○
石田(宥)
議員 私は、
提案者を
代表し、ただいま
議題となりました
農業生産組合法案について、その
提案理由及び
内容の
概要を御
説明いたしたいと存じます。
わが国農業における
経営規模の
零細性は、今日、
農業生産力の
発展と
農民所得の
向上をはかる上に、致命的な欠陥となっております。すなわち、最近の
農業機械の急速な
普及も、
農家経済にとっては、むしろ
過剰投資となって
投資効率を低くし、
経費を増大させ、
所得率を低下させております。
一方、
経済の
高度成長政策によって、大
資本の
成長は急テンポで進み、
農業は、
生産、
流通、
価格の各
方面にわたる
経済的圧迫を受け、
農業と他
産業との
所得格差は
拡大し、このままでは、
現状の
家族経営の
形態では、たとい
上層農家であっても、その
自立は困難であります。また、
個々の
農家が一反歩二十万円もの高い
農地を取得して
経営を
拡大しても、
土地資本利子負担の増大によって、
経営の
改善にならないばかりか、
他方では多数の
農民を
農地から分離させなければならないのであります。
われわれは、
農民を
土地から分離させず、しかも
零細経営の
現状から解放して、
経営規模の
拡大をはかるために、基本的には
生産または
経営の
共同化を
促進することが必要であると考えるのであります。
言うまでもなく、われわれは急激に、また強制的に
共同化を進めようとするものではありません。すでに今日では、
農民の間で進んだ
農業技術を
最高度に発揮するため、
共同化、
共同経営の自主的な実践が
全国各地で進められております。われわれは、かかる
農民の
自主性を尊重しつつ、
経営の全部または一部の
共同化を認め、
共同施設や
共同作業など
共同組織の奨励と並行しつつ、
共同化の
方向に進めようとするものであります。
しかし現在の
条件のもとで、
共同化の
推進は強い国の
助成なしには進めることはできません。われわれはこのため、別に
農業近代化促進法案を
提案して、
生産条件の
整備はもとより、
共同化に対する各種の
助成措置をとろうとするものでありますが、これと並行して、
農民が
相互扶助の精神に基づいて共同して
農業を行うための
組織を
整備確立するため、本案により、
農業協同組合のもとに
農業生産組合を育成するとともに、新たに
農業生産組合が、その
共同経営のため必要となる
農地、採草放牧地に関する権利の取得を認めることとしたのであります。これが、
社会党が特に
農業生産組合法案という独立単行
法案を
提案した
趣旨であります。
次に、
法律案の主要な
内容について御
説明申し上げます。
まず、
農業生産組合の行なう
事業、その
組織等についてでありますが、第一に、その行なう
事業につきましては、
農業生産組合は、
農業及びその付帯
事業のみを行なうものとして、原則としてそれ以外の
事業を行なうことは認めておりません。
第二に、
農業生産組合の
組織原則につきましては、
農業経営の
共同化及び
近代化を貫徹することと、一方においては
生産手段の導入の
必要性をも考慮して、
農業生産組合の組合員はすべて組合の
事業に常時従事しなければならないこととするとともに、その
事業に常時従事する者のうち、組合員またはその世帯員以外の者の数は、常時従事者の総数の三分の一をこえてはならないものとしているのであります。
第三に、その組合員につきましては、組合員の資格を、組合の住所のある
市町村の区域内に住所を有する
農民で定款で定める者とし、特に準組合員
制度を設けず、また定款の定めるところによって加入を制限することができるものとしておりますが、これは、
地域性を考慮した
土地と労働の
地域的な
共同化に眼目を置いて組合の
事業を
推進することが、
農業の実態に即応するものであるとの考え方に出たものであります。なお、この
農業生産組合は、独立の
経営体として
農業経営を行なう関係上、
出資制度をとることとし、組合員は
出資一口以上を有しなければならず、しかして組合員の責任は、
出資額を限度とする有限責任とすることにしております。
第四に、組合の管理及び財務の運営につきましては、おおむね一般の
農業協同組合と同様の
規定をいたしておりますが、剰余金の配当
方法につきましては、年五分以内で定款で定める
割合の
出資配当をなし、なお剰余がある場合には、組合員が
事業に従事した程度に応じて配当することといたしております。
第五に、設立等の手続につきましては、
農業生産組合が組合員の共同により
農業経営を行なうという従来に例のない
生産事業を
実施する組合であることにかんがみ、かつ、
出資制度、有限責任をとっている建前から、一般の
農業協同組合と同様、認可主義を採用するとともに、一面においては
生産組合の設立を容易ならしめるため、極力その手続を簡素化することといたしました。すなわち、七人以上(当分の間は設立を容易にするため二人以上)の
農民が発起人となり、設立手続を終了し、行政庁の認可を受けたとき初めて
農業生産組合が成立するものとしておるのであります。
最後に、
農業生産組合を
農業生産法人として
発展させるため、
都道府県は、組合の設立及びその
業務の運営に関し必要な
指導を行なうとともに、国は、
生産基盤の拡充、
機械化、
有畜化の
促進、
技術経営面の
指導、
資金の確保等について積極的な
助成をすることといたしております。
次に、本案の大きな柱ともいうべき
農地制度の
改正の主要点について申し上げます。
農地の所有
形態につきましては、
農業基本法案におきまして、
農地は、これを耕作する者が所有するという原則を貫くとともに、
農民自身の自主的な意思によって、
農地に関する権利を共同で保有するよう漸進的にこれを
指導することといたしておりますが、この
基本法案の理念に沿って、地主的
土地所有を排除する従来の
農地法の精神を堅持しつつ、一面、
共同化を
推進するため、新たに
農業生産組合に
農地、採草放牧地についての権利の取得を認めることとしたのであります。
すなわち、第一には、新たに
農業生産法人が
農地または採草放牧地についての所有権または使用収益権を取得し得るようにするとともに、その場合においては、従来の
農地等の最高面積の制限を緩和して、
農地法第三条第二項第三号または第四号の別表で定める面積に、その
農業生産組合の組合員の属する世帯数を乗じた面積まで取得し得ることとしたのであります。
第二に、
農業生産組合の組合員がその
農地または採草放牧地に関する所有権以外の権利を組合に対して設定しようとする場合には、従来の小作地等の保有の制限を適用しないこととし、また、組合員がその賃借りしている
農地を組合に対して転貸ししようとする場合には所有者の
承諾を要しないこととして、組合の
農地等に関する権利の取得を容易ならしめるとともに、一方において
農業生産組合が一たん取得した
農地等についてはこれを他に貸し付けることを禁止して、
共同化の実をあげることといたしております。
第三に、創設
農地について所有権以外の権利を組合に対し設定した場合、その組合が解散した際におけるその創設
農地の取り扱いについて
規定しております。すなわち、創設
農地については、従来、原則として、賃借権等の用益権の設定は禁止されております関係上、組合が解散した場合等には、
一定の手続を経て旧所有者に返還するか、それができない場合には、国が買収する旨を
規定しております。
以上が
農業生産組合法案のおもなる
内容でありますが、
政府案におきましては、
農業生産法人については、組合法人以外に、有限、合名、合資会社のような会社法人をも考慮し、これらに対して
農地等に関する権利の取得を認めることとしておりますが、本来営利を目的とし、構成員の資格要件に何らの制限を加えず、二人以上の者がかなり任意に設立し得る会社法人を認めることは、
農民の一部を、
土地、
資本を所有する
資本主義的企業者へ、他の多数の
農民を
土地、
資本から分離された
農業労働者へ、それぞれ分解させることとなり、
農村の階層分化を一層激化せしめるおそれ少なしとせず、害多く益少ないかような
措置は、われわれとしてはこの際とらざることとし、日本
社会党案におきましては、
農業生産法人は、
生産組合法人に限ってこれを認め、強力に育成しようとするものであります。このような
農業生産組合の
制度によってのみ、
農業の
近代化、
合理化が達成されることをわれわれは深く期待している次第であります。
以上がこの
法律案の
提案の
理由及び主要な
内容の
説明であります。何とぞ慎重に御
審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。