○角屋議員 ただいま
委員長の御指名によりまして、日本社会党の議員立法にかかる
漁業基本法案の提案理由及びその概要について御説明申し上げたいと思います。
戦後、わが国の漁業は急速な発展を遂げましたが、その発展は一様でなく、遠洋・沖合漁業の急速な発展に比べて沿岸漁業の停滞が目立っております。しかも、漁業における格差の増大と競争の激化によって、総体的な漁業生産高の増加にもかかわらず、巨大資本漁業及び一部の上層漁
業者を除き、一般に漁業の経営は、かえって不安定の度を加え、零細漁民や漁業労働者の所得及び生活水準は他産業に比して著しく劣悪となっております。
これは、上述のように漁業における階層間の格差が拡大し、生産及び流通の場において中小漁
業者が巨大資本によって
圧迫、支配または収奪されていることが重要な原因となっておりますが、同時に、歴代政府が行なって参りました大資本漁業偏重零細漁業軽視の誤った政治の結果であります。
このような漁業格差を解消し、政府の誤った政策を是正するためには、すべての漁業分野を通ずる基本政策の確立、それに基づく総合的な
施策を実施することが必要であります。
このような考えのもとに、日本社会党はかねてから各方面の意見を求めて検討を加えて参りましたが、このたび成案を得ましたので、今次国会に
提出する運びとなったのであります。
以下、この
法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、前文でありますが、ここでは日本漁業の問題点とそれを打開するための方向を述べ、本法案作成の基本的態度に触れております。
第二点といたしまして、総則においてこの
法律の目的と国の責任について規定いたしました。すなわち、(イ)わが国の漁業構造の改革による生産力の向上と格差の是正、(ロ)漁民の所得及び生活水準の向上、(ハ)漁村の生活文化水準と都市のそれとの格差の解消をはかることを目的として明記するとともに、国は、以上の目的を実現する責任を有する旨規定しております。
第三点といたしまして、国は前項の目的を達成するために、長期の漁業基本計画及びそれに基づく年度計画を作成して、国会の承認を受けねばならないこと、及び毎年、前年度の漁業年度計画の実施の結果の報告書及びその年度の漁業年度計画の実施
状況の報告書を国会に
提出せねばならないことを規定いたしました。これは、水産
行政における最大の欠陥の
一つとされている計画性の欠除を是正、長期的展望に立った総合的な
行政を確立するためであります。なお、基本計画に包含さるべき諸計画及びこれらの計画を樹立する場合の手続についても規定いたしております。
第四点といたしまして、漁場利用の基本原則について規定するとともに、沿岸漁
業者や沖合漁
業者の漁場利用の
確保に国は特段の配慮を加えねばならない旨定めております。これは、沿岸漁場や沖合い漁場における漁業の実態から見て、操業秩序の確立と関係漁
業者の保護をはかろうとする意図によるものであります。また、漁業権にかかる漁業の免許は原則として漁業協同組合に対して行なうこと、大資本を要する母船式漁業の公社化及び国際漁場の利用のあり方についても基本的な方向を示しております。
第五点といたしまして、漁業生産
基盤の整備等について規定するとともに、中小漁
業者の資本装備の高度化、安い漁業用資材の
確保についても、国は必要な
措置を講ずべき旨定めております。
第六点といたしまして、漁業の共同化について、国は漁業経営の合理化をはかるため漁業協同組合、漁業生産組合その他漁
業者の協同組織を育成強化せねばならないことといたしました。
第七点といたしまして、国は、水産物価格を安定させるための
措置として、生産費及び所得補償の原則に基づく価格支持制度を確立せねばならないと規定するとともに、流通の合理化、需要の拡大、輸出
振興及び輸入制限等についても必要な
措置を講ずべき旨定めております。
第八点といたしまして、国は、中小漁業に対する長期低利
資金の
確保をはかるとともに、漁
業者の蓄積
資金の漁業への還元利用に必要な
措置を講ぜねばならないことを規定いたしております。
第九点といたしまして、国は効率的な試験研究及び調査を行なうため、施設の拡充をはかるとともに、総合的な
施策を講ずること、並びに水産業または漁民生活の改善に資するため、改良普及及び
指導に関する必要な
措置を講ぜねばならないことといたしました。
第十点といたしまして、国は、漁場、漁港及び漁業用共同利用施設等の
災害による被害を、その
負担において復旧せねばならない旨規定するとともに、漁船保険、漁業共済制度を整備確立して、漁船漁具及び養殖にかかる水産動植物の
災害による損害並びに不漁による漁
業者の損失が十分補償されるようにすべきことを定めております。また、漁船の遭難防止のために国のとるべき
措置についても規定いたしました。
第十一点といたしまして、漁業労働者の所得と生活水準を高めるため、国は、漁業労働者の就業機会の増大、賃金その他の労働
条件の改善、漁船内の労働と生活環境の改善等の
措置を講ぜねばならないことを規定するとともに、漁業労働者に社会保険を完全に適用できるよう、その制度を充実整備すべき旨定めております。
第十二点といたしまして、漁村の生活と文化水準を向上させて都市のそれとの格差を解消するための方策について規定するとともに、あわせて、国は、漁民の所得を増大させるための一助として、その者があわせ営む副業の
振興に必要な
措置を講ぜねばならないことといたしております。
第十三点といたしまして、国は、この
法律に基づいて講ぜらるべき諸
施策の円滑な遂行を
確保するため、漁業
行政機構を整備するとともに、その
運営の改善に努めねばならないことといたしました。また、いわゆる海外漁業の発展をはかるため、別に
法律で定めるところにより、政府の監督のもとにこれらの漁業に関する調査、情報の提供、あっせん、連絡等の
業務を行なう機関を設けることを定めております。
第十四点といたしまして、この
法律の規定によりその権限に属せられた事項等をつかさどるための機関として、総理府に漁政
審議会を設けることとし、組織その他必要な事項を規定いたしました。
以上がこの法案の提案理由及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さるよう心からお願い申し上げまして、提案理由の説明を終ります。
————◇—
————