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1962-04-10 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       小笠 公韶君    大森 玉木君       辻  寛一君    藤原 節夫君       保科善四郎君    飛鳥田一雄君       猪俣 浩三君    緒方 孝男君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         総理府事務官         (恩給局長)  八卷淳之輔君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業訓練局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      中嶋 忠次君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部司法         法制課長)   安原 美穂君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金課長)    東村金之助君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      桑原 正憲君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 四月十日  委員柳田秀一君辞任につき、その補欠として猪  俣浩三君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月五日  行政不服審査法の施行に伴う関係法律整理等  に関する法律案内閣提出第一五一号) 同月九日  恩給増額に関する請願海部俊樹紹介)(第  三六五九号)  同外二件(中垣國男紹介)(第三六六〇号)  同(海部俊樹紹介)(第三七三三号)  同(福田篤泰紹介)(第三七九二号)  同(福家俊一紹介)(第三八三六号)  同(安倍晋太郎紹介)(第三九三七号)  戦没軍人軍属栄典授与等に関する請願外二  件(臼井莊一君紹介)(第三六六一号)  同外一件(臼井莊一君紹介)(第三八七五号)  旧軍人恩給増額等に関する請願臼井莊一君  紹介)(第三六六二号)  同(澁谷直藏紹介)(第三六六三号)  同(辻寛一紹介)(第三六六四号)  同(竹山祐太郎紹介)(第三七三五号)  同(福田篤泰紹介)(第三七九一号)  建国記念日制定に関する請願外一件(辻寛一君  紹介)(第三六六五号)  同外三件(草野一郎平紹介)(第三七三四  号)  同外五件(濱田幸雄紹介)(第三八三五号)  同外五百九十五件(牧野寛索紹介)(第三九  四三号)  同(加藤常太郎紹介)(第三九四四号)  同(山崎巖紹介)(第四〇六一号)  恩給扶助料増額に関する請願椎熊三郎君紹  介)(第三六六六号)  恩給年金等受給者処遇改善に関する請願(  中曽根康弘紹介)(第三七三六号)  健康感謝の日制定に関する請願小枝一雄君紹  介)(第三八三四号)  栃木県各市町村の寒冷地手当に関する請願(戸  叶里子紹介)(第三九〇二号)  国有林野事業職員賃金引上げ及び雇用安定に  関する請願足鹿覺紹介)(第三九二七号)  同外二百四十四件(井岡大治紹介)(第三九  二八号)  同外三十件(太田一夫紹介)(第三九二九  号)  同外三十一件(小松幹紹介)(第三九三〇  号)  同外八百六十七件(下平正一紹介)(第三九  三一号)  同外三件(野口忠夫紹介)(第三九三二号)  同(松井政吉紹介)(第三九三三号)  同外九件(村山喜一紹介)(第三九三四号)  同外四十三件(山口鶴男紹介)(第三九三五  号)  同(山中吾郎紹介)(第三九三六号)  同(石村英雄紹介)(第四〇〇八号)  同外百件(石山權作君紹介)(第四〇〇九号)  同(小林進紹介)(第四〇一〇号)  同外一件(島本虎三紹介)(第四〇一一号)  同外七十五件(石橋政嗣君紹介)(第四〇四九  号)  同外四百二十一件(角屋堅次郎紹介)(第四  〇五〇号)  同(中島巖紹介)(第四〇五一号)  同外八件(松平忠久紹介)(第四〇五二号)  同外八百二十七件(湯山勇紹介)(第四〇五  三号)  恩給増額に関する請願安倍晋太郎紹介)(  第三九三八号)  解放農地補償に関する請願内海安吉紹介)  (第三九三九号)  同外一件(小山長規紹介)(第三九四〇号)  同外百六十八件(田澤吉郎紹介)(第三九四  一号)  同(堀内一雄紹介)(第三九四二号)  同外九件(小澤太郎紹介)(第四〇五四号)  同(大高康紹介)(第四〇五五号)  同外十一件(小山長規紹介)(第四〇五六  号)  同(正力松太郎紹介)(第四〇五七号)  同外一件(内藤隆紹介)(第四〇五八号)  同外四十三件(西村英一紹介)(第四〇五九  号)  解放農地補償に関する請願安藤覺紹介)(  第三九九八号)  同(飯塚定輔紹介)(第三九九九号)  同(生田宏一紹介)(第四〇〇〇号)  同(上林山榮吉君紹介)(第四〇〇一号)  同(佐々木義武紹介)(第四〇〇二号)  同(白浜仁吉紹介)(第四〇〇三号)  同(舘林三喜男紹介)(第四〇〇四号)  同(綱島正興紹介)(第四〇〇五号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四〇〇六号)  同(濱地文平紹介)(第四〇〇七号)  山形県河北町溝延、西里両地区の寒冷地手当増  額に関する請願西村力弥紹介)(第四〇一  二号)  上山市の寒冷地手当増額に関する請願牧野寛  索君紹介)(第四〇六〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月六日  金鵄勲章年金及び賜金復活に関する陳情書  (  第六〇三号)  同(第六〇  四号)  恩給法等の一部を改正する法律案成立促進に  関する陳情書  (第六〇五号)  建国記念日制定に関する陳情書  (第  六〇六号)  同外七十五件  (第六〇七号)  同外七十四件  (第六二九号)  同外一件  (第六三〇号)  同外百三十四件  (第  六七七号)  同外百件  (第七一五号)  旧金鵄(し)勲章年金受給者に関する特別措置  法案の修正に関する陳情書  (第六二八号)  公務員内国旅費基準引上げに関する陳情書  (第六五八号)  解放農地補償に関する陳情書外四件  (第六七  八号)  同外一件  (第七四七号)  同外一件  (第七四八号)  観光省設置に関する陳情書  (第七四六号)  旧軍属恩給支給額に関する陳情書  (第七四九  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一八号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)  臨時司法制度調査会設置法案内閣提出第八六  号)      ――――◇―――――
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。草野一郎平君。
  3. 草野一郎平

    草野委員 恩給法改正案につきまして、私二、三お尋ねをいたしておきたいと存じます。  この法案が提出されるまでに、非常に複雑な作業に御努力になりました恩給局関係の方に対しましては、その労苦を私は多とするものでありますが、わが国恩給制度というものが、その沿革と、さらにここ二十年来の経済的あるいは政治的諸情勢の激しい変遷に従って、ますます複雑化しつつある実情の中において、幾たびかの恩給制度改正が行なわれておるわけでありますが、今回出されました恩給法改正によって、それで当局は十分であると考えておられるのか、わが国恩給制度はこれで完璧であると考えておられるのか、完璧であると考えておられないとするならば、その完璧でない点は何と何であるか、その点をまず一つお聞きしておきたいと思います。
  4. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給制度につきましては、そのつどの経済情勢変化に応じてその受給者処遇改善にあたっていくということが、私どもの使命でございまして、そのような観点から、公務員給与が上がるというふうな場合には、その背景として生活水準上昇あるいは物価上昇というふうなものがあるということを考えまして、国家財政その他諸般の状況を考えながら、逐次恩給受給者給与改善ということをやっておるわけであります。今回の措置といたしましても、昭和三十三年に、旧退職者あるいは戦没者傷病者というものの恩給につきまして、一万二千円ベースから一万五千円ベースという在職公務員給与基準にいたしましてのベースアップが行なわれたのでありますけれども昭和三十三年以降の状況を考えまして、一般恩給につきましては、公務員の二万円ベースの本俸を基準にし、また、公務傷病死没者関係恩給というものは、二万四千円ベース基準にするところの増額をはかっておるわけでございます。  今回出された改正によって、恩給制度は完璧なものであるかどうかというお尋ねでございまするけれども、もちろん、恩給につきましてはいろいろ御要望等がございます。しかしながら、大体臨時恩給調査会で御審議をいただき、その答申に基づきましていろいろ措置いたしました昭和三十三年の法律百二十四号及びそれ以後の諸法律におきまして、大筋の解決は見たわけでありまして、恩給内部における不均衡の問題等々大体解決はいたしたと思うのでございます。しかしながら、その処遇内容の充実という問題につきましては、今後なお十分検討していくという余地がある問題であろうと思っております。従いまして、今後の経済情勢の推移その他諸事情を勘案いたしまして、充実すべきものは充実していくという方向で進まなければならない、こう考えております。
  5. 草野一郎平

    草野委員 ただいまの恩給局長の御答弁によりますと、大体満たし得た、その内容においてさらに充実しなければならぬ面があるというふうな、ほぼ満足したようなお答えであると思いますが、私は、どうもそれではあまりにも手ぬるいのではないか、もっと大きな矛盾幾つかその内部に抱いておるし、解決しなければならぬ諸問題がそのまま残されたままでここへ来ておるのでないか、そう考えます。たとえば現職公務員給与ベースというものは、御承知の二万七千円あるいはそれを幾らか上回っておるかもしれぬと私は考える。そこへもってきて、このごろ例の春闘々々で、上がるのか上がらないのか、私は予測はいたしませんが、そうなると、公務員給与ベースというものがだんだん前進していくに従って、それに追っついていけばよろしいが、二段階も三段階もおくれながら、おくればせながら、ぼつぼつ、息せき切って、そこへ間隔を置きながらついていくということ自体に、私は問題があると思う。いわゆる基本ベースに断層がある。それを一体どうするつもりなのですか。これは重大な問題であって、むしろ、こういう恩給法改正問題がしばしば出てくること自体は、一般公務員現職公務員ベースアップが行なわれ、二万四千円が二万七千円になる、あるいは二万七千円以上に今日なっておると思いますが、そうなれば、それとともに退職公務員恩給というものも、自然にそのベースに歩調を合わした格好になっていかないと、恩給制度というものが、国家の目から見て、退職者現職者とに対して公平な立場をとっておるとは考えられませんが、それはいかがなものですか。
  6. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給ベースアップと申しますのは、つまり、恩給というものは、退職時の俸給というものを基礎にしてきめられておるということから出発するわけでありますけれども退職時の俸給基礎にして恩給を支給するということにつきまして、その後の経済情勢変化というものがありました場合に、はたして、その前にやめたときの給料を基礎にした年額というものが、現在の状態のもとで購買力の維持ができるかどうかというような観点からの増額の問題があるわけです。もう一つは、基準年額のとり方によりましては、公務員給与が切りかわりますと、ベースアップされますと、その時点の前後によりまして同じ退職者の間におけるアンバランスの問題が出てきます。この二つの側面からいたしまして、従来からの恩給ベースアップというものはやってきたわけでございます。もちろん、全般の考え方といたしまして、公務員ベースに追随していくべきであるというふうな議論もございますけれども、必ず公務員ベースの改定に準拠するということはなかなかむずかしいわけでございまして、そのときのそれまでの経済情勢変化、あるいは生活水準上昇率、あるいは国家財政というものを総合的ににらみ合わして、過去の退職者年金をどう再評価するかということをきめなければならない問題でございまして、公務員ベースが上がったということに必ず準拠して考えるということは、なかなかむずかしい問題だろうと思っております。
  7. 草野一郎平

    草野委員 さらに、昭和三十四年の十月でしたか、共済組合法が行なわれて、退職年金制度制定されたわけなんですが、その共済組合法による退職年金をもらっておる者と、恩給法によって恩給をもらっておる者との間に、将来共済制度というものが充実されていくようになると、恩給法によってもらっておる者の処遇が悪くなるようなことがありはしないか、そういう問題に対して、政府自体としてそれをどういうふうに足並みを合わしていくように考えておいでになるか、その点を一つ伺っておきます。
  8. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給共済退職年金制度に切りかわりましたのは昭和三十四年の十月でございます。従いまして、共済制度の上における退職年金制度というものと、恩給というものは、一応制度的に切り離されているということが言えると思うのでございます。しかしながら、共済退職年金にいたしましても、昭和三十四年十月当時の十月から半年くらいの間はいわゆる二万円ベースでやめた方がある、また、その後、昭和三十五年十月以降におきましてはいわゆる二万四千円ベースでやめた方がある、それからさらに、去年の十月以降では二万七千円ベースでやめた方がある、こういうようなことで、共済内部におきましても、そうした退職時期によっての年金額における格差というものが出てきておるわけであります。従いまして、将来の問題といたしまして、もしも共済退職年金の方で、二万円ベース時代にやめた人の年金額というものをさらに上回って改定するというようなことがありますならば、これはすなわち、その当時の年金額というものをそれから後の経済事情変化に伴って再評価するということになるわけでございますから、恩給におきましても、その後の生活水準上昇というものを勘案してのベースアップというものは当然考えなければならぬわけでございまして、制度的に切り離されておりましても、その根本精神におきましては同じことでございますので、共済恩給との間のバランスというものをとっていかなければならぬかと思っております。
  9. 草野一郎平

    草野委員 今回の増額措置は三年間にわたる段階的なものでありますが、これが昭和四十年度に平年度化するとして、大体三百三十二億円が必要になると言われておるのです。昨年ここで議決になりましたいわゆる未裁定着加算復権の問題、だんだん恩給を支給しなければならぬ年次がやって参りますと、恩給予算の最大のピークは一体いつになるのでありますか。さらに、それがわが国予算の中に占める比率はどの程度になるのか。しかも、恩給予算比率はどの程度が一番妥当なのであるか。少々よけい出してもいいのか、なるべく押えておいた方がいいのか、一つその辺を……。
  10. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 今回提出いたしております法律案によりまして、将来恩給財政規模がどの程度になるかという点でございますけれども、三十六年度予算は千二百三十億でございます。この法律実施によりまして必要になる経費は、三十七年度におきましてはさしあたり四十四億でございますけれども、これは三カ年計画予算的には四カ年目にピークにするように計画を組んでございますので、この実施によりましてその増額分だけを考えますと、今御指摘の三十七年度ベースにおきましては三百三十二億、これを将来四十年度の時期において再計算いたしますと、三百五億必要になってくるわけでございます。一方におきまして、恩給費そのものはだんだんと失権等によりまして減りますので、御指摘の昨年の改正による加算実施による増を考えましても、なおかつ漸減の傾向にございます。従いまして、三十七年度から四十年度にかけて約九十億から百億くらいの目減りがあるということになっておりますので、今回の増額措置によって三百億ふえましても、三十六年度ベースにして二百億しかふえない。従いまして、昭和四十年におきましては千四百四十二億というふうに推計されております。この千四百四十二億という恩給費は、今回の改正後何ら増額措置をしないならば、その趨勢は、昭和四十一年度から二十億前後の傾向でもって減っていく、こういうふうな見通しでございます。  恩給費が国の財政の中でどのくらい占めておるか、また、どのくらい占めるのが妥当であるかというふうなお尋ねでございますけれども昭和三十六年度の一千二百三十億という恩給費は、国家財政の中で、一般予算の中で六・三%でございます。往年国家予算の一割ということが憂えられておりました時代から考えますと、ずっと低下いたしまして、現在は六・三%という状態でございます。これが昭和四十年度、先ほど申し上げました一千四百四十二億になりました場合の比率はどうなるであろうか、四十年度における財政規模はどうなるかということはわかりませんが、現在の三十七年度予算二兆四千二百六十八億を基礎にいたしましても、大体五・九%くらいにしかならない、五%台に落ちつくのであります。その意味におきまして、そう大きな財政的な負担ではないというふうにも考えられるわけでございます。しからば、一般予算の中でどのくらいの規模が妥当であるかというふうな問題は、なかなかむずかしい問題でございまして、私ども財政当局でありませんからお答えできませんが、列国の趨勢から考えまして、六、七%くらいのところはそう無理がないではなかろうか。ドイツあたりにおきましても、現在六%程度のところにきている、こう考えております。
  11. 草野一郎平

    草野委員 もう私きょうは長い質問をいたしませんが、恩給局長のお話を初めからずうっと聞いておりますと、まあまあこの程度でよかろうというふうな、非常に安易なといいますか、これである程度尽くしたのだというようなお考えのようにも受け取れるのでありますが、やはり今日の恩給制度というものは、この改正をもってしてもなお幾多の矛盾を残していると私は思うのです。私自身、今あげよと言われても、四つ五つの問題をあげることもできますが、それを申し上げている時間もありませんから、今は言いません。しかし、そういうことに対して、一ぺん恩給局事務当局としても真剣な検討をしてみたらどうかと私は思う。恩給局というのは、まことに妙な役所であって、何か政府の方で恩給の方針がきまると、その銭勘定をして銭払いをするというだけの役所で、恩給制度そのものに対して、あるいは一般公務員ベース上昇に伴ってどうあらねばならぬとか、そういうことに対して、意欲を燃やした役所とはお見かけ申しておりません。それをすることがよいのか、しない方が恩給局当局は安全なのか、それはどっちか知りません。しかし、非常に大きな矛盾幾つか持っております。公務員ベースが年々進んでいくのですから、その背景にある物価上昇生活費の膨張、そういう情勢の中で、恩給制度というものについて幾つかの問題を取り上げていって、でき得るならばこれはどうする、こう考えているということを、この問題を議決するまでに心がまえとして考えておいてもらいたい、そういうことを申し上げて、一応質問を打ち切りたいと思います。      ————◇—————
  12. 中島茂喜

    中島委員長 次に、臨時司法制度調査会設置法案議題とし、質疑に入ります。質疑申し出がありますので、これを許します。  なお、この際、お諮りいたします。  本法案審査最高裁判所当局より発言の申し出がありました際は、これを承認することといたしたいと存じますが、これに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 中島茂喜

    中島委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  飛鳥田一雄君。
  14. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは臨時司法調査会設置法案の問題について、一、二質疑を申し上げたいと思います。  まず、この臨時司法制度調査会目的を見ますと、法曹一元、裁判官等任用制度改善、さらには給与関係改善、こういうようなものが主たる内容になっておるわけです。もしそうだとすれば、それらは司法権が適正に運用されていくということを担保する基本的な問題になるではないか、こう思うのです。もしそうだとすれば、司法権独立、さらには司法権を適正に運用していくという責任をお持ちのはずの最高裁が、この臨時司法制度調査会の主管とならずして、第十条で「調査会に係る事項については、内閣法にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。」、こういうことになっているわけです。なぜこのようなちぐはぐな状態になっているのか、この点について、最高裁の方と大平さんから、一つおのおの立場で御説明をいただきたいと思います。
  15. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、この問題は、政府が立案すべき法律案司法制度に関する法律案前提といたしまして、その案にいかなる内容を盛るかということを調査審議することが目的になるわけでございます。従いまして、もちろん、裁判所あるいは最高裁判所の意見も十分徴さなければなりませんけれども、それはあくまでも政府におきますところの法案作成権前提になるわけでございます。従いまして、政府部内に置くということが相当であるという考え方でございます。
  16. 大平正芳

    大平政府委員 ただいま最高裁から御答弁がありましたような趣旨に私どもも考えております。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 政府の今後提出すべき法案、それは裁判所法改正とか、あるいは弁護士法改正とか、あるいはその他の二、三の法律改正するという形で最終的には結実するのだ、こう思います。しかし、そういう形式的な法案立案権という問題ではないのじゃないでしょうか。むしろ、裁判官弁護士と検察官がどういうふうに交流をしていくのか、そして裁判官保障というもの、いわゆる裁判権保障ではなく、生活保障というものが、どうあるべきかということは、むしろ、具体的な事実の問題、そういう環境をどう作っていくかという問題になるので、それを単に将来結実すべき法律案、そういう法律案立法権というような形で形式的に解釈をなさる、そういう態度の中に、何べんおやりになってもりっぱなものができてこない原因があるのじゃないかと私は考える。司法権独立、こういうことが言われます。なるほど、司法権独立という場合には、個々の裁判官が行なうべき裁判内容について他の機関が干渉しない、できないということだと法律的には思います。しかし、現実に裁判官がやみをやらないで飢え死にしてしまうような生活環境の中で、司法権独立などというものは、まれな一、二のすばらしい人にとってはあり得ても、全般にとってはあり得ないだろう、こう私たちは思うので、そういう現実の状態それ自身が非常に大切なんじゃないか。そういう点から考えて参りますと、何か立案権というような形式的な点にこだわって、最高裁は問題を回避しているのじゃないか、こう私たちは思うわけです。現実に委員の構成を拝見しても、この中で、裁判官は三人、検察官は三人です。そして事務局も内閣です。最高裁は、一体この中で、出てきてお行儀よく意見を述べて帰られて、それで足れりとされるのですか。そういう態度自身に非常に消極さ——司法権独立というものが、本来であるならば、裁判官あるいは裁判制度の積極さを担保するものでなければならないのに、実は逆にそこに閉じこもってサザエのようにからを固くしていくという消極さに、現実の段階では転化している。それで国民の司法権に対する信頼をつなぐなどということはもってのほかです。そういう消極さがここにもすでに現われているのじゃないだろうか、こう私たちは考えざるを得ないわけです。なるほど、大平さんのようなりっぱな方が長官でおられて、そして、広く裁判制度というものについて公正な知識を集めていく、おれはそうしてやる、そういうお考えはりっぱですし、それは信じてもよいのだろうと思いますが、しかし、私は、態度の問題じゃないだろうか、こういう感じがするわけです。もっと積極的に最高裁が、裁判制度あるいは裁判官任用制度というものに対して、おれは責任を負うのだという気魄、気がまえを、なぜこの法案の中に出さないのだろうか。立法権が内閣にございますからなどという、そんな消極的な態度では、何べんおやりになったってりっぱなものはできないのじゃないだろうか、こう私たちは考えるわけです。個人的なことを申し上げて恐縮ですが、私も法律で何年か飯を食ってきました。そしてその中で一番痛感いたしますのは、やはり最高裁が日本の法曹に対して、おれが責任を負ってやるのだという強い気魄をお出しにならないところに、基本的な問題があるのではないだろうかという感じがするわけです。そういう意味で、裁判官任用制度及び給与制度というもの、そして法曹一元の制度というものは、広い意味で司法権独立の基盤をなしている、富士山でいえばすそ野をなしているものだと考えないわけにいかない。そういう点で、もうお出しになってしまったものはやむを得ないと思いますが、しかし、何か最高裁がもっと責任をもって積極的にそれらの職域にある人々の生活を考えるというかまえを出せないものでしょうか。この点について最高裁はいかがお考えですか。
  18. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 裁判所に関係いたします法律案というのは、直接間接に司法権独立を担保するものであるということは、ただいま飛鳥田委員の御意見の通りだと私たちは考える次第でございます。  さて、この臨時司法制度調査会をどこに置くかということに関しましては、ただいま政府委員からも御答弁がありましたように、この調査会によって審議いたしました結果、これは法律案として諮っていける、あるいはそれに伴って予算を要求するというような、いろいろな関係が出て参るわけでございます。最高裁判所といたしましては、これが内閣に置かれるということについては特に異議はないわけでございまして、私たちといたしましては、別にこれによって最高裁判所司法権独立を主張することにおいて怠惰であるということはないと考えておるわけであります。私たちといたしましても、この委員会委員等を派遣することができることになっておりますので、その際には、十分裁判所立場というものを御説明申し上げて、裁判所の意見がこの調査会審議に十分に反映するように努力を続けて参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もうその点について押し問答をしても仕方がないと思うのです。そこで、官房長官に伺いたいと思いますが、第九条を見ますと、「事務局長は、内閣総理大臣が任命する。」こういうことになっておりますが、今申し上げたような実情にあるわけでして、この法案の一番重要な問題は、やはり事務局長の選任、そして事務局長がどのような方向でこれを運営していくかという点に問題があるだろう、こう思うわけです。とするならば、何といっても、裁判官生活保障という問題と、この法案司法制度、いわゆる裁判制度というものと、無関係には運用できないわけです。ですから、この事務局長というものは、当然最高裁の側から任命をせらるべきだと思いますが、そういう点についてのお含みは今のところないのでしょうか。主管大臣が総理大臣、そして事務局長も内閣の方、こういうことでは、最高裁との関係というものは切れていってしまいますし、最高裁自身の主張は、今幾らおいばりになっても、そう簡単に通るものではありません。やはり事務局長ぐらいを最高裁に割り当てない限り、そういうバランスはとれないのじゃないだろうか、こう思いますので、その点について何かお含みがあれば伺いたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平政府委員 この調査会を内閣に置くことについて、先ほど御論議がございましたが、私ども内閣に置いて内閣がコントロールしようというような考えは持っていないのです。内閣の屋台を開放しまして、広く朝野の良識を集めて、司法制度の発展に資したいということに尽きるわけでございます。また、法曹界の実情から申しましても、非常に大きな期待を持たれておるように私ども承知いたしております。今問題の事務局長の人選ということが死命を制する大事なことだということにつきましても、飛鳥田委員と私は認識を一にするものでございまして、必ずしも私どもで勝手に任命しようなんて思っておりませんで、今御指摘がございましたように、その職にふさわしい有能な人材でございますれば、何もとらわれるところなく御就任願おうと思っておるわけでございます。実は、これは法律を作りましたあとから気がついたのですけれども一般職になっておるのです。一般職となりますと、実は人選の範囲が狭くなりはしないかと今心配いたしておりますが、そういう方向で適当な方をお願いするということで、支障がございますれば、また国会と御相談してもいいぐらいの気持を持っておるわけでございます。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それを次に伺おうと思っておったのですが、最高裁の方が、かりに裁判官の身分を持っていらっしゃる方が事務局長に就任をする場合には、やはり一応退職してこれに就任するという形をとらざるを得ないわけですか。
  22. 大平正芳

    大平政府委員 さようになると思います。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 すると、たとえば同様なことは、弁護士をやっていらっしゃる方が就任をなさる場合でも、弁護士の登録を取り消さなければならぬ、こういうことになりますね。
  24. 大平正芳

    大平政府委員 弁護士法でそうなっておると承知しております。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その点について、何か今からでも救済の方法はないものでしょうか。たとえば法務省の方がなられるとすれば、大がい検察官か何かの身分を持っておられる、裁判官がなられるとすれば裁判官の身分を持っておられる、弁護士がなられるとすれば弁護士の身分を持っておられる。そうすると、結局、だれだって一時その身分をはずれるのはいやですから、結局ちゅうちょする。こういうことで、しょせんは、内閣官房の中のどなたかが事務局長になるという形にならざるを得ない場合があるのじゃないだろうか。そういう点から考えてみると、この問題は、今からでも政府の方で何か修正をなさるという方法を——まだここにあるのですからいいと思いますが、一つ考えていただかないと、狭くなってしまうのではないだろうかという感じがいたします。  さらに、専門委員等の問題については、そういう障害はないわけですね。
  26. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申しましたように、私どもきわめて開放的な考えを持っていますので、だれでなければならぬというようには考えておりません。従って、今の事務局長になっていただく方を広く求める場合の法制上の制限につきましては、実は弁護士会の方からも内々お話がございまして、何か考えられないかという御相談がございますので、これは法務大臣と相談いたしまして、善処したいと思います。私ども別に全然こだわって考えているわけではございません。  専門委員には別に制約はないようでございます。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 善処いたしますといっても、この法案もじきに上がるでしょうから、できるだけ早いところに善処をしていただかないと、間に合いませんので、一つお願いをしたいと思います。  それからその事務局長の問題ですが、僕は、先ほど最高裁からということを一例として申し上げましたが、これをおきめいただきます場合には、弁護士会あるいは法務省、最高裁等の意見を十分聞いていただくようにお願いをしたいと思います。そして、そのことによってまたトラブルが起きるようなことがあれば、法曹一元化などという問題は烏有に帰してしまうのですから、その点も一つお願いをしたいと思います。  そこで、こまかい問題になりますが、最高裁の方に伺いたいと思いますが、今裁判官の定員は何名で、何名が欠員ですか。
  28. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 お手元へ政府の方から臨時司法制度調査会設置法案参考資料というものがお配りしてあると思いますが、その二枚目に、三十六年十二月一日現在で、「下級裁判所裁判官の定員・現在員等」という表が出ております。これによりますと、高裁におきましては、高裁の長官、判事を合めまして定員が二百二十七名のところ、現在員二百十五名、従って欠員が十二名、地裁につきましては、判事が定員七百六十八名のところ、現在員七百六十三名で、欠員が五名、判事補の定員が三百六十九名のところ、現在員三百六十七名で、欠員二名、家庭裁判所におきましては、判事が定員百九十三名のところ、現在員百七十七名、従って欠員十六名、判事補が定員百四十三名のところ、現在員三十八名で、欠員五名、簡易裁判所につきましては、現定員七百名のところ、現在員六百八十一名で、欠員十九名、こういうことになっております。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、ほとんど定員に近い数を持っていらっしゃる、高裁を除けば。たとえば地裁の判事補の場合には、定員三百六十九名、現在員三百六十七名、欠員二名、こういうことになるわけですね。そうすると、今度の裁判官任用制度及び給与制度に関する事項、法曹一元化の制度、こういう御指定の中には、大体欠員が非常に多いというようなことは入ってこないわけですね。大体定員は充足していると考えていいわけですね。
  30. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、合計で申し上げますと、高裁の長官、判事につきましては欠員が三十三名、判事補の欠員が七名、簡易裁判所の判事の欠員が十九名となっているわけであります。これは、現在の定員がこれで十分だという前提に立ちます限り、定員が必ずしも多くないということは言えるかもしれません。しかし、私どもといたしましては、たとえば判事の欠員が三十三名ということは、これは実務の運用からいたしまして、相当大きな欠員であるというふうに考えるわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、現在の事件の状況等から見まして、現在の定員が必ずしも司法の運営に適正に十分であるということは考えていないわけでございまして、毎年裁判官の増員ということを要望して参っておるわけでございますけれども、御承知の通り、裁判官の任用をいたしますためには、その給源に隘路があるわけであります。従って、そういう面からいたしまして、裁判官任用の給源を拡大いたしますために、法曹一元化ということが強力に進められなければならないというような観点に立ちますと、この調査会において、法曹一元の問題にからみまして裁判官任用制度ということが論議されますということは、私どもとして非常に期待をつないでおる次第でございます。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、結局、定員充足の問題でなく、定員を拡大しなければならぬという問題も、この臨時司法制度調査会の主たる内容になるわけですか。
  32. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 ただいま飛鳥田委員のおっしゃる通りでございます。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 だとするならば、先ほど申し上げたように、非常に重要なことで、最高裁がその点について具体的なことをみんな知っているわけですから、単に委員を送ったり何かするだけではなしに、もっとその責任をはっきりと、積極性をこの法案の中でお示しになる必要があったのじゃないかという感じが私はするわけです。  それでは法務省の方に伺いますが、検察官の定員とその充足の状況はどうでしょうか。
  34. 津田實

    津田政府委員 これもお手元にお配りしてあります参考資料の中にございますが、検察官につきましては、現在欠員は最高検におきまして四人、高等検察庁におきまして十二人、地方検察庁におきまして四十人、合計五十六人、それから副検事の方は十九人、かようになっております。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ここでも当然定員をふやしていくという問題が出てこなければならぬわけですが、そういった問題も、この司法制度調査会の主たる内容になっておりますか。
  36. 津田實

    津田政府委員 ただいまの点、これは裁判官につきましても検察官につきましても同じ問題でございますが、検察官につきましては、検事につきまして五十六人、判事補以上、判事につきまして約四十人の欠員と申しますものは、数から見れば必ずしも多くないように思われますけれども、実際問題といたしまして、非常に補充困難でございまして、これを充足して、なおかつ定員増を求めるというような機会は、なかなか回ってこないわけです。そういう意味におきまして、完全に現定員を充足し得るならば、この定員増加の問題は、比較的政府部内においても簡単に考えておりますし、予算的にもさように困難な問題ではございません。額としてはわずかなものであります。従いまして、問題は、現在の欠員、あるいは将来に優秀なる人をいかにして裁判官、検察官に求め得るかという根本問題さえ解決すれば、その定員充足の問題はさして困難な問題でないというふうに考えますし、それをこの点で御調査、審議願うほどのことではないというふうに考えまして、法曹一元の問題、それから任用制度給与制度の問題を解決する、こういうことに中心を置いたわけでございます。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この際、ちょっと横道ですが、検察官の場合に、非常に地域的なアンバランスが多いんじゃないでしょうか。たとえば各地方で、ある検察庁では一人頭の事件の数が百四十くらいあるいは百三十くらいだとすれば、横浜の検察庁などは百八十幾つというふうに、平均を百として、横浜などは約倍に近い事件の手持ちがあるわけです。そういうアンバランスを直していくということもかなり重要な問題ですが、それはこの司法制度調査会には無関係だ、法務省の中でやれる、こういうことですか。
  38. 津田實

    津田政府委員 結論を申し上げますと、その通りでございます。ただ、現在地方におきましては、非常に検事は少ないわけでございますが、大体において、東京、大阪あるいは六大都市の大都市に検事は比較的多くいるわけです。しかしながら、大都市には事件の数も非常に増加して参りますので、それに追っつかないという場合もありますけれども、地方におきましても最小限度の数の検事は、事件があってもなくてもと言えば悪いけれども、少なくとも確保しなければならぬという事情があろうと存じます。現在のところは、定員すなわち人員の充足が画期的にできない限りは、なかなか事件の負担の低下は困難であろうというふうに考えております。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今すぐおわかりにならなければ、あとでけっこうですが、裁判官及び検察官の定員の欠員の地域的な分布を一つ聞かしていただきたいと思います。私は、おそらく地方の方に欠員が多くて、中央には割と少ないという傾向が今後出てくるのじゃないだろうかという感じがいたしますので、これはあとでけっこうですから……。  そこで、もう一つ問題が出てくるのですが、そうした形で裁判官及び検察官の任用制度及び給与制度、法曹一元という問題を考えて、裁判官の充足あるいは検察官の充足をきちっとやっていきたい、こういう議論をこの臨時司法制度調査会でなすっていきますと、勢い実体法に触れてくる部分が非常に多いのじゃないか、こう思うわけです。たとえば法曹一元で、弁護士から急に裁判官になられる人、こういう人のことを考えてみても、今のようなこまかい書類をたくさん作ったり、煩瑣なことをやったりするような形では、おれはいやだという人が相当多いだろうと私は思うのです。そうすると、勢い刑事訴訟法の最高裁で出しておる規則とか、あるいは刑事訴訟法それ自体に対する何らかの改正という問題、その他も出てくるでありましょう。また、民事訴訟法の問題についても、実体法に触れてくる部分も出てくるのじゃないだろうか。そういうようなことまでこれは触れて議論をなさるおつもりですか。そういう問題は、他に法務省の中に法制審議会があって、それに諮問をしていただいておる、おれの方のこの調査会は無関係だというので、ただ形式的に法曹一元をどうしたらいいかという狭いワク内でおやりになるのですか。
  40. 津田實

    津田政府委員 この調査会におきましては、この調査会目的と申しますか、所掌事務にございますように、緊急かつ基本的、総合的な施策をきめていただくということでございます。わが国におきまして法曹一元の制度をとるかどうかということについての基本的、総合的施策をきめていただく。それによって基本方針をきめるわけでございます。それに対して必要な手続法の改正というようなことは、当然その後に考えなければならぬ問題であります。その問題につきましては、やはり法務省に法制審議会があることでもございますので、そういうところの審議によって結論を出すということになるわけでございますから、要するに、基本施策として法曹一元をとるべきか、裁判官任用制度を今のようにいわゆるキャリア・システムによるか、しからざるかということをここで調査審議して、結論を出していただく、こういう考え方であります。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 法曹一元という制度を、ただ外国の制度をそのまま日本に持ってくるという形で日本で実現できないことは、御存じの通りだろうと思うわけですけれども、一体、法曹一元がもし原則としてとられるとすれば、それに必要な最低の条件というものをどうお考えになっていらっしゃるのでしょうか。僕は、外国と日本とは相当条件が違うように思うのですが……。
  42. 津田實

    津田政府委員 ただいまの点は、もっぱら、この調査会ができますれば、そこにおいて調査審議していただく問題となると思うのでありますが、しかしながら、法曹一元をとるかどうかは別といたしまして、法曹一元の問題につきましては、これは日本弁護士連合会におきましても、また、在朝在野法曹で設けておりますところの日本法律家協会におきましても、多年検討をいたしておるわけであります。最近におきまして、日本法律家協会におきまして、具体案がある程度出ておりますが、それらで議論をいたしましたところによりましても、やはり現在の弁護士のあり方、あるいは法曹協会というようなもの、バー・アソシエーションというものを作るべきではないかというような考え方、あるいは弁護士事務所のあり方、あるいは検察官のあり方、こういうような問題を、そういう基礎的な条件を相当はっきりせしめなければ、法曹一元はできないということは、もう論議済みのことでございます。従いまして、そういう点につきましては、この調査会において当然御審議があることでありましょうし、私ども政府部内関係者はもちろんでありまするけれども弁護士会におきましても、あるいは裁判所におきましても、当然あらゆる資料を提供して、その調査、審議の御参考に資するということになるだろうというふうに考えております。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは、法曹一元化という制度がこの国に定着いたしますためには、そのための社会的な基盤か必要です。そしてまた、そのための最高裁、法務省等の基本的な態度も必要です。そういうものを抜きにして、ただ弁護士裁判官と検察官とをぐるぐる交流化すれば済むような安易なお考え方は、ぜひおとりにならないようにお願いしたいと思います。そのためには、十分な研究をお願いしたい、こう要望いたします。  と同時に、このごろ、私、最高裁の法曹一元化に対する態度などというものについて、かなりな疑問を抱かざるを得ないことを幾つか見聞きいたします。たとえば法曹一元化といいましても、その一番本元は、司法修習生、いわゆる司法修習という制度を抜きにするわけにはいかないわけです。弁護士でも、検事でも、裁判官でも、この最高裁に一応修習生として採用されて、二年間の修習期間を経てこない以上、その一元化の線に入ってこないわけです。その修習生に採用するという段階で、このごろ最高裁は非常に非民主的なことをやっていらっしゃるのではないか、こういうことを私は幾つか見聞きいたしております。たとえば司法試験を通って修習生に採用の願いを出しますと、思想調査をやる。そして、方々の弁護士さんや方々の検察官等からお願いしまして、採用いたします場合にも、お前は仲間に対して思想的に働きかけてはいかぬというような誓約書をお取りになる。そのために、中には、せっかく司法試験を通りながらも、学生時分に学生運動なんかをやったために、司法修習生になれずに、やむを得ず、一年間くらい最高裁の信用のありそうな弁護士さんのところに居そうろうをしてそこで働いて、もう一ぺん来年採用願いを出すというような形が非常に多いわけです。といたしまするならば、あらかじめ最高裁が思想的にあるいは生活的な問題からふるいをかけてしまって、自分のお気に召すやつだけをそういう法曹のルートに乗せておいて、その上に立って法曹一元化なんて言ってみたところで、なかなかむずかしいのじゃなかろうか、こう私は思うのですが、そういう私が見聞きいたしました事実があるのかないのか、一つ最高裁の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘になられましたような問題は、かつて国会においても論議されたように私も速記録で拝見いたしておるわけでございます。実は、私は司法修習生の採用のことについて所管いたしておりませんので、はっきりしたことは申し上げられないのですが、私の聞いたところによると、司法修習生の採用に際して、思想調査というものをいたしておる事実はないというように聞いておるわけでございます。ただ、修習生を採用いたしますについては、身上調査というものをやりますけれども、それは別にその人がどういう思想を持っておるかというようなことを調査する目的で行なっておるわけではございませんし、また、その人がいかなる思想を持っておるかということによってその採否を決定したことはないように聞いておる次第でございます。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ないとおっしゃるなら、ここで水かけ論になりますから、それはそのまま速記録にとどめておいていただいて、いずれかの機会に私は具体的な例を十例くらい出しましょう。そして、最高裁にその点についての反省をとっていただきませんと、あたかも思想的に法曹をセレクトしてしまうというようなことは、これは大へんなことです。かりにその方が共産党の党員であっても、それは憲法によって定められた合法政党ですから、そのことだけによってこれを拒否する理由はなかろうと私は思っておるわけです。ところが、そうでない事例がたくさんあります。きょう私その事例を持ってきておりませんので、名前や何かをきちっとあげてこの次にお示ししましょう。ともかく、そういう工合に法曹一元化の基盤にやはり何といっても最高裁なり法務省がきちっと民主的な態度を持していただかない限り、法曹一元化ということは、形だけあって実を失う、こういうおそれがあります。  それからもう一つ、第二の条件は、やはり生活的な条件です。今法務省の方でお調べになった範囲で、日本の弁護士さんの平均収入はどのくらいでしょうか。
  46. 津田實

    津田政府委員 法務省におきましては、日本の弁護士の所得につきまして調査をいたしたいとは存じておりまするけれども、これはしばしば日本弁護士連合会にも連絡いたしまして、その調査に何か資料をいただきたいということを申しておりますが、いまだ資料はいただいておりませんし、法務省が直接調査する方法というものはございません。従いまして、あるいは同僚とかいうものについて若干聞くという程度のことはありましても、それは公の資料と申すわけには参らぬわけです。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 大体税務署の方をお調べになればわかるはずですがね、僕らも税金を取られていますから。しかし、それはお調べにならないということもけっこうです。しかし、弁護士さんの収入と裁判官の収入というものは、かなり開いているんじゃないだろうか。この開きをどうして法曹一元化という問題にあたって埋めていくことができるか。やはり何といったって、資本主義社会においては経済生活というものは重要な問題ですから、これを一つお考え置きをいただきたいと思うわけです。ただいたずらに名誉を与えるというような考え方が、ともすればありがちです。しかし、裁判官が名誉で、弁護士は野人だというような考え方自身が非民主的な考え方で、そういうものにたよってはならないでしょう。そういう点で、当然裁判官になることによって快的な自分の思った通りの裁判ができるという、そういう面を開いてあげませんと、なかなか困難じゃないか。この点はぜひ十分な御研究をいただきたいと思います。  と同時に、それに付随してもう一つ、こういうことを考えていただく必要があるのではないか。裁判官は非常に転任があります。検察官も転任があります。私の大学の友人で、検察官の子供がいました。検事正の子供でしたが、おやじはやはり自分の跡継ぎにしたくてうずうずしておったわけです。それで私などにも、飛鳥田さんや、どうぞうちのせがれも一緒に法律を勉強して検察官——当時でいえば検事ですね。検事になれるようにといって、盛んに僕らにおせじを使って、ごちそうになったこともあります。ところが、その男に言わせると、絶対にいやだ、おれは小学校を三度、中学を四度かわった、従って、おれはいつも新しい学級にいるのだ、だから、君らは小学校の友だちとか中学校の友だちとかをいかにもなつかしがって物語るけれども、おれにはそれらの友だちというものがない、いつも新しい教室に入っていって、今度このやろうに負けるもんか、一番になってやろうという形でしか、自分の学生生活はなかった、やっと大学や高等学校に来て友だちらしい友だちができたということを言っておりました。自分の子供にそういう思いをさせるという気持は今後絶対にない、こういうことを言っておりましたが、これなども、私は、非常に重要なことではないだろうか、こう思うわけです。沖繩から山形県にその人のおやじは赴任をいたしました。そういうことがあっちこっちに行なわれるということでは、法曹一元化ということはおそらく不可能だろう。といって、一定の場所にあまり長く検察官や裁判官を置くことは、弊害があることは私たちもわかります。そこに何かの調和点を見出していただきませんと、問題は解決しないのじゃないかという感じがするわけですが、その点について、今法務省だとか最高裁の方ではどうお考えになっているのでしょうか。
  48. 津田實

    津田政府委員 ただいま御指摘の問題は、まことにごもっともな問題でございまして、私どももかねがねいろいろその点については検討と申しますか、非常に腐心いたしておる点でございます。と申しますのは、もちろん、給与の問題は、やはり在野法曹からきていただく以上、相当な給与を出さなければいかぬということについては論がないわけであります。しかしながら、今の転任子弟の教育の問題、あるいは官舎と申しますか、宿舎の問題、あるいは研究の環境の問題とか、こういう問題を相当解決しなければ、やはり弁護士から適任者を得ることは困難である。そういう意味におきまして、今御指摘の子弟の教育上の事情ということは、当然考えなければならぬ問題でございます。しかしながら、一面考えてみると、それらの点は、一般国家公務員の共通の問題でもあるわけです。そこで、共通の問題ではありまするけれども、現実に裁判官に、あるいは検察官になり手がないという場合には、少なくともそれらの者については優先的にこういう問題を解決しなければならないというふうに考えておるわけでございます。若干の共済施設等におきまして、法務省においては東京に子弟の通学寮というものも設けておりますが、裁判所にもそういう施設を設けられておるようでございます。そういうような、やや微温的ではありますが、ある程度解決の一助というものもいたしておるわけでございます。将来の問題としては、全くお説の通り、十分解決しなければならぬ問題だと考えております。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 弁護士裁判官になる、検察官になるという場合には、定時的なごく短期間を限ってなるということも考えていらっしゃるのですか。と申しますのは、弁護士が自分の職業を廃止して裁判官になる。二年か三年なら、戻ってきてまた弁護士をやれるわけです。ところが、十年、十五年やってしまいますと、もう戻るわけにはいきませんので、もうどんなにいじめられてもその職にとどまらざるを得ない状況になりますから、そういうことも臨時司法制度調査会にかける資料としてお考えになっていらっしゃるかどうか。
  50. 津田實

    津田政府委員 もちろん、そういう問題があるわけでございますが、御承知のように、裁判官につきましては、一任期が十年、一応裁判所としては最小限度十年の任期は勤めてもらいたいということが前提になるであろうと思います。検察官につきましても、任期の制限はございませんけれども、やはり二年とか三年たって、ようやく一人前と申しますか、使えるようになってやめることは困るということは、当然考えられる。しかしながら、かりに十年なら十年、一任期を勤めた場合の退職手当等につきましては、特別の措置を考えるということは当然出てくる問題だと思います。従いまして、そういう裁判官につきましては、十年一任期勤めた場合の特別退職金も考えて、さらに在野法曹に戻られた場合の不便あるいは困難というものを除去することは考えられるわけであります。しかしながら、法曹一元化がかりにできました場合には、やはりアメリカにおきますように、弁護士につきましては、合同事務所と申しますか、ロー・ファームと申しますか、こう制度が相当発達しない限りは、なかなか今の退職金だけでそれを解決しようということは、困難であろうというふうにも考えられるわけであります。
  51. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 最高裁の方に伺いたいのですが、私は、裁判官弁護士がなっていかない一番大きな原因は、先ほど申し上げたように、経済的な問題だと思いますが、しかし、これから先は弁護士会にしかられるかしれませんが、僕自身の感情で言えば、めんどうくさいという印象の方が強いわけです。弁護士をやっておれば比較的のんきにやれる。ところが、裁判官なり検察官になれば、一々書類もきちっと作らなければならず、何もしなければならずという形です。片っ方は非常に事務的にきちっとやらなければならぬ。こちらは、どちらかといえばなまけなまけでもできる。まあ、悪口ですけれども、そういうアンバランスが現実にある。このアンバランスをなくさない限り、こっちからこっちに移っていこうという気持になるはずがないと思うのです。ですから、別に訴訟制度を煩瑣にしろ、複雑にしろという意味ではないのですが、そういう意味ではなく、逆にいえば訴訟制度をもっと民主的にすべきだと思うのですが、何らかの形で訴訟制度に手を加えていかない限り、検察官、裁判官の持っておる気分的な雰囲気と、弁護士の持っておる気分的な雰囲気とが埋まらないのじゃないか。その限りにおいては、どうもこっちからこっちへ行くのはめんどうくさい、この年になって、もう四十づらさげたこの年になって行って、一々こまかい書類を作るのではという印象が、大ぜいの人間をチェックしていくだろうと思うのです。そういう意味で、法曹一元の基本的な問題としては、訴訟制度をもっと民主的にして、むしろ、仕事の重心を訴訟当事者の方に移していくという形をとっていかない限り、法曹一元という形はできないのじゃないかという感じが私はするわけです。ですから、当然、法曹一元のためには経済的な理由、そういうものは取り除いていく考慮をしていただく、同時に、訴訟法なり実体法なり、そういうものにまである程度手を加えていきませんと、一元というのはむずかしいのじゃないか。たとえば英米の訴訟制度なんか見ますと、裁判官の具体的に行なうところは非常に少ないわけです。そうして双方の弁護士、あるいは刑事事件でいえば弁護人と検察官の双方に仕事がうんと課されていくわけです。だから、この人たちが裁判官の席にいつすわっても、かえって仕事が楽にこそなれ、煩瑣な手続からむしろ解放されるという条件が、英米法の系統にはかなり熟しているんじゃないだろうか。だから、弁護士から検察官にも裁判官にもかなり気軽にかわっていける、こう私たちは思っておるわけです。ですから、私は、臨時司法制度調査会を別建てにしていくやり方に一つの疑問を持たざるを得ない。そういう訴訟を遂行していく基本法、そういうものを同時に考えていらっしゃらないと問題があるんじゃないか。そういう意味では、法制審議会というものが法務省の中にあるわけですが、ここで並行してこれを論じていいんじゃないかという感じが私はしておったわけです。しかし、別に作ってはいけないというものでもありませんから、別にそのことに異議は述べないのですが、そういう点まで最高裁の方じゃお考えになっていただいて、法曹一元化の行なわれる基本的な訴訟制度を検討してみるということ、そうでなく、上だけで何か三者交流するということだけに局限をしていきますと、おそらく失敗するだろう、こんな感じがいたしますが、どうでしょうか。
  52. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 ただいま飛鳥田委員から御指摘になりましたように、弁護士から裁判官に任用された場合に、その仕事のやり方について非常に煩瑣であるということで、法曹一元に隘路があるということは、御指摘の通りだと私も考えるわけでございます。それについて、ただいま御指摘にございましたように、実体法の関係その他訴訟法の関係についてどういうふうな態度をとっていくかというようなことにつきましては、これは先ほど政府委員からも御答弁がございましたように、たとえば法務省所管の法制審議会等の関係もございまして、裁判所がそういった法律案の立案のことについて意見を申し上げることは差し控えたいと存ずるのでございますが、裁判所といたしましても、法曹一元の実現によって弁護士から多数の裁判官が出るというような場合において、安んじて事務をやっていただくというような態勢を、裁判所限りにおいてできることは十分やっていかなければならないと考えるわけであります。たとえば裁判官の補助人員を強化することによって、裁判官でなくても済むようなことは、なるべくそういった補助機構に仕事を流していくというようなことも、一つ考え方だろうと思うのであります。また、戦後におきましては、当事者主義というものが民事、刑事を問わず徹底されまして、当事者が訴訟進行の、言葉はよくありませんが、リーダーシップをとっております。それに対して裁判官が訴訟指揮を適正に行使するということによって、民主的な裁判をやっていくということになっておるわけであります。これが必ずしも十分に所期通りには行なわれていないという問題もございまして、今後十分に検討を加えて参りたいと考えております。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 最後に、もう一つ、私は問題があると思うのです。それは裁判官の仕事とうらはらの形で仕事をしていくべき裁判所の書記官、あるいは検察官とうらはらの関係で仕事をしていくべき検察庁の書記官、こういう人たちが非常に重労働のもとにあえいでいるわけです。おそらくどの書記官でも、調書を作るのに、家へ持ち帰って調書を作り直すとか、あるいは残業で調書を作り直すとかいうことをしない書記官はない。どこでもそうです。なるほど速記をこのごろ非常に採用されておりますが、速記それ自身にも問題があります。一つの法廷をやって、その速記がきちっとでき上がってくるまでには二カ月近くかかる。こういうような問題点もありますけれども、速記士自身が翻訳係を兼ねておりますために、非常な労働の過重を強いられている、こういう点もあります。いずれにもせよ、裁判官とうらはらの仕事をすべき人々の定員が非常に少ない、こういう問題がやはりあるのじゃないか。こういう問題がある以上、弁護士の側から裁判官に喜んでなってくるということは考えられない。非常に煩瑣ないろいろな仕事を結局裁判官が自分でもやらなければならなくなりますし、また、書記官自身も非常に辛いのを見ておりますと、裁判官になっておれもやろうという気持には弁護士の方でもならないのじゃないだろうか。そういう点で、当然書記官の増員、こういうことを最高裁は、この法曹一元の前提としておやりにならなければならぬと思うのですが、この点についてどうでしょうか。
  54. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 裁判官の事務の負担が非常に重いということに伴いまして、書記官その他の補助機構の人々の事務の負担も相当大きいということは、ただいま御指摘の通りであります。そしてわれわれといたしましては、先ほど答弁申し上げましたように、裁判官の補助機構の充実ということを大きな重点的な方策として、毎年努力を続けて参っておる次第でございます。従いまして、書記官その他の補助陣営の定員の増加、そういった面につきまして、いろいろこの国会におきましても御審議を願い、御援助をいただいて参った次第でございます。今回の国会におきましても、裁判所職員定員法の関係で詳しく申し上げたのでありますけれども、そういった面で、最高裁判所といたしましても、裁判官の増員はもちろんのこと、これが補助陣営についての強化という点について、今後とも一そうの努力を続けて参りたいというふうに考えております。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もうたくさん申し上げても仕方がないのですが、毎年々々国会に出てくるちびちびした増員程度では間に合わないのですよ。もっと大幅に、最高裁は自信を持ってずばり政府に要求してくる、こういうきちっとした積極的な態度をおとりにならないと、ばんそうこうをそのときそのときに張っていくという程度に終わってしまうわけです。そういうことでは法曹一元なんというものの基盤はないわけです。ですから、こういう調査会をお作りになることはけっこうです。しかし、その基盤になるべきものをどんどん整備していただくということを、一つ私の方から強くお願いをしておきたいと思います。これは最高裁だけでなく、法務省についても同様です。  以上で終わります。
  56. 中島茂喜

    中島委員長 受田新吉君。
  57. 受田新吉

    ○受田委員 私は、簡単に一、二の点をただしたいと思います。  きょうは最高裁の総務局長がおいでになっておりますし、津田さんは法制調査の責任者でありますから、この臨時司法制度調査会の問題点についてはとくと御研究になっておると思います。私が申し上げたいことは、司法官、検察官、そういう身分で一般職の行政官を兼ねておる、最高裁の事務局にも、判事で事務局の責任者になっておられる方があるのじゃないかと思いますし、法務省の局、課長の皆さんの中にも、検事の身分でやっておる方がありますが、そういう者は今度の設置法には一向関係ない問題ですか。
  58. 津田實

    津田政府委員 今回の調査会におきましては、裁判官、検察官任用制度の問題を論議するということになっております。任用制度と申しますのは、裁判官の現在の初任者をいかにするかということの問題である。あと、裁判官につきましてその者を司法行政につけるという問題、あるいは検察官を法務行政の一部につけるというような問題は、自後の運用の問題ということになろうかというふうに考えますが、直接この調査会の対象としては、はなはだ遠いと申しますか、そういう問題になるのではないか。すなわち、裁判官あるいは検察官の初任者をどのような制度のもとに採るかということだというふうに考えておる次第であります。
  59. 受田新吉

    ○受田委員 しかし、これは問題があると思うのですが、ほかの役所にはないことを法務省はやっておられるわけです。身分は判事、検事である。そういう者が、最高裁判所の判事や検事でない一般行政事務をやっている。こういう問題は、任用に関する基本的な問題としては非常に疑点があると思うのですが、そうお考えになりませんか。
  60. 津田實

    津田政府委員 法務省におきまするところの行政事務のうち、あるいは最高裁判所事務総局におきますところの司法行政事務のうち、裁判官あるいは検察官の経験者でなければ行ない得ないような行政事務は当然あるわけです。これは、たとえば法務省の刑事局におきましては、検察行政を指揮するということになっておりますので、検察官の経験がなければできないような問題、これはまあ多々あるわけです。裁判所におきましても、指揮ということはございませんけれども、いろいろな資料の収集とかその他資料の分析とかいうことにつきましては、やはりそういうような事務があろうと私どもは考えております。従いまして、かりに任用制度の問題を除外すれば、そういう経験者をもって充てなければならない、こういうことになるわけです。そういたしますと、その経験者につきましてどういう処遇を与えるかという問題に結局帰着するのでありまして、先ほど来お話が出ましたように、給与の面において相当の開きが出れば、当然そういう一般行政事務を扱う者がなくなる。そうすれば、しろうとの者に事務をあずけていいかということになれば、それはできないというような問題があります。従いまして、この兼任と申しますか、重職と申しますか、そういう制度が必然的に出てきたわけでございまして、今日におきまして、今日の一般国家公務員の制度の中におきましては、これはやむを得ない制度だというふうに私は考えております。
  61. 受田新吉

    ○受田委員 一般職の職員が判事であったり検事であったりするということは、やはり行政系統を混乱させることになると思うのです。一般行政事務をやるわけなんですからね。判事の任務を一つもやるわけじゃない。検事の仕事をやるわけじゃない。ですから、それが身分が判事や検事であるということは、今特別の知識が必要であり、経験が要るというお話でありましても、それは必要であったとしても、一般行政事務においては間違いないわけなのです。みずから判事や検事の職務を行なうわけじゃないのですから、それが一般行政の中へ判事や検事の身分で流れ込んでおるという行き方は、行政事務の系統を乱すものであると私は思うわけなのです。それは給与の問題を今例をとられましたが、給与がもし低いということになれば、たとえば二等級の一番高い号俸を適用すればいいのであって、そうした措置ができるわけなんです。局長にしても課長にしても、一番高い号俸、検事や判事に近い号俸、それがなければ、さらに号俸を延伸する措置をとればいいわけでありますから、そういう行き方から考えると、一般職の職員であって一般行政を担当する者が、判事や検事の身分を持っておらぬと困るんだという今の御理論は、筋が通らないと私は思いますが、これはどうお考えですか。
  62. 津田實

    津田政府委員 ただいま御指摘のような問題があると思います。しかしながら、先ほどここに飛鳥田委員の御議論もございましたように、この司法制度調査会の事務局は、判事あるいは弁護士の身分あるいは弁護士の身分を保有したまま事務局長にしないと、適任者を得られないという御意見がございました。私はその御意見に必ずしも全面的に賛成ではございませんけれども、しかし、そういう御意見もあるわけでございます。そういたしますると、今の判事あるいは検事の身分をはずして、何を好んで司法行政なり法務行政にいくかということが当然出てくるわけであります。そういう、いわば現在判事なり検事なりをしておった者で、しかも行政に当てなければならぬという必然性から、やはりこういう今の事務職、あるいは判事におきまして最高裁事務局の事務をとるということが生まれて参ったものというふうに考えられるわけでございまして、ただいま仰せのありましたように、なるほど行政事務に判事や検事の身分でいくことはおかしいじゃないかとおっしゃるのは、まことにごもっともな点がございますけれども、そういうような事情のもとに行なわれておるわけでありますから、決してこれがいい制度だというふうには私どもは申しませんけれども、やむを得ない制度であるというふうに申すほかはないと考えておる次第でございます。
  63. 受田新吉

    ○受田委員 一般行政官になる場合は、判事や検事を退任すればいいのです。純粋な一般行政官になって、また司法官に帰り、検察官に帰る場合にはまたその身分を復元すればいいわけです。その身分をわざわざ置いておいて、兼務のような形で官と職とを両方またにかけておるという行き方でなくて、あっさり判事や検事をやめて、そして一般職に飛び込む。判事の現職にある人が判事をやめて、一般行政官になればいい。また判事に戻る道を今度次に考えればいいわけでありますから、判事や検事の身分を持ったままでそこへ行くということが問題だと私は申し上げておる。退任してもいいでしょう、復元できないことはないわけですから。その点をお尋ねしておるのです。
  64. 津田實

    津田政府委員 ただいま申し上げましたように、先ほど飛鳥田委員の例でございますと、弁護士なり検察官なり裁判官の身分を保持しながら事務局長になる方が、人を得られやすいというふうな御意見があったわけであります。それはやはり一つの御意見であり、私どももこの場合には必ずしもそれに同調すると申しますか、御賛成申し上げるわけではございませんけれども、しかしながら、今の裁判官の身分を保有しながら最高裁における司法行政事務を扱うということは、やはり判事としては、そうすれば適任者を得やすいということはあり得ると思うのです。その点を御了解を願いたいというふうにこの問題については考えるわけであります。従いまして、すっぱり割り切るという考え方もむろんあります。ありまするけれども、やはり裁判官なり検察官を多年した者が司法行政にあずかる場合に、その身分を保有したいというその人たちの心理というものも見なければ、適任者を得られないということがある。問題は、適任者を得られるかどうかということにかかっておると私は思うのであります。
  65. 受田新吉

    ○受田委員 適任者は、また復元するときに高い地位を与えていけば、それで十分適任者を得られるわけなんです。たとえば法務省の刑事局長になられた人が検事に帰られようとするときに、高検の長に持っていかれればいいことなんで、そういう次のポストがりっぱなものが待ち受けておるならば、その一般職の系統を乱してまで、そこへちょっと身分を兼ねて乗り込むという行き方については、そう未練はないと私は思うのです。人材が得られがたいということは、次のポストに対する約束がないというようなことにも関連すると思う。次のポストがりっぱなものであれば、その一般行政職の期間をまる裸で一般行政官として飛び込むということは、私は可能であると思う。人が得られないとかなんとかいう問題の前に、そういう優遇措置で次の問題がはっきりしていない危険を感じていると私は思うのです。ちゃんとそういう対策が用意なされるならば、こういう行政系統を混乱させるような例外を作らないで、筋を通していくということがいいと思うし、そのことが、また法務省の権威を保つことにもなるし、他の省とのバランスを保つことにもなると私は思うのですが、この問題は、他の省に対して官房長を持っておらぬ法務省としては、他省との連絡協調に事を欠くことも一方で考えられるのじゃないかと思いまするし、官房長を置けというわけではないですが、そうした何か孤立した法務省の印象を国民に与える危険があると思うのです。今私が申し上げている問題は、判事の仕事をしていない人が——最高裁の総務局長さんは今判事の身分ですか。
  66. 桑原正憲

    ○桑原最高裁判所長官代理者 私も判事のままで総務局長に指名されているわけであります。
  67. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、判事の仕事をされないで、一般行政事務だけやっておられるわけですね。それから検察官の身分で入った人もそうなんですね。これは非常に問題があると思います。きょうは時間の都合でこれでよしますが、これは官房長官にあわせて検討してもらおうと思った問題なんですが、非常に重大な問題がひそんでいると私思うのです。委員長、次の機会にもう一度官房長官に見解をただしてみたいと思います。  これで質問を終わります。
  68. 中島茂喜

    中島委員長 猪俣君。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は、材料の提出を、この次の十二日になりますか、していただいて、質問の資料にしたいと思います。  一つは、過去三カ年間の司法修習生が判事、検事、弁護士等、どういう方面に就職したか、その比率ですね。何人のうち何人が判事になり、検事になり、弁護士になっているかということ、これはこの次でけっこうです。  それから二点といたしましては、法務省の中の法制審議会の官制といいますか、規則といいますか、それと、現在法制審議委員になっている人の身分、氏名、そういうもの。  それから三点としては、法務省の中に訟務局というのがございましょう、その訟務局の職員の身分、今の問題とからみますから、検事の職の人が大部分だと思いますが、その身分と人数ですね、そういうものをお知らせ願いたい。  それから委員長にお願いしますが、この次のこの法案審議に際しましては、法制審議会の幹事ですか、それは多分竹内刑事局長が幹事じゃないか、それで、実際の事務をやっていると思いますので、法務省刑事局長の竹内さんの御出席をいただきたい、こう思うわけであります。これは委員長の方から一つお願いいたします。
  70. 津田實

    津田政府委員 ただいまの最初の、司法修習生からの判事、検事、弁護士その他の採用状況、これはお手元の末尾の表に出ております。これでごらん願いたいと思います。あとの資料につきましては、準備をいたしまして、次会にお知らせいたします。  それから法制審議会の事務局に当たるのは、私のところでやっております。私はもちろん幹事でございますが、私の方がこの法制審議会の事務をやっておりますから、もし法制審議会のことでございましたら、私の方にお尋ね下さい。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうですか、それならそれでよろしゅうございます。      ————◇—————
  72. 中島茂喜

    中島委員長 次に、労働省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を継続いたします。  質疑を許します。石山權作君
  73. 石山權作

    石山委員 賃金の問題が労働省から設置法として出ているとき、時あたかも労働界では春闘でございます。大へんいろいろな形で賃上げ闘争が行なわれております。一部の新聞の社説等によりますと、その組合のやったことに関するよしあしの批評もございますけれども一般的な問題として労働省が考えていられるだろうと思われる節が一つございます。それは、一般の労働組合が戦後十何年ずっとやってきているのですが、言うところのスケジュール闘争というふうなものは、こういうふうな経済情勢の場合には考え改める必要があるのではないかというふうな示唆に富んだ社説が出ておるわけです。スケジュール闘争をやるとかやらないとかいうのは、もちろん組合の自主的なやり方でございますけれども、現在のような経済情勢というふうなところに、スケジュール闘争を労働組合が十年以上もやっているのだから、ここら辺で考え直す必要があるのではないか、もっと深く掘り下げたことは、社説を書いた当事者でなければわからぬわけですけれども、労働運動あるいは日本の労働賃金、こういうふうなものを見ていられる労働省としては、日本の労働組合運動の賃上げ闘争というものがある時期にきているんだ、方向転換する必要性があるのではないかというふうなお考えがあるのかどうか、あるとすれば、労働省としては何が好ましいのか、どういう格好が好ましいのか、考えているとすれば、そういうふうなこともこの際聞かせていただきたいと思います。
  74. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいまの御質問、一がいにお答えすることは非常にむずかしいことであると私は考えるのでございます。いわゆるスケジュール闘争について世の見方もいろいろでございますが、今石山さんは、そういうことについて、ある時期にきているのではないかという表現をされたのでございます。私も、曲がり角にきたとかなんとかいうほどの表現はいかがかと思いますが、確かにある時期という感じはいたすわけでございます。しかし、そのある時期ということが的確にどういう時期かということになると、これまたなかなかむずかしい問題であろうと思います。いずれにいたしましても、そういうことは言えると思うし、現に労働組合の関係の諸君も、同じスケジュール闘争にいたしましても、今回の場合等は、情勢の推移その他いろいろの事情を考慮して、かなりこのスケジュール闘争について弾力的に実際の運びをやっているように私は見受けるわけでございます。その辺にも、労働組合それ自体の人々もいろいろ考えているのではないかというふうな気がする次第でございます。いずれにいたしましても、労使双方が相互に理解と信頼の上に立って、うまく話し合いをつけていくようにしなければならぬ。大きな闘争をするということは、いずれにしても労使双方にとって犠牲が大きいのであります。そういうことでなくて、問題が合理的に解決されれば、これに越したことはない、こういうふうに存ずる次第であります。従って、政府といたしましては、そういうことに役に立つような的確な資料の整備、提供その他のことも行なって、あなたの言われるある時期に対処する方策を講じていかなければならない、こんなような感じがいたしている次第であります。
  75. 石山權作

    石山委員 一国の政治、社会の情勢あるいは社会運動といったふうなものを見ている場合には、そのことの進展に対していろいろと目標を持つわけです。その目標の中で、たとえば労使間の問題と日本の経済というふうな問題があるだろうと思います。それは賃金という現われた数字だけでなく、労働争議という本質の問題もあるわけです。いずれにしても、私どもは、今の場合、労働省では、労使が理解し合って、仲よくやって産業の発展に努めるべきだという、そういう善意の見方を否定するものではない。だからといって、今の日本の労使間の関係においては、労働法の精神さえともすればゆがめられる。たとえば先ごろの国鉄労働組合と国鉄の理事者側の団交等を見てもわかるわけなんですが、ともすれば労働法をゆがめたような考え方で労使慣行をば作ろうとする。こういう状態においては、外国の例をとってもわかるわけですが、社会の進展あるいは労働組合の独立性、こういうふうなものは、法律といったような面だけあるいは指導という面だけではなかなか達成されてこなかったのではないか。昔の人は知識の程度が低いからそうだ、むだな紛争を起こして、そういう慣行を作った、こういうふうな見方もあるかもしれませんけれども、われわれが見ている歴史というものはそうではなかった。ですから、そういう見方からすれば、日本の労働運動というものは、スケジュール闘争かあるいはどういう闘争かわかりませんけれども、まだまだ労使がすぐ理解し合って仲よくやっていくというふうなことにはならないのではないか、そういう規制の仕方を労働省がとるということは、この際あまり好ましいことではないのではないかというふうに考えているわけです。この前のときは、公共企業体の組合に対しては、労働省は職権あっせんのような形で仲裁に持ち込んだわけですが、今度の場合、見送っているというのはどういうわけです。
  76. 福永健司

    ○福永国務大臣 今お話がありましたように、過去においていろいろな闘争ないし闘争を含むところの交渉等が、何年かの間行なわれて参ったのでありますが、こういう経過を通じて、労働者も、また経営者もそれぞれに感ずるところは感じ、そういう意味において、いろいろの進歩も遂げてきておる、こう思うわけでございます。しかし、日本全体といたしますと、まだまだ労働立法等に対する理解の十分でない部分もかなりある、こういうように私も考える次第でございます。従って、今直ちにこうした労働立法等につきまして規制を強化するというようなことは、もとより考えていないのであります。既存の労働立法等についてなお一そうの理解の促進ないし徹底をはかって参りたい、こういうように考えておる次第でございます。少しお触れになりましたが、そういう意味から申しましても、世界的の視野の中においてもこういうことが行なわれなければならないというような意味におきまして、労働関係の知識等について国際交流等も一段とはかっていかなければならない、そして、わが日本の労働界が世界的の水準にすみやかに到達すること、これも考えていかなければならない、こういうようなふうに考えております。
  77. 石山權作

    石山委員 公共企業体の方は今残したようですが、労働大臣のおっしゃっている世界的な労働運動の視野というふうなことは、ILO等の問題だと私は考えておりますが、公共企業体の労働運動あるいは公務員の労働運動等を見ると、どうも世界的視野に立った労働運動でもなさそうに見えますし、法律背景を見ても、かなりに問題が違うようにも思われます。世界的な視野に立つために、労働基準法等は、これは確かにその意味では外国にも通ずる思想でしょうし、現実的に行なわれている一つのものの尺度にはなるだろうと思いますけれども、公共企業体及び公務員の労働権というふうなものになりますと、かなり違うのではないか。今度のILOなどの場合でも、これは十日と言っていますけれども、本日になるかどうか知りませんが、政府ではいよいよ出す、こういうふうな考え方を固めたようですが、国内法の問題については、政府で何回も出したり引っ込めたりしていて、一体どの法案が国内法かということで苦しんでいるわけです。やはり国内法の方は、今の公労法、鉄道営業法あるいは公務員法をば生かすような形で、その精神をば横すべりさすような格好で、国内法を準備なさっていたようですが、それは変わらぬのでございましょうか。ILOは批准なさる、そして、国内法はそういう意味では横すべりするのではないかと思うのですが、やはり横すべりなさるのですか。
  78. 福永健司

    ○福永国務大臣 公共企業体の関係のことを先刻御答弁申し上げるのをちょっと失念いたしまして恐縮に存じます。昨年の場合、ああいうように手っとり早く政府の方で職権であの措置に持っていった。今度は昨年とは違うような、言うならば、かなり落ちついたような格好であるが、それはどういうことだというお話でございますが、去年は去年なりに、前任者があの事態のもとにおいてはあれがいいと考えて対処したのでございますが、私はことしの状態から見まして、そんなにあわててやるということよりも、よくじっくり労使が話し合うことがよろしいのだ、これが本筋なんだと考えておりましたし、また、石山さんの方がさらに私よりもよく御理解になっておられるのでございますが、公共企業体等で、中労委であるとかあるいは公労委であるとかいうようなものにつきまして、昨年あたり表現しているのと違った表現をいたしております。いろいろありましょうが、たとえば一口で申しますと、そういうものを活用するというような表現等も関係労働組合等でいたしております。従って、私は、そういうような意味においては、今度の場合、問題の解決が早いに越したことはございませんが、同時に、やはりある程度の時間をかけて相互に折衝し、しかる後ある程度の時間をかけて納得もいくような、解決がつくような中労委、公労委等の機関の活動を促すということがよろしいのではないか、私は私なりに考えての措置をとったつもりでございます。  ILOにつきましては、私はしばしば申し上げましたように、もっと早くに出したいのが本意でございましたが、従来ともいたしますと提出いたしましたままで、どういう形で審議するかというようなことで、結局、実質的な審議に入らずに幾たびか国会を経過したこと等もございますので、ぜひある程度のめどをつけまして仕上げができるようなことが望ましい、こう考えておったのでございますが、与野党両方で、この問題についての党対党の話し合いの窓口等も作っていただいて、ある程度お話し合いをいただいたのでございます。まだ十分にこれが進捗したとは申せないのでございますけれども、しかし、今期も余すところそう多くはありません。そこで、このめどでございますが、十分にめどがついたところまでということになりますと、かなり日があるいはかかるかもしれないというようなことも心配いたしまして、今までに比較いたしますと、党と党で話し合っていこうというような姿になっていくということは、少なくとも過去何回かの事例よりは前進している。与野党の話し合いというような意味においての前進が行なわれている。従って、十分なめどがついたとは申せませんけれども、今申し上げましたような意味において、ある程度のめどはういたような気もいたすわけでございます。従って、今申しましたようなことにおいての話し合い等にも期待しつつ、関係案件は提出させていただきまして、その上でさらに一そう話し合いを促進していただくようにいたしたい、こういう考えであります。従って、話し合いが内容的に結論を得ておるというところまでいっておりませんので、関係案件は従来きまっております形のままで提出をさせていただきたい、こういうように考えておりますが、しかし、そのことは、過去の姿とは違う今日におきましては、党対党で話し合いをしていただいて、どういうことに相なるかわかりませんけれども、その結果において、ある程度の考慮が払われる。考慮が払われた結果、どう処置するかというようなことについてお話し合いの結論がつくならば、私は政府の責任者といたしまして、これに喜こんで従う、こういうつもりで関係案件を提出いたしたい、こう考えておる次第であります。
  79. 石山權作

    石山委員 私は、ILOの問題については、あなたと討論する気持はないわけですが、ただ、残念に思うのは、ILOの精神というものと、国内関係法案というものは、全然違うということなんですね。ここにやはり私、どうも今の労働行政に対する池田内閣、自民党政府のやり方に非常な疑問を持つわけなんです。表向きのILOだけ見れば、なるほどILOの条約を批准すると一歩前進したわけですね。しかし、そのことは、今度は個々の国家公務員法、地方公務員法、公労法、鉄道営業法等に照らし合わせれば、ILOの精神で動いたことが罰則になるというのです。罰せられるということです。それではちょっと筋が通らないし、何のためのILOの批准かということになりかねないと思うのです。労働省で今出していられる賃金問題、この賃金部設定は、労働組合側から見れば、これはマル公賃金を設定することを一生懸命やる部であるのだ、こういうように言っているわけです。新聞などでは、適正水準というふうな言葉、あるいは適正賃金を中小企業の労使間に提示するのではないかというふうなことが間々出ているわけですが、それが大きな波になって労働組合関係者をば刺激しているようです。法文そのものを見れば、全く単純明快にして、何ら疑義のはさまるようなことはないのでございますけれども、それに尾ひれをつけていろいろな疑問が浮かぶというのは、結局、政府のとっている労働対策というものが、非常にごまかしをしょっちゅうやっているというところに通ずると思うのですね。ILOの問題一つとってみたのですが、ごまかしのような感じがする。たとえば今度の法律の場合で見てみますると、八条の三項に賃金部の仕事の部分というふうなものが書かれてある。これだけ見れば、マル公賃金を作るとか適正水準の賃金を作るとかいうことは、何ら書いてない。しかし、それをやるだろうというところに、今までの労働行政の誤りがあったのではないか。それで、賃金の面だけ見てもわかるわけですが、たとえば労使で、国鉄その他現業関係の方々が賃金をきめたのですが、これが大蔵省関係から強い異議がありまして、三年ぐらいたったら、それは不法な労使の契約であるから、その金を返せといって、返された時代がありました。ですから、労使間でうまく話し合いをしろ、こう言って労働省が指導しておりながらも、そこできまったものが、あるときになると、微妙な解釈をつけて返還を命ぜられていた、こういうような事実もあった。ですから、どうしても労働組合の諸君は、労働省の労働行政に対しては信用が置けない。その返還を命じたのは、私どもの知っている労働大臣時代にばしんと行なわれた。たしか三カ年分で七百円近くの返還が行なわれたと思っております。ですから、これはやはり労働行政の一つでしょう。公共企業体ですから、各大臣のその下にあるのだけれども、労働省としては、労働行政上から見れば、大きな責任があったと思っております。それから労働賃金というものについて、労働省はどうもあまりにも外国主義的なものの考え方をしているのではないかというふうに思うのです。賃金とは何ぞやと原則論をうたわなくてもよろしいわけですが、賃金というものは、われわれの肉体を動かして何がしかの仕事をなしたときのいわゆる一つの代価になるわけですが、このわれわれが仕事をなすというときの肉体と精神というものとは、なかなか分離はできないはずなんです。こういうことを私はなぜ言っているかというと、たとえば賃金、労働時間——ここに八条の第一項にあるわけですが、「賃金、労働時間及び休息に関すること。」の中から、賃金だけをはずしてきているわけなんです。こういうものの考え方は非常に機械的だと思うのです。賃金だけを何でもかんでもやるというふうな考え方で、八条の一項一号、六号の四、十一号というふうに、賃金に関するものだけをはずしてやってきているわけですが、賃金というものは、そういうふうな格好で抽出できるものかということです。賃金というものは、私はそういうふうなものではないと思うのです。非常に外国的にカード式なものだと思うのです。しかし、このカード式になるのには、少なくとももっと賃金がよくなければそういう仕方が出てこないと思うのです。労働基準局の中に賃金があるということを考えてみてもおわかりだと思う。この日本の賃金という場合には、労働時間、それから非常に条件の悪い労働条件、こういうふうなものが加味されて賃金が出るわけですが、賃金というその上積みにされたもののみを取り扱ってみて、中小企業と大企業との賃金格差が最近は縮んできたと喜んでいるんだが、そういう喜び方でいいのかどうか。賃金課はおそらく今までそういうことをおやりになってきたのですが、賃金部を作って、より以上に上積みなものを見る、形式的なカードの分類に終わりゃしないかというような考え方がある。これは私ども設置法を二十何条か見ているんだけれども、無理に課を分離するために何か物事を集めてみる、今回もそういう傾向があるんじゃないかと私は思うのです。何もこの中に入れておいてやれないことはない。この中から抽出をして別個に問題を見るということは、むしろ、日本の現在の労働賃金というものをまともに見なくなってしまうという欠点が浮かぶのではないかというふうに思うのです。そうではございませんでしょうか。
  80. 福永健司

    ○福永国務大臣 まず、ILOの関係でお話がございましたが、御質問の要点ではないかもしれませんが、お説がございましたので、ちょっと申し上げます。条約それ自体の批准と、これと関連して、これに矛盾しないように国内立法をする、さらにはまた、この精神をより効果的ならしめるというようなことなどからいたしまして、幾つかの国内立法改正措置をとる、こういう考え方なのでございまして、社会党さんからごらんになると、よけいな改正をしようという意図があるとごらんになる部分もあるいはあるかもしれませんが、それはそれぞれ立場が違いますと、幾分そういうことが相互にあるわけでございます。従って、そこいらになお話し合えば話し合う余地がないかということ等も生じてくるわけでございます。これは今後の問題であり、私自体この際内容にまで立ち入るべきものじゃございませんので、いずれにいたしましても、先刻申し上げましたような次第で、関係国内法も提出をいたしたい、こういうように考えておる次第でございます。  そこで、今度提出いたしました賃金部設置に関連しての設置法改正について、法文上は非常に明確であるが、どうもごまかすのじゃないか、こういうようなお話でございます。だれだか、私はうそを言いませんと言った人があるようでございますが、私はごまかしはいたさないつもりでございまして、今まで法文上明らかにされていないところを今度明確にするということによって、今石山さんがおっしゃいますごまかしも防げる、こういうようにも思うわけでございます。先ほど具体的におあげになりました、大蔵省がいろいろ言って、あとで金を返すようになったとかいうお話でございますが、この実際の事例につきましては、私実は十分認識を持っておりません。これはどういうことだったか、私は存じないのでございますが、私が強く確信をいたしますところは、常時労働者諸君と最もひんぱんな接触を保つところの労働省が、賃金について機構を強化して、この問題については大いに努力をするということは、これは私は大いに労働者諸君のためになると思うのであります。大蔵省は大蔵省なりに給与関係のことについての機構を持っておるのでございますが、先ほどのお話に、現在のままでもやれぬことはないじゃないかというようなことに考えられる節もあるようなお話もなさいました。石山さんがそう考えておられるというわけでもないでしょうが、そういった見方もあるではないかという意味においておっしゃったかと思うのでございますが、先ほどおあげになりましたような事例等につきましても、あっちも何課である、こっちも何課であるという程度では、さっきのようなことが起こりやすいのじゃないか。同じ賃金に関しましても、労働省にはちゃんと部というものがあり、よそには部というほどのものがない、一格下の課ということになりますと、機構的にも優位性といっていいかどうか、まあ優位性を保つことになる。これらのことが、私は労働者諸君のために有利になると思うのです。先ほど労働者に不利なようなことになってはいかぬというお話でございますが、まさに私は、そういう点で、労働者諸君のためにも有利になる、こういうように考えておる次第でございます。機構の強化が労働者諸君のためになるのだ、こういうように考えておるわけでございます。  もとより、お説のごとく 賃金だけを抽出してということでは、なかなか問題全体を解決し、把握するゆえんではないのであります。労働時間とも関連するし、労働や雇用の質とも関連するし、いろいろ関連するものでございますから、常にそういうことを念頭においての考慮が必要であろうと思うのでございます。私の希望といたしますならば、賃金というものは、何といっても最も大切なものでございますので、今度の改正措置をわれわれは国会に提出して、今御審議をいただいておるのでございます。さらに申しますならば、労働経済全体について、さらに日本政府がこの方面をより強化するような措置等も必要じゃないかという感じは、私もいたしておるわけでございます。そういうような意味から申しまして、労働者のために不利になるようなこととか、ごまかすとかいうようなことのためにこんな改正をするというつもりは、毛頭ないのでございます。賃金の統制というようなこと等をするつもりももとよりございませんし、しばしば野党の皆さんからのお話がありますように、規模別には格差があるのじゃないかとか、中小企業ではこういう点がまずいじゃないかなどということ等も、御指摘があるのでございます。そういうことを思えば思うほど、今御審議をいただいておりますような機構の強化を行なって、そういう意味における前進をしなければならぬ、こういうように考える次第でございまして、一部、それは確かに、こういう機構を改めることによって、何かわれわれの全然考え及んでないことを企てているのではないかというような説が、初めのうち新聞等にもちらっと見えたようでありますが、だんだん理解が深まったせいか、このごろではよろしいという説がもっぱらで、その点はだいぶ真相を御理解願っているもの、こういうように思う次第でございます。  いろいろ御注意のありました点につきましては、十分注意をいたしまして、せっかくできたものが妙なものにならないようにということにつきましては、重々考えていきたい、労働省の関係の者全員がそれについての心をいたして参りたい、こう考えております。
  81. 石山權作

    石山委員 中央労働委員会なりあるいはいろいろ政府機関、地方でもそれぞれの機関があって、仲裁裁定等になるわけですが、そこで今やられているところを見ても、正確な数字の上で労使が握手しているのではないのですね。やはりこれでいこうや、こういう建前なんです。このたびはこれでいこうやということが、おそらく現段階における和解の仕方だと思う。しかし、それは仲裁機関だからそれでよろしい、調停機関だからそれでよろしいが、労働省で今考えている賃金部の設定の必要性というものにだんだん問題が向いていくわけですが、その中の一つの例証として、私は、せんだって経済企画庁にも来ていただいて問いただしたわけですが、先ごろ経済企画庁で賃金の問題を出したわけですね。三月十九日、経済企画庁の経済研究所で出したわけですが、その中には、日本の経済に与える賃金の影響をば分析しております。それは生産性と賃金のコストの問題、それと同時に、あしたの日本経済に与える賃金ということです。それで、世間が物価問題でやかましいものだから、賃金が上がると物価が高くなるんだぞと、こういう表現まで使っているわけです。経済企画庁の見方は、日本の賃金はそろそろ生産性をばまさにこえようとしている、こえれば、賃金が上がると同時に、物価が上がるんだぞという意味で、白書を出している。これは一つの見方です。私は、これに対して、何をよけいなことを言う、賃金とかそういうことは労働省でやるんで、お前たち何言っている、春に設定した数字が夏になればくずれるのに、来年のことの賃金の問題なんか言っているのはけしからぬ、そんなことを言ったのですが、企画庁は企画庁でそういう見方をしておるわけなんです。今度の労働省の賃金部を作るということに対して、私、先ほど二つばかりの熟語を使ったのですが、適正水準という言葉、適正賃金という言葉をば労働省は作り上げるのではないか。しかも、おもにこれから賃金部で一生懸命おやりになるのは、おそらく中小企業の問題だと思うのです。大組合の場合には労働省の数字をかなり参考にするのだろうと思うけれども、それには依存をそんなに強くしないだろうと思う。やはり労働省のねらっているのは、中小企業の経営者及び労働組合をば対象にしていられるのではないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  82. 福永健司

    ○福永国務大臣 経済企画庁が時おり賃金等に触れるのでございますが、これはこれといたしまして、そういうこともありますだけに、賃金に関して最も権威ある見解はわが労働省において持ちたい、こういうように私は考えております。  そこで、適正水準という言葉をお使いになりましたが、私どもは標準賃金のようなもの、あるいは賃金の適正水準というようなものを示して、これに従えというようなことに事を進めようとは考えておりません。労使が話し合いによって賃金等をきめるということが建前でございまして、どうしてもそういかない場合に、労働委員会等が法律所定の機能を発揮するわけでございますが、私はむしろ——適当というお言葉をお使いになりましたので、そのまま拝借いたしたいと思うのでございますが、的確、公正な資料を作り、これを関係者に十分利用してもらうようなことにはいたしたいと思います。今、大企業と中小企業とについてお話がございましたが、お話の通りでございまして、大企業と中小企業とは、われわれが今後行ないます作業を利用するというような点からいっても、ある程度違うと思うのでございます。大企業にいたしましても、現在の年功序列型の賃金そのままが理想的なものであるということで、ずっと考えていっていいかどうかということについては疑問がある、私自身そう考えております。従って、こういうような点について理想的な賃金体系というものはどうであるかということで、大企業も大企業なりに、やはり今後の研究課題に当面しているというような気もいたすわけでございますが、一方中小企業といたしますならば、割合に、こういうことについて正確な知識ないし認識というものを十分に持っている人ばかりじゃないのでございます。従って、中小企業の経営者等については、先ほど申し上げるような資料を大いに活用してもらう必要がある、これが中小企業における労働者諸君の労働条件の改善に役立っていく、こう思うわけでございます。ことに中小企業におきましては、初任給がこのところかなり上がって参っておりますが、それと従来からおります者との間のアンバランス等で、さしあたり非常に苦悶をいたしておるところ等もございます。そういうこと等からいたしまして、できるだけ今労働省が考えておりますようなことについての前進を行なって、こういう問題の解決等にもお役に立つようにいたしたい、こんなことを考えております。
  83. 石山權作

    石山委員 今の中小企業の労働者の実態というものは、非常に若いのですね。中小企業の場合は、低賃金で採用するために、若い人たちを採用したでしょう。しかし、今の場合は、若い人の給料の上がり工合は、中高年者の方々よりも、その速度が早いわけですね。ですから、中少労働者を多くかかえている中小の経営者は、賃金の占める比率が大企業より大きいということは確かです。ここで労働省の正確というふうな資料の出し方になると思うのですね。正確だという資料です。経営者に対して正確な資料というものはどうなるのだろう。景気のいいときはそれはいいだろうと思うが、景気が下降した場合なんか、労働者の資料というのは大へんものを言うと思う。たとえば、あなたのところでこういうふうに賃金を出していますが、今度の賃上げで二千円を上げると、あなたのところの経営は一割のもうけにはなりませんよ、五分しかもうかりませんよというような資料を出す場合も想定されます。これは経営者側に向けた資料。労働者側に向けるときの資料は、そういう場合どうだろう。いわゆる不況宣伝の中身をかなりに充実した資料を出すだろうと思うのです。そうして、賃金部もできるのですから、もっと個別に資料等をかなり集めるわけですが、あなたのような工場の実態では、今のところはこれくらいしかもうけはないんだから、あなたのところの賃金要求というものはここら辺がよろしいのではないだろうか、こういう資料の提出方があり得ると思う。そういうことを正確な資料として、労使に配られた場合には、これはだれが考えても、経営者側は非常に楽で、労働者側の考え方は非常に卑屈なものにならざるを得ないと思う。だって、資料はそういう出し方ができるわけだし、その意味では正確無比でもあり得るわけだから、経営者の方を向いた資料の出し方と労働者の方を向いた資料の出し方と違ってくるのではないか。しかも、労働省が言うところの正確な水準を示しているという前提のもとで、そういう資料を出されるとすれば、やはり労働組合の諸君が考えているように、労働省の賃金部設置というものは危険である。労働者側に有利に展開するよりも、むしろ損な立場を多く与えるのではないか、今の場合、こういう解釈も成り立つわけなんです。そうではないのだ、あなたの考え方はちょっとおかしいじゃないか、そういうならば、それのように御説明をいただきたい。
  84. 福永健司

    ○福永国務大臣 私先ほど石山さんのお言葉をお借りして、正確、公正というような言葉を使ったのでございますが、公正という言葉が示すごとく、ことさらにある種の作為を持って、一方のために都合のいいようなことを言い、また、他方へは別のことを言うというようなことをいたさないという意味において、公正という言葉を私は使った次第でございます。今念のために、取り越し苦労をなすって御注意をいただいたのですが、そういうことはございません。ぜひ一つ労働省を御信頼いただきたいと思うわけであります。今おあげになりましたような例の場合において、私どもがつまらぬことをいたしまして、当事者間の問題の解決がより一そうこんがらかって、紛争の度を増すというようなことにならないように、十分考えて参るつもりでございます。そういう意味において正確、公正ということを申し上げておる次第でございます。
  85. 石山權作

    石山委員 政治を行なう場合にも、いろいろな運動をする場合にもあることでございますが、全部が全部賛成を得られることは、口では言ってもなかなかむずかしいことだと思っております。しかし、今までの労働省というふうな限定の仕方ではいかぬでしょう。これはおそらく自民党政府の労働行政と申し上げた方が差しさわりがないでしょう。今までやってきた指導方針は、おおむねこういわれているのです。どうも労働省は労働者の生活保障というふうに賃金を見ない、企業の支払い能力あるいは企業の存在ということにより以上の力を入れてきたのが、自民党政府の労働対策であった。いろいろな書物や雑誌を見ても、そういう表現がたくさんあるということです。これは何も私が社会党だからといって、社会党系の人だけの書物や論評ではないのです。しかし、割り切ってしまって、保守党で資本主義経済だから、賃金を搾取するのは当たりまえだ、こういうふうに言ってしまえば、われわれは行政に対して、特に労働省の労働行政に対しては侮べつしたことになります。そうでないと思う。そうでないと思うのだけれども、現在まで行なわれたものは、そういう形になって根強く現われているということです。ですから、私の繰り返して申し上げたい点は、法文上に見えないいろいろな行政措置について誤りのないように、この際特段の工夫が必要だろうということです。  それから、いろいろな資料が集まった際のいわゆる適正公平という言葉ですが、公平というようなこと、適正というふうなことは、なかなかむずかしいことだと思うのです。ですから、その資料も、そういう意味では労使双方の選ぶものですから、ほんとうから言うと、適正なものというようなものは数多くあるわけがないと思うのですが、これは複数の形で出すべき段階だろうと思う。たとえば資料を求められた場合、これ一通が適正なんだという言い方ではいかぬのじゃないか、こういう見方もあるのだと、こういうやり方だろうと思うのです。その際、私が先ほど言ったのは、賃金というものは、上積みした賃金そのものを見るだけでなく、いわゆる労働時間、労働施設、福祉施設というものをみんなにらみ合わせることも必要になってくる。出す場合にしても、適正というものは一つでなければならぬけれども一つであってはならぬという資料の提出の考え方、こういうふうなことを求めざるを得ないと思います。  それから、これからの賃金の考え方でございますが、急速に賃金というものに目が向けられているということ、つまり、日本の賃金が、ある意味では賃上げの速度が早いためでしょうが、そのために体系の改正が迫られているだろうと思う。今までのような体系でよいであろうかどうかということが、今では労使間の苦労の種になっているようです。これに対して、確かに適正な資料というものはございません。労働大臣給与担当大臣になったわけで、人事院の勧告等を見てもわかるのですが、すべて民間の横すべりなのが公務員の賃金体系である。これだけを見ても、賃金体系がこれでよいかどうかという考え方になると思います。人事院の勧告が今のままでよいかどうか、労働大臣給与担当大臣になったから、あなたはやはり考えて任を務めなければいけないと思う。それと同時に、民間の給与の問題について、今の体系のままでやっていかれるかどうかということに対しても、勉強しなければならぬだろうと思う。賃金体系のことについて特に考えられるのは、せんだってから炭鉱の問題等も出ているわけですが、離職者の再教育の問題、それには都合のよいような言葉がたくさんあるわけですけれども、実際の行政上になると、これがどういうふうに動いていくのか。たとえば、中高者を再訓練して日の当たる産業へ配るといっても、日の当たる産業とは今どういうものを考えているかということなんです。たとえば石炭産業の方に離職の率が非常に多いが、その中高者を日の当たる産業にすく振り向けるような訓練がはたして可能なのかどうかということが、やはりわれわれの心配の種の一つになっていますが、それをやるんだとおっしゃっていますが、やるという具体例を一つ示していただきたいと思います。
  86. 福永健司

    ○福永国務大臣 数点にわたってのお話でございますが、まず最初の、どうも労働省は、労働者のためでなくて、企業ないし経営者のために都合のいいような措置をよくやるのじゃないかというような意味のことを申され、書物を見てもよくそういうことが書いてあるというようにおっしゃるのでありますが、石山さんが好んでそういう書物をお読みになるか、特にそういう文字がお目におつきになるということもあるのじゃないかというような——そう言うとしかられるかもしれませんが、私どもは決してそういうことではないのであります。労働省というものは、もちろん企業がつぶれるということになっては労働者のためにもなりませんので、そういうことも考慮しなければなりませんが、何としても労働者のためということについては、特に考えて措置をいたしておる次第でございます。しかし、こういう点については、過去のことがどうだった、こうだったということについては、人によって見方は違いましょうが、私は、賃金部ができてそういう点については非常によくなった、ぜひこういうふうになるようにいたしたい、こういうように思うのでございます。そのためにも、ぜひすみやかにこれができまして、石山さんがこうでありたいとおっしゃるようなことにすみやかに持っていきたいと雇うわけでございまして、これと関連しての行政措置等についても十分注意をして参りたいと存じます。  資料について適正という言葉をお使いになったのですが、私は、適正という言葉を言うことは、実はちょっとちゅうちょいたします。と申しますことは、適正の方の適というのは、適当にそのときそのときに何かしかるべくやるような印象を与えますので、先ほど申し上げておりますように、正確公正という、むしろ、適正より公正という言葉を使っておるのでございます。この適というのは、多分に、何かそのときそのときの政策的考慮が加わるような印象を与えますので、私はその言葉を使っておらないのでございます。というて、無為無策という意味じゃないのでございます。先ほどから申し上げますように、いろいろ御注意いただいておりますように、社会党さんからごらんになると、自民党の方では労働者よりも企業本位ということに考えるのじゃないか、決してそうじゃないのでございますが、そういうようにお思いになるといけませんので、こういう言葉使いについても、今申し上げておる次第でございます。  そういう点から申しまして、賃金体系の改善というようなことにつきましても、これまた今るる御指摘がございましたように、日本の事情が、この数年間急速に変化をしておる、ないしは前進をしておるというような中にあって、ぜひこれから考えていかなければならぬ点があるわけでございます。こういう場合におきましても、労働者のためを十分考え、そして企業の健全化というようなことも、それとともにというか、その次に考えて参りたい、こういうように考えておる次第でございます。  なお、離職者等の再教育等につきましては、これはなかなかめんどうな問題で、ことに中高年令者等につきましては、すぐに日の当たるような産業でこれはいいからぜひと言われるような人々が、きわめて短い時間で再訓練ないし再教育されて多数得られるということには、なかなか簡単には参らないのではございますが、せっかく今いろいろ努力いたしております。こういう抽象的な言葉だけではいかがかと存じますので、この点につきまして具体的にやっておりますことを、事務当局から二、三御報告させていただきたいと思います。
  87. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 たとえば炭鉱離職者に対する職業訓練をやっていく、職業の紹介をしていくという点についても、具体的にどういうことをやっておるだろうか、そういう点について明確でなければ、いろいろな施策についても疑問が持たれるという趣旨での御質問のように拝聴したのでございますが、具体的に炭鉱離職者に対する職業訓練を現在やっておりますところを申し上げますと、就職と関連しまして一番大事なことは、訓練職種の選定であろうかと考えております。産業界の最も欲するところの訓練種目を選ぶということが先決であろうかと存じますが、炭鉱離職者につきましては、一般職業訓練所におきまして三十一の種目、総合訓練所におきましては三十七の種目を訓練種目としておりまして、たとえば自動車整備工、電気機械修理工、電工、板金工、塗装工、配管工といったような各種の職種を選びまして、今日行なっておるような次第でございます。  問題は、その訓練を終わってからはたして就職できるかどうかということでございますが、これはだろう話では適当ではございませんので、今までの実績を申し上げますと、この訓練所を終了されました方の約九〇%が就職なさっております。残りの一〇%の方につきましても、これはたとえば自分で帰農なさった、訓練所には入ったけれども、国に帰って農業に従事するとか、その他いろいろな事情があるようでございますが、就職の状況につきましては、約九〇%というような成練をおさめておりますので、私どもといたしましては、一〇〇%就職という目標が達成できますように、今後ともさらに努力して参りたい、こういうふうに考えております。  なお、中高年令層の職業訓練、これは御指摘のように非常に困難がございますが、職業訓練審議会におきましても、その具体的な方策について答申がございました。私どもといたしましては、三十七年度から転職訓練というカテゴリーにおきまして予算増額いたしまして、本格的に取り組んで参りたい、かように考えておるような次第でございます。
  88. 石山權作

    石山委員 説明を聞いていますと、この法案は労働者の側の人たちが危惧しているようなものではないんだ、むしろ、調査機関等をあまり持っていない中小企業の方々は、これを利用することによって非常によくなるのじゃないか、こういうふうに聞えるのです。そうすると、この賃金部というものを通すと、一般の労働者には有利になるということですか。そういう行政指導を行ない得るという自信があるわけですか。
  89. 福永健司

    ○福永国務大臣 私の考えており、念願いたしておりますることの最も重要な点は、その点でございます。この基本ができまする場合におきまして、いろいろこれによっていいことがございましょうが、労働者諸君が最も喜んでくれるだろうと思いまするし、そういうようになるようにいたしたいと私は考えております。
  90. 石山權作

    石山委員 これだけですが、御返事は要りませんが、この賃金部ができると、労働者の賃金はよくなる、そうすると、私がこの前からしつこく言っておる公務員の暫定手当なども、この法案が通ると同時に実行化されるというふうなことにもなるであろうと私は楽しみにして、きょう一応質疑を打ち切りたいと思います。
  91. 中島茂喜

    中島委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十二日木曜日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十一分散会