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1962-03-13 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十三日(火曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 草野一郎平君    理事 堀内 一雄君 理事 宮澤 胤勇君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君    理事 山内  広君       内海 安吉君    金子 一平君       辻  寛一君    藤原 節夫君       保科善四郎君    田口 誠治君       西村 関一君    受田 新吉君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (入国管理局         長)      高瀬 侍郎君         公安調査庁次長 關   之君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君  委員外出席者         検     事         (大臣官房営繕         課長心得)   住吉 君彦君         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         検     事         (刑事局参事         官)      高瀬 礼二君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二二号)  通商産業省設置法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第四六号)      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。石山權作君
  3. 石山權作

    石山委員 八日に開かれました全国次席検事合同会議において、交通事犯を根本的に検討されるように植木法相が訓示をしたのでありますが、その中で、私もこの前大臣に申し上げた点でございますが、「一部国民の間に脱法的手段によって刑責を免れようとし、刑罰法規の存在すら無視しようとする傾向が増大しているが、」この点に関して、一つ傾向を御説明していただきたいと思うのです。われわれ国民は、法規を順法していることを望んでいますし、国民はそういうふうに考えているのではないかと思うのですが、法務大臣がこういうふうにおっしゃっていることを見ますと、かなり国民は法を無視したようなやり方が顕著だ、こういう言い方だと思います。その傾向一つこの際お話していただきたい。
  4. 羽山忠弘

    羽山説明員 次席検事会同で協議いたしましたのは、現場の次席検事から脱法事犯の実態を聴取することが目的でございまして、従いまして、協議の内容は、公安関係を除きまして、一般刑事事犯風紀事犯、その他きわめて多種多様にわたったのでございます。たとえば売春防止法が施行されますと、売春というのではなくて、飲食店というような形態のもとに売春を行なうことを計画して実行する、これの実例、それに対してどういう取り締り対策があるか、こういうことを協議いたしたわけでございます。
  5. 石山權作

    石山委員 そうすると、治安関係は御論議なさらなかったということでしょうか。
  6. 羽山忠弘

    羽山説明員 治安関係につきましては、別途公安係検事会同を予定しているのでございます。
  7. 石山權作

    石山委員 あとの方ちょっとわかりませんでしたが、公安関係の問題については、この次に別途の会議でおやりになるということですか。
  8. 羽山忠弘

    羽山説明員 さようでございます。
  9. 石山權作

    石山委員 公安関係では、最近、右翼方たちかなり直接行動に出ているし、あるいはクーデターの問題等ありまして、破防法適用をする、こういう御意見も一部新聞に出ていたようでございますが、これははっきり態度がきまったのでございましょうか。
  10. 羽山忠弘

    羽山説明員 私は刑事課長でございまして、その点は公安課長所管でございますので、いずれ公安課長が参りまして御説明を申し上げるのが適当かと存じます。
  11. 石山權作

    石山委員 あなた答えられないの。
  12. 津田實

    津田政府委員 私は司法法制調査部でございまして、所管刑事局でございますが、一般論といたしましては、それらの方針につきましては、一般方針というものは確かに持っておるわけでございますけれども個々の事案に対する方針につきましては、そのつど最高検察庁中心になりましてきめるわけでございますので、あまりかくかくということは申し上げかねるというふうに考えております。詳細につきましては、刑事局長が申し上げるのが相当だというふうに考えております。
  13. 石山權作

    石山委員 今度公安調査庁では新規に百三名の増員でございます。その内容としましては、調査官八十七名、守衛十六名というふうになっておりますが、何だか守衛さんの十六名という数は、全体の人数から比べてちょっと多いような感じでございます。これは交代の関係とかいろいろあるだろうと思いますが、十六名は何かお役所仕事のように、多いように思うのですが、どういう配置になるのでございましょうか。
  14. 關之

    ○關(之)政府委員 実は、公安調査庁は非常に新しい役所でございまして、スタートにおきましては、たとえば検察庁に同居いたしますとか、あるいは行政管理庁に同居するとか、そういうふうにほかの役所に同居したところがほとんどでございまして、そこには守衛は置かなかった。ところが、その後、漸次いろいろな事情から独立庁舎を作るようになり、そうすると、どうしても従来の定員ではまかなえないから、守衛というものがございませんから、それで守衛をいただく、こういうことになったのでございます。そして、ここ二、三年来だいぶ独立のものができて参りまして、一カ所に一人ということで見て参りますと、大体そのくらいの数字になりまして、全国の局にまかれるということになるわけであります。全体の局は、現在全国に五十局ございまして、各府県に一つずつ、北海道には全体で五つあるわけでございます。そういうような五十局をやっておりまして、それがだんだん独立いたして参ります。そういうような関係で要るわけでございます。あるいはここ二、三年のところ、独立庁舎ができるに従って、守衛の数ももう少しふやしていただくようになるか、こう思います。
  15. 石山權作

    石山委員 私どもは、やはり非常に平和で、みんなが楽しんで生活できるような国ということを理想にしているわけですが、公安調査庁の使命もその一つにあるだろう、こう思っているわけです。この場合、私ども考えているのは、皆さんの方で、たとえば破壊的団体規制に関する調査業務を充実するためにという名目で、今回公安調査官を八十七名ふやされたわけですが、そこで調査をされたものを報告する系統でございます。皆さんの方では報告だけだろうと思うんですが、報告する系統、それから地方調査局と各県にある警察との、あるいは検事局との関係は、どういう工合になっているか。ちょっと僕らには、普通の警察検事局よりも、皆さんの方の局は非常に隠密に物事が進められているように見えます。何かそっと物の陰に隠れて、部屋の中をのぞかれるというふうな気分がどこかにあるわけですから、この際、明らかにできることは努めて十分明らかにしておいていただいた方が、気分的にいいのではないか、こう思うものですから、連絡関係調査報告される機関系統、こういうようなものを御説明していただきたいと思います。
  16. 關之

    ○關(之)政府委員 まず、調査報告するその系統でございますが、現地調査いたします。それが、全国で約五十の局が八つと四十二とに分けられるのでございます。四十二というのは、たとえば先生の御出身の山形でございますか、あそこは山形地方公安調査局というのがございます。その直接の監督は、仙台の東北公安調査局というのがいたしております。そして、中央に本庁があるわけです。それで、役所は、もとより法務省の外局でありますから、調査したものの報告は、その系統に従って上の方へ参るわけであります。そして大臣において、その御報告申し上げたことを、しかるべき大臣の政治的なお立場から御利用になる、こういうことに相なるわけであります。それからまた、当国会におきましてさまざまな右翼ないしは左翼の問題についてお求めがありますならば、調査に差しつかえない範囲において御報告申し上げるわけであります。  それからまた、警察及び検察庁との連絡関係でありますが、破壊活動防止法調査の二十九条であったかに、警察との一応の協力関係が書いてあるわけであります。暴力主義的な破壊活動に関する問題については、相互に情報交換をする、それからその種の事件検挙については、公安調査官が立ち会うことができる、こういう規定があります。要するに、破防法第四条に規定する暴力主義的破壊活動というような問題については、双方で情報交換をし協力をする、こういうことになるわけであります。従って、情報資料犯罪検挙その他に役立つものがあるならば、私の方から警察の方に差し上げる、あるいはこちらの団体規制に関する破防法運用参考になるような情報資料は、向こうからもいただく。これは現地でもいたしますと同時に、本庁としていたしていくのが多いかと思います。  それから検察庁との関係でございますが、これは、破防法には今申し上げたような警察公安調査庁との関係規定がありますが、検察庁関係はそういうふうに規定してないのでございます。これは立案の当初、実は検察庁は同じ法務大臣傘下にあるのだし、大臣の御命令でどうにもなることだから、そこは要するに、公安調査庁から検察庁の方に情報を差し上げ、あるいは資料を差し上げ、また、向こうから、向こう犯罪捜査によって公安調査庁団体規制参考になる情報資料が出て参りますと、それをいただく、こういうことに相なるわけでありまして、現に日本共産党の問題などにつきましては、過去において暴力主義的破壊活動をしたかどうかというような問題については、検察庁がお用いになった各種の捜査書類の中に貴重なものがあるわけでございまして、そういうものを全部一応拝見して、そうして私の方の資料としてそれを取りまとめる、こういうような作業もいたしておるわけでございまして、大体そういうような連絡をいたすのであります。  なお、先ほど、どうも公安調査庁仕事は陰でもそもそしておるのではないかというようなお尋ねでございますが、これは御承知のごとくに、実は破防法の中にはいわゆる強制調査権限が全然規定してないのですが、強制調査権限を立法の当初規定いたさなかったのは、理論上の問題ではなくて、むしろ、政策的な問題から規定しなかった。それで、団体規制というような重大な人権の侵犯をするには、やはり強制権を必要とするという方が、私は理論としては正しいと思うわけであります。一応そこまでやってみて、もし相手方が承諾しなかったら、強制権を使って資料証拠をはっきりつかんで団体規制をするのが、私は理論として正しいと思うわけでありますが、当時の情勢として、そういうことは警察検察庁刑事訴訟法による一応の権限があるから、それでまかなえ、それで出たものを公安調査庁がいただいて、あと情報調査の、強制権のない調査によってやる。大体その範囲において破防法運用すべきである。要するに、人権を尊重する建前から、政治的な御判断が政府として強いのでありまして、そういうような趣旨において法律ができ上がっておるわけであります。そこで、当時、しからばどんな方法で調査するかという国会お尋ねに対して、率直に言って、新聞記者と同じようなことであります、こういうふうにお答えしたことがあるわけであります。そこで、陰でもそもそというような今のお尋ねが出るかと思いますが、私ども決して必要でないところに陰でもそもそするわけではないのでありまして、破壊的団体調査については、正々堂々と表から取り組んでいるつもりであります。ところが問題は、たとえば、私どもただいま調査対象としている日本共産党というようなものを見てみましても、そこにはかなり秘匿が、要するに、われわれには知らせない、あるいは一般に知らせないというなにがあります。この秘匿も、客観情勢の推移によってある程度違う。あるときにはそれが違う形になるわけでありまして、それを知るためには、それにこちらも即応して調査を進めていくということになりまして、あるいは第三者が見ますと、陰でもそもそというような御批判があるかもしれませんが、要するに、一般の方々に御迷惑になるような無用なことは極力避けなければならぬ。つまり、対象をきめてねらいをあやまたずにそこに向かって、強制権のない範囲において調査し、正しく情勢の把握をいたしたい、こういうふうに考えている次第であります。
  17. 石山權作

    石山委員 参議院予算委員会での新聞記事を見ますと、団体規制対象になるのは、共産党のほかに、全学連やもう一つくらいあったと思ったのですが、対象にしておられるようです。この対象にする場合、一つの事象がなければならないと思います。たとえば日本共産党の場合は、綱領とか年次の運動方針とかいうようなものになるだろうと思いますが、日本共産党の場合は、八全協以後だいぶ革命方針を変えたと宣伝しているわけです。暴力革命を否定するという方向を出しているのですが、そうしますと、そんなに対象にしなくてもいいのじゃないかと思うわけなんです。いやいや、そうじゃないんだ——そうじゃないという場合の認定の仕方でございますが、たとえば全学連対象にした、全学連破壊活動対象になった理由というふうなものがあげられてこなければならぬ。特に全学連のような場合、加入、脱退の仕方、これはなかなかあいまいなものがあるだろうと思うのです。あいまいなものの団体というものを規制して、団体から出る個人々々の探索をなさっていくわけですね。そうして積み重ねて、あるものを予知していくわけです。行動は大体どうだろうというふうにお考えになるだろうと思うのですが、日本共産党の場合は、社会党もそうですけれども、登録しまして、ちゃんと名簿がある、党員証もあるというような工合で、きちんとするわけですね。ところが、全学連のような場合はなかなかそうじゃないようですが、そういう場合の規制の仕方、何も関係がなくても、その分子と見られて尾行などされたり、あるいはいろいろな書籍なんかも調べられる場合もあるでしょう。何を読んでいるのか、そういうのはちょっと困るのじゃないか。その認定の仕方というものをきちんとやられているだろうと思うのですけれども全学連のような場合はどういうふうな認定の仕方をなさるのか、それをお聞きしたいと思います。
  18. 關之

    ○關(之)政府委員 破防法法律建前から申しますと、要するに、暴力主義的破壊活動が習性になった団体対象にする、こういう考え方であります。従って、建前では、過去において暴力主義的破壊活動を一回いたしたその団体が、さらに継続または反覆してそのようなことをする可能性がある場合に、団体規制する、こういう建前をとっているわけであります。そこで、それを一回しただけではいきなり規制はいたさないわけであります。しかし、そういう団体があった場合、公安調査局として調査をして、それを委員会に請求するわけでありますが、規制のときに問題となるような事柄はすべて調査をしなければならないのであります。従って、ある団体暴力主義的破壊活動をするおそれがある、あるいはどうも諸般の情勢からそういう方向へ発展する、あるいはすでにこのことはどうも暴力主義的破壊活動というような疑いがある、こういういろいろな情勢がある場合に、調査権を発動するわけでありますが、そのときは、一応公安調査庁におきましてその認定責任を持って決定する。これはもちろん大臣の御指揮を受けてこれこれこれといっていたすわけであります。そういうふうにいたしまして今日までいたしました結果、左が五つ、右が五つ、左が日本共産党、朝鮮総連、全学連とありまして、右の方は大日本愛国党護国団、その他三つほどございますが、そのような団体を、今までの行動から見て、やはり私ども調査対象として正式に調査をする。その他の団体調査をいたさないわけであります。  さてそこで、今のお尋ね全学連の問題は、かなりデリケートな、お尋ねのような問題がございまして、全学連という組織は一体どうなっているかと申しますと、全国大学自治会連合体になっているわけであります。従って、私ども調査するのは、その自治会連合体である全学連でありまして、たとえばぎりぎりのお話を申し上げまして、全学連解散という措置をとった場合には、その連合体である全学連であって、各大学自治会にまで影響しない、こういうふうに考えているわけであります。従って、その連合体の体を持つものだけを一応見る、ういうものをどういうふうに見るかというようなことを考えているわけなんです。従って、たとえば全学連傘下のあらゆる学生を全部追いかけるということは考えておりませんし、また、実際上それは不可能であります。全体の構成員はたしか二十九万あると申しておりまして、それを私ども役所のわずか千三百人の調査官でやるということはとうてい不可能でありまして、要するに、最も目につく活動分子だけを注意するというふうに、ごく少数の範囲だけに限定し、しかも、その上だけを見ている。その範囲内で認められることだけをする、こういうふうな仕事をやっているわけでありまして、決して二十九万に上るあらゆる学生をどうだこうだということは考えておりませんし、事実上不可能で、まあ、その範囲において破防法運用をいたしていきたい、こう考えている次第であります。      ————◇—————
  19. 中島茂喜

    中島委員長 質疑の途中でありますが、通商産業省設置法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、去る六日、本院の承諾を得て内閣において修正いたしましたので、この際、政府より修正趣旨について説明を求めます。通商産業大臣佐藤榮作君。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通商産業省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、その修正を求めました理由及び修正概要を御説明申し上げます。  通商産業省におきましては、最近の経済情勢に即応した体制を整えますために、設置法改正を検討いたしますと同時に、審議会につきましても、これを整理する方向で検討し、さきに通商産業省設置法等の一部改正案を提出いたしました。その後も、審議会の整理につきましては検討を続けておりましたが、このほど、新たに武器生産審議会を廃止しても差しつかえないとの結論に達しましたので、急遽修正を求めた次第でございます。  武器生産審議会は、昭和二十八年武器等製造法が制定されました際に設けられたものでございます。武器等製造法は、当時武器生産事業が特需を中心として再開されたばかりであり、乱立、過当競争の状態にあったものを調整し、秩序づけることを目的として立法されたものでありますが、同法の運用につきましては、当時の武器生産業界、その他四囲の事情から識者意見を反映させる必要があり、そのために審議会が設置されたものであります。  しかし、最近に至りまして、武器生産業界は整備され、しかも、製造法運用に関しましても一応軌道に乗っておりますので、今後恒常的に独立審議会を設けておいて識者意見を聞く必要が出てくることはまずないと思われます。  このような見地から、地下資源開発電気関係法令改正鉱業法改正石炭鉱害対策の各審議会とともに、この際武器生産審議会を廃止することとした次第でございます。  以上、修正理由及び概要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
  21. 中島茂喜

    中島委員長 これにて説明は終わりました。  本案に対する質疑は後刻に譲ります。      ————◇—————
  22. 中島茂喜

    中島委員長 先ほどの質疑を継続いたします。石山君。
  23. 石山權作

    石山委員 日本共産党全学連二つ左翼としては発表していますが、皆さんの方でこれが団体規制をしなければならぬという団体は、隠密のうちに決定して、そして調査をなさっているか、それとも、その団体については何か機関を通じて忠告みたいなことをなさるというふうなことがあるのですか。
  24. 關之

    ○關(之)政府委員 団体を正式に破防法調査対象として取り上げるかどうかの問題につきましては、これは法律上といたしますれば、公安調査庁の長官が責任をもって決定する、こういうことに相なっております。いろいろな資料から見て、調査しなければならない、こういうことになりますと、全庁に向かって調べるべしと命令される。これで一応は済むわけであります。そして、その調査ということは、この類似の問題と申しますと、これはいわば犯罪捜査によく類似したものでありまして、一応密行するというととが建前ではございますが、個人々々の犯罪捜査とは少し違って、すでに団体で公に存在しているいろいろな問題がございまして、やはり何がしかの意味において、その団体にもそういうことの警告をいたすことが、私は正しいことと思うのであります。しかし、法律上たとえば警告をしろとかいうような規定はないのでありまして、今日までそういうことはとっておりません。ただ、私どもとしては、共産党あるいは総連あるいは学生団体のごときが、一昨年、ずっと前からときどき問題がありまして、一体調査はどうするのかという国会でのお尋ねがございまして、その国会でのお尋ねのときに、実はこれこれの理由によって、私どもはこの事件を契機として調査をいたさざるを得ないというようなお答えを申し上げているわけであります。実はそこが、私は、この問題を調査庁調査するということを公式化すと申しましょうか、公然化すと申しましょうか、正式に意見を発表する場と心得ておりまして、国会において御報告申し上げることが、一般に調べているぞということを申し上げる一番権威あることだと存じて、大体そんなようなつもりでやってきているわけでございます。
  25. 石山權作

    石山委員 私は右翼団体名前なんかあまり聞きたくもないし、あれですけれども、たとえば国会で、左翼団体はどれどれだ、右はどれどれだ、こういうふうに聞かれた場合、あなたの方で答弁できる用意を持っておりますか。
  26. 關之

    ○關(之)政府委員 ここで私が責任を持って御答弁申し上げられるのは、やはり法律運用上の問題でなければできないわけであります。従って、左の方の共産党について申しますと、共産党はどうなっているか、その活動はどうなっているか、そしてまた、共産党党員というのは、一般大衆団体の中に入っているわけでございまして、その党員はこれこれの団体にはどのくらいいるかというような問題ならば、共産党のことについてはお答えいたすことができるのであります。先般も参議院予算委員会お尋ねがございましたから、全国の官公庁の中に約一万四、五千人の党員がおりますと言って、各個々名前まで申し上げてお答えをいたしましたのは、そういう角度からで、共産党員なり共産党活動として、共産党員がそれぞれの大衆団体の中に潜在していて、そしていろいろな活動をする、それ自体は調べておりますから、そういう意味で申し上げたのであります。そういうふうに調査対象団体に関しては、その団体とその団体の影響の及ぼす範囲におきましては、責任を持ってお答えすることができるのであります。その他の点については、たとえばその他の自民党について何か言えというお話がありましたが、全然そんなものは私ども調査権限範囲外でございまして、全然申し上げる事由はないのであります。そういう意味お答えを申し上げることはできるわけであります。
  27. 石山權作

    石山委員 たとえば共産党のような場合は、非常に広範囲大衆の中へ溶け込んでおる。それに長じておって、実にわれわれとしても感心しているわけなんです。そうしますと、かなり分子が入っておるというわけで、日本の国をどうしようとかこうしようとかいう、きつい考えを持たない団体でも、たとえば原爆防止問題あるいは母親大会とか、あるいはPTAの大会までもそうかもしれないけれども調査をされる可能性が生まれてくるのですが、そういう場合には、どういうふうに区別をつけて調査をなさっておるのですか。
  28. 關之

    ○關(之)政府委員 いわゆる共産党以外の大衆団体の中に党員がいる。その場合の調査の仕方でありますが、これは一応法律的に考えてみますと、要するに、大衆団体だけは調査をしない、中におる党員活動だけを調べる、こういうふうに御説明申し上げるのが、一応の法律論であります。ところが、実際問題になりますと、要するに、その中の共産党員というものは、共産党員であると同時に、その大衆団体の組織の構成員で、いわば二重の性格を持っておるのでありまして、特にそれが役職その他についておりますと、またそこにむずかしい問題があるのであります。そこで、その点は、私どもとしても調査上最も苦心をするところであり、また、国会の中でおしかりを受けるというか、御注意をいただくのも、実はそういう点に問題があることは、承知をいたしております。そういう場合には、私どもとしては、調査の心得といたしまして、要するに、その大衆団体その他を調べるのじゃなくて、その中にいる共産党員共産党員としてどういうことをやるか、そういう点を調べる、こういうことを言って、厳にその範囲を限定するように指示をいたしておるわけであります。と申しますのは、共産党員というのは、大衆団体におって、大衆団体構成員という二重的な性格を持つのでありますが、その共産党員は——規約上共産党員は他の大衆団体に入っていって、党の勢力の拡充と影響力の深化に努めるということが原則になっておるのでありまして、結局党勢力の拡充に大衆団体に入っておるというのが、いわゆる国際共産主義、一応すべての国の共産主義の原則であります。そこで、そういう角度からそのものの動きを見て、そして、共産党の中央ないしは国際共産主義からの影響というものがどういうふうに流れ込んでいって、どういうふうに動いておるかという範囲に厳に限定して調べておるわけであります。こうはいたしておりますが、仰せの通りでございまして、いろいろ実は問題があって、われわれがそんなことはやらぬでもよろしいと言われますが、とにかくわれわれの建前といたしましては、要するに、共産党員共産党員としての活動を調べる、こういうことを中心として調査をしているわけであります。
  29. 石山權作

    石山委員 公安調査庁の場合は、普通地方語でいえば、昔の特高みたいな仕事をしておるのだろう、こういうふうに認定をしておる向きが多いだろうと思うのです。そこの中には非常に暗い歴史があるわけです。いじめられなくてもいい人が、非常にたくさんいじめられたという経緯がございます。これは何といっても、説明できないほど歴然とした過去があるわけです。これは私たち非常に経験しておるわけなんです。国家でございますから、安寧秩序というものは、しょっちゅう念頭に置かなければならぬのだけれども、そのための予防的な調査をしなければならぬ、そういう意図を私たちは否定しているわけじゃないのであります。だからといって、認定された団体の方々が、ある意味では非常に束縛を受けた感じでいなければならぬ、あるいはそのことによって日常生活にまで何か暗いかげがさすようであるとすれば、これは考えざるを得ないのです。それから共産党の場合でも、中身はどうかということになると、これはいろいろ問題があるのですけれども、当面は八全協以降は変わったというふうに宣伝している。こういうようなことも、この際考えておく必要があるのではないか。おそらくは、特に思想の問題でしょう。事実行為があれば、刑法によって罰せられるのです。人の思想とか、もちろん行動も結ぶわけでしょうけれども、まだ罪を行なわない前に、お前は罪を犯すだろうという一つの判定のもとに調査を進められる、本人にとれば、これは非常に不愉快だろう。共産党員の場合、あるいは全学連の場合でも、国の基礎というものを暴力によって云々というふうなことは、そう強くまで考えていないのではないか。それから、僕らが、破壊活動防止法ができるときに非常に懸念したのは、あなたがさっきお使いになった扇動という言葉でございますが、最近、たとえば公務員の組合で、池田内閣の何々の政策については反対だ、こういう打ち出し方が大へん見えるわけです。それは社会党が扇動しているのかもしれませんし、あるいは共産党が扇動しているのかもしれません。この場合における調査という問題が必然的に浮かんでくるように思うのですが、これはおやりになっているわけでございますか。
  30. 關之

    ○關(之)政府委員 破防法の場合の暴力主義的破壊活動には二つの類型があるわけであります。一つの類型は、いわゆる内乱形態によるものでありまして、これは現在の情勢から申しますと、いろいろの暴力革命というものがこれに当たろうかと思います。第二の類型は、政治上の主義、施策を推進し、またはこれに反対すること、ただいまの池田内閣の何々政策に反対だというようなことは、その政治上の主義、施策を推進し、支持し、またはこれに反対するというカテゴリーに一応入ってこようかと思います。そういうような意図のもとに、暴力主義的破壊活動を十ほどあげておりますが、これはすべてその元の形を刑法にとっておりまして、例を申しますと、殺人、騒擾、汽車の転覆、あるいは放火、そして最も軽いもので、凶器または毒劇物を所持して警察官などの公務執行を妨害する、こういう形になるわけであります。  そこで、国会破防法審議におきましても、確かにそれらの点は問題になりましたが、今のような政治上の主義、施策は、現代では日本の各政党なり組織なりがおやりになっていることでありまして、そんなことは一々対象にならない。問題は、それがどういう行為をするかという問題であって、たとえばある労働組合が殺人をするとか、あるいは騒擾をするとか、あるいは凶器を持って警察官の公務執行を妨害するということは、とうてい考えられないことでありますし、だから、幾らおやりになっても、そういうことをやらなければ破防法対象には全然ならない。そこで、私どもとしても、政治上のそういう頭からではなくて、下の方の個々の行為、騒擾するとか、殺人するとか、あるいは汽車の転覆をはかるとか、あるいは毒劇物、硫酸とかいろいろ持って警察官の公務執行を妨害するというような、そういう個々的な行為とくっつかない限りにおいては、いかなる政治上の論議も調査対象にはいたさないのでありまして、そういうふうにしてしぼったのが、今申し上げました左が五つ、右が五つ、こういうふうに限定されておるわけでありまして、決してこれが無制限に広がるということは考えていないのであります。かつての特別高等警察官、治安維持法の運用の結果、確かに若干の行き過ぎがあった、その反省によって生まれたのが、実はこの破防法だろうと考えております。それは御存じだと思いますが、治安維持法の「目的遂行ノ為ニスル行為」ということになりまして、極論いたしますと、共産党員に御飯をくれてやったということだけで問題にまで展開する可能性がありましたが、今の破防法は、決してそういうことにはならないのでありまして、刑法のいろいろな規定を取り上げて、刑法をちょっと広げただけでありまして、その刑法がしっかりしている限りにおいては、われわれがこれを勝手に広げることはできない。それは判例において、学説においてがっちりと固めておりますから、私どもが勝手に広げることはできない。また、この十年間の運用におきましても、それを勝手に広げてはいないのでありまして、これがどうにでもなるというものではないのであります。だから、この刑法の根本というものがゆるがない限りにおきましては、破防法運用も、かつての治安維持法のようなえらいところまで行き過ぎになってしまうということは決してなかろう。これは十年間の運用の実績で、私はそう考えている次第でございます。
  31. 石山權作

    石山委員 だんだん内容がはっきりしてきていいのでございますが、私、今度の増員等について不審に思っているのは、左右両翼の過激の団体調査なさっていられる。しかし、実際に行なわれている問題は、むしろ左翼に重点が置かれているのではないか。左翼の中に社会党の半分が入っているかいないかわからぬけれども、行なわれているのではないか。ということは、これは各府県にみな置いているわけですね。各府県の分布図を見てみますと、右翼団体のある県は幾県もないのですね。普通にはほとんど平穏無事です。例をとるならば、私の方の秋田県なんかも、幸いにして、あなのた方ではあるかもしれませんが、われわれの知る限りは、右翼団体はないのではないか。そうすると、これは秋田県もあるわけですから、この対象は、社会党を半分含めた共産党の諸君、あるいは労働組合等を対象にしているのではないかということも、一応考えられるのですが、全国的に見た場合、右翼左翼調査は同じくらいなものですか。件数というか、そういうものは大体同じような格好で行なわれているものでしょうか。
  32. 關之

    ○關(之)政府委員 全国的にいいまして、破防法の観点から見ての調査対象の状況でありますが、左翼の問題は、お尋ねのごとく普遍的な問題でありまして、左翼の組織原理は、行政組織によって組織を行なう。従って、市町村あるいは区まで細胞のあるところがあろうかと思います。最近においては全国で約七千以上の細胞がございますから、ほとんどないところはないくらいにばらまかれていると考えてよろしいかと思うのであります。これに比較いたしまして、右翼の問題は、私はそう普遍性はないと思うのであります。ある一部分に限定された問題が多い、こういうふうに考えてよろしいかと思うのであります。従って、私どもとしましては、その右と左の調査の態度におきましては、やはり問題のあるところに人員を配置する、問題のないところには配置しない、こういうふうな方針をとっておるのであります。御質問の秋田県の場合には、たしかここには全体で十人の者がおりまして、これは局長が一人と課長が二人と、中にはタイピストぐらいもおりますし、全部を含めてみますと、実際の調査に従う者は五人前後に相なるわけでありまして、もちろん、右翼の問題はそうないことは私も全く御同感でありまして、主として共産党の動きということが重要な問題になるわけでありますが、この程度で、現在あそこには数百人の者がすでにおるのでありますが、これをさらに二千、三千に伸ばしていく計画があろうかと思うのでありまして、それをこの勢力で内容を探知する、こういうことになると思うのであります。これに反しまして、たとえば九州の福岡であるとか、東京であるとかいうことになりますと、これは左も非常に強いのでありますが、同時に右の方も問題が集中しているわけであります。そういうところには従来もそのように人員を配置いたしましたが、今度の増員をお認めいただけますならば、その増員もそういう観点から配置いたしたい、こういうふうに考えているのであります。
  33. 石山權作

    石山委員 八十七名の配置区分はきまりましたか。その中で、秋田県は何名配られるのですか。
  34. 關之

    ○關(之)政府委員 こまかい数字はまだきまりませんが、大体の方針といたしましては、八つの公安調査局に配置をしよう。八つと申しますと、北の方から札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、高松、これがそれぞれの管内の地方局を監督しておりまして、もちろん、東京、大阪、この二カ所にかなり多く配置いたしまして、そうして、北海道あるいは東北のごときは十名未満に相なると思います。そこに配置して、各管内には、秋田なら秋田にはそこの局の職員としては配置することは不可能であろう。現実に増員することは不可能である。もしそこに仕事があるなら、東北から応援でも新しい配置でやるというふうに、いわゆる機動的な意味を持たしてみたい、こういうのが今の大体の構想であります。
  35. 石山權作

    石山委員 たとえば破壊活動の問題で調査をするというが、個人対象になる。個人の秘密の事項も探知される場合がある。破壊活動とは何にも関係がない男女関係があるかもわからぬし、ともかく個人が秘密にしていた事項を探知する機会に恵まれる場合が多いと思います。そうすると、よくあるのですが、それを種にして、脅迫という言葉はなるべく使いたくないけれども、恐喝という言葉も使いたくないけれども、事実上そういうふうな不名誉な譴責を受けた事例はございませんか、庁員の中で。
  36. 關之

    ○關(之)政府委員 強制調査権を持たず調査をいたすことになるのでありまして、新聞社の皆さんの御活動にいろいろな工夫をこらすということに相なろうかと思います。そこで、今の、全く個人の、一般的に言うならば、秘密で、暴力事件破壊活動と何ら関係のない行為を調べ上げて、それで懲戒を受けた事例はないかというようなお尋ねでありますが、従来懲戒としてはそういう事例はありません。ただ、たとえば無用に調査対象でない労働組合の情報をくれというような場合については、しかりおいた例はございます。そういうことをやってはならぬ、要するに、共産党活動ならよろしい、そうでなくて、何ら共産党関係のない大衆組織の情報をくれということはいかぬ、そういうことはいけないというて、しかりおいた事例はございますが、今のような事例は今まではありません。しかしながら、御疑問の通りに、いろいろと起こり得る場合があろうかと私は思っておりまして、従来も、結局個人のいろいろな秘密というような問題についてはせんさくしてはならない、やはり問題は、各個人を調べなければならぬことになろう、その場合に、たとえば、共産党で申すならば、それぞれの共産党員としての個人活動、そういうものがどういうことをしようと、そういうことはわれわれと関係はない、共産党の指令によって共産党員として活動する、その範囲において調べる、こういうふうに一応言うておりまするが、向こうから見ますると、一人の人間の行動として、いろいろばらばらくっついて参ることもあるのでありまして、そういうことは、とにかく知っても、本来ならば要らざることでもあるからというふうにして、調査官にはそのけじめはつけるように常に注意をいたしておる次第でございます。
  37. 石山權作

    石山委員 調査活動を非常に充実さすため、正確にさすために、ときどき行なわれているようでございますが、たとえば労働組合の共産党員活動を知るために、何か金銭あるいは物品を供与してやったというふうな事例が、ときどき新聞などに出ているようですが、それは奨励事項になっているのですか。
  38. 關之

    ○關(之)政府委員 組合の中に共産党員なりあるいはそのシンパなりがいて、そして、中の共産党情報を提供していただく、それに対しては実費補償の意味において、それ相当の謝礼を差し上げるというようなことが普通の状態になっております。もちろん、情報の提供というものは、なるべく金銭的な関係なく、向こうも自由に積極的に進んでしていただき、そうしてわれわれもそれをいただくのが理想的な形態でありまするが、今日におきましては、なかなかそういうわけにいかず、先方の方から若干の謝礼とかいうことを求められる例が多いのでありまして、多くの例においては、協力していただくその代償として、物心両面の御苦心に対してお礼を差し上げるということになっているのであります。
  39. 石山權作

    石山委員 これは調査事項が非常に機密を要するということ、あるいは経費の点などで、機密費みたいなものが当然どこかに見込まれなければならぬわけでしょうけれども、行政的に見まして、行管の調査を受けたことはございますか。
  40. 關之

    ○關(之)政府委員 今まで行管の調査を受けたことはございません。これは私の役所が特殊な役所だから受けないとかいうような理由でなくて、行管の方の御都合によるものだろうと私は思っております。私の方は別に一般役所と違っておるところではなく、国家の行政機関でありますから、もちろん、行管の調査とかあるいは監察というものは、いつでも受けるつもりでおるわけであります。
  41. 石山權作

    石山委員 もう一つお聞きしたい点は、会計監査という言葉がよく使われているわけですが、こういうことを今まで受けたことはございますか。
  42. 關之

    ○關(之)政府委員 会計の方は、これは私ども十分監査していただきたいし、また、検査院におきましてもよく御注意いただいておりまして、本庁の方は毎年受けておりまして、地方の方は、五十局のうち、関東にあります公安局が今日まで三回受けておりますし、その他、近畿の公安局が二回、九州の公安局が二回、そのほか、各地方局に至りまして今日まで七カ所が受けておるわけであります。これは一般役所としてはそう少なくない方と思っております。まあ、そんなわけで、これを受けておりまして、その間、経理上の不始末の点で御注意を受けたようなことは今までほとんどなく、その場でわずかのいろいろな間違いはございますが、それは指導的に見ていただいて直したりして、漸次正しい方向に現在いっているものと、こう思っております。
  43. 石山權作

    石山委員 さきごろ、中央公論から天皇制を論じた雑誌が出るものが取りやめになった。その中に、何か公安調査庁の人の名前が出ていたのです。何か公安調査庁が干渉したのじゃないだろうけれども、その休刊に一役買っているのでございましょうか。
  44. 關之

    ○關(之)政府委員 これはたしか「思想の科学」という題名でございましたが、そういうことが新聞に出て、天皇制を論じた雑誌を出そうとしたが、急にそれをおやめになったということを承知いたしておるわけでございます。さて、これと公安調査庁との関係はどうか、こういう問題でありますが、これは私どもの関東の一人の調査官がありまして、そうして、中央公論社の総務部の何とかという方と個人的にかねてから知り合っていたのであります。そこで、その調査官の頭の中に、そういう新聞を読んではいたようでありますが、ひょっとして、全体としては天皇制の問題であるからして、あるいは右翼か何かの問題が起こりやしないかということを観念的には想像していたようでありますが、そのときとしては、そんな情報はありませんでした。そこで、そのときに、何か中央公論社の前をぶらぶら歩いていて、友だちだから寄ってみたのでしょう。おい、元気かということで寄ってみましたところが、その応接間の本だなにその本が置いてあった。ああ、この本か、見せろとぱらぱら見たということが事の実想でありまして、たとえば積極的にこちらで調査に行ったとか、あるいは勧告してそれを廃刊にしろということは、全然ないのであります。実際、ちょっと筆者の方から、中央公論社の方にも、公安調査官になぜ見せたかということで抗議がきたようでありますが、私ども心配しまして、実相はどうかということをよく調査したのであります。実はそういう関係で、友人として、たまたまちょっとデスクにあったから見たというようなことのようでありまして、それ以上の関係はございません。廃刊にした方がよろしいと勧告したとかなんとか、全然そういう話は出ておりません。向こうの方もそう言っているようでありまして、その点はほんの偶然の友だちづき合いのことで、たまたま目に触れたような問題と御承知をいただきたいと思うわけであります。
  45. 石山權作

    石山委員 昔の特高の任務は、天皇制護持が中心であったのです。天皇制を維持するために、天皇に対して反逆を企てる者に対しては、国体擁護の名においてという立場でやっておったと思うのです。あなたがおっしゃる通りであれば、偶然でしょう。ただ、そういうことを知らないでちょっと見ますと、公安調査庁の性格というものはやはり天皇制護持にあるのではないか、そこにやはりめどを置いていろいろなことをお考えになり、そうして調査対象というものが行なわれているのではないか、国の治安ということでなくして、天皇制護持、そんなところにあるいはあるのではないか、私などもちょっと気にした一人でございます。新聞ではちょっとしか書いておりませんでしたけれども、そういう面があるのではないかというふうに思われる意図がまだ残っておるわけですね。そうでないというふうにあなたがおっしゃるのでございますから、その通りだと思います。考えてみますと、皆さん仕事というものは、非常に困難な仕事なようでございます。団体規制しながら、個人に糸がついている。それを調査のもとに集約するというようなことになるのでしょう。全学連の場合なんか特にそういうことになりそうでございますが、よほど注意していただかないと、皆さんの方では一生懸命やっているというふうに思いますが、われわれの方ではうるさいなというような感じになりそうでございます。そういう点を注意していただきまして、やってもらいたい。  それから、右翼左翼という言葉はよく使っているのですが、実際言って、右翼左翼という問題は、判定の仕方がなかなかめんどうだろうと思うのですが、今の場合、皆さん方から見た場合、割合に左翼は安定しているだろうと思うのです。左翼のものの考え方は安定している。突発事項というものは少ないのではないか。治安の面では心配ないのじゃないか。むしろ右翼の方が非常に団体の数が多くて、その中では、思想的に訓練をされた者もおりますけれども、おおむね訓練をされない、いわゆる理論というものが非常にあいまいな形で、団体が結成されておる。ですから、思想的に見ても、行動的に見ても、不安定なのは右翼なのではないか、右翼こそ十分に調査対象として未然に防ぐという対策が練られる必要が今あるのではないか、こう思いますが、こういう点はいかがでございますか。
  46. 關之

    ○關(之)政府委員 私どもの立場から見て、右翼左翼との突発的危険性というような問題についてはどうなっておるかというお尋ねでございますが、私は、個人テロであるとか、あるいは個人的傷害というようなものから見ると、明らかにお言葉通り、右翼の突発性の方が、現在は重大な問題であろうかと思っておるわけであります。そしてまた、一昨年の浅沼さんのケースから見ても、同じように、いろいろな方面で思いも寄らないような少年やら不良が飛び出てきて、いかにも調査がむずかしい問題で、以前から見ると、きわめて重大な問題でありまして、この方は確かにそういう面で注意しなければならない、そういうふうに私も考えておりまして、浅沼さんの事件あるいは中央公論社の事件その他を通じて、調査の方法も大体そういうような点に注意を置いて、全体の運営をいたしておるのであります。これに反して左の方の安定というお言葉でありますが、私は安定とまではどうも考えられない状況にあろうかと思うのであります。と申しますと、たとえば共産党にいたしましても、実力、暴力を使うかは、要するに相手方の出方いかんである、それが根本の規定でありまして、これは国際共産党のモスクワ宣言にさかのぼってもそういう規定になる。日本共産党では終始一貫そういうことになるのであります。それから、革命形態がそうでありますが、そのほかの、たとえば騒擾であるとか、あるいは集団的な凶器を持つ公務執行妨害というものが、いろいろなケースに起こり得る事態でありまして、そういうものも二、三年来の経過を見ておりますと、すっかりそういうことまで考えないでよろしいという安定性はなかろう、その方も十分に注意していかねばなるまい、こう思っておるわけであります。
  47. 石山權作

    石山委員 公安調査庁あと一つで終わりますが、特高課というものは、昔は警察の中にあった一分野だと思います。今度はそういう国家行政組織から見れば、自治省関係警察法務省関係皆さんの外局になられておるわけですが、実務的に見て、法務省の外局であった方がいいと思われるのですか、それとも不便を感じていられるか。昔の遠いことを振り返ってみて、今の方が庶民に不安感もあまり与えない、やりいいんだ、実績も上がっているんだ、こういうふうにお考えでしょうか。
  48. 關之

    ○關(之)政府委員 これは公安調査庁の次長として、ほんの事務的な一つ意見でありまして、これは大臣のお許しを得なければ申し上げられないことかもしれませんが、私といたしましては、破防法を作るときにこの問題がありまして、当時の木村法務総裁が、やはり法務省に置いた方がよろしかろう、その考え方は、非常に法律の事務であり、そして、あまり権限を一括して集めるより、法務省の外局として、法務省の全体的な法律的コントロールを加えて運用した方が、あまり乱用の弊害は少なかろうということが、当時の一番の大きな課題であったのであります。そういう観点から見ると、確かに目的は達せられた。そういう至上命令、すなわち、乱用の危険を法務省法律的なコントロールを加えてやる、そういう点から見ますと、たとえば破壊的団体の指定とか調査の点も、いろいろ新聞では書かれておりますが、これは今日まで向こう様の言うほどの理由一つもないと思うのであります。それで、たとえば検察審査会あるいは検事局あるいは検察庁に告訴していただきたい、われわれのやったことが悪いかどうか、法律上どうかということは、すべて疑いなし、検察審査会というものがありまして、全く独自の存在でありますが、それにも数件私どものやった行為がかかっておるわけでございます。検察庁で起訴したら、その通りじゃないかというような御意見があって、そして審査会に審査は請求もされましたが、審査会の方でもこれはよろしい、あるいは人権護擁局に言われても、人権保護はすべてよろしいという御判断があったのでありまして、ですから、私は、当初の法案の乱用を防止するという観点から見ると、今のような形が最もよろしいものである、こういうふうに思っておるわけであります。  その他、さらに積極的に捜査面を広めるとかなんとかいうような問題については、中の予算の問題とか、あるいは人の問題に関する面が多いのでありまして、今は千七百人と十七億円ばかりの予算でございますが、それで最大の努力をいたしておる。それで一応の成果を上げているもの、こう思っているわけでございます。
  49. 石山權作

    石山委員 これは大臣が来たときでも、討論みたいな格好になるだろうと思うんですが、手足を持つというのは、警察の一部分にいた方がやりやすいですね。応急の場合に大いにやれる。だけど、さっきの話を聞くと、何らか横の連絡はとれるわけでしょう。調査事項としてお頼みすれば、警察では、その事項は調査をしてくれるというふうになっているんじゃないですか。
  50. 關之

    ○關(之)政府委員 それは、一応そういうことができるわけでございます。私の方ではできない調査がございます。たとえば強制調査権がありませんから、疑いがあるならば頼むといおうか、私の方でしなければならないようなことは、やはり警察の方でもしなければならないというのが、一般の例でありまして、向こうでやったものをこっちへ下さるとか、あるいは警察、進んで検察庁においてなされたものをもらうとか、しいて頼んで向こう強制権を発動するということは、今まで一回もございません。おおむねこっちでやらなければならぬものは、向こうでもやらなければならぬ。むしろ、事態とすれば、右翼事件のごときは、警察権の発動の方が早いので、あとを追っかけて私の方が団体規制をやるということに相なるかと思いますので、従って、実際の運用からいいますと、大体そういうことに相なっておるのでございます。
  51. 石山權作

    石山委員 そうすると、公安調査官八十七名というのは、最近右翼事件等ひんぱんに起きている、それから左翼の組織活動も進みつつある、そういう両面にわたっての増員でございましょうか。
  52. 關之

    ○關(之)政府委員 お尋ねの通りでありまして、左右両翼の最近の情勢に対処することになるのであります。左の方は、この二年間に四万の党員が八万にふえたのであります。その勢いをかりまして、今後二年間に全国で三十七万にふやす、こういうのが共産党の計画に相なっておるのであります。そのために、これが積極的な、非常に熱心な行動を最近展開しているわけであります。左の側のこのような動きに対しまして、右翼はどう出るか、要するに、右翼一つの基本的な観念は、反共という立場に立っておりまして、一昨年来のいろいろなテロ的な行動も、根底にはそこに原因があるわけであります。そういたしますと、この左の増強というものに対して右翼が非常に危険を感じまして、右翼行動も、全体として矯激な方向にどうしても走らざるを得ない。しかも、従来右翼とは考えられなかったいろいろな部面まで、そういうような行動分子が出て参るのが最近の特徴でありまして、三無事件のごときもその一つの例だろうと思います。そこで、要するに、その両方を、特に左を見るのは前からの同じ態度でありますが、右の方は従来以上に問題を重要視して、御指摘の通り、全く私同感でありまして、非常にむずかしい問題となりましたから、その面にも相当のものをさいて力を入れていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  53. 石山權作

    石山委員 この前の右翼事件に対して破防法を適用するというふうなことが新聞等に出ておりましたが、その後態度がきまりましたのでしょうか。
  54. 高瀬礼二

    高瀬(礼)説明員 先般三無事件というものが発生いたしまして、東京地検において捜査をいたしました。現に捜査を続けておる段階でございますが、昨年の十二月二十九日、関係者の一部につきまして、十名でございますが、起訴いたしました。さらに本年に入りまして、二月一日に二名起訴いたしました。いずれも破防法の三十九条、四十条を適用いたしまして、政治目的の騒擾、殺人の予備ということで起訴いたしたのであります。なお、残りの被疑者につきましては、現在捜査を継続いたしておるという状況でございます。
  55. 石山權作

    石山委員 三十九条、四十条をお読みなすって下さい。
  56. 高瀬礼二

    高瀬(礼)説明員 破防法の三十九条「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもつて、刑法第百八条、第百九条第一項、第百十七条第一項前段、第百二十六条第一項若しくは第二項、第百九十九条若しくは第二百三十六条第一項の罪の予備、陰謀若しくは教唆をなし、又はこれらの罪を実行させる目的をもつてするその罪のせん動をなした者は、五年以下の懲役又は禁こに処する。」これが三十九条の全文でございます。ただいま申しました三無事件につきまして適用されましたのは、この政治目的をもって、刑法第百九十九条というのがございますが、これが殺人の罪でございます。その百九十九条の罪の予備というのがございまして、予備をなした、こういう部分が、三無事件につきまして適用された関係になっております。  それから、次が四十条でございますが、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもつて、左の各号の罪の予備、陰謀若しくは教唆をなし、又はこれらの罪を実行させる目的をもつてするその罪のせん動をなした者は、三年以下の懲役又は禁こに処する。」となっておりまして、一号から三号まで出ておるわけでありますが、三無事件関係は、その一号「刑法第百六条の罪」というのが騒擾の罪になっておりますが、その政治目的の騒擾の予備、こういう関係になっております。
  57. 石山權作

    石山委員 それから武器が韓国から輸入された形跡があるというふうにも新聞の一部では報道されておりましたが、その武器の輸入等は明らかになりましたか。
  58. 高瀬礼二

    高瀬(礼)説明員 今お尋ねの武器の輸入の関係と申しますのは、長崎事件関係ではないかと思いますが、これにつきましては、すでに長崎地検で処理をいたしておりまして、関係者につきましては、本年の一月から二月にかけまして三回にわたりまして、姜大運外十一名を起訴いたしております。さらに、一月二十二日岡村俊男外五名を略式請求ということでやはり起訴いたしております。ほかに一人少年が入っておりまして、これは家庭裁判所に送致をいたしました。こういった関係で処理をいたしておるわけでございますが、現在の段階では、お尋ねの三無事件との関連があるということを証拠づける資料は出ておらないという状況でございます。
  59. 石山權作

    石山委員 こっちで武器を買うのは、法律上問題があるわけですが、韓国の国内法では、外国人に武器を売ることは何ら差しつかえないのでありましょうか。この場合即答ができなければ、あとでお知らせを願えばよろしい。韓国側としては合法的に売っているのかどうか、その点を一つ……。
  60. 高瀬礼二

    高瀬(礼)説明員 その点はちょっと即答できませんので、調査をいたしまして……。
  61. 石山權作

    石山委員 最後のところでお聞きしておきたい点は、植木法相の訓示の中の、刑罰法規の存在すら無視しようとする傾向というふうに強くうたっているわけですが、これはおもにどういう傾向をさしているのでございましょうか。たとえば最近交通事件が非常にやかましくなっているのですが、そういうふうな、だれが見てもはっきりするような事件をさしているのか、それとも、思想上の問題というふうなことを言っているのか、あるいはまた、公務員の諸君が法律改正に反対するというふうなこと、公務員の組合の方が、政策上出しているああいうふうなものに反対すること、そういうこと等をもさしているのだろうか、こういうような疑問を持っているわけですが、その傾向という言葉は、何か例示ができれば、その例示のおもな点を三つぐらいあげていただければよろしいのではないか、こう思っております。
  62. 羽山忠弘

    羽山説明員 ただいまお尋ねの点は、先般の次席検事会同の際の植木法務大臣の訓示の内容の点と考えるのでございますが、たとえば、先ほど申し上げましたように、売春防止法があるにもかかわらず、平然と売春が行なわれる、あるいは麻薬取引が禁止されておりますにもかかわらず、公然と麻薬を売っているようなところがあるというような、むしろ、一般刑事検察の面の脱法的あるいは法無視の傾向を強調されておられるのでございまして、その会同の席上におきましては、治安関係の問題について言及されたわけではない次第でございます。
  63. 石山權作

    石山委員 これはまあ法務大臣お話しなさったのだから、お互い推測してやっているわけなんですが、あなたの御意見からすれば、一般的なことを言っているのではないか、一般的に言っているのではないかということは、一般的にそういうふうな犯罪みたいなものが、法無視の形であらゆる意味で出ているということで、特定の団体で出ているというような意味ではございませんね。
  64. 羽山忠弘

    羽山説明員 さようでございます。
  65. 石山權作

    石山委員 終わります。
  66. 中島茂喜

    中島委員長 山内広君。
  67. 山内広

    ○山内委員 各般にわたって石山委員より御質問がありましたので、私は焦点をぐっとしぼりまして、川崎入国者収容所の一点で、やや詳細にお聞きしておきたいと思います。  今度川崎の収容所が横浜に移転されることになりまして、その移転の必要を説明されておるわけですが、どうもこれだけではあまりに抽象的であり、よくのみ込めませんので、一つ具体的に、こういう必要から移転するのだということを御説明いただきたいと思います。
  68. 高瀬侍郎

    高瀬(侍)政府委員 川崎に現在ございまする入国者収容所を他の場所に移転いたしたいという考えが起こりましたのは、一両年前から当該地区にたくさんの石油その他の化学工場が林立して参りました。その結果、大気の中に非常に多い分量の違和——人間が感じて不快になるような分子が入って参りまして、まず収容所関係のものについて申し上げてみますると、収容されておる者並びに職員、その家族等が、のどが痛い、目から涙が出るというような、いろいろの健康上の苦情を申し入れているのでありまして、以後、特に夏季におきまして窓をあけておりますと、収容者が非常に臭気並びに健康上のいろいろな異常を訴えて参りましたので、   〔委員長退席、草野委員長代理着席〕 神奈川県の衛生部、川崎市の衛生課、その他、この種の事務を扱っておりまする試験所等に依頼をいたしまして、詳細な試験をしていただきましたところ、直接直ちに健康上に甚大な障害を与えるということではないが、非常に不愉快な問題であり、長くこの種空気に汚染しておることは、必ずしも健康上好ましくないというような結果が現われて参りました。その結果、この場所は適当ではないのではないか、他に移転すべき場所を探すのが正しい行き方ではないかということを感じて参りました。  第二の点といたしましては、現在の川崎収容所のございまする場所が昔は海でございまして、それを埋め立てました。ところが、川崎市の非常に急速な経済上、特に貿易港、工場地帯等としての発展によりまして、その海が先へ先へと埋め立てられまして、その埋め立てられました場所に大きな工場、化学工場を中心にいたしまして、鉄鋼所その他各種の工場が周囲に林立して参りましたので、どうも入国者を収容して置く場所としては立地条件も適さなくなったのではないかというようなことを考えまして、以上申し上げました二つの理由から、移転を考慮するに至り、実施する段階に立ち至った次第でございます。
  69. 山内広

    ○山内委員 環境が悪くなった、立地条件が悪くなった、なるほどそういうことであれば、移転をしなければならぬ大きな理由だ、私もその限りにおいては認めないわけにいかないのですが、提案理由の御説明によりますと、昭和三十一年に開設しておりまして、まだ五年か六年よりたっておらない。多分、これは古い建物を転用したのではないかと思いますけれども、もうすでに三十一年の年といえば、川崎地帯が工場地帯として発展する見通しは十分たっておる。たった五年か六年でこういう移転をせざるを得なくなったということは、ちょっと解せないのですが、この点はどうですか。
  70. 高瀬侍郎

    高瀬(侍)政府委員 ただいま御指摘に相なりました点は、われわれといたしましても実は非常に恐縮に存じ、かつまた、その先見の明の足らざることを非常に恥としておる者であります。川崎市千鳥町三番地というのが現在の収容所のございます場所でございますが、そこに昭和三十一年に土地を選定いたしまして、古い建物ではございませんで、新しい鉄筋コンクリートの建物を建てております。しかるにもかかわりませず、それを他の場所に移転せざるを得ざるに立ち至りました、先ほど申し上げました二つの理由というものは、まことにわれわれの想像を絶するスピードでもって迫り来たる怒濤のごときものでございまして、まことにその先見の明のないことは、重々苛責の念を持っておるのでございますが、何とも現在の状況が、衛生的に見まして工合の悪いという状況に立ち至り、その移転をある意味におきまして強要せられておるという状態に相なっておる次第でございます。
  71. 山内広

    ○山内委員 建物もそう古くない、りっぱな建物であり、五年くらい前から見通しがきかなかった、率直にそう認められてあやまられれば、それまでだと思いますけれども、ただ、環境が非常に悪くなって、人間として住む環境でなくなったという、このことは、何も収容所に入る人ばかりの問題でない、これは労働者全部の問題です。これは別に法務省のあなた方を責めるわけではなくて、もっと政府自体が、あるいは地方自治体として、十分に再検討しなければならぬ重大な問題であるわけです。大臣がおれば、こういう問題は、自分たちの収容所だけ逃げていけばいいんだという考え方に立たないで、もっと閣議なんかの話題にして、もう人間の住む環境でないという一つの決定の仕方をもって、将来いろいろな施策も施さなければならぬ、こう思うのですが、きょうは大臣がおいでになりませんから、一応その問題はそれで、見通しの悪かったことを率直に認められた点に対しては、一応了解したいと思います。  そこでその次なんですが、この土地坪は約一万坪ぐらいと聞いておりますが、要するに敷地関係ですね。新しく移るところの横浜はどれくらいの大きさで、どういう環境なのか、はたしてまた五年後になって——この本牧というところも、私の聞いたところでは、何か昔の花柳界の中で、そういうあまり環境のよくないところのように聞いておるのですが、それらについても、見通しをされておると思うので、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  72. 高瀬侍郎

    高瀬(侍)政府委員 ただいま御指摘の問題につきましてお答え申し上げます。  今般移転を決定いたしまして、その移転先といたしまして選定いたしました横浜市中区本牧の土地でございますが、その場所を選定いたしますまでに、神奈川県庁、横浜市、大蔵省等と緊密な連絡をとりまして、神奈川県下で三十数カ所、正確に申しますと、三十五カ所の土地をわれわれは見に参りましたが、いずれもその施設を作りますための立地条件その他の点で、必ずしも適当でございません上に、また、移転それ自身が円滑に行なわれるかどうかという問題につきましても、むずかしい問題がございます。たとえば民家が近所に非常に密集しておるというような場所等の問題がございましたが、最後に至りまして、この本牧の土地を発見、この土地に収容所を作るということに相なった次第でございます。この場所は、ただいま御指摘がございましたが、本牧と申しましても、三溪園と申します名園がございますが、それと八聖殿の間の丘陵地帯でございまして、前方が海で、後方は高級と申しますか、中流の住宅地でございます。しかも、住宅地からは隔絶せられました丘の上にございますので、場所といたしましては非常に適当な場所というふうに考えられましたので、話を開始いたしまして、当該場所を選定したというのが現状でございます。  なお、新しい土地の内容でございますが、その土地の選定までは入国管理局においていたしますが、事後の国有財産等の問題の処理につきましては、経理部と協議いたしまして、経理部が主管として、大蔵省その他と折衝してもらっておりました経緯がございますので、詳細の点等につきましては、営繕課長から御説明をお願いしたいと思っておりますが、この中区本牧の敷地は六千百二十一坪二五ございます。この土地の上に鉄筋コンクリート二階建、延べ九百七十坪の庁舎を建設いたす予定でございます。なお、その場所が、通勤の便等から見て必ずしもしごく便利なところでございません関係上、及び、収容所が二十四時間勤務の建前でございますので、職員の宿舎が付近にあることが非常に望ましいと考えられますので、延べ四百八十二坪の職員宿舎を同じ敷地内に建設する計画でございます。近く三月末に着工をいたしまして、本年の十一月ごろまでには竣工する予定で事業を開始したいと思います。なお、当該場所は、先ほど申し上げました三溪園及び八聖殿なる、横浜の割合に景色のよろしい地区に相なっております。つまり、風致地区ということに相っておるのでありますが、その風致地区に存在いたします関係上、周囲の状況並びに建物の構造及び職員宿舎の建設等につきましても、周囲の風景、風致等を阻害しないように細心の注意を払いまして、設計等については十分な研究をしてもらうようにいたしております。  以上、概略でございます。
  73. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、この横浜に求められた六千百二十一坪というのは、坪単価どれくらいに評価されておるのですか。
  74. 住吉君彦

    ○住吉説明員 お答えいたします。  六千百二十一・二五坪でございますが、その評価額は、総額におきまして一億五百二十八万六千百八十八円となっております。
  75. 山内広

    ○山内委員 この評価が高いか安いかはあとでまた申し上げたいと思いますが、そうしますと、今度不用になった川崎の方の土地はどういうふうに処分されるお考えですか。
  76. 住吉君彦

    ○住吉説明員 先ほど入管局長から説明がございました通り、現在の川崎市千鳥町にございます当方の施設、それの敷地が国有地で約一万坪ございます。うち、四千坪をもちまして、この六千坪と交換をいたしました。正確に言いますと、四千四十九・三一坪、それと先ほど申しました六千百二十一坪、これとを交換いたしまして、残りの土地建物と、先ほど御説明のございました庁舎、宿舎その他の付帯施設、これとを俗に特得と言っておりますが、庁舎等特別取得費、この予算でもって受け渡しをするという一応の構想になっております。まだ契約は結んでおりませんけれども、そういうことになっております。
  77. 山内広

    ○山内委員 相手は、これは会社ですか。それとも何か公共団体ですか。会社ならどんな会社ですか。
  78. 住吉君彦

    ○住吉説明員 川崎化成株式会社でございます。
  79. 山内広

    ○山内委員 六千幾らと四千幾らを交換して、そうしてあとの残を、建物もついているわけですが、これと新しい庁舎と交換する、こういうわけですね。
  80. 住吉君彦

    ○住吉説明員 そうです。
  81. 山内広

    ○山内委員 それで、金銭の授受はちょうど折り合うことになりますか。ということは、持ち出しとか、向こうから入ってくるとか、そういう関係はどうなりますか。
  82. 住吉君彦

    ○住吉説明員 国費でもって不足補充をいたすという予算措置はございません。従いまして、私の方の受けます建築物、工作物その他の付帯施設、これの一応の現在計画しております金額は一億八千六百二十七万二千円でございますが、この範囲内で川崎入国者収容所が移れるだけの規模のものを作っていただく、そうなりまして残りました——残りましたといいますか、現施設でございますが、これの評価額と、若干そこに出入りがございます。そうなりました場合、もしそれが現実に契約いたします際に評価をいたしまして、現在の国の施設の方がそれを上回るという場合には、川崎化成としましては、財務局に対してその購入費を支払うということになろうと思います。
  83. 山内広

    ○山内委員 この川崎化成が取得した土地の単価というものは幾らか、御調査になっておりますか、御存じだったら教えていただきたい。
  84. 住吉君彦

    ○住吉説明員 私の方は、先ほど申します現施設の敷地のうち四千坪、この評価その他は一切関東財務局で、民間精通者の評価額を参酌いたしまして算出したものでございます。従いまして、その算出の根拠その他については、詳細存じておりません。
  85. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、これは二億近い財産ですが、これは、国有財産の中央審議会に、この措置の適否について答申を求められただろうと思いますが、その辺はどうですか。
  86. 住吉君彦

    ○住吉説明員 お尋ねの国有財産審議会でございますが、これまた担当部局は大蔵省管財局、その出先でございます関東財務局、そういうところで地方審議会、さらには中央審議会ということになろうかと存じますが、本件については、審議会にまだかけておりません。現在まだ契約いたしておりませんので、まだかかってはおりません。
  87. 山内広

    ○山内委員 これは契約を結んでしまってからかけることになるのですか。それとも、そういう事実があったら、その適否の答申を求めるように私は常識上判断するのです。これは法を調べればすぐ出てくると思いますが、特にこういう相手方が会社であり、しかも、そこで事業をやりたい人なんですから、いろいろ問題もあろうかと思うので、こういうものを審議会の答申を経ないでどんどん話を進めて、契約をしちゃった、もう建物はどんどん工事にかかって、来年は入れる状態にある、これでは、審議会がこれは不都合な契約だと言っても、方法がないじゃありませんか、その辺はどうですか。
  88. 住吉君彦

    ○住吉説明員 おっしゃる通りに、こういう大規模の国有財産の処分でございますから、おそらく審議会に諮って、全体契約を一応御検討いただいて、その意見を徴した上でなされることかと存じますが、先ほど申しました一部敷地の交換でございまする四千坪、これについてはかけておりません。
  89. 山内広

    ○山内委員 これは、今まで法務省としては、行政財産として自分のところで使用もし、管理もして持ってきたものだ。それを今度売るのについては、普通財産に所管がえをして、そうして売り払ってしまう。しかも、これは、もうあなた方の手から半分離れてしまう。そういうときに、せっかくそれがために設けられている審議会に答申を求めないで、作業だけをどんどん運ぶということは、どうも私は措置としてはよろしくないと思う。これはもっと責任のある人の御回答をいただきたいと思います。場合によっては、大蔵省もこういうことを——僕は、これはここばかりを言っているのじゃない。全部行政財産というものをよそへ転用するときには、普通財産に書きかえて、帳面では押えているかもしれないが、今まで見たことも聞いたこともないものですから、大蔵省の所管にして、そうしていろいろなそういう会社との関係につながっていく。特に法務省であるあなた方は、法律は最も厳粛に守っていただかなければならぬし、相手方がこういう会社で、いろいろ誤解を招く点もたくさんあろうと思います。そういう点は、十分にこの審議会事情を話し、事前の答申を得て、計画と並行して進められなければ、私は大へんな問題だと思います。場合によっては、大臣なりあるいは大蔵省から責任者に来ていただいて御回答いただいてもいいのですが……。
  90. 津田實

    津田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、ただいま申し上げました川崎にあります一万坪の土地のうち、約四千坪につきまして、本牧の土地六千坪と交換をした、こういうことでございます。それにつきましては、この四千坪の土地につきましては、行政財産にあったものを用途廃止をいたしまして、普通財産といたしておるわけであります。普通財産といたしておりますけれども、これは国有財産法の八条の一項ただし書き、二項及び施行令の五条によりまして、依然として大蔵大臣に引き継がず法務大臣所管している、こういうことでございます。ところが、これを交換いたします、つまり、処分いたしますにつきましては、大蔵大臣と協議いたすということに、国有財産法二十七条でなっておる。そういたしますと、この点について、法務大臣は大蔵大臣に協議いたしておるということであります。ただし、国有財産地方審議会あるいは中央審議会は、大蔵大臣所管審議会で、それに諮問するかどうかは、大蔵大臣あるいはそれの地方部局の関東財務局長がきめる事柄なんであります。そこで、法務省といたしましては、この問題につきまして大蔵大臣に協議した際に、大蔵大臣がそれについて諮問するかどうかという問題は大蔵省がきめる問題でございますが、本件につきましては、国有財産地方審議会に諮問されていないという事実は、法務省として承知しておるわけですが、その具体的な、いかなる理由によって諮問されなかったかという点については、ただいまのところ、つまびらかにいたしておりません。
  91. 山内広

    ○山内委員 いろいろ大蔵省との関係もあるようですし、やはり関係者の責任のある人に、今後それをどうしてやるのか、これは法務省のあなた方の立場も誤解を招かないために、こういう相手方が事業会社ですから、正しくしておく必要があろうかと思います。そういう意味で、次会にまた関係者を呼んでただしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  92. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十五日午前十時より理事会、十時半より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十一分散会