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1962-03-09 第40回国会 衆議院 文教委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月九日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 八木 徹雄君 理事 米田 吉盛君    理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    坂田 道太君       田川 誠一君    高橋 英吉君       中村庸一郎君    濱野 清吾君       松山千惠子君    南  好雄君       杉山元治郎君    三木 喜夫君       鈴木 義男君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部政務次官  長谷川 峻君         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 清水 康平君  委員外出席者         参議院議員   豊瀬 禎一君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局記念         物課長)    滝本 邦彦君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 三月八日  委員前田榮之助君辞任につき、その補欠として  松前重義君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員淺沼享子君及び山口シヅエ辞任につき、  その補欠として井伊誠一君及び前田榮之助君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月八日  学校法人紛争調停等に関する法律案内閣提  出第一二一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校法人紛争調停等に関する法律案内閣提  出第一二一号)  学校教育法の一部を改正する法律案千葉千代  世君外四名提出参法第七号)(予)  学校教育法の一部を改正する法律案豊瀬禎一  君外四名提出参法第八号)(予)  義務教育学校教科用図書無償に関する法  律案内閣提出第一〇二号)  義務教育学校児童及び生徒に対する教科書  の給与に関する法律案山中吾郎君外九名提出、  衆法第一三号)  教科書法案山中吾郎君外九名提出衆法第一  四号)  文化財保護に関する件      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  学校法人紛争調停等に関する法律案議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。長谷川文部政務次官
  3. 長谷川峻

    長谷川政府委員 このたび提案いたしました学校法人紛争調停等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容あらましを御説明申し上げます。  わが国学校教育において、私立学校は重要な一翼をにない、その特色ある教育と伝統ある学風によって教育文化の進展に多大の貢献をしているのであります。  ところが、名城大学に見られるごとく、学校法人理事評議員の間において長期にわたり、深刻な紛争が続けられ、ために、理事会の機能は、麻痺し、法令寄付行為等に違反する事態が起こっている私立学校があるのは、遺憾なことであります。  このような事態を放置することは、ひとり当該学校教職員学生、父兄の不幸であるばかりでなく、私立学校全般の名誉にも関係する重大問題であります。  本法案は、このような事情に照らし、学校法人紛争解決のための措置として、次の方法を講じようとするものであります。  まず、第一に学校法人紛争は、本来訴訟では解決のできない性質のものが少なくありませんので、新たに調停制度を設けて、所轄庁の任命する調停委員による調停を行ない、学校法人紛争実情に即して公正迅速に解決しようとするものであります。  第二に、調停委員により成立した調停を受諾しながら、当事者が、これに違反し、それに対する是正命令にも従わない場合、または、あらゆる方法を尽くしてもなお当事者調停案を受諾せず、このため紛争が継続し、学校法人の正常な管理および運営をはかることができないような場合は、所轄庁私立大学審議会等意見を聞いて、当事者解職または辞職勧告をすることができることとし、第三に、さらにその勧告にも応じない場合において、やむを得ない手段としてその者を解職することができることといたすものであります。  従って、これらの措置は、現行法により認められている解散に至る前の救済方法と考えられるのであります。  なお、この法律案は、以上の措置によりまして当面する紛争をできるだけすみやかに解決し、学校法人の正常な管理及び運営を確立しようとするものでありますので、その有効期限を二年といたしました。  以上が、この法律案提案理由及び内容あらましであります。何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 補足説明がありますので、これを許します。杉江局長
  5. 杉江清

    杉江政府委員 ただいま提案になりました学校法人紛争調停等に関する法律案につきまして御説明がございましたので、若干補足説明をいたします。  条を追って御説明申し上げます。  第一条は、この法律案目的規定するものであります。この法律は、学校法人紛争が生じ、これにより学校法人の正常な管理運営が行なわれなくなり、そのため当該学校法人法令規定に違反するに至ったという三つの要件に該当する場合において、調停委員による調停その他の措置を行なうことにより、学校法人の正常な管理運営をまかり、もって私立学校における教育の円滑な実施に資することを目的とするものであります。  第二条は、用語の定義をいたしております。すなわち、この法律における用語のうち、学校法人私立学校または所轄庁とは、私立学校法でいうそれぞれの用語と同様であり、また、この法律において学校法人紛争とは、学校法人役員または評議員の間における当該学校法人管理及び運営についての紛争をいう旨を定めております。また、この法律における当事者とは、学校法人紛争関係ある役員または評議員とし、当該紛争により役員または評議員の地位を失った者を含む旨を定めるものであります。  第三条は、調停の開始についての規定であります。学校法人紛争により、学校法人の正常な管理運営が行なわれなくなり、そのため当該学校法人法令規定に違反するに至った場合において、所轄庁は、当事者の申し出または審議会の建議もしくは審議会意見を聞き、職権により調停委員調停を行なわせることができることとするものであります。  第四条は、調停委員三人以上五人以下とし、事件ごとに、審議会委員その他学識経験者のうちから任命することを、第五条は、調停委員の権限として、当事者出頭を求めて意見を聞き、また資料提出を求めることができる旨を、第六条は、調停の成立を困難にするおそれがある行為につき調停委員が必要な勧告を行ない得る旨を規定したものであります。  第七条は、調停を行なっているうちに、当事者の間に合意が成立し、その合意調停委員が相当と認めて調停書に記載したときは、調停が成立するものとする規定であります。  第八条は、調停案による調停についての規定であります。自然の合意による調停が成立しないときは、調停委員は、当事者意見を聞き全員一致調停案を作成し、期限を付して当事者に受諾を勧告することができることとし、この場合調停委員は、調停案を公表することができることとしております。当事者全員が、その期限内に調停案を受講したときは、調停が成立いたします。これを原則といたしますが、全員が受諾しない場合においても、調停委員が、受諾した者だけの間においても調停を成立させることが適当と認めるときは、それらの者の間にいわば一部の調停が成立することとして紛争解決に資することとしております。  第九条は、成立した調停内容を確保するための所轄庁措置として、必要な報告を求め、また調停内容に違反した場合等に是正のため必要な措置を命ずることができることを定めたものであります。  第十条は、解職または辞職勧告及び解職等について規定したものであります。すなわち、所轄庁是正命令違反者、または、調停の成立しない当事者について、その者が当該役員または評議員の職にとどまっていたのでは学校法人の正常な管理運営をはかることができないと認めるときは、所轄庁は、あらかじめその者に弁明の機会を与えるとともに審議会意見を聞いた上、当該学校法人に対しその者の解職勧告をすることができることとし、なおこの場合当該学校法人勧告にかかる措置実施することができないと認められるときは、法人にかえて直接その者に辞職勧告することができることを定め、さらに勧告にかかる者が解職されない場合または辞職しない場合において、学校法人の正常な管理および運営をはかるため他に方法がないと認められるときは、やむを得ない措置として、当該勧告にかかる者を解職できることとしたものであります。  第十一条は、調停委員調停を行なわせるため必要があるときは、所轄庁資料提出帳簿書類等調査ができることとし、第十二条は、この法律規定の準学校法人への準用について定め、第十三条は、実施規定政令への委任について定めたものであります。  最後に附則は、この法律施工期日及び経過措置等について定めたものでありますが、第四項において、この法律施行の日から起算して二年を経過した日に効力を失うことを定めております。  以上がこの法律案の概要であります。      ――――◇―――――
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に予備審査のため付託されております学校教育法の一部を改正する法律案参法第七号)及び学校教育法の一部を改正する法律案参法第八号)の両案を一括議題とし、提出者より提案理由説明を聴取いたします。参議院議員豊瀬禎一君。     ―――――――――――――
  7. 豊瀬禎一

    豊瀬参議院議員 ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  御承知通り義務教育学校における児童生徒健康管理並びに保健指導のことに関しましては、その沿革は古く、大正十一年の文部省学校看護婦配置に始まり、その後、学校衛生婦学校養護婦等の名称のもとに、逐年関係職員は増加し、保健管理充実して参りましたが、さらに昭和四年には文部省訓令をもって学校看護婦職務内容が明らかにされたこと、昭和十六年の国民学校令においては判任官待遇養護訓導として職務制度の確立をはかったことがあげられます。また戦後の新学制においては、昭和二十二年の本法制定に伴う養護教諭の設置、次いで昭和三十三年の学校保健法制定へと進み、学校における保健管理は、教育の重要な一部門として位置づけられたのであります。  すなわち、学校教育法第十二条の「学校においては、別に法律で定めるところにより、学生生徒児童及び幼児並びに職員の健康の保持増進を図るため、健康診断を行い、その他その保健に必要な措置を講じなければならない。」と規定され、学校保健法第一条でも同様の趣旨が規定されております。これらの規定は、地域学校種別学校規模の差異や大小にかかわらず、すべての学校において、保健管理が綿密な計画のもとにひとしく実施されることを求めていると解するのは当然のことであります。  かくして、学校医常勤制ではないわが国においては、養護教諭配置がきわめて重要なことであるとされ、学校教育法第二十八条並びに第四十条において、小学校及び中学校には養護教諭を置かなければならないとされました。もっとも、本法制定されました昭和二十二年当時にあっては、養護教諭養成が緊急に間に合わなかったため、同法第百三条において「当分の間、養護教諭は、これを置かないことができる。」とされたことも、また事情やむを得ないものがあったと考えられます。  しかしながら、学校撒布法施行後十五年を経た今日なお、財政上等理由をもって、これが養成並びに配置は、遅々として進まず、その全国平均配置率は、わずかに小学校二五・七%、中学校一八・二%であり、しかも、配置地域格差もはなはだしく、たとえば、小学校配置のよい東京都の七九・五%、佐賀県の五九・四%、福岡の五七・二%に対して、悪いのは、島根の二・七%、栃木の六・一%、徳島の一〇・二%などで、これらの実情はまことに憂うべきことと申さねばなりません。  この点につきましては、今日までの国会審議において、始終問題とされ、両院の文教委員会の決議にもしばしば取り上げられたところであります。  さて、一方、昭和三十三年に制定されました公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律においては、養護教諭に相当する定数小学校児童千五百人に一人、中学校生徒二千人に一人という標準で算定するという方式がとられているために、これが定数増加は、なかなか期待できない状況にあります。  このような事態を反映して、昨年度の文部省調査によっても、市町村支弁養護関係職員が約四千名もあること、また地方には、養護教諭相当数一般授業を担当したり、困難な数校兼務をしているという事実が指摘されるのであります。  従いまして、法に定められました目的を本当に実現していくために、この際、年次計画をもって段階的に養護教諭増員し、七年後には、すべての公立小中学校養護教諭配置することを期して、本改正案提出致した次第であります。  次に、本案内容といたしましては、第一に、昭和四十三年度からはすべての小、中学校養護教諭を置くこと。第三に、養護助教諭制度を確立し、養護教諭のかわりをなし得ることとすること。第三に、公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の一部を改め、今後六年間にわたって年次的に教職員定数のワクを広げることを規定しております。第四には、本法施行期日昭和三十七年四月一日としております。  ここで特に申し添えたいことは、こうした措置によって、従来、ほとんど養護教諭配置されなかった僻地小規模学校にも正規の養護職員が迎えられるわけで、現行政令により、五学級以下の小学校では学級プラス〇・三人という過少な配当率であるものが、少なくとも昭和四十三年度以降においては、学級プラス一人の配当率が確保されることとなり、これによって僻地教育振興健康管理の徹底が大いに期待されるものであります。  もう一つの点は、養護教諭の緊急な養成についてであります。これは今後の重要な問題でありまして、昭和三十七年度の文部省予算要求にも二百数十万円の養護教諭臨時養成費が計上されておりますが、こうした措置が一そう拡大強化されることを大いに期待するものであります。  なお、本案における第一年度たる昭和三十七年度の増員は、約四千名の市町村支弁養護職員を、とりあえず県費負担教職員に切りかえることを主眼としております。  続いて、ただいま議題となりました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  わが国教育制度は、新憲法のもとに大きな改革が行なわれたのでありますが、わけても、義務教育の年限を延長して、一般国民教育水準を高揚し、学術文化振興に資する基盤をうちかいましたことは、最も重要な改善でありました。  自来十数年を経ました今日、小学校中学校等における教育は、ようやくその施設設備の整備と内容充実を見るに至りましたが、それにもかかわらず、これらの義務教育学校においては、さき提案されました養護教諭の問題とともに、いま一つ、事務職員に関する問題が未解決のままに取り残されているのであります。  事務職員が担当処理すべき学校事務内容は、文書、人事、保健、厚生、渉外等いわゆる庶務的なものから、給与その他の会計に関するもの、校地、校舎、備品、消耗品等管理の面に至るまで、多岐多様にわたるものであります。学校事務の円滑機敏な処理いかんが、直ちに学校運営に及ぼす影響の僅少でないことに思い至りますならば、学校教育の効果を遺憾なく発揮させるための推進力として、事務職員の果たしつつある役割は、まことに大きいと申さねばなりません。  しかるに、御承知通り学校教育法第二十八条の第一項には、一応、「小学校には校長、教諭養護教諭及び事務職員を置かなければならない。」と規定しながら、そのただし書きには、「特別の事情のあるときは、事務職員を置かないことができる。」となっており、このことは、同法第四十条及び第七十六条において、そのまま中学校及び盲、ろう養護の諸学校にも準用されておりますために、現在、義務教育学校における事務職員配置はきわめて不十分であります。昨年五月一日の調査によりますと、全国公立小中学校配置されております事務職員は、小学校二万二千七百十四校に対し四千七百七十四名、中学校一万二千百二十五校に対し四千四百四十四名にすぎない実情でありますし、特に、千葉、大分、鹿児島の諸県におきましては、一人の事務職員が三校ないし六校を兼務させられている場合もあり、過重労働の結果は、長期欠勤のやむなきに至るという実例さえも報告されているのであります。  さらにまた、事務職員の全然配置されていない小学校中学校等においては、児童生徒教育を担当しながら学校事務を分担処理しなければならない教師負担がきわめて重く、その本来の使命である教育活動に至大の障害を与えている現状であります。  このような状況にありますことは、一面、地方公共団体財政事情によるところでもありましょうが、その主たる原因は、むしろ、事務職員必置法制措置が行なわれていないことに存すると申すべきであります。それゆえに、さきに申し述べました学校教育法第二十八条第一項のただし書きはもとよりのこと、公立義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律による教職員算定基準についても改正を加えて、事務職員増員をはかるとともに、教師を過重の勤務から解放して、学校教育に専念せしめることが、喫緊の急務であると信ずる次第であります。  以上がこの法律案提案理由でありますが、次に法案内容について、そのあらましを申し上げます。  まず、第一に、学校教育法第二十八条第一項のただし書きを削除し、小学校及び中学校並びに盲学校ろう学校及び養護学校小中学部には、事務職員を必置すべきことを明確にいたしました。  第二に、義務教育学校学級編制及び教職員定数標準に関する法律の第七条、第八条及び第九条について、小学校及び中学校においては、学校規模いかんにかかわらず、一名以上の事務職員を置き得るように、また、盲、ろう及び養護学校においては、現在事務職員配置されていない学校に、小中学部を通じて最低一名を置き得るように、それぞれの算定基準を改めました。  第三に、この法律昭和三十七年四月一日から施行することと定めてありますが、特別の事情のあるときは、第二十八条の規定にかかわらず、事務職員を置かないことができる旨を規定し、同時に、定数等標準法第七条及び第八条の規定の適用についての読替規定を設けて、昭和三十七年四月一日から同四十二年三月三十一日までの間、漸次事務職員増員充実をはかり、昭和四十二年度以降は完全必置となるように措置いたしました。  第四に、定数等標準法に、その施行令第四条の規定を掲げて、本校と分校とについての事務職員の数の算定基準を、より明確にいたしました。  その他若干の条文整理を行なってありますが、なお、この法案は、さき提案されました学校教育法の一部を改正する法律案に盛られてあります、養護教諭に関する改正を前提として立案してありますことを付言いたします。  何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  8. 櫻内義雄

    櫻内委員長 各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  9. 櫻内義雄

    櫻内委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま本委員会において調査中の文化財保護に関する件、戸籍に関する問題について参考人出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  なお、参考人の人選及び出頭日時等その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ若あり〕
  11. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  12. 櫻内義雄

    櫻内委員長 義務教育学校教科用図書無償に関する法律案義務教育学校児童及び生徒に対する教科書給与に関する法律案及び教科書法案の三案を一括議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、この際これを許します。山中吾郎君。
  13. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教科書価格値上げを一四%認可されたということを新聞紙しで見ているだけでありますが、それは事実でございますか。
  14. 福田繁

    福田(繁)政府委員 その通りでございます。
  15. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その十四%の値上げをした算出基礎といいますか、それについて詳しく御説明を願いたいと思います。
  16. 福田繁

    福田(繁)政府委員 教科書値上げの問題につきましては一般物価等値上げに関連いたしまして、製造原価等につきましても、用紙代あるいは印刷製本費、そういうものの値上がりを見込むと同時に、教科書製造におきまする人件費値上げというものもあるわけでございます。従ってこの労務費の上昇に伴います値上げあるいはまた編集費等につきましても若干の値上げを見込み、あるいは金利等値上がりも若干ございますので、そういう要素を見込みまして、経済企画庁で算定いたしましたのが一三・七%、約一四%ということになっております。
  17. 山中吾郎

    山中(吾)委員 教科書無償にするという政府方針と、値上げするということは別問題であるというふうにいつか文部大臣意見を述べておりましたけれども、、負担を受けるPTAから言いますと、これ以上矛盾を感ずるものはないのでありますから、その意味において、値上げ算出基礎を私は明らかにすべきであると思う。そういう意味において、ただ局長のように用紙代を若干値上げした、印刷代も若干値上げをした、労務費も若干値上げをしたということだけでは、私は教科書無償方針との関係において納得ができないので、詳しくその教科書の一三%何がしの値上げ算出基礎を明確にしていただきたい。きょうはできなければ次の機会でけっこうです。若干若干ということだけでは、これはPTAという立場から言いますと、負担をかけない無償原則に従って政府府が論議をしているときに、買う価格値上げになったということでは、幾ら理屈を言ったってそれは納得しない。そういう意味において正確にお出し願いたい。
  18. 福田繁

    福田(繁)政府委員 それでは先ほど申し上げました点をもう少し具体的的に申し上げたいと思います。  用紙代につきましては大体五%の値上がりを見ております。それから印刷製本費につきましては四五%の値上がりを見ておりまして、それぞれの原価に占める割合を大体五十五対四十五の割合に見まして、数量増も若干ありますので、そういう数量増の点を考慮しまして、前年度比にいたしますと製造原価が大体三十六年を一〇〇にいたしますと一四一・一%というような計算をいたしております。それから営業販売関係内容でございますが、職員給与は、一般公務員等も上がったわけでございまして、三十六年度に比しまして一二%上昇しているという見込をいたしております。それから一般管理費につきましては一八・九%増加を見込んでおります。そのほかに荷作り発送費等も相当労務を伴いますが、それについても約三〇%の増加を見ております。それから宣伝広告等の経費は、これは値上げをいたしませんで、三十六年の実績額を抑えているというようなやり方でございます。それから編集費は約一三%の増を見込んでおります。それから金利におきましては、これは一部分でございますけれども、十五%程度の値上がりを見込んだのであります。それから印税等につきましても、総売上額の三・七%程度を見ておりますが、これは大体三十六年度の実績通りでございます。それから利潤等は大体売上総額の三%でございますので、これは大体前年通りでございます。それから販売手数料等も、これは大体売上総額の一六%程度でございます。これも従来の通りでございます。今申し上げましたように、製造原価におきまして、用紙代あるいは製本印刷費等の増加値上がりを見込んでおります。それから労務費管理費の一部について値上がりを認めている。そのほかに編集費等の増額も見ておりますが、そういう関係でございまして、これは一般の物価上昇に伴いましてこの教科書の製造発行に関係して、いわゆる原価計算の内容について、従来の実績よりもそれぞれの各要素について値上がりを認めないと困るというような立場から、やむを得ざる部分についての値上げを認めた、こういうことでございます。
  19. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この算出基礎が総領で二二・七%の値上がりになっているかどうか、今お聞きしただけではわからないのであります。何かそれより多い算出基礎になっておりますが、業者の方かしは幾ら値上げを要求したわけですか。
  20. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまの告事項についての上昇を見まして、それから発行部数によって、これはいろいろ違いますので、そういう発行部数を勘案いたしまして一三・七%というものを計算したわけでございますが、教科書会社からは大体二割五分四厘の値上げを要求しております。
  21. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それの一覧表を次の委員会に出していただきたい。よろしゅうございますか。
  22. 福田繁

    福田(繁)政府委員 提出いたします。
  23. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その利潤の関係について、大小出版会社がたくさんあるわけですが、どの企業の規模を標準にして利潤を考えておられるのですか。
  24. 福田繁

    福田(繁)政府委員 大体算定いたしました資料として用いましたのは、専業十二社のうちの十社でございます。その資料をもとにして計算をいたしたわけです。
  25. 山中吾郎

    山中(吾)委員 専業十二社というのは、結局一番大きい方から数えて十二社が専業十二社になりますか。
  26. 福田繁

    福田(繁)政府委員 これは会社の大小によりませんが、大きいものも相当含まれております。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういう大きい企業の十二社が利潤三%というのは僕はどっかに間違いがあると思います。それは資料を一度見せていただきますけれども、大きい会社の方はもっと利潤があるのではないですか。専業十二社というのは大体大きい方からの基準で、今説明された利潤は三%だというのはどうも私は疑問です。小さな企業の場合についてはわかる。その点については今十分明確にお答えできなければ次でけっこうです。これは私どもは納得できないので、いま一度明確にしていただきたいと思います。
  28. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま申し上げましたのは、教科書発行の専業会社をとるのが一番数字としては妥当と考えまして、その中の十社をとったわけでございますが、大体利潤三%というのは、これは過去の実績でございます。専業は十二社しかございませんので、その十二社の中の十社をとったということでございます。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)委員 専業でないのはたくさんあるわけですか。そうすると出版会社は相当あるわけですね。
  30. 福田繁

    福田(繁)政府委員 兼業を含めますと八十六社くらいございます。
  31. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大蔵省あたりには、教科書値上げの場合について、何か各地の税務署その他から調査した資料からいいますと、ずいぶん不当、過当競争の結果支出しておる金も莫大なものがある。こういうものを節約をすれば、十分値上げする必要がないというふうなことをいっておるわけなんで、その資料を出せといったら出してもいいのですけれども、もう少し私はこの問題については疑問があるので、この点についてはまだ納得しない面がたくさんあります。特にこの教科書無償という方針の場合、不明確な値上げというものを持ってきて、父兄に納得さすわけにはいかないだろうと思うので、その点についてはこのお答えだけでは不明確で、私は満足できないということを先に申し上げておいて、資料を出していただきたい。  次に無償とそれから値上げは別問題であるというのは理屈なんで、無償方針を是としておるならば、値上げをしなければならぬ分だけ国が出してやればいいというのが端的な理論だと私は思うのです。全部無償にするという方針まで持っておるのですから、値上げをしてその分だけPTA負担をかけるという現実があるならば、値上げをしなければ出版会社が出版できないといえば、常々と国が補助をすべきだ。その分だけは補充すべきだ。米麦について二布価格制度をとっているくらいですから、無価の方針の前に立っていう場合については、別問題だとは私は考えない。その点は文部大臣は一流の別のものであるという理論を二、三回新聞に出されておりましたけれども、どういうふうにお考えなのかお聞きしておきたいと思います。
  32. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 結論から先に申し上げれば、山中さんも御指摘になりましたように別問題だと心得ております。もちろん教科書無償が一挙にできますることならば、値上げの問題もひっくるめて一挙動で解決する。結果的にはそうだって一緒になると思いますけれども、何しろ無償にすることそのことが立法措置を要し、教育の場における基本的な市大問題でもございますから、そのことを当然のこととして前提に置いて処置をすることもいかがかと存ぜられるところでございます。もともとこの値上げの問題というのは、一昨年の暮れごろから発行業者の方では頭痛の種になっておったようであります。それが先ほど政府委員から申し上げましたように二割五分ちょっと上回るくらいの値上げをしてもらわなければ、第一労賃が払えない、団体交渉等をやっておって、何ともその財源がないので苦慮をしておるということも実情のようでございまして、そういう状況下において教科書審議会の方でも業者からの直接陳情に基づきまして、自主的に昨年の春早々から審議に着手いたしまして、たしか前後六回か七回の審議を経て、教科書審議会としましては二割五分何厘というのは企業内努力でもっと合理化し得るはずだというふうな見解から、結論的には二割見当の値上げはやむないという建議をもらったのであります。その建議に基づきまして経済企画庁と相談をして、経済企画庁で大蔵省とも相談をしながら作業を進めまして、経済企画庁の査定の結論が一割四分の値上げにとどむべきであるという結論になりまして、先ほど来御説明申し上げたようなことになっておるわけでありまして、これは暮れ押し迫ってこのことを決定いたしましたが、教科書は、早いものは一月の末ごろからは従来の例からいきますと売り出される。その教科書の売り出し、山間僻地までも送り届けるという責任を持った発行会社の責任を果たす意味におきましても、もし一部でも混乱を生じたらば大へんなことでございますから、混乱を生じないようにするためにも、やむを得ざる範囲の値上げ認可は余儀ないことではないかと判断をいたしまして認可をいたし、幸いにして教科書の配給につきましてはいささかの混乱もなしに着々と配付されておることは御承知通りでございます。従って別問題だと申し上げるのは、具体的に直面します教科書の円滑なる配給を確保するということに関連して、当面差し迫った一つの物価問題として処理せざるを得ない。そのことが一つの課題であり、教科書無償の問題は憲法につながる教育政策の基本線に立った課題でもございますから、それはそれとして重大教育政策の課題としてとらえて今日まで参った。その意味においてそれとこれは別問題だと申し上げたのであります。
  33. 山中吾郎

    山中(吾)委員 内藤初中局長の言だったと思うのですが、あるいは大臣だったか知りませんが、いつかの新聞に、二割程度の値上げを必要とし、それをカバーするためにも教科書無償配付が検討されておる。最初から業者の方から二割以上値上げの要求をしてきた。上げなければならぬということに関連をして、それをカバーするために、この機会無償にしようじゃないかという論が最初の出発点であったということは、新聞の記事で私は覚えているのですが、そうでございませんか。
  34. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 これは理念的に言えば、全然別個の、次元を異にする課題であることは注釈を待たずして明瞭だと思います。かねて、何も教科書値上げの問題にかかわらず、できることならば憲法の趣旨を拡大していくという課題は以前からあったことは御承知通りであります。すでに数年前、小学校一年生の教科書を、憲法二十六条の理想を具現する一つの試みとして実施されたことがあり、さらにそれが経費の分担等、支払いの延期等の混乱のために事実上実施困難な事態に立ち至りまして、聞くところによれば一年生に対して入学祝いとして無償支給するのだということに趣旨が変わって実施され、それもまたいわば応急的な試みであったものですから、幾ばくもなく廃止された。それはそうですけれども、教科書無償の課題は文部省としても数年前すでに着手しているということからいたしましても、無償課題そのものは全然値上げの問題とは関係なしに従来から存続しておった懸案でもあるわけであります。ただ二割五分も値上げしなければ教科書の配給が混乱するおそれありとするならば、かねての教科書無償という課題を本格的に取り上げる一つの時期的なチャンスではなかろうかという気持は絶無であったとは申し上げかねると思います。ですけれども、必然的にそれとの関連においてのみ考えられたということはむろんございません。
  35. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私がこう申し上げるのは、父兄に負担をかけてはならないという一つの基本的な思想があって、値上げをするくらいならば、実際に教科書は運転資金その他の融資が一番困難なために発行について支障を来たしておるのだから、教科書金融公庫というものを作って父兄に負担をさせないで発行が適時適切にいけるように考えてやる、こういうのならば、私はわかる、住宅金融公庫と同じ構想に持っていくならばわかるが、無償に関する法案を出しておって一方に値上げをするということについては、どんなに理屈を言っても矛盾が残る。受け取る立場から言ったら矛盾が残るので、私は質問をしておるのであって、この点は文教政策として私は決して上等の文教政策ではないと思う。少なくとも賞賛さるべきような文教政策ではなくて、別な言葉で言えばずいぶんまずい文教政策である、こういうことを私は痛感するので申し上げておるのであります。  この値上げをおきめになる諮問機関の審議会のメンバーはどういうメンバーになっておるのですか。
  36. 福田繁

    福田(繁)政府委員 今メンバーを手元に持っておりませんので、後ほどお答えいたします。
  37. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この次の機会にお出し下さい。今そこにあるならばもちろんお聞きします。そのメンバーというのは公正に判断のできるメンバーであるかどうかということも、この機会に明らかにしておく必要があるのでお聞きしておくのであります。  今私が価格のことでお聞きしたのは、いわゆる基本的なものの考え方が、教科書行政について憲法の思想に基づいた無償方針なのか、あるいは社会保障的な立場に立って考えているのかということについても明確にしなければならないので、私はお聞きしておるわけです。この法案が出るまでの経過をずっと顧みてみますと、憲法の無償の法則に基づいてこの無償方針が出されてきたのか、あるいは社会保障的な政策として出されてきたのか、これは明確でないと思うのです。大臣の答弁の中にも、あるいはここの答弁ではないにしても、折に触れて意見を出されておる中にも、これは減税的な性格もあるのだ、社会保障的な性格もあるのだということを主として説明されておったはずです。その点について、その後心境あるいは考え方が変わってこうだというならそれでもけっこうでありますが、今までの経過からいって基本的な考え方について大臣の方からお聞きしておきたいと思います。
  38. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 憲法第二十六条の理想を敷衍しようとする基本線に立っておることは終始一貫しております。それは先刻も触れましたように、私一個の意見ということ以前の問題としても、文部省として最初に小学校一年の教科書無償にいたしましたときの法律そのものにうたっておりますように憲法第二十六条の理想を具現する試みとして、試みであったことに今度と違いはございますけれども、小学校一年ではありましても、差別なく学童すべてに無償で交付するということ、そのことが憲法第二十六条の趣旨を体しておることはきわめて明瞭であります。そういう線に立ってこの問題が取り上げられたことも確かでございますが、ただこの相談の過程におきまして、社会保障的な意義もあり、さらにはまた減税的な意義もあるということを申したことは意識しております。意識的に申した機会があったことはいまだに記憶をいたしておりますが、それは教科書無償の効果を敷衍して説明します場合に、当然連想される事柄、またまさに社会保障的な意義もあわせ持ち、あるいは減税的な意義もあわせ持つものであることは確かでございますから、そのことを特に強調して説明した機会はございました。しかし、だからといって憲法二十六条と全然別個の立場に立つなどということは構想としてあり得ないことだと存じておるのであります。
  39. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますと、同じ政府の大蔵省の考え方と文部省の基本的な考え方に矛盾があるので、私は大蔵省を呼んで聞かなければならぬ。大蔵省の方では、これは社会保障的なものである、従って基本的に貧富の差別なく全部無償にすることは不合理である、貧乏人の者にだけ出せばいいということを正式に新聞に発表いたしておりますので、この法律の基本的な精神について政府においては統一をされていない。従って大蔵省の責任者とここではっきりお答えを願わないと私は審議を進めていくことはできない。その点において、大蔵省が来るまで質問を保留いたします。
  40. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 この審議の過程でいろいろ議論が出たことは事実であります。ところがそういう途中の賛否の議論を経過いたしまして、最終的な終着駅は憲法第二十六条の趣旨を敷衍しその理想を実現する建前においてこの法律案が成案を得たわけでございます。途中の過程では御指摘のようなこともあったかもしれませんが、あくまでも憲法第二十六条の理想を具現する建前に立っておることをこの際申し添えさせていただきます。
  41. 山中吾郎

    山中(吾)委員 いま一度言っておきます。この法律の第一条の中に本憲法の無償原則に基づくといった明示は何もないわけなんです。今までの大蔵省の予算編成方針においてもその以後においても、この間大蔵省の主計官に聞いたときもそうなんですが、これは社会保障的なものであり、貧富の区別なく全部無償にするということについては反対の意見をはっきりされております。従って法案審議の前提として明確に政府が統一しなければ、私は審議を進めることはできません。保留いたします。
  42. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今申し上げたように、途中の議論ではいろいろあったかもしれません。意見を持っておる者がなかったとは言い切れないと思いますが、政府のいろいろの決定は閣議決定で最終段階に至ります。閣議決定の趣旨はまさしく憲法第二十六条の趣旨に基づいてこれを実施しようというのであります。社会保障などという概念から申し上げれば、貧富の差を一応つける、要保護、準要保護の学童に対して教科書無償で提供するという考え方が社会保障の態度だと思います。財源の関係から御案内のごとく七億円ちょっとの予算措置を講ずるにとどまりましたことは、別の意味で遺憾な点もございますけれども、しかしそれはそれといたしまして、社会保障の建前からする教科書無償も、むろんこれが完成されるに至りますまでは補充的に必要でございますから、準要保護児童の支給率も一%引き上げて予算の御審議を願っておる。衆議院で御決定いただいた予算の内容にはそういうふうにいたしまして、並行的にいたしておるのであります。社会保障の立場からならば、貧富にかかわらず、全小中学校児童生徒に対して教科書無償支給するという本法案の第一条の趣旨は成り立たないわけでございまして、憲法はまさしくそのことを意図しておる。また憲法第二十六条の趣旨に基づいておるというなら、そう書いたらどうかということもお説ではあると思います。ですけれども、いつかもお答え申し上げた記憶がございますが、あらゆる立法措置は憲法のらち内にある。この立法のたびごとに憲法第何条によりということは、必ずしも一貫した立法の形式ではないと私は心得ております。教育本法義務教育における授業料を無償とするという宣言規定がございますが、これとても何も憲法第何条ということを引用して規定してない前例からいたしましても、立法形式としては、あえて山中さんの御指摘のような必要はないと考えまして、この案を作成しておるわけであります。   〔「名答」と呼ぶ者あり〕
  43. 山中吾郎

    山中(吾)委員 名答でないから、いま一度お尋ねいたします。  学校給食については私らは無償を主張している。しかし、学校給食の場合は、これは憲法の無償原則であるかどうかということについては、私自身は疑問がある。従って無償にする場合にも、憲法のいわゆる人権、教育権とか、保障された立場において無償制度をとるか、極端な言葉で言えば恩恵として無償にするということも、行政的にはあり得ると思うのです。ことにこの法案は、調査会を設置するというふうな一つのあいまいもこたるものなんです、理屈はいろいろあっても。そういう関係から、今までの法案の論議の過程から見ても、そしてまたその過程があるからこそ、基本的な精神を第一条に書くべきであると私は確信するのですが、そういう意味において、やはり疑問は残る。政府は今までの中においてその点明確にされていない。私は受け取れない。従ってこれ以上の審議は保留して、次の機会に明確にしてもらって、また質問を続けたいと思うのです。
  44. 櫻内義雄

    櫻内委員長 他の委員質疑は後日に譲ります。      ――――◇―――――
  45. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、文化財保護に関する件等について調査を進めます。資料の要求がありますので、この際、発言を許します。谷口善太郎君。
  46. 谷口善太郎

    ○谷口委員 これは私が知らないからお願いすることになるのかもしれませんが、重要文化財が、戦後の状況の中で法律の網の目をくぐってかなり海外に流れ出ておるという実情があるようであります。私は京都でありまして、京都に国立博物館がございますが、この博物館の関係者あたりに聞きましても、大へん憂うべき状態にあるというふうに聞き及んでおるのであります。これらにつきましては私どもも今具体的に調査しておりますので、いずれその結果を持って当局に御質問するときがあると思います。これに関連しまして、重要文化財として指定されているものの、戦争前から現在に至るまでの移動というようなものの資料があると思うのですが、そういうものを出していただけないかどうかということであります。特に、いわゆる重要文化財から国宝になったものもこの期間にはだいぶあるかと思います。また、新しく重要文化財に指定されたものもあると思います。それらがどういうふうな移動をここ十年間にしておるかという点を、できればリストが欲しいのですが、非常に膨大なものですからちょっと困難かと思いますが、数字的に明らかにできる資料がありましたら御提出願いたいと思います。ことに、現存するものにつきまして正確に資料を出していただけたら、今後審議する上に大へん助かる、こういう点お願いできないものかと思うのですが、どうですか。
  47. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ただいま文化財保護委員会の事務当局が来ておりませんので、ただいまの資料の御要求が直ちに間に合うかどうか、ちょっと確答はできませんけれども、今の御要求の趣旨をメモさせておりますから、文化財保護委員会の方に伝えまして、できれば次の機会までに資料として提出いたします。
  48. 谷口善太郎

    ○谷口委員 けっこうです。     ―――――――――――――
  49. 櫻内義雄

    櫻内委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。
  50. 山中吾郎

    山中(吾)委員 現在平城宮の埋蔵文化財を中心として、いろいろの企業が企業的立場で整地をするために、民族的文化が破壊されようとしており、考古学者、歴史学者並びに建築史を専門としておる学者あるいは地元の奈良県知事その他関係の民族的文化遺跡を持っておる執行機関というものが非常に心配をしておる。ある意味においては、日本の埋蔵文化界の危機という言葉で心配をしておるのが現状であります。そこで、文部大臣は常に愛国心をもっと作らなければならない、教育本法改正ということも再検討するべきであるというふうな表現をしながら、よき日本人としての立場を教育の中に入れようという思想を出しておられる。そのときに、ほんとうの意味において日本の民族的な文化というものを保護する、そうして修学旅行その他でもそれを見聞するという努力をされることが、あなたのそういう思想を裏づけるのに正しい政策だと思う。ただ修身の時間を一時間ふやしたとか、法文をいじくったということではそういうものはできないと私は思う。そこで、機構的に文化財保護という行政は自分には直接関係はないのだといって傍観をされる立場でなくて、荒木文相も同時に国務大臣であるのだから、一はだも二はだも脱いで、このかけがえのない、われわれの祖先の生活様式あるいはアジアの全領域から集中された、一度つぶしてしまえば二度と復活できないようなものについての保護に対しては、国務大臣としてまじめに考えなければならぬ問題だと私は思うのです。何か党派性をむき出しにして、組合に対する批判を含めながら道徳教育振興であるとか、あるいは基本法改正とか、あるいは日本人的性格が薄いからもう少しどうだとか、そういう言葉だけを弄されるということが国務大臣、文部大臣としての責任では決してないと私は思う。その意味において、今平城宮を中心として、その他岡山県の古墳はほとんどつぶされておる、あるいは堺市の臨海地域の開発に応じて百舌鳥の陵を中心とした古墳なども、土建業者その他によってじゅうりんをされつつある。日本の至るところのそういう埋蔵文化財というものが破壊されつつあるので、この点については国務大臣という立場を含んで私は何とかしなければならぬ立場であると思うので、その点のお考えを、まだ文化財の事務局長が来ておりませんので、まず大臣の方から、基本的な精神をお開きしておきたい。そして政治的に、文部大臣の立場からいっても、ひとはだ脱ぐ一つの姿勢をはっきりとされる必要があると思うのでお聞きしておきたいと思います。
  51. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 文部大臣という立場で、文化財保護行政に直接タッチする立場でないといつか申し上げまして、言葉足らない点を補足的に申し上げた記憶がございます。それは、文化財保護行政、文化財の価値判断につきましては、法律にも明記してありますように、文化財保護委員が、それぞれ独立してその職権を行なうということで処理すべき問題だと心寄る意味で、その点につきましては、私は直接関与できないのだと申し上げたつもりであります。もちろん、文化財保護委員の人選なり、人事関係一般、あるいは会計、予算等の世話をするということは、当然文部大臣の職責だというふうに心得ております。と同時にまた、文化財保護行政全般についての閣僚の一人としての政治的立場での責任者であるということも、むろん自覚しております。ついでながら申し添えさせていただきます。  先ほどの、平城宮の遺跡についての御質問についてお答えしたいと思いますが、私の承知しておりますところでは、今の近鉄会社が建設工事を始めつつある場所は、平城宮の指定地域外だと承知しておりますけれども、指定地域外といえども、平城官のもよりの場所であることには間違いございませんので、指定地外にも、地下埋蔵物等で文化的価値の高いものがないとは言い切れない。従って、法律制度に基づいて、強制的な処置はできないといたしましても、現実問題としては、考慮せわばならない課題でございますから、近鉄当局に対しましても、発掘途中において、もしそれとおほしきものを掘り当てた場合は、直ちに工事を取りやめて、すみやかに連絡をしてほしいという措置をいたしておるのでございます。全国的に、同じような貴重な文化財が埋蔵されておりそうな懸念のあるところに対して、十分の注意を怠らず、取り返しのつかないようなことにならないようにということは、かねてから手配をいたしておりますが、その点は、さらに十分の措置を講ずるような努力をしなければならぬと考えております。  それからなお、私が日教組を批判しますことは、何も妙な考え方じゃない、教育の場が共産勢力に牛耳られることはもってのほかだ、こう考えまして批判しておることは、かねて申し上げておりまして、御理解をいただいておるかと思います。この機会に申し添えさせていただきます。
  52. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣、まだ着工はしてないのですね。従って一カ月くらいまでは、まだ指導したり何かする手はあるのですから、その点一つ。  そこで私は、むろんあそこが指定地域であるかいなかという問題でなくて、たとえば第二次大戦の場合も、その当時の敵国であるアメリカでさえ、この奈良地域全体の文化財を保護しようとして、爆撃を意識的に回避したというふうな認識の上に立って、国務大臣としてもお考え願わなければならぬので、もっと大きい立場で、直接まず文部大臣に伺いたいと思うのですけれども、京都と奈良というのは、世界の国々においても、単なる日本の文化財地域ではないのだ、世界人数のためにやはり残すべきだという思想があってこそ、ああいう熾烈な、生きるか死ぬかという戦争の中でも回避をしておるのです。ところが日本の国民自体が、営利的な立場において現在近鉄が車庫を置くという地域、その地域が指定されている、いないということからの回避だけでなしに、奈良公園全体の風致、文化財を保護するために支障を来たす地域に、しかも指定外だというので、温泉地帯を作るとか、それからまた西部劇に出てくるような、ああいう雰囲気をかもす遊び場、夢の国ですか、そういうものを作ったりして、全体としてあの地域が破壊されつつある、その一環として私は考えなければならぬのじゃないかと思うのです。修学旅行というふうな文教行政の指導部面の立場に立っても、あの地域の、奈良時代その他の文化の雰囲気に触れて、日本の国を愛するというふうな情操を教育する場面が、同時にあの夢の国に遊ばす、温泉地帯に行かす、そしてその付近全体を全国の小中学校が修学旅行するというふうなことは、文教行政の中核的な問題としても、このまま捨て置けない問題じゃないかと私は思う。そういう意味において、あの地域を国務大臣として、つまり政府の立場において、これを買い上げて、国において保存するというふうなことを考えなければならぬ問題ではないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  53. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お話の趣旨は、大体私も賛成でございます。ただ、具体的に京都、奈良一帯を政府が直接管理できるような姿にしたらどうだという御高説は承っておきますが、具体的にそれに着手するような、具体性を持った意味においては、今にわかに御賛成申し上げるわけにもいかぬところもありますけれども、お気持はわかるような気がいたしますので、努力したいと思います。  なお、今事務当局が参りましたので、先刻の私のお答えに対しまして、補足的な必要があれば、政府委員からお答え申し上げさせていただきます。
  54. 清水康平

    ○清水政府委員 奈良、京都が、わが日本国民全体の心のふるさとであるばかりでなく、世界の最も大切なところであることは、だれもそう考えているところでございます。文化財保護行政の立場から申しますと、保護行政の内容のおもなことと申しますと、要するに国宝とか重要文化財、あるいは史跡名勝とかいうものに指定されているところについては、相当程度の管理、指導、指揮もできるのでございますが、指定していないところにつきましてはどうも手が届かない。極端な言い方で申しますと、点と線とだけしか守れないというのが今日の状況でございます。しかし、気持から申したならば、奈良などは、ただ単に指定されているところばかりでなく、全体が、その環境といい、風景といい、奈良の空気それ自体が、やはり広い意味における日本の大切な文化遺産でありますので、そういう方面につきましてどうするかということは、今後各方面の意見をお聞きし、御鞭撻を受けて努力して参りたいと思う次第でございます。  それから平城官跡で、指定してある地区につきましては、現在発掘を進行しているのでございますが、指定していない地区につきましては、地元の管理団体である県の無体的な決意を見まして、これを処理して参りたいと事務的には考えている次第でございます。
  55. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣、ちょうどいい機会でありますから、直接大臣の方に文化財関係に関連をして主としてお聞きしたいと思います、なかなか大臣はおいでになるときがないから。  ユネスコという事務局が文部省の中にある。そこで、ユネスコ事務局の仕事と文部大臣との関係は、どの程度に文部大臣がユネスコについては責任者になっておるのですか。あれはどういう関係になっているのですか。
  56. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ユネスコの事務局は、文部省内部の部局として置いてあります。その意味文化財保護委員会と文部大臣という立場とはもっと密着した他の文部省内の部局と同じ立場にある、文化財保護委員会は文部省に付置せられた外局である、という意味の違いがあると思っております。
  57. 山中吾郎

    山中(吾)委員 官房長、何か補足するところがあるようですから……。
  58. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 今大体大臣からおっしゃった通りですが、もっと法律的に厳密に申しますれば、文化財保護委員会は、文部省の外局でございます。ユネスコ国内委員会は文部省の、これは国家行政組織法の方では付属機関とい言葉を使っております。文部省設置法あるいはユネスコ活動に関する法律等には「文部省の機関とする」というふうにございまして、大臣は先ほど内部部局とおっしゃいましたが、その点は、外局に対しては内部部局的な色彩がございますが、厳密に申しますれば付属機関、文部省ではそれを所轄機関と呼んでおりますが、西洋美術飢とかあるいは科学博物館とか学校とかいったような、それらと並ぶべき所轄機関というふうに解しております。従いまして大臣との関係は、これは先ほど文化財保護委員会と文部大臣との関係文部大臣からあらためて説明されましたが、それほどの独立性――独立性という意味につきましては、どっちがより独立的であるかと言えば、気持としては文化財保護委員会の方がユネスコ国内委員会よりも文部大臣に対してはより独立性が強いものというふうに考えます。
  59. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この付属機関というのは、たとえば文部大臣と国立博物館その他の国立営造物との関係と同じであるとすれば、そこの機関にいる所長とか事務局長の任命とか指揮監督権はある。その意味におけるユネスコ事務局についての大臣の責任は、指揮監督という関係において、あることになりますか。
  60. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 指揮監督という言葉も、たとえば所轄、所管、管理、監督、いろいろ行政法的に言葉があるようですが、今先生がおっしゃいました指揮監督、これをどの程度解釈するかですが、大体所管とかあるいは指揮監督するとかいったような言葉で並べて言うときには、指揮監督までの強い権限は国内委員会に対して文部大臣は持っていないというふうに考えます。
  61. 山中吾郎

    山中(吾)委員 監督まではあるのですか、指揮じゃなくて。
  62. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 抽象的に指揮監督と申しますまでですが、国内委員会につきましては、ユネスコ活動に関する法律規定されておりまして、その法律には、ユネスコ国内委員会の所掌事務なりあるいは権限等が規定されております。従いまして、これらについて特に文部大臣がいかなる点について指揮をし、監督をするか、これは個々の問題について検討しなければいけませんが、文部省の内部部局といたしまして調査局がございますが、調査局の方でも、ユネスコ活動に関することは文部大臣の直接の権限として内部部局の調査局で行なうようになっております。そういうようなことから彼此勘案いたしますと、今先生がおっしゃいます直接指揮をし、命令をし、直接監督をするといったようなものは、国内委員会には文部大臣はないと思います。
  63. 山中吾郎

    山中(吾)委員 少しわからないのですが、いずれにしても、官房長が答えた僕の質疑関係を頭に置きながら大臣にお聞きしたいのですが、日本の埋蔵文化財の保存について、国際機関であるユネスコから三十一年度に勧告が来ておるということが前の委員会で明らかになって、私は知らなかった。そうして勧告内容は、こういう奈良地域その他を含んで埋蔵文化財の地域にいろいろの建物を建てたりする場合には許可制にするように、今は届出になっているのですが、許可制にするようにとか、あるいは調査を十分にするようにという勧告が来ておると聞いておるわけなんです。それについて、大臣はおそらくこれはお聞きにはなっていないと思うのですが、官房長、今言った勧告内容は間違いないですか。溝水事務局長でもけっこうです、大臣にわかるように答えてみて下さい。
  64. 清水康平

    ○清水政府委員 ただいまお話しの、ユネスコにおける三十一年十二月五日の総会におきまして、考古学上の発掘を規制する国際的原則勧告がございます。それは文化財保護委は会といたしましても、文部省から通知を受けて存じておる次第でございます。その内容は相当深く大きいのでございますが、一言的に申しますと、国によってそれぞれ違うではあろうが、考古学上発掘する場合、これは許可制にしてはどうかというのが中心の勧告内容でございます。御承知のごとく、日本におきましては学術調査は届出制でできるわけでございます。土木工事その他につきましても、もちろん届出制で工事が着工できるわけでございますが、文化財保護委員会といたしましては、将来許可制にしなければならぬ場合がかりに出てきた場合でも、全国のどこにどういう古墳があって、どういう貝塚があるかということにつきましては、必ずしも明確になっておりませんので、現在それを調査中でございます。しかる後に文化財保護委員会としましては、各方面の意見を聞きまして、検討の上、許可制にするかしないかということを、考慮いたしたいと思っておる次第でございます。
  65. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その勧告の中に、国内のそういう文化財の調査を進めるようにという勧告は入っておりませんか。
  66. 清水康平

    ○清水政府委員 ちょっと見当たらないのでございますが、文化財保護委員会といたしましては、昭和三十五、六、七の三カ年間にわたりまして全国の貝塚、古墳等の埋蔵文化財の調査をいたしておりまして、三十七年度におきましては全国的な埋蔵関係のいわゆる遺跡台帳を作る予定でございます。現在調査いたしておる途中でございます。
  67. 山中吾郎

    山中(吾)委員 今の遺跡台帳の調査した中間報告ができたら、その一覧表をいただきたい。  それから大臣、今ユネスコの関係文化財保護委員会の事務局長が答弁をいたしておるのでありますが、先ほど官房長と私の質疑応答の中で、ユネスコは文部大臣の付属機関なので、ユネスコの勧告は、文部大臣がその勧告に沿うて、国際信義上、また日本に存在する文化財は同時に人類の文化財であるという国際的な進歩した考えの中に来ておるこういう措置なので、文部大臣がこれにタッチをして、そして調査を進め、法改正を進めていくという――私は文部大臣がタッチをすべき問題だと思うのです。文化財の事務局長が答えておられますけれども、文部大臣の付属機関であるユネスコに来た勧告は、まず調査局から文部大臣に具申をして、文部大臣実施する権限がなければ、文化財保護委員会に助言するか、こういうふうに考えるのですが、その辺はどうなりますか。
  68. 宮地茂

    ○宮地(茂)政府委員 先ほど文化財の務局長がユネスコの問題に答えましたのは、なるほどおっしゃいますように、多少筋が違うといえば違うかもしれませんが、問題が文化財保護についてのユネスコの勧告でございます。従いまして、ユネスコの方でそういう勧告をなさいまして、政府としましては一応文部省が受けまして、それを、文化財保護行政に関することですから文化財保護委員会にこういう勧告が来ておる、きめられておるということを印し伝えまして、文化財保護行政の直接の責任機関である文化財保護委員会がその問題について検討するという流れでございます。従いまして回りくどいのですけれども、途中を省略いたしまして、文化財保護委員会も十分承知いたしておりますので、便宜上事務局長がお答えしたような関係であろうと思います。
  69. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そこで、勧告を大臣がつぶさに検討して、そして文化財保護委員会に助言をするとかということが当然なされたということになるのですが、そうじゃないですか。大臣はだんだん無関係にはあり得ないでしょう。
  70. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 無関係ではあり得ないと思います。ユネスコの国内委員会の事務局が文部省内に、建物の中にありますが、概念的には、さっき官房長が御説明申し上げましたように――私がお答えしたのと少しニュアンスが違うようですけれども、いずれにいたしましても文部大臣という立場でユネスコのことも、あるいは文化財保護のことも、当然総括すべき立場にあることだけは間違いない、かように思います。今御質問の点は、はなはだどうも恐縮ながら、私自身が念頭にございませんのを遺憾といたしますが、これは文部省で、ユネスコ委員会でこの勧告を受けて、文部省の立場から、外局である文化財保護委員会に移牒して、そして文化財保護委員会の事務局長が今お答えする程度に一応マスターしておる姿であって、その結論を、現行法改正して許可制にするかしないかという案件として、私のところまで知らしてもらう段階にきていなかったことだと私は承知するわけですが、その点もっとスピード・アップすべき問題も残りましょうけれども、文部大臣という立場とユネスコの関係文化財保護委員会の相互関係は、私はそういうことと心得ます。
  71. 山中吾郎

    山中(吾)委員 将来これを改善してもらいたいのだと言っておるのです。三十一年の勧告です。ことしは三十七年ですね。従ってユネスコそのものが文部省の中にあって、その勧告の、許可制にするようにという事柄は、少なくとも検討するということについて大臣がまず検討すべき立場に立って知っていなければならない。それをす通りしているということの中に、私は日本のこういう文化財保護について、国民が今軽視の思想にあると思うわけです。政府当局もこういうものは十分の認識がない。それが運営の上にも欠点が現われておるのだ。これは直ちに改めなければならぬ問題だと思うのです。そのために大臣がおるので、この問題を、重要な日本の文化的な問題と世界文化的な共通した問題として、重要な問題として認識して、お互いに取り上げなければならぬと思うので、参考に申し上げておきますが、これはフランスのアンドレ・マルロー文化大臣――向こうには文化省がございます。その大臣がユネスコで演説をした中に、エジプトのあのアスワン・ダムの大工事のためにアブ・シンバル神殿のような世界人類の共有財産的な性質のものが埋没してしまうのだから、その保護の責任は当事国のみならず人数全体がこれを負うべきものであるという趣旨の演説をして、各国の代表者から非常な共鳴を受けた。またその演説の中に、もしカンボジアのアンコールや日本の奈良が隠滅の危機に瀕したら、世界中はやはり救済に立ち上がるであろうという大演説をしておるわけです。そういう奈良の世界人類の共有的な文化であるという認識はおそらく日本の政治家にはない。いわんや日本の一般の国民にもない。そこでこの中に、近鉄なんかは簡単に指定地域でないから届出さえすればいいというので、その付近に建てるという。文化財保護委員会の事務局長も、これは法律上やむを得ないのだと簡単に事務的に片づけるというムードがある。このムードを改造しなければならない。今や所得の倍増計画の中で設備投資がどんどん進んできている、そして観光行政に名をかりて文化財を犠牲にしてだんだんつぶしていくという現実をわれわれは直視して考え直すべきだ。これは文化財保護委員会に文句を言っても解決する問題ではなくて、国務大臣である文部大臣が一はだ脱いで、日本の文化行政の立場からいっても、あるいは日本の正しい青少年の教育手段としても、私は検討すべきものがあると思うので、この機会に十分認識してもらいたい。そして文化財保護委員会は外局である、大して直接は関係がないということではなしに、真剣に取り上げてもらわなければならぬという性格があるのだ、こういうことを大臣に直接申し上げたいのです。あと、この委員会において参考人、学者等を呼んで聞くというところまで委員会で決定しておるのでありますから、今のような認識を私は持ってもらいたいと思う。そういうふうな認識の中に各国の政治が動くことに、よって、戦争を防止するという大きい世界平和の問題も解決し得ると私は思うのであって、今申し上げたことを基礎にして、大臣の今後のあり方についての具体的な考え方も含んでお答え願えれば幸いだと思います。
  72. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 日本の古典文化についてのそういう国際的評価を、山中さんと一緒に多とするものでございますが、アンコール・ワットや、あるいはアスワン・ダムの工事によってのヌビアの遺蹟の保護、これにも日本が協力しておるわけでありますが、それと同じレベルにおいて価値判断をしてもらったことはありがたいようなものの、危機に瀕したというようなことは、カンボジアとかアフリカのごときところではあり得るかもしれないが、日本ではあらしめてはならない問題としてとらえなければならぬと思います。そういう意味で、今山中さんの御高説を承ったわけですが、私も同感でございます。同時に妙なことを申し上げておそれ入りますが、日教組の指示によるか何か知らぬが、学校の先生が平城京の遺蹟等につきましても、これは昔の朝廷が労働と財産とを搾取して作ったものであるという角度から、変なセンスの教え方をしておると私は聞いておりますが、まず学校の先生が山中さんと同じような認識を持って子供たちにも教えてもらいたいと思うと同時に、文部大臣たる私の立場におきましても、今のお説をけんけん服膺しまして、相当重大な文化財保護行政の具体的な一つの対象として取り上げて、真剣な努力を注ぎ込まねばならないと、特に今のお説を拝聴して感じた次第でございます。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣はそれにこだわらないでいただきたい。それは封建諸候の権力によってできた文化にしても、上代の氏族制度の中に、そこの政治権力の力によって、日本の全力を注いで東大寺ができた、平安時代の貴族文明の中にも、それに応じた文化ができた、この歴史的事実をすなおに認めて、日本民族が残した文化財というものをわれわれが保護するということについて、いろいろな理屈は要らないと思う。われわれの日本の国土の中に固着しておる文化財、文化地域を保護していくということについては、あまりこだわらないでやるべきである。その中に民族の過去に対する正しい愛着と、またこれからの歴史触発展に対してもっと高いヒューマニズムを基礎にしたものが生まれていくのであって、そういう解釈もあるから消極的であったとかそういうことでなしに、そういう解釈があればあるほど、日本の民族の残した文化、あるいは世界的に大きい意味がある、しかも日本のあの地域の文化というものは、アジア全体の当時の一番高い水準があすこに集まっておるわけです。フランスのルーブル博物館に行っても、ギリシャを征服してギリシャから略奪した文化財もあのフランスのルーブル博物館にありますよ。しかしそれを世界の民族共通のものとして保護していく、そういうところの中に新しい政治もあるのであって、今のようにあまり気にかけないで、理屈を考えないで、もっと乗り出してもらわなければいかぬと私は思う。その点まだこだわっておられるのでしたら、いま一度お答えしていただかないと、どうも困る。
  74. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 一つも私はこだわっておりません。そういう妙な説明を主眼にしてするので能事終われりとせずに、文化的価値判断を子供心にもわかるように教えるべきではないかという点にいささか不満を持っておりましたから、つい申し上げたわけですが、そういう説明は別にいたしましても、今のお話のごとく、世界的視野に立っても、重要な全人類的な文化財なりという価値判断をされるがごときものを持っておる日本人は幸福だと思いますが、その大事なものを子々孫々に伝える意味におきましても、これが保存のためには一生懸命の努力をしなければならないことを痛感いたします。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)委員 痛感だけしないで、具体的に一つ政府の問題として、文教政策の責任者の立場から、機会を見て推進役になっていただきたいと思います。  それから今のこういう保護の行政の中に、どうしても解決しなければならぬものは、文化財という個々のものを保護する行政なんで、地域を保護する行政がないわけなんです。そこで指定をしたものだけが保護されて、その指定したものを保護するために必要な周辺――その周辺が破壊されればそのものももうできないのに、個々のものを保護するという行政をしておるために、今のような矛盾が出ておると思うので、そういう意味においては東北の平泉であるとか、あるいは奈良、あるいは京都、あるいは各県に群集して一つの古代文明の発祥地のようないろいろの遺物が集合したところがあるわけですが、そういうものをたとえば――私は私見としてあるところで言ったのですが、国立文化財公園とか、その地域を全体として守らなければ文化財は保護できないのです。たとえば東大寺のはたに勝手に飲食店ができて火災が起こる、それで破壊をされるということが事実出て参りますし、また文化財の保護という立場からいって民族情操の資料にする場合には、そういうバランスのとれない施設が同じ場所に集合すればこれもだめ、そういう意味において、国立文化財公園というような構想を持って、現在の自然現象、原始的な景観だけを保護する国立公園でなしに、文化財を保護するため地域全体を、文化財の保護と観光地域とを兼ねるような目的を持ったそういう構想も必要じゃないか。同時に文化財保護委員会の内部の指定についての問題、保護についての問題の個々の法律改正もこの機会に取り上げるべきじゃないか、こういうように思うのですが、そういう具体的なものを含んで推進をしてもらいたい。われわれも努力をいたしたいと思うのでありますが、この点はいかがですか。
  76. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 文化財保護法が議員立法で誕生したと記憶しております。私も当時賛成した一人であって、その当時の構想は、地域の広がりを対象として文化財的に取り扱うという構想がなかったと思います。だから国会の側でも十分に御検討をお願いしますと同時に、政府側も十分な検討をしまして、できれば政府提案という形でありましょうとも、立法措置を講ずる意味から検討すべき問題と思います。今は感想だけしか申し上げられませんでおそれ入りますが、具体的な検討を一つ文化財保護委員会においてしてもらいたいと思います。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)委員 さらにこれは、また私すぐ立法論になっていかぬのですが、現在の運営から言っても、どこか制度的に迫力が出ない。それで現在の文化財保護委員会の委員長はすべて国務大臣をもって充てるということになると、そこから出てくる指導方針、指導精神、指導措置というようなものはずっと迫力があるものが出て、また予算措置についても迫力のある予算要求ができる。今おそらく文部大臣はあの地域のために十億の予算を要求するとか、そういうふうなことについて先頭を切られたことはあるはずがない。またそういう希望がない。そういう一つの基本的な機構についても、文化財保護行政の推進のために必要だと思うのですが、これについてはいかがでしょう。お答え願えますか。
  78. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 立法論として一つのお説だと思います。具体的には文部大臣不信任案の意味もございまして申しわけなく思いますが、人によりけりということもございましょう。ただ今の文化財保護委員会が独立して職権を行なう、その職権を行なう人々の取りまとめをやる立場が委員長だと思います。そういう意味ではおのずから文化財保護行政について、文化財の価値判断それ自体につきましても、特殊の見識を持ち、意見を持っておるというふうな人が望ましかろうと思うわけです。現行法の弁護的についなりがちでございますが、今の制度でありましょうとも、文部大臣という立場でもっと突っ込んで積極的な考慮をいたしながら努力するということで、当面はやっていけそうな気がいたします。将来、今の制度そのものに欠陥ありということが再確認されましたら、立法論は別といたしまして、文化財保護委員会と文部省とが一緒になって努力すべき課題かと思います。
  79. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私はそれは人によるとは思っていないのです。荒木文相が文化財に不熱心だからこうなっているとは思わない。制度だと思うのです。予算要求に大臣がほかの予算と同じような努力をする立場にないように制度ができておるからそうなので、たとえば清水事務局長が奈良付近の保護のためにあれを十分にするには十五、六億、十七億も要るという認識は持っているけれども、最初からこれはもうだめだというので予算要求していないのでしょう。何か文句があるなら言って下さい。要求したことはありますか。
  80. 清水康平

    ○清水政府委員 予算の要求にいたしましても、会計法、財政法、国有財産法、いろいろ関係がございますが、文部省とよく連絡をとりまして、私のできることは大いに努力し、また場合によっては次官にも御苦労願い、大臣も予算の獲得に御苦労願っていただいておるのでございまして、これは大へん手前みそになるようで恐縮でございますけれども、文化財保護委員会発足当時の全体の予算が三億五千万円であったものが、昨年も今年も若干ふえまして、現在は約十二億くらいになっておるのでございます。もちろん私どもは、大臣もそうでございますが、これで十分だとは決して思っているわけではございません。少なくとも特別大きな問題がない限りは、正常の建前からいって、少なくともあと十七、八億ぐらいは、ほんとうの文化財行政をやるには必要ではないか、さように考えておる次第でございます。
  81. 山中吾郎

    山中(吾)委員 すでに平城宮趾の保護のために十七億くらいは要求しておるべきはずだと思うのです。そして財政的に否定されておるなら別です。従って認識不足だ。清水事務局長の力では幾らさか立ちしても、全部で十七、八億しかとれないのです。大臣が責任をもってやれば、三十億、四十億とれると思うのです。日本全体の文化財の保護じゃないですか。そこで私は、機構の問題で、人の能力の問題ではないと申し上げたのです。さらにこれも、大臣と事務局長が、委員長、事務局長、係長、三役をみな兼ねているような格好だから、どうもよくないと思うのですが、何でもかんでも事務局長に聞かねばならぬので困るのです。こっちへ来られないようなお年寄の大人格者を委員長にしておったのではだめだと思うのです。問題は国宝級の文化財を保護しておるもの、あるいは永久に保存をしなければならないようなそういう遺跡を持っておる地主も、税金をとられておる。相続税もとられる。そうしてこれを大事にしなさいというふうな、そんな保護行政であるからなくなっていくと思うのです。そこでこの点については少なくとも、たとえば大阪の河内の仁徳帝の付近の何百という古墳、その中には上代の民族の生活を証明するたくさんの貴重なものがある。その土地を持っておる人は税金をとられる、相続税をとられる、そうなれば生活に窮して人に売ってしまう、土建業者がそれを買って、その墳墓を掘って何百万ももうける。とったあと住宅を建てる、自然そういうことになってしまうと思うのです。そういうものを一生懸命資材を投じて努力しておって、今度人に渡すときはまた税金をとられる、そういうふうな制度自体を私は改造しなければならぬと思うのです。これは現在のような文化財保護委員会の機構ではできっこない。やはり国務大臣をかしらに持ったものでなければならぬと私は思う。そういう税制の問題についても、根本に改造すべき問題があると思うので、これも政府の立場において税制度を改善をするという総合政策が必要だと思うので、その点も国務大臣として検討されるようにお願いしたいと思います。その点について、また立法論的なことになってしまいますけれども、やはり感想をお聞きしておきたいと思います。
  82. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今のお話の点も含めて先刻申し上げたような意味合いから、立法論として政府側としても検討すべきであろうと考えます。
  83. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それ以上聞いても仕方がないので、認識をしてもらいたいということを私は言っておるわけであります。  事務局長に伺いたいのですが、全問題になっておる平城京は指定外だからやむを得ないというふうに事務的に割り切っておられるのですが、これは将来指定することは不可能という問題ではないですね。指定できますね。平城京全体として保存する価値があるという認定ができれば、全体を指定できるんでしょう。それは制度上どうなっていますか。
  84. 清水康平

    ○清水政府委員 指定しておりません平城宮趾の問題、約十四万坪ございますが、これは指定する価値ありということになりますると、形式的には、形式的といいますか、法律上の要件といたしましては専門審議会に付議して、そうして専門審議会におきまして答申があって、それによってやるべきでございます。しかしながら未指定の平城宮趾の跡ばかりでなく、全国的には日本の文化遺跡としてのものが相当あるわけでございまして、これは毎年いろいろ調査もいたし、指定する価値あるものはしておるわけでございますが、その平城宮趾の十四万坪について、今ここですぐ指定する価値があるかどうか、価値判断の問題でございまして、私からはあれこれ申し上げることは困難でございまするけれども、しかし平城宮趾の一部であって、非常に大切であるということはよく承知しております。それでもし、これはもちろん各方面の学者の意見、学者の意見にもいろいろありましょうが、最後的には専門審議会意見になるわけでございまするけれども、たとえば文化財保護委員会といたしましては未指定の十四万坪のところで現在の時点における計画といたしましては、文化財保護委員会の付属機関でございまする国立奈良文化財研究所におきまして年次計画で、十五カ年計画で、現存指定地の中を発掘いたしておるわけでございます。しかし第二次計画で指定しておりませんけれども、西大寺の門があったであろうというところは現在調査いたしたいと思っているわけでございまして、そういうことを考えますと、少なくとも価値判断の問題は、私はしろうとでありまするが、その辺のことは指定する価値が十分あるのではないかと事務的には思っておる次第であります。しかしいずれにしましてもこの十四万坪のところには相当の所有者があるわけでございます。未指定の十四万坪のうちの一万五、六千坪、今度近鉄が届け出てやることになっておるわけでございますが、そこにおられる土地所有者がやはり五十人近くおられるわけでございます。その人たちの積極的な理解と協力がないというと、現実問題としては非常に指定が困難になるということがあり得るということでございます。
  85. 山中吾郎

    山中(吾)委員 事務局長はもちろん専門家でないから、それは価値があるかどうかということは答弁はできないでしょう。しかしその価値があるかということを調査をする推進役になるわけなんで、その付近を指定地域として価値があるかどうか調査させましたか。
  86. 清水康平

    ○清水政府委員 全国の貝塚、古墳、その他の遺跡については、常にこれを調査研究いたして、そうして価値あるものにつきましては、これを専門の文化財保護委員会にかけ、また専門審議会に付議してその答申を縛るわけでございます。もちろん未指定の平城宮趾も、比較考量の問題でありまするから非常に大きな大切なところだと思うのでございますが、あれを早く指定せよという問題は、私の知る限りにおきましてはごく最近承っているような事情でございます。いわんやあそこを買い上げるという問題につきましても、昨年文教委員長委員の御視察の際に出てきた問題でございますが、いずれにいたしましても文化財保護委員会といたしましては、全国民があれを保存していかなければならぬのでございますが、特に地元の奈良県の人たちが、現在指定されて、しかも発堀を進行しつつあります特別史跡平城宮跡、そこへ未指定の問題を全部入れまして、管理団体である県当局が現今いろいろ計画を立てておりますので、その計画に基づきまして私どもは処理して参りたいと考えておる次第でございます。
  87. 山中吾郎

    山中(吾)委員 調査は、調査費を委員会が計上して調査員に経費をやらなければそんな調査なんてできるものじゃないので、計画に基づいて指定すべきかどうかの調査をしたかということを私は聞いたのですが、その答えにはなっていない。
  88. 清水康平

    ○清水政府委員 平城宮跡の未指定の問題につきましては大体の見当がついておりますが、文化財研究所といたしましても、常に調査をなしつつあるわけでございます。ただし申し上げにくいのでございますが、申し上げますと、研究所の所員などが未指定地であるところへいろいろ参りましても、民有地の人たちのやはり心よい協力を得ませんと、調査はなかなか十分にいかないという節はあるのでございます。従いまして私は地元におきまして特に所有者の積極的な協力、心よい御理解、これがあればやれるのじゃないか。しかし先生のおっしゃいましたその調査が根本的な発掘調査になりますと、届出工事をしようとする近鉄のあの上地、一万数千坪でございますが、それの校本的な調査は数年かかるだろうと思っております。
  89. 山中吾郎

    山中(吾)委員 従って、国が土地を買収しなければ不可能だというふうなことが、言外に出ておるわけなんですが、奈良県知事が、国が補助を出してくれれば買収してもいいということを表明しているそうですが、その点、事実間違いないですか。
  90. 清水康平

    ○清水政府委員 ちょっと答弁が長くなるかもしれませんが、昨年文教委員長外各文教委員の先生方が御視察後いろいろな点において改善されてきつつあるのでございます。そのうちの最も顕著な事例といたしましては、地元におきまして、あの大切な遺跡を何とかしなければならぬ。少なくとも指定されておるところだけでも、できれば指定外でも、全体くるめて根本的に検討して結論をきめてからもって参るということになっておりますが、そのうちの、たとえば指定地の中に民有地が相当多いのでございますが、それをも含めて県でもって将来管理したい、それを買いたいという希望がもしありまするならば、その線に沿って、もちろん前向きの姿勢で開拓精神をもちまして努力して参りたいという気持は十分持っております。
  91. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あと参考人をまた呼んで、われわれの認識を正しくするための機会があるので、質問は終わりたいと思うのですが、全国的に埋蔵文化財でいろいろと支障を来たしておる個所を書物その他を見ると、ずいぶんあるわけなんです。岡山市の関係、岡山県はずいぶんあちらこちらに古墳の土地が企業の発掘になっておる。それから大阪堺市の関係、それから広島県にもある、福岡県にも、京都、大阪、香川、埼玉、茨城、おのおの上代の古墳関係の未調査のままで発掘し、企業が他の用途に使っているというふうな事例がたくさんあるようでございますから、文化財保護委員会の現在判明しておる全国的な状況について資料を出していただきたい。できますね。
  92. 清水康平

    ○清水政府委員 わかっておる程度は……。
  93. 山中吾郎

    山中(吾)委員 埋蔵文化財を、他のたとえば国立病院とか公民館を建てるためにつぶすというところもあるようでありまして、私企業だけでなしにそういうふうなことも書物を見るとあるのです。それをお調べ願いたいと思う。これは大臣の県で福岡県の須玖遺跡、そういう付近も何か十分に発掘しないままに他の用途に転用される危険がある。これは事実はわからないのです、書物を見ますとある。そういうものがあるものですから、その埋蔵文化の調査が十分できるように対策が立てられれば立てるべきだと思うので、資料をいただきたい。土建関係の者とか、建築技師というふうな者、そういう事業をやる場合について、何か技師の資格をやるときには、埋蔵文化財の取り扱いに関する要領とか、それを一つの学習、技師免許の単位に条件としてやるという、ヨーロッパあたりなんかある、そういうふうなことも、一つの文教政策に入ってくるので、もっと総合的に、考えればうまくいくような方法がありそうに思う。それを参考にしたいと思うので出していただきたい。  きょうは、私の質問はこれで終わります。
  94. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次会は来たる十二日月曜十時半に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十七分散会