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緒方孝男君 私は、本日、予期せざる
空襲におびえる
国民のために、
日本社会党を代表して、
総理並びに
防衛庁長官の責任ある
言明を求むるため、
質問を試みんとするものであります。(
拍手)
今日、われわれの周囲はまことに危険な
状態に置かれております。地上には走る凶器が横行し、空には
予告なくして落ちてくる凶器あり、
日本全国六十余州いずれに安住の地を求めるか、まことに悲しき
状態といわなければならないのであります。(
拍手)ましてや、最近における
自衛隊の
航空事故の続発は、もはやこれ以上黙過することのできない問題であると思うのであります。
本年二月六日、
八戸沖におきまして、
海上自衛隊機の
事故により十名のとうとき
犠牲者を出し、いまだその遺体もその
機体も収容することのできないうちに、二月二十六日には山口県の沖合いにおいて、はたまた三月十七日には
小田原市において、
航空自衛隊所属の
ジェット機二機が墜落しておるのである。しかも一昨十一日には、御丁寧にも、南は福岡と北は北海道の二カ所において
墜落事故を起こしておるのであります。
新聞の報ずるところによりますと、本年になって十二機の
飛行機が墜落しておるから、五日間に一機の割合で落ちておるということになる。
防衛庁当局の
提出した資料によりましても、今日まで墜落せる
飛行機の数は百九十八機、
乗務員の死亡せる者百二十七名に及んでおります。これらの
事故によって、そのとうとき生命が失われた
乗務員各位、並びに被災を受けた
人たちの
犠牲を惜しむはもとよりのことながら、
国家経済の
損失の面から見ましても、ゆゆしき問題であるといわなければならないのであります。(
拍手)一人の
パイロットを
養成するに五千万円ないし一億円もの経費を費やしながら、これが
訓練の途上においてむなしく姿を消していき、一機三億円から五億円もするという高価な国の
財産が、次から次へと失われていくことは、
国家経済の面から見ましても、放置することのできない問題であると思うのであります。ましてや、何の
予告もなく頭上に落下してくる怪物の
犠牲にさらされておる
国民の不安は、まさに言語に絶するものがありといわなければなりません。(
拍手)しかも、この不安にはおまけがついております。それは
在日米軍の
航空事故であります。この悲しむべき付録の
件数も、
昭和二十七年以後百八十二機に及んでおりまするから、まさに
日本の
国民は、
日米両軍の
予告なき
空襲にさらされておるといわなければならないのであります。(
拍手)
この際、私は、
国防会議議長池田総理大臣並びに
藤枝防衛庁長官に対し、
国民にかわってかくのごとき不幸なる
事故を絶滅するための
対策を強く要望すると同時に、以下数点にわたってその
内容について
質疑を行ないたいと思います。
第一に
質問いたしたいことは、昨年末以降における航空機の
事故の
激増は、その
根本原因は一体いずれにあるのか、責任ある
調査の結果があるならば、これを明らかにしていただきたいと思います。
新聞の報道によると、
防衛庁当局は、
飛行件数や
飛行時間の面から見れば、統計的には
事故が多いとは言えないと言われているが、最近における
事故の
現況は、まさに異常といわなければなりません。統計的に云々というがごときは、かつて
米軍当局が、
交通事故に比べれば
飛行機の
事故は何万分の一だなどと放言した、無責任なる
言明にも似た暴言といわなければならないのであります。
次に、
防衛庁のあげる
事故の
原因の中には、
パイロットのあやまちや未熟練によるものがその大半を占めておるということでありまするが、未熟練なる者に
操縦をさせ、
人命、
機体等を
犠牲にする、そのこと自体が検討されなければならない問題だと思うが、これに対する
防衛庁長官の
見解を要望するものであります。(
拍手)
次に、未熟練なる者にでもひんぱんに
操縦をさせなければならない事態が
防衛庁の内部に存在しておりはしないかという疑問である。最近、
アメリカは南ベトナムにおける内戦に干渉し、第七艦隊を初め、極東の
米軍はすでに
戦時体制に入っておるということである。行く行くは
在日米軍もこの
戦闘に参加する場合もあり得るという
状態に置かれておる
現状から見て、
日本の
自衛隊も、事の
緊迫感に伴い、
ジェット・
パイロットの
養成に血道を上げておる中から、
事故件数の
激増を引き起こしておるものがありはしないかと考えるが、これに対する
長官の
現況報告を願いたいと思うのであります。
次に、
防衛庁は、
事故の問題については常に過去の数字を引き出して、
現状を誇ろうとしております。たとえば、
昭和三十一、三十二年の
事故に比較して、その
事故率は激減しておるというが、今後、機種の変更に伴い、また再び
激増してくる
危険性を感ぜざるを得ないのであります。すなわち、
プロペラ機から
ジェット機に総入れかえをしなければならない
現状から見て、現在の危険が緩和されるとは考えられません。
プロペラ機がF86F
ジェット機にかわり、F86F
ジェット機がF104Jに入れかわっていく急激な変化の過程の中で、今後ますます追落
事故の
犠牲者は
激増するものと思うが、これについても
長官の
見解をただしておきたいと思うのであります。
次は、
ジェット戦闘機の
機数の増加と
パイロット養成の
現状からくる矛盾である。たとえば、
昭和三十年より昨年までの間に三百機のF86
ジェット機が装備されて参りましたが、これを
操縦する
パイロットを充足することは、容易なことではなかったことは事実である。次にまた、第二次
防衛計画に基づいてF104
ジェット機二百機が新たに装備されていくわけでありますから、
飛行機はあれども
操縦士はいないという
現状から、その
養成訓練に過重が生じたり、また未熟練なる者にも無理な
操縦を強要する等の危険が存在するものといわなければならないのである。この際、新三菱重工には多少不満は出てくるかも存じませんが、
飛行機を先に買い入れて
パイロットを急造していくよりも、みっちりと
パイロットを
養成し、
飛行機をあとで買い込むよう、
装備計画を再検討してみる必要がありはしないかと思うが、この点については、
国防会議議長はおられませんが、後日
答弁を願うとして、
防衛庁長官の
所見を承っておきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
パイロットの
養成訓練の
内容でありますが、
パイロットの
教育は、英文、
英語を主体とし、
アメリカの
教育方法そのままを使用しておるものと思います。このことのよしあしは別として、
パイロットにとっては相当の加重であることは事実でございます。複雑化した機械の
内容、音速をこえる
飛行訓練等、一人前の
パイロットを作り上げるために、相当の時間をかけなければならないと思うのであります。現在、三年六カ月から四年間の
期間を設けて
教育をしておりますが、
新聞の漫画にならうわけではありませんけれども、この際振り出しに戻ってこの
期間を再検討してみる必要がありはしないかということを、
防衛庁長官からその
所見を承っておきたいと思うのである。
以上
指摘した幾つかの問題は、われわれの単なる想像や危惧の
一端に過ぎないのであります。当然これらの問題については
当局側の十分なる
関心と注意とが払われてきたものと思います。しかし、それでも
事故は現実に起こっております。われわれの
指摘するところが多少なりとも的中しているといないとにかかわらず、いずれかに
事故の
原因を突きとめ、抜本的な
対策を講じなければならないことだけは事実であると思います。
当局においても、しろうとに対する反発の
答弁ではなく、誠意のある
答弁を要請するものでございます。
最後に、私は、本日の御出席がないのが残念でございますが、御
答弁は後日に譲るといたしましても、この際
池田総理に一言お尋ねしておきたいことがございます。
聞くところによりますと、
航空自衛隊の
源田元
空幕長は、七月一日に予定されている
参議院選挙に出馬するために、四月七日付をもって辞職せられたそうであります。
源田氏はかつてグラマンをロッキードにすり変えた偉大な
政治家でございます。それであるから
政治に
関心を持たれることはこれまた自由といわなければなりませんが、
幕僚長の職にありながら、
参議院に立候補するため、その職務が手につかず、
選挙の
事前工作にうき身をやつしておったという風評が今日流れておるのでありますが、
飛行機事故の続出しておる今日、当の
責任者がかくのごとき
状態はまことに遺憾のきわみであるといわなければならないのであります。(
拍手)今日の
事故の続出する
原因はここにその
一端があるといっても過言ではないと思うのであります。
源田氏に対する私の批判はさておきまして、私が
政府にただしたいことは、
政府は今、今
国会に
公職選挙法改正案を
提出されておるのであります。その
内容は
選挙制度審議会の答申を無視した粗末な
ごまかしものであるとわれわれは思います。しかし、その粗末な
ごまかし改正案のうちにも、
政府の
高級職員の
立候補制限がうたわれておるのであります。
源田空幕長は、最近まで
政府の
高級職員であり、
自衛隊二十六万の票を目当てに
選挙を行なおうとするのである限り、当然この
規制に当てはまるものと考えなければならないのであります。
自衛隊は
総理の
直属の部隊、
源田氏はかつては
総理の
直属の
部下であったはずであります。
内閣首班の
総理は、
法案提出の
責任者である。その
責任者の
部下がその
規制を破ろうとしていることに対して、いかなる
見解を有せられるでありましょうか。もちろんいまだ
法案は議決されておりませんが、しかし、議決をされておらないから、そのことを
理由として御
答弁をなさるとするならば、私は
総理の
政治的責任と良心とを疑わなければならないのであります。しかもまた、伝えられるところによりますと、
源田氏は
自民党の
公認として出馬をなさるとのことでございますが、これはあくまでちまたのうわさにすぎないだろうと私は思います。よもや
総理が今日の立場上、
自民党の総裁として
源田氏の
公認を認めることはあるまいと私は信じておりまするが、もしかりにこれを認めるようなことありとせば、これこそまさに朝三暮四、
国民を愚弄するもはなはだしい行為なりといわなければならないのであります。後日でもけっこうでございますから、これに対する
総理の明確なる御
答弁を要求いたしまして、私の
質問を打ち切りたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣藤枝泉介君
登壇〕