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1962-04-18 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十八日(水曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       内海 安吉君    小笠 公韶君       金子 一平君    倉成  正君       高橋  等君    辻  寛一君       西村 英一君    藤原 節夫君       保科善四郎君    細田 吉藏君       緒方 孝男君    田口 誠治君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         総理府事務官         (恩給局長)  八卷淳之輔君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (経済局経済協         力部長)    甲斐文比古君         大蔵事務官         (主計局次長) 谷村  裕君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      中嶋 忠次君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  木村 四郎君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 四月十八日  委員大森玉木君及び島村一郎辞任につき、そ  の補欠として細田吉藏君及び西村英一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員西村英一君及び細田吉藏辞任  につき、その補欠として島村一郎君  及び大森玉木君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 四月十七  日中小企業省設置法案松平忠久君外二十六名  提出衆法第二六号)本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五〇号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)  公務員給与に関する件      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  公務員給与に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。石山權作君
  3. 石山權作

    石山委員 この前、大蔵省設置法の一部を改正するときもお話し申し上げたわけですが、そのお話の続きに大蔵大臣が約束の通りおいでをいただきまして、その点は感謝を申し上げます。  それで、特に大臣にお聞きいたしたい点は、暫定手当を去年の十二月十四日に人事院勧告しているわけでございます。その額も、公務員に関しては六億程度でございましたけれども、これが予算化されないというのは、大蔵省側で疑義があるために予算化されないというふうなもっぱらの評判なのでございます。ただ、私そのとき感ずるのは、十七日の閣議で、公企労方々仲裁裁定は、大臣は簡単に御賛成になっているわけなんですね。しかも、その金額は、国鉄の百三十億ですか、集計約三百五十億程度あっさり御承認になっておる。しかるに、人事院勧告を、六億程度のものをなかなか難色を示しているということについて、何だか僕らとしては、ものの考え方が、公務員方々に対しては大蔵省はどうも冷酷ではないだろうかというふうにもとれない節がないではないというふうに思うのですが、今度の仲裁裁定はあっさりのんだ。項目の流用を認めて、三百五十億をば使ってもよろしい、こういうようなことをおっしゃっているのですが、それと暫定手当との関係は、われわれはどういうふうに理解すればようございましょうか。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度の仲裁裁定を今三百五十億と言われましたが、そんなにはなりません。概算で三百十億前後じゃないかと思いますが、これは現行給与制度に基づいてのベース・アップの裁定でございますから、これは資金的なやりくりがつくということであったら、裁定を尊重してのむのは当然だと考えまして、三公社現業の経理を私どもは十分検討した結果、移流用物件費の節約、予備費使用、それから剰余金の一部使用というようなことで、各企業とも非常な無理ではございますが、やりくりをすればできるという結論になりましたので、これは裁定に従ってその通りに実行するということをきめたわけでございますが、こちらの方の暫定手当の問題は、今言った現行制度の上に立ってのこういう裁定とは違いまして、新たに給与制度の変更でございますので、これについては、相当実施具体案が準備されない限りはすぐに実行できない。従って、三十七年度にこれを予算化すという措置具体案のないものでございましたので、これは当初予算においては一応見送るということをきめたわけでございまして、これは大蔵省だけがそうきめたというのではございませんで、給与担当省そのほか政府部内で意見が一致して、そういう措置をとったわけでございますが、この当初予算にこれを計上しなかったということは、この問題を解決しないという意味ではございませんで、この前申し上げましたように、合理的な解決方法具体案を得て、私どもはぜひこの問題は解決をはかりたいと考えておるわけでございます。
  5. 石山權作

    石山委員 これは大蔵大臣にすれば、給与一つの形が変わるのだから、慎重に具体策を検討しないといかぬという御意見だと思います。その通りだと思いますが、しかし、この件については、今の大平官房長官が当内閣委員をしておる時代に、一ぺんこういう操作をして——当時の東京、大阪その他の公務員の方の最高が二〇%でございました。そのときは地域給と言っておりましたが、二〇%でございました。それを現行まで引き下げたわけなんです。ですから、操作方法としては一ぺん決定済みでございます。地方と都市の公務員地域差をば実情に合わして解消するには、いうところの底上げに似たような方式をもって本俸に繰り入れる、これしか方法論はないのではないかというふうに極言してもよろしいと思います。ですから、これは第一回目は実情に合わして操作をした。それから以後三年たちまして、また実情に合わしてこれを操作をしなければ、実情に合わないようになったというのが現実だと思います。ですから、私どもとしては、これを早目政府意思表示をしておいていただかないと、人事院が、例年のごとく公務員給与はおおむね七月ごろ勧告をするわけなんですが、この暫定手当が、政府で腹がまえを示しておかないと、何と申しても、人事院は次の勧告をしぶらざるを得ないというのが実情だろうと思うのです。私があえて大臣に御出席を願ってこの話を申し上げるというのは、公企労その他のおおむねの労働組合の賃金がかなりな額で決定しているにもかかわらず、公務員はわずかに——この問題を解決をするという政府意図が不明なために、人事院は次の勧告に対しても非常に慎重というよりもちゅうちょしているというようなことになりかねないのではないか。これを処理するということになるわけですが、これを処理するというめどが一応つかないと、まずいのではないか。早く処理をするということになるのでございましょうけれども、これをいつごろどういうふうにして処理をするかということが、この際かなり明らかにならないと、まずいのではないかというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは、おっしゃられるように、まずい面もあろうと思います。暫定手当整理の時期とか、政府整理方針というものを事前に確定しないと、技術的に見て、官民格差比較というような問題で、人事院がその点で非常に困られるというようなことも一応は考えられますが、今の人事院格差についての調査というようなものは、必ずしも政府暫定手当方針がきまらなければ人事院作業が進まないというものではないというふうにいわれておりますし、人事院もそのように考えておるようでありますから、その点の心配はないと思います。ただ、私どもが心配しますのは、本来なら、政府はこういう方針暫定手当整理したい、それを頭に置いて人事院官民給与格差作業のときに、その政府方針を頭に入れた格差比較というようなものをやってくれいということが言えるのでしたら、これはある程度合理的に解決ができるのじゃないかと思いますが、問題は、御承知のように、人事院というものは、政府の関与を一切受けない、政府意図をあまり受けないで、独自の立場で公正な官民給与格差比較をやることになっておりますので、政府がそういう案を事前に言って相談をすることが、あるいはほんとうならこれくらいの格差があって、人事院勧告がもう少し高くあるべきものを、そういうことで政府が干渉したために、それを手かげんさせて下げたとかいうような、またいろいろな誤解を起こさないとも限りませんので、そういう意味において、現に人事院比較が全国一本でやっておるのじゃなくて、暫定手当級地別基準内給与比較して、その平均をとるという方法でやっておるので、人事院の公正な調査が進んだあとでも、政府方法によってそこを勘案するという方法は残されておるのでありまするから、本来なら、理屈から言ったら、人事院政府が緊密なこの問題についての連絡をとってやるのがいいと思いますが、そういうような点で、これは給与の問題ですから、誤解を受けやすい点もあるだろうと思いますし、そういう意味で、事前にこの問題の人事院との話し合いというような方法は、私はあまり適当じゃないのじゃないか、そういうふうに考えております。
  7. 石山權作

    石山委員 これは、今機構改革等の問題がかなりに論議をされてきている時代でございますが、僕は、政府労働組合あるいは国鉄公社とて関係等を見てみますると、どうも大蔵省のものの考え方をば、今までの習慣と申しますか、慣例と申しますか、改めることがだんだん必要になってきたのではないかというふうに考えます。たとえば、今回の公企労の問題で、仲裁裁定の出るまでの間の交渉経緯を見てみますると、どうも大蔵省の顔色をうかがわなければ、国鉄であろうと電電公社であろうと、一銭も出せないのだ、こういうふうなことが厳然としてあるようでございますが、それでは団交とかなんとかいうものはほとんど無意味なように感じられます。これは労働組合の場合ですが、私ども、たとえば予算編成権の点に関しては、大蔵省独自性を認めるにやぶさかではございません。予算が編成されて、これが実施段階配分段階になりましても、かなり大蔵省——これは大臣、こういうことかもしれません。当面陳情を受ける通産であれ、農林であれ、どうも風当たりが強いから、大蔵省へ問題を横にころがすのかもしれませんが、この問題は私どもの方の一存でいきません、あなたの方の学校の起債の面は一存にはいきません、これは大蔵省にも一つ言ってもらわなければならぬというふうなことをよく言うわけです。そうしますと、大蔵省では予算権を持っているわけですね。そのほかに、実施配分を監督する官庁に今度は早変わりをしていくというようなことになるのですね。今見ていますと、これがどうももう少し考え直していただく必要があるのではないか。ということは、今の公企労との団交の問題等にらみ合わしてみて、予算権を持つのだから、予算権を持つところに集中して、その他の問題に関しては、もう少し大蔵省——寛容という言葉は適当でないでしょう、みずからがタッチをしないような立場をとる方がよろしいのではないかというふうに思うのですが、これは仲裁裁定とからんで、その間の御説明をいただきたいと思います。
  8. 谷村裕

    谷村政府委員 大臣から政府委員が答えるようにと申されましたので、私から申し上げます。  石山委員の今お尋ねの点は、非常に一般的なお話としてでありますならば、大蔵大臣がお答えになることと思いますが、事柄仲裁裁定でありますとか、あるいは具体的な予算執行に関連して、大蔵省がどのくらいに関与しておるかというようなお話でございますので、ちょっと申し上げますが、仲裁裁定につきましては、団交は、もちろんこれは当事者主義でございまして、当事者の間においてやっております。私どもは、公労委におきましていかなる裁定が出るかということをいわは静かにわきから見ておりまして、それが出ましたところで予算上の措置を講じるわけでございまして、決して仲裁裁定それ自身あるいは団交それ自身に対して、何やかとわきから口を差しはさむというようなことはいたしておりません。そのことは明確に申し上げておきます。  その他、公社、あるいは公社に限らず、現業、さらには各省所管のいろいろな予算執行に関しまして、これは御指摘もございますが、要するに、程度の問題でございます。全部予算がきまってしまっておりましても、実際には、その具体的な執行についてまだ双方で相談してやろうという内容のものもございます。そうでなくて、それぞれもう規定の大きく定まった筋に従って責任の官庁によってやっていただくというのもございます。一事が万事すべて大蔵省がどうということではございませんが、もとより国会の御議決を得ました予算の適正な執行という面におきまして、ある程度どももやはり御相談にあずかり、あるいはいろいろ協議いたしまして、処理しているものもあるようなわけでございます。決して私どもとしては行き過ぎないようにはいたしますが、さりとて、野放図にするというわけにも参りませんので、その程度の問題として御了承いただきたいと思います。
  9. 石山權作

    石山委員 私は、人事院の問題もそれにからんでいると思うのです。今回のこれは政府意見として、暫定手当を当初予算に盛らぬということは政府意思です。しかし、その意思を最終的に決定したのは大蔵当局主計局だろうとわれわれは見ているわけなんです。その点では、私たち、在来の習慣等もあるから、今すぐというわけにはいかぬと思うのですけれども、やはり機構改革がいろいろ問題になっている場合、今までの慣例でやってきている。法律的には何らそういうことはないはずですが、慣例的にやってきておる。もちろん、大蔵当局としては積算して予算を見積もるわけですから、その積算が意外な積算で、各省が持ってきて、配分積算とが別個であるならば、おかしいというのは当然だろうと思います。積算した予算が変更される場合には、もちろん通産省であれ、農林省であれ、それはこういうふうな格好予算を動かすからという了解を求めるのは、また一つ政府の構成上、当然だと思うけれども、そうではないようだというような考え方なんですね、一般に言わせれば。相談じゃないのだね。相談じゃなくて、もっと強いような格好大蔵省方々が対応しているというのが、今までの慣習なのではないかというふうに思います。これは一般論でございまして、法律的には何ら今まで破綻も示しておらぬので、私たちあえて言うわけじゃないのですが、この仲裁裁定を見たり——新聞仲裁裁定に対して各社で解説しているのですね。そうすると、私が今言ったようなことをおっしゃっている。それからまた、暫定手当の問題につきましても、前の政府が一ぺんこれを施行して、解消をもくろんでいながら、これを押えたということも、僕らとしてはちょっと気になる問題でございます。それから大蔵大臣は、この前のとき、私が暫定手当を申し上げたときに、これは早期に解決するように努力するということと同時に、もう一つおもしろいことをおっしゃったのは、僻地に住む人たち考え方を及ぼさなければならぬのではないか、つまり、優秀な公務員地方に分散しなければ日本政治、行政の能率は上がらぬという意向だと思うのですが、僻地手当というふうなことをおっしゃって、これはわれわれ東北地方とか、へんぴのところに住んでいる者としては、むしろ政府は、というより大蔵大臣が、われわれ考えているよりも新しいいい考え方を示していただいているわけですが、この僻地手当等を脳裏に浮かべながら、今回暫定手当処理なさろうとしているのか、それとも、もう一つ、特にこれは主計局次長の方がよくわかるかもしれませんが、私たちの希望としては、これはこれなりに、前もって出ているものですから、人事院勧告はのれんみたいなものです。これは解消しないものですからね。これを別にして勧告をするようにという心持で、この暫定手当を未解決にしているのか、その点を明らかにしてもらわないと、人事院も困るだろうし、公務員もこの問題を待っているものですから、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 この前、僻地手当の問題を、私が、私見ということを断わってございますが、こういう考えも入れた合理的な解決方法はないかというようなことも考えていると言いましたが、しかし、これはなかなかむずかしい問題でございますので、今のこの暫定手当は、一応これなりの問題として処理するという考え方をするほかにはなかろうと思います。
  11. 谷村裕

    谷村政府委員 大臣が申されたことを若干補足さしていただきますが、要するに、暫定手当の問題につきましては、しばしば大臣が申された通り、方向としてこれを解消していくということは変わりないものでございます。時期としていかなるときを考えるか、また、それはいわゆる今まで発表されております人事院民間給与調査、それに基づくいわゆる公務員給与改定勧告、それとのつながりをどう見て処理していくかということで、実はちょっと昨年度足踏みをした形になっておりますが、給与問題と申しますものは、先生方承知通り、バランスが非常にむずかしゅうございまして、そのつどそのつどいじっておりますと、あっちがでこぼこ、こっちがでこぼこということになって参ります。と申しまして、全部をながめて一挙にというわけにも参りません。そういうところで、いろいろわれわれなりにも考えまして、今回は見送ったわけでありますが、それは先般来大臣から申されておる通り、いずれは解決しなければならない問題だと存じております。そして、それは御指摘のように、人事院調査がまた今後どのようにされてくるかということにもかかってくると私どもは考えております。  それからまた、大臣が申されました、いろいろな意味で、時世も変わって参る、われわれの勤務態勢も変わって参るということで、いわば勤務の実態に即応した各種の手当というものを考えなければならぬという問題でございますが、これは御承知通り、現在いろいろな勤務の態様によりまして、あるいは危険手当でありますとか、あるいはまた離れ島に住んでおるような方には遠隔地手当でありますとか、寒いところに住んでおられる方には寒冷地手当でありますとかいう形で、手当が出ております。そういう全体の給与の体系を見ながら、全体をどういうふうに見ていくかということでございます。先ほど大臣は、表立ってはもちろん人事院とそういう話を干渉的にするとかどうとかいうことはございませんと申しましたが、実質的には、私ども常に人事院ともよくそういう問題についてもいろいろ話し合いながら、事柄を進めて参ればよろしいのではないかと思っておるような次第でございます。
  12. 石山權作

    石山委員 これ一つで終わりにいたしますが、今度の暫定手当は、人事院勧告の趣旨を十分に了解をしてこれを解決したい——一部では、わずかの金額であるけれども、春闘に小さい油の玉を注ぐだろうから、政府はこれをオミットしておるという意見一つございます。それからもう一つの見方としては、この暫定手当を残しておけば、次に人事院給与勧告するのに非常にちゅうちょするだろう、未解決にしておくことは、こういう二つのねらいを持っているのだろうというふうに言っている。だから、この暫定手当は、十分に人事院意図するものを了解するということが一つと、もう一つは、このことは、決して人事院の次の勧告に対して、故意に何かちゅうちょさせるような意図を持ってこの問題を未解決にしておるのではないのだ、政府としては、この案を十分に検討するために時間を費やしておるのだ、こういうふうに私たちはこの際了解をしなければどうも困るわけです。この点に関して、大臣の力強い説明をいただきたい。
  13. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう意図は一切持っておりません。さっき申しましたように、十二月に勧告を受けてから、早急に政府部内でこの解決具体案ができなかったということから、これを今後解決するという立場で当初予算の見送りをしたというだけでありまして、そのほかの意図は一切ございません。      ————◇—————
  14. 中島茂喜

    中島委員長 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を継続いたします。  質疑申し出がありますので、これを許します。石山權作君
  15. 石山權作

    石山委員 新聞記事というものは、口が悪いものでございまして、外務省は、最近ガリオア・エロア、タイ特別円の問題が衆議院を通過したので、昼寝をしているということを書いているのです。昼寝をするほどのんきでもないような事件がたくさんあるわけなんです。私、内閣委員なものですから、機構というものから政治を見るという一つの習性があるのですが、昼寝をするほどならば、サケ、マス、カニの問題について、何で外務省農林省にまかせっきりなような格好になっているのですか。今までの習慣もございましょうが、そっちはそっちだ、こっちはこっちだというふうな格好になっているのはどういう理由ですか。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最初にお断わりさしていただきたいと思いますが、新聞記事というものは云々というお言葉もございましたけれども外務省は絶対にそういう昼寝などはいたしておりません。ほかの省のことはなんですが、私は私なりに、外務省は最も働いている省だというふうに確信を持っておる次第でございます。どうぞその点は御信頼をいただきたいと存じます。  それから日ソ交渉の件についてでございますが、漁業の問題というのは、非常に技術的な面が多うございまして、水産庁が、その面におきまして、日本国内においても、国内のそういう関係方面にいろいろな接触を持っておりますので、どうしても水産庁考え方というものを外務省がよくリエイゾンするということが必要なわけで、なまじっか聞いて取り次ぐよりは、そのものずばりで水産庁が前面に立って話をしていただくという方が、より効果的な交渉もできる、こういう意味で、従来からさようにしておるわけでございます。もちろん、外務省といたしましては、非常に緊密な連絡をとりまして、私ども欧亜局長の法眼君が、常に伊東水産庁長官連絡をとりましていたしておりますし、私も河野大臣と常時連絡をいたしておるわけでございます。先方に出ておりますわが方の大使館員でも、向こうにおります重光君は、非常にその方の造詣が深いわけでございます。従来そういう形でやっておりますので、日ソ関係漁業交渉にはこれが一番いい形である、こういうふうに私ども信じておるわけでございます。
  17. 石山權作

    石山委員 魚のことば水産庁だ、そうすれば、物のことは通産省ですね。金のことは大蔵省だ。そうすると、外交問題というのは一体何か知りませんけれども経済協力局なんて、そんなもの要らぬじゃないですか。みんなまかせておくならば要らぬと思うのです。それから、私特におかしく思うのは、今度、物事がきまらなければ農林大臣をやるというのでしょう。農林大臣魚とりですか。魚とりのベテランですか。それならば話はわかるけれども、この問題に関する限り、外交という言葉が浮かんでこない。外務省という言葉が浮かんでこない。しかし、ある意味では、これも国策で、ソ連外交なんかしたくないということかもしれません。ソ連となんか外務省は話をしたくないんだ、これは全く経済の実務的な問題だから、それに局限して、われわれは外交という問題でソ連とは話したくない、こういう線を引いた建前で意図しているというならば、これもこれだ。せんだってあなたの方では、文化使節かなんか呼んで、ソ連とごじゃごじゃ話してみたりしているわけなんですが、この問題に関する限りは、私はどうも釈然としない。高崎さんが話がデッド・ロックに乗り上げれば、やはり今のところは、農林大臣政治折衝をなさるというふうな建前で進んでいるのでございましょうか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現在の代表団は、高崎さんがその関係で非常に造詣が深いというので代表になっておりますが、わが方の山田大使も代表でございまして、これは外務省がやっておると言っても差しつかえないわけでございます。もとより、交渉の経過その他については、逐一公信がきておるわけでございます。河野農林大臣が行かれるかどうかという問題については、私どもきめておらないわけであります。これは今高崎代表が主となって、山田大使がこれを助けて交渉しておる際でございますので、一部新聞等にはそういうことが出ておりますけれども、私ども何もさようなことはきめておりません。
  19. 石山權作

    石山委員 カニ、サケ、マス、これはやはり経済の問題でしょう。私、経済協力局をあなたの方でお作りになるというから、こんなところにもやはりいろいろと考える必要があるのではないか、こう思ってみたわけなんです口そうすると、魚のことは水産庁が動いておるということになると、悪口を言えば、外務省のやる仕事はなくなるんじゃないか。物は通産省、金は大蔵省、そうすると、外務省でやることは——昔の外務省を調べてみると、こういうことが概括的にいわれておる。日本の軍部の連中が盛んにあばれ回った、それを合法化することにきゅうきゅうとした外交をやっておったといわれておる。これは何も外務省方々だけでなく。日本の官僚全般が、軍部と結託して云々というふうに今日批判されているわけですが、今みたいなものの考え方で問題を煮詰めていけば・外務省の仕事はないんじゃないか。カニ、マス、サケ等の問題にも、もっと精を入れてみる必要があるんじゃないか。そこを煮詰めていけば、歯舞、色丹等の問題等も、外務省は逃げていますけれども、これはやはり一生懸命勉強せざるを得ないということになるのではないでしょうか。どうもそういうむずかしいところには——実務だけで問題を処理していく、これも政治としては一つの心がまえですよ。めんどくさいことが解決しなければ、何もかも一歩も前に出られないということでは外交でもないでしょうし、政治でもない。ですから、それはわかるけれども、何年前も農林省がこの問題を主体的にやる、何年後の今日も主体的に農林省がやるというところに問題がある。進歩がないということを私は言っているのです。そして、経済協力局というものを設置して大いに経済外交を推進していきたい、他省との連絡を密にしたい、こうおっしゃっておる。ですから、この問題は、やはり米ソ外交を通じた大きな目から、その派生的な問題としてこの漁業権を見るという心がまえがないと、日本外交の進展というものは、ソ連に対してひけをとることにならぬでしょうか。私はそう思われてなりません。まだその時期でないというふうに小坂大臣はお考えでございましょうか。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最近の外交面で、経済の分野が非常に大きくなって参っております。その面では、私どもやっております外交で、経済に関することが非常に多いわけでございます。この点については、お話しのように、もちろん、国内の各関係官庁連絡を密にして参らなければなりませんし、これは現在相当によくいっておると思うのでございます。ただ、そのものの度合いでございまして、たとえば綿製品の賦課金の問題が出てくる、これは窓口といたしましてやはり私ども交渉するわけでございます。しかし、その実態がどうなっておるかということについては、通産省がやはりそれを見まして、これこれの影響がある、こういうことを言ってくる。われわれ、それを受け、またそれを議論して、こうだということを信じたら、その線で交渉するわけでございます。漁業の場合は、特殊の形態といいますか、今までから百日交渉というようなことで、非常に厄介な交渉になっておるわけでございます。そうすると、漁期と交渉の妥結の時期というものは、常に重なり合ってきておりまして、その間に、他の一般通産省関係あるいは大蔵省とのいろいろな話し合いの関係、そういうものと違った非常に特殊な形態がございますわけで、もちろん、これは私ども農林省にまかせきりでやっておるわけではなくて、われわれの意見を言い、農林省との間に緊密にやっておるわけでございますけれども、ただ、事柄の性質上、今の場面では、水産に非常に経験のある人が代表になって行き、外務省の大使がまたこれを補佐する、こういう形の方がよいのじゃないか。私も農林大臣と常に緊密に協議して、もちろん外務省としての見方というものを十分話し合って、また、私ども農林省の見方を聞いてやっていく、この形が現在ではやはり一番いい。未来永劫これがいいかということになりますと、これはその時点において最も妥当だと思われる方法があるわけでございましょうけれども、この時点ではこれが一番よくないか、こう思っておるわけであります。
  21. 石山權作

    石山委員 大臣が十一時に参議院においでになるというので、いろいろまだ聞きたいことがございますが、とりあえず新しいところでは、十七日の午後四時、米国大使とお会いになりまして、例の綿製品の賦課の問題について政府意思を伝えたようですが、その場合の状態を、一つどういう御返事をもらっているのか、補足説明としてあなたはどういうふうな説明を申し上げたか、この点をまず一つ聞いておきたいと思います。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この綿製品の賦課金問題については、われわれ、この問題が起きて以来、ずっと強い反対の態度をとってきておるわけであります。本院におきましても、そういう御決議をいただきまして、その趣旨も先方に伝えております。この公聴会が一応最終段階になって参りまして、そろそろ公聴会としての結論、また従って、政府としての結論というものも、だんだん時期が近づいてきたわけであります。そこで、この機会に、さらにもう一歩強くわれわれの意思を表明しておきたいというので、書きものにしまして、強く国民の要望を先方に伝達したわけであります。大使としましては、この御希望をそのまま政府に取り次ぎますと、こういうことでございます。
  23. 石山權作

    石山委員 それからもう一つお聞きしたいことは、たとえばガリオア・エロアを、われわれは今度は年次計画で支払うことになったわけですが、同時にそれとからんで、極東の南ベトナムあたりは非常に困難な様相を呈して、アメリカはかなりこれに対して意欲的にこの紛争解決に乗り出そうとしておるようですが、これらを通じてみて、バイ・アメリカンというふうな考え方が薄れてきているのではないか、こう思って私どもは見ているわけですが、あなたは米国大使にお会いになったときは、こういうふうな経済問題については、そこまでお話し合いはなさらぬですか。それからまた、外務省としてながめてみた場合、このバイ・アメリカンということが、少しずつであろうとも、今後ゆるんでいくのではないか、そこに日本経済の明るさがあるのではないかというふうな見方が出てきておりませんか。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 バイ・アメリカンに関連いたしまして、いわゆるAIDによるところの買付が全部米品優先ということで、日本が締め出されるという事例が、昨年後半期から本年初頭にかけてあったわけであります。私ども先方の要人を呼んだり、あるいは来た際に話したりいたしまして、ことにハミルトンAID長官が参りましたときに、強くこの問題を話をいたしました。また、国務省内でも非常に力のあるハリマン次官補、この方にもこういう話をいろいろしたわけであります。その結果と思いますが、先方もいろいろこちらの話を非常に理解を持ったわけでございますが、今度パキスタンの肥料の入札におきまして、これは当初六万トンという予定でございましたけれども、金の関係で五万四千トンになった。そのうち四万五千五百トンというものは、日本品が落札した。これは一回入札したのを、われわれの抗議によって入札し直しまして、そして日本品が四万五千五百トン、アメリカ品が八千五百トンということになったわけであります。今のAIDができてから——昨年六月にできましたわけですが、それ以来とった方針が若干修正されてきておるような格好になったわけです。これが一時的なことでないように、どうかこれを方針として取り入れてもらうように、われわれは引き続き努力しておるわけです。少なくともアジアに関する日本の協力というものが非常に必要であるし、これはまた日本自身のためにも必要だということで、アメリカ側はこの点非常に理解を深めてきておる、かように思っております。
  25. 石山權作

    石山委員 経済協力局というふうになると、経済をほんとうに取り扱う局になりそうですが、韓国に代表をお出しになった場合、大阪の商工会議所の会頭ですか、杉さんというふうに民間人を登用されておるようですが、この局長さんはどうですか、民間人登用というふうなことが構想の中に入っておりませんか。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ここにおります外務省経済力部長を局長にしたいというふうに現在考えております。
  27. 石山權作

    石山委員 部長さんが昇格するわけですか。それはそれとして、私は、世間一般に通用しているような、国民外交というふうな平らな意味で言うのではなくて、経済というものは、やはり苦労をしないと、経済の本質というものはなかなかっかみにくいものなんですよ。お役人の場合なかなか苦労はしておらぬですね。苦労をしない者が経済を論ずるというのは、非常に危険性がある。それは実態をつかんでいないということですね。世界の経済学者がいろいろなことを言っておるけれども、なかなかその通りに動いていかぬということでしょう。日本の企画庁でいろいろ計算を立ててやるけれども、春立てたものが四半期でくずれていくというふうな現状、これは苦労をしていないからだ。経済同友会等でいろいろ経済の問題を論議しているが、これも間違う。間違うけれども政府経済企画庁でお作りになったものとはだいぶ違って当たっている。ですから、経済に関する限りは、やはり長い間の苦労をして生まれた、修練からくるところの勘というものが働かなければ、経済というやつは動かぬですよ。ですから、そういう意味では、大臣が考えているように大体まとまっているとすれば、あえて異議を申し立てないのだけれども経済というものを考える場合には、そういう必要があるのではないだろうかということです。  それからもう一つ大臣お考えを願っておきたい点は、いわゆる外交というものを私たちが考えてみる場合に、日本外交の場合は、先ほど戦前のことを私は悪口を言いましたけれども、終戦後は一生懸命努力しておるようです。努力をしておるようですが、これが技術的な努力に終わっているように見えてならないのです。それはそうではないというふうにいろいろ言っているかもしれませんけれども、もっと国民の気持、血の通うたいわゆる声というものが外交に反映しなければならぬのではないか。ということは、国民の、たとえばわれわれ社会党を中心にした有権者は一千万票あるわけですね。この人たちの声というものが、やはり外交のどこかに現われてこなければならぬと思うのです。その現われ方はどうかというと、もっと積極的に共産圏と外交をやることだと思う。まだその時期でないという政治判断があれば、それはさておきますが、交渉しないということが、即お隣の、いわゆる持てる資源を研究しないとか、お隣の国の成長発展というものまで検討しないとかいうふうなところまで後退をしているのでは、私はこれは大へんな問題だと思うのです。たとえば今われわれは、中国と表向きには交渉しない、こういうことになっている。外務省としては、十分にお隣の中国に対して御研究なさっている体形が省内にありますか。何を研究題目になさっていられるか、そういう点も一つ聞きたいと思うのです。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国民の声が外交に反映しなければならぬ、これは当然でございまして、私ども大いにそういうことに努めておるつもりでございます。ただ、外交というものは、相当タイミングが重要な問題でございます。従って、言っていい時期と悪い時期があるわけです。従って、いろいろなことをいたしましても、こういうことをやっているぞということを、大体十やったら九は言わない方が多いわけであります。従って、それがいずれ、雨が地の中へにじみ込むようにその効果が現われてくる、現われてくるときにはどなたかのお手柄になる、それで私はけっこうだと思うのです。そういうつもりで外交をやっておる気持でおるのでございます。  それから中国本土、大陸の問題につきましても、もちろん私ども研究はやっておるつもりであります。これはどこに比べても、外務省の研究というものは非常にすぐれたものだと思っております。どこでどういうことをやっているかということになりますと、これはなかなかリパーカッションがあるわけでありまして、こういう席では——あらためて他の席で申し上げたいと思います。
  29. 石山權作

    石山委員 研究なさっているということはよくわかりました。  それで、いわゆる時期判断の判定によって国交を回復する、友好条約を結ぶ、その場合に、こっちでどうもあまり向こうの方の国のことを知らぬというのでは、これはいかぬのではないかと思う。友好条約、平和条約等を結ぶだけの準備が、いつでも十分整えられていなければならぬと私は思うのですが、どうも共産圏は相手にせず、こういう建前が優先してしまって、そのことにみんななびいてしまって、研究を怠っているようであれば、これは日本外交にとって百年の失敗になると思うのです。アメリカ外交を中心にしてやっていく、自由主義諸国をば中心にして政治経済をやっていくという自民党の政策は、それはそれでいいでしょう。それでいいでしょうけれども、それのみが日本の国民全般でないということを私は申し上げている。一千万の有権者は、それだけではいかぬじゃないかという強い要求をしているわけなんです。その要求にこたえるべく、表面に現われてこなくても、内部に熟すような工夫を外務省の中で、外交の中でやはり含んでいなければならぬと私は思う。それをやっているというのですか。そういうふうに私が理解してもかまわぬと思うが、もう一ぺん……。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の方の方針といたしまして、共産圏とももちろん仲よくやっていくという考えでいるわけです。ただ、分裂国家の場合には、いろいろ影響するところが微妙でございますので、そういう点についてはきわめて慎重に考えていかなければならぬ、こういうことでございますが、御心配のような点、すなわち、現在国交がない国についても、その国の状態について十分研究をし、また、そのときどきに応じて、いかなる考え方も、手も打てる、こういうふうな研究をしているかということでございますれば、私どもは自信を持って、しておりますとお答えいたします。
  31. 石山權作

    石山委員 時間がないようですから、一つだけ大臣がお立ちになる前に伺っておきますが、韓国との交渉が、今の場合中止されたような形ですが、これは政治的に見れば、あなたの方は中止した方が、ガリオア・エロア、タイ特別円の法案を通すには便利だったということもあろうと思うけれども、難関は何でございましょうか。あの問題と一緒に、二カ月ぐらいも前にもう交渉は決裂しなければならぬのが、後退に後退を重ねて、今日では中絶状態になっているようですが、その大きな原因は一体どこにあったでしょうか。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そのものずばりで申し上げますと、いろいろな難関がございますわけですが、やはり韓国というものが、現在三十八度から南にしか支配権が及んでいないわけです。ところが、全体の朝鮮を代表する支配権を持っておる政府として問題を妥結させようという考えが先方にありますと、なかなか私どもとしてはよく考えなくてはならない、これが根本でございましょうと思います。
  33. 石山權作

    石山委員 何か一説によりますと、向こうの財産請求権等の問題があまりにかけ隔たっているということと、もう一つは、韓国の政治がいささか片寄り過ぎてきて、どうも危険性がある、こういうふうなことがからみ合っていると思うのですが、そういう点に関しては、大臣の答弁は私の考えておることからそれたような感じを受けるのですが、もう一ぺん御答弁していただきたいのです。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いろいろな点があると申し上げているわけです。いわゆる請求権につきましても、われわれとしては、日本は韓国に賠償を払うという関係にはないわけです。請求権というものは賠償じゃない。また、日本の在韓の財産というものは、軍令三十三号というものによって没収されているわけです。日本はその効力を平和条約によって認めているわけです。これが韓国に譲渡されておるわけですね。そういう関係についても、双方のそれをどう見るかという見方が相当に違うということになれば、われわれはやはりわれわれの立場として、日本国民の気持に沿うた主張をして、その上で会談を妥結しなければいかぬというふうに思うわけです。そういう点について双方の理解は、歩み寄りにはまだまだ少し距離がある、こう率直に申し上げるわけです。
  35. 石山權作

    石山委員 見込みはあるということになりますか。外交には相手があることだから、予定を立てにくいということだろうけれども、やはり大よそのめどというものは——これはサケ、マスと違って季節がないから、のんびりかかってやれといえばそれまでの話ですけれども、このあとで、あなたがおいでにならなくても、私官房長にお聞きしようと思っておったのですが、のんびりかかって、日本の民間経済がどんどん入っていく、西ドイツその他の国々も来る、こういうせり合いの中においてどういうふうに処理するかということは、やはり正規な外交問題ができ上がらないと進まぬわけでしょう。ですから、のんびりやっていられるのもけっこうだ、相手が言えばおれもこうだ、強く押せばこっちも引っ込んで、また機会を見る、こういう技術もけっこうだろうと思いますけれども、めどを立てながらやはり進んでいられると思うのですが、そのめどはいつごろでございましょう。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは先ほどの話もあったように、私ども日本国民の気持というものをやはり十分考えていかなければならぬ。従って、政府だけでめどを立てるということもいかがかとも思っておるわけです。この点については、十分国民各界の気持というものを私ども察知いたしまして、早からずおそからず——できるだけ早いにこしたことはないと思います。とにかく隣の非常に近い国なのでございますからというふうには考えておりますけれども、こちらからしゃにむにめどをつけてそれに突進するということも、問題は、いかなる内容で国交回復をする条件をきめるかということになろうと思いますので、めどといっても、なかなか一口に言いにくいことかと思っております。
  37. 石山權作

    石山委員 ではこれだけ一つで終わりますが、私がめどと言うことは、そのめどが立たぬとすれば、韓国の朴政権が安定しているようで安定していない。それにもかかわらず、日本の民間経済方々が積極的にぐんと進んでいっている。そうすると、このめどというものは、民間の経済方々の行き過ぎなるものを押えなければならぬということだと思うのです。私は皆さんの方でやるいわゆる正規な外交のめどが立たぬとするならば、民間の経済外交がどんどん進んでいろいろな契約をなさるということを押えなければならぬ。これは押えて置かないと、また自民党政府では、この欠損を取り上げて国民の税金で支払うということになりますよ。インドネシアの前例がありますから、われわれとしては非常に危険に感じておるわけです。正規の外交はいつかわからない、民間の経済外交は野放しだ、欠損したらそれは国民が払うのだという格好になるのだ。それでは困りますから、皆さんの方でめどが立たぬというならば、朴さんと大へんに親しい人が中心になって進められている保税加工の問題などは、かなり忠告というか、勧告というか、注意を促すというか、そういうふうなことをとられぬと、既成事実ができてしまって、政変があったりすると、これは大恐慌を受けるという格好にならざるを得ないと思うのですが、そこらあたりの調整はどういうふうになさっておるのですか。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民間資本というものは、非常に鋭敏でございまして、危険があると思えば入っていかないというのが、資本の持っている先天的な性格じゃないかと思うのです。お話しの湯川構想といいますか、そういうものが一時新聞その他の面を非常ににぎわした時期もございましたけれども、現在まで実を結んでいるものは一件もない。役所に申請その他が出てきたものは一件もないようであります。従いまして、御心配のような点はないと思います。
  39. 石山權作

    石山委員 それじゃ、正規な外交が結ばれない以前の商行為等について、損害があっても政府は補償しない、こういう言明ができるわけですか。それも当てにならぬ、地主賠償みたいなものだから、あなたの方の閣議というものは当てにならぬけれども、当委員会としては、一応聞いて速記録にとどめておかなければならぬ。だから答弁をいただきたい。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まあ、こういう問題は、そのときの事情によるということを言わざるを得ないと思うのでありますが、さっき申し上げたように、政府が補償すべきような事例が今までは現われていない、こういうことでございます。ですから、今後もあまりあるまいという状況を先ほど申し上げたので、あまり御心配になる必要はないんじゃないですか。
  41. 石山權作

    石山委員 大臣が行く時間でしょうから、私はもう差しとめませんけれども、小坂さんの発言は、まるで日本の二また外交みたいなもので、どっちにもとれるような答弁で、はなはだおもしろくありませんけれども、いずれにしても損害をこうむった場合は、特定の商社の損害というふうには片づけようとしても片づかない場合が多いだろうと思うのです。そしてこれが翻って、国費から特別に半額なりあるいは三分の一なりを補償してあげるという建前を、外交からくる商社等の関係の場合はとるのですね。ですから、私どもは、正規な外交問題が進む前はなるべく押えておく方が、この際政府としては最良の道なのではないか、国民の欠損を少なくするのではないかというふうに思うのですが、その点だけ答弁をいただいたら終わります。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどのお答えで御理解いただけるのじゃないかと思っておりますが、現在までそういうような御心配の案件はございません。今後もなかろうと思っております。これは保険に入りまして、その保険で手当しているという案件はまた別でございますが、今政府が何か奨励して、そのためにどうしても政府としてあとでそのしりをぬぐわなければならぬというような事案は一つもございません。
  43. 緒方孝男

    ○緒方委員 ちょっと関連して、質問させてもらいたいと思うのです。一言だけでいいのですが、これはすみを突っつくような小さななにになりますけれども、この前、政務次官に質問したときに、外務省設置法の第四条の二十六号の関東州とか南洋群島という文字がいまだに入っているのは不自然じゃないかということに対して、政務次官の方からは、早急に検討して訂正しましょうということでしたから、すぐ訂正のお申し出があるだろうと思っていたのです。ところが、もう法案の採決直前にきておりますけれども、何の意思表示もございませんが、このまままだ据え置く方が適当とお考えになっておるのかどうか、その点、一つお伺いしておきたいと思うのです。
  44. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 お答え申し上げます。  先般、設置法に朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島というような地域の名前が出ておる、これは今の時代にはもう時代おくれである、従って、そういうものを包括した新しい名称に変えるべきではないか、こういう御意見だったと思います。これは確かに研究に値する問題である、それで研究するということをお約束したわけでございます。  これは、なぜこういう地域に関する整理事務というのが残っておりますかと申しますと、こういった地域の官公署所属の機関、人員及び帰還職員について、いろいろな法令に基づいて、あるいはまたそういう法令に関連して、前歴事項の証明とか恩給計算、諸給与の支給を行なう必要がある場合のいろいろな調査、あるいはそういった地域において取得した学歴とか資格とかいったものについて証明を行なう必要がある、そういった整理事務をやっておるわけでございます。  そこで、いろいろ研究したのでありますが、こういった地域から帰ってこられた方々が、やはり前の地域の名前のある方が何かそういう手がかりを探されるのにも便利じゃないかという考慮もまたございます。それからまたいろいろな法令がございます。国家公務員等退職手当法とか、あるいは恩給法とか、未帰還者留守家族等援護法とかいった関係法令がいろいろございますが、やはり帰還された職員の便利あるいはその方がわかりやすいというようなことで、みなこの名前を残しておるということがわかりましたので、こういった関連で、まだ当分この名前を残しておいた方が、やはり帰ってこられた方のために便利ではないかという結論になりましたので、当分このまま続けさせていただくということをお答え申し上げます。
  45. 緒方孝男

    ○緒方委員 このことも、深くここで追及しようとは思いませんが、少なくとも外務省設置法ということになりますと、諸外国でもやはりその内部規定などにも目を通されやしないか、そういう場合に、あまり自慢にならない文字は何らかの形で早急に整理する方が私は適当ではなかろうかということを申し上げておきます。  もう一つ、外務大臣にお伺いいたしますが、今石山先生の方からいろいろと日韓会談の問題について話されましたが、これもきょう深く討議しようと思いませんが、ただ、先般来、韓国政府の方で、日本政府の会談に対する誠意が疑わしいというような再三にわたっての声明が行なわれてきた。ところが、昨日または一昨日現在の、韓国政府のこの釈明か何かわかりませんが、参議院選挙を前に控えての日本政府としては、早急に政治会談を開いて具体的な解決策をはかることは、内部的には困難であろうから、その事情をわれわれは了解しなければならないというふうな論説が、韓国の方から行なわれております。このことをわれわれは憶測いたしますと、今、日韓会談の焦点になっておる対日財産請求権の問題について、八億ドルと一億ドルとの開きの上に交渉が行なわれておるが、これは早晩双方の大幅な譲歩がなければ会談の成立にいかない。ところが、日本政府側から大幅な譲歩を行なう場合には、国会の開会中並びに参議院選挙前にそういう事態になるとするならば、再び国民世論の非難を受けるから、参議院の選挙が終わってから大幅な譲歩を行なうような会談が進むのではなかろうか、そういう時期をおのずからほのめかしたのではなかろうか、こう憶測される点がございます。この点についての私の憶測は当たっておるのか、当たっておらないのか、外務大臣はあくまでも日本立場に立って、不当な請求権には絶対に応じないという基本的な態度が堅持できるのかどうか、その点についての御説明を一曹お願いしておきたい。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 会談をいたします場合に、双方の主張が食い違ったからといって、相手方が誠意がないというのはおかしな議論だと私は思っております。また、韓国側の新聞にどういうことが出ていたか、私は存じませんけれども、今御質問のようなことは私の腹にはない。向こうが勝手に考えるのは、これは随意ですけれども、私どもは全然考えておりませんし、それから金額の点についても言っておりましたようですが、そんなことは私は言った覚えはありません。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 私は、一言だけ、今度の外務省設置法の改正の最重点である、外交政策上の経済協力を推進するため、経済協力部を経済協力局に昇格するという、この目的を果たすことについて、関連する問題をお尋ねしてみたいと思います。これは一言だけです。  一昨日の報道機関によって報道されたことの中に、アラスカのシェリコフ海峡におきまして、日本漁船がアメリカのアラスカ州政府の当局によって拿捕された、こういう事件が起こった。これは、一体その後どういうふうな形で処理されておるのか。この問題は、日米間のいわゆる経済協力関係に重大な影響のある漁業協定に違反をしたというのでやられたのか、あるいは領海を侵したという事件であるのか、どのような結論を外務省はお出しになっておられるか、お答えを願いたいと思います。
  48. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題は、シェリコフ海峡そのものは、アラスカ州政府によって伝統的に内海であるという、こういう解釈のようでありますけれども、私どもはそうではないというふうに思っておるわけです。問題は、その領海を侵したかどうか、第五鵬丸というのが拿捕されたその場所が、一体領海内であるのか外であるのか、事実の確認が問題であるということで、この確認を取り急いでおるわけでございます。それから第三十一播州丸、この母船でございますが、この母船の船長が許可なくして漁具を携行したというかどで裁判に付せられるということでございますが、この点も、事実が問題でございますから、事実の確認を急いでおる、こういうことであります。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 確認を急いでおるということでございまするが、米政府日本政府間において何らかの交渉がされておるのかどうか、そのことと、また、報道機関によると、このシェリコフ海峡から特にコディアク島の周辺はカニの豊漁を見るところである、この地域に対して、ニシン漁業を旗じるしとしてくる日本漁船が、同時にカニの漁場を荒らすのではないかという、日本の漁場拡張についての何らかの阻止措置をとらなければならぬということで、ちょうどいわゆる李ラインのような形で一線を引いて、日本漁業者の進出を阻止するという政策的なものが行なわれておるのではないかという報道がされているわけです。こういうことになると、非常に重大な問題になると思う。アメリカ自身が李ラインを引く、そういう危険をわれわれは感ぜざるを得ないのでございますが、外務大臣、この問題はどういうふうに御判断されておるか。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう問題は私どもまだ承知しておりません。問題は、今申し上げたように、コディアク島の非常に近い場所、すなわち、湾が幾つもあるのですが、この湾の中に入って漁撈したかどうか、これはやはり領海の問題になるわけでございます。これは、その場所の確認が問題だ、こういうことでいるわけであります。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 報道機関によって報道されている事柄の中に、アラスカ州当局の、あるいは漁業当局者の強い危惧が、そこにひそめられておるという説がここへ堂々と掲げられているわけです。このことは無視できない説であると思うのです。向こうの責任ある当局者の談話であるということになると、これは大臣お読みになっておられると思うのですが、かりそめにできることじゃないと思うのです。日本漁業進出を阻止するからには、アメリカでさえも李ラインを引く、こういう危険があるわけです。これに対してはっきりした信念で処置されたのかどうか、御答弁を願います。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公海でありますれば、はっきりした信念を持って、これはそういう禁止がないのがあたりまえであるということを言っております。この問題は、今言っているように、領海の中でとったかどうかという問題なんです。その事実を確認しなければならぬ。コディアク島の中の、湾の中に入ったかどうか。シェリコフ海峡そのものは領海じゃないので、これは公海なんです。向こうは伝統的に内水だと言っているそうですけれども、われわれは、それは認められぬ、こういうことを言っているわけです。その他のことは、もっと交渉してみないと、今交渉過程でここでいろんなことを言ってみてもかえってあれでありますから、この程度にさしていただきます。
  53. 受田新吉

    ○受田委員 これで終わります。大臣軽くお考えになっておられるようですが、これは領海の中に入ったか入らぬかという問題のほかに、捕獲事件というものは問題でなくして、むしろ、そうしたわれわれの漁業権を侵されることに対する一つの危惧が、われわれの最も木きい問題だということを言うておるのですから、私、その問題はかりそめに取り扱ってはならないと思うのです。せっかく経済協力局をお作りになろうという段階において、国際機関との関係を密接にしようという御趣旨があるようでございますから、北方漁業が非常な圧迫を受けているこの際、アラスカの州当局、州漁業当局者の方から締め出しを食らうような形の日本の弱体外交であるということで、外務大臣はお勤まりにならぬのでありますから、積極的にしっかりがんばってもらわなければならぬ。よろしゅうございますか。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このニシン漁船がこの地区に入ったのは、本年初めてなんです。従って、この問題は、慎重に扱っていかなければいかぬ。これはあくまでも信念を強くして、そうして事実に基づいて強く交渉する。われわれは、あくまで国際法規というものをたてにとって交渉する、これは当然のことなんです。その前から、こうするんだ、ああするんだと言って、事実を確認しないうちにいろいろ言うことは、かえってみずからを軽んずることだ。決して弱体ではありません。
  55. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  56. 石山權作

    石山委員 私の方では、予定を二日ばかり繰り上げて、外務省の設置法を通す、それほど野党はこの経済協力に対しては協力しているのですよ。だから、うんとやってもらいたいという意思が、その中に含まれているということを十分に御理解していただきたい。  それからもう一つ申し上げたい。これは文書でお願いしたいのですが、南ベトナムに対して、われわれは二百億の賠償を支払った過去を持っている。これは卵三個に二百億払ったという意見まで出て、困難をきわめた賠償問題でございました。これがどういう格好使用されているかということがわかっている限り、文書でけっこうでございますから、その支払い状態、使用されておる状態、これは私どもはいわゆる軍事目的に使われると非常に懸念していたものですから、そういうことを文書でお出しを願いたいということを、委員長からも当局に要望をしていただきたいと思います。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 承知いたしました。
  58. 中島茂喜

    中島委員長 これにて質疑は終了いたしました。     —————————————
  59. 中島茂喜

    中島委員長 本案に対し、草野一郎平君外八名より自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党共同提案による修正案が提出されております。
  60. 中島茂喜

    中島委員長 この際、提出者より本修正案の趣旨説明を求めます。草野一郎平君。
  61. 草野一郎平

    ○草野委員 ただいま議題となりました自民、社会、民社三党共同提案にかかる修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、読み上げることは省略させていただきます。  政府原案では、施行期日は四月一日でありまして、その日はすでに経過いたしておりますので、これを公布の日から施行することに改めるものでありますが、定員に関する改正規定については、四月一日から適用することを適当と認めまして、修正案を提出した次第でございます。よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  62. 中島茂喜

    中島委員長 本修正案について御質疑はございませんか。——質疑もないようでありますので、原案及び修正案を一括して討論に入ります。  別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  外務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  63. 中島茂喜

    中島委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  64. 中島茂喜

    中島委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案の通り可決いたしました。  これにて外務省設置法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 中島茂喜

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  66. 中島茂喜

    中島委員長 次に、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑申し出がありますので、これを許します。田口誠治君。
  67. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 恩給法等の一部を改正する法律案について、改正の内容について御質問をいたしたいと思います。  今度の改正は、大まかに申し上げまして、従来は公務員の一万五千円ベースの俸給額を基準として算定されておったのでございまするが、それが二万四千円ベースの俸給を基準額として算定をし、しかも、これの増額分については、三カ年の計画で全額増給するということになっておるわけでございます。  そこで、御質問を申し上げたいと思いますることは、賃金のベース・アップにいたしましても、物価の上昇率にいたしましても、生活、家計の状況にいたしましても、三カ年たちますると相当ギャップができるわけでございます。それを今度の改正で三年先までのものを改正するということにつきましては、いささかここに物足りないものかあると思うわけです。私どもは、元来、この恩給というものにつきましては、終戦後新しい憲法ができまして、社会保障制度の確立が憲法の中でもはっきりとうたわれておりまするために、社会保障制度の確立ができれば、こういう問題は一切解決できるのじゃないかという考え方を持っておりましたけれども、終戦後十六年を経た今日に至りましても、社会保障制度の確立ということについては非常にほど遠いものがある。しかし、物価は上昇いたしておりまして、金の値打がなくなっておる段階におきましては、この際、この恩給の増額を必要とするということが考えられるわけでございまするが、そういう観点につきまして、なぜ今回一万五千円ベースを基準としたものを二万四千円ベースに引き上げて、三カ年の計画で増額給付をしなければならないのか、この辺のところをはっきりしていただきたいと思うのです。巷間伝うるところによりますると、今年は参議院の選挙がございまするので、恩給を受ける人たちに好意を持たせる一つ方法として、一万五千円から二万四千円までの引き上げを行なって、その陰には三カ年の期限をとって増給するということにいたしている、このことは、参議院選挙との関連があるのだということが言い伝えられておるわけです。従って、こういうことから、私は、今度提案された改正案について、今御質問申し上げました点について明確にしていただきたいと思うわけです。
  68. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 ただいまのお尋ねは、今回の恩給増額措置というものが、三年またがりの計画であるという点の御指摘でございました。この関係のことは、結局、増額措置をいたしますことによりまして、相当巨額な財政負担になるわけでございます。すなわち、今回の措置にいたしましても、平年額といたしましては三百三十億という予算を必要とするわけでございます。本年度予算あるいは来年度予算に、急激にそうした恩給費の増額を見るということは、相当困難な次第でございます。そういうような観点からいたしまして、この三カ年内になしくずしにと申しますか、できるだけ財政負担の面で恩給費の上がり方というものが急激に増加しないよう、かたがた一方におきましては、恩給費が減少していくという要素もかみ合わせまして、そうした将来に対する財政を見通した現在の時点に立って、将来の財政を見通しながら無理のないようにしようということで、三十九年の半ばに完全実施になる、こういう計画で進んで参ったわけでございます。この増額措置につきましては、将来の問題として、さらにいろいろ諸物価が上がり、また生計費が上がり、公務員給与も上がる、こういうようないろいろな経済上の変化というものがございますれば、またその時点に立ちましていろいろ考え、総合的に判断を下さなければならないという問題が出て参ると思いますけれども、現在の時点におきましては、そういうようなことで、総合的に検討いたしました上で、三カ年計画を実施したい、こういうことでございます。  なお、このベース・アップの措置が、何らか参議院選挙の関係であるとかなんとかいうにおいがありはしないかというお尋ねでございましたけれども、これはわれわれ側で今まで恩給につきまして従来ベース・アップをやって参りましたことは、その恩給受給者の年金額の購買力というものをそのときどきにおける経済情勢に見合わせるという努力を今までもやってきたわけでございまして、昭和三十三年に一万二千円ベースから一万五千円ベースに上げましてから、その後数年たって参りました。その間、物価、生計費、あるいは公務員給与も上がって参りましたものですから、そこで、本年度予算からその増額措置をするということをきめたわけでございまして、何らそういった考慮とは無関係でございます。
  69. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 この案をお作りになったときに、昭和三十七年十月一日から全額増給するという考え方の上に立って、大蔵省と折衝されたのか、それとも、初めからこういう計画で二本建の相談大蔵省へなされたのか、この点をはっきりしていただきたい。
  70. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 この問題は、平年額としては三百三十億かかる、これをどうするかという問題で、大蔵省相談したわけでございます。こうした三カ年計画による手法というものは、昭和三十三年度における増額措置案の場合も同じようにとられたという経緯からいたしまして、大蔵省との折衝の経過におきまして、こういうことになった、こういうことでございます。
  71. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それで、今までの恩給法の改正の経緯を見ますと、一般公務員の恩給の場合については、これは今後年金によって消化されていくものでありますから、ある時期になりますと、この恩給を受ける人が結局なくなりますし、今後公務員の場合には、年金というような方向へ移行されて消化されていくわけですが、ただ、旧軍人の遺家族、こういう方々に対しての恩給の場合には、これはまだ相当今後年限を経るわけなんです。そこで、昭和二十八年に、一時停止されておった軍人恩給が復活されましたときに、たしか一万円のベースを基準に算定されたと思うのですが、そのときの公務員の賃金は一万三千五百八十七円ベースということになっております。それから三十年に今度は一万二千円のベースを基準に算定するということに改正になったのですが、その経過を申しますれば、三十三年に一万五千円、そして今日の改正、こういう経過をたどっておるのですが、三年後のものを今日きめるということは、今までの経過からいきましても、昭和二十八年には一万円のベースで決定をして、三十年には一万三千円に改定をしておる。   〔委員長退席、草野委員長代理着席〕 こういうことでございますから、昭和三十七年に改定をして三十九年までかかって増額給付するということになりますると、結局その時期には、また増額の改正をしなければならないような時期が回ってくるのではないかと思うのです。そういうことから、私は、今度の改正は、財源は相当かかりまするけれども、三十七年十月一日から改正案通り全額給付されるというのが正しいあり方であって、三年後にはまた新しい改正をいたさなければならないと思うのです。この点については、恩給の増額改正をされた金額と、それから公務員の賃金のベース・アップの比率と比較してみますると、そういうことが判断できるわけなんです。こういうことについては何らお考えにならなかったのですか。
  72. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 昭和三十九年あるいは四十年になったときに、公務員給与が一体どうなるか、その方の問題はこれから先の問題でありまして、見通しがつかないわけでございます。現在の時点において考えられることは、今までの、三十三年からその後における公務員給与の上がり方なり、現時点までの生計費の上がり方というものだけしかわかっておらないので、将来の問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、いろいろ経済事情も変わってくるということになりますれば、その時点においてしかるべくまた見直しをしてくるということが出てくるかと思っております。
  73. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そうしますと、現時点においては物価の上昇がない、貨幣価値の変動がないというお考えの上に立って、昭和三十九年の七月一日までに消化するということにおきめになったのですか。
  74. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 今年度から発足するわけでございますが、その後における公務員給与の改善等の措置がどんどんと進行してくる、あるいは生計費の上昇も高いという問題が出て参りますれば、このままでは済まないという問題も出てくるのではないか、こう思っております。
  75. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それは御回答の通り、そういうことにはなるのですけれども、私は、この案をお作りになるときに、当然三年先のことはおおよそ推定をして算定をされなければならないと思うのです。それで、ただいまお答えの経過からいきますると、三十七年十月一日には半額だ、それから三十九年七月一日から全額だ、こういうことになっておりまするので、私は、三十九年の七月一日まではこの二万四千円ベースを基準としての算出で足りるのだというお考えが、どういうところから出たかということを知りたいと思うのです。これは単なる改定を行なう場合の一つの算定資料としても、おそらくそういう点を十分に勘案されたと思うのですが、先ほども申しましたように、この恩給の改定金額の上昇と、公務員の賃金のベース・アップの額とが、大体並行してきておるのです。ところが、今度五年目に改正をされたところのこの改正案は、三十七年に一万五千円が二万四千円の基準で算定するのだという、見たところは大へんいいのですけれども、実際の実施は半額ということなんです。そうしますると、今日では二万五千百七十円ベースになっておりまするが、これは昨年の勧告によるところの給与改定が二万五千百七十円ベースであって、おそらく三十七年ベに人事院からどれだけかの勧告があって、また改正されると思うのです。おそらくこれに二千円なり三千円なりというものがプラスされると思うのですが、そうなりますると、今度の改正は、従来の改正と異なって、公務員の賃金ベースと恩給の算定基礎のこの開きが、今度出たときには非常に大きいわけなんです。言いかえれば、非常に上昇率が悪いわけなんです。だから、これは単なる国の財政ということに頭を置いてお作りになったのか、実際において貨幣価値がなくなったということから、生活に窮しておる実態に即してこの引き上げをなされたのか、その点のところが全くわからないので、こういう点をやはり明確にしていただきたいということなんです。
  76. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 なぜ初め半額でスタートし、三十九年の七月になって初めて満額にするか、三カ年になしくずしにやるようにしたかということは、これはやはり全体の財政需要という中で、何を先にするかという優先順位をつけ、緩急の順序をつけただけのことでございまして、理想からいえば、平年額そのものがずばりと単年ごとに実施されるということが望ましいわけなんでございます。しかしながら、諸般の事情を考えて、こういうふうな三カ年計画で漸進的に進む。この二分の一にしたことが、そのときにおける物価水準にちょうど見合うのだとか、そういうことではないわけであります。
  77. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私のお聞きしようとする点にそのままお答えがないので、なおお聞きをしたいのですが、今までの改正は、これは公務員給料と比較いたしますると、一万円の場合には、公務員は一万三千五百八十七円だった。それから一万二千円のときは一万五千六百六十八円であった。それから一万五千円の場合には一万九千三百九十円であった。それで今度は、昭和三十七年にはおそらく二千円から三千円のベース・アップと推定いたしますると、二万七、八千円になるわけなんですが、これに対して、一万九千どれだけということになるわけですね。そうしますと、比率が今年の場合には非常に下がってきておるわけなんです。公務員給与——公務員給与というのは、これはやはりそのときそのときの物価の上昇率、貨幣価値のなくなったという面から、この賃金のベース・アップというものはなされておるのですが、そういうことから考えていきますると、大体公務員給与にならった引き上げを行なわなければならないのですけれども、今回だけは大きく開いておるということなんです。従って、この点が私は腹に入らぬということなんです。今年この改正をされた場合には、財政措置がどの程度許されるかということをまずきめて、逆算してこの金額になされたのだろうと思うのですが、こういうことになりますると、実際的に社会保障という一つの要素が大きく含まってきておるこの恩給に対しましては、これは時代の推移に逆行することになるわけで、こういう点について、私は、この支給という面については、努めて三十七年の十月一日から全額ということが望ましいと思うのですが、こういうことは絶対にむずかしいものですか、どうなんですか。これは三百三十億とか金額は出されておりますが、金額はどうなろうとも、やはり公務員の賃金をきめる場合には、民間賃金との格差を考えたり、物価指数を考えたりして、賃金の上昇額をきめるわけなんですから、生活の裏づけになるところの恩給につきましても、そういう点を無視しては考えられないわけなんです。従って、今年の場合には、生活実態ということについては無視されて、ただ国の予算というところに頭を置いて改正されたというように判断できるわけなんですが、真実を申し上げると、そういうことになるのじゃないですか。
  78. 小平久雄

    ○小平政府委員 その点、昨日も御説明申し上げたのでありましたが、恩給のベースをどうしていくか、こういう問題だと思います。今回の改正も、決して国家財政の面だけからきめたものではありません。もちろん、国家財政の面も非常に大きな考慮の要素ではありましたが、それだけではございません。先生のお話しのように、物価の関係、生活水準の関係、それらも当然総合的に考えなければなりませんし、あるいは国民の一般の感情等も考え合わせなければなりません。要するに、それらのものを総合的に判断をいたして、今回の処置をとることにいたしたのであります。公務員給与ベースが上がるということ、これまた確かに恩給のベース改定の一つの大きな理由である、こう申し上げることができると思うのであります。また、ただいまお話しの通り公務員給与が民間の給与との比較において、また、民間の給与そのものは、やはり物価の動向と見合って、こういったような工合に、間接的には物価なり生活水準なりと、これまた非常に関係のあることも事実であります。いずれにいたしましても、そういうものを総合的に判断をして、今回程度の改定がまず妥当であろう、こういう結論に至ったわけであります。こういうように御了解いただきたいと思います。
  79. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 妥当であろうと思われるという答弁ですけれども、妥当でないわけなんです。これは国民感情がどうであろうと、理論的に筋が通っておれば、私はそれは通るものだと思うのです。それが理論的に筋が通っておらぬから、巷間いろいろなことをいわれておるわけなんです。従って、私はなおここで邪推されることは、今、各種年金の給付率の引き上げをそれぞれ運動されておるのですが、この恩給法の改正によるところの率の引き上げによって、この各種年金の給付率の引き上げに、何か影響があるというようなことも考慮されておるのじゃないかと思うのですが、こういう点についてはどうですか。
  80. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給のベース・アップという問題は、恩給自体の問題、恩給受給者の処遇をどうするかということでございまして、ほかの関係がどうなろうということとは別個の問題でございます。ただ、まあ、これに関連いたしまして、それを担当しておるその部局におきましては、こちらの方の関係を見ていくということになろうと思うのですけれども、私どもの方から積極的にそちらに遠慮するというようなことはございません。
  81. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そういう答弁をされておりますけれども、実際的には、先日本会議で決定になりました援護法——援護法というのは、今度の恩給法の改正の引き上げ率を勘案してあの率というものは引き上げられておるわけなんです。こういう点からいきますると、恩給法の引き上げ率というものは、一つの基準になるわけなんでありますから、私は、各種年金の給付率の引き上げということにも関連があるから、大蔵省としてはこれを三年先に全額増給するということになったと思うのですが、そういう事実があるわけなんで、ただいまのお答えの通りには私は受け取れぬのです。くどいようですけれども、三年先のことを今決定しなければならぬという理由はありません。今年は今年の場合を決定すればいいし、そうしてまた、二年なり三年先になって増額の必要があれば改正をすればいいわけなんですから、今年昭和三十九年までのものを決定して、しかも、増額決定はいたしても増給をしないという、こういう法律の出し方は私は間違っておると思いますし、恩給を受けられる方々の生活実態を勘案してこの増給額を決定されたものではない、こういうように判断ができるわけなんですが、なお突っ込んでその点をお聞きするわけなんですから、もう少し理論的に筋の通る回答を願いたいと思います。
  82. 小平久雄

    ○小平政府委員 先生は理論的に筋の通ると申しますが、筋が通るか通らぬかというのは、お立場によって、考え方によって違うのでありまして、私どもは、今回の改正は、やはり理論的にも、あるいは筋の点からも妥当ではないか、かように考えておるのであります。  それから、三年先に実現するのを今からきめるのはおかしいじゃないか、こういった御指摘でございますが、前回の改定の際にも、ちょうど今回と同じような実施方法をやっておりますし、また、受給者の立場から申しましても、たとい三年先であっても、三年先にはこうなるのだということがやはり明らかになっておる方が、将来明るい期待も持てるわけでございまして、そういう面から考えますならば、三年先のことをきめておくこともあながち意義のないことではない、これは受給者に明るい期待をはっきりと国が約束するわけですから、むしろ好ましいことではないか、さようにわれわれは考えておるわけであります。
  83. 内田常雄

    ○内田委員 関連して。今、田口君がお尋ねになっている三年間の段階的の実施のことにつきまして、今度の法律の構成で一つ手抜かりがあるのではないかとも思われる点をお尋ねしたいのです。  それは、三年実施でありますけれども、重傷の傷痍軍人につきましては、法律では本年から完全実施になっております。そうすると、これは、傷痍軍人を優遇すること、もとよりけっこうでありまして、たとえば遺族の扶助料のように段階的の実施に傷痍軍人を引き戻せということではありませんが、遺族の扶助料についても、私は、さらにこれを段階実施のあり方として改善する道はないかと思う点があります。たとえば三年実施といいますけれども、老齢者については、たとえば七十才以上の受給者については、来年の七月ですか、十月ですか、全額実施していく、二年実施という方法をとっておられるのでありますから、老齢者については、この三年実施かなり縮まっている面があります。ところが、未亡人については、ことしの十月から半額実施、来年は一年間を通じて半額実施で、再来年の途中から全額実施ということになっておりますから、未亡人であられる遺族扶助料の受給者は、全額実施までにはかなり待たなければならぬ。そこで、未亡人については来年から全額実施にするようなことを、来年またこの一部改正法を出されてやったらどうか。おそらく田口君のお気持も、またわが党の委員のお気持も、そこにあるのじゃないかと思いますが、なぜ一体未亡人については傷痍軍人と同じような扱いをしてはならぬのか。これは、遺族扶助料の受給者がおそらく百五、六十万人でありましょうか、そのうち、未亡人の方々はおそらく三十万人くらいだろうと思います。老人はもちろん老い先が長くないから、なるべく早く優遇する趣旨はわかりますが、未亡人については、現在ほんとうに生活上、峠に差しかかっておる。なぜならば、お子さん方が、すでに終戦後十七年たちまして、だんだん二十才に近づいてきまして、子女加給がもらえなくなってきておる人が非常に多くなっておるのであります。でありますから、今度の恩給法による処遇是正で、確かに三六%上がるのはあるけれども、人によっては子女加給が落ちているという点がずいぶん出ておる。そういう点からもっと考えてやっていいのではないかという点、それから年令的には、これはあなたの方がお調べになっておられます遺族の平均年令が四十九才くらいだと承っておりますが、いわば更年期にもなるわけで、いろいろな社会的の苦痛も加わっておる、また、さきの子女加給に関連して、子女の結婚とか、入学とか、その方面で一番お金の要る、ちょうどきわどい、むずかしいところに差しかかってきておるから、今度の改正を百尺竿頭一歩を進めて、ここでさらに修正できれば一番いいがそれは不可能でありましょう。私はいろいろな事情を知っておりますが、せめて来年の途中から、未亡人についてはさらに繰り上げ増額、完全実施という方向で考えられないものかどうかということをお尋ねいたしたい。
  84. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 三カ年の実施案の中で、いろいろのことを考えたわけでございますが、その中でも、老齢者につきましては、平均余命がだんだんと減ってきておるわけですから、そういう方々については一日も早くという声がありますので、そこで七十才以上の方々につきましては、三十八年度の予算で十月から実施するというふうに一部したわけでございます。そのときの考え方といたしましても、国民年金の併給というようなことが一つ頭にあったことも、この七十才以上を完全実施するという点を早めるという結論に至った一つの原因だと思います。もう一つは、この予算の各年度割りを考えました場合に、七十才以上という方々の数は割合少ないものですから、それをこういうふうに変更いたしましても、そう予算に大きな変動はないというような観点から、そういうふうに、七十才以上の方々につきまして来年の十月からということにしたわけでございます。お話の点は、確かに今後の研究問題ではあると思いますけれども、母子と申しますか、未亡人の方の人員数からいきましても、約三十万くらいの人員になっておるわけでありまして、相当な予算にもなるわけでございます。将来の予算編成の際において、また検討すべき問題である、こういうように考えております。
  85. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 今関連質問もございましたが、とにかく七十才以上になっておる方で、ようやく来年の十月から全額引き上げということなんですね。この程度のことは今年から引き上げたとて、これはそんなに予算面に響くものじゃございませんし、私は、一般恩給の場合は別といたしましても、とにかく傷痍軍人の場合とその遺族の場合は、物価の上昇によって非常に困っておられる方があるわけなんです。あなた方は東京にお住みになって、あまり地方のそうした気の毒な方々の実態をお知りにならないから、こういうような理屈の通らぬものを、理屈は通っておるんだというような答弁で提案されておられますけれども、実際において、地方へ行きますと、傷痍人の方と未亡人の方は困っておられるわけなんです。それで、とにかく三年先のものを今決定をして、そうして、金額は決定するけれども、全額支給をするのは三年先だというようなことでは、三年先にはおそらくまたこの金額では足りないものが出てくるのじゃないか。こういうことから、私はどう良心的に考えてみましても、この提案の仕方はおかしい提案であり、巷間に伝えられておるように、参議院選挙の人気取りにやっておるんだと言われても、これは何とも言えないわけです。従って、そういうことから、今自民党からも内田委員が御指摘をされましたように、この法案に対しては、これは出し方に疑義があり、そうして隘路もあるわけでございますから、今後は、この点については理事間でいろいろとお話をされ、また、当局に対してもいろいろ交渉されるような場合もあると思うのでございますけれども、私は、やはりすっきりとした法案にして提出していただきたいということをまずもってお願いしておきたいと思います。強い要望をしておきたいと思います。それで、そういうような要求が三党からなされた場合には、話に応じられる用意か幾分はございますか。
  86. 小平久雄

    ○小平政府委員 私ども政府としては、この案が適当である、こう考えて御提案を申し上げておるわけでありますから、あとは国会の審議を通じてどのように結論を出されましょうとも——ただ問題は、もちろん、これは言うまでもなく予算との関係もございますから、皆さんでその辺も御勘案の上に、慎重に御検討いただきたいと思います。
  87. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 今の御答弁は、三党が修正するのにおいては、まず総務長官の手元では反対をしないが、大蔵省のところでどういうようになるかということだと思いますが、そういう場合には、総務長官は、やはり修正さたれた方の立場で、大蔵省の方へ強力に当たっていただけるものかどうか、これを承っておきたい。
  88. 小平久雄

    ○小平政府委員 それは具体的に話を承らなければ、何とも申し上げかねます。
  89. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 まあ、そういうことで、何と妥当だと言われても、この案は妥当でない。この点は、提案された立場として、妥当でないと思われても妥当だと言うよりしようがないと思うので、きょうはどれだけ突っ込んでみても平行線だと思いますので、この項については終わりたいと思います。  そこで、次にお聞きをいたしたいと思いますことは、将来の問題といたしまして、社会保障制度を大きく取り入れるという面から、恩給そのものに対する考え方が変わってこなければならないと思うのです。これは憲法の精神から言っても、そういう方向へ向けていろいろと検討されなければならないと思うのですが、そういう点については、今までに検討されたことがあるのかどうか、これを承りたいと思うのです。
  90. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給制度は、あくまで国家保障の制度でございまして、社会保障制度という、つまり、国家との使用関係といいますか、公務関係のない方々一般人に対する生活の保護の問題とか、そういうものとは、違っておるわけでございます。しかしながら、増額措置その他いろいろな改善措置をしていきます場合に、限られた財源の中でどういうふうにやったならば一番受給者のためになるかということを考えます場合には、たとえば老齢者を優先にするとか、あるいは未亡人を先にするとか、あるいは重傷病者を先にするとか、そういうような、いわば広い意味での社会政策的な配慮というものが、随所に今まで現われてやって参ったわけでございまして、今後もそういう意味におきまして社会保障をせいと言われるならば、十分社会的必要に応じたところに重点を置くという精神には変わりはございません。
  91. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 一般公務員の恩給の場合は、これは別といたしまして、軍人恩給の場合には、これはいわゆる恩賞という考え方の上に立って、賜わり金という一つの性格を持っておるものなんです。従って、こういう性格のものであるから、占領政策が日本にとられたときに一時停止をされた、こういうことなんでございますから、そういう国のために尽くしたというごほうびに出ておる賜わり金という性格を持っておるものであっても、実際において戦争のために傷を負い、それが一生不治な病気になって、今日まで傷痍軍人として、自分の思うような業にもつけず、また、自宅でも思う仕事ができずにおるような人、そうして一家の柱である亭主を失わさせられた戦争未亡人の場合には、これは単なる一つの恩賞というような性格のものでなしに、賜わり金というような性格のものでなしに、こういう人たちに対しては、社会保障という考え方の上に立って問題を解決していかなくてはならないと思うのです。従って、一般公務員の場合は、やはり今後は年金に切りかえが徐々になされていって、これは消化されていきますが、いわゆる軍人恩給に関係するものは、そうしたことにはならないので、この点については、やはりせんだっても増額を決定しましたあの援護法もあるわけでございますし、そういうような面から解決をしていく方法もあるわけなんで、私は、こうした一切のものは、各種年金を含めて、社会保障制度というものを確立するという考え方の上に立って、一歩でも二歩でも前進した考え方の上に立って、こういう問題を処理していかなければならないと思うので、こういう点について、今お伺いをいたしたようなわけでございます。従って、将来は、ただいまの御答弁では私は不得要領でございますけれども、十分に日本の憲法にのっとっての社会保障制度を確立して、そういう中でこうした問題を消化していくという方向に持っていっていただくことを、この点も強く要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、今後の問題もありますので、参考にお聞きいたしますが、傷痍軍人といわゆる未亡人の方を昭和三十七年の十月一日から全額給付するということになりますと、現在予定されておる財源よりどのくらい多くなるのですか。大まかに判明しているところでけっこうです。
  92. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 詳しい正確なデータを持っておらないのでございますけれども、旧軍人の公務扶助料を受ける者の中で、未亡人の方の数は現在三十五万くらいだと記憶しております。従いまして、その年額五万三千円が七万二千円になり、約二万円上がるわけですが、二万円といたしますれば七十億、そのうち半分がもう織り込み済みであるということになりますれば、あとの三十五億、こういうことになるわけであります。
  93. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それで、これは年々人数は減っていくわけなのですが、ここ数年間でよろしいけれども、大体一年に平均どのくらいずつ対象者が減っていっておりますか。
  94. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 対象者がどのくらい減るかということは、将来の見通しをずっと立てなければならないわけですが、大ざっぱに考えてみまして、現在軍人恩給の中の大宗を占める戦没者遺族という方々が百五十万、現在は百四十数万というような数になっておりますけれども、この方々の中で百万くらいのものが父母でございます。こういう方々は相当年令層が高い。従いまして、この方々の失権率というものは相当高くなっておるわけでありまして、全体の恩給受給者からいって、千分の三十くらいの割合で減っておるわけですから、人間数でのデータはございませんけれども、恩給費の額の面での落ちカーブということから考えて参りますと、大体平年的に二十億前後落ちていく、こういうふうに考えているわけであります。
  95. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 二十億程度減ということは、これは違っておりませんか。正確な数字を言われたのではなくて、大ざっぱな言い方ではあるけれども、私は数字が違っておると思います。これは私の手元で私がいろいろ出したのだから、私もそう自信をもって自分の数字を持っておるわけではありませんけれども、だいぶ山がかかっておるように思うが、どうです。
  96. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 このところの三十七、八、九、四十年度という一覧表を差し上げてあると思いますが、この辺のところまでは、恩給増額措置の三カ年にまたがる計画の基礎になっておる恩給費の推移というものにつきましては、相当加算の実施というようなものが上がってきておりますので、自然減というものはあまり目立っておりません。しかしながら、四十一年くらいのところを見ていただきますと、恩給費の減が前年対比十八億くらいになっております。その後のずっと恒常的なカーブというものは、やはり二十億前後ではなかろうかと、今のところ見ておるわけであります。正確な失権率等をはじきまして、昭和五十年なり六十年なりというものを見通さなければなりませんけれども、ここの数字だけで四十一年ごろの趨勢でみますと、二十億前後というふうに見当つけていいんじゃないかと思います。
  97. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 この点を、これを参考に私はもう一度はじいてみたいと思います。  そこで、将官と兵との関係ですが、昨日受田委員からも質問をされておりましたが、今度の改正案は、将官の場合は、上昇率が率としては少ないのですが、金額の面までいきますと、これはどういうことになるのですか。
  98. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 兵と一番てっぺんの大将というところを比べますと、率は、兵の公務扶助料は三六%上がるに対しまして、大将のところでは二割弱だろうと思うのでありますが、ここに書いてございますように、現在最短年限ではじきまして、二十万五千円が二十五万九千円、約二十六万円ということになりまして、率からいえば、兵の方が確かに高く、大将の方が低いわけでありますが、しかし、その基礎になる俸給の額が高うございますから、従いまして、現われてくる絶対額の増というものはどうしても多くなる、これはやむを得ないと思います。
  99. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そこで、将官の方も兵の方も、やはりあの戦争のために相当犠牲になられたということの点については同じでありますし、そうして未亡人の方も、これは将官の奥さんであっても、兵の奥さんであっても、主人をなくしたということについては同じであり、そして今日の生活の実態からいきましても、生活の入り用についても同じであるわけなんです。従って、私は、ここにこの恩給というものが、社会保障というものの要素を大きく取り入れるか、取り入れないかということの必要が出てくると思うのです。今年は相当思い切ってそういう点を解消するために出されておりますけれども、率の上においてはやはり兵が相当有利でございますけれども金額の面までいきまするとやはりそうではないわけなんで、私は、あくまでも、傷痍軍人にしても、それから未亡人にしても、生活実態というものを勘案して、今後こういう問題を大きく取り扱わなければならない、いわゆる社会保障という性格を大きく取り入れ、その要素を大きく取り入れて取り扱わなければならないと思うので、先ほど来、社会保障という面についてのお考え方をお聞きしたのですけれども、あのお答えでは、そういう点の勘案をするという点がまだ大きく頭の中へ入っておられないように受け取ったわけなんです。こういう点は今後の問題としてやはり十分に考慮をしていただく必要があろうと思うわけです。この点について、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  100. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 兵の公務扶助料は七万二千円であるけれども、大将の公務扶助料は二十六万円になるのではないか、それは三倍以上じゃないか、これはあまり開き過ぎるのじゃないかというふうなお考えかと思うのですが、実は大将の二十六万円の公務扶助料、今度の増額のときには二十六万円になるといたしましても、その基礎となるものは普通扶助料、つまり、十二年以上勤めてなくなれば、普通の恩給の普通扶助料としていくわけなので、二十六万円の中身での十数万円というものが、公務で死のうと死ぬまいと、普通扶助料として当然いくわけなんです。そういたしますと、公務で死んだネットの部分というものは十万円内外のものになるわけで、その公務災害扶助料としての年金額という面からいきますと、兵の七万円と大将の十万円内外の差というものは、非常に縮まってきているわけです。それをしも減らしたらどうか、一律にしたらどうかという御意見もございましょうけれども、これはやはり旧秩序と申しますか、昔のそうした恩給というものが、その者のメリットというものを勘案した制度でございますから、そうしたニュアンスというものはどうしてもつけなければならない。もちろん、いろいろ公務扶助料の倍率なんかをきめます場合には、できるだけ下の方、下級者に厚くという精神でやってきて、今日に至ってきているわけでございますから、そういう差というものは、これはあってしかるべきだと私は考えます。
  101. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 年金にいたしましても、それは年限を勘案するということは、今日の時代においてもあり得ることでございますから、私はその御回答の内容は全部否定はいたしませんが、ただ、将来の問題としてお聞きいたしたいと思いますことは、この年限を勘案するものと、いわゆるあの戦争協力をしたというその恩賞、すなわち、賜わり金という性格のものとを、どの程度に比率を持っていかれようとしておるのか、それで、今日の場合はそういう点をどういうようにお考えになっておられるのか、この点を承わりたいと思うのです。そこまで考えていないならばいないでよろしいのです。
  102. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 お尋ねの点に、あるいは私の答えがまとがはずれているかもしれませんが、結局年功恩給といいますか、一定年限を勤めてもらうところの退職年金なり恩給なりというものの考え方と、それから戦死者、戦傷病者に対する補償、コンペンセーションというものの考え方とは、やはりウエートのかけ方が違っていいんじゃないかというお尋ねじゃないかと思うのですが、そうであるとすれば、私は、そうしたコンペンセーション的なものを重点を置いて考える。戦争犠牲というものが一番つらかったああいう人たちに対して、やはり一般のそういう退職年金とか、そういうものよりも重点的に考えるということは、今までの恩給法の改正のつどやってきたわけでございますし、そういう考え方は当然である、こう考えております。
  103. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ちょっとむずかしい質問になるかもわかりませんけれども、そのお考え方の比率ですね。比率は大体何対何ということになりますか。そうでなかったら、ただ理屈的にそういうような御答弁をされるだけで、今までそうしたことに対して、実際この恩給の金額をはじき出す場合に、何ら考慮されておらずに、ばく然と公務員の賃金との比率から出されたということ、そしてこの段階の改正のたびごとに兵と将官との格差是正という要望があったので、今日こういう改正をされたというばく然たるものであって、それをほんとうに理論的にどうこうというようにはじき出されたものではないと思うのですが、もしそれがわかりますれば、明確にしていただけばまことにりっぱだと思います。
  104. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 一般の退職年金と比べてその率と、こういうおっしゃり方でございますと、なかなかその率というものはむずかしゅうございますけれども、先ほど申し上げました、いわゆるコンペンセーションに類する公務扶助料なり、あるいは傷病恩給の中でも、重病者に対する増加恩給なり、こういうものに対するいろいろ算定の基礎ともなりますところの公務扶助料の率と申しますか、倍率でございますとか、増加恩給は一本の年額でございますけれども、その年額というものと本俸とのバランスの問題等というものは、これは、一般の昔の恩給法あるいは今の共済年金法というものでスタンダードの率というものを相当上回っておる率を適用しておるわけです。具体的に申しますと、現在われわれが公務で死にますと、本俸の四割の年金がつくわけです。ところで、戦没者遺族の場合には、大体本俸の六割という倍率が適用されておるわけであります。厳格に言うと、五九・幾つという結論になると思うのですが、大ざっぱに言って、そういうふうな割のいい率を適用されておるわけであります。また、増加恩給につきましても、一般重度傷病者につきまして、一般公務員の場合には、それが年金であった場合にも本俸の三分の二というふうな標準になっておりますけれども、これを相当高めて、兵の仮定俸給を基礎にいたしますれば、たとえば兵の仮定俸給が九万円、あるいは今度十万八千円、そういうようなベースに考えて参りますと、一項症の基本年金の額にいたしましても二十三万三千円でございますから、その倍以上にもなる、こういうようなことで、一般のスタンダードの例等から比べますと、非常に優遇しておる、こういうことが言えるわけです。そういう率の上で運用しておるということを例証せよとおっしゃるならば、そういうようなことでも申し上げるわけであります。
  105. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 あと、受田委員が昨日の継続質問があるようですから、私はまだありますけれども、時間の面を考えて、もうあと一問で終わりたいと思います。  一般公務員の場合、それから軍人の場合、いわゆる公務ですが、この名前のつけ方と、それから職場のあり方によって、結局いろいろと内容的に考えても変わってきておるわけなんですが、一般公務員の場合の扶助料の場合の考え方と、それから戦争未亡人の場合の考え方、こういう点のウエートというようなものについては、完全に同じとお考えになっておるか、その点も承っておきたいと思う。これは将来の改正のときに参考にいたしたいと思いますので、今度の改正にはちょっと間に合わぬと思いますが……。
  106. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 一般公務員の妻の場合に受ける扶助料、これは普通恩給でありますれば十七年、それから共済でありますれば二十年以上勤めて死んだ場合に、妻の受ける扶助料は退職年金の半額でございます。ところで、公務扶助料の場合、戦死者の未亡人の場合は、先ほど申し上げましたように、その退職年金あるいは普通恩給の半分に対する三倍とかあるいは二倍半、いろいろな率が適用されているわけでございまして、そうした一般退職者の妻が受けるものよりも、率の上では上回っておる、こういうことは申し上げられるわけです。
  107. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そこらのところも、一つの社会保障という性格からいろいろ検討しますと、なお突っ込んで研究をする必要もありますので、将来恩給を取り扱われる当局としては、こういうこまかい点もやはり考えていただいて、改正案を出される場合には、少なくとも理論づけの筋の通ったものを出していただくようにお願いをしておきたいと思います。  時間の関係もありますので、私はこれで質問を終わります。
  108. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 受田新吉君。——先般の受田委員に対する御答弁を総務長官から願います。
  109. 小平久雄

    ○小平政府委員 さきに受田委員から、いわゆる白衣の募金につきまして、その活動の状況とか対策とかがどうなっているか、あるいは取り締まり等どうしているか、さらにまた、就職状況もどうなっているかというようなお尋ねがございました。そのうち、就職状況等につきましては、労働省から後ほど御説明を申し上げることになっておりますので、一般的なことにつきまして、私から御答弁申し上げたいと思います。  その後調べたところによりますと、よく見受けますところのいわゆる白衣の方の街頭募金でありますが、これがはたして傷痍軍人がほんとうにやっているのかどうか、そこらのところも実ははっきりいたしておらないようであります。昭和二十七年当時におきましては、旧傷痍軍人更生資金募集関係の組織がございまして、それらがやっておったようでありますが、現在はこれらの団体の活動もほとんど行なわれておらないようであります。また、国立病院や療養所におきまする戦傷病者関係の滞留者も、ほとんど今日ではなくなっております。戦傷病者に限らず、一般の身体障害者につきましても、募金活動等によって生計を立てるというようなことはなるべくないように、戦傷病者戦没者遺族等援護法の援護の事実のほかに、身体障害者福祉法によりまして、福祉事務所を通じて、身体障害者福祉司あるいは社会福祉主事等による指導を強化いたしておるわけであります。なお、一部には職業化した街頭募金も行なわれているじゃないか、こういわれているわけであります。都道府県の募金条例等により規制も行なわれておりますが、実態に応じまして、更生意欲を高めるよう、身体障害者関係団体との協力のもとに、一そう指導督励していきたい、かように考えております。  なお、取り締まりの点につきましては、一般方々と同じように、軽犯罪法であるとか、道路交通法であるとか、鉄道営業法であるとか、これらの法の適用によりまして取り締まりをいたしているのであります。傷痍軍人と申しますか、白衣の募金だからといって、特にこれを取り締まるといったようなことはいたしておらないわけであります。  これがただいまの大体の状況でございますが、先ほど申しました通り、就職の関係につきましては、労働省から御説明申し上げます。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 傷痍を受けた旧軍人の処遇について、特に就職の便宜を与えることは、生活の根拠を与えるという意味で、きわめて大事だということで、身体障害者雇用促進法の措置がとられているわけですが、五項症以下款症程度の軽度の障害の皆さんは、十分職務に耐え得る力を持っているわけですから、この人々に優先的に生活の根拠を与えることについて、労働省としてどのように努力しておられるかを昨日質問したわけです。その数字等もお示し願いたいと昨日要望してありますので、御答弁を願います。
  111. 木村四郎

    ○木村説明員 身体障害者の雇用につきましては、昭和二十五年七月二十五日に身体障害者雇用促進法が制定せられました。その後われわれ努力しているわけでございますが、もちろん、その中に、戦争によって身体障害者になられた数字も含まっておるわけでございます。われわれの方といたしましては、現在安定所に求職の登録をしている者の数が、法施行以来三月一日現在までに二万五千七百四十七名でございます。原因別に見ますと、戦争によって障害者になられた方が二千二百七十九名、比率にして八・八%ということになっております。   〔草野委員長代理退席、委員長着席〕  全体で一万四千二百八十四名就職しており、そのうち、戦争による障害者の方が千三百十七名で、比率にして九・二%というふうなことになっております。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 それではえらい促進になっていないですが、促進の方法にまずいところがあったのじゃありませんか。
  113. 木村四郎

    ○木村説明員 はなはだおそれ入りますが、御指摘のことは、身体障害者全般の雇用促進のことでございましょうか。戦争による障害者の就職ということだけに限定されることでございましょうか。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 今の御答弁は、両方にまたがっておると思うのです。御答弁に応じた質問ですから……。
  115. 木村四郎

    ○木村説明員 身体障害者の雇用促進法の施行以来の概況を、先生に大体概略御説明いたしたいと存じます。  まず第一番に、法の雇用率の適用の問題でございます。これによりますと、国等の機関につきましては採用計画を作成しなければならない、かようになっております。それにつきましては、国等の機関におきましては、昭和三十九年三月末日までに採用計画を作成いたしまして、採用を予定しておる数が四千四百人でございます。それから一般民間事業所の方、これは雇用率を示して、それに対する努力義務になっておるわけでございますが、百人以上の労働者を雇用している事業所におきましては、今後三十九年三月末までに二万七千人の身体障害者が雇用されるものと見込まれておるわけでございます。もちろん、百人以下のところにつきましても、さらに雇用を促進していくように努力をしていただくようにしておりますので、これらの面も勘案いたしますと、民間の事業所におきましては、三十九年三月末日までに約六万人程度の雇用が見込まれるものと予想いたしまして、安定所におきまして努力しておるわけであります。これが雇用率の適用の問題でございます。  それから第二番目といたしましては、例の適応訓練の問題、これは三十五年度におきましては、二百五十五人につきまして実施いたしました。三十六年度は五百九十八人を実施いたしました。三十七年度においては三十六年度と大体同じ規模で実施する予定になっております。ただ、ここで適応訓練の問題でございますが、三十七年度は特に重度の障害者のために、今までは半年間の適応訓練であったわけでございますが、しかし、福祉法別表の一、二級というような重度の障害者は、半年の適応訓練ではなかなか訓練の効果が出ないということで、特にこの点について配慮をしなければならないということで、一年間にする特別な適応訓練のやり方をとりまして、これに対して特別の予算を計上しておるわけでございます。これが三十七年度の新しい適応訓練でございます。  それから第三番目は、職業紹介の関係でありますが、これは先ほど申し上げましたように、登録が二万五千七百四十七名、三月一日現在、就職が一万四千二百八十四名、以上でございます。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 軍人の傷疾者について、八・八%の登録のうち、九・二%就職したということが今提起されたわけです。軍人の傷演者についての取り扱いが、やや一般よりも有利にされておるという現象があるわけですか。
  117. 木村四郎

    ○木村説明員 ただいま私の説明がちょっとまずかったので、登録の二千二百七十九名、これが全体の登録の二万五千七百四十七名に対して八・八%、九・二%というのは、就職した全体の一万四千二百八十四名のうち千三百十七名で、一万四千二百八十四名に対して九・二%、こういうことでございます。今、求職登録者総数が、戦争によるものが二千二百七十九、戦災が三百六十六というふうになっております。就職の率は、登録の率と比例しておりまして、五七%になっております。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 どうもこまかいことで時間をとるのは惜しい感じがしますが、これは大事な問題ですから、基本的な問題としてお尋ねしたいのですが、今三十九年三月までに六万人の就職を可能にしようとおっしゃっておるが、これはどうですか、完全雇用に近いのですか。
  119. 木村四郎

    ○木村説明員 この民間事業所につきまする雇用は、いわゆる努力義務でございまして、われわれ安定所におきまして雇用主を訪問いたしまして、そうして六万人の雇用が見込まれるというふうに見込んだわけでございます。その数に基づきまして、工場、事業場を指導、勧奨いたしまして、その実現方に努力いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 戦争によって傷疾を受けた人で、現に就職を希望する人の総人員は何人か。その中で今就職しているのは何人か。残された人はいつまでに完全雇用にしようと計画されておるか、はっきりした御答弁を願いたい。——これは恩給局その他政府部内で連絡ができていないのですか。恩給局が傷病恩給。年金、公傷等でどれだけ裁定されておるか、その人がどういうふうに処理されておるかというようなことは、これは当然政府間で連絡調整ができていなければならないのです。総務長官、いかがお考えですか。
  121. 小平久雄

    ○小平政府委員 今。受田先生御指摘のように、そこまでいくことが理想であろうと思うのであります。私も承っておりまして、登録人員が傷痍軍人関係者二千何百人だということで、ずいぶん少ないものだと実は感じておったところであります。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 労働省にも資料がないとなると、これは問題だと思うのです。つまり、恩給局で裁定された項款症の裁定者が何人おって、その人々はどのような就職状況になっておるかということは、これはやはり国全体の問題ですから、結論を出しておいていただかないと、私の質問に対してのお答えにならぬでしょう。
  123. 木村四郎

    ○木村説明員 私の方におきましては、身体障害者の障害になった原因別の統計というものは、実はこまかくはとっていないわけでございます。つまり、身体障害者の重軽度、あるいは視覚障害であるか、聴覚障害であるか、肢体不自由であるかというふうな、障害の程度別、種類別、そういったものの統計をとって、それに基づいて業務を推進しておりまして、何によって身体障害者になったかというふうな原因別の資料は、実は私の方ではつまびらかにしておらないわけでございます。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 これは国家補償の精神に基づいて、国家の公務に従事して負傷して障害を受けた人と、しからざる人との分類ぐらいはできていなければ、私は当局の行政措置としては適当ではないと思う。原因別の中に、そういう公務の障害としからざる障害との分類ぐらいはできておらなければならぬ。そうしなければ、恩給法の適用を受ける人々の中で、どれだけの者が就職しておるかという問題の質問に対する答弁にならないわけです。これは私、総務長官において十分政府部内の意見を調整されて、国家補償の精神に基づく人々の処遇、特に恩給法の適用を受けて、一方でこの部分の手当が幾らできておるのであるから、一般の就職の方でどれだけのものがあれば、その障害者の生活を保障するに足るかという問題にも関係するわけで、この点は恩給局、総理府、労働省において十分検討されて、この資料をはっきりしてもらう必要があると思うが、これは不可能ですか。
  125. 小平久雄

    ○小平政府委員 今まで先生の御要求のような点についての明確な調査もないようでありますが、せっかくの御指摘でありますから、よく研究の上で善処したいと思います。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 これはもう一つは、遺家族の育英資金というような問題にも関係してくるわけでございますが、遺族の小供さんがちょうど高等学校から大学へ行く、今高等学校へ入っておるのが一番しまいくらいで、あとは大体大学へ進学するという程度まできた際に、ちょうど満二十才の家族加給、あるいは公務扶助料を受ける年令のぎりぎりにきて、何らの支給の恩恵に浴することができなくなってから大学に行くというような場合には、育英資金の道も特別に考慮しなければ遺家族は処遇されないわけであります。そういう問題にも関係するので、この遺族の子供で育英資金を出していない遺家族の場合はどれだけあるかという数字も、一般とごっちゃにしているから、はっきりしないというような問題も出てくるおそれがある。これは文部省でまた御調査願わなければならぬ。特に国家の公務で父を失って、その子供さんがお母さんの手一つで育てられて、これから大学へ行こうという段階になって、家族加給もない、また、お母さんのいないようなお子さんは、二十才になると恩給権、公務扶助料受給権がなくなってしまう。そういうふうにまる裸になってから大学へ行くという場合に、どのような遺家族の処遇をしていくかという基本的な問題があると思うのです。この問題はどうですか。恩給受給権を喪失して、まだ人手の要る、まだ勉強する資金の要る子供たちに対するどのような措置政府はとっておられるか、御答弁を願います。
  127. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給法では、御承知通り、未成年の間の権利資格を認めておるのでありまして、成年に到達することによって資格を失う、年金はそれで切れるわけであります。その後の育英関係でございますれば、これは文部省の所管として育英資金を——そういうまだ大学に行っておられるというような方々に対する育英資金の供与というものがなされておるわけでございます。遺家族のそうした子弟のめんどうであるとか、あるいは傷病者のいろいろな広範にわたる総合的な対策というものに対して、各省ばらばらにやっておる。また、ばらばらにやっておる中でも、一般的な社会保障の中でやっておるというような実情からいたしまして、必ずしも遺家族なり傷病者だけの対策というものが打ち出されていないといううらみがございます。確かに御指摘通り、そういう目的をはっきりさせた一木の総合的な対策というものが打ち出されることが望ましいわけでございます。先ほどから総務長官から検討せよというようなお話でございますので、今後調査検討して参りたいと思います。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 これは当面する問題になってきているわけで、遺族のうちで、両親をなくした子供というものは、どこからも収入の道がなくなっているのです。そういう天涯の孤児になった子供さんに対して、英霊の子供さんであるという場合に、大学へいこうとしてももう道がないというようなことでは困るので、こういうところは、総務長官が中心となって、文部省その他関係各省連絡調整をとられて、政府部内の意見を統一して、一つ早急にその対策を講ずるようにしてほしいと思います。これは総合的に遺家族対策の抜本的な措置をとる上において非常に大事なことでありまするので、政府の特別の配慮を総務長官より御答弁を願いたいと思います。
  129. 小平久雄

    ○小平政府委員 きわめて重要な点でございますので、今後関係各省とも協議をいたしまして、できるだけの努力を払いたいと考えます。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 ちょうど今ごろが大学の年齢になってきていて、非常に切実な問題になってきておるわけです。受給権は切れる、お母さんにしても子供の加給がなくなるし、お母さんの収入が別にあるわけでもないというときに、扶助料が大した増額も見ないという現状において、遺児育英対策というものは、当面する問題として、今の長官及び恩給局長の答弁の御趣旨に沿った御措置を要望しておきます。  同時にもう一つ、私は、恩給法については従来いろいろ研究をさせてもらっておる一人でございますが、恩給法の規定がはなはだ手きびしい。特に遺族に対する規定の項におきまして、第七十六条の扶助料を受ける資格を失う規定、また八十条の権利を失う規定、こういうところは、大東亜戦争の様相の、あの特別の規模による形であったということで、この恩給法の規定ではどうも釈然としない現実の問題があるわけです。たとえばその氏を改めた場合、父母または祖父母の婚姻によってその氏を改めた場合、これはその英霊の奥様ではなくて、その父母や祖父母の婚姻によって氏を改めた場合、あるいはこの八十条の規定によると、配偶者婚姻したるとき、これは権利を失うとなっておるわけでございます。あるいは遺族以外の養子になったとき、この規定などは、大東亜戦争の終結した以後の社会情勢からいって、これを厳格にするのはあまりにも手きびしい規定なんです。あの終戦直後の国をあげての飢餓に瀕しようとしたときに、経済上の事情でやむなく結婚をした。しかし、二十七年に援護法ができ、二十八年に恩給法が復活して、その恩典に浴することができなくなったことを知って、初めて離婚して——経済上の理由で婚姻して、離婚した不幸な英霊の奥さんは、英霊のお宅へ帰ったけれども、この八十条の、一たび婚姻したときという規定によって、とうとう権利を失っておる。この法律、二十七年に援護法ができたとき、そういうことがそれより以前に行なわれたという場合に、その法律が施行された以後と別に考えていくという必要があるのではないか。大東亜戦争の様相の特殊性と戦後の混乱、飢餓の状況に瀕するという社会情勢の中で、やむなく婚姻したけれども、今日では英霊のおうちに帰って、英霊のお守をしているのです。この御婦人に対する態度としては、八十条に特例を設ける必要があると私は思う。また、氏を改めた場合の措置についても、七十六条の特例を設けても、国民は憤慨もしなければ、むしろこれに対しては賛意を表するということを私は確信するものでございますが、恩給法の規定についての特例を設ける、今二つの例を申し上げましたけれども考え方としていかような態度をお持ちか、御答弁願います。
  131. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 ただいま、遺族の資格を失う、あるいは権利を失う場合の要件といたしまして、婚姻というものを失権、失格の要件にしていることについての御指摘もございましたけれども、この規定というものは、あくまでも、なくなった方の残された遺族が、婚姻するという事態によって新しい生活設計に入られるという点に着目いたしまして、それからはもうなくなった方の遺族年金ということから出発したところの遺族年金、公務扶助料というものは、これは差し上げる必要はないじゃないか、こういう考え方でできているわけです。この婚姻による失権、失格というものは、各外国の法制でも取り上げておるところでございます。また、最近の退職年金法などでも、もちろん要件にしておるところでございまして、必ずしも恩給法だけの問題ではございません。もちろん、一ぺん再婚したけれども、その後離婚して現在はまた再びもとの戦争未亡人になっているというふうな事態に対する法制の態度というものは、各外国におきましてもいろいろまちまちでございますけれども、英米あたりでは、大体一ぺんよその人と婚姻したならばそれで失権するという建前をとっております。また、フランスあたりでは、婚姻をしても、その後それが不縁になって離婚した、現在はまたもとの戦争未亡人に戻った、こういう場合には、また復権させるというような制度をとっているところもございます。いろいろ外国の法制の中でも態度が違いますので、現在までのところ、恩給法では、多数説であるところの、婚姻というものによって新しい生活設計に入ったということで、そこでピリオドを打つというふうな建前をとってきております。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 これはぜひ——戦後のあの混乱、飢餓の状況の中で、経済上の事情でやむなくいったという場合を指摘するのであり、二十七年の援護法ができる以前の事情にあった人だけを対象にするのであって、その後援護法や恩給法ができて後の問題を指摘するわけではない、きわめて限られた期間の問題だけを今指摘しているわけです。だから、社会政策的な問題としては、このような人々を救済するということは、毫も国民感情の上に悪い影響を与えない、むしろ国民はその人々に同情し、かかる改正規定のできることをフランス式に歓迎する、こう私は思うのです。内縁関係にあればこれはいいわけです。たまたま籍に入ったためにいけない。だから、内縁関係よりもっと薄い関係にあった人が、たまたま籍に入っておったばかりに、こういうことになってきておるのですから、実際には即していないということになる。そういうことは実態と形式との問題になってくるわけです。この形式的な一時的な婚姻が尾を引いて、英霊のそばにいる奥さんに対して何の処遇もされないというのは、片手落ちであり、その奥さんを生涯不幸にすると思いますが、フランス式に思い切って改正したらどうですか。
  133. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 今事実上婚姻して、法律上婚姻していない場合は見のがされるじゃないかという御指摘がございましたが、これは法律の建前からいたしましても、実際われわれやっている関係からいたしましても、事実婚というものは、全く法律婚と同じように、失権の関係におきましては扱っているわけでございまして、事実婚の認定が甘いとかからいとかいうふうな問題はございましょうけれども、事実婚であるがゆえに見のがしているということはございません。また、法制の建前をフランス式のものにするかどうかというふうな問題につきましては、片や英米あるいはドイツあたりのように——ドイツはちょっと記憶しておりませんけれども、そういうふうな婚姻ということを失権要件に厳格にしているところもあるわけでございまして、必ずしも直ちにそれを御賛成申し上げるということはできません。
  134. 受田新吉

    ○受田委員 事務当局としては、法律の番人としてやむを得ない御答弁であろうと思いますが、政治的な配慮で、社会政策的な見地を取り入れるという立場で、これは事実婚ということについても一応除外されているといっても、実際非常に緩和された方法がとられている、形式的なものがとられていると思っておりますので、政策的な見地として、このような問題は十分考慮すべきで、この前の社会労働委員会——昨年灘尾厚生大臣は、この問題について非常に善意のある答弁をしておったし、この間もまた答弁しておったけれども、これを恩給法の中に入れてしかるべき性質のものであろうと思うので、灘尾厚相と同じ程度の答弁を総務長官からいただけば、私は満足して質問を終わりますがね。
  135. 小平久雄

    ○小平政府委員 灘尾厚生大臣がどういう答弁をなさったか、実は私は承知をいたしませんが、大体先生のお話で想像がつきます。いずれにいたしましても、現在までの考え方からいたしますと、局長の答弁の通り困難かと存じますが、もちろん、さらに研究をいたして参るということには、何ら異存はございません。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 研究と、それから善処するというのとはだいぶ違うのですが、長官は慎重派と見えるので、研究して十分善処される方向へ向かわれるという以外には、あなたの場合には答弁できないのですが、あなたの場合には十分研究して善処したいと思うということでいいですね。
  137. 小平久雄

    ○小平政府委員 けっこうです。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 次に、問題として、恩給特例の問題ですけれども、これは恩給法の中の一つの特例で、例の内地で斃病死された人々の場合を指摘された法律ができたけれども、これは恩給法の特例で、社会政策的な見地を持って生まれた法律です。恩給法からいったら逸脱した法律です。だけれども、この法律の中で、また新しい問題ができてきているわけです。たとえば、この法律の第二条に「当該旧軍人等で営内に居住すべき者」とあり、営内居住に一つの制限がある。それから「在職期間内又は在職期間経過後一年以内に、これにより死亡したものであるときは、」こういう規定をもってこの法律の適用を考えておられるのでございますけれども、実際は営内居住という中にも、営内に住んでいる立場の人で、たとえば特別の高射砲部隊などで、外部で寝起きするというような人が、営内居住が厳重に守られない営内居住の性質を持っていた人がいるわけです。そういう場合をどうするか。もう一つは、「期間経過後一年(厚生大臣の指定する疾病については、三年とする。)」とありますが、これはその後になくなった人には適用がない。実際はすでに長く苦労してなくなった人が困難をしておられるのでありますから、この年限についてあまり手きびしい規定は、これは緩和させる方法をおとりになる必要はないか、こういう問題が一つ出てくるわけですね。これはやはり社会政策的な見地から、長く病床で苦労して、それが原因で死なれた人の方が、家族にとってはより一そう苦痛があったわけです。この年限を制限しておくことには私は問題があると思う。との二つについてお答え願いたい。
  139. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 営内居住というこの特例法のできた精神は、結局大東亜戦争が苛烈になりまして、第二国民兵まで召集されるという事態になって、必ずしもからだの丈夫な人ばかりが召集されるのではないという事態で、勤務もきびしかったということから、いわゆる公務でなくても、職務に関連して死んでも、その方の遺族に対して公務扶助料の六割額の特例扶助料というものを支給する、こういう制度であったのです。もともとの発端は、こういうふうな職務に関連した程度においてなくなった方々に対しましては、援護法で五万円の弔慰金を支給する、ですから、公務によった場合は、弔慰金を支給すると同時に、年金を支給することになっておりましたが、こういう点の職務に関連した程度で死んだ方に対しては、弔慰金で打ち切るという制度になっておったわけです。ところが、弔慰金だけで打ち切ったのでは気の毒じゃないか、本来の公務でなくなった方々に対しては公務扶助料でだんだん厚くなってきているのに、一方は一時金で打ち切りはひどいじゃないか、こういうことで、年金化する方策として、特定扶助料の制度というものができたわけです。そこで、根っ子の援護法、これも、そうした特別弔慰金というものをどういう幅で出すかという基本的な問題になります。その特別弔慰金を出す範囲というものは、営内に居住し、また発病後一年ないし三年以内に死んだ方、こういうふうな限定を置いて、そうした方に特別弔慰金を出す、こういうことになっているわけなんです。そこで、特別弔慰金をもっと幅の広い方々に出すかどうかということになりますと、援護法の立案政策の問題になるわけです。従いまして、これは厚生省側においてどういうふうに今後考えていくか、結核の場合は三年、一般の病気の場合は一年以内に死んだ方々ということは、おそらく立証の方法に技術的な問題があったり、ほかとの関連の問題があったりして、そういう限定を置いたのだろうと思うのでありますけれども、現実の問題として、一年一カ月目に死んだ方は、弔慰金ももらえなければ、特例扶助料ももらえない、こういうような気の毒なケースがその後出てきた、こういうことから、これをどうするかという問題が出てきていると聞いております。従いまして、そうした根本の援護法における特別弔慰金の範囲をどうするかということがきまって参りますと、今後特例扶助料も変わってくることになるかと思います。また、営内居住の解釈の問題につきましては、大体下士官、兵というものがこれに該当いたしますけれども、将校につきましても、一定の範囲に、その勤務の状況というものを十分勘案いたしまして、これを適用させるというふうにいたしておるはずでございます。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 私お尋ねしているのは、営内居住の場合は、営内居住の性格論の話であります。だから、営内で通常勤務すべき形態であるけれども、実際は営外に出て、営内居住によく似た形の勤務をした者も、これに含んだらどうか。この法律は大体議員立法の形でスタートに立ったわけでありますが、議員立法といえども一たび法律になったら、政府が法の番人をしていただかなければならぬ。だから、恩給局としては、非常に取り扱いにお困りになられると思いますけれども、しかし、現実は、今申し上げたように、療養期間などが三年以上に延びてついに死亡されたような人に対しても、これはその疾病の原因が公務であったというものであれば、何とかの形で認めてやらねばいかぬ、こういう問題があるわけで、この問題は、営内居住の性格と年限の問題については十分検討していただきたい、かように思いますが、検討して善処するということで、長官よろしゅうございますか。
  141. 小平久雄

    ○小平政府委員 今局長のお話を聞きますと、厚生省の方の関係もあるようですから、よく研究して善処いたします。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、今度は恩給法の一部を改正する法律の中にある規定です。これはいろいろな規定を盛り込んでいる法律でございますが、その三十条の未帰還公務員の規定、この未帰還公務員の規定が最近ないがしろにされておりますので、指摘いたしますが、未帰還公務員の恩給につきまして、これがその後どういう形にやられているのか、私ちょっとお尋ねしなければならぬ。  死亡した場合の規定の方に入りましょう。死亡の日にさかのぼってこの公務扶助料を支給するという方法と、死亡が確認された日に支給するのと、二通りあるわけですが、実態に即するのには、死亡の日にさかのぼって支給するのが一番当を得たものだと思いますけれども、この法律では死亡の日にさかのぼるという規定がないわけです。
  143. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 この点は、臨時恩給調査会で受田委員が非常に熱心に御指摘になりまして、その結果答申にも、さかのぼって公務扶助料を支給すべしということになったわけで、それに基づいて、昭和三十三年法律第百二十四号によってこの昭和二十八年法律第百五十五号を改定いたしまして、現実の死亡のときにさかのぼって、軍人で申しますれば、昭和二十八年の八月にさかのぼるというふうに改めたわけでございます。そのさかのぼってやりますために、その間支給している留守家族手当等も調整するということになりますけれども、さかのぼって支給するというふうに改めたわけであります。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 ところが、実際は、この第四項の規定の中にはこういうことがあるわけです。今も満足にいっていない。「旧軍人、旧準軍人又は旧軍属であった未帰還公務員の遺族については、当該未帰還公務員の死亡した日が昭和二十八年四月前であるときは同月、その他の未帰還公務員の遺族については、当該未帰還公務員の死亡した日が同年八月前であるときは同月」一括して死亡した日になっていない規定が一つあるのですね。これは削除した方がいいのではないか。この規定が残っている。
  145. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 この第三十条四項の規定でもって「旧軍人、旧準軍人又は旧軍属であった未帰還公務員の遺族については、当該未帰還公務員の死亡した日が昭和二十八年四月前であるときは同月」すなわち、昭和二十八年四月前に現実に死んでいるということであれば、昭和二十八年の四月分から給与するということに、軍人恩給の復活によってなっておりますから、昭和二十八年の四月から。その他の一般の文官につきましては、当該未帰還公務員の死亡した日が同年八月前である場合には、この法律第百五十五号が施行されました八月というふうにしたわけであります。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 恩給法施行以前にさかのぼって昔の恩給法の恩典に浴せしめるという規定にはなっていない。法律ができたから、そのときから施行されているからというような意味で、今御答弁されているわけです。この問題は、援護法との関係にもなるわけですけれども、これは今の御答弁でよしましょう。  そこで、実際の問題として、現在未帰還公務員でまだ死亡が確認されない人が何人いることになっておりますか。——あなたの方でわからない。それでは現在未帰還公務員で普通恩給を支給している数と、扶助料を支給している数、これはわかりますね。——これもわからぬ。  ではもう一つ、経費のところでお尋ねしたいのですが、外国人の恩給というのが、文官の中に出ておりますが、外国人の恩給がそれぞれ毎年ふえておるわけです。これはどういう形の人ですか。
  147. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 外国人恩給と申しますのは、恩給法のレールの上でやっておるのではございませんで、たとえば美術学校の外国人の講師であるとか、あるいは音楽学校の外国人の講師、あるいは昔でいいますと、高等学校なんかの英語の講師というような方々がございました。こういう方々が、日本で二十年も長く勤めておるということになりますと、その退職のときに、恩給法に準じて、日本政府と本人との個人的な契約といいますか、公法上の契約でもって、恩給を差し上げるという意味のことをやっております。この経費が外国人恩給の経費でございまして、これがふえて参りますということは、一般の恩給がベース・アップになりますれば、その部分も基礎法規を手直しするというようなことをやっておりますので、その分が若干ふえておる、こういうことでございます。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、総務長官、私しばしばお尋ねしているのですが、もう結論を出さなければならないのです。日本軍人として戦死した韓国人とか台湾人とか、こういう人々の処遇です。今、日本国内に、日本人として戦死した人の遺族が住んでおるのです。御本人が戦死するときは、日本軍人として戦死したのです。これは請求権の問題に関係してくるというので、ちゅうちょしておられるようでございますが、平和条約の処理についての請求権の問題とはまた別に、国内でこの人々に対して扶助料を出したとしても、あとから請求権の中にそれだけ入れればいいのですから、一応国内措置として、日本軍人として戦死した、同じ日本人の中に入って戦死した、韓国人の子供さんであろうと、台湾人の子供さんであろうと、日本軍人として戦死したことは同一だったのです。その戦死の崇高なる動機、現状というものを今われわれが追憶したときに、その人々には、外国人であるからというので、恩給もやらなければ扶助料も出していない、こういう現象になっているわけなんです。これはやはり人道的見地から見て、日本軍人として戦死した英霊の親、子供さん、奥さんには、当然日本国独自の立場で一応扶助料を支給しておいて、そして請求権のときには、そのすでに支給した部分を差し引いて請求権の処理をする、こういう取り扱いをする方が、人道国家日本立場からはるかにりっぱな措置だと私は思うのですが……。
  149. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 外国人恩給に関連いたしまして、韓国人あるいは台湾人の日本政府の官吏であった人たちに対する恩給の問題に触れられたわけですが、実を申しますと、これらの方々は恩給法の規定からいいますと、国籍を喪失するということによって失権いたしまして、その後は権利がないわけでございます。そういうような関係になっておりますけれども、これは向こう側の請求権、広い意味での個人的な請求権と法的の上での請求権ということで、平和条約の特別取りきめの対象にもなっているわけでございまして、恩給法だけで考えるわけにも参りません。やはり外交問題として広く考えるという問題になっているわけであります。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 外交問題と関連させるとすれば、国内でこれらの人々に一応の措置をしておいて、あとから請求権のときに相殺すればいいのですから、これは決して外交技術の上でまずいことはなくして、むしろ、このことによって、世界的に非常に大きな人道的な影響を与えると私は思うのです。総務長官は、閣議に列席される資格がおありの方だし、恩給局長のような非常に専門的に御勉強されておる方とは別の、政治的な配慮をなされる実力を持っておられる方ですから、あなたとして何らかの答弁が必要な段階にきたわけです。
  151. 小平久雄

    ○小平政府委員 人道的に考えれば、受田先生のようなお考えになられるかと思いますが、今局長から説明のありましたような事情になっておるようでありますので、この問題につきましては、今直ちに人道的にどうこうすると仏から申し上げる二ともいかがか、かように考えます。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 秋霜烈日の感じがする御答弁です。これは私、問題があると思うのです。英断をふるわれる日本政府が、韓国人であろうと、北鮮人であろうと、台湾人であろうと、中国人であろうと、同様の立場でわが国がこうした人道的措置をおとりになるということは、これは全世界に大へんな影響があると思うのです。私は秋霜烈日の御答弁に対してもう申し上げません。  おしまいに一言、今度の増額措置実施要領の中に、年令制限が、つまり、弱年停止が七十までなっている。七十といえば弱年停止じゃないでしょう。実際七十といえば老年ですからね。これは五十五才という恩給の受給資格を得る年令のところに、いつになったら返されるのですか、本格的措置については。普通恩給、普通扶助料の場合、この増額措置は五十五才から支給するという原則は、いつごろからおとりになろうとするのか。こういう原則の部分は全然無視して、弱年停止をうんと引き上げて、六十才とか七十才というのを今後もお続けになるのですか。いずれ五十五才というところに復元されるのですか。
  153. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給法のルールというものは、五十五才が満額です。四十五才から五十五才までの間はある一定の制限をするという形をとっておるわけでありますので、百二十四号あるいは今回の法律措置等、いずれも諸般の状況を考えました結果のこうした措置でございまして、必ずしもこれがオーソドックスの恩給法のルールになるということは考えておりません。しかるべき機会に、恩給法のもとのレールの上に乗っかるということをわれわれとしては期待するわけです。これをもって固定的になるということは考えておりません。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 三十九年の七月から全額実施と書いてある分は、これは五十五才という年令ですか、あるいは六十才という年令ですか。
  155. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 これは、三十九年七月から六十才以上の方については全額を実施いたしますということであります。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、五十五才の人は、今回の措置は全然恩典に浴していない、原則を無視されている、かように考えてよろしいのですか。そしてその原則に、だんだんとルールに乗せていくように努力したい、こういう御配慮があるということも、あわせて御答弁が得られるかどうか。
  157. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 この措置によって、五十五才から満額にするという恩給的な考え方というものは、全部なくなってしまったのだというふうにお考えになっていただきたくないのでございます。私どもとしては、やはりそのもとの姿に返るという時期を将来において求めたい、こういう気持でおります。
  158. 受田新吉

    ○受田委員 事務当局はそれだけの苦労をしておられます。国務大臣と同じ地位にあられる総務長官とされましては、政治的な配慮をされて、五十五才から恩給は受けられるようになっているのですから、それへ早く返すように努力するという方向は、総務長官の御地位にあられる先生の方から御答弁をいただいておきたいと思います。
  159. 小平久雄

    ○小平政府委員 その点は、局長の答弁申し上げた通りと心得ております。      ————◇—————
  160. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  161. 中島茂喜

    中島委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明十九日十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会