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1962-02-15 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十五日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君       安倍晋太郎君    稻葉  修君       大野 市郎君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    草野一郎平君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邉 國男君    中山 榮一君       福永 一臣君    藤田 義光君       本名  武君    松浦 東介君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    安井 吉典君       山田 長治君    湯山  勇君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     桧垣徳太郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長) 庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         農林事務官         (蚕糸局長)  立川 宗保君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁次長   村田 豊三君     ――――――――――――― 二月十五日  委員飯塚定輔辞任につき、その補欠として亀  岡高夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君辞任につき、その補欠として飯  塚定輔君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十四日  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第九三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 私は、今度の年次報告やあるいはまた新年度施策に関する問題につきまして、農林大臣お尋ねをしたいわけでありますが、特に国際経済日本農業との関連の問題、あるいはまた就業構造の問題、それから構造対策あるいは価格対策、さらに時間があれば水産政策等にも触れたいと思うのでありますが、まず前提的に、発表されました年次報告から受ける一般的な印象について初めに申し上げて、大臣のお考えをお聞きしたいのであります。  今度の年次報告の中では、経済高度成長に対応しつつ日本農業は高い成長を示し、農民生活水準もかなり上昇はした、しかし他産業との生産性開差はかえって拡大し、生活水準差も同様に拡大している、兼業依存度は深まり、農村内部の貧富の差も広がっている、耕地零細性資本不足等農業近代化をはばんでいる、こういうような情勢の分析がございます。これを通読して感じますことは、これらの日本農業の新しい変化は、農業とかあるいはまた農政内部の要因に基づくところが大きいと思うのでありますが、しかしそれだけではなしに、広く今日の池田内閣経済政策そのものに根を置くものであるというふうな気がするわけです。大へん激しい高度成長の中で、農産物の需要がふえて、農家の手取りもふえるし、兼業収入も増すわけであります。そしてまた問題になっていた過剰労力の吸収にも役立っていることは確かです。しかし無計画で不均衡な成長のゆえに、逆に農業と他産業との格差が開いて、農業の体質の中にも以前から多くの問題があったわけでありますが、その欠点や矛盾を一そう増大したという姿であります。今の高度成長政策で、実際二重構造是正というようなものははっきりと可能ではないわけであります。こういう広く経済政策の基本的なあり方に問題があると思うわけです。大臣はきのうの御答弁の中で、むちゃくちゃに伸びる製造業農業との所得開差を縮小するようなことはできるものじゃないというようなことをおっしゃいました。これが池田総理大臣なら、さしずめ農民は民族の苗しろであるというようなことを言って済ますわけでありましょうが、その点河野農林大臣はさすがに率直で、大へん好感を持てるわけであります。実際農業はもう今は苗しろどころじゃなしに、他産業草刈り場みたいな形である、そういうような印象があるわけであります。つまり私はそういうふうな産業全体の構造改善が並行しないで、農業だけをどうしようこうしようといっても、実際は何もできないと思うわけであります。今度の政府のこの年次報告に、そういう最も重要な基本的な点に対する突っ込みが足りないというふうな気がするわけでありますが、この点大臣のお考えを伺いたいと思います。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り年次報告は正直にある姿をありのままに報告しておるのでございまして、それに主観を加えることは正しくないと思いますので、そういう報告書が適当じゃないかと私は考えております。
  5. 安井吉典

    安井委員 そういう意味におきまして年次報告という価値はあると思うわけです。ところがその年次報告を受けて立った農業施策の方、一般期待は従ってそこへいくわけでありますが、これの方は、この間も足鹿さんが本会議の質問で、中身は、従来やってきた農林省を初め各省の農村向け施策をただ並べただけじゃないかというふうな言い方をされたわけでありますが、その報告と相呼応する形で施策がぴったりと出てくる、そういうような形にどうもなっていないような気がするわけであります。政府自身でもいろいろ施策の誤りもあったと思うのですが、そういうような自己批判というようなものも見当たりませんし、どうも選択的拡大に乗りおくれた農民だけが悪いというような、そういうふうな印象すら受けるわけであります。特に経営政策あるいはまた価格対策といったような点に弱点があるというふうな気がするわけでありまして、そういうような点を私はこれからお尋ねを進めて参りたいと思いますが、その前に、これまでの質疑の中で、大臣の御答弁で明らかにされていない点一、二をお尋ねいたしたいと思います。  大臣は、新年度施策によって所得格差是正ができるかどうかという点に対して、農業はほかのものと違い、だんだん効果を現わしていくのだ、農基法ができたからといってまだ半年ぐらいしかたたないので、性急な注文を出しても困るではないかというふうな御答弁がありました。しかしあまり効果を現わすことのできないような施策だということであっては、そしてそれに財政資金が投ぜられるのであっては、農民はもとより納税者一般はこれは納得をしないと思うわけです。それはもちろん大臣の御答弁にはもっともな点はありますけれども農基法施策国会報告農林大臣に要求したというその精神からいいましても、いわゆる構造改善なら構造改善事業でけっこうでありますが、それによってどれだけ開差を縮小することができるか、これはもう今すぐにどうこうは言えないにしても、先々はこうなるのだという長期の展望、それへの道筋というものがやはり明らかにされなくては意味がないと思うわけですが、その点いかがですか。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 申し上げるまでもないことと思いますけれども、御承知通り農業施策といたしましては、従来やって参りました保護政策は、これはある程度続けていかなければなりません。一方においてそういう宿命を持っております。その保護政策を続けつつ、その間に新たに将来の農政を志して所得格差を縮めて参るということもあわせてやって参るということが、仕事の性質から非常に困難性がある、同時にその施策をいたすにいたしましても、たとえば果樹園芸にいたしましても、どんなにいたしましても三年や五年は準備にかかります。酪農をやるにいたしましても、牛を飼えばすぐに乳が出るものじゃないと思うのでありまして、相当技術を修得いたしまして、そうしてほんとうの一人前の新しい経営ができるというまでには、ある程度の年月を必要といたしますることは申すまでもございません。従いましてわれわれといたしましてはここに三年なり五年なり少なくとも年月をかけて、そうしてそこに安定した農業経営構造していくことが一番大事じゃないか。性急にいたしまして、そうしてあやまちを重ねるというようなことでは、農業に対して致命的な悪影響を来たすことになりますから、よほど慎重にすべての施策をやって参る必要があろう。ところが御承知通りに、これらについて、今価格政策一つ実行いたすにいたしましても、従来基盤とすべきいろいろな統計一つ考えてみましてもなかなかよるべきものが見当たらない。これを一つきめるにいたしましても、なかなか万人の納得するものは得にくいというようなことになりますので、全面的に各施策を発動いたしまして、そうしてその中から準備のできたものを取り上げてやって参る。その中にまた、計画としてはすべてにわたって青写真を書くという行き方がいいのではないかと考えまして、一方には全農村にわたって構造改善を提唱しつつ、その間に成長農産物準備を進めて参る。そうして一方におきましては、経営規模拡大もあわせて意図して、農地造成等もやって参るということにしていかなければならぬのでございまして、部分的に一つ一つ見ますると、どれもこれも非常に未熟なように見えますけれども、私はある年限をかけて、総体的に総合的に目的の達成に順次意欲を持っていくべきだと考えておるのでございまして、今御指摘のように、一つ一つ指摘いただきますと、みなばらばらでいつどうなるかわからぬじゃないかというような御非難をちょうだいすることになると思うのでございますが、その辺のところは一つしかるべく御了承いただきたいと思うのでございます。
  7. 安井吉典

    安井委員 農業施策も慎重でなければならないとおっしゃる大臣の御答弁も大へん慎重で、実際具体的に、の農村がどういう姿になるのだということ、農業がどういう姿になるのだということの御提示がやはりないと困ると思うわけです。つまり今おっしゃったことでは、これもやっている、あれもやっている、そうして総合的な効果を上げようとしているんだ、それは必ず上がるんだから見ておれ、そういうことであろうと思うのでありますが、それはずいぶんお力を持っておられる大臣のことですから、りっぱに改善が行なわれ、前進がなされるということはもちろん期待はできますけれども、それだけではやはり農民はついてこないと思うわけです。だから、ついてこいという、だから農村は前進するのだという力強さがほしかった、そういうふうな気がするわけです。なお具体的な問題についてはあとから触れていきますが、ただそれに関連いたしまして、所得倍増だといったような幻想を農村に振りまかれた。これはだいぶ日がたっているわけでありますが、それじゃその見通しという問題に関連いたしまして、農業部門の中で十カ年で所得倍増という形が実現できると大臣はお考えでしょうか。その点一つ伺いたい。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 むろん今の国際情勢の中において、日本経済発展と相関連して農業を同時にひとしく成長させることはなかなか困難でございますけれども、今日の情勢からもってして、私は、十カ年に所得が倍になるということはそう大して困難じゃないと考えております。
  9. 安井吉典

    安井委員 そうすると、そのおっしゃるのは農業だけの所得倍増ですね。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 どう申し上げたらよろしいか知りませんが、十年後の農村の実態がどういうふうなことになるかということが第一問題だと思います。これからの十年先の世界をどういうふうに想像するか、日本産業がどういうふうな姿でこの中に溶け込んでいくか、しかして農村が、今一部でいわれておりますように、現在の農村人口がどの程度に他産業に転向いたしまして、そこにどういうものが必然的に残って参るかということ等についての見通し計算等が非常に困難かと思うのでございますけれども、そういう架空なことでなしに、私が現実に今心がけておりますところのものは、農業に対して相当資本力を導入いたしまして、そうして一方には経営拡大した農業、一方には兼業農家、さらにまた一方には集約的な経営農家等を、それぞれ実情に即してそこにある姿を想像して考えた場合に、私は所得倍増計画することはさほどに困難ではないというふうに考えております。
  11. 安井吉典

    安井委員 池田内閣所得倍増に対する計画青写真と今の大臣の御答弁とだいぶ違うような気がするわけであります。つまり国民所得倍増と、農業だけが倍になるということでは、これはだいぶ意味が違うわけでありますが、そういう論議をやっていても前に進みませんので、その点政府部内でも御意見がだいぶ違っているように思いますから、お話し合いを願いたいと思うわけであります。  次に国際経済日本農業との関連の問題で、この間EECのいわゆる第二段階移行の問題がきまりまして、そういうような問題に関連いたしまして、いち早く農林大臣が御見解を発表されております。やはり経済方向は、狭いワクの中じゃなしに、広い国際的な観点から考えなくちゃいけないという、進んだ御見解方向には放念を表するわけでありますが、今まで私どもEECあり方関心は持っておりましたけれども、確かに今日までの発展というものは、実に目ざましいものですから、シックスかセブンかというようなことで、一方の側に閉じこもっていたEFTAのリーダーである英国までが入ろうということを言うし、あるいはまたアメリカも今度は接近策をはかっている。こういう段階で、日本政府も、特に財界の方もこの問題について急速に関心が高まっているという段階であろうと思います。もっとも、この西欧の統合経済の中に英国も加わり、そうしてアメリカまで加わるといたしますと、西側の陣営の貿易の約九〇%が含まれるわけですから、これはもう決して無視される問題でないと思います。そこでこれに関連いたしまして、貿易自由化とか関税の引き下げを一そう促進しなくてはいけないという見解も出てきているわけです。そういうような場合に、国内産業部門で最も弱い部門を担当しておられる農林大臣のお考え一つ伺いたいと思います。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 実は私もEEC発展過程に深く留意をいたしまして、しばしばアメリカ当局ともこの問題について懇談をいたしておるわけでございますが、ついに最近アメリカの態度は、ただいまお示しになりましたような傾向に参っておるわけであります。この進展が将来日本産業にどういう影響を及ぼしてくるか、またこの流れを日本産業がどういうふうに受け入れていくかということが、将来の日本の運命を決することになりかねない場合を私は想像しなければいかぬと思うのでございます。ところが、そういう事態に立ち至りましたときに、この自由国家群内部におけるものの動き、それを日本経済がどういうふうに受け入れ、取り入れていくかということは非常に大きな問題でございます。国内日本農業という非常に弱い面を持ちまするがゆえに、これを拒否してわが日本経済は立てるかといいますと、なかなか困難だと私は思うのでございます。といって、無条件にこれを受け入れるということも日本農業のためにとうてい忍べることではないというような場面が、何だか遠からざる時代に直面するような不安に私はかられておるものでございます。従って、想定できるそういう事態を想像して、一日もすみやかに、その事態影響をなるべく少なくして、日本農業がこれを受け入れることのできるような体制を整備するということが、最近わが日本農業に課せられたる一つの大きな命題であろう。ところがこのことたるや、ひとり農村関係者だけでよくできる道ではないと私は思うのでございまして、つとにこれに対する関心を各方面に私は強く要求をいたし、そうして国民全体の問題として日本農業対応策を御検討いただきたい。またこれについて御協力願いたいということを主張いたしておるものでございます。私深く研究をいたしておりませんけれども、ときどき想定いたしてみましても、私は今の農林予算の少なくとも倍、三倍の金を長期にわたって日本農業に導入して、そうして完全に日本農業に大きな資本を加え、土地と資本と合わせた上に日本農業を築き上げていく。しかもその中には優秀な技術を導入して、少なくとも後進国農業との間に前進した日本農業が想定されるということを早く作り上げるのでなければ、この事態に対応できぬのじゃなかろうかというふうに考えて、せっかく努力をいたしておるのでございますが、まだ、何分にも事態についての大方の御認識にもいろいろ区別がありますし、等差がございます。また一がいに、われわれが不安を持っております点についての御理解と御協力も願いにくい場面もありますので、どうか一つ、ただいまの御主張、ただいまの御意見につきましては、社会党さんの方でもできるだけ御理解と御協力を賜わりまして、ともども一つそのときに備えていかなければならないのではなかろうか、こう考えております。
  13. 安井吉典

    安井委員 今日までEECの中でも、内部的な、つまり域内における農政の問題の調整にずいぶん手間取って、去年の春などはフランスでも農民暴動が起きて、鉄道が破壊されたり電線が切られたり、大へんな騒ぎもあったわけですが、そういうふうな事態を乗り越えて、今度は農業基金というような形で共通農業市場の設立というところまで彼らはいったようであります。しかし日本農業国際農業に対する弱さというようなものは、このような事態が起きようと起きまいと、従前から予想されていたことであります。そういうような大勢を頭に置いてわれわれは施策をとってきつつあったと思うのでありますが、河野さんは、これは十八日の記者会見ですか、その中で、今おっしゃったような言い方で、世界農業との関連農政を国全体で考え直すべき事態だ、生産性の高い資本農業へ移行すべきだとか、あるいはまた調査会も設立して新しい農政のための対策に充てなくてはいけないとか、そういうふうな御発言がございましたが、その点はどういうふうに今お考えですか。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 もし私の受け取りようが間違っておったら訂正いたしますが、今までわれわれが想定いたしておりましたものは、少なくとも自由貿易に対処してわが日本農業はどうあるべきかという受け取りようだったと思うのであります。ところが貿易自由化という中には、御承知通り農産物に関しては、おそらく大かたの国がその国の農業特殊性を考慮して、そしてある程度のワク外に置くことを通念にいたしておったと私は思うのでございます。でございますから、日本農業の脆弱な面、すなわち米麦を初めとして、酪農製品というようなものにつきましては、耕地の狭いこと、収益の少・ないというようなことから、特殊の価格を想定して、そして農業経済の安定をはかることを肯定してわれわれは行政を将来に計画することが妥当だったと思うのであります。ところが、先ほど来お話のありますEEC発展からいたしまして、関税の障壁が全面的に引き下げられる。そしてそこには農業特殊性がある程度――全然なくなるということはともかくといたしまして、非常に共通性を持っていかなければならぬことになってくるというような事態にまで発展することがもしあるとするならば、今の日本農業は非常に大きな変革をせざるを得ぬような事態に追い込まれる危険があるということについては、少なくとも私はEEC発展から起こってきた全く新しい事態である、こう思うのであります。従って今一部論議になっておりますアジア共同体というようなものにつきましても、あらかじめアジア共同体の場合においては、そこまではいかないのだという前提に各国とも立っておるようであります。でございますから、その段階はよろしい。ところが欧州共同体にいたしましても、出発の当初におきましては、これは別だ、あれは別だということで、お互いの国が話し合える限界を非常に狭めて出発いたしましたが、だんだん回を重ねておるうちに、ついに今日の段階まできた。しかもその結果は各国とも苦難のうちに将来に非常に大きな成長を約束されておる。さすがの英国も参らざるを得なくなったということは、先ほど来御指摘通りであります。従って、われわれが今ここに想像するところの世界動き日本農業の将来というものを考えた場合に、私はここによほど大きな決意をもって対処するだけの用意が必要じゃなかろうかという気持を持っておるのであります。
  15. 安井吉典

    安井委員 農林大臣の口ぶりから察しますと、昨年農業基本法ができまして、農政方向を一応政府はお立てになったわけでありますが、今あるこの農政方向だけでは不十分である、国際経済からのこの新事態に立っては、今ある方向ではもう不満足だというふうなお考え方と私どもは見るわけでありますが、いかがですか。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 農業基本法は満足であるとか満足でないというような受け取り方で受け取るわけには私は参らぬと思います。これは先ほどもお話のありました通りに、現状はどうである、従って将来にわたってどうしなければならぬということを忠実に探求して、そして現実を忠実に実行して参るということを要求しておるのでございますから、それはそれで私はよろしいと思うのであります。  ただ私の考えますものは、国際経済動きが将来にわたっていろいろな想定ができる。それはアジア共同体が想像できる場合、自由国家群一つ経済単位になってこれが動いてくる場合、日、米、加、蒙、いわゆる太平洋ブロックというものを想像して動いてくる場合、それらによって、いずれも日本農業に及ぼすところの影響というもの、日本農業のあらねばならない姿というものが、需給の関係等、もしくはそれぞれの適地適作供給地等関係から違って参るということではなかろうかと思うのであります。従って、これが長期にわたる将来を想像して、そして日本農業に対する青写真を書く場合に、違ったものがあるじゃないか。従って、そういうものについて各方面の方々の御認識を得て、一方においては輸出産業においてどういうものが伸びていく、その反面においてどういうものが輸入されてくる、それに対して日本国内産業はどうあるべきかというようなことが必要なのであって、農業基本法そのもの農業の大宝典として、これはこれでよろしい。しかしそこに受け取って参る客観情勢検討等については、国をあげて大調査会を設け、将来にわたっての基本的な方向等を確定して、各方面の正しい認識、強力なる援助を可能ならしめるような事態の創設ということが必要ではなかろうかと私は考えておるわけであります。
  17. 安井吉典

    安井委員 今の御答弁の中から、私は二つの問題を感ずるわけであります。  第一は、農業基本法ができましてからまだ一年にまでならないわけでありますが、それこそ農業に関する憲法だとか、不磨の大典だとか――そう言ったかどうか知りませんが、とにかくそういうようことであれは出たわけでありますから、これはおそらく相当長期にわたる、何千年も先はとにかくといたしまして、相当長期にわたる見通しをおそらく政府や与党の諸君はその中に考え込んでおられたと思うのです。そういう自信があったからこそ、あのように、あらゆる無理を冒してまで、国会成立というような姿にお取りつけになったのだと思うわけであります。ところが今国際経済の新たな事態が起きてきた、さあ大へんだ、これからどうしようかということを、国をあげての態勢の中で考え直さなくてはいけないと農林大臣はおっしゃる。ですから、私はまず第一に、去年農業基本法ができるあの際におきまして、社会党は、あせることはないじゃないか、もう少し事態の推移を見きわめながら、ほんとうにそれこそ千載にわたって滅びない、そういうふうなりっぱなものを作り上げようじゃないかという主張をした。そういうことが今ここで明らかになったということが第一点。  それから第二点は、農業基本法の、もうそれだけの態勢ではとてもやれないので、基本法は基本法として大事だからそれはたなの上に置いておいて、あらためて新しい事態に対する対策を立てようじゃないかという河野さんの新しい御提案、こういうふうに問題が二つに分かれると思うのでありますが、そういうような調査会というふうなものをお作りになって、国際経済への対策をお立てになるおつもりでしょうか、その点重ねて伺います。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまのお話でございますが、私少々迷惑いたします。私の申し上げたのは、そういう感触で申し上げたのではないのでありまして、たとえば、はなはだ御無礼な申し分でありますが、その席には同席いたしておりませんから、私の申し上げることが違うかもしれませんが、昨年、少なくとも農業基本法論議あそばした委員の各位が、はたして当時今日のようにEEC発展し、あのEEC内部において農業問題についてああいうふうに踏み切りがつき、それがさらにアメリカのこれに対する受け取り方、かくのごとくに世界経済の流れが急激に早くくるということを想像して論議された人が一体どのくらいあったろうか。当時私は日本国内にもそういう受け取りをしていらした人はそうたくさんなかったのじゃなかろうか。寡聞にして新聞、雑誌等にもあまりそういうことを見聞しなかったのでございます。だからこれはあわてずに、ひとり農業基本法を急がぬでもよかったという議論にはならぬのじゃなかろうかと思うのでありまして、決して農業基本法を作ったのは、あわて過ぎたとか、早まったという結論にはならない。一年早くできたから、ことし一年早くレポートができて、それによって今ここでお互いに日本農業の現状についての論議ができる。そのことだけでも私は相当効果を上げておる。広く国民全体がこれに興味を持つということでも、一年早くしたことが一年だけの効果相当上げておるというふうに見ることが、決して私は言い過ぎじゃないじゃなかろうかと思うのであります。ところが事態は、私が今申し上げるようなことが少し早まっておるかもしれませんが、これも必ずしも、ただ単に早まるというだけではなしに、そういうような感触もぼつぼつ出てきておる。出てきておるとすれば、その出てきておるものに対して、農業のように、きてからでは間に合わない、もしそういう事態がどうしても必然的にこなければならぬものであるとするならば、あらかじめ、なるべく早くそれに対する対応策を講ずる必要がある。のみならず、できるならば、日本国民諸君にさらにもう二度、日本農業世界農業の中にどういうあり方にあるか、これが従来のように貿易自由化とかいうようなことで受ける圧力の程度ならば、これは各国とも農業の特異性をそれぞれの国が自認いたしまして、それぞれの国で農業の特異性を尊重しております。ところがその各国が、農業の特異性を尊重するらちを破って、今回欧州六カ国が踏み切った。その踏み切った傾向が世界的傾向にもしなる場合があるとするならば、日本農業としては非常に大きな問題が起こってくる。私は今のままで進むならば、そういう事態がきたときに、農業じゃない、一体日本国内はどうなるだろうか、これだけの強力な、産業の中における農業の地位というものを想像したときに、日本は踏み切りがつかぬだろう。つかなかったとき日本産業全体がどうなるかというようなことを考えますときに、日本民族の大きな将来の命題としてこれに対処する問題をわれわれ検討し、考慮するということは、私は間違っていないじゃないかと思っておるのでございます。しかし、それはただ単に私がそう思っておるので、大方の各位に、調査会でも作って、農業だけではない、全体の産業の中の日本農業としてどうあるべきかということに対して、国民全体から一つ方向を固定していくということが、必要ではなかろうかと提唱しておるのでございまして、私が提唱しても、みながお前の考えは早まっておる、その必要はない、そういうふうに理解にならぬということであるならば、これは不問に付される。取り上げていただくわけに参らぬだろう。従って、私は機会あるごとにそういう提唱をしておるのが私の気持でございまして、なるべく早くそういう御理解、御協力が願えれば、日本農業のために私は非常にけっこうじゃないか、こう思っておるわけでございます。
  19. 安井吉典

    安井委員 農業基本法の問題については、私どもは私ども考え方でさらに今国会に基本法案を提出いたしております。われわれはそういう中でさらに論議を尽くしたいと思うのでありますが、その前に、先ほどの貿易自由化に対する考え方が、今の段階でお考え直しになっておられるのかどうかということです。そのお尋ねのお答えがなかったのですが……。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 現実の問題として、貿易自由化に対する対処策は対処策としてこれはこれとして取り上げていく、現実には私はその問題に取り組んでおります。ただ、将来の問題について考慮して各方面の御認識を深めることに努力いたしておるということで御了承いただきたいと思います。
  21. 安井吉典

    安井委員 アジア経済協力機構、OAECですか、この問題につきましても先ほどちょっとお触れになったわけでありますが、けさの朝刊では、この問題に関するエカフェの提案につきまして、けさの関係閣僚懇談会で政府としての最後的な態度をきめるのだという報道がございましたが、よろしければそれについてのお考え一つお聞かせいただきたいと思います。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 今朝の関係閣僚懇談会で問題にいたしまして、政府としての方針は決定をいたしました。外務当局から外交処置をとって参るのでございますから、私からまだ申し上げることは適当でないと考えますから、しばらく御猶予いただきたいと思います。
  23. 安井吉典

    安井委員 私は、OAECとの関係EECとの接近とは別な意味で、しかし結論は同じようなことになるわけでありますが、日本農業への影響が非常に大きいと思うわけです。それは大臣ももちろん御承知通りでありまして、それだけに慎重な御処理を願っておきたいと思うわけです。  次に、就業構造の問題について触れたいと思います。これはきのう湯山委員から跡取りの問題というふうな定義の仕方で論議がされておりますので、私はむしろ逆に離農者の問題について、そういうふうな側面から少しだけ触れてみたいと思うのであります。  報告によりましても、三十五年の農家人口の減少は非常に著しい。ところが最近の新聞に出ております三十六年の一月ないし九月の調査の結果によりますと、その減少率がまた前年度より六〇・四%増というふうな報告がなされております。特に経営主の離村就職というようなものの増加も激しいようであります。これらの変化は、私はこれは問題は、きわめて無計画で無秩序な移動状態にあるというところに問題があると思うわけで、つまり基幹労働力までが流出していく反面に、むしろほかに転出したらいいのではないかと思われるような零細な農家までが残っているといったような事態があります。さきの農基法の問題に関連いたしまして、三分の二の農民を切り捨てるのだというふうな言い方がなされたり、混乱を起こしたわけでありますが、河野農林大臣はこの農村の就業人口の問題についてどういうふうな見方をなさっているのか、どの程度の移動が合理的だというふうな見方をなさっているのか、その点を一つ伺います。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 現に他産業が非常に設備投資の行き過ぎ等のために今日の現状に相っておりますことは御承知通りであります。それにある程度刺激されまして、異常な賃金高、労銀高というようなものが農村を刺激して、一部農村の労力が都市に流れておるというような事態もあるわけでございます。ところがなかなかこれらを、都市と農村との関係計画的に割り切って指導する、もしくは案を立てるというようなことはむずかしいことであると同時に、可能じゃない。そこで私はむしろそのことよりも、現にわが農業として与えられておりまする農耕地、これを利用するところの成長農業もしくは既存農業等を組み合わせて、そしてその中に安定して農業成長するものはどういうふうにあり得るか、どういう施策を必要とし、それが可能であるかというような面から農業考えて参る。これだけの農業の中に、これだけの人は他産業にかわって、残る者は幾らであって、その残る者をどういうふうにしていくというような考え方は私はとらないわけであります。また現実を離れて飛躍した、すっきりしたというようなものは農業にはなかなか受け入れにくいものであるというふうに考えられますので、今申し上げましたように現実に即して、そこに地域的な農業を、政府施策もしくは政府の保護助成等と相待って、安定した農業を育成していくという方向でいきたい、こう思うのであります。
  25. 安井吉典

    安井委員 池田総理は盛んに数字を出してどうこうされるわけですが、河野農林大臣は言葉のあやで問題を解決されようとされているようであります。その点お話方向はわかるのですが、しかしどうも聞いている人の方がぴたりと胸に落ちるというふうな気がしないので、その点残念であります。  ところで、その話をさらに進めまして、農村から離れていく人たち、こういうような人たちに対してどんな対策を講じておられるかということをお聞きしたいわけです。これはもうやめていくんだから仕方がないとか、あるいはまた過剰人口が減ってありがたいとか、そういうだけではなしに、その人の農業からの離脱が、むしろその人の人生にとってプラスになるように見届けていくという態度、そこまで政治のあたたかさがあってほしいと思うわけです。その点どういうふうにお考えですか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘通りでございまして、私も決してその点について失念いたしておるわけではございませんので、たとえて申しますれば、現に農村に残留をして、そうして農業経営に専念いたした場合には、この地方においては主産地としてこういうものを取り入れて、こういう経営規模農業をして参るとすれば、大体一年の生計はどの程度になるというようなものをやって参るのが農業構造改善でございます。その農業構造改善の中にあって、なおかつ他に転出して他に職を求められる方は、それより以上に恵まれたものを見出されたときに、与えられたときに出ておいでになる諸君と考えられますので、これらの諸君はほんとうに農村におったってどうにもならぬから出ていくのだというようなものではない。農村におればこれだけのことはいける、この程度のことはやれるというのを一方において想像しつつ出ておいでになるというようなことはいいのではなかろうかというような意味で、全国的に構造改善青写真を出して、これをなるべく急速に各方面に御相談申し上げて、そしてそこに希望を持つと同時に協力を要請して、おのおのの方々の努力によって村作りをしていただく、できるだけの応援を申し上げるということでいきたい、こう考えております。
  27. 安井吉典

    安井委員 大臣青写真を提示して、こうなるから先々見込みがあるのだと言われましても、現実にはもうどんどん出て行っているわけです。長い間、額に汗して作り上げたその田畑を手放して、部落の人たちと別れを惜しんで町へ出て行きます。しかしこれは勤労者やあるいは公務員なんかでありましたら退職手当も当たるし、退職年金や恩給も当たるわけです。高級官僚になると参議院議員にも出られるわけです。しかしこういうふうな事態の中から、農業の立場にある人は、それこそ石をもって追われるようにして町に出て行かなくてはいけない。しかも小金を持っていっても、町では悪いのが寄ってたかってみなそれを使わせてしまう、こういうふうな事態があるようです。職業転換というのは、これはだれにとっても人生の非常に重大なことでありますが、そういうような人たちによく相談に乗って、土地問題を片づけたり、借金の整理をしたり、転職先のうちのことを心配してやったり、そういうようなことを市町村でも世話してあげるように指導すべきだと思うのです。もちろん離農をしなくてもいいような、そういう体制を作るのがそれは何といっても第一段階で、そうでなくてはいけませんが、しかしやむを得ないそういうような人たちにはもう少しあたたかみがあっていいと思うわけですが、そういうような指導はなすってないのですか。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 私は今お話しになりましたような事態は、今日農村では比較的少ないのじゃないかと思うのです。なぜなれば、従来の経営はまずそのままにしておいて、余剰労力が都市に農業所得を求めるために出かけていくというようなことが農業労力の転出という場合に相当多い。ところが一切の農業を手じまって、そうして家族ぐるみ都会に出かけておいでになるというような例は、比校的全体から見れば少ないのではないかという気がいたすのでございます。しかも炭鉱労働者の諸君のように、炭鉱におっても先々どうにもしょうがないというものと違いまして、わが農業は決してそんなに先の暗い、見込みのない仕事とはだれも考えておらない。またそこに一日も早く新しい希望と目的を与えるようにせっかくお互いに努力をいたしておるのでございまして、われわれとしても、すでに構造改善もしくは近代化資金等によって、新しい成長農業方面一つ協力、御助力いただきたいということでやっておるのでございますから、それよりもなお都心において非常にいいかせぎ場があるというような人が農村から都会へ出て行く。季節的に出る人もありましょうし、また月給で出て働かれる人もありましょうし、というような場合が多いのでございまして、ただしそういうものの世話は一切しないか、ほうっておくのかというと、それについてもそれぞれ御相談相手にはなっていたしておるのではなかろうか。またそういうようにお話しになることもぜひ必要である、また不十分であれば大いにやらねばならぬのじゃなかろうかと思っておるわけであります。
  29. 安井吉典

    安井委員 挙家離村といいますか、そういうような数はどれくらいですか。
  30. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 私、正確な数は覚えておりませんが、比較的少ないと思います。正確な数は後ほど資料としてお出しいたします。
  31. 安井吉典

    安井委員 経営主離村といいますか、それは相当ありますね。
  32. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 最近は経営主が、離村と申しますか、他産業の従事者になるということは、最近の傾向としては多くなるということが数字的には見られるようでございます。
  33. 安井吉典

    安井委員 私も数字はよく知りませんが、私も北海道の農村に住んでいますが、私の部落からも去年一人、その隣の部落からも一人、それも村じゅうで大へんな数ですよ。そういうふうな統計もやはりお取りまとめになっておく必要があると思うわけであります。  次に兼業の問題でありますが、一そう増加の傾向にあるということはこのレポートの中でも明らかであります。これまでの農林大臣の御発言では、これはもうどうにもならないではないか、今さら兼業をやめろといっても仕方がないという、現状是認的な態度というふうに、きのうあたりの問答の中から、お聞きをしたわけであります。ところが、今言う外国農業と太刀打ちのできる農業だとか、あるいはまた主産地形成だとか、そういうような場面に立ち至りますと、兼業の問題は新たな面から考え直していかなくてはいけないのではないかと思うわけです。つまり、池田総理大臣などの言い方では、兼業収入がふえるのだから農家収入がふえるのだ、そういう所得の態勢からの御発言がありましたけれども、外国農業との太刀打ちだとかあるいはまた主産地形成だとか、そういうことになりますと、この問題は新たな展開がなくてはいけないと思うわけでありますが、その点いかがです。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 白か黒かということになれば話はめんどうになりますけれども、私はものの判断は白か黒かじゃなかろうと思います。今申し上げますように、主産地を形成して、そして専業農家を育成していく、これも私はやらなければいかぬと思う。しかし、平たく申せば、近所に工場ができた、そこへ出て働く、そして一方においては家族のものが従来の狭い耕地を耕して、そして機械化してやっていくというような農業あり方というものも、決して私は悪いあり方ではないと思うのであります。でございますから、半農半何と言いますか知りませんが、農業所得を、それは主人が取る場合もありましょうし、せがれさんが取る場合もありましょうし、そういうものも合わせて、そこにりっぱな家族の安定があるなら、それも私は、日本のようなこういう国柄からしてはやむを得ぬ、けっこう奨励していいのではなかろうか。全国に工場の分布を適正にして参ろうというような点も、私はそういう意味において賛成しておるものであります。
  35. 安井吉典

    安井委員 この年次報告にいたしましても、あるいは施策の方にいたしましても、農業近代化という言葉がずいぶん使われているわけです。どうも今のお話など伺っておりますと、一体農業近代化ということはどういうことなんでしょう。私もどうもわからないのですが。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 技術の面におきまして、もしくは使用いたしまする農機具の面におきまして、従来よりも非常に進歩したものを取り入れて経営するのが農業近代化であると思うのでございまして、別に事新しく言うほどのものではないと思います。そこで、農機具を入れることによって労力が過剰になって参ります。新しい技術を取り入れることによって労力が過剰になって参ります。少ない労力で同一の生産を求める、そこに生産費が低下して参るということがわれわれの理想でございます。そこで出てきたものがどういう方向に向かうか、そこで私は、従来の経営にプラスして、これから生み出されたところの労力を集約した高度の農業技術を取り入れた農業に一部経営を入れて参るということが、資本を取り入れた農業というように想定しておるのでございます。
  37. 安井吉典

    安井委員 それでは、大臣農政学者じゃないですから、どうぞ大澤さん一つ……。
  38. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 大臣が言われたことに尽きると思いますけれども資本装備を高度化するとか、あるいは優秀な高性能の技術を取り入れるとか、生産性の高い農業経営をするというようなことで所得も上げてりっぱな生活ができるような経営をするということが、農業経営近代化ということだと思います。
  39. 安井吉典

    安井委員 そうすると、兼業の問題についての大臣の御答弁で、その近代化方向と矛盾しませんか、どうですか。
  40. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 兼業の問題も大臣の言われた通りだと思います。能率を、生産性を上げるということで浮いた労力があれば、それをさらに高度な農業に使う、あるいはまたそういう機会がなければ他産業へ就業機会を求めて出ていくということで、農家としては所得を上げていくという意味で、大臣の言われる通りだと思います。
  41. 安井吉典

    安井委員 それでは論点を構造政策の方に変えて、今の問題にも触れていくことになると思うのでありますが、日本農業近代化を困難にしている制約条件の大きなものは、経営耕地零細性であるところのレポートは率直に指摘しております。ところがこの指摘を受けた施策が、その零細性をいかに克服するか、そして農業を前進させるかという道筋の提示を怠っていると思うわけです。選択的拡大だとか基盤の整備だとか主産地形成だとか、こういったような一枚看板のいわゆる農業構造改善事業は宣伝されておりますけれども、肝心の零細性という基本構造そのものには力が全く抜かれているというふうな感じがするわけです。私はこの零細性の克服というのが構造対策の中の中心課題だと思うのですが、その点いかがでしょう。
  42. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 決してそのようなことはないのでありまして、たとえば、ただいま提案いたしまして御審議を願っております農地法の改正あるいは農協法の改正というようなことも、経営規模拡大零細性の克服という意味では果たす役割があるのでありまして、そういう施策を、ほんの一例でございますけれども、私どももやっているわけでございます。
  43. 安井吉典

    安井委員 特にそれはほんの一例として申されましたけれども、私はもっと大きな問題は耕地拡大、改良の問題だと思うのです。農地の流動性という問題は私は否定するわけではありませんけれども、それよりももっと大きな問題は農地拡大、改良の問題だと思うのです。周囲を山々に囲まれている村、その他農村へ参りますと、農用地の拡大のための林野の払い下げ、そういうような意向がきわめて強いわけであります。それが国有林である場合も多いわけです。ところが、そういうような問題についてちっとも明らかにされていないというふうな気がするわけであります。この施策の中に。この点政府のお考えはいかがですか。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は私も全く同感で、最も強く主張いたしておるところでございまして、明年度の予算におきましても、農地局の方面におきまして、従来で申しますれば干拓等をなるべく重点的にやっておりましたが、早急に金のかからぬ開架の方にむしろ重点を向けたらどうだというようなことで、施薬をその力に重点を置いてやるということに指導いたしております。また、開墾もしくは草地の造成等につきましても、従来とは異常な関心を持って予算措置等も相当に考慮いたしたつもりでございます。
  45. 安井吉典

    安井委員 確かに平地改良事業を初めて公共事業に取り上げる、そういうふうな柱が立ったということは、この点だけは、私はことしの予算の中の、農林大臣の唯一のりっぱなできだと思うわけです。私は悪いことは悪いと言いますが、いいことははっきり賛辞を呈したいと思います。ただ予算額があまりにも少な過ぎまして、たった十億円ぐらいで一万七千町歩の水田――一万七千町歩の水田ならまだわかりますけれども、林好の、今の荒廃地的なものでありましょうから、一万七千町歩では、これではお話にならないわけであります。これは一つ今後に期待いたしたいのでありますが、とにかくスイスなんかへ行って見ましても、北海道の面積の半分くらいしかない国で、しかもその六割の面積はアルプスの山々で占められている。ところが、その山のてっぺんまでがすばらしい牧草でおおわれているわけで、日本の土地の利用率などと比べると問題にならないということがいえるわけであります。こういう思いをすれば、まだまだ私は農用地の拡大は可能なはずだと思うのです。ですから、私はここではっきり大臣のお気持をお示し願いたいのは、今林地の問題についていろいろ考えているということをおっしゃいましたが、この際具体的な国土利用計画農地と林野と、そういうふうな国土利用計画をはっきりと立ててお示しになる必要があると思うわけでありますが、その点いかがですか。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 私も全く同感でございます。しかし今計画が小さいじゃないか、金が少ないじゃないかとおっしゃたのですが、金をふやすのは簡単ですが、ほんとうに利用する人がそれだけあるのだろうかということに私疑念を持ちます。これは従来の例から参りましても、牧野々々ということはずいぶん古くから言っておりますが、今日、失礼な申し分ですが、北海道から東北を歩いて見て、牧野の予算がどこへ一体入ったんだろうか、私新聞記者をしておったときから牧野の改良、牧野の改良ということを議会で始終言われました。それから三十年も四十年近く、牧野改良、牧野改良といわれておりますが、それがどこへ入ったのか、入った先がわからない。そこで私は今申すように、今度はほんとうにひっくり返していかねばだめだ、ほんとうにひっくり返してやって下さるだろうかどうであろうか、というような懸念が実はあるくらいなのであります。そういう御要望があれば御要望にこたえて幾らでも私は計画は立てます。現に林野庁に命じまして、今お話のように木のはえておるところを払い下げろといっておるのはどうかと思う。野の方がなくなって、用うべき原野がない、木のはえているところばかりしかないというなら、それは別です。別ですが、まだ利用すべき野がたくさんあるにもかかわらず野の方はそのまま未利用で、そうして木のはえているところを優先的に払い下げて、木を切ったらそのままほうりっぱなしということが全国に間々見受けられ、はなはだ私は遺徳でございます。そういう意味から、林野庁に命じまして、全国の青写真を、航空写真をとりまして、そうしてどの程度の原野の利用地域があるか、明年度予算編成までに案を立てろという命令はいち早く私はいたしておるわけであります。せっかくそれぞれ係において計画を立っておると私は期待いたしております。
  47. 安井吉典

    安井委員 牧野がちっともふえないというふうに大臣は言われますけれども、牧野に対する補助率の問題、それから酪農に対する政府施策の弱さだということはいえるわけです。牛を入れても、まだ乳が出ないうちに償還年限がきてしまう、それからしぼった乳は値下がりをしてしまう、だから北海道なんかちっとも牛がふえてないという現実があるわけです。だからそういうふうな総合的な施策を同時にお進めをいただかなくてはならないわけでありますが、今の日本酪農がデンマーク式の姿からスイス式というふうな形に変わっていく段階において、そこで飼われる家畜の品種をどうするか、そういうようなこともやはり関連があると思うのです。あるいはまた、自分のうちの畜舎と出先の簡易畜舎といいますか、そういうような問題だとか、尿を機械で散布する設備だとか、そういったような総合的な改善設備が必要となってくると思うのです。そういう研究や準備はなされているのでしょうか。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 これはもちろん過ぎるほど研究はしてあるのでございまして、ただ研究はしましても、実際は御承知通り、北海道のようにあれだけ酪農が発達しておりまして、あれだけすべてが行き届いておるように見えても、今御指摘のようなことでございますので、なかなか実際はそういう段階になりませんことははなはだ遺徳でございますけれども、そういう点に各方面の御協力を願って一つやらなければなるまいと思うのでございます。
  49. 安井吉典

    安井委員 私は今までも何もやらないで遊んでいたとは言いません。しかしながらこれから草地に力を入れて日本じゅうを緑の牧野にするのだというふうなお気持が大臣にもしおありなら、もっと積極的な手が打たれなくてはいけない。だから今までの酪農の方式が変わってくるのですから、そういうような具体的な方針というようなものをお出しになる必要がある、そういうことを申し上げたいわけです。そこで、零細性の克服による日本農業近代化の道は、私はどうしても協同化よりほかに道がないと思うのです。たとえば、先ほど機械化の問題で、大臣はいい機械を入れるのが近代化だとおっしゃいましたが、しかし小規模経営向けの小型機械では、能率も悪いし、こわれやすいし、今もう農村では機械メーカーの売り込みで機械装備はぐんぐん進んでおります。しかしその機械の下敷きになって経営効率がひどく落ちているというふうな姿もあります。それからまた、技術近代化といいましても、やはり大型機械を導入すべきであり、そういうふうなことを考えますと、いわゆる自立経営というふうな独立経営では、いわゆる零細経営と五十歩百歩といえるのではないかと思うのです。農地の集団化というふうな表現もありますけれども、これも共同化ができれば当然に集団化ができることにもなっていくわけです。ところがこの施策の中には積極的な熱意というものが少しも感ぜられないわけです。構造改善の主眼というものはこういうところにこそ注がれなくてはならないのではないか。零細性という小規模構造改善のためにはやはり共同化の方向を進むべきだ、そういうふうな考え方に対していかがでしょうか。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 私は共同化もけっこう、協業もけっこう、それぞれ一つの方針を示して、これでなければいかぬ、あれでなければいかぬということは、これだけ日本全体の農村の実態が違うのでございますから、この方式でなければならぬというものはないだろう。いずれにしても個人小規模よりも共同、協業大規模がいいことは、やっておりますればおのずからその結論が出るのでありますから、その地域地域に適したまたは人情、風俗に適したものが一番よろしいということであるべきじゃなかろうか、こう思っておるのであります。
  51. 安井吉典

    安井委員 人情、風俗に適したものでなくてはいけないという基本的な考え方は当然であります。ですから私はそういうことで共同化の促進の問題につきましてもやはり類型を示すべきだと思うのです。水田地帯だとか、酪農地帯だとか、畑の地帯だとか、そういうようなことからそれぞれに適する機械だとか品種だとか、畜産にも耕種にもそうでありますが、品種の問題だとか、肥培管理の問題だとか、そういう共同経営のための総合的な検討といいますか、そういうようなものがなされなくてはならないと思うわけです。今の段階はそういう点はどうでしょう。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろんそういう点につきましては、万事手落ちなくやっておるつもりでございまして、全国には普及員まで置いて十分指導もいたしておるのでございます。もちろん行き渡らぬ、または行き届かない点もあるかもしれませんが、一応制度設備としてはやっておるわけでございます。なお十分一つ徹底するように努力をいたしたいと思います。
  53. 安井吉典

    安井委員 それは何かやっているでしょう。しかしそれに重点を置く、そういう姿でこそ進めなければ、これはちっとも進まないと思うのです。そういうことだと思うのです。この協業の助長という施策の中におきましても、大規模技術の未確立あるいは生産基盤の未整備、労働評価だとか利益配分等経営技術の未熟等によるほか、農村社会と農民意識の因襲が制約条件となっているというふうな書き方がなされております。こういうようなものが確かに制約条件であろうと思います。ですからそれがある以上、単に指導をするというだけじゃなしに、共同化に向かうための条件を整えることが必要だと思うのです。たとえば資金も共同化の場合にはより有利な扱いをしてやるとか、土地についても同様だし、機械の貸与だとか、サービス・ステーションを作るとか、とにかく有利な条件を提示するという方向ができて初めて共同化への方向が進んでいく、こういうことでなくてはならないと思うわけです。そういうふうな姿勢がこれは皆無とは言いません。あることはありますけれども、しかしきわめて弱いということを私は指摘せざるを得ないわけです。この点ぜひ積極的な御努力をお願いいたしたいと思うわけです。
  54. 野原正勝

    野原委員長 午前中はこの程度にしまして、午後二時から開会いたします。  休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十六分開議
  55. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。安井吉典君。
  56. 安井吉典

    安井委員 今度は私は価格政策についてお尋ねをしたいわけでありますが、あとの時間の関係もありますので簡単に済ませまして、最後に水産政策をお伺いして、それで終わりたいと思います。  構造改善というふうな言い方をなさいましても、それはすべて総合的な需給の見通しの上に立つ価格対策の確立がなくては実効がないと思います。それで価格の変動が適応体制のおくれを引き出しているわけでもあるし、またどれだけ需要があり、どれだけ生産してよいかというふうな計画が示されませんと、なかなか農民の側もあぶなくてついていかないというふうなことになると思います。選択的拡大で、豚がいいからとどんどん豚を飼い出したら、豚の値が下がってしまう。ビートがいいからといってそちらへ片寄っていくと、値段が合わなくてもうやめてしまわなくてはいけない。そういう事態が今まで幾度も幾度も繰り返されているということであります。ですから、ある農家の人は、何を作って何を飼えばいいかというのは、政府が言うのと反対のことばかりしていたらもうかるだろう、そういう悪口を言う人さえいるわけであります。この間からの質問に対しましても、大臣はそういうふうな全体的な生産の計画と需給の計画というものを示すべきだというわれわれの同僚委員の質問に対しまして、いつもお答えをはずしてしまうわけであります。やはり私は生産の政策と価格の政策、流通の計画、こういったものがうまくバランスをとった形でつながっていなくてはいけない、そうでなければやはり農民は安心できないと思うわけですが、その点いかがですか。
  57. 河野一郎

    河野国務大臣 理想の姿はまさにその通りです。しかし現実はどなたがおやりになっても多種多様、またそのときそのときによっていろいろな災害の影響もございますし、もしくはまた天候に非常に恵まれ過ぎて豊作になり過ぎることもあるしいたしますので、可能な限りこれらについて施策をするということで御了承を得るより仕方がないのではないか、われわれとしてはこれらの点をその通り考えて努力いたしているということでございます。これを計画して、そうして生産をするというようにすることは、一つの方法かもしれませんが、そうやってみたところで、中共のように計画通りに物ができず、そこに非常な凶作があり飢饉が生ずるというようなこともあるわけでございますし、農産物に関する限りなかなかそう計画通りいきにくいというものでございますから、われわれとしてはこれら各般の場合を想像しつつ、なるべく所期の目的を達成することに努力するというふうにいくべきだろう、こう思います。
  58. 安井吉典

    安井委員 それはぴったり計画が合うというようなことは、これは考えられないと思います。しかしやはりそういうふうな姿に持っていくことが、政府の責任を明らかにするゆえんだと思うわけです。だから計画が合わなくて困ってしまうと、これは農民のせいだけに最後はさせられてしまう、こういうことになるわけです。これは水かけ論になるようですから論争はやめますが、しかしいずれにしても、そういうかまえを一つお作りになっていただきたいということを希望しておきます。  そこで、この農業施策の中では、流通、価格対策につきましては、引き続き現行制度を堅持しつつ、現実に即して弾力的かつ効率的にその機能を発揮し得るように改善することを検討する、そういうような言い方がなされております。ところで、私どものところへも実にたくさん陳情が参ります。その大部分は最近は価格の問題ばかりと言ってもいいくらいです。たとえば大豆にいたしましても、昭和三十五年産の大豆の交付金がまだ未交付だといったような問題、あるいはまた三十六年産大豆につきましても、価格の告示に対しまして農民側は非常な不満を示しているようであります。ビートにつきましても、やはり価格の問題を中心にしてパリティが上がって、ほかのものはみんな上がるんですが、ビートの値段は八年も九年も据え置いているわけです。澱粉についても、これの価格だけは一応きまっておりますけれども、いまだに買い上げ措置がないものですから、非常な値下がりがあって、ずいぶん農村は心配をしております。一例をあげればそういうようなことであります。私は、ここに書いてある弾力的かつ効率的に機能を発揮という言葉が、そういうふうな適当な措置だけで済まされているのではないか、 こういったような疑いを持たざるを得ないわけであります。これらの具体的な問題につきましてはまた後に機会を持ちたいと思いますが、どうしてもおかしいと思うのは、三十五年のものがいまだに交付されてないというふうなことであります。きのうからいろいろ論議がかわされておりますが、大臣はなかなかはっきりしたお答えをいつもなさらないでいるわけですが、どうでしょう、少なくともこのうちの一つぐらい今お答えをいただけるものはないでしょうか。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだんお示しでございますが、実は私就任いたしましてからは、懸案事項なしという農政をやれということを言っておりまして、たまたま今、三十五年は何かの事務の都合でおくれておる、三十六年は、きめて、近日中に施行することになっておりますということを聞いたのでございますが、これはさっそく取り調べまして、一つすみやかに善処いたします。  それから澱粉の話でございますが、澱粉は御承知通り、カンショの方はことしはむしろ値上がりで、そういう買い上げる必要はない。バレイショについては、最近多少弱含みであるから買ってくれという話がある。これについては買うべく今準備をしておるということでございまして、農家の方に尽くすべき手段があるにもかかわらず、これを怠っておるというようなことは絶対にないように私はいたしますから、その点は、一つ御注意がありましたらいつでも御荘意いただきたいと思います。  それからビートにつきましては、これは昨年の四月決定になりまして、決定後パリティの計算が何%でしたか、上がらなければこれを買い上げることはできないということがあるものですから、私はそのことが事情に即さないということで、むしろビート工場に対して生産奨励金を出すべきじゃないかという勧告をして、何かの生産奨励費の方で出したまえ、買上価格の方でなしに善処したまえということを勧告するように指示をいたしました。そういうふうに、なすべき処置としてはやっておるつもりでございますが、なお至らぬ点がありましたらば、逐次御注意いただきますれば必ず善処いたします。
  60. 安井吉典

    安井委員 ビートの価格につきまして、去年できたものはああいう姿に処理されたわけでありますが、新年度のものも間もなく告示をしなくてはならない時期が近づいてきているわけであります。これはやはり奨励金という形じゃなしに、支持価格の引き上げという形で御処理さるべきだと思うのですが、その点いかがですか。
  61. 河野一郎

    河野国務大臣 これは昨年の例もありますから、なるべく早い機会に、諸般の情勢考えました上で、適当な価格を決定して指示することにいたします。
  62. 安井吉典

    安井委員 これはこまかく入りますとずいぶん問題がありますが、時間がありませんので別な機会に譲りたいと思います。  畜産物の問題につきまして、昨日も豚肉の問題がいろいろ論議されたわけであります。そのうち私はこの点だけちょっと伺っておきたいと思いますのは、買土地の問題です。中央卸売市場から遠いところでは、輸送費がかかるわけですね。また輸送力そのものも問題になってくるわけです。そういうようなことで非常に価格的に不利な状態に陥りやすい、こういう事態があるわけです。ですから私は、そういう全般的な見方の中から、十分な施設があれば、全国的な中心地といいますか、そういう地域的な中心地にやはり買い上げ指定地を置くべきだ、そういうふうに思うわけでありますが、その点いかがお考えでありますか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 豚の問題でございますと、中央卸売市場、すなわち東京、大阪、福岡、広島、名古屋というような、中央卸光市場ということになっておりますので、その市場法の適用を受けておりますところについて支持価格を出して買い上げをする、こういうつもりでございます。
  64. 安井吉典

    安井委員 それはいいですが、たとえば北海道というような遠隔なところ、あるいは九州というようなとろこの価格は、結局その市場までの運賃だとかそういうふうなものを差し引かなくてはいけないわけですから、今支持価格がきめられても、当然にそれよりも相当低めの実際農家の手取りになってしまう、こういうことになるわけです。だから私は、卸売市場が今はなくても、できるだけそれに準ずるような地帯に買土地を広く置くべきだ、そういう考え方でありますが、その点いかがですか。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 一品ごとに運賃の計算ができれば一番けっこうであるかもしれませんけれども、これは何についてもそうはいかぬ、まあ最大公約数でいけばある程度のものにいく、その場合に、産地からの運賃もいろいろ一応価格形成の中に織り込んであるわけでございますから、それですべてが満足するというわけにはむろんいかぬと思いますが、一応の数字としては立ててやっておるつもりでございます。
  66. 安井吉典

    安井委員 この点どうもあとの質問者の時間の関係もありますので、とにかくそういう事情をもっとこれは御検討いただかなくてはならないと思うわけです。おそらく遠い地帯ほどそういうふうな要請が出てき、そういうふうな不満も出てくると思います。その点さらに御検討をいただきたいと思うわけです。  なお畜産物につきましては、昨日脱脂粉乳その他の安定上位価格がきまったそうですね。ところが原料乳についてはどういうふうなお考え方になっているか、それを一つ伺います。
  67. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 原料乳並びに乳製品の下位価格につきましては大体十日、二週間くらいまでには全部整理いたしまして、三十六年度それから三十七年度等の価格の諮問をいたしまして、検討いたしたいと思います。審議会でも価格算定方式について目下検討中であります。
  68. 安井吉典

    安井委員 私はあべこべじゃないかと思うのです。つまり原料乳がきまってから、乳製品の価格というものはきまってくるわけですね。ところが乳製品が先にきまってしまえば、そのあとの原料価格というのは上の価格から逆に押えられてしまう。そういうやり口では、これから現われてくる原料乳価格が、農民の強い要求である生産物の再生産を確保できるようなそういう価格になるようにという期待は裏切られることになるのではないか、そう思うのですが、いかがです。
  69. 森茂雄

    ○森(茂)政府委員 原料乳の価格につきましては、いろいろ生産条件等を参酌いたしまして決定いたしたいと思います。乳製品の下位価格を先にきめてしまいますと、原料乳の価格影響があると思いますけれども相当幅のありまする上位価格の問題でありまするので、上位価格から原料乳の価格決定に相当作用するということは私どもとしては考えておりません。
  70. 安井吉典

    安井委員 なお、ほかからもまた御議論があると思いますので、私先に進みますが、いずれにしても非常に大きく、初めて行なわれるこの畜安法による価格決定について関心が寄せられております。それだけに一つ慎重な態度でお進みをいただきたいと思うわけです。  最後に水産の問題でありますが、農業につきまして農基法ができて、このレポートやブランが発表されまして、国会や国民の注目を引く形がとられたわけでありますが、水産業については何もなされていないというふうな印象が、そのコントラストの中から生まれてくるわけであります。ところが沿岸漁村の漁民の生活は、零細貧農よりももっとずっと低い窮乏の中にありますことは御承知通りです。それだけに、今まで農林省でも昭和三十年に漁業制度調査会ができ、その翌年には農林漁業基本問題調査会もできたはずです。非常に長期にわたって審議がなされて、その答申もあるはずです。私どもはその答申や建議の内容に対しまして完全に同調しているというわけでは決してありませんけれども、それにいたしましても、そういうようなものがあって、何一ついまだに具体化されていないという事態です。そういう事実につきましていかにお考えでしょうか。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り漁業につきましては漁業関係三法を整備いたしまして今国会に提案をし、御審議を願い、これを基盤にして懸案の振興対策を立てていきたい、こういうつもりでおります。
  72. 安井吉典

    安井委員 農業の問題は割合に早く処理をされる。しかし漁業問題については実にのろのろと、何年も農業対策よりもおくれてでしか進んでいかない。こういう事態が今まであるわけです。一つそういうふうな事態河野農林大臣の手で破っていただかなくてはいけないと私思うわけです。  次に日ソ漁業交渉の問題につきまして少し伺いたいと思います。  大臣は今狸穴からお帰りだそうでありますが、去年の暮れに漁業専門家会議が終わりまして、そのあと二月の二十六日から本会議がモスクワであるということを聞いております。昨年の会議におきましても、マス資源の評価に関する双方の対立がきびしかったとも聞いております。ソ連側はその規制区域をマスの住む全海域に広げるかまえをとっており、そういうようなことになりますと、現在の国内の漁業、区分にまで大きな影響を持ってくるというふうなことにもなるということも聞いているわけであります。ですからその交渉のいかんによりましては、国内問題としても非常な紛糾が予想されるわけであります。それだけにことしの漁業交渉につきまして各方面から異常な関心が寄せられているわけです。これにつきまして今後の見通し等につきまして農林大臣の御意見を承りたいと思います。
  73. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解が起こるといけませんから明瞭に申し上げておきます。  私は本日正午からソビエト大使と会談をいたしました。これは先方の申し出によって会ったのでございますが、会談の内容は決して漁業関係のものではございません。内容は、先般ミコヤン副首相が日本に参りました際に、私から日ソ両国の農業技術交流、調査の交換ということについて提案いたしましたのに対しまして、先方から応諾をして参りました。そして具体的な打ち合わせを事務当局によってすみやかに進めて、本年双方で農業技術者の現地調査をお互いにやろうということの話し合いをいたしたのでございます。誤解があるといけませんから明瞭にいたしておきます。  ただいま日ソ漁業交渉についてお話がございましたが、これはお話通り昨年末専門家会議をいたしました結果、マス資源について非常に今年は不安があるという点について意見の一致を見ております。資源保護ということはすべての大前提であって、この保護をどの程度にするかという認識については必ずしも日ソまだ意見は一致いたしておりません。しかし資源が非常に今年は双方とも考慮しなければならぬ年回りであるということについては意見が一致いたしておるのであります。従って今後どういう方法によって所期の目的を達成するかというところに、今後の折衝、交渉があるわけでございます。わが方としても昨年度のように規制をいたそうと言った以上は、その規制は規制としてこれは完全に、実行することが必要でございます。昨年のように、規制を約来しながらそれをわが方の漁民諸君が規制を越えてとられたということは、将来の両国交渉の上に非常に悪影響があるというこの事実に徴して、私は今年の交渉もこれらが基礎になりまして相当めんどうだと思いますけれども、あらためてわが方はわが方独自の規制案を立てまして、それをソ連をして了承せしむるように努力していただくところに、今年の交渉の主眼点があるのではなかろうかと考えております。しかしいずれにいたしましても、今ようやく高碕君を政府代表にお願いをいたしまして、そして来たるべき機会に折衝に入る段階でございまして、まだ高碕君その他訪ソいたします諸君と意見の交換もいたしておりません。具体的内容についてまだ検討中のことでございますから、今これ以上のお答えをすることは私としては困難でございます。
  74. 安井吉典

    安井委員 まあ外交交渉の問題ですから、今の段階では深くお尋ねはしませんが、一点だけ、これは大事なことだと思うのですが、いつもの交渉を見ておりますと、交渉の終末が大てい出漁期に当たってしまう。その中に食い込んでくるものですから、もうどたん場に理屈を乗り越えた政治的な妥協に終わってしまうというのが従来の例ではなかったかと思います。それだけに、ことしの場合においては、そういうことを含んだ交渉の進め方をやはりやっていただく必要があると思います。そういうふうな御努力をしていただきたいと思いますが、最後にそれだけお尋ねをします。
  75. 河野一郎

    河野国務大臣 これまで沖取りにつきましてはだんだん研究が進んで参っておるのでございまして、しいて申せば、今まで考えておった概念が必ずしも適切であったかなかったかというふうなことについては、その後の研究によってだんだん変わってきておることは事実でございます。すなわち出漁期についても、出漁期が迫ったというておりますけれども、その迫ったということは必ずしも追っていなかった。五月の初めに出て参りましても、ちょうどしけにぶつかるというようなことになりますので、漁が必ずしも経済効果を上げていない。その後しばらくおくれることによって非常に天候が安定し、漁獲も安全のうちに操業できるというようなことも、その後いわれております。しかもあの広い海域を遊泳いたしまする魚族の流れ等もだんだん明瞭になってきておりますから、それらの点から申しまして、いつがほんとうに一番大事な出漁期であるかということ等につきましても、研究の余地はまだあるのじゃないかというふうに専門家の間にいわれておるのでございます。しかしいずれにいたしましても、ただいたずらに交渉が長引いたりおくれたりすることがいいことじゃないのでございますから、もう長年の経験、長年の意見の交換も大体煮詰まっておるのでございますから、始めればそんなに長くかからぬようにいたしたい。ただし、困りますことは、規制区域外に出漁される諸君、これらと交渉との関係がどうなるかというところに一番問題があると私は思います。従ってこれらについても遅滞なく、漁民諸君の御迷惑にならぬように善処いたしたいと考えておる次第であります。
  76. 野原正勝

    野原委員長 東海林稔君。
  77. 東海林稔

    ○東海林委員 私は昭和三十七年度の農林施策並びに予算に関する先般の大臣の御説明に対しまして、主として農地行政を中心としてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、農地問題に入る前に、一つだけ基本的な問題についてお尋ねいたしたいと思います。  それは、河野大臣日本農政の基本はこうなければならないと御自身で考えられておる方向と、昨年の六月に成立しました政府農業幕本法との間に、私が以下述べますような諸事例からして、私は相当な広きがあるのじゃないかという疑念を持っておりますので、その点を明らかにしていただきたい、こう思います。  まず第一点でございますが、昨年の十一月と記憶しますが、三十九臨時国会の直後、農相が記者団と会われてお話しされた談話の記事が新聞に出ておったのでありますが、その中に、基本法関連法案、農地法とか農協法という重要なものが不成立になったのは、自分の熱意が足らなかったことによるというような趣旨のことが出ておったように、私は拝見したのであります。担当大臣が自分で出した法案に熱意を持たないということは、きわめて奇異の感を私は持たせられたのでありますが、私が考えたのは、一つ大臣が就任後まだ日が浅いから、それらの検討が不十分だということじゃないかとも一応考えてみましたのですが、しかし農政について、長い間の経験と確信を持っておられる河野さんが、基本法なりその関連法案について一定の御見解をお持ちでないということもどうも不可解でございますので、あるいはこれは基本法についての考え方について必ずしも農相自身が満幅の賛意を表していないんじゃないかという疑念を一つ持ったわけでございます。  それから第二の点は、食管法の改正に関する河野構想の打ち出し方の問題でございます。農業基本法の審議の際に、たまたま参考資料として政府から出されました経済企画庁の所得倍増十カ年計画の中に、米については直接統制から漸次間接統制に移行するということが書いてあるということが問題になりまして、池田首相の出席を求めてその見解をただしたところ、池田首相は、この記述は間違っておる、自分としては食管法を改正する意向はない、こういうことを明確に御表明になったわけでございます。そこで前臨時国会におきましても、河野構想に関連して再び池田首相の見解をただしたところ、自分は、河野構想は現行食糧管理法を根本的に改正するものではないと考えておるから、自分の前の言明とは食い違いはないと思う、ただし国民の多数が、いやそうじゃない、これは根本的な改正に触れるもので食い違うという御判断であるならば、河野さんの構想は取りやめてもらわなければならないと考えておる、このように首相は答弁されておるわけであります。私は今ここでいわゆる食管法に対する河野構想についての論争をしようというわけではないのでありますが、ただこのように各方面に非常に大きい論議を巻き起こし、農民に対しても非常な不安を起こしたような農政上のきわめて重要な問題が、農政の基本路線であるという農業基本法の内容の一環であるということでなしに、河野農相自身の構想という形で出された、こういう点が非常に私は問題であるという点をここで指摘したい、こう思うわけであります。  それから第三の点でありますが、これは農業構造改善に関する内容の問題でございます。農業基本法第四章に書いてある農業構造改善、このことはすでに何回も本委員会でもお話がありましたように、家族経営を中心とする自立農家の育成あわせて一部協業を考える、こういうことになっておるわけでありまして、十カ年計画におきましても、二町五反程度の自立経営農家を百万戸育成するいうことが、その基本的な内容になっておるという説明があったわけでございます。ところがこの三十七年度の予算案の中に、農業構造改善という項で出されておる具体的な内容を拝見いたしますと、これは主産地形成を軸とする各町村の自主的な新農村計画、こういうふうな形で出ておりまして、両者の間に非常な差があるんじゃないかというふうに私には感じられるわけであります。  なお、さらに先般の本会議において、グリーン・レポート並びにグリーン・プランに対するわが党の足鹿議員の質問に対して、農相は、構造改善というのは従来の主として農地に依存しておるような経営から脱却して、投資額をふやし、そうして基盤を整備するとともに畜産や果樹を導入し、あるいは農産加工というようなことをそこに取り入れて、そうして収益の上がる農業経営にしていくことだ、こういうふうに御答弁になったように私は拝聴いたしたのでありますが、河野さんのその考え方を一口で言えば、これは生産構造改善ということになるんじゃないか、こういうふうに、農業基本法の第四章に書かれておる農業構造改善と非常に違うように私は考えられるわけでございます。  こういう点からいたしまして、私は当初申しましたように、河野農相の基本路線と基本法の路線というものは矛盾するとか、あるいは相反するということをあえて申すわけじゃないのでございますが、その間に相当開きがあるのじゃないかという感じをぬぐい切れないわけでありますので、まずその点からお伺いしたいと思います。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほども申し上げましたように、現在のわが国の農政をおあずかりする者といたしまして、第一に厳守しなければなりませんことは、現状の農業保護政策であると私は思うのであります。農業基本法に何と書こうが、現状の保護政策を捨てるわけには参らぬ、私はこれはやらなければならぬと思います。成長農業成長農業と言ったって、成長農業とは別の意味において保護政策は続けていかなければならぬ、これは間違いないと思います。それを堅持しつつ、そこに新たに農業基本法の精神にのっとった政策を取り入れて、そして基盤を強化し、経営拡大してやっていく。農業をこの中に構想して計画を立てていく。そうしてやって参りますうちに、いろいろ客観情勢の変化によってはまた新たにそこにプラスして参るものがあって差しつかえないのじゃないか。これを一つのものをきめてこれだ、こういうわけにはいかぬのじゃないか。そう単一に割り切れるものではないだろう。ことに御承知通り、北海道の農業から九州鹿児島の農業まで、ずいぶん距離のある農業でございます。この農業を全面的に縦横からながめて、そこにそれぞれの自立農業の形成をして参らなければならぬことでありますから、それを部分的に取り上げ、もしくは私が言葉で言うただけのことを取り上げて、そうしてああ言ったじゃないか、こう言ったたじゃないかとおっしゃれば、それはそれぞれそのときにいろいろなことがあったかもしれませんけれども、たとえば、御承知通り、この委員会であの短期間にあれだけの法案を御審議いただいたのでありますから、前国会から持ち越しの非常に広範なものについてはこの期間では困難である、やむを得ずこれは通常国会の方で御審議をいただきましょうということもあります。これを熱意が足らぬと言っておしかりを受ければ、私は決して熱意が足らぬのじゃない。無理をしいても仕方がない、委員各位もそうしようじゃないかというのでそうなったわけでありまして、決して私はこんなものはもうやらぬでよろしいと言った覚えはございません。私は、やっていただければこれほどしあわせなことはなかったのでありますけれども、そういうわけには参らなかったからおくれたのでございます。こういうことでございますので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  79. 東海林稔

    ○東海林委員 私も、具体的な政策というものがそのときそのときの農業情勢に適応したものでなければならぬということについては、同じ意見でございます。ただしかし、基本法を制定するということは長期見通しに立って農政の基本路線を設定するということでありますから、この基本路線というものがそうしょっちゅう変わるものでは困る、こういう点が考えられるわけであります。  それと関連して一つお伺いしたいのですが、午前のお話にも出ましたように、欧州共同市場の非常に急速な発展等もあって、そういうことからする日本農業に対するきびしい影響ということも、遠くない将来に覚悟しなければいけないだろう。それには、あらかじめそれに対する備えということも十分検討しなければならぬということを、農相はかねがね建言している、こういうお話がございました。またさらに農相は、昨年の基本法を検討する際はどなたもこのような情勢を予見して農業基本法を検討されたことでもなかったろうというような御発言もあったようでございます。そういたしますと、そういう重大な問題を考えた場合に、やはり農政の基本路線についても、昨年できたばかりの農業基本法であるかもしれませんけれども、そういう非常に大きい新たな問題が出てきたとすれば、そういう点を含めてもう一度検討するというような心がまえが、今の農相の御見解からすれば当然出てきていいんじゃないかという感じがするわけでございますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 これは午前も申し上げます通り農業基本法は、どういう事態が起こりましても、基本に関する問題でございますから、足らぬ点が起こった場合にはそれをプラスしていくということであって、これを行き過ぎであるとか悪いとか、根本から直さなければならぬというような事態が起ころうとは、私は今想像いたしておりません。
  81. 東海林稔

    ○東海林委員 責任ある農林大臣として、すぐ基本法を変えた方がいいということもなかなか言いにくいと思うのであります。従ってこの問題はこの程度にいたしたいと思います。  それでは、次に農用地の拡大の点についてお伺いいたしたいと思うわけであります。農業基本法の論争の際に非常に議論のありました一つの問題は、この農川地の拡大の問題でございました。私どもは、零細経営を解消するには一面に共同経営を推進する必要があるが、同時にまた農用地の積極的な拡大をはかる必要があるということを主張しました。従来の農林省のいろいろな発表にも相当余裕があるということが出ているのであるから、十カ年間に少なくとも耕地百万町歩、採草放牧地二百万町歩の拡大計画をすべきではないかと主張をいたしました。これに対しまして、当時の周東農林大臣はきわめて消極的な態度でありまして、経営規模拡大については主として中小の農家が他産業に転出をする、そこで浮かんでくるところの農地を大きい農家に集めて、そうして自立経営農家を育成するのだ、こういう建前で、農用地の積極的拡大ということについては熱意がなかった答弁があったわけであります。十カ年計画におきまして十年後の耕地状態がどうなるかということをお尋ねしたのに対しましても、大体現状と変わらない、すなわち宅地とか工業用地としてつぶれるものを補てんする程度の数字をその際にお示しになったのでございます。ところが、先日の丹羽委員の質問に対する答弁、ここに速記録がすでにできておりますが、並びに片島委員等の質問に対する御答弁を拝聴しますと、河野大臣はそうではなしに、農用地の拡大についてはきわめて積極的な御意思を持っておることを聞きまして、これは私どもまことに欣快に感じたわけでございます。そういたしますと、前大臣の農用地拡大に関する考え方はこの際これを改めて、そうして、今後は積極的に耕地並びに採算放牧地の拡大をはかっていくのだ、こういう御方針というふうに承ったわけでありますけれども、もう一度これを確認する意味お尋ねいたしたいと思います。
  82. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、わが国の現状もしくは将来にかんがみまして、現在の山に対する施策というものを、午前中にも御質問がございましたが、できることならばスイスのようにこれを積極的に利用するということが、とる、べき方法ではなかろうかと考えておるわけであります。
  83. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、皮肉を言うわけではないのですけれども、実は三十七年度計画書を拝見いたしますと、ただいまの大臣の言明とは違って、数字的にはむしろ昨年より減少するというような計画数字が出ているわけであります。これはまことに残念でありますが、それならば、三十八年度以降におきましては、ただいま大臣お話にありましたように、農用地の拡大について積極的な計画考えられ、予算的にもそういうような措置がされるものと期待してよろしゅうございますか、その点の御決意を承りたい。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 実はその点は、前年度までは、御承知通り単に採草放牧地というような意味合いで薄く、広く施策をしておりましたが、私はそれを根本的に、少なくとも開墾と申しますか、土地を一ぺんひっくり返して、そうしてほんとうの牧草地にするのでなければ効果は上がらない、ただ単にこれは採草地であるとかこれは放牧地であるとかいうてなわを張っておくだけではだめだという考えのもとに、まず、多少狭くてもいいから、ほんとうに利用される牧野というものを想定して、狭く深くやるというふうに方針を変えたのでありまして、先ほども申し上げておるように、もう少し利用する方がある、積極的にそこに酪農の取り入れが可能であるということに準備ができますれば、広がることについては私は少しもやぶさかではない、むしろ積極的にその意欲を持ってやりたいと考えておるのでございますから、これは今後後年度におきましては私責任を持って、一つ積極的に増大をしていくという方針であります。
  85. 東海林稔

    ○東海林委員 その問題に関連してもう一つお伺いしたいのでありますが、農民が今の大臣お話のような線に沿って、未墾地なりあるいは採草放牧地を収得したいと考えた場合に、その方法としては、所有者との相対ずくの相談で確保されるということをお考えなのか、それとも農地法の規定にありますように適地である場合には、必ずしも所有者の意向によらずに法の規定によってこれを収得するということも考えておられるか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 根本的に、今後積極的施策をする場合にどういう必要が起こってくるかということについては、今十分検討してやるべきである。もちろんいろいろな場合が想定されるのでございますが、ただいま考えております程度の地所ならば、そういう問題は起こらず、適地はどんどんあるだろうと考えますけれども、今後におきましては今お話のような場合が起こってくるだろう、それをどういうふうにするかということについてもあわせて検討いたしまして、次の機会には積極的に施策のできるようにいたしたいと思っております。
  87. 東海林稔

    ○東海林委員 ただ私がここで申し上げたいのは、今の農地法においては、適地があった場合にはやはり農業委員会調査をして、計画を立てて取得ができる。特に農業協同組合とか農業委員会からそういう意見具申があった場合には、国の代行として県はこれを調査しなければならぬというような法的規定になっておるように承知しておるのでありますが、その規定についてはやはりこれを尊重するということでなければいけないと思うのですが、その点をお伺いしたいと思います。
  88. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 御指摘通りただいまの農地法では、未墾地取得制度が法によりまして、適地調査の結果、取得するところは買収をかける、こういう制度になっております。この点につきましては耕地の拡張という必要から、三十五年度いろいろ問題がありまして検討いたしました結果、未墾地取得制度についても価格の点等で非常に取得の問題が難航いたしておりまして、片や政府といたしましてすでに未墾地買収をいたしました、政府の管理中の未墾地も相当まだ手持ちがある、こういうようなことでございまして、一方農用地の拡充の要請も非常にございますので、未墾地取得制度についてはただいま大臣から御答弁がありましたように、検討するとともに、新しい未墾地の開発ということにつきましては、御承知と思いますが、開拓パイロット・システムというものを三十六年度から実施することにいたしまして、相対売買で町村あるいは県あるいは国営というような形におきまして、権利の調整のつきましたところに開拓を進めていく、こういう開拓パイロット制度を三十六年度から新しく実施いたしておる段階でございまして、片や政府が持っております未墾地につきましては、既着工地区の早期完了ということと、手持ちの分につきましてもできるだけ早く開墾を進めていく、そういう施策を合わせて開拓パイロット制度を片や進めていく、こういう両建で今進んでおるわけでございます。大臣から今御答弁になりましたように、将来農地法で未墾地収得制度の必要があれば、また新しく取得するということをただいま検討中でございます。
  89. 東海林稔

    ○東海林委員 実は私の県の事例なんかから見ましても、この経営規模拡大する、特に畜産をやるような場合に採草放牧地がほしいというようなことで、未墾地なり採草放牧地の収得希望は非常に多いわけです。ところが現実の問題としてこれは国の事業でございまして、県にその費用が国から交付されるわけでありますが、その調査費なり計画費というものがきわめて不十分なために、実際には農民から調査の希望が出ても、これが全部できないというのが今の実情じゃないかと私は見ておるわけです。そういう点、今のような御方針であるとすれば、相当改善されなければならないのではないかと私ども思うのですが、その点についての御見解はいかがでしょうか。
  90. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 未墾地取得につきまして、調査につきましては国営なりあるいは県営の分につきましては、いろいろ補助をいたしております。それから小規模のものにつきましては、町村段階等である程度計画を立てて、それによって工事を着工して進めていく、こういうことに相なるわけでありまして、将来の農用地の造成ということにつきましては、自然条件なり経済条件の調査が要るわけでございまして、予備調査あるいは基本調査という形で国営、県営というふうに区分いたしまして、規模に応じて調査費を出す、こういうふうなシステムになっております。
  91. 東海林稔

    ○東海林委員 私が今お尋ねしたのは、大規模な土地改良ということと関連しての未墾地取得というものもあるかと思いますが、そうではなしに、経営規模拡大するという意味において、近くにあるそういう開拓の適地なり採草地をほしいというような農民があった場合に、それを取得するための農地法に基づく――土地改良法じゃありません。農地法に基づく調査費、この意味お尋ねしたのです。
  92. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 今後の問題といたしましては構造改善の事業の中に、そういった構造改善対策といたしまして、いろいろ村作りの基本になります開拓のパイロット事業等も、構造改善に含めてあるわけであります。その中にやはり調査費等もございます。そういうものから町村段階においては調査が進められる、こういうふうに承知いたしております。
  93. 東海林稔

    ○東海林委員 この点はちょっと食い違いがあるようですが、こまかい点ですからあとで機会があった場合に局長にお尋ねします。  次に土地改良のことに移りたいと思います。新しい年度の予算におきましても、これが三百四十億というふうなきわめて大きい数字が出ておるわけでありまして、農政の重点施策一つになっておるわけでありますが、私はこの土地改良を今後積極的に進めていく上におきまして、新しい問題としていろいろ考えなければならぬ問題もありますが、同時に従来しばしば論議されながらいまだに解決されずに、それが農民に対する重圧として土地改良の進行をはばんでおるという問題が幾つかあるかと思うのです。それを何とか解決する方途を講じなければ、なかなか今後の推進はうまくいかないのじゃないか、こういう懸念を持つわけでございますので、二、三言いふらされておる問題でありまするが、それらについてどういうような対策を講じようとしておるかという点について、まずお尋ねをいたしたいと思うわけです。  それはまず第一は、工事期間の短縮の問題でございます。先般本会議の質問のときも足鹿委員指摘されておるのでありますが、非常に期間が長いために、農村情勢も変わってきておるし、また農民は利息の負担やその他で熱意を失って、途中で停滞しているというような例が非常に多いわけであります。現在のようにこの工事期間が延びておる原因というのは、終戦直後の食糧増産が非常に要請された場合に、政府でも極力そういう勧めをしましたし、また農民自身もわれがちに計画を立てて申請して認めてもらった。一つ一つの土地改良の計画には、それぞれ年度計画はできておることはできておりますが、しかしそれが国全体の予算規模との関連なしにできておる、また予算も単年度予算である、こういうようなことから非常に工事が延びて、私の知っておる県営でも、一つで十六年もかかったというような経験もあるわけでございます。十年一昔どころか、このごろでは五年、三年一昔でございますから、こういうことでは関係農民が熱意を失うのも当然じゃないかという気がするわけであります。三十五年からでありましたか、国営の特に急ぐものにつきましては特定土地改良というようなことで、特別会計で起債をして、これを推進するというような方策も講ぜられておるのでありますが、県営以下につきましては、そういう点がまだ講じておられないというために、県営や団体営においては、非常に工事期間が延びて困っておるという問題があるわけでありますが、これについて、何らかこの際対策を講じようというお考えはあるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  94. 河野一郎

    河野国務大臣 私もかねて、ただいま御指摘になりましたように、一つの工事の完了までの期間が非常に長くなっておるということを遺憾に考えまして、完成年度をなるべく繰り上げるようにということを極力指示いたしておりますが、御承知通り、全国にわたって非常に施行地域が拡大いたしております。一朝にしてこれが全部整理できないことは、はなはだ遺憾でございますが、今後は努めてただいま御指摘のように、施行期間を短縮するということに努力して参りたいと考えます。
  95. 東海林稔

    ○東海林委員 それに関連して、これは私のきわめて粗雑な考え方でありますが、国営につきまして、特定土地改良というような制度を採用されておるわけですが、県営以下につきましても、たとえば県が起債等によって国の補助分を一時立てかえて、早期完成を期したいというような場合に、国でこれに対して利率を補償するというような施策をもし講ずるとすれば、相当な短縮ができるのじゃないか、これは私の感じでございますが、しますので、そういうことにつきまして、一口で言えば国営における特定土地改良事業というような考え方を、県営以下にも拡大するような方途を検討するというようなお気持があるかどうか、この点をお伺いいたします。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 事務当局におきまして、すでに検討いたしたそうでございます。ところが、県営以下におきましては、予算が、いろいろ特別会計にすることによって、ふくらむというようなこと等もありまして、困難な事情がある、事務当局との間に意見の一致を見ることが困難である、ということになっておるそうでございますが、なお私もこれからよく検討いたしたいと思います。
  97. 東海林稔

    ○東海林委員 今年度の新しい計画を見ますと、新規地区が県営で二十カ所というような計画が入っておるようでありますが、新規地区の採択についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 大体従来から調査をいたして参りまして、そして施行の準備が完了しておるというものから順次これを許可して参りたい、こう考えております。
  99. 東海林稔

    ○東海林委員 次にもう一つの問題は、排水事業をやる場合の工事費の地元負担の問題でありますが、従来からも、土地改良法によって排水工事をやる場合には、地元負担は、これは田畑を持っておる農業者が負担する、こういう形でございます。しかし、実際の受益者は、必ずしも農民だけではなくて、あるいは宅地その他の土地を持っておる者も利益を受けるし、また実際には、排水する雨は、自分たちの地域に降る雨だけではなしに、上流地区から流入する水量が多いということで、ずいぶん従来から問題があったのでございます。特に最近におきましては、工場の地方分散というようなことも関連いたしまして、地方にもだんだん大きい工場ができてきておる。その工場の排水等が、多量に農業排水のところに流れ込んでくるというような事態があるわけです。そういうことについて、新しい事態考えて、これは何とか法的な、そこにはっきりした規定を作る必要があるのじゃないか。現在そういうような問題で、農民側と工場側で紛争を起こしているというような事例もだいぶあるようでございますから、そういう点について、これは至急に善処する必要があるのではないかと考えておるわけでありますが、その点に対する御所見を伺いたいと思います。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 実は御指摘のような場所が、新潟県その他にございまして、その一部につきましては、明年度予算の中に、排水事業の一部を政府が負担するという道を開いてあるわけでございます。そういう事態がございましたならば、順次善処して参りたいというふうに考えております。
  101. 東海林稔

    ○東海林委員 私は今建設工事費の点を申し上げたつもりでございましたが、ただいまの御答弁関連しまして、今度は維持管理の費用について……。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 維持管理のことを申したのです。
  103. 東海林稔

    ○東海林委員 それに関連してもう一度お聞きしたいと思うのでありますが、この維持管理は、御承知のように原則的には土地改良がこれに当たる。土地改良法においても、土地改良区から申請があって、必要な場合には、国または府県が管理することができるというふうな規定になっておるように承知しておるわけでございます。現在では、この予算を見ましても、国営造成施設管理費として七百七十三万五千円というものが計上されて、北海道並びに内地で一カ所ずつの国の管理の地区があり、また、ただいま大臣から御答弁がありましたように、来年度から新たに県で、この維持管理をするものに対して四割の助成をするということで、一千二百万の金が計上されているようでございます。従来土地改良区がみずから管理するというような考え方は、確かに地主が土地を持っているような場合には、そういう能力もございましたし、また一つには慣行水利権であるとか、あるいは土地改良施設というものは、私的財帳だというような考え方もありまして、むしろみずから管理したいというような意欲が相当強かったと思うのであります。しかし現在におきましては、そういう考え方は非常に変わってきまして、地主がなくなったということもあって、経済的にこの経費負担が困難になったという形もございますが、また同時に、この土地改良施設というようなものは、ある程度公共的な性格を持っているというように、考え方も変わってきているように思うわけです。そこで最近では、たとえば主要道路については、国が管理しあるいは県が管理しているのじゃないか、土地改良区についても、もっと国なり県で管理するという考え方を強めて、また実際にそういう管理をやるべきじゃないかという意見が多分にあるわけです。今年新たに、ただいま大臣の御説明のような方策が講ぜられることになったことは、私は非常にけっこうだと思うのでありますが、しかし、これはごく限られた個所でございますので、これをもっともっと幅広く、主要なものについては国なりあるいは府県で責任を持って管理する、こういう方向に進むべきじゃないかと思うのでありますが、これに対するお考えを伺いたいと思うのです。特に、たとえばため池等の管理なんかが不良のために、豪雨によって災害を起こすとか、あるいは水路の維持管理が不十分なために、災害が起こるというような事例もあるわけでございますので、そういうような意味から、私はもっともっと積極的にこの考えを推し進めるべきじゃないかと思うのでありますが、御所見を承りたい。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ考え方はあると思うのですが、あまり広範にわたりますと、つい手落ちもできますので、やはり自分のものという気持で十分管理していただき、それに対して政府が一部補助をするという考え方が、団体営、県営以下のものについては適切ではないか、こう今考えておるわけでございますが、事例につきましては十分検討することはやぶさかでありません。
  105. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、今の大臣の言葉にもあったのですが、私は今度新たに計上されました千二百万円は、土地改良区の申請によって、新潟県が責任を持って管理するのに対して、国が四割補助するということでございますから、かりに府県が管理できなくて、今お話しのように、ある場合によっては土地改良区みずからが管理した方がいい場合があり得ると思いますが、しかしその場合におきましても、やはり維持管理費の負担ということについて、土地改良区で実は非常に問題になっておるのでありますから、県が負担する場合に四割を補助するということであるならば、やはり同じように、土地改良区みずからが管理する場合にも、そういうような助成は当然考えらるべきじゃないかと思うわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  106. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 国の国営造成施設、あるいは県営で作りました施設、あるいは団体営で作りました施設、いろいろ規模なりによって施設があるわけでございまして、国が作りました施設は、大体大規模のものが多いわけでございまして、その受益面積も非常に広い。それからダムにいたしましても、今御指摘のように、管理いかんによりましては、水利の問題あるいは洪水の問題等、非常に公的な色彩を帯びてくる問題がある。あるいは管理の仕方につきましても、大規模になってきますと技術的に非常に困難な問題がある。そういうような面から、県の施設につきましても、直轄で国が管理する場合、これはすでに御指摘のように北海道ないし新潟等でございますが、国が作りましたものについてもやはり県の段階で管理してよいというものもあろうと思います。ただ、建設省あたりの河川管理あるいは道路管理等と、土地改良によりまして造成いたしました施設というものの性格が、公共的な面におきまして、建設省の方は不特定多数の公共性、それから土地改良でやります分につきましては、国営にしても特定した多数の農民の利益に奉仕するもの、そういったところで本質的に多少の違いはございますが、そういった面を勘案しながら、県、国が直轄するもの、あるいは県に委託してやるもの、あるいは団体が直轄してやるもの、こういうものがあろうかと思います。ただいまのところでは、やはり公的色彩とかあるいは技術的に非常に困難だということで、県なり団体がやる場合に補助するというところまで話が進んできたわけでございますが、今後の問題といたしまして、団体みずからがやるのが建前でございますが、それについては今後検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  107. 東海林稔

    ○東海林委員 私が今お尋ねしたのは、県で管理する場合に四割の補助を出すならば、団体で管理する場合にも補助を出したらいいと思うが、そういう考えはないかということを聞いたのでございますから、一つその点を御答弁願いたいと思います。
  108. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 今の管理費補助の考え方の根本は、先ほど申しました技術性の問題とか、公共の利害に非常に関係するものは、管理方法、管理の仕方が非常に影響する、そういった面からこれは国が直轄でやる、あるいは県でやった方がいい、こういうような性格で、それについて補助をしていこう、こういうことに相なるわけです。団体みずからがやれるもの、団体が十分管理できるもの――ただ負担の問題だけは、土地改良の事業の当初の建設費と、でき上がった後の管理費といったようなものは一応経済的増産効果あるいはその後におきます積極、消極のいろいろな便益、そういうもので一応償いができるという立て方になっておりますが、その点については、われわれとしてはそういう必要性の問題について今後特に検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  109. 東海林稔

    ○東海林委員 今の点は一つ大臣も今後検討していただきたいと思います。  次に移ります。この前の臨特国会で各党一致で不振土地改良区の財政の再建に関する決議をいたしまして、財政的な不振改良区の救済について何らかの措置を講ずるようお願いをしたわけですが、今度の予算を拝見しますと、約六百万円の予算が計上されまして、調査並びに指導に当たる、こういう説明がついておるわけでございます。額としてはきわめて不十分なようでございますが、私がこれでお伺いしたいことは、これは第一年度だからこの程度だが、今後はさらにもっとこの問題を調査した上で本格的に取り組むという心組みで、第一年度六百万円を計上したのか、あるいはこれは一年ぽっきりのものか、その辺を大臣にお伺いしたいと思います。
  110. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 不振土地改良区の不振の対策をして決議がありましたことは、われわれも承知いたしまして、慎重に審議いたしました結果、土地改良区の不振の原因なり不振の実態というものをさらに十分把握しなければ、これに対する措置ができないというような事情に立ち至っておりまして、三十七年度におきましては、不振土地改良区を選定してその実態を究明いたしまして、財政再建の措置を講ずる基本を調べる、それで、その段階において財政再建の整備ができればそれでもよろしいが、あるいは金融の段階でその条件を金融機関と話し合って処理すれば結末がつくものもあろうかと存じます。そういういわゆる不振の原因を究明して金融機関とのあっせんをやるというのが、来年度の予算の実態でございます。そういう実態の究明されましたところでこれに対する――土地改良区にいわゆる金融ベースでは処理できないようないろいろな問題があろうかと思いますが、それにつきましては、今後予算的あるいは法的に措置いたしたい、こういう感覚で、来年はとりあえず実態の究明ということで処理いたしております。
  111. 東海林稔

    ○東海林委員 大臣に申し上げたいのですが、この決議をされた場合に、これは慣例通りかもしれませんが、前農林大臣は非常に熱意ある口調で、大いに努力するというようなことを言明されているわけであります。決議の内容には、予算措置と同時に法的措置ということも盛ってあるわけですが、今回政府で、予算措置は一部してあるが、法的措置がしてないということで、わが社会党としてはこれに対して議員立法という形で提案しているわけでありますから、そういう意味で、これは野党の提案だということでなしに、十分一つ御検討をお願いしたいことをまず申し上げたいのであります。  さて、今後の問題として、一、二お伺いしたいのですが、新年度計画を見ますと、一般の土地改良の予算のほかに、先ほどもちょっと申し上げました主産地形成を軸とした町村ごとの新農村計画の中においては、農道の問題だとか、あるいは農地の集団化の問題とか、あるいは田区を三反歩にするとか、そういう土地改良の内容を含んでいると思うのです。そこでお伺いしたいことは、一般の土地改良の予算でもって実施する計画と、この構造改善と称する中で実施する土地改良に類するもの、そういうものとの総合的調整をどうするか、こういう問題であります。所管から申しましても、一般土地改良の方は御案内のように農地局でございますし、片方は振興局、今後機構改革があると農政局の所管になる、こういうふうに承知しております。そうなりますと、いよいよその間の総合調整を十分にして、国全体としての計画がどうあるべきかということ、それとの関連をどういうように総合調整していくかということが、非常に大事な問題になるではないかと思いますが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  112. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま御質問のございました通り構造改善事業の両予算の中におきましても、約四割程度は土地集団整備事業に充てる、こういう予定にいたしているわけであります。その事業自身といたしましては、いわゆる構造改善事業として村の総合計画を立って、その一環として土地集団整備事業をやるということになろうかと思うのであります。そこで、事業自身としては、従来農地局でやっていた事業と実質的には同じものになろうかと存じます。従って、事業の基準というようなものにつきまして、大体従来農地局でやっておりました農地の最低基準等によって事業を取り上げて参りたい。施行の上につきましては、構造改善辛業をして一応振興局に計上されておりますけれども、実施にあたりましては、農地局あるいは県の耕地課等の指導を通じましてこれを実施していきたい、その間に何らのふつり合いがないようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  113. 東海林稔

    ○東海林委員 この点は今後実施の、面について大臣に特に御留意を願いたい、このようにお願いいたしたいと思います。  次の問題でございますが、今度の予算の中に利根水系の開発特別調査費五千九百万円というのが上がっているわけであります。最近水資源の開発ということが非常に大事な問題になっておりまして、農業用水、工業用水あるいは飲料水という大規模な総合的な開発がいろいろと考えられるのでありますが、その場合には、私は、どうしてもこれは大局的見地といいますか、大所局所からこれを計画されると思うわけです。ところが、現在の土地改良法による土地改良計画は下からの関係農民の盛り上がりといいますか、民主的にこれはできておると思うのです。下からの討論によってお互いにやろうというようなことになった場合に、お互いの納得するような計画でやろうという、こういう下からの盛り上がる計画だ思うのです。ところが、大きい水資源開発というのは、どうしても上からくる、こう思うのです。そういう点で、今後の大規模な水資源開発計画に水源を求めなければならぬような土地改良事業の実施というような場合に、現在のこの土地改良法の下から盛り上がる式のやり方との間になかなかむずかしい調整の問題があると思うのでありますが、そういう点についてはどのようにお考えでございますか、お伺いしたいと思います。
  114. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 利根水系の開発につきましては、御承知のように群馬用水そのほか今調査段階でございます。これについては、事業実施を水公団でやるかどうかということは将来の問題になろうかと思いますが、水公団で取り上げる場合におきましても、やはり御指摘のように土地改良事業は下から盛り上がった事業でございまして、水公団でやる場合におきましても、その計画等については、地元の意見を十分聴取するということに相なっておりますので、そういう手続を踏みまして、地元の意向が、水公団でやります場合におきましても、阻害されないで十分反映するように、チャンスがございますので、そういうチャンスを十分利用して、地元の意見に沿わないようなことにならないように注意していきたい、こういうふうに考えております。
  115. 東海林稔

    ○東海林委員 まあこの問題は非常にむずかしい問題ですから短時間に議論できないと思うのです。そこで一つだけお伺いしたいことは、こういうような問題と関連して、土地改良法の根本的な改正ということについて農林省としては検討する意思があるかないか、その点を一つ伺いたい。
  116. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 土地改良法の問題につきましては、農業基本法のもとにおける土地改良はどういうふうに進むべきかというような問題、あるいは計画樹立の方式につきましてもいろいろ問題がございまするし、先ほど御指摘がございました建設費につきましての、農業と非農業の負担の問題、あるいは管理に移りましてからの管理費の負担の問題、あるいは先ほど御指摘の不振土地改良工事をどうするかというような問題 いろいろ問題がございまして、われわれといたしましては先般来から検討はいたしております。問題が非常に広範になっておりまして、まだ十分な結論には達しておりませんけれども、そういう問題は非常に大きな問題でございますので、われわれとしては検討を進めて、成案を得ますればまた改正ということに相なると思います。
  117. 東海林稔

    ○東海林委員 最後に私は、旧地主に対する二十億の融資の問題について大臣にお伺いしたいと思うのです。この問題は、先般も丹羽委員並びに片島委員からすでにお尋ねになっておるわけでございますが、私は、これまでの御答弁を伺いましても、この融資のねらいがどこにあるかという点がなかなか理解できないわけでございます。御承知のように、けさの新聞によりますと、十三日に、農地被買収者調査会では旧地主を含めての実態調査が大体でき上がって、さらに十四日からどういう対策を講ずるかという問題について調査に入る段階で、六月ごろまでには答申ができるであろう、こういうような新聞記事が出ているわけでございます。  まず第一点は、あるいはやや重複した質問でおそれ入るのでありますが、このように、せっかく法律に基づいて設置した調査会が近く答申されようとしておるような時期を目の前にして、どうしてそれと関連なしに今回の措置を講ぜられたか、この点がまず一つでございます。  それからもう一つは、大臣の今までの御答弁によりますと、調査会で検討している問題とは別だ、こういうような御答弁であったわけでありますが、別であるとすれば、そのねらいは一体何なのか、こういうことをまずお尋ねいたしたいと思うわけであります。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 国民金融公庫を通じて資金の融通をするということになっております点で明瞭でありますように、この資金は生業の資金でございます。旧地主の諸君が生業資金をほしい、なかなか金融がつかない、つかないからぜひ一つ何とかしてくれという一つの社会問題が起こっておるわけでございまして、それに対して早急に資金の融通の道を開いていく、こういうことでございます。
  119. 東海林稔

    ○東海林委員 今、大臣は、旧地主の中で生業資金がほしいという者が多い、こういうお話でございますが、生業資金がはしいというのは決して旧地主だけに限ってはいないと思う。国民金融公庫の業績発表を見ましても、大体、貸してほしいというて国民金融公庫に申し込んで、その結果貸していただけている人は大体三分の一、こういうことが出ておるわけです。これは決して旧地主だけが貸してくれということでないのでありますから、もしその貸してくれという者に貸すというのであれば、大体現在の三倍くらいに資金をふやさなければそういうことにならないのではないかということが一つの疑問でございます。  もう一つは、ただいま、大臣は、旧地主で生業資金がほしいという者が多いというお話でございますが、せっかく調査会調査して、その結果が十三日にまとまったというのに、大臣の、生業資金がほしいという旧地主がたくさんあるということはどこの資料から出ているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 昨日の――そういうふうなことを言うのはどこから出てきたかという御意見でございますが、お互いに代議士の集まりでございますから、日本じゅうのことは、社会党さんにもおわかりになるし、私ども国民党にもわかるわけでございます。そこでわが党では全国の情勢をわが党に反映いたしましたものを集めまして、党としてこれには生業資金を出すべきだという党の決定の方針に基づいて内閣においては処置をした、こういうことでございます。
  121. 東海林稔

    ○東海林委員 自民党の党議できまったという点はよくわかるわけでございますが、それならばどういうねらいでそういうことをきめたかということをお聞きしたいわけです。生業資金がほしいという人があるから貸すのだ、こういうお話ですが、しかし、ただいまも申しますように、生業資金がほしい者はたくさんほかにもおるわけですから、そのねらいがどこにあるか、その点をお伺いしたいと思います。
  122. 河野一郎

    河野国務大臣 どこにあるかといって、党の方で調査をいたしました結果、これは二十億程度のものを生業資金として国民金融公庫から融資することが適当であろうという党議の決定がございまして、内閣としてもこれを取り入れて組むことにした、こういうことでございます。
  123. 東海林稔

    ○東海林委員 政党政治ですから、与党の意見を尊重するということはよくわかりますが、大臣答弁で、予算の編成権というものは政府にあるわけですから、自民党が言うたから出したのだという答弁では、私は、国会の答弁としては受け取れないわけですが、その点もう一度あらためて御答弁を願いたいと思います。
  124. 河野一郎

    河野国務大臣 党の決定を妥当適切なものとわれわれも考慮いたしまして予算を組んだわけでございます。
  125. 東海林稔

    ○東海林委員 もう少しその点を明らかにするために別な観点からお尋ねしたいと思うのですが、それならば、今回の二十億円はどういう要領で、どういう条件で貸し出されることになっておりますか。その点をお尋ねしたいと思います。
  126. 河野一郎

    河野国務大臣 まことにぶしつけな答弁でございますが、大蔵大臣の方で所管いたして、向こうでやっておりますから、大蔵大臣にじきじきに御質問を願いたいと思います。
  127. 東海林稔

    ○東海林委員 その点はそれでは今度の機会に、せっかく今農林大臣もそう言われるのですから、大蔵大臣を呼んでいただいて、そこで私は質問することをお許しいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。(「理事会で相談」と呼ぶ者あり)  それでは別な点から質問をいたします。先日のお答えの中に、地主補償の問題は農地法の改正と関連して再検討すべき時期にあるとかねがね考えておったし、今も考えておるのだ、あの改革当時においては、出征であるとか、あるいは都会に一時いたということでも不在地主として処置された。しかし今度の農地法の改正の中では、信託制度を通じて一部不在地主も認める、こういう形になっておるので、そういうことと関連してこの際政治的に何らか考慮する必要があると考えておる。しかしその具体的な対策は与党並びに政府においてこれを検討して基本的な態度をきめるべきで、きまったものを推進するのが自分の立場だ、こういうふうに御答弁になったように記憶するわけでありますが、私はそれを伺って、今度の農地法の改正案の中にそういう点があるから情勢は非常に違ったという考え方、どうもよくわからないのでありますが、その点もう少し御説明をいただきたいと思います。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話しになりました通りに、農地法制定の当時におきまして不在地主として処置された諸君が、同じ条件におきまして、今回提案いたしております改正案におきましては信託の道も開かれるということになっておる。そのこと自体が私は違っておるのじゃないかという気がするわけであります。
  129. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、この問題は農地法の改正と一体をなしておるもので、万が一農地法の改正というものが成立しなかった場合、あるいは今の不在地主の生ずる原因である信託、特に管理信託というような制度が修正されたというような場合には、この問題はどういうことになりますか。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 この問題とは……。
  131. 東海林稔

    ○東海林委員 今のそれと関連して、その情勢が変わったから融資の問題を考えた、こういうお話でございますから、もし国会において農地法が、すでに二回も成立せずにおるのですが、もう一度もし成立しなければ、政府でもあきらめなければならぬ立場だろうと思うのですが、そういうようなこと、あるいは審議の過程において、御承知のように管理信託というものはずいぶんむずかしいとして異論が多いわけですが、そういう点が修正されますと、不在地主という考え方が農地法の改正の中から除却されてくることになると思うんです。そうなると、これはもとに戻って、予算には計上したが実施しなくてもいいということになるのかどうか、その点もお伺いしたいと思います。
  132. 河野一郎

    河野国務大臣 それはちょっと話が違うと思います。これはそういうふうになったから、その対策として二十億ということじゃないのでございまして、それならば、いろいろ御主張がありますように、委員会の答申を待ってやったらどうかということと矛盾があるという御主張通りに私はなると思います。そうじゃなくて、委員会の答申を待つまでもなく、現在の情勢においてこれらの生業資金を出してやる必要があるということでこの資金を出したということでございます。一方農地の制度の改正の法案等が出ております。それについては別に考慮の必要なしというのが党の方の決定と私は心得ておるのでございます。
  133. 東海林稔

    ○東海林委員 丹羽委員の質問に対する答弁の一番終わりの方に「つまり補償はいたさない、ただし生産資金等において困窮しておられる旧地主には資金の貸付をするということでわが党はいくということに結論が出ておりますから、その方針にのっとって私は農政振興いたすという所存でございます。」こう書いてありますが、このことは今回の二十億融資に限ってのことでございましょうか、それとも地主の農地補償についての今後にわたってのお考え方でございましょうか、この点ちょっとお聞きしたいと思います。
  134. 河野一郎

    河野国務大臣 党の態度が、この農地の問題について、一応この二十億の融資をもって第一段階としてわれわれ決定いたしておりますから、ただしなお引き続き委員会は検討を続けておるようでございますが、今後その委員会の検討の結果が別途に出てくれば、またそのときに私としてはあらためて考慮する。一応はこの決定、この処置をもって、農地に対する私の考え方は党の方針として進むつもりでございます。
  135. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、今後党の方でいろいろとまた別な対策を講ずべきだというようなことであれば、さらに農林大臣としては考える、こういうことでございますが、新聞報道によりますと、党の方ではさらに第二段として、困っておる旧地主に対する救済ということではなしに、やはり土地に対する補償ということも検討されておるというふうな新聞報道が出ておるわけでありますが、そういう党の決定があった場合には、農林大臣としてはやはりそれを尊重してそれの処置をされる、こういう御趣旨でございますか。
  136. 河野一郎

    河野国務大臣 重大な政策でございますから、私は党の決定に従って、その方針に基づいてやるつもりでございます。
  137. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、これまでしばしば総理大臣その他が国会で答弁されておることと私は非常に食い違いが出ると思うのであります。昨年の十月二十五日かと思いますが、参議院の決算委員会における池田総理の答弁を見ますと、従来の方針には変わりはない。「農林大臣だって、政府の方針はよく御存じだと思います。」従って従来の政府の方針と違うようなことは農林大臣はしっこないという趣旨のことを答弁されているわけですが、今のあれは、今後の問題として党の決定があればそれを尊重するのだ、こういうことでございますが、しかしながら最高裁の判決にも出ておりますように、補償という問題は従来政府では一切考えないということをしばしば言明されているわけです。ただ河野大臣は、私の記憶によりますと、大臣でなかった約三年前に、新潟県の農民の会合においでになりまして、補償はすべきだ、その財源は、解放を受けた農民が土地を手放す場合に値上がりしたその差額を税金でとって与えたらいいじゃないかという談話を当時発表されたことを、私は新聞で見たのを今でも記憶しておるわけでありますが、そういう河野大臣の個人の考え方は別としまして、大臣として、今党で補償という問題が出れば当然自分としてはそれを推進するのだ、ということをはっきりおっしゃっていただくと、従来の国会における首相初め各担当大臣の言明と非常に違うというように私には受け取れるわけですが、それでよろしゅうございましょうか。
  138. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、党の決定が変わってくれば、政党内閣であります以上は、内閣としても党の決定に従って政策を実行するということは、各党とも同じだろうと思うのであります。従って、端的に申し上げますれば、総理は総裁でございますから、総理、総裁が自分はやらぬと言明されて、それと違った党の政策が出てくるというような場合が一体あるだろうかないだろうかという問題が出てくるわけでございます。従って私は基本論を申したのでございまして、どなたでも党の方針に従ってやります。大臣はこう答えるよりほかに答えようがないだろうと私は思うのでございます。その通り答えたのでございますが、今のお尋ねがございまして、お前おかしいじゃないかと言われても、これは社会党の大臣が出られてもやはりそう答えられるだろうと私は思うのでございます。
  139. 東海林稔

    ○東海林委員 この問題はこれ以上やりとりしても大体同じだと思いますので、この点でとめたいと思いますが、ただ私は大臣にお願いしたいことは、党の決定を尊重されるということは当然でございますが、しかし、党の決定と同時に、法案を政府の法案として出す場合、あるいは政府の予算として組む場合は、やはり政府としての判断というものがあってしかるべきだと思うのです。議員立法として出される場合は問題は別でございますが、やはりその点をとくとお考えおきを願わないと、私は党一辺倒の農林大臣ではちょっと困ると思うのでございます。これは非常に失礼な言い分でございますが、そのことだけを申し上げまして、以上で私の質問を終わります。  重ねて委員長にお願いしますが、先ほどお約束願いましたように、大蔵大臣の適当な機会の出席についてのお取り計らいをぜひ一つお願いいたしておきます。
  140. 野原正勝

    野原委員長 委員長から申し上げます。この問題は大蔵委員会に付託されておる案件でございますから、大蔵委員会の方と協議いたしまして、農林委員会農政上の問題には関連はあるかもしれませんが、必要があれば、大蔵委員会の方で、一つ十分に御質問なり何なりお願いしたいと思います。理事会で相談をいたします。
  141. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほどの東海林委員の土地改良区の問題についての御質問に関連して、資料の要求をいたしたいと思います。  一つは、先年関係団体に調査費を交付して調査になりました土地改良区の経営診断とでもいいますか、その資料があると思いますので、一つこの際当委員会にそれを公開していただきたい。それから土地改良に関連しまして、農地の集団化の年次別の進捗率、現在の実績、将来の計画、そういうような点につきまして、御調査の上資料として御提示を願いたい。いただけるでしょうか。
  142. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 第一番の土地改良区の経営診断書はまとまっておると思いますので、至急取り調べまして、できますれば至急出したいと思います。それから集団化の方はございますので、さっそくお出しいたしたいと思います。
  143. 野原正勝

    野原委員長 次会は来たる二十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会