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水田国務大臣 個々のケースを見ましたらいろいろあると思いますが、全般論としましては、この
金融の引き締め対策というものにはいろいろ問題がございまして、設備投資を抑制するとか、内需を押えるという目的からの締め政策であります以上は、これは単に
金融の引き締めだけでは達成できないものでございます。従って、その背後においてやはり強い
行政指導をする必要がありまして、この方がむしろ有効だと
考えています。昨年は、六月に民間の設備計画の吟味を私
どもはやりましたが、これは少しおそかったと思いますので、今年はすでに通産省、
大蔵省、日銀は今始めておりますが、まず
行政指導によって、不急な設備を押えていくということをやる方が実際的でございますので、ことしは相当強力にこれをやるつもりでございます。昨年もこれをある程度やりました。もしそれをやらないで、すぐに
金融の引き締めへ入った場合には、これは中小企業に
金融のしわが寄ってしまうことははっきりしておりますし、三十二年の経験から見ましても、こういう点は顕著なことでございましたので、引き締め政策をとっても、大企業が力づくで
資金を使うという状態を押えるだけの準備をしておかなければいけませんので、去年は引き締めの時期がおくれたようでございますが、実際は六月からずっとその仕事をやって、そうして一応の目回しをしてから
金融引き締め政策をやりましたので、この点は比較的うまくいっていると思います。普通なら、中小企業と大企業の使う
資金貸し出しの率が大きく変化するはずでございますが、私
どもは、中小企業向けの
資金量を落とさずに
指導も事前に十分しましたので、あれだけの引き締め政策をやっても、御
承知のように現在
比率は落ちておりません。引き締め以前の
比率を維持しておりますし、むしろ、中小企業部門への貸し出し率の方が多くなっている。しかも、中小企業専門の
金融機関の貸し出しは、昨年の同期に比べたら三割、四割ふえておるというような状態でございまして、設備をやらない中小企業にこの設備抑制のしわを寄せないという配慮は十分にしておりますし、また、政府関係
機関からも相当の追加融資をやっておりますので、今のところは、中小企業
金融問題に関する限り、これは私
どもが予想しておったよりも割合に順調に時期を切り抜けてきているのじゃないかと思います。倒産件数というようなものも、私
どもは非常に気をつけておりますが、
昭和三十四年、三十五年の景気のいいときの倒産件数よりも、統計ははっきり減っております。三十六年度は非常に少なくなっておる。不渡り手形の発生率も、去年までは一%以上の不渡り発生率を持っておりましたが、三十六年度はこれよりはるかに減って、〇・何%というふうに不渡り手形の発生率も落ちておるということで、これだけの
金融引き締めをやったのに、現にそういう傾向が出ておるということ自身は、ある程度中小企業
金融に私
どもが骨を折ったことが現われているのじゃないかと思います。従って、
一般の中小企業
金融については、一−三月の危機は確かに切り抜けてきたと思いますが、問題は、むしろ大企業の
金融にしわ寄せせられているというのが
現状だと思います。これは設備投資を押えるということからきたらほんとうの姿でございますが、これがある程度今私はきついと思っておりますが、きついために、今度は大企業の系列下の中小企業への支払いというものが、あなたのおっしゃられるような傾向を今示してきていることは事実でございます。これに対する対策が、むしろ今の段階では必要になってきているのじゃないかというふうに見ておりますので、これは、私
ども二月に日銀のオペレーションをやりましたし、そういうようなことによっての緩和も相当はかっております。四月の月は散超期でもございますので、情勢を見ていろいろやれば、何とか四月には
金融の問題は起こさずに済むと思いますが、またその
あと揚超期に入ってきますので、そういうときには、今のような
金融事情は、常にこの推移を見ながら必要な措置をとることによって、中小企業への支払い遅延という現象だけは避けたいと思います。大企業がこのごろ百八十日の、たとえば八幡製鉄、そういうところからの手形がそうなっているという御
指摘も、国会で野党の
委員の方々からいろいろ受けましたので、この点は私
どもすぐに民間の調査をやりましたが、大企業がまだ百八十日の手形を出すというような事例はございませんし、この点については公取
委員会にもお願いして、こういうものの監視を十分にしてもらいたいということで、政府部内でも協力してやっておりますが、まだそこまでにはいっておりません。そういう傾向は確かに今後見られると思いますので、この点は十分善処するつもりでおります。