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池田国務大臣 孟子の言われた言葉を全面的にとって、国滅ぶるとまでは私は申しませんけれもど、国栄えずということは言えるのではないかと思います。せっかくのあれでありますから申し上げますが、
昭和二十七年にメキシコで、日本、ドイツの参加した国際通貨基金の
会議がございました。私は、エアハルト
経済相、シェーファー大蔵
大臣と話をして、戦後のドイツと日本のいろいろな点を比べ合わしたことがあります。
昭和二十五年、二十六年には日本は相当減税いたしました、そしていろいろなものの国内的な自由化を、米以外はほとんどやってしまった。その話をしたら、エアハルト
経済相あるいはシェーファー大蔵
大臣は、それは、日本には東シナ海、朝鮮、日本海があるから、
池田君、君は減税ができたり統制撤廃もできた、ドイツは道一重で共産主義と戦っている、これがドイツが君の方に負けたゆえんだ、こう言う。これはあなたの御意見と同じでしょう。その翌年私はドイツに参りました。そして、ドイツの今申し上げたシェーファー大蔵
大臣、予算局長と会いました。向こうの予算を見ますと、当時は二百六十五億マルクで、防衛費を九十億マルク使っておる。三分の一近くであります。今はもう四百億マルクくらいになっておりまして、その三分の一にはなっておりませんが、相当の軍事費であります。これは大へんではないか、しかし、アメリカ、イギリス、フランスが守ってくれなかったら、これの倍くらい要ります。だから、われわれまだ占領に甘んじているのだ、こういうことを言っております。こういうのは、やはりあなたと同じような
考え方であります。東南アジア各国を回ってみましても、パキスタンにおきましても、あるいはインドにおきましても、中共との
関係あるいはカシミールとの
関係、そしてタイにおきましても、共産主義のなにで非常に為政者は真剣に
考えております。ビルマはそれでもその
程度ではございません。これにて私は、ビルマをどうこう言うわけではございませんが、立ちおくれております。これは私はビルマの首相にも、あるいは軍当局者にも
お話ししております。そういう、どこに国を立てる焦点を置くかというときに、
政治家はえてして外国との対抗ということをよく使っております。そういう国は相当あると思います。しかし日本では、今の
お話しのように敵にする国はございません。まあ幸いにして、エアハルトの言ったように朝鮮あるいは東支那海、日本海があるから切実に
考えないのかもわかりません。しかし私は、これを切実に
考えるということで今引っぱっていくような格好をすると、日本人は過去の経験で反発いたしますから、自分の気持から上がってくるようなことをやっていかなければならない。それで私は、いわゆる
経済倍増
政策をやり、希望を持たし、そうしてその間において自分を信じ、自分の力を伸ばすように盛り上がる気持をやっていくのが、今の日本としてはそうじゃないか、こう
考えております。私は今もうちょっと外国のある雑誌を読んだのですが、やはり日本は非常によくなったけれども、
政治家が少ない、それで、日本の力を持っているときにりっぱな
政治家が出たならば、世界における地位がもっとよくなるであろう、われわれはそれを期待する、こういう意見を読んだのですが、しかし、日本の実情を申しますると、
政治家があまりに世界を
考えたり何かする時間が少な過ぎる、国内にあまり引っぱられ過ぎている。どこの
政治家を見ましても、国会というものはもちろん大切でありますが、もう国会開会中は、
総理が何もほかのことはできぬというような国はあまりございません。ということで、私は言いわけではございませんが、そういう点をずっと
考えて、国会の正常化をして、国民が盛り上がるような気持を私は育成するように
努力いたしておるのであります。外国人が、りっぱな
政治家がない、能力のある
政治家がいないと言われることは、まあこれはしばらくかぶとを脱ぐと申しますか、もう少し勉強し、
考えていかなければならぬと思いますが、とにかく
政治家としては、
お話のように国を立てる意味において、外国との
関係を主としていっておるのが通例でございます。しかし日本の今の場合はそこまではいけません。反発があってはいかぬ。だから私は、とにかく国を思うことは、九千四百万国民が
一つになる。思い方にいろいろな違いがありましょうけれども、思い方の違いがあるだけで、国を思うという気持は
一つになってもらわなければいかぬ、それが私は組閣以来念願で、それに向かって
努力をしておるのであります。