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1962-03-28 第40回国会 衆議院 文教委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十八日(水曜日)    午前十一時八分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 八木 徹雄君 理事 米田 吉盛君    理事 小林 信一君 理事 村山 喜一君    理事 山中 吾郎君       小澤佐重喜君    坂田 道太君       田川 誠一君    高橋 英吉君       松山千惠子君    南  好雄君       井伊 誠一君    杉山元治郎君       前田榮之助君    松前 重義君       三木 喜夫君    鈴木 義男君       谷口善太郎君  出席政府委員         文部政務次官  長谷川 峻君         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君  委員外出席者         議     員 村山 喜一君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 三月二十四日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員野原覺辞任につき、その補欠として松前  重義君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十八日  著作権法の一部を改正する法律案山中吾郎君  外十一名提出衆法第一二号)は委員会の許可  を得て撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律の一部を改正する法律案(  村山喜一君外九名提出衆法第一一号)  著作権法の一部を改正する法律案山中吾郎君  外十一名提出衆法第一二号)の撤回に関する  件  著作権法の一部を改正する法律案起草の件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。山中吾郎君外十一名より成規の手続を経て著作権法の一部を改正する法律案を撤回いたしたい旨の申し出がございます。これを許可するに御異議ありますんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 社会教育に関する件等について調査を進めます。  著作権法の一部を改正する法律案起草に関し、八木徹雄君より提案がなされております。     —————————————
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 起草案の説明を求めます。八木徹雄君。
  6. 八木徹雄

    八木(徹)委員 ただいま議題となりました著作権法の一部を改正する法律案起草案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  最初に法律案を朗読いたします。  著作権法明治三十三年法律第三十九号)の一部を次のように改正する。  第五十一条の次に次の一条を加える。第五十二条 第三条乃至第五条中三十年トアルハ演奏歌唱著作権及第二十二条ノ七二規定スル著作権除ク外当分ノ間三十三年トス   附則  この法律は、公布の日から施行する。だだし、この法律施行前に著作権の消滅した著作物については、適用しない。  すでに御承知の通り現行法は、明治三十二年に制定せられ、以来数回の部分的改正を見ましたが、基本的な事項は、そのままにして現在に至っております。従って、著作権保護対象及び保護方法も再検討すべき時期に到達しており、近く政府もこれに関する制度審議会を設置して全面的に検討を加えようとしているようであります。そしてこれは相当の期間を必要とすることが予想されますので、これが答申がなされるまでの問、著作権保護期間の終了される方々救済のため、この際暫定的に保護期間を若干延長することが時宜に適するものと考え本案を立案することとなった次第であります。  次に、本案の要点を申し上げますと、第一は、イ、発行または興行した著作物著作者死後においての著作権、口、著作者の死後発行または興行した著作物著作権、ハ、無名または変名著作物著作権、右これらの著作権保護期間について、現在は三十年となっているのを当分の問三十三年と改めること。  第二は、通称隣接権といわれている演奏歌唱著作権及び録音物著作権は、前に申し上げた著作権に比すると付随的の性格を持つがために、諸外国ではむしろ三十年よりも短い例が多くなっている実情にかんがみ、この際この保護期間は据え置くこととしたこと。  第三は、本法案施行日公布の日と規定したことであります。  以上がこの法律案提案理由及びその概要でございます。何とぞすみやかに御決定あらんことを切望する次第であります。
  7. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいま提案起草案に関し、質疑の通告がございますので順次これを許します。臼井莊一君
  8. 臼井莊一

    臼井委員 本案につきましては議員提案でございまして、すでに私どもはできるだけ調査、研究した結果ではございますけれども、これを利用する側の方に立ちますといろいろまた影響されるところが多いのでございます。従いましてできるだけ慎重にやってもらいたいという希望もございますので、この際主として政府に対しまして二、三質問を申し上げたいと思うのです。  ただいま提案理由にもございましたように、著作権法明治三十二年にでき、もうすでに六十年以上になっておるのでありますが、世界各国著作権の法によりますと、その死後が相当長く五十年ぐらいになっておるのが多いということでございますが、その事実につきまして政府の方でおわかりの点をお伺いしたいと思います。
  9. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 各国におきます著作権保護期間につきましては、わが国が加盟しておりますベルヌ条約関係におきまして五十年に満たない国は日本とタイとルーマニアとポーランドの四カ国であります。それからベルヌ条約以外の国におきまして、アメリカ条約系統——米州関係条約の国々は著作権制度が違っておりまして、二十カ国程度のうち三十年以下のものが半数ほどございます。それからいずれの体制にも属しない国が三、四カ国ございますが、これはいずれも三十年に満たないのであります。
  10. 臼井莊一

    臼井委員 そういたしますとアメリカ等の国においては相当短い期間のものもあるようでありますが、しかし大多数の国はベルヌ条約で五十年ということになっているということです。本法がしかれましてから日本においてはすでに六十数年になっておるのでありすが、この点に関しまして従来部分的な本法の修正がなされたにもかかわらず、この問題が改定できなかったのは何か理由があるのでございましょうか。
  11. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 主として戦後の事情で申しますれば、昭和二十五年と記憶しておるのでありますが、占領下におきまして著作権の全面的な改正起草審議会を、これは事実上の機関でございますが、設けまして検討したこともございまするし、また二十八年にはやはり著作権に関して部内限りで学識経験者を招いて検討する会を設けていろいろ検討はして参りましたが、一つには、やはり占領中におきまして外国著作権外国との関係につきましては特別な取り扱いがなされておる、それから特にベルス条約関係におきましては、終戦直後の昭和二十三年にブラッセルにおいて改正が行なわれまして、その改正におきまして初めて条約最低五十年ということになったわけでございます。それは当時敗戦国でありましたために日本ドイツ等は招かれておりませんので、ブラッセル規定に加盟しなかったという事情もございます。  もう一つは、最近いわゆる隣接権と申しまして、実演家レコード製造業者あるいは放送事業者著作権に隣接する権利の問題が、数年来草案等が出されまして、国内でもその検討を続けておりました。これが昨年の秋、初めて条約としてでき上がったわけでございます。その隣接権の問題がかなりわが国著作権法に影響がありますので、そういういろいろな問題を部内検討しておりました。本格的な改正というまでには至らなかったのでございますが、ようやく昨年で、国内的に見ましても国際的に見ましてもあらゆる材料が出そろったので、政府といたしましては先般御決定をいただきました著作権制度審議会におきまして全面的な検討をいたしたい、こういう段階に立ち至ったわけでございます。
  12. 臼井莊一

    臼井委員 この著作権は、私は法律的なことは詳しくないのですが、やはりこれは当然一つ財産権である、こう考えるのであります。そうであるならば、やはり死後三十年に限らず、相当長い間著作者の労作によって作られた財産権が遺産的にある程度継承されてもよかろう、しかしこれはもちろん一つ文化財でありますから、他の発明発見等においてもある程度年限の制限があるのでありますから、そう永久にというわけにはいかぬと思うのでありますが、これはやはり当然財産権とみなされると思うのです。その点一つお伺いしておきたい。
  13. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 著作権の本質の問題につきましては学説上いろいろな解釈があり得ると思うのですけれども、一種の具体的な財産権であるということは通説だろうと思います。
  14. 臼井莊一

    臼井委員 そういたしますと、聞くところによると、従来全集本などが出まして、これは非常に安く出されるので、一般大衆はその恩恵に浴することはもとよりでありますが、何かこの著作権が切れたとたんにそういう全集本がわっと出る、こういうようなことも聞き及ぶのであります。そういうふうであると、安くそれが頒布できて利益になるとはいうものの、やはり財産権として三十年間でも著作者の死後保護を受けておったものが、それによって相当の収得すべきものが失われる、損失を受ける、こういうことになろうかと思うのであります。今申し上げた学説がいろいろあるということでしたが、三十年に限る、あるいはアメリカその他で二十年以下に限るということも、一般の公衆、大衆と申しますか、社会に公共的に利益するという点である程度年限を限っておるのでございましょうか。その点についてちょっとお伺いしたい。
  15. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 著作権につきましては、著作者精神的な創造の労苦というものを保護するという観点から、財産権として保護をしておるわけでございますが、それをどの程度期間保護すべきかという保護期間の問題は、今御指摘になりましたように、個人の利益と公共の利益ということとの調和をどこに求めるかという問題で、無期限という国はきわめて一、二の例外でありまして、大多数の国におきましては年限を切っておるのでございます。ただいま申しましたように、ベルヌ条約体制の国におきましては三十年より長いものが多いし、またブラッセル規定におきましては五十年を最低年限としておるということでございます。
  16. 臼井莊一

    臼井委員 本問題につきましては、政府著作権制度審議会でございますか、これが設けられて十分慎重に各方面から御検討を加えられると思うのでありますが、ただ審議会を設けて、これらの点についても研究しなければならぬ、こういうようなふうになってきた社会情勢の中において審議が長くなりますと、その間に失われる著作者権利というものは非常に多くなるわけであります。この審議会は何か年限でも限っていついつまでにという期限があるのでございましょうか。その点を一つ
  17. 長谷川峻

    長谷川政府委員 お答えいたします。せんだって皆さんから御審議、御可決いただきました著作権制度審議会、これを早々に発足いたさせまして、ただいま御議論がありましたように、古い法律でそうした方々が守られていない面、あるいはほかの国との関係からして、私の方で直すべき点などを早急にやっていきたい、こう思っております。その間において、本日御提案法律案が従来の三十年を三十三年にするということは、私ども解釈といたしますれば、その制度審議会がいろいろな結論を出す期間において当然現行法律において失効するであろうという方々利益を守るためにおやりいただくものだ。であるからその方々のため、三年の間においてさえも、早急すみやかに結論出して将来の布石にしたい、こう思っております。
  18. 臼井莊一

    臼井委員 この問題はいろいろこまかい点になりますと伺いたい問題もあろうかと思いますが、今お話しのように、政府著作権制度審議会が作られるのでありますから、またその過程においてこれらの問題を十分慎重に御検討を賜わり、ことに外国とのいろいろ文化交流が激しくなりますので、日本からも相当こういう著作権外国に輸出するような形のものもふえてくると思います。しかしまた海外著作権日本で利用する、こういうことがあるのですが、その際に外国において五十年、こうなっておりますのが日本法律によると現在三十年、こうなりますと、日本においては当然日本法律によって三十年の期間の切れたものは、これは著作料を払わぬでいい、こういうことになるかと思うのですが、今度外国日本出した場合においては、五十年と規定があっても、日本法律と同様に、やはり相互関係において三十年過ぎれば向こうにおいても日本に対して著作権を払わなくてもいいものですか、その点一つ……。
  19. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 その点は相互主義でございますので、日本国内法が三十年になっておりますれば 外国保護される限度も、日本保護される限度でございますので、三十年で消滅するのであります。
  20. 臼井莊一

    臼井委員 もう一つは、かりに五十年というような長い期間に伸ばすと、せっかく外国著作物日本において著作権を払わないで済むものにまで今度払わなくてはならぬ、日本損失だというような議論をする人があるのですが、これはかって外国本日本において一つのやみで、いわゆる海賊版というものを作ったときに問題になった。これは外国の本が非常に高いので、日本においてやむを得ずそういう挙に出ておるという事情はわかるけれども、しかしこれは国際的信義の上から言ってもそういうことはいかぬというので、国会におきましても論議対象となってたしか立法でそういうことをやかましくした記憶があります。こういうような文化的な面については、日本としても世界並みに少なくともひとりこの問題に限らず行くのが至当だと思うのでありますが、それらの問題については本日は省略いたします。私どもはこの点についてはすでにいろいろ提案の間において研究いたしておりますので、本日はこの程度で終わります。
  21. 上村千一郎

    上村委員 一点だけ関連の質問をさせていただきます。  臼井委員からおっしゃったことに関連いたすわけですが、外国に対する関係においては、文化的には日本輸入国の状態にきている。でございますが、日本の現在の文芸作品その他著作権対象となっている作品はきわめて優秀なものが相当あって、外国に輸出し得るものが非常に多いと思うのであります。過日石川達三さんだとか、あるいは丹羽文雄さんその他の代表の方々と懇談する機会があった際に日本文芸作品なりを外国へ輸出する際に、翻訳をする機関というものが非常に日本として完備されていない、だから、非常に大きな、この翻訳をする機関、そういうものが設置されるなら、飛躍的に輸出関係のことが考えられるのではなかろうかというような御意見があったわけです。文部省としまして、かかるような御構想、文化輸出関係について、特に日本語を外国へ出す場合には、特にこの翻訳の問題が非常に重要性を持つと思うのでございますが、何かお考えになっているか、その一点だけを御質問さしていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  22. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 部分的ではございますが、日本国内ユネスコ委員会におきましては、これは大量に日本のものを出すという建前ではございませんが、すぐれた哲学、宗教あるいは文芸等につきまして、翻訳事業をやって発行したこともございまするが、今御指摘のように、全般的に海外に出す日本文芸作品等翻訳する機関設置等はまだ検討されておらない状況でございますが、これらの問題につきましては将来の問題として私どもも十分研究してみたいと思います。
  23. 櫻内義雄

  24. 谷口善太郎

    谷口委員 著作権の問題につきましては、私も被害者の一人として大いに論ずることがあるのです。しかし、これはすでに審議会ができまして、全般的な改正をなされる意図で、すでに法案が通って参議院へ回っておりますから、改正案のときにやることにしまして、ここでは議員提案としてお出しになったこの法案について一、二点確かめておきたいとだけお尋ねしたいと思います。  これは今臼井先生もお尋ねになったところでございまして、それでいいように思うのですが、三十三年というふうに暫定的になさったのは、審議会で十分に御検討になって、公正で合理的な著作権法をお作りになるのは、大体三年以内に完成するだろう、新しいものができるだろうという見通しで三年間延ばされたというふうに了解するのですが、その点はどうでしょうか。
  25. 八木徹雄

    八木(徹)委員 三年というところが一番問題になると思うのですけれども、中には、この後の著作権法根本的改正のためには四、五年かかるのではないかというような意見を吐く人もおるようでございます。しかし、三年ときめる前に、一応齋藤局長国際会議に出席して隣接権等問題等も研究しておりますし、民間関係者も参画しておりますし、一番難点になります隣接権の問題につきましても、国際的にだんだん煮詰まってきておるという状況じゃないかと思いますので、文部省気持は大体二年間くらいで答申を期待しておるというように承りましたので、万全を期する意味において、われわれとしては三年とっておけば間違いがなかろうということで三年にいたしたような次第でございます。
  26. 谷口善太郎

    谷口委員 それでもいいのですけれども、今あなたがおっしゃったように、三年以内にできませんと、せっかくこれは三年間延ばすことにしましたけれども、切れてしまうものが出てくると思う。その法律は五十年ということに、大体これはみんな暗黙のうちに一致しているのじゃないかと思う。だから年限をいえば、新しい法律では五十年ということになるだけに、そういう見通しが立つだけに、その間に切れてしまうのを今ここで保護しようというので三年だといたしますと、この三年の間に新しい法律ができませんと、せっかくやっても水のあわになるわけですね。そこらの保障がやはり政府からされませんと、これは無意味になるという点ですね、この点、大事な問題だと思うので、これはやはり政府の方の努力いかんによるわけなんですけれども、その見通しをはっきりさしてもらった方がいいんじゃないかと思います。
  27. 長谷川峻

    長谷川政府委員 議員提案で、文部省を御信用いただいて、三年以内に大体結論が出るだろうというふうなことでこういう三十三年というふうになったのでありますが、その期待にこたえる意味におきましても、先日また皆さんから御審議御可決いただいた著作権制度審議会というものを発足させますにあたりまして、私たちの方といたしましては、関係者が非常に多うございますから、そういう人選なども急ぎながら早々のうちに発足をさせ、そうしてまた、この委員会における皆さん方の空気などもお伝えして、三年以内に結論を得たい、そうして日本文化向上のために役立つようにしたい、こう思っております。
  28. 谷口善太郎

    谷口委員 もう一点この問題で念を押しておきたいのですが、いろいろな政治情勢いかんによりまして萬一、三年以内に新しい法律ができなかった場合には——提案者としましては、五十年ということを一応頭に置いてこういう三年間延ばすという原案をお出しになったと思うのだが、その場合には再びこういう暫定的な法律案出して、また期間を延ばすというふうな、そういう御意思があるかないか、その点もちょっと承っておきたいと思います。
  29. 八木徹雄

    八木(徹)委員 御趣旨に沿いたいと思っております。実は、私ここで答弁申し上げておりますけれども、この法律案につきましては、各党話し合いの上で救済措置ということを前提にしてやったことでございますので、三年たってなお審議会の方で答申が長引くというようなことでございますならば、そのときにまたあらためて皆さんとも御相談申し上げて延長するにやぶさかではないつもりでございます。
  30. 谷口善太郎

    谷口委員 けっこうです。そこでもう一点。これはここで論議しなくてもあと論議になるのではないかと思いますが、すでにもう法文に表われておりますので、この点についてのお考え方を提案者並びに政府から伺っておきたいのですが、附則のただし書きで、「著作権の消滅した著作物については、適用しない。」ということになっているのですが、これは五十年に延長された場合には大いに問題が起こってくるところだと思うのです。現にすでに消滅してしまっている、あるいは去年あたり消滅したというように、ここ一、二年の間には著作権のなくなる人が大勢いると思うのでありますが、五十年になりますと、これがやはり問題になると思うのですよ。実際問題として、五十年になったならば、やはり復権さしてほしいという問題が起きてくると思うのでありますが、これは法律建前からいったら、新しい法律ができたのは著作権が消滅したあとだからそれは及ばないという理屈も立ちますが、救済するという根本的な精神からいったら大いに問題になるところだと思うのですが、そこらは、政府並びに提案者はどう考えておられますか、ちょっと伺っておきます。
  31. 八木徹雄

    八木(徹)委員 気持の上では、人情の上ではしごく同感なんでございますけれども、これを提案する前に法制局等とも相談をいたしましたが、法律建前上、もうすでに権利が喪失している人を遡及して復権さすということは適当ではないというような解釈と承知いたしましたので、やむを得ずこのようにいたしておるということでございます。
  32. 谷口善太郎

    谷口委員 最後にもう一点伺っておきますが、今特に京都あたりで問題になっておりますのは、従来の著作権を設定して保護するという問題も、伝達機関が非常に複雑多岐になっているという問題もありまして、著作権使用範囲、その使用の形態などにもいろいろとむずかしい問題が起こってきていると思います。従って新しく著作権を設定をする場合には、何にどこまで設定するかということも論議になることだと思うのですが、そこには触れませんが、京都で今問題になっておりますのは、たとえば友禅なんかの意匠といいますか、あるいは図案といいますか、そういう一つ著作権を守ることはできるかどうかという、あるいは守ってほしいという問題が出ておるわけです。これはなかなかむずかしい問題もあろうと思うのですが、こういう問題も審議会著作権法を正しく合理的に改正をなさるという場合には、一つのテーマとして取り上げられる考えを持っておられるかどうか、そういうものも審議の配慮に含まれておるかどうか、そういう点をお聞きします。
  33. 齋藤正

    齋藤(正)政府委員 芸術的にすぐれました図案家作品をどう保護するかという問題につきましては、われわれも直接制作者側からの意見も伺っておりまして、当然そういう点も著作物の一種といたしまして立法上あるいは解釈審議会で御議論になると思います。従いまして保護期間の問題だけでなく、著作権法改正にあたりましては、保護すべき著作物範囲でありますとかあるいはその仕分けでありますとかいう点が、やはり基本的に問題になってくると思うのであります。
  34. 谷口善太郎

    谷口委員 けっこうです。  最後にもう一点念を押しておきますが、三年間延ばしたということは、現在五十年であるというのが大体常識になっておりますが、その五十年という法律ができる前に消滅する人々の利益を擁護するというのが精神ですから、これが生きるように一つ進めていただきたい、これを要望しておきます。  これで終わります。     —————————————
  35. 櫻内義雄

    櫻内委員長 他に御質疑がないようでありますから、起草案に対する討論に入るのでありますが、通告がありませんので、この際お諮りいたします。  ただいまの八木徹雄君の提案による著作権法の一部を改正する法律案起草案委員会の成案と決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次にただいま決定いたしました成案を委員会提出法律案といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって著作権法の一部を改正する法律案委員会提出法律案とするに決しました。  なおただいまの法律案の字句の整理等がありましたならば、委員長に御一任願うこととし、これが提出に伴う手続等につきましては委員長に御一任いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  39. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、この際これを許します。三木喜夫君。
  40. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 先般富山県におきまして教職員の定数減についていろいろ知事部局並びに教育委員会側と話をして参ったのであります。御存じのように、小学校児童数の減少、中学校の生徒数の増加によりまして、教員定数の増減を見ております。特に富山県では小学校の児童数が非常に減る割合に中学校の生徒数がふえないというところから、教員定数を減少する、こういうことになっておったわけでありますが、だんだん話をしておりますうちに、知事部局並びに教育委員会側で非常によく考えられた方法によって、実質的には定員減を来たさないというような方途がとられたようであります。このようにして小学校の児童数が減少することに対処して、各県ではそれぞれの具体案を持って進めておるように思うのであります。特に本年文部省におきまして、小学校の基準は五十四、中学校の基準は五十二になったことから、大部分の府県がこの基準に沿うて改善するという方向に動きつつあることは既定の事実でございます。特に一学級小学校五十人定員にした県が、長野、滋賀、京都、兵庫、岡山、広島、山口、七府県になっておる。中学校では神奈川、長野、滋賀の三県になっておる、こういうことを聞くわけであります。これが日本の中に起こったところの一つの現象でございますが、こういう一学級の児童、生徒の定員を少なくしていきます考え方は、これは世界的な教育に対する立場から大きな考え方の前進であろうと思うのです。従いまして、文部省にお聞きしたいのですが、世界各国、主要国でけっこうですが、一学級当たりの児童、生徒数あるいは一教師当たりの児童、生徒数、こういうものがどういうことになっておるか、一つここでお聞かせいただきまして、以下諸般の問題についてこの点を起点として御質問を申し上げていきたい、このように思いますので、御答弁をお願いいたします。
  41. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 ただいまの御質問に関してでございますが、あまり詳しい資料を今手元に持っておりません。手元に持ち合わしておる資料によりお答え申し上げますと、世界各国とも初等教育につきまして一学級の定員をなるべく少なくして教育効果を上げるということは、これは共通の問題であろうと思います。現在大体外国の資料によりましてはっきりしておりますのは、イギリス、フランス、西ドイツ、ソ連等でございますが、大体初等学校におきまする一学級の定員は四十人ないし四十二人というのが普通のようでございます。しかしこれは単式学級あるいは複式学級を問わずにきめておるような次第でございまして、日本の場合と事情は異なっておると思います。大体初等学校における一学級当たりは四十人程度が普通のようでございます。その他の国においてもいろいろあると思いますが、その程度の資料を持ち合わしておりますので申し上げます。それから一人の教師の場合でございますが、いわゆるワン・ティーチャー・スクールの場合でございますが、これはいろいろきめ方はあるようでございますが、最低はノルウェーの十二人、それからイギリス、ソ連、ウクライナ、日本といったようなところは二十人、従ってワン・ティーチャー・スクールの場合は、日本は世界で二番目ということにランクからいうとなるわけでございますが、フランス、西独あたりで四十人、一番多いところで七十人くらいのきめ方をしておるところがございます。これはユネスコによる資料でございます。大体そんなところでございます。
  42. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今非常に多い七十人というような例が出ておるわけなんですが、これについてもう少し質問しておかぬと、自後の質問に影響があると思います。この七十人というのはどういうところで、どういう関係で、こういう七十人というような一人の教師当たりの児童数になるのですか。この点私は多少非常識な点があろうと思います。なおこれは検討を要する問題でありますので、その点念のために伺っておきたいと思います。
  43. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 私あまりその実情をよく存じませんけれども、ユネスコの世界各国の、教育資料によりますと、今七十人と申し上げましたのはルクセンブルグでございまして、それが一番多いのですが、トルコで六十人、メキシコで五十四人、チリ、アフガニスタンあたりで五十人、ブラジル、イランが四十五人、それから四十人のところは先ほど申し上げましたように、フランス、西ドイツ、ポーランドでございます。そういういろいろ国によって事情が違っているようでございますが、しかしそれは少なくとも一人の教師でやっているという学校でございます。
  44. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それでは次の問題ですが、日本の小中学校の一学級当たりの児童、生徒数はどのくらいですか。
  45. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 現在の予算等におきましていわゆるすし詰め解消の措置を進めますにつきまして、大体三十七年度におきましては、小学校五十四人、中学校五十二人という目標で進んでおるわけでございます。これはもちろん最高でございまして、各府県におきますいろいろの実情に応じてその範囲内で編制をするということになるわけでございますが、これは一応予算的な措置でございまして、実態を申し上げますと、小学校において三十六年の一学級当たりの児童数は四十一人、それから中学におきまして四十五・八人、約四十六人というのが実態でございます。
  46. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 さっき富山県の例を申し上げましたが、長野県の場合、五十名の学級編制で教員を配置した場合に、昭和四十二年において二千七百八十名定員減となる。従って県としては三十七年度四十五名編制に学級編制を改め、五年間で現行教員定数を減じないよう年次計画を立て、四十二年には四十名編制にしようという考え方があるわけです。文部大臣は、さきに首切りをしないように、学級編制基準、定数の確保をはかる決意を表明されましたが、事務当局としてどの程度考え方を持ち、あるいは案を進めておられるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  47. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 まだ成案として申し上げる段階に至っておりませんが、三十七年に比べますと、小中学校の生徒数が大体四十二、三年ごろになりますと四百三、四十万減というのが見込まれます。総体の児童、生徒数が減少いたしますので、それに伴って教員の定数も当然に、五十人として計算いたしますれば減るわけでございます。それだけ要らないということになるわけでございます。その見込みとしては、いろいろ計算の方法もございますが、ざっと推算いたしますと、五十人定員にした場合に五万人程度は減少するというような見込みになろうかと思うのであります。従ってそういう時期に際会いたしますので、少なくとも今はまだすし詰め解消の段階でございまして、三十八年までは、文部省としては、すし詰め解消の方向で、小中学校を通じて定員の増をはかっていくわけでございますが、三十九年以降におきましては、そういう生徒減の推移等と考え合わせまして、できる限りこの教育的な学級編制を置きかえて、そうして先生の定員をふやしていきたい、これは三十九年以降の問題でありますが、そういうことで今後これを十分検討していきたい、かように考えておるわけでございます。   〔委員長退席、八木(徹)委員長代   理着席〕
  48. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 御検討をわずらわすわけでありますが、今申しましたような各県に出ておるところの考え方を考慮に入れて進めていただきたいと思います。  この法律提案者として、今申しましたような世界の情勢あるいは日本国の今置かれておる位置、こういうものに対する検討につきましてお考えがあれば一つ聞かしていただきたいと思います。
  49. 村山喜一

    村山議員 この基礎的な数字は文部省の推計表に基づくわけであります。昭和三十六年度を一〇〇にしました場合に、三十七年度においては、前年に比べまして小学校が七十五万四千人減り、中学校は四十一万人ふえますが、そのトータルといたしましては三十四万人の減少ということで、指数といたしましては九八・一五という指数が出て参ります。従いまして三十七年度において、五十四名あるいは五十二名の学級編制基準ということで予算的には措置されておりますが、これでは先ほど質問者の方がお話しになりましたように、部分的には定員の減少という、定数よりも減少をしなければならないという実態が出て参ります。従いましてこの首切りという問題が派生をしてくるわけであります。従いまして今日の段階において、この定数表の改善を四カ年で計画を立ててやらなければ、将来の教育水準の向上はできないというような見通しに立ってやって参ったわけでございます。今日まで文部省が五カ年間の学級編制、そのすし詰め解消の計画に従いまして、漸次改善の措置を進めて参りました功績に対しましては、高く評価いたしておりますが、さらにそれを国際水準に近づけていくのだということで、この児童、生徒の減少の傾向と相待って、財政的に無理をしないような方向において考えていったというのが提案の趣旨でございます。それと後ほどまた質問をしていただくことになるかもしれませんが、ただ一学級当たりの児童、生徒数の収容の問題だけでなくて、教職員の勤務量の問題や、あるいは新しい教育課程の問題に即応した、そういうような時間数から打ち出した教師の労働の密度というようなものも考えていかなければ、この学校教育の成果は期し得ないものであると考えるわけであります。
  50. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 文部省の方から、生徒の方は今ふえておりますけれども、将来児童数の減少に伴って検討していきたい、このようなお話で、けっこうなんでありますが、それにつきましては現状把握の一つとして小中学校の学級編制を将来どのようにしなければならないかということがあると思うのです。これは現況と比較した上で、検討する基本的な考え方としてこれをお聞かせ願いたいと思います。
  51. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 現状は、小規模学校の一学級当たりの定数はいろいろ各県によって違っておるようでございます。しかし小規模学校におきます教育の実情から考えますと、現在の各県の基準よりも若干下げる方がより望ましいわけでございます。従ってそういう点につきましてはできる限り三十九年以降の生徒減の推移とにらみ合わして検討していきたいと考えております。
  52. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 この法律提案者の方ではそういう問題をどのようにとらえられておるか、これもあわせて検討の資料にしたいと思いますのでお聞かせ願いたいと思います。
  53. 村山喜一

    村山議員 小学校の場合の小規模校の教員の配置につきましては、大体文部省で基準を定めている通りに配置をしているところが多いわけでございますが、中には小規模校の特殊事情というものを考えまして、府県によっては非常にそれを上回る教員配置をやっているところが多いわけであります。小学校の場合には学級経営という上から考えて教員配置の点がなされておりますが、問題になるのは中学校の場合の小規模校の例でございます。これは指導要領に基づいて新しい教育課程が改正されたわけでございますが、その中の授業時数を調べてみますと、やはり中学校の場合には教科ごとの教育が行なわれているという格好になっておりますので、授業時数を性別やあるいは授業の形態から考えた場合において、一学級の場合には延べにいたしまして五十三時間という授業時数が必要になる、二学級の場合には九十五時間という授業時数が必要になる、三学級の場合にはいわゆる教科外指導まで入れまして百三十五時間という授業時数が必要になる、こういうようなことで中学校における小規模校の場合におきましては、特に教科の関係、そういうような組み合わせの関係からいいまして普通の正常な形態の学校よりも教師がよけい要るということが言えると思うのであります。そういうような点においては文部省の現行の配置基準ははるかにその必要性を満たしていないものであって、小規模校の学力が低下しているという実情はそういうような点にもあるのではないかと考えて、今度の改正法案を用意したわけでございます。
  54. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 その改正法案の内容も、従来の分と比較してあわせてお聞かせ願いたいと思うのです。
  55. 村山喜一

    村山議員 改正の要綱につきましては、御承知のように法律の一部改正の要綱をお手元に差し上げておるわけでございますが、四カ年間で同学年の児童生徒で学級を編制する場合においては、児童数をそれぞれ四十名といたすことにいたしております。なお異なる学年の児童で編制する一学級の児童数は、二つの学年で編制する学級は二十名、三つまたは四つの学年の児童で編制する学級は十五人、五つまたはすべての学年の児童で編制する学級は十人。これは小学校の場合でございます。  中学校の場合は、二つの学年の生徒で編制する学級は二十人、すべての学年の生徒で編制する学級は十五人、なお特殊学級は十人、盲ろう学校の小学部、中学部の一学級の児童生徒数はそれぞれ十人ということにいたしたわけでございます。  なお、それに見合いまして教員の勤務量を一応の計算の基礎に置いたわけでございます。これは御承知のように文部省調査によりましても明らかになっておりまするように、教科指導と教科外指導が、文部省の資料の実態によりますと四時間二十五分と五十三分、それに教材研究、指導準備、整理に二時間六分、学級運営事務、学校の管理事務にそれぞれ四十五分と一時間四十二分、個人研究研修に一時間十六分、合計いたしまして十一時間七分になっておる。日教組の方で調査いたしましたのによりましても十一時間という勤務量でございます。それで御承知のように教師の勤務時数は一週四十四時間ということでございますので、その四十四時間の定時の中において勤務をしていくということで、今日においては超過勤務手当も支払いがなされていないわけでございます。この勤務時数の中において授業時数というものも考えていかなければならないということで、要求といたしましては、小学校の場合は二十二時間ということで押えてあるわけでございます。中学校については二十時間というのが授業時数、いわゆる教科指導と教科外指導の時数として押えました。これはさきに制定をされました高等学校の標準に関する法律の中において、一教師当たりの授業時数は十八時間以内とするということが編制の基準になっておりますので、それをもとにいたしました点からもこういうような数字は客観的に見て妥当性のある数字だと確信をいたしているわけでございます。このようにいたしまして一日の勤務時数を八時間に押えまして、一週の勤務時数を四十四時間の範囲内においてやった場合においては、一体どれだけの教師が必要になるかというようなことで計算をいたして参りました。  それと同時に考えなければならないのは、先ほど申し上げましたように新しい教育課程が実施をされることになりましたので、文部省が基準として要求をいたしております実例をいろいろと——実際にその基準を適用して行なっている学校に参りまして、東京の麹町中学校あるいは永田小学校の例やその他の例を参考にいたしまして、一体どれだけの授業時数というものが必要になるのかというようなことで、この点を計算をいたしまして、その結果、東京の場合には配置基準が非常によろしゅうございますので、大体麹町中学校の場合で一人当たり二十五・四時間ということになるようでございます。それを一人当たり二十二時間という数字に合わせまして各学級ごとの授業時数というものを押えて参りました。それによって教員数を勘案をいたして参ったのであります。御承知のように、小学校の場合にはそういうようなのが平均値として求められるわけでございますが、中学校の場合には、それぞれ教科ごとの指導時数というものが出されておりますので、ただ二十時間以内ということで押えましても、教科によりましては、たとえば音楽とか美術というのは全学年を通じて五時間とか四時間とかいう数字でございます。そういうよう場合等をも勘案いたしまして、いわゆるその補正係数を加えたものを小規模学校の場合には置いたわけでございます。そういうふうにして打ち出しまして、今日国の要求にかかわります日本の教育水準というものを保っていくと同時に、それと現行の定員の問題とを比較検討をいたして参りまして、御承知のように、学校教育法の施行規則の二十二条、二十三条には、一学級一人以上の教諭と専科の先生を置くようになっておりますし、中学校の場合には、一学級当たり二人の教諭を置くようにすることが基準として示されておりますので、そういうような点を勘案をいたして参りまして、最終的に数字として出されて参りましたのは、小学校の場合は、これは校長、養護教諭、事務職員を除く、いわゆる実際教壇に立ちまして教鞭をとっております教員の一学級当たりの係数は一・三三と押えました。中学校の場合には一・八三という係数で押えまして、それを現在の配置基準との関連において年次別に増員をして、その学級の児童生徒数の減に見合って激しい異動がないように、教員の数が減少しないような方向において考えたものであります。
  56. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今、小規模学校の問題に関連して、少人数であるということと勤務量の問題、それから教育課程という三点からこれを科学的に分析して、そして小規模学校の学級定員並びに教員定数というものをはじき出さなければいけない、こういうようなお話でしたが、私はこの中で、勤務量という問題については、ただ正規の小学校二十二時間とか中学校二十時間とか高校十八時間とかいうことを設定して、その上に立ったところの勤務量だけしか考えられていないではないか、こう思うのですが、小規模の学校においては養護の先生のかわりもしなければならない。また、事務職員の仕事もしなければならない、こういう僻地の実態をふまえた姿もあると思います。それは学校々々によって違うとは思うのですけれども、そういうのは考えの中に入っているかいないか、この点をお尋ねいたします。
  57. 村山喜一

    村山委員 もちろん、小規模学校におきます養護教諭あるいは事務職員が当然担当しなければならないというような教育上の問題、義務上の問題があると存じます。それにつきましては、別に参議院の方で学校教育法等の一部を改正する法律案といたしまして、事務職員並びに養護職員の配置を全校にいたすようにという提案をしてあるわけでございます。
  58. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 さきに高校定数法のときに、わが党の山中委員の方から、定時制の学級生徒数といいますか、その限界点を百名にするという問題が出たと思うのです。百名という数をここに限界点としておくということは、知事部局等で百名でなければ認可しないというようなことが将来目安になる。従って、定時制は百名ということによって設置の基準を打ち出されるおそれがあるというときに、私は重要な発言であると思って今も銘記しているわけですが、こういう定時制に行くという生徒は、その地方のやはり文化の中心になっていく人々であるということが強調されたと思うのです。ここで小規模学校に対する考え方と、なおここの公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準を打ち出そうとする場合の考え方が重要なやはりポイントになるではないかと思います。従って、以下その点について若干ただしておきたいと思うのです。  まず、小規模学校というのは、私は僻地に多いと思うのです。その僻地には、今もお話がありましたように、複式学級、また複々式の場合もあると思います。そして単級の学級も持っておると思うのです。今も御質問申し上げましたように、将来を展望して見ますと、こういうところから人物が輩出する、あるいは人物が輩出してくるような素地がある、こういうことをまず第一に考えなければならないわけです。従って、今先生の勤務量が非常に多いのですが、雑務を非常に多くし、そして教師が、あるいは中央と連絡をとるために遠距離のところを出ていくという関係で、学校に教師の手が非常に不足するというような状況においておけば、さきがた申しましたようなわれわれの期待というものがやはりそのことによって阻害される。言い直すと、この僻地におけるところの教師の勤務量というものと子供の学力といいますか、こういうものとは非常に関係があるということを申し上げておるわけなんです。従って、ここで文部省としては、三十八年度からこの基準を単式の場合五十人、複式の場合三十五人、複々式の場合三十人、単級の場合二十人から三十人、こういうものを確実に実現していくような考え方を持っておるか。このことがやはり僻地を守っておる教師に対するところの大きな希望になっておる。この点、検討するとかというような言葉ではなくて、そういう決意があれば、一つお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 先ほど申し上げましたように、三十九年以降については別途今後の学級編制の問題、あるいは教員の定数の問題等を十分研究いたしまして、少なくとも四十二、三年ごろまでの問題をいろいろ解決すべくやらなければならぬと考えております。その際にいろいろな問題が出てくるわけでございますが、もちろん教員の定数を考えます場合に、やはり勤務量というもの、時間数も当然に考えなければならない要素でございます。先ほどこの勤務量についていろいろございましたが、文部省としても、あまり新しい調査がございません。いつかの委員会でも、なるべく新しい調査を科学的にやってみたいということを申し上げたつもりでございますが、三十二年に一部やりました調査は、教員の全体の活動量を対象として、総時間数を調査したものでございます。従って、この服務時間内の教授活動、あるいはその教授活動のための準備時間、あるいはその他の公務といったものももちろん含めてございますが、服務時間外のそれらの今申しましたようないろいろな事務も含まっておるわけでございます。従って、研究会に出席するとか、個人の研究に要した時間といったようなもの、あるいはまた団体組合活動に要した時間というものも実際含めた調査でございます。あるいは日直、宿直に勤務した時間も含めての問題でございます。あるいはまた学校だけでなく、社会教育関係の活動に要した時間も含んでいる全体の総時間数を調べたものでございます。従って、それをいろいろ分析してみますと、服務時間内の大体の平均勤務時間は四十四時間を下回っているという実情でございます。またかりにその服務時間内の勤務時間、たとえば今申しましたような教授活動とか、あるいはそれに必要な準備、あるいは整理時間、あるいは公務等を加えましても、小学校におきまして四十一時間強、中学におきまして四十時間強というような数字になっておりますが、服務時間外の必要な時間を加えましても、大体全教員の平均は四十余時間を超過していないというような分析になっておるようでございます。しかし、これは三十二年の調査でございますので、念のために申し上げておいたわけでございますが、今後科学的なりっぱな調査をいたしまして、その資料に基づいて考えたいと私どもは思っております。その際に、定数の問題に関連いたしまして、当然に大規模学校と小規模学校が非常に事情が違いますので、おっしゃいますように、僻地の小規模学校におきましては、いろいろな面から検討しなければならない問題がたくさんございます。現在一応各府県の定数というものをきめまして、各府県にそれの中での小規模学校その他の学校に配置すべき数はまかしてございますけれども、その点はやはり将来の私ども考え方としましては、そういう小規模学校によって有利に——有利と申しますと言葉が悪いかも存じませんが、その教育の特殊性に基づいた、教員配置ができるような仕組みを考えてみたいということは、変わらざる考え方でございます。そういう観点から十分今後検討して参りたいと思っておる次第でございます。
  60. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今、教育をより適正に進めるために、有利な方法を考えていきたいというようなお話があったわけなんですが、この現実を文部省はどのように見られ、どのように改正しようとされておるかということについてお聞きしたいのですが、複式学級では三十五名の基準を持っておるところが、小規模学校に非常に多い。しかし小学校で考えた場合、北海道では四十五人、それから岩手、福島、徳島は四十人、岐阜、奈良が三十八人、熊本、宮崎、鹿児島の三十六人、このように府県によって十名の開きがあるわけです。このアンバランスのままほうっておいて、なお文部省では有利にしていく、あるいは教育を適正に進めるという考えを持っておるということでございますけれども、こういうアンバランスをどうせられるか。これでは今おっしゃっておる言葉というものが現実離れがしておると思うので、こういうアンバランスに対する対処の仕方を文部省から聞かしてもらいたい。
  61. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 現在は御承知のように、三十八年まではすし詰め解消というその目標一途に進んでおりますので、一般の単式学級におきましてもいろいろ差のあることは御承知の通りだと思います。特に今御指摘のありましたように、複式の場合におきましても各県によっていろいろな違いが現実にございます。これは私どもも認めておりますが、これにつきましてはやはり一般の単式の場合を五十人に引き下げるという目標を置いてございます。また複式につきましても、定数法の基準がございますので、少なくともその線まではこれは各県とも引き下げるというようなやり方をしてもらいたいと思っております。従ってそういうように、私どもとしてはできる限りの指導助言をして参りたいと考えております。
  62. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 単式の場合、五十名に学級定員を近づけること、これはもちろん努力していただかなければならぬのです。また違いにいたしましても、もう一、二名というような違いになって参っておりますけれども、複式の場合は今も申しましたように、十名近いところの差があるのです。すし詰め解消に今力を入れておるから、こういうところには力が入れられないというようなお考えのように聞けるわけなんですが、これは先ほどから申し上げましたように、僻地というものは教育上の制約を持っておるわけです。従ってこういうままにほっておくということは、私は小規模学校に対する考慮が現実的に足らぬと思うのです。一つこの点御協力いただきたいと思います。  それから提案者の方で、こういう小規模学校について、さらに今の基準より下げたということについて、特段のお考えがあれば聞かせていただきたい。かなり減っておるように聞きます。
  63. 村山喜一

    村山議員 文部省の基準が、御承知のように単級は二十五人二学年、複式三学年四十人、四学年と五学年の複式は三十五人ずつということでございますが、今日十七府県のそういう小規模学校の多いところの実情を調べてみたり、あるいは全国の、これは文部省の財務課の調査でありますが、それによって一番多いところの例は、その基準よりもそれぞれ人数が減りまして、五名ずつ全部減って少ない数で編制をしている、こういうような実情はよく御承知の通りであります。この点はそういうような小規模学校における教員の配置数というようなものが大きな原因になっておりまするし、またもう一つは、単級の場合あるいは複式の場合、複々式の場合の授業の形態から考えまして、一人の教師が三学年ぐらいも違う児童を教えていく場合においては、教授上非常に困難性がある、こういうような点は経験のある方は十分了解ができるわけでございますが、そういうような教育効果をどういうような点において最大限に発揮していくかということを考えていった場合には、やはりできるだけこれらの小規模学校の教育の実態という上から考えて、人数を押えていかなければならない。これが大体最高の——最高のと言えば語弊がありますが、単式の四十名の一学級に対して一教師が教える場合の教授上の効果と、たとえば単級で一年生から六年生まで含めた、そういうような場合の十名と比べた場合に、どちらの方が教育効果が大きいかということになれば、やはり四十名の方が大きいといわざるを得ない。そういうような点を考えまして、僻地における教育振興をはかっていくためには、まずとりあえず小規模学校におけるところの学級編制基準を改善するということが一つ、もう一つは、とりあえず当面早急にやらなければならないのは、小学校、中学校の僻地におけるところの教員配置を、基準の線に従ってできるだけ早く配置をする、こういうような二つの方法で解決をしていかなければならないということで、十名、二十名、十五名の線を出して参ったわけであります。
  64. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 国会で論議する場合に一地方の問題を申し上げるのは恐縮ですが、私は兵庫県であります。兵庫県は今申しました大規模学校と小規模学校あるいは僻地、寒冷地というようないろいろなバラエティに富んだ県であります。地勢的に見ましても日本海から瀬戸内海まで、日本有数の大都会から非常な僻地まであるわけであります。  そこで現在両方の大規模、小規模学校の場合を考えてみますときに、勤務量とそれから教師の数、こういう問題はやはり大きなウエートを持ってくると思う。まず大規模学校について考えてみますと、尼ケ崎、神戸こういうところは、基準は五十二名とか三名とかいうことにしておりましても、現実教師が不足しておるような場合は五十七名も八名も詰め込んでおるような学校がざらにある。こういうような学校では今非常に交通上の問題が出て参りまして、教師はこの方面に力をそがれている。それから学校給食をやっておる関係で時間を非常にこれによってさかれているということ。小規模学校につきましては、先ほづ申しましたように教師の人手が足りないために、養護教員あるいは事務職員の仕事までして、山川越えて都会まで教師が次々と出張していく。そうしますと教師の手が足らなくなって参るわけであります。従って私はここで最後に強調したいことは、先がたからの御答弁を聞いておっても、私はくつの上からかゆきをかくような工合で、おそらく小規模学校の先生がこれを聞かれても了としにくい答えだと思う。従って僻地の小規模学校というものを、兵庫県でもよく言うわけですが、教育の一つのこぶのような考え方、やっかいもののような考え方というものは、これは最初に申し上げましたように捨ててもらいたい。こういうところから人材が輩出することが多いわけなんであります。教師の配置の問題あるいは定数の問題にしましても、一つ格段の御努力をいただきたい、こう思うわけであります。  それと、先がた申しましたように三十二年の勤務量では、これは時代離れがしておる。今文部省は給食につきましては義務設置を考えたりして参っておりますし、大規模学校につきましては交通方面の指導のために教師の手をとられる。教師は四十四時間以内だというような考え方は、私はやはりもう少し科学的な調査を進めていただきたい。いわゆる超過勤務をやっておる姿が随所に出て参っておりますし、この点で私たちもデータを出し文部省に要請をして参る場合には、相当問題点が出てくるだろうと思う。初等中等局長、これはよくお聞きをいただきたい。何か私は文部省からこれについてすう少しはっきりした御決意をいただきたかったと思います。将来またそういう機会もあるかと思います。要するに教師の勤務量、僻地といえども人材を輩出する重要な場所であるということを考えてやっていただいて、こぶであるというような考え方は排除していただきたい、こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  65. 八木徹雄

    八木(徹)委員長代理 次会は来たる三十日金曜日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十八分散会