運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-04-06 第40回国会 衆議院 本会議 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月六日(金曜日)     —————————————  議事日程 第三十号   昭和三十七年四月六日    午前零時五分開議  第一 日本国に対する戦後の経済   援助処理に関する日本国とア   メリカ合衆国との間の協定の締   結について承認を求めるの件           (前会の続)  第二 特別円問題の解決に関する   日本国タイとの間の協定のあ   る規定に代わる協定締結につ   いて承認を求めるの件           (前会の続)  第三 質屋営業法及び古物営業法   の一部を改正する法律案内閣   提出参議院送付)  第四 国有財産法第十三条第二項   の規定に基づき、国会の議決を   求めるの件  第五 経済企画庁設置法の一部を   改正する法律案内閣提出)  第六 科学技術庁設置法の一部を   改正する法律案内閣提出)  第七 行政管理庁設置法等の一部   を改正する法律案内閣提出)  第八 児童扶養手当法の一部を改   正する法律案内閣提出)  第九 国民年金法の一部を改正す   る法律案内閣提出)  第十 畜産物価格安定等に関す   る法律の一部を改正する法律案   (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 日本国に対する戦後の   経済援助処理に関する日本国   とアメリカ合衆国との間の協定   の締結について承認を求めるの   件           (前会の続)  日程第二 特別円問題の解決に関   する日本国タイとの間の協定   のある規定に代わる協定締結   について承認を求めるの件           (前会の続)  日程第三 質屋営業法及び古物営   業法の一部を改正する法律案   (内閣提出参議院送付)  日程第四 国有財産法第十三条第   二項の規定に基づき、国会の議   決を求めるの件  日程第五 経済企画庁設置法の一   部を改正する法律案内閣提   出)  日程第六 科学技術庁設置法の一   部を改正する法律案内閣提   出)  日程第七 行政管理庁設置法等の   一部を改正する法律案内閣提   出)  日程第八 児童扶養手当法の一部   を改正する法律案内閣提出)  日程第九 国民年金法の一部を改   正する法律案内閣提出)  日程第十 畜産物価格安定等に   関する法律の一部を改正する法   律案内閣提出)    午前零時十二分開議
  2. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件           (前会の続)  日程第二 特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件           (前会の続)
  3. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第一、日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、日程第二、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題とし、前会の議事を継続いたします。  これより討論に入ります。  まず、日程第一につき、討論を行ないます。黒田壽男君。   〔黒田壽男君登壇〕
  4. 黒田寿男

    黒田寿男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件についての委員長の報告に反対をいたします。これからその反対の理由を述べます。  政府は、本協定によりまして、ガリオア・エロアわが国アメリカに対する債務として支払おうとしております。しかしながら、いかなる理由によって債務と見るかということについて、政府はこれまでわれわれを納得させる根拠を何一つ示しておりません。(拍手)元来ガリオアについては、過去長い間、政府自身が、それが債務であるか贈与であるかということについて、はっきりとした見解を持っていなかったというのが事実であります。ガリオア・エロアは債務であるか贈与であるかという問題につきましては、過去長い間国会におきまして、あるいは予算委員会において、あるいは大蔵委員会において、あるいは決算委員会等におきまして、質疑が行なわれました。私自身が委員会議事録で調べただけでも、十数回にわたってこの問題についての質疑が行なわれております。それにもかかわらず、政府によって明瞭な見解は示されておりません。池田首相自身大蔵大臣でありましたころ、昭和二十四年四月の国会の委員会におきまして、次のように答弁をしておる。ガリオアが債務であるか贈与であるか、依然としてきまっておりません、それは平和条約のときにきまるべきものと考えておる、外国では贈与された例もある。このように答弁をしておるのであります。また最近、この国会の予算委員会におきまして、こう答弁しておる。私は、その後ずっといろいろ研究したあと、昭和二十五、六年ごろから、ガリオアは債務と心得ます、こう言っております、このように答弁をしております。しからば、昭和二十五、六年以前、ガリオア援助が開始せられてから四、五年もの間は、池田首相ガリオアを債務と心得ていなかったということになるのであります。だからこそ、昭和二十四年の国会で、さきに指摘いたしましたように、ガリオアは贈与か債務かは依然としてきまっておりませんと答弁したのであります。池田首相は先般の外務委員会におきまして、この点についての私の追及にあって、合理的に弁解することができなかった。そこで、従来の答弁の内容を変更して、ガリオア援助が始まったころから、その中に債務と心得るべきものと、贈与と解すべきものとがまじっておったと思っておった。こういうように答弁の内容を変更したのであります。しかしながら、今になって答弁内容を変更いたしましても、昭和二十五年以前は、債務と心得ておらず、債務か贈与か依然としてきまっていないと考えていたという答弁をいたしましたその事実を変えることはできないのであります。(拍手)この一例をあげましただけでも、ガリオア債務性について、政府自身がはっきりした考えを持っていなかったということが証明せられるのであります。  次に、池田首相は、昭和二十四年の大蔵大臣としての答弁で、ガリオアが贈与か債務かは講和会議できまるべきものと考えておると答弁されておる。しからば、対日平和条約ではどうであったか。対日平和条約には、ガリオアを債務として支払うべきことを義務づけた規定は全然見当たらないのであります。(拍手)また、対日平和条約締結責任者でありました吉田元首相は、平和条約締結後の昭和二十八年七月の衆議院予算委員会におきまして、ガリオアの問題に関する答弁を行ない、それは法的債務ではないが、独立国になれば、独立国民の名誉から、援助を返したい、こういうふうに答弁しておる。緒方副総理も、それから約二週間後に、ガリオアは法的に確立した債務ではない、道義的なものであると答えておるのであります。対日平和条約の解釈は、この条約を締結した首席全権である吉田元首相の解釈が最高の権威を持つものであると私どもは見なければならぬ。その吉田元首相が対日平和条約ガリオア援助法的債務として支払う規定はないと認めておることが、前述の答弁で明らかになったのであります(拍手)  池田首相大蔵大臣時代の答弁を待つまでもなく、戦時中及び占領期間中に生じましたわが国対外関係上の支払い請求権の、平和条約締結後の効力は、これを平和条約において規定しておくというのが、国際法上の原則であります。(拍手)しかるに対日平和条約には、わが国アメリカに対し将来ガリオア援助を支払うべき義務がある旨の規定は、先ほど申しましたように、全然ないのであります。池田首相自身も、とのことを昨日の外務委員会におきましてはっきりと認められております。ただし、池田首相は、同時に、弁解してこう言われた。ガリオアについては後日話し合うつもりであった、こうつけ加えられたのであります。しかしながら、われわれの常識をもってして、ガリオアについてだけ他の債権債務の処理に関する平和条約上の取り扱いの原則の例外とする理由はないのであります。また、政府の高級官僚の人々、そういう人々は、ややともすれば秘密独善外交を好むという欠点を持っていますが、こういう政府部内の高級官僚腹の中で何を考えておりましょうとも、それによって、国民は何らの拘束をも受くべき筋合いのものではございません。(拍手)池田首相がその腹の中で、将来ガリオア支払いについてどう考えていたかということによってではなくて、文字の上に現われた平和条約の字句とその厳格な解釈、世の中には何かためにするところがあって、ある条文の反面解釈を行なったり、拡張解釈をしたりするようなことがありますけれども、そういうことによってではなくて、条約の条文の厳正な解釈と国際法及び国際慣習の原則に従って物事を判断すべきであります。そして、対日平和条約にはガリオア支払いに関する規定はない。このことは、池田首相自身も、先ほど申しました通り、昨日はっきりとそう答弁しておられる。池田首相腹の中にどういうことを考えておいでになったといたしましても、対日平和条約にはガリオア支払いの規定はないのでありますから、この一点をもっていたしましても、ガリオア債務性を主張する政府の考え方が、いかに根拠のないものであるかということがわかるのであります。(拍手)  政府は、ガリオア債務性の根拠をスキャッピンに求めておる。連合国司令部日本政府あての覚書に求めております。この覚書に、援助物資支払いについて、後日これを決定する旨のただし書きがついていた、こう言うのであります。しかしながら、これがはたしてガリオア債務性の根拠になるかどうか、私はこれに関する見解をこれから申し述べてみたいと思います。  ガリオア援助が債務か贈与かが、本協定における論争の中心点と、現在なっております。それを決定するための根本的な基礎的な判断の資料となるものは、ガリオア援助が行なわれました時期におきまして、わが国がいかなる国際的地位に置かれておったかということを明らかにすることである。(拍手)特にアメリカわが国との国際的地位を比較して、わが国がいかなる立場に置かれておったかということをはっきりとつかんでおく必要があります。現在、わが国アメリカに対し、軍事的にも経済的にも政治的にも、文字通りに対等平等の関係にあると考えることには無理がありますけれども、しかし、今は一歩譲って、一応常識に従って、独立国同士の関係と見られておるといたしましょう。しかしながら、ガリオア・エロア日援助が行なわれておりました時期は、対日平和条約締結前の時期でありまして、日本は連合国軍の、実質的にはアメリカ軍占領下に置かれておりまして、わが国の主権は連合国司令官マッカーサーの超憲法的権力のもとに置かれ、国の独立は残念ながら奪われ、外交権は全面的に停止せられ、貿易は全面的に管理せられておったのであります。要するに、アメリカに対するわが国の当時の国際的地位は、対等平等の立場で、自由な意思に基づいて取引ができるというような関係ではなかった。絶対権力者としての支配者と、その意思に従うほかない被支配者との間の関係であったのであります。  そのことから次のことが言える。アメリカと日本とは契約的基礎の上に立つ国際的取引、これを輸出入と言ってもよろしいでしょう。そういう国際的取引によって債権債務を発生させるような関係にはなかったというととであります。(拍手)ガリオア援助は、債権債務などの観念を超越した環境のもとで行なわれたものであります。それではどういう援助であったか、それはアメリカ占領政策として行なわれた援助であったのであります。ここにガリオア援助の本質があるのである。従って、同じアメリカわが国に対する援助と申しましても、日本国アメリカ合衆国との間のいわゆるMSA小麦輸入協定のような一定の国際的取りきめがあって、それに基づいて援助が行なわれるというようなものとは本質的に違っておったのであります。すなわち、ガリオア援助は、物資の輸入の形式で行なわれはいたしましたけれども、それが通常の商業輸入といかに異なったものであったかということは、われわれの記憶に今なお新たなところであります。(拍手)わが国には輸入物資の種類あるいは品質等についての選択権はありませんでした。価格に関する何らの協定もなくして輸入せられたのであります。支払い方法も何ら協定されておりません。物資を入手してもその自由な処分は許されなかったのである。国民に物資を売りつけた代金は、見返り資金として積み立てられましたけれども、その使用についても、一銭一厘に至るまで総司令官指令通りにするはかなかった。こういう状態であった。援助物資のこのようないわゆる買付が、法的な契約に基づくものであり得るはずはなく、従って、法的な代金支払い債務の発生するというような余地はなかったのであります。すなわち、ガリオア・エロア法的債務ではない、こういう結論に到達しなければならぬ。(拍手)  しからば、ガリオア援助は一体何であったろうか、これを考えてみなければなりません。アメリカガリオア予算は本来アメリカ外国地域における占領に関し、アメリカの責任と義務に応ずるために必要な経費として支出したものであります。これをいま少し砕いて申しますならば、アメリカが占領しておる地域の住民が飢餓や病気で苦しむようなことになると、そこに社会不安の状態が発生する。そのことは直ちに占領軍の不安となるのであります。このような不安から米国の軍隊を守るために、必要な最小限度の供給として物資を供給したのであります。このことを最もよく表わしておりますものが、極東委員会食糧輸入に関する決議であります。この決議は、日本に食糧の輸入を許可するについての根本的な原則を示しております。それは次のようにいっておる。連合軍の当座の安全にとって必要不可欠と認めるもの以外は、日本に対しそれ以上の待遇を与えてはならない、こういうように決議をしておるのであります。これによって日本への食糧輸出は、当時の食糧の事情からいたしまして、日本人への食糧援助にもなりましたけれども、しかし、根本的には、日本人食糧欠乏によって社会不安が発生すれば、それがアメリカ占領軍に不安を与えることになるので、その不安が発生することを防ぐことによって、アメリカ占領軍を守るということが、根本の目的とされておったのであります。すなわち、アメリカ占領軍の安全にとって必要不可欠として、食糧についても、その輸入を許可したものである、こういうことがわかるのである。ガリオア予算は、ある外国に対する借款として用いらるべき性質のものではなかったのであります。ガリオア物資の輸入は、それによって通常の輸入の場合のように、先ほど申しましたように法的債務を負担するということになるような性質のものではなかったのであります。それは占領軍占領政策として、それ自身の責任とし、義務とし、利益として、日本に供給した援助であるということができるのであります。ガリオア援助占領政策でありますから、占領期が経過し、占領政策が終了するとともにスキャッピンの効力も消滅するのであります。占領中に行なわれた援助について、将来その取り立てを留保しておこうと思えば、平和条約締結の際、これを明記すべきものであったのであります。(拍手)しかるに、このことは明らかになされておりません。占領中にのみ効力を有する総司令部の覚書を今ごろになって持ち出してきて、これをガリオア債務性の根拠とするというようなことは、われわれの絶対に承服しがたいところであります。(拍手)  ガリオア援助の本質を全面的に、かつ正しくとらえるためには、その法的解釈の面から見るほかに、経済的な面からも、また政治的な面からも、これを見る必要があります。ガリオア援助に対し支払いをしようという考えの中には、これを法的債務として支払おうというものと、道義の問題、名誉の問題として支払おうというものとがございます。その立場に相違はありますけれども、しかし、ガリオア援助を、本来の意味の援助と考えておるという点では、両者は一致しておるのであります。すなわち、援助によってアメリカはそれだけ損をする、そしてアメリカは損をするだけである、日本はそれだけ得をしておる、そして得をするだけである、こういう関係になるのが本来の意味の援助であります。かような意味での救済を受けたのであると考える者には、債務の弁済として、あるいは恩に報ゆるという意味において、これを返そうという考えが起こってくるのであります。  しかしながら、アメリカの戦後の対日援助の実体は、決してそのような単純なものではありません。それは深刻な内容を持っておったのである。アメリカは戦後の対日援助政策によって、決して、われわれの目から見れば、物質的に損をしておるものではありません。その政策を通じてアメリカは、国家としても、またアメリカの資本としても、十分な利益をあげておるのである。ガリオア援助に見合うだけの利益は、日本からすでに取り戻しておる。(拍手)もっと率直に言えば、それに見合う以上の利益を、すでに日本から取り戻しておるのである。これが私はガリオア問題の実体であると考える。  これについて、私は若干の説明をつけ加えてみましょう。  第一に指摘したいのは、ガリオア物資は、その大部分がアメリカ過剰物資であったということであります。たとえば食糧について申しますならば、これを日本にでも送らなければ、腐って使いものにならなくなってしまう、そういう状態にあったのであります。ガリオア食糧については、動物の飼料用のものもあったのでありますけれども、これを贈与と思ったからこそ、国会は感謝決議をしたのである。これは率直な事実である。今ごろになって、感謝にいろんな理屈をつけておる者がありますけれども、事実は、あの当時そうであった。また国民もそう思っておったのであります。それを今さらアメリカが有償であるというならば、ガリオア援助によってアメリカは非常な有利な輸出を日本を相手としてなしたことになるのであります。  第二に、ガリオア援助による輸入は、日本がアメリカ占領下にあるという特殊事情のもとで行なわれましたために、他国の商品輸出わが国に入り込むすきを与えないように利用せられていたのであります。管理貿易を媒介にして、わが国の対米偏重貿易政策という、アメリカにとりまして非常に有利な貿易を将来作り出す、その出発点を作ったのが、ガリオア援助の対日輸出であったのであります。(拍手)こういう利益をアメリカはあげておる。  第三に、ガリオア援助を通じて当時アメリカの資本がいかに利益をあげたかということにつきましては、これは多くの人がすでに指摘しておるところであります。計数的なことは外務委員会において井手委員などが詳細に論じられておりますので、私はここでは概論的に申し上げるにとどめます。昭和二十四年四月、見返り資金特別会計設置までの輸出入は、複数レートで操作せられておりまして、これは多くの人が指摘しておりますように、アメリカからの輸入は不当に高く計算され、日本の輸出品は不当に安く買い付けられ、それによってアメリカの資本は大きな利益をあげておる。これは動かすことのできない過去の事実であります。また、輸出入の差額は、見返り資金特別会計を通じて、援助物資払い下げ代金でまかなったのであります。このような事実は、日本への援助政策を通じてアメリカの資本がいかに利益を獲得しておるかということを示すものであります。  次に、第四に、私は終戦処理費との関連からガリオアを考えることができると思う。ガリオア援助もいわば間接軍事費であります。終戦処理費も同じ性質のものであることは、だれも疑う者はございません。われわれはガリオア援助の金額がアメリカの計算する通りであるといたしましても、その倍額以上の税金を、国民は終戦処理費として取り立てられておるのであります。ガリオア援助のおつりは十分以上に出ておる。これは理屈では反駁のできぬ国民感情であります。今さらながらガリオアを支払えとは何事であるか。これがこの協定に対して国民の抱いておる率直な感情である。このことを政府は知るべきである。(拍手)以上の事実によって見ても、ガリオア物資に対し、アメリカはすでに十分な利益を取り戻しておる、今さらこれに対し支払う必要は私どもは断じてない、そう考える。  次にアメリカは、占領、被占領という関係の中で、ガリオア援助という政策を発端といたしまして、わが国を経済的に従属さしたのでありますが、当時の経済的従属を通じて日本を政治的にも従属さしたという利益をアリメカは得ておる。対日平和条約全面的講和としなかったことにそれが現われております。この条約と同時に日米安全保障条約を締結して、アメリカに対する日本の軍事的従属関係アメリカによってかちとられたのであります。ガリオア援助が終わったあとMSA軍事援助がこれにかわって従属的関係をさらに一そう深めました。その上に新安保条約によってアメリカへの軍事的従属体制固めをしたのである。ガリオア援助はこのようなアメリカの対日政策の体系の中でこれをとらえ、そのようなアメリカの対日政策の一環として、そしてその発端としてとらえるときに、その政治的本質をはっきりととらえることができるのであります。  アメリカは今深刻なドル危機の中でガリオア返済を求めてきており、池田内閣はこれに応じました。池田内閣は、私どもから見れば、支払わなくてもよい金をアメリカに支払おうとしておるのであります。これが今回の協定であります。これを支払うならば、私は二重にも三重にも支払うことになると思う。このような支払い協定にわれわれは承認を与えることは断じてできないのであります。(拍手)  次に、本協定の付属交換公文について簡単に申し述べてみたいと思います。この二つの交換公文にも重要な問題が含まれておる。交換公文の一つは返済金の一部を日米の教育、文化の交流のために使用することに関するものであります。これはアメリカが、政府対政府の政策によってだけでなく、さらにそれ以外の方法によって、日本国民の精神の奥底にまでアメリカ文化の腐敗した資本主義的精神を植え付けようとする意図に基づくものであると私は考える。これはいわゆるディプロマシィ・イン・デプスの実行を企図するものであります。われわれは、日本の勤労者の健全な文化の維持、擁護、発展のために、このような政策に対し反対せざるを得ないのであります。  第二の交換公文は、ガリオア返済金をもって東アジアの低開発国アメリカの計画に基づいて援助するために使用することを予定しております。アメリカのこの政策に応じて池田内閣アメリカに資金を支払おうとしておる。その上、池田内閣は、この国会におきまして御承知のようにタイ特別円協定の改定について承認を求め、正当な理由なくしてタイ国に九十六億円を贈与しようとしております。一方は国民に贈与と思わせていたものを債務として支払おうというものである。他方は債権としてやがては弁済してもらえる関係のものを贈与に変えてしまったのであります。この二つの協定は奇妙なコントラストをなすものでありますが、同時にわが国が払わなくてもよい金を外国に支払うという点では共通のものを持っておる。その上韓国からも現在理由不明な金を要求せられておるのであります。  私は、こういうことだけを見ても問題の重要性を知ることができると思いますけれども、さらに重要な他の問題がひそんでおります。ガリオア援助支払いを通じてアメリカに返済される金は、東アジアにおけるアメリカの戦略基地への援助として支払われるということは明らかであります。タイ国への支払いが、SEATOの中心に立つ国の政策を強化することに役立つことは明らかである。日韓会談が中止されぬ限り、池田内閣は、日韓会談を通じて、韓国の凶悪な軍事ファッショ政権の強化に協力することになることも明らかであります。池田内閣アメリカへのガリオア支払いとタイへの贈与と日韓会談は、それぞれ個々別々に、相互に無関係の政策として遂行されようとしておるものではありません。これらの政策は、その背後にアメリカの東アジア政策があり、それに推進せられて行なわれておるものであります。(拍手)これらの政策には内面的なつながりがある。これらは、すべてアメリカの東アジア戦略への追随として行なわれるものである。池田内閣は、これらの政策によって、アメリカの東アジア政策に追随するとともに、わが国の独占資本の東アジアへの進出をもあわせて意図しておるのであります。池田内閣の政策は、アジアの平和に役立たぬだけでなくて、アジアの緊張を激化するものであります。アメリカの東アジアにおける危険な戦争政策に追随することによって、わが国を戦争の危機にさらすものである。われわれは、池田内閣の外交政策それ自身に全面的に反対し、その池田外交の一つの現われである本協定の承認にも、断固として反対するものであります。  以上をもちまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  5. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 北澤直吉君。   〔北澤直吉君登壇〕
  6. 北澤直吉

    ○北澤直吉君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件に対し、賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)  一般にガリオア・エロアといわれておりますところの戦後米国の対日経済援助処理は、わが国における戦後処理の重要な一環として、米国との間の多年の懸案でありましたが、今回この協定によりまして、約十八億ドルに上ります援助額に対し、わが国が四億九千万ドルを年二分五厘の利子を付して十五年間にわたり半年ごとに支払うこととし、ここに本問題の最終的解決を見ることと相なるわけであります。  次に、本件に賛成する理由のうち、重要なるもの若干について申し述べます。  まず第一は、ガリオア等の援助債務性に関する点であります。米国政府は、一部の贈与分を除き、本件援助贈与であることを言明したことはなく、むしろ、極東委員会決定等の諸文書、マッカーサー元帥初め米国政府関係者の諸証言によっても、米国は、他日これが返還さるべきものであるとの態度を明らかにしております。また、わが政府に対しまして、援助物資提供に際し、これが支払いについては後日これを決定するとの趣旨が、日本占領下にあった時代においては、すべてに優先して最高の効力を持っておった占領軍司令部の指令において明らかにされておるのであります。このようないきさつから、この援助は、当初から、将来何らかの処理を要するものであったことは、きわめて明瞭であり、また、これに基づいて、過去十年来、日米間に返還交渉が行なわれて参ったのであります。このように債務性が明らかであります以上、これに対して相当の支払いをなすことは当然と申さなければなりません。一方、平和条約発効後十年を経過し、賠償問題もほとんど解決しまして、また、わが国経済力も西ヨーロッパ程度といわれるまでに向上しました今日、これが解決をはかることは時宜を得たものと考える次第であります。(拍手)  第二は、今回わが国が対日援助処理として支払うことに決定しました四億九千万ドルという金額の点であります。これは援助総額についての日米双方の計算方法、総額より差し引くべき各種の項目金額、西ドイツのガリオア処理協定の前例等の要素が勘案され、また一韓国及び琉球との清算勘定残高が、日本の米国に対する反対請求権として処理された結果でありますし、西ドイツがガリオア等の援助約三十億ドルに対し十億ドルを支払うこととしましたことに比較してみましても、妥当なる金額であると信ずるものであります。  第三は、今回の協定による支払いは、日本国民にとり二重払いとなるのではないかという点についてであります。日本政府は、援助物資を民間に放出し、その代金を受け取っておりますが、この代金は、昭和二十四年見返資金特別会計設置以前は、日本国内において物資を安く売るための価格補給金等に充てられ、見返資金特別会計設置以後はこの会計に積み立てられ、戦後の各般の経済復興の資金源として使用せられており、日本政府としては、今回の協定の対象となっております援助物資について、一銭一厘も米国政府に支払ってはおらないのであります。従って、日本政府と米国政府との関係においては、二重払い云々は全然問題にならないのであります。(拍手)世間でいわれておりますところの二重払い云々は、国民は、放出物資に対しては代金を支払っておるから、もし、今回の協定による支払いのために、新たに国民からの税金を充当するようなことになれば、国民にとり二重払いになるのではないかということであります。しかしながら、今回の協定によりますれば、四億九千万ドルの支払い方法は、最初の十二年間に毎回二千百五十九万ドル、その後の三年間に毎回八百七十万ドルずつとなっており、わが国の過重なる財政負担とならないばかりでなく、また、その財源も、援助物資代金を積み立てた見返資金特別会計の資産で、現在産投特別会計に引き継がれて残っているものの運用によって生ずる利益によりまして支払い得るもので、国民よりの税金を充当する必要はなく、従って決して世間でいうような二重払いにならないことは明らかであります。(拍手)  第四は、この支払い金の使途についてでありますが、協定に付属する交換公文において、二千五百万ドルは円貨払いとして、日米間の教育文化交流計画に使用され、残余の大部分は、東アジアその他の地域におきます低開発諸国に対する経済援助資金として使用される旨の米国側意図が明瞭でありまして、わが国としてもまた満足すべきものと考える次第であります。  第五は、戦後の対日援助は、あの終戦直後の極度の食糧難、社会不安の時期におきまして、いかにわが国民を勇気づけ、かつ、今日の経済復興の原動力となったかということでございますが、この点は何人も否定し得ないところであろうと思います。御承知の通りわが国と同様の立場にあります西ドイツは、すでに九年前の昭和二十八年に返済協定を結んで、その後、米国の要請によって繰り上げ支払いまで行ない、すでに大部分の債務を履行し、今日、世界におきまして押しも押されもせぬ国際的地位を築き上げるのに少なからず貢献したことは周知の通りであります。(拍手)これに対して昔から外国よりの借金はこれを踏み倒さないで、必ずこれを返済するという輝かしい実績を持ち、これによって世界のいずれの国にも劣らない伝統的な対外信用を築き上げ、外国資本の導入を促進し、明治以後の脅威的発展をなし遂げて参りましたわが国としましては、前に述べましたような、終戦後のきわめて困難な時期に供与されたこの米国の援助に対しまして、日本経済力と見合いながら適当な返済を行なうことは、独立自尊の誇りと、決して恩を忘れないとの信念を有する国民として当然のことと思われ、また、これによって、米国はもちろん、世界に対し、先進国の一つとしての日本国際的地位の向上発展に資するところ少なからざるものがあることを確信いたす次第であります。(拍手)  口を開けば民族の独立を唱え、日本は米国に従属しておると非難する人々が、事対日援助については、前述の経緯を無視して、一方的に、対日援助は無償の贈与なりと断定し、これに対する支払いを拒否し、ひたすらに米国の恩恵、米国の慈善にすがらんとする態度は、自家愛着もはなはだしいものといわなければならぬと思うのであります。(拍手)  この際、私が特に指摘しておきたいことは、日本国憲法の前文に、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」と声明せられておることであります。われわれ国民は常にこれを心に銘記すべきものと信ずるのであります。(拍手)  先ほど黒田議員の討論を伺っておりますと、過般の社会党と中共との共同声明に表われたように、米帝国主義に対する闘争という片寄った見地からすべてを割り切って議論しておることは明らかであります。われわれとしましては、これに反駁の必要を認めないのであります。  以上述べました理由によりまして、私は、今回の協定に対し、全面的に賛意を表するものであります。  以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手
  7. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 佐々木良作君。   〔佐々木良作君登壇〕
  8. 佐々木良作

    ○佐々木良作君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております、いわゆるガリオア・エロア協定承認を求めるの件につきまして、すでにわが党提案の積極的な撤回再交渉動議は否決せられましたので、本件に対する反対討論を行なわんとするものであります。  戦後における米国のわが国に対する援助をどう結末をつけるかという問題につきましては、本院は、昭和二十四年の大蔵委員会における質疑以来、足かけ十四年間にわたって、政府並びに国会の間におきまして常に論議の対象となって参りました。この間において自民党政府が一貫してとってきた態度は、本件をじわじわとわが国債務であると確認する方向に引っぱってきたことでありまするし、野党である社会党が一貫してとってきた態度は、本件は債務ではない、米国に対して一切返す必要はないという趣旨でありまして、いずれにしましても、本件を日米間の債権債務として認めるかどうかということに問題の焦点が置かれて参りました。このことは、本件を過去の外交案件の処理という観点からとらえるならば当然の帰結でありましょうけれども、私は、別の角度から、日本及びアメリカを含む自由陣営の将来向けの世界政策的見地に立って本件をとらえて処理することをもあわせ検討すべきである、こういう観点に立ちまして、わが党提出の動議の基本的な考えもここにあったわけでありまするが、これは内容を省略いたします。  反対理由に移りまするが、本件反対の第一の理由は、すでに同僚議員諸君も述べられましたごとくに、本件の背景となっているわが国に対する米国の戦後援助は、いかなる両国間の交換文書等によりましても、わが国側においては、これを法律上の債務として認め得る結論はどうしても出てこないということであります。政府が今回本件の参考資料として提出した昭和二十四年四月六日の衆議院における阿波丸事件決議、同年四月十日の同事件についての日米両国政府処理協定、また、昭和二十二年六月二十日のマッカーサー元帥の米国議会にあてたメッセージ、及びその前年の昭和二十一年七月二十九日のスキャッピンにおける援助物資支払いについては後日これを決定するというただし書き、これらのいずれの資料をとってみましても、また、本日のこの議場における質問に対する外務大臣等の答弁を伺いましても、本件が法律上の債権債務であり、わが憲法上、財政法上、わが国債務として認めなければならないという結論はどうしても出て参りません。政府提出の資料は、むしろ、本件の債務性が成立しがたいことを国際的に立証するための資料とみなしても差しつかえがないと思われるほどであると思います。さらに、先ほどの論者も言われましたごとくに、政府は、たびたび西ドイツの例を引かれるのでありまして、戦後の復興にあたって、わが国と同様に西ドイツも米国から経済援助を受けましたけれども、西独の場合、それについての米国の請求権は、援助当初から両国の間に確認されておりました。従いまして、二国間の債権債務として処理されたのは当然の帰結でありまして、これがわが国の場合に当てはまり得ないことは言うまでもありません。(拍手)かくして、政府の言うがごとき債務性を立証することはついにできなかったと私は思うのでありまして、これが本件反対の最大の理由であります。  第二は、右のごとく、本件の背景をなす日米間の債権債務関係が明確に立証されないにもかかわらず、政府は、債務性が濃いものという表現をもちまして国会に臨み、自民党の多数の力をもって債務を確認しようとするこの政府・与党の態度にあります。政治——格別外交に関しましては、国民の十分なる納得を前提としてのみ効果を上げ得るものでありますることは言を待ちますまい。本件を多数の圧力をもって押し切ろうとする政府・与党の態度は、国会戦術としてはあり得ても、決して国民を納得せしめる説得力を持つものではありません。(拍手)これは、わが国外交上現在最も重要な地位を占めるべき対米外交を、依然として国民に対して不可解、不明朗なままに推移させ、いたずらに対米追従外交の汚名を高からしめるに至るものであると思います。(拍手)従って、昨日の外務委員会、本日のこの本会議におけるごとき状態において、政府・与党の多数無理押しをもって本件を成立せしめても、それは日米友好の効果を上げ得るものではありません。国民の血税を効果なき外交に使用することは浪費であり、政治ではないと存じます。これが反対の第二の理由であります。  最後に、わが党の態度について付言をいたしたいと存じます。  まず、私は、本件に関して、皆さんも御承知のごとく、かつて国会が各党各派を越え、この壇上より最大の感謝の言葉を贈ったことを想起するものであります。そして、この率直な態度こそが、本件についてのわが国民の心情であり、この決議に即応した処理方針こそが、今後この問題を契機として、日米外交を大きくプラスするものであると考えるのであります。(拍手)この意味において、わが党は、本件を道徳的債務、出世払い的債務という表現をもってとらえて、わが国の道徳的責務を、日本及びアメリカを含む自由陣営の世界政策的路線に結びつけた低開発国援助に振り向ける方式を主張しておるのであります。米国の戦後援助に対してのわが国民の率直な感情は、借金の証拠があるから返す、いや、証文がないから返さないというがごとき処理のワク内に窮屈に閉じ込められるものではありません。先ほど戸叶さんの御意見を拝聴いたしましたが、戸叶さん自身が御承知のごとくに、外交はそう簡単に白か黒かの理屈ばかりで処理できるものではありますまい。国民意思感情を常に正しく反映し、それを世界平和に貢献する方向に組織化していくのが外交であるならば、本件を債権債務であると無理にこじつけるのも誤りでありまするし、債権債務でないから一銭も返す必要がないというのも誤りであります。それはわが国だけの利己主義、功利主義の立場に立つものでありまして、少なくとも、外交としての友好も親善しない態度といわなければなりません。  かかる観点に立って、わが党は、先ほど田中議員より説明のありました通り、三点の内容を持つ撤回再交渉動議を提案いたしたわけであります。動議は遺憾ながら否決されましたが、さらに一言いたします。もし、再交渉妥結の可能性について、政府・与党の方で疑問を投げかけられるようなことがあるならば、私は、それこそ一にかかって日本政府自身の認識と熱意にあることを指摘いたしておきたいと思います。聞くところによりますと、かつて大平官房長官は、わが党の出世払い方式という言い方に対して、すでにわが国は出世の段階にある、こういう意見を漏らされたとか。最重要案件と称せられた本協定が、国会提出されてから一カ月余も審議なく放置され、最後の段階に至るや、昨今の無理押し強行、まさに国会正常化という言葉も泣くに泣けないような体たらくであって、これが出世の名に値するわが国の姿であるとお考えになるような政府の認識ならば、再交渉もなかなか困難でございましょう。もしこれを出世の姿と見られるならば、それは西尾委員長がかつてこの壇上から指摘しましたように、まさに金力万能の成金出世の姿であります。世界の外交舞台で大きな口がきけるような出世の姿ではありますまい。  わが国の政治は、経済に比して半世紀もおくれているという言葉を十分かみしめていただき、猛反省をせられるよう、政府・与党に強く強く要望いたし、同時に、背伸び外交、党略外交の中止を断固として要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手
  9. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 川上貫一君。   〔川上貫一君登壇〕
  10. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表しまして、日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定反対の意見を述べます。  反対のおもな理由二つあります。その一つは、この協定は、正常な形で委員会を通過したものではありません。他の一つは、協定そのものの性格と内容についてであります。  池田総理大臣は、このガリオア・エロア債務と心得てきたものであって、一ぺんも債務と言うたことはないと、一貫して答弁をしておられます。なぜこんないいかげんなことを言わなければならぬか。吉田元総理は、昭和二十四年の四月二十七日の参議院の本会議で、阿波丸協定及び付属了解事項についての報告の中で、ガリオア・エロア日本にとって有効な債務でありますと、はっきり言うております。速記録をごらんなさい。それだけではありません。そのあとで丁寧にも、「日本の中には、このガリオア・エロア物資を、あたかもただでもらっておるかのような誤解がありますから、この機会に、これが債務であることを了解事項としてつけ加えまして、私が外務大臣として署名したのであります。」とわざわざつけ加えておるのです。これは速記録です。これは明らかに債務であることを承諾したのです。池田さんは、承諾したことはないと言われるが、しておるのです。これだけではありません。吉田元総理は——昭和二十六年一月の平和会議の直前に、アメリカから示された議題表というものがあります。この議題表の中に、ガリオア・エロアという項目があるのです。この項目にどういうことを吉田さんは書き込みましたか。日本支払いますと書き込んでおるのです。この公の文書は、明らかに国際的に残っております。ここでもまた明らかに債務であることを承諾したのです。国民に諮らず、勝手に債務を取りきめたのであって、明らかに憲法第八十五条違反です。財政法第十五条を踏みにじったものです。これは明瞭です。私はここではっきりと言いたい。たとえどんな事情がありましょうとも、もともと明らかに憲法に違反しておることを、国会の名において承認することは絶対にできません。これは国会たるものの権利であり、義務であります。  第二に、このガリオア・エロアについての処理は、極東委員会の決定、対日基本原則に対する重大なる違反であります。すなわち、一九四七年六月十九日の極東委員会の基本原則には、こう書いてある。占領者がその必要上輸入した非軍事的物資代金は——これはガリオア・エロアです。日本輸出によって得た金で国民の最低生活を保障して、その上残りがあったならば、その支払いに充ててもよろしい、これが極東委員会の決定です。まして、今回の協定のように、援助物資の売却代金で支払ってもよいというようなことをどこで決定しておりますか。絶対に決定しておりません。しかるに、政府は、また自民党は、これは救援の物資であり、援助物資であるから支払うのがあたりまえだと、池田さんなどはいたけだかになってお答えになっておる。はたしてこれが援助物資でしょうか。われわれはそうではないと考えます。この物資は、明らかにアメリカの対日支配政策に基づく占領措置であります。当時どういうことがありましたか。日本国民は、敗戦の結果、生活上の困難に襲われました。一方では膨大なる隠匿物資がありました。それゆえに国情騒然、人民の不平と不満は至るところで爆発しました。これに対して政府と保守勢力は何をしましたか。何もしなかった。ただ動揺するばかりだった。このような事態に直面したGHQは、彼らの占領政策の上から、この人民の闘争を押えることを第一に考えた。アメリカの本国に剰余物資の放出を要請したのが事実であります。このことは、ここにおられる池田総理はよく知っているはずです。外務大臣もよく知っているはずです。すなわち、GHQ、アメリカ占領軍の目的は、二つあった。一つは、国民の不平不満、これの爆発と闘争の発展を押えること、もう一つは、それは日本をアジアにおける反共の防壁として育成する、これである。それは、その後の事実をごらんなさい。今日までの事実を見てごらんなさい。明らかにこれは証明されている。証拠がある。アメリカの本国におけるガリオア予算についての説明を一ぺん見てごらんなさい。どう言うておりますか。一九五一年、下院の歳出委員会における聴聞会でヴォルヒーズ陸軍次官補がどう言うておりますか。われわれはこの予算を持つことによって非共産主義の日本を作り上げるのだと証言している。これが証言なんだ。笑いごとではないのです。また当時の……(発言する者あり)そう言われたら痛いでしょうが、当時の予算局長であったドッジ氏は、こう言うている。われわれの極東政策は、援助の拡大によって日本を利用することを必要とする、こう言った。これが証言です。まだございます。アメリカの国務省の説明、アイケルバーガー中将の発言、そのほかたくさんの証言がある。その証言の中で、敗戦によって日本国民が窮状に陥っておるから、これを特別に援助し、救助するのだという言葉がただの一つでもありますか、一つもないのです。ましてや、これは契約による借款ではありません。貸与でもありません。私ははっきり言いますが、贈与でもないのです。まさしくアメリカの反共と冷戦のための占領政策の手段であります。占領軍の安全を守る以外の何ものでもなかったと私はここに断言してはばかりません。しかも、これによって時のGHQは何をしましたか。時のマッカーサーは、日本の全貿易を握って、ガリオア・エロア物資代金はもちろん、日本輸出品代金まで、まるで一緒くたのどんぶり勘定にして、これをあらゆる謀略資金に使うておる。今もってその詳細がわからぬのです。何やらわからぬ。これは日本政府にわからぬだけではない、もちろん自民党にはわからぬ。アメリカ政府にさえわからぬのだ。   〔発言する者多し〕
  11. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 静粛に願います。
  12. 川上貫一

    ○川上貫一君(続) 特に昭和二十八年の七月七日、その当時の岡野通産大臣は、昭和二十四年以前のものは全然わかりませんと答弁をしております。昭和二十四年のことです。今度の国会で、水田大蔵大臣はどう言いましたか。二十四年以前のものはわからぬと言っておる。これが事実なんだ。  こうしてアメリカは、ガリオア・エロアによって日本国民には一度感謝をさせました。しかし、そのお金で何をしたか。この金で独占を太らせて、軍国主義の復活を助けて、日本アメリカの下僕に育て上げて、百パーセントの利益と目的を果たしておる。それを今になって、債務と心得て支払うという、そんな道理がどこから出ますか。さらに、支払うばかりじゃありません。この支払った金をどこへ使うというのです。あの二つ覚書をごらんなさい。その金は、安保条約のもとで、アメリカが極東における干渉と新しい植民地政策、これに使うのじゃないか。また、日本人アメリカのために再教育する費用に使うのじゃないですか。これこそ、まさに明らかに人民を愚弄する売国協定であると断言して差しつかえない。  それゆえ、日本共産党は、第一に、憲法の名において反対であります。第二に、日本人民の誇りと名誉の名において反対であります。第三に、国会の権威の名において反対であります。第四に、アジアの平和と日本独立のために絶対反対であるということをここに宣言して、反対討論を終わります。(拍手
  13. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、日程第二につき、討論を行ないます。稻村隆一君。   〔稻村隆一君登壇〕
  14. 稻村隆一

    ○稻村隆一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件に反対討論を行なわんとするものであります。(拍手)  新協定は、タイに対する九十六億円の供与を、旧協定の投資またはクレジットの形から無償供与に切りかえようとするものでありますが、反対のおもなる理由は、第一に、タイの現在の対外政策、国際行動から見て間接的な軍事援助になり、アメリカの誤れる反共一辺倒政策を強化し、おそるべき戦争に発展する危険性を助ける結果となること、第二に、新協定締結に至るまでの経緯から見て、国際法上の通念に反するきわめて不合理なる取りきめであること、この二点であります。  第一の点につきましては、次の事実を指摘することができるのであります。タイは従来より親日国であり、かつ伝統的な中立政策をとってきたことは歴史の示すところであります。さきには日本の国際連盟脱退に際し、棄権をしてわが国を事実上支持する態度をとり、また、第二次大戦中に、一時日本と軍事的な同盟条約を結び、日本軍の駐留を許しましたが、これは日本の軍国主義の強要によった唯一の例外でありました。中立政策は、欧米各国の帝国主義、植民地主義の入り乱れたる東南アジアの中心に位置し、国力も伴わない後進国としては、まことに賢明なる道であったといわねばなりません。しかるに、現在のタイは、中立の伝統政策をなげうち、向米一辺倒、反共一色の国となり、その首都には、反共軍事同盟、SEATOの本部さえ置いているのであります。また、現政権を握る独裁者サリット元帥は、無謀、近視眼的なるアメリカの出先機関と結び、イギリス、フランスの反対を押し切って、隣国ラオスに対する干渉に乗り出し、中立主義のプーマ政権を倒して、元帥の女婿である右派のノサバン将軍を政権の座に据える軽挙をしたのであります。その結果、中立派を、パテト・ラオなど左派との協力に追いやり、ラオスの大半は右派の手から脱落して、アメリカとサリット元帥は今や自縄自縛に陥り、苦悶の渦中にあるのであります。しかも、サリット元帥は、この失敗に学ぶところなく、ますますラオス国境付近に飛行場を整備するなど、兵力の増強を行なって挑発的な行動に出、さらに中立国カンボジアに対しては、しばしば越境事件等の紛争を巻き起こし、また、泥沼の様相を呈している南ベトナムの対ベトコン戦にも、アメリカに次いで派兵のそぶりを示しているのであります。  このようなタイに対し、九十六億円の無償供与切りかえが行なわれるがごときことは、サリット政権の無思慮なる対外政策への協力、てこ入れとなることは、火を見るよりも明らかなところであります。(拍手)池田さんの行動は、一国の総理大臣としてまことに軽率千万であり、アジアの平和のために深憂にたえざるものであります。(拍手)しかも、タイは、SEATO加盟国としてアメリカの反共軍事体制に組み込まれ、アメリカの誤れるアジア政策に積極的に参加しているのでありますから、日本タイに対し間接的な軍事援助を行なうことによって、局地戦の冒険をますます深めるものであります。東南アジアの情勢は、ベルリン問題とともに、おそるべき第三次大戦を誘発する危険性を内包していることを考えるとき、友邦であればあるほど、大胆率直に忠告し、警告しなければならないのであります。(拍手)  また、かかるタイに対する日本政策は、東南アジアのインドネシア、ビルマなどの諸国に対しても、決して好印象を与えるものではありません。不安定なインドシナ半島の情勢の中で、タイがさらに火の手を広げようとしていることは、強い批判を招いておるところでありますから、九十六億円の無償供与切りかえが、他の諸国にいかなる意味を持つものとして受け取られるかは明らかであります。そしてこのことは、第二の国際慣例上の問題とからみ合って、池田総理大臣の、いわゆる大所高所論を根底からくつがえすおそれがあると考えられるのであります。  タイ特別円の債務性根拠は、すでに昭和二十年十一月のタイの、同盟条約とそれに付随するすべての協定効力終了の通告によって失われており、いわゆる三十年協定、旧協定においても、すでに国際法上の通念として大きな疑問を残しているのであります。また、これまでの外務委員会の審議を通じて明らかになりました通り、国家間の貸借関係を清算する支払い協定が、それぞれ憲法上の手続を経て発効した後において、その内容を根本的に変更するというようなことは、国際慣例上、全く前例を見ないところであります。おそらく常識破りの悪例として外交史上に長く残るであろうと、外務省の内部においてすら批判する声が現われておるのを、われわれは耳にしておるのであります。しかも、政府・自民党がそれを知りながら、あえて新協定承認を強行しようとする動機は、タイ側が裏では三十年協定は無償供与のものであると誤解していたと泣き落とし戦術に出、表では池田総理の言う経済断交、すなわち輸入停止、関税障壁などの脅迫戦術を用いるというかけ引きにゆさぶられているからであります。しかし、タイ側の日本に対する不満は、多年にわたる日本からの大量の輸入超過にあるのであり、日本の通商政策に根本的転換がない限り、九十六億円を無償供与することによって解決するものではないのであります。また、現に日タイ両国間に友好通商条約が現存している以上、国交断絶一歩手前とも見られる経済断交のごときは、タイ側の立場からしましても、実現の可能性は全然ありません。それにもかかわらず、池田総理大臣が流言飛語におびえて腰くだけとなったことは、水鳥の羽ばたきに驚いて逃亡しだ平家の貴公子にも比すべきであり、世界じゅうの物笑いの的ともなりかねない無定見といわざるを得ません。(拍手)  こうした失態は、東南アジア諸国に池田くみしやすしの印象を与えており、池田総理大臣の否定にもかかわらず、現にビルマから賠償再検討の要求が起こっており、今後他の諸国にも影響を及ぼし、韓国の請求権問題等、将来に長く禍根を残すことになるのは疑いのないことであろうと思うのであります。(拍手)  われわれは、アジアの一員としてタイとの友好を心から願い、また、これまでの親日的関係が正しい姿においてますます強固になることを望むのはもちろんであります。それゆえにこそ、われわれは、新協定承認によりタイ側の理不尽な要求が通り日本の外交政策がこれまで以上に大きくゆがめられてしまうことに反対せざるを得ないのであります。(拍手)もし万一、新協定承認の場合において経済的困難が生ずるとしたならば、それはあくまでも別途の交渉、対策によって解決すべきものであると考えられます。経済的報復をおそれて日本外交政策の基本をゆがめるがごときは、池田総理大臣の言われる大国日本としてとるべき道ではないのであります。政府はよろしく真の大所高所に立って、戦争の防止と真の平和と善隣友好の外交の王道を堂々として進むべきであることをわれわれは考えるのであります。まことに、池田首相今回の処置は、日本の総理大臣として、アジアと世界の平和の立場より見まして重大なる過誤を犯したものであり、断固として反対しなければなりません。(拍手)  以上、日本社会党を代表いたしまして、内閣提案の不当性を指摘し、反対討論を終わるものであります。(拍手
  15. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 床次徳二君。   〔床次徳二君登壇〕
  16. 床次徳二

    ○床次徳二君 私は、ただいま議題となっております特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件に関し、自由民主党を代表して賛成の意を表するものであります。  戦争中日本債務でありました特別円勘定残高処一理の問題につきましては、昭和三十年に締結された特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定によって解決を見たのでありますが、その協定第二条に規定された九十六億円の経済協力に関し、協定発効後タイ側がこれを無償供与であると主張し、その後六年にわたってこの問題について両国間に幾多の折衝が行なわれたのでありますが、どうしても履行することができず、本件が日タイ両国の友好関係の重大な阻害要因になっておったのであります。  今般、政府は、大所高所より、三十年の協定を改定して新たな協定締結して本件を解決したのでありますが、このことは、日タイ両国友好関係のしこりを取り除いて、タイとの間の友好親善関係を一段と強化するのみならず、アジアにおけるわが国の声望をさらに高める意味において、まことに意義深いものと考える次第であります。(拍手)  しかしながら、本案件の審議にあたり種々論議がありましたので、ここにわが党の見解を明らかにしておきたいと存じます。  第一に、今回の措置は、大局的見地に立って、日タイ両国の友好関係の将来及びアジアにおけるわが国の地位を考えるとき、きわめて有効かつ適切な措置であったと考える次第であります。日タイ両国は古くからともにアジアの独立国として伝統的な友好関係にあり、また、現在タイわが国にとって東南アジアにおける最大の輸出市場であり、一千人をこえる在留邦人がタイ経済活動を行なっていることを考えるとき、同国との友好関係を促進するためにでき得る限りのことをなすべきは当然のことでありますが、戦時中の日本債務であった特別円問題に関する協定が履行されないため、タイ国民の日本に対する感情が冷却化しつつあるとき、日本としては協定文をたてにとってこれを放置しておくということは、決して賢明なことではないと考えるのであります。  第二に、今回三十年の協定を改定して九十大億円を無償供与とすれば、他の諸国に波及するのではないかとの懸念が表明されましたが、特別円問題は、戦時中日本が負っていた債務の問題であって、他の賠償あるいは賠償に伴うところの経済協力とは全く性格を異にする問題でありますので、これが他に波及するというおそれはないと考える次第であります。  第三に、九十六億円という金額は決して少ない金額ではありませんが、これを一時に支払うのではなく、当初の七年間に毎年十億円ずつ、最後の八年目に二十六億円を支払うという方式で支払われますので、わが国の財政に与える負担はそれほど大きなものではなく、本件の解決によって日タイ友好関係がさらに緊密化し、わが国タイに対する輸出が一段と増大されることを考えまするならば、わが国にとっても有利でこそあれ、決して不利ではないと考える次第であります。(拍手)  第四に、今次のタイ特別円問題の解決は、アメリカの対外援助政策の肩がわりではないかとの説もあるのでありますが、これは全く片寄った見方であると考える次第であります。東南アジア諸国との友好関係の促進は、わが国の外交の基本原則の一つであって、東南アジアのあらゆる国との友好関係の促進を念願としておることは申すまでもありません。今次の特別円問題の解決は、特別円という戦時中の日タイ関係より生じました問題が、両国の友好関係のしこりとなっておりましたのを解決いたしたのでありまして、アメリカの外交政策とは全く関係のないものであることは、きわめて明らかなことであります。  なお、今次の協定によって、タイ側がわが国から年々支払いを受ける金円をもって、タイ側はわが国の生産物及び役務を買い付けることを約束しておりますが、一部巷間に伝えられたごとく、タイ側がこれを武器弾薬等の調達に使用することのないことは、合意議事録に明らかに約束せられておりまして、かかる心配のないことを付言いたしたいと思うのであります。  以上述べました通り、今回の協定締結はきわめて適切であると認めますが、これが国民の負担によって実施せられる以上は、政府は単に協定の適切な実施並びに運営を期せられるのみならず、これを契機といたしまして、日タイ両国友好関係の強化促進と、ますます積極的なアジア外交の推進に努力せられることを心より望む次第であります。  以上簡単でありますが、これをもちまして私の賛成の討論といたします。(拍手
  17. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 本島百合子君。   〔本島百合子君登壇〕
  18. 本島百合子

    ○本島百合子君 私は民主社会党を代表して、ただいま議題となりました特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件に対し、反対討論を行なうものであります。(拍手)  タイ特別円に関しましては、昭和三十年八月、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定締結され、わが国は五年の分割払いによって五十四億円をタイに支払うとともに、経済協力として九十六億円を限度とし、投資及びクレジットの形により、わが国資本財及び役務を供給することを約束したことは御承知の通りであります。しかも、このことは当時の国会の議決を経て国民も納得している事柄であります。この問題に関しましては、三十年協定から七年の歳月を経過しており、当時から今日までその具体化しなかった懸案の経済協力供与九十六億円の円貨支払いの取りきめについて、政府は本年一月三十一日、にわかに新協定に調印したものであります。その当時から、国会承認を得ることの困難を予想して、最悪の場合は自然成立もやむを得ないということを申し、その決意をもって国会提出をすることになったそうでありますが、何がゆえにかかる決意をしなければならなかったのでしょうか。それは国民の納得のいかない内容であるからでありましょう。従って、今回外務委員会の審議にあたりまして、二回にわたる質疑打ち切りの暴挙をいたしましたことは、国民とともに許すべからざる行為といおなくてはなりません。(拍手タイ特別円問題は終戦処理に関することでありますから、国民に納得と理解が得られることであれば、三十年協定のときと同じようにスムーズに審議されたはずでありますが、政府は初めから政治的配慮であると述べているところに問題があり、国民に暗い疑惑を持たせ、外交上にも不信の感を深くしたものであります。  昨年、池田首相はバンコック訪問に際し、サリット首相と会談して、今回の新協定を急遽調印されました段取りを見ますと、タイ国に対し日本は全面的な譲歩となっており、三十年協定解釈にあたっても、両国間に大きな開きがあることが明確となったわけであります。いわゆる三十年協定にあたって、九十六億円の貸与条件また期間等が明確でなく、第二条と、そのための合同委員会の設置をきめた第四条を具体化すべきであったのに、当時タイ国との間にこの点の取りきめを行なわなかったことは、外交上重大な失態と申さなければなりません。  さらに、現行二条の中には、九十六億円を限度とする経済協力の措置は、あくまでも「投資及びクレジットの形式で、日本国資本財及び日本人の役務をタイに供給することに同意する。」とあって、この九十六億円はあくまでも無償供与でなく、有償貸与であることは文言上きわめて明瞭であります。にもかかわらず、無償供与に切りかえようとする新協定は、全く国民の利害を無視した奇怪しごくの態度と申さなければなりません。(拍手)  第三に、日本側がタイに支払うべき資金の性格が、協定上きわめて明確でありながら、この協定の明文の解釈をめぐって、日本側とタイ側との間に重大なそごを来たすに至ったのはなぜでありましょうか。すなわち、協定締結の背後には不明朗きわまる暗黙の取引が当時存在したのではないかという疑惑があります。こうした点につきまして、本来、戦争中の同盟国間の債権債務関係は、敗戦の場合放棄するのが通例であります。たとえば第二次大戦後のイタリア、ブルガリア、ルーマニアに対する平和条約では、これらの国は同盟国であるドイツに対する請求権を一方的に放棄し、日本平和条約では、相互放棄を条件としてドイツに対する請求権を放棄しているのであります。ところが、タイは当時わが国と同盟条約を結んでいたことは御承知の通りであります。しかも、この同盟条約並びにこれに付随する協定を、タイ国が一方的に廃棄する通告を行なってきたのは、昭和二十年の九月十一日であったのであります。このような事実からして、当時タイの特別円債権は無効になったという見解すらあったのであります。しかしながら、わが国タイ国との親善関係の樹立という見地から、三十年現行タイ特別円協定を結んで、タイ国の要請にこたえて五十四億円の無償供与と九十六億円の経済協力のための有償供与を約束したというのがこれまでの偽らざるいきさつであります。従って、国民としてはこれ以上の犠牲を払う必要はごうも認められないのであります。  第四に、日タイ特別円協定に対する国民の疑惑の一つは、このような戦後処理協定にあたって、当然処理すべきであった日緬鉄道等のタイに対する債権を同時に相殺しなかったということであります。いかに敗戦国とはいえ、タイは同盟国であったのでありますから、債務債権を明確にして、日本立場も相手国の立場も平等に取りきめられたはずであります。  以上述べましたような理由に基づいて、新協定より三十年協定の方がはるかに日タイ親善の基盤を持っていることは明らかであり、産業、経済の発展に寄与するもの大なるものがあります。しかるに、あえて新協定に調印せざるを得なかった理由を私どもは発見することができないのであります。敗戦のみじめさから立ち上がっていくことのむずかしさは、日本人みずからが体得しております。戦後十七年を迎えるわが国におきましても、戦争のなまなましい傷あとはいまだいえておりません。御承知のように、戦争による賠償金はすでに四千億円にも上り、もしここに政府が提案しておりますところのヨタイ特別円協定並びにガリオア・エロア協定が取りきめられるとすれば、この種の負担は六千億円にも達します。このことは、国民生活の圧迫となり、社会保障の充実、完全雇用の実施、低額所得層の生活水準の引き上げ等に支障を来たし、いまだ一千数百万人の生活困窮者をかかえておる原因ともなっておることを忘れてはなりません。  最後に、政府は国家間の協定として国会の議決を経たものを、一回の首相間の会談によって、五億円に近い有償貸与を無償供与に切りかえる暴挙をあえてなし得るとするならば、国民の血税を私物化し、国際間の信用を失墜したといわなくてはなりません。(拍手)  今や日本経済は、国際収支の赤字とともに、経済成長の見通しの誤りによる不況、所得倍増ならざる物価倍増で、勤労者、農民、一般国民の政治に対する不信は日とともに高まりつつあります。  私ども民社党は、秘密外交を排し、国民とともに国民のための政治を行なうことを強く要望し、国民の納得のいかぬタイ特別円協定の改定に反対の意を表明して、私の反対討論を終わります。(拍手
  19. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 以上をもって討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  この採決は記名投票をもって行ないます。本件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票をおのおの持参せられんことを望みます。——閉鎖。   〔議場閉鎖〕
  20. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  21. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。——開鎖。   〔議場開鎖〕
  22. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  23. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕  投票総数 四百   可とする者(白票)  二百五十   〔拍手〕   否とする者(青票)   百五十   〔拍手
  24. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 右の結果、日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)     —————————————  本件を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名       安倍晋太郎君    安藤  覺君       相川 勝六君    愛知 揆一君       青木  正君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    秋田 大助君       秋山 利恭君    足立 篤郎君       天野 公義君    綾部健太郎君       荒舩清十郎君    有田 喜一君       有馬 英治君    井原 岸高君       井村 重雄君    伊藤 五郎君       伊藤 郷一君    伊藤宗一郎君       伊藤  幟君    飯塚 定輔君       生田 宏一君    池田 清志君       池田 勇人君    池田正之輔君       石田 博英君    一萬田尚登君       稻葉  修君    今松 治郎君       宇都宮徳馬君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    内田 常雄君       内海 安吉君    浦野 幸男君       江崎 真澄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    小川 平二君       小沢 辰男君    小澤佐重喜君       小澤 太郎君    尾関 義一君       大石 武一君    大上  司君       大久保武雄君    大倉 三郎君       大沢 雄一君    大高  康君       大竹 作摩君    大野 市郎君       大野 伴睦君    大橋 武夫君       大平 正芳君    大村 清一君       大森 玉木君    岡崎 英城君       岡田 修一君    岡本  茂君       加藤 高藏君    加藤常太郎君       加藤鐐五郎君    金子 一平君       金子 岩三君    金丸  信君       上林山榮吉君    神田  博君       亀岡 高夫君    鴨田 宗一君       唐澤 俊樹君    仮谷 忠男君       川島正次郎君    川野 芳滿君       川村善八郎君    菅  太郎君       簡牛 凡夫君    木村 公平君       木村 守江君    岸  信介君       岸本 義廣君    北澤 直吉君       久野 忠治君    久保田円次君       久保田藤麿君    草野一郎平君       倉石 忠雄君    倉成  正君       藏内 修治君    黒金 泰美君       小枝 一雄君    小金 義照君       小坂善太郎君    小平 久雄君       小山 長規君    河野 一郎君       河本 敏夫君    纐纈 彌三君       佐々木秀世君    佐々木義武君       佐藤虎次郎君    佐藤洋之助君       佐伯 宗義君    齋藤 邦吉君       齋藤 憲三君    坂田 英一君       坂田 道太君    櫻内 義雄君       笹本 一雄君    薩摩 雄次君       志賀健次郎君    始関 伊平君       椎熊 三郎君    椎名悦三郎君       重政 誠之君    澁谷 直藏君       島村 一郎君    首藤 新八君       正示啓次郎君    白浜 仁吉君       周東 英雄君    壽原 正一君       鈴木 正吾君    鈴木 仙八君       鈴木 善幸君    瀬戸山三男君       關谷 勝利君    園田  直君       田川 誠一君    田口長治郎君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       田中 榮一君    田中 角榮君       田中 龍夫君    田中 正巳君       田邉 國男君    田村  元君       高田 富與君    高橋清一郎君       高橋  等君    高見 三郎君       竹下  登君    竹山祐太郎君       舘林三喜男君    千葉 三郎君       中馬 辰猪君    津雲 國利君       津島 文治君    塚原 俊郎君       辻  寛一君    堤 康次郎君       寺島隆太郎君    渡海元三郎君       徳安 實藏君    床次 徳二君       富田 健治君    内藤  隆君       中垣 國男君    中島 茂喜君       中曽根康弘君    中野 四郎君       中村 幸八君    中村庸一郎君       中山 榮一君    永田 亮一君       灘尾 弘吉君    南條 徳男君       二階堂 進君    丹羽喬四郎君       丹羽 兵助君    西村 英一君       西村 直己君    野田 卯一君       野田 武夫君    野原 正勝君       羽田武嗣郎君    馬場 元治君       橋本登美三郎君    長谷川四郎君       長谷川 峻君    服部 安司君       濱田 幸雄君    濱田 正信君       濱野 清吾君    早川  崇君       林   博君    原 健三郎君       廣瀬 正雄君    福家 俊一君       福田 赳夫君    福田 篤泰君       福田  一君    福永 一臣君       福永 健司君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    藤田 義光君       藤原 節夫君    藤本 捨助君       藤山愛一郎君    船田  中君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    保利  茂君       坊  秀男君    細田 義安君       細田 吉藏君    堀内 一雄君       本名  武君    前尾繁三郎君       前田 正男君    前田 義雄君       牧野 寛索君    益谷 秀次君       松浦周太郎君    松浦 東介君       松澤 雄藏君    松田 鐵藏君       松永  東君    松野 頼三君       松山千惠子君    三池  信君       三浦 一雄君    三木 武夫君       南好  雄君    宮澤 胤勇君       村上  勇君    毛利 松平君       森下 國雄君    森田重次郎君       森山 欽司君    八木 徹雄君       保岡 武久君    柳谷清三郎君       山口 好一君    山崎  巖君       山田 彌一君    山中 貞則君       山村新治郎君    山本 猛夫君       吉田 重延君    米田 吉盛君       米山 恒治君    早稻田柳右エ門君       渡邊 良夫君    古賀  了君  否とする議員の氏名       安宅 常彦君    阿部 五郎君       赤松  勇君    淺沼 享子君       足鹿  覺君    飛鳥田一雄君       有馬 輝武君    淡谷 悠藏君       井伊 誠一君    井岡 大治君       井手 以誠君    猪俣 浩三君       石川 次夫君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    石村 英雄君       石山 權作君    板川 正吾君       稻村 隆一君    小川 豊明君       緒方 孝男君    大柴 滋夫君       大原  亨君    太田 一夫君       岡  良一君    岡田 利春君       岡田 春夫君    加藤 勘十君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    川村 継義君       河上丈太郎君    河野  正君       木原津與志君    北山 愛郎君       久保 三郎君    久保田鶴松君       栗原 俊夫君    栗林 三郎君       黒田 寿男君    小林 信一君       小林  進君    小林 ちづ君       小松  幹君    兒玉 末男君       五島 虎雄君    河野  密君       佐々木更三君    佐藤觀次郎君       佐野 憲治君    坂本 泰良君       阪上安太郎君    實川 清之君       島上善五郎君    島本 虎三君       下平 正一君    東海林 稔君       杉山元治郎君    鈴木茂三郎君       田口 誠治君    田中織之進君       田中 武夫君    田邊  誠君       田原 春次君    多賀谷真稔君       高田 富之君    高津 正道君       滝井 義高君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    中澤 茂一君       中島  巖君    中嶋 英夫君       中村 重光君    中村 高一君       中村 英男君    永井勝次郎君       楢崎弥之助君    成田 知巳君       二宮 武夫君    西宮  弘君       西村 力弥君    野口 忠夫君       野原  覺君    芳賀  貢君       長谷川 保君    畑   和君       原   茂君    原   彪君       日野 吉夫君    肥田 次郎君       平岡忠次郎君    広瀬 秀吉君       藤原豊次郎君    帆足  計君       細迫 兼光君    堀  昌雄君       前田榮之助君    松井 政吉君       松井  誠君    松平 忠久君       松原喜之次君    松本 七郎君       三木 喜夫君    三宅 正一君       武藤 山治君    村山 喜一君       森島 守人君    森本  靖君       八百板 正君    八木 一男君       矢尾喜三郎君    安井 吉典君       安平 鹿一君    山内  広君       山口シヅエ君    山口丈太郎君       山口 鶴男君    山崎 始男君       山田 長司君    山中 吾郎君       山中日露史君    山花 秀雄君       山本 幸一君    湯山  勇君       横路 節雄君    横山 利秋君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       伊藤卯四郎君    稲富 稜人君       受田 新吉君    内海  清君       春日 一幸君    片山  哲君       佐々木良作君    鈴木 義男君       田中幾三郎君    西尾 末廣君       西村 榮一君    門司  亮君       本島百合子君    川上 貫一君       志賀 義雄君    谷口善太郎君     —————————————
  25. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 次に、日程第二につき採決いたします。  本件は委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  26. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 起立多数。よって、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)      ————◇—————  日程第三 質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案   (内閣提出参議院送付
  27. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 日程第三、質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  28. 清瀬一郎

    議長清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事高田富與君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔高田富與君登壇〕
  29. 高田富與

    ○高田富與君 ただいま議題となりました質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。  まず、質屋営業法の改正の要旨は、第一に、質屋が質物として同種のものを取り扱う営業者から善意で質にとった物品が、盗品または遺失物であった場合における被害者等の無償回復請求権の対象から有価証券を除外したこと、第二に、質屋営業の許可証の更新制度を廃止したこと、第三に、質置主が物品を取り扱う営業者であり、かつ、その質に入れようとする物品がその取り扱っている物品である場合、質屋は、その物品の流質期限を一カ月まで短縮することができることとしたこと、第四に、質屋は命令で定める方法により、相手方が受取権者であることを確認した場合でなければ、質物を返還してはならないこととし、それを確認して質物を返還したときは、原則として正当な返還とみなすこととしたことなどであります。  次に、古物営業法の一部改正の要旨は、古物商及び市場主等の許可証の更新制度を質屋の場合と同様廃止したことであります。   〔議長退席、副議長着席〕  本案については、三月十五日安井国務大臣より提案理由の説明を聞き、自来審査を続けて参ったのでありますが、その詳細は会議録に譲ります。  三月二十九日、質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定したのであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  30. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  31. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件
  32. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 日程第四、国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件を議題といたします。     —————————————   国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件     —————————————
  33. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長小川平二君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔小川平二君登壇〕
  34. 小川平二

    ○小川平二君 ただいま議題となりました国有財産法第十三条第二項の規定に基づき、国会の議決を求めるの件につき、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本件の内容は、まず第一に、葉山御用邸の暖房設備新設、第二に、皇居内生物学御研究所の標本室建築、第三に、皇居付属庭園施設整備計画に基づき、廐務班事務所、馬車庫等の新築等であり、これに要する費用総額七千九百七十八万八千円が昭和三十七年度一般会計予算案に計上いたしてありますが、これを皇室用財産として取得しようとするものであります。  本件は、審議の結果、昨四日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  35. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 採決いたします。  本件の委員長の報告は可決であります。本件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  36. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————     —————————————
  37. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長中島茂喜君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔中島茂喜君登壇〕
  38. 中島茂喜

    ○中島茂喜君 ただいま議題となりました三法案につき、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、法案の要旨を申し上げますと、  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案は、第一に、水資源の総合的な開発及び利用の合理化を強力に推進するため、新たに水資源局を設置すること、第二は、審議官の定数を二人減ずること、及び職員の定員を三十二人増員することであります。  行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案は、第一に、行政管理庁が監察に関連して行なう調査の対象に、鉱害復旧事業団等四つの事業団を加えること、及び同庁の職員の定員を十人増員すること、第二は、北海道開発庁の職員の定員を千二百九十七人増員することであります。  科学技術庁設置法の一部を改正する法律案は、第一に、科学技術庁の総合調整機能を強化するため、新たに研究調整局を設置すること、第二は、放射性降下物による障害の防止に関し、関係行政機関が講ずる対策の総合調整を行なうことを科学技術庁の権限に加え、これを原子力局の所掌とすること、第三は、科学審議官の定数を二人減ずること、及び職員の定員を二百五十七人増員することであります。  以上三法案は、それぞれ、一月二十五日、同じく二十五日、二月五日、本委員会に付託され、二月一日、同じく一日、二月六日、政府より提案理由の説明を聴取し、四月四日、質疑を終了いたしましたところ、右三法案に対し、自民、社会、民社三党共同提案にかかる、施行期日を公布の日に改め、定員に関する改正規定は四月一日適用とする旨の修正案がそれぞれ提出され、草野委員より趣旨説明がなされた後、討論もなく、採決の結果、右三法案はいずれも全会一致をもって修正案の通り修正議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  39. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 三案を一括して採決いたします。  三案の委員長の報告はいずれも修正であります。三案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  40. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告の通り決しました。      ————◇—————  日程第八 児亙扶養手当法の一部   を改正する法律案内閣提出)  日程第九 国民年金法の一部を改   正する法律案内閣提出
  41. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 日程第八、児童扶養手当法の一部を改正する法律案日程第九、国民年金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————     —————————————
  42. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員会理事井村重雄君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔井村重雄君登壇〕
  43. 井村重雄

    ○井村重雄君 ただいま議題となりました二法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法は、本年一月から施行されておりますが、今回、さらに手当の額を引き上げるとともに、受給資格者の所得制限を緩和して、児童扶養手当制度の充実をはかろうとするのが、本改正案の目的であります。  そのおもなる内容は、  第一に、現行法では手当の月額が児童一人の場合は八百円、二人の場合は千二百円、三人以上の場合は三人以上の一人につき二百円を加算することになっておりますのを、児童二人の場合は千四百円、三人以上の場合は三人以上の一人につき四百円を加算することに改めることであります。  第二に、受給資格者の前年度の所得による支給制限の額を十三万円から十五万円に引き上げて、支給要件を緩和しようとするものであります。  次に、国民年金法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法は、昭和三十六年四月をもって全面的に実施されたのでありますが、低所得者階層の処遇をさらに厚からしめる等、なお改善充実の必要があるため、本改正案が提出されたものであります。  そのおもなる内容は、  まず、拠出年金に関しては、第一に、国庫は、保険料を免除された者に対しても、その保険料の二分の一を負担すること、第二に、老齢年金の支給要件を緩和すること、すなわち、保険料の納付済み期間、免除期間またはこれらの合算期間が三十五年以上であれば支給することとし、その額は、保険料の納付済み期間に応じて定める額と免除期間に応じて定める額との合算額とすること、第三は、障害、母子、準母子及び遺児の各年金の受給資格を緩和して、三年間被保険者であれば、たといその全期間が保険料を免除されていても、年金を支給すること等であります。次に、福祉年金に関しては、第一に、受給権者本人の所得による支給制限額十三万円を十五万円に引き上げること、第二に、公的年金と福祉年金の併給について、その額の限度を原則として二万四千円とし、公的年金が戦争、公務により死亡または廃疾に基づいて支給されている場合には、この限度を七万円とすること、第三に、老齢、障害の各福祉年金の受給者の配偶者が公的年金を受けている場合の制限を撤廃し、さらに母子、準母子の各福祉年金を支給される子の加算額二千四百円を四千八百円に引き上げることといたしたのであります。  以上二法案は、二月二十一日厚生大臣より提案理由の説明を聴取し、審議に入ったのでありますが、四月四日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、日本社会党八木一男君外十一名より国民年金法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出され、八木君より趣旨の説明が行なわれました。次いで、討論の後、採決の結果、修正案は賛成者少数をもって否決され、政府提出の両法案は多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第でございます。  なお、両法案に対して、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三派共同提案による附帯決議を付することに決したのであります。これらの内容については会議録で御承知願いたいと思います。以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  44. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 両案中、日程第九につき、討論の通告があります。これを許します。島本虎三君。   〔島本虎三君登壇〕
  45. 島本虎三

    ○島本虎三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました国民年金法の一部を改正する法律案及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行なわんとするものであります。(拍手)  申すまでもなく、近代国家の政治の核心は国民福祉の充実であります。社会保障はその根幹であり、年金と医療はその両翼ともいうべき重要な制度であることは、論を待ちません。従って、わが党は社会保障の拡充に鋭意努力してきたのでありますが、政府並びに自民党も、盛り上がる世論とわが党の熱意に押され、国民年金法提出後、一再ならず手直しを加えてきたことは御承知の通りでございます。私はその努力には敬意を表するものでありますが、現行拠出年金制の有する重大な欠陥を根本的に是正する勇気のないことをまことに遺憾とするものでございます。(拍手)  現行拠出年金制の重大なる欠陥は、その組み立、が社会保険主義で貫かれ、保険財政の安全性のみにこだわり、社会保障の精神が全くぼけている点であります。  まず、その理由の第一は、定額保険料のため、社会保障の重要な側面である所得再配分の思想に欠けていることであります。その二は、支給金額が少なく、スライド制が明確でなく、物価上昇についていけないということであります。第三は、受給資格の取得期間が長く、かつ支給開始がおそ過ぎることであり、第四は、保険料免除規定が厳格過ぎることであります。また、第五には、積立金の管理運用の民主的規定の明確でないこと等であります。  今回の改正案によって、貧困で掛金の免除を受けた者に対する年金給付条件が若干緩和されて、保険料の実納した者と同様に二分の一の国庫負担が確保されて、全期間免除の者といえども、六十五才になれば、給付が全期間保険料実納の人の年金額の三分の一以上の年金が確保されるようになったことは、これは前進であり、その限りにおきましては、まことに同慶にたえません。しかし、政府もこの際、保険料を免除されるような階層の人々こそ、真に年金の必要な人々であることを思い、この保険料も国がかわって積み立てることに踏み切り、全期間の実納者と同額の年金が確保されるようにすべきであり、これこそ倍増計画に即応した血の通った政治と言えるのであります。(拍手)  次に指摘しなければならないことは、年金は、少なくとも安心して食える金額でなければならないということであります。現行国民年金は、御承知のように、四十年間の経済成長率を、年平均二%と見て、資本蓄積分〇・五%を引いて、一・五%の率で上昇するとの考えに立って、昭和三十二年度の生活保護者の全国平均月二千円を基礎にして、四十年後には三千五百円だとして、その金額が策定されたとのことでございます。さらにまた、実施は五年も延ばされまして、四十五年後に三千五百円という、いわば現在生活保護を受けている人と同じ程度の生活しか保障されないのでありまして、これがはたして憲法で保障された健康にして文化的な生活と言えるでございましょうか。金額算定の根拠になった経済成長率一・五%にしても、政府の豪語する最近のいわゆる三カ年平均の九・二%に比べても、戦前の経済成長率の四%に比べても、問題にならない低い数字であって、これでは動物的生活の維持にしかならないことは明瞭なる事実なのでございます。(拍手)すでに生活保護さえも一八%の増額を見、日雇い賃金も平均四百二十五円に増額されているのでございます。この際こそ、当然年金額を改定する必要があったのに対し、何らこれに触れていないのは全く遺憾とするところでございます。  政府はいかに社会保障の拡充を口にしても、一般会計に対する社会保障費の割合を見るに、昭和三十二年度の英国の二〇%、西ドイツの一六%に比べて、三十七年度のわが国の予算でさえ、ただ一三%にしかなっていないことは、社会保障に対する熱意いずこにありや、疑わざるを得ないのでございます。  次に、老齢福祉年金については、まず何よりも先に、支給金額を増額することでございます。七十才の老人にして月一千円では、まさに老齢福祉の文字が泣きます。最近の物価高騰は、もうすでに目に余るものがあります。御飯のおかずにいたしましても、老人がちくわのかまぼこ一本買って参りましても、値段が高いほかに、中の穴まで一段と大きくなっている現状でございます。まさに値上げのダブルプレーです。高くならないものは豆腐の背たけと年金の金額ぐらいのものでございます。それにまた、七十才の支給ではおそ過ぎるうらみがあります。せめて六十才からの支給として、年一万二千円、六十五才以上は二万四千円、七十才以上は三万六千円としても、決して高過ぎることはないはずです。六十才台からの完全支給は為政者の当然の義務といわなければならないと思います。  障害年金にしてもその通りでございます。今回若干の手直しを加えたにいたしましても、いまだ障害者には冷酷無比でございます。障害者といえども家族を扶養しなければならない一個の人間であることを思うときに、一級障害者にして月千五百円では全く話にならないではございませんか。どうして生活の維持ができるでしょう。暗い谷間に生きる人々に光を与えるために、この際、一級障害の場合年四万八千円、二級の場合三万六千円、三級の場合には二万四千円として、同時に、内科障害も当然認めてやるべきでございます。あわせて、母子福祉年金の多子加算の考え方と同じように、障害者の家族加算も当然認めてやるのが妥当であろうと思うのでございます。(拍手)給付制限にいたしましても、少し過酷にすぎるうらみがあるわけです。現に老齢福祉年金にいたしましても、七十才に達した老夫婦に支給される一人月千円の、たといあめ玉年金といわれる額でも、老人にはありがたいはずです。しかるに、夫婦がそろっておれば、その一人分二百五十円、夫婦で計五百円を削るに至っては、無慈悲といおうか、無理解といおうか、まさに言語道一断といわなければなりません。(拍手)せめてこの二五%減分だけでも即時撤廃してしかるべきでしょう。さらに、いかなる観点からいたしましても不合理な配偶者所得制限も、当然撤廃すべきであろうと思うのでございます。  次に、児童扶養手当について申し上げます。これは、言うまでもなく、全児童に対する児童手当によって、次代をになう国民をりっぱに育成することは国の責任であり、同時に、ILO条約百二号、社会保障の最低基準に関する条約精神に沿うゆえんでもあります。われわれはその実施に努力して参りました。そして現在の児童扶養手当が提案されまして以降も、常にその不備を指摘して改善に努力して参ったのであります。今回の改正によって、金額においては第二子以下は一人二百円ずつ増額になり、その限りにおきましては敬意を表するにやぶさかではございませんが、現体系のままでは、いまだわれわれの主張とはほど遠いものがあること、まことに遺憾です。われわれは、欧米先進国の例に学び、ILO条約百二号の精神に基づいて、すみやかに本格的児童手当制度の成立を望むものでございます。従って、現行児童扶養手当は国民年金の補完的立法であるため、国民年金が前進されない限り、単独で改善される性質のものではないので、もし改正だけに満足されては、真の児童手当制度の制度の障害になるおそれがあります。(拍手)従って、国民年金法児童扶養手当法の一部改正案は、具体的には一歩前進であることを認め、その努力は了とするものですが、その改善点があまりにも微温的であり、改正の方向が根本的、抜本的方向をとっていないため、日本社会党としては、社会保障の方針に従った十分なる国民年金制度と、本格的児童手当の制度の制定促進の立場から、両案に対し反対するものでございます。  以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手
  46. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第八につき採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。  次に、日程第九につき採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  48. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  日程第十 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  49. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 日程第十、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————     —————————————
  50. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長野原正勝君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔野原正勝君登壇〕
  51. 野原正勝

    ○野原正勝君 ただいま議題となりました内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。  本案は、畜産及びその関連産業の健全なる発達を促進するため、畜産振興事業団の業務を拡大強化しようとして提出されたものでありまして、そのおもな内容を申し上げますると、  まず第一に、畜産振興事業団の事業として国内産の牛乳を学校給食の用に供する事業に対し補助すること、及び、主要な畜産物の流通の合理化のための処理もしくは保管の事業、畜産の経営もしくは技術の指導の事業等に対し、補助または出資すること等の新規業務を加えたことであります。  第二に、政府は、事業団に追加される新規業務に対する資金措置として、予算の範囲内で事業団に対し交付金を交付することができることといたしております。  第三に、事業団は、政府の交付金及びその運用益金にかかる経理については、これを他の経理と区分して整理しなければならないことといたしております。  その他、事業団の理事を一人増員して四名とすること、及び、事業団が交付する補助金については、補助金等にかかる予算の執行の適正化に関する法律規定を、その一部を除いて準用すること等といたしております。  以上、本案の骨子について申し上げましたが、本案は、二月十四日付託され、同月二十二日提案理由の説明を聞き、三月十五日から四月四日に至る間に六回にわたり慎重審議を行ない、一昨四日、質疑を終了しましたところ、自由民主党田口長治郎委員から、自由民主党及び民主社会党を代表して、本案の施行期日を公布の日から施行することに修正すべき旨の動議が出されたのであります。次いで、修正案及び原案に対し、日本社会党湯山勇委員から反対討論がなされ、採決の結果、本案は多数をもってこれを修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対しましては、民主社会党玉置一徳委員外一名の提案による、畜産振興のための予算を一そう充実するよう努めるとともに、事業団が行なう指定対象助成事業に対する助成は、これら予算措置と相待って効果的な運用をはかること等、六項目にわたる附帯決議がこれまた多数をもって付された次第であります。  以上をもって報告を終わります。(拍手
  52. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 討論の通告があります。これを許します。西宮弘君。   〔西宮弘君登壇〕
  53. 西宮弘

    ○西宮弘君 私は、ただいま上程されました畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について、日本社会党を代表いたしまして、反対討論を行なおうとするものであります。(拍手)  まず、反対理由の第一は、この法律の欺瞞性についてであります。名はいかにも畜産物価格安定法ではありますが、価格の安定ないしは所得の保障には何ら全く役立たないのみならず、かえって、逆に畜産物価格を最も低いところにくぎづけするために利用されておるのであります。その具体的な一例をあげれば、去る三月末日農林省が決定した、原料乳は工場渡しで一升五十二円と告示されました。今日、日本じゅうどこへ参りましても、こんな値段で牛乳が売られてはおりません。一番安い地方でさえ、農民は自分の庭先で五十三円で売っておるのでありますが、この法律に基づいて政府が決定いたしました安定価格は、工場渡しで五十二円、すなわち、農民から牛乳を買い取る乳業資本家は、自分の工場まで運搬させまして、その買い取り値段を五十二円までは引き下げてもよろしい、こういうことがきめられておるのでありまして、この法律は、全く畜産物価格引き下げのために利用され、逆用されておるのがその実態であります。(拍手)こんなばかばかしい話はないのであります。これでは畜産物価格の安定とはおよそ正反対の目的に奉仕をする欺瞞法と断ぜざるを得ないのであります。とかく政府が提案をいたしまする法律には羊頭狗肉のものがはなはだ多いのでありますが、この法案のごとき、まさにその典型といわなければなりません。(拍手)  反対理由の第二に、政府の畜産政策に対する無責任さでございます。そもそも畜産をして今日のブームにまでかり立てたのは、申すまでもなく、農業基本問題調査会の見解であり、政府の所得倍増のかけ声であったのであります。農業基本問題調査会は、畜産をして成長農産物の代表として、今後の日本農業の発展はこれ以外にないことを強調いたしました。政府はまた所得倍増計画において、農民の所得を増大させる道は一にも二にも畜産振興であるとなして、今後十年間に牛乳は五・七倍、食肉は三・二倍、鶏卵は二・四倍にまで増大すると、飛躍的発展の構想を示したのであります。従いまして、農民はこの政府の鳴り物入りの宣伝に踊らされて、いずれも多額の借財をあえてしながら、養豚に、養鶏に、あるいは酪農にと取り組んで参ったのであります。畜産振興もとよりけっこうであります。しかし、価格政策を持たない単なる奨励や宣伝は、はなはだしく無責任のきわみといわなければなりません。もしも価格が適正に保障され、安定していさえしますならば、特別な宣伝等をいたしませんでも、だまっておっても農民はこれについて参ります。しかるに、今日まで政府が畜産振興、選択的拡大のためにとって参りました手は、その一つは所得増大のかけ声であり、二つには、従来の米麦等のいわゆる耕種農業をできるだけ抑圧しようというやり方であったのであります。大麦、裸麦の作付制限のごときはその代表的例でありますが、米価の決定等にあたりましても、常に同じような考え方に支配され、つまり米価を引き上げるといつまでも米に未練が残るから、これをなるべく低く押えないと果樹や畜産には取りつかないであろうという考え方から、低米価を押しつけようとしてきたのであります。私どもはこのような考え方に徹頭徹尾反対をし、畜産の振興には、まず価格政策の確立がその前提条件でなければならないことを再三再四主張し続けて参ったのであります。(拍手)しかるに、何ら価格対策の裏づけを行なわずに、いたずらに増産を奨励した結果、農民は多額の借金をかかえ、収支全く償わず、絶えず不安にさらされてきたのであります。特に豚の価格のごとき、暴落に次ぐ暴落をもってし、選択的拡大は、一転して選択的恐慌、選択的破局に突入したのであります。(拍手)  反対理由の第三は、政府法律無視、法律じゅうりんの態度に対してであります。昨年秋の臨時国会で成立した法律には、特に原料乳または指定食肉の価格決定には、再生産を確保することを旨として定めるとの一項が加えられたのであります。しかるに、先般政府より告示をされました豚肉の安定基準価格キロ当たり二百四十五円のごとき、完全にこの法律規定を踏みにじるものであります。何となれば、この価格をもってしては絶対に採算はとれず、再生産の確保などとうてい思いもよらないことは、火を見るよりも明らかであります。その点は当院において述べられました参考人の意見に徴しても明らかであり、さらに農林省発表の統計によりましても、たとえば百キロまでに太らした豚を枝肉二百四十五円で販売いたしますと、労力費をゼロとして計算いたしましても、なおかつ三千円近い赤字を生ずることをこの統計は計数的に示しておるのであります。このような事情は、酪農についてもまた全く同様であります。生産費は一升七十円以上はどうしてもかかるのでありますが、実際の取引は五十五、六円程度であり、これではとても間に合わないので、生産農民は政府の安定価格の決定に一縷の望みを託しておったのであります。ところが、先月末日発表されました政府決定の価格は、この実際の取引をさらに下回るものであることは、前に述べた通りでありまして、農民の失望と憤激はその極に達しているのであります。政府の所得倍増計画によりますと、牛乳は六倍にまで伸びることになっておるのでありますが、近来とみに伸び悩みを示しておりますことは、申すまでもなく採算割れの結果であります。このように法律の明文が完全に無視され、没却されておることをわれわれはどうしても見のがすことはできないのでありますが、もっとも、国法の根本であります憲法をさえ、御都合次第で自由自在に解釈をし運用をいたします政府のことでありますから、農民保護のための一法律のごとき、ほとんど眼中にないのかもしれません。政府はそれでいいといたしましても、助からないのは畜産農民であります。去る二月半ば、九州の一農民は、畜産物価格の値下がりを苦にして、ついに自殺を遂げたのであります。全く痛ましい限りと申すほかはありません。  畜産事業のコストは、その大半は飼料費、えさ代でありますが、このえさ代は、いたずらに高騰するにまかせられ、従って、今や、飼料高と生産物安のはさみ打ちにあいまして、あえぎあえいで苦しんでおる農民の姿は、まことに惨たんたるものであります。  反対理由の第四は、畜産物価格審議会の運営についてであります。まず第一に、その委員のメンバーの選び方が不公正であり、次には、その会議は非公開として、鉄のとびらをかたく閉ざし、一切を世人の耳目からおおい隠そうとしておるのであります。いやしくも、政府が、所得倍増のためのただ一つの成長農産物だと唱える畜産物価格の審議を、何がゆえに秘密会にしなければならないのでしょうか。しかも、このことは、近く開かるべき米価審議会も同様だと伝えられておりますが、一体、政府は、何におそれおののき、何に血迷っているのでありましょうか。かくのごとき反民主的、反動的暗黒政治は、やがて最も高価なる代価を支払わせられるであろうことを、私はこの際特に警告いたしておきます。  最後にあげまする反対理由は、畜産振興事業団の機能の拡大についてであります。畜産振興事業団は、何はさておきましても畜産物価格安定のために全力を尽くし、これに専念すべきであるにもかかわらず、今回は法律を改正いたしまして、大幅にその機能を拡大しようとしておるのであります。そもそも、かかる事業団等の設置は、本来政府が直接負うべき責任を回避するための手段として利用される場合がはなはだ多いのでありますが、今回は、当然に政府が行なうべきあらゆる指導、助成の事業等までもこの団体に行なわせようとするのでありまして、私どもはこのような考え方にはとうてい承服することはできないのであります。(拍手)かかる特殊の機構を乱設いたしまして、不正事件を誘発せしめ、しかもその間、往々にして政界とのくされ縁を疑わしむるがごときは、断じてとるべき策ではないと考えます。(拍手)  私は、以上数点の理由をあけて本法案に反対して参りました。これからの農民諸君はすべからくこの畜産の振興で所得をふやしなさいと、政府が声をからして宣伝する畜産物に対する施策にしてなおかつかくのごとしであります。これでは、今後の農民の所得を向上させて、他の産業の所得との開きを解消することをもって目的とすると規定いたしました農業基本法第一条のうたい文句が泣いています。大声を上げて泣いております。しかも、かくのごとき農業政策の貧困は、決してひとり農林当局だけの怠慢の結果ではないのであります。すなわち、換言すれば、現在の池田内閣そのものに農政確立の意図が全くないからであります。試みに、先般本国会の開会にあたり述べられた池田総理の施政方針を聞きますと、農業問題については、たった一言、農業生産の選択的拡大と農業経営の近代化は、急速に進展し、農業所得も堅実に増加しているということを報告しているだけであります。つまり、わが国の農業はすばらしく発展し、農民の所得も大いに増大していると、いわば万々歳だと言わんばかりに、うちょうてんになって手放しで喜んでいるだけでありまして、現在日本農業が当面をいたしております所得格差の問題等々、困難にして重大なる問題はひた隠しに隠して、これには全く触れようとはしないのであります。  かくのごとき農業軽視の、働く農民大衆を捨てて顧みない池田内閣それ自身の姿勢を正すことなしには、日本農業の振興、発展の道は絶対にないことを、私は特に声を大にしてつけ加え、その具体的現われとしてのこの法案にあくまでも反対するものであります。(拍手
  54. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  55. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  56. 原健三郎

    ○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午前三時一分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君      ————◇—————