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1962-01-30 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年一月三十日(火曜日)    午前十一時一分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    仮谷 忠男君       倉成  正君    小枝 一雄君       坂田 英一君    田邊 國男君       内藤  隆君    中山 榮一君       福永 一臣君    藤田 義光君       松浦 東介君    足鹿  覺君       片島  港君    栗林 三郎君       西宮  弘君    安井 吉典君       山田 長司君    湯山  勇君       玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君     ————————————— 一月二十九日  農業機械化促進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号) は本委員会に付託された。      ————◇————— 本日の会議に付した案件  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第三号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四号)  農業機械化促進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出、第  三十九回国会閣法第六六号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第六七号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  開拓融資保証法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案並びに農業機械化促進法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題として提案理由説明を聴取いたします。中馬農林政務次官
  3. 中馬辰猪

    中馬政府委員 ただいま提案となりました開拓融資保証法の一部を改正する法律案提案理由を御説明いたします。  戦後開拓地に入植した開拓農家は約十五万戸ございますが、全般的に見まして、開拓農家経営状況は、一般農家と比べてなおかなりの開きがあり、立地条件の劣悪、資本装備不足等の事情によって、営農基盤がいまだに確立できず、不安定な経営を続けている農家も相当数あります。  政府といたしましても、開拓農家経営を極力早期に安定させたいと考え、従来から各般助成措置を講じて参っておるのでありますが、開拓農家営農振興をはかるためには、建設工事実施営農施設整備等のほか、年々の経営資金が円滑に供給されることが必要であります。  この点開拓農家は、営農基盤も脆弱で、経営資金の調達が必ずしも円滑に行なわれがたいので、開拓融資保証法によって債務保証を行ない、肥料、飼料、農薬、乳牛及び肥育牛その他中小家畜などの購入資金系統金融機関から円滑に融通されるよう措置して参っております。  この開拓融資保証制度の仕組みは、各都道府県地方保証協会開拓農家系統金融機関に対する債務を保証し、中央保証協会がさらにこれを保証する建前になっておりまして、政府中央保証協会に対して五億四千万円を出資しております。  しかし開拓地における営農の伸長に伴いまして、開拓農家資金需要も増大し、現在の基金による融資保証ワクでは十分にその資金需要を満たすことができません。そこで昭和三十七年度において、地方保証協会の増資の状況に対応して中央保証協会に対する政府出資金をさらに三千万円増額し、政府出資総額を五億七千万円、中央保証協会基金総額を六億七千五百万円として融資ワクを増大し、開拓農家資金需要にこたえて開拓地における営農の確立を促進いたして参ろうとするものであります。  以上が開拓融資保証法の一部を改正する法律案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。  次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  農林漁業金融公庫は、その設立以来九年、農林漁業生産力を維持増進するために必要な長期かつ低利の資金融通をして参っております。公庫設立以来貸し付けて参りました資金総額は、昭和三十六年度末において約三千七百六十二億円、その融資残高は、約二千四百一億円に達する見込みでありますが、昭和三十七年度におきましては、前年度に引き続き、重要農林漁業施策に即応して、農林漁業生産基盤強化経営の安定に必要な資金融通を行なうこととし、このため公庫に対する政府出資増額するとともに、新たに公庫の行なう業務として、沿岸漁業者経営の安定に必要な資金貸付業務を加えるため、本法律案提案した次第であります。  以下、改正内容について御説明申し上げます。  第一点は、資本金増額であります。昭和三十七年度において公庫貸付契約を行なうことを予定している額は七百十億円でありまして、前年度に比較して百十億円の増加となっておりますが、この七百十億円の貸付を行なうために必要な資金は、年度内に交付しなければならない資金の額を勘案いたしまして、一般会計からの出資金十三億円、産業投資特別会計からの出資金百二十億円、借入金といたしまして資金運用部から二百九十六億円と簡易生命保険及び郵便年金特別会計から二十七億円並びに回収金等二百十億円、合計六百六十六億円となっております。  以上の通り政府一般会計及び産業投資特別会計から百三十三億円を新たに出資することとなっておりますので、現行資本金に関する規定改正することといたしたのであります。  第二点は、公庫の行なう業務に、新たに沿岸漁業者経営の安定に必要な資金貸付業務を加えることであります。  沿岸漁業者わが国漁業経営体総数の九割に及んでいるにもかかわらず、その大部分は今なお零細な経営の状態にあります。それゆえ、沿岸漁業構造改善し、その生産性を向上することが必要であることは申すまでもありませんが、一方、沿岸漁業者経営不振の原因は、単に生産性の低いことのみにあるのではなく、疾病、災害等やむを得ない理由による負債の累増・固定化沿岸漁業者経営改善を妨げ、その生活を不安定ならしめていることも見のがすことはできないのであります。従いまして、明年度より実施いたします沿岸漁業構造改善事業を推進するため、これに即応して沿岸漁業者長期固定化負債を整理し、経営の安定をはかることが現在特に必要であると考えられますので、今回公庫業務沿岸漁業者経営の安定に必要な資金貸付業務を加えることといたした次第であります。  以上がこの法律案提案する理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上しすみやかに御可決下さらんことをお願いいたす次第であります。  次に、農業機械化促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  近年におけるわが国農業機械化は目ざましいものがありますが、今後におきましても、農業と他産業との間の生産性及び所得の格差の存在と農村労働力流出傾向にかんがみまして、農業構造改善農業生産性の向上とをはかるために不可欠な農業機械化への要請はますます強まるものと思われます。  しかしながら、わが国農業機械化の現状を見ますと、農作業の各分野において機械化進展が見られるとはいいますものの、各農作業間の機械化の度合いに遅速があり、また畜産、園芸部門等機械化はおくれており、さらに全体としては機械化効率が十分に発揮されていないうらみがあるのでありまして、農業機械化のための各種助成指導をさらに強化する必要があることは申すまでもありませんが、特に農業機械化を推進するための試験研究を拡充強化することが急務であると考えられるのであります。  この分野における試験研究につきましては、国の農業試験研究機関中心となりまして、多くの成果を上げておりますものの、このうち農機具開発改良に関する試験研究につきましては、他の農業関係試験研究に比べまして多大の費用、施設等を要するものであり、また民間企業との連携が必要でありまして、今後時代の要請にこたえて参りますためには、このような現行体制では不十分であり、その飛躍的な改善強化が必要となってきておるのであります。  また、一方農業機械化のもう一つの重要な対策であります農機具検査につきましては、昭和二十八年農業機械化促進法の制定以来漸次対象機種を拡大いたしまして、優良農機具普及に貢献して参っておりますが、農家が安んじて優良な農機具を購入することができますようにさらに多くの種類農機具検査を、常時にしかも高い精度で実施いたしますには、検査施設人員等を大幅に拡充強化するほか、試験研究成果を十分に取り入れ、権威あるを実施する体制を確立する必要があるのであります。  これらの実態にかんがみまして、新しい構想のもとに、国と民間共同出資による農業機械化研究所設立し、充実した施設設備等をもちまして、農業機械化動向農機具産業動向とに十分対応し得るような農機具に関する試験研究及び調査を行なわせることといたしますとともに、これと密接な連携のもとに検査実施させますほか、その他の規定につきましても農業機械化進展に即応いたしましてその整備を行なうこととし、これがため農業機械化促進法の一部を改正することといたしたのであります。  次に、法律案の主要な内容につきまして御説明いたします。  第一に、農業機械化研究所設立と関連いたしまして、試験研究体制整備をこの法律目的に加えることといたしました。  第二に、農業機械化進展に対応した国及び都道府県施策を明らかにするため、その農業機械化を促進する義務及び国の都道府県に対する援助規定整備することといたしました。  第三といたしましては、研究所設立等に伴い、農機具検査に関する制度整備改善することといたしました。  その主要点の一は、国は、農業機械化を促進するため、との法律規定により、依頼による農機具型式検査を行なうものとし、型式検査を行なう農機具種類及び基準は、農林大臣が定めますが、その実施は、研究所に行なわせることといたしますとともに、検査を常時行ない得るように改正を加えました。  なお、型式検査成果を確保するため、事後検査は従来通り農林大臣が随時行なうことができることといたしております。  第二点としましては、農機具利用者等がその性能等をよく知ることができますように、農林大臣は、研究所から検査の結果を報告させ、合格した農機具検査成績概要等を公示しなければならないものといたしますとともに、依頼した農機具型式につき合格の通知を受けた者は、その型式農機具検査合格証票を付する場合には、検査成績表の写しをもあわせて付さなければならないことといたしました。  なお、このほか、検査合格証票添付期間の限定その他今回の検査制度改正に伴う所要の規定改正をいたしております。  第四は、農業機械化研究所設立であります。  この研究所は、農業機械化を促進するため、農機具改良に関する試験研究及び調査並びに農機具検査を行ない、その試験研究成果普及をはかることを目的とし、これらの事項をその主要な業務とするものであります。  研究所資本金は、政府出資額民間出資額合計額でありますが、政府は、研究所設立に際し、二億円を出資することといたしますとともに、当分の間、国が農機具改良に関する試験研究または農機具検査の用に供しております土地、建物、物品等出資目的とすることができることとし、また、研究所は、必要があるときは、農林大臣認可を受けて、その資本金を増加することができるものといたしました。  その他、研究所組織業務及び財務会計に関し必要な規定を定めますほか、研究所に対する農林大臣の監督に関する規定を設けております。  なお、研究所は十月一日までに設立することと予定いたしております。  以上が本法案提案理由及び主要な内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  4. 野原正勝

    野原委員長 引き続き、農業機械化促進法の一部を改正する法律案につきまして、補足説明を聴取いたします。齋藤振興局長
  5. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 それでは、ただいま提案いたしました農業機械化促進法の一部を改正する法律案提案理由につきまして、補足説明をいたしたいと存じます。  御承知のように、農業機械化促進法は、昭和二十八年に制定されたものでございますが、その後農業機械化は非常な目ざましい進展がございまして、三十五年度におきましては、農家の九割までが何らかの形において農作業動力を使用して参りまして、この十年間に動力使用農家数は約五割増加して参っておるような次第でございます。また作業におきましても、脱穀調製作業のほか、この十年間に防除及び耕転等作業につきましても、機械化が著しく伸びて参りまして、耕転機について見ますると、最近数年間に小型トラクターは約百万台、大型トラクターは約四千五百台の普及を見るに至った次第であります。しかしこのような農機具進展の中におきましても、機械効率というものにつきましては、必ずしも十分な効果を上げているというふうには見られない点もございまして、今後の機械化を健全に伸ばしていきますためには、農業機械につきまして、より効率を高めるような開発改良が目下の急務であろうと考えるのであります。のみならず、機械多様化、高級化するに応じまして、農家優良農機具普及するために、それに必要な鑑定、検査を一そう高めて参ることが必要であろうと考えるわけでございます。  このような現況にかんがみまして、農林省としても、各般機械化に関する施策を行なっておるわけでございますが、今回提案いたしました法案の中の第一の骨子といたしまして、農機具開発改良に関する試験研究を飛躍的に拡充する、さらにまた、検査を拡充して参るという意味で、農業機械化研究所設立を計画いたした次第でございますが、そのほかに、それに基づきまして、農業機械導入につきましては、引き続き各般施策を進めて参ります。また、大型機械ばかりでなしに、各般農作業、たとえば大麦、小麦、大豆、菜種等作業についても、機械化作業についての助成をいたしておるような次第でございます。さらにまた、この上における試験研究につきましても、試験場中心といたしましていろいろの研究を拡充いたして参っておるわけでございますが、特に実験的に今後発展するであろう中型、大型機械導入につきまして実施をいたすために、機械化実験集落あるいは果樹経営実験集落等を設けて、機械化の実験的な措置をも講じておるわけでございます。また、それに関連いたしまする機械化各般の研修、講習等施設につきましても、実施いたしておるような次第でございます。  こういうような、この法律ができました当時と比べまして、機械化に関する一般的な進展と、それに即応する各般施策等も考えまして、当委員会におきましても、農業機械化促進法改正を行なうべきではないか、こういうふうな御意見もございまして、今回提案いたしました法案におきましては、全面的に改正をいたして提案いたしたような次第でございます。  以下、簡単でございますが、条文に即して御説明申し上げていきたいと存じます。お手元に農業機械化促進法の一部を改正する法律案関係資料というのをお配りいたしてございますが、八十四ページに現行法との対比がございますので、この対比につきましてごらん願いながら御説明を申し上げたいと存じます。  第一章におきましては、第一条から第五条までに、法律目的、定義、それから機械化に関する国の義務、あるいは融資援助措置規定いたしたものでございますが、第一条の「目的」のところにおきましては、研究所設立に伴いまして、試験研究体制整備という点を明らかにいたした次第でございます。  それから第二条におきましては、従来は、耕転整地肥培管理、それから家畜家禽飼養管理等が書いてございましたが、最近の実態から見まして、耕転整地のみならず、播種だとかあるいは収穫、調整加工といった一連の作業につきまして、さらに規定整備して参ったわけでございます。  それから第三条でございますが、先ほど申し上げましたように、当初の段階から最近の機械化進展状況、あるいはそれに対する施策は相当全面的に拡充されて参りましたので、従来第五条で試験研究規定があり、それから第三条で国の機械化を促進する義務規定がございましたのを合わせて、第三条にまとめて書いた次第でございます。また機械化につきましては、旧法におきましても、農業構造改善の重要な事項として規定されておりますし、またこれを進めていくためには、どうしても農業者みずからの自主的な努力を中心とすべきであるという点を明らかにする意味におきまして、条の二項にこのような規定を書いた次第でございます。  第六条におきましては従来夢事をあげて国の助成規定を書いておったわけでございますが、現在はこのような施設ばかりでなしに、もっと施策自身が拡充されて参っておりますので、それらを包括的に書く意味で、第五条ではまとめて国の援助規定いたした次第でございます。  それから第二章は、農機具検査に関する規定を取りまとめて規定いたしたわけでございます。  主要な改正の第一点といたしましては、従来第七条に規定いたしておりますように、国が国営検査として農機具検査を行なっておったのでございますが、今回は、それを機械化研究所にあげて実施の委任をするというようにいたしたわけでございます。ただ現行法におきまして、農林大臣検査の仕方といたしましては、依頼検査を行ないます場合におきまして、検査実施する対象機種なり基準農林大臣が定めて、また合格、不合格取消権あるいは事後検査権限を持っておったわけでございますが、この点につきましては、今後とも検査対象となるべき機種検査基準実施方法、これは農林大臣が定めることにいたしておりますが、その実施については研究所にあげて委任する、こういう体制をとっております。また事後検査についても、引き続き農林大臣がその権限を持つことにいたしておるわけでございます。これが改正の主要な第一点でございます。  第二点は、従来の検査はいわゆる限時検査でございまして、旧法の七条の二項にございますが、農林大臣が毎年検査の時期をきめておったわけでございます。今後機械化進展に伴いまして、機種もふえて参りますし、検査の能率も上げるという意味で、常時検査にこの点を変えまして、この限時検査規定を改めることにいたした次第でございます。  それから第三点は、検査成績に関する規定でございます。現行法におきましても、第八条で、農林大臣は、検査をいたしました場合に合格、不合格のほかに検査成績をつけることにいたしておりますけれども、今後検査をいたします場合におきましては、特に性能検査に重点を置きまして、単に不良品の排除ということから、機種性能を明らかにしまして、使用者側の利便に供したい、こういう考え方をとったわけでございます。そこで検査成績につきましては、第八条、第九条以下において規定いたしておりますが、農林大臣は、合格、不合格の公示のほかに検査成績も公示するということにいたしたわけでございます。さらにまた、依頼検査を行なった者が合格証農機具に添付いたします場合には、必ず検査成績表をもあわせて付するようにいたしまして、使用者性能成績を見まして選択する便宜を供する、こういうことにいたしたわけでございます。  第四点の改正点といたしましては、従来八条の二項で検査有効期間を、合格証を添付し得る期間農林大臣が定めておったわけでございますが、この点も今回改正いたしまして、一般的には有効期間を設けない、しかしその後において検査基準が変わったよらな際におきましては、従来のままつけておくことは非常に不適当であるというような場合にのみ期間を指定いたしまして、合格証票を添付し得る期間を限定することにいたしたわけでございます。  それから第五点としまして、これは手続関係でございますが、従来は依頼検査を受けた者だけが検査合格証を添付するということにいたしておったわけでございますが、今回の改正におきまして、企業の譲渡を受けた者や一般承継人にも効力が及ぶような改正手続をとった次第でございます。  次に第四章でございますが、第四章は、新しく規定いたした農業機械化研究所に関する事項でございまして、これは旧条文には全然ない規定でございます。研究所目的としましては、先ほど提案理由にも申し上げましたように、農機具改良に関する試験研究及び調査農機具についての検査業務を総合的かつ合理的に行ない、その試験研究及び調査成果普及をはかることを目的として規定したものでございます。  十七条以下に組織並びに資本金定款等が書いてございますが、そのうち第十七条にありますように、この機械化研究所は、法人格を持ちました特殊法人でございます。住所は、従来この農業機械に関する改良開発試験研究は、鴻巣農業試験場において行なっておったわけでございますが、今回この研究所ができるに伴いまして、これらの機能があげてこの研究所の方に移るということにいたしているわけでございまして、研究所試験場との関係につきましては、機械利用研究については農業試験場で従来通り行なら、農機具改良に関する分は、あげてこの研究所に移そうということにいたしているわけでございます。しかし従来とも、検査室試験場にあったり、あるいは利用面との密接なる連携をはかっていく意味におきまして、これは埼玉県の鴻巣の付近に研究所を設けるといろことにいたして、十八条にその旨を規定いたしたわけでございます。  資本金としましては、これは政府民間出資した合計額資本金を構成するということにいたしておりますが、設立に際します政府出資としましては、一応二億円を計上いたしているわけでございます。これは第十九条でございます。しかし研究所資本金につき度しては、広く民間からも出資を期待いたしておりまして、大体農業団体あるいは農機具のメーカーあるいは農業に関連する企業からの出資を期待いたしておりまして、農林大臣認可を受けて資本金増額をすることができるようにいたしております。農業研究所に対しましては、別途附則におきまして現物出資ができる規定を設けてございます。これは現在検査関係のいろいろな施設がございますので、それをこの研究所に引き継ぐという考え方をとっているわけでございます。  第二十条、持ち分払い戻し等禁止規定、第二十一条は持ち分の譲り渡し等に関する規定でございまして、これはこの研究所性格から見まして、持ち分には払い戻しをしないという従来の研究所の例に上って規定いたしたわけでございます。持ち分の譲り渡しについても同様でございます。  それから第二節は組織のことを書いてございまして、役員等規定が雷いてございます。ただこの研究所性格からいいまして、役員については営利を目的とする団体役職との禁止規定であるとか、あるいはこの役職員については刑法上公務員とみなされるというような規定を設けることにいたしております。そのほか、運営審議会であるとか、その規定を設けましたのは、従来この種の研究機関として設けたる例によったのでございます。  第三節は業務、それから第四節は財務及び会計でございますが、いずれもこの種の研究機関の例によった規定を設けた次第でございます。  最後に、この研究所につきましては、先ほど提案理由にもございましたが、大体十月一日を目途といたしまして設立をする考えでございまして、八月一日から施行を予定いたしている次第でございます。  なお、この研究所ができるに伴いまして附則の経過規定で従来の検査との関係はどらなるかということでございますが、その途中の経過につきましての規定を設けております。  それから最後に、研究所につきましては、この種の研究所の例にならいまして登録税、所得税、法人税、事業税、不動産取得税につきまして免税の規定を設けることにいたしております。  以上はなはだ簡単でございますが、補足説明を終了させていただきます。      ————◇—————
  6. 野原正勝

    野原委員長 次に、前国会より継続審査となっております内閣提出にかかる農業保険事業団法案農業災害補償法の一部を改正する法律案農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の四法律案について審査を進めます。     —————————————  農業保険事業団法案  農業災害補償法の一部を改正する法律案  農地法の一部を改正する法律案  農業協同組合法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  7. 野原正勝

    野原委員長 これらの四法律案につきましては、前国会においてすでに提案理由説明は聴取済みでありますのでこれを省略することとし、政府当局より補足説明をいたしたい旨の申し出がありますので、これを聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔異議なしと呼ぶ者あり〕
  8. 野原正勝

    野原委員長 御異議ないものと認めます。  それでは補足説明を聴取することといたします。坂村農林経済局長。
  9. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 それでは農業災害補償法の一部を改正する法律案内容について補足して御説明申し上げます。  農業災害補償制度は、農家が不慮の事故によって受ける損失を補てんして、農業経営の安定に資するための重要な災害対策であり、年々多額の国費を投じておりますことは、今さら申し上げるまでもないことであります。  しかし、最近における土地改良進展、あるいはまた品種の改良、農薬の発達、耕種技術の進歩等に伴い、農作物災害の発生態様も著しく変化して参りまして、この制度に対し、農家を初め各方面からの批判が高まり、抜本改正を要望する声が強くなって参りました。  そこで政府は、昭和三十五年四月以来約一年にわたり、各界の権威者や関係団体の代表者を交え慎重に検討を加えた結果、農作物共済を中心として改正案の成案を得ましたので昨年の第三十八回通常国会に法案提出しましたが、審議未了となり、第三十九回臨時国会に全く同じ内容のものを再提出いたしましたところ、今国会に継続審議となり、現在に至った次第であります。  以下その内容を御説明申し上げます。  第一は、画一的強制加入方式の緩和であります。  まず組合への加入につきましては現行制度のもとでは一たん組合ができますと省令で定める一定規模、たとえば水稲と陸稲または麦の耕作面積が一反歩以上の農家はすべて一律に組合への加入が強制されており、それ以下のものについては任意加入ということになっております。今回の改正案では第十六条の規定改正して、任意加入の幅を広げることといたしました。すなわち、当然加入と任意加入の限界となる農家の規模は、政令で定める範囲で各都道府県内の地域の実情に応じ都道府県知事が定めることといたしました。政令では北海道は別として、水稲、陸稲または麦の別に一反歩ないし三反歩の範囲とする考えであります。  次に農家と組合等との間の共済関係についても任意的要素を取り入れることといたしております。これに関する規定は第百四条、策百四条の二及び第百四条の五であります。すなわち現行制度のもとでは水稲、陸稲または麦のいずれかを耕作している農家または養蚕農家であれば、任意加入をしたものであっても、農作物共済及び蚕繭共済の共済関係が当然に成立することとなっておりますものを、任意加入の組合員は申し込みにより共済関係を成立させることができることといたし、共済関係が当然に成立するものは第十六条の規定により当然に組合員となる農家だけといたしました。  なお、これに関連をいたしまして従来の共済関係の停止に関する制度はこれを整備し、存続せしめております。すなわち農作物共済の共済関係は共済目的の一つの種類について第十六条の都道府県知事が定める基準に達しておれば、第百四条の規定によりその基準に達しないほかの共済目的種類についても当然に成立することとなりますが、その基準以下の農作物については第百四条の五により組合員の申し出により年度ごとに水稲、陸稲及び麦等共済目的ごとに共済関係を停止させることができることといたしているのであります。  さらに、共済目的種類ごとに、事業の廃止ができる規定を新たに設けました。第八十五条では組合は原則として農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済の全部を行なわなければならないこととなっておりますが、事業量の僅少な共済目的や、農家経済上さほど重要でない共済目的についてまで、なおこれを強制する必要はないと考えますので、従来きわめて例外的にしか認められなかった共済事業の一部または全部の廃止につき、今回その範囲を拡大し、農作物共済と蚕繭共済につきましては、共済目的種類すなわち水稲、陸稲もしくは麦または春蚕繭もしくは夏秋蚕繭別に、その規模が農林大臣の定める基準以下である等、共済事業を行なわないこととする理由がある場合には、総会の特別議決を経て、共済事業を行なわないことができることといたしました。なお、このようにして共済事業を一部廃止いたしました場合でも、その後に再び総会の特別議決により事業を開始することはできることといたしております。  以上の改正によりまして、強制加入制度が相当緩和されることとなりますが、この際、第二十九条のような行政庁による組合の設立命令の規定は、農家の自主性を尊重する見地から好ましくないと考えましたので、削ることといたしました。共済関係の問題については、以上のほか、第百四条の三及び第百四条の四等若干の技術的な改正を行なっております。  第二は、農作物共済における農家単位収量建引受方式の採用と補てん内容の充実であります。  現在の方式は一筆単位収履建方式でありますが、災害を受けた農家の所得の補てんという見地から、これを原則として農家単位収量建方式に切りかえたわけであります。関係条文は第百六条及び第百九条であります。すなわち、現行の一筆単位方式においては、各耕地ごとに見て三割以上の減収があれば共済金の支払いを行なうこととなっておりますものを、改正案では農家単位方式でありますので、被害のあった耕地ごとの減収を農家ごとにまとめてみて、その減収量の合計がその農家全体の基準収量の二割をこえることとなった場合に支払いを行なうこととした次第であります。  損失の補てん内容につきましては、現行制度では、水稲を例にとりますと、全損の場合の共済金は、百五十キログラム、一石当たり最高約五千円、最低約千五百円でありますが、改正案では最高約七千円、最低約三千円に引き上げ、その充実をはかることといたしました。  この農家単位収量建方式の採用は、今回の改正の大きな柱となっておりますが、直ちに全部の組合がこの方式に移行することも無理な点もあるかと思われますので、附則第十四条で例外を設けまして、耕地の分散度、耕作規模別農家の分布状況及び最近の被害の発生状況等を勘案して、都道府県知事が指定する組合等につきましては、なお三年間は現行の一筆単位収量建方式によることができることといたしております。この場合の共済金額は、おおむね現行通りとする予定であります。  第三は、組合等の共済責任の範囲を拡大し、その自主性を強化することとし、これに伴い共済保険設計の改修をはかったことであります。  現行制度は、組合等の共済、連合会の保険、特別会計の再保険という三段階制になっており、末端の組合等ではわずかに共済責任の一割を実質上分担しているにすぎないのであります。従って農民の掛金もその相当の部分が連合会に納められることとなっておりまして、最近における農民のこの制度に対する不満も、組合等の運営が適切に行なわれがたいこと等も、その原因の大きな部分はここにあると考えられるのであります。一方、最近における農作物災害の発生態様の変化から見て、都道府県段階に危険のプール機能を持たせるよりも、市町村段階で設計の個別化を行ない、通常災害の全責任を持つこととする方が実態に即すると毛考えられますので、農作物共済につきましては、従来連合会で持っておりました通常災害の責任の全部を組合等におろすこととし、これを越える異常災害については事業団の保険に付するという二段階制を原則とすることにいたしました。従いまして、従来都道府県段階の連合会を中心になされておりました保険設計も、市町村段階での設計に個別化されるわけであります。これによりまして、末端の組合等の事業の責任体制が確立されることとなるのでありまして、これに伴い、基準収量の設定や通常災害の損害評価につきましても、組合等の自主性を尊重することといたしており、組合等は、農業保険事業団が農林大臣認可を受けて定めた準則に基づき、基準収量を設定し、損害評価を行なうことといたしております。しかし、組合等だけで通常災害責任を引き受けるのに心配がある場合もありますので、この場合においては第百二十三条に規定してありますように、組合等は自己の通常責任の一部を連合会の保険に付することができることとし、その付保する割合は連合会と組合等が協議して定めることといたしております。これに関連する条文として、第百七条の料率の規定、第百二十三条の連合会の保険の規定及び第百三十三条の政府の再保険の規定を改めたわけであります。なお、この際第百九条を改正しまして、従来明確でなかった基準収量、減収量及び植付不能等の場合の取り扱いについての技術的な規定整備いたしております。  以上のように末端の組合等の任務を強化して参りまして、組合等が責任と自主性を持つことにより、この制度の適正、円滑な運営を期待しているわけであります。  第四は、農作物共済の料率の設定方法及び共済掛金の国庫負担方式の改善であります。  農作物共済の料率につきましては第百七条に規定されておりますが、さきにも申し上げました通り現行制度都道府県段階を中心に仕組まれております関係上、料率もまた都道府県段階においてその過去二十年間の被害率を基礎としてまず都道府県別の標準率が設定され、これを都道府県内の危険階級別に割り振って基準率を定め、これを下らない範囲内で組合等がその区域または危険階級別の地域ごとの共済掛金率を定めることとなっております。このため、組合等にとりましては必ずしも被害の実態に合わない面があるのであります。そこで、今回は組合等の過去十数年間の被害率を農家単位方式に換算して、組合等ごとに料率を設定する予定であります。また、組合等の区域内で被害の出方が異なる等のため料率を細分する必要がある場合には、あらかじめ事業団の承認を得た上で、各地域ごとに掛金率を定めることといたしております。  共済掛金の国庫負担に関しましては第十二条、第十三条に規定されております。まず国庫負担割合についてでありますが、従来は一つの都道府県内ではその都道府県の共済掛金標準率によって定められる国庫負担割合をすべての組合等に一律に適用しておりました。しかし、今回の改正で組合等に通常責任を保留させることとした結果、基準共済掛金率も組合等の被害率を基礎として定めることといたしましたので直接組合等ごとに国庫負担割合をきめることとしたのであります。この際、従来の通常災害、異常災害については半額国庫負担、超異常災害に対しては全額国庫負担という建前に基づきまして、総体として現在の国庫負担割合六二%程度をそのまま維持することとし、基準共済掛金率の高低、すなわち被害の高低に応じて、負担割合を法律の別表で定めることといたしたのであります。この表では、最低を二分の一とし、超過累進の方法によって国庫負担の割合を短めているのでありまして、これにより、従来の国庫負担の不均衡、不合理の面が是正されると考えております。  次に共済掛金国庫負担金の交付方法についてであります。今回の改正案では、国にかわり事業団が国庫負担金の交付を行なうことといたしました。この場合、事業団を国とみなして、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律を準用して、その取り扱いの適正化を期するとともに、組合等に対する交付金の交付も農家からの共済掛金の徴収度合いを勘案して行なうこととし、事業運営の適正化を期することといたしました。  第五は、共済掛金の割引と水稲についての病害虫防除事業の推進であります。  最近では病害虫防除技術も著しく進歩いたしましたので、その施設が完備すれば特定の病虫害を除き防除がおおむね可能となっております。従って将来の問題としては、一般の病虫害を共済事故からはずすことも考えられるわけでありますが、今直ちに全国的に病虫害を事故からはずすことも問題でありますので、病害虫防除体制の備わった地域の組合等を指定して、特定の病虫害以外の病虫害を共済事故から除外し、共済掛金のうち病虫害に対応する部分を減額することができることといたしました。第八十五条第四項、第八十六条第二項がこの規定であります。また、このような病害虫防除事業を行なう組合等に対しましては、第十四条の二の規定によりまして、国は減額した共済掛金のうち農家負担分に相当する額を防除費の一部として補助することができることにいたしております。  第六は、事業団による保険事業及び再保険事業であります。  現在の農業共済再保険特別会計にかわりまして、新たに農業保険事業団を設立することとしておりますので、これに伴い、蚕繭共済及び家畜共済については、事業団が従来の特別会計と同様そのまま再保険事業を行なうことといたしておりますが、農作物共済については事業団が組合等の共済責任を直接保険することとなるわけであります。これらの関係規定は第五章でありまして、それぞれ規定整備を行なった次第であります。  以上御説明いたしました点が今回の主要な改正点でありますが、そのほか農業共済団体組織及び運営に関する条文を若干改正しております。すなわち組合の総代選挙に選挙区を設けることができることとしたこと、及び組合役員の選任規定の追加、共済目的種類ごとの事業廃止を決定する場合は総代会にゆだねることができないこととしたこと、現在定款で定めて実施されている延滞金徴収について、その根拠を明確にしたこと、農業共済組合の共済事業にかかわる事務の一部を農業協同組合に委託することができるようにしたこと、共済掛金等にかかわる権利の消滅時効は現在一年でありますが、これを三年としたこと、組合の合併、市町村の廃置分合等の場合の規定整備したこと等であります。  なお、第百四十三条の二及び第百四十四条に都道府県及び中央の保険審査会の規定がありますが、今回の改正で事業団の業務が保険及び町保険の二種類になりましたので、その名称を都道府県農業災害補償審査会及び中央農業災害補償審査会に改めました。  最後に、この法律案の附則でありますが、大別いたしますと、施行期日、経過措置及び関係法律改正の三項目となっております。  このうち、施行期日及び経過措置につきましては、従来、事業団の設立が予定されております昭和三十七年二月から施行し、事業関係改正条文は、水稲、陸稲及び蚕繭につきましては昭和三十七年産のものから、麦につきましては昭和三十八年産のものから適用することといたしておりましたが、改正制度実施のための準備期間等も考慮いたしました結果、これを一カ年延期することとし、近日中に所要の修正手続をとることといたしております。この修正により、施行は昭和三十八年二月から、水稲、陸稲及び蚕繭にかかわる改正規定の適用は昭和三十八年産のものから、麦にかかわる改正規定の適用は昭和三十九年産のものからとなるわけであります。  それ以前の年産のものにつきましては現行規定によるわけでありますが、事業団設立後は特別会計が廃止になりますので、現行規定政府とありますものは事業団と読みかえて適用することといたしております。  また、改正後は農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済の料率の設定は事業団が担当することとなりますが、事業団がみずから設定を行なうのは、水稲、陸稲及び蚕繭については昭和三十八年産のもの、麦については昭和三十九年産のものにかかわる料率から、家畜共済については昭和三十八年度加入のものにかかわる料率からとし、それ以前のものについては、現在適用になっております農林大臣の設定した料率を事業団が設定したものとみなしてこれを引き続き適用することといたしております。  なお、一筆収量建制の暫定適用につきましては、さきに申し述べました通りでありますが、この場合の共済掛金の国庫負担は、その組合について農家単位制を実施した場合の国庫負担の率を適用することといたしております。  以上が、農業災害補償法改正案の説明でございます。  次に、農業保険事業団法案内容について補足して御説明申し上げます。  この法案は、今次の農業災害補償制度改正の一環として、新たに設立いたします農業保険事業団の組織業務、財務、会計等について規定するものでありまして、事業団と農業共済組合等との間の保険関係及び事業団と農業共済組合連合会との間の再保険関係については、農業災害補償法規定されることになるわけであります。  以下、その主要な内容を御説明申し上げます。  第一は、目的であります。第一条に規定いたしております通り、事業団は、農作物共済についての保険と蚕繭共済及び家畜共済についての再保険の事業を行なう等農業災害補償にかかわる事業を分担して、その適正かつ能率的な実施に当たり、農業災害補償制度の円滑な運営と健全な発展に資することを目的とする法人でありまして、後来政府農業共済再保険特別会計を設置して直接行なっておりました事業を、新しく特別法人を設立して、これを行なわせようとするものであります。  第二は資本金であります。この法人の資本金は、第四条第一項及び附則第九条第二項に規定いたしております通り、現在の農業共済再保険特別会計において、再保険金の支払い財源が一時的に不足した場合に、その不足金に充てるための財源として一般会計から繰り入れられた再保険金支払い基金をそのまま国が事業団に出資することにいたしておりまして、その金額は約三十六億円となる見込みであります。  元来、農業災害補償制度は、保険収支の長期均衡を基本として設計をいたしておりますが、一町的には、支払い資金に不足を生ずることもありますので、この資本金は、あとで申し述べますように、事業団の基金勘定においてこれを管理し、保険金または再保険金の支払い資金の不足に充てるための財源とすることにいたしております。  今後大災害が起こり、保険金または再保険金の支払額がその年の保険料または再保険料の徴収額を超過するようなことがありましても、この資本金及びその運用益とをもって保険金または再保険金の支払いに充てることになるわけであります。もし不幸にして、これをもってしても、なお支払い資金に不足を生ずるような人災害が発生いたしました場合は、借入金によるか、または増資によってこれをまかなう予定でありまして、この場合の借入金は、後にも述べますように原則として政府の、一般会計からの借り入れを予定いたしておりますし、また増資は、今後とも政府がその全額を出資することとなっております。  第三は役員及び職員であります。役員は、理事長一人、理事三人以内、監事二人以内とし、農林大臣が任命することといたしております。  なお、この事業団の性格にかんがみまして、事業団の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、公務員と同様の取り扱いを受けることといたしますとともに、役職員のうち理事長から事業団の予算執行の職務を行なう者として指名された者については、予算執行職員等の責任に関する法律を適用して、その予算執行につき、職員の責任を明確にし、違法支出を防止して、その適正化をはかることといたしております。  第四は業務であります。第十九条に規定いたしておりますが、事業団は、農作物共済についての保険事業と蚕繭共済及び家畜共済についての再保険事業を行なうとともに、共済掛金の額を定める基準となる基準共済掛金率等の決定、基準収穫量設定準則、損害認定準則等の設定、あるいは共済掛金国庫負担金の交付等、農業災害補償法等により事業団の業務に属させられた権能を行なうことを本来の業務とし、あわせて農業共済組合または市町村の行なう共済事業及び農業共済組合連合会の行なう保険事業に関して各種の援助を行ない、また今後の制度発展に資するため農業の災害補償に関する調査研究をも行なうことができるようにいたしております。  しかしながら事業団の人員構成等を考慮いたしますと、現地における損害認定のための実測調査等については、事業団のみでは短期間に的確な調査を行なうことは困難でありますから、農業共済組合連合会の協力を得ることが必要であると考えまして、準則の制定等のような事業団の権限に属させられた事項を除き、事業団はその業務の一部を連合会に委託することができることといたしました。この場合には、この受託業務に従事する連合会の役職賃も、事業団の役職員と同じく、刑法その他の罰則の適用については、公務員と同様の取り扱いを受けるわけであります。  なお、これらの業務を行なうについての納期的事項につきましては、設立委員が農林大臣認可を受けて定める業務方法書に規定することといたしております。  第五は事業団の財務及び会計についてでありますが、事業団の財務の重要性にかんがみまして、予算決算等につき、政府のみならず、会計検査院及び国会の規制をも受けさせることとし、その適正な運営をはかることといたしました。  すなわち事業団は、毎事業年度、その開始前に、予算、事業計画等について、農林大臣認可を受けることといたしますとともに、決算が結了したときは、財務諸表を作成して農林大臣の承認を受けた上、事業の実施結果を明らかにした報告書とともに、農林大臣を経由してこれを内閣提出し、内閣は、これにつき、会計検査院の検査を経た上、国会に報告することといたしました。  事業団の会計につきましては、第二十七条に規定いたしております通り、各事業ごとに会計区分を行なうことを法律により事業団に義務づけ、損益の処理についても、各勘定ごとに損失てん補準備金または積立金として整理し、これを他に費消させたいようにいたしまして、保険収支の明確な経理を行なうことといたしました。また事業団の事務費は、国がこれを負担することとし、各保険事業の収支との混同を避けるため事務勘定を設け、別に経理することといたしました。さらに、借り入れを行なうときは農林大臣認可を受けること、役職員の給与支給基準についても農林大臣の承認を受けること、あるいは余裕金の運用についての制限等の規定を設けますとともに、その他の財務会計の細則についても農林省令でこれを規定することとしております。そしてこれらの会計経理は、会計検査院が、国の機関と同様、毎年検査実施することといたしまして、さきに申し上げました事業団の役職員の責任や農林大臣の各種の監督権限の行使等とも相待って、事業団の経理に遺憾なきを期することといたしました。  第六は関係行政庁の協力であります。事業団の業務の遂行については、農林省及び都道府県、ことに農林宵の地方支分部局であります各地の統計調査事務所及び食糧事務所並びに都道府県に設置されております病害虫防除所、家畜衛生保健所等の密接な協力を受けなければこの事業の適正な運営をはかることは困難でありますので、第三十九条で特に「事業団は、農林大臣または都道府県知事に対して、事業団の業務に関し、助言、資料の提示、その他必要な協力を求めることができる」旨の規定を設けております。  第七は事業団の発足についてであります。事業団の設立は本年二月一日の予定でありましたが、さきに申し述べました農業災害補償法の一部を改正する法律案の修正と同じく、一カ年延期して、明年二月一日とする旨の修正を行なうことといたしております。そして農業共済再保険特別会計は事業団成立の時点をもって閉鎖し、同特別会計が有する権利義務は、一般会計に対して有する権利義務を含め、事業団が包括して承継することといたします。ただし、昭和二十八年及び二十九年に同特別会計の農業勘定の歳入不足を補てんするために一般会計から繰り入れを受け、後に剰余金が生じた場合は一般会計に繰り戻すこととなっております。繰入金の残高につきましては、事業団が国への納付金として納付する義務を負うこととし、附則第十条にその旨を規定いたしております。なお事業団が承継した財産のうち、同特別会計の再保険金支払基金勘定の残高を国の事業団に対する出資とすることについては、さきに御説明いたしました通りであります。  一方、事業団の職員につきましては、さしあたり同特別会計所属の定員百三十六名をこれに振り向けることとし、業務の運営に遺憾なきを期する所存であります。  次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして補足説明を申し上げます。  このたび提案いたしました農業協同組合法改正案は、前々国会において成立いたしました農業基本法に基づき、農業における協業の助長及び農地等についての権利の設定または移転の円滑化等、いわゆる農業構造改善に資するための施策と、農業協同組合及び農業協同組合連合会の業務運営を整備するための措置をその主たる内容としております。  政府は、今後農村の実態に即応し、農民の共同の利益を増進するため農民によって組織された農事組合等の育成をはかる考えでありますが、これらの団体農業経営及び共同利用施設の設欄等の事業を行なう場合に、法人格を取得する道を開くこととしたのであります。しかして、その場合において、これら法人格を取得した農事組合を農事組合法人と称することといたしました。  第一に、農事組合法人は、農業にかかわる共同利用施設の設置、農作業の共同化に関する事業または農業経営及びこれらの事業に付帯する事業が行なえることとしております。農業生産の協業化をはかる場合において、個別経営を解消して農業経営そのものを法人に移すいわゆる全面協業の形態ももちろん考えられるところでありますが、一般的には耕転機の共同所有、共同防除施設の設置等の部分的な協業、いわゆる協業組織に対する要望が強いのでありまして、すでにこのような事業を行なう小規模集団が数多く存在しており、これらのものが法人格を取得することが必要または便利な場合も予想されるのであります。右のような実情に即しまして、以上のような事業が行なえることとしたのであります。また農事組合法人は、出資制をとっても非出資制をとってもよいこととしておりますが、農業経営を行なう農事組合法人は、出資制のものに限定しております。なお、農業経営を行なう農事組合法人で農地法で定める条件に適合するものにつきましては、農業生産法人として農地等の取得につき、農地法上の特例を認めることとしております。  第二に、農事組合法人が農業経営を行なう場合には、組合員及びその世帯員以外にも、その事業の能率化をはかる観点から、特殊な技術者等のいわゆる員外者を総常時従聖者の五分の一の範囲内で、その事業に常時従事させることができるものとしております。  第三に、組合員の資格は農民であって定款で定めるものとし、定款の定めるところによって加入を制限することができるものとしております。また准組合員制度を認めないこととしておりますが、これはその産業農業経営農業にかかわる共同利用施設の設置または農作業の共同化に関する事業に限られている点からしまして、農民以外の者を准組合員として認める必要がないからであります。  第四に、その管理につきましては、その業務運営は、一般の協同組合と同様に、意思決定機関として総会、業務執行機関として理事を設けることとしておりますが、役員の選出方法を総会における選任制度とし、監事を任意機関とする等、その業務運営方法を民法の社団法人に準じて簡素化するとともに、一方定款変更、解散決議、合併等については、総会における特別決議事項とすることとしております。  第五に、その財務につきましては、法定準備金の積立、減資手続等、おおむね出資制の農業協同組合に準じた規制を行なうこととしております。  なお剰余金の配当方法につきましては、従事分量配当、出資配当及び利用分量配当を認めておりますが、その配当順位等は各法人の選択にまかせております。しかし、出資配当につきましては、年八分以内において、政令で定める割合に制限することとしております。  最後に、設立等手続につきましては、その設立に準則主義を採用することとし、五人以上の農民が発起人となって設立手続を終了したときに、農事組合法人が成立するものとしております。また定款変更、解散決議及び合併につきまして行政庁に対する届出制をとることとし、また検査、必要措置命令等の監督権限を必要最小限の範囲に限定しております。  本法案の第二の改正事項は、農地等の信託の引き受けの事業であります。  まず第一は、農業協同組合に、その事業として農地等の信託の引き受けの事業を新たに認めることとしておりますが、その場合、信託目的につきましては貸付の方法による運用または売り渡しに制限することにより、農業協同組合に新たに信託の引き受けの事業を認めることとした本来の趣旨に即応することとしております。  第二に、その事業の性格上、信託事業を行なうことのできる農業協同組合を信用事業を行なうものに限定するとともに、信託の引き受けの事業を行なおうとするときは、事業の実施方法及び信託契約に関する事項を信託規程に定め、行政庁の承認を受けなければならないものとしております。  第三に、信託財産の管理処分の制限でありますが、信託を引き受けた農地等を農業協同組合が貸し付け、または売り渡す場合には、信託の本旨に従って誠実に行なう義務を負うことは言うまでもありませんが、この信託の引き受けの事業は農業構造改善のために行なわれるべきものでありますから、組合員等の農業経営改善に資することとなるように配意してしなければならないものとしております。  最後に、信託事業の実施に伴い種々制限規程を設けたり、関係規定整備したりしておりますが、特にこの場合にも適用のあります信託法につきまして、所要の規定の適用を排除するための特例等をも設けることとしております。  以上が、農地等の信託の引き受けの事業に関する規定の概要であります。  第三の改正事項は、農業協同組合及び農業協同組合連合会の業務運営の整備に関するものであります。  その第一といたしましては、農業経営を行なう農事組合法人及び農業経営のみを行なうその他の法人に農業協同組合の正組合員たる資格を与えることによって、農業協同組合との緊密な連携のもとにその育成をはかることとしております。  また、農業経営を行なわない農事組合法人等農民の共同の利益を増進することを目的とする団体農業協同組合の一員となりますことが、その育成上適当であるとの趣旨のもとに、これらの団体につきましても、准組合員資格を明定することといたしております。  その第二といたしまして、農業協同組合及び農業協同組合連合会が主たる構成員または出資者となっている法人に准会員として農業協同組合連合会に加入する道を開くことといたしております。これは、農産加工、農用資材生産等の農業関連産業の部面におきまして、農業協同組合系統組織と他の資本、技術との連携のもとに、これらの事業の振興に資さんがための措置であります。  その第三といたしまして、員外利用制限の整備でありますが、医療事業のように公的性格の強い事業、農産加工事業のように施設利用に時期的変動の激しい事業等政令で定める特定の事業につきましては、組合員の事業利用に支障のない範囲で政令で定める割合まで、現行の員外利用の制限を緩和することによって、これらの事業の振興をはかることとしております。  その第四といたしまして、剰余金配当方法の整備でありますが、現在のように法律によって一律に剰余金配当の方法を規制することは、諸種の情勢から不適当と考えられますので、配当についての規定改正し、法律上は、単に利用分量配当及び出資配当以外の方法による剰余金の配当を禁止するにとどめ、具体的にどの方法によるかは経営の実情に即し個々の定款にゆだねることとするとともに、出資配当の最高限度につきましては、年八分以内において、経済事情の変動に応じ、一般の金利水準をも参酌して、政令で定めることとしております。  第五といたしまして、議決権及び選挙権の行使に関する整備措置でありまするが、農業協同組合の合併を促進することと関連をして、大規模な農業協同組合等におきまして、総会の円滑な運営を確保するため、議決権につきまして、一代理人が代理することができる組合員の数を一人から四人まで引上げるとともに、選挙権につきましても、書面または代理人による行使を認めることとしておりまするほか、合併により設立される農業協同組合及び農業協同組合連合会における設立当初の理事につきましても、その資格要件を緩和することといたしております。  以上が、農業協同組合法の一部を改正する法律案内容でございます。
  10. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 次に、引き続きまして農地法の一部を改正する法律案につきまして、若干補足説明を申し上げます。  提案理由説明につきましては、前国会にありました通り、今回の改正案の主たる内容は、農地等の権利取得の最高制限面積に関するもの、次に、農業生産法人に関するもの及び農業協同組合が行なう農地等の信託の引き受けの事業に関するものの三点のほか、右の改正に伴う関係法律規定整備等に関するものでございます。  まず改正の第一点でございますが、農地等の権利取得の最高制限面積に関する改正について御説明申し上げます。これは、第三条第二項第三号(農地法の農地保有制限に関する規定)及び第四号(採草放牧地の保有制限に関する規定)の改正でありまして、農地等の権利取得の最高面積の制限を越える場合を認めて参ろうというものであります。  現行制度では、農地等の取得は、取得後の耕作地と貸付地とを合わせた面積が、農地については内地平均三町歩、北海道十二町歩、採草放牧地については内地平均五町歩、北海道二十町歩になるように各都道府県別に定められた制限面積を越えることとなる場合は、原則として許可できないこととし、例外的に政令(農地法施行令第一条第一項第一号)におきまして、自家労力で効率的に経営すると認められるときには許可することができることとしているのでありますが、今回の改正は、この政令で規定されておりました例外事由を法律上の原則といたしますとともに、従来政令では自家労力による場合に限定しておりましたものを、主として自家労力による場合まで含めることといたしました。この結果、若干雇用労力に依存いたしましても労働の主体が自家労力ならば許可できることとなるわけでございます。  次に、改正の第二点は、農業生産法人に関する改正でございます。これは農業生産法人に農地等の権利取得を認めるとともに、それに伴う規定整備を行なうことを内容とするものでございます。  まず農地法第二条(定義を定めた規定)を改正いたしまして、農業組合法人、合名会社、合資会社または有限会社で一定の要件を備えるものを農業生産法人と定義いたしました。これは第二条に第七項第一号から第六号を新設したのでございます。農業生産法人の組織形態として農業組合法人のほかに会社形態のものを認めることとしたのは、農民が協業をしようとするに至った具体的状況に応じて最も適当な形態を農民の創意により選択し得る余地を残しておく方が望ましいという考え方からであります。しかし、株式会社につきましては、その性格農地法の規制に調和いたしませんので除外いたしました。また、これらの法人のうちさらに一定の要件を備えているものに限り農業生産法人として認めることといたしましたのは、どのような法人にも農地等の取得を認めますと、たとえば不耕作者がその法人の経営を支配し、耕作者の労働の成果の公正な享受を阻害するような、農地制度の基本をそこなう事態の発生も考えられますので、このような危険を未然に防止する必要があるという考えに基づくものでございます。  すなわち、第一に農地法の第二条第七項第一号(法人の事業の規定)第二号(法人の構成員の規定)及び第四号(常時従事義務者たる構成員の議決権の規定)の要件は、農業に従事しない者が農業生産法人の経営を支給する危険等を未然に避ける趣旨から設けられたものでありますし、同項第三号(第三者から法人が土地を借り受ける場合の制限の規定)の要件は、土地の面から、また同項第五号(法人の必要労働力に関する規定)の要件は労働力の面から、農業生産法人の経営は、雇用労働力に依存する資本家的経営と申しますよりは、共同経営的色彩の濃い性格のものであるべきであるとする趣旨から、また同項第六号(法人の利益配当に関する規定)の要件は、耕作者の労働の成果の公正な享受を確保しようとする趣旨からそれぞれ設けられたものであります。  第二に、第三条第二項を改正しまして、農業生産法人が農地等の所有権、賃借権等の取得をする場合には許可できることとするための規定整備することとしております。これとともに、その他の法人につきましては、原則として農地等の権利の取得を認めないこととしておりますが、試験研究、農事指導等に供される場合は政令(農地法の施行令)でこれを認めることとしたいと考えております。なお、現行法では創設地の貸付と小作地等の転貸を一般的に禁止しておりますが、これは第三条の第二項第六号及び第七号に規定しておりますが、法人の事業に常時従事する構成員がその法人に貸し付ける場合には許可できるように改正することとしております。  第三に、現行法の第六条(所有できない小作地及び小作採草放牧地に関する規定)では、在村地主の内地平均一町歩、北海道四町歩を越える小作地等の所有を制限しておりますが、今回第七条(所有制限の例外規定)を改正しまして、農業生産法人の事業に常時従事する構成員が所有し、その法人に貸し付けている小作地等につきましては、在村地主の所有制限を課さないことといたしました。なお、法人の事業に常時従事する構成員が常時従事することをやめた場合または構成員でなくなった場合におきましても、期間の定めのある賃貸借等でなお残存期間のある小作地等につきましては、その期間の満了までは所有制限を課さないこととし、(第七条第三項の新設)、またその法人の事業に常時従事する構成員が出作地をその法人に貸し付けた場合や、その法人の構成員で疾病による療養等の事由で一時不在村となっているものがその法人に貸し付けた場合は、在村扱いとすることとしております(第七条第四、項、第五項の新設)。  第四に、今回農業生産法人が所有権を取得できるようにしたことに対応して、国有農地または採草放牧地を、個人と同様に、農業生産法人にも売り渡すことができるようにするとともに(三十六条一項の改正)農事組合法人が新たに設けられましたことに伴い、農業協同組合と同様、これに対しましても、共同利用のため、国有の採草放牧地または未墾地を売り渡すことができるよう、第三十六条及び第六十四条を改正いたしました。これと同時に、第三十一条(市町村の利用権設定)を改正いたしまして、農事組合法人も農業協同組合と同様に、薪炭林、採草放牧地等に利用権を設定することを求めることができるようにしたのであります。  第五に、農業生産法人がその要件を欠くに至りました場合の措置を第十五条の二(新設)に規定しておりますが、これがその要件を欠くに至りました場合は、三カ月以内にその要件を満たすための措置を講じさせることとしております。このようにしましてもなお要件を満たさない場合は、その法人の所有する農地等は他に譲渡させ、その法人の借りている農地等は返還させることとし、それでもなお法人に残留する農地等につきましては、買収の措置を講ずることとしております。(第九条、第十五条の二)なお、要件を欠くに至りました法人の賃借人としての地位は、特にこれを保護する必要はありませんので、このような場合の賃貸借の解約等は許可するよう第二十条第二項に第四号を設けております。  第六に、農業生産法人の事業に常時従事する構成員がその法人から脱退した場合や常時従事することをやめた場合でありまして、その所有する在村地主の所有限度を越えた貸付小作地等や創設農地等がその法人に貸し付けられたまま残っておりますときは、三カ月以内にこれをその法人に譲渡するか、またはその法人から返還を受けることとし、その期間を過ぎましてもなお貸し付けられたまま残っております農地等は、農地法の一般原則に戻って国が買収することとして、第九条及び第十五条の二に所要の規定を設けております。このような脱退後、その者が主として自家労力により効率的に農業経営を行なう場合は、その法人に貸し付けられている農地等の賃貸借の解約等はこれを許可することとし、第二十条第二項(四号)に、法人が要件を欠くに至りました場合の賃貸借の解約等と並びましてこの旨を規定することといたしました。これは主として自家労力により効率的に農業経営を行なう場合は、その者の協業経営からの離脱を容認するという考え方に基づくものであります。なお、その他の場合の賃貸借の解約等につきましては、一般の賃貸借と区別する理由はないと考えられますので、特別の取り扱いはせず、現行の第二十条第二項の基準に従い、許否を決することといたしますが、特にいわゆる自作相当性という第三号の基準につきましては、同号を改正いたしまして、賃借人が法人である場合は、賃借人たる法人の経営、賃貸人の経営能力等を考慮して相当性を認定する旨を明確にしております。  改正の第三点でございますが、次は農業協同組合の行なう農地等の信託の引き受けの事業に関する改正であります。これは、農協の行なう信託事業について、事業の円滑化をはかるため、権利移動及び小作地所有の制限の特例等を設けるものであります。  農地制度の基本的な考え方は依然としてなお堅持しなければならないと存じますが、他面、最近における農業と、それを取り巻く環境の変化を考慮しつつ農地等の有効利用ないし農業構造改善に資するような農地等の権利移動をはかりますために、農民の自主的な協同組織であり、農民の経営状況を最もよく把握していると見られる総合農協の機能に着目いたしまして、これに農地等の権利の耕作者への移動の媒介をさせることとし、その媒介の方法といたしましては、単なるあっせんではなく、農地等の所有権を一たん移転して目的に従った管理、処分をなさしめる信託という方法をとらせることにより、効率的な運用をはかることとし、このため農業協同組合法改正することとしております。  農協の行なう信託事業の信託は、農地等を貸付地として運用することを目的とするものと、その売り渡しを目的とするものとに限られますが、後者の売り渡し目的の信託は、農民が離村しようとするような場合で、その農地等の適当な買い手がすぐには見つからないようなときに利用されると思いますが、農民心理の常として土地に対する執着が断ち切れないようなときは、前者の貸付目的の信託が利用されることが多いと考えられます。いずれの場合にいたしましても、信託の引き受けによる農地等の所有権の取得や信託農地等の貸付につきましては、農協の信託事業の本質から見て一般個人間におけるものとは異なっておりますので、農協による土地所有の集中とか、占い型の地主制の発生のおそれはないと考えられます。  それでこの農協法の改正と対応して、農地法の基本線は堅持しつつ農協の行なう信託事業が円滑に行なわれるよう、農地法の第三条第一項第八号を設けて農協が信託の引き受けにより農地等の所有権を取得する場合等には許可が要らないこととし、第七条第一項第九号(所有制限の例外規定)と第六条第六項(所有できない小作地等の規定)の改正により信託財産たる小作地等に対する農協の所有制限につき特例を設け、また第二十条(農地等の賃貸借の解約等に関する制限)を改正して信託の終了に伴う賃貸借の解約等は許可を要しないことといたしました。なお、農協法に基づく信託の引き受けを認めることと対応しまして、これ以外の信託の引き受けにより農地等の権利を取得することは、農地法第三条第二項を改正して(第二号の四)、この際禁止することといたします。  以上のほか次の改正を行なうこととしております。すなわち、現行法第八十条(国有農地売り払い)では、自作農創設特別措置法や農地法で国が買収した農地、採草放牧地、未墾地、立木等で国が管理している間に事情が変化したため買収目的に供しないこととしたものは、旧所有者一代に限って売り払うことになっておりますが、その旧所有者である個人または法人が死亡したり、合併により消滅しておりますと、その一般承継人には売り払えないことになっておりましたが、今回第八十条を改正いたしまして、売り払いの相手を一般承継人にまで拡大することといたしました。このほか第八条(公示及び通知の規定)、第十七条(承継人に対する通知の効力)、第七十八条(買収した土地、立木等の管理)、第八十五条(訴願)、及び第八十七条(換地予定地に相当する従前の土地の指定)の改正をしておりますが、これは条文整理のためのものであります。  次に、本法の附則で関係法律改正することとしておりますので、これについて御説明申し上げます。  まず土地改良法の改正でございますが、これは法人が土地改良区の組合員となりました場合にはその総代の被選挙権を持つことができ、さらにこのような法人の業務執行役員は土地改良区または土地改良区連合の役員の被選挙権を持つことができるようにすることでございます。  次に、農業委員会等に関する法律改正でございますが、これは従来家族農業経営を営んでおったり、またこれに従事していた者が農業生産法人の構成員となってその事業に従事いたします場合に、現行農業委員会に関する法律の第八条の規定によりますと、農業委員会の委員の選挙権及び被選挙権を持てないこととなりますので、これを持てるように改正するものでございます。  次に、土地改良法の一部を改正する法律改正でございますが、これは昭和三十二年に農地法により買収した埋め立てまたは干拓に必要な土地を特定土地改良事業特別会計に移管いたしましたが、それらの土地につき現行農地法第八十条と同じ趣旨を規定する附則第十五項を前に述べました農地法の第八十条の改正と同様の内容に改めるものでございます。  最後に、果樹農業振興特別措置法の改正でございます。この法律は、樹園地の集団化と農作業の共同化の促進による合理的な果樹園経営の確立をはかるため、一定の要件を備えた集団的果樹農業者または果樹農業者が構成員となっている法人が果樹園経営計画を作成し、これについて都道府県知事の認定を求めることができることとし、この場合必要があれば農林漁業金融公庫資金貸付、国及び都道府県の助言、指導を受け得る等の助成措置規定するものでございます。しかし、この果樹農業者経営主体でありますから、果樹農業者が構成員となっている法人には、果樹農業経営を行なう農業生産法人は含まれません。農地法改正に梓いまして、農業生産法人たる果樹農業者は果樹農業振興特別措置法による助成措置対象とし得るようにする必要があると存じますので、附則第五項を設けた次第でございます。  以上で補足説明を終わります。どうぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  11. 野原正勝

    野原委員長 次会は明三十一日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会      ————◇—————