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1962-03-29 第40回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十九日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 林   博君 理事 牧野 寛索君    理事 井伊 誠一君 理事 松井  誠君       井村 重雄君    池田 清志君       一萬田尚登君    上村千一郎君       唐澤 俊樹君    岸本 義廣君       小金 義照君    千葉 三郎君       猪俣 浩三君    鈴木 義男君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君  出席政府委員         検     事         (訟務局長)  浜本 一夫君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      下村 三郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局行政局         長)      仁分百合人君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月二十六日  委員森山欽司辞任につき、その補欠として千  葉三郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員田中織之進君及び片山哲辞任につき、そ  の補欠として淺沼享子君及び鈴木義男君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員淺沼享子辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。    ───────────── 三月二十二日  皇室の尊厳をおかす者を処罰する法律制定に  関する請願山崎巖紹介)(第二七一六号)  同外一件(河本敏夫紹介)(第二七四〇号)  同外七件(松本俊一紹介)(第二七六三号)  同(小川半次紹介)(第二七六四号)  同(濱地文平紹介)(第二八〇二号)  同外二十九件(古川丈吉紹介)(第二八八七  号)  同外二十四件(宇野宗佑紹介)(第三〇〇九  号)  同(菅太郎紹介)(第三〇一〇号)  同外十六件(佐々木義武紹介)(第三〇一一  号)  同外十六件(野田卯一紹介)(第三〇一二  号)  同外五件(濱田幸雄紹介)(第三〇一三号)  浦和家庭裁判所庁舎独立に関する請願(松永  東君外四名紹介)(第二七八七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政事件訴訟法案内閣提出第四三号)  行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等  に関する法律案内閣提出第一三五号)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  行政事件訴訟法案及び行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の両案を一括議題といたします。  質疑を続行いたします。上村千一郎君。
  3. 上村千一郎

    上村委員 行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  質問に先立ちまして、今回行政事件訴訟法案制定に関連いたしまして、現行数百の行政法規について、諸種の角度からこれを検討されまして、さらに各省との折衝において幾多の苦心をされまして、本整理法案をまとめられた御当局労苦に対しまして、特に浜本訟務局長杉本参事官の数年にわたる労苦につきまして、敬意を表しておきたい、こう思うわけであります。  次に質問の点でございますが、この行政事件訴訟法案趣旨にのっとりまして、所要の整理をするというもののうちで、第七条の土地調整委員会設置法改正について逐条説明を拝見いたしますと、その中にこの改正趣旨といたしまして、「かような実質証拠有無裁判所判断対象となるものにつきましては、取消判決拘束力行政事件訴訟法案第三十三条第三項の規定だけでは、明らかでないばかりでなく、従来、との点については、解釈上疑義があった」からというような説明になっておるわけですけれども、これはきわめて難解な点でございますので、具体的な事例をあげて一つ説明を賜わりたいと思います。
  4. 浜本一夫

    浜本政府委員 具体的な事例をあげてその説明を求めるとおっしゃられると、私ども非常に困るのでありますが、ただ一つだけ申し上げますと、たとえば実質証拠がないというので、かりに取り消されたといたしますと、さらに原処分庁処分をしなければならない、委員会がさらに裁決をしなければならないことになるかどうかというようなことが、たとえば本法の三十三条の三項でございますと、「前項規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。」とあります。実質証拠有無が問題になったような場合には、この行政事件訴訟法案の第三十三条ではまかなえないわけなのであります。それでありますから、本法では手続に違法がある場合だけを取り扱うことに一般法としてはいたしまして、そして今言ったような実質証拠有無が問題になるような場合には、それぞれ特別法に譲ろうというための規定であります。
  5. 上村千一郎

    上村委員 次に十九条についてお尋ねをいたしたいわけですが、十九条の国の利害関係のある訴訟についての法務大臣権限等に関する法律の一部改正における同法第七条の新設の点でありますが、この地方公共団体その他政令で定める公法人訴訟について、法務大臣においてその所部職員指定代理人とすることができる、こういうような点に関連いたしまして、この所部職員というのは、具体的にどんなものを言われるのか、具体的に一つ説明を承りたいと思います。
  6. 浜本一夫

    浜本政府委員 従来行政事件訴訟特例法下におけるこの所部職員解釈は、法務省訟務局職員というふうに私どもは解しております。また現実にもそれ以外の職員を指定したことがなかったように私は記憶しております。つまりそのためにある所部職員、具体的には法務省訟務局職員というふうに解しております。あるいはまたその出先の機関職員を含んでおります。
  7. 上村千一郎

    上村委員 地方自治本旨考慮してこれとの調整をはかった規定としたという説明がしてありますが、地方自治本旨考慮して調整をはかったというのはどういう点か、その点を具体的に御説明を承りたい。
  8. 浜本一夫

    浜本政府委員 この権限法の第七条に地方公共団体を入れますことについて、私ども最も苦労いたしましたのは、今御指摘になった点であります。いやしく竜地方自治本旨に違わないように、地方自治原則からいってここに地方公共団体を入れる必要はないのではないかという疑問がまず第一に起きるわけであります。それについては実際の必要がしばしば痛感されるのであります。たとえば同じ種類行政処分が争われる、国の方の場合には法務大臣がこれを指揮監督し、そうして一方地方公共団体の方になりますと、地方公共団体だけがこれに応訴するのでありまして、力のある公共団体は十分これに対応し得るだけの措置ができるのでありますが、私ども横の方から見ておりますと、力のない地方公共団体には、言葉が悪いのでありますけれども、若干そういったことの心配があるのであります。それで国との共通の利害のあるような種類訴訟については、どうしても法務大臣が一括してと言いますか、同じ態勢でこれに応訴しなければならないという必要がしばしば痛感されておったのでもります。そこでこういうふうな改正をいたしたいというのが私どもの年来の念願であったのでありますが、そこで直ちに地方公共団体自治権に国が介入するという非難がどうしてもそこに考えられるのでありまして、そこで私ども一番苦労したのは、具体的にどの規定かと申しますと、ただいま問題になっております第七条の第二項であります。「地方公共団体がその事務に関する訴訟についての前項請求をするときは、あわせてその旨を自治大臣に通知しなければならない。」また第三項で「第一項の請求があった場合において、法務大臣は、国の利害考慮して必要があると認めるときは、」必要がないのに、国の利害に何も関係がないのに介入することがないようにという考慮をそこでいたしております。また「地方公共団体事務に関する訴訟については、法務大臣は、自治大臣意見を求めるものとする。」という第三項の末段であります。それから第四項では「前項規定は、地方公共団体その他の公法人弁護士訴訟代理人に選任し、第一項の訴訟を行なわせることを妨げない。」という規定を置いております。さらにまた「第八条を第九条とし、第七条中」、この第七条であります。権限法の第七条、権限法の新八条にただし書きを設けまして、「地方公共団体事務に関する訴訟につき前条第三項の規定により法務大臣の指定した者については、民事訴訟法第八十一条第二項の規定を準用する。」すなわち、民事訴訟法の第八十一条には、訴訟代理人である弁護士法定権限規定してあるのであります。その第二項にその法定権限ただし書きをいたしまして、所定事項については特に委任がなければならない、委任事項に特別にうたってなければそういうことができないという権限制限といいますか、特別委任事項規定してあるのでありますが、それをも地方公共団体がそれに関する限りは法務大臣の指定した所部職員代理人にそういった制限を加えるというような配慮をいたすことによりまして、地方自治権との調整をはかったつもりなのであります。
  9. 上村千一郎

    上村委員 「政令で定める公法人」というのがございますが、現在どんなものがあるか、具体的に御説明を賜わりたい。
  10. 浜本一夫

    浜本政府委員 今、一々具体的に漏れなく列挙することはできぬのでありますけれども、大体において整理法の方で法務大臣監督規定を削っておるものであります。つまり従来あの監督規定によって法務大臣監督しておった公法人なんでありまして、条文で申し上げますと、逐条説明のところで申し上げております第八条、北海道東北開発公庫それから二十三条日本専売公社、それから三十三条国民金融公庫、それから四十六条医療金融公庫、五十七条農林漁業金融公庫それから八十二条中小企業金融公庫、八十三条中小企業信用保険公庫それから百十六条住宅金融公庫、百二十二条公営企業金融公庫が現在ではこの公法人に当たるわけなんであります。
  11. 上村千一郎

    上村委員 現行地方自治法や、公法人に関する各種行政法規には、訴訟に関し法務大臣監督規定を設けているものがあるが、今回この監督規定は削除されることになったわけであります。従来法務大臣監督というのはどんなふうな姿で行なわれておったのか、またどういうわけでそれが削除されることになったか、御説明を賜わりたいと思います。
  12. 浜本一夫

    浜本政府委員 従来、御指摘監督規定の発動の実情を申し上げますと、何分私どもの力の人的陣容がきわめて貧弱でありますので、私どもの方から進んでこれを一々の具体的の訴訟を取り上げて、こちらの指定代理人訴訟活動をやるということはとうていできませんので、それらの公庫から事件の起こりますたびにこちらに依頼する旨の文書を送ってきます訴訟だけについては、私どもの方でその求めによって所部職員を指定することにいたしております。それ以外の事件については、実ははなはだ申しわけないのでありますが、こちらから積極的に進んで指揮監督するというところまでは手が回りかねておった実情であります。  それからまた、これを削除いたしましたのは、何分実情がそんな実情でありますので、また一々特別法でまちまちになるおそれもあるしいたしますので、むしろそういったことは権限法改正によって政令で指定できるようにした方が実際的ではないかという考慮から政令に譲ることにいたしたのでありまして、まだその政令案は確定はいたしておりませんが、私どもの腹案といたしましては、現在整理法で落としました公庫、公団そのほか若干のものを政令で収容したいというふうに考えておるのであります。
  13. 上村千一郎

    上村委員 次に、実は行政事件訴訟法改正で、新たにできた大きな意義といたしましては、訴願置主義原則として廃止しておるという点が大きなものであろうと思います。ですから、その点について少しくお尋ねをしておきたいと思います。  提案理由説明のうちに、三つ基準を定めまして、従来三百からあった訴願置主義、この訴願前置の法律を五十数個にしぼったということについては、非常な立案者側の御努力の点につきまして敬意を表するわけですが、行政事件訴訟法案訴願置廃止原則をとった、またこれが大きな特色をなしておるわけですが、その原則例外といたしまして、訴願を前置させる点としまして三つ基準を設けた。その中で大量的処分という問題あるいは専門技術的処分について、そういう関連する問題について、これは訴願置主義をとっておる。これは理解するととができるわけですが、第三者的機関によって裁決がなされる処分という問題をも基準の中に入れられておるわけです。なぜ第三者的機関によって裁決がなされる処分についても、訴願置廃止原則例外をなす基準に取り入れたのか、その点についてお尋ねしておきたいと思います。なお、この第三者的機関というものは目尻体的には一体どんなものか、その性格とか設置法的根拠などについても具体的な御説明を賜わりたいと思います。
  14. 浜本一夫

    浜本政府委員 私ども統一的な行政、それから能率的な行政というふうなことを考えました際に、実は訴願前置にも非常な特徴がある。一律に訴願訴訟とを例外なしに併置させるということは不経済でもありますので、訴願前置にも非常にいい点があるということにかんがみまして、訴願前置は原則としてとるべきものだということに私ども実は考えておったのであります。ところが、従来の訴願並びにその手続あるいはまたその裁決というものに対して、きわめて強力な批判がなされまして、どうしても訴願前置をはずすべきであるという強力な反対意見が出てきたのであります。そこで、私ども双方意見を十分翫味しんしゃくいたしまして、今、上村委員の言われましたような三つ基準は、まず大体例外的に訴願前置を認めることが双方を納骨させるポイントであろうと考えまして、数年間にわたる審議経過においてさような結論に達したのであります。  上村委員指摘されました第三者的機関と申しますのは、私とも考えておりますのは、処分行政庁から、法律上もまた美質上も独立して意見を出し縛る、そういった独立の担保のある裁決機関というものを基準にしておるのでありまして、具体的には、この逐条説明の十二ページのところにあげておるのでありますが、犯罪者予防更生法関税法文化財保護法道路運送法建築基準法国家公務員法、これらの法律規定しております審査会なり委員会なりというものが、われわれがその要件に当たるものとして今回の整理法において例外としておるものであります。
  15. 上村千一郎

    上村委員 この大量的処分ですね、大量的に行なわれる処分であって、この訴願裁決により行政統一をはかる必要があるもの、これは訴願置主義をとる一つ基準としておる。これはもっともだろうと思いますのは、大量的に行なわれる処分であって、訴願裁決によって行政統一をはかる必要があるというものは、一つ訴訟経済意味から言いまして、あらゆる点からいっても納得できるだろうと思うのです。それから専門技術的性質を有する処分、これもまたその系統内において、一応訴願方式によって一つの不服を解決していくということもいいことだと思うのです。第三の、訴願に対する裁決第三者的機関によってなされる処分という場合の、第三者的機関という場合に、他の官庁から独立して、自己の独自の判断裁決していくというような機関、これを推し進めていけば、結局裁判所というものもそれに入りはしないのか。そうすれば、要するにこの基準の一、二の範疇と第三の範疇とはちょっと違うのではなかろうか。だから、もし訴願前置をはずすという原則を広範囲に貫いていく意欲があるとするならば、むしろ、この第三の基準というものは、訴願置主義原則の一基準として入れていくことは妥当ではないではないか。訴願前置をしていくという方面から見れば、それからはずしていく。結局、行政事件訴訟法の今度の法案から言いますならば、訴願前置ということをはずしていくのが原則であるということになれば、むしろその方へ入れていく基準ではなかろうかというような考えのもとに、先ほど質問を申し上げたわけでございますが、何かこの点について立案過程において問題になったというような点はなかったのであるかどうか、承っておきたいと思います。
  16. 浜本一夫

    浜本政府委員 大へんむずかしい御質問で、はたしてお答えになるかどうか恐縮いたしますが、第三基準第三者的機関による裁決というものを例外といたしました審議経過における論議は、つまり先ほど申し上げました訴願並びにその手続あるいはその裁決に対する批判と申しますのは、言葉が非常に悪いので恐縮なのでございますが、どうせ裁決庁といえども行政庁なのだから、言ってみれば同じ穴のムジナなのだ、そんなものがやっている裁決が、不服を申し立てている者にとうてい満足を与えるはずがない、こういったような見地から訴願前置をはずせという、端的にいえば批判なのであります。でありますから、むしろ、この第三の基準に当たりますような裁決は、そういった批判にも従来からすでにたえ得ているわけなのでありまして、この第三基準例外として訴願前置を新法において認めるということにつきましては、そういう批判をする側からも、これはよろしいとむしろ言われたほどでありまして、多少第一、第二とは性質が違いますけれども、もともと私ども訴願前置には非常な長所を認めておったものでありますから、第三基準例外とするということについてはもちろん異議はなかった、かような審議経過になっておるわけでございます。
  17. 上村千一郎

    上村委員 次に、行政事件訴訟法案では、取消訴訟は原処分の取り消しを原則としているが、本法案では、これに若干の例外を設けまして、訴願裁決のみを訴訟対象とするいわゆる裁決主義規定を置くことにしておられるようでありますが、その理由は、単にその性質裁決主義をとることが適当であると言っておるが、具体的な事例について御説明を賜わりたい、こう思うのであります。
  18. 浜本一夫

    浜本政府委員 これは逐条説明の十二ページのところに関するのでありますが、現行法におきましても、海難審判法特許法上地調整委員会設置法などにすでにこの種の規定が見られるのでありまして、私どもが本法案を作ります際に検討いたしましても、やはりこれらの現行法におけるものもそのままでよろしい、それからまた、これをそのままといたします以上は、全般を検討いたしまして、さらにそのほかにもあるということに気づきましたので、現行法の今申し上げましたもののほかに、さらに農産物船舶計器などが所定基準に合致するかどうかというふうな技術的検査につきましても、同様の裁決主義に従うことにいたしたのであります。なぜ裁決主義がいいかということをここで実質的に御説明申し上げることは、ちょっと私にも即座にはいたしかねるのでありますが、具体的に申しますと、今申しました現行法のほかに、農産物船舶計器などが所定基準に合致するかどうかという技術的な検査、そういうものについてもさらに同じように裁決主義をとった方がいいというので、そういう調整をいたしたのであります。
  19. 上村千一郎

    上村委員 次に出訴期間の点でございますが、あまりに短いものは適当な期間に延長する、あまりに長いものはこれを適当な期間に短縮するというふうに整備をされた、こういうふうになっておりますが、ここにあまりに短いものとかあまりに長いものというのは現行法上どんなものであるか、一体適当な期間というのはどのくらいをお考えになったのか、御説明を賜わりたいと思います。
  20. 浜本一夫

    浜本政府委員 現行法を全部洗い上げてみますと、実は私どもの目に触れましたのは、むしろ短きに失するものの方が多い。たとえば一カ月というふうなものを規定しておるものがございます。それからまた何らこれに言及しておらぬもの、つまりいつでも起こせるようなただし書きになっておる法規もございます。実に統一を欠いておるのが目についたのであります。そこで何らかの基準を設けなければならぬと考えたのでありますが、大体適当な期間と申しますのは、もともと抗告訴訟について三カ月という期間を定めております建前、それからまた従来の実際における実情考慮いたしてみますと、土地収用法規定しております三カ月、こういうものがちょうど抗告訴訟期間にも合致いたしますので、三カ月というのが実際上もあるいはそういった統一的な見地からも妥当であろうというので、大体土地収用法規定しております三カ月というものを基準にいたしまして、統一をはかることにいたしておる次第であります。
  21. 上村千一郎

    上村委員 次に行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案というのがございます。それと本案との関係について少しくお尋ねをいたしたいと思います。本案は、不服審査法整理法案における新設規定をつけて整備していると思われる点があります。たとえば本案の第十六条犯罪者予防更生法改正で、第五十一条の三、これは審査請求訴訟との関係規定でありますが、その規定新設しておるが、現行の同法には第五十一条の二の規定がなく、これは不服審査法整理法案で同法に同条を新設したと思われるが、どういうふうな関係になっておるかお尋ねしておきたいと思います。
  22. 浜本一夫

    浜本政府委員 犯罪者予防更生法の五十一条の二に、審査会審査請求を受理した日から六十日以内に裁決をしなければならないという規定新設されております。従いまして、この行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の第十六条の改正と申しますのは、今申し上げました五十一条の二の次に三として、この規定を賢くという関係になります。実は行政不服審査法行政事件訴訟法とは所管が違います。理論的に言いますれば、かように両方を伴います整理法案というものは、別々にならざるを得ないのでありますが、今ここに問題になっておりますような関係で、二本建にいたしますと、さように複雑な関係になりますので、実はわかりやすくするためには、本法案の方はそれぞれ所管が違うといたしましても、共同作業するなり何なりいたしまして、整理法の方は、むしろ一本でいった方がわかりやすくてよくはあるまいかと考えたのでありますが、何分所管が違いますし、また関係者が共同作業するという時間的余裕もございませんために、やむを得ずかように別々にいたしたのであります。そのために今御指摘になりましたような現行法を見ただけではわからぬ、現行法をさらに行政不服審査法整理法によって改正されたものを基礎にしなければ、私どもの方のこの行政事件訴訟法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の内容がわからない。そういった不便な結果に相なったのでありますが、まことに恐縮でありますけれども、一々の条文につきまして御指摘があれば、こちらの方の法案で御説明を申し上げるほかないと思うのであります。
  23. 上村千一郎

    上村委員 私、この程度で質問を終わりたいと思うわけでございますが、実は少しく御要望申し上げておきたいと思います。  と申しますのは、現行各種行政法規における訴訟に関する規定は、その基本法たる行政事件訴訟特例法がございますが、これがすべての点においていかにも実情に沿わなくなってきておる、あるいは各種行政法規との関連が十分に考慮されて整備されていなかった、こういう点などは率直に認めなければならないと思うわけです。そういう意味から、今回行政事件訴訟特例法を全面的に改正されまして、新たに行政事件訴訟法制定する、それに関連しまして各種行政法規における訴訟に関する規定整理する、あるいはこれらの規定における不備、不統一を是正するということが必要になってきた。これに対する当局の御苦心、また立案されましたところの長い期間の御努力については、冒頭に申しましたごとく深く敬意を表するものでございますが、この要請は今後また起きてくるのではないか。と申しますのは、既存の行政法規については、この整理法案によってすべて行政訴訟の体系を整備することができる、またこの観点から言いますれば相当効果があった、努力の実った法案であろうというふうに私は思っておるわけですが、今後各省が新たに立法する場合——これはもう日々行なわれておるような実情でございまして、その立案の過程において、内閣法制局ももちろんこれにつきまして御関係はされるとは存じますけれども、法務省も、この新設規定について参画をして、整備された体系をくずさないようにされるという努力は、今後とも必要であろうと思うのです。何となれば、行政法規というものは現在の段階におきましては整備されておるが、これからまた日々の要請におきまして、行政法規とこの立法関係はとどまることを知らないと形容して差しつかえなかろうと思うのです。そういう意味におきまして、せっかくできましたかかる体系的な法案といたしまして、その体系をくずさないような御努力をされることを御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 浜本一夫

    浜本政府委員 別に御質疑でありませんので、よけいなお答えになるかと思うのでありますが、私どもも、実はこれで広範にわたる現行法規に関する限りは、私どもの意図するところに従って整理し得たことを満足に思っておる次第であります。今後のことにつきましては、法制上あるいは文書の上でさようなことを約束したということはございませんが、少なくとも現在の私どもの方の職員、あるいはまた現在の法制局の職員との間では、今後新しい法規を立案するにあたっては、出訴期間について、あるいは訴願前置について、いずれもそういった点については法務省の意見も聴取しなければならないような建前で進むということは、口頭では実は申し合わせをしておるのでありまして、十分上村委員の御希望にも沿い得ることと思いますのみならず、私どもも実はさような希望を抱いておるものであることを申し上げておきたいと思います。
  25. 上村千一郎

    上村委員 以上をもって私の質問を終わります。
  26. 河本敏夫

    河本委員長 この際、最高裁判所事務総長より発言を求められておりますので、これを許します。下村事務総長。
  27. 下村三郎

    ○下村最高裁判所長官代理者 私は、去る十五日付をもちまして最高裁判所事務総長を命ぜられました下村でございます。多少の時間を拝借して一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  裁判の事務に従事いたしてからもう相当久しい年月がたっておりますが、ことに昭和二十二年の十一月以来東京高等裁判所におりまして、もっぱら裁判事務をやっておりましたので、裁判事務につきましては相当理解も経験も持っておるつもりでございますが、国会その他に参りまして十分所管事項を御説明申し上げ、十分の御理解を願えるかどうかにつきましては、はなはだ無経験でございますので、あるいは御期待に沿えないようなこともあるかとも存じますが、よろしく御支援のほどをお願いいたしたいと思います。  裁判所は新しい憲法になりましてから、裁判の独立ということにつきましては、まことにりっぱな地位を与えられたわけでございますが、その後のいろいろな情勢の変化に伴いまして、事件が非常にふえて参りましたり、裁判官の人員が必ずしも充足するに十分でないというような点、また訴訟手続等におきましても、必ずしも裁判所の面目を十分に発揮できないというような点もあります。それから施設も十分でないというようなことがありまして、国民一般の方々に対して、ごくささいなことでも裁判の信用というものを傷つけることもなきにしもあらずでありますが、私どもは、あらゆる努力をいたしましてそういう困難に打ち勝っていきたいと思いますので、今後ともよろしく御支援のほどをお願い申し上げたいと思います。  なお終わりに、ただいま申しましたような事情でございますので、本委員会において御審議を願っております法案の内容につきましても、非常に重要なものでありますが、十分の研究をいたしておりませんので、皆さんに対するお答え等は主として行政局長その他の係の者にさせていただきたいと思いますので、その点もはなはだ勝手でございますが、御了承をお願いしたいと思います。
  28. 河本敏夫

    河本委員長 猪俣浩三君。
  29. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最高裁判所事務総長にちょっと御質問申し上げたいと思いますが、今当委員会審議しております行政事件訴訟法案につきまして、最高裁判所事務総局では、全国の弁護士会あるいは下級裁判所意見を徴したと聞いておるわけであります。そこでその結果について概略御報告いただきたい。そしてこの審議の参考に供したい、こう思うわけであります。裁判所側にこの質問の要旨が通告されておりましたかどうかわかりませんが、お知りの限りのところをお話し願いたい。
  30. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 私どものところで行政事件訴訟法案につきまして、各個の条文ごとに賛否の意見を徴したことはございます。ただし、弁護士会の意見としては、こちらでは伺っておりません。高等裁判所、地方裁判所意見は徴したことはございます。しかし、総体としてどうかということでなしに、各個の条文については意見を徴しておりますので、個々の条文についてしか——ちょっと総体としては申し上げかねるようなことでございます。
  31. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは第二十七条の内閣総理大臣の異議について、全国の裁判官の意向を徴されたかどうか、その結果がどうなっているか、それを御説明いただきたいと思います。
  32. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 内閣総理大臣の異議でございますが、私どもの方で意見を徴しました結果、回答がございましたのが三十五庁でございます。そのうち賛成論が六庁、反対論が二十九庁ということになっております。
  33. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 弁護士会の意向はおわかりになりませんか。
  34. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 これは、私どもの方としては直接関係いたしておりません。
  35. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務省おわかりになりませんか。
  36. 浜本一夫

    浜本政府委員 全国の各弁護士会に意見を徴した事実はございません。法制審議行政訴訟部会の小委員会案について、日本弁護士連合会から、内閣総理大臣の異議は削除すべきであるという意見を出された事実はございます。
  37. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると日本弁護士連合会から内閣総理大臣の異議——この本案の第二十七条と同じものですか、小委員会の案というのは。
  38. 浜本一夫

    浜本政府委員 だいぶ違った点がございます。つまりそういった反対意見がございましたので、いろいろ反対の意見の内容を考慮いたしまして、その後に一部変更を加えたものが、今御審議願っております内閣総理大臣の異議という形になって現われたわけであります。
  39. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、日本弁護士連合会の内閣総理大臣の異議、小委員会の案に対する反対の趣旨あるいは理由ですね。全部に、異議そのものに反対なのであるか、あるいはその弁護士会の意見を入れてこの案のようになったようにもあなたの説明では聞き取れるのですが、その日本弁護士連合会の反対の趣旨をちょっと御説明いただきたい。
  40. 浜本一夫

    浜本政府委員 その際、日本弁護士連合会が反対意見であるにつきましては特段理由は備えておりません。それから小委員会の案をさらに本法案のような内容に改正をいたしました具体的な点と申しますのは、この第二十七条の第六項であります。「内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第一項の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。」というこの第六項のような、具体的に申しますと第六項だけがその当時の小委員会の案とは異なった点であります。
  41. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、第六項のないような第二十七条と大体似ておる案に対して、日本弁護士連合会は削除を要求したわけですか。
  42. 浜本一夫

    浜本政府委員 さようであります。
  43. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで最高裁判所事務総長にお尋ねいたしますが、こういう訴訟事件の第一線に立っておりますところの下級裁判所から三十五の回答があって、ほとんどその大部分がこの二十七条については反対だということが今わかったわけでありますが、そこで反対の理由がいろいろありますならば、それを一つ説明いただきたい。どういう理由で反対なのか。これは実際日夜訟訴事務に精励されております裁判所意見ですから、非常に重視しなければならないと思うのです。当委員会審議についてもこれは非常に参考にしなければならない。そこで相なるべくならば詳細にその反対の理由を、もし理由が出ておりましたならばここで御説明いただきたい。
  44. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 私どもが先ほど意見を徴したと申し上げましたけれども、これは小委員会の案であるということをお断わりしておきたいということでございます。それから賛成、反対の理由ははっきりいたしておりません。結論だけでございます。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、最高裁判所の諮問の方法は、イエスかノーだけの諮問なんですか。反対なら反対、賛成なら賛成の理由は諮問しなかったわけですか。
  46. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 こちらといたしましては、理由はもちろんほしいと思うのでございますけれども、全部結論で出しているということであります。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういうことのほかに、この案につきまして裁判官会議その他において何か決議したとか、要望したとかいうような事実がありますか。
  48. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 裁判官の会同は開いてたびたび意見は徴しておりますけれども、いろいろな問題点につきまして非常に意見が分かれておるということでございます。われわれがアンケートをとりましたとき、これは誤解もかなりあったのではないかというふうに見ておるわけでございますが、案が十分に理解されていなかったんじゃないかということでございます。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、その裁判官会議なんかで論議されております趣旨から考えて、結局、この小委員会の案と本案との違うところは、第二十七条の第六項が小委員会の案にはなかったというのですから、結局第六項みたいなものが入ればいいというような趣旨でありましょうか、その辺はおわかりになりませんか。
  50. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 この問題は、法制審議会におきましても非常に問題になった点でございまして、結局のところ、司法権に対する信頼の問題になってくるのではないかということでございます。私どもといたしましても、積極的には賛成できかねる点でございますけれども、ただ過去の先例におきまして行き過ぎの例が間々見られるわけでございまして、しかもこの行き過ぎが将来絶対なくなるという保証も私どもとしてはできかねるという関係もございましたので、現行法に比べますと相当の改善になっておりますところから、積極的に賛成はできかねるけれども、私どもとしても、あくまで反対しなければならないということまでいきかねておるわけでございます。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたのおっしゃることは、一つはこの法案全体について相当改善せられておることはわれわれ認めます。国民の権利伸張については相当進歩性をもって立案せられておる。しかし、内閣総理大臣の異議については逆転しているんですよ。全体の法案の指向するところとはなはだ矛盾した思想的立場において二十七条ができておる。これは前の特例法よりもずっと後退しておりますよ。何となれば、裁判官が公共の福祉上差しつかえないと思って執行の停止をして竜、停止後において内閣総理大臣の異議が出れば取り消さなければならないという、裁判官に対して非常な侮辱的な規定だと思うのです。そして日本の裁判機構というものを全く破壊するような趣旨なんです。重大な問題ですよ。裁判官が一たん決定したものを、行政権者の異議の申し立てがあれば取り消さなければならぬ。これは三権分立の思想から見ても非常に大問題だと思う。この点は、前の特例法よりもよほど悪くなっている。ですから全体として、訴願置主義を相当後退せしめた点に相当進歩性はありますけれども、内閣総理大臣の異議の申し立てについては改悪されておる。ことにあなたがおっしゃったように裁判官の信用問題、裁判官を信頼するのかしないのかという立脚点に今からまってきている、あなたの今おっしゃる通りなんです。そこで私は非常に問題があると思う。裁判官が全く中正な判断をしたことを、行政官の長である総理大臣、しかも自民党の総裁なんだ、その人が異議の申し立てをすると取り消さなければならぬ。日本の裁判機構では、裁判官の決定を取り消すのは上級裁判所以外にないはずです。それを行政官の異議の申し立てによって取り消さなければならぬ。日本の裁判機能というものを根本的に変革している、ここに重大な異議が僕はある、これは容易ならぬことだと私ども考える。ですから、全国の下級裁判所のほとんど大部分が意見を具申したということは、僕はそこに中心点があると思ってあなたに聞いておるのだけれども、何も理由がなかった、こうおっしゃる。何か少し遠慮されている点があるのじゃないかと思う。そんなことは、真理発見のために遠慮なくずばずば言ってもらいたい。こういう裁判機構そのものに対する重大な変革的な意義を持っている法案に対して、裁判官が奮起することは当然じゃありませんか。あなた方最高裁判所事務局としても当然のことだと思うのだ。何も遠慮する必要はないのです。しかし、理由は何もなかったとおっしゃられればそれ以上質問してもむだであります。  そこでなお訟務局長お尋ねしますが、この訴訟法案の第二十五条、これに執行停止のことが規定されておる。しかも執行停止する場合は非常に限定されている。非常なしぼりをされておる。ことに三項に「公共の福祉に重大な影響を及ぼす」ということを裁判官が認めた場合には執行停止はできない。もし執行停止しましても、六項において直ちに即時抗告ができる。こういう規定がある。なお三十一条を見れば、いわゆる事情判決もできるようになっておる。公共の利益に障害を生ずる点があると裁判官が認めれば、形式的には取り消しあるいは無効の訴訟について理由かあったといたしましても、これは請求を棄却することができるという事情判決規定まである。この二十五条、三十一条があるにかかわらず、何がゆえに総理大臣の異議までも、もう一ぺん屋上屋を重ねる必要があるであろうか。そうして裁判の機構というものを根本的に変革するような、裁判判断行政判断との食い違いに際して、行政判断が優越するような趣旨を織り込むということは、私は理由がわからない。裁判官が公共の福祉に害があると見れば執行なんか停止しないでもいい、執行をかりに停止したとしても直ちに即時抗告ができる。こういう二十五条の規定があるにかかわらず、総理大臣の異議ということは何がゆえに必要であるか、その必要の理由を御説明願いたい。
  52. 浜本一夫

    浜本政府委員 猪俣委員の御指摘になりますように、従来の例に見ますような総理大臣の異議というものは、おそらくは第二十五条の執行停止を争う方で大部分はまかなえるとは私も考えるのであります。しかしながら、今猪俣委員の御指摘の第二十五条の第六項によります即時抗告は、民事訴訟法の即時抗告とは全く異なりまして、その第七項によって、執行を停止する効力を持たないというふうに、即時抗告ではありますけれども、ほとんど即時抗告としての唯一と言ってもいいくらいな執行停止の効力を持たないきわめて薄弱な即時抗告なんであります。でありますから、御指摘のような第二十五条の執行停止の決定を争う手続で大部分はまかなえるとは思いますが、なおかつ、めったには使わぬといたしましても、やはりある種の事案におきましては、屋上屋を架するきらいはあるかもしれませんが、本法案の第二十七条におきますような制度を維持する必要があると考えたのであります。その具体的事例につきましては、前回お答えの際に申し上げたつもりでありますが、たとえば、市町村の境界変更もしくは市町村の合併というような処分が争われております際に、この執行停止によって直ちにその処分が効力を失うことになってしまいますと、ときたまたま総選挙が行なわれる、あるいは補欠選挙が行なわれるという場合に関連いたしまして、所定の期日にその地区だけ選挙の執行が行なえないような緊急な事態が起きてくることが予想されるのです。また現に、今日までの実例におきまして、さような事態に逢着したことが実はございますのであります。しかも、これは前回お答え申し上げたつもりでありますが、事柄が中央官庁の近くで起きますれば、あるいは十分対処し得る時間的な余裕もございますのでありますが、何分僻遠な地にまで裁判権並びに行政権が散在しておりますから、しかも、執行停止なるものは、訴え提起のとたんに、きわめて簡素な疎明によって裁判所にいずれか結論を出してもらわなければならないという御迷惑をかけることになりますので、さような場合には、あるいは裁判所も、執行停止をされた後に進んでお取り消しになる場合もあるかとは思いますけれども、重ねて二十七条のような制度を今後も維持する必要がある。さような点から、私どもは、おそらくはこれを利用しなければならぬような事態はなかれかしと願うのでありますけれども、制度といたしましてはこれを維持する必要がある、かように考えた次第でございます。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたと議論しても始まらぬのだが、あなたの今の説明意味をなさぬと思うのです。そんなことは、ほとんど万に一つもないようなもので、しかも裁判官を信用すれば、そんなことが起こり得るはずはないのだから、制度としてはちゃんと、公共の福祉の場合には、裁判官の判断行政処分停止決定などできないとあるわけです。今の市町村合併の問題だって、裁判所へ訴えれば、具体的な——みんなその地方にはあるのです。へんぴな所には、総理大臣はおらないでも、裁判所はそこにあるのだから、実情に沿うた判断を裁判官の方がやりますよ。総理大臣が何がわかりますか。総理大臣や法務大臣などはへんぴな所のことはわかりませんよ。裁判所は、へんぴなところにもあるのです。その実情が公共の福祉に合致するかどうかの判断は、総理大臣や法務大臣よりは、よほどその地元におる裁判官がよく知っていますよ。裁判官さえ信用すれば、今あなたのあげたような例はあるはずはない。万に一つもないようなことを想定して、裁判機構を根本からくつがえすような、こういう裁判官の判断について行政権の判断を優越せしめるような思想を植え付ける、こういう条項を置くというととは、私どもはどうしても理解できない。しかし、今あなたと議論しても始まらないから、これはやめておきます。そこで私は、法務大臣がお見えになっておりますので、大臣に二、三お尋ねしたいと思うのですが、今回のこの案によりますと、相当国民の権利の伸張を裁判制度上はかっておる、これは確かに認めなければなりません。その反面、相当この裁判制度を利用して、国民が権利の伸張の訴訟を今よりよけい行なわれるのじゃないか。ことに訴願置主義は非常に制限されておりますから、訴訟事件が非常に増加するのではないかと思われますが、それにつきまして、こういう昔ならば元来行政裁判所でやったようなことを司法裁判所がやるわけでありますから、裁判官の訓練というものがある程度必要じゃないかと思います。そこで、それとからみまして、ちょうど今家庭裁判所というものがあって、普通の事件よりもそういう特殊な事件をやっているように、特殊左裁判所じゃないが、司法裁判所一つの機構として、行政裁判所とか、そういうふうな専門裁判官を集めた機構を作るような考えがあるのかないのか。なお、この法案ができますると、相当裁判官が増加されなければならぬとも私は思いまするし、今言ったように特別な訓練というものもしなければならぬ。そうすると、それに当然予算が伴うと思うのです。そういうことに対して法務省はどういうお考えを持っているのであるか、御意見を承りたいと思うのです。
  54. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの御質問は、主として裁判所関係の部門についての御質問でございますから、その点は、所管関係から申しましても、裁判所当局の御意見を徴していただいた方がいいと思いますが、私の考えを申し述べますならば、私の方の所管といたしましては、訟務局、検察庁等々の陣容におきまして、相照応しまして人員の増加あるいは特殊な部課の設置等が必要じゃないかということになると思いますが、ただいまのところでは、新しい法律が出ることによって事件の増加は相当予想されるとは私は思っておりますが、何分にも、しばらくその経過を見てみませんと、どれくらいふえて参りますか、処理のために非常に不都合が起こるかということ等もわかりません。そこで、しばらく様子を見た上で、必要が生ずるならばそのときに善処しても差しつかえないのじゃないか。それまでのところは、ただいまの陣容なりあるいは部課の状況においてやっていけるのじゃないか、それでいけなくなるようなおそれが生じたときには直ちに考えていこう、こういうふうに思うのであります。  従いまして、裁判所の方の場合におきましても、私のただいま想像するところでは、やはりしばらく経過を見る必要があるのじゃないかというように思います。ことに現在、たとえば特定の裁判所をこしらえて判事の数をふやすということを考えてみましても——判事、検事同様でありますが、不幸にしてなかなか人材を得られません。従って、今別途に内閣委員会で御審議になっておりまする臨時司法制度調査会の法案が出ておりますが、この案におきまして、法曹一元化の問題でありますとか、判検事の給与の問題でありますとか、そういう問題を扱っていただいて、そうしてこれらの要員の充足に非常に困っている実情をどうして打開していくかということを考えていただくことになっておりますが、これらにもよりまして初めて人員不足等々にも対処し得るようになる。それまでは、今の状況では、かりにここで判事を増員しよう、検事を増員しようといたしましても、実は不可能な状態にございます。この点を御了承願いたいと思う次第であります。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最高裁判所側の御意見を伺いたい。
  56. 仁分百合人

    仁分最高裁判所長官代理者 ただいま法務大臣がお述べになりましたと同じ見解でございます。
  57. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 よろしゅうございます。
  58. 河本敏夫

    河本委員長 松井誠君。
  59. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私も、今猪俣委員から御質疑がありました総理大臣の異議権の問題を中心にしてお尋ねをいたしたいと思います。その前に、この改正案の異議権の原形、もとの形である現行法規定ができたそのいきさつ、これは大体知られておりますけれども、この総理大臣の異議という制度が挿入をされた経過というものについて、まず承りたいと思います。
  60. 浜本一夫

    浜本政府委員 実はお答え申し上げるのははなはだ苦しいのでありますが、何分私は当時あまりその点については、経過ということについては関心を持っていませんでしたし、その当時当局にいませんでしたので、現行のこの制度ができました立法の経過については、承知するところがないのであります。はなはだ申しわけございません。
  61. 松井誠

    ○松井(誠)委員 当時のGHQが、例の平野力三氏の追放の問題について、執行停止を裁判所が行ないそうになった。そういう形勢にGHQがあわてて、それで日本政府に対して、こういう特例法の十条ですけれども、十条のこの異議権の制度を入れさせた。そういうことを伺っておるのでありますけれども、どなたかその間の経緯について、特別に詳しく御説明は要りませんけれども、間違いないと思いますが、そういうことの経過で入ったということについてどなたかおわかりの人、どなたでもけっこうですが、お教えいただきたいと思います。
  62. 浜本一夫

    浜本政府委員 ただいま申し上げましたように、実は私個人が承知しませんのみならず、今出て来ております係の者も具体的には承知しないのでありますが、私どもも、松井委員がおそらく御引用になるであろうと思われる印刷物などによって承知するところとおそらくは同じであろうと思います。大体それに間違いないものと、私どもも同じような根拠から思うのであります。
  63. 松井誠

    ○松井(誠)委員 大体間違いないというよりも、むしろ周知の事実のようになっておる事柄でありますけれども、私がなぜそういうことをお尋ねするかと申しますと、これは単にこの改正案の原形である現行法の十条の成立の経過というそういう問題だけではなくて、やはりこの制度そのものが、その後の運用から見て、成立の経過から背負っておる性格というものをやはり非常に強く持っておるのではないか。そういうものは、ほんとうならばこの改正案のときにあらためて考え直さなければならない非常に重要な問題であったにかかわらず、それがやはりまだ依然として引き継がれておる。そういうことに根本的の疑問を私は持つものですからお伺いをいたしたわけなんですが、そうすると、詳しいことがおわかりでないということになりますと、あるいはどうかわかりませんが、これは私の聞くところでは、その当時のGHQの追放という制度そのものは、当時の日本の政治を民主化するという、そういうある程度進歩的な意味を持っておった。従って、そういうものを執行停止という形で何か阻止しようということに対して、GHQが追放というものをスムーズに行なわせるためにこういうものを要求したという。従って、その限りでは、その当時にこの制度が果たした役割というものは必ずしも否定すべきものではないかもしれません。つまり、政治の民主化というものに果たした役割に関する限りにおいては、あるいはそういうことが言い得るかもしれません。それでGHQがそういうものを要求した当時の考え方の中には、何かアメリカの裁判所の裁判官というものは非常に保守的で、行政官の方が進歩的なんだという、そういうアメリカ流の考え方が頭の中にあって、従って、頭の古い裁判官がこの追放という制度をチェックするのではないかということを考えてやった。ところが、その後の実際の運用、これはあとでお伺いいたしますけれども、むしろ逆に、たとえば安保条約の行政協定に基づく特別措置法、そういうものをむしろ推し進める役、そういうものをチェックすることを排除する役、そういう役をこの異議という制度が現実に果たしてきているわけであります。そういう意味で、むしろ政治的には逆な、おそらくは当初GHQの人が考えたこととは逆な作用を及ぼしてきているのではないかと思いますけれども、しかし根本は日本の自主的な立場で考えられた制度ではないという、そのことがずっとあとまで尾を引いているのではないか、そういう意味で立法の経過をお伺いをしたのであります。  それではさらにお伺いしますけれども、こういう異議という制度、これはともかく裁判所の執行停止というものを行政権の介入によって阻止するという制度、こういうものは、外国の立法例としてはございましょうか。
  64. 浜本一夫

    浜本政府委員 私どもの承知する限りにおきましては、諸外国にはこれに当たるような制度はないようであります。
  65. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、そのように特異な制度というものを日本の制度の中に導入しなければならないという、そういう何か日本的な特殊性と言いますか、そういうものがおありだという考えでこの制度を必要だとされるのか。それからもう一つ、こういう制度を入れられた理由として、いろいろ提案理由の中で申しておりますけれども、そのような危惧というものは、こういう制度がない外国では一体ないのかどうか。あるいはそういうものがあったとしても、あるとすれば具体的にどういう方法で措置をしているのか。そういう点、おわかりでしたら一つお伺いいたしたいと思います。
  66. 浜本一夫

    浜本政府委員 前回からやはり同じ点が問題になりまして、しばしば御答弁申し上げているのでありまして、私どもの知恵の及ぶ限りは、もはや御答弁申し上げ尽くしたと言ってもいいと実は私考えるのでありますが、私とものきわめて乏しい知識から考えますと、想像いたしますと、たとえばアメリカなどでは、何と言いますか、裁判所は保守的であると言いますか、私はそこら辺は批判は避けたいと思いますが、行政権に裁判権が介入しないのがむしろ司法のエチケットであるというふうに考えられておるようでありまして、おそらく裁判慣行でこれに当たるような事態は起きないような実情になっておるもののように私ども想像いたしております。また、ドイツなどにおきましては、先ほど来問題になりました同じ司法権の行使につきましても、各種の特別裁判所を用意いたしております。たとえば社会裁判所、労働裁判所行政裁判所といったような各種の専門的な特別裁判所を設けておるのでありまして、そこら辺で、つまり行政に明るい司法、行政と無用な摩擦の起きないような司法という実情が慣行として定立しておるのではないかと私ども考えるのであります。これに反しましてわが国におきましては、もうすでに十数年の経験を経ているとは申しますが、一種類の通常司法裁判所があわせて行政事件をも担当するように改正されたのでありまして、まだ一種の過渡期と言ってもいいのじゃないかというふうに私ども考えるのでありまして、先ほど来御説明申し上げております通り、かような異議を申し立てなければならぬような事態はおそらくあるまい、またなかれかしと祈るのでありますが、実際といたしましては、先ほど申し上げましたような例も最近ございましたし、また今後も起きないとだれも保証できないのであります。でありますから当分の間と申しますか、やはり制度といたしましては、かようなものを設けておくのが、司法と行政との無用な摩擦の起きないような、あるいはこれは摩擦じゃないとおっしゃるかもしれませんけれども、無用の摩擦の起きないような、その間に調整をとった制度であるというふうに考えまして、私どもは、今後もこれは制度としては必要であるというふうに考えるのであります。
  67. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、日本の場合には、端的に言って司法権の行政権に対する介入というものが少し多いのじゃないか、あるいはまた知識や経験の未熟な裁判官がいわゆる公共の福祉に反するようなそういう執行停止をやる危険性が外国よりも多いのじゃないか、今の局長のお話を裏返して率直に言えば、そういう日本の具体的な現実からこれが必要なんだ、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  68. 浜本一夫

    浜本政府委員 私は、行政事件を担当する当該裁判官が未熟であるとか、あるいは行政に暗いとかいうふうなことを申すつもりは実はないのであります。御承知のように、この執行停止と申しますのは、繰り返し御説明申し上げましたように、訴訟の起きましたとたんに、きわめて乏しい、しかも疎明というきわめて軽い資料に基づきまして裁判所は左右を決しますね。つまりジレンマに陥らされまして、どうしてもそこに制度そのものといたしまして、何と言いますか、行政権との間に無用の摩擦の起きるような事態が起きないとは保証できないというだけでありまして、当該具体的な裁判官があるいは未熟である、日本の裁判官が行政に暗いというふうなことを私ども少しも考えておりません。制度といたしまして、執行停止という制度そのものがそういったものであるというふうに私ども考えております。
  69. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、ちょっとわからなくなるのでありますけれども、たとえば英米法では、別に行政事件という特殊なものを考えないで、普通の民事事件と同じような取り扱いをする。そうしますと、やはり民事事件と同じような形で仮処分というものが行なわれる。そうしますと、行政事件でもやはり執行停止というものがあるようであります。また行政事件の執行停止そのものが、今局長の言われたようにそういう危険性を持ってきたとすれば、英米の制度でも、行政事件の執行停止が持つ危険性そのものは同じだと思うわけです。しかし、そういうところにはそういう制度がないということは、現実には日本の具体的にどういう必要に対しておるのかということを、先ほどもお伺いしたのでありますけれども、今のお話では、執行停止一般がそういう危険性を持っておるのだということになるから、必ずしもお答えにはならないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  70. 浜本一夫

    浜本政府委員 私の御説明が実は至らなかったので、またそういう御議論も起きるのでありますが、執行停止そのものが制度としてそういうものであるということとあわせまして、わが国では、今言った普通の裁判所行政事件をも担当する日の浅い経験によりまして、制度そのものの本質と、また何と言いますが、行政と司法との摩擦のない矛盾のない司法慣行というものがいまだ確立しておらぬということとあわせまして、私どもは、かような制度が今も存置する必要があると考えておるのであります。
  71. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その点は実はもう少しお伺いをしたいのでありますけれども、時間の関係でまた後日にいたしまして、今のお話ですと、いわばそういう現実の政策的な必要ということからお述べになっておるようでありますけれども、そうしてまた先ほどこれは最高裁判所の方から、裁判官に対する不信というそういう問題がこの制度の底にはあるのだというようなことをおっしゃったようでありますけれども、私は、そういう政策の便宜の問題とか、あるいは裁判官を信用するのか行政官を信用するのかというそういう問題とか、話がちょっと横道にそれますけれども、裁判官に対する不信ということは、逆に言えば行政官に対する信頼ということになるわけですが、しかし、この制度の運用の現実を見ますと、行政官に対する信頼は私は少なくともほとんど持ち得ない。そういう現実の運用の状況なんです。しかし、ともかくそういう信不信の問題だとか、あるいは政策の便宜の問題だとかいう前に、三権分立と言いますか、憲法との関係についてやはり疑いなしとしない。そういうこともやはり最初に考えなければならない問題じゃないかと思うのです。この改正案のもとになった小委員会の案には少数意見がついておる。その少数意見には、やはりこういう制度は違憲の疑いがあるということを述べておる。私はやはりこれが相当重要な問題ではないかと思うのです。憲法の三十二条には、国民は、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない、あるいは七十六条では、司法権は裁判所に専属する、そういう規定があるわけですけれども、この規定と、この異議の制度というものとの関係はどのようにお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  72. 浜本一夫

    浜本政府委員 私どもの承知しております限りでは、この執行停止そのものは純理論的には司法事項ではない、それ自身が一種の行政事項であるというのが、わが国の判例並びに学説の支配的な意見であると私考えておりまして、執行停止そのものが司法事項でない。理論的には司法事項でない、理論的にはむしろ行政事項であるという限りにおきましては、現実になされた裁判を総理大臣の異議によって取り消さなければならぬような制度を設けるといたしましても、今御指摘のような憲法違反であるという非難は、私は受けるはずはないというように考えるのであります。
  73. 松井誠

    ○松井(誠)委員 この執行停止の処分行政処分だから、これは先ほど申し上げましたような憲法の条項とは関係がないのだという御議論が多いようでありますけれども、これは相当形式的な議論ではないかと考えるのです。これはもちろん終局判決ではなくて、終局判決に至るまでの一つの中間的なそういう手続であるわけですけれども、しかし、そういう執行停止というものが実効を伴わなければ本訴そのものの提起の意味がないという、それほどの重要性を執行停止が持っておる場合——そういうものももちろんあるわけです。しかしまたそれより前に、従ってそういう裁判所に所属されておる行政裁判という、そういうものに非常に密着した、そのいわば一部ともいうべき執行停止というものは、普通の行政処分と同じようにはもちろん考えられない。裁判所のやることは全部司法の作用だというようには考えませんけれども、しかし、少なくともそのような裁判所にほんとうに密着した、ほんとうにその裁判の一部ともいったような事項、全部がそうだとは言いませんけれども、それほど現実に分かつことのできないような形でくっついておる仮処分、仮執行停止の必要がくっついている場合もあり得るわけです。そういうもののことを考えてみますると、これは執行停止は行政処分だからというような形式的な論理だけでは、私は割り切れないのじゃないだろうかと思うのです。  なお、大事なことは、こういう制度がありますと、先ほどから、制度として残しておる、しかしこの制度が使われるということは、まあめったにないようなことを期待されておりますけれども、しかし、この制度があるということ自体で、実は執行停止そのものが非常にチェックされるということがあると思うのです。どうせ総理大臣の異議が出るだろう、それならば執行停止の申請をしたところで意味はないしということで、初めから執行停止の申請をあきらめる。あるいはそれをやらなければ意味がないような本裁判の本訴の提起そのものをあきらめる。そういうことになりますと、これは単なる行政処分だというようなことでは、そういう理屈だけでは片づかないので、現実には、そういう現実の司法権というものを侵害し、そうして国民の裁判を受ける権利というものを侵害する、そういう結果になる場合があるだろうと思う。ですから今のような御議論では、私はどうしても納得できないのですけれども、その点重ねてお伺いいたしたい。
  74. 浜本一夫

    浜本政府委員 私が今司法事項だ、行政事項だと申しましたのは、憲法違反かどうかということに関連いたしましたからそういうことを申し上げましたので、やはり、憲法違反かどうかということは理論的に決しなければならぬところでありますから、憲法違反ということに対しては、そういうふうに理論的に説明できるということを申し上げたのでありまして、決して形式的なその場のがれの答弁をしたつもりは私は少しもございません。また、異議制度があれば執行停止の申し立てもせぬだろうし、あるいは訴訟さえも起こさなくなるだろう、これは現実をどう認識するかという認識の相違でありまして、私は何ともお答えしかねるのでありますが、私どもが裁判官として長い間、あるいはまた裁判に関与する訟務局長として長い間経験いたしましたところでは、総理大臣の異議があるから訴えを差し控える、あるいは執行停止の申請を差し控える、さような実情はわが国にはないように私は考えております。
  75. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういう実情を局長どれほど御存じか知りませんけれども、これはあとで詳しくお伺いをいたしますが、先ほどもちょっと私が申し上げましたけれども、いわゆる特別措置法に基づく行政事件の執行停止、これはもう異議の理由そのものが、このような特別措置法に基づくものについては元来執行停止はできないのだと言わんばかりの異議の理由が書いてある。従って、執行停止の申請をすれば、これは必ずできないということがもうわかり切っておる、そういう現実の取り扱いになっておる。そうしてこれは神奈川県の場合ですけれども、そのために初めから執行停止の申情をあきらめたという現実の事例を私は知っている。ですから、そういうことを考えてみますと、私は、局長の言われたのは、何も一時のがれの口実だというような意味で言ったのではございません。形式論だというのは、司法処分行政処分かというそういう形式論で憲法論を割り切っていいのかどうかという、そういう意味お尋ねしたわけです。  しかし、その点は、やりとりをしておってもしようがありませんから、次にお伺いをしたいと思うのですが、それでは一体、少なくとも正面からこれは違憲ではないにしても、今申し上げましたような現実の事態、あるいは行政処分とはいうものの、それが司法というものに非常に密接な関係を持っておる。従って、それだからこそまさに司法裁判所権限に所属をされておる。そういう事柄について、行政権がそういう形で介入するということは、正面から違憲だとは言えなくても、少なくともこの三権分立というそういう建前から言えば、必ずしも妥当ではない、そういうようには少なくともお考えにはなりませんでしょうか。
  76. 浜本一夫

    浜本政府委員 この二十七条による異議が乱用されるということについては、私どもは好ましくない、もちろんさように考えます。また先ほど来申し上げておりますように、私自身も、のみならずわれわれ職員全般も、かような制度はそうしばしば使うべきではない、またなかれかしとさえ祈るのでありまして、さればこそ、私どもはこの第二十七条の末項におきまして、内閣総理大臣はやむを得ない場合でなければ述べてはいけない、またこの異議権を行使した場合には、次の常会で国会に報告しなければならない。言いかえれば、内閣総理大臣がその政治的責任を背負って、極端に言いますならば、その政治生命をかけてもこれを使わなければならぬという場合にしか使えないというようにしぼっておるのでありまして、これで私は、乱用されないという担保は制度としては十分であるというように考えております。
  77. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私のお伺いしたのは、少なくともこういう制度は、まれに使われるかしばしば使われるかは別として、今お話しのように、総理大臣が政治生命をかけてもやらなければならぬ、それほど重大な場合にしかできないような、そういう担保が具体的にこの条文の中にあると言われましたけれども、私はとてもそんなにしぼったきちんとした担保としては出てないと思うのです。しかし、そのことは別としまして、私が先ほどお伺いしましたのは、少なくともこういう異議という制度そのものが百パーセント合憲だとは言えないんじゃないかということについての御意見を伺いたかったわけなんです。
  78. 浜本一夫

    浜本政府委員 むずかしい点でありまして、どうもぴったり御質疑の真意に的確に的に当たるようなお答えを実はいたしかねておるのでありますが、違憲かどうかということについては、これは理論的にしか解決できないのでありまして、それが一〇〇%とか五〇%とか——五〇%の違憲ということはあり得ないのでありまして、違憲かどうかということは、やはり理論によって決するよりないのでありまして、五〇%の違憲を含んでおるとか二〇%の違憲を含んでおるとかいうことは、私は考えられないと思うのであります。
  79. 松井誠

    ○松井(誠)委員 だけれどもそれは、憲法違反であるか憲法違反でないか、どっちかしかありませんね。しかし、現実の問題としては、憲法違反の疑いもある、そういう問題もあり得るわけですね。憲法違反の疑いがあるけれども、それはしかし憲法違反であるか違反でないか、どちらかの結論を出さなければならぬということはあるでしょう。しかし、現実に憲法違反の疑いがある、そういうものは理論的にもあり得るわけです。ですから私は、憲法違反の疑いがあるとまでは局長は言われないかもしれませんけれども、しかし、これは憲法との関連において少なくとも一点の疑念もないのだというふうにはまさか言われないだろうし、そのようにはお考えになっておられないだろうと思いますけれども、くどいようですが、この点、実はあとの質問と関連があるものですから、一つお伺いをしたいと思うのです。
  80. 浜本一夫

    浜本政府委員 私は、やはり百パーセント違憲でないというように考えておるのであります。たとえば現行法における内閣総理大臣の異議につきましても、すでに最高裁判所は判例を下しておるのでありまして、最高裁判所も、これが違憲であるとは言っておりません。ただ現行法の実現の上からは、決定があった後にはいけないということを最高裁判所は言っているだけでありまして、これが違憲であるというふうには最高裁判所は言っておらぬ。むしろ、その前提としては違憲でないという前提で最高裁判所は取り扱っているものと私は確信しております。
  81. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その最高裁判所判決の場合にも、これは私の記憶がはっきりしませんけれども、多分真野裁判官かなんかは、少数意見として違憲説をとっておられたのではないかと思うのですが、私がお尋ねをしたいのは、そのような性格を持った制度だけに、従ってそれを導き入れるということについては、もちろん当然慎重な上に慎重な配慮をしなければならないし、それがほんとうに必要やむを得ない制度であるという場合において初めて取り入れるかどうかということが考慮に値する問題だと思うのです。そういう意味で、一体この制度というのは違憲か合憲かという問題を離れて、どうしてもなければならぬものかどうか。これは先ほど来何度も繰り返されておりますので、くどくは申し上げませんけれども、この二十五条でいろいろな要件を書いてある。先ほど局長は猪俣委員質問に答えて、疎明ということを盛んに言われましたけれども、ともかく意見を聞かなければならない、疎明を調べなければならない。そうして公共の福祉に合致するかどうかということを判断しなければならない。その結果、執行停止あるいは取り消しということになるかもしれない。そういう万般の事情を考慮して、そういういろいろな条件をくぐって執行停止というものはやっと日の目を見てくるわけです。従って、そういういろいろなしぼりにかけて、なおかつこういう制度が必要だということの中には、やはり先ほど言いましたように、端的に言えば、裁判官に対する不信というものがその底にどうしてもあると考えなければならぬ。公共の福祉に合致するかどうかということ、そういう判断そのものは、元来は裁判所判断すべき法律事項だと思うのですけれども、しかし、その公共の福祉に合致するかどうかという判断について、裁判所を信頼しないで、より総理大臣の判断を信頼するということ、これはとりもなおさず裁判官のそういう法律解釈の本来的な機能に対する非常に重要な不信だと言わなければならない。それでは一体総理大臣の公共の福祉に対する考え方というものはまさに信頼に値するのかどうか、そういうことが当然裏返しの中に議論をされなければならぬわけですけれど4、これはもちろん裁判官に対する不信がこういう制度を生ませたとは言わないにいたしましても、このような二十五条のいろいろな規定があるにもかかわらず、なおかつこういう制度が置かれなければならないのだという理由は、もう先ほど来のことで私はお答えはお願いはいたしませんけれども、逆に言えば、そういう行政官に対する信頼、司法官よりも行政官に対する信頼の度合いが強いのだ、そういうことがやはり頭の中におありになると言わなければならないと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  82. 浜本一夫

    浜本政府委員 くどく同じ答弁を申し上げまして、まことに申しわけないのでありますが、私は、当該裁判官に対する不信の念がこの規定になったのだというふうには理解しておらぬわけでありまして、先ほど来くどく申し上げまして恐縮なんでありますが、やはり執行停止そのものが、申し立て請求のとたんに、しかもきわめて乏しい疎明によって裁判所は左右しなければならぬという状態でありますので、制度としてやはりこういうものが必要だというふうに解するだけでありまして、決して日本の裁判官が行政に暗いとかあるいは粗雑な裁判をするとかいうふうな、裁判所に対する不信というものがこれに表明されているのだというふうには私どもは少しも理解しておりません。制度としてこういうものが必要なのだ、執行停止そのものがそういう仮処分的なものなのだということに帰するのであります。
  83. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、一番最初の私の質問がまた出てくるわけなんですが、執行停止そのものが、こういう異議という制度を本来的に必要としておるのだということになりますと、そういう制度を持っていない外国と比べて、それじゃ具体的に日本の場合はどうなんだということにならざるを得ない。そうしますと、日本の現実の状況というものはこうなんだから、執行停止というものが持っておる本来の性格にプラスそういうものがあるから、やはりそれに対応してプラス異議の制度が必要なのだということがまさに理論的に出てこなければならぬと思う。しかし、裁判官に対する不信というものがこの底にあるということは、これは御答弁としては言いにくいことは重々わかります。わかりますけれども、しかし、少なくとも裁判官はそういうように受け取っておる。裁判官が受け取っておるだけでなくて、おそらく普通の行政法学者なども、やはりこういうものを入れなければならぬというその底には裁判に対する不信があるのだということを言っておるわけです。ですから、そういうことをまともの正面からの答弁としては私は求めませんけれども、そういうことがあるということは、これは否定ができないと思う。ですから、そういう形でなかなか答弁がしづらいでありましょうから、それでは日本の行政官というものはそれほど信頼に値するだろうかという形でお答えを願いたいと思って、それでお尋ねしたのです。重ねてお答えをいただきたい。
  84. 浜本一夫

    浜本政府委員 私どもも、こういう制度が必要であるという根本には、実情として今言った理論的な面もありますが、先ほど来御説明申し上げておりますように、やはりそこに司法と行政との接触面で円満な、矛盾のない、あるいは有害なる摩擦を起こさないような司法慣行それからまた行政慣行が日本ではいまだ確立しておらぬという実情もその理由一つに先ほど来数え上げておるのであります。裁判官よりも行政官の方が信頼が厚いとは私ども実際には考えておりません。また同時に、それほど日本の行政が頼むに足らぬものだというふうにも実は私ども考えておりません。ただ、事柄がデリケートな司法と行政との接触面でありますので、どうしてもある人から見れば憲法違反だというような制度、またある人から見れば憲法違反でないといだというような制度で、それは見方により個人によって違います。最高裁判所判決においても、おっしゃるように少数意見がついております。でありますから、私どもは司法と行政とのデリケートな接触面をこれによって調整しようと考えておるのでありまして、決してこれによって、行政官が信頼できないとか、あるいは裁判官が信頼できないとか、そういったような感情的な意味からこういった制度を作ったものでないことをお答え申し上げたいと思います。
  85. 松井誠

    ○松井(誠)委員 司法と行政との接触面の問題であるだけにいろいろ問題がある、摩擦がある、それは確かにその通りだと思う。しかし、それを行政権の優位という形、行政権の介入という形で解決しようというその解決の仕方の底には一体何があるかということです。そのような摩擦のあるその原因は一体まず何なのか。それは日本の行政というものが国民のそういう権利を侵害するチャンスが非常に多い。それだけに、それに対する訴訟事件の数は決して多くはございませんけれども、従って執行停止をしなければならない、ような、そういうことによって救わなければならないような現実の事態が非常に多い。そういうものが実際の原因であるかもしれないわけです。あるいは裁判官が未熟なために、やらなくてもいい執行停止を乱発するということが原因であるかもしれないわけです。そういうことを考えてみますると、そういう摩擦を一体何によってなくするかということのためには、原因の究明が必要なんです。ところが、この摩擦をなくするということを行政権の介入によって解決していく、そうしますと、これはやはり行政権に対する信頼、司法権に対する不信ということに理の当然としてならざるを得ないのじゃないか。これはもうお答えは要りませんけれども、私は、やはりそういうものが、制度を導き入れた根本にはどうしてもあると思う。しかし、それに対する疑問の一つは、裁判官が一体それだけ信頼に値しないのがどうかということもさることながら、私は、行政官というものは一体それだけ信頼に値するかどうかということの方が、むしろ問題として大きいと思う。  そこで、実際にこの異議の制度が運用されてきた今までの経過について少しお尋ねをしたいのですが、その前に、行政事件の執行停止の数が大体どれくらいあったかということは、いただいた資料の中には載っておりませんので、今もしおわかりでありましたら一つお教えをいただきたい。
  86. 浜本一夫

    浜本政府委員 きょう実は私は手元に持ってこなかったのでありますが、御提出申し上げております資料のうちには、今日まで総理大臣が異議を述べた回数、それから意見ども掲げたものが含まっているはずであります。  実情を概括的に申し上げますと、現行特例法における十条の制度ができました当初は、確かに乱用と批判されてもいたし方ないような事例が間々ございました。従いまして、たしか昭和二十六年ごろだと思いますが、内閣においてその点を考慮いたしまして、この異議権を発動するについては所管の大臣と法務大臣とが協議をして、その両大臣が合議で総理大臣に申請をしなければ発動しないという行政慣行がもたらされておりますが、そういった申し合わせができまして以来は、厳重に法務大臣の手をくぐらなければ、言いかえれば法務大臣所管の私どもの局を通らなければ異議を申し立てないということが確立されておりますので、それ以来は行使された実例はきわめてまれであります。最近におきましては、一年を通じて一回もない年の方がむしろ多いのであります。むしろ、異議権を行使した実例が最近には私の記憶にはないくらいであります。実情を概括的に申し上げますと、さようなものであります。また資料としてはお配りしておりますので、ちょっとそれをごらんを願いたいと思います。
  87. 松井誠

    ○松井(誠)委員 異議を申し述べた実例なり実情なりは資料としていただいておりますけれども、異議のなかった執行停止事件というものは出ていない。私の知りたいのは、執行停止はやったけれども異議がなかったというものが、異議のあったものの一体どれくらいあるか、特に私が知りたいのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、安保条約の行政協定——現在は地位協定ということになっておりますけれども、そういったものに基づく特別措置法で執行停止があって、なおかつ異議がなかったのは一体あるのかないのか、そういうことを実は知りたいわけなんですが、今資料がございませんでしたら、一つ執行停止の統計、できればその執行停止も法律ごとの内訳をした統計、そういうものをいただきたいと思うのです。  そこで、これは現行法の運用の問題になるわけですけれども、この異議というものが、今おっしゃったように異議を述べるについて何か次官会議で決定をしてからは非常に少なくなったというようなお話でございましたけれども、いただいた資料では、必ずしもそうはなっていないのじゃないか。この次官会議の決定というのは、昭和二十五年の十一月三十日、そしてそれ以後昭和二十六年以降の、三十年からはなるほどありませんけれども、二十六年以降の異議もやはり相当あるように思うのです。従って、この次官会議の決定を境にして急速に減ったというようなわけにはいかない。減ったことは事実ですけれども、それは何かほかの原因によるのじゃないか。この点、異議が減っていることは事実ですけれども、一体この異議が減ったというのは、裁判官の方で執行停止をするという機会が少なくなったために減ったのか、あるいは次官会議の決定のために、異議を言うという、そういう手続が非常にめんどうになったから減ったのか、これはやはり先ほど来の行政官を信頼するか、司法官を信頼するかという問題にもからまりますけれども、この点は、この次官会議の決定というものはどれほどの役割を現実に果たしておるとお考えになりますか。
  88. 浜本一夫

    浜本政府委員 従来私どもの承知している限りにおきましては、やはり減ったのは、その次官会議の決定があってから、すなわちそういった行政慣行を確立してからだと思います。と申しますのは、それ以前におきましては、私どもの手を経ぬで異議の申し立てをなされるという事例も実はございました。そういう行政慣行ができましてからは、私どもの手を経なければ異議の申し立てをいたしません。また実は私どもの方に異議を申し立ててくれと言ってくる事件も間々ありますが、厳重に私どもはその慣行に従いまして、そしてまた、その制度本来の趣旨に照らしまして、かような事件では異議を申し立てることができないといってチェックする、抑制する事例が往々あるのであります。でありますからやはりその行政慣行、今御指摘になりました昭和二十五年の次官会議の決定が確立しましてから顕著に減っているということは言えると思います。
  89. 松井誠

    ○松井(誠)委員 だいぶ最近異議権の行使が減ったという理由をもう少しはっきりさせるためには、やはり年度ごとの執行停止の事件の数、そういうものもどうしても必要だと思いますので、一つ資料を御提出いただきたいと思います。今のようなお話ですと、少なくとも昭和二十六年以降の異議権の行使は、これは法務省とのいわば共同責任だということになると思うのですが、現行法の異議というのは、今度の改正案のようにいろいろこまかい条件がついておりませんけれども、やはり異議を言うというその底には、執行停止が公共の福祉に反するのだという場合にしか言えない、そういう場合にはまた言えるのだという建前でされておるのだろうと思いますけれども、その点はいかがですか。
  90. 浜本一夫

    浜本政府委員 ちょっと御質問趣旨を理解しかねたのでありますが、従来の異議を申し立てております実例あるいは執行停止との間の統計的な関係、かようなものは今私承知しておりませんが、実は執行停止というのは、実際にはほとんど大部分行政事件に関する限りなされておるわけです。でありますから、総理大臣の異議が一年に一回もないということは、言いかえれば、行政事件に関する限り全部執行停止されておると御理解願ってもいいくらいなんであります。実情はその通りであります。従来も、本法施行後も、その異議を申し立てるか申し立てないかの私どもの決断の基準は少しも変わらぬと思います。従来もきわめて厳重に解しております。また、本法ができますれば二十七条によるのでありますが、その決断の基準はほとんど変わりないものであると私ども考えております。
  91. 松井誠

    ○松井(誠)委員 現行法の十条の二項では「執行の停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞のあるとき及び内閣総理大臣が異議を述べたとき」というふうになっておりまして、内閣総理大臣はどういうときに異議を述べるかということは必ずしも書いてない。しかし、やはり異議を述べるときには、この執行停止を取り消さなければ公共の福祉に重大な影響があるのだというときにしかやらないという建前であり、従って改正案の建前と同じことになるわけですけれども、そのように理解をいたしていいかということをさっきからお伺いをしているのです。
  92. 浜本一夫

    浜本政府委員 御指摘の通りであります。
  93. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、二十五年十一月の次官会議の決定以前と以後とにかかわりがなく、やはり私は、必ずしも公共の福祉という立場から問題がなしとしない、そういう異議権の行使というものが相当あるのじゃないかと思います。一番いい例が、先ほど来申しておりまする特別措置法の関係、これはもう言うまでもございませんけれども、全部この次官会議の決定後だ。こういう特別措置法に基づく行政事件の場合に、総理大臣の異議という場合にどういうことを言っておるかといいますと、これはもう判で押したように同じ言葉がいつも使ってある。たとえば例のアーニー・パイル劇場の事件にしても、執行か停止されたときは、「日本国のアメリカ合衆国に対する前記義務の履行」、これは日米合同委員会において使用させるというそういう約束をしたという、そういう「義務の履行は不可能となり、国際信義に反するのみならず外交上困難な事態を生ずる虞なしとしない」と、これはもう特別措置法に基づく異議の理由には必ずこれが書いてある。そしてこれしか書いてない。そうしますと、特別措置法に基づくものは全部これによって異議が言えるし、言わなければならないのだという建前であるかのように思われるのですけれども、そして現実にはおそらくそういう建前で運用されてきたのじゃないかと思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  94. 浜本一夫

    浜本政府委員 従来ありました御指摘種類事件についてはおっしゃる通りであります。しかし、最近にはそういうような事例がございませんので、私ども突き詰めては考えていなかったのでありますが、従来の事例はまさにおっしゃる通りであります。同種類事件でありますので、判で押したように同種類理由になることは、これはもうやむを得ない結果になったと思うのです。
  95. 松井誠

    ○松井(誠)委員 同種類事件と言いましても、特別措置法そのものはいろいろあるわけですね。ただ、行政協定に基づく法律については、もろ執行停止はできないのだという、そういう建前を法務省はおとりになっておったのか、そしてそれは今後もやはりおとりになるということなのか、その点はいかがです。
  96. 浜本一夫

    浜本政府委員 その種の事件についてどういうふうな態度をとるかということは一般的にはきめてはおりません。やはり事件が起きます都度、どうしても執行停止をされては困るという実情を聴取した上、その種の事件については、行使する場合には同じようなものにならざるを得ないと今申し上げただけであります。やはり個々の事件につきまして、そのとき、そのときに必要あるかないかを考慮はいたします。
  97. 松井誠

    ○松井(誠)委員 今度は具体的に事情を書くということになっておりますから、あるいは多少違ってくるかもしれませんけれども、しかし少なくとも今までの行使の仕方は、この特別措置法に関する限りは、全部異議の理由は同じなんです。これを読むと、少なくともこういう法律事件については執行停止はできないのだと言わんばかりの、少なくとも受け取る方ではそう受け取らざるを得ないような文言の仕方になっておるわけです。ですから、ほんとうはケースによって考えをきめなければならぬのはもとより当然なんですけれども、これはそういうことじゃなしに、むしろ法律論を述べておるような観さえある。これは実際の執行停止の場合には正面から法律論を出しておりますけれども、これは正面からの法律論じゃありませんで、具体的な事情という形で述べてはおりますけれども、それは、特別措置法についてはもうだめなんだという、そういうことを言わんばかりの一般論であり、従って法律論と隣合わせのような議論になっておるわけです。しかも、これは執行停止されるというと、何か土地を使用させるというそういう義務が履行できないのだという、そういうことが書いてある。執行の停止だけでは、当面はできないかもしれませんけれども、本裁判の結果によっては、義務の履行ができるかできないかはわからないわけですね。従って、それまでは終局的にはわからないのに、執行が停止されればそれで義務の履行はできないのだと書いてある。これで使わせましょうということをアメリカに約束をした、その約束は、即時使わせましょうということであるならば、執行停止をやれば即時使わせるということの義務の履行はできないと思います。しかし、本裁判できまった結果、使わせるということはできるかもしれない。それを頭から執行停止そのものを否認をするようなやり方になっているわけです。私が先ほど立法のいきさつということを申し上げましたのは、こういう性格というものがこの法律、この制度にまつわりついておるのじゃないか、つまり地位協定、それに基づく特別措置法というものをスムーズに運用させるという、そういう非常に強力な役目をこの異議という制度が現実には持ってきたのじゃないか。そうしますと、これが一体公共の福祉かどうかという問題からもう一度考えてみますと、私は、もう今さらここであれこれ申し上げませんけれども、非常に疑問がある。しかも、この特別措置法関係の異議というのは、十八件の中で、正面から特別措置法の問題だという形で出ておるものだけでも五件あるわけですね。それからもう一つ、たとえば自治体のそういう議員の懲罰の問題これも二、三件ありますね、理由は全く同じ。そしてこういうものについては元来執行停止はできないのだという法律論を書いている。ほとんど法律論に終始をしておるわけですね。法律判断の最終の責任を持っておる裁判所に対して、行政官が法律判断で異議を言って、そして執行の停止をとめる。そういうことはこれからあとはあり得るのでしょうか、どうなのでしょうか。法律論というものが異議の理由になるかどうかということです。
  98. 浜本一夫

    浜本政府委員 先ほど来お答え申し上げているところで御理解願いたいと思うのでありますが、自治体の議員の懲罰としての除名の執行停止あるいはそれに対する内閣総理大臣の異議、かようなものが御指摘のように過去においては数例ございます。しかしながら、今後においては、さような事件については、おそらくは総理大臣の異議というような形では現われぬと私考えております。実は過去における青森県における地方自治体議員の除名の不服訴訟における執行停止に対する内閣総理大臣の異議と申しますのは、実は私どもの知らぬ間に出された実例なんでありまして、私どもは強硬に反対したのでありますけれども、知らない間に出されたという実は過去に忌まわしい実例がございましたので、それをあげられると私ども非常に苦しいのでありますが、今後はさような事例は絶対にないということを保証申し上げてもけっこうだと思います。
  99. 松井誠

    ○松井(誠)委員 今の青森県の場合に、法律論を書いてあるのですけれども、その法律論の中で、今度の改正案によれば、もう消滅をしてしまったという理由もありますけれども、そのほかの理由も書いてある。私がお伺いしたのは、つまり法律論で異議を言うということが、今度は具体的な事情ということになっておりますから、その点との関係でお伺いをいたしたのでございますが、現行法の運用としても、異議の理由法律論で、どういうことには執行停止はできないのだ、そういうことが異議の理由として妥当であるか、あるいは合法であるか、そういう点をお伺いをするのと、それからこの改正案の趣旨によれば、やはりそういう点はどう考えるべきものなのか、そういう点をお伺いしたい。
  100. 浜本一夫

    浜本政府委員 しばしば御質問を受けておる間に思い出したのでありますが、その当初の法律論と申しますのは、実はこういった関係があったのであります。本来行政事件の執行停止ではありませんので、裁判の執行停止と考えますと、つまり事後に執行のあるものでなければ執行停止は考えられないのじゃないかというふうに実は当初のころは解釈する向きもございましたので、つまり効力の停止というものが執行停止の内容じゃないのだ、だからその種の事件に対しては執行停止は考えられないのだというような解釈が当初にございまして、そのころはそういう法律論を戦わしたと思いますが、本法案では、実は一方で明瞭に解決づけておりますから、効力の停止も執行停止のうらに含む。その後実例でも解決されましたし、また今度の法案では明文をもって解釈しておりますから、今日まで法律論でやった異議はおそらく今後現われないだろうと思います。
  101. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それから法律論ではございませんけれども、一般論として異議の理由を書いておるわけですね。今の特別措置法の場合にも、一般論という形で、法律論と隣合わせのような形で出ておりますけれども、自治体の議員の場合にも、たとえば青森県の県会議員の問題にしても、議会の懲罰処分は議会の規律を維持するための議会の自律作用である。従って、そういうものについて処分の執行が停止されることは地方議会の規律の維持に好ましからざる影響を与える。これは一般論であります。これを見ますと、何か議会の自律作用に基づく処分については、執行停止をやっても必ず異議は言うんだぞと言わんばかりの形になっておるわけです。私が、公共の福祉という立場から疑問だというものの一つは、現実に青森県の場合なんかは典型的な例で、次官会議の決定後にもかかわらず、法務省は関知しなかったというのでありますから、くどくは申し上げませんけれども、これはまさに公共の福祉を最も悪用した具体的な実例だと私は思うのです。そのほか、たとえば学校の生徒の退学処分だとか、あるいは一般の公務員の免職処分だとか、そういう個人にとっては非常に重要な問題についての執行停止に対する異議権の行使というものが相当数占めておるわけですけれども、たとえば、その中で昭和二十四年に大規模な行政整理があった。その行政整理の際にやった執行停止に対しては、この行政整理というのはどうしてもやらなければならないのだ、従って執行停止をされることによってこの必要な行政整理ができなくなるじゃないかという意味で異議の理由を言っておるわけですね。これはもちろん一般論であります。これはいわば極言をすれば公共の福祉ということでなくて、実は政府の都合というものを公共の福祉という言葉にすりかえて言っておるのであります。そういうような具体的な運用の過去の実例があるわけであります。そういう政府の御都合だという形で公共の福祉を理解するという建前がこれからあとはなくなる、そういう具体的な担保は一体どこにあるのですか。そのことを考えますと、では、この改正案がそういうことを具体的に担保しておるのかどうかということになりますと、私ははなはだ疑問だと思うのです。  それでこの改正案の二十七条についてちょっとお尋ねをしたいのであります。先ほど猪俣委員からもお話がありましたけれども、そして局長の御答弁の中にもちょっとありましたが、今までは執行停止後の異議権の行使はいけないのだということを最高裁判所では言っておった。少なくともこれを行使するとすれば、執行停止の事前でなければならないのだということを言っておる。それが執行停止後でもいいという形で、つまり目に見えて、われわれの目の前で裁判官の決定が現実にひっくり返るということが行なわれるようになってきたわけです。これも、提案理由によりますと、執行停止をした後に公共の福祉に影響があることがはっきりする場合があるのだから、これは当然の規定なんだという御説明です。そうしますと、執行停止前には、公共の福祉に合致するか反するかどうかがわからなくて、執行停止後に初めて判明するという、公共の福祉というのはそういう非常にデリケートなものなのか。私は、公共の福祉というものは、そんな、どの人が考えたからどうだというほどのものではなくて、執行停止があってからそういうことが判明するなどというものではなくて、もっと明々白々のものでなければならぬと思う。ところが、そうでなくて、執行停止のあとに初めて公共の福祉に反するんだということが判明するということを言われる裏には、やはり、公共の福祉というものの考え方が非常にあいまいだ、そういうことがそこにあるような気がしてならないのです。公共の福祉に違反するかどうかは、執行停止の前にはわからなくて、あとになって判明するというのは、具体的にはどういうことなのか。これは先ほどのお話にありましたように、まず執行停止をするときには、意見を聞く、疎明資料を出させる。そういう経過の中で一体考える余地が、あるいは材料がないほどなものなのか。そういう具体的な場合としては、たとえば一体どういうことをお考えになっておるのでしょうか。
  102. 浜本一夫

    浜本政府委員 逐条説明で申し上げておりますように、後において判明するというのでなくて、執行停止があった後にそういう事態が起こる例があり得るということを私ども考えておるのであります。主といたしましては、やはり執行停止前から公共の福祉の要件は満たしておるのでありますけれども手続上、ついこっちが意見を述べるまで、あるいは内閣総理大臣の異議の手続の進行中に決定されてしまう。つまり決定までに異議の手続が間に合わなかった、そういう場合が多かろうと思うのでありますけれども、執行停止がなされた後に公共の福祉に反するような事態が起きる——判明するのではなくて、起きるという場合があり得るということを実は考えておるのであります。逐条説明でさような文言を使ったわけであります。たとえてみますと、執行停止がなされて、本案判決がなされるまで、さらに一審、二審、三審と重ねますから、長いものになりますと数年はかかる。ところが、その間に、先ほどあげました選挙なんかのことを考えますと、執行停止後に選挙を執行しなければならぬ、しかもその裁判の結果を予測するところでは、おそらく原告の請求は立つまいと考えられます場合には、どうしても選挙を執行いたしますのは、もとのままでやるよりも、あとの、つまり行政処分がなされた後の姿で選挙を執行した方が妥当であろう、その方が公共の福祉に合致するという場合が考えられますので、決定後に判明するというよりも、決定後にそういう事態が起こるということを私ども考えておるのであります。
  103. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その町村合併の具体的な例はよく知りませんので、よく引用されますけれども、その場合に、近く総選挙が行なわれるということを無視して執行停止をやろうと具体的に裁判官がしたのかどうか知りませんが、あるいは、そういう総選挙が行なわれることを無視して執行停止をやってしまったのかどうか知りませんけれども、しかし、そういうまさにきわめてまれな事例でものを考えるならば、そういう形でいろいろお話をされるならば、これはなるほどその限りでは当然だということになりましょうけれども、しかし、そういうまれな例だけでは実は国民は納得しない。そういうめったに使わないのだとはいうものの、先ほど来、この制度があるということ自体がいろいろな圧力になっているわけなんですから、そこで今度異議を言うときには、異議には理由をつけなければならない、その理由を二十七条の三項で詳しく善いておるわけですけれども提案理由によりますと、理由をつけなければこれは効力がないのだ、しかし理由がついておれば、その中に事情の明示がなくても異議の効力はあるのだという御説明なのですけれども、これはあまり実益のない質問かもしれませんが、理由は書いてあるけれども、しかしそこには理由らしい——たとえば先ほど来申し上げましたような法律論、これはもうこういうものにはできないのだというような法律論、あるいはきわめて一般論、たとえば大量首切りということはできなくなるのだからいけないのだという一般論、あるいは自治体の懲戒処分については、これは自律作用なのだから、そういうものでやられては困るのだというような一般論、そういうものの場合には、これはやはり事情の明示ということになりますか。提案理由では具体的な事情ということを書いておりますけれども法案には必ずしも具体的という言葉がないわけです。その点はどうですか。
  104. 浜本一夫

    浜本政府委員 御指摘のような一般論、それを一般論と言われると困るのですが、その当該事案においてはそれはやはり一般論ではないのでありまして、もしそれがそういった一種の団体内の自治にまかさるべき事項であるということになりますれば、いわゆる法律論において言わざるを得なくなると思うのであります。その具体的事案においては一般論じゃないのでありまして、やはり、その具体的事案においては執行停止ができないのだ、執行停止されれば国民の利益に反するのだということは、一般論としては言えますけれども、その具体的な事案においては一般論じゃないと私は思います。その事案がそういった事案になるのはやむを得ないのじゃないかと思います。
  105. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その点も疑問がなしとしませんけれども、それではたとえば、これは実益のない議論ですけれども、ほんとうに、きょうは天気が悪いから異議を申し立てるのだということになれば、これは異議の理由を書いたことにはならない。これはその通りなんですね。つまり具体的、常識的に、これには異議の理由が書いてあるのだというようなものでありさえすれば何でもいいということなのか。逆に言えば、そういうものでなければ何が書いてあってもそれは理由を書いたことになるのか、その辺の境目ですね。具体的に事情を書けと書いてある。その具体的というものとも関連してもう少し教えていただきたい。
  106. 浜本一夫

    浜本政府委員 具体的事件に関しない限りは、具体的かどうかという展開をしてもむだじゃないかと実は思うのでありますけれども、おっしゃるような、きょうは天気が悪いから執行停止はいかぬというようなことは、それは明らかに  過去の判決自身でもそういうことがあったのでありますが、理由にならぬことは明瞭であります。だから、その二十七条にいう理由たるに足ることが書いてあるかどうかということについては、裁判所に審査権があると私は思うのです。そんなくだらぬ理由にならないものを書いてある、それはやはり理由にならぬという批判を受けざるを得ない。それで、それが具体的か抽象的かということをここでお答え申し上げても実益がないように思いますし、私も御答弁申し上げかねると思います。
  107. 松井誠

    ○松井(誠)委員 お答えはわからぬことはありませんけれども、だれが見ても理由にならぬじゃないか、理由になるかならないかの判断は、理由があるかどうかということじゃなしに、理由が書いてあるかどうかという判断はもとより裁判官の権限の中にあるわけですね。従って、理由が書いてあるかどうかということは、何か文字が書いてあるからそれは理由だということではないわけです。文字の内容が理由であるかどうかということなんですね。ですから、理由として何か書いてあるけれども、それは全然理由にならないのだというときには、これは異議の効力というものはない、きわめて抽象的にはそういうように一応考えてよろしいわけですか。
  108. 浜本一夫

    浜本政府委員 御指摘の通りだと私考えます。
  109. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それから、とにかく理由は書いてあるけれども、その理由があるかないかということは、これは裁判所判断外で、異議に理由が書いてあればもう執行停止を取り消さなければならぬ。先ほどから問題になっておるこの制度を取り入れるかどうかについていろいろ異論があり、疑問があったとすれば、たとえばこういうところでもっと何か規定の仕方というものはあったのじゃないだろうか。たとえば執行停止というものは、異議は事前に限るとか、あるいは事前事後を問わず、そういう異議の理由については裁判所に審査権があるとか、何かそういうようなことで、行政権の百パーセントの優位という形でこの摩擦を解決するのじゃなくて、つまりそういう相互の、お互いのコントロールという形をもう少しこまかく考えて、何かこの制度をもう少し違ったものにするような、そういう御意見なり御努力は一体なかったのだろうか、そういうことを思うわけですけれども、その点何かございましたら一つ御答弁をいただきたいと思います。
  110. 浜本一夫

    浜本政府委員 総理大臣の異議という制度の本質上、その点について裁判所に審査権を与えなければならぬ、与えた方がいい、与えた形でならばよかろう、そういうような議論は私はなかったと思います。異議の性質上、やはりその点については裁判所の審査権はないのだということについては異論がなかったように考えております。ですから、そういった形で、この異議をどういうふうにするがいいかということは論ぜられたのでありまして、そこにまで裁判所の審査権を留保しようというふうな意見はなかったと私考えております。
  111. 松井誠

    ○松井(誠)委員 たとえば六項の国会の報告というものにしても、国会の承認にすべきだとか、あるいは裁判官の審査権を認めるべきだという議論が、委員会の中ではなかったかもしれませんけれども、現実にはあるわけですね。従って、そういうものを法務省としては——こういう形でいわばストレートで総理大臣の意見というものを認めてしまうという形でなしに、もっとお互いに入り組んだコントロールというものを、法務省として立法経過の中でお考えになるというようなことはなかったのでしょうか。
  112. 浜本一夫

    浜本政府委員 突き詰めて理論的に考えてみますと、総理大臣の異議という制度そのものがそういったものでありますので、御指摘のような相交錯したようなことは考慮の余地があるかどうかということについて、私は、むしろ考慮の余地がないというように考えておったのであります。現在もそう思っておるのであります。
  113. 松井誠

    ○松井(誠)委員 あと、訴願の問題その他についていろいろお伺いしたいことがございますけれども、時間の関係もあると思いますので、きょうはこれで終わりたいと思います。
  114. 河本敏夫

    河本委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十九分散会