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1962-02-22 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十二日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君       飯塚 定輔君    大野 市郎君       仮谷 忠男君    小枝 一雄君       坂田 英一君    田邉 國男君       谷垣 專一君    綱島 正興君       内藤  隆君    福永 一臣君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    中澤 茂一君       西宮  弘君    安井 吉典君       山田 長司君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         水産庁長官   伊東 正義君  委員外出席者         議     員 石田 宥全君         議     員 北山 愛郎君         農林事務官         (畜産局参事         官)      保坂 信男君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中西 一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第九三号)  てん菜生産振興臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第九六号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農業基本法案北山愛郎君外十四名提出衆法  第六号)  農業近代化促進法案北山愛郎君外十四名提出、  衆法第七号)  農業生産組合法案石田宥全君外十四名提出、  衆法第八号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及びてん菜生産振興臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、提案理由説明を聴取いたします。中馬農林政務次官
  3. 中馬辰猪

    中馬政府委員 ただいま議題になりました畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  近年、国民生活水準向上とそれに対応する農産物需要の変動に伴い、わが国農業国民生活において畜産の果たす役割がきわめて増大しつつありまして、今後畜産は、わが国農業発展中心部門として、また国民の食生活改善に資するものとして、ますます重要性を加えて参ることは疑いを入れないところであります。  このような趨勢に即応して、政府におきましては、家畜改良増殖家畜衛生飼料需給及び価格の安定、自給飼料の増産、畜産経営改善等生産面に対する施策を一そう強化推進するとともに、畜産物価格の安定及びその流通改善に必要な施策を講じ、畜産の健全な発達を促進するよう努力しているのであります。  しかしながら、今後広く期待される畜産及びその関連産業振興を急速に実現して参りますためには、これら政府施策と相待って、民間においても、畜産経営改善または技術向上畜産物消費拡大流通合理化等生産流通消費の各部門にわたり徹底した諸方策を講じていく必要があるものと痛感いたす次第であります。  よってこの際、この種の畜産振興に資するための事業助長、育成する道を開くことといたしたのでありますが、この措置は、国から公的機関一定資金を交付し、その交付金運用によって行なうこととし、また一方、従来国が行なっておりました学校給食への牛乳供給事業補助にもこの国からの交付金を充当することとして、この二つの業務畜産物価格安定措置実施主体たる畜産振興事業団に担当させ、その公正かつ弾力性のある運営を期することとしたものであります。  以上がこの法律案提出した理由であります。  以下、改正法律案の主要な点につきまして、御説明申し上げます。  まず第一に、民間における畜産振興に資するための事業補助または出資を行なう機関として畜産振興事業団組織を活用することとして、事業団業務に新たに、国内産牛乳学校給食の用に供する事業についてその経費補助し、及び主要な畜産物流通合理化のための処理または保管の事業畜産経営または技術指導事業その他の畜産振興に資するための事業農林省令で定めるものに対して補助し、または出資する業務を追加することといたしたのであります。  第二に、事業団の追加された業務に対する資金措置といたしまして、政府は、畜産振興に資するための事業に対する補助または出資業務に必要な経費の財源に充てるため、事業団に対し、予算の範囲内で交付金を交付することができることといたしたのであります。事業団は、この交付金及びその運用利益金をこの業務に必要な資金として管理し、その経理は、従来からの価格安定及び債務保証業務にかかわる経理と区分して整理しなければならないものといたしたのであります。  なお、このほか、これに関連して事業団の役員に関する帆走を整備するとともに、事業団が追加されたこれらの業務として交付する補助金については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律規定をその一部を除いて準用することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。  次に、てん菜生産振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知の通りわが国におけるてん菜生産は、昭和二十八年てん菜生産振興臨時措置法が制定施行されて以来、作付面積において約二・八倍、てん菜生度量において約三・二倍という急速な伸長を見たのであり、この間に同法の果たしてきた役割は、まことに大きなものがあったと考えるのであります。また、近時、寒地てん菜糖以外の国内甘味資源につきましても、カンショ糖結晶ブドウ糖等において見るべき生産伸長があり、さらに府県てん菜について、てん菜集団化導入等事業が進められつつあります。  昭和三十六年について見ますると、国内産糖は、寒地てん菜糖で十二万八千トン、そのほか府県てん菜糖四千トン、カンショ糖十二万七千トン、結晶及び精製ブドウ糖精糖換算七万トン、計約三十三万トンに達し、将来の見通しといたしましても、程度の差はあるものの、総じてわが国農業生産の中で甘味資源生産増強可能性について期待し得るものがあると思われるのでありまして、現在はこのような甘味資源対策の新しい飛躍をするための時期に当たっていると考えるのであります。  政府といたしましては、冬甘味資源を通じ、農業製造企業国民生活の各般にわたって最も効率的かつ合理的な施策を展開するため、各方面意見を聞きつつ検討を進めて参ることとし、とりあえず昭和三十七年三月三十一日限りで失効することになっているてん菜生産振興臨時措置法有効期限を一年間延長して、寒地におけるてん菜糖政府の買入れ等の措置を継続することとしたのであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。      ————◇—————
  4. 野原正勝

    野原委員長 この際申し上げます。  本委員会において審査中の内閣提出にかかる農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案修正について、去る十九日内閣からそれぞれ本院の承諾を得たい旨の要求があり、去る二十日本院におきましてこれに承諾を与えました。  この際両案を一括議題とし、本院の承諾を得た修正部分について政府より説明を聴取することといたします。中馬農林政務次官
  5. 野原正勝

    野原委員長 農業災害補償法の一部を改正する法律案修正及び農業保険事業団法案修正内容一括説明申し上げます。  この修正は、前国会から継続審査になっております農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案につきまして、その施行期日をそれぞれ一年延期して農業保険事業団の設立を昭和三十八年二月とし、新制度実施昭和三十八年産水陸稲からといたしますとともに、これに伴い関連規定所要修正を加えようとするものであります。      ————◇—————
  6. 野原正勝

    野原委員長 北山愛郎君外十四名提出農業基本法案及び農業近代化促進法案、並びに石田宥全君外十四名提出農業生産組合法案の三案を一括議題として、順次提案者から提案堺田説明を聴取いたします。
  7. 野原正勝

  8. 北山愛郎

    北山議員 私は、甘木社会党を代表して、社会党農業基本法案について、提案の趣旨を御説明申し上げます。  本法案は、昨年の第三十八国会提案した農業基本法案と同様の内容のものであり、これを再提出し、政府農業基本法にかえようとするものであります。  従って、政府農業基本法とわが党の農基法案との相違点及び社会党案内容については、すでに昨年国会の中で十分説明論議されたのでありますから、詳細については会議録をごらん願うことといたしまして、ここでは再び繰り返すことはいたしません。  ただ、昨年来のわが国農業の動向が現実に示しておる通り、政府農業基本法をもってしては、当面する農業危機に対処して、わが国農業に新しい発展の道を開き、農民所得向上して、その生活を安定することは不可能であり、社会党農業基本法の正しさが証明され、その必要性が増大していると考えるのであり、これこそあえてわが党案を再提出して、政府農業基本法を廃止せんとする理由であります。  第一に、過般政府から国会に出された農業動向年次報告を見ても、昭和三五年度は農業生産で五・二%、農業所得六%の伸びを示し、生産性も四%以上の上昇で農業の環境は順調であったにもかかわらず、他産業の成長にははるかに及ばず、通常の方法をもってしては他室業との格差を是正することは不可能であることが明らかとなっております。  すなわち、もっぱら他産業高度成長に依存し、これに農業を適応させる政府農業基本法のもとでは、農業はますます他産業の圧迫を受け、立ちおくれるだけであり、わが党案基本方針の通り、資本主義の搾取と抑圧から農業を守る諸施策をとらなければ、農民の地位の向上が望み得ないことをはっきりと示しておるのであります。  第二に、農業所得率が年々低下し、昭和二十七年の七三・八%から昭和三十五年度には六二・一%に下がっている。すなわち粗収益がふえても、農業資材などの経費の増高によって所得の割合は減少していることであります。  この対策としては、電力、肥料、農機具、飼料などの資材と農業資金のコストを安価にする施策を伴わなければ、生産向上所得向上を期待することができないのであります。  わが党案の第十九条、第二十条に、農業用資材の安価な供給の確保を規定し、必要の場合はこれらの生産、販売、輸入について国営または国家管理を行なうことを規定しておることは、農業所得率引き上げのためまさに妥当な政策といわなければなりません。  第三は、生産農家手取率の低下であります。すなわち、年次報告によれば、消費者食料費に支払った金額のうち、農家のふところに入った生産者販売額の割合も年々低下し、昭和三十年度三五・三%から昭和三十五年度には二八・七%に急減しているのであります。消費者が支払う四兆百八十一億円のうち、生産農民には一兆千五百四十億円しか入らないという低い手取率のもとでは、どんなに食料消費需要が伸びても、農家収入はふえないという矛盾は一そう激しくなるでありましよう。  農家手取率を高める方法は、わが党の基本法第十四条に明記するように、米麦などの主要農畜産物管理制度を維持改善し、強力な価格支持政策をとり、第十二条に規定するように、農民の手による農畜産加工及び関連産業振興であり、第十七条、第十八条に規定する需給と流通合理化と市場の整備を実施するほかないのであります。  大豆を自由化し、大麦、裸麦を食管制度からはずし、米を間接統制に移し、農畜産物流通過程を自由化しようとする政府政策は、農民手取率をさらに引き下げ、加工資本企業商業資本をもうけさせる傾向をさらに悪化させるでありましょう。  第四に、年次報告に示されたことは、協業化すなわち経営共同化への農業のすさまじい意欲であり、短期間に二千五百以上の共同組織が自主的に生まれたことであります。年次報告は、この事実の正しい評価を故意に避けていることは不当であります。すでに家族経営そのものの限界、農機具過剰投資の負担に悩む農民に対して自立経営育成構造政策は何の魅力も与えるものではなく、農家経営規模合理的拡大の道は共同化あるのみであるということは明らかであります。政府農業基本法のあいまいな構造政策を一擲して、わが党案のように村ぐるみ共同化に前進するほかはないと信ずるものであります。  第五に、若年人口離農農村就業人口老齢化女性化の傾向、物価高、経費高、そして飼料高の中における豚肉や鶏卵の下落などの諸現象は、農業の将来に対する農民の不安をますます深刻化なものにしております。  今こそ農業に対する諸施策が、場当たりの思いつきやインスタント施策ではなく、国の責任における計画的な基本政策の方向を確立し、生産価格流通の各部面において、安定した基盤の上に、農民が希望を持って新しい日本農業の前進に立ち上がるよう全面的に農政転換を必要とする段階であると思います。  以上、最近の動向にかんがみ、わが党農業基本法正当性を確信し、各位の御賛成を得てその成立を強く念願し、提案理由の説明を終わります。  次に私は、提案者を代表して、農業近代化促進法案について、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法案の目的は、第一条に掲げてあるように、農業近代化のために必要な土地条件の整備、経営共同化機械化有畜化促進技術改良生産加工流通合理化などの諸施策を総合的に行ない、農業発展農民所得向上をはかろうとするものであります。すなわち、社会党提出農業基本法案の原則に従い、農業経営農業地域の部面からの近代化政策を総括したものといえるのであります。また、経営共同化組織法農業生産組合法案であり、これを政策的に援助助成するのがこの近代化法案であると言うこともできるのであります。  本法案は、第一章総則以下、農業近代化計画農業サービスセンター及び農業講習施設農業機械ステーション試験研究に関する措置補助及び融資の六章及び附則に分かれております。  まず第二章の農業近代化計画について申し上げます。  農業近代化は、言うまでもなく、個個の経営の形態だけを改善するだけではなく、農業地域的性格を考え、自然的・経済的・社会的条件に応じ、一定の区域を単位としての計画的施策が必要でありますので、都道府県内を数地域に分けて、農業近代化地区を設定し、知事は近代化促進計画を作成して農林大臣の承認を受けることといたしております。  また、知事が近代化計画を作るときは、当該地区に設けられた農業近代化協議会の意見を聞かなければならないことといたし、計画の中に関係農民代表などの意思を十分反映させるとともに、全国の基本計画との関連などを考慮したのであります。  近代化計画には、第三条第三項にあるように、土地や水の利用の問題、経営共同化機械化などの事項農畜産物生産流通合理化に関する事項農畜産物加工及び関連産業振興に関する事項人口配置に関する事項教育訓練に関する事項など当該地域農業を各方面から近代化するための諸事項を含むものといたしております。  農業近代化協議会都道府県の条例で設置するものでありますが、そのメンバーは、農業サービスセンターの長、市町村長農業委員会土地改良区、農協、農民団体の代表及び学識経験者などを充てることといたしており、近代化計画作成の際の意見のみならず、近代化事務連絡調整計画の推進を行なう民主的機関であります。  また、農業近代化計画の作成には、専門的・技術的な知識なども必要でありますので、農林大臣の助言を求めることができることといたしました。  次に、農業共同化についても、営農設計など専門的な知識を必要といたしますので、知事は地区の実情に応じ、共同化類型を作り、これに基づいて、農業サービスセンターを通じ助言指導を行ない、共同化がスムーズに行なわれるように配慮いたしております。  また、農業近代化は、個々の経営やそれぞれの地域の農業のあり方を全面的に改革するものでありますので、特に一部の地区モデル地区とし、あるいは特定の共同組織モデル経営とし、実験を通じ、実物教育をもって推進することが効果的でありますので、これについては第八条に規定いたしました。  なお、国有農地の売り渡しにあたっては、農業経営共同化に役立つよう配慮するほか、附則6の土地改良法の改正によって、国の直轄土地改良事業への一部地元負担をとりやめ、農業近代化に伴う土地改良事業については、都道府県営とし、政令の定めるところにより、その経費全額国庫補助とするなどの措置をとるとともに、第九条に規定する通り、市町村関係農業団体は、農業近代化計画の、実施推進に協力すべきことといたしております。  次に第三章には、農業近代化のための指導及び教育機関について規定し、都道府県近代化地区ごと農業サービスセンターを置き、所要の専門技術員及び改良普及員を置いて、従来のような生産技術指導だけではなく、経営の診断、共同化機械化有畜化などの経営指導加工、貯蔵、販売の指導生活改善指導を行なうとともに、農業用機械の貸付、資金融資のあっせんまで、広範なサービス業務を行なうことといたしております。  また都道府県知事は、農業サービスセンターによる指導普及のほか、短期の講習施設を定期的に設けて、農業または農民生活に関する知識技能向上をはかることといたしております。  第四童は、農業機械ステーション規定であります。  国は、農地事務局附属機関として、都道府県ごと農業機械ステーションを置き、農業土木建設機械と大型の農業用機械都道府県市町村土地改良区などに貸し付け、または機械の修理や使用指導などの業務を行なわせることといたしております。  機械ステーション農業経営機械化資本装備の負担を軽減するため補給指導の機能を担当するものでありますが、またヘリコプターを備えて、要請によって、農業、肥料、種子などの散布をみずから行なうこともできるのであります。  第五章は、試験研究機関についての規定であり、大体従来の農業改良助長法の趣旨によっておりますが、特に農業近代化発展のために、農林省都道府県試験研究機関の連絡を密接にすること、及び試験研究の成果を公表し、サービスセンターなどを通じてこれを活用せしめるよう規定しておるのであります。  第六章は、以上に関する経費補助、融資の規定であります。  補助については、第十九条に列記した農業近代化計画の作成及び実施に要する費用について、政令で定めるところによって行なわれるのであります。  また、農業生産組合その地生産加工、販売などの共同組織農林省令で定めるものに対して、農林漁業金融公庫から年三分五厘以内、据置期間五年以内、償還期間三十年以内の条件で近代化資金融資の道を講じたのであります。  その原資については、附則11の農林漁業金融公庫法の一部改正によって、公庫農林漁業債券の発行を認め、これをもって主として農林中金、信連などの余裕金を吸収し、政府はこれに債務保証利子補給を行なって農民の蓄積を、制度金融を通じ、低利長期資金に直して農村に還元する方法を取り入れたのであります。  本法の施行期日昭和三十七年四月一日からとし、本法の実施に伴う関係法令改廃等については、附則に、農業改良助長法の廃止、農林漁業金融公庫法農林省設置法土地改良法特定土地改良工事特別会計法愛知用水公団法公庫の予算及び決算に関する法律などの改正規定を設けております。  上層の家族経営自立経営として育成しようとする政府農業基本法構造政策は、一方では零細農の切り捨て、他方では農地に対する効果のない資本投資の負担を招き、経営合理化近代化を実現する正しい政策ではないこと、経営共同化こそが構造改善の新しい方向であることは、政府農業動向に関する年次報告にも明らかであります。まして、構造改善と称して、これを主産地形成適地適政策にすりかえるがごときは、安定した基盤の上に農業の新しい発展を導く正しい政策と言うことはできません。  われわれは、社会党農業基本法農業生産組合法及び本法案実施により、共同化を中心として有畜化機械化をはかることによって、初めてわが国農業近代化し、飛躍的な発展農民生活福祉向上が可能になることを確信するものであります。  農政に深い理解を持たれる議員各位の御賛同を得て、本法案が成立することを念願し、趣旨の説明を終わります。(拍手)
  9. 野原正勝

  10. 石田宥全

    石田(宥)議員 私は、提案者代表し、ただいま議題となりました農業生産組合法案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたしたいと存じます。  わが国農業における経営規模零細性は、今日、農業生産力発展農民所得向上をはかる上に、致命的な欠陥となっております。すなわち、最近の農業機械の急速な普及も、農家経済にとっては、むしろ過剰投資となって投資効率を低くし、経費を増大させ、所得率を低下させております。  一方、経済高度成長政策によって、大資本成長は急テンポで進み、農業は、生産流通価格の各方面にわたる経済的圧迫を受け、農業と他産業との所得格差拡大し、このままでは、現状家族経営形態では、たとい上層農家であっても、その自立は困難であります。また、個々農家が一反歩二十万円もの高い農地を取得して経営拡大しても、土地資本利子負担の増大によって、経営改善にならないばかりか、他方では多数の農民農地から分離させなければならないのであります。  われわれは、農民土地から分離させず、しかも零細経営現状から解放して、経営規模拡大をはかるために、基本的には生産または経営共同化促進することが必要であると考えるのであります。  言うまでもなく、われわれは急激に、また強制的に共同化を進めようとするものではありません。すでに今日では、農民の間で進んだ農業技術最高度に発揮するため、共同化共同経営の自主的な実践が全国各地で進められております。われわれは、かかる農民自主性を尊重しつつ、経営の全部または一部の共同化を認め、共同施設共同作業など共同組織の奨励と並行しつつ、共同化方向に進めようとするものであります。  しかし現在の条件のもとで、共同化推進は強い国の助成なしには進めることはできません。われわれはこのため、別に農業近代化促進法案提案して、生産条件整備はもとより、共同化に対する各種の助成措置をとろうとするものでありますが、これと並行して、農民相互扶助の精神に基づいて共同して農業を行うための組織整備確立するため、本案により、農業協同組合のもとに農業生産組合を育成するとともに、新たに農業生産組合が、その共同経営のため必要となる農地、採草放牧地に関する権利の取得を認めることとしたのであります。これが、社会党が特に農業生産組合法案という独立単行法案提案した趣旨であります。  次に、法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  まず、農業生産組合の行なう事業、その組織等についてでありますが、第一に、その行なう事業につきましては、農業生産組合は、農業及びその付帯事業のみを行なうものとして、原則としてそれ以外の事業を行なうことは認めておりません。  第二に、農業生産組合組織原則につきましては、農業経営共同化及び近代化を貫徹することと、一方においては生産手段の導入の必要性をも考慮して、農業生産組合の組合員はすべて組合の事業に常時従事しなければならないこととするとともに、その事業に常時従事する者のうち、組合員またはその世帯員以外の者の数は、常時従事者の総数の三分の一をこえてはならないものとしているのであります。  第三に、その組合員につきましては、組合員の資格を、組合の住所のある市町村の区域内に住所を有する農民で定款で定める者とし、特に準組合員制度を設けず、また定款の定めるところによって加入を制限することができるものとしておりますが、これは、地域性を考慮した土地と労働の地域的な共同化に眼目を置いて組合の事業推進することが、農業の実態に即応するものであるとの考え方に出たものであります。なお、この農業生産組合は、独立の経営体として農業経営を行なう関係上、出資制度をとることとし、組合員は出資一口以上を有しなければならず、しかして組合員の責任は、出資額を限度とする有限責任とすることにしております。  第四に、組合の管理及び財務の運営につきましては、おおむね一般の農業協同組合と同様の規定をいたしておりますが、剰余金の配当方法につきましては、年五分以内で定款で定める割合出資配当をなし、なお剰余がある場合には、組合員が事業に従事した程度に応じて配当することといたしております。  第五に、設立等の手続につきましては、農業生産組合が組合員の共同により農業経営を行なうという従来に例のない生産事業実施する組合であることにかんがみ、かつ、出資制度、有限責任をとっている建前から、一般の農業協同組合と同様、認可主義を採用するとともに、一面においては生産組合の設立を容易ならしめるため、極力その手続を簡素化することといたしました。すなわち、七人以上(当分の間は設立を容易にするため二人以上)の農民が発起人となり、設立手続を終了し、行政庁の認可を受けたとき初めて農業生産組合が成立するものとしておるのであります。  最後に、農業生産組合農業生産法人として発展させるため、都道府県は、組合の設立及びその業務の運営に関し必要な指導を行なうとともに、国は、生産基盤の拡充、機械化有畜化促進技術経営面の指導資金の確保等について積極的な助成をすることといたしております。  次に、本案の大きな柱ともいうべき農地制度改正の主要点について申し上げます。  農地の所有形態につきましては、農業基本法案におきまして、農地は、これを耕作する者が所有するという原則を貫くとともに、農民自身の自主的な意思によって、農地に関する権利を共同で保有するよう漸進的にこれを指導することといたしておりますが、この基本法案の理念に沿って、地主的土地所有を排除する従来の農地法の精神を堅持しつつ、一面、共同化推進するため、新たに農業生産組合農地、採草放牧地についての権利の取得を認めることとしたのであります。  すなわち、第一には、新たに農業生産法人が農地または採草放牧地についての所有権または使用収益権を取得し得るようにするとともに、その場合においては、従来の農地等の最高面積の制限を緩和して、農地法第三条第二項第三号または第四号の別表で定める面積に、その農業生産組合の組合員の属する世帯数を乗じた面積まで取得し得ることとしたのであります。  第二に、農業生産組合の組合員がその農地または採草放牧地に関する所有権以外の権利を組合に対して設定しようとする場合には、従来の小作地等の保有の制限を適用しないこととし、また、組合員がその賃借りしている農地を組合に対して転貸ししようとする場合には所有者の承諾を要しないこととして、組合の農地等に関する権利の取得を容易ならしめるとともに、一方において農業生産組合が一たん取得した農地等についてはこれを他に貸し付けることを禁止して、共同化の実をあげることといたしております。  第三に、創設農地について所有権以外の権利を組合に対し設定した場合、その組合が解散した際におけるその創設農地の取り扱いについて規定しております。すなわち、創設農地については、従来、原則として、賃借権等の用益権の設定は禁止されております関係上、組合が解散した場合等には、一定の手続を経て旧所有者に返還するか、それができない場合には、国が買収する旨を規定しております。  以上が農業生産組合法案のおもなる内容でありますが、政府案におきましては、農業生産法人については、組合法人以外に、有限、合名、合資会社のような会社法人をも考慮し、これらに対して農地等に関する権利の取得を認めることとしておりますが、本来営利を目的とし、構成員の資格要件に何らの制限を加えず、二人以上の者がかなり任意に設立し得る会社法人を認めることは、農民の一部を、土地資本を所有する資本主義的企業者へ、他の多数の農民土地資本から分離された農業労働者へ、それぞれ分解させることとなり、農村の階層分化を一層激化せしめるおそれ少なしとせず、害多く益少ないかような措置は、われわれとしてはこの際とらざることとし、日本社会党案におきましては、農業生産法人は、生産組合法人に限ってこれを認め、強力に育成しようとするものであります。このような農業生産組合制度によってのみ、農業近代化合理化が達成されることをわれわれは深く期待している次第であります。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容説明であります。何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  11. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することといたしまして、この際休憩いたします。    午前十一時十二分休憩      ————◇—————    午後三時八分開議
  12. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。山田長司君。
  13. 山田長司

    ○山田(長)委員 過日来の同僚委員の一般質問についていろいろと大臣から御答弁があったわけですが、私の質問もあるいは二番せんじ、三番せんじになる危険性が多分にあるわけですけれども、ふに落ちない点がありますので、さらに、最初それらの点について伺いたいと思います。  農業基本法の制定以来、農業近代化を旗じるしといたしまして、農業のあり方についてあらゆる角度で再検討されていることは御承知の通りでありますが、この中で農業構造の改善、この中にはむろん農業に就業する人口の減少を背景として、日本の特殊事情に置かれております零細農業、こういうものについて農業の仕上げを能率的にやろうという考え方と、さらに選択拡大農業方向を変えて、肉や卵や牛乳や果実などで選択的拡大をはかろうという二つのコースが生まれてきたと思うのです。この二つのコースについては、知ると知らざるとにかかわらず、農村におきましては人口の減少を考慮に入れながら、いずれを選ぶべきかというので、実はほんとうに悩んでおると思うのです。この点について、農民の悩みを解決するために、やはりいずれを選ぶべきかということを強く打ち出す必要があるのじゃないかという気がするわけでありますが、その点について、過日来同僚委員の質問もあったのでありますけれども、特にこの際私は力を入れて大臣の所信を伺っておきたいと思うのであります。
  14. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は、いずれを選ぶべきかということは、それぞれの地方、地域におきまして農業経営に特徴があるだろうと思います。またその人々によりまして好みもあるだろう。ただしわれわれの方として期待いたしますものは、なるべくならばある地方におきましては、主産地として一定の、たとえば畜産であるとか、くだものであるとか、果樹園芸、蔬菜、それらにつきまして一定の主要なものを取り入れて、たとえば畜産でありますれば、全国に百何十カ所、それぞれのものについて需給の関係を考慮いたしまして、大体この程度のものは日本農業の中に組み入れらるべきものだということを考えつつ、地元の方々と御相談をして形成をしていくようにしたい、そうして構造改善をはかっていきたいというふうに考えておりますが、しかし、もちろんこれはあくまで強制し、強要するものではございませんが、それに御協力願うように経営の構造を改善して参りたい、こう考えております。
  15. 山田長司

    ○山田(長)委員 場所あるいはその土地の主産地形成によって、大臣の今おっしゃられるように、生きていくための農民自体の意欲、これが勘案された形が考えられていると思うのでありますが、やはりそういう意欲を持っている人ばかりではなくて、その点で大きな示唆を農民自身に——農民には企画性が非常に乏しいのですから、これをやはり強く与えてやるべきではないか、この転換期に処しては方向を強く示唆してやる必要があるのではないかという気が私はするのです。この点についてどうですか。
  16. 河野一郎

    ○河野国務大臣 示唆して計画性を与える方が適当であるというところにつきましては、もちろんただいま申し上げました通りに、そこに一つの町村を単位にいたしまして構造改善をやって参るわけでございますから、その際に、この地方ではこうおやりになり、こういう経営をなさる方が適当と考えられるということの示唆もしくは御相談はもちろん申し上げるつもりでおります。
  17. 山田長司

    ○山田(長)委員 旧来の場合と違いまして、基本法制定以来の農業というものにつきましては、ただいまの大臣の御答弁くらいでは、なかなかこれは容易ではないという感じが私はいたしますので、ただいまの御質問をいたしたわけであります。  そこで最近の食生活を見ますと、われわれが——特に私は農村に育ったわけでありますけれども、われわれが子供の時分には、農村における食生活というものは、まことに単純な食生活であって、みそ汁にたくあんくらいで食事を済ませた経験を持っているわけです。こういう生活から最近の食生活が一変してきていることは事実だと思うのです。そこで肉や卵や牛乳や、あるいは果実の消費量というものは、戦前と比べて驚くべき状態になっていることは事実だと思うのです。この変化は米の不足ということから、こんなような形で急激に変わってきたということはわかるのですが、十年後の米の消費量の状態とか、あるいは果実、肉、これらの消費の状態、こういうものが当然大きな見地から基本法に従って力を入れられる以上、やはり検討されておるべきものと思うのでありますが、この点はどんなふうに当局では見ておられるものか、その点の示唆を一つお願いいたしたいと思うのであります。
  18. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お話の通り、せっかく検討を加えまして、なるべく早い機会に——今月中という予定でおりましたが、多少おくれるかもしれませんが、なるべく早い機会に、今後十年間の需給の見通しについて検討を加えたいというふうに考えております。
  19. 山田長司

    ○山田(長)委員 桃クリ三年、カキ八年というふうに、くだものについても、やはり果樹の奨励がなされまする以上は、生産される時期というものは目の前にちゃんと数字的に出てくると思うのです。しかしこれが国家的な視野に立って奨励されまする以上は、当然この計画がなされないで進められますと、また農村におそるべき果樹の増産時代がきて、農民は大へんな事態に追いやられると思うので、今月中ないし来月にその計画が立つということであれば、私はこれ以上申しませんが、しかし増産の反別の状態については、なかなかこれはむずかしいのでありますけれども、最近の奨励の状態から勘案いたしますと、想像以上に農家がその方向へ向かっていると思うのです。こういうことについての調査等は現在幾らかされていると思うのですが、この点はどんなものですか。
  20. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまのお話は、基本法によりまして十年の見通しを報告することに相なると思いますので、それに基づきまして計数を取りまとめて、目下審議会の議を経て御報告申し上げるその準備を進めておる段階でございます。  そこで果樹について特にお話でございますが、この点はむろん構造改善の際に今後の需給等も勘案いたしまして、ある程度の指導はして参らねばなるまいと思っておりますが、何分これまではそれについての行政が非常におくれておりますので、それらについて特に園芸局の設置等によりまして、その方面に専門の係を置きましてやって参りたいと思っております。そういうふうに御了承願いたいと思います。
  21. 山田長司

    ○山田(長)委員 近代化に伴って農業というものの経営の面が急速に企業化してきていると思うのです。この企業化の中に当局の奨励等によって養鶏、養豚、酪農が盛んになってきているのですが、これが次の段階として飼料の問題が当然問題になってくると思うのです。飼料の問題については、飼料需給安定法があるとはいうものの、これは無力化してきているような印象を私は持っておるのですが、この点飼料に対する何か強い当局の方針というものが、私は再度打ち出されてしかるべきだと思うのですが、この点に対する考え方はいかがですか。
  22. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り飼料につきましては、飼料需給安定法によりまして、食管の特別会計の中において政府におきましては相当の負担をしております。海外飼料の原料の輸入並びに内地産麦の特別払い下げ等の濃厚飼料対策とあわせて自給飼料対策について、一応政府としては考慮できる点はやっておるわけでございまして、特に本年度におきましても、先般一応の計画を立てましてこれを発表し、目下実行中でございます。私は一応これでいけるのではなかろうかと考えております。
  23. 山田長司

    ○山田(長)委員 なぜ私は飼料の問題を強く大臣に伺っているかというと、ちょうど果樹と同じように、畜産の奨励が強く打ち出されます以上は、このことによってやはり三年、五年ないし十年先の強い見通しが飼料の面にも打ち出されなければ、農民畜産生活の上におそるべき飼料の値段高が再来して、私は幾ら法規があっても取り締まりのつかぬ事態になるのではないかという印象を持つのです。この点どの程度国内資源として確保できるのか、それから国外の資源の依存はどんなふうになっているのか、果樹と同じように、先の見通しはなかなかむずかしいことでありますけれども、五年先あるいは十年先の方針が打ち出されないと、安心して農民政府の方針に従った形の動きをとるわけにいかぬと思うのですが、いかがですか。
  24. 河野一郎

    ○河野国務大臣 いずれ計数につきましては後刻参考資料を差し上げることにいたします。  御承知のように海外に非常に安い原料が豊富にあるわけでございます。でございますから、えさに関する限り輸入を潤沢にするという措置さえ講ずれば、将来の見通しは決して不安はない。むしろできるだけこれに加えて国内飼料給源を何に探すか、たとえばてん菜等の奨励によって裏作等にこれを求める、ないしは内麦の一部これに充てるかというような方法で、足りない分につきましては外国飼料の輸入を自由にすることによりまして、決して将来日本の畜産振興飼料によって不安があるということはあり得ないと思っております。しかもこれは相当低廉なものでございますから、国際的に低廉な価格飼料の入手をすることができると考えております。
  25. 山田長司

    ○山田(長)委員 飼料の検査の問題でありますが、外国からのものは政府が検査をしているようでありますし、地方の場合都道府県で抜き取り検査をやっておるようでありますけれども、人手の不足等でなかなか思ったようにいっていないと私は思うのです。それがために飼料について、同じようなものを買っていながら、農民自身がずいぶん苦労していると思いますけれども、この検査の方法について何か強化するとか、あるいは名案はないものですか。
  26. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知のように、従来は肥料が相当に強い検査の対象に考えられておったわけでございますが、最近は化学肥料が重点になりまして、この方面における検査、取り締まりが多少手が抜けるようになって参ったと思うのであります。そういう意味から、今回農林省設置法の一部を改正願いまして、従来相当全国にわたってあります肥料の検査所にいずれもえさの検査所を併設して、えさの方に重点を置いて検査するということに変えて参りたいと考えて、せっかく今御審議を願っておるわけであります。
  27. 山田長司

    ○山田(長)委員 この検査が完璧でないと、農民には飼料に対する科学的な知識は全然ありませんし、それがために、計画生産がされる段階になってきています仕事が全く烏有に帰す危険があると思う。そういう点で私は、検査の強化という問題で、当然何らかの形で現在以上の手が打たれなければならぬものと思うのです。今の大臣の答弁ですが、そういう点、もう少し強い示唆が農民のためにあってしかるべきだと思いますが、何かもう少しいい案はないのですか。
  28. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今申し上げましたように、従来肥料の検査についても相当に行き渡ってやっておったが、これが肥料の方は手が抜けるようになったと思いますので、今回えさの検査所を肥料の検査所と兼ねて同時に行なえるように、行政機構を変えまして、そうして従来肥料の検査をやっておったところでひとしくえさの検査も全部行なうようにして、徹底的に検査を行なうという方向に行政機構を変えることにいたしましたから、それでやれるのではないか、こう思うのであります。
  29. 山田長司

    ○山田(長)委員 外国からの飼料の話が出ましたから、つけ加えて私は伺うのでありますが、政府の奨励によりまして、全国各地で果樹園芸が盛んになってきておると思うのです。東北本線の沿線などを見ましても、白岡、蓮田、久喜各駅の周辺などは、最近非常な上田地がつぶされて、桃畑やブドウ畑やナシ畑に変わっておる。おそらくこれらの問題について、数年前の日本の農民だったならば、あざ笑いするほどの事態だと思うほど、上田地が果樹園に変わりつつあるわけであります。これは先祖伝来の美田がつぶされてこうした果樹園に変わっておるのであります。  私は、実は去年の夏、経済視察という名目で、衆議院から派遣されて、東南アジアへ行ったわけです。たまたま香港で日本のくだものに出っくわした。それは二十世紀と高知からいったスイカでありましたけれども、それを見ることができて、いただいたわけですが、向こうの人たちにいわせると、日本のくだものは非常にうまいというので、大へん賞賛しておったのであります。どういう経路できておるかということを調べてみましたところが、特殊な人間がためしに船へ積んで持ってきたというだけで、自由港でありますので、香港ではそれを特殊なマーケットで販売することができていたわけです。こうして全国的に果樹の奨励がなされて、果樹園ができて、どんどんくだものができる段階になってきますと、当然輸出の問題について、特殊の人間が船で持ってきたくらいのものじゃなくて、正式なルートでの輸出面が今から考えられなければならぬと思うのです。ジェトロの人たちなどに会って聞いてみますと、残念ながらまだ東南アジアにも日本のくだものを出すだけの実際の状態に立ち至ってないというお話なんです。けれども今度の場合は、日本じゅうで果樹が奨励されて進められる以上は、東南アジア、少なくとも消費地になれる個所は選んで、どんどん出す計画を進めなければならぬと思うのです。アメリカなどにはリンゴ等がいっておると伺っておるのでありますけれども、これらについても、何か選別される神戸の商人等がうるさくてなかなか思うように出されないという不平があるわけですが、この点についてやはり明確な指針が打ち出されていないと、作っている人たちも、日本じゅうでくだものができるようになったら一体これはどうなるのだろうというふうに、不安にかられているだろうと思うのですけれども、この点はそういう趣旨の指針を打ち出しても決しておそくないと思うのです。早くそのルートを作るべきじゃないかという気がするのですが、大量に生産されるのを前にして、大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。
  30. 河野一郎

    ○河野国務大臣 第一はこれらの輸出の問題でございますが、もちろん輸出については相当の考慮を払っておるわけでございます。と申しますのは、現にカン詰として日本のくだものが、いろいろな種類のものが全部カン詰としてはミカンのカン詰を先頭にしてこれのお供のような格好でずっと進出しております。ことしはミカンが非常に値が高うございましたので、カン詰の原料のミカンに事欠いておるような始末でございますが、私は、大体日本のくだものは値段が高過ぎる、もう少し値段が安くなってしかるべきである、今よりも増産されて、そうして極端に申せば消費が倍にふえて、値段が何割か下がって、農家所得が適当なところにいくんじゃないか、その程度で成長農産物としてむろん取り入れることは可能じゃないか、こう思うのでございます。そういうことになりますと、カン詰用の原料としてすべてのものがここに消化できる。まず第一は、お話のように日本のくだもの類が、その消費において世界のどこに比べても少ない。ぜいたく品のような扱いを今なお受けておる現状である。これがイタリアあたりに比べても消費が半分である。従ってその国内における消費自体でもまだまだ倍くらいにふえることは可能である。そこまでいけば相当値が下がってもいいじゃないか。値が下がることによって、これはカン詰原料になる。たとえば桃についてもそうでございます。カン詰用ということで植えたものが、なまのままでどんどん売れてしまって、カン詰の原料にまだ回らないというような実態でございますので、相当に増産されましても、それが処分され、余ったものがカン詰になるというところまでいくには、まだ相当の増産が可能である。輸出のことでございますが、実はリンゴを東南アジアに適当なところに輸出の奨励をしようということで、実はこれにつきましては三十七年度で奨励費の予算補助が組んであるわけでございまして、これについては積極的にやろうという考えでおりますが、まだこれは茶話程度と申しますような話でございますが、ごく最近石がきイチゴをロンドン、パリに実は日航機で積み出して、定時的にこれを輸出というほどの量にはまだいっておりませんけれども、まず草分けにこれを積み出そうということで、これの積み出しを始めておるということでございます。
  31. 山田長司

    ○山田(長)委員 草分けに日光イチゴの海外進出を試みられたという話で、大へんこれは産地たるわれわれとしては喜んでおる次第でございますが、問題は、やはり消費地の開拓という問題につきましては、歩いてみて東南アジアの各都市におけるくだもの店というのは、まことに日本の国内などから見ますると貧弱です。食べることを知らないわけではないと思うのでありますけれども、案外路傍でバナナを売っているとかあるいはマンゴウを売っているとか、そういう程度のことであって、日本のようにマーケットを備えた形の市場は見受けられなかったのですけれども、この点やはり日本商品のこれからの進出の場所としましては東南アジア以外に各国が考えられると思うのです。そこで私の考えることは、これらの消費地に向けての宣伝の方法及びこれらの土地に対する日本商品の進出の度合い等で——私はこれは通産省の関係だと思って二、三日前に検査官の人たちに伺ったのですが、ビルマに賠償物資としてオートバイが七千台行っておったのですが、これがいずれも土地の事情を知らずして出ている関係上エンジンが焼けて、見た形はまことにきれいなんですけれども、路傍に捨ててある姿を見たのです。それと同じようにこの果樹の東南アジアへの進出の場合等についても、いずれにしても暑いところです。なかなかこれは容易じゃないと思うのです。それで今のその進出の機構について神戸と横浜にしかないそうですけれども、私は今から政府で、日航機で特殊にイチゴを出したというふうなことではなくて、もっと明確な線で海外へ進出できる態勢というものができていなければ、これから果樹園芸に携わる人たちにとってみては、同じ作り出すにいたしましても張り合いがない作り出しの仕方をしなくてはならぬと思うのです。この点やはり将来の明るい見通しを国民に与えて、それで農業の転換をさせる必要があるのではないかと思うのです。貿易市場における海外進出の方途というものは今どういうふうになっておるか、それから将来はどういうふうにしようとしておるか、わかりましたらばお知らせ願いたいと思うのです。
  32. 河野一郎

    ○河野国務大臣 くだものにつきましては、御承知の通り一部ミカンのようなものにつきましてはカン詰として四百万箱からのものは出るのでございますから、貿易品として相当の座を占めております。それだけの、これは世界各国どこにでもないものであります。他のくだものに関しましては、まず一応輸出として考える場合にはカン詰として輸出するということだろうと思います。これは一番可能である。ところがそれには今の現に日本にありますくだものでは値段が高過ぎる。そこで先ほど申し上げましたように日本のくだものはまだまだぜいたく品の域を脱しない。非常に必要以上に手をかけて、そして必要以上にみがき上げて、そうしてぜいたく品として取引されておる。実用品の域にまだ至っていない。これらが、くだものの消費が欧米に比べて少ないゆえんであろう、こう思いますので、私はくだもの政策としてはまず少なくとも現在の倍ぐらいの生産をいたしまして、そしてこれが消費は世界で比較的少ないイタリアさえ日本の倍でございますから、倍になることは決して不可能ではないという目安のもとに倍の増産をする。そして値段は現在よりも幾分下げてよろしいというところへいくべきであろう。下げることによってカン詰の原料としてこれが取り入れられて、そうしてこれが海外輸出の原料になってくるという方向でいくべきものという考えのもとに、まだ現在非常に植えたあとが心配だ——なお私も研究いたします。勉強もいたしますが、一応の私のめどとしてはそういう方向で奨励をいたしておるわけであります。
  33. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいま大臣の御答弁の中に値を下げるという問題を申されましたが、値を下げる一つの方法として、果樹の栽培が最後まで手でなされなければならぬところになかなか値段の下げられない理由があるという話を伺っているのでありますが、アメリカでは手動機を利用しまして、すでにサクランボウとかアンズとかスモモ類などの場合は、むだなものを手動機で落としてしまっている、こういうようなことからかなり手間が省けて製品の価格についても安さを作り出すことができる。安ければ私は消費すると思うのです。この消費について、やはり何といいましても、私はただ品物を出しておけばいいというだけじゃなくて、消費の教育がこれに並行しなくちゃならぬと思う。農林省としては消費の教育をどういうふうな方向国民に示唆するおつもりですか。
  34. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り、まだくだものを食うことを教育するということはやっておりません。行く行くは消費、宣伝でもいたさなければならぬと思いますけれども、まだ実はそこまでいたしておりません。
  35. 山田長司

    ○山田(長)委員 この点は、私は園芸の奨励をする以上は、産地の青森で青森リンゴの宣伝をしているということではなくて、やはりよい品物を作るために、それから栄養価をねらって国民健康上から考えてみても、こんなにことしのように農業基盤整備の中に旧来の食糧増産対策と違って根本的に変わった線が打ち出されてきている以上は、安心して作り出させる方向を指示するためにも、政府でもおのずと指導するだけじゃなくて消費の面の宣伝をやるべきものと思うのです。こういう点は特産課の仕事になるかもわかりませんけれども、お考え願えればと私は思います。  次に米の問題です。米の問題が前の大臣のときも選択拡大の対象にはならなかった。米を果樹や畜産のように選択拡大の対象に考えられないでおりましたけれども、私は根本的に食糧増産対策というものが考えられないで——あるいは考えているのかもしれぬけれども、力を入れない段階になってきたときには、当然方針がやはり考えられてしかるべきだと思うのです。こういう点からやみ米の合理化という看板を河野農林大臣が掲げたのかもしれませんけれども、この点は自民党内部の時期尚早論で一応やんでおる、大臣の構想の中にはお持ちだと思うのですけれども、世間的に党内の時期尚早論でおやめになったような印象でありますが、この点農民は実際ははらはらしているのです。横紙破りの大臣のことだからいつまた言い出すかわからぬというので、実ははらはらしているのです。この点この際やはりあなたのお持ちになっている構想をここでできるだけお伝え願いたいと思うのです。これはぜひお伝え願いたい。
  36. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は私の考えておりますことが妥当であり適切であると考えておりますけれども、何分大方の農民諸君の御批判もありますし、このことを実行するにあたりましては大多数の諸君の御賛同がなければ実行すべきものでない、それが私の信念でございます。従って脱衣のように各方面に御議論がある以上は、私の考えだけでやってはいけないというために、さらに私は先輩同僚諸君の意見を十分承って、そしてこれら諸君の意見がどういうところに一致いたしますか、これら諸君にとるべき方策を伺いましてこれを実行することに対しては、おそらく全国農民諸君も御納得がいき、安心して御賛成いただけるものと考えますので、せっかく今御承知のように米穀懇談会の各先輩方の御意見を伺っておるところであります。いずれそのうちにその意見が一致いたしましたならば、この諸君の意見の一致を見て、それを実行する。私の考えておることを再び実行するにあらずして、これら諸君の考えの帰一いたしたところを実行するという考えでございますから、もし全国でいろいろお考えになっておる農民諸君があられるとすれば、私の今まで考え、申したことがその通りになるかならぬか、それは知りません。知りませんが、私の考えとしては、実行はいたしません。この次に私が行政として、実行するものは、米穀懇談会の結論を実行するということで私は実行するつもりでございますから、さよう御承知をいただきたいと思います。
  37. 山田長司

    ○山田(長)委員 今まで河野さんを知っている遠くで見ておるわれわれの考え方としては、昔と違ってずいぶん性格がやわらかになってきたという印象なんです。なぜそういうことを申し上げるかというと、この農業基盤整備という大きな題目は、何と言いましてもこのことが考えられているんじゃないかという印象をわれわれとしては持つわけです。この点が、今懇談会の方針に従って方向をきめるというふうなことでございますけれども、やはり懇談会に少なくとも農林大臣としての強い方針ぐらいは、一応示唆してしかるべきだと思うのですけれども、こういう大きな方向転換を意味してきておりまする以上、農業のこの転換期にあたっての——何と言いましても、今まで米に依存する度合いというものが非常に多かったのだけれども、今度は米だけではなくなってきておるのです。そういう点で強い方針があってしかるべきだと思うのですが、懇談会の方針が出なければ、あなたの方針というものはないものですか。私は、大臣としては懇談会は諮問機関ぐらいにしか思っていないで、方針として強い方針をお持ちであってしかるべきだと思うのです。でないと、やられないならばやらないで——農民自身がはらはらしておるが、何か奥歯にもののはさまったようなものの言い方で、何かやりそうな気がしておるのですよ。これは実際農民に伺ってみますと、そう思っておるのですよ。この点もう一ぺんお願いいたします。
  38. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私の考えが大へんいい考えで、早くやらないかと思っておる諸君もあられると思います。そういう人はなぜまごまごしておるのだと言う人もあります。(笑声)ありますが、しかしいずれにしてもまだ早い、あれじゃ困ると言う人もあるわけでございます。事、実は事実、現実は現実として私は受け取らなければいかぬという意味において、しかもこの点たるや一部の私の真意を誤認と申しますか、無理に曲げて、農民に宣伝されておる向きもあります。というのは、決して将来にわたって生産者所得方式に変更を加えるものじゃないという点をどうしてもそうお受け取りいただきませんで、河野がやり出したからこの次は間接統制だ、この次は米の値段はどうなっちゃうかわからないという宣伝が非常に強いと思います。ここまで宣伝が行き届いた以上は、私の責任においてやるということは無理でございます。従って他の諸君の一致した考えが、どういう結論が出るか、だれが考えても、事情をすっかり検討なさいましたならば、そう違うものではない。むろん私の考え通りのことに結論が出るとは私考えません。考えませんけれども、その結論というものはそう違うものではないと思うのでございます。従って、これらについては、ある期間を置いて農民諸君にも十分御検討をいただき、また各方面のそれぞれの立場にあられる人に十分に御検討をいただいて、そうして出た結論についてやることの方が私はよろしいという考えのもとに、これら諸君の結論が出るのをお待ちいたしておるのでございます。ただし、このことたるや食管法運用の問題でございます。農業基本法の上における米の地位、立場というものについては関係ございません。私は日本の農業政策の上において、食糧を増産して参るという方針については、いざさかも変更を加える意思はございません。これはどこまでもやっていくべきものだというのでございますから、この結論が出ませんでも、農業政策を遂行して参る上におきましては、私は支障ないと考えておるものでございます。
  39. 山田長司

    ○山田(長)委員 しかし、これははっきり申し上げると、食糧増産の政策から農業基盤政策という政策の大転換ですよ。そういう大転換期のときに、旧来やってきました方針というものが少なくともたな上げされているものと私は思うのです。これはやはり基本法を打ち出されたことによる一つのあり方として次の段階のことが出てきたわけですけれども、そうすると今の食糧増産の問題というのは、もう根本的に変わってこなくてはならぬ状態だと思うのです。全国の農協の倉庫などを見ましても、麦も米も一ぱい詰められて、農協自体が食糧を保管している手数料でとにかく何とかかんとかようやくやっているというような状態で、早く指示を打ち出さないと、次の段階のとき、転換しようとするとき、私は農協がみんなばたばたつぶれてしまうような事態になると思う。この点は早く転換期に処して方針を大臣としては打ち出すべきものと私は思うのです。この点がどうもまだ納得できないです。
  40. 河野一郎

    ○河野国務大臣 山田さん、その点は少し私と考えが違うのでございますが、御了解いただきたいと思いますことは、農業基本法を制定いたしまして成長農産物の生産に意欲を持つと申しましても、やはり日本の農業の場合には、適地におきましては米作が一番よろしい。この米作を捨てるという考えは私はございません。ただ、従来のように非常に米の生産に急であって、生産費がいかようであろうが、条件がいかようであろうが、まず米の生産という考え方については考慮を要する。つまり適地適産ということでいくのがわれわれの考えでございまして、従いまして食糧増産、米の生産に意を用いて参りますと答えたのはその意味でございまして、麦にしましても、米にしましても、決してひどくあり余ってどうにもならないというものじゃないことは御承知の通りでございます。従って、われわれが今ここで意欲を持ちますのは、米の生産をいたしますよりも、さらにもとに上回る所得のある農産物というものを形成していくということでございまして、米の方を捨てておいて、こちらの方に行こうという考えはないのでございます。でございますから、米についても従来同様に意欲は持ってやります。しかしその持ってやります意欲は、適産地において、そしてより以上に生産費が下がって、値段が高く売れて、農家所得の増すような奨励をやって参りたい。と同時に、他にはまだ、米にかけておった労力の一部を合理化することによって他のものを取り入れて、ここに多角経営によって農家所得を増すというようなことも可能であるならばやって参りたいということでございまして、どこまでもわが国農業の上において米の持つウエートというものは決して軽いものではない。これをそう簡単に捨てて、ほかにそんなにいいものがあるというふうには考えていないのであります。これは私はどなたもそういうお考えじゃなかろうかと思うのでございますから、その点は一つ御了解いただきたいと思います。
  41. 山田長司

    ○山田(長)委員 その点了解しました。  次に、農地制度改正については、当局も取り組んでいて、今度立法化されたようでございますが、土地の売買それから賃貸借の制限、条件、これをもっと自由化するということは考えられていないのですか。
  42. 河野一郎

    ○河野国務大臣 その点は十分検討の価値のある問題と考えておりますが、そこまではまだ手をつけておりません。
  43. 山田長司

    ○山田(長)委員 次に伺いたいことは、過日農林委員会で芝浦の屠場の視察に行きましたそのことです。私はこの屠場へ行ってみて——おそらく大臣も関係者とお話しになっておられるから、奇異の感じをお持ちになられたものと私は思うのでございますが、この取引がどう考えてみても明朗を欠いている印象なんです。何とかもっとこの制度改善というものを打ち出さなければならないものだと私は思うのでありますが、何かこれについての改善案というものをお持ちですか。
  44. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私も全く同様な感を受けまして非常に心外でございます。いまだにああいう取引、ああいう屠場があるということは、しかしそれが日本の代表的な屠場であるということは、いかにも情けない感じをいたしたわけでございます。ところが御承知の通りわが国におきましては、中央卸売市場でありましても、それは農林省所管でございませんで、所掌事務にはなっておりますけれども、これの直接の監督は地方庁におまかせをしてあるわけでございまして、そういう関係から、どうも重要な施策であるにもかかわらず、何か隔靴掻痒の感がある。見には行ってみても直接どうするわけにもいかない。そこで私も芝浦に参りました際に、屠場の関係者諸君に、この際は豚の価格操作をするについてもはなはだ遺憾だが芝浦を対象にするわけに参らぬ、すみやかに機構の整備拡充を期待する、その日のあることを待っておるということを申して、そして全国に向かって芝浦がいかに適当でないかということを明瞭にするために、大宮と横浜を指定いたしまして、ことさら農林省の対象市場から芝浦ははずしました。これによって相当反省されるものと思いますけれども、なお反省なくして現状のままでおるようであるならば、私は重大な決意をしなければならないと考えております。つきましては、今朝も経済閣僚会議におきまして、先般来視察いたしました神田市場といい築地の市場といい、さらにまたただいまの芝浦の屠場といい、いずれも少々時代に沿わないものがあるような気がいたします。たとえば神田にいたしましてもあの通りの始末でございます。最も設備の行き届いておると思う築地にいたしましても、五百万市民を対象にした魚市場で、その中に、魚市場だけでなしに、野菜ものも入っておれば何も入っておるというような始末であります。このままにいたしておきましたのでは、取引の機構を改善する、整備すると申しましても処置ございません。そこで特に閣内におきまして総理とも談合いたしまして、必要があれば法律的処置を講じて、直接政府が中央市場の監督に当たるという処置も、必要があればやらなければなるまいということで、これの研究に着手することにいたしたわけでございます。
  45. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいまのお話を聞きまして、私は実はすみやかなることを要望したいのであります。何となれば、あの大手筋の数社の人たちが親値を出して、その親値を出した上にその日の取引価格というものがきめられるということでは、これはどんな安定法が出ても、あの理解のできない機構があるために、出す方の農民にとってみても、これは安心して出せない事態だと思うのです。こんな機構が今どきあるなんということは、私は実に意外だと思う。こういう点はすみやかに改めてもらいたいと思うのです。この点大臣もすみやかにやられるおつもりのようでありますが、私は特にこの点を要望いたします。  次に、ただいまの取引のことに関連してくることになるわけでありますが、農民が全販連等に委託して、それで全敗連が市場へ持ち出していく。この場合、夏などには二、三十頭の動物が暑さのために倒れる場合があるそうなんです。そうすると、それが全部農民負担になっていく。こういう事態を伺ってみたときに、農民にとってはこの機構自体を、こんなままにして置くことができないということがわかってもらえたと私は思うのです。さらに、一般の仲買いの家畜商の人たちが買ってきて、さらに屠場に出している場合においても、今お話しになりましたように、大手筋のボスがこれに介在しているとするならば、農民にとっては大へん不利な事態がここにあるわけなんです。この点やはり農民自体にも明らかになるように、せりの市場にするとか、あるいは正札販売の市場にするとか、これはすみやかに対象が立てらるべきものと思うのですが、この点今の御答弁と関連して、大風の御答弁が願えればと思います。
  46. 河野一郎

    ○河野国務大臣 実は私は、現に全販連が相当の数量を出荷し、取り扱いをいたしておるのでございますから、中において相当の指導性を持ってやっているものと期待しておったのでございます。ところが行ってみて、今御指摘のように非常に驚いております。私も戦前中央畜産会の会長をして、豚の販売あっせんをいたしたことがございます。その当時でも、北海道、九州のものを夏に積んで参ると、途中において死ぬ。死んだものについてはどういうふうにするかというような問題は、その当時から問題がございまして、その当時、これを共同計算の中で落とすとか、農林省から出荷の補助費をもらうとかいうようなことをやっておったことを、自分が経験しております。それが今なお、今お話しのように問題になっているということでは、実は私は、一体何年間何をしておったんだという気持がいたしたのでございます。しかもあの芝浦の実情を見れば、あれだけのものを全販連が持っておりながら、何らあの市場の中で指導性を持っていない。自分のものだけでもせりをしたらいいじゃないか。なぜ自分のものだけせらないのだ。当時私はせりをやっておった経験があるのでございます。ところがこのごろでは、全く職員にまかせて、あの市場の中の風習に従ってやっているというようなことでは、どこに一体全販の実があるか。ただおざなりに、集めてあそこへ運んでいるだけじゃないか。これは先般も申し上げました通りに、金融の面において三段階、販売、購買の面において、今日単協から県、県から中央という、三段階というようなことが一体適切であるかどうか。非常に機構が整備せられ、取引が簡素化されてきているときに、そして非常に遠距離までトラックでもって品物がどんどん動いている回転の早い時代に、今のような協同組合の組織が、一体三段階要るか要らぬかというような時代にも入ってきておるのじゃないかというような気持もいたします。これは成長農産物等におきまして、ますます共同販売の実をあげて参らなければならぬ時代になれば、これも一つ皆様方の御検討、御賛助をいただきまして、それぞれの業種別の協同組合というようなものに改組して参るというようなことも必要じゃなかろうか。そしてもう少しきめのこまかな販売、購買、あっせんというようなものが実現できるような農業団体の組織が必要じゃなかろうかというような感を非常に深くするものでございます。さしあたっては全販連を一つ指導いたしましてやっていくことが、われわれとして一番可能なことだと思いますので、せっかくその方面の検討をいたしてみたいと思います。
  47. 山田長司

    ○山田(長)委員 屠場を見て私は痛切に感じたのでありますが、一体九州の鹿児島の方からきたり、あるいは四国の果てからきたり、東北の果てからきたりする。最近の輸送事情から推してみても、生きたものを貨車に積み込んで持ってくる、こういうこと自体に、私は一つの疑問を感じたのであります。なぜこれらについて、全国的に一つの県に一つの屠場くらい設けて、それで枝肉にしてこれを持ってくる方法が講じられないのか。そうすると、当然機構全体にも私は大きな変化が起こってくると思います。この点を、行ってみて痛切に感じたので伺うわけでありますけれども、もっと近代的な方法が講ぜられないものかという印象を受けたのですが、その点どうなんです。
  48. 河野一郎

    ○河野国務大臣 その点は、実は私も専門家じゃございませんけれども、現実に処理して参ります場合に、産地の屠場で屠殺をして、そして枝肉にして持って参りますよりも、生体のまま大消費地、つまり東京、大阪その他六大都市程度のところに持って参りまして屠殺した方が、内臓等の処理、これが非常に有利に処分できますので、豚全体の処理としては有利になるというようなことから、豚につきましても、産地においてこれを屠殺して、そしてこれを冷凍車で運んでくるということの方がそろばんが合わないというようなことのために、それは現在行なっていないように聞いております。なおよく検討いたします。
  49. 山田長司

    ○山田(長)委員 私は、その点大臣の考え方とちょっと違うのです。最近のように自動車でも、冷蔵庫施設のあるようなものが動くような時代になってきているのに、そういう内臓にしましてもあるいは皮の部分にしても、これが大きな障害が起こってくるというようなことは考えられません。そういう点は私は考え方が違います。  それから次に、私は今度の奨励によって大きく制度改正がなされなければならぬと思いますことは、各都道府県畜産の熱が入ってくることによって、少なくとも屠場というものは各都道府県に一カ所くらいは設けて、これが販路についても、当然もっと円滑化が考えられてしかるべきものと思うのです。そういう点は、今の東京における市場等を勘案してみたときには、それは制度的にも無理があるのじゃないかと思うのですけれども、当然全国的な考案がなされてしかるべきものと思いますが、これらについては、何も現段階においてお考えになりませんか。
  50. 河野一郎

    ○河野国務大臣 所管は厚生省になっておりますけれども、しかし農林省としても、屠場は決して少なくないのでございまして、必要があればどこにでも開設できるわけでございます。決して一県一カ所ということでなしに、一県数カ所という屠場があるわけであります。決してこれは屠場に個所の制限はございません。
  51. 山田長司

    ○山田(長)委員 大臣はそう簡単に言っても、実際は設ける場合にいろいろな困難さがあるようです。その点やはりもっと明文化した形のものがなければ、新たに作り出すということは、幾ら畜産の奨励がなされてきたにしても容易じゃないと思うのですが、この点どうですか。
  52. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私今申し上げましたように、事務の話によりますと、全国に八百六十カ所屠場の数はあるそうでありますから、決して屠場の数は少なしとしないのであります。屠場の設備が悪いということはありますけれども、数の点については十分ある。また必要があればこれを作ることについてはそうやかましくないというふうに話を聞いております。
  53. 山田長司

    ○山田(長)委員 個所はそういうふうに設けられているようでも、実際はその機能を発揮していないのですよ。その機能を発揮していない事態をもっと血を通わせるようにするためには、悪い言葉で言うと各府県にいるボス勢力でこれができない機構になっている。やはり当局で育成強化をしていかなければ、実際畜産の奨励をされてもこれが機能を発揮し出さない、こういうところに、実は問題があるのではないかと思うのです。やはり何か指導、育成の方法を講ずべきだというのが私の意見なのです。
  54. 河野一郎

    ○河野国務大臣 よく全国的に再検討いたします。
  55. 山田長司

    ○山田(長)委員 私の質問を終わります。
  56. 野原正勝

  57. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は農林大臣に水産政策の問題に焦点を合わしてお伺いをしたいと思います。きょうは午睡中から十分時間があると判断をしておりましたが、しかし大臣は五時から用事があるということでありますので、その点私協力いたしまして五時には終了いたすように質問をいたしたいと思います。従ってこまかい数字的なことは大臣もあまり強くないと思いますので省略をいたしまして、なるべく基本的な考え方の問題としてお伺いいたしたいと思います。  最初に、日ソ漁業交渉の問題から入りたいと思います。日ソ漁業交渉の問題は、今月の二十六日からいよいよ話し合いが始まるというふうに承っておりますし、すでに政府代表にきまりました高碕さんも来月にはソ連の方に行かれる、こういうことのようでございます。しかもまた、日ソの漁業交渉を前にいたしまして、二十日には河野農林大臣、高碕政府代表がお会いになって、日ソ漁業交渉に臨む基本的な方針について打ち合わせをされたということを承っております。なおまた、ことしの日ソ漁業交渉については、昨年の秋から暮れにかけまして、御承知の専門家会議も開催をされ、生産部長もその方に出席をして、技術的な問題についてはいろいろ打ち合わせがなされたわけでありますが、専門家会議の状況等を記事等で判断いたしますと、やはり従来同様に資源論争といいますか、特にマス資源の問題についての考え方という問題に、今後の交渉の焦点の一つがあるやに聞いております。二十日の高碕さんと河野さんの話し合いの内容は後ほど大臣からもお話が出るかと思いますが、ソ連側のこれから交渉に臨んでこられる考え方、資本側のこれから交渉に臨む態度、例年これは百日交渉ということで出漁期、間ぎわまでいろいろ折衝が難航するわけでありますけれども、大臣、ことしは日ソ漁業交渉については、いろいろ論議は十分尽くされると思うけれども、交渉としては難航せずにいくという判断をされておるのか、あるいはまた相当やはり論議が出て出漁期、間ぎわまで交渉が難航する可能性があるというふうに見ておられるのか、いずれにしてもソ連のことについては大臣非常に精通しておられ、しかもまた高碕さんもこの方面については代表として十分資格のある人ですが、ことしの交渉については手ぎわよくいくということを私ども期待しますけれども、今後の日ソ漁業交渉の見通し、というものについて大臣はどういう判断をされますか。なおまた、ことしの日ソ漁業交渉に臨む基本的な考え方というものはどういうふうに持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  58. 河野一郎

    ○河野国務大臣 日ソ漁業交渉と申しましても、もうすでに回を重ねること数回、お互いにこの問題の山はわかっておるわけであります。と同時に、利害相反するかといえば、利害は相反するんじゃない、利害相一致しているんだ、物の考え方をこちらがたくさんとって向こうにとらさぬようにしてしまう、向こうはまたこちらがとるから自分がとれなくなるというような考え方であれば、そこに両者の利害相反しますから交渉は難航すると私は思います。そういうものの考え方はしたくない。そうでなくして、これだけ年々の経験、もしくは調査の結果からいたしまして、お互いに、いかにして魚族を保護し、永遠にわたってこれによって営業いたしておりまする関係漁民諸君の営業の安定を与えるかという立場に立ってものを考えていくことができるならば、両者の利害は相一致するものである。ことに私は強くソ連側に期待をいたし、また日本側としても反省をいたさなければならぬ点は、たとえば、年々のソ連側の漁獲量と日本側の漁獲量を結果において見た場合に、一つの傾向があると私は思うのであります。と申しますことは、御承知の通り、ソ連側は日本側の漁獲について制限を加えようとしておるように思うのであります。ところがそれならば、日本側を制限して自分は十分にとっておるか、毎年一定の量とっておるのかというと、そうじゃございません。日本の数字が減ったときにはソ連側も減っております。年々ソ連側も減っております。日本側が減った率と同じようにソ連側も減っておるのであります。この事実を見ますると、ソ連側が日本に対してある程度の漁獲の制限を期待いたしますときには、自分の方もそれにこたえて漁獲の制限をして魚族の繁殖保護に協力しているという事実が明瞭に示されておると私は思うのでございます。この事実をそのまま了承することができますならば、双方において忌憚なく魚族の繁殖保護という観点に立って懇談いたしますならば、談笑のうちに結論を得ることができるだろうと思うのでございます。従って、私は、日ソ漁業交渉は、いかにして日ソの間に大局的な結論を得て、それをいかにしてわが国漁民諸君に御納得を得て、これに御協力を願うかという問題であると思うのであります。今までのようにたくさんとればいいのだという考え方は間違っておる。そういうことをしてきたために、いかに年々魚族が減っておるかという事実は認めないわけには参りません。でございますから、大乗的見地に立って、そうして魚族の保護、繁殖ということについては孵化の奨励もいたさなければならぬでございましょう。わが方はわが方として、北海道の水域の繁殖、保護についても意を用いる必要があるでございましょう。さらに進んで、どの程度の漁獲をすることが適当であるかという見地に立って、自主規制を十分にやってその実をあげるという態度に出るならば、私は両者の間に意見の一致を見ることは決して困難ではないという立場において、この交渉に当たって参りたいと思っておるのでございます。
  59. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今、大臣から日ソ漁業交渉の基本的な考え方、あるいは今後の見通し等についてお話があったわけですが、例年の例、特にことしは御承知のように偶数年の不漁年に当たっておるわけでありますし、また専門家会議等の経過等から判断をいたしましても、やはり資源問題、こういうふうなものが焦点になるだろう。同時に、昨年の規制区域外におけるところの自主規制でやるべき日本側の漁獲高というものが、双方で紳士的にきめた量を上回っておる。それに対するソ連側の不信感というものはやはり払拭できない。従ってそういった点から、今、大臣も言われた資源保護の立場から見ても、もう少し規制区域を拡大すべきであるという主張がおそらく出てくるのじゃないかと思う。大臣はあくまでも規制区域については従来きめた規制区域以上に拡大をしない、自主規制については、昨年の点については反省すべきは反省をして規制の実をあげたい、こういうことでおそらく臨まれるのじゃないかと思いますが、そうであるとするならば、自主規制、こういうことを言いましても、流し網等の関係の団体にいたしましても、双方で自主規制をしなさいと言うだけでは、なかなか実績を上げ得ない従来の経過から見て危惧されるのではないか。また、ことしもあくまでも規制区域の拡大ということは避けて自主規制していくのだという考え方であるならば、自主規制の実をあげるという具体的な問題についての誠意をソ連側に示さなければならぬのじゃないか、そういうことになると、やはり場合によっては減船措置も考える、こういうふうな考え方も具体的に検討して、ソ連側にことしの自主規制についての具体的な誠意あるプランを示して、規制区域の拡大ということについては避けるという方向でソ連側を納得せしめる、こういうことが必要ではないかと思いますが、いわゆる規制区域についての拡大のソ連側の予想される主張と、わが方があくまでも自主規制でいきたいという場合には、向こうに納得せしめるだけの誠意というものを過去の実績の反省の中から具体的に示す必要がある。それにはやはり場合によっては、減船措置というふうな問題も考えられる場合が出てくるのじゃないかと思います。それらの問題について、一つ大臣のお考えを聞きたい。
  60. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいま私は基本の方針を申し上げたのでございます。ソ連側がどういうことを考えておるかということを承らないうちは、わが方といたしましては基本方針を申し上げる程度でございまして、それから先のことはまずソ連側の考え方を一応承って、その上で双方合意の上であらゆる処置をお互いに自粛、規制して魚族の保護に当たるという方針でありまして、ただいまいろいろな角度からいろいろな点についてお述べになりましたが、それらについてここで私が申し上げる段階ではないと考えております。
  61. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あくまでも規制区域の拡大を避けて自主規制でいくのだという主張に立つ場合には、やはり過去の経緯等も見て、過去の自主規制が十分ならざる点については、具体的にことしはこういうふうにやるのだということを明らかにされていいのじゃないか、このことは国際関係の交渉の問題でありますけれども、何ら対外的にも差しつかえのない問題ではないか、この際そういう問題についてさらに御説明を願いたい。
  62. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は、ソ連側と十分話し合いました上で、最終的に自分の腹をきめて、わが方の流し網の業者もしくは母船の業者等と十分懇談し、納得の上で最善の処置をとるというつもりでございます。経緯から申しますれば、今朝出発いたしました諸君が、まず三月の中ごろまで網の規制その他についての事務的な打ち合せをおやりになる、その間において先方との間に話し合いをする、そして両者の事務的な話し合いの間に先方の考え等も承って、三月の二十日前後に高碕さんに向こうに行っていただく。高碕さんに行っていただくときまでには今申し上げた処置を大体きめ、またわが方の態度もきめるようにいたしたいと考えておるのでございまして、それまでは現状においては、先方の考えを承るという程度で適当ではないか。それ以上に進んであわてて処置をとる必要の段階にいまだ至っていない、私はこういう考えでおるわけであります。  ただ、この機会に農林委員の皆さんにも御納得をいただいておきたい点があるのであります。これは実は釈迦に説法かもしれませんが、従来往々にして制限区域内の流し網の漁業者に対して、零細漁民、零細漁民という言葉をお使われになっておるようでございます。また業者自身もそういうことをみずから言うております。しかしあれらの諸君が零細漁民なら、零細漁民というものは一体どういう人なのかと考えたくなる。たとえて申しますれば、母船と一緒に参ります独航船と、以南のいわゆる零細漁民といわれる流し網業者とでは、一体どちらの方が採算がいいんだ。たとえば独航船で制限区域内に出漁いたします船の数はおおむね四百そう、以南の流し網に従事しておりますもの四百そう、漁獲高はただいまお話になりました通り、以南の方が問題にならないほど多いわけであります。そうすると遠方まで出かけていってとった魚の数と、零細漁民といわれる人たちが近間で同じ隻数でとった魚の数と比べると、いわゆる区域外の方が問題にならなく多い。これは数字は明瞭でございます。ということであれば、いわゆる一零細漁民の諸君がいかにそろばんがよくいっておるか、非常に恵まれた漁業に従事しておられて、その漁業の内容たるや、たとえて申しますれば、こういうことを私が言うのは適当であるかどうか知りませんが、いわゆる権利というようなものになると、一トン当たりの権利金が世間でどの程度に言われておるかというようなこと等から見れば、零細漁民を圧迫するとかしないというような言葉は私は適当でないと思う。従ってこれら区域内の独航船、区域外のいわゆる流し網業者との立場をどういうふうに今後規制して参るかという場合につきましては、おのずからこれらの間にあって、公正な態度で自主規制願わなければならぬというふうに考えておるのでございまして、これについては一つ皆さんにおかれましても、どうか十分御検討をいただきたいと思うのでございます。
  63. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日ソ漁業交渉の問題については、やはりこれから相当期間かかる問題でありますから、今日の時点でいろいろな問題に触れてお伺いをいたしましても、具体的にお話のできない部面もある、こういうことは私も了解をいたします。ただ、日本側の立場としては、ことしは偶数年の不漁年ではあるけれども、できる限りやはり規制区域内においても、規制区域外においても、なるべくたくさんの量がとれるように、もちろん資源保護の立場がありますから十分それを配慮しなければなりませんけれども、その点について話し合う場合には、一方においてはやはりなるべく多くとれるようにというそういう努力も当然されるべきであると思います。最終的には決着をするわけですが、この日ソ漁業交渉は数次にわたって例年続いておりまして、河野大臣はせっかくソ連へも何回か行かれて親しい関係にあられるわけです。今の大臣の御答弁を聞いておりますと、技術的な問題が基礎にはなりますけれども、やはり双方の政治的な話し合いが相当な力を持つ、そういうふうな御答弁のように判断いたします。高碕さんもりっぱな代表として行かれるわけですけれども、場合によっては、やはり大臣も快くモスクワまで飛ばれて最終的な話し合いをする、こういうお気持でおられるのですか、いかがですか。
  64. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り、私が出かけるまでもなく、高碕さんがおいでになってお話し合いいただけば、りっぱな結論を得られると信じておるわけであります。
  65. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日ソ漁業交渉の問題については、これからの話し合いの問題でありますから、十分日本の立場を主張されまして、そして関係のそれぞれの団体、業者等にも了解がつく点までの最大限の成果を上げられるようにお願いしておきたいと思います。  次に、過般、水産庁長官が第五回のオットセイの国際会議に行かれたわけです。これも時間の関係がありますから、そう深くお伺いをしませんが、これは日本、カナダ、アメリカ、ソ連の四ヵ国の参加による会合ですけれども、この条約の関係は昭和三十八年に失効になるわけです。今度の会議では、具体的にどういうふうなことが話し合いの焦点であったのかということになりますれば、私ども、記事等で判断いたしますと、おそらく、オットセイの捕獲規制をどうするとか、あるいはオットセイの資源状態の調査と、本年度の規制捕獲量をどうするかというような問題が焦点であったろうかと思いますが、行ってこられた水産庁長官の方から、オットセイ会議の相談事項あるいはこの条約の失効等の問題に関連しての今後の取り扱いについて伺いたい。
  66. 伊東正義

    ○伊東政府委員 オットセイの会議でありますが、今後の段取りは、先生御承知のように、来年度にこの条約をどうするかという問題になります。実はあの条約にも書いてありますように、科学的見地に立ちまして技術者があの委員会に共同報告をするということに相なっております。それでこの秋、十一月二十六日からワシントンで二週間会議を開きまして、四カ国の科学者が書きました共同報告を、それに基づいて、一体関係四カ国にどういうふうな勧告をするのかということをやりまして、その上で、関係国がその勧告をもらいまして、三十八年度の当初にあの条約をどういうふうにするかという相談をしようじゃないかという今後の手順に相なっております。先生御承知のように、それまでは、カナダ、日本は海上猟獲は実はあの条約で認められておりません。調査としまして約千五百頭のものを海上で国が直接とるということをやっておりますが、それ以外は、アメリカがプリビロフ島でとりましたものを日本が一五%皮でもらうというふうなやり方をやっておりますので、条約改定までは海上猟獲の問題等はまだ解決しないということになっております。海上猟獲の問題は明治四十四年から日本はやっておりません、歴史的な事実がありますので、今後、秋の会議と来年の会議でどういうことを相談いたしますか、まだ基本的にはこうだということには相なっておりません。
  67. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ソ連の技術専用家会議の方に出席した漁政部長が、ソ連と話し合いをしたり、あるいはイギリスに渡って話し合いをしてきた記事等で承りますと、南氷洋の捕鯨の割当の問題で、イギリスの提唱で近く五カ国会議をやることに相なる、こういうことが言われておるわけであります。御承知の、南氷洋の捕鯨の割当については、一九五八年のロンドン会議以来やはりノルウエー、オランダの脱退問題があり、現実に南氷洋の捕鯨の問題は、今捕獲中でありますけれども、この問題とは別に従来の経緯から見て近く五ヵ国会議の開催の問題が出てくるのではないか、こういうような報道を聞いておるわけですが、大臣それはどうでございましょうか。
  68. 伊東正義

    ○伊東政府委員 大臣にかわりまして私から御答弁いたします。  実はカナダでもソ連のイシコフ漁業大臣に会いましてこの話をしたのでありますが、先生御承知のように、一九五八年に南氷洋で捕鯨をいたしております五カ国で協定をいたしたわけでございます。それはソ連が二〇%、その他四カ国で八〇%をとるというような趣旨になっておるのでございますが、これに基づきまして、その八〇をどういうふうに分けるかというようなことで、日本、ノルウエー、イギリス、オランダの間でなかなか話し合いがつきませんで、オランダは御承知のように条約から脱退いたしました。ノルウエーも話し合いがつかなければこの六月一ぱいで脱退するということになりますとあの捕鯨条約は非常に困ったことになりますので、実は昨年四カ国でいろいろ話し合いをしまして、八〇をどう分けるかにつきまして大体話し合いがついたわけでございます。それでオランダが条約にさえ入れば、ソ連も一九五八年にきめました二〇%の割当で、現在は不満だけれども仕方がないからのむというようなことで、オランダが一日も早く条約に入りますれば、その上でソ連を加えまして、四カ国で一九五八年にきめました割当でやっていこうというような話し合いになるのだろうと思いまして、目下イギリスその他を介しまして、オランダが一日も早く条約に入るようにというようなことをやっておるわけでございます。
  69. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 国際の漁業条約の関係で大臣にさらにもう一つ聞いておきたいと思いますが、御承知の日米加漁業条約の期限がやがてくる、こういうふうな関係にあるわけですが、私どもはこの日米加漁業条約というものは不平等条約であって、これはやはり改めていかなければならぬ問題である、こういうふうに思っておるわけですが、今後の日米加漁業条約の取り扱いというような点については、大臣いかがでございますか。
  70. 河野一郎

    ○河野国務大臣 従来の経緯がございますから、水産庁長官の方からお答えいたさせます。
  71. 伊東正義

    ○伊東政府委員 かわりましてお答えいたしますが、これも来年六月でこの条約をどうするかという問題が実は出てくるわけでございます。この秋に御承知の年次会議が開かれますが、その前に実は今カナダの提唱で、ことしの八月くらいにアメリカと将来のいろいろな問題について自由に話し合いをしようじゃないかというような提案がありまして、実は米加が賛成であれば日本側もそれに出ようというようなことをつい最近きめたことがございます。先生おっしゃいましたが、あの条約をどういうふうに判断するかということは、日ソの関係とかいろいろな関係がありまして、べーリング海の問題は軽々に判断すべきでない、非常に慎重にやらなければならぬ問題がございますので、目下のところ日本側としまして、あの条約のたとえば百七十五度の線をどうするとか、オヒョウをどうするとかいう問題を具体的に大臣と御相談するというような段階にはまだ至っておりません。
  72. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 河野農林大臣は国際感覚がだいぶあると思って、国際条約の関係を大臣に承りたいと思いましたが、水産庁の長官まかせでは大臣への質問になりませんので、国内問題に入ります。時間を十分にとってありませんので、いずれ漁業の関係の問題については法案も出て参りますからそういう機会にまたとくと承ることにして、きょうは数点についてお伺いをいたしたいと思います。  御承知の農業基本法の問題が論ぜられる、あるいは林業問題を論ずる、あるいは漁業制度の問題を初め漁業関係の問題を論ずる農林漁業基本問題調査会の答申が出ましてから、第一次産業農業、漁業、林業等の問題について論ずるというのは、やはり今日、申し上げるまでもなく、経済高度成長の中で非常に問題をはらんできておる。これらの問題については現状の状態ではいけない。何とかこれを打開していく方向を考えなければならぬという問題の中で、政府与党としても農業の問題について農業基本法を出す、あるいはわれわれの方でも党の立場において農業基本法ないしはそれに関連するものを出す、こういうことであろうかと思われるのであります。漁業のこれからの問題の発展を考える場合に、法の立て方として一体どうするかという問題が一つある。私どもは漁業の問題については、やはり沿岸から、沖合いから、遠洋まで、漁家漁業、中小漁業から資本漁業に至るまで、農業以上にはるかに階層間の段差の激しい日本の水産業、しかも漁獲高においては世界第一を誇っておるというけれども、漁業内部においては多くの問題を持っておる。そういう問題について、やはり農業基本法と対置した立場において漁業基本法として基本的な問題の位置づけをする、こういうことが考えられていいのではないか。私ども党といたしましても、漁業基本法の問題に今日真剣に取り組んでおるわけですけれども、やはり沿岸、沖合い、遠洋を含めての漁業基本法としてそれぞれの漁業についての位置づけをし、特に今日問題の多い沿岸漁業について沿岸漁業の振興をどうするかという法制的な整備をする、こういうことが私どもは望ましいのではないかというふうに思うわけであります。従来政府与党におかれましては、沿岸漁業振興という問題については、いわゆる農業基本法をちょっとかじった基本法的な性格のものを加えて沿岸漁業等振興法、こういう形でこれを出されようとする、何か水産庁の長官の記事に載っておるのを見ますれば、事業法的な基本法というような名づけをしておるのだけれども、作業をやっておる方では事業法的な基本法というのは具体的に河を織り込んだらいいのか、与党内でもいろいろ論争があるやに聞いております。この辺のところはやはり漁業基本法としてまずそれぞれの位置づけをし、その中で一番これから力を入れなければならぬ沿岸漁業振興法について法制的な整備をする、こういう方が非常に法制的にも立てやすいし、またグリーン・プラン、グリーン・レポートに対置した漁業全般についてのレポート、あるいはこれからのプランというものを考えた場合にも、単に沿岸漁業とか沖合いだけを考えるのではなしに、国際的な問題もあって、全体的な問題についてもやはりレポートというものをまとめ、またこれから講じなければならぬという問題を出していく。こういう漁業全体の問題を全体的な視野から考える、そういう意味からいっても漁業基本法というものが当然政府与党においても考えられていいのではないか。あまりむずかしく考えると、なかなかむずかしければ、ドイツ式の法三章というやり方ももちろんある。だから、私どもとしても、私どもの考え方でそれに対置して出しますけれども、法制的な仕組み方としてはそういうことを考えるべきじゃないか。そういう中で、今日漁業制度の問題でいわゆる漁業法の改正、あるいはまた水産業協同組合法の改正、こういうものがやはり総合的な観点の中でそれぞれの法制的な位置づけをして論議される、こういうことでないと、何か今日出てこようとしておるところの問題というものは片手落ちの論議になりはせぬかという感じがする。大臣にこの際伺いたいのは、今後の日本の水産政策をやる立場として、法制的な建前としてはそういう考え方がいかがであろうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  73. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御指摘のように、水産は沿岸漁業から資本漁業まで、しかもその対象とするものは海の中に泳いでおる魚でございますから、わかったようなわからぬようなものでございます。それを法制的に振興法、基本法というようなことで、一体どれでなければならぬということはどうも私はちょっと合点がいかない。私は従来通りに沿岸漁業振興法もしくは水産に関する今考えておりますような三法というようなことで足りるのではないか。その他のものにつきましては、七つの海に今日飛躍しております日本の漁業、これは国際情勢の変化によって対応して参らなければならぬ点もございましょうし、外交の推進によってさらにこれが積極的に進出できる場合もございましょうし、また外国の漁業がこの中に介在してくる場合もございましょうし、将来の非常な変化をわれわれ予想しなければならぬ漁業のあり方等を考えますときに、これをただ単に日本の国内に企画し形成をして参る農業との間には根本に違いがある。さればといって、沿岸漁業についてはどうか、沿岸漁業は御承知の通り今までのような全く野放しの、そして原始的な、そこに沿岸漁民の非常な困窮というようなものが、これから少なくともここに沿岸の増殖から始めて計画生産計画漁獲というところまでいけるようなものを持っていくべきではなかろうかというふうに考えますと、全然趣が違う。このただ一つの水産という名前をつけて、そこに基本法というものを、これに共通したものを打ち出していくというようなことは、それが一体どういう長所もある、どういう点においていいのかというような気持もいたします。私はむしろ、そういう拘束を受けるよりも、その起こってくる現象に対して十分慎重性のある施策を考えていくことの方が漁民全体の幸福ではなかろうか、こう考えておるわけでございます。これもだんだん時勢の変化、客観情勢の変化等によりましてはなおよく検討しなければならぬ場合も起こってくるでしょうが、当面は私はこの程度でよろしいと考えております。
  74. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私はむしろ今の漁業基本法の立て方の問題について大臣の答弁をすなおに聞かずに、沿岸から沖合い、遠洋等を含めての全体的な位置づけをするという場合には、今日の日本漁業の内部情勢というものを見ると、やはり資本漁業というものが沖合いからさらに沿岸にまでいろいろな形で伸びている。そういう中で一番先にしわ寄せを受けているのが沿岸漁業の今日の実情になっておる、こういう点がそういうレポートなりプランの中で明確にされるというようなことが問題になる。ことさらに、そういう点で一番底辺になっている沿岸漁業、あるいはそれに沖合いの中小漁業といったふうなところで一つ沿岸漁業等振興法でまとめて、資本漁業の問題は圏外にはずして考えよう、こういう感じが率直に言ってしないわけではない。しかし、この問題はこれからいずれ法案の出てくる場合にさらに論ずることにして、私どもとしては、法の立て方としては日本漁業の国際的な問題も含めての全体のレポートをまとめ、そうしてまた、それに対してそれぞれの位置づけをしたものに対するプランを出していく、こういうことで漁業内部におけるところの異常な格差というものをいかにしてチェックすべきものはチェックし、そして非常に悪条件にあるものを伸ばしていくという方途を考えるか、こういうことでなければならぬのじゃないかと思うのです。  この際、近く出ようとしております漁業法、水産業協同組合法の問題についても若干お伺いをしたいと思うわけでありますが、これは農林漁業基本問題調査会の答申なり、あるいは漁業制度調査会の答申等に基づいて、水産庁中心に第一次案あるいは第二次案というふうな形で進行しているわけでありますけれども、特に漁業法の問題については、これは従来からたとえばカツオ・マグロ漁船の大臣許可の問題、あるいはまた母船、独航船の取り扱いの問題、あるいは真珠の区画漁業権の取り扱いの問題等、いろいろと漁業制度の改革をやろうという法案の取りまとめの中では、それぞれの関係団体から意見が出ておるわけであります。過般私ども新聞紙上で拝見をしたところでは、農林大臣が全漁連の片柳会長と会われたときの新聞の談話を見ますと、今水産庁で漁業法、水協法についてはいろいろ事務当局としてやっておるけれども、まだ自分の意見は入れてないのだ、最終的に自分が断を下すのだ、こういうようなことが出ておるわけでありますが、漁業法、水協法等についてはすでに法制局の最終段階でありますが、まだ大臣の意見が入らざる事務的な段階で進んでおるのか、あるいはもう大臣の意見も織り込んで最終的な取りまとめの段階にきているのか、法案の現在の状況の取りまとめのことをお話し願いたいと思います。
  75. 河野一郎

    ○河野国務大臣 各方面の御意見のある問題につきましては、各方面の御意見を承って最終的にきめる問題も残っておるものがあります。また、大体各方面の御了承を得ておるものについては、法制局の審議を願っておるものもあります。従いまして今これをどっちにどうだという御答弁を申し上げる段階には至っておりません。
  76. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業法の改正の問題を考える場合には、やはり漁業法の問題を考える基本的な立場と基本的な方針がはっきりあるだろうと思う。われわれは、漁業法の問題を考える場合には、大臣許可漁業にしても、知事許可の漁業にしても、あるいは漁業権の漁業にいたしましても、やはりそれら全体を包んで沿岸あるいは沖合いの漁場は関係漁民のためにこれを確保し、外部の関係からの独占集中というふうな方向についてはこれを排除するということを基本的立場にしながら、漁業法の法制化を考えるべきじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、これは政府、自民党の場合であれ、あるいは私どもが将来政権を担当して社会党がやる場合であれ、改革という問題はなかなかむずかしい障害にぶつかるわけであります。漁業法の問題を考える場合に、過去の漁業制度の中で清算すべき問題についてはやはりはっきり断を下して、勇敢に進むことが必要であろう、あるいは政治は現実から進むわけでありまするから、現実の調和として取り扱うべき問題についてはどう調和させるか、こういう取り扱いでいかざるを得ない二つの問題があろうと私は思う。漁業法の問題で清算ないし是正をしていかなければならぬ将来の問題として、許可の権利化などの問題があります。今日いろいろカツオ、マグロの問題以外の母船、独航船の問題や、あるいは真珠区画漁業権の問題はどう調和させるかというふうな性格でやはり判断をすべき問題ではないのかという感じが率直にいたすわけでありますが、大臣の漁業法改正に対する基本的な考え方というのは、一体どういうところに置いて最後の断を下されるわけですか。
  77. 河野一郎

    ○河野国務大臣 長年の経緯もございますし、また各種の事情もあるのでございますから、一つの方向を定めてその方向によって断下すというわけにはいかなかろう。そこで、審議会等の御意見も十分あるわけでございますから、これらの意見基盤にいたしまして、そうしてその後関係業界からのいろいろな御要請等も十分考慮いたしまして、各方面なるべく摩擦の少ない、御納得のいく方向で断を下すべきであろうと考えております。
  78. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 水産業協同組合法の改正を今日考えておるわけですけれども、先ほども農林大臣と山田委員との応答の中で農業団体の問題に触れられたわけですが、これは漁業法の改正の問題とも関連しますけれども、一体、これから経済圏の拡大あるいは国際的な貿易の自由化の影響等も前提に置いて考える場合に、漁業協同組合の今後の発展方向をどういうふうに価値判断をし、どういうふうに持っていこうというのか。これはやはり沿岸漁業を中心にした問題を考える場合に非常に重要な問題だと思う。地先漁業の問題、漁業権に結びついた部落単位の漁業協同組合として今日数多くの漁業協同組合が現存しておる、これは今後の発展方向としてどういうふうに持っていこうという意欲を持っているのか。これはいかがですか。
  79. 河野一郎

    ○河野国務大臣 あまりとっぴなことを申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、沿岸漁業、沿岸と言うけれども、沿岸漁業という言葉は一体日本以外にあるでしょうか。私はそこにわれわれがもう一ぺん考えなければならぬ点があるのじゃなかろうかと思う。沿岸漁業、沿岸漁業といって、沿岸漁業でこれだけ文化が進歩してきたのに、新しい漁獲方法を取り入れたらば、すぐ魚がなくなってしまう。上げようといっても上げる限界がなくなっておる。地先漁業、地先漁業とおっしゃいますけれども、地先漁業も大体程度はわかっておる。そこで所得がどのくらいふえてくるかといったところで、おのずから限界がわかっておる。私は略奪漁業の限界がきておるのじゃなかろうかと思うのです。そこに沿岸漁業、沿岸漁業といっても、振興の限度がある。従ってこれを漁業ということで他の養蚕とか畜産とかいうものと分けて、漁業というものの特異性をここに一つはっきり区画されるから、そこに無理が起こってくる、そういう事態がそろそろくるのじゃなかろうかという気持も実はするのでございます。従って今までのように地先漁業といっても、漁業権のある地先漁業は非常によろしい、漁業権のない地先漁業というのは、地先だけでもってやっておるのは一体どうなるか、しかもそれが、私はあまり専門じゃございませんけれども、おのずから定置にしても距離がなければ張るわけにいきません。定置の権利のある部落、その中間にある部落、こういう不合理なものが一体このままでいいかという点にも、私は議論すれば議論の余地があるだろうと思います。従ってこれらのものはなるべく大きくして、共同でいかなければならぬことはわかっております。従ってなるべく大きくして、大きい中に今までのとらわれた沿岸漁業という考え方でなしに、そこには他の農業も取り入れて、そうしていくべきじゃなかろうか。しいて申せば、農業に兼業農家があるように、水産にも兼業漁業家が当然生まれてしかるべきである。その兼業が一体畜産であるか、養蚕であるか、果樹園芸であるか、当然そういうものが現に入っておるわけであります。ミカン山をたくさん持っておる者が、一人も海には出ていないけれども、そこの部落におるから、そこの協同組合の組合員として地先漁業の漁業権の分け前に加わっておるといったようなことを主張する場合がもしあるとすれば、これは私はおかしなことだと思います。従ってこれらについてはよほど今までの観念にとらわれないで、しかもつきいそあたりで非常に有利なものが受けられるというような地勢に恵まれておるところであれば、これはまたおのずから別であります。日本の沿岸といいましても、非常に地先漁業に恵まれておる沿岸もあれば、そうでないところもある。現に先日も北海道の知事にお会いしましたところが、船を作ってやっても船の乗り手がないという漁村も北海道にある、そういうようなことに相なっておるのが今日の現状じゃなかろうかと思うのであります。ちょうど農村の青年が都会へどんどん出ていくと同様に、沿岸であるけれども船に乗らないというような現実の変化も相当にあるというこれらの事実をしさいに検討しつつやって参るということが必要じゃなかろうか、そういう方向にきつつあるのじゃなかろうかというような気持もいたしますので、せっかく慎重に検討していきたいと私は考えております。
  80. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の大臣の答弁は非常に多くの問題を含んでおりまして、私としてはこれはいずれまた沿岸漁業等振興法が出てくるのだから、その機会に十分論議しなければならぬ大へん問題の多い発言を含んでおると思います。すでに約束の時間もほとんど切れておるわけですが、きょうはたくさんのお尋ねをする用意をしておりましたけれども、漁業協同組合の今後の発展方向の問題についても、必ずしも明確な答弁を聞くことができませんでした。答申によりますと、近代的な漁村と、何か夢のようなプランを書いておられる。その中では中核漁港というようなこと、漁業経済圏の拡大、さらにまた、いわゆる僻地にある漁村等も産業道路としてのそういうものでつないでいくのだ、そして漁業経済圏というものをもっとやはり充実をしていくのだ、こういうふうなことが書かれておるわけですが、ここでやはり問題になるのは、一つは漁港の問題であります。第一次、第二次整備計画というものが進行して参りまして、そして新しく第三次計画にかからなければならぬという時期にきているわけです。これは、まあ港湾の場合でもそうでありますし、漁港の場合でもそうでありまするけれども、漁業生産のいわば出発地点、基地ともいうべき漁港の問題について、従来の実績というようなものは必ずしも所期の目的通りには出てきておりませんが、これから新しく立てる漁港整備の構想と、第三次整備計画にもかかろうという段階ですから、どういう構想でこれからいわゆる新しい漁村の漁業基地としての形成をやっていこうとするのか、その辺のところについて一つお伺いしたいと思います。
  81. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまも申し上げました通りに、これからの漁業につきましてはよほど慎重に検討を要する問題だと思います。遠洋漁業、これはある程度安定しております。沖合い漁業につきましても、私はある程度のものはできておるといえると思います。さらに沿岸漁業を中心にした漁港、それらの三種類の漁業の基盤ともなるべき漁港の形成につきましては、よほど慎重に検討した上できめるべきものだと考えております。
  82. 伊東正義

    ○伊東政府委員 大臣もお述べになりましたが、中核漁港というような考え方は、現在ありますどこへ行っても小さい漁港がたくさんあるという形から、もう少し重点的なものの考え方をしたらどうかというような、あれは答申でございます。私どもあの答申を受けまして、しかしそうかといいましても、これをどうするかという問題がございますが、第三次整備計画では、将来の漁港の整備と漁業の発展とあわせましてその辺のことは重点的にやるというような考えで計画を作る必要があるのじゃなかろうかというふうに思います。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 価格流通政策の問題もお伺いするつもりでございましたが、それでは時間を相当とりますからそれはやめまして、最後に簡単な問題を一点。  今後やはり重要な問題と思いますが、第一次産業における林業の関係の労働者の問題、あるいは漁業の関係における漁業労働者の問題、こういうような問題は、これからの第二次、第三次産業との関連においては、もっと近代的な感覚というもので考えなければならぬ。これは労働問題というのはもう労働省だという考え方ではなくて、やはり農業政策として、漁業政策として近代的な労働感覚、労働慣行というような問題について、直接水産庁、林野庁というものが真剣にこの問題に取り組んでいくという姿勢が必要な段階ではないかと思うのであります。率直にそう思うのです。これは大臣は、何か沿岸漁業はちょっと捨てたような感じの答弁のように受け取れたわけですが、それはやはり厳然として伸ばしていくものは伸びなければいかぬと思いますが、そういう労働問題に対する農林省の従来の姿勢というものを変えて、農業政策の重要な一環として、あるいは水産政策の重要な一環としてこれに取り組んでいく、こういうことが必要な段階にきている。また、いわゆる近代的な産業と同じような条件に社会保障の問題やその他のいろいろな問題を近づけていく、こういう状態で物事を考えていかなければならぬのじゃないかと思うのですが、大臣いかでですか。
  84. 河野一郎

    ○河野国務大臣 よく勉強いたします。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますから以上で終わります。
  86. 野原正勝

  87. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、時間がありませんので、二点だけお尋ねしたいと思います。実は私、昨日予算分科会におきまして質問したのでありますけれども、大臣おられなかったので、政府委員より答弁を受けております。しかしこれは非常に問題が大きゅうございますので、大臣からその策弁を得たいと思いまして、重複いたしますけれども、二点だけお尋ねをしたい。  その一点は、今回の三十七年度の予算を見ますと、農業基本法に対する農業構造改善という問題には政府も相当に重点を置いておられることは十分承知いたしております。そもそも農業基法でいう農業構造の改善ということは、元来、日本の農業の特質であります零細経営であるとか、あるいは零細土地所有を打破して、経営規模拡大して経営近代化をはかり、農業構造の改善に資したいということに大きなねらいがあるとわれわれは解釈しているわけなんです。ところが今回の三十七年度の予算を見ますと、この構造改善対策事業といたしましては、十カ年にわたり三千百市町村を対象とする、要するに主産地形成を非常に大きく取り上げられているようにわれわれ見るわけであります。農業基本法のほんとうの目的といたします経営規模拡大とか、こういう問題がいつすりかえられたのであるか、こういう感じをわれわれは深くするのでございますが、この点大臣としてどういうような御方針であるのか、この経営規模拡大というものに対しては将来どういう考えを持たれておるのか、この点一つこの機会に承っておきたいと思うのであります。
  88. 河野一郎

    ○河野国務大臣 経営規模拡大は基本的なものであって、これは終始可能な範囲において続けて参る考えでございます。決してこれをすりかえたわけではございません。これはそういうわけで常に熱意に燃えているのでございますけれども、と申してこれができるまではほかのものはやらぬというわけには参りません。従ってこれを進めつつ、可能な範囲において、今お話しになりましたように主産地の形成もいたしますれば、成長農業の取り入れもし、経営の構造の改善もやるというわけで、おくれておりますからいろいろなものを一ぺんにやらぬと間に合いませんので、なるべく一ぺんにいろいろなものに手をつけていく、こういうわけでございます。
  89. 稲富稜人

    ○稲富委員 主産地形成を悪いと言うのじゃありませんよ。しかし根幹をほうっておいて——これは将来やるのだとおっしゃるかもわかりませんけれども、第一年度ではございますし、政府経営規模拡大等に対して手を染めるのだくらいのにおわせは、これを実行する上において必要ではないかと考えます。だから私はここに主産地形成の問題に対していやみを言うわけじゃございませんが、あなたがこの前の大臣のときにおやりになった新農村建設事業とよく似たようなものなので、今度はそういうことにならぬと思いますけれども、有線放送とかそういうことにならないようにわれわれは期待するだけに、この問題を特に憂えておるわけなんです。  さらに、これに関連して、私が経営規模拡大等が一つもうたわれていないと言う点の一つは、農業基本法の十六条に、経営規模の問題から相続の問題をうたっております。要するに十六条は、「国は、自立経営たる又はこれになろうとする家族農業経営等が細分化することを防止するため、遺産の相続にあたって従前の農業経営をなるべく共同相続人の一人が引き継いで担当することができるように必要な施策を講ずるものとする。」ということを条文にうたっております。これに対してどういう手を打とうとしておられるのか。これは現実に目の前に迫った問題がたくさんあるわけです。それで、一面には主産地形成をやられる、こういう中で土地の細分化が行なわれるということは、農業基本法趣旨からいって非常に好ましからざる結果になってくると思うのでございますが、こういう問題も放任されているようでございます。構造改善の問題に対してわれわれが憂えるゆえんもそこにあるわけでございます。この点も含めて、一つ政府の考え方をお示し願いたいと思うのであります。
  90. 河野一郎

    ○河野国務大臣 われわれといたしましては、構造改善よりも経営規模拡大するために、御承知の通り先々国会からこれに必要な法案国会提出いたしておるわけであります。ところが、残念なことにこれが継続審議、継続審議ということになりまして、いまだに御審議をちょうだいできないことになっております。これが国会を通過して成立いたしますと、これを基盤にして、経営規模拡大方向がこれによって明瞭になってくるわけでございますから、決してほうってあるわけでもなく、どこにも見当たらぬわけじゃなくて、あなた方の机の上に書類は差し上げてありますので、どうかその点は一つお見落としなく願いたいと思うのでございます。  今の相続の問題でございますが、これも重大な問題でございますが、なかなかむずかしい問題であります。従って政府といたしましては、これについては明年度におきまして調査費をつけまして、まず十分に調査をして、その上でいかなる施策を講じたらよろしいかということに踏み切るというわけで、調査費をお願いいたしておるのが現在の状態でございます。
  91. 稲富稜人

    ○稲富委員 構造改善の問題はいかにもこちらに責任を転嫁するような大臣の答弁ですが、これは実にわれわれ心外でございまして、あなたの方でやろうという意思があるなら、法律は、すみやかに御可決あらんことをお願いしますとあなたが言っておるから、われわれはすみやかに御可決しようと思っておりますので、あなたの方はこれと並行して、どしどし具体的な構造改善に対するそういう問題をお示しになったらいいと思う。しかも当然グリーン・プランの中には入るべきだと私は思う。私がこういうことを言うのは、うたってないというのは、ちょうど農業基本法を作るというのは、やれ二町以上にするのだとか、総理大臣のああいう言葉があって、選挙のときには、自民党が首切りを策するのだとか、そういうような問題が出たので、何だかお控えになって、もう実際の問題には触れぬでおこうというようなことでほうかぶりされているのじゃなかろうか、こういうような懸念さえあるわけなのです。この点を、やるならやるのだ、やらないならやらないのだ、こういうことをはっきりお示しになることがこの農業基本法を行なう上に忠実なるゆえんである、かように考えます。  なお相続の問題は今後これを検討するのだというが、もう法律実施されているのです。しかもきのうの答弁でも、これは民法等の関係があるとか、いろいろな問題があるとかいうけれども、そういう問題は法律にこの条文を入れる場合にすでに検討して条文の中に入れてあるはずです。これが通過した後に、この条文は今から研究するのだということでは、農業基本法を通すときにあまりに無責任じゃなかったかと私は思う。これは現にひしひしと追っておる問題なんです。これに対してはどういう特例法をもって処するとか、あるいはこういう実際の問題が起こったときには、これに対しては融資等何か金融の措置を講じてやるとか、こういう措置を当然考えなければいけない問題だと私たちは思うのです。これを放任しているということは、すでに実施する時期にあたって政府は非常に怠慢である、こう言われても仕方がない。こういう意味からお聞きしているので、こういう農業基本法実施するにあたっては、これに対する具体的な問題を直ちに実行に移すという方策を立てる、こういう施策を立てるということが法の実行に対する忠実なゆえんである、こういうことを考えます意味から、特にこの点は要望して大臣の意見を聞いておるわけでございます。その点よろしく大臣の考え方を、直ちにそういうことに移すかどうか、今から考えるということではあなたらしくないと思う。
  92. 河野一郎

    ○河野国務大臣 やるのはもう簡単で、すぐやります。ただしやる前によほど準備いたしませんとまたしくじりますから、そこで調査を十分にしてやる。だんだんどうも農業基本法でお小言をちょうだいするのですが、私は少しは同情してもらいたい。といいますのは、何分日本の農業現状にかんがみて、少しずつでも手をつけなければいかぬ問題が差し迫っておるという意味から、全部が間に合わなければやってはいかぬというようなことでなしに、できるところからやっていくのだという意味で、まずやる場合にはこの建前でいくということで出したのが農業基本法であります。だからそれについてあれもこれも準備ができてからやるのだったらこれはできていくものではない。できているものもあるができていないものもある。できていないものをあとから追っかけてやる。それだからお前間違っておるという議論でなしに、御注意がありましたらどんどん御注意をいただきまして、そうして農村のために万全を期して、りっぱな農村を作ることに御協力をいただくということをお願いしておるのでありまして、決してこれは農林省とか河野一郎が一人でできることではないのでありますから、一つあらゆる角度から御注意をいただきまして、いただきましたらこれはけんけん服膺してやるようにいたしますから、どうか一つ親切に御注意をいただきますことをお願い申し上げます。
  93. 稲富稜人

    ○稲富委員 文句を言っているのじゃないのです。なぜ実行しないか、こう言っているのです。それで、今のような問題は当然実行しなくちゃいけない問題なんです。当然実行しなくちゃいけない問題を放任されておるから、こういう問題をなぜおやりにならないかということを言っておるのであって、これはわれわれ大いに協力するから審議をしておるわけです。それで、あなたの方がこういう方法で、実行する、計画を立てているのだ、こうおっしゃるなら納得できるけれども、今から考えなければいけないと言われるから、不忠実ではないか、こういうわけです。一つあなたの実行力にまかして、どしどし実行していただきたい、こういう意味でわれわれは言っておるのであります。
  94. 河野一郎

    ○河野国務大臣 よくわかりましたから、おっしゃる通りにやりたいと思います。
  95. 野原正勝

    野原委員長 次会は来たる二十七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会