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1962-04-26 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十六日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    金子 岩三君       仮谷 忠男君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邊 國男君    谷垣 專一君       寺島隆太郎君    中山 榮一君       藤田 義光君    松浦 東介君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  中野 和仁君         参  考  人         (元農業災害補         償制度協議会議         長)      清井  正君         参  考  人         (千葉大学講         師)      山内 豊二君     ————————————— 四月二十五日  食糧管理法改正等反対に関する請願戸叶里  子君紹介)(第四六七六号)  同(帆足計紹介)(第四六七七号)  農林漁民生活向上のための農政推進に関する  請願外一件(藤本捨助君紹介)(第四七一八  号)  同(三宅正一紹介)(第四七一九号)  現行食糧管理制度維持継続に関する請願(三  宅正一紹介)(第四七二〇号)  同外四件(臼井莊一君紹介)(第四九一〇号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第五〇九〇号)  農業協同組合体質改善抜本的対策樹立に関す  る請願小枝一雄紹介)(第四七二一号)  農地法の一部を改正する法律案等早期成立に  関する請願小枝一雄紹介)(第四七二二  号)  農地集団化に伴う換地処分促進に関する請願(  小枝一雄紹介)(第四七二三号)  果樹(バナナ)農業振興に関する請願菅太郎  君紹介)(第四八三四号)  同外一件(成田知巳紹介)(第五〇七九号)  造林事業補助単価引上げに関する請願池田清  志君紹介)(第四八六〇号)  農業協同組合等による小水力発電事業に関する  請願田中角榮紹介)(第四八六一号)  同外一件(古井喜實紹介)(第四八六二号)  同(足鹿覺紹介)(第四九〇七号)  同(井出一太郎紹介)(第四九〇八号)  同(仮谷忠男紹介)(第四九〇九号)  同(徳安實藏紹介)(第五〇三九号)  同外三件(永山忠則紹介)(第五〇七八号)  農業災害補償制度抜本的改正に関する請願外  四件(臼井莊一君紹介)(第四九一一号)  臨時肥料需給安定法等廃止反対に関する請願  外四件(臼井莊一君紹介)(第四九一二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第五〇八九号)  農林漁業振興に関する請願池田清志紹介)  (第四九二四号)  漁業法の一部改正に関する請願池田清志君紹  介)(第四九二五号)  前籠漁港の整備及び第四種港に変更等に関する  請願池田清志紹介)(第四九二六号)  米価審議会運営に関する請願亀岡高夫君紹  介)(第五〇三八号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第五〇九一号)  北洋さけます漁業自主規制措置に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第五〇五一号)  岩手県内在庫冷凍さんまの滞貨に対する応急措  置等に関する請願鈴木善幸紹介)(第五〇  五二号)  果樹農業振興に関する請願羽田武嗣郎君紹  介)(第五〇九二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案を一括して議題といたします。  昨日の決定に基づき、両案について参考人の御意見を聴取することにいたします。  御出席参考人は、元農業災害補償制度協議会議長清井正君及び千葉大学講師山内豊二君でございます。なお参考人として御出席お願いいたしておりました東京農工大学教授大谷省三君は、都合により出席できない旨連絡がありましたので、さように御了承願います。  両参考人には非常に御多忙にもかかわらず、当委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜わりますようお願いいたします。  それでは清井参考人から御意見を御開陳願います。
  3. 清井正

    清井参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました清井でございます。かつて農林省に設置されました農業災害補償制度協議会議長の役を承りました関係上、お呼び出しを受けたものと存ずるわけでございます。  ただいま御提出、御審議になっておられます法律案について御意見を申し上げる前に、私が議長として協議会の取りまとめをいたして参りました経過につきまして、若干申し上げさせていただきたいと思います。  すでに御承知のことではございますけれども農業災害補償制度協議会は三十五年の三月にできたのであります。今から二年前であります。当時、農業災害補償制度の問題は事きわめて緊急を要する問題でありまして、しかも過去数年来、非常に問題が山積しておりまして、早くこれについての根本的な結論を得なければならないから、十分慎重にすみやかに協議をしてもらいたい、こういうような意味合いで、当時の農林大臣から諮問を受けまして、協議会が発足いたしたのが三十五年三月二十五日でございました。四十五人の委員がおられまして、その委員方々の中には、もちろん学識経験者もおられます。自民党社会党民社党各国会議員の中からも、それぞれ専門の方が委員として御出席になっておられたのでありまして、ここに御出席になっておられる委員の中にも、名前は申し上げませんが、おいでになるわけであります。協議会が非常に努力をいたしまして、本会議のほか小委員会というものを設置いたしまして、その小委員会の中にも国会議員の多数の方が御参加になられまして、非常に熱心に農業災害補償制度の問題の各般にわたって、根本的な御議論があったのであります。本会議は三十五年の四月一日から都合四回、六日間にわたって行なわれ、小委員会は三十五年五月六日から三十五年十月十五日まで六回、十日間にわたって行なわれたのであります。正式な委員会はそのようなことでございましたが、なお委員会のほかに、有志の方の種々たび重なる懇談の会合もあったような次第でございます。三十五年四月一日に第一回の会議を開きましてから一年ほどたちまして、三十六年二月十三日に協議会としては結論を出したようなわけでございます。約一年かかって出したのでありまして、協議会結論が出ましてから、すでに本日まで一年かかっておるような次第でございます。そのようなことで協議会というものは、非常に熱心な各位の御努力によりまして、農業災害補償制度について、根本的な問題についての徹底的な御意見、御討論の開陳と、それに基づく改正についての根本的な結論を得たようなわけでございます。  そのごくおもな点について要点を申し上げてみましても、共済関係成立については、以前の法律と比し、やや弾力性を持たせまして、当然加入についての範囲もやや広げるとか、場合によっては一部の共済目的について事業を廃止することができるとかいうようなことについての、やや弾力的な制度を設けるということを考えましたことが第一でございます。  第二は、農家単位収量建ということにきめまして、なお若干暫定的には従来の一筆単位収量建ということも認めるということもあるのでありますが、建前としては農家単位収量建でいこう、こういうような考え方をきめましたのが第二点であります。  第三点の共済事故につきましては、病虫害を共済事故からはずし得るというような工作を講じたような次第でございます。  また共済責任保険責任につきましては、農業共済保険事業団というものを設置することにいたしまして、末端共済組合がこれとタイ・アップいたしまして、通常災害については、末端共済組合においてこれを手持ちの責任といたしました。それをこえる被害については、全部事業団保険に付するというようなことにいたしたようなわけであります。  共済掛金等につきましても、当時いろいろ実態に即さないというような問題もございましたので、最近の実態にかんがみまして、それを負担する農民に最も便利あらしめるようなことをいたすとともに、それについての国庫負担についてもその趣旨に沿うて、できるだけ農民の利益になるようにという配慮から一定の定めをいたしたようなわけであります。  基準収量損害評価等につきましても、できるだけ末端組合員の実情に沿い、その自主性を尊重いたしまして、できるだけ現地の実態に即する方法をとっていこうじゃないかということで、収量のきめ方、損害のきめ方についても工夫をいたしたような次第でございます。  なお、機構といたしましては、先ほどもちょっと触れましたけれども共済保険事業団というものを作りまして、これが単位共済組合保険関係を結ぶということにいたしたのであります。むろん事業団の中には特別会計を中心といたしまして共済基金も加える、あるいはただいまの全国農業共済協会仕事も吸収するように考えたわけでございます。  事務費等につきましては、基幹的な事務費は、できるだけ全部国が負担するという建前をとったようなわけであります。その他任意共済等につきましても、いろいろ御議論の末意見を出したようなわけでございます。  なお、この案につきましては、一委員からこれに対して異論がありまして、たとえば保険事業団が一括して単位組合保険関係を結ぶことに対して、連合会を存置すべきであるという建前からの少数意見が付されたような次第でございます。  これを要するに、一年かかりまして四十何人の委員がお集まりを願い、しかも委員の中には、自民党の方、社会党の方、民社党の方それぞれ国会議員方々が御参集になりまして、一年間にわたって慎重かつ熱心に御審議の結果できた案でございまして、その要点とするところは、ただいま現行法にあるように、単位組合がその九割を上部の連合会保険をいたしまして全くその自主性がない。従って保険についての責任を持たないということを根本的に直そう、すなわち末端単位組合自主性責任を持たせるべきであるという建前に立ちました点が一つの点であります。  もう一つは、最近の農業生産状況その他に応じて、いろいろ問題の起こっております点をこの際はっきりさせて、農業災害の発生の状態に即応するように、標準収量標準被害率等を直していこうというような点が、大きな問題であったように私どもは記憶いたしておるのであります。  この業務の中におきましては、一つ一つ事項につきまして御意見が相当分かれまして、非常な激論にわたりました点もあったのでございますが、小異を捨てて大同につくという各委員の御見解のもとに、とにかく一つ案をまとめようという各委員の熱心な御協力のもとに、非常に困難な問題ではございましたが、昨年の二月十三日に農業災害補償制度協議会としては、大臣答申をすることができるという段取りになった次第でございます。従いまして、政府は当然この答申に基づいて農業災害補償制度改正案をお作りになったと思っておるのでございますが、私は、ただいま御提案になっております政府原案がどのようになっているかということについて、一応勉強いたしましたが、あまり詳しく実は勉強いたしておりませんので、間違ったことを申し上げましたらお許し願いたいと思うのでございます。  大体私どもがずいぶん長い間かかって研究をいたしまして議論をいたしました根本の点は相当中に取り入れられておるものと思います。ただ重要な点に問題がございまして、それはいわゆる協議会の案が、末端組合に完全に自主性独立性責任性を持たせる、それが、単位組合保険事業団というものを作りまして、それと通常災害をこえる異常の部分について保険をする、この制度に差があるように考えられるのであります。案を拝見いたしますと、特別会計事業団にするというふうに考えております。普通の単位組合保険をいたしますところの通常災害について、一部歩合保険を任意に連合会と取り結ぶことができるということになっているようであります。この点は保険設計建前から申しましても、農業災害補償制度協議会議論経過から申し上げましても、重要な問題点であるように思うのであります。農業災害補償制度協議会の案は、事業団というものを設立いたしまして、それが現行共済連合会仕事を吸収いたしまして、各県に支部を持ちまして、この農業共済保険事業団単位保険組合との間に、普通災害をこえる部分については保険をするということでありまして、通常部分については組合が全部責任を持つというようになっているわけでございます。ところが政府提出の案は、この点が異なっているのでありまして、事業団というものは特別会計だけが事業団ということになりまして、連合会というものは今度は現行のままありまして、その単位組合通常責任部分について、一部を歩合保険をする、またすることができると申しますか、そういうような形になっているようであります。ほかの大部分のものは、大体協議会の精神はくみ入れられまして、一〇〇%といわないまでも相当程度達成せられていると思うのでございますけれども、この点が協議会におきましても非常に重要な問題として議論をされたところでありまして、この点が協議会の案と政府原案とが異なっているものと思うのであります。  この協議会におきまする議論の過程から申しますと、私、率直に申し上げまして、この政府案保険事業団というものを作ることにつきましては、残念ながらちょっと中途半端じゃないかという感じがいたすのであります。制度協議会原案のときに、事業団というものを今の特別会計基金とそれから共済協会仕事とを合わせて、全国的な組織として事業団を作りまして、それが単位共済組合保険契約を結ぶということであるならば、これは保険会計上きわめて有利だと思いますし、これが理想的な形であると思うのでありますけれども、国の特別会計だけが事業団になるということでありますれば、若干これは不徹底と申しますか、やや問題を異にするのではないかという気がするのであります。将来協議会のような案にいく前提として、とりあえず中央事業団を作るという思想であるのか、あるいは中央事業団中央特別会計だけの事業団にいたしまして、県の連合会はそのまま残るという恒久的なものであるのか、この点がはっきりいたしていないのであります。かりにこれが将来協議会の案のごとくにいく前提として、とりあえず中央だけを事業団にするという形であるならば、一つの将来の進歩に対する前提として考えられるわけでございまするけれども、単に特別会計だけを農業共済保険事業団というものにするだけであったならば、ややこれは徹底を欠くのではないかという感じがいたすのであります。この点、政府の案を批判するようではなはだ申しわけないのでありますが、私、率直に協議会の案におきます皆さんの御意見を顧みますというと、そういう感じがいたすのであります。  それから、連合会単位組合通常災害保険部分についての歩合保険をするということでございますが、これは連合会がある以上、連合会についてそういう使命を与えるということは、当然考えられることだろうと思います。この点は、連合会の存置ということを前提といたしますれば、そういうことも考えられるわけでありますけれども、これまた保険設計立場からいって、組合が全部負うておる通常責任歩合保険を任意に相談ずく連合会と結ぶというような制度がはたしてうまくいくものであるかどうかということについて若干疑問があるのではないかと思います。むしろこれは、かりに連合会を残すのであれば、やっぱり連合会としての存立の意味があるわけでありますし、また意味を持たせなければならぬのでありますから、この点についてはあるいは保険事務を移管するとか、いろいろな問題がありますから、評価問題等もいろいろ連合会組織を借りなければならぬ問題があると思います。従って、連合会を残すという立場に立ちますならば、連合会をもっと積極的に使ってしかるべきじゃないかというような感じがいたすのであります。単に末端組合通常損害保険事故について、一部を歩合保険にするということでなしに、積極的にその一部について制度的に責任を持たせるというところまで進めなければ、連合会はなま殺しになるのじゃないかという気がいたすのであります。こまかい点については、私この方の専門家でありませんからよくわかりませんけれども、どうも拝見いたしましたところ、政府案は、その他の点については大体答申をいれられているのじゃないかと思います。ただその重要な点が若干協議会案政府案と異なっているわけでございます。その点につきましては、当委員会でその是非について十分御審議願いたいと思うのでありますが、私は議長立場として、協議会のかつての激論あり、しかもこれだけの結論を得たことを顧みますと、政府案を拝見して、そういう感じを率直に持つような次第であります。  ただ、最後に私申し上げたいことは、この協議会が始まりましたのが三十五年の初めであります。この答申をいたしましたのが去年の初めであります。ですから一年たっている。その間一体客観情勢はどう推移をしているのかということは、私つまびらかにいたしていないのでありますけれども、おそらく早急に現行制度を何らかの方法によって改正していかなければならぬということは、もはやおそ過ぎている感があるのではないかと私は思うのであります。私お願いをいたしたいのでありますけれども、何とかして、現在政府提出している法律案そのままであるかどうか、これは各位の御審議をされるところでございますから、私がとやかく申し上げることではございませんけれども、とにかく現行制度よりもさらに進みましたところの改正案というものをすみやかにお作り願いたいと思うのであります。協議会議長といたしましては、協議会案がそのままいれられたような修正案できまりますればけっこうでありますけれども、かりにそうでないといたしましても、原案におきましても相当部分入っていると思われるのでありますから、どうぞ一つすみやかにこの法律改正案というものを明るみに出していただきたい、きめていただきたい。そうして、この問題になっております補償制度の問題につきまして、関係者がたって要望しているところでございますから、その方向に沿って一歩でも二歩でも先に前進させていただきたいというふうに私は強く考えるのでございます。  大へん失礼なことを申し上げたようなことになった場合があるかもしれませんけれども、その点お許しいただきまして、私が当時協議会議長といたしまして一年間激論いたしまして、それからまた一年間たっている現状におきまして、最近の事情はよくわかりませんけれども、率直にそういう感じを持ちますので、各位に対しまして、こういう制度改正についてすみやかに何とか案をきめていただきたいというお願いを申し上げまして、最後の言葉といたす次第であります。御清聴ありがとうございました。
  4. 野原正勝

    野原委員長 次に、山内参考人お願いいたします。
  5. 山内豊二

    山内参考人 私は実は最近インドから帰りまして、こまかい最近の事情を知りませんので、私の参考意見が時宜に適しているかどうか、私自身非常に心配をいたしております。昨日農業災害補償制度改正の要綱を読ませていただきまして、私に与えられました問題は、これにつきましても意見を述べるということであろうと思っております。ただ私の考えを述べます前に、この問題を考えていく基盤といたしまして、今日農家はこの災害補償制度というものを一体どういうふうに考えているかということから問題を進めていきたいと思います。  実は、過去二年間ほどこの災害補償制度につきまして、私若干の調査をやったことがございます。と申しますのは、東京で聞いておりますと、農家自身農業保険は要らないのじゃないかという声すらも私には感じられたわけでございます。そういたしますと、今日の農家は大へん技術も進歩いたしましたし、はたして災害補償法自身が要らないのかどうかというふうに感じているのではないかと思いまして、実は四つの県につきまして、農業経営におきまして、農家が一体何を不安定要素として考えているのであるかということについて調査したわけであります。やりました地区は、香川県の白鳥町、これは非常に集約的な農業が行なわれている地帯で、非常に規模が小さいといったところに特徴がございます。それから山形県の藤島町、これは稲作単作地帯経営規模も非常に大きい地帯であります。それからもう一つは、福島県の保原町と申しまして、果樹養蚕、米といったものの複合経営が行なわれている地帯でございます。それからもう一つ北海道の、ちょうど稲作北限地帯に当たります美幌町を対象に選びまして、いろいろなアンケートを試みたわけでございます。  まず私は、今日農家生産変動、すなわち作物災害というものをどういうふうに考えておるかということで、その危険の意識を調べてみようというわけで、質問事項として、左記の事項経営主として農業経営を行なうにあたって現在最も不安を感じているものから第三位まで順位をつけて下さいということにいたしまして、作物災害農産物価格下落、家畜の死亡、家屋の火災、農具の破損、それから肥料値上がりということを書きまして、農家に一、二、三とその順位をつけてもらったわけでございます。その結果、出てきました事実は、作物災害価格変動というものが第一位あるいは第二位というところに出てくるわけでございます。それから肥料値上がりというところが第三位に出て参ります。従って、作物災害、あるいは価格変動というものが地帯によりまして、たとえば北海道美幌町で、非常に不安定な地帯でございます。そういう地帯では、作物災害というものは危険意識として第一位に出て参ります。それから価格変動というものが二位に出てくる。それから安定地複合経営をやっております、たとえば果樹あるいは養蚕が入っております地帯を見ますと、農産物価格下落というものが第一位になり、作物災害が第二位であるというふうに出て参ります。ほかの不安定要因というものは、その順位はいろいろございますけれども、非常にそのウエートは軽くなっております。このことは、要するに直接農業所得に影響をいたしますところの要素、すなわち生産面、従って価格面、その所得に直接影響いたします二つの要素にやはり農家は非常に不安を感じておるんだというふうな結論を得ました。それから肥料の問題は、これは経営費におきまするところの可変費用でございます。従いまして、これが第三位にやはり当然の結果ではないかというふうに実は出たわけでございます。これは言うまでもなく、今日非常に技術が安定しておるわけでございますけれども、なおかつ農家には生産変動といったことに対しまして不安定要素が存在しておる。従いまして、異常危険意識といたしまして、作物災害に対する危険意識というものがきわめてはっきりした形において価格とともに存在しておることを私は確信したわけでございます。そのことは言うまでもなく、過去における災害発生の確率というものを見てみますと、非常に明白になるわけでございます。それで他の固定資産の問題になりますと、その発生いたします確率が非常に低くなって参ります。作物災害あるいは価格保障のない価格につきましては、変動のプロバビリティは非常に高い。従って、当然農家といたしましてはこの問題が経営におきまして不安定要素として考えざるを得ない結果ではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。もちろんこれは経営規模、あるいは地帯、専・兼業によって差がございます。しかし時間がございませんので、この点は御質問がございましたら述べることにいたしまして、次に移りたいと思います。  そこで、こういう危険意識農家に存在しておる場合に、はたしてその農作物共済に対して農家が積極的な加入意思があるかどうかということを私は聞いてみたわけであります。実は今日制度が強制でございますので、私はもし今日の制度が任意加入というふうになったならば、その結果はどういうふうになるだろうかということを頭に置きまして、三つ答えを書きまして、それにまるをつけていただくようにいたしました。質問は、今日の農作物共済が任意加入制になった場合に加入するかどうか、下の三つの答えにまるをつけて下さいというので、加入するというのと、掛金が安くなれば加入するというのと、それから加入しないという三つの答えを提出したわけであります。その結果どういう答えが出て参るかというと、北海道、これは非常に不安定地帯でございます。特に北限地帯でございますから、この場合加入するという答えが約九〇%出て参りました。安くなれば加入するというのが約九%、あとは加入しない。それからその他の地帯の、たとえば過去におきまして相当被害の高かった香川県を見てみますと、加入するというのが約三四%、掛金が安くなれば加入するというのが約六〇%ということになっております。それから藤島町と申しますのは、最近山形県の藤島は非常に安定地帯でありますが、ここで加入するという答えは約三〇%、それから加入しないというのが三〇%、掛金が安くなれば加入するというのが四〇%出ました。これらのお答えは水稲についての統計を申しております。それから福島の保原につきましては、これは複合地帯でございますので、米麦作のウエートというものは非常に軽いのでございますけれども、そこでは加入するというのが一二%、掛金が安くなれば加入するというのが四八%、加入しないというのが四〇%、こういった形で出て参りました。従いまして、農作物共済保険に対しますところの需要というものを見てみますと、加入するというのはいわば有効需要でございます。掛金が安くなれば加入するというのはいわば潜在的な需要と言えるのでございます。従って、こうして見ますと、結局、北海道を除きまして有効需要は三割前後、潜在需要というものが大体四〇%から五〇%の範囲に存在しているということがわかるわけでございます。そこで問題をさらにかえまして、現在の掛金負担の高低につきまして意見を求めたわけでございます。その掛金が安くなれば加入するという人に対しまして、一体どの程度を要求するのかということを実は聞いたわけでございます。これは潜在的な需要を有効需要にかえていく一つの条件であろうと思うわけでございますが、その結果、これは大体今日の半分というところに答えが集中をいたしました。それから掛金が高いという農家意見を、過去におきまして保険料を支払われた分と農家が現実に負担した部分の比率を出してみますと、過去十年間のバランスでございますけれども、たとえば白鳥町の場合におきましては掛損ではなくて非常にプラスになっている。それから保原においてもやはりそういうことが出ます。それから山形県の藤島町の場合にはむしろかけ捨てをしているという方が多かったわけでございますけれども、結局このことから言えますことは、農家の高低に対する意見というものは、いわば長期的な判断に基づいたものでなくして、きわめて今日の短期的な経験から問題を判定していくというふうに私はとったわけでございます。問題は、農家作物災害に対する危険意識は存在し、またその順位は高いわけでございますけれども、今日はきわめて潜在的な需要が存在している。従って、今日保険改正ということになると、いかにしてこれを有効需要にかえていくかということになってくるのじゃないかと私は思ったわけでございます。  それからなお農家保険に対する基本的な態度でございますけれども、これは一般的に保険というものをわれわれが考えます場合には、保険の用益でありますところの安全ということを実は買うわけでございます。ところが農家には保険に加入する場合に安全ということの意識が非常に希薄でありまして、むしろ所得というふうな観点から問題を考えていく。実は危険の意識があるのだけれども、それに対する安全というものを保険を通じて買うというふうな意識が非常に低いのではないか。このことの原因は、たとえばわが国では今日強制がとられておりますけれども、これはやはり日本の農業経営の基本的な構造に基づくものでございまして、作物災害あるいは価格の下落があっても、その経営費の中の、資材費とかそういった可変的費用と、それから最低の消費欲求を充足し得るだけの所得、すなわち家族労働力を維持し、再生産し得るだけの家計費さえあれば何とかその構造が維持されるという一つの構造的特質がございますけれども、こういったことが基本的に農家の構造の中にありますので、保険のような間接的な効用を持つものに対しましての農家の支出の緊急度と申しますか、その序列というものは、直接的な効用を持つものに比べまして非常に低いということに原因があるのではないか。農家の経営から見ますとそういうふうなことが考えられます。  もう一つの問題は、やはり今日の保険制度というものが農家に合っていない点が一つの側面であるだろう。もちろん今日の制度は御承知のように戦後の農業の構造の上に成り立っております。従いまして、食糧生産の増大という絶対的な要請の基盤の上に出発いたしましたので、その間に食糧統制のもとにあって強行せられました低価格政策、そのもとにおける生産変動に伴う農家所得を維持した。あるいはまた過剰人口のもとで耕作せざるを得ない限界地耕作というものを維持した。そしてその限界地耕作を維持するために補償制度というものが少なからざる役割を果たしたということも言える。従いまして、その意味において過去における補償制度に対する評価というものはわれわれ見過ごすことはできないと思うわけでありますけれども、今日は農業の構造がその後の経済成長とともに次第に変化をいたしておりますので、いわば補償制度のワク自身が変わってきたといわざるを得ないように思います。特に農業内部におきまして経営上の地域分化を起こしておりますし、また地域におきまして産業構造の変化等を通じまして農業の構造が変わってきております。従いまして、いわば農業の構造的な地域的な分化が非常に進行している。そうなってきますと、画一的な保険政策というものが農家に与えますところのベネフィットというものは、地域によって非常に変わって参ります。また補償制度が対象にいたしております災害農家に持つ意味自身も非常に変わってくるように思います。従いまして、基本的には地域の特性を反映するような保険の対象を考慮して保険制度というものを再編成することがやはり今日の見通しではないか、こういうふうに思います。また同時に、今日価格政策自身もいろいろな面において進展するであろうし、またいろいろ制度化されると思っておりますが、その際に、あるいは金融面もそうでございますけれども保険制度自身も独立させないで有機的な結合の中に持っていかなければ、ただ単なる保険ということでは、農家に対して魅力というものも出てこないのではないか。有機的な結合があって初めて農家保険に対する考え方というものも変わってくるのではないか、こういうふうに思うわけであります。しかしながら今日なお農業構造は変革の過程にございまして、直ちにこれをどうするというわけには参りません。従ってたとえば果樹保険という問題が出てきておりますし、あるいはまた北海道の豆類についての保険というものも出てきておりますけれども、これは今日の農業構造の変化に伴う一つの現われだろうと思うわけであります。従いまして、こういった面に今後の方向というものを対応させざるを得ないのじゃないか。たとえば私は調査中に感じたわけでありますけれども稲作に対しますところの農家災害意識というものが、たとえば北と南でずいぶん違うように思いました。たとえば非常に零細な兼業農家の多い地帯では、かりに五割以上になりますと、もう絶対非常に困る。そういうときには完全な補償、てん補をしてほしい。ところが北の方なりますと、稲作技術が非常に安定してきた。しかし経営規模が大きいので、所得面から見ますと、かりに二割ということになっても、かりに三町歩ですと、反三石といたしますと、九十万でありますから、それの二割といいますと、相当大きい額になります。そうすると農家自身一つの低被害ということに対しても所得量の変動という面につきましては非常に問題になる、こういう問題を考慮してほしい、こういった声がございます。そのこと自身はいわば地域の特性を反映したものではないかというふうに考えたわけでございます。  さて、私が今申しましたことは、今後の一つの方向でございますけれども、さしあたって今日提出せられているものについて次に問題を考えてみたい、こういうふうに思います。  一つ問題点として出ておりましたのは、画一的強制加入の緩和ということでございます。これはおそらく農業に依存しないで、全く片手間で農業をやっていく階層を意味しているだろうと思うわけでございます。しかしながら強制加入ということは、小農制のもとにおきまして、たとえばアメリカのような、同じ家族経営でありましても、比較的大規模でコマーシャライズしているというふうな地帯と違いまして、先ほどから申しましたような農家の基本的な性格がございますので、この強制加入というものを緩和と申しますか、はずしますと、これはやはり結果的には不安定地帯だけの逆選択ということが起こらざるを得ない。だから緩和については、これは当然の措置と存じますけれども、強制加入をはずすということにつきましては、保険の運営面からはずすことはできないのじゃないか、こういうふうに思います。  それからもう一つの点の農業共済組合の共済事業責任の拡充ということでございますが、これは考えてみますと、今日存在しております農業作物保険の型を分けてみますと、その一つに当たるのじゃないか。すなわち今日、日本の制度自身がそうでございますけれども、分けまして、集中型と申しますか、セントラリゼーション、それからもう一つ分散型といいますか、ディセントラリゼーション、アメリカのような、いわばアメリカ政府が中心になりまして、作物保険のアメリカの連邦作物保険公社といったものを作って末端にエイジェントを置いておりますのは、いわばセントラリゼーションだと思います。日本の今日存在しておりますのは、各保険団体が一定の責任を持って保険を運営している、そういうことはいわば分散型すなわちディセントラリゼーションではないかと思います。これを経営面から見ますと、ディセントラリゼーションをいたしますと、ただ単に経営面のみから見ますと、運営費の面ではむしろ集中化の方が安く上がるのではないか。   〔委員長退席、秋山委員長代理着席〕 ただ今日存在しております農村の現実というものから推しまして、やはりディセントラリゼーションというものにならざるを得なかったのではないかというふうに思うわけでございますけれども、ただここで共済組合通常災害部分について全面的な責任を負うということにつきましては、本来の保険の発展の過程から申しますと、なるべく拡大化していくというようなことが従来のあり方だろうと思うわけであります。しかしながら、これが日本の今日の世論調査から見ましてもそうでございますけれども、自分たちのものとして運営していくというふうな意識が農村にございますので、その意味では、この共済組合事業責任の拡充ということは実態に即するわけでありますけれども、ただ保険運営からいたしました場合にたえていけるかどうかという点が非常に大きな問題になってくると思います。そうなるとやはり金融上の措置が十分に考慮されなければ、共済組合の今後の運営というものが非常にむずかしいのではないか。  同時にもう一つ問題がございますが、共済組合が今日も存在しておりますけれども、ここで問題は、付加保険料の問題でございます。おそらく農家の、先ほど私が申しました調査を通じましても、半分にせいということは、農家から考えますと、純保険部分と付加保険部分の合体したものが農家の掛金負担ということでございますから、半分にしろということは、結局その付加保険料を安くしろ、あるいはなくしろというふうなことに通ずるのではないかというふうに感ずるわけでございます。従いまして、この共済組合事業拡充の場合におきましても、やはりその付加保険料というものをいかにして軽くするか、あるいはまた国家がこれをいかに負担していくかということが運営上の大きい問題になるだろうと思います。  それからもう一つ共済組合ごとの料率算定ということが出ております。これは従来のあり方は、実は各組合が経験がないものですから、県を単位に出しまして、そうしてそれを割り振っていくという形が行なわれておったわけであります。これは今日経験が次第に各組合で積まれましたので、保険的理論から申しましたならば、この上に立つということは当然のことだと思います。従って個別化ができておるわけでございますから、これは従来よりも一つの進歩ではないかと私は思います。  それからもう一つ、掛金の割引と病虫害防除事業ということが出ております。これは小農区における作物保険というものが、ただ保険事業だけでもって保険を運営するということは、実は不可能に近い。必ずその生産政策というものをかたわらに置かないと、農家保険事業自身から受けるベネフィットといいますか、それが非常に少ない。やはりその意味におきまして、今度病虫害防除がこういった形で入ってきたということは、私は当然のあり方ではないかというふうに思います。  それからもう一つ出ておりましたのは、一筆収量建引き受けか、あるいは農単かということが問題になっておったようでございますが、理論的に申しますと、当然これは農家単位でもって十分な填補をしていくということが理論としてはあり方だろうと思います。ただ問題はその損害評価の面、あるいはまたその補てんを受ける回数といいますか、あるいは可能性と申しますか、今日の土地所有の形態から申しますと、どうしても零細農に農単の方が有利な結果が過去の実験からは出ております。従いまして、やはり農単になっていく基礎は、なるべくいわばアメリカのような形におけるファームというふうなことに日本の農業の構造というものが変わらざるを得ないのではないか。そうして初めてそこに農単という問題が生まれるので、私は理論としては農単は賛成をいたします。しかしながら農家の過去の意見を見まして、やはりその保険をやっていくということになると、そこに何らか過渡的な考慮が必要ではないかというふうに私は感じたわけでございます。  なお事業団でございますが、やはり事業団をやるからには徹底したセントラリゼーション、私が申しましたセントラリゼーションということが初めて事業団を可能にするのであって、ディセントラリゼーションの過程では、これはもう一つ趣旨がはっきりしない、理論的に合わない、やるならやるでセントラリゼーションを徹底してやらなければ事業団成立しないというのが私の意見であります。
  6. 秋山利恭

    ○秋山委員長代理 ただいま御開陳いただきました御意見について質疑の通告があります。順次これを許します。足鹿覺君。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 二、三、清井参考人並びに山内参考人にお伺いをいたしたいと思います。  最初に清井参考人に伺いたいのでありますが、先ほど、協議会議長として、昨年二月十三日答申をされるまで非常に御努力になられたこと、また苦心の数々についてお話がございました。私ども当時を振り返って考えてみまして、まことに感慨深いものを覚えたわけであります。そこで、先ほど清井さんは、協議会答申が十分尊重されておらない点があるという点を二、三御指摘になりました。たとえば事業団の点について、これを中央のみにしたということについては、むしろ三段階か四段階にもなるという複雑な機構になりかねない。こういう点も指摘され、また事実上の連合会歩合保険についての疑問といったような点についても御指摘になりました。そこで全体として伺いたいのでありますが、本改正案に対する当時の協議会議長としての気持は、十分尊重されてはおらないが、どの点とどの点を協議会の線に復帰するためにどうしたらいいのか、そういう具体的な考え方をお持ちになっておるかどうか、もしあったらそれを承りたいと思います。  それから連合会歩合保険に対する点でありますが、これは政府原案では組合の定款事項になっておるようであります。こういう定款に定める定めないというようなことでこの重大な問題がはたして目的達成が可能であるかどうか。これは協議会の論議の際にはいろいろ議論がありまして、いわゆる二段階という考え方に立った場合には法律事項ではないかというふうにわれわれは理解しておったと思うのですが、そういう定款事項等でこの問題が解決つくとお考えになるか。つまり、先ほども御指摘になりましたように、ある県ではすべてが歩合保険を実施した、ある県では半分したといった工合に非常に乱調子にならざるを得ない。これは組合自主性という立場からいってそういうことになら、ざるを得ないと思うのです。こういったことでは、私はこの制度自体が一つの体系として進むことができない事態が起きてくると思うのです。従って、これは政府の行政措置とか、あるいはいろいろな形において右へならえで、歩合保険なら歩合保険をやらしめるような定款を強制するというと語弊がありますが、そういうふうにつかしめざるを得ないような行政指導が行なわれ、また団体においても強力なそういう統制力が加わってくるということにならざるを得ないと思うのであります。この点について、清井さんはどのようにお考えになりますか。  第二の点でありますが、事業団中央のみにしたということは、私どもは全く意味のないことだと思っております。ただし、二段階制との関係もあって、都道府県連合会というものを事業団の支所にする。中央事業団には、基金をも吸収をさせる、またこの際協会の機能をも吸収をするというような趣旨のものであったわけです。特に、基金を吸収し、農林省の特別会計事業団に移す、これが骨格になっておった。それができない場合は、中央は依然として複雑な機構を存置するという結果になり、先ほど指摘しましたように、事業団特別会計だけを振りかえるということになりますと、さらに、監督機構は農林省が持っておる、がしかし一面また事業団にある程度の監督指導機構が必要になってくるというふうに、二重、三重の行政上の重複機構が生まれてくる、こういうことになるのではないか、こういった点が先ほどお話の中にも非常に指摘をされておりましたので、さらに突っ込んで、この際、当時の協議会議長という立場において承ることができたら幸いかと思います。  要するに、今度の改正が、当時われわれがその仕事に従事した際には、抜本改正、こういうことでスタートもし、そういう結論をつけたわけでありますが、少なくともこれは抜本改正という名に値しない、手直し程度のものではないかと私は考えるわけでありますが、清井さんのこれに対するお考えは、抜本改正と受け取られますか、手直し程度と御判断になりますか、それを第三点に承りたい。
  8. 清井正

    清井参考人 ただいま御質問のありました点でございますが、これは私も先ほどちょっと触れましたけれども、この協議会は単に農業災害補償制度関係する者、あるいは学識経験者だけでなしに、与野党を問わず、国会議員方々委員になって参画しておられたのでありますが、そういう成り立ちできておる協議会における結論は当然これは法律案としてそのまま実現するものであろうというふうに実は私は考えておったわけであります。そういうことで、三十五年から三十六年の二月まで、約一年間にわたって非常な御審議を願いました。ただいま足鹿さんの御指摘になりました問題も重要な問題として非常な御議論のあったところでございます。   〔秋山委員長代理退席、委員長着席〕 一部委員から保留の意見も出たくらいで、実は非常な激論のあったところであります。この事業団は、単なる事業団の機構の問題ではない、保険制度全体を二段階にするか三段階にするかという問題であります。単なる機構いじりという問題ではないのでありまして、今までのように、単位組合が普通の責任を持って、それの九割を全部連合会にかけておりますから、結局連合会までが普通通常責任を負う。それからそれ以上の超異常あるいは異常について国の保険をかけるということでありますから、そこで初めて単位組合連合会というものが保険設計上存立し得たのだと思います。ところがこの制度協議会の案によりますと、通常責任の分は全部末端組合が負うということになったのでありまするから、その意味においては連合会責任を負う立場がなくなってしまったということであります。そこでこの連合会という組織を、この新しく考えられた末端単位組合通常責任を全部負わした場合に、一体どういう存立価値を持たせるべきかということが協議会によって非常な御議論になったと思います。  そこでただいまちょっと御発言にありました連合会に対しましては単位組合歩合保険をするという案も、この過程の中にあったと思います。しかしその後いろいろの議論を重ねて参りますると、単位組合連合会歩合保険をする場合でも、これを制度的にするということはなかなかむずかしいわけであります。全部通常責任末端組合が負った以上は、どうしても三段階にすることは保険設計上無理であるということが、事務的にもいろいろ言われた問題でありまして、従ってこれは責任体系、保険体系としては二段階にするけれども、必要に応じてその歩合をやったらどうか、こういうような妥協的な考え方が一時あったわけであります。しかしその点について重々いろいろな御議論もありまして、これだけ抜本的な改正をしようというときに、しかも今までの末端組合が九割も上にかけてしまって、全く自主性もなければ責任もないという態勢から、いろいろ保険設計上に問題が起こったり、損害評価についても問題が起こったり、いろいろな問題が起こっているのだから、この末端組合責任を持たせ義務を持たせるということが本改正の根本の問題だということであるからには、どうしても保険設計上三段階にすることは無理だという結論になりまして、それで単位組合事業用という保険の二段階制ということに踏み切っていったわけであります。むろんこれについては先ほど申しましたように保留の意見がございましたけれども、そういったことで踏み切ったわけであります。従ってその事業団というものは特別会計が各県に支部を持ちまして、いわゆる県の連合会も吸収した形であります。従って基金仕事も吸収するあるいは協会の仕事もあわせ行なっていいのだろうと思いますが、そういう保険設計としては末端組合一つ事業団、その事業団が県に支部を持つという二段階にするということが、これがとにかく今までさんざん議論された末の結論としてこれ以外にいく道はない。あと中途半端な案を作ることはかえって保険設計上むだを作ることになるし、その団体があやふやな存立しか持たないことになって、かえっていかがなものであろうかという議論になりまして、大部分の方はそれに賛成をされて事業団というものに踏み切られたのであります。一部の委員の方はそれに対しまして、通常責任単位組合が持つといたしましても、やはり異常部分連合会が持っていいじゃないか、しかし超異常の分は国で持てという案を作って、事業団単位組合ということではなしに、中に連合会があるということが、今まで長い間の連合会の実績からいって、当然そうした方が保険設計上うまくいくし、全体の保険事業の運営もうまくいくから、連合会を残すべしという御意見がありましたので、これは保留意見としてなっておるわけであります。そういう形で一年間にわたる粒々辛苦の努力の結果こういう形になったのであります。従って事業団という単なる機構を作るという意見ではなしに、保険設計上の問題でありまして、二段階にするか三段階にするかということの議論の結果、通常責任を今までのように九割を連合会に持たせるということではなしに、通常責任単位組合が持つというふうに制度をきめたからには、どうしても二段階にしなければ保険設計上無理だというような皆さんの御議論であったというふうに私記憶しております。従いまして、そういうような過程でもってこの制度協議会結論が出たのでありまするから、私といたしましては、その線に沿うてこの法律案改正していただくことが一番制度協議会の趣旨に合っていることだと考えます。ぜひそうありたいと思って希望いたしております。  ただその点についていろいろ御議論がありました点は、新しい法律改正案を拝見いたしますと大体趣旨が通っているのじゃないかというふうに考えます。こまかい点についてはむしろ足鹿さんの方が御専門であるからおわかりと思いますが、私は改正案を参照いたしましてこの協議会結論と照らし合わせてみますと、大体通っていると思います。ところが今の問題が違っております。それはしかし保険設計上の重要問題でありまして、二段階であるか三段階であるかという問題であって、これは機構の問題ではないのであります。従ってそういう点で違っているところが非常な差であると私は考えます。ただ問題は、この問題以外にも、ただいま御議論のあった通り、あるいは先ほど山内さんからもお話がありましたが、共済関係成立の問題であるとか、補てん方式の問題であるとか、損害評価の問題あるいは責任問題、その他各般にわたる重要な問題がありますが、それは大かたこの案でとれているわけでありますから、その点私は政府案は多としなければならないかと考えております。従って一つ単位組合事業団という二段階になりますから、連合会歩合保険をするということが、単にそのときそのときの契約できめるというような形は、これは保険設計上あまり適当じゃないのじゃないかという感じがいたします。だから制度として行なわれるならば、これはある一定の割合は必ず保険にかけるというような制度にいたさなければ、保険設計上かえって複雑になりまして、めんどうなことが起こるのではないかという感じがいたしておるわけであります。  以上私の感想を申し上げましてお答えにかえる次第であります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 これ以上いろいろとお尋ねすることはどうかと思いますが、ただ一言だけ、先ほど清井さんのお話の中にありました与野党を代表する国会議員が参加をした協議会の構成であった、従ってその答申はそのまま法律化されるものだと期待しておった、こういうお気持を率直に述べられた。私どももそういう気持で、答申についてはきわめて不備な点もあり、また党として不満な点もあったが、最大公約数としてこれを実現すべく努力しよう、こういうことで、一名の態度保留の方を除いて満場一致の答申が出された。それが今日になって全く重要な、今清井さんも御指摘になった二段階制の問題は、機構の問題じゃない、保険設計の基本問題だという御認識をるるお述べになった。全く私も同感でありますが、そういった点があいまいとなり、そして組織、機構の点についてもさらに繁雑化していき、肝心な点が骨抜きになっておる。その背景は一体どこにあるかということについては、私どもいろいろ考えを持っておりますし、その根拠も知らぬじゃございませんが、これはまた別の機会に申し上げたいと思います。いずれにいたしましても、ただいまのお話によりまして、今回の改正は重要な点が欠けておる、明確を欠いておるという点を指摘いただきましたことについて、私も当時を振り返ってきわめて同感でありますので、その点を申し上げておきたいと思います。  なおあとで二、三関連してお尋ねをいたしますが、山内参考人に伺いたいのは、よほど以前、昭和二十九年か八年のころでございますか、当委員会に御出席をいただいていろいろと御研究のほどを御披瀝いただいた記憶がございます。その後いまだにこういう状態で、この問題は片がつかぬのであります。まことに残念に思うわけでありますが、先ほど来から根本的な制度のあり方についてまずお話がございました。そこでその点を二、三伺いたいと思うのです。  保険方式を貫いていくべきであるかどうかということです。昭和三十二年の改正は、これを公営化の方向を打ち出して、行く行くは中央・地方ともに公営化を実現していく素地を作っておると思うのです。そうした場合に、保険方式とからんで、どういうふうに考えるべきでありましょうか。考え方によっては、今度は協議会答申通常災害の場合から特別の病虫害を除いて大体事故対象から除外しておる。その掛金部分を国が援助する、補助するということで、防除に重点を置いておる。そういった点から、むしろ通常災害というものは農業技術の進歩等でだんだん事故の機会が少なくなってくる。またその判断が非常にむずかしくなってくる。いわゆる努力をすればある程度未然に防除できようし、防除を怠れば被害として現われてくるという、非常に微妙なものが出てくる。従ってやはり考え方としては異常部分以上にまとまったいわゆる共済金を支払っていく、こういうことがやはり制度としては中心に考えられるべきではないかということが論議もされ、私どももそう考えておるわけなんです。そうなった場合に、やはり農単というものが一つの方式として出てくるわけでありますが、問題はこの保険方式を貫く場合は、必ずしも強制を必要としないのではないか、こういう議論がずっとあるのであります。元来、保険は最も利己的なものであって、掛金をかけた者がいざというときに保険をもらうという、非常に資本主義的な、自己本位の考え方に立ったものである。これを強制していくところにこの制度全体を通じて非常にむずかしい問題が出てきておる。それをこのたびはある程度緩和をして、事業別に廃止もできよう、また復活も認めよう、こういうことも答申の中に盛っておるのですが、これが不明確になった。純粋の保険方式でいく場合、やはり異常部分以上に対して完全な任意制にしまして、そして掛金をなるべく合理化し、国も責任を持つだけはちゃんと法に基づいて持たしめていくというようなことも、事ここに至りますと私どもは真剣に考えてみる必要があるのではないかと思うのであります。これは協議会の際に大蔵事務次官をしておられた河野委員が、現在のように強制しておるから国が補助を出しておるのだという議論に対して、大蔵省としてはそういう考え方ではないので、強制であろうが任意であろうが、国が必要と認めた場合は、国が補助助成をすることは当然であるということを明言をしておられる。相沢主計官もそのときおられて、ちゃんと陪席して聞いておられた。従来、私どもが理解するところでは、強制をしておるから国から自動的に、いざというときには金が出てくるのだ、これがこの制度の根幹をなしておるものだ、そう考えておった。ところが協議会審議経過を通じて、強制であろうと任意であろうと、これは国が定めたことであるならば大丈夫だ、こういう注目すべき意見がありまして、その後いろいろ考えました場合に、保険方式でいくならば、やはり異常部分以上な部分というものに対してある程度任意の原則というものが可能になるのではないか、この点どのように山内さんはお考えになりますか。保険理論として一つ……。
  10. 山内豊二

    山内参考人 大へんむずかしい御質問なのでございますけれども、私、考えますのに、任意が成立するかいなかということは、結局いわば個人主義といいますか、そういったものに徹した、近代的なセンスが日本の農家にあり得るかどうかということになるのじゃないかと思うのです。ところが今日の段階におきます農家の価値判断と申しますか、それはないのではないか。いわば日本の農業経営自身が持っておる、家族経営にしてもなおおくれた面を多分に持っております。これがもし家族経営にいたしましても、かりに経営主が中心になって責任を持っていわば企業的な意味において経営をしていくということになりますと、保険の需要というものが出てくるのではないか。今日はなおその段階にならない。従って個人主義に徹しますと、むしろ社会連帯性といいますか、個人主義的な立場に立った社会連帯性、すなわち保険で申しますところの保険の連帯性というものが出てくると思う。しかしながら私のここ最近あるいは過去の調査におきましては、部分的な企業経営の農家以外は、たとえば非常に高度な集約的な企業的農業をやっておる人以外は、おそらくそういうことはないのじゃないか。失敗すれば何とかなるだろうというふうな農業経営自身が持っておる一つの構造的なおくれといいますか、それがてこになって、どうしても企業としての経営を考えていくという面が少ないのではないか。従ってやはりこれが小農の持っておる特徴ではないかというふうに理解しております。従ってもし今後日本の農業経営というものが発展をいたしまして、企業的ないわば経営主を中心といたしました、経営主責任において経営を遂行していくということになっていきますと、私はこの可能性も生まれていくだろうというふうに思います。ただその場合に、異常というものをどういうふうに考えていくかということが、私は問題になってくるだろうと思う。過去におきまする異常という考え方は、一つの地域集団としてその起こってくる災害が異常であるかどうかというふうに判定をするわけでございます。しかし災害の発生の形態というものは、必ずしも地域集団としてのみだけでなくて、やはり個々に個別性を持って起こり得る可能性もあるわけでありますから、過去のような考え方における異常災害というふうなことは適用が非常にむずかしいのではないか。やはりその場合には個別経営を中心にした考えを反映していかざるを得ないのではないか。ただそこで、アメリカの場合もそうでございますけれども、一体どの程度の填補を選択するかということが問題になってくると思う。そうするとそこに、かりに総収量の二割五分以上の損害の出たときの保険、あるいはおれのところは要らない、おれのところは半分でいいというような農家の考え方、そういったところに農家自身の持っておる考え方を取り上げていくような形にやはりいかざるを得ない。それがやはり近代的な意味における保険ではないかというふうに思います。ただ今の段階といたしましては、先ほど強制の問題を申しましたけれども、申しましたのは保険を運営するという意味から申したのでありまして、持続し、運営していくということになりますと、今日の農家意識から申しますと、やはり逆選択いわば高位な危険地帯だけが残っていくだろう、先ほど三割というのはそういうことだろうと思います。そうなると保険自身としても運営が非常にむずかしいですし、デッド・、ロックに乗り上げざるを得ないというふうに私は考えております。従って過渡的な手段としては、今日はやはり保険というものを、ネガティブなマイナスの面だけ補てんを受けるという面だけで農家を引っぱっていこうとしますと、これはとうていできないのじゃないか、少なくとも小農を背景にいたしますと……。そうするとやはり保険と他の農政との関連を有機的に結びつけていくというところに、これからの運営が出てくるのじゃないかというふうに思います、それで、たとえば最近メキシコでやっておりますのは、これはアメリカが初期にやったことでございますけれども一つ保険以外のベネフィットを受けるには、やはり保険に加入せざるを得ないというような形において、強制じゃないのでございますけれども、勧奨的な形で参加を求めていく、ちょうど初期のアメリカの保険の場合に、たとえば農産物価格支持制度におきまして、価格支持のベネフィットを受けるには、小麦の場合、小麦保険に加入することが一つ前提になっていたようでございます。そういった形で金融あるいは価格制度というものとの関連において、やはり有機的に結びつけていく、従って全体として所得安定に農政として持っていくというところに、私はあり方が今後出てくるのじゃないかというふうに思っております。これは私、最近考えていることでございます。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 大へん参考になる御意見を聞かしていただいて喜ぶわけでありますが、さらに保険方式の問題で、山内さんも今後時間を要するだろうということは先ほどもおっしゃっておりますが、現在、個人単位の共済契約じゃないのですね。私どもは、三十二年の改正の際にも、村全体の契約からこれを個人にまでおろせ、そうしたら保険という趣旨を個人々々が納得をする、今山内さんが指摘されましたような、アメリカにおける事例、自分は七五%保険をつける、ある者はいや五〇%でいいというふうに、個人々々の意思がその契約に反映してくる、今の日本のこの農済制度はそこまでいっていない、部落を一括し、あるいは郷村を一括して、ある程度危険階級によって掛金率を変更するという程度のことであって、一括していくのですね。これは今の小農経営の大多数を占めておる日本の現状から、これを直ちに個人々々にしていくということは、私どもはきわめて困難である、しかしその方向を打ち出していかなければ、この保険という考え方で進む限りは、これは矛盾が出てくるであろう、必ず農民の突き上げを食って大きな問題が起きよう、こういうことを主張し続けてきたわけであります。ところが、なかなかそういうわけにはならない。ですから、少なくとも部落が選択をするというのが大体今の最小限度の段階ですね。これは純粋の保険制度としてこれを貫くということは、今の段階ではきわめて困難だ。そこで公営化の方向を打ち出して、そして災害による農家所得をどうして補償するかということに対して国がいろいろと各方面からめんどうを見ていく、こういう性格が出てきておると思うのでございます。そこで今度は補てん額が実補てん額に変わります。大体石当たり七千円、五千円、三千円というのが協議会答申の線でありましたが、政府原案によりますと、大体その線は考えている。補てん額が上がれば、掛金が上がってくるということは、これは保険の方式からいって当然なんですね。ところが実際は上がったらいかぬのだ、こういうことになるのです。保険方式で貫こうと思えば、矛盾がもう明らかに出てくるのです。それを保険でいこう、一方においては、国家補償の性格も再保険という形で付加していこう、村では共済だといって、お互いが助け合うのだといっている、この共済と保険と再保険という名によって国家補償を三つこね合わせたのが今の制度であって、非常にむずかしい制度になっているわけです。そこで補てん額を高めれば掛金が上がる。それを上げないためには、どうしても国家がその賦課金の面において農民負担を軽減し、掛金を合理化する面においてまた農民負担を軽減していくということにならざるを得ない。それをある程度国家財政の一定のワク内においてやらせようとするところに矛盾が出てくるわけであります。そこで結局自家労賃部分の六割を補てんするというのが従来の考え方だったが、山内さんが前に著書に書いておられましたような所得補償的な性格を今度の改正ではやや盛り込んでいこうとしているわけです。そうなりますと、今申しましたように掛金で必ず問題が出てくる。この点についてどういう形で調整をとっていくべきか。要するに大蔵省なら大蔵省が国家財政をあずかっており、一定の共済制度に対しては、これだけの補助金だぞ、この範囲内でやれというようなことで補てん額を上げていこうとするならば、これはもうどこかに亀裂が出て、そこへ矛盾がしわ寄せされてくると思う。その辺にこの制度のむずかしさがあると思うのですが、この点について実補てん額を所得補償的に高めていく場合に、保険方式をもってしてはとうていまかない得ない。どうするか。この点について、よその国の事例等もだいぶお調べになっているようですが、何かいい方法を御示唆いただけないものでしょうか。
  12. 山内豊二

    山内参考人 今の問題は、実は与えられたワクにおける分配の問題ですが、保険でございますから、過去において被害の高かったところは、当然保険料率を上げる。今度もその意味でやや出ていると思うのでございますが、過去における経験というものが出てきて、そうしてそれが個々の村の保険料としてきまっていくということでございますが、それ自身一つ当然な合理性はあるわけでございます。実は今度インドにおきましてその問題がございまして、どうするか、あるいは経営規模によって問題を考えて、非常に零細な人については負担分——実はインドで五エーカー以下ということになりますと、非常に貧農に属しますが、五エーカー以下ということになると、ちょうど二町歩でありますが、それで線を切って、それ以下の農民については相当掛金の面でめんどうを見ていく、そういう線を実は打ち出したわけです。二つ線がございまして、一つ規模の面あるいは所得を反映した規模、もう一つの問題は、危険の程度と申しますか、その問題がございますが、結局もし可能であれば、いわば今日零細農家をどうするかということが一つ問題だと思いますけれども、この中にそういう考え方を生かしていこうとすることになると、限られたワク内では、地域性に応じた、零細農家に対する保険料の負担というものの軽減をはかっていくということにならざるを得ないんじゃないか。ただ、実質上低所得農家としてどう定義していくかということは非常にむずかしい問題でございまして、それをどうするかということは非常に大きい問題だったわけでございますが、それ以外に今日考えられないんじゃないかというふうに思っております。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点だけお尋ねをしたいと思うのです。先ほど各地の調査の結果を御発表いただいたわけでありまして、山形県藤島の事例あるいは香川県の事例その他いろいろお話があったのですが、藤島の場合は加入する者と加入しない者がおのおの三〇%、掛金が安くなれば加入するという者が四〇%、香川の場合は六〇%もありますが、その加入しないという者の考え方ですね。なぜ加入しないのかということについて御検討いただいたのでしょうか。それから掛金が安くなれば加入するということは、どの程度農民として素朴に考えておるのか。そういったような点は、きわめてまとまった御調査でありますし、参考になろうかと思いますので、もう少しそれを詳しく御披露いただければ……。
  14. 山内豊二

    山内参考人 実はこういうことになっております。加入しないという農家を調べた場合、実はこれはいろいろな要因がございます。一つは、損害評価をめぐります利害の問題とか、あるいはまた制度自身に対する誤解がこの面からも相当ございます。それからもう一つは、きわめて安定しているというところでございます。しかしこの掛金が安くなれば加入するという農家の層にもいろいろありまして、比較的安定している層もこれには含まれております。ただ、過去におきまして災害を契機にいたしまして——実は私のは山形の藤島町の事例でございますが、藤島町は比較的安定した地帯なんです。非常に安定した、割合に大きい農家で、農地改革以前は小作農であったわけです。それが最近自作農になったわけですね。その農家に話を聞いたわけですが、その話にいわく、やはり過去に災害で相当苦労をしたという話なんですが、そういうことが起こると困るから、すなわちそれは災害によって、個々の地主制のもとにおいて相当苦労したのではないか、あるいはそのことが契機になってまたもとへ戻るのではないかというふうな、過去の経験からの不安感というものが相当あるようでございます。それは非常に安定した農家、非常にいい農家です。今四町歩程度耕しておるんじゃないかと思いますが、やはりそういった面がございます。  それからそういった人たちは、今日の掛金負担をどの程度のところに希望しているのかということでございますけれども、現在の掛金に対する希望負担割合ということで、実は一割から九割まで出しまして聞いたのですが、そういたしますと、たとえば香川県の白鳥町は、モードが二つ出て参りました。一つの一番大きなモードは、五割のところでございます。それからもう一つのモードが七割のところにある。従って今日の掛金の七割でいいというのと、それから半分でいいというのと、二つの層が見受けられます。それから藤島町の場合は、半分というところに集中をいたしております。それから福島の保原も半分でございます。北海道美幌につきましては、これは事実上非常な利益を得ておるわけでございますから、安くなればなるほどいいわけでありますけれども、今日の八割から五割の間に広く分布しているというふうなことが言えるように思います。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほど大事な点を落としてしまったのですが、異常部分の程度ですね。山内さんはどの水準を異常部分としてお考えになりますか。現在この制度が発足した当時と農業情勢が著しく変わっておる。そういう意味から、三割の被害を今度農単で二割を原則とし、暫定的に従来の三割というものを市町村に共済責任を負わせよう、こういうことであるわけですが、これに対していろいろな意見が今出ておるところなんです。実際においては共済事故の対象になるのは低いほどいいわけですが、しかしそうなるとこれは保険なのか保険でないのか、わずかの差額をめぐって紛争が始終起きる。しかもそれは全く自分たちのかけたものを取り戻すという意識であって、いわゆる災害から自分たちの所得を補償してもらうという考え方でなしに、かけたから取り戻すのだという考え方で、今の制度の趣旨とはほとんど離れておるのが実情じゃないかという気がするのでございます。そこでいわゆる異常部分以上なら以上というものに区切って、これに徹底した所得補償をしていく。しかもこれは任意なら任意ということによって踏み切り、国もこれに相当額のめんどうを見ていく、こういう考え方も一部識者の間には考えられておる。しかし、今の日本の小農経営の立場からいって、問題がそこにあるということは先ほど指摘した通りなんですが、大体今の三割以上と五割以上と六割以上の通常、異常、超異常というものの区分は、妥当なものでしょうか。大体異常部分として考えていく面はどの程度が今後妥当であるか。それは末端通常部分の問題とは切り離して、そこに一つの線を引く場合を仮定した場合ですね。あとでまたいろいろとお話を詳しく個人的に伺うとしまして、もし御構想があったら、異常部分の程度が問題だという先ほどお話がありましたので、ちょっとその点だけ……。
  16. 山内豊二

    山内参考人 先ほど申しましたように、実は通常、異常、超異常というのは、今日の制度のための一つの仕分けでございます。そのためにいわば統計的な方法を用いて決定したのでございますね。従ってそれは個々の農家の場合と必ずしも一致しないと思います。それから先ほどちょっと農単の話もございましたけれども、非常にひどい災害の場合には、これは農単であろうと一筆であろうと結果は変わらない。むしろ農単の方がいい填補が得られると思います。ただ、異常という意味が問題だと申しましたのは、結局は個々の農家の異常ということは一つの個々の農家の問題だというふうに思うのです。過去において災害がありました場合に、たとえば非常に小農の場合ですと、いわば期待収量一ぱい一ぱいの生活を続けているという面もございます。それから比較的いい農家ですと、割合余裕を持った考えが出て参ります。そこに異常という線が個々の場合に非常に引きがたい。しかし、異常ということはやはり個々の農家立場から考えざるを得ないだろう。ただ私が感じましたのは、たとえば瀬戸内の非常に工業化が進んでいる地帯、その地帯農家災害に対して非常に関心を持っておるわけなんです。ただしかし、その持ち方が非常に違う。たとえばやはり零細農家で兼業農家の場合ですと、食糧自給というその面がむしろ非常に強くて、その食糧自給がこわされていくというような点に彼らとして非常に大きい問題が出ている。そうすると、先ほど申しましたように、その地帯農家で五割以上の災害になるとこれはもうかなわぬ。そうなった場合に徹底した填補をしてほしいというふうに申しました。それは一つの兼業零細規模の事例でございますけれども、ただ非常に大規模の経営と申しますか、単作地帯ということになりますと、現在の所得維持、所得安定というようないわば保険的な感覚が出て参ります。そうすると、その考え方は比較的低い線で農単として考えて、二割程度といったところに非常に大きい問題が出て参ります。これはやはり地帯的な問題として、あるいは個々の農家の問題として考えざるを得ないのじゃないかというふうに思っております。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 どうもありがとうございました。
  18. 野原正勝

    野原委員長 西宮弘君。
  19. 西宮弘

    ○西宮委員 それではお二人の参考人に二点ずつ、都合四点お尋ねしますが、まず清井参考人にお尋ねいたします。  私ども協議会審議の状況等を全く存じませんので、参考にお聞かせ願いたいと思うのであります。要するに、審議経過と申しますか、最後にお一人の保留意見をつけてその他の方は全部賛成をされて、最後答申がきまったというお話でありますが、あの協議会には各界を代表する方が集まっておるわけです。ただし、そう申しましても、たとえば売手と買手が一緒になって価格を決定する、そういう審議会みたいに全く両極に分かれて意見が対立するというようなことはなかったはずだと思うのであります。ただ、たとえば農協側の御主張あるいは農済側の御主張、そういう点には若干のニュアンスの違いがあったり、あるいは同じ農済と申しましても、たとえば国の段階、県の段階あるいは末端の段階、さらにまたそれに働いております職員の立場、そういう点には多少ずつ相違があるのではないかと思うのでありますが、そういう点などを前提にいたしまして最後にまとまった御意見というのはどうであったのか。つまり、たとえば農協、農済におきましては若干の意見の違いがあったように私ども承っておりますが、同じ農済系統の中でいわゆる保留意見なるものは全部一本にまとまっておったのか、それとも今申し上げたようなそれぞれの立場々々で若干の違いがあったのか、そういったような審議経過一つお尋ねいたします。
  20. 清井正

    清井参考人 お答え申し上げます。  先ほどちょっと申し上げました通り、この協議会が始まりましたのが三十五年の三月でございまして、終わりましたのが昨年の二月でございます。終わりましてからすでに一年たちましたので、はっきりした記憶を持っていない点がございますが、その点は御了承願いたいと思います。  この点は最初に私が発言いたしましたときにも若干触れたのでございますけれども委員の方は各方面が出ておられるわけでございます。従って、農業共済組合方々もむろん委員として出ておられますし、協同組合関係方々委員として出ておられたわけであります。一部農業協同組合関係委員の方の中には、根本的に災害補償制度というか、こういうような緻密な保険制度によらないで、むしろ災害の起こった農家に交付金をやるようなことを考えてみてはどうかという御意見さえあったのであります。それは意見があった程度で済んだわけでございますが、農業共済組合系統の方々の御意見は、すでに御自身が現在その制度の運営に当たっておられまして、相当いろいろ御苦心になっておられるわけでございまして、そういった面の実情等をも考え合わせまして、実地に即したいろいろ貴重な御意見の御開陳があったわけでございます。そこでだんだんと話が進みまして、最後保険体系、保険設計と申しますか、それをどうするかという段階の議論をいたしました。相当後半になってからそういう議論が起こったわけでございますが、そのときに議論となりました問題は、先ほども私が触れました通り、今度の改正の趣旨が、今までその九割の分を共済連合会の方で保険をするという建前になっておるために、末端組合がそれだけ責任が薄いと申しますか、自主的でないと申しますか、責任の度合いが薄いわけであります。従って、そういう面からくるところのいろいろな弊害点というものが、今までの農業災害補償制度の弊害点といわれておる問題に基因している点が相当あるのではないかというようなことから、今回の改正は、通常災害部分単位組合にこれを保険させる、そこへ受け持ちさせるということをきめたということが根幹であったわけであります。それから出発して、それでは上部機構はどうするかという議論になったわけでございます。そこで、先ほど御議論がありました通り、これは現在の段階といたしましては、ただいまの連合会に相当するものをそのまま残しまして、それに一部歩合保険をさせるべきであるという御意見もありまして、一時そういう案もあったのであります。ところが、最後に至りまして、通常災害保険部分単位組合に全部やらせますと、それ以上の保険を二段階と申しますが、いわゆる連合会と国という二段階で受け持つということは、どうしても保険設計上無理があるということになりまして、そこで事業団というものを作りまして、単位組合事業団でもって通常、異常の災害について保険をする、通常部分組合だ、こういうふうにきちんと保険設計をすべきだ、こういうところに踏み切られたわけであります。ただそのときに、従前農業共済の方のお仕事をされて非常に御努力をされておる方々は、そういうふうに分けるのは一つ方法かもしれぬけれども、むしろ仕事のやり工合なり実情を十分勘案するという、いわゆる事業団という法的機関と末端組合とが直接つながるということには相当無理があるのではないか。やはりそこに従来の実績を持った連合会というものを残して、そしてそれをして損害評価なり保険の引き受け事務なり、そういうものに大いに協力させる必要があるのではないか、そのために連合会を残しておけ、そういうことで連合会を残しておく以上はそれに保険設計の一部の責任は当然持たせるべきであるから、いわば通常は普通組合に持たしてもいいが、通常をこえる異常部分については連合会保険をさせろ、しかし、超異常の分は国でも持ったらいいじゃないかということで、異常に相当する部分連合会に持たせるべきである、こういう御意見が出たわけであります。そういう御意見も出まして、そういう点についていろいろ御議論があり、また先ほど申し上げましたような事業団をもって完全な二段階制にするという問題についてずいぶん御議論があったわけでありますが、結局保険設計としては、この際末端通常責任を負わせるという以上は、二段階にするのが適当であるということで踏み切ったわけではございますけれども、なおかつ共済組合関係の方の御意見として、今私が御紹介申し上げたような有力な意見を御主張になりまして、その点につきまして、十分各委員間で議論した結果、これは否決をするということでなしに、これは保留意見として総会に報告すべきであるということが小委員会できまりました。総会にかけまして、総会においてもその通りこれは保留意見としてあわせて報告しようということで、保険事業団を中心とするところの災害協議会意見に、保留といたしまして、別に添付いたしまして、その一部意見というものを保留意見として報告した、こういう経過になっておるわけでございます。
  21. 西宮弘

    ○西宮委員 私がお尋ねをいたしました要点は、その際いわゆる農済側と申されましても、たとえば県の段階、町村の段階、あるいはときによりますと、別に職員の代表というのは入っておらないと思いますけれども、いろいろ陳情その他があったかもしれないと思うのでありますが、そういう際等に違いはなかったのかということであったわけです。
  22. 清井正

    清井参考人 御議論の最初の段階では、いろいろこまかい部分については御意見の差があったかもしれません。しかしだんだんとお話が進むに従いまして、ただいま私が紹介申し上げましたような意見に御統一になったものと私は理解をいたしております。
  23. 西宮弘

    ○西宮委員 もう一点は、先ほどお述べになりました御意見の中の最後に、とにもかくにも早く法案を通すべきだという御意見があったのでありますが、これはどうなのでございましょうか。たとえばいろいろ協議会で研究をされた経過あるいは結果についてのお話があったわけですが、それと今日提案されておるのとでは、若干の相違があることは御指摘の通りだ。そういうことを十分前提にして、なおかつ早く通せ——さらに別な立場でお尋ねをしますと、それを通した結果、それではこの農災問題、今いろいろ論議をされておるわけですが、そういう問題は全部終止符が打たれて、ほんとうに農民の利益が確保される、そういうお見通しを持っておられるかどうか。
  24. 清井正

    清井参考人 協議会結論政府提出の法案とは非常に重要な部分が違っておることは、先ほど申し上げたのでありますが、それ以外の点については、大体私は通っておると思うのであります。そこで、私ども協議会議論をしたときも、これは急ぐから、早く結論を出してくれということで、私ども勉強をしたわけでございます。昨年の三月に結論を出して、もうそれから一年たっておるわけであります。私どもといたしましては、この一年間にどういうふうに客観情勢が推移したか存じませんけれども、しかし現行制度よりも一歩も二歩も進んだ内容であるならば、できるだく早く改正案というものをおきめ願いたいと私は考えるのであります。協議会議長としては、当然協議会の案通り法律案成立することを望みますけれども、しかしいろいろの御事情でもしもそういうことができないとするならば、できるだけ協議会の案の内容を実現した内容で一刻も早く一つ補償制度改正を実現願いたいということを、私は重ねて各位お願いを申し上げたいと思う次第であります。
  25. 西宮弘

    ○西宮委員 当時の協議会議長であった方にこういうお尋ねをしても、ちょっとお困りかと存じますが、このまま通した場合、農災問題は完全に問題が解決をして、要するに農災問題については、全く安定して、ほんとうに農民に歓迎される、そういう状態が日本じゅうに起こるかどうかということなのですが、これはお尋ねするのがいささか無理かもしれませんけれども、もしお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  26. 清井正

    清井参考人 これはただいま申し上げた通りの答えを繰り返すことになるわけでございますが、法律案も重要な点において違っておりますけれども、その他多くの部分について相当協議会の希望がいれられておる点もあると思います。ただ事業団というものにつきましては、先ほども触れましたけれども中央だけの事業団ということには、いささか問題があるのではないかという気もいたします。それから単に契約と申しますか、定款で、単位組合連合会とが、単位組合の負う通常保険歩合保険をするというようなことがはたして適当であるかどうか、私もちょっと判断できないのでありますが、当時の議論の結果としては、一応それは経過的に議論があったわけで、それを乗り越えて事業団で二段階制にするという議論になったという経過もあるわけでございます。私といたしましては、相当部分協議会意見が法案に入っておるという建前もあるのでありますが、若干の疑問はありますけれども、できるだけ早く一つこの補償制度協議会意見に沿うた点で法案を通していただきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  27. 西宮弘

    ○西宮委員 山内参考人に二つだけお尋ねをいたします。  第一点は、農村に入っていろいろ農民の考え方を御調査になったようでありますが、私懸念をいたしますことは、農災制度なるものが、ほんとうに農民の中に消化されておるかどうか。十分理解と納得を得て、たとえばアンケートについてお調べになった、農民がそれぞれ回答する際等にも、ほんとうに農災というものを十分に理解してそういう答えが出ておるかどうかということを危惧するわけであります。と申しますのは、たとえば農災の掛金をとられることを何か税金と同じように考えておったり、あるいはまたもらったやつを補助金と同じように考えて、出せというから出す、くれるというからもらうというようなことで、ほんとうに幾らかければ幾らもらうのだということを最初から承知の上で入っているわけでもない、そういう実態がかなりあるのではないか。それがために、分配するときに規定通りの分配が行なわれない。勝手な頭割りで分けてしまうということがあったりする。そういうことがあったりすることだけは厳然たる事実なんです。もちろんそれは少数の例外かもしれませんけれども、とにかくそういうことが現にあるわけです。そういう点から判断をいたしまして、ほんとうにこの制度農民に消化されておるかどうかということに疑いを持つのですが、その点いかがでございましょうか。
  28. 山内豊二

    山内参考人 私は割合理解されているんじゃないかというふうに実は判断をいたしました。と申しますのは、比較的自分の利害に直通するわけなんで、誤解というのは、たとえば損害評価の場合におきまして、かりに基準収量の問題にいたしましても——そこに誤解があると思うのでありますけれども基準収量組合が勝手にきめた、自分の本来の生産力はもっと高いんだというふうな形で言っているわけです。しかしそれ自身は組合の中に反映をされていない。そういった意味で、保険制度に対する誤解が相当出ているんじゃないか。それから必ずしも全然知らないということはないようですね。実は保険制度の話を聞いたかどうかというアンケートもございましたですが、これはほとんど聞いております。何らかの意味における——完全な知識は持っておりません。ただしかし、さらに個々の農家にもう少し普及といいますか、趣旨を徹底さすといいますか、先ほど申しましたような、安全を買うというような精神が出てくるところまでは、とうていまだいっていない。その点がやはり不足しているんじゃないかというふうに思います。
  29. 西宮弘

    ○西宮委員 第二点は、お尋ねしようと思いましたが、少しおそくなりましたので、他日個人的にお伺いいたしたいと思います。ただお伺いしたいと思いましたことは、今農災制度改正という問題で私ども取り組んでいるわけですが、もしそうでなしに、全くここで白紙に文字を書くようなおつもりで、今の農業災害に対してどういう制度をとったらいいかということをお考えになるとすれば、どういう案が今の段階において最も適当か、たとえば内容的に言うならば、さっき足鹿委員は、異常あるいは超異常というような災害、それを完全な任意にしたらどうかというような御意見をちょっと述べられたわけですが、あるいは逆に今までの通常災害——農業経営が非常に安定してきたわけですから、あるいは通常災害的なものははずしちゃって、大きな災害だけを保険の対象にするというような考え方もあり得るんじゃないか。これは内容的な問題。それから機構の問題として、たとえば純然たる今の保険会社みたいなものにしてしまうという考え方、あるいは純然たる公営にして、たとえば今の社会保障制度のいろんなやり方がありますが、あれと同じような形で純然たる公営にしてしまうというようなこともあり得ると思うのですが、そういったようないろいろ、全然新しいところで白紙に構想を描くということになればどういうことが考えられるかというようなことをお尋ねしたいと思ったのですが、これはあとで個人的にお伺いすることにいたしまして、どうもありがとうございました。
  30. 野原正勝

  31. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 清井参考人にお伺いしたいのですが、昨年二月十三日に答申を出される際に、答申の冒頭に、政府はこの答申を十分尊重して、そして早く改正をしてもらいたいということが一つ、それから政府は三十六年度の予算編成に関してこの協議会審議を軽視をした措置を現在行ないつつある、まことに遺憾であるということを答申の冒頭に言われておるわけですね。今お伺いしますと、何かもう大部分通っておるから早く通してもろうた方がいいというようなことを言われましたけれども答申の冒頭に言われた後段の、政府制度協議会審議を無視しておるではないかという方のその御意見と、今もう大部分いれられておるから早く通して下さいというお考えの関係はどうなっておるのでしょうか。
  32. 清井正

    清井参考人 あの当時を思い起こしてみますと、まだ協議会結論が出ない前に、ちょうど三十六年度の予算の編成が行なわれましたそのときに、まだ正式決定になってない本制度の問題について与党の中でいろいろ御議論がありました。ややその協議会答申をせんとする案と違ったような方向に動きつつあるというようなニュースが当時情報として入って参りました。そのことが協議会において問題となったわけでありまして、それで協議会全体の意向といたしまして、協議会の進んでいる方向と、しかもその途中において違った動きがあるということははなはだ遺憾であるということが全委員の御意向でございました。で、ただいま御指摘になったようなことが冒頭にはっきりと書き出されたというような経緯を見ているわけでございます。私が先ほど申し上げましたのは、協議会議長といたしましては、できるだけ協議会案でこの法律案改正してこの委員会でおきめ願いたいという希望を申し上げておるわけであります。かりにそうでない場合においても、できるだけ協議会の線に沿うたところ、一つおきめ願いたいということを御要望、お願いを申し上げておるようなわけであります。さような事情を御了承願いたいと思います。
  33. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体政府がそういう制度協議会を作っておって、ほかの公職選挙法なんかの場合でもそうですけれども、なかなか答申を尊重しない、こういうことは非常に多いです。それからまた参考人を呼んでも、せっかく貴重な御意見を聞きながら、それが実際の審議の上になかなか結果として取り入れられない、こういうことが間々あるのです。今度の今かかっておる農災の問題も制度協議会答申をほんとうにそのまま尊重してやられておれば、いろいろわが党も意見があるけれども、多数の各界の人が一緒になって一年間もかかって議論を戦わして作られた案ですから、制度協議会の案のようなやつが政府案として出てきておるならば、こげんに長う審議せぬでもよかとです。ところがそういうふうになっておらぬからこうなっておるのです。それでかつての協議会議長がもう少し怒った御答弁を私はお伺いできると思っておったところが、もう九割くらいは通っておるから——私の受けた印象が間違いでした。今お話を聞きますと、できれば制度協議会の線で改正してもらいたいけれども、万やむを得ずこういうふうになっておるから、それでもちょっとでも前進しておるからというようなお話ですから、必ずしも私が受けた印象とは違うようですけれども、非常に重大な点でやはり制度協議会答申を無視しておる。特別会計だけを事業団にして、そうして当初の二段階を今のような改正案にして、これは何ですか。全然話になっておらぬ。それで制度協議会のかつての責任者としてもう少し強力な意見一つまあ吐いてもらいたいと私は思ったわけですが、これが大体団体の立場に立つのでなしに、やはり共済は農民立場に立たなければいかぬ。農民立場に立つとすれば、一体農民立場はどういうことかというと、農民の負担を軽減するということが一つ。それからいわゆる災害に対して再生産を保障する、これが二つ。これが貫かれておればまあまあですけれども、非常にこの改正案の内容についてはそういう点が必ずしも満たされていないわけです。  そこでもう一点だけお伺いします。たとえばこの事業団方式は、これは今までのお答えで受ける印象ですが、これは中途半端な格好である。問題になっておった特別会計と、それから基金と協会、これが整理されておる。そうすると、これが宙ぶらりんであるから、この点を事業団方式、この事業団を廃止するというような形にもし修正が起こるとするならば、これはこの法案全体にどの程度の影響があるか、その点だけちょっとお伺いしておきたい。大したことはないのかどうか、あるいはある程度根本的なものになるかどうか。
  34. 清井正

    清井参考人 先ほど来私お答え申し上げておりますのは、協議会議長として協議会の案通りできればこの法案を改正していただきたいということをお願いを申し上げたわけでありますが、政府提出の案は、ただいま御指摘の通り、事業団の点と連合会に一部歩合保険を作るという点が違っておるように思います。その他の点は大体通っておると思います。そこで、かりに事業団制度をやめたらどうかという御質問でございましたが、これは私ども協議会として議論したのは、全体を包括する単一団体としての事業団でございまするから、県の連合会はむろん吸収されまするし、共済基金も吸収します。それから共済協会仕事も実際上行なうということになりまして、その単一団体である事業団単位組合との保険とを二段階として結ぶということで事業団という案を作ったわけであります。政府提出法律案はそうでなくして、中央特別会計だけを事業団にするということでございますから、名前は事業団でも内容は全然違っておるわけでございます。従って私どもの意向といたしましては、先ほども申し上げた通り、事業団というものを協議会答申のような性格のものにして修正を下さるならば、私としては一番ありがたいのでございますけれども、かりにそうでない場合が起こります場合におきましては、できるだけ協議会答申の線に沿うたところで法律案改正いただきたい。こういう希望を持っておるわけでございます。従いまして事業団のことについての修正をどうなさるかということは、これはまあ国会においてなさることでございますから、私がとやかく申し上げるわけじゃございませんが、事業団というものはそういう性格であるから、全般的な一つ単位団体としてのみ初めて事業団としての意味があるということを重ねて申し上げまして、御了解を得たいと思います。
  35. 野原正勝

  36. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 実はきょうは、当面の二法案に対して参考人を招致するということでございますけれども、実際これは重要法案でありまするから、本来参考人を招致すれば、お三方だけでなしに、やはり私ども関係からいけば、市町村公営をやっておる現実の関係地区からの代表の意見も聞かなければならない、あるいは解散問題等が生じておる地区からの代表意見も当然聞かなければならぬ、各般の関係の団体等もいろいろ利害対立する面がありますけれども、この時点ではそういう関係意見も聞く必要があるだろう、こういうふうに思うわけであります。きょうは大谷さんがお休みになって、清井さんと山内さんということになりますと、清井さんの協議会のお話をオウム返しに聞くのでは大して意味がない、それはもう資料の中においても私ども十分承知しているわけであって、もっと農災制度をどうするかという自由な立場から発言ができるのであれば、そういう点でいろいろ御意見も承らなければならぬと思うが、われわれはこの問題を処理するにあたって判断をする場合の素材というものは、もっと広く、それぞれの中央から末端を通じての関係者から率直な意見を聞いて、その上に立ってどうするかというわれわれが判断をすべきものだと思うんです。そういう点では清井さんが協議会立場に立ってオウム返しに言われるということであれば、これはあまり質問をしても新しい答えは得られないのじゃないかというふうに実は率直に思うわけであります。  ただこの機会に清井さんにお願いしたいのは、もちろんそういう立場もありましょうけれども、たとえば市町村公営等の問題についてでありますけれども、これは、こういう農災制度の問題を公営化していこうという考え方の中から、市町村公営の問題が現行法律の中でも若干取り入れられておるわけでありますが、清井さんの承知し得る範囲内において、市町村公営の将来の方向という問題について、これは将来の方向としてはそういうふうにいくべきだとお考えになっておるのか、あるいはそういう点についてはやはり現実の問題としていろいろ問題があるというふうに判断をされておるのか、もっと協議会立場を離れて、意見としてお述べいただければお述べいただきたい、こういうふうに思います。
  37. 清井正

    清井参考人 これは協議会におきましても、非常に問題になって御議論があった点だと記憶をいたしております。公営はすでに実行されておるわけでございまして、実行の段階においては、私の古い知識では相当成果を上げていると思います。ただこれを全般的に全部公営にするかどうかということになりますと、やはりこれは制度的に問題がある。農業共済というものがいわゆる生産者の相互の共済制度ということから保険へ発達してきておるわけでありますけれども、これが公営という形になりますと、言葉は悪いかもしれませんが、上下というような感じがやや出てくる。官僚的な視点が出てくるわけです。そういうことが一体共済制度から出発した保険というものと根本的に相いれるかどうかという問題があるのではないか、これは理論的な問題でございます。ただ現実問題としてはすでに法規上許されておるし、また実行されております。成果を上げておるという現実はあるわけでございます。従ってその点につきましては、現在の公営の実態の認識は協議会におきましても十分なされたわけでございますけれども、進んで全部を公営にするというところになりますと、いろいろ議論があって、そこは結論に達しなかったということでございます。従って、結論の中におきましても公営という字は入っておりますが、同時にたしか共済組合に事務を委託するということも考えろというようなことも入っていたのじゃないかと記憶いたしております。そういう言葉で表現されておる、こういうことでございます。理論としてはちょっと問題がある、現実は非常な実績を上げている、こういうところが偽らざるところではないかというふうに私自身考えております。
  38. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今清井さんの関係しておった協議会関係の問題と現行法関係事業団問題が出ておるわけですけれども、本来本委員会の各種法案の審議の過程でも、農林省の各種公団あるいは事業団あるいはそういうふうな関係の問題についてきわめて問題が多いということが、常に国会の審議を通じて指摘をされて参ったのであります。機械開発公団の問題その他各般の審議の過程を通じて問題が出て参りました。この種国の責任においてやるべき性格の問題を、事業団という形でやるべきなのかどうかという点を一つの大きな問題として検討しなければならぬというふうに思うわけですし、ことに最近の趨勢として、国会の審議を通じてでも出て参りました問題は、やはり事業団理事長以下役員、こういうふうな関係の者がややもすれば政党間の政治力の問題でやはり左右されるというふうな傾向が現実には出ておるし、この農民のための農災制度の公正適正な運営という面から見てそういう機構というものが現実の姿の中でそういうふうな誤りに陥らずにいけるかどうかという問題もありますし、また国の責任で財政的ないろいろ付与をしていく場合に、事業団というからには、事業団としての性格からくるいろいろ制約が生まれないかどうかというふうな問題等もいろいろ考えてみなければならぬかと思うわけでございます。ことに私どもが党の方針として出しておる下部末端を市町村に移譲していく形の公営というものを考える場合には、中央事業団であり、下部は地方自治体の形をとる、行政運営上の問題としてそういうことが将来の方向として適切かどうかということにも地方自治団体との関係で問題があるだろう。いろいろ各般の問題を考えて参りますと、事業団ということが一ついわれておるけれども、そういうことがいいのかどうか自身もやはりこの種農災の問題として検討しなければならぬ問題を持っている、こういうふうに思うわけですが、清井さんは協議会立場がおありでしょうから、そういう点ではいかがかと思いますので、山内さんは、かつて東畑委員会といいますか、その当時に御参画になって、この協議会関係では直接メンバーではなかったと思うんですけれども、農災の運営上の機構のあり方の問題についてどういう御意見をお持ちか、参考までにお伺いいたしておきたい。
  39. 山内豊二

    山内参考人 本来作物保険を考えますと、特定の保険を対象にいたしましたいわばひょう害保険、それから今やっております全部の危険を対象にいたしましたオール・リスク・インシュアランスと申しますか、この二つに分かれると思います。これを考えてみますのに、歴史的に発展段階を見ますと、まずオール・リスク・インシュアランスというものは事実上災害の性格からして、国家の援助あるいは国営、そういったものなくしては成立しがたい本来的な性質を持っている。問題は、私は歴史的な災害補償法の発生の過程を見ますと、今日の共済団体、すなわち戦前の、何と申しますか、農業会と申しますか、そういった面からの要請があって、実は作られたものじゃないかというふうに理解しております。ただ問題は、いかに合理的にいかに安く保険の運営を上げていくかという点にかかっているように私は思います。それで、もし今日の団体営であっても、この点が可能であれば、私はアメリカ人あたりから言わせると、むしろ逆にアメリカの場合は政府中心になってやっている。従ってその意味で非常に官僚臭が強いのだ、彼らから言わすと日本の方は非常にデモクラティックなんだということを申します。しかし今度は逆に運営という面から見てみますと、やはり非常に問題がある。すなわち運営のコストの面ですね。この面から私は今日の制度は欠陥があるのではないかというふうに思っております。従って問題は、私はどちらにせよということは言えませんけれども、要するに今の制度であっても、もし運営費というものがもっと安く、あるいは農家の上に立って非常に安く上がるのであれば私は可能だと思います。それからまた市町村公営ということになってきますと、市町村の片事務ということになってくるとやはり問題がある。むしろそういった場合には市町村というよりもやはり公営といった別の機関を置くべきが妥当じゃないかというふうに私は思います。これが今日の各国の一つの趨勢だと思います。
  40. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 共済事故から病虫害の関係をはずす場合の病虫害の防除事業関係、これを本来的に農業災害補償制度の中で推進していくのか、あるいはその他の問題もありますけれども、本来農村の場合には農業協同組合農業を中心にした生産あるいは流通関係を含めた総合的な農政活動をやるべき立場に立っておる。従ってそういう点から見て本来的に共済組合でやるべき仕事、あるいは農政の母体である農業協同組合で取り入れてやらすべき部面、この問題の調整といいますかあるいは区別といいますか、その辺のところは例の建物共済を初めとする任意共済の取り扱いの問題をめぐっても、問題が現実に提起されておるわけですから、やはり農業災害補償法の中で取り扱うべき範囲というものをどこまでに見、本来的に取り扱うべき部面をどこまでに考えるか、また農政上の母体である農業協同組合が発展強化していくという立場から、どういう部面についてはむしろそれは農協でやるべきである、そういうふうに持っていくべきかという点について、任意共済の問題やあるいは病虫害防除事業の今後の取り扱い上の問題等について、むしろこれはやはり自由な立場からという意味山内参考人から御意見があれば承りたいと思います。
  41. 山内豊二

    山内参考人 病虫害防除のことでございますけれども、これは私先ほどから申し上げておりますように、小農を対象にした作物保険では、ただ単に補てんということだけでは農家はついて参りません。それから、やるということになってきますと、やはり先ほど申しましたように、あの程度の強制力というものがないと存在し得ない性格のものだと私は思っております。従いまして農家の面から見ますと、あるいはそれは農協であろうと、どちらからでもいいわけだと思いますけれども、しかし保険事業に参加することによって、それから病虫害防除という一つの便益といいますか、そういうものを受けられることが一つの魅力になる、そして同時にそれが生産という問題につながっていくという意味ですね。それから保険運営という立場に立ってきますと、一つ農家を引っぱるという意味と、それからもう一つ、支払いをむしろ逆にセーブするといいますか、節約する、そういった意味でどうしてもこれはつけざるを得ない。これは何といいますか、アメリカのような非常な大農国ですと各人でやり得る余地があるわけでございますけれども、やはり小農ということになってきますと、どうしても事業の一部としてやる、その対象は保険作物に限定せざるを得ないと思いますが、そういうことだと思います。ただだれが担当者になってやるかということは、農村の事情によって最も能率的になされることがいいのだけれども、しかし参加するということにおいてその便益を受けることが、どうしても保険運営としては必要だろうというふうに私は思います。
  42. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますからあと一点でやめます。  最近、衆議院の方を通って参議院に行っておるわけですが、御承知の通り農地法、農協法のそれぞれ改正案の中で、いわゆる政府農業基本法によりますれば自立農家の育成、協業の助長という前提に立ってということに相なるでしょうけれども、いずれにいたしましても農業生産法人というものが今後いわゆる農村の生産母体として次から次に出てくるであろう、またそういう点においては、われわれが党の立場からいえば、今後の農政活動の母体としては、個人的な面よりもむしろ共同経営的な面を発展助長していかなければならない、こういうことを言っておるわけでありますが、それらの問題と関連して、今の一筆石建の問題、あるいは農家単位の問題ということについて、今日の時点で将来の意欲的な農政の発展方向というものとからめて考えて参りますと、先ほど来二人の参考人から、特に山内先生からも御意見が出ておりましたけれども、理論的な面、あるいは現実面、そういうふうな点で農家単位あるいは一筆石建の問題については当面いずれか一方ということでなくて、並行的な問題の中で将来の方向としての重点を明らかにする、こういう取り扱いにするのが当面の時点における法改正として適当ではないかという感じを私自身は持っておるわけですが、重ねてお伺いいたします。山内参考人にそういう今後の農政の発展方法というものから見て、もう一度今の点についての御意見を承っておきたいと思います。
  43. 山内豊二

    山内参考人 一筆石建と農家単位の問題ですが、現段階では実は法人化あるいは共同化という段階が萌芽として出ておると思います。ただ問題は、今災害補償法が存続しておるわけでございます。そしてそれが次第に変貌していくだろうと思います。ところが今日の段階においてはやはり農家単位ということが望ましいわけでございますけれども、理論的にも当然そうあるべきだと私は思いますけれども、ただ今日それを直ちに打ち出すという段階はまだ早いのではないかと思っております。ただしかし今後のあり方は当然農家単位で完全な填補というところが近くとらるべき措置である。今現実はやはり過渡期であるというふうに私は非常に強く感じます。
  44. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係上これで終わります。
  45. 野原正勝

    野原委員長 中澤茂一君。
  46. 中澤茂一

    ○中澤委員 一点だけ……。長い間清井さんに御苦労願ったのですが、私は社会党という立場から協議会に参加して、われわれ党の基本的な考え方からいえば、あの二段階方式というのは非常に後退したものなのです。しかしあなたも非常に苦労してくれたし、しかも国会の法律の問題だからというので、各党から十人の国会議員まで参加してやったのですから、われわれは後退したものだけれども、一応あれでがまんしたわけです。ところがいよいよ出てきたお化けを見れば、これは全くお化けなんですけれども、そこであなたはだいぶ取り入れられているじゃないかというが、基本的にまず掛金をわれわれは安くするというので、大蔵省まで呼んで事務人件費全額国庫負担まで追い込んだんだが、最後は基幹人件費で妥協したということですね。その掛金を安くするという問題が、現行法で出てきたものを見ると、約千二百組合の基準掛金率が上がってしまうんですね。最高四〇%近く農単計算で上がるんです。三八%という組合もあるようです。これをもし一筆というふうに引き直したら、おそらく基準掛金率が五〇%上がる組合が出てくるのではないか。これは農林省が試算してみなければわからぬですがね。それではこの根本的な問題のケリがつかないで、現行法でこれが実施になったら、かえって協議会答申制度崩壊のきっかけを作ったのではないか。むしろそういう制度崩壊のきっかけを今作りつつある。今まででも、農民が不満で不満でしょうがないのを、まあ君ら制度改正するから待て待てと言ってきたものが、今度この法案が通って制度改正になったら、基準掛金率がぐんと上がってしまったとなったら、これは必ず解散になってきます。あなたは九割とったから通した方がいいじゃないかという御意見のようだが、その点どうお考えですすか。
  47. 清井正

    清井参考人 私が先ほど申し上げておりましたのは、ただいまの御質問の点は別といたしまして、制度といたしまして現在の政府提出案は協議会答申と違っているけれども、現在の政府提出案そのままを通したらいいということは、先ほど来私は申していないのであります。これはできるだけ協議会の線に沿うて下さるのが一番いいけれども、できないにいたしましても、現在の政府提出案で問題となっている、先ほど来私が指摘いたしました二点の問題、事業団の問題と連合会歩合保険の問題、この二点のうち最初の事業団は、名前は事業団という字を使っておりましたけれども協議会答申事業団とは本質的に全然違っていますし、そういう現在の政府提出案の事業団というものはむしろ問題が非常に多いのではないかという感じがいたします。極端に申し上げますと、屋上屋を架するのではないかという感じさえするくらいでございます。まあそこに問題があるということを申し上げます。  それからいわゆる歩合保険という問題も、これもそのときどきで連合会単位組合とで契約をするというようなことになっておるようでありますが、そうなりますと、保険設計上そういうことができるのかどうか、あるいは適切であるかどうかという問題もあると思いますから、かりに連合会を残すというようなことになりますと、もうちょっと考え方を変えなければならぬのではないかという感じもいたすということを先ほど来申し上げておったわけなんであります。  そういう点で現在の政府提出法案に対する率直な私の考えを申し上げたわけでございますが、それでただいまの点でございますけれども、これは当時先生も委員としてお加わり下さいまして十分御議論願ったわけであります。私どもこの御議論経過を聞いておりましても、とにかく抜本的に今までの問題点、困っている点を改正しようという大きな意気込みで、小異を捨てて大同についていただいたことを私もよく存じておるわけでございます。従って、あのときに協議会答申の中に盛られました農民負担をできるだけ適切なものにするということは、政府原案政府改正法律案においても当然その精神は盛られるべきものだと思うのであります。事務費につきましても、全額国家負担というのが初めてできましたけれども、まあ基幹事務費ということになった。これは財政的な問題がありますからなかなか無理な点もあることは御承知願っておると思いますが、とにかく当時の委員の御意見としては、事務費というものはできるだけ国家負担にすべきものである、それから農民の負担もできるだけ実情に即するようにして適正にすべきである、こういう御意見であったわけであります。従って今度の法律案につきましても、またその実行につきましても、当然その精神が盛られていなければならぬのではないかと思います。私、法文を拝見いたしますと、盛られているように考えておりましたので大体趣旨は通っているんじゃないかというふうに拝見をいたしたわけでありますけれども、なおその実行上にあたりましてはできるだけ協議会の精神が実行できるように、予算の獲得その他につきまして政府側の御処置を願いたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  48. 中澤茂一

    ○中澤委員 あとは山内先生に……。これは一つの課題なんですが、先ほど非常にけっこうな御示唆があって、生産政策と結びつかない補償制度では意味がない。これはやはり生産政策というものと農業補償というものと価格政策、この三つが完全に結合した形でなければ、私は制度そのものがいつもこういうひずみを起こして問題を続けていくだけだと思うのです。そこでむしろこれは、協議会においても、われわれ社会党立場としては国家補償の理論を貫け、こういう根本的な態度を持っていたわけですね。まあだいぶそれが後退、変貌しましたが、しかし私は日本の農業の零細性からいって——現在の制度保険方式、国家補償方式、五割、五割の組み合わせなんです。それもさっき足鹿委員の言ったように、この五割、五割の組み合わせでも完全形態になっていないのです。末端共済組合で助け合い運動だ、お互いに金を出して助け合おうじゃないか。県連へくれば保険理論になってくる、再保険措置になれば国家補償になってくる。すなわち国家補償と保険理論との二つさえも密着しないのですね、今の制度は。そこで私は日本農業の零細性その他から考えて、これは国家補償理論の方へ今の五割、五割のものをどう寄せていくかという以外に、この制度を根本的にやる方法はないと考えておるのです。これは基本論ですがね。これは大きな課題ですから、私今すぐ先生に御答弁を求めるわけじゃないのですが、そういう方向へ持っていく以外には方法がないと私は考えておるのですけれども、後の課題として、いずれまた先生においでを願って党でも——どうせこの今の改正やったって、来年の通常国会でまた改正しなければこれはだめです。だからこれは根本的に検討してみなければいかぬと思いますから、そういう考え方があるのですが、簡単に御答弁願えるのならば御答弁をお願いしてもけっこうですし、もしなんでしたらあとでもけっこうです。
  49. 山内豊二

    山内参考人 私は今日の趨勢あるいは歴史的な発展段階からして、やはり農業の劣性産業、劣性性といいますか、そういった面からして、歴史的な過渡としてそういう方向に流れるであろうというふうに思っております。ただ問題は、日本の農村と外国の農村とやはり違いますので、また農村自身の構造にもいろいろ特性がございます。だから直ちにそれが変貌し得るかどうかという点につきましては、私は疑問を持っております。しかし歴史的な必然としてそちらにいくのではないか、このように思います。
  50. 野原正勝

    野原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、長時間貴重なる御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  この際、暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕