運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-14 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十四日(水曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君       安倍晋太郎君    稻葉  修君       大野 市郎君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    小枝 一雄君       坂田 英一君    内藤  隆君       中山 榮一君    福永 一臣君       藤田 義光君    松浦 東介君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (蚕糸局長)  立川 宗保君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 増田  盛君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁次長   村田 豊三君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     石田  朗君         農林事務官         (畜産局参事         官)      保坂 信男君     ————————————— 二月十四  委員寺島隆太郎辞任につき、その補欠として  亀岡高夫君議長指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君辞任につき、その補欠として寺  島隆太郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  瀬戸内海に国立増殖センター設置に関する請願  (小枝一雄紹介)(第九二五号)  岡山県に国立栽培漁業実践活動センター設置に  関する請願小枝一雄紹介)(第九二六号)  岡山県に中国和牛改良増殖センター設置に関す  る請願小枝一雄紹介)(第九二七号)  農業改良普及事業整備強化に関する請願(小  枝一雄紹介)(第九二八号)  農業近代化資金利子補給率引上げ等に関する  請願小枝一雄紹介)(第九二九号)  母船式さけ、ます漁業許可に関する請願(田  中彰治紹介)(第九三二号)  農業協同組合合併助成法による援助措置のそ及  適用に関する請願外三十六件(小枝一雄君紹  介)(第九六一号)  臨時肥料需給安定法等廃止反対に関する請願  (木村守江紹介)(第九六二号)  大規模草地開発事業及び草地改良事業に関する  請願羽田武嗣郎紹介)(第九七八号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇四三号)  同(中島巖紹介)(第一一一六号)  土地改良事業に対する助成措置に関する請願(  羽田武嗣郎紹介)(第九七九号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇四四号)  同(中島巖紹介)(第一一一七号)  てん菜生産振興支持価格引上げに関する請  願(羽田武嗣郎紹介)(第九八〇号)  同(唐津俊樹紹介)(第一〇四五号)  同(中島巖紹介)(第一一一八号)  出雲崎漁港修築工事促進に関する請頒(田中角  榮君紹介)(第一〇六〇号)  学校給食用牛乳供給施策継続に関する請願(  鈴木善幸紹介)(第一二一三号)  現行食糧管理制度維持継続に関する請願(宇  野宗佑紹介)(第一二二二号)  林道網整備拡充等に関する請願宇田國榮君  紹介)(第一二四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した件案  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第八  九号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  森林法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。中馬農林政務次官
  3. 中馬辰猪

    中馬政府委員 ただいま提案せられました森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現行森林法昭和二一六年に制定されて以来、すでに満十年余を経過いたしておりますが、この間において、わが国林業ないし森林状況は、相当大きく変化いたしております。  森林資源状況について見ますと、造林事業は年々着実に推進されておりまして、人工造林地面積はすでに民有林総面積の三〇%以上に達しており、今後もなお確実に拡大していくことが予想されております。また、森林資源の保続上最も憂慮すべき幼齢林伐採も、過去における伐採許可制度運用の実績から見ますと、さほど心配する必要はないように判断されるのであります。これらのことは、奥地林開発による老齢林伐採や、林種転換促進等に対する国の積極的施策と相待って、森林所有者が合理的な施業を行なう傾向が強くなってきたことの現われであります。  一方、最近における経済成長発展とともに、木材に対する需要増大の一途をたどっており、また、その需要構造も変化して参っているのでありまして、この変化に対応するためには林業生産を積極的に増大するとともに、需要に対し供給を弾力的に対応せしめていくことがますます必要となっているのであります。  このような林業の動向ないし森林資源状況を考慮いたしますと、今後の森林資源対策方向としては、立木伐採について法的な制限を加えるという消極的な対策よりは、国が強力な指導援助を行なって森林所有者林業経営意識をさらに高めることに努め、その自発的意欲によって積極的に森林資源を造成していく方が望ましいと考えられるのであります。従って、このためには、林業生産長期性にかんがみ、林産物需要等に関する長期見通しを立て、これに即して全国森林計画地域森林計画を立てることとする等森林施業基本となる森林計画制度を改善し、一般森林についての画一的伐採許可制度を廃止して、弾力的な諸施策のための体制の整備をはかる必要があるのであります。  また、以上のように一般森林についての伐採許可制度が廃止せられること、及び奥地開発もますます進行することを考えますと、保安施設制度は、これまで以上に国土保全の上で重要な使命を負わされることとなります。従いまして、保安施設制度につきましても、保安林等が常にその指定目的に即して機能することを確保するため、所要の改正を行なう必要があるのであります。  以上が、この法案提案した理由でありますが、次に、この法案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、森林計画制度及び伐採許可制度に関する改正であります。すなわち、現行森林基本計画森林施業計画森林実施計画を廃止するとともに、保案林等を除く一般民有林についての伐採許可制度を廃止し、かわりに、農林大臣は、重要な林産物需要及び供給並びに森林資源状況に関する長期見通しを立てるとともに、これに即して全国森林計画を立てることとし、都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、地域森林計画を立てることといたしました。森林所有者等は、この地域森林計画に従って施業することを旨としなければならないものとし、森林所有者等がその森林施業について地域森林一画を順守していない場合は、都道府県知事は、必要な勧告をすることができることといたしました。なお、森林施業に関する指導を行なう必要から、森林所有者等は、立木伐採する場合には、あらかじめ、伐採届出書都道府県知事に提出しなければならないことにいたしております。  第二は、保安施設に関する制度についての改正であります。その主要点の第一点といたしましては、従来森林施業計画及び森林実施計画において示しておりました保安林等施業要件を、その指定の際にあらかじめ、森林所有者に明示する仕組みにすることにいたすとともに、その立木伐採について都道府県知事許可をする場合には、その指定施業要件に定めるところに従ってこれを行なうことにいたしました。  第二点といたしましては、保安林における植栽の義務を明確化し、保安林所有者は、指定施業要件に従って、伐採跡地植栽しなければならないものとするとともに、植栽をしない場合には、都道府県知事は、指定施業要件に従って植栽すべき旨を命ずることができることにいたしました。  第三点は、保安林が常にその指定目的に即して機能することを確保するため、農林大臣及び都道府県知事が適切な措置をとるように努めなければならない旨の規定を設けることといたしたことであります。  なお、以上の改正に伴って必要となる経過措置を講じ、また、関係法律規定整備することといたしております。  木林林法の一部を改正する法律案提案理由及び主要な内容は、おおむね以上の通りでございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 野原正勝

    野原委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。片帰港君。
  5. 片島港

    片島委員 最初に、大臣に対して農林省機構改革の問題でお尋ねをしてみたいと思うのであります。  地方農林局設置せられ、また新聞報道などを見ますと、農林省が直接地方に出店を拡張して、その地区、そのブロックに応じた農林行政をやっていくということでありますが、これに伴って公務員の定員が幾らかふえるものかどうか。また、これほど大きな改正をせられるとなれば、相当本省から地方に役人が出ていく、転勤といいますか、地方の方に異動が相当あるであろうと思うのでありますが、それらの構想はどうなっているか伺いたい。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 一応は人員増加はいたさない、それから本省から相当の人を地方に出して行政していただくという所存でございます。
  7. 片島港

    片島委員 およそどのくらい中央から地方へ転出せられる見通しでございましょうか。
  8. 石田朗

    石田説明員 ただいま予定いたしております定員増関係は、地方局設置分といたしまして約百五十名程度予定いたしておりますが、その他全体の中央地方の調整によりまして、地方事務局の仕事が遺憾のないようにいたせるようにいたす所存でございます。
  9. 片島港

    片島委員 百五十人増員ということですが、大臣増員は予定しておらないというお話だったのですね。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 振りかえを百五十名する、全体の定員の増はいたさぬ、こういうことでございます。
  11. 片島港

    片島委員 地方農林局設置に伴って、食糧事務所林野庁関係国営林野行政営林局だけは統合しない、この前こういうお話でありましたが、食糧事務所あるいは営林局の中から民有林行政といいますか、国有林でない部分は、一般林野行政は移す。そうしますと、食糧管理制度の問題もいろいろと河野構想なんかが発表せられておるのでありますが、食糧事務所国営国有林行政だけを別にしておくというと、何か新たにこの分野においてまた河野大臣が別途の考えを持っておるのではなかろうかという疑惑を聞くのでありますが、何かそういう含みがありはしないか。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り国有林経営と食管に関する問題は現業の問題でございますから、これは現状通りが適当であろうという意味で、これは今度の機構改革の中には入れないという趣旨でございまして、別にこれらについては他に所存があるというわけではございません。
  13. 片島港

    片島委員 次に年次報告に関連いたしましてお尋ねをしてみたいと思うのでありますが、農家所得が年々着実に伸びて、この前本会議における藤田議員に対する答弁におきましても、農家所得は着実に少しずつ伸びていくのがいいので、伸びたり縮んだりしたのでは困るというような御答弁でありました。伸びたり縮んだりしては困るのでありますが、しかし農家所得がふえておるといいましても、むしろ農外所得が大幅に伸びておって、農業所得というのがふえていない。農業を企業として、産業として確立するためには、農業所得増大が最も重要なことであります。ところが農業所得でなく農外所得が非常にふえておる。農業基本法の第一条は、農家所得をふやすというのでなく、農業そのもの所得をふやしていかなければならぬ。農外所得が非常に伸びたにかかわらず、農家所得全体としては他産業従事者とまだ非常な開きがある。農業そのものについての所得ということでなく、農家所得で、しかも農外所得がふえておるということになりますと、一般経済一般の他産業によって農家所得そのものが振り回されるようなことになるのであります。農業そのもの所得がふえていない。この点について、足鹿議員の質問に対しても非常にあいまいな点があったのでありますが、年次報告を読んでみますと、他産業伸びがあまりにも急激であったために、これに追いつくことができなくて格差が拡大をした、こういうようなことを口頭でも御説明があり、年次報告でもなっておるのであります。ところが私どもは農外所得がふえておるというような点から考えましても、少しずつではあるが農家所得が増したということは、他産業高度成長にささえられて農家所得があれだけ伸びたのではないか。年次報告に言うように一般の他産業が非常なスピードで超高度成長をしたので、それに追いついていけなかった、歩調が合わなかった、こういうことでありますが、私は他産業が非常に高度な成長をしたがゆえに、あれだけのことでも農家所得伸びたのではなかろうか。もし御説明のようでありますならば、他産業がここで非常にスピード・ダウンをして高度成長でなく、歩調をだんだんゆるめて待っておれば、農業だけは確実なる歩調でこれに追いついていけるものかどうか。むしろ他産業が非常なスピードでいったので、その影響を受けて少しずつではあるが伸びたのではないか。年次報告に言うように、他産業があまり早く走り過ぎたから追いつかなかったのでなく、少しでも伸びがいったのである。そこで他産業停滞をし、歩調をゆるめたならば、農業はそれとは関係なくどんどん伸びていくから歩調が合う、こういうことに裏からいえばなるのでございますが、その点はどんなお考えでございましょうか。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、他産業が急激に伸びたということの裏には、これの従事者所得が非常に増した。これらの所存の増したものは、一時停滞がありましても、また所得の減少はないと私は思います。むろん全然ないということはありませんけれども、一ぺん上がったものは下がるということはない。一般国民各位所得の増が、今日の食糧を初めとして特に生鮮食料品等価格の高騰になっておる、これは事実であります。そういう関係からいたしまして、今お話しのように、他産業伸びたから農家所得がふえたのじゃないか、これも私は事実だと思います。その点もある。その点もありますけれども、しかしそれがことしのように伸びがとまったならば、そこで停滞をするかというと、そうじゃない。一ぺん伸びたものは、農家はそれなりに収入が増しておる。ただお考えいただきたいと思いますことは、農業基本法を実施いたしましてから、まだ実はわれわれとしては、この基本法に基づいて施策に入ったところでございます。従いまして基本法を実施したから、実施したからということで、こうじゃないか、ああじゃないかということでお小言をちょうだいいたしましても、どうも何か言われておる本人もぴんとこないので、戸惑いしておるようなことでありますから、その点は一つ寛容にしばらく経過を見ていただきまして、われわれといたしましてもこの基本法精神にのっとって十分に努力をいたしておりまするその努力について、努力の仕方が悪い、こうじゃないか、こういう御注意ならばいかようにも承りまして、なお勉強いたしますが、結果が出ないじゃないかということですが、結果が出るまで今種をまきつつあるところでございまして、結果が出るまでいきかねておりますから、そういう意味で御批判をいただきたい、かように思います。
  15. 片島港

    片島委員 農業基本法の問題は、昨日予算委員会公聴会を拝聴いたしましても、ラッパか、トランペットか、何とかというような説明がありましたので、私も農業基本法ができたからということを言っておらないのです。農林省は、すでに明治時代から農林行政をやっておるのであります。そして他産業との関係というのは、農業基本法ができる前からどんどん他産業伸びていっておるから、農業は常になかなか追いついていけない。何も農業基本法の問題でなくて、年次報告によりますと、他産業伸びに追いつけなかった、こういうことが書いてあります。ところが他産業が非常な伸びをしておりますときには、結局所得弾力値といいますか、農産物の需要もふえ、値段も高くなる。また農外所得がふえたということは、農業以外によって農家がささえられておる。他産業がそういうように伸びたために、農衣所得がふえたのであって、あれに報告してあるように、もし他産業歩調をゆるめるならば、それについていけるかのような書き方がしてあるのです。私はむしろ農産物価の問題、あるいは農外所得の問題などから考えるならば、他産業が緩慢になればなるほど、農業についてもかえって悪い影響を来たすのではないか、あの年次報告に書いてあるものの逆ではないか、こういうことをお尋ねしているのです。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御質疑になりましたことにつきましては、私は程度の問題であろうと思うのであります。従いまして、年次報告に害いてありますことが全然違うという御議論であれば、私はにわかにそういう同意はいたしかねますけれども、これが、ああいうふうにはっきり割り切るのは割り切り過ぎじゃないかというようなことでありますれば、私もそれについて異論を申すものではないのです。一応の見方としては、御承知通り非常に他産業伸びましたもので、それについていきかねたということを具体的事実について申しておるのでございまして、そういうことは一つ御了承いただきたいと思います。
  17. 片島港

    片島委員 昨年農業基本法を論議いたしましたときに、当時の総理大臣はもとよりでありますが、農林大臣も、農業基本法の一番の大きな柱というものが自立経営農家育成ということに置かれており、自立経営農家育成するというこの基本的な方向に向かって農業基本法が論議をせられて参ったのであります。ところが今度の昭和三十七年度において講じようとする農業施策なり、いろいろと大臣施政方針演説を見ましても、自立経営農家育成ということが非常にぼけてきて、むしろ主産地の形成だとか、選択的拡大とか——そういったような零細農を脱却するとか、経営規模拡大するとかいっような面が非常にぼやけてきておるように思います。ここに大臣説明書を持っておりますが、第一、第二、第三とあって、選択的拡大が一番の大きな問題として第一に取り上げられ、第二には、これは後ほどまたお尋ねをしたいと思うのでありますが、貿易自由化等の諸情勢に対応して、国際競争力の培養をはかるため農業生産性を向上する。第三には価格の安定である。第四には総合的な構造改善である。そうして十八ページになりまして、ようやく最後のところになって、以上の総合施策のほか——その第四まで全部述べられたあとに、いわゆるその他になりましてから、構造改善に関する個別の施策についても充実をはかることとし、経営規模拡大を助長するため、農地流動化と協業化に資するよう農地法改正をやる——こういういうふうにいたしまして、自立農家育成がその他の項にはずされて——この説明資料の四つの柱の中からはずされているところから見ましても、私はどうも、この自立経営農家育成といった、昨年の農兼法の精神、一番大きな柱というものが非常にぼやかされてきたのではないか。それはまた業績から考えてみましても、昭和二十五年から三十年には、一町ないし二町の農家がふえておりますが、三十年以降は、統計を見ましても、だんだんと両極分化が著しくなってきております。中堅農家という、いわゆる自立経営農家育成をしなければならない中堅農家、しかも農家の半数を占めておるそういう中堅どころが、陥落地帯になって、谷間になっておる。これは、ただそれが数の上においてだけでなく、一方においては大規模経営農家——一町五反、二町以上のところは、非常に近代化も進み、機械化も進んでおる。また五反百姓といわれておったような人が、むしろそれ以下の人が、賃労働農家というような形で所得がふえてきておる。こういう統計から見ましても、これが谷間の中に陥没をしようとしておるし、大臣説明書なりいろいろなお話を承っても、自立経営農家育成ということがぼけてきておる。これは私は日本農業としては、これから先の日本農業をどうやっていくかということについて、非常に大きな問題であろうと思うのでありますが、その点について大臣の御所見を伺います。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 自立経営農家育成という考えは、基本的なものでございまして、あくまでもその線を堅持して参りますことは、申すまでもないことだと考えます。ただし、その自立にいたしますには、今御指摘になりましたように、従来のいわゆる適正規模農家自立経営農家として該当するかどうかということになりますと、経営規模拡大しなければ困難である、真に自立経営をして、そして所得を他産業と一緒にしていくということはなかなかむずかしいというような変遷が起こってきておるということじゃなかろうかと思うのであります。そういう意味におまきして、われわれといたしましては、まず経営規模拡大することに力を入れなければならぬことは申すまでもないことでありますが、何分にもわが国の与えられております客観条件が、経営規模拡大するということは非常に困難である。また土地に対する愛着その他からいたしまして、所期するところの、経営規模を大きくするということに第一条件を置きまして、それを基盤にした自立経営を待っておったのでは、なかなか前進は困難であるという点も考えなければなるまい。そういうような意味合いからいたしまして、ここに協業をして経営をするという点も考えていかなければならぬのじゃなかろうか。または、重点的に主産地を形成して、その中に大きく経営を合理化していくということもやっていかなければならぬのじゃなかろうかというような意味合いからいたしまして、もし誤解がありましたらば一つ御了承いただきたいと思うのでありますが、理想図としては、どこまでも自立農家育成基本でありますことは申すまでもありませんが、それと相かね、相全からしめるために、各般の施策をこれにあわせて行なうということでなければ、わが国の実情から、所期の目的達成はなかなか困難じゃなかろうかというような意味におきまして、全体的に見て構造改善を行ない、その中に、今申しますような経営規模拡大という——その可能な部分につきましては、できるだけその道を選びますけれども、その困難な部面におきましては他の施策もかね備えて、目的達成努力いたしたい、こういう所存でございますから、その点、さよう御了承いただきたいと思います。
  19. 片島港

    片島委員 自立経営農家百万戸育成というようなことはとうてい不可能である——これは、私たちが農業基本法を論議いたしますときに、強くその点を指摘いたしたわけであります。農業構造を改善するといいましても、強権を持って農地の移動あるいは経営規模拡大をはかるということは、これは自民党の政府でも、また社会党の政府ができたといたしましても、なかなかできないだろう。結局農業経営というものからあるべき方向へ自然に向かっていくのを助成をしていく、助長をしていくというのが政府の政策でなければならぬと思うのであります。ところがこのままにしておきますと、中堅農家が非常な陥没をいたしまして、むしろ私どもが指摘をいたしておりましたように、一部の現在経営の成り立っておる農家だけを育成をし、また一方においては零細農が他産業との兼業によっていろいろ賃労働農家というような形で伸びていく、中間における一番大事なところの農民層というのが、切り捨てとは言わないけれども、実は陥没をしてしまうのではないか。現在の政府の農政によっていくならば、私たちが指摘をした通りに、この一番大事なところの農家が陥没をし、極端に言えば、切り捨てにされるのではないか。これは三十五年度の年次報告から見ましても、またここ数年来の両極分化ということが非常に激しい点から見ましても、その点を非常に憂えるのであります。これらの点に対してもっと明確なる農林大臣の御方針を示していただかなければ、日本の農民は非常に不安に感じておると私は思うのでありますが、この点に対してもっとはっきりとした態度を示していただきたい。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 その点、私といたしましては、これらの申されました中堅と見るべき農業経営の中に成長部門に属する農業をあらゆる角度から取り入れまして、そこに主産地の形成もいたしますし、また適地適度の角度からいろいろな農業の組み合わせ、つまり構造改善をして、これらのものの育成をはかっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  21. 片島港

    片島委員 そこでその構造改善、いろいろなものを組み合わせをしてやろうという施策が、ここに大きく出されておるのでありますが、この前本会議において藤田君から、社会党の農業基本法は計画経済——農林大臣はまだ読んでいないからというので答弁はなかったようでありますが、計画なしに、ただ構造改善——私がここではっきりしておいていただきたいと思うことは、これも後ほどお尋ねをいたしたいのでありますが、豚肉などが三十四年のピークから半額くらいに非常な値下がりを見た。畜産だ、果樹だ、園芸だといったようないわゆる選択的拡大として非常に御推奨され、助長せられるいわゆる成長部門といわれるものが、ただ無計画にやったらいいだろうというようなことだけでは、非常な危険を農民は感じておるのではないか。成長部門といいましても、選択的拡大といいましても、長期の年次の生産計画というようなものが示されなければならぬと思う。需要見通し需要に見合うところの長期の年次の生産計画、このくらいのものをどのくらい生産しておったならば決して損はしないのだといったような、何かお示しがなければならぬ。成長部門であり選択的拡大といっても、これは無限に成長するものではないと私は思う。そういたしますと、成長部門がいつの日かかえって危険部門になる。また今は停滞部門として割合に冷たく見られておる部門が、長い目で見た場合にかえって安定部門になる。停滞部門が安定部門となり、成長部門が危険部門となる可能性がある。その選択的拡大成長部門についての一つ見通しなしに、ただこれがよかろう、あれは伸びるだろうということになると、今度の豚の暴落の二の舞を踏むようになるのじゃないか。それについては何がどの程度まで成長し、どこまで成長すればそこに停滞をするのか、またその見通しはどうか、これらの点について農林当局として、大臣としてはっきりとした見通しを示していただかなければ、ただ選択的拡大だ、成長部門だというだけでは、非常に心配になると思うのです。たとえば畜産あるいは果樹、園芸等に対してのどういう部門がどの程度にまでいったならば限度であり、どの程度から停滞をしていくか、そういったことについてのはっきりとした計画がなければ、非常に不安に感じるのでありますが、その点はいかがですか。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろんお示しのように、需給の関係を考慮しつつ、所要の生産を指導するということは当然いたさなければならぬことでございまして、構造改善にあたりましても、たとえば畜産の主産地を大体何百カ町村くらい奨励するか、果樹、園芸等についてはどういう地方において奨励するかというような意味合いで鋭意調査をし、これを指導することはもちろんでございます。
  23. 片島港

    片島委員 初年度は二百地区、終了までに三千百、ほとんど全国の市町村を対象として構造改善の事業を進められておる。しかしながらこれがもちろん強制的に主産地を形成するとか、構造改善を、何々をやれということでなくて、これは各町村の自主的な計画によってやらせる、そう言いましても、自主的ということになれば、実は市町村単位から見ました場合には、何をどのくらいまでやったらいいという見通しはっかないわけです。めくらめっぽうにやるかもしれません。もし鶏がいいといって鶏ばかりやっておったら——これは島根県の大東町の高橋町長という人に会いましたが、ああいう人が私は泣くだろうと思うのです。みな鶏をやられたら自分のところばかりやっておってもどうにもならぬ。やはりその土地々々に向いて、しかも全国的な視野に立った指導というものがなかったたならば——ただ地域的にいろいろな差がありますが、しかし何か見本、青写真というようなものを示してでなければ——従来の適地通産というのは、その地方によっての立地条件あるいは交通の問題、運送手段と、いろいろ違いがあって適地適作がきまっておったのでありますが、道路も整備をされ、土地改良もやる、運送手段もだんだんと整備をされ、農業技術がだんだん進歩していくということになりますと、自分のところだけが適地かと思っておりましたところが、適地があらゆるところで競合して参りまして、寒冷地と暖地くらいの気候的な点だけが変わるだけで、その他の点においてはほとんど変わらないようなことになっていくのであります。そういう点について、立案者として何かはっきりした見本なり青写真というものを持っていなければならない。実際は農林当局としてもそれを持たないのではないか。そういうことになりますと、せっかく河野農相の発案ではありますが、新農村建設事業というのが前にあった。これが一つの手本として残っておるだけでありまして、ほかには何も青写真がない。そういうことになると、新農村をまねてそのままの続きをやるのではないか。また、新農村計画でやり残しておったことを今度助成してもらって、看板を構造改善というふうに書きかえるには書きかえますけれども、実際はやり残した分をこの際やっておこう、こういうふうなことになって非常にあいまいな危険な状態を来たすのではないか、そういう点についての青写真なり見本というようなものが何も示されておらないわけなんです。その点はいかがでしょう。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろんそれぞれの所在町村の適産性もしくは地元の農民諸君の意欲というようなものが、計画というものが主であることは申すまでもございませんが、さればと申して、今お話しのように、これを全国的立場に立って、需給の関係を何ら考慮せずして生産をいたしますことは、その結果が非常に農家のためにならない。たとえば当面いたしておる豚の生産のような事態を引き起こしかねないことはもちろんでございます。そこでわれわれといたしましては、おおむね今後十カ年間における各地の需給の関係等について可能な計数を出しまして、これを一体どういう地区においてどういうふうに生産していくことが一番適切であり、妥当であるかというようなものを腹案しつつ、これら主産の町村との間に十分話し合って、お互いに理解と協力の上に農業の改善をやって参りたい、そして結論において需給のバランスが可能な限り調整できるようにして参るということでやって参りたいと考えておるのでございまして、決して無計画奔放の中にそれぞれの構造の改善を奨励して参るという気持は持っていないのであります。
  25. 片島港

    片島委員 三千幾らの各町村単位でやろうということになりますと、地域的にはいろいろな差がありますから、町村単位というのも一つ考えではありましょうが、あまりにも小さく、しかもよそのことを考えないで町村単位の規模でやっていくという場合には、それぞれが孤立分散したような形になって、むしろその後の流通面などにおいても非常に混乱をすることになるのではないかというふうに考えるわけですが、その点いかがですか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御指摘の点につきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、小さな地区でばらばらな経営があったのではどうか——これはもちろんそうでございまして、今後の農業経営はなるべく集団的に主産地を形成して、その販売、購売等についてもなるべく合理的にいくことが便利であることは申すまでもないことでございますから、そういう意味合いにおきましても、われわれとしては、可能な限り主産地形成もしくは地域の農業育成するというような面で、従来のように全国的視野に立って奨励するよりも、地域農業の奨励発展ということに努力して参りたい、こう思っておるわけであります。
  27. 野原正勝

    野原委員長 午後二時より再開することとし、この際休憩いたします。    午前十一時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  28. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。片島港君。
  29. 片島港

    片島委員 大臣の所管事項の説明にも、「他産業との生産性の不均等発展を極力是正するとともに、貿易自由化等の国際経済の諸情勢に対処して、国際競争力の培養をはかるため農業生産性の向上を促進すること」こういうことを言っておられるわけでありますが、それも非常に重要な事項として第二にこれを取り上げて説明されておりますし、先月の中ごろの記者会見であったかと思いますが、EECに接近させるための体質改善を進めるというようなことも言っておられるわけであります。そこで先日の丹羽さんの御質問もあったようでありますが、一部の野菜、果実その他の加工品や牛、綿羊、鶏卵などについて今年の十月一日までに自由化するということが伝えられておるのでありますが、これらの農産物に対する自由化の問題をもう少し明確にしておいていただきたい。
  30. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 事務的に一応お答え申し上げます。  自由化の問題につきましては、一応先般の閣僚会議におきまして、本年の十月までに全体といたしまして自由化率九〇%に持っていこう、こういうようなことで、そういう目標でいろいろ準備をいたしておるのでございます。現在農産物の中の自由化の率は大体六〇%くらいでございます。全体の貿易額に比べますと、農産物が大体現在一九%くらいの自由化率になっております。九〇%というところに持っていきました場合におきましても、残りまするところの一〇%の中で、ほとんど米麦であるとかあるいは酪農品であるとか、そういうような農産物の重要なものでございまして、なかなか自由化を簡単にするわけにいかぬ、こういうようなものがその中で大体五、六%は農産物で占められるというような状況でございまして、かりにここまで自由化をいたしますと、今の計画では大体農産物の自由化というものは全体の貿易の中で二〇%前後になる程度であろうかというふうに一応は考えております。  個々の品目につきましては、たびたび申し上げておりますように、いろいろ影響等も十分考えまして、農家の生産等につきましても、生産の合理化を進め、そうして影響がないというような状態にできるだけいたしまして、そうして自由化をしていこう、こういうふうなつもりで準備を進めておるわけでございます。  それからまた、必要なものにつきましては、関税率を改正するあるいは場合によったら関税の運用につきましても、相当弾力的に運用ができるような、そういう制度も新しくできましたので、そういう点を運用いたしまして、急激な変化が起らぬように方向としてはできるだけやはり合理化をいたしまして、そうして自由化の方向考えていただきたい、こういうようなつもりで準備をいたしておるわけでございます。
  31. 片島港

    片島委員 ただいま私は、一部の野菜、果実その他の加工品や牛、綿羊、鶏卵といったような品目をあげたわけでありますが、これらについてはいかがですか。
  32. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 野菜、畜産物等の中におきましても、たとえば現在のところでは肉類であるとか酪農品であるとか、そういうものにつきましては、これは現在畜産振興ということで畜産の方のいろいろ振興考えておる段階でございますので、これは簡単に自由化をするわけに参らぬじゃないかというようなことで、国内の方の体制を十分一つ整備していこう、こういうように考えておるわけでございます。  それから野菜とかくだもの、こういうものにつきましては、これは大体いろいろ外国との競争関係等を考えましても、相当のものが競争をやっていけると思います。中には非常に困難なものもございまして、そういう過程にあるものもございますので、そういうようなものは個々に十分検討いたしまして、そうして急激な影響を与えないように十分準備をして参りたい、こういう工合に考えておるわけであります。
  33. 片島港

    片島委員 EECに接近させるための体質改善をする、また貿易の自由化に対処するための競争力を培養するというようなことを言っておられるのでありますが、大体経営規模の面から見て、またそれに見合う資本装備、資本効率といったような点から見て、日本農業とヨーロッパ諸国あるいは先進国の農業との間には天地の差があるのじゃないかというふうに考えるのであります。そういうのに接近させるといっても正面から太刀打ちできると私たちは考えていないのでありますが、河野農林大臣はどういうふうにお考えですか。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 日本農業の国際農業の間におきましての地位はどういうことか、御承知通りでございまして、経営規模が小さいとか、投下資本が少ないとかいうような点が劣っておるのでございまして、その他技術の面において非常に格差があるとか、もしくは経営それ自体が非常に幼稚であるとかいうような面は、私は見られないのじゃないか、つまり作っております製品それ自体は少しも見劣りがするものでもなし、相当りっぱなもので、現に蔬菜園芸にしても、くだものにしても、畜産製品にしても、決して見劣りがするものはない。これを要するに、経営を合理化し、さらにまた、申しますならば資本投下によって生産コストを引き下げる等々の道を講ずることによって、私はこれが国際農業の間に処して少しもおくれをとらないようにすることは可能である、こういうふうに考えておるわけでありますから、そこに構造改善の目標を置いて持っていきたい、こう思っておるわけであります。
  35. 片島港

    片島委員 日本農業経営規模などから見まして、資本装備あるいは効率が諸外国に比べて幾多の制約があるわけであります。ところが、また、日本農業内部におきましても農業機械の急増などによってかえって過剰投資となって、ますます資本効率を下げておるといったような面があると同時に、資本効率が高い分野になかなか投資が十分に行き渡らない。日本農業の特殊性に見合った農村金融の問題を通じてでも、この資本効率が過剰投資となり、あるいは一方においては、投資をすればそれだけ効率が上がるのが、なかなか十分にいき渡らない。農家の貯蓄が全体として非常に増大をしてきた。しかし農業外の方に流出をしておるということが言われておるのでありますが、農家の貯蓄が増大をして農業外に流出をしておるのに、一方では、また制度金融や補助金などで外部から注入されておる、またその要求が非常に強い。こういったような面を何とか農林省としてはもっと効率の上がるような行政をすべきであると思うのでありますが、その点について大臣のお考えを伺いたい。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 いずれの産業におきましても、変革期、黎明期におきましてはある種の混乱が起こり、今御指摘になりましたような事態があることは、私は普通の例ではなかろうかと思うのであります。まして、わが農業のように非常に長期にわたって、一定の方向で、国家指導のもとに国家目的達成のために推進して参りました農業が、自主的にみずからの経営計画のもとにこれを運営して参るというような方向に、言葉は適当ではないかもしれませんが、しいて申せば解放された経営のもとにこれが出発をしようというときには、よほどの準備がなければならぬものでありますけれども、その準備が今ようやく緒についたというところではないかと思うのであります。たまたまそのときに、こういうふうな国際情勢の中に非常な困難な立場にあります日本農業が、すべてを一度に仕上げていかなければならぬということに直面いたしておるのでありますから、いろいろな問題が起こっておりますことははなはだ遺憾でございますけれども、これについて万全を期して、一つ相協力して大過なくやって参りたいと念願いたしておるのが私の気持でございます。
  37. 片島港

    片島委員 午前中ちょっと触れたわけでありますが、農業の階層分化が非常に激しい、両極への分化が激しい。中堅どころが非常に陥没しておる。昨年の農基法の論議のときには、自立経営農家育成するというのが非常に重要な柱であったわけでありますが、しかし昭和三十年以降農地の移動、流動性というのが非常に停滞をしており、これは単に自作農創設資金のワクが問題でなく、農業経営というものに対しての資金の問題ばかりで流動性が停滞をしておるのか、そうでなくてどこかに大きな原因があって、政府が考えておるような農地の移動がうまくいかないのか、その点についてはどう考えるか。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、御承知通り日本農業指導性が戦後急激に変わってきております。つまり食糧増産に専念いたしましたこと、さらにその食糧増産も、食管法が順次変わって参りましたように、農業経営方向についても、農民自身がいろいろなふうに、いわゆる曲がり角にきたというようなことをみずから言うようなわけで、将来に対する目標が非常に不明確になってきて、そうして都市に対して農村の労力が流れ出る度合いも多くなるというようなことがございまして、そこに安定した方向の発見に苦慮いたしておりますので、これらが順次方向づけられて参り、また農業基本法を基盤にしてこれを方向づけて、ここに安定した成長というものを達成するようにして参らなければならぬのではなかろうかと思うのでありますが、今申し上げるように、何分三十年当時から、それまで要するに食糧を作ればすべてもうかるというような雰囲気の中にありましたものが、だんだんにその方向も多少混迷して参ったというようなことが影響しておるのではなかろうかと思うのであります。
  39. 片島港

    片島委員 非常に間口が広いので急行列車で行きたいと思うのでありますが、農地問題については、さらに、わが党の専門的な委員から質問があるわけでありますけれども、私は一言だけ、今度の農地法改正というのが地主補償要求を誘発しておるのではないか。また一般にそのようにいわれておるのでありますが、法律でもって農地被買収者問題調査会というのができております。これがまだ何らの答申を行なわないときに二十億円という予算措置までいたしておられるのでありますが、もし農地被買収者問題調査会に諮問せられた事項は、一つの社会保障として、被買収者に負担さしている社会的な問題は必要ないか。これに対する措置が必要かどうか、こういったようなものですが、何らの必要なしと、こういう答申が出た場合にはどうされるのでありますか。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 お話通りの調査会でございまして、その答申の結果はまだわかりませんが、どういう答申が出ますか予測はいたしかねます。しかし今国会に二十億円の資金を国民公庫から旧地主の諸君に生業資金の必要なものに貸し付けるという処置は、これは必要のものに資金を運用するということでございますから、必要の有無ということは別に関係がないというふうに思うのでございまして、困った人があるかないか、困っておる人をめんどうを見る必要があるかないかというものに対して、そんなに困っている人はない、そんなものをせめでもよろしいという答申が万一あったといたしましても、当面いたしておりますものは生業資金の必要なものに運用するというのでございますから、その間にそう大きな問題はないというふうに私は考えております。
  41. 片島港

    片島委員 生業に困っておる者に資金の手当をするというのは何も旧地主に限らないことでありまして、一般国民で困っておる者があればそれに資金の手当をするというのは、これは当然のことなのです。ただ私たちが問題にしておるのは、わざわざ被買収者に関しての問題の調査会を設けておられて、一方においては最高裁の御承知のような買収価格は正当であった、何らのそれに対する補償は必要ない、こういう最高裁の判決もありますし、また調査会が被買収者についてだけの調査をしておる。一般国民が困っておるか、困っておらぬかを考えておらない。被買収者だからといって特別な措置は必要でないという答申が出るかもしれません。それに先がけて予算的措置をやるということは、法律でわざわざ問題になった調査会、それを全く無視したやり方ではないか。伝えられるところによると、委員をしている人で、あまりばかにしているというので委員辞任する動きさえあるということを聞いておるのです。当然こういう調査会を作った以上はその答申を待って決定すべきである。予算的の措置をすべきである。これは地主補償ではないといわれるならば、この被買収者問題調査会そのものが地主補償という意味ではなくて、社会保障的な意味において諮問が出されておるわけなのでありますから、それを無視して、こういうことを先走りするというのは、これは私はせっかく法律を作って調査会を作っておる趣旨に相反するのではないか、この点をお尋ねしておきます。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、今申し上げましたように、旧地主の中で特に生産資金に事欠いておる諸君の非常に強い要望に対してこたえる必要があるというような意味合いから、二十億円を国民公庫に予算措置として組むということを閣議決定し、大蔵省所管においてこれをやっておるというふうに了承しておるのであります。
  43. 片島港

    片島委員 この問題についてはさらに他の委員からお尋ねがあると思いますので、先に進みたいと思います。  今度の大臣説明を見ましても、また三十七年度の予算を見ましても、生産性を高めるためには相当力を入れておられるのでありますけれども、流通組織、また価格政策ということが非常に立ちおくれておるし、また非常にずさんではないか、こういうように考えるわけです。カンショ、バレイショといったようなものについては一応きまっておるのでありますが、選択的拡大と言っておりましても、何らの支持価格も何もきめてない、またきめようともされてない。今年度三十七年度の予算でタマネギをちょっと例に出しておられるようでありますが、将来とも今度のタマネギ程度の扱いにまでは支持価格政策を持っていく、あれは一つの見本だというふうに考えてよいのでございますか、あるいは支持価格ではなくして、結局安定資金というような形で出しておられるのか。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 新鮮食料品の価格安定は非常に条件が困難でございますので、これをどういうふうに施策して参るかということは、慎重の上にも慎重を期していかなければ、結果が相反することになる危険もあると考えられますので、一つのテスト・ケースとしてタマネギについてやってみよう、そうしてなおよく検討し、勉強して、そうして将来に可能なものがあり、また将来それによって非常に有効のものがあったならば、拡大してやっていくことは適切であるという考えのもとに、実は踏み切って着手するようにいたしたのでございますが、元来それでは一般のものはどうなるのだということになりますと、私は生鮮食料品に関する限り需給の関係を十分に勘案しつつ、しかもこれらに必要な貯蔵、運搬等についてさらに施策する必要がある点はまだまだたくさんあるのではなかろうか、それらについてもおくれておる点もあるのではなかろうか、これらを十分に利用することによって効果を上げるものもまた多くあるのではなかろうかというふうに考えるのでございます。これまで怠っておったといえば怠っておったことになりますが、先般も魚市場を調査に行ってみて驚いたのでございますが、魚市場を見ただけでも、中の設備がいかに旧式であって、何らそこに見るべき施策もない。これではたして生産者が満足がいくだろうか、また消費者の面から考えても、これではたしていいだろうか、一体これらの市場行政というようなものについてこれをどういう感覚でやっていくべきか、これに対しては、私は政府の施策がこれに加わって、そうして合理的にものの流れがあるべきが当然である。それを独立採算制というような意味で、一切の負担が生産者と消費者において負担すべきであるというような考え方では非常に間違いがある。それではうまくものが動かない。ことに都市のこういう交通難の際に、市場の中も外も一緒にごった返しておる。そこに小さな万を数えるような車が殺到していく、そうしてこれが配達等についても、運搬等についても、実に乱雑きわまるものであるというような、もの等の運搬、輸送等について改善の余地はまだ十分にあるのではなかろうか、専門家諸君の検討に待ってこれらに改善を加える必要があるのじゃなかろうかというふうに思うのでございまして、今後大いに勉強しなければならぬと考えております。
  45. 片島港

    片島委員 大臣のお声がかりで、昨年官房企画室に専門調査班というのを作っていろいろ調査をされたようでありますが、どうもその後龍頭蛇尾で、どういうふうになっておるか、その結論はわかっておりませんか。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 その通り、若手の係を指名いたしまして、全国各地にわたって調査を続けさせております。実は三月末までの期限を切って調査を命じておりますけれども、近日中に中間報告を一回するようにということを指示いたしましたから、近日中に取りまとめがつくと思います。できましたならば、委員の皆さんにも報告書をお分けして御検討願う資料にしたらと考えております。
  47. 片島港

    片島委員 今月の十日に新聞発表された食料品の小売値、農林省の四種の数字、これは専門調査班の結果じゃないのでありますか。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 これは全然別でございます。それは昨年神田市場を視察に参りましたときに、大根が高い、ネギが高い。高い、安いと言うのは一体どういう標準で高いと言い、安いと言うか。農家の側から見れば高い方がいい、消費者から見ればむやみに高い高いと言われるというようなこともありますので、大体趨勢としてどのくらいのところが妥当な価格であろうかということを一つの尺度といいますか、参考にする必要があるというふうに考えまして、初めは大いに勉強してという気持もございましたが、さて、実際やってみますと、なかなかその基準が出しにくうございます。むろん第一回、第二回では満足すべきものが出ませんが、せっかく作ったのだから、一応これは発表して、世間の批判を受けつつ、だんだん見るべきものを作った方がよかろうというのでいたしましたので、今後も引き続き、前年に比べ、過去数年来の傾向から見れば、現在の物価のあり方から見れば、大体この辺が大根の相場としてはいいところじゃないかというような傾向を出し、それを現在の大根の値段と比べて、これは高過ぎる、これは五割高になっているじゃないかということで、私から見れば行政の一つの指針とし、また消費者の方々からすれば、割高のものは避けて割安の方に方向を変えて生活の工夫をしていただくというようなつもりで出したのでございまして、今の流通の内面を調査しておるのは全然別に、現在のものの動き、それに必要な諸般の経費、どこにどうロスがあり、どこでどういうふうに値が上がってしまうかというような点を調査させておるのでございます。
  49. 片島港

    片島委員 これはどういう効果があるのでしょうか。単純平均値とか最高最低年を除く平均値、回帰式による趨勢値、対前期比による算出値と四つの種類の数字が並べてあるのであります。今おっしゃいましたけれども、こういう数字を出してこれは高過ぎはしないかと言ったところで、値段を下げるわけではない。ただこういう四つの数字を並べてみたというだけで、何も意味がないと思うのですが、これは何か値打ちがあるのですか、こういうことを発表されて。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げましたように、ものが高いとか安いとか言ったところで一体何を標準にしているのか。前の年甲州街道に大根が捨てられてあった。運賃にもならないという去年の大根の値段に比べて、今年の大根は倍もしているじゃないか、高いじゃないかと言われても、これは困る。また、今年大根がひどく高いのに来年下がる。これは安いとか高いとか言ったところで、去年高過ぎたから今年は非常に安いのだというようなことも私はあると思うのであります。従って、傾向というものをお互いに勉強をして、そうして、その傾向に比べて現在がどうであるかというようなことを考えながらものの判定をしていくことが必要じゃないかというような意味で勉強をさした、こういうふうに御理解願います。
  51. 片島港

    片島委員 勉強されるのはけっこうですが、しかし、高くなっておるならばそれが安くなるように、また、あまり暴落をしているならば価格をあるところで安定させるというのが私は農林省の仕事でなければならぬと思うのです。これは高いな、これは安いなといってただ調べただけでは何も意味のないことなんで、こういうことをやるならやってもよいのです。ひまならどういうことをやってもよいのですけれども、しかし、高ければ下げる、暴落をすれば安定したところまで何とかささえをしていく、こういうことを勉強するのでなければ、ただこういうことになっておるというだけでは意味がないと思うのですが、いかがなものですか。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 それはおっしゃる通り、ただものさしを持ってきて、これは一尺ざしだ、これは何だとおっしゃっても、竹にただ筋が入っているだけでこれはものさしというだけでわからぬ。私が出したそれにしても、ものさしを出したようなものでありますから、ものさしだけを見て、これは何だ、ものさしだ、幾ら私があほうでも、そんなつもりでもって出したと思われては迷惑千万でございます。高いと非難をされる非難は甘んじて受けなければなりませんが、私たちの施策はその受けた非難を基盤にしてやるべきは当然でありまして、非難を基盤としてこれから出発していかなければならぬというものをあえて発表したのでございます。従って、これによって、高い、行政が悪いじゃないか、何とかしなければいかぬじゃないかという声が起こってくる、われわれもこれにこたえて努力するようにすべきものだというのでございまして、ただ一がいに高い安い、高ければ農村が喜ぶ、安ければ消費者が喜ぶというだけでは困りますから、そこに一つの傾向、趨勢というものを出して、その傾向、趨勢というものを基礎にしてお互いに努力しなければいかぬ。今日でも豚肉は安いが牛乳は高い。同じ畜産物の価格の中でも、一方は上がるように努力しなければなりませんし、一方乳価はこれから夏を控えてどうも怪しい、何とかしなければいかぬだろうということがあると私は思うのでございます。従って、そういうものについて、行政をいたします上に自分の趣味や好みで上げてみようというわけにもいきません。未熟のものでございますから、それを一つの基盤にしてやるというわけにはなかなかいかぬと思います。それを物価指数になぞらうようなものにだんだん研究して出して参りまして、それを一つの基盤にして、そこに行政のめどが立ってくるということも一つのなにになりはせぬかということで勉強しているというわけでございますから、どうか一つ指導を賜わりたいと思います。
  53. 片島港

    片島委員 今豚肉の話もありましたわけですが、生産者としてみれば、今度は豚肉が上がったから今から養おう、みなが一緒に養うようになれば生産過剰でどっと市場に出て、価格が暴落をする、暴落をしたからこれはえさ代にもならぬからやめておこうと言って、今度はやめる。そうすると、それが成豚になったころになりますと、ちょうど需要に追いつけないで、供給の方が足らないものですから、非常に高く上がる。周期的にそういうことをやっておるわけです。一人々々の農家あるいは町村単位、府県単位で見ても、どういう生産物がどのくらい必要なのか、そして今はどのくらい生産されておるかということはこれは農業家はわからぬのです。各市町村でもわかりません。そうするとどうしても全国的な視野に立って長期的な、しかも安定性のある需要見通しというものが示されておらなければ、いつも損ばかりしなければいけない。幾ら主産地形成、選択的拡大ということを言ってみましても、こういうふうな状態で長期の安定した需要見通しというものがないものでありますから、ただ十年後に果実が二・五倍、肉類が三・五倍、牛乳は四倍になるであろう、こう言っております。これは十年先にこのくらいにふえるでありましょうが、しかし、年次々々の続いた継続的な長期の安定した見通しというものが示され、またそれに見合う生産というものが指導されなければ、この周期的な価格の変動というものは避けることができないと思うのでありますが、その点はどうでありましょうか。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろん、ただいまお話しのようになるべく長期に年次の需給の計数がありますことは、一番農家のために必要なことと思いますが、生産と消費の関係等につきましても、なかなかつかみにくいのが現状でございます。しかし御承知通り基本法によりまして政府としては今後十年つまり四十六年といいますか、四十六年には一体米はどういうふうなことになるか、何はどういうふうなことになるかという一応の見通しを立てこれを発表することになっております。従って今せっかくその見通しを計算をし、その考え方が適当であるかどうかということを審議会の議を経て、できればこの月末くらいまでにその数字を発表いたしたい、取り急ぎ勉強いたしておるようなわけでございまして、こういうふうな大局、大勢はつかんでいく。まあ何分苦しくなると同じような答弁をするのでございますが、始めたばかりで店がまだうまく整ってない、いろいろ混雑がございまして、どこから何を探し出していいかわからぬようなときでございますから、うまくいきませんけれども、だんだんこれをやっておりますうちに、主人もものがわかるようになって参りますし、番頭さんもよく店の中が整頓するというようなことになりますれば、そこに働いていただくどなたにも順序よく働いていただけるようになるだろう、それが今日の日本農業そのものじゃなかろうかと思うのでございまして、農業基本法によって店の改造をし、そしてその中に商品の並べかえを今やろうとしておるときでございますから、なかなか混乱、混雑いたしておりますが、決してこれは、私はすっかりでき上がれば御期待に沿うようなものにでかし上げたいと努力いたしておるわけでありまして、しばらくの間は一つ何分政府だけでいかんともなるものではございませんので、民間団体、一致して協力してこの難業を達成いたしたい、こう思っておるのでございます。  先ほどからたびたび共同体の話、その他外国の農業のわが農業に対する圧力等についてちらほらお話が出るのでございますが、こういうものまでが一緒になってやってこようとしておりますので、一体今までの貿易自由化だけでなしに、いろいろな要素が加わって参りますから、実は応接にいとまがないというようなことで、ますます混乱するようなことになるわけでございますので、各方面の御注意、御協力を得て一つやって参りたい。ふだんでございましたらば、一応秩序の上に民間団体の諸君の協力を得つつ行政をやって参るということでございますから、案外に行政の方がぼやぼやしておっても民間の団体が連れていって下さるとか、またはやりつけていることをそのまましておれば、豊作でさえあれば、まあまあこれで米価さえ適当なところにおさめれば、まずごきげんというところにいくのでございますけれども、なかなかそういきかねる点があるのでございますから、いろいろ御心配をいただくことはごもっともでございますけれども、一つよろしく御協力をちょうだいいたしたいと思うのであります。
  55. 片島港

    片島委員 事業団のお話もありましたが、私がお尋ねをしておるのは、ただ一つの基準価格といったような、そういう問題でないと思うのです。いかなる価格政策をとり、支持価格制度をとりましても、需給がアンバランスであります場合には、それがくずれてしまうわけです。それで長期にわたる計画的な需給見通し、これがはっきりと示されておらなければ、みんなが豚を養ったら、これはそんなに食べ切れるものではないから、値は暴落するにきまっておる。やはり長期の安定した、そうした指導をやっていかないとならぬのでありまして、これも店開きしたばかりだからだとおっしゃいますけれども、農林省ももう古い役所であります。また河野農林大臣だけに責任を負わせるわけに参りませんけれども、河野さんもベテランであります。農林省としてそういう計画を持ち、そういう行政指導をしていかなければ、ただ価格を上げてみるとか、下げてみるとか、指示価格をするだけでなかなか解決つかないものです。ここにはどうしても計画的なものが入ってこなければならぬのです。われわれは自由経済でいくのだからと言ってみたところで、農業の場合に当てはまらぬ点がある。そういう点は今始まったのでなく、ずっと前から続いておる。農林省としてしっかりした対策を持っておらなければならぬ。この豚肉の値下がりの問題でも、何も農民は思いつきや投機心で養豚を行なっておるのでない。増産の刺激になったのは、やはり何といいましても所得倍増計画とか、構造改善とか選択的拡大だといって、むしろ、こういうことをやっていけば、畜産なら畜産をやれば他産業との所得開差がだんだん解消していくのだというふうに誤信を農民はしておる。これは農業基本法の責任です。農業基本法ができて構造改善選択的拡大、こうやれば所得開差が縮まっていく。こういうことを宣伝をし、多頭飼育を奨励する、また価格についても価格安定法を作って価格の支持をするといってやってきた政府の宣伝した責任がある。それを十二月初めに事業団ができて、二月半ばに、今でもまだ確定をしておらぬ。十一月一日施行の安定法が今日までおくれ、政令なり省令もまだ整備されておらない。三十六年度産の大豆の基準価格もまだきまっておらぬ。こういうふうに私たちが考えてみますと、今度の豚肉の場合を考えると、落とすところまで落として、そこで事業団の活動を始めれば、安いところに基準価格がきまるのは当然なのであります。むしろ値が暴落するのを待って、それまで見送って安いところに安定基準価格というものを持っていったのではないか、私たちはこういう疑いさえ出てくるのであります。農林省で発表されました資料に基づきましても、生産者の生産費がどのくらいかかるかというのでも、三百十七円といったような数字が出ている。それが二百二十円に落ちるまでほっておいたことは、これはただ単にサボっておったのではなくて、むしろ故意に安定基準価格を引き下げるためのサボではなかったかというふうにさえ私たちは考えるのでありますが、いかがでありますか。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 そこまでお考えいただいてははなはだ迷惑いたしますので、二百二十円まで下げてからしなければならぬ理由は毛頭ないのでございます。これは前回も申し上げました通りに、委員会設置に多少不手ぎわがございまして、その審議がはかばかしく参りませんために、大へん不行き届きのありましたことはおわびを申し上げる以外にないのでございます。さればといって、今回私が一応指示、決定いたしました二百四十五円という価格は、全国各方面の豚の産地等へ行ってみて一応聞いてみましても、まあまあというような声が相当に聞かれるのでございます。もちろんそれは高いに越したことはございませんけれども、今さしあたってこの程度の価格で維持するということであれば、まずまずというような声もあるのでございまして、これを一応基準にして最低はここまで下げるというつもりは決してございませんけれども、まあまあ当面はこれで一応の安定を、ここまでは価格も回復しておりますし、ここで下値抑えということはいたしますが、今後のものにつきましては、さらに委員会におきまして、長期にわたって今後どの程度にいたすが適当であるかということについて再検討を願って、決定を願うつもりでございます。おそらく全国の養豚家諸君はこの価格を基盤にせられまして、コロの値段は大体二千五百円が適当か、三千五百円が適当か、どの辺までは買えるだろう、そこで市場価格が自分のところではどの程度にかかるだろう、八千円かかる、九千円かかるか、二万円かかるかというようなこと等々もそれぞれ計算され、胸算用せられた上でおやりになることと思いますから、ここに私は一つの需給の関係が生まれてくるというように思うのでございまして、今回のような不手ぎわは今後再び繰り返すようなことはないと思いますし、絶対にそういうことのないように努めて参らねばなるまいと思っておるのであります。他の畜産品につきましても、御承知通り可能なものにつきましては順次これをできるだけ強力に進めて参る所存でございます。
  57. 片島港

    片島委員 まあ豚が非常に安くなったといいましても、これは一朝にして成長するわけでなく、成長期問もちゃんとわかっておるのでありますから、こういう状態になるであろうということは、去年の秋ごろからすでに予想せられておったことなんです。少し期日はずれて早まりましたけれども、しかし大体二、三月ごろにそういう状態になるであろうということが半年も前から予測せられておったのにかかわらず、せっかくできた法律まで、実施を延ばして、それまで待つということは非常に怠慢ではないか、また私が申し上げたように、下がるのを待っておったのではないか。これは私の郷里から新聞がきておりますが、一つの部落で十数件の豚の密殺が行なわれておるのが保健所に摘発された。子豚を買ってきて、養わないで子豚を自分で処理をする。聞くところによると、屠殺場の方にも、未成熟豚や極豚まで出荷しておる。飼育頭数をもっとふやさなければならぬ、あるいは主産地の形成といったようなことがいわれておるのに、一方においてはこういうでたらめが行なわれておる。みなが安心をして、これから先、政府の方針に従っていくかどうか、政府の言うことを信用するかどうか、政府の信用の問題だと思います。その点は、早目々々に農林省の方で手をつけていかなければ、今後何をやるにしても、農林省の方針、政策というものが農民からそっぽを向かれてしまうと思う。今度の緊急対策にしても、いろいろ考えて発表されておりますが、河好農林大臣は、学校給食もやるとかなんとか言っておられたが、学校給食の問題はきまりましたでしょうか。
  58. 河野一郎

    河野国務大臣 やるつもりでおりますが、今手続中でございます。
  59. 片島港

    片島委員 それは大蔵省の方も了承しておりますか。
  60. 河野一郎

    河野国務大臣 大蔵省の方と今話し中でありますが、公団にあります金の中で操作するのでございますから、結論においては、決して大蔵省からとやかく言われるべき筋合いのものではない。ただ、御承知通り、どの程度に値引きしてこれをPTAに渡すか、学校側に引き取らすかという点では多少の論点があるというふうに考えております。
  61. 片島港

    片島委員 肉屋に行きますと、生産者価格ないし枝肉の卸売価格と小売価格が必ずしもスライドしておらない。——きょうは公取は見えておりますか。食肉環境衛生協同組合の協定価格というのがあるのです。それによって小売値段をきめておるのですが、これは明らかに公取違反だと思うのですが、いかがでありますか。
  62. 野原正勝

    野原委員長 公取は来ていないのですが——
  63. 片島港

    片島委員 それでは農林大臣にさしむきの問題として、あなたの方の事業団がはなはだおくれておりますので、さしむき生産者団体をして——これは本会議でも足鹿委員からも質問があったようでありますが、これに代行をせしめるということは考えておられないかどうか。  それともう一つは、今農協が食肉販売をやっておるのでありますが、自分のところで処理場を持たないために、遠くへ持っていって相当の処理料をとられる。そうして売る場合には、安く売ろうといたしましても、組合、いわゆる同業者との関係でそう安く売るわけにいかない。農協あたりに簡易な処理場を作り、また食肉販売などについても、これは環境衛生法に基づいていろいろな基準がきまる、こういうもので農協としては非常に困っておるのでありますが、そういう屠殺処理場あるいは食肉販売の場合のいろいろな設備、そういうものについて農林省として何らかの助成を考えられたことがあるかどうか。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 現在特別の助成はいたしておらぬそうでございますが、これは、かつて私も戦前の畜産組合時代に畜産組合長をして、屠場の経営をいたしたことがございます。それをそのまま戦時中の農業会に引き継ぎまして、そのままその農業会が今の協同組合に経営を継承されておるのが事実であります。現在のことはちょっとわかりませんから、的確なお答えはできかねますけれども、そうなっておるのではなかろうかと思うのであります。従って全国には何がしか、そういうものがあるのではなかろうかと私は思います。またそういうふうな経営をどうしてもしたい、もしくは、今は市町村が主体になってやっておる場合が多いのでございますが、これに対して特殊の農協が関与したいということであるならば、それらについてのあっせんはいかようにも協力していいのではなかろうか、こう思うのであります。また直売所等につきましては、私は農協は率先しておやりいただいて、けっこうである、それについて厚生省方面の問題について農林省にあっせんする問題があるならば、いかようにも協力する  のにやぶさかでございません。ただ事業団発足までの間に云々ということでございましたが、この事業団の発足に  つきましては、実は今法制局の係の人が流感で倒れておりますために一両日おくれておるのでございまして、もうきょうにも出てきておるのではないかと思っておりますが、そうすればすぐ一切準備が整うことになっております。しかし市価は大体今二百四十円から四十五円ということになっておりますので、今すぐに事業団がこれに手を出していかなければならぬことに相なっておるかどうかということについては、まだ検討の必要があるのではなかろうかと思っております。従って今お話しのように、発足に先だってどうこうしなければならぬというような事態ではない、こう考えております。
  65. 片島港

    片島委員 いつごろこの基準価格が決定されますか。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げた通りでございますが、一両一中には決定いたします。
  67. 片島港

    片島委員 この基準価格がきまりました場合に、その線を割るという場合には、無制限に買い入れをやられるわけでございますか。
  68. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  69. 片島港

    片島委員 事業団の使う資金というのは限度があるわけでありますが、暴落した場合にこの程度の資金で無制限に買い入れ操作をやれる見通しでありますか。
  70. 河野一郎

    河野国務大臣 今おります豚の数から申しまして、何しろ何億と豚を買うのでありますから、すぐ値が上がりますから、そんなに売ってくるはずはないと思います。
  71. 野原正勝

    野原委員長 湯山勇君。
  72. 湯山勇

    ○湯山委員 今の片島委員の質問に関連して、畜産物価格のことで一、二お尋ねいたします。この問題は一括して聞きます。  事業団の買い上げ価格というのは地域差が設けられるものなのかどうか。第二は、事業団の買い上げというものは上物だけに限るというようなうわさも聞いておるわけですが、それはそういうことになるのかどうか。第三点は、今示されておる算定方式というのは暫定方式であるのかどうか、もし暫定方式であれば、三十七度には今の方式は適用されないのかどうか。この三点を先にお伺いいたしたいと思います。
  73. 保坂信男

    ○保坂説明員 ただいまの御質問に対してお答えをいたしますが、事業団の買い入れにつきましては、ただいま審議会の御答申をいただきまして財政当局とも話し合い中でございますが、各市場で買いますものにつきましては、御承知のように、大宮、横浜、それから名古屋、大阪、広島、博多等ございまして、大阪、博多等につきましては、地域の差あるいは仕立て方の湯はぎと皮はぎの差がございますので、そういう観点から若干の差を設ける予定でございます。  なお、第二の規格につきましては、白の上を買い入れの対象といたしたいというふうに考えております。  価格の算定方式につきましては、今回は、大臣からもお話がございましたように、当面の暫定的な緊急の措置として価格をきめまして、今後審議会の御意見等も十分聞いて検討して参りたいと考えております。
  74. 湯山勇

    ○湯山委員 地域差を設けるということは、私どもは安定法の趣旨に反するのではないかという疑問を持っておるわけです。それは今のように価格というものは一本できまることが建前で、法律審議のときにはそういう議論をしたわけですから、地域差を設けるとなると非常に別な問題が起こってくると思いますので、もう一ぺん今の御答弁については御検討を願いたいと思います。それから今の白の上だけというふうに限ることも、本来の畜産物価格安定法の趣旨にもとる点があると思います。この二点については今の御答弁では納得しかねますけれども、時間の関係もありますから、農林大臣、今の御答弁については再検討を願いたいと思うのですが、いかがでしょう。
  75. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。御指摘の通り、私といたしましては地域差を設ける意思はございません。大蔵側において地域差の点をなかなかやかましく言うようでございますけれども、これは何とか御指摘のように地域差を設けぬという立場で最終的に決定いたしたいと考えております。  それから買い上げの品物でございますが、これは貯蔵いたします関係から、やはり貯蔵に耐え得る良質ものでございませんと処分の際に非常に困りますので、ある程度品質は選ばなければなるまい。ただし価格の安定が目的でございますから、これらのものを相当に買い上げますれば価格の安定は可能であると考えてやっておるのでございまして、もっとも達成が困難である場合には別途のことを考究する必要があると考えます。  それから最後の点はお話通りでありまして、これは今、これからあらためて検討するというふうになっていますから、現に今回でも答申は二百四十円という線でございましたが、私、各般の情勢を勘案いたしまして、二百四十五円ということにいたしたのでございまして、各地の実情に合うようにいたして参りたい、こう考えております。
  76. 湯山勇

    ○湯山委員 私は今から、主としてグリーン・レポートとグリーン・プランについてお尋ねいたしたいと思います。  本来、申すまでもないことですけれども、基本法第七条に示されておりますように、動向に関する年次報告書、それから来年度の農業施策、この二つのものは密接な関連を持っていなければならない。これは当然だと思うのですが、そういう建前でお出しになっておられるかどうか、原則的なことをまず伺っておきたいと思います。
  77. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りであります。
  78. 湯山勇

    ○湯山委員 その通りだということでございますから、私は農家の跡継ぎの問題、これを中心にお尋ねいたしたいと思います。  グリーン・レポートは、農業近代化生産性の向上、これを阻害しておる条件として、耕地が零細である、資本が不足しておる、近代農業の担当者の確保と質の向上ができていない、こういうことをあげておられます。その中で耕地については構造改善その他施策の中にもいろいろ触れておられます。資本についてもいろいろ触れておられます。ところが近代化を担当する者の確保については、これは来年度施策の中であまり触れておられません。ただレポートの方は、農業従事者の他産業流出が非常に多い。それが新しい後継者を作るということにおいて欠けておるというために、老齢化、女性化していって、人は減る、このことがむしろ生産性の向上には逆効果を示しておるというような指摘がしてありますし、それから新規卒業者の農業就業が急激に減少してるいという事例をあげまして、この報告書の十八ページには、このままでいけば将来農業生産の停滞のおそれがないとはいえない。農業生産は、このままでは停滞する。このままでいけば、農家の世代交代を機会に農業就業人口が急激に減少することが予示される、こういうふうに非常に強い言葉でこのことを指摘いたしまして、何らかの対策を講じなければならないことを強調しております。この指摘と全く合致する農民の声は、先般の農協婦人部の全国大会でも、一体農家の跡取りをどうするのかということが大へん大きな問題になった。それから農村でも以前は嫁の行き手がないということが問題でありましたけれども、最近は嫁をもらう方の跡継ぎの方が問題だということで大へん大きい問題になっております。全くこのことから見ますと、こういう農民の間の非常に大きな率直な心配をこういうレポートの形で資料をあげて、その本質に触れているこのグリーン・レポートには、私はそういう点では敬意を表するわけです。ところが、そういうふうに取り上げておきながら、これに対する対応策というもの、がこの施策の中でほとんど取り上げられていない。これは一体どういうわけなんだろうか。このレポートの方でこんなに強く指摘しておきながら、実際はこれに対する認識が不足なのか。あるいはこれは自分の方の農林省の仕事じゃなくて、どこかほかの方の仕事だというふうにお考えになっておられるのか。あるいは何とかなるだろうという楽観的な観測をしておられるのか。あるいはこれじゃどうにもならない、この問題だけは政治の面でどうこうならないので、お手上げだということになっておるのか。私にはレポートとプランとの間の関連が全くかけ離れておるところから、そういう疑問が起こるわけです。これについて最初に大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  79. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のように、近時とみに農村青年が都市に転出して参る数字がふえておりますことは、御承知通りであります。さればと申しまして、これをどうして農村に食いとめるか。私は、今のような農村の実情である限り、この前途に対して不安定であり不安のままの農村に青年をとどめるという力はないのじゃなかろうか。そこにすみやかに農村の構造を改善するとか、成長農業を取り入れて、農家経済に対してここに企画的な安定感を農村の青年に与えるということが先決問題でございまして、どういう説法よりもまずそこに施策を先にいたしまして、そうしてその施策に対して自信と興味を青年に与えるということによって、ここに新しい青年の農村に対する興味を呼び起こすということでなければならないのではなかろうかというふうに思うのでございます。もちろん私の考えで十二分であるとは決して考えておりません。それには別にまた農村教育の問題が起こって参りましょうし、ことに農学校等の教育につきましても、今日各県立の大学農学部がありますけれども、これらが一体どういう関連性があるのか、どういうふうになっておるかということにつきましては、私も及ばずながら今多少の関心を持って、これからそろそろ考えなければならぬじゃなかろうかという気持はいたしておりますけれども、まず第一に考えるべき問題、まず第一にしなければならぬ問題は、農村の構造を改善して、そこに農村の将来に対して、農業経営の将来に対して、農村青年をして興味を持たせ、十二分に安定感を与えるということが先決問題であるというふうに思うのでございまして、あえて私は農村の構造改善に非常に重点を置き、またこれからの経営改善について考えて、これに農村青年が興味を持っていただくということで対処して参るというふうに考えておるのでございます。
  80. 湯山勇

    ○湯山委員 大田のおっしゃることは、私の言わんとするところと鶏が先か卵が先かという議論になるような御意見じゃないかと思います。現実に農家人口が多過ぎるということで、非常な勢いで農業人口の他廃業への流出が行なわれておる。ところがそのこと自体は、あるいは好ましい傾向だとも言えると思いますが、その傾向が逆に今度は、今の農村の近代化あるいは生産性の向上を阻害しておる大きな条件になっておる。こういう事実を見ると、はたして今大臣がおっしゃったように、安定性のある農村を作っていく、あるいは農村の近代化あるいは生活の向上を進めていくと申しましても、今のような新規卒業者がどんどん他産業に出ていくという事態は、大臣のおっしゃるような条件を作っていくことを阻害する、こういうことになっておるということをグリーン・レポートは報告しております。そうだとすれば、先にそれをやるというのじゃなくて、同時に農村の後継者の確保、養成ということについて積極的対策を立てていかなければ、やはりいびつになって、お互いにそれが制約する条件になる、こういうふうに私は考えますが、どうでしょうか。
  81. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、ただいまも申し上げました通りに、そのこと自体は対策であって、そのことなくしてただ単に農村青年を農村にとどめるということは、なかなかむずかしいのじゃないか、たとえばつまらぬことを申し上げるようでございますけれども、私の郷里の神奈川県で福羽イチゴ、石がきイチゴをしきりに作っております。これを今度ロンドンとパリに輸出することにいたしまして、実はこれを定期便で輸出を始めるわけでございます。これについて神奈川県もある程度の補助金を出し、そして日本航空もある程度これについて協力をし、県のイチゴ組合もこれについて大いに努力をして、そしてこれがわが国としては初めて欧州に新鮮なイチゴが輸出される、こういうこと自体が現実に行なわれてくるということが、農村の青年をして一つの大きな興味を持たせるということになるのだと私は思うのであります。そこに農村青年がイチゴを作ってパリ、ロンドンの食膳をにぎわすということになるならば、一体それがどういうふうに出て、どういう計算になるだろうか、これをさらに合理化してどういうふうにできるだろうかということが、農業経営の中に現実に生まれて参る。その事実が農村の青年をして農村に足をとどめさせることになるのであって、そのことなくして、ただ、都会へ農村青年が流れるから、それをどうする、こうするといっても、なかなかむずかしいのじゃないかという気持がいたします。従って私はここにりっぱな農村をいかにして築き上げるか、築き上げるその事実、その事実に対して、青年の協力を求める、興味を喚起するということで、青年もとどまり、りっぱな農村もできるということになるのだろう、こう考えてやっておるわけでございます。
  82. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣、神奈川の例をおっしゃいましたが、神奈川県では、三十六年の三月の学業生について申しますと、中学の卒業生が四万六千三百名、その中で就職した者が約一万五千名です。農業についた者百三十名。中学卒業生のわずかに〇・四%です。大臣のおっしゃる神奈川県でそうです。それから高校では三万四千五百人の卒業生がありました。その中で就職した者が二万一千百名、その中で農業についた者が二百六十七名、わずかに〇・八%です。これで神奈川県の農業の将来が——何とか今のイチゴを作らしたり、あるいは果樹を作らしたりすればやはり三%、五%にふえる、こうばかりとも私は言えないのじゃないかと思うのです。ここではやはりそこが政治で、私はほかの例をあげて必ずしもそれと合わないかもしれないけれども、たとえば保健所のお医者さんが足りないというときには、やはり保健所のお医者さんを養うために国が特別の金を出してそれを養成しておる。あるいは学校の先生についても、特別に国が金を出して先生の確保をはかっております。それから自衛隊は別でしょうけれども、これらについてもとにかく被服費から食費、さらに防衛大学の学生は国が給料四千五百円出して募集しております。そうすれば実際に日本産業全体の中で農家戸数はこれだけいる、それだけいるのについてはこれだけの後継者が必要だということになれば、今の大臣のおっしゃるような農業形態、農業構造を作っていくことはもちろんですけれども、それと同時に、積極的にそういうものを作るための直接の対策が並行して講じられていかなければ、いざというときに振り返ってみたらあと何にもいない、このレポートで指摘しているように後継者が激減する、あるいは生産が停止する、こういうことになるのじゃないかということを私は心配しておるわけです。いかがなものでしょう。
  83. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のような点も私は決して心配ないとは申し上げませんけれども、たまたま今神奈川県の例を引いて数字をお示しになりましたが、地理的条件からいたしまして勤め先が非常にたくさんある。工場がたくさんある。たまたま中、老年のおやじがおる、じいさんがおる、そして私の県は、機械が割合によく田んぼに入りますから、これを機械化することによって労力が非常に過剰である。中学、高校卒業生の農業の力はあまり必要としないというようなことから、これらの人が必要以上に転出しておるということは、私はその通りだろうと思うのであります。しかし一たびこれが世代がかわるというようなことになりますれば、当然私は帰農して変わっていくものと考えられます。一方、それではそういうふうにそこに年滞りばかりおって、若い者を失なう農村の実態がどうか。非常に固陋であって、保守であって、進歩改良に熱意がないかと申しますると、私は私の周辺の農村の姿、果樹、蔬菜に、園芸に、非常に進歩した農業経営がどんどん生まれつつある事実を知っております。従ってこれらが安定し、固定して参ったときに、そこに私は新しい農業というものが生まれて合理化された労力を、そこに必要なものは吸収される、りっぱな農村が建設されていくものであると思うのでございます。
  84. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣のおっしゃったこともありますけれども、グリーン・レポートはその逆な現象を指摘しております。と申しますのは、農家の補充率を、新卒業生が新しく農業に就業するその状況を指摘して次のように述べております。山陽、近畿地方では大体現状のまま固定するとして、その二〇%程度しか確保できない。それから北海道八〇%、東北が六〇%、北九州が四〇%、こういうふうに指摘をしております。しかしこれは三十五年です。三十五年は十二万七千名の高校、中学の卒業生が農業に就業いたしました。ところが三十六年は十二万七千であったものが七万七千に減っておる、こう報告しております。これはその約四割にしか当たりません。しかもこの中で都市周辺のものは通勤形態等からどうにか農業がささえられているけれども、山村、純農村は逆に出ていかなくてはならないために、その跡継ぎを得るということについては非常に深刻になっておる。非常に著しい後継者の不足が見られるというふうに、大臣のおっしゃった就業機会の多い便利な工場のあるところ、そうだからそうだというのではなくて、むしろ山村、純農村に今のように後継者不足の現象が強いということも、逆な現象として出ておる。こういうことを見て参りますと、これらの対策というものはやはり相当強力な手を今の段階に打っておかなければならないのじゃないか。ことに悲観的な条件としては、農業基本法によって所得格差の均衡をはかるとはなっておりますけれども、他産業とひとしくする、こういうことは言われてありません。現に今年度の報告の中でも、格差は一そう拡大しておる。伸びていきながら拡大しておる。そういう中で、じゃ将来農村に帰ってくるかといっても、一部には帰るのもありましょうけれども、実際そういう期待も強くは持てないと思います。それから毎年農業就業者の数は減ってきておるというようなそういう事実、それから出生率も高校急増対策で、今度入るのは二百六十万とか二百三十万とか生まれた連中が入って参りますけれども、三十年以降に生まれた数はもうはるかにそれを下回って百七十万、百六十万台に落ちております。大体その傾向が今続いておる。そうすると所得倍増計画その他で鉱工業、製造工業方面へどんどん人が行けば、一そう農村の後継者の確保ということはむずかしくなってくる。そういう楽観的な条件よりもむしろ悲観的な条件の方が将来大きくなってくるのじゃないかと思います。そこで私は、この際非常に強力な対策を政府全体としてお立てにならなければならないのじゃないか、それについては若干の意見もあるわけですけれども、そういうことを痛切に感じるわけですが、もう一度大臣の御所見を伺いたいと思います。
  85. 河野一郎

    河野国務大臣 私は二つの点について御考慮をわずらわしたいと思います。  第一点は、御承知通りわが国のいわゆる農業以外の産業がたまたま国際的にその例を見ないほど成長率がよろしい、これはよく池田総理が使われる言葉でございますが、一体そういうことは永久に続くことなんだろうか。それはイギリスにしても、アメリカにしても、その他の国の例をとってみましても、一体一般産業成長率というものがいつになっても六割も七割も八割も成長していくものだろうか、私はそんなことはないと思うのです。従って、いつでもこれらの産業は、今申すように所得倍増、所得倍増というようなことを言って、太鼓をたたくようなふうに倍増していくものではない。たまたま今のわが国産業がそういうときに回り合わせておって、非常に成長率のいい段階にある。成長率の伸びのいいときにありまするから、そういう環境に置かれておりまするから、農業との格差が非常に開くということも考慮の一端に差しはさむ必要があるだろう、こう言っていいのじゃないか。それからまたわが農業ほどこれまで国家の犠牲になってきた農業はない。これほど条件の悪い農業はない。たまたまあらゆる保護助長の中に初めてどうにかやってきた農業である。でございますから、こういう非常に条件の悪い、成長率の悪い悪環境のもとにある農業が、非常に伸びのいい時代にぶつかっておる産業との間で議論をし、その間に青年の興味を右にし左にするというようなことはなかなか容易なことではできることではないと思うのでございます。従って、湯山さんのおっしゃるように大きな力が必要だ、大きな施策が必要だ、必要かもしれません。私もそれをあえて否定するものではございません。しかしそれはそれにして、農村には農村のまたよさがあります。これは私は、農村青年が決して否定はしないと思います。でございまするが、ただ農村の青年のよさというようなことでもってこれを食いとめるわけにはいかぬ。そこにはやっぱり安定も必要でございましょうし、発展も必要でございましょうし、将来に対する希望も必要でございましょう。その人自身が自信を持ってその企業に従下をし、そこにみずからの幸福感を求めることができるような環境を作り出すということに政治は全力を尽くす必要がある、こう私は思うのでございまして、まず日本農業の客観性をよくするということが必要である。その中に独自の企画、独自の経営というものがその青年をして自信を持たしめる。そこに初めて私は安定した農村の姿というものが生まれてくるのではなかろうか、こう思うのでございまして、これを今申し上げますように、他産業との所得差をなくせなくせと言ったって、当面、ここ一年や三年でわが日本農業所得日本の他産業との所得格差を縮めろ縮めろと言っても、そんなに縮まるものではないと思うのです。どうやったって、一番条件がいいものと、一番悪いものとが一緒になっておるのでございますから、(「あきらめるな」と呼ぶ者あり)あきらめるわけじゃありませんけれども、できるだけの努力をして、そうして皆様方の御協力を得て、政府としては、施策において、あらゆる角度からこれに協力を申し上げるということでいくべきだろう、こう思っております。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣のおっしゃるように、大体農村が、ほんとうに青年にとって魅力があるというふうになるのは、一体いつごろそういうふうになるというお見通しでしょうか。人間の方は現実に生きて年をとっていっているわけですから、いつどうというような見通しがあればまたそれは話になると思います。ただばく然と、にじですか、夢、そういうものを掲げてそれで行けといっても、これは行けるものではないと思います。ことに農業の持っておる本質は、そういうことがなかなかむずかしいと思う。それでEECあたりでもやはり農業の問題がいろいろ議論の中心になっておりますということも大臣がおっしゃった通りです。そういうことから考え合わしてみて、はたしてそういうことが、今のように、ただばく然とじゃないにしても、環境をよくする、そういうことだけでできるものかどうか、この点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  87. 河野一郎

    河野国務大臣 湯山さんの御承知通り、全国にはそういう青年が私は現にたくさんおると思います。新しい経営、新しい成長部門に自信を得て、そうして農業経営をみずからやっておる、非常に興味を持っておる青年が現におる。また、境環その他の関係から自信を失っておる人もたくさんおられるということであります。いっそうなるか、私は、現にあるものはあるのですから、そういうものに対して周囲からあらゆる協力を申し上げて、その環境を整備することによって、また御本人の御自覚によって、そういう事態が農村に生まれてくるようにすることがわれわれの政治のねらいでなきゃならぬ、こう思うのでございまして、少なくともわれわれの主張するところの構造改善、これを全国各町村に及ぼし、そうしてさらに政府が協力をしていくならば、必ずや私は可能である、こう思っております。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 今おるということを私は否定してはおりません。ただ、今おる人はそれは一生懸命やっていくだろうと思いますし、どうにもならないからやっていくという人もあると思います。が、そういう人はそれとして、その跡継ぎになる新規卒業生がある程度希望を持って農業についていって、将来これで農業をやれば立っていくのだ、後継者がなくなって、それで生産が停滞するとか、あるいは急激に農業従事者が減ってしまってどうもこれでは農業がやっていけない、そういう事態が起こらないのだというだけの施策はしておかないと、今せっかく一生懸命やっておる人たちも、さて自分がやっておるあとはだれが継ぐだろうか、こういう心配はやはりあるだろうと思うのです。その点について、何か新たな対策が必要じゃないかということを申し上げておるわけです。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 刻々と変わる世界情勢の中にありまして、たびたび申し上げますように、条件の悪い日本農業のことでございます。どういう事態が起こってくるかということも、実は考えられる場合がなかなかいろいろあるわけでございます。従いまして、よほど今後強力に政治がこの方面に施策をしていくのでなければ、今お話しのように、いつどういう事態がくるということは、私は決してこれを安閑と楽観しておるわけには参らないと思います。しかし、さればといって、今申し上げます通り全国各地に、たとえば柑橘地帯に参りますれば——藤田さんの顔が見えますが、熊本市の郊外のあの柑橘地帯に参りましてあそこの青年と会って話をしてみれば、これは実に非常な希望を持ってその柑橘畑で働いておられる青年を発見することができます。そういうふうに、全国にそれぞれの特殊な場所において新しき成長部門に取っ組んで成果をあげておられる青年はたくさんあると私は思うのであります。従って、これをつい最近始めてというだけでなしに早く始められた、早くそういうようなものを持っておられる人もおりますし、たまたまおくれたと申して恐縮ですが、時代の趨勢に沿って農業の中にみずからの将来を考えずに、都会に走られる青年もおられるというのが現実である。だからそれを、これから全国的にわれわれとしては構造の改善を行ない、それに安定した一つの青写真をもって、これら青年に将来についての十分な検討を、同時に興味を持っていただくようにするならば、将来の日本農業というものはそこに私は強固な基礎の上に成長していくものではなかろうか、こう思っておるのです。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 少し時点が私と大臣と違っておりますのは、大臣は現在農業をやっておる若い者ということに焦点をしぼっておられるようです。私はそうじゃなくて、農業をやっていない、今学校に行っておる、中学校に行っておる、高校に行っておる、そういう者が、農業につく者がだんだん減っていっておる。農業高校の志願者も減っておる。それじゃ結局将来今やっておる人の跡を継いでいく者がなくなってしまうのではないかということを申し上げておるわけで、そのことについてのグリーン・レポートの指摘は私は大へんよくできておるということを申し上げておるのです。現在やっておるのは、どの地域にもほんとうに青年が一生懸命やって、共同作業をやっておる者もあり、あるいは機械化作業を進めておる者もあり、いろいろあることはそれは否定しておるわけではあません。  そこで今のことを少しあと戻りしまして、グリーン・プランの中で言っておられる三十七年度の後継者の、あるいは農業従事者の質の向上、あるいはそれの後継者の確保、そういうところで述べておられる施策というのは、これは一体農業のためになるというふうに判断しておられるのか、あるいはこれは農業にとってはよくないんだというので指摘しておられるのかわからないようなところがたくさんあるわけです。たとえて申しますと、施策の中に、何といっても農業教育が後継者の養成には大事である、中学の職業家庭科では農耕園芸を今年度までは必修でやっておった、来年度からは技術・家庭になる、こういうようなことが書いてあるのです。一体技術・家庭というものが三十七年度から実施されることは農業にとってプラスなんですか、マイナスなんですか。
  91. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 農業経営者の養成、確保という三十七年度に予定しております施策を明らかにした文書の四十一ページかに載っておりますが、ただいま御指摘のことは直接に私の方の担当ではございませんけれども、農業にこれから従事しようとされる方の養成、確保、人材の確保ということには効果があるものだというふうに考えます。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 その理由がわからないのです。今までは職業家庭では一年三百十五時間の中で三十五時間必修でした。今度は技術・家庭になって機械とか技術方面が多くなりましたから、その中での園芸といいますか、農耕関係は三十五時間の中で必修時間が二十時間に減っておるのです。だからそれは一体いい施策と判断して書いておられるのか、悪いとして書いておられるのか、ちっともこのプランではわからないのです。私どもに言わせれば、これは農業だけからいえば悪くなっておると思います。いろいろその補助がたくさんあるようなことを書いてありますけれども、農業関係の補助というのは移植ごてだとか、そんなまことにありふれたものばかりで、そうでないところへはうんと大きいものが補助される、こういうことになっておって、今度のではむしろ科学技術という今の技術の方が重く見られて、農業というようなものは今度の改定では軽く見られておる。これはみんなだれもが一致した意見です。ところがこのグリーン・プランの中では、あたかもそれがよくなるように、今もおっしゃったようによくなるというような判断に立った書き方をしておる。それで私が最初に大臣に、このレポートとプランとは一体一致しておるのかしていないのかということをお尋ねしたのはそこなんです。どうなんですか。
  93. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 文部省の関係でありますので、私必ずしもつまびらかにしておりませんが、内容的に近代農業をやるのにふさわしい科学技術というような意味でのところに重点を置いたという意味で、進歩的な政策の価値があるというふうに了解できるのではないかと思います。詳しい内容につきましては、私ここで御説明申し上げて誤解があるといけませんから差し控えさせていただきたいと思いますが、そういうふうに理解できると思います。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 それはどちらかといえばこじつけだと思うのであります。今度の改定自体が新しい科学技術というその言葉は、決して今の農業を重視するという立場をとっていない。その次に農業高校の教育については統廃合、あるいは教科を新設する、あるいは科を変える、定員の検討をする、こういうことがあって、これによって農業教育はよくなる、後継者の確保もあるいは技術の確保もできるというようにおっしゃいましたが、実はこれは御存じの通り農業高校の志願が三十六年度はすでに定員に足りません。そこで困って農業土木をふやすというのは、実は工業の土木科をふやせないから、仕方がないから農業土木を出た者を工業土木の代用に使っておる。今の農産加工、これはある程度は使える者もありますけれども、これも大企業、大産業に就職するということで、転科をしているというのは、従来の農耕を中心にした、自分のうちの跡継ぎになる農業の科を減らして——長野県なんかは学校数にしても四分の一に減っております。それを外に出ていくのに都合のいいように振りかえておるわけで——一人一人を見ればよくなったかもしれませんけれども、農業全体の体制としては、後継者が減っていくことに拍車をかける。こういうことにしかなっていないのですが、そういうことをあたかもこれによってグリーン・レポートの今の農業従事者の確保に対応した施策であるかのごとく書いておられるから、これではどうも大へんなことになるのではないか、そういう心配があって、そこで大臣ともずいぶん同じことを繰り返し問答したのはその点なんです。これは自分のところのことではない、文部省のやったことだと言われるかもしれませんけれども、文部省自体は、国全体の政策の中ではむしろ工業技術者の確保が重点で、農業の後継者の確保というようなことは、あの審議の中でそんなに出ておりません。仕方なく今度農業町校の教育と書いたらどうだという答申を出して、それではやろうかというのを思いついたのはやっとこの間です。だからこのプランの中に書いてあるいろいろな施策というものは、少しおざなりではないかというような感じを持つわけですが、どうなんでしょう。
  95. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 先ほどから農業経営を受け継ぐ人の数の問題としての御議論にむしろ重点があったように思いますが、経営者の後継者の確保という意味は、必要な数を、しかもこれから新しい形の農業を担当する優秀な人材を確保する。むしろその質の方に重点が今後は置かれなければならぬと思うのです。そういう意味で文部省で考えております農業高等学校についての考え方も、これからやろうとすることも、そういう意味で教育に非常に大きな効果があるといふうに考えられます。そういう意味での施策をここへ書いたのであって、先ほど来の大臣お話と何ら矛盾することはないというふうに考えます。
  96. 湯山勇

    ○湯山委員 それはもう少し実態を御把握願いたいと思います。  今度の教育課程の改定ですね、それの中心は科学技術の振興にあることは御存じでしょう。それに合うような体制をとっているわけです。そこで、たとえばそのために工場、事業場等でやる技能教育、そういうものも文部大臣が認定すれば、通信教育、定時制教育の単位に入るわけです。しかし農家の者は、中学を出て、ほとんど定時制に参ります。一生懸命勉強して、うちの仕事を一生懸命にやっても、ちっとも単位にならない。おとなと同じようなことをやっても単位にならない。そういう体制で進んでおる今の改革の中で、それで農業が充実するということを一ぺんに思い込まれてしまうのでは困る。むしろこういう問題は農林省の方がイニシアをとって、このグリーン・レポートのこの面での分析においては私は敬意を表しておるわけですから、こういう状態だからこうでなくちゃならぬじゃないかという積極的な意見がむしろ農業担当の農林省から出るべきだと思います。大臣そういうふうにしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  97. 河野一郎

    河野国務大臣 よくわかりました。
  98. 湯山勇

    ○湯山委員 ぜひ一つそういうふうにお願いいたしたいと思います。  そこで今の、私はそういうことのためにはこういうこともお考え願いたいと思うのは、たとえば自創資金なんかで、二男、三男の土地を長男が分散しないために、二男、三男に金を払って学校に行かす。行かしたのはみんな他産業へ就職する。農家の金で養って他産業へ就職させる。しかし今度はほかの勉強をした者が農業へくるというのはほとんどありません。農林大臣のように奇特な方は、他の勉強をなさって農業の方へきて下さった前例がありまずければも、他にはほとんどないのが今の実情です。そして今のように技能教育にしたって、農業で一生懸命実際にリンゴを作る、ミカンを作る、そういう仕事に青年がついておっても、それは単位に認められない。大きい目で見ると、どっかで養成をして、農業へもそういう養成をしたりっぱな素質を持った後継者を返してやるということは、政治全体の場では、一件々々で考えると変ですけれども、国全体の政策の中では、そういう考え方をするということは私は間違いじゃないと思うのですが、どうでしょうか。
  99. 河野一郎

    河野国務大臣 よく勉強いたします。
  100. 湯山勇

    ○湯山委員 そのためには、御参考までに申し上げたいのは、さきのお医者さんが足りない、公衆衛生の技官が足りないというので、公衆衛生修学資金貸与法の中で、月四千五百円ずつ出す、それを借りた期間の二倍就職すれば免除になる。これは矯正施設の医官の場合も、自衛隊の特別な技能者、それからお医者の場合も、それから義務教育の先生、今度からは高校の先生にも、これは二千円ですけれども適用になります。防衛大学はさっき申し上げた通り、そういうことを考えると、新しい優秀な者が農村に残らなければならない。それが足りないということならば、農業高校でなければ、実際新しい農業のにない手はできないわけですから、その農業高校を無償にして全部修業さす、そうしてそれが将来必ず農業の跡継ぎになるということがきまっておる、そういう形でやっていくというようなことを、この際農林省としてはあるいは河野大臣としてはやっていただくのがいいのじゃないかと思うのですが、どんなもんでしょうか。
  101. 河野一郎

    河野国務大臣 今のようなお話も、大へん参考になるお話と私は思います。先ほども申し上げました通りに、たまたま農業教育について一つ何らか考慮しなければいかぬのじゃなかろうかと思っておった際に、非常にけっこうなお話を承りまして、よく勉強いたしまして善処いたします。
  102. 湯山勇

    ○湯山委員 これで終わります。
  103. 野原正勝

    野原委員長 明日午前十時から委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会