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河野国務大臣 私は二つの点について御考慮をわずらわしたいと思います。
第一点は、御
承知の
通りわが国のいわゆる
農業以外の
産業がたまたま国際的にその例を見ないほど
成長率がよろしい、これはよく池田総理が使われる言葉でございますが、一体そういうことは永久に続くことなんだろうか。それはイギリスにしても、アメリカにしても、その他の国の例をとってみましても、一体
一般産業の
成長率というものがいつになっても六割も七割も八割も
成長していくものだろうか、私はそんなことはないと思うのです。従って、いつでもこれらの
産業は、今申すように
所得倍増、
所得倍増というようなことを言って、太鼓をたたくようなふうに倍増していくものではない。たまたま今の
わが国の
産業がそういうときに回り合わせておって、非常に
成長率のいい段階にある。
成長率の
伸びのいいときにありまするから、そういう環境に置かれておりまするから、
農業との格差が非常に開くということも考慮の一端に差しはさむ必要があるだろう、こう言っていいのじゃないか。それからまたわが
農業ほどこれまで国家の犠牲になってきた
農業はない。これほど
条件の悪い
農業はない。たまたまあらゆる保護助長の中に初めてどうにかやってきた
農業である。でございますから、こういう非常に
条件の悪い、
成長率の悪い悪環境のもとにある
農業が、非常に
伸びのいい時代にぶつかっておる
産業との間で議論をし、その間に青年の興味を右にし左にするというようなことはなかなか容易なことではできることではないと思うのでございます。従って、湯山さんのおっしゃるように大きな力が必要だ、大きな
施策が必要だ、必要かもしれません。私もそれをあえて否定するものではございません。しかしそれはそれにして、農村には農村のまたよさがあります。これは私は、農村青年が決して否定はしないと思います。でございまするが、ただ農村の青年のよさというようなことでもってこれを食いとめるわけにはいかぬ。そこにはやっぱり安定も必要でございましょうし、発展も必要でございましょうし、将来に対する希望も必要でございましょう。その人自身が自信を持ってその企業に従下をし、そこにみずからの幸福感を求めることができるような環境を作り出すということに政治は全力を尽くす必要がある、こう私は思うのでございまして、まず
日本農業の客観性をよくするということが必要である。その中に独自の企画、独自の
経営というものがその青年をして自信を持たしめる。そこに初めて私は安定した農村の姿というものが生まれてくるのではなかろうか、こう思うのでございまして、これを今申し上げますように、他
産業との
所得差をなくせなくせと言ったって、当面、ここ一年や三年でわが
日本農業の
所得と
日本の他
産業との
所得格差を縮めろ縮めろと言っても、そんなに縮まるものではないと思うのです。どうやったって、一番
条件がいいものと、一番悪いものとが一緒になっておるのでございますから、(「あきらめるな」と呼ぶ者あり)あきらめるわけじゃありませんけれども、できるだけの
努力をして、そうして皆様方の御協力を得て、政府としては、
施策において、あらゆる角度からこれに協力を申し上げるということでいくべきだろう、こう思っております。