○坂村
政府委員 それでは
農業災害補償法の一部を
改正する
法律案の
内容について補足して御
説明申し上げます。
農業災害補償
制度は、
農家が不慮の事故によって受ける損失を補てんして、
農業経営の安定に資するための重要な災害対策であり、年々多額の国費を投じておりますことは、今さら申し上げるまでもないことであります。
しかし、最近における土地
改良の
進展、あるいはまた品種の
改良、農薬の発達、耕種技術の進歩等に伴い、農作物災害の発生態様も著しく変化して参りまして、この
制度に対し、
農家を初め各方面からの批判が高まり、抜本
改正を要望する声が強くなって参りました。
そこで
政府は、
昭和三十五年四月以来約一年にわたり、各界の権威者や
関係団体の代表者を交え慎重に検討を加えた結果、農作物共済を
中心として
改正案の成案を得ましたので昨年の第三十八回通常国会に
法案を
提出しましたが、
審議未了となり、第三十九回臨時国会に全く同じ
内容のものを再
提出いたしましたところ、今国会に継続
審議となり、現在に至った次第であります。
以下その
内容を御
説明申し上げます。
第一は、画一的強制加入方式の緩和であります。
まず組合への加入につきましては
現行制度のもとでは一たん組合ができますと省令で定める一定規模、たとえば水稲と陸稲または麦の耕作面積が一反歩以上の
農家はすべて一律に組合への加入が強制されており、それ以下のものについては任意加入ということになっております。今回の
改正案では第十六条の
規定を
改正して、任意加入の幅を広げることといたしました。すなわち、当然加入と任意加入の限界となる
農家の規模は、政令で定める範囲で各
都道府県内の地域の実情に応じ
都道府県知事が定めることといたしました。政令では北海道は別として、水稲、陸稲または麦の別に一反歩ないし三反歩の範囲とする考えであります。
次に
農家と組合等との間の共済
関係についても任意的要素を取り入れることといたしております。これに関する
規定は第百四条、策百四条の二及び第百四条の五であります。すなわち
現行制度のもとでは水稲、陸稲または麦のいずれかを耕作している
農家または養蚕
農家であれば、任意加入をしたものであっても、農作物共済及び蚕繭共済の共済
関係が当然に成立することとなっておりますものを、任意加入の組合員は申し込みにより共済
関係を成立させることができることといたし、共済
関係が当然に成立するものは第十六条の
規定により当然に組合員となる
農家だけといたしました。
なお、これに関連をいたしまして従来の共済
関係の停止に関する
制度はこれを
整備し、存続せしめております。すなわち農作物共済の共済
関係は共済
目的の一つの
種類について第十六条の
都道府県知事が定める
基準に達しておれば、第百四条の
規定によりその
基準に達しないほかの共済
目的の
種類についても当然に成立することとなりますが、その
基準以下の農作物については第百四条の五により組合員の申し出により年度ごとに水稲、陸稲及び麦等共済
目的ごとに共済
関係を停止させることができることといたしているのであります。
さらに、共済
目的の
種類ごとに、事業の廃止ができる
規定を新たに設けました。第八十五条では組合は原則として農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済の全部を行なわなければならないこととなっておりますが、事業量の僅少な共済
目的や、
農家経済上さほど重要でない共済
目的についてまで、なおこれを強制する必要はないと考えますので、従来きわめて例外的にしか認められなかった共済事業の一部または全部の廃止につき、今回その範囲を拡大し、農作物共済と蚕繭共済につきましては、共済
目的の
種類すなわち水稲、陸稲もしくは麦または春蚕繭もしくは夏秋蚕繭別に、その規模が
農林大臣の定める
基準以下である等、共済事業を行なわないこととする
理由がある場合には、総会の特別議決を経て、共済事業を行なわないことができることといたしました。なお、このようにして共済事業を一部廃止いたしました場合でも、その後に再び総会の特別議決により事業を開始することはできることといたしております。
以上の
改正によりまして、強制加入
制度が相当緩和されることとなりますが、この際、第二十九条のような行政庁による組合の
設立命令の
規定は、
農家の自主性を尊重する見地から好ましくないと考えましたので、削ることといたしました。共済
関係の問題については、以上のほか、第百四条の三及び第百四条の四等若干の技術的な
改正を行なっております。
第二は、農作物共済における
農家単位収量建引受方式の採用と補てん
内容の充実であります。
現在の方式は一筆単位収履建方式でありますが、災害を受けた
農家の所得の補てんという見地から、これを原則として
農家単位収量建方式に切りかえたわけであります。
関係の
条文は第百六条及び第百九条であります。すなわち、
現行の一筆単位方式においては、各耕地ごとに見て三割以上の減収があれば共済金の支払いを行なうこととなっておりますものを、
改正案では
農家単位方式でありますので、被害のあった耕地ごとの減収を
農家ごとにまとめてみて、その減収量の
合計がその
農家全体の
基準収量の二割をこえることとなった場合に支払いを行なうこととした次第であります。
損失の補てん
内容につきましては、
現行制度では、水稲を例にとりますと、全損の場合の共済金は、百五十キログラム、一石当たり最高約五千円、最低約千五百円でありますが、
改正案では最高約七千円、最低約三千円に引き上げ、その充実をはかることといたしました。
この
農家単位収量建方式の採用は、今回の
改正の大きな柱となっておりますが、直ちに全部の組合がこの方式に移行することも無理な点もあるかと思われますので、附則第十四条で例外を設けまして、耕地の分散度、耕作規模別
農家の分布
状況及び最近の被害の発生
状況等を勘案して、
都道府県知事が指定する組合等につきましては、なお三年間は
現行の一筆単位収量建方式によることができることといたしております。この場合の共済金額は、おおむね
現行通りとする予定であります。
第三は、組合等の共済責任の範囲を拡大し、その自主性を
強化することとし、これに伴い共済保険設計の改修をはかったことであります。
現行制度は、組合等の共済、連合会の保険、特別会計の再保険という三段階制になっており、末端の組合等ではわずかに共済責任の一割を実質上分担しているにすぎないのであります。従って農民の掛金もその相当の部分が連合会に納められることとなっておりまして、最近における農民のこの
制度に対する不満も、組合等の運営が適切に行なわれがたいこと等も、その原因の大きな部分はここにあると考えられるのであります。一方、最近における農作物災害の発生態様の変化から見て、
都道府県段階に危険のプール機能を持たせるよりも、市町村段階で設計の個別化を行ない、通常災害の全責任を持つこととする方が
実態に即すると毛考えられますので、農作物共済につきましては、従来連合会で持っておりました通常災害の責任の全部を組合等におろすこととし、これを越える異常災害については事業団の保険に付するという二段階制を原則とすることにいたしました。従いまして、従来
都道府県段階の連合会を
中心になされておりました保険設計も、市町村段階での設計に個別化されるわけであります。これによりまして、末端の組合等の事業の責任
体制が確立されることとなるのでありまして、これに伴い、
基準収量の設定や通常災害の損害評価につきましても、組合等の自主性を尊重することといたしており、組合等は、
農業保険事業団が
農林大臣の
認可を受けて定めた準則に基づき、
基準収量を設定し、損害評価を行なうことといたしております。しかし、組合等だけで通常災害責任を引き受けるのに心配がある場合もありますので、この場合においては第百二十三条に
規定してありますように、組合等は自己の通常責任の一部を連合会の保険に付することができることとし、その付保する割合は連合会と組合等が協議して定めることといたしております。これに関連する
条文として、第百七条の料率の
規定、第百二十三条の連合会の保険の
規定及び第百三十三条の
政府の再保険の
規定を改めたわけであります。なお、この際第百九条を
改正しまして、従来明確でなかった
基準収量、減収量及び植付不能等の場合の取り扱いについての技術的な
規定を
整備いたしております。
以上のように末端の組合等の任務を
強化して参りまして、組合等が責任と自主性を持つことにより、この
制度の適正、円滑な運営を期待しているわけであります。
第四は、農作物共済の料率の設定方法及び共済掛金の国庫負担方式の
改善であります。
農作物共済の料率につきましては第百七条に
規定されておりますが、さきにも申し上げました
通り、
現行制度が
都道府県段階を
中心に仕組まれております
関係上、料率もまた
都道府県段階においてその過去二十年間の被害率を基礎としてまず
都道府県別の標準率が設定され、これを
都道府県内の危険階級別に割り振って
基準率を定め、これを下らない範囲内で組合等がその区域または危険階級別の地域ごとの共済掛金率を定めることとなっております。このため、組合等にとりましては必ずしも被害の
実態に合わない面があるのであります。そこで、今回は組合等の過去十数年間の被害率を
農家単位方式に換算して、組合等ごとに料率を設定する予定であります。また、組合等の区域内で被害の出方が異なる等のため料率を細分する必要がある場合には、あらかじめ事業団の承認を得た上で、各地域ごとに掛金率を定めることといたしております。
共済掛金の国庫負担に関しましては第十二条、第十三条に
規定されております。まず国庫負担割合についてでありますが、従来は一つの
都道府県内ではその
都道府県の共済掛金標準率によって定められる国庫負担割合をすべての組合等に一律に適用しておりました。しかし、今回の
改正で組合等に通常責任を保留させることとした結果、
基準共済掛金率も組合等の被害率を基礎として定めることといたしましたので直接組合等ごとに国庫負担割合をきめることとしたのであります。この際、従来の通常災害、異常災害については半額国庫負担、超異常災害に対しては全額国庫負担という建前に基づきまして、総体として現在の国庫負担割合六二%程度をそのまま維持することとし、
基準共済掛金率の高低、すなわち被害の高低に応じて、負担割合を
法律の別表で定めることといたしたのであります。この表では、最低を二分の一とし、超過累進の方法によって国庫負担の割合を短めているのでありまして、これにより、従来の国庫負担の不均衡、不合理の面が是正されると考えております。
次に共済掛金国庫負担金の交付方法についてであります。今回の
改正案では、国にかわり事業団が国庫負担金の交付を行なうことといたしました。この場合、事業団を国とみなして、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する
法律を準用して、その取り扱いの適正化を期するとともに、組合等に対する交付金の交付も
農家からの共済掛金の徴収度合いを勘案して行なうこととし、事業運営の適正化を期することといたしました。
第五は、共済掛金の割引と水稲についての病害虫防除事業の推進であります。
最近では病害虫防除技術も著しく進歩いたしましたので、その
施設が完備すれば特定の病虫害を除き防除がおおむね可能となっております。従って将来の問題としては、一般の病虫害を共済事故からはずすことも考えられるわけでありますが、今直ちに全国的に病虫害を事故からはずすことも問題でありますので、病害虫防除
体制の備わった地域の組合等を指定して、特定の病虫害以外の病虫害を共済事故から除外し、共済掛金のうち病虫害に対応する部分を減額することができることといたしました。第八十五条第四項、第八十六条第二項がこの
規定であります。また、このような病害虫防除事業を行なう組合等に対しましては、第十四条の二の
規定によりまして、国は減額した共済掛金のうち
農家負担分に相当する額を防除費の一部として補助することができることにいたしております。
第六は、事業団による保険事業及び再保険事業であります。
現在の
農業共済再保険特別会計にかわりまして、新たに
農業保険事業団を
設立することとしておりますので、これに伴い、蚕繭共済及び家畜共済については、事業団が従来の特別会計と同様そのまま再保険事業を行なうことといたしておりますが、農作物共済については事業団が組合等の共済責任を直接保険することとなるわけであります。これらの
関係の
規定は第五章でありまして、それぞれ
規定の
整備を行なった次第であります。
以上御
説明いたしました点が今回の主要な
改正点でありますが、そのほか
農業共済
団体の
組織及び運営に関する
条文を若干
改正しております。すなわち組合の総代選挙に選挙区を設けることができることとしたこと、及び組合
役員の選任
規定の追加、共済
目的の
種類ごとの事業廃止を決定する場合は総代会にゆだねることができないこととしたこと、現在定款で定めて
実施されている延滞金徴収について、その根拠を明確にしたこと、
農業共済組合の共済事業にかかわる事務の一部を
農業協同組合に委託することができるようにしたこと、共済掛金等にかかわる権利の消滅時効は現在一年でありますが、これを三年としたこと、組合の合併、市町村の廃置分合等の場合の
規定を
整備したこと等であります。
なお、第百四十三条の二及び第百四十四条に
都道府県及び中央の保険審査会の
規定がありますが、今回の
改正で事業団の
業務が保険及び町保険の二
種類になりましたので、その名称を
都道府県農業災害補償審査会及び中央
農業災害補償審査会に改めました。
最後に、この
法律案の附則でありますが、大別いたしますと、施行期日、経過
措置及び
関係法律の
改正の三項目となっております。
このうち、施行期日及び経過
措置につきましては、従来、事業団の
設立が予定されております
昭和三十七年二月から施行し、事業
関係の
改正条文は、水稲、陸稲及び蚕繭につきましては
昭和三十七年産のものから、麦につきましては
昭和三十八年産のものから適用することといたしておりましたが、
改正制度実施のための準備
期間等も考慮いたしました結果、これを一カ年延期することとし、近日中に所要の修正
手続をとることといたしております。この修正により、施行は
昭和三十八年二月から、水稲、陸稲及び蚕繭にかかわる
改正規定の適用は
昭和三十八年産のものから、麦にかかわる
改正規定の適用は
昭和三十九年産のものからとなるわけであります。
それ以前の年産のものにつきましては
現行規定によるわけでありますが、事業団
設立後は特別会計が廃止になりますので、
現行規定中
政府とありますものは事業団と読みかえて適用することといたしております。
また、
改正後は農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済の料率の設定は事業団が担当することとなりますが、事業団がみずから設定を行なうのは、水稲、陸稲及び蚕繭については
昭和三十八年産のもの、麦については
昭和三十九年産のものにかかわる料率から、家畜共済については
昭和三十八年度加入のものにかかわる料率からとし、それ以前のものについては、現在適用になっております
農林大臣の設定した料率を事業団が設定したものとみなしてこれを引き続き適用することといたしております。
なお、一筆収量建制の暫定適用につきましては、さきに申し述べました
通りでありますが、この場合の共済掛金の国庫負担は、その組合について
農家単位制を
実施した場合の国庫負担の率を適用することといたしております。
以上が、
農業災害補償法改正案の
説明でございます。
次に、
農業保険事業団法案の
内容について補足して御
説明申し上げます。
この
法案は、今次の
農業災害補償
制度の
改正の一環として、新たに
設立いたします
農業保険事業団の
組織、
業務、財務、会計等について
規定するものでありまして、事業団と
農業共済組合等との間の保険
関係及び事業団と
農業共済組合連合会との間の再保険
関係については、
農業災害補償法に
規定されることになるわけであります。
以下、その主要な
内容を御
説明申し上げます。
第一は、
目的であります。第一条に
規定いたしております
通り、事業団は、農作物共済についての保険と蚕繭共済及び家畜共済についての再保険の事業を行なう等
農業災害補償にかかわる事業を分担して、その適正かつ能率的な
実施に当たり、
農業災害補償
制度の円滑な運営と健全な発展に資することを
目的とする法人でありまして、後来
政府が
農業共済再保険特別会計を設置して直接行なっておりました事業を、新しく特別法人を
設立して、これを行なわせようとするものであります。
第二は
資本金であります。この法人の
資本金は、第四条第一項及び附則第九条第二項に
規定いたしております
通り、現在の
農業共済再保険特別会計において、再保険金の支払い財源が一時的に不足した場合に、その不足金に充てるための財源として
一般会計から繰り入れられた再保険金支払い
基金をそのまま国が事業団に
出資することにいたしておりまして、その金額は約三十六億円となる見込みであります。
元来、
農業災害補償
制度は、保険収支の
長期均衡を基本として設計をいたしておりますが、一町的には、支払い
資金に不足を生ずることもありますので、この
資本金は、あとで申し述べますように、事業団の
基金勘定においてこれを管理し、保険金または再保険金の支払い
資金の不足に充てるための財源とすることにいたしております。
今後大災害が起こり、保険金または再保険金の支払額がその年の保険料または再保険料の徴収額を超過するようなことがありましても、この
資本金及びその運用益とをもって保険金または再保険金の支払いに充てることになるわけであります。もし不幸にして、これをもってしても、なお支払い
資金に不足を生ずるような人災害が発生いたしました場合は、借入金によるか、または増資によってこれをまかなう予定でありまして、この場合の借入金は、後にも述べますように原則として
政府の、
一般会計からの借り入れを予定いたしておりますし、また増資は、今後とも
政府がその全額を
出資することとなっております。
第三は
役員及び職員であります。
役員は、
理事長一人、
理事三人以内、監事二人以内とし、
農林大臣が任命することといたしております。
なお、この事業団の
性格にかんがみまして、事業団の
役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、公務員と同様の取り扱いを受けることといたしますとともに、
役職員のうち
理事長から事業団の予算執行の職務を行なう者として指名された者については、予算執行職員等の責任に関する
法律を適用して、その予算執行につき、職員の責任を明確にし、違法支出を防止して、その適正化をはかることといたしております。
第四は
業務であります。第十九条に
規定いたしておりますが、事業団は、農作物共済についての保険事業と蚕繭共済及び家畜共済についての再保険事業を行なうとともに、共済掛金の額を定める
基準となる
基準共済掛金率等の決定、
基準収穫量設定準則、損害認定準則等の設定、あるいは共済掛金国庫負担金の交付等、
農業災害補償法等により事業団の
業務に属させられた権能を行なうことを本来の
業務とし、あわせて
農業共済組合または市町村の行なう共済事業及び
農業共済組合連合会の行なう保険事業に関して各種の
援助を行ない、また今後の
制度発展に資するため
農業の災害補償に関する
調査研究をも行なうことができるようにいたしております。
しかしながら事業団の人員構成等を考慮いたしますと、現地における損害認定のための実測
調査等については、事業団のみでは短
期間に的確な
調査を行なうことは困難でありますから、
農業共済組合連合会の協力を得ることが必要であると考えまして、準則の制定等のような事業団の
権限に属させられた
事項を除き、事業団はその
業務の一部を連合会に委託することができることといたしました。この場合には、この受託
業務に従事する連合会の
役職賃も、事業団の
役職員と同じく、刑法その他の罰則の適用については、公務員と同様の取り扱いを受けるわけであります。
なお、これらの
業務を行なうについての納期的
事項につきましては、
設立委員が
農林大臣の
認可を受けて定める
業務方法書に
規定することといたしております。
第五は事業団の財務及び会計についてでありますが、事業団の財務の重要性にかんがみまして、予算決算等につき、
政府のみならず、会計
検査院及び国会の規制をも受けさせることとし、その適正な運営をはかることといたしました。
すなわち事業団は、毎事業年度、その開始前に、予算、事業計画等について、
農林大臣の
認可を受けることといたしますとともに、決算が結了したときは、財務諸表を作成して
農林大臣の承認を受けた上、事業の
実施結果を明らかにした報告書とともに、
農林大臣を経由してこれを
内閣に
提出し、
内閣は、これにつき、会計
検査院の
検査を経た上、国会に報告することといたしました。
事業団の会計につきましては、第二十七条に
規定いたしております
通り、各事業ごとに会計区分を行なうことを
法律により事業団に
義務づけ、損益の処理についても、各勘定ごとに損失てん補準備金または積立金として整理し、これを他に費消させたいようにいたしまして、保険収支の明確な経理を行なうことといたしました。また事業団の事務費は、国がこれを負担することとし、各保険事業の収支との混同を避けるため事務勘定を設け、別に経理することといたしました。さらに、借り入れを行なうときは
農林大臣の
認可を受けること、
役職員の給与支給
基準についても
農林大臣の承認を受けること、あるいは余裕金の運用についての制限等の
規定を設けますとともに、その他の
財務会計の細則についても農林省令でこれを
規定することとしております。そしてこれらの会計経理は、会計
検査院が、国の機関と同様、毎年
検査を
実施することといたしまして、さきに申し上げました事業団の
役職員の責任や
農林大臣の各種の監督
権限の行使等とも相待って、事業団の経理に遺憾なきを期することといたしました。
第六は
関係行政庁の協力であります。事業団の
業務の遂行については、農林省及び
都道府県、ことに農林宵の地方支分部局であります各地の統計
調査事務所及び食糧事務所並びに
都道府県に設置されております病害虫防除所、家畜衛生保健所等の密接な協力を受けなければこの事業の適正な運営をはかることは困難でありますので、第三十九条で特に「事業団は、
農林大臣または
都道府県知事に対して、事業団の
業務に関し、助言、資料の提示、その他必要な協力を求めることができる」旨の
規定を設けております。
第七は事業団の発足についてであります。事業団の
設立は本年二月一日の予定でありましたが、さきに申し述べました
農業災害補償法の一部を
改正する
法律案の修正と同じく、一カ年延期して、明年二月一日とする旨の修正を行なうことといたしております。そして
農業共済再保険特別会計は事業団成立の時点をもって閉鎖し、同特別会計が有する権利
義務は、
一般会計に対して有する権利
義務を含め、事業団が包括して承継することといたします。ただし、
昭和二十八年及び二十九年に同特別会計の
農業勘定の歳入不足を補てんするために
一般会計から繰り入れを受け、後に剰余金が生じた場合は
一般会計に繰り戻すこととなっております。繰入金の残高につきましては、事業団が国への納付金として納付する
義務を負うこととし、附則第十条にその旨を
規定いたしております。なお事業団が承継した財産のうち、同特別会計の再保険金支払
基金勘定の残高を国の事業団に対する
出資とすることについては、さきに御
説明いたしました
通りであります。
一方、事業団の職員につきましては、さしあたり同特別会計所属の定員百三十六名をこれに振り向けることとし、
業務の運営に遺憾なきを期する所存であります。
次に、
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案につきまして
補足説明を申し上げます。
このたび
提案いたしました
農業協同組合法の
改正案は、前々国会において成立いたしました
農業基本法に基づき、
農業における協業の助長及び農地等についての権利の設定または移転の円滑化等、いわゆる
農業構造の
改善に資するための
施策と、
農業協同組合及び
農業協同組合連合会の
業務運営を
整備するための
措置をその主たる
内容としております。
政府は、今後農村の
実態に即応し、農民の共同の利益を増進するため農民によって
組織された農事組合等の育成をはかる考えでありますが、これらの
団体が
農業経営及び共同
利用施設の設欄等の事業を行なう場合に、
法人格を取得する道を開くこととしたのであります。しかして、その場合において、これら
法人格を取得した農事組合を農事組合法人と称することといたしました。
第一に、農事組合法人は、
農業にかかわる共同
利用施設の設置、
農作業の共同化に関する事業または
農業の
経営及びこれらの事業に付帯する事業が行なえることとしております。
農業生産の協業化をはかる場合において、個別
経営を解消して
農業経営そのものを法人に移すいわゆる全面協業の形態ももちろん考えられるところでありますが、一般的には
耕転機の共同所有、共同防除
施設の設置等の部分的な協業、いわゆる協業
組織に対する要望が強いのでありまして、すでにこのような事業を行なう小規模集団が数多く存在しており、これらのものが
法人格を取得することが必要または便利な場合も予想されるのであります。右のような実情に即しまして、以上のような事業が行なえることとしたのであります。また農事組合法人は、
出資制をとっても非
出資制をとってもよいこととしておりますが、
農業経営を行なう農事組合法人は、
出資制のものに限定しております。なお、
農業経営を行なう農事組合法人で
農地法で定める条件に適合するものにつきましては、
農業生産法人として農地等の取得につき、
農地法上の特例を認めることとしております。
第二に、農事組合法人が
農業経営を行なう場合には、組合員及びその世帯員以外にも、その事業の能率化をはかる観点から、特殊な技術者等のいわゆる員外者を総常時従聖者の五分の一の範囲内で、その事業に常時従事させることができるものとしております。
第三に、組合員の資格は農民であって定款で定めるものとし、定款の定めるところによって加入を制限することができるものとしております。また准組合員
制度を認めないこととしておりますが、これはその
産業が
農業の
経営と
農業にかかわる共同
利用施設の設置または
農作業の共同化に関する事業に限られている点からしまして、農民以外の者を准組合員として認める必要がないからであります。
第四に、その管理につきましては、その
業務運営は、一般の協同組合と同様に、意思決定機関として総会、
業務執行機関として
理事を設けることとしておりますが、
役員の選出方法を総会における選任
制度とし、監事を任意機関とする等、その
業務運営方法を民法の社団法人に準じて簡素化するとともに、一方定款変更、解散決議、合併等については、総会における特別決議
事項とすることとしております。
第五に、その財務につきましては、法定準備金の積立、減資
手続等、おおむね
出資制の
農業協同組合に準じた規制を行なうこととしております。
なお剰余金の配当方法につきましては、従事分量配当、
出資配当及び
利用分量配当を認めておりますが、その配当順位等は各法人の選択にまかせております。しかし、
出資配当につきましては、年八分以内において、政令で定める割合に制限することとしております。
最後に、
設立等の
手続につきましては、その
設立に準則主義を採用することとし、五人以上の農民が発起人となって
設立手続を終了したときに、農事組合法人が成立するものとしております。また定款変更、解散決議及び合併につきまして行政庁に対する届出制をとることとし、また
検査、必要
措置命令等の監督
権限を必要最小限の範囲に限定しております。
本
法案の第二の
改正事項は、農地等の信託の引き受けの事業であります。
まず第一は、
農業協同組合に、その事業として農地等の信託の引き受けの事業を新たに認めることとしておりますが、その場合、信託
目的につきましては
貸付の方法による運用または売り渡しに制限することにより、
農業協同組合に新たに信託の引き受けの事業を認めることとした本来の趣旨に即応することとしております。
第二に、その事業の
性格上、信託事業を行なうことのできる
農業協同組合を信用事業を行なうものに限定するとともに、信託の引き受けの事業を行なおうとするときは、事業の
実施方法及び信託契約に関する
事項を信託規程に定め、行政庁の承認を受けなければならないものとしております。
第三に、信託財産の管理処分の制限でありますが、信託を引き受けた農地等を
農業協同組合が貸し付け、または売り渡す場合には、信託の本旨に従って誠実に行なう
義務を負うことは言うまでもありませんが、この信託の引き受けの事業は
農業構造の
改善のために行なわれるべきものでありますから、組合員等の
農業経営の
改善に資することとなるように配意してしなければならないものとしております。
最後に、信託事業の
実施に伴い種々制限規程を設けたり、
関係規定を
整備したりしておりますが、特にこの場合にも適用のあります信託法につきまして、所要の
規定の適用を排除するための特例等をも設けることとしております。
以上が、農地等の信託の引き受けの事業に関する
規定の概要であります。
第三の
改正事項は、
農業協同組合及び
農業協同組合連合会の
業務運営の
整備に関するものであります。
その第一といたしましては、
農業の
経営を行なう農事組合法人及び
農業経営のみを行なうその他の法人に
農業協同組合の正組合員たる資格を与えることによって、
農業協同組合との緊密な
連携のもとにその育成をはかることとしております。
また、
農業の
経営を行なわない農事組合法人等農民の共同の利益を増進することを
目的とする
団体が
農業協同組合の一員となりますことが、その育成上適当であるとの趣旨のもとに、これらの
団体につきましても、准組合員資格を明定することといたしております。
その第二といたしまして、
農業協同組合及び
農業協同組合連合会が主たる構成員または
出資者となっている法人に准会員として
農業協同組合連合会に加入する道を開くことといたしております。これは、農産加工、農用資材生産等の
農業関連
産業の部面におきまして、
農業協同組合系統
組織と他の資本、技術との
連携のもとに、これらの事業の
振興に資さんがための
措置であります。
その第三といたしまして、員外
利用制限の
整備でありますが、医療事業のように公的
性格の強い事業、農産加工事業のように
施設利用に時期的変動の激しい事業等政令で定める特定の事業につきましては、組合員の事業
利用に支障のない範囲で政令で定める割合まで、
現行の員外
利用の制限を緩和することによって、これらの事業の
振興をはかることとしております。
その第四といたしまして、剰余金配当方法の
整備でありますが、現在のように
法律によって一律に剰余金配当の方法を規制することは、諸種の情勢から不適当と考えられますので、配当についての
規定を
改正し、
法律上は、単に
利用分量配当及び
出資配当以外の方法による剰余金の配当を
禁止するにとどめ、具体的にどの方法によるかは
経営の実情に即し個々の定款にゆだねることとするとともに、
出資配当の最高限度につきましては、年八分以内において、経済事情の変動に応じ、一般の金利水準をも参酌して、政令で定めることとしております。
第五といたしまして、議決権及び選挙権の行使に関する
整備措置でありまするが、
農業協同組合の合併を促進することと関連をして、大規模な
農業協同組合等におきまして、総会の円滑な運営を確保するため、議決権につきまして、一代理人が代理することができる組合員の数を一人から四人まで引上げるとともに、選挙権につきましても、書面または代理人による行使を認めることとしておりまするほか、合併により
設立される
農業協同組合及び
農業協同組合連合会における
設立当初の
理事につきましても、その資格要件を緩和することといたしております。
以上が、
農業協同組合法の一部を
改正する
法律案の
内容でございます。