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芳賀委員 せっかくの御指名でありますから意見を申し上げたいと思います。
この
畜産物価格安定法の問題点になるのは第三条各項に関する問題ですが、この点は
政府原案を当
委員会において各党一致の修正案によって修正した点であります。私ども修正した国会の側から見ると、
政府におかれましては修正以前の
政府案にいまだに固執しておられて、見解がそこから出発しておるので、現在成立して実施しておる
法律の運用の上に大きな誤謬があるのじゃないかというふうに判断されるわけであります。
そもそも
政府原案の場合には、原料乳及び指定食肉、指定乳製品のそれぞれの品目につきましては、価格をきめる場合に安定価格といたしまして上位価格並びに下位価格を設定するということであったわけでありますが、この点につきましては
法律にも明記されております
通り、原料乳については上位価格、下位価格のいわゆる安定帯価格的な思想を是正しまして、安定基準価格一本の価格に修正されておるわけでありますからして、原料乳につきましてはいわゆる価格帯というものは
法律上ないわけであります。ただ問題は、原料乳の安定基準価格を定める場合の
要素として、算定の基準というものをどのような形によって求めるかということは、策定の作業上の問題であって、
法律上の解釈からいうと、原料乳につきましては、安定帯価格的な
意味はなくて、単純に安定基準価格一本ということになっておるわけであります。
次に、指定食肉の場合には、
政府原案は上位価格並びに下位価格でありましたが、この点についても、実は生産者の
立場を保護するためにはやはり安定基準価格一本が当然であるというような主張もありましたが、これを調整しまして、下位価格については、これが発動された場合には生産者の
立場から見ると不利益な価格になるのではないかということも憂慮されましたので、下位価格というものを取り下げまして、いわゆる安定価格帯から見れば
中心をなす価格というものを基準価格に置きかえて、上位価格だけはこれを残すということで、指定食肉については安定基準価格並びに上位価格というふうに修正されたわけであります。従って下位価格というものが
中心から以下なくなったという理解で妥当だと思うわけであります。
第三の指定乳製品につきましては、これは
政府原案がそのまま残っておりますので、いわゆる上位価格、下位価格の間においては価格帯なるものは形成されておることは当然であります。ただ上位価格、下位価格をきめる場合には、当然の順序として、この価格帯の
中心をなす価格は何かということを求めて、その
中心価格に対してあるいは価格変動係数等を使いまして上位安定価格あるいは下位安定価格をきめるということにいたして、きまった暁には、その
中心価格というものは、この
法律あるいは大臣が告示する価格の面には現われてこないというふうになると思うわけです。
これが原料乳並びに指定食肉、指定乳製品の安定価格のそれぞれについて加えた修正の重点であったのであります。
もう一点、大事な点は、第三条第四項の安定価格をきめる場合の基本でございますが、実はこの第四項に現在ありますところの「これらの再生産を確保することを旨とし、」というこの字句は、当時
政府原案には載っていなかったわけです。指定食肉についても、原料乳についても、乳製品についても、生産
条件あるいは需給事情だけを勘案してきめればいいという
考えでありましたが、生産者の
立場から見て最も大事なことは、再生産を確保するということが重点にならなければ、真の
意味の生産者あるいは所得を確保する価格というものはそこから生まれてこないのでありまして、この点については、乳製品と、一方指定食肉と原料乳の価格決定の方式というものを第四項の中で区分しまして、前段においては、原料乳及び指定食肉についてはこれらの再生産を確保することを旨としなければならぬということを基本にして、生産
条件並びに需給事情等を勘案して価格をきめる。指定乳製品に対しては、これはいわゆる加工品でございますので、これらの再生産を確保された原料を用いることによって、それに標準的な製造経費というものを加算して、乳製品の上位価格あるいは下位価格というものをきめればいいのでありますから、ことさらに再生産確保なる字句を乳製品については用いなかったわけであります。従って再生産を確保するその最も必要な価格の決定というものは、原料乳の場合においては、当然安定基準価格において再生産が確保される、生産費並びに所得が確保されるということを旨として安定基準価格というものは当然決定さるべきであります。食肉についても、安定基準価格のきめ方はそれと同様でありますが、ただ上位価格を認めるということを言うことは、この
法律の運用上、たとえば畜産振興
事業団が輸入業務を行なうというような場合、あるいは国内の食肉を買い入れて保管しておる
事業団が放出を行なうというような場合のそのめどというものを、上位安定価格に求めておるわけです。従って、国内価格というものが上位価格を越えておる、あるいは需要が供給よりも上回っておるというような場合には、必要最小限度の不足量は国外に依存しなければなりませんからして、その
条件としては、上位価格をすでにもう越えておる、あるいは越えるおそれがあるという場合に、
事業団を通じて輸入を行なう、あるいは手持ちの放出を行なうというところに上位価格設定の理由というものがあるわけである。大事な点は、やはり安定基準価格というものは生産者のための保護
規定であって、当然これは再生産が確保される要件というものは、生産費及び投下された自家労賃というものが適正に回収されて、そうして生産が継続されなければならぬというところに重点を置いておるので、この点に対しては、私の今述べた諸点が修正の要旨でございますので、
政府が修正されたこの
法律を適正に運用される場合においては、大臣並びに事務当局におかれましても、修正した国会の意思を十分理解して、これを尊重して運用せられれば間違いはないというふうに私は
考えておるわけであります。