまで食いつぶす——食いつぶすというのじゃない、食っていくかという問題、まあ平生、通常の在庫卒が九五、六%になるということは、片一方の、生産の横ばいか、上がるか、落ちるかによる。輸入の増減に似ておりますが、大体私は、大蔵大臣が言ったように、今まで多いのを食いつぶして、だんだんいくと思います。食いつぶしていくその食いつぶしの仕方が、これからの財政経済政策なんです。通産大臣、企画庁長官は、その在庫が異常とは申しませんが、相当ふえておる分をだんだん食っていくだろう、大蔵大臣も食っていくだろう。食っていって、九五、六の在庫率にいつなるかということは、片一方の生産の増強と輸入の状況で違うわけですが、今の状態は、そういうふうに在庫率は非常に高い。今までに二番目くらいに高い。生産が横ばいとか、あるいは落ちてくるということになって、輸入が相当少なくても在庫率は一〇〇ぐらいを維持するのじゃないか。今の信用状から輸入の状況を見まして、昨日の現在は十五億一千万ドル、一月は総合収支で二千四百万ドルの黒字になる。二月はどうかということになりますと、十一月、十二月、そして一月の信用状の黒字は九千六百万ドルですか、これは十一、十二、一月の信用状から見ますと、四、五は輸出が相当伸びていく、輸出が伸びる。片一方は食いつぶすというか、食っていったその食い方にもよりますけれども、大体私は、まあ心配はしておりません。楽観はしておりませんが、国民の御期待に沿うような国際収支がだんだん出てくると確信しております。だから、皆さんの見方は同じなんです。きょうもみなで集まって話しましたが、みんな同じ意見です。ただその場合の質問によりまして、ちょっとぐらい言葉づかいの違いはあるのですが、数字は今申し上げた通りでございます。
  59. 木原津與志

    木原委員 あなたは、肝心なところになると数字をあげてわれわれはだまされてしまうのですがね。私があなたに聞きたいのは、数字の率でなくて、現在とにかく大蔵大臣が、輸入は減ったのは十一月、十二月、一月とずっとですね。民間在庫を食いつぶして、そうして三月ごろまでには食いつぶす、そうして食ひつぶすために輸入が減った。だから、一−三月ごろまでの間には一億数千万ドルの黒字が出るんだということ、しかもそれが在庫の調整が一巡した五、六月ごろから輸入がまたふえる。その先の——速記録によれば、それで輸出の振興よりも輸入の抑制の方が私は非常に困難じゃないかということを心配しているんだということを、大蔵委員会で言っておられるんですよ。だから、私はその点を聞くのです。三月ごろまでに在庫を食いつぶして、そうしてそれが一巡して五、六月ごろから輸入が大幅にふえるのじゃないか、私どもそう思う。大蔵大臣がたまたまそれを言われたから、通産大臣にも企画庁長官にも聞いたのだが、その点について大蔵大臣みたいにはっきりしたことを言わない。だからあなたにお伺いしたわけなんだが、あなたが数字をあげてちょろちょろとわからぬようにしてしまったんですよ。もう一ぺん在庫の状況を話して下さい。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 在庫の状況をお話しするのには数字でないといかぬ。そこで今は十一月、十二月——十一月は、輸入超過の結果が現われまして非常に在庫が多かった。そうして十二月は生産がちょっと落ちました。輸入も実際の通関の方は——為替とは違いますよ、通関の方は、輸入もまた相当旺盛なんです、十一月は五億ドルの輸入でございますから。しかし在庫が通常の在庫よりも上へ行っております。食いつぶすには、在庫をみな食いつぶすんじゃございません、普通よりも多い分を食いつぶしていきますから、一、二、三というものが一億五千万ドルの黒字というのは、信用状の黒字でしょう。そうすると、一億五千万ドルの信組状の黒字というのは、大蔵大臣は丁三月で一億五千万ドルというのは、少し少ないんじゃございますまいか。そうでしょう、一月だけで九千六百万ドルですから。だからその分は申しませんが、サーブラスであった分を、だんだん生産がずっと横ばいであったときにもある程度食っていくでしょう。どの辺まで行ってサーブラスの分を食うか、あるいは通常の状態よりもちょっと下まで行くのがいつかということは、今後の生産の伸び方でございます。生産の動きです。それから輸入をどうするか、輸入は担保率その他金融で私はふえないと思います、減っていくでしょう。ことに輸入の大部分であった機械の輸入というものは、通産省は相当押えておりますから、外貨予算よりも七、八千万ドルから一億ドルくらい押えるんじゃございませんか、また押えるべきだと思います。そうやってみますと、輸入はあまり伸びません、そうして在庫を食いつぶしていくでしょう。それがいつになるかというのは、まあ四月、五月ごろぐらいにサーブラスの分だけを食いつぶすか、そうして普通の分よりもちょっと下がるか、四月までよう食いつぶさぬかもわかりません、普通の状態までは。そうやっていきますと、今度五、六月ごろになってくると、もし三、四月まで食いつぶしたとすれば手当をしようというので、四、五、六は輸入時期でございますから、少し輸入が伸びてくるかもわからぬ、こういうことで、大蔵大臣も企画庁長官も何も変わりはないと思います。だから、とにかく在庫の食いつぶしという食いつぶし方の問題です。しかし幸いに在庫が相当たくさんございますから、私は、大蔵大臣の言った信用状の黒字は一−三月が一億五千万ドルよりちょっと上に行くんじゃないか。大蔵大臣はいつも引っ込み思案でございますから、一億五千万ドルというでしょう。とにかく一月は九千六百万ドル、こういう状況でありまして、この三月、四月に食いつぶすかどうかという問題も、長い目で見ていくならば、皆さんの答えは私は同じで、ただ質問によりまして、前の質問とうしろの質問とでいろいろな答えがあるのですが、考え方一つも変わっていないと思います。
  61. 木原津與志

    木原委員 貿易の輸出、輸入の問題について、地域別に聞きたいと思ったのですが、もうすでに私に与えられた時間が来ましたので、あとの委員にこの点を引き継いでいただきまして、私は一点だけ、なおお尋ねいたしておきますが、それは設備投資の問題であります。日本経済があなたの言う高度成長を遂げて今日に至ったという、その一番の基本的な発展の基盤は、民間及び国の設備投資の異常な増大によって異常な経済の成長があったということになることは、総理もお認めになるだろうと思う。そこで、過般の委員会で井手委員から、その設備投資によって、もはや数年の設備投資であるから、やがてここに生産力の大きな拡大となって、そのために、現在の日本の経済の状態の中においては、今度はその過大な設備投資から起こる生産過剰を一体どうして消化していくかという点について、これが大きな問題だということをわが党は指摘をしたのであります。そのとき総理は、これは国民の消費力と輸出の拡大によってその膨大な生産力を吸収していきたい、こういう御答弁があったと私は承知しておる。そこで、この問題、国民の消費をより強大にし、輸出を振興させる中でその過剰生産を切り抜けていくということ、これは総理の正しい態度だと私は思うのですが、これについてあなたの具体的な構想を、あのとき時間の関係で説明されなかったが、その点についての総理の基本的な考え方、どういうふうにして、その過大な設備投資から出てくるであろう膨大な生産力を吸収するかということについての考え方を説明していただきたい。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 考え方としてはそういう考え方なのです。別に変わったことはございません。(木原委員「具体的に」と呼ぶ)ただ前提といたしまして、この設備投資が行なわれました三十六年は、三十五年に対して二割上がる、そしてその前年は四割、その前は三割、こういうふうに設備投資がふえましたが、設備投資による生産高、GNPはどうかという問題ですね。これは六%、七%、いろいろな点がございます。しかしこれはくぎづけのものではございません。昔は八%という説もあったのですが、今は六%あるいは七%。だから、これがどれだけ設備がこうなったから、三十七年度において、それではどれだけ総生産が伸びるかという問題、今までと同じ率でいくか、いかないかというのは一つの問題です。その問題をなすものは、消費の状況を見て出産を考えなければなりません。これは自由経済の原則です。もう一つは、その考え方——消費の状況と、いかにしたならば生産性がより上がるかというので、新しい設備を稼働して、陳腐化した設備を遊休に落とす。これも自由主義経済の原則で、私はけっこうだと思う。それをどういうふうに生産者や労働者が考えていくかということが第一の問題。率とその問題。  そして今度は個人消費で見てみますと、御承知通り、これは数字を言って恐縮でございますが、三十四年は総生産は二割一分ふえましたね。そして名目で個人消費は一八%ふえたのです。三十五年になりますと、総生産は一割八分ふえました。個人消費は一割一分ふえました。三十六年はどうだ。総生産は一割四分ふえた。国民消費は一割四分四厘と、名目的の生産増以上にふえた。一四・四%、個人消費が名目的にふえた。(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)何が違いますか。違いませんよ。  そういうふうに昨年度は総生産のふえる以上の率で個人消費がふえました。これは異例です。私は健全な個人消費を期待いたしますが、総生産以上な伸び率を個人消費が行なうということは、国際収支に非常な悪影響が及びます。だから三十七年度の予定は、個人消費が三十六年度に一四・四%ふえたのを、三十七年度は八・七%に見ておるわけであります。だからふえることはふえますけれども、去年のようなふえ方ではない。個人消費は去年は異常です。そこで個人消費は減らしていただきたい。ごく健全なところへ持っていっていただきたいということで八・七%——政府の財政投融資はある程度ふえます。そこで、今度は今の生産の増強の率とあるいは陳腐化を抑えることと、そうしていろいろな市場のことを考えまして、どうしても伸びたものは輸出へ持っていかなければならぬ。これはもう至上命令です。だから輸出に対して格段の措置をやっていこうというのであります。だから、どういうところへどういう力を入れるかということは、これは通産大臣並びに大蔵大臣、企画庁長官がおやり下さると思いますが、大体四十七億ドルというものは私は行くと思います。また行かさなければならぬ。そのためにはあらゆる努力をしなければいかぬ、こういう考え方でいるのでございます。
  63. 木原津與志

    木原委員 個人消費の伸び率を言われましたが、その個人消費の伸び率は、あなたのおっしゃるのは国内の総生産に対する個人消費の率を言っておられる。しかし、私どもは、これはあなたに経済学の講義をするわけじゃないが、個人消費はどういうふうな率で伸びているかということは、国内総生産だけじゃない。国内総生産にフラスの輸入される毛のがあるでしょう。輸入する財貨やサービス、これを加えたものの何割が、すなわち総供給——国内生産とそれから輸入されたもの、その総供給に対して国民の消費の需要が何パーセントであるかということ、これが個人消費率だと私は思う。そうすれば、総供給に対して個人消費の率は伸びておりませんよ。かえってこれは減っているわけなんです。総生産に対してはなるほど五〇何%かの個人消費率かもしれないけれども、国の総供給全体に対する国民消費というのは、これは五〇%を下っておる。むしろ個人消費率は戦時状態の、戦争中の状態と同じ、あるいはそれ以下になっておる。これは私の数字が正しいかどうか知りませんけれども、私が調べたところでは四二%のところまで今年度は下がる見込みだということを指摘される人もある。あなたは国民総生産だけでパーセンテージを言われるからなんだけれども、実際のあれは、総供給に対する消費の率を言わなければうそなんです。そうすれば今申し上げるように、国民の消費購買力というのが、総供給に対する率においては戦時中以下に下がっておるというこの現在の事態、また輸出にいたしましても、なるほど輸出そのものは伸びているかもしれませんが、この供給全体の率からすれば、需要としてみるならば、この輸出も下がっておる、こういうような実態なんだ。しかも上がっておるのは何かといえば民間設備投資及び国の設備投資、これが需要としては一番大幅に伸びておる。私の計算が、数字がほんとうかどうか知りませんが、私の勉強したところでは、設備投資は需要にすれば総供給に対して約三四%という驚くべき伸びを示しておる。私はこの無鉄砲な設備投資の暴走、この大きな拡大が今日物価の高騰の原因となり、あるいは貿易の赤字の原因となると思うのです。しかも、この設備はだれが一体やっているかということを調査してみますと、日本昭和三十四年度現在で資本金一億円以上の大会社が千七百五社ある。この千七百五社が全日本の設備投資の実に八六%をやって、そうしてどんどん大きくなっている。ここから生産力は拡大してくるということになる。一方、貿易は供給に対して率は下がっている。国民購買力も下がっておる。こういうようなことになれば、さらに需要を拡大するためには設備投資をどんどんふやしていくよりほかに方法はなくなる。そのとばっちりはだれが受けるかというと、すぐ国際収支の赤字、さあ金融引き締めだということになって中小企業がしわ寄せを受ける。こういうような悪循環をやっておるのが日本の経済の実態であり、これが池田高度成長の実態だと思う。私はそういうような統計の数字に立って——時間がありませんからこの問いだけで終わりますが、それだから、日本経済の一番ガンである、設備投資を機軸にして日本の高度成長をやるというこの態度を改めなければならぬと思う。そのためには、今のような大資本がどんどん行なっていく設備投資を野放図にやらせておくというようなことは、中小企業、その他農業の犠牲、あるいは二重構造というような問題がそこから起こってくるのでありますから、この辺で、賢明な池田さんがほんとうに日本の経済の基盤を強固にし、そうして体質を改善するという立場に立たれるならば、この大資本の設備投資に対して国家的な資金の規制をやるとか、あるいは法律でこの設備投資を何らかの形で抑制する。金融引き締めというような、そういう行政的なものではもううまくいかない。こういうような点から、あなたに、この大資本の設備投資を法律で規制をするというようなことを、日本経済の体質改善のためにやられたい、私ども社会党はそういう考え方を持っておるのでありますが、この点について一つ詳細な池田総理の御答弁をお願いして……。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 私の申した数字は、またあとから念査してみますが、違いないと思います。  問題は、結論を申し上げますが、設備投資につきましては、お話の通り行き過ぎでございますから、これを極力押えております。しかし、今までの日本の高度成長というのは、やはり設備投資が非常に役立ったことも考えられる。総生産に対しまして、日本の設備投資は二割五、六分を三年間続けている。アメリカなんか六%ぐらい。イギリスでの一0%足らず。ドイツが一四、五%。日本は二五、六%やっておる。これは落とさにゃいかぬ。しこうして、私が今申し上げたのは、GNPの毎年の伸びを見ますと、名目で二二、一八、一四と、こう来ている。それから、個人の前年に対する消費の伸びは、九%、一一%、一四・四%と、こう来ている。そうすると、総生産の伸びよりもずっと下だったのが総生産の伸び以上になろうとしておるから、この分は、個人消費はもっと健全なところでいって下さい、国際収支の問題は……。この数字に誤りはありません。そこで、あなたのおっしゃった数字はこの総生産に輸出入を加除している。需要総高が輸入超過によってGNP以上になったのはこの三十六年度だけです。しかし、人体の見当は違いません。輸入総高とGNPの分はあまり違いません。私の言うのは、対前年の伸び率というものはあの数字です。しかるに、あなたの今おっしゃった総体の国民所得に対する国民の消費はどうか、こういう問題でございます。私はどこかの会合でイギリスは七五%と言いましたが、これは国連の調査が数字が違っておりまして、六五、六でございましょうか。アメリカもそうです。フランスもそうです。そうして、ドイツが五九ぐらいです。日本が五三。こうすれば、日本国民消費は、私はもっと伸びてもいいというのが昔からの考え方だった。しかし、今度急に伸びてきたし、国際収支がこうなったから、健全な消費にして下さいというのですが、見てごらんなさい、この計画には八兆七千億でしょう。国民所得はどうなっておりますか、五割を切るようなことはありません。私は、どなたが国民所得に対して四割三分と言われたか知りませんが、五割を切るようなことをやったならば、それは過剰で大へんなことになる。そういうことは私は考えられません。そうあるべきじゃない。そこで、今申し上げましたように、個人消費の分の伸びることは賛成だけれども、国内需要が非常にふえていって、GNPよりも国内需要が多いということはどこに原因があるかというたら、設備投資と個人消費の急激な伸び方と政府の財政投資でございましょう。だから、その点は勘案いたしまして、三十七年度の計画をごらん下されば、私がここで申し上げた通りにいっておると思います。  で、設備投資の行き過ぎは、もうあなたの言葉をかりるまでもなく、政府があらゆる手段を講じましてやっておる。しかし、自由主義経済のもとでございますから、お前の会社は設備投資を増加してもいいけれども、この会社はやめろというふうなことは、自由な国民の創意と工夫によって発展を来たそうとするわが党の政策に反しますから、法律でどうこういうことはいたしません。ただ、両者の話し合いとか、あるいは法律に基づく行政指導でやっていくのが適当かと考えるのであります。
  65. 山村新治郎

    山村委員長 それでは午後は正二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  66. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、議事進行について横路節雄君から発言を求められております。特にこれを許します。横路節雄君。
  67. 横路節雄

    ○横路委員 池田総理に申し上げたいと思うのです。  午前中の木原津與志委員質問に答えて、総理からいろいろ数字を並べられたわけですが、私は、この予算委員会総理からお答えになる数字は、やはり正確でなければならないと思うのです。先ほど総理答弁の中で、私は聞いていて総理の御答弁で間違っている点があるから私が指摘をしましたら、総理は、その場所で、間違いはない、こうおっしゃったわけです。そこで、私は今速記を取りましたところが、こういうふうにお答えになっています。「GNPの毎年の伸びを見ますと、名目で二二、一八、一四と、こう来ている。それから、個人の前年に対する消費の伸びは、九%、一一%、一四・四%と、こう来ている。そうすると、総生産の伸びよりもずっと下だったのが総生産の伸び以上になろうとしているから、」、こうお答えになっているわけです。私たちの手元に経済企画庁から昭和三十六年度の年次経済報告が出されています。ここの五ページの第一表に今総理が述べられた数字について出ていますが、三十五年度は総生産については一四・六%前年度に比し伸びがある。個人消費については一二・六%の伸びです。上回っているどころではないわけです。しかも、この年次経済報告書の二十九ページには、経済企画庁で出されたものですが、前段は省略しますが、「この結果、国民総支出に占める個人消費支出の比率は三十五年度で五三%にまで低下した。戦後の高蓄積時代でも三十年まではほぼ六割台で推移していた。三十五年度のように消費比率が低下したことは、戦時経済以外には見られない現象である。」、こう書いてある。いわゆる、戦争中に、個人消費については、勝つまではほしがりません、こういうので抑制をしてきた。「戦時経済以外には見られない現象である。」と、こう書いてある。こう報告しておる。こういう報告であるのに、何で一体総理はこういう数字をお使いになるのでしょうか。総理はこういう事実を御存じないのかどうか。私は、もっと数字は正確に使ってもらいたいと思うのです。さらに、経済企画庁で出された「昭和三十七年度の経済見通し経済運営の基本的態度」において、附表の主要経済指標を見ましても、三十六年度については、国民総生産は一四・四%個人消費については一四・一%と、やっぱり下回っている。しかも、その絶対金額が半分ぐらいにしか及ばないのですから、そういう意味で、私は議事進行ですからいずれ私の総括質問のときにお尋ねをしますが、ここでお使いになる数字はもっと的確なものをお使いいただきたいと思うのです。この点については、総理は数字が得意でいらっしゃることは私たちも十分承知しています。しかし、ここでお使いになる数字は、やはり政府が公に発表された数字をきちっとお使いになるのでなければ、予算委員会審議というものは十分審議を尽くすわけにはいかぬし、そういう点で、私は、これは言い過ぎかもしれませんが、やはりこういう数字は、経済企画庁長官なら長官が、自分の出した数字に基づいてここで御答弁していただく、こういうことでなければ、総理が何でもここでお立ちになって、やはりそういう点、私は数字のお間違いがあると思うのです。これからずっと一月近く審議をいたしていくわけでありますから、私は、そういう点の総理がお示しになる数字については的確なものを私たちも聞いているわけですから、的確なものをお使いいただきたい、こう思うのです。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶は、繰り返して申し上げますが、今まで、総生産は、名目で申しますと、三十四年が二二%、実質で一八%、それから、三十五年が名目で一六%、実質が一四%、三十六年が名目で一四・三%、実質で一〇・九%、こう記憶いたしております。これは年度か年かわかりません。私の記憶はそうです。  そこで、国民消費の前年に対しての伸びは、前々年が九・数%、前年が一一・数%、今年が一四・四として、GNPの一四・三よりも〇・一%上回っておるという数字を企画庁からもらっておる、私の記憶はこういう記憶です。  それから、国民所得に対しましての国民消費は、先ほど申し上げましたように、あなたの数字と合っております。五三%。この五三%というのは急激にGNPがふえた関係上下がっておる、しかも、この数字というのは、世界の一等国に比べますと、先ほど申し上げたように相当低い、しかし、四十何パーセントというようなことはありません、こう答えておるのであります。  そこで、違いは、総生産に対しまする五三%というのは違いはございません。前年に対する分は、これは多分年と思いますが、一応これから資料を取り寄せます。しかし、私の記憶が間違っておったならば訂正しますが、私は、二、三回読んでおり、多分間違いがないと思います。
  69. 横路節雄

    ○横路委員 それは、総理、あなたがお述べになった数字に間違いがあります。私たちは、あなたの方からお出しになった昭和三十七年度経済計画の大綱、この中で見ておるわけです。あなたの方が予算委員会で正式の資料として出されたものについてわれわれは指摘をしておるわけです。だから、国民総生産の場合には、三十六年度は前年度に比べて一四・四%、個人消費については一四・一%。それは総理がここでお答えになった数字は逆です。総理は勘違いをされておる。私は総理が数字を勘違いをされるというところに問題があると思って実はお尋ねをしたのです。今総理がお答えにたりましたように、昭和三十五年度の個人消費の割合は、国民総生産の中で総理がお示しになった数字の通りをここに書いてあります。そうであれば、ここに出してあるのは昭和三十六年度年次経済報告書なんです。われわれはこれに基づいてお尋ねをしておるし、これに基づいてあなたたちの答弁を聞いておるわけなんです。特にまた、今私が指摘した三十六年度については、総理は完全に勘違いをしておるわけです。私どもは、これはあとで議論をしますが、個人消費の割合がふえたんだ、だからもっと圧縮をしなさい、——個人消費の割合がふえたからそれは物価が値上げになるのです。これだけ伸びているからベース・アップもこの際控えてはどうですかというようなことに、こういう数字を間違えられてとられては大へん遺憾なんです。だから、そういう意味で申し上げておるので、やはり、ここでお答えになる以上は、総理は数字については詳しくいらっしゃるでしょうが、国会に正式に出された報告書ですから、それらに基づいて的確に一つ答弁いただきたいと思う。きょうは、議事進行ですから、その点だけ申し上げておきます。
  70. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。堂森芳夫君。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として国民生活と密接な関係を持っておる社会保障を中心として池田総理初め関係閣僚質問をいたさんとするものであります。  まず池田総理お尋ねをいたしますが、本委員会が始められまして以来、与野党の議員諸君から、すでに物価の値上がりの問題につきましていろいろと質疑が繰り返えされておるのであります。これに対しまして、総理以下関係閣僚からいろいろと答弁がなされておるのであります。しかし、この答弁を聞いておりまして、私は、国民の一人として、はたして政府答弁しておられるような方法で物価の値上がり、こういうものを抑制することができるかどうか、納得ができないのであります。  すでに物価がどれぐらい上がっておるか、こういう数字につきましては、たびたび、委員質問の中にも、あるいは政府の閣僚の答弁の中にも出ておりまするから、その数字につきましては私はこれを述べることを控えますが、一体どういうわけで物価の値上がりを来たしたと考えておられるのか、まずこの原因から総理に御答弁を願いたい、こういうふうに存ずるのであります。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の関係は、やはり需要供給の関係でございます。また、需要供給の関係以外に、いわゆるサービス関係というものもございます。御売物価の関係と消費者物価の関係は違いますが、卸売物価は、おおむね需要供給の関係、あるいは金利その他の経済界の見通しによって左右される。それから、消費者物価の方も、需要供給の関係によって支配されるべきものでございますが、そればかりでなしに、やはり、賃金その他の上昇によりまするサービス料の上がりということも影響いたします。生産性の合理化のできるものとできないもの等がサービスに関係するわけでございます。そういういろいろな点が関係しております。需要供給だけでなく、流通関係ということも考えられるし、ムードの関係もございましょう。各般の問題が出てくると思います。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、ただいまの総理答弁を聞いておりますと、まるで顧みて他を言うような答弁だと思うのであります。まず第一に、物価が値上がりをしてきた原因の最大のものは、あなたがお作りになった所得倍増ムードであります。あなたは、こういうものを物価の値上がりの大きな原因である、こういうふうにお考えにならぬですか。御答弁を願いたいと思います。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の成長の場合におきまして、おおむね物価の値上がりというのはある程度伴うものでございます。それは卸売物価よりも消費者物価に影響するところが多いのであります。消費者物価は、今申し上げましたような状況でございます。また、消費者物価に、今言い落とした問題は、生活内容の向上ということもございます。教育費なんかの増加とか、あるいは娯楽費の増加とか、あるいは住宅、家具のような点は、必ずしも需要供給ということでなしに、生活内容の向上によっても影響されるのであります。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、総理答弁されるところの、消費者物価の値上がりの大きな原因の一つは生活内容の向上、これは当然数えられると思うのであります。また、あなたの所得倍増政策、高度成長政策、こういうものによって、もちろん多くの従業員を大企業が要求いたします。特に若年者を要求する。従来中小企業では若年労働者を安い賃金で使っておった。こういうような労働力の問題もございましょう。しかし、私は、もう一つの大きな原因というのは、あなたがお作りになった所得倍増ムード、値上がりムード、こういうものが非常に大きな原因であるということは看過できないと思うのであります。そういう意味で、あなたは、物価値上がりというものに対するあなたの政策の大きな責任である、こういうふうにお考えにならぬでありますか。御答弁を願いたいと思います。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、高度成長の場合におきましての所得の増加ということが前提でございます。その場合におきまして、今申し上げましたような高度成長に至る場合の——一時的か、あるいはずっと続く場合もございます。しかし、その率が違います。ある程度時間的にずっと物価が上がるということもございます。それから落ち着くこともございます。所得の倍増をする場合に、ある程度物価が上がることはやむを得ない。しかし、長い目で見て、所得がふえた以上に物価が上がって生活が悪くなったとは考えません。要は、所得の増加ほど物価が上がらないということであれば、上昇、成長過程においてやむを得ない。しかし、できるだけ上がらないようにすることはもちろんでございます。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、後ほど数字を示しまして、あなたが所得倍増計画、高度成長政策をお進めになるようになって以来、所得の増加というものが、低い所得の階層の人たちと所得の非常に商い人たちとの間に差が出てきておるじゃないかとか、いろいろな方面から、あなたのそうした、高度成長には物価の値上がりのある程度はやむを得ないというような議論はきわめて暴論であるということを論破したい、こう思うわけであります。  そこで、農林大臣にお尋ねをいたしたいのであります。昨日川俣清音委員から、生鮮食料品というものが物価の値上がりについて大きな役割を果たしておる、そこで、生鮮食料品について生産者の価格と消費者の価格とに大きな差がある、とにかくこの生鮮食料品の価格についての政策をお持ちであるかどうか、こういうふうな質問があったと思うのであります。これに対しまして、河野農林大臣は、生鮮食料品の標準価格構想といいますか、そういうものを公示して、そうして生活に密接な関係のあるそういう生鮮食料品の暴騰を防ぎたい、こういう御答弁があったと私は思うのであります。そこで、あなたがきのう答弁をされましたような構想は、はたして資本主義経済という今日の皆さん方の政治経済機構の中でほんとうに効果があるとお考えであるかどうか、まず承っておきたい、こう思うのであります。
  78. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。  実は、最近の都市の生鮮食料品の事情を勘案いたしますのに、単に需給の関係だけで物が動かぬ場合がある。あまりに広範囲に物が動きますために、原因がまちまちである。また、買う人についても、売る人についても、どれが安いかどれが高いかという認識に非常な差がある。たとえて申しますと、前年度に大根がもう運賃だけないというような暴落であった。その翌年である昨年は室戸台風その他によって非常に産地がいためられて高くなった。高くはなったが、前年度の倍も三倍もするじゃないかといって非難されますが、その基準となる数字がはたして妥当であるかどうかということによって、倍であるのか三倍であるのか、一割だか何だかよくわからない。そこで、私は、一般の方々の認識を得るために基準になるような数字を定めてみようと思っておりますと答えたのでございまして、決して生鮮食料品をこの価格によって統制しようというような気持はないのでございます。それを一つの目標にして、生産者におきましても、また、買ってお食べになる人も、これは割高だからほかの物を食べた方がいいのだというふうに御協力を願う目標にしようということで、そういうものを選ぼうというような考えなのでございまして、それをきめたからといって、決してそれがどうなるものでもなければ、また、自由経済においてそういうことが一体どうだというただいまのお話になりますれば、私も同じように考えます。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 農林大臣は私の質問をすなおに了解しておられないと思うのです。私は、あなたがそういう構想を答弁になったが、何も生鮮食料品の値段を統制する、こういうふうなことを述べた覚えはありません。あなたがそういうふうな構想と思われるような答弁を昨日されましたが、そういうことで生鮮食料品というこのむずかしい、しかも生活に特に密接に関係しておる消費物資のそういうふうなべらぼうな暴騰というものがはたして防げるかどうかということを聞いたのでありまして、あなたは少し答弁がおかしいと思うのであります。
  80. 河野一郎

    ○河野国務大臣 そういうもので防ごうという考えはゆめゆめ持っておりません。
  81. 堂森芳夫

    堂森委員 それじゃ、ただそういう考えもあるという意味で御答弁になったのでございますか。
  82. 河野一郎

    ○河野国務大臣 昨日も申し上げました通りに、あくまでも需給の関係でございます。しかし、その需給の関係が、一方において需要面に属する人口の増加、ないしはまた消費地が非常に近時拡大いたしておるというようなことで、なかなかつかみにくい。生産地につきましても、最近の情勢でございまして、畑地等がどんどんつぶれて参りますので、ことに都市の周辺の蔬菜用の畑地等がつぶれて参りますので、生産地の需要関係のつかみがむずかしいということ、さらに、野菜の市場、生鮮食料品の市場がこういう状況でございますということで、いろいろ困難な情勢を昨日は申し上げました。そういうことでございますから、これに実はこういうふうにして一応のめどをつけ、さらに需給の関係を調整するためにわれわれせっかく努力をし、さらに、タマネギ等の買い上げ貯蔵をして、そして不測の際に持ち出すということをして、あらゆる角度から努力をいたしておるのでございますと答弁したのでございます。
  83. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると、あなたは、そうした物価を適正な値段に保持していくという方法はないと、こういう御答弁でございますか。
  84. 河野一郎

    ○河野国務大臣 適正な値段で保持するということは、物によっては、たとえば、畜産物の価格を安定させるために、法律に基づいて事業団を作って、これから発足しようといたしておる。もしくは、野菜ものについて、今初めてタマネギについてやろうとしておる段階でありまして、順次これからそれら諸般の施策を研究してやろうとしておりますと答えたのであります。
  85. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、農林大臣に重ねてお尋ねいたしますが、生鮮食料品があのような値上がりをしたという原因はどういうふうな点にあるとお考えでありますか。
  86. 河野一郎

    ○河野国務大臣 これは、御承知のように、昨年夏から秋にかけて、異常な集中豪雨、室戸台風というようなものによって、産地がひどくたたかれた、これが主たる原因であります。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、もちろんそういうことが大きな原因であることは了承しております。私が見ました数字をとつて質問してみたいと思うのでありますが、たとえば輸送という問題が一つの大きな点になっておると思うのであります。これは東北の国鉄の支社において管内における在貨の比較をした数字でありますが、三十六年度と三十五年度を比較してみましょう。そうすると、魚介類が三十五年度には八千トンであった。それが三十六年度には二万三千トンにふえておる。比率でいきますと一七〇、こういうふうになっております。それからまた、野菜類でありますが、三十五年度が千トン、三十六年度が二千トン、倍に在貨がふえてきております。こういうふうに一々数字をあげますと切りがございません。それからまた、輸送のトン数もいろいろ調べた数字をもらったのでありますが、輸送は三十五年よりは三十六年が状況はよくなっておるのでありますが、滞貨が非常に多い。こういうことが一つの原因でありますが、もちろんこれは農林大臣の所管の問題ではありませんが、やはり、農林大臣として、輸送ということについて、閣僚としてももちろんこういう方面に大きな留意を払われる必要があると思うのでありますが、運輸大臣がおられませんからやむを得ませんが、農林大臣はどういうふうな努力を閣僚としてしておいでになるか、これも御答弁を承っておきたいと思います。
  88. 河野一郎

    ○河野国務大臣 実は、最近、生鮮食料品の輸送につきましては、東京の場合で申しますと、東京近郊の道路が非常に整備されまして、たとえば、福島、長野、静岡を円にしたところからは、いずれもトラックで入ってきております。今お話しの通りに、入って参ります品物にもむろんよります。従って、入荷の数量を全部合計すれば前年に比べて少なくないじゃないかということになりますが、逆に、消費する消費圏が非常に大きくなりまして、最近の数字で見ましても、東京都内で消費するものが七割で、三割は東京からさらに近県の都市にこれが逆送されて出ておるというようなことでございますので、私が申しましたように、その需要供給の関係が非常に輻湊しております。それらからいたしまして、野菜のごとき、災害が参りますとすぐに暴騰する。少し供給が落ちますと暴騰する。魚の方は比較的そういうことはなくて推移いたしておるということでございますので、これについて手を打つ必要があるというので、せっかく今タマネギから始めようとしておるというのが実情でございまして、何らかこれを一つ考えなければいかぬということをきのう御答弁を申し上げて、さらに、市場についても考えなければならぬ、今のような集荷方法では適当でない、生産についてももう少し指導の方法があるだろうということで、今せっかく努力いたしておりますと御答弁申し上げたのであります。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 きのうの農林大臣の答弁でも、流通機構というものに対して大きな不満を持っておるのだ、こういう御答弁でありました。しからば、現在の流通機構のどういうところにどういう大きなネックがあるのか、しかもどういう構想を持っておられるのか。あなたがこのマイクを通じて御答弁になることは、全国の大衆、特に家庭を預かる御婦人方は生活必需品の値上がりということには非常に神経を使っておりまするから、あなたがどういうことをおやりになろうとしておるのか、これを一つ承りたいと思います。
  90. 河野一郎

    ○河野国務大臣 実は、従来生産者の手取りと消費者の支払いますものの間の差額が多過ぎる。これを詰めるということに非常に議論があったのでございますが、実は、私は、いろいろ御意見もございましょうけれども、私自身としましては、ただ詰める詰めるといっても、これはそういくものじゃない。由来、わが国の例で申しますると、中小商業者のうちで農林物資に関するものがおおむね四割ないし五割ある。これらの諸君については、比較的に中小企業対策についても第二次的に考えられている面があるのじゃなかろうか。行政的に、通産大臣が中小企業者に対するいろいろな施策も、今申し上げまする農林物資を扱っているものは第二次的になっているんじゃなかろうかというような気持がいたしますので、私としては、これらについて特に考慮する必要がある。そこで、昨年の九月の終わりでございましたか、物の動きを一ぺんよく調べてみようということで、それぞれ係官を選定いたしまして、専門にこれらに調査をいたさせておるところでございます。おそらく今月中に第一期の中間報告がまとまると思いますが、それによって、品目別の中間の物の動き、それに要する諸雑費、経費等が調べ上がりました上で、これに対するしかるべき処置を講じて、そうして、中間の合理化、たとえば運送においてはどういう点においてロスがあるか、これらの中小企業者に対してどういう施設をしてやることによって合理化されるか、ないしはまた、資金が不足しておるためにこういうことがあるというような面で、この中間の扱い業者に対してしかるべき施策をし、それによってこの中間報告を生かしていくということによって、生産、消費の中間が狭まる、しかも、そこに介在する業者の諸君も仕事ができるということになるのじゃなかろうかという考えのもとに、行政を進めて参るという所存でございます。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 せっかくの河野農林大臣の御答弁でありますが、私、わからぬのです。しかるべくとか、そういうお言葉がございますが、今日物価はどんどん上がっておるですね。そうして国民生活は苦しくなっておる。こういう人たちがたくさんいるということは事実なんです。従って、これから考えてしかるべくとか、そういうことでは、何もないということじゃありませんですか。具体的にこうやっていくんだという御答弁を私は願いたい、こう思います。
  92. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は、ただ単に用語でごまかそうというような量見は毛頭ありません。だから、目下調査中でございまして、その調査も今月のうちぐらいに報告を得るようにいたしております、その報告を得た上でなければ手の打ちようがない、今までやっておりませんでしたからと答えておるのでございます。明瞭にお答えしております。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、それでよくわかりました。現内閣はそういう対策は何もないということですから、よく了承したのであります。  そこで、時間も経過いたしますから、方向を変えてみたいと思うのであります。  物価が大きく値上がりが来た、こういう一つの大きな原因としては、公共料金の値上がりが昨年引き続いて行なわれた、こういうことが大きな原因であると思うのであります。たとえば、国鉄の運賃が値上がりした、あるいは電気料金が値上がりをした、あるいはまた東京においては都電の値上がりがあった、あるいはまた郵便料金が値上がりが来た、多くの一連の公共料金の値上がりがあったと思うのであります。  そこで、私は、経済企画庁長官にお尋ねしますが。昨年以来問題になっておりますところの公共料金の中で、私鉄の運賃は、何か伝えられるところによりますと、閣僚の中でも何か意見の対立がある、こういうふうにうわさをされておるのでありますが、運輸大臣来ておられますが、運輸大臣にも御答弁願えればいいのですが、そういうわけで、何か新聞の伝えるところによれば、国会中は社会党の、野党の追及もうるさいから、従って、国会が済んだころには私鉄の運賃も値上げしよう、こういうようなことを考えておるということが新聞に書いてあるわけであります、この公共料金の有力なものである私鉄の運賃というものは、一体どうなるのでありますか。これについての内閣考え方を伺いたい、こう思うわけであります。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 公共料金につきましては、政府は抑制の方針を堅持はいたしております。ただ、しかし、先般も答弁申し上げましたように、将来の物価その他に影響するような状況に相なりましてはいけないという点は考えなければなりませんので、そういうような意味で、やむを得ざるものについてはある程度認めていかざるを得ないという場合もございます。そこで、私鉄の問題につきましては、私鉄十四社から値上げの申請が運輸省にございまして、私どもは、今申し上げたような趣旨によって、単純な赤字ということだけでなしに、はたして、運賃を値上げをしなければ、将来の輸送の円滑化をはかり、あるいは増大してくる輸送力に対応ずるような施設の改善整備、あるいは安全運転というものが確保できないかどうかというような点を十分考えました上で、今後の問題としてそれらのものは扱って参りたいと存じております。ただ国会開会中だから延ばすとか延ばさないとかいうことはございません。理由のあるものならば、国会開会中といえども、十分説明がつく問題でございますから、御理解を得ると思いますから、国会開会中かいなかということには関係しないで扱って参りたい、こう思っております。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 重ねて藤山長官にお尋ねしますが、国会中だから上げないのではない、上げるものなら上げる、こういう御答弁でありましたが、私鉄の運賃の値上げの問題は、そうすると、上げるということも今後あると理解していいわけでありますか。これを御答弁願いたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私鉄の運賃の問題につきましては、今せっかく検討中でございます。特段に閣議内に意見の相違があるとは思いませんけれども、これらにつきましては、今言ったような基準に沿って十分に検討をしてみて、はたしてその必要があるかどうかということをきめて参りたいと思うのでありまして、まだ結論に達しておりませんから、すぐに上げるとも上げないとも申し上げかねるわけであります。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、いつごろ各私鉄の運賃の申請があったのでございますか。一体どれだけの間考えておるのですか。この点御答弁を願いたいと思います。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 運輸省に対する申請は昨年の秋だったかと思います。私どもに運輸省の方から御建議がありましたのは、十一月の初めでありましたか、中ごろだった、こう思っております。
  99. 堂森芳夫

    堂森委員 運輸大臣がいらっしゃいますからお尋ねしますが、私鉄の運賃の値上げの申請があったのは、正確に運輸省へいつごろあったのでございますか。
  100. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 正確には覚えておりませんが、今企画庁長官がお答えを申し上げましたように、昨年の九月の初めごろであったとか考えております。
  101. 堂森芳夫

    堂森委員 運輸大臣が正確に覚えてないなんて、そんな無責任なことは私はないと思うのです。重要な問題であります。大体いつごろということはわかっているはずであります。そこで、九月ごろに申請されたものがいまだに結論が出ないということは、一体それはどういうことでございましょうか。   〔「慎重に検討中だ」と呼ぶ者あり〕
  102. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これも、企画庁長官からお答えをいたしましたように、填重に検討いたしまして、(笑声)そして運輸省が企画庁に相談を持ちかけておるわけであります。企画庁の方も、いろいろと資料を取り寄せて、ただいま数字的に検討してもらっておるところであります。
  103. 堂森芳夫

    堂森委員 与党の諸君はお笑いになりますが、私鉄あるいはそうした交通機関の運賃の値上がりということがいかに大衆の生活に大きな影響があるか、皆さんおわかりにならぬからお笑いになるのだろうと思います。非常に重要な問題だと思います。従って、そういう言いのがれのような答弁じゃなしに、この運賃の値上げの問題については、上げないという原則でこれを早く処理されることが当然のことであろうと私は思うのですが、そういうふうにお願いをしたい、こう思うわけであります。  そこで、私鉄の運賃以外に、さらに、各都市の市電なんかもやはり運賃の価上げを要求していると思うのでありますが、これは、やはり同様に、値上げをするかどうかまだ検討中だ、こういうふうに理解をしてようございますか。
  104. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 御意見通りでございます。
  105. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、政府答弁が全くごまかしでありまして、きわめて憤激の念にたえないのでありますが、時間もございませんから進めていきたい、こう思います。  そこで、もう一つ、公共料金の問題です。問題が幾つかあると思うのであります。たとえば、昨年の予算委員会で、電気料金の値上げについて私は当時の通産大臣にお尋ねをしたことがございます。その際、九州電力はやむを得ない事情で近く値上げをすることになっておる、東京電力についても、申請があって、ある程度値上げをせざるを得ないかもしれない、こういう答弁があった。しかし、その他についてはわれわれは値上げということは考えていない、こういう答弁があったと記憶しておるのであります。ところが、近く東北電力でありますとかあるいはまた他の電力会社でも料金の値上げを次々と申請しそうな情勢にあるとも聞いておるのであります。電力料金というのは国民生活に大きな影響があるものでありますから、通産大臣の方針をこの機会に承っておきたい、こう思うのであります。
  106. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 電気料金が各方面に影響がある、御指摘の通りであります。公共事業に対しましては、料金の面ばかりでなく、事業のあり方等につきましても、私ども一つの方針を持っておるわけであります。サービス相応の料金と申しますか、料金が高くてサービスが悪ければ、二重に高いということであります。そういう意味から、公共事業体自身が真にその公共性を十分発揮し得るかどうか、そういう事業の状態にあるかどうか、これを絶えず注意し、指導していく必要があると思います。電気料金につきましても、昨年、東京電力の料金を、私就任してから、これを改訂をいたしました。改訂をいたしましたが、ただいま申し上げました点で、料金が変わること、改訂することが需用者に対して非常な負担をかもし、それが経済全般に影響が及ぶ、こういうことについて、改訂率をいかにするか、こういう意味では非常に苦心をいたしました。同時に、その事業体自身の事業内容が公共の使命を達するに十分かどうか、これを勘案いたしまして、やむを得ず料金の改訂をいたしたわけでございます。ただいま東北電力あるいは他の地域にもそういう問題があるではないかという御指摘でございますが、私どもといたしまして、東北電力自身がただいままで正式に申請をいたしておりません。しかし、非公式というか、あるいは改訂について打診しているというか、そういうものがあるやに見受けますが、まだ書類は正式には出ておらないというのが現状でございます。  こういうものに対する通産省の態度といたしましては、先ほど企画庁長官がお答えになったように、閣議決定の基本的方針がございます。それに加えまして、ただいま申し上げた基本方針につきましても、ただいま私が説明したと同様の意味だろうと思います。公共聖業自身がそのサービスの万全を期する、サービス相応の仕事ができるように事業体の内容を整備する、そういうので必要な場合、その料金の改訂の影響をできるだけ少なきよう調整する、こういう基本的な考え方を持っているわけであります。  東北電力の実態等については、今具体的に右だとか左だとか言う状況ではございません。
  107. 堂森芳夫

    堂森委員 今通産大臣の答弁を聞いたのでありますが、電力料金の改訂ということについては、政府は慎重な態度をとらなければならぬと私は忠告しまして、さらにもう一度農林大臣に伺いたいのであります。  国民生活と密接な、特に低額所得の人たちの生活費と非常に関係の深い消費者米価の問題であります。河野農林大臣は、世に言う河野構想、こういうものをお持ちであり、また、あなたの考え方に対しまして、本委員会でも、すでに前国会においてもいろいろ論議がなされました。私があなたにお尋ねしたいことは、農林大臣として、消費者米価は三十七年度においてはこれを上げない、こういうことをこの席で答弁をしていただくことができるかどうか、あるいはどういうふうな考え方を持っているか、これもあわせて国民生活安定のために私はお尋ねをしておきたい、こういうふうに思うのであります。
  108. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。  御承知通り、食管法によりまして、生産者米価、消費者米価の決定は、それぞれ法の示すところによって定めることになります。従って、おおむね六月下旬になりまして、諸般の物価指数その他経済事情を参酌してきめるということが妥当である、そう考えております。ただし、今お尋ねのように、消費者米価については、一般低額所得者その他の生活の安定等勘案することは、従来の慣行になっております。従って、われわれとしても、その点を十分留意しきめることになると心得ております。
  109. 堂森芳夫

    堂森委員 昨日の川俣議員の質問に対して、生産者米価は下げない、三十六年産米より下がることはない、こういう御答弁だった。もちろんけっこうだと思うのであります。同時に消費者米価というものは三十六年度の、現在の米価より上げない、こういうことはあなたは今答弁になられぬわけです。そのときになってみないとわからない、こういうふうな答弁と理解してようございますか。もう一度めんどうでございますが、お答え願いたい。
  110. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。消費者米価はどうか、こう先ほどもやかましい御質問でございましたから、四角四面にお答えしたのであります。ただし、今のような御質問でございますれば、消費者米価は下げるということは困難でございますけれども、これは上げる場合があるかということでございますれば、それは、今の経済事情その他に特別の変動があるとか、ないしは社会情勢に特別な変動があるというような事情が六月ごろまでの間に生まれて参りましたときに、特に考慮する場合があれば別でございますけれども、大体においては据え置かるべきものと私は考えております。
  111. 堂森芳夫

    堂森委員 さらに私は、物価の値上がりに大きな影響を来たしておる地価の問題について伺いたいのであります。これは総理に伺いたいわけでありますが、わが国における土地の価格、宅地の価格、これは戦後非常な暴騰を示しておることは御承知通りであります。一般物価の上昇と比較して、土地の値上がりというものは異常なものがあるわけであります。このような暴騰を来たしておるという理由については、これはいろいろな理由があると思うのでありますが、しかし考えてみますると、政府は今日まで——もちろん池田内閣だけではありません、あなたの前の人の内閣におきましても、土地の価格が異常なまでにも暴騰しておる。こういう姿に対して何ら対策がなされてなかった。こういうふうに言って過言ではないと思うのでありますが、まずこの土地が今日のような暴騰を来たしておるその原因は、総理大臣は何だとお考えでございましょうか、御答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 土地の値上がりの最もひどいのは都市でございます。またその都市でもごく中心地——全般でございますが、特に中心地、あるいは都市に近いところの値上がりが非常に大きいと思います。これはやはり人口の都心集中ということが原因であると思いますが、上がり始めると、やはり思惑という点も相当加わって参りましょう。何もしなかったというおしかりでございますが、なかなかむずかしい問題でございます。やはり国有財産の問題とか、あるいは道路整備その他との関係におきまして抜本的な手を打たなければならぬときが来ておるのじゃないか、もちろん土地造成その他につきましても十分の施策をいたします。このままではほっておけないと考えて、今せっかくいろいろな点を関係各省で考えておる次第でございます。
  113. 堂森芳夫

    堂森委員 総理にただいまお尋ねしましたが、関係閣僚と今せっかく考慮中である、こういうきわめて抽象的な答弁でありまして、私はその答弁には満足できないものがあるわけであります。特に閣僚の中で——土地、宅地の造成、地価の暴騰、こういう問題につきましては多くの影響するところがあるのでありまして、関係閣僚ももちろん何かと考究中であろうことは当然でありますが、企画庁長官の藤山さんにお尋ねいたしますが、従来私は、土地対策というものは歴代の内閣に何らなかったと言って過言でないと思うのであります。しからば経済企画庁長官としての藤山さんは、どういう構想を持っておられて、どういう対策を今後やっていかれようとしておるのか、この点についてお尋ねしておきたいと思います。
  114. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいまの日本の事情から申しまして、土地の値上がりというものは非常に著しいのでありまして、総理が御答弁になりましたように、市街地における商業用地の高騰も著しいのであります。同時に地方において、単価そのものが低いわけですから、その倍数になりましても目立ちませんが、工業用地等の問題につきましても著しく高騰して、あるいは工業を運営するというような場合に不便を感ずるというようなところも相当できておるのでございまして、地価の問題は、都市におきます商業地域あるいは住宅地、同時に将来の工業力の基点となる工業用地の問題、いろいろな角度からこの問題を検討して参って、そうして今日のような著しい急激な値上がりを見ないようにある程度抑制をしなければならぬのではないか。そこでこの問題は、今申し上げましたように、市街地の問題あるいは工業用地の問題等諸般の問題がございますので、今日までいろいろの対策がなかったというわけではないと思いますけれども、この際、現実の物価問題を考えてみましても、あるいは将来の工業発展のことを考えてみましても、あるいは生活改善の点を考えてみましても、この問題とは取り組んで参らなければなりませんので、企画庁としては、今省内の人を使いまして、その問題点の所在地、またその実情等について若干の調査を始めておるわけでございます。そしてそれらのものが整って参りましたならば、何らかの形でそれらの総合対策ができるような調査会その他のことを進めまして、そうして将来の値上がり問題等に対処して参りたいと思います。お話しのように、地価は需要供給の関係もございますけれども、投機的な対象として扱われておる面もないわけではございませんので、そういう面についても考慮して参ることが必要ではないか、こういうふうに存じております。
  115. 堂森芳夫

    堂森委員 土地、宅地の価格が暴騰しておる大きな原因の一つは、投機の対象として土地が扱われておるということも大きな原因でありましょう。また特に池田内閣になってからのいわゆる所得倍増、高度成長という呼びかけによる工業地あるいはその他の土地の需要が急激にふえてきた、こういうことも大きな原因でありましょう。いろいろありますが、きのうも臼井委員の方から質問がございましたが、工業の分散とか官庁の分散、あるいは学校の分散とか、いろいろな意見が述べられて、政府からも答弁がございました。そういうふうな事柄をも含めた対策はぜひとも必要であろうと思うのでありますが、企画庁長官はどのようにお考えでございますか。
  116. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 都市の過大化を防止するということは、地価における一つの対策だと思います。また同時に、都市の高層化ということによりまして、新しい住宅地もしくは商業地を造成していくということも考えられると思います。また積極的には、埋め立て等の方法によりまして土地を造成していくということが必要だと思います。この点につきましては、農業用地の造成ということもあわせて考えて参りませんと、土地全体を考えるわけには参りませんし、また工業用地等の特殊な造成ということも考える必要もあろうと思います。何はともあれ、そういう意味でもって、現状ございます土地を高度に利用する方法というものが一つの出発点であることは申すまでもない、こう考えております。
  117. 堂森芳夫

    堂森委員 地価の対策として、投機の対象になっておるという現況から見まして、この投機の対象となっておる現状に対する、たとえば税制において課税をするというような方法を考えるとか、あるいはまた空間地の利用税を取っていくとか、いろいろな課税から見た政策も必要だと思うのであります。政府が従来からこの地価対策ということにきわめて不熱心であった、こういうことは否定できないのでありまして、すでにもう今日のような事態になっておることは、非常な手おくれであると申さねばならぬと思うのであります。政府の猛省を促しておきたい、こういうふうに思うのであります。  そこで私は三十七年度の予算に関連をしまして、池田内閣の社会保障の政策一般について若干の質問を展開したいと思うのであります。  池田総理は昨年、昭和三十六年度の予算国会提案されました際、池田内閣の大きな政策の柱の一つは社会保障である、こういうふうに施政演説でも述べておられるのであります。そしてまた先般の通常国会の湾頭における施政演説におきましても、やはりこの社会保障というものについて池田内閣は非常な重点を置いておるのである、こういう意味の施政演説をしておられるのであります。しかし、現実の三十七年度の予算案を見ますと、非常な大型の予算でありますところの三十六年度当初予算と比較しますと、二四%何がしかの膨張になっておるわけであります。ところが、社会保障費のふえ方は、たしかその半分ぐらいの一二%何がしかになっておりまして、その一般会計の予算の膨張率と社会保障のふえ方、増加の率とを単に比較するだけでも、社会保障は前進しておる、こういうふうには私は言えないと思うのでありますが、池田総理はやはり前進しておる、こういうふうにお考えでありますか、まず御答弁を願いたいと思います。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 全体の歳出予算に対します費目の割合もある程度考えなければなりませんが、御承知通り今年は予備費も倍額になっております。食管会計の方の経費、あるいは災害、あるいは国債償還と、非常に特にふえた費目がございますので、その割合以上には参りませんでしたが、内容的に見ますと、私は、三十六年度の予算が画期的であったごとく、それに続いてずっと内容は進んでいっておると考えております。
  119. 堂森芳夫

    堂森委員 総理に私は重ねてお尋ねしたいと思うのです。こういう質問総理に私が聞きますと、そういう詳細なことは厚生大臣に聞いてくれ、こういう御答弁になるかもしれませんが、内容的に非常に充実したというのはどういう意味でございますか、発言されたのですから、御答弁を願いたいと思います。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 中心をなすものは生活保護費でございます。これは昨年一八%上げましたが、補正予算で五%、そしてその上に今度二二%上げた。問題の国民健康保険も五%引き上げております。生活保護費につり合わうとは申しませんが、大体権衡をくずさないように必要対策もいたしております。それから年金につきましても、所得につきまして、所得額十三万円を十五万円に上げたと思います。それから社会保障関係の職員の給与も上げております。私は、大体やはり前向きの方向をずっと進めていっていると考えている次第でございます。
  121. 堂森芳夫

    堂森委員 それは池田総理大臣、きわめて社会保障に重点を置いているとおっしゃる総理答弁とは思われません。そういうしろうとをごまかすような答弁をされてもだめです。たとえば昨年あなたは生活保護費の基準を一八%上げて、さらに五%で、確かに昨年は二三%上げた。しかし物価の値上がりということを考えるならば、=二%という値上がりは何も多くないです。その証拠に、私は後ほどお尋ねしようと思ったのですが、厚生大臣は大蔵大臣に対して二二%上げるように要求しておるのですが、大蔵大臣は二三%に削っておるのです。かりそめにも厚生の最高責任者である厚生大臣が二二%でなくてはやれませんと言っておるのを、二三%に削ったのです。そんなものは進歩ではありません。それからあなたは国民健康保険の国庫負担を五%上げたとおっしゃいますが、そんなものはあたりまえのことなんです。医療費が上がったことによって、国民健康保険をやっておる団体あるいは被保険者は、負担が非常にふえておるのです。二割を二割五分に国庫負担をふやしたところで、それは医療費の値上がりで相殺されているのです。それでも進歩でしょうか、私は進歩じゃないと思う。それからまた、無拠出年金の制限を緩和した、こういうことです。そういうことは私は今総理に尋ねようとは思っていません。しかし、今回の予算の四百数十億の社会保障費の増額というのは、医療費の値上がりあるいは物価値上げによる生活保護費の保護の基準の値上げ、こういうことでありまして、何も進歩じゃないのです。それを間違えておられると思うのでありまして、どこに社会保障の前進の証拠があるのでありましょうか。何もないですよ。これを一つ答弁願いたい。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通り、生活保護費につきましては、もう多年ずっとやって参っておりますが、八%、一〇%上がったことはございません。最高が五%くらいで、三十二年くらいであったと思います。昨年はこういうことを改めまして一八%上げておるのであります。そして補正予算で五%上げましたから、今度は二二%とした。だから、昭和三十五年に比べますと、三十七年は三割六、七分、まあ一八%上がったところを五%上げ、そうして一三%でございますから、三割五分以上上がっております。物価の上がりはそうはございません。しかし、この上げ方で満足というわけではございません。しかも厚生大臣が最高責任者として出した数字を、これを削ったから後退だと言われるのは、私は、予算案編成の場合に適用にならぬと思います。私は、公平に見まして、十分ではございませんけれども、三十五年に比べて三十七年が三十数%上がっておるということは、相当進歩だと考えるのであります。しかし、これで満足するものではございません。  それから医療関係で五%というのは、大体前の臨時国会等の様子から見まして、この程度でがまんできるのじゃないか、こう私は考えておるのでございます。これも医療費の問題等から、政府の方も別に出しましたが、国民の方もやはりある程度負担してもらわなければなりません。五%では何にもならぬとおっしゃいますが、私は、国会の皆さんの意向は、大体五%くらいで御了承いただけるのじゃないかということを前の臨時国会で感知したのであります。しかもまたそのときに、五%を一〇%にせよという議論を私は聞きませんでした。五%くらいでいいんじゃないか、大がい済むのじゃないかと私は了承いたしておるのであります。一つも進歩していないということは、少し酷評じゃございますまいか。十分じゃないと言われれば、私は十分じゃないと思います。しかし、進歩していないというのだったら、私は国民に聞いてもらわなければならぬと思います。
  123. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、総理のそういう答弁では満足できないのであります。そこで厚生大臣にお尋ねしますが、あなたは生活保護の基準につきまして二二%を要求されております。それはどういう根拠から要求されておりますか。おそらく腰だめではなかろうと思うのですが、十分科学的根拠があって要求されたのだろうと思うのです。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  124. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えをいたします。御承知のように経済の成長政策をとり、所得の増加をはかっていきます現内閣といたしましては、それに伴いまして低所得階層のために特別の考え方をしなければならぬ。従って、生活保護を受けるような世帯に対しましては特に配慮をせなければならない、こういう考え方に立っておるわけでございます。従いまして、経済生活が伸びて参り、国民化活が向上するにつれまして、生活保護を受けるような世帯の生活内容も漸次向上さして参りたい、そういう考え方のもとに、特に昨年以来努力いたしておるところでございます。私としましては、今二二%を引き出されるのはいささか困るのでございます。これは予算の折衝の過程におきましていろいろな数字が出て参りますけれども、いろいろ話し合いの結果、政府全体といたしまして、来年度はまず一三%程度が妥当であろうという結論になりました問題でございますので、この一三%についていろいろ御審議を願い、御論議をお願い申し上げたいと思うのでございます。ただ、私の心持を申し上げますれば、なるべく早く生活内容の向上をはかって参りたい、こういうような心持から、幾らかでも一般世帯との所得の格差も縮めていきたい、こういう考え方のもとに二二%というような数字を持ち出しまして、いろいろ大蔵省と相談をいたしましたというようなことでございますので、その程度で一つ御了承願いたいと思います。
  125. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま厚生大臣からの答弁でありまするが、それはあなたは厚生大臣としてまことに不可解千万な御答弁だと思います。あなたはやはり厚生省の責任者として、現にはっきりと大蔵大臣との間に生活保護費の基準は二二%くらいにしてもらわないと、一般の勤労者の家庭と保護世帯の家庭との格差が開き過ぎます、物価はどんどん値上がりが続いております、こういう意味であなたはされたのでしょう。もっと上げなければいかぬ、おそらくそうだと思うのです。しかし、それは交渉の結果、大蔵大臣といろいろ交渉され、そして一三%に下げられたのでしょう、そうじゃないんですか。それじゃ大蔵大臣にお尋ねしますが、——まずそれじゃあなたからもう一ぺん答弁を願います。
  126. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護世帯の生活内容を向上さしていくということは、私どもきわめて人事なことと考えるわけでございますが、これは、しかし二二%でなければならぬというふうなものではないと思うのでございます。そういうことでございますので、私どもの心持といたしましては、できるときになるべく早くやりたいというふうな心持で相談を持ちかけたわけでございますけれども、全体の関係におきまして、今日の場合一三%程度で妥当じゃないか。と申しますのは、一つは、総理も申されましたけれども、昨年一八%引き上げさらにまた五%引き上げて、その七に、立ってまた二三%ということでございますので、実質は四割強、実は今年度と来年度を通じますと四割強の増額をはかるということにもたるわけでございます。二二%の場合よりはもちろん落ちますけれども、しかし現在よりはかなり進むということは御了承いただけるだろうと思うのでございます。この程度で一つ御了承願いたいと思います。
  127. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの厚生大臣の答弁は、まことに厚生大臣らしからぬ答弁だと私は思うのであります。だが、あなたが幾らそういうことをおっしゃっても、二〇%ぐらいにしないときは格差がひどいのだ、あなたはこういう論点に立たれたと思うのでございますが、それ以上私が追及しましてもあなたは答弁なさらぬでしょう。  大蔵大臣、一三%にきめた根拠でありますが、この生活保護法の保護の基準という問題は、日本の社会保障の基準をきめるもとなんです。これが日雇い労務者の貸金にも影響してくる。あるいは厚生年金、国民年金というものの給付にもこれが影響してくる。いわば日本の社会保障のもとでありますから、私はそういうことを重ねてお尋ねするわけでありますが、一三%の保護基準の引き上げをきめたという、あなたのその考え方の根拠でありますが、これを承りたいと思うわけです。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、一般勤労世帯と生活保護者の生活水準の格差は三十三年以来年々開いております。三十二年が四〇・五という数字になっておりますが、三十四年が三九、三十五年が三八と、ずっと開いておりますので、まず生活保護者の一般国民との格差をできるだけ縮めるということを目途とする限りは、三十三年以前の水準へとりあえず戻したいというのがわれわれの考えでございまして、今度一三%上げることによってこれが約四〇、三十三年以前にこの格差が戻るという姿が出てくることが一つ。それから、実は、この政府の長期経済政策とからんで、今後厚生行政もどういう長期計画を立てていくべきかというようないろいろな構想が政府の中にもできております。やはり、国力と関係する問題でございますので、これが年々無制限にふえていくわけにいかぬ。さっき総理が言われましたように、従来が非常に少なかったために格差が開いているのですから、三十六年から思い切ってこれを一八%上げまして、そうして三十七年度に一三%、三十六年の五%を加えますと一八・六%ということになりますので、二カ年分で四〇%近く上がるということになるのですが、ここらが大体適当ではないか、妥当なところではないかと私どもが考えた理由の一つは、今言ったような長期計画から見ますと、この格差解消のために昭和三十一年度から三十三年度平均を基準として、この生活保護者の保護基準は昭和四十五年度ぐらいまでに三階ぐらい上げるのが適当である、そしてまた国力もそれに耐えられるだろうというような一つの計算がございます。その通り経済が伸びていってくれれば、厚生省の望むような三倍という線へも行けると思います。かりにそれが行けるとしますと、この三十七年度に、三十五年度に対して四割程度上げておくと、今度は年率一定率で少しずつ上がっていく、一〇%以上にはなるかもしれません。計算では一〇%前後でいいという計算になりますが、あとは大体年率によって上がると、この厚生省の意図している目標あたりにつくという計算も出てきます。そういうことを考えまして、将来これをことしは何%、何%というようなむずかしい問題にならなくて、長期計画の線に沿って年率でいくというようなことが、行政としてはやはりいいことではないかと私は考えました。そうしますと、この二年間で四〇%程度上げておくと、そこらが非常にうまい工合に、将来の対策になるというふうにも考えまして、いろいろな方面からの考慮を払って、ここらが妥当ではないかということに落ちついた次第でございます。
  129. 堂森芳夫

    堂森委員 私は数字をちょっと調べまして厚生大臣にお尋ねしますが、厚生省の社会局保護課から出しておる三十六年十二月の生活保護速報というものがあります。このものを見ますと、東京都において、昭和三十六年の九月でありますが、生活保護世帯四人家族——三・九というのですから四人ですね。四人で実収入が一万六千六百五十一円になっておるのです。そして、八月の東京の一般勤労者世帯をとりますと、実収入——可処分所得ですが、実収入が四万五千二百九十一円になっております。一般の労働者世帯の純収入が四万五千二百九十一円です。ところが昨年、三十六年の九月の保護世帯が、四人家族で二万六千六打円の収入になっておる。いわば三分の一強のお金で保護世帯の家族は暮らしておる。これであなたがおっしゃるように長期計画でふやしていくなんということではどうするんですか。保護世帯の人たちは最低生活だってできませんよ。そうなればこそ厚生大臣が二二%を要求したのだろうと思うのです。私はそう考えざるを得ないのです。この厚生省が示しておる数字を見ましても、普通の勤労者世帯の三分の一しか保護世帯では金がないのです。四人家族で一万六千円ということは、一人四千円ですよ。これで暮らすというのですよ。それを一三%というのです。どうです。あなたのおっしゃるようなそんな長期計画なんて、命が続きませんよ。これは私は、いかに池田総理大臣が社会保障が前進したなどとおっしゃっても、足りぬと思う。これは、所得倍増計画は格差を大いに解消するのかもしれませんけれども、まずこういうひどい格差がある人たちに対するあたたかい手というものが池田内閣では全然やられていない——やられていないとは申しませんが、それはきわめて微温的なものである、こうとしか私には思えないのであります。これは今私が質問しておりましても、お前とは意見が違うのだということになればやむを得ないことであります。この生活保護法に対する態度について、私はきわめて遺憾であるということを表明しておきたいのであります。  そこで時間がだんだん経過いたしますから進んでいきたいのですが、池田総理お尋ねをいたします。これは私決して言葉じりをとらえて言っておるわけではないのですが、昨年の通常国会の劈頭に、わが党の代表質問で加藤勘十氏が質問をされました。中立政策についてあなたは幻想と考えておるかという質問があったと思うのです。そのときに、総理は、小国はいざ知らずという答弁をされまして、わが国は中立政策をとらぬという答弁をなされたことを記憶しておられると思うのです。その後いろいろな機会に、池田総理は何か自分で大国意識というものを強くお持ちのように、これは私の印象でありますが、そういうふうに思うのであります。もちろんあなたは日本は大国である、こういうふうに自負しておられると思うのであります。先般東南アジアを回ってこられてそういう気持がよけい強くなったのではないか、こういうふうに私は思うのでありますが、決して言葉じりをとらえるのではなしに、あなたは大国というのは一体どういう条件を持っておる国だと、ばく然とした条件でいいのですが思っておられるのか、あるいはわが国はどういう意味で大国である——あなたは小国はいざ知らず、こういう答弁をされて問題になったのですから、大国というのは一体どういう条件を持った国と思っておられるのか、私は、この社会保障の質問を展開していく上において聞いておきたいと思うのでありますから、答弁をお願いしたい、こう思います。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 大国、小国というのは、変な目で、優越感とかなんとかいうので見てはいかぬと思います。お互いに州関連しておる。これは一般には、領土、人口あるいは経済力とか文化の程度というふうなものをその材料にして、——これはきめるわけでございませんよ、そういうことが常識的な判断でございますまいか。いろいろな点からおのずからそこに出てくる。しかし、それは比較の問題でございます。
  131. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも総理大臣答弁は何だかはっきりしないのであります。いつものように胸を張って堂々と答弁をすればいいと思うのですが、まあ大体意味はわかってきましたから質問を続けたいと思います。  一九五二年であります。ILOで社会保障の最低基準に関する条約、こういうものが採択されました。これをILO百二号、こう言っております。すでにこの社会保障に関する最低基準の条約を批准した国が世界に二十カ国は数えると思うのであります。しかもこれに加盟をする条件についてはいろいろあるわけであります。この条件とか、そういうことについては、私は総理お尋ねするわけではないのです。これは厚生大臣その他に聞きますが、そういう社会保障の最低基準はこれくらいは持つべきだということが、世界の各国が集まっておるILOできめられておる。こういう条約は日本は批准すべきであると思いますが、現在まだ批准していないのです。こういう日本の国の状態に対して、池田総理は批准すべきだとお考えでございますか、どうでしょうか。内容については、私また後ほど他の閣僚に聞きます。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は、さきの国会でも予算委員会で御質問を受けたかと思います、参議院でございましたか、多分衆議院だったと思います。まあILOに入りまして、百カ国くらい入っておりますか、その百カ国のうちで批准しているのがわずかに十二か二十か、ちょっとはっきりしません。われわれとしては、そういう理想的なりっぱな案には入っていきたいという考えは持っておるのでありますが、しかし日本の社会保障制度というのは、御承知通り、側々の問題から随時発展してきたのであります。その間の均衡もとれていないものがございますが、これはわが国の国情の自然発生的のものでございます。だから、その最低のあれよりもわが国の方が上回っているのもございます。非常に低いのもございます。こういう点はやはりILOの最低基準の条約を見ながら、それにだんだん近づけていくことを理想として進むべきじゃございますまいか。実情が合わないし、またそれだけの経済力がないというときに、これに入ってしまって、財政その他について非常なひずみを起こすということは避けなければならぬ。だから、私は、日本の社会保障をあの線にだんだん近づけるようにしていって、そうして将来において批准ということも考えられるのじゃないかと思います。
  133. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、今池田総理答弁を聞いて、全く驚かざるを得ないのです。それは内容について今総理に、ああこうという答弁をしろということは無理であります。そこで、厚生大臣に伺いますが、このILOの条約、最低基準の条約を、日本は今のままの法律の姿で批准ができると考えておられますか。世の中には批准ができるという議論もあるわけであります。またILOの本部においても、そういう意見を吐いておる人もあるし、また加盟国の代表の中にはそういう意見を言っている人もあるのです。しかし厚生白書を見ますると、つい最近発行になった厚生白書には、政府見解としては批准できない、こういうふうに書いております。しかし、日本学者の中でも、批准はやろうと思えばできる、こう書いておるのでありますが、厚生省の代表的なといいますか、統一的な見解はどういうふうでありますか、まず答弁を願いたいと思います。
  134. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この条約を批准するのにつきましては、堂森さんも御承知だと存じますが、一つの条件があるわけでございます。それは九つばかりの部門があるわけでありますが、そのうちで三つの部門の要件を満たす必要があるということ、そのまた三つの部門の中には、失業給付、老令給付、業務災害給付、廃疾給付または遺族給付、そのうちの少なくとも一つを包含しなければならない、こういう条件があるようでございます。私ども従来の考え方といたしましては、日本の現在の状態から申しますと、この九つの種類の部門のうちで要件を満たしておると考えますのは、疾病給付と失業給付、この疾病給付というのは、傷病手当金のことでありますが、この二つは要件を満たしておるかと思いますが、そのほかのものは、この要件と合致しない。ただ、念のために申し上げますが、日本のやっておりますことは、この基準よりもよほど上回っておるというものも、中にはあるわけであります。全体として考えますと、要件に合致しないというようなことで、現行法のままでは批准ができない、一応さような考え方をとっておるわけでございます。今お話のように、その点についてはいろいろまた御意見のある向きもあるようであります。それらはなお検討したいと存じますが、従来、厚生省としましては、まだ要件が満ちていないということで批准をやられていないわけでございます。
  135. 堂森芳夫

    堂森委員 いまだに社会保障のそうした最低基準の条約にすら加盟できない、こういうことはいかに社会保障が貧弱であるかということを、雄弁に物語っておると思うのでありますが、そこで、あなたは、厚生大臣として、やはり一日も早くこれに加盟するというような態度で現在臨んでおられるのか、まあこうして情勢を見ようという態度でありますか、これをまず承りたい、こう思います。
  136. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 心持といたしましては、日本もこの条約に加盟するような段階まで持って参りたいということは考えておりますけれども日本の社会保障制度は、先ほど総理も申されましたように、いろいろな沿革を持ってでき上がっておりますので、ある点においてはこの最低基準よりは相当上回っておるというふうなのもありますし、しかしその法律全体からいいますると、また要件に満たないというふうなものもありまして、いろいろでこぼこがあるわけでございます。従って、先の問題としましては、もちろん批准を否認するとか批准を好まないとかいうわけじゃございませんけれども日本日本としてのベースをもって、社会保障制度を発展させなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  137. 堂森芳夫

    堂森委員 特にわが国の社会保障において世界の水準から非常におくれておる問題の一つは、やはり年金制度の給付がきわめて貧弱である、こういうことであります。たとえば厚生年金制度を一つ見ましょう。二十年間かけても、毎月もらう金が六十才において三千円、四千円です。こういうべらぼうな年金制度を持っておる国はないのです。これは世界のいろいろな国を調べたってないのです。こういうものを放置しておいて、社会保障を持っておる、前進しておると池田総理が幾ら胸を張っておっしゃっても、この厚生年金制度というもの一つ取り上げましても、これはもう日本の社会保障制度の大きな欠陥です。これを是正するという態度を第一の目標として、そして最低基準を批准する、こういう態度でなければならぬと思うのでありますが、今回の三十七年度の予算を見ますると、そういう新しい日本の社会保障制度自体が持っておる多くの矛盾あるいは社会保障制度自体の中にある多くの格差というものが、放置されておるわけであります。そうして五分くらいの国庫負担をふやしたりあるいは保護基準を一三%にして、十カ年計画でやっていくんだ、そういうことでは社会保障に重点を置いておるなんということは、私は言えないと思うのでありまして、厚生大臣は、厚生年金制度というものが、まず日本の年金制度の根幹でありますから、この制度の中で特に問題のある給付の内容の向上というものについて、どのような構想を持っておられるか承っておきたいと思います。
  138. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話しの通りに、ILOの示しております最低基準のうちで、日本といたしまして一番おくれておると考えられますのは、年金部門だろうと思います。これは比較的おそく発展したという関係だと思いますけれども、これがおくれておることは事実であります。従いまして、この年金制度の発展ということが、今後の大きな課題になってくるわけでございますが、特に厚生年金につきましては、お話しの通りに、現在の給付ではあまりにも実情に合わないというふうな点もございますので、厚生省としましては、なるべく早い機会にこの年金額の引き上げを行ないたい。これもなかなか一挙に国際的水準まで達するのは困難かと思いますけれども、ともかく引き上げの方向に向かって進んで参りたいというので、せっかく検討をいたしておるところであります。なかなか保険数理とか財政の関係、負担の関係等で困難な問題もございますけれども十分検討いたしまして、なるべく早く成案を得たいものと考えております。
  139. 堂森芳夫

    堂森委員 もう年金問題につきましてこれ以上聞きましても、政府には今具体案がないということは明らかでありますから、追及せずにおきまするが、そこで、社会保障制度というものは、二つの大きな柱があると思うのであります。それは御承知のように、医療保障である健康保険制度、それから所得保障としての年金制度、それから公的扶助としての日本では生活保護、こういうものの三つがそろって、社会保障というものがりっぱなものになる、こういうことだろうと思います。ところが、わが国のこの社会保障制度というものは、なるほど形はそろって参りました。昨年の三月一ぱいで皆保険が実現されました。そういうふうに皆保険も実現した、こういうことでありますが、たとえば国民健康保険を一つ見てみたいと思います。ちょうど自治大臣いらっしゃいますが、地方の自治体に国民健康保険制度が非常な財政的な圧迫を来たしておる、そういう大きな原因になっておる、こういうことは明らかな事実でありますが、具体的に全国の国保をやっておる団体の中で、どれくらいが赤字で、そしてどれくらいが一般会計から繰り入れてようやく黒字にさしておるとか、そういう事情がおそらく自治省にはあるはずでありますが、御答弁を願いたい、こう思います。
  140. 安井謙

    ○安井国務大臣 お答えいたしますが、全国でただいま国保に加盟しております団体は大体三千四百有余であります。そのうちの約三八%程度、千三百団体くらいが赤字団体と称されております。
  141. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、そのような約四〇%が赤字になっておる。しかし、今大臣は御答弁されませんでしたが、この黒字の中にも、一般会計から繰り入れまして、そしてようやく赤字を防いでおる。これは当然市町村の財政を圧迫しておるのでありまして、そういう事情も相当な数にのぼっておるのであります。そういうふうに地方の自治体を大きく圧迫しておる、こういう状態であります。しかも、先刻総理大臣は、二割の国庫負担を二割五分にしたから、それは非常な進歩だとおっしゃいますが、そこで、厚生大臣に伺いますが、一体、昨年の医療費の値上げによってどれくらいの保険財政に影響を——国民健康保険においてどれくらいの財政的な負担をかけておって、今度の五分の引き上げによって、それは非常に国保が楽になるという見通しであるのか、そういう点について伺っておきたい、こう思います。
  142. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 まことに申しわけがございませんが、全体の数字は今ちょうど持ち合わせておりませんので、この点はお許し願いたいと思います。あとで政府委員から申し上げます。  ただ、今回の五分の引き上げによりまして、前の通りの二割でありましたならば、相当保険税が増額せられなければならないというふうに考えておりましたが、ただいま私どもの計算では、この五分の引き上げによりまして、保険税を引き上げなくて済む、あるいは多少は減るのではなかろうかというような見通しをつけておるわけでございます。
  143. 高田浩運

    高田政府委員 医療費の改定によりまして、増加する保険料が約五十六億でございます。
  144. 堂森芳夫

    堂森委員 私が調べたのでは、昨年の七月一日と十二月一日の二回の医療費の改定で、五十七、八億、六十億くらいの支出増に国保ではなると思うのであります。来年度の三十七年度の予算で五分の国庫負担がふえて、おそらく七十七、八億くらいの増になると思いますから、なるほど幾らかの余裕は出るでありましょう。しかしながら、現在の国保の運営については、さっきも申しましたように、一般会計から繰り入れを相当やっておる団体がたくさんあるわけであります。私は、別に、これによって非常に国保の運営が楽になるというふうには、値上がりというものを見ますから、楽になるというふうには考えません。まあ、総理は、それは非常な進歩だと、こうおっしゃいましたけれども、私はそう思わないわけであります。そこで、医療給付の健康保険制度の中に、国保というものは御承知のような状態である。しかも、地域によっては、自治団体に大きな財政的圧迫を及ぼしておる。しかも、給付内容は、社会保険というものと見たならば、健康保険制度と見たならば、非常な給付の差があることは申すまでもないのであります。また、社会保険、健康保険制度だけを見ましても、健保連の健康保険制度、政府管掌ではまた大きな差があることは、これは私が申し上げるまでもないのであります。また、日雇い健康保険、これは非常に条件の悪い健康保険制度であるというふうに、多くの矛盾、アンバランスというものが、健康保険制度の中にあるわけであります。これは世界的に見ても、やはりある意味で珍らしいようなアンバランスを持った制度であります。先般、たしか床次議員でありましたか、質問をされておりました。総理は、社会保障制度審議会に今答申を求めているから、それが出次第やるのだ、そういうアンバランスを排除する方向に持っていくのだ、こういう答弁でありましたが、いつごろその答申が出て、そうして政府としては、それをいつごろからそういう方向に着手していくのか、私は承っておきたい、こう思うわけであります。
  145. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の医療保険は、お話の通りの状況でございます。どうやらようやく国民皆保険の形態ができたというところでございまして、これを構成しております各種保険の間に非常な相違がある、不均衡があるということは、御指摘の通りであります。漸次これを改善して参りたいと思うのでございますが、それにつきまして、各種保険間の総合調整を必要とするではないかというので、社会保障制度審議会に、この問題についての御検討をわずらわしておるところであります。社会保障制度審議会におきましても、年来この問題について検討を重ねておられます。われわれといたしましては、なるべく早くその結論をいただきたいというので、お願いをしておるようなわけでございますが、はたしていつ出ますか。私どもは三月末くらいまでにはいただきたい、こういう心持でやっておりますけれども、問題がなかなか複雑であり、むずかしい問題でございますので、われわれの期待するがごとき速度ではたして結論をいただけるかどうか、この点はまだ疑問でございます。いずれにしましても、総合調整の案を練っていただいて、それに従って考えて参りたいと思うのでございます。なおまた、一つ考えなければなりませんことは、各種の保険の間が非常に違っておりますが、それに対しましては、すぐに統合するとか、あるいは調整するとかと申しましても、なかなか困難だと思います。劣っているものを、とにかく底を引き上げていって、だんだんならしていく、そうしてその間に調整をはかっていくというのが順当ではないかと思うのであります。先ほど、こんなものではしょうがないというふうな意味の御指摘もございましたが、今回国民健康保険につきまして、政府が従来の二割の国庫負担を三割五分に引き上げたということも、まず国民健康保険の財政的当盤を整えてかかろうじゃないかというような考え方から出発いたしましたようなわけでございますが、なかなか、財政その他の関係あるいは被保険者の負担能力の関係等で、むずかしい問題もございますけれども、鋭意努力いたしまして、劣っているものを引き上げることにまず努め、そうして各種保険間の総合調整をスムーズに行ないたい、かような考え方をいたしておるわけでございます。
  146. 堂森芳夫

    堂森委員 日本の社会保障制度の中で、世界的な一応の常識といいますか、基準と申しますか、給付の内容はともかくとして、行なわれておる制度で、日本でまだ行なわれていない制度があると思うのです。それは家族手当制度であります。これは、すでに世界各国で四十数カ国がこれを実施しておると思うのでございます。数字はとにかく、少なくとも三、四十の国がやっておると思います。わが国でも早く家族手当制度を実施すべきである、こういう声がすでに高く起こっておったのであります。そこで、今回の予算を見ておりますと、何か調査費で、今秋から児童手当制度の準備としての調査にかかる、こういうことがいわれておりますが、実際において、いつから家族手当制度としての児童手当制度が実施される見込みをお持ちでありますか。あるいはまた、現在厚生省の考えておる構想、調査しなければわからぬということではなしに、ばく然たる構想でもよろしゅうございますが、答弁願えるならばけっこうと思うわけであります。
  147. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 家族手当とか、あるいは児童手当とかいうふうな言葉で呼ばれておる問題でございます。このまとまった児童手当て、家族手当の制度は、おっしゃる通り、まだ日本では確立せられておらない部門でございます。従いまして、これにつきましては、国会方面におきましても、衆参両院の社会労働委員会等でこれが制定を促進せられたこともございますし、また、関係の諮問機関等からもさような意見も出ておるわけでございますので、厚生省といたしましては、ただいま中央児童福祉審議会におきまして、児童手当部会というものを作りまして、そこでいろいろ検討をいたしておるところであります。世界の国々のこの手当のやり方につきましても、国によっていろいろ異なっておる点もあるようでございます。また、この制度の趣旨等につきましても、国によっていろいろ異なった点があるように思うのであります。ただいま児童手当部会におきましては、この問題の基本からいろいろ検討をしてもらっておるわけでございます。わが国としてやるといたしますれば、いかなる趣旨のものにするか、あるいはまたいかなる範囲のものにするかというふうな点も、大きな問題点でございます。関連する事項がたくさんございますので、この調査も相当に手間取るのではないかと思います。  同時に、調査費のお話がございましたが、お話の通りに、明年度から児童の養育費に関する調査というものをやりまして、今後の審議の参考に資したいと考えておる次第でございます。そういうわけでございますので、いつからどうというところまでまだ確たる計画は持っておりませんけれども、私どもは、いわゆる経済成長十カ年計画、この長期計画が終わるまでには何とかこれが実現をはかって参りたいという心持ちを持って、今いろいろ検討を進めておるところでございます。
  148. 堂森芳夫

    堂森委員 一日も早く家族手当制度としての児童手当の制度の実現を望むものでありますが、私は、もう一つ、社会保障の世界的な傾向として現われてきておる住宅問題というものを、社会保障の一環として取り上げなければならぬ時期がとうからきておると思うのであります。国際条約がどうとか申すことはともかくとして、昨年でありますか、ILOで、やはり労働者の住宅に関する勧告というようなものも採択されて、労働者住宅というものについてのいろいろな傾向が強く世界的にも現われてきておるのでありますが、現在の住宅政策というものは、私は多くの問題があると思うのであります。特に社会保障として現われてきておるのは、これは世界でも類の少ない国でありますが、ニュージーランドあたりでは、家族手当制度の金を前渡金としてまるまる払って、幾つくらいまで生きるという計算で払って、それで住宅を建てるというような、これはまるで極楽のような制度でありますが、社会保障の一環として取り上げなければならぬ問題だと思うのであります。  そこで、現在の住宅政策について、私は二、三伺いたいと思います。  労働大臣いらっしゃいますが、日本の国では、古くから社宅というものが強く推進されておる。また、建設大臣にもお尋ねしたいのですが、建設省では社宅の建設の推進ということに非常な力を入れておられると思うのでありますが、この労務者社宅というものは、私が考えますのに、これは従来占い労務管理という観念が強く現われて、そういうものの一つの労務管理の政策として行なわれてきた、こういう傾向についても私は問題があると思います。しかも、世界的な趨勢から見ましても、企業が住宅を社宅として持つというようなことはもう時代おくれで、そんなことはやりません。しかし、どういうものか、日本ではそういう傾向が強い。それは建設省の意見を聞けば、住宅が足らぬのだからないよりはいいじゃないか、かような意見もあるかもしれませんが、やはり私は、社宅というような方向は、これは清算すべき方向に向かうべきものと思います。労働大臣、建設大臣の御答弁を願いたいと思います。
  149. 福永健司

    ○福永国務大臣 お説の点は、方向といたしまして、私も同感でございます。労務管理の近代化という観点よりいたしまして、そういう方向へいくことが望ましいと私は考えております。ただ、過去の日本の実情といたしますると、住宅の絶対数が非常に足りないというようなことからいたしまして、その種類はどうであれ、ないよりはある方がよろしい、こういうようなことから、社宅等も相当利用されておったわけであります。従って、政府施策としての住宅政策がもっともっと強力に推進されて後に、現実問題といたしましては、今おっしゃるような社宅の廃止というような方向へもいくということであろうと思います。今直ちに廃止するということになりますと、住宅全体への影響が非常に大きいので、かえって労働者のためにも思わしからぬ結果にもなろうか、こういうように思うわけであります。例外的には、社宅等も、地理的事情とかあるいは作業環境の関係で、やはりある程度社宅を持っていないと、労務管理がうまくいかないというような特殊のものもあろうかと思います。ただし考え方の方向といたしましては、先ほど申しましたように、御説のような方向へ持っていくのがしかるべきであろう、こう私は考えております。
  150. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 わが国でやっておりますいわゆる産労住宅は、今御指摘の御趣旨とは矛盾しておる形になっております。ILOの百十五号勧告にも、御意見のような点がうたわれておるわけでありますが、この勧告の中でも、原則的に国情に応じて実施をするようにということでございます。日本のまだ住宅窮迫の状況から見ますと、やはり産労住宅のような制度がありまして、国からもある程度の資金を融通する、反面、企業者も、住宅難の折柄、従業員に対する住宅の供給の一半の責任を負う、こういう方法で窮迫の状態に対処していく、応急処置としてはこれもやむを得ない方法であると思います。ただ、あの勧告の中にも、社宅の場合に、労働組合に加盟したりあるいは結成したりすることを禁止するようなことがあってはいかぬ、この点は日本でも自由になっておると思うのであります。従いまして、筋としては、確かにお話のことは了解できるのでありますが、日本の現状から見て、まだ、産労住宅というものが、産業労働者のためには確かに必要な現状にあると思いますので、ここ当分はこれもあわせて行ないまして、できるだけ住宅の充足をはかっていきたい、これが適当ではないだろうかと思っております。
  151. 堂森芳夫

    堂森委員 住宅金融公庫を通ずる産労住宅、こういうものも、一つの方向として建設省は推進しておられるわけでありますが、大阪の住宅金融公庫の営業所に、産労住宅の建設を申し込んだのが何件でありますか、九十六事業所が大体昨年申し込んでおるのだそうであります。ところが、その中で、資金が足りなくなった、あるいは土地が足りない——主として資金の獲得難でございますが、九十六専業所が決定しておりながら、そのうちの三十四カ所ぐらいがもうやめてきた、辞退してきた。とても金がなくて建てられぬから、産労住宅はやめます、こういうような事態が起こってきておることを、先般私新聞で見たのであります。この間も、東京の方はどうだろうと思って尋ねてみたのですが、東京の方はまだそういうことがわかりませんといって、資料をとることができなかったわけでありますが、こういう事情が全国的に起こっておるのではないかと思います。わかっておるならば答弁を願いたい、こう思うわけであります。
  152. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 この住宅金融公庫の融資によって建設せられます産労住宅は、非常に各方面とも要望が盛んでございまして、なかなか要望にこたえ切れない状態でございますが、ただ、おそらく、最近国際収支改善対策の一環としまして、企業体の方々としては、計画をしましたものも取りやめざるを得ない、取りやめた方が企業経営上安全であるというような角度から、御指摘のようなものがぼつぼつあるように承知いたしておりますが、まだ数字等、実ははっきりつかんでおりません。
  153. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、日本の戦後の住宅、戦後建てられた住宅数は約七百万戸ぐらいでありますか、昨年末まで七百五十万か六十万戸くらいだと思うのでありますが、その中で、公的な資金によって建てられた住宅が非常に少ないわけです。しかもまた、借家というものが戦後非常な勢いで減っております。しかも、公的な資金によって建てた住宅の建設の数と、自己の資金によって建てた数とを比較すると、問題にならない。公的のものが少ないわけです。西欧諸国と比較すると、これは逆であります。西欧諸国では、住宅は公的資金をもってこれを供給していく、国の責任において供給していく、こういう方向であると思うのであります。私、全国の足りない住宅を一ぺんに公的資金をもってやれ、そういう乱暴な意見を言っておるわけではないのでありますが、今日、住宅政策あるいは住宅公団、金融公庫というふうないろいろな制度で建てておるわけでありますが、公的な資金によって住宅をふやしていくという方向に転換しなければならぬ時期が来ておると思うのでありますが、建設大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  154. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 できるだけ御指摘のような方向に進みたいのはやまやまでございます。ただ、これも国の政治施策の一つとして、一般政策との調和を保ちながら進めざるを得ませんので、明年度の数字の比較を見ますと、政府施策住宅関係が二十一万六千戸になりますか、これに対して民間自力の建設は、昨年、一昨年等の推移から推算をいたしまして、四十三万戸と押えておるわけでございます。できるだけこの数が接近し、あるいは政府施策住宅が民間自力建設の数を越えていくということが望ましいことでございますが、現状としましては、われわれとしては、年々漸増の姿をとりまして、逐次強化をして参りたい、かように考えております。
  155. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、建設大臣の答弁ではきわめて不満足でありますけれども、もうすでに私の時間は終わるわけであります。最後に、答弁は要りませんが、私は池田総理大臣に申し上げたいと思います。  先刻も、大国とはどういう国のことを言うのか、どういう条件を持った国のことを言うのか、こういうことをわざわざお尋ねした理由は、社会保障という、この国民の生活を守る——ある意味では消費面でありましょう、ある意味ではたての一面でありましょう、そういう制度というものが、世界的な水準から見るならば、きわめておくれておるものがある。しかも、予算を見ましょう。こんなに大膨張をした大型予算であるにもかかわらず、社会保障費の増額というものは、予算の全体の伸びから見ると、半分ぐらいしか伸びていない。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 また、文教、科学費に至ってもそうであります。ところが、広義における軍事費といいますか、防衛費といいますか、そういうものはふえている。しかも、文教あるいは社会保障費よりは防衛関係費の方が多い、こういうようなことがある。あるいはまた一昨日問題になりましたタイの特別円の問題、これは惜しげもなくお払いになる。こういう態度を続けながら、社会保障がきわめて貧弱である。こういうことを私はいろいろ申し上げたわけであります。やはり池田内閣の政策は、独占資本に奉仕する政策をやられる、こういう本質を、私は社会保障の面から見まして、その真実の姿を遺憾なく物語っておるのが、社会保障政策に現われた池田内閣の姿である、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  156. 山村新治郎

    山村委員長 次会は、明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会