○東海林
委員 それでは最後の点に移りたいと思うのでありますが、首相が現在の農林行政の進め方についてどのような
考え方を持っておるかという点でございます。なぜこんな点を
質問するかと申しますと、まず私
どもは
農業基本法の
審議の際に、食糧管理制度についてずいぶんと議論がございました。特に総理の
出席を求めて
見解をただした
ところ、
経済企画庁で出しておるいわゆる国民所得倍増
計画に書いてあるのは間違いであって、自分としては食管制度を改変する意向はないということを明言されたわけでございます。その後
農林大臣がかわられまして
河野大臣が登場いたしますと、いわゆる
河野構想ということで、自由米を認めるという構想が打ち出されました。そこで当
委員会に特にまた首相のおいでを願って、この点は
農業基本法の
審議の際に首相が言われたことと違うじゃないかということをただしました
ところ、その当時首相は次のようにお答えになりました。自分としては
河野さんの構想が食管問題の
基本を変えるものだとは
考えない、しかし国民の多数の方が、いやそうじゃない、それは
基本を変革するものであるというふうに
判断されるならば、
河野さんの構想はとりやめていただかなければならない、こういうようにおっしゃったことがございます。その後この問題は御
承知のようにいろいろと
論議がやかましくなりまして、現在、元
農林大臣あるいは食糧庁長官等を顧問として
審議するということで、一応たな上げになっておるわけでございます。こういう
一つの経過がございました。
それから、先ほ
ども問題になりました農地補償の問題についてでございますが、これは
政府もしばしば、農地の補償はしない、最高裁の判決も出ておることであるからしないということをはっきりお答えになったわけでございます。昨年十月二十五日の参議院の決算
委員会におきまして、補償問題について
河野さんの
考え方として新聞に出た記事が問題になったということで北村
委員が
質問したのに対して、池田総理はこのように言われております。間違うと悪いですから速記録をちょっと読みますが、「農地改革に対しまする事柄は、私は初めから関与いたしております。
昭和二十八年の最高裁の判決も存じております。そしてこの問題につきましては、ただいままでお答えした
通りでございます。で、
農林大臣がどういう気持を持っておられるか、私はこの問題について特に聞いたことはございませんが、
農林大臣だって、
政府の
方針はよく御存じだと思います。」このように答えております。
ところが今年の二月の六日目に当
委員会におきまして、自民党の
丹羽委員がやはりこの点が問題になっておるからということで
河野農林大臣の所信をただしました
ところ、次のように答えております。これも間違うと困りますので速記録を読みます。「ただいま
丹羽さんのお述べになりました点につきましては、多少新聞等に主観がありまして私の真意と違った表現が出ておったことも事実でございます。しかし私は、終始一貫少しも私の
考え方は変えていないのであります。どう変えていないかと申しますると、今提案されておりまする二つの
法案は少なくとも農地解放当時のあり方と違ったものが出てきておる。たとえばそれが一反歩であろうが三反歩であろうが、出征とか都心に在勤するとかいうようなことであっても不在地主として所有を認められなかったものが、今度はその道を開くようになった。時勢の変化とはいいながら現実はその
通りである。従ってこれをどう扱うかということは政治的に一応考慮の
段階にあると私は
考えます。ただしそれは補償すべきものか補償すべからざるものか、これをそのままにしていくべきものが何らかの処置を講ずるかということは、わが与党並びに
政府によって
基本的なものが決定さるべきものである。その決定に従って私は善処いたします。こう私は述べております。その
考えは今も変わっておりません。」こう言われておるのであります。ここでは、繰り返して言いますが、補償すべきものか補償すべからざるものか、これをそのままにしていくべきものか何らかの処置を講ずるかということは、今後の問題だ、
政府は補償はしないということをたびたび言って、先ほど読みましたように総理も、補償はしないんだ、これはきまったことだとおっしゃっている。
ところが
河野さんはすべきものかしないか、確かに補償するとも言っていませんが、補償しないとは言っていないのです。これは非常に重大な食い違いであると私は思うわけでございます。先ほど指摘しましたように、食管法の
改正につきましても、総理と
河野さんとの間には
見解が違うようでございますが、この補償の問題についても明らかに私は違うと言わざるを得ないと思うのです。
河野さんは
農政についての深い識見を持っておられます。
農林大臣になった以上、自分の
考え方を
農政の上に反映したいという御
努力をされるということは当然だと
考えます。しかし
政府が国民にしばしば約束し、
政府の既定
方針としてはっきりしておるというようなことについて、自分がそれと違う
見解があって、かりにこれを
改正しようというならば、それに伴う慎重な
態度というものがなければならぬと私は思うわけです。それでないと、いたずらにこういうふうな問題を惹起して、その結果としては農民も非常に迷う、こういうことになると思います。また、これは首相と農相の
見解の相違ではないかもしれませんが、肥料の二
法案等につきましても、
国会前におきましては、
国会に対して成立を期するのだというようなことをいわれておりまして、これまた農村に対して大きい反響を及ぼしたのでありますが、現在の
ところまだ出ておらない、こういうような状態でございます。私は、このように、卒直に申しまして、何か池田総理の
考えておられること、
政府の従来
考えておられたことと現在
河野大臣の
考えておられることの中には、相当大きい差があるのじゃないかということを感ぜざるを得ないのでございます。内閣を統率される池田総理として、このような
河野さんの
農林大臣としてのやり方についてどのように
考えておられるか、この点を
一つ伺いたいと思います。