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1962-04-19 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十九日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 石田 宥全君    理事 片島  港君 理事 中澤 茂一君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邊 國男君    谷垣 專一君       綱島 正興君    寺島隆太郎君       内藤  隆君    中山 榮一君       福永 一臣君    藤井 勝志君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    久保 三郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       西宮  弘君    芳賀  貢君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    楢崎弥之助君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠若  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部         長)      酒折 武弘君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部農         業協同組合課         長)     大河原太一郎君         農林事務官         (農地局管理部         長)      丹羽雅次郎君         農林事務官         (農地局管理部         農地課長)   山路  修君     ————————————— 四月十九日  委員草野一郎平君、福永一臣君、芳賀貢君及び  山田長司辞任につき、その補欠として藤井勝  志君、亀岡高夫君栗林三郎君及び久保三郎君  が議長の指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君及び藤井勝志辞任につき、そ  の補欠として福永一臣君及び草野一郎平君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事足鹿覺君同日理事辞任につき、その補欠と  して中澤茂一君が理事に当選した。     ————————————— 四月十八日  北緯四十八度以南さけます流網漁業に対する国内規制措置に関する請願伊藤郷一君紹介)(第四一二〇号)  同(椎熊三郎紹介)(第四二〇九号)  同(大野市郎紹介)(第四二七四号)  同(田中角榮紹介)(第四二七五号)  同(田中彰治紹介)(第四二七六号)  同(高橋清一郎紹介)(第四二七七号)  同(内藤隆紹介)(第四二七八号)  同(渡邊良夫紹介)(第四二七九号)  同(伊藤幟紹介)(第四三四一号)  同(大竹作摩紹介)(第四三四二号)  同(亀岡高夫君紹介)(第四三四三号)  同(木村守江紹介)(第四三四四号)  同(齋藤邦吉紹介)(第四三四五号)  同(八田貞義紹介)(第四三四六号)  同(八百板正紹介)(第四三四七号)  同(篠田弘作紹介)(第四三九八号)  同(田澤吉郎紹介)(第四六一三号)  内水面漁業振興対策に関する請願岡本隆一紹介)(第四一二一号)  食糧管理法改正等反対に関する請願石山權作君紹介)(第四一二二号)  同外十五件(広瀬秀吉紹介)(第四二一一号)  農林漁民生活向上のための農政推進に関する請願久保田鶴松紹介)(第四一二三号)  同(藤原節夫紹介)(第四六一四号)  北洋さけます漁業自主規制措置撤回に関する請願田中彰治紹介)(第四二一〇号)  冷凍さんま対策に関する請願鈴木善幸紹介)(第四二七三号)  臨時肥料需給安定法等廃止反対に関する請願宇野宗佑紹介)(第四三九四号)  同外十六件(寺島隆太郎紹介)(第四三九五号)  同外二件(藤原豊次郎紹介)(第四四三〇号)  同(始関伊平紹介)(第四四七四号)  トマト加工製品貿易自由化延期等に関する請願外一件(鈴木正吾紹介)(第四三九六号)  現行食糧管理制度維持継続に関する請願外十六件(寺島隆太郎紹介)(第四三九七号)  同(始関伊平紹介)(第四四七三号)  農業災害補償制度抜本的改正に関する請願外  十六件(寺島隆太郎紹介)(第四三九九号)  同外三件(藤原豊次郎紹介)(第四四三四号)  同(始関伊平紹介)(第四四七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出、第三十九回国会閣法第六六号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出、第三十九回国会閣法第六七号)  農業近代化促進法案北山愛郎君外十四名提出衆法第七号)  農業生産組合法案石田宥全君外十四名提出衆法第八号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案、並びに北山愛郎君外十四名提出農業近代化促進法案及び石田宥全君外十四名提出農業生産組合法案、以上四案を一括議題として質疑を行ないます。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま議題となりました政府提出農地法農協法のそれぞれ一部改正の問題につきましては、昨日参考人を招致いたしまして、参考人からもそれぞれ御意見を承って審議を続けて参ったわけですが、本日は大臣出席でありますので、重点的にこれら二法案の問題に関連をしてお伺いをいたしたいと思います。  御質問の前に大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、今日農業基本法関連法案、つまり農地法農協法のそれぞれ一部改正の問題を審議しておるわけでありますが、最近の国会情勢から参りますと、これら二法案の問題については十分論議を尽くし、農業基本法との関連問題等も含めて慎重審議をしなければならぬと私ども思いますけれども国会情勢では、国会法案審議の最終的な段階というふうな問題で、いろいろ大へん微妙な動きがあるように判断をいたします。こういう問題の中に、私は河野農林大臣のいわゆる日ソ漁業交渉の今日の非常に重要な段階から見て、新聞報道でもいろいろ私ども注目をいたしておるところでは、高碕さんがソ連に参りまして、その後イシコフ漁業相との間に数次にわたっての会合を持っておるようでありますけれども、特に過般来、本委員会でも大臣に御出席を願い、質疑を重ねて参りました規制区域等拡大の問題が相当やはり難航しておるやに伝えられておりますが、そういう情勢から河野さんが今月の、場合によっては下旬にも訪ソをしなければならぬ段階がくるのではないか、そういう問題とも関連をして、かねてからの農基法関連法案についてはなるべく早く国会で処理したい、こういう逆の問題等も出てきておるやに判断をいたすわけであります。もともと日ソ漁業交渉の問題は、日本の国民的な立場から見て大へん重要な問題でありまして、必要があれば河野農林大臣みずから訪ソして、問題の解決に最終的な努力をするということを、私どもとしても希望いたすわけでありますが、この際国会の会期末もだんだんと近づいて参っておりますけれども日ソ漁業交渉問題との関連での訪ソ問題あるいは法案審議の問題についてはどういう態度大臣として臨まれておるか、まずその点を冒頭にお伺いいたしておきたいと思います。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り日ソ漁業交渉は、今出漁時期も非常に切迫しておりますので、一日も早く妥結を必要といたしておるのでございますが、モスクワからの情報によりますと、なかなか交渉は進展を見ません。私といたしましても非常に憂慮いたしておるのでございます。しかし高碕君のような堪能な方が交渉に当たっておられますので、私としましては、必ずや近日中に何とかわが方の期待通りソ連側の了解を得られるのじゃなかろうかと思っておるのでございますけれども万々一先方から私にどうしてもモスクワに来るようにという電報が入りますれば、私としても遅滞なくモスクワに行かなければならぬと考えております。これは高碕君が向こうに参ります際に、国交のことでございますから、そういう必要はないとは思いますけれども、万一私が行く必要が起こるならば、いつでも私は参りますからということで、高碕君に行っていただいております。従って時期的にも切迫いたしておりますから、私、実は内々準備はいたしまして、電報が来ればすぐにでも即刻飛び出せるようにしておかなければなるまい、そうでなければ出漁期に対して支障を来たすようなことがあってはいかぬという心づもりはいたしておるわけでございます。  またそれと同時に、ただいまお話がありました通りに、これら農業基本法関連重要法案につきましては、すでに昨年一年にわたって継続審議になっておるものでございまして、この国会ではどうしても御協賛をいただかなければならぬと思っておるのでございます。そういう意味合いから実は一日も早く御了承を得て法案の成立を期したいと考えておるわけであります。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま大臣から日ソ漁業交渉関連する訪ソ問題についてきわめて率直な御意見の発表がございました。私どももかねてこの問題については、国会審議を通じて党の日ソ漁業交渉に対する基本的な立場というものは明らかにしてきたわけでありますが、それと同時に、やはり国民的な立場から見て、情勢がそれを必要とするならば、河野農林大臣みずからソ連に渡って、日ソ漁業交渉の暗礁に乗り上げておる問題の打開と解決をはかるということで、最善の努力をしてもらいたいということを期待いたしております。しかしながら、この問題と国会における農林省関係の諸法案の問題とはおのずから別個でありまして、それについて大臣が訪ソされる場合には適当な代理を置かれ、それで審議をされるということを、われわれは受け入れるにやぶさかではございません。従って訪ソ問題と農基法関連法案等法案審議の問題はこれを切り離して、十分時間をかけるべきはかけ、そしてこの問題に対処するような心がまえで一つやってもらいたいということを、まず冒頭に希望いたしておきたいと思います。  本論に入りまして、次に法案関連はありますけれども伺いをいたしたいのでありますが、御承知通り、一昨日から二十六日までの十日間、アジア農業協同組合会議が初めて開催をされまして、大臣も御出席になって祝辞を述べられたと承っております。今度のアジア農業協同組合会議は、十五カ国あるいは四国際機関がそれぞれ参加をいたしまして、日本側からは四議題を提案しておるというふうに承っておるわけであります。つまり農業協同組合運動発展のための相互協力の問題、あるいは農業協同組合貿易促進問題、あるいはアジア農業協同組合連絡協議会の設置問題、さらに農業協同組合金融機関創設の問題、こういうふうなことを日本農協側としては提示をして、これから十日間の間にいろいろ第一回の会合としての相互交流をやろう、こういうふうに承っておるわけでありますが、これはもともと農協の自主的な国際交流ということでありましょうけれども日本側から提示をしております、たとえば農業協同組合金融機関創設の問題あるいは農業協同組合貿易促進の問題、こういう問題は、直接政府あるいは農林省とも関係の深い問題でありまして、また同時に、一時には、いわゆるヨーロッパ共同市場というふうなものの発展関連をいたしまして、こういう農協会議等アジアにおける一つ経済的な連係の強化という問題で相当大きな会議成果期待を持っておる向きもあるわけでありますが、大臣といたしまして、今回初めて持たれましたアジア農業協同組合会議というものについては、今後こういう問題の発展方向というものをどういうふうに御指導なさるおつもりか、御見解一つ承っておきたいと思います。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 私は数日前に発会式に臨んであいさつをいたしたわけでございます。その際にも申したのでございますけれども、重ねて申し上げますれば、今お話しの最初にお示しになりました一と三については、全面的に政府は同一意見で支持いたします。後段お述べになりました貿易の問題とか金融の問題につきましては、にわかに政府として賛否は表しかねるので、各国と談合の上でその方向が明瞭になった上で、政府としてもとくと考慮するという態度でございます。しかしいずれにいたしましても、御承知通り、EECの発展、これが各国農業に及ぼす影響、具体的に申しますれば、強力な組織の中に力を持っておりまするその国、その共同体農業は、これらの非常に強力なる支持を受けますから非常にすみやかに発展ができますけれども、たとえば東南アジアを初めとして、日本農業にいたしましても、米ソ、欧州共同体というような国々農業に比べまして、多少資本的にもおくれる点が出て参ります。従ってわれわれとしては、よほど相協力、相協同して、お互い立場を理解しつつ備えをかたくしていく必要があるという考えのもとに、これら各国代表者の諸君にも、アジア農業お互い立場を理解しつつ、お互いが相協同し、助け合って発展成果をおさめるようにしていきたいものだということを私は申し上げたのでありますが、政府としてもその方針で臨みたいと考えておる次第でございます。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 さらにもう一点、アジア農業協同組合会議の問題についてお伺いをいたしておきたいと思いますが、ただいま大臣から、日本側から出しておる四議案に対する政府としての当面の見解というものを明らかにされましたが、同時に、私ども伝え聞いておるところによりますと、今回集まりましたアジア関係地域国々からは、わが国に対する農業技術者の派遣問題に対する強い要請が出ておるということを承っておるわけであります。この点についてはかねてから農林省といたしましても、いわゆるアジア農業地域に対する日本の高度の技術援助、技術的なそういう者の派遣ということについては熱意を持っておられるわけでありますが、こういう問題が今回の農協会議の席上で論議をされ、強く要請されて参るというふうな場合においては、やはり今後農林省としては本格的に、日本農業技術というふうなものを、一つはやはり国際的な視野から高めていくという関連もあって、さらに積極的に取り組んでいくという気持が必要なんじゃないかと思いますが、これら後進地域に対する農業技術者の派遣問題あるいはそういうところに対する技術援助の問題、こういう点についてはどういうお考えであるか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、つとにわが国におきましては、これら後進国農業に対して、農業センターを設置する、もしくは農業技術員を派遣するというようなことでやって参りましたが、必ずしも十分でない点もあります。また一部必ずしも期待に沿わない点もありますが、今後におきましてはますますこれらを過去の経験等を生かして十分やって参るという強い熱意を持っておるわけであります。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 本法案審議に入るわけでありますが、この問題と関連をいたしまして、やはりこれは農業基本法関連法案ということになるわけですが、数日米の二法案に対する大臣質問等を通じて、かねてすでに制定になっております政府から出しておりました農業基末法というものに対する河野農林大臣の認識、把握という点から考えて参りますと、いわゆる河野基本法という持ち味を持って政府原案農業基本法をそしゃくしておられるような感じが、率直に言ってなくはないわけであります。それはあとの質問の中でさらに承ることにいたしまして、この農業基本法の中では、第六条のところ農業の動向に関する年次報告、これはすでに法に基づきまして国会提示されて参りましたし、同時に第七条における施策を明らかにした国会に対する文書提出についてもすでに提出済みでございます。そこで政府与党農業基本法から参りますと、いわゆる国会提示すべき報告文書の問題と同時に、内外に対する公表問題があるわけであります。つまり第八条によりますと「政府は、重要な農産物につき、需要及び生産長期見通しをたて、これを公表しなければならない。この場合において、生産長期見通しについては、必要に応じ、主要な生産地域についてもたてるものとする。」そしてさらに、第一項の長期見通しについてはこれを決定するにあたって農政審議会意見を聞かなければならない。これは昭和三十七年度の新年度の農政をやるにあたっては、いわゆる生産選択的拡大の問題その他各般の施策遂行のためには、第八条にいう長期需給及び生産見通しというのは非常に重要な問題になる。この問題については今日どういうふうな作業段階にあるのか、この点もあらかじめ承っておきたいと思います。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 事務的な作業は大体終わりまして、今審議会の議を経ておるところでございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 さらにこの際、同じく公表に関連する問題でありますので、一言お伺いをしておきたいと思いますが、第十一条において農産物価格の安定問題についてもやはり第二項の中で、政府は定期的に農産物価格等の問題の施策について「その実施の結果を農業生産選択的拡大農業所得の確保、農産物の流通の合理化農産物需要の増進、国民消費生活安定等の見地から総合的に検討し、その結果を公表しなければならない。」同時にこの問題についても農政審議会意見を聞く、こういう形で第十一条がつづられておるわけでありますが、これら農産物価格安定の公表問題、こういう問題についてもあわせその取り扱いをどういうふうにされるか、お伺いをしておきたいと思います。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 何分初年度のことでございますので、多少事務がおくれておるきらいがありますけれども、今審議会の中に小委員会を作っていただきまして、その小委員会で検討中でございます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 それでは前段の問題については以上の程度にとどめまして、農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案関連をいたしましてお伺いをいたしたいと思います。  数日来の質問でも、重要なポイントの問題については、石田委員あるいは安井委員等からの質疑を通じてでも出ておるわけでありますが、重ねて私からも数点についてお伺いをいたしたいと思います。きょうは実経済企画庁長官あるいは中村建設大臣その他関係大臣の御出席も同時に求めまして、農地転用問題、これにからむ今後の経済高度成長の中における土地造成の問題あるいはこれに対するところ価格問題、こういうこと等について総合的にお伺いしたいと考えておりましたが、それぞれ関係委員会事情等もありまして、午後に回るそうでありまするから、その問題のそれぞれの関係大臣に対する質問の点は保留をいたしたいと思います。  そこで、これは石田委員からも御指摘をされた中身の問題でありますけれども、御承知通り今度の国会に新産業都市建設促進法案あるいは首都圏既成市街地における工業等の制限に関する法律の一部を改正する法律案並びに同じく首都圏市街地開発区域整備法の一部を改正する法律案、これらの法案がそれぞれ出て参っておるわけでございます。これらの法案を見て参りますと、農林大臣その他関係大臣のそれぞれの分掌の点が書いてあるわけでありますけども、特に新しく出て参れりました新産業都市建設促進法の問題に関連いたしましては、この新産業都市区域の指定あるいはまた政府が立てる建設に対するところ基本方針、あるいはまたこれを受けて参りまして関係都道府県における建設基本計画、こういう建設基本計画の中でそれぞれ計画推進がなされて参るわけであります。それについてはそれぞれ建設審議会建設協議会等の議を経ることに相なっておりますけれども、この問題と関連をして、第十八条のところには、農地法関連する問題等も含んで出て参っておるわけであります。つまり第十八条では「国の行政機関の長、都道府県知事又は港湾管理者の長は、新産業都市区域内の土地を、建設基本計画を達成するために必要な工場用地住宅用地工業用水道、道路、鉄道、港湾等輸送施設並びに水道及び下水道の用に供するため、公有水面埋立法農地法その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、新産業都市建設促進されるよう配慮するものとする。」つまり経済高度成長の中における工業等発展農業その他農地等の問題については、これからいくというと、私どもの言葉から言えば、従属した立場で問題の配慮をしなければならぬというふうな感じも受け取れるわけでありますが、かねてから、農地転用の問題については石田委員からも御質問がありまして、最近の経済引き締め政策ということから、特に農地転用の問題については大臣直轄でいろいろ裁量することを当分続けるという方針のようにも承っておるわけでありますが、この際この新産業都市建設促進法等の運営の問題に関連をいたしまして、農地転用等の問題に対する従来のいわゆる転用基準というものをさらに緩和しながら経済高度成長協力するという形でいくのか、あくまでも農業等の問題についてはいわゆる都市近郊都市周辺あるいは純農村、そういうそれぞれの地域における農業のあるべき姿というものを十分構想しながら、そういう立場からこの問題に対処する、こういう考え方であるのか。これらの新産業都市建設促進法等の問題にからむ今後の経済の高度の成長の中における農業の位置づけ、あるいは農地転用問題に対する基本的な考え方を、農地法との関連においてもこの際御見解をあらためてお伺いをしておきたいと思うのです。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 昨日も石田さんにお答え申し上げましたように、私はわが国の置かれておりまする産業立場というものを十分に考慮しつつ、また同時に日本農業の将来の基本というものとの調和をどこに求めるかということが問題のポイントであると思うのであります。そういう意味におきまして新産業都市建設にあたりましても、特に農林大臣としてその関係閣僚として十分な発言のできる立場を留保したわけでございます。そういう意味におきまして、これが計画基本におきましてただいま申し上げましたような精神を十分生かし、そうしていやしくも農業立場を侵食されないように、またあわせて産業立国立場を拘束しないようにその調和を求めていきたいというふうに考えております。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 最近国会図書館の調査立法考査局関係から、「経済高度成長農業構造太平洋ベルト工業地帯を中心として」という貴重な調査報告並びに見解の資料が出て参っておりまして、これを私どもも通読をいたして参ったわけでありますが、ここの中で経済高度成長下における農業の実態がどういうふうな形に具体的に現われておるかということがきわめてクローズアップされておるわけであります。そこでこういう問題と関連をして、やはり新産業都市建設計画等の問題を考える場合にも、十分農業農業としてのあるべき姿というものを、はっきりしたものを農林省として持って、そういう新産業都市建設にあたっての農業の位置づけというものをやっていかなければならぬ。今までのところは、やはり工業が無計画にどんどん進行していく、農業はそういう中で押しつぶされていくというふうな形がややもすればありまして、もう一回工場等を含む再編成をやらなければならぬような問題も地域によっては出てきている。私はやはり都市等の発展の中で、工場がどんどん発展をするということは、これは必ずしも否定するものではありませんけれども農業立場から見れば、やはり都市近郊における農業の位置づけあるいは都市周辺における農業の位置づけ、つまり田園農業というものの、それぞれの立地条件というものに応じた位置づけという問題については明確な農林省としても地域別の方針を持って誤りなきを期するということが必要ではなかろうか、そういう観点から考えて参りますと、たとえば建設基本計画の中における内容というものをずっと見て参りますと、第十一条の工業開発の目標、人口の規模及び労働力の需給あるいは土地利用、第四項として次に掲げる施設の整備等を各般見て参りますと、やはり工業重点主義における建設基本計画という感がなきにしもあらずであります。もっと総合的な立場から、農業、商業、工業等も含めた総合計画というものが建設基本計画の中で考えられ、またその場合に農林省としては建設基本計画の中におけるその地域農業の位置づけというものを明確にしながら、建設基本計画の総合的な成果というものを生み出すようにする、こういうことが必要ではなかろうかと思いますが、今日までのいわゆる都市の発展状況、工業用地の取得並びに工業の発展状況を見ておると、あまりにも無計画であって、農業の位置というものが無視される傾向で推移してきているのではないか。今度のこの新しい法案を見ましても、もっと建設基本計画の中では、総合的な視野から産業全体の中で工業の位置づけというものをどうするか、農業の位置づけというものをどうするかという国土総合開発的な観点というものが、この中では抜けているような気がするわけでありますが、そういう問題は今後関係大臣等の中でも十分調整をしながらやっていかれると思うのでありますけれども、こういう建設基本計画の中における農業の今後の位置づけ等の問題に関して、農林省としてどういうふうにやっていかれるか、お伺いをしておきたいと思います。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 一昨年もお答え申し上げたのでございますが、実は国の建設もしくは産業都市建設等は、国土計画が完全にできて、その上に順次組み立てて参るということであれば、これは私は理想だと思います。しかし御承知通りわが国の国情から参りまして、終戦以来今日までの国の変遷からいたしまして、これらをそう順序よくやって参ることは困難でございます。従って産業におきましても非常な発展を遂げております中におきまして、農業の変遷がまた非常な角度で変わっておるわけであります。従いまして農業立場を十分に検討しつつ、農業建設を行ないつつ、農業基本法の精神を十分発揚しつつ、一面におきましてこれら産業立国立場調和を求めていくということが必要であろうと思うのであります。そういう意味におきまして、ただいま申し上げました通りに、農業のあるべき姿を十分把握しつつ、産業立国のあらゆる施策協力をして参る、調和をして参るということがあるべき姿ではないだろうかと思うのでございまして、農林大臣として、これら産業都市建設等にあたりましても十分注意をいたしまして、そうして日本農業の将来のあるべき姿に対して最も好ましい条件を整えて参るということにいたす必要があるだろうと考えております。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど申しました経済高度成長農業構造の中における太平洋ベルト工業地帯のいろいろな調査報告を見て参りましても明らかでありまするけれども、いわゆる人口移動と地域就業構造、こういうふうなものの中で、第一次産業の就業者の比率というものは、当然工業等発展をして参ります高位地域については大体二二%程度であるけれども工業等発展をしていない中位地域では四七%であり、あるいは工場等ほとんどない低位地域では五二%というふうなそれぞれの数字等も出て参りますが、特に東京、神奈川、大阪等においては、いわゆる全就業人口の中における第一次産業の就業人口の比率というものは、東京、神奈川の場合にはわずかに五・八%、あるいは大阪の場合には六・四%、この点ではイギリス並みの就業人口の比率になっておると指摘しておりますけれども、しからばそういう就業人口の比率であるところ農業の姿として近代化された姿にあるのかということになりますと、調査報告でも明らかになっておりますように、きわめて零細な兼業化がそういう地域においては極端に進んで参る。特に専業的な方向について、東京周辺では一部そういうところが見られるけれども、あるいは名古屋を中心にしたところでも、大阪、兵庫を中心にしたところでも零細化が進んでおる。大阪府の例をとるならば、農業戸数の中における兼業戸数の問題について、二千五年六六%であったのが、三十六年度には七八%になる。しかもこの七八%の中で第二種の兼業率が五〇・五%を占め、これは全国第一位であると指摘をされておるわけであります。つまり経済高度成長の中で農業人口の減少、そういう中で農業の構造改善を期待していくんだということがいわれておるけれども、現実に工業の発展をしていく地域における農業の姿を見て参りますと、調査報告でも指摘しているように、第一次産業の就業率は大きく減少して参ってきておるが、農業の構造改善それ自体の立場から見ると、必ずしも好ましい方向にいっていない。むしろ政府考えておる農業基本法立場からいって、自立農家の育成あるいは協業の助長、こういう立場から見たら、全く無方針な形で放置をされておるのが、今日の工業中心地帯の周辺の農業の姿ではないのか。従って老人農業あるいは主婦農業、そういう種々さまざまの形がこれら周辺地域で出て参っておることが、御承知のように指摘をされておるわけであります。従って、こういう観点から見ても、今日河野農林大臣がこれから十カ年にやろうとする農業構造改善の三千近くの対象市町村は、これは工場の発展していく地域を除いた地域における構造改善を中心にしながらやっていこうという御構想のように承っておりますが、それと同時に、工場の発展していく中心の地域における農業の姿をどうするか、そういう地域における構造改善をどう考えるのか、こういう問題もあわせて考えていくという方向でなければ、農業基本法の本来考えておる問題の相当部分が空白のまま放置されるのではないか、かような感じが率直にいっていたすわけであります。この点に対する農林大臣としての今後の指導の考え方について承っておきたいと思います。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 私はかねて申し上げております通りに、わが国の場合におきまして、兼業農家というものを将来の農業のあるべき姿として無視するわけにいかない。兼業農家の固定、兼業農家の安定ということを将来大きく考えて指導して参る必要があると考えておるのでございます。従って、一部におきましては自立農家の育成、これに重点を置いてやって参ることはもちろんでありますが、他の一面におきまして、大都市周辺もしくは工業都市の周辺におきまして、兼業農家の育成という点についても考えていくべきである。これが他の諸国に比べて耕地の狭い日本農業のあるべき姿としては当然考えられる道であると考えまして、これらを十分計画の中に繰り入れてやって参りたいと考えております。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 太平洋ベルト地域等の四大工場の中心地帯の周辺地域における農業の変貌状態は、農政立場から見て憂慮すべき問題になっておる。兼業の状態の方向は当然そういう地域では考えられることであるし、そういう問題は、今後農政上の中でも当然そういう性格として残っていくんだ、こういう形ではなくて、政府考えておる農業基本法立場から見ても、企業的な農業を伸展さしていこうと考えておるわけでありますから、自立農家育成の方向でいくにしろ、あるいは協業の方向でいくにしろ、いわゆる田園農業というもののそれぞれの地域における立地条件を考えながら、積極的にそういう工場中心地域は工場中心地域なりの構造改善を取り上げてやっていくことが必要であろうと思うわけでありますが、ただ何か農林大臣の御答弁をお伺いしておりますと、そういう地域においては現状の推移にまかせて、農林省が積極的に基本的な方針を持ちながら指導していくという面の構造改善の方針が必ずしも明確でないのじゃないか。そういう地域では、老人農業になろうと主婦農業になろうと、兼業化がどんどん進展をしようと、農地の高騰等によって擬制的な資本に依存をする農業熱意を持たない姿で推移しようと、それはそういう地域についてはやむを得ないのじゃないかという感じが、農林大臣の答弁から受け取られるように思うのでありますが、そういう地域においては、やはり農林省農政の指導としてはどうやるのかということについては、もっと現実のなまなましい姿の認識の上に立って、明確な指導方針を持って臨まれる、こういう熱意が率直にいって必要であろう。今後新産業都市建設促進法等の問題が審議され、処理されるという段階になると、必ずしも四大工業地帯のみならず、新産業都市建設等の問題に関連をして、そういう地域における農業の今後の発展をどうするかという問題も重要な問題になってくると思うのです。四大工業地帯周辺の農業の問題にしろ、また今後の経済成長の中での新産業都市建設方向における農業の位置づけの問題にしろ、あるいは、すでに法案は通過をしておりますけれども、いわゆる低開発地域工業開発促進法等の推進に伴うそういう地域における農業発展の位置づけの問題にいたしましても、それぞれの立地条件に見合った農業の今後の発展方向をどうするかという問題については、現実に即応した指導方針を持たれることが必要であって、単に全国三千市町村等に網を張って構造改善をやるんだということじゃなしに、もっときめのこまかい、それぞれの立地条件、それぞれの地域の状態に合わした農業のこれからの発展方向について、さらに緻密な計画、御指導というものが必要ではないかという感じが率直にいっていたすわけであります。これは農林大臣としてはお考えであろうけれども、説明として不十分だったかと思いますが、重要な問題でありますので、重ねてお伺いをいたしておきたいと思います。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通りに、世界経済が非常に急激な変化をいたしておりますことは申し上げるまでもないのでございます。従って、これら世界経済の急激な変化の世界各国農業に及ぼす影響は、これまた申し上げるまでもなく、各国におきまして、それぞれの農業が、あらゆる角度から非常に変更をしようとしておることは事実でございます。それはアメリカの農業を見ましても、EEC各国内における農業を見ましても同様であります。そういう格好でございますので、わが国農業が、この急激に発展しつつある一般産業の中において変化を余儀なくされることは当然だと思うのであります。従って、今農業それ自身において将来のあるべき姿を固定するということをいたしましても、これらの産業の変遷に影響されることは当然だと思うのであります。さればといって、それが固定するまで黙っておる、ほうって置くというわけには参りません。従って、今申し上げましたように、これらの産業農業に及ぼす影響、従って、現に統計の示します通りに、兼業農家の家計が、従来のいわゆる専業農家よりも比較的に安定しておるというような数字が出ておる。その数字の示しますごとくに、将来の農業についてあるべき姿を地域的に、それぞれの地方的に確立することがなかなか困難でございます。従いまして、まずここに構造改善の第一次といたしましては、基本的なものの考え方基本的なあるべき姿を確立しつつ、その中に今お示しのように、今後の国内の国土、産業の立地等をそれぞれ勘案しつつ、きめのこまかな農業の固定に進んでいくことが一番安定した政治のやり方ではないか、こう考えておるのでございまして、今ここで直ちに将来かくあるべきものだというふうな終着点を見きわめまして、そしてそれに基づいてかくあるべきものだといって指導するということは、それが将来の混乱のもとになるとか、再編成のもとになるとかということを余儀なくされるようなきらいがありますので、周囲と見合いつつ、そこに農業のあるべき姿を基本的に求めていくという行き方がいいんじゃないかというような意味合いにおいて、農業基本法を基盤にいたしまして、その上に他産業との調和、調整をとりつつ日本農業のあるべき姿を求めていくという考え方でいきたいと考えております。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま大臣からの御答弁があったわけでありますが、この問題はやはり今後の農政上の重要な問題の一つだと思います。産地形成もけっこうでありますけれども、やはり四大工業地域周辺におけるところ農業問題、あるいは新しく新産業都市として伸びようとする周辺地区における農業問題、あるいはそこまで及ばない低開発地域における農業問題、それぞれの地域の立地条件に合わした農業の今後の発展方向をどうするか。あるいは構造改善の問題一つをとらまえましても、工場の発展に押された中で農業が変貌していくのをそのままに放置するのではなくて、もっと指導的な立場農業の固定した——観念ではありません。農業のあるべき姿、農業発展方向、こういうものを十分見きわめながら指導的な役割というものをやはり農林省が持って、全体的な計画の中でもやはりそういうものを織り込んだ総合開発の方向発展をさしていく、こういうことで今後ともぜひやっていただきたい。今日までの実態を見ると、必ずしもそういう方向のようには判断ができないという点から、今後の問題として強く今後の御指導を希望しておきたいと思います。  次に農地法の一部改正の問題に入るわけでありますが、これは数日来の論議でも出てきたことと関連をして重要な問題でありますので、冒頭重ねてお伺いをいたしておきたいと思います。  農地改革の成果を維持し、これとの調和をはかりながら、諸般の施策と相待って農地保有の合理化農業経営の近代化に資する所要の法制的措置を講じたものが今回の農地法の一部改正であるという政府の提案理由の説明の要旨がうたわれておるわけでありますが、かねてから今回の農地法の一部改正そのものは、いわゆる従来から堅持してきた農地法の精神、自作農主義を中心とした農地法の精神というものを修正をしていくという第一段階になるのかどうかという問題が、やはり一つの問題点としていろいろ論議がなされてきたわけでありますけれども質疑冒頭にあたりまして、今回の農地法の一部改正というものは、従来の農地制度の根幹に対する修正ではなくて、あくまでもそれと最近におけるところ経済その他の諸情勢と見合った調和としてとらまえておられる考え方を、再度明らかに説明願いたいと思います。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまもお話しになりましたように、農地法の精神、自作農主義を基本に置きました育成、これをどこまでも続けて参ることについては一点の疑問の余地がないのでございます。ただ農業の変遷、将来の農業のあるべき姿等を勘案いたしますと、過去に農地法の基盤にいたしましたその基盤が変わってきております。従ってその変わって参りました基盤に合わせて必要な所要の最低限度の改正を行なっていくということでございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 最近大きな政治問題に与党内ではなっております農地被買収者の補償等の問題、この問題はしばしば本委員会でも問題になり、午後総理が出席される場合にも問題の一つに相なると思うわけでありますが、この問題については、かねてから衆議員、参議院を通じての関係委員会、特に数年前に農地被買収者調査会法案等が審議された内閣委員会段階でも、私ども、私を含めてこの問題に対する政府見解を伺って参りました。大臣も御承知通り、この問題についてはいわゆる最高裁の判決等もあり、あくまでも政府としては旧地主に対する補償は考えていないのだということで終始して参りました。今日与党内の一部における諸意見等に対しても、政府はこれらの推進については反対の意向を明らかにしてきておるということを承っておるわけでありますが、特にこの問題は農林大臣が直接の所管大臣でもありますので、この問題に対しては、石田委員に対する答弁でも、必ずしも明確な御見解というふうには受け取れないわけでありますが、農地被買収者等の補償という立場からする問題については、かねてからの方針をあくまでも堅持して対処する、こういうお考えであるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ問題もある祭でございますし、わが党内、内閣におきましても目下検討中の問題でございますので、結論が出ました上でお答えいたしたいと思います。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは午後総理が出席になればさらに聞かれる重要な問題でありますが、新聞報道で私ども承知をしておるところでは、数日来の与党内の一部の強い要請に対して、政府はかねてからの基本方針を堅持して、これには反対であるというふうに明確な態度をとっておるように報道されておるわけですが、その態度については政府として間違いはございませんか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 政府がどうとか党がどうとかいうことはございません。挙党一体となりまして検討中であります。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 この問題は、午後の質問にも、総理出席の場合にさらに取り上げられる問題でありますから、時間の関係もありまして、次に進んで参りたいと思います。  数日来の質疑の中で、私ども大臣の答弁を聞いておりますと、いわゆる農基法による構造改善、その中で自立農家の育成、協業の助長、こういう問題に対する自立農家やあるいは協業問題の認識という点について、大臣政府与党がきめられた農業基本法というものを河野さん流に把握をして考えておられるのではないかという感じがいたします。たとえば協業の問題に対して、農基法の中では自立農家を補完するというような立場からの協業というとらえ方をしておりますが、何もそういうことがあっても別に悪いとは申しませんけれども大臣は自立農家が協業の形をとるというような形も含めての協業の認識というような、何か自立農家の育成ということと協業の問題を、両者をあわせて構造改善を考える場合に、双方の位置づけが必ずしも明確には私どもには把握できない。それはおそらく大臣は、所得倍増計画の中で言っておるこれから百万戸の自立農家の達成ということは、各般の状況から見て困難であって、従って自立農家、自立農家ということで、所得倍増計画の問題から指摘をされれば大へん困るから、自立農家、協業等の問題をあわせた考え方で今後の構造改善をやっていくのだということで、問題をそらしておられるのではないかという感じがいたしますが、いわゆる構造改善の基本方針、こういう問題に対して重ねて大臣の今後の基本的な見解というものを承っておきたいと思います。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 私は先ほどもお答え申し上げました通りに、およそ政治をやる者は、客観条件の変化に即応して変わっていくことは当然なさなければならぬことと思うのであります。国際情勢が変化して参りまして、世界農業もしくは世界経済、それが日本農業に対してどういうふうに変わってくるかというようなものを非常に大きな要因としてこれをとらえなければならぬと思うのであります。従って、農業基本法におきましても、農業基本法の精神を生かしつつ、これらの変遷に対応して、そしてもって農民、農家の福祉を増進するというようなことにならなければならないと思うのであります。従いまして、先ほど来申し上げますように、自立農家百万戸といいましても、百万戸がいいのか、今後の変遷によりまして、さらに工業立国の度合いが進みまして、東南アジアとのからみつきがどういうふうになるかというような変遷が当然起こってくるものと思うのであります。従って、これを一律に固定した考えでどこまでもいくべきものではないというような意味合いからいたしまして、多少融通性のある御答弁を申し上げておるわけであります。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは大臣の御答弁等から受け取れますところによれば、すでに成立しておる農業基本法の問題についても、あるいは農地、農協法の当面の改正の問題についても、今後の経済の伸展、農業発展方向というものと見合って、いつでもやはり情勢に合わす必要から一部改正等をやらなければならぬということがある場合には、当然一部改正考えていくのだという立場で御答弁になっておられると思うのですが、そういうふうにとっていいわけですか。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 基本として変えてはならないものと変えていいものとあると思うのです。従って、先ほど申されました農地法におきましても、農地法基本精神、自作農主義というような基本的なものについては変えるべきものではない。しかしその精神を生かしつつ農業者をどういうふうにすることが便利か、どういうふうにしていく方が農業経営上よろしいかというようなものは遅滞なく変えていく、指導方針としても変えることがいいのじゃないか、こう考えて申し上げておるわけであります。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 農地法の一部改正の問題と関連をいたしまして、あるいは先ほど聞きました旧地主に対する補償とも直接必ずしも関係はありませんけれども、それと関連する問題でありますけれども、私ども承っておるところによりますると、戦後行なわれました農地解放の買収代金、この中で約一億九千六百九十余万円、これは去年の三月末現在の数字でありますが、これは現金あるいは農地証券、こういうものを含んでの金額でありまするけれども、件数にいたしまして約十万二千余件のものがまだ引取手のない、宙に浮いた状態に相なっておる。この農地買収代金の引き取りの相手がない、その原因等の問題もいろいろあろうと思いますけれども、三十七年度中には大部分が時効にかかって国庫におさまるという形になるのじゃないかとも言われておるわけであります。戦後行なわれた農地改革の買収代金、そのうちでいまだに引取手のない農地買収代金等の問題は従来どういうふうに処理をし、どういうふうに今後処理をしていこうとされるのか、この問題について大臣直接の御答弁でなければ、担当の農地局長からでもけっこうでありますが、これも従来からの経過の一つの問題点でありますので、明らかにしていただきたいと思います。
  32. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 買収代金につきまして、買収と同時に現金あるいは農地証券で支払いました分につきましても、繰り上げ償還等をいたしましてこれの支払いに当ってきたわけでありますが、その間におきまして地主の方の住所が転々とされるとか、あるいは受領を拒絶される、そういう場合等もございまして、その支払いができなかった分につきましては、御指摘のように供託してあるわけであります。それが供託後期間を経過いたしまして時効にかかりつつある、こういうような状態でございまして、これにつきましては再々主要新聞その他地方の知事、府県等を通じましてそういう状態にあるということを新聞で公告する、あるいは農業委員会を通じまして地元の市町村等からそういうような状態にあることを一般に周知といいますか、啓蒙普及等の措置をとりまして、この引き取り方を奨励している段階でございまして、こういう点については一そう努力してそういう旧所有者の受取人のわからないものを探し出すのに努めているような次第であります。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 あとの時間関係もありまして、委員長からの御連絡もありましたので、農協法改正問題について関連をいたしまして二点お伺いして私の質問をとりあえず終わりたいと思います。  まず第一点は、これは数日来の論議でも出て参りまして、ぜひこの機会にお伺いしておきたいと思いますが、当面農業協同組合法の一部改正等の所要の法改正をやるということで、農事組合法人以下農協の信託制度の問題等を含む所要の改正案を提示して参ったわけですが、数日来の論議の中で私ども判断しているところでは、今後検討しながら農業団体再編成の問題に農林大臣としては相当な抱負と決意を持って臨まれる、そういう御見解じゃないかというふうに判断をいたしております。と申しますのは、農林大臣が今後の農林金融の問題に関連をいたしまして制度金融、系統金融等をある意味では含めた農民銀行的なものを考える、となりますと、農協の信用部門の問題、機構という問題が出て参るわけでありますが、今後の農業団体の再編成に対する基本的な方針というものをどういうふうに農林大臣としてお持ちか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように成長農業等が新たに非常に活発な動きをいたしております。たとえば果樹、陶芸、蔬菜等の組合が非常な勢いで活動しております。畜産においても同様であります。これらのものについて専門農協を認むべしという相当各方面に御要望が強いわけであります。従って、これらをくるめて何とか現在の農業団体の各種の法律について考えなければならぬじゃないか、考うべしという要望も強いのでございますが、御承知通り、よほど慎重に考慮いたしまして、いやしくも混乱の起こらないようにして参らなければならぬと思うのであります。従って、私は先日もお答え申し上げました通りに、国会が終了いたしましたならば、これらの専門家の会合を求めまして、その中の十分意見の交換を求めて、行くべき方向等について求めていきたいと考えているのでございまして、今私がこれらについてどういう素案があるとか考えがあるということを申し上げることは適当でないと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 最後に一点質問を申し上げたいのでありますが、それは御承知通り、今回農協法改正あるいは農地法改正に伴いまして、農協の組合員の中に農業生産法人というものが組合員として入ってくる、あるいは農協連合会については農協及び連合会が主たる構成員または出資者になっておる法人、これは加工その他の問題を含む、そういう法人、これが農協連合会の会員として入ってくる、こういう道が開かれるわけでありますが、そういう合名、合資あるいは農事組合法人、こういうふうな構成の状態に相なりますと、独占禁止法との関係の問題につきまして、従来農協は御承知通り農協法第九条によって独占禁止法第二十四条の要件を無条件に満たしておるということで取り扱われておるわけでありますが、農業生産法人等が今後農協の中に加わると、構成員の規模の問題あるいは資本構成の問題、こういうものから見て独禁法の二十四条の無条件適用という問題について、今後問題ができてくるのではないかということがいわれておるわけでありますが、この問題に対する見解について明らかにしていただきたいと思います。
  36. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 ただいま御指摘の問題は、新しい農事組合法人やそれから農業生産法人が会員になりましても、現在の農協法では、ただいま御指摘の独禁法の排除はそのまま続けるということで法制的にははっきりいたしております。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは関係大臣等の出席も求めて、先ほど農林大臣にも若干お伺いした点等も含めて質問いたしたいと思いましたが、午前中の質問は時間の関係もありますので、一応この程度にいたしまして、残余の問題については保留をいたすことにいたします。
  38. 野原正勝

    野原委員長 午後一時打開することとし、この際暫時休憩いたします。    午前十一時三十二分休憩      ————◇—————    午後一時十四分開議
  39. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案並びに北山愛郎君外十四名提出農業近代化促進法案及び石田宥全君外十四名提出農業生産組合法案、以上四案を一括議題として質疑を行ないます。湯山勇君。
  40. 湯山勇

    ○湯山委員 まず農地局長にお尋ねいたしたいと思います。  今回の農地法農業協同組合法改正によって、従来の農地に対する考え方が若干変わったのではないか、農地法第一条の性格が変わったのではないかということが先刻来議論になっておりましたが、そのことと関連して具体的に起こっておる問題について、まず農地局長にお尋ねいたしたいと思います。  それは香川県の三木町というところで起こった事件でございまして、すでに昭和三十五年の十二月に地主側の団体から内容証明の郵便をもって、従来小作をしておった者は総生産の五割五分を小作料として出してもらいたい、もしこれに応じないならば農地を返せ、こういう文書を発送しております。その理由とするところは、農地法改正さらに農地被買収者調査会法ができたことによって、従来の農地解放というものはもうすでに性格が変わったのだということが大きい理由になっております。その後その地主側の団体の代表あるいはその地主を含めまして、その小作が麦の省力栽培をしているところに堆肥をまくようなことをやっておりますし、さらに小作しておる農地へ立ち入ってジャガイモを植え付ける、こういうこと等もやっております。ところがこれに対して、そういう文書を発送したことあるいは小作の農地に立ち入ること、そういうことは明らかに農地法違反ではないか。従来農地解放当時、つまり現在の農地法ができた当時は、そういうことについては、文書で請求しようがどういう形で請求しようが、あるいはまた代理人が農地返還の請求をしても、それは農地法の違反である、こういう解釈がなされておりましたが、しかし今度の場合はそういうことに対しての農林省側の御見解も最初の段階では若干あいまいであった。必ずしもそのことがあの農地法の九十二条、九十四条の罰則適用になるかどうかということについては問題であるというか、あるいは明確なそれに対する見解表明がなかったということを、現地の方では申しております。  さらに刑事、つまり検察側の言い分を間接に聞いてみますと、さきに省力栽培をしておるところへ立ち入ったり、あるいはジャガイモを植え付けるために小作地に立ち入った、そういう立ち入ったという行為が直ちに農地法違反になるかどうか、立ち入ることまでは農地法は統制していない、こういう解釈であったということです。しかしその立ち入ったということは、それ以前に請求しておる、そういう行為があるわけですから、むしろ立ち入ったことによって、単に請求だけでなくて実力をもって農地の返還を求めた、こういうことになるのですけれども、それらについても的確な措置が当時検察側においては行なわれなかった。こういう点については現地の農民たちは、確かに農地法の解釈が後退したのじゃないかという不安を持っておりました。  その後いろいろないきさつがありますけれども、結局本年に入って、その事件が発生してから一年有余を経た本年四月になって、やっと検察はこれを起訴した。非常に長い時間がかかっておるわけです。従来であればこういうことはほとんど即刻処理される、あるいは農地局あたりでこれを取り上げて告発する、そういうことがなされておりましたが、今回はそういうふうに非常に長い時間かかったし、それから地主側の言い分が、今申しましたようにもう農地法は空文化したんだというような理由を、今回の農地法改正あるいは農地被買収者調査会法の成立、そういうところにその論拠を求めている。こういうことになって参りますと、私ども農地法の第一条がはたして従来通りの性格を持つかどうかということについては、やはり大きな疑問を持つわけですが、この香川県の問題がそういうふうに非常に長い間かかった。その間に農林省の小作官も職権乱用でおそらく告発されておると思います。県の小作官もまた同じように告発されている。そういう不法行為をやった側が告発をして、そして農林省なりあるいはその責任を持たなければならない側は告発しないで、一年以上にわたって結局起訴もされなかった。それらの経緯は大きく農民に不安を与える条件になると思いますので、その香川の問題を通じて、ただいまの問題に対する農地局長の御見解伺いたいと思うわけです。
  41. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 ただいま御質問のように、香川の三木町におきまして小作地の取り上げ事件がおこっております。これにつきましては、一昨年から昨年にかけまして、御指摘のように小作料の増額要求等があり、それからなおその後昨年の夏にかけまして、また内容証明等をもって高額小作料を要求して、そして土地取り上げの契約書に調印した、こういうような事例があって、われわれといたしましても、県から直ちにこの事件についての報告を受け、また県を指導いたしまして、この農地法違反等の起こらない、また起こったものについては、厳重注意して原状回復をするように指導をいたしまして、小作人側も昨年の夏やりました契約等につきましては、小作地を取り上げられても異議がないというような契約書につきましては、契約破棄の通告をなさしめる、こういうような措置をとった次第でございますが、さらに本年に入りまして、先ほど御指摘のように本年の一月五、六日に、地主の主人になる方が小作地の中に立ち入って堆肥をまいた。それからさらに一月の末から二月の初めにかけまして、夜間に小作地の一部に地主の御主人が入ってバレイショを植えつけた、そういった事案が起こりまして、これについては単なる立ち入りではなしに、前からも小作料の増額要求とか、あるいは土地取り上げの要求等がある。そういうあとを受けてのそういった堆肥をまくといったような、自分みずから耕作の意思を示す行為でございます。明らかにこれは土地取り上げの事実行為だ、こういうふうにわれわれは見た次第でございます。そして、そういう事案がありましたので、直ちに県等とも連絡し、県からまた三木町の農業委員会等にもよく連絡をとって、農地法二条違反ということで、小作地にバレイショを植え付けた事案のあと、二月三日に告発を農業委員会長からなしております。告発後また地主の植えたバレイショ等につきましては、警察において二月十七日でございましたか、刑訴法上の令状によりまして、証拠物件として地主が無断で植えつけたバレイショを押収した、そういうことでございまして、原状回復がなされ、その後に小作人の方がみずからバレイショを植え付け、現状に及んでおります。それで告発をいたしまして、それから捜査等がなされまして、三月十九日に高松の地方検察庁でございますが、立ち入って小作人のバレイショを抜いてみずからバレイショを植えた、こういった行為につきまして農地法の二十条違反として三月十九日に起訴いたしております。この間におきまして、われわれといたしましても県を指導し、また県にも、小作人の方からの御要望もあって、農地局長名をもっていろいろこちらの方針等も明確に通達しておりますが、ただいま御指摘のように二十条の解約、解除あるいは更新拒絶、そういうものの意思表示を相手方にするには、これはまず知事の許可を受けてからしなければならぬ、こういうふうにわれわれは二十条を厳格に解釈いたしております。で、この申し入れ、地主の方から小作人に解約、解除の申し入れをするには、口頭たると文書たるとを問わず、まず許可を受けてからすべきものである、許可を受けないでやることは違反である、そういうふうに解しておりまして、これに事実行為が伴う伴わないということに関係せず、まずその行為については、許可を受けないでなしたものにつきましては二十条違反と解しておりますし、その点につきましては法務省の刑事局、警察庁、われわれのところ意見の統一を見ておる次第であります。
  42. 湯山勇

    ○湯山委員 刑事局は返還命令だけならかまわないとか、あるいは立ち入りということは今のように統制事項にはなっていない、そういった見解をもって当初堆肥をまいたときは起訴しなかった、そういう事実がありますが、これは御存じでしょうか。
  43. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 そういう見解もあったかとも存じますけれども、われわれといたしましては、中央におきまして先ほど申しましたように、法務省の刑事局を中心にいたしまして、警察庁とわれわれのところ意見統一をいたしまして、申し入れをするには二十条として知事の許可を受けなければ申し入れできない、こういうふうに明確にしている次第であります。
  44. 湯山勇

    ○湯山委員 現地の警察のとった態度は大へんりっぱな態度であったし、適切な処置がとられたと思います。ただそういう場合に、具体的な事実が発生して一カ年以上もかかっておりますし、同時にその間に、はたしてこれが起訴されるものかどうか、そういう明確な事実がありながら今のような心証を農民に与えておるということの背後には、今回の農地法改正なりあるいは農地被買収者調査会法の成立、そういうことがあったということはお聞きになっておられますか。
  45. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 われわれは聞いておりませんが、旧地主の方の中にはそういったことを特に申しておられるような向きもあろうかと思いますけれども、われわれといたしましては直接そういうことは聞いておりません。
  46. 湯山勇

    ○湯山委員 今の問題は、先方が発表している文書にもちゃんと書いてございます。ですから、もしそういうことだとすれば、そういう法案を出すときに、今のような問題に対する適切な指導が行なわれなかった。つまり政府がこういう提案をしたことに対する影響がそういう方面に出ている。そこで、これは明らかに政府の責任だと言うこともできないことはないと思いますので、この問題を含めて十分な今後の御留意を願いたいと思います。  その問題は一応その程度にいたしまして、今申し上げましたように、今度の農業基本法の成立に伴っての政府農業政策、そういうものをくるめて、農地に対する考え方が若干変わってきたのじゃないかということを私ども考えざるを得ないわけです。  そこで、事務的な問題になりますけれども、非常に重要な問題でございますから、ここでお尋ねしておきたいことは、農地法改正では、農業生産法人の条件として、「その法人の事業が農業及びこれに附帯する事業に限られる」——カッコの中でいろいろ補足はありますけれども、大筋は、農業生産法人の行なう事業というのは、農業及びこれに関連、付帯する事業である、これは生産法人の満たすべき条件であるということが書かれてあります。それから農業協同組合法の第七十二条の八の今回改正になった中には、出資農事組合は農業の経営ができる、しかし非出資農事組合は農業の経営はできないということが、明確に法文の中にしるされております。そこで一体非出資組合が農業をやっているかどうか、やっておれば法律違反で、場合によれば勧告等も受けますし、解散命令も受ける。ここで一体農業とは何かということが問題になってくると思います。農業というものの定義を明確にしておかないと、実際にこれを処理する上に非常に問題が起こって参ります。なぜ農業の定義のようなものをここでお尋ねするかというと、農業の近代化あるいは機械化その他によって農業の内容が著しく変わって参りまして、従来のように耕作ということが必ずしも農業の前提になっていないという事象も万々に起こっております。あるいは畜産等にいたしましても、今の大きい会社がやっておる養鶏等は、はたしてそれが農業かどうかということについては問題があって、鶏というのは単に卵を生産する機械というような形になっておると思いますし、あるいは購入飼料で酪農をやっておると、牛は単に乳を作る機械というものじゃないかというようなことさえもいわれております。そこで、そういうふうなことを見て参りますと、農業の限界は一体どこにあるのかということがこの際問題になると私は思うわけです。従来のように、ともかくも耕作ということがその条件になっておる農業ではなくて、もっと別の意味農業に変わってきている。そこで政府の方ではこの法律を処理していく上の農業というものはこういうものだということを明確にする必要があると思いますので、これは一つ両局長からお伺いいたしたいと思います。
  47. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 仰せの通り農業というものが具体的にはだいぶいろいろ変わって参っておる点もございますが、この農協法農業といっておりますのは、農協法の第三条にもございますように、「この法律において、農業とは、耕作、養畜又は養蚕の業務(これに附随する業務を含む。)をいう。」こういうことになっておるのでございまして、この農協法の定義で考えて参りますれば、今の果樹、園芸その他畜産、そういう方面がいろいろ進んで参りましても、大体のものが農業ということで考えられると思います。
  48. 湯山勇

    ○湯山委員 たとえば水産会社がフィシュ・ミール等で飼料を作って、農地に関係なく卵だけとるような養鶏をやっておる、これはやはり農業といえるかどうか、今おっしゃった意味の定義に入るかどうか。それからモヤシなんか作っておるところは、全く農地と離れて、箱の中で、しかも非常に大きな設備で作っております。こういうものも一体今おっしゃった意味農業といえるかどうか。耕作じゃないと思うのですが、そういうのはどうなりますか。
  49. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 いろいろ実態にもよると思いますけれども、今御指摘のような問題については、大体農業に付随する業務として、加工という農業生産されたものを加工するものでございますから、付帯する業務というような意味で、農業協同組合法上の農業というように考えられると思います。
  50. 湯山勇

    ○湯山委員 たとえば今孵卵場でひなだけかえしておるというのは、やはり付帯する業務ということになるわけですか。
  51. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 その孵卵業のようなものはいろいろ考え方があろうと思いますけれども、現在の農協法では大体養畜ということで考えていいのではないかというふうに考えておるのでございまして、いろいろ金融関係その他におきましても、大体農業の中に入れて扱うような取り扱いをいたしております。
  52. 湯山勇

    ○湯山委員 この問題は、法律運営の上では、もし今のようなものをやり始めても、付帯する事業だけ独立してやることはこの法律の中では認められていないわけですから、そういうものを明確にしておかないと、あとで処理する上に問題が起こってくるということか考えられます。そこで個人的な見解ではなくて、農林省としてあるいは政府としてそういう点を明確にする必要があると私は思います。そういう点必要があるとお考えなのかどうなのか、あるとすれば、そういうことをこの法律が施行される段階で明確にするという御意思があるかどうかを承りたいと思うのです。
  53. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通りでございまして、いろいろ疑義がありますれば正式にはっきりとさせるべきであろうと思います。そういう意味で、ただいま申し上げましたものも個人的な見解ではございませんで、農林省政府委員としての答弁でございますので、御了承願いたいと思います。
  54. 湯山勇

    ○湯山委員 いろいろ問題があると思うというようなあいまいなところがあったのでは、法の運営ができないわけです。明らかに出資農事組合は農業の経営ができる、その他はできないとここで規定してあります。それから付帯する事業についても、その農業の経営がなければ付帯する事業は独立してはできない、共同利用施設の設置、農作業の共同化に付帯する仕事でなければできない、こうなっておるわけでありますから、この定義あるいは見解というものを明確にしておかなければ、実際には末端では運用ができない。届出制ですから、いいかげんにやっておる。いよいよの段階でトラブルが起こったときに大へんな問題になると思いますし、今確かにそういう傾向が出ておることは、最初局長も肯定された通りですから、私はその点は明確にすることを強く要望したいと思います。必要があればではなくて、ぜひそうしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通りでございますので、運用にあたりましては十分明確な線をはっきりさせまして、処理いたしたいと思っております。
  56. 湯山勇

    ○湯山委員 次にお尋ねいたしたいことは、今回農地法で最高土地制限の撤廃がなされております。そのこと自体が問題ではなくて、私がここでお尋ねしたいのは、所得倍増計画の中では、二・五ヘクタールの自立経営農家を百万戸十カ年間に育成する、こういうことが閣議で決定され、政府方針として示されております。二・五ヘクタールの自立農家を百万戸育成するというその基本方針と今度の農地法改正とはどういう関係があるか。私ども今簡単に考えてみますと、三町歩という最高限度を撤廃しないで、それ以上のものはむしろ押えて、そしてその限度に近づける。それ以下のものは二・五ヘクタールの耕地を持った自立農家を作る。そのことを先にすることの方が従来の方針からいえば必要じゃないか、こう考えられるのですけれども、今回のような措置をとられれば、大きいところはどんどん大きくなっていって、二・五ヘクタールの自立農家の育成ということはもうあと回しになっている、比重が置かれていない、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、その点はどういうふうな関係を持っておりますか。あるいはこの法律の中でどのようにしてその二・五ヘクタールの自立農家の育成をはかっていく、そういう積極的な意図がおありになるか、これをお答えいただきたいと思います。
  57. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 所得倍増計画の構想といたしまして、十年間に大体全国平均で二・五ヘクタール以上、農業所得百万円というような自立経営農家の目標が掲げられてございます。われわれといたしまして、この自立経営農家の育成ということにつきましては、御承知のように農業基本法におきましても自立経営農家の育成をはかるということに相なっております。われわれとしては、できるだけ自立経営農家を育成して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。農地法におきまして、ただいま自家労力のみによってやっておる場合は三町歩、それを今度主として自家労力に依存する場合に限りまして三町歩以上に拡大していくという従来の方針の緩和につきましては、いわゆる経済の高度の発展によりまする農村における労働人口の移動状況あるいは農業技術発展、そういった面から参りまして、自家労力のみによって経営を拡大するというのみならず、主として自家労力による場合にもこういう機会を与えるということがやはり自立経営の育成のために非常に資する、こういうふうな考え方で三町歩のそういった制限を緩和した次第でございます。
  58. 湯山勇

    ○湯山委員 それは少し間違っておると思います。局長のおっしゃるのは、二・五ヘクタール以上の農家を作っていくことが所得倍増計画方針である、こういうふうに以上ということを大へん強調しておられますけれども、そういう表現はございません。所得倍増計画の中にいっていることはそういうことではなくて、自立農家を育成していく、その自立農家というのはこういうものだ、耕作面積は今おっしゃったように平均二・五ヘクタール——それ以上のものを作るということじゃないのです。労働力は三名、年間粗収入は百万円、こういう規定がしてありまして、二・五ヘクタール以上どこまでも自立経営であればいってもいい、そういう農家を作っていくのだということではありません。これはお考えが少し違っておると思いますので、もう一度御答弁を願います。
  59. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 以上と申しましたが、府県平均二・五ヘクタール、こういうことになっております。私の思い違いでした。ただし府県平均二・五ヘクタールでございますので、二・五ヘクタール以下でも百万円の所得を確保できる場合もございましょうし、また二・五ヘクタール以上でなければできない場合もあろうかと存じます。私の申しましたのは、大体想定でございますので、必ずしも二・五ヘクタール一本でいくという意味ではなしに、幅がある。これには三町歩の場合もありましょうし、あるいは二・五ヘクタール以下でも近代的な経営で生産性の高い農業をやれば、農業所得も所要の想定される百万円をこす場合もある、こういうことであります。私の申しました農地法上の三町歩については、やはり所得倍増計画の想定と合わせて、そういうふうにいかない場合もありますので、三町歩以上についても、主として自家労力によって適正な経営ができる場合には、その拡大の道を開くということが、農業規模の拡大あるいは経営の合理化等に必要だ、こういうように考える次第であります。
  60. 湯山勇

    ○湯山委員 今の局長の御答弁は大へん苦しいこじつけの答弁で、そういうことではないと思うのです。自立経営農家で、年粗収入大体百万円の農家を作る、そのためには三町歩という制限ではだめだから、三町歩という制限を撤廃したのだということじゃないのでしょう、この法律の精神は。どうなんですか。今の御答弁だと、結局、年間粗収入百万円の農家を作るためには、三町歩という制限ではできないから、三町歩という制限を撤廃するんだ、つまり本来は二・五ヘクタールでいいんだけれども、それでできないのを補うために制限撤廃をした、こういう結びつけで御答弁になっておるのですけれども、それとは無関係に、近代化あるいは機械化を進めていく、そのためには、実は所得倍増計画では二・五ヘクタールなどということをいったけれども、それではだめだ、自家労力でやっていける場合には、三町歩になろうが、四町歩になろうが、その制限を撤廃することが、農業の近代化をはかっていく上に必要だ、こういう観点からこういう建前をとられたのではないですか。私はそうだと思うのですが、いかがですか。
  61. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 現行の農地法では、三町歩が一応の制限になっておるわけでございますが、それを自家労力ということだけによって制限するのは、現状の農業事情から必要がない。これはやはり現状の農業労働力の移動あるいは機械の導入、そういう点から考えまして、経営規模の拡大をしようという農家には、そういうチャンスを与えるべきではないか、こういうことであります。
  62. 湯山勇

    ○湯山委員 従って、所得倍増計画の、十年後に二・五ヘクタールの自立経営農家を百万戸作る、そういうこととは必ずしも一つのものではない。それとは別個のものだ。もっと端的にいえば、所得倍増計画は倍増計画だけれども、そういうことじゃいけないから、この際踏み切ってこういう措置をとったんだ、こういうことなんでしょう。
  63. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 所得倍増計画の府県平均二・五ヘクタールというのは、構想ということになっております。二・五ヘクタールのものをそのまま作るというようなことでなしに、二・五ヘクタールのものを十年間にこれだけ作り、自立経営させていこうという構想として発表されたわけであります。農地法では三町歩の現行の制限については、先ほど申しましたように、農業事情等の変更で、これを撤廃する方が、農業経営の規模の拡大、近代化のために必要である、こういうふうに考えた次第でありまして、二・五ヘクタールでなければならぬということではないと思います。
  64. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうお考えはそれで了解できると思います。そこで、そうなりますと、昨日も議論がありましたけれども、ずっと富農中心の農業になっていって、その格差というものは一そう拡大されてくる。もっと言えば、三割農政というのが二割農政になるか、一割農政になるか、そういうことになる可能性もあるというふうに考えられるのですが、これはいかがでしょうか。
  65. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 経営を拡大して合理化していこう、こういう農家につきまして現行の農地法が制限になってはいけないということでいわゆる三町歩の制限の緩和をはかった次第でございまして、農家が経営を拡大するという意欲がありますればそういう大きくなり得る道を開いただけでございます。一方零細な農家等につきましては、先ほどからも申し上げましたように、協業の助長あるいは新しい近代化等によります生産性の向上といったような措置を講じていくようにしたい、私たちはこういうように考えております。
  66. 湯山勇

    ○湯山委員 経営規模の拡大ということは一つ条件としていいと思う。ところが、この農地法改正農協法改正考え方の基礎はあくまでも自立経営農家の育成であって、それの補いとして協同経営があるというようなことが提案説明にも書かれてあります。しかし、今の二・五ヘクタールということも、これにこだわっておってはほんとうの近代化はできない。そういうことから考えれば、今のように自立経営農家ということだけに拘泥しておったのでは、ほんとうに農業の近代化あるいは合理化ということができていかないのじゃないか。と申しますのは、御存じのように先進国の非常に近代化された農業と太刀打ちしていかなければならない。一方においては東南アジアその他のああいうプリミティブな農業と競争していかなければならない。そういう中にあって、今二・五ヘクタールとかあるいは自立経営農家、そういう考えで一体日本の農家が立っていくかどうか。それについては私はこの際その考え方を変えていかなければならないのじゃないかと思うわけです。今出された法律の中の非出資農事組合、これじゃなくて、むしろ出資農事組合が今後の中心になっていかなければならないのじゃないか。そうでなければ、今言ったように、二・五ヘクタールというワクにこだわらないで、上の制限は撤廃したのだからいけるものはどんどんいく、こういう踏み切った考え方があれば、同時にそのためには自立経営農家というこだわった立場を離れて、むしろ将来の日本農業の行き方は出資農事組合の方へ重点を移していかなくちゃならないのじゃないか、こういうことを考えるわけですが、どうでしょうか、お考え伺いたいと思います。
  67. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 やはり日本農業といたしまして家族農業を主体にいたしまして自立経営が伸びていく、こういう方向に助長するとともに、先ほどから申されますように、小経営の農家等につきましては一面兼業化ということも否定することはできない、兼業化ということも進めざるを得ない状況にございますが、そういった農家についても協業の助長、これは農事生産組合等も利用する道があろうかと思います。そういった両方でいかざるを得ないと思いますが、やはり大筋としては家族経営を中心にしました自立経営を伸ばしていくという方向にならざるを得ない、こういうふうに考えております。なお自立経営におきましても大きな資本操業をやるということのためには、協業等の組織もやはり利用しなければならぬというふうに考えております。
  68. 湯山勇

    ○湯山委員 端的にお答えいただきたいと思うのですけれども、今から十年、二十年先を見通して、はたして今局長の言われたようなことでいいかどうかです。もっと長い目で見た場合には、家族経営の自立経営ということだけで一いかどうか。むしろその方が従であって、お互いに出資し合って共同化していくということでなければ、今申しましたように、日本独自の農業日本独自の形態といっても、そういうことでは実際は現在の競争できない状態がさらに続いていくばかりであって、この際、見通しとしてはこういかなければならないということをはっきりさせる必要があるのじゃないかということを、私はお尋ねしておるわけです。局長の言われるように、何といっても自立経営が中心であって、それで足りない分は協業化で補っていくという考え方で将来の日本農業が立っていくかどうか、これはどうお考えでしょうか。
  69. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 非常にむずかしい先の見通しでございます、農事組合あるいは農業生産法人というものもただいまから新しく発足する制度でございまして、大宗は先ほど申しましたように、家族経営を中心にする自立経営ということに考えるわけでありますが、やはり新しい協業経営というものが資本操業その他の経営拡大の上に今後は重要な地位を占めていくということは、私ども考えておるわけであります。その見通しというものは、非常に新しい制度でございまして農家がこれになじむよう、われわれといたしましては協業化の方向等については今助長の方策を大いに講じていきたいというように考えております。
  70. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで先ほど農林大臣は、十年間の大体長期見通しに立った構想を今作業しておったということでございますが、そういう中には今局長の御答弁になったような考え方は入っておりますか。
  71. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 先ほど大臣が御答弁になりましたのは、農業生産需給長期見通しかと存ずる次第でございます。需給見通しというものが立ちまして、その需給見通しに即応するように農業施策というものは一致さしていかなくてはならぬ、こういう基本になる需給見逸しでございます。それが立ちまして、それに合わせて基盤整備をやる、いろいろなことをやる、こういうことに相なると思います。
  72. 湯山勇

    ○湯山委員 その需給見通しの中に、今局長が御答弁になったように、将来としてはそういう方向をとっていくだろうという考え方が入っているかどうかということをお尋ねしているわけですが、それはどうなのでしょうか。
  73. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 需給見通しをやりまする基盤といたしましては、基本法によりまして自立経営を育成するという基盤は当然ある。その上に立ちましていろいろやっていく、こういうふうにわれわれは了解しております。需給見通しそれ自体に経営の方向を示すということはないと思います。
  74. 湯山勇

    ○湯山委員 そうだとすればお尋ねしなければならないのは、今政府の方でお進めになっておられる構造改善事業、市町村単位で今度から着手される構造改善事業というものが、今のような点にこだわっておるためにあちこちで非常に支障を来たしております。現に河野農林大臣のおひざ元の津久井という郡でございますか、ここではパイロット返上の決定をしたということも聞いておりますが、これはお聞きになっておられますか。
  75. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 私、まだそちらの方のことは承知いたしておりません。
  76. 湯山勇

    ○湯山委員 経済局長いかがですか。
  77. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 所管が違いますので聞いておりません。
  78. 湯山勇

    ○湯山委員 構造改善が実情に合わない。それは今御答弁になったような考え方で進めておられるから実際に合わないわけです。そこで、この農林大臣のおひざ元でパイロット返上ということが起こっておるわけですから、一つ担当の局長をお呼び願いたいと思うのです。これは事実ですから。あるいは説明の中でお聞きになっておる方があればそのことについて御答弁願いたいと思います。
  79. 野原正勝

    野原委員長 委員長から申し上げます。  齊藤振興局長は参議院の方に出ていますのでこれから呼びにやりますが、おそらく本会議が散会後再開したときに間に合うようにしたいと思います。よろしゅうございますか。
  80. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ委員長からただいまのように、あとへ質問を留保さしていただきましたので、なおこの問題はさきの、今回の法律改正に伴っての自立経営農家の育成ということと関連がありますので、農林大臣にも、お見えになったときに、あとでけっこうですから質問を留保させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  81. 野原正勝

    野原委員長 午前中はこれだけにしておきますか。
  82. 湯山勇

    ○湯山委員 あとでけっこうです。  それでは次にお尋ねいたしたいのは、現在農村では実行組合というものがございます。実行組合の中にやはり生産活動をやっておる実行組合も、多くはないかもしれませんけれども相当あるわけで、その実行組合と今回法律によってできる農事組合、これとは一体どういう関係を持つか。これはどのようにお考えになっておられるか、承りたいと思います。
  83. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 御指摘のように、現在農村の末端には実行組合とかあるいは農家組合とかいろいろの名前で小さなグループの団体がございます。これがいろいろ農業関係におきましても、たとえば共同作業をやっておるとか、あるいは共同利用をやっておるとか、そういうものもございまして、トラクターを買って三人で一緒に使っておるとか、そういうようなものもいろいろあるわけでございますので、そういう実態に応じましていろいろの姿のものが末端では必要であろうと思うのでございますが、そういうような意味で、大体そういう実態をカバーできますような意味で今度新しい法律でも農事組合というものを考えましたわけでございます。従いまして、農事組合の考え方は、そういう人格のないものも、出資も非出資もいろいろあるのでございまして、人格を持ちましたものについては、自分が主体になって農業の経営ができる、こういうようなことで考えていったらどうかというふうに考えておるわけでございます。
  84. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると局長の御答弁では、現在の実行組合がそのまま届出によって農事組合になることができる、あるいはそうする、そういうわけでしょうか。あるいは農事組合ができても、従来の実行組合というのは、それは別個のものだ、こういうことなんでしょうか。これは法律の解釈じゃなくて、農林省方針がその点は明確になっていなければならないと思うわけです。ある部落の中で、ある集団は従来通り実行組合でやっておる。そのお隣は今度の農事組合になっておる。しかも同じことをやっている。一方は法律によって作られたものだし、一方は任意のものだ。こういうことではこれは首尾一貫しないと思うわけで、その点については一貫した指導方針がなければならないと思うわけです。どうお考えなのでしょうか。
  85. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 御指摘の通りでございます。ですから今度の法案では、農業経営を行なう場合には法人格を持って出資をした組合でなければならない。そうしてこれは登記によって成立し、官庁に届け出ればいい、こういうことにしたのでございまして、その他の農業経営を行なわないものにつきましては、いろいろの姿のものがあっていいのではないかというふうに考えております。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 その場合にいろいろの姿というのは、従来の実行組合というものも今回この法律によってきめられる農事組合の範疇に入れるのかどうかということなのです。
  87. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農事組合という制度を考えました以上は、なるべくそういう小組合も同じような名称で全体同じ一つの体系の中に入ってくることが望ましいと思うのでございますけれども、しかしこれを強制的に農事組合という名前に直せというようなことを無即やりにやることもどうかと思いますので、考え方といたしましてはできる限り一つの名前で全体が統一といいますか、包括をされます方がいいのではないか、そういう考え方で指導いたしたいというふうに考えております。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 そこでやはりこれも具体的な問題になって参りますけれども、出資農事組合の場合は別としまして、非出資の農事組合の場合、実行組合であるのとそれから生産法人である農事組合になるのとは一体どういう利害得失がございますか。それによって実行組合が農事組合になるかどうか、それは判断の材料になると思いますのでお伺いいたしたいと思います。
  89. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 人格を持たない組合の場合には単なる任意組合でございますから、名前を変えることによって特に両方に利害の差はございません。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは従来ある実行組合というものは、そのまま実行組合でもいい、それから農事組合になるものはなってもいい、こういうことでございますか。
  91. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、できる限り農家の小組合が農事組合という名前に移り変わって参る方が、全体としては適当であろうと思うのでございますけれども、それはいやなものは実行組合でもかまいませんし、農家小組合のままでやっておっても、それを強制するつもりは毛頭ございません。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 私がお尋ねしておる焦点は、今度はこの法律によって農事組合というものは非出資であっても法人格が与えられる、そういうことになるわけで、従来の任意組合とはそこに違った人格ができるわけです。違った人格ができても、今の局長の御答弁では、別に非出資の場合は変わったところはないのだ、ただ便宜上名前を統一してもらいたいことが望ましいけれども、いやなら仕方がない、こういうことですか。
  93. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 何回も同じようなことを申し上げるようで恐縮でございますけれども、非出資であろうと出資組合であろうと、あるいは法人格を持とうと持つまいと、これはいわゆる農民が自主的に作る団体でございまするので、いろいろ仕事をやっていく、その仕事に応じた姿のものを作っていったらいいじゃないかと思うのでございます。そこで、農業経営をみずからやろう、団体が責任を持って経営をやろうという場合には、出資して法人格を持たなければいかぬ、こう思って、これだけを規制いたしますれば、あとはそう無理にこういう姿でなければならぬということを統一的にきめてかかる必要はないのじゃないかと思いまするけれども、先ほど言いましたように、指導といたしましては、なるべく農事組合というような姿になって参る方が全体としてもいいと思いまするので、指導はそういう指導をいたしたいと思っておるわけでございます。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 なお、念のためにもう一度このことについてお尋ねいたします。  それは七十二条の八で、第一項に一号、二号、三号と区別がございます。三号は「前二号の事業に附帯する事業」ですから、これは問題外として、一号、二号、つまり「農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業」それと「農業の経営」この二つに分かれるわけで、その二つで結局出資組合と非出資組合に分かれる。今の局長の御答弁では、一の方はまあこれはどうでもいいのだけれども、便宜上そうしておるだけであって、そのことは別に問題ではない、ただ飾りのように、アクセサリーのようにつけておるだけだ、極端に言えばこうですか。それならばいいのです。いい悪いを言っているのではなくて解釈を伺っておるだけですから……。
  95. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 お言葉ではございますが、アクセサリーというような意味でもございませんけれども、ここで農業の経営をやっていく、こういう法人ができました場合に、あるいはそういう法人におきましては、共同利用施設をやるとか、あるいは農作業の共同化をやろうとかいうようなものは当然農業経営をやっていくものに比べまして、ウエートが現在では相当大きいのじゃないかと思うのでございます。そういったような意味で、共同利用施設とかそれから農作業の共同化というものも一つの項目としてあげたわけです。しかしこの場合にはしいて、何と言いまするか、農民、いわゆる農業の経営をやっているところの一号だけの場合には、農業の経営をやっているという考え方ではございませんものですから、農業の経営をみずからやっておりまする農事組合法人とはまたある程度いろいろ差異をつけておるわけでございます。
  96. 湯山勇

    ○湯山委員 またどうもはっきりしませんので、大へん失礼ですが、もう一回聞きます。  第二号の農業経営をする場合、これは、私は先ほど農地局長にお尋ねしたように、むしろこれが今後重点にならなければならぬのじゃないかという質問を申し上げて、農地局長もそれについてはそういうふうに考えられるという御答弁があったし、今経済局長も、二の場合は将来非常に重要であって、こちらが重点であるということ、これはもう私と全く意見の一致を見ておるところです。問題は第一号の方なので、第一号の場合は——先ほど来の局長の答弁からしても、第二号の「農業の経営」ということは重要だ。これはもう全く意見の一致を見ておるところですから、それは御説明要らないのです。第一号の場合は、やってもやらなくてもいいという先ほどの御答弁です。それは好きなようにしたらいいじゃないかということで、実質的には任意組合である場合も、第一号の法人になった場合も別に損得はない。いいところはちっともない。それならやらなくてもいいじゃないかということになるわけで、あるいは名前だけ統一した方がいいということでなるのもあるでしょうが、どっかいいところがなければ何のために法律を作ってくれたのかわからないし、また指導していく場合にも、それは今実行組合になっておるけれども、法人におなりなさい、登記の手数料を払って法人におなりなさい、という指導ができないでしょう。悪いというのじゃないが、法人にするのならば、それだけの何かいいところがなければならないじゃないですか、あった方がいいんじゃないかと思います。ところが、それについては局長は、別に一号についてはいいところはないのだ、こういう御答弁ですから、それはアクセサリーのようなもの、アクセサリーよりももっと悪いかもしれませんが、そうじゃないかということなんです。ここは何かこうすっきりした御説明はいただけないものでしょうか。
  97. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 お答えが不十分でどうも失礼をいたしました。実は共同利用施設等をやります場合におきましては、御指摘のように法人格を持っても、法人になってもどちらでもいいということでございますけれども、法人格を持つことによってその事業について一つの人格が責任を持って仕事をやっていけるというものもございますし、それからあるいは法人についての税法上の問題、そういうような問題も恩典はあるのでございます。そういう利点はございます。ですから、任意組合の場合には一々個々の民法上の組合契約のようなものになるわけでございますが、いろいろの扱い上も非常に厄介になる、こういう点がございます。それから法人として、外に対して法人格を持ったその組合そのものが責任を持っていろいろ仕事ができる、こういうような面もございます。法人としてやっていく方が何かにつけてその共同利用施設等をやります場合にも便利であるというふうに考えております。
  98. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうふうにお答えいただくと幾らかわかりました。  もう一つ念を入れてお聞きしますが、今の点をお百姓さんにわかるように言うのにはどう言ったらいいのでしょう。
  99. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 法人格を作る方が仕事をしていきます場合におきましても非常に責任がはっきりとして仕事がしやすくなりますし、税金の面等におきましても勝手な組合で仕事をやっている場合に比べれば相当恩典があるから、できるだけ法人格を持った方が、仕事の性格にもよりますけれども、便利じゃございませんか、こういう工合に言ったらわかるのじゃないかと思います。
  100. 湯山勇

    ○湯山委員 大へんありがとうございました。  続いてお尋ねいたしたいのは、信託行為についてでございます。いろいろ御質問がございましたけれども、そこで、残っている問題は、政府の方で信託の模範規程案を御発表になるということですが、これはもうできておりますか。
  101. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 要旨は作ってございます。
  102. 湯山勇

    ○湯山委員 それは本法を今審議のまっ最中ですし、それからその信託規程についての質問はかなり出ておったと思いますが、資料としてすぐ御配付願えますでしょうか。
  103. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 持参してございますからすぐお配りいたします。
  104. 湯山勇

    ○湯山委員 それではそれは信託規程を拝見してからなお質問したいと思いますが、問題は一つこういう問題があるのじゃないかと思うのです。信託というのは土地を持っている人と農協との間にまず信託行為が行なわれる。それから、信託された農協はそれからある時期を置いて売り渡しもしくは貸付を行なう。その間に時期がございますね。特に売り渡しの場合等は、有利な場合には相当相対取引でやってしまうですから、そうすると大体どうにもならないという段階で売り渡し信託というものは行なわれるのではないか、こう考えられます。ところが農地の場合は時期的な問題がありますから、たとえばこの三月なら三月に売り渡し信託を受けて、どうにもならないようなので来年の三月まで持ち越す、そういう場合の管理は一体どうなるわけですか。
  105. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 信託契約によりまして、所有権が農協の方に移っておるのでございます。その間のいろいろの管理は農協がやる、こういうことになります。
  106. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは農協が耕作をするわけでございますか、管理をするという意味は。
  107. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 耕作をやるとか、あるいはそういうようなことではございませんで、とにかくその土地を——その間の考え方は、使用貸借という程度の考えで、その保存上の最小限度の管理ということで考えていったらどうかと思います。
  108. 湯山勇

    ○湯山委員 保存上の最小限度の管理ということになれば、それでは、かりにどうにもならない土地ですから、売り渡し信託を受けて二年、三年たって、その間は、保存上の最小限度の管理ならば、荒らしておくわけでございますか。
  109. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 現在考えておりまするのは、大体一年間も処分ができないような場合には、これはその信託が円滑に動かないわけでございまするから、そういう状況に置くことは適当でないと思うので、そういう場合には信託契約を解除させるようにしたらどうかというふうに考えております。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 では解除された人はどうなるのでしょうね。信託しておいてよそへ出ていく。よそへ出ていったあとで、今おっしゃったように一年たって解除された。また戻って作るというわけにも参りますまい。相対取引で売り渡しができないから信託した。一年たって解除されたら、一体どうなるのでしょうか。
  111. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 この問題は取り扱い上非常にむずかしい問題でございますけれども、事は農地の問題でございまするので、これは最初から信託規程等できめまして、一年間なら一年間、処分ができない場合にはこれは解除するのだという、最初からそういう約束ごとのもとに信託を受けるというようなことに運ばざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  112. 湯山勇

    ○湯山委員 この信託規程というのは、その信託する農民を保護するということが前提になっておると提案説明ではおっしゃっておるわけです。今のようだと、信託をしてよそへ出ていこう、転業していこうというような場合に、では一年間は待たなければどうにもならない。せっかく計画しても、今度は一年間たってその信託したものが売り渡しできなければ、また戻って土地の管理をしなければならぬ、あるいは今度は土地の売り渡しじゃなくて、貸付の方へそれを回す。いずれにしても今のような御答弁だと、信託は安心してできないということになるのじゃないでしょうか。と申しますのは、最初申しましたように、大体今のような状態だと、相対取引の方が有利な場合の方が多いと思います。それでできないで信託するというのですから、売買の条件というのは悪いものが多いと思うのです。それを引き受けて、今のように一年で解除するというのでは、これは安心して信託できないということになりはしないでしょうか。
  113. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 売り渡し信託につきましても貸付信託にいたしましても、そういった組合員の中に、あるいは組合の管轄する地区内の事情といったものに一番やはり精通いたしておりまする農協を使っておるわけでございまして、そういった地区内の農地の売買事情あるいは耕作事情といったものがよくわかっている農協にこれを制度化した状況から申しましても、そういった点については信託引き受けの際において農協においても十分にやらなければならぬかと思います。その一面において売り渡し目的の信託がその後のいろいろな事情で、見通しが悪くて引き受けたあとでどうしても売れないというような事情がございますれば、これは先ほど経済局長から御答弁がありましたように解除ということに相なるかと存じますが、またそういう状況になりました場合に、これを貸付信託に切りかえるという方法もございましょうし、また一年間になかなか売れそうにないような事情のものを、信託者の方の事情で引き受けるといったような場合には、売り渡しをやる、あるいは売り渡しができないときには貸付にも変更できるといったような信託契約の方法も考えて売り渡し信託と貸付信託を合一したような制度というものをあわせて囲いていくという道も考えていく、あるいは途中で切りかえるということも考えていいのではないかと思います。
  114. 湯山勇

    ○湯山委員 私はそういう答弁で了解できないのは、信託事業というのは農協本来の事業ではありません。当然国がやるべき事業を委託しているという性格が強いと思うのです。構造改善を進めていく、そのことのためには国が責任を持ってやらなければならないことを便宜上農協——先般来御答弁にあったように、ほかへ持っていくわけにはいかない、仕方なく農協、その農協も必ずしもすべての農協じゃなくて総合農協という条件をつけてそこにやらしておる。だから当然これは国の委託事業的な性格を持っている。だから農協に最終的に今のような責任を持たせるというのではなくて、最終責任は国が持つというような必要があるのではないでしょうか。  それからいま一つは、一年間はその農協で管理するという場合の管理に要する費用、そういうものを含めて、一体この信託事業が農協に対して赤字を出させる、損失を与える、そういうことはないでしょうか。先般来の御説明では、手数料はどうとか、あるいは一万円の事務費でございますか、そういうものを見ておるというようなことも言っておられましたけれども、今これだけの大きな事業を農協に委託して国の方でお考えになっている程度では、農協としてはこういうことはあまりやりたくないという気持の方が先に出るのではないかということを心配するのですが、その点についてはどのようにお考えになっておられますか。
  115. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 信託に必要な経費は委託者の方からも取りますし、また半分は国が補助する、こういうことで予算も組んでおるのでございますので、少なくとも農協がこのために赤字になるというようなことは絶対にさせないようにやっていきたいと思っております。
  116. 湯山勇

    ○湯山委員 管理部長と農林大臣等に質問がまだあるのですし、先ほど保留したのもありますけれども、本会議が始まるそうですから一応これで留保しておいて、今回のは終わることにいたします。
  117. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することとして、この際休憩いたします。    午後二時二十九分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  118. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、理事辞任の件につきお諮りいたします。  理事足鹿覺君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次に、理事補欠選任の件につきお諮りいたします。  足鹿君の理事辞任に伴い、理事が一名欠員となりましたので、この際その補欠選任を行ないたいと存じます。先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。それでは中澤茂一君を理事指名いたします。      ————◇—————
  121. 野原正勝

    野原委員長 内閣提出農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案並びに北山愛郎君外十四名提出農業近代化促進法案及び石田宥全君外十四名拠出、農業生産組合法案、以上四件を一括議題とし、質疑を行ないます。石田宥全君
  122. 石田宥全

    石田(宥)委員 池田内閣は、昨年所得倍増計画関連いたしまして農業基本法提出されました。農業基本法について、情勢の分析その他については社会党と必ずしも大きな食い違いはなかったのでありますけれども基本法を中心とする考え方には大きな相違があったわけです。私どもは、池田総理の言われる基本法の構想は農民の削減論、切り捨て論だ、こう申したのでありますが、総理は切り捨てでなくて切り上げ論だ、こうおっしゃったのであります。しかし、それは切り捨てであろうが、あるいは切り上げであろうが、池田さんのお考えになっておるように農業人口は大幅に減って参りました。農業人口がほかの産業に移って参りましたが、ほかの産業に移った人たちが安定した生活を営んでおるかというと、非常に疑問が多い。労働者になりましても、臨時工とか社外工とかいうような人たちの生活というものは必ずしもよくなっておらない、こういうふうな情勢であります。数字的にも、農林省の統計を見ますと、大幅に農業人口ははっきりいたしておるのでありますが、政府は一体今後の日本農業についてどうお考えになっておるのか。昨年の基本審議にあたりまして、総理大臣農業発展させるためにいろいろな施薬を行なうのであるということを言われたのでありますが、その後の推移を見ておりますと、だんだんと衰微する方向へ向かっておる。今後は日本農業というものをどういうふうに位置づけていこうとされておるのか、お伺いをしたいと思うのであります。
  123. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業は、他の産業とは異なりまして、自然的条件、経済的条件、いろいろな点で困難性が多いのでございます。しかも日本農業は、今の近代化される趨勢に逆行とは申しませんが、立ちおくれまして、一部には百年前の農業自体を今もやっている。こういうことは、農業のためにまことに悲しむべき状態である。しかも片一方では産業合理化と所得十年倍増計画でいっているときに、農業についていろいろな施策を講じなければならぬ。私が農業人口が相当減ると言ったときにみんな驚かれたが、一年半、二年足らずのところでもうその点が認められてきたのではないか。十年たったならば私が二年前に言ったようなことが実現、好むと好まざるにかかわらず、そうなるではないか。これを私は考えまして農業基本法を制定し、農業があらゆる制約を乗り越えてりっぱな産業として立つように経営規模の合理化、そうして経営方式の近代化、これをはかっていこうとして農業基本法の制定をお願いし、そうしてこれが関係法案を御審議願っておるのであります。
  124. 石田宥全

    石田(宥)委員 りっぱな産業として立っていくようにという御答弁でありますけれども、これは口先だけのことであって、内容的にはそれに伴っておらない。たとえば、食糧にいたしましても、飼料にいたしましても、外国依存度がますます激しくなって参ります。このように、食糧や飼料等の農産物を大幅に外国に依存するような政策がはたして日本の将来のために好ましい方向であるかどうか、この点も伺っておきたいと思うのであります。
  125. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今の国際経済におきまして、食糧、飼料の自給度を高めることのみに施策を集中してはいけない。やはりあくまで国際的に見て、しかも経済的にこれが合理性を持つように、そういう前提で自給度を高めていく、こういう二つの目的を合致せしめることが必要であろうと考えるのであります。
  126. 石田宥全

    石田(宥)委員 口先だけは自給度を高めるということをおっしゃるけれども、実際おやりになっていることは、少しも伴っておらないのであります。そこで、これに関連いたしますけれども河野農林大臣は、三月十一日に京都でこういう講演をやっておる。日本農業は東南アジア共同体一つとして考えなければならないので、このためには米作を一、二割減らし、その分だけ他の農産物に転換する必要があるということを言っておるのです。これは昨年の基本審議の過程におきましても、米麦については作付制限をする意図を持っておるのではないかということをわれわれはしばしば追及したのでありますけれども、そういうことはやらないんだ、こう言っておられたのでありますけれども、今度は農林大臣は、はっきりと、米作の一、二割の作付転換をしなければならない、こういうことを言っておられるのでありますが、総理大臣のお考えはどうでしょうか。
  127. 河野一郎

    河野国務大臣 今、京都で私が米作の一、二割の作付転換をしなければならないと言うたように——それをそのまま総理が答弁をされますと、誤解から誤解を生むと思いますから、お許しをいただきたい。私はそれには前提があります。もしそういうことが可能であるならばということが前提でございまして、決して私は、それをやるというようなことで申したのではないのであります。日本と東南アジア農業の一体化をはかることができ、そしてよってもって、もし日本生産費の高い米作地帯のものが一、二割作付転換ができて、それで東南アジアとの間に一体化ができるならばというのであって、ただ無条件にそういうことを私は考えておりません。日本農業が近代化して参る上におきまして、生産費の高い米作地帯は、いつまでも米作でなければならぬということはないだろう、そこに農家の自立経営を育成する上においてそういうことが可能であるならばということでございまして、それには相当の施策が必要でございます。ただむやみに米作地帯を切り捨てるような誤解の出ることは非常に遺憾でございます。決して私はそういうことを考えておりませんから、その点は一つ御了承をいただきたいと思います。
  128. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは実は河野さんにお尋ねしたわけじゃないのですが、総理の答弁を求めてもこれと同じだという御答弁になるだろうと思いますから、重ねてお伺いはいたしません。これは農業基本法第二条第一項のいわゆる選択的拡大ということが規定されておりまして、需要の増大するものは生産を高める、需要の減退するものは作付を転換する、また外国産農産物と競合するものはこれを合理化していくという規定があるわけでありますが、これに基づいて、いろいろ作付転換についても政策が出ておるわけです。まっ先に出たのは、大麦、裸麦の作付転換であります。これは政府の半ば強制的な指導に基づいて、大・裸麦十五万町歩も作付転換が行なわれ、五万町歩も耕作が放棄されておる。しかし法案は成立をしなかった。政府の指導によって行なわれた作付転換をした農民諸君は泣くにも泣けない状態なんです。今、河野さんの答弁のようであると、今度は、これは米にまたくる危険性がある。それならば、一体、成長財とはっきり銘打っておった畜産はどうか。私は、昨年の基本審議にあたりまして、政府が、畜産が成長財だなどといって宣伝をされると、農民はネコもしゃくしも畜産に飛びついて、結果においてはえさ会社のえさになってしまうのではないか、かつての農民は機械屋の奉公をやってきたが、今度畜産をやると、えさ屋のえさになるのじゃないかということを指摘しておったのです。ところがその通りになってしまっている。最近の養豚家のごときは、先般来お話がありましたように、農民の中には、それがために自殺をした農民すら起こっておる。ところがそれに対して政府はどんなことをやったかというと、むしろ畜産物価格安定法に基づいて、乳業会社に対しては牛乳の値下げの口実を与えるような標準を示しておる。ことしは、夏場になると牛乳が相当不足するのではないかということになると、すでにこれは、外国から、乳製品四百トン、それに粉乳一千トンの輸入の手当をして値下げをはかろうとしておる。こういうところ政府考えておる選択的拡大の意図がはっきり現われておるわけです。この状態が続いていけば、日本農業というものがどういう運命をたどるのかということは明らかであって、私はそういう点から、政府がどんなに強弁されようとも、日本農業の発達のための施策をやろうとしておられるものではないと断ぜざるを得ないのでありますが、総理大臣はこれに対してはどうお考えになっておるか。
  129. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業政策の具体的の問題でございますから、農林大臣からお答え願うことにいたします。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 少しゆがんで御質問じゃないかと思うのであります。たとえば私は農産物価格は高ければよろしいというふうに考えるわけには参りません。適正な価格のもとに成長農業がその中に堅実な発達をして参るということが条件でなければならない。農産物価格が高くさえあればよろしいということはとりません。従って、今の酪農製品等につきましても、需要の増大を意図しつつ、そこに健全な生産の意欲が起こってくるということがあるべき姿でなければならぬと思うのでございます。たまたま豚について異常な増産が行なわれまして大へん御迷惑をかけたこと、まことに遺憾でございます。政府としても、ただ遺憾で申しわけないといわざるを得ませんが、成長の過程におきまして指導に誤りがあった、これはその通りでございますから、私は申しわけないと謝罪いたします。しかし、再びこういうことのないようにいたさなければなりませんけれども、さればといって、豚の値を、安いんだから、今度高くさえあればいいということには参らない。適正な価格生産がそれに順応して参る、堅実な発達をして参るということでありたいものだ、そこにこれからの指導方針を持って参りたいということでいきたいと考えるわけであります。  それから米について大麦、裸麦などと同様なということでございましたが、大麦、裸麦につきましては、確かに御指摘のようなことで、われわれの施策が一貫して国会の協賛を得ることができませんでしたことは、はなはだ残念でございました。しかし、それによって一部御迷惑をかけた地方もございますけれども、またそのこと自体が、御承知通り麦作につきましては、面積が必ずしも耕作を決定するものではない、面積寡少のところに十分な増産意欲によって所期の数量を得ることもできるということは御承知通りであります。かくのごとくに、耕作その他の改良努力というものが、わが国農業を堅実に発達さすゆえんであると思うのでございまして、われわれが作付転換を奨励しながら、途中でその言う通りにならなかったことについても、まことに申しわけないと思っておりますけれども、できるだけこれらの農民諸君には今後において構造改善その他について一つ十分御協力申し上げて、再びそういうことのないようにいたしたいと考えております。従って、米について再びそういうことがあるようなことは絶対いたさぬという所存でございます。
  131. 石田宥全

    石田(宥)委員 政策的なことは農林大臣ということで御答弁になりましたけれども、総理大臣に最初に私が御質問申し上げたように、日本農業というものをどの程度の規模にして、どういうふうに安定させたらいいのかというお考えですか、これを一つ承りたいのです。
  132. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業というものは自然的条件、いろんなことがございますので、画一的にどうこうということはいえません。これが兼営農業であるか——まあ専業でありましても、地域によって、そして地質によって違うのでございます。従いまして、われわれといたしましては、大体三町程度が今の場合で適当じゃないかということも考えますが、三町というのは、それじゃ米麦だけか、こう申しますと、やはり合理的に畜産との関係を持たすとか、いろんな方法によって経営規模は変わってくると思います。その地方、そして技術、機械化に便かどうかという点から、私は適正なものが自然にきまってくると考えております。
  133. 石田宥全

    石田(宥)委員 質問の要旨を取り違えておられるようでありますが、私は、たとえば食糧の自給度の問題から見ても、あるいはまた最近の、農地に対する保護規定というものが全然なくて、工場や宅地を作るためには、個人の利益を追求するためのものに対しても、土地収用法を適用するというような措置がとられておって、農地として土地改良などをやって投資をいたしましても、これはどんどんつぶされていくが、農地としてこれを守るところの措置というものは何ら行なわれておらない。だからそういうものをこのままに放任していきますならば、一体日本の農地というものがどうなるか。全く農地を守っていくという規定は何にもないわけです。ですから、まだまだ当分この通り衰微、衰亡にまかせるのだ、そういうふうにお考えになっておるように見えるのですが、どうなんですか。
  134. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地の転換その他につきましては、個人の利益追求のための土地収用というようなことはやっていないと確信いたしております。やはり農地法の精神によりまして、産業全般のために必要なものにつきましては転用を認めます。また農地自体をよくするための改良事業につきましても、政府努力を続けておるのであります。おっしゃるようなことにはなっていないと思います。
  135. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは憲法にも抵触するような問題でありますけれども、そういう法律が出ておるんですよ。私は、きょう時間がないからそういうものはあまり掘り下げて議論をしようと思いませんけれども、諸外国では、ことに西ドイツなどはっきりしておるわけですが、ちゃんと土地の利用区分を定めまして、二十年なら二十年、一千年なら三十年の間ここは農業団地とする、ここは工場団地にする、ここの区域は市街地とするというような基礎的なものがちゃんときまっておって、その土地の利用区分が明らかな上に立ってそれぞれ適当な措置をとられるのはいいけれども、今日本の場合は、そういう区別が何にもできない上に、ただ工場団地あるいは宅地造成というような場合に、私益追求のためのその事業に対して土地収用法を用いる。これは間違いのない事実じゃないですか。そういうことをおやりになっておるところを見ると、一体農業を守っていこうとするのか、農用地などを守っていこうとするのかどうか疑わしいじゃないか、こういう点を言っておるのです。あなたは簡単に、そんなことをやっていないとおっしゃるけれども、ちゃんとそういう法律が出ておるんですよ。だから今日本のような狭い国土では、国土の全体の完全な調査の上に立って土地の利用区分を明らかにして、その明らかになった利用区分の上に立っていろいろな行政が行なわれなければならないのではないか、こういうことを言っておるんです。
  136. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地の転用につきましては、農林大臣法律の規定に基づいて合法的適当にやっておられると思います。この点は農林大臣からお答えいたします。
  137. 石田宥全

    石田(宥)委員 実は農林大臣は、農地の転用その他について農地転用基準のようなものは作られたけれども、行なっておらないし、農地法というものは完全に実施していないのです。これは最近の自民党の中の一つの組織であるといっても過言でないところの旧地主の団体のようなものが自民党の中にばっこして、そうして自民党と一体になって農地法というものが厳正に行なわれないように政治をゆがめておるのです。そういうところ農地法がゆがめられておる大きな原因があるのに、さらに今度、今審議されておる農地法の一部改正の中には、第八十条の二項に書いてありますが、政府が開墾適地として買い上げた土地、今五十万町歩ほど残っておりますが、その土地が旧地主の妨害によって開墾が行なわれないでおる。それを今度は旧地主の一般相続人に、十何年も前に買い上げた値段でまた売り渡すことができるという改正が入っておる。そういうことはどういう影響があるかということが私どもの非常に重大視しておる問題の一つなんです。要するに、開墾適地として買い上げたけれども、旧地主勢力の妨害にあってそれが開墾されないでおる、売り渡しされないでおる、こういう状態にしておいて、今度はこの農地法改正が行なわれると、買い上げの対象になった地主さんはもう長い年月だから死んでしまった。今度は一般相続人にこれを買い上げたときの価格で売り渡すというような立法措置は、きわめて反動的なものであって、われわれが断じて認めることのできない点であるということを私は指摘せざるを得ないのであります。一体なぜ旧地主の要求などに基づいてそういう法律改正をなさろうとするのか、さらには国民金融公庫法の一部改正によって、旧小作人よりははるかに生活程度もよろしいし、農耕をやっておるものは耕作面積も多いし、相当な役職にもついておるということが明らかである者に対して、金融の道を開いたり、今度は二千八百億もの国民の血税によって旧地主に補償をしようとあなたの党では今準備をしておるじゃないですか。そういうふうな反動的な農地行政をわれわれは許すことができないのです。一体総理大臣は、今申し上げたように、これから農地を守り、農地を広げていって、農民の生活の安定と日本農業発展のための措置をしなければならないときにあたって、それに逆行するような立法措置をやられることははなはだ遺憾にたえないのであるが、一体これは総理大臣のお気持から出ておるのかどうか、これを一つ伺っておきたい。——いや、農林大臣じゃない、総理大臣に聞いているんです。
  138. 河野一郎

    河野国務大臣 誤認が起こるといけないから、事実について申し上げたい。と申し上げますのは、ただいま数十万町歩の開墾適地を旧地主に返すということをわれわれが意図してこの改正案を出しておるように御質問でございますが、私たちは決してそうじゃございません。と申しますのは、その例が絶無とは申し上げませんけれども、おおむね開墾適地を買収いたしましてそれが一時売り渡しにされ、その開墾の実情等を見てみますと、今日開墾の要求が割合少ない。そのために今政府に何十万町歩というものが残っておるのでございまして、意欲があるにもかかわらず、その払い下げを政府が渋っておるというようなことをいたしておる事実はございません。従って、今お示しのように、われわれとしては、むしろ積極的に開墾をどんどん進めていこうというのでございまして、お話の点と違う点がございますから、その点を私はお答え申し上げたいと思ったのでございます。また総理がその実情を誤認せられて答弁になるといけませんから、失礼でございますが、申し上げたのでございますから、あしらからず御了承いただきたいと思います。
  139. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農林大臣がお答えになった通りでございまして、開墾の目的で買い上げた、その目的が達せられないというものをそのまま置いておくということは、農地造成の上からいってもよくございませんから、これを適当に払い下げるということは私は当然の措置じゃないかと思います。  それから今農地被買収者に対しましての措置を云々しておられるようでございますが、私は、党でいろいろ研究しておられることは聞いておりますが、党から正式にまだ私にどうこうということは言っておりません。われわれは農地被買収者の生活状況その他につきましての調査をお願いいたしまして、そうしてその調査に基づいて農地問題について検討を加えて、適正な措置があるならば、その措置を将来において講ずることあるべしということの検討を加えておるのであります。
  140. 石田宥全

    石田(宥)委員 補償の問題はまだ法律として提案はされておりませんが、先ほど申しましたように、すでに国民金融公庫法の一部改正法律案は提案されておるわけです。その性質は必ずしも同一だとは申しませんけれども、軌を一にするものであることは間違いがございません。一体総理は、旧地主に対してのみ特別に国民金融公庫から融資をしなければならない理由というものは、どこにあるとお考えになりますか。
  141. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地を買収せられて、そうして生産資金にお困りの方につきまして、私は二十億円程度のものを実情に応じてお金をお貸しするということは、やはり政治の一つの道だと考えておるのであります。
  142. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほどもちょっと触れたように、旧地主というものの生活が一般の国民の中ではむしろ上位にある、むしろいい方にある。それならば一体戦傷病者、いまだに戦争に行って病気をしたりけがをしたりして病院に入っておるような人がある。あるいはまた沈没船舶の問題あるいは郵便年金の問題、強制疎開とかいうような問題、こういうものと旧地主の関係をどこでけじめをつけ、どこで区別されるのですか。
  143. 池田勇人

    ○池田国務大臣 別に区別するとか区別せぬとかいう問題ではございません。われわれはそういう問題がまだたくさん残っているということは承知いたしておるのであります。
  144. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういうことになりますと、国民金融公庫法の一部改正というものは、旧地主に限って特別な融資をするということをなさるということは、今の答弁の趣旨と反する、矛盾する、その矛盾はどういうふうに解決されようとしておるのか。
  145. 池田勇人

    ○池田国務大臣 矛盾はいたしません。いろいろな問題がございまするが、旧地主の方々の実情を調査してみますと、お気の毒な点もありますので、多数の地主のうちで、生業資金その他にお困りの方につきましては、ごく低額の融資を個々の問題を審査して出すということは、私は政治的に適当な措置と考えて御審議願うことにいたしたのであります。
  146. 石田宥全

    石田(宥)委員 海外引揚者の資産に対する補償の問題というものも今起こっておるわけでありますが、そういうものをすべて国民金融公庫法の精神に基づいて、すべてに均霑をさせるというならわかるけれども、農地被買収者という特定の者に、これは自民党の一部であるから、そういう自民党の一部の者であるがゆえに特別に融資をしなければならないということであるとするならば、これは自民党の堕落これよりはなはだしきはないといわなければならない。一体どうその点を区別してお考えになっておるのですか。
  147. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外地からの引揚者につきましては、四年前に五百億円の交付公債の措置をいたしました。地主の方々につきましては、何らそういうことはいたしておりません。百数十万人の旧農地被買収者に対しまして、私は今の状態からいって、三十億円程度の生業資金を個々の事態に応じてお貸しするということは、政治として適当なことだと考えて御審議願っておるのであります。
  148. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう同じようなものが非常に多いのでありまして、それを区別して取り扱うということは、私は公平の原則を欠くものであって、これは許さるべきではないと考えるのでありますが、この点は時間の都合もございますから、この程度にいたしておきます。  総理は、先ほど来私が指摘をいたしておりますように、農業人口はどんどん減っていく、そしてまた農地を守ろうという施策も行なわれておらない。あらゆる施策がまだ農業、農村の人口をどんどんと追い出そうとする政策をとられているが、たとえば構造改善事業を見てもその通りでありますし、昨年、総理は農業近代化資金というものによって、農業の構造を改善していくためにこれは使ってもらうのだということでありましたが、実はこの近代化資金というものは、私は見せる金であって貸す金ではないと指摘しておった。ところが最近は全くその通りになっている。個人で二百万円、共同する場合一千万円、あるいは農協がやる場合には二千万円貸付できるということになっているけれども、実態を調べてみると、五万円か十万円の農業改良資金の肩がわり程度にみんな使われておって、構造改善には何の役にも立つものではない。ことに政府はちゃんとそこに意を用いまして、そして農村の中流農家以上のものでなければ貸さない、年所得四十万円以上のものでないと貸さないということを指示している。一体それではそれ以下のものはどうなるのか、まだ積極的な農民の切り捨て政策がここに行なわれているわけですね。一体そういう年所得四十万円以上のものでなければ、中流以上のものでなければ、政府のその資金すらも借り受けることができないとするならば、農民というものは将来のどこに希望を持ち、どこに夢を持って農業に従事することができるか。池田さんは昨年の基本審議にあたって、私が農民を苦しめるようないろいろな施策ばかりやっているじゃないかといって五、六点例をあげたところが、それはかわいい子には旅をさせるのだと、こうおっしゃった。それで大体の総理大臣の腹は読めたのでありますけれども、しかし旅には夢があるし、希望がある。ところが今の日本の農民には夢もなければ希望もないですね。夢も希望も持てない、日暮れの山入りのような姿である。それをやっているのはこの池田さんの農政なんだ。それをお手伝いされているのが河野さんだ。一体こういうふうな状態がいつまで続くのか、二町五反で百万戸の農家を作るのだということを示された数字で。ところが二町五反歩でやっていけないということははっきりしている。きのうの参考人はこう言っている。三町や四町ではどうにもならない、十町歩以上でなければこれは経済的にペイしないということをちゃんと言っている。一体二町五反で自立経営農家を育成するなどという方針は今後もおとりになる方針ですかどうですか。
  149. 河野一郎

    河野国務大臣 たびたび総理の答弁を妨害いたしまして相済みませんが、石田さんが御質問なさるのに、一方的なお尋ねをなさいまして、総理が答弁されるのに困られるように御質問いただくものですから、一応注釈を加えて、その上で答弁願わぬと工合が悪いという意味で私は申し上げるのであります。たとえば今の御質問でも、年収四十万円以上でなければ貸さぬじゃないか——四十万円以上でなければ貸さぬ場合は、二百万円以上借りる場合には四十万円以上という条件があるのでございまして、二百万円以下百万円前後ならば、そういう条件はないのでございます。やはり公平の原則に立って、一つ公平にものをお取り上げいただきませんと、一部分を取り上げ御質問いただくと非常に誤解が起こりますから、私から実情を訂正させていただきたいと思うのであります。  なおまた、何もやらぬじゃないかということでございますけれども、昨年農基法を御説明申し上げた当時と違いまして、今日では、すでに成立いたしました明年度予算の中にも構造改善事業、たとえば近代化資金にいたしましても、金利の引き下げ等当時に比べて相当に改善をいたしておりますことは御承知通りであります。われわれはこれで満足しておるのではございません。将来に向かって十分に農民諸君の期待にこたえて、そして農民諸君がみずから自立経営農家をできるように十分育成して参りたい。それにこたえて農民諸君が十分立ち上がっていただくことができるようにいたしたいと思っておるのでございまして、決して日暮れて山入りということじゃない。夜が明けてこれから里へ出る農業でございますから、御承知いただきたいと思います。
  150. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも代理答弁が多くてはなはだおもしろくないのでありますけれども、最後に総理に伺いますが、総理は昨年来農村は民族の苗しろだということをしばしば繰り返していらっしゃる。今国会においてもそのことを言っておられる。なるほどそういう面は確かにあります。総理もよく御記憶だと思うのでありますが、最近の新聞でも明らかでありますように、昨年の高等学校、中学校の卒業生百三十万人のうち農家に残ったのは七万六千人程度で、わずかに六%程度、あとは全部他産業に従事しておる。まことに農村の苗しろぶりが明らかです。一体百三十万人の高等学校、中学校卒業生を作ったものはだれか、これは農民です。農民の負担によってはぐくみ育てたこの若い労働力を、ことごとく他産業に低賃金で提供しなければならないこの政治というものを私どもは黙って見ておるわけにはいかないのです。農民は苗しろを大切にいたしまして、苗しろ田は一年作付を休みます。これは総理にはおわかりにならぬかもしれぬけれども、それほど苗しろというものは大切にしておるのに、その苗しろである農村を先ほどから私が指摘いたしまするように、農村の青年には何の夢も希望も与えることのできないような農政がこれ以上続けられてはならない。どこかでけじめをつけて、農業で生活していこうと青年が期待を持ち、希望を持って農業に従事することのできるような農政考えなければならない重大な時期であると思うのでありますが、総理大臣の所見を伺いたいと思います。
  151. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農村の大事なことはお話しの通りでございます。苗しろは大事だから苗しろ田は一年休むとおっしゃるが、これは東北地方でございまして、今はだんだん減っております。苗しろだから一年休まなければならぬことはありません。関西地方はない。東北の一部で、だんだんと減っていっておりますというわけでございまして、苗しろは大事でございます。しこうして、百三十万人の学校卒業生が農村にあまり残らないということをわれわれ考えますから、そういう状態を私はもう前から予想しておりますから、早く農業基本法を制定してりっぱな農村を作り上げよう。農地法につきましても、農業協同組合法改正も早くやってりっぱな農村を早く育て上げようということがわれわれの念願であるのであります。
  152. 石田宥全

    石田(宥)委員 それは全く空理空論というべきものであって、どんどんと首切りばかりし続けて、さらに融資の関係でも首切りをやる。農地法改正されるとまた急速に首切りが進む。一体どこへ落ちつけようとされるのかということです。二町五反級の農家を百万戸作るのだということを昨年はおっしゃったけれども、できやしないじゃないですか。一体そういう措置を何を一つやっておるか。これは農業というものは企業として育てるのだということをおっしゃるけれども、企業として考えるならば、これは資金の規模と並行する問題、ところが資金については一体どういうお考えがあるか。去年の春の周東農林大臣は、三分五厘で三十年年賦くらいの金融措置を作りたい、こう言った。総理大臣は二分五厘くらいで三十年年賦くらいの資金を一つ作る、こうおっしゃった。一体一年たった今日どの程度具体的になっておるか。そういう点が少しも具体的になっておらないじゃないですか。この金融の問題一つでも……。もう一つは、農業基本法の十六条で農地の共同相続人の部分を全部一人で相続できるようにする、そうでないと全部分散してしまうから、こう言う。なるほど理屈としてはその通りです。けれども、これは法律上どういう措置をされようとするのか、むしろ分散させるためにそういう法律上の措置を意識的にやらないのではないかとすら考えられるのであるが、どうですかこの点。二点を一つ伺いたいと思います。
  153. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業につきましていろいろな施策がぐずぐずしておるじゃないか、これはお話しの通りに、なかなか直ちにこういう農業のような自然的条件に左右される産業は、すぐ手の平を返すようにできるものではございません。で、私は農業金融の問題にしましても、農林漁業金融公庫で固定できるもの、また農業の近代化につきましての予算を組むこと、こういう根本のことはやりますが、そのお金の貸し方につきまして、今言ったように四十万円以上の所得でなければ貸さぬとか、こういうことにつきましては農林大臣でお答え願うよりほかにない。総理大臣は、全体の立て方をどうするかということについては私はあれします。従いまして、今後の農業の状況を見まして、こういう原始産業的なものはできるだけ長期で安くなければなりません。そういうふうに向かって進むべきだと思います。今後それを努力していきたい。  また、農地の相続関係につきましては、憲法問題その他いろいろな点がございますので、今失態調査をしようというので調査中でございます。これを分散させようという気持で調査を延ばしておるとかなんとかいうわけではございません。われわれは憲法の範囲内においてどういうことができるか、そのことをやるためにはどういう実態になっておるかということをただいま調査いたしておるのであります。
  154. 石田宥全

    石田(宥)委員 私もそんな簡単にできるとは思わないけれども、しかし金融措置などはやろうと思えばことしの予算からつくのです。できるのです。これは農林大臣の所管であるかもしれないし、大蔵大臣の所管であるかもしれないけれども、総理大臣みずから発言されたから私は言っておる。みずから自分が言ったことに対してあと何も——そのときだけの答弁では、全く誠意のない答弁と言わねばならぬ。そうじゃない。あなたが言ったから、言ったことをどうするのですか、こう言うのです。だから、その相続の問題は今検討中だと言うけれども基本法を出すときに十分調査検討を加えた上で基本法で書かれたのでしょう。それをまだこれから調査研究じゃ日が暮れてしまう。そういう無責任な答弁ではしようがないですよ。今度ははっきりした、あとで責任を負える答弁をして下さい。
  155. 池田勇人

    ○池田国務大臣 金の貸し方、金利等につきましてこれは実態を見てやらなければならぬ……。
  156. 石田宥全

    石田(宥)委員 実態はわかっておるのです。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 まだ実態が十分でき上がっておりません。農業基本法に基づきます今の二町五反、三町の農家、そして選択的拡大等々が実際に行なわれていない。だから、理想といたしましては長年月のごく低金利でいくのが理想である。われわれはそういうふうに向かって進みます、こう言うのです。三十七年度から二分五厘で三十五年という約束はしておりません。農業というような原始産業につきましての金利は長期、そして低利を欲する、こういうことを言っておる。できれば、そうでしょう。できれば二分五厘でもけっこうです、こういうことをやるべきだ、私はただその考え方を言っておるだけてございます。  それからまた、農地の相続問題につきましては、農業基本法を作りますときにも、ばく然と書いて研究すると言っておるのでございます。これをどうこうするということは結論を出していない。その結論を出すべく今調査を進めておるのであります。
  158. 河野一郎

    河野国務大臣 補足してお答えいたします。  先ほども申し上げました通りに、現在組合金融がございまして、六分前後の運用があるわけでございますので、これに障害を受けまして、六分五厘ということで明年度はわれわれはがまんをせざるを得なかった。できれば五分よりもっと低くするように考えましたけれども。そこで先般来お答え申し上げておりますように、明年度におきましては、この組合金融の問題をまず第一に考慮をして、できればこれを抜本的に改正して、農村金融の低利を期したい、少なくとも明年度の予算編成までにはその道を講ずるようにいたしたいということをたびたび私お答え申し上げておるのは、わが池田内閣の政策でございますから、それで総理も少しも私の考えと違っておられぬと思います。御了承をいただきたい。三分五厘、二分五厘と申しましても、何分今の六分の組合金融がございましては、それ以下に金融の方法がございません。従って多額の金を、今申しますように近代化資金として融通いたします場合には、抜本的に農村金融の問題を解決いたさなければならぬのでございますから、それまでしばらく御猶予をいただきたいと申しておるのでございます。  また相続の問題につきましては、これも憲法上の問題もございますが、また農村の実態がどうなっておるかということが非常に問題でございますので、明年度予算にわずかな金額でございますが、予算措置を講じまして、農村の、実情を調査して、その調査の結果等を待ってこれに対処するということでございますから、さよう御承知いただきたいと思います。
  159. 石田宥全

    石田(宥)委員 総理大臣というと、国民全体が総理大臣の言明されたことは政治の上に現われてくると実は期待をしておるのでありますが、総理大臣みずからが発言されたことに対して、きょうの答弁でははなはだあいまいになっておるのであります。ここには問題があるわけでありますが、また別の機会に譲ることにいたしまして、同僚議員にさらに御質問を願うことにいたしまして、私の質問は以上で終わります。
  160. 野原正勝

    野原委員長 東海林稔君。
  161. 東海林稔

    ○東海林委員 私もぜひ総理大臣の所信を伺いたいと思うような点だけ数点限ってお尋ねいたしますので、農林大臣でなく、総理大臣みずから御答弁いただくことを前もってお願いいたしておきます。  ただいま議題になっております農地法農協法改正は、御承知のように農業基本法関連する法案でございますので、私もまず基本法実施以来の過去一ヵ年の実績にかんがみて、今でも池田総理は、農基法制定当時に考えたように、この農基法が今後の日本の農民をしあわせにし、他産業従事者と同じような生活を営むことができるための法律である、このように確信を持って考えておられるかどうか、この点を伺いたいと思うわけです。御承知のように基本法の内容では、一つ選択的拡大一つは構造改善ということになっておるわけでありますが、まず農民は政府選択的拡大で、畜産をやれば今後は一番いいだろうというような声に応じまして、手っとり早い養豚に飛びついたのは御承知通りであります。しかし今日における養豚業者の経営がどうであるかという点は、ただいまもお話がありましたように、結局はえさ屋のえさになったということでございまして、手間賃もとれない。このことは、われわれが農業基本法論議の際に、農業資材の価格あるいは農産物についての価格制度を確立しなければならぬという論議をいたした点で、すでに指摘したのでありますが、そういうような結果がすでにはっきり欠陥として出ておるのであります。私ども農村に行くと、やはり東海林さん、政府の言う通りにやったのでは農業は損するばかりだ、反対をやった方が損は少ない、こういうことを今言っております。また一面構造改善の面におきまして、当時総理は、他産業が今後大いに発展していくのだから、そちらの方に農民が移っていけば、農業をやっておるのに劣らざるところの生活が保証されるのだというようなことを言われたわけでございますが、しかし池田内閣の表看板でありました高度経済成長政策は、御承知のように、国際収支の悪化あるいは物価の高騰ということで行き詰まって、現在これを大きく調整しなければならない段階にきておるわけであります。農民としては、当時他産業にいけばある程度生活が向上するのではないかというような望みを持っていった人もありますし、また今後そういう望みを持っていこうとしておった農民も、最近の実情からしまして、これでは一体農業をやめてよそへいっても、今よりよくなることはちっとも保証されないのではないかというような点に大きな疑問を持つに至っておるわけであります。一言でこれを申しますならば、現在の農村は農にとどまるも前途に何ら明るい希望が持てないが、というて、他産業に転業をしても生活が保証されるということについてちっとも確信を持てないままに、混迷をきわめておるというのが実情であるといわざるを得ないと思うわけです。池田総理は、経済政策の失敗は、政府の政策が悪いのではなくて、民間の設備投資の行き過ぎにその大きい責任があるというふうに言われております。また最近では、物価の上昇は国民全体の責任であるというようなお話をされて、非常に問題を惹起しておるのでありますが、ここで私がお尋ねをしたいのは、このような過去一年の農業基本法の実績からして、今でも農業基本法方向というものは間違いないものである、このような確信を持っておられるかどうかという点と、もしそうであるとするならば、現在の農民のこの混迷状態、こういうような実情を招来したところの責任は一体どこにあるのか、だれにあるのか、この点についての池田総理の見解をまずお伺いしたいと思います。
  162. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業基本法に盛られた考え方は間違いないと確信いたしております。そうして農村の子弟その他が混迷をしておるというお話でございますが、三、四年前の農村の次男、三男をどうしようかというあの陰うつなことと、今のように他へ伸びていき、同時に農村も守ろうというこの雰囲気とは、私はよほどよくなったと考えておるのであります。
  163. 東海林稔

    ○東海林委員 池田首相は、ただいま次三男問題に限ってこの農村の実情を判断されるようなお話でございましたが、確かに若い学校出たての青年たちが他に転業することについての機会は、ある程度増大したことは私も認めるわけです。しかし基本法では、そうでなしに、農家人口を大きく他に移していく、従って従来農業をやっておった者も他に転業する機会が大きくできるのだ、そういうことによっての構造改善を実現するのだ、こういう説明であったと思うのでありますが、そういう点について、もう少しはっきり御説明を願いたいと思います。
  164. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは多種多様でございまして、もう御存じの通り、専業農家、第一種兼業、第二種兼業、こうなって、六百万戸といいますか五百五十万戸といいますか、専業農家と第一種兼業、第二種兼業の構成部分をごらんになっても、移り変わりはおわかりになると思うのであります。次男坊、三男坊の問題はもう解消し、今では長男の問題もこうなりつつあることは御承知通りでございます。そこで早く農業基本法の精神を具体化し、そしてりっぱな農業を立てるようにしていくことが目下の急務であると私は考えておるのであります。
  165. 東海林稔

    ○東海林委員 次に移りまして、農地法関係でお伺いしたいのでありますが、御承知のように、現有の農地法は、終戦後わが国の民主革命の基礎をなした農地改革の根拠法でありました自作農創設特別措置法並びに農地調整法その他関係政令等を一本化しまして、講和会議成立後の新しい情勢に即応するための立法として、今日まで農地改革の成果を維持、発展させるということをおもなる役割としてきたと思うのでございます。私どもは、この農地改革の成果につきましては、あの終戦直後の日本の混乱した状態において、民心を安定させる上において、また農業生産力を発展させ、日本の農村の民主化を促進する上において大きな役割を果たしたものと、これを高く評価しているわけでございますが、最近旧地主を初め一部の中には、あの農地改革は、占領軍に押しつけられた非常に行き過ぎた改革であった、(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうような意見もぼつぼつ出てきているように思うわけでございますが、この点はきわめて重大でございます。ただいまも自民党の席からその通りというようなやじがございましたが、この点はきわめて重大でございますので、総理大臣として、またただいま自民党員の中からそういうやじが出たということについて、総裁という立場においても、池田さんのこの点に対する評価を、一つはっきりしていただきたいと思います。
  166. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地改革が耕作者の地位を安定し、そうして労働力に対しての適正な報酬を与える、しかもそれが日本の民主化の助長に稗益し、ひいて日本経済の今日の発展を来たしたもとをなしているということは、われわれ日本人のみならず、世界各国が認めておるところです。しかもまた、この農地改革というのは、後進国でこれにならってやっているところが多いのであります。私は、この農地改革の効果は非常に高く評価しておるのであります。しこうして、それはいろいろな議論はございましょう。その農地改革自体はいいけれども、農地改革のやり方につきましての具体的問題についてのいろいろな批判はありましょう。これは各人各様でございます。しかし、農地改革がいいか悪いかという問題につきましては、私は日本のために非常によかったということは申し上げられると思います。
  167. 東海林稔

    ○東海林委員 農地改革の成果の評価を非常に高くされておるという点については、私もまことにけっこうだと思うのですが、ただ、やり方については各人各様の見解がある、こういうことでございましたが、池田総理は、農地改革のやり方についてはどのようなお考えを持っておりますか、その点を重ねてお伺いします。
  168. 池田勇人

    ○池田国務大臣 もう既成事実とし、また、最高裁判所の判決もこれを認めておるのでございます。私はこのやり方につきまして、今悪かったから変えようという気持は毛頭ございません。
  169. 東海林稔

    ○東海林委員 このように池田さんみずから農地改革の成果を高く評価し、そのやり方も悪かったとは別に考えておらぬ、こういうようなことでございまするから、そういたしますと、この成果を維持、発展させるための農地法というものについては、政府として十分これを順守、励行するという責任を持たなければならないし、そういう熱意を持たなければならぬというふうに私は考えるわけでございます。ところがここ数年来の農地法の順守状況を見ますると、はなはだ遺憾ながら、これが違反事件も非常に多いのであります。これまでの審議の過程においても、たとえば不法な農地の転用の問題であるとか、あるいはやみ小作料の問題であるとか、あるいは地主が最近になって農地取り上げを強行しようとしているような事犯がたくさんあるということが論議されておるわけでございます。まことに遺憾でありますが、これに対する政府の指導監督といいますか、順守、励行に対する熱意というものが私どもにはさっぱり見受けられないのでございます。また同時に、農地法の積極部面でありまする国土を高度に利用するという見地からしまして、農用地としての適地は、これを公共な立場に立って、かりに所有者において異論があろうとも、これを買収することができるという農地法の規定は、厳然として存するのでありまするが、しかし実際面においては、年々これに必要な予算が削減される等によって、この条項は空文化しておるように私どもには見受けられるのであります。こういうふうに、私どもから見まするならば、政府当局のこの農地法の順守、励行ということについては非常に欠ける点があるように思うのでありまするが、この点について総理はどのように考えておられるか、所見を伺いたいと思います。
  170. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地改革につきましては、これが日本経済発展、また民主主義の育成、そして耕作者の利益保護など、非常に高く評価しております。しかしその結果として起こった問題についての処置につきましては、私は何もしないという意味じゃございません。今言ったように、国民金融公庫で被買収者のお気の毒な点を助けるとか、いろいろな点につきまして、われわれは国全体として考慮しなければならぬ。これは農地改革のいい悪いという問題とは違った範疇で考慮すべき問題と思います。  それから農地法につきまして、その精神を尊重しないということでございますが、われわれは法律を守っていっております。しこうして、その農地法の規定と現に置かれた日本の状態から、これを改正するものは改正していくのが政治の進路であると思います。精神を非常に没却した措置がとられた、こういうお話でございますが、具体的の問題につきましては農林大臣からお聞きいただきたいと思います。
  171. 東海林稔

    ○東海林委員 私が今伺ったのは、農地法の順守、励行という点がこのごろ非常に乱れておる。それについては政府の指導監督という点についてきわめて不十分な点があるようにわれわれは考えるが、それについて総理大臣としてはどのように考えておるか、これはやむを得ない最近の情勢だというふうに考えておるのか、そういう点に責任を感じて、今後は十分そういう点について監督指導する、こういうお考えなのか、その点を承りたいと思うのであります。
  172. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地法その他関係法令を農林省は適正に運営しておられると考えております。具体的の問題で、こういう問題は農地法の精神に反するという問題がありますれば、農林大臣に御質問いただきたいと思います。
  173. 東海林稔

    ○東海林委員 総理の時間の関係があるそうですから、農林大臣にあとでお伺いすることにいたしまして、次に進みたいと思います。  次にお伺いしたいことは、この農地改革の基本的な精神ですが、これは確かに今度の農地法改正の提案理由を見ましても、農地改革の実施当時と現在とはいろいろ情勢が違っているから、それに即応するような改正をするのだ、こういうことをいわれておるのでありまして、その限りにおいてはわれわれとしても異論がないわけでございます。しかし今度の改正の具体的な内容を見ますると、共同経営のために法人に対して新たに農地の取得を認める、こういう点は、わが党もこれと同じような考えから農業生産組合法案等を出しておるのでありまして、こういう点は確かに農業の近代化に即応する適当な方策だ、このように考えられるのでありますが、その他の点はいずれもほとんど農業の進歩、近代化というような方向とは無縁でございまして、むしろ農村の民主化に逆行するような反動的な改正点であるというふうに私ども考えるわけです。その具体的なことについて今首相と論争するというつもりはもちろんないのでありますが、私は、このように農村情勢が変わった場合に、農地法についてある程度の修正をしなければならぬというような場合においても、あくまでも農地改革の基本精神はくずさない、こういう考え方、こういう態度をもってやはり改正する場合には処置しなければならぬのじゃないか、こう思うのでございます。また今後におきましても、やはりこの農地改革の基本的な精神を堅持するという意味において、農地法の中心的な考え方はそうでなければならぬというふうに考えるのでありまするが、この農地法基本的な精神はくずすべきでないということについての私の見解について、首相はどのようにお考えでございまするか、この点を伺いたいと思います。
  174. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地法基本的精神はくずしていないと思っております。今の農業法人にいたしましても、みんなが一緒になってやる、そしてその過半数を自作農の人がやる、また自作農の人が所有し得る面積の制限等も緩和するということは、農業の近代化に即するようにその人が大規模の経営が自作農としてできるような状況を見てからこれを許そうとしておるのでありますから、農地法の精神は私は変えていないと考えます。
  175. 東海林稔

    ○東海林委員 一つ今度の改正点で非常に重要な点になっている信託制度という問題があるわけでありますが、国が農地の流動化を農業基本法考え方に従って具体化する、こういう考え方に立つならば、政府が責任を持って全国一律にこれが実施できるような制度を考えるのが適当ではないか、こう思うわけです。少しくこまかくなって恐縮でありますが、ところが今度のこの法案を見ますと、そういうことではなしに農業協同組合にやらせる。農業協同組合にやらせるのでありますから、法律の面におきましてもこれを強制するというのではなしに農業協同組合がやることができるという形でございます。従ってそれをやるかやらぬかということは農業協同組合の自主的な立場で決定される、こういうことになります。そういたしますと、昨日も参考人との間に意見を交換したのでありますが、空白ができるということは当然だと思うわけです。こういうようなことは基本法で農地の流動化を実現するというふうな考え方に基づいてこれを具体化するということであれば、これはきわめて適切なやり方ではないのじゃないか、国が責任を持たないのじゃないか、こういう感じがするわけでありますが、この点についての首相の御見解を承りたい。
  176. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地の信託制度を創設し、農協がこれをやるということは、農業の近代化、規模の適正化ということから考えられることでございます。この制度を認めましてどういうふうな状況になっていくかということは今後をやっぱり見なければいかぬと思います。今われわれが考えられることは法律でありまして、これを強制するのでも何でもなしに話し合いでいこう、しかし実際がどういうふうに行なわれるかによってこの問題も将来考えなければならぬ問題だと思います。
  177. 東海林稔

    ○東海林委員 今の御答弁のように、実効があるかないかについては今後の実際の運用の結果に待たなければならないというようなきわめて自信のないようなこの点でございますが、しかもこういう制度を設けることによって生じてくる悪い面が非常にはっきりいたしているわけです。というのは、形の上であって、昔の地主制度とは違うというふうな御意見政府は持っておられるようでありますが、しかしここに今まで農地法になかった不在地主というような形が出てきておるわけです。このことが旧地主に対して一つの大きな元気を与え、これを基礎にして農地補償の根拠を求めようとするような動きも出ているわけでございます。そういう実際的な効果があまりないような改正をやって、しかも明らかにそこに大きな弊害が出てくるようなこういう改正は慎しまなければならないと思うわけでありますが、そういう点についてはいかがでございましょうか。
  178. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業の近代化の場合において、しかもその土地を自分がやっぱり持っておりたいというふうなことはあり得ると思います。よそへ行ってほかの仕事につく、自分の土地は放したくない、今まで作っておった分もある、こういう点からいって私は信託制度は必要だと思う。これによって悪い結果が起こるからこの信託制度は絶対にいかぬ、こういうふうな一本筋な考え方は、これからの農業を育成していく上におきまして、そういう悪い面のことばかりを考えて新しい方向への前進を妨げることはよくないと考えます。
  179. 東海林稔

    ○東海林委員 それでは最後の点に移りたいと思うのでありますが、首相が現在の農林行政の進め方についてどのような考え方を持っておるかという点でございます。なぜこんな点を質問するかと申しますと、まず私ども農業基本法審議の際に、食糧管理制度についてずいぶんと議論がございました。特に総理の出席を求めて見解をただしたところ経済企画庁で出しておるいわゆる国民所得倍増計画に書いてあるのは間違いであって、自分としては食管制度を改変する意向はないということを明言されたわけでございます。その後農林大臣がかわられまして河野大臣が登場いたしますと、いわゆる河野構想ということで、自由米を認めるという構想が打ち出されました。そこで当委員会に特にまた首相のおいでを願って、この点は農業基本法審議の際に首相が言われたことと違うじゃないかということをただしましたところ、その当時首相は次のようにお答えになりました。自分としては河野さんの構想が食管問題の基本を変えるものだとは考えない、しかし国民の多数の方が、いやそうじゃない、それは基本を変革するものであるというふうに判断されるならば、河野さんの構想はとりやめていただかなければならない、こういうようにおっしゃったことがございます。その後この問題は御承知のようにいろいろと論議がやかましくなりまして、現在、元農林大臣あるいは食糧庁長官等を顧問として審議するということで、一応たな上げになっておるわけでございます。こういう一つの経過がございました。  それから、先ほども問題になりました農地補償の問題についてでございますが、これは政府もしばしば、農地の補償はしない、最高裁の判決も出ておることであるからしないということをはっきりお答えになったわけでございます。昨年十月二十五日の参議院の決算委員会におきまして、補償問題について河野さんの考え方として新聞に出た記事が問題になったということで北村委員質問したのに対して、池田総理はこのように言われております。間違うと悪いですから速記録をちょっと読みますが、「農地改革に対しまする事柄は、私は初めから関与いたしております。昭和二十八年の最高裁の判決も存じております。そしてこの問題につきましては、ただいままでお答えした通りでございます。で、農林大臣がどういう気持を持っておられるか、私はこの問題について特に聞いたことはございませんが、農林大臣だって、政府方針はよく御存じだと思います。」このように答えております。ところが今年の二月の六日目に当委員会におきまして、自民党の丹羽委員がやはりこの点が問題になっておるからということで河野農林大臣の所信をただしましたところ、次のように答えております。これも間違うと困りますので速記録を読みます。「ただいま丹羽さんのお述べになりました点につきましては、多少新聞等に主観がありまして私の真意と違った表現が出ておったことも事実でございます。しかし私は、終始一貫少しも私の考え方は変えていないのであります。どう変えていないかと申しますると、今提案されておりまする二つの法案は少なくとも農地解放当時のあり方と違ったものが出てきておる。たとえばそれが一反歩であろうが三反歩であろうが、出征とか都心に在勤するとかいうようなことであっても不在地主として所有を認められなかったものが、今度はその道を開くようになった。時勢の変化とはいいながら現実はその通りである。従ってこれをどう扱うかということは政治的に一応考慮の段階にあると私は考えます。ただしそれは補償すべきものか補償すべからざるものか、これをそのままにしていくべきものが何らかの処置を講ずるかということは、わが与党並びに政府によって基本的なものが決定さるべきものである。その決定に従って私は善処いたします。こう私は述べております。その考えは今も変わっておりません。」こう言われておるのであります。ここでは、繰り返して言いますが、補償すべきものか補償すべからざるものか、これをそのままにしていくべきものか何らかの処置を講ずるかということは、今後の問題だ、政府は補償はしないということをたびたび言って、先ほど読みましたように総理も、補償はしないんだ、これはきまったことだとおっしゃっている。ところ河野さんはすべきものかしないか、確かに補償するとも言っていませんが、補償しないとは言っていないのです。これは非常に重大な食い違いであると私は思うわけでございます。先ほど指摘しましたように、食管法の改正につきましても、総理と河野さんとの間には見解が違うようでございますが、この補償の問題についても明らかに私は違うと言わざるを得ないと思うのです。河野さんは農政についての深い識見を持っておられます。農林大臣になった以上、自分の考え方農政の上に反映したいという御努力をされるということは当然だと考えます。しかし政府が国民にしばしば約束し、政府の既定方針としてはっきりしておるというようなことについて、自分がそれと違う見解があって、かりにこれを改正しようというならば、それに伴う慎重な態度というものがなければならぬと私は思うわけです。それでないと、いたずらにこういうふうな問題を惹起して、その結果としては農民も非常に迷う、こういうことになると思います。また、これは首相と農相の見解の相違ではないかもしれませんが、肥料の二法案等につきましても、国会前におきましては、国会に対して成立を期するのだというようなことをいわれておりまして、これまた農村に対して大きい反響を及ぼしたのでありますが、現在のところまだ出ておらない、こういうような状態でございます。私は、このように、卒直に申しまして、何か池田総理の考えておられること、政府の従来考えておられたことと現在河野大臣考えておられることの中には、相当大きい差があるのじゃないかということを感ぜざるを得ないのでございます。内閣を統率される池田総理として、このような河野さんの農林大臣としてのやり方についてどのように考えておられるか、この点を一つ伺いたいと思います。
  180. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農地被買収者に対しまして、補償をするということにつきましては、歴代内閣はこれを否定しております。補償すると約束はいたしておりません。補償をしないということを言っております。これは御質問に対して、その当局としての意見でございます。しこうして、最近に至りまして、新聞でごらんの通りいろいろ問題が起こっております。で、農地補償の問題は各人各様に答弁しておると思います。これは非常な重大な問題でございます。党におきましても、いろいろ議論があることは私は承知いたしております。しかし、党の議論はまだ聞いておりません。正式に私のところにきておりません。私は、今までは農地の補償はしないということを言明しております。これは事実でございます。また人によりましては、考えなければならぬだろうというお答えをした人もありましょう。これが農林大臣かどうかは存じません。どういうことか、今速記をお読みになったのでございますが、その前後の情勢は知りません。しかし、これが大きい問題として出てきたことは確かでございます。そこで、今までこれが正式の問題として出ていないときに、単なる質疑応答のときの答弁に絶対にとらわれる、その後の情勢の変化は全然見ないかという問題になりますと、これは大いに政治的に考えなければならぬ問題でございます。補償という言葉のいろいろな意味もございますから、こういう問題につきまして、政府は五、六年前から、一応政府の責任としては補償をしないと答えておるのは私ばかりではない。情勢がこうなってきたときにはどうするかとういことは大きい政治問題として、内閣はもちろん、党としても十分考えなければならぬ問題でございます。これでおわかりいただけると思うのです。
  181. 東海林稔

    ○東海林委員 私は、ここで伺いたいのは、総理大臣はそれでは現在は従来の言明通り補償はしないという立場に立っておるのかどうか、それとも河野さんと同じように迷った立場に立っておるのかどうか、その点を一つはっきりしてもらいたい。
  182. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はまだ補償論者の意見、また補償にかわる報償の意見等、正式に聞いておりません。従いまして、私だけの考え方は従来と変わりございません。しかしいろんな問題が出てきまして、政治的にこれはこうあるべきだという結論は、私は党並びに各閣僚と十分討議いたしまして、そうして国民世論も見ながら進んでいくことでございます。四、五年前、またこれが大きい問題にならぬときに言った言葉にあくまでとらわれるというようなかたくなな措置はいたさない。やはりそのときの情勢によって国民の世論あるいは同僚閣僚の意見も十分聞いて措置することが政治家としての建前だと考えております。
  183. 東海林稔

    ○東海林委員 今の段階においては補償は総理大臣としては考えておらぬという明言については満足するものでございます。  そこで私は、希望を申し上げたいのでありますが、いろいろな政策について政治家である自民党の皆さんに御意見がある、あるいは農林大臣としてもいろいろ御意見がある、これは当然だと思います。しかし農林大臣あるいは総理大臣という資格において発言される場合においては、少なくとも、総理大臣農林大臣との考え方が違って農民がその判断に迷う、こういうようなことのないように、そこは総理大臣は内閣の統轄者としてはっきり責任を今後持っていただきたい、このことをお願いしまして、私の質問を終わります。
  184. 野原正勝

    野原委員長 玉置一徳君。
  185. 玉置一徳

    ○玉置委員 私は農業協同組合法並びに農地法の一部を改正する法律案の提案に関連いたしまして、総理並びに農林大臣質問をいたしたい、かように思います。  政府はさきに農業基本法を制定せられまして、日本の農村、農民の他産業所得者との所得の均衡をはかるというのでありますが、今日日本の農村は所得の均衡どころか、ますます格差が開いていっておりますことは、農林省並びにその他の報告によって御承知通りであります。これも先ほどのお話の踊り一朝一夕にいかないことも十分わかるわけでありますけれども、現有のような農政のテンポでは、私は先ほど総理もおっしゃっいましたように、人口の減少その他につきましては全くお見通し通りでありますけれども、旧態依然たる日本の農村で人口、人手はどんどん不足するというので、かえって当今は生産の阻害を来たしておるという断層すら見得られるのではないか、こういうふうに思うわけです。そこで総理にお伺いいたしたいのは、このように農村人口が減って参ります。これに見合うような農業の近代化と経営の合理化ということを急速に進めてやらなければ、先ほど私が申しましたような問題が起こってくるのではないか、かように思いますが、先ほども私が申しましたように、一朝一夕にいく話でないということもわかりますけれども、テンポが少しゆるいと言わざるを得ないのじゃないか、かように思いますので、これに対する総理の御意見及びそれだけの熱意をお持ちいただいておるかどうかということをお答えいただきたいと思います。
  186. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の通りだと思います。とにかく農業関係というものについても、私は日本人全体の認識が今まで足りなかった。私が半分くらいになりますよと言ったときには、びっくりして、首切り論だといわれて非常に非難されたのですが、一年か一年半足らずにおいて、十年後は池田の言う通りになるのじゃないか、そうなってきた。そうして今度はずっとやってみると、やらなければいかぬ、やらなければいかぬと言いながらテンポがおくれている。片一方は非常に早過ぎる、片一方はおそ過ぎる、こういうことは、あなたのおっしゃる通り、われわれといたしましては行き過ぎの第二次、第三次産業を押えると同時に、第一次産業につきましてはもっと積極的にやらなければいかぬ、こういう気持でおるのであります。
  187. 玉置一徳

    ○玉置委員 ただいまお答えの通り一つ積極的に農政のテンポを裏づけられるようにお進めをいただきたい、かように思います。  そこで、こうした問題を片づけて参りますのには、農業基本法で説明されておりますように、経営規模の適正化がまず第一であり、それにつきまして大圃場主義による土地改良を実施しまして、農業の機械化、近代化を次にはかる、その次にそれに必要な資金を十分に与えてあげる、この三つがそろわないといかぬと思うのですが、政策面にわたりますので農林大臣にお伺いすることにいたしまして、総理にお伺いいたしたいのは、その前提となります土地の騰貴が、これはただに農業だけの問題ではなく、産業全般に非常な悪影響をもたらしております。これに対して何らかの立法措置をお講じになる御意図があるかどうか、あるいは御研究されるだけの心がまえがあるかどうかをお答えいただきたいと思います。
  188. 池田勇人

    ○池田国務大臣 土地の騰貴につきましては、私は二通りの場面があると思います。市街地の宅地の騰貴、これは主としてやはり経済高度成長によりまして、事務ビルの建築が非常に多い。また会社関係の社用の建築が都内でも非常に多い。個人で家を建てられるという人はほとんどない。これは住宅金融公庫その他の政府あるいは地方関係のもの、これが非常に多い。第三には、今の事務ビルあるいは社用の社宅、そうしてもう一つは、健康保険によります厚生施設、これがやはり会社の関係で一番多い。それから農地関係の方につきましては、これはやはり設備の増強によりまして、工場の地方分散から工場への転換によるもの、それとまた別荘地等におきましては社用関係、こういうふうに一般の個人のささやかな住宅のための騰貴というものが割に少ない。私はこういう点を考えなければならぬというので、先般の物価対策にも社用の方を慎んでもらいたいということを言ったわけであります。  今御質問の点がもし農地の問題だとすれば、昨年の九月から農林大臣に頼みまして、農地の転用につきましては、極力押えるようにいたしておるのであります。これは農地の地価ということもさることながら、片一方では工場の過剰設備投資という、この二面からきて、これを押えておるのでございます。ただ、これから大都市の疎開とか、あるいは五十万都市、百万都市の建設とか、こういう見越しで、ある程度上がることはやむを得ないと思いますが、政策といたしましては、極力これを押えていく次第でございます。
  189. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで河野農林大臣にお伺いいたしたいのでありますが、現在提案されております農地の信託制度でありますけれども、これは経営の適正化をはかるための一助としておやりなすったと思います。私が想像いたしますのには、この案をお考えなすったときと違いまして、すでに現在では、こういうことをお願いにくるところは、おそらく人手不足になりまして、どこももうかなわぬというところが大がい信託を委託してくるのじゃないか。これを農協が受託いたしましても、信託者の意図に基づくような有利な運用というものがほとんど不可能なところが多いんじゃないかということを心配するわけです。先ほどもお話しいたしましたように、また総理からお答えがありましたように、急速に農業の経営の適正化をはかろうと思えば、この信託制度では、すでに先ほどの石田先生のお話ではないけれども、日暮れて道遠しというような工合で、ちょっとやそっとに有効な措置を講じ得られないのじゃないか。思い切ってほんとうにそういうところをやろうというお考えならば、時価によって買い取って、それから農地の適正価格で売るというような二重価格制度をとらなければ、私はとうていこの問題を切り開き得ないのじゃないかと思います。そこで農地信託制度を施行されて、一年ほど模様を見られて、とてもこれは問題じゃないというような段階になりましたときに、二重価格制度をお考えになる用意があるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  190. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のように、たとえば数年前には法人格を持ってやるということが非常にはやりました。これを議論しておるうちに、今日ではもうそういうことを考える者はだんだん減っちゃった。信託と言い出した、やるころにはもうおそいというふうに現実はどんどん前進しております。その事実は私も了承しております。がしかし、さればと言って、今お話しのように、農地の二重価格制度をやって、そして買い上げて、これを差額をつけて売るのだということをここで打ち出したらば、どの程度の時価になるだろうということになりましたら、これは際限がないと私は思うのであります。従ってまず政府といたしましては、この信託制度によって可能な限り努力をいたしまして、そうして今後の推移を見まして、また先般来お答え申し上げております通り農業の現実に即して打つべき手は打っていかなければならぬ。これはどなたがお考えになってもその通りと思います。われわれといたしましても、農村の現状に即して、現実をなるべく忠実に親切にものを運んでいくという政治をやって参りたいと考えておる次第であります。
  191. 玉置一徳

    ○玉置委員 次に、この両法案と同じような趣旨をあれしたのでありますが、農業の近代化と経営の近代化をはかるのには、どうしても大圃場主義によるところの大土地改良をやっておかなければ交換分合も行なわれなければ、こういう信託制度もうまくいかず、ぽつぽつと点在するようなところでは、とうてい信証制度もうまくいきにくいと思うのです。そういうような意味で、思い切った構造改善をおやりになるのには、大圃場主義の土地改良をやらなければいかぬのじゃないか。きのうの参考人のお話もありましたが、私が計算したところでは、たんぼの八割、畑の五割、こうざっと計算しまして、大体今の時価にすれば四兆円近くの土地改良費が要るのじゃないかと思いますが、これを十年でやりましたら、一年に四千億円というようなことになりまして、なかなかむずかしいことになりますが、今のテンポではだめじゃないか。だからもう少し思い切ったやり方をやっていただける熱意があるかどうかお伺いしたいのと、その次に、それにつきましては、農地の移動というものをどんどんやらなければ経営の適正規模というのは行なわれないのですから、さきに予算委員会でもお伺いしたと思うのですが、思い切って土地銀行でも創設されて、それを担保にやってあげるようなお考えがないかどうか、お伺いしたいと思います。
  192. 河野一郎

    河野国務大臣 お話の通りに、交換分合が最も必要である。その他自立農家の育成、構造改善につきまして必要な問題は、他にもいろいろ私はあると思います。しかし何を申しますのにも、農村問題に対してもう少し大方の御協力、御熱意、御理解がなければ、進むことはむずかしい。たとえば今日本で道路問題が非常に強力に取り上げられております。これというのも、やはり各方面の世論の支持があって、道路の改良ができていると私は思います。農村の問題の根本的な改造、改革について各方面の御理解と御協力が生まれてきませんうちは、われわれいかに努力をいたしましても、なかなかその御理解と御協力が得にくいということだと私は思うのでございます。従って一つ大方の御協力によりまして、われわれの方も及ばずながら努力をいたしたい。それには今お話にありました通りに、不動産金融も必要でございましょう。いろいろな点で抜本的に改革しなければならぬ点が多々あるということは、私も実は人後に落ちない熱意を持っておるわけでございますので、せっかく努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  193. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで最後に簡単に一点お伺いしたいと思うのです。農林省の意図されております農業改善事業でありますが、一町村に一億数千万円、重要な価格政策をほっておいて一町村だけが封鎖経済のような意味で、幾ら投資をしても、これはやれないのだということを前に質問をし、農林大臣からもお答えをいただいたのでありますが、せっかく農林大臣としては、市場の問題その他につきまして御勉強をいただいておるわけでございますが、将来ともこの価格政策を打ち立てていただかなければならないし、ことにEECの問題とか、東南アジアの方の問題とかいうようなことを考えますと、よけいそういうふうな感じがするのですが、食管法というようなものはもう今後そういう価格体系、保障政策が完全にできるまでの間はおいらいにならないようにされる御意図があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  194. 河野一郎

    河野国務大臣 農産物価格安定がいかに重要であるか、しかしこれがまたいかにむずかしいかということも、身をもって経験いたしておるところでございます。ただ、今食管法のことについてお話ございましたが、これにつきましては、今せっかく同僚、先輩の懇談会におきまして抜本的に研究を進めていただいておりますので、その結論が出た上で考えて参りたいと思っておる次第でございます。
  195. 玉置一徳

    ○玉置委員 時間がありませんので、最後に、先刻来たびたび質疑がございました旧地主補償の問題でありますが、ただいまいろいろと御質疑をいたしましてお答えをいただきました通り、前向きにやらなければならない、費用のものすごく要るやつがいやというほどあるわけでございまして、今ごろになってから、うしろを向いて前の方に一つも進まないというようなことでは、非常に今後の農政について心配するわけです。総理は、まだ聞いてないのだというお話ですが、毎日、新聞に載っておりまして、自民党の執行部の方々は御心配になっておいでになるように新聞では伺っておるわけであります。何とぞ、こういういろいろな費用の要る、緊急に手を打たなければいかぬ施策が累積しておるわけであります。これからの農政農業基本法の精神にのっとりまして、前向きの姿勢で一つすみやかに、日本農業農業基本法の意図するような方向に進みますように、せっかく御努力をいただきたいのでありますが、これにつきまして、最後に総理の御所見をいただきたいと思います。
  196. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業基本法の精神にのっとりまして、極力前向きに進んでいきたいと考えております。農地の補償あるいは戦争に基因するものあるいは戦後の財政経済政策、その他のものにつきましての、何と申しますか次善措置につきましては、いろいろな問題がございますので、まだ結論には達しておりません。
  197. 玉置一徳

    ○玉置委員 終わります。
  198. 野原正勝

    野原委員長 芳賀貢君。  芳賀委員に申し上げます。総理大臣は五時まででどうしてもほかに参らなければなりませんので、その前に総理の御質問を願います。
  199. 芳賀貢

    芳賀委員 総理大臣にお尋ねしますが、昨年の農基法の審議の際に、総理としましては、ただいま審議中の農地法並びに農協法は農基法の重要法案と心得てぜひこれを成立させたいということを発言されましたし、また今国会においても、先日総理から与党に対しても、ぜひ農基法の関連法案は今国会で成立するようにしてもらいたいという指示を与えたわけでありますが、われわれが見ると、この農地法改正あるいは農協法改正にしても、政府や与党の諸君が宣伝するほど、それほど日本農業発展のためには重要な内容を持っておらない。特にその改正点については、むしろ改悪と考えられる諸点もあるわけですが、総理大臣としては、どのような点を強調してこの二法案の成立をはかろうとしておるか、総理大臣としての立場から御説明を願いたい。
  200. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨年、農業基本法の御審議を願います場合におきましても、こういう問題についてお答えした通りでございます。農業の経営規模の適正化、構造の近代化等々を考えまして、農業基本法関連する重要法案として、われわれ御審議を早急に願いたいということは、昨年も今も変わりございません。
  201. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、たとえば農地法改正の中で、現行の制度の改正によって耕作農家の農地の所有面積の制限を緩和する、そういうことが改正点の一つであります。これは具体的にお尋ねしますが、たとえば総理は広島県の出身でありまして、全国のことはよくわからぬと思いますが、出身地の広島県の農業事情というものはある程度おわかりと思うわけです。現在の農地法を広島県に適用した場合、一体、広島県における適用されておる農地の保有面積というものはこれは過小であるかどうか、特に自立農業を育成する場合において、この保有限度を是正する必要に迫られておる実情であるかどうか、その点はいかがですか。
  202. 池田勇人

    ○池田国務大臣 広島県の例をお出しになりましたが、私のところは——広島県にはあまり帰っておりません。農業の実態は、私は二十才までぐらいしかおりませんのでその後知りませんが、私の地方は主として畑でございます。段々畑でございます。ミカンその他をやっております。ミカンをやりますと、自家労力で三町とかいうことはとてもいけません、一町もなかなか——一町ぐらいはやっております。非常な労力を要します。しかし、一町をやりますと大へんな所得になります。広島県をもって千葉県とかあるいは北海道、東北の方も律するわけにはいかないわけであります。今、私は総理になってからは、農協のあれについてあれしておりませんが、私の友人はモデル地区的なものに行って指導しております。最近ちょいちょい聞きますと、非常に進んだ地方がある、三町では足りないというところもぼつぼつ聞いております。しこうしてこういう機運は、初めは非常にゆっくりしておりますが、もしこれがずっと行き渡りますと非常な速度でいくものです。だから、現状にばかりとらわれて施策がおくれるといかない。やはり常識的に考えて、農業の経営はこれは三町に限ったことはございませんが、その地方地方によって規模の適正化、近代化をはかる方法を講ずるような道をつけておくことが政治家と考えます。
  203. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは広島県の場合は大体どのくらいの所有面積があれば、総理が考えておる自立農家としての経営ができるのか、これは大まかな点でいいです。
  204. 池田勇人

    ○池田国務大臣 広島県は私はよく知りません。そうして広島県でも、福山地方とわれわれのような海岸地帯と全然状況が違う。ことに奥の方の比婆郡あるいは双三郡の方とは、県としてもよほど違うわけでございますから、今、広島県の状況は、先ほど申し上げましたように、もう子供のときにおったというだけでございまして、ごく近くの方は選挙区でございますから、ときどき伺いますが、もうわれわれのような島国、海岸では、十町も二十町も要る土地はないので、ほとんど段々畑でやっておるという状況でございますから、これは当てはまりません。
  205. 芳賀貢

    芳賀委員 他国に例をとるようですが、たとえば中国の周恩来首相のごときは、自分の国の農業事情というものを非常によく心得ておるし、また日本における農業の実態等もかなり勉強しておるとわれわれは認めたわけですが、総理の場合は出身地の広島のこともあまりわからぬ、選挙区の事情もわからぬということです。それではこちらから問題を提起しますが、たとえば広島県では一町六反ぐらいの所有農地があれば、これは政府考えておるような完全な自立農業の経営は可能であるかどうか、その点はいかがですか。
  206. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう経営規模の問題を総理にお聞きになるのはいかがかと思いますが、一町六反というのは作物は何でございますか。ミカンならば十分やっていけます。そうして私の村はそういってはなんでございますが、ジャガイモのなにで年に三回、四、五年前作っておりました。そういうところが一町五、六反の田畑ならば相当の収入があると思います。そうしてまた、たばこなんかにいきますと、一反五、六万ということになりますから、一町五、六反もなかなかむずかしいと思います。しかしたばこだけであっても、一反五、六万円、六、七万円の収入を上げておるところは私の村でございます。そうしますと一町五、六反ならば百万円ということになりますが、肥料その他を引きますとそうはいきません。そしてまたたばこを作りますのは、これは裏作と申しますか、片一方の作もできますから、家族の状況によりましたが、私らの地方ならば一町五、六反なら相当の収入があると私は考えております。
  207. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、一国の総理大臣であっても、中学生の社会科の勉強程度の常識は必要であると思ってこういう平易な質問を実はしておるわけです。それで現在政府考えておる農地法改正は、限度を引き上げるという必要はあまりないわけです。たとえばあなたの出身県では農家戸数は約十八万戸あります。耕作面積は十一万四千町歩、これは非常に零細であります。しかも農地法で定めてある農地法の別表による広島県の農地の保有面積の最高限度は一町六反ということになっておるが、それでは最高で抑えられておる一町六反以上の保有農家が幾らあるかというと、わずかに三千五百戸しかないわけです。全体の二%。これはもう各県ごとに全部実例になっておるのですよ。農林大臣にはあとで神奈川県のことを聞きますが、今から用意してもらいます。だから現在の農地法でさえも現行の保有限度というものを大幅に法律の定めの中に緩和するという必要はないというのがわれわれの判断であります。現在でもこれはやればやれるでしょう、政令の認めるところによって。それをあえて緩和するとか限度を取り除くというようなことは、一体その意図がどこにあるかということをわれわれは非常に心配するわけです。その点についてお考えがあれば聞かしてもらいたい。
  208. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私はそういうお考え方農業をよくするゆえんでないと思います。現状でそのままでいけばいいという考え方のようでございます。われわれはもっと規模を拡大し、そしてまた全国的に考えて、今では考えられるようなことも農業がりっぱな産業として成り立つためには必要である場合もあるのですから、そういうことを考えていろいろな措置をとるべきである。今現状はこうであるからもうそれでいいじゃないかという考え方は私は農業をかわいがるゆえんではないと考えております。
  209. 芳賀貢

    芳賀委員 現状は広島県は一戸当たりの平均保有面積は六反歩しかないのですよ。その現状でいいとはわれわれは言わない。少なくとも最高の一町六反歩まで引き上げる必要は認めます。ところがあなたの国はわずか二%しか、最高の一町六反以上の農家がないじゃないですか。これを一体どうして引き上げるか。その何らの施策というものがないし、自民党でも何らそういう具体的な考えを持っていないでしょう。ただ現存の制限面積というものが農業発展を阻害しておるから改善しなければならぬというのは、こういうばかげた現状を全く無視したような改正案を出しておるというところに問題があるから、われわれはその点を指摘しておるわけであって、あなたが現実の通りではいかないとするならば、どうしたならば農業拡大のために農地をまだまだ取得したいというような零細農家に対して農地が持てるような施策というものを講じてやらないか。制限面積だけ撤廃したところで農家は農地を持つことができないでしょう。持てるような施策というものが今回の制度改正の中においても何ら用意されていない。そこに問題があるじゃないですか。これがいわゆる池田内閣の風船玉政策であって、大きくふくらめばふくらむほど中身が全くないというようなから宣伝に終わっているわけであって、こういう点をわれわれは具体的に総理の責任において一体どうするのだ。関連法案を通せ通せといっても、風船玉だけ通してもこれは何もならぬでしょう。具体的な意見がなければないでいいですからお帰りになってもいいですが、もう少し身のある政策というものが総理の中に内蔵しておるとすればこの際せっかくの機会だから御開陳を願いたい。
  210. 池田勇人

    ○池田国務大臣 農業基本法を御審議願ったときにあなたにも十分申し上げたと思うであります。しこうして、今回の農地法改正とか農業協同組合法改正につきましては、私は農民は渇望しておると考えておるのであります。私は農業のためにいろいろな制約を除くと同時に、今後農業をよくするための積極的手段をどしどしとやっていきたいと考えております。
  211. 野原正勝

    野原委員長 総理に対する質問はこれで終わります。
  212. 芳賀貢

    芳賀委員 次に農林大臣にお尋ねしますが、第一の点は、農地法改正のその一つの問題点である農業生産法人の設立の問題でありますが、これは二本立になっておるわけですね。農林大臣、一体二本立方式をとる必要がどこにあったかという点を、これは農林大臣から答えてもらいたい。骨子だけあなたが言わなければまずいでしょう。——いや、農地局長、あなたは農林大臣じゃないか。一農地局長が何も質問しないうちに立つのはおかしいじゃないか。農林大臣には簡単なことしか聞いていないですよ。
  213. 河野一郎

    河野国務大臣 二つになっておりますが、農民の創意工夫によっていずれをとってもよろしいということであります。
  214. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長、もう少し明快に言ってもらわなければわからぬ。
  215. 河野一郎

    河野国務大臣 今の御質問は、二つになっておるがどうかということのようでございますが、二つにして、農民の創意工夫でどちらでもいい方をとっておやりなさい、こういうことでございます。
  216. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、その二つにした理由と特徴だけでも述べてもらいたい。理由と特徴ですね。——だめだよ、そのくらいのこと大臣が知らなければ、一国の大臣じゃないか。局長いいよ、何も……。
  217. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 大臣の御指名によりましてお答えいたします。  農業生産法人につきましては、先ほど大臣からお話がありましたように、農協法によりまする農事組合法人と、それから一般の有限会社法あるいは商法によりまする合資、合名によりまする会社法人、二つの法人からなっております。これは大臣からお答えありましたように、農民の創意工夫を生かして、農民の最も欲する協業経営にマッチする形において、農民の選択によって協業ができるように、そういうふうな意向から二本立にしたわけであります。
  218. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで大臣にお尋ねしますが、この二つの農事組合法人と会社法人との特徴点はどういうところにあるのですか。
  219. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農事組合法人によりますものは、農協法によりまして五人以上ということで、農民が協業経営を簡易な組織でやれる、こういうふうに農協法上の法人になります。それから有限会社によります分、あるいは合資、合名によります分は、有限会社によりましては二人以上のものがあればできる、こういうことになりましょうし、合資、合名会社もやはり人的結合の強いものでございまして、そういった点で農協法によりまする農事組合法人と会社法人、それぞれ特徴があるわけでございまして、それは農民の選択にまかせる、こういうことであります。
  220. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、この具体的な法律の内容の質問に対してお答えができないようでありますが、もちろんこの法案が提案されたのはあなたの時代ではなくて、周東農林大臣の時代ですが、その後あなたが大臣になられたわけだから、周東君がこれを出したからおれは知らぬでもいいというわけにはいかないと思いますが、この農地法農協法改正には全然興味がないのですか。
  221. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。  農業基本法の重大な関係のある法律でございますから、重大な興味を持っております。
  222. 芳賀貢

    芳賀委員 それではお尋ねしますが、農事組合法人と会社法人の場合の構成員の資格要件ですが、これはいずれも農民が構成員になるのであるが、たとえば社員が構成員になるのか、これは農林大臣から答えてもらいたい。私はあなたが答えられるような簡単な質問しかしませんから……。
  223. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農事組合法人にいたしましても、その他の会社法人の農業生産法人にいたしましても、この法人形態によって農業経営を営もう、こういう農民は農地を法人に出資または提供する、それからあるいは労働力を提供する、こういった形において組合あるいは法人の構成員に相なる、そして、そこで農業経営を営む、こういうことに相なるわけであります。
  224. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、農事組合法人の場合には、構成員五名以上で設立ができるが、会社法人の場合には何名以上で設立ができるか、この点は農林大臣にお尋ねします。
  225. 河野一郎

    河野国務大臣 たびたびの御指名でございますが、そういう細部のものにつきましては、私よりも事務当局の方が明確に答えられると思いまして、私は事務当局をしてかわって答えさせます。
  226. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農事組合法につきましては、構成員の数につきましては五人以上ということに相なっております。それから有限会社につきましては二人以上五十人以内、こういうことに相なります。合名会社は二人以上、それから合資会社につきましては有限及び無限責任社員各一名以上あれば構成することができることになっております。
  227. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、先般、畜産物価格安定法の改正法案審議の際、あなたは私の質問に答えて、おれは一国の大臣だから事務当局の役人が何を言おうと、農林大臣である自分が認めたものでなければ責任はないということを言われたわけでございますが、こういう重要な法案といわれる法案の内密についてわれわれが質問した場合に、今度は事務当局の答弁そのものは大臣の答弁ということに態度が変わったわけですか。
  228. 河野一郎

    河野国務大臣 施策基本に関する問題につきましては私みずからお答えいたします。法案内容の細部にわたるものにつきましては、私より事務当局をしてかわってお答えせしめます。
  229. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは法案基本に対する点ですが、今度の農地法改正の中にも、あるいは農協法改正の農事組合法人の中にも、しばしば農民なる用語が用いられておるが、この農民なる用語の定義というものは何であるか、これは非常に大事な点ですから、農林大臣の責任ある答弁をお願いいたしたいと思います。
  230. 河野一郎

    河野国務大臣 農業者という言葉が出ておりますが、農業者とは農業を行なう者であります。
  231. 芳賀貢

    芳賀委員 農協法の前段にある農民の定義を、今回の改正の場合にもこれを全部適用するという考えの上に立っておるかどうかは、それはいかがですか。これは農業大臣
  232. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農業協同組合法におきまして「農民とは、みずから農業を営み、又は農業に従事する個人をいう。」こういう工合になっておるわけであります。先ほど大臣のお答えの通りでございまして、この農民が構成員となって農事組合法人ができる、こういうことでございます。
  233. 芳賀貢

    芳賀委員 農事組合法人の場合は農協法にうたわれておる農民の定義を用いる、会社法人の場合にはどういうような適用でいくか、この点は大臣はどうお考えですか。
  234. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 やはり農地を提供し、それから農業労働を提供する、こういうことでございまして、現実に農地について耕作あるいは養畜の業を営む農業者ということになりまして、先ほど経済局長からお答えのありましたように、農協法における農民と同じことに相なると思います。
  235. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣にお尋ねしますが、今回の改正によって、農地の保有面積の最高制限あるいは小作地の最高制限、あるいは採草放牧地の最高の所有制限等は、これはすべて農地法の別表において、全国の都道府県それぞれ定められておるわけでありますが、この別表の問題については、農林大臣としてはどういうふうに考えておるか伺います。これは大事な点ですよ。
  236. 河野一郎

    河野国務大臣 別表は現状のままで参ります。
  237. 芳賀貢

    芳賀委員 別表は現状のままにおいて、法定上別表の最高所有限度を越えることができるというような改正をするということは、これは非常に疑点があると思うわけです。今の別表では、これはどうしても農業の経営拡大を阻害することになるから、別表の各都道府県における実際の制限面積というものをこの際是正する必要があるというのであれば、これは了承される点もあるが、農地についても採草放牧地についても、小作農地あるいは小作採草放牧地についても、別表はそのままであるということになると、これは非常に問題があると思いますが、その点について大臣は疑点を感じているのかいないのか、どうです。
  238. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。  御承知通り農業の機械化、その他農業経営を従来より前進いたしまして、組み合わせて各種の農業を営むことに構造改善を進めて参る所存でございます。そういう意味合いからいたしまして、従来厳重に、自家労力をもって経営が別表を越える場合には許可を得て越えてよろしいということにいたしておりましたものを、多少そこにゆとりを設けまして、自家労力を越えても、経営上主として自家労力であればよろしいということにいたします。自立農業の経営に重点を置いてゆとりをとってやる方が適当であろうという意味合いにおいて変えたのでございます。
  239. 芳賀貢

    芳賀委員 次に農林大臣にお尋ねしたい点は、この農地法の別表に基づいて全国それぞれの都道府県においては最高所有面積というものに到達しておる農家がどういうような状態になっておるか。これは大臣としてはそこをお答えできないとしても、農地局長はそういうことは全部頭に入っておるですか。北海道や神奈川から九州に至るまで、別表に基づいてこれを検討した場合、最高所有限度に達しておる農家というものは、その都道府県における全体の農家の大体何%に達しておるかという点については、それはわかっていますか。
  240. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農林統計の府県別統計によりまして、承知いたしております。
  241. 芳賀貢

    芳賀委員 それは答弁じゃないでしょう。農林統計なんて、一体そんなもの出ておるですか。それではあなたたち、それを握っておるのだから、もう少し具体的に答えて下さい。全国の都道府県の、農地法の別表に基づく、農地あるいは採草放牧地、小作地の、それぞれ最高限度があるでしょう、別表に。それと、都道府県別にその戸数が何戸あって、何%かということを、資料を持っているなら、即座にここで片っ端から読み上げて下さい。
  242. 野原正勝

    野原委員長 芳賀委員に申し上げます。  芳賀委員の御質問は非常に微細にわたることでありますが、この審議においては、目下農林大臣に対する基本的な問題や、あるいはまた特に農地、農協法の重要な問題にできるだけしぼっていただきたい。今の数字統計を一々読み上げるというふうなことは、相当時間もかかると思います。ですから、この委員会審議に御協力いただく意味において、できるだけ簡潔に、大臣あるいは事務当局に対する質問は要点をしぼっていただきたい、そのことを私からお願い申し上げます。
  243. 芳賀貢

    芳賀委員 それは協力しますが、私が農林大臣に尋ねれば、大臣は答弁ができないわけです。ですから、事務当局に今尋ねたのは、何もそういう細目のことを聞いておるわけじゃないわけです、資料があるとか、ととのっていないとか言えば、それで私はいいわけですが、持っておると言うから、それじゃ読みなさいと言っておる。これはないですよ、おそらく。あるならあるで、ちょっと、二、三読み上げて下さいよ、それでわかるから……。
  244. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 経営耕作別、規模別の農家数で申しますと、別表、三町歩が全国平均の最高限になっておりますが、三町をこすものが大体九万一千百七十八戸、そのパーセンテージが一・五%に相なっております。
  245. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうばかなことを聞いているのじゃないですよ。いいですか、農地法という法律があるでしょう。その法律の末尾に別表があるじゃないですか。その別表に基づいた場合に、各都道府県の最高保有面積農家というのはどうなっておるかという、そういう資料があるかないかということを私は聞いておるわけです。なければないでいいのですよ。まだととのっていなければいないで——あなたが、あるようなことを自信を持って言うから、それでは読み上げなさいと言っただけです。
  246. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 全国平均では三町歩でございますが、府県別には、広島は一町六反、こういうふうに相なっております。そういう刻んだものはございます。私、間違えまして、全国平均三町歩以上と、こういうふうに聞きましたから、先ほどお答えしたわけであります。
  247. 芳賀貢

    芳賀委員 なければないで、それでいいわけですよ、そういうものが用意されていないということがわかったわけですから。  その次にお尋ねしたいのは、農地の所有の権利の移動あるいは移転についてでありますが、一体農林大臣は、農地の所有形態の中において、農地の所有権というものは大幅に移動することが好ましいと考えておるか、あまり移動しない方がいいと考えておるか、その点はいかがですか。
  248. 河野一郎

    河野国務大臣 問題は、自作農の理想に到達するように農地があることが理想でございます。自作農が創設できるように移動するならば、移動は幾ら多くてもけっこうでございます。
  249. 芳賀貢

    芳賀委員 次に農林大臣にお尋ねするのは、今回の農地法及び農協法改正によって、特に農地信託なるものが両法案の中に出てきておるわけですが、特にここでお尋ねしたい点は、農業協同組合が、農地法との関連の中で農地の信託事業を行なった場合、現在の農協に性格的な変化というものが生ずると思っておられるか、全然そういう性格的な変化というものはないと確信されておるか、その点はいかがですか。
  250. 河野一郎

    河野国務大臣 性格に変わりはないと考えます。
  251. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの農地の信正事業というものは、国のたとえば農地制度あるいは農業政策の実行上必要と認めてこれを制度化するわけであって、これを突き詰めて考えれば、この農協に行なわせようとする農地の信託事業というものは、ある意味においては政府の行政補助的な業務ということになるとわれわれは考えておるわけですが、その点はいかがでしょうか。
  252. 河野一郎

    河野国務大臣 政府考えるのじゃなしに、農民の農業経営を助ける意味において行なうのでございます。
  253. 芳賀貢

    芳賀委員 これは農協の性格上に変化がくるとわれわれは考えておるが、従来、全く農民の意思によって農協というものが形成されて、自主性の上に立って農協の事業というものは運営されてきたのであるが、今度は法定して、農協だけに農地の信託事業を行なわせるということになれば、これはやはり国の農地制度あるいは農業の構造改善であるとか、そういう、政府が特に農業基本法の実施のために必要と認める行政の路線について、農協協力させる、業務の面で協力させるということになれば、これはやはりある意味における政府の行政補助的な業務ということになるわけでありますが、これがならないというふうに農林大臣考えておるわけですか。
  254. 河野一郎

    河野国務大臣 行政の補助とか補助でないとかということの先に、組合員の利益のためにこの方法を講ずる、こういう考えでございます。
  255. 芳賀貢

    芳賀委員 それではどういう点が、信託事業をやることによって組合員の全体の利益になるかという点を、一、二事例をあげてもらいたい。
  256. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り経営規模を拡大し、自立農家を育成するという意味におきまして、現在の過小経営が経営の拡大をいたそうという場合に、御承知のように現在日本の農家におきましては、農地を手放すということは、非常に愛情がわきますので、なかなかそれができにくい。できにくいのを、一時期限をきめましてこれを信託しておくことによって、農地の集合ができるという、組合員全体のためになると考えるわけであります。
  257. 芳賀貢

    芳賀委員 組合員のためになるということは、農地の売り渡し信託が信正者により行なわれたという場合に、その農地を要求する組合員はたくさんあると思う。これは売り渡しである以上は、農地の対価を支払う能力のない組合員は、それを取得することができないわけですね。しかし実情は、現在手持ち資金がなくても、農業の経営規模を拡大する意欲を満たすためには、やはり農地の取得を行ないたい、こういう意欲の方が、組合員全体の中においては大部分を占めておるわけですが、そういう意欲とか希望というものを、組合員の利益のためという形で処理できるかどうか、その点はいかがですか。
  258. 河野一郎

    河野国務大臣 その資金を求める道でございますが、御承知通り自作農資金もございますし、その他組合におきましても組合資金をなるべく融通する道をとる必要もございましょうし、さらにまた構造改善の上におきましてできるだけ政府協力いたす必要もあろうと考えます。また、現にその資金に欠ける点につきましては、今後大いにこれを増大して、円滑に進む道を考える必要もあろうと考えておるわけであります。
  259. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは三十七年度に農民が経営農地の拡大をしたいという場合に、自己資金のあるものは別ですが、資金的な用意がないという熱心な農家に対して、国の農地取得の金融制度からどのくらい金を大臣は用意して出す考えでおるか。
  260. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り百数十億の自作農資金があるわけでございます。
  261. 芳賀貢

    芳賀委員 三十七年度の自創資金も含めた農林漁業金融公庫の貸付予定計画は七百十億円、そのうち自創資金関係が百九十億円ですが、一体百九十億全部使って、農林大臣はこの農地の権利の移転がどのくらいの面積が行なわれると考えておりますか。
  262. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 自作農資金は百九十五億でございます。そのうち維持資金等に充てられるものもございまして、農地の購入資金として考えているものが百三十五億予定いたしております。これにつきましては自己資金等によるものもございましょうし、信託を受けまする農協が、組合員の経済事情、資金事情等も一番よくわかるわけでありまして、そういうところでこの資金の最も必要な農家に貸せるように努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  263. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは百三十億円で、一体どれだけの農地の所有権の移転ができるのですか。
  264. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農地の価格も平均的に申しますと、田で十万から二十万、こういったふうにいわれております。地区によりましていろいろ違いますので、この算定は非常に困難かと思いますが、できるだけ有効にこれが動くように運用して参りたいと考えます。
  265. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうばく然としたことでなくて、たとえば百三十五億円の政府資金を放出すれば、一反歩十万円の場合にはこれこれとか、二十万円の場合にはこれこれとか、そういうことがわからなければ農地局長勤まらぬじゃないですか。
  266. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 そういう計算は簡単でございますけれども、それが実際にそうなるかどうかは別でございます。やはりそういう計算よりは、最も実情に合った、農協の組合員の構造改善に最も適する人にこれが融資されるようにわれわれとしては努力していきたいと考えております。
  267. 芳賀貢

    芳賀委員 それは一反歩十万円とすればどれくらいの面積になるのですか。十万円なら一番わかりやすいでしょう。
  268. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 反当り十万円、こういうふうに考えれば一万三千五百町歩、こういうことになりましょう。反当たり二十万円と考えますればそれの半分、こういうことでございます。
  269. 芳賀貢

    芳賀委員 だからそのくらいの面積だと恥かしくて答弁ができないのです。とにかく全国で一万町歩そこそこの農地の所有権の移転しかする金の用意がない、それでは何もできないじゃないですか、農協に信託事業をやらすといっても。手持金のある有力な農家だけは自己の所有面積の拡大をすることができるとしても、ほんとうに農業に精進して農業の経営の拡大をはかりたいという熱意のある農民諸君に対しては、何もこたえ得る資金的な用意がされていない。これじゃ信託事業をやってくれ、やってくれといったってしようがないじゃないですか。そうは思わぬですか。
  270. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 信託事業はこれから始める制度でございまして、われわれといたしましても、農民の実際の要望等も、地区によっては非常にあるわけでありますが、全国的にどの程度に売り渡し信託が出てくるか、そういう点についてはまだ十分把握ができないわけであります。先ほど申しましたように、自作農資金につきましても、三十六年度よりははるかに取得資金をふやしてこれに対処しよう、こういう考え方でございます。なお、今後ともそういう点については、この信託事業の動向を見ながら、この資金の予算化に努力したい、こう思います。
  271. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで農林大臣にお尋ねしますが、今農地局長の言った通り政府の制度資金をもってしては一万数千町歩しか農民の所有意欲にこたえることはできない。そうなると、農協が今度は農地の売り渡し信託を引き受ける、あるいは貸付信託を引き受けるという場合、信託ですからして、信託契約を結ぶことによって、とにかく個人の所有者から今度は農協に所有権の移転が行なわれるわけです。そういう場合考えられることは、それでは農業協同組合がそれらの農地を対象にして金融を行なうべきであると大臣考えておるか、絶対農業協同組合として農地の担保金融等は行なうべきでないと考えておるか、この点はいかがですか。
  272. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだんお小言をちょうだいいたしておりますが、実は答弁に非常に困るのであります。先ほどは、そんなものは時代おくれで、今ごろやっても間に合わぬだろうという御発言も実はあったわけでございます。もう信託時代じゃないだろう、もうちょっと次のことを考えなきゃいかぬだろうという御発言が先日もあった。ところが、今度は信託をやるといっても金がなくちゃだめじゃないか、どれだけ信託があるかわからぬじゃないか、こういったお小言をちょうだいしておるわけです。そのくらいに農村の実情は、見方、考え方によっていろいろあるわけであります。でございますから、われわれとしても、どなたにも御満足のいくようにお答えをする準備をするといっても、その準備はいたしかねます。従って、まず法律を通していただいて、その法律に対して、要望にこたえてわれわれは善処するということが一番いいのじゃないか、こう実は考えておるのでございまして、それは素手ではいけませんから、実は百三十億や五十億の金ではどうにもならぬじゃないかとおっしゃるけれども、信託と申しましても全部が売り渡しじゃない、傾けていく人も相当おられる。預けていかれる人をどうするか、順次これをやって参る。また一方かたがた考えますれば、あれだけ法人々々といって騒がれた法人の声も今日は消えておるというようなことでございますから、これは農業の実情がどんどん変って参りますから、変わって参る農業の実情、実態に合わせて、われわれは施策をして参らなければならぬと考えますので、いろいろ御不満な点もあるかもしれませんが、とにかく一生懸命やっておるつもりでございますから、どうか一つ御了承いただきたいと思います。(拍手)
  273. 芳賀貢

    芳賀委員 簡単に拍手はできない。問題は、農地の売り渡し信託を農協が引き受けたとしても、これは適格者の選考を行なって、こういう農家に対しては売り渡しをしたいとしても、その農家が資金的な用意がない、自創資金から借りようとしても、全国わずか一万町歩しか金がないということになれば、それでは資金のない農家に対してはどういうような配慮をしてやらなきやならぬかということが、そこに必然的に必要性が出てくるわけです。どこからも金が出てこないからお前はだめなんだということは、適格基準からの除外事項にはならないと思うのですよ。農業政策を進める場合に、そういうことになれば政府からも資金が流れてこない。その本人も今の価格の高い農地を取得することができないということになれば、やはり農業に精進するいわゆる適格者に対しては何らかの形で配属してやる必要があるということになれば、その場合政府としては、農業協同組合が農地に対する資金の融通等を行なうということについては一体どう考えておるか。これはいい悪いの議論ではないですよ。政府立場において、農業協同組合が行なう、たとえば農地を担保にした金融等についてはどう考えておるか。そのくらいのことは頭にないわけではないと思う。
  274. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお答えを申し上げた通りでありますが、本法を実施いたしまして、今芳賀さんのお示しになりますような事態が各地に起こって参りますならば、私責任を持ってこの金額を増額いたすことに努力いたします。
  275. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、国の資金の増額というのですか。非常に大事な点です。
  276. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうことでございます。
  277. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの点は忘れないでおいてもらいたいと思うわけです。  それに関連してお尋ねしたい点は、これは同僚の石田委員からも指摘がありましたが、昨年の農基法の審議の場合には、池田総理も周東農林大臣も非常にうまいことを言ったが、特に農地移動に対する金融上の措置というものは何も講じていないということが暴露されたわけです。河野さんにお尋ねしたい点は、昨年の第三十九臨時国会において、たまたまこの農林水産委員会において自民党と民社党の諸君が違法な委員会の開会を行なって、社会党の委員出席を見ないままで現在の自創法の一部改正を附則の中で行なったわけです。それは特に三十六年度分だけについて、北海道だけについて附則の中で法律改正を行なったわけでありますが、その問題が一つ。その法律改正を行なった直後、これは附帯決議でなくて単独で自創法の一部改正に関する決議というものが委員会に行なわれたわけです。これも自民党と民社党の諸君がその案を出したわけですが、丹羽兵助君が代表者になって、社会党のいないままで通ったことも事実であります。そういうやり方を行なったことは記録にも明らかであるが、問題は、この政府与党の自民党と、若干の民社党の諸君が決議を行なったこの内容というものに問題があるわけです。この内容なるものは、われわれ社会党が数年前から国会に自創法の根本改正を行なうために提案した改正点の内容というものが、決議の中に盛られておるわけです。やり方はともかくとして、与党と民社党の人たちは、決議を通された。しかも国会委員会の決議としてこのことを行なわれたわけであって、これはから宣伝のためにそれらの決議というものが作られたということではないと思うわけです。従って委員会の権威にかけて、これらの決議の内容というものが、当然この農地法あるいは農協改正とあわせて自創法の改正案というものが政府提案にしろ、あるいは何らかの形で提案されてしかるべきであるというふうにわれわれは考えたわけであります。その決議の内容というものは、社会党の改正案の内容と全く同一でありまして、自創法の金利については現行の五分を三分五厘にこれを改める、据置年限については現行の三年を五年に改める、償還年限については現在の二十年を三十五年に改める、貸付限度については現在内地府県については一戸当たり三十万円、北海道においては三十六年に限って四十万円という現行制度の制限を、法律の中で一戸当たり百万円というふうに改める、これが当時の決議案の内容でありますが、この決議案を自創法改正の形で、政府の責任において国会に提案する意思が一体あるのかないのか。その点を農林大臣から率直に答えてもらいたいわけであります。
  278. 河野一郎

    河野国務大臣 目下検討中でございます。
  279. 芳賀貢

    芳賀委員 意思があるかないかだけ聞かせてもらえばいい。
  280. 河野一郎

    河野国務大臣 検討しておるのでございます。
  281. 芳賀貢

    芳賀委員 次に農業協同組合法改正点の数点についてお尋ねしますが、今回の改正においては、特に農協法の中に農事組合法人の規定を定めようとしておるわけでありますが、農林大臣にお尋ねしたい点は、現在の農業協同組合と今回政府が意図されておる農業組合法人との関係をどのように考えておるか。この点はいかがでございますか。
  282. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 法律の内容の問題でありますので私からかわってお答え申し上げますが、現在の農業協同組合の法体系の中におきまして、組織なり設立なりというふうなものを簡素化いたしまして、末端の組織として合うようなものを制定する、こういう内容でございます。
  283. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、現在の農業協同組合政府の企図  されておる農事組合法人との関係をどのように考えておるか。これは事務的な問題ではないですよ。
  284. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 法律の内容の問題になりますのでかわりましてお答え申し上げますが、現在の農業協同組合の正会員としての資格を農事組合法人は持つ、こういうことで考えておるのでございます。
  285. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは農林大臣にお尋ねしますが、農業協同組合組織の一環として農事組合法人というものを考えておるというふうに判断していいのですか。
  286. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  287. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、農業生産法人の中の農事組合法人以外の会社法人と農業協同組合関係農林大臣はいかように考えておられるか。——局長、待って下さい。農林大臣がわからなければあなたに何か指示しますから。
  288. 河野一郎

    河野国務大臣 農業を行なう会社でございますから、農業組合員になることができます。
  289. 芳賀貢

    芳賀委員 組合員というのは何の組合員ですか。
  290. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 法律技術の問題でございますので私からお答え申し上げますが、正会員になるのは農業者、農民でございますので、今度考えております合資会社、有限会社等農業経営を営むものは農民と同じように扱う、こういうような意味で正会員になるというふうに規定いたしております。
  291. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは局長にお尋ねしますが、農事組合法人も、農業を行なういわゆる農地法の規定に基づく会社法人も、農業協同組合には正組合員としての資格があるということですね。
  292. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 その通りでございます。
  293. 芳賀貢

    芳賀委員 それは改正案のどこにあるか、ちょっと読んで下さい。
  294. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 改正案の十二条でございますが、組合員の資格「農業協同組合の組合員たる資格を有する者は、左に掲げる者で定款で定めるものとする。」この条項の中で、一の「農民」、これは従来通りでございますが、二は「第七十二条の八第一項第二号の事業を行なう農事組合法人並びに農業の経営(これとあわせ行なう林業の経営を含む。)及びこれに附帯する事業のみを行なうその他の法人。」こういうことになっております。
  295. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、農事組合法人も、会社法人も、正組合員として農業協同組合に対して加入した場合は、議決権並びに選挙権を当然持っておるということになるわけですが、その点は間違いないですか。
  296. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 その通りでございます。
  297. 芳賀貢

    芳賀委員 正組合員であるならば、当然議決権並びに選挙権を持っておるということになるが、その点はどう考えておるのですか。
  298. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 その通りでございます。
  299. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、今回の改正によって、議決権並びに選挙権の代理行為を大幅に認めるという改正が行なわれようとしておりますが、これは非常に重大な問題であります。ですからこれは河野農林大臣の耳にも入れてあると思いますが、その点どうですか。
  300. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 非常に法律技術的な問題でございますので……。
  301. 芳賀貢

    芳賀委員 耳に入れたかどうかということを聞いている。
  302. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 入れてございます。今までは一人の代理しかできなかったのでございますが、最近の実情に応じまして、四人まで代理ができる、こういうような規定に改正いたしましたわけでございます。
  303. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは農林大臣にお尋ねしますが、今局長の言った点について、そういう代理権を大幅に拡張して行使できるというふうに農協法改正するという必要が一体どこにあると大臣考えておりますか。
  304. 河野一郎

    河野国務大臣 なるべく農協拡大強化、合併強化して参りたいと考えておりますから、組合員の数がいたずらに増大いたしますから、こういう必要が起こってくると考えております。
  305. 芳賀貢

    芳賀委員 いたずらにというのはどういうわけですか。これは冗淡じゃないですよ。いたずらにふえるというのはどういうことなんですか。
  306. 河野一郎

    河野国務大臣 返事が悪かったら取り消しますが、組合員の数が非常に増大いたします。なるべく協同組合が大きい方がよろしいという建前で合併を奨励いたしております。従って、一会場で総会ができないというような事態になりますから、大幅に代理行為を認める必要がある、こういうことでございます。
  307. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、会場の都合だけで代理権をふやして、そして出席者を制限するというのがこの改正の目的ですか。
  308. 河野一郎

    河野国務大臣 会場の都合だけというわけではございませんが、なるべく多数の人が参加する方がよろしい。それには表決権がなるべく多い方がよろしいという意味合いから代理行為を認めるということでございます。
  309. 芳賀貢

    芳賀委員 この協同組合の中において組合員の権利義務の忠実な行使ということは非常に大事なことであって、かつて昭和二十九年に農業協同組合法改正が行なわれた場合において、このときには一名に限って代理権を認めるということにいたし、あるいは一方においては総代制というものを採用することになったわけでありますが、今回の場合には、代理権の場合には一名が四人までの代理権を認める、しかも議決権だけでなくて選挙権の行使までも代理権の中で認めるというようなことになると、今後もそういうことが実現するとなると、協同組合の民主的な運営というものは大きく阻害されるというふうに考えられるわけでありますが、そういう心配はあるものか、全然ないものか、どう考えていますか。
  310. 河野一郎

    河野国務大臣 なるべく全員参加いたしまして民主的に総会の運営をやることが望ましい姿でございます。しかし、私自身も経験したことがあるのございますが、あまり組合員の数が多い組合におきましては、総会を開くに聞けないというような事例が現にあるわけでございます。そういったようなことをいたしまして代理行為を幅広に認めるやむを得ざる実情に立ち至っておると考えるのでございます。
  311. 芳賀貢

    芳賀委員 私ども判断は、現在の総会の招集あるいは選挙の制度を実行する場合に、たとえば選挙を行なう場合の総会において成立要件を欠くような事態が全国的に生じて、どうしてもこれでは現実の問題として運営が困難であるからある程度代理権を拡大する必要があるという判断から、政府がかかる改正案を用意されたかというふうに考えたのでありますが、そういうことではなくて、会場がないとか会場が狭いとかいう、そういう便宜的な考えだけでこういう法律改正を行なうということになると、これは非常に重大問題だと思いますが、一体局長はそういう考えでこの改正を立案したかどうか、その点はどうなんです。
  312. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 会場の問題もございましょうし、そのほか農業協同組合が非常に規模が大きくなって参った、全員集まって総会をやらなくても、委任状をもって意思がきちんと通ずるような形で反映できれば、こういう活発な動きになって参りました場合にそれでいいじゃないかということで、四人がいいか、五人がいいか、そこら辺のところは非常に問題がございましょうけれども、いろいろ実情を見まして、四名程度のところで代理を認めていいのじゃないか、こういう工合に考えたわけでございます。
  313. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは具体的に伺いますが、最近農協合併促進法が先般通った関係もあるが、北海道は別にしても、内地府県の農業協同組合の場合には、総会を招集した場合、正組合員全員が出席した場合においても、大体どのくらいの構成人員であるかどうか、その態様について事例をあげてもらいたい。
  314. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 北海道を除きまして全国平均では組合員五百名になります。大きなところは千名、二千名、三千名というのもございます。
  315. 芳賀貢

    芳賀委員 三千名という農協はどうですか。
  316. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 今統計上の資料がございますけれども、個々の名前は資料がございません。いずれ調べましてお答えいたします。
  317. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、選挙とか特別の議決を行なう場合の総会は、全部が米なければ開けないのですか。
  318. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 法律の規定上は二分の一以上の出席、こういうことになっております。
  319. 芳賀貢

    芳賀委員 だから千人の場合でも五百人の出席で成立するわけですね。その成立要件の中で、組合の役員選挙というものは十分やれるわけですが、最近どの農村に行っても、交通も非常に便利になっておるし、たとえば地元の小学校であるとか中学校というものを利用すれば、会場が狭いために出席人員を制限しなければならぬということはないと思うのですよ。しかも組合員が進んで出席する場合に法律の中で代理権が認められておるからして、お前は来る必要がないとか、五人を一人に整理せいなんていうことは、これできないでしょう。三千人の場合でも、みんな来る場合には、これは、もうこれ以上は受け付けしないということはできないじゃないですか。
  320. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通り、代理権を認めましたからといって、お前は来る必要はないというようなことは、これは農業協同組合の運営上あり得ないことだと思います。もちろん、出られれば全員が出席した方がいいのでございまして、場所により、あるいは都合によって、どうしても出られない場合には便宜を計らいまして、代理権の範囲を広げた、こういうふうに御理解いただきたいと思うのでございます。
  321. 芳賀貢

    芳賀委員 これは明らかに、われわれの邪推ではないが、ボスの暗躍を農村において復活させるということがねらいの最たるものであって、それ以外の理由は何もないわけです。いいですか。  そこで、さらにお尋ねしますが、この代理権を行使する場合に、二様あるでしょう。それをまずお尋ねします。
  322. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 二様とおっしゃいますのはどういうことでございますか、お伺いいたします。二つの姿があるという意味でございますか。
  323. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、代理権を行使する資格として、一つは、正組合員が他の正組合員から委任を受けて代理権の行使ができる、もう一つは、正組合員と同一世帯にある農業従事者が、組合長資格はないが、同一世帯に所属する者という資格で、従来もその世帯の正組合員の権利の代行を、現在までは認めてきたわけなんです。今度は、その一人の代理はもちろんであるが、世帯を別にした他の正組合の代理権も、正組合員でない世帯員が代理権の行使ができる、これで二様ということになるが、その点はどう考えておりますか。
  324. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通り二様でございまして、正組合員が正組合員の委任を受ける場合と、それから正組合員以外の者が受ける場合とございます。従来は、組合員でなくても、親族でなくても、だれでもその委任を受けることができましたけれども、今度の改正では、人数をふやした関係もございますので、組合員同士か、あるいは組合員の世帯に属する親族ということに限定をいたしたわけでございます。
  325. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大事な点ですが、それでは今の局長の答弁からいうと、正組合員の代理するのは四名の範囲ですね。組合と何も関係のない非組合員は、その者が所属する世帯内の正組合員については、四名までの代理権が行使される、そういう答弁ですね。それに間違いないですか。
  326. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 関係のない非組合員の代理は認めないようにいたしております。
  327. 芳賀貢

    芳賀委員 関係のないとは——局長、にやにやして、わからぬじゃないですか。関係のない者というのは何ですか。もう一度言いなさい。
  328. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 関係のない非組合員というお話でございましたから、関係のない非組合員には認めない、こういうことになっておるのでございます。舌が足りなくてどうも申しわけございません。
  329. 芳賀貢

    芳賀委員 こっちはそういう関係のないことを言っているのではない。だから、農協の正組合員である資格を持っておる者は、委任を受けて他の四人までの組合員の権利の行使ができる。もう一つは、正組合員と同一世帯にある者は、従来はその世帯内の正組合員の代理権を一票だけ行使できたが、今度の改正によると、その正組合員の中に所属する同一世帯の非組合員が世帯以外の正組合員の代理権の行使もできるというふうに、政府改正案は出ておりますが、これは重大問題でないかというわけです。その点はどうか。
  330. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 今度の改正案の趣旨の内容では、組合員同士のものについてはおっしゃる通りでございますが、組合員の中の世帯員の問題につきましては、その世帯の中の問題だけでございまして、その世帯員が他の世帯の者までも代理するということは考えておりません。
  331. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは同一世帯内の正組合員の代理を四名まではやるということですね。
  332. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 その通りでございます。
  333. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、議決権の行使の場合は、総会の付議事項であらかじめ通知を受けた議決事項に限って、書面によるところの議決権の行使、代理人によるところの議決権の行使ができるからして、この議案については賛成、反対の意思表示は、正組合員は代理人を通じて反映させることができるとしても、今回の改正は、これは全く異例の措置であって、選挙権の行使もできるということになれば、一体どういうような形で、正組合員が依頼した選挙の意思というものを代理人が忠実に、的確に行使できるかどうか、その点はどう考えますか。
  334. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 いずれ詳細の問題は定款で定めることになろうと思いますけれども、あらかじめ候補者を出しまして、そして選挙をするのでございますから、意思ははっきり代理ができると思います。
  335. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは局長、農業協同組合の役員選挙は立候補制を現在採用しておるわけですか。
  336. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 立候補制をやっておる場合もございますし、立候補制でない場合もございます。実情によって違っております。
  337. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、正組合員の委任を受けて、確実にその選挙権の行使が一体できるかどうかという点なんですよ。あなたはできると思っているのですか。
  338. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 たとえば代理人に、役員選挙の場合にはこの人をやってくれということを頼めば、ちゃんと意思の代理はできると思います。
  339. 芳賀貢

    芳賀委員 一体その確認をどういう方法でやるのですか。
  340. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 委任をいたします以上はお互いに二人の間の信任関係でございますから、甲なら甲という人を役員に選びたい、こういうことがはっきり伝わりますれば、あるいは書面によろうが口頭によろうが、その点はお互い農業協同組合の内部の問題でございますので、そういう問題はそう形式的に非常に厳格な確認の方法を法律上講じなくても、運用上困らないのではないかと思っております。
  341. 芳賀貢

    芳賀委員 これは買収とか情実を認める考え改正考えたんでしょう。秘密投票である場合、いかに坂村さんと私の間であっても、私があなたに委任を受けても、その会場へ行って坂村何がしと書かぬ場合があるでしょう。野原委員長と書く場合もあるでしょう。それは確認できないじゃないですか。だからそういう場合に農協内部に、特に大事な役員選挙等について、しかも一人で四票の行使ができるというような道をわざわざ開いた場合においては、これはやはりこういう点が弊害として当然悪用されるということになるわけです。お前の札は四票あるからおれに何千円で売ってくれというような、そういう取引というものが公然と行なわれる道をあなたは開いているじゃありませんか。何のために神聖な農協の役員選挙にあたって、そういう腐敗堕落の道を考えなければならぬかということであります。ほんとうに農協のことを考えた場合において、現在においては一〇〇%出席して役員選挙をやるのが実情なのですよ。それをわざわざ堕落の道を開いて、しかも一人で四票の選挙権の売買ができるというようなことを、一体だれに頼まれてあなたは政府当局としてこういう改悪案を出したか、その真意を聞かしてもらいたい。
  342. 河野一郎

    河野国務大臣 私からお答えいたします。  私は今芳賀さんの御指摘になっていらっしゃるような農協がないことを希望いたします。いやしくも農協の中におきまして、役員選挙に買収して目的を達成するような姿は、全国においても例外中の例外と私は心得ます。そういうものがあるならば、私は一日もすみやかに除去する必要があると心得まするから、そういう場合のものを想定して、農協の育成を健全にするために、われわれはこういうふうに考えておるのでございまして、先ほどからいろいろお話でございますけれども、たとえて申しますれば三千人の組合員があっても、半分出ればいいのだから千五百人でいいじゃないかと仰せになりますけれども、いやしくも総会を開く場合におきましては、組合員が三千人あれば三千人が入り得る場所を想定して組合総会を開かなければなりません。従いましてこれを代理行為を認めるという便法をとります場合には、組合の運営等におきまして、非常に私は円満のうちに便宜、事務を簡素化してやることができる、お互いの信頼の上に立って初めて協同組合は発達するのでございますから、それを組合の内部におきまして今おっしゃるようなことのあることを私は遺憾に考えまして、そういうことのないように極力指導して参るつもりであります。
  343. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは公職選挙法の場合には買収が公然と行なわれておるが、こういう道を開いても、農協の役員選挙の場合にはこういう弊害が絶無だとあなたは考えておられるのか。今までに制度があるならばこれは別ですよ。今回の改正に便乗してこういう悪の道を開くというような考え方というものを、政府当局が考えること自体がおかしいじゃないですか。公職選挙法の場合にも、多額の金を使う場合には、一人一億円くらいのそういう選挙資金というものを使ってまで国会に出てこなければならぬということも、これはそういう人もあるが、今まで農協の場合にはそういうことができなかったが、今回の改正を通じて一人四票までは売り買いをやろうとすればできるというような道を、どうしてあなた方はそれを考えたのか、大事な問題じゃないですか。
  344. 河野一郎

    河野国務大臣 私は農協の役員選挙に買収とかなんとかいうことの例をあまり知りません。絶無とは私も申し上げる勇気はございませんけれども、おそらくそういう例は聞いたことがございません。で、それを絶無に近い例を示されましてそれでこの改正が悪いという結論にはならぬのじゃなかろうか。これによって農協が総会の運営等において非常に便利になる、総会の運営等においてこのために費用その他が簡素化されるというような利点が非常に多いということであれば、今お示しになりますような場合が万々一あったといたしましても、それを改善し、その方面の絶対絶無になるように指導することが必要である。そのことあることをおそれて法の改正を阻止するというわけには参らぬだろう、こう思うのであります。
  345. 芳賀貢

    芳賀委員 これは断じて了解できない点であって、とにかく選挙の神聖あるいは秘密保持というものが正組合員の自由なる意思において行使されてこそ初めて正しい意味農協の運営ができるにもかかわらず——こういう事例はないじゃないですか、一人で四票も選挙権を行使できるなんということは、これは全く前時代的な問題であって、産業組合の時代においてもこういう事例というものはなかったわけです。だからほんとうに実情を知る者は、これは定款で定めることになっておるので、まじめな協同組合は定款の中でこういう規定を採用することは断じてないと私たちは確信しておるが、このような選挙にあたっての買収規定を農業協同組合法の中にわざわざ挿入するという考え方というものは、やはり農村における一部のボス勢力があるいは保守政党とつながって、河野さん一流の農村に自民党の勢力拡大をしなければならぬ、金の力さえあれば農協でも何でもどうでもできるというような、そういう悪質な非近代的な資本主義的な思想で農協を運営されては、これはやり切れないですよ。だからこの点はやはりこの際率直に反省して、こういう悪い、将来に害毒を残すような改正点というものは、進んでこれは農林大臣の手によって、この点だけは間違ったから、これは悪い考えであったからして、この委員会において直して下さいぐらいの一片の良心があなたの農林大臣立場においてあってしかるべきと思いますが、その点はどうですか。
  346. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、問題が農業協同組合の問題であります。協同組合の選挙で買収をしなければならぬというような協同組合は、協同組合自体が破壊します、混乱します、成り立ちません。あくまでも協同の精神に立脚して組合を盛り立てていこうというその組合の総会もしくは選挙の場合でございます。従ってこれを他の一般の選挙と同様にお考えいただくことは、いささか私は違うのではないかと思うのでございまして、選挙によって買収して地位を獲得してそれで運営するというような組合が発展するはずもなければ、これが繁栄するはずもない。こういう組合はよろしくつぶしてしまった方がよろしいと思うのでございます。従ってこれからの組合はあくまでも農村の協同の精神に発足して、そうしてより強く、より大きく、そうして協同一致繁栄することを期待するものでございまして、その場合に、今のお話になりますような選挙に買収するとかしないとかいうようなことが論ぜられることは、おそらく全国の協同組合員がお聞きになりましたならば、涙を流して憤慨するだろうと私は思うのでございます。(拍手)
  347. 芳賀貢

    芳賀委員 ついにこれは諮るに落ちたようなもんですが、あなたの農協ぎらいというよりも、妄執的に何とか農業協同組合を弱体化したい、場合によったらつぶしてしまえというそういう考え方、邪道の道を開いて、あなたがそういうことをやるということは、われわれは見抜いているわけだから、これだけで議論はしないが、しかしあなた以外の農林官僚諸君がこのように、全く農協精神をはき違えたように、しかも坂村局長の時代に、農協の悪い道を開いて、あなたは不日退任するわけだが、そういうことは全国の農協あるいは農民の非常に痛烈な批判と不信を買うということだけを私は指摘して、農林官僚諸君の、この点は戒めにしておきたいと思います。  その次にお尋ねしたい点は、農事組合法人の場合も、会社法人の場合もそうですが、この出資の問題について今回の法律案の内容というものは明確にしていないわけですね。特に農事組合法人の場合においても、この出資の内容あるいはその性格というものに対して、いずれを重点に置くかということが全く不明であります。たとえばこれを二つに分けると、現物出資と普通の出資に対する払込方式による出資方式がとられておるが、払い込みによる出資の場合においては、必ず農業協同組合法はもちろん、その他の協同組合法等においても出資の持ち分の限度というものは法定上これは明らかにしておかなければならぬ点でありますが、この点についてはいささかも触れておらない、この点が一つと、もう一つは、現物出資というものを農地法の中にも、生産法人の構成員の資格要件の中にうたっておりますね。これは農林大臣にお尋ねしたい点であるが、一体現物出資という場合において、農地の所有権の移転による出資を重点にするか、あるいは使用収益権を中心とした権利の出資ということを重点にするか、この点は今後法人化の上に非常に大事な点でありますから、農基法の関連農林大臣からこれは答えてもらいたい。できないですか、できなければできないと言いなさい。答えられなければ答えられないと発言しなさい。
  348. 河野一郎

    河野国務大臣 事務当局から答えさせます。
  349. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農事組合法人の出資の限度の問題は昨日もいろいろお答え申し上げたのでございますが、きわめて人的結合の強い数人の集まりでございますので、そういう点は、法律上一般の組合のように厳格にそういうものを規定しなくても、そういう集まりによって相談してやっていく、こういう自主的な態勢をできるだけ助長した方がいいんじゃないか、こういう工合に考えておるわけでございます。  それから現物出資の問題につきましては、これはもちろん土地の所有権を出資する場合もございますし、使用収益権も出資の対象にはなります。それはそのときどきの、そのところの実情に応じましてどちらが多くなるか、どちらが重点になるかというものは変わって参ろうと思うのでございまして、法人化して共同経営を行なうというものの間の実情に応じて、そういうものは相談の上できめて参る、こういうのがほんとうの筋であろうと考えております。
  350. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は農林大臣はおわかりにならぬようですが、特に農地局長の方から、農地法改正の中でうたわれておる生産組合法人の構成員の資格要件の中にいろいろ列挙されておるが、特に現物出資の場合、農地の所有権の移転を通じた出資を重点にするか、使用収益権ですね、いわゆる耕作権を含めた使用収益権を中心とした現物出資を重点にするか、これは政策上非常に大事な点ですから、方針があれば明確にしてもらいたい。無為無策で何もなければ何をかいわんやですが……。
  351. 河野一郎

    河野国務大臣 今坂村局長から答えた通りであります。
  352. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 農業生産法人の出資につきまして農地法上の権利の移転ということに相なります。これにつきましてその所有権の出資を中心にするか、あるいは使用収益権を重点に置くか、こういうことに御質問のようであります。大体の場合は所有権が出資の対象になろうかと思いますが、やはりこれは農民の自主的な意図によるわけでございまして、地区によりましては使用収益権も出資の対象になるということに考えております。
  353. 芳賀貢

    芳賀委員 いずれを重点に考えておるかという点だけ明らかにしてもらいたい。
  354. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 現物出資の農地法上の権利といたしましては、所有権が重点になろう、こういうふうに考えております。
  355. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の関係の注意があったから、あと二点だけお尋ねしておきます。  一つは、農事組合法人の場合、組合法人の役員の中に監事を置かなくてもいいという規定になっておるが、これはいかなる理由ですか。
  356. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますように、非常に人的結合の強い小さなグループを考えておるのでございますので、ほんとうに自主的なお互いの監査ができる、こういうような形でこういう問題は考えるべきじゃないかと思いまして、任意機関にいたしたわけでございます。
  357. 芳賀貢

    芳賀委員 これは農業協同組合の一環としての法人ですから、これは申し合わせの単純な組合であれば、役員構成にしても、財務の関係にしても、それは大福帳でいいということになるかもしれませんが、少なくとも共同化、あなたの方で言うと協業化、これが農業の近代化を大きく前進させる一つの組織単位ということになる場合、その法人の経営の内容というものは、単に執行者である理事だけで十分やれるということにはならぬと思う。それが適正に行なわれたかどうかということを判断する尺度というものが、いわゆる農協でいえば監事ということになるし、監査権の発動とかあるいは調査権も持っておるわけであるし、あるいは総会の招集権も監事は持っておるわけであるが、それを置かなくてもいいということをわざわざ法定するということはどういう理由なんですか。
  358. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 お言葉ではございますけれども、農事組合法人は最低五人以上でできる、こういうことになっておるのでございまして、五人ということを考えました場合には、場合によったら二戸でやるという場合も三戸でやるという場合もございます。そういう小さなグループが大体主体になってやっておるのでございますから、監事を置かなければこの経理がうまくいかぬとか、経営がうまくいかぬとか、お互いに監査ができない、信頼し合って仕事ができないというような場合には、人数が多くなってそういう機関を置く必要があるという場合には置けばいいのであって、何もしいてそれを置かなければならぬという法律上の義務を義務的な規定にする必要はないのじゃないかというふうに考えております。
  359. 芳賀貢

    芳賀委員 この点はこのまま通れば、あとで法人の適正な運営上非常に問題が生ずるわけですから、そういうことをわざわざ気がつかないという点、あなたは後世そしりを免れないですよ。全く無能な、見通しのない坂村という局長があったということは残るわけですから、それだけはあなたは覚悟しておいてもらいたい。  それから最後にもう一点は、従来農協の経営上問題になっておる点の一つに、たとえば農業協同組合法にうたわれておる組合員と協同組合との間における専属利用契約の義務条項の問題があるんですね。これに対しては当然改正の場合には、数年前から検討を下して根本改正の機会にはこれは措置するということになっておったわけですが、この点に対してはどういうような考えの上に立っておるかということ。もう一つあわせて申し上げたい点は、これは農協法の中ではありませんが、農業協同組合の財務処理基準令があるが、これは今後農業協同組合の共同利用あるいは農村工業の発展とかあるいは近代化を進める場合においては、現在の財務処理基準令というものは農協の大きな発展を阻止しておるような役割を一向において持っておるわけですが、この二点について、農林省事務当局としてどういう考えを持っておるか、明らかにしていただきたい。
  360. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 第一点でございますが、農協法十九条の問題であろうと思いますけれども、これは前々から問題でございまして、いろいろの御意見がございましたが、私どももいろいろ検討いたしまして、農業協同組合というものはやはり自主的な団体でございますので、これの利用を法律上強制するというような形で協同組合連動というものはやるべきものじゃないんじゃないか、協同組合の自主的な活動に期待する、こういう面が非常に大きいと思うのでございますので、この点については法律改正については触れなかったわけでございます。今後もその方針で指導して参りたいと思っております。  それから経理の問題で、財務の問題で財務処理基準令につきましては、おっしゃる通りあるいは農協の活動に非常に障害になる面も現在まではございましたし、あるいは一面からいいますると、農協は今非常に合併をどんどん進め、回りの経済がどんどん進んで参りまするときに、農協といたしましてはこれは非常に財務が弱体化するという面も一画にはございまするので、そういう点を両方いろいろ検討いたしまして実情に合うように改正をする、こういうことで考えております。
  361. 芳賀貢

    芳賀委員 それは農協法の第十九条の本文の規定を私は言っているのじゃないですよ。十九条にはわざわざ組合員の専属利用契約というものが、これは義務条項としてうたわれておるでしょう。それをさらに緩和したり、そのことが行なわなくてもいいというようなものがそれに付随しておるのであって、これをやはり早く処置しなければ、せっかくの組合員の忠誠義務規定というものが、これが何ら、実行不能なものになるじゃないかという点は、これはもう数年前から国会においても議論された点であるが、あなたはそのことを頭の中にのみ込んでおらないから、今回の改正の場合失念したと思うのですが、失念したとすれば、これは責めるわけにはいかぬが、特に大事な点は、あとの財務処理基準令は追って検討してなんという時代ではないでしょう。これは協同組合の固定資産と出資金との関係というものを戦後の農協の健全化のために作った時代には必要性はあったが、しかし現在民間の大企業や大資本がどんどん農村へ進出してきて、そして農村を経済的に支配しようとしておる。その場合の民間資本というものは、過大な設備投資を行なって、出資金と資本と借入金とのバランスも何も考えないで、過熱的な投資を進めて、そうして農村に進出してきておる。一方農業協同組合の場合は、この固定資産と出資のバランスというものは、固定資産一〇〇の場合には、出資金についてはその一四〇以上でなければならぬという点でこれは押えられておるわけだ、基準令の第二条でこれを押えて今日に至っておるわけです。いかに共同化を進めるとか、あるいは設備の拡大をやるといっても、この法律がじゃまをしておる限り、期待に沿った仕事はできないじゃないですか。そういう大事なことを法改正の機会においてやらないで、何も改正する必要のないような無用な点あるいは悪用されるような点だけを悪知恵を働かして、そうして改正法案を出して、いかにもこれが農業基本法関連法案でございます、重要法案ですから、この国会でしゃにむに通して下さいというようなそういう農民を愚弄したような考え方が、農林大臣初め政府農林省に充満しておるということは、これはまことに遺憾にたえない点でありますが、特に財務処理基準令の場合にはこれから検討するという必要はもうないでしょう。それではいつの機会まで最も農協の運営に適応したようにこれを是正する考えであるか。これは局長として責任ある答弁をしてもらいたい。
  362. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 専属利用契約の問題は失念したのではございませんで、先ほど申し上げましたように十分検討いたしました結果、そのままにするという結論になりましたわけでございます。  それから財務処理基準令の問題は実は失念をいたしまして、去る三日前の月曜日に公布をいたしました。ですから、今まで検討いたしまして、財務処理基準令の改正は月曜日に公布をいたしておりまするので、先ほどの御指摘の第二条の問題も、たとえば農業近代化資金であるとか、あるいは農林漁業金融公庫の融資であるとか、あるいは地方の県単でいろいろ融資制度もやっておりますが、そういうようなもので特に政策的に進めました固定資産につきまして計算上からこれを除外して計算しよう、こういうようなことで、とりあえず今の実情に合って前向きで動きますようにという改正案を公布をいたしましたので、公布をしたことを失念いたしましたので、まことに失礼をいたしました。
  363. 芳賀貢

    芳賀委員 その内容がまことに微温的なものであって、あの程度のものでは期待に沿わぬということを特に強調して、これ以上質問をしても大事な点は農林大臣は答弁ができないようですから、一応時間の関係があるので、きょうはこの程度にします。
  364. 野原正勝

    野原委員長 湯山勇君。
  365. 湯山勇

    ○湯山委員 先ほど事務当局へは大臣に御質問申し上げる前提となるような諸点について質問をいたしましたので、大臣には直接大臣にぜひお聞きしたいと思っている幾つかの点をお尋ねいたしたいと思います。  その一つは、構造改善事業を進めていこうということでパイロット地区をお作りになりましたが、大臣のおひざ元の津久井という地区でそのパイロット返上の動きがございました。これは大臣は御存じかどうかお聞きしたいと思います。
  366. 河野一郎

    河野国務大臣 実は神奈川県の津久井におきましてパイロット地区であったものを辞退するとかしないとかいう問題だそうでございます。これははなはだ神奈川県当局に誤解がございまして、構造改善もしくはパイロット地区の指定を受ければ工場誘致は認めないというような県当局の指導方針があるということの誤認に基づいてそういう辞退があったのでございます。事はだんだん各府県にわたって構造改善の希望町村を申し出するように通達をいたしましたところが、神奈川県からその希望が上がって参りません。そこで私は農林部長に面談をし、県の町村会長と懇談いたしましたところが、町村長会長から県の方針として工場誘致について、県としては構造改善の指定町村には工場誘致は認めないということになっておるので、工場誘致を一切拒否されるということであれば非常に困る、自治体の責任者として困るから、そこで構造改善には協力できません、こういう答えでございましたので、その非常に間違っておる点等を指摘いたしまして、特に神奈川県の町村長会の総会に私と県の農林部長が出席いたしまして、そういうことはないということを明瞭に説明をいたしまして、その誤解は解けたのでございます。
  367. 湯山勇

    ○湯山委員 津久井地区につきましては大臣の今のような御理解がおありになるとすれば、その内容についてなお聞きたいことがございますけれども、それは省きます。  ただ、今一つの例でありましたように、構造改善あるいは今回の農地、農協法改正にいたしましても、どうも私は大臣のお考えになっていること、あるいは政府施策が首尾一貫しない。今度の場合も、農地法改正あるいは農協法改正が、構造改善の事業を進めていく、その中心になるものは自立経営農家の育成である、こういうことでございました。そこで先ほど自立経営農家というのは何かということについてお尋ねしたのですが、当然自立経営農家というのは、先般の所得倍増計画の中で二・五ヘクタール耕地を持ち、大体労働力が三名、年間粗収入が百万、こういうものを百万造成する、これが所得倍増計画の中の自立経営農家でございました。そこでそれと今度のとは表裏一体をなしていなければならないと思います。ところが今の御説明によりますと、芳賀委員に対する御答弁の中では、年間大体一万五千町歩ぐらい、反十万円として動くだけの資金の準備しかしていない。あの所得倍増計画の中で議論されたのは、大体十ヵ年間で自立経営農家を百万戸作っていく、ためには百五十万町歩程度の農地の移動が必要である。しかもこれは借地じゃなくて自立経営農家ですからそれを所有する、自作である、こう考えられます。そうすると、今の御説明だと、一万五千町歩ずつ今のような計画でいけば、百年かかる、こんなことになりますので、一体本気でそういう自立経営農家を育成する、そういう政策と取り組んでおられるのかどうか、そこに一つ疑問がございます。それから同じように構造改善事業、つまり大臣の言われる自立経営農家の育成ということから考えてみますと、三町歩という限度の撤廃ということは、制限の撤廃ということは、考え方によれば二町五反程度の自立経営農家を作るという、その政策の足を引っぱるような要素もその中にはあると思います。よほど政府の指導よろしきを得なければ、そういう傾向が生まれてくると思います。  さらに第三番目に指摘して参りたいことは、非常に法律的なことになりまして恐縮ですけれども、先ほど今回の改正一つの中心、生産法人の中の農事組合というのが、今度の改正の中では一つの柱になっております。その農事組合には二種類ございまして、一つ農業経営を行なうことのできる出資農事組合、いま一つ農業経営のできない非出資組合、こう分かれております。自立経営農家の育成という観点からいけば、当然非出資の農事組合、ここに重点が置かれなければならないと思います。出資農事組合というのは、これは農業を共同して経営する法人でございますから、これは大臣政府の今まで言われる自立経営農家ではございません。そこで先ほど事務当局にお尋ねをいたしますと、農事組合のほんとうのねらいといいますか、ほんとうに仕事のできていくのは非出資の方ではなくて出資農事組合、つまり法人が農業経営を行なうそこに重点がある、それについては納得のいく説明がございます。ところが非出資の農事組合については、現在の実行組合、任意組合であっても法人になってもそんなに大した変わりはない、それはどちらでも都合のいい方を選んだらいいのだ、こういう御説明が事務当局からございました。しかしせっかく法律を出しているのだから、何かいいところがなければ進めていくことにならないじゃないかというお尋ねを再三いたしまして、ようやく、法人ということになれば、その主体性も明確になるし、多少税制の方の恩典を受ける可能性もある、こういう御説明でございまして、今度の改正一つの焦点になっておる農事組合というのは、明らかに自立経営農家の法人というものは、共同作業を行なうとか、あるいは共同施設を持つ程度の法人というものは極端な言い方をすればあってもなくてもいい。ないよりはあった方がましな程度の御説明があったわけでございます。  以上のような点を、三点でございますが、以上の三点を勘案して参りますと、実は今回の改正は自立農家の育成である、こういうことを大臣もおっしゃったし、提案説明にもそうおっしゃっておられるし、それにそれの補いとして協業化を進めていく程度である、こういうことでございましたけれども、実はこの法案の内容を見て参りますと、今のように、全くそれとは違った、しかも別にいろいろ心配しなければならないような要素を持っている、これではたして大臣が言われるような自立農家の育成ということができるかどうか。そのことを肯定したとしても、できるかどうかということには大へん大きな疑問があるし、この法律の建前から見ていけば、むしろそれに逆行する、あるいはそれの足を引っぱる、そういう要素があると思います。そこでそれらの点について、一体大臣はほんとうにこれでやれるという確信がおありになるかどうか、おありになるとすれば、いかなる点でそういう確信が持てるのか、その点をこの際明確にしていただきたいと思います。
  368. 河野一郎

    河野国務大臣 お示しのような三点でございますが、その前段として、こういう点について御考慮いただきたいと思うのであります。と申しますのは、先ほどからもいろいろお話がございましたが、われわれが農業基本法の精神にのっとりまして、日本農業のあるべき姿、自立農業の達成もしくは農家の福祉の増進というような目的達成のためには、これでよろしいというような万能薬は私はなかろうと思います。日本の農村のあるべき姿から勘案いたしまして、いろいろな薬を必要に応じて調合して参らなければならない。従ってこういう点についてこういうことがあるならばやりやすいということがあれば、できるだけ努力をして、そのやりやすい方法に裏づけていくようにする必要がある。まず農業基本法におきまして、従来に増して経営規模の拡大ということが基本になって考えらえます場合には、どうすれば経営規模が拡大していくだろうか、自立農家がどうすればできるだろうかということについて、まず考えられるのは農地の問題についてこれをどうしたらば農地の統合ができていくか、農地の移転ができていくかということについて当然考えられる問題だと思うのでございます。その他におきましても、必要なことがあばれ当然行なわなければならないと思うのでございまして、またそれによって生ずる弊害がある、二町五反歩が三町歩にすることによってかえって害があるじゃないか、こういうことでございますが、それは御承知通りに、全国によっていろいろ場合がございます。事情もあります。従ってわれわれは、ただむやみに大きくなり過ぎるというものについては行政の指導等によりまして、資金の融通等によりまして、それを押えていく、必要な面もしくはこれを利用することによって助長せられる面を十分に活用いたしましてやって参るというつもりでございます。  また農事組合の点につきましてお話でございますが、これもまた農村の実情におきまして、農村が完全な共同作業もしくは協業、もしくは協同組合の整備拡充というような、あくまでも私は農村における作業の面におきましても、経済交流の面におきましても、共同して大資本に対抗するということが必要であると同時に、ものの動きにおきましても、なるべく大量のものが動くということは経済であることは申すまでもございません。それら諸般の点を勘案いたしまして、なるべく共同の精神を涵養して参る、その場を作る、そういう方法に育てていくというような意味において、諸般の点を勘案いたしまして、わわわれといたしましてはこの方法を選んだのでございます。
  369. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣の御答弁によってこういうふうに私は解釈ができるのではないかと思います。大臣が最初おっしゃったように万能薬がない、そこでこういう方法をとって、それではたして思う通りいくかどうかわからないけれども、ともかくも善意をもってこれを一生懸命やっていくのだ、その上で実情によって合わないところは改めていく、あるいは進めていくところは進めていく、こういうことであって、これによって自立経営農家の育成ということが必ずでき上がる、そういう確信はないんだ、こういうふうに受け取ってよろしいのでございましょうか。
  370. 河野一郎

    河野国務大臣 これによって相当の目的の達成はできる、しかしこれですべてができるとは確信はございません。まだまだ地方の実情によりまして付加して参らなければならぬところもございましょうし、また場合によりましたら改善する必要も起こってくるかもしれません。とにかく大方針として、基本方針としてはこの考え方でいきたい、こういうつもりであります。
  371. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、もし自立経営農家の経営規模の拡大ということをほんとうにやろうと思えば、大臣にはすぐできることもあるはずでございます。こういう制限の撤廃だとかあるいは信託行為とかそういうことではなくて、たちまちおできになるのは国有林野の開放、そういうことならば、これは大臣の職権をもってすぐおできになることでございますが、そういうことをまずおやりになるのが先ではないか。それについては大臣は何か具体的な御計画をお持ちでございましょうか。
  372. 河野一郎

    河野国務大臣 私はそれについては全く同感でございまして、保安林に属するものもしくは山として相当の水源涵養その他植林としての機能を果たすべき必要性のあるものを別といたしまして、原野その他開放することが適地である国有林等の開放につきましては、これまで申し上げました通り現に林野庁に調査を命じまして、必要な面については明年度からぜひこれを実行に入りたいということで立案を命じてある次第であります。
  373. 湯山勇

    ○湯山委員 時間がございませんので、今御答弁になりました中の一番問題になる点をお尋ねいたしたいと思います。それは農事組合についてのことでございます。大臣はやはりまだ法案の内容をよくおのみ込みになっておられないように感じますのは、農事組合には二種類ございます。一つは農事組合みずからが農業を経営する農事組合、いま一つはみずからは農業経営を行なわない、そういう農事組合、二つがございます。自立経営農家の場合には、法人みずからは農業経営を行なわない。つまり共同施設とか共同作業とかだけしか行なわない農事組合でございます。そこで、ここは大事なところですから、その共同施設、共同経営を行なう農事組合法人については、この法律の中では大して期待をしていない。現在も実行組合というものがございます。この共同施設あるいは共同作業等については実行組合でやってもいいくらいだ、必ずしも法人にする必要はない、こういう答弁がございました。そのことを先ほど申し上げたわけで、実は自立経営という方針からいえば、今申しました共同施設、共同作業の方に重点があって、この法人化についていろいろな恩典があって、それならやろうという意欲を起こさせる、こうでなければならないのに、それはそうではなくて、共同運営の方はこの法律によっていろいろ保護され、その他の恩典もございます。そうすると農事組合というのは自立経営農家にとってはすでに実行組合を作っておる、そういうものについては大して利益のないものではないか、こういうことになっておるわけです。そうするとこれは先ほど申し上げました自立経営農家の育成ということとは重点の置き場所が違ってやしないか、こういうことでございます。
  374. 河野一郎

    河野国務大臣 私たびたび申し上げます通りに、日本の農村は古来からの風俗習慣等によって非常に固陋のものがございます。従ってこれを一律に一つの方法、一つの手段をもって律することは困難でございます。たとえば名前が違っても非常に食いつかれるものもあれば、名前が違うためになかなかそれが浸透しないものもあるわけでございます。従って私は、農村においてそれが非常に取り入れられやすい方法を勘案いたしまして、そして農村の便宜、農村の実情に適したものをもって奨励するということが必要であろうと思います。農事実行組合とこれと違うのじゃないか、どっちでもいいじゃないかというような御意見もあるかもしれませんが、またこれにはこれのよさがあるというようなことで、われわれとしては奨励して参りたいと思うのであります。
  375. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣の御答弁は、私のお尋ねしておることにはお答えになっていないのですけれども、それは大臣法律をよく御存じないのだからいたし方ないと思います。そこで大臣がお答えになられることをお尋ねいたしたいと思います。  自立経営農家の育成ということだけで今後の日本農業を進めていっていいかどうかということでございます。この法律の中にも今のような矛盾点がございますし、それから所得倍増計画を進めていくその中においても、そういう従来言われておった自立経営農家の育成ということの基本線は変わってきておると思います。これは大臣はお認めになられますか。
  376. 河野一郎

    河野国務大臣 これは別の機会に私は湯山さんにお答え申し上げたいと思います。私は兼業農家について新しい角度から検討をし、兼業農家の育成も大いに日本農業の新しい手段として大事である、これについてもわれわれとして十分な考慮を払っていく必要があるということを私は考えております。従いまして、わが国産業全体のあり方から勘案いたしまして、農業のあるべき姿につきましては、地域的に立地条件その他からいたしまして、いろいろな姿のものを考えねばなるまい。もちろん農業として自立経営農家を主体として農業のあるべきものを創造しなければなりませんけれども、大都市周辺農業等につきましては当然兼業農家についてその育成強化をはかって参るということも必要でございます。これも農林行政として重大な役目の一つであると考えております。
  377. 湯山勇

    ○湯山委員 最後に大臣にお尋ねいたします。  それは大臣は非常に視野の大きい方ですけれども、ただいまの御答弁は逆に非常に視野を小さくしてお答えになられたと思います。私がお尋ねしておるのは、日本農業の将来を考えた場合に、自立経営農家の育成ということを旗じるしにしていって、はたしてそれでいいかどうかというのは、もっと大きい視野からお尋ねいたしたわけでございます。今日本農業の立ちおくれておる大きい要素は、先進国に比べて近代化が進んでいない、そういう問題が一つございます。そうかといって東南アジアのような、ああいうプリミティブな形ももはやとれない状態にある。そうすれば一体原始的な農業に比べて自立家族経営というものがどうなのか、それから先進国の近代的な農業に比べて自立家族経営というものがどうなのか。そういうものを見ていったときに、今後国際的な中に立って日本農業発展していく、少なくとも日本農業が立っていく、そういうことのために、そういう今大臣が言われたようなことでいいかどうか。兼業農家のことを考えていくんだとか、自立農家を柱にしていくんだ、そういうことで一体日本農業が立っていくかどうか、そういうことを考えて参りますと、そんないつまでも自立経営農家、自立経営農家で、しかもその自立経営農家の足を引っぱるような制度までできておる、それで一体いいかどうかということで、そういう意味から、そういう広い観点、池田内閣の言われるような大所高所からいつまでもそんな自立経営農家ということでいいのかどうか、これをお尋ねしておるわけですから、これは一つ大臣のうんちくを傾けた御答弁を願いたいと思います。   〔「行き当たりばったりじゃだめだ」と呼ぶ者あり〕
  378. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、——行き当たりばったりだということでございますから、この間から申し上げたいと思っておりましたことを一つお聞き取りいただきたいと思います。  私は大臣就任以来、いやしくも私の考えとして発表いたしたものは直ちに事務当局に立案実行について命令をいたしております。その命令いたしたものの進展の状況につきましては、月二回これを報告せしめております。最近わが池田内閣は閣議におきまして、各省ともこの方針にのっとりまして、各省はそれぞれの施策を毎十五日ごとに内閣に提出することにいたしております。従って、いやしくも一たんこれを外部に発表したことにつきましては、いずれもそれぞれ施策としてこれを、実行に移しておるわけであります。またこれを実行に移すべく努力をいたしておるわけであります。従って言いましたことが、その場限りであるとかなんとかいうような御非難は一つごかんべんをいただきたい。ただ党派が違うとは申しながら、農村は非常に皆様のような有力な方の御発言はこれを信用いたします。そういたしますと、どちらがほんとうかわからぬで、不安動揺が起こります。これらが農村の青年をしていたずらに不安の結果離れさすもとになると思いますから、どこまでも建設的にわれわれは農村を指導して参りたいと思うのでございますから、どうか一つ協力を賜わりたいと思うのであります。お小言はお小言で幾らいただいてもけっこうでございますが、いやしくも無責任な発言は一つお控えいただきたい。私が悪ければ、いかようにも私は御説明を申し上げますし、事情も申し上げて御了解を得たいと思うのでございます。  第二に、ただいま湯山さんの御質問でございますが、私は先進国という言葉は認めますけれども、先進国農業という言葉は認めません。私は世界各国にそれほど先進した農業があるとは考えておりません。従ってそれぞれの国において、恵まれた条件のもとに恵まれた農業をやっておるものはございます。これはわが国が恵まれない条件にありまするから、また、たまたま明治以来のわが国農政が誤っておりましたために、非常に零細農業わが国に現存しておるのでございますが、これは過去のことでございます。そこでわれわれはこの零細農業をいかにして自立先進した農業にいたすかということが命題でございます。その意味におきまして、私はあくまでも日本農業が世界唯一の先進した農業にあらしめるためには、どうあるべきかということについてお互い考えていく必要がある。その場合にわれわれは恵まれない土地、これはもう宿命的なものであると私は思います。いかにこれを努力いたしましても、欧米のそれのごとく十町歩、十五町歩の牧野を持って、そこに酪農を経営するというようなことは、なかなか困難でございます。従って日本農業には日本農業のあるべきものをここに創造する必要がある。それは何かと申せば、土地と、それに乏しいながらも各方面の理解を得て、資本を大幅に低利の融資をする、それに近代化した技術を加えて、その上に農業を打ち立てていくということであると思います。いかにしてこれを実現するかというところにわれわれの使命があると考えます。これを一朝にしてよくすることはなかなか不可能でございます。従ってこの道を達成するために、あらゆる角度から積み上げて、そしてなるべく早い機会にこの達成に努力することがわれわれの使命であると考えておるのでございまして、そこにわれわれは、社会党の皆さんとともに農村に対する愛情を持ってこの積み上げを競争して参ることが両党のお互いの責任であると考えておるのでございます。(拍手)
  379. 野原正勝

    野原委員長 ただいま議題となっております四案中、内閣提出農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案に対する質疑は、これにて打ち切ることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  380. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。   〔「まだ質疑が残っているじゃないか」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕     —————————————
  381. 野原正勝

    野原委員長 これより、農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  382. 安井吉典

    安井委員 私は、討論に入る前に、ただいまの質疑打ち切りに際しましての委員長態度に不満の意を表したいと思います。多くの質問通告者があり、保留者があり、かつまた要求大臣出席をも得ないままに質疑打ち切りの措置に出たことをきわめて遺憾に存じます。  私は、日本社会党を代表し、政府提出農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案、両案に対し、反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)  まず政府提出法案につき、改正の要点を見まするに、農地等の権利取得の最高制限の緩和は、現在政府のいわゆる自立経営農家を確立するといたしましても、平均一町歩にも満たない現在の経営構造を少なくとも二町五反程度に保有の低い階層を引き上げることが急務であり、これには現行三町歩の制限規定で十分に間に合うにもかかわらず、主として自家労力によりというがごときあいまいな限定のもとに三町歩の制限を取り払うことは、すでに三町歩以上を保有しているたかだか二%程度の農家その他の富農層の高度成長に実益があるのみであり、土地は上層農に集中し、中農、下層農との間の階層間の格差を一そう拡大せしめ、ついにはこれらを農業の中から締め出そうとするものといわねばなりません。  次に、今日のような内外経済情勢の中で、自立経営といっても発展の限度があり、われわれは自作農の共同経営体としての農業法人にこそ多くの期待を持つのでありますが、改正法案による農業生産法人の規定では、農事組合法人及び会社形態の多様な制度を混在させ、いたずらな農村内の混乱を招くおそれがあり、法人構成資格については、不耕作者の出資をも認めることにより、自作農集団であるところの本旨をそこなうものでありますとともに、法人の管理や財務の運営の指導に確固たる方針がなく、農民の創意による法人経営をいたし方なく認めるといった態度で、残念ながら今度の日本農業の構造的発展のにない手として農業生産法人を位置づけ、助長発展させようとする政府の配慮も熱意も見受けられず、農民の期待を全く失うものであります。  次に、農地の信託制度を農協に新設することは、売り渡し信託の場合は不在地主の存在を一時的にも認めることになり、他面農民首切りの道具とされるおそれが多分にあり、貸付信託の場合も、貸付農地の返還について耕作農民に対する農地法の保護は停止され、地主及びその委託者である農協の一方的土地取り上げを許すものであり、かくては農地制度の根底をゆるがし、農民を農協から離反せしめる結果ともなりかねないことを指摘しなければなりません。  なお国の被買収農地の処理については、農業構造の改善に資すべく、たとえば農業協同化を助長促進するため、優先的に農業法人に売り払うこと等の方向が当然とられるべきであると考えられるにもかかわらず、今次改正では売り払い対象を旧所有者優先、しかも旧所有者の一般承継人にまでこれを広げ、旧地主補償への筋づけとすら解されるおそれのあること、さらには農業協同組合運営に関する規定の改悪、その他法案の中に随所に多くの反農民的な問題点をわれわれは見ることができるのであります。  以上の両法案に見る問題点よりして、私は以下結論的に反対の理由三点を申し述べます。  第一に、政府及び自民党は、さきに農業基本法を野党や多くの農民の反対にもかかわらず、はなはだ理不尽なやり方をもって国会を通過させました。その農基法の本質は、農民所得の向上を口実に、高度経済成長を謳歌する大企業の膨大な労働力需要に呼応し、多数の農民を農業から追い出し、大企業に供給しようとするものであります。昨今の政府統計によっても、農家所得はわずか上昇はしたが、他産業との格差はかえって大きく拡大し、農業就業人口は、経営者や跡取りをも含めて、おそるべき勢いで流失しつつあることを明らかにしているのであります。今回の農地法農協法改正は、かかる農民首切りの農業基本法構想を決定的なものにするものであり、そのギロチンの役割を演ぜしめようとするものであり、われわれの絶対承服しがたいところであります。  次に、私は、中近東や東南アジア諸国の農民がいまなお封建的土地制度のもとで農奴的存在に苦吟しており、農業だけでなく、それらの国の産業経済発展にとり大きな障害になっていることを見ますとき、戦後わが国の農地改革は、戦前に比べ日本農業生産力の驚くべき上昇と、今日の国民経済発展の大きな基礎になっていることを今さらながら思わざるを得ません。かくてわれわれはその地主的土地所有制からの農民解放の成果をあくまでも維持しつつ、農業と農民生活の前進発展を期さなければならないのにもかかわらず、今政府与党は逆に農地改革の基盤を切りくずさんとしているのであります。これにより農村内の上下格差を拡大し、ついには貧農のいびり出しの結果を生ずることは明らかであります。これが私の反対の第二の理由であります。  第三に、旧地主補償の問題について、全く筋の通らない政府の旧地主に対する国民金融公庫融資案、さらに自民党の膨大な補償額を見込む常識はずれの報償案、これらに対し今日国民の世論は総反撃を加えているのであります。今度の農地法改正は、その道づけ、理論づけとされるおそれがあるのであります。現に河野農林大臣がそのような不用意な発言をしているのでありまして、かかる危険な道に通ずるおそれのある法案にわれわれは断じて賛意を表するわけには参らないのであります。  以上私は政府提出法案に対する反対の理由を申し述べましたが、最後に、過般日本社会党は、池田総理並びに自民党総裁に対し、政府の目にあまる反農民的農政の展開に関し公開質問状を発しました。しかし、今もってこれに対する回答や反論が参っておりませんことは、政府、与党の農政担当に対する自信喪失を物語るものであります。私は、今日の農村が、池田総理の言う民族の苗しろどころか、独占大企業による労働力の草刈り場となり、田園荒れなんとする現状を前にし、自民党内閣が独占資本本位の政治から一日も早く離脱し、貧しい零細農の一人々々まであたたかな愛情を注ぐ正しい農政方向に転換すべきことを強く要求し、政府提出法案に絶対反対の意を表明し、反対討論を終わるものであります。(拍手)
  383. 野原正勝

    野原委員長 米山恒治君。
  384. 米山恒治

    ○米山委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案に対して賛成の討論をいたしたいと思います。(拍手)  最近におけるわが国経済高度成長の中にあって、農業とそれを取り巻く諸条件には著しい変化が生じてきているのであります。この変化に対応いたしまして、農業産業経済の重要な一部門として、他産業におくれをとらないようにするためには、農業経営規模を拡大し、農業経営の近代化、合理化をはかることが喫緊の重要事であると考えるものであります。両法案は、この要請にこたえるために、農地法基本原則を維持しつつ、農地等の保有を認めて、経営規模の拡大に寄与しようとし、農業の経営または共同利用施設に関する事業を行なう農事組合法人の組織を創設し、さらにまた農業協同組合農地等の信託の引き受けの事業を行なう道を開いて、農地等の流動化の促進をはかろうとする等、まことに時宜に適した措置であると考えるものであります。このことは、昨日、当委員会において行なわれた参考人の陳述を聞きましても、四参考人がすべて両法案に賛意を表せられ、法案が一日も早く成立することを希望された事実に徴しても明らかなことであると存ずるのであります。  農業基本法の具体的実施にあたり、両法案による以上の諸措置のほか、政府、自民党においては、農業近代化資金を初めとする各種金融措置や、農業基盤整備のための各種事業など、農業経営を発展させるためのもろもろの施策を行ない、これら相持って、わが国農業の近代化、合理化をはかり、農業生産力の飛躍的な発展をはかろうとするものであります。  このように、現在わが国農業が置かれている実情に最も適合していると考えられます両改正案に対して、日本社会党が全国耕作農民の心からなる要望を無視し、単に抽象的な観念にとらわれて反対をいたされますることは、全国六百万農家のためにも私はまことに遺憾と存ずるのであります。(拍手)  私は、両改正案が、現在の日本農業の実態に最もよく即応するものであることの趣意を申し述べて、両法案に対して賛成の意を表する次第であります。(拍手)
  385. 野原正勝

    野原委員長 これにて討論は終局いたしました。  農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。  両案に賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  386. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、両案はいずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)     —————————————
  387. 野原正勝

    野原委員長 この際、稲富稜人君外一名より、ただいま可決いたしました両案に対し、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨弁明を許します。稲富稜人君
  388. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、自由民主党、民主社会党共同提案によるただいま採決されました農地、農協両案に対する附帯決議を付する旨の動議を提出いたします。  その案文を朗読いたします。     農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、左記各項に留意して法律の施行に当るべきである。       記  一、改正後の農地法第三条第二項第三号及び第四号の規定により都道府県知事農地等の権利移動に関する許可をするに当っては、農地制度の趣旨に背反しないよう厳格な運用を行なうこと。  二、農業協同組合の行なう農地等の信託事業の運営に当っては、これが農地法基本理念にもとることとならないよう充分留意すること。  三、農地等の貸付信託の実施に当つては、その信託期間を可能なる限り長期間になるよう指導しもって借受け耕作農民の経営の安定を図ること。  四、農地等の流動化を促進するため農地等の取得資金について長期低利の新融資制度の設置を検討すること。  五、農業経営の合理化農業経営規模の拡大強化に資するため、速やかに相続の際の経営細分化の防止に関する特別の措置について検討すること。  六、農事組合法人の健全な発展を図るため、農業協同組合と農事組合法人との間に無用のまさつを生ずることがないようにする等農事組合法人に対する万全の指導助成に努めること。    右決議する。  その内容の説明につきましては、すでに数次にわたりまする論議を尽くして十分でございますので、これを省略いたします。  何とぞ御賛成をお願いいたします。(拍手)
  389. 野原正勝

    野原委員長 稲富君の動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  390. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、稲富君の動議の通り両案にそれぞれ附帯決議を付するに決しました。  この際、政府当局よりただいま議決いたしました附帯決議に対する所信を求めます。河野農林大臣
  391. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議の精神を十分尊重いたしまして、行政の上にあやまちなきことを期したいと考えております。     —————————————
  392. 野原正勝

    野原委員長 なお、両安議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  393. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十一分散会      ————◇—————