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1962-03-15 第40回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員   委員長 河本 敏夫君    理事 小島 徹三君 理事 林   博君    理事 牧野 寛索君 理事 坪野 米男君       池田 清志君    一萬田尚登君       上村千一郎君    唐澤 俊樹君       小金 義照君    馬場 元治君       松本 一郎君    赤松  勇君       猪俣 浩三君    田中幾三郎君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君  出席政府委員         法務政務次官  尾関 義一君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (民事局長)  平賀 健太君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君  委員外出席者         検     事         (保護局総務課         長)      中田 愼一君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      桑原 正憲君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    長井  澄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月十四日  委員猪俣浩三君及び田中幾三郎君辞  任につき、その補欠として帆足計君  及び片山哲君が議長指名委員に  選任された。 同月十五日  委員帆足計君及び片山哲君辞任につ  き、その補欠として猪俣浩三君及び  田中幾三郎君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 三月十四日  下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一二号)(参議院送付)  平和条約第十一条による刑の執行及  び赦免等に関する法律を廃止する法  律案内閣提出第一一六号)(参議院  送付) 同日  皇室の尊厳をおかす者を処罰する法  律の制定に関する請願高田富與君  紹介)(第二二八五号)  同(岡崎英城紹介)(第二四五二号)  同外四件(坂田英一紹介)(第二四  五三号)  同外四件(堀内一雄紹介)(第二四  五四号)  同外十二件(大橋武夫紹介)(第二  四八二号)  同(野田卯一紹介)(第二五一七号)  同外六件(羽田武嗣郎紹介)(第二  五一八号)  同外一件(高田富與紹介)(第二六  五八号)  同(塚原俊郎紹介)(第二六五九  号)  印鑑法制定に関する請願二階堂進  君紹介)(第二四九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案内閣  提出第一一五号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一二号)(参議院送付)  平和条約第十一条による刑の執行及  び赦免等に関する法律を廃止する法  律案内閣提出第一一六号)(参議院  送付)      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律を廃止する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。林博君。
  3. 林博

    林委員 矯正局長に伺います。この法律案提案理由説明によりますと、昭和三十三年の十二月二十九日に、戦犯受刑者の刑の執行及赦免または軽減の事務は終了したように理解されるのであります。自来三年間、この廃止法案提出がおくれておるのでありますが、何ゆえにおくれておったのであるか、その理由を承りたいのであります。また、提案理由説明によりますと、適用する可能性のあるものが海外に存在するとも認められないと認定しておりますが、その認定した理由はどうであるか、その点をお伺いしたいと思います。
  4. 大澤一郎

    大澤(一)政府委員 昭和三十三年十二月二十九日に、すべての戦犯についての刑の減刑、赦免が行なわれまして、一応巣鴨刑務所に収容いたしました戦犯受刑者に対しましての刑は一切終了しました。その者につきましては再び戻ってくる可能性がないわけでございますが、いかんせん、はたして外国に、それらの者がまだ外国刑務所で服役しているかどうか、近い将来送還される可能性があるかどうかということの調査をいたしませんと、帰って参りましたとき収容する場合に、本条約による義務が履行できないというような事案がございまして、自来法務省におきまして、戦争裁判に関する文書その他情報によりまして、戦犯者名簿をまず作成いたしまして、その名簿について、その者の受刑状況等調査しまして、一応法務省として入手しました文書並びに情報によります戦犯者はもういないということがわかったわけでございます。しかし、外国のことでございますので、その点につきまして外務省確認を求めるということで、外務省に照会したわけでございます。従いまして、その間相当期間を経過いたしました。また、外務省といたしましても、さような事務相当詳細に調べてくれたわけでございますが、外国政府におきましても、なかなか確たる回答を寄せないというような事情がございまして、昨年末になりまして、ようやく外務省として、さような者はないというふうな回答を得たわけでございます。認められるに至ったという非常にあいまいな書き方でございますが、かような法務省として入手しました文書資料によって調査し、また外務省出先機関を通じましていろいろ確認方法をとってくれたわけでございますが、一応われわれとして、もういないというふうに認定したわけでございます。相手が外国政府のことでございますから、もう非常にこの戦犯事務について冷淡と申しますか、普通の外交折衝のように的確な資料をくれませんので、その点の認定推測等が多少あれでございますが、一応さような認定を下しまして、本法提出に踏み切ったわけでございます。
  5. 林博

    林委員 ただいまの説明は了解をいたしました。  いま一点お尋ねをいたしますが、この戦犯記録の保存その他所要事務は今後どこが担当するのであるか、また、この海外にある記録等収集はやっておるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  6. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、戦争犯罪資料調査につきましては、ただいま法務省司法法制調査部で継続して行なっております。巣鴨戦犯がおりました当時は矯正局所管において行なっておりましたが、先ほどお尋ねがありましたように、もうすでに巣鴨戦犯完全釈放になった後につきましては、司法法制調査部の仕事として資料収集をいたしております。現在におきましては、A級戦犯につきましては、ほとんどその資料が集まっておるわけであります。B、C級につきましては、まだ非常に資料の集まり方が少ないわけでございます。これは大体におきまして、関係各国にその資料があるわけでありますので、これを入手する方法についてなかなか問題があるわけでございますが、幸いにフランスにつきましては、すでに資料の交付を受けております。その他の諸国につきましては、相当いろいろ交渉を続けておる段階でございまして、今のところ、まだいつこの資料が完全に入手できるか、見込みがつきませんわけでございますが、できるだけの努力をいたしておるわけであります。
  7. 林博

    林委員 質疑を終わります。
  8. 坪野米男

    坪野委員 関連してお尋ねいたしますが、戦争犯罪者戦犯裁判を受けて海外で拘禁され、まだ仮釈放にもなっておらない者の数は大体どの程度と把握しているか、現在まだ刑の執行中の者が何名くらいあるか、これをちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  9. 大澤一郎

    大澤(一)政府委員 平和条約第十一条によりまして日本が刑の執行等を引き受ける戦犯者は、すでに海外にはおらないというふうにわれわれは考えておる次第でございます。ただ、中共地区にいまだある程度の戦犯が、いわゆる戦犯者として拘禁されている方があるやに聞いておりますが、これは本法関係外でございまして、法務省としては的確な調査はいたしておりません。
  10. 河本敏夫

    河本委員長 この際お諮りいたします。  本案に対する質疑はこれにて終局いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  12. 河本敏夫

    河本委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論申し出もございませんので、これより直ちに採決いたします。 平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律を廃止する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  13. 河本敏夫

    河本委員長 起立多数。よって、本案は原案通り可決せられました。      ————◇—————
  14. 河本敏夫

    河本委員長 次に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑通告がありますので、これを許します。林博君。
  15. 林博

    林委員 昨年、三十八通常国会において、本案と同趣旨の改正案審議に際して私が質問したところなのでありますが、現在、全国五百七十余の簡易裁判所のうち、未開庁となっているものが何カ所ありますか。また、開庁準備のできているものがあるのかどうか、この点だけを一点お伺いいたしたいと思います。
  16. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 未開庁簡易裁判所は現在八つございます。すなわち、甲府地方裁判所管内の韮崎、大阪地方裁判所管内の東淀川、西成、神戸地方裁判所管内の灘、宝塚、それから奈良地方裁判所管内の柳生、十津川、それから山口地方裁判所管内の鹿野、この八つでございまして、この八つの庁につきましては、いずれも今のところ開庁見通しが立たない状況でございます。
  17. 林博

    林委員 将来どういうことになりますか。
  18. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 最高裁判所といたしましては、これらの簡易裁判所法律によって設置されることになっておりますので、法律の存続する限り開庁に向かって努力をするということなのでございまして、ただいま申し上げましたように、開庁見通しは非常に困難な状況にあるわけでございます。しかしながら、法律によって設置されることになっております簡易裁判所でございますので、最高裁判所といたしましても、できる限りの努力を払って参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  19. 林博

    林委員 終わります。
  20. 坪野米男

    坪野委員 ちょっと関連して伺います。これは法務省並びに裁判所当局お尋ねしたいのですが、鹿児島県の離島である種子島屋久島地方裁判所支部設置してほしいという請願が参っているわけですが、それに関連しまして、わが国における相当数人口を擁しておる離島における地方裁判所支部設置状況をちょっと簡単に御説明願いたいと思います。
  21. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 いわゆる離れ島に置かれている地方裁判所支部といたしましては、乙号支部のみでございますが、ただいま取り調べたところによりますと、長崎地方裁判所管内の厳原、福江、平戸、壱岐、それから鹿児島地方裁判所支部といたしまして名瀬支部、それから松江地方裁判所支部としまして隠岐の西郷支部、それから新潟地方裁判所支部といたしまして佐渡、以上の支部がいわゆる離れ島にある支部として存在しておるわけでございます。
  22. 坪野米男

    坪野委員 それ以外の離島、もちろん人口にもよりましょうけれども、簡易裁判所はあっても地方裁判所支部がない、このように理解していいだろうと思うのですが、今請願なり陳情を受けておる鹿児島県の種子島、これは人口が西之表が三万二千です。その他合計して約六万からの人口を擁しておる島のようでありまして、この種子島から鹿児島港まで週三回ぐらいしか定期航路がない。しかも距離が六十二海里で約六時間の航海時間を要する、こういう不便なところのようであります。屋久島も同様に人口が二万五千ほどあって、同様に宮之浦港までの距離が三十四海里、約三時間、非常に不便な所に住んでおって、しかも相当数人口を擁しておるという地区のようでございますが、こういった離島の住民の家庭裁判所事件、あるいは管轄から地方裁判所事件になって、一々鹿児島まで宿泊をして出張しなければ裁判を受けることはできない。また検察庁から呼び出しを受けても、区検だけしかないので鹿児島まで泊まりがけで出張、取り調べに応じなければならないというような不便が訴えられておるわけでありますが、こうい点について、今法務省なり裁判所の方では、この種子島に限らず、そのほかにも相当数人口を擁したこれらの不便な離島地域についての支部設置について、どのようなお考えを持っておられるか、簡単にお尋ねしておきます。
  23. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のございました屋久島種子島について支部設置してもらいたいという陳情は、最高裁判所といたしましても受けております。何分支部設置につきましては、裁判官の人員がかなり窮屈な状況もございます。その他いろいろな制約もございまして、今ここで直ちにその両島について支部を置くか置かないかという結論を申し上げる段階ではないのでございますが、なおよく検討して態度を決定したいと思っておる次第でございます。ただ屋久島につきましては、支部の問題は別といたしまして、ここに家庭裁判所の出張所を置くべきでないかというような方向で、ただいま検討をいたしておる次第でございます。
  24. 坪野米男

    坪野委員 終わります。
  25. 河本敏夫

    河本委員長 お諮りいたします。  本案に対する質疑はこれにて終局いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  27. 河本敏夫

    河本委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論申し出もありませんので、これより直ちに採決いたします。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  28. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決せられました。      ————◇—————
  29. 河本敏夫

    河本委員長 商法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。上村千一郎君。
  30. 上村千一郎

    上村委員 今回の商法改正は、株式会社計算内容に関する改正と、株式会社等事務簡素化に関する改正を目的としておられるようでございます。きわめて専門家あるいは学界その他の御意見などを参酌されまして、なお会計の方の理論もしくは実際を加味されまして適切な改正がなされておられるというふうに思うわけでございますが、しかし、この点につきましては、きわめて重要な諸問題を含んでおりますので、二、三各論に入る前に一つお尋ねをいたしておきたいと思います。と申しますのは、元来、この株式会社計算内容に関する諸規定というものにつきましては、資本充実原則とか、あるいは取引の安全もしくは第三者の保護というような諸般の問題から、その計算内容につきましてはきわめて正確なものを要求すると同時に、企業の発展という見地からいたしまして、これまたこれが正確を要求をいたしておるわけであります。さればこそ、これに関連いたしまして、商法は、これに違反をいたす場合におきましては、過料制裁を特定なものに対して課しておる、こういうような実情になっておる。しかしながら、株式会社実態というものは、現在の日本におきましては、資本的に規模におきまして、また業種におきましてきわめて多種多様でございます。それに一律に、要するにこの会計理論並びに実際面におきまするところの諸要請を満たしていくということが現実において妥当するかどうかという問題は、きわめて重要な問題であろうと思うのであります。そういう意味から一つ各論についてお尋ねをいたす前にお尋ねをしておきたい点があるわけです。  まず第一に、合名会社合資会社有限会社株式会社というのは、現行商法におきまして認められておる会社の種類でございます。この割合というものは全国にどういう割合になって、大体どのくらいの数を持っておるのだろうか。  第二点としまして、株式会社について、資本金別実態はどんなふうになっておるだろうか。要するにマンモス会社と称せられますところの株式形式企業形態もございますし、またきわめて資本金の小さなものが、あるいは世間でよく言われておりまするところの同族、あるいは個人とほとんど変わらないような株式会社も存在しておる。こういうような意味におきまして、その資本金額最低最高の別、またどのくらいのクラスの会社が最も多いのであろうか、こういうことをお尋ねしておきたいと思います。  第三点としまして、株式会社の増減の状況でございます。最近の一カ年におきまするところの株式会社設立数、それから合併、解散あるいは清算結了などによりまして減少しました数というようなものにつきまして、あらかじめお尋ねをいたしておきたいと思います。
  31. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいまお尋ねの点は「商法改正に関する資料(2)統計」と題しました「昭和三十七年二月 法務省民事局」という表紙のつけております資料の二十一ページに資料を差し上げてございます。合名会社がこの統計によりますと約一万、それから合資会社が四万二千、株式会社が二十五万五千、有限会社が十六万九千、約十七万でございます。全部合わせまして四十七万七千百六十三という数字が、これはちょっと統計が古うございますが、昭和三十四年一月三十一日現在の調査でこういうことになっております。  そして資本額別に見ますると、これは非常に異常な現象かと思われるのでございますが、二十万円未満会社がかなりあるのでございます。最低というところで申しまして、合名会社が二千、合資会社が五千、株式会社が八千、有限会社が一万一千、合計二万七千五百八十の会社が二十万円未満会社なのでございます。それから大きいところは、五十億円以上というところで数字が出してございますが、これは株式会社でございますが、五十七社あるという統計になっております。数字の上から申しますと、一番多いのは、資本金一千万円未満会社がほとんど大多数を占めておるわけでございます。合名会社につきましては一万、合資会社が四万、株式会社が二十四万、有限会社が十六万八千、全部で四十六万四千で、全会社の九七・三%というような数字になっております。非常に小さい規模会社が多いということが言えるのではないかと思われるのでございます。  それから最近の会社設立状況でございますが、これはお手元に資料として差し上げてございませんが、これもちょっと統計が古うございますが、昭和三十六年の初めに作成しましたもので、昭和三十四年一月から十二月までの株式会社設立数調査いたした資料がございます。これによりますと、これは株式会社だけでございますが、昭和三十四年一月から十二月までの間に二万九千五百五十四社設立がなされております。もっとも合併だとか組織変更なんかによる設立の件数も含まれておりますので、こういうものを除きました実際の増加した数は、三十四年一月から十二月までの間に二万八千十社の設立登記がなされております。ほかの合名会社合資会社有限会社につきましては、ただいま設立数調査した資料を持ち合わせておりません。株式会社だけについて申し上げますと、そういう状況になっております。
  32. 上村千一郎

    上村委員 ただいまの御説明でも明白なように、実はわが国株式会社企業規模もしくは資本金額などの実態から申しますと、九七・三%というもの、それが一千万以下の資本金である。世界的な規模におきましては、きわめて諸外国、特に西独などと比べてみまして、有限会社組織でやって適切なものを株式会社組織で大体やっておるというような実態になっておる。それで本改正案は、近代的な大企業としての株式会社、少なくとも資本金一億円以上の、証券取引法公認会計士会計監査を必要とするものを対象として勘案されたものではなかろうかと思われる改正点が多いと思うのであります。証券取引法公認会計士会計監査を必要とすると思われる規模株式会社には適切な部面が非常に多い。けれども、中小企業というものにつきましては、その実態から即しまして、これを厳正に適用していくという場合におきましては、要するに違反した場合に過料処分にしなければならないという問題が生じてくる。そういう場合において、少なくとも日本株式会社実態というものに即して見るならば、ここに少なくともその実態に即するような何らかの配慮というものがなされてしかるべきかというふうに思われるわけでございますが、改正案作成段階におきまして、かかるものが考慮されたかどうかということについてお尋ねをしておきたい、こう思います。
  33. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいまの点は、法制審議会におきまして、商法株式会社計算関係規定改正審議いたしました際におきましても問題になったところでございまして、まず大企業株式会社、真に株式会社らしい会社と、そうでない中小企業株式会社とを区別して考えるべきではないかという議論が当初あったのでございます。そこで法制審議会におきましては、この計算規定改正審議するにあたりましては、真に株式会社らしい株式会社、大企業株式会社というものを念頭に置きまして、計算規定改正検討いたしたわけでございます。そして最後になって一応計算規定改正要綱案がまとまった暁において、はたしてこれは中企業あるいは小企業にも適用可能かどうかということを検討した上で、もし中小規模株式会社に適用するのが不適当であるという規定があるならば、そのときに二つのものを区別して考えようじゃないかということで審議が始まったわけでございます。そういうわけで、あくまで大企業株式会社というものを念頭に置きまして審議がされたのでございますが、いよいよ最後段階になりまして、改正要綱案というものがまとまりました暁におきまして、当初の計画に従いまして再検討いたしまして、これを中小規模株式会社に適用して、はたしていいかどうかということの検討がされたわけでございます。その結果は、どうも今度の改正規定のいずれを適用いたしてみましても、中小企業に適用したのでは不都合であるという点がない。中小企業にもやはり同じ原則でいっていいのではないかという、そういう結論になりまして、大企業中小企業を区別するということにはならなかったのでございます。ただ一つ問題になりましたのは、現行法の二百八十三条におきまして、計算書類株主総会において承認を受けました後、遅滞なく貸借対照表日刊新聞紙または官報公告するということになっておるのでございますが、関係者範囲も非常に狭い中小規模株式会社についても、一律にこの貸借対照表公告を強制することが、はたして妥当であるかどうか、この公告がされませんと、これは先ほどもお話しのように過料制裁があるわけでございますが、これを強行することがはたして適切であるかどうか。この点は非常に問題になりまして、法制審議会で決定されました改正要綱答申におきましては、実はこの点の改正が含まれておったのでございます。と申しますのは、株式会社については貸借対照表損益計算書登記所提出させて、登記所でこれを公示する。そういう制度をとって、官報または日刊新聞紙にこれを公告するというのは、取引範囲が非常に広い、利害関係人範囲が非常に広いほんとうに大企業株式会社、十億円とかあるいは二十億円という、資本の額が相当大きい会社だけに限定してこの公告制度を存置したらどうかという意見も、そういう答申の線が出たのでございます。ところが、遺憾ながら、この点は登記所の方におきまして、貸借対照表損益計算書を公示するということになりますと、予算の措置が必要でありまして、その点がうまくいきませんでした関係で、今回は改正案の中に織り込むことを見合わせざるを得ないような状況になりまして、二百八十三条は、この貸借対照表公告ということは、現行規定のままに今回はしたのでございますけれども、将来におきましては、少なくともこの点は大規模株式会社中小規模株式会社とにつきまして区別を設けるべきではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  34. 上村千一郎

    上村委員 次に、現行商法は明治三十二年に施行されて以来数次の改正があったわけです。終戦後におきまして英米法系の規定が非常に多く含まれたわけですけれども、しかし、なお大陸法的な考え方が基本をなしていると思われるのであります。でございますが、現在の企業会計は大体英米流のやり方をとっておりまして、そしてここに法律と実務においていろいろとギャップが生じておるというような事実が考えられるのであります。今回政府において、実業界の要望に応じて、会計学者とか法律家、実務家等の意見を調整しまして、企業会計原則あるいは財務諸表規則、株式会社計算規定を同一のレールに乗せたわけでありまして、この御努力に対しましては深く敬意を表さなければならぬわけです。しかし、なお、税法等との調整というようなものは完全についておるのかどうか、この点につきまして少しく御意見を承りたい、こう思います。
  35. 平賀健太

    平賀政府委員 私どもといたしましては、商法が特に計算関係につきましては会社に重大な影響がありと認められますので、法制審議会におきましても、審議会の審議には大蔵省から係官に参加をしていただきまして、税法の関係も十分に考慮に入れて検討いたしたのでございます。本来から申しますと、この会社法の規定と税法とは完全に一致するということが理想であろうかと思うのでございまして、企業の当事者にとりましてもそれが便宜であるわけでございます。ただ、この会社法におきますところの計算規定というのは、株主、債権者、一般の投資家、それからその企業自体、こういう私人間の利害の調整ということが目的であるのに対しまして、税法の方におきましては、租税負担の公平であるとか、その他政策的な目的によりまして必ずしもこの会社法の原則通りにはいかぬ場合が出て参りまして、細部の点におきましては食い違いが生じることもやむを得ない点が本来あるわけでございます。しかしながら、この商法改正されました以上は、税法におきましても、やはり再検討せられるべきものであろうというふうに考えておりまして、また本法の施行期日は来年の四月一日ということになっておりますが、附則の規定によりまして、実際この新しい規定会社に適用されますのはさらに先のことになりますので、それまでにおきまして、税法の方におきましても十分検討がされるべきものと承知いたしておる次第でございます。
  36. 上村千一郎

    上村委員 少しく本案の個々の条文につきましてお尋ねをいたしておきたいと思います。  本案の主要な改正点は、株式会社の保有する資産の評価に関して第二百八十五条ノ二から第二百八十五条ノ七までの新設規定をもって、流動資産、固定資産、金銭債権、社債、株式、のれん等について、それぞれの性格に応じた評価方法規定したことであると思うのでございます。この点につきましては妥当な改正であろうと考えるわけであります。  ここで少しくお尋ねをいたしておきたいのは、第二百八十八条ノ二の第三号を削除されておる。この第二百八十八条ノ二の三号は「一営業年度ニ於ケル財産ノ評価益ヨリ其ノ評価損ヲ控除シタル額」、こういうわけです。それは資本準備金として積み立てることを要すということになっておったわけです。これが削除されたということになるわけです。従来の資本準備金に繰り入れられた資産の評価益を一切認めないということになります。この場合、企業の業種によりましては、資産運用の道を封じられるというようなことがありはしないだろうか、こういうような点について御意見を承りたいと思うわけです。ことに固定資産について、資産再評価法による再評価益というものはどういうふうにお取り扱いになられるのか、この点につきましてお尋ねをしておきたいと思います。
  37. 平賀健太

    平賀政府委員 現行法の二百八十八条ノ二の第三号の資産の再評価益に関する規定を削除いたしましたのは、これは今度の計算規定の建前におきましては、財産の評価益というものが出ないということになりまして、この必要がなくなったから削除したことは、先回御説明申し上げた通りでございます。この改正規定におきましては、すべての資産を通じまして原則として原価主義をとりまして、これは申すまでもなく原価を越えた時価を付するということは、まだ実現しない利益というものを計上することになる。実際その資産が処分されます場合に、はたして原価以上の現在の時価で、あるいはそれ以上の価額で処分できるかどうかということが、これははなはだしく不安定、不確実なのでございまして、そういう原価を越えた時価を付するということは、資本維持の原則から見て好ましくないということでこの原価主義を採用いたしまして、評価益の計上を認めないことにしたわけでございます。そこで、ただいまお尋ねの固定資産につきまして、それはインフレなどの関係で、以前に取得した固定資産の取得がそのまま残るということは非常に不合理であるわけであります。現行法のもとにおきましては、先ほどお話しの資産再評価法がございまして、そういう場合にはそういう特別な法律を用いまして措置がされるわけであります。資産再評価法は、あの法律はあの法律として残しまして、再評価益というものは、これは御承知の通り再評価積立金として、実質的には資本準備金と同じ性質のものでございます。そういうことで会社に留保されるということになるわけでございます。そういう特別の場合はそういう特別の措置によって処理するわけでございまして、今度の改正規定のもとにおきましては、そういう特殊の事情のない一般の場合の規定といたしまして置かれておるわけでございます。従いまして、やはり原則は原価による。固定資産でありますと、取得価額あるいは製作価額をもととしまして、一定の方法による減価償却を行なっていくという原則を貫くべきものだろうと考えた次第でございます。
  38. 上村千一郎

    上村委員 次に、三百八十五条ノ二でございますが、これは流動資産の評価に関する規定でございます。この流動資産は、商品、原材料等のたなおろし資産をさすものであろうと考えられますが、その評価について、原価主義であって、かつ時価以下主義をとっておるものと理解される。そこで、ここの「時価」という問題が重要な問題になっておりますが、一体この「時価」というのは売却価額を見ておるのか、あるいは再取得価額を見ておるのか、それはどういうふうにお考えになっておられるか、お尋ねしておきたい。
  39. 平賀健太

    平賀政府委員 この「時価」とは何ぞやという点につきましては、現行法におきましても、その解釈は実は分かれておるのでございますが、私どもといたしましては、この「時価」というのは、やはりその流動資産、たなおろし資産の種類ごとに考えるべきではなかろうか。たとえば商品であるとか製品であるとかいうことになりますと、これはやはり売却価額というものを考えるべきではなかろうか。ところが、原材料などになりますと、これは売却価額というのは不適当で、再取得価額と考えるべきではなかろうかというふうに私どもとしては考えておる次第でございます。
  40. 上村千一郎

    上村委員 二百八十五条ノ二の中に「著シク低キトキ」とか、「回復スルト認メラルル場合」とかいう字句が使ってあるわけですね。この「著シク低キトキ」というのは一体どういう具体的な場合をさすのか、あるいは「回復スルト認メラルル場合」というのはどういう場合をさすのか、簡単でけっこうですが、お答えを願いたい。
  41. 平賀健太

    平賀政府委員 「著シク低キトキ」と申しますのは、抽象的に申しますと、たなおろし資産の通常の値幅よりもさらに低いというほどの意味でございます。これは常識的に判断するほかないのじゃないかと考えます。それから回復すると認められるかどうかという点も、そのたなおろし資産が、通常の企業の経営の過程におきまして、それが処分される予定の時期までに回復するかどうかということでありまして、これも健全な常識によって判断をしていくということにならざるを得ないかと思うのでございます。
  42. 上村千一郎

    上村委員 次に、二百八十五条ノ三でございますが、固定資産の評価に関する規定です。機械の据付費用は一体固定資産の取得価額に入るのかどうか、その点はどうですか。
  43. 平賀健太

    平賀政府委員 お説の通り、据付費用も固定資産の取得価額の中に入ると考えます。
  44. 上村千一郎

    上村委員 同じ条文の中に「相当ノ償却」という言葉を使っておりますが、これは会計法とか税法等の慣行にまかしておいていいのかどうか、この点をお尋ねしておきます。
  45. 平賀健太

    平賀政府委員 その点は、商法におきましては特別に具体的な規定を置いておりませんので、現在慣行としましては、定率法とか定額法とかいうような方法がとられておりますが、会計のそういう慣行によって行なわれるという趣旨でございます。
  46. 上村千一郎

    上村委員 最近非常に問題になっておる点として、海運業者、海運企業、これは資本の構成上固定資産の占める比重が非常に大きい。しかも、今日の経済情勢からして、この海運企業について相当の償却を義務づけるということは、企業の存続にも重大な影響を及ぼすものだと考えられるが、この点について何らか考慮が払われているのかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  47. 平賀健太

    平賀政府委員 私ども立案の段階におきましても、海運業の問題は取り上げたのでございますが、何分商法は、海運業のみならず、すべての企業にわたる一般法であります関係で、この商法自体において海運業はどうこうというそういう特別の規定を設けるというようなことは適当でございませんので、この点は運輸省とも十分協議をいたしたのでございます。もし海運業におきまして、この商法の一般原則を適用することがどうしても無理である、しかも海運業の日本の国あるいは世界において占める重要性に応じまして何らかの政策的な考慮をしなければならぬというようなことでありますならば、これは運輸省の方におきまして、この法律が実際に適用になりますまでに何らかの対策を講じたいということで、運輸省とは話し合いがついたような次第でございます。この商法としましては、ごらんの通り、海運業がどうであるというようなことは考慮いたしていないわけでございます。
  48. 上村千一郎

    上村委員 二百八十五条ノ三の二項に「固定資産ニ付予測スルコト能ハザル減損ガ生ジタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコト」を義務づけております。最近よく行なわれている新発明により優秀な機械が他に出現したという場合、従来あった同種の機械にとって、本条二項の相当の減額をしなければならないのかどうか、この点について伺っておきたい。
  49. 平賀健太

    平賀政府委員 ただいま仰せの通りでございまして、新しい機械を採用した、従来の機械を取りはずしたというような場合には、本条第二項に入るわけで、そういうような機能的な減損も入るという趣旨に解しております。
  50. 上村千一郎

    上村委員 二百八十五条ノ四。これは金銭債権の評価の規定ですが、本条第一項の「相当理由アルトキ」というのはどういう場合をさすのかお伺いしたい。
  51. 平賀健太

    平賀政府委員 「相当理由アルトキ」と申しますのは、無利息の金銭債権であるとか、あるいは寄付金債権などのように、債権金額から利息等を減額して評価する、そういうことが適当であるわけでございますが、その場合の利息相当額を減額するという趣旨でございます。
  52. 上村千一郎

    上村委員 同条第二項「金銭債権ニ付取立不能ノ虞アルトキハ取立ツルコト能ハザル見込額ヲ控除スルコトヲ要ス」という規定ですが、これは取り立て不能のおそれがあるという債権について取り立てることのできない見込額を減額しなければならないこととしているが、個々の金銭債権について、取り立て不能額を見積もるということは非常に困難であるというふうに思われるのでございます。この点についてどういうふうなお考えを持っておりますか。
  53. 平賀健太

    平賀政府委員 仰せの通りでございまして、金銭債権全般につきまして、売掛債権は売掛債権、貸金債権は貸金債権、そういうふうに分類してよいのでありますが、従来の実績並びに現在及び将来における景気の見通しと言いますか、そういうようなものを勘案しまして、そういうグループごとに何%というふうに計上することは差しつかえないのでございます。
  54. 上村千一郎

    上村委員 次に、二百八十五条ノ六の三項に「資産状態ガ著シク悪化シタルトキ」というふうに書いてありまするが、これは具体的にはどういうふうに理解していいか、お尋ねしておきたいと思います。
  55. 平賀健太

    平賀政府委員 これは当該の株式を取得しました当時の発行会社の資産状態と、その株式の価額を評価いたします際の資産状態を比較しまして、異常な資産の減少があった場合という趣旨でございます。ただ、その発行会社のある期の決算で若干の欠損が出たということだけでは著しく悪化したというふうにはならぬ趣旨でございます。
  56. 上村千一郎

    上村委員 二百八十五条ノ七、これはのれんに関する評価の規定ですが、こののれんということは、従来いろいろとこれが概念の決定につきましては意見が多いところでございますが、この法案作成過程におきまして、のれんの概念はどういうふうに統一されておったか、お尋ねしておきたいと思います。
  57. 平賀健太

    平賀政府委員 のれんという言葉は、従来慣行的には使われておりましたが、必ずしも正確な概念ではないかと思うのでございますが、これは英米法で言われておりますいわゆるグッドウィルそのものなのでございます。まあ説明といたしましては、企業取引関係、仕入れ先関係、金融関係などの事実関係である、それが財産的な価値を持っているのだ、そういうものをのれんというのだという説明がされておるわけでございますが、ここに言うのれんも、やはり従来言われておりますそういう意味のグッドウィル、そういう事実関係をさした趣旨でございます。
  58. 上村千一郎

    上村委員 そうすると、商号権や商標権との関係はどういうふうになるか。
  59. 平賀健太

    平賀政府委員 商号権は、これは本条ののれんに入るわけでありますが、商標権は、のれんには入らないけれども、これは他の工業所有権と同じように一つの無体財産権であるというふうに考えられるように理解いたしております。
  60. 上村千一郎

    上村委員 有償で創設したのれんというような場合は、一体これは一切認めないのかどうなのか、お尋ねしておきたい。
  61. 平賀健太

    平賀政府委員 自家創設の場合を認めますと、のれんの評価というものは非常に恣意的になりまして、これはやはり不当な経理が行なわれる原因をなす危険がございますので、自家創設の場合は、これは認めないということにいたしたのでございます。
  62. 上村千一郎

    上村委員 次に、現行商法は創業費、新株発行費用あるいは建設利息、社債の差額というような四種のものを繰り延べ資産として認めておるわけですが、今回さらに開業準備費あるいは社債発行費用あるいは新製品、技術の研究、新経営の組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出したる金額を繰り延べ資産に認めておる。かかることは、現在の貿易の自由化の問題、あるいは輸出振興の問題などと関連いたしまして実情にきわめて沿った適切な処置であろうというふうに思われるわけでございますが、ここでお尋ねしておきたいのは、二百八十六条ノ三の「特別ニ支出シタル金額」というものは一体どういうものだろうか、具体的に説明をしていただきたいと思います。
  63. 平賀健太

    平賀政府委員 この「特別ニ支出シタル金額」と申しますのは、経常費として支出した金額を除く趣旨でございます。たとえば製品または技術の研究にいたしましても、常時新しい製品を作るために研究しておる、そのために若干の経費を出しておるというような場合は入らないわけでございまして、何か特別に、経常的以外に特別に支出した金額があればという、そういう趣旨なのでございます。
  64. 上村千一郎

    上村委員 販路の拡張のための広告宣伝費というようなものは、これは繰り延べ勘定に入るのかどうかお尋ねしておきたい。
  65. 平賀健太

    平賀政府委員 これは改正法二百八十六条ノ三の第四号の市場の開拓のために支出した経費ということに当たると考えます。
  66. 上村千一郎

    上村委員 二百八十七条ノ二の引当金の規定に関連してお尋ねしておきたいと思うのですが、修繕引当金とか価格変動準備金というようなもの、これは本条の引当金に入るのか入らないのかお尋ねしておきたい。
  67. 平賀健太

    平賀政府委員 従来の例を見ますと、お尋ねのような修繕引当金あるいは価格変動準備金というものが負債の項目に計上されておりますから、そういうものがまさしくこの二百八十七条ノ二にいう引当金に当たると考えております。
  68. 上村千一郎

    上村委員 最後お尋ねをしておきたいと思いますが、この手続規定簡素化を目的とした改正点ですが、取締役等の登記について、代表取締役以外の平取締役などは氏名のみとして、住所の登記をはずしておるというふうに理解するのですが、その点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  69. 平賀健太

    平賀政府委員 現在登記の実際を見ますと、登記簿の抄本の交付請求あるいは資格証明の請求があるわけでございますが、それはほとんど全部百パーセント代表取締役だけについてでありまして、平取締役あるいは監査役について抄本の請求があるとか、あるいは資格証明の請求があるということは絶無と言ってもいいような実情であります。それを平取締役、監査役を登記することは実益があまり考えられないのでございます。ところが、この平取締役、監査役の登記が実は非常に煩瑣なのでございまして、しょっちゅう異動します関係で、これは登記所にとりまして非常に大きな事務負担になりますのみならず、会社にとりましても変動があります場合に登記をしなければならぬ。うっかりして期間を経過すると過料に処せられるというようなことで、会社側にとりましても非常に大きな負担になるわけでございます。しかし、この平取締役、監査役の登記を全部廃するというのもいささか行き過ぎではないかというような意見法制審議会でございまして、せめて氏名だけにいたしまして、住所の登記はやめる、それだけでも負担の軽減になるのではないかということで、もっぱら氏名だけを登記すればよいということにいたしたのでございます。
  70. 上村千一郎

    上村委員 以上をもって私の質問は終わりたいと思います。
  71. 坪野米男

    坪野委員 関連して一点だけお尋ねしておきたいと思います。社債等の評価の規定でございます。二百八十五条ノ五に定められた、原則として取得価額によるのだ、ただし例外の場合に、社債の金額が取得価額と異なるときには相当の増額または減額をすることができるようにしたという「社債ノ金額」という言葉は、社債の時価という言葉と同じであるのかどうか、ちょっとその点を……。
  72. 平賀健太

    平賀政府委員 社債の額面の趣旨でございます。現在百円の額面が多いので百円ということなのでございます。
  73. 坪野米男

    坪野委員 もう一点お尋ねしておきますが、現行のいわゆる時価以下主義から、今度はいわゆる原価主義の原則をとって、例外的に取得価額よりも低い時価の場合に減額して計上する。こういう原則があるにかかわらず、社債の評価に限って——株式の場合もその原則でいっておるようですが、社債の評価だけが相当の増額または減額をすることができるというようにされた理由をこの説明で書いてございますけれども、もう少し具体的に伺っておきたいと思います。
  74. 平賀健太

    平賀政府委員 株式は御承知の通りに価額が変動常なきものでございます。社債はそうではございませんので、これは時価というものはかなり安定いたしておるわけでございます。御承知の通り社債は、社債の額面よりも低い対価で社債を以前に取得しておりますような場合には、償還期限が近づいて参りますと、普通だんだんこれは額面に近くなって参るわけでございます。これは株式のように変動するものじゃございませんで、実際価値が増加するわけでございますから、その場合には、その利息相当額をプラスいたしましても、決して会社の資産の健全さを害するというようなおそれがございません関係で、社債につきましては、こういう額面より低い対価で買い入れた場合には、利息相当額をプラスした額でやってよろしい。また、金利の関係で社債を額面より高い価額で買った。そういう場合は、償還期が近づきますとやはり額面に近づいてくるわけで、この場合は金利分だけ時価が減ってくるわけでございます。その場合には、取得価額から減額をしていくという余地を認めたのでございます。これは要するに、社債と株式というものは非常に性質が違うというところから、こういうことの取り扱いをいたした次第でございます。
  75. 河本敏夫

    河本委員長 この際お諮りいたします。  本案に対する質疑はこれにて終局をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  77. 河本敏夫

    河本委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論申し出もありませんので、これより直ちに採決いたします。  商法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  78. 河本敏夫

    河本委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決せられました。     —————————————
  79. 河本敏夫

    河本委員長 お諮りいたします。  ただいま可決せられました三案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会      ————◇—————