○帆足計君 私は、ここに
日本社会党を代表いたしまして、
沖縄及び
小笠原諸島における
施政権回復共同
決議案に心からなる賛意を表するものであります。
終戦すでに十七年になりますのに、わが
沖縄八十八万の同胞は、
終戦直後の占領下さながらの境涯に苦しんでおるのであります。(
拍手)三権ことごとく米軍の手に握られ、琉球立法院といい、行
政府というも、ただ名のみでありまして、その実権はことごとくアメリカ
政府の任命する高等弁務官の権限に握られ、言論、集会、出版、思想の自由はもとより、本国との往来の自由すら極度に制約されておる実情であります。たとえば
社会保障審議会会長大内兵衛博士、自由主義的評論家中野好夫教授さえ、単に進歩的たることを
理由に、
沖縄視察旅行の旅券さえ交付されない実情にあるのでございます。(
拍手)今日
沖縄の少女が無知なる米軍兵士の暴行を受け、これは由美子ちゃん事件というて、まことに悲惨の限りの事件でありますが、あるいはまた路傍に遊ぶ子供たちが米軍ジープにひき逃げされましても、
沖縄市民には、治外法権のもと、裁判の
権利すら与えられていないのでございます。(
拍手)
沖縄の同胞は、みずからの
本土のことを祖国となつかしみ、一瞬一刻も早く祖国への
復帰を渇望しているのでございます。
そもそも、
沖縄が
日本本土から引き離されるに至りましたいきさつは、言うまでもなく、
サンフランシスコ平和条約第三条によるものであります。当時インド
政府は、アメリカに対し、
沖縄が
日本固有の
領土であるのに、アメリカ軍が占領政策を半永久化しようとするのは不当ではないかと警告し、また
沖縄占領は、今後
日本とアメリカとの間に重大なる不和の種をまくであろうと警告して、ついに、サンフランシスコ
条約に調印しなかった事情は周知のことでございます。(
拍手)おそらくインドは、過去において植民地支配の塗炭の苦しみを知るがゆえに、
日本に対してかくも理解ある良心的
態度に出たものであることを思うとき、感謝の念をもって当時を思い起こすのでございます。このインドの
発言に対し、ダレス・アメリカ代表は、
沖縄はやがて国連の信託統治に移す見通しのもとにしばらく占領を続けるのであって、このことをインド代表は理解しないのかと反論し、諸国代表の疑惑をなだめることに努めたのでございます。すなわち、当時ダレス代表は、
沖縄はやがて信託統治に移すが、それまでの暫定期間だけやむなく占領を継続するという名目で、諸
国民を納得せしめたものの、国連信託統治のもとでは、特定国の軍事基地を置くことは許されないことは明瞭でありますから、初めから占領を継続するつもりであって、国連信託統治に持っていく気持などはごうまつもなかったことは明らかであると、外交専門家たちはこぞってこのことを指摘しておるのでございます。(
拍手)
これらの経過をひもとけばひもとくほど、まことに不法にして不当、陋劣なる手段によって
沖縄がわれらの手から奪われたことを、
諸君とともに痛感いたすものでございます。(
拍手)戦い敗れたとはいえ、
沖縄八十八万の同胞は、他国の支配を必要とするほど無知もうまいの民でもなく、また無自覚なる市民でもありません。
沖縄同胞は、目前は貧しくとも、正しく清く子供たちの未来に
希望ある自立の
生活を求めて、心冷たき他国支配から解放され、平和憲法下の祖国のふところに
復帰を求めるの訴えは、身売りされた不幸なる妹を思う兄の思いのごとくにも、切切として私どもの胸を打つものがあるのでございます。(
拍手)
しかるに、最近に至りまして、世界の世論は、ゴア、西イリアンの解放を初め、植民地解放のあらしは怒濤のごとく、民族の自決を求めるの声いよいよ強く、さらにこれに呼応して
沖縄同胞の
施政権返還、祖国
復帰を求めるの叫びは、あるいは
国民大会となり、あるいは立法院
決議となり、
沖縄の
島々を熱風のごとく席巻いたしておるのでございます。この
国民の声、世界の世論に押されて、アメリカ国務省当局の一部に若干の反省の色があるやに見受けられますことは、諸兄とともに御同慶の至りでありますが、それが単に見せかけの譲歩にとどまり、事の本質たる
施政権の
返還にはごうも触れるところなく、ただ国旗の形式的掲揚、教育振興費並びに特需、民需、
経済援助の増額等にとどまるものであるとするならば、
日本国民としては不満この上もないことでございます。(
拍手)本日伝えられるアメリカ国務省の譲歩案というものについて見ますと、単に見せかけの譲歩によって目前を糊塗し、逆に占領政策を永久化しようとする危険性なきや、良識ある与党の各位とともに、私たちは、十分なる警戒と検討を要するものであることを痛感いたす次第でございます。(
拍手)
一体、アメリカ
政府は、
沖縄住民のことを何と心得ておるのでありましょうか。
沖縄八十八万の市民はわれらの同胞であります。
沖縄同胞に対する外からの侮べつは、われら自身に対する侮べつであり、
沖縄同胞の心の痛みは、そのままわれらの心の痛みでございます。戦勝の余勢に乗じて他国の
領土への軍事占領政策を継続し、その
住民の自由と人権をじゅうりんして、何の自由国、何の同盟国、何の友好国ぞやと言いたいほどの思いがいたすのでございます。(
拍手)それでは、万が一にも、国際連合総会の席において、アジア・アフリカ諸国のうちの一国から、アメリカがこのまま
沖縄住民の意思に反し、たって占領政策を続けるならば、実質的には侵略国の疑いがあるなどと提訴されましても、アメリカは何と弁解できるでありましょうか。いずれの国の軍人もそうでありますように、とかく職業軍人というものは、視野狭小にしてものわかりが悪いものであることは定評でありますけれども、偏狭なる軍部と異なり、みずから自由主義的教養を誇るアメリカ国務省に対し、切に反省を
要望する次第でございます。(
拍手)
サンフランシスコ平和
会議の速記録をひもといてみますると、当時、ダレス代表は次のように述べております。「そもそも、他国の恵みによって生きる
国民に真の自尊心は期待できない。
外国の支配は、いかにそれが恵み深い場合であろうとも、それは支配を受ける人々の自尊心をはぐくむものではない。」私は、なきダレス代表に、この言葉をわれわれに対して説く上りも、夫子みずからの
政府に対して説いていただきたかったと思うのでございます。(
拍手)
明治の夜明けにあたりまして、福沢諭吉翁は、「天は人の上に人を作らず」の一句をもって「学問のすすめ」を説き起こしておりますが、さらに翁は、「真に独立の気象なくんば、国を思うこと深くかつ切ならず」と説いております。まさに今日の
わが国の内外の情勢に照らして警世の名言であると思うのであります。(
拍手)
先日、コンロン報告を執筆したカリフォルニア大学のスカルピノ教授が
沖縄を訪れ、東京に立ち寄りましたとき、私も同教授に会う機会を持ちました。私はスカルピノ教授に、このように話しました。「もし、
日本にかりに軍隊があり、日米軍事同盟の必要があるからといって、
日本の兵隊がカリフォルニアに駐在し、高等弁務官と称して
施政の全権を握り、ロスアンゼルスの貧しい娘たちの幾人かはパンパンに陥り、子供たちはジープにひき逃げされても訴えるすべもない。カリフォルニア大学の教授たるあなたは、多少進歩的であるという
理由のために、ワシントン行きの旅券さえもらえないということでは、自尊心あるアメリカ市民として、少々の軍需、特需のおこぼれぐらいは犠牲にしても、カリフォルニアの他国支配からの解放を要求するでありましょう。民主主義をわれら東洋人に説きたいと思うならば、まず、おのれの欲せざるところ人に施すことなかれ、この格言を理解することが第一です。」と語ったことでした。(
拍手)
最後に、われわれは、ここに、
日本国民の最高の意思を代表する
わが国会の名において、
政府に対し、あくまで
日本国平和憲法の示す方向に忠実なることを要求するとともに、しかして、
日本民族の大義に基づいて、
沖縄の
施政権返還と祖国
復帰につき、強力にアメリカ
政府当局と
交渉することを要請する次第であります。
今や、
沖縄は、アメリカの国防の第一線として、危険なる前線基地、補給基地、あるいは中継基地となり、さらには、戦略的にはアメリカの原爆ミサイル・ギャップを補うための、米軍の前線、犠牲基地となっております。それゆえ、アメリカの軍事評論家たちは、こぞって、
沖縄をもって南太平洋の第二のアッツ島と呼んでいることは、まことに痛心のきわみであります。アッツ島は無人島でありますけれども、
沖縄には、われら八十八万の同胞が住んでいることを忘れることはできません。かくて、
沖縄をして再びひめゆりの塔たらしめることなきように、
日本国民の憂国の熱意と党派を越えた切なる平和の願いをもちまして、
沖縄の米軍支配からの全面的解放、
施政権返還、祖国
復帰を皆様とともに世界の公正なる世論に強く訴えまして、
賛成のあいさつにする次第でございます。(
拍手)