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1962-04-12 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邊 國男君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       中山 榮一君    福永 一臣君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    川俣 清音君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野一郎君  委員外出席者         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局監察審         議官)     片山 一郎君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局監察         官)      池上 正紀君         農林事務官         (農地局参事         官)      富谷 彰介君         農林事務官         (農地局農地開         発機械公団監理         官)      佐伯 悟郎君         会計検査院事務         官         (第四局長)  宇ノ沢智雄君     ————————————— 四月十二日  委員東海林稔君辞任につき、その補欠として川  俣清音君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月十一日  漁業法の一部を改正する法律案角屋堅次郎君  外十一名提出衆法第三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地開発機械公団法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五三号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出、第  三十九回国会閣法第六六号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第六七号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  農地開発機械公団法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昨日来、機械公団改正法について事務当局にお伺いをして参ったわけでございますが、この質疑の途中でぜひ大臣の御見解を承らなければならない問題が出て参りましたから、以下数点にわたって大臣に関する問題だけにしぼって質問をいたしたいと思います。  この開発機械公団は、本三十七年度から、いわゆる無出資の法人であったのが、政府が一億五千万円の出資をする。それから今までの赤字の累増しておったものを、今度新しく一億五百万赤字の補てんを行なう、そうして、さらに修理難業ども含めまして国からも国有機械現物出資をして、ほんとうに新しい装いを施して出発するわけでして、非常にこの公団発足に対して期待するところも多いわけですが、過去数年にわたる設立以来の公団運営を見て参りますと、そのいろいろな欠陥の多くは、公団自体運営責任であると同時に、国の指導性欠除、こういう点にその原因のある点が多いわけです。こういう点で昨日も、国の指導が全くなっていなかったではないかという点の指摘をして参ったわけです。そういう点について、農林大臣は、この公団というものについていろいろ欠陥が過去あったわけですが、国の公団に対する行政指導、そういう面でどのような責任を持って指導してこられましたか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、この機械公団は創立の当初、たしか昭和三十一年か二年だったと記憶しますが、大規模開墾をいたしますにつきまして、政府がその開墾機械をアメリカから購入をし、資金を向こうに求めてやっていこうということで、今お話通り政府出資はなく、借入金で機械を買って、その機械を活用することによってペイしていくというところに少々無理があったと思います。しかし、何にしても当時大規模開墾が非常に要望せられておるときでございましたので、政府としてもあえてこの処置をとったわけであります。その後、その仕事が引き続き各地に十分にあればむろんそういうことはなかったと考えますけれども目的とする大規模開墾がだんだん終わりを告げまして、その後その機械を十分に活用することができなかった、もしくは各地運搬して使わなければならぬというようなことのために、運搬その他、稼働日数欠除等のために、公団が十分に経理的にペイすることができなかったということと私は考えます。むろんその間においてすみやかに大規模開墾のある程度の終了とともに切りかえる必要があったと考えますけれども、その処置が多少おくれた点に御指摘のように赤字も出てきたというふうに私は考えます。従って、私就任以来直ちに過去の検討をいたしますと同時に、将来について改組の必要を認めまして、今回法案を出して御審議いただいておるわけでございます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 行政管理庁監察局行政監察報告によりましても、農林大臣がこの公団に対して直接指導する面は非常に多いわけですね。たとえば予算書あるいは業務方法書等認可の問題、あるいは決算承認の問題等々多いわけですが、特に予算認可のごときは、公団が申請をして、そして大臣がそれを認可されるのに一年近くもかかる。従って、公団認可がされないままに予算執行をやっておる、こういう状態ですね。それから業務方法書認可の問題についても、非常に認可がおくれておる。全く国の行政の的確さがないと断言してもはばからないくらいの事務の停滞です。こういう点について、大臣はどのようにお考えになるのですか。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 過去においてそういうことを私も知りましたので、今回の改組をいたしたわけでございます。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると今後公団が新しく発足するにあたって、政府からも出資をするわけですが、過去においては公団は自分の業務確保するのに精一ぱいで非常な無理をやって参ったけれども、今後国が責任を持って指導されるというならば、たとえば事業確保についてどれほどの法的あるいは制度的な裏づけがあるか、この点についてお伺いしたい。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 これまでの公団発足経緯は、ただいま御説明申し上げた通りであります。当時私、農林大臣をいたしておりましたので、多少の経緯を御説明申し上げたのであります。その後の運用におきまして遺憾の点がございますので、今回大臣に就任いたしますと同時に、今申し上げた通り改組をする、また御承知通りに、これまでにおきましては、国のやる大規模開墾にこの機械を使う、もしくは地方から要請があった場合には使うということでございまして、国においてその事業がない場合には、公団が積極的に働く余地が非常に少なかった。ところが御承知通りに今後におきましては、社会党さんでもおっしゃっておられるように、何さま狭い耕地を広げていこう、経営規模を拡大していこう、私もこの国会始まって以来申し上げております通りに、原野開墾等についても大いに積極的にやろう、それにいくことが必要であるということを御説明申し上げております通りに、今後におきましては、これら原野開墾等について、この公団の使命は相当に大きいものがあるというふうに考えておるわけでございます。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 要するに、国の行政指導によってこれをやっていくということなんでございますが、しかし、ただ行政指導でやるやると言っても、それに何らかの法的な裏づけあるいは制度的な裏づけがないならば、事業確保すると言ったって何の保証もないじゃないですか。ただ行政指導でやるやると言ったって、今までだってそうであったわけです。こういう点で、この法案を見ましても、そういう裏づけ制度的にも法的にもちっともないわけですね。従って、もし大臣が国の責任でこの事業確保をやっていくと替われるならば、それをどういうふうに、たとえばその保証について制度的に何かお考えがありますか。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御説明申し上げました通りに、時代耕地を必要としない、田畑等開墾は不必要であるという時代発足いたしますならば、法的なこういう規定があるとか、制度的なこういう裏づけがあるということでなければ不安ではなかろうかということはごもっともと考えます。しかし、国をあげて原野開墾をしなければならぬ、有畜農業、酪農の振興を期さなければならぬ、構造の改善をしていくべきだということは国家的な要請であります。この要請にこたえてこの機械をフルに動かしていくべき時代がきておる。すでに事務当局から御説明申し上げたと思いますが、中小のものについては県にそれぞれのターミナルを置き、また大規模のものについては国に置く、両々相待って国内の耕地の完璧を期していこうという建前でやっておるのでありますから、ここに制度的、法的な裏づけがあるとかないとかいう問題ではない。その一歩前のものであるというように私は考えております。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 新しい改正法によって、業務計画大臣責任を持って認可をされることになっておるのです。そういう条項ともからんで、これは一年たってみないとわかりませんけれども、十分その点の、今大臣がおっしゃられたようなことが実際に一年たって現われるかどうか。それは責任を持って、一年たってでもいいから御答弁できるようにしていただきたいと思うわけです。  それから大臣公団に対する監督指導は、実際には公団におられる監理官を通じてなされるということになっておるわけですが、農林部内とこの監理官との責任分野というものは一体どのようにお考えになっておるのか。この行管の勧告にもありますように、これが非常に不明確であるということが指摘されておるわけです。従って事務遂行上に非常に大きなそごが出てきておる、このように指摘されておるわけです。そういう点も大臣自身が何らかの新しい抱負なり決意をこういう点を通じてでも出していただきませんと、実際にそこで責任を持って指導すると言われても具体性がちっともないわけでして、この改正案を中心にして国側の明確な責任を示していただきたいと思うわけです。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 どういうふうに制度がなっておりましても、行政上遅延があり、怠慢がありますれば、これは遺憾な事態が起こることは当然でございます。これが監督について、監督上遺憾の点が第一にございますならば、どういうふうな制度法的根拠がありましても私はだめだと思うのであります。従いまして私といたしましては、最善を尽くして指導監督して参り、いやしくもこういう事態を再び起こさぬようにする決意でございます。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今からの質疑は直接大臣にではありませんが、一つ大臣はよく聞いておっていただいて、あとで大臣見解を求めたいと思うわけです。  昭和三十五年度決算検査報告会計検査院から出ておるわけですが、との開発機械公団に対する報告が出ております。この内容を見ると、これは完全に公団運営の失敗の報告ですね。赤字もこれほど出ておる、その赤字原因はこれこれしかじかであるという報告が出ておる。これは内容は全く不当であると思うのです。ところがほかの報告を見ますと、不当事項あるいは不法事項としてそういう問題がちゃんと処理されて出されておるのに、機械公団の問題は、内容は明らかに不当であるにもかかわらず、不当事項の中に入れてない。これはどう理由でしょう。
  14. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 お答えいたします。  各省所管の分につきましては、それぞれ不当と認めた事項各省所管の分に不当事項という見出しの下に掲載してございます。それからたただいま問題になっております農地開発機械公団その他の企業体につきましては、個々の不当事項という点に着眼して検査することももちろん必要でございますけれども、やはりその事業の全体の運営というような点に着眼して検査することが重要ではないかということで、総体的な観察もちろんその中には、必ずしも不当事項という表題はついておりませんけれども不当事項という意味も含めまして、全体的な観察からそういう表示をしたわけでございます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはしきたりはそうかもしれませんが、たとえば農林省関係不当事項のところで、非常に措置を誤ったために不経済な結果が出ておるというような事項不当事項に載っておりますね。そうするとこれはやはりきちっと不当事項として指摘をしていただいた方がいいのではなかろうか、重ねてお伺いいたします。
  16. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 御趣旨の点は、十分今後研究して参りたいと思います。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今会計検査院からのお答えのように、この公団運営内容は、三十四年以前もそうでございますけれども、三十五年度についても明らかに不当事項であるということを明確に御答弁になったわけです。  さらにお伺いしたいのですが、昨日参事官の方から、公団機械稼働の問題について、ほとんど稼働していないものがあるという行管指摘について、これは行管の方のミスである、この印刷ミスであるというようなことを言われたのですが、この報告書の中の特に機械稼働の項について、国の方では、印刷ミスかあるいはその指摘ミスかよくわからなかったのですけれども、そういう指摘をやっておるのですが、行管のお考えをお伺いしたいと思います。
  18. 片山一郎

    片山説明員 お答え申し上げます。  私の方で稼働が悪いというふうな調査結果を出しましたのは、すべて公団側資料に基づきまして調査した結果でございます。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、きのう参事官のおっしゃったことはどういうことになるのでしょうか。公団資料に基づいてこういう指摘を行なったと今お答えがあったのですが……。
  20. 富谷彰介

    富谷説明員 昨日申し上げましたのは、備考の欄にございます、多少稼働しておる模様であるが、資料が十分整備されていないので不明である、この備考の欄が上までかかるそのミスプリントであるということを申し上げたのであります。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たといそうであっても、私が指摘したことの反論には全然ならないじゃないですか。私どもがいただいておる資料の三十二ページの備考のところでございますが……。
  22. 富谷彰介

    富谷説明員 私は昨日もさように申し上げたわけでございまして、きのうも、それから参考人公団理事長さんもこの点に関してお話がございましたように、資料の整備が非常に悪いのでございますけれども、全然稼働していない事実は、確認はちょっとむずかしいのではなかろうか、かように考えております。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大体確認がむずかしいというような答弁があるのですか。全然でたらめではないですか。そういうことを御答弁になるというのはおかしいじゃないですか。行管は、今もお答えのように、公団資料に基づいてこれを検討し指摘をしたとおっしゃっておるんですよ。行管ミスだと今言われておるのですが、行管どうでしょうか。
  24. 片山一郎

    片山説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、公団側資料によって調査をいたしました。ただこの備考にございますように、資料が整備しておりませんために、全然稼働しておらぬかどうかということをはっきりつかむことは困難なものも中には若干あったということでございます。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今の御答弁と国の方の御答弁は明らかに食い違っておりますね。しかも国側の御答弁は、確たる資料がないからさだかにはわからないというような御答弁ですね。これは全く事務的にも整備されていないということをみずから告白されたような結果になるわけですが、この点についても、今の質疑を通じて、大臣お聞きの通りなんですが、お考えがあったらお伺いをしたいと思います。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど私がお答えいたしました通りに、この公団発足の当初が、根釧を初め青森の何とかいうところの大規模開墾をやることが目的発足いたしました。そういうことに、所要機械を取りそろえたところが、その後開墾規模がだんだん小さくなったというようなことから、していない機械もあると私は考えます。そういうことからして、またそれの運搬等のために非常に金がかかるから、それを持ち運んでやるということは、計画的に事業遂行がうまくいかなかったというようなことのために、こういう結果に相なったことと考えまして、お答え申し上げたわけであります。従って、今御指摘のようなこともあろうかと私は考えます。しかし、そういう点を勘案いたしまして、今後は中央・地方を一体化しまして、国には大型機械をそろえ、中型、小型の所要のものを県の希望によって県に補助いたしまして、県にそういうふうなターミナルを作り、大型、小型相関連して国の開墾を進めて参るという計画でございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 さらに昨日、公団法附則の九条に関連をいたしまして、国の受託工事契約、これは国庫債務負担行為であるかと聞きましたら、監理官はそうですとお答えになったわけです。その通り間違いございませんか。
  28. 庄野五一郎

    庄野政府委員 附則九条によりまする交付金特別事業でございますが、それの交付金の問題でございますが、これは財政法によりまして、法律による負担行為、こういうことになるということでございます。国会承認は要らない、こういうことに相なっております。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ここに書かれておるように、「その借入をした日の属する年度の翌年度以降五箇年度以内に、公団に支払う」これは全く、今おっしゃいました財政法十五条の三項を見ますと、明らかにこれは内容的には国の債務行為ですね。その点はどうでしょう。
  30. 庄野五一郎

    庄野政府委員 財政法十五条によりまして、「法律に基くもの」という、こういうことになっておりまして、の予算の中に事業費として計上いたしますその事業費の中から公団に交付する、こういうことになります。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、一般会計の国の債務に関する決算報告の中には当然これは出てくるはずでございましょう。
  32. 庄野五一郎

    庄野政府委員 国の債務ということじゃなしに、国の事業費として予算に計上されておりますので、その予算執行の段階において事業費として、交付金として公団に交付されるわけでございます。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 おかしいではないですか。これは五年間に国が公団に支払うのでしょう。だから毎年幾ら支払ったということは、明らかに国の決算のどこかに載っていなくちゃならないじゃないですか。五年間で現実に支払っていくんだ。
  34. 庄野五一郎

    庄野政府委員 毎年の事業費予算として計上されておりますので、五年間に支払っておく分が年度区分として毎年の事業費の中の決算として出てくるわけでございます。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 決算報告に出てきておりますか。ちょうど三十五年度でこれは終了しているわけです。
  36. 庄野五一郎

    庄野政府委員 一般予算決算の中に出てきている、こういうことになっております。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私どもがいただいておる決算報告でございますが、三十五年度一般会計国債務に関する計算瀞、この中に当然私は出てこなければいけぬと思うのですが、これに出ておるという意味ですか。
  38. 庄野五一郎

    庄野政府委員 篠津地域泥炭地開発事業費として三十一年から毎年事業費交付金として交付されております。また根釧地区機械開墾建設事業費として、これも三十一年から交付するようになっておるわけであります。それから上北も、その三つの項目で交付金が交付されております。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、私が言っておるのは、内容的に明らかにこれは国庫債務負担行為と同じ内容のものですから、国がちゃんと国の債務決算報告の中に当然出さないと、国が五年間かかって公団に支払っているのでしょう。当然決算報告で出てこぬとおかしいじゃないですか。そうでしょう。今のは財務諸表か何か知りませんけれども、国の方としては当然一般会計の国の債務に関する計算番の中に出てこないとおかしいではないですか。幾ら払ったということをどこでだれが確認しますか。だから私が言っておるように、これは内容的には完全に国庫債務負担行為と同じであるから、当然この計算書に載せて報告しなくてはいかぬ。幾ら国が払ったか、だれが確認するのですか。私は、これに載っているのですか、載っておらぬのですかと言っているのです。この三十五年度一般会計国債務に関する計算書報告されておるかどうかということをお伺いしておるのです。
  40. 庄野五一郎

    庄野政府委員 公団法附則九条の二項によりまして、これは政府が五カ年間に支払うこと、こういうことになっておりまして、これは債務負担行為ではないとわれわれは考えておるわけであります。財政法十五条によりまして「法律に基くもの又は歳出予算の金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」こういうことになりまして、法律に基づくものはこの以外になるわけです。それでわれわれといたしましては、債務負担行為でなしに予算をもってこれは毎年交付する、五カ年間に計上してこれを支払う、こういうことでございます。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは詭弁です。予算できめられておっても、実際に支払ったのは確認を受けなければいかぬではないですか、国の債務に間違いないのだから。五カ年間に公団に支払いますということになっておる。だから各年、五カ年間に幾らずつ支払ったかということは、これはやはり国会承認を受けなければおかしいではないですか。そうでしょう。これに載っていないのですか、載っているのですか、それをまず聞いておきたい。
  42. 庄野五一郎

    庄野政府委員 債務負担行為ということではなしに、一般会計から繰り入れるということになっておるわけでございます。一般会計決算書に入っておるわけであります。債務負担行為としての決算書に入らぬで、一般会計の支出の方の決算書に入る、こういうふうになっております。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし、この内容債務でしょう。今もおっしゃっているように債務には間違いないから、当然これに報告されるべきであると思うのです。これは会計検査院の方としてはどうお考えになりますか。これは附則の九条からいきますと、この第二項は明らかに財政法の三項と内容は完全に一致しておるわけですね。だから国の債務には間違いない。
  44. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 突然のことで、私も十分どういう事態であるかということを詳しく研究していませんですが、国庫債務負担行為国会承認を得たものにつきましては、毎年度五カ年間なら五カ年間にわたって、これだけのものを支払うということになりますれば、その各年度に支出されましたものにつきましては、歳出決算に上がって参りまして、それについては私ども確認をいたしております。ただ、ただいまもお尋ねの債務計算書に載っておらないじゃないかという点でございますが、この点につきましては、もう少し検討してお答えいたします。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今、会計検査院の方から検討をしてお答えしたいとおっしゃいましたが、そうすると、今の農林省の方のお答えはどのような信憑性があるのですか。載っていないのです。載っていないから言っておるのです。載っているなら示して下さい。大臣、今会計検査院の方から検討して答えるということだったのですが、ちょっとそういう答弁では国側として大へん無責任な御答弁じゃなかろうかと思うのです。
  46. 庄野五一郎

    庄野政府委員 ちょっと打ち合わせをいたしますから、しばらくお待ち願います。
  47. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 財政法の第十五条によりまして「法律に基くもの又は歳出予算の金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、」「外」とあります。「国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」それで、ただいま問題になっております政府が支払うべき金額と申しますのは、公団法附則第九条によりまして、法律によってこういう契約をすることができるということになっておりまするので、いわゆる国庫債務負担行為のうちの債務ではないということで、債務計算書には載っていないと思います。
  48. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この九条の二項によって、五年間で支払っていきますというのは明らかに債務ではないですか、債務でしょう。国の債務行為ではないですか。
  49. 庄野五一郎

    庄野政府委員 法律できめておりますので、五年間毎年の一般会計予算に計上しております。それで支払っております。法律通り施行しております。それで一般会計決算書に今会計検査院からお答えがありましたように計上しております。債務負担行為の方の計算書には入っていないと思います。
  50. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この行管が出されておる報告書の十二ページに「債務負担行為計画により予算を実行する」と書いてあるじゃないですか。債務負担行為とちゃんと書いてある。だから私が言うのは、幾ら国公団に支払っていったかということは、当然これは報告書に出てこねばいかぬではないかと言っておるのです。この点については、まだ国の答弁はあいまいであると思います。会計検査院も検討さしてもらってと、今言っておりながら、直ちに農林省の方の言うことを聞かれてそういう答弁をされるというのは実に権威がない。これは後ほどこの点は明らかにしたいと思うのです。私は、なぜこういうことをこまかく言うかというと、膨大な赤字を今までこの公団は出しておるではないですか。(「関係ない」と呼ぶ者あり)関係ないですか、それだったら今の点は質問を保留して先に進みます。業務内容予算内容が実にでたらめです。これは行管指摘しておる通りです。関係のないことはないです。行管指摘しておるではないか。農林大臣指導も悪いとちゃんと書いてある。なっておらぬです。こういう重大な問題をはらんでおる公団について、新しく三十七年度から理事を一名増員される。そこで私は、この公団赤字に関連をして、特に今度役員を一名増員されるというような重大な問題であろうと思いますから、適正な役員人事を行なってもらうために、過去の役員人事に対する疑問点を提出しながら大臣のお考えを聞きたいと思うわけです。  昨日の質疑を通じまして、三十四年度、三十五年度の膨大な公団赤字、これの原因会計検査院によって検査報告の中に指摘されております。その問題に関連して、公団はその事業と関連をして職員を引責辞職さしておられる。それからなお、当時は成田理事長でございますが、成田理事長のもとにおられました土屋、和田両理事も、これに関連をして責任を感じ、やめられたというふうに聞いておりますが、重ねてその点確認をしたいと思います。
  51. 庄野五一郎

    庄野政府委員 三十五年度の関係におきまして、三十五年度以降におきます業務運営等の問題もございまして、先ほどお答え申しましたように、理事の方が責任をとっておやめになった。土屋理事は海外移住振興の方から、ぜひおいで願いたいというようなお話がありまして、海外移住振興の方に行かれた、こういうように承知いたしております。
  52. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その成田理事長は、理事二名、それから職員二名、責任をとらしてやめさせられたわけです。こういう問題についての責任の所在というのは一体どこにあるのです。私は昨日も、この公団指導について、いろんな面について国の責任公団責任は一体どういうふうな関係になっておるのか、これをお伺いしましたが、半々みたいなお答えでございました。一体、こういう場合の責任というものはだれにあるのでしょうか。だれが負うべきでしょうか、大臣のお考えを承りたい。
  53. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどからお答え申し上げております通りに、この公団業務運営は、国において相当に協力をいたしませんと、たとえば国の方において積極的に農地造成を計画して、そうしてこの機械を使うということでありませんと、何さま民間において必要とする機械には非常に大きいものを要したわけであります。また、そのためにこの公団ができたわけであります。従って公団自身がいかに熱意がありましても、その仕事が公団自身が計画するわけではありませんので、そこで公団事業の不振というものが生まれたと思うのであります。従って国との関係においてよほど緊密な連絡がなければいけなかった。ところがたまたま農林省から出仕しております推薦した理事長と当時の理事の一部との間に多少の意思の疎通を欠くようなこともあったように私は委員会において聞いております。そういう関係等からいたしまして、理事の入れかえ等はあったのではなかろうかと思うのであります。確かに御指摘のように事業内容が非常に不振で、相当の欠損を出したということははなはだ遺憾でございます。諸般の点を勘案いたしまして、私は今回これをやめるか、もしくは全面的に改組するかということを考えたのでございますが、農業の改良、構造改善、大規模の土地造成というような諸般の点から参りまして、むしろ積極的に改組して、そしてこの公団を活用することがよかろうということで、ただいま御審議願っておりますように国で持っておりますものも——この機械等の運用に多少の遺憾の点もあろうことも私は従来聞いておりましたので、それらを全部集めて十分に活用してみようということで、ただいま御審議をいただいておるようなわけでございます。過去におきましていろいろな点がありましたが、これを貴重な経験として、将来十分に活用して参るようにいたしたいと考えておる次第でございます。  ただいま理事一名増員についてお話でございましたが、この理事一名の増員等につきましても、北海道、東北等に主たる機械の活用の場が多いのでございますから、この方面との連絡が緊密にとれ、事業の活発に進行できるというような点を勘案して、この人事は充足して参りたいというふうに予定いたしておるわけでございます。
  54. 楢崎弥之助

    楢崎委員 御決意のほどはよくわかるのでありますが、成田理事長がおやめになったのが昨年の十月ですね。これは大臣は就任されておったわけですか。その部下の理事二名も責任をとらしてやめさせ、職員二名も責任をとらしてやめさせるほどの重大な事業の失敗を公団がやっておる。その公団における最高責任者である成田さんは一体どのような責任があることになるのでしょうか。これは農林大臣管轄のもう一つの公団の愛知用水公団理事長の方に就任させられておりますが、これはどういうことなんでしょうか。成田理事長は責任は追及されないのでしょうか。こういう点の人事の問題について私は非常に疑問を感ずるのですが、この成田理事長については大臣はどのようにお考えですか。
  55. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御説明申し上げた通り、官庁、特に農林省、北海道庁との関連を緊密にして事業の振興を期するということが一番大事である。ところがそういう点について役所から出向しておる者等について多少の遺憾の点があった。これが私は真相と考えます。従って成田理事長に責任がなかったとは考えませんけれども、しかし原因はだれが考えても明瞭であって、この点について遺憾の点があったのでございますから、役所にも非常に責任がある。また公団側においても、この監督、連絡の点において遺憾の点があるということに尽きると私は思うのでございます。もしこれが不正とか不当の経費の使い込みであるとかいうことで、監督上遺憾の点があるという場合とは多少違うのではないかというふうに考えておる次第であります。
  56. 楢崎弥之助

    楢崎委員 不当事項であるということは会計検査院からはっきり答弁があった。今の大臣の御答弁では、不当事項というようなことがはっきりしないからというような御答弁のようにお伺いしたのですが、もちろん不当事項ということは、はっきり会計検査院指摘をした。しかも理事二名、職員二名を理事長がやめさしている。理事長の任命は農林大臣だから、従って最高責任者である理事長の出所進退については、今度は農林大臣が何ほどかの責任を追及されなければならない立場にある。それが同じ農林大臣の管轄下にある愛知用水公団理事長の方へ回される、これは一体どういうことなんです。理事責任があって、そしてまた職員もやめさしておきながら、理事長を任命された農林大臣が何らの責任を追及されぬということは、これは出所進退の上から言っても信賞必罰から見ても非常に不可解な人事であるように思うわけですが、どうしてもこの点は私は今の大臣の御答弁では納得し得ないわけです。大臣、いま一度、成田理事長の責任を……。
  57. 河野一郎

    河野国務大臣 成田理事長については人格、識見、人物において私は愛知用水公団理事長として適任であると考えましたので、閣議の了承を得て任命した次第でございます。
  58. 楢崎弥之助

    楢崎委員 りっぱな人でも間違いを犯したり、現実に不当事項指摘されておるような公団運営の失敗があった。だから、たとい農林大臣が信頼しておられても、現実にこういう失敗をやらかしておる最高責任者ですから、農林大臣がこれは推薦されて理事長にさせられたのかどうか知りませんけれども、それならばそれだけにこういう場合は信賞必罰で明確な処理をなさなければならない。それが愛知公団理事長、月給も同じ理事長のところに行ってしかもおまけに一億七千万円という赤字を作った最高責任者です。それが千二百万円も退職金はいただいて、愛知公団の方の理事長に行くというととはどういうことですか。私ども農林大臣の人事について、この点は非常に納得がいきません。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げました通りに、一億何がしかの赤字ができたゆえんは、仕事がなかった、機械が十分に活用できなかったということに起因する、これは当該官庁たる農林省において開墾のこの機械を活用する事業が十分に企画されなかったという点に主たるものがある、私はこう思うのであります。従ってこの機械を十分に活用するだけのものがあればこういうことにはならなかった、こう私は思うのでございます。従って先ほども申し上げました通り、こういう公団はつぶす方がいいか、やめるがいいか、それともさらに活用するがいいかということについて十分私も考えました。考えましたが、土地造成の急なる今日、さらに積極的にこれを活用することが国家のために必要であるという考えのもとに、今回改組をして出発することにいたしました。こういうことでございます。従ってこの一億何がしのもの、これは何か仕事の上で失敗して、そうして赤字が出たとか、もしくは使い込みがあったとかいうこととはいささか趣が違うのではないか。これは機械を十分に活用することができなかったということに主たる原因がある。しかもこれは政府出資ではありませんから、買うときも借金で買った機械であります。従って、これは使わなければどんどん赤字が累積することは当然であります。従って仕事があるかないかということによって会社の業績が変わるのでありますから、しかもその仕事たるや、政府が企画しなければその仕事がないということでございますから、その意味で違うというふうに私は考えるのでございます。
  60. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 先ほどの問題になっておりました国庫債務負担行為の件について申し上げますが、国庫債務負担行為と申しますのは、形式的には毎年国会の議決を経ます予算の総則の中で、これこれしかじかのものは国庫債務負担行為であるということで形式的にはきまっておるわけでございます。ただいま先生のおっしゃるのも、実質的には確かに債務負担行為でございますけれども、いわゆる予算総則できまっております国庫債務負担行為の中には入らないわけであります。債務に関する計算書については大蔵大臣がその様式を定めておりまして、その様式の中には、ただいま先生のおっしゃる実質的には国庫債務負担行為に属するものでありましても、予算の総則から見ますと、形式的に国庫債務負担行為として取り扱っておりませんものはこの計算書には載せないことに取り扱われておりますので、計算書には掲記されておりません。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しあさってごろ出てきて、そういう答弁を今ごろ言うてもらっては因るのです。私、何のことかと思って聞いておった。ちっとは議事の進行を考えていただきませんと——今あなたが答弁された問題は、私はまだ資料を持っておるのです。何ぼでもやります。しかし今は大臣がせっかくおられるから、大臣に関する問題で進めます。私が先ほどこの決算のことを聞いたのは、いかに公団事務的に放漫な仕事をしておるかということを私は浮き彫りにしたかったからやったまでのことです。  人事の問題でさらに進めます。私は若輩で、大臣に対してこういうことを言うのはなんですが、審議のときに大臣がおっていただいたら、きのうもおっていただいたら、どういうところにこの公団欠陥があるかということは、質疑の中ではっきりわかってくるはずです。今の大臣答弁を聞きますと、何か国というものはよそにあって、公団機械稼働しなかったから非常に赤字になる。機械稼働させなかったのは、突き詰めていえば、きのうの質疑でも明らかなように、国がこれに対する事業確保する責任法律的にも制度的にも何もないから、公団を放置しておる。ほったらかしておいて、一体公団をどうするのですか。そして大臣は、いかにも国というものが別にあって、そして国が確保しなかったからとかなんとかおっしゃる。それであったら農林大臣責任がある。農林大臣答弁を集約していけば、公団赤字責任はあなた自身にあることになるのです。これはやはり審議にずっと出てもらってよくその内容をわかっておいていただきませんと、もう一ぺん同じことを繰り返さなければならぬようになるのです。それで、成田さんの人事についてはどう考えても——部下をやめさしておって、そして自分はぬくぬくとして一千二百万円もの退職金——この退職金は一億七千万円の赤字の何ぼになるのですか。私はこの人事についてはどうしても納得いきません。  別のもう一つの人事に進んで、最終的に大臣決意を聞きたいのですが、今新しく理事長になられております松本さん、これは東北開発株式会社の理事であったわけです。そしてこの東北開発株式会社が昭和三十二年の八月一日に発足するときに、この東北開発株式会社の役員をきめるときにいろいろ問題があった。これはもう当時の新聞が十分報道しておるし、今度の東北開発株式会社の汚職問題をめぐってさらにそれが振り返られ、いろいろな点が述べられておる。その中に、松本さんは河野大臣の強力な推薦で東北開発株式会社に入れられたということが新聞に書いてある。これは新聞が誤りなら、間違いかもしれませんけれども、そう書いてある。つまり新聞用語でいえば河野派だ。そこで東北開発株式会社ですが、これが汚職を起こして、現在検察当局の追及の過程にあるわけです。これは国策会社ですから、国会もこの問題を決算委員会で取り上げられておる。当時の役員、総裁、副総裁、理事全員、この汚職問題とからんで、必ずしも汚職そのものに面接の関係はない人も含めて、総員引責辞職しておられるわけです。それは本年の二月十五日の決算委員会におけるわが党の勝澤委員あるいは久保委員の質問に対して、経企庁の管政務次官がお答えになっておられる通りです。ところが、昨日参考人としてお見えになりました松木さんは、その点に触れられて、これは政府側の政務次官の答弁が行き過ぎである、自分は決して責任をとってやめたのではないというようなお答えがあったわけですが、幸いに政務次官が見えておりますので、東北開発株式会社の当時の役員解任の経緯は、一体十五日に御答弁になっておる通りなのか、これは間違っておったのか、その点についてお答えいただきたい。
  62. 菅太郎

    ○菅政府委員 お答えいたします。  あの人事の一新は、建前から申しますと任期が満了いたしまして、改選の時期にありましたので、その改選の形でやっておるわけでございます。ただし、理事全員を総入れかえするというようなことは異例のことでございます。そこで、建前から申しますと任期満了による改選でありまして、つまり、その点は任期が至らぬときに職務不都合による解任ではございません。しかしたまたま任期が満了いたしましたのでどうするかという問題になりました際に、それはちょうど去年の夏でございましたが、会社の運営がおもしろくない点がある。特に派閥の関係その他がありまして、正規の機関運営ができておりません。たまたま会計検査院の検査の結果の内容が私どもにも伝達をされまして、三十四、三十五両年度におたる決算の不適正が指摘をされました。また同じく会計検査院から、セメントの販売につきましてはなはだまずいことがありました点も指摘をされました。そういう点を勘案いたしまして、もちろんそれは一部でございますが、全般的に見て、この際異例ではございますが、理事は全部総改選ということに決意をいたして、全部入れかえて新しい人事を抑えたおけでございます。しかし汚職の問題はその後の発生でございます。ですから、汚職云々ということをも含めての総改選ではございませんでした。しかし今申しましたような意味において、運営土遺憾がございまして、改選を機会にいたしまして総入れかえをいたした次第でございます。あるがままに申しまして、これが実態でございます。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは次官の答弁のお言葉ですが、これは刑法上の問題は私はわかりませんが、会社の運営上は明らかに理事者としての職務違反だと、私も監督背任のある一員として申し上げました。こういうことも含めて幹部の更迭をいたしましたと、こう書いてある。従って、これは職務違反として更迭をされた、このことは明らかであると思うのです。そうであるかどうかだけでよろしゅうございますから……。
  64. 菅太郎

    ○菅政府委員 ただいま申し上げました通り、背任の問題につきましては、これは刑法上の犯罪構成要件にぴしゃっとはまりませんから、私はそうは考えませんが、今申しましたように、今の会計検査院の御指摘の問題も含めまして、全体として理事諸君が正当に職務の運営をしておらなかったのであります。正規の理事会も開かずに重要なことが決定されたりしておりますので、そういう意味の正当の職務権限の行使をしておりません。職務違反であります。でありますから、私は、そういう意味も含めて総入れかえをお願いいたしたのでございます。つまり解任権の発動ではございません。任期の満了によります改選ではございますが、実質上の職務違反があると認めましたので、総退陣を願ったのであります。そういうことを申し上げておるわけでございます。ただし汚職の問題は当時はまだ出ておりませんでしたから、汚職との関連ではございません。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 はっきりしておる点は、これは職務違反で責任をとらされてやめられた、そのやめられた時期がたまたま改選の時期であったというにすぎない。やめられた理由は、職務違反というその責任を負われて職を辞された。これははっきりしている。その理事の一人が、実は現機械公団理事長の松本さんである。そこで、こういう東北開発株式会社の運営について職務違反をし、監督責任も果たさず、重大な責任を負ってやめられた人を、審議を通じて明らかになっておりますように、非常に問題の多い機械公団理事長に農林大臣が持ってこられたというその辺の人事についても、はなはだこれは妥当でない、不適格であると思うわけです。この松本理事長任命に対する農林大臣のお考えをお伺いしたい。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、松本君につきましては、神奈川県の副知事時代からよく彼の手腕、力量を心得ております。当時、東北開発会社の発足にあたりまして、私は企画庁の長官をいたしておりました。たまたま主要な人事は、前任者から引き継ぎましたので、その通りいたしましたが、その中に理事がまだ不足いたしておりましたので、私は企画庁長官として松木君をこれに当てました。その後東北開発はいろいろだ問題がありましたことも陰ながら聞いてはおりました。しかし、今のように、東北開発の役員がかわりましたその経緯につきましては、いろいろ御批判もございましょうが、松本君に関する限り、機械公団理事長としてこれを当てることに何らの不適格性はないというふうに私は信じまして、この処置をとった次第であります。なお、この人平は私一存でやる人事ではございません。閣議の了承を得ていたす人事でございます。それには藤山企画庁長官も列席しておられましたけれども、藤山企画庁長官からも不適当であるという意見はございませんでした。従って私としては正当なものと考えて任命いたした次第でございます。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは刑法上の責任を負わされてやめられた方ではないですけれども、こういう人事の問題について決して私は責めるわけではありません。それはきのうも申し上げたのですが、松本さんは非常に同情すべき立場にあることはわかります。しかし、そういう問題と、公正な役員人事をする、適材適所という観点から見ると、東北開発株式会社で引責辞職をされたようなお方をわざわざ問題の多い公団責任者として持ってこられるについては、その人事は不法ではないけれども、はなはだ妥当性がない、適格性がない。これは、周囲の、公団を取り囲む現在の情勢から考えても、あるいは過去の経緯から考えても、この人事は非常に適格性を欠いておる。このように私どもはお互い政治の場にある者として考えるのが、道義上まことに普通の考え方ではなかろうかと思うわけです。しかもその公団法の役員の欠格条件の中で、「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であって公団と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員」は適格条件を欠いておる。東北開発株式会社の定款にあるように、農村工業なり土地造成なり、あるいは農林水産業に対する投資事業も非常に大きなウエートを占めておる会社であったわけです。従って、その欠格条件がこういうふうになっておりますから、これは当然それを扱う理事の欠格条件としても考えていいし、この点は私はこの欠格条件に直ちに当てはまるとは言いません。これは議論がありましょう。しかし、東北開発株式会社は、すでに請負業者のうちからも汚職者が出ておる。業者と非常に関係の深い会社です。そうすると、この欠格条件から考えてもはなはだ疑問なしとしない。しかも東北開発株式会社そのものの過去の経緯からいってもこの松本理事長の任命についてははなはだ適格でない。これは大臣考えていただかぬとならぬ。重ねて大臣のお考え伺いたい。
  68. 河野一郎

    河野国務大臣 私は別にあえて松本君を弁護するわけではございませんが、引責辞職、引責辞職という言葉をお使いになりますけれども、彼は断じて引責辞職しておりません。私は友人として十分承知しております。現に、今政務次官の御答弁にございましたが、監事の一人は東北開発の副総裁か何かで残っておる人もあるじゃないか。監事で残っておられる人がある。これは断じて引責辞職されたものとは考えません。それをあえて引責辞職、引責辞職と、何か引責辞職したことにきめてしまうということは、少し行き過ぎじゃないかと私は思うのであります。御無礼でありましょうけれども、私はそう思います。また今後において、非常な失態があるということでありますれば、その責任はあげて私が負うべきであります。私は大臣として十分に監督をして、職責を十分全うさせることができると考えて任命したわけでございます。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私からもはなはだ御無礼でありますけれども、先ほど政務次官ははっきりとこれは責めを負うてやめられた、たまたまその時期は解任の時期であったと言われておるのです。これは政務次官がおっしゃっておることを全部ここに写しておる。明らかに責めを負うてやめられた。そういう問題のあるところからやめてこられた方を、これまた問題の多い公団理事長に持ってくるということは、よそならともかくも、これは納得できない人事であろうと思う。先ほどの成田前理事長の人事ともからめて、まるでこれは大臣の任命の権限下にある役職について、どうもたらい回しをされて、信賞必罰、適材適所という観点から見ると、はなはだ私は適格を欠いておる、どうしても納得できない人事であると思う。これは大臣考え直していただきませんと、今後たとえば公団の職員が勤労意欲を持って公団業務運営に成績が上がるように努めなくちゃならぬのですけれども、こういう人事を繰り返されておったのでは、とても働く意欲どころか、さじを投げるような気持にもならざるを得ない。こういうことはお互い主義、主張は別として、そういう主義以前の問題ですから、同じく政治の場にある者として、これは考え直していただかぬとだめだ、こう思うわけです。
  70. 河野一郎

    河野国務大臣 あえて強弁するようですが、そういう汚職事件が起こっておる中で、少しでも疑いを持たれたという事実がありますなら、これは私はそういうことをすべきでないと思います。その中にあって、少しも彼にそういう点があったと聞いておりません。一ぺんも、彼はそういう汚職のるつぼの中にあって、少しもそういう事実があったということを聞いておりません。聞いていないにもかかわらず、たまたま中におったから、あれは悪いやつだと言って、悪い極印を押すということは一体いいでしょうか。それでは人間、そういうものの中にたまたま籍を置いたから一緒になって汚名を着せられたら、私はかなわぬと思います。その点は私は考えてやるべきじゃなかろうか。松本が一ぺんでも取り調べを受けた、非常に疑惑を受けたということがありますなら、私は今からでもすぐにでも更迭いたします。しかしそうでなく、そこに籍があったというだけでそれを今のようにきめつけられることは、少し行き過ぎではないかと思うのでありますが、いかがでしょう。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは単なる松木さん個人の能力、これはいろいろ判定の仕方がございましょうけれども、一応東北開発株式会社のあの汚職問題に関連をして、理事者として運営上あるいは指導上職務を完全に全うしていなかったということだけは、今政務次官がはっきりされておるわけですね。職務違反ということは、理事者としての能力に欠けるところがあるということなんですね。そういうことで責任をとってやめられておるのだから、それをそのまま公団に持ってこられるのは、いわゆる適格性を欠くのではないか、妥当性がないのじゃないかということを言っているのです。不法とは、決して私は言っておりません。
  72. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、政務次官の御答弁になりましたような事実を知っておりませんでした。ただ先ほど申し上げたように、閣議で了承を求めたら、経済企画庁長官が御異議がなかった、御意見もなかった。そこで発令いたしましたが、御注意でございますから、経済企画庁長官の意見を徴して、あらためて善処いたします。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あらためて善処されるというわけですが、当時の任命のときには、この汚職問題はそう表面的に明確になっていなかったと思うのです。その後ずっと経過を経ていろいろ問題が出てき、そして決算委員会でも明らかになっておりますように、これは大臣お調べになったらわかるのですが、その理事者の指導が実になっていなかった。決算委員会の議事録を読んでいただければ、それは明確になります。それでそういう点が明確になった現時点において、いま一度大臣は経済企画庁長官と相談をして善処したいというお答えでございますから、それはぜひその通りにしていただきたい。従って先ほどの成田前理事長の人事ともからめまして、はなはだ御無礼でございますけれども河野大臣の人事というものは非常に個性が強過ぎる。これは私どももひとしく感ずるわけです。あまりに個性が強過ぎます。もう少し一般的な基準においてやってもらいたいと思うわけです。  なお行管からも指摘をされておりますけれども、この公団の顧問、嘱託がまた非常に多過ぎるということが指摘をされております。年間五百万円もこれにかかっておる。これもいわゆる赤字をなくする、一つの冗費を省く手段としてこの顧問、嘱託の問題も十分検討し直さなければならないということが行管から勧告をされておるわけです。そこで昨日この顧問、嘱託の方々の問題についてお伺いをしましたところ、顧問が二人で嘱託が五名おる。その職務内容を一応聞いてみました。しかしこれはほとんどおられなくても大して公団運営には関係のないような存在である。それを実証するのは、公団の今までのいろいろな業務運営上の問題点を考えれば、それが明瞭になって参ります。そこでこの行管の勧告について、松木理事長としてはどういうふうに対処をされるつもりであるか聞きましたら、いろいろおっしゃいましたけれども、結局たらい回しをして、身分を変えるという問題だけで、依然としてこれまでのものはかかえていこうという態度のようでございますが、この顧問、嘱託の問題について、大臣はこれを検討されたことがあるかどうかお伺いをしたい。
  74. 河野一郎

    河野国務大臣 御無礼な御答弁でございますけれども、私そこまでは手が回りません。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はその通りであろうと思うのです。これはよく検討されれば、当然こういうものは要らないという結論が出てくると思うのです。検討をされていないからこれはおわかりにならなかった。しかし行管もこれを指摘しておる。これはもう明らかに冗員ですから、早く何とか行管の勧告通りしていっていただかぬと、依然としてむだな費用を使っていくというような結果になるのではなかろうかと思うわけです。そこで理事一名の増員の問題につきましても、えてして今まで公団とか公庫とかいうものの役員は、古手の役人の骨の拾い場所みたいな関係になっておりますから、この点は、今までの人事の不手ぎわも一応考慮に入れられて、今度こそはほんとうに公団に働いておられる職員がこの人のためならというような意欲のわく理事、よく業務内容がわかる理事、そういう理事の御起用をぜひいただきたい、このように思うわけです。  さらに二、三点、これは公団内容の問題について大臣のお考えを聞いておかなければならない点があるわけですが、三十七年度から国が公団機械現物出資するわけです。全部で今予定されておるのは、農地局関係の汎用性の大型機械百五十二台、さしあたっては三十七年度は八十六台ということになっておりますが、昨年も農地局長にお伺いしたのですけれども、どうも国の方で手に負えないような機械、つまり稼働時間が残っていないような機械公団に押しつけるおそれがありはしないかということをお伺いしたわけです。その点について資料の要求もいたしましたが、まだいただいておりませんけれども……。  そこで、これは大臣にお伺いをしたいのですが、たとえば三十七年度八十六台、全部で年を追って百五十二台公団現物出資をされますが、その台数だけは、公団に出したというような格好になるけれども、中身の機械が役に立たないような機械であると困るわけです。たとえば五年間の耐用の機械があるとしまして三年間使っている。その三年間分は実は農地局の方で減価償却してとっていらっしゃるのですね。そうすると残りの二年間分を公団にやって、公団が二年間でそれを回収して、そして今度は機械を更新しなければなりませんですね。そうすると公団は新しい機械を買うのです。すでに国側が何分かとっている分は、一体公団の方に仮していただけるのかどうか。機械を新しく更新する場合に、大臣からこの点は現金で出資をするなら出資するということを言明をしていただかぬと、公団は再び赤字を作る大幸な原因にもなりかねないと思いますから、この点は一つ大臣から確たるところを言っておいていただかぬと、公団としては不安ではなかろうかと思うのです。
  76. 河野一郎

    河野国務大臣 私も同様に考えます。私は赤字ができるくらいに、この公団には日常必要でない機械でも保持させて、大規模開墾もしくは特殊の機械の必要とするものを温存せしめるということがねらいでございます。従って赤字が出る場合もあるでしょう、それは国庫でときには特別な補助もしくは助成をしなければならない場合も起こってくるだろう。私はそれは決して悪いと考えないのであります。従って今後この公団については十分厳重な監督をすると同時に、また今のような場合が起こってくるときにはこれに特別に助成する処置もとる必要があるだろう、こういうふうに考えております。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今の大臣からの御答弁は、農地局の方で減価償却された分については更新のときにそれを現金に換算して公団に充て、新しい機械を買う、そういうお約束だと承っておいていいでしょうか。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 機械が引き続き必要である場合には公団において買う場合も起こってくるでしょう。その場合においては公団が借入金で買う場合もあるでしょうし、政府が特別に助成をして特殊の機械を持たせる場合もあるでしょう。それはときどきによって、事情によって違うと思います。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 業務内容の細部にわたってはまだ問題がございますが、これは必ずしも大臣を必要としませんので、大臣に対する私の質問はこれで終わりたいと思いますが、先ほどの人事の問題については、何としても私どもは納得できませんので、これは先ほど大臣が言明されたように、直ちに経済企画庁長官と御相談の上、この人事の適正化について善処されますように特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  80. 野原正勝

    野原委員長 山田長司君。
  81. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいま楢崎君の質問で理解のできない点があったので、最初にそのことを伺ってから、私の伺おうとする問題について進めます。  人が多くて人が少ないということがございますが、ただいまの農林関係の人事の異動についてはそういうものを痛切に感ずるわけです。そこで国策会社から国策会社に動く場合に、私のどうも理解ができないのは、動くときに一千万円以上の退職手当をもらって動いていく、この点大臣の所見を伺いたいのです。役所から役所に人が動いていく場合には別に退職手当がないように、国策会社から国策会社に動いていく場合にも、退職手当の問題については必要ないのじゃないかという印象を私は持つのです。それは最終年度に通算をして退職手当を出せばそれでよいのじゃないかという印象を持つのですが、大臣の御所見はどうですか。
  82. 河野一郎

    河野国務大臣 実は私もよく存ぜなかったのですが、今度事情を聞いたのですけれども、これは公団、各会社別に積立金がございますので、それで一応落として、次に行った新しい職場でもらうということに通則がなっておるそうであります。
  83. 山田長司

    ○山田(長)委員 政府機関の場合のように、そのつど支払うというのではなしに、通算して支払えば私は同じじゃないかと思うのです。今度の場合などの支払いは、決算委でも東北会社の人たちの退職手当を聞き、さらに今度の機械公団から愛知用水公団に行ったという場合の退職金を聞いたとき、何だか退職金をもらうために次々と動いていくような印象を持つのですが、その点もう国策会社に働かなくなったという最終の段階において支払えば、理屈は同じだと思うですけれども、この点どうです。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 役所ならば、通算してよろしいかもしれませんが、会社、団体におきましては会計がみな独立しておりますから、それぞれにおいて積立金があるわけでございますので、その積立金で落としていくということになっておるようでございます。これはいずれも千何百万円という、私も非常にたくさん持っていくものだなという気がいたしました。ところが政府機関はみなそういうは内規、通則がありまして、その計算によってそういう数字になるそうでありますので、ああそうかということで私も了承したわけであります。
  85. 山田長司

    ○山田(長)委員 これは、政府機関の場合はその点将来もあることですから、私はやはり明確にすべき筋合いのものだと思うのです。どうか、その点について、実力大臣と言われるのですから、不明確な点は清算するようにしていただきたいと思います。  それから次に伺いたいのは公団の仕事の内容ですが、業務内容開墾事業に力点を置くのか、あるいは貸付事業に力を入れるのか、場合によれば修理事業に力を入れるのかという点が、力点が欠けているという印象があるのですけれども、この点はいかがですか。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 保持いたしております機械の性質から申しまして、貸付が主になるであろうと思います。ただ今回の措置といたしまして、各修理工場をこれに経営させることにいたしましたから、従って、民間の機械についても必要があればこれを修理してやることもいたすということでございます。目的はどこまでも全国の原野開墾に重点を置いておるわけでございますが、民間の開墾についても協力するということでございます。
  87. 山田長司

    ○山田(長)委員 この仕事の前身である農地開発営団なるものは、食糧の不足当時あるいは帰還軍人、海外引揚者、疎開者、失業者、こういう人たちに緊急に開拓をさせて、土地の造成をさせようというふうな意図だったと思うのです。当時は多数の零細農の人々にも土地を与えようという大きな眼目があったと思うのですが、それがいつの間にか零細農を対象とする形ではなくなってしまって、今度の場合などは県の委託とか、あるいは町村の委託とか、こういう形で開墾の仕事が生まれてきていると思うのです。前の零細農に対する土地の付与というものは非常に金がかかるから、現段階においてはできない事態になってしまったと思うのですが、との点についてはやはり所期の目的というものをお持ちなのかどうか、これはやはり明確を欠いておると思うのですけれども、この点いかがですか。
  88. 河野一郎

    河野国務大臣 もし私のお答えが間違っておりましたならば事務当局から明瞭にいたさせますが、先ほど申し上げましたように、この機械開発公団政府が行ないます大規模開墾のために機械を認め、この開墾をやることが主目的発足いたしたのでございます。そのでき上がったものを零細農に分譲し、分与して政府がこれをやったということじゃないかと私は考えます。そこで、これからどうするかというお話でございますが、これからも今の零細農に開墾したものを与える、これは別に政府として考えていかなければならぬ問題だと考えております。
  89. 山田長司

    ○山田(長)委員 先ほども大臣が楢崎さんの質問のときに、この機械公団に対してどうあるべきかということについて、かなり悩んでおられることを発言なさったようでありますが、これは私はもっともだと思うのです。私のふに落ちない点は、この機械公団なるものが、次の段階に機械を適当な価格で国からも付与されるという形でたくさんの機械を所有する段階に発展していくわけですが、大体この公団ができたのは三十年の十月であるが、機械の購入された状態というものを調べてみると、いずれも二十六年、二十八年、二十九年ころ、要するに設立する前にかなり多くの輸入機械の購入がなされておる、こういうことになるのですが、そもそも始まりがどうもMSA協定によって購入をしいられたという印象があるのですけれども、この設立にあたってのこういう無理は全然なかったものなのですか。
  90. 河野一郎

    河野国務大臣 私、当時農林大臣をいたしておりまして、創立の過程につきましては今も記憶が新たなものがあるわけでありますが、実は根釧、上北の開墾を大規模にやるべきだということで、しいて申せば青森の上北の開墾について非常に地元に熱意が強うございまして、そうしてわが党の議員諸君から議員立法ででもこれをやるというような御要求が強うございました。そこで私、農林大臣としていろいろ計算もしてみるが——たしかこれは議会の会期半ばにやったように記憶いたしております。予算もつけずに、たしか余剰農産物か何かの金じゃなかったかと記憶いたしますが、安い金利の金でアメリカから大型機械を買ってきて、そうして大規模開墾をやるということで作ったのでございまして、今お話しのように、以前に買ってあったとか、いわゆるそういったような関係で買わされたんじゃないかというようなことは全然ないんじゃないか、私の記憶に間違いがあれば事務当局から訂正させますが、私はそう考えております。
  91. 山田長司

    ○山田(長)委員 この発生当時の事情、さらに現段階における事情等を見ますと、どうも購入する事態に立ち至ったときの様子というものが非常に不明瞭なんですが、それは場所によってはかなり強い要請機械購入を依頼してきたところもあると思いますけれども、当時世銀の技術団等が日本に来て、こういう形のものができる事態になってきたわけですが、その当時の北海道とか青森あるいは東北地方という地域に向けて購入したのにしては、機械台数が何か非常に多いのじゃないかという印象なんです。この点機械稼働の状態というものは、これは大臣でなくてもけっこうですが、はたしてフルに使い得たかどうか、この点が疑問なんです。
  92. 庄野五一郎

    庄野政府委員 機械開発公団発足いたしましてから、機械は借款をもって取得いたしました。大体三十一年度からであります。それで、お配りしました資料の中に、「昭和三十七年度機械公団への現物出資機械予定調」というのがあります。これは今政府が取得しておるもので今後この中の汎用性のある機械公団現物出資する、こういうことになるわけであります。公団といたしましては、発足後三十一年度から機械を取得しておる、そしてそれは上北、根釧あるいは篠津開発、そういったところに稼働あるいは受託工事として使用いたした次第であります。
  93. 山田長司

    ○山田(長)委員 そういう地点に出動しておる機械の実情というものが、これだけの使用台数を要したかどうか。この点不明瞭なんです。
  94. 庄野五一郎

    庄野政府委員 行管の御指摘がありますように、現段階においては、工事の進行状況によりまして稼働しない不十分な面も細部においては出ておるわけであります。政府といたしましては、事業計画に基づきまして篠津開発にはこれだけ、上北、根釧にはこれだけということで購入いたして稼働させたわけであります。その中で、これまでも問題になっておりますが、篠津開発の分が、計画の変更その他によりまして不十分な面が生じたわけでございます。そういう面についての稼働の不十分な機械等の処理については、北海道開発庁において北海道の開発用に十分に活用していくということになっております。
  95. 山田長司

    ○山田(長)委員 機械公団から出した三十六年十一月の概要の中には、輸入にかかる乳牛を地方の道なり県に売り渡すという条項は、十ページの乳牛導入事業というところで、三十五年度をもって終了することになったと規定してある。そういう規定があるにかかわらず、今度出ておる法案の中にはやはりこれは削除されずに業務内容の中に入っておりますが、この点はどういう意図でそごがあるのですか。
  96. 庄野五一郎

    庄野政府委員 乳牛の導入計画は三十五年度までの年度計画によって遂行した次第でございまして、これの経費は世銀から借款して今後もなお——この一応の導入計画は終わった次第でございますが、借款としてはその支払い義務がまだ残っておるわけでございますけれども、そういう面において今回の目的の中から落としてない、こういうことでございます。
  97. 山田長司

    ○山田(長)委員 そうしますと、この印刷物が公団から大量に出ているとすると、事業概要だけに私は非常に間違いを起こすのじゃないかと思うのです。この点は削除すべきものと思うのですけれども、いかがですか。
  98. 庄野五一郎

    庄野政府委員 一応事業計画としては三十五年度で終わったのでございます。なお借款が残っておるから、この点は返済ということでなお残したわけでございます。十分その点は今後とも検討したいと思います。
  99. 山田長司

    ○山田(長)委員 監督の問題なんです。法案の中に大臣がこの公団監督をするといっておるけれども、先ほど楢崎君が三十五年度会計検査院の批難事項の中に指摘があったことを申されましたが、やはりこの監督業務全体にわたって大臣がなされることであると思うので、なかなか全国津々浦々の機械化の仕事の監督という問題については容易ならぬことだと思うのですが、この監督監理官がさしあたって総裁等と連絡をとりながらやられるものだと思うのでありますけれども、当然稼働能率をよくするためには、これが計画としてフルに機械を操作し得る計画が立てられなければならぬと思うのです。こういう計画等については、報告資料なんかにもありますが、必ずしも稼働能率のよかったということだけが出ていない、非常に悪かったときが書かれておる、こういう点は計画上に粗漏があるのじゃないかと私は思うのです。この計画等についてはやはり大臣も相当指示を与えなければならぬ筋合いのものだと思うのですが、大臣はどう考えておられますか。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 ごもっともなお話でございまして、その点について考えるところがありましたので——仕事がなかった、稼働日数が少なかった、赤字が出た、こういうことだと私は思いますので、今後におきましては、国におきましても積極的にこれらの機械を使用いたしまして、そして十分な開墾事業もしくは土地造成事業を積極的に推進する、こういうふうにやって参りたいと考えます。
  101. 山田長司

    ○山田(長)委員 輸入されている機械及び国内における機械使用年数、大体耐久時間とでもいいましょうか、そういうものがむろんあげられると思うのです。それで将来この公団の実績いかんを見た結果、国から機械をここに導入しておいて、それが将来適当なころ合いを見計らって、民間の会社にでも払い下げるのじゃないかというようなことを言われておるものもあるわけですが、この点はやはりこのままの公団で推し進めていくという確信のもとにそれが進められておるのですか。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたしますことが間違っておりましたらあらためてお答えいたしますが、一応お答えいたします。  先ほどから公団赤字が出てけしからぬという御非難がだいぶ強かったのですが、稼働せずに出る赤字は、これは政府との連絡が悪いから稼働せずに赤字が出る。もう一つの出る原因は、機械の貸与賃が安い。それから経済的にペイしないところでもこれを移動して貸与する。ときによれば北海道から東北まで持ってくる金が非常に高くつきまして、そうして働く日数が少ないという場合には、これは、お前のところは働く日数が少ないから運んでやるわけに参らぬ、もしくは移動の費用をお前のところが持たなければいかぬというようなことで、その仕事ができなくなるということのある場合に、どう調節していくべきかというのが問題だと私は思います。そこで私として考えますことは、今日政府もしくは公的機関のみならず、民間にもだいぶトラクター等が入っております。これらの使用料は相当の金額に上ります。走って開墾もしくは土地造成を民間で行ないます場合には相当の負担がかかるわけであります。一方において補助金も出しますけれども、またそれらの負担が非常に大きい。これを牽制する意味において、大いに県もしくは国のこの機械を活用する必要があるという意味からいきまして、これらの使用料等については十分な監督をして、そうしてこの土地造成に寄与するところがある、決してもうけて会社がうまくいって配当ができる、もしくは内容がよくなっていくということは、私はあえて期待するものではないのでございまして、むしろその逆の方向を——遊んでいて赤字が出ることは、これはいけません。これはいけませんから、決して赤字の出るのを弁明して言うのではございませんけれども、今後の運用の方針としてはただいま申し上げたような点に特に留意する必要があるのではなかろうか。従ってこれを民間に移すというようなことは全然考えてはおらぬ。どこまでも民間の農業機械の使用料の上がって参るのをこれによって牽制し、適正な使用料を維持するということに役立たせるべきものだと考えております。
  103. 山田長司

    ○山田(長)委員 機械の移動等によりそれが目地に着くまでの間にかなりむだな時間が出ると思われる点はわかるのです。この点についてやはり最初から大きな計画を立てて、そういうむだのないような形が当然生まれなければならぬと私は思うのです。その点についての開発の大計画が国土の上に立てられなければならぬと思うのです。この点がやはり監督の衝に当たる大臣としても全体の見きわめをつけて、それが稼働能率の上昇を願わなければならぬと思うのです。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕 この点について大計画が立てられておるのかおらないのか。これによって私はずいぶん違ってくると思う。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、民間に貸し付けるという、民間の利用をある程度期待いたしております。従って民間の開墾もしくは造成等に寄与しようということも、大きなものは国、小さなものは県ということでやっておりますから、今御指摘のようにもちろん国において計画するところの土地造成、開墾というようなものがむろんなければならぬわけでございますが、それは今年度予算に一応十億円あるわけであります。この程度ではむろん少ないということはたびたびおしかりを受けましたが、明年度におきましてはこの方面に十分意を用いて、酪農の主産地形成をするとかもしくは果樹園芸等に寄与するとかいうことでいくべきものである、これにつきましては円下林野庁におきましてどの程度の林野もしくは原野が利用できるか、そこでどういう計画が立つかというようなことを根本的に私は立案いたしまして、明年度においては考えていくべきだというふうに考えております。
  105. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいまの大臣答弁で、明年度にその計画が立てられるという話でありますが、私はこれをすみやかに立てることによって、今度改組される機械公団もこれが機能を十分に発揮することができると思うのです。その点、公団の整備強化をすみやかにやられる必要があると思うのです。そのことにより、各府県の改良事業の効率的な進め方も当然各府県ともに前進してくると思うのです。この点やはり、どういう形で各府県にPRをしておるかわかりませんけれども、今度の機会をねらってより一そうPRする必要があると思うのでありますが、この点についてどんな形のPRをされようとしておるか、御意見を承っておきたいと思います。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘通りでございまして、先ほどから申し上げますように、すでに府県にも、実は中型、小型の機械を持たせてこれを稼働せしめる、それと相提携して国の大型の方も取り入れるようにするというふうにして、全面的に全国の土地造成もしくは開墾、草地の造成というものの方向を打ち出しておるわけでありまして、こういう機会に申し上げていいかどうかわかりませんが、農林省のこれら事業の各府県の割付等におきましても、おおむねこの十五日を目途として全部終わりまして、全国一斉にこれを急いでやれと指示いたしております。例年よりもなるべく早く一切のものが新予算とともに動き出すように督励して参る、その中に機械も入れるようにやっていくべきであると考えます。
  107. 山田長司

    ○山田(長)委員 賛同を終わります。
  108. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 足鹿覺君。   〔田口(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 足鹿覺

    足鹿委員 農地開発機械公団法の問題については、楢崎委員が中心で、また角屋委員等から詳細な質疑がありましたので、それらと重複しない事務上の質問もありますが、それはあとに回しまして、私は主として大臣伺いたい二、三の点を申し上げたいと思います。  この公団法が成立をいたし実施になりましたのは昭和三十年でございます。当時の農業情勢なり農政の方向と今日とは、農基法制定以後においてはよほど異なった様相を示しておることは、大臣もお認めになろうかと思うのですが、当時私どもが愛知用水公団なりまた開発機械公団という新しい公団設置に対しての検討をいたしました際に、これは公団でいくべきか、特別会計による公営でいくべきか、いわゆる国営でいくべきかということでずいぶん論議をしたのであります。当時の政府のおもなる理由として、これは世銀が融資をするのだ、いわゆる外資を導入し、あるいは見返り円を資金源に求めるという趣旨からいって、これは公団に踏み切るべきではなかろうかという態度でありました。しかし見返り円を資金源に持つとかいうことについては、すでに愛知用水の運営をめぐって見返り円が利用できなくなり、それで資金コストが高くなるというようなことから資金操作に困難が起き、従って受益者負担に問題が進んできた。その当時、私それを指摘しまして、そういう不確定な資金源を対象とした資金運営というものは必ず問題が起きるのではないかという点毛指摘いたしましたが、何しろ当時この種の公団のトップを切った愛知用水公団は、すでによほど具体的に進んでおりまして、ただ法案の審議ということについて時間の問題があったので、愛知用水公団法に重点がかかって、この開発機械公団法そのものの審議というものは必ずしも十分とはいえない実情にあった。二つとも同じような資金構成によっており、すでに愛知用水はその使命を達成して、今後は管理公団的な性格を多分に持つであろうということは指摘するまでもない。要するに建設公団の任務を終えて管理公団的な性格に変わらざるを得ない段階にきておると思う。また今問題になっておるこの開発機械公団にいたしましても、大赤字を出して問題を惹起し、事実上においては性格が相当変わってきてはいないか、従って世銀借款等については、政府が当然これは肩がわりをして、との種のものについては再検討を加える段階にきておるのではないか、私どもはそういうふうに思う。農業情勢の推移、変化、また農政基調の農基法以降の変わり方、建設なり当初の任務を終えたこれらの愛知用水公団あるいは開発機械公団というものについては、おのずから情勢の推移と相待って、建設なりあるいは業務内容というものが変化し、性格が変わってきておると思うのです。それをなおやっていこうというところにすでに無理があるのではないか、かように私どもは思うのであります。農林大臣は非常に勘の鋭い、感覚の鋭敏な方でありまして、おそらくお気づきになっておると思う。なぜこのような行き方に固執をされなければならないのか。先ほどからも役員の問題をめぐって、るる楢崎委員から具体的な質疑が行なわれ、私ども聞いておって、大臣答弁が必ずしも当を得たものとは考えませんが、その問題は一応あとで私は若干触れる点がありますから申し上げませんが、ともかくこの両公団というものについては根本的に検討の余地があるのではないか。その解決のための世銀借款その他の問題については、当然国が肩がわりをして処置していけばよろしい、私はそういうふうに思うのです。この基本問題について、大臣はよくお考えになっておられると思いますが、一つ御見解をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  110. 河野一郎

    河野国務大臣 私も御指摘のような意味合いにおいて慎重検討いたしました結果、先ほど来お答え申し上げましたが、今日の時勢が、土地の造成もしくは原野開墾等、ますますその必要の度を加えておる。これが達成にはどうしても大規模機械もしくはこれに必要な機械が必要である。この機械を、先ほども申し上げましたが、民間に個々の所有にまかせておきましたのでは機械の使用料がいたずらに高騰するだろう、それでは土地造成等が非常に高くつく。従って政府においてこれを保持いたしまして、これをあまねく有利に民間に利用せしめる方法が必要だ。これらの必要を充足するためには、むしろ積極的に政府において土地造成に必要な機械を持ち、大型なものは国、中型なものは県というふうに、これをあまねく農家の利用に供する、もしくはみずから開墾する場合にこれを使うということが適当であろうという意味合いで、積極的に改組したわけであります。
  111. 足鹿覺

    足鹿委員 機械開発公団については大臣の言われる点も——今後の運営を見なければわかりませんが、まあ一応そういうことも考えられるでしょう。しかし、従来の運営を見ておりますと、これはこまかいようで大きな問題で、赤字の大きな原因でありますが、経験が足りなかったとか、いろいろ理屈をつけております、赤字のできた原因について。しかし普通の商社は、やはり稼働率は二〇〇%以上稼働せしめておるのです。この公団に限って、たとえばパワーショベルであるとか、あるいはドラッグショベルあるいはその他の大型機械の一、二の事例を——こういう機会でないと、大臣は御認識できないと思いますが、耐用年数が一万二千時間あるものを、三十一年度にはパワーショベルについてはたった百六十時間、三十二年に五百四十時間、三十三年に六百二十時間、三十四年に六百六十八時間、三十五年に四百六十五時間、締めて二千時間を上回る程度のものであります。そこで問題になって、これ以降は北海道開発にこれを回しておられる。私どもは愛知用水の現地を見たときに、アメリカから押しつけられたと言うと、あるいは語弊があるかもしれませんが、とにかくアメリカの大型機械を入れて、橋がない、道路がない、至るところで停滞をして、現地の作業場へ行けないという事態があった。従って結局稼働時間が大幅に下回る、こういうことになる。上北を見、根釧を見ましても、なかなか林野庁との未墾地の調整がつかない。一方は林野庁であって、やはりこの林野行政当局としては理論的には必要を認めておっても、なかなかその山を開墾地として提供することに難点ができる。なかなか話がつかない。結局、上北の場合におきましても、適地はあってもあの程度のことにしかならなかった。こういうことなんですね。根釧の場合は御存じのようにパイロット・ファーム地区の新しい地区でありますが、いよいよ計画が立ったとたんに、今度は防衛庁が演習場にそれを引き受けたいということを言い出して、これは広漠たる地であります、数字は忘れましたが——というので、またとれにも支障が出てくるというふうに、適地があっても事実上においてこれらの機械が十分フルに稼働するような状態が生まれない。むしろそれが逆に狭められていくような実情の中にあって、今後、北海道開発庁にいたしましても国の機関でありますが、はたしてこの大型機等が所期の稼働日数をあげて意義ある仕事を達成できるかどうか、これまた問題があろうと思う。いわんや内地の山間地帯あるいは開懇適地といえども、最近はなかなかうまく参りません。従って今後草地開発改良という方面ならば、あるいは若干の稼働面が出てくるのではないか。それも政府の態度いかんだと思うのです。農地局は大臣構想に基づいて、はたして今後このたびの改正を通じて赤字の始末をし、理事を増員し、そして従来の運営の批判の上に立って十分これに仕事を与えていく準備があるのですか。事実上はそっぽを向いているんじゃありませんか、あなた方は。この開発公団に仕事を与えていく具体的な内容をお示し願いたい。従来十分に稼働しないだけには、いろいろな受け入れ条件の不備もあったし、事実入ってみたら、今度はそれがフルに活動し得るような状態にならなかった。予定されたところはいろいろな支障によってまたやむを得ず放棄せざるを得ない、こういう事態の中にあって、一体どうしようというのですか。少なくともこの基本的な問題を検討されなければ、そして具体的なものを示されない限り、この機械開発公団赤字の始末をしてもまた運営上から赤字は必至だと思うのです。これはもう間違いありません。こういう運営状態であっては、赤字が出るのは当然なんです。赤字が出てもいわゆる退職金が出る。それは赤字が出てもそれに値するような仕事をしておいでになって、理事長が退職金を幾らお取りになろうと、私どもはあえてその金銭について論ずるものではないのです。値するような仕事をしておらないで退職金をむさぼる、こういうところにやはり世の指弾を受け、批判を受けなければならないいわれが私は当然出てくると思うのです。そこで仕事を与えるような大臣構想は、民間にこれを活用せしめる、あるいは都道府県のサービス・ステーションにこれを利用せしめる、あるいは農林地方局ができればこれにも十分やらせる。なるほど言葉の上ではそういうことは言い得られますが、実際上どの地区にどの程度の面積をこの機械開発公団をして当たらしめていくか、そういう具体的な資料提出されない限り、私はこの問題はまた数年後には同様のことを繰り返すのではないか、かように思うのです。その点は、大臣なり責任ある事務当局としても、具体案は事務当局から、大体の構想については河野さんからこの際明らかにしていただきたいと思います。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、あまり適当の用語でないかもしれませんけれども、これまでしばしば私が明年度の草地造成費は十億——そんなことでどうするか、もっともっとふやさなければいかぬじゃないかという御要望が非常に足鹿さんあたりからもあったわけであります。民間はそんなものじゃ問題にしてない、もっとなければいかぬ、民間に非常に意欲が旺盛であるということの御指摘があったわけであります。私もこの民間の意欲、この要請にこたえて、機械は今後十分動くだろう、また政府としても、そういう要請にこたえて動かすようにしていかなければならぬと思っておるのでございます。ただし民間貸与だけを当てにしておりません。政府におきましても今お話しのように、これからは十分この民間の要請にこたえて、土地造成に強い意欲、熱意を持って、この機械がフルに動くようにしていくときに、初めて農村の構造改善ができる、日本に新しい村が生まれてくるものと確信するものであります。
  113. 足鹿覺

    足鹿委員 これはあとで事務当局にお尋ねをしたいと思うのですが、ここに私の手元にある資料によりますと、これは古い話でありますが、みながみなとは言いません、言いませんが、いかに政府がわれわれ国会提出をなさる資料というものが信憑性と具体性に欠けたものであるかという一つの事例として私は申し上げたいのでありますが、三十年この公団発足当時に国会提出をされました経営収支に関するものをあらためて見直してみると、まことにでたらめという一語に尽きるのであります。たとえば収入の場合でありますが、国庫補助金の例をとってみましても、われわれ国会に示された当時の資料によりますと、三十年度はゼロですが、三十一年度に五千万円、三十二年度に三百万円、三十三年度に八百万円、三十四年度はゼロ、三十五年度は八百万円、三十六年度が九百万円という数字であった。実際上に政府が支出したものはこういう数字でありますが、当時の計画によりますと、三十一年度は七千九百万円、三十二年度は六千二百万円、三十三年度が六千一百万円、三十四年度も同じく、三十五年度も同じく、三十六年度も同じく、こういうことになっております。支出の面を申し上げますと、なおひどいのですね。こういう事業収支、経営収支というものは、立てたときからもう全くなってない。そういうものを国会提出をして、短時間の間に審議をせよと言っても、これは審議に疎漏があり、十分目の届かないことは当然なんです。だからこれから立てられようというはっきりとした根拠のある、絶対に赤字は出ない、事業効率も十分上がって、大臣が今言われたような成果の上がる具体的な計画が、当時出されたようなこの資金及び償還計画の欄の中にある公団の経営収支のようなでたらめなものであれば、こういうものはわれわれは断じて承服できません。これはあえて現在のあなた方を責めるわけではありません。あなた方の責任ではないわけです。その点は役人さんはかわられればそれでおしまいですから、あえてこれをあなた方の責任として私は追及するわけではない。が、しかし、この事例の上に立って、先ほどから言いますように、公団は充実したわ、借金のしりをぬぐったわ、一体ほんとうにあなた方が前向きで公団に仕事をさせる気なのか、気でないのか、その内容をここで明らかにしてもらわないと、この問題は解決がつかぬと思うのです。もうすでにこの公団の出発当初から、これは資料の面から見ても全くでたらめしごくなことになっておるのです。かりに支出の面を申し上げましょうか。実際のあなた方が考えられましたものとは、当初の計画があったものが十倍以上に支出されておるものもあるのです。全くもう驚き入るほかはないのです。特にこの差益金の事例を申しましても、われわれに示しておられたところの資料というものは、たとえば三十一年度のごときは——まだ三十一、三十二年、三十三年度程度は、公団根釧といい、上北といい、その他の地区において相当活躍しておる当時なんです。その当時においても、剰余金の計算が三十一年度において一億七千一百万円を見込んでおった、とれが八千二百万、決算面によりますとそういう開きになっておる。一億七千一百万というものと八千一百万の差、四億三千五百万と七千八百万の差なんです。五億八千五百万と二億九千五百万の差なんです。昭和三十四年度は七億五千四百万と四億四千三百万の差なんです。三十五年度に至っては十一億一千六百万に対して四億四千五百万、三十六年度においては十億五千七百万に対する二億三千万というように、それは全くもうお話になりません。こういうでたらめというか、ずさんというか、不十分な運営によってこれが運営されれば問題の起きてくることは、私は当然だと思うのです。こういうような事例から申し上げて、今後この公団を充実、前向きの姿勢にするんだと誓われますが、そのために大きな国費を投入するわけでありますけれども、どういう具体案を持って、誤差のないような、ほんとうに日本の農地造成や草地改良あるいは災害の復旧——あってはならぬことでありますが、災害対策、そういったことに対して対処されようとしておるか。年度別、地域別のものがあれば——これは公団あたりも当然良心的にあなた方に迫って、そのものをとるべきであるし、またあなた方も進んでこういうことであるから過去は確かに間違っていました、失敗でした、がしかし、今後はこういたします、こういうものが当然出されてしかるべきものだと私は思うのです。そういう点について大臣答弁は大まかで抽象的でありまして、これ以上大臣に申し上げても益ないことだと思うのですが、少なくともあなたの御意図と中身とはだいぶん食い違っておると私は思う。どのような御決意で私が指摘したような大きな食い違いが起きない運営をなさる御所存でありますか。かつての成田理事長は、月に二、三回の登庁であったそうですね。月に二、三回登庁すればいいという程度——真偽のほどを確かめようと思ってわれわれは昨日参考人としての出席を要求したら、支障によって御出席がなかった。これはうわさでありますから、われわれは真偽を確かめたかった。一体月俸の百分の六十五もの退職金がとにかく勤めてさえおれば月給のほかに毎月つく、こういううまい商売はないでしょうね。しかも赤字を出そうが、欠損をしようが、とにかくもらえるものだけはやめるときもらえる。これは農林省からただいまいただいた資料によりますと、ほとんど大部分が百分の六十五、こういう退職金を農林大臣認可によって受けることになっておるようですね。ですから大臣は御存じないはずはない。今度はまた畜産事業団も出てくるでしょうが、まだ退職金の規定がないようであります。ないのも若干あるようですが、一体その業務運営その他についてやはり信賞必罰といいますか、功績のある者とない者ということは、役人としては退職給与金等については当然考えてしかるべきだし、第一、百分の六十五も一カ月に、たとえば成田さんの場合は何にも仕事をしないでも二十三万円の百分の六十五、十四万九千五百円の退職金が毎月ついてくるのです。こういうばかばかしい話は、私はないと思う。そこに公団をたくさん作っていく上においても批判を受ける当然の理由が出てくると思うのです。ですから、これはやはり特別会計、公営主義、こういうもので愛知用水等も性格を転換すべきだ、こういうふうに思うのです。これらを総合して大臣はどのようにお考えになりますか。その辺のしかとした御見解を明らかにしていただきたい。仕事をほんとうにさせる気ならば、どういう具体的な指示を与え、今後事務局が案を練ったものに対してもどういうふうに決裁を与えられ、そしてこの公団が前向きにされるか、余談でその面に言及いたしましたが、質問を戻しまして重ねてその点を御答弁願いたい。もし次の機会においてこういう事態が起きたら、それこそこれは責任問題ですよ。それが出る要素は多分にあるということをこの際はっきり指摘しておきます。その点もしかと承っておきたい。
  114. 河野一郎

    河野国務大臣 私が大臣に在職いたします限りにおきましては、断じてそういうことのないように十分指導をし、もしくは事業計画等についてもあやまちなく公団と役所との関係を緊密にいたしまして十分に目的を達成するように監督いたす所存であります。  ただいま成田君が役所に出なかったというようなことでございますが、これは本人のために私はあえて弁明いたしますが、役所に出なかったということはない。これは事務当局もそうじゃありませんと申しております。私も友人の一人として在野時代からよく連絡があったのでありますが、大てい役所に行っておりましたことを私は知っております。  それから、今の退職金が多いということでありますが、これは各公団共通の退職金の規程だそうでございます。これは私が認可をすることでなくて、退職金の規程を認可して、規程に基づいて給与されるというととだそうでございます。従って私は実は幾ら出たかも知らずにおりまして——どうして知らずにいたかというと、退職金の給与規程が認可になっておるために、その認可になっておる規程によって各公団はみな同様の率によって給与されているものだということでございます。
  115. 足鹿覺

    足鹿委員 これはあなたが御決裁になったわけではない昭和三十年に発足した当時に、農林大臣認可によるところの給与規程が実施されておるわけでありますから、それはあなた自体を私はとがめることは当たらないと思いますが、少なくとも不合理をお感じになりませんか。月俸の百分の六十五も出して、いい事業成績の場合には以内となっておりますから、あるいはそれ以内で押える場合もありましょうし、一ぱい一ぱいいく場合もありましょうが、もうこういう基準ができますと、一ぱい一ぱいということに今までの慣例上なっておるでしょうね。畜産事業団もまだ退職給与金規程ができてないそうでありますが、この機会にこれらのものを再検討される御意思はないですか。でないと、これはほんの一つの事例にすぎません。要するに公団でやっても国の特別会計でやっても事業内容そのものは私は大した変わりはないと思う。私どもはあなたの構想に反対です。地方農林局には反対ですが、かりにあなたがきめのこまかい農政を地方農林局によって打ち出されておりますが、地方農林局の中心は従来の農地局のようです。農地局は当然こういうことをやっていいんじゃないですか。現在の農地局でもやれるんじゃないですか。何を苦しんでこのような公団を、しかも任務を一応達成した愛知用水にしろ、この問題にしろ固執をされるのか、私どもには納得がいきません。その辺にどうしても事業計画その他に無理が出てくる。ことわざに、一斗のもちにも一合のもちとり粉が要りますし、一升のもちにもやはり一合のもちとり粉が要る、というのがありますが、いろいろの門戸をかまえれば理事長だ、副理事長だ、監事だ、いわんやこの公団には顧問、嘱託なるものがおります。ある顧問は一文も取っておらない。ある顧問、ある嘱託には相当額の金が出してある、その任務なり活動状況なんというものも、資料を出せといえば出しただけで何ら説明を加えておらない。資料を出すからには、これについて説明をすべきではないですか、われわれは義務を持っておるのですから。それをあなた方が説明をすれば何もこういうことを質疑をする必要はないのです。一体機械開発公団に顧問、嘱託あるいは理事一名増員というようなかまえをとらなければこれからの事業遂行できるのかできないのか、どうも私どもには理解できません。一つ十分これは大臣みずからがもっと真剣な御判断をしてしかるべきだと思う。もう特別会計でもいいじゃないですか。新しく世銀から借款を負うわけではないですから、これはほとんど政府の補助金と交付金で現状はまかなわれておる。ただ負債を負っておりますから、その負債の責任政府が肩がわりしていけばよろしいのではないですか。その辺については発足当時は建設公団としての任務を終えた愛知用水公団には特にこのことが言える。今問題になっている機械公団の場合も、内容は若干違いますが、大体においてそういうことは共通だと思うのです。この点は先ほどから何べんもお尋ねをしておりますが、この際出直すお考えはないですか。
  116. 河野一郎

    河野国務大臣 私は遺憾ながら足鹿さんと根底の考えが違うようです。私はこの機械を、機械開発公団が出発いたしましたときには国にかわって上北なりそれから北海道の根釧なりの大規模開墾をやることが出発の動機で、これはその通りでございます。従ってそれに必要の機械を買ってこの事業をやる。ところが、これから私が意図いたしますところのものは、全国的に草地の造成をするなり原野開墾をするなりして土地の造成をして参ろう。必ずしもこれは政府のやることをこの公団によってやるということを淡く考えておりません。民間に十分にその機械を使わせよう、もしくは民間の機械のいたんだものは修理をしていくようにしようということで、それぞれ新しい時代の農業にふさわしい基本となる土地の造成をしていくに必要な機械をだれが持つかという問題であります。そこで政府が一部持ち、一部は、中型、小型は府県が持ち、そうしてこれをして一般民間のこれらの機械の使用価格をコントロールしていこう、もしくはまた民間がとうてい持てないものをここに温存しようということが目的でございます。でございますからこれを特別会計にやれとおっしゃったところで、民間に貸与するとかいうような場合に、はたして官庁がよくその機能を達成できましょうか。やればできぬことはないでしょうが、そういう場合にはわれわれの方針としては、公団でいくべきものであるときめておるわけであります。従ってその点は根本が違う、こういうことでありますから御了承いただきたいと思います。
  117. 足鹿覺

    足鹿委員 しからば愛知用水についてはいかようにお考えになりますか。愛知用水は先ほどからも私が申し上げておりますが、あれは発足は建設公団ですよ。しかも農業川水といいながら、事実は工業用水オンリーになりつつある、変貌しつつある。東海製鉄の設置その他名古屋中心の臨海工業地帯のマンモス企業の誘致によって多量の水を要する。ほとんど農民からキャンセルが始まっている。こういうふうに事実上において性格も変わっておりますし、実際上においてはもう建設は大体において基幹水路が終わり、支線導水路もほとんど完成をし、あとは末端の土地改良区がその水の配分をどういうふうにするかという点に尽きておる。これは愛知用水公団自体の仕事ではない。としますと、これは建設公団として発足したのです。現在も管理公団です。これをいかに管理し維持していくか、しかも農業川水的な性格はほとんど変貌を遂げようとしておる。公団自体発足当時の性格なり事業内容というものは変わっておるのですよ。この点はいかがですか。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 私も変わっていないと申し上げたわけではございません。その通りだと認識いたしております。ただ水資源公団によって総合的な水の利用についてはやろうということがわが党の方針でございますから、その際に愛知用水公団をこれに入れるか入れぬかということが問題でございます。水資源公団発足しておって愛知用水の方の仕事があとになりましたならば、私は当時水資源公団に吸収、合併したかもしれないと思います。ところが、これがいろいろ御承知のような事情で、水資源公団ができませんでした。発足がおくれました。そこで愛知用水公団に従事いたしておりまする職員の諸君も、当然いずれも長年この道に精進された諸君でありますから、この人材をそのまま取り入れてこれを活用することが、国家社会のためであるというふうに考えまして、たまたま水資源公団はさしあたり利根川と淀川の水域についてこれを実施するということでございましたから、そこに豊川用水が愛知においてありますので、愛知用水の経験を生かして豊川用水のあとの始末をやっていこうということで、今愛知用水は豊川用水の仕事をしておる。しかし今後の処置につきましては十分検討しようといたしておるのでございまして、別に今御指摘のように目的が違うじゃないか、いや違わない。ただ問題は公団でいいか悪いかという問題でありますが、水資源公団に合併するということになりまして、われわれとしては公団方式でいこうということについてはこれでちっとも差しつかえないのではないか、こう考えております。
  119. 足鹿覺

    足鹿委員 豊川用水の建設が新しい任務として愛知用水に付与されたということは私も存じております。それは確かにその点はあるでしょう。しかし、当時の政府の一貫した答弁は、われわれは特定のしかも外国資本を導入して国土の開発を安い金利でやれる、こういう点について公式的にあながち反対すべき性格のものじゃなかろう、種々検討の結果そういう結論に達した。またあなた方の唯一の公団設置の理由というものは、責任借款あるいは見返り円を資金源として充当していくのだ、これは政府の特別会計ではできないから公団を作るのだ、こういう思想、こういう主張によって一貫されておった。現実にはもうその必要はないでしょう。アメリカの技術団の最高技術は、日本の愛知用水の技術陣をもってして十分習得をし、実施も何ら遺憾はない、いい点はどんどん取り入れて吸収し尽くした、今日すべての点において私は日本の農業土木というものはそうアメリカの技術に依存をしていかなければならぬということはない。ロックフィル・ダムにいたしましても、あるいは幹線導水路の工法にいたしましても全部余すところなく吸収しておる。ですから資金源の問題は、これは当然政府が肩がわりをしていけば、問題は借金を返すだけのことになる。とすれば、建設公団的な性格は豊川に新しく吸収することによって任務ができようとできまいと、これは公団方式というものについて根本的な問題なんですから確かめておきたいのですが、今後はそうした資金問題は別にして、河野農林大臣事業団構想というもの、公団構想というものを進めていくのだ、そしてそれにはみんな先ほど言ったような役人を次から次と順番にたらい回しをしていくというふうな印象をわれわれは強く持つわけでありますが、そういう構想で資金問題とは別に、当時の愛知用水公団ができたときのいわゆる政府の根本的な理由はもう解消しておるとするならば、新しくそういう考え方に立って今後は進めていかれるのでありますか、そうだとしますと私どもは、この種のものについては再検討をしなければならぬと思うのです。その点いかがですか。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 足鹿さんは公団、公社が非常におきらいのようでございますが、われわれはそう考えておりません。従って愛知用水公団を作りましたときには、そういう理由を申し上げたことはその通りでございます。しかし、せっかくその愛知用水公団の職員諸君が非常に農業土木関係において経験を持たれ、非常に貴重な知識を持たれた一つのグループができ上がったわけであります。これをそのまま日本の農業土木もしくは土地の改良等に使うということは、国家のために非常にいいことであるというふうに考えまして、これをそのまま使っておる、こういうことであります。
  121. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、その職員の身分問題を大臣からおっしゃられるとまた一言申し上げなければなりませんが、われわれは愛知用水公団に奉職をしておる職員諸君の気の毒な実情というものは当時からいろいろ折衝したりして、解決の衝に当たった一人です。というのは各都道府県から技術者を出向さしたのです。用水が終わったときには帰るポストがなかったんですね。優秀な技術者をそのまま使うのだ、それはもちろん使っていただかなければ困りますが、当然国の職員としてポストもない、県へ帰るにもポストがない、結局豊川用水を吸収することによってかろうじてその技術者の自分も一応今のところは片がついているでしょう。これとても永久に農用用水があるわけでもありますまい。とするならばそういう不安定な条件において、最高の技術者あるいは画期的な建設工事に当たったそういう功労のある人々は今もって将来の不安を持っているのですよ。だからこういうものを作っても、任務が終われば当然その奉職する技術者を中心とする職員が不安を感じ、動揺し、そうして工事が末期になりますと、作業能率にも従って影響する。私どもは現場で切々とそれを聞いた。ですから何もお使いになること自体を私は言っているのではないのです。当然、そのようなりっぱな技術を修得したそういう人々は国の職員とし、あるいは地方公共団体の職員として使われても仕事はできるのです。その辺、大臣は私の質問をはき違えておられるのじゃないかと思うのです。
  122. 河野一郎

    河野国務大臣 国の職員として使えとおっしゃっても使うポストがないじゃありませんか。ふさがっておるじゃありませんか。
  123. 足鹿覺

    足鹿委員 それで性格の問題になる。
  124. 河野一郎

    河野国務大臣 だから性格の問題となると、われわれは公団方式でいきますから、これの任務が済んだら、引き続いて水資源公団としてこれを永久にそちらの水資源の開発に当たらせるということを基本方針としております。決して不安動揺していただかなくても、責任を持ってわれわれはその指導をするつもりでございます。たまたま、先ほど申し上げた通り、その発足に前後がございまして水資源公団がおくれましたので、豊川用水の仕事を愛知用水公団がそのまま温存しておる、こういうことでございます。その豊川用水が済むころにまた水資源との関係がどうなるかということについて、永久にこれらの職員の将来に対して不安を与えるような無責任なことを考えておりません。
  125. 足鹿覺

    足鹿委員 それだけの御言明は一応承っておきますが、要するに公団そのものの性格が変わった場合には、何も無理をして公団に執着する必要はないではないか、私はこういうことを言っておるのです。当時からの議論なんです。しかし、あなた方は借款するから、外資を導入するから公団を作るのだと言ったのだ、当初そうなんですよ。
  126. 河野一郎

    河野国務大臣 当時はそう申し上げたけれども、その公団が、今言う通り非常に有効適切な公団として、今日ではそれに国家として必要な新任務を遂行していただく。どこか悪いところがあるのでしょうか。ちっとも悪いことはないと思う。戻すといっても戻る場がない。あなた方のように、初めから公団を作ることは悪い、決定的にいかぬのだ、これは遺憾ながら私たちと意見が違うということでやむを得ませんが、しかし公団が悪いなら——私たちは公団は悪いと思っていないという建前でございますから、初めに公団をやるときにはそういうことを言いました。しかし今日はその公団の団体が非常に有能な人材をそろえていく、国家としてこれに農業土木の仕事をやらせるととは適当であるということで筋が通っておるのです。何が悪いのでしょうか。
  127. 足鹿覺

    足鹿委員 別に私は公団が悪いと言っておるのじゃないのですよ。方式そのもの、いわゆる当時の政府公団を主張した根本的な理由が消滅しておる。それはお認めになるでしょう。であれば、当然その理由が消滅すれば、新しい角度に立って職員の問題や、あるいはその技術者の問題、そうした問題を——国にポストがないとおっしゃるけれども、ポストそのものは国家が考えるべきことではないですか。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 でございますからわが党としては水資源公団その他を作って、この方に吸収して有能な職員に働いてもらう予定でおりましたが、国会の審議その他の関係から、水資源公団と愛知用水の主たる任務の完了とにズレができました。そこでこの愛知用水公団に豊川用水の仕事をしていただくことになりました。それだけのことです。
  129. 足鹿覺

    足鹿委員 大体わかったようでわからないようですが、要するに公団方式というものは、外資導入のいかんを問わずこれからやるんだ、こういうお考えのようですね。一応そういうことにして、押し問答をいたしましてもいたし方がありませんから、これ以上申し上げません。  そこで、先ほど質問いたしました公団共通の役員等の退職手当規程等は、各公団共通のものであるから別に差しつかえないじゃないかということでありますが、共通であればあるだけにこのようなことに不合理をお感じになりませんか。せんじ詰めると、御改定の意思があるかどうか。それから畜産事業団等もまだ規程が整備しておらないようですが、やはりその方針を踏襲されるのでありますか。この点は大臣として御検討なさる用意があるかどうか。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ御指摘の点等もあるようでございますし、なお私は公団、公社等について各方面とよく検討いたしまして、もう一ぺん思いを新たにしてこれに当たりたいと考えます。
  131. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣質疑に関連して、庄野農地局長にお尋ねいたしますが、当時農地開発機械公団法を審議した際に示されました資料の資金及び償還計画というものについて、あまりにも狂いが大きい。先ほど指摘した通りなんですが、われわれはその決算状況等をこの項目に従って知る由もない。私が先ほど指摘したのは、わずかの資料によって若干比較をしてみた程度でありますが、あなた方は、年度別、項目別におもなる項目に従って比較検討されたものがありますか。
  132. 庄野五一郎

    庄野政府委員 当初の資金計画でございますが、これにつきましては公団発足前の資金計画、こういうふうに私承知しております。これをもって公団発足いたしまして、そして上北あるいは根釧その他の開発特定事業をやる、あるいは篠津の開発事業をやるということを予定されております。その後特定事業の範囲その他は、今御指摘のようにいろいろな事情もありまして、未懇地の場合そういう点もあって縮小した、あるいはパイロット・ファームは北岩手で機械開墾懇式をもって今後の基本営農類型の事業をやってもらうといったような事情、それから公団発足当時予定されてなかったジャージー種等の輸入もされておる、そういった点もありまして、相当これについては当初の資金計画等はいろいろ改定もあったようでございます。これについての各年次の決算というものの詳細な比較というものはないわけでございますが、毎年の決算は当然ございます。当初の資金計画との比較はできてないと承知しております。
  133. 足鹿覺

    足鹿委員 楢崎委員からも御指摘がございましたが、三十五年度の大赤字の際に、山梨県の韮崎地区の災害復旧工事の際に、機械経費として一千一百万の赤字を出し、下請業者に対して過払い四百万円を出しておりますが、あるいは下請業者あたりが支払い能力がないような状態になる場合も私は出てくると思うのです。一事が万事でありますが、公団能力ということになりますと、なかなか監理官一人の手に負えないでしょう。先ほども言いましたように、理事長がなかなか勤務状態はよろしくない。二、三日がどうか、ということは本人がおりませんし、しようがありませんけれども、そういう話なんです。どの程度まで責任を持った監督指導をしておるかということはわかりませんが、とにかくその赤字内容を見ていきますと、随所に過払いをやっておった。契約解除後の下請業者の債務を元請者としての責任を負って負担したものが一千百万円もある、こういうような事態が随所にあるのです。私どもは伊豆地域の大風水害の復旧工事の稼働状況を見ました。なかなか仕事そのものはいい、きわめて良心的だという地元の話でありました。私どもも見ましたが、そのこと自体は末端の職員諸君はきわめてまじめにやっておるようである。一例をもってすることはできませんが、しかしその人々の良心に相反するようなことが上部において行なわれておることはまことに遺憾に思うのです。その結果はそういう人々の勤労意欲を減退せしめ、に対する熱意を消失せしめていく、こういう全くわれわれの想像外の事態が起きておるのです。これは枝葉末節のことを聞いておるのではないのです。資金及び償還計画というところで、公団の経営収支というものが、当時わが委員会提出された。われわれはそれを信用したのです。政府が出した資料を信用した。そうしたところが数年後にはこういう事態になってしまった。ですから決算そのものはあるが、当初の事業計画公団の経営収支というものとどういうふうに食い違ったかということは、あなたが当然公団当局にも命じ、あなた方一体としても比較検討されてしかるべきことでしょう。責任があるでしょう。監理官なるものは一体何をしているのです。毎年食い違いはもうものすごい食い違いが出ておるのですから、そうしますと、われわれはあなたが出された資料なんというものの信憑性を疑う。一体国会を何と考えておるか、こういうでたらめな大きな食い違いを当初から国会に出して、それによってわれわれをして審議せしめる。われわれも一々当たってみるわけにはいきませんから、その点は私は重要だと思って指摘している。あなた方の方にもあるでしょう。支出の部におけるところの一、二、三、受託建設工事、事業支出、公団経費、収入の部が大見出しの借入金、国庫補助金、続いて交付金というものがありますが、この交付金の性格というものも私どもにはわかりません。補助金があって交付金がある。たなおろし資産といいますか、団体の場合は、機械残存価格の評価、差益金、償還までの剰余金運用残高、その内容がずっと二、三ずつ出ておりますが、少なくともこの程度のものは比較検討されて、どこどこにどういう間違いがあったが、それをしさいに検討して、今後のあやまちなきを期するというのが、特に監理官責任じゃないですか。監理官はやられたのですか。何ですか一体、こういう資料をわれわれに出して。この検討なしに公団の新しい発足はありません。われわれは今すぐにその資料をお出しなさいとは言いませんが、この際、なければ私が貸してあげます。この点がどうなっているかをお示し願いたい。
  134. 庄野五一郎

    庄野政府委員 公団発足後におきまして、資金計画事業計画も逐年事情の変更等で当初と変わっております。それは御指摘通りであります。それに即応する毎年の決算がないというおしかりでございます。これにつきましては、われわれといたしましても今後の運営の方針等もございます。そういう点は十分比較するように研究をいたしたい、そういうふうに考えております。
  135. 足鹿覺

    足鹿委員 この委員会が済んでしまうと一々こんなにかかり合っているわけにはいかない。ですから問題が出たときに詰めた話にしておかないと、庄野さんだめなんです。ですからこれを貸してあげますから、その決算があるというなら、これにあてがって当時あなた方がやった経営計画というものはどんなにでたらめしごくなものであったか。あなた方の先輩がやったのでしょうが、あなた方も課長か何かでその当時作業しておったでしょう。責任がないとは言えませんよ。この資料はありますか。これは大事な点ですよ。僕はほかにたくさん資料を持っておりますが、やりますか。資料をすぐ印刷して出せとはちょっと無理でしょう。どうかこれをごらんいただいてこれにやりますか。大体監理官というものは一体何をしておるのですか。どういうことをやるのですか。こういう検討もしないで何を監理しているのですか。毎年々々こういう食い違いを示しているのですからね。
  136. 庄野五一郎

    庄野政府委員 お手持ちの資料を貸していただきまして、至急検討いたしたいと存じます。なお公団監理官につきましては、公団の監理の直接の監督官といたしまして毎年の事業計画、それから予算執行、編成、それから各面にわたる事業監督指導、そういうものをやっております。また農地局長監理官の上に立ちまして、今後は事業計画認可する上に、法律改正もありますのでその事業計画認可の段階におきまして、具体的に、先ほどから御指摘になりましたような事業量の確保、そういった面は今後とも十分指導監督して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  137. 足鹿覺

    足鹿委員 それから監理官に一つ伺いたいが、農地開発機械公団の顧問、嘱託というものは、この間出しました資料によると顧問が二人、嘱託が五人、計七人の顧問、嘱託がありますが、これ以上ございませんね。
  138. 佐伯悟郎

    ○佐伯説明員 ございません。
  139. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと最高八万円から最低二万円、大体中間が五万から五万五千円程度の手当が出ておるようで、平川守さんは無給でありますが、どういう事情か知りませんけれども、とにかくそういうことは別問題といたしまして、この顧問、嘱託の勤務状況、それから任務は、顧問は一体どういうことをやるのですか。要するに私は手当を出すなとは言わないのです。値する仕事をしておるかどうかということです。捨て扶持などということは認められない。どういうことをやっておるか、具体的に一つ詳細に御説明願いたい。
  140. 佐伯悟郎

    ○佐伯説明員 昨日公団理事長から申し上げました通りでございます。
  141. 足鹿覺

    足鹿委員 参考人の意見の通りとは一体何ですか。あなたはそれを監理していく立場ではないですか。監理官としてどういう仕事をしておるか。顧問、嘱託というのは、個人別にその勤務状況、それからその勤務内容、どういう仕事を与えておるか、それに対してどういう任務を達成しておるか、それを具体的に説明願いたい。
  142. 佐伯悟郎

    ○佐伯説明員 平川顧問は世銀関係のお仕事をやっておりまして、上松顧問は公団の受託工事における未墾地の買収関係のお仕事、それに関する訴願等のお仕事をされております。堺田顧問は公団の保有機械の管理上の問題点、それから受託契約等に伴います紛争等の処理、委嘱弁護人との交渉等の仕事をしておられます。それから久保嘱託は公団内部の事務管理の整備に関する仕事をされておられます。川田嘱託は公団受託工事の牧野に関係する牧野造成改良工事に関する事務を委嘱されております。野崎嘱託は公団の資金繰りないし乳牛の借入金の償還等に関する事務をされておられます。荒木嘱託は愛知用水公団からの受託工事に関するお仕事をされておるわけでございます。
  143. 足鹿覺

    足鹿委員 当初公団発足当時の人員の予定は、二十名であります。それが現実においては四百二十三名になっております。まさに大飛躍です。大増員です。これと公団事業内容との関連がありましょうから、増員になったこと自体には私はとやかくここで論じようとは考えませんが、少なくとも発足当時は二十名であったものが四百二十三名の大事業になった、その上に正員にあらざる顧問、嘱託も置いておる。大体世銀借款の問題等については当時の成田さんがアメリカにおいでになって借款協定をお結びになった当の責任者である。理事長ぐらいはその借款を取り結んだ責任者としてこれをその職員に命じて処理されるようなことはできないのですか。無給嘱託や無給顧問を置いて、あるいは有給顧問や有給嘱託を置かなければとの大陣容で片がつかぬのでありますか。必要ならばなぜ正員に切りかえて唯々と仕事をなされないのでありますか。私どもその間の納得がいきません。役員の退職金の問題といい、顧問、嘱託の多いことといい、他に類例を見ない公団であります。いかがですか。
  144. 庄野五一郎

    庄野政府委員 顧問、嘱託の問題等、いろいろ御指摘を受けた次第でございます。なお行管の方からも人件費の冗費等について、顧問、嘱託等の問題が指摘されておるように承知いたしております。監督官庁といたしまして、今後顧問あるいは嘱託の仕事の内容をよく検討いたしまして、正規の職員にすべきものは正規の職員とし、あるいはあまり仕事が必要でないというようなものにつきましては、公団の事情を十分聞きまして、冗費の節約に努めたいと考えておる次第であります。
  145. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどあなたにお渡しした資料は、御一見になって、決算があるのですからすぐできるはずです。それに合わせてみれば、どう食い違っておるかということはすぐ出るはずなんです。決算があるというのですから、監理官に命じて、すぐにお作りになったらいかがですか。赤字かあるいはその他の色変わりで、それがどうなっておるか書き込んでいただきたい。特に補助金があると同時に交付金という国庫支出金がありますが、先ほどからも同僚楢崎委員から、国庫負担行為の問題との関連で指摘がありましたが、その性格は一体どういうものなのか。補助金は補助金で出す、交付金というのは一体何でしょうか、具体的に御説明願いたい。
  146. 庄野五一郎

    庄野政府委員 公団に対しまする補助金は、一般管理費の不足分等を補助するということに承知いたしております。なお交付金の方は、先ほど問題になりましたが、公団法附則九条によりまする事業費公団で立てかえておりまして、それを国から交付する、こういうことになっております。
  147. 足鹿覺

    足鹿委員 今監理官が持って帰っております資料にずっと書き込めばよろしいのですから、それができるのを待って、それによってまた重要な質疑をしたいと思います。本会議中にその作業をして下さい。その間暫時質疑を留保いたします。
  148. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時五十六分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  149. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  議事進行に関し、丹羽委員より発言を求められておりますので、これを許します。丹羽委員
  150. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 動議を提出いたします。すなわち、農地法の一部を改正する法律案農業協同組合法の一部を改正する法律案農業災害補償法の一部を改正する法律案農業保険事業団法案の四案を一括議題として審議を進められんことを望みます。
  151. 野原正勝

    野原委員長 丹羽委員の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕   〔「そんなむちゃなことないよ」「理事会を開け」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  152. 野原正勝

    野原委員長 起立多数。よって、丹羽君の動議の通り決しました。  内閣提出農地法の一部を改正する法律案農業協同組合法の一部を改正する法律案農業保険事業団法案農業災害補償法の一部を改正する法律案、右各案を一括議題とし、質疑に入ります。米山恒治君。
  153. 米山恒治

    ○米山委員 それでは最初に農協法の改正の問題について二、三お尋ねいたしたいと思います。  昨年成立いたしました農業基本法の第十七条には協業の助長について定められておるのでありますが、それを見ますと、「農業協同組合が行なう共同利用施設の設置及び農作業の共同化の事業の発達改善等必要な施策を講ずる」ということが掲げられ、また「農業従事者が農地についての権利又は労力を提供し合い、協同して農業を営むことができるように農業従事者の協同組織」を整備するともうたってあるのであります。協業には、数戸の農家がトラック等を共同購入して共同利用するような、協業組織といわれるような簡単なものから、数戸の農家が家畜、農業機械、現金等を出資しまして、共同化法人を設立しまして、個々の農家が農業経営でなくなってしまうような完全協業経営といわれるものに至るまで、いろいろな形が考えられるわけであります。今度の農事組合法人の制度もこの協業助長のための施策であると思うのでありまするが、今後政府は具体的にどのような方法をもってこの計画と協業を促進していかれるつもりでありますか、まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  154. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 御指摘通り、農業基本法におきましては農業の協業の促進ということが一つの大きな題目になっておるのでございまして、先ほど御質問の中にもいろいろございましたが、そういう趣旨に沿いまして協業を促進して参りまするために、この農業協同組合法改正案、それから関連しまして農地法改正案を提案いたしました次第でございます。  この内容は御承知通りでございまするけれども、農業法人、いわゆる農業の生産を共同いたしまして一緒に行なうもの、あるいは部分的に農機具の共同利用であるとか、農作業の共同化でございますとか、そういうものがあるのでございます、そういうようないろいろの段階の協業が自由に農民の実態に応じましてできますように、組合という制度考えたわけでございます。そこで、農事組合には、ほんとうに農業経営を行なうという場合には法人である必要があろうと思うのでございまして、そういうものにつきましては農事組合法人、その他のものにつきましては、いわゆる法人という名前をつけませんで、農事組合というものがいろいろの段階のものがございまするので、そういうようなものも取り込んで一緒に助長をしていく、こういう考え方でやって参ったらどうかというふうに考えておるわけでございます。そういうような意味からいたしまして、この協同組合法の改正案で、いわゆる農事組合というものを通じまして協業化を進めていくということを考えまして、それにつきましては、法人の場合には土地の所有制限の緩和、それから小作地の賃借の緩和、こういうようなものを考えておるのでございます。それから一面におきましては、すでに昨年成立をいたしました農業近代化資金というようなものがございますので、これらの運用におきましても、今後協業というようなものにつきましては十分一つこれを助長いたしまするような意味で運用して参りたい、こういうことも考えておるのでございまして、現在計画中の農業構造改善事業というようなものにおきましても、この協業の問題をこれらの協同組合法の改正と相関連をいたしまして、あるいは金融の面を通じ助長して参る、そういう考え方で進めて参りたいと思っております。
  155. 米山恒治

    ○米山委員 農業近代化資金のお話がございましたが、これは三十七年度からは金利が六分五厘ということになりましたけれども、三十六年度では七分五厘という金利でやられたわけでございまして、各地方公共団体では、この金利ではとうてい近代化資金を貸し付けて農業経営をやらせるにはどうも困るということから、相当の金額を負担して五分というところで貸付をしておる府県があるかと思うのでございます。これが全国でどのような状況になっておりまするのか、また五分にしたその差額の金利を地方公共団体が負担しておりまする総額等がわかっておりましたらお知らせいただきたい。
  156. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農業近代化資金におきましては、御指摘のように、発足の当初七分五厘という末端金利でこしらえたわけでありますけれども、三十七年度からは個人施設及び協業施設につきましては六分五厘、こういう考え方で運用して参りたいと思っておるわけでございます。そこで、今までの三十六年度の実績を見ますると、もちろん、各県とか、あるいは市町村とか、そういうところでこれに加えまして利子補給をある程度やっておるところがございます。全般的に見まして、全体の県の中で半分ぐらいのものは県あるいは市町村で利子補給をやっておるという状況でございまして、その補給の程度は一分ないし五厘というものが大部分でございまして、中には特に一分五厘という補給をしているところもございますけれども、大体の線は五厘ないし一分というところでございます。
  157. 米山恒治

    ○米山委員 それでは次にお尋ねいたしたいのでございますが、農業基本法は農業構造の改善を主要な施策の一つに考えられまして、その内容といたしましては、一方では家族農業経営の望ましい姿として自立経営ということを考え、農業として自立しようとする経営については、できるだけ自立経営になるように育成する、こういうことでいろいろな施策を講ずるといい、一方では協業を助長するとされまして、今度の改正案によりまする農事組合法人制度の創設は、共同利用施設あるいは農作業の共同化という一部協業から始まって、農業経営という完全協業に至るまでのものを規定する協業助長の施策であると思うのであります。この協業と自立経営との関連性についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、また政府は、基本法にいう自立経営の育成と協業とに関して、どちらにウエートを置いて今後施策を進めていかれるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  158. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、なるべく経営は大きい方がよろしい、そういう意味経営規模を大きくするという意味から、協業もけっこう、共同もけっこう、どこまでも協同精神に徹して農村はいくべきものである。それが地方の実情によってこちらをとると申しましても、なかなかそういきかねる場合がある。従いまして、どちらにウエートを置くかということでなしに、地方の実情に即して指導して参ることが一番適当である。順次やっておるうちに機械が入ってくる、やはり協業にしていく必要が起こってくるだろうということでございまして、これを一定の指導方針をきめていくということは必ずしも適当でない場合が多いことだろうと思いますので、地方の実情に即して指導して参るという考え方でいくべきではなかろうかと考えております。
  159. 米山恒治

    ○米山委員 次に、昨年の国会に御提案になりました改正案によりますと、これが農業上産協同組合、こういうふうになっておる。今回の改正案によりますと、農事組合法人として提案になっておるわけであります。これを比較してみますと、その名称のほかに、法人の行なうことのできる事業、あるいは組合に対する出資の義務、また組合員の事業従事義務、あるいは剰余金の配当方法など、組合の構成上本質的な面にわたってかなりの改訂が加えられておるようであります。この一年の間に農業経営の実情あるいは農業共同化の推移についてさしたる変化も見られないのに、これを改訂したのはどのような理由によるのか、御説明をいただきたいと思います。
  160. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 御指摘の先年の国会に提案しました法案といいますのは、三十四国会法案じゃないかと思うのであります。その法案におきましては、その当時、農業法人という問題が盛んに議論をされておりまして、これについて農地法の問題、農業協同組合法の問題、そういうものをもう少し時間をかけて検討しようということで、とりあえず農業法人についての対策といたしまして、暫定的な案として、三十四国会提出した案があるのでありますが、その後農業生産協同組合、そういうことで考えたわけでありまして、そういう農業生産協同組合につきましては農地法の特例を受けるということで考えたわけでありますけれども、その際、いろいろ全国の情勢を見ますと、農業の共同化を進めます場合に、農業生産協同組合というふうに、完全に共同化する、自分の経営も全部投げ出して法人経営に移すというようなものは、全体的には数としては、実態はそう大きなウエートのものではないのではないか。そこで、あるいは共同作業をやるとか、共同利用をやるとか、そういういろいろの段階があるのでございます。そういうような農村の実情に応じまして、いろいろの段階の協業、共同に合いますような段階を考えた方がいいのではないかということで、いろいろ検討いたしまして、農事組合という制度考えたわけであります。その中で、農業経営の実態や、一般取引との関係といったようなことで法人格を必要としますようなものにつきましては、農事組合法人ということで、法人格を持ったものについてはそういったことで考えた。その他法人格を持たない組織ももちろんありますので、そういうようなものが法人格を持たずに共同ということもあるわけでありますので、そういう各種の段階の共同、協業化に合いますような段階を考えるべきであろう、これが農村の実情に合うのではないかというようなことで考え直してみたのであります。
  161. 米山恒治

    ○米山委員 次に、今お話しの農事組合法人は、前回の農業生産協同組合と異なりまして、その事業の能力として、農業の経営及びその付帯事業を行なうことができるほか、新たに農業に関する共同利用施設の設置及び農作業の共同化に関する事業も実施し得ることになっておるようであります。この後者の共同利用施設及び作業共同化という問題については、現在の農業協同組合においてもすでにその事業の能力が付与されておる。これを全国的に見てみましても、トラクター等の農業川機械の共同利用とか、あるいは共同採種圃、稚蚕共同飼育等による共同作業が認められておるわけです。そのほか、相当広範にこのような共同作業というものが行なわれておることを見聞いたしておるのでございますが、まずこの農業協同組合で、現在どの程度のそうしたような生産関係の事業が普及と申しますか、行なわれておるかというのがおわかりであったら御説明をいただきたい。
  162. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農協の共同利用といいます事業は非常に広範に行なわれておるのでございまして、精米所を作るとか製粉所を作るとか、いろいろそういうようなものもございまするし、それから農業機械を入れていくというようなものもございます。数字につきましてはいずれ調べましてお答え申し上げますけれども、そういうのは相当幅広く行なわれておりますが、いわゆる生産というものについても、ほんとうに土地を持ってそうして生産をやるもの、生産にタッチをするものというようなものは、今までは、農業協同組合においてはほとんど行なわれておりません。そう新しい資料ではございませんが、今までの二、三年前の資料で、農協が土地を持っておるというのは全国で一千町歩でございまして、それも大部分は、今の状況では何らかの工場の敷地に使うというようなものが多いのじゃないかと思うわけでございまして、農地を持って農業生産をやるという例はほとんどないのではないかと考えております。農業経営が農業協同組合にできるかできないかという問題が従来も疑義がございまして、あるいは議論としてはできるのじゃないかという議論もございますが、できない建前で作っておるという議論もございます。疑義があったわけでございます。そういう点も今度の法改正ではっきりさしまして、農協法ではできない、ですからそこで特例を設けて農業経営ができるようなそういう団体組織をこしらえる、そういう考え方に立って今回考え方を固めたわけでございます。
  163. 米山恒治

    ○米山委員 次に農事組合法人と農業協同組合との関係でございますが、農事組合法人は農業協同組合の正組合員の資格を与えられ、そうしてまた農業協同組合の系統に入ることになるわけでございます。ところが逆に、農事組合法人は農業協同組合を設立するときの発起人になる資格が与えられていないようでございます。こうした関係で、将来この農事組合法人が活発に活動するようになりた際に、共同利用施設あるいは農作業の共同化という面で、農業協同組合と農事組合法人とが競合するようになりはしないが、こういう両者の関係で摩擦が起こってきはしないか、このように考えられるわけでございますが、この点をどういうふうにお考えになっているか。
  164. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 御指摘のように、農業経営を行なう農事組合法人は農業協同組合の正会員になれる、それから共同施設のみを行なう農産組合法人は準会員になれる、こういう案になっておるのでございます。ですが、その点、農業協同組合は任意加入の団体でございまするので、まあ会員になれる、こういうことで法律上はなっておるのでございますが、今後の問題といたしましては、農協の系統運動につきまして、あるいは場合によっては支障を来たす、そういう心配もないこともないのでございまして、そういう点は、今後農業協同組合の活動自体におきましても、そういういわゆる農事組合法人をできるだけ系統の活動に参加をさせる、こういうようなことで指導して参るのが適当じゃないかと思っておるのでございますが、これを法律上農業協同組合の系統運動にきちんと結びつけてしまうようなことは、これは実際問題としては農協運動としては無理であろうというふうに考えるのでございまして、会員となれる資格だけ与えまして、あとは実情に応じまして団体の自主的な活動なりあるいは行政指導なりそういうようなもので系統組織の活動というものに支障のないように指導して参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  165. 米山恒治

    ○米山委員 次に農事組合法人は、先ほどもお話がありました通りに、組合員のためにする共同利用施設の設置とかあるいは農作業の共同化と、農業経営自体を認めながら、販売とか購買事業を行なわせないということになっておるわけでございますが、これは協同組合の一種と見てもいいんですが、協同組合からいえば中途半端なものだ、こういうことが言えると思うのであります。農業組合法人が今後健全な発達を遂げてきて、いわゆる活発な組合法人の活動が始まる、そういうことで特に農業経営を活発に行なうようになってきた段階になれば、当然生産した農産物を共同販売しようじゃないか、あるいは肥料とか飼料、こういう農業生産資材の共同購入をやろうじゃないか、こういうようなことが自然発生的に起こってくるのじゃなかろうか。法の上ではこれを認めないといいましても、事実上はそうしたことが行なわれるのじゃなかろうか。こういうことから特に農事組合法人に対してこのような販売、購買事業を行なわせない、こういう理由はどういうところからきておるのか御説明いただきたいということと、農事組合法人の事業の付帯事業というものが書いてあるようでございますが、これは明確でない。どのような事業が付帯事業として考えられておるのか、御説明いただきたいと思います。
  166. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 ただいまの御指摘のように、農事組合法人につきましては、いわゆる共同販売事業とか共同購買事業とか、そういうようなものはやれないようになっておるのでございますが、これは農業協同組合の会員としての農民と同じにこれは扱っていく、こういう考え方でございます。法人として一個の人格を持ちまして農業経営をやっていく、こういうものでございますから、これは当然農民と同じ立場で組合員になる、こういう考え方のもとに考えておるのでございます。もちろん御指摘のような、たとえば自分のとりましたものを売るとか、それから農業組合法人の組合員が、自分で使いますところの経営に必要な資材を購入する、これは共同購入のようにも見えますけれども、これはいわゆるその法人が必要なものを一緒に売り必要なものを買うのでございますから、これは当然できるわけでございまして、いわゆる個々の経営体が別個に経営をやっております場合の資材購入とか生産品の販売とは趣が違うのでございまして、当然これは一緒に売れる、こういう考え方でおるわけでございます。  それから農事組合法人の付帯事業と申しますのは、農業経営を行ないます場合にたとえば自分の作りましたものを、これを高価にもっと有利に売るためにある程度の加工をする、あるいは農業機械を持っておりましても、使わないときにはこれをほかの者に貸すとかいうこともあろうかと思うのであります。そういう自分の経営に付帯をいたしましてやれるような仕事につきましては、農事組合法人でやれる、こういうことで考えておるわけでございます。
  167. 米山恒治

    ○米山委員 次にお尋ねいたしたいのでありますが、御承知通り、最近の経済の高度成長と国民の食糧消費構造の変化ということに伴いまして、農業生産もこれに対応して、昨今非常に声の高い畜産、果樹のいわゆる成長部門の発展が目ざましいのであります。ところで、このような畜産、果樹の発展に伴い、果樹あるいは養鶏、養豚、あるいはこれらの生産加工、こういう事業を行なう専門単協も全国的に急速な勢いで設立されつつあります。私、鹿児島県でありますが、鹿児島の例を見ましても、これは法人化はしておりませんけれども、最近百二十一のこうした共同で仕事をやるというのがあるようでございます。これを見てみますと、ほとんど養豚とか養鶏とか果樹というもので共同経営をやっておるようであります。こうしたことから考えまして、現在の専門単協、専門の特殊協同組合と申しますか、地区総合農協に加入しておるのは見られないようでございます。今後こうした専門の農協というものが増加していくことが予想されるわけでございます。こうしたことから、専門の単協と今の総合農協との関係を今後どのような方針で指導していかれるおつもりなのか。また、今度の改正案では、農事組合法人に共同利用の施設の設置とか、農作業の簡素化に関する共同化の道を開かれたのは先ほどの御説明の通りでございますが、従来の総合農協と今度の農事法人組合との間に競合が出てきやしないかという気もするわけであります。これをどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。農業基本法の中にも「農業に関する団体の整備につき必要な施策を講ずる」とのようなことが定められてあるわけでございます。以上のような観点から考えまして、今後、農業協同組合に対する考え方あるいは制度の上でどういうふうに御指導、改革を考えていらっしゃるのか、その辺のところを一つお示しを願いたいと思います。
  168. 河野一郎

    河野国務大臣 私からお答えいたします。  実は農村における団体はどうあるべきかということにつきましては、当面する農村問題の中の最重要問題と考えます。ただいま御指摘になりました単位農協と今ここに法案提出いたしておりますものとの関係がどうか。私は農協はなるべく合同合併して大きく指導すべきものである、規模を大きくして内容を強固にして参るべきものである。それからこれは今後の農業経営の上におきまして、それぞれの地区々々に事業主体を設けてやるべきものでありますから、そこになるべく競合を避けるようにしていくことが可能でもあるし、またそうあるべきものではなかろうかと思うのでございます。  そこで第二段に御指摘になりました専門農協と現行の農協との関係はどうかという点でございます。私は現在のいわゆる成長農業といわれるものが今後専門農協としてますます発展し、強い要望のもとに育成されていくだろうというふうに当然考えらるべきであって、これらを総合して、今後来たるべき機会までにぜひ根本的にあるべき姿を結論づけなければならないと思って、鋭意検討をいたしておる段階でございます。いずれ皆様方の御意見も十分伺いまして、そして今後の農村における団体はどうあるべきかということについて十分に研究し、そしていたずらな摩擦混乱を避けつつ、あるべき姿に到達するようにいたしたいと考えております。これは、農村が従来の米麦を主にしておった、そこに新しい成長のものが生まれてきた、主産地の形成をする、構造を改善するという施策が進むにつれまして、当然いろいろな面について変化が必然的に約束されておると思うのであります。重ねて申し上げますが、摩擦を避けつつ、十分慎重に検討を加えて所期の目的を達成したいと考えております。
  169. 米山恒治

    ○米山委員 次にお尋ねいたしたいのは、この農事組合法人も農民の経済的なまた社会的な地位を向上させるための農民の協同組織たる協同組合である、かように解するのであります。従いまして、農業経営を行なう本のについては構成員全員が経営に従事することが理想ではないか、しかし、一方において特に農業の経営という生産事業を行なう以上は、資本の充実をはかる必要があると思うのでございます。そこで前回の農業協同組合の場合には、協同組合の本質と資本金の充実の必要性の調和点と申しますか、そういう観点から組合員の半数以上の常時従事義務を定められておったようでございますが、今回の農事組合法人では、新たに共同の施設あるいは農作業の共同化事業を認めた、こういう関係からかして組合員の従事義務について何らの規定がないようでございます。これは農業経営を行なう農事組合法人の組合員についての事業従事義務を免責されたものであるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  170. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 おっしゃる通り、先般の改正案におきましては、組合員の従事義務というものを書いておりましたが、これは先ほど申し上げましたように、とりあえずの暫定措置としまして、農地の方の制限を非常に窮屈に考えておったのでございます。そういう関係からして組合員の従事義務というものまでもつけておったのでございますが、今度考えた案におきましては、いわゆる協業化ということによってその農協の経営自体が合理化されなければならぬという点もあるのであります。これに強制的に組合員の従事義務を置くことは適当でないと考えたのであります。二面組合の仕事に対しまして、組合員が従事するというようなことは本質的にこれは組合員の権利といってもいいものではないかと考えるのでございまして、そういう意味からいたしまして、法律上従事義務を課する必要はないというふうに考えたわけでございます。ただ、うらはらの関係でございますが、他の一方におきましては従事する者の中の五分の四は組合員でなければならない、こういう規定を置いておるのでございまして、そういう意味で農事組合法人の仕事をやっておる着の五分の四は組合員がこれをやる。だからその点を加えておらないのであります。
  171. 米山恒治

    ○米山委員 次に、信託制度の問題についてお尋ねしたいと思います。  今度の改正では、農業構造の改善に寄与するという建前から、農地法の規制を緩和するということと、農民の自主的な共同組織である農業協同組合が、農地等の貸付をやる、あるいは売り渡しを目的とする信託を引き受ける、こういう事業を新たに設けられたわけでございます。このような農地の流動化を促進するための対策として、今度新しく信託制度というようなものができた。信託ということは農家にはきわめてなじみが薄い制度であると私は思っておるのであります。そういうふうに思うわけでございますが、第一に信託による場合には売り渡しをする土地あるいは貸付をするという土地、こういうものは委託者である農民から農協に所有権を移してしまう、その上で相手方である耕作農民に売り渡しをする、あるいは貸付をする、こういうことが行なわれるわけでございますが、こういう貸付あるいは売り渡しについても、農協におきましてはいろいろな経費が要るわけでございます。登録税とかあるいは管理費とかあるいは手数料、こういうものを考えて参りますというと、農地等の信託事業考えておる目的は、農協とかあるいは農業委員会によってあっせんしてやっても実現できることじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。むしろそうした方が農民心理にも適合するのではないか、このように考えるわけでございますが、特に信託制度でなければならない積極的な理由と申しますか、そのようなものを一つ教えていただきたいと思います。
  172. 庄野五一郎

    庄野政府委員 今回の農地法の改正の一つの大きな柱といたしまして、農地の流動化を促進する。これは基本法によりましてそういう方向がきめられたわけでございますが、その流動化を促進する一つの方法といたしまして、農民の自主的な団体でございます、また一面農村における公共的な団体ともいうべき農協をその対象といたしまして、農民が農地の信託制度を認めてくる、こういうことになります。御質問のように、この信託には売り渡し目的の信託と貸付目的の信託があるわけでございまして、そういう信託目的に沿うようにいたしますために、一応農民から農協に所有権を移して、そうして農協が組合員の自立経営あるいは協業経営を促進するような方向におきまして、預かりました農地を売り渡す、あるいは貸し付ける、こういうことに相なるわけであります。この信託制度につきまして、これは農地法の基本原則でございます根本的な考え方の範囲におきましてこういう流動化をはかる、こういうことに相なるわけでございまして、その農地法の基本原則を維持していくという観点におきまして、やはり農民の自主的な、農村における公共的な団体である農協を信頼して、農協にそういうにない手をお願いする、こういうことに相なるわけでございます。権利関係等を明確にするために、そういう点を農協に移して、そして貸付なりあるいは売り渡しなりをする、こういうことに相なるわけであります。あっせんによります場合は、これは個人から個人に、農民から農民に所有権が移る。あるいは農民から農民に賃借権が設定される。こういうことに相なるわけでございますが、やはり今の情勢において、農民が所有権を終局的に売り渡してしまう、あるいは賃借権を設定すると、一般の賃借権のように解約解除という点につきまして、農地法の特殊な耕作権保護の規定がある、そういう点から非常に農民も逡巡するわけでございます。信託目的で信託期間が過ぎますれば、また農協から所有権が返ってくる、こういう点において保証ができる、こういう点において農協を中心にしたわけであります。そういう点から制定いたしたわけでございます。
  173. 米山恒治

    ○米山委員 今お話通り、そうした農地等の信託事業が実際行なわれるということになりましても、現状と申しますか、農村における土地の売買の状況を見てみましても、売買価格というのはきわめて高いのです。反当十万円もする、場所によっては二十万円もする、こういう高値を呼んでおるわけです。売り渡しの方法による信託を時価で売買することになりますというと、これが円滑に目的通り実施ができるかどうかということは非常に疑問に思います。また貸付の方法による信託にいたしましても、信託利益と申しますか、それに当たる貸付料が現行の統制小作料を基準として定められるとするならば、委託者である農民の受け取る収益というものもきわめて少額なものになるのではないか、こういうふうに思われるわけでございます。このような状況から考えまして、政府は農地等の信託事業によって農地の流動化がどういう程度に促進されるのだろうか、どういうふうにお考えであるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  174. 庄野五一郎

    庄野政府委員 農地の流動化の問題でございますが、この新しく創設いたさんとします信託制度、こういうものは初めての事業でございまして、まだ十分その見通しというものは立たない次第でございます。なお最近におきまする農業事情、特に農村から都市へ、あるいは一般の鉱工業の方に農業従事者人口が移動していくというような趨勢があるわけでございまして、その中におきましてやはり農村における、あるいは農家における労働の非常な不足化ということ、あるいはそういうふうに都市に出て参ります場合に、農地をそのまま一般に売り渡すというわけにも参らない、あるいはそれを従来のように小作に出すということも、また帰ってきた場合にそれを返してもらうようにするにも法制限がある、新地作りをするとかあるいは都市にいい労働移動の場があっても逡巡するという面があるのでありまして、そういう面の解決の一助としてこの信託制度を設けたわけでございます。御承知のように売り渡し目的の場合におきましては、農地は大体その地方におきます時価によるわけでございます。大体全国的な時価が田地反当十七万円から十八万円程度ということになっておりますが、これに対して農地を買います側の資金につきましては、自作農創設資金を融通いたしまして、そうしてその面から買うようにしていきたい、こういうふうに考えております。また貸付目的の信託につきましては、従来通りの貸付料は、公定小作料の範囲だということになるわけでありまして、その中から信託をいたします農協の手数料等を引いたものが委託者の収入になる、こういうことに相なるわけであります。そういう点、今後今の農地移動の状況あるいは経営規模の面において拡大したいという農村におきます実情、そういう点から見て、相当これの利用があると見ておるわけであります。なおそういう信託をいたします組合につきましては、事務費等の補助ということで、予算を計上しておる次第でございます。
  175. 米山恒治

    ○米山委員 今の信託事業を行なう場合の事業主体でございますが、この農地等の信託事業を実施する場合に、農協、特に信用事業を行なう農協に限っておるわけです。そうして、しかもほかの仕事と違いまして、信託事業内容も、農地等の貸付やまた売り渡しの方法によるものに限っておる。他の一切の信託事業というものは認めない。さらに二人以上の耕作農民が共同して信託を引き受けることも、これを禁止した。また信託の受益者を組合員とかまたその一般の承継人に限る。第三者が信託利益を享受するいわゆる他益信託を禁止する。さらに農協の信託事務というものを他の者に委託することはできないとか、このような各種の規制が加えられておるようであります。そうでなくても、法律的に非常にむずかしい信託事業というものが、このように各種の規制を加えられたということ、そういうことは、どういうところに理由があるのか、一つ御説明いただきたいと思います。
  176. 庄野五一郎

    庄野政府委員 農地法の基本的な考え方といたしまして、いわゆる戦後の農地解放によりまする自作農の創設、それを維持するということが、農地法の大きな使命になっております。そのためにいわゆる戦前の耕作しない地主が小作料を通じまして農民の労働の成果を搾取するといったようないわゆる不耕作地主の発生を防ぐということが農地法の大きな一つの眼目になっておるわけであります。そういう面から貸付目的の信託あるいは売り渡し目的の信託にいたしましても、いわゆるもとの寄生的地主の発生の動機にならないようにという点から農協に信託事業の主体を限定いたしまして、農協以外のものでやるということにつきましては、これはやはりこれを通じまして農地法の脱法行為等の事態が出てくる。そうしていわゆる不耕作地主発生の動機になるのだ、そういう点もありまして農協にしぼる。そうして農協以外のものはこれはやってはいけない。それから委託者につきましても受益の範囲は、委託した本人並びに一般承継人であります相続者に限定するということで、第三者がこの信託を通じて利益を受けるということによりまして、やはり寄生的地主の発生も出てこない、そういうような各般の配慮をいたした次第であります。それで非常に厳格にやったわけでございますが、ただし一つの試みといたしまして、そういうことを通じまして万全の注意を払っていきたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  177. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 関連して。ただいまのお尋ねに関連してちょっと聞いておきたいのですが、農地の信託事業を農協を対象として限った。そこでそれらはさきに行なわれた自作農の関係、これらの問題がいろいろ問題を起こしてはいけないので、特に信託事業を関係の深い農協にやれば問題は起きないであろう、こういうような御答弁でありますが、なるほど河野大臣お話のように農協規模の拡大、また農協の近代化等をやっていこうとすれば、耕地面積の拡大ということも必要になってくるのは当然なんですが、たとえば近ごろ大へん問題になっておりまする旧地主の補償問題です。これは補償であるか救済であるかはさておいて、とにかく局長答弁のうちに言われますように、自作農ということで解放させたのだ、そうして今度の信託でもそれが問題になってきてはということを懸念しておられるようですが、これはいかがでしょう。こういう農地法を改正して、そうして農協に信託事業ができるということになると、自律農創設の精神がだいぶくずれた格好になります。耕作農民にあらざれば農地を所有することができないという精神から、農地を解放しておって、それが今度たとい農協であろうとも信託事業ができるということになると問題が出てくると思うのですが、その点将来の見通し、ことに旧地主と自作農創設との関係、それをもう一ぺんお聞かせ願っておきたい。
  178. 庄野五一郎

    庄野政府委員 農地解放当時におきまして買収いたしました分につきましては、御承知のように不在地主、それから在村地主につきましては一町歩をこすものは買収いたしております。在村地主の一町歩未満のものは、これは所有を認めておるわけでございますが、これはやはり極力自作農創設という目的に沿って、その所有権は小作人以外には持てないということで、将来小作人が自作農を廃する場合にはなくするということに相なっておるわけでございます。今度はその後の農業事情等もいろいろ変化いたして参りまして、最近におきましては先ほど申しましたように経営規模をできるだけ拡大しなければならない。これは農業の自立経営を確保していく、そういう意味において経営規模を拡大する、あるいは経営規模の小さいものにつきましても農業の方法をもって経営規模の拡大をはかっていく、こういうような方向になります。一面、やはり日本の経済の高度発展に即応しまして鉱工業の方あるいは都市の方に農村の労働力が移動しておる。農村におきましても農業の労働力不足を生ずる、こういう状況でございます。そういった場合におきましてその調整をいかにやっていくかということに相なるわけでございます。いわゆる人手不足で、これを小作に出そうといった場合においても先ほど申しますように今の農地法の形で出しますと、また買い上げるといった場合には相当制限があって耕作権の安定という面からまた判断されるという問題がある。それからまた荒らし作りをせざるを得ない。そういうような非常に不合理が出てくるわけであります。そういう面の解決の一助として農協を通じて信託制度をやる、こういうことになるわけであります。それには先ほど申しました厳格な制限を付して、そしてそれが寄生的地主というような方向に逆戻りするというようなことをわれわれとしては防ぐということになっておりますし、一応売り渡し目的あるいは貸付目的で信託いたしました場合におきましても、法律的な面から見ますれば所有権は農協に移って、農協から経営規模の拡大を希望する農家にこれを信託の範囲内において貸し付けるということに相なるわけでございます。その間、旧所有者の人は農業経営から離れ、あるいはまた都市に移ってもよろしい、こういうことになりまして、結果においては不在地主的な形が発生するやに見えますが、これらにつきましては先ほど申しましたように、その信託の目的の受益者はその信託をたいしました本人か相続人に限る、あるいは農協以外にはこれはやってはいけない、こういう制限で、従来の寄生的な不在地主というものとは本質的に違うというふうにわれわれは考えるわけでございまして、これによって旧地主が復活するとか、また旧地主と同じような形のものが出るというふうにはわれわれは考えていない次第でございます。
  179. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 重ねてお尋ねしたいのですが、なるほど、そういう形で近代農業の基盤を作っていこうということはわかりますよ。農業の基盤を大きくしていこう、これはわかる。しかし、私の特にお尋ねしておきたいのは、この自作農創設からいって農地を解放した人、いわゆる旧地主、これらの立場から考えると、あくまでも自作農創設の精神から解放したんだという問題は出てくると思う。私はこの方々が一反七百円、六百円で解放したことは——その土地が現在他に転用されるとするならば相当な金額で売買されておる、またかりに農地として売買が行なわれても、これは相当な価格で売買されておる、このことを言うわけではない。そうしてまたそのことの価格が安いとか高いとかというものではないのです。この買収した価格が安い高いという問題ではない。ただ何度も言いますように、旧地主は自分の土地を解放するときに自作農だという考え方で解放したのでしょう。それが今度時代も変わり世も変わって大きな農業規模にしなくちゃならぬということで特定のある規模のものに集約される。もちろん農村の労働力は都会へ、他の産業へ変わっていく、それだから大きくしていかなくちゃならぬということ、これもわかる。けれども、そうなったときに、昔解放したときの考え方で問題が起きてこないかということなんです。  それともう一つは、今おっしゃいましたように小作、貸し借りの借地としての信託はいいのですね。かりに売買信託が行なわれた場合には当然問題が起きてくる。これは私の邪推なんですが、こういう問題は起きないとお考えですか。私は、旧地主からあるいは解放地主から、一町歩だけを与えたのだから他のものはどうなろうとも考えられない、考えなくてもいい、こういうことだけでは済んでいかないと思うのですが、いかかでしょう。今申し上げましたように、一町歩のものは確保された。他のものは出した。だから今度規模を大きくして信託事業をやったって、あるいは極端にいえば売買信託をやったってこれは問題じゃない。旧地主からの問題ではないと言われるかもしれませんが、解放した地主はそんなことは言わない。きょうは解放の大立者である網鳥正興先生が来ておられぬですが、これはきっとこういう問題が出てくると思うのですけれども局長さん、出ないとお考えなんですか。
  180. 庄野五一郎

    庄野政府委員 自作農創設の目的をもちまして買収いたしまして、そして小作人、耕作者に売り渡した創設農地の問題でございましょう。創設農地の問題につきましては、ただいま現在におきましてとれが転用されていく場合非常に問題が起きているわけであります。正当な価格でこれは耕作者に売り渡したのでありますが、それが転用される場合につきまして、経済の高度発展によりまして非常に地価が暴騰している面もあって、そういう旧地主の方からいろいろ問題の指摘があることはよく承知しておりますけれども、農地解放は正当な法律によりまして、正規の価格によりまして農民に売り渡した、そして完全な所有権が農民に移っているという実情、それからその後の経済の高度発展によって地価が高くなった、それからいわゆる転用等の場合におきましては、農地の価格以外にやはり経済の事情によって土地価格が高くなっておるほかに自作保障的なものも、いわゆる転用価格というふうに言っている中に措置価格だけでなしに自作農的なものも入っておる、そういう点もございまして、旧地主から問題の指摘があろうかと思います。われわれといたしましては、この農地解放が正しく行なわれてすでに十数年たった今日においてはどうにもしようがない、こういうふうに考えております。なお売り渡し目的の信託等につきましても、いわゆる解放を受けました農地について離村するといったような場合に、買い手が早急に見つからないといったような問題、あるいは海外に移住するといったような場合に、資金はほしいのだがなかなかいい買い手がつかない、こういうようなときに、自分の村の農協に預けて、農協が村の中で最も経営拡大に熱心であるところの適格者にこれを売り渡す、そしてそれを受託者の方に渡す、こういうような問題でございまして、御心配のような点はなかろうかと思います。
  181. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 せっかくの米山さんの御質問中の時間をお借りしたのですから、これはまた私が質問通告をしたときにゆっくり承るととにいたしますが、局長さんは問題は起きてこないという言明をしておみえになる、そうでございましょうが、農地の供託なんかを、法律で定めて進めていくということになると、それは今御答弁ありましたように、なるほどその当時の適正な価格で買収したのだ、これには問題はない、しかも十数年たっておる、もうすでにその所有権は農民に移ったのだ、だからこの農地解放そのものには何ら問題はない、こういうことなんです。なるほどそれに対して私は異論をはさむものではない。しかし、現実にはもやもやしたものが旧地主関係から出ておる、要求が出ておる。私は、今申し上げたように、決してそのやったこと自身に欠陥があったとか、間違いがあったとか、不合理であったとか叫ぶものじゃないけれども、その解放したときの農民の気持というものは——これはもちろん不在地主もあったでしょう、あるいは国有地、県有地、公の土地も解放したものもありましょうが、中には自分のたな子と申しまするか、作らしておったその農民に、一町歩は自分のものになったけれども、あとほとんどたくさんのものを、それ以上の何倍というものを、やはり情実ではないけれども、そういう法律ができたのでやむを得ず自分の作らしておるお百姓の方々に渡した、それは自作農創設というのですか、自作農創設のあれで渡したのですけれども、そこに法律で取ったとか渡したというのではなくて、やはり農民感情としては、自分の小作人であるからというので渡した、その気持が依然として生きておる。それは少なくとも農政をあずかっていただく方の忘れていただいてはならない気持の流れであろうと思うのです。だから私は、今おっしゃったようなことについて、今後とにかく海外へ行かなくちゃならぬ、お百姓はできない、だから農協へ信託した、他にほしい人があればその土地は要求する人に、今度は農協の方から立場をかえて売り渡して、同じように農地として使われるならば、旧地主の文句を言うところは一つもないじゃないか、極端にいうとこういう御説明なんですが、私はその間の原因と結果においてはいいけれども、その過程において、もやもやしたものが将来起きてこないかということなんです。これは方法論からいけば問題ない。問題ないが、たとえばここにある人があって、私はもとの小作であったから、そういう法律で現在三百万円の土地を当時は六百円で妥当であったから六百円で買い受けたのだ。しかしこの人が要らぬということになって、御承知のように農協なら農協が預かる、そしてまた適当な価格で、おそらく時価でありましょうが、第三者の農民に渡されよう、特にこれが農地以外に転用されるというような含みがあって売り渡されたということもないでしょうが、かりにそういうことも考えられるとすれば考えなくちゃならぬ。そういう間において、農民感情というか、解放された農民と旧地主との関係は絶対に起きないものとは言えない。絶対という言葉はないかもしれないけれども、起きてこないかどうか、私はそれを非常に心配するものです。法律でやったのだから絶対だと言えばそれだけのものでしょうが、そういう点はお考えになってやっていらっしゃるかどうかということを、もう一ぺん念のために、くどいようですけれどもお尋ねしておきたいと思います。
  182. 庄野五一郎

    庄野政府委員 御指摘の点、まことに農地解放にあたりまして、旧地主の方が受けられましたいろいろな社会的な変革というものは、御承知のようにこれまでもかねがね問題になったわけでございまして、旧地主の人のそういう大きな変革に対しまする、生活上あるいは社会的ないろいろな問題があるわけでございます。この問題については、やはり御指摘のように、解放いたしました農地が転用されて、他に高い価格で売れていくということから出た問題でありまして、その問題については、今内閣調査会の方で十分検討されておる、こういうふうに考えております。この売り渡し信託につきましては、いわゆる転用目的の信託ということは、厳にこれを禁ずるということにいたしておりまして、やはり、農地を農地として、農協を通じまして、その村の中で構造改善なり自立経営をやるたくさんの農民に渡していくということでございまして、いわゆる転用のために農地を信託するのではございません。やはり自作農の維持あるいは拡大に資するという点におきまして、御心配のような点はないではないかと考えている次第であります。
  183. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 申しわけありませんが、もう一分間だけいただいて……。売り渡し信託には転用は絶対しないという制限をつけるという、そういう制限で信託をなすのだ、これはおっしゃったですね。おっしゃったが、私は解放者ではありません、どちらかというと買い受けた方なんです、その私が言うのですが、解放されるときには、これは解放後もあくまで農地として使用していくのだ、解放後は農地壊滅はさせない、これは違っておるかもしれぬが、そう聞いておる。しかし、今あなたがお認めになっていらっしゃるように、次から次へと、国が勝手に、解放農地であろうがなかろうが、必要があれば農地の壊滅、農地以外に転用を認めていっておるでしょう。それが今日旧地主からいろいろの声が出てくる大きな原因なんですよ。農地として解放されて、依然として——それを私ども要求するということは時代の流れで無理でありましょうが、かりに農地として解放されて、依然として農地であるならば、この地価が百万円になっておろうが二十万円になっておろうが、そう旧地主はやかましく言うものではない。やはり自分のたな子、小作人が農業を経営して生きていってくれることを、またそれによってしあわせを築き上げていくことを喜んでおるのでありますが、とにかくそれを片っ端から転用していく、片っ端から壊滅して、そうして膨大な利益を受けておる、その許可をさっさと国が与えていらっしゃるでしょう。それが事の起こりで感情的に大きな問題になっているのですよ。というと違うかもしれませんが、私どもはそう見ている。だから今ここでそういう工合に、信託は農協という団体を通じてそれ以外のものにやらせない、特に売り渡しなんかは今後転用ということは厳重に禁止するということをおっしゃいますが、それをやったってだめなんですよ。絶対だめだと私は思う。今ずっと聞いておりまして、やはり買い受けた農民であろうとなかろうと、農業規模を大きくして農協がまた売っていく、この行き方は、先ほど来言っております、昔の解放者と今度買う者との間に変なものができる。そこで、心配ない、これはあくまで解放された農地の精神を生かすのだ、転用はまかりならぬ、これは制限していくのだ、禁止していくのだとおっしゃるならば、どういう方法で絶対禁止するのか、こういう方法をここで明らかにしておいていただけたら大へんけっこうだと思います。これ以上お尋ねしませんから……。
  184. 庄野五一郎

    庄野政府委員 この農地信託制度で農地を農協に信託いたしまして、これは農地として当然貸し付けられる、当然売り渡し信託も、先ほど申しましたように、農地以外のものとして売り渡しを信託するということは禁止することになっております。農地は農地として、その村の中の経営規模の拡大をやろうとする農民に売り渡しされるようにその信託はいくということでございます。片一方、農地を転用されるというのは、農地法の五条でございまして、これは五千坪未満は知事、五千坪以上は農林大臣。五千坪につきましても、最近は一万坪以上は中央におきまして、従来事務局長に委任しておりましたものについても十分審査して規制していく、こういう方法で、いわゆる農地が農地以外に転用される面については、規制を厳重にいたしております。その点については、特に最近の農地の改廃状況、それから旧地主の人たちの、御指摘のような感情的な問題、そういう問題もございまして、十分注意して、この農地が農地以外に転用されるということについては、適切なる、経済の発展に即応する限界において規制しなければならぬと私は考えておりまして、農地信託の問題と転用とは関係がない、こう申し上げた次第でございます。
  185. 野原正勝

    野原委員長 この際暫時休憩いたします。    午後四時十二分休憩      ————◇—————