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1962-01-30 第40回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年一月三十日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 淡谷 悠藏君    理事 川俣 清音君 理事 小松  幹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       池田正之輔君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    正示啓次郎君       周東 英雄君    床次 徳二君       中曽根康弘君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤井 勝志君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       山本 猛夫君    井手 以誠君       加藤 清二君    木原津與志君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    野原  覺君       長谷川 保君    山花 秀雄君       横路 節雄君    山口丈太郎君       井堀 繁男君    春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚郎右         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 一月三十日  委員田中伊三次君、倉石忠雄君、松井政吉君、  西村榮一君及び佐々木良作辞任につき、その  補欠として井村重雄君、正示啓次郎君、山花秀  雄君、春日一幸君及び井堀繁男君が議長の指名  で委員に選任された。 同日  委員春日一幸君及び井堀繁男辞任につき、そ  の補欠として西村榮一君及び佐々木良作君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長代理 これより会議を開きます。  山村委員長は都合により本日出席がおくれますので、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、予算に関しまして若干の質問をいたしたいと思うのでありますが、まず総理大臣にお伺いしたいと思うのです。  私は、総理施政方針の冒頭におきまして、真の繁栄は、豊かな経済基礎とし、これを貫くに高い精神、美しい感情、すぐれた能力をもって実現されるといたしまして、真の福祉はわれわれの営々として努力して建設すべきことを述べ、さらに文教の振興、社会保障の前進、民主的秩序確立政治行政刷新等を掲げられたことにつきましては、心から賛成を表するものであります。しかし、このことは総理の単に国民に対するところの精神訓話であってはいけないのでありまして、総理が本年度予算を通じまして、国民とともにこの経済生活を実践し、さらに高い精神生活を伴いまして、そうしてこれをやり遂げようとするところに、かように解してこそほんとうにその重要なる意義を私は認めるものであります。昨年来所得倍増等の目標で、経済の伸展を期せんとするにあたりまして、あまりにも経済あるいは物質というものが強調されたかのような印象を与えておるのでありますが、今や、ようやく国民が冷静となりまして、経済とともに精神生活及び道徳、倫理というものがこれに伴わなければならぬということが理解されてきたのでありまして、この点はまことに国家社会のために御同慶にたえないと思うのであります。私はこの機会におきまして、総理が単なる口頭禅あるいはスローガンとしてこれを取り扱われるのではなくして、真に国民とともに一致協力、真剣にその実現を期すべく、あらゆる施策を講ずる、その当盤として、ただいまの決意を表明されたものと考えるのでありまするが、この際総理の御信念を伺いたいと思う次第であります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、組閣以来政治の姿を正さなければいかぬということで、まず自分から自粛自戒いたしておるのであります。しこうして、今回の施政演説に申し述べました通りでございます。ただ、この私の気持が、口頭禅とかあるいは訓話だと批評されることは、私の不徳のいたすところかと思いますが、しかし、私の心から出た願いであり、悲願であるのであります。私は、どうぞ国民各位が、私のほんとう悲願であることを、精神訓話でなしに悲願である、ともにやっていこうという気持になって下さることを心から念願し、そうして自分の今までの不徳をもっともっとよくいたしたい、こういう考えで進んでいきたいと思っております。
  5. 床次徳二

    床次委員 以下、文教その他に関しまして、総理の御所見を伺いたいと思います。  ただいまの御精神の前提のもとにものを考えていきたいと思うのでありますが、文教刷新ということについて、特に青少年育成を重視せられておることは、まことにこれは当然であります。従って、今回の予算におきましても、教育機会均等施設の充実、環境整備等努力の跡を認めるものであります。総理は、青少年こそ祖国の生命力の源泉として、民族将来のために遠大なる使命感とゆかしい学問、教養を求め、教職員には、その職分にふさわしい品格と学識の研摩を期待しておられるのでありまするが、予算におけるところの施設環境整備もさることながら、現下わが国教育制度並びに教育公務員に関する制度というものが、はたして総理が庶幾せられるような状態にあるのか、また、それを達するためにふさわしいものであるかということについて、なお考えさせられるのであります。ことに現在日教組の指導するところの教職員組合には、国民はいまだなお全面的には信頼することを得ざるものが残っておるのでありまして、政府はこの際いかようなる考え方を持っておられるのでありますか。積極的にこの教育問題に関して刷新を加えるお考えがないかを承りたいのであります。  なお、今回問題となっておりまするが、高校生徒急増対策は、現下青少年の問題の中心であるわけであります。政府もいろいろとこれに対して努力をしておられるのでありまするが、現在の地方団体が真に責任を持ってその地元青少年のために解決を尽くすことのできるだけの国からの援助がやはり必要ではないかと思うのであります。元来高校教育というものは府県事務とせられておるのでありますが、近ごろは高校の卒業生というものはほとんど都市に集中せられるのであります。地元には残っておる者がない。地方府県は、特に後進地方におきましては、青少年育成の義務だけが残っておるのであります。作り上げましたところの青少年は他へ吸収せられるという状態なのでありまして、かかる状態にふさわしいところの国からの援助というものがやはり望ましいのではないか。地方団体ほんとう高校生急増対策のためになし得るだけの環境について一つ考慮せられたいのであります。これは単に高校生急増に限るのではないのであります。青少年全般にも通ずることであることを考えまして、総理の御所見を伺いたいと思う次第であります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 教育刷新向上につきましては、いろいろ問題があると思います。第一は教育施設改善でございます。このことにつきましても、十分とは申しませんが、逐次解決していっておるのであります。また次の問題は、教育内容改善でございます。教育内容につきましても、終戦直後とはよほど違って参りまして、道徳観念高揚とか、あるいは歴史、地理の学科をふやすとか、内容につきましても改善を加えつつあるのであります。そうしてまた教育機会の均霑と申しまするか、私は学校教育のみならず、社会教育方面にも意を用いてきておるつもりでございます。まだ十分ではございませんが、そういう三つの点に向かって今後できるだけの力を入れていきたいと考えております。  御質問の第二の高等学校の問題でございますが、高等工業専門学校につきましては、御承知通り今回来年度から十二校を増設することにいたしております。一般高等学校につきましても、終戦直後に起きました非常な人口の増加によって、三十七年度にも相当ふえます。三十八、三十九年度には非常な激増でございます。これが対策といたしまして、一応の起債その他でまかなうことにいたしております。何分にも、三十七年度に新規発生する分につきましての措置は大体できるかと思いますが、三十八、三十九年度急増の分につきましては、今の起債だけでは足りないのではないかという気がいたしておるのであります。今後の様子を見まして、具体的に三十八、三十九年度対策を講じなければならぬと考えております。しかし御承知通り、今年度の第二次補正によりまする地方交付税も相当ふえております。百三、四十億ございます。それで、私の見るところでは、昭和三十六年度自然増収も相当ありました。とれによる交付税も相当入ってくる。こういうことを考えまするならば、起債その他の施策によりまして、私は遺憾なきを期していきたいと考えておるのであります。
  7. 床次徳二

    床次委員 ただいま総理の御答弁もありましたが、この問題は今後の地方における負担において相当大きな影響があるのでありまして、一つ実情に応じました適切なる措置を考慮せられんことを特にこの際に要望しておくものであります。  次に、社会保障の問題について申し上げたいのですが、これまた総理が相当努力せられておるのでありまして、今回の予算におきましては相当の進歩を見ることができるのでありますが、この際考えられますことは、本年度におきまして特に大幅の国税、地方税等減税が行なわれて、国民負担均衡に努められたことは多とするのでありまするが、今回この負担均衡上特にその不公平が依然として残されたのではないかと考えられますものとしましては、社会保険中の国民健康保険税減税の問題でありまして、この減税にまで実は手が届かなかったことにつきましては、まことに私は残念に考えるのであります。今回の国保予算につきましては、療養の給付につきまして、国庫の負担が二割から二割五分へ増額せられたことにつきましては喜ぶべきことでありまするが、この増額は、結局昨年実施せられましたところの医療内容向上に伴うところの医療費増加を抑制することには役立ったのでありまするが、従来からありまするところの国民健康保険と他の一般社会保険との保険料の不均衡、これは大ざっぱに見まして二倍近く差があるのではないかと思うのでありまするが、そこまでの是正には及ばなかったのであります。将来の問題として、これはぜひ解決いたしたいと思うのでありまするが、できるだけすみやかにこの国保保険税と他の社会保障保険料均衡をはかるということが第一でありまして、この減税をはかりつつ、なお将来におきましては、各種社会保険統一連帯という問題も残されておるわけであります。なお、これが統一運営せられることによりまして、事務合理化刷新、簡素化せられまして、一部はたとえば医療関係者事務負担軽減というようなところまでも影響があるのであります。その時代にこそほんとう国民保険というものの実をあげることができると思うのでありまして、この際、一つ積極的なる総理の御決意と申しまするか、将来のこの国民負担軽減、特に医療費負担軽減に対する総理の御所見を伺いたいと思う次第であります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、文教関係予算あるいは社会保障関係予算、これは経済高度成長によりまして、非常に急速度に向上しつつあるということを、占えると思うのであります。いろいろ私、自分で計算いたしまして、昭和三十五年度を十三兆六千億として、倍増計画のあの基本で、しかも九・二%の上昇率であったならば、昨年の生活扶助の五%の補正予算引き上げ増、あるいは昨年当初でやりました一八%増、あるいは今年もまた一三%の増は、私はできなかったのではないかと思います。予想以上の高度成長の結果として、私が二年前に想像した以上に、これがこれだけやれるだろうという私の想像以上にできたことを私は喜ぶのであります。高度成長が行き過ぎて非常にいかぬ、罪悪のように失敗だと言われますが、文教関係にしても、社会保障制度にしても、今から二年前に、昭和三十七年度予算がこれだけ組めるとは、私自身も実は想像しなかったぐらいでございます。しかし、まだ十分ではございません。しかし、そういうことは私は国民努力によって、非常に喜ぶべきことであると考えております。  ただ、こういう高度成長のうちにも、一面には非常に所得がふえ、一面にはふえたけれどもまだ十分でないというのが、今お話しのような社会保険にも出てくるわけでございます。御承知通り医療保険につきましては十年以上の歴史を持っております。組合関係医療費関係あるいは政府管掌のもの、そしてあとから出ました国民健康保険等々の状況を見ますと、非常な差があることは御承知通りでございます。もう有力会社健康保険組合なんかというものは、資金がだぶつくというのは言葉が悪うございますが、非常な行き過ぎの点が見られます。そうして片一方の国民健康保険は、お話し通りに非常に貧弱でございます。これを国民保険ということの考えから言ったならば、非常に不均衡この上ない。これを改めるという気持は、私も以前から持っておりまするが、しかし、いかにも各個人の、また各組合負担に非常な変化が起こりますので、理想としてはそれに向かって進みたいと思っておりまするが、むずかしい問題でございますので、社会保障制度審議会にせっかく諮問いたしまして、これが解決につきましての知恵をしぼってもらうことにいたしておるのであります。国民保険、そうして医療関係についてりっぱなものにしたいという念願に立つ以上、この各種健康保険制度につきまして、再検討を加える時期がきたと私は考えております。
  9. 床次徳二

    床次委員 次にお尋ねいたしたいのは、総理民主的秩序確立を説いておられるのであります。政府みずからも戒慎するとともに、国家社会のより民主的慣行の浸透、違反者に対する処断、あるいは破壊活動の根源の除去等決意を表明しておられるのでありまするが、ぜひこれは一つ徹底してやっていただきたいものと思うのであります。要は、その実行が大事なんでありまして、私は、しかしこの問題の根本におきまして考えさせられることは、やはり社会におけるところの一般観念でありまするが、国民個人基本人権公共福祉社会秩序、この正しい関係確立することが根底において必要であると考えておるのであります。言いかえまするならば、利己心に対する公共心、あるいは法律で申しまする順法精神の問題でありまして、なおこの精神が発露するところには、いわゆる愛国心あるいは国民精神高揚という問題までこれは及ぶべきものと思うのであります。この問題に関しましては、すでに憲法調査会等におきましても論ぜられておるのでありまするが、これは憲法改正を待って確立せられるというものではなくして、むしろ憲法以前の問題として当然解決せられるべきものでありまして、政府はあらゆる機会において、一つどんどんとこの秩序確立というものに対しましては実現に邁進していただきたいと思うのであります。一例をもって申しますると、政治的暴力行為防止法のごときも、すみやかに成立を期すべきものでありまするが、見解を伺いたいと思います。  なお、社会党は、国会において三分の一の少数をもって国民大多数の要望を阻止し得たことを得々として誇示しておるのでありまするが、このことは往々にいたしまして国民をして真の民主的秩序確立ということに対する理解を誤らしめるおそれもあるのではないかと思うのでありまして、この点政府におきまして、国会正常化ということに対しましていかよう考えておられるかを承りたいのであります。  なお、民主政治確立基礎をなすものといたしましては選挙制度改正ということもまことに重要であります。一部やっておられるのでありまするが、参議院選挙に対するものばかりでなく、広く進んで公職選挙法等改正に及びまして、そうして政治の粛正、向上に努め、もって民主的秩序確立に寄与せらるべきではないかと思うのであります。この点に対して御所見を伺いたいと思うのであります。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 社会秩序確立ということは必要なことでございまして、先ほどお話し施政演説にもはっきり申しておるのでございます。やはり民族と国土を愛する愛国心の涵養と同時に、基本人権社会福祉の増進、こういうむずかしい問題を解決して参らなければなりません。それには、やはり何と申しますか、高い精神、美しい感情、いわゆる国民育成が必要であると私は考えて、その方に進んでおるのであります。  政防法の問題につきましても、政治的暴力を絶対に排除するという各党の申し合わせの線に沿って、この法案が今国会を通過するよう私としても熱望いたしておる次第でございます。  そうしてまた民主的政治確立には、そのもとをなすやっぱり選挙法がりっぱなものでなければなりません。で、私は今選挙制度調査会答申を尊重いたしまして、選挙法改正の立案を命じておりまするが、法律改正ばかりでなしに、やっぱり正しい選挙をする、明るい選挙をするという気持国民に持ってもらうために、公明選挙運動につきましても予算を増額する等、あらゆる方法をとっていっておるのであります。  そうしてただいまの憲法改正の問題、私は人を非難するというわけではございませんが、私の気持では、憲法のような基本法を、三分の一国会で確保したからこれで大丈夫だということはよくない。われわれが三分の二以上とっても、国民のそういう盛り上がる気持がなければ、憲法なんかをすぐこうするああすると言うことは、私は、自分としては慎しむべきことだと思います。国民の盛り上がる気持考えて、そうしていかなければ、三分の一とったからもう大丈夫だというふうな気持ならば、ほんとに民主的な憲法を十分に理解しない言葉じゃないかと私は自分でも思っております。
  11. 床次徳二

    床次委員 次に、総理政治行政刷新して綱紀の維持と行政効率的運営努力すると言われておるのでありますが、最近におけるところの中央及び地方におけるところの公務員増加、並びにこれに伴うところの人件費増加というものは、これは国民負担の立場から見ましても看過し得ないものであると思うのであります。このために事務能率向上と同時に、各機関間の事務配分ということが大事ではないか。特に中央地方等事務配分是正ということは、すみやかに検討せらるべきものであるかと考えておるのであります。  なお、他面におきまして、近時いわゆる地方格差是正ということが非常に問題となっておるのであります。同時に、国民負担均衡ということがこれに伴って考えられておりまするおりからにおきまして、地方ブロック制あるいは道州制ということの検討も必要である、その時期になってきているのじゃないかと思うのであります。すでに地方制度調査会におきましては答申も出しておるのでありまするが、政府いかようにこれを処置せられんとするのか、伺いたいと思うのであります。  なお、公務員制度につきましては、すでにILO条約の批准問題と関連いたしまして、各種国内関連法案改正がすでに準備せられておるのでありまして、私は少なくともこの程度のものでも実施されるということが、やはり公務員秩序というものを正しくするゆえんであると考えておるのでありまするが、これに対する総理の御所見を伺いたいのであります。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 行政制度の改革につきましては、ただいま臨時行政制度調査会というものを設けまして、最近におきましてその委員の任命もできることに運んでおります。私は、今の場合最も必要な施策一つは、やはり今の行政制度根本的に考え直すことが必要であると考えております。それによりまして行政の簡素、公明、そうして租税負担軽減等々、非常に益するところがありますので、この行政制度根本的改正はぜひやっていきたいと考えておるのであります。  なお、道州制の問題につきましては、いろいろ答申が出ておりまするから、問題ばあると思います。私は、現状から申しますと、あの道州制だけでは地域格差の問題の解決はむずかしいのじゃないか、こういう気持を持っております。何はともあれ、重要施策地域格差につきましては、低開発地域開発促進法その他を活用いたしまして、この格差をできるだけ早く直したいという気持を持っております。  ILO条約は、今国会に批准の手続をとる考えでおります。また同時に、私は国家公務口法改正をいたしまして、職員団体のあり方、また人事管理権問題等につきまして御審議を願うべく、今考慮をいたしておるのであります。
  13. 床次徳二

    床次委員 以下、一つ外交問題に関しまして御意見を伺いたいと思います。  特に本日伺いたいと思いますのは、アジア外交の点であります。総理は、過般すでにアジアを回ってこられました。相当アジアに対して認識をせられたことと考えるのでありますが、第一点は、わが国平和外交に対しての問題であります。わが国外交方針は平和の追求でありまして、国連中心として核実験の禁止あるいは軍備縮小等平和推進努むべきことにつきましては当然でありまして、これは相当努力せられておると思うのでありまするが、近時のアジアの情勢を見ておりますると、アジアの平和というものがようやく動揺をしておるように見受けられるのであります。わが国アジアの一員でありまする以上、重大なる関心を持たざるを得ないのでありまするが、同時にわが国自体といたしまして、領土の問題に関しましては、すでに北方領土の回復ということを念願しておる。同時に、この点はAA諸国植民地主義反対運動に対する深い理解となって現われるものと私は思うのであります。しかしながら、領土の問題、あるいは植民地解放の問題にいたしましても、武力行使ということにつきましては、これは国連理想から申しましても、当然排撃すべきでありまするが、わが国民族信念という、わが国独特の立場から申しましても、とうてい容認し得ないものであるわけであります。従ってAA、特にアジア地域におきましては、わが国の立場上、直接間接にこの武力行使というものは行なわれないように、これを防止すべく、積極的な努力、平和的解決のために、やはり努めなければならないのではないかと思うのであります。近くゴアの事件にいたしましても、あるいは西イリアンの問題にいたしましても、いろいろうわさがありますが、われわれは武力行使の正しいこと、悪いことということに対しましては、はっきりとした態度をとる、また同時に共産勢力のいわゆる武力的進出、これはインドシナ地方において、またその他の地方におきましても見受けられるのでありますが、これはアジアの平和のみならず、わが国の平和に対しましても影響するところが非常に多いのでありまして、かような意味におきまして、われわれは武力行使に対し十分なる態度を明らかにすると同時に、アジアの紛争の平和的解決ということに対して、やはりわれわれ日本といたしましても努力する必要があるし、また義務もあるのじゃないか、かように考えるのでありますが、御所見を伺いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点、もっともでございます。同感でございます。私は、ゴアの問題につきましても、武力の行使が行なわれないよう努力いたして参りました。また西イリアンの問題につきましても、武力の行なわれないように、国連におきましてこれが十分審議される、そして適正な解決を見るように、わが国アジアの一員として努力をしてきたのでございます。今後におきましても、そういう意味で武力をもってものを解決しようということは、これは平和の敵であると私は考えております。
  15. 床次徳二

    床次委員 この問題は、国連における活動のみならず、直接アジアにおける各民族に対しまして話しかけを行ないまして、やはり平和的解決を見るというような積極的な手段にまで発展する余地があるのじゃないか、時期を見てこういうことも一つ御考慮をいただきたいと思うのであります。  それから第二の問題は、アジアの諸国との経済的提携を強化すべきではないかという点であります。従来わが国アジア政策とでも申しまするか、アジアの一員としての立場を堅持するということにつきましてはまことに一張一弛、そのときの状態によりまして必ずしも永続的な政策が確立されたもののように考えておらないのであります。また実際の政策等におきましても、具体的な裏づけが十分であったかどうかということにつきましては、やや疑念なきを得ないのであります。近時ヨーロッパ経済共同体に対しまして、わが国が積極的な気持を持ちまして、経済上また政治上の新しいかつ長期の問題としてできるだけこれに接近するという努力をいたしますことは当然でありまするが、しかしアジアを現状のままと申しますか、従来の状態に置いておいてよろしいということにはならないのでありまして、われわれは自由主義国の一員として、アジアの中におけるところの中立国、自由主義国並びにわが国の賠償関係諸国というグループに対しましては、積極的な提携の努力をなすべきではないかと思うのであります。この点は総理も十分認識せられてこられたことと思うのでありまするが、この種類の国々に対しまして、われわれが経済的に緊密を加え、そうして将来の提携、共同の基礎を作るというととが今日重大な問題じゃないか。この意味においてわれわれはほんとうアジアの一員としての立場を認識すべきものではないかと思うのでありまするが、これに対する御所見を伺いたいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 アジア諸国に対しましてのわれわれの経済的並びに文化的の協力関係は、私は相当よくいっていると思います。今回東南アジア四カ国を回りましたときにおきましても、パキスタンにおいては、日本の経済協力によりましてりっぱな紡績工場が建ち、また今後もいろいろな工業施設が拡充されつつある。パキスタンの国民は、日本の協力に対し心から謝意を述べておるような状況でございます。またインドにおきましても、最近きまりました八千万ドルの長期借款——パキスタンもそうでございますが、五年据え置き十年償還、これによりましてインドの経済が急速に開発されると思います。こういう各国との共同、協力でなしに、日本自体がインドにおきましていろいろ施設をいたしております。カルカッタにおきまする中小企業技術センター、これなんかも、数百万のカルカッタ市民はもちろん、インド全体として非常に謝意を表し、今後ますます日本の進出をこいねがっております。これは政府がやるばかりでなしに、民間会社も組立工場その他を設けまして、盛んに現地人と協力して経営をやっておる状況でございます。また、タイに参りましても、通信センターでございますが、こちらの技術者が学校を設けまして、そうして向こうの青年の電気技術の修得に献身的な努力を払っておるということは、タイ国民もひとしく喜び、今後ますますそういうようなものの進出をこいねがっておるのであります。この参りました四カ国のうち、ビルマにつきましてはまだ十分ではございません。しかし、ビルマにおきましても、私とウー・ヌー首相との話、あるいはオン・ジー参謀次長との話、今後日本との経済協力をぜひ進めていきたい、こういうことを熱願しておりますので、私は、今までのわれわれのやったことに対しまして、私らが想像しておるよりも向こうは感謝し、期待しておることをつくづく感じて参ったのであります。今後におきましても、今までよりもっと研修生を日本に受け入れるとか、日本の技術者を向こうに送る、あるいは経済援助あるいは資源の開発等々、われわれの持つ任務の非常に多いことを痛感いたしましたので、今後できるだけの努力をいたしたいと思います。
  17. 床次徳二

    床次委員 総理がインドあるいはパキスタン等におきまして、日本の経済協力の相当効果の上がっておることを認識せられたことにつきましては、私、非常に喜ぶものでありまするが、しかし、決してこれでもって満足すべきものではないのでありまして、実はわれわれはもっと本格的にアジアに対して取っ組まなければならない。すなわち経済協力を、先ほど申し上げましたような各種アジアの親善政策と相伴いまして、そうして一そう徹底させる必要があるのじゃないか。総理自身がお感じになりましたよりも、今日民間また一般国民はもっと強いアジアの振興に対する熱意を持っておるのでありまして、これを実現していただきたいと思うのであります。幸いにいたしまして、新年度におきましては、海外経済協力予算一般的に拡充せられ、また技術協力事業団も設置せられたのでありますが、しかし、従来から問題となっておりまするのは、欧米あるいは共産圏諸国の経済協力と比べると、その量において、金額においてわれわれが及ばないのはもちろんでありまするが、その質的条件におきましても相当劣っておるのでありまして、その中において、辛くもお話しになりましたような意味の事業が今日行なわれておるのじゃないか。異常な苦しい努力をもってあそこまで開拓しておるのでありまして、この際わが国経済協力というものがさらに一そう徹底せられまして、その量において及ばないことはやむを得ないのでありますが、その質において改善する、同時に経済協力の目標において、わが国の持っておりますところの得意な技術、あるいは農業にいたしましても、あるいは医療技術等におきましても、これは言い得ることと思うのでありまするが、かかる特色を十分に発輝いたしまするごとく努力いたしましたならば、もっともっと数倍の効力が上がるのじゃないか。今日輸銀の取り扱い状況、あるいは協力基金、これは発足したばかりでありますが、これらの状態を見ましても、今後大いに活躍せしむる余地がある、強化する必要がある、改善をする必要があると思っておるのであります。政府は、対外経済協力審議会等を持っておるのでありますが、これをもっと積極的に運営されると同時に、民間団体の協力、特に民間団体との連絡強化、言いかえますならば、過当競争の防止ということも意味があると思うのでありますが、さような意味におきまして、もう一回、一つ一そうの努力をせられる必要があるのじゃないか。総理はきわめて安心してこられたような感じを受けるのでありますが、実はそれではまことに残念に思うのでありまして、この機会に一そう伸ばしていただくことが、わが国の将来の東南アジア貿易の伸展にもなるし、同時に、日本のアジアにおける平和並びに発展の基礎にもなるし、また、いわゆるアジアにおけるところの各種共同体の発展の基礎にもなるんだと考えておるのでありまして、特にこの点に対しましては、一つ強い努力をされんことを要望したいと思うのですが、御所見を伺いたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 床次さんほど長くいませんので、私の考え方が十分でないかもわかりませんが、私は、各国の東南アジアに対する施策と日本の施策とを比べて、日本が劣っていない、こういう確信を持っております。インドにおきまするドイツの技術センター、そうしてまた、タイにおきまするドイツの技術センターと日本の技術センターの比較等々を聞きまして、私に対して言うのですから、少しほめているのかもわかりませんが、私の感じでは、決してドイツなんかに負けていない。しこうしてまた、各国とも、ヨーロッパに対する期待よりも、日本に対する期待の方が強いということを私は感じたのであります。安心じゃございません。そういうことを感じたから、もっと責任を持ってやらなければいかぬということを今お答えした状況でございまして、われわれはできるだけこの気持を伸ばしていこう、こういう気に燃えておるのであります。決して安心しておりません。責任の重大なことを感じておるのであります。ことに私は、ビルマにおける今までの協力関係が、他の三カ国よりも非常に劣っておる。これは受け入れ態勢も悪い。そこで、私は、ビルマの政府要路者のみならず、野党の方々とも直接会いまして、いろいろ話をしてみましたところ、インド、パキスタン、タイに劣らないいわゆる親日感と、日本との協力を熱望しておることを私は知ったのでございます。今後この気持でやっていきたい。たとえばパキスタンにおきましても、二年間二千万ドルのあれでございましたが、私は今後はもっとふやしていきたい、こういうふうな気持を持っておるのでございます。東南アジアにおきましての経済協力は、合同のいわゆる低開発、DACの委員としての分担は、それは英米独より少うございますが、日本の置かれた立場、日本人と東南アジア人との気持の合致等は、ヨーロッパ諸国に決して劣りません。そしてまた、技術その他につきましても、日本の技術を非常に高く評価してくれておる。私は決して、何と申しますか、安心したり、しり込みするというような気持は毛頭ないのでございます。
  19. 床次徳二

    床次委員 総理がごらんになりましたインドあるいはパキスタンと、日本として相当よくやっておるのでありますが、アジアにおきましては、先ほども申し上げましたが、多くの中立国がある。また、自由国があるし、特にわれわれは賠償関係としていわゆる相当密接な関係を持っておる。この際、経済協力というものが、さらに背後からこれをバック・アップいたしましたならば、一そう大きな効果が上がるのではないかという点におきまして、特に申し上げたわけでありまして、今後一そうの御努力一つ望みたいと思うのであります。  次に、日韓問題について、一言意見を伺いたいと思うのでありますが、今日わが国がすみやかに日韓の国交を正常化すべきことにつきましては、すでに明らかでありまするが、私は、特にこの際伺いたいのは、政府のこの問題に対する根本的な理念というものを明らかにして、国民に訴えていただきたいことなんであります。元来、韓国は自由主義国の一環であるし、平和と繁栄とを念願して、かつ、わが国との国交の回復を今日期待しておるのでありまして、しかも、二面におきまして、わが国と韓国との関係は、数千年来の最も近い隣邦としての立場にある、地理的にも文化的にも経済的にも密接な関係のあることは申すまでもありませんし、同時に、わが国の平和と安全にも至大の関係を有するのであります。しかも、わが国に現在いわゆる在留韓国人というものが六十万にも達するというようなわけであります。また、われわれ国民といたしましては、竹島、あるいは季ライン、あるいは財産請求権、その他の重大なる利害関係を持っておるのであります。従って、この日韓交渉、国交の正常化というものは、単なる外交折衝というものではないと思うのであります。これは従来行なわれました諸外国とのいわゆる交渉とは全く違ったと申しますか、本質において非常に大きな意味を持ったところの折衝であるのでありまして、両国民感情の融和、同時に、懸案を合理的に解決するということを前提として、いわば国民基礎の上に両国の国交が正常化さるべきものだと思うのであります。この意味において、政府が今後正常化外交を折衝せられるにあたりましては、単に韓国に対してのみならず、国内に対しても十分なる努力をせられるべき必要があるのではないか、かような意味におきまして、総理の御所見を伺いたいと思っておるのであります。  しかるに、昨日もありましたが、社会党におきましては、両国間の懸案の合理的解決いかんということよりも、むしろこれが東北アジア軍事同盟につながる、あるいは朝鮮の統一に害があるというようなことに籍口いたしまして、正面から国交の正常化に反対をいたしておるのでありまして、その真意がどこにあるかということにつきましては、まことに理解に苦しむものでありますが、この際、政府におきましては、多数国民にあやまちなきを努めなければならないと思うのでありまして、私は、国家百年の大計をこの際立てられるという一つの大勇猛心のもとに、政府におきましては、一つ根本的なこの問題に対する解決努力に邁進せられたらどうかと思うのでありまして、総理の御所信を伺いたいと思うのであります。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 日本と韓国との関係は、お話のように、その歴史をひもといてみましてもおわかりいただけるように、特別の関係があるのであります。従いまして、こういう特別の関係がある国と、じんぜん今のような国交正常化ができないという状態で置くことは、非常に遺憾でございます。従いまして、私は、できるだけ早く合理的な解決をいたしたい、こう念願いたしておるのであります。そうして、そのことは、私は、国民に対しましても、今後お話し通り十分PRして参りたいと考えております。
  21. 床次徳二

    床次委員 この機会に、日韓交渉に関しまして、外務大臣から数点伺いたいと思うのでありますが、一括してお答えいただいたらどうかと思うのであります。  第一は、今日の韓国の軍事政権というものに対する非難がある。これはかいらい政権である、交渉の相手としてはまことに不足であるという意味におきまして言われるのでありますが、はたしてかような考え方でもって軍事政権に臨むべきものであるかどうかという点が第一点であります。  第二点は、両国の国交の正常化は、朝鮮の平和的統一を不可能にするかどうか、また、不可能にすることがどういうことを意味するのかという点でありますが、これが国交正常化をはばむ理由になるかどうか、一つ政府所見を伺いたいのであります。  第三といたしまして、日韓会談は東北アジア軍事同盟に密接につながるということを往々にして言う者がありますが、はたしてかようなことがあるかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。  第四点といたしまして、韓国政府に対し今日国交正常化をいたし、そうしていろいろ問題が解決したとする場合におきましては、このことが、将来南北統一の実現した後におきまして、統一政府を拘束するかどうかという点です。今日正常化をして問題を解決したことが、かえって将来むだになるんじゃないかというような宣伝もあるわけでありますが、私は、今日の努力というものは、将来の統一政府に対しましても効果があるものと思うのでありますが、この点に対しまして外務大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
  22. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 四点をあげられましたので、逐次お答えいたしますが、まず第一に、現在の政権の関係でございます。これはクーデターによってできた政権でございますが、国連においても、また、現在韓国とそれ以前から国交を持っておる三十数カ国の国においても、これはやはり継続性を持ったものである、六三年夏に民政移管を公約しておる建前からいたしましても、これを相手といたしまして国交を持っておるのでございますから、当然、私ども世界的な、一般的な考え方においてわが国の持っておる、わが政府がとっておる態度は、その常識の線に沿っておる、かように考えるのであります。  第二は、現在の韓国政権との間に国交回復をしたら、将来統一が不可能になるのではないかという点でございますが、さようなことはないと思います。逆に申しますれば、現状をほうっておけばそのままに統一されるであろうかという保証はだれにもないのでありまするし、また、現在の韓国との間に日本が国交を回復して、韓国の民政がりっぱに復興することによって、将来さらに南北の間にも落ちついた話し合いができて、統一というものが考えられるのでありまして、日韓交渉が円満に妥結したことが、朝鮮の南北の統一を阻害するということはないと考えております。  第三は、いわゆるNEATO問題というものでございますが、私どもはかようなことは全然考えたことはございません。日本が軍事同盟を韓国あるいは台湾と結んでNEATOというものを作るというようなことは、全然考えたことはございませんが、いずれの方面からでございますか、さような発言が行なわれておることは遺憾に存ずるのでありまして、日本政府は全くさようなことに関知いたしておりません。  将来にこの政権との交渉がつながるかどうかという問題でございますが、現政権は、国連憲章の尊重あるいは自由世界との協調ということを掲げておりまするし、前の政権と同様に日韓間の国交調整ということを強く希望いたしておるのでございまして、当然、民政移管になりました場合、この政策は引き継がれるでございましょうし、一国の外交政策が、将来南北が統一された場合にも、その基調というものは将来に受け継がれるであろうということは、これは国際常識上当然であろうと考えておる次第でございます。
  23. 床次徳二

    床次委員 次に、中国問題に触れたいと思いまするが、わが党は、さきに行なわれましたところの社会党及び中共の共同声明に対しまして、作目統一見解を発表いたしました。その共同宣言の非なることを明かにいたしたのでありますので、この際質疑は省略いたしたいと思いまするが、中国問題の解決につきましては、わが国は決して国連の決定に無条件に追随しているというものではないのでありまして、国連をして中国の実態を十分認識せしめるとともに、特に中国に対して密接な関係を持っておるところのわが国の立場、わが国の見解に立って、国連をして解決させよう、適切なる決定を得ようとして努力しているのだと思うのでありますが、この点に関しまして、政府国民に対して十分誤りなきを期するがごとく対処する必要があるのではないか。特に今回の社会党の共同声明のごときものにつきましては、政府として、外交権の問題その他等におきましても、いろいろと国民に明らかにすべき問題があると思う。断じてこれを黙視しておることは許されないと思うのでありますが、この際、政府所見を伺いたいと思うのであります。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 政府の外交権と違う一部の人の考え方につきましては、私は、先般本会議で遺憾の意を表しております。この問題につきましては、この前の事件あるいは今度の事件等を千分調査いたしまして、そしてまた、その後の動きも見まして、適当な措置をとるかとらないかを私はきめたいと思います。
  25. 床次徳二

    床次委員 次に、沖繩の問題につきまして伺いたいと思いますが、池田・ケネディ共同声明に基づきまして、沖繩援助に対するところの日米の協力が一そう緊密化しまして、新年度におきましては、わが国の県並みに向上を目標といたしまして、援助予算が増大せられ、また、米大統領もその措置をとりつつあることが明かになったのでありまして、沖繩住民並びにわが国民の要望に合致するものでありまして、この点は同慶の至りにたえないのであります。しかしながら、現下の国際情勢下におけるところの基地の重要性にもかんがみてみまして、将来その自治権の拡大、援助増加によりまして、内地府県並みの生活を確保しながら、すみやかに復帰の実現を期待すべきものと考えるのでありますが、総理の御所見を伺いたいと思うのであります。  なお、小笠原につきましては、島民の要望でありまするところの帰島の実現がほしいと思うのであります。  また、これに関連するのでありまするが、北方領土に関しましては、すでに総理はたびたびその所見を明らかにしておられるのでありまするが、この問題は、単にソ連に対してのみならず、関係各国と申しまするか、また国連におきましても、また特に東南アジア、AAの諸国に対しましても、十二分に理解せしむることが必要だと思うのでありまするが、これに対していかが考えておられるか、伺いたいのであります。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 沖繩問題につきましては、さきのアメリカ訪問の際、ケネディ大統領と十分打ち合わせいたしまして、今回予算上とられた措置、また、それまでの経過から申しまして、私は画期的の前進をいたしたと思います。従いまして、今後もこの方向で進みながら、施政権の返還につきまして強く要求を続けていきたいと思います。  また、小笠原における沖繩住民の帰島問題につきましても、同様に私は努力していきたいと考えております。  次に、北方領土の問題につきましては、フルシチョフ首相とたびたび書簡の交換でお互いの意見を言っておりますが、まだ解決のところまでは遠いようでございます。この問題につきましてどういう外交的手段をとるかという問題につきましては、私は前から慎重に考えておるのでございます。これを、ソ連以外の国に対していかなる措置を今後とるかということにつきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  27. 床次徳二

    床次委員 次に、ガリオア、エロアにつきまして、若干質疑いたしたいと思います。  政府は、きのう四つの資料を提出したのでありまするが、その第一は、ガリオア、エロアは債務であるということを明らかにし、第二は、対日援助総額は十七億九千五百九万五千二百六十八ドルでございまして、そのうちの純援助額というものは十七億四千六百十六万六千五百六ドルであることを明らかにしております。第三の資料は、この額より各種の控除をいたしまして、差引残高に対し西独の返還率を適用し、さらに日韓、日琉清算勘定の残高を控除いたしまして四億九千四百四十四万六百二十二ドルとなりました。その結果、債務の確定額四億九千万ドルといたした経過を明らかにしておりまして、さらに産投会計貸借対照表をもちまして、現在の見返り資金承継分は二千二百九十四億円でありますから、四億九千万ドルならば、新たな国民の税負担によらずして、同会計より支払い可能なることを一応説明しておるのであります。  しかし、この際、若干の追加質問をいたしまして問題を明らかにいたしたいと思うのであります。数点にわたりますので、少しずつまとめてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、第一は、産業投資特別会計からガリオアに支払うのでありまするが、このガリオアに対して支払った後、さらに一般会計から税金を戻入する、繰り入れるという補充が必要であるか、そういうことになるであろうかどうかという点であります。言いかえまするならば、将来結局国民負担をかけることになるのではないかというおそれがあるかどうかを明らかにしてもらたいのであります。  それから第二は、今回の締結せられました協定には、ガリオア援助額の総額というものが書いてないのであります。単に支払い額だけしか書いてありませんが、この点はどういうわけであるか、明らかにしていただきたいのであります。  それから第三に、昨日いろいろと日本側の数字を提出せられたのでありまするが、この数字というものは、具体的な資料に基づくところの正確なものであるかどうか。政府は確信を持ってこういう数字の資料を出したものか。  以上、とりあえずお答えをいただきたいと思います。
  28. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 順次お答えいたします。  まず、第一点でございますが、これは昨日お答えいたしましたように、利息を含めまして、複利計算でわれわれは二千八十五億円返すわけであります。五億七千九百万ドル返すわけでございます。そこで、昭和二十八年八月に産投会計が継承いたしました見返り資歴は二千九百十九億円でございまして、これだけでも十分支払い額を上回っておりまして、さらにその上に、今日まで多額の利益を生んでおります。この利益は、見返り資金以外の分と合わせて、三十六年度末までに千四百三十三億円の利益金を生じておりますが、その相当部分が見返り資金関係の収入でございまして、産投会計はガリオア支払い額をはるかに上回る見返り関係の資産を持っておるわけでございます。しかも、ガリオア債務の支払いは、原則としまして、これらの見返り関係の資産をくずすことなく、見返り資産のうち、開銀出資金に対する毎年度の納付金、これは十五年間に千七百五十七億円になりますが、それと開銀の貸付金の約定に基づきます回収金、これが三百五十四億円ございます。それにその利子収入が九十一億円ございますから、合わせて四百四十五億円になりますが、今申し上げたように、これらの納付金と回収金と利息の合計が二千二百二億円になります。そこで、十五年にわたりまして、対米支払いを完済し得るわけでございます。すなわち、納付金と利息と回収金、これでもって全部いくわけでございますが、さらに、今申し上げたように、この全部の額でも二百億円余分に余るわけでございます。そこで、十五年間にわたってこの対米債務を完済するわけでございますが、債務支払い後も、納付金の元になっております見返り関係の出資金はそのまま手元に残る。従って、これがまた利息を生んでいく、こういうことになるわけでございます。従って、このガリオアに関する債務の支払いによって国民に二重払いの負担を課するという議論は、全く私は納得できない議論だと思います。政府に関する限り、これは一回も払っていないわけでありますから、払うわけであります。それから国民政府関係は、国民はすでにこれだけの放出物資を受け取って、政府に金を払っておるわけであります。その払った金を政府は積み立てておって、その産投の中にあります積み立てたものの回収金なり利息からまた払っていくということでございまして、全然さようなことはない。二重払いなんというものは、全く不思議な議論と言わざるを得ないことになると思うのであります。  第二は、総額を西独の場合にはいっておるのに、わが方は支払い額だけ債務として確定しようとしている、これなどういうわけかということでございます。西独の場合は、アメリカの支払いベースによりまして、そのままこれを基礎といたしまして、それに三三・一七八をかけまして十億ドルというものを算出しておるわけでございます。ところが、わが方の場合は、これは第三点と関連いたしますが、資料をいろいろ精査いたしました結果、わが方では、通産省のお調べでは十七億九千万ドルであるということになりまして、その関係で、どうも先方の支払いベースとわが方の受け入れベースが違う、こういうことで、先方にいろいろ交渉いたしました結果、わが方の受け入れたという数字を基礎といたしまして、そして、それから引くべきものは引き、西独の関係の三三・一七八をかけて、昨日提出いたしましたような資料に基づいて、四億九千万ドルということを算出したわけでございます。  それから第三点の、資料が確実なものであるかどうかということでありますが、これはこの委員会でも何回も申し上げましたように、占領軍が残置しておった資料に基づいて算出したものでございます。従って、これ以上ふえる場合もあるいはあるかもしれません。これは資料が十数年をたっておりますので、その間に、これが全部であるとは言い切れぬ点もあるわけでございますが、少なくとも、われわれの持っておる資料から減るということはない、こういうことは言えるわけでございますが、これも外交交渉の結果、アメリカ側も日米関係というものを重大に考えて、わが方の計算による主張を、政治的に折衝の結果、先方も了承してくれた、こういうことでございます。
  29. 床次徳二

    床次委員 なお、数点、右に関連して、追加して質問したいと思いますが、次は、西独のそれに比して有利であるという点、歩合を西独と同じ歩合でやっております、その他において控除したところが有利であると言われるのかと思いますが、いかなる点が有利であるかということを、あらためて説明していただきたいのであります。  それから、次の問題といたしまして、政府は、かねて、返済額はアジア経済開発に使用されることが予想されることを言明しておるのでありますが、署名されたところの交換公文によりますと、米国側の適当な立法措置に従うことを条件として、低開発諸国の経済援助に使用されることとなっておるのにすぎないのであります。これでは、米国議会の意思いかんによって、返済額をアジア諸国のために使うことも不可能になるのではないかというふうに、文面上は読めるのでありますが、この点はいかなる了解があるのか、伺いたいのであります。  次に、二つの交換公文につきましては、これはアメリカ政府を拘束する効力を持っておるのかどうかという点でありまして、この点の御説明を伺いたいのであります。  次は、今回債務負担行為というものができたように思うのでありますが、債務負担行為が確定いたします場合には、国会の承認を要することになっておりますが、今回の条約案の提示がそういうことになるのかどうか、いつ債務負担行為というものが確定するのかどうかという点について、明らかにしていただきたいと思います。
  30. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  まず、第一に、西独との比較でございますが、先ほど申し上げたように、西独の場合はアメリカの支払いベース、これを基礎として計算をいたしました。それによりますと、わが国の場合、その通りにいきますと、アメリカはわが国に対して十九億五千四百万ドルを支出したと、こう言っておるのでございますから、それに三三・一七八をかけますと、約六億五千万近くになるわけでございます。ところが、今申し上げましたような経緯で、わが方は四億九千万ドルでございますから、これを西独側ので逆算してみますと二五・八%になります。それから、わが方の計算のなにで逆算いたしてみますと二八・五%になります。従って、結果的にそれだけ有利であるということがいえると思います。  それからなお、西独の場合は、その資金の使途についての、支払いについての取りきめは何にもございません。これは何にもというのは言い過ぎですが、わが国ほど有利にはなっておりません。わが方の場合、使途は、これからの問題に触れますが、低開発国の援助のために使われるということが合意されております。それから教育、文化のために、わが国の場合、二千五百万ドルに相当するものを円払いとして国内に積んでおけということになるわけでございます。それも最初の二年間に、一年間に千二百五十万ドルずつ、二回積み立てるわけでございます。この分はわが国の内部において積み立てられ、わが国内において利子を生んでいく、こういうことになるわけでございますが、西独側は一千万ドル、それもドルで払っておる、かように承知しております。  それから、まだいろいろ申し上げたいこともございますが、長くなりますので、そのおもな点だけにしまして、第二の、交換公文はアメリカの行政府を拘束するかという点でございますが、さように考えております。ただ、アメリカの立法措置を条件として、すなわち、アメリカ議会の承認を条件としてということになっております。そこで、ガリオアの金を、これはガリオアの金であるからというので、ひもをつけてそのまま回すという提案を実はアメリカ政府はいたしました。すなわち、今後五カ年間に八十八億ドル、それをガリオアその他を含めて回す、こういう提案を、この五月の議会にアメリカ政府は提案いたしたのであります。これは最初の場合、アメリカ財務省借り入れとガリオア等の返金、こう二つに分けまして、財務省の借り入れを九億ドル、ガリオア等の返金を三億ドル、最初は十二億ドル、それから財務省の借り入れとガリオアの三億を合わせましたもので、十九億ドルずつあと四年間に出す。それで八十八億ドルにする、こういう提案をしたのであります。ところが、財務省の借り入れということにいたしますと、これは議会の権限を犯すものである、こういう主張で、全体の額も七十二億ドルに減らされました。これは今申し上げましたように、その内容については、ガリオア初年度三億ドル、それから一般の方を九億、ドルにいたして、合計十二億ドルはそのままでございますが、あとの財務省借り入れの十九億というのは十五億に減っております。しかし、それは全体を七十二億ドルにいたしまして、そうして、これを対外援助法によるところの援助として国庫の歳出から出す、こういうことになっておるのでございまして、われわれの交換公文に言っておるところの趣旨はその中に生かされておる、かように考えておる次第であります。
  31. 床次徳二

    床次委員 なお、外務関係の最後といたしまして特に伺いたいのは、海外移住の問題であります。  最近、海外移住の普及ということが相当できてきて参ったのでありまするが、過般ドミニカにおけるところの移住の失敗ということは、まことに残念であるのであります。将来のために、政府は、当該引揚者に対しましては万全な措置を講ぜられたいと思うのであります。しかし、全体から見ますると、海外移住に対しましては、さきにアルゼンチンとの間の移住協定が成立する、また、中南米各地におきましては著しく好転の傾向が見えるのでありまして、この際、私は、政府が移住対策基本確立すべきときになっておるのだと考えるのであります。すなわち、移住基本法の制定とかあるいは移住審議会の拡大強化、あるいは移住行政機関の総合一元化、あるいは移住実施機関の統合調整、移住者に対する補助の増額という意味におきまして、根本的にこの際移住対策確立すべきじゃないか。総理がよく言われるところの、有為な青少年の海外活躍ということとあわせまして、貿易の伸張、また経済の協力というところに対して、この際、私はつちかうことが大事であると思うのでありまして、総理の海外移住に対する熱意のほどを一つ伺わしていただきたいのであります。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 お話し通り、最近における中南米、ことに南米におきまする移住は、ドミニカのような例外はございまするが、条約上その他の関係で非常に理解が深まって参ったのであります。私はお話しのような点十分考えまして、移住問題につきまして、もっと強力に進めていきたいと考えております。
  33. 床次徳二

    床次委員 次は、経済問題であります。特に物価の問題について以下伺いたいのでありますが、農林大臣お急ぎのようでありますので、とりあえず、農林関係の物価の抑制と申しますか、安定に対して、生産者に対してはむしろ安定ということがいいと思うのでありまするが、これに対して具体的な御所見を伺いたいと思うのであります。
  34. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り、生産が自然の影響を受けまして、なかなか予定通りいきかねる場合があり、また、非常によくでき過ぎる場合があるというようなことがございまして、生鮮食料品につきましてはなかなか困難な場合がございますけれども、しかし、そうだからといって、そのままにしておくわけに参りません。ことに本年度予算におきましては、玉ねぎ等につきまして、多少これを貯蔵して、そうして常時これを出すというようなことをして、幾らか固定して参るということもしてみたいと考えておるわけでございます。一番大事なことは、常に申されますように、生産者と消費者との間の差額、これが一体どうなるかという問題でございますが、昨年の九月ごろから特に農林省の役人に命じまして、産地から消費地までのものの動き、それがどこでどういうふうに金がかかるか、どういう経路で動くかということを品目例に調査を命じまして、大体この三月ごろまでに調査を済ますように命じてありますので、それができてきました上で、なるべくむだを排除するように、また、どういう施策をしたらよろしいかということをやって参りたいと考えておるのでございます。何分、たとえば一例を生鮮食料の青物にとってみましても、神田市場に入って参ります青物は、その三割が近県にこれがもう一ぺん出て流れていくというようなことでございまして、常に需要と供給の関係が正確につかみにくいということもあります関係から、一般市民の御期待に沿うようなことはなかなか困難でございますが、これらにつきまして鋭意需要の関係と合わせて、もしくはその供給の範囲を広げるというようなことでやって参りたい。特に園芸蔬菜につきましては、今農業生産の中でも成長部門といわれるように、この方面の需要もしくは農家経営の面に寄与するものが多いものでございますから、特にこれらを団地的に生産をし、指導をして参るということをやって参りたいと考えておるのでございますが、今後いろいろ施策を重ねていかなければならないと思っております。
  35. 床次徳二

    床次委員 恐縮でございますが、もう一言簡単に伺いたいと思います。  最近の情勢で言いますると、農村におきましては、労働力の流出が相当多いし、また、労銀の値上がり等のしわ寄せを受けておると思うのでありまするが、かかる状態におきまして農業基本法実施の第一年になっておるのでありまして、はたして順調に農家に対してその期待に沿うがごとき構造改善その他の効果を上げるかどうか、この点に対して大臣の自信のほどを一つ伺いたいと思うのであります。
  36. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り、都市におきまして急激に産業が上昇いたして参りました影響から、労力を要求する面も多くございますし、かたがた労銀等も上昇いたしております。そういう影響を受けまして、農村の労力が都市に吸収せられる面もございます。また、農業自身といたしまして最近の貿易の自由化、世界の経済の動向等からいたしまして、農業経営それ自体に不安もございます。かたがたまた、農業機械の導入等から、農業の労力が一部過剰になっておる面もございます。諸般の原因が錯綜いたしまして、御指摘のように、農村の労力は、青壮年が都市に出まして、一部老年の労力が農村に残るという格好になっております。こういうことはこのままにいたしておく、続くということは、非常に農村のためによろしくないという考えからいたしまして、農村全体の構造をどういうふうに青写真を書いて参れば、その経営がどうなるかということを広く、深く検討いたしまして、そこに地域農業、つまり適地適作、適産というような角度から、新しく農村構造を改善して参ろうというので、明年度予算にもお願い申し上げてあるようなわけでございます。これを実施することによりまして、農村の青年に希望を与えまして、そしてその希望は、単なる希望でなしに、具体的にそこに事実をもってこれらの青年に将来の農業経営が何であるかということをわかるようにして参るような施策を講じて参るというつもりでございます。
  37. 床次徳二

    床次委員 農林大臣は時間がありますので、これでもって大臣に対する質疑を打ち切りたいと思います。  次は、総理に伺いたいのでありまするが、この経済問題あるいは物価問題全体に関連して御所見を伺いたいのであります。  わが国経済が近ごろ著しく高度成長を遂げまして、国民生活水準の向上を遂げたことは、まことにこれまた喜ぶべきことでありまするが、予想以上の経済の拡大から、国際収支の赤字、あるいは道路、港湾等の社会資本の立ちおくれ、あるいはただいまお話しがありましたが、労働力の不足、消費物価の上昇等、経済分野の不均衡が目立ってきたことも争えない事実でありまして、これに対して警戒を要するのでありますが、これに対しまして政府は今年度予算編成に際しまして、国際収支改善を基調とするところの健全予算という建前で出発せられ、総合的な景気調整をやりながら、経済の見通しと、将来の経済運営の基本的態度をきめられました。それに対していわゆる抑制、あるいは助成と、積極的、消極的な努力を今日期待しておられるのだと思うのであります。そのためには、設備投資の抑制とか、あるいは消費節約あるいは輸入の抑制、輸出の増大、貯蓄奨励、国産愛用、いろいろの努力が要るのでありますが、一部は政府予算自体の運営におきまして相当の操作ができるのではないかと思うのであります。もう一つは金融によるところの日銀の適切なる操作ということが必要であろうと思います。しかしなお根本的には、これに対する国民の協力ということが必要だと思います。最初にも若干精神問題にも触れたのでありますが、国民の協力、また国民の協力を得るにふさわしいところの地盤を作り上げる。そして行政指導をするということが必要だろうと思います。しかしこれが行き過ぎることになりますと、いわゆる官僚独善の政治にもなるのではないか、いわゆる自由主義経済のもとにおきまして、民主的な運営を自由経済のワクのもとにおいて十分やらなければならないのでありますが、しかしそのためには何と申しましても、これは国民の協力ということが中心になるのではないか。あらゆる面におきまして、協力を得ながら努力して参らなければ、ことしのいわゆる難関を乗り切って、総理の所期する目的に到達することは困難ではないかと思うのでありますが、この点総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 自由主義経済を建前としております関係上、政府はどうするこうすると申しましても、国民のこれに対する理解と協力がなければ目的を達するわけに参りません。従いまして、われわれといたしましては、いろんな経済事情を考慮いたしまして、そうして国民に協力を願うと同時に、また政府としてでき得ることは、調整、不均衡是正等につきまして万全を尽くす考えでございます。お話の通りこの難局と申しますか、私はこれは一段上に上がるための関所と考えておりますが、国民の協力を得て切り抜けていかなければならないし、切り抜けられると思います。ただ申し上げたいことは、一時の数字にとらわれて、非常に悲観したり、楽観したりぐらぐらするということは、経済の安定に一番いけないことだと思います。そういう意味におきまして、国民各位におかれましても、この事情を十分理解され、そして政府に対する御協力を特に私はお願いいたしたいと思います。
  39. 床次徳二

    床次委員 次に物価を中心としまして、各省関係大臣にそれぞれの担当物品の価格の問題を中心としてお答えをいただきたいと思うのですが、まず通産大臣に伺いたいのであります。昨年来の金融引き締めの効果が相当現われつつあると思うのでありますが、このうち、特に中小企業に対する配慮といたしまして、特別な融資等を準備されておるようでありますが、この中小企業者に対する対策というものを、この際お示しをいただきたいと思うのであります。  なお今後の景気調整策の一端といたしまして、設備投資を抑制することが当然必要になってくると思うのでありますが、一律にこれを抑制するということがありますと、その影響はなかなかひどいのでございます。すなわち自由化を控えての企業の国際競争力というものを弱める結果にもなりますし、また社会資本の立ちおくれている今日では重点的選別投資を確保する必要があるというような点もあるわけであります。なお中小企業に対しましては、合理化、近代化ということに影響がくるのでありまして、この点一つ十分な配慮が必要だと思うのでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。  なお物価に関連いたすのでありますが、最近の近代化、合理化、設備投資の結果によりまして、企業の生産性が相当向上しておるものもあると思うのですが、その場合におけるところの利益というものを消費者に還元する、すなわち物価をその分だけ抑制するということも必要ではないかと思うのでありますが、この点に関する大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  40. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 金融の引き締めがだんだんその効果が上がって参りまして、まず第一は、大企業におきましても融資の額が漸減といいますか、減る方向に向かってきた、あるいは日銀券の発行高も減っておる。その結果金融の面から卸売物価がまず下落した、あるいはまた鉱工業の生産の伸びにいたしましても、増勢が鈍化するとか、あるいは輸入が抑制され、輸出が伸びるとか、こういうような結果を生じて、ただいま調整の段階でそれぞれ効果を上げておると思います。そういう際に、御指摘になりました中小企業、いわゆる弱者にしわ寄せが来ないように、特に私どもも配慮いたしまして、昨年の年末あるいは第三・四半期におきまして中小企業金融も増額をいたしまして、これはすでに御承知のことでございますが、オペレーションを加えますと約八百億円に上る資金の確保をいたしたのでありますが、この第四・四半期に際しましても、最近の中小企業金融のあり方等から見まして、さらに増額の必要があるということで、ただいま大蔵省と折衝をいたしております。大体約二百五十億程度の金の手当ができやしないか、かように考えます。もちろん第四・四半期についても、来年度の上期等におきましても、中小企業金融の実情、これに合うようなめんどうを資金的には見る考えでございます。特にかような考えをいたしますのは、お話の中にもありましたように、貿易の自由化に備え、中小企業の競争力を強化する、設備の近代化等をはかっていく必要がございますので、そういう観点から、本来弱い中小企業に対して政府も特別な考慮を払うという考え方でございます。  また一般の設備投資の抑制についてのお尋ねでございますけれども、もちろん設備投資の抑制、これは資本主義自由経済のもとにおいてなされることでございますから、どこまでも業界の自主的な規制を待つこと、この本来の態度は堅持して参りたいと思います。そういう面におきまして、いろいろ行政的な指導が必要でございます。将来の事業の発展等を考え、あるいは自由化に備える、こういうことを考えて参りますと、やはり重点的、選別的にこれを行政的に指導していくということをいたして参るわけでございます。その具体的な方法といたしましては、ただいま産業合理化審議会を持っておりますから、この産業合理化審議会の資金部会におきまして、業種別の選別を十分いたしまして、その協力を得て基本的な方針をきめる、あるいはまた開銀融資を中心にして民間市中銀行の金融の協力を得る、こういう方向で行政指導も強化して参るつもりでございます。そうして産業自身が設備抑制を受けた結果、停滞するというような事態を起こさないように、十分必要な進歩向上、それへの道は開いていくつもりでございます。  最後に物価についてのお尋ねでございましたが、御指摘のように、よほど生産性が向上して参りましたが、品物によりましては相当の価格の低減をいたしておるものがございます。一番はっきりした例は、いわゆる高級消費財と申しますか、これは相当価格が安くなって参っておると思います。一割ないしものによりましては五割、自動車などは五割に近い価格の低減でございます。これなどは合理化の結果であると思います。また同時に、最近の金融の結果から一部換金等の問題もございましょうから、全部が全部合理化の結果ということは言い過ぎかと思いますが、相当の合理化の実が上がっておると思います。あるいはまたすぐ消費に関係するものではございませんけれども、産業の基本資材であるあるいは鉄鋼、機械、セメント、これらの資材等も約一割程度生産性の向上の結果価格を引き下げ得た、かように考えます。  また消費物資等につきまして、最終的な段階等については、最近の物品税の減税等を価格の面に移すことができるだろう、こういう意味で業界の指導をいたしておるつもりでございます。基本には、印すまでもないことですが、生産性向上の利益を、幾らの率にするかは問題があると思いますが、資本、労働、消費者の三者に分配するというその基本考え方の上で、経営者あるいは労働者の協力を得たい、かように考えております。
  41. 床次徳二

    床次委員 次に大蔵大臣に伺いたいのですが、大蔵大臣は間接税の大幅減税を行なわれたのであります。この点に関しまして、消費者の負担軽減になるようにいかにこれを処理せられるか、その具体的と申しますか大臣の御方針を伺いたいと思います。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間接税の減税を、消費者に還元させるために関係方面の指導を、これから強く行なって参るつもりでございます。たとえば酒税につきましては、四月一日から減税額だけ小売価格を引き下げるように、基準価格をそれだけ引き下げることにいたしておりますが、この点につきましては、関係業界も協力して、現在そのつもりで準備をしておるという状態でございますし、そのほかの物品税関係につきましては、昭和三十四年に一部間接税の減税を行なったときがございますが、そのときの実績を調べてみますと、大部分のものは減税額だけはっきりと価格が下がっておりますし、手数料等も値下がりに伴なって、率できまっておるようなものの手数料は下がるというような関係から、減税額以上に末端価格において値下がりしたという事例さえ非常に多いというようなことでございます。結局、現在競争が非常に激しいときでございますので、私どもは減税が必ず還元されるようにという指導は、ひとり大蔵省だけじゃなくて、工業品、農業生産品等をそれぞれ管理している主管官庁と全部協力してこれら業界の指導を行ないたいということを、今関係各省でもいろいろ相談しておるときでございますので、必ず私はこの減税額だけは消費者に還元できることと、今のところは思っておるわけであります。また業界も今、大体そういう協力態勢をとってくれておりますので、この点はうまくいくのじゃないかと思っております。
  43. 床次徳二

    床次委員 これは国民の強い期待でもありますので、ぜひ一つ関係業者も政府に協力さして、その目的を達するようにお計らいをいただきたいと思うのであります。  次に建設大臣に伺いたいのでありますが、数年来、地価の高騰というものは非常なものでありまして、これが投資対象といたしまして一流株並みに取り扱われて参っておったと思うのでありまするが、これが一般物価に及ぼす影響はこれまた少ないものではないと思うのでありますが、地価抑制対策といたしまして、大臣はいかようなことを考えておられるかお伺いしたい。
  44. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 最近の地価の高騰状態は、いろいろ原因があると思いますが、第一には需給のバランスの問題がありますが、そのほかに近来土地が非常に投資対象にされておる。こういうような点にかんがみまして、投資対象、投機的な行為を何か抑制する道を談じなければならない、かようなことを私どもも考えておるわけでございます。これをやりますのには、考え方としましては、税制上の措置とか、あるいは取引の秩序関係でございますとか、あるいは評価鑑定制度育成の問題でありますとか、いろいろあると思います。しかしながら、これらはいずれも私権との関係が非常にむずかしい事情にありますので、建設省としましては、今国会を通じまして宅地制度審議会を設けまして、学識経験者あるいは法律専門家等に入っていただいて、急送に目下構想として考えております事項を具体的に御審議いただきまして、適切な措置を講じたい、こう思っております。  一方、現在の制度下においてできますることとしましては、地方公共団体に住宅金融公庫から融資をいたしまして、地方公共団体の宅地造成をやっていただいております。もう一つは、住宅公団みずからが宅地造成をして分譲いたしております。これらはいずれも利潤を全然含めない宅地の造成及び分譲でありまして、しかも合理的に下水、道路等も整備されて分譲するわけでありますから、一般の取引によってつり上げられておる地価を牽制する一つの方法として、非常に有効であるという考え方に立ちまして、昨年度においても力を入れましたが、今年度は特にこれに重きを置きまして、住宅金融公庫の融資額約四十九億八千万円で、これによりまして百四十五万坪くらいの宅地造成をする、また住宅公団の手による宅地造成、これを三百万坪くらい、そのほかに工業用地九十万坪、こういうような方法によりまして、さしあたり現在の制度下において地価高騰の、ことに宅地不足の牽制策として進めておるわけでございます。  かような点に目下力を入れておりますが、根本対策としましては、いろいろ法律上のむずかしい議論をさばいて、あるいは税制上その他法制上の措置を講ずる必要がありますので、今申し上げましたように、今国会で宅地制度審議会を設置するように御審議をいただきまして、急速にこれを進めて参りたい、かように考えております。
  45. 床次徳二

    床次委員 次に運輸大臣に伺いますが、最近におけるところの大都市の交通事情の波乱は、今さら申し上げるまでもないと思います。この点を含めまして、交通、運輸の非能率というものが中間経費の増大、物資供給の不円滑を来たし、物価上昇の大きな原因になるということにつきましては申すまでもないと思うのですが、これらの対策に対しまして御所見を伺いたいと思います。また通運事業、運賃等の問題に対しまして御所見を伺いたいのであります。
  46. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 都市における交通の混雑、ことに麻痺のような状態を来たしておりますことは、ただいまおっしゃいますように、産業上も大きな支障を与えております。ことにトラック輸送は生産と直接関係を持っておりますが、これらのトラック輸送が非常に効率を低下いたしておるわけでありまして、これが産業に及ぼす影響もまた相当なものがございます。従いまして、都市における全体の交通を緩和するということにつきましては、これは交通取締まりの面、あるいは道路の面、またその他いろいろ関係する省が多いわけでありますが、御承知のように、内閣に臨時交通閣僚懇談会を設けまして、川島行政管理庁長官を中心にいたしまして、関係各省今懸命の努力をいたしているわけでございます。  建設省関係におかれましては、恒久的な対策といたしまして、都市におけるハイウエイを早く作るという問題であります。しかし、これには相当の時間を要します。従って、簡単に、あるいは停留所の位置を変えるとか、あるいはまた歩道を狭あるとかいろいろな方法を今講じてもらっております。また、交通規定の面からも、今いろいろと御承知通りの方策を講じていただいております。運輸省といたしましては、たとえば昼間、都市を通過をしていくというようなトラックは、できるだけ夜間に同すように指導いたしております。これら何か制度的に規制をしたらということで、警察当局と単種別の時間制限について、今具体案を検討いたしているわけでございすます。  トラック輸送につきましては、いわゆる一般の常業のトラック輸送にかかるものと、それから各個人の会社、事業者等が持ってトラックで輸送をいたしておりますが、これらが非常にふえてきております。従って、こういった通運車業、あるいは個人で、いわゆる自家用としてトラックを持っておる、これらを都市の交通の非常に混雑をしている時間を避けて、荷主と相談をしながら、混雑のない時間にあるいは配達をするとか、あるいは輸送するとかいう面も今それぞれ検討し、また業者の中においても検討いたしておりますが、そういう方内で指導をいたしているわけでございます。従いまして、この都市におけるいわゆる通運事業、小運送、これらにつきましては、先ほど申しますように、非常に車両の効率が低下をいたしておりまするので、今日の料金においては非常に困難を来たしております。早晩考えなければなるまいと考えまして、経済企画庁とも相談をいたしておるわけでございます。
  47. 床次徳二

    床次委員 次に、環境衛生関係の料金の値上がりについて、厚生大臣に伺いたいのであります。  最低賃金が設定せられたことは、環境衛生上これはまことに適当なものと思うのでありまするが、同業組合などの申し合わせによりまして、どうも中にはもぐりの値上がりもあるのではないかと思うのでありますが、こういう対策に対しまして、厚生大臣はいかよう考えておられますか。また、その措置対策等につきまして伺いたいのであります。
  48. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 環境衛生関係の料金が最近一般的に仕上がりの状況を示しておりますことは、事実御承知通りであります。私どもとしましても、こり問題についてはいろいろ苦慮いたしているところであります。御承知のように、こういった種類のサービス料金は、人件費がふえるということの影響を一番大きく受ける業態であります。また、いわゆる生産性の向上というふうなことで、コスト・ダウンをはかるという余地もまとこに少ない業種でございますので、ただいまのような経済事情のもとにおきましては、ある程度の値上がりは、これはどうもやむを得ないといわざるを得ない事情にあるように思うのでございます。ただ、こういう際に不当に料金をつり上げるとかいうようなことは、これは極力避けなければならぬと考えます。私どもといたしましては、環境衛生関係の同業組合、業者というものと随時接触を持っていることでもございますので、その仕事の社会性等についても十分理解をしていただきまして、不当な料金の引き上げというようなことは、極力させないように努力をいたしたいと思っております。
  49. 床次徳二

    床次委員 次に、労働大臣に伺いたいと思いますが、過去の経済成長の結果労働需要というものは相当旺盛化しまして、労働市場の改善というものには非常に役立ってきたのでありますが、昭和三十七年度は景気調整の年だとすると、これが雇用面に対する影響というものも相当違うではないかと思うのであります。先ほどもお話がありましたが、中高年令層というものは、どっちかというと失業の状態を来たしておるのでありますが、これらの対策をどういうふうに考えられるかということを伺いたいのであります。なお、若年労働者を中心とするところの労働力不足というものが中小企業、サービス関係の賃金に相当大きく響いてくるのであります。こういうことに対する労働の流通性確保に対する所見を伺いたいと思います。  なお、一般的に申しまして、わが国経済が健全に炎届いたしますためには経営者、労働組合、それぞれ今回は日本経済の建て面しと申しますか、健全なる再建に対しまして十分なる理解と協力を持ってもらわなければならないと思うのでありますが、こういうことに対する労働大臣の御所見を伺いたいのであります。  また、春闘もそろそろ時期になってきておるのでありますが、必要以上に混乱を及ぼすということに対しましては、十分これは戒心を要すべきことではないかと思うのであります。昨年度におきましては、いわゆる春闘のベース・アップあるいは公務員のベース・アップというものが和関連し合いまして、他の労銀の値上がりにも刺激を与えたかと思うのでありますが、かかる労銀の値上がりには、同時に貯蓄奨励ということも考えていくべきではないかと思うのであります。これらの諸点に対しまして、労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  50. 福永健司

    ○福永国務大臣 幾つかの点で御質疑がございましたが、まず、景気調整の雇用面への影響でありますが、お説のごとく、経済成長も鉱工業生産も、確かに伸びは鈍化いたしますのでありますが、過去数年の経済情勢よりいたしまして、労働市場における需給関係は著しく改善されて参っております。従って、全般的にはさしたる心配もなく、ことに年少労働者、技能労働者等は不足を来たしているような事情でありますが、まあ中高年令者等につきましてはなかなか深刻な問題もございます。  ただいまの御質問の第一点の全体に対する影響というものは、ここで伸びが鈍化するということであり、また一面においては、予算面でも公共事業等にも相当費用が増しておるとか、財政投融資も大きくなっておるとかというようなこともめぐりめぐって参りまして、私は雇用面全体については影響はそう大きくない、まずおおむね軽微である、こう見てよろしいと思うわけでありますが、中高年令属等につきましては、労働力の流動化等について、ことに力を用いていかなければならない。また、全体の中にあって、炭鉱等はまた特殊の事情でございます。こういうものに対しましては、適切な施策を強力に講じていかなければならない、こういうように考えておる次第でございます。  若年労働者等が不足するので、中小企業やサービス業において、いろいろ困難な事情のあることも御指摘の通りでございます。この点につきましては、いろいろ今度の予算にも施策を講じておるところは御承知をいただいている通りでございますが、どうも中小企業等に対しましては、よほど思い切った施策を講じていきませんと、若い人そのものが来たがらぬこと等もございますので、集団求人方式その他によりまして、できるだけそちらへも向けるような措置も講じていかなければならない、こうしたことを考えております。  労使協力につきましては、逐年、労使双方が相互の信頼の上に立って、平和的に早期に問題を解決するというような望ましい傾向の方へ向かっては来ておりますものの、まだまだそうでない面もございます。一段と労働教育その他を通じまして、御懸念のようなことのないような方向へ持っていかなければならない、こういうように考えております。  拝聞につきましては、これから先のことでございますが、今申し上げましたように、できるだけ労使双方が相互信頼の上に立って話し合い、平和的にかつ早期に解決していくような方向へ行くことが望ましいのであります。こうした雰囲気の醸成について政府も特段の力を用いていかなければならぬ、こういうように存じております。もとより法律秩序を無視するというようなことが、こういう春闘等の過程においてあることは望まないところであります。そういうことがないことを期待しつつも、万々一そういうことがあります場合においては、適切な措置々講じていかなければならぬ、こういうように考えております。  なお賃金について、昨年の例々引かれてのお話でございますが、公務員一般の労働者の賃金との関係につきましては、公務員のベース・アップ等は、一般の賃金が上がったから、従ってということであります。従って、公務員等が先に立って春闘等を行なってベース・アップが行なわれ、それが逆に一般に御指摘のようなふうに影響していくというふうなことは、話はあべこべであり、そういうことがあってはならぬ。こう思います。従って、私どもも御指摘のようなあべこべの現象がないように、大いに留意していきたい、かように存じております。
  51. 床次徳二

    床次委員 以上、各関係大臣から所管の物価についての御意見を伺ったのでありますが、なおこれを総合ける立場におきまして経済企画庁長官に伺いたいと思います。なおその際あわせてお尋ねいたしたいのは、三十七年度の物価の見通しは、卸売物価は低下するが、消費者物価は上がることになっておるのでありますが、この消費者物価の上昇の要因というものが何であるか。次に、景気後退期にかかわらず、消費物価が上昇するということは、国民生活から申しますと決して好ましいことでない、一そう苦しくなる傾向にあるのではないかと思うのであります。特にこの点は、低所得者に対する影響が大きいのでありますが、この点いかよう考えておられるのか。こういうことを勘案されまして、一つ積極的な物価対策——物価の総合対策というものもぽつぽつ紙上に見えておるのでありますが、こういうことに対する長官の御意見を伺いたいと思うのでございます。
  52. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 本年度国際収支を合わせて参りますことは、一つの大きな命題でございますが、同時に現在起こっております物価の騰貴というものを押えて参らなければならぬのでございまして、その点は卸売物価の場合でも同じでございますが、特に国民の日常生活に影響のございます消費者物価の高騰に対しては、それが著しいだけになおさらわれわれは強力な手を打って参らなければならぬと思うのでございます。来年度の予想におきまして、二・八程度の消費者物価の上昇を見ざるを得ないような予想をいたしたことは残念でございますが、できるだけその以下にとどめるように諸般の施策考えていくべきだと考えておるのでございまして、御質問のございました要因はどこにあるかと言いますと、衣料費等につきましてはそう高騰の情勢にはございません。むしろ横ばい、あるいは若干弱含みと考えられますけれども、住居費あるいは雑費、食料費等が引き続きやはり増加の傾向を保つのじゃないか、あるいは今年上昇した物価のままの横ばいになっていくのじゃないかというふうに予想されるのでございまして、これらの点に対する諸般の施策をとって参らなければならないと思います。そこで私ども企画庁といたしましても、できるだけ消費者物価の実態の調査をいたします。特に消費者物価というものは、単に指数の上における変動以上に、各家庭における主婦その他の身に感ずる影響というものがあるわけでございまして、そこらにつきましての実態の調査も十分いたす必要もございますので、企画庁としては婦人団体等に、若干ではございますが調査費等も出しまして、主婦の家計節における影響というものに対する調査をしていただきまして、それがわれわれの施策の上に反映するように実態の調査をお願いをいたしておるわけでございます。そういうようなことで、われわれとしては各省にもそれぞれお願いを申し上げまして、そうして歩調をそろえて、総合的にこれらの施策を続けて参りますことが必要と思うのでございまして、今日では各省それぞれ所管大臣が物価の問題を重要視して、そしてそれぞれ各省の施策の中に織り込んでやっていただいておりますので、それらのものの結果を総合してやって参りたい、こう思っております。むろん物価の問題は、当面の問題であると同時に、恒久的にも経済が成長発達して参りまず過程において、当然考えて参らなければならぬのでございますから、やはりこの問題に対して、企画庁といたしましても、将来はいま少しく企画庁自身の組織の上にも、何らかそうした機構を持つことが必要ではないかと考えますが、今日におきましては、できるだけ現状の機能を利用いたしまして、そして物価の総合対策を立てて参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  53. 床次徳二

    床次委員 なおこの物価の意義に対して、過般長官は演説におきまして、各所に民間の協力を得てという表現があるのであります。現在もちろん統制経済をやっておるわけではないのでありまして、はたして実際としてどの程度の効果が民間の協力ということによってあり縛るか、この点長官の所見を伺いたいと思います。また行政指導といいましても、民間協力を得られるだけの条件をあらかじめ準備しなければならないのだと思います。いたずらに官僚独善ということになってはこれはいけないので、厳に避くべきものだと思う。この点いわゆる官民あるいは関係者全体の協力が必要ではないかと思います。英国におきましては、最近、長期経済計画実施のために、国家経済開発委員会とでも申しますか、これを発足せしめまして、官民、労使等の協力を得て長期の経済振興に努めておると思うのでありますが、わが国といたしましても、自由経済のワク内におきまして所期の目的を達する。特に本年におきましてはなかなか経済指標の目的達成に対して努力を要するときだと思うのでありますが、これに対していかにして対処していかれるのでありますか、この所見を伺いたいと思います。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価の問題は、政府の内部においても歩調をそろえて参らなければなりませんので、従って、まず政府部内の歩調をそろえる意味におきまして、消費者物価対策連絡協議会というものを作りまして、各省の御協力を得て、そしてやっておるわけでございますが、民間との協力ということは当然考えて参らなければならぬ。先ほどちょっと触れましたけれども、主婦連等に対する調査費等を出しまして、そして実態の調査、実際の家計簿の赤字がどういう推移になっているかという調査をお願いすることも、民間に対する協力の一端として企画庁としてはお願いをしておるわけなんであります。この点は、広く一般の消費者の立場からもいろいろ議論をしていただかなければなりませんし、また消費自体の問題についても考えて参らなければなりませんので、国民生活研究所を作りまして、そうしてこの国民の消費生活がいかようにあるべきかという基本的な問題をまず考える必要もあるので、今回そういうような発足をいたしておるわけで、予算等についても御審議を願うことになっておりますが、その他一般に、間接税の引き下げでありますとか、あるいは合理化によります耐久消費財を中心としたものの値下げというような問題については、やはり民間経済各方面の方々とも連絡協調を保ちまして、物価の安定自体がやはり産業の発展に非常な重要な要素であるということを認識していただきまして、そうして産業界各方面の御協力も得なければならぬと思うのでありまして、そういうことについては、われわれ今後とも極力何らか皆さん方の協力を得るような方法を考えて参りたい、こう存じております。
  55. 床次徳二

    床次委員 次に、地域格差是正の問題についてお尋ねしたいと思うのですが、大体今日までの経済の成長の状況からいきまして、とかく地方格差は増大するおそれがあるのではないかと思います。従って、これを是正するためには、新予算におきまして公共事業費が相当増加しておりまするが、この実施において十分な弾力性を発揮いたしまして、可及的格差是正に寄与するべく、公共事業等の実施に弾力的な運営をせらるべきだと考えておるのであります。反面におきまして、地方開発には、後進地の開発、あるいはその他の法律関係施設がぼつぼつできておりますが、総合的に効果があがるように運営すべきじゃないかと思うのです。せっかく、全国総合開発計画、地方地域開発計画、後進地の工業開発促進法、あるいは新都市建設も準備せられておるのでありまするが、こういうようなものが十分に相寄り相待って地方格差是正ができるような運営が特に必要である。とかく、健全財政調整時代にありましては、地方が犠牲になりやすいのが今までの例であった。特にこの点はことしは考慮すべきじゃないかと思います。この点、長官の御意見を伺いたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 経済が健全に発達して参りますしにおいて、地方的な格差がありますことは、総合的な日本の経済力の発展には相ならぬわけでございまして、従って、全体として、単に大都会中心だけで日本の経済、文化が伸びるばかりでなく、各地方においてもそれぞれ伸びて参らなければ総合の力が出てこない。従って、今日、国土総合開発法を初め、各地方におきます地域開発の問題等につきましても、国会でもそれぞれ法案を作られまして努力をしておられるわけでございまして、われわれといたしましても、当然これらの総合開発計画並びに各地方開発計画に即応して政府としては仕事をして参らなければなりませんし、それにこたえるようにして参らなければならぬと思います。特に、御承知通り、数年社会資本の充実ということが存外おくれておりましたので、この機会にそういう面についての予算措置を十分して、そうして地方開発の問題を取り上げて参らなければならぬと思います。今回の予算においてもそういう点について多分の留意をされておるのでございますから、これを適正に活用いたしまして、そうして、各地におきます産業の格差、あるいは経済格差、文化的な格差国民生活自体の格差をできるだけ解消する。それには、道路も必要でございましょうし、港湾も必要であるし、あるいは新しい産業の誘致の問題に対する助成も必要でございます。そうした面について総合的な施策をして参ることが必要だと思っております。そういう点について、政府は一そうの努力をいたすつもりでございます。
  57. 床次徳二

    床次委員 最後に総理の所信を伺いたいと思うのです。  ただいままでいろいろ論議いたしましたことはきわめて一端ではありまするが、ことしの予算は国際収支の均衡、健全財政を重要目標としておりますが、この達成を期する道は決して安易なものではないと私は思うのです。しかし、御答弁がありましたごとく可能ではある。しかし、そのためには、政府自体があらゆる努力をすると同時に、国民の協力ということが必要だ。最初に私が申し上げましたが、この点は、やはり、国民公共心と申しますか、愛国心とでも申しますか、そういうものの高揚と、同時に、政治に対する国民の信頼というものがなければいけない。これによってわれわれは順調な発展を期待することができると思うのです。従って、政府におかれましても、よろしく政治の姿勢というものを正しくする、これはかねがね主張しておられたのでありますが、さらに一そう一つこれに努められると同時に、国民の協力を得べくあらゆる施策を講ぜられまして、正しい民主政治福祉国家の建設に邁進すべきだと思うのですが、重ねて総理の御所信を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点、まことに同感でございまして、その線に沿って努力して参ります。今後も一そう努力を続けていきたいと思います。
  59. 青木正

    青木委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十九分開議
  60. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十七年度予算に対する質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  61. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、今非常に問題になっているタイ特別円の問題、また、すでに調印をいたしましたガリオア・エロア返済に関する問題、あるいは海外移住等の問題につきまして、総理大臣その他の関係大臣から一つ詳しく政府の所信とその内容をただして参りたいと思うのであります。  最初にタイ特別円の問題について伺いますが、これはきのう与党の田中委員も触れられておりましたけれども、その答弁に当たりました池田総理大臣あるいは小坂外務大臣のお答えの内容によりましては、一向その交渉の経過やその返済の方法についての具体的な内容がはっきりいたしておらないのであります。おそらく、この問題について今日まで政府の申してきたこと、あるいは三十年八月に協定が発効いたしましたその内容等を見た国民は、非常に深い疑義を持っていると思うのであります。従って、私はその経過からまず池田総理にお伺いをいたしたいと思うのであります。  本問題は、申すまでもなく、すでに三十年の七月にタイ側との間に協定を結び、その協定内容によりますと、第一条においては、五十四億円をタイに支払うということを取りきめておるのであります。しかも、この五十四億円につきましては、三十四年に日本側は完済をいたしております。ところが、第二条の、九十六億を投資及びクレジットの形式で供与するというこの取りきめについては、今日まで実行せられておらないのであります。その理由は、これまた申すまでもなく、二条の解釈について、調印後タイ側はこれは無償供与であると主張して譲らないからだといわれておるのであります。まことに私どももこのタイ側の主張に対しては理解できない点が多々あると同時に、非常にこの協定締結当時のいきさつについて深い疑義を持っておるのであります。なぜなら、三十年八月発効の特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定を読めば、その表現については何ら疑問をさしはさむ余地はございません。投資及びクレジットの形式と、はっきりこれはうたわれておるのでありまして、この文句からは一点の疑義も私はないと思うのであります。従って、九十六億というのは、あくまでもこれは有償の供与である。私どもはこの当時の協定を支持せざるを得ないのでありますが、われわれのみならず、このことはあたりまえなこととして、今日まで、締結当時の鳩山内閣はもとより、その後の歴代内閣、すべてタイ側の無償の提案については絶対不可能であるとこれを拒否し続けてきたことがそれぞれの機会に明らかにせられておるのであります。同時に、国会における政府の答弁を見ましても、すべて、第二条の解釈については、明らかにこれは無償ではなくて有償であるということを言い切っておるのであります。たとえば、これらのいきさつについて、昭和三十二年の六月には、前岸首相が東南アジアに訪問の際にピブン首相との間にこの話のかわされたときにも、はっきりこれを拒否しておるのであります。あるいは、同じくその年の六月の末にナラティップ外務大臣がわが国を訪れた際におきましても、当時の石井副総理や、また当時の池田大蔵大臣、同様これを拒否しているのであります。こういうような経過を追って今日に至っておるのでありまするが、ところが、この経過をどういうことか無視して、急転直下、今回池田総理のタイ訪問を機会にいたしまして、サリット首相との間に、全額、すなわち九十六億の全部を無償で支払うという約束を向こうと取りきめて、これを解決しようとしているのであります。このことは、三十年協定の趣旨、あるいはその後の政府の態度、またわれわれ国民の受け取り方、こういうものから見ますると、全く信ぜられないことであって、まさに日本側の百パーセントの譲歩ではないか。また、政府としては百八十度の転換ではないか。一体、そういうふうな譲歩、そういうふうな方針の変更に至った経緯というものは何であるか、具体的に一体その理由というものは何だということをこの機会に明らかにしなければ、とうてい私は納得できないと思う。昨日田中委員に答弁がございましたけれども、あの程度のことでは、何らわれわれはここまで変更するに至った理由には当たらないとしか考えられない。具体的に総理から承りたいと思います。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 タイ特別円の問題につきましての経過はお話の通りでございます。昭和三十年に、タイ国と日本国と特別円に対しまする交渉締結を見たのであります。そうして、その第二条には、九十六億円を投資またはクレジットの形式によって供与する、こういうことになっております。従いまして、お話のように、従来しばしばこの問題で交渉がありましたけれども、われわれはこれを譲らなかったのでございます。しかし、最近の状況から考えまして、五十四億円はすでに支払いましたが、その後において、九十六億円の問題が両国の間に難問題として、常にこれによって交渉を重ねても解決がつかない、これをこのままにほうっておくことが日本の外交として適当であるか、また、従来からの日・タイ関係から考えていいかという問題でございます。私も、お話のように、昭和三十一年から二年の初めにかけまして大蔵大臣の職にありますときに再三交渉いたしましたが、どうしても解決つきません。従って、最近に至りまして、タイ国との関係を考慮の上、九十六億円をある程度減額させて払ったらどうかということをわれわれは寄り寄り協議をしておったのであります。私は、交渉に当たります前に、これを減額してやろうと、こう申しましたところ、向こうでは、それは困ります、この九十六億円というものは、われわれはもらうことに考えておると言う。いろいろ交渉を重ねましたが、結局、向こうの言い分は、向こうは戦争中に相当の金額の物資を供出したのであります。日本に売りました。そうしてその代金は払ってもらったが、なお当時の金で十五億円に相当するものがあるのであります。そこで、その十五億円の内容につきまして検討いたしましたところ、これは今までたびたび金で返しております。金で返しておりますが、まだ十五億円のうちに金で返すべきものが四千四百万ポンドあるのであります。この分を金で返そう、そして、その他英国に返すべき——英国がタイにイヤマークしている〇・五トンの金も返します。その他のものは、やはり戦争中の一円は今の一円である、こういうことで話をしておったのでございます。しかるところ、向こうでは、あの当時の十五億円というものは、今の値段で換算すれば千三百五十億円になる、あの当時の物の値段、千三百五十億円を日本に要求すべきだけれども、これは少し大き過ぎるからということで、当初は向こうが四掛の五百四十億円に言ってきたのであります。それでもいかぬ、こういうので、結局百五十億円にいたしまして、そして、今の金の分を換算して、昔の一円は今の一円と同じようにして五十四億円、その他九十六億円、こういうのですが、向こうの感情では、ものを供出させられて、その代金を日本が払うと言いながら、その金額を払うのでなしにタイが借金になる、こういうことはわれわれタイ国人として耐え切れないのだ、これが向こうの言い分であります。だから、向こうの人はそういう感情になりましょう。相当多額のものを買い取られて、そしてその支払いとして一応百五十億円にきめた、そして、現金で払った残りは貸付の格好で、利益があったら払ってやろうというのでは、われわれタイ国人の感情に合いません、日本はここまで来ておるのだから、何とか将来の日・タイ関係考えて九十六億円を一ぺんに払ってくれ、それはできない、こういうので、実は交渉に入りまして、そういうことなら、将来の日本とタイとの関係等々を考えて、そして、昨日も申し上げましたごとく、タイという国と日本との関係は御承知通りでございます。そうして今も日本人が千人ほどおります。そして日・タイ関係は非常によくいっておるのであります。この九十六億円の払い方によって、将来のタイと日本との外交関係が冷却することは、日本としても東南アジア政策上耐え切れません。ことに、タイと日本との貿易関係は、十四、五年前は、あるいは十年くらい前までは、輸出入はバランスしておりましたけれども、三、四年前は、向こうが日本へ輸出するものが二千数百万ドル、日本から向こうへ出すものは八千万ドル、最近に至りましても、まだ、向こうの五、六千万ドルの日本への輸出に対しまして、日本は一億二千万ドル程度のものを輸出しておるのであります。とにかく、毎年五、六千万ドル、六、七千万ドルの日本の輸出超過です。こういうことから考えて参りますと、私は、東南アジアにおけるわれわれ活動の基点であります日・タイの関係の過去と将来を考え、そして、タイとしてはどこの国よりも日本との貿易が一番多い。アメリカやイギリスとの貿易額よりも日本の貿易額が一番多い。しかも輸出に対して輸入が倍額になっておる、五、六千万ドルも違う。こういう実情を考えますると、私は、大所高所より、一ぺんには払えませんが、これを八年間にしよう、しかも、八年間も、当初額は十億円にして、一番しまいを二十六億円、日本の財政のこともあるからこれでいきたい、こういうので妥結を見たわけであります。現在価値にするとなんぼとかかんぼとか言いますが、私は、一ぺんに払うよりも、そしてまた、三、四年前の計画では、九十六億円の実際の利益をタイが享受し得るように、あるいは石油の精製工場とか、いろいろな工場を計画いたしました。百億とか百五十億出して、そして向こうで事業をして、その分の利益で九十六億円をなしくずしにしようかという考え方も私は出したことがある。そういうことは、せっかく金を九十億も百五十億も出して、タイ人の好まないような日本独善の考え方でいくよりも、向こうの好むようで、しかも日本がやり得るような格好でタイと日本との関係をよりよくすることが私は外交であると考えましてやったのでございます。事情は以上の通りでございます。
  63. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理大臣、るる述べられました前段の理由というのは、これもおそらく外務省が出した資料だと思うのですが、ここに詳しく書かれておるわけです。あなたが今言われた、タイ側が当時の特別円の処理についてこれをポンドに換算して、ポンドとの換算率から千三百五十億、これを四割に見積もって五百四十億と踏んで要求して来、それが最後に百五十億というものについて五十四億と九十六億の借款ときめたというのは、これは三十年の協定を結ぶまでのいきさつではありませんか。私が伺っておるのは、はっきり両国が合意に達した協定が、初めからその解釈が異なり、しかも今度の解決方法というのはまるきり向こうの言い分通りですね。日本側の主張、日本側の意向というものはどこにも残っていないような解決方法をしたではないかと私は言っている。そこまで急転直下今までの主張をおろすには、それ相当の理由がなければならぬでしょう。その一体具体的な理由というのは何でしょうかと、私はこう聞いている。あなたが言われたのは、タイとの特別の関係であるとか、タイとの輸出貿易その他の問題が現状はどうあるとか、言われているのはすべてこれ一般的理由です。そういう要素を織り込んで、鳩山内閣当時あの三十年協定というものができたのではありませんか。そんなことを私は今さら尋ねておるのではない。なぜ一体今度そういうような譲歩をしたか。九十六億というのは、国費総額から見ればあるいはあなた方これは少ない額と言うかもしれない。年間十億の支払いは少ない額と言うかもしれない。しかし、国民にとっては、私は十億というのは決して少ない額ではないと思う。そういう意味で、こんなラフないわゆる協定、まるきり完全にシャッポを脱いでしまうようなそういう妥結方法を得々としてやったということは一体何か、その理由を具体的に聞いている。  そこで、伺いますが、何か伝えられるところによりますると、きのうも田中さんから質問がございましたが、どうも私は三十年協定当時のいきさつがくさいと思う。何か向こうにこうなんだと思い込ませるような、そういう内輪話か、あるいは向こうに信じ込ませるようなそういういきさつがあったのではないか。言いかえてみれば、何かそういう密約めいたものがあったのではないかと疑われる節があるのです。総理はこの点についてどうお考えになりますか。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、タイ人の気持を見、そして将来のことを考えて、大所高所からきめた、こう答えておるのであります。タイ人の気持の分は、三十年の交渉の経過等もタイ人は知っておりますから、それを申し上げたのであります。タイの人の気持はこうだということ。  そうして、また、三十年のこの日・タイの協定につきまして、何か密約とかなんとか、私は全然存じません。そういうことがあろうとは私は思いません。
  65. 辻原弘市

    ○辻原委員 密約がないとおっしゃるのでありますが、何にもそういうことについて相手に思い込ませる材料がないのに、何で一たん取り結んだ協定に向こうがそこまで固執するのか。私は協定が結ばれておらなければこんな質問は申し上げません。しかし、いやしくも、国と国との間で正式に、いろんな経過があったが、お互いにそのことを了解して、ちゃんと国際法上有効な取りきめを行なっているのであります。なぜ、その取りきめを行なっているのに、その条文の解釈について全く常識では考えられない根本的な相違を来たしておるかというところに、私は非常な疑問を持つわけです。条文は実に簡明であります。実にはっきりしている。きのう小坂さんは、投資及びクレジットの形式ということに若干の表現上の問題がある、こういうふうなことを答弁されておりましたが、その語意から受ける内容として、常識を持っておる人間ならば、その言葉からどこにも疑義が出てくる余地はないと思う。明らかに、明瞭な文句で表現せられておるではありませんか。なぜかというに、総理はまたタイの国民感情と言われました。タイの国民感情というのは決して今日起きたものではございません。戦後、三十年協定に至るまでも、国民感情というものはずっと持続されてきておるはずなんです。だから、今さら国民感情を勘案してこうきめたということは、これまた私は理由にはならぬと思う。一体、この第二条の解釈について、向こうは具体的にどういう根拠をあげてこれは無償だと主張しておるのですか。それとも、第二条については、この協定を認めた上、あらためて再交渉という形においてそのことを申し出ておるのか。その辺の経緯をいま少し明かにしておいていただきたい。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 第二条の解釈につきましては、御承知通り、われわれはこの通りで突っぱっておったのであります。向こうは、私の聞くところでは、やはり、初めはもらうのだというふうに解釈しておったようです。それからわれわれが説明をどんどんして参りましたので、向こうは、もしそうだとすればわれわれが間違っておったかもしれません、しかしわれわれはもらうつもりでおるのですということで、その理由は先ほど申し上げた通りであります。十五億円に相当する焦げつき債権を返すといってまた債務を負うということは、われわれは耐え切れない、これが向こうの感情であります。これは、協定を結びましたが、向こうは履行しない。履行しないのは理不尽だと言うのは理屈でしょう。しかし、向こうが、どうぞこの問題については日・タイの関係等々からわれわれの方に対しましてこれを返してくれ、こういう新しい要求で、われわれが間違いだったということを向こうで言うときに、間違いは知りませんといっては、このままでタイと日本との関係がどうなるかということを考えていただきたいと思います。  先ほど申し上げたような理由で、私は、大所高所から、日・タイ関係、その他東南アジアに対する日本の立場等から考えまして——この際九十六億円一ぺんには払えません。もちろん、国民の税金でございますから、少なくする方法を考えなければならぬ。私は、少なくする方法で、いわゆる現在価値としての九十六億円より相当低い額にしようというので、そういう年賦で、しかも先に大きくするようにしていったのであります。
  67. 辻原弘市

    ○辻原委員 将来の日・タイ関係云々と言われておるのでありますが、もちろんわれわれもタイ国との親善関係を望みますし、また経済提携の発展もこれは希望するところでありますけれども、しかし、今の総理言葉をかりて言うならば、一たん取り結んだものを、おのれ勝手に解釈をして、一方的にそれを履行しないというこの理不尽なやり方に対して、何ら相手方にその反省を求め譲歩さすことなくて、すべてその責任は日本国民が税金でもって払うタイ特別円処理の支出金という形に帰してしまうことは一体どうか。それはタイとの問題においてはいいかもしれません。しかし、国民が、そういう理不尽なことまでも聞かなければならぬのか、それだけしかとるべき手段がなかったのか、私は政府に対してそう追及するだろうと思います。私もそう言いたい。極端に言えば、相手が履行しなければ、たとえば第一項の問題だって、すらすらすらっと払う必要もないということも言える。あるいは、協定の重要な部分になっておるこの第一条、第二条、この二つの項目のうち半分が履行されないとなれば、あとの半分はわれわれだって考えますぞということがあってしかるべきだと思う。それが自主的な国際協定の場合における交渉のあり方ではないか。もちろん、タイとの将来の問題、親善関係、そのことは当然でありますが、それと、理不尽な言い分を聞いて完全に日本が譲歩することは同一ではないと私は思う。いま一度総理にその点をお伺いしたい。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 そこで、私が経過をお話ししたのでございます。もともとこの金は、戦争中日本が徴発した徴発分の代金でございます。そして、われわれの分で、これが現金で直ちに払わなければならぬという分は払っております。三十四年までに払っております。その残りの九十六億円というものは、協約を結びましてから六年かかってもなお何ら解決がつかないのです。将来このままでつくかと言ったら、つきません。そこで、私は、先ほど申し上げましたように、協定を結んでからももう六年、戦争中から考えますと十数年、二十年にもなっておる、これを考えたときに、昭和三十七年から十億円ずつ払うということ。この債務というものは二十年前の債務だ。しかも、明らかに昔の一円が今の一円ということの原則を立てながらやるというときに、九十六億円を直ちに払ってくれという向こうのことも、それは、二十年前、十五年前の債務ならば、直ちに払ってくれと言うことが当然でしょう。それを私は年賦にする。そして将来タイと日本との関係を他国よりもよりよくする。そして日本人に対します待遇その他いろいろな点で協調関係を結んでいく。大所高所から考えまして、九十六億円の二十年前の債務、そして協約が済んでから六年も経過してそのままでいっておる、それを考えますときに、一ぺんで払うことはやめて、八年間で、しかもおしまいに多くすることならば、現在価値というものは非常に少なくなりますし、私は適当であると考えたのであります。
  69. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうも何回総理から伺いましても、急直下方針を変更した具体的理由というものはお述べにならない。  そこで、総理、ちょっとお伺いいたしますが、三十年協定の際に、タイ側の顧問的役割を果たしておったといわれるリップスという米人弁護士について何か聞かれたことがございますか。これは三十年協定の際にタイ側について向こうの顧問的役割を果たしたといわれておる。聞かれておりますか。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 その当時政府におりませんもので知りませんが、何か外人弁護士が向こうの顧問であったということは、うすうす聞いております。会ったこともございませんし、名前も存じません。
  71. 辻原弘市

    ○辻原委員 当時政府におられなかったので詳しいことは知らないということでありますが、大蔵大臣、外務大臣、このことについてお聞きになっておりますか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は全然聞いておりません。
  73. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理大臣のお答えと同じでございます。
  74. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は不確かなことを申し上げておるのではない。これは、明らかに、大蔵省の中だって、外務省の中だって、知っている人がずいぶんいる。また、その人と現に話した人がおるわけです。だから、総理はあとで、そういう名前は知らぬけれども、そういう顧問弁護士がおったと言われておる。しかし、これはその衝に当たって三十年協定の重要なポイントを握るといわれておる人なんです。そのことを大蔵大臣も外務大臣も何も知りませんということで済まされますか。全然知りませんか。大蔵大臣、もう一ぺん御答弁を願います。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は全然知りません。
  76. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御質問は、その人のことについて知っておるかということでございますれば、私は知りません。しかし、今御質問の中に、その当時に外務省にいた人がおるだろうということで、それはおりますから、その人から答弁いたさせます。
  77. 中川融

    ○中川政府委員 サージ・リップスという人物は、米国籍の法律家でありまして、この当時、このタイ特別円問題を扱うタイ外務省の法律顧問としてワン・ワイタヤコン外相と一緒に日本に参って、日本の政府と交渉した人物でございます。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 おかしいではありませんか。今政府委員の答弁によると、たびたび日本に来て日本政府と交渉した人物であると言われておる。それを、今度のタイ特別円の再協定を取り結ぶ際に、総理大臣も外務大臣も大蔵大臣も全然知らぬとは、一体何ですか。そんなばかなことがありますか。そんな答弁がありますか。
  79. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私がその人について知っておるかということですから、私は知りませんけれども、当時の局長がおりますから、それから答弁をさせた次第でございます。
  80. 辻原弘市

    ○辻原委員 私が総理にお尋ねしたのは、総理がその人とお会いになりましたかとは尋ねていない。大蔵大臣、その人にお会いになったかとは尋ねておりませんぞ。外務大臣にもしかり。三十年協定の際にタイ側について顧問的役割を果たしたリップスなる人物にづいて何か知っておりますかと私は聞いておる。それを知らないとあなたは言われたじゃありませんか。私はあなたが会ったかとは聞いていない。だから、もう一度答弁して下さい。あなたはあらかじめその人物について知っていたのですか。
  81. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういう御質問でなかったように思いましたので、さようにお答えしたのです。私は、そのリップスという人ですか、そういう人についての知識は実はないのであります。しかし、そういう人が顧問として来たのかどうか、こういう質問であれば、それはまたお答えのしようがあると思います。
  82. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、あらためてお伺いいたします。そのリップスなる人物は、当時三十年協定の折に日本にもしばしば来て政府と交渉したと今言われておりますが、どういう役割を果たしたかということについて、外務大臣の知っている範囲でお答えを願いたい。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そのリップスという人は、当時のワン・ワイタヤコン外務大臣ですね、この人の法律顧問としてこちらへ来て、そして特別円の協定の折衝に当たったということしか知りません。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 当時そのリップスと主として交渉に当たった日本側の責任者、あるいは代表とでも言いますか、それはだれであったか。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、この署名は当時のタイの大使の太田一郎君がいたしております。なお、当時の外務大臣は重光さん、大蔵大臣は一萬田さん、総理大臣は鳩山さん、こういうことでございます。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう少し具体的に私はお伺いをしたいのでありますが、当時の総理大臣は鳩山さんで、外務大臣は重光さんであったことは、私も一応控えております。私がお尋ねいたしたいというのは、主としてこのリップスと交渉に当たった外務省の責任者、日本側の責任者は一体どなたであったかと伺っておるのです。それはだれであったか。
  87. 中川融

    ○中川政府委員 当時、リップスは、単独で参ったこともございますし、ワン・ワイ外相についてきたこともあるのでございます。単独で参りました際は、当時アジア局長でありました私がリップスと折衝いたしました。ワン・ワイ外相についてきましたときには、重光外相、一萬田蔵相等とワン・ワイ外相が折衝したのでありまして、その補佐としてリップスは仕事をしたわけでございます。
  88. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、当時のいきさつを少しくこの国会の場で私はお話を願いたいと思うのでありますが、当時の重光外務大臣も、お尋ねするに現在すでにこれは故人になられております。一萬田さんは政府の当局者ではございません。そうすると、それに立ち会った中川条約局長がそのいきさつについて私にお答えになるということに相なるのでありますが、政府としてそれでよろしいか。
  89. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 けっこうでございます。
  90. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、条約局長に伺いますが、このリップスは、今あなたも言われたように、また小坂さんも言われたように、向こうの外務大臣の法律顧問としてかなり日本との往来も激しく、当時の日本の首脳部とも相当会談をした重要な人物であります。この人物との間に特別円の問題についてもかなり突っ込んだ話し合いをしたと思われるが、そういう話がございましたか。条約局長に伺います。
  91. 中川融

    ○中川政府委員 事務的な話はリップスと私としたことが非常に多かったのでございすます。
  92. 辻原弘市

    ○辻原委員 政治的な話は、リッブスはだれとしましたか。
  93. 中川融

    ○中川政府委員 政治的な話は、向こうの外相がこちらの外相、大蔵大臣等々としたわけでございます。
  94. 辻原弘市

    ○辻原委員 その際にリップスは同席をいたしましたか。
  95. 中川融

    ○中川政府委員 政治的な話の際は私は立ち会いませんので、リップスがワン・ワイ外相に同席したかどうか、実は私は直接存じません。同席したこともあり、同席しないこともあったと思います。
  96. 辻原弘市

    ○辻原委員 けっこうです。だいぶ話がわかって参りましたが、結局、ともかく、リップスという人物が、この日・タイ特別円の処理に重要な役割を果たしたということは明確であります。ただ、遺憾ながら、政治的話をしたといわれる当時の日本側の責任者が、今日ここにおられないので、その点ははっきりいたしませんけれども、私は、日・タイの問の三十年協定についての解釈をめぐっての受け取り方の相違等は、やはり、そういった第三者の介入というところにも非常に大きな原因があったのではないかと実は想像しておるのであります。リップスなる人物がタイに伝えた日本側の異義、このことが誤って伝えられておるのではなかろうかといわれている。そういういきまうについては、外務大臣、どうお考えになりますか。全然なかったとここではっきり言われますかどうですか。
  97. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当時の状況は私も実は存じませんので、憶測をたくましゅうすることもいかがかと思います。私は、総理大臣がお答えになりましたように、密約のようなものはなかったというふうに存じております。
  98. 辻原弘市

    ○辻原委員 当時のそういういきさつは詳しくは知らない、憶測でものは言いたくないという話でありますが、私は、これは重要なポイントだと思います。少なくとも今回のあらためてこの協定を結ぶについては、当時のいきさつを——これは、総理だって、外務大臣だって、大蔵大臣だって、さっきから言われた通り、その当時はおられないのですから、詳しいいきさつはわからない。外務省だって、会ったのは中川条約局長だけだと、こう言う。ということになれば、詳細にその当時のいきさつ、経過というものを外務省は調査する責任が私は当然あると思う。一体、リップスについてそういう調査を具体的にやりましたか。その点を外務大臣から伺います。
  99. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうこととは別に、私ども外交をいたします者は、やはり前向きに将来の問題を非常に大事に思っておるのであります。総理大臣からお答え申し上げたように、現在、日・タイの関係は、この特別円の問題を動かさないと将来幅広の展開が望めない、こういう状態でございまして、とにかく、この問題について日本側の主張を六年にわたって繰り返したのでありますが、解決いたさないのであります。従って、大所高所に立って、タイ側の気持も十分聞いてこれを解決した、こういうことでございます。
  100. 辻原弘市

    ○辻原委員 日本側が断じて譲らぬと主張しておった第二条に関する当時のいきさつであります。そのことの経過が判然としないで、私は、今回の九十六億支払うというあらためての取りきめをやられたということについては、これは何といっても外務省それ自体の調査その他に対して非常に不十分な点があったということが後日必ず問題として起きてくると思う。そういう意味で、今前向きだ、うしろ向きだとか言われておるが、そういうことではなくて、なぜ事態というものを正確につかんで交渉に当たらなかったかと言っている。私はあらためてこれは外務省に要求したいと思う。一体リップスなる人物は今日どこにおるのか、また、そのことについて正確な調査をする意思があるのかどうか、このことを一つもう一度外務大臣に伺いたい。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 リップスという人が、この特別円の問題は、ああいうふうに書いてあるけれどもやったというふうに何か言ったのではないか、こういう御想像に基づいての質問でございますが、どうも、さような話は、先ほどからお答えしておりますように、ないと承知しておるのでございます。ただ、問題は、タイ側では、あの第二条については、自分らはもらったものと解釈するのだ、こういう主張を堅持して譲りませんので、今回その問題を解決した、こういうことになっておるわけでございます。
  102. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はそういうような情報を持っている。ところが、それをあなた方政府としては、そういうことは万なかったであろうという答弁しか今できてない。だから、私の言うのは、あったかなかったか、一体どういう経過に基づいてリップスが向こうにどういう真義を伝えたか、そういうことについての調査をする必要があるということを言っている。政府はすぐこの私の質問に対して正確なお答えを願いたい。   〔発言するもの者多し〕
  103. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君、総理大臣から答弁がございます。聞いていただきます。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 当時の経過でいろいろな想像を加えるよりも、あの条約にわれわれは承認を得たのであります。これによって将来のことをきめなければいかぬ。しこうして、その協定調印につきまして、向こうが異議を申しておる。われわれはふに落ちません、納得できません、調印しながらこういうことを言い出した。その善悪につきましては、われわれはいろいろ考えなければなりません。向こうが承服できないという理由は、今私が申した通りの理由を私には申し述べておる。その言い出したもとは、そのまたもとはということよりも、私は、今回サリット首相との話は、そういう論拠に基づいてやったのであります。従って、三十年協定につきまして今度変更を加えることがいいか悪いかということは、国会において御審議願いたい。私の気持はそういうことで話し合いをつけたのであります。
  105. 辻原弘市

    ○辻原委員 国会審議をしてもらいたいと言われるが、審議をするために私は印しておるのであります。審議をするために質問をしておるのであります。常識上、一たん協定したものについて、今総理が言われたが、私が先ほどから再三言っておるように、一たん合意に達しておきながら、その直後からまるきり正反対の受け取り方をするなどということは、およそ普通の常識の場合にはないと私は言っておる。一体なぜ向こうがそう受け取ったのだろうかということを追及しなければ、向こうの主張の根拠そのものは明らかにならない。そのことが明らかにされれば、首相が決断をされて九十六億、あるいは私どもも、やむを得ない、やむを得なかったものと判断するかもしれません。しかし、なぜ向こうがそこまで固執したのか、そういう受け取り方をしたのか。あるいはそれは誤解であったのか。あるいはそれが日本側の何らかの責任において向こうがそう受け取っておったのであるか。一体そこの理由は何だということを私は、具体的にお聞きしておるわけです。その一つのファクターとして、リップスというのがかなり重要な役割を果たしたということがわかった。ところが、伺ってみても、それじゃそのリップスがどういう具体的な行動、役割をしたかということについて、何らの調査ができておらない。ところが、巷間伝わるところによりますと、はっきり言えば、リップスは、日本はああ言っておるけれども、日本のある政府筋の話によると、形式的には有償投資あるいはクレジットのようには書いてあるが、内容は無償ですから御心配なく、というようなことを伝えたといわれておる。そのことが真実であるかどうかを究明をしてもらいたいと私は言っておる。そのために調査をしてもらいたいと言っておる。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 私、先ほど申し上げましたように、日本政府はそういうことは全然関知いたしません。六カ年間あの第二条の規定をずっと通してきておるのであります。日本の当局者がいずれはどうこうしてやろうと言ったことは毛頭ないと、私は確信しております。ただ、向こうが、ああいう調印をしたのですが、考えてみて、どうもわれわれとしては受け入れかねるということを言いました。そうして、タイの経済事情、日本との関係政治的あるいは貿易上の関係、将来の東南アジアとの緊密関係を増進する上から、大所高所からやったのであります。
  107. 辻原弘市

    ○辻原委員 外務大臣、ちょっと伺いますが、三十年協定は、日本は八月に批准をしておりますが、向こうも批准をしておるのでしょうね。これはどうなんですか。   〔発言する者多し〕
  108. 山村新治郎

    山村委員長 静粛に願います。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先方は、御承知のように、現在クーデターの政権でございますので、憲法上の国会の承認を得られないということになっておるわけであります。
  110. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、向こうの批准がなくて、三十年協定というものは効力を発したのですか。具体的に一つ外務大臣に説明を願いたい。向こうが批准をしなくて具体的に効力を発したのか。そんなばかな条約がありますか。
  111. 山村新治郎

    山村委員長 条約局長、詳しく説明して下さい。
  112. 中川融

    ○中川政府委員 御承知通り、現行の協定、つまり三十年にできました協定第五条によりますれば、双方の国がおのおのその憲法上の手続に従って承認されなければならない。憲法上の手続に従って承認をした際に、その承認を通知する公文が交換された日から効力を生ずる。タイのその当時の憲法上の手続によれば、この協定はタイの国会の承認を必要としないものであったわけでございます。その意味で、タイは政府としてこれを承認し、日本が国会の承認を経まして批准するのと同日付で、先方はこれを承認して通知をしてきたわけでございます。
  113. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと、条約局長、参考に、タイの憲法上の手続——今外務大臣がクーデターという事情によって国会の承認を経ないで憲法上の手続がとれると説明されたんだが、そのタイの憲法上の規定というものをちょっと参考にお聞かせを願いたい。
  114. 中川融

    ○中川政府委員 その当時、この点についてタイ政府に確かめましたところ、タイ政府としては、その憲法の規定上、この種の協定については国会の承認を必要としないということであったのでございます。
  115. 辻原弘市

    ○辻原委員 その点の議論は別といたしまして、ともかく、向こうもちゃんと批准をしておるのです。批准をしておるということは、調印をした政府の意思も確定したし、批准をしたということで国民の意思も確定したということなんです。だから私はおかしいと言っている。だから、一応形式的には国際法としての体裁が整ったから、日本も三十四年までにその金の五十四億は支払ったのでしょう。そういうようなはっきりしたものでありながら、第二条については、これは若干の食い違いどころじゃないのです。まるきり違うんだ。ただでやるというのと、貸してやるというのとは、まるきり違う。そういう解釈の相違というものは、まことにこれは今まで聞いたこともないと私は言うんだ。だから、それがおかしいから、当時のいきさつというものをはっきりしなければ、その後の交渉には入れなかったはずだと言うんだ。一体タイがそういう解釈をとった理由というものは他にあるのか。総理に伺ってみても、タイとの特別な関係、あるいは大所高所と、こう言われている。しかし、大所高所とか、タイとの特別な関係というのは、これは何も今日の問題ではないと私は思う。そういうことは全部要素に入れて三十年の協定というものができ上がった。タイの国民感情、戦後、日本がいわゆる軍物資を徴発した、そういうような日本とタイとの戦時中からの感情、そういった諸般の状況、諸般の要件というものが加わってタイの主張になってきたのです。だから、五百四十億なんというべらぼうな要求をタイは出したのです。そうして、曲折を重ねて三十年にあの協定ができ上がった。今から始める交渉、初めて結ばれる交渉なら、私はあえてこんなことは言わない。しかし、そこまで双方いろいろ主張し合うものは主張するし、折れるべき点は折れて合意に達した協定が、その直後に百八十度解釈が違うというようなことは、何らかの特別な理由がある以外には、ちょっと常識では想像できませんと言っておる。その特別な理由というのは何か。私が先ほど申し上げましたように、たとえばリップスがいろいろ日本の要人とも会った。外務省の当事者とも会いました。打診をした。そうして本国へ持って帰って、外務大臣の顧問だから外務大臣に入れ知恵をいたします。ああ言っているけれども、実際は日本では内容はただだと言っておりますよということを言ったら、向こうはどうしますか。これは米国人の弁護士でございます。そういう状況下に置かれてタイがこの話を受け取ったとすれば、そのリップスの言をあるいは信用したかもしれないと私は思う。だから、当時日本はそんなことを言っておりながら、協定の形式上の文章にこだわって、クレジットだ、投資だということはけしからぬというタイのそういう主張が現われてきたのではないでしょうかと、こう伺っている。だから、私のこの疑問に対して、あなた方政府が晴らしていただくためには、そのリップスについての調査をする必要があるということを要求しているのです。  委員長、お願いいたします。私は政府にそのことを要求する。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 ワン・ワイ殿下もこの問題にはあれしております。あの方も、私の見るところでは英語も相当たんのうでございます。国連にもずっとおられました。それが、一法律顧問がこうだとか、そういうことは私は信じません。そういうことをタイの要路の人からも聞いたことはございません。われわれは条約によってあくまでこれを主張し、向こうも、われわれの考え方には、それはあなたの言うことはわかります、しかし、われわれは間違っておった、今後こういうふうに改めてもらいたい。こういうことで交渉に入ったわけでございます。
  117. 辻原弘市

    ○辻原委員 首相は、関知をいたしませんと、こう大みえを切られたわけなんですが、私は関知をするとか関知をしないとかいうことじゃないのです。私もいたずらにこの問題をのみ取り上げているわけではない。この点が判然とわからなければ、当時の交渉のいきさつというものがわからない。当時の交渉のいきさつがはっきりしなければ、九十六億をただでやると池田さんがバンコックに乗り込んで、向こうの在外公館と交渉しているさ中に、すぱっとそれをきめたといういきさつが、私の頭にはのみ込めない。だから、その点を明らかにしてくれということを私は申しているのであって、だから、私は、この点について政府に正確なその辺の事情を報告していただくことを重ねて一つ要求をいたします。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 私が参りまして、すぱっときめたというのじゃないのです。私は、先ほど申し上げましたように、過去数年間いろいろの方面でこれを検討いたしておったのであります。しこうして、昨年の中ごろから、バンコック駐在の日本大使と向こうとたびたび折衝を重ねたのであります。大江大使も途中でこっちに帰って参りました。そうして、関係大臣と会って、一回払いのときにはどのくらいまでにするかという腹打ち合わせはずっとしておったのでございます。行って、ぱっときめたというわけではございません。
  119. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、さっきからお答えしているように、この問題について、何か先方に特に交渉の結果と違うような印象をリップスという人が与えたという疑念はないと考えているのであります。そこで、たびたび総理大臣からお話があったように、現行協定は動かない、これを動かすようにするためには、大所高所に立って、これを実行可能なものにするように今回措置をした、こういうことと御了承願っておきたい。
  120. 辻原弘市

    ○辻原委員 三十年協定は、これは動いているのです。三十年協定はすでに五十四億円払って動いている。しかも、あなたは、私が調べてほしいと言うことに対して、尋ねても、あなたは詳しくは知らない。ただそういう事実はなかったと思うとしか答弁できないじゃありませんか。思うということは、これは私は小学校の一年生でも答えられると思う。私はそう思います、そんな不確かなことでは困る。いやしくも一国の外務大臣ならば、その辺の事情を正確に把握して、こうだという、ここではっきり言い切れるファクターを持ってきなさいと言っているんだ。調査をしなさい。
  121. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君、まだ質問はございますか。
  122. 辻原弘市

    ○辻原委員 それから誤解があってはいかぬと思うから私は申し上げておきますが、九十六億は動かないと外務大臣が言われたようでありますが、この点はあとで私はもう少し詳しくお尋ねをしたいと思っておるのでありますけれども、九十六億は動くのです。九十六億は少なくともあらためての調印が済んでおらない今日においては、投資及びクレジットです。ところが、今政府が方針をきめた新たな協定がもしここで締結されるということになれば、九十六億はただであるということなのです。九十六億という数字は、これは利子加算その他のことについてはあとで外務大臣に伺いますが、九十六億の取り扱いというのは、投資かクレジットか、それ以外には現在はないのです。ところが、今度はそれをただということ、これはまるっきり違うのです。違うということは動くのです。動くから重要な問題だから、今議論をされている。そんなばかな話がありますか。
  123. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように、この一項の五十四億円はスターリング・ポンドで払ったわけです。これは動いたわけです。それから第二項の九十六億円を投資あるいはクレジットの形式で供与するという協定は動かないのです。こちらが投資すると言っても向こうは受けないと言うし、こちらが貸すと言っても向こうは受けない。そこで見解が違っているから動かないと、こう申し上げている。そこでこのタイの特別円の結末をつけるというのがタイ特別円問題でございますが、結末をつけまするには、タイ側の気持にもなって、タイ側の気持もいろいろ聞いてみて、これを実行可能なものにするために総理が決断をされた。その結果といたしまして、タイと日本との関係はさらに親密の度が加わるし、わが国アジアにおける地位を高からしめるためにも非常に有効であろう、こういうことでございます。
  124. 辻原弘市

    ○辻原委員 もちろんタイ側の気持になることもやぶさかではありません。同時に、われわれ日本人の気持にも立って処理を願わなければならぬということも、これは日本の政府である以上当然だ。だから、その意味において現在では動かないということはわかっている、その動かない事情は一体何かと私は聞いている。向こうが承服しないという一番大きな原動力は何か。これは比較の問題であれば私はそういうことを申しません。比較の問題であればそういうことは言わない。これが九十六億と言ったのが、向こうはあるいは八十億と言ったとか、あるいはその他投資という形が別の形のクレジットという、日本の予想しておったものと違うという程度の相違であるならば、あるいは受け取り方が違うかもしれない。しかし、問題は根本的に違うのだ。貸してやるというのと、ただでやるという根本的に違うそのことが、協定批准までしたそのことについて、最初から違うということについてのいきさつが、いかにも私どもは納得しがたいと言っている。わからないと言っている。だから、九十六億を払うということを、きょう、あすにも政府は取りきめようとしているではありませんか。その際に、なぜそこまで日本が譲歩しなければならなかったのだという理由を、克明にやはり国民に明らかにする必要があると言っている。一般的にタイとの将来の友好関係だとか、経済協力だからというのはこれは一般的であって、何もタイに限ったことではありません。その他の国にだって通用する言葉なのです。しかし、タイ特別円のこの九十六億をただでやるというそのことを、方針をにわかに変更したその根本的理由というのは、もう少し具体的なものに違いないと私どもは判断しているから、その点について再三伺っておるのです。その一つの問題として、一体リップスについての調査はできておるのかどうかと言っている。これは委員長、調査をやってもらわなければ私は審議することができません。
  125. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 特別円の問題というのは、日本とタイとの間にだけしかない問題であります。そこで、この特別円の性質については、総理大臣からるるお話があったので、これ以上申し上げる必要はないと思いまするが、とにかくそういう性質のものであるので、タイ側の申しますには、まさにあの投資あるいはクレジットの形式において供与する、こういうことを取りきめたことは、自分の方としては全く言うことはない、それは日本側のおっしゃる通りですと言うのです。ただ、自分らの国民感情からしては、日本に貸したものを清算するためにまた日本から借りるということは、どうしても国民感情上納得できません。そこで日本とタイとの将来の関係考えて下さい。こういうことでありまするので、総理大臣においても決意をされた、こういうことでございます。  リップスの問題もいろいろお話しでございまするが、彼はやはりアドバイザーとしての立場でございまして、この協定についての責任者は先方の外務大臣なり政府でございます。その政府の意思というものは、この協定に現われておるところによって判断するほかない。政府としてはそういうふうに考えるべきものであると思います。
  126. 辻原弘市

    ○辻原委員 何か私が言っていることが仮定の上に立っているというふうな雑音も入りますが、私はそうではないのです。そういうことを具体的に聞いてもおるし、またあるいはさもありなんというような想像もつくから、この点についての疑念を晴らしていただきたいのです。これは当然協定の修正か何かの形で国会に出されるのでしょう。そのときにやはりこのいきさつが明瞭にならないと、協定の承認あるいは審議の進捗ということは非常に私は困難だ、そういうふうに思うからこそ、この機会に、政府としては、その辺の事情を政府自体として正確なものにして発表していただきたいということを要望しておるのです。委員長、お取り扱いを願いたいと思います。
  127. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君に申し上げますが、委員長は公正な取り扱いをいたします。その見地から、あなたの貴重な時間を有効に使いたいという意味からも申し上げるのでございまするが、あなたの御疑念については、政府側からはっきりそういう疑問はないという答弁が先ほどからたびたびされておるわけでございます。従って、いま一歩、同じ問題じゃなく、一つ別の問題なり何なりに進めていただきたいと思います。   〔「外務大臣はわからぬと言っているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  128. 山村新治郎

    山村委員長 それではもう一ぺん申し上げます。辻原君、要点を政府質問していただいて、それを外務大臣からはっきり答えていただきます。それで、一つ貴重な時間を有効に使いたいと思います。要点をもう一ぺん質問して下さい。それで外務大臣がはっきり答えます。
  129. 辻原弘市

    ○辻原委員 私も、他に質問もございますので、このことについてはこだわりたくはないのであります。しかしながら、私が伺っていることについて小坂さんがお答えになっておるのは、そういう事実はないと思います、総理大臣は、関知をいたしませんと、こう言う。ところが、私はそういうファクターを実は聞いておるのだから、そこで正確に調査をしてもらいたい。また私の希望としましては、だから本日でも、外務省で知っておられる方々もいるわけだから、省議でも開いて、そうしてはっきり一つその辺のことを取りまとめてもらいたい。どうですか。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実はこのタイ側が誤解をした理由——協定そのものについて、協定が調印されてから誤解をずっと続けておるわけですから、その理由については、六年間にわたりましていろいろ先方の事情を聞いてみたのであります。しかし、結局何がゆえにさような誤解をしたかということはまだ不明でございます。しかしながら、不明であるからといってそのままにいたしておきましては、日・タイ間の関係がこれ以上よくなりませんので、大所高所に立って今回の決断をいたした、こういうことでございます。   〔「不明のまま先に行かれぬじゃないか」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  131. 山村新治郎

    山村委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  132. 山村新治郎

    山村委員長 速記を始めて下さい。  十分間休憩いたします。    午後三時四分休憩      ————◇—————    午後三時十九分開議
  133. 山村新治郎

    山村委員長 それでは再開いたします。  ただいま休憩中に理事会を開きまして、先ほどの問題につきまして辻原君から要点をもう一度政府に問いただし、これに対しまして責任ある答弁を総理大臣並びに外務大臣からいたすということで話し合いがつきましたから、どうぞよろしくお願いいたします。  辻原弘市君。
  134. 辻原弘市

    ○辻原委員 休憩前に私がお尋ねをいたしました問題から、小坂さんがこう私に最後に答弁をされたのでありますが、それは三十年協定以後、なぜタイが協定の第二条にうたわれている投資及びクレジットの方式ということについてまるきり違った誤解を持ったのか、そのことは今日まで不明であります、こういう答弁があったのであります。私も、なぜそういう誤解を持ったのか、そういう認識を持ったのか、非常に不思議に思いますので、その事実を明らかにいたしたいと思いまして、いろいろ検討をしました。そうすると、そこに介在をした米人介護士のリップスなる人物が浮かび上がってきたのであります。この人物の果たした役割は一体どうであったかということをいろいろ検討して参りますると、かなり重要な役割をその当時やっておったということもおぼろげながらわかってきた。そこで質問をいたしたのであります。たとえば、はっきり言えば、当時交渉の際に、日本の外務省筋がリップスに、あれは実際は無償なんだよという了解を与えたということまで伝わっておる。こういうような事実、だからそういうようないきさつがあったればこそ、かつて第二条の解決について、これは日本側から請求についての話し合いにも参りましたけれども、その話し合いも途中においてこわれた。結局、今のような事態に私は発展していったのではないか、こう推察するので、その間の事情というものを、政府としては協定の更改の再交渉にあたってつまびらかにする責任がある。同時にまたこれを、すでに調印寸前にある今日の事態に、国民にもそのいきさつを克明に知らず必要がある。最後のそういう努力をすべきだ。その意味において、なぜ向こうがそういう誤解をしたかについてのあとう限りのファクター、まず私が具体的にあげたリップスという人物についてのいきさつをはっきりしてもらいたいということを要求したのでありまするが、今までの答弁では私は釈然といたしません。はっきりいたしません。しかし、この問題だけにこだわっておりますると、私の持時間もございませんので、いずれこの点につきましては当委員会なり外務委員会におきまして、わが党といたしましては、さらに詳細に政府にその間のいきさつをただして参るということを申し上げまして、この項に関する限り、政府の答弁については了承いたしかねるとはっきり申し上げまして、私は次の問題に入りたいと思います。
  135. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君にちょっと申し上げますが、それではここでお答えしなくてよろしゅうございますか。
  136. 辻原弘市

    ○辻原委員 答弁はけっこうです。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 辻原さんは答弁は要らないとおっしゃいますが、今のお言葉のうちに、私はこの際明らかにしておいた方がいいという問題がございます。外務省が、無償だという了解を向こうに与えたといううわさがあるというお言葉でございますが、さようなことは私は全然ないと思います。
  138. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは総理がそう言われましたので、私はこの問題は、時間の関係で後日わが党があらためて当委員会なり外務委員会でやりますということを言っておるのですから……。はっきりないと、こう言う。しかし、そのことのうわさは、巷間周知の事実なんです。私は外務省がと言っておらぬ。外務省筋あるいは外務省の高官、それとリップスとの関係において、だからその間の事情がある、非常に不明朗ないきさつがあったから、相手方に誤解を与えたのではないかと言っておる。しかし、いずれこの問題は後日明瞭にいたしていきたいと思います。  次に、タイの特別円についてもう一、二点お伺いをいたしておきたいと思います。何かきょう調印されるとか、あす調印されるとか、話が伝わっておりまするが、現地との交渉についての現時点のいきさつはどうであるか、この点のお話を願いたい。
  139. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどのお話では、私どもも申し上げたいことはたくさんございまするが、また御質問があるそうですから、今の御質問だけにお答えいたしますが、明日調印をいたす考えでございます。
  140. 辻原弘市

    ○辻原委員 明日調印をするそうでありますが、九十六億というのは、これは実支払額ですか、いわゆる実際に日本の国民負担する額というのは九十六億ですか。その点をはっきりしておきたい。
  141. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 政府の財政から支出する額は九十六億円でございます。
  142. 辻原弘市

    ○辻原委員 財政以外から支出する額というのは、それじゃあるのですか。
  143. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本政府とタイ政府関係において支払われるのが九十六億であります。
  144. 辻原弘市

    ○辻原委員 聞くところによりますと、何か当初伝えられた話では、二十六日ごろ現地で調印を済ますということであったのが、明日まで延びておるわけなんです。これは新聞情報であります。その延びておる事情という中に、八年間にわたって八回に分けて支払う、その支払いの金の預託銀行、この点について、何か現地との話し合いがうまくつかぬということが伝えられておりましたが、そのことはきまったのですか、どうなんですか。
  145. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そのことはきまったわけでございます。
  146. 辻原弘市

    ○辻原委員 どういうふうにきまりましたか。
  147. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それは御承知のように、イニシアルするときから、新聞等に出ておりましたので御承知と思いますが、十億円ずつ七年間払って、八年目に二十六億円払う、こういうことでございますが、五月末日に日本はこれをタイ側に払うわけであります。その金を保管いたしまするために、これを銀行へ預金するということになるわけでございます。さようなことでございまするが、タイ側といたしましては、できるだけ早くその金を使い切りまするように、日本の産品並びに役務をこれによって調達するわけでございますから、そうした契約を作っておいて、その金が入ったらこれをどんどん出していく、こういうふうな考え方でございます。
  148. 辻原弘市

    ○辻原委員 その預託をする銀行はどこになりますか。それは日本ですか、タイですか。それと利子についてはどうなりますか。
  149. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは明日調印するわけでございますから、今ここで申し上げることは、ちょっと慣例上いかがかと思いますけれども、私どもの考えといたしましては、日本並びにタイの両方の銀行、こういうことに考えております。タイはバンコック銀行の支店が東京にございますから、それをタイ側はおそらく考えるだろうと思います。  利子は、これは保管を目的とするものでございますから、普通預金、当座預金、あるいは通知預金までということになろうかと思います。
  150. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこではっきりしておいていただきたいのは、預託をして、それぞれタイと日本とに分けて、これは私が聞いた範囲によると、何か折半をしてやるという話でありますが、その場合利子については、いずれの場合も原資の九十六億、いわゆる返済額九十六億にプラスもしなければマイナスもしないということですね。返済額はともかく、実際の負担額は九十六億だとさつき私に答弁をされたのだが、ということになると、利子についてはプラスもしないし、マイナスもしない、そういうことですか。
  151. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうことではございません。日本の政府がタイの政府に払う金は初年度十億円、それからずっと十億円続いて、最後に二十六億円払うわけであります。そこで日本政府の手を離れて銀行の預金になるわけでございます。しかし預金は、今申し上げたようにそう長くたまっているわけではございませんで、その使途に充てられる、支払いに充てられるために保管の意味で預金されるわけでございます。それがどんどん出ていく、こういうことになりますが、若干その間に、滞留している間に普通預金あるいは通知預金に入れられたものについては、利子がつく場合も考えられるわけでございます。しかし、これは日本の政府負担ないしは国民負担ということではございません。
  152. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君に申し上げますが、持ち時間は特別に四時十分までにいたしますから、どうぞ。
  153. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の点でもう一点伺っておきたいが、それは日本政府が、日本の国民負担する額は九十六億、しかしそれが日本の銀行あるいはタイの銀行等に預託される場合には、それぞれの預け入れの方法によって利子が加算される。そこまではよくわかりました。そこで一体日本の銀行に預託する場合と、タイの銀行に預託する場合と、日本にとっての利益、不利益ということはどういう関係になりますか。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 利益といいますとなんでございますが、銀行へ入れまする場合に、日本の銀行法で当座預金の場合は無利子というわけでございます。それ以外のものは利子がつくというのは、銀行へ金を入れる場合当然出てくるわけでございます。その場合日本の利益、タイ側の利益というとどういうことになりますか、おそらくお考えは、日本としてそれだけの金をタイに払うということになるのじゃないか、こういうことかもしれませんが、逆に利子をつけないということになりますと、これはタイ側として、日本の政府から協定によってそれだけの金を入れて、今度日本の銀行がその金を無利子で運営するということになれば、それだけ利得をすることになるという議論もできるわけであります。しかし、いずれにしてもその銀行へ入れるということは利殖を目的とするということではなくて、安全な保管をする、こういう目的のために銀行を使うわけでございますから、そう大きな利子のつくような金をそこへ滞留することのないようにするということを合意いたしておるわけでございます。
  155. 辻原弘市

    ○辻原委員 生産物及び日本の公社及び国民の役務調達にこの九十六億が充てられる、こういうことになっておると思うのですが、その場合に九十六億を向こうが、極端な場合には利子かせぎをするというようなおそれが調達と預け入れとの間のずれによって、起きる場合が想像されるが、そういうことは絶対にありませんかどうか。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきまして、私が五月の末に払うということをきめましたゆえんのものは、当初向こうは、初年度一ぺんにというて聞きません。向こうの会計年度は十月から九月まででございます。私はできるだけ期間を長くしたいために、それでは五月に払えば、その年度の九月の会計までにできるから、五月にしましょう。こういうことにいたしております。従ってタイにおきましては、社会環境衛生その他とにかく一般国民のために使います、できるだけ早く使わなければいけない、そうしていわゆる今年度の九月までの分にも使いたい、こういうことで五月にいたしたのでございます。従いまして、これが毎年十億ということになりますれば、来年の分は来年の五月にこちらが払う、そのときには計画を立てて、日本の役務を注文して、計画的にどんどん早く行くようにしますから、この預金というものは利殖なんかに使ってはいかぬ、この考え方で定期預金もやめさせます。通知あるいは当座あるいは普通預金ということにいたしたのであります。銀行預けというものは例外と私は考えておるのであります。
  157. 辻原弘市

    ○辻原委員 今回の改正では、三十年協定の四条にあった合同委員会が削除せられておるようでありますが、そうしますると、この役務調達、それから経済協力の主体というものは、結局タイだ——もちろんタイでありますけれども、日本についての従来の協定の内容から見た場合の、日本側の参画というものは、若干薄れるような印象を与えますが、その点についてのなにはどうでありますか。
  158. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘のように、今回の協定では、あした調印されます協定では、現行協定の第四条の合同委員会の規定を廃棄するつもりでおります。その趣旨は、この合同委員会という制度は、九十六億円を投資またはクレジットで供与する場合に、いかにして日・タイ双方が協議してこれを円滑に実施していくかという趣旨のことを相談する委員会のつもりで作ったわけでございます。規定しておるわけでございます。ところが今回の新しいやり方によりますと、十億円ずつ毎年払うという行き方でいきまして、それに基づいてタイ側で日本の生産物及び役務を調達をする、調達をすると同時にその金が落ちていくという建前でございますので、別に事業それ自体に日本が関与してどうこうするということはないわけでございますので、合同委員会という規矩は要らない、それにかわりまして、常時緊密に協議して細目をきめるという規定を新たに置く予定でございます。しかしこれだからといって、日・タイ今後別の形で経済協力が行なわれます場合に、日本がいろいろな意味でタイ側の力になってアドバイスするということは、これで薄れるということは決して考えておらないのでございます。
  159. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間の関係で私は別の問題に移りたいと思います。それは、やはり今回政府が借金だから返すときめたガリオア・エロア返済の問題であります。昨日の田中委員、本日の与党の床次委員もこの問題に触れましたけれども、今まであの終戦後のアメリカの援助物資が、もらったものであったと理解をしておった国民に対する回答としては、政府の答弁はまことに不明瞭なものがございます。この点はずいぶん今日まで国会で議論をせられて参りましたけれども、いずれも交渉中ということで具体的な内容は明らかにせられておりませんでした。しかしすでに調印が終わっておりまする今日の段階におきまして、一体なぜ政府がこれを返したか、この総額が一体幾らであったか、具体的に私はお尋ねをいたさなければならぬと思うのであります。  そこで総理にお伺いをいたしますが、これは直接内容の問題ではございませんが、実は速記録をいろいろ私も読んでみました中に、こういうことがございました。それは昨年の通常国会、三十六年の五月十七日の当予算委員会におきまして、わが党の井手委員質問をいたしました際に、総理はこういうふうに積極的に発言をせられております。それはガリオア・エロアが結着つけば、各野党党首を歴訪して、みずからその交渉の経過と具体的内容を詳細説明をいたしたい、とこう言われておる。すでに一月の九日に調印が済んでおるのでありますが、寡聞にして、総理がわが党の河上委員長をたずねて、具体的にしかじかかくかくであったという話を印されたということを私は聞いておらないのでありますが、いつ、そういうことをおやりになりましたか、お伺いをいたしたいと思います。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう問題につきまして、あの当時は野党の党首とお話ししてみたいという気持は持っておる、いたしますとは言っております。その後の情勢によりまして、その機会がなかったのであります。
  161. 辻原弘市

    ○辻原委員 ずいぶんたくさん、何回もおっしゃられておるのです。私はこれが質問中心ではありませんし、あと大して時間もございませんので多くを申し上げることはできませんけれども、もう一ぺんどう言われたか速記録をお読み願いたい。何回もあなたは機一会を持ちたい、もちろん思いますとは言っておりますけれども、最後に井手委員が、首相のその誠意を確信をいたしまして、ぜひそういうよりよい慣習を作られたいとまで希望してこれは終わっておるのです。私はこの十七日の首相が言われたことはまことにけっこうなことだと思うのです。この間の本会議でも盛んに与党席から超党派外交ということを言われておりますし、政府もそう言っております。超党派外交というのは政府みずからがやはり国の重要な外交に関する問題等について、その内容を隠すのではなくて、国会の場を通ずることはもちろんであるが、それぞれ野党に対しても詳細な説明をするぐらいの気がまえを持ち、それを実行することが私はぜひ必要だと思うから、あえてこの機会にお尋ねをいたしたわけであります。その機会がなかったと言われるのでありまするけれども、それはどうも池田さんの平素言われる超党派外交を推進したいということと、言行一致せざるように私は受け取っておるのであります。しかしこれはできておらぬのでありまするから、ぜひ他の機会におきましても、申されたことは一つ責任を持って御実行を願いたいということを御注文申し上げておきたいと思います。  そこで総理にお伺いをいたしますが、ガリオア・エロアを返済するときめたわけなんだけれども、その返済するときめた根拠は一体何であるのか。このガリオア・エロアが法律的な根拠を持つ債務だからそうしたのか、あるいはまた独立国の名誉心というような立場からこれを債務と心得て返済するのであるか、一体いずれの根拠に立たれておるのか、これを明瞭にしていただきたいと思います。
  162. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題については、しばしばこの委員会で申し上げておりまするが、質問の御時間もございますから非常に簡単に申し上げますと、まず予算上はガリオアの支出というものは、アメリカの方ではこれは返済すべきものというふうに考えておるわけであります。この趣旨で、当時のマッカーサー元帥初め政府の要路者が、しばしば議会でさような証言をしておるのであります。またわれわれ受け取った方の側においても、昭和二十一年七月の占領軍のスキャッピン一八四四というのにおいて、この返済方法は後日決定するということが書いてあるのでございます。また一方、同様な戦後の援助を受けました西独におきましても、これは一九五三年にこの返済をきめております。その当時やはり西独とフランス、西独とイギリスとの間にもこの返済が行なわれておるのでございまして、当時イギリス、フランスとの間では大体七五%ぐらいを返しております。そこでアメリカと西独との間に行なわれました三三・一七八という切捨額が、非常に西独側においても多とせられておったわけでございます。わが国においてもやはり同種のものでございまするから、これについては当然債務性の濃いものと考えて、しかも通産省でいろいろ調べていただきました資料によりますると、その中に、これは無償だということははっきり書いてあるものもございますが、これは全体の一%くらいでございます。そうすると、他のものは無償でないということも言い得るわけでございまして、要するに非常に債務性の濃いものであったわけでございます。そこで、これについては政府としては債務と心得まして、そうして外交交渉によって債務額を決定する、こういうことにいたしておったわけでございます。従来、いろいろ政府としては一貫してさような答弁を国会においても行なっておりまするし、また重光さんが昭和三十年に、このガリオアの返済はできるだけ早く合意してこれを行なうということを共同声明で言っておりますし、そういうようなことで、ずっと日米間にはこの交渉が行なわれてきておったわけです。今回これを確定して払う、こう決意してさような調印をいたしたわけでございます。
  163. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから、法律根拠を持つ債務と、こういうふうに言われておるのですか。だから法律根拠のある債務だ、こういうふうに政府は決定したのですか。
  164. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 政府は四億九千万ドルを債務ときめまして、これを憲法八十五条によって国会に提出して御承認を仰ぐ、こういうことにしております。
  165. 辻原弘市

    ○辻原委員 私のお尋ねしておるのは、しかじかかくかくといろいろあげられました——私もここに外務省の、米国の戦後対日援助が債務性を有するものであると考えられる根拠資料というものをいただいております。だからこのファクターをもって政府法律的根拠のある債務と決定したのですかと私はお尋ねをしておるのです。それとも、日本も戦後ここまで復興したのであるし、独立国としての名誉心からもこれは返すべきである、すなわち政府が今まで答弁をされてきておったような、債務と心得るという立場において国会に四億九千万ドルの返済協定というものを提出されるのですか、いずれですかと私はお尋ねしておる。
  166. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 従来もこのガリオアの問題に対して、いろいろな機会に申し上げておるように、今申し上げたスキャッピンを受けて、その返済は後日決定する、すなわち支払いについて交渉して幾ら払うかきめるということは、これは終戦後の内閣、自民党の内閣ばかりでない、社会党の内閣のときにおいてもそのことを承知して受けておるわけでございます。しかし援助を受けたものをすべて法律上の債務であるとはこれは言い切れないというふうに先方と了承し合っておりまして、交渉の結果、幾ばくを債務として確定するかということに合意することに話がなっておりましたので、今回それを実行する、こういうことであるわけでございます。
  167. 辻原弘市

    ○辻原委員 こういうことでしょう、これも提出された資料から見ると、あなた方がはっきり無償であるというものを除いて計算した結果が債務額四億九千万ドルと、こうきめられたんでしょう。だから私は、その除いたものについて今言っているのじゃないのです。除いて残った、そうして出た四億九千万ドルは法律的な根拠のある債務かと、こう聞いておる。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 十数億近い援助がございました。それをわれわれは一応これが債務、これが債務でないということを、区別せずに、債務と心得て今まできたのであります。しこうして今回アメリカと交渉、調印いたしまして四億九千万ドルを日本は債務として負担をいたします、こういう条約を結んで、そうして皆さん方の同意を得ましてこれが債務と確定する、こう了承しております。
  169. 辻原弘市

    ○辻原委員 くどいようですが、その債務というのは、はっきり法律的根拠のある債務かないしは道義的な意味において払わなければならぬものだから払うという立場か、いずれかと私は問いておるのです。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 国会の議決を得まして、四億九千万ドルが債務となるのであります。
  171. 辻原弘市

    ○辻原委員 議決はまだ経ておりません。議決は経ておりません。四億九千万ドルは政府の方針として債務ときめておるだけですけれども、しかし、政府がその方針としてきめた債務というのは、一体法律的根拠ありとしてきめられたのかどうかと私は聞いておるのです。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 援助のうち、四億九千万ドルは日本が債務として負担すべきものなりと考えまして、そうして案を提案いたしたのであります。
  173. 辻原弘市

    ○辻原委員 債務として負担をするということはよくわかっております。そのことはもうすでに言われておる。私の尋ねたいのは、一体その債務とした理由は何かというのです。まあ、小坂さんが先ほど言われたのも、何か法律的根拠らしいのでありますけれども、しかし、これがはっきり法律的根拠といえるか。だから、この根拠をもって国内的に、国際的に、法律根拠のある債務だとして将来国民が受け取ってよろしいかどうか、私は今、国会にこの問題が議せられる最初にあたってお伺いをいたしたい。ぜひ聞いておきたい。このことがわからなければ、このことがはっきりしなければ、私どもの本問題に対する考え方も出てこない。政府の方針をまずはっきり聞いておかなければならぬ。そういう意味でお伺いをしているのでありますが、法律的な根拠のある債務とされたのかどうか。というのは、今まで国会の速記録を見ましても、たとえばいろいろなことを言われているのです。私は時間がないから、そのことはくどくど申しませんけれども、たとえば吉田さんは、法律的根拠ということは言わないけれども、少なくとも借りたものだからこれは返さなければならぬ、こう言っておるのです。だから、そういうような根拠をとったのか、あるいは小坂さんが今述べられたような法律的根拠ということを裏づけにされて債務と決定をせられたのか、そこはどうなんですかということを私は伺いたいのであります。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 援助を受けたということは、はっきりした事実でございます。この援助が無償なりやいなやということにつきましては、先ほど来外務大臣が申した通りであります。一部無償のものもありました。アメリカは大体これは払ってもらうべきものだ、こういうことを言っておるのであります。しかし、われわれはこれを払いますとは言っておりません。幾ら払いますとも言っておりません。しかし、今の状態から見まして、この際この問題を解決する要ありと思いまして、アメリカと交渉し、そうして四億九千万ドルをわれわれは払うべしということを決意いたしたのでございます。しこうして、これを国会の承認によりまして、これがわれわれの債務と確定するのであります。
  175. 辻原弘市

    ○辻原委員 国会の承認を経て債務と確定をすると言われるのでありますが、私は、債務という限りにおいて、少なくとも借金をしたという限りにおいて、その借金ができるということは、これはあらかじめ国会の承認がなければ、日本の憲法に照らしてみてもできないはずだということをかねてから思っておりますが、今総理大臣のお言葉によりますと、国会に提出してこれが債務となる、返済額を決定するということは、国会の議決によってきまるでしょう。しかし、借金をする、幾らの借金をするかということは、これは国会でのあらかじめの議決を必要とすると私は考える。総理は一体どうなんです。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 借金をするというのではございません。われわれは先ほど来言っておりますように、援助を受け、無償でない。従って、これは将来払わなければならぬという気持で、債務と心得ておるというので来たわけであります。それで、今は法律上の債務ではございません。そうして国会の協賛を得まして、これが債務として確定するのでございます。
  177. 辻原弘市

    ○辻原委員 現在では法律上の債務ではない、今首相はそう答弁をせられましたので、私はこの問題についてはただいまの首札の答弁で了解をいたしておきます。ただいまはこれは法律的債務ではない。  憲法の問題について私が質問をいたしましたが、まだお答えがありませんので、もう一度……。あらかじめの議決を必要とすると私は言っておる。
  178. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法は、国が債務を負担するには国会の議決を必要とすると書いてございます。従いまして、確定的な債務を負担するには、もちろん法律あるいは国庫債務負担行為その他の形式によって国が国会の議決を経て、初めて債務を負担するわけであります。これこれの借金をするという場合には、もちろんそういうことでございます。しかし、ガリオアにつきましては、ただいままで総理大臣あるいは外務大臣からお答えがございました通り、この援助を受けまして、その援助について無償ではない、しかしその償還方法と、あるいは償還金額それ自体についても、なお別途相談をするということが、初めから向こうからも言ってきておるわけでございます。従いまして、そういう意味において確定的なものではなかった、それを今度はっきりさせよう、そういうわけでございます。
  179. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、いろいろな三百代薄的な法解釈を実は承ろうとは思っておりません。実は、総理大臣から憲法運用に関する根本的な考え方として聞きたかったのでありますが、いやしくも国が定めた基本法である憲法の運用について、その当時のいきさつがどうであったからとかこうであったからというようなことで、借金になったりならなかったりする、そんなばかなことは私はないと思う。国がはっきり借りたものであるならば、また借りるものであるならば、当然国会が議決をし、同時に毎会計年度予算の中にそれを繰り込めという八十六条の趣旨を生かして運用するのが正しい建前である。その意味においてこれは債務ではありません。だから、われわれは債務でないものを返す必要はないと言っている。しかし、政府がこれを返すという決定をしてきておりますので、そこで私は少しく今度の返済額の内容に関して、この機会にお尋ねをいたしておきたい。協定文にもまた覚書にもどこにも総額が記載をされておりません。先ほどの床次さんの質問に対して、外務大臣が、これまたわかったようなわからぬような話をされておりましたが、アメリカは十九億六千万ドルというものを援助総額だと主張し、日本側は通産省の資料に基づいて十七億九千万ドルということを主張したのでありますが、合意に達したのかどうか、一体日本が借りた金の総額というものはどうなったのか、この点をまず伺っておきたい。
  180. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどお答えしたことを繰り返すようになりますが、アメリカの言っております支払いベースの金額と、われわれが通産省でもって当時の資料に基づいて積算したものとが違うわけであります。そこでいろいろと外交折衝をいたしました結果、われわれの積算に基づいて、四億九千万ドルというものを出すことについてアメリカが了解いたしましたので、従来債務と心得ておったものを、四億九千という債務を確定して国会の御承認を得たい、こういうことであります。
  181. 辻原弘市

    ○辻原委員 一向に明快じゃないのです。借金をする場合に、幾ら借りたのかわからないで借金をする人もないでありましょうし、返す場合に、かりに値切ったといたしましても、幾ら借りてあったのかということをはっきりさせないで返す借金というものは私はおそらくないだろうと思う。そういう意味で今回四億九千万ドルが返済額だとしておるのであるが、その四億九千万ドルにした援助額の総額というものは一体何か、十七億九千五百万ドルというものは、向こうもそれを認めたのですかということを私は言っておる。向こうもそれを認めたのかどうか。
  182. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今申したように、日本側の計算によって債務を確定するということをアメリカの方は了承した、こういうことであります。今あなたは、一体何ぼ全体があったのかわからぬじゃないか、こう言われますが、ドイツとアメリカとの場合は、ドイツ側もいろいろ申し立てたのでありまするけれども、それはアメリカ側において聞くところとならなかった。しかし今回は——それは一九五三年当時でありますが、今回はアメリカ側においては、日本の主張をいれてくれた、こういうことであります。
  183. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは先ほどの床次さんの質問のときにも、西ドイツの例を引っぱってきて比較をされたようでありますが、これは非常に事情が違うと私は思うのです。西ドイツの場合には、これはもちろん総額が明示されております。なぜ一体西ドイツは総額が明示されたかといえば、西ドイツは初めからはっきりこれは無償ではない、有償だということが取りきめられて、その取りきめられた額の中で交渉をして返したという経過がある。その点から考えてみても、日本の場合にはどうだったか。少なくとも、今までの国会の答弁を通じてみても、二十四年三月以前の数字については、まことに不確かではありませんか。全然日本側がその数字にも、また物そのものにも、タッチすることができないで、全くアメリカの陸軍省あるいは国務省それと連合軍総司令部との間で、この物資の保管あるいは供給一切の権限を持っておった。そういう経過から見ましても、初めから債務であったものと、債務ということが全然きまっておらなかった日本の場合とでは事情が違う。西ドイツは総額がはっきりわかっておる。だから向こうが負けてくれと言ったところで、数字が明瞭なものだからそれはどうにもならなかった。日本の場合には、十七億九千万ドルというのは、何か向こうが十九億を主張し、こちらが十七億を主張したならば、援助総額について負けてもらったような印象があるけれども、内容はそうではありません。不明なんだ。要するに二十四年三月以前のものについては不明だ。そうではありませんか、外務大臣。
  184. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 西独の場合と日本の場合と事情が違うとおっしゃいますが、両方とも戦敗国であって、ガリオア等の援助を受けたという事情は同じであるわけです。そこで西独の場合、ガリオアの援助を受けたものが十五億八千万ドルで、それから十五億二千万ドルというものをECAから援助を受けておったわけです。そこで金額もはっきりしておったし、その通りになった。ところが日本の場合は、二十三年以前のものは不明瞭であった。しかし不明瞭ながらわれわれの持っておる資料によりまして、非常に苦心をいたしまして、この資料に基づいて先方と交渉いたしました結果、不明なものについて、アメリカ側はそれについていろいろ言うことを遠慮してくれた、こういう事情になっておるわけでございます。それがいかぬということではなくて、わが国のためにそれはよかったことだと私は思うのです。  それからさらに西独の場合よく言われておりますることは、農産物の援助が非常に少なかった。そういうことをよく言っているものや、書いてある文書があるのでございますが、食糧とその他の比率は、日本の場合は六一対三八・九、西独の場合は六五・四対三四・六でございまして、西独の方が食糧については高率である。こういう事情で、高率でありますが、大体似たようなものであります。そこで、これは完全に比較の対象になると私は思っております。
  185. 辻原弘市

    ○辻原委員 その点の議論をいたしますると、時間を食いますが、われわれは西ドイツと非常に事情が違っていると思うのです。一つは占領方式の違いもあるでしょう。また初めからこれははっきりした向こうの協定がある。債務という協定がある。最初から借金をしてそれを払ったという西ドイツの場合と、借金だか何だか、むしろ借金よりも贈与だということの根拠の多い日本の場合とは、非常に事情が違うということは、これはもう明らかであります。そこで政府は今までの説明でも、主として西ドイツの方式あるいは西ドイツとの比較、こういうことばかりを強調されております。私は三分の二切り捨てというこの西ドイツのやり方だけではなくて、援助を受けたその他の国々の中に、全然これを返しておらぬ国が相当数あることを知っております。だから、何も西ドイツに比較をして今回の協定は有利だなどという強調は、これは当たらない。たとえばイタリアあるいはオーストリアまた韓国、すべてその取り扱い方については、あれは日本のあれよりも有利な取り扱いをしているではありませんか。この点は一体外務大臣どうなんですか。
  186. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今あげられました例は非常に事情が違うと思います。オーストリアは、御承知の遡り国家条約で独立したのでありますが、これはソ連と英米仏が共同で占拠しておりまして、このオーストリアを独立させるためには、これはやむを得ないということになった、金額も非常に少のうございます。イタリアの場合は、これはバドリオ政権が終戦後に連合国側に加担いたしましたので、日本やドイツの場合と違うわけであります。韓国については、これは申し上げるまでもないことであります。要するに米英連合軍側との戦いをした国という意味においては、これは日本とドイツしかないわけなんです。  それからガリオアの問題について、日本とドイツは違うので、日本はもらったのだけれども、ドイツは借金であるとおっしゃいますが、ガリオアとかプレガリオアとか、あるいはエロアというものもガリオアの中に入るのだそうですけれども、そういう趣旨の金はアメリカの予算上は同一に扱われておる。ですから、同一の性質の問題として取り扱わるべきものであるというふうに思います。
  187. 辻原弘市

    ○辻原委員 西独の場合と日本とは、アメリカにおいては同一に扱われておるというのでありますけれども、しかし少なくても西独の場合においては、一九四五年のポツダム四カ国会議その他一九四六年の米英西独占領地区統合協定等々から見て、いずれも債務ということを再三再四これはきめておるのです。アメリカとドイツとの間においては、あるいは占領当局とドイツとの間において債務であるということを決定して話が今日に至っておる。それと債務かどうか何もはっきりしない日本の場合と事情が同じだということの理屈が、どうにも私にはわからない。
  188. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それも非常に私違うと思います。と言いますことは、アメリカ側においてはガリオアという勘定を立てて、それからやっておるわけであります。アメリカ側としてみれば、ガリオアの性質上は、予算上これはいずれ返金さるべき性質のものだ、こういう了解で予算上の措置はしているわけであります。  それから西独側に対しまして債務を何回か確定したというなら、なぜそのまま払わないのでありますか。やはり減額方式というものがあるのは、債務と、やはり日本の場合と同じように心得ておって、そしてさように措置をした、こういうことだと思います。しかも西独は一九五三年にこれを払っておるのであります。日本は今年まで、一九六二年までこれをじんぜん持ってきておるわけでございます。その意味においては、事情は違うかもしれませんが、持ってきている間に、先ほども申し上げましたように、二千九百億の金がかなり利息を生んでおる。この点は日本それ自身として非常に有利だと思いますが、これ以上延ばすと、私といたしましては国際信用に関する問題ではないか、かように思っております。
  189. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは伺いますが、西ドイツと占領国との間に取りきめられたような国際協定において債務である、返すというような取りきめが日本の場合にありますか。それはどうなんですか。日本の場合にありますか。
  190. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これも資料に差し上げてあることでございますが、しばしば、日本政府は債務と心得ておる、こういうことを言っておるわけでございます。なお、重光外務大臣もしばしばここで申しておられるように、これについては早急に解決するということを、もうすでに昭和三十年にアメリカとの間に共同声明をしております。その前からもずっと、そういう問題について、日本はいつか時期が来れば、これは債務と心得ておるので、日本として納得し得る額をアメリカと交渉して払います、こういうことを言っておるわけであります。
  191. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の言ったのは、取りきめのことを言ったのです。そういう取りきめがありますか。そうでしょう、重光さんが言ったこと、これは当時の日本政府の当事者の考え方を述べたにすぎない。それからあなたが、差し上げた資料と言っておりますが、差し上げた資料にどこにも協定なんかありませんよ。ありますか。
  192. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 支払い協定というものは、債務額を確定したときに作るものでございます。先ほどから申しておるのは、債務と心得ておるのだ、その幾ばくを債務とするかということは、外交交渉によってきめますから、国内的の手続でも、憲法の手続によって、きまったものを債務として国会に御承認を求める、こういう態度でおるということは一貫いたしておるわけでございます。
  193. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の質問点をぼかされては困る。あなたが、私があげた、に言えば、一九四五年ポツダム四ヵ国会議、一九四六年米英西独占領地区統合協定、マーシャル援助の米独経済協力協定、こういう協定で、西ドイツは払う、債務だということをはっきりさしておるという協定がある、取りきめがある。同じだと言うから、それじゃ同じなら、日本にそういう取りきめがあるかと言ったら、差し上げた資料の中にそういうことが書いてあると言うが、ちっとも書いてない。どこに書いてありますか、それは。
  194. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 なお、協定のこまかいことについて、西独とアメリカの協定とか、そういうものについては、政府委員から申し上げますが、要するに債務と心得ておって、これをいつか確定して払うということを日本政府考え、アメリカ政府もさように了承しておったわけです。その意味において、ドイツ政府がこのガリオアの問題、あるいはECAの問題を解決したという態度とは同じ態度でおる、こういうことであります。
  195. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がないから、私は結論だけ言いますが、あなたが、西ドイツと同じような、日本としてはアメリカに対しては債務の関係にある、こう言われたのだが、それは違います。西独の場合には、たびたび国際協定によって双方の取りきめ、双方が納得して債務ということがきまっておる。日本の場合には、それが、資料の中にはスキャッピン一八四四、こういうような占領指令はあります。ありますが、これは指令にすぎない。日本側がそれによって了承したとかしないとかというような国際協定ではないのです。その後にもそういうものはないということを私は言っておる。しかし、この点で論争いたしますると時間がございませんから、私は最後に……。
  196. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君、時間もだいぶ過ぎておりますから、結論を出して下さい。
  197. 辻原弘市

    ○辻原委員 具体的に返済額の内容について、いま少しく承りたいと思いますが、産業投資特別会計から払うと政府は言っておるのでありますが、いただきました資料を見ますると、どうもはっきりしない。先ほど、私は、床次さんに対するあなたの御答弁も聞きました。そこで、大蔵大臣に伺いますが、返済額四億九千万ドルというのであるが、正確に一体利子を加算いたしまするとなんぼになりますか。
  198. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 元金が四億九千万ドル、利子が八千九百万ドル、日本の円にして二千八十五億円であります。
  199. 辻原弘市

    ○辻原委員 ドルの合計……。
  200. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君、だいぶ時間が経過しました。どうぞお急ぎ願います。
  201. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、返済すべき総領というのは、四億九千万ドルに利子の八千九口万ドルが加わって、総額約五億八千万ドルと理解してよろしいですか、大蔵大臣。
  202. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうです。
  203. 辻原弘市

    ○辻原委員 その金を産投会計の中から支払うということでありますが、先ほども説明を承りましたし、提出をしていただいた産投会計——これは私が要求したのでありますが、産投会計の貸借対照表というものを見ますと、まず、資料から一つ質問をいたします。設立時の二十八年八月一日のそれぞれの貸借対照表の資産勘定、これは見返り分と一般会計とが分かれております。ところが、三十六年度末のトータル、たとえば、あなた方がこのうちのいわゆる納付金から返すんだと言われておる開銀の出資金は、出資金トータル借方の分で五千百九十五億とある。その下に開銀出資が二千三百四十億とあるが、このうちで、見返り相当分の金額は、正確に言えば幾らになりますか。
  204. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 二千二百九十四億円。
  205. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと正確に端数も言っていただきたいと思います。
  206. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 二十八年の八月一日に継承されたものは、見返り資金からの継承分は二千二百九十四億円、それから一般会計からの承継分千百八十七億円のうちの六百二十五億円を加えたもの、産投会計の設立当時の見返り関係資産は二千九百十九億円。
  207. 辻原弘市

    ○辻原委員 大蔵大臣、私が伺っておるのは——それはこの資料に出ているのです。それは二十八年の産投会計に、見返り特別会計から継承したときの出資金の資産、それが回転をされて三十六年度末という数字がここに出ているのだが、開銀出資金のトータルが出ておるが、見返り相当分は不明なんです。出ていない。一体見返り相当分は幾らあるかということを伺っている。
  208. 山村新治郎

    山村委員長 事務当局からお答えいたします。
  209. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。  開銀出資金二千三百四十億円のうち、見返り関係資産は二千五十三億でございます。
  210. 辻原弘市

    ○辻原委員 端数を一つ言ってもらいたい。二千五十三億なんぼですか。
  211. 山村新治郎

    山村委員長 宮川理財局長、答弁して下さい。
  212. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 これは二千三百四十億円のうち、見返り資金を産投会計から引き継ぎましたときの出資金が千四百十億ございます。それに復金の出資の肩がわり金が六百二十五億ございます。さらに一般私企業に対する貸付金を出資に振りかえましたのが十八億ございまして、合計いたしまして二千五十三億円になるわけでございます。
  213. 辻原弘市

    ○辻原委員 その後回転していますね。それはきちっと正確な数字ですか。
  214. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 今申し上げた数字は正確であります。
  215. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、こう私が理解してよろしいか。出資金は三十六年度末——これはたまたま三十六年度末の数字が出ておったからそう言ったまでなんだが、かりに三十七年度末あるいは三十八年度末、この点はきちっとそれが仕訳られますか。
  216. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 それははっきりしておりますが、運用の利益については按分によって計算いたしますので、きっちりと正確には計算いたしかねます。
  217. 辻原弘市

    ○辻原委員 だから、私は正確に聞きたいと言っている。というのは、政府が今回の協定の返済について強調していることは、援助費の払い下げ物資で受け入れた見返り会計から継承した産投会計の中で払うから、これは決して国民に対しは二重払いになりません、アメリカに対しては二重払いになりませんという説明をしている。それじゃ、一体、現在産投会計の中で見返りに相当する部分の金というのは、正確になんぼあるのだろうということが一番の根拠になる。一体その根拠数字は何かと聞いたならば、どうもぷすっと途中で二千五十二億とか三億とか言っているから、ちょっと私は不思議に思う。この出ている数字というのは、正確に、厳密にいう数字ではなくて、今宮川さんが最後に言われた、いわゆる按分して計算した数字だというふうにこれは受け取ってよろしいか。いわゆる正確な数字ではなくて、按分した数字、そういうふうに受け取ってよろしいか。
  218. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この出資ははっきりしております。貸付金もはっきりしております。そこから運用の利子が生まれておりますので、概算をいたしますと、今産投会計の資産が大体六千億円ございます。その六千億のうち、四千億くらいの資産が、見返り資金関係の資産だと思って下されば間違いないと思います。
  219. 辻原弘市

    ○辻原委員 そこで、もう一ぺんその返し方を大蔵大臣から承りたいのであります。先ほどの説明を聞きますると、納付金、回収金、それから利子、合わして約二千二百億、返す金が二千億強だから、まあ二百億くらいはおつりが出るのだという説明であります。そこで、その回収金でありますが、この表によりますと、三十六年度末四百五十五億とこう出ているが、これはその後原資は減っておるのではないですか。大蔵大臣、どうなんでしょう。理財局長でもよろしいが……。
  220. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お答え申し上げます。  開銀貸付金四百五十五億のうち、見返り部分としての数字は三百五十四億であります。
  221. 辻原弘市

    ○辻原委員 親切に最初からそういうふうに書いてくれておると、手間が省けるのです。だから、そういうふうに資料を要求したのに、こういう数字を出してきておる。私は、これはまことに不親切だと思うのです。だから、今言った三百五十四億を回収するというのでありますが、私は、この数字のこまかい点は、これは議論をいたしましても、おそらくあなた方と水かけ論になるでありましょう。ただ、一般的に言えることは、ともかく三百五十四億という原資をこれは抜くのです。そこで、通産大臣、いかがでしょう。日本の経済の今後の発展、そういう諸施策のために、現在の開銀融資あるいは産投会計、それに対する一般会計からの繰り入れというのは、今後どういう予想でありますか。繰り入れを必要といたしますか。もうこれで大丈夫だ、こういうことで、繰り入れについては考えておりませんか。所管大臣の通産大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。
  222. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もちろん、経済上の情勢いかんによりましてはやはり資金をふやしたい、こういう希望を持つことは当然であります。もちろん、そういう際には、大蔵省とよく折衝いたしまして、財源の有無等を検討し、そして、必要な資金はあらゆる努力をして獲得する、これが私どもの考え方でございます。
  223. 山村新治郎

    山村委員長 辻原君、お約束の時間をだいぶ超過しておりますから、一つお急ぎを願います。
  224. 辻原弘市

    ○辻原委員 これで終わります。  今通産大臣が述べられたように、今後も資金を必要とする。そうなりますと、何といっても、三百五十四億というものは、これは絶対額から抜けるわけですから——大蔵大臣、どうなんです。そうすると、通産大臣から、今後の開銀の運用その他について一般会計からの繰り入れを要請された場合に、少なくとも、この三百五十四億の原資の減というものは、これは常識的に影響してくると考えなければなりませんが、そういうことには相なりませんか。その点はどうですか。
  225. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは当然なると思います。で、さっき申しましたように、見返り資金関係の産投にある資産でも四千億円近くあるのですから、もうそれで、それだけを全部回収してかりに払ったとしますれば、二千八十五億円払ってもまだあと半分残るというくらい十分あるところですが、これは今言ったような、出資を回収するとか、こういうようなことでいろいろ影響がございますので、私どもはそういう元に手をつけない、開銀の納付金で、これを中心に、それから貸付の回収される金額三百五十四億を入れて、それでりっぱに払える、ほかに影響させないで払える、そうして、元の原資はそっくり残るのだ、こういう計算でございますので、もう見返り資金関係の今ある財産でりっぱに払える、ここはもう問題ないと思います。で、もしこれを返済しなければ、これは、十何年間に二千八十何億円というものがさらに出資の原資になっていくということでございますが、これは借金を払いますから、出資の原資にはならぬ。それだけ、従来から見ましたならば予定の金は減るということになろうと思いますが、これは別に問題なかろうと思います。
  226. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後にぼしゃぼしゃ言われたのですけれども、やはり減るということは事実なんです。だから、通産大臣から要求があったときにはそういう影響があるということを、大蔵大臣もこれは認めておられる。だから、当然、それだけ減って、一般会計から繰り入れるということになれば——私は、納付金とか利子とかいうことだけで言われるなら、それは理解いたしますけれども、しかし、現実に貸付金の回収金をもって充てるという限りにおいて、原資の減少は明らかなんです。その分だけは、少なくとも、これはあたりまえだとしても、あとで金が足らぬときには、必ず一般会計からそれを補てんしなければならぬ。そこに、私どもは、何と言っても、これはその大部分であるか小部分であるかは別として、何としても、これは国民としての負担が二重になるという、そのことは免れないと言っておる。このことは免れない。  まあ、時間がありませんから、それらの点についての詳細は、いずれまた別の機会にいたすことといたしまして、本日の私の質問はこの程度で終わります。
  227. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、次会は明三十一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会