○安平鹿一君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました
自由化に直面する
金属鉱業危機打開に関する
決議案に
賛成の
討論を行ないます。(
拍手)
政府の本年十月九〇%
自由化実施に対し、わが党はかねてより反対し続けて参ったのであります。それは、
わが国経済はEECのごとく
地域経済的な共同体ではなくて、その貿易構造は、アジアにおいては孤立的立場にあり、かつ、労働市場は欧州のごとき完全
雇用状態ではなくて、近時若年労働力の不足がいわれておりまするが、依然といたしまして、中高年令層の失業群をかかえておる
現状で、今直ちに
自由化の中に突入することはきわめて危険であると主張して参ったところであります。(
拍手)
しかも、輸出の大半は、低賃金労働によるものであり、重化学工業は旧海軍の遺産たる造船、女子の器用なる手によるトランジスター・ラジオ、時計、カメラ等、一部の製品を除いては、いまだ欧米よりはるかにおくれておるのであります。現時点における貿易の
自由化は、一方におきまして低賃金政策の強行となり、他方においては、戦後ようやく伸びて参りました機械、化学の今後の成長
産業を根底より崩壊せしめる危険なしとしないのであります。(
拍手)この危険を回避せんとするための各企業の急激なる増設競争は、かえって過剰生産の徴候を生じ、逆に国際収支の赤字を来たし、高度成長政策を破綻に導きつつあることは、諸兄の御存じの通りであります。
政府は十月より大幅な
自由化に踏み切らんとするならば、それに対応する十分な
措置が、立法的にも、また予算的にも、本
国会において当然なされるべきであったのでありますが、若干の
関税の手直しと、やるのか、やらないのか、判断に苦しむような石油業法を
提出したにすぎなかったのであります。無準備のままの貿易の
自由化は、輸出の
自由化ではなくて、それは輸入の
自由化となることはきわめて明白であります。(
拍手)
金属鉱業政策においても同様であって、
関税の従価税を従量税に直し、
探鉱奨励金三億円を計上したにすぎないのであります。
金属鉱産物の
需要は、電気銅に例をとるならば、十年後には二・四倍にも伸びるのであって、この点石炭
産業におけるがごとき消費構造の変化による
需要減退の悩みはなくて、重化学工業の基礎材料として、むしろ成長
産業と言い得るものであります。しかしながら、鉱石の品位低く、単位当たり埋蔵量少なく、脈状鉱床の多い
わが国の
鉱業は、
現状において裸で競争することは許されないのであります。
政府は、
金属鉱産物の
自由化をまず最大限に延ばし、その間次の政策をすみやかに確立すべきであると思うのであります。
決議案文にもありましたごとく、資源
産業である性質から、第一に、
探鉱を国の責任において徹底的に行なうべきであります。今日、
わが国の代表的大
鉱山といわれておる神岡、棚原、下川等の
鉱山も、
昭和年代に入る前は中小企業の域を出なかったのでございますが、その後の強力な
探鉱によりまして、逐次鉱量を
増加し、今日見るがごとき大
鉱山にまで
発展したものであります。また、最近においても、小坂、八茎、古遠部、別子等において、大規模な鉱床を発見しておるのであって、
わが国において積極的
探鉱によって優秀な鉱床発見の可能性は、まだまだ十分あるといわなければなりません。高品位の鉱床の発見は、直ちに
コストの低下に直結するものであります。銅粗鉱品位〇・一の向上は、
コスト一万円の低下を来たすのでございます。しかしながら非常にリスクが多く、しかも投資から収益をあげるまでの懐妊期間の長いこの
探鉱費は、銀行融資の対象となり得ないのであって、当然国において新
鉱床探査事業団ともいうべき機関を設けまして、地下資源の徹底的
調査の推進が必要であると思われるのであります。(
拍手)
政策の第二点といたしましては、
価格安定対策についてでございます。
鉱産物は、きわめて
価格変動の激しい国際流通商品であります。電気銅が
昭和三十一年に四十五万円にも上がったかと思えば、三十三年には二十二万円にまで下がったのであります。しかも、かかる性格を持った商品が、
貿易自由化によって無制限に輸入できるとすれば、一般
関税はもちろんのこと、緊急
関税の障壁をも乗り越えて押し寄せてくることを覚悟しなければなりますまい。本来、
貿易自由化に対処する国内
産業保護の道といたしまして、
関税障壁に政策の中心を求めることは、
自由化対策として矛盾撞着であると思うのであります
自由化の仲間入りをする場合、
関税保護といっても、戦前のような高率
関税を課することは、国際的にも認められないと思うのであります。また非鉄
金属を原料とする電線、伸銅等の
関連産業も同じく
自由化を迎えるものでありまするから、当該
産業のことも十分配慮しなければなりますまい。
かかる観点より、わが党は、
関税保護政策よりも、むしろ国内
鉱産物価格支持のための輸入
鉱産物と国内
鉱産物との
価格プール制を主張いたしたいのでございます。前通産次官徳永氏が、徳永構想といわれる
価格プール制を唱えたことは周知の事実であります。またフランスは国内
鉱山を保護すると同時に、国内
需要者に対しても、適正かつ安価な
価格で配分するための
一手買取機関を設けているのであります。わが党は決してイデオロギー的な
見地から唱えているものではございません。企業基盤の弱い
金属鉱業を保護育成いたしまして、
関連産業に負担のかからない方法として、
国民経済的視野に立って主張しておるのでございます。この構想について、
政府は虚心たんかいに
鉱業審議会に諮り、すみやかに
検討すべきであると思うのであります。
政策の第三といたしまして、私は、特に
中小鉱山の
振興対策を強調いたしたいと思うのであります。
鉱業界における
中小鉱山の比重はきわめて高く、銅、鉄鉱は二〇%にも満たないのでありますが、金、鉛、亜鉛は約三〇%に達しており、水銀、マンガン、クローム、モリブデン等はほとんど一〇〇%の生産であって、数多い貴
金属に至っては、大体一〇〇%をまかなっているのでございます。大手会社は製練所を有し、安い輸入鉱の買い入れ等によりまして、若干の余裕がありまするが、売鉱のみの
中小鉱山は、
自由化のあらしの前に、風前のともしびのごとき
状態にあり、全く放置できないのでございます。
政府は、すみやかに低金利、融資のワクの拡大、
税制の
優遇措置、
開発道路の建設、機械の貸与など、特段の
措置をする必要があると思うのであります。
政策の第四点といたしましては、国内資源をいかに
開発しても限度がありますので、
外国鉱石を確保するため、
海外資源
開発の促進が必要であります。世界的に鉱石のスポット物は比較的少なく、池田首相渡米の際も、銅鉱のスポット物の半分も
日本が買いあさったという非難があったほどであって、後進国との協力のもとに、みずからの手で
開発し、業界が不要な競争をすることなく、民間、
政府一体となり、
海外鉱物資源株式会社を設立し、大規模に行なうべきであります。その他、
税制の改善あるいは
近代化の推進も必要であります。
最後に、私は
政府に強く要望したいことは、
金属鉱業をして石炭
鉱業の惨状を再び繰り返さないということであります。
自由化により
鉱産物の大幅な値下がり、
鉱山会社の赤字累積、それによる賃金の引き下げ、賃金の遅欠配、人員整理、労使間の血みどろな争い、こういった一連の
事態を再現してはならないと思うのであります。しかも、石炭と異なり、
鉱山は山間の僻地にあり、
鉱山の衰退が地域住民に与える
影響はより一そう深刻なものとなるのであります。
政府はこの事実を直視いたしまして、
鉱業政策を強力に推進するよう要望いたしまして、
賛成討論といたしたいと存じます。(
拍手)