○關(之)
政府委員 破防法の場合の
暴力主義的破壊活動には二つの類型があるわけであります。
一つの類型は、いわゆる内乱形態によるものでありまして、これは現在の
情勢から申しますと、いろいろの
暴力革命というものがこれに当たろうかと思います。第二の類型は、政治上の主義、施策を推進し、またはこれに反対すること、ただいまの池田
内閣の何々政策に反対だというようなことは、その政治上の主義、施策を推進し、支持し、またはこれに反対するというカテゴリーに一応入ってこようかと思います。そういうような意図のもとに、
暴力主義的破壊活動を十ほどあげておりますが、これはすべてその元の形を刑法にとっておりまして、例を申しますと、殺人、騒擾、汽車の転覆、あるいは放火、そして最も軽いもので、凶器または毒劇物を所持して
警察官などの公務執行を妨害する、こういう形になるわけであります。
そこで、
国会の
破防法の
審議におきましても、確かにそれらの点は問題になりましたが、今のような政治上の主義、施策は、現代では
日本の各政党なり組織なりがおやりになっていることでありまして、そんなことは一々
対象にならない。問題は、それがどういう行為をするかという問題であって、たとえばある労働組合が殺人をするとか、あるいは騒擾をするとか、あるいは凶器を持って
警察官の公務執行を妨害するということは、とうてい考えられないことでありますし、だから、幾らおやりになっても、そういうことをやらなければ
破防法の
対象には全然ならない。そこで、私
どもとしても、政治上のそういう頭からではなくて、下の方の
個々の行為、騒擾するとか、殺人するとか、あるいは汽車の転覆をはかるとか、あるいは毒劇物、硫酸とかいろいろ持って
警察官の公務執行を妨害するというような、そういう
個々的な行為とくっつかない限りにおいては、いかなる政治上の論議も
調査の
対象にはいたさないのでありまして、そういうふうにしてしぼったのが、今申し上げました左が
五つ、右が
五つ、こういうふうに限定されておるわけでありまして、決してこれが無制限に広がるということは考えていないのであります。かつての特別高等
警察官、治安維持法の
運用の結果、確かに若干の行き過ぎがあった、その反省によって生まれたのが、実はこの
破防法だろうと考えております。それは御存じだと思いますが、治安維持法の「
目的遂行ノ為ニスル行為」ということになりまして、極論いたしますと、
共産党員に御飯をくれてやったということだけで問題にまで展開する
可能性がありましたが、今の
破防法は、決してそういうことにはならないのでありまして、刑法のいろいろな
規定を取り上げて、刑法をちょっと広げただけでありまして、その刑法がしっかりしている限りにおいては、われわれがこれを勝手に広げることはできない。それは判例において、学説においてがっちりと固めておりますから、私
どもが勝手に広げることはできない。また、この十年間の
運用におきましても、それを勝手に広げてはいないのでありまして、これがどうにでもなるというものではないのであります。だから、この刑法の根本というものがゆるがない限りにおきましては、
破防法の
運用も、かつての治安維持法のようなえらいところまで行き過ぎになってしまうということは決してなかろう。これは十年間の
運用の実績で、私はそう考えている次第でございます。