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1962-03-09 第40回国会 衆議院 文教委員会 第11号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十七年三月九日(金曜日) 午前十時五十四分
開議
出席委員
委員長
櫻内
義雄君
理事
上村千一郎
君
理事
臼井 莊一君
理事
八木 徹雄君
理事
米田 吉盛君
理事
山中
吾郎
君 伊藤
郷一
君 坂田
道太
君 田川
誠一
君 高橋 英吉君
中村庸一郎
君 濱野 清吾君
松山千惠子
君 南 好雄君
杉山元治郎
君 三木 喜夫君 鈴木 義男君
谷口善太郎
君
出席国務大臣
文 部 大 臣
荒木萬壽夫
君
出席政府委員
文部政務次官
長谷川
峻君
文部事務官
(
大臣官房長
) 宮地 茂君
文部事務官
(
初等中等教育
局長
)
福田
繁君
文部事務官
(
管理局長
)
杉江
清君
文部事務官
(
文化財保護委
員会事務局長
) 清水 康平君
委員外
の
出席者
参議院議員
豊瀬
禎一
君
文部事務官
(
文化財保護委
員会事務局記念
物課長
) 滝本 邦彦君 専 門 員 石井 勗君 ――
―――――――――――
三月八日
委員前田榮
之助君
辞任
につき、その
補欠
として
松前重義
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月九日
委員淺沼享子
君及び
山口シヅエ
君
辞任
につき、 その
補欠
として
井伊誠一
君及び
前田榮
之助君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
三月八日
学校法人紛争
の
調停等
に関する
法律案
(
内閣提
出第一二一号) は本
委員会
に付託された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
学校法人紛争
の
調停等
に関する
法律案
(
内閣提
出第一二一号)
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
(
千葉千代
世君外四名
提出
、
参法
第七号)(予)
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
(
豊瀬禎一
君外四名
提出
、
参法
第八号)(予)
義務教育
諸
学校
の
教科用図書
の
無償
に関する法
律案
(
内閣提出
第一〇二号)
義務教育
諸
学校
の
児童
及び
生徒
に対する
教科書
の
給与
に関する
法律案
(
山中吾郎
君外九名
提出
、
衆法
第一三号)
教科書法案
(
山中吾郎
君外九名
提出
、
衆法
第一 四号)
文化財保護
に関する件 ――――◇―――――
櫻内義雄
1
○
櫻内委員長
これより
会議
を開きます。
学校法人紛争
の
調停等
に関する
法律案
を
議題
とし、
政府
より
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
長谷川文部政務次官
。
長谷川峻
2
○
長谷川政府委員
このたび
提案
いたしました
学校法人紛争
の
調停等
に関する
法律案
につきまして、その
提案
の
理由
及び
内容
の
あらまし
を御
説明
申し上げます。
わが国
の
学校教育
において、
私立学校
は重要な一翼をにない、その特色ある
教育
と伝統ある学風によって
教育文化
の進展に多大の貢献をしているのであります。 ところが、名城大学に見られるごとく、
学校法人
の
理事
、
評議員
の間において
長期
にわたり、深刻な
紛争
が続けられ、ために、
理事会
の機能は、麻痺し、
法令
、
寄付行為等
に違反する
事態
が起こっている
私立学校
があるのは、遺憾なことであります。 このような
事態
を放置することは、
ひとり当該学校
の
教職員
、
学生
、父兄の不幸であるばかりでなく、
私立学校全般
の名誉にも
関係
する重大問題であります。 本
法案
は、このような
事情
に照らし、
学校法人紛争
の
解決
のための
措置
として、次の
方法
を講じようとするものであります。 まず、第一に
学校法人紛争
は、本来訴訟では
解決
のできない性質のものが少なくありませんので、新たに
調停制度
を設けて、
所轄庁
の任命する
調停委員
による
調停
を行ない、
学校法人
の
紛争
を
実情
に即して公正迅速に
解決
しようとするものであります。 第二に、
調停委員
により成立した
調停
を受諾しながら、
当事者
が、これに違反し、それに対する
是正命令
にも従わない場合、または、あらゆる
方法
を尽くしてもなお
当事者
が
調停案
を受諾せず、このため
紛争
が継続し、
学校法人
の正常な
管理
および
運営
をはかることができないような場合は、
所轄庁
が
私立大学審議会等
の
意見
を聞いて、
当事者
の
解職
または
辞職
の
勧告
をすることができることとし、第三に、さらにその
勧告
にも応じない場合において、やむを得ない手段としてその者を
解職
することができることといたすものであります。 従って、これらの
措置
は、
現行法
により認められている解散に至る前の
救済方法
と考えられるのであります。 なお、この
法律案
は、以上の
措置
によりまして当面する
紛争
をできるだけすみやかに
解決
し、
学校法人
の正常な
管理
及び
運営
を確立しようとするものでありますので、その
有効期限
を二年といたしました。 以上が、この
法律案
の
提案
の
理由
及び
内容
の
あらまし
であります。何とぞ、十分御
審議
の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
櫻内義雄
3
○
櫻内委員長
補足説明
がありますので、これを許します。
杉江局長
。
杉江清
4
○
杉江政府委員
ただいま
提案
になりました
学校法人紛争
の
調停等
に関する
法律案
につきまして御
説明
がございましたので、若干
補足説明
をいたします。 条を追って御
説明
申し上げます。 第一条は、この
法律案
の
目的
を
規定
するものであります。この
法律
は、
学校法人紛争
が生じ、これにより
学校法人
の正常な
管理
、
運営
が行なわれなくなり、そのため
当該学校法人
が
法令
の
規定
に違反するに至ったという三つの要件に該当する場合において、
調停委員
による
調停
その他の
措置
を行なうことにより、
学校法人
の正常な
管理
、
運営
をまかり、もって
私立学校
における
教育
の円滑な
実施
に資することを
目的
とするものであります。 第二条は、
用語
の定義をいたしております。すなわち、この
法律
における
用語
のうち、
学校法人
、
私立学校
または
所轄庁
とは、
私立学校法
でいうそれぞれの
用語
と同様であり、また、この
法律
において
学校法人紛争
とは、
学校法人
の
役員
または
評議員
の間における
当該学校法人
の
管理
及び
運営
についての
紛争
をいう旨を定めております。また、この
法律
における
当事者
とは、
学校法人紛争
に
関係
ある
役員
または
評議員
とし、
当該紛争
により
役員
または
評議員
の地位を失った者を含む旨を定めるものであります。 第三条は、
調停
の開始についての
規定
であります。
学校法人紛争
により、
学校法人
の正常な
管理
、
運営
が行なわれなくなり、そのため
当該学校法人
が
法令
の
規定
に違反するに至った場合において、
所轄庁
は、
当事者
の申し出または
審議会
の建議もしくは
審議会
の
意見
を聞き、職権により
調停委員
に
調停
を行なわせることができることとするものであります。 第四条は、
調停委員
三人以上五人以下とし、
事件ごと
に、
審議会
の
委員
その他
学識経験者
のうちから任命することを、第五条は、
調停委員
の権限として、
当事者
に
出頭
を求めて
意見
を聞き、また
資料
の
提出
を求めることができる旨を、第六条は、
調停
の成立を困難にするおそれがある行為につき
調停委員
が必要な
勧告
を行ない得る旨を
規定
したものであります。 第七条は、
調停
を行なっているうちに、
当事者
の間に
合意
が成立し、その
合意
を
調停委員
が相当と認めて
調停書
に記載したときは、
調停
が成立するものとする
規定
であります。 第八条は、
調停案
による
調停
についての
規定
であります。自然の
合意
による
調停
が成立しないときは、
調停委員
は、
当事者
の
意見
を聞き
全員一致
で
調停案
を作成し、
期限
を付して
当事者
に受諾を
勧告
することができることとし、この場合
調停委員
は、
調停案
を公表することができることとしております。
当事者
の
全員
が、その
期限
内に
調停案
を受講したときは、
調停
が成立いたします。これを
原則
といたしますが、
全員
が受諾しない場合においても、
調停委員
が、受諾した者だけの間においても
調停
を成立させることが適当と認めるときは、それらの者の間にいわば一部の
調停
が成立することとして
紛争
の
解決
に資することとしております。 第九条は、成立した
調停
の
内容
を確保するための
所轄庁
の
措置
として、必要な報告を求め、また
調停内容
に違反した場合等に
是正
のため必要な
措置
を命ずることができることを定めたものであります。 第十条は、
解職
または
辞職
の
勧告
及び
解職等
について
規定
したものであります。すなわち、
所轄庁
の
是正命令
の
違反者
、または、
調停
の成立しない
当事者
について、その者が
当該役員
または
評議員
の職にとどまっていたのでは
学校法人
の正常な
管理運営
をはかることができないと認めるときは、
所轄庁
は、あらかじめその者に弁明の
機会
を与えるとともに
審議会
の
意見
を聞いた上、
当該学校法人
に対しその者の
解職
の
勧告
をすることができることとし、なおこの場合
当該学校法人
が
勧告
にかかる
措置
を
実施
することができないと認められるときは、
法人
にかえて直接その者に
辞職
を
勧告
することができることを定め、さらに
勧告
にかかる者が
解職
されない場合または
辞職
しない場合において、
学校法人
の正常な
管理
および
運営
をはかるため他に
方法
がないと認められるときは、やむを得ない
措置
として、
当該勧告
にかかる者を
解職
できることとしたものであります。 第十一条は、
調停委員
に
調停
を行なわせるため必要があるときは、
所轄庁
は
資料提出
、
帳簿書類等
の
調査
ができることとし、第十二条は、この
法律
の
規定
の準
学校法人
への準用について定め、第十三条は、
実施規定
の
政令
への委任について定めたものであります。 最後に附則は、この
法律
の
施工期日
及び
経過措置等
について定めたものでありますが、第四項において、この
法律
は
施行
の日から起算して二年を経過した日に効力を失うことを定めております。 以上がこの
法律案
の概要であります。 ――――◇―――――
櫻内義雄
5
○
櫻内委員長
次に
予備審査
のため付託されております
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
(
参法
第七号)及び
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
(
参法
第八号)の両案を
一括議題
とし、
提出者
より
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
参議院議員豊瀬禎一
君。 ――
―――――――――――
豊瀬禎一
6
○
豊瀬
参議院議員
ただいま
議題
となりました
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
提案
の
理由
及び
内容
の
概略
を御
説明
申し上げます。 御
承知
の
通り
、
義務教育
諸
学校
における
児童
、
生徒
の
健康管理
並びに
保健指導
のことに関しましては、その沿革は古く、大正十一年の
文部省学校看護婦
の
配置
に始まり、その後、
学校衛生婦
、
学校養護婦等
の名称のもとに、逐年
関係職員
は増加し、
保健管理
も
充実
して参りましたが、さらに
昭和
四年には
文部省訓令
をもって
学校看護婦
の
職務内容
が明らかにされたこと、
昭和
十六年の
国民学校令
においては
判任官待遇
の
養護訓導
として
職務制度
の確立をはかったことがあげられます。また戦後の新学制においては、
昭和
二十二年の
本法制定
に伴う
養護教諭
の設置、次いで
昭和
三十三年の
学校保健法
の
制定
へと進み、
学校
における
保健管理
は、
教育
の重要な一部門として位置づけられたのであります。 すなわち、
学校教育法
第十二条の「
学校
においては、別に
法律
で定めるところにより、
学生
、
生徒
、
児童
及び幼児並びに
職員
の健康の
保持増進
を図るため、
健康診断
を行い、その他その
保健
に必要な
措置
を講じなければならない。」と
規定
され、
学校保健法
第一条でも同様の趣旨が
規定
されております。これらの
規定
は、
地域
、
学校種別
、
学校規模
の差異や大小にかかわらず、すべての
学校
において、
保健管理
が綿密な
計画
のもとにひとしく
実施
されることを求めていると解するのは当然のことであります。 かくして、
学校医
が
常勤制
ではない
わが国
においては、
養護教諭
の
配置
がきわめて重要なことであるとされ、
学校教育法
第二十八条並びに第四十条において、
小学校
及び
中学校
には
養護教諭
を置かなければならないとされました。もっとも、
本法
の
制定
されました
昭和
二十二年当時にあっては、
養護教諭
の
養成
が緊急に間に合わなかったため、同法第百三条において「当分の間、
養護教諭
は、これを置かないことができる。」とされたことも、また
事情
やむを得ないものがあったと考えられます。 しかしながら、
学校撒布法施行
後十五年を経た今日なお、
財政上等
の
理由
をもって、これが
養成
並びに
配置
は、遅々として進まず、その
全国平均配置率
は、わずかに
小学校
二五・七%、
中学校
一八・二%であり、しかも、
配置
の
地域格差
もはなはだしく、たとえば、
小学校
の
配置
のよい東京都の七九・五%、佐賀県の五九・四%、福岡の五七・二%に対して、悪いのは、島根の二・七%、栃木の六・一%、徳島の一〇・二%などで、これらの
実情
はまことに憂うべきことと申さねばなりません。 この点につきましては、今日までの
国会審議
において、始終問題とされ、両院の
文教委員会
の決議にもしばしば取り上げられたところであります。 さて、一方、
昭和
三十三年に
制定
されました
公立義務教育
諸
学校
の
学級編制
及び
教職員定数
の
標準
に関する
法律
においては、
養護教諭
に相当する
定数
を
小学校児童
千五百人に一人、
中学校生徒
二千人に一人という
標準
で算定するという方式がとられているために、これが
定数増加
は、なかなか期待できない
状況
にあります。 このような
事態
を反映して、昨年度の
文部省調査
によっても、
市町村支弁
の
養護関係職員
が約四千名もあること、また
地方
には、
養護教諭
の
相当数
が
一般授業
を担当したり、困難な数校兼務をしているという事実が指摘されるのであります。 従いまして、法に定められました
目的
を本当に実現していくために、この際、
年次計画
をもって段階的に
養護教諭
を
増員
し、七年後には、すべての
公立小
、
中学校
に
養護教諭
を
配置
することを期して、本
改正案
を
提出
致した次第であります。 次に、
本案
の
内容
といたしましては、第一に、
昭和
四十三年度からはすべての小、
中学校
に
養護教諭
を置くこと。第三に、
養護助教諭
の
制度
を確立し、
養護教諭
のかわりをなし得ることとすること。第三に、
公立義務教育
諸
学校
の
学級編制
及び
教職員定数
の
標準
に関する
法律
の一部を改め、今後六年間にわたって年次的に
教職員定数
のワクを広げることを
規定
しております。第四には、
本法
の
施行期日
を
昭和
三十七年四月一日としております。 ここで特に申し添えたいことは、こうした
措置
によって、従来、ほとんど
養護教諭
の
配置
されなかった
僻地
の
小規模学校
にも正規の
養護職員
が迎えられるわけで、
現行
の
政令
により、五
学級
以下の
小学校
では
学級
数
プラス
〇・三人という過少な
配当率
であるものが、少なくとも
昭和
四十三年度以降においては、
学級
数
プラス
一人の
配当率
が確保されることとなり、これによって
僻地教育
の
振興
と
健康管理
の徹底が大いに期待されるものであります。 もう一つの点は、
養護教諭
の緊急な
養成
についてであります。これは今後の重要な問題でありまして、
昭和
三十七年度の
文部省予算要求
にも二百数十万円の
養護教諭臨時養成費
が計上されておりますが、こうした
措置
が一そう拡大強化されることを大いに期待するものであります。 なお、
本案
における第一年度たる
昭和
三十七年度の
増員
は、約四千名の
市町村支弁養護職員
を、とりあえず
県費負担教職員
に切りかえることを主眼としております。 続いて、ただいま
議題
となりました
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
提案
の
理由
及び
内容
の
概略
を御
説明
申し上げます。
わが国
の
教育制度
は、新憲法のもとに大きな改革が行なわれたのでありますが、わけても、
義務教育
の年限を延長して、
一般国民
の
教育水準
を高揚し、
学術文化
の
振興
に資する基盤をうちかいましたことは、最も重要な改善でありました。 自来十数年を経ました今日、
小学校中学校等
における
教育
は、ようやくその
施設設備
の整備と
内容
の
充実
を見るに至りましたが、それにもかかわらず、これらの
義務教育
諸
学校
においては、
さき
に
提案
されました
養護教諭
の問題とともに、いま一つ、
事務職員
に関する問題が未
解決
のままに取り残されているのであります。
事務職員
が担当処理すべき
学校事務
の
内容
は、文書、人事、
保健
、厚生、
渉外等
いわゆる庶務的なものから、
給与
その他の会計に関するもの、
校地
、校舎、備品、
消耗品等
の
管理
の面に至るまで、多岐多様にわたるものであります。
学校事務
の円滑機敏な
処理いかん
が、直ちに
学校運営
に及ぼす影響の僅少でないことに思い至りますならば、
学校教育
の効果を遺憾なく発揮させるための
推進力
として、
事務職員
の果たしつつある役割は、まことに大きいと申さねばなりません。 しかるに、御
承知
の
通り
、
学校教育法
第二十八条の第一項には、一応、「
小学校
には校長、
教諭
、
養護教諭
及び
事務職員
を置かなければならない。」と
規定
しながら、その
ただし書き
には、「特別の
事情
のあるときは、
事務職員
を置かないことができる。」となっており、このことは、同法第四十条及び第七十六条において、そのまま
中学校
及び盲、
ろう
、
養護
の諸
学校
にも準用されておりますために、現在、
義務教育
諸
学校
における
事務職員
の
配置
はきわめて不十分であります。昨年五月一日の
調査
によりますと、
全国
の
公立小中学校
に
配置
されております
事務職員
は、
小学校
二万二千七百十四校に対し四千七百七十四名、
中学校
一万二千百二十五校に対し四千四百四十四名にすぎない
実情
でありますし、特に、
千葉
、大分、鹿児島の諸県におきましては、一人の
事務職員
が三校ないし六校を兼務させられている場合もあり、
過重労働
の結果は、
長期欠勤
のやむなきに至るという実例さえも報告されているのであります。 さらにまた、
事務職員
の全然
配置
されていない
小学校中学校等
においては、
児童生徒
の
教育
を担当しながら
学校事務
を分担処理しなければならない
教師
の
負担
がきわめて重く、その本来の使命である
教育活動
に至大の障害を与えている現状であります。 このような
状況
にありますことは、一面、
地方公共団体
の
財政事情
によるところでもありましょうが、その主たる原因は、むしろ、
事務職員必置
の
法制措置
が行なわれていないことに存すると申すべきであります。それゆえに、
さき
に申し述べました
学校教育法
第二十八条第一項の
ただし書き
はもとよりのこと、
公立義務教育
諸
学校
の
学級編制
及び
教職員定数
の
標準
に関する
法律
による
教職員
の
算定基準
についても
改正
を加えて、
事務職員
の
増員
をはかるとともに、
教師
を過重の勤務から解放して、
学校教育
に専念せしめることが、喫緊の急務であると信ずる次第であります。 以上がこの
法律案
の
提案理由
でありますが、次に
法案
の
内容
について、その
あらまし
を申し上げます。 まず、第一に、
学校教育法
第二十八条第一項の
ただし書き
を削除し、
小学校
及び
中学校
並びに盲
学校
、
ろう学校
及び
養護学校
の
小中学部
には、
事務職員
を必置すべきことを明確にいたしました。 第二に、
義務教育
諸
学校
の
学級編制
及び
教職員定数
の
標準
に関する
法律
の第七条、第八条及び第九条について、
小学校
及び
中学校
においては、
学校規模
の
いかん
にかかわらず、一名以上の
事務職員
を置き得るように、また、盲、
ろう
及び
養護学校
においては、現在
事務職員
の
配置
されていない
学校
に、
小中学部
を通じて最低一名を置き得るように、それぞれの
算定基準
を改めました。 第三に、この
法律
は
昭和
三十七年四月一日から
施行
することと定めてありますが、特別の
事情
のあるときは、第二十八条の
規定
にかかわらず、
事務職員
を置かないことができる旨を
規定
し、同時に、
定数等標準法
第七条及び第八条の
規定
の適用についての
読替規定
を設けて、
昭和
三十七年四月一日から同四十二年三月三十一日までの間、漸次
事務職員
の
増員充実
をはかり、
昭和
四十二年度以降は
完全必置
となるように
措置
いたしました。 第四に、
定数等標準法
に、その
施行令
第四条の
規定
を掲げて、本校と分校とについての
事務職員
の数の
算定基準
を、より明確にいたしました。 その他若干の
条文整理
を行なってありますが、なお、この
法案
は、
さき
に
提案
されました
学校教育法
の一部を
改正
する
法律案
に盛られてあります、
養護教諭
に関する
改正
を前提として立案してありますことを付言いたします。 何とぞ、十分御
審議
の上、すみやかに御賛同下さいますようお願い申し上げます。
櫻内義雄
7
○
櫻内委員長
各案に対する
質疑
は後日に譲ることといたします。 ――――◇―――――
櫻内義雄
8
○
櫻内委員長
この際、
参考人出頭要求
の件についてお諮りいたします。 すなわち、ただいま本
委員会
において
調査
中の
文化財保護
に関する件、戸籍に関する問題について
参考人
の
出頭
を求め、その
意見
を聴取いたしたいと存じますが、これに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
櫻内義雄
9
○
櫻内委員長
御
異議
なしと認め、さように決しました。 なお、
参考人
の人選及び
出頭日時等
その手続につきましては、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、これに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ若あり〕
櫻内義雄
10
○
櫻内委員長
御
異議
なしと認め、さよう決しました。 ――――◇―――――
櫻内義雄
11
○
櫻内委員長
義務教育
諸
学校
の
教科用図書
の
無償
に関する
法律案
、
義務教育
諸
学校
の
児童
及び
生徒
に対する
教科書
の
給与
に関する
法律案
及び
教科書法案
の三案を
一括議題
とし、
質疑
に入ります。
質疑
の通告がありますので、この際これを許します。
山中吾郎
君。
山中吾郎
12
○
山中
(吾)
委員
教科書
の
価格
の
値上げ
を一四%認可されたということを新聞紙しで見ているだけでありますが、それは事実でございますか。
福田繁
13
○
福田
(繁)
政府委員
その
通り
でございます。
山中吾郎
14
○
山中
(吾)
委員
その十四%の
値上げ
をした
算出
の
基礎
といいますか、それについて詳しく御
説明
を願いたいと思います。
福田繁
15
○
福田
(繁)
政府委員
教科書
の
値上げ
の問題につきましては
一般
の
物価等
の
値上げ
に関連いたしまして、
製造原価等
につきましても、
用紙代
あるいは
印刷製本費
、そういうものの
値上がり
を見込むと同時に、
教科書製造
におきまする
人件費
の
値上げ
というものもあるわけでございます。従ってこの
労務費
の上昇に伴います
値上げ
あるいはまた
編集費等
につきましても若干の
値上げ
を見込み、あるいは
金利等
の
値上がり
も若干ございますので、そういう要素を見込みまして、経済企画庁で算定いたしましたのが一三・七%、約一四%ということになっております。
山中吾郎
16
○
山中
(吾)
委員
教科書
を
無償
にするという
政府
の
方針
と、
値上げ
するということは別問題であるというふうにいつか
文部大臣
は
意見
を述べておりましたけれども、、
負担
を受ける
PTA
から言いますと、これ以上矛盾を感ずるものはないのでありますから、その
意味
において、
値上げ
の
算出
の
基礎
を私は明らかにすべきであると思う。そういう
意味
において、ただ
局長
のように
用紙代
を若干
値上げ
した、
印刷代
も若干
値上げ
をした、
労務費
も若干
値上げ
をしたということだけでは、私は
教科書無償
の
方針
との
関係
において納得ができないので、詳しくその
教科書
の一三%何がしの
値上げ
の
算出
の
基礎
を明確にしていただきたい。きょうはできなければ次の
機会
でけっこうです。若干若干ということだけでは、これは
PTA
という立場から言いますと、
負担
をかけない
無償
の
原則
に従って
政府
府が論議をしているときに、買う
価格
が
値上げ
になったということでは、
幾ら理屈
を言ったってそれは納得しない。そういう
意味
において正確にお出し願いたい。
福田繁
17
○
福田
(繁)
政府委員
それでは先ほど申し上げました点をもう少し具体的的に申し上げたいと思います。
用紙代
につきましては大体五%の
値上がり
を見ております。それから
印刷製本費
につきましては四五%の
値上がり
を見ておりまして、それぞれの
原価
に占める
割合
を大体五十五対四十五の
割合
に見まして、
数量増
も若干ありますので、そういう
数量増
の点を考慮しまして、前年度比にいたしますと
製造原価
が大体三十六年を一〇〇にいたしますと一四一・一%というような計算をいたしております。それから
営業販売関係
の
内容
でございますが、
職員給与
は、
一般
の
公務員等
も上がったわけでございまして、三十六年度に比しまして一二%上昇しているという見込をいたしております。それから
一般
の
管理
費につきましては一八・九%増加を見込んでおります。そのほかに荷作り発送費等も相当労務を伴いますが、それについても約三〇%の増加を見ております。それから宣伝広告等の経費は、これは
値上げ
をいたしませんで、三十六年の実績額を抑えているというようなやり方でございます。それから編集費は約一三%の増を見込んでおります。それから金利におきましては、これは一部分でございますけれども、十五%程度の
値上がり
を見込んだのであります。それから印税等につきましても、総売上額の三・七%程度を見ておりますが、これは大体三十六年度の実績
通り
でございます。それから利潤等は大体売上総額の三%でございますので、これは大体前年
通り
でございます。それから販売手数料等も、これは大体売上総額の一六%程度でございます。これも従来の
通り
でございます。今申し上げましたように、
製造原価
におきまして、
用紙代
あるいは製本印刷費等の増加
値上がり
を見込んでおります。それから
労務費
、
管理
費の一部について
値上がり
を認めている。そのほかに
編集費等
の増額も見ておりますが、そういう
関係
でございまして、これは
一般
の物価上昇に伴いましてこの
教科書
の製造発行に
関係
して、いわゆる
原価
計算の
内容
について、従来の実績よりもそれぞれの各要素について
値上がり
を認めないと困るというような立場から、やむを得ざる部分についての
値上げ
を認めた、こういうことでございます。
山中吾郎
18
○
山中
(吾)
委員
この
算出
の
基礎
が総領で二二・七%の
値上がり
になっているかどうか、今お聞きしただけではわからないのであります。何かそれより多い
算出
の
基礎
になっておりますが、業者の方かしは幾ら
値上げ
を要求したわけですか。
福田繁
19
○
福田
(繁)
政府委員
ただいまの告事項についての上昇を見まして、それから発行部数によって、これはいろいろ違いますので、そういう発行部数を勘案いたしまして一三・七%というものを計算したわけでございますが、
教科書
会社からは大体二割五分四厘の
値上げ
を要求しております。
山中吾郎
20
○
山中
(吾)
委員
それの一覧表を次の
委員会
に出していただきたい。よろしゅうございますか。
福田繁
21
○
福田
(繁)
政府委員
提出
いたします。
山中吾郎
22
○
山中
(吾)
委員
その利潤の
関係
について、大小出版会社がたくさんあるわけですが、どの企業の規模を
標準
にして利潤を考えておられるのですか。
福田繁
23
○
福田
(繁)
政府委員
大体算定いたしました
資料
として用いましたのは、専業十二社のうちの十社でございます。その
資料
をもとにして計算をいたしたわけです。
山中吾郎
24
○
山中
(吾)
委員
専業十二社というのは、結局一番大きい方から数えて十二社が専業十二社になりますか。
福田繁
25
○
福田
(繁)
政府委員
これは会社の大小によりませんが、大きいものも相当含まれております。
山中吾郎
26
○
山中
(吾)
委員
そういう大きい企業の十二社が利潤三%というのは僕はどっかに間違いがあると思います。それは
資料
を一度見せていただきますけれども、大きい会社の方はもっと利潤があるのではないですか。専業十二社というのは大体大きい方からの基準で、今
説明
された利潤は三%だというのはどうも私は疑問です。小さな企業の場合についてはわかる。その点については今十分明確にお答えできなければ次でけっこうです。これは私どもは納得できないので、いま一度明確にしていただきたいと思います。
福田繁
27
○
福田
(繁)
政府委員
ただいま申し上げましたのは、
教科書
発行の専業会社をとるのが一番数字としては妥当と考えまして、その中の十社をとったわけでございますが、大体利潤三%というのは、これは過去の実績でございます。専業は十二社しかございませんので、その十二社の中の十社をとったということでございます。
山中吾郎
28
○
山中
(吾)
委員
専業でないのはたくさんあるわけですか。そうすると出版会社は相当あるわけですね。
福田繁
29
○
福田
(繁)
政府委員
兼業を含めますと八十六社くらいございます。
山中吾郎
30
○
山中
(吾)
委員
大蔵省あたりには、
教科書
値上げ
の場合について、何か各地の税務署その他から
調査
した
資料
からいいますと、ずいぶん不当、過当競争の結果支出しておる金も莫大なものがある。こういうものを節約をすれば、十分
値上げ
する必要がないというふうなことをいっておるわけなんで、その
資料
を出せといったら出してもいいのですけれども、もう少し私はこの問題については疑問があるので、この点についてはまだ納得しない面がたくさんあります。特にこの
教科書無償
という
方針
の場合、不明確な
値上げ
というものを持ってきて、父兄に納得さすわけにはいかないだ
ろう
と思うので、その点についてはこのお答えだけでは不明確で、私は満足できないということを先に申し上げておいて、
資料
を出していただきたい。 次に
無償
とそれから
値上げ
は別問題であるというのは理屈なんで、
無償
の
方針
を是としておるならば、
値上げ
をしなければならぬ分だけ国が出してやればいいというのが端的な理論だと私は思うのです。全部
無償
にするという
方針
まで持っておるのですから、
値上げ
をしてその分だけ
PTA
に
負担
をかけるという現実があるならば、
値上げ
をしなければ出版会社が出版できないといえば、常々と国が補助をすべきだ。その分だけは補充すべきだ。米麦について二布
価格
制度
をとっているくらいですから、無価の
方針
の前に立っていう場合については、別問題だとは私は考えない。その点は
文部大臣
は一流の別のものであるという理論を二、三回新聞に出されておりましたけれども、どういうふうにお考えなのかお聞きしておきたいと思います。
荒木萬壽夫
31
○荒木国務大臣 結論から先に申し上げれば、
山中
さんも御指摘になりましたように別問題だと心得ております。もちろん
教科書無償
が一挙にできますることならば、
値上げ
の問題もひっくるめて一挙動で
解決
する。結果的にはそうだって一緒になると思いますけれども、何しろ
無償
にすることそのことが立法
措置
を要し、
教育
の場における基本的な市大問題でもございますから、そのことを当然のこととして前提に置いて処置をすることもいかがかと存ぜられるところでございます。もともとこの
値上げ
の問題というのは、一昨年の暮れごろから発行業者の方では頭痛の種になっておったようであります。それが先ほど
政府委員
から申し上げましたように二割五分ちょっと上回るくらいの
値上げ
をしてもらわなければ、第一労賃が払えない、団体交渉等をやっておって、何ともその財源がないので苦慮をしておるということも
実情
のようでございまして、そういう
状況
下において
教科書
審議会
の方でも業者からの直接陳情に基づきまして、自主的に昨年の春早々から
審議
に着手いたしまして、たしか前後六回か七回の
審議
を経て、
教科書
審議会
としましては二割五分何厘というのは企業内努力でもっと合理化し得るはずだというふうな見解から、結論的には二割見当の
値上げ
はやむないという建議をもらったのであります。その建議に基づきまして経済企画庁と相談をして、経済企画庁で大蔵省とも相談をしながら作業を進めまして、経済企画庁の査定の結論が一割四分の
値上げ
にとどむべきであるという結論になりまして、先ほど来御
説明
申し上げたようなことになっておるわけでありまして、これは暮れ押し迫ってこのことを決定いたしましたが、
教科書
は、早いものは一月の末ごろからは従来の例からいきますと売り出される。その
教科書
の売り出し、山間
僻地
までも送り届けるという責任を持った発行会社の責任を果たす
意味
におきましても、もし一部でも混乱を生じたらば大へんなことでございますから、混乱を生じないようにするためにも、やむを得ざる範囲の
値上げ
認可は余儀ないことではないかと判断をいたしまして認可をいたし、幸いにして
教科書
の配給につきましてはいささかの混乱もなしに着々と配付されておることは御
承知
の
通り
でございます。従って別問題だと申し上げるのは、具体的に直面します
教科書
の円滑なる配給を確保するということに関連して、当面差し迫った一つの物価問題として処理せざるを得ない。そのことが一つの課題であり、
教科書無償
の問題は憲法につながる
教育
政策の基本線に立った課題でもございますから、それはそれとして重大
教育
政策の課題としてとらえて今日まで参った。その
意味
においてそれとこれは別問題だと申し上げたのであります。
山中吾郎
32
○
山中
(吾)
委員
内藤初中
局長
の言だったと思うのですが、あるいは大臣だったか知りませんが、いつかの新聞に、二割程度の
値上げ
を必要とし、それをカバーするためにも
教科書無償
配付が検討されておる。最初から業者の方から二割以上
値上げ
の要求をしてきた。上げなければならぬということに関連をして、それをカバーするために、この
機会
に
無償
にしようじゃないかという論が最初の出発点であったということは、新聞の記事で私は覚えているのですが、そうでございませんか。
荒木萬壽夫
33
○荒木国務大臣 これは理念的に言えば、全然別個の、次元を異にする課題であることは注釈を待たずして明瞭だと思います。かねて、何も
教科書
の
値上げ
の問題にかかわらず、できることならば憲法の趣旨を拡大していくという課題は以前からあったことは御
承知
の
通り
であります。すでに数年前、
小学校
一年生の
教科書
を、憲法二十六条の理想を具現する一つの試みとして
実施
されたことがあり、さらにそれが経費の分担等、支払いの延期等の混乱のために事実上
実施
困難な
事態
に立ち至りまして、聞くところによれば一年生に対して入学祝いとして
無償
支給するのだということに趣旨が変わって
実施
され、それもまたいわば応急的な試みであったものですから、幾ばくもなく廃止された。それはそうですけれども、
教科書無償
の課題は文部省としても数年前すでに着手しているということからいたしましても、
無償
課題そのものは全然
値上げ
の問題とは
関係
なしに従来から存続しておった懸案でもあるわけであります。ただ二割五分も
値上げ
しなければ
教科書
の配給が混乱するおそれありとするならば、かねての
教科書無償
という課題を本格的に取り上げる一つの時期的なチャンスではなか
ろう
かという気持は絶無であったとは申し上げかねると思います。ですけれども、必然的にそれとの関連においてのみ考えられたということはむろんございません。
山中吾郎
34
○
山中
(吾)
委員
私がこう申し上げるのは、父兄に
負担
をかけてはならないという一つの基本的な思想があって、
値上げ
をするくらいならば、実際に
教科書
は運転資金その他の融資が一番困難なために発行について支障を来たしておるのだから、
教科書
金融公庫というものを作って父兄に
負担
をさせないで発行が適時適切にいけるように考えてやる、こういうのならば、私はわかる、住宅金融公庫と同じ構想に持っていくならばわかるが、
無償
に関する
法案
を出しておって一方に
値上げ
をするということについては、どんなに理屈を言っても矛盾が残る。受け取る立場から言ったら矛盾が残るので、私は質問をしておるのであって、この点は文教政策として私は決して上等の文教政策ではないと思う。少なくとも賞賛さるべきような文教政策ではなくて、別な言葉で言えばずいぶんまずい文教政策である、こういうことを私は痛感するので申し上げておるのであります。 この
値上げ
をおきめになる諮問機関の
審議会
のメンバーはどういうメンバーになっておるのですか。
福田繁
35
○
福田
(繁)
政府委員
今メンバーを手元に持っておりませんので、後ほどお答えいたします。
山中吾郎
36
○
山中
(吾)
委員
この次の
機会
にお出し下さい。今そこにあるならばもちろんお聞きします。そのメンバーというのは公正に判断のできるメンバーであるかどうかということも、この
機会
に明らかにしておく必要があるのでお聞きしておくのであります。 今私が
価格
のことでお聞きしたのは、いわゆる基本的なものの考え方が、
教科書
行政について憲法の思想に基づいた
無償
の
方針
なのか、あるいは社会保障的な立場に立って考えているのかということについても明確にしなければならないので、私はお聞きしておるわけです。この
法案
が出るまでの経過をずっと顧みてみますと、憲法の
無償
の法則に基づいてこの
無償
の
方針
が出されてきたのか、あるいは社会保障的な政策として出されてきたのか、これは明確でないと思うのです。大臣の答弁の中にも、あるいはここの答弁ではないにしても、折に触れて
意見
を出されておる中にも、これは減税的な性格もあるのだ、社会保障的な性格もあるのだということを主として
説明
されておったはずです。その点について、その後心境あるいは考え方が変わってこうだというならそれでもけっこうでありますが、今までの経過からいって基本的な考え方について大臣の方からお聞きしておきたいと思います。
荒木萬壽夫
37
○荒木国務大臣 憲法第二十六条の理想を敷衍しようとする基本線に立っておることは終始一貫しております。それは先刻も触れましたように、私一個の
意見
ということ以前の問題としても、文部省として最初に
小学校
一年の
教科書
を
無償
にいたしましたときの
法律
そのものにうたっておりますように憲法第二十六条の理想を具現する試みとして、試みであったことに今度と違いはございますけれども、
小学校
一年ではありましても、差別なく学童すべてに
無償
で交付するということ、そのことが憲法第二十六条の趣旨を体しておることはきわめて明瞭であります。そういう線に立ってこの問題が取り上げられたことも確かでございますが、ただこの相談の過程におきまして、社会保障的な意義もあり、さらにはまた減税的な意義もあるということを申したことは意識しております。意識的に申した
機会
があったことはいまだに記憶をいたしておりますが、それは
教科書無償
の効果を敷衍して
説明
します場合に、当然連想される事柄、またまさに社会保障的な意義もあわせ持ち、あるいは減税的な意義もあわせ持つものであることは確かでございますから、そのことを特に強調して
説明
した
機会
はございました。しかし、だからといって憲法二十六条と全然別個の立場に立つなどということは構想としてあり得ないことだと存じておるのであります。
山中吾郎
38
○
山中
(吾)
委員
そうしますと、同じ
政府
の大蔵省の考え方と文部省の基本的な考え方に矛盾があるので、私は大蔵省を呼んで聞かなければならぬ。大蔵省の方では、これは社会保障的なものである、従って基本的に貧富の差別なく全部
無償
にすることは不合理である、貧乏人の者にだけ出せばいいということを正式に新聞に発表いたしておりますので、この
法律
の基本的な精神について
政府
においては統一をされていない。従って大蔵省の責任者とここではっきりお答えを願わないと私は
審議
を進めていくことはできない。その点において、大蔵省が来るまで質問を保留いたします。
荒木萬壽夫
39
○荒木国務大臣 この
審議
の過程でいろいろ議論が出たことは事実であります。ところがそういう途中の賛否の議論を経過いたしまして、最終的な終着駅は憲法第二十六条の趣旨を敷衍しその理想を実現する建前においてこの
法律案
が成案を得たわけでございます。途中の過程では御指摘のようなこともあったかもしれませんが、あくまでも憲法第二十六条の理想を具現する建前に立っておることをこの際申し添えさせていただきます。
山中吾郎
40
○
山中
(吾)
委員
いま一度言っておきます。この
法律
の第一条の中に本憲法の
無償
の
原則
に基づくといった明示は何もないわけなんです。今までの大蔵省の予算編成
方針
においてもその以後においても、この間大蔵省の主計官に聞いたときもそうなんですが、これは社会保障的なものであり、貧富の区別なく全部
無償
にするということについては反対の
意見
をはっきりされております。従って
法案
の
審議
の前提として明確に
政府
が統一しなければ、私は
審議
を進めることはできません。保留いたします。
荒木萬壽夫
41
○荒木国務大臣 今申し上げたように、途中の議論ではいろいろあったかもしれません。
意見
を持っておる者がなかったとは言い切れないと思いますが、
政府
のいろいろの決定は閣議決定で最終段階に至ります。閣議決定の趣旨はまさしく憲法第二十六条の趣旨に基づいてこれを
実施
しようというのであります。社会保障などという概念から申し上げれば、貧富の差を一応つける、要保護、準要保護の学童に対して
教科書
を
無償
で提供するという考え方が社会保障の態度だと思います。財源の
関係
から御案内のごとく七億円ちょっとの予算
措置
を講ずるにとどまりましたことは、別の
意味
で遺憾な点もございますけれども、しかしそれはそれといたしまして、社会保障の建前からする
教科書無償
も、むろんこれが完成されるに至りますまでは補充的に必要でございますから、準要保護
児童
の支給率も一%引き上げて予算の御
審議
を願っておる。衆議院で御決定いただいた予算の
内容
にはそういうふうにいたしまして、並行的にいたしておるのであります。社会保障の立場からならば、貧富にかかわらず、全小
中学校
の
児童
、
生徒
に対して
教科書
を
無償
支給するという本
法案
の第一条の趣旨は成り立たないわけでございまして、憲法はまさしくそのことを意図しておる。また憲法第二十六条の趣旨に基づいておるというなら、そう書いたらどうかということもお説ではあると思います。ですけれども、いつかもお答え申し上げた記憶がございますが、あらゆる立法
措置
は憲法のらち内にある。この立法のたびごとに憲法第何条によりということは、必ずしも一貫した立法の形式ではないと私は心得ております。
教育
基
本法
で
義務教育
における授業料を
無償
とするという宣言
規定
がございますが、これとても何も憲法第何条ということを引用して
規定
してない前例からいたしましても、立法形式としては、あえて
山中
さんの御指摘のような必要はないと考えまして、この案を作成しておるわけであります。 〔「名答」と呼ぶ者あり〕
山中吾郎
42
○
山中
(吾)
委員
名答でないから、いま一度お尋ねいたします。
学校
給食については私らは
無償
を主張している。しかし、
学校
給食の場合は、これは憲法の
無償
の
原則
であるかどうかということについては、私自身は疑問がある。従って
無償
にする場合にも、憲法のいわゆる人権、
教育
権とか、保障された立場において
無償
制度
をとるか、極端な言葉で言えば恩恵として
無償
にするということも、行政的にはあり得ると思うのです。ことにこの
法案
は、
調査
会を設置するというふうな一つのあいまいもこたるものなんです、理屈はいろいろあっても。そういう
関係
から、今までの
法案
の論議の過程から見ても、そしてまたその過程があるからこそ、基本的な精神を第一条に書くべきであると私は確信するのですが、そういう
意味
において、やはり疑問は残る。
政府
は今までの中においてその点明確にされていない。私は受け取れない。従ってこれ以上の
審議
は保留して、次の
機会
に明確にしてもらって、また質問を続けたいと思うのです。
櫻内義雄
43
○
櫻内委員長
他の
委員
の
質疑
は後日に譲ります。 ――――◇―――――
櫻内義雄
44
○
櫻内委員長
次に、
文化財保護
に関する件等について
調査
を進めます。
資料
の要求がありますので、この際、発言を許します。
谷口善太郎
君。
谷口善太郎
45
○谷口
委員
これは私が知らないからお願いすることになるのかもしれませんが、重要文化財が、戦後の
状況
の中で
法律
の網の目をくぐってかなり海外に流れ出ておるという
実情
があるようであります。私は京都でありまして、京都に国立博物館がございますが、この博物館の
関係
者あたりに聞きましても、大へん憂うべき状態にあるというふうに聞き及んでおるのであります。これらにつきましては私どもも今具体的に
調査
しておりますので、いずれその結果を持って当局に御質問するときがあると思います。これに関連しまして、重要文化財として指定されているものの、戦争前から現在に至るまでの移動というようなものの
資料
があると思うのですが、そういうものを出していただけないかどうかということであります。特に、いわゆる重要文化財から国宝になったものもこの期間にはだいぶあるかと思います。また、新しく重要文化財に指定されたものもあると思います。それらがどういうふうな移動をここ十年間にしておるかという点を、できればリストが欲しいのですが、非常に膨大なものですからちょっと困難かと思いますが、数字的に明らかにできる
資料
がありましたら御
提出
願いたいと思います。ことに、現存するものにつきまして正確に
資料
を出していただけたら、今後
審議
する上に大へん助かる、こういう点お願いできないものかと思うのですが、どうですか。
荒木萬壽夫
46
○荒木国務大臣 ただいま
文化財保護委
員会の事務当局が来ておりませんので、ただいまの
資料
の御要求が直ちに間に合うかどうか、ちょっと確答はできませんけれども、今の御要求の趣旨をメモさせておりますから、
文化財保護委
員会の方に伝えまして、できれば次の
機会
までに
資料
として
提出
いたします。
谷口善太郎
47
○谷口
委員
けっこうです。 ――
―――――――――――
櫻内義雄
48
○
櫻内委員長
質疑
の通告がありますので、これを許します。
山中吾郎
君。
山中吾郎
49
○
山中
(吾)
委員
現在平城宮の埋蔵文化財を中心として、いろいろの企業が企業的立場で整地をするために、民族的文化が破壊されようとしており、考古学者、歴史学者並びに建築史を専門としておる学者あるいは地元の奈良県知事その他
関係
の民族的文化遺跡を持っておる執行機関というものが非常に心配をしておる。ある
意味
においては、日本の埋蔵文化界の危機という言葉で心配をしておるのが現状であります。そこで、
文部大臣
は常に愛国心をもっと作らなければならない、
教育
基
本法
の
改正
ということも再検討するべきであるというふうな表現をしながら、よき日本人としての立場を
教育
の中に入れようという思想を出しておられる。そのときに、ほんとうの
意味
において日本の民族的な文化というものを保護する、そうして修学旅行その他でもそれを見聞するという努力をされることが、あなたのそういう思想を裏づけるのに正しい政策だと思う。ただ修身の時間を一時間ふやしたとか、法文をいじくったということではそういうものはできないと私は思う。そこで、機構的に
文化財保護
という行政は自分には直接
関係
はないのだといって傍観をされる立場でなくて、荒木文相も同時に国務大臣であるのだから、一はだも二はだも脱いで、このかけがえのない、われわれの祖先の生活様式あるいはアジアの全領域から集中された、一度つぶしてしまえば二度と復活できないようなものについての保護に対しては、国務大臣としてまじめに考えなければならぬ問題だと私は思うのです。何か党派性をむき出しにして、組合に対する批判を含めながら道徳
教育
の
振興
であるとか、あるいは基
本法
の
改正
とか、あるいは日本人的性格が薄いからもう少しどうだとか、そういう言葉だけを弄されるということが国務大臣、
文部大臣
としての責任では決してないと私は思う。その
意味
において、今平城宮を中心として、その他岡山県の古墳はほとんどつぶされておる、あるいは堺市の臨海
地域
の開発に応じて百舌鳥の陵を中心とした古墳なども、土建業者その他によってじゅうりんをされつつある。日本の至るところのそういう埋蔵文化財というものが破壊されつつあるので、この点については国務大臣という立場を含んで私は何とかしなければならぬ立場であると思うので、その点のお考えを、まだ文化財の事務
局長
が来ておりませんので、まず大臣の方から、基本的な精神をお開きしておきたい。そして政治的に、
文部大臣
の立場からいっても、ひとはだ脱ぐ一つの姿勢をはっきりとされる必要があると思うのでお聞きしておきたいと思います。
荒木萬壽夫
50
○荒木国務大臣
文部大臣
という立場で、
文化財保護
行政に直接タッチする立場でないといつか申し上げまして、言葉足らない点を補足的に申し上げた記憶がございます。それは、
文化財保護
行政、文化財の価値判断につきましては、
法律
にも明記してありますように、
文化財保護委
員が、それぞれ独立してその職権を行なうということで処理すべき問題だと心寄る
意味
で、その点につきましては、私は直接関与できないのだと申し上げたつもりであります。もちろん、
文化財保護委
員の人選なり、人事
関係
一般
、あるいは会計、予算等の世話をするということは、当然
文部大臣
の職責だというふうに心得ております。と同時にまた、
文化財保護
行政全般についての閣僚の一人としての政治的立場での責任者であるということも、むろん自覚しております。ついでながら申し添えさせていただきます。 先ほどの、平城宮の遺跡についての御質問についてお答えしたいと思いますが、私の
承知
しておりますところでは、今の近鉄会社が建設工事を始めつつある場所は、平城宮の指定
地域
外だと
承知
しておりますけれども、指定
地域
外といえども、平城官のもよりの場所であることには間違いございませんので、指定地外にも、地下埋蔵物等で文化的価値の高いものがないとは言い切れない。従って、
法律
制度
に基づいて、強制的な処置はできないといたしましても、現実問題としては、考慮せわばならない課題でございますから、近鉄当局に対しましても、発掘途中において、もしそれとおほしきものを掘り当てた場合は、直ちに工事を取りやめて、すみやかに連絡をしてほしいという
措置
をいたしておるのでございます。
全国
的に、同じような貴重な文化財が埋蔵されておりそうな懸念のあるところに対して、十分の注意を怠らず、取り返しのつかないようなことにならないようにということは、かねてから手配をいたしておりますが、その点は、さらに十分の
措置
を講ずるような努力をしなければならぬと考えております。 それからなお、私が日教組を批判しますことは、何も妙な考え方じゃない、
教育
の場が共産勢力に牛耳られることはもってのほかだ、こう考えまして批判しておることは、かねて申し上げておりまして、御理解をいただいておるかと思います。この
機会
に申し添えさせていただきます。
山中吾郎
51
○
山中
(吾)
委員
大臣、まだ着工はしてないのですね。従って一カ月くらいまでは、まだ指導したり何かする手はあるのですから、その点一つ。 そこで私は、むろんあそこが指定
地域
であるかいなかという問題でなくて、たとえば第二次大戦の場合も、その当時の敵国であるアメリカでさえ、この奈良
地域
全体の文化財を保護しようとして、爆撃を意識的に回避したというふうな認識の上に立って、国務大臣としてもお考え願わなければならぬので、もっと大きい立場で、直接まず
文部大臣
に伺いたいと思うのですけれども、京都と奈良というのは、世界の国々においても、単なる日本の文化財
地域
ではないのだ、世界人数のためにやはり残すべきだという思想があってこそ、ああいう熾烈な、生きるか死ぬかという戦争の中でも回避をしておるのです。ところが日本の国民自体が、営利的な立場において現在近鉄が車庫を置くという
地域
、その
地域
が指定されている、いないということからの回避だけでなしに、奈良公園全体の風致、文化財を保護するために支障を来たす
地域
に、しかも指定外だというので、温泉地帯を作るとか、それからまた西部劇に出てくるような、ああいう雰囲気をかもす遊び場、夢の国ですか、そういうものを作ったりして、全体としてあの
地域
が破壊されつつある、その一環として私は考えなければならぬのじゃないかと思うのです。修学旅行というふうな文教行政の指導部面の立場に立っても、あの
地域
の、奈良時代その他の文化の雰囲気に触れて、日本の国を愛するというふうな情操を
教育
する場面が、同時にあの夢の国に遊ばす、温泉地帯に行かす、そしてその付近全体を
全国
の小
中学校
が修学旅行するというふうなことは、文教行政の中核的な問題としても、このまま捨て置けない問題じゃないかと私は思う。そういう
意味
において、あの
地域
を国務大臣として、つまり
政府
の立場において、これを買い上げて、国において保存するというふうなことを考えなければならぬ問題ではないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
荒木萬壽夫
52
○荒木国務大臣 お話の趣旨は、大体私も賛成でございます。ただ、具体的に京都、奈良一帯を
政府
が直接
管理
できるような姿にしたらどうだという御高説は承っておきますが、具体的にそれに着手するような、具体性を持った
意味
においては、今にわかに御賛成申し上げるわけにもいかぬところもありますけれども、お気持はわかるような気がいたしますので、努力したいと思います。 なお、今事務当局が参りましたので、先刻の私のお答えに対しまして、補足的な必要があれば、
政府委員
からお答え申し上げさせていただきます。
清水康平
53
○清水
政府委員
奈良、京都が、わが日本国民全体の心のふるさとであるばかりでなく、世界の最も大切なところであることは、だれもそう考えているところでございます。
文化財保護
行政の立場から申しますと、保護行政の
内容
のおもなことと申しますと、要するに国宝とか重要文化財、あるいは史跡名勝とかいうものに指定されているところについては、相当程度の
管理
、指導、指揮もできるのでございますが、指定していないところにつきましてはどうも手が届かない。極端な言い方で申しますと、点と線とだけしか守れないというのが今日の
状況
でございます。しかし、気持から申したならば、奈良などは、ただ単に指定されているところばかりでなく、全体が、その環境といい、風景といい、奈良の空気それ自体が、やはり広い
意味
における日本の大切な文化遺産でありますので、そういう方面につきましてどうするかということは、今後各方面の
意見
をお聞きし、御鞭撻を受けて努力して参りたいと思う次第でございます。 それから平城官跡で、指定してある地区につきましては、現在発掘を進行しているのでございますが、指定していない地区につきましては、地元の
管理
団体である県の無体的な決意を見まして、これを処理して参りたいと事務的には考えている次第でございます。
山中吾郎
54
○
山中
(吾)
委員
大臣、ちょうどいい
機会
でありますから、直接大臣の方に文化財
関係
に関連をして主としてお聞きしたいと思います、なかなか大臣はおいでになるときがないから。 ユネスコという事務局が文部省の中にある。そこで、ユネスコ事務局の仕事と
文部大臣
との
関係
は、どの程度に
文部大臣
がユネスコについては責任者になっておるのですか。あれはどういう
関係
になっているのですか。
荒木萬壽夫
55
○荒木国務大臣 ユネスコの事務局は、文部省内部の部局として置いてあります。その
意味
で
文化財保護委
員会と
文部大臣
という立場とはもっと密着した他の文部省内の部局と同じ立場にある、
文化財保護委
員会は文部省に付置せられた外局である、という
意味
の違いがあると思っております。
山中吾郎
56
○
山中
(吾)
委員
官房長、何か補足するところがあるようですから……。
宮地茂
57
○宮地(茂)
政府委員
今大体大臣からおっしゃった
通り
ですが、もっと
法律
的に厳密に申しますれば、
文化財保護委
員会は、文部省の外局でございます。ユネスコ国内
委員会
は文部省の、これは国家行政組織法の方では付属機関とい言葉を使っております。文部省設置法あるいはユネスコ活動に関する
法律
等には「文部省の機関とする」というふうにございまして、大臣は先ほど内部部局とおっしゃいましたが、その点は、外局に対しては内部部局的な色彩がございますが、厳密に申しますれば付属機関、文部省ではそれを所轄機関と呼んでおりますが、西洋美術飢とかあるいは科学博物館とか
学校
とかいったような、それらと並ぶべき所轄機関というふうに解しております。従いまして大臣との
関係
は、これは先ほど
文化財保護委
員会と
文部大臣
との
関係
を
文部大臣
からあらためて
説明
されましたが、それほどの独立性――独立性という
意味
につきましては、どっちがより独立的であるかと言えば、気持としては
文化財保護委
員会の方がユネスコ国内
委員会
よりも
文部大臣
に対してはより独立性が強いものというふうに考えます。
山中吾郎
58
○
山中
(吾)
委員
この付属機関というのは、たとえば
文部大臣
と国立博物館その他の国立営造物との
関係
と同じであるとすれば、そこの機関にいる所長とか事務
局長
の任命とか指揮監督権はある。その
意味
におけるユネスコ事務局についての大臣の責任は、指揮監督という
関係
において、あることになりますか。
宮地茂
59
○宮地(茂)
政府委員
指揮監督という言葉も、たとえば所轄、所管、
管理
、監督、いろいろ行政法的に言葉があるようですが、今先生がおっしゃいました指揮監督、これをどの程度解釈するかですが、大体所管とかあるいは指揮監督するとかいったような言葉で並べて言うときには、指揮監督までの強い権限は国内
委員会
に対して
文部大臣
は持っていないというふうに考えます。
山中吾郎
60
○
山中
(吾)
委員
監督まではあるのですか、指揮じゃなくて。
宮地茂
61
○宮地(茂)
政府委員
抽象的に指揮監督と申しますまでですが、国内
委員会
につきましては、ユネスコ活動に関する
法律
が
規定
されておりまして、その
法律
には、ユネスコ国内
委員会
の所掌事務なりあるいは権限等が
規定
されております。従いまして、これらについて特に
文部大臣
がいかなる点について指揮をし、監督をするか、これは個々の問題について検討しなければいけませんが、文部省の内部部局といたしまして
調査
局がございますが、
調査
局の方でも、ユネスコ活動に関することは
文部大臣
の直接の権限として内部部局の
調査
局で行なうようになっております。そういうようなことから彼此勘案いたしますと、今先生がおっしゃいます直接指揮をし、命令をし、直接監督をするといったようなものは、国内
委員会
には
文部大臣
はないと思います。
山中吾郎
62
○
山中
(吾)
委員
少しわからないのですが、いずれにしても、官房長が答えた僕の
質疑
の
関係
を頭に置きながら大臣にお聞きしたいのですが、日本の埋蔵文化財の保存について、国際機関であるユネスコから三十一年度に
勧告
が来ておるということが前の
委員会
で明らかになって、私は知らなかった。そうして
勧告
の
内容
は、こういう奈良
地域
その他を含んで埋蔵文化財の
地域
にいろいろの建物を建てたりする場合には許可制にするように、今は届出になっているのですが、許可制にするようにとか、あるいは
調査
を十分にするようにという
勧告
が来ておると聞いておるわけなんです。それについて、大臣はおそらくこれはお聞きにはなっていないと思うのですが、官房長、今言った
勧告
の
内容
は間違いないですか。溝水事務
局長
でもけっこうです、大臣にわかるように答えてみて下さい。
清水康平
63
○清水
政府委員
ただいまお話しの、ユネスコにおける三十一年十二月五日の総会におきまして、考古学上の発掘を規制する国際的
原則
の
勧告
がございます。それは
文化財保護委
は会といたしましても、文部省から通知を受けて存じておる次第でございます。その
内容
は相当深く大きいのでございますが、一言的に申しますと、国によってそれぞれ違うではあ
ろう
が、考古学上発掘する場合、これは許可制にしてはどうかというのが中心の
勧告
内容
でございます。御
承知
のごとく、日本におきましては学術
調査
は届出制でできるわけでございます。土木工事その他につきましても、もちろん届出制で工事が着工できるわけでございますが、
文化財保護委
員会といたしましては、将来許可制にしなければならぬ場合がかりに出てきた場合でも、
全国
のどこにどういう古墳があって、どういう貝塚があるかということにつきましては、必ずしも明確になっておりませんので、現在それを
調査
中でございます。しかる後に
文化財保護委
員会としましては、各方面の
意見
を聞きまして、検討の上、許可制にするかしないかということを、考慮いたしたいと思っておる次第でございます。
山中吾郎
64
○
山中
(吾)
委員
その
勧告
の中に、国内のそういう文化財の
調査
を進めるようにという
勧告
は入っておりませんか。
清水康平
65
○清水
政府委員
ちょっと見当たらないのでございますが、
文化財保護委
員会といたしましては、
昭和
三十五、六、七の三カ年間にわたりまして
全国
の貝塚、古墳等の埋蔵文化財の
調査
をいたしておりまして、三十七年度におきましては
全国
的な埋蔵
関係
のいわゆる遺跡台帳を作る予定でございます。現在
調査
いたしておる途中でございます。
山中吾郎
66
○
山中
(吾)
委員
今の遺跡台帳の
調査
した中間報告ができたら、その一覧表をいただきたい。 それから大臣、今ユネスコの
関係
を
文化財保護委
員会の事務
局長
が答弁をいたしておるのでありますが、先ほど官房長と私の
質疑
応答の中で、ユネスコは
文部大臣
の付属機関なので、ユネスコの
勧告
は、
文部大臣
がその
勧告
に沿うて、国際信義上、また日本に存在する文化財は同時に人類の文化財であるという国際的な進歩した考えの中に来ておるこういう
措置
なので、
文部大臣
がこれにタッチをして、そして
調査
を進め、法
改正
を進めていくという――私は
文部大臣
がタッチをすべき問題だと思うのです。文化財の事務
局長
が答えておられますけれども、
文部大臣
の付属機関であるユネスコに来た
勧告
は、まず
調査
局から
文部大臣
に具申をして、
文部大臣
が
実施
する権限がなければ、
文化財保護委
員会に助言するか、こういうふうに考えるのですが、その辺はどうなりますか。
宮地茂
67
○宮地(茂)
政府委員
先ほど文化財の務
局長
がユネスコの問題に答えましたのは、なるほどおっしゃいますように、多少筋が違うといえば違うかもしれませんが、問題が
文化財保護
についてのユネスコの
勧告
でございます。従いまして、ユネスコの方でそういう
勧告
をなさいまして、
政府
としましては一応文部省が受けまして、それを、
文化財保護
行政に関することですから
文化財保護委
員会にこういう
勧告
が来ておる、きめられておるということを印し伝えまして、
文化財保護
行政の直接の責任機関である
文化財保護委
員会がその問題について検討するという流れでございます。従いまして回りくどいのですけれども、途中を省略いたしまして、
文化財保護委
員会も十分
承知
いたしておりますので、便宜上事務
局長
がお答えしたような
関係
であ
ろう
と思います。
山中吾郎
68
○
山中
(吾)
委員
そこで、
勧告
を大臣がつぶさに検討して、そして
文化財保護委
員会に助言をするとかということが当然なされたということになるのですが、そうじゃないですか。大臣はだんだん無
関係
にはあり得ないでしょう。
荒木萬壽夫
69
○荒木国務大臣 無
関係
ではあり得ないと思います。ユネスコの国内
委員会
の事務局が文部省内に、建物の中にありますが、概念的には、さっき官房長が御
説明
申し上げましたように――私がお答えしたのと少しニュアンスが違うようですけれども、いずれにいたしましても
文部大臣
という立場でユネスコのことも、あるいは
文化財保護
のことも、当然総括すべき立場にあることだけは間違いない、かように思います。今御質問の点は、はなはだどうも恐縮ながら、私自身が念頭にございませんのを遺憾といたしますが、これは文部省で、ユネスコ
委員会
でこの
勧告
を受けて、文部省の立場から、外局である
文化財保護委
員会に移牒して、そして
文化財保護委
員会の事務
局長
が今お答えする程度に一応マスターしておる姿であって、その結論を、
現行法
を
改正
して許可制にするかしないかという案件として、私のところまで知らしてもらう段階にきていなかったことだと私は
承知
するわけですが、その点もっとスピード・アップすべき問題も残りましょうけれども、
文部大臣
という立場とユネスコの
関係
、
文化財保護委
員会の相互
関係
は、私はそういうことと心得ます。
山中吾郎
70
○
山中
(吾)
委員
将来これを改善してもらいたいのだと言っておるのです。三十一年の
勧告
です。ことしは三十七年ですね。従ってユネスコそのものが文部省の中にあって、その
勧告
の、許可制にするようにという事柄は、少なくとも検討するということについて大臣がまず検討すべき立場に立って知っていなければならない。それをす
通り
しているということの中に、私は日本のこういう
文化財保護
について、国民が今軽視の思想にあると思うわけです。
政府
当局もこういうものは十分の認識がない。それが
運営
の上にも欠点が現われておるのだ。これは直ちに改めなければならぬ問題だと思うのです。そのために大臣がおるので、この問題を、重要な日本の文化的な問題と世界文化的な共通した問題として、重要な問題として認識して、お互いに取り上げなければならぬと思うので、参考に申し上げておきますが、これはフランスのアンドレ・マルロー文化大臣――向こうには文化省がございます。その大臣がユネスコで演説をした中に、エジプトのあのアスワン・ダムの大工事のためにアブ・シンバル神殿のような世界人類の共有財産的な性質のものが埋没してしまうのだから、その保護の責任は当事国のみならず人数全体がこれを負うべきものであるという趣旨の演説をして、各国の代表者から非常な共鳴を受けた。またその演説の中に、もしカンボジアのアンコールや日本の奈良が隠滅の危機に瀕したら、世界中はやはり救済に立ち上がるであ
ろう
という大演説をしておるわけです。そういう奈良の世界人類の共有的な文化であるという認識はおそらく日本の政治家にはない。いわんや日本の
一般
の国民にもない。そこでこの中に、近鉄なんかは簡単に指定
地域
でないから届出さえすればいいというので、その付近に建てるという。
文化財保護委
員会の事務
局長
も、これは
法律
上やむを得ないのだと簡単に事務的に片づけるというムードがある。このムードを改造しなければならない。今や所得の倍増
計画
の中で設備投資がどんどん進んできている、そして観光行政に名をかりて文化財を犠牲にしてだんだんつぶしていくという現実をわれわれは直視して考え直すべきだ。これは
文化財保護委
員会に文句を言っても
解決
する問題ではなくて、国務大臣である
文部大臣
が一はだ脱いで、日本の文化行政の立場からいっても、あるいは日本の正しい青少年の
教育
手段としても、私は検討すべきものがあると思うので、この
機会
に十分認識してもらいたい。そして
文化財保護委
員会は外局である、大して直接は
関係
がないということではなしに、真剣に取り上げてもらわなければならぬという性格があるのだ、こういうことを大臣に直接申し上げたいのです。あと、この
委員会
において
参考人
、学者等を呼んで聞くというところまで
委員会
で決定しておるのでありますから、今のような認識を私は持ってもらいたいと思う。そういうふうな認識の中に各国の政治が動くことに、よって、戦争を防止するという大きい世界平和の問題も
解決
し得ると私は思うのであって、今申し上げたことを
基礎
にして、大臣の今後のあり方についての具体的な考え方も含んでお答え願えれば幸いだと思います。
荒木萬壽夫
71
○荒木国務大臣 日本の古典文化についてのそういう国際的評価を、
山中
さんと一緒に多とするものでございますが、アンコール・ワットや、あるいはアスワン・ダムの工事によってのヌビアの遺蹟の保護、これにも日本が協力しておるわけでありますが、それと同じレベルにおいて価値判断をしてもらったことはありがたいようなものの、危機に瀕したというようなことは、カンボジアとかアフリカのごときところではあり得るかもしれないが、日本ではあらしめてはならない問題としてとらえなければならぬと思います。そういう
意味
で、今
山中
さんの御高説を承ったわけですが、私も同感でございます。同時に妙なことを申し上げておそれ入りますが、日教組の指示によるか何か知らぬが、
学校
の先生が平城京の遺蹟等につきましても、これは昔の朝廷が労働と財産とを搾取して作ったものであるという角度から、変なセンスの教え方をしておると私は聞いておりますが、まず
学校
の先生が
山中
さんと同じような認識を持って子供たちにも教えてもらいたいと思うと同時に、
文部大臣
たる私の立場におきましても、今のお説をけんけん服膺しまして、相当重大な
文化財保護
行政の具体的な一つの対象として取り上げて、真剣な努力を注ぎ込まねばならないと、特に今のお説を拝聴して感じた次第でございます。
山中吾郎
72
○
山中
(吾)
委員
大臣はそれにこだわらないでいただきたい。それは封建諸候の権力によってできた文化にしても、上代の氏族
制度
の中に、そこの政治権力の力によって、日本の全力を注いで東大寺ができた、平安時代の貴族文明の中にも、それに応じた文化ができた、この歴史的事実をすなおに認めて、日本民族が残した文化財というものをわれわれが保護するということについて、いろいろな理屈は要らないと思う。われわれの日本の国土の中に固着しておる文化財、文化
地域
を保護していくということについては、あまりこだわらないでやるべきである。その中に民族の過去に対する正しい愛着と、またこれからの歴史触発展に対してもっと高いヒューマニズムを
基礎
にしたものが生まれていくのであって、そういう解釈もあるから消極的であったとかそういうことでなしに、そういう解釈があればあるほど、日本の民族の残した文化、あるいは世界的に大きい
意味
がある、しかも日本のあの
地域
の文化というものは、アジア全体の当時の一番高い水準があすこに集まっておるわけです。フランスのルーブル博物館に行っても、ギリシャを征服してギリシャから略奪した文化財もあのフランスのルーブル博物館にありますよ。しかしそれを世界の民族共通のものとして保護していく、そういうところの中に新しい政治もあるのであって、今のようにあまり気にかけないで、理屈を考えないで、もっと乗り出してもらわなければいかぬと私は思う。その点まだこだわっておられるのでしたら、いま一度お答えしていただかないと、どうも困る。
荒木萬壽夫
73
○荒木国務大臣 一つも私はこだわっておりません。そういう妙な
説明
を主眼にしてするので能事終われりとせずに、文化的価値判断を子供心にもわかるように教えるべきではないかという点にいささか不満を持っておりましたから、つい申し上げたわけですが、そういう
説明
は別にいたしましても、今のお話のごとく、世界的視野に立っても、重要な全人類的な文化財なりという価値判断をされるがごときものを持っておる日本人は幸福だと思いますが、その大事なものを子々孫々に伝える
意味
におきましても、これが保存のためには一生懸命の努力をしなければならないことを痛感いたします。
山中吾郎
74
○
山中
(吾)
委員
痛感だけしないで、具体的に一つ
政府
の問題として、文教政策の責任者の立場から、
機会
を見て推進役になっていただきたいと思います。 それから今のこういう保護の行政の中に、どうしても
解決
しなければならぬものは、文化財という個々のものを保護する行政なんで、
地域
を保護する行政がないわけなんです。そこで指定をしたものだけが保護されて、その指定したものを保護するために必要な周辺――その周辺が破壊されればそのものももうできないのに、個々のものを保護するという行政をしておるために、今のような矛盾が出ておると思うので、そういう
意味
においては東北の平泉であるとか、あるいは奈良、あるいは京都、あるいは各県に群集して一つの古代文明の発祥地のようないろいろの遺物が集合したところがあるわけですが、そういうものをたとえば――私は私見としてあるところで言ったのですが、国立文化財公園とか、その
地域
を全体として守らなければ文化財は保護できないのです。たとえば東大寺のはたに勝手に飲食店ができて火災が起こる、それで破壊をされるということが事実出て参りますし、また文化財の保護という立場からいって民族情操の
資料
にする場合には、そういうバランスのとれない施設が同じ場所に集合すればこれもだめ、そういう
意味
において、国立文化財公園というような構想を持って、現在の自然現象、原始的な景観だけを保護する国立公園でなしに、文化財を保護するため
地域
全体を、文化財の保護と観光
地域
とを兼ねるような
目的
を持ったそういう構想も必要じゃないか。同時に
文化財保護委
員会の内部の指定についての問題、保護についての問題の個々の
法律
改正
もこの
機会
に取り上げるべきじゃないか、こういうように思うのですが、そういう具体的なものを含んで推進をしてもらいたい。われわれも努力をいたしたいと思うのでありますが、この点はいかがですか。
荒木萬壽夫
75
○荒木国務大臣
文化財保護
法が議員立法で誕生したと記憶しております。私も当時賛成した一人であって、その当時の構想は、
地域
の広がりを対象として文化財的に取り扱うという構想がなかったと思います。だから国会の側でも十分に御検討をお願いしますと同時に、
政府
側も十分な検討をしまして、できれば
政府
提案
という形でありましょうとも、立法
措置
を講ずる
意味
から検討すべき問題と思います。今は感想だけしか申し上げられませんでおそれ入りますが、具体的な検討を一つ
文化財保護委
員会においてしてもらいたいと思います。
山中吾郎
76
○
山中
(吾)
委員
さらにこれは、また私すぐ立法論になっていかぬのですが、現在の
運営
から言っても、どこか
制度
的に迫力が出ない。それで現在の
文化財保護委
員会の
委員長
はすべて国務大臣をもって充てるということになると、そこから出てくる指導
方針
、指導精神、指導
措置
というようなものはずっと迫力があるものが出て、また予算
措置
についても迫力のある予算要求ができる。今おそらく
文部大臣
はあの
地域
のために十億の予算を要求するとか、そういうふうなことについて先頭を切られたことはあるはずがない。またそういう希望がない。そういう一つの基本的な機構についても、
文化財保護
行政の推進のために必要だと思うのですが、これについてはいかがでしょう。お答え願えますか。
荒木萬壽夫
77
○荒木国務大臣 立法論として一つのお説だと思います。具体的には
文部大臣
不信任案の
意味
もございまして申しわけなく思いますが、人によりけりということもございましょう。ただ今の
文化財保護委
員会が独立して職権を行なう、その職権を行なう人々の取りまとめをやる立場が
委員長
だと思います。そういう
意味
ではおのずから
文化財保護
行政について、文化財の価値判断それ自体につきましても、特殊の見識を持ち、
意見
を持っておるというふうな人が望ましか
ろう
と思うわけです。
現行法
の弁護的についなりがちでございますが、今の
制度
でありましょうとも、
文部大臣
という立場でもっと突っ込んで積極的な考慮をいたしながら努力するということで、当面はやっていけそうな気がいたします。将来、今の
制度
そのものに欠陥ありということが再確認されましたら、立法論は別といたしまして、
文化財保護委
員会と文部省とが一緒になって努力すべき課題かと思います。
山中吾郎
78
○
山中
(吾)
委員
私はそれは人によるとは思っていないのです。荒木文相が文化財に不熱心だからこうなっているとは思わない。
制度
だと思うのです。予算要求に大臣がほかの予算と同じような努力をする立場にないように
制度
ができておるからそうなので、たとえば清水事務
局長
が奈良付近の保護のためにあれを十分にするには十五、六億、十七億も要るという認識は持っているけれども、最初からこれはもうだめだというので予算要求していないのでしょう。何か文句があるなら言って下さい。要求したことはありますか。
清水康平
79
○清水
政府委員
予算の要求にいたしましても、会計法、財政法、国有財産法、いろいろ
関係
がございますが、文部省とよく連絡をとりまして、私のできることは大いに努力し、また場合によっては次官にも御苦労願い、大臣も予算の獲得に御苦労願っていただいておるのでございまして、これは大へん手前みそになるようで恐縮でございますけれども、
文化財保護委
員会発足当時の全体の予算が三億五千万円であったものが、昨年も今年も若干ふえまして、現在は約十二億くらいになっておるのでございます。もちろん私どもは、大臣もそうでございますが、これで十分だとは決して思っているわけではございません。少なくとも特別大きな問題がない限りは、正常の建前からいって、少なくともあと十七、八億ぐらいは、ほんとうの文化財行政をやるには必要ではないか、さように考えておる次第でございます。
山中吾郎
80
○
山中
(吾)
委員
すでに平城宮趾の保護のために十七億くらいは要求しておるべきはずだと思うのです。そして財政的に否定されておるなら別です。従って認識不足だ。清水事務
局長
の力では幾らさか立ちしても、全部で十七、八億しかとれないのです。大臣が責任をもってやれば、三十億、四十億とれると思うのです。日本全体の文化財の保護じゃないですか。そこで私は、機構の問題で、人の能力の問題ではないと申し上げたのです。さらにこれも、大臣と事務
局長
が、
委員長
、事務
局長
、係長、三役をみな兼ねているような格好だから、どうもよくないと思うのですが、何でもかんでも事務
局長
に聞かねばならぬので困るのです。こっちへ来られないようなお年寄の大人格者を
委員長
にしておったのではだめだと思うのです。問題は国宝級の文化財を保護しておるもの、あるいは永久に保存をしなければならないようなそういう遺跡を持っておる地主も、税金をとられておる。相続税もとられる。そうしてこれを大事にしなさいというふうな、そんな保護行政であるからなくなっていくと思うのです。そこでこの点については少なくとも、たとえば大阪の河内の仁徳帝の付近の何百という古墳、その中には上代の民族の生活を証明するたくさんの貴重なものがある。その土地を持っておる人は税金をとられる、相続税をとられる、そうなれば生活に窮して人に売ってしまう、土建業者がそれを買って、その墳墓を掘って何百万ももうける。とったあと住宅を建てる、自然そういうことになってしまうと思うのです。そういうものを一生懸命資材を投じて努力しておって、今度人に渡すときはまた税金をとられる、そういうふうな
制度
自体を私は改造しなければならぬと思うのです。これは現在のような
文化財保護委
員会の機構ではできっこない。やはり国務大臣をかしらに持ったものでなければならぬと私は思う。そういう税制の問題についても、根本に改造すべき問題があると思うので、これも
政府
の立場において税
制度
を改善をするという総合政策が必要だと思うので、その点も国務大臣として検討されるようにお願いしたいと思います。その点について、また立法論的なことになってしまいますけれども、やはり感想をお聞きしておきたいと思います。
荒木萬壽夫
81
○荒木国務大臣 今のお話の点も含めて先刻申し上げたような
意味
合いから、立法論として
政府
側としても検討すべきであ
ろう
と考えます。
山中吾郎
82
○
山中
(吾)
委員
それ以上聞いても仕方がないので、認識をしてもらいたいということを私は言っておるわけであります。 事務
局長
に伺いたいのですが、全問題になっておる平城京は指定外だからやむを得ないというふうに事務的に割り切っておられるのですが、これは将来指定することは不可能という問題ではないですね。指定できますね。平城京全体として保存する価値があるという認定ができれば、全体を指定できるんでしょう。それは
制度
上どうなっていますか。
清水康平
83
○清水
政府委員
指定しておりません平城宮趾の問題、約十四万坪ございますが、これは指定する価値ありということになりますると、形式的には、形式的といいますか、
法律
上の要件といたしましては専門
審議会
に付議して、そうして専門
審議会
におきまして答申があって、それによってやるべきでございます。しかしながら未指定の平城宮趾の跡ばかりでなく、
全国
的には日本の文化遺跡としてのものが相当あるわけでございまして、これは毎年いろいろ
調査
もいたし、指定する価値あるものはしておるわけでございますが、その平城宮趾の十四万坪について、今ここですぐ指定する価値があるかどうか、価値判断の問題でございまして、私からはあれこれ申し上げることは困難でございまするけれども、しかし平城宮趾の一部であって、非常に大切であるということはよく
承知
しております。それでもし、これはもちろん各方面の学者の
意見
、学者の
意見
にもいろいろありましょうが、最後的には専門
審議会
の
意見
になるわけでございまするけれども、たとえば
文化財保護委
員会といたしましては未指定の十四万坪のところで現在の時点における
計画
といたしましては、
文化財保護委
員会の付属機関でございまする国立奈良文化財研究所におきまして
年次計画
で、十五カ年
計画
で、現存指定地の中を発掘いたしておるわけでございます。しかし第二次
計画
で指定しておりませんけれども、西大寺の門があったであ
ろう
というところは現在
調査
いたしたいと思っているわけでございまして、そういうことを考えますと、少なくとも価値判断の問題は、私はし
ろう
とでありまするが、その辺のことは指定する価値が十分あるのではないかと事務的には思っておる次第であります。しかしいずれにしましてもこの十四万坪のところには相当の所有者があるわけでございます。未指定の十四万坪のうちの一万五、六千坪、今度近鉄が届け出てやることになっておるわけでございますが、そこにおられる土地所有者がやはり五十人近くおられるわけでございます。その人たちの積極的な理解と協力がないというと、現実問題としては非常に指定が困難になるということがあり得るということでございます。
山中吾郎
84
○
山中
(吾)
委員
事務
局長
はもちろん専門家でないから、それは価値があるかどうかということは答弁はできないでしょう。しかしその価値があるかということを
調査
をする推進役になるわけなんで、その付近を指定
地域
として価値があるかどうか
調査
させましたか。
清水康平
85
○清水
政府委員
全国
の貝塚、古墳、その他の遺跡については、常にこれを
調査
研究いたして、そうして価値あるものにつきましては、これを専門の
文化財保護委
員会にかけ、また専門
審議会
に付議してその答申を縛るわけでございます。もちろん未指定の平城宮趾も、比較考量の問題でありまするから非常に大きな大切なところだと思うのでございますが、あれを早く指定せよという問題は、私の知る限りにおきましてはごく最近承っているような
事情
でございます。いわんやあそこを買い上げるという問題につきましても、昨年文教
委員長
外
委員
の御視察の際に出てきた問題でございますが、いずれにいたしましても
文化財保護委
員会といたしましては、
全国
民があれを保存していかなければならぬのでございますが、特に地元の奈良県の人たちが、現在指定されて、しかも発堀を進行しつつあります特別史跡平城宮跡、そこへ未指定の問題を全部入れまして、
管理
団体である県当局が現今いろいろ
計画
を立てておりますので、その
計画
に基づきまして私どもは処理して参りたいと考えておる次第でございます。
山中吾郎
86
○
山中
(吾)
委員
調査
は、
調査
費を
委員会
が計上して
調査
員に経費をやらなければそんな
調査
なんてできるものじゃないので、
計画
に基づいて指定すべきかどうかの
調査
をしたかということを私は聞いたのですが、その答えにはなっていない。
清水康平
87
○清水
政府委員
平城宮跡の未指定の問題につきましては大体の見当がついておりますが、文化財研究所といたしましても、常に
調査
をなしつつあるわけでございます。ただし申し上げにくいのでございますが、申し上げますと、研究所の所員などが未指定地であるところへいろいろ参りましても、民有地の人たちのやはり心よい協力を得ませんと、
調査
はなかなか十分にいかないという節はあるのでございます。従いまして私は地元におきまして特に所有者の積極的な協力、心よい御理解、これがあればやれるのじゃないか。しかし先生のおっしゃいましたその
調査
が根本的な発掘
調査
になりますと、届出工事をしようとする近鉄のあの上地、一万数千坪でございますが、それの校本的な
調査
は数年かかるだ
ろう
と思っております。
山中吾郎
88
○
山中
(吾)
委員
従って、国が土地を買収しなければ不可能だというふうなことが、言外に出ておるわけなんですが、奈良県知事が、国が補助を出してくれれば買収してもいいということを表明しているそうですが、その点、事実間違いないですか。
清水康平
89
○清水
政府委員
ちょっと答弁が長くなるかもしれませんが、昨年文教
委員長
外各文教
委員
の先生方が御視察後いろいろな点において改善されてきつつあるのでございます。そのうちの最も顕著な事例といたしましては、地元におきまして、あの大切な遺跡を何とかしなければならぬ。少なくとも指定されておるところだけでも、できれば指定外でも、全体くるめて根本的に検討して結論をきめてからもって参るということになっておりますが、そのうちの、たとえば指定地の中に民有地が相当多いのでございますが、それをも含めて県でもって将来
管理
したい、それを買いたいという希望がもしありまするならば、その線に沿って、もちろん前向きの姿勢で開拓精神をもちまして努力して参りたいという気持は十分持っております。
山中吾郎
90
○
山中
(吾)
委員
あと
参考人
をまた呼んで、われわれの認識を正しくするための
機会
があるので、質問は終わりたいと思うのですが、
全国
的に埋蔵文化財でいろいろと支障を来たしておる個所を書物その他を見ると、ずいぶんあるわけなんです。岡山市の
関係
、岡山県はずいぶんあちらこちらに古墳の土地が企業の発掘になっておる。それから大阪堺市の
関係
、それから広島県にもある、福岡県にも、京都、大阪、香川、埼玉、茨城、おのおの上代の古墳
関係
の未
調査
のままで発掘し、企業が他の用途に使っているというふうな事例がたくさんあるようでございますから、
文化財保護委
員会の現在判明しておる
全国
的な
状況
について
資料
を出していただきたい。できますね。
清水康平
91
○清水
政府委員
わかっておる程度は……。
山中吾郎
92
○
山中
(吾)
委員
埋蔵文化財を、他のたとえば国立病院とか公民館を建てるためにつぶすというところもあるようでありまして、私企業だけでなしにそういうふうなことも書物を見るとあるのです。それをお調べ願いたいと思う。これは大臣の県で福岡県の須玖遺跡、そういう付近も何か十分に発掘しないままに他の用途に転用される危険がある。これは事実はわからないのです、書物を見ますとある。そういうものがあるものですから、その埋蔵文化の
調査
が十分できるように対策が立てられれば立てるべきだと思うので、
資料
をいただきたい。土建
関係
の者とか、建築技師というふうな者、そういう事業をやる場合について、何か技師の資格をやるときには、埋蔵文化財の取り扱いに関する要領とか、それを一つの学習、技師免許の単位に条件としてやるという、ヨーロッパあたりなんかある、そういうふうなことも、一つの文教政策に入ってくるので、もっと総合的に、考えればうまくいくような
方法
がありそうに思う。それを参考にしたいと思うので出していただきたい。 きょうは、私の質問はこれで終わります。
櫻内義雄
93
○
櫻内委員長
次会は来たる十二日月曜十時半に開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十七分散会