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1962-02-09 第40回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月九日(金曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 河本 敏夫君    理事 田中伊三次君 理事 牧野 寛索君    理事 井伊 誠一君 理事 坪野 米男君    理事 松井  誠君       有田 喜一君    井村 重雄君       池田 清志君    上村千一郎君       岸本 義廣君    阿部 五郎君       赤松  勇君    猪俣 浩三君       田中織之進君    志賀 義雄君  出席政府委員         法務政務次官  尾関 義一君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         法務事務官         (人権擁護局調         査課長)    池田 保之君         文部事務官         (大学学術局大         学課長)    村山 松雄君         文部事務官         (管理局振興課         長)      平間  修君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      桑原 正憲君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局第         一課長)    長井  澄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 二月九日  委員南條徳男君及び岡田春夫君辞任につき、そ  の補欠として高橋英吉君及び赤松勇君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二三号)法務行政及び人権擁護に関す  る件      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。坪野米男君。
  3. 坪野米男

    坪野委員 私は、裁判所当局にお尋ねをしたいと思いますが、最初に、今回の法案によりますと、判事定員増が十五名、裁判官以外の職員定員増が百二十四名になっておるかと思うのでありますが、本件は予算の伴う法案でありますから、おそらく当初、裁判所から、内閣あるいは大蔵当局に対して、裁判官並びに裁判所職員定員増の当初の計画に基づいて予算概算要求をしておられると思うのでありますが、当初どういう計画でこれらの職員定員増予算要求をされたかという点について、最初にお尋ねしたいと思います。
  4. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 予算の当初要求におきましては、裁判所としては、大都市裁判所事件が非常に輻湊しておりますし、また相当長期にわたる未済事件が多いという事実がだんだん出てきているのでございます。そして地方裁判所におきましては、旧裁判所構成法の当時と違いまして、第一審の裁判単独裁判官がするということが原則になっておるわけであります。これを合議部になるべく複雑困難な事件は移していきたいというふうな考え方、それから未済事件処理をなるべくすみやかに行ないたいというような考え方で、大都市裁判官に七十四名の裁判官増員するということによって、ただいま申し上げましたような未済事件の迅速な処理と、それから合議部に回す事件をなるべく多くしていこうというような考え方で、七十四名という要求をいたしたのでございます。
  5. 坪野米男

    坪野委員 裁判官以外の職員増員要求は何名でございますか。
  6. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいま裁判官以外の詳細につきましては、手元に資料がありませんので、後刻取り調べましてお答え申し上げたいと思います。
  7. 坪野米男

    坪野委員 その七十四名の裁判官増に伴う人件費として要求された予算額はどの程度でございますか、それも参考にお聞かせいただきたいと思います。
  8. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいまお答えを留保いたしました裁判官以外の裁判所職員予算要求における数字がわかりましたので、これをお答え申し上げます。  行政職俸給表(一)の適用を受ける職員といたしまして、調査官二、事務官八十七、書記官百九十、事務官廷吏でございますが、二十五人、判決前の調査に当たる調査官五十人、家庭裁判所調査官百二十四人、技官が四十三人、行政職俸給表口適用を受ける職員、これは用人に当たるものでございますが、この職員として、タイピスト百三十九人、守衛二十六人、電話交換手百三十五人、自動車運転手百七十九人、火夫百五十一人、電工十四人、賄夫(婦)、庁使夫(婦)等合わせて三百三十三人、昇降機運転手二十人、空気調整員五人、その他医療職俸給表適用を受ける者として二十三人の増員要求したわけでございます。
  9. 坪野米男

    坪野委員 今の裁判官以外の職員増員要求をされた合計の概数は何名ぐらいですか。
  10. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 合計千五百四十七名であります。
  11. 坪野米男

    坪野委員 そういたしますと、裁判官七十四名の増を要求して、十五名が予算措置として認められた。それから裁判官以外の職員について千五百数十名の要求をして、その結果何名の増になるのですか。
  12. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 百二十四名であります。
  13. 坪野米男

    坪野委員 昨日の上村委員からの質問もあったわけですが、結局七十四名、あるいは千五百数十名の要求をして、本法案で十五名と百二十四名の増員を提出されたということは、主として予算措置が伴わなかったということが理由になっている、このように解してよろしゅうございますか。
  14. 津田實

    津田政府委員 御承知のように裁判所予算は、裁判所大蔵省との間で取りきめられる問題でありまして、法案は法務省が立案することになっておりますが、その予算の折衝の結果、裁判所大蔵省との間に妥結した点につきまして、立案をいたした次第でございす。
  15. 坪野米男

    坪野委員 裁判所当局の説明は……。
  16. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 予算関係ももちろんございますが、特に裁判官等につきましては、新規の増員充員いたしますことが非常に困難な状態にございまして、本年度において可能な数字というものを、今回の十五人の増員並びに本年度末までに欠員になる人数等を考えますと、裁判官については十五名程度増員でやむを得ないという考え方でございます。
  17. 坪野米男

    坪野委員 そういたしますと、当初裁判所として要求した七十四名あるいは千五百数十名という要求を、法務当局と相談して、予算措置だけでなしに、今の裁判官供給源というような問題も照らし合わせて、予算があってもこの程度しか増員が困難だという事情からこの数字を最終的に出された、こう承ってよろしいわけですか。
  18. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 大体そのように了解していただいてけっこうだと思います。
  19. 坪野米男

    坪野委員 それではいただいた参考資料に基づいて、少しお尋ねしてみたいと思うわけであります。  資料の二ページにあります「下級裁判所裁判官定員・現在員等」という表の中で欠員が相当あるようであります。特に家庭裁判所判事欠員が十四名、簡裁判事欠員が三十六名、その他の裁判官にも欠員があるようでありますが、特に家裁、簡裁の場合に欠員の数が非常に多く目立つわけでありますが、この欠員は一時的な欠員であるのか、あるいは慢性的にそのような欠員理由があって補充ができないということになっておるのか、また、この程度欠員はあっても裁判を進めていく上に支障を来たしておらないのかどうかという点についてお尋ねしたいと思います。
  20. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 主として判事増員に対する充員関係給源といたしましては、現在の状態におきましては判事補を十年いたしまして、判事に任命される資格を取得した人から判事に任命していくということが給源としては一番大きな関係でございます。従って、四月末日に大体十年の判事補職務期間を終えまして、判事資格を取得するわけでございます。その当時におきましては、大体判事充員が行なわれるわけであります。ところがその後、次の判事補から判事に任命する期間におきまして、定年退官であるとか、依願退官であるとか、あるいは死亡であるとかその他の関係でぼつぼつやめていかれる方があるということで欠員が多少出てくるわけであります。その時期その時期によって多少は違いがございますけれども、いつも必ず裁判官充員されておるという状態ではないわけでございます。
  21. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、この程度欠員は大体一年を通じて多少のでこぼこはあってもあるのだ、このように伺っていいわけですか。
  22. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいまも申し上げましたように、判事補から判事になる資格を取得する人が出て参りまする四月末日には、大体欠員というものが埋まってくるわけでございまして、そのあと多少ずつ欠員が出てくるという関係になるわけでございます。
  23. 坪野米男

    坪野委員 これは参考までに伺いたいのですが、判事補簡裁判事を兼ねておるような事例をよく見かけるのですが、これは身分としては、やはり判事補簡裁判事職務を行なっておるというふうに伺っていいのでしょうか。従って、判事補の欄に組み入れらるべきであるか、固有の簡裁判事ではない、こういうふうに考えていいのでしょうか。
  24. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 判事補簡易裁判所判事を兼官しております人たちは、これは仕事関係におきましては、判事補仕事もできますし、簡易裁判所判事仕事もできるわけでございます。しかしながら、身分といいますか、定員関係におきましては、本官である判事補の数の中に入れてあるわけでございまして、両方にダブって入っておるわけではないのでございます。本官によって数字を算定しておるわけでございます。
  25. 坪野米男

    坪野委員 次に資料の第三表に「裁判官以外の裁判所職員新旧定員内訳」という中に、速記官が五十四名、組みかえ措置によって速記官昇任百五十三名、それから事務官が四百二十名、これはいずれも減になっていますね。ですから書記官補事務官の中から書記官昇任されたということは大体想像がつくのですが、今の速記官の五十四名の組みかえによる昇任、これが事務雇は五百九名、五百九名の増減なし——今見ているのは地方裁判所だけですよ。ですからおそらく事務官から速記官になっておる人がおるのじゃないかと思うのですが、速記官補という人たち——裁判所法の附則では速記官補という職名があるようですけれども、この表の中では速記官補の位置づけがよくわからないのです。
  26. 長井澄

    長井最高裁判所長官代理者 ちょっと事務的な数字でございますので、私からお答え申し上げます。速記官研修所におります間雇身分を有しておる者が、研修が終わりますと、毎年十月一日をもって速記官補に任官いたします。そして速記官補が半年の修習によりまして速記官資格を取得いたしまして、速記官に任官いたすわけでございます。それで組みかえの速記官になる五十四名というのは、先ほど雇からと申し上げましたが、定員の運用上は事務官——事務雇事務職として一本として運用いたしておりまして、この五十四名は事務職たる事務官から五十四名の速記官への組みかえをいたしたわけでございます。これは速記官研修計画に従いまして、毎年その年の任官の予定者欠員の状況を勘案いたしまして、この組みかえの数を決定いたしております。
  27. 坪野米男

    坪野委員 そうすると、やっぱり事務官の中に入っているわけですね。事務官から、速記官補たる事務官が今度速記官昇任された、こういうように数字の上で理解すればいいわけですな。  それから今の書記官に七百十九名、地方裁判所ですが、これを書記官補事務官両方から補充されているようですけれども、書記官補書記官昇任する、これはわかりますが、事務官から書記官になるということの経緯はどういうことになっていますか、それを一つ、こまかいことですが参考に伺っておきたいと思います。
  28. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 これは定員等関係がございまして、書記官補または書記官資格を取得しておりながら事務官身分でおるという人がかなりあるわけでございます。そういう人を本来の職務内容である書記官の方へ組みかえていくといろことでございます。
  29. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、定員関係事務官になっておるが、職務書記官あるいは書記官補仕事をやっておるという事務官があるわけですか。
  30. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 御説の通りでございまして、いわゆる代行という辞令を出しておりまして、それで書記官職務をやっております。
  31. 坪野米男

    坪野委員 事務官でありながら書記官あるいは書記官補事務代行する、そういうことは現実に行なわれているのですか。代行書記官制度はわかっていますが、書記官資格があって事務官職務をやっている、こういうことはありますね。その逆に、事務官であって裁判所書記官職務を行なうことができるのかどうか。
  32. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 事務官資格といいますか、事務官辞令だけで書記事務というものは行なわせられませんので、いわゆる併任の形で書記官または書記官補を任命するわけであります。その併任の形において書記官と、書記官補の方はまた代行するということにして、二本立ての辞令を出しているわけでございます。
  33. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、定員関係事務官のところに入っておりますけれども、実際は兼書記官補書記官職務代行している、こういう場合があるのですね。
  34. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 その通りでございます。
  35. 坪野米男

    坪野委員 従って今度書記官に相当数昇任させたという事務官は、書記官補を兼ねておる人たちだ、こういうように伺っていいわけですね。
  36. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 そういう人も含まれておるわけでございます。
  37. 坪野米男

    坪野委員 その点はそれでわかりましたから次へ移ります。  資料第四表にある裁判官以外の職員定員の現在員の中で、これも目立つのは、欠員の非常に多いという点でございます。その点についてちょっとお尋ねしたいのですが、司法研修所教官定員が二十一名、現在員六名、欠員十五名と、非常に欠員の多いのが目立つわけですが、わずか二十一名のうち六名の教官司法研修所教官がまかなわれておるということは、事務支障がないかどうか。あるいは六名程度で十分であれば定員を減らすべきでないかという疑問が当然起こるわけなんですが、二十一名のうち十五名の欠員というこの事実の理由並びに実情を一つお尋ねしたいと思います。
  38. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘になりました教官調査官等につきましては、昨日もお答え申し上げましたように、その職務性質裁判官の実務を長年やってきた人をもって充てるということが、教官調査官事務を円滑に行なう上に適当なわけであります。ここに欠員として出ておりますのは、こういう裁判官資格をもって教官調査官等に充てられている人はこの中に入っておりませんので、そういった人とここに充員されておる数、たとえば最高裁判所教官六名、そういった教官と、最高裁判所関係調査官五名等と、それから裁判官資格を持って教官調査官仕事に従事しております数とを合わせますと、大体それぞれの職務を行なうのに差しつかえはない程度に行なわれておるわけでございます。
  39. 坪野米男

    坪野委員 ちょっとただいまの答弁では私には納得いかないのですが、司法研修所教官定員二十一名のうち六名しか現在員がおらない、十五名の欠員がある。また裁判所調査官、これはもちろん高等裁判所にもあるようですが、主として最高裁判所ですね、調査官二十名の定員のうち五名しかおらない、十五名欠員になっておるということは非常に私は不思議に思うのですが、今のお答えですと、これ以外に裁判官資格を持った人が実質教官職務をやっておる、あるいは調査官職務活動をやっておるから差しつかえがない、こういうお答えのようですが、そうすると、教官とか調査官というのは資格がむずかしいから、そういう適任者がないので欠員のままになっておる、こういうことになるのでしょうか。私は、ここに定員に組み込まれている教官調査官はおそらく裁判官資格を持った人たちが全部なっておるんじゃないか、例外を除いては九分九厘判事調査官なり教官をやっているのじゃないかと思いますが、あるいはそうでないのかもしれませんが、定員が満たされてないということは、私は定員の必要がないんじゃないかという疑念を非常に強く持ちますので、もう少しわかりやすく説明願いたいと思います。
  40. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 最高裁判所調査官それから司法研修所教官等につきまして、裁判官の養成あるいは裁判事務の推進ということについて仕事をする関係において、裁判官資格を持っている人を充てたいということは、その事務性質上そういうことになると思うのでありますが、ここに書いてありますのは、たとえば書記官研修所あるいは調査官研修所におきましては、主として研修対象等裁判そのものではなくて書記官あるいは調査官等関係でございますので、そういった方面から教官調査官を任命するというようなことも考えられるわけでございまして、裁判官資格を持つ人で教官調査官というものもある程度確保していくということは、この仕事性質上やらざるを得ないことだというふうに考えるわけでございます。
  41. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、研修所教官定員二十一名中六名しかないということは、あと実質上の教官判事によって補っておるということなんでしょうか。そうしてあとの十五名の欠員は、必要があれば、またその人を得れば補充をするつもりであるということになるのかどうか、教官だけにしぼって、ちょっとはっきりしておいてもらいたいのです。
  42. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 裁判官資格を持つ人から任命して、それは定数外に考えまして、そのほかになお予算上認められております、ここに出ております定員欠員になっておる人を別に埋めるということはできないわけでございまして、総計合わせてその数にならなければならないという制約はあるわけでございます。
  43. 坪野米男

    坪野委員 そうすると、やはり十五名欠けておることは間違いないのですね。
  44. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 その裁判官資格を持っておる人で教官調査官等をしておる人の数を合わせますと、大体これに見合う数があるわけでございますが、そういう裁判官ということで司法研修所教官に充てるとか、あるいは最高裁判所調査官に充てるとかいう辞令が出ておる人たちは、ここにいわゆる教官という数の中には入っていないわけでありますけれども、実態においてはこの教官の中に入れてお考えいただければわかりやすいのじゃないかというふうに考えております。
  45. 坪野米男

    坪野委員 最高裁調査官も同様に二十名のうち十五名まで欠員になっておる。これはおそらく判事以外の人が調査官に当たるということはないのじゃないかと思うのでありますが、最近の最高裁判所訴訟遅延状態からして、調査官欠員は何としても埋めなければならぬのじゃないか、定員が二十名確保してあるにかかわらず、五名しか現在員がおらないということでは、最高裁判所の審理を促進する上に非常に支障を来たしておるということが推察されるわけで、この最高裁調査官欠員補充についてどのようにお考えになっておるのか、その点一つお答え願いたい。
  46. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいまも申し上げて参りましたように、この調査官の中の現在員五名とございますのは、裁判官資格を持たない調査官でございます。裁判官資格を持って調査官仕事に当たっておる人を加えますと、最高裁判所調査官欠員はないということになるわけでございます。
  47. 坪野米男

    坪野委員 そうしますと、ここの定員というのは、裁判官以外の職員をもって調査官なり教官に充てる定員を二十一名なり二十名確保してある、そのうち適任者が現在この程度しかなくて、欠員の方が多い、こういうことだと伺っていいわけですね。
  48. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ここに書いてございますように、行政職俸給表(一)の準用を受けるものとして調査官になっておる人としては、これだけの欠員があるというふうに御了解願いたいと思います。
  49. 坪野米男

    坪野委員 その点わかりました。  同じ表の中で、最高裁、地方裁いずれについても言えるわけですが、事務官の方は定員以上に現在員がおって、一方事務雇定員を欠いておる。たとえば最高裁では六十名中十三名しか現在員がおらない。先ほどの問題と同じですけれども、こういう点おそらく流用しておられるんじゃないかとも考えますが、事務官とこの事務雇というものをどういうように区別しておられるのか、こういう区別が必要なのかどうか。こういう点ちょっとお尋ねしたいと思います。
  50. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 事務雇といわれますのは、裁判所事務官とか裁判所書記官裁判所書記官補または家庭裁判所調査官または調査官補等事務補助することを一般的に職務内容としております事務補助職員でございます。事務雇職務内容といたしましては、ただいま申し上げましたように事務官等事務補助をすることになっておるわけでございますけれども、現在予算上におきましても、等級別定数の上におきましても、事務官事務雇との間には何ら区別がないわけでございます。従って、事務職ということで統一的に考えて参りますれば、定員関係についてもおわかりがいただけるのじゃないかと思うわけでございます。
  51. 坪野米男

    坪野委員 大体わかったのですが、結局これらの定員と現在員との差額、欠員が一時的な時期的なものなのか、あるいはこのような定員が相当慢性的なのか。たとえば先ほどの教官なり調査官が四分の三まで欠員になっておるというようなこと、そういった欠員が慢性的なものである、継続的なものだということになれば、この定員そのものを再検討する必要があるのじゃないかということも考えられますし、また一方廷吏欠員は、地方裁判所の場合には百八十五名という相当多い欠員が免じておりますが、こういった欠員が長期的なものであるということであれば、それだけ現在の裁判所職員労働過重になっておるということも考えられるわけでありますが、その欠員の現状が一時的なものなのか、あるいは相当長期的、継続的なものになっておって、裁判所職員労働過重を来たしておるという事情がないかどうか。その点についてお尋ねしたいと思います。
  52. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいまお答えいたしましたように、事務官事務雇との間においては、一応この表等においては分けて書いてございますが、ただいま申し上げましたように、事務職一本というふうに考えますと、定員にそれほど大きな不足はないわけでございます。ただ事務雇につきましては、裁判所におきまして研修を続けることによって、なるべくいわゆる事務官の方へ切りかえていきたいというふうにして、せっかく努力をいたしておるわけでございます。  廷吏につきましては、この表の作り方が少しおかしかったりで、おわかりにくかったと思うのでありますが、ここにも書いてございますように、廷吏といいますのは、事務官の発令をされて廷吏事務をとっておる人が別にあるわけでございます。これは予算上もそういうふうなことが認められておりますが、それは事務官の方で計上されておりましたので、いわゆる雇の身分をもって廷吏をしておる人がここに出ておりますので、これとの関係でいかにもたくさんの欠員があるように出ておるわけでありますが、事務官廷吏事務をしておるという人を合わせて考えれば、こんなに大きな欠員はないわけでございます。表の作り方が少しまずかったわけであります。
  53. 坪野米男

    坪野委員 もう一つお尋ねしておきますが、第五表にあります三十三年から三十五年にかけて地方裁判所民事刑事の新受件数、この中で民事刑事ともに「その他」という欄があって、これが一番多いわけなんです。民事事件訴訟事件の第一審、控訴審、再審、それから調停、その他、とありますが、「その他」というのは具体的にいうとどういう事件になるのですか。刑事の場合も同様に、訴訟事件の第一審、控訴審、再審、その他、とありますが、「その他」というのが非常に多いので、私も今ちょっとどういう事件をさされるのか具体的に把握できないのですが、「その他」の中にどういうものがあるか、例示していただきたいと思います。
  54. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 これは民事関係で「その他」の中に入りますのは、非常に多くて、会計百十二ぐらい拾い上げられるわけであります。それから刑事関係についても三十二種類ばかりあげられるわけでございます。  少し繁雑にわたりますけれども、例示を申し上げますと、民事の「その他」の中には、抗告の事件、それから民事非訟事件、商事非訟事件、それから罹災都市借地借家臨時処理法の関係事件、それから仮差し押え、仮処分、それから強制執行、競売法による競売、それから破産、和議、会社更生の事件、それから過料事件、共助の事件、人身保護の事件、上告受理に関する事件、それから抗告受理に関する事件、それから管轄指定の申し立て、それから裁判官裁判所書記官に対する除斥であるとか忌避の申し立て、それから訴訟引き受けの申し立て、それから訴訟費用額確定決定の申し立て、担保提供命令の申し立て、担保取り消し決定の申し立て、それから休日、夜間送達の申し立て、証拠保全の申し立て、執行文付与の申し立て、仮差し押え、仮処分決定に対する異議の申し立て、それから保全処分事件におきます起訴命令の申し立て、それから裁判の取り消し、変更の申し立て、それから復権の申し立て、強制執行等中止の申し立て、仮登記仮処分命令申請の事件、夜間、休日の執行許可の申し立て、債権転付命令の申し立て、債権取り立て命令の申し立て、移送の申し立て、その他約七十八種類ばかりございまして、合計すると百十二種類ということになるわけであります。  刑事関係につきましては、抗告事件、それから管轄の併合指定及び移転の請求、裁判官裁判所書記官に対する忌避及び回避の申し立て、接見禁止等の請求、勾留理由開示の請求、勾留取り消しの請求、保釈の請求、保釈取り消しの請求、保釈保証金没取の請求、起訴前の勾留延長の請求、刑の執行猶予の言い渡しの取り消しの請求、準抗告、それから裁判の執行の異議の申し立て、訴訟法上の令状請求、その他十八種類、会計三十二種類ということになっております。
  55. 坪野米男

    坪野委員 大体資料関係はわかりましたが、今回の裁判所職員定員増については、裁判所としては、相当の努力をされた跡が見受けられるわけでありますが、しかしながら、裁判官について七十四名の定員増の必要があるという判断で予算要求をされながら、供給源その他から十五名の増にとどまっておる。これではまだまだ不十分であるということは、裁判所当局も認めておられるところでありますし、また、裁判所のその他の職員についても、千五百数十名の要求をされながら百二十四名、これは供給源とのみは言い切れないと思うのでありまして、ほんとうに千五百名からの職員を必要とするのであれば、この供給源はさほど困難ではなかろう。この方はおそらく予算が認められなかったということから百二十四名にとどまっておる。従って、裁判所職員労働過重という点から相当下級の職員にそのしわ寄せがきておるということも考えられるわけであります。  一方、裁判所書記官あるいは家裁の調査官などについて、組みかえによって昇任をさしておる数が千名に及んでおるという点についても、裁判所の努力の跡は十分認められるわけでありますけれども、御承知のように、まだまだ下級の裁判所職員、特に書記補あるいは調査官——書記官補という職にある職員が、能力その他においては十分書記官職務にたえるという職員でありながら、予算上の制約から、一応は試験制度があるようでありますけれども、書記官昇任させられておらないという職員がまだ相当数あるということが考えられるわけでありまして、そういう点について、今後裁判所におかれても従来以上に努力をして、これらの下級職員の待遇改善を含めた意味において昇任の、あるいは予算組みかえの努力を十二分にしていただきたいということを特にお願いし、さらにまた裁判官供給源についても、抜本的な原因を除去されて、そういった供給源を十分確保されるように特に要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 桑原正憲

    桑原最高裁判所長官代理者 ただいまお話しになりましたことを十分考えながら、今後ともに努力を続けて参りたいと思うのであります。  裁判官供給源につきましては、聞くところによりますと、臨時司法制度調査会というようなものもまた作られるような方向に向かいつつあるようでございます。そういったことから早急な解決をできるように、われわれとしてもできるだけの努力を払って参りたいと思うのであります。      ————◇—————
  57. 河本敏夫

    河本委員長 法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。志賀義雄君。
  58. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は、けさ、二月九日午前八時二十分、ラジオ東京でも放送されました昭和女子大の学校当局の言語道断な人権じゅうりんの問題について、政府当局、政府委員に少し伺いたいことがあるのでございます。  この事件は、昨年十月二十日のことでありますが、昭和女子大の日本文学科三年生の二人の学生が、自分のクラスで政防法反対の署名を集め、そして四日間に約二十名の学生と教師一名が署名したそうであります。ところが、これが十月二十八日、学校当局に呼び出されて、そして長時間尋問めいたことを受けたのでありますが、その事件は、ついに学生が思い余って相談した中野幸次講師、この先生が自己の信念において行なったことは自己の責任において処理することと答えたために、十一月三十日解雇通知を受けているのであります。これが、学監をやっている人見圓吉という人だそうでありますが、その人が、一片の紙きれに学校の印鑑も何もないもので、十一月限りで退職していただきますというような意味の文書を出しているのであります。そこでこの中野教師が法務省人権擁護局へ訴え、それが十日に東京タイムズ、日本経済その他で発表されることになったのでありますが、どういう事件の経過になっております。  このことについて人権擁護局には二つの訴えが出ておると思います。一つは、今申しました中野幸次講師、これは昭和女子大の倫理学の講師でありますが、これを不当に解雇したことについて、また女子学生を退学さした件で、その後の事態の悪化に驚いた学校当局は、スパイ活動をやって尾行をやらせている云々ということについて訴えが出ているはずでありますが、人権擁護局では、これに対して今日までそれを受け付けられてどういうふうにやられたか、そのことについて御報告を願いたいと思います。
  59. 池田保之

    池田説明員 ただいま御質問がありましたことにつきましてお答えいたしますが、本件につきまして、まず昭和女子大学講師に対する解職事件調査したことを申し上げます。  これにつきましては、昭和三十六年の十二月十一日ごろにある新聞社の記者からの情報によりまして、東京法務局人権擁護部において調査を開始したわけであります。その事件の内容を申し上げますと、昭和三十六年の十月下旬ごろ世田谷区三宿十番地昭和女子大学日本文学科三年生の教室におきまして、二名の学生が持ち込んだ政防法反対の署名用紙に約二十名の学生及び一名の教員の方が署名をされたわけであります。これは同学校当局に対し内密に行なわれましたが、間もなく学校当局はこの情報を知りまして、その調査を始めたわけであります。同校の倫理担当講師である中野幸次氏三十五才が、署名した学生の一部の者に、今はこの署名をしたことを言わないでおいた方がよいかもしれないなどの意見を述べた旨を、学校側は署名した学生から聞き知ったようであります。学校側は、同講師は学生補導の責任を全うせず、不適任であるとして、同年十一月七日ごろ中野講師に対し、当分休講されたい旨を電報で連絡し、次いで同月三十日ごろ解職した模様であります。中野講師は、この解職は不当であり人権侵害であるとして訴えられているわけであります。  次に、学生が尾行されているかどうかという点でありますが、最近におきまして、同大学の学生数名が他の学生らに尾行されているので調査されたいという申し出がありましたので、東京法務局人権擁護部においてその事情調査中であります。
  60. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 事の経過から見ますと、中野講師が解職されただけでなく、退学を強要された者が三名おりますね。この点についての調査はなされたのでしょうか。
  61. 池田保之

    池田説明員 この署名運動に関連いたしました学生三名は、同学校の、学校の内外における署名運動等については学校当局に届け出、その指示を受けなければならない旨の規則に違反したとのことから、同学校におきましては、同年十一月初旬ごろから登校をとめているようであります。その後、そのうち一名は復学しておりますが、二名につきましては、学校側は、反省を求めるため補導中であるとして、なお休校させている模様であります。この点につきましても、東京法務局人権擁護部におきまして、中野講師の事件に関連しまして、事情を聴取中であります。
  62. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その中の一人が、お父さんの厳重な抗議、学校へのどなり込みによって復学したということを聞いております。今伺うと学校当局は、学則に違反したというので、署名活動をしたというので退学させた。お話を伺っているうちに、いつの間にか退学ではなくて補導中ということですが、退学させたことも事実ですが、どういうことで補導ということに変わったのでしょうか。お話ではよくわかりませんが、そういう点お調べになったのですか。ここは法務委員会ですから、そういう点を正確におっしゃらなければ……。
  63. 池田保之

    池田説明員 この点につきましては、学校側からいろいろ事情を聴取しましたところによりますと、登校をとめておったものであって、退学は最初からさしておらない、こういうふうに言っておるようです。
  64. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 十一月十五日、署名を集めた二人の学生が二人の女の先生に呼ばれて、校則に反した責任として退学いたしますということをペンと紙を出されて書いておるのですがね。それに基づいて退学させたと言っていたのです。このときの尋問は、今警察の中で暗黒で行なわれる尋問もちょっと顔負けするようなことを言っているわけです。そういう事情はこれはもう天下に隠れもない事実で、一月二十九日の「女性自身」、今までこんな雑誌が法務委員会に出たこともないようなものでありますが、こういう雑誌ですらもずっと書いているのです。もう一つは「新週刊」の一月二十五日号、別にここで週刊雑話の広告をするわけではありませんけれども、こういうようなものにまでみな出ておるのであります。そういうことについて、あなたも「女性自身」をちゃんと持っておられるのでよく御存知のはずであります。そういうことについて、学校当局がそういう調べをやったということを学生本人についてお調べになったのでしょうか。まだでしょうか。その退学いたしますということを書かせた……。
  65. 池田保之

    池田説明員 今言われました退学に関する書面を学生が書いたことは事実のようです。その点につきましても、学校側に尋ねましたところ、本人がそのようなことを書いたことは間違いない、こういっておるようです。
  66. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところがそれをやらされた翌日の十六日に、どういうことが教室であるのです。この学校の学則によると、正式な退学届というものは父兄の同意が要ることになっていますが、十六日には、クラスの主任教師がクラスで三人は自発的に退学なさいましたと報告し、出席簿の名前を消しておるのです。こういう点はお調べになりましたか。
  67. 池田保之

    池田説明員 実は本件は主といたしまして中野講師の件を集中的に調べている段階でありますので、学生の退学あるいは休校という問題につきましては、まだ十分調べておらないわけでありますが、何か出席簿でしたか、ちょっと名前ははっきりいたしませんが、そのような上で名前を一応消したというようなことも調査の上で出ておったことは記憶しております。
  68. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それは初めから言って下さいよ。あなたの話を聞いていると、まだ退学させておりませんと学校が言っていると言われるけれども、その学校はちゃんとここに出席簿を消したということをあなたは調べられたんではありませんか。しかも、この中野講師が解雇された理由は、この三名あるいは二名の学生の署名を集めた行為、これについてですから、そのことに対する学校当局のやったことがよいか悪いか、学生自身に問題があるかどうか、それを調べなければ中野講師の人権擁護局に対する訴えの正否、これははっきりしないでしょう。ここが根本であります。その根本のところはお調べにならないで、中野講師ですか、その方の問題が重要点だというと、一体人権擁護局では何をお調べになっているのかということになりますが、その点はどうでしょうか。
  69. 池田保之

    池田説明員 この点につきましては、中野講師の問題がまず訴えがありましたものですから、その関係者が非常に多いものでありますので、その解雇処分が不当であるかどうかという点を調べが十分でない関係がありますので、学生の方につきましてはまだ十分調べが行き届かなかった点はあると思います。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今、二月の九日ですね。三月には進級するか、卒業するかというところに学生は来ているのですよ。これがおくれますと、退学させて、出席簿ですか、それは消した、退学なさいましたと全学の学生の前で言って、ところが問題が大きくなってきたので学校当局うろたえて、あれは退学させたんではない、補導中だと言っておる。一体こういうことを学校当局が言って、試験も受けられないというようなことになって、今年進学できなかったら、あるいは卒業できなかったら、親ごさんに対しても大へん迷惑をかけることになるでしょう。一年間の学資その他を考え、心配その他を考えてみましても、そういう点がありますから、これは至急お調べになって判断をお出しになるべきときではないでしょうか。たとえばあなたのお嬢さんがそういう目にあったらこれからどうします。そういう点はどういうようにお考えでしょうか、局長代理で非常に難儀なところですけれども、一つ、かぜを引いておられないからまずあなたの御見解を伺っておきます。
  71. 池田保之

    池田説明員 なるべく至急に調べることにいたしたいと思います。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今お聞きのようなことでありまして、学生はこの二月は試験勉強の最中です。それがこういうことになっておりますので、特に私はこの問題を取り上げたことを委員長も御確認願いたいのでございますが、今言ったような事情ですから、この点についてさっそく調べていただきたいと思うのですが、さて、問題は政防法の署名運動をしたことが、退学を学校当局あるいは教師が強要する理由になるものでしょうか。どうでしょうか。つまり、学校当局は学生の思想傾向で退学を強要できるものでしょうか。できるとすればいかなる法律的根拠があってできるか、その点についてまず人権擁護局に伺いたいと思います。
  73. 池田保之

    池田説明員 この点につきましては、学校側では、先ほどちょっと申し上げたと思いますが、署名運動などについて、学校側へ届け出てその指示を受けなければならないという規則に違反して、学校に届け出などをせずにやった点が休校させた理由、こういうことを主張いたしておりますので、学校側としましても、思想の自由とか、そういうことを理由にしてやったのではないと主張いたしておりますので、私の方では、思想の問題というよりは、その届け出に関する問題として調査する、あるいは今事情を聴取中である、こういう段階であるのであります。
  74. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その届け出云々というのは、これは学校の言い分ですよ。届け出があろうとなかろうと、学内で学生が署名を集めるとかなんとかいう政治活動をしてはならない、そういう自由は、学校当局に届け出をしろということがたとえば学則にあったとしたら、これは憲法並びにその他の学校関係の法律によって承認されたこと、こういうことも一片の学則が優越するのかどうか。学校当局の言ったことの御紹介を私はお願いしているのではないのです。法律上そういうことができるか、できるとすればいかなる法的根拠に基づくものか、その点を伺っておるのでありまして、学校当局が何と言っているかは、私の方も十分承知をしておりますから、その点をまず伺いたいと思います。
  75. 池田保之

    池田説明員 ただいまの点につきましては、教育基本法等の問題でありますので、文部省の見解もたださなければならないものだと思いますので、私の方でも十分研究しておるわけでありますが、いましばらく、事実をもう少し確定した上で、よく検討した上で御返事いたしたいと思います。
  76. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう事件をお扱いになれば、今言ったような法律、教育基本法、そういうようなものは当然くるのでありますから、まだお調べになっていないようでありますが、そういう点からお調べになりませんと、この問題の正しい人権擁護局の扱いはできませんから、至急そういうふうにやっていただきたいと思います。局長のかわりでだいぶあなたも苦労されるようですが、では、ただいまの点について大学学術局の方に伺いたいと思います。来ておられますか。
  77. 村山松雄

    ○村山説明員 大学で学生が行動いたします場合には、やはり学則その他学内の規則に従ってやることが当然の義務であると考えておりますので、大学で署名活動につきまして届け出をしなければいかぬという規制をすることも、これは当然のことだと考えております。そういう学内規則に違反した場合には、やはり大学の秩序維持の観点から、それ相当の処分を受けるということは、これは当然のことと考えております。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、大学の中では——あなたはポポロ事件ということを御存じでしょう。大学の中で、政治活動の自由というものが、あなたの言うところによると、学校の規則によって縛られてもいい、学校の規則が優先するということをあなたは断言されますか。そこのところを私は伺っているのですよ。学校の規則があれば、学生の政治的活動の自由を奪ってもいいのかどうか、その根本点を伺っているのです。あなたの今の言われるところでは、規則に従ってやらなければ、これは処罰を受けるのは当然のことだ、こういうお考えですか。政治的な活動一切を否定する、こういうわけですね。そもそもあなたは昭和女子大の学則なるものをごらんになりましたかどうか、そのこともあわせてお伺いいたします。
  79. 村山松雄

    ○村山説明員 大学の教育活動は、やはり一定のルールに従って行ないませんと、秩序の維持ができませんものですから、政治的活動その他につきましても、大学の構内で行なう以上は、一応大学の学則に準拠してやらなければならぬ、かように考えております。昭和女子大学の学則については、これは大学の設置の認可をする際に必要的記載事項になっておりますので、承知をいたしております。以後変更につきましては届け出を受けることになっておりますので、届け出を受けた範囲におきましては承知をいたしております。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、今度の場合、政防法反対の署名を集めるということですね。これは当然、あなたの言われるところによると、処罰されてしかるべきだ、学校にそういう規則があるならば。こういうことを明言されるのですか。その点を一つ伺います。
  81. 村山松雄

    ○村山説明員 政防法反対の署名であるかいなか、内容のいかんは別といたしまして、大学の学則、この妥当性の問題は一応あるかと思いますけれども、秩序維持の観点から必要的に定められました範囲におきましては、学則に規制される、かように考えております。
  82. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 「昭和女子大の態度」というのを昭和女子大学学生課が父母各位あてに十二月二十六日に出しているのでありますが、その中にはこういうことがあります。「事件の経過」について、「一、政防法反対の署名を学友に要請して波紋をまき起こした三名の学生を補導したこと、」その注があります。「イ、本学は入学当初から教育基本法第八条の2「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治活動をしてはならない」よう、また学外の団体に加盟する場合は許可を要することが示されている。」この許可を要することは学生手帳に示されている。これに違反したと書いてありますが、この教育基本法第八条、法律に定める学校は政治活動をしてはならない。こういう理由があるのに、この三名の学生はそむいたという。この「法律に定める学校」というのは学生のことですか、学校のことなんですか、そこを言って下さい。
  83. 村山松雄

    ○村山説明員 「法律に定める学校」と申しますのは、法律と申しますのは、学校教育法第一条に学校の種類が列挙してございます。小学校、中学校、高等学校、大学、幼稚園、盲学校、聾学校、これが教育基本法に定める「法律に定める学校」に該当するという解釈でございます。その場合、「学校」と申します実体が何かにつきましては、これは一口に言うことは困難でございますが、一応考えますことは、大学の施設、それから教職員組織などを含めました学校の教育活動の全体を把握して学校、こういう工合に把握いたしております。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この「学校」というのは学生のことを含んでいるのかどうかと私は伺っているのです。学生を対象とする普通の学校側ですね、このことをさしているのでしょう、どうですか。
  85. 村山松雄

    ○村山説明員 厳密に申しますと、学生は教育の客体ということになろうかと思いますので、狭い意味の学校当局の方にはもちろん入らないと思います。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、昭和女子大学の学生課というのはとんでもないことを言っている。自分たちが政治活動をしてはならない、政治教育はしてはならないというふうに言われている教育基本法の第八条を引っぱってきて、自分のことを忘れて学生に押しつけているのです。そうでしょう。あなたの今言われたところから言えば、学生というものは学校教育の客体である、学校の客体になる。こういう点から言えば、こういうめちゃくちゃなことをやっているのです。全然あべこべだ。これは学生の方が、今度のような弾圧をされてきたとき言うべき言い分です。教育基本法第八条を援用する場合に、盗人たけだけしいというか、これは強盗の方が法律を振り回すというふうな格好になっておりますね。それをお認めになりますか。
  87. 村山松雄

    ○村山説明員 本件に関しまして、実は私は非常にうかつでございまして、昨日初めて承知いたしまして、大学の学長から大学としての御説明を承ったばかりでございますので、昭和女子大学の学生指導方針なり指導の内容がはたして適切であったかどうかにつきまして、軽々に判断できかねておるわけでございますが、本件を率直に申しますと、教育基本法の問題を離れまして一般的に大学の管理規則と学生の関係ということで一応説明がつくのじゃないかと思います。大学が管理上の必要から規則を設けた、それに違反する場合には、やはり学生としての本分を越えたものという工合に言わざるを得ない、かように考えます。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きのうお聞きになって、あなた御自身はうかつにもまだ内容を知らないとおっしゃる。内容を知らないことにはそういう断言めいたことはあまりおっしゃらない方がいいと思いますよ。あとであなたは困りますよ。教育基本法は私立大学といえども、従ってまた昭和女子大といえども、それの拘束を受けるものですね。自分はそれに拘束されずに、学校について言われていることを、学校の客体である学生に対してこの法律を援用して、自分の不当な行為を正当化しようというのが、今の昭和女子大の態度です。これがどういうことになっているか。学校教育法第十一条に違反した場合には、学生を処分できないことになっておりますね。今度も、今あなたがそういうふうに処分されても仕方がないと言われるならば、これについてあなたはそれは当然法律から処分を正当だとおっしゃるかどうか、その点を伺いたいと思うのです。
  89. 村山松雄

    ○村山説明員 学生の懲戒に関しましては、御指摘のように学校教育法の第十一条に基本的な法的根拠がございまして、校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところによって懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできないという規定でございます。そこで監督庁の定めといたしまして、学校教育法の施行規則の第十三条によって、懲戒を加えるべき場合の条件等が書いてございます。「校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当っては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあっては、学長の委任を受けた学部長を含む。)がこれを行う。前項の退学は、公立の小学校、中学校、盲学校、ろう学校又は養護学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、左の各号の一に該当する児童等に対して行うことができる。一性行不良で改善の見込がないと認められる者 二学力劣等で成業の見込がないと認められる者 三正当の理由がなくて出席常でない者 四学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者第二項の停学は、学齢児童又は学齢生徒に対しては、行うことができない。」かように懲戒を行なう場合の条件等が規定されておるわけでございます。大学が処分される場合には、大体この施行規則の規定を受けまして、学則でまた処分の条件、懲戒の条件を書いておるのが普通でございます。直接には大学は法令の規定を受けた学則に照らして処分をするということになるわけでございます。なお、大学学長の御説明によりますと、処分はいたしていないということでございます。処分の前提としての補導を行なっておるのでありまして、補導の様子を見て最終的に処分をするかどうかをきめたいという御説明でございましたので、私どもは善処されることと思います。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうもあなたは、うかつで何も知らないと言っておられるが、知っておられる。しかも学校当局とだけ話をしておられる。先ほども言ったでしょう。主任教師がクラスで、だれそれさんは退学なさいましたと言って出席簿から消している。明らかに退学処分をとっているのです。それがあとで世論が大きくなってきたので、補導中だというふうに言いかえている。あなたはそのあとの方のことしか聞いていないじゃないですか。正当な理由によってやったのなら、なぜそういうふうにいいかげんに学校当局がごまかすのか。退学というように言っておいて、しかもあとで、いや補導中だというように変えてくる。明らかに、世論がこれを無視しないからこういうように態度を変えてきているんですよ。ところが、そういうふうに言われるならば、はたして学内の秩序を乱したかどうか。この取り調べにあたって教師が何と言っているか。二人の女教師が調べた際の言葉を申しましょう。「創立以来四十一年、歴史上左傾学生を一人も出さず、デモ参加者一人もなく、この名誉と誇りを傷つけ、世間の信用をあなたは裏切ったんですよ。——あなた方がやったことは、どろぼうをしたという程度のものでなく、殺人したとも同じことくらいの罪になるのですよ。幾らあやまっても、殺した人は返ってこない。あなたたちが幾らあやまっても同じことだ」これがそもそも教師として言うべきことですか。教育基本法第八条に基づいた行為ですか。(「それは脅迫だよ」と呼ぶ者あり)脅迫じゃありませんか。明白な政治行動じゃないですか。ちょっとそれを御返答下さい。
  91. 村山松雄

    ○村山説明員 文部省といたしましては、私立大学の運営に関しましては、法律の規定によりまして設置の際に認可をいたします。認可された大学は、法令の規定に従いまして自主的に運営されることと信じております。以下の運営につきましては、文部省設置法の規定によりまして、指導と助言はできることになっておりますが、その指導と助言は大体大学当局の系統を通じて、必要があればする建前でございまして、紛擾が起こりましたような場合でも、直接当事者を呼んで取り調べるというようなことはいたしておりませんので、学長から聞いたままを申し上げた次第でございます。
  92. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 学長から聞いたまま、学長はこういうふうに言いましたというならいいですけれども、あなたは学校の規則に従って処分するのは当然だ、こういうような文部省としての見解を述べられたから、それについて、事の内容はこういうものだ、こういうことを言ったのです。あなたが、そこにくると、学校当局の言い分を聞いたままだ、前には判断を述べておいて、都合が悪くなったら、聞いたままを述べたのだ——人殺しも同じだ、若い娘がこういうめちゃくちゃのことを言われて、こんなことをほうっておけますか。それで、この二人はなま殺しの状態に置かれているわけです、今試験期になっているのに。退学でなく補導中だと当局が言っているということは、今文部省からも言われたのですが、補導中だというならば、登校、授業、出席は許可されているのか、あるいはいわば隔離の状態でおかれているのか、こういう点はお調べになりましたかどうか、人権擁護局にもう一度伺います。
  93. 池田保之

    池田説明員 両名の学生は学校には出ておらないようであります。
  94. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、私どもの見るところでは、今学年末の試験です。それも受けられない、なま殺しの状態に置かれる。こんな学校にいてもという気持を起こさせるために学校当局はやっているとしか思えないのであります。刑事局長に伺いますが、今お聞きのような状態で、もし本人の自由意思でなく退学届が出され、そうして退学なさいましたということがふれられたとしたならば、これを強要したのは、刑法上どういうことになりましょうか。刑事局長に伺いたいと思います。
  95. 川井英良

    ○川井説明員 局長はほかの委員会に出ておりますので、私からかわってお答え申し上げます。  事実関係が明白になりませんと、法律の適用の問題がはっきりしないと思いますけれども、一般論といたしましては、御指摘の強要罪でございますけれども、暴行脅迫を手段として義務なきことを行なわしめた、あるいは行なうべき権利を妨害するというような構成要件がここに書いてございますので、その構成要件を満たすような事実関係が証拠によって裏づけられるということになれば、刑事問題として論議する段階になると思いますけれども、ただいま御指摘になりましたような事実関係で、直ちに強要罪の適用があるのかないのかということにつきましては、もう少し事実関係をはっきりした上でまたお答えを申し上げなければならない、一般論としてはこの程度しかお答えできません。
  96. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 川井さんの御説明によりますと、これは強要罪にならないとも断言なさらない。なるともまだ言っていらっしゃらない。もう少し事実関係、構成要件を調べてとおっしゃったが、若い娘に対して、あなたのしたことは、これはどろぼう程度じゃなくて人殺しと同じようなものだなんて、それでペンと紙を出して、退学届に署名しなさい、長時間にわたってこういうことを強要しているのですからね。これが学校教師のやったことだ。そこいらのごろつきのやったことじゃないのですよ。あなたが言われた構成要件に必要にして十分なものを満たしていると私ども考えるのでありますが、弔う少しこの問題を明らかにした上で、なお私は伺いたいと思うのであります。  さて、ここにありますのは学生手帳です。各種願書及び届書の第六項に、「学内外をとわず署名運動、投票、新聞雑誌その他印刷物の発行及び配布、物品の販売、資金カンパなどしようとする時は事前に学生課に届出、その指示をうけなくてはならない。」こういうことになっております。文部省の方が言われたのは、学校の秩序うんぬんということは、これは良識によって判断すべきものであります。ここに投票ということがあります。これはあなた方文部省が、私立大学のいろんな学則なんかを点検される場合に、この投票というのはどういうことをさしているのか、これを承認された場合、これをどういうふうに解釈して承認されたのか、その点を伺いたいと思います。
  97. 村山松雄

    ○村山説明員 ただいま御指摘の学生手帳につきましては、これは文部省に届け出がございません。学則と申しましても、狭義の基本的な学則と、それの細則的なものとございまして、一般に設置、認可の条件としてお出しいただきますのは、基本的な、学校教育法の施行規則に記載事項を定めた学則でございます。そのほかに細則的な学則はいろいろあるわけでございまして、その学生手帳もその一部かと存じます。ただいま初めて承ったわけでございますので、その投票なるものがいかなるものを意味しておるか、ちょっとわかりかねます。
  98. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いかなるものを意味しているかを私が申しますから、一つ判断して、あなたの御見解を伺いたいと思います。  昭和三十四年の四月の東京都知事選挙の際に、この昭和女子大当局は、当時候補者でありました東龍太郎知事の夫人に、全校の学生生徒を集めて出席をとった上、わが夫を語るという演説をさせておるのであります。選挙中ですよ。東知事が候補に立つのが明らかになったのに、こういうことをやっているのです。そうしますと、先ほど言った、政治教育または政治活動をしてはならないという教育基本法の第八条から見て、これはどういうことになりますか。
  99. 村山松雄

    ○村山説明員 個々の実例につきまして即座に見解を述べますことは、いろいろそれに関連する事項などもございまして、非常に判断を誤る危険がございますので、一般論として申し上げますと、学校は、私立大学であろうとも政治的中立を保つことが望ましいわけでございますので、特定の政党を支持するがごとき印象を外部に与えるおそれのあるようなことは慎むべきだと考えます。
  100. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういうことを学校当局がやる場合については、あなたは一般論で、事実の誤認があってはいかぬから判断を言わない。しかも学校の規則を守るという、その規則そのものが法律上ゆゆしい問題を呼び起こすようなことの適用については、これは当然だと言われる。ところが、東知事の奥さんを呼んだ場合には、あなたは回答を避けられる。政防法反対の署名、これはどこの大学でも、学校に届け出て大学生がやっているところは全国一つもありませんよ。請願法にも、学生はそういうことはしてはならないと書いてない。国民の奪うことのできない固有の権利であります。反対の請願書の署名であります。それをあなたは規則が優先すると言われるが、その規則は請願権をも否定する、こういうように言われるのかどうか、もう一度伺いたいと思います。
  101. 村山松雄

    ○村山説明員 学則が法令に定められました他の規則より常に優先するというようなことは考えておりません。しかし学則というのは、大学の教育活動を円滑に行なわせるために規定されておるものでございますので、一般論といたしましては、学内においては少なくとも学則が優先するといって差しつかえないと思います。  非常に極端な例を申し上げて恐縮でございますが、かりに教室で授業中といえども、公民権の行使は自由なんだから何か別の意見を発表してもいいじゃないかというようなことを言うことは成り立たない。非常に極端な例を申し上げて恐縮でございますが、一般的に申しますと、何度も申しますが、教育活動というのは一定のルールに従って行なわなければなりませんので、学内におきましてはそのルール優先ということは言って差しつかえないと思います。
  102. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 請願署名をとったことは、教室の中で現に授業中にやるとかなんとかいうことじゃないのですよ。いいですか。それをあなたのように一これは重大問題だが、私どもは、あなたがそういうことで後日のっぴきならないことを言われないように、半ば協力しながら言っているのに、どこまでもそういう極端な現にない例を持ってきて、この場合を正当化されようとする。大体この学校の始業式では学監が何と言うか。当大学は東京大学や早稲田大学のような赤の学校と違って、保守反動の学校である、天下にはこういう学校が一つはあっていい、こういうことを言うのですよ。そして今のような国民の基本的権利に属するような活動さえ不当に制限している。投票ということを、ここに各種の願書及び届書というので、学内外を問わず署名運動、投票、新聞雑誌その他云々は届け出てその指示を受けなければならない。ルールがあっても、そうしてその学生の方でやったことは、当局に対して教室でやったのでもなし、授業中にやったのでもないというような場合に、これがどうして学校の秩序を乱るのか、てんで問題にならない。それをあえてこの昭和女子大ではやっておるわけです。そうしますと、ここに投票なんということを書いてありますが、投票というものが、もしこれが公職選挙法による投票——投票という字はいろいろ解釈できますね。署名運動とかなんとか書いてあるから、そうしますと、これは明らかに選挙権の行使をも、学校に相談しなければ、してはいけないというようなことが書いてある。文部当局として、こういうことはいいと考えられるかどうか、これを伺いたい。
  103. 村山松雄

    ○村山説明員 選挙権の行使をも拘束するような規定をもし大学で設けるとすれば、明らかに行き過ぎであると考えます。
  104. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今言ったように、学校当局の方で特に特定候補のなにを呼んでやる、これはほかのにはやらせないというようなことをしている。それから署名運動、現に起こったのは請願権の行使の署名、この条項に照らして学生を退学させ、思い余った学生の相談に応じた講師も解雇している。こういうことまであるのです。これがこの昭和女子大の事件のいきさつでありますが、今日は局長もお見えになりません。ことに文部省の説明員の説明は、ほとんど法務委員である私どもを納得させるところが少しもないのであります。それでこの問題についてはきょうだけでなく、またあらためて、委員長も御承知のように、かぜを引いて来られなかったりしたことがありますので、なおほかの委員からも質問もあることだと思います。私どもはもう少し事実をはっきりさせて伺いたい。学校のやったことについて奇々怪々なことが山ほどあるのであります。場合によっては、私どもは、これについてもっと人を呼ぶなり何なりして調べなければならないことをお願いするときもあろうと思う。きょうは私の質問はこれで一応終わることにいたします。
  105. 河本敏夫

    河本委員長 関連質問の通告がありますのでこれを許します。猪俣浩三君。
  106. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 一点だけお尋ねいたしますが、この昭和女子大学の理事者の態度につきましては、学生、先生、こもごも詳細な訴えをわれわれにしているわけでありまして、実にその実態は驚きに絶えた学校が今日存在する、私どもは実に驚いているわけであります。一例を言えば、ドイツのナチスは最も愛国団体であって、ヒトラーは尊敬すべき人物だというようなことを放言しておる。そうして今志賀君が指摘しましたような、これは保守反動の教育をするのだということを揚言するとともに、先生を採用する際にはそれを約束させるそうであります。  そこで中野という教師が退職せしめられておりますが、全然その理由がわからぬというので、今法務省の人権擁護局へ訴えているわけであります。これは法務省の人権擁護局長が出席されましたら詳細にお尋ねするつもりでありましたが、きょうは出席がありませんので、後日に留保いたしておきます。  文部省の方々がお見えになっておられるそうでありますので、お尋ねしたいことは、一体こういう学校等、私立学校に対する文部省の監督権はどういう範囲になっておるのでしょうか。今申しましたような国会で質問が出ました際に、文部省は積極的にこの昭和女子大学の教育の内容等を調査することができるのかどうか、またできるとするならば一調査する意思があるかどうか。  私はついでに申し上げますが、民主主義は共産主義の温床だということをこの学校の理事者は堂々と生徒に訓示しているそうであります。これは一体教育基本法に違反せざるものなりやいなや。ヒトラーを賞賛し、民主主義は共産主義の温床だと言うようなことが、この日本国憲法の支配下における現在の学校にあるということは、実に驚きに絶えたことであるが、かような教育がされておるのに対して、文部省はいかなる指導監督権があるのであるか。もちろんこれは抽象論であって、さようなことを学校がやっておるかどうかは、学生、教師の訴えだけであります。これは今法務省の人権擁護局で取り調べ中でありますから、局長の国会に出席とともに私どもは事実を明らかにしてほしいと思うわけでありますが、文部省はこれと並行いたしまして、どういうような調査権があるのであるか、監督権があるのであるか、その原則を示していただきたい。
  107. 村山松雄

    ○村山説明員 まず文部省と私立大学との監督権の問題でございますが、最初に大学ができます際には、学校教育法に基づきまして認可をいたします。認可権という形で監督いたしておるわけでございます。設置が認可されました以後におきましては、大学は法令の規定に従いまして自主的に運営する建前になっております。文部省といたしましては、文都省設置法に、大学の運営に関して指導と助言をすることができるということになっております。指導、助言という形で、監督にあらざる指導を行なうわけでございます。それから調査に関しましては、必要に応じて資料の提出その他の方法で調査することができることになっております。ただ、この指導、助言、調査といったようなものには強制権が伴っておりませんので、調査に対して大学が協力していただきませんと、なかなかむずかしい筋合いになって参ります。もっとも統計法その他で強制的に調査できる面もございますが、一般的には大学の協力を得て調査して、こちらも必要と認めれば助言を与えるというような関係になっております。
  108. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これも抽象論になりますが、民主主義は共産主義の温床だ、これは戦時中、ちょうど東条内閣時代に内務省側から出た言葉であります。その作成者も私はわかっておるわけでありますが、こういう言葉をこの学校当局は言っておるそうであります。まあ、それは言っておるのかどうかは事実問題でありますから、あなた方として断定できないと思います。だからこれも抽象論になりますが、民主主義が共産主義の温床だということを公然生徒に訓辞しているということは、教育基本法の精神に違反するものであるかないか、これをお答え願います。
  109. 村山松雄

    ○村山説明員 民主主義が共産主義の温床であるというような一般論につきましては、教育基本法のどの条項に直接触れるかという問題は別といたしましても、教育基本法その他の法令の趣旨にはそぐわないものと考えます。
  110. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いま一点。私立学校の先生を退職せしめるというようなことに対しましては、それがいかなる理不尽な理由であったといたしましても、文部省としては、それに対して何らの調査権あるいは助言、指導というものはないものであるか、それをちょっと承っておきたいと思います。
  111. 村山松雄

    ○村山説明員 私立大学の職員の任免等の人事に関しましては、現在の学校法令では特段の規定がございませんので、労働基準法その他一般の雇用の原則に従ってなされるわけでございます。文部省といたしましては、実際問題といたしまして、従来教職員の人事は、私学の場合には、関係法令に従って自主的におやりになるものと考えまして、指導、助言等を特にいたしておりません。ただ、私学につきましては、大学設置基準で教員の資格はきめられております。従って資格を満たし——俗な言葉で言えば、なるべくいい先生を雇って教員組織を充実するようにというような形での助言はいたしておりますが、具体的な任免そのものについての指導、助言といったようなことはいたしておりません。
  112. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 よろしゅうございます。
  113. 河本敏夫

    河本委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会